令和5(ネ)10084 特許権侵害損害賠償等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和6年3月26日 知的財産高等裁判所 3部 判決 原判決変更 東京地方裁判所 令和2(ワ)13317
ファイル
hanrei-pdf-92933.txt

キーワード

判決文本文20,067 文字)

令和6年3月26日判決言渡令和5年(ネ)第10084号特許権侵害損害賠償等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和2年(ワ)第13317号)口頭弁論終結日令和6年1月30日判決 控訴人兼被控訴人株式会社齋藤創造研究所(以下「第1審原告」という。) 同訴訟代理人弁護士上山 浩 同井上 拓 被控訴人兼控訴人 AppleJapan 合同会社(以下「第1審被告」という。)同代表者代表社員アップルサウスアジアピーティーイーリミテッド 同訴訟代理人弁護士矢倉千栄同稲瀬雄一同訴訟復代理人弁理士大塚康徳同補佐人弁理士大塚康弘 同坂田恭弘 主文 1 第1審被告の控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。 ⑴ 第1審被告は、第1審原告に対し、1755万3642円及びうち1269万1831円に対する平成21年9月27日から、うち25万3 585円に対する平成22年9月26日から、うち170万7608円 に対する平成24年9月30日から、うち290万0618円に対する平成25年9月29日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 第1審原告のその余の請求を棄却する。 2 第1審原告の控訴を棄却する。 3 訴訟費用は、第1、2 円に対する平成25年9月29日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 第1審原告のその余の請求を棄却する。 2 第1審原告の控訴を棄却する。 3 訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを100分し、その4を第1審被告の負担とし、その余を第1審原告の負担とする。 4 この判決は、第1項⑴に限り、仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 第1審原告の控訴の趣旨⑴ 原判決を次のとおり変更する。 ⑵ 第1審被告は、第1審原告に対し、4億円及びこれに対する平成21年9月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 第1審被告の控訴の趣旨 ⑴ 原判決中、第1審被告の敗訴部分を取り消す。 ⑵ 前項の部分につき、第1審原告の請求を棄却する。 第2 事案の概要(略称等は、特に断らない限り、原判決の表記による。) 1 本件は、原判決別紙特許権目録記載の特許(本件特許)を有していた第1審原告が、原判決別紙被告製品目録記載1の製品(被告製品1)及び同目録記載 2の製品(被告製品2)は本件特許に係る発明の技術的範囲に属し、第1審被告が被告製品1及び被告製品2(併せて「被告各製品」という。)を輸入、販売する行為は、第1審原告の本件特許に係る特許権(本件特許権)を侵害するものであると主張し、第1審被告に対し、不当利得返還請求として、9億6545万0475円及びうち6億9805万0744円に対する平成21年9月2 7日から、うち1394万7195円に対する平成22年9月26日から、う ち9391万8467円に対する平成24年9月30日から、うち1億5953万4069円に対する平成25年9月29日から、各支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改 年9月26日から、う ち9391万8467円に対する平成24年9月30日から、うち1億5953万4069円に対する平成25年9月29日から、各支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による法定利息の支払を求めた事案である。 原判決は、第1審原告の請求のうち、4388万4112円及びうち317 2万9579円に対する平成21年9月27日から、うち63万3963円に対する平成22年9月26日から、うち426万9021円に対する平成24年9月30日から、うち725万1549円に対する平成25年9月29日から、各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、第1審原告のその余の請求を棄却したので、第1審原告が原判決のうち第 1審原告敗訴部分を不服として、第1審被告が原判決のうち第1審被告敗訴部分を不服としてそれぞれ控訴した。第1審原告は、当審において、請求額を4億円及びこれに対する平成21年9月27日から支払済みまで年5分の割合による金員に減縮した。 2 前提事実、争点及び争点に対する当事者の主張は、後記3のとおり補正し、 後記4のとおり当審における第1審原告の補充主張を付加し、後記5のとおり当審における第1審被告の補充主張を付加するほか、原判決「事実及び理由」第2の2及び3並びに第3(3頁1行目から44頁26行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する。 3 原判決の補正 ⑴ 原判決3頁15行目及び4頁11行目の「軌道」をいずれも「軌跡」に改める。 ⑵ 原判決8頁14行目の後に改行して次のとおり加える。 「カ第1審被告及びアップルインコーポレイテッドは、令和2年12月25日、本件特許について特許無効審判を請求したが、特許庁は、 改める。 ⑵ 原判決8頁14行目の後に改行して次のとおり加える。 「カ第1審被告及びアップルインコーポレイテッドは、令和2年12月25日、本件特許について特許無効審判を請求したが、特許庁は、令和4年1 月6日、審判請求不成立の審決をした。第1審被告及びアップルインコー ポレイテッドは、上記審決の取消しを求める訴え(以下、この訴えに係る訴訟を「別件審決取消訴訟」という。)を知的財産高等裁判所に提起したが(知的財産高等裁判所令和4年(行ケ)第10012号、同第10045号)、同裁判所は、令和5年2月16日、第1審被告及びアップルインコーポレイテッドの各請求をいずれも棄却するとの判決をした。第1審被告及 びアップルインコーポレイテッドは、同判決を不服として上告受理申立てをしたが、最高裁判所は、令和5年11月1日、上告受理申立てを不受理とする旨判断し、上記判決が確定した。別件審決取消訴訟では、後記乙8発明を主引用例とする進歩性の判断の誤り、後記乙9発明を主引用例とする進歩性の判断の誤り及び後記乙10発明を主引用例とする進歩性の判断 の誤りが取消事由として主張されていた。(甲43、60、61)」⑶ 原判決9頁3行目の「本件各発明の無効理由の有無」を「本件特許の無効理由の有無」に改める。 ⑷ 原判決9頁8行目の「特許法102条3項に基づく損害額」を「第1審被告が第1審原告に対して不当利得返還義務を負う金額」に改める。 ⑸ 原判決12頁4行目の「あるから、」の後、17頁20行目の「あるから、」の後、23頁19行目の「あるから、」の後に、それぞれ「本件特許は」を加える。 ⑹ 原判決32頁8行目の「特許法102条3項に基づく損害額」を「第1審被告が第1審原告に対して不当利得返還義務を負う金額」に改める。 あるから、」の後に、それぞれ「本件特許は」を加える。 ⑹ 原判決32頁8行目の「特許法102条3項に基づく損害額」を「第1審被告が第1審原告に対して不当利得返還義務を負う金額」に改める。 4 当審における第1審原告の補充主張⑴ 原判決は、本件各発明の相当実施料率を0.5%と認定したが、不当に低いものであり、相当実施料率は10%を下回らない。 ア本件では、①第1審被告は、本件特許成立前、かつ、本件各発明の実施品に当たるクリックホイール搭載のiPod 発売前に、第1審原告から本件 特許の原出願を含む複数の特許出願に係る発明の実施許諾の交渉を申し 入れられていたこと、②それにもかかわらず、第1審被告は、本件特許の原出願の存在を認識しながら、実施許諾を受けることなく、クリックホイール搭載のiPod を発売し、輸入を開始したこと、③第1審被告は、本件特許の成立後も、再度第1審原告から実施許諾の交渉を申し入れられていたこと、④当該交渉において、第1審原告は、許諾実施料率7ないし10% を提示していたこと、⑤それにもかかわらず、第1審被告は、実施許諾を受けることのないまま、長期間にわたってクリックホイール搭載iPod の輸入・販売を続行したこと、⑥しかも、第1審被告は、第1審原告が別件訴訟を提起した後はもちろん、別件訴訟の第1審判決(別件1審判決)及び控訴審の判決後も、第1審原告に対し実施許諾を打診することさえせず、 輸入・販売を強行したこと、⑦本件訴訟の被告各製品と同一構造の製品について、構成要件充足性が認定された判決が確定しているにもかかわらず、本件訴訟において再度構成要件充足性を争うという不誠実な訴訟追行態度をとっていること、⑧別件訴訟で、第1審被告は、地裁で10個、高裁で13個にもわたる無効事由を主張 決が確定しているにもかかわらず、本件訴訟において再度構成要件充足性を争うという不誠実な訴訟追行態度をとっていること、⑧別件訴訟で、第1審被告は、地裁で10個、高裁で13個にもわたる無効事由を主張したがいずれも排斥されたにもかか わらず、本件訴訟の原審でも4個の無効事由を主張するという不誠実な訴訟追行態度をとっている、という事情が存在する。 このような悪質な侵害者である第1審被告に対し、第1審原告が、通常の実施料率と同程度の合意をすることはあり得ず、ましてそれより低い実施料率を合意することなどさらにあり得ない。 原判決の認定によれば、「電気音響機械器具」の平成4年度から平成10年度の実施料率(イニシャルなし)の平均値は5.7%であり、平成16年から平成20年の電気産業における司法決定ロイヤリティ料率の平均値は3.0%である。そして、上記のとおり、第1審原告は、訴訟提起前の交渉において、実施料率として7ないし10%を提示していた。これら のことからすれば、特許法102条4項に基づいて認定されるべき相当実 施料率は10%を下回らないというべきである。 イ本件各発明は、製品内部での処理の改善や内部構造によるものではなく、顧客が直接操作する部分に係るものである点で、顧客吸引力に極めて大きな影響を与える。また、本件各発明の構成の中核であるクイックホイールは、被告各製品の外観の大半を占めるものであり、かつ、画面は競合製品 にも共通して存在する構成であるから、クイックホイールがデザイン上の差別化ポイントとなっている。前記アの平均値5.7%あるいは3.0%は、相対的に価値の低い特許発明の実施料率を含む平均値であり、本件各発明の相当実施料率は業界相場の数倍程度と認定すべきである。 ウ原判決が、本件各発明の相当実施料 の平均値5.7%あるいは3.0%は、相対的に価値の低い特許発明の実施料率を含む平均値であり、本件各発明の相当実施料率は業界相場の数倍程度と認定すべきである。 ウ原判決が、本件各発明の相当実施料率を低くする方向の事情として挙げ たものは、以下のとおり、いずれも相当実施料率を低く認定すべき事情とはいえない。 (ア) 「音楽配信サービスであるiTunesMusicStore に対応するiTunes を、そのまま持ち歩く環境を備えたこと」との点は、被告各製品の販売が開始された時点では競合他社もiTunes に相当する再生ソフトを提供して いたこと、iTunes は被告各製品以外の製品で使用することが可能であったこと、iTunes は使い勝手がよいといえず、被告各製品の使用者ですら他の音楽再生・管理ソフトを使用する者がいた。 (イ) デザインについては、むしろ、被告各製品は、本件各発明の構成の中核であるクリックホイールの採用により、デザイン面で競合製品と差別化 できていた。 (ウ) カラーバリエーションについては、これが被告各製品の売上げに影響を与えたことに関する主張も立証もなく、競合製品も被告各製品以上に多様なカラーバリエーションを採用していた。 (エ) 大容量のハードディスクという点については、記憶媒体にハードディ スクを採用していたのは、クリックホイール搭載のiPod のうち被告製 品1のみであり、他の機種は被告製品2を含めフラッシュメモリを採用していた。また、フラッシュメモリは容量が大きいほど価格が高くなるため、第1審被告及び競合他社は価格設定に応じて複数の容量の機種を販売しており、被告製品2の記憶容量は競合製品に比して大きくなかった。 (オ) バッテリー持続時間については、第1審被告が るため、第1審被告及び競合他社は価格設定に応じて複数の容量の機種を販売しており、被告製品2の記憶容量は競合製品に比して大きくなかった。 (オ) バッテリー持続時間については、第1審被告が提出した乙27は、ホームページに「長時間持続するバッテリー」の記載があることを述べているだけであり、それが競合製品と比較して優れていたことの記載はなく、バッテリーは、容量を大きくすれば、重量が重く、サイズが大きくなり、価格も高くなるので、第1審被告及び競合他社は価格設定に応じ て複数のバッテリー容量の製品を提供していた。 (カ) アップルのブランド価値については、現在はともかく、iPod 販売当初においては決して高くなかった。現在のアップルのブランド価値の形成にはiPod が大きく寄与しており、複数の種類のiPod の中でも、クリックホイールを搭載した機種が最も長期間にわたって販売され、人気を博 してきたことからして、本件各発明がアップルのブランド価値に寄与した。 (キ) 第1審被告の宣伝広告については、第1審被告がiPod シリーズ、特に被告各製品の宣伝広告にどの程度の費用を投じたかについては、何らの証拠も存在せず、競合製品と比してより多額の宣伝広告費を投じていた ことの証拠もない。 (ク) 「クリックホイールの機能の割当てや本件各発明とは無関係のセンターボタンの役割」については、第1審被告も主張しておらず、証拠も提出されていないのであり、これらのような細かな事項が顧客吸引力に影響を与えたとは考えられず、仮に何らかの影響があったとしても微細な ものにすぎなかった。 ⑵ア第1審原告は、売上高が1000万円を超えたこと等から、消費税課税事業者届出手続を行った。 法人税基本通達2-1-43は、他の者から支 ったとしても微細な ものにすぎなかった。 ⑵ア第1審原告は、売上高が1000万円を超えたこと等から、消費税課税事業者届出手続を行った。 法人税基本通達2-1-43は、他の者から支払を受ける損害賠償金の額は、その支払を受けるべきことが確定した日の属する事業年度の益金の額に算入するものと定めている。 したがって、今後、本件訴訟に基づく損害賠償金が第1審被告から第1審原告に支払われることが確定した時点では、第1審原告は消費税課税事業者になっており、当該損害賠償金について消費税が課されることになる。 よって、消費税額相当額は、損害額に含まれることになる。 イ第1審原告が課税事業者となる選択を行ったのは、主としてインボイス 制度の導入に対応するためである。 令和5年10月から始まったインボイス制度においては、免税事業者の取引先が課税事業者である場合、その課税事業者は免税事業者からの仕入れについて、原則、仕入税額控除ができないこととなっており、このため、インボイスを交付できない免税事業者は、課税事業者との取引について、 取引金額の値下げを求められたり、取引自体を打ち切られてしまったりする可能性がある。第1審原告は、令和5年会計年度の売上高が1000万円を超える見込みとなったことも踏まえ、インボイス制度導入に伴う上記デメリットを避けるため、課税事業者となることを選択した。 したがって、第1審原告が第1審被告の負担を増大させることのみを意 図して課税事業者となったとの第1審被告の理由には根拠がない。 また、第1審原告は、令和5年10月からインボイス制度が開始されたことから、同月31日に消費税課税事業者届出手続を行い、同年11月1日付け準備書面⑴でその旨を主張し、追って証拠を提出することも記載した。こ 1審原告は、令和5年10月からインボイス制度が開始されたことから、同月31日に消費税課税事業者届出手続を行い、同年11月1日付け準備書面⑴でその旨を主張し、追って証拠を提出することも記載した。このように、攻撃防御方法の提出は適時適切に行われており、時機に 後れたものではない。 5 当審における第1審被告の補充主張⑴ 構成要件Cにおける「タッチ位置検出センサーが検知しうる接触圧力」という記載は、これを素直に読めば、「検知」の主語が「タッチ位置検出センサー」、目的語が「接触圧力」であるので、本件各発明のタッチ位置検出センサーは、接触圧力を検知することができるものに限定される。同様に、構成要 件Dにおける「前記タッチ位置検出センサーに対する接触圧力よりも大きな接触圧力」という記載からも、本件各発明のタッチ位置検出センサーが、接触圧力を検知することができるものに限定されるとの解釈が導かれる。被告各製品のクイックホイールは、接触圧力を検知することができない静電容量センサーを用いているから、被告各製品は、「タッチ位置検出センサー」を含 む構成要件A、C及びDを充足しない。構成要件C及びDに関する原判決の解釈は、これらの構成要件の記載から逸脱しており、文言解釈の限界を超えるものであって、誤りである。 ⑵ア乙8発明に周知技術1「接触点を一次元又は二次元座標上の位置データとして検出するタッチ位置検出センサーの下にプッシュスイッチの接点が 別個に配置された構成」を適用することは、従来技術との関係において新たな工夫を要せず、当業者にとって容易であり、かつ、乙8発明に周知技術1を適用することには動機付けがあったといえる。したがって、当業者が乙8発明に周知技術1を適用することにより、原判決が認定した相違点8-1に係る構成 業者にとって容易であり、かつ、乙8発明に周知技術1を適用することには動機付けがあったといえる。したがって、当業者が乙8発明に周知技術1を適用することにより、原判決が認定した相違点8-1に係る構成に想到することは容易であった。 また、乙8発明に対する周知技術1の適用は、「先行技術の単なる寄せ集め」といえる、又は「設計変更等」に該当するといえるから、この点からしても、本件各発明の進歩性は否定される。 イ原判決が認定した相違点8-2は、センサー下プッシュスイッチの数が四つに特定されていること以外、相違点8-1と同じものであり、周知技 術1の適用に際してプッシュスイッチの数を四つにすることは、設計的事 項の採用にすぎないから、乙8発明に対してプッシュスイッチを四つとするように周知技術1を適用することにより相違点8-2に係る構成に想到することは当業者が容易になし得たことである。 ウ原判決が認定した相違点8-3「本件各発明では接触操作型入力装置が小型携帯装置に適用されている(構成要件F)のに対して、乙8発明にお いてはタッチパネル式制御信号発生装置が適用されたビデオテープレコーダ(構成要件Fに相当)が小型携帯装置であるかは明らかでない点」については、乙8発明においてタッチパネル式制御信号発生装置を小型携帯装置に適用する(又は当該タッチパネル式制御信号発生装置が適用されたビデオテープレコーダを小型携帯装置として構成する)ことは、一定の課 題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計的事項の採用にすぎず、本件特許の出願前に当業者が容易に発明できたことであるから、相違点8-3に係る構成に想到することは、当業者が容易になし得たことである。 ⑶ア(ア) 特許発明の寄与率を決定するにあたっては、特許発明による商品又は 前に当業者が容易に発明できたことであるから、相違点8-3に係る構成に想到することは、当業者が容易になし得たことである。 ⑶ア(ア) 特許発明の寄与率を決定するにあたっては、特許発明による商品又は役務の価値ないし需要者の購入動機への寄与度を最終的な判断基準とす るのが妥当である。そして、商品又は役務全体の価額における特許発明の実施部分の価額割合や、商品又は役務全体の原価における特許発明の実施部分の原価割合を目安とすることは、特許発明の寄与率の考慮の客観性を担保するものとして許容される。したがって、本件各発明の寄与率を決定するにあたっては、本件各発明を実施するクリックホイールの 価格が被告各製品の販売価格に占める割合を目安とすべきであるところ、損害計算対象期間におけるクリックホイールの平均価格は●●●円を上回ることはなく、これが被告各製品の平均販売価格に占める割合は、●%に満たない。 (イ) かつてiPod が商業的人気を博した背景には、アップルというブランド の訴求力、iTunes による従来の音楽鑑賞方法の進化、iTunes ミュージ ックストアを通じた革新的な音楽配信サービス、及びiPod が有していた大容量のストレージや長時間持続するバッテリー等、様々な要素の貢献があるのであって、本件各発明は被告各製品の売上げにほぼ貢献していない。 本件各発明に係る入力装置と、被告各製品のクリックホイールでは、 構造、外観、機能及び動作の点で大きな違いがあり、本件各発明はクイックホイールにほとんど寄与していない。 クイックホイールが被告各製品の宣伝に用いられていたとしても、消費者は、被告各製品が有するその他の特徴など、前記の各要素を購入の主な動機にしていた。また、iPod シリーズにおいてタッチスクリーン搭 ックホイールが被告各製品の宣伝に用いられていたとしても、消費者は、被告各製品が有するその他の特徴など、前記の各要素を購入の主な動機にしていた。また、iPod シリーズにおいてタッチスクリーン搭 載機が登場すると、被告各製品を含むクリックホイール搭載機種に対する消費者の興味・関心は急速に失われており、このことはクリックホイール自体の訴求力が低かったことを示している。また、本件における損害算定対象期間においては、クリックホイール搭載機種の販売台数は一貫して減少傾向にあった。 (ウ) 本件各発明の実施料率を定めるに当たり比較対象となるライセンス契約のうち、売上高に実施料率を乗じる方法により実施料の額を算出することとされていた15契約において、実施料率の中央値は2.65%であった(乙27)。上記(イ)のとおり、本件の損害算定対象期間において、クイックホイールの技術自体が時代遅れのものとなっていたことに鑑 みると、本件各発明の寄与率考慮前の実施料率は2.65%を超えない。 そして、上記(ア)のとおり、本件各発明の被告各製品に対する寄与率が●%を下回ることからすると、本件において損害額の算定に用いる実施料率は、2.65%に●%を乗じた●●●●●%を超えることはない。 イ別件1審判決は、本件訴訟の原判決と概ね同様の事情を考慮した上で、 相当な実施料率を●●●%と認定し、別件訴訟の控訴審判決もこの判断を 是認した。本件訴訟の原判決と別件訴訟の判決とで異なることは、本件訴訟の原判決が、特許法102条4項に言及し、第1審被告が別件1審判決及び控訴審判決が言い渡された後も被告製品1を販売し続けたことを考慮した点にあると考えられる。 しかし、特許法の令和元年改正で導入された特許法102条4項は、そ れに先立つ平成1 別件1審判決及び控訴審判決が言い渡された後も被告製品1を販売し続けたことを考慮した点にあると考えられる。 しかし、特許法の令和元年改正で導入された特許法102条4項は、そ れに先立つ平成10年改正で改正された同条3項の下で考慮することとされた事情を明確化したものにすぎず、原判決の時点で、別件訴訟の時から損害額の算定方法や考慮すべき要素が変更されたわけではない。 そして、別件訴訟の判決が確定する平成27年9月9日までは、別件1審判決あるいは控訴審判決は覆される可能性があったのであり、第1審被 告は、同日より前に被告製品1の販売を終了していた。したがって、第1審被告が別件1審判決及び控訴審判決の後も被告製品1を販売し続けたことをもって、原判決が「侵害態様は看過し得ない」と評価したのは行き過ぎである。 したがって、別件訴訟と本件訴訟において、認定される実施料率が大き く異なるべきではない。 そして、特許法102条4項が、侵害時の事情のみならず、事実審が結審するまでのあらゆる事情を参酌することができるのであるとすれば、本件各発明に係る技術が、侵害時から本件訴訟の第1審の結審時までの間に陳腐化し、別件訴訟の判決で定められた高い実施料率に基づく実施料を払 ってまで本件各発明に係る技術を使いたいと考える者がいないことも考慮すべきである。 以上によれば、本件で認められる寄与率が、仮に前記アの●●●●●%を上回るとしても、別件1審判決で認定された●●●%を大きく上回ることは相当でない。 ⑷ア第1審原告は、課税事業者となったことを根拠として、消費税相当額も 認容されるべきであると主張する。 しかし、第1審原告が行ったのは、基準期間における課税売上高が1000万円を超えた場合に行う消費税課税事業者届出手続 なったことを根拠として、消費税相当額も 認容されるべきであると主張する。 しかし、第1審原告が行ったのは、基準期間における課税売上高が1000万円を超えた場合に行う消費税課税事業者届出手続ではなく、自ら課税事業者になることを選択する場合の手続である消費税課税事業者選択届出手続であった(甲62)。 上記手続は、基準期間における課税売上高が1000万円を超えたか否かにかかわらず行うことが可能であった。すなわち、第1審原告は、本件訴訟が原審に係属している間に、上記の主張並びに関連する証拠である甲62及び63を提出することが可能であったにもかかわらず、少なくとも重大な過失によりこれを怠ったものである。そして、その結果として訴訟 の完結の遅延を招いているから、時機に後れた攻撃防御方法であって、上記主張並びに甲62及び63は却下されるべきである。 イ第1審原告が第1審において提出した令和3年11月17日付け「訴訟救助の申立書」の疎明資料とされた決算報告書によれば、第1審原告の年間売上高は、第45期(平成30年4月1日~平成31年3月31 日)、第46期(平成31年4月1日~令和2年3月31日)及び第47期(令和2年4月1日~令和3年3月31日)のいずれも1000万円に遠く及ばない額であった。消費者課税事業者選択届出書(甲62)における基準期間の課税売上高の欄にも何も記載されていない。そうすると、売上高が1000万円を超えたために課税事業者となる届出を行っ たとする第1審原告の主張は、極めて疑わしい。 仮に第1審原告の令和5年度の課税売上高が1000万円を超えていたとしても、その場合に第1審原告が消費税の納税義務を負うのは、原則として早くとも令和7年度である。しかし、いわゆるインボイス制度開始の経過措置とし の令和5年度の課税売上高が1000万円を超えていたとしても、その場合に第1審原告が消費税の納税義務を負うのは、原則として早くとも令和7年度である。しかし、いわゆるインボイス制度開始の経過措置として、令和5年10月1日から令和11年9月30日 までの日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受ける場 合には、登録希望日(適格請求書発行事業者の登録申請書の提出日から15日以後の日)から課税事業者となることができる措置が設けられている(消費税法施行令附則(平成30年政令第135号)15条)。第1審原告はこれを利用して、消費税課税事業者選択届出書の提出日の15日後である令和5年11月15日から課税事業者となることを求め(甲 62)、それが認められている(甲63)。つまり、第1審原告は、仮に1000万円を超える課税売上高を上げていたとしても、消費税の納付義務を当面は免れることができたにもかかわらず、直ちに課税事業者となることを敢えて選択したのである。 このように第1審原告が自ら課税事業者となる選択を行ったのは、ひ とえに第1審被告の負担を消費税相当額分だけ増大させたいとの意図に基づくものであったことが強く推認される。 第1審原告が、必要もないのにあえて課税事業者になることを選択することによって、第1審被告が支払義務を負う金額を増加させようとするのは、信義則上の損害拡大防止義務に違反する行為であり、認められ ない。 第3 当裁判所の判断当裁判所は、第1審原告の請求のうち、1755万3642円及びうち1269万1831円に対する平成21年9月27日から、うち25万3585円に対する平成22年9月26日から、うち170万7608円に対する平成2 4年9月30日から、うち290万0618円に対する平 万1831円に対する平成21年9月27日から、うち25万3585円に対する平成22年9月26日から、うち170万7608円に対する平成2 4年9月30日から、うち290万0618円に対する平成25年9月29日から、各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこの限度で認容し、その余の請求は理由がないから棄却すべきであると判断する。その理由は、当審における当事者の主張も踏まえて原判決を後記1のとおり補正し、後記2のとおり当審における第1審原告の補充主張に 対する判断を付加し、後記3のとおり当審における第1審被告の補充主張に対 する判断を付加するほか、原判決「事実及び理由」第4(原判決45頁2行目から94頁12行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 1 原判決の補正⑴ 原判決51頁2行目から3行目にかけての「前記タッチ位置検出センサーが検知しうる」を「前記タッチ位置検知手段におけるタッチ位置検出センサ ーが連続して配置される前記軌跡上における前記タッチ位置検出センサーに対する」に改める。 ⑵ 原判決51頁7行目の「軌道」を「軌跡」に改める。 ⑶ 原判決75頁3行目の「ものでなはく、」を「ものではなく、」に改め、同86頁22行目の「特許法102条3項に基づく損害額」を「第1審被告が 第1審原告に対して不当利得返還義務を負う金額」に改める。 ⑷ 原判決86頁24行目から87頁5行目までを次のとおり改める。 「 第1審被告は、本件特許に係る発明の技術的範囲に属する被告各製品を輸入し、販売するのであれば、本来、第1審原告に対し、上記発明の実施の対価としての実施料(ライセンス料)を支払うべきであったといえるところ、 これを支払うことなく被告各製品の輸入、販売を行 を輸入し、販売するのであれば、本来、第1審原告に対し、上記発明の実施の対価としての実施料(ライセンス料)を支払うべきであったといえるところ、 これを支払うことなく被告各製品の輸入、販売を行ったものであるから、上記実施料相当額について法律上の原因なく利益を受けているといえ、第1審原告は、上記実施料を受領していないから、上記実施料相当額について損失があると認められる。」⑸ 原判決87頁6行目の「したがって、実施に対し受けるべき料率は、」を「そ して、上記実施料相当額は、被告各製品の売上高に対して実施料率を乗じて算出するのが相当であるが、この料率については、第1審原告の不当利得返還請求権の発生原因が第1審被告による第1審原告の本件特許権の侵害であることを考慮すると、」に改める。 ⑹ 原判決87頁25行目の「前記認定事実」を「前記1ないし7において認 定した事実」に改める。 ⑺ 原判決91頁13行目から19行目までを次のとおり改める。 「(イ) 侵害の期間等計算鑑定の結果によれば、被告各製品の売上高(ただし、被告製品1については、別件訴訟の対象期間の後である平成25年3月31日以降のもの)は、原判決別紙損害額計算表の「売上げ」の箇所に記載のとおりであ り(同表のマイナスの数字は返品等により売上額が減少したことを示す。)、被告製品1の売上げがあった最後の時期は平成26年会計年度の第12会計月(平成26年8月31日から同年9月27日まで)、被告製品2の売上げがあった最後の時期は平成24年会計年度の第1会計月(平成23年9月25日から同年10月29日まで)であることが認められる。」 ⑻ 原判決92頁1行目の「侵害の態様」を「侵害の期間」に、同頁5行目の「0.5%」を「0.2%」に、それぞれ改める。 23年9月25日から同年10月29日まで)であることが認められる。」 ⑻ 原判決92頁1行目の「侵害の態様」を「侵害の期間」に、同頁5行目の「0.5%」を「0.2%」に、それぞれ改める。 ⑼ 原判決92頁6行目から93頁1行目までを次のとおり改める。 「⑶ 消費税ア第1審原告は、特許権侵害に基づき利得金を侵害者から受領した場合、 その利得金も消費税の課税対象となるから、消費税額相当額についても第1審被告が第1審原告に対して不当利得返還義務を負うと主張する。 イ消費税法9条1項及び9条の2第1項は、課税期間に係る基準期間又はその事業年度に係る特定期間における課税売上高が1000万円以下である事業者は、その課税期間中又は事業年度に行った課税資産の譲 渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税の納税義務が免除される旨規定している。そして同法2条1項14号によれば、上記基準期間は、法人については課税期間の事業年度の前々事業年度をいい、同法9条の2第4項2号は、上記特定期間は前事業年度開始の日以後6か月の期間をいう旨規定している。 他方、納税義務が免除される事業者であっても、消費税事業者選択届 出書をその納税地を所轄する税務署長に提出した場合、消費税法9条1項の消費税納付義務免除の規定が適用されず、消費税課税事業者となる(同条4項)。 第1審原告の売上高は、平成30年度は50万円、平成31年度(令和元年度)は7万7600円、令和2年度は0円であり(弁論の全趣旨)、 その後についても事業年度における売上高が1000万円を超えたとは認められない。しかし、第1審原告は、令和5年10月31日、消費税課税事業者選択届出書を大月税務署に提出し、同年11月15日から課税事業者となっている(甲62、63)。これ 1000万円を超えたとは認められない。しかし、第1審原告は、令和5年10月31日、消費税課税事業者選択届出書を大月税務署に提出し、同年11月15日から課税事業者となっている(甲62、63)。これらの事実によれば、第1審原告は、同日に消費税の課税事業者となる以前は、消費税法9条1項に より、消費税の納税義務が免除されていたと認められる。 ウ第1審原告は、第1審被告による本件特許権の侵害が行われた各年度において、本件特許権の実施料相当額に加えて消費税相当額についても第1審原告の損害が発生したものとして、消費税相当額も加えた損害額に係る不当利得の返還と、当該不当利得金に対する当該年度の初日を起 算日とする年5分の割合による利息の支払を求めている。 しかし、前記イの事実によれば、第1審原告は、第1審被告による本件特許権の侵害が行われた年度においては、消費税の納税義務が免除されていたのであるから、当該各年度において、第1審原告に消費税相当額の損害(損失)が発生し、第1審被告が同額の利益を得たと認めるこ とはできない。 また、第1審原告が、令和5年10月31日に消費税課税事業者選択届出書を提出し、同年11月15日から課税事業者となったことをもって、遡って、前記各年度において、第1審原告に消費税相当額の損害が発生したと認められることになるとも解されない。 したがって、本件特許権の侵害が行われた各年度において、本件特許 権実施料相当額に係る消費税相当額について第1審原告の損害が発生したとの第1審原告の主張は採用することができず、この主張を前提として、消費税相当額の不当利得返還を求める第1審原告の請求は認められないというべきである。」⑽ 原判決93頁4行目の「別紙損害額計算表」を「別紙控訴審損失額計算表」 とができず、この主張を前提として、消費税相当額の不当利得返還を求める第1審原告の請求は認められないというべきである。」⑽ 原判決93頁4行目の「別紙損害額計算表」を「別紙控訴審損失額計算表」 に、同頁6行目の「とおりとなる。」を「とおりとなり、その合計額は1595万7857円となる。」に、それぞれ改める。 ⑾ 原判決94頁1行目から3行目にかけての「利得金(別紙損害額計算表の「損失額」の「実施料率を乗じた額」)合計3989万4647円の約1割である398万9465円」を「利得金(別紙控訴審損失額計算表の「損失額」 の「実施料率を乗じた額」)合計1595万7857円の約1割である159万5785円」に改める。 2 当審における第1審原告の補充主張に対する判断⑴ 前記第2の4⑴の主張について第1審原告は、前記第2の4⑴アないしウのとおり、不当利得金の金額を 算出するのに用いるべき実施料率は10%を下らないと主張する。 ア前記第2の4⑴アの主張について第1審原告が前記第2の4⑴アで挙げる①ないし⑧の事情のうち、第1審原告が第1審被告との交渉において提示して合意に至らなかった実施料率が7ないし10%であったことは、相当な実施料率の判断において考 慮すべき事情とはいえず、その余の事情は、これらを考慮しても、補正の上で引用した原判決「事実及び理由」第4の9⑴に挙げた考慮事情について本件で認められるものも含め総合考慮した場合に、実施料率として0. 2%が相当であるとの結論を左右しない。第1審被告が、別件訴訟の第1審判決(別件1審判決)及び控訴審の判決の後も被告各製品の販売を継続 したとの点(前記第2の4⑴ア⑥の事情)については、補正の上で引用し た原判決「事実及び理由」第4の9⑵ウ(イ)によれば、 決(別件1審判決)及び控訴審の判決の後も被告各製品の販売を継続 したとの点(前記第2の4⑴ア⑥の事情)については、補正の上で引用し た原判決「事実及び理由」第4の9⑵ウ(イ)によれば、被告製品2について最後の売上げがあったのは平成24年会計年度の第1会計月(平成23年9月25日から同年10月29日まで)であり、これは別件1審判決の前であり、被告製品1について最後の売上げがあったのは平成26年会計年度の第12会計月(平成26年8月31日から同年9月27日まで)であ り、別件訴訟において最高裁の判断がされた日(平成27年9月9日)よりも約1年前であって、別件訴訟の判決が確定した後における販売はなかったと認められ、これらの事実によれば、第1審被告が別件1審判決及び控訴審判決の後も被告製品2の販売を行ったことをもって、実施料率を高く算定すべき事情として過度に考慮することは相当でないというべきで ある。 上記相当な実施料率は、第1審原告が第1審被告と合意することのできる料率を意味するものではないから、第1審原告が当該実施料率で合意するつもりがないとの主張は、相当な実施料率に関する結論を左右しない。 したがって、第1審原告の上記主張は採用することができない。 イ前記第2の4⑴イの主張について第1審原告は、本件各発明が顧客の直接操作する部分に係るものであること、クイックホイールがデザイン上の差別化ポイントとなっていることなどからすれば、本件各発明の相当実施料率は業界相場の数倍程度と認定すべきであると主張する。 しかし、本件各発明が被告各製品において使用者が直接操作する部分に関するものであるとか、クイックホイールが被告各製品の外観の一定程度の部分を占めるといった事情があるとしても、本件各発明が携帯型音 しかし、本件各発明が被告各製品において使用者が直接操作する部分に関するものであるとか、クイックホイールが被告各製品の外観の一定程度の部分を占めるといった事情があるとしても、本件各発明が携帯型音楽プレーヤである被告各製品の売上げに最も寄与したと解すべきことにはならず、全体的なデザイン、カラーバリエーション、音楽配信サービスとの 関連性、「アップル」のブランド価値、第1審被告の宣伝広告等が被告各製 品の売上げに相当程度貢献したことは、補正の上で引用した原判決「事実及び理由」第4の9⑵ウ(ア)及び後記ウのとおりである。 したがって、第1審原告の上記主張は採用することができない。 ウ前記第2の4⑴ウの主張について、第1審原告は、原判決が本件各発明の相当実施料率を低くする方向の事 情として挙げたものは、いずれも相当実施料率を低く認定すべき事情とはいえないと主張する。 しかし、第1審原告が挙げる事情のうち、「音楽配信サービスであるiTunesMusicStore に対応するiTunes を、そのまま持ち歩く環境を備えたこと」については、競業他社の製品がiTunes に相当するソフトウェア を提供していたとしても、そのことをもってiTunes が顧客吸引力を有しないことにはならない。甲45には、iTunes を用いて第1審被告以外の会社が販売する製品に音楽を転送する方法が記載されているが、「著作権保護された曲は再生できません。」とも記載されており、第1審被告以外の会社が販売する製品で被告各製品と同様にiTunes を使用することができた とは認められない。iTunes は使い勝手がよいといえないとか、顧客の評判が悪いと認めるに足りる証拠はない。 デザインについては、クリックホイールが被告各製品の外観の一 用することができた とは認められない。iTunes は使い勝手がよいといえないとか、顧客の評判が悪いと認めるに足りる証拠はない。 デザインについては、クリックホイールが被告各製品の外観の一部を構成するとしても、それが全体としてのデザインにおいて重要な位置を占めるとか、クリックホイールの存在があったためにiPod がデザイン面で競 合製品と差別化されていたとは認められない。 「アップル」のブランド価値については、iPod が「アップル」のブランド価値形成に一定の寄与をしたとしても、本件各発明が「アップル」のブランド価値の形成に重要な寄与をしたとは認められない。 宣伝広告については、第1審被告が被告各製品について宣伝広告を行っ ていることは、甲19ないし27などからも明らかであり、このような宣 伝広告によって被告各製品の存在や特長を認識した顧客が一定程度存在すると推認することができる。 その余の事情は、被告各製品の特長や性質であり、顧客はこれらの製品の特長や性質も考慮して、被告各製品を購入するか否かを決定するといえるから、これらの事情を被告各製品の売上げに貢献した事情として挙げる ことは相当であり、このような様々な事情が被告各製品の売上げに寄与していることの結果として、本件各発明が被告各製品の売上げに貢献した程度がそれほど高くない旨の判断をしたことも相当であるといえる。 したがって、第1審原告の上記主張は採用することができない。 ⑵ 前記第2の4⑵の主張について 第1審原告は、第1審被告から第1審原告に支払われるべき不当利得返還金に消費税相当額を含めるべきであると主張する。 しかし、補正の上で引用した原判決「事実及び理由」第4の9⑶のとおり、本件の事実関係に照らして検討すると、第1審被告による 支払われるべき不当利得返還金に消費税相当額を含めるべきであると主張する。 しかし、補正の上で引用した原判決「事実及び理由」第4の9⑶のとおり、本件の事実関係に照らして検討すると、第1審被告による本件特許権の侵害が行われた各年度において、第1審原告に消費税相当額の損失が発生したと 認めることはできないから、第1審原告による消費税相当額の不当利得返還請求は認められない。 したがって、第1審原告の上記主張は採用することができない。 3 当審における第1審被告の補充主張に対する判断⑴ 前記第2の5⑴の主張について 第1審被告は、本件各発明のタッチ位置検出センサーは、接触圧力を検知することができるものに限定されるから、被告各製品は本件特許に係る発明の技術的範囲に属しない旨主張する。 しかし、上記主張は原審段階での主張の繰り返しであり、これについては、原判決「事実及び理由」第4の2における判断のとおり、タッチ位置検出セ ンサーは加えられた圧力を検知しない静電誘導式検知手段(静電容量タイプ) を含むものと認められ、第1審被告の主張を検討しても上記判断は左右されない。 したがって、第1審被告の上記主張は採用することができない。 ⑵ 前記第2の5⑵の主張について第1審被告は、本件各発明については、乙8発明を主引用例とした進歩性 欠如があるから、本件特許は無効とされるべきものであると主張する。 しかし、前提事実⑸カ(本判決で補正した部分)のとおり、本件特許については、第1審被告が当事者の一人となっていた別件審決取消訴訟の判決が確定し、審判請求不成立の審決が確定しており、別件審決取消訴訟において、第1審被告は、乙8発明を主引用例とした進歩性欠如の無効の主張をしてい たが、この主張が採用されなかったものであ の判決が確定し、審判請求不成立の審決が確定しており、別件審決取消訴訟において、第1審被告は、乙8発明を主引用例とした進歩性欠如の無効の主張をしてい たが、この主張が採用されなかったものである。 そして、乙8発明を主引用例とした進歩性欠如の無効の主張が認められないことは、原判決「事実及び理由」第4の4の判断のとおりであり、当審における第1審被告の補充主張を検討しても上記判断は左右されない。 したがって、第1審被告の上記主張は採用することができない。 ⑶ 前記第2の5⑶アの主張について第1審被告は、本件における相当な実施料率は、2.65%に●%を乗じた●●●●●%を超えないと主張する。 しかし、①売上高に実施料率を乗じる方法により実施料率を算出していたライセンス契約の15例における実施料率の中央値が2.65%であり、② クイックホイールの平均価格が被告各製品の平均販売価格に占める割合が●%に満たないから、本件における相当な実施料率は2.65%に●%を乗じて算出される率を超えないという第1審被告の主張は、そもそも上記①及び②の各割合が第1審被告の主張するとおりであると認めるに足りない上、①の割合に②の割合を乗じることによって相当な実施料率が算出されるとい うべき根拠があるとも解されないから相当ではない。 したがって、第1審被告の上記主張は採用することができない。 ⑷ 前記第2の5⑷アの主張について第1審被告は、第1審原告が消費税の課税事業者になったとの第1審原告の当審における主張並びに甲62及び63は、時機に後れた攻撃防御方法であるから却下するよう申し立てた。 しかし、これらの主張及び証拠の提出が、第1審原告の故意又は重大な過失により時機に後れて提出されたものであるとは認められないから、 時機に後れた攻撃防御方法であるから却下するよう申し立てた。 しかし、これらの主張及び証拠の提出が、第1審原告の故意又は重大な過失により時機に後れて提出されたものであるとは認められないから、上記申立てを却下する。 その上で、消費税相当額を不当利得返還金に含めるべきとの第1審原告の主張が認められないことは、補正の上で引用した原判決「事実及び理由」第 4の9⑶のとおりである。 4 その他、原審及び当審において当事者が主張する内容を検討しても、当審における上記認定判断(原判決引用部分を含む。)は左右されない。 5 結論以上によれば、第1審原告の請求は、主文第1項⑴の限度で理由があるから この限度で認容し、その余の請求は理由がないからこれを棄却すべきところ、これと異なる原判決は一部不当であり、第1審被告の控訴は一部理由があり、第1審原告の控訴は理由がない。 よって、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 今井弘晃 裁判官水野正則

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る