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平成10(行ウ)20 土地売買受差止住民訴訟事件

裁判所

平成13年5月16日 横浜地方裁判所 住民訴訟

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56,996 文字

主文 1 被告は,川崎市が川崎市土地開発公社から3億9410万円を超える金額並びにこれに対する平成8年12月9日から取得時までの利息及び事務費を加算した金額をもって別紙物件目録記載1ないし26の各土地を取得する旨の契約を締結してはならない。2 訴訟費用は被告の負担とする。事実及び理由 第1 請求主文と同旨第2 事案の内容 1 概要本件は,川崎市(以下「市」ということがある。)が,川崎市土地開発公社(以下「公社」という。)から土地の取得を予定していることに関し,市の住民及び市内に事務所を有する社団である原告らが,被告に対し,上記予定に係る取得行為は被告の裁量権を濫用若しくは逸脱する違法な行為であるとして,上記取得に関する契約の締結及びこれに基づく公金支出の差止めを求めた住民訴訟である。2 前提となる事実(証拠等の記載のない事実は争いがない事実であり,証拠等の記載のある事実は主に当該証拠等により直接認められる事実である。書証の成立は弁論の全趣旨により認められる。)(1) 当事者等ア原告かわさき市民オンブズマンは,川崎市内に事務所を置き,「川崎市を中心に地方公共団体等の不正・不当な行為を監視し,それらを是正することを目的とする。」旨を会則に掲げた団体である。原告P1,同P2及び同P3は,上記団体の事務局長等をしている川崎市の住民である。(弁論の全趣旨)イ市は,昭和48年2月,公有地の拡大の推進に関する法律(以下「公拡法」という。)10条に基づき,市の全額出資により特別法人としての公社を設立し,市の公有地となるべき土地を公社に先行取得させている。被告は,地方自治法(ただし,平成11年法律第87号による改正前のもの。以下「地自法」という。)242条の2第1項1号の執行機関であり,市の代表者として公社 るべき土地を公社に先行取得させている。被告は,地方自治法(ただし,平成11年法律第87号による改正前のもの。 「公拡法」という。)10条に基づき,市の全額出資により特別法人としての公社を設立し,市の公有地となるべき土地を公社に先行取得させている。被告は,地方自治法(ただし,平成11年法律第87号による改正前のもの。以下「地自法」という。)242条の2第1項1号の執行機関であり,市の代表者として公社 るべき土地を公社に先行取得させている。被告は,地方自治法(ただし,平成11年法律第87号による改正前のもの。以下「地自法」という。)242条の2第1項1号の執行機関であり,市の代表者として公社に対し,特定の物件の先行取得を依頼するとともに,公社が取得した物件を市において買い受ける契約を締結する権限を有している。(2) 公社による本件土地の取得ア被告は,市の市民局からの用地買収の申出を受け,平成8年10月,公社に対し,別紙物件目録記載1ないし26の土地(以下「本件土地」という。)を先行して取得するように依頼した。上記申出に係る事業目的は,市民が利用する施設としての保養所の設置である。公社は,平成8年12月9日本件土地の当時の所有者である学校法人伊東学園(以下「伊東学園」という。)から代金6億1734万0704円の価格(以下「公社購入価格」という。)で本件土地を購入し,同月10日その所有権移転登記手続を経由した。公社購入価格は,不動産鑑定士P4の作成した平成8年11月18日付鑑定書(甲3。以下,この内容を「P4鑑定」といい,P4鑑定による本件土地の評価額を「P4評価額」という。)に基づいて決定された。イ市は,公社から本件土地を取得することになるが,その期限は,当初,平成12年3月31日と予定された(甲50,弁論の全趣旨)。市が公社から買い受ける場合の価格は,公社購入価格に少なくとも市による買受時までの利息,事務費を付加して,その合計額とすることとなっている。ただし,市は,平成12年10月4日現在,本件土地を未だ取得していない。また,市と公社との間に,売買契約の予約等はされていない。(3) 本件土地の概況ア形状本件土地は,別紙1の図面のうち赤線で囲まれた範囲の土地で,全面積は実測で7万0696.09平方メートル,公 ,市と公社との間に,売買契約の予約等はされていない。(3) 本件土地の概況ア形状本件土地は,別紙1の図面のうち赤線で囲まれた範囲の土地で,全面積は実測で7万0696.09平方メートル,公簿上で8万8977.11平方メートルである。 ,売買契約の予約等はされていない。(3) 本件土地の概況ア形状本件土地は,別紙1の図面のうち赤線で囲まれた範囲の土地で,全面積は実測で7万0696.09平方メートル,公 ,市と公社との間に,売買契約の予約等はされていない。(3) 本件土地の概況ア形状本件土地は,別紙1の図面のうち赤線で囲まれた範囲の土地で,全面積は実測で7万0696.09平方メートル,公簿上で8万8977.11平方メートルである。全体として標高差が約150メートルある概ね傾斜状の土地であり,北北東側から南南西側にかけて下り,その南西側外に国道136号線(以下,単に「国道」という。)が通っている。本件土地の南側部分は平坦部(面積が全体で合計4837.28平方メートル。以下「下部平坦地」という。)であり,その一部で国道に接している。国道からは本件土地の上部へ通ずる通路(以下「本件通路」という。)がある。本件通路は,現況幅員約5メートル,延長約280メートル,平均勾配約14パーセントの舗装された通路である。下部平坦地は,本件通路により,北西部の3294.52平方メートルの部分(以下「下部西側平坦地」又は「平坦地A」とという。)と南東部の1542.76平方メートルの部分(以下「下部東側平坦地」又は「平坦地B」という。後記の鉱泉地を含む)とに二分されている。本件通路を上方に上ると,下部平坦地から高低差約40メートル上部の位置に本件土地の一部である面積8007.53平方メートルの平坦な部分(以下「上部平坦地」又は「平坦地C」という。また,下部平坦地と併せて「本件平坦地」ということがある。)本件平坦地の背後は標高約120メートルの山林であり,雑木,檜,竹が密生し,山麓に近いところは35度から40度,中腹は25度から30度,山頂付近は40度以上の傾斜がある。また,上部平坦地の東側には,斜面地の中に,やや平坦な土地がある(以下「上部準平坦地」又は「平坦地D」という。)。下部東側平坦地の中には,毎分湧出量92.3リットルの温泉を湧 度以上の傾斜がある。また,上部平坦地の東側には,斜面地の中に,やや平坦な土地がある(以下「上部準平坦地」又は「平坦地D」という。)。下部東側平坦地の中には,毎分湧出量92.3リットルの温泉を湧出する鉱泉地(以下「本件鉱泉地」ということがある。)がある。本件鉱泉地は,静岡県賀茂郡南伊豆町(以下,単に「南伊豆町」という。 坦地D」という。)。下部東側平坦地の中には,毎分湧出量92.3リットルの温泉を湧 度以上の傾斜がある。また,上部平坦地の東側には,斜面地の中に,やや平坦な土地がある(以下「上部準平坦地」又は「平坦地D」という。)。下部東側平坦地の中には,毎分湧出量92.3リットルの温泉を湧出する鉱泉地(以下「本件鉱泉地」ということがある。)がある。本件鉱泉地は,静岡県賀茂郡南伊豆町(以下,単に「南伊豆町」という。)との共有となっており,公社は伊東学園からその持分3分の2を取得した。(以上,ア全体につき,P5鑑定,甲3,乙1,乙9,弁論の全趣旨。なお,本件土地の形状について別紙1参照)イ位置及び交通手段南伊豆町は,伊豆半島最南端に位置し,伊豆急行線下田駅から南西約8キロメートル,バス利用で同駅から約25分の場所に位置する。川崎市内から本件土地までは,車を利用した場合,往復で約350キロメートルの距離があり,8時間程度を要する。電車・バスを利用した場合,往復の交通費は平成10年の時点で1万3000円余であり,川崎駅から6時間以上を要する。ウ行政的条件本件土地は,未線引都市計画区域(都市計画区域には指定されているが,市街化区域,市街化調整区域の線引きがされていない区域)内の土地で,用途指定はなく,建築物の建築については建ペイ率70パーセント(以下「%」と表示することがある。)以下,容積率400%以下の規制がある。ただし,本件土地は,富士箱根伊豆国立公園特別地域内にあり,さらに,国道中心線より100メートルの地点以降は,国立公園第2種特別地域に指定さている。そのため,本件土地のうち,上記地点以降(上部平坦地などが該当する。)の部分は,敷地面積が1000平方メートル以上の建築物を建築する場合には,建ぺい率20%以下,容積率40%以下の基準を充たす必要がある。(規制の概要は争いがない。詳細は,証人P5,甲77,乙9の一部) 分は,敷地面積が1000平方メートル以上の建築物を建築する場合には,建ぺい率20%以下,容積率40%以下の基準を充たす必要がある。(規制の概要は争いがない。詳細は,証人P5,甲77,乙9の一部)なお,国立公園第2種特別地域に指定されている部分に建築物を建築する場合は,静岡県知事の許可が必要である(自然公園法17条3項)。(4) 住民監査請求原告らは,川崎市監査委員に対し,平成10年2月25日に地自法242条に基づき,執行機関である被告及び関係職員を相手方として,不当かつ違法な財産取得行為に該るとして,本件土地の取得の禁止(差止め)の措置を求めて監査請求を行った。 P5,甲77,乙9の一部)なお,国立公園第2種特別地域に指定されている部分に建築物を建築する場合は,静岡県知事の許可が必要である(自然公園法17条3項)。(4) 住民監査請求原告らは,川崎市監査委員に対し,平成10年2月25日に地自法242条に基づき,執行機関である被告及び関係職員を相手方として,不当かつ違法な財産取得行為に該るとして,本件土地の取得の禁止(差止め)の措置を求めて監査請求を行った。市監査委員は,同年4月24日,上記請求に対し,監査委員間で意見の一致をみることができなかった旨の結果を原告らに通知した。3 本件の争点本件の争点は,被告が,本件土地を公社購入価格の6億1734万0704万円に市による取得時までの利息及び事務費を加えた価格で,公社から取得することの適否である。具体化した争点は,次の4で記載するとおりである。4 当事者の主張(原告らの主張)(1) 本件土地取得の適否についての判断基準ア地自法2条13項及び地方財政法4条1項違反の違法地方公共団体の長が,社会通念上著しく高額な対価に基づいて不動産を取得することは,地方公共団体の財政の運営に関する基本原則を定めた地自法2条13項及び地方財政法4条1項に違反する。市が,公社購入価格を基礎として本件土地を取得することは,以下述べるように,必要性のない土地を著しく高額な価格で取得するものであって,被告の裁量の範囲を逸脱する。被告は,地自法2条13項及び地方財政法4条1項が訓示規定であり,同条に違反する事実があったとしても,違法とならない旨主張するが,仮に,上記条項が直接の裁判規 あって,被告の裁量の範囲を逸脱する。被告は,地自法2条13項及び地方財政法4条1項が訓示規定であり,同条に違反する事実があったとしても,違法とならない旨主張するが,仮に,上記条項が直接の裁判規範とならないとしても,上記条項は予算執行者の裁量の限界を画する基準として,財産の取得に際して間接的に適用され,取得の適否に当たり実質的な裁判規範として働くものである。イ議会の議決と本件土地取得の違法性(後記被告の主張(1)イに対する反論)(ア) 被告は,市が本件土地を取得する際には,必ず議会の議決を得る必要があり(地自法96条1項8号),同議決を得た場合であっても,なお,本件土地の取得が違法となるのは,同議決に重大かつ明白な瑕疵がある場合に限られる旨主張する。 準として,財産の取得に際して間接的に適用され,取得の適否に当たり実質的な裁判規範として働くものである。イ議会の議決と本件土地取得の違法性(後記被告の主張(1)イに対する反論)(ア) 被告は,市が本件土地を取得する際には,必ず議会の議決を得る必要があり(地自法96条1項8号),同議決を得た場合であっても,なお,本件土地の取得が違法となるのは,同議決に重大かつ明白な瑕疵がある場合に限られる旨主張する。(イ) しかしながら,財産の取得などの契約の締結は,本来執行機関の権限に属することである(同法149条6号)。被告指摘の同法96条1項8号は,一定の範囲の財産の取得又は処分について,執行機関の提案に対する議会の同意が必要である旨定めたものであり,議会に対して,執行機関の提案を待たずに積極的な決定を行う権限を認めたものではない。執行機関が契約を締結すべきでないと考えれば議会に提案をしなければ足りるのであって,その場合,議会が積極的に契約の締結を執行機関に命ずる議決をすることはあり得ない。また,執行機関は,議会の議決があった場合であっても,地方財政法4条1項の趣旨から,より地方公共団体の利益となる契約条件を追求する責任と権限が予定されており,地自法96条1項8号は,一旦議決した内容の変更を禁止する旨の規定ではない。(2) 本件土地取得の不要地自法2条13項及び地方財政法4条1項は,「限られた財源で,地域住民の生活水準が最大限高められるような効率的行政を行う」趣旨を定めており,その する旨の規定ではない。(2) 本件土地取得の不要地自法2条13項及び地方財政法4条1項は,「限られた財源で,地域住民の生活水準が最大限高められるような効率的行政を行う」趣旨を定めており,その趣旨からすれば,市において,市民保養所を開設することは不要であり,市が本件土地を取得する必要性はない。ア市民保養所開設の不要性(ア) 市が提供すべき行政サービスについては,その優先度の高い順から,①教育,上下水道,ゴミ処理などの必需的項目,②看護サービス,特別養護施設などの福祉的項目,③市民会館,図書館,市民グラウンドなどの選択的項目に分けられるが,市民保養所などの宿泊施設は,最も優先度の低い選択的項目に分類される施策である。(イ) 保養所は,収容人員が限定されるため,図書館・美術館などに比較して,利用者数は極端に少ない。 ア) 市が提供すべき行政サービスについては,その優先度の高い順から,①教育,上下水道,ゴミ処理などの必需的項目,②看護サービス,特別養護施設などの福祉的項目,③市民会館,図書館,市民グラウンドなどの選択的項目に分けられるが,市民保養所などの宿泊施設は,最も優先度の低い選択的項目に分類される施策である。(イ) 保養所は,収容人員が限定されるため,図書館・美術館などに比較して,利用者数は極端に少ない。他方で建設費は同等にかかり,建設後は,維持費に占める人件費が大きく,市においても,既設の3か所の保養所の支出の6割を税金で補助している。(ウ) 市の平成10年度予算の総額(企業会計を含む。)は前年度比5.7%減の1兆0892億円となっており,市の平成10年度末の市債残高見込みは1兆3300億円である。また,市債償還や退職者増による人件費の増大などで,財源不足が深刻になるものと予測されており,浮島などの大規模整備基金の積立てを見送る一方,すでに8億円近い先行投資を行った岩手県東和町「市民保養交流施設」をも着工先送りとしている。ところが,平成10年度は,既存保養所の運営維持にかかる経費だけで5億4400万円が予算に計上されており,この種の事業をさらに拡大し,そのために借金を増加させることは不合理である。(エ) さらに市が保養所を設置することは,南伊豆町の宿泊施設を経営している民業を不当に圧迫することになる。仮に れており,この種の事業をさらに拡大し,そのために借金を増加させることは不合理である。(エ) さらに市が保養所を設置することは,南伊豆町の宿泊施設を経営している民業を不当に圧迫することになる。仮に南伊豆町が保養地として適するのであれば,同町所在の既存の民間宿泊施設と提携すれば足りる。(オ) したがって,市が保養所を設けるために本件土地を取得する必要はない。イ本件土地の利便性の欠如前提となる事実(3)イのとおり,本件土地は,川崎市民が利用する施設の用地としては,遠過ぎる場所にあり利便性を欠いている。また,急傾斜地で,利用可能な平坦部分が限られており,しかも,岩石の崩落が始まっている危険な土地で,保養所の用地として適切ではない。ウ取得手続の問題点と取得の不要(ア) 市が公社に対して,用地の先行取得を依頼するには,議会の議決を要せず,市長の決裁のみで足りる。そして,公社が先行取得した具体的な土地に関し,議会に対して地自法96条の議決が求められた場合,議会がこれを否決するのは容易なことではないから,公社の先行取得に基づく市による再取得は非民主的な手続である。 石の崩落が始まっている危険な土地で,保養所の用地として適切ではない。ウ取得手続の問題点と取得の不要(ア) 市が公社に対して,用地の先行取得を依頼するには,議会の議決を要せず,市長の決裁のみで足りる。そして,公社が先行取得した具体的な土地に関し,議会に対して地自法96条の議決が求められた場合,議会がこれを否決するのは容易なことではないから,公社の先行取得に基づく市による再取得は非民主的な手続である。(イ) 公拡法が制定された昭和47年ごろは,高度経済成長に伴い,地方公共団体においては各種公共事業の用地取得難を来していた。それ以降も地価高騰が継続していたころまでは,公拡法による公共事業用地の先行取得に一定の意義があった。しかしながら,バブル経済の崩壊した平成2年ごろ以降は,地価は下がる一方であり,公拡法に基づき公共事業用地を先行取得する必要性はなくなった。(3) 公社購入価格の過大性(P4鑑定の問題点)公社購入価格は,6億1734万0704円であり,時価の2倍をもはるかに超えている。そして,公社購入価格は,P4評価額を基礎としたものであるが,P4鑑定は,次のとおり,正当 性(P4鑑定の問題点)公社購入価格は,6億1734万0704円であり,時価の2倍をもはるかに超えている。そして,公社購入価格は,P4評価額を基礎としたものであるが,P4鑑定は,次のとおり,正当な鑑定評価ではなく,P4評価額は過大である。ア上部平坦地の過大評価P4鑑定においては,下部平坦地と上部平坦地とを均一の単価で評価している。しかしながら,下部平坦地と上部平坦地とでは,前提となる事実(3)ウのとおり,建ぺい率・容積率の規制に違いがあり,前者が国道に接面しているのに対し,後者は国道の背後地にある。しかも,後者は,十分に整備されていない唯一の道路である本件通路に接しているだけである。このように条件を全く異にした土地の単価が同一であるはずはない。上部平坦部の適正単価は下部平坦地の単価の3分の1を上回るものではあり得ず,P4評価額はこの点だけでも適正価格を2億3500万円余り上回っている。イ本件土地における開発行為の必要性と減価P4鑑定は,以下のような減額要素についておよそ考慮していない。(ア) 本件土地上に建築物を建築するためには,都市計画法29条の開発行為の許可を要するが,P4鑑定は,本件土地を一体利用することにより開発許可を受ける必要がないという前提に立ち,開発許可手続費用・道路等の整備費用を考慮していない。 4評価額はこの点だけでも適正価格を2億3500万円余り上回っている。イ本件土地における開発行為の必要性と減価P4鑑定は,以下のような減額要素についておよそ考慮していない。(ア) 本件土地上に建築物を建築するためには,都市計画法29条の開発行為の許可を要するが,P4鑑定は,本件土地を一体利用することにより開発許可を受ける必要がないという前提に立ち,開発許可手続費用・道路等の整備費用を考慮していない。(イ) 仮に,本件土地の一体利用によって,都市計画法上の直接的な規制を免れたとしても,本件土地については,建築基準法令上の規制(浄化槽,排水設備の規制),静岡県における地震力の規制基準を満たす必要がある。特に,上部平坦地に保養所を設置した場合には,下部平坦地の国道沿いの水路まで,本件通路上などに排水設備や調整池を設置する必要がある。また,周辺の山林からの雨水等を同時に処理することが要求される。さらに,本件土 に保養所を設置した場合には,下部平坦地の国道沿いの水路まで,本件通路上などに排水設備や調整池を設置する必要がある。また,周辺の山林からの雨水等を同時に処理することが要求される。さらに,本件土地内には,岩石が露出して,崩落・崩壊の危険がある急斜面が多く,安全性・防災性の観点から問題が多い。(ウ) 市は,高齢者による利用を確保するため,上部・下部平坦地を結ぶ移動手段として,エスカレータを設置した保養所を構想している。本件土地は,現況での一体利用は不可能であり,一体利用のためにはエスカレ一タ等の設置費用を積算し,これを土地の標準価格から減価する必要がある。ウ鑑定の恣意性P4は,現地を調査した際,静岡県土木事務所に寄ることをせず,本件土地の開発許可について権限を有する静岡県都市住宅部土地対策室,建築確認について権限を有する同都市住宅部建築確認検査室など,静岡県の各部署から情報を入手することを行っていない。さらに,平成6年にされた本件土地の取引(売買代金2億円)の情報を入手せずに本件土地を鑑定している。公社による本件土地の先行取得に関する市の決裁文書(甲49ないし52)には,市がP4に対し,鑑定依頼をした平成8年10月31日より前に,P4評価額と全く同一の金額が記入されており,P4が市から多くの資料の提供を受け,市の職員の案内で現地調査をしていることなどに鑑みると,P4鑑定は,市の誘導によって,恣意的で不当に行われた疑いが強い。 地の取引(売買代金2億円)の情報を入手せずに本件土地を鑑定している。公社による本件土地の先行取得に関する市の決裁文書(甲49ないし52)には,市がP4に対し,鑑定依頼をした平成8年10月31日より前に,P4評価額と全く同一の金額が記入されており,P4が市から多くの資料の提供を受け,市の職員の案内で現地調査をしていることなどに鑑みると,P4鑑定は,市の誘導によって,恣意的で不当に行われた疑いが強い。(4) 市による取得の不合理性(差止めの必要性)公社は,自己資金がなく,市の連帯保証による銀行融資を得て土地を購入しているところ,その保有資産のほとんどは取得時よりも価値が下落しており,この含み損が顕在化すれば,赤字会社である。結局,本件土地を市自身が再取得すると市に回復困難な損害が生ずるおそれ 土地を購入しているところ,その保有資産のほとんどは取得時よりも価値が下落しており,この含み損が顕在化すれば,赤字会社である。結局,本件土地を市自身が再取得すると市に回復困難な損害が生ずるおそれがある。したがって,再取得の途を封じた上で,売主あるいは第三者に対し公社購入価格になるべく近い価格で処分する方法を追求することが,市の損害を小さくする唯一の方法である。(被告の主張)(1) 本件土地取得の適否についての判断基準ア地自法2条13項及び地方財政法4条1項の訓示規定性原告らの主張(1)アは争う。地自法2条13項及び地方財政法4条1項はいずれも訓示規定であり,その違反により違法の法的評価を受けることはない。仮に,訓示規定ではないとしても,いかなる経費でいかなる施策を実施するかは普通地方公共団体の長の広範な裁量に委ねられており,その裁量は,単に経済的見地からだけでなく,広く社会的,政策的見地から総合的になすべきであるから,その判断に著しい不公正若しくは法令違背が伴わない限り,これを尊重することが地方自治の精神に合致する。イ議会の議決に伴う本件土地取得の適法性(ア) 地自法242条の2第1項1号の差止請求は,執行機関又は職員に対して地方公共団体が有する差止請求権を,住民が代わって行使するものであるから,差止めが認められる前提として,地方公共団体が当該行為につき執行機関又は職員に対して差止請求権を有していることが必要である。したがって,差止事由となる違法は,あくまで執行機関又は職員の行為が普通地方公共団体に対する関係で内部的に違法となる場合に限られる。 性(ア) 地自法242条の2第1項1号の差止請求は,執行機関又は職員に対して地方公共団体が有する差止請求権を,住民が代わって行使するものであるから,差止めが認められる前提として,地方公共団体が当該行為につき執行機関又は職員に対して差止請求権を有していることが必要である。したがって,差止事由となる違法は,あくまで執行機関又は職員の行為が普通地方公共団体に対する関係で内部的に違法となる場合に限られる。(イ) 市が本件土地を取得するには議会の予算議決のほかに,地自法96条1項8号の議会の議決を得ることが必要である。したがって,同議決に重大かつ明白な瑕疵がない限り,地 違法となる場合に限られる。(イ) 市が本件土地を取得するには議会の予算議決のほかに,地自法96条1項8号の議会の議決を得ることが必要である。したがって,同議決に重大かつ明白な瑕疵がない限り,地方公共団体の長は同議決を尊重して財務会計上の行為を行う義務があり,同議決に従ってされた執行機関又は職員の行為が普通地方公共団体に対する関係で内部的に違法となることはない。(ウ) ところで,本件土地は,市民保養所建設という市の施策に必要な用地として買い受ける予定であり,また市が支払うべき代金の基礎となる公社購入価格は,資格を持った不動産鑑定士の鑑定価格によったものであるから,本件土地買受けのためにされる議会の議決に重大かつ明白な瑕疵が生ずることはあり得ない。(2) 用地取得の必要性ア市民保養所の必要性原告らの主張(2)アは争う。(ア) 市は,昭和30年代から昭和40年代にかけて深刻な公害を経験しており,公害の被害にあった市民に対してはもとより,広く市民一般に対して自然に恵まれた環境の中で,心身をリフレッシュする機会を提供する必要性が高い。市民保養所の設置は,市においては,環境・公害対策の一環としての側面を有しており,市は,従前から一貫してこれを重要施策として位置づけてきた。また,市が設置してきた保養所(以下「既設保養所」という。)に対する市民の需要は極めて高く,市議会においても,市民保養所設置に向けての質疑が繰返し行われている。さらに,本件土地における新たな保養所(以下「第4保養所」ということがある。)の開設は,従前からの施策の延長というだけではなく,高齢者の増大に対応した高齢者の健康の維持とゆとりある豊かな老後生活を支援していくという「豊かな長寿社会」の構築をめざす施策の一環として位置づけられている。 設保養所」という。)に対する市民の需要は極めて高く,市議会においても,市民保養所設置に向けての質疑が繰返し行われている。さらに,本件土地における新たな保養所(以下「第4保養所」ということがある。)の開設は,従前からの施策の延長というだけではなく,高齢者の増大に対応した高齢者の健康の維持とゆとりある豊かな老後生活を支援していくという「豊かな長寿社会」の構築をめざす施策の一環として位置づけられている。単なる既存の民間施設によっ だけではなく,高齢者の増大に対応した高齢者の健康の維持とゆとりある豊かな老後生活を支援していくという「豊かな長寿社会」の構築をめざす施策の一環として位置づけられている。単なる既存の民間施設によって代替できるものではない。(イ) 限られた市の財源の中で,市がどのような事業を実施するかは,政策の当否の問題であって,住民訴訟上の違法とは関係がない。自治体が提供する行政サービスは住民全体が必ず利用するとは限らないのであり,行政効率の低いサービスであっても,住民福祉のために必要であれば,当然実施すべきである。イ本件土地の有用性原告らの主張(2)イは争う。本件土地が存在する下田周辺は,日本有数の観光地域であり,市を含む首都圏住民が観光・保養に利用する地域である。したがって,本件土地が市の住民のための保養所を設置するのに不適であるなどとはいえない。ウ公社による先行取得手続の合理性原告らの主張(2)ウは争う。公社は,公共事業に要する土地に民間資金を積極的に導入し,事業実施に先立って先行取得することを業務とするものであり,市も将来的に予定される公共事業の用地については公社にその先行取得を依頼し,公社において取得した土地を公共事業実施時に公社から取得することとしている。これにより,市としても財政の効率的な運営を図るとともに公共用地取得の円滑化を図り,安定的に公共事業の推進を図ることが可能となっている。(3) 公社購入価格の適正(P4鑑定の正当性)公社はP4鑑定に基づいて公社購入価格を決定しており,以下のとおり,同鑑定は正当である。ア本件平坦地の一体評価の正当性(上部平坦地の評価の適正)原告らの主張(3)アは争う。不動産の鑑定評価にあたっては,まず対象不動産の最有効使用を判定する必要があり,P4鑑定では,本件土地は,①全体 件平坦地の一体評価の正当性(上部平坦地の評価の適正)原告らの主張(3)アは争う。 公社購入価格の適正(P4鑑定の正当性)公社はP4鑑定に基づいて公社購入価格を決定しており,以下のとおり,同鑑定は正当である。ア本件平坦地の一体評価の正当性(上部平坦地の評価の適正)原告らの主張(3)アは争う。不動産の鑑定評価にあたっては,まず対象不動産の最有効使用を判定する必要があり,P4鑑定では,本件土地は,①全体 件平坦地の一体評価の正当性(上部平坦地の評価の適正)原告らの主張(3)アは争う。不動産の鑑定評価にあたっては,まず対象不動産の最有効使用を判定する必要があり,P4鑑定では,本件土地は,①全体が同一所有者に帰属していたこと,②国道に接していること,③本件土地内に鉱泉地があること,④本件通路が整備されていることなどから,上部と下部の両平坦地を一体として利用し,保養所ないし別荘地として使用することが本件土地の最有効使用であるとしており,正当な評価である。本件土地付近は市街地の一般住宅地域とは異なり,建ぺい率や容積率の制限ぎりぎりまで建物を建築する状況ではなく,しかも上部平坦地の背後にある林地の面積も上部平坦地の建ぺい率や容積率算定の基礎に算入されるのであるから,原告らが主張する建ぺい率等の規制の違いは格差要因とならない。したがって,上部と下部の両平坦地を一体として評価することに問題はない。イ開発行為等の考慮の不要原告らの主張(3)イは争う。(ア) 本件平坦地を一体として利用する場合,できるだけ自然の景観を残して,現状のまま利用することが適切であり,本件土地の最有効使用のためには,必ずしも都市計画法上の開発行為を前提としなければならないものではない。そして,開発行為が不要である以上,その基準を充たすための造成工事も不要である。また,本件土地では,雨水対策も既に実施されているから,そのための経費を減価する必要はない。P4は,都市計画法上の開発行為をしないとの前提で本件土地の評価を行っているから,開発行為の許可を得るのに要する費用を鑑定評価に反映していないのは当然である。(イ) P4鑑定で採用された取引事例比較法では,標準画地の価格算定の基礎となった取引事例地と本件土地との個別格差だけが問題となるところ,原告らが主張する浄 定評価に反映していないのは当然である。(イ) P4鑑定で採用された取引事例比較法では,標準画地の価格算定の基礎となった取引事例地と本件土地との個別格差だけが問題となるところ,原告らが主張する浄化槽,地震力等の基準は,取引事例地にも本件土地にも一律に適用されるから,格差要因とはならない。 では,標準画地の価格算定の基礎となった取引事例地と本件土地との個別格差だけが問題となるところ,原告らが主張する浄 定評価に反映していないのは当然である。(イ) P4鑑定で採用された取引事例比較法では,標準画地の価格算定の基礎となった取引事例地と本件土地との個別格差だけが問題となるところ,原告らが主張する浄化槽,地震力等の基準は,取引事例地にも本件土地にも一律に適用されるから,格差要因とはならない。下水道設備も,取引事例比較法では,評価対象地の接面する道路で判断するものであって,敷地内における上下水道設備の有無を検討する必要はない。(ウ) 土地の鑑定評価に当たってされる最有効使用の判定は,一般的な利用の観点からされるのであって,市の利用計画を前提に判定するのではない。また,市の計画を実施した場合の費用を本件土地の評価に際して減価しなければならないというものではない。ウ P4鑑定の正当性(作成の経緯)原告らの主張(3)ウは争う。(ア) 被告は,公社に対して本件土地の先行取得を依頼するために,その正確な価格を把握する必要があったので,公社による正式な鑑定依頼の前に,平成8年7月中旬,口頭で株式会社迫・大澤不動産鑑定事務所(以下「迫・大澤鑑定事務所」という。)に対して,本件土地の鑑定を依頼し,その結果,平成8年9月30日付けで,同事務所から本件土地についての不動産鑑定評価書(乙1)の提出を受けた。なお,市とP4との間で正式の鑑定依頼がされていないが,それは,鑑定費用を公社の資金から支出する必要があったためである。市は,正式な鑑定依頼日の前にP4評価額を把握したので,それに従って,内部書類の用地買収費にかかる部分を訂正した。原告らが主張するように市の職員がP4に対して誘導をしたという事実はない。(イ) 本件土地は平成6年に取引されており,その売買代金が2億円であることは認める。しかしながら,同取引は,株式会社南伊豆園芸クラブ(以下「南伊豆園 員がP4に対して誘導をしたという事実はない。(イ) 本件土地は平成6年に取引されており,その売買代金が2億円であることは認める。しかしながら,同取引は,株式会社南伊豆園芸クラブ(以下「南伊豆園芸クラブ」という。)と伊東学園との間でされたものであり,両者は同族関係にあり,取引価格自体正常ではない。P4が同事例を収集していなかったが,だからといって,その鑑定評価に客観性・正当性がないとはいえない。 園 員がP4に対して誘導をしたという事実はない。(イ) 本件土地は平成6年に取引されており,その売買代金が2億円であることは認める。しかしながら,同取引は,株式会社南伊豆園芸クラブ(以下「南伊豆園芸クラブ」という。)と伊東学園との間でされたものであり,両者は同族関係にあり,取引価格自体正常ではない。P4が同事例を収集していなかったが,だからといって,その鑑定評価に客観性・正当性がないとはいえない。また,開発規制等の許認可権限は静岡県にあるが,その許認可の申請は,地元自治体の南伊豆町役場を経由するから,P4が,町役場からしか聞き取り調査をしていないとしても,その調査方法は不当ではない。(4) 市による取得の合理性ア原告の主張(4)は争う。なお,市は,公社が受ける銀行融資について,連帯保証しているのではなく,損失補償をしている。イ仮に,地方公共団体の長が行う財産取得契約の締結が,価格の面から違法となり得るとすれば,それは,取得価格が適正価格に比して著しく高額であって,しかもそこに合理的理由が認められない場合に限られる。そして,土地の取引価格は,社会的,経済的な要因に由来する複雑多岐な要素に基づき,かつ,当該取引の当事者の個別的,主観的な事情によって決定されるものであり,大きく変動する性質があるから,ある取得価格が適正価格であるかどうかの判断が困難な場合がしばしばある。本件土地の公社購入時ころの価格については,P4鑑定のほか,裁判所の鑑定人であるP5不動産鑑定士の鑑定(以下「P5鑑定」という。),被告が依頼したP6不動産鑑定士による鑑定(以下「P6鑑定」という。)が,それぞれ異なった鑑定評価額を算出しており,鑑定人の判断のぶれが相当大きい。したがって,本件土地の適正な価格自体,相当な幅があるから,さらに,その20から30 鑑定(以下「P6鑑定」という。)が,それぞれ異なった鑑定評価額を算出しており,鑑定人の判断のぶれが相当大きい。したがって,本件土地の適正な価格自体,相当な幅があるから,さらに,その20から30%程度の幅の中の価格であれば,著しく高額であるということはできない。ウまた,取得価格が適正価格に比して著しく高額であったとしても,取得は,そこに合理的理由があれば違法とはならない。そして,不動産の正確な価格の判定は,専門家である不動産鑑定士の判断に依拠せざる得ないから,仮にそれが客観的に判断される適正価格に比して高額なものであっても,その鑑定評価に従って取得価格が決定されている以上,取得は,合理的理由があり,適法である。 れば,著しく高額であるということはできない。ウまた,取得価格が適正価格に比して著しく高額であったとしても,取得は,そこに合理的理由があれば違法とはならない。そして,不動産の正確な価格の判定は,専門家である不動産鑑定士の判断に依拠せざる得ないから,仮にそれが客観的に判断される適正価格に比して高額なものであっても,その鑑定評価に従って取得価格が決定されている以上,取得は,合理的理由があり,適法である。市は,公社に対し,P4鑑定に基づいて,公社購入価格を指定した上で,公社購入価格に利息と事務費等を加算して市の取得価格とすることにして,本件土地の先行取得を依頼している。したがって,市としては公社購入価格を基に積算した価格で公社より買い入れる信義則上の義務を負っている。仮に公社から取得しないとすれば,市は公社に社会通念上看過することのできない積極的損害を与えることになるのであって,その損害を補償しなければならない。したがって,市が,公社から公社購入価格を基礎にして本件土地を取得することには合理的理由があり,取得は適法である。第3 当裁判所の判断(証拠により直接認定する事実は,当該事実の前後に適宜,主な証拠を略記する。争いのない事実及び一度認定した事実は,原則としてその旨を断らない。) 1 本件土地取得の適否についての判断基準(1) 地方公共団体による土地取得における内部的な規律の有無・程度地方公共団体が土地を取得する場合に,取得するかどうか,また,取得する場合における対価の決定方法等について,私人が購入する場合とは異 1) 地方公共団体による土地取得における内部的な規律の有無・程度地方公共団体が土地を取得する場合に,取得するかどうか,また,取得する場合における対価の決定方法等について,私人が購入する場合とは異なった団体内部における格別の手続を定めた規定はない(ただし,後記(3惨照)。そうすると,地方公共団体が土地を取得する場合のその是非,価格等についての団体内部の意思決定に係る判断は,当該団体の長の権限(地自法138条の2,147条)に属する事項として,その裁量に委ねられていると解される。そして,土地の取引価格は,社会的,経済的な要因に由来する複雑多岐な要素に制約され,とりわけ当該取引における両当事者の個別的,主観的な事情等の個別の条件に影響される性質がある。そうすると,地方公共団体が土地を取得する場合におけるその対価の決定については,当該団体の長に認められる裁量の範囲は,売主の意向,団体における取得の必要性の程度等を踏まえ,ある程度広範なものとなると解される。 れていると解される。そして,土地の取引価格は,社会的,経済的な要因に由来する複雑多岐な要素に制約され,とりわけ当該取引における両当事者の個別的,主観的な事情等の個別の条件に影響される性質がある。そうすると,地方公共団体が土地を取得する場合におけるその対価の決定については,当該団体の長に認められる裁量の範囲は,売主の意向,団体における取得の必要性の程度等を踏まえ,ある程度広範なものとなると解される。(2) 取得についての地自法2条13項及び地方財政法4条1項の規範性の有無(1)のように地方公共団体の長に土地取得に関する裁量権が認められるとしても,必要性の乏しい土地を適正価格よりも著しく高額な対価で取得することは,特段の事情のない限り,上記裁量権の逸脱若しくは濫用に当たると解するのが相当である。そして,そのような場合には,「地方公共団体は,その事務を処理するに当っては,住民の福祉の増進に努めるとともに,最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」と定める地自法2条13項及び「地方公共団体の経費は,その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて,これを支出してはならない。」と定める地方財政法4条1項の趣旨に著しく反する財務会計上の行為として,違法となると解すべきで 「地方公共団体の経費は,その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて,これを支出してはならない。」と定める地方財政法4条1項の趣旨に著しく反する財務会計上の行為として,違法となると解すべきである。この点について,被告は,地自法2条13項及び地方財政法4条1項は,いずれも訓示規定であって,その違反によって違法の評価を受けることはない旨主張する。しかしながら,地自法2条13項及び地方財政法4条1項は,執行機関が行う財務会計行為の一般的原則を定めた規定であって,裁量権の逸脱・濫用と評価されるような税務会計上の行為がされた場合は,上記条項違反の瑕疵を帯びるというべきであり,その限度で法的規範性を有している,と解される。被告の主張は採用できない。(3) 地自法96条1項の議決と本件土地取得の適否ア被告は,本件土地の取得については,地自法96条1項8号の議会の議決があることが前提となり,その議決に重大かつ明白な瑕疵がない限り被告はこれに従う義務があるから,議決に従って本件土地を取得することが市との関係で違法となることはあり得ない旨主張する。 瑕疵を帯びるというべきであり,その限度で法的規範性を有している,と解される。被告の主張は採用できない。(3) 地自法96条1項の議決と本件土地取得の適否ア被告は,本件土地の取得については,地自法96条1項8号の議会の議決があることが前提となり,その議決に重大かつ明白な瑕疵がない限り被告はこれに従う義務があるから,議決に従って本件土地を取得することが市との関係で違法となることはあり得ない旨主張する。イそこで検討するに,地自法96条1項は,「普通地方公共団体の議会は,次に掲げる事件を議決しなければならない。」とし,同項8号において「前2号に定めるものを除くほか,その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める財産の取得又は処分をすること。」と定めている。そして,政令指定都市においては1件4000万円以上の範囲で条例が定める価格(川崎市においては8000万円以上一川崎市財産条例2条)の不動産を取得する場合が,上記の議決を要する場合であるとされている(平成12年3月政令第55号による改正前の地自法施行令121条の2及び同令別表第2)。これは,財産取得又は処分は,通常執行機関限りで行 産を取得する場合が,上記の議決を要する場合であるとされている(平成12年3月政令第55号による改正前の地自法施行令121条の2及び同令別表第2)。これは,財産取得又は処分は,通常執行機関限りで行うことができるのであるが,条例で定める重要なものについては,議会の議決を要するとしたのであり,地方公共団体の団体意思の決定を民主的機関である議会の議決にかからしめたものである。しかしながら,本件では,本件土地の取得について,未だ同条項の議決がされておらず(弁論の全趣旨),これがされたことを想定した被告の主張は,仮定の事実を前提とした主張であって,まずその点において採用できない。さらに,仮に,地方公共団体の長がその裁量権を逸脱ないし濫用して不当に高額な代金をもって土地を取得した場合には,その取得は(2)のとおり違法となるのであり,たとえ議会の議決があったとしてもそのことが直ちに土地の取得の違法性を阻却する理由とはならない。また,被告の主張を前提とすると,地自法96条1項8号の議決を要する財務会計上の.行為については,議会の議決におよそ重大かつ明白な瑕疵がない限り,地自法242条の2第1項1号の差止めが認められないこととなる。 濫用して不当に高額な代金をもって土地を取得した場合には,その取得は(2)のとおり違法となるのであり,たとえ議会の議決があったとしてもそのことが直ちに土地の取得の違法性を阻却する理由とはならない。また,被告の主張を前提とすると,地自法96条1項8号の議決を要する財務会計上の.行為については,議会の議決におよそ重大かつ明白な瑕疵がない限り,地自法242条の2第1項1号の差止めが認められないこととなる。しかし,それでは,同条項が地方公共団体に回復の困難な損害を生ずるおそれがある場合に財務会計上の行為の差止めを認めた趣旨に反するといわなければならない。(4)検討の順序そこで,(2)の見地に基づき,被告が市の長として本件土地を公社から取得しようとすることに裁量権の濫用があるかどうかを検討する。ところで,被告の主張中には,本件土地の取得の必要性の有無は政策の当否の問題であって,住民訴訟上の違法とは無関係である旨の部分がある。しかし,全く不要な土地を取得するようなことがあれば,特段の事情がない限り,取得価格の過大の有無に 地の取得の必要性の有無は政策の当否の問題であって,住民訴訟上の違法とは無関係である旨の部分がある。しかし,全く不要な土地を取得するようなことがあれば,特段の事情がない限り,取得価格の過大の有無にかかわらず,裁量権を濫用したものとなり得る。また,取得の必要性が強ければ売主の意向にある程度応じて取得価格が高めでも成約に至ることが許されることもあり得る。したがって,取得の必要性の有無は,取得における裁量権濫用の有無を判断する要素として検討対象とすべきである。そして,取得の必要性がある場合には,取得価格が合理性を欠くような過大なものでないかが問題となる。したがって,2において本件土地の取得の適否(主に必要性の有無),3において価格の考慮要素となり得る本件土地における開発行為及びその許可の要否等,4において公社購入価格の妥当性の有無(各鑑定内容)を検討する。2 本件土地の取得の適否(1) 公社による本件土地取得の経緯ア市は,市内在住・在勤の人が使用できる市民保養所として,昭和47年8月16日に箱根に「みどり山荘」を,昭和54年8月20日に長野県八ヶ岳山麓に「八ヶ岳市民休暇村」を,昭和59年7月11日には静岡県賀茂郡東伊豆町に「あかがわ荘」を開設した(上記の保養所を総称したのが既設保養所)。 4において公社購入価格の妥当性の有無(各鑑定内容)を検討する。2 本件土地の取得の適否(1) 公社による本件土地取得の経緯ア市は,市内在住・在勤の人が使用できる市民保養所として,昭和47年8月16日に箱根に「みどり山荘」を,昭和54年8月20日に長野県八ヶ岳山麓に「八ヶ岳市民休暇村」を,昭和59年7月11日には静岡県賀茂郡東伊豆町に「あかがわ荘」を開設した(上記の保養所を総称したのが既設保養所)。そのほかに,市民が料金を割り引いて利用することができる契約保養所が全国に8か所ある。イまた,市は,市民保養所の設置を住民福祉のための重要な施策として位置づけ,昭和63年3月の市長の施政方針において,第4保養所の新設について調査を進める旨言及している。そして,市は,「2001かわさきプラン」(昭和58年策定)の実施計画として,平成2年に策定した中期計画において,基本方向の1つとして生涯福祉都市づくり」を掲げ,その重要な柱として,余暇・スポーツの項で新 市は,「2001かわさきプラン」(昭和58年策定)の実施計画として,平成2年に策定した中期計画において,基本方向の1つとして生涯福祉都市づくり」を掲げ,その重要な柱として,余暇・スポーツの項で新たな保養所(第4保養所)の建設を掲げた。さらに,平成5年に策定された「川崎新時代2010プラン」では生涯福祉都市づくりの中で「市民の憩いの場として,市民休養・保養交流施設の整備・充実」を掲げた。市民保養所の設置・運営を担当する市民局は,上記市長の施政方針演説のあった昭和63年3月から,第4保養所の用地選定の作業に入り,神奈川県県央部から,静岡県熱海市,伊東市方面まで拡大して調査したが,適切な用地を発見できず,平成5年度まで,用地の選定のめどが立たなかった。ウ上記状況のもと,市民局は,平成6年3月,当時の市議会議長である宮田良辰(甲76)から,本件土地の情報提供を受けて,同月24日及び同年6月17日から18日にかけて,現地視察を行い,本件土地につき多目的利用を含めた利用方法及び取得の可否を検討することとなった。市は,当初,川崎市役所健康保険組合とともに,共同利用することを検討したが,同健保組合の財政難から共同利用が困難となったので,平成7年10月,同組合と共同ではなく,多目的利用を考慮した市民利用施設用地として本件土地を先行取得する方針を固め,被告の決裁を経て,平成8年10月8日,公社に対して本件土地の先行取得の依頼をし,これを受けて公社が本件土地を取得した。 用方法及び取得の可否を検討することとなった。市は,当初,川崎市役所健康保険組合とともに,共同利用することを検討したが,同健保組合の財政難から共同利用が困難となったので,平成7年10月,同組合と共同ではなく,多目的利用を考慮した市民利用施設用地として本件土地を先行取得する方針を固め,被告の決裁を経て,平成8年10月8日,公社に対して本件土地の先行取得の依頼をし,これを受けて公社が本件土地を取得した。(以上(1)全体につき,甲51・77,乙16,弁論の全趣旨)(2) 本件土地取得の必要性の有無ア川崎市の既設保養所の部屋稼働率は,100%近い高率を維持しているものの,利用者数及び利用率は平成2年度以降減少傾向にある。また,既設保養所の申込件数は,平成5年度に2万8150名と 性の有無ア川崎市の既設保養所の部屋稼働率は,100%近い高率を維持しているものの,利用者数及び利用率は平成2年度以降減少傾向にある。また,既設保養所の申込件数は,平成5年度に2万8150名となった後は,減少に転じ,平成9年度では1万6451名となっており,大きくその件数を減らしている。また,平成10年度の川崎市市民保養施設等構想検討委員会作成の検討結果報告書では,市民保養所の利用の今後の予測について,「若干下降気味の傾向が見受けられる。」と分析している。さらに,市が平成9年度に実施したアンケート結果によると,既設保養所の存在について知らないと答えた人の割合は67%であり,知っていると答えた人のうちでも,一度も利用したことのない人の割合は70.6%に及び,約9割の人が利用したことがないと答えている。なお,南伊豆町の保養所数も減少傾向にある。(以上ア全体につき,甲41・46,乙14から16)イ前記(1)のとおり,市は,昭和47年以降,既設保養所を建設・運営し,昭和63年ごろから第4保養所の設置計画を推進していたことが認められるが,前記アのとおり,少なくとも平成5年度以降は,既設の市民保養所の需要自体減少傾向が顕著であることに照らすと,第4保養所の設置の必要性及び合理性についてはいささか疑問を抱かないではない。このような事実に加えて,本件土地は,前提となる事実(3)イのとおり市からやや離れた場所に存在すること,後記3のとおりの公法上の規制があり,安全性についても問題があることを考慮すると,公社が平成8年度に本件土地を取得する必要性があったかどうかについては疑問が生じる。 設の市民保養所の需要自体減少傾向が顕著であることに照らすと,第4保養所の設置の必要性及び合理性についてはいささか疑問を抱かないではない。このような事実に加えて,本件土地は,前提となる事実(3)イのとおり市からやや離れた場所に存在すること,後記3のとおりの公法上の規制があり,安全性についても問題があることを考慮すると,公社が平成8年度に本件土地を取得する必要性があったかどうかについては疑問が生じる。しかしながら,被告主張のとおり,保養所の設置の当否・程度という問題は,市における、政策の問題であり,そこには高度の政策的な裁量があることを認めるべきである。そ ったかどうかについては疑問が生じる。しかしながら,被告主張のとおり,保養所の設置の当否・程度という問題は,市における、政策の問題であり,そこには高度の政策的な裁量があることを認めるべきである。そのような見地に立つと,市が本件土地の取得を公社に依頼してこれを取得しようとしていることが高度の裁量権を濫用した違法なものであったとまではいえない。3 本件土地における開発行為等の許可の要否等(1) 序2のとおり,市が本件土地を取得して保養所を設置する行為自体は,裁量権を濫用したとまでは認められない。したがって,取得価格が適正かどうか,観点を変えれば公社購入価格が過大かどうかの検討が必要となる。そこで,本件土地の価格を判断する前提作業として,開発行為及びその許可の要否について,検討する。(2) 開発許可の要否ア都市計画法上の規定前提となる事実(3)ウ記載のとおり,本件土地は未線引都市計画区域内にあるため,3000平方メートルに及ぶ開発行為を行う場合には,都市計画法上の開発許可を受けなければならない(都市計画法附則4項,同法施行令附則4条の2)。そして,開発行為とは,建築物や特定工作物を建築するために行う土地の区画形質の変更であり(同法4条12項参照),「区画の変更」とは建築物の建築又は特定工作物の建設のための土地の区画の変更を,「形質の変更」とは切土,盛土又は整地のことをいうと解されている。イ上部平坦地における宿泊施設の建築と開発許可の要否上部平坦地は,8007.53平方メートルで,現況の地表面には凹凸があり,宅地造成が済んでいるという状況にはない(甲36,乙8,弁論の全趣旨一特に釈明処分としての検証の結果)。さらに,上部平坦地に至るまでは,上下水道等の公共施設の整備がされていない(争いがない)。 めの土地の区画の変更を,「形質の変更」とは切土,盛土又は整地のことをいうと解されている。イ上部平坦地における宿泊施設の建築と開発許可の要否上部平坦地は,8007.53平方メートルで,現況の地表面には凹凸があり,宅地造成が済んでいるという状況にはない(甲36,乙8,弁論の全趣旨一特に釈明処分としての検証の結果)。さらに,上部平坦地に至るまでは,上下水道等の公共施設の整備がされていない(争いがない)。したがって,上部平坦地に,建 いう状況にはない(甲36,乙8,弁論の全趣旨一特に釈明処分としての検証の結果)。さらに,上部平坦地に至るまでは,上下水道等の公共施設の整備がされていない(争いがない)。したがって,上部平坦地に,建築物を建築するためには,切土,盛土等の造成工事を行う必要があり,かつ,上下水道等の公共施設の整備が必須である。したがって,そのためには開発許可を受ける必要がある(証人P5,乙9の一部)。その場合,本件土地の開発には,まず幅員9メートルの道路の配置が必要となる(都市計画法33条1項2号,同条2項,同法施行令25条2号,都市計画法施行規則20条。なお,静岡県都市住宅部都市計画課作成の「都市計画法による開発行為等の手引き」(甲68))。また,本件土地の開発には,設置道路に側溝,街渠,その他の適当な施設を設け,道路の縦断勾配を原則として9パーセント以下にし,地形等によりやむを得ないと認められる場合は,小区間に限り,12パーセント以下とすることが必要である(同規則24条)(3) がけ地の落石・崩落の危険の有無ア証拠(P5鑑定,甲9・36・86)及び弁論の全趣旨によれば,本件土地の斜面地部分には,一部に風化した岩石が露出し,落石等も見られること,下部東側平坦地は,勾配が40度を超える急傾斜地に面しており,一部落石と思われる岩が存在すること,本件通路の途中には,巨大な切り立った岩石があり,また明らかに落石と思える石が見られること,上部平坦地には,ほぼ垂直のむき出しの岩壁が存在しており,緑色の防護ネットで覆われているが,ネットの一部には落石によって破れたと思われる箇所があることなどが認められる。さらに,前記2(1)ウのとおり,市が,本件土地の取得を検討するにあたり,平成6年6月17日から18日にかけて本件土地を調査したが,その際の報告書(甲77)には, る箇所があることなどが認められる。 明らかに落石と思える石が見られること,上部平坦地には,ほぼ垂直のむき出しの岩壁が存在しており,緑色の防護ネットで覆われているが,ネットの一部には落石によって破れたと思われる箇所があることなどが認められる。さらに,前記2(1)ウのとおり,市が,本件土地の取得を検討するにあたり,平成6年6月17日から18日にかけて本件土地を調査したが,その際の報告書(甲77)には, る箇所があることなどが認められる。さらに,前記2(1)ウのとおり,市が,本件土地の取得を検討するにあたり,平成6年6月17日から18日にかけて本件土地を調査したが,その際の報告書(甲77)には,本件土地上には安定性の悪い巨岩石が多く,落石や土砂崩れの発生するおそれのある旨の印象を抱いたとの記載がある。上記事実を総合すれば,本件土地は,いくつかの地点で落石等が発生したことがあり,少なくとも下部東側平坦地及び上部平坦地については,落石・土砂崩れ等が発生するおそれがあるというのが相当である。イなお,公社に本件土地を売却した伊東学園の前所有者である南伊豆園芸クラブが,本件土地に園芸学園を建設する計画を立てた際,南伊豆町から指導を受けて,平成2年9月から平成4年3月にかけて,本件土地上で,のり面・壁面の工事,U字溝設置,調整池の設置等の工事(費用は合計2億6440万1000円)を注文した事実がある(乙6の1から4)。しかしながら,その際どのような工事がされたかは別として,少なくとも現況においてはアのような事実が認められる。さらに,本件通路の途中に設置された調整池は,既に老朽化しており,今後,十分な機能を果たすことは期待できず,壁面の工事も不十分である(甲77,弁論の全趣旨)。そうである以上,小規模の落石及び将来の崩壊のおそれを否定することはできない。4 公社購入価格の過大の有無(1) 価格の多寡の判定方法そこで,次に本件土地の公社購入時の価格(公社購入価格)の適否を検討する。本件土地は,斜面上の広大な土地で,かつ,その中に平坦地が上下2段に含まれている。このような土地は,まとめて取引の対象となる場合であっても,それ自体をまとめて評価するか区分して評価するかという問題がある。これは,本件土地が通常どのように使われるかに関わる問題 段に含まれている。このような土地は,まとめて取引の対象となる場合であっても,それ自体をまとめて評価するか区分して評価するかという問題がある。 。本件土地は,斜面上の広大な土地で,かつ,その中に平坦地が上下2段に含まれている。このような土地は,まとめて取引の対象となる場合であっても,それ自体をまとめて評価するか区分して評価するかという問題がある。これは,本件土地が通常どのように使われるかに関わる問題 段に含まれている。このような土地は,まとめて取引の対象となる場合であっても,それ自体をまとめて評価するか区分して評価するかという問題がある。これは,本件土地が通常どのように使われるかに関わる問題であるが,その点は,必ずしも明らかではない。そうすると,一体的な利用が通例であるとまではいえない以上,少なくとも区分して価値をとらえて取引されると考えるのが相当である。ところで,本件においては,公社による本件土地の購入の際にP4鑑定がされ,本訴では不動産鑑定士P5による鑑定がされ,その後に,被告から不動産鑑定士P6が作成した鑑定意見書(P6鑑定)が提出された。そして,これら3名の不動産鑑定士による鑑定の結果は,別紙2「各鑑定の比較」のとおり大きく異なっている。そこで,このような点を踏まえ,公社購入価格の適否を検討する。(2) P4鑑定の概要((2)は,証人P4の証言を加味した上での甲3の要約である。)前提となる事実(2)のとおり,公社購入価格は,P4鑑定(甲3)に基づいて決定されたものであり,P4評価額と同一である。P4鑑定の概要は次のとおりである。なお,鑑定評価の価格時点は平成8年9月2日である。ア鑑定手法本件土地を,林地(実測面積5万7847.97平方メートル。以下「本件林地」という。なお,P5鑑定では,これに3.3平方メートルを加算した面積である。),本件平坦地(自然宅地。実測面積1万2844.91平方メートル),鉱泉地(本件鉱泉地)に区分し,各物件が一体として利用されることを前提に,それぞれ個別部分について価格評価を行った、本件土地には,前提となる事実(3)ウ記載の公法上の規制があること,本件土地内に本件鉱泉地があることを考慮して,本件平坦地については保養所施設又は別荘地を最有効使用であるとした。一方,本件林地につい 土地には,前提となる事実(3)ウ記載の公法上の規制があること,本件土地内に本件鉱泉地があることを考慮して,本件平坦地については保養所施設又は別荘地を最有効使用であるとした。一方,本件林地については,25度から40度以上の傾斜があるため,開発は不可能であるとして,現況のまま用材林地以外の利用法は考えられないとした。 件平坦地については保養所施設又は別荘地を最有効使用であるとした。一方,本件林地につい 土地には,前提となる事実(3)ウ記載の公法上の規制があること,本件土地内に本件鉱泉地があることを考慮して,本件平坦地については保養所施設又は別荘地を最有効使用であるとした。一方,本件林地については,25度から40度以上の傾斜があるため,開発は不可能であるとして,現況のまま用材林地以外の利用法は考えられないとした。イ本件平坦地の評価(ア) 標準画地価格の算定近隣地域における宅地495平方メートルを標準画地として想定し,①別紙3(上段は甲3及び乙1の添付資料)のとおり,周辺の類似地区内の取引事例No. 4ないし6に,それぞれ補正を行って,取引事例No.4の標準画地価格を3万7700円/㎡(このような場合に,「1平方メートル当たり」という意味で便宜「/㎡」と表記することがある。),同No.5を5万2600円/㎡,同No. 6を5万2400円/㎡と算出し,No.5及び6の価格を中心に比準価格として5万2500円/㎡を求め,②標準画地に建物を建て,温泉付貸別荘として運用した場合を想定した収益価格を4万1400円/㎡と求め,③別紙3の「公示地」欄記載のとおり,公示価格を規準とした標準画地の価格を4万4000円/㎡と求めた。そして,上記比準価格と収益価格を参照に,公示価格を規準とした価格との均衡に留意して,標準画地の価格を5万円/㎡と決定した。(イ) 個別要因格差による修正本件平坦地を温泉付大型別荘地又は保養所として利用することを想定していることから,標準画地の価格と本件平坦地価格との個別的要因格差として,①道路整備のための潰地,利用不可能なのり地等の減価6.6%,②切土,盛土の造成・整地に要する費用の減価5%を考慮し,本件平坦地(自然宅地)の評価額を4万4200円/㎡と決定した。上記評価額に,本件平坦地の地積1万2844.82㎡ のり地等の減価6.6%,②切土,盛土の造成・整地に要する費用の減価5%を考慮し,本件平坦地(自然宅地)の評価額を4万4200円/㎡と決定した。上記評価額に,本件平坦地の地積1万2844.82㎡を乗じて,同土地の評価額を5億6774万2000円と決定した。50,000円×{1一(0.066十0.05)}×12,844.82㎡≒567,742,000円ウ本件林地の評価取引事例比較法による比準価格として,805円/㎡を求めた。 ②切土,盛土の造成・整地に要する費用の減価5%を考慮し,本件平坦地(自然宅地)の評価額を4万4200円/㎡と決定した。上記評価額に,本件平坦地の地積1万2844.82㎡を乗じて,同土地の評価額を5億6774万2000円と決定した。50,000円×{1一(0.066十0.05)}×12,844.82㎡≒567,742,000円ウ本件林地の評価取引事例比較法による比準価格として,805円/㎡を求めた。一方,静岡県基準地価格として,570円/㎡を求め,それとの均衡を考慮して,本件林地の単位当たり評価額を660円/㎡と決定し,これに地積5万7847.97㎡を乗じて本件林地全体の価格を3818万円と決定した。660円×57,847.97㎡≒38,180,000円工本件鉱泉地の評価鉱泉地の価格は,一般に,源泉地盤所有権,採取設備所有権,源泉権の価格の合計からなるとし,本件鉱泉地には採取設備がないことから,源泉地盤所有権と源泉権を評価し,その評価額の合計を評価額とした。源泉地盤所有権の評価額については,前記イの平坦地の標準画地の価格5万円/㎡を基準に,その立地条件を考慮して5%の減価を行い,これに地積3.3平方メートル・持分割合3分の2を乗じて10万5000円と決定した。50,000円×(1-0.05)×3.3㎡×2/3≒105,000円源泉権の評価額については,取引事例比較法に基づく比準価格,固定資産評価に応ずる価格,分湯想定法による価格,原価法に基づく積算価格をそれぞれ試算し,最も信頼性のある取引事例比較法による比準価格(1696万円)を採用し,これに持分割合3分の2を乗じて評価額を1131万円と決定した。そして,上記源泉地盤所有権の評価額と併せて,本件鉱泉地の評価額を1142万円と決定した 較法による比準価格(1696万円)を採用し,これに持分割合3分の2を乗じて評価額を1131万円と決定した。そして,上記源泉地盤所有権の評価額と併せて,本件鉱泉地の評価額を1142万円と決定した。(3) P4鑑定の実施経緯ア原告らの主張原告らがP4鑑定の作成経緯に疑念を呈しているので,内容の検討の前に作成経緯を検討する。イ作成経緯P4鑑定書(甲3)が作成された経緯について,証拠(証人P4の一部,乙1,甲48から51・62・77)及び弁論の全趣旨から,次のとおり認められる。(ア) 市の試算価格市は,平成7年10月,本件土地を取得する方針を決定したが(前記2(1)ウ),その時点では,市が直接取得する方式も選択肢として考えられていた。 原告らがP4鑑定の作成経緯に疑念を呈しているので,内容の検討の前に作成経緯を検討する。イ作成経緯P4鑑定書(甲3)が作成された経緯について,証拠(証人P4の一部,乙1,甲48から51・62・77)及び弁論の全趣旨から,次のとおり認められる。(ア) 市の試算価格市は,平成7年10月,本件土地を取得する方針を決定したが(前記2(1)ウ),その時点では,市が直接取得する方式も選択肢として考えられていた。そこで,市は,平成8年度予算に本件土地の取得費の予算を要求するため,温泉組合及び民間企業からの情報をもとに,本件土地の価格を試算し,平成7年11月21日付けで,別紙4のとおり,用地買収費を約5億6099万2000円(以下「市試算額」という。)とする「用地買収費の根拠(概算)」と題する資料(甲48)を作成した。その後,公社による先行取得の方針が確定したので,公社に対して本件土地の先行取得を依頼するため,市民局は,平成8年6月11日起案の「用地買収及び物件補償執行確認書」(甲49)を企画財政局長に送付して同年7月2日に市長決裁を受け,さらに同月8日付けの「用地買収及び物件補償事業依頼書」(甲50)を土木局長に送付した。これらの手続上作成された上記書類(甲49・50)には,市試算額を四捨五入した金額「5億6100万円」が取得予定価格として記入されていた。(イ) P4による鑑定の実施市は,平成8年7月中旬,口頭で迫・P4鑑定事務所に対して,本件土地の鑑定を依頼した。P4は,鑑定の作業に当た 5億6100万円」が取得予定価格として記入されていた。(イ) P4による鑑定の実施市は,平成8年7月中旬,口頭で迫・P4鑑定事務所に対して,本件土地の鑑定を依頼した。P4は,鑑定の作業に当たって,本件土地の実測図,公図,登記簿謄本,固定資産税評価証明書(温泉権を除く),温泉権の取引事例1件の資料の提供を市から受けた。P4は,市の職員(土木局用地部のP7,P8,P9)と共に,同月22日に本件土地の現地調査を実施し,同年8月26日に,補充的に本件土地を確認した後,土木局用地部のP10の案内によって,取引事例地等の現地を確認し,その後南伊豆町役場及び南伊豆町温泉組合に寄って,調査を実施した。なお,その際,P4らは,静岡県の土木事務所や県庁には立ち寄らず,その後も,鑑定を行うに当たって,静岡県が定めている本件土地の開発の規制等については全く調査をしなかった。 ,P9)と共に,同月22日に本件土地の現地調査を実施し,同年8月26日に,補充的に本件土地を確認した後,土木局用地部のP10の案内によって,取引事例地等の現地を確認し,その後南伊豆町役場及び南伊豆町温泉組合に寄って,調査を実施した。なお,その際,P4らは,静岡県の土木事務所や県庁には立ち寄らず,その後も,鑑定を行うに当たって,静岡県が定めている本件土地の開発の規制等については全く調査をしなかった。そして同年9月30日付けで,本件土地の不動産鑑定評価書(乙1)を市に対して提出した。(ウ) 先行取得の依頼市は,平成8年9月30日付けのP4作成に係る不動産鑑定評価書(乙1)の提出を受けたため,企画財政局財政課長が,同年10月4日に,(ア)の甲49・50の書類の金額部分をP4評価額である「6億1734万2000円」に訂正した。そして,同月8日付けで甲50の依頼書に対し土木局長決裁がされ,被告は,同日付けで公社に対し本件土地の先行取得を依頼した(甲51)。(エ) 公社による鑑定依頼その後,公社は,迫・P4鑑定事務所との間で,平成8年10月29日,鑑定委託契約を締結し,P4から同年11月18日付け不動産鑑定評価書(甲3)の提出を受けた。ウ P4鑑定の作成経緯についての疑義の有無(2つの鑑定書の異同)前記イ(イ)のとおり,P4は,乙1及び甲3の2つの鑑定書を作成したが,その 1月18日付け不動産鑑定評価書(甲3)の提出を受けた。ウ P4鑑定の作成経緯についての疑義の有無(2つの鑑定書の異同)前記イ(イ)のとおり,P4は,乙1及び甲3の2つの鑑定書を作成したが,その鑑定内容における記載は,下記の点が異なっているほかは,同一である。記項目乙1の鑑定書甲3の鑑定書①実地調査日の日付平成8年7月22日平成8年10月31日②本件土地の公法上の規制都市計画区域外都市計画区域内・未線引区域③取引事例No.2,No.3の「公法上の規制」欄都市計画区域外都市計画区域内④基準値林-19の「公法上の規制」欄都市計画区域・未線引都市計画区域内・未線引上記①については,甲3の鑑定書に記載された「実地調査日」である「平成8年10月31日」に実際に前記イ(イ)の2回に加えて3度目の現地調査が行われた事実はない。現地調査の実施日を,鑑定委託契約が締結された後の日付とする必要があったため,市からその日に合わせてほしい旨の要請があり,P4が虚偽の事実を記載したものである(証人P4)。 値林-19の「公法上の規制」欄都市計画区域・未線引都市計画区域内・未線引上記①については,甲3の鑑定書に記載された「実地調査日」である「平成8年10月31日」に実際に前記イ(イ)の2回に加えて3度目の現地調査が行われた事実はない。現地調査の実施日を,鑑定委託契約が締結された後の日付とする必要があったため,市からその日に合わせてほしい旨の要請があり,P4が虚偽の事実を記載したものである(証人P4)。また,上記②及び③については,甲3の鑑定書の記載が正しい。P4が甲3の鑑定書の提出時に訂正したものである(証人P4)。このように,ほとんど期間を経ずに同一の鑑定事項について2通のP4鑑定書が作成されたが,それは,市と公社との別個の依頼に基づき形式上2つの別個の鑑定書が作成されたということである。そして,内容は変わらないので,先に完成した乙1の鑑定書を流用し,誤りの訂正を要する箇所(上記②③④)及び形式的な整合性の必要な箇所(上記①)について訂正をして,甲3の鑑定書が作成された。上記2通の鑑定書が存在することの理由は,以上のとおりであり,このことを超えて,例えば市の担当者がP4鑑定の鑑定価格を誘導して(原告らの主張),先に甲3 について訂正をして,甲3の鑑定書が作成された。上記2通の鑑定書が存在することの理由は,以上のとおりであり,このことを超えて,例えば市の担当者がP4鑑定の鑑定価格を誘導して(原告らの主張),先に甲3の鑑定書を作成させ,そのことを隠すために乙1の鑑定書が作成日時を遡及して事後に作成されたといったことまでの事実を認めるに足りる証拠はない。もっとも,市と公社とが鑑定書を必要とするとしても,鑑定依頼を市と公社とが同一鑑定人に別々に行い,形式的とはいえ,別個の2通の鑑定書を作成する事務のあり方には,疑問を感じることを付言する。(4) P4鑑定の検討ア序P4鑑定は,本件土地を一体として利用することが最有効使用であるとした上で,本件平坦地を一体として評価している。ただし,その場合に特に上部平坦地等を平均的な平坦地として扱うには補正を施す必要があるので,標準的な画地に対する本件平坦地の格差率(P5鑑定ではマイナス50%としているのに対し,P4鑑定ではマイナス11.6%)がどのように判断されるべきかの点を中心に,P4鑑定の内容について検討する。イ上部平坦地の利用方法と土地の減価の要否(ア) P4鑑定は,最有効使用に基づく本件土地の利用方法を想定する際に,上部平坦地に建物を建て,下部西側平坦地に運動施設,下部東側平坦地に駐車場を設置すると想定した(証人P4)。 地に対する本件平坦地の格差率(P5鑑定ではマイナス50%としているのに対し,P4鑑定ではマイナス11.6%)がどのように判断されるべきかの点を中心に,P4鑑定の内容について検討する。イ上部平坦地の利用方法と土地の減価の要否(ア) P4鑑定は,最有効使用に基づく本件土地の利用方法を想定する際に,上部平坦地に建物を建て,下部西側平坦地に運動施設,下部東側平坦地に駐車場を設置すると想定した(証人P4)。さらに,上部平坦地の建築物については,建築面積約650平方メートル,延べ面積で1950平方メートル,3階建て,収容人員7~80名規模の保養施設を想定した。ところで,本件土地上に建築物を建築することは,都市計画法上の開発行為に該当するため(前記3(2)イ),都市計画法上の各基準を充たす必要がある。そうすると,上部平坦地と国道を結んでいる本件通路について,同基準を充たすための造成工事が必 ことは,都市計画法上の開発行為に該当するため(前記3(2)イ),都市計画法上の各基準を充たす必要がある。そうすると,上部平坦地と国道を結んでいる本件通路について,同基準を充たすための造成工事が必要であるが,本件通路については勾配を9%以下にすることが極めて困難であって,その工事費用は非常に膨大な額になる可能性がある(証人P5)。したがって,上部平坦地を標準的な宅地として扱うためにはそれだけの工事費用を要するということであるから,上部平坦地の評価に際しては,上記費用分を減価する必要がある。(イ) この点についてP4は,仮に開発許可を受ける必要があるとしても,鑑定手法として開発法ではなく取引事例比較法を採用する以上,開発許可を受けるためにかかる工事費用等は,鑑定評価額に影響しない旨証言する。しかし,取引事例比較法においても,開発許可基準を満たすために接面道路に工事を要する土地と,何ら問題のない土地とでは,明らかに格差があるというべきであって,P4が採用した標準画地は通常の宅地なのであるから,この点について考慮する必要がある。したがって,上部平坦地に建築物(宿泊施設)を建築することを前提とし,しかも開発許可を受けるための費用を何ら考慮しないというのは適当ではない。なお,被告は,「本件平坦地の最有効使用は,各平坦地に宿泊施設,運動施設,公園,園芸施設等を適宜配置するものであるから,仮に上部平坦地に建物を建築することが困難であっても,下部平坦地に建築すれば足り,最有効使用に従った利用方法は何ら妨げられない。 する必要がある。したがって,上部平坦地に建築物(宿泊施設)を建築することを前提とし,しかも開発許可を受けるための費用を何ら考慮しないというのは適当ではない。なお,被告は,「本件平坦地の最有効使用は,各平坦地に宿泊施設,運動施設,公園,園芸施設等を適宜配置するものであるから,仮に上部平坦地に建物を建築することが困難であっても,下部平坦地に建築すれば足り,最有効使用に従った利用方法は何ら妨げられない。したがって,上部平坦地は,減価を要しない。」旨主張し,P4はこれに沿った供述をする。しかしながら,その場合には,上部平坦地について,宿泊施設を建築することができず,その意味で土地の利用方法が限定されるのであるから,土地の価格はその分 。」旨主張し,P4はこれに沿った供述をする。しかしながら,その場合には,上部平坦地について,宿泊施設を建築することができず,その意味で土地の利用方法が限定されるのであるから,土地の価格はその分減価すべきである。また,仮に,建築物を建築しないとしても,上部平坦地に何らかの施設を造る以上,そこに至る本件通路の防災上の安全性は考慮すべきであって,土地の価格はその分減価すべきである。これに反するP4の供述は信用できず,上記被告の主張を採用することはできない。ウ落石の危険による減価の要否下部東側平坦地については,前記3(3)のとおり,急斜面の落石・崩落等の危険があるが,P4鑑定はこれを適正に評価していない。この点,被告は,仮に落石の危険があったとしても,下部東側平坦地については,駐車場や堅固建築物を建築するという手段があるから,本件平坦地の最有効使用が限定されることはない旨主張するが,後記(6)ア(エ)で判示するとおり,被告の主張は採用できない。エ排水設備費用による減価の要否本件土地を開発するに当たっては,雨水対策を十分に行う必要があり,宅地にするための造成費のほか,防災排水設備(調整池,U字溝)等の造成費を考慮する必要があるが,P4鑑定はこの点について,適切に考慮していない。P4は,排水設備は建物の建築に付随する問題で,土地の鑑定時には考慮すべきではない旨供述するが,少なくとも防災排水設備については,その必要がない標準画地と必要な本件平坦地とを比較する際,その必要面積について適正に減価して評価するべきである。したがって,P4の上記供述は採用できない。オ鑑定の際の調査方法の適否P4は,鑑定を行う際,本件土地の開発許可について権限を有する静岡県都市住宅部土地対策室,建築確認について権限を有する同都市住宅部建築確認検査室から 定時には考慮すべきではない旨供述するが,少なくとも防災排水設備については,その必要がない標準画地と必要な本件平坦地とを比較する際,その必要面積について適正に減価して評価するべきである。したがって,P4の上記供述は採用できない。オ鑑定の際の調査方法の適否P4は,鑑定を行う際,本件土地の開発許可について権限を有する静岡県都市住宅部土地対策室,建築確認について権限を有する同都市住宅部建築確認検査室から 述は採用できない。オ鑑定の際の調査方法の適否P4は,鑑定を行う際,本件土地の開発許可について権限を有する静岡県都市住宅部土地対策室,建築確認について権限を有する同都市住宅部建築確認検査室から情報を入手することを行っていない((3)イ(イ))。また,乙1のP4鑑定書には,本件土地の公法上の規制について,「都市計画区域外」と,明らかに誤った記載がされている((3)ウ)。これらの点は,不動産鑑定士として適切な対応であったかについて問題を提供するものではあり,P4鑑定全体の信用度に影響を与えるというべきである。カまとめ上記イ及びウのとおり,P4鑑定は,本件平坦地の一体評価を前提とした結果,各平坦地の個別の事情,特に上部平坦地の問題点(建築物の建築の是非,接面する本件通路の安全・防災上の問題点等)についておよそ考慮せず,事実上,最も条件が優れた下部西側平坦地と同じ条件で全平坦地の価格を算定した。その結果,不当に高額な評価額になっているということができ,鑑定内容については問題がある。その上,オのような問題もある。以上から,P4鑑定は採用することができない。(5) P5鑑定の概要((5)は,証人P5の証言を加味した上での同鑑定書の要約である。)P5鑑定は,本件土地を,山林等の傾斜地(本件林地と同一の部分),平坦雑種地(本件平坦地と同一の部分)及び鉱泉地とに区別し,平坦雑種地(本件平坦地)を一体的に使用してリゾート(保養・宿泊)施設敷地とすることが最有効使用であり,山林等傾斜地(本件林地)は,植林地を含む保存緑地とすることが相当であるとして,山林等傾斜地,平坦雑種地,鉱泉地を評価し,その合計額をもって本件土地の評価額とした(鑑定書の「1号評価」)。その結果,平成8年12月9日時点での本件土地の評価額を3億9410万円(以下「P5評 て,山林等傾斜地,平坦雑種地,鉱泉地を評価し,その合計額をもって本件土地の評価額とした(鑑定書の「1号評価」)。 有効使用であり,山林等傾斜地(本件林地)は,植林地を含む保存緑地とすることが相当であるとして,山林等傾斜地,平坦雑種地,鉱泉地を評価し,その合計額をもって本件土地の評価額とした(鑑定書の「1号評価」)。その結果,平成8年12月9日時点での本件土地の評価額を3億9410万円(以下「P5評 て,山林等傾斜地,平坦雑種地,鉱泉地を評価し,その合計額をもって本件土地の評価額とした(鑑定書の「1号評価」)。その結果,平成8年12月9日時点での本件土地の評価額を3億9410万円(以下「P5評価額」という。)と判定した。また,本件平坦地について,それぞれ個別取引を前提とした評価額を算定し,上部平坦地を1億2730万円(同「2号評価」),下部東側平坦地を2870万円(同「3号評価」),下部西側平坦地を1億4860万円(同「4号評価」)と判定した。上記の一体的使用に係るP5鑑定の具体的内容は,次のとおりである。ア平坦雑種地(本件平坦地)の評価(ア) 評価方法P4鑑定と同様,本件平坦地を一体として評価することとし,まず標準画地として,国道背後の幅員4メートルの舗装された公道に接面する300平方メートル程度の標準的な更地を想定して,取引事例比較法による比準価格,収益還元法による収益価格を求め,公示価格との均衡を考慮して当該標準画地の価格を求め,次に個別格差率を乗じて,本件平坦雑種地の価格を求めた。(イ) 標準画地の価格①周辺の類似地区内の取引事例5例を基に,別紙5のとおり,それぞれ補正を行って,取引事例Fについて5万1700円/㎡,同Gについて5万3500円/㎡,同Hについて5万4300円/㎡,同Iについて5万2800円/㎡を算出し,これらのほぼ中庸値をもって比準価格5万3000円/㎡を求め,②直接法(対象不動産の総収益から,これに対応する総費用を控除して直接的に求める方法)を適用し,想定更地に帰属する純収益を査定して,収益価格を3万8000円/㎡と求め,③別紙5のJのとおり,公示価格を規準とした価格を4万7800円/㎡と求めた。そして,本件土地の周辺には,収益物件が多くないこと,公示価格を規準とした価格と比準価格 格を3万8000円/㎡と求め,③別紙5のJのとおり,公示価格を規準とした価格を4万7800円/㎡と求めた。そして,本件土地の周辺には,収益物件が多くないこと,公示価格を規準とした価格と比準価格が相応の均衡を保っていることなどから,比準価格を相当と認め,想定更地の評価額を5万3000円/㎡と算出した。 ㎡と求めた。そして,本件土地の周辺には,収益物件が多くないこと,公示価格を規準とした価格と比準価格 格を3万8000円/㎡と求め,③別紙5のJのとおり,公示価格を規準とした価格を4万7800円/㎡と求めた。そして,本件土地の周辺には,収益物件が多くないこと,公示価格を規準とした価格と比準価格が相応の均衡を保っていることなどから,比準価格を相当と認め,想定更地の評価額を5万3000円/㎡と算出した。(ウ) 個別的要因格差想定更地の価格と本件平坦地価格との個別的要因格差として,①想定更地に比して,対象画地が系統連続性に優る国道に接面していることによる増価5%,②本件平坦地が3区分されているため分割利用せざるを得ないことによる減価5%,③下部東側平坦地に対し崩落の危険もある40度以上の急傾斜地が迫っていることによる減価2%,④上部平坦地への取付通路が安全性・防災性の観点から問題なしとはしないことによる減価13%,⑤現況雑種地であり,宅地とするための造成費の考量からの減価10%,⑥面大による市場性からの減価15%,⑦有効宅地化率の検討からの減価10%と判断し,上記①から⑦を併せて,標準画地との格差率をマイナス50%と評価し,本件平坦地の価格を総額3億4040万円と求めた。53,000円×50/100×12,844.82㎡≒340,400,000円イ山林等傾斜地(本件林地)の評価(ア) 評価方法通路・調整池・防災工事施工のり面等を含む傾斜地を一体として評価対象とし,近隣地域内において南傾斜で勾配30から40度の1万平方メートル程度の整形山林を想定し,これについて比準価格を中心として求め,次いでこれと本件林地との格差を判定して,本件林地の価格を求めた。(イ) 標準画地の価格周辺の類似地区内の取引事例を基に,補正を行った価格の中庸値である690円/㎡をもって,標準画地の比準価格とし,別途山林標準価格を算定して同価格とも相応の の価格を求めた。(イ) 標準画地の価格周辺の類似地区内の取引事例を基に,補正を行った価格の中庸値である690円/㎡をもって,標準画地の比準価格とし,別途山林標準価格を算定して同価格とも相応の均衡が保たれていると判断して,上記比準価格を標準画地の価格とした。(ウ) 個別的要因格差標準画地と対象地との格差について,①築造された通路及び防災工事施工済ののり面等を有し,一定効用を発揮している部分の存在による増価20%,②岩石が露出して崩壊・崩落の危険性があり,保存緑地としても効用が劣ると認められる部分の存在による減価を15%とし,山林等傾斜地(本件林地)の価格を4170万円と求めた。 も相応の均衡が保たれていると判断して,上記比準価格を標準画地の価格とした。(ウ) 個別的要因格差標準画地と対象地との格差について,①築造された通路及び防災工事施工済ののり面等を有し,一定効用を発揮している部分の存在による増価20%,②岩石が露出して崩壊・崩落の危険性があり,保存緑地としても効用が劣ると認められる部分の存在による減価を15%とし,山林等傾斜地(本件林地)の価格を4170万円と求めた。690円×105/100×57,851.27㎡≒41,700,000円ウ本件鉱泉地の評価第1次温泉権(湯口地盤所有権,湯口権,採取設備所有権)の価格をもって標記の価格とし,取引事例比較法による比準価格,原価法による積算価格,地元保証金慣行方式による価格を試算し,比準価格を中心として,本件鉱泉地の価格を1200万円と求めた。(6) P5鑑定の検討ア本件平坦地の評価について(ア) 一体的評価の是非上部平坦地と下部平坦地とでは相違点もあるのに,P5鑑定は,P4鑑定と同様,本件平坦地について一体的に評価している。しかしながら,P5鑑定では,標準画地と本件平坦地との個別的要因格差を算定する際には,各平坦地固有の問題を取り上げ,それを本件平坦地全体の面積で加重平均するという手法を取り入れている。それにより,各平坦地の異なった条件を考慮して,本件平坦地の価格を算定しているので,その評価額は相当程度の合理性を有するものとうかがわれる。以下,被告の主張に対する検討を通じて,その内容を個別に吟味する。(イ) 国道接面による格差(プラス5%)認定の当否a を算定しているので,その評価額は相当程度の合理性を有するものとうかがわれる。以下,被告の主張に対する検討を通じて,その内容を個別に吟味する。(イ) 国道接面による格差(プラス5%)認定の当否a 被告は,P5鑑定では国道に接面した土地である取引事例Gと国道背後地に想定した標準画地との地域格差について35%の増価を認めているから,国道に接面する本件平坦地と標準画地との地域格差も同様にプラス35%である旨主張する。b しかしながら,まず,本件平坦地のうち上部平坦地の部分については,国道接面による増価を認めることができない。また,下部東側平坦地の部分については,本件鉱泉地以東で国道と接面しているものの,国道との高低差が1ないし2メートルあることから,取引事例Gと同様に考えることはできない。 について35%の増価を認めているから,国道に接面する本件平坦地と標準画地との地域格差も同様にプラス35%である旨主張する。b しかしながら,まず,本件平坦地のうち上部平坦地の部分については,国道接面による増価を認めることができない。また,下部東側平坦地の部分については,本件鉱泉地以東で国道と接面しているものの,国道との高低差が1ないし2メートルあることから,取引事例Gと同様に考えることはできない。P5個別鑑定では,下部東側平坦地と標準画地との間で格差を認めておらず,この評価は妥当である。また,取引事例Gの地域格差は,別紙5の下段の表のとおり,街路条件20%,環境条件15%とされており,国道接面による増価は20%にとどまるということができる。そうすると,本件平坦地のうち,国道接面による増価が認められるのは,下部西側平坦地部分に限られ,しかもその格差は20%の増価にとどまる。そこで,これを本件平坦地全体の面積で加重平均すると,次のとおり5%程度の増価となる。(3,294.52㎡(平坦地A)X1.20+1,542.76㎡(同B)十8,007.54㎡(同C))÷12,844.82㎡(本件平坦地)≒1.05したがって,国道接面による本件平坦地の増価を5%としたP5鑑定は正当である。(ウ) 分割利用による格差(マイナス5%)認定の当否a 被告は,個別格差の検討において問題とすべきは標準画地との格差であるとして,P5鑑定の標準画地は300平方メートルと P5鑑定は正当である。(ウ) 分割利用による格差(マイナス5%)認定の当否a 被告は,個別格差の検討において問題とすべきは標準画地との格差であるとして,P5鑑定の標準画地は300平方メートルという狭少な土地であるところ,本件平坦地には300平方メートル以下に分割利用せざるを得ない部分はないから,分割利用を理由とする減価は不当である旨主張するb しかしながら,まとまって存在する土地と,分散して存在する土地とを比較した場合,後者の方が土地の利用方法が限定されるのは当然である。P5鑑定での標準画地は,一体としてまとまって存在する標準的な宅地を想定しているのであるから,3か所に分散している本件平坦地を評価する際は,その違いを考慮する必要がある。被告の主張は,地積の違いによる格差(面大・面小による格差)と,分割して利用せざる得ないことによる格差とを混同しており,採用できない。 る土地と,分散して存在する土地とを比較した場合,後者の方が土地の利用方法が限定されるのは当然である。P5鑑定での標準画地は,一体としてまとまって存在する標準的な宅地を想定しているのであるから,3か所に分散している本件平坦地を評価する際は,その違いを考慮する必要がある。被告の主張は,地積の違いによる格差(面大・面小による格差)と,分割して利用せざる得ないことによる格差とを混同しており,採用できない。(エ) 下部東側平坦地の崩落の危険による格差(マイナス2%)認定の当否a 被告は,「土地利用の限定を理由とする減価は,同土地の最有効使用が限定される程度によって判定されるべきであり,P5鑑定における本件平坦地の最有効使用は各平坦地に宿泊施設,運動施設,公園,園芸施設等を適宜配置するというものであって,各平坦地全てに建物を建築するというものではないから,仮に,下部東側平坦地に落石のおそれがあるとしても,最有効使用に沿った利用が可能であれば,土地利用限定を理由とする減価の必要はない。」旨主張する。b しかしながら,下部東側平坦地は,リゾート用地としての最有効使用を前提としても,上記のように落石のおそれが高いことから,落石による影響を受けない強固な建築物を建築するか,園芸地あるいは駐車場等に利用することしかできない。したがって,その限りで土地の使用方法が限定されているという 記のように落石のおそれが高いことから,落石による影響を受けない強固な建築物を建築するか,園芸地あるいは駐車場等に利用することしかできない。したがって,その限りで土地の使用方法が限定されているというべきであり,これを理由に2%減価したP5鑑定は正当であって,被告の主張は採用できない。(オ) 本件通路が開発基準を充足しないことによる格差(マイナス13%)認定の当否a 被告は,「P5鑑定は,本件通路が開発行為の基準(道路勾配等の基準)を充足するのに問題があることを主たる理由として減価しているが,開発行為の基準を充たす必要があるのは,当該道路が都市計画法上の開発行為の許可を要する区域内の道路として位置づけられた場合のことであって,同区域内の通路(道路ではない。)として位置づければ何ら問題がない。」旨主張する。b 上記の主張の趣旨は,上部平坦地に建築物を建築した場合に開発許可を要するとしても,本件土地が国道に接面しているので,本件土地内には都市計画法33条1項2号にいう「道路」を設ける必要がないというもののようであるが,本件平坦地が相当広い面積を有して,分散して存在していることに照らすと,上記の主張は非現実的であって,採用することができない。 路ではない。)として位置づければ何ら問題がない。」旨主張する。b 上記の主張の趣旨は,上部平坦地に建築物を建築した場合に開発許可を要するとしても,本件土地が国道に接面しているので,本件土地内には都市計画法33条1項2号にいう「道路」を設ける必要がないというもののようであるが,本件平坦地が相当広い面積を有して,分散して存在していることに照らすと,上記の主張は非現実的であって,採用することができない。また,仮に,上部平坦地に宿泊施設等の建築物を建築せず,開発許可を受けない形での利用方法を考えるというのであれば,それは,土地の利用方法に大幅な制約を設けることであり,開発行為をしないことによるよりも大きな格差があることを意味し,それだけの評価減を要する。なお,P5鑑定は,前記(5)アのとおり,標準画地との格差を判定して,本件平坦地の価格を求める鑑定手法を採用したのであり,開発許可を要するか否かが直接問題になるわけではない。接面する通路の状態が標準画地と比較して格差があるか否かが問題となる。そこで,こ を判定して,本件平坦地の価格を求める鑑定手法を採用したのであり,開発許可を要するか否かが直接問題になるわけではない。接面する通路の状態が標準画地と比較して格差があるか否かが問題となる。そこで,この観点から見ると,上部平坦地が接面する本件通路は,前提となる事実(3)アのとおり平均勾配は約14パーセントの急な通路であること,幅員が平均約5メートルで,国道から上部平坦地に至るまで4か所の急カーブがあり,大型自動車がすれ違うのは困難であること,通路の右側は一部急斜面があり,落石のおそれが認められること(以上につき,P5鑑定,甲77,弁論の全趣旨)などから,安全性・防災性には問題が多い。これに対し,P5鑑定における標準画地は,舗装公道に接面する標準的な更地が想定されている。したがって,本件通路に接面する上部平坦地については,上記問題点による減価をする必要がある。被告の主張は採用できない。(カ) 造成費の考量による格差(マイナス10%)認定の当否aP5鑑定における造成費とは,都市計画法上の開発基準を基本的にクリアするための造成に要する経費である。絶対額としては,合計7000万円と積算され,そのうち4700万円が雨水対策(調整池・U字側溝)費用である(証人P5)。これを格差率に直して,少なくとも10%とすることは,本件土地全体の価格に占める造成費の割合的な対比から見て,合理性はある。 (カ) 造成費の考量による格差(マイナス10%)認定の当否aP5鑑定における造成費とは,都市計画法上の開発基準を基本的にクリアするための造成に要する経費である。絶対額としては,合計7000万円と積算され,そのうち4700万円が雨水対策(調整池・U字側溝)費用である(証人P5)。これを格差率に直して,少なくとも10%とすることは,本件土地全体の価格に占める造成費の割合的な対比から見て,合理性はある。そして,この点に関し,被告は,本件平坦地(雑種地)の最有効使用には必ずしも都市計画法上の開発行為を必要とせず,開発基準を充たすための造成は不要である旨主張する。b ところで,前記(オ)で判示したように,P5鑑定においては,開発許可を要するか否かが直接問題となるのではなく,標準画地との格差の有無程度が問題である。そこで,検討するに,前記3(3)イのとおり,平成 ところで,前記(オ)で判示したように,P5鑑定においては,開発許可を要するか否かが直接問題となるのではなく,標準画地との格差の有無程度が問題である。そこで,検討するに,前記3(3)イのとおり,平成4年ごろにかけてされた防災工事で,本件平坦地,本件通路部分等には,一定のU字溝が設置され,本件通路の途中には調整池が設置されたが,なお,本件土地上に保養所等を設置する上で,雨水対策等が十分であるということはできない(甲77,証人P5,弁論の全趣旨)。したがって,P5鑑定で標準画地として想定された標準的な更地との格差があることは明らかであり,本件平坦地の評価においては,宅地造成のためにかかる費用を考慮して減価する必要がある。(キ) 面大による格差(マイナス15%)認定の当否a 被告は,本件平坦地の最有効使用(リゾート施設敷地)を考慮すると,本件平坦地は特別広い土地ではないから,面大地に該当しない旨主張する。しかしながら,面大地に該当するか否かについては,想定された標準画地と対象地とを比較して判断すべきであるから,被告の主張は採用できず,本件平坦地は面大地に該当するというべきである。b また,被告は,対象地が標準画地と比較して広い面積であっても,一体利用することが合理的である場合又は対象地が稀少性を有する場合には,面大による減価はすべきでない旨主張する。確かに,一般的に,大規模な画地の取引では,総額が大きくなるために市場性が減退して単価が低くなる傾向にあることから面大を理由に減価するが,対象地の高度利用が可能であって,需給関係のひっ迫している地域にあっては,大規模な画地であっても稀少性の面から取引価格が高くなる傾向にある(面大増価)。 も,一体利用することが合理的である場合又は対象地が稀少性を有する場合には,面大による減価はすべきでない旨主張する。確かに,一般的に,大規模な画地の取引では,総額が大きくなるために市場性が減退して単価が低くなる傾向にあることから面大を理由に減価するが,対象地の高度利用が可能であって,需給関係のひっ迫している地域にあっては,大規模な画地であっても稀少性の面から取引価格が高くなる傾向にある(面大増価)。そこで,これを本件土地について見るに,本件土地は,同等の大きさの取引事例が少ないこと(証人P5,P5鑑定 あっては,大規模な画地であっても稀少性の面から取引価格が高くなる傾向にある(面大増価)。そこで,これを本件土地について見るに,本件土地は,同等の大きさの取引事例が少ないこと(証人P5,P5鑑定),特殊な形状をしていることなどから,同種の土地が少ないという意味では稀少性を有するということができる。しかし,本件土地の過去の取引をみるに,昭和57年3月30日(なお,本件土地の一部については,平成元年6月9日以降)に日本重建株式会社(平成元年3月5日に株式会社南伊豆園芸クラブに商号変更)が取得した後は,平成6年10月20日にその関連法人である伊東学園に譲渡されたに過ぎない(甲10から35・59・77)。また,本件土地の周辺部でも不動産の取引が活発であるということはできず(乙9の一部,弁論の全趣旨),本件土地が都市部のように需給関係がひっ迫している地域の土地であるとはいえず,高度利用に適した土地であるということもできない。したがって,本件土地は,その地域性等に照らし,稀少性の観点から取引価格が高額になるという性質の土地ではない。(ク) 有効宅地化率の考慮による格差(マイナス10%)認定の当否aP5鑑定では,有効宅地化率の検討において防災排水施設(調整池,U字側溝)の設置に要する面積を積算し,当該面積が本件平坦地(雑種地)の約10%になるから,これを減価割合とした((5)ア(ウ)⑦,証人P5)。この点に関し,被告は,防災排水施設は既に設置されており,新たに設置する必要はない旨主張する。b しかしながら,前記(カ)のとおり,防災排水施設が現状において十分整備されているということはできない。急傾斜地中にある平坦地に保養所を設けるのであるから,排水関係の対策は十分に行う必要がある。そして,P5鑑定人は,各平坦地について,防災排水施設の位置及 これを減価割合とした((5)ア(ウ)⑦,証人P5)。この点に関し,被告は,防災排水施設は既に設置されており,新たに設置する必要はない旨主張する。b しかしながら,前記(カ)のとおり,防災排水施設が現状において十分整備されているということはできない。急傾斜地中にある平坦地に保養所を設けるのであるから,排水関係の対策は十分に行う必要がある。そして,P5鑑定人は,各平坦地について,防災排水施設の位置及 いて十分整備されているということはできない。急傾斜地中にある平坦地に保養所を設けるのであるから,排水関係の対策は十分に行う必要がある。そして,P5鑑定人は,各平坦地について,防災排水施設の位置及び必要な面積をそれぞれ検討した上で,その合計面積が約1340平方メートルと求めた(証人P5)。これは,本件平坦地の面積(約1万2850平方メートル)の約10%である。そして,防災排水施設に要する土地は,有効に利用することができないから,評価額を減額すべきであり,その額について面積比を考慮して算出する手法は,相当な方法と認められる。なお,有効宅地化率の要素である防災配水施設の設置費用は(カ)の造成費用でもあるが,造成に費用を要することと,防災施設を設置する面積分の土地を有効利用することができないこととは,別個の問題であるから,格差を重複して評価することにはならない。よって,10%を減価したことは相当である。したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。イ林地等傾斜地(本件林地)の評価について(ア) 上部準平坦地の評価の仕方a 被告は,上部平坦地の東側にある面積約2600平方メートルの平坦地D(上部準平坦地)について,宅地見込地として評価すべきであるのに,そのような評価がされていない旨主張する。b 前提となる事実(3)ア記載のとおり,被告が指摘する場所に,やや平坦な土地が存在することが認められるが,被告が主張する2600平方メートルという面積は,図面求積したに過ぎず(乙11),巨石が野積みにされている部分(乙4,弁論の全趣旨)を含んだものであり,不正確である。さらに,上部準平坦地は,本件通路から5メートルないし20メートルの高低差のある石積の急斜面地の上部にあり,少なくとも現状では上部準平坦地に入ることが容易な状況ではない(甲8 あり,不正確である。さらに,上部準平坦地は,本件通路から5メートルないし20メートルの高低差のある石積の急斜面地の上部にあり,少なくとも現状では上部準平坦地に入ることが容易な状況ではない(甲86の4,弁論の全趣旨一特に釈明処分としての検証調書添附写真23)。 から5メートルないし20メートルの高低差のある石積の急斜面地の上部にあり,少なくとも現状では上部準平坦地に入ることが容易な状況ではない(甲8 あり,不正確である。さらに,上部準平坦地は,本件通路から5メートルないし20メートルの高低差のある石積の急斜面地の上部にあり,少なくとも現状では上部準平坦地に入ることが容易な状況ではない(甲86の4,弁論の全趣旨一特に釈明処分としての検証調書添附写真23)。なお,上部準平坦地に至る狭い山道が存在するが,急斜面地に設けられた同山道が宅地の接道として十分であるということは到底できない(弁論の全趣旨,同検証調書添付写真24)。そして,公社と伊東学園の契約書,P4鑑定,P5鑑定では,いずれも同土地が山林として評価されていること,同土地内には段差があり,その面積も被告が主張するほどの広さがあるとはいえないことなどを併せて考えると,上部準平坦地については,山林の一部として評価するのが正当であり,他の平坦地と同様に取り出して評価するほどの価値があるということはできない。したがって,P5鑑定が上部準平坦地を林地等傾斜地(本件林地)に含めて評価したことは適切であり,被告の主張は採用できない。(イ) 本件通路及び既存防災工事部分の加算の要否a 被告は,林地等傾斜地(本件林地)には,その中に通路及び防災工事の実施されたのり面が存在するので,上記防災工事に費やされた経費を加算して同土地の評価額とすべきである旨主張する。b 前記3(3)イのとおり,平成2年から4年にかけて行われた防災工事に係る合計2億6440万1000円の見積書が存在するが,その工事の程度が明らかではない上,元来当該工事費用は,そのまま本件土地の評価額に反映するものではなく,本件土地の利用上の価値を結果的に増加させている限度で考慮されるべきものである。そして,P5鑑定においては,本件通路及び防災工事部分がされたのり面について,約1万1000平方メートル程度の面積を求め,林地等傾斜地の の価値を結果的に増加させている限度で考慮されるべきものである。そして,P5鑑定においては,本件通路及び防災工事部分がされたのり面について,約1万1000平方メートル程度の面積を求め,林地等傾斜地の標準画地の2倍の効用があるとして計算し,それを林地等傾斜地の総面積で除して,2割という数字を算定して増価しており,通路及び防災工事の施工について適切に考慮しているというべきであるから,被告の主張は採用できない。 を結果的に増加させている限度で考慮されるべきものである。そして,P5鑑定においては,本件通路及び防災工事部分がされたのり面について,約1万1000平方メートル程度の面積を求め,林地等傾斜地の標準画地の2倍の効用があるとして計算し,それを林地等傾斜地の総面積で除して,2割という数字を算定して増価しており,通路及び防災工事の施工について適切に考慮しているというべきであるから,被告の主張は採用できない。(11,000㎡×2.0+46,851.27㎡)÷57,851.27(林地等面積)≒1.2(7) P6鑑定((7)は,乙9の要約である。)ア概要本件土地の利用法については,P5及びP4の各鑑定と同様,リゾート施設の敷地とすることが最有効使用であるとした上で,平坦地A,B,C及びD,山林(東側及び西側),本件通路部分,その他のり地部分並びに鉱泉地に区分し,それぞれ個別に価格を評価して,その合計額を求めた。さらに,対象不動産は各部分が適正な規模,位置で配置されており,各部分相互の効用の増加に寄与していると評価し,同様の土地の稀少性を考慮して総額について3%の増分価値を認め,本件土地の価格を7億2400万円と評価した(価格時点は平成8年12月9日)。その内訳は,次のとおりである。イ平坦地部分(ア) 総論平坦地A及びBについては,熟成度の高い宅地見込地として,同Cについては熟成度中等程度の,同Dについては熟成度のやや低い宅地見込地として評価した。そして,各平坦地部分の評価手法については,P5及びP4の各鑑定と同様,標準画地を設定して,その想定更地価格を求め,その価格を基準として,各平坦地部分との個別要因比較を行う手法で価格を求めた。標準画地の想定更地価格については,取引事例比較法に基づく比準価格を基準とし,かつ公示価格を規 その想定更地価格を求め,その価格を基準として,各平坦地部分との個別要因比較を行う手法で価格を求めた。標準画地の想定更地価格については,取引事例比較法に基づく比準価格を基準とし,かつ公示価格を規準として評定するものとしており,収益還元法については採用していない。(イ) 平坦地A及びB部分標準画地を,面積約300平方メートル程度,南西側国道に接面するほぼ長方形の宅地として設定し,別紙6-1のとおり,取引事例比較法に基づいて標準画地の想定更地価格7万5900円を求め,別紙6-2のとおり,個別的要因比較を行って,平坦地Aについては2億3005万円,平坦地Bについては8062万3000円を求めた。 として評定するものとしており,収益還元法については採用していない。(イ) 平坦地A及びB部分標準画地を,面積約300平方メートル程度,南西側国道に接面するほぼ長方形の宅地として設定し,別紙6-1のとおり,取引事例比較法に基づいて標準画地の想定更地価格7万5900円を求め,別紙6-2のとおり,個別的要因比較を行って,平坦地Aについては2億3005万円,平坦地Bについては8062万3000円を求めた。なお,取引き事例及び公示価格の採用にあたっては,平坦地A,B部分が,国道に接面する土地であり,周辺の国道に接面する土地の用途等を考慮すると,住宅地のほか,店舗,事業所,リゾート関連施設用地として利用可能であることから,同種の用途的地域の事例等を採用することとした。(ウ) 平坦地C及びD部分a 下部平坦地を中心に一体としてリゾート施設用地として利用することを前提として,当分の間は,上部平坦地部分は現況のまま,テニスコート等の屋外運動施設ないし,自然的特性を生かした散策路,庭園として利用し,建築物の建築が必要になった時点で開発許可等を受け,建築物等の敷地として利用するのが適当と思料されるとした。b 平坦地Cについての標準画地を,面積約500平方メートル程度,北東側5メートル道路に接面するほぼ長方形の宅地と設定し,別紙6-3のとおり,取引事例比較法に基づいて,標準画地の想定更地価格4万5000円を求めた。その上で,平坦地Cについては,別紙6-4のとおり個別的要因比較を行い,1億5494万6000円を求めた。なお,取引事例及び公示地について 基づいて,標準画地の想定更地価格4万5000円を求めた。その上で,平坦地Cについては,別紙6-4のとおり個別的要因比較を行い,1億5494万6000円を求めた。なお,取引事例及び公示地については,平坦地Cの想定宅地と同種同等と思われる,国道からやや離れた住宅地若しくは別荘地等の事例を採用した。c 平坦地Dについては,上記平坦地Cに係る標準画地との比較から,別紙6-5のとおり,まず試算価格1万3050円/㎡を求めた。そして,後記の「その他のり地等部分」の平均価格である1万0075円/㎡と関連づけて,平坦地Dの価格は,1平方メートル当たり単価を1万1563円,全体で3006万4000円と求めた。ウ山林部分取引事例比較法に基づいて比準価格800円/㎡を求め,公示価格を規準とした価格との関連性も考慮し,標準画地の想定山林価格を求め,本件の山林の傾斜が激しく,岩石を有すること等による格差をマイナス8%として,山林の価格2902万円を求めた。 り地等部分」の平均価格である1万0075円/㎡と関連づけて,平坦地Dの価格は,1平方メートル当たり単価を1万1563円,全体で3006万4000円と求めた。ウ山林部分取引事例比較法に基づいて比準価格800円/㎡を求め,公示価格を規準とした価格との関連性も考慮し,標準画地の想定山林価格を求め,本件の山林の傾斜が激しく,岩石を有すること等による格差をマイナス8%として,山林の価格2902万円を求めた。800円×92/100×(11,750(北側)+27,680(東側))㎡≒29,020,000円エ本件通路部分通路部分については,先に求めた平坦地C部分の想定画地の更地価格を標準とし,一般的な私道減額補正率(-80%程度)を基準として,かつ敷地内通路であること及び当該通路が公道を含むものであること等を考慮し,当該私道減価割合を65%と査定して次のとおり評定した。45,000円×1,000㎡×(1-0.65)=15,750,000円オその他のり地部分「その他のり地部分」には,平坦地部分ののり地及び山林,雑種地等が混在していることから,熟成度の低い宅地見込地と位置づけ,平坦地Cの平均価格(1万9350円/㎡)と山林部分の林地としての標準価格(800円/㎡)を関連づけて,防災工事等による 及び山林,雑種地等が混在していることから,熟成度の低い宅地見込地と位置づけ,平坦地Cの平均価格(1万9350円/㎡)と山林部分の林地としての標準価格(800円/㎡)を関連づけて,防災工事等による人工施設の存在及びこれに要した費用等を考慮し,両価格の平均値を採用して,1億4932万4000円を求めた。(19,350+800)円×1/2×14,821.28㎡≒149,324,000円カ鉱泉地及び温泉権鉱泉地価格については,平坦地Bの価格を採用し,温泉権の価格は取引事例比較法,原価法,収益還元法に基づく各試算価格とを関連づけて評定し,1344万8000円と算定した。(8) P6鑑定についての検討ア検討対象の抽出P6鑑定は,本件平坦地3か所を個別に評価している点でP5及びP4の各鑑定と異なるが,この点については,一つの正当な鑑定手法であると考えられる。そして,別紙2のとおり,鉱泉地価格についてはP5鑑定と大きな差がない。しかしながら,P6鑑定は,P5及びP4の各鑑定が林地に含めて評価した本件通路,平坦地D,防災工事がされているのり面等を個別に評価している点で他の鑑定と大きく異なっており,さらに①平坦地A,②平坦地D,③その他のり地部分について,それぞれ高額な評価額を算定したことが,本件土地について,P5評価額の約1.8倍という高額な評価額を求めた主な要因となっている。 鉱泉地価格についてはP5鑑定と大きな差がない。しかしながら,P6鑑定は,P5及びP4の各鑑定が林地に含めて評価した本件通路,平坦地D,防災工事がされているのり面等を個別に評価している点で他の鑑定と大きく異なっており,さらに①平坦地A,②平坦地D,③その他のり地部分について,それぞれ高額な評価額を算定したことが,本件土地について,P5評価額の約1.8倍という高額な評価額を求めた主な要因となっている。そこで,以下,便宜,上記3点について検討する。イ平坦地Aの評価についてP6鑑定では,下部平坦地(平坦地A及びB)については,国道に接面した宅地を標準画地として想定している(それ自体は正当である。)が,標準画地の比準価格の算定のためにP6が採用した取引事例は,別表5-1のとおり,いずれも1平方メートル単価が6ないし8万円前後の事例である。2ないし7万円 て想定している(それ自体は正当である。)が,標準画地の比準価格の算定のためにP6が採用した取引事例は,別表5-1のとおり,いずれも1平方メートル単価が6ないし8万円前後の事例である。2ないし7万円前後の事例を採用したP5及びP4の各鑑定より概して高い。そして,P5及びP4の各鑑定と比較するといずれも増価補正が多い。被告は,P6鑑定では下部平坦地と上部平坦地とで別の標準画地を想定した上で,下部平坦地については,国道に接面した宅地を想定したのであるから,国道背後地を標準画地として想定したP5鑑定とは,異なって然るべきである旨主張する。しかしながら,P5及びP6の各鑑定で共に採用された平坦地Aに係る取引事例地(P5鑑定のNo.G及びH(P6鑑定の事例b及びc))で比較した場合であっても,P6鑑定では,街路条件以外の点を考慮して増価補正を認めている。すなわち,地域要因比較でP5鑑定が減額補正している(100/135)ところを,P6鑑定は増額補正している(100/77)。事後に提出されたにもかかわらず,この逆転補正についてP6鑑定では何ら説明がされていない。そうである以上,不可解な補正として採用しないのが相当である。ウ平坦地Dの評価についてP6鑑定は,平坦地Dについて,熟成度のやや低い宅地見込地と評価しているが,これは,前記(6)イ(ア)のとおりの理由により,疑問である。さらに,仮に平坦地Dを宅地見込地として評価するとしても,前記のとおり,道路との接面状況等に鑑みると,その熟成度は極めて低いというべきであって,林地の価格を基準として多少の期待性を加味して算定する程度の価格となるべきである。 ないのが相当である。ウ平坦地Dの評価についてP6鑑定は,平坦地Dについて,熟成度のやや低い宅地見込地と評価しているが,これは,前記(6)イ(ア)のとおりの理由により,疑問である。さらに,仮に平坦地Dを宅地見込地として評価するとしても,前記のとおり,道路との接面状況等に鑑みると,その熟成度は極めて低いというべきであって,林地の価格を基準として多少の期待性を加味して算定する程度の価格となるべきである。ちなみに,不動産評価鑑定基準(平成2年10月26日付け土地鑑定委員会による国土庁長官宛答申)においても,熟成度の低い宅地見込地について,「比 少の期待性を加味して算定する程度の価格となるべきである。ちなみに,不動産評価鑑定基準(平成2年10月26日付け土地鑑定委員会による国土庁長官宛答申)においても,熟成度の低い宅地見込地について,「比準価格を標準とし,転換前の土地の種別に基づく価格に宅地となる期待性を加味して得た価格を比較考量して決定する」旨定めている。しかしながら,P6鑑定では,平坦地C部分とその他のり地部分の1平方メートル当たり単価の中庸をとって,平坦地D部分の単価としており,あてはめ方の根拠に乏しい上,転換前の土地(林地)の性質(価値)をほとんど考慮していないという問題がある。いずれにせよ,P6鑑定のうち平坦地Dに関する部分は,採用できない。エその他のり地部分の評価について(ア) P6鑑定の最大の特徴は,その他のり地部分について,山林とは別途評価し,この部分に1億5000万円近い評価額を算定している点である。P6は,この部分を「熟成度の低い宅地見込地」と評価するが,その中には,防災工事がされた傾斜度約30度程度の斜面のほか,木の生い茂るそれ以上の急斜面が含まれており,その土地自体は利用不可能な斜面地(ないしがけ地)である(争いがない)。したがって,その他のり地部分を「熟成度の低い宅地見込地」として評価することは,極めて不適切であり,到底,採用することはできない。(イ) この点について,被告は,「土地の素地価格に当該工事(防災工事費用)を加算したもの」が基本的に評価額とされるべきで,本件土地では,前記のとおり合計2億6440万1000円の防災工事費が費やされているから,P6鑑定のその他のり地等部分の評価額1億4932万4000円が控え目な評価である旨主張する。しかしながら,前記(6)イ(イ)のとおり,防災工事に要した費用を加算して本件土地を評価するのは不 (イ) この点について,被告は,「土地の素地価格に当該工事(防災工事費用)を加算したもの」が基本的に評価額とされるべきで,本件土地では,前記のとおり合計2億6440万1000円の防災工事費が費やされているから,P6鑑定のその他のり地等部分の評価額1億4932万4000円が控え目な評価である旨主張する。しかしながら,前記(6)イ(イ)のとおり,防災工事に要した費用を加算して本件土地を評価するのは不 ,P6鑑定のその他のり地等部分の評価額1億4932万4000円が控え目な評価である旨主張する。しかしながら,前記(6)イ(イ)のとおり,防災工事に要した費用を加算して本件土地を評価するのは不当であって,被告の主張は採用できない。P6鑑定によると,それ自体としてはおよそ利用価値のない急斜面地部分に上部平坦地の価格に匹敵する1億5000万円近い評価額がつけられていることになり,これが正当でないことは明らかである。(ウ) また,被告は,国土庁土地局地調査課監修の「土地価格比準表」(乙12参照)の別表第30の「崖地格差率」(乙13)を基にその他のり地部分をがけ地として評価したとしても1億6060万3390円の価値を有するから,P6鑑定におけるその他のり地部分の評価額は,むしろ控え目な評価である旨主張する。しかしながら,「土地価格比準表」のがけ地の「別表第30」は,造成住宅団地等擁壁で保護されたがけ地を含む住宅地を評価対象とすることを前提として作成されたものであり(乙13参照),がけ地については,その上部にある平坦地を評価した上,それらを支えているのり地の土地を別途に評価するようなことは想定されていない。それ自体として利用することが不可能ながけ地部分の評価は,その上部にある平坦地に効用を及ぼしている限りで,かつ,上部の平坦地の価格の中に取り込んで,評価するのが正当である(P5鑑定参照)。オまとめP6鑑定は,イないしエで検討したように,多くの問題点を抱えており採用することはできない。(9) 小括ア結論以上から,P4及びP6の各鑑定における評価額を採用することはできない。なお,P5鑑定についても,本件平坦地を一体的に評価している点は適切ではなく,前記(5)の個別取引を前提とした評価による金額を合算する方がより正確性が高いと における評価額を採用することはできない。なお,P5鑑定についても,本件平坦地を一体的に評価している点は適切ではなく,前記(5)の個別取引を前提とした評価による金額を合算する方がより正確性が高いと考えられる(合算額は,3億5830万円となる。 い。なお,P5鑑定についても,本件平坦地を一体的に評価している点は適切ではなく,前記(5)の個別取引を前提とした評価による金額を合算する方がより正確性が高いと における評価額を採用することはできない。なお,P5鑑定についても,本件平坦地を一体的に評価している点は適切ではなく,前記(5)の個別取引を前提とした評価による金額を合算する方がより正確性が高いと考えられる(合算額は,3億5830万円となる。)。ただし,(6)ア(ア)のとおり,P5鑑定では,各平坦地の異なった条件を考慮して,本件平坦地の価格を算定しているので,その評価額は個別条件の点を含め,相当程度の合理性を有するものとうかがわれる。そこで,本件土地の平成8年12月9日時点での適正な価格は,一体的な評価によるP5評価額(3億9410万円)と認めるのが相当である。したがって,公社購入価格と適正な時価との差額は,2億2324万0704円となり,公社は,適正な価格より5割以上高い価格で本件土地を購入したこととなる。そうすると,公社購入価格は,一般の取引通念に照らして著しく高額であって,適正を欠いたものであったといわざるを得ない。イ被告の主張に対する判断(ア) 県知事の指導価格との関係被告は,平成6年に南伊豆園芸クラブが伊東学園に本件土地を譲渡しようとした際,当初,約8億5000万円で売却しようとしていたこと,それに対して静岡県知事から,国土利用計画法(ただし,平成10年法律第86号による改正前のもの)24条1項に基づいて,売買代金を7億2904万8082円以下とするよう指導されたこと(乙10)を理由に,上記知事指導価格が適正価格であって,P5評価額は本件土地の適正価格より低い旨主張する。しかしながら,同法24条1項に基づく都道府県知事の指導は,取引価格が「相当な価額に照らし,著しく適正を欠く」場合に限られており,上記規定の文言上,上記指導額の上限である7億2904万8082円という価格が,当然に本件土地の適正な価格であるという 指導は,取引価格が「相当な価額に照らし,著しく適正を欠く」場合に限られており,上記規定の文言上,上記指導額の上限である7億2904万8082円という価格が,当然に本件土地の適正な価格であるということではない。国土法の届出は,世情,不勧告となる(指導を受けない)売買金額の見当をつけるためにも行われることがあり,その場合には知事から勧告・指導がされるように実勢価格より相当程度高めに届けられる。 という 指導は,取引価格が「相当な価額に照らし,著しく適正を欠く」場合に限られており,上記規定の文言上,上記指導額の上限である7億2904万8082円という価格が,当然に本件土地の適正な価格であるということではない。国土法の届出は,世情,不勧告となる(指導を受けない)売買金額の見当をつけるためにも行われることがあり,その場合には知事から勧告・指導がされるように実勢価格より相当程度高めに届けられる。これに対して指導がされるが,指導における上限価格は,著しく適正を欠く限界額であり,実勢価格に相当の幅を見てもなお許容できない額である。したがって,「7億2904万8082円以下」という上記指導の場合,上限の金額が当然に最も適正に近いとまではいえない。よって,被告の主張は採用できない。しかも,南伊豆園芸クラブと伊東学園とは,結局は,平成6年に2億円で売買契約を成立させている。同族法人間の売買代金であるから,2億円という金額は,客観的ではない可能性があるが,極端に低廉な価格をもってする売買は税法上の負担を受けることもあるので,著しく低廉というのは相当ではない。そして,その2年後に公社が伊東学園から購入したわけであるが,公社又は市が伊東学園と購入価格について熱心な交渉をしたことをうかがわせる証拠の提出はない。これらのことからすると,本件土地の取引価格が平成6年当時は2億円かそれよりいくらか高い金額であって,平成8年当時はそれに時点修正した程度であり,公社購入価格(約6億1734万円。P4評価額)は,実勢価格よりも高かったものと推認される。(イ) P4鑑定に従った購入価格決定の拘束性の有無被告は,本件土地の取得については,資格を有する不動産鑑定士であるP4の鑑定を経て,公社が購入価格を決定したのであるから,仮に同価格が適正な価格に比して著しく高額であ た購入価格決定の拘束性の有無被告は,本件土地の取得については,資格を有する不動産鑑定士であるP4の鑑定を経て,公社が購入価格を決定したのであるから,仮に同価格が適正な価格に比して著しく高額であったとしても,同価格を基礎として市が公社から取得することには合理性がある旨主張する。しかしながら,P4評価額が適正価格より著しく高額であることが判明した以上,その価格を基礎として取得することの合理性は,失われたというべきである。しかも,未だ市による取得はされていない状況にあり,柔軟な対応ができるから,被告の主張は採用できない。 価格を決定したのであるから,仮に同価格が適正な価格に比して著しく高額であったとしても,同価格を基礎として市が公社から取得することには合理性がある旨主張する。しかしながら,P4評価額が適正価格より著しく高額であることが判明した以上,その価格を基礎として取得することの合理性は,失われたというべきである。しかも,未だ市による取得はされていない状況にあり,柔軟な対応ができるから,被告の主張は採用できない。さらに,次のとおり,被告側には,P4鑑定について疑問を抱く相当の理由があったわけであるから,そのような点からしても,被告の主張は採用できない。すなわち,前記(3)イ(ア)のとおり,市は,本件土地の取得を決定するに当たって,独自の調査を行っており,その結果,排水施設・防災工事の必要性,本件通路の安全性等に問題を残している土地であることが指摘されている。行政的条件についても,土木事務所で聞き取り調査を行い,本件土地が都市計画区域内の未線引区域内の土地であること,がけ地について建築基準条例による規制があることなど,開発上の問題点について,検討を行っている(甲77)。そして,P4鑑定では,上記問題点について検討した形跡が見られないのであるから,市の担当者はP4鑑定に無条件に依拠してよいかについては疑問を抱いたはずである。ところが,不可解なことに,そのような形跡がない。のみならず,P4の現地調査等には,市の職員が立ち会っているにもかかわらず,市の情報や調査内容の伝達が不十分であり,結果として,市試算額より5600万円以上高額の大津評価額が平成8年9月30日付け鑑定書(乙1)で導き出され(なお,市試算額のうち「温泉権利」の価格 かわらず,市の情報や調査内容の伝達が不十分であり,結果として,市試算額より5600万円以上高額の大津評価額が平成8年9月30日付け鑑定書(乙1)で導き出され(なお,市試算額のうち「温泉権利」の価格を1億円とした部分は,明白な誤りであるから,これをP5評価額の1200万円に修正すると,P4評価額はそのように修正した場合の市試算額より1億4000万円以上高額な価格となる。),その鑑定書には本件土地の公法上の規制について明白な誤りがあったにもかかわらず,市は,その評価額について内容を確認することもなく,同年10月4日付けで,前記内部書類の所得予定金額に係る数字を訂正しているのである(甲49ないし51,証人P4)。 は,明白な誤りであるから,これをP5評価額の1200万円に修正すると,P4評価額はそのように修正した場合の市試算額より1億4000万円以上高額な価格となる。),その鑑定書には本件土地の公法上の規制について明白な誤りがあったにもかかわらず,市は,その評価額について内容を確認することもなく,同年10月4日付けで,前記内部書類の所得予定金額に係る数字を訂正しているのである(甲49ないし51,証人P4)。したがって,被告の主張は到底採用することができない。(ウ) 公社に与える損害との関係 被告は,市としては,公社購入価格に利息・事務費・維持管理費を加えた価格で公社から買取る信義則上の義務を負っており,これを履行しない場合には,公社に看過できない損害が生ずることになるから,市としてもそれを補償する必要が生ずる旨主張する。確かに,市が公社購入価格よりも低い価格を基礎として公社から本件土地を取得するということになると,公社に損害が発生することになる。したがって,公社に発生する損害については,別途解決する必要があるが,本件土地を公社購入価格を基礎とした金額で市が取得することは,到底看過しがたい損害を確定的に市に生じさせることになる。そうすると,公社に損害が生ずることの一事で市による公社購入価格による取得が正当化されるわけではない。また,公社購入価格を基礎にして市が取得することが合理的で違法性が阻却されるということもできない。被告の論理に従えば,市から依頼を受けて公社が購入すると,その価格が不合理であっても,市はその価格を基礎とし 社購入価格を基礎にして市が取得することが合理的で違法性が阻却されるということもできない。被告の論理に従えば,市から依頼を受けて公社が購入すると,その価格が不合理であっても,市はその価格を基礎として公社からの取得をせざるを得なくなるが,それでは,公社の購入についても,市の取得についても事前の違法の是正の機会がなくなるから,適当ではない。5 まとめ以上のことからすると,公社は,市にとって必要性の必ずしも高くない本件土地を適正価格より著しく高額な対価で購入している。そして,市は,公社に取得依頼した土地を公社から公社購入価格に利息と事務費とを加算した額をもって再取得することとされているため,明示の売買予約までは成立していないが,本件土地についてもそのような取得契約がされる予定である。 事前の違法の是正の機会がなくなるから,適当ではない。5 まとめ以上のことからすると,公社は,市にとって必要性の必ずしも高くない本件土地を適正価格より著しく高額な対価で購入している。そして,市は,公社に取得依頼した土地を公社から公社購入価格に利息と事務費とを加算した額をもって再取得することとされているため,明示の売買予約までは成立していないが,本件土地についてもそのような取得契約がされる予定である。そうすると,市は,適正価格より5割以上高額の金額をもって購入した公社から,同額を基礎にしてこれに利息等を加算した金額をもって取得することになるが,このことに合理性を認めることは困難である。なお,土地の「適正価格」にはある程度の幅があると考えられるから,具体的な適正価格それ自体に照らして判断するのではなく,これにある程度の幅を持たせた金額を基準に判断するのが適当であると解される。そのような観点からしても,適正価格3億9410万円より5割以上高額の金額を基礎として取得することは,裁量権を濫用したものといわざるを得ない。ところで,原告らは,公社購入価格を基礎とした金額による取得の差止めにとどまらず,P5評価額(3億9410万円)を超える金額を基礎とした取得の差止めを広く求めている。一般的にいえば,「適正価格」といっても絶対的な特定の金額があるわけではないので,特定の適正価格と認められる金額を少しでも超える金額による取得行為はおよそ許されず,差止対象となると を広く求めている。一般的にいえば,「適正価格」といっても絶対的な特定の金額があるわけではないので,特定の適正価格と認められる金額を少しでも超える金額による取得行為はおよそ許されず,差止対象となるというのは適当でない。特定の「適正価格」に一定程度の幅を持たせた金額を基準にして,差止めの許否を判断するのが適当である。ただし,本件におけるP5評価額(3億9410万円)は,本件平坦地について個別に鑑定した場合を基礎とした本件土地の金額(3億5830万円)及び平成6年における伊東学園の取得価格(2億円)に照らすと,いくらか高い可能性があり,特定の適正価格に高めの方向での幅を持たせた後の金額と評価してもあながち不当ではない。加えて,前記2(2)イのとおり,本件土地の取得の必要性について疑問であることに鑑みると,P5評価額を超える金額による取得には合理性は認められないと解するのが相当である。 別に鑑定した場合を基礎とした本件土地の金額(3億5830万円)及び平成6年における伊東学園の取得価格(2億円)に照らすと,いくらか高い可能性があり,特定の適正価格に高めの方向での幅を持たせた後の金額と評価してもあながち不当ではない。加えて,前記2(2)イのとおり,本件土地の取得の必要性について疑問であることに鑑みると,P5評価額を超える金額による取得には合理性は認められないと解するのが相当である。そうすると,結局のところ,市が公社からP5評価額(3億9410万円)を基礎とした金額(同金額並びにこれに対する平成8年12月9日から市取得時までの利息及び事務費)を超える金額で取得することは,被告の裁量権を逸脱・濫用した違法をもたらすから,そのような行為の差止めを認めるのが相当である。よって,主文のとおり判決する。横浜地方裁判所第1民事部裁判長裁判官岡光民雄裁判官窪木稔裁判官家原尚秀

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