平成14(わ)2862 贈賄被告事件,収賄被告事件

裁判年月日・裁判所
平成15年8月14日 千葉地方裁判所
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判決文本文6,766 文字)

平成15年8月14日宣告平成14年(わ)第2862号,平成15年(わ)第123号,同第269号判決 主文 被告人Aを懲役2年6月に,同Bを懲役2年にそれぞれ処する。 被告人Bに対し,この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 被告人Aから金4600万円を追徴する。 理由 (罪となるべき事実)被告人Aは,Y市長として,同市の事務を統括掌理するとともに,Y市清掃センター焼却処理施設及び粗大ゴミ処理施設(以下「Y市清掃センター」という。)の運転管理等の業務委託に関し,その発注方法の選択及び発注先業者の選定並びに同委託契約の締結等の職務に従事していたもの,被告人Bは,ごみ焼却施設等の運転管理等を業とする株式会社Cの代表取締役であったものであるが第1 被告人Aは,Y市清掃センターの運転管理等の業務委託に関し,発注方法を随意契約によることとした上,発注先業者としてC社を選定し,同社との間で前記運転管理の業務委託契約を締結したこと等,同社のために有利・便宜な取り計らいを行ったことに対する謝礼及び今後も同様の方法により業務委託契約を継続する等有利・便宜な取り計らいを受けたい趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら 1 平成11年2月4日,前記B及びC社常務取締役であったDから,東京都新宿区a町b番地株式会社E銀行F支店(ただし,同年4月18日同支店廃店前の名称。)から千葉県Y市cd番地のe株式会社G銀行H支店に開設されていたA名義の普通預金口座(以下,前記口座という。)に,現金700万円の振込みを受け 2 同年12月27日,前記B,同D及びC社社長秘書であったIから,東京都新宿区fg丁目h番i に開設されていたA名義の普通預金口座(以下,前記口座という。)に,現金700万円の振込みを受け 2 同年12月27日,前記B,同D及びC社社長秘書であったIから,東京都新宿区fg丁目h番i号株式会社G銀行J支店から前記口座に,現金600万円の振込みを受け 3 同12年2月10日,前記B,同D及び同Iから前記第1の2記載の支店から前記口座に現金300万円の振込みを受け 4 同年3月24日,前記B及び同Dから,東京都中央区j町k丁目l番m号株式会社G銀行K営業部から前記口座に,現金500万円の振込みを受け 5 同年4月7日,前記B,同D及び同Iから,東京都千代田区n町o丁目p番q号株式会社G銀行L支店から前記口座に,現金400万円の振込みを受け 6 同月28日,前記B及び同Iから,前同様に,現金100万円の振込みを受け 7 同年8月8日,前記B及び同Dから,前記第1の4記載の株式会社G銀行K営業部から前記口座に,現金700万円の振込みを受け 8 同13年1月15日,前記Bから,前同様に,現金500万円の振込みを受け 9 同年3月12日,前記Bから,前同様に,現金300万円の振込みを受け同年8月8日,前記B及び同Dから,前同様に,現金500万円の振込みを受けもって,それぞれ被告人Aの前記職務に関して賄賂を収受し第2 被告人Bは,いずれも前記第1の記載と同趣旨のもとに, 1 前記D及び同Iと共謀の上,平成11年12月27日,前記第1の2記載の株式会社G銀行J支店から前記口座に,現金600万円を振り込み 2 前記D及び同Iと共謀の上,同12年2月10日,前同様に現金300万円を振り込み 3 前記Dと共謀の上,同年3月24日,前記第1の4記載の株式会社G銀行K営業部から前記口座に,現金500万円を振り込み 4 前記D 謀の上,同12年2月10日,前同様に現金300万円を振り込み 3 前記Dと共謀の上,同年3月24日,前記第1の4記載の株式会社G銀行K営業部から前記口座に,現金500万円を振り込み 4 前記D及び同Iと共謀の上,同年4月7日,前記第1の5記載の株式会社G銀行L支店から前記口座に,現金400万円を振り込み 5 前記Iと共謀の上,同月28日,前同様に現金100万円を振り込み 6 前記Dと共謀の上,同年8月8日,前記第1の4記載の株式会社G銀行K営業部から前記口座に,現金700万円を振り込み 7 同13年1月15日,前記第1の4記載の株式会社G銀行K営業部から前記口座に,現金500万円を振り込み 8 同年3月12日,前同様に現金300万円を振り込み 9 前記Dと共謀の上,同年8月8日,前同様に現金500万円を振り込みもって,被告人Aの前記職務に関してそれぞれ賄賂を供与したものである。 (証拠の標目)省略(法令の適用)省略(量刑の理由等)本件は,Y市清掃センターの運転管理等の業務を委託されていたC社の代表取締役であった被告人Bが,当時のY市長として同清掃センターの運転管理等の業務委託契約の締結等の職務権限を有していた被告人Aに対し,同清掃センターの運転管理等の業務委託に関し,発注方法を随意契約としてC社を発注先とするなどのC社に有利・便宜な取り計らいを受けたことの謝礼及び将来も同様に有利・便宜な取り計らいを受けたい趣旨のもとに,前後9回にわたって合計3900万円の賄賂を供与した贈賄の事案,被告人Aが被告人Bから上記贈賄に対応して供与された合計3900万円の賄賂を前後9回にわたって収受した収賄とその前に同様の趣旨で収受した700万円の合計4600万円の収賄の事案からなる。 被告人Bは,昭和29年に長野県の高等 対応して供与された合計3900万円の賄賂を前後9回にわたって収受した収賄とその前に同様の趣旨で収受した700万円の合計4600万円の収賄の事案からなる。 被告人Bは,昭和29年に長野県の高等学校を卒業後,冷凍機器の運転管理の業務を経験をした後にほとんど徒手空拳でC社を昭和45年に設立し,都内でビル設備管理業務を営んでいたが,昭和47年ころから地方自治体が清掃工場を大手炉メーカーに建設させたことを契機に非メーカー系の会社としてその試運転や各地方自治体のゴミ処理施設並びに上・下水道施設維持管理業務等に業務を拡大し従業員約2500名を雇用する大会社に発展させるかたわら,複数の関連会社を設立し,千葉県会議員の選挙運動を応援していた平成7年4月ころ,当時Y市長選挙に立候補していた同県県議であった被告人Aの面識を得たものであるが,被告人Aは,同月にY市長に初当選し,同11年4月に同市長に再選されていた。 ところで,各地方自治体のゴミ処理施設については,同施設を建設したプラントメーカーの子会社又は系列会社が自治体の委託を受けてその運転管理にあたることが多く行われており,Y市では,M株式会社が同施設(Y市清掃センター)を建設した経緯から同社の子会社であるN株式会社が同市から業務委託を受けてその運転管理業務を行っていた実情であった。 被告人Aは,Y市長当選後,同市の財政状況の改善を目標として掲げていたが,Y市清掃センターの運転管理業務をN社に随意契約で業務委託しているにもかかわらず漫然と人件費が増額されるなど経費削減の実効をあげていないのではないかとの疑問を持ち,被告人B等を通じて関連情報を得てN社よりC社に委託する方がより低廉に業務委託が可能との感触を得たことから,Y市清掃センターの運転管理業務からN社を外してC社に同業 いのではないかとの疑問を持ち,被告人B等を通じて関連情報を得てN社よりC社に委託する方がより低廉に業務委託が可能との感触を得たことから,Y市清掃センターの運転管理業務からN社を外してC社に同業務を委託しようと考え,同10年度のY市清掃センターの業務委託を同年5月以降は指名競争入札とする決裁をした。そしてこれより前の同10年3月19日,同市役所内で入札に関する現場説明会が実施され,その席上,N社の出席者が最低制限価格の有無について質問したのに対し,Y市の担当者からは最低制限価格はない旨の回答がなされた。同月27日,Y市清掃センターの同年5月から同11年3月までの分の運転管理業務について非メーカー系のC社とN社を含むメーカー系4社の合計5社による指名競争入札が実施されたが,前記の経緯から参加者の間ではN社とC社の一騎打ちと目されていた。その入札の結果は,前年度契約金額の概ね半額程度である8470万円で入札したN社が1番札となったが,執行官は事前に示されていた被告人Aの意向に従い,N社の落札決定を違法に保留して調査を実施した。N社側はこれに応じ応札金額には問題がない旨回答し,同市助役ら担当職員も被告人Aに対し,N社の落札はやむを得ない旨2度にわたり上申するなどしたが,被告人AはN社との契約締結拒否の意向を示したため,N社は,結局,本件入札を口頭で辞退するに至った。その後,被告人Aは,本件を随意契約方式に変更した上,再度,N社を除いた業者間で見積もり合わせを実施させ,その中で最低価格であったC社との間で,Y市清掃センターの焼却・粗大施設運転管理業務委託を約1億1735万円で委託する旨の随意契約を締結した。被告人Aとしては,それまでの交渉で減額に応じていなかったN社が突然前記入札金額に下げたことが不当に廉価ではないかと 粗大施設運転管理業務委託を約1億1735万円で委託する旨の随意契約を締結した。被告人Aとしては,それまでの交渉で減額に応じていなかったN社が突然前記入札金額に下げたことが不当に廉価ではないかとの疑念から不信感を生じた結果C社との契約を選択したものであったと推認され,この選択に関して被告人Bからの働きかけ等は窺えないが,被告人Aのかかる不明朗な行為は批判を免れないところである。加えて,被告人Aは,毎月のY市長の歳費が手取りで月額約60万円程度であるのに,クレジットカードでの買い物や交際の飲食等でおごるなどの浪費を重ね,毎月の支払が200万円以上であったほか,以前の事業失敗の際の借入金や市長選での借入金等で総額4億円以上の借金があったことから,親戚や知人から借財を重ねていて平成10年ころには,クレジット代金の決済等に使用していた銀行口座が貸越可能限度額に達するようになり,親戚や知人からの借財も困難となっていた。その結果,被告人Aは,被告人Bに対し賄賂を要求してこれらの返済金等にあてて資金繰りをしようと決意し,好意を示していた被告人Bに対して当初は借財名下に判示第1の1記載の賄賂を要求した。そして,被告人Bの捜査段階の供述等によれば,被告人Bは,被告人AがC社のために有利・便利な取り計らいを行ったことに対する謝礼及び今後も同様の方法により業務委託契約を継続する等有利・便宜な取り計らいを受けたい趣旨のもと被告人Aに要求されるままに賄賂の供与を繰り返すようになったものと認められる。 (被告人Aの情状)被告人Aは,収入額をはるかに超える額の浪費を繰り返して借金を重ね,その借金返済等の目的で,Y市長としての立場を利用して平成11年2月から同13年8月までの約2年6か月の長期間,合計10回の多数回にわたって,ときには市長室 超える額の浪費を繰り返して借金を重ね,その借金返済等の目的で,Y市長としての立場を利用して平成11年2月から同13年8月までの約2年6か月の長期間,合計10回の多数回にわたって,ときには市長室から電話をかけるなどして執拗に賄賂を要求したもので,1回あたりの要求額も100万円ないし700万円と高額であった。その犯行の動機,態様に酌量の余地は全くない。被告人Aの収賄額は合計4600万円と極めて多額であり,今日の経済状況下で額に汗して身を粉にして働いている善良な一般国民からすると到底一朝一夕に獲得できる金額ではない。市長である被告人Aはこのことに深く思いを致すべきであった。しかるに,被告人Aは,公職にある者としての自覚と責任感を全く欠如し,本件各犯行に及んでいる。これは,常軌を逸した誠に許し難い犯行である。また被告人Aは,事件発覚後,被告人Bに対しすべて借財であったとか被告人Aの秘書がしたことである旨の口裏合わせを指示するなどして証拠隠滅を図っている。その背景には,被告人Aは,秘書に命じて資金の受け皿となる会社を設立し,この会社を通じて被告人Bから毎月100万円前後の資金援助を受けていたことが関係するとうかがわれるほか,被告人Bが贈賄の要求にC社の利益が少ないとして難色を示した折りには,前記契約単価の上乗せで解決を図れば良い旨の回答をしていたと認められ,契約単価等は毎年増大の兆しを示していたのであって,地方自治体の首長とその委託先業者との慢性的癒着の構造が背後に存在していた側面が否定できず,このことも憂慮されるものである。 このように,被告人Aの本件各犯行は,市民の公正な市政に対する信頼を大きく損ね,国民や市民のため日々真摯に職務に精励している多くの公務員の職務の公正,適正,廉潔性に対する社会的信用を著しく害しか このように,被告人Aの本件各犯行は,市民の公正な市政に対する信頼を大きく損ね,国民や市民のため日々真摯に職務に精励している多くの公務員の職務の公正,適正,廉潔性に対する社会的信用を著しく害しかねず,その刑事責任は重大である。そうすると,被告人Aが県議会議員を務めた後,本件が発覚した2期目の途中までY市長を務め,総合病院誘致に尽力してその道筋をつけるなど地域の発展にそれなりに貢献したこと,市長として同市の行財政改革に取り組み,同市の経常収支比率の改善などに一応の成果をあげ有為な人材であると評価される一面があったこと,当初犯行を否認していたものの,現在は犯行を認めて反省の弁を述べていること,少年時の交通罰金前科1犯のほかに前科がないこと,本件発覚後,Y市長を辞職したこと,妻や元の後援会会長が公判廷に出頭して寛大な処罰を訴えているほかY市民の中にも寛大な処分を望む嘆願の声が支持者から上がっていること,扶養すべき家族がいること等被告人Aのため酌むべき事情を十分勘案しても,市民に尽くすという立候補当初の初心を忘れて巨額な賄賂を受けてこれを乱費して贅沢な生活に耽って有権者等を裏切り,神聖な市長職を汚した本件犯情に照らすと,本件が,刑の執行を猶予すべき事案とは認められず,主文の刑期を相当と判断したものである。 (被告人Bの情状)被告人Bは,平成11年12月から同13年8月までの約1年8か月以上にわたり,合計9回の多数回にわたって,当時のY市長であった被告人Aに対して賄賂を供与したものであり,その合計額は3900万円と極めて多額であるほか,賄賂の供与に当たっては,被告人A本人の名義で振込み依頼を行い被告人Bの名前が出ないようにしている。私利私欲に基づく犯行の動機に酌むべきものは無く,その犯行の態様も巧妙で悪質である。被告人 ほか,賄賂の供与に当たっては,被告人A本人の名義で振込み依頼を行い被告人Bの名前が出ないようにしている。私利私欲に基づく犯行の動機に酌むべきものは無く,その犯行の態様も巧妙で悪質である。被告人Bの本件各犯行は,公務の公正,適正,廉潔性に対する市民や国民の信頼を大きく損ねたもので,その刑責は重大である。他方,被告人Bは,C社に対してY市長として業務の委託,継続等を決定する権限を有していた被告人Aから賄賂を一方的に要求されてこれに応じた経緯があり,犯行への関与は積極的ではなかったこと,犯行を素直に認めて反省の態度を示していること,前科がないこと,C社の代表取締役や関連会社の役員をすべて辞任して自らの生き甲斐として精勤して来た同社らへの影響力を失うなど,社会的制裁を受けていること,幼なじみの友人が公判廷に出頭して更生に助力する旨確約していること,法律扶助協会に対し1000万円の高額の贖罪寄付をしていることやC社を設立し多数の従業員を雇用するなどこれまで相当程度社会に貢献していること,高齢であることなどの被告人Bのため酌むべき事情も認められる。 以上の諸情状を総合考慮すると,被告人Bに対しては,主文掲記の刑を科した上,今回に限りその刑の執行を猶予し,社会内で更生の道を歩ませることが相当であると判断した。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑被告人Aにつき懲役3年6月及び金4600万円の追徴,被告人Bにつき懲役2年6月)平成15年8月14日千葉地方裁判所刑事第1部裁判長裁判官大谷吉史裁判官岡野典章裁判官広瀬達人 章 裁判官 広瀬達人

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