平成11(行コ)197 土地価格に対する審査決定処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成8年(行ウ)第268号)

裁判年月日・裁判所
平成12年4月19日 東京高等裁判所 租税
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判決文本文14,276 文字)

主文 一原判決を次のとおり変更する。 二控訴人が、被控訴人に対し、平成八年八月二八日付けでした原判決別紙二物件目録記載の土地について固定資産課税台帳に登録された平成六年度の価格に係る審査の申出に対する決定のうち、同土地の価格が一七億八〇九四万〇七〇〇円を超える部分の審査の申出を棄却した部分を取り消す。 三被控訴人のその余の請求を棄却する。 四訴訟費用は、第一、二審を通じてこれを二〇分し、その一を控訴人の、その余を被控訴人の各負担とする。 事実及び理由 第一控訴の趣旨一原判決中控訴人の敗訴部分を取り消す。 二被控訴人の請求を棄却する。 三訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。 第二事案の概要本件事案の概要は、一のとおり原判決を補正し、当審における控訴人の主張を二のとおり付加するほか、原判決「事実及び理由」の「第二事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。 一原判決三頁八行目の末尾に続いて改行し「原審は、本件決定のうち、本件土地の価格が一四億五〇一九万四五七〇円を超える部分について審査の申出を棄却した部分を取り消し、被控訴人のその余の請求を棄却したところ、控訴人が右敗訴部分の取消しを求めたので、当審における審判の対象は右取消しに係る部分のみである。」を、同四頁一行目の「土地」の次に「に」を、同一一行目の「法附則一七」の次に「条」をそれぞれ加え、同二三頁一二行目の「なならない」を「はならない」に、同三一頁五行目の「はりません」を「はありません」に、同三六頁三行目の「2」を「3」に、同三七頁八行目の「次のとり」を「次のとおり」にそれぞれ訂正し、同四三頁一三行目の「地価変動率」の次の「率」を削除し、同四八頁六行目の「ことより」を「ことなどにより」に、同七行目の「右の」を「右に」にそれぞ 行目の「次のとり」を「次のとおり」にそれぞれ訂正し、同四三頁一三行目の「地価変動率」の次の「率」を削除し、同四八頁六行目の「ことより」を「ことなどにより」に、同七行目の「右の」を「右に」にそれぞれ訂正する。 二当審における控訴人の主張 1 「適正な時価」の算定基準日(一) 法三四九条一項は、「登録価格」を基準年度に係る賦課期日における価格と規定しているのではなく、あくまで「『課税標準』を基準年度に係る賦課期日における価格」と規定しており、また、「固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする」(法三五九条)、「価格」は「適正な時価をいう」(法三四一条五号)と規定しているにすぎない。そうすると、法は、課税標準が平成六年一月一日の適正な時価であると規定するにとどまるから、審理の対象は、あくまで課税標準が賦課期日の価格として適正か否かに限定されるというべきである。 また、法三四九条一項は、課税標準を、「基準年度に係る賦課期日における価格で『土地課税台帳に登録されたもの』」と規定しているのであり、これは、法が各市町村長に対し、土地課税台帳に価格を登録するに当たり種々の手続を履践するように求めていることから、課税標準を、単に賦課期日における価格ではなく、法の要求する種々の手続を履践した上で賦課期日に課税台帳に登録することができる価格とする趣旨と解される。したがって、「適正な時価」を求めるに当たり、賦課期日を算定基準日とする必要はなく、種々の手続を履践して賦課期日に課税台帳に登録可能な時点を算定基準日とすることで足りることになるから、平成六年度の評価替えにおける価格算定基準日を平成四年七月一日としたことは、法が当然予定しているものということができる。 (二) 仮に、適正な時価の算定基準日を基準年度の賦課期日とすると、以下のと 平成六年度の評価替えにおける価格算定基準日を平成四年七月一日としたことは、法が当然予定しているものということができる。 (二) 仮に、適正な時価の算定基準日を基準年度の賦課期日とすると、以下のとおり、法の規定自体が矛盾を来すことになりかねない。したがって、法は、登録価格の算定基準日を賦課期日と規定してはおらず、賦課期日から評価事務に要する一定期間を遡った過去の時点に求めることを許容していると解すべきである。 (1) 法は、一方で、市町村長に対し、固定資産の価格を二月末日までに決定しなければならないとしており(法四一〇条)、この規定に従って二か月の期間を遵守するならば、その間に①標準宅地の鑑定評価を行い、②これに基づいて当該標準宅地に沿接する主要な街路に路線価を付設し、③これに比準して主要な街路以外の路線価を付設した上で、④画地計算法を適用して各筆の坪点数を算出し価格を決定し、⑤基準宅地の適正な時価を調整する手続を経ることになるが、このような手続を二か月以内に行うことは実務上到底不可能である。 (2) 賦課期日時点の価格に基づき課税し、他方、固定資産の価格を同年二月末日までに決定し登録しなければならないとすると、いったん課税を行った後、賦課期日時点の時価を再評価して価格の修正を行い、その増減額について賦課決定をしなければならないことになるが、膨大な数の納税者に対し、課税・徴収事務を二度行うことを法が予定していないことは明らかである。 (3) 固定資産税の課税が適正に行われるためには、全国の市町村間で実質面のみならず手続面でも均衡が取れていることが必要であるから、前提となる価格調査基準日等について一致させなければならない。そうすると、法は、賦課期日から評価事務に要する一定期間を遡った過去の時点の価格をして賦課期日における価格とすることを予定 必要であるから、前提となる価格調査基準日等について一致させなければならない。そうすると、法は、賦課期日から評価事務に要する一定期間を遡った過去の時点の価格をして賦課期日における価格とすることを予定していると解すべきである。 (4) 地価公示価格の公表は、毎年三月下旬に行われており、固定資産の価格を決定すべき二月末日の時点では当該年の地価公示価格は公表されていないから、基準年度の初日の属する年の地価公示価格を基準として評価することは、制度上(価格決定時期、縦覧時期等)も実務上も困難であり、法の予定するところではない。 (三) なお、あくまでも賦課期日時点の価格に基づき課税するということであれば、地価が減少傾向にある場合には、あらかじめ賦課期日までの地価の下落をできる限り標準宅地等の価格に反映させるよう配慮しなければならないことになるであろう。しかし、宅地の鑑定評価に当たっては、不動産鑑定士が「鑑定評価基準」によって評価するとされているところ、右基準においては、一般的要因(自然的要因・社会的要因・経済的要因・行政的要因)、地域要因(宅地地域・農地地域・林地地域)、個別的要因の三つの価格形成要因を考慮して評価するとされているだけであり、将来の価格変動は鑑定評価の要因とされていないし、将来時点の鑑定評価は、対象不動産の確定、価格形成要因の把握、分析及び最有効使用の判定についてすべて予測しなければならない上、収集する資料についても鑑定評価を行う時点までのものに限られ、極めて不確実にならざるを得ないことから、このような鑑定評価は行うべきではないとされている。したがって、将来の価格変動を考慮するのは相当でない。 また、不動産鑑定評価によらず他の方法であらかじめ想定される価格下落率を折り込むことも不可能である。なぜなら、不動産鑑定士による鑑定ですら行 。したがって、将来の価格変動を考慮するのは相当でない。 また、不動産鑑定評価によらず他の方法であらかじめ想定される価格下落率を折り込むことも不可能である。なぜなら、不動産鑑定士による鑑定ですら行うべきでないとされる将来予測を、専門家でない者が適正・妥当に行うことは不可能であるし、固定資産税の課税が適正に行われるためには、固定資産の評価が適正で、かつ、全国的に各市町村相互間で均衡がとれたものであることが必要であるところ、特定の地域のみ特別にあらかじめ想定される価格下落率を折り込んで評価することは右の均衡を失するからである。 (四) 以上のように、「適正な時価」の算定基準日は、賦課期日から評価事務に要する一定期間を遡った過去の時点に求めれば足りると解するのが相当である。 2 固定資産税における「適正な時価」の意義仮に、「適正な時価」が賦課期日である平成六年一月一日時点の適正な時価であることを要するとしても、原判決には、次に述べるような違法が存するから、控訴人の敗訴部分は速やかに取り消されるべきである。 原判決は、平成四年七月一日を価格調査基準日とし、平成五年一月一日までの時点修正をした価格に、平成五年一月一日から平成六年一月一日までの時点修正率(ただし、時点修正率は、平成四年七月一日から平成五年一月一日までの時点修正率と同じである。)を乗じ、その価格の七割程度を登録価格とすべきであるとしているから、平成六年一月一日時点の客観的時価の七割程度を「適正な時価」と判断するようである。 しかし、このような原判決の判断枠組は、固定資産税における「適正な時価」(法三四一条五号)の理解を誤るものである。すなわち、固定資産税は、固定資産課税台帳に登録された固定資産の価格を課税標準とすることを原則とし(法三四九条一項、三四九条の二)、固定資産の所有 な時価」(法三四一条五号)の理解を誤るものである。すなわち、固定資産税は、固定資産課税台帳に登録された固定資産の価格を課税標準とすることを原則とし(法三四九条一項、三四九条の二)、固定資産の所有者(質権又は一〇〇年より長い存続期間の定めのある地上権の目的である土地については、その質権者又は地上権者)に対し(法三四三条一項)、資産の所有という事実に着目して課税される財産税であって、資産から生ずる現実の利益に着目して課税される収益税とは異なる。このような固定資産税の性質からすると、その課税標準又はその算定基礎となる土地の「適正な時価」とは、正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち、純粋な客観的交換価値(客観的時価)をいうものと解すべきである。してみると、客観的交換価値の一定割合(七割)をもって「適正な時価」とする原判決の判断枠組は失当である。 3 本件土地の固定資産税評価額が「適正な時価」であること(一) 平成五年一月一日から平成六年一月一日までの地価の下落率を求めるに当たっては、正常な価格たる地価公示価格及び東京都地価調査価格を参考に算出するのが適当なところ、本件土地を中心とした継続調査の対象とされた地価公示地(商業地)は、本件土地を中心とした半径一・五キロメートル内に八地点、半径一キロメートル内に五地点存する。これを前提に地価の下落率を検討すると、港区内の地価公示地(商業地)の公示価格のそれはマイナス三三パーセントであり、本件土地を中心とした半径一キロメートル内の地価公示地(商業地)の公示価格のそれはマイナス三三・五パーセントであり、本件土地を中心とした半径一・五キロメートル内の地価公示地(商業地)の公示価格のそれはマイナス三三・三パーセントである。 また、本件標準宅地の価格を鑑定するに当たり規準とされた東京都基準地( であり、本件土地を中心とした半径一・五キロメートル内の地価公示地(商業地)の公示価格のそれはマイナス三三・三パーセントである。 また、本件標準宅地の価格を鑑定するに当たり規準とされた東京都基準地(港五―一九)の東京都地価調査価格の時点修正率を検討すると、平成四年七月一日の価格は一二五〇万円、平成五年七月一日のそれは八七二万円、平成六年七月一日のそれは五四〇万円であることから、平成五年一月一日の推定価格一〇六一万円と平成六年一月一日の推定価格七〇六万円を対比した地価下落率は、マイナス三三・五パーセントになる。 (二) 既に述べたように、不動産鑑定理論に基づいて求められた不動産鑑定評価額や公的価格について、評価額に一定の幅が存することは経験則上明らかであるから、平成五年一月一日から平成六年一月一日までの地価変動率がマイナス三〇パーセントを超えるとしても、直ちに違法になるわけではない。すなわち、適正な価格とは、ある一点を示す固定的なものではなく、ある幅を持った価格帯に存する価格を指すと解すべきである。このことは、①実際の土地の取引を見ても、売り手と買い手の力関係によって適正と思われる価格水準を多少上下して取引がされるのが通常であり、特別の事情がない限り、これらの取引価格はいずれも適正なものと考えられること、②同一土地を複数の不動産鑑定士が鑑定評価した場合にも、全く同一の価格が求められるのは稀であり、鑑定評価額に一〇パーセント程度前後の開差が存する場合も少なくないが、これらの鑑定評価額は、資料の選択、評価手法の適用等に誤りがなければいずれも適正な価格であることからも裏付けられる。このように、「適正な時価」は、正常な条件の下における取引価格であるが、それは一〇パーセントから二〇パーセント程度の幅を持った価格というべきであるから、前記(一)の三 であることからも裏付けられる。このように、「適正な時価」は、正常な条件の下における取引価格であるが、それは一〇パーセントから二〇パーセント程度の幅を持った価格というべきであるから、前記(一)の三パーセント程度の幅は、「適正な時価」の許容範囲にあるということができる。 (三) 仮に、本件標準宅地の平成五年一月一日から平成六年一月一日までの地価下落率が三三・五パーセントであり、三〇パーセントを超える部分が違法であるとしても、平成六年一月一日における本件標準宅地の主要な街路の一平方メートルの価格は、平成四年七月一日時点の不動産価格八九九万円に、平成五年一月一日までの時点修正率マイナス二二・七パーセント及びその後の平成六年一月一日までの時点修正率マイナス三三・五パーセントを乗じて算定することになる。したがって、少なくとも、本件土地の固定資産税評価額である一八億六九九八万七七三〇円と対比し、原判決別表1の計算方法により算定された本件土地の価格を超える部分のみが取り消されるべきである。 4 処分権主義違反被控訴人は、原審において、手続的違法の場合は格別、実体的違法の場合については一四億五九〇〇万円を限度として取消しを求めていたのであるから、一四億五〇一九万四五七〇円を超える部分の審査の申出を棄却した処分を取り消した原判決は、処分権主義に違反することが明らかである。 第三当裁判所の判断当裁判所は、本件全資料を検討した結果、控訴人が平成八年八月二八日付けでした本件土地の固定資産課税台帳に登録された平成六年度の価格に係る審査申出を棄却した本件決定のうち、一七億八〇九四万〇七〇〇円を超える部分を取り消すのが相当であると判断する。その理由は、以下のとおり加除訂正するほか、原判決「事実及び理由」の「第三当裁判所の判断」に説示のとおりであるから、これ 、一七億八〇九四万〇七〇〇円を超える部分を取り消すのが相当であると判断する。その理由は、以下のとおり加除訂正するほか、原判決「事実及び理由」の「第三当裁判所の判断」に説示のとおりであるから、これを引用する。 一本件訴訟が訴えの利益を欠く不適法なものであるか否か(争点1)について原判決五一頁二行目の冒頭から同五五頁一一行目末尾までを次のとおり訂正する。 「 しかしながら、法は、登録価格の変動が税額の変動をもたらすことを本則とした上で、固定資産課税台帳に登録された価格に不服がある場合に審査の申出をすることを認め(法四三二条)、右申出に対する決定については、課税処分に対する不服とは区別して、審査決定に対する取消訴訟を提起すべき旨を規定しているのであるから、法四三四条は、税額の変動とは別個の観点から、審査委員会の評価に関する決定に対する取消しの訴えの利益を肯定していると解すべきである。 また、登録価格は、固定資産税又は都市計画税のみならず、不動産取得税(法七三条の二一第一項)及び登録免許税(登録免許税法附則七条)の課税標準の算定基礎としても機能しているが、このことは、右各地方税及び国税の税額とは別に、固定資産の評価そのものについて、不服審査及び訴訟を経、これを確定させる必要があることを意味する(最高裁第一小法廷平成六年四月二一日判決・判例時報一四九九号五九頁参照)。 さらに、被控訴人は、本件において、控訴人における審査手続の適否及び固定資産の登録価格の当否を争って控訴人がした本件決定全部の取消しを求めているものであり、手続的違法の主張が認められて被控訴人の請求が認容されれば、控訴人はあらためて審査をやり直すことになるし、また、右の登録価格の評価が違法であるとして被控訴人の請求が認容される場合には、その納付すべき固定資産税等の額に変動 れて被控訴人の請求が認容されれば、控訴人はあらためて審査をやり直すことになるし、また、右の登録価格の評価が違法であるとして被控訴人の請求が認容される場合には、その納付すべき固定資産税等の額に変動が生じる可能性もある。すなわち、被控訴人の主張中には、本件土地の平成六年一月一日時点の時価は、A鑑定書による本件土地の同時点の価格一四億五九〇〇万円とするのが相当であるとする部分があり、それによれば、納付すべき固定資産税等の額に変動はないことになるが、被控訴人の主張全体を見れば、被控訴人の主張する評価額一四億五九〇〇万円というのは、適正な時価がそれを超えることはないという一応の評価額の意味でしかなく、その適正な固定資産評価額がそれを下回る場合に、右の評価額で満足するという趣旨のものではないと解される。そうすると、本件においては、右の評価額の範囲内でしか本件決定を取り消すことができないということにはならないから(これによれば、原判決は処分権主義に違反するとの控訴人の当審における主張{前記第二、二4}が失当であることは明らかである。)、本判決いかんによっては固定資産税等の額に変動が生ずる可能性もあることになる。 以上のように、被控訴人は、本件訴訟につき訴えの利益を有するというべきであるから、控訴人の本案前の主張は失当である。」二本件審査手続に本件決定の取消事由となるべき瑕疵があるか否か(争点2)について原判決五九頁一一行目から一二行目にかけての「原告らら」を「被控訴人ら」に、同六〇頁四行目の「原告らの」から同七行目の「被告は、」までを「控訴人としては、都知事が被控訴人らの右主張に対し具体的な反論をするしないにかかわらず、」に、同六一頁二行目の「のであって、これを覆し、」から同四行目の「主張は」までを「のである。したがって、被控訴人の右の主 ては、都知事が被控訴人らの右主張に対し具体的な反論をするしないにかかわらず、」に、同六一頁二行目の「のであって、これを覆し、」から同四行目の「主張は」までを「のである。したがって、被控訴人の右の主張も」にそれぞれ訂正する。 三固定資産税の課税標準となるべき土地の価格の評価について原判決六一頁九行目の「使用収益される状態における」を、同一〇行目から一一行目にかけての「使用収益される」を、同六二頁一行目から二行目にかけての「使用収益するために土地を取得するものとして、」を、同三行目の「使用収益するために土地を取得することを前提とした場合の」を、同五行目の「右の意味での」をそれぞれ削除し、同六四頁一〇行目の「弁論の全趣旨」の前に「証拠(乙一四、二〇)及び」を加え、同六六頁八行目から九行目にかけての「使用収益するために土地を取得することを前提とした場合の」を削除し、同六七頁一行目から二行目にかけての「幅で誤差が生ずる」を、同三行目の「誤差が生ずる」及び同九行目の「幅で許容すべき誤差が生ずる」をいずれも「幅がある」に、同一一行目の「安全性」を「安定性」にそれぞれ訂正する。 四都知事が本件標準宅地の評価に当たり時点修正通知に従ってした価格調査基準日の設定、時点修正通知が評価方法として違法かどうか、違法とした場合その評価方法はいかにあるべきか(争点3)について原判決六九頁一行目冒頭から同七五頁二行目末尾までを以下のとおり訂正する。 「1 法三四九条一項は、基準年度に係る賦課期日に所在する土地に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準は、当該土地の基準年度に係る賦課期日における価格で土地課税台帳又は土地補充課税台帳に登録されたものとすると規定し、法三四一条五号は、固定資産税に関する「価格」という用語の意義は、「適正な時価をいう」と規定してい 準年度に係る賦課期日における価格で土地課税台帳又は土地補充課税台帳に登録されたものとすると規定し、法三四一条五号は、固定資産税に関する「価格」という用語の意義は、「適正な時価をいう」と規定していることからすると、法が予定している登録価格は、基準年度に係る賦課期日(本件の場合は平成六年一月一日)における適正な時価であると解すべきであるから、この限りにおいては被控訴人の主張は相当である。 これに対し、控訴人は、適正な時価の算定基準日は、賦課期日から評価事務に要する一定期間を遡った過去の時点に求めれば足りると主張するが、法三四九条及び三四一条五号の文言に照らすと、当該土地につき、基準年度に係る賦課期日における価格、すなわち、適正な時価を土地課税台帳に登録し、これを固定資産税の課税標準とするのが法の趣旨であり、賦課期日以外の特定の日の価格を適正な時価とみなすことを法は許容していないことは明らかであるから、右の主張は採用することはできない。 2 もっとも、法は、市町村長に対し、固定資産の価格等を毎年二月末日までに決定しなければならないとしているから(法四一〇条)、基準年度の初めに至って当該基準年度に係る賦課期日の土地の価格の鑑定を行い、適正な時価を算定してそれを土地課税台帳に登録しなければならないとするならば、わずか二か月間に、標準宅地等の鑑定評価を行い、これに基づいて当該標準宅地に沿接する主要な街路等に路線価を付設し、画地計算法を適用して各筆の坪点数を算出するなどし、膨大な量の土地の価格を決定しなければならないことになるが、それが実務上不可能を強いることになることは明らかである。したがって、法は、賦課期日から評価事務に要する相当な期間を遡った時点を、価格調査基準日(乙一四、一五、一八、二〇、二一)とし、右基準日において調査された当該土地の価 ることになることは明らかである。したがって、法は、賦課期日から評価事務に要する相当な期間を遡った時点を、価格調査基準日(乙一四、一五、一八、二〇、二一)とし、右基準日において調査された当該土地の価格を一つの資料にして賦課期日における価格を算定することまで禁止するものではないと解すべきである。しかし、その場合でも、価格調査基準日の価格をそのまま賦課期日における適正な時価とするのではなく、右の価格を基礎とし、賦課期日までの地価の動向等諸般の事情を総合して将来の地価の下落率等を予測し、基準年度に係る賦課期日における適正な時価を算定しなければならないものであり、評価時点(本件でいえば平成四年七月一日)と賦課期日(本件でいえば平成六年一月一日)との間に地価の下落傾向がある場合には、その点を配慮し、地価の下落率を予測して算定しなければならないことは、法が賦課期日における適正な時価をもって課税標準としている以上、当然のことというべきである。 3 これに対し、控訴人は、不動産鑑定評価基準によれば、不動産の鑑定評価においては将来の価格変動を鑑定評価の要因とすることはできないとされている、将来時点の鑑定評価は極めて不確実にならざるを得ないから将来の価格変動を考慮するのは相当でない、不動産鑑定評価によらず他の方法であらかじめ想定される価格下落率を折り込むことも不可能であると主張する。 しかしながら、本件で問題になっているのは、不動産の鑑定評価がいかにあるべきかという問題ではなく、固定資産税の課税標準となる土地の価格を決定する場合において、土地の価格が下落傾向にあるときに、法が固定資産税の課税標準となる土地の価格を基準年度の賦課期日における土地の適正な時価と定めていることと、実務上右の賦課期日から価格評定事務に要する相当期間を遡った時点で土地の価格を評価し ときに、法が固定資産税の課税標準となる土地の価格を基準年度の賦課期日における土地の適正な時価と定めていることと、実務上右の賦課期日から価格評定事務に要する相当期間を遡った時点で土地の価格を評価しなければならないという要請をどのように調和させるかということであるから、控訴人が指摘する不動産鑑定評価基準の定めを援用するのは相当でない。確かに、ある時点における不動産の価格の鑑定において、将来の価格変動を考慮するのは困難であるという控訴人の主張を全面的に否定するものではないが、評価時点において相当期間地価の下落傾向が続きそれが将来にわたっても続くことが予測される場合に、適正に行われた価格調査基準日における不動産鑑定評価を前提に、将来の基準年度に係る賦課期日における適正な時価を算定することは決して不可能ではない。したがって、賦課期日における適正な価格が、価格調査基準日の鑑定評価額を下回ることが見込まれるにもかかわらず、将来の予測を織り込まないまま放置することは許されず、可能な限り地価の下落を価格に反映させることを要すると解すべきであるから、控訴人の右の主張を採用することはできない。 4 以上のように、適正な時価は、賦課期日である平成六年一月一日における価格を意味するものであるが、評価基準を適用して評価するに際し、価格調査基準日の鑑定評価額を基礎として将来の地価の下落を価格に反映させるについて、将来の地価の下落率等を予測することには困難さが伴うことから、客観的時価を超えるという事態を避けるため、あらかじめ減額した価格をもって標準宅地の適正な時価と扱うことは、課税処分の謙抑性の観点から許容されると解される。この観点からすれば、評価基準等を適用するに際し、個別評価額の一定割合を標準宅地の適正な時価とみなすことは、評価基準等に内在する評価誤差の是正方法 は、課税処分の謙抑性の観点から許容されると解される。この観点からすれば、評価基準等を適用するに際し、個別評価額の一定割合を標準宅地の適正な時価とみなすことは、評価基準等に内在する評価誤差の是正方法として合理性を有するということができるところ、かかる趣旨において、評価基準の取扱いに関する依命通達を改正した七割評価通達は、結果的に右の控え目な算定の役割を果たしており、合理的なものというべきである。すなわち、七割評価通達は、土地基本法一六条の趣旨を踏まえて地価公示価格等の公的土地評価の均衡化、適正化を目指すものであって、賦課期日までの時点修正を直接の目的とするものではないが、評価基準の適用においては、七割評価という修正を加えられた標準宅地の価格が賦課期日における「適正な時価」とされているのであるから、標準宅地の価格の適否は、右修正を加えられた価格が賦課期日における客観的時価を超えないものであるか否かによって判断すべきことになる。したがって、七割評価による修正を経た登録価格が、賦課期日の価格(客観的時価)を超えていない限り違法ではないと解すべきであるが、逆に、賦課期日の価格(客観的時価)を超えているときは、右の価格を超える部分は違法といわざるを得ないから、本件決定はその限度で取消しを免れないことになる。 五都知事が決定した本件土地の登録価格が賦課期日である平成六年一月一日時点の適正な時価を上回るものであって違法かどうか、違法であるとした場合に固定資産評価額をどのように決定すべきか否か(争点4)について原判決七五頁一一行目の「普通商業地区」を「普通商業地域」に、同七八頁九行目の「地点修正率」を「時点修正率」にそれぞれ訂正し、同八〇頁三行目の「しかして、」以下を改行した上、同八六頁七行目末尾までを以下のとおり訂正する。 「(三)このように、都 商業地域」に、同七八頁九行目の「地点修正率」を「時点修正率」にそれぞれ訂正し、同八〇頁三行目の「しかして、」以下を改行した上、同八六頁七行目末尾までを以下のとおり訂正する。 「(三)このように、都知事が、平成四年七月一日を価格時点とする本件鑑定に基づく本件標準宅地の所在する地点における価格を八九九万円とし、これに平成五年一月一日までの時点修正率をマイナス二二・七パーセントとして、同日の本件標準宅地の所在する地点における本件標準宅地の価格を算定したことは相当であるが、同日から平成六年一月一日までの地価下落率がマイナス三〇パーセントを上回る場合は、七割評価通達によって算定した登録価格が、賦課期日における本件標準宅地の適正な時価を上回ってしまうことになる。 そこで検討するに、証拠(乙一一、一二の1、2)によれば、港区内の地価公示地(商業地)の公示価格の平成五年一月一日から平成六年一月一日までの平均下落率はマイナス三三パーセントであること、本件土地を中心とした半径一キロメートル内の地価公示地(商業地)の公示価格のそれはマイナス三三・五パーセントであること、本件土地を中心とした半径一・五メートル内の地価公示地(商業地)の公示価格のそれはマイナス三三・三パーセントであることが認められる。また、証拠(乙一三の1ないし3)によれば、本件標準宅地の価格を算定するにつき規準とされた東京都基準地(港五―一九)の東京都地価調査価格は、平成四年七月一日が一二五〇万円、平成五年七月一日が八七二万円、平成六年七月一日が五四〇万円であること、それぞれの価格の中間値から平成五年一月一日と平成六年一月一日の価格を推定すると、平成五年一月一日が一〇六一万円、平成六年一月一日が七〇六万円になり、これを対比すると、その間の地価下落率はマイナス三三・五パーセントになることが認 年一月一日と平成六年一月一日の価格を推定すると、平成五年一月一日が一〇六一万円、平成六年一月一日が七〇六万円になり、これを対比すると、その間の地価下落率はマイナス三三・五パーセントになることが認められる。 本件土地との近接性、類似性からすると、半径一キロメートル内の地価公示地(商業地)の公示価格の平成五年一月一日から平成六年一月一日までの地価下落率三三・五パーセントが、最も本件土地の同時期の地価下落率を正確に反映すると考えられるところ、本件標準宅地の価格を算定するにつき規準とされた東京都基準地(港五―一九)の東京都地価調査価格から推定した同時期の地価下落率も同じく三三・五パーセントであることからすると、右の地価下落率の信用性は極めて高いというべきである。そして、平成五年一月一日から平成六年一月一日までの地価下落率が三〇パーセント以内であることを裏付ける資料は提出されておらず、右の間の地価下落率が三三・五パーセントであることを覆すに足る証拠もない本件においては、本件標準宅地につき、右の期間内に三三・五パーセントの割合の地価の下落があったと推認するのが相当である。 そうすると、本件標準宅地の平成六年一月一日時点の一平方メートル当たりの価格は、平成四年七月一日時点の価格八九九万円に、平成五年一月一日までのマイナス二二・七パーセントの時点修正を行い、さらに、平成六年一月一日までのマイナス三三・五パーセントの時点修正を行った結果、四六二万円(一万円未満切捨て)となる。 (四) 以上の認定を踏まえ、評価基準に従い、本件土地の平成六年度の賦課期日である平成六年一月一日時点の価格を求めると、別表3記載のとおり、一七億八〇九四万〇七〇〇円となる。 2 控訴人の反論これに対し、控訴人は、不動産鑑定理論に基づいて求められた不動産鑑定評価額や公的価格 平成六年一月一日時点の価格を求めると、別表3記載のとおり、一七億八〇九四万〇七〇〇円となる。 2 控訴人の反論これに対し、控訴人は、不動産鑑定理論に基づいて求められた不動産鑑定評価額や公的価格について、評価額に一定の幅が存することは経験則上明らかであるから、平成五年一月一日から平成六年一月一日までの地価下落率がマイナス三〇パーセントを超えたとしても、直ちに違法になるわけではなく、適正な時価とは、ある一点を示す固定的なものではなく、ある幅を持った価格帯に存する価格(正常な条件の下における取引価格)であり、それは一〇パーセントから二〇パーセント程度の幅を持った価格というべきであるから、三・五パーセント程度の幅は「適正な時価」の許容範囲にあると主張する。 しかし、法三四一条五号の「適正な時価」とは、正常な条件の下に成立する土地の取引価格であって、それは理論上一義的なものと解すべきであるから、「適正な時価」が、一〇パーセントから二〇パーセントの幅を持った価格帯に存する価格であると解することは相当でない。特に、ここでいう「適正な時価」とは、固定資産税を賦課する前提として認定された不動産の客観的な価格を意味し、これに基づき固定資産税等の額が決定され、賦課されるのであるから、課税処分の謙抑性からしても、正当な手法により算定された客観的価格を超える額である以上、それを適正な時価の範囲内にあると解することはできないといわなければならない。したがって、控訴人の右の主張も採用することはできない。 3 まとめ以上のように、本件土地の平成六年一月一日時点の固定資産税の課税標準となるべき価格は、一七億八〇九四万〇七〇〇円とするのが相当であるから、本件土地の登録価格のうちその価格が右金額を超える部分は違法であり、被控訴人の本訴請求は、本件決定のうち右金額 資産税の課税標準となるべき価格は、一七億八〇九四万〇七〇〇円とするのが相当であるから、本件土地の登録価格のうちその価格が右金額を超える部分は違法であり、被控訴人の本訴請求は、本件決定のうち右金額を超える部分の取消しを求める限度で理由があるが、その余は失当として棄却すべきである。」六結論よって、右と一部異なる原判決を右のとおり変更することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六七条二項、六四条を適用して、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第九民事部裁判長裁判官塩崎勤裁判官小林正裁判官萩原秀紀

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