主文 本件各控訴を棄却する。 理由 第1 各控訴の趣意本件各控訴の趣意は,主任弁護人松本恒雄,弁護人東俊一,同高田義之及び同中川創太連名作成の控訴趣意書,主任弁護人松本恒雄各作成の控訴趣意書及び平成14年7月8日付け意見書に記載のとおりであり,これに対する答弁は,検察官高橋信行作成の答弁書に記載のとおりであるから,これらを引用する(なお,以下の説明に際しては,原審記録の証拠等関係カードの記載中,原審検察官請求証拠番号を「原審検1」などと,原審弁護人請求証拠番号を「原審弁1」などと略称する。)。 各論旨は,要するに,次のようなものである。 1 本件の被告人A(以下「被告人A」ともいう。)らに対する税務調査としての質問検査は,同被告人から被告人B株式会社及び被告人C株式会社(以下,それぞれ「被告人B」,「被告人C」といい,この両社を併せて「被告人2社」ともいう。)を申告人とする各修正申告書の提出依頼を受けた税理士のD(以下「D」ともいう。)が,今治税務署副署長のE(以下「E」ともいう。)にその修正申告についての事前相談を持ち掛けたことをきっかけにして,しかも,同税務署からの連絡を受けて急きょ開始された高松国税局調査査察部(以下「調査査察部」ともいう。)による被告人2社に対する犯則調査に協力する方針の下に実施されたもので,調査査察部は,この質問検査によって得た供述や帳簿類等に基づいて臨検・捜索・差押許可状の発付を受け,それにより差し押さえた証拠資料を基に犯則調査を遂げた結果, 被告人らを検察官に告発し,この告発を受けた検察官も,その犯則調査によって得られた証拠資料に全面的に依拠して本件公訴を提起したものである。このような税務調査及び犯則調査の手続は,法人税法156条 告人らを検察官に告発し,この告発を受けた検察官も,その犯則調査によって得られた証拠資料に全面的に依拠して本件公訴を提起したものである。このような税務調査及び犯則調査の手続は,法人税法156条並びに憲法31条,35条及び38条に違反するものであるから,この各手続により得られた証拠資料に全面的に依拠した本件公訴は,無効なものとして公訴自体棄却されるべきである。仮に公訴が棄却されないとしても,原審で取り調べられた検察官請求の書証や証拠物のうち,上記質問検査以降に収集されたものは,違 法収集証拠に該当するから,刑事手続の証拠から排除されるべきである。それにもかかわらず,原判決は,前提事実の認定を誤り,上 記各法令の解釈適用をも誤った結果,(1)不法に公訴を受理し,仮にそうでなくても,(2)上記の違法収集証拠を証拠として取り調べた上,本件の罪証に供する誤りを犯したものであり,しかも,この(2)の手続違反は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから,いずれにしても破棄を免れない。 2 原審弁護人が請求した書類の取寄せ(取寄先を高松国税局,取り寄せるべき書類を,平成6年2月から同年4月12日までの間に,調査査察部が被告人B,被告人Cを被調査者として銀行調査をすることを承認する旨の,高松国税局長の証印のある書面,とするもの〔原審弁108〕),各証拠物の差押え((1)差し押さえるべき物を,調査査察部が高松簡易裁判所から捜索差押許可状の発付を受けるに当たり,メモ〔原審弁2はその写し。以下,このメモを「預金残高メモ」ともいう。〕の作成者,意義,入手経路などについて言及した査察官報告書,差押えの場所を松山地方検察庁,とするもの〔原審弁109〕,(2)差押えるべき物を,(1)と同内容の査察官報告書,差押えの場所を高松国税局,とす 意義,入手経路などについて言及した査察官報告書,差押えの場所を松山地方検察庁,とするもの〔原審弁109〕,(2)差押えるべき物を,(1)と同内容の査察官報告書,差押えの場所を高松国税局,とするもの〔原審弁110〕,(3)差押えるべき物を,調査査察部が,平成6年4月13日,高松簡易裁判所に対し被告人Bを犯則嫌疑者とする臨検・捜索・差押許可状を請求するに当たり,同裁判所に提出した疎明資料のうち,(ア)同許可状請求書に添付した疎明資料目録,(イ)同許可状請求書に記載された,事業年度が平成3年8月1日から平成4年7月31日まで及び事業年度が平成4年8 月1日から平成5年7月31日までの各隠ぺい所得金額中,振出人が不明の手形・小切手の各入金が隠ぺい所得にかかる売上げである旨を記述した査察官報告書,とするもの〔原審弁115〕)及び調査査察部査察第1部門主査のF(以下「F」ともいう。)の証人尋問(立証趣旨を,平成6年4月15日付け甲銀行X支店の証明書〔原審検甲133〕添付の要求払預金入出金明細表の入金額のうち,「集中取立手形入出金明細表のため不明」というのは,平成6年4月時点においても,約束手形の振出人名が不明であるということを意味しているところ,証人は被告人Bを嫌疑法人とする臨検・捜索・差押許可状を請求するに当たり,上記入手先不明の金額について,それが隠ぺい所得の一部であるとどのようにして疎明することができたのか,その他関連事項とするもの〔原審弁114〕)は,本件の税務調査及び犯則調査に関する事実関係を解明する上で不可欠のものであったのに,原審裁判所は,この各請求をいずれも却下しただけでなく,検察官に対しても,そうした事実関係の有無についての適切な釈明権を行使しないまま判決に至ったもので,こうした点において, のものであったのに,原審裁判所は,この各請求をいずれも却下しただけでなく,検察官に対しても,そうした事実関係の有無についての適切な釈明権を行使しないまま判決に至ったもので,こうした点において,原審の訴訟手続には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反がある。 3 国税犯則取締法による犯則事件の調査手続は,実質的には租税ほ脱犯の捜査としての機能を有するものではあるけれども,本来, 国税の公平確実な賦課徴収という行政目的を実現するためのものであって,国税通則法65条5項の要件を満たす修正申告書の提出があった場合には,この行政目的が達成されたことになるから,そうした修正申告書の提出は,当該租税ほ脱犯についての可罰的違法性を失わせるか,超法規的違法性阻却事由となるかして,犯罪の成立を阻却し,仮にそうでなくても,超法規的処罰阻却事由となって, 刑を免除すべき場合に当たると考えられる。したがって,そうした修正申告書を提出した被告人らは,いずれも無罪であるか,その各刑を免除されるかするべきであるのに,こうした点を看過して被告人らを有罪とし,被告人らにそれぞれ主文掲記の各刑を言い渡した原判決は,平成10年法律第24号による改正前の法人税法159条(以下,単に「法人税法159条」という。)の適用を誤っており,しかも,この誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかである。 以上のとおりである。 そこで,以上の各点について,各所論(当審弁論をも含む。)にかんがみ,記録を調査し,当審における事実取調べの結果をも併せて検討する。 第2 各控訴趣意中,上記第1の1の主張(前提事実に関する事実誤認及び法令の解釈適用の誤りが,ひいて公訴の不法受理及び訴訟手続の法令違反を招いたとの主張)について 1 本件の主要な事実経過関係証拠による 意中,上記第1の1の主張(前提事実に関する事実誤認及び法令の解釈適用の誤りが,ひいて公訴の不法受理及び訴訟手続の法令違反を招いたとの主張)について 1 本件の主要な事実経過関係証拠によると,本件の主要な事実経過は,原判決が「争点に対する判断」の第1で認定するとおりであると認められ,これに関係証拠によって認められる若干の事実を付加して示すと,以下のとおりとなる。 (1) 被告人Aは,平成6年4月7日,税理士のDに,被告人2社が合計約5億円の売上げを除外して法人税を免れていることなどを打ち明け,同月9日にはDに修正申告をして欲しい旨依頼した。この依頼を引き受けたDは,その売上除外の額が多額に上ることなどから,同月11日午前11時30分ころ,自ら今治税務署に赴き,Eに対し,被告人2社が多額の売上除外をしていることを打ち明けて,修正申告の可否等について相談した。 (2) Eは,翌同月12日午前9時ころになって,Dからの上記相談内容を同税務署法人課税第1部門統括国税調査官のG(以下「G」ともいう。)及び同第3部門統括国税調査官H(以下「H」ともいう。)に伝え,3名で対応を協議した結果,事実の確認などのために同署職員を税務調査に行かせることにした。 (3) そこで,GとHとは,同日午後0時30分ころ,部下の同税務署法人課税第3部門所属上席国税調査官のI(以下「I」ともいう。)及び同部門所属国税調査官のJ(以下「J」ともいう。)に対し,被告人2社に対する税務調査を指示した。また,Eは,同日午後1時過ぎころ,D に電話をして,職員を調査に行かせる旨伝えた。 (4) IとJとは,上記指示に従い,同日午後1時30分ころ,被告人2社の事務所(所在場所は同じ。)に赴き,そのころから同日午後4時前ころまでの間, に電話をして,職員を調査に行かせる旨伝えた。 (4) IとJとは,上記指示に従い,同日午後1時30分ころ,被告人2社の事務所(所在場所は同じ。)に赴き,そのころから同日午後4時前ころまでの間,D立会いの下,被告人Aやその妻のK(以下「K」ともいう。なお,当時Kは被告人Bの代表取締役の地位にあった。)に対し,修正申告を申し出た事業年度についての売上除外の方法やその金額,売上除外の動機,修正申告を決意するに至った動機等について質問するなどした。また,IとJとは,被告人Aらから,(ア)被告人Bの平成2年7月期,平成3年7月期,平成4年7月期の総勘定元帳,(イ)被告人Cの平成2年1月期,平成3年1月期,平成4年1月期の総勘定元帳,(ウ)請求書4冊,(エ)売上帳2冊,(オ)手形帳1冊を預かり,その旨の預り証を作成して交付したほか,(カ)簿外資産である定期預金の名義人や残高等が記載された預金残高メモ5枚,(キ) 売上除外金額が集計された除外金額集計表(以下「除外金額集計表」ともいう。)6枚(原審弁3はその写し),(ク)複数の普通預金通帳 (以下,単に「普通預金通帳」ともいう。)の表紙裏の見開き部分のそれぞれの写しを受領した。 (5) 他方,調査査察部では,平成6年3月22日,被告人2社に対する内てい立件決議をし,同日付けで内てい立件決議書を作成した。そして,この決議に基づき,広島国税局調査査察部長に対し,同月23日付けで防府税務署に対するL及びM株式会社(被告人Bと取引関係があったもの)の課税事績等の収集を,同月24日付けで広島南税務署に対するN有限会社(被告人Cと取引関係があったもの)の直近4年分の確定申告書外の徴求等を,それぞれ嘱託したほか,東京国税局査察部長に対し,同月23日付けで横浜市中区役所に対する被告人Aの娘 署に対するN有限会社(被告人Cと取引関係があったもの)の直近4年分の確定申告書外の徴求等を,それぞれ嘱託したほか,東京国税局査察部長に対し,同月23日付けで横浜市中区役所に対する被告人Aの娘夫婦のO及びP(以下「O夫婦」ともいう。)の住民票の徴求及び課税事績の収集を嘱託し,同年4月8日までにそれらの回報を得ていた。 (6) また,調査査察部は,同年4月12日,同部職員の査察官Q(以下「Q」ともいう。)を派遣し,今治市役所において被告人A及び当時の被告人Bの代表取締役R(以下「R」ともいう。)の住民票を,波方町役場において被告人A及びRの戸籍謄本を,松山地方法務局今治支局において被告人2社の商業登記簿謄本を入手した。 (7) さらに,調査査察部は,同月13日,高松簡易裁判所に対し,被告人2社の事務所,被告人Aの居宅及び各金融機関を臨検場所とする臨検・捜索・差押許可状の請求をし,同日中にその発付を受けた。そして,その際の法人税法違反の嫌疑事実は,被告人Bだけを嫌疑者とした上,平成3年7月期の隠ぺい所得額が6873万円,ほ脱税額が2577万3000円,平成4年7月期の隠ぺい所得額が1億30 14万2000円,ほ脱税額が4880万3000円,平成5年7月期の隠ぺい所得額が6143万1000円,ほ脱税額が2303万7000円であるとするものであった。 (8) そして,翌14日,調査査察部は,R立会いの下に被告人2社の事務所を,被告人Aら立会いの下に同被告人方居宅をそれぞれ臨検するなどし,帳簿等の証拠品を押収した。そして,上記(4)のとおりIらが税務調査の際に預かっていた総勘定元帳等については,被告人 2社の事務所において,今治税務署からRにいったん返却された上で,調査査察部係官によって改めて押収された。 2 法人税法156条の法 りIらが税務調査の際に預かっていた総勘定元帳等については,被告人 2社の事務所において,今治税務署からRにいったん返却された上で,調査査察部係官によって改めて押収された。 2 法人税法156条の法意ところで,法人税法156条は,税務調査における「質問又は検査の権限は,犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」 旨規定し,その質問検査の権限を,租税の公平確実な賦課徴収のために必要な資料を収集するという行政目的の範囲内に限定しているが,昭和29年法律第92号による改正前の商品取引所法151条のようないわゆる使用免責を定めた規定(同条は「何人も,自己が訴追又は処罰を受ける虞があることを理由として,……陳述若しくは報告をし,……報告若しくは資料の提出をし,……帳簿書類その他の物件の検査若しくは調査を受ける義務を免れることができない。但し,その義務を履行することによって自己が訴追又は処罰を受ける虞があることを主張したにもかかわらず,その陳述,報告,資料の提出又は帳簿書類その他の物件の検査若しくは調査を求められた者は,……当該陳述,報告,資料又は帳簿書類その他の物件を証拠として訴追され,又は処罰されない。」旨規定する。なお,同条は既に廃止された。)などと対比して検討すると,そうしたことを明示していない法人税法156条が,行政目的を常に優先させて,質問検査により得られた上記資料を犯則調査又はそれに引き続く犯罪捜査等の刑事手続に利用することを一般的に禁ずる趣旨のものであるとは解されない(なお,最高裁昭和51年7月9日判決・裁判集刑事201号137頁,最高裁平成10年3月4日決定・税務訴訟資料第233号69 9頁参照)。もっとも,税務当局が,税務調査のための質問検査の権限を犯則調査又は犯罪捜査のための手段として行使した 集刑事201号137頁,最高裁平成10年3月4日決定・税務訴訟資料第233号69 9頁参照)。もっとも,税務当局が,税務調査のための質問検査の権限を犯則調査又は犯罪捜査のための手段として行使したような場合には,刑事手続における令状主義の原則を定めた憲法35条や自己負罪拒否権(以下「黙秘権」ともいう。)を定めた同法38条の趣旨を没却することにもなりかねないから,そうした質問検査を手段とした税務調査は法人税法156条に違反するというべきであり,その手続により収集された証拠資料,更にはその証拠資料を手掛かりに派生的に収集された証拠資料を,刑事手続の証拠から排除すべきかどうかを検討する必要がある。 3 本件税務調査の法人税法156条違反の有無そこで,今治税務署の職員らが,本件の税務調査において,質問検査の権限を犯則調査又は犯罪捜査のための手段として行使したといえるかどうかについて検討する。 (1) Iらに本件の税務調査を指示したGは,原審での証言等において,その当時,調査査察部が被告人2社について内偵調査を進めていたことは全く知らず,本件の税務調査に当たり,同部の犯則調査に協力する意図などは有していなかった旨述べ,原判決も,このGの証言部分を信用し得るとしている。 しかしながら,(ア)被告人2社の売上除外の総額は非常に多額であって,Gにおいても,Iらに税務調査を指示する前から本件が調査査察部による犯則調査に発展する可能性の高い事案であると考えていたこと,(イ)裏付け資料までは示されなかったとはいえ,本件の売上除外の情報は当該会社の経営者の依頼を受けたという税理士のDから副署長のEに直接持たらされたものであり,Dは,Eに対し,その大まかな金額や当該会社の業種のほか,最終的には被告人2社の会社名をも明らかにしてい は当該会社の経営者の依頼を受けたという税理士のDから副署長のEに直接持たらされたものであり,Dは,Eに対し,その大まかな金額や当該会社の業種のほか,最終的には被告人2社の会社名をも明らかにしていたのであって,その情報は一般の部外情報に比べれば信用性が高いものであったとみられ,しかもGはそうした事情をEから全て知らされていたこと,(ウ)最終的には上記1(3) のとおり,EがDに対し電話で職員を被告人2社の事務所に調査に行かせる旨伝えたものの,Gは当初Iらに対し事前連絡なしに調査に行くよう指示していたのであって,このことからは,Gが,被告人2社による証拠資料の隠滅を気に掛けていたことがうかがわれるが,G のこうした問題意識は,証拠資料の隠滅を避けるために臨検・捜索・差押許可状の請求を急きょ早めたという調査査察部のそれと共通するものがあること,(エ)Gが本件について電話連絡を取った相手方(ただし,その時期はしばらく措く。)の調査査察部査察第1部門総括主査のS(以下「S」ともいう。)は,Gのかつての上司であり,GはSの要望に簡単に応じて,Iらが被告人Aらから受領して帰った上記 1(4)の帳簿類等のうち,同(カ)ないし(ク)の各書類写しを調査査察部にファックスで送信していることなどの事情を総合すると,Iらに本件の税務調査を指示する以前に,Gか,場合によっては他の今治税務署の職員かが,被告人2社に多額の売上除外がある旨の情報を,Sあるいは他の調査査察部の職員に提供していたと推測するのも,それなりに合理性があるというべきである。 しかも,原判決は一蹴しているものの,Gの上記証言部分の信用性を判断するに当たり,上記1(6)のQの行動の持つ意味を軽視することができない。すなわち,上記のとおり,Qは,平成6年4月12日,少なく しかも,原判決は一蹴しているものの,Gの上記証言部分の信用性を判断するに当たり,上記1(6)のQの行動の持つ意味を軽視することができない。すなわち,上記のとおり,Qは,平成6年4月12日,少なくとも,今治市役所,波方町役場及び松山地方法務局今治支局の3か所を回って,被告人A及びRの各住民票,各戸籍謄本のほか,被告人2社の商業登記簿謄本を入手したことが認められるが, 調査査察部査察第1部門統括国税査察官のT(以下「T」ともいう。)やSもその原審での各証言中で自認するとおり,Qによるこうした書類の入手は,その請求予定の時期はともかく,被告人2社の事務所等を臨検場所とする臨検・捜索・差押許可状の請求に備えたものであることが明らかである。ところで,Tは,原審において,最終的には「Qを行かせたのは,あらかじめ4月下旬に予定していた令状請求に備えたからであって,13日の令状請求を予定してのことではない。」旨証言するに至っているものの,当初は,原審弁護人の質問に対し,明確に,それは「13日の令状請求のためである。」旨証言していたのであって,こうした証言の変遷過程や,上記のようなQによる関係書類の入手時期と臨検・捜索・差押許可状の請求時期との関係などによると,この両者のうちでは当初の証言の方がより信用性が高いものと考えられる。そして,これを前提にして更に検討するに,Gの原審での証言によると,当時,調査査察部のある高松市内から今治市内に赴くのに約3時間はかかったというのであり,このことに,上記市役所等の執務時間(原審弁50,51,53及び54によると,少なくとも被告人A及びRの各住民票及び各戸籍謄本は,窓口での交付であったことが明らかである。),Qが上記の3か所を回って住民票等を入手するのに要したであろう時間などを併せ考える び54によると,少なくとも被告人A及びRの各住民票及び各戸籍謄本は,窓口での交付であったことが明らかである。),Qが上記の3か所を回って住民票等を入手するのに要したであろう時間などを併せ考えると,Qはどんなに遅くとも同月12日の昼過ぎころまでには,翌13日に予定された被告人2社の事務所等を臨検場所とする臨検・捜索・差押許可状の請求に不可欠な上記書類を入手すべく,高松市内を出発したものと推測するよりほかなく,こうしたことは,遅くともその出発時刻までには,今治税務署と調査査察部との間で,被告人2社の売上除外をめぐって何らかの接触があったことを疑わせる余地を残しているというべきである。 以上のような事情を総合すると,Gの原審での証言等のうち,本件に関し調査査察部と連絡を取り合ったのは,帰署したIらからの復命を聞いた後,Sに電話連絡したのが最初である旨の部分は,その信用性に疑問が残るといえる。また,現実に本件の税務調査に赴いた Iらにまで,こうした事情が知らされていなかったことも十分考えられるところであるから,Gの上記証言に沿うかのようなIの別件民事裁判での証言内容(原審弁86及び87)やJの原審での証言によっても,この疑問は払しょくされず,関係証拠を検討しても,他にこの疑問を払しょくさせるに足りる的確な証拠は見出せない。 (2) 以上で検討してきたところによると,Gあるいは他の今治税務署の職員が,遅くともGらがIらに被告人2社に対する税務調査を指示するまでには,被告人2社に多額の売上除外がある旨の情報をSあるいは他の調査査察部の職員に提供していた可能性を否定し去ることができない。そして,こうしたことに加えて,上記3(1)(ウ)でも指摘したとおり,その時点での調査査察部及びGを含む同税務署側の問題意識は,いずれも専ら に提供していた可能性を否定し去ることができない。そして,こうしたことに加えて,上記3(1)(ウ)でも指摘したとおり,その時点での調査査察部及びGを含む同税務署側の問題意識は,いずれも専ら被告人Aらによる証拠資料の隠滅を防止するという点にあったと認められることをも併せ考えると,Iらによる税務調査は,(ア)被告人Aらによる本件の証拠資料の隠滅を恐れたSあるいは他の調査査察部の職員が,証拠資料を保全するために何らかの手段を講じるようにGら今治税務署の職員に依頼し,それに同税務署職員が応じたか,(イ)Gら同税務署職員の側が自主的にそうしたことを慮って,調査査察部の犯則調査に協力する意図の下,証拠資料の保全を図るために,税務調査を行ったかのいずれかである可能性を排除することができない。そうすると,本件の税務調査の手続は,質問検査の権限を犯則調査又は犯罪捜査のための手段として行使したものと一面で評することができるから,本件の税務調査は,法人税法156条に違反するものであると考えるよりほかない。 (3) なお,原判決は,(ア)Iらが税務調査に赴くに当たって,事前にEからDに対して職員を調査に行かせる旨を連絡していること,(イ)Iらは,D の立会いを積極的に容認した上で,税務調査を行っていること,(ウ)その調査の態様も,不正計算の方法,修正申告の動機等を聴取し,被告人Aらの供述に係る事業年度分の帳簿類を預かり,預金残高メモ,除外金額集計表及び定期預金通帳の表紙の各写しを受領しただけであり,その間,Iらが被告人Aらに対してこれらの書類の提出を執ように迫るなどといったことはなく,質問検査としての一般的な態様を逸脱していなかったことなどは,Gらが当時,調査査察部が被告人2社を内偵調査していることは知らず,同部の犯則調査に協 類の提出を執ように迫るなどといったことはなく,質問検査としての一般的な態様を逸脱していなかったことなどは,Gらが当時,調査査察部が被告人2社を内偵調査していることは知らず,同部の犯則調査に協力しようという意図を有していなかったとすることとも平仄の合う行動といえる旨説示しているが,こうした一連の行動は,Gらがそうした意図を隠しながら,通常の税務調査を装った結果であると見る余地も十分にあるから,原判決指摘の点が上記判断を決定的に左右するとは考えられない。 4 法人税法156条に違反する税務調査の手続及びそれに派生する手続により得られた証拠の刑事手続における証拠能力上記のとおり,本件の税務調査の手続が法人税法156条に違反するものである以上,その手続及びそれに派生する手続により得られた証拠の刑事手続における証拠能力の有無について検討する必要があるところ,その検討に当たっては,本件の税務調査の手続に,刑事手続における令状主義の原則を定めた憲法35条や黙秘権を定めた同法38条の趣旨などを没却するような重大な違法があり,この手続及びそれに派生する手続により得られた書証や証拠物を証拠として許容することが,将来におけるそうした違法な手続を抑制する見地から相当でないと認められるかどうかを考察すべきである。 (1) 令状主義違反や黙秘権侵害の有無関係証拠によると,被告人Aらが上記1(1)の修正申告を決意するに至った経緯,同1(4)のIらによる税務調査の内容やその際の被告人Aらの応対ぶりは,おおむね次のとおりであったと認められる。すなわち,ア被告人2社の売上除外金を定期預金にするなどして管理して来たKは,新聞,テレビなどで脱税のニュースを見聞きするたびに不安な気持ちになっていたが,平成6年2月ころ,上記定期 る。すなわち,ア被告人2社の売上除外金を定期預金にするなどして管理して来たKは,新聞,テレビなどで脱税のニュースを見聞きするたびに不安な気持ちになっていたが,平成6年2月ころ,上記定期預金のうち,甲銀行X支店にU名義でしていた定期預金について満期の案内があったため,同支店に赴いたところ,同支店職員から同支店に高松国税局が来ているので,今は書換えなどの手続はしないほうがよい旨聞かされ,早速このことを被告人Aに伝えた。 Kからこの話しを伝え聞いた被告人Aは,被告人2社が高松国税局の調査対象になっているのかも知れないとの不安を抱き始め,同年3月に入ってから,被告人2社の取引先である乙銀行Y支店にも高松国税局による調査が入ったかどうかを問い合わせたところ,同支店職員から,被告人2社が調査対象ではないと思うが調査には来た旨の解答を得て,更に不安を募らせ,同年4月6日には,これに追い打ちをかけるように,被告人Aあてに「高松国税局の査察部が被告人2社を調べている。税理士に早く相談したほうがよい。」との趣旨の匿名の手紙が送付されてきたため,ついに上記1(1)のように,Dに相談を持ち掛けることにした。 当時,被告人Aは,不安の余り夜もよく眠れない状態に陥っており,相談に際して,Dに「本件で自首する方法はないのか。」と問うたところ,同人から修正申告をする方法がある旨聞かされたため,被告人2社について修正申告をすれば,重加算税の賦課までは免れることができるかも知れないし,法人税のほ脱についても,罪が軽くなるか,場合によっては罪を問われなくなるかも知れないなどと考えて, 修正申告を決意するに至った。 イ Iらによる税務調査は,上記1(1)ないし(3)の経緯をたどった後,同1(4)のように関与税理士のD立会いの下に実 を問われなくなるかも知れないなどと考えて, 修正申告を決意するに至った。 イ Iらによる税務調査は,上記1(1)ないし(3)の経緯をたどった後,同1(4)のように関与税理士のD立会いの下に実施されたが,その調査の内容は,原判決も適切に説示するとおり,修正申告を申し出た事業年度についての売上除外の方法やその金額,売上除外の動機, 修正申告を決意するに至った動機等を聴取したほか,被告人Aらが売上除外をした旨供述する事業年度分の帳簿類を言われるままに預かり,預金残高メモ,除外金額集計表及び普通預金通帳の表紙の各写しを受領しただけであった。 その間,Iらが,被告人Aらに対し供述を強要したり,こうした書類の提出を執ように迫ったりするようなことはなく,被告人AらはIらの質問に対し率直に解答し,帳簿類等を出し渋る様子も見せなかった。 以上のような被告人Aらが修正申告を決意するに至った経緯や税務調査時における応対ぶりなどによると,被告人Aらは,自分らがした上記のような不利益供述や,Iらに預けたいわゆる裏帳簿を含む帳簿類等が,場合によっては被告人2社や被告人Aらの刑事責任追及のために用いられるかも知れない旨十分認識しながらも,上記のとおり,法人税のほ脱について罪が軽くなるか,うまくいけばその罪を問われなくなるかも知れないなどとの思惑から,Iらの質問に対し任意に供述し,上記帳簿類等も任意に提出したと認めることができる。そうすると,本件の税務調査に際し,被告人Aらの黙秘権が実質的に侵害されたことはなく,また,令状主義に違反する行為も同様なかったといえる。 (2) 本件の税務調査自体の法規から逸脱の度合いア税務調査の必要性本件においては,DがEに打ち明けた被告人2社の売上除外の額が非常に多額であったこと,被告人2社 様なかったといえる。 (2) 本件の税務調査自体の法規から逸脱の度合いア税務調査の必要性本件においては,DがEに打ち明けた被告人2社の売上除外の額が非常に多額であったこと,被告人2社が突然多額の修正申告を申し出てきた動機や経緯も明らかでなかった上に,いわゆる事務方を通さずに副署長のEにいきなり相談を持ち掛けてきたことも,何らかの事情の存在をうかがわせたことなどによると,客観的に見て,被告人2社に対する税務調査の必要性は十分にあったと認めることができる。 イ質問検査の態様等Iらによる質問検査の内容やその態様は,上記4(1)イのとおりであって,関与税理士の立会いをも得た本件の質問検査は,質問検査としての一般的な態様を逸脱していなかったことはもとより,上記の質問検査の必要性に照らしても,相当な範囲内のものであったと認められる。 ウ調査査察部による犯則調査の進ちょく状況等上記1(5)の事実などからも明らかなように,調査査察部は,本件の税務調査以前から,被告人2社の犯則に関して内偵調査を相応に進めており,本件の質問検査は,被告人2社に対する犯則調査の端緒にもなっていない。 このように,Gら今治税務署職員の主観的な意図を抜きにすると,本件の税務調査は客観的にはその要件を満たしたものといえる上に,上記のとおり,その調査の中では令状主義違反や黙秘権侵害もないのであって,こうしたことに,上記のように本件の質問検査は犯則調査の端緒にもなっていないことをも併せ考えると,本件の税務調査自体の法規からの逸脱の度合いは,実質的には小さかったといえる。 (3) 小括【要旨】以上で検討してきたところによると,本件の税務調査は法人税法156条に違反するものではあるけれども,その手続に令状主義違反や黙秘権侵害はな 実質的には小さかったといえる。 (3) 小括【要旨】以上で検討してきたところによると,本件の税務調査は法人税法156条に違反するものではあるけれども,その手続に令状主義違反や黙秘権侵害はなかった上に,その手続自体の法規からの逸脱の度合いも実質的には小さかったといえるから,その違法はいまだ重大なものであるとはいえず,また,本件のほ脱事案としての重大性(関係証拠によって明らかなように,本件は長期にわたる非常に多額の法人税ほ脱事件であり,その各犯行態様も,同和団体に属する人物に依頼して指導を仰ぎ,売上げを除外するなどした上,税務調査を免れるために同団体名義等で申告するなどして敢行したものであって,この種事件の中でも甚だ悪質で重大な事案である。)等をも考慮に入れると,この手続により得られた証拠はもとより,それに派生する手続により得られた証拠を被告人らの罪証に供することが,違法な手続の抑制の見地から相当でないともいえないから,こうした証拠の証拠能力はこれを肯定するのが相当である。 5 被告人らの各所論の検討(1) 各所論は,税務調査と犯則調査とは共に行政手続に属するが,その目的や機能の面においては全く別個の手続であるから,現実の権限行使に当たっても両者は峻別して行使されるべきところ,この峻別原則の実効性を確保し,他方で,公平な課税実現の要請にもこたえるためには,税務調査中に犯則事件が探知された場合に調査査察部への連絡が許される場面があるとしても,それは,課税庁が質問検査による調査を進め,過少申告に基づく更正処分・決定処分をした場合,又は,当該処分をするだけの調査の進展があった後に,調査事実中に「隠ぺい・仮装がある」として重加算税を賦課決定し,もしくは賦課決定すべき事実が判明した場合などに限られ,しかも,その場合 場合,又は,当該処分をするだけの調査の進展があった後に,調査事実中に「隠ぺい・仮装がある」として重加算税を賦課決定し,もしくは賦課決定すべき事実が判明した場合などに限られ,しかも,その場合でも,事案の概要を連絡することが許されるにとどまり,収集資料をそのまま引き継ぐことまでは許されないと解するのが相当である旨主張する。 しかしながら,上記のとおり,質問検査により得られた証拠資料を犯則調査又はそれに引き続く犯罪捜査等の刑事手続に利用することも一般的には禁止されず,しかも,事案によっては,早期に強制手段を用いた犯則調査等を機動的に実施しないと,罪証隠滅を招いて真相の解明が困難になる場合も容易に想定し得るところであるから,証拠資料の利用制限をいう点はもとより,連絡可能時期を制限的に理解すべきである旨いう点も,およそ採り得るものではない。この各所論は採用することができない。 (2) 各所論は,国税通則法65条5項は過少申告加算税や重加算税の除外要件を定めて,自発的な修正申告を奨励しているが,本件においても,被告人Aは,その期待にこたえて被告人2社の各修正申告書を提出するべく,Dを通じて今治税務署に事前協議を求めたのであって,それにもかかわらず,そのことを逆手に取って,過少申告の情報を調査査察部に連絡したり,質問検査により入手した証拠資料等を同部に提供したりすることにより,被告人らに刑事罰を科することは,いわば納税者を,上記の各加算税の免除というわなにかけて処罰するに等しく,こうした犯則調査の手法は著しく正義の観念に反し,適正手続を定めた憲法31条に違反する旨主張する。 しかしながら,税務調査中に犯則事件が探知された場合に,課税庁がその事実を調査査察部へ連絡すること,更には税務調査により得られた証拠資料を同部に提供す 続を定めた憲法31条に違反する旨主張する。 しかしながら,税務調査中に犯則事件が探知された場合に,課税庁がその事実を調査査察部へ連絡すること,更には税務調査により得られた証拠資料を同部に提供することが一般的に禁止されないことは,繰り返し説示するとおりであり,また,課税庁がそうしたことをするについて時期的な制限はないと解されるから,仮にその経緯において各所論指摘のような事情があったとしても,それを端緒に同部が犯則調査に着手すること(なお,本件では,今治税務署から連絡が犯則調査の端緒にもなっていないことは,上記のとおりである。) が,憲法31条に違反するなどとは到底いえない。この各所論も採用することができない。 (3) 各所論は,Dが今治税務署のEの下を訪れた平成6年4月11日以前に,調査査察部が被告人2社に対する銀行調査などの内偵調査を実施していた事実はなく,同月12日のGからの情報提供及び証拠資料の送付がなされた時点では,同部において本件の各嫌疑事実を把握していなかったし,それを疎明するために必要な証拠も収集していなかったのであって,被告人2社の事務所等を臨検場所とする臨検・捜索・差押許可状の請求に当たっては,被告人Aらから提供された上記の帳簿類等を疎明資料として利用したことが明らかであるから,本件の税務調査及び犯則調査の手続には重大な違法がある旨主張する。 しかしながら,上記のとおり,税務調査により取得した証拠資料等を犯則調査に利用すること自体が一般的に禁止されることはないから,調査査察部による内偵調査の到達度を問題にし,そうした証拠資料の利用の違法をいうのは,そもそもその主張自体が当を得ないものであって,本件で,各所論のように同部による内偵調査の到達度を議論することに実益は存しない。 しかしながら 問題にし,そうした証拠資料の利用の違法をいうのは,そもそもその主張自体が当を得ないものであって,本件で,各所論のように同部による内偵調査の到達度を議論することに実益は存しない。 しかしながら,この点は原審以来重要な争点になっていることから,被告人AらがIらに提供した上記の帳簿類等が,被告人2社の事務所等を臨検場所とする臨検・捜索・差押許可状の請求に当たり,どの程度利用されたかについて,それに関連する事項をも含め,当裁判所の検討の結果を簡潔に示しておく。 ア上記1(4)の(カ)ないし(ク)の預金残高メモ写し等について(ア) 関係証拠によると,Gが,Iらの持ち帰った上記帳簿類等のうち,預金残高メモ5枚,除外金額集計表6枚及び普通預金通帳の表紙裏の見開き部分のそれぞれの写しを,調査査察部あてファックスで送信したこと,上記の臨検・捜索・差押許可状を請求するに当たり,ファックス送信されたこれら書類写し(以下,この項では特に断らなくてもファックス送信されたものであることを前提とする。)のうち,少なくとも預金残高メモ写し5枚のうちの1枚(5枚目)をV農業協同組合を臨検場所とすることについての疎明資料として利用したことが明らかであり,この点については検察官もあえて争わない。 ところで,上記預金残高メモ写し5枚は,Kが,Dの指示により,現存する被告人2社の売上除外金を原資とした定期預金の名義人,その金額,預金年月日及び金融機関名を記載して作成したものの写しであるが,その名義人の中には,被告人A,同被告人との身分関係が明らかなK(平成2年9月28日受付の被告人Bの法人税申告書〔原審検9〕中には,Kが被告人Aの妻である旨の記載がある。)及び O夫婦(上記のように調査査察部が同夫婦の住民票を徴求していることに照らすと,被告人Aと同 年9月28日受付の被告人Bの法人税申告書〔原審検9〕中には,Kが被告人Aの妻である旨の記載がある。)及び O夫婦(上記のように調査査察部が同夫婦の住民票を徴求していることに照らすと,被告人Aと同夫婦との身分関係を把握していたものとみられる。)以外に,同被告人らとの身分関係が必ずしも分明ではない者も数名含まれており,中でも,こうした者を名義人とする定期預金しか存在しないW農業協同組合分(預金残高メモ写しの3枚目)について,調査査察部が預金残高メモ写しの入手前にどのようにしてその存在を把握するに至ったのかは,関係証拠によっても明らかになっていない。そうすると,同部が,この預金残高メモ写しの3枚目を,W農業協同組合を臨検場所とすることについての疎明資料とした疑いも否定し得ない。 そして,こうしたことのほか,上記各書類の写しはその内容に照らし臨検・捜索・差押許可状請求の疎明資料としての価値を十分に有するものであることなどをも踏まえて検討すると,調査査察部が,わざわざGからファックス送信された上記各書類の写しを,預金残高メモ写し1枚を除き,疎明資料(直接添付するなどしたか,報告書等の記載中に引用したかなどの方法は問わない。)として全く利用しなかったなどというのは疑問であり,同許可状の請求者のFをはじめとする調査査察部の職員らの原審での各証言等によっても,この点に関する検察官の立証が尽くされているとは言い難い。 (イ) そうすると,調査査察部が,臨検・捜索・差押許可状を請求するに当たり,ファックス送信された上記預金残高メモ5枚,除外金額集計表6枚及び普通預金通帳の表紙裏の見開き部分のそれぞれの写しのうち,預金残高メモ5枚のうちの1枚(5枚目)以外は,疎明資料として使用しなかった旨認定した原判決には,事実の誤認があるとい 額集計表6枚及び普通預金通帳の表紙裏の見開き部分のそれぞれの写しのうち,預金残高メモ5枚のうちの1枚(5枚目)以外は,疎明資料として使用しなかった旨認定した原判決には,事実の誤認があるというべきであるが,本項((3))冒頭で説示したところからも明らかなように,この誤りが判決に影響を及ぼすことはない。 イ上記1(4)の(ア)ないし(オ)の被告人2社の総勘定元帳等について(ア) 上記1(5)の事実によると,調査査察部は,遅くとも平成6年3月ころから,被告人2社の犯則の嫌疑について,内偵調査を進めていたことが明らかである。 ところで,上記4(1)アのとおり,甲銀行X支店の職員が,Kに対し,わざわざ高松国税局が来ているから今は預金の書換えなどの手続はしないほうがよいなどと告げていることからすると,被告人2社あるいはそのいずれかを対象として同支店に対する調査が実施されたことがうかがわれるが,関係証拠によると,同支店には,(a)被告人B名義の公表外の普通預金口座(口座番号(省略))であって,同口座への入金のひん度,その額(100万円単位のもの多数含まれている。),その際に利用された小切手の振出人名義等から,同被告人の売上除外金を扱う口座であることが容易にうかがえる口座が存在したこと,また,(b)名義こそKになっているものの(なお,上記のとおり,調査査察部はKが被告人Aの妻であることを把握済みであったと認められる。),入金額やその際に利用された小切手の振出人名義(上記被告人B名義の普通預金口座への振込みに利用された小切手の振出人と同一の株式会社が,振出人となっているものがある。)から,被告人Bの売上除外金を扱う口座であることがこれ又容易にうかがえる普通預金口座(口座番号(省略))が存在したことが認められるから, 人と同一の株式会社が,振出人となっているものがある。)から,被告人Bの売上除外金を扱う口座であることがこれ又容易にうかがえる普通預金口座(口座番号(省略))が存在したことが認められるから,調査査察部においても,内偵調査の段階から,当然そうした各口座の存在を把握し,その各普通預金元帳等も入手していたものと推認し得る。 また,同じく上記4(1)アの事実からは,同支店だけではなく,乙銀行Y支店でも調査が実施されていたことがうかがわれるところ,こうしたことによると,調査査察部が平成6年2月ころから3月ころにかけて今治市内所在の30店舗の銀行支店等のうちの相当数を調査した旨のTの原審での証言部分はこれを信用することができるから,同部は,乙銀行Z支店にも被告人B名義の公表外の普通預金口座(口座番号(省略))が存在したことを把握しており,しかも,その口座は上記の各口座同様,被告人Bの売上除外金を扱うものであるとの疑いを持って,その普通預金元帳等を入手していたものと推認することができる。 (イ) そして,この各普通預口座の普通預金元帳等(甲銀行X支店及び乙銀行Z支店各作成の各証明書〔それぞれ原審検133,同検13 6〕参照)を利用し,その各入金額から売上金の入金であるかどうかが判然としない現金による入金及び利息の入金を除外して計算すると,現金主義により,被告人Bを犯則嫌疑者とする臨検・捜索・差押許可状請求書(原審弁111及び112はその一部の写し)記載の嫌疑事実のうち,平成3年7月期,平成4年7月期,平成5年7月期の各期の隠ぺい所得額をおおむね把握することが可能である。 (ウ) このように,内偵調査の段階で入手していた証拠資料等によっても被告人Bの各期の隠ぺい所得額をほぼ把握することができたと認められることに加えて,(a 額をおおむね把握することが可能である。 (ウ) このように,内偵調査の段階で入手していた証拠資料等によっても被告人Bの各期の隠ぺい所得額をほぼ把握することができたと認められることに加えて,(a)Fらは,平成6年4月13日の昼ころには,高松簡易裁判所に対し,臨検・捜索・差押許可状の請求したのであって,上記総勘定元帳等の帳簿を取り寄せた上,それらを分析し,その分析結果を根拠付けるような必要書類を整えて疎明資料とするほどの時間的余裕は到底なかったと考えられること,(b)法人税法上は,いわゆる権利確定主義が原則であると解されるのに,上記の各隠ぺい所得額は現金主義に基づいて計算されていることなどを併せ考慮すると,調査査察部は,上記1(4)の(ア)ないし(オ)の被告人2社の総勘定元帳等については,臨検・捜索・差押許可状の請求の疎明資料として利用しなかったと認めるのが相当である。 (エ) なお,各所論は,こうした認定に関連して,(a)被告人2社に対する各内てい立件決議書(原審検73及び74はその各抄本)は,いずれもその作成期日とされる平成6年3月22日に作成されたものではなく,同年4月12日になってから作成されたものであり,(b)甲銀行X 支店の上記各普通預金口座への手形による入金の中には,集中取立手形入金の方法が採られたために,振出人が不明で入金者を特定することができないものが多数含まれており,その各普通預金元帳等のみでは,上記の隠ぺい所得額の疎明は不可能である旨も主張している。しかしながら,まず(a)の点については,各所論指摘の点を踏まえて検討しても,同決議書がいずれも同年3月22日に作成されたと認められることは,原判決が適切に説示するとおりである。また,(b)の点についても,その各普通預金口座への入金のひん度,そ の点を踏まえて検討しても,同決議書がいずれも同年3月22日に作成されたと認められることは,原判決が適切に説示するとおりである。また,(b)の点についても,その各普通預金口座への入金のひん度,その額,その際に利用された小切手の振出人名義等(手形についても一部振出人が判明しているものもある。)から,それが被告人Bの売上除外金を扱う口座であることが容易にうかがわれことは上記のとおりであって,しかも,手形による決済は,それ自体,被告人Bの取引関係のものであるとの一応の推認が働くものと見てよいから,入金者不明の分があったとしても,上記普通預金元帳等を用いれば, 上記の各隠ぺい所得額の疎明は十分に可能であると考えられる。 いずれにしても,この各所論も採用することができない。 6 各論旨に対する結論以上のとおり,原判決は,一部前提事実を誤認し,法人税法156条の適用を誤った結果,本件の税務調査の手続を適法なものと判断した点で,誤りを犯したというほかないが,上記のとおり,問題とされる違法はいまだ重大なものであるとはいえず,また,この手続により得られた証拠はもとより,それに派生する手続により得られた証拠を被告人らの罪証に供することが,違法な手続の抑制の見地から相当でないとも認められないのであって,こうした証拠等を用いた本件の公訴提起は当然有効であるから,その公訴を受理したことに何ら違法な点はなく,また,各所論指摘の各証拠を取り調べた上,本件の罪証に供した原審の訴訟手続が,違法との評価を受けることもない(もとより,上記の事実誤認や法令適用の誤りが判決に影響を及ぼすこともない。)。 その他各所論にかんがみ検討しても,この結論を左右するような事情は見出せない。各論旨は理由がない。 第3 各控訴趣意中,上記第1の2の主張(証拠調請 適用の誤りが判決に影響を及ぼすこともない。)。 その他各所論にかんがみ検討しても,この結論を左右するような事情は見出せない。各論旨は理由がない。 第3 各控訴趣意中,上記第1の2の主張(証拠調請求の不採用及び釈明権の不行使が訴訟手続の法令違反に当たるとの主張)について原審弁護人がした上記の書類の取寄せ,各証拠物の差押え及びFの証人尋問の各請求は,その書類や各証拠物の内容についての原審弁護人の主張やFの証人尋問の立証趣旨,更には原審弁護人の全体的な主張に照らして検討すると,結局,いずれについても, 調査査察部が,被告人2社の事務所等を臨検場所とする臨検・捜索・差押許可状の請求に当たり,被告人AらがIらに預けた上記帳簿類等を疎明資料として利用したことを立証し,そうした利用は一切許されないとの立場から,本件の税務調査及び犯則調査の手続が違法であることを根拠付けようとの意図の下になされたものと推察することができる。 しかしながら,原審裁判所も,税務調査中に入手した情報や証拠資料を犯則調査に利用することは一切許されないとの立場を取らないことが原判決の説示からも明らかであって,こうした原審裁判所の立場を前提にして考えると,原審裁判所が,各所論指摘の事項について検察官に対する釈明権を行使したり,上記の書類の取寄せ,各証拠物の差押え及びFの証人尋問の全部又は一部を許したりしても,それらに基づく立証等が直ちに税務調査手続等が違法であるかどうかの判断に結び付くものではないと認められる。 そうすると,原審裁判所が,上記事項につき検察官に対し釈明権を行使せず,また,原審弁護人の上記各請求を却下したのはいずれも相当であり,こうした原審裁判所の措置が合理的な裁量の範囲を逸脱したものであるとは到底いえないから,この点に関する 検察官に対し釈明権を行使せず,また,原審弁護人の上記各請求を却下したのはいずれも相当であり,こうした原審裁判所の措置が合理的な裁量の範囲を逸脱したものであるとは到底いえないから,この点に関する原審の訴訟手続に各所論の法令違反はない。各論旨は理由がない。 第4 各控訴趣意中,上記第1の3の主張(法人税法159条の適用を誤ったとの主張)について被告人2社による各納期限前の虚偽過少申告ほ脱犯(原判示第1の1及び3並びに同第2の1及び2)及び不申告ほ脱犯(同第1の2) は,いずれも各法定納期限経過時に既遂に達するのであって,仮に,その後,被告人2社が,上記各虚偽過少申告ほ脱犯について国税通則法65条5項の要件を満たす各修正申告書を提出したり,上記不申告ほ脱犯について同法66条3項の要件を満たす期限後申告書等を提出したりしたとしても,それらは,せいぜい被告人らに対する起訴猶予処分の当否又は科刑の程度を判断するための1つの資料となるにとどまるものであると解される。そうした修正申告書等の提出は,上記各ほ脱犯についての可罰的違法性を失わせるか,超法規的違法性阻却事由となるかして,犯罪の成立を阻却し,仮にそうでなくても,超法規的処罰阻却事由となって,刑を免除すべき場合に当たる旨の各所論は,独自の見解であって,およそ採用し得るものではない。 したがって,この見解を前提に,法人税法159条の適用の誤りをいう各所論も失当というほかない。各論旨は理由がない。 第5 結論よって,刑訴法396条により本件各控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官正木勝彦裁判官増田耕兒裁判官齋藤正人) 判決する。 (裁判長裁判官 正木勝彦 裁判官 増田耕兒 裁判官 齋藤正人)
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