平成13(行コ)94 法人税更正処分等取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成9年(行ウ)第260号)

裁判年月日・裁判所
平成14年3月14日 東京高等裁判所 租税
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判決文本文39,691 文字)

主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、第1、2審とも、被控訴人の負担とする。 事実 第一当事者の求めた裁判一控訴人主文と同旨の判決を求める。 二被控訴人 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 との判決を求める。 第二当事者の主張一被控訴人の請求の原因 1 更正処分等の経緯(一) 被控訴人は、いわゆる住宅金融専門会社(以下「住専」という。)であったA株式会社(以下「A会社」という。)に対し、3760億5500万円の貸付債権(以下「本件債権」という。)を有していたところ、平成8年3月29日、A会社との間で、債権放棄約定書(以下「本件約定書」という。)を取り交して、A会社の営業譲渡の実行及び解散の登記が同年12月末日までに行われないことを解除条件として本件債権を放棄する旨の合意(以下「本件債権放棄」という。)をし、平成8年7月1日、平成7年4月1日から平成8年3月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税について、本件債権放棄に係る放棄額を損金の額に算入し、欠損金額を132億7988万7629円とする青色確定申告(以下「本件確定申告」という。)をした。 (二) ところが、控訴人は、平成8年8月23日、上記の損金算入を否認して、所得金額を3627億7511万2371円、納付すべき税額を1285億1210万6600円とする更正処分(以下「本件更正処分」という。)及びこれに係る過少申告加算税額を191億9263万3500円とする過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件第一過少申告加算税賦課決定処分」といい、本件更正処分と合わせて「本件更正処分等」という。)を行い、同日、その旨を被控訴人に通知した。 (三) 被控訴人は、本件更正 申告加算税賦課決定処分(以下「本件第一過少申告加算税賦課決定処分」といい、本件更正処分と合わせて「本件更正処分等」という。)を行い、同日、その旨を被控訴人に通知した。 (三) 被控訴人は、本件更正処分等を不服として、平成8年8月30日に国税不服審判所長に対し審査請求をしたが、平成9年10月27日に同審査請求が棄却されたため、同月30日、本件更正処分等の取消しを求める本件訴えを提起した。 (四) その後、控訴人は、平成10年3月31日、被控訴人の本件事業年度の法人税について、所得金額を3641億8109万9162円、差引納付すべき税額を21億7916万6000円とする再更正処分(以下「本件再更正処分」という。)、これに係る過少申告加算税額を3億1919万7000円とする過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件第二過少申告加算税賦課決定処分」という。)及び重加算税額を311万8500円とする重加算税賦課決定処分(以下「本件重加算税賦課決定処分」といい、本件再更正処分、本件第一過少申告加算税賦課決定処分及び本件第二過少申告加算税賦課決定処分と併せて「本件再更正処分等」という。)を行い、同年4月1日、その旨を被控訴人に通知したため、被控訴人は、本件訴えの請求を本件再更正処分等の取消しを求める旨に交換的に変更した。 2 本件再更正処分等の違法性(一) 本件更正処分及び本件再更正処分等の違法性本件債権は、A会社の破綻に伴って平成8年3月末において全額回収不能に陥っていたことは明らかであり、その上で、被控訴人は、本件債権を同月29日に放棄したものであって、本件債権は、同月末において法的にも消滅したというべきであるから、本件債権の全額を本件事業年度において損金の額に算入することができるのは当然であり、本件更正処分及び本件第一過少申告加算税賦課決定処分は 件債権は、同月末において法的にも消滅したというべきであるから、本件債権の全額を本件事業年度において損金の額に算入することができるのは当然であり、本件更正処分及び本件第一過少申告加算税賦課決定処分は、上記損金算入を理由なく否認したものであって違法であり、本件再更正処分によって新たに加えられた更正理由を考慮しても、被控訴人には納付すべき税額が発生しないことが明らかであるから、本件再更正処分、本件第二過少申告加算税賦課決定処分及び本件重加算税賦課決定処分も違法である。 (二) 国税通則法65条4項所定の「正当な理由」の存在(1) 内閣は、平成7年12月19日付けで、損失の処理、関係金融機関に対する要請、公的関与及び債権回収の促進について所要の法的措置を講ずることによって、破綻した住専の処理を進めることを内容とする「住専問題の具体的な処理策について」と題する閣議決定(以下「本件閣議決定」という。)を行ったが、被控訴人は、A会社の設立発起会社5社のうちの一つとしてA会社に対して資金援助等を行ってきたいわゆる母体行であったところ、被控訴人による本件債権放棄は、本件閣議決定に明文化された「母体行の債権全額放棄」という政府の方針に沿ったものであり、被控訴人は、平成8年2月以降行われた母体行代表者会議の場等において、当時の大蔵省担当者から本件閣議決定に沿った債権放棄を率先して行うように指導を受けていた。 (2) 国税庁課税部審理室のa企画専門官(以下「a専門官」という。)は、平成8年1月10日、同月12日及び同月18日の3回にわたって、被控訴人の依頼を受けたb税理士(以下「b税理士」という。)や被控訴人の幹部職員に対し、本件債権の全額を損金算入するためには、債権放棄をした上で、寄附金非該当として処理するのが最善の方法である旨を述べ、債権放棄を強く勧めた 税理士(以下「b税理士」という。)や被控訴人の幹部職員に対し、本件債権の全額を損金算入するためには、債権放棄をした上で、寄附金非該当として処理するのが最善の方法である旨を述べ、債権放棄を強く勧めたものであり、同月18日には、債権放棄に条件を付ける方法もあると助言し、被控訴人が同年3月15日に再度確認した際にも、債権放棄に解除条件が付いていても税務上は有効であり、損金算入には差し支えがない旨を回答した。 さらに、国税庁のc課税部法人税課長(以下「c課長」という。)及びd国税審議官は、同年2月28日、被控訴人のe経理部長に対し、債権者が機関決定をなし、母体行債権の全額放棄を行うことが直接償却の要件である旨を伝え、同年3月12日及び同月15日にも、被控訴人のf経理部税務室長は、c課長からかかる見解に変更がない旨の確認を得、その後、平成8年3月末までに国税庁が被控訴人に対して方針を変更したことを伝えた事実はなかったのであるから、被控訴人は、本件債権放棄に解除条件を付したことを理由に、本件債権の損金算入を否認されるとは予想もしなかった。 (3) 被控訴人は、以上のような経緯で本件債権放棄をしたものであるから、仮に本件更正処分が適法であるとしても、被控訴人が本件債権の全額を損金の額に算入して本件確定申告を行ったことについて国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるものというべきであり、本件各過少申告加算税の賦課決定処分は取り消されるべきである。 3 したがって、本件再更正処分等は違法であるから、控訴人が、被控訴人の本件事業年度の法人税につき、平成10年3月31日付けでした本件再更正処分のうち、欠損金額118億7390万0838円を超える部分、平成8年8月23日付けでした第一過少申告加算税賦課決定処分並びに平成10年3月31日付けでした第二過 年3月31日付けでした本件再更正処分のうち、欠損金額118億7390万0838円を超える部分、平成8年8月23日付けでした第一過少申告加算税賦課決定処分並びに平成10年3月31日付けでした第二過少申告加算税賦課決定処分及び重加算税賦課決定処分の各取消しを求める。 二請求原因に対する控訴人の認否 1 請求原因1の事実は認める。 2 同2の(一)の主張は争う。 3 同2の(二)の主張は争う。 a専門官らが被控訴人の主張するような助言及び確認をした事実はなく、被控訴人が解除条件を付して本件債権を放棄し、本件事業年度の決算において本件債権を損金の額に算入し、これに基づいて本件確定申告をしたのは、代表訴訟を牽制しつつ、税務上も本件事業年度にこれを損金に算入するという被控訴人自身の都合によるものにすぎない。被控訴人は、同損金算入が国税当局によって否認される可能性を予測していたが、それが被控訴人にとって最後の方法であったため、あえて国税当局に説明をせず、その意見も求めないままに、解除条件付きで本件債権放棄を行い、a専門官から平成8年4月19日に被控訴人の上記扱いについて疑問を呈され、損金算入を否認される可能性を具体的に認識していながら、本件確定申告をしたものである。 以上のような事情によれば、被控訴人が本件債権の全額を損金の額に算入して本件確定申告を行ったことについて国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとは認められない。 4 同3の主張は争う。 三控訴人の抗弁 1 本件更正処分の適法性法人税基本通達(昭和44年5月1日直審(法)25(例規)、以下「基本通達」という。)は、金銭債権の資産損失を損金に算入し得る基準を明らかにしており、基本通達9-6-2は回収不能の貸金等の貸倒れについて、同9-6-1(四)は債権放棄等による貸倒れについて、 下「基本通達」という。)は、金銭債権の資産損失を損金に算入し得る基準を明らかにしており、基本通達9-6-2は回収不能の貸金等の貸倒れについて、同9-6-1(四)は債権放棄等による貸倒れについて、同9-6-1(三)は関係者の協議決定による貸倒れについて、同9-4-1は子会社等を整理する場合の損失負担についてそれぞれ定めているが、本件債権及び本件債権放棄については、本件事業年度においては、次のとおりいずれによっても損金算入することができない。 (一) 回収不能の貸金等の貸倒れ(基本通達9-6-2)基本通達9-6-2(昭和55年12月25日直法2-15)は、「法人の有する貸金等につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。この場合において、当該貸金等について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとして損金経理をすることはできないものとする。」と定めるところ、事実上の回収不能によって税務上貸倒損失が認められるためには、債務者の資産状況、支払能力、債権者の回収努力の有無、担保の設定状況等、諸般の事情を総合的に勘案し、その全額が回収できないことが客観的に確定した場合でなければならず、具体的には、強制執行、破産手続、会社更生、整理といった回収不能を推定し得る法律的措置が採られた場合及びこれに準じるような場合、すなわち債務者の死亡や所在不明又は事業閉鎖というような回収不能の事実が不可逆的で、一義的に明白な場合に限られると解すべきである。 本件事業年度の終了時である平成8年3月31日においては、A会社の借入金等の返済のための資産は約1兆円残されていたところ、これはA会社の借入金総額の約40パーセントに 限られると解すべきである。 本件事業年度の終了時である平成8年3月31日においては、A会社の借入金等の返済のための資産は約1兆円残されていたところ、これはA会社の借入金総額の約40パーセントにも上るのであって、このようなA会社の財務状況では、本件債権が基本通達9-6-2所定の事実上の貸倒れに該当しないことは明らかである。 (二) 債権放棄等による貸倒れ(基本通達9-6-1(四))基本通達9-6-1(昭和55年12月25日直法2-15)は、「法人の有する売掛金、貸付金その他の債権(以下この節において「貸金等」という。)について次に掲げる事実が発生した場合には、その貸金等の額のうち次に掲げる金額は、その事実の発生した日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入する。」と定め、同(四)は、「債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その貸金等の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額」を掲げているところ、これは、経済的に無価値となった債権を法律的にも消滅させる場合について定めたものであるから、債権放棄による損失を損金に算入するためには、当該債権放棄が私法上の効果を生じていることが必要である。ところが、本件約定書が作成された平成8年3月29日においては、政府の住専処理計画が実現するか否かについては全く予断を許さない状況にあって、その確定を見ることなく、債権放棄のみについて法的な効果を先に生じさせる合理的な理由はなかったのであるから、解除条件が付された本件債権放棄を行った被控訴人の真の意思は、政府の住専処理計画の実現に必要な予算や法律の成立を見るまでは債権放棄の効果を生じさせないというものであったと解するのが相当であり、それにもかかわらず、被控訴人が、本件債権放棄をしたのは 真の意思は、政府の住専処理計画の実現に必要な予算や法律の成立を見るまでは債権放棄の効果を生じさせないというものであったと解するのが相当であり、それにもかかわらず、被控訴人が、本件債権放棄をしたのは、ひとえに本件債権の償却に備えて計上した多額の株式売却益に対する課税負担を回避するためであったと推認することができ、本件債権放棄は、本件事業年度において債権放棄としての私法上の効果を生じておらず、被控訴人に損失が生じたとはいえないから、基本通達9-6-1(四)所定の債権放棄等による貸倒れには該当しない。 (三) 関係者の協議決定による貸倒れ(基本通達9-6-1(三))基本通達9-6-1(三)は、「法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で次に掲げるものにより切り捨てられることとなった部分の金額」として、「イ債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの」、「ロ行政機関又は金融機関その他の第三者のあつ旋による当事者間の協議により締結された契約でその内容がイに準ずるもの」を掲げるところ、これは、同(四)と同様に経済的に無価値となった債権を法律的にも消滅させる場合について定めたものであるから、同(三)に該当するためには、関係者の協議決定それ自体が、法律上、債権消滅の効果を発生させる内容のものであるか、あるいは、そうでなくとも、同協議決定の結果、従前に行われた債権消滅の効果が確認されるものであることが必要であって、同協議決定後に、別途、債権消滅について法律行為を要する場合には、同(三)の協議決定には該当しないというべきところ、平成8年3月末までに成立した政府の住専処理計画に関する合意は、基本的な枠組みについてのおおむねの合意にすぎないもので、各住専ごとの整理計画に係る合意と同視できるものではなく、各住専ごと きところ、平成8年3月末までに成立した政府の住専処理計画に関する合意は、基本的な枠組みについてのおおむねの合意にすぎないもので、各住専ごとの整理計画に係る合意と同視できるものではなく、各住専ごとに処理計画を策定する将来の段階において改めて合意をすることが予定されていたものである。 また、基本通達9-6-1(三)にいう「合理的な基準」とは、同(一)及び(二)と同視できる内容でなければならず、原則として法的に平等な関係にある債権者においては切り捨てられる債権の割合も基本的には平等の割合となることが必要であるところ、母体行・非母体行の債権の合計額2兆4567億円のうち約40パーセントを占めるB系統金融機関の債権については、全額返済が予定されていて、債権放棄の条件は平等ではなかったのであるから、それでは「合理的な基準」ということはできない。 したがって、基本通達9-6-1(三)によって、本件債権を損金の額に算入することはできない。 (四) 子会社等を整理する場合の損失負担(基本通達9-4-1)基本通達9-4-1(昭和55年5月15日直法2-8)は、「法人がその子会社等の解散、経営権の譲渡等に伴い当該子会社等のために債務の引受その他の損失の負担をし、又は当該子会社等に対する債権の放棄をした場合においても、その負担又は放棄をしなければ今後より大きな損失を蒙ることになることが社会通念上明らかであると認められるためやむを得ずその負担又は放棄をするに至った等そのことについて相当な理由があると認められるときは、その負担又は放棄をしたことにより生ずる損失の額は、寄附金の額に該当しないものとする。」と定めるところ、債権放棄による損失が、法人税法22条3項3号の「当該事業年度の損失」に該当するためには、その私法上の効果が発生し、かつ、これによる損失が確定 は、寄附金の額に該当しないものとする。」と定めるところ、債権放棄による損失が、法人税法22条3項3号の「当該事業年度の損失」に該当するためには、その私法上の効果が発生し、かつ、これによる損失が確定していることを要するものであり、本件事業年度においては、解除条件付きの本件債権放棄の私法上の効果は発生しておらず、また、これによる損失が確定したとも認められないから、解除条件付きの本件債権放棄は、基本通達9-4-1の該当性を論ずる前提を欠いている。 また、法人税法37条1項は「各事業年度において寄附金を支出した場合」と規定し、現金主義に依拠しているところ、「寄附金を支出」した場合であっても、それが条件付きであるような場合は、現金主義の下では寄附金には該当しないと解され、いわんや解除条件の付された本件債権放棄のように何ら経済的効果を及ぼさないものについては、利益操作を排除するなどの目的で現金主義を採用した法人税法の趣旨に照らし、「支出」したと認める余地さえない。 したがって、基本通達9-4-1によって、本件債権を損金の額に算入することはできない。 2 本件再更正処分等の適法性上記のとおり、被控訴人の本件事業年度の法人税の計算上、本件債権について本件事業年度において法人税法22条3項3号の損失が生じたとして本件債権を損金に算入することは許されないのであり、したがって、これを理由としてした本件更正処分及び本件第一過少申告加算税賦課決定処分(その加算及び減額に係る内訳金額は、別紙1のとおりである。)並びに本件再更正処分、本件第二過少申告加算税賦課決定処分及び重加算税賦課決定処分(その加算及び減額に係る内訳金額は、別紙2のとおりである。)は、いずれも適法である。 四抗弁に対する被控訴人の認否及び主張 1 抗弁1の主張は争う。 2 同2について 分及び重加算税賦課決定処分(その加算及び減額に係る内訳金額は、別紙2のとおりである。)は、いずれも適法である。 四抗弁に対する被控訴人の認否及び主張 1 抗弁1の主張は争う。 2 同2について別紙1のうち、②、④、⑦及び⑩の各項目及び金額、別紙2のうち、⑭ないし<26>及び<29>の各項目及び金額については認めるが、その余の主張は、争う。 3 回収不能の貸金等の貸倒れ(基本通達9-6-2)(一) 被控訴人は、A会社の設立母体であるのみならず、資本、資金及び人的関係のあらゆる観点においてA会社と密接な関係にあって、その経営に深く関与し、A会社設立以来、非母体行のA会社に対する融資を保証してきたものであり、この保証は、昭和55年以降、行政指導によって集合債権譲渡担保方式に順次切り替えられたが、被控訴人は、その協定幹事行として、他の債権者のために担保権の管理をなすべき立場に就いていたものであり、非母体行は、A会社への与信は被控訴人の信用に支えられたものとして、その取引を拡大してきたところである。このような経緯に鑑みると、被控訴人と非母体行との間においては、当時から既に被控訴人のA会社に対する貸出債権が非母体行の同社に対する貸出債権より弁済順序の点で劣後するとの了解がされていたというべきである。 (二) A会社を含む住専各社の財務・経営状態は、平成4年以降、いわゆるバブル経済の崩壊により急激に悪化したため、A会社の責任母体行である被控訴人は、同年5月、A会社の事業計画(以下「第1次再建計画」という。)を立案し、B系統金融機関らに対して、融資残高の維持を要請したところ、B系統金融機関は、融資残高の維持に応じる条件として、①母体行がA会社を支援することを表明すること、②B系統金融機関の債権(系統債権)の優先弁済性を確保するために系統債権を全額 持を要請したところ、B系統金融機関は、融資残高の維持に応じる条件として、①母体行がA会社を支援することを表明すること、②B系統金融機関の債権(系統債権)の優先弁済性を確保するために系統債権を全額有担保化することを要求したため、被控訴人は、これに応じることとして、支援を口頭で約束するとともに、被控訴人のA会社に対する有担保の長期証書貸付を無担保の短期手形貸付(約1560億円)に、B系統金融機関のA会社に対する無担保貸付を有担保貸付にそれぞれ振り替え、その結果、平成5年4月末までにB系統金融機関のA会社に対する債権は全額有担保化された。 (三) ところが、地価の下落に伴い、住専各社の財務状況の悪化は一層顕著となったため、大蔵省の要請により、平成5年12月27日、A会社の財務状況を再建するための新事業計画(以下「本件新事業計画」という。)が策定されたが、同計画では、高利優先弁済を前提として、関係金融機関のA会社に対する債権の金利は、B系統金融機関のそれが4.5パーセント、その他の非母体行(以下「一般行」という。)のそれが2.5パーセント、被控訴人ら母体行のそれが0パーセントと定められ、その結果、担保協定に基づく集合債権譲渡担保の行使順序においても母体行債権が最劣後に置かれることになった。また、被控訴人は、本件新事業計画をまとめるに当たり、大蔵省の要請を受け、A会社の再建に責任を持つ旨の念書を差し入れた。 (四) しかしながら、平成7年8月に実施された住専各社に対する大蔵省の立入調査によって、住専各社の破綻が明らかとなったため、被控訴人は、平成7年9月22日、A会社の母体行を招集して同社を整理する方針を確認し、また、被控訴人らA会社の母体行は、平成7年9月以降、A会社の破綻処理問題についてB系統金融機関と協議を始めたが、A会社を整理する段階で 22日、A会社の母体行を招集して同社を整理する方針を確認し、また、被控訴人らA会社の母体行は、平成7年9月以降、A会社の破綻処理問題についてB系統金融機関と協議を始めたが、A会社を整理する段階でも母体行の債権を最劣後に置き、B系統金融機関の債権を最優先とすることについては、何らの異論もなかった。 住専各社全体をみると、住専各社の母体行の債権(3兆5000億円)のみならず、B系統金融機関以外の一般行の債権(3兆8000億円)の全額(合計7兆3000億円)を劣後させても、B系統金融機関の債権に合計約2000億円もの元本ロスが生じることが確認されたため、関係機関の間でこれを誰がどのように負担するかという点を巡って協議が進められていたところ、大蔵省は、平成7年12月17日、住専各社に生じる約7兆5000億円の損失のうち第Ⅳ分類(大蔵省の金融検査における資産査定の分類基準上、回収不可能又は無価値と判定される資産に分類される債権)に該当する約6兆3000億円の損失をいわゆる1次ロスとして切り分け、このような1次ロスについて、母体行は債権全額を、B系統金融機関以外の一般行は債権の一部をそれぞれ放棄し、B系統金融機関は、貸付債権全額の返済を前提として、住専各社の資産を引き継ぐ組織(住専処理機構)に約5300億円を贈与すること、政府が住専処理のために6800億円の公的資金を支出することなどを内容とする住専処理計画を発表し、被控訴人は、翌18日に、これに同意することを大蔵省に伝え、B系統金融機関を含め、すべての関係金融機関がこれに同意した結果、母体行債権の最劣後性を前提とした母体行債権の全額放棄を基底とする1次ロスに係る全ての関係者間の合意が成立し、これに基づいて、内閣は、翌19日、損失の処理、関係金融機関に対する要請、公的関与及び債権回収の促進に 劣後性を前提とした母体行債権の全額放棄を基底とする1次ロスに係る全ての関係者間の合意が成立し、これに基づいて、内閣は、翌19日、損失の処理、関係金融機関に対する要請、公的関与及び債権回収の促進について所要の法的措置を講ずることによって、破綻した住専各社の処理を進めることを内容とする「住専問題の具体的な処理策について」と題する閣議決定(本件閣議決定)を行った。 被控訴人は、A会社が整理されることになったことを受け、平成7年12月29日までに本件新事業計画で余裕資産による弁済が第2順位で保証されていた再建のための新規融資金(母体ニューマネー)をA会社から回収し、A会社に対する貸金残元本が3760億5500万円となった。 (五) 大蔵省は、引き続き、残る第Ⅲ分類債権(最終の回収又は価値について重大な懸念が存し、したがって、損失の発生が見込まれるが、その損失額の確定し得ない資産に分類される債権)から生ずる損失見込額1兆2000億円のいわゆる2次ロスの処理について関係金融機関と協議を重ねた結果、これについては、B系統金融機関も含めた金融機関が拠出した基金の運用益等によって処理されることとされ、内閣は、関係金融機関の合意を踏まえ、平成8年1月30日、住専処理方策を具体化する旨の「住専処理方策の具体化」と題する閣議了解(以下「本件閣議了解」という。)を行った。 (六) 被控訴人は、平成8年3月21日、A会社のB系統金融機関以外の一般の金融機関全てに対し、母体行債権の全額放棄を基底とし、本件閣議決定を前提とした負担見込額を書面により通知し、異議のある場合は被控訴人に申し出るよう明確に求めたが、これに対して異議申出期限である同月25日までに何らの異議も出されなかったもので、これによって、すべての関係金融機関からA会社の破綻処理に係る具体的な損失負担割 控訴人に申し出るよう明確に求めたが、これに対して異議申出期限である同月25日までに何らの異議も出されなかったもので、これによって、すべての関係金融機関からA会社の破綻処理に係る具体的な損失負担割合についての同意が得られ、被控訴人のA会社に対する本件債権の全額が回収不可能であることもまた最終的に確認され合意された。そしてこの合意に基づき債務者であるA会社から債権放棄の要請がなされて、そのころには平成8年度予算及び住専処理法の成立は確実な状況にあったことも踏まえ、同月29日にはA会社の母体行の間において母体行債権の全額放棄を内容とする出資母体間協定が締結され、被控訴人は、A会社と本件約定書を取り交して、全ての担保権を無条件で放棄するとともに、本件債権放棄を行ったものである。 (七) 以上のように、A会社においては、その設立から平成8年3月29日に被控訴人が本件債権を放棄するまでの間に、実質的な債務超過の状態が長期間継続し、その経営破綻に伴って保有資産の実質価値が著しく毀損されて減少していたものであり、そのような中で被控訴人を含む母体行のA会社に対する債権は非母体行の債権に対して弁済順序において劣後することが段階的に顕在化したものであって、本件債権は、平成8年3月末までの間に、関係金融機関の合意又は社会通念により、弁済順序において最劣後のものとなっていたのであり、当時のA会社の資産価値をどのように高く見積もったとしても、本件債権の全額が回収不能の状態にあったことは明らかである。また、住専問題は、当時、政治問題化して世間の注目を集め、母体行としての責任を厳しく問われていたのであるから、被控訴人が本件債権を行使することは、社会全体を敵に回すに等しく、社会的存在としての銀行にとってこの上なく有害な行為というほかなかったというべきであるから、平成8 任を厳しく問われていたのであるから、被控訴人が本件債権を行使することは、社会全体を敵に回すに等しく、社会的存在としての銀行にとってこの上なく有害な行為というほかなかったというべきであるから、平成8年3月末までに本件債権を回収することは事実上不可能になっていたものというべきであって、本件債権は、本件事業年度において、社会通念上回収不能の状態にあったものというべきである。 したがって、基本通達9-6-2により、本件債権の全額について貸倒れとして損金経理をすることが認められるべきである。 4 債権放棄等による貸倒れ(基本通達9-6-1(四))前記3(六)のとおり、被控訴人は、平成8年3月29日、本件債権放棄を行ったが、A会社は、平成5年3月期以降平成8年3月期に至るまで相当の期間大幅な債務超過状態を継続させていたのであるから、基本通達9-6-1(四)によっても、本件債権の全額が貸倒れとして損金の額に算入されるべきである。 基本通達9-6-2とは別途に、基本通達9-6-1(四)が設けられた趣旨は、「一定の客観的事実の存在」と「書面による債務免除の意思表示」をもって、当該債権の経済的価値の精査をすることなく貸倒れを認める点にあるというべきであるから、基本通達9-6-1(四)の適用に当たっては、基本通達9-6-2と同様な意味での「回収不能」な債権である必要はなく、本件債権の全額が貸倒れと認められるべきである。 また、本件債権放棄には解除条件が付されているところ、法人税法22条3項3号の「損失」については、同項2号に定める場合(同号においては「債務の確定」を必要とする。)とは異なって、その確定は必要ではなく、また、そもそも債権放棄の効力は、意思表示の時点で発生するのであるから、改めて確定を要するものとする理由も見当たらない。その上、既に平成8 定」を必要とする。)とは異なって、その確定は必要ではなく、また、そもそも債権放棄の効力は、意思表示の時点で発生するのであるから、改めて確定を要するものとする理由も見当たらない。その上、既に平成8年3月末までには住専処理法及び住専処理を前提とする予算の成立は既定の方針となっており、解除条件の不成就は確実であったもので、その後、確定申告期限である平成8年7月1日までに住専処理を前提とする平成8年度予算と住専処理法が成立し、A会社の営業譲渡及び解散が決議されたことを考え併せると、本件債権放棄の効力は、平成8年3月期において私法上も税法上も完全に生じていたというべきである。 5 子会社等を整理する場合の損失負担(基本通達9-4-1)A会社は、被控訴人との関係で基本通達9-4-1所定の「子会社等」に該当し、本件債権放棄は、このような子会社等の解散・整理に際してされたものである。そして、被控訴人をはじめとした住専各社の母体行は、平成8年3月当時、住専処理が円滑にいかなかった場合に生じる金融システムの混乱ないし崩壊による莫大な損失、母体行の債権全額を超える追加負担要求による損失を被るおそれにさらされていたところ、本件債権放棄は、本件閣議決定に従ったA会社の処理を円滑に進め金融システムの混乱ないし崩壊を回避し、母体行としての責任を果たすことによって、母体行に対する世論からの非難が沸騰することを避け、追加負担を強いられることを避けるべく実行されたものであって、より大きな損失を避けるためにやむを得ず行われたものにほかならない。加えて、本件債権放棄は、被控訴人にとって「事実上高度の強制的効果」を有する本件閣議決定及び免許事業に対する監督権を背景とした大蔵省からの強い指導が介在した上で行われたものであって、被控訴人にとっては、やむを得ざるものだったから、 とって「事実上高度の強制的効果」を有する本件閣議決定及び免許事業に対する監督権を背景とした大蔵省からの強い指導が介在した上で行われたものであって、被控訴人にとっては、やむを得ざるものだったから、基本通達9-4-1によっても、本件債権の全額が貸倒れとして損金の額に算入することが認められるべきである。 平成8年3月期において被控訴人と同様に住専向け債権を放棄した株式会社C銀行については、基本通達9-4-1が適用されることを否定されなかったものであり、また、株式会社D等の事案において、解除条件付きで債権放棄をした事業年度において損金算入を認めているのであるから、本件債権放棄について損金算入を認めないことは、合理的理由なく特定の納税者についてのみ不利な取扱いをするものであって、課税の公平性の原則からいって、許されない。 6 関係者の協議決定による貸倒れ(基本通達9-6-1(三))本件閣議決定によって定められた住専処理のための損失負担の割合は、大蔵省及び農林水産省という行政機関たる「第三者」の斡旋・仲介によって合意され成立したものであるから、基本通達9-6-1(三)にいう「協議決定」に当たり、その内容も、住専各社の設立以来の経緯を反映した合理的なものであるといえるから、同通達によって本件債権の全額について貸倒れとして損金の額に算入することが認められるべきである。 第三証拠関係本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。 理由 一公正処理基準と債権の貸倒れによる損金算入 1 法人税法上、内国法人に対して課される各事業年度の所得に対する法人税の課税標準は、各事業年度の益金の額から損金の額を控除した所得の金額とされているところ(同法21条、22条1項)、同法22条3項は、内国法人の各事業年度の 対して課される各事業年度の所得に対する法人税の課税標準は、各事業年度の益金の額から損金の額を控除した所得の金額とされているところ(同法21条、22条1項)、同法22条3項は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、①当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額、②当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額、③当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るものとし、同条4項は、当該事業年度の収益の額及び損金の額に算入すべき金額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする旨を定めている。これは、法人所得の計算が原則として企業利益の算定技術である企業会計に準拠して行われるべきことを意味するものであるが、企業会計の中心をなす企業会計原則(昭和24年7月9日経済安定本部企業会計制度調査会中間報告)や確立した会計慣行は、網羅的とはいえないため、国税庁は、適正な企業会計慣行を尊重しつつ個別的事情に即した弾力的な課税処分を行うための基準として、基本通達(昭和44年5月1日直審(法)25(例規))を定めており、企業会計上も同通達の内容を念頭に置きつつ会計処理がされていることも否定できないところであるから、同通達の内容も、その意味で法人税法22条4項にいう会計処理の基準を補完し、その内容の一部を構成するものと解することができる。そして、同条項が単なる会計処理の基準に従うとはせず、それが一般に公正妥当であることを要するとしている趣旨は、当該会計処理の基準が一般社会通念に照らして公正で妥当であると評価され得るものでなければならないとしたものである 計処理の基準に従うとはせず、それが一般に公正妥当であることを要するとしている趣旨は、当該会計処理の基準が一般社会通念に照らして公正で妥当であると評価され得るものでなければならないとしたものであるが、法人税法が適正かつ公平な課税の実現を求めていることとも無縁ではなく、法人が行った収益及び損金の額の算入に関する計算が公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて行われたか否かは、その結果によって課税の公平を害することになるか否かの見地からも検討されなければならない問題というべきである。 2 金銭債権については、当該債権のうち経済的に無価値となった部分の金額を確定的に捕捉することが困難であるところから、法人税法上は、金銭債権については、評価減を認めないことが原則とされている(同法33条2項)。したがって、不良債権を貸倒れであるとして資産勘定から直接に損失勘定に振り替える直接償却をするためには、全額が回収不能である場合でなければならず、また、同貸倒れによる損金算入の時期を人為的に操作し、課税負担を免れるといった利益操作の具に用いられる余地を防ぐためにも、全額回収不能の事実が債務者の資産状況や支払能力等から客観的に認知し得た時点の事業年度において損金の額に算入すべきものとすることが、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に適合するものというべきであり、基本通達9-6-2も、このことを定めたものということができる。 一方、国税庁は、昭和29年7月24日、債権の貸倒れの特例を定めた通達(同日直法-140、乙第62号証)を定め、手形取引停止処分、会社更生手続又は和議の開始の決定があった場合等に、債権金額の50パーセント相当額を「債権償却引当金」として負債の部に計上することができることとして、課税実務上不良債権の間接償却を認める道を開き、昭和39年の通 は和議の開始の決定があった場合等に、債権金額の50パーセント相当額を「債権償却引当金」として負債の部に計上することができることとして、課税実務上不良債権の間接償却を認める道を開き、昭和39年の通達改正によって、「債権償却引当金」は、「債権償却特別勘定」と改められ(昭和39年直審(法)89、乙第63号証)、その後、適用範囲が拡大されて、昭和44年の基本通達にも引き継がれ、これらは、平成10年法律第24号による法人税法の改正によって、個別評価による貸倒引当金の設定制度等(法人税法52条)という形で法制化されたものであり、不良債権の会計処理としては、当該不良債権に係る回収可能性の危機的度合と段階に応じ、未だ回収不能とはいえないが、将来回収不能になることが見込まれる金銭債権については間接償却が行われ、現に回収不能であることが明らかになった不良債権については直接償却が行われるものということができる。 3 また、回収不能とはいえない金銭債権が放棄され、あるいは協議により切り捨てられた場合は、経済的利益の無償供与があったものとして、法人税法上、寄附金に該当するものとして扱われ、算入される損金の額が制限されるが(同法37条2項)、例えば、債権の回収不能部分を特定しその部分の債務を免除し又は債権を放棄した場合、損失を負担しなければより大きな損失を被ることが明らかであるためやむを得ず債権放棄を行う場合、債権者の協議等によって回収不能部分を特定しこれを原則として債権者らの債権額に案分して切り捨てた場合などには、経済取引として十分に肯首し得る合理的理由があるということができるから、そのような場合には、経済的利益の無償供与は、寄附金には当たらないものと解され、基本通達9-6-1(四)、9-4-1、9-6-1(三)もこのことを定めたものということができる。その とができるから、そのような場合には、経済的利益の無償供与は、寄附金には当たらないものと解され、基本通達9-6-1(四)、9-4-1、9-6-1(三)もこのことを定めたものということができる。その場合の損金算入時期についても、これを恣意的に早め、あるいはこれを遅らせるなどして、課税を回避するための道具として利用することは、法人税法の企図する公平な所得計算の要請に反し、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に適合するとはいえないのであって、その許されないことは当然である。 二本件債権放棄等に至る経過請求原因1の事実は、当事者間に争いがなく、証拠(甲第1ないし5号証、第6号証の1ないし44、第11号証、第13号証、第15号証、第16号証、第18ないし第22号証、甲第23号証の1ないし4、第24ないし第28号証、第32ないし第37号証、第39ないし第41号証、第51号証、第53ないし第55号証、第58号証、第61ないし第63号証、第73号証、第75ないし第77号証、第88号証、第109号証、第112ないし第117号証、第120号証、第122号証の1、2、第123号証、第126ないし第134号証、第143ないし第148号証、第149号証の1、2、第153ないし第155号証、第158号証、第165号証、第166号証、第171号証、第189号証、第193ないし第195号証、第199号証、第200号証の1、2、第201号証の1ないし6、第207号証、第210号証、第217号証、第219号証、第248号証、第249号証、第253号証、第274号証、第288号証、第289号証、第308号証、第318ないし320号証、第326号証、第330号証、第331号証、第334号証、第354号証、第355号証、第356号証、第358号証、第359号証、第42 8号証、第289号証、第308号証、第318ないし320号証、第326号証、第330号証、第331号証、第334号証、第354号証、第355号証、第356号証、第358号証、第359号証、第422号証、第423号証、第426号証、第460号証及び第604号証、乙第20号証、第22号証、第24号証、第35ないし第42号証及び第44号証、証人e及び同kの各証言)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。 1 A会社の設立の経緯及び被控訴人との関係(一) A会社は、被控訴人、株式会社E銀行(以下「E銀行」という。)、F証券株式会社(以下「F証券」という。)、G證券株式会社(以下「G證券」という。)、H證券株式會社(以下「H證券」といい、以上、5社を「本件母体5社」という。)、元大蔵省銀行局長のg、被控訴人出身のh及びE銀行出身のiの合計8名が発起人となり、不動産、不動産に関する権利又は有価証券を担保とする住宅資金貸付等を事業目的として、昭和51年6月23日に設立された株式会社であり、設立に際して発行された株式総数160万株(額面金額500円)のうち、発起人は80万株(本件母体5社は各15万9000株)を、発起人以外の金融機関等43社はその余の80万株をそれぞれ引き受けた。本件母体5社のA会社に対する出資比率は、A会社設立時においては、各9.94パーセントであったが、その後の増資を経て、昭和62年10月以降は、各5パーセントとなった。また、本件母体5社は、いずれもA会社に対し、継続して役員及び従業員を出向させ、A会社の設立から昭和56年6月まではgが、同月からA会社の解散までは被控訴人出身者が、代表取締役を務めた。 (二) A会社は、銀行等の金融機関から融資を受け、それを貸し付けるという営業形態をとっていたところ、被控訴人 56年6月まではgが、同月からA会社の解散までは被控訴人出身者が、代表取締役を務めた。 (二) A会社は、銀行等の金融機関から融資を受け、それを貸し付けるという営業形態をとっていたところ、被控訴人の貸付高が最も多く、A会社の総借入残高及び被控訴人からの借入残高の推移は、それぞれ昭和52年3月期が183億円及び73億円、昭和57年3月期が4783億円及び1343億円、昭和62年3月期が1兆0377億円及び1960億円、平成元年3月期が1兆4885億円及び2915億円、平成2年3月期が2兆1290億円及び3542億円、平成4年3月期が2兆6571億円及び3791億円、平成7年3月期が2兆5183億円及び4061億円であった。 (三) A会社の母体行である被控訴人及びE銀行は、非母体行からのA会社への融資について、原則として各50パーセントの分担割合で一律にその返済債務を保証していたが、昭和54年5月、大蔵省銀行局長が、一部の金融機関が安易な債務保証を行い、経営の健全性を著しく損ねた事例が見受けられたとして、安易な債務保証をしないように求める通達を発出したことを受け、昭和55年2月、A会社と同社に融資している母体行を含めた金融機関との間で、A会社が現に保有しあるいは将来取得する住宅ローン債権を同金融機関に譲渡して、同金融機関がこれを準共有する旨の債権譲渡担保契約を締結し、被控訴人及びE銀行による債務保証は、昭和62年3月ころまでに解消された。 2 A会社を含む住専各社の経営状態の悪化と再建計画及びその破綻(一) 昭和50年代後半から、都市銀行等が個人向け住宅ローンに力を入れるようになり、個人住宅ローン市場における金融機関相互の競争が激化したため、住専各社は、不動産会社等の事業者向け融資を拡大し、昭和55年度には1804億円であった住専8社( 向け住宅ローンに力を入れるようになり、個人住宅ローン市場における金融機関相互の競争が激化したため、住専各社は、不動産会社等の事業者向け融資を拡大し、昭和55年度には1804億円であった住専8社(A会社、I金融株式会社、株式会社J、株式会社K、L住宅ローンサービス、総合M株式会社、N金融株式会社及びOローン株式会社)の事業向け融資残高は、平成元年度には8兆1183億円、平成3年度には10兆1456億円へと増加した。 ところが、いわゆるバブル経済の崩壊により、地価が著しく下落し、不動産担保融資を主体としていた住専各社は、深刻な影響を受け、特に急激に拡大していた事業者向け融資債権の不良債権化をもたらし、平成3年度以降、住専各社の財務状況は急激に悪化した。そこで、大蔵省銀行局は、平成3年8月から平成4年8月にかけて住専各社に対する立入調査を行ったところ、A会社を含む住専7社(住専8社のうち住専処理計画の対象とされなかったOローン株式会社を除いた7社)の不良債権総額は、合計4兆6479億円、不良債権率は約37.8パーセントであることが判明した。 (二) A会社の事業者向け融資残高は、平成2年度末に1兆6533億円であり、平成3年11月末の時点での要管理債権は、総額1兆2482億円と総貸付金残高2兆4028億円の約52・0パーセントを占めるようになり、また、大蔵省銀行局の上記立入調査によれば、平成4年8月31日時点の総貸付金残高2兆3638億円のうち不良債権額は、1兆2694億円であることが明らかとなった。そして、平成2年度には35億6800万円あったA会社の税引前当期利益は、平成3年度には5億2400万円へと減少し、さらに、平成4年度には150億2700万円、平成5年度には71億3000万円の各税引前当期損失を計上した。 (三) A会社は、平 A会社の税引前当期利益は、平成3年度には5億2400万円へと減少し、さらに、平成4年度には150億2700万円、平成5年度には71億3000万円の各税引前当期損失を計上した。 (三) A会社は、平成4年1月末に大蔵省から経営再建計画の作成を求められ、同年5月、本件母体5社に再建計画期間である平成8年度までの金利減免と必要資金の追加融資を、非母体行に融資残高維持及び担保条件の現状維持をそれぞれ要請し、資産の圧縮等を目指す第1次再建計画を策定した。そこで、被控訴人は、A会社の同再建計画の推進を支援するために、独自に①緊急融資枠1000億円の設定、②住宅抵当証券取得限度枠400億円の設定、③公定歩合(3.25パーセント)までの金利の減免からなる対応策を策定したが、非母体行の中には、A会社に対する融資の回収や保全に向けた姿勢を示すところも現れたため、被控訴人及びE銀行は、平成4年3月から平成5年4月にかけて、B系統金融機関がA会社に対して有する譲渡担保の対象外とされている貸付期間1年以内の短期貸付金を譲渡担保の対象とされている同1年超の中長期債権に振り替えると同時に、それと入れ替える形で、被控訴人及びE銀行が有する中長期債権を短期債権に振り替える措置を講じ、平成4年3月末にB系統金融機関が有していた707億8100万円の短期債権は、平成5年4月末までにすべて中長期債権に振り替えられた。 (四) しかしながら、その後も不動産市況が一向に回復しなかったことなどから、住専各社の経営環境はより一層悪化し、従前の再建計画のような母体行のみの金利減免によっては、もはや経営の再建ができなくなることが指摘され、大蔵省は、平成4年12月7日、A会社を含む住専7社の代表者に対し、新たな再建計画を立案するように指導するとともに、各金融機関の金利を母体行は0パーセント はや経営の再建ができなくなることが指摘され、大蔵省は、平成4年12月7日、A会社を含む住専7社の代表者に対し、新たな再建計画を立案するように指導するとともに、各金融機関の金利を母体行は0パーセント、B系統金融機関以外の非母体行は2.5パーセント、B系統金融機関は4.5パーセントに減免するなどの内容を含んだ再建計画の骨格を示したところ、B系統金融機関は、監督官庁である農林水産省とともにこれに厳しく反発し、調整が続けられた結果、最終的には母体行が責任を持って再建計画に対応することが明確になり、債権の元本が回収できることを条件に、金融システムの安定という観点から再建計画に協力し、金利減免に応ずる意向を示し、一方、大蔵省銀行局長と農林水産省経済局長は、平成5年2月3日、住専7社の再建は母体行が責任をもって対応し、大蔵省はB系統金融機関にこれ以上の負担をかけないよう責任をもって指導することなどを内容とする覚書き(甲第6号証の11)を交わした。 (五) そこで、A会社は、平成5年5月25日までに第1次再建計画に代わる新たな再建計画(本件新事業計画)の概要を固めたが、それは、計画期間を同年4月から平成15年3月までの10年間とし、総資産、借入金規模の圧縮を行い、延滞債権の回収に向けた努力をし、経営の合理化を図ること、余裕資金による返済順序は、①住宅ローン債権信託、②母体行からの新規融資金(母体ニューマネー)、③借入有価証券、④B系統金融機関の順とすること、被控訴人及びE銀行は、計画期間中、既融資金の金利を免除し、新規融資を実施すること、F証券、G證券及びH證券も、計画期間中、新規融資を実施すること、非母体行は、現状の融資金残高を維持し、融資金利は、B系統金融機関が年4.5パーセント、一般行が年2.5パーセントとすること、A会社の自己資本強化のため、 證券も、計画期間中、新規融資を実施すること、非母体行は、現状の融資金残高を維持し、融資金利は、B系統金融機関が年4.5パーセント、一般行が年2.5パーセントとすること、A会社の自己資本強化のため、本件母体5社は、第三者割当増資を引き受けることなどを基本的な内容とするものであり、これを受けて、A会社の本件母体5社は、平成5年5月25日、①被控訴人及びE銀行は、同年4月1日に遡ってA会社に対する貸出金の金利を10年間免除し、本件新事業計画の遂行上必要な資金として600億円を上限として新規貸出を行い(母体ニューマネー)、第三者割当増資を各30億円ずつ引き受けること、②F証券、G證券及びH證券は、200億円を限度として新規貸出を行い、第三者割当増資を各30億円ずつ引き受けることなどを確認し、その後、A会社は、同年12月27日までに非母体行から本件新事業計画への合意を取り付けた。 (六) 本件新事業計画は、A会社が新規に獲得できる正常債権の金利水準が本件新事業計画策定当時の水準である6・50パーセントであること、不動産市況が、本件新事業計画策定当時を底値とし、当初3年間は回復せず、4年目から緩やかな回復基調にある(4年目以降年3パーセントの上昇を想定)ことを前提としていたが、その後も、不動産市況は依然として大幅な下落を続け、金利水準も低利で推移し、本件新事業計画の前提は客観的な情勢に合致しなかった。A会社の貸借対照表上の欠損金は、平成5年3月末において33億0800万円であったものが、平成6年3月末には104億6000万円、平成7年3月末には187億0100万円へと増加し、平成5年度に本件新事業計画に従って増資をしたにもかかわらず、資本合計は平成6年3月末に139億3600万円、平成7年3月末に56億9500万円であり、平成6年3月末、平成7年 00万円へと増加し、平成5年度に本件新事業計画に従って増資をしたにもかかわらず、資本合計は平成6年3月末に139億3600万円、平成7年3月末に56億9500万円であり、平成6年3月末、平成7年3月末の各期損失がそれぞれ71億5100万円、82億4000万円であったことから、資本欠損に陥るおそれがあった。また、平成6年度末に東京共和信用組合と安全信用組合が破綻し、平成7年夏には木津信用金庫や株式会社兵庫銀行の破綻が表面化し、内外から日本の金融システムに対する不安が高まった。 (七) 大蔵省銀行局は、平成7年8月、住専各社に対して2度目の立入調査を行ったところ、同年6月30日を調査基準時とするA会社の資産残高は2兆5151億円で、不良債権額(大蔵省の金融検査における資産査定の分類基準上、第Ⅱ分類債権以上のもの)は1兆8532億円に達し、そのうち第Ⅱ分類(債権確保上の諸条件が満足に充たされないため、あるいは信用上疑義が存するなどの理由により、その回収について通常の度合を超える危険を含むと認められる債権及び何らかの理由により銀行資産として好ましくないと判定されるその他の資産に分類される債権)は2991億円、第Ⅲ分類(最終の回収又は価値について重大な懸念が存し、したがって、損失の発生が見込まれるが、その損失額の確定し得ない資産に分類される債権)は1953億円、第Ⅳ分類(回収不可能又は無価値と判定される資産に分類される債権)は1兆3588億円であることが明らかとなった。このような状況を受けて、本件母体5社は、平成7年9月22日、A会社を整理する方針を確認した。 3 住専処理計画の策定(一) 被控訴人らの母体行は、大蔵省銀行局中小金融課ア室(以下「ア室」という。)から、A会社の整理方法についてB系統金融機関と協議するように要請され、平成7年9 認した。 3 住専処理計画の策定(一) 被控訴人らの母体行は、大蔵省銀行局中小金融課ア室(以下「ア室」という。)から、A会社の整理方法についてB系統金融機関と協議するように要請され、平成7年9月27日から同年11月22日までに5回にわたって協議が行われたが、B系統金融機関側は、A会社を整理することになった場合でもB系統金融機関への優先弁済の方針は維持されるべきである旨の発言をし、B系統金融機関の元本損失部分は、母体行側が責任を持つ完全母体行責任による処理を行うように強く求めたが、被控訴人らの母体行は、ア室から損失の平等負担を求めるようなことは避けるように要請されていたこともあって、株式会社としてできる限界があり、貸出金の全額を棒引きすることまでが限度であって、それ以上の負担をすることは商法上許される範囲を超えると答えてB系統金融機関の同要求を拒否し、B系統金融機関との協議は物別れに終わった。 (二) 大蔵省銀行局長は、平成7年11月29日、住専7社に対し、大蔵省として、住専処理について関係当事者の仲介を行い、公的資金の導入を含む抜本的な住専処理計画を策定する意思があることを示唆し、政府予算案の内示がある同年12月20日までに住専処理計画の概要をとりまとめるように求めた。一方、当時の政府与党の政策調整会議は、同月1日、大蔵省及び農林水産省に対し、できる限り住専7社を一括して処理するものであること、残余の資産等については受け皿となる組織(後の住宅金融債権管理機構。以下「住専処理機構」という。)を設立して対処すること、日銀融資、政府保証等を活用すること、損失の負担割合を決める場合は、住専設立から今日の破綻に至った経緯を充分踏まえることを骨格とする処理計画の策定を要請した。大蔵省は、住専7社の母体行に対する意見聴取を行ったが、被控訴人は、 ること、損失の負担割合を決める場合は、住専設立から今日の破綻に至った経緯を充分踏まえることを骨格とする処理計画の策定を要請した。大蔵省は、住専7社の母体行に対する意見聴取を行ったが、被控訴人は、貸出残高までの負担が商法上許される限度であることを改めて伝え、他の住専7社の母体行も同様の認識を示した。 (三) 大蔵省は、平成7年12月17日、回収不能な住専7社の不良債権(第Ⅳ分類資産)6兆3000億円を1次ロスとし、このうち3兆5000億円は、住専7社の母体行がその債権全額を放棄し、1兆7000億円は一般行が、1兆1000億円はB系統金融機関がそれぞれその債権を一部放棄して処理する案を提示し、被控訴人を含む住専7社の母体行は、翌18日、同1次ロスの処理案を受け入れるが、これ以上の負担には応じられない旨の意向を示し、その後、政府とB系統金融機関との交渉が続けられた結果、与党3党と政府の首脳は、同月19日、住専の具体的な処理方策について、①住専処理機構は、住専の資産等を引き継ぎ、回収不能な不良債権に係る損失見込額(7社合計で約6兆2700億円)、欠損見込額(約1400億円)を処理すること、②関係金融機関に対し、母体行は債権の全額(3兆5000億円)を放棄し、また、住専処理機構への出資及び低利融資を行うこと、一般行は債権のうち1兆7000億円を放棄し、また、住専処理機構への低利融資を行うこと、B系統金融機関は貸付債権の全額返済を前提として、住専処理機構に対する約5300億円の贈与及び住専処理機構への低利融資の協力を行うことを要請すること、③政府は、預金保険機構に住専勘定を設け、平成8年度当初予算において、同勘定に対して6800億円を支出し、同勘定は、住専処理機構に対し、同年度以降回収可能性の精査、整理状況を踏まえて支出を行うこと、④預金保険機 保険機構に住専勘定を設け、平成8年度当初予算において、同勘定に対して6800億円を支出し、同勘定は、住専処理機構に対し、同年度以降回収可能性の精査、整理状況を踏まえて支出を行うこと、④預金保険機構住専勘定は、住専処理機構において住専から引き継いだ資産に損失が生じた場合、その一部を補てんし、政府は同勘定に損失が生じた場合に適切な財政措置を講ずること、⑤政府は、平成8年度当初予算において、預金保険機構に対し、同機構の運営を強化するために50億円の出資を行うこと、⑥日本銀行に対し、預金保険機構への出資及び同機構住専勘定への資金供与を行うよう要請すること、⑦以上について、所要の法的措置を講ずるとともに、関係機関による調整が行われ、適切な整理計画が策定された住専から速やかに住専処理機構に対し資産等の譲渡を行い、その処理を着実に進めていくこととすることなどを確認した。 (四) そこで、内閣は、平成7年12月19日、住専をめぐる問題は、金融機関の不良債権問題における象徴的かつ喫緊の課題であり、我が国金融システムの安定性とそれに対する内外からの信頼を確保し、預金者保護に資するとともに我が国経済を本格的な回復軌道に乗せるためにも、その早期解決が是非とも必要であるとし、そのため、住専問題に係る透明性の確保、種々の責任の明確化等を図りつつ、具体的な方策を講ずるものとするとの閣議決定(本件閣議決定)を行い、翌日に予定されていた平成8年度予算の大蔵原案の内示前にこの問題に一応の決着をつけ、一方、被控訴人は、平成7年12月29日までに本件新事業計画に基づいて新規に融資した貸金(母体ニューマネー)をA会社から回収した。 本件閣議決定の内容は、次のとおりである。 (1) 処理の損失住専処理機構を設立し、住専の資産等を引き継ぐこととし、回収不能な不良債権に係る損失 た貸金(母体ニューマネー)をA会社から回収した。 本件閣議決定の内容は、次のとおりである。 (1) 処理の損失住専処理機構を設立し、住専の資産等を引き継ぐこととし、回収不能な不良債権に係る損失見込額(7社計で約6兆2700億円)及び欠損見込額(約1400億円)について処理する。 (2) 関係金融機関に対する要請関係金融機関に対し、次により対応することを要請する。 ア母体行は、住専に対する債権約3兆5000億円の全額を放棄する。また、住専処理機構への出資及び低利融資を行う。 イ一般行は、住専に対する債権のうち約1兆7000億円を放棄する。また、住専処理機構への低利融資を行う。 ウ B系統金融機関は、貸付債権の全額返済を前提として、住専処理機構に対する約5300億円の贈与及び住専処理機構への低利融資の協力を行う。 (3) 公的関与ア政府は、預金保険機構に住専勘定を設け、平成8年度当初予算において、同勘定に対して6800億円を支出する。同勘定は、住専処理機構に対し、同年度以降、同機構の保有する債権の回収可能性の精査及び整理状況を踏まえて支出を行う。 イ預金保険機構住専勘定は、住専処理機構において住専から引き継いだ資産に係る損失が生じた場合、その一部を補てんする。 また、政府は、同勘定に損失が生じた場合に、適切な財政措置を講ずる。 ウ政府は、平成8年度当初予算において、預金保険機構に対し、同機構の運営を強化するために、50億円の追加出資を行う。 エ日本銀行に対し、預金保険機構への出資及び同機構住専勘定への資金供与を行うよう要請する。 (4) 債権回収の促進住専処理機構は、預金保険機構の指揮の下、法律家、不動産取引の専門家等の参加、協力を得て、法的手段等を活用しつつ、債権の回収を強力に行う。両機構は、法務・検察当局及び警察当局と ) 債権回収の促進住専処理機構は、預金保険機構の指揮の下、法律家、不動産取引の専門家等の参加、協力を得て、法的手段等を活用しつつ、債権の回収を強力に行う。両機構は、法務・検察当局及び警察当局と緊密な連携を図る。 (5) 以上について、所要の法的措置を講ずるとともに、関係機関による調整が行われ、適切な処理計画が策定された住専から、速やかに住専処理機構に対し資産等の譲渡を行い、その処理を着実に進めていくこととする。 (五) その後、住専7社の第Ⅲ分類資産に係る損失(2次ロス)1兆2400億円の負担について、大蔵省側と住専各社の母体行側との間で交渉が進められ、大蔵省は、平成8年1月24日、住専処理に関する法律により、預金保険機構の中に、1兆円を限度とする金融安定化拠出基金を設立し、住専7社に融資している関係金融機関に基金の拠出を求め、同基金の運用益等で賄うことなどを内容とする案を関係金融機関に示したところ、関係金融機関は、翌25日に、これに同意する意向を示したため、内閣は、同月30日、上記2次ロス処理方策を内容とする閣議了解(本件閣議了解)を行い、同年2月9日に、本件閣議決定及び本件閣議了解の内容を実現すべく、住専処理法(特定住宅金融専門会社の債権債務の処理の促進等に関する特別措置法)案が国会に提出された。 (六) これに対し、当時最大野党であった新進党は、住専問題に関する処理に税金を投入することに反対する根強い世論があることを踏まえ、本件閣議決定及び本件閣議了解がされた後である平成8年2月27日、平成8年度予算案に計上している6850億円の住専関係予算を削除すること、市場原理に基づく自己責任の大原則により国民に開かれた状況の中で住専問題の解決を行うことなどを内容とする「住専問題に関する基本方針」を発表し、さらに、同年3月4日、住専関係予算 係予算を削除すること、市場原理に基づく自己責任の大原則により国民に開かれた状況の中で住専問題の解決を行うことなどを内容とする「住専問題に関する基本方針」を発表し、さらに、同年3月4日、住専関係予算6850億円が計上されている平成8年度予算案の審議に応じないという方針を決定して、同党議員が予算委員会の委員室に座り込みを始めたため、国会審議が中断され、同月25日に衆議院議長の下で与野党5党党首会談が開催され、国会の正常化が合意されるまで国会審議が中断した。 4 本件債権放棄及びA会社の整理に至る経緯(一) A会社は、本件事業年度上半期において、本件新事業計画の3年目を迎え、本件新事業計画に従って、引き続き住宅ローン営業基盤の維持・不良債権の回収・経費の圧縮等の努力を行っていたが、本件新事業計画策定時の予想を超える不動産不況の長期化、金利低下による利息収入の減少等により厳しい経営が続いた。 この結果、平成7年9月末の貸付金残高は、前期末比0.7パーセント減の2兆2387億円となり、総資産は前期末比21.1パーセント減の1兆9977億円となった。また、損益面については、334億円の貸倒引当金の組入れを行ったことから営業費用が796億円となり、これにより経常損失は323億円となった。さらに、特別損失として4521億円の貸倒引当金の積み増しを行った結果、中間純損失は4844億円の計上を余儀なくされ、A会社の平成7年9月末現在の貸借対照表上、4788億0300万円の資本欠損が生ずることになった。 (二) 被控訴人は、大手銀行21行の中で、住専7社に対する減免予定債権額が6607億円と突出していたにもかかわらず、一般貸倒引当金の残高が極めて不十分であり、住専7社に対する債権についての債権償却特別勘定の設定もしていなかったため、このままでは、平成8年3月 定債権額が6607億円と突出していたにもかかわらず、一般貸倒引当金の残高が極めて不十分であり、住専7社に対する債権についての債権償却特別勘定の設定もしていなかったため、このままでは、平成8年3月期決算において、引当金不足が問題視され、商法285条の4第2項違反の責任を追及される可能性が高まったことから、被控訴人としては、A会社に対する本件債権については、平成8年3月期において、貸倒処理による直接償却をするほかないとの判断に至り、同期に合わせて含み益を実現する目的での株式売却を平成7年11月以降積極的に行い、その利益の額は、同月が818億円、同年12月が2072億円、平成8年1月が781億円、同年2月が496億円、同年3月が436億円と合計4603億円に達した。 (三) 一方、被控訴人は、同社の顧問税理士であるb税理士に対し、本件債権は、全額回収不能といわざるを得ず、全額を貸倒債権として直接償却したいので、事前に国税当局と償却方法について相談してほしい旨を依頼され、b税理士は、平成8年1月10日、国税庁課税部審理室のa専門官を訪ねたところ、a専門官は、基本通達9-6-2の全額回収不能に基づく貸倒償却の方法で税務処理を行うことは到底できないこと、住専7社の母体行が住専に対して債権放棄をすれば、基本通達9-4-1によって、当該債権放棄について寄附金認定を行わず、当該放棄によって生じる損失額について、税務上の損金算入を認めることができることなどを説明をし、b税理士は、その旨を被控訴人に報告した。しかしながら、公的資金を導入することについて反対が強く、本件閣議決定及び閣議了解に則った住専処理法案が成立する見通しもない段階において、本件債権を放棄し、その後、結局、これが成立しなかった場合には、株主代表訴訟による責任追及がされるおそれがあったとこ 本件閣議決定及び閣議了解に則った住専処理法案が成立する見通しもない段階において、本件債権を放棄し、その後、結局、これが成立しなかった場合には、株主代表訴訟による責任追及がされるおそれがあったところから、被控訴人内部においては、債権放棄によることは避け、全額回収不能であるとして税務処理したいとして、再度、国税庁と協議を行うべきとの結論に達したため、b税理士は、同月12日と同月18日の2回にわたり、被控訴人の職員数人と共に再度、a専門官を訪ねたが、a専門官の意見は変わらず、b税理士は、同月18日の際、本件債権の担保権を放棄した上で平成8年3月期に当該債権が全額回収不能になったとして貸倒処理を行う方法の是非についても確認したが、a専門官は、担保権を放棄しただけでは、本件債権について全額回収不能であるとまではいえないと述べ、基本通達9-4-1による債権放棄以外には損金算入する方法は考えられない旨を述べた。 一方、j国税庁次長は、同月27日、衆議院予算委員会において、本件閣議決定によって策定された住専処理スキームに基づいて関係者の合意の下に関係金融機関が債権放棄を行えば、税務上も損金の額に算入される性格のものと考えていること、合意に基づいて債権放棄を行うというのであれば、すべての母体行がそろって放棄を行うのが自然の形であるが、個別にどのように判断するかは、申告書の提出を待たざるを得ない旨を答弁した。 (四) 本件母体5社は、本件閣議決定及び本件閣議了解で示された住専処理計画に沿って、A会社の不良資産のうちの損失見込額1兆3588億円及び欠損見込額187億円の合計1兆3775億円について、本件母体2行がA会社に対する債権を全額放棄することによって5370億円を負担し、一般行はA会社に対して有している債権の合計9264億円のうち4999億円を債権 7億円の合計1兆3775億円について、本件母体2行がA会社に対する債権を全額放棄することによって5370億円を負担し、一般行はA会社に対して有している債権の合計9264億円のうち4999億円を債権放棄することによって同額を負担し、B系統金融機関は、3407億円を贈与することによって同額を負担することを基本とするA会社の具体的処理計画案を策定するとともに、平成8年3月期末時点での関係金融機関の債権額及び債権放棄予定額を計算し、被控訴人において、平成8年3月21日、上記内容を記載した「A株式会社の損失処理に関するご連絡」と題する書面(本件損失に関する連絡)をA会社のすべての一般行に送付した。上記処理計画案では、A会社の正常資産及び不良資産のうち回収が見込まれるものの合計額は、1兆2103億円であり、実質的に一般行及びB系統金融機関に返済される合計額(一般行及びB系統金融機関がA会社に対して有する債権から、一般行の債権放棄額及びB系統金融機関の贈与額を除いたもの)は、1兆0791億円とされていた。 また、一般行あての上記書面には、同書面内容に意見等がある場合には、同月25日までに連絡するように求める記載がされていたが、一般行から特段の意見は表明されなかった。 (五) 本件母体5社は、平成8年3月29日、A会社の母体行である被控訴人及びE銀行並びに一般行の債権放棄額を確認するとともに、被控訴人及びE銀行は、A会社の営業譲渡の日までに同債権放棄額に対応する貸出債権を全額放棄するものとすることを確認する旨の書面を作成した。 また、被控訴人は、同日、取締役会を開催し、A会社向けの母体行債権の全額を債権放棄することを決議したが、同取締役会では、本件債権を本件事業年度において直接償却する必要性がある理由として、仮に本件事業年度において多額の債権償却 役会を開催し、A会社向けの母体行債権の全額を債権放棄することを決議したが、同取締役会では、本件債権を本件事業年度において直接償却する必要性がある理由として、仮に本件事業年度において多額の債権償却特別勘定の設定をすると、前年度にこれをしていなかったことの責任を問われるおそれがある旨が説明されたほか、本件債権放棄に解除条件を付すことにすれば、債権放棄によって被控訴人に損害を与えたとしてする代表訴訟を防止する効果がある旨が説明された。そこで、被控訴人は、同日、A会社との間で、本件約定書を取り交わし、本件債権放棄をしたが、本件約定書は、同約定書別表記載の貸付債権(元本合計金3760億5500万円の本件債権)及びこれに付帯する利息債権を含む一切の権利を対象債権として、被控訴人が同対象債権をA会社の「営業譲渡の実行及び解散の登記」が平成8年12月末日までに行われないことを解除条件として本日放棄し、A会社はこれを承諾すること(第2条)、被控訴人は、同債権放棄に伴い、対象債権に付帯する一切の担保権及び保証債権が消滅することを確認すること(第3条第1項)、第3条第1項の他、被控訴人がA会社に対して根抵当権、根質権、包括的な譲渡担保権、根保証債権等、対象債権を担保する包括的な物的・人的担保権を有する場合、被控訴人は、このすべてを本日放棄し、A会社はこれを承諾すること(第3条第2項)、被控訴人とA会社は、第2条の解除条件が成就した場合、その解除の効果は平成8年12月末日の経過をもって発生することを確認すること(第4条)等を内容とするものであった。また、被控訴人とA会社は、平成8年3月29日、本件約定書第2条について、①営業譲渡の実行とは、営業譲渡契約において定められる営業譲渡日に行われる資産譲渡等を意味する、②平成8年12月末日までにA会社の営業譲渡の実 会社は、平成8年3月29日、本件約定書第2条について、①営業譲渡の実行とは、営業譲渡契約において定められる営業譲渡日に行われる資産譲渡等を意味する、②平成8年12月末日までにA会社の営業譲渡の実行又は解散の登記のいずれか一方しか行われない場合には、解除条件は成就したものとするとの覚書を締結した。また、A会社は、本件債権放棄を受け、平成8年3月期の事業年度において、3760億5500万円の債務免除益を計上した。 (六) 住専処理に係る公的資金6850億円を盛り込んだ平成8年度予算案は、与野党間で直前まで交渉が行われ、与党と新進党との間において、平成8年4月10日、同公的資金については、制度を整備した上で措置する旨の合意が交わされたことを踏まえて、翌11日に衆議院本会議で可決されたものの、住専処理法自体の審議入りの時期は不明で、決着は先送りされた旨の報道もされた。その後、同予算案は、同年5月10日に参議院本会議で可決されたが、住専処理法自体は、国会会期末前日の同年6月18日にようやく可決されて同月21日施行された。これを受けて、A会社は、同月26日、株主総会における特別決議により、解散及び営業譲渡に関する定款の一部変更の決議をし、同年8月31日に、住宅金融債権管理機構との間で営業譲渡契約を締結した上で、同年9月1日解散し、そのころその旨の登記がされた。また、被控訴人は、同年6月26日ころ、本件約定書の5条によりA会社に返還することとされていた貸付契約証書、約束手形等の関係書類を返還した。 (七) 一方、預金保険機構は、平成8年8月29日、住専7社の母体行、一般行及びB系統金融機関に対して、本件閣議決定、本件閣議了解及び住専処理法を前提とした住専処理計画に係る基本協定(住専処理に係る基本協定)を提示し、関係金融機関は、そのころ、預金保険機 の母体行、一般行及びB系統金融機関に対して、本件閣議決定、本件閣議了解及び住専処理法を前提とした住専処理計画に係る基本協定(住専処理に係る基本協定)を提示し、関係金融機関は、そのころ、預金保険機構に対し、同基本協定書に同意する旨の書面を提出した。 三本件債権の本件事業年度における損金算入の適否 1 平成8年3月末における本件債権の回収不能性(貸倒れ)前記一のとおり、法人税法は、金銭債権については評価減を認めないことを原則としているため、不良債権を貸倒れとして直接償却することができるのは、その全額が回収不能となった場合に限られることになる(全額が回収不能とはいえない場合には、間接償却の方法や債権放棄等による直接償却の方法が別途用意されていることは、前記一のとおりである。)。ここで債権の全額が回収不能であるとは、債務者の実際の資産状況、支払能力等の信用状態から当該債権の資産性が全部失われたことをいい、この場合に限って、所得の計算上、金銭債権の滅失損として、法人税法22条3項の規定により損金の額に算入することができるものである。そして、貸倒れによる損金は、その損金算入時期を人為的に操作して、課税負担を免れるといった利益操作の具に用いられる余地を防ぐためにも、全額回収不能の事実が債務者の資産状況や支払能力等から客観的に認知し得た時点の事業年度において損金の額に算入すべきであり、それが一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に適合する所以である。 これを本件についてみると、前記二で認定した事実によれば、A会社の正常資産及び不良資産のうち回収が見込まれるものの合計額は、その当時、少なくとも1兆円は残されていたことが推認され、この金額は、A会社の借入金総額の約40パーセントにも上るのであるから、このようなA会社の客観的な財務状況に鑑みると、 まれるものの合計額は、その当時、少なくとも1兆円は残されていたことが推認され、この金額は、A会社の借入金総額の約40パーセントにも上るのであるから、このようなA会社の客観的な財務状況に鑑みると、平成8年3月末時点において、本件債権が全額回収不能であったといえないことは明らかである。 これに対し、被控訴人は、A会社の設立時から被控訴人が平成8年3月29日に本件債権を放棄するまでの間に、被控訴人を含む母体行のA会社に対する債権は、非母体行の債権に対し、その弁済順序において劣後することが段階的に顕在化し、本件債権は、平成8年3月末までの間に、関係金融機関の合意又は社会通念により、弁済順序において最劣後のものとなっていた旨を主張するが、被控訴人は、A会社を破綻させ、その結果、我が国の金融システムに対する不安を招いたことにつき、母体行として、社会的、道義的責任を負っていたことは否定できないし、また、A会社の健全経営やいわゆるバブル経済崩壊後のA会社の再建計画に当たって、母体行として責任がある旨を表明したり、不利な返済条件等を受け入れるなどしたことは窺われるものの、本件新事業計画の実施までは、A会社を再建することを前提としていたものであって、これをもってA会社の破綻後の整理条件についてまで被控訴人ら母体行の債権を非母体行の債権に劣後させる旨の合意がされたものとはいえないし、社会的、道義的にみて本件債権を行使し難い状況が生じつつあったとはいえても、法的にみて本件債権が劣後化していたとまでいうことはできない。また、確かに、A会社の母体行、一般行及びB系統金融機関は、本件閣議決定及び閣議了解に基づくA会社の破綻処理計画に同意したことが認められるものの、その同意は、あくまでも、住専処理法及び住専処理を前提とする予算が成立し、公的資金導入の決定がされる 融機関は、本件閣議決定及び閣議了解に基づくA会社の破綻処理計画に同意したことが認められるものの、その同意は、あくまでも、住専処理法及び住専処理を前提とする予算が成立し、公的資金導入の決定がされることが大前提であったものであって、A会社の関係金融機関は、その後、翌事業年度に入ってから、同予算及び住専処理法が成立し、A会社がその営業を譲渡したのを受けて、預金保険機構が示した住専処理に係る基本協定に改めて同意していることに照らしても、未だ平成8年3月末時点においては、本件債権が関係金融機関の合意により又は社会通念上弁済順序において法的に最劣後のものとなっていたということはできない。 また、被控訴人は、解除条件付きで本件債権放棄をした際、全ての担保権を無条件で放棄したものである旨を主張するが、本件約定書(甲第4号証)の記載によれば、被控訴人は、A会社の営業譲渡の実行及び解散の登記が平成8年12月末日までに行われないことを解除条件とする本件債権放棄をするのに伴い、本件債権に附帯する一切の担保権及び保証債権が消滅することを確認したものにすぎない上、被控訴人は、公的資金の導入を前提とする住専処理法が成立する前に本件債権を無条件で放棄したのでは、同法及び住専処理を前提とする予算が成立しなかった場合に、被控訴人の取締役が株主代表訴訟によってその責任を追及されることをおそれ、これを回避するために本件債権放棄に解除条件を付したものと認められるのであるから、被控訴人が本件債権に係る担保権のみを無条件で放棄したものとは到底考えられないのであって、解除条件が成就して本件債権放棄の効力が消滅した場合には、担保権についてもこれを消滅させない趣旨であったものと解されるのであり、そして、当時、住専処理法や住専処理を前提とする予算が成立しないで、解除条件が成就する可能 件債権放棄の効力が消滅した場合には、担保権についてもこれを消滅させない趣旨であったものと解されるのであり、そして、当時、住専処理法や住専処理を前提とする予算が成立しないで、解除条件が成就する可能性も相当程度にあったのであるから、上記のように条件付きで担保権を消滅させたとしても、これによって本件債権が同年3月末時点において全額が回収不能になっていたものということはできない。 さらに、被控訴人は、本件債権を行使することは、社会全体を敵に回すに等しく、社会的存在としての銀行としてはこの上なく有害な行為であって、本件債権は、本件事業年度において、社会通念上回収不能の状態にあったものである旨を主張するが、そもそも、債権の全額が回収不能であるとは、前記のとおり、債務者の実際の資産状況、支払能力等の信用状態から当該債権の資産性が全部失われたことをいうのであって、責任財産がありながら、債権行使に対する社会的批判等の他事を考慮して債権者が当該債権を行使しないこととしたような場合などは、これに当たるものではない。 翻って考えるに、以上のようにA会社の母体行としての責任を問われ、また、A会社の再建やその後の破綻を前提とした住専処理計画の中において、被控訴人が不利な返済条件や債権放棄等を甘受する意向を表明し、A会社に対する担保権の放棄を余儀なくされるに至ったこれら一連の経過は、未だ資産性が全部滅失していない本件債権の行使を差し控えようとするものにほかならないのであって、結局は、被控訴人が平成8年3月29日に明示的に行った解除条件付きの本件債権放棄に集約されるものであり、これを経済的利益の無償供与として損金の額に算入することができるか否かを別途検討する余地はあるとしても、それをもって本件債権が全額回収不能となったということのできないことは明らかである。 であり、これを経済的利益の無償供与として損金の額に算入することができるか否かを別途検討する余地はあるとしても、それをもって本件債権が全額回収不能となったということのできないことは明らかである。 2 本件債権放棄による本件事業年度における損金算入の適否(一) 前記一のとおり、必ずしも全額回収不能とはいえない金銭債権が放棄された場合でも、債権の回収不能部分が特定されて当該部分の債権が放棄された場合や、損失を負担しなければより大きな損失を被ることが明らかであるためやむを得ず債権放棄を行う場合には、経済取引として十分に肯首し得る合理的な理由があるということができるから、そのような場合には、経済的利益の無償供与は、寄附金には当たらないものと解することができ、基本通達9-6-1(四)、9-4-1も、その趣旨を定めたものということができる。そして、本件においては、前記二のとおり、平成8年3月までにA会社の債務超過の状態が相当期間継続し、本件債権に回収不能部分があったことが認められ、また、被控訴人は、母体行として、A会社と密接な事業関連性を有していたところ、A会社の経営が破綻して公的資金を導入した上での整理が予定されていたもので、本件債権を放棄しなければ、さらに大きな損失を被ることになることが明らかであったともいえるから、本件債権放棄が寄附金には当たらないものと解する余地はある。 (二) ところが、本件債権放棄は、A会社の営業譲渡の実行及び解散の登記が平成8年12月末日までに行われないことを解除条件としたものであり、その解除条件の不成就が翌事業年度において確定したものであるところ、被控訴人は、本件債権放棄の効力は、このように解除条件が付されていても、債権放棄のされた本件事業年度において効力が生じているのであるから、同年度における損金の額に算入されるべ したものであるところ、被控訴人は、本件債権放棄の効力は、このように解除条件が付されていても、債権放棄のされた本件事業年度において効力が生じているのであるから、同年度における損金の額に算入されるべきである旨を主張するものである。 しかしながら、前記二で認定した事実によれば、被控訴人は、平成8年3月期決算において引当金不足が問題視されることを危惧して、本件事業年度において本件債権を直接償却するほかないと判断し、これに合わせて保有する株式の含み益を得るため、平成7年11月以降株式売却を積極的に行い、その利益の額は、平成8年3月までに合計4603億円に達し、本件債権の償却を次年度に繰り越すことはもはや事実上不可能な状況に自ら立ち入った一方で、本件事業年度に本件債権を直接償却するために本件債権を平成8年3月末までに放棄した場合には、公的資金の導入を前提とする住専処理法が成立に至らなかった場合に被控訴人の取締役が株主代表訴訟によってその責任を追及されるおそれを払拭できず、解除条件付きの本件債権放棄は、このようなジレンマの中でいわば苦肉の策として考えられたものということができ、被控訴人としては、これによって、本件事業年度に本件債権を直接償却することができ、4603億円もの株式売却益に対する課税負担を回避することができる一方で、仮に住専処理計画が計画通り成立しなかった場合でも、被控訴人の取締役が株主代表訴訟による責任を追及されるおそれも回避できるということを意図して行われたものということができる。そして、このような解除条件の付された債権放棄に基づく損失の損金算入時期を、当該意思表示のされたときの属する事業年度としたときには、本来、無条件の債権放棄ができず、当該事業年度において損金として計上することができない事情があるにもかかわらず、法人側の都合で損 金算入時期を、当該意思表示のされたときの属する事業年度としたときには、本来、無条件の債権放棄ができず、当該事業年度において損金として計上することができない事情があるにもかかわらず、法人側の都合で損金計上時期を人為的に操作することを許容することになるのであって、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に適合するものとはいえない。 (三) そして、そもそも、課税は、私法上の法律行為の法的効果自体にではなく、これによってもたらされる経済的効果に着目して行われるものであるから、ある損金をどの事業年度に計上すべきかは、具体的には、収益についてと同様、その実現があった時、すなわち、その損金が確定したときの属する年度に計上すべきものと解すべきところ、解除条件付き債権放棄の私法上の効力は、当該意思表示の時点で生ずるものの、本件におけるような流動的な事実関係に下においては、債権放棄の効力が消滅する可能性も高く、未だ確定したとはいえないのであるから、本件解除条件付きでされた債権放棄に基づいて生ずる損金については、当該条件の不成就が確定したときの属する年度、すなわち、本件事業年度ではなく、住専処理法と住専処理を前提とする予算が成立し、A会社の営業が譲渡され、解散の登記がされた翌事業年度の損金として計上すべきものというべきである。 (四) 被控訴人は、被控訴人と同様に平成8年3月期において住専向け債権を放棄した株式会社C銀行については、基本通達9-4-1が適用することを否定されなかったものであり、また、株式会社日貿信等の事案においては、解除条件付きで債権放棄をした事業年度において損金算入を認めているのであるから、本件債権放棄について損金算入を認めないことは、合理的理由なく特定の納税者についてのみ不利な取扱いをするものであって、課税の公平性の原則からいって、許さ 年度において損金算入を認めているのであるから、本件債権放棄について損金算入を認めないことは、合理的理由なく特定の納税者についてのみ不利な取扱いをするものであって、課税の公平性の原則からいって、許されない旨を主張するが、仮に類似事案において損金算入が認められた例があるとしても、控訴人が被控訴人を殊更恣意的に不公平に扱おうとしたと認めるに足りる事情は認められないのであるから、それだけでは本件再更正処分等の違法性を基礎付けるものとはいえない。 3 関係者の協議決定による損金算入の適否前記一のとおり、債権者の協議等によって、回収不能部分を特定しこれを原則として債権者らの債権額に案分して切り捨てた場合は、経済取引として十分に肯首し得る合理的な理由があるということができ、そのような場合には、当該経済的利益の無償供与は、寄附金には当たらないものと解することができ、基本通達9-6-1(三)も、このことを定めたものということができる。 前記二で認定した事実によれば、本件閣議決定及び閣議了解に基づく住専処理計画は、政府が斡旋し、A会社の関係金融機関が協議して決定したものというべきであるが、同住専処理計画は、被控訴人ら母体行の社会的、道義的責任を重視して、その債権を全額放棄させ、B系統金融機関については、他の一般行よりも優遇した内容となっているのであるから、その内容からして被控訴人の経済的利益の無償供与性を否定することは困難であり、そればかりか、確かに前記認定事実によれば、A会社の母体行、一般行及びB系統金融機関は、本件事業年度中に、本件閣議決定及び閣議了解に基づく住専処理計画に同意していたことが認められるものの、その同意は、あくまでも、住専処理法及び住専処理に係る予算が成立して、公的資金が導入されることを大前提とするものであったのであり、A会社の関係 基づく住専処理計画に同意していたことが認められるものの、その同意は、あくまでも、住専処理法及び住専処理に係る予算が成立して、公的資金が導入されることを大前提とするものであったのであり、A会社の関係金融機関は、その後、翌事業年度に入ってから、住専処理法等が成立し、A会社がその営業を譲渡したのを受けて、預金保険機構が示した住専処理に係る基本協定に同意したのであるから、行政機関等の斡旋による当事者の協議が成立したのは、翌事業年度においてであったというべきであり、いずれにしても、本件事業年度における損金算入を認めることはできない。 4 まとめ以上のとおり、本件債権は、平成8年3月末当時、全額回収不能であったものとはいえず、また、本件債権放棄や関係者の協議決定によっても、本件事業年度において本件債権を損金に算入することは許されず、他に本件事業年度において本件債権について損金算入を認めるべき理由もないから、被控訴人が本件確定申告において本件債権の額に相当する3760億5500万円を損金に算入したことには、否認すべき理由があるというべきである。 四国税通則法65条4項所定の「正当な理由」の存否被控訴人は、本件債権放棄は、本件閣議決定という政府の方針に沿ったもので、大蔵省の担当者も、本件債権の放棄を率先して行うように指導しており、また、国税庁の担当者から本件債権を放棄すれば、その全額を損金の額に算入することができ、債権放棄に解除条件が付いていても税務上有効である旨の指導を受け、被控訴人はこれに従ったものであるから、被控訴人が本件債権の全額を損金の額に算入して本件確定申告を行ったことについて国税通則法65条4項にいう「正当な理由」が認められ、控訴人による本件の過少申告加算税の賦課決定処分は取り消されるべきである旨を主張する。 しかしながら、前 入して本件確定申告を行ったことについて国税通則法65条4項にいう「正当な理由」が認められ、控訴人による本件の過少申告加算税の賦課決定処分は取り消されるべきである旨を主張する。 しかしながら、前記二で認定した事実によれば、本件事業年度において本件債権を貸倒れとして損金の額に算入することができるか否かについて、被控訴人は、国税庁のa専門官に相談をし、同専門官がこれに対応したもので、同専門官は、全額回収不能であるとして債権放棄をしないで本件事業年度において損金として処理したいという被控訴人の意向に対して明確にこれを否定し、債権放棄をした上で基本通達9-4-1によって損金処理する以外には方法がないと指導していたものであり、一方、被控訴人がa専門官との交渉を依頼したb税理士の陳述書(甲第326号証)中には、a専門官が、b税理士に対し、解除条件が付されていても税務処理に差し支えないと回答した旨の陳述記載部分があるが、これを否定するa専門官の陳述書(乙第24号証)の陳述記載部分に照らして、上記b税理士の陳述記載部分を直ちに採用することはできず、他にはこれを認めるに足りる証拠はない。 その他、本件の一切の事情を考慮しても、被控訴人が本件債権の全額を損金の額に算入して本件確定申告を行ったことについて国税通則法65条4項にいう「正当な理由」が認められるものとはいえない。 五本件更正処分及び本件再更正処分等の適法性前記三のとおり、本件債権の額に相当する3760億5500万円は、本件事業年度における被控訴人の所得金額に加算されるべきであるところ、請求原因1(二)の事実、並びに抗弁2のうち別紙1の<2>、<4>、<7>及び<10>の各項目及び金額については当事者間に争いがなく、別紙1の<3>のとおり、所得金額を加算すると、控除可能な外国税額が別紙1の< 二)の事実、並びに抗弁2のうち別紙1の<2>、<4>、<7>及び<10>の各項目及び金額については当事者間に争いがなく、別紙1の<3>のとおり、所得金額を加算すると、控除可能な外国税額が別紙1の<8>となることは、甲第1号証及び弁論の全趣旨によって明らかであり、そうすると、控訴人が納付すべき法人税額が別紙1の<5>、過少申告加算税が別紙1の<11>となることは計数上明らかであって、これは、本件更正処分及び第一過少申告加算税の各内容と一致する。また、請求原因1(四)の事実、並びに抗弁2のうち別紙2の<14>ないし<26>及び<29>の各項目及び金額については当事者間に争いがなく、再計算後の控除可能な外国税額が別紙2の<30>となること、本件更正処分によって既に被控訴人が納付した本税額が別紙2の<32>となることは、甲第7号証及び弁論の全趣旨によって明らかであり、本件更正処分に係る所得金額と上記争いのない各項目を前提とすると、新たに納付すべき法人税額等が別紙2の<27>、過少申告加算税額が別紙2の<33>、重加算税額が別紙2の<34>となることは計数上明らかであって、これは、本件再更正処分、第二過少申告加算税及び重加算税の各内容と一致するところである。 したがって、本件更正処分等は、いずれも適法である。 六結論以上の次第で、被控訴人の本訴請求は、いずれも理由がないから、これを認容した原判決を取り消して、被控訴人の請求をいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第8民事部裁判長裁判官村上敬一裁判官澤田英雄裁判官永谷典雄(別紙は省略) 永谷典雄(別紙は省略)

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