主文 1 本件控訴及び附帯控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。 2 控訴人は,別紙認容額目録「氏名」欄記載の各被控訴人に対し,各被控訴人にそれぞれ対応する同目録「認容額」欄記載の各金員及びうち各被控訴人に対応する同目録①ないし⑬欄記載の各金員に対する各同欄記載の各年月日からそれぞれ支払ずみまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを7分し,その6を控訴人の負担とし,その余を被控訴人らの負担とする。 5 この判決は,2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(1) 原判決を取り消す。 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 または,(2) 原判決を破棄する。 本件を岡山地方裁判所に差し戻す。 2 被控訴人ら(1) 控訴人の控訴を棄却する。 (2) 原判決を次のとおり変更する。 (3) 控訴人は,別紙請求債権目録「氏名」欄記載の各被控訴人に対し,各被控訴人にそれぞれ対応する同目録「請求額」欄記載の各金員及びうち各被控訴人に対応する同目録①ないし⑬欄記載の各金員に対する各同欄記載の各年月日からそれぞれ支払ずみまで年5分の割合による金員を支払え(当審で請求を拡張)。 第2 事案の概要 1 次のとおり訂正し,当審における主張として,2,3のとおり付加するほか,原判決4頁2行目から67頁7行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。 なお,被控訴人らは,附帯控訴を提起して,請求を拡張し,次のとおり主張した。 「 平成12年度以降の被控訴人らに対する賃金の支給も,控訴人に勤務する男性との間 りであるから,これを引用する。 なお,被控訴人らは,附帯控訴を提起して,請求を拡張し,次のとおり主張した。 「 平成12年度以降の被控訴人らに対する賃金の支給も,控訴人に勤務する男性との間のこれまでの賃金格差が是正されないまま算出された支給額であり,これまでと同様の損害が被控訴人らに発生した。また,原審の結審後,被控訴人C,同F,同G,同O,同R,同Sが定年退職したところ,上記6名に対する退職金の支給額もこれまでの賃金格差が是正されないまま算出されており,同被控訴人らに当該支給額の格差について損害が生じている。さらに,控訴人は,雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下「男女雇用機会均等法」という。)の成立・改定等男女雇用平等が強く求められる情勢であるにもかかわらず,その是正を一向に行おうとしないばかりか,同一の主張を執拗に繰り返し,訴訟を長期化させているから,被控訴人らが本件訴訟遂行に要した弁護士費用も控訴人の不法行為と相当因果関係のある損害として追加する。 なお,各被控訴人の請求額の明細,及び計算根拠となる一時金の計算根拠は別紙1ないし25のとおりである。」(1) 原判決30頁5行目の「職能給率」を「職能率給」に改める。 (2) 同42頁8行目の「右六名」を「それ以外の六名」に改める。 (3) 同66頁4行目末尾の次に,以下のとおり加える。 「すなわち,被控訴人らに対し,同年齢,同勤続年数の男性従業員に支給された賃金との差額を支給することになると,労使が合意妥結した賃金額の総源資の枠を超えることになってしまうことになるが,労使が合意妥結した総源資の枠を超えてまで,控訴人に格差是正義務を負わせるのは,労働基準法4条の解釈適用を誤るものである。」(4) 同67頁5行目の「平成五 えることになってしまうことになるが,労使が合意妥結した総源資の枠を超えてまで,控訴人に格差是正義務を負わせるのは,労働基準法4条の解釈適用を誤るものである。」(4) 同67頁5行目の「平成五年五月」の次に「一八日」を加える。 2 当審における控訴人の主張(1) 「賃金表という制度自体の有効性」と「賃金表の個別適用・運用の有効性」の区別について原判決は,賃金表の有効性を判断するために,昭和56年以前の職務の実態のみならず,昭和57年以降の職務の実態を併せて認定し,この認定事実を基にして,賃金表Ⅰ,Ⅱの区別が労働基準法4条に違反していると判断している。 しかし,昭和57年以後平成7年までの賃金表は労使合意に基づいた各年度の昇給額を,それぞれ加算しているものにすぎず,昭和57年以後平成7年までの賃金表の有効性はひとえに昭和56年賃金表の有効性にかかっている。 そこで,昭和56年賃金表自体が労働基準法4条に違反するか否かを確定させる必要があるが,賃金表の有効性は,その当時又はそれ以前の男女の職務の実態を基に判断されることはあっても,その賃金表が成立した後の事実が,その有効性の判断に影響を与えることがないことは経験則上当然のことである。昭和56年賃金表の有効性は,昭和56年賃金表が合意妥結された昭和56年3月12日当時の又はそれ以前の男女の職務の実態を認定判断して決めるべき問題であり,昭和57年以後の男女の職務の実態は昭和56年賃金表の有効性には無関係であるということである。それは昭和56年賃金表の個別適用ないし運用の問題である。 原判決の認定手法では,どの年度の賃金表の有効性をどの事実によって認定したのか不明であり,認定が経験則に反するのみならず理由不備である。 原判決は,「賃金表という制度自 問題である。 原判決の認定手法では,どの年度の賃金表の有効性をどの事実によって認定したのか不明であり,認定が経験則に反するのみならず理由不備である。 原判決は,「賃金表という制度自体の有効性の問題」と「賃金表の個別適用の問題」を混同するものである。 (2) 賃金表という制度自体の有効性について昭和57年賃金表から平成7年10月20日までの各年度の賃金表の有効性は,ひとえに昭和56年賃金表の有効性にかかっている。 昭和56年賃金表の有効性とは,賃金表という制度自体の有効性のことである。したがって,まず,昭和56年賃金表という制度自体の有効性について検討するが,以下のアからウに述べるとおり,労働基準法4条に違反することはなく適法有効である。 ア男女労働は同一でなく,男女の職種・職務内容等には差異があること(ア) 労働基準法4条が禁止するのは,「女性であることを理由」とする差別的取扱いである。職種・職務内容・能率(労働成果),責任(権限)・作業条件などの違いによる男女の賃金格差は違法ではなく,労働基準法4条に違反しない。 (イ) 控訴人は製造業である。製品を出荷するまでには,原材料の手配から始まって多くの製造工程を経ている。当然,製造工程の各職場では,重量物の取り扱い,危険設備や動力機械の操作,金型の交換,機械設備の保守管理,有害物の取り扱いや高温・粉塵などの悪環境下にある作業には男性を,製造された製品の簡単な加工や仕上げ作業,良品・不良品の選別,計数・包装・箱詰めといった軽作業には女性を従事させてきた。 これは男女の体力の強弱,機械の知識習得の有無,労働基準法上の制限(女性には深夜業が禁止され,時間外労働にも上限があった。また,危険有害業務への就労も禁止されていた。)等 させてきた。 これは男女の体力の強弱,機械の知識習得の有無,労働基準法上の制限(女性には深夜業が禁止され,時間外労働にも上限があった。また,危険有害業務への就労も禁止されていた。)等々を考慮した結果の適正配置であった。 昭和47年以前も,昭和48年以後昭和55年まで,そして昭和56年以後も男女のこうした配置区分は変わっていない。設備の合理化が進み,環境も整備されてきたが,控訴人では現在でも労働災害の約9割は男性が被災しており,しかも重大事故につながっている。 こうして,男性には,「重量物の取り扱い・力や腕力のいる重作業」,「技術・技能及び治具・機械の調整・保全とか技術判断能力と臨機対応力の必要な作業」,「時間外勤務と交替勤務の必要な主体業務」,「大型機械とか複雑な機械による危険度の高い作業」を,女性には,「力のかからない軽量なものの取り扱い・手先や目を主体とした軽作業」,「技術・技能の習熟度の比較的容易なものとか,治具・機械の調整・保全の伴わない作業」,「時間外交替勤務のない作業」,「機械を使用しないとか軽機械による比較的安全な作業」というように男女の職務は二区分されており,その結果,男性には,機械に対する高度の技能や知識が要求され,重量物(金型も含め)や危険有害業務を取り扱ったりすることから,身体や生命に対する負荷や危険性が高かったり,交替勤務があればそれだけ会社からの拘束度が強いということから,控訴人では,男性には賃金表のⅠ表を,女性にはⅡ表を適用してきた。 こうした考えは従前から変わっておらず,昭和48年賃金表に「男女」の表記のある賃金表となっていても,これは性別のみで賃金表を区別したのではなく,男女の就く職務の違いを反映したものに他ならない。 (ウ) 被控訴人らは, っておらず,昭和48年賃金表に「男女」の表記のある賃金表となっていても,これは性別のみで賃金表を区別したのではなく,男女の就く職務の違いを反映したものに他ならない。 (ウ) 被控訴人らは,昭和56年賃金表が労働基準法4条に違反し,無効であると主張している。 既に指摘したように,「賃金表という制度自体の有効性(Ⅰ表・Ⅱ表という制度自体が労働基準法4条に違反するか否か)の問題」と,「その賃金表の個別適用あるいは運用(個別適用なり運用が労働基準法4条に違反するか否か)の問題」は別の問題であることを明確にしておかねばならない。 制度自体が労働基準法4条に違反するか否かは,昭和56年賃金表の成立した当時の事情に基づき判断されるべきであり,昭和57年以後の男女の職務の実態は,考慮すべき事情ではない。昭和57年以後の男女の職務の実態は賃金表の運用が正しいか否かという問題にすぎない。 (エ) 昭和56年賃金表という制度自体の有効性を判断するために,それ以前の時点において男女の職務に差異があったのかどうかを検証する必要がある。 そこで,昭和56年賃金表成立時までの男女の職務について,被控訴人らの主張するところを整理し,それにしたがって,昭和48年から昭和56年までの被控訴人らの職務を明らかにすれば以下のとおりである。 昭和48年から昭和56年までの職務に絞ったのは,被控訴人Dの主張のような昭和26年・27年当時のことは余りにも過去のことであり,考慮の対象外であるし(そもそも被控訴人Dの主張するような事実はない。),「昭和48年当時も男女差別があった」というのが被控訴人らの基本的主張であるので,「男女差別があったかどうか」を検証するためには,昭和48年以後昭和56年までを検証すればよいと うな事実はない。),「昭和48年当時も男女差別があった」というのが被控訴人らの基本的主張であるので,「男女差別があったかどうか」を検証するためには,昭和48年以後昭和56年までを検証すればよいと考えられるからである。 の部分は,被控訴人らが,「男性と同様の仕事をした」とか「男性と一緒に仕事をした」と主張しているところである。しかし,それ以外の職務については,そのような主張をしていない。 ①A 検査作業,包装作業②B 検査作業,包装作業成型作業(L-84)③C 成型作業,検査作業④D 包装作業,出荷作業,メカニカルシール加工⑤E 出荷作業(輸出)⑥F スリット加工,検査作業,包装作業,出荷作業⑦G 検査作業,包装作業,仕上作業,内職指導,グリス注入,カット作業⑧H 成型作業,仕上作業,検査作業,庶務(食堂作業兼務)⑨I 検査作業,仕上作業,シート重ね作業,串通し・運搬・串取り作業⑩J シール磨き作業,軸シール仕上・検査・包装作業,スリット作業,台シール加硫・接着・箱詰・出荷作業,グリス注入・包装作業⑪K 検査作業,受入作業(受入検査作業),良品選別作業,曲り直し作業,箱詰作業(国内)⑫L 検査作業,包装作業,出荷作業(輸出),受入検査作業,メカニカルシールの組立加工,内職指導作業⑬M 検査作業,包装作業,成型作業(L-84),受入検査作業,包装作業,箱詰作業⑭N プラスフォームブロック加工⑮O 検査包装作業,受入検査作業,出荷作業 査作業,包装作業,成型作業(L-84),受入検査作業,包装作業,箱詰作業⑭N プラスフォームブロック加工⑮O 検査包装作業,受入検査作業,出荷作業⑯P 検査作業,溝入れ作業,受入作業,出荷作業⑰Q 選別作業,検査・包装作業,受入検査作業⑱R 仕上作業,包装作業,出荷作業(国内)⑲S 包装作業(なお,⑧Hの成型作業は昭和35年当時のことであり,旧成型機による作業についてである。)(オ) 以上の検証結果をみれば,被控訴人ら19名中13名は昭和48年から昭和56年までの職務について,男女差別を窺わせる記載は一切ない。残り6名が,昭和48年から昭和56年までの間のある時期の職務に限って,男性と「一緒に仕事をした」とか「同じような仕事をした」とか主張している。そこで,これを個別に検討すると,以下のとおりである。 ②B昭和52年9月から昭和56年3月まで(3年6ケ月),成型職場において男性と同じような仕事をしたとするが,Bの職務は軽量作業,単純作業,安全な作業であり,一方男性の行っているのは重量作業(50~60㎏),危険作業,技能作業(設備の保全)の職務で,交替勤務もあり,明らかに異なっている。 ⑤E昭和48年4月から昭和56年3月まで(8年),輸出出荷において,箱詰と伝票整理(安全な軽量作業)を行い,梱包作業もしていたとするが,梱包作業は行っていない(もちろん,フォークリフトも使っていない)。 男性は月6回の出荷作業に際し毎回3~5日前から環境の悪いシートハウスで梱包作業およびフォークリフトによる移動を行うという重量作業,危険作業を行なっており,Eとは明らかに クリフトも使っていない)。 男性は月6回の出荷作業に際し毎回3~5日前から環境の悪いシートハウスで梱包作業およびフォークリフトによる移動を行うという重量作業,危険作業を行なっており,Eとは明らかに職務が異なっていた。 ⑨I昭和50年9月から昭和52年9月まで(2年),型物精練組にて「シート重ね作業」を行ない,男性のTと同じ作業を行なったとするが,Tは身障者であり,控訴人が配慮して特別処置として配置したものであり,比較対象されるべきものではない。 また,昭和52年9月から昭和56年3月まで(3年6ケ月),「串通し,運搬,串取り作業」を行ったが,この職務に関し,男性と同一労働と主張したいようである。しかし,男性の行う芯金処理作業は,技能作業,危険作業,汚染作業,交替勤務であり,女性のそれとは明らかに異なっている。 Iの作業は,軽量作業(芯金の供給とか取出しとか運搬)で,男性と同じような作業内容でなかった。Iの主張は,男性と同じ作業を女性でも「すればできる」との主張であり,単なる話だけのことである。 ⑫L昭和55年9月から昭和56年3月まで(6ケ月),輸出出荷において,箱詰とパレット梱包において男性と同じ仕事をしたとするが,Lは箱詰作業を行っており,安全な軽量作業であり,パレット梱包は行っていないし,フォークリフトも使っていない。 男性は,環境の悪いシートハウスでフォークリフトを使っての梱包作業で重量作業,危険作業であり,明らかに異なっている。 ⑬M昭和54年4月から昭和56年3月まで(1年11ケ月),特殊シールの箱詰作業を行ない,重量が重く取扱い数量が多いとするがこの主張は事実と異なる。重量は7~8㎏であり,箱 ⑬M昭和54年4月から昭和56年3月まで(1年11ケ月),特殊シールの箱詰作業を行ない,重量が重く取扱い数量が多いとするがこの主張は事実と異なる。重量は7~8㎏であり,箱数も外注先のもの(これは取扱わない)を除けば半分であり,また,1人ではなくみんなで作業したのであって,誇張した主張である。 ⑭N昭和48年4月から昭和56年3月まで(8年),プラスフォーム加工作業において,男性と同じような仕事をしたとするが,Nの扱ったプラスフォームは約7㎏であり(重いというものでもない),男性の扱ったものは20~30㎏(重いもの)であり,ブロックの移動も2階への運搬などはすべて男性が行っており,また,機械の調整や保守等も男性が行っていた。Nの行っていた作業はごく普通の安全な作業であり,男性の重量作業,技能作業とは明らかに異なっていた。 (カ) 以上のとおり,「男性と一緒に仕事をした」とか「男性と同じような仕事をした」と主張している職務を,被控訴人ごとに,男性と比較対照すれば,職務の内容も異なっており,責任の度合,危険性の度合,身体的負荷の度合,拘束度において男女の職務には差異がある。このことから明らかなように,男女の職務は相違しており,それに見合って男女に賃金差があるのは当然のことである。 前述したように,昭和56年3月12日以前のことについて,平成5年に提訴して以後,「男性と同様の仕事をした」とか「同じ職場で働いた」と主張しているのは被控訴人ら19名のうちの6名に過ぎない(しかも,昭和56年以前の全ての時期に関するものではなく,ある一時期に関するものである)。 他の13名は格別職務について男性と同一の仕事をしていたとは述べていない。それは男女間の賃 しかも,昭和56年以前の全ての時期に関するものではなく,ある一時期に関するものである)。 他の13名は格別職務について男性と同一の仕事をしていたとは述べていない。それは男女間の賃金格差が職務の違いを反映したものと理解していたからである。のみならず,「男性と同様の仕事をした」とか「同じ職場で働いた」と主張している6名の職務も同様の仕事をしている男性と比べ同一ではない。 以上のように,昭和56年賃金表作成当時,被控訴人らは,男女間に職務の違いがあることを認めていたのである。 (キ) 控訴人は職務給制度を採用していない。しかし,職務給を取らない年功賃金制の下でも,職務の差異に応じた2本立ての賃金表を持つことは,年功賃金制と何ら矛盾するものではない。 (ク) 被控訴人らは,「同一価値労働同一賃金が原則」であると主張している。しかし,実定法の解釈として,そうした原則が含まれているか否かについても定説があるわけではなく,もちろん職務分析の手法も確立されておらず,被控訴人らも,専門家に依頼して具体的職務について職務分析をして「同一価値労働」であるとの科学的根拠を提供しているわけでもない。こうした主張は,違法性判断において考慮する必要はない。 イ男女の賃金格差に対する労働組合の認識について内山労組及び青年婦人部は,昭和48年当時も昭和56年当時も,男女の賃金格差が違法なものであるとは認識していなかった。 昭和48年春闘時の組合ニュース(乙13の(4),(5))の中で,「是正」要求が記載されているが,男女賃金差別があってその是正を求めることなど記載されていない。そればかりか,昭和50年春闘職場討議資料(乙14の(1))の3ページには,前年度までの是正(男女間の格差ではなく同性 記載されているが,男女賃金差別があってその是正を求めることなど記載されていない。そればかりか,昭和50年春闘職場討議資料(乙14の(1))の3ページには,前年度までの是正(男女間の格差ではなく同性間の格差の是正)の取り組みの結果「スッキリした賃金体系が整いました」と自賛しているくらいであり,男女賃金格差のことなど一言も出てこない。 内山労組内には青年婦人部が存在し,活発な活動をしていたが,その当時,男女の賃金格差については一切問題視されていない。昭和48年10月の青年婦人部発行のニュース(乙15,16),昭和49年春闘時の青年婦人部発行の機関紙(乙24)にも男女賃金格差の是正という言葉さえ出てこない。昭和52年青年婦人部定期大会議案書(乙29)を見ても同様である。 その頃の青年婦人部の関心事は,賃金問題では一律配分の見直し,賃金以外では結婚祝金見直し,母性保護の改善,土・日週休二日制導入などであった(乙10)。 女性の賃金について,これが性別による差別賃金であるとの問題意識は,内山労組の組合大会の議案書(例えば,昭和52年9月青年婦人部の定期大会議案書(乙29))のどこにも見られない。 このように昭和48年当時も昭和56年3月12日当時も,組合も青年婦人部も,男女の賃金格差のあることに格別異論を唱えていない。控訴人,組合,被控訴人ら当事者間において,男女の賃金格差は,男女の職務の違い(職務内容,要求される技能・知識,危険性,会社への拘束度)からくる当然の結果を反映したものと捉えられていたからである。 ウ労使自治の原則について重要なことは,被控訴人らの属する内山労組と控訴人とが合意妥結して昭和56年賃金表が成立しているということであり,かつ,その成立過程で被控訴人らの意見も十分反映 ウ労使自治の原則について重要なことは,被控訴人らの属する内山労組と控訴人とが合意妥結して昭和56年賃金表が成立しているということであり,かつ,その成立過程で被控訴人らの意見も十分反映されており,組合内で調整ずみであるということである(ア) 昭和56年賃金表ができるまで,内山労組のU委員長が1年間専従として賃金問題を調査・研究し,昭和56年3月12日の臨時組合大会で,被控訴人ら19名を含む内山労組組合員が昭和56年賃金表を絶対多数で可決承認しているのである。内山労組にはその当時84名の女性組合員がいたが,その全員が承認,賛成したのである。 その組合大会に先立ち,組合は執行委員会で討議し,各職場の代表者で構成された代議員会にかけて討議され,執行委員会の討議を答申という形で出した賃金資料(甲3)を被控訴人らを含む組合員全員に配付し,臨時大会を開いて,挙手をもって絶対多数で可決し,昭和56年賃金表を全員で承認したのである(証人U〔原審〕)。甲3に基づき,Ⅰ表・Ⅱ表による初任給,基本給の違い,Ⅱ表が女性に適用されることを,被控訴人らは,組合から説明を受け,被控訴人らはこれを了承しているのである。 組合内部において,Ⅰ表とⅡ表の賃金差は,20パーセントであり,全国平均の35パーセント差からすれば,その格差は少なく,同業他社や岡山県の県内企業の状況と比べても男女の賃金差は稀少であり,男女の職務の困難度の相違を考えれば,20パーセント程度の格差はやむを得ないとの判断から,被控訴人らも昭和56年賃金表を承認し,控訴人との間で合意妥結に至ったものである。以後,同賃金表は企業内に定着し運用されてきたものである。 ところが,唐突に,平成2年3月15日の春闘要求書で「男女賃金格差の解消」の 認し,控訴人との間で合意妥結に至ったものである。以後,同賃金表は企業内に定着し運用されてきたものである。 ところが,唐突に,平成2年3月15日の春闘要求書で「男女賃金格差の解消」の要求があった。しかし,春闘要求書には合理的理由はなんら示されていない。そうした中,平成5年5月18日に被控訴人らがいきなり提訴してきたものである。 (イ) 団体交渉中心主義は憲法28条の取るところであり,集団的労働関係について労使が自主的に決めたことについては,裁判所の介入は極力差し控えねばならない。これが,集団的労働関係に関する法原則である。 また,労使が自主的に取り決めたことを,一方当事者が改廃を申し入れるには,それなりの合理的理由を示す必要があるし,改廃の申し入れの効力があるのは,その時点から将来に向かってであり,過去に遡って改廃の効力が生ずるという解釈は採られていない。法的安定性を考慮すれば当然のことである。 昭和56年賃金表は,(ア)で述べたように,Uが1年間専従として賃金問題を調査研究し,被控訴人らを含む内山労組内で十分討論され,その上で労使が自主的に取り決めたことである。労使が自主的に取り決めたことについて,被控訴人らは,内山労組に属したまま昭和56年賃金表が違法であると主張している。 しかし,労使が自主的に取り決めたことについて,その改廃を求めるなら,当然組合内で議論して,組合からの申出という形で賃金表の改廃を求めるのが労使自治の原則に適うものである。当然,労使が自主的に取り決めたことについては,裁判所による介入は極力避けねばならない。 また,組合民主主義の原則から,組合内での性別による組合員の差別も禁止されているから(労組法5条2項4号),被控訴人らの主張 ことについては,裁判所による介入は極力避けねばならない。 また,組合民主主義の原則から,組合内での性別による組合員の差別も禁止されているから(労組法5条2項4号),被控訴人らの主張にあるような組合内で性別による差別が行われるはずもない。 もし,被控訴人らが,組合内での扱いが男女差別と考え,賃金表自体(つまり賃金表Ⅰ,Ⅱという制度自体)が労働基準法4条違反であると考えるなら,その時点で,あるいはそれ以後の時点でも,内山労組を脱退し,被控訴人らだけで労働組合を結成し,その上で合理的理由を示して賃金表の改廃を求めるべきである。それが,労使自治の原則からくる帰結である。 被控訴人らが内山労組の組合員である限り,賃金表自体に拘束されるものであり,労使が合意したことについて,しかも12年間もそれに則った運用がされてきているのに,平成5年に突如として提訴し,12年も前に遡って,「昭和56年賃金表のⅠ表・Ⅱ表自体の基準が不明確だ」とか,賃金表自体が「昭和48年賃金表の男女別賃金を引きずっている」などと主張して争うことは労使自治の原則に照らし許されない。 (3) 消滅時効について原判決は,控訴人のした消滅時効の主張につき,被控訴人らが違法な男女賃金差別に当たる旨の認識をいつから持ったかをめぐって更に審理をする必要があり,訴訟の完結を遅延させることとなるから,時機に後れた防御方法に当たるとしてこれを却下した。 しかし,本件は,平成5年5月18日に訴えが提起されたものであるから,提訴日からさかのぼること3年,すなわち平成2年5月17日以前に被控訴人らに生じた損害については時効消滅している。内山労組は,平成2年3月15日付けで春闘の要求書を提出し,その中で「男女の差別をなす現行賃金体系の ぼること3年,すなわち平成2年5月17日以前に被控訴人らに生じた損害については時効消滅している。内山労組は,平成2年3月15日付けで春闘の要求書を提出し,その中で「男女の差別をなす現行賃金体系の差別を廃止すること」を申し入れているのであるから,上記労働組合の組合員である被控訴人らは,全員が,この時点までに加害者及び損害の発生を知っていたものと解される。したがって,被控訴人らが加害者及び損害の発生を知った時点の認定は証拠上容易であって,訴訟の完結が遅延するものではない。よって,控訴人のした消滅時効の主張を時機に後れた防御方法として却下した原判決は不当である。 3 当審における被控訴人らの主張(1) 職務二分論についてア控訴人の主張する職務の分け方は,極めて曖昧であって,現実の職務がいずれの職務に属するのかを容易に判断できない。 重量物と軽量なものの区別,技術・技能の習熟の難易度,治具・機械の調整,保全の範囲,大型機械,複雑な機械と軽機械との区別等,いずれも賃金に多大な差を設ける以上,明確な違いを示す基準が存することが必要であり,しかもそれは,いつでも誰でも簡単に判断できる基準でなければならない。 しかし,そのような職場に働く者全員が簡単に判断できる基準などどこにも存していない。分類基準を文書で示されたものも,呼称すらもなく,およそ形のあるもので示したものが存在しないのである。被控訴人らにその基準が示されたことは一度もない。控訴人側のV証人(原審)でさえ明確な分類をなし得なかった。 今回,控訴人は,被控訴人らの実態からしても,被控訴人らは控訴人の主張する職務二分論の賃金表Ⅱの職務しか行っていないと主張する。しかし,その職務実態には常に言い訳が付きまとう。 たとえば,当審における控訴人準 訴人らの実態からしても,被控訴人らは控訴人の主張する職務二分論の賃金表Ⅱの職務しか行っていないと主張する。しかし,その職務実態には常に言い訳が付きまとう。 たとえば,当審における控訴人準備書面(8)において,「上ゴマ調整は非常に軽量なので女性も行っていた」(P.5)「成型職場の中のごく一部のことである」(P.10)「梱包の際のバンド掛けの相方として持つ程度の手伝い」(P.11)「多くの男性は二交替作業を行っていた」(P.15)「男性のTを配置したのは腸の病気のため体力的に交替作業ができないので…特別に人間的に配慮した結果」(P.21)「10kgほどのものを扱ったと言っているが,それぐらいあったとしても時たまのことであり」(P.31)などと述べているにすぎないのである。 明確な基準が存在していたのであれば,だれが判断しても同一結論が出るはずであり,殊更に言い訳をする必要もない。また,被控訴人らの原審における証言や陳述が,控訴人から間違っていると非難されるようなことになるはずもない。被控訴人らが従事していたとか,していないとか,争いになること自体がおかしいことなのである。 言い訳に終始していること,しかもその細かい説明からしても,結局,何故いつも男性にⅠ表が適用され,女性にⅡ表が適用されるのか,一つとして例外がないのか,十分納得し得る説明がないことこそが控訴人のいう職務二分論のいい加減さを物語っている。 イしかも,控訴人のいう職務二分論は基準が明確でないだけでなく,職務の評価もまったく妥当性を欠く不当なものである。 肉体的な能力,重量物の取り扱い,安全面での適応力,時間外・交替勤務,どの面でも男女間に明らかな差が 二分論は基準が明確でないだけでなく,職務の評価もまったく妥当性を欠く不当なものである。 肉体的な能力,重量物の取り扱い,安全面での適応力,時間外・交替勤務,どの面でも男女間に明らかな差がある,というのが控訴人が繰り返し述べるところである。 そして,控訴人は,重量物を扱うことを殊更に高く評価しているらしい。 重量物を取り扱っていたから高い賃金であり,力のかからない軽量なものを扱う,手先とか目を主体とした危険度の少ない軽作業は低賃金と決めつけている。 アメリカの女性は「男性と同じ位の体格で体力もあり重量物を扱っている」とし,「(日本人女性は)アメリカ女性と比べて体力面で劣っているという点は解消されていない」とするのは,日本人女性の賃金は安くてよいという結論に結びつくらしいが,この前提について一体どのような検証がされたのか,明らかでない。 重要な問題は,力のあることが直ちに高収入に繋がると判断してよいかということである。同一価値労働同一賃金原則を貫くとき,労働の価値評価は正しくされなければならない。直接・間接の性差別を排除した「客観性」が担保されなければならない。 たとえ肉体的な力は必要としなくても,高い集中力・緊張度を必要とする高価値の労働は存するのである。被控訴人らが多く就労していたとされる選別・受入検査,工程検査等はまさにこの高く評価されるべき労働なのである。 職務の価値評価につき何らの検討をなすこともなく,重量物を扱う者イコール男性の価値が高いとの主張自体に,控訴人側の差別意識が垣間見えるのである。 ウいずれにしても,控訴人会社の賃金表Ⅰ・Ⅱの歴史的沿革からして,それは「男性」表,「女性」表であったのであり,「職務の違い」を考慮して作成されたものではない。当 識が垣間見えるのである。 ウいずれにしても,控訴人会社の賃金表Ⅰ・Ⅱの歴史的沿革からして,それは「男性」表,「女性」表であったのであり,「職務の違い」を考慮して作成されたものではない。当時の男性賃金と女性賃金を基に作成されただけなのである。 作成時に職務内容を云々する発想はなく,控訴人が縷縷述べる職務二分論は本件訴訟において初めて披瀝されたものにすぎず,しかも前述したとおり,極めて不明確・独善的なものである。 エそもそも,控訴人の主張する職務二分論そのものが,伝統的な男女差別の思想であり,憲法第14条違反の考え方である。 すなわち,控訴人のこれらの主張は,女性は重量物や力を必要とする作業に従事することができず,技術・技能やその習熟能力において男性より劣り,機械の調整や保全をする能力もなく,交替勤務や時間外勤務ができず,危険な作業にも就かせることができないものと決め付け,合理的根拠のない予断と偏見を基にして,女性はすべて軽度・単純・安全な作業にしか配置しておらず,重要な作業には従事させていない,と主張するものである。 これこそ,根拠のない性差を前提として男女の固定的・伝統的役割分担を勝手に押し付け,女性の能力の向上や開発の途を閉ざそうとするものであり,まさに典型的な男女差別の思想であって,憲法第14条違反である。 したがって,控訴人の職務二分論は,賃金決定の合理的な説明とはなっておらず,むしろ,憲法秩序という公序に反する主張である。 (2) 男女差別と認めるべき事情について被控訴人らは,原審以来,控訴人の賃金格差は性差によるものと主張し,その事情として次のような指摘をしてきた。 ア昭和48年以前には,賃金表の年齢給は男・女という文言が使用され,男女差によることを明確 らは,原審以来,控訴人の賃金格差は性差によるものと主張し,その事情として次のような指摘をしてきた。 ア昭和48年以前には,賃金表の年齢給は男・女という文言が使用され,男女差によることを明確に示していた(甲4)。 昭和48年賃金表も,昭和56年賃金表も,基本的にこれを承継したものである。すなわち,職務や職種によってではなく,男性か女性かによって賃金表が異なっていたのである(甲1,2の各(1)・(2)も男子・女子という文言が使用されている)。 イ控訴人の賃金の決定要素は,性差と年齢と勤続年数という三つの要素によって決められており,職務・職種によって決められたことはない。 固定的・伝統的年功賃金であって,職務とリンクされたことは一度もなかった。 ウ採用基準や手続は男女同一であり,肉体的能力,技術力,経験といった要素は全く考慮されることもなく採用されている。すなわち,女性であるから軽度・単純・安全な職務に従事することが条件であるとされたことは全くない。 ただ,初任給が,男性と女性では同一年齢であっても格差があるという点のみが相違しているに過ぎない。採用そのものの方式や手続,職務の指定に何の差異もない。 エ男性と女性の労働内容は,基本的には同一であり,明確な区分はない。 この点,控訴人は職務二分論として縷縷述べるが,前述のように,不明確で不合理な二分論である。基本的に男・女で労働内容に差異はない。 オ全体として,控訴人では賃金について男女間には明確かつ顕著な差異があり,賃金のみならず一時金支給でも男女差を設けている。 以上のように現在の民事訴訟の実務において考慮すべき事情とされている諸点について照らしてみても,控訴人における賃金の格差は,男女の差によるものであることが明白であ 給でも男女差を設けている。 以上のように現在の民事訴訟の実務において考慮すべき事情とされている諸点について照らしてみても,控訴人における賃金の格差は,男女の差によるものであることが明白である。 (3) 職務の実態についてア控訴人は,被控訴人らが実際に従事した作業が,軽量・単純・安全な作業であったと執拗に繰り返し,原審の認定を非難する。 しかしながら,控訴人は職務二分論を主張しながら,誰にでも理解できるように明確に被控訴人らの職務や作業を立証できないのである。控訴人提出の多数の陳述書(乙38以下)は,いわば,一種のケチ付け,水掛論でしかない。 もし,本当に職務が二分され,男性・女性により従事する職務が別異とされているなら,予めそのような職務分担表が作成されて就業規則等に明示され,採用時はもとより人事異動ではそのことが従業員に良く理解できるよう提示されていなくてはならない。だが,そのような分担表は一切作成されたことはなく,控訴人準備書面において,あれこれと言い訳をし,例外の例外を設けて辻褄を合わせようとしているだけである。 原審が認定した被控訴人らの従事した職務・職場ごとの被控訴人らの就業の事実認定は正当なものである。 (4) 損害についてア以上のように,被控訴人らが従事してきた職務や就業状態は,男性と同一の価値のものであり,その間に労働としての価値的差を認める事情や根拠はない。 控訴人が本裁判になって行ったという職務評価(平成8年8月28日付控訴人準備書面別紙2)では,男性職の最低点(自動裁断)と女性職の最高点(溝入れ加工)との差は3点しかない。一方,男性職の最高点( 原料計量・混練り・冷却 )は36点,最低点は24点であり,その差は12点である。12点の格差がある の最低点(自動裁断)と女性職の最高点(溝入れ加工)との差は3点しかない。一方,男性職の最高点( 原料計量・混練り・冷却 )は36点,最低点は24点であり,その差は12点である。12点の格差があるが,男性であるからいずれも賃金表Ⅰが適用される。すなわち,12点の格差があっても同一賃金なのである。12点の格差があるとしても同一価値労働とされているのである。 そうだとすると,男・女の職務間においては,たかだか3点の差だけなのに,労働としての価値が,賃金金額において2~3割もの格差がつけられるのは,明らかに矛盾である。要するに,労働の価値の相違から,賃金額が決められていないので,このような不都合な結果となるのである。 控訴人においては,様々な職務があるが,その価値は同一として賃金は組み立てられており,職務による労働の価値の差はないものとされているのである。職務の差は,全くもって賃金の額に反映されてこなかったものであり,労働としてはすべて同一価値とされてきたのである。 イそうだとすると,もし,控訴人が賃金の額について,男女間における性による差を設けなかったとしたら,被控訴人らは男性と同一の賃金を得られたはずである。控訴人が,女性であることを理由として賃金を低く設定するという不法行為をしなかったとするなら,男性と同一価値の労働をしている被控訴人らは,いずれも男性と同一の賃金を得られたはずである。控訴人の不法行為と相当因果関係のある損害とは,男性との賃金差額ということになる。 ウさらに,控訴人は,被控訴人らの損害は,男性と類似の職務に従事したその期間だけが損害であって,男性との賃金差全体が損害となるものではないと主張する。なるほど,職務と賃金とがリンクされ,職務の相違が賃金の額の決定要素となっておれば,その立論も可 似の職務に従事したその期間だけが損害であって,男性との賃金差全体が損害となるものではないと主張する。なるほど,職務と賃金とがリンクされ,職務の相違が賃金の額の決定要素となっておれば,その立論も可能であろう。 しかし,控訴人においては,賃金の差は職務によって決定されておらず,性差と年齢と勤続年数だけが決定要因である。したがって,どのような職務に異動しようとも,どのような職務に就こうとも,男性は賃金表Ⅰであり,女性は賃金表Ⅱなのであるから,被控訴人らが男性類似の職務に就いた期間だけが損害ということにはならないのである。男性類似の職務に就いていない期間は,男性とは劣る賃金でなくてはならないとする理由も根拠もなく,控訴人の前記の主張は,その前提を欠いているというべきである。 (5) 消滅時効について控訴人は,原審が始まった当初から,消滅時効を主張することが可能であったにもかかわらず,訴訟提起後約8年を経てから,突然消滅時効を援用したものであり,原判決がこれを時機に後れた防御方法として却下したのは相当である。むしろ,当初より消滅時効援用が可能であることを熟知していながら,援用も行わず,原審において実質的な最終準備書面を作成した平成10年8月31日の段階で,控訴人は援用権を黙示的に放棄したと考えるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実次のとおり訂正,付加,削除するほかは,原判決67頁9行目から134頁6行目までの記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決67頁9行目の「甲一ないし六〇」を「甲一ないし六六,七五ないし八六」と改める。 (2) 同89頁につき,ア 1行目の前に,次のとおり加える。 「 被控訴人らは,いずれも,採用時,初任給は男性よりも低かったものの,それ以外の 六六,七五ないし八六」と改める。 (2) 同89頁につき,ア 1行目の前に,次のとおり加える。 「 被控訴人らは,いずれも,採用時,初任給は男性よりも低かったものの,それ以外の労働条件及び採用手続においては男性との間に異なるところはなく,控訴人に入社した。採用に当たって,控訴人から,男性と異なる職務に就くことになるとの説明もなかった。」イ末行の「昭和三四年」を「昭和二三年」に改める。 (3) 同89頁3ないし4行目,同90頁2ないし3行目,同91頁3ないし4行目,同92頁5行目,同95頁6ないし7行目,同96頁4行目,同98頁末行から同99頁1行目,同頁末行から同100頁1行目,同101頁1ないし2行目,同102頁1行目,同頁9ないし10行目,同103頁7ないし8行目,同104頁末行から同105頁1行目及び同106頁7ないし8行目の「採用時の採用基準は男性と特に異なるところはなかった。」を,いずれも削る。 (4) 同92頁につき,ア 2行目の「従事している」を「従事し,平成一三年三月二〇日に退職した」に改める。 イ 4行目の「四九月」を「四月」と改める。 (5) 同94頁1行目の「働いている」を「働き,平成一三年三月に退職した」に改める。 (6) 同95頁3行目の「従事している」を「従事し,平成一四年二月二〇日に退職した」に改める。 (7) 同96頁1行目の「従事した」を「従事し,平成一二年一二月二〇日に退職した」に改める。 (8) 同98頁8行目の「働いている」を「働き,平成一二年一一月に退職した」に改める。 (9) 同99頁3行目の「良品」を「不良品」に改め,8行目の「働いている」を「働き,平成一三年二月に退職した」に改める。 (10) 同100頁2ないし3行目の「 一月に退職した」に改める。 (9) 同99頁3行目の「良品」を「不良品」に改め,8行目の「働いている」を「働き,平成一三年二月に退職した」に改める。 (10) 同100頁2ないし3行目の「出荷作業」を「出荷(輸出)作業」に改める。 (11) 同103頁1行目の「代に成型組」を「第二成型組」に改める。 (12) 同103頁4行目,同106頁4行目及び同107頁3行目の各「従事してきた」を,「従事し,平成一二年九月二〇日に退職した」に,各改める。 (13) 同118頁8行目の「(原告Lの後任)」を削る。 (14) 同122頁末行の「従事していたていたが」を「従事していたが」に改める。 (15) 同125頁10,11行目の「カットする作業であり、原告Eの異動後は、男子であるWが後任として働いていた。」を「カットする作業である。」に改める。 2 争点1(差別の有無)について(1) 原判決134頁8行目から170頁9行目までの記載を引用する。ただし,同166頁9行目の「本人給」を「職能給」に改める。 (2) 控訴人は,男性従業員には,「重量物の取り扱い・力や腕力のいる重作業」,「技術・技能及び治具・機械の調整・保全とか技術判断能力と臨機対応力の必要な作業」,「時間外勤務と交替勤務の必要な主体業務」,「大型機械とか複雑な機械による危険度の高い作業」を,女性従業員には,「力のかからない軽量なものの取り扱い・手先や目を主体とした軽作業」,「技術・技能の習熟度の比較的容易なものとか,治具・機械の調整・保全の伴わない作業」,「時間外交替勤務のない作業」,「機械を使用しないとか軽機械による比較的安全な作業」というように,控訴人における男女の職務は二区分されており,その結果,男性従業員には,機械に対する高度の技能や知識が要求さ 交替勤務のない作業」,「機械を使用しないとか軽機械による比較的安全な作業」というように,控訴人における男女の職務は二区分されており,その結果,男性従業員には,機械に対する高度の技能や知識が要求され,重量物(金型も含め)や危険有害業務を取り扱ったりすることから,身体や生命に対する負荷や危険性が高かったり,交替勤務があればそれだけ会社からの拘束度が強いということから,控訴人では,男性従業員には賃金表のⅠ表を,女性従業員にはⅡ表を適用してきたと主張する。 その上で,控訴人は,被控訴人ごとに,比較対照の男性と比べれば,男女の職務の内容は異なっており,責任の度合,危険性の度合,身体的負荷の度合,拘束度において男女の職務には差異があり,男女の職務は相違しているのであるから,それに見合って男女間に賃金差があるのは当然であると主張し,控訴人における従業員の職務内容及び被控訴人らの職務内容について,控訴人の上記主張に沿う男性従業員らの陳述書(乙38,40ないし65〔枝番のあるものは枝番を含む。〕)を提出する。 しかし,上記各陳述書中,被控訴人らの各陳述書(甲16ないし20,29ないし32,34ないし43)に反する部分は,実際に個々の現場で自ら作業を行っていた被控訴人らの供述の方が実際に体験した者の供述としてはるかに信用性があるといえること,及び被控訴人らが当審において追加して提出した各陳述書(甲61ないし66,75ないし86)に照らして採用できない。 確かに,控訴人における作業内容が,単に重量物を運搬するだけの作業であれば,より重い物品を運搬する男性従業員の方が女性従業員より賃金が高くても合理性があるということになる可能性があるが,控訴人における作業内容は単に物品を運搬するだけの仕事ではない。被控訴人らが多く就労していた選別・受 運搬する男性従業員の方が女性従業員より賃金が高くても合理性があるということになる可能性があるが,控訴人における作業内容は単に物品を運搬するだけの仕事ではない。被控訴人らが多く就労していた選別・受入検査,工程検査等は,重量物を運搬するための肉体的な力は必要としなくても,高い集中力・緊張度を必要とする高価値の労働であると評価することができるのであって,控訴人における男性従業員と女性従業員との賃金の格差は,作業内容によって区別されたものであるといい難い。 (3) 前記認定のとおり,昭和48年以前には,賃金表の年齢給は男・女という文言が使用され,男女差によることが明確に示されており,昭和48年賃金表も,昭和56年賃金表も,基本的にこれを承継したものであって,職務や職種によってではなく,男性か女性かによって,適用される賃金表が異なっているものと認められる。そして,控訴人の賃金の決定要素は,性差と年齢と勤続年数の3つであり,職務・職種によって決められたものとは認められない。また,採用基準や手続は,初任給の額を除いて男女同一であり,肉体的能力,技術力,経験といった要素は考慮されることもなく採用されており,女性であるから軽度・単純・安全な職務に従事することが条件であると明示されたことはなく,採用そのものの方式や手続,職務の指定についての男女の差異はない。 さらに,男性従業員と女性従業員の労働内容は,前記のとおり,明確な区分は認められない。控訴人が主張する職務二分論では,前記のとおり,合理的な説明になっておらず,結局のところ,控訴人における男女間の賃金格差は,単に男性であるか女性であるかという性差のみを理由として区別されたものであると推認されるのであって,何ら合理性のない差別であるといわざるを得ない。 (4) 労働基準法4条は,合理的理由 金格差は,単に男性であるか女性であるかという性差のみを理由として区別されたものであると推認されるのであって,何ら合理性のない差別であるといわざるを得ない。 (4) 労働基準法4条は,合理的理由なく,労働者が女性であることを理由として,賃金について男性と差別的取扱いをすることを禁じている。したがって,女性であることのみを理由として賃金格差のある賃金制度を定め,あるいは,これを是正することなく維持することも禁じられているものであり,このような賃金制度の制定あるいは維持は違法であり,その適用を受けた女性従業員に対する不法行為を構成するものと解される。 以上の認定によれば,控訴人は,女性であることのみを理由として男女間に格差のある昭和56年賃金表を定め,これを是正することなく維持してきたものであるから,違法であり,このことにより被控訴人らに生じた損害を賠償すべき義務を負うというべきである。 控訴人は,男性の職務に就く女性が一部存在したとしても,全体として男性の就く職務と女性の就く職務が区別されておれば,職務の相違による合理的区別であるというを妨げないと主張するが,前記の認定,判断からすれば,そもそも控訴人において,賃金水準の異なる2種類の職務があり,かつ,性により男女の就く職務が異なるという取扱いが慣行として存在したとすら認められないのであり,むしろ,本訴において控訴人の主張する男女の職務の相違というのは後付けの理由にすぎないものと考えられる。また,控訴人は,昭和56年賃金表の違法性は,昭和56年までの控訴人における男女の職務の実態に基づき判断されるべきであり,昭和57年以降の実態に基づき判断されるべきではないと主張するが,前記のとおり,控訴人が同賃金表を是正せず維持してきたことが違法であると判断されるのであるから,昭和5 に基づき判断されるべきであり,昭和57年以降の実態に基づき判断されるべきではないと主張するが,前記のとおり,控訴人が同賃金表を是正せず維持してきたことが違法であると判断されるのであるから,昭和57年以降の男女の職務の実態がこの判断の前提として考慮されるべきであるのはいうまでもない。 (5) 控訴人は,① 各年度の賃金表はいずれも控訴人と内山労組との合意のもとに作成されているので,内山労組に所属する被控訴人らもこれを容認しているはずであるし,特に,昭和56年改定による賃金表は,内山労組内において十分に検討され,臨時組合大会で承認された上で,控訴人と内山労組との合意のもとに民主的に作成されている,② 各年度における労使交渉によりいったん1人当たりの平均賃金額が合意妥結されている以上,内山労組の組合員である被控訴人らも,上記労使交渉による合意内容につき拘束を受けるのであり,被控訴人らとしては内山労組に対し賃金表についての不満を主張し,組合からの申出という形で賃金表の改廃を求めるのが労使自治の原則であるにもかかわらず,12年間も昭和56年賃金表に則った運用がされてきているのに,平成5年に突如として本件訴訟を提起し,組合を通じることなく控訴人と賃金等の額につき争うことは,労使自治の原則や禁反言の原則に反し,許されない旨主張する。 しかしながら,労使交渉の結果により各年度の賃金表が作成され,これにより被控訴人らの賃金等が確定されたとしても,必ずしも,被控訴人らが各自に対して不合理な差別のある内容で賃金等が支給されることについてまで容認していることにはならない。また,各年度における賃金表が労使交渉の合意のもとに作成されているとしても,そのような手続を経たからといって,その内容が不合理な差別を含むこと自体を否定するものではないし,その内容 ことにはならない。また,各年度における賃金表が労使交渉の合意のもとに作成されているとしても,そのような手続を経たからといって,その内容が不合理な差別を含むこと自体を否定するものではないし,その内容に違法がある場合に,民主的手続を経たことによってそれが適法になるものでもない。 確かに,昭和56年の賃金表改定の段階では,まだ男女雇用機会均等法は存在せず,現在ほど男女平等の考え方があまねく行き渡っておらず,控訴人も内山労組も男女の賃金格差が違法とまでは十分認識していなかった点は否定できないにせよ,この点について控訴人に過失があることは明らかであるから,控訴人の責任を否定する根拠にはならない。 また,組合員は,一般的に労使交渉の合意内容につき拘束を受けるとしても,その内容が不合理な賃金の差別を含むものであって,労働基準法4条に違反するような場合には,個別の労働者は会社の不合理な差別という不法行為による損害賠償を請求することができると解すべきであり,私人間における合意内容に違法性が存する場合に,これにより損害を被った者が不法行為による損害賠償請求という司法的救済を求めることを妨げるものではない。したがって,被控訴人らの本件訴訟提起が労使自治の原則や禁反言の原則に反し許されないということはできない。 (6) さらに,控訴人は,平成7年11月の新賃金制度においては賃金表は1つであり,職務内容によってではなく各従業員の職務遂行能力によって賃金を決定しているのであるから,新賃金制度においては性差による差別は生じ得ない旨主張する。確かに,新賃金制度においては,賃金格差を生じさせる2種類の賃金表は存在せず,新賃金制度自体から新たな賃金格差が生じることはないが,前記認定のとおり,新賃金体系への移行の方法は,平成7年10月における従業員の基 制度においては,賃金格差を生じさせる2種類の賃金表は存在せず,新賃金制度自体から新たな賃金格差が生じることはないが,前記認定のとおり,新賃金体系への移行の方法は,平成7年10月における従業員の基本給を基準として,新賃金制度における賃金表(職能給表)に該当する等級及び号俸が決定されているのであるから,新賃金制度における賃金自体が,平成7年10月時点で生じていた賃金格差を包含するものにほかならず(ただし,昇給分は除く。),この点に関する控訴人の主張は採用できないし,平成7年11月以降の賃金について,被控訴人らが時の経過とともに請求を拡張することが権利の濫用に当たるということもできない。 3 争点2(被控訴人らの損害額)について(1) 本件における「損害」ア本件において,被控訴人らは,控訴人における賃金等は,基本的に各従業員の年齢及び勤続年数を基準として定められていることから,各年度各月又は各期において各被控訴人と同勤続年数,同年齢の男性従業員に支給されるべき賃金等と各被控訴人に実際に支給された賃金等との差額が,控訴人の上記不法行為により被控訴人らに生じた損害となると主張して,その賠償を請求している。 そこで,検討するに,控訴人における男性従業員に支給されてきた賃金等は,個別の有効な労働契約に基づき正当に支給されてきたもので,控訴人においてはもちろん,社会的にも正当な根拠を有するものとして支給されてきたものであり,控訴人がその一部にせよ返還請求できるという根拠はない。一方,控訴人における女性従業員に支給されてきた賃金等は,同じく控訴人との間の個別の労働契約に基づき支給されてきたものではあるが,労働基準法4条の規定に反する差別的取扱いと評価できる賃金表を策定し,これを是正しないまま各労働契約に適用して支給されてきたも じく控訴人との間の個別の労働契約に基づき支給されてきたものではあるが,労働基準法4条の規定に反する差別的取扱いと評価できる賃金表を策定し,これを是正しないまま各労働契約に適用して支給されてきたものである。 そして,同法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約を,その部分について無効とする旨定めた同法13条が本来予定している労働時間(同法32条)や年次有給休暇(同法39条)等の場合と比較してみても,女性従業員に対する賃金差別に関して女性従業員を救済する必要性は低くはないことが明らかであるから,このような場合にも同法13条の規定を類推適用して男性従業員と同等の賃金等の請求権を認めるのが相当であると解される。 本件は,不法行為に基づく損害賠償請求であり,その損害額は不法行為がなかった場合と比較して算定されるべきものであるところ,男性従業員に対する賃金等の上記性格及び労働基準法4条に違反する女性従業員の賃金等に対する救済についての同法の趣旨からすると,被控訴人らには,控訴人の不法行為により,勤続年数,年齢において同等の男性従業員との賃金等の差額相当の財産的損害が生じたものと認めるのが相当である。 控訴人は,被控訴人らに対して男性従業員との賃金等の差額を支給することになると,労使が妥結した賃金額の総源資を超えることになり,このような格差是正義務を使用者に負わせるのは,労働基準法4条の解釈適用を誤るもので,被控訴人らの請求額は過大であるなどと主張する。しかし,格差是正は賃金の総源資を無視しては行えないものであることはそのとおりであるが,その具体的方法としては使用者の資金状況や労使の関係等から種々の方法によることが考えられるのであり,男女の賃金水準の格差解消のために,男性従業員の賃金水準を必ず切り下げることになる とおりであるが,その具体的方法としては使用者の資金状況や労使の関係等から種々の方法によることが考えられるのであり,男女の賃金水準の格差解消のために,男性従業員の賃金水準を必ず切り下げることになるとは断定できない。そして,仮に格差是正のためには通常男性従業員の賃金水準を切り下げることになるとしても,裁判所がこれを前提に男性従業員との賃金差額の一部のみを損害と認定することは,女性従業員に対する合理的理由のない差別の一部を容認することになりかねない(前記のとおり,会社が男性従業員に差額の一部にせよ返還請求できる根拠はない。)から,控訴人主張のように損害額を限定することは相当でない。 イ以上のとおり,昭和56年賃金表については,これを女性従業員に適用することが違法であるから,初任給における男女の格差等が違法であるか否かにかかわりなく,上記適用により生じる男女間の賃金等の差額が損害となると解される。また,平成7年11月以降については,昭和56年賃金表における違法な男女間の賃金格差を是正しなかった部分が違法であるから,これにより被控訴人らに生じた損害額を算定すべきことになる。 (2) 具体的な計算方法(具体的な計算の処理方法については,原判決添付別紙三六「損害額の計算方法」参照)原判決176頁3行目から194頁末行までの記載を引用する。ただし,原判決178頁6行目,185頁4行目,190頁1行目及び194頁3行目の「から平成11年度まで」を「以降」に改め,180頁6行目の「本人給の七割」を「職能給の七割」に改め,194頁9行目の「同K」の次に「,同C,同F,同G,同O,同R,同S」を加える。 (3) 消滅時効についてア控訴人は,本件訴訟は平成5年5月18日に提起されたものであるから,平成2年5月17日以前に被控訴 」の次に「,同C,同F,同G,同O,同R,同S」を加える。 (3) 消滅時効についてア控訴人は,本件訴訟は平成5年5月18日に提起されたものであるから,平成2年5月17日以前に被控訴人らに生じた損害については時効消滅していると主張し,これに対し,被控訴人らは,控訴人は,原審での審理が始まった当初から,消滅時効を主張することが可能であったにもかかわらず,訴訟提起後約8年を経てから,突然消滅時効を援用したものであるから,時機に後れた防御方法として却下すべきであり,また,当初より消滅時効援用が可能であることを熟知していながら,援用も行わず,原審において実質的な最終準備書面を作成した平成10年8月31日の段階で,控訴人は援用権を黙示的に放棄したと考えるべきであると主張する。 イ控訴人が消滅時効を主張するに至った経緯は次のとおりである。 控訴人による消滅時効の主張は,平成13年2月21日の原審第32回口頭弁論期日において陳述された控訴人の同月20日付け準備書面(18)において初めて主張されたものである。本件訴訟においては,平成5年5月18日に訴えが提起され,同年6月16日に第1回口頭弁論期日が開かれ,途中4回の準備手続を経た後,平成7年9月13日の第9回口頭弁論期日から平成10年4月15日の第22回口頭弁論期日まで人証についての証拠調べが実施され,同年9月9日の第24回口頭弁論期日においては,当事者双方からいずれも同年8月31日付けの各自の主張を総括する内容の準備書面がそれぞれ陳述された。その後,同年10月28日の第25回口頭弁論期日において本件は弁論準備手続に付され,平成11年5月14日の第4回弁論準備手続期日まで,主張整理が行われ,同年7月7日の第26回口頭弁論期日において弁論が終結されたが,その後弁論が再開 口頭弁論期日において本件は弁論準備手続に付され,平成11年5月14日の第4回弁論準備手続期日まで,主張整理が行われ,同年7月7日の第26回口頭弁論期日において弁論が終結されたが,その後弁論が再開され,主張及び書証が追加され,平成12年7月25日の第31回口頭弁論期日において,当事者双方が他に主張立証はないとして,弁論が終結されたが,ふたたび再開され,平成13年2月21日の第32回口頭弁論期日が開かれた。同期日において,控訴人は,上記同月20日付け準備書面(18)を陳述したが,上のとおり,同準備書面において初めて主張される消滅時効の主張等の新しい防御方法が含まれていた。 ウ以上のような訴訟の経緯にかんがみると,本件訴訟においては,控訴人による消滅時効の主張は,より早期に提出することが期待できたものであるといえなくもない。しかし,そもそも,消滅時効を援用するかどうかは,当事者の意思に委ねられており,本件における控訴人のように請求権の発生自体を争っている当事者にとっては,消滅時効の抗弁が認められることによって勝訴することを潔しとしない場合も考えられるし,また,訴訟の推移を見てから援用するか否かを決めるということもあり得る。 以上のような消滅時効の抗弁の性質に照らすと,一審の口頭弁論終結段階で初めて消滅時効の主張をしたからといって,それが直ちに時機に後れた防御方法であるとはいえない。 また,不法行為による損害賠償請求権の消滅時効の起算点は,被害者又はその代理人が「損害及ビ加害者ヲ知リタル時」であり(民法724条),各被控訴人が本件において問題となっている賃金格差が不法行為に該当し,これにより損害が発生していることを認識した時期が問題となるが,本件においては,内山労組は,控訴人に対し,1990年3月15日付けで春闘の 人が本件において問題となっている賃金格差が不法行為に該当し,これにより損害が発生していることを認識した時期が問題となるが,本件においては,内山労組は,控訴人に対し,1990年3月15日付けで春闘の要求書を提出し,その中で「男女の差別をなす現行賃金体系の差別を廃止すること」を申し入れている(甲5)のであるから,上記労働組合の組合員である被控訴人らは,全員がこの時点までに加害者及び損害の発生を知っていたものと推認されるというべきである。このように,被控訴人らが加害者及び損害の発生を知った時点の認定は証拠上容易であって,控訴人に消滅時効の主張を許すことにより訴訟の完結が遅延するとはいえない。したがって,控訴人のする消滅時効の主張は,時機に後れた防御方法として却下すべきものとはいえない。同様の理由で,控訴人が,原審において実質的な最終準備書面を作成した平成10年8月31日の段階で,時効援用権を黙示的に放棄したと考えるべきであるとの被控訴人らの主張も採用できない。 以上によれば,本件は,平成5年5月18日に訴えが提起されたものであるから,提訴日からさかのぼること3年,すなわち平成2年5月17日以前に被控訴人らに生じた損害に係る賠償請求権は時効により消滅しているといわざるを得ない。 (4) 被控訴人らの具体的な損害額ア各年度各月ごとの基本給の損害額原判決195頁8行目から196頁3行目までの記載を引用する。 イ各年度各期ごとの一時金の損害額原判決196頁5行目から197頁1行目までの記載を引用する。なお,附帯控訴に係る平成12年及び平成13年の一時金については,別紙20「平成12年上期一時金」ないし別紙23「平成13年下期一時金」記載のとおりである。 ウ各年度各月ごとの世帯手当の損害額 ,附帯控訴に係る平成12年及び平成13年の一時金については,別紙20「平成12年上期一時金」ないし別紙23「平成13年下期一時金」記載のとおりである。 ウ各年度各月ごとの世帯手当の損害額原判決197頁3行目から10行目までの記載を引用する。 エ各被控訴人ごとの退職金の損害額別紙24「退職金請求額計算表」及び別紙25「退職金請求額計算表-2」の「請求額計算」における各「氏名」欄記載の各被控訴人について対応する各「③-①請求額」欄記載のとおりである。ただし,被控訴人E,同I,同J,同K及び同Qについては,同欄記載の金額よりも別紙請求債権目録中の「⑫退職金」欄に記載された請求額の方が低額であるので,その額をもって認容額とする。 オ弁護士費用被控訴人らが,弁護士に委任して本件訴訟を提起追行したことは,裁判所に顕著であり,被控訴人らが本件訴訟遂行に要した弁護士費用も控訴人の不法行為と相当因果関係のある損害と認められるところ,本件事案の内容,審理経過,認容額等に照らせば,控訴人に負担させるべき弁護士費用は,別紙認容額目録の「⑬弁護士費用」欄に記載のとおりである。 カ各被控訴人ごとの損害額前記計算方法により各被控訴人に生じた損害として,控訴人に対する賠償請求が認められる各年度の具体額は,別紙26ないし44(各被控訴人の認容額目録)記載のとおりである。 なお,被控訴人らは,昭和63年以降の損害の賠償を求めているところ,前記のとおり,控訴人が,抗弁として,消滅時効を援用したため,平成2年5月17日以前に被控訴人らに生じた損害に係る賠償請求権は時効により消滅したといわざるを得ない。したがって,被控訴人らは,昭和63年度分,平成元年度分及び平成2年4月1日から同年5月17日 平成2年5月17日以前に被控訴人らに生じた損害に係る賠償請求権は時効により消滅したといわざるを得ない。したがって,被控訴人らは,昭和63年度分,平成元年度分及び平成2年4月1日から同年5月17日までの損害については,控訴人に対して賠償を請求できないことになる。 4 控訴人は,原審は審理不尽であるとの主張をするが,採用できない。 第4 結論以上の次第であるから,結論を異にする原判決を変更することとし,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所岡山支部第2部裁判長裁判官前坂光雄裁判官岩坪朗彦裁判官横溝邦彦
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