主文 被告人を懲役9年に処する。 未決勾留日数中170日をその刑に算入する。 押収してある棍棒1本(平成14年押第60号の1)及び刈込鋏の片刃1本(同押号の2)を没収する。 理由 (犯行に至る経緯)被告人は,趣味のカラオケなどを通じ,かねてA(以下「A」という)と付,。 ,,,き合いがあったものであるがたびたびAに寸借を申し込まれ自身の性格として人の頼みを断り切れず,金銭管理の点においてだらしない面があることなどから,その度に1000円ないし10万円程度の金を貸し付けていたが,返済を得られないでいた。このような関係が始まってしばらく後,被告人は,A又はその息子が,同和を名乗る団体ないし暴力団と関係があり,Aの依頼を断ると何をされるか分からないと思いこむようになり,さらには,前記の被告人自身の性格もあって,返済を強く督促することを躊躇する一方,引き続き,貸付金の名目で金を渡し続けていた。 他方,Aは,被告人が断らないことに乗じ,引き続き,被告人から借金名下に金を拠出させるほか,Aの息子が自動車の車検代金のローンを申し込む際,被告人に保証人になるよう求め,これが金融会社の審査を通らず,金融が得られない結果となるや,被告人に約15万円の車検代金を負担させるなどした。また,Aの息子らも,同人,同人の嫁及び同女の連れ子を,植木職人としての能力がないにもかかわらず,不相応に高額の賃金の支払いを約束させて雇用させ,被告人の植木職人としての収入のほとんどを拠出させたり,被告人名義でAの息子の家族ら4人分の携帯電話機を用意させ,使用料を負担させるなどしていた。 被告人は,Aらに渡した金のために,日々の生活費にも事欠くに至り,かねて同人らに対し,不満の念を強くしていたところ,平成14年3月18日午前中,雇っていたAの息子の嫁が,庭木のせん定作業 していた。 被告人は,Aらに渡した金のために,日々の生活費にも事欠くに至り,かねて同人らに対し,不満の念を強くしていたところ,平成14年3月18日午前中,雇っていたAの息子の嫁が,庭木のせん定作業の現場から勝手に帰宅し,被告人の方から電話し,翌日も仕事に来てくれるように言うと,難癖を付け,怒鳴って,一方的に電話を切ったことから,Aらに対する憎悪の念を一層募らせ,全ての元凶はAにあると思い,まず同人を殺してしまおうなどと考えるに至り,棍棒及び刈込鋏の片刃を携え,A方に赴いた。 (罪となるべき事実)被告人は,平成14年3月18日午後8時過ぎころ,ア市イ町2番15号所在の(),,,A当時67歳方において被告人がAに対し自身の経済的苦境を訴えたのに同人が貸付金の返済を断った上,被告人に背を向けてテレビを視聴しだしたことから,かねて同人に抱いていた憎悪の念を爆発させ,殺意をもって,所携の棍棒(平成14年押60号の1はその一部)で同人の肩を殴打したり,同人を押し倒し,被せた布団の上から押さえつけたりするなどした上,所携の刈込鋏の片刃(同押号の2,刃体の長さ約26.5センチメートル)で,同人の頸部,背部等を突き刺すなどし,よって,そのころ,同所において,同人を背部刺創に基づく胸部大動脈損傷による失血により死亡させて,殺害したものである。 (証拠の標目)省略(法令の適用)被告人の判示所為は刑法199条に該当するところ,所定刑中有期懲役刑を選択し,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役9年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中170日をその刑に算入することとし,押収してある棍棒1本(平成14年押第60号の1)及び刈込鋏の片刃1本(同押号の2)は,いずれも判示殺人の用に供した物で被告人以外の者に属しないから,同法19条1項2号,2 その刑に算入することとし,押収してある棍棒1本(平成14年押第60号の1)及び刈込鋏の片刃1本(同押号の2)は,いずれも判示殺人の用に供した物で被告人以外の者に属しないから,同法19条1項2号,2項本文を適用していずれも没収し,訴訟費用は,刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,殺人既遂の事案である。 ,,,,本件の犯行態様は予め木製の棍棒のみならず鋭利な刈込鋏の片刃を用意しこれらを携えて被害者方に赴き,被害者の不誠実な対応を契機に憎悪の念を爆発させ,テレビを視聴中の被害者の背後から,同人の頭部を狙って前記棍棒で殴りかかり,これがはずれて同人の肩に当たったにとどまったため,引き続き抵抗する同人を押し倒し,顔に布団を被せて押さえつけるなどした上,うつぶせになって動かなくなった同人の頸部や背部等を,所携の刈込鋏の片刃で何度も突き刺すなど,判示,。 のとおりの強力な攻撃を執拗に加えるもので確固とした殺意に基づく犯行であるこれらにより,被告人は,被害者を死亡させる重大な結果を生じさせた。また,被告人は,犯行後も,引き続き被害者の親族らの殺害を狙っており,捜査段階では,本件犯行を認める一方で,被害者及びその親族らに対する強い憎悪の念と,将来,引き続いて殺害する旨を明言してはばからず,反省の色は認められなかった。本件犯行の遠因である被害者らとの関係については,後述のとおり,なるほど酌むべき点もあるものの,判示の被告人の性格も寄与しているのであって,被害者らの側の事情のみに原因を求めることはできない。加えて,遺族らは,厳しい処罰を望む旨述べている。このほか,被告人の生活態度は,仕事は熱心にするものの,派手好きで見栄を張る傾向があること,金遣いが荒いこと等の事実が認められ,被告人の犯 はできない。加えて,遺族らは,厳しい処罰を望む旨述べている。このほか,被告人の生活態度は,仕事は熱心にするものの,派手好きで見栄を張る傾向があること,金遣いが荒いこと等の事実が認められ,被告人の犯情は悪く,刑責は重いと言わざるをえない。 しかしながら,本件犯行は,判示のとおり,遠因として,被害者及びその親族らが,被告人の性格に乗じ,全くの他人である被告人から長期かつ多数回にわたり金を巻き上げていたことが存在しているのであり,被害者及びその親族らが被告人に接する際の態度を併せ考えると,これらが殺人を正当化するものではないにせよ,被害者側にも責められるべき点があり,被告人の置かれていた状況には同情すべき点があったものと認められる。また,被告人は,最終的に公判廷においては,自身の非を認識し,真摯な反省の念を表明するに至っていること,前科はないこと,金,,,,遣いは荒くても仕事は真面目にこなし借金はきちんと返済していたこと現在70歳と高齢であること等被告人に有利に斟酌すべき事情も認められる。 以上の点を考慮して,主文の刑が相当であると判断した。 平成14年11月20日岡山地方裁判所第2刑事部裁判長裁判官榎本巧裁判官中川綾子裁判官足立堅太
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