主文 1 被告は,原告Aに対し,3591万9000円及びこれに対する平成29年10月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,3591万9000円及びこれに対する平成29年10月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,これを5分し,その4を被告の負担とし,その余は原告らの負担とする。 5 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告Aに対し,4547万6500円及びこれに対する平成29年10月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,4547万6500円及びこれに対する平成29年10月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等本件は,被告に雇用され,被告の管理運営する病院(以下「本件病院」という。)に勤務していたCが自殺したこと(以下「本件自殺」という。)について,Cの両親である原告らが,Cは,被告の安全配慮義務違反により本件病院において過重な長時間労働を強いられたこと等によってうつ病エピソードを発病し,自殺を図って死亡したと主張して,被告に対し,債務不履行による損害賠償請求権に基づき,それぞれ4547万6500円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成29年10月4日から支払済みまで,民 法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実等(争いのない事実並びに後記証拠及び弁論の全趣旨により容易に の翌日である平成29年10月4日から支払済みまで,民 法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実等(争いのない事実並びに後記証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 当事者等ア C(昭和62年10月26日生まれ)は,高校時代にライフル射撃競技を始め,高校3年生の時には全国高等学校総合体育大会のビームライフル競技で5位に入賞し,大学3年生の時には国民体育大会(以下「国体」という。)のエアライフル競技に出場するなどしていた。(甲31)原告AはCの父親であり,原告BはCの母親である。(甲10)イ被告は,L(本件病院)を設置管理している厚生農業協同組合連合会である。 ⑵ 本件病院への異動の経過等ア Cは,岐阜県教育委員会の紹介により,平成24年に岐阜県で開催される国体においてライフル射撃競技の選手として活躍することを期待される職員として,大学卒業時の平成22年4月1日に被告に就職し,同日,被告本所の企画管理課に配属された。 イ Cは,平成24年10月2日,岐阜県で開催された国体におけるライフル射撃競技50mライフル男子膝射20発競技に出場し,優勝した。(甲8)ウ Cは,平成25年4月,岐阜県瑞浪市所在の本件病院に異動を命ぜられ,同月10日から,本件病院の管理課(以下「管理課」という。)で勤務することとなった。 ⑶ 本件病院の体制平成25年4月当時,本件病院の病院長はD(以下「D院長」という。)が務めており,事務部門の事務局長はE(以下「E事務局長」という。)が,事務次長はF(以下「F事務次長」という。)が務め,その下に管理課が設 置されていた。 同月当時,管理課長はG(以下「G課長」という。)が務めており,管理 E(以下「E事務局長」という。)が,事務次長はF(以下「F事務次長」という。)が務め,その下に管理課が設 置されていた。 同月当時,管理課長はG(以下「G課長」という。)が務めており,管理課の事務職は,G課長,H,C及び女性嘱託職員1人の4人が担当し,電気・ボイラー関係等の技術職は,Iら2人が担当していた。 (以上,甲26・227頁,260頁)⑷ Cの自殺に至る経緯ア Cは,平成25年12月26日午前1時頃,自身のスマートフォンから自身のパソコンに宛てて,「なんかもう生きてることって何なのかわからない・・・。」,「生きてることが辛くなっている。」,「仕事の全てにとんでもなく重圧を感じて耐えられなくなっている。」,「何もかも捨て去りたくなった。消え去りたくなった。限界だ。」,「体調はすごくだるい・・・。気持ち悪い。辛い。」,「生きたくない・・・。生きてると辛いだけ・・・。」,「体がいくつあっても足りない仕事の毎日・・・。この先に未来はない・・・。」,「もう無理です。今日で終わりにしようと思います。今までこんなことをするなんて考えたこともありませんでしたが,決めました。今日までありがとうございました。」などと記載されたメールを送信した。(甲2の1から6まで)イ G課長は,同日朝,Cが本件病院に出勤してこなかったことから,Cの自宅のアパートに赴く等してCを探したものの,見つけることができなかった。(甲3・7頁)ウ Cは,平成26年1月初旬頃,名神高速道路尾張一宮パーキングエリアに駐車した車内において,自殺を図り,一酸化炭素中毒により死亡した(死亡当時26歳であった。)。(甲1,10)⑸ 責任原因被告は,その雇用する労働者に対し,業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して を図り,一酸化炭素中毒により死亡した(死亡当時26歳であった。)。(甲1,10)⑸ 責任原因被告は,その雇用する労働者に対し,業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義 務を負っており,Cに対して長時間労働等によりストレスが蓄積して心身の健康を損なうことがないように配慮する義務を負っていたところ,これを怠り,Cを死亡させたことから,Cに対する債務不履行責任を負う。(争いなし)⑹ 労働者災害補償保険法に基づく支給多治見労働基準監督署長は,Cは,平成25年12月23日頃,うつ病エピソード(F32)を発症し,自死に至ったとして,原告らに対し,Cの死亡に関し,労働者災害補償保険法に基づいて,以下の保険金を支給した。 (甲9,26・27頁,28頁,29)ア遺族補償一時金合計1438万5000円イ定額特別支給金 300万円ウ遺族特別一時金合計 287万7000円 2 争点及びこれに関する当事者の主張⑴ Cの死亡による損害の発生及び損害額(原告らの主張)Cは,被告の安全配慮義務違反により死亡し,これによる損害は,以下のとおり合計9095万3000円であり,原告A及び原告Bは,それぞれその2分の1に相当する4547万6500円の各損害賠償請求権を相続した。 ア葬儀費用 160万円原告らは,Cの葬儀費用として合計164万5995円(葬儀代114万5395円,遺体搬送費47万0600円,火葬費3万円)を支出したところ,そのうち160万円につき,Cに生じた通常損害として被告の損害賠償責任が認められるべきである。 被告は,安全配慮義務違反に基づく損害賠 費47万0600円,火葬費3万円)を支出したところ,そのうち160万円につき,Cに生じた通常損害として被告の損害賠償責任が認められるべきである。 被告は,安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求においては,葬儀費用は損害として認められない旨主張するが,葬儀費用は,死亡事案について通常その遺族に発生する損害であり,安全配慮義務違反に基づく請求であ ると,不法行為に基づく請求であるとで異ならず,Cに生じた通常損害と認められるべきである。 仮に,原告らが出捐したことから,Cに生じた損害といえないとしても,遺族である原告ら自身に生じたCの死亡と相当因果関係のある損害として,賠償が認められるべきである。 イ死亡逸失利益 5609万3000円Cは,自殺当時26歳であり,67歳までの就労可能年数は41年(ライプニッツ係数は17.294)であった。 平成26年賃金センサス産業計・企業規模計・男子・大卒・大学院卒労働者の1年間の平均賃金648万7100円(42万8500円×12月+134万5100円)を基礎収入とし,生活費控除50%で計算すると,逸失利益は5609万3000円(648万7100円×(1-0.5)×17.294(千円未満切り捨て))となる。 ウ死亡慰謝料 2500万円Cは,心身ともに健康な青年であり,自殺に至ったことに対する被告の重大な責任を考慮すれば,精神的損害は上記金額を下回ることはない。 エ小計8269万3000円オ弁護士費用 826万円カ合計9095万3000円(被告の主張)ア葬儀費用安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求においては,葬儀費用は,損害として認められるべきではない。 すなわち,葬儀費用は, 000円(被告の主張)ア葬儀費用安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求においては,葬儀費用は,損害として認められるべきではない。 すなわち,葬儀費用は,遺族が支出したものであり,死亡した本人が支出を強制されるというものではないから,死亡した本人に生じた損害ということはできない。また,遺族は,雇用契約の当事者ではないから,雇用 契約上の債務不履行により,遺族固有の損害である葬儀費用を請求することもできない。 イ死亡逸失利益Cの死亡による逸失利益が5609万3000円であることは認める。 ウ死亡慰謝料Cは自殺当時独身であり,扶養すべき者もいなかった。しかも,Cの自殺には,後述の⑵(被告の主張)のとおり,Cの自己保健義務違反等の寄与も認められる。したがって,慰謝料としては2000万円が相当である。 原告らの主張する2500万円の金額は通常の交通事故における損害額を参考にしているものと思われるところ,これは近親者固有の慰謝料も合わせた金額であるから,近親者固有の慰謝料を請求し得ない安全配慮義務違反の事案においては,高額に過ぎる。 エ弁護士費用認容額の1割程度が認められるのが相当である。 ⑵ 過失相殺(被告の主張)以下の各事情に照らし,Cに5割の過失相殺等を認めるべきである。 アうつ病エピソードの発病原告は,Cにつき,自殺の直前にうつ病に発病していた旨主張するが,本件自殺の直前である平成25年12月頃において,管理課職員はCが落ち込んでいる様子を確認しておらず,Cが同僚とユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下「USJ」という。)に行った際にも周囲の者から見てCに落ち込んでいる 成25年12月頃において,管理課職員はCが落ち込んでいる様子を確認しておらず,Cが同僚とユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下「USJ」という。)に行った際にも周囲の者から見てCに落ち込んでいる様子はなかったというのであるから,Cがうつ病に発病していたということには強い疑問が残る。 イ Cの業務の進め方,姿勢等 以下のとおり,本件病院の管理課におけるCの業務量は,日常的に長時間労働を要するような過大なものではなかった。 a 本件病院の管理課において,Cを含めた3名で業務を行っていた同年10月から同年12月までの3か月間のG課長及びHの時間外労働時間数と,Cが失踪し,管理課の事務職が2名で業務を行っていた平成26年1月から3月までの3か月間の時間外労働時間数を比較しても,両者に大きな違いはなかった。 また,本件病院の管理課における過去の業務分担表や他病院の管理課職員の業務内容と比較しても,Cの業務が多いとはいえなかった。 しかも,Cに与えられていた業務は簡単なものであり,難しい業務は同僚のHが行っていた。 bCは,本件病院において当直業務に従事していたものの,当直業務の際に実際に稼働していたのは当直時間帯の一部にすぎず,当直時間中常に稼働していたわけではない。また,本件病院が夜間の救急診療の担当日ではない日には,当直時間帯の外来受付はほとんどなく,当直担当者が実際に稼働していた時間は少なかった。 しかも,Cが本件病院において当直業務を担当するようになった初めの2か月程度は,午後8時頃までHがCに帯同し,Cにおいて判断できない点があったときはHに電話で確認することも可能であった。 その上,当直時間帯にどうしてもわからない処理については,保留にすることも可能であった。 このように,当直業 において判断できない点があったときはHに電話で確認することも可能であった。 その上,当直時間帯にどうしてもわからない処理については,保留にすることも可能であった。 このように,当直業務によるCへの負担が過大であったとはいえない。 c 原告らは,Cの総労働時間につき,パソコンのログイン・ログアウトの時間等から計算しているが,Cは毎朝中央監視室にコーヒーを飲みに行っており,勤務時間中に居眠りをすることなどもあったのであ るから,パソコンのログイン時刻からログアウトの時刻までの間,常に集中して業務を行っていたわけではない。したがって,Cの総労働時間の長さから,Cの業務が多かったものと,直ちに断ずることはできない。 d 原告らは,E事務局長による決裁の方法が必要な限度を超えた厳しいものであった旨主張するが,同人による決裁は,適切な業務の範囲内のものであった。そもそも,管理課は,物品の購入や修理など支出を伴う業務を担当する部署であるところ,支出の必要性・相当性,費用対効果等について十分な根拠が求められ,外部に提出する書類についても十分なチェックが必要になるのであり,E事務局長は,そのために必要なチェックを行っていたにすぎない。E事務局長の指導の方法についても,声を荒げるなどの不適切なものはなかった。 被告は,Cの業務の負担につき,以下のとおり対応していた。 a 被告は,Cの異動先につき,Cのライフル射撃競技の便宜等を考え,練習場に近い本件病院を選んでおり,管理課の職員を1名増員したり,Cの分担業務量を相当少なくしたりするなどの配慮を行っていた。 b また,Cの本件病院への異動当初は,同僚職員に帯同して業務を遂行するようにさせたり,分担業務の一部を他の職員に担当させたりするなどして,業 業務量を相当少なくしたりするなどの配慮を行っていた。 b また,Cの本件病院への異動当初は,同僚職員に帯同して業務を遂行するようにさせたり,分担業務の一部を他の職員に担当させたりするなどして,業務の軽減を図るようにしており,Cがスムーズに業務になじんでいけるよう配慮をしていた。 被告の役員は,Cの異動の際,E事務局長に対し,業務上の配慮を要請していたし,Cに異動の辞令を交付する際には,何かあれば相談に来るよう伝えていた。 以上のように,被告は,Cに対しては様々な配慮を行っており,Cから業務量等について相談があれば,必要な対応をとることができた。 しかし,Cは,上司等に相談することなく一人で業務をこなしていた ため,軽減措置をとることができなかったのであり,Cにも一定の責任がある。 そもそも,Cは,仕事のペースが遅く,「朝と昼は弱くて,夜が冴える。」などと述べており,日中,業務に集中して取り組むことができておらず,居眠りをすることもあった。仕事について,自分から積極的に上司や同僚に相談する姿勢も欠けていた。労働基準監督署も,Cの「全体的にスピードが遅い」等の仕事ぶりも業務に時間を要していた原因であると認めている。 このように,Cの仕事の進め方は,Cが時間外労働を行ったことの一因になっている。 ウ超過勤務申請書の不提出被告は,長時間労働がなされていた場合には,医師の面接などにより健康障害の防止を図るための措置をとっており(乙1),上司もCに対して超過勤務申請書の提出を促していた。それにもかかわらず,Cは超過勤務申請書を提出せず,自己の労働時間を過少に申告していた。 その結果,被告は,Cの労働状況及び健康状態を把握することができなかったのであり,被告が必要な措置をとれな れにもかかわらず,Cは超過勤務申請書を提出せず,自己の労働時間を過少に申告していた。 その結果,被告は,Cの労働状況及び健康状態を把握することができなかったのであり,被告が必要な措置をとれなかったことにつき,Cにも責任がある。 原告は,Cのみならず他の職員も超過勤務の申請をしておらず,申請することができない状況にあった旨主張しているが,被告において超過勤務の申請を禁じていた事実はなく,Cの死亡前においても,Cによる超過勤務の申請はなされていたし,病院全体として,他の職員も時間外労働の申請をしていなかったということはない(乙5,10)。 このように,Cにおいて超過勤務の申請をすることができなかったとはいえない。 エ Cの健康状態への配慮(自己保健義務違反) 労働者は,自己の健康管理につき,自己の内面の問題として注意すべきであり,労働者には,自己保健義務が課せられる。 本件において,原告らはCがうつ病エピソードを発病していた旨主張するが,かかる精神障害についても労働者に自己保健義務が認められるのは当然であるから,仮に,Cがうつ病エピソードに発病していたとすれば,Cは医療機関の受診その他の方法により自ら健康管理を行うべきであった。 しかるところ,Cは,発病前に精神科を受診し,仕事を休んだり,上司等に相談したりするなどの合理的な行動をとっておらず,これがCの自殺に寄与している。 原告らは,使用者が安全配慮義務を履行していない下においては労働者の不注意は損害減額事由として評価されない旨主張するが,請求原因である使用者の安全配慮義務違反による損害賠償義務が発生して初めて過失相殺による損害額の減額の問題が生じるのであり,このような場合に常に労働者 は損害減額事由として評価されない旨主張するが,請求原因である使用者の安全配慮義務違反による損害賠償義務が発生して初めて過失相殺による損害額の減額の問題が生じるのであり,このような場合に常に労働者の不注意を損害減額事由にできないかのような原告らの主張は失当である。 また,原告らは,過労自殺につき,誰にも相談することなく精根尽き果てて自殺に至る事案が多いことを主張しているが,これは一般論にすぎず,本件においてCが精神科の受診等をすることができなかった具体的事情は特段認められないのであり,Cには自己保健義務違反がある。 原告らは,精神科を受診せず,周囲の者が気付かないうちにうつ病になることが過労自殺の特徴である旨主張するが,労働者において,うつ病の罹患前又は罹患直後に病院に通うことは可能であり,これをしていなかったことは,自己保健義務を果たしていなかったと評価できる。 使用者が労働者の異常に気付くことが容易であったにも関わらずこれを見逃した場合と,困難であったためにこれを見逃した場合とでは, 責任の軽重は異なるというのが相当である。 本件において,Cは,精神障害をうかがわせる兆候なく職場で業務を行っていた。また,Cは,懇親会,旅行等において精神障害をうかがわせるような兆候はなかったのであり,管理課の同僚や上司も,Cに特段の変化はなかったとしている。Cは失踪の2か月ほど前に自分から同僚を旅行に誘い,失踪の10日ほど前のUSJ旅行中に異常はなく,旅行後には「また遊びに行きたい。」とのメールを同僚に送っている。 したがって,被告がCの精神障害に気付くことは困難であった。 オスモールボアライフル所持許可の失効等Cは,スモールボアライフルの所持許可の失効により,「自分の人生そのもの」であったラ したがって,被告がCの精神障害に気付くことは困難であった。 オスモールボアライフル所持許可の失効等Cは,スモールボアライフルの所持許可の失効により,「自分の人生そのもの」であったライフル射撃をすることができなくなり,種目の異なるエアライフルで出場しようとした平成25年の東京国体にも予選落ちし,平成26年の長崎での国体にライフル射撃競技で出場する目処も立たず,出場を伝えてある地元の親や応援してくれている職場に対しても本当のことを言えずに苦しんでいた。このようなライフル所持許可の失効による一連の状況も,Cの自殺の原因の一つとなっていた。 (原告らの主張)アうつ病エピソードの発病Cは,本件病院管理課における過重な長時間労働により肉体的又は精神的な疲労が蓄積して,自殺前にはうつ病エピソードに発病し,正常な認識や行為選択能力が著しく阻害された結果,自殺に至ったものである。 本件において,労働基準監督署長は,医学的見解を踏まえ,Cにつき,平成25年12月23日頃にうつ病エピソードを発病したと断定している。また,上記時期の前には,Cの時間外労働時間が3か月連続して100時間を超えており,事務局長による厳しい指導があったことを踏まえると,業務上の強い心理的負荷があったと判断される。 イ Cの業務の進め方,姿勢等 Cは同年9月から同年10月にかけて,管理課における時間外・休日労働は2倍以上に増加し,100時間を上回る時間となっており,本件自殺直前の同年11月には時間外・休日労働が約100時間となっていた。 また,Cは月3回ほど救急外来の対応等のため夜間の当直業務を行っており,これを加えると,同年10月から同年12月の時間外・休日労働はいずれも100時間を大きく上回るもの 100時間となっていた。 また,Cは月3回ほど救急外来の対応等のため夜間の当直業務を行っており,これを加えると,同年10月から同年12月の時間外・休日労働はいずれも100時間を大きく上回るものとなっていた。このように,Cは本件病院において恒常的な長時間労働に従事してきた。そして,上記当直業務は,多岐かつ専門性の高い業務となっており,新人のCにとって困難な業務であったから,これもCにとって過重な業務となった一因であった。 Cは,管理課において機械修理,消耗品発注,廃棄物処理,決算資料の作成等の事務作業に従事していたところ,管理課の決裁文書は事務局長の厳しいチェックにより不備として戻されるものが多くあり,決裁が通る文書を作成するために相当な手間と時間を要した。また,広報誌等の資料を回覧するに当たって,事前の下調べ等に相当時間を要していた。 このように,Cは,初めて勤務する病院において,不慣れであるにもかかわらず,過大な業務量を割り当てられ,それに対する職場の支援がなかったことから,その負担は大きいものであった。 その上,Cは,管理課の職員として作成した文書に対するE事務局長からの限度を超えた指導を受け,業務遂行への萎縮を生じさせ,その業務はより過重となっていった。 しかも,Cは,失踪前日に,保健所への提出文書の作成につき,1時間余りの長時間にわたり,E事務局長から事務局長室において厳しい指導・叱責を受けており,事務局長室から出てきた際のCの様子は,無言 で一見して落ち込んでいるのが分かる様子であった。 被告は,Cの業務は過大ではなく,負担軽減の配慮をしてきた旨主張する。しかし,被告が行うべき負担軽減措置は,Cの長時間労働の是正にあったところ,被告は,Cの労働時間を適正に把握することなく, 被告は,Cの業務は過大ではなく,負担軽減の配慮をしてきた旨主張する。しかし,被告が行うべき負担軽減措置は,Cの長時間労働の是正にあったところ,被告は,Cの労働時間を適正に把握することなく,自己申告による過小な労働時間を前提に,何らその是正措置をとらないまま放置してきた。 ウ超過勤務申請書の不提出 被告は,Cが超過勤務申請書を提出していなかったことを損害減額事由として主張する。 これにつき,使用者は労働者の労働時間を適正に把握する義務を有しているのであるから,その義務の懈怠によって労働時間を把握できなかった場合において,上記不提出は,その責任を軽減する理由にはならない。 そして,使用者は,労働者の労働時間の適正把握義務を負い,始業終業時間の確認は,使用者が自ら現認するか,タイムカード,ICカード等の客観的な記録を基礎として確認,記録することが原則であり,例外的に自己申告により行わざるを得ない場合でも,労働者に対して労働時間の実態を正しく記録し,適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うとともに,自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて必要に応じて実態調査をすることが求められている。また,使用者は,労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じてはならない。(甲19,20)しかし,本件病院では,Cを含む職員の労働時間はタイムカード,ICカード等の客観的な出退勤の記録によることなく,職員による自己申告及び所属長による現認によって記録する方法によって管理されており, しかも,適正な自己申告を確保するための説明や,パソコンのログの照合等もしていなかった。 その結果,Cが申告した時間外労働は当直勤 属長による現認によって記録する方法によって管理されており, しかも,適正な自己申告を確保するための説明や,パソコンのログの照合等もしていなかった。 その結果,Cが申告した時間外労働は当直勤務時における患者への対応時間のみにとどまり,時間外労働の申告は皆無であった。しかも,被告は,上記労働時間の管理方法につき,Cが自殺する前年の平成24年8月20日付で労働基準監督署官から指導を受けていた。(乙7)また,G課長らは,Cの恒常的な長時間の時間外労働を毎日現認していながら,「早めに帰るように」と声を掛けるのみで,特別の対応はせず,Cが自己申告しないことを放置していた。時間外労働の必要性についての具体的な確認も行っていなかった。仮に被告においてCの長時間労働を把握していなかったのであれば,それは労働時間の適正把握義務を懈怠していたことによる。 そもそも,本件病院では,Cのみならず他の職員も,超過勤務についての申請をしておらず,超過勤務について申請をしないという意識が蔓延していた。 被告は,超過勤務命令兼報告書(乙5,10)をもって自己申告による労働時間の適正把握がされていたことを主張するが,これによると,管理課職員は当直時の患者等への「当直受付業務」以外の時間外労働の申告はなく,その他の職員の申告もほとんどなされていない。 エ Cの健康状態への配慮(自己保健義務違反)について 被告は,労働者に自己保健義務が課せられている旨主張するが,労働者は,使用者に対し,本旨に従った労務を提供する労働契約上の義務を負うことはあっても,使用者との関係で自己の健康を管理する義務を負うものではない。 また,労働者の不注意が損害減額事由となるのは,使用者の労働者に対する安全配慮義務が履行されていることが前提となるの ても,使用者との関係で自己の健康を管理する義務を負うものではない。 また,労働者の不注意が損害減額事由となるのは,使用者の労働者に対する安全配慮義務が履行されていることが前提となるのであり,これ が懈怠されている下では,減額を認めるべきではない。本件において被告が履行すべき安全配慮義務の内容は,過重な長時間労働や限度を超えた指導により,Cに疲労やストレスが蓄積して心身の健康を損ねることのないよう注意することであり,被告が過重な労働等が生じないよう是正措置を講じたにもかかわらず,この指揮命令に従わなかったといえる場合にはじめて,Cの不注意として損害減額事由として評価されるべきである。 そして,被告において安全配慮義務が著しく懈怠されていた本件においては,Cにおける受診の有無は損害減額の評価の対象たり得ない。 長時間労働等の業務による過重な心理的負荷が加わると,うつ病等の精神障害を発病し,正常な認識や行動選択能力が著しく阻害され,自殺を思いとどまる意思も著しく阻害される一方で,本人において病識を持ち,専門医の診療を受けるなどの行動をとることは容易でない。過労自殺とは,このような状況の下で精根尽き果てて企図されるものであり,本人が医療機関を受診しなかったことが直ちに本人の義務違反となるわけではない。 被告は,Cが上司等に相談しなかったことを主張するが,使用者である被告が労働時間の適正な把握を行うことなく,Cが過重な長時間労働に従事していることについての是正措置をなすべき安全配慮義務を懈怠し,かつ,Cに対し精神科医への受診を指示していない本件においては,Cの自己保健義務違反は認められない。 被告は,Cにつき,精神障害をうかがわせる兆候はなかった旨主張するが, 務を懈怠し,かつ,Cに対し精神科医への受診を指示していない本件においては,Cの自己保健義務違反は認められない。 被告は,Cにつき,精神障害をうかがわせる兆候はなかった旨主張するが,周囲の者は,Cの様子がおかしいことを感じていたし,本件自殺の直前に事務局長から叱責された際,Cは落ち込んだ様子であった。 オスモールボアライフルの所持許可失効等被告は,ライフルの所持許可失効による一連の状況も,本件自殺の一因 となっている旨主張する。 しかし,Cは平成25年9月には教習射撃の試験を受ければ再度許可を受けられる状況にあったところ,長時間労働が継続する中で,教習射撃を受ける時間的,精神的余裕がなく,許可を受けることができなかったものであり,Cにこのような状況が生じたのは,本件病院における長時間労働がその主要な要因である。Cは,自らに割り当てられた業務に対し責任感をもって当たっており,他の職員からは自己の趣味として行っていると見られがちなライフル射撃競技よりも仕事を優先したため,長時間労働が続く中,教習射撃を受けるための休暇を取ることができなかったものである。 ⑶ 損益相殺(被告の主張)Cの死亡に関し,原告らには,前提事実⑹のとおり,遺族特別一時金287万7000円の合計2026万2000円が支給されており,過失相殺後の金額の元本から,これを控除すべきである。 (原告の主張)被告は,原告らに対し労災保険給付金として支給された遺族補償一時金,定額特別支給金及び遺族特別一時金につき,いずれも控除すべきであると主張するが,定額特別支給金及び遺族特別一時金は,労災福祉事業としての給付金であり,損益相殺の対象とならない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事 遺族特別一時金につき,いずれも控除すべきであると主張するが,定額特別支給金及び遺族特別一時金は,労災福祉事業としての給付金であり,損益相殺の対象とならない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実並びに後記証拠及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。 ⑴ 本件病院への就職の経過ア Cは高校において射撃部に所属し,ライフル射撃競技を行っていた。 ライフルには,ビームライフル,空気銃(以下では「エアライフル」ということもある。),実弾を発射する小口径のスモールボアライフルなどの種類があり,Cは,高校においてビームライフル競技を行っていた。 Cは,高校2年生の時,ビームライフル競技の全国大会で3位となり,高校3年生の時にはビームライフル競技の全国高等学校総合体育大会で5位に入賞するなどしていた。 (以上,甲26・312頁から314頁まで,31・6頁,弁論の全趣旨)イCは,ライフル射撃のAO入試で明治大学を受験し,同大学の農学部農業経済学科に入学した。Cは,大学の入学以前には,ビームライフル以外のライフルを使用したことがなかったものの,大学においてはビームライフルの競技がなかったことから,エアライフルの競技に参加するようになった。また,Cは,大学2年生の時にスモールボアライフルの免許を取得し,スモールボアライフルの競技にも参加するようになった。 Cは,大学3年生の時にエアライフル競技で国体に出場した。 (以上,甲31・6頁から7頁まで) エアライフル及びスモールボアライフルの所持は,銃砲刀剣類所持等取締法(以下「銃刀法」という。)により原則として禁止されているものの,都道府県公安委員会の許可を受けることにより所持することができる( アライフル及びスモールボアライフルの所持は,銃砲刀剣類所持等取締法(以下「銃刀法」という。)により原則として禁止されているものの,都道府県公安委員会の許可を受けることにより所持することができる(銃刀法4条1項)。ライフル銃の所持に係る許可は,ライフル銃の種類ごとに受ける必要があり,許可の更新時期もライフル銃ごとに異なる。 Cは,大学在籍当時,エアライフル及びスモールボアライフルを所持することにつき,都道府県公安委員会の許可を受けていた。 (以上,甲26・312頁から314頁まで)⑵ 本件病院への異動ア Cは,岐阜県教育委員会の紹介により,平成24年に岐阜県で開催され る予定の国体におけるライフル射撃競技の選手として活躍することが期待される職員として,大学卒業後の平成22年4月1日に被告に就職し,同日,被告本所(岐阜市内所在)の企画管理課に配属された。Cは,岐阜市内のアパートから,被告本所に通勤していた。 被告本所における企画管理課の業務は,財務,経営管理,病院の建築企画及び事業計画の作成,業務監査等があり,Cは,日々の出入金や職員の預り金の管理,病院の患者数等の統計資料の整理等の業務を担当していた。 当時,Cが勤務時間外に業務を行うことは,ほとんどなかった。また,平日にライフル射撃競技の練習があるときは,出張扱いで練習に行っており,練習の参加や大会出場はいずれも業務として扱われていた。 (以上,甲3・2枚目,26・213頁,214頁,245頁,246頁,247頁,503頁,31・10頁,乙21)イ Cは,平成22年に千葉県で開催された国体のスモールボアライフル競技に出場し,準優勝の成績を収めた。また,平成23年に山口県で開催された国体のスモールボアライフル競技で4位に入賞し,平 イ Cは,平成22年に千葉県で開催された国体のスモールボアライフル競技に出場し,準優勝の成績を収めた。また,平成23年に山口県で開催された国体のスモールボアライフル競技で4位に入賞し,平成24年10月に岐阜県で開催された国体のスモールボアライフル競技では優勝した。 (甲8,26・330頁,31・10頁)ウ被告は,平成24年の国体の後も,Cが被告における勤務の継続を希望したため,Cに病院での業務を経験させる必要があると考えた。そこで,被告は,平成25年4月,Cに対し,本件病院(岐阜県瑞浪市所在)への異動を命じた。Cの異動先として本件病院が選択されたのは,Cにおいて,スモールボアライフルの練習場である愛知県総合射撃場(愛知県豊田市所在)に最も近い本件病院が適切であると判断されたことによるものであった(愛知県総合射撃場は,本件病院から車で63.1km,約1時間30分を要する場所にあった。)。(甲31・10頁,乙20から23まで,32から34まで,弁論の全趣旨) 被告の役員は,Cに対して,本件病院への異動の辞令を交付する際,本件病院の事務局長に便宜を図るよう伝えてあること,遠慮なく上司に申し出ること,何かあれば相談して構わないこと等を伝えた。(甲3・10枚目,31・10頁,乙14・1頁)Cは,本件病院の管理課に配属され,同月10日から,管理課で勤務することになった。Cは,本件病院への異動に伴い,本件病院に近い岐阜県瑞浪市内のアパートに引っ越し,以降,同アパートにおいて単身で生活していた。(甲31・9頁から11頁まで,証人G18頁)⑶ 管理課の体制・業務内容ア人数本件病院の管理課には,Cが異動する前,事務職として2人の職員が配置されていたところ,平成25年4月にCが増員として配置されたこと 証人G18頁)⑶ 管理課の体制・業務内容ア人数本件病院の管理課には,Cが異動する前,事務職として2人の職員が配置されていたところ,平成25年4月にCが増員として配置されたことにより,3人の職員が管理課の事務職として業務に従事することとなった。 もっとも,増員の前後において,管理課の業務の量が特に増加したということはなく,増員前においても,仕事は忙しかったが,増員前の人数で仕事を行うことはできていた。 (以上,甲3・4枚目,26・173頁から174頁まで,208頁,228頁,260頁,280頁,281頁,483頁,証人H2頁,証人G1頁)イ Cが日常業務を行っていた管理事務所には,総務課と管理課がワンフロアーに配置されており,合計8人の職員が業務を行っていた。事務局長室及び病院長室は,管理事務所と同じ階にあり,いずれも管理事務所から確認できる場所にあった。事務局長室の扉は普段開いていることが多いが,病院長室の扉は閉まっていることが多かった。(甲31・50頁,証人H10頁,弁論の全趣旨)ウ業務内容 管理課は,病院施設の修繕管理,機械備品等の購入・維持管理・修繕,消耗品の購入・払出し,廃棄物関係の全般的な管理,注射針等診療に必要な医療材料の購入等の業務を担っていた。 Cは,管理課に配属されて以降,同年7月頃までの間,Hの業務に帯同し,管理課の業務内容を学んでいった。具体的には,本件病院の有料駐車場の駐車券及び金銭の回収,本件病院で使用する消耗品の発注,廃棄物回収業者が来た際の立会いなどの業務を担当し,その他,病院内に修繕が必要な箇所があれば,業者に対する修繕依頼の起案,修繕の際の立会い等の業務を行っており,インターネットやパソコンに不具合が生じたときなどの対応も担当していた。 を担当し,その他,病院内に修繕が必要な箇所があれば,業者に対する修繕依頼の起案,修繕の際の立会い等の業務を行っており,インターネットやパソコンに不具合が生じたときなどの対応も担当していた。 これに対し,Hは,主として,外部からの調査依頼に対する回答,支払業務に関する支出決裁,修繕関係の対応,医薬品の管理などを行っていた。HとCの業務の分量は,Cの異動直後はおおよそ9対1の割合で,Hの業務の方が多かった(その後,8対2から7対3までの割合となった。)。また,Hには,Cに割り当てられる業務よりも難易度の高い業務が割り当てられており,外部に出るような資料等の作成も任せられていた。 G課長は,高額な修繕に関わる業者との立会い,高額な医療機器・機械備品等の購入稟議・管理,本件病院における防火・防災管理のための消防署との連絡,管理課職員の業務管理などの業務を行っていた。 G課長は,E事務局長から,Cがライフル射撃競技の練習に行けるよう配慮するよう言われていたが,練習は,本件病院の休暇の日に行けると思っており,本件病院においては,Cがライフル射撃競技の選手であることを理由に,特段,Cの仕事の量や休みに気を遣うことはなかった(これに対し,証人Gは,勤務時間内に処理できる業務量ということで業務の配分をしてCがライフル射撃競技の練習ができるように配慮して いた旨証言するが,Gは,多治見労働基準監督署の聴取の際,練習は病院の休みの日に行けると思い,特段,仕事の量や休みに気を遣うようなことはしなかったと具体的に述べているから,証人Gの上記証言を採用することはできない。)。 (以上,甲3・4枚目,甲4,26・150頁,260頁から263頁まで,294頁から295頁まで,乙14・2頁,15・1頁,16 いるから,証人Gの上記証言を採用することはできない。)。 (以上,甲3・4枚目,甲4,26・150頁,260頁から263頁まで,294頁から295頁まで,乙14・2頁,15・1頁,16・1頁,証人G1頁,7頁,証人H2頁以下) 管理課においては,上記のとおり,管理事務所の自分の席で行う業務以外に,機械修理の際の立会いや現場確認などの業務が多く,自分の席で行う事務作業は他の仕事が終わった後でなければできなかったことから,立会い等の業務が長引いた際には,管理課職員の時間外労働が長くなっていた。 管理事務所においては,通常,総務課の職員よりも管理課の職員の方が帰る時間が遅く,管理課職員による時間外労働は慢性的に行われていた。 (以上,甲26・322頁,608頁から615頁まで,証人H19頁)エ決裁制度 管理課の業務には決裁制度があり,C又はHが作成した文書は,G課長,F事務次長,E事務局長の順に決裁に回るものが多かった。決裁文書には,G課長の専決が認められるものも存在したが,E事務局長は,課長専決の文書の内容も確認していた。また,E事務局長の決裁の後,D院長や被告本所の決裁を要する文書も存在した。(甲26・321頁)E事務局長の決裁が必要な管理課の書類のうち,Cが担当していたものは全体の2割ほどであり,その他はG課長及びHが担当していた。CからE事務局長に回ってくる決裁文書には,寝具の委託報告書や修理依頼に関する文書などがあり,その内容は,Hの決裁文書と比較して,簡 単なものが多かった。 (以上,甲26・290頁,乙14・2頁,証人H15頁,16頁,証人G12頁から15頁まで,証人E3頁)本件病院では,決裁において,E事務局長から修正を命ぜられることが少な ものが多かった。 (以上,甲26・290頁,乙14・2頁,証人H15頁,16頁,証人G12頁から15頁まで,証人E3頁)本件病院では,決裁において,E事務局長から修正を命ぜられることが少なくなかった。管理課の職員は,E事務局長の決裁は,求められる添付資料が多く,文書の書き方や根拠などを指導確認されることも多いことから,厳しいものと感じていた。 C又はHの作成した決裁文書につき,E事務局長から修正を求められる際には,G課長に渡されることもあるが,文書を起案したC又はHに対し直接修正を求められることも少なくなかった。 管理課の決裁においては,10件に二,三件ほどの頻度で,E事務局長から文書の訂正等を求められていた。Cの作成した文書については,月に二,三件ほど,E事務局長から訂正を求められていた。 (以上,甲26・290頁,296頁,321頁から322頁まで,618頁,乙14・2頁,15・2頁,証人H16頁,証人G3頁,11頁,20頁,証人E3頁以下,24頁)⑷ 本件病院の事務部門における勤務時間等ア本件病院の事務部門の勤務時間は午前8時30分から午後5時15分までであり,午後0時から午後0時45分までは休憩時間,午後0時45分から午後1時までは休息時間(仕事があれば行わなければならない時間)とされていた。もっとも,月初め,当直及び当直明けの日には,変形労働時間制を採用し,変形労働勤務表であらかじめ定められた勤務時間に勤務するものとされていた。管理課では,当月の勤務予定につき,各職員が前月末にG課長に申告し,これを踏まえて,G課長が変形労働勤務表を作成していた。(甲26・262頁,281頁) 管理課においては,G課長が作成し,各職員に交付された変形労働勤務表に基づいて業務が行われていた。そし ,G課長が変形労働勤務表を作成していた。(甲26・262頁,281頁) 管理課においては,G課長が作成し,各職員に交付された変形労働勤務表に基づいて業務が行われていた。そして,現実の勤務時間については,管理者であるG課長が現認し,各職員の変形労働勤務表にG課長が押印することで確認するものとされていた。また,変形労働勤務表に記載されている勤務時間以外の時間に業務を行う場合には,あらかじめ,超過勤務申請書に時間外労働の予定時間等を記載した上でG課長に申請し,同人の許可を受けることとされていた。そして,時間外業務が許可された場合には,各職員は,変形労働勤務表を訂正した上,月末に超過勤務命令兼報告書を作成するものとされていた。 しかし,G課長が先に帰った場合には,残っていた職員が自ら報告しなければ,当該職員が何時に帰ったかはG課長には分からなかった。G課長が,他の職員よりも先に帰る場合には,G課長は「早く帰れよ。」と声をかけていた。 このように,当時の管理課ではG課長が毎日各職員の帰宅を現認しているというわけではなく,変形労働勤務表の押印についても,1週間などのある程度まとまった期間ごとにされることがあった。また,平成25年4月から同年12月にかけて,G課長がCやHに対し,残業の申請をするななどと述べたことはなかったものの,C及びHが,当直業務に関するもの以外に超過勤務申請書を提出したことはなかった。 (以上,甲26・263頁,282頁,563頁から576頁まで,乙5,10,証人H8頁,9頁,証人G10頁,弁論の全趣旨) 被告は,平成24年8月20日に,労働基準監督署より指導を受けており,同指導の中には,労働時間の適正管理に関し,被告の事業場では労働者の労働時間を自己申告により把握してい 論の全趣旨) 被告は,平成24年8月20日に,労働基準監督署より指導を受けており,同指導の中には,労働時間の適正管理に関し,被告の事業場では労働者の労働時間を自己申告により把握しているところ,申告時間とパソコンのログ等の記録との間に大きなかい離があることから,原則としてタイムカード,ICカード等の客観的な記録による方法を検討された い旨記載されていた。(乙7)これを受けて,被告は,時間外労働の実態調査を行った上,同年9月頃,「タイムカード,ICカードの導入については困難な状況であるため,現行通りの自己申告制とし,管理者による現認確認の徹底を図ることと致します」と回答した。(甲27,乙8)平成25年当時,本件病院管理課においては,事務職員の出勤・退勤に関し,タイムカードやICカード等の客観的記録に基づく労働時間の確認はなされておらず,勤務表により自己申告に基づいて労働時間を確認していた。そして,当時,事務職員による勤務表に基づく自己申告の労働時間と,実態としての労働時間については齟齬が生じていた。(甲26・49頁,弁論の全趣旨)本件病院の事務職員について,平成26年より前に,変形労働勤務表とパソコンのログの照合作業が行われたことはなかった。(証人E18頁)イ本件病院には午後5時15分から翌朝午前8時30分までの当直業務があり,男性職員のみが担当していた。当直担当者は,主に電話対応と救急患者の受付・会計の業務を行っていた。役職者以外においては,月に3回ほど当直業務の担当が割り当てられていた。 本件病院が救急車の受入れを行う日(輪番日)には,午後9時まで女性職員が残って業務を行っていたが,それ以降の時間は,当直担当者である男性職員のみが対応していた。 てられていた。 本件病院が救急車の受入れを行う日(輪番日)には,午後9時まで女性職員が残って業務を行っていたが,それ以降の時間は,当直担当者である男性職員のみが対応していた。 当直における受付業務は,パソコンを使って救急患者の受診歴を確認し,受診歴があれば,カルテ庫や診療科から診療録等を持ってくるというものであった。会計業務は,医師の作成したカルテ等に基づき,診療内容をパソコンに入力し,会計計算に反映させ,請求書を打ち出すというものであったが,カルテ等に記載されている治療方法がシステムに入 っていない場合には,マニュアルに基づいて入力することが必要となり,医療事務に初めて携わる者にとっては処理することが難しい業務も含まれていた。 患者の受付がなされてから会計がされるまでの時間は,短いときは30分程度であったが,長いときには2時間から3時間ほどかかることもあり,その間,当直担当者は,当直室において電話応対や休憩をしていた。当直時間帯に患者が本件病院を訪れることは,当直開始時である午後5時15分から午後10時までが多かったが,患者が訪れない場合には,当直担当者は,午前0時頃から,当直室において仮眠をとることが多かった。 (以上,甲26・49頁,218頁,255頁,268頁から270頁まで,291頁,292頁,乙24,証人H13頁)輪番日には,当直の時間帯に本件病院を訪れる患者が多く,また,電話がかかってくることも多いことから,眠ることができないのが通常であった。他方で,非輪番日には,当直の時間帯に本件病院を訪れる患者は少なく,通常2時間から4時間ほどは眠ることができており,患者が訪れない日については,午後10時頃にはベッドのある部屋で休むことができていた。当直担当者は,当直明けの勤務日において 院を訪れる患者は少なく,通常2時間から4時間ほどは眠ることができており,患者が訪れない日については,午後10時頃にはベッドのある部屋で休むことができていた。当直担当者は,当直明けの勤務日において,午後0時までの勤務とされていた。(甲26・49頁,256頁,257頁,269頁,270頁,292頁,307頁) Cも,本件病院において当直業務に従事しており,平成25年4月には月に1回,同年5月から同年11月までは月に3回,当直業務に従事した。(甲26・153頁から160頁まで,519頁から540頁まで,631頁から653頁まで,乙4の1から23まで)Hは,Cが管理課で当直業務に従事するようになった同年4月から同年6月頃までの間,Cの当直担当の日の午後8時頃までCに帯同して当 直業務について説明し,午後8時以降については,当直業務で分からないことについて,Hに電話するようCに伝えていた。Cは,何回かHに電話し,Hが本件病院まで教えに行ったこともあった。(甲26・291頁,証人H7頁)Cが本件病院に異動になった同年4月頃においては,当直室に当直業務に関するファイルが備えられており,そこに記載されている内容等に基づいて当直事務が行われていた。当直業務については,同8月1日に統一的なマニュアルが作成された。しかし,Cは,それまで被告の本所で勤務をしており,会計業務などに従事していなかったこともあって,当直業務には不慣れであり,被告の本所で同僚であった友人には,当直が嫌だという趣旨のことを述べたことがあった。(甲26・218頁,657頁,証人H13頁) 本件病院においては,当直業務に関し,午後10時から翌日午前8時30分までを時間外労働と扱い,当直時間帯の受付人数1人当たり30分の た。(甲26・218頁,657頁,証人H13頁) 本件病院においては,当直業務に関し,午後10時から翌日午前8時30分までを時間外労働と扱い,当直時間帯の受付人数1人当たり30分の実労働があったものと評価して,従業員に賃金を支払っていた。 (甲26・517頁,518頁,証人E19頁)ウ本件病院においては,時間外労働時間が3か月間継続して月80時間を超えた場合又は時間外労働時間(宿日直時間外を除く)が6か月間継続して月60時間を超えた場合には,当該職員と産業医による面接指導を実施するなどの職員の健康を保持するための対策が平成22年8月1日付けで定められていた。(乙1)⑸ Cの本件病院への異動直後のやり取り Cは,エアライフル及びスモールボアライフルにつき,銃刀法に基づく所持許可を有していたものの,スモールボアライフルの所持許可の有効期間が平成24年10月26日までとされており,更新手続が行われなかったことから,同日の経過をもって,スモールボアライフルの所持 許可が失効していた。その結果,Cは,スモールボアライフルを所持することができなくなり,スモールボアライフルの射撃練習もできなくなった。 もっとも,Cにおいて,スモールボアライフルの所持許可が失効していることにつき,被告や岐阜県のライフル射撃担当者に伝えたことはなく,これらの者は,Cの上記許可の失効について,当時認識していなかった。 (以上,甲26・173頁,176頁から177頁まで,314頁) スモールボアライフルの所持につき再度許可を受けるためには,都道府県公安委員会において①講習会を受講し,②射撃教習資格認定の申請後,同教習を修了して,③スモールボアライフルの所持許可の申請を行う必要がある。なお,スモールボアライ 再度許可を受けるためには,都道府県公安委員会において①講習会を受講し,②射撃教習資格認定の申請後,同教習を修了して,③スモールボアライフルの所持許可の申請を行う必要がある。なお,スモールボアライフルの所持許可に係る申請に際しては,精神保健指定医等の作成した診断書を添付しなければならなかった。(甲26・179頁,310頁から313頁まで)イ Cは,平成25年4月中旬頃,本件病院の管理課のIに対し「どこか良い精神科をご存じありませんか。」,「M病院に予約しているのですが。」などと質問した。また,その際,Cは,Iに対し,自分がライフルの選手であること,ライフルの免許が失効していることについて話した。(甲3・10枚目,甲26・222頁,606頁)ウ同月18日,日本農業新聞からF事務次長に対し,Cに関する取材依頼があった。取材企画の内容は,「仕事に奮闘しながら趣味やスポーツで成果を出すJA職員を紹介する」というものであった。F事務次長は,日本農業新聞の担当者と同年7月の記事掲載に向けて同年6月に取材を行えるように調整をした後,以降は,Cと取材担当者が直接調整を行うことになった。もっとも,同月の取材は,後日,Cから取材担当者に対して,免許の関係で写真撮影の際にライフルを持つことができない旨の申入れがあり, 実施されなかった(同年10月及び11月にも,取材担当者からCに対して取材の申込みがあったものの,Cは,ライフルの免許の都合で取材対応できないと回答し,実施されなかった。)。(甲3・4枚目,26・209頁)エ Cは,同年6月18日,J医師から統合失調症,そううつ病(そう病及びうつ病を含む。)等の精神疾患はないとの診断を受けた。Cは,射撃のための銃の免許の取得のために診断書が必要であるとのことで,同院を訪れ ,同年6月18日,J医師から統合失調症,そううつ病(そう病及びうつ病を含む。)等の精神疾患はないとの診断を受けた。Cは,射撃のための銃の免許の取得のために診断書が必要であるとのことで,同院を訪れたと述べていた。(甲26・337頁,339頁)⑹ 平成25年7月から9月までの経過等ア Cは,同年7月12日から同月15日までにかけて,全日本ライフル射撃クラブ対抗選手権大会に出場し,85人中18位の成績を収めた。(甲31・添付資料E)岐阜県教育委員会のライフル射撃競技担当者は,同月7日の国体の岐阜県予選の際,Cのスモールボアライフルの所持許可が失効していることを知ったものの,これについて具体的な対応はしなかった。(甲26・181頁)イ Cは,同月頃,G課長に対し,ライフルの免許の更新に行きたい旨相談し,多治見警察署に赴いたところ,担当者が不在で手続をすることができなかった。そこで,Cは,同月26日,再度,多治見警察署に赴き,射撃教習資格認定の申請を行った。(甲3・9頁,26・178頁,272頁)ウ G課長は,Cが仕事にも慣れてきたと考えて,同月頃から,Cが一人で処理する業務を増やし,また,Cの担当するパソコン関係の業務を増やした。さらに,G課長は,Cに対し,修繕関係の業務も徐々に担当させることとした。 もっとも,この頃から,Cが勤務時間中に居眠りすることが見受けられるようになり,HやG課長が注意することもあった。また,Cは,Hに対 し,「朝と昼は弱くて,夜が冴える」などと述べたこともあった。Cは,日常の業務の際,周囲の者に相談することは少なく,一人で業務を行うことが多かった。 (以上,甲3・4枚目,11枚目,12枚目,26・264頁,266頁,287頁,295頁,乙 った。Cは,日常の業務の際,周囲の者に相談することは少なく,一人で業務を行うことが多かった。 (以上,甲3・4枚目,11枚目,12枚目,26・264頁,266頁,287頁,295頁,乙16・2頁,証人H5頁)エ同月22日及び同月23日,本件病院の内部監査が実施された。その際,被告本所に所属する監事が本件病院を訪れ,Cと質談をしたところ,Cが当直明けである旨述べたため,監事は早く帰るように促した。(甲3・3頁)。 オ Cは,同年8月17日及び同月18日,同年の国体東海地区予選会を兼ねた東海ブロックライフル射撃競技選手権大会のエアライフル射撃競技に出場したものの6位となり,国体に出場することはできなかった。エアライフル射撃競技は,Cが社会人になってから出場していた種目ではなかった。(甲3・9枚目,11枚目,31・添付資料F)Cは,この頃,被告本所に勤務していたころの同僚であった友人に対し,「今年は国体の予選が通らなかった。」,「岐阜国体が終わってモチベーションが下がった。」,「思うように練習ができない。」などと述べた。 (甲26・615頁)しかし,Cは,本件病院のF事務次長,G課長やHなどに対して,ライフル射撃競技の練習や大会などについて話をすることはなかったため,同人らは,Cがこれらの大会に出ることや,ライフルの所持許可が失効していることなどは把握していなかった。そのため,被告本所と違って,本件病院ではCが大会に出る日を出張扱いとすることもなかった。(甲3・4枚目,13枚目,26・209頁,263頁,264頁,294頁,295頁,証人E23頁)カ Cは,本件病院に異動になり,住所を変更したことに伴い,同年4月に 身上異動届を本件病院に提出しなければならないものとされ ,263頁,264頁,294頁,295頁,証人E23頁)カ Cは,本件病院に異動になり,住所を変更したことに伴い,同年4月に 身上異動届を本件病院に提出しなければならないものとされていた(Cの住民票では,同月1日付けで転入とされていた。)が,同年8月になっても,未だ提出されていなかった。 そこで,E事務局長は,同月頃,F事務次長及びG課長も同席の下,事務局長室において,Cに対し,身上異動届の提出遅延の理由を確認し,このような書類は事務職員としてきちんと提出しなければならない等と指導し,必要であれば遅延理由書を提出するよう伝えた。この日の事務局長室でのやり取りは30分ほどであった。 Cは,同月21日に遅延理由書を提出し,また,同月に身上異動書を提出した。 (以上,甲3・4枚目から5枚目まで,26・210頁から211頁まで,229頁から230頁まで,296頁,553頁,証人E5頁以下)キ多治見警察署は,同年9月24日,Cに対し,射撃教習資格認定書が交付できるようになった旨連絡した。なお,Cは,同日及び同月25日には夏期休暇を取得しており,同月21日から同月25日までは長崎県の実家に帰省していた。(甲26・178頁,237頁,471頁)⑺ Cの時間外労働の増加等ア G課長は,平成25年10月頃,平成26年度の事業計画の作成が始まり,管理課全体の業務が忙しくなるとともに,管理課においてOA機器等の修理業務を行う必要が生じたことから,Cに対し,それまでG課長やHが担当していた少し難易度の高いパソコン関係の業務や修繕関係の業務を担当させるようになった。 Cは,平成25年10月頃から勤務時間外に業務を行うことが多くなっていた。もっとも,その頃,G課長及びHについても, 度の高いパソコン関係の業務や修繕関係の業務を担当させるようになった。 Cは,平成25年10月頃から勤務時間外に業務を行うことが多くなっていた。もっとも,その頃,G課長及びHについても,Cと同時刻頃まで残って業務を行っていた。しかし,G課長において,C及びHに対し,超過勤務申請書の提出を促すことはなく,C及びHから,当直業務以外に関 して超過勤務申請書が提出されることはなかった。G課長は,Cから超過勤務申請書が提出されていないことを認識していたものの,その理由を確認することはなかった。 (以上,甲3・5枚目,12枚目,13枚目,26・265頁,289頁,証人H14頁,証人G17頁)イ Cは,同月25日に夏期休暇を取得した。また,Cは,同月26日,被告本所に勤務していたころの同僚であった友人と連絡をとり,大阪市のUSJに行く計画を立てた。(甲26・472頁,626頁,628頁)⑻ Cの失踪直前の経過ア Cは,平成25年11月になっても,多治見警察署に射撃教習資格認定書を受け取りに行かなかった。そこで,多治見警察署の職員は,同月7日,Cに対し,再度,同認定書の交付ができる状態になっている旨連絡した。 しかし,Cが多治見警察署を訪れることはなかった。(甲26・178頁)イ同月頃には,管理課における平成26年度の事業計画の作成業務により,管理課職員の業務は多忙を極めていた(なお,Hは,本件自殺の後,この頃は事務所全体がピリピリしている時期であったため,Cは,Hに対して相談しにくかったのではないかと振り返っていた。)。(甲26・289頁,証人H14頁)Hは,Cに対し,平成25年9月頃,本件病院における訪問看護に用いる車両の自動車検査証の期間更新に関する仕事を依頼していたところ,同年11月になって 。)。(甲26・289頁,証人H14頁)Hは,Cに対し,平成25年9月頃,本件病院における訪問看護に用いる車両の自動車検査証の期間更新に関する仕事を依頼していたところ,同年11月になってもされておらず,自動車検査証の有効期限が迫っていた。 そこで,Hは,Cとともに自動車検査証の更新のために必要な事務の処理を行った。 (以上,甲26・288頁,289頁,599頁,乙16・1頁から2頁まで,証人H5頁)ウ Cは,同月18日午後10時22分頃,被告本所所属の同僚職員の携帯 電話に電話を掛け,消耗品費及び寝具委託費の事業計画の作成方法について質問をした。この際,電話を受けた同僚職員は,Cに対し,早く帰宅することを勧めた。(甲3・4頁)エ両親との東京旅行等 Cは,同年11月27日に当直業務(来院患者は4人)に従事しており,翌日の同月28日は朝から本件病院で通常勤務をしていた。 原告らは,同月に永年勤続の旅行で京都,名古屋,東京を巡っていたところ,同日,岐阜県を訪れ,同日の夕方頃からCの自宅などで同人の帰りを待っていた。そうしたところ,午後11時30分頃に,Cから原告Bに電話があり,今から帰ると述べたことから,原告らはファミリーレストランにおいてCと合流し,食事をした。その際,Cは非常に疲れた様子で口数も少なく,原告Aが食事を勧めても,スープしか飲まなかった。 Cは,同月29日,午前7時半過ぎに自宅を出て本件病院に出勤し,同日午後10時30分頃まで本件病院で業務を行って,自宅に帰宅した。 原告らは,同月30日,Cと共にCの兄であるKの住む東京に旅行に出向いた。同日,原告BがCに対し,「(作業着について)新しいのを買おうか。」などと尋ねたところ,Cは「作業着はいらない。」と強 原告らは,同月30日,Cと共にCの兄であるKの住む東京に旅行に出向いた。同日,原告BがCに対し,「(作業着について)新しいのを買おうか。」などと尋ねたところ,Cは「作業着はいらない。」と強く答えた。また,同年12月1日,原告AがCに対し「仕事はどうなの。」と尋ねたところ,Cは「もう嫌だ。」と述べた。 (以上,甲26・30頁,180頁,238頁,239頁,334頁,540頁,585頁,31・28頁,29頁,原告A本人6頁) Cは,同月10日,原告Bに対し,電話で,同月30日から平成26年1月3日まで帰省する旨伝えた。(甲26・241頁)オ Cは,平成25年12月12日,本件病院の忘年会に参加した。その際,景品が当たり,Cは同じテーブルの職員とともに喜んでいるように見えた。 また,その際,Cは,年末年始は九州に帰省することを楽しみにしていると話していた。(甲26・140頁)カ Cは,同月14日,本件病院の職員を含む5名で大阪のUSJに旅行に行った。この旅行は,Cが,同年10月頃に提案したことにより,実施されたものであった。Cは,同旅行の際,友人から見て,落ち込んでいるようには見えず,楽しそうにしているように見えた。Cは,旅行の後,友人に対し,「また遊びに行きたい。」という内容のメールを送信した。もっとも,同月20日頃以降,当該友人のもとにはCからのメールは来なくなった。 (以上,甲3・6頁,26・216頁,217頁,31・30頁,乙25)キ Cは,毎朝午前8時前後に出勤し,病院内の冷暖房設備の灯油残量を2か所で確認し,病院患者用駐車場において駐車券の回収を行った後,午前8時20分頃に中央監視室に向かい,Iらと仕事の打合せをしたり,コーヒーを飲みながら雑談等をしたりすることが日課となってい 残量を2か所で確認し,病院患者用駐車場において駐車券の回収を行った後,午前8時20分頃に中央監視室に向かい,Iらと仕事の打合せをしたり,コーヒーを飲みながら雑談等をしたりすることが日課となっていた。 しかし,同月16日頃から,Cが朝に中央監視室に来ることがなくなった。 (以上,甲3・6枚目,26・224頁,284頁,286頁,607頁)ク Cは,同月22日,当直業務に従事した後,同月23日に火バサミ及び七輪を購入し,同月24日には練炭を購入した。(甲3・6枚目,26・220頁,335頁,619頁)⑼ Cの失踪前日ア Cは,平成26年1月に本件病院で実施することが予定されている保健所による立入検査の事前提出書類の作成を依頼されており,同書類の提出期限は平成25年10月末とされていたが,同年12月になっても提出できていなかった(なお,E事務局長は,保健所に対し,書類の提出が遅れる旨伝え,保健所担当者の了承を受けていた。)。 Cは,同月上旬頃,E事務局長のもとに上記保健所に提出する書類を持参したところ,同書類に誤りがあったため,E事務局長は,その旨指導した。(以上,甲26・231頁から232頁まで,証人E6頁)イCは,同月25日午後5時半頃,修正した保健所への提出書類につき,G課長らの決裁を経たものをE事務局長のいる事務局長室に持参したところ,その数値が誤っていた。そこで,E事務局長は,Cに対し,指示した修正がされていなかったことにつき,叱責した。事務局長室における上記やり取りは,5分ほどであった。 その後,E事務局長は,Cとともに,管理事務所の書類棚の前に行き,Cに対し,書類の作成方法について説明した。また,その際,E事務局長は,G課長に対しても,書類の不備についての監督責任につき指導をした。 ,E事務局長は,Cとともに,管理事務所の書類棚の前に行き,Cに対し,書類の作成方法について説明した。また,その際,E事務局長は,G課長に対しても,書類の不備についての監督責任につき指導をした。 同日は,非輪番日で,Hが当直業務を担当していた。Hは,勤務時間以降も,Cとともに管理事務所で仕事をしていたが,Cに変わった様子を感じたことはなく,G課長においても,Cに格別変わった様子を感じなかった。 Cは,同日,午後9時半頃に本件病院を後にし,帰宅した。 同書類については,G課長が修正の上,同月26日に提出した。 (以上,甲26・211頁,231頁,272頁,273頁,595頁,612頁,乙14・3頁,15・2頁,16・2頁,26,証人H9頁,証人G6頁,13頁,証人E6頁から8頁まで) 上記認定について,原告は,E事務局長の同月25日におけるCへの指導につき,長時間にわたる厳しいものであると主張し,D院長も,証人尋問において,E事務局長によりどう喝に近い叱責があった旨証言する(甲32の1及び2,証人D3頁)。 しかし,D院長の証言するところは,G課長その他の職員らからE事 務局長による叱責の様子を聞いたというものにすぎず,D自身がE事務局長による叱責を目撃したというものではないところ,その証言する内容も複数の職員からE事務局長によるどう喝を見たという話を聞いたという抽象的なものである上,そのような話をしたとされるG課長はそもそもE事務局長による事務局長内での叱責を目撃していない旨証言している(証人G6頁)ことを踏まえると,上記Dの証言をもって,E事務局長によるどう喝のような厳しい叱責があったものと認めることはできない。 したがって,上記原告の主張するように,E事務局長がCに対し, 頁)ことを踏まえると,上記Dの証言をもって,E事務局長によるどう喝のような厳しい叱責があったものと認めることはできない。 したがって,上記原告の主張するように,E事務局長がCに対し,同月25日,長時間にわたる,どう喝のような厳しい叱責をしたとまでは認めることができない。 ⑽ Cの失踪の経過ア Cは,平成25年12月26日午前1時頃,自分のスマートフォンから自分のパソコンに宛てて,「なんかもう生きてることって何なのかわからない・・・。ここしばらくネガティブなことしか頭にない。生きてることが辛くなっている。」,「仕事の全てにとんでもなく重圧を感じて耐えられなくなっている。この先これ以上は耐えられそうにない。生きる意味って何だろう。」,「何もかも捨て去りたくなった。消え去りたくなった。 限界だ。」,「体調はすごくだるい・・・。気持ち悪い。辛い。生きたくない。」,「生きてると辛いだけ・・・。」,「体がいくつあっても足りない仕事の毎日・・・。この先に未来はない。」,「もう無理です。今日で終わりにしようと思います。今までこんなことをするなんて考えたこともありませんでしたが,決めました。今日までありがとうございました。」などと記載されたメール3通を送信した。(甲2の1から2の6まで)イCは,同日午前8時頃,本件病院に出勤してこなかった。G課長は,同日午前8時15分頃に,Cに電話をかけたが,繋がらなかった。そし て,G課長は,Cが出勤時間である午前8時30分頃になっても出勤してこなかった(なお,同日以前に,Cが無断で出勤時間を過ぎても出勤してこないということはなかった。)ことから,F事務次長とともに,本件病院近くのCのアパートに赴き,インターホンを鳴らして玄関ドアを叩くなどしたが,中から反応はなかった。 で出勤時間を過ぎても出勤してこないということはなかった。)ことから,F事務次長とともに,本件病院近くのCのアパートに赴き,インターホンを鳴らして玄関ドアを叩くなどしたが,中から反応はなかった。 F事務次長は,同日午前11時30分頃,原告Bに電話を掛け,Cが出勤していないことを報告するとともに,アパート内の捜索をすることの了承を得た。そこで,同日午後0時20分頃,警察官立会いのもと,Cのアパートのドアを開錠し,室内を捜索したが,Cは不在であった。 本件病院は,Cの所在が分からなかったことから,同日午後6時30分頃,瑞浪交番にCの捜索願を提出した。同日午後8時頃,警察官がCのアパートを訪問し,Cのパソコンの電源を入れてメールを確認したところ,Cの送信した前記アのメール3通が確認され,警察官は,その旨,原告Aに連絡した。 (以上,甲3・7頁,26・175頁,証人G18頁以下)なお,同日午後4時頃にCの車が小牧から一宮方面へ移動していることが確認されている。(甲3・7枚目)ウ同月27日,本来はCが当直担当者であったが,HがCの代わりに当直業務を行った。(甲5の9,26・715頁,証人H12頁)エ Cは,平成26年1月8日,名神高速道路の小牧インターチェンジと一宮インターチェンジの間に位置する尾張一宮パーキングエリアに駐車した車内において,バーベキューコンロを設置し,練炭を燃焼させて発生した一酸化炭素を吸引する方法により自殺し,死亡(死因は一酸化炭素中毒)しているのが発見された。(甲1,3・9枚目,26・219頁,352,359頁)⑾ 関係者らに対する懲戒処分等 ア被告は,Cの自殺について,平成26年2月25日から同年4月2日までの間に関係者に対する聞き取り調査を実 26・219頁,352,359頁)⑾ 関係者らに対する懲戒処分等 ア被告は,Cの自殺について,平成26年2月25日から同年4月2日までの間に関係者に対する聞き取り調査を実施し,同月18日,調査報告書を作成した。(甲3)イ被告は,Cの自殺に関し,本件病院の労務管理が不適切であったことにつき,同年5月21日付けで,D院長に訓戒,E事務局長,F事務次長及びG課長に減給の懲戒処分をした。(乙9)⑿ 被告に対する是正勧告 多治見労働基準監督署は,被告に対し,平成29年3月9日,時間外労働協定の特別延長時間まで労働時間を延長できる上限回数を超えて時間外労働を行わせており,労働基準法に違反する状態になっていることから,再発防止対策を検討するよう記載した是正勧告書及び指導票を送付した。(乙11,12)これを受けて,被告は,多治見労働基準監督署長に対し,同年4月28日,是正(改善)報告書を提出した。(乙13)⒀ 労働基準監督署におけるCの時間外労働時間及び精神障害の認定ア労働基準監督署は,Cの出勤時間を原則として午前8時,帰宅時間を原則としてパソコンのログアウト時刻であることを前提に,Cの時間外労働時間を以下のとおり認定した。(甲6,26・49頁から56頁まで,乙26) 平成25年12月23日~同年11月24日 107時間29分 平成25年11月23日~同年10月25日 118時間38分 平成25年10月24日~同年9月25日 105時間20分 平成25年9月24日~同年8月26日 76時間50分 平成25年8月25日~同年7月27日 70時間28分 平成25年7月26日~同年6 間20分 平成25年9月24日~同年8月26日 76時間50分 平成25年8月25日~同年7月27日 70時間28分 平成25年7月26日~同年6月27日 104時間55分イ労働基準監督署は,Cが平成25年12月23日頃にうつ病エピソード (F32)を発病し,本件自殺に至ったものと認めた。(甲26・27頁)⒁ Cの性格や本件病院における勤務状況等ア Cの性格,考え方等 Cは,おとなしい性格であり,感情を表に出すことはあまりなく,自分から積極的に話をすることも多くなかった。また,責任感が強く,他人の悪口をいうことはなかった。他方で,途中経過は評価されず,結果が全てであると考えるなど,自分に厳しい一面も兼ね備えていた。射撃部の後輩がCに対して相談をした際には,Cは「結果を出せばいいんだよ。」と述べることがあった。仕事においては,もくもくと仕事を行うことが多い一方で,凝り性なところがあり,仕事においてしっかりと作成することにこだわることもあった。(甲26・208頁,211頁,218頁,222頁,246頁,31・8頁,原告A本人1頁) Cは,仕事をしていてわからないところについて,G課長に質問することはほとんどなかった。また,Cは,Hに質問をすることはあったものの,頻繁に質問しているというものではなく,G課長やHと自発的にコミュニケーションをとることも少なかった。そのため,G課長の方から,Cに対し,「分からないことはないか」と尋ねることがあった。 (甲26・265頁,289頁)Cは,業務に優先順位を付けることが得意ではなく,仕事を溜めることが少なくなかった。また,Cは,仕事を教えてもらう際にメモをとることはなく,Hに った。 (甲26・265頁,289頁)Cは,業務に優先順位を付けることが得意ではなく,仕事を溜めることが少なくなかった。また,Cは,仕事を教えてもらう際にメモをとることはなく,Hに対し,同じことを何度も質問することがあった。Cは,期限内に仕事を終わらせることができないことも少なくなかった。(乙15・2頁,乙16・1頁から3頁まで,証人H4頁,20頁)なお,Cが失踪した後,Cの机やロッカーの中から,未処理の修理伝票等仕事に係る書類が複数発見された。(乙16・2頁,証人H22頁)イ HやCは,月末や月初めなどの業務が忙しい時期には,午後9時から午 後10時頃まで残って仕事をしていることが多かったが,それ以外の時期は,午後7時から午後8時頃に帰宅していた。そのため,Hの超過勤務時間は,Cとほぼ同じ程度となっており,1か月当たり100時間を超えるときもあった。(甲26・284頁,乙26,証人H8頁,弁論の全趣旨)G課長は,午後8時頃から午後9時頃に帰宅していた。G課長は,C及びHに対し,翌日でもできる業務については超過勤務せずに帰るよう指示していたものの,CもHも超過勤務をして業務をしていることが多かった。 G課長がCに対して超過勤務を認めないと伝えた場合でも,Cは残って業務をしていることが多かった。G課長は,Cの業務につき,勤務時間内に終えることが可能なものであると考えており,勤務時間内で終わらせるように日々伝えていた。(甲26・266頁,証人G3頁,4頁,20頁)Hにおいても,勤務時間内にコーヒーを飲んだり,雑談をしたりしていたことから勤務時間内に仕事が終わらなかったことは自己責任であると考え,超過勤務申請を出すことはなかった。(甲26・599頁,証人H8頁,12頁,証 務時間内にコーヒーを飲んだり,雑談をしたりしていたことから勤務時間内に仕事が終わらなかったことは自己責任であると考え,超過勤務申請を出すことはなかった。(甲26・599頁,証人H8頁,12頁,証人G10頁,17頁)⒂ Cの健康状態についてCについて,本件自殺以前に,精神障害の療養にかかる受診歴はない。 また,Cが,本件病院への異動後,G課長に対し,体調が悪い,病院に通っている等の話をしたことはなく,異動の希望を述べたこともなかった。 G課長は,Cの居眠りが多かったときも,夜が遅いからであろうと感じていたにすぎなかった。 (以上,甲26・272頁,334頁) 2 争点1(Cの死亡による損害の発生及び損害額)について⑴ 葬儀費用 160万円ア証拠(甲25の1から3まで)及び弁論の全趣旨によると,原告らが,Cの葬儀費用として合計164万5995円(遺体搬送費47万0600 円,葬儀代114万5395円,火葬費3万円)を支払ったことが認められ,そのうち160万円につき,被告の安全配慮義務違反と相当因果関係を有する損害と認めるのが相当である。 イ被告は,葬儀費用について,死亡した本人が支出を強制されるものではないから,死亡した本人に生じた損害ということはできない旨主張する。 しかし,葬儀は,死者を弔い,人間としての尊厳を全うさせるために行われ,専ら死者のために催されるものであるし,葬儀費用が死者の生前蓄えた財産から支出されることも少なくないことを踏まえると,葬儀費用につき,死者に生じた損害と観念することができるというべきである。 そうすると,本件自殺により原告らの支出した葬儀費用は,Cに生じた損害ということができ,これは,被告の安全配慮義務違反と相当因果関係を有するもの と観念することができるというべきである。 そうすると,本件自殺により原告らの支出した葬儀費用は,Cに生じた損害ということができ,これは,被告の安全配慮義務違反と相当因果関係を有するものと認めることができる。 ⑵ 死亡逸失利益 5609万3000円当事者間に争いがない。 ⑶ 死亡慰謝料 2200万円被告の安全配慮義務違反の態様,Cが自殺するに至った経緯等の一切の事情を考慮すると,Cが被った精神的損害を慰謝するには2200万円が相当である。 ⑷ 以上のとおり,Cの死亡により生じた損害(弁護士費用を除く。)は,7969万3000円となる。 3 争点⑵(過失相殺)について⑴ うつ病エピソードの発病ア前記認定事実によれば,Cは,平成25年4月に本件病院の管理課の配属となり,Hの業務に帯同し,G課長の指導を受けながら,日常業務及び当直業務を覚えていったものであるが,Cにおいて,未だ管理課の業務を十分に習熟していない同年7月頃から,徐々に,一人で担当する 業務が増えていき,内向的で周囲の者に相談することが得意ではなく,責任感が強いCの性格も相まって,業務を効率的に処理することができず,時間外労働時間が増え,同月の時間外労働時間が100時間を超える結果になったものといえる。 そして,同年10月頃には,管理課において平成26年度の事業計画の作成が始まることを受けて,Cに従前の業務よりも難易度の高い業務等が割り当てられるようになり,E事務局長による文書決裁も厳しかった(それ自体は,管理課における書類の重要性に鑑みると,やむを得ない面もあるともいえる。)ことも相まって,Cにおける業務の負担は増大し,周囲の他の職員も多忙を極め,Cにおいて業務について相談することもできず,Cの時間外労働時間 書類の重要性に鑑みると,やむを得ない面もあるともいえる。)ことも相まって,Cにおける業務の負担は増大し,周囲の他の職員も多忙を極め,Cにおいて業務について相談することもできず,Cの時間外労働時間は増加し,平成25年10月から同年12月頃までの時間外労働時間は,いずれも月100時間を超えるなど,慢性的な長時間労働に陥っていたものといえる(なお,被告は,パソコンのログイン・ログアウトの記録に基づくCの労働時間と実態としてのCの労働時間との間には齟齬がある旨主張する。しかし,Hによると,Hは,終業時に自身のパソコンをログアウトすることを忘れることはあったものの,基本的には本件病院に出勤した時にパソコンをログインし,退勤する時にパソコンをログアウトしており,Cも同様であった(そして,HがCの休みの日に同人のパソコンにログインすることも,平成25年4月から同年12月までの間に多くても5回ほどしかなかった。)というのである(証人H11頁,18頁,21頁,甲26・284頁から285頁まで)から,Cの労働時間については,労働基準監督署がパソコンのログイン・ログアウトの記録に基づき認定した労働時間(認定事実⒀ア)が,実態をおおむね反映したものであると認めるのが相当である。)。 そして,Cは上記長時間労働に加え,初めて病院で勤務する中で,月 3回程度,慣れない当直業務に従事しており,このような当直業務もCにおいて負担になっていたことは容易に認められる。 以上の状況の下で,原告らが同年11月28日に岐阜県を訪れた際,Cは当直業務を担当した翌日であるにもかかわらず,午後11時30分頃まで職場で業務をこなしており,業務後のCは非常に疲れた様子であって,同年12月1日にはCが原告Aに対して「(仕事が)もう嫌だ。」と述べていたことを合わせて検討する もかかわらず,午後11時30分頃まで職場で業務をこなしており,業務後のCは非常に疲れた様子であって,同年12月1日にはCが原告Aに対して「(仕事が)もう嫌だ。」と述べていたことを合わせて検討すると,Cにおいて,同年12月上旬頃までの間には,上記長時間労働により,相当の肉体的・精神的負担を感じ,抑うつ気分や易疲労性を生じていたものといえる。 そして,Cは,同月23日に本件自殺に用いられた火バサミ及び七輪を購入し,同月24日には練炭を購入して,同月25日におけるE事務局長からの叱責を契機に,同月26日に「仕事の全てにとんでもなく重圧を感じている。」,「体調はすごく悪い。」,「体がいくつあっても足りない。」「この先に未来はない。」,「何もかも捨て去りたくなった。」などと記載されたメールを作成し,その翌日に失踪して,最終的に自殺を図っていることを踏まえると,同月23日頃には,Cにおいて,本件病院における業務の負担に限界を感じ,将来の人生に希望を持てずに悲観して,希死念慮を覚え,その後,自殺に至ったものといえる。 以上によれば,Cにおいて,同日頃に,本件病院での長時間労働等によってうつ病エピソード(F32,甲28)に発病し,本件自殺に至ったものと認めるのが相当である。 そして,Cが,E事務局長から複数回にわたり,保健所に提出する書類の修正を求められていたにもかかわらず,同月25日に,E事務局長から再度修正を求められ,叱責を受けたことは,E事務局長がCとの関係で,人事上強い立場にあり,Cが当時長時間労働による相当の疲労があったことも合わせて考えると,同叱責によりCは相当のショックを受 け,かかるショックが本件自殺の端緒の一つとなったものと認めるのが相当である。 イこれに対し,被告は,Cに の疲労があったことも合わせて考えると,同叱責によりCは相当のショックを受 け,かかるショックが本件自殺の端緒の一つとなったものと認めるのが相当である。 イこれに対し,被告は,Cにおいて,本件自殺の直前にG課長やHが,Cの落ち込んでいる様子を確認していないことから,Cがうつ病エピソードを発病していたことには疑問が残る旨主張する。 しかし,Cは元来感情を表に出すことはあまりなく,自分から積極的に話をすることも多くなく,G課長やHと自発的にコミュニケーションをとることも少なかったというのであるから,G課長やHとの間で,日常のコミュニケーションが十分になされていたとはいえないと考えられる上,同年10月以降は,管理課全体として業務が忙しく,HやG課長もCと同様に長時間の時間外労働に従事するなど,各々が自己の業務に追われ,Cの様子を十分に観察できる状況にあったものとはいえないとも考えられることを踏まえると,Cが抑うつ気分になっていたにもかかわらず,H及びG課長が気付かなかったということは十分考えられるのであり,上記被告の指摘する事実は,Cがうつ病エピソードを発病していたとの判断を左右するものではない。 また,被告は,Cが同年12月14日に友人とUSJに旅行に行った際,自殺の兆候は見受けられなかったことから,Cがうつ病エピソードに発病していたことには疑問がある旨主張する。 しかし,前記のとおり,本件病院の業務に重い負担を感じ,心身ともに疲弊していたCが,自己の企画した旅行において友人に心配を掛けたくないという想いから,明るく振る舞っていたものと考えることもできるのであるから(ICD-10にも,症例によっては気分の変化が隠されたりすることがあることが指摘されている(甲28)。),上記被告の くないという想いから,明るく振る舞っていたものと考えることもできるのであるから(ICD-10にも,症例によっては気分の変化が隠されたりすることがあることが指摘されている(甲28)。),上記被告の指摘する事実をもって,前記判断は左右されない。 ⑵ Cの業務の進め方,姿勢等 ア上記⑴のとおり,Cは,平成25年10月以降,月100時間労働を超えるような慢性的な長時間労働に陥っており,相当の業務上の負担があったものといえる。 これに対し,被告は,H及びG課長における時間外労働時間は,Cが失踪する前後で大きく変化していないことから,管理課におけるCの業務は過大ではなかった旨主張する。 しかし,管理課における業務の内容及び量は,時期によって大きく異なっており,Cが失踪した後において,管理課がCの失踪前と同様の体制で業務を行っていたかどうかも明らかではないのであるから,被告の指摘する2つの時期におけるH及びG課長の時間外労働時間を比較し,両者が大きく変化していないからといって,Cの業務の量が少なかったと,直ちに認めることはできない。 また,被告は,本件管理課の業務の量及び質は,Cが配属される前後で大きく変化していないことから,管理課におけるCの業務は過大ではなかった旨主張する。 しかし,Cの異動の前後を問わず,本件病院の管理課においては,慢性的に長時間の時間外労働が行われており,もともとの管理課の業務が相当に過大であったことがうかがわれるのであるから,管理課の事務職が2人から3人と増員されたことにより,1人当たりの業務の負担は少なくなったとはいえるものの,これにより,直ちに,Cの業務が過大ではなかったということはできない。 被告は,Cに与えられていた業務は比 人と増員されたことにより,1人当たりの業務の負担は少なくなったとはいえるものの,これにより,直ちに,Cの業務が過大ではなかったということはできない。 被告は,Cに与えられていた業務は比較的容易なものであったことから,Cの管理課における業務は過大なものではなかった旨主張する。 この点,確かに,Cの担当していた業務は,HやG課長の担当していた業務よりも難易度が低いものであったといえる。しかし,平成25年10月頃には,従前HやG課長が担当していた難易度が高めの業務につ いてもCが一部担当することになっている上,病院での勤務を始めてから半年程度しか経っておらず,未だ業務に習熟していないCにおいては,難易度の低い業務であったとしても,相当な困難を伴うことが容易に予想されるのであるから,Cに与えられた業務の難易度が相対的に低かったとしても,これにより,Cの負担が少なかったということはできない。 被告は,当直業務によるCへの負担が過大であったとはいえないとも主張する。 しかし,前記認定事実によると,輪番日の当直業務では,眠ることができないのが通常であり,非輪番日であっても通常2時間から4時間ほど眠ることができるものであったこと,それにもかかわらず,当直明けの勤務日においても,午後0時までの勤務とされていたこと,平成25年4月の本件病院への異動後に当直業務において会計業務などを行うようになったCにとっては当直業務は不慣れであったことからすると,たとえ,Hが同年6月頃までの間,Cの当直担当の日の午後8時頃までCに帯同して当直業務について説明するなどしていたとしても,当直業務はCにとっては,身体的にも精神的にも負担が大きなものであったと認められる。 被告は,Cにおいて,中央監視室に 頃までCに帯同して当直業務について説明するなどしていたとしても,当直業務はCにとっては,身体的にも精神的にも負担が大きなものであったと認められる。 被告は,Cにおいて,中央監視室に毎日コーヒーを飲みに行くことがあり,居眠りをすることもあったのであるから,前記パソコンのログイン・ログアウトの時間等による労働時間につき,全て集中して業務を行っていたわけではなく,前記労働基準監督署が認定した時間外労働時間等からCに過大な負担があったものと認めることはできない旨主張する。 しかし,Cが毎朝中央監視室でコーヒーを飲んでいた時間が,長時間の時間外労働を生じさせるほどのものであったとは考えられないし,Cの居眠り(これは,同年7月及び同年8月におけるライフル射撃競技の大会出場に向けた練習量の増大などに起因する可能性もある。)につい ても,同年9月頃には改善されていたというのであり,その他,労働時間を殊更伸長したといえるようなCの不適切な業務態度はうかがわれないのであるから,被告の主張には理由がない。 イそうすると,Cは,管理課において,長時間の時間外労働を必要とする相当量の業務に従事していたものといえる。 これにつき,被告は,Cにおいて,業務量等について上司等に相談しておらず,1人で業務をこなしており,その結果,被告において軽減措置をとることができなかったのであるから,Cにも一定の責任を認めるべきである旨主張する。 しかし,前記認定事実によれば,Cが勤務時間内に与えられた業務を終えることができず,慢性的に長時間の時間外労働をしていたことは,上司であるG課長が現認しており,しかも,Cにおける仕事の進め方に問題があることについても同様に認識していたのであるから,Cによる相談がなかっ ができず,慢性的に長時間の時間外労働をしていたことは,上司であるG課長が現認しており,しかも,Cにおける仕事の進め方に問題があることについても同様に認識していたのであるから,Cによる相談がなかったからといって,被告における軽減措置を困難にしたものということはできない。 また,労働者の長時間労働の解消は,第一次的には,業務の全体について把握し,管理している使用者において実現すべきものであるところ,本件において,G課長はCに対し,早く帰るように声を掛ける等したにとどまり,長時間労働を抜本的に解消するために,仕事の進め方についてCと協議をしたり,合理的な事務処理のための教示をしたりするなどした事実はうかがわれず(HやG課長において,納期の迫っているCの業務につき,協力をしたことは認められるものの,一時的なものにすぎず,長時間労働を抜本的に解消するための措置ということはできない。),あまつさえ,Cの時間外労働の時間を把握しようと努めた痕跡さえ認められない。 さらに,被告は,Cの異動の際に,Cに対して相談に来るよう伝える などの配慮を行ったものと主張するが,あくまで異動の際の配慮にすぎず,その配慮の内容も長時間の時間外労働を解消する上で十分なものとは認められない。また,被告は,Cに対しては,ライフル射撃競技の大会や練習がある場合に業務を調整しやすい管理課に配置するなど,Cに対する業務の配慮をしていたとも主張するが,認定事実のとおり,本件病院のF事務次長及びG課長は,Cがライフル射撃競技の大会に出場しているのかどうかさえ把握していなかった(G課長は,Cは本件病院の休暇の日に練習に行けると思っていた。)のであり,このような中で,Cに対する業務の配慮が十分にされていたと認めることはできない。 そうすると,被告において,Cの G課長は,Cは本件病院の休暇の日に練習に行けると思っていた。)のであり,このような中で,Cに対する業務の配慮が十分にされていたと認めることはできない。 そうすると,被告において,Cの長時間の時間外労働に対する配慮が著しく欠けている一方,Cが業務量について上司に相談等しなかったことが被告における配慮の妨げになったと認めることのできない本件においては,当事者間の公平の見地から,Cが業務量について上司に相談等しなかったことをCの過失と評価し,被告の賠償額を減ずるのは相当ではない。 被告は,Cの長時間労働は,Cの仕事のペースが遅いなど業務に取り組む姿勢も一因となっているのであるから,過失相殺が認められるべきである旨主張する。 これにつき,確かに,Cにおいて,業務を教えてもらう際にメモを取ろうとしないなど,効率的に業務を処理しようとする姿勢が十分ではなく,業務に優先順位を付けることを苦手としていたこと等が,Cにおける長時間労働を生じさせた一因となった可能性も考えられる。 しかし,Cは,被告本所においては時間外労働をほとんど行うことなく,業務を処理することができていたのであるから,一概にその能力が低かったということはできないし,本件病院に配属されてから経験が十分でない状況で,業務を効率的に処理できないのは当然のことであるか ら,そのことをもって,直ちにCの過失と評価すべきではない。 むしろ,G課長やE事務局長においては,Cが効率的な業務を行えないことを想定し,対応すべきであったところ,Cが現に効率的な業務を行えていないことを認識しながら,十分な指導や助言を行っていない本件において,上記Cの仕事の進め方等をもって,被告の賠償額の減額を認めるのは相当でない。 ⑶ 超過勤務申請書の不 効率的な業務を行えていないことを認識しながら,十分な指導や助言を行っていない本件において,上記Cの仕事の進め方等をもって,被告の賠償額の減額を認めるのは相当でない。 ⑶ 超過勤務申請書の不提出被告は,Cに対し,超過勤務申請を促していたにもかかわらず,超過勤務申請書を提出しなかったことから,被告において,Cの労働状況及び健康状況を把握することができず,必要な措置をとることができなかったのであり,過失相殺を認めるべきである旨主張する。 しかし,前記認定事実のとおり,G課長は,Cにおいて,超過勤務申請を出さずに,慢性的に長時間の時間外労働をしていたことを現認しており,申告されている労働時間が現実のものとかい離していることを十分に認識していたにもかかわらず,Cに対して超過勤務申請を提出することを積極的に求めたことも,Cの労働時間を正確に把握しようとしたこともないのであり,Cの超過勤務申請書の不提出により,被告においてCの長時間の時間外労働に気付くことができず,必要な措置を執ることが困難になったということはない。 かえって,G課長においては,Cが時間外に行っている業務につき,時間外に行う必要のないものであると考え,時間外労働として認めなかったことがあり(甲26・266頁),E事務局長においても,管理課全体として慢性的な時間外労働・長時間労働が生じていたにもかかわらず,Cが勤務時間内に業務を終えることができずに時間外労働をしなければならなくなったのは,Cの仕事の進め方に問題があり,本来時間内に処理を終えることができる業務であったとの認識を示しており(証人E29頁),C及びHにおいて, 平成25年4月から同年12月の間に,月100時間を超える時間外労働を行いながら,当直業務以外に超過勤務申請書を提出したことがなかったことを踏 示しており(証人E29頁),C及びHにおいて, 平成25年4月から同年12月の間に,月100時間を超える時間外労働を行いながら,当直業務以外に超過勤務申請書を提出したことがなかったことを踏まえると,Cにおいて超過勤務申請することをちゅうちょさせるような職場環境となっており,被告はそのような職場環境を放置していたものといえる。 そうすると,上記被告の主張は,自ら労働者の労働時間の把握を怠っておきながら,労働時間が把握できなかった責任をCに転嫁しようとするものであり,Cの超過勤務申請書の不提出をもって,過失相殺を認めることは相当ではない。 ⑷ 医療機関の受診等についてア被告は,Cがうつ病エピソードに発病していたとしても,発病前に精神科を受診し,自己の健康管理を行うべきであり,これを怠ったCにおいて,過失相殺を認めるべきである旨主張する。 これにつき,被告が主張するように,労働者が,自己の健康状態について最もよく認識し,健康管理を行うことのできる地位にあることは,一般論としては肯首できるものであるが,本件のように,使用者が労働者における慢性的な長時間労働を認識しながら,十分な措置を講じず,労働者の健康状態に対する配慮が何らなされていない場合には,労働者において医療機関を受診していないことをもって,直ちに自己の健康管理を怠った過失を認めるべきではなく,少なくとも,労働者において,医師から具体的な受診の必要性を指摘される等して,医療機関を受診する機会があったにもかかわらず,正当な理由なくこれを受診しなかったといえる場合に限り,過失として評価する余地があると解すべきである。 そして,本件において,Cが,医師から精神疾患に関する具体的な指摘を受けたことはなく,その他,Cにおいて医療機関を受診する機会があっ 限り,過失として評価する余地があると解すべきである。 そして,本件において,Cが,医師から精神疾患に関する具体的な指摘を受けたことはなく,その他,Cにおいて医療機関を受診する機会があったといえる具体的事情が認められないことを踏まえると,Cにおいて,う つ病エピソードの発病前に,自ら精神科の病院を受診しなかったことを過失と評価すべきではない。 イ被告は,Cにおいて,うつ病エピソードに発病する前に,自ら仕事を休み,上司等に相談するなどして自ら自己の健康管理を行うべきであった旨主張する。 これにつき,Cにおいて,長時間労働に従事し,適切に休暇が取得されていなかったことが,うつ病エピソードを発病した要因の一つになっていることは否定できない。しかし,前記のとおり,Cは,平成25年10月以降,長時間の時間外労働をしなければならないほどの業務を負担しており,日常の業務の中には期限のあるものも少なくなく,業務を滞りなく処理する上で休暇を取得することが困難であり,休暇を取得することで,休暇取得後の業務処理が一層困難になる状況であったと推察されるところ,被告において,Cが休暇を取得できる状況にあったにもかかわらず適切に休暇を取得しなかったことに関する具体的な事実の主張はない。そうすると,Cが適切に休暇を取得しなかったことをもって,Cの過失と評価することはできない。 また,G課長は,Cの業務の負担を総合的に調整し得る立場にあり,Cの休暇の取得状況や長時間労働の状況を十分に認識していたのであるから,Cによる相談等がなかったとしても,Cの健康を保持するための措置を講じるべきであったところ,本件では,そのような措置は全く講じられていない。 このように,被告において,Cが定期的に休暇を取得できるようにす 談等がなかったとしても,Cの健康を保持するための措置を講じるべきであったところ,本件では,そのような措置は全く講じられていない。 このように,被告において,Cが定期的に休暇を取得できるようにするための十分な配慮がなされていたとはいえない本件においては,Cが自ら休暇を取得するなどの健康管理措置をとらず,G課長らに対して積極的に業務の負担に関する相談をしなかったとしても,かかるCの対応をもって,被告の損害賠償額を減額する理由とすることは相当ではない。 なお,被告は,Cが上司等にも相談しなかったことなどから,上司らがCの異常に気付くことが困難であったとも主張する。しかし,被告において,Cが一月当たり100時間を超えるような超過勤務が続いていたことを認識していたことが認められ,かかる状況においては,被告において,Cによる相談がなくとも,Cの心身の健康について配慮すべきなのであり,損害の公平な分配の見地において,上司がCの異常を認識しえなかったことを理由に,賠償額の減額を認めるのは相当ではない。 ⑸ スモールボアライフルの所持許可の失効等ア被告は,Cにおいて,ライフル所持許可の失効によりライフルの競技に出場することができなくなり,平成25年の国体の選考予選で敗退し,平成26年の国体でのライフル射撃での出場の目処が立っていなかったことも,Cの自殺に寄与しており,この点を踏まえた減額を認めるべきである旨主張する。 しかし,前記認定事実によれば,Cにおいては,エアライフルの所持許可は有しており,平成25年にもエアライフル射撃競技の大会には出場していること,Cは,同年7月に,射撃教習資格認定の申請を行うなどして,平成26年の国体への出場を目指しており,平成25年9月頃には,射撃教習を受けることで,スモール ライフル射撃競技の大会には出場していること,Cは,同年7月に,射撃教習資格認定の申請を行うなどして,平成26年の国体への出場を目指しており,平成25年9月頃には,射撃教習を受けることで,スモールボアライフルの所持許可を得ることができる状況にあったのであるから,Cにおいてスモールボアライフルの競技に出場できない状態にあったとはいえず,平成26年の国体への出場の目処が立っていなかったということもできない。むしろ,Cにおいて多治見警察署から複数回の連絡を受けていたにもかかわらず,射撃教習を受講していないことを踏まえると,その頃,Cにおいて,本件病院での業務の負担から,射撃教習を受講するだけの余裕がなく,ライフル射撃ができる状態でなかったことが強くうかがわれる。 イそうすると,Cにおいてライフル所持許可が失効し,平成25年の東京 国体に予選落ちしたことは,ライフルを人生そのものと考えていたCにおいて,当時の悩みの一つであった可能性は否定できないものの,本件自殺との直接の因果関係を認めることはできず,かえって,Cがライフル競技に専念することができなくなったのは,被告の安全配慮義務違反が強く関与しているものといえるのであるから,損害の公平な分配の見地において,これらの事情を理由に,賠償額の減額を認めるのは相当ではない。 したがって,被告の上記主張は採用できない。 ⑹ 以上によれば,本件自殺につき,民法418条により又は同条の類推適用によって,被告の損害賠償額を減ずることは相当ではなく,Cの被告に対する損害賠償請求権は7969万3000円であると認められる。 そして,原告らは,それぞれ,Cの有する損害賠償請求権のうち2分の1に相当する部分を相続したのであるから,原告らの有する各損害賠償請求権の金額は,39 69万3000円であると認められる。 そして,原告らは,それぞれ,Cの有する損害賠償請求権のうち2分の1に相当する部分を相続したのであるから,原告らの有する各損害賠償請求権の金額は,3984万6500円となる。 4 争点⑶(損益相殺)について⑴ 証拠(甲9,26・13頁,22頁,29)及び弁論の全趣旨によれば,原告らは,Cの死亡に関し,労働者災害補償保険法に基づき,遺族補償一時金として合計1438万5000円の支給を受けたことが認められ,これについて当事者間に争いがない。 したがって,原告らの各損害賠償請求権3984万6500円から,上記1438万5000円の2分の1に相当する719万2500円をそれぞれ控除すると,原告らの各損害賠償請求権の金額は3265万4000円となる。 ⑵ 被告は,原告らが受給した定額特別支給金及び遺族特別一時金につき,損害から控除すべきである旨主張するが,これらは,同法29条1項により遺族の福祉増進等を目的として支給されるものであり,Cの死亡による損害を填補する性質を有するものということはできないから,受領した金額につき, 損害額から控除することはできない。 5 弁護士費用本件事案の性質,難易度,訴訟遂行の経過,認容額等本件における諸般の事情を考慮すると,原告A及び原告Bの弁護士費用に関する損害額は,それぞれ326万5000円とするのが相当である。 したがって,原告A及び原告Bの各損害額はいずれも合計3591万9000円となる。 第4 結論以上によれば,原告らの被告に対する債務不履行に基づく損害賠償請求は,それぞれ,3591万9000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成29年10月4日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金 よれば,原告らの被告に対する債務不履行に基づく損害賠償請求は,それぞれ,3591万9000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成29年10月4日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 したがって,原告らの各請求は上記の限度において理由があるから認容し,その余は理由がないからいずれもこれを棄却し,訴訟費用の負担につき民事訴訟法64条本文,61条を,仮執行宣言につき同法259条をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 岐阜地方裁判所民事第1部 裁判官岡部絵理子 裁判官森香太 裁判長裁判官眞鍋美穂子は転補のため署名押印できない。 裁判官岡部絵理子
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