平成30(ワ)1394 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年3月29日 千葉地方裁判所
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判決文本文27,710 文字)

平成30年(ワ)第1394号損害賠償請求事件(労災)令和4年3月29日千葉地方裁判所民事第3部判決口頭弁論終結日令和3年9月7日 主文 1 被告は,原告に対し,88万円及びこれに対する平成30年9月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを15分し,その11を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求の趣旨被告は,原告に対し,330万円及びこれに対する平成30年9月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告と労働契約を締結している原告が,被告が労働契約上の安全配慮義務に違反したため,上司及び同僚からパワーハラスメント(以下「パワハラ」という。)やいじめを継続的に受け,これによって精神的苦痛を生じたと主張して,被告に対し,労働契約上の債務不履行若しくは不法行為又は使用者責任に基づく損害賠償として330万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成30年9月11日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがない事実又は各項に掲記の証拠若しくは弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)⑴ 当事者等 ア被告は,【x】の経営,不動産賃貸等を目的とする会社であり,【x】「【a】」(以下「【a】」という。)及び「【b】」を経営して ことができる事実)⑴ 当事者等 ア被告は,【x】の経営,不動産賃貸等を目的とする会社であり,【x】「【a】」(以下「【a】」という。)及び「【b】」を経営しているものである。(甲1)イ原告は,■■■■■生まれの女性であり,平成20年に被告と期間の定めのある労働契約を締結し【a】の【c】(以下,単に「出演者」という。)を務めているものである。(甲B20)ウ 【A】(以下「【A】」という。)は,被告の従業員であり,平成21年から平成29年6月まで,【a】のスーパーバイザー(被告の【x】において開催される個々のショー,パレード等の運営に関する現場責任者であり,それらの実施に関して生じたトラブル等の現場対応や出演者の配役の調整,出演者に対する事前事後の演技指導などの業務を担当する。以下「SV」という。)を,同年7月から,ユニットマネージャー(SVの統括者であり,SV間の調整業務等を行う。以下「UM」という。)を,それぞれ務めているものである。(甲2,乙B14)エ 【B】(以下「【B】」という。)及び【C】(以下「【C】」という。)は,いずれも,被告の従業員であり,平成23年2月又は平成24年から,【a】のSVを務めているものである。(乙B15,16)オ 【D】(以下「【D】」という。)は,被告の従業員であり,平成21年から,【a】のUMを務めているものである。(乙B17)カ 【E】(以下「【E】」という。)は,被告の従業員であり,平成17年から平成28年4月19日まで,【a】のステージマネージャー(SVの指揮命令の下でショー,パレード等の進行管理などを行う者。以下「SM」という。)を,同月20日から,SVを,それぞれ務めているものである。(乙B18) ,【a】のステージマネージャー(SVの指揮命令の下でショー,パレード等の進行管理などを行う者。以下「SM」という。)を,同月20日から,SVを,それぞれ務めているものである。(乙B18)キ 【F】(以下「【F】」という。),【G】(以下「【G】」という。),【H】(以下「【H】」という。),【I】(以下「【I】」という。)は,いずれも,被告の従業員であり,【F】は平成3年から,【G】は平成15 年から,【H】は平成8年から,【I】は平成18年から,それぞれ出演者を務めていたものである。(乙B19ないし22)⑵ 原告と被告との間の労働契約の締結ア原告は,平成21年4月1日,被告との間において,次の内容の出演者雇用契約を締結した。(争いがない事実,乙B13)期間平成21年3月31日まで1年間賃金基本時給1630円その他手当は出演者就業規則の定めによる。 所属エンターテインメント本部ショー運営部職務内容 【a】における【d】次年度契約次回の出演者雇用契約は,業務上の必要性及び出演者の意思,健康状態,能力,技能,体力測定評価,勤務成績,勤怠評価等を総合的に勘案し,本契約期間中に行われるゼネラルオーディションにおいて合格した場合に限り,配属を決定し締結する。自動更新は行わない。 特記事項本契約期間中,傷病等で休演が多発した場合は,必要に応じて安全配慮義務に則り,配置換え等の措置をとることがある。 また,疾病や事故等により,契約後の業務の遂行が困難であると判断された場合,本契約は解除される。 イ上記アの雇用契約は,その後,1年ごとに更新された。(乙B13)⑶ 平成 とがある。 また,疾病や事故等により,契約後の業務の遂行が困難であると判断された場合,本契約は解除される。 イ上記アの雇用契約は,その後,1年ごとに更新された。(乙B13)⑶ 平成25年2月7日の出来事ア原告は,平成25年2月7日(以下の時刻はいずれも同日の時刻である。)午前11時20分頃,【a】において出演者の業務である【e】に従事していた際,男性客から右手の指を折り曲げられる暴行を受けた(以下,この出来事を「本件出来事」という。)。(乙B1,3)イ原告は,午前11時40分頃,被告ショー運営部(以下の部はいずれも被 告の部である。)に対し,勤務中に男性客から右手を曲げられたという申告をした。(争いがない事実)ウセキュリティ部は,ショー運営部から,原告が暴行被害を受けたと報告を受け,加害者である男性客の特徴を基に捜索を開始した。セキュリティ部は,上記特徴に類似した男性客を確認し,建物の管理会社の従業員と共にモニタリングを行った。原告は,午後3時頃,ショー運営部に対し,男性客からの暴行被害について警察署に被害届を提出したいと連絡した。原告は,午後3時44分頃,【A】SV及びショー運営部の従業員と共に,セキュリティ部がモニタリングを行っていた男性客を確認したが,加害者とは別人であった。 セキュリティ部は,午後3時54分頃,原告,【A】SV及びショー運営部から,再度状況を確認した。原告は,被告が設置する健康管理センター(以下,単に「健康管理センター」という。)で診察を受けた際,様子をみるように言われたが,被害届を提出したいと要望したため,病院で診断を受けて警察署に連絡することとなった。(乙B3)エセキュリティ部は,当日,【a】が閉園するまで,加害者の捜索を行ったが,加害 うに言われたが,被害届を提出したいと要望したため,病院で診断を受けて警察署に連絡することとなった。(乙B3)エセキュリティ部は,当日,【a】が閉園するまで,加害者の捜索を行ったが,加害者が発見されることはなかった。上記イの申告の後,【A】SVは,【a】内のセキュリティ部のオフィスで,原告と面談をした。(争いがない事実)⑷ 本件出来事による原告の傷害の治療経過等ア原告は,平成25年2月7日午後0時15分頃,健康管理センターを訪れ,診察を受けた。その診察結果が記載されている「出演者負傷記録(業災)」の「災害発生経緯」欄には,20代前半の男性と握手をしたところ,右第3,4指を反対側に曲げられて痛みが生じた,右第3,4指について痛みと軽度の発赤があるが,しびれはなく,指の屈伸に問題はない,右指捻挫(軽度)であり,負担を軽くして勤務継続と記載されている。原告は,その際,カトレップ(湿布薬)1パックの処方を受けた。(乙B1) イ原告は,平成25年2月8日,【f】クリニックを受診した。【f】クリニックの【J】医師は,被告が用意した通院見込証明書に,傷病名を右第3,4指捻挫,通院見込期間を2月8日から同月14日までの7日間と記入した。(乙B2)ウ平成25年2月13日にショー運営部から人事二部長に提出された業務災害報告書の発生状況欄には,次の記載がある。(乙B4)11:00からの【g】終了間際,【h】入って正面にある【i】の駅の一つの付近でゲスト(男性,25歳前後)から握手を求められ,ゲストが【j】の手を手に対して垂直に両手で痛みを感じるほど強い力で約3秒握りしめられた。その後ゲストが手をずらし,被災者の指のみを握って,その指を手の甲側へ無理に曲げられ3秒くらい倒された。通常 ゲストが【j】の手を手に対して垂直に両手で痛みを感じるほど強い力で約3秒握りしめられた。その後ゲストが手をずらし,被災者の指のみを握って,その指を手の甲側へ無理に曲げられ3秒くらい倒された。通常では曲がらない方に倒したため,右手中指と薬指の間隔がなくなるほどの強い痛みを感じた。 この後すぐに捌け,担当SM指示によりアイシングを行い,健康管理センターを受診した。 当日は,その後【k】出演。その後の【e】はカット。【k】は指を動かす必要のない【l】に変更した。 指を動かせる程度まで痛みは軽減。 ※災害発生日と外部病院受診日が異なる理由被害届を出す可能性があった為(被害届を出すには診断書が必要とアドバイスをもらった為)エ被告は,本件出来事について平成25年2月27日付けで船橋労働基準監督署長宛てに作成された,業務災害用の療養補償給付たる療養の給付請求書の写し2通(【m】薬局経由のものと【f】クリニック経由のもの)を所持している。これらの請求書には,人事二部長が必要事項を記載しており,原告が必要事項を記載した上,【m】薬局又は【f】クリニックに提出すれば,療養の給付請求をすることができるようになっている。 (乙B5の1及び2) ⑸ 本件出来事後の出来事ア原告は,平成25年3月22日,浦安市の【n】メンタルクリニックを受診し,ストレス障害と診断されたが,主治医と折り合いが悪く,継続的に通院しなかった。原告が初診時に作成した問診票には,困っていることとして,「眠れない」「もの悲しくなる」「他人に陰口を言われる」「考えがまとまらない」「仕事ができないと思うと死にたくなる」「人を避け自室に閉じこもる」がチェックされており,自由記載欄に「過呼吸」と,「 「眠れない」「もの悲しくなる」「他人に陰口を言われる」「考えがまとまらない」「仕事ができないと思うと死にたくなる」「人を避け自室に閉じこもる」がチェックされており,自由記載欄に「過呼吸」と,「発病のきっかけと思われるものは」の欄に「仕事中お客さんに指を折られそうになる事件があり,それに対し上司がいたずらに我慢できない君の心が弱いからいけないと言われた日から,様子がおかしくなった」と,それぞれ記入されている。(争いがない事実,甲B4,14,乙B24)イ原告は,平成25年7月25日,業務中に腰を痛めた。【B】SVは,同年8月15日,出演業務の合間に,原告に声をかけたところ,腰痛の症状が出たとのことであったため,早退をするよう指示した。原告は,出演業務に支障はないので業務に就くと申告するとともに,本件出来事の影響が続いていると申告した。【B】SVは,原告を早退させるとともに,原告に対し,産業医との就労相談を提案した。(弁論の全趣旨)原告は,平成25年8月15日,被告の従業員相談窓口であるE-EARに対し,SVの対応に関する不満,評価及び契約体制に関する不満についての相談(以下「本件相談」という。)をした。本件相談に係るE-EAR相談実績報告の申告内容欄及び対応欄には,次の記載がある。なお,これらの記載には,次のウ以下の事実経過に関するものが含まれている。(乙B12) 申告内容元々SVのパワハラ的な対応や言動に対して不信感が強かった中,1月にゲストに故意に指を反られ捻挫する事故の際,「エンターなんだからそれ位我慢しなくちゃ。君は心が弱いよ」と言われたことをきっかけに,会 社への不信,仕事への恐怖,過呼吸が始まり,心療内科へ通った結果,「ストレス性障害」と診断された。その後も んだからそれ位我慢しなくちゃ。君は心が弱いよ」と言われたことをきっかけに,会 社への不信,仕事への恐怖,過呼吸が始まり,心療内科へ通った結果,「ストレス性障害」と診断された。その後も,SVの対応が苦痛で症状が進行している。気持ちの落ち込みが激しい中,出来る限りの行動として,SVやUMにも状況を相談したが相手にされなかった。SVに対しては,日常的なパワハラによる不信感に加えて,評価者であるために嫌われるといくらでも評価を左右される怖さから,休みたいとも中々言い出せず,評価の在り方を含めた(SVの出演者管理)対応に納得いかないが相談すべき相手がいない。 対応本人は8/22にMGRとSV立ち会いの下,産業医面談も受けていたものの,パワハラを受けているSVが同行していた為に本当の理由を産業医に伝えきれていないとのことだったので,E-EAR立ち合いの下,改めて9/12に産業医面談を実施した。その際も,「通勤の電車も苦痛で死にたい気持ちになる」とのことであり,自宅療養を勧められたが,本人は「生活などの理由から出勤を辞める訳にはいかない」とのことだった。 その後,ショー運営部長,第3ショー運営グループマネージャーが入った上で健康管理センターと協議し,健康管理センターでは月一で面談を今後実施していくこととなり,E-EARでは部長,マネージャーを含めた面談を実施すべく,本人に働きかけることとなった。(本人の強い匿名希望により時間が掛かったが,上記面談を了承の下,10/30スケジュール調整中) 申告内容8月15日受信の継続案件。10月15日に産業医面談を実施。その中で,【o】のキャスティングが指を反られた【p】であったことに納得がいかず,対応に改善が見られないと申告があった。また, 8月15日受信の継続案件。10月15日に産業医面談を実施。その中で,【o】のキャスティングが指を反られた【p】であったことに納得がいかず,対応に改善が見られないと申告があった。また,契約面談前で気持ちが不安定であることの申告があった。 対応11月28日に【K】部長,【L】MGR,E-EAR担当と面談し,更に12月18日に【L】MGR,E-EAR担当と面談を実施した。まず,11月28日の面談で【o】のキャスティングはなるべくゲストに接することがないように配慮したポジションであることを説明し,契約面談については2014年度については契約が締結される見込みであることを伝えた。更に,12月18日の面談では,2014年度契約が締結された後であったこともあり,本人からも体調の改善と一連の対応に関して御礼を言われた。メンタルに関しては引き続き,主治医の診断を継続することを【L】MGRとE-EARから勧め,本件の対応については一旦の区切りとした。 ウ原告は,平成25年8月22日,健康管理センターの産業医である【M】医師(以下「【M】医師」という。),【N】医師(以下「【N】医師」という。)と面接した。この面接には,被告の保健師である【O】が立ち会い,原告の所属部署の【L】(以下「【L】」という。)マネージャー(MGR)と【A】SVが,途中から同席した。この面接の記録には,次の記載がある。 (乙B10の1)原告整形外科には通っていないが,心療内科に通っている。【n】メンタルクリニック。今の症状は,電車やバスに乗れないことと,【l】をやると過呼吸になる。その役をやるとフラッシュバックする。過呼吸が原因で早退すると,不安感で自殺念慮が出てくる。意識はないが,気付 ンタルクリニック。今の症状は,電車やバスに乗れないことと,【l】をやると過呼吸になる。その役をやるとフラッシュバックする。過呼吸が原因で早退すると,不安感で自殺念慮が出てくる。意識はないが,気付くと行動している。 最近では,1週間前に首をつろうとした。仕事をしていないと不安。家にいる方が怖い。休むと契約に響くと思うと,休むこともできない。【n】メンタルクリニックの先生と合わないので,5月末から受診していない。主治医を変えようと思うが経済的な理由でそれもできない。 【M】医師日常生活が普通にできる上での仕事だと思うので,医療機関に継続してかかってほしい。ちゃんと治療をすれば立て直せないことはないと思う。実家で療養することが望ましい。紹介状を用意するのと,家族とも情報共有して確実に直してほしい。 (ここから,【L】MGR,【A】SVが同席)【M】医師治療が中断している状況なので,まずは治療を受けていただくことが必要。 また,精神的には不安定な状況なので,主治医と連携して実家での療養の必要性や就労の可否について意見を求めることも必要。できれば実家で療養することが望ましいが,公共の交通機関の使用が困難な状況。 【N】医師このままの状態が続くのは良くない。その方が契約に差しさわりが出てくると思う。一番大切なのは,確実に病気を治して,もとの仕事ができるようになること。そのためには療養することが望ましいと思う。経済的にも,契約の問題的にも,安心して休めるように,会社のルールや自治体の補助制度等について情報提供することが必要。 エ 【M】医師は,平成25年8月22日付けで,【q】の担当医に対し,紹介状(診療情報提供書)を作成した。その紹介状には, ,会社のルールや自治体の補助制度等について情報提供することが必要。 エ 【M】医師は,平成25年8月22日付けで,【q】の担当医に対し,紹介状(診療情報提供書)を作成した。その紹介状には,原告の主訴又は傷病名として,「希死念慮?,自殺未遂,公共の交通機関を利用するのが困難,不安感,過換気」と記載されており,症状経過として,「1週間前に気付いたら首をつろうとしていたこともあったようです。本来,実家暮らしなのですが,電車・バスに乗るのが困難なため,会社のある浦安市周辺でマンガ喫茶や友人の家を渡り歩いているような状況です。仕事上,【r】の中に入っていると息苦しくなるとのことで,仕事にも差支えが出ている状況です。本人としては,仕事を離れることに大きく不安を感じており,仕事を早退した 日に自殺未遂を起こしたようです。私,産業医から,メンタルクリニックにかかる必要があることを伝え,実家で療養する必要性も伝えております。本人としては,仕事を継続しながら治療することを考えておりますが,生命への危険性から,実家で療養して治療を進める必要があろうと考え,そう説明しております」「就労の可否につきご判断をお願いしたいのと,自宅療養(実家等で)の必要性についてもご教示お願い致します」と記載されている。(甲B3)オ原告は,平成25年8月25日【q】を受診した。原告がその際に作成した問診票には,困っていることとして,「呼吸困難・窒息感」「漠然と不安」「電車,バス,人混み,人前など特定の場所や状況が苦手」「憂うつで塞ぎ込む」「物事が楽しめない」「悩み事を繰り返し考える」「やる気が出ない」「情緒不安定」「怒りっぽい」「物事を必要以上に確認してしまう」「物忘れが困る」「人間関係で悩んでいる(職場)」がチェックされており,悩み始めた しめない」「悩み事を繰り返し考える」「やる気が出ない」「情緒不安定」「怒りっぽい」「物事を必要以上に確認してしまう」「物忘れが困る」「人間関係で悩んでいる(職場)」がチェックされており,悩み始めたきっかけとして,「職場で傷害事件にあい,それを職場が取り合ってくれない事への不信感から」と記入されている。原告がその際に作成したチェックシートには,「会社の契約を切られるのではないかと思うと不安になり,不眠や過呼吸など症状が出ます」と記入されている。原告は,【q】の【P】医師に対し,契約更新の掲示を見て過呼吸となり,早退させられ,契約更新をすることができるか不安となり,首をつろうとしたが,酩酊状態で記憶がないと説明した。原告の初診時診療録の「病歴現症」欄には,「幻覚・妄想(+)『使えないから死んじゃえ』気分が落ちると聞こえる。初めての経験」と記載されている。同医師が作成した【M】医師に対する返信には,うつ病と診断した上,「人込みや外出に対する不安感が強く,倦怠感や易疲労感,判断力の低下,思考静止もあり,上記の病名を暫定診断としました」「仕事に対する意欲は旺盛で,仕事をしない方が不安ともおっしゃっているため,勤務は通常通りとしてよいと思われました。自宅療養も現在必要とせず,規則正しい 生活は心がけるよう伝えました」「希死念慮は本人も否定していますが,仕事の契約が切れることを一番心配しており,再び症状が出現する可能性もあるので,勤務が続けられる安心感を持たせてあげて下さい」と記載されている。(甲B3,13,乙B23)カ原告は,平成25年9月12日,健康管理センターの産業医である【M】医師,【N】医師と面接した。この面接には,被告の保健師である【Q】(以下「【Q】保健師」という。)が立ち会い,E-EARの担当者である【R 平成25年9月12日,健康管理センターの産業医である【M】医師,【N】医師と面接した。この面接には,被告の保健師である【Q】(以下「【Q】保健師」という。)が立ち会い,E-EARの担当者である【R】(以下「【R】」という。),【S】が同席したが,原告の希望により所属部署の上司には内密で行われた。この面接の記録には,次の記載がある。(乙B10の3,乙B12)原告前回は,ゲストにやられたことに対してメンタル不調になってしまったと説明したが,実際には,隣にいた【A】SVのパワハラ的な対応について,溜まりに溜まったものがあり,こうなってしまったので,話すことができなかった。人間関係のストレスは,【A】SVだけでなく,他の出演者など周りからもあるので,完全に切り離すのは難しい。体調が悪くなったときに対応してもらえない。目に見える病気は対応できるが,目に見えないから,わがままを聞いていられないと言われてしまった。 【R】【a】から【b】に異動するのはどうか。 原告具合が悪いことを知ってくれている出演者が徐々に増えてきているので,それを全く知らない人の中に異動するのは怖い。体調が悪くなるのは一緒に動くメンバーによる。 【R】来年度の契約はすることを前提に,ちゃんと休業加療をするという選択肢 はあるか。 原告それが理想だが,家の中で働き手が自分しかいないので,休めないという現状。週5が週4くらいになればいいと思う。 【N】医師契約上も,経済的にも,本人が安心して休める環境を与えてあげることが理想。会社で配慮できることを検討する必要があり,まずは上位上司に相談することを勧めた。 【N】医師契約上も,経済的にも,本人が安心して休める環境を与えてあげることが理想。会社で配慮できることを検討する必要があり,まずは上位上司に相談することを勧めた。 【R】ショー運営部長と部門のMGRに相談するのがよいと思う。 【N】医師まず,E-EARの方も交えて上位上司と産業医が面接することで本人了解を得た。 【M】医師は,同日付けで,【q】の【P】医師に対し,礼状を作成した。 その礼状には,「仕事が原告の支えとなり得ている部分,職場での人間関係の苦しさ,本音としてはゆっくり休みたいけど契約継続に影響を与え得る不安,自宅療養をしようにも家庭内が安定しない状況,実家の家計を支えている稼ぎ頭であることなどの事情が絡み合って起こり得ている状況のように思われます。会社側としては,こと職場の人間関係につき,本人とも確認をとりながら所属の責任者である部長などへの相談なども検討中で,本人にとって大きな負担になるようなことがないよう,また,本人が大きく不利益を被ることがないよう,配慮しながら関わっていくことになっています」と記載されている。(甲B3)キ被告は,平成25年9月,出演者に対し,平成25年11月から公演が行われる【o】(以下「【o】」という。)の配役を発表したところ,原告には,本件出来事の当時の配役(以下「本件配役」という。)が配役された。 【o】の出演者は,1日2公演の【o】に出演するほか,【o】の空き時間を利用して【e】に1回出演することになっていた。この【e】に出演することは「【s】」と呼ばれている。本件配役は,■■の出演者で構成されるグループであり,【o】及び【e】に出演する際は,必ず■■の出演者がそろって出演することとなっ になっていた。この【e】に出演することは「【s】」と呼ばれている。本件配役は,■■の出演者で構成されるグループであり,【o】及び【e】に出演する際は,必ず■■の出演者がそろって出演することとなっていた。(乙B15)原告は,平成25年9月21日,【Q】保健師に対し,次の内容のメールを送った。(乙B10の5)① ずっと事件になった役をやると過呼吸になり怖い。なるべくその役のシフトには入れないでほしいとSVに伝えておいたにもかかわらず,【t】のキャスティングでその役になった。嫌がらせ?と考えてしまい,症状が悪化。これから先の苦痛を考えると頭がおかしくなりそうです。また嫌がらせをされると考えるとキャスティングを降りることもできない。 ② 悪くなっていく一方で,どうしたら良くなるのかが分かりません。この文章も頭が働かないため,上手に伝えられず,まとまりがなくすみません。 ク原告は,平成25年10月15日,健康管理センターの産業医である【M】医師,【N】医師と面接した。この面接には,【Q】保健師が立ち会ったが,この面接は,原告の希望により所属部署の上司には内密で行われた。この面接の記録には,次の記載がある。(乙B10の4及び5)原告通勤はなんとか。体調で仕事を休むことはない。遅刻早退も。【t】のキャスティングはもともと過呼吸のきっかけになり得た【l】であり,不安は大きい。E-EARの人には報告しているが,E-EARの人とも面接するのがいっぱいいっぱい。 【N】医師必要な部門や上司とは情報共有をしていきたいが。背丈からできる【l】の種類も限られるようで,部門は【t】のキャスティングもフロートの上で 手をひねられることもなく,考えた上でのキ 必要な部門や上司とは情報共有をしていきたいが。背丈からできる【l】の種類も限られるようで,部門は【t】のキャスティングもフロートの上で 手をひねられることもなく,考えた上でのキャスティングのようだった。情報共有を関係各者と行っていくことは進むと思うが。 原告【K】部長との情報共有については,E-EARより打診を受けているが,体調が芳しくないことから先送りしている。体調が戻ったら,E-EARに連絡する旨伝えている。 【M】医師原告は,上司との情報共有につき,本人に勧めるも,本人はやる気が出ないといった体調を理由に希望せず。上司との情報共有により,仕事環境の改善につき依頼できる可能性はあることを本人には伝えた。主治医との情報共有につき本人に伝えた。 【N】医師【Q】保健師へのメール①について,原告の苦しさはよく分かるが,上司には話さないでほしいとのことで,今は聞くだけになってしまっている。上司に伝えなければ,問題は解決しない。原告のことを理解してくれる上司にも入ってもらいたい。 原告上司(SV)にそんな人はいない。 【N】医師SVよりも上の,MGRの方に相談することを勧める。 原告それなら自分と同じ目にあっているキャストがいるので,その人と一緒に相談します。 【N】医師ここでは原告の健康のことが問題なので,原告だけにしましょう。 【Q】保健師へのメール②については,現在の状態を考えると,療養する ことが一番良いと思う。良くなるためには,療養することを勧める。 今後の対応について引き続き休養加療を原告に勧 ール②については,現在の状態を考えると,療養する ことが一番良いと思う。良くなるためには,療養することを勧める。 今後の対応について引き続き休養加療を原告に勧めていく。今後のフォロー面談には,MGR,UMクラスの上司が同席するよう本人を説得していく。 ケ 【M】医師は,平成25年10月15日付けで,【q】の【P】医師に対し,診療情報提供書を作成した。その診療情報提供書には,「先生からの就労可能のご判断に基づき就労継続にて経過を確認しております。やる気が出ない,判断力が落ちている様子が顕著であり,情報提供のため書面を作成致しました。直接の上司との関係が悪く,体調不良に大きく影響しております」「本人は,ある出来事をきっかけに特定の仕事内容が困難となりました。本人の思いとしては,そのような状況は上司等にも伝えているにも関わらず,体調不良の原因となり得た仕事内容を割り振られ,上司が故意にその仕事を割り振ったと疑念を抱いております。私産業医より,その上司の上司にヒアリングしたところ,故意的な要素は薄く,本人が仕事しやすいよう配慮した上での仕事の割り振りのようには思えました。ただ,本人の意向,職場の意向が行き違っているように見受けられるため,直接の上司の上の立場に当たる上司,従業員相談窓口の担当者などを交えて,本人の希望を確認し仕事内容の調整を行う面談を設定するつもりですが,やる気が出ないため原告は面談に臨むことができないとのことでした。環境調整目的の面談が困難な場合,本人に対するストレスの軽減ができないため,体調回復が望めないのではないかと考えております。また,本人の働く環境改善を促すための面談を行う行わない判断ができないように見受けられ,うつ病に伴う判断力の低下が影響していると考えられました。 め,体調回復が望めないのではないかと考えております。また,本人の働く環境改善を促すための面談を行う行わない判断ができないように見受けられ,うつ病に伴う判断力の低下が影響していると考えられました。公私にわたる意欲低下を認めており,環境改善の調整を促そうにも膠着状態となっております。本人と産業医面談を行っていても,終始流涙しており,意欲低下,判断力低下,考えがまとまらないといった症状が顕著なことから,就業継続していてよいのか非常に判断が迷う ところであります。再度,本人には自宅療養も検討してみてはと伝えております」と記載されている。(甲B3)コ原告は,平成25年11月以降,【o】に出演し,本件配役を演じていた。 原告は,同月頃,【B】に対し,【s】の本件配役を変更してもらいたいと申し出たが,その申出後も,原告の配役が変更されることはなく,原告は本件配役を演じていた。(【B】,原告)サ原告は,平成25年12月6日,被告との間において,上記⑵アと同様の内容の出演者雇用契約を締結した。(乙B13)⑹ その後の出来事ア原告は,平成27年12月頃,それまでと同様に【a】において出演者として勤務していたところ,同月又は平成28年1月頃,ロッカールームにおいて,【F】に対し,来期【u】に入ったのでよろしくお願いしますと挨拶をした。(争いがない事実)イ平成28年1月5日夜から同月6日午前1時頃にかけて,新浦安駅近くの居酒屋において懇親会(以下「本件懇親会」という。)が行われた。原告は一次会から,【D】UMは二次会から,本件懇親会に参加した。(争いがない事実)ウ 【F】及び原告は,平成28年4月から,【u】におけるショー(以下「本件ショー」という。)に出演していた。【G】は,平成2 D】UMは二次会から,本件懇親会に参加した。(争いがない事実)ウ 【F】及び原告は,平成28年4月から,【u】におけるショー(以下「本件ショー」という。)に出演していた。【G】は,平成29年2月,本件ショーに出演していた。(争いがない事実)エ原告は,平成28年4月20日午後0時15分に,首痛及び腰痛のため早退した。原告は,平成29年5月4日に生じた業務上の災害によって,同月31日から同年8月30日まで休職した。原告は,その後,復職したが,一部の業務の担当から外れていた。(争いがない事実)オ原告は,平成30年7月13日から現在に至るまで,頸椎椎間板ヘルニア,頸椎捻挫を理由として休職している。(争いがない事実) 2 争点本件の争点は,⑴ 被告の安全配慮義務違反の有無(【A】SV,【B】SV,【C】SV,【F】,【D】UM,【E】SV,【G】,【H】,【I】によるパワハラ及びいじめについて被告に安全配慮義務違反があったか否か),⑵ 被告の使用者責任の有無(上記のパワハラ及びいじめの有無),⑶ 原告の損害である。 3 当事者の主張⑴ 被告の安全配慮義務違反の有無(原告の主張)ア被告の安全配慮義務違反使用者は,労働契約上の義務として,労働者に対し,当該労働者がその生命,身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をする義務を負っているのであり(労働契約法5条),その一環として,職場内においてパワハラによる人権侵害が起きないようにし,良好な職場環境を保持するため,従業員にパワハラ防止のための教育をし,パワハラが発生した場合はこれを調査把握し,適切な措置を講ずるべき義務(職場環境調整義務)を負っている。 原告は,次のイ な職場環境を保持するため,従業員にパワハラ防止のための教育をし,パワハラが発生した場合はこれを調査把握し,適切な措置を講ずるべき義務(職場環境調整義務)を負っている。 原告は,次のイ以下のとおり,本件出来事に関連して,【A】SV,【B】SV,【C】SVにより,一連のパワハラを受け,うつ症状を発症し,増悪した上,【F】,【D】UM,【E】SV,【G】,【H】,【I】を始めとする他の出演者により,出演者間の「カースト」に基づいた職場における常習的ないじめの一環としてのいじめを受けて,著しい精神的苦痛を受けたところ,被告は,原告から,職場内におけるパワハラ及びいじめについて相談を受けていたのであるから,上司及び他の出演者による原告に対するパワハラ及びいじめの有無を調査し,原告がパワハラ及びいじめを受けることがないよう適切な措置を講ずるべきであった。ところが,被告は,原告に対す るパワハラ及びいじめの有無を調査し適切な措置を講ずることなく放置していたのであり,そのため,原告は,職場におけるパワハラ及びいじめを受けて,著しい精神的苦痛を受けたのであるから,被告は,これによって原告に生じた損害を賠償する義務を負う。 イ 【A】SVの発言原告は,平成25年2月7日,本件出来事の後,直属の上司である【A】SV及び更に上の地位にあると考えられる50歳代の男性上司(以下「本件上司」という。)と面談をし,本件上司から,「エンターなんだから,それくらい我慢しなきゃ」「君は心が弱い」と言われ,労災申請への協力を拒絶されたところ,その場に同席していた【A】SVは,本件上司の言葉を復唱し,本件上司の言動に賛同する発言をしていた。 原告は,労災申請を断念し,右手の治療のための通院も断念した。原告は,被告と たところ,その場に同席していた【A】SVは,本件上司の言葉を復唱し,本件上司の言動に賛同する発言をしていた。 原告は,労災申請を断念し,右手の治療のための通院も断念した。原告は,被告との契約を維持することができなくなるという強い不安を抱き,この不安が後にうつ症状に発展した。 ウ 【B】SVの発言原告は,平成25年11月下旬頃,本件出来事の当時の配役(本件配役)を演じると過呼吸の症状が出るようになっていたことから,本件配役を全うすることができないことを理由に,【o】について一時的な配役の変更(同僚との配役の交換)を申し出たところ,【B】SVは,「わがままには対応できない」「解雇対象になる」と発言した。 原告は,本件配役を演じると過呼吸の症状が出るようになっていたことから,複数のSVに対し,あらかじめ,本件配役を割り振らないよう願い出ていたのであり,それにもかかわらず本件配役が割り振られたことから,SVの不興を買ったと考え,それ以上SVの心情を害することをおそれて本件配役を一旦引き受けた。原告は,過呼吸のため業務の継続が困難な状態になったことから,上記の申出をしたが,【B】SVに一蹴され,【o】の終了ま で過呼吸の症状に苦しめられ,被告との契約を維持することができなくなるという不安に苦しめられることとなった。 原告は,頻繁に過呼吸の症状が出ることから,他の出演者の迷惑になっているのではないかと考え,80名ほどの同僚に対し,自らの過呼吸の事情を説明し謝罪する手書きの手紙を書き,各人のレターボックスに差し入れたところ,その手紙の一部は破られて捨てられており,一部の者からは無理解を謝罪する言葉があった。 エ 【C】SVの発言【C】SVは,平成25年11月下 のレターボックスに差し入れたところ,その手紙の一部は破られて捨てられており,一部の者からは無理解を謝罪する言葉があった。 エ 【C】SVの発言【C】SVは,平成25年11月下旬頃,原告がバックステージで過呼吸を繰り返したことについて,「次に倒れたら(【o】の役を)辞めてもらう」と発言した。 原告の同僚の一部は,原告に嫌悪感を抱き,「早く辞めてくれないか」などと聞こえよがしに言うようになっていたところ,【C】SVは,過呼吸のためバックステージにおいて20分ほど座り込み呼吸を落ち着かせていた原告に対し,上記発言をした。原告は,自らが【o】の役から外れ,他の出演者に迷惑をかけると,自らに対する風当たりが強くなることから,同僚との配役の交換を認めるよう再度申し出たが,【C】SVは,上記発言は会社(被告)の判断であるとして,原告の申出を一蹴した。原告は,【C】SVの理不尽な態度に精神的な苦痛が増し,うつ症状が悪化した。 オ 【F】の発言【F】は,平成27年12月又は平成28年1月頃,ロッカールームにおいて,原告から,来期【u】に入ると挨拶された際,原告に対し,「お前みたいにやる気のないやつは全力でつぶすから」「【u】には神様がいるんだから,お前は神様に嫌われているから3か月後に絶対怪我するから覚えておけ」と発言した。 【F】は,出演者としての長いキャリアを有し,他の出演者に強い影響力 を持つ権力者であり,原告をいじめていたこともある。そのような人物である【F】が,その機嫌を損ねることをおそれて挨拶をした原告に対し,上記発言をしたのであり,原告は,【F】から,周囲を巻き込んだいじめの対象とすることを予告されたと捉え,強い恐怖を感じた。 カ 【D】UMの発言 損ねることをおそれて挨拶をした原告に対し,上記発言をしたのであり,原告は,【F】から,周囲を巻き込んだいじめの対象とすることを予告されたと捉え,強い恐怖を感じた。 カ 【D】UMの発言【D】UMは,平成28年1月6日,本件懇親会において,「20代を集めてこい」と発言した上,前に座っていた原告に対し,「目障りだからどけ」と発言し,原告が【u】の楽屋が合わず喘息が起こると相談すると,「病気なのか。それなら死んじまえ」「死んじゃえNISSAN」「30歳以上のババアはいらねーんだよ,辞めちまえ」「てめーのわがままはきいてらんねーんだよ」「俺の前に汚え面見せるな」「お前は来期【b】に異動かな」「行っちゃえNISSAN」と発言した。 原告は,【F】の発言を受けて,来期の業務に不安を感じていたところ,【D】UMが本件懇親会に参加したことから,思い切って,その前に座り,【u】におけるいじめについて相談したものである。しかし,【D】UMは,「俺の前に座っていいのは20代だけだ」「20歳のやつを集めてこいよ」と述べ,自らの窮状を訴えて配置換えを求める原告の話に耳を傾けず,かえって,原告の願いはわがままであるとして,原告の人格を非難する発言を繰り返したのであり,原告は,【D】UMの発言に耐えかねて,俯き,涙を流していた。原告の苦痛は計り知れない。 キ 【E】SVの発言原告は,平成29年1月頃,トイレ内において,過呼吸になっていたところ,【E】SVは,「体調悪いなら早く言ってくれないと」と発言し,トイレから出た原告が「過呼吸は予測できないんです」と言うと,「ショーがキャンセルになったらどう責任を取るつもりなの」と発言した。 原告は,当日,他の出演者から,原告と一緒だと不幸がうつっちゃうなど た原告が「過呼吸は予測できないんです」と言うと,「ショーがキャンセルになったらどう責任を取るつもりなの」と発言した。 原告は,当日,他の出演者から,原告と一緒だと不幸がうつっちゃうなど と言われ,精神的負担を感じ,過呼吸の症状を生じたことから,トイレに駆け込み,呼吸が治まるのを待っていたところ,【E】SVは,上記発言をした。原告は,【E】SVに,他の出演者からのいじめを受ける不安について相談していたところ,その【E】SVに心ない態度をとられたことから,社内における孤立感を深め,精神的苦痛が増した。 ク 【G】の発言【G】は,平成29年2月2日,楽屋において,原告に対し,「どっち?」と質問し,「え?何ですか」と原告が答えると,原告に対し,「A(役名)とB(役名)どっちかをきいているのに決まってるじゃん。他の人は■■■■■■やりませーん。バカ?」と発言した。 【G】は,平成29年2月7日,楽屋において,原告が本件ショーの最中の着替えの際に■■■着用順を間違えそうになったところ,「はい,出たー,出ましたー」と大声で言ってあざ笑った。 原告は,上司に対し,いじめについて相談していたが,上司の対応は冷たく,改善はみられなかった。そのため,原告は,複数の出演者から,常習的に,無視,悪口,陰口などのいじめを受ける状況に陥っていた。【G】は,原告をいじめていた出演者の一人であり,原告は,その発言によって,著しい精神的苦痛を受けた。 ケ 【H】の発言【H】は,平成29年10月27日,楽屋において,原告が3か月の休職を余儀なくされた平成29年5月4日発生の労災事故のため従事することができる業務が制限されていると話したところ,同席していた他の同僚を煽るように「私もでき 月27日,楽屋において,原告が3か月の休職を余儀なくされた平成29年5月4日発生の労災事故のため従事することができる業務が制限されていると話したところ,同席していた他の同僚を煽るように「私もできないとかいってみたいわー」と発言した。 【H】は,平成29年11月22日,楽屋において,原告が,これから役を交代する他の出演者が【r】をたたんで戻そうとしていることについて,その【v】はクリーニングに出されるものである(そのため,たたむ必要は ない)と指摘したところ,「あー,最初から分かってたのに言わなかったんでしょー。意地がわるーい」と繰り返し大声で発言し,執拗に原告を責め立てた。 【H】は,原告をいじめの対象として扱ったものであり,原告に著しい精神的苦痛を与えた。 コ 【I】の発言【I】は,平成30年2月3日,楽屋において,片付けをしていた原告に対し,「カーペット敷きたいんですけど,早くその大きなお尻をどかしてくれます。本当に邪魔」と発言した。 【I】は,平成30年3月12日,喫煙所において,原告が新人にアドバイスしていたのを見て,当該新人に対して「【T】の言うことなんてきかない方がいいよー」と発言した。 【I】は,原告をいじめの対象として扱ったものであり,原告に著しい精神的苦痛を与えた。 (被告の主張)ア被告の安全配慮義務違反について被告の従業員が原告に対しパワハラ及びいじめを行った事実はなく(原告が主張する発言の中には,発言そのものは行われたものもあるが,いずれも,社会通念上相当性を欠くものでなく,違法でない。),原告がこれらのパワハラ及びいじめによってうつ症状を発症するなどして精神的苦痛を受けた事実もないのであり,被告は, 行われたものもあるが,いずれも,社会通念上相当性を欠くものでなく,違法でない。),原告がこれらのパワハラ及びいじめによってうつ症状を発症するなどして精神的苦痛を受けた事実もないのであり,被告は,原告に対するパワハラ及びいじめの有無を調査し適切な措置を講ずる義務を負っていなかった。被告は,原告に対し,損害を賠償する義務を負っていない。 イ 【A】SVの発言について【A】SVは,本件出来事の後,原告と面談をしたが,原告が主張するような人物(50歳代の男性上司)は同席していない。【A】SVは,原告が 主張する発言をしておらず,労災申請への協力を拒絶していない。 ウ 【B】SVの発言について原告が本件出来事の当時の配役(本件配役)を演じると過呼吸の症状が出ることは否認する。 原告が,【B】SVに対し,精神的にしんどいと説明し,【o】について配役の変更を申し出たことはあるが,原告から申出があったのは【s】の部分のみの配役の変更である。【B】SVは,原告に対し,【s】の部分のみの配役の変更は難しいと伝え,思い切って仕事を全部休むことを提案したのであり,原告が主張する発言はしていない。 エ 【C】SVの発言について【C】SVは,過呼吸の状態の原告に声をかけておらず,原告が主張する発言はしていない。【w】の配役は,全てのSV及びUMの意見を反映して決定されるものであり,担当SVといえども独断で変更することはできないから,【C】SVが,他のSVに相談することなく,原告が主張する発言をしたとは考えられない。 オ 【F】の発言について原告は,平成27年12月又は平成28年1月頃,ロッカールームにおいて,【F】に対し,挨拶をしたところ,【F】は,他の場 る発言をしたとは考えられない。 オ 【F】の発言について原告は,平成27年12月又は平成28年1月頃,ロッカールームにおいて,【F】に対し,挨拶をしたところ,【F】は,他の場所よりも狭く出演者同士の衝突などの危険性が高い【u】においては緊張感を持って出演してほしいと思っていたことから,「本気で行くよ」などとは言ったものの,原告が主張する発言はしていない。【F】は,原告が主張するような権力者ではなく,出演者の間において,原告が主張するようないじめが存在した事実はない。 カ 【D】UMの発言について【D】UMは,本件懇親会において,原告に対し,「てめえらは稼いでいるんだから,ちょっとは我慢しろよ」「我慢できねえんなら,とっとと辞め ちまえよ」「病気なんだ。それでこういう商売できるの?ずっと」「行っちゃえNISSAN」と発言したが,原告が主張する発言は,【D】UMの発言の前後の文脈等を無視し,言葉の断片を寄せ集めたものであり,不当な印象操作である。【D】UMは,仕事をする上で人間関係の好き嫌いがあったとしても我慢することが必要であり,どうしても我慢することができないのであれば他の【x】に異動する方法があるということを出演者の先輩としてアドバイスし,原告の健康状態について素朴に質問していたものである。 キ 【E】SVの発言について【E】SVは,原告に対応したことがあるが,それは,平成28年4月20日のことであり,平成29年1月頃には対応していない。【E】SVは,SVとなった平成28年4月20日,トイレの個室内の原告に対し,「どうしたの,大丈夫」と声をかけた上,「代わりは立ちますので,無理はしないで下さい」と話したのであり,原告が主張する発言はしていない。【E】SV 平成28年4月20日,トイレの個室内の原告に対し,「どうしたの,大丈夫」と声をかけた上,「代わりは立ちますので,無理はしないで下さい」と話したのであり,原告が主張する発言はしていない。【E】SVは,原告から,いじめについて相談されていない。 ク 【G】の発言について【G】は,平成29年2月当時,原告と同じショーに出演していたが,原告が主張する発言はしていない。 ケ 【H】の発言について【H】が,平成29年10月27日,原告に対し,労災事故による受傷の状態について尋ね,原告が業務を制限されていることを説明した可能性はあるが,原告が主張する発言はしていない。 【H】が,平成29年11月22日,楽屋において,原告に対し,「分かってて言わなかったんでしょー」「いじわるー」と冗談めかして言った可能性があるが,非難する趣旨でなく,執拗に責め立てたものでもないから,社会通念上相当性を欠き違法となるようなものでない。 コ 【I】の発言について 【I】は,平成30年2月3日は勤務していなかったのであり,原告が主張する発言をしていない。 【I】は,平成30年3月12日,落ち込んでいた後輩を「大丈夫だよ」と励ましていたところ,原告が「何かあったときは会社を訴えればいい」と発言したことから,後輩が驚いて困惑したのに対して,「【T】の言うことを真剣に捉えすぎなくていいよ」とアドバイスしたにすぎないのであり,社会通念上相当性を欠き違法となるようなものでない。 ⑵ 被告の使用者責任の有無(原告の主張)上記⑴イないしコの【A】SVらの発言は,被告の事業の執行についてされたものであるから,被告は,上記⑴イないしコの発言によってされたパワハラ及びい 使用者責任の有無(原告の主張)上記⑴イないしコの【A】SVらの発言は,被告の事業の執行についてされたものであるから,被告は,上記⑴イないしコの発言によってされたパワハラ及びいじめについて使用者責任を負う。 (被告の主張)被告の従業員が原告に対しパワハラ及びいじめを行った事実はなく,被告は,使用者責任を負わない。 ⑶ 原告の損害(原告の主張)被告の安全配慮義務違反並びに【A】SVらのパワハラ及びいじめによって原告が受けた精神的苦痛に対する慰謝料は,300万円を下るものでない。 弁護士費用は上記金額の1割に当たる30万円が相当である。 第3 当裁判所の判断 1 被告の安全配慮義務について使用者は,労働契約に伴い,労働者がその生命,身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう,必要な配慮をする義務を負う(労働契約法5条)ところ,被告は,その義務の一環として,原告との間における出演者雇用契約上,原告に対し,その時々の原告の心身の状況に応じて,原告の仕事内容の調整を行い, 又は職場の人間関係など職場環境の調整を行う義務を負っていたというべきである。 2 認定事実前提事実に加えて,各項に掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 ⑴ 原告は,平成21年4月1日,被告との間において,出演者雇用契約を締結し,その雇用契約は,その後,1年ごとに更新された(前提事実⑵)ところ,被告における出演者雇用契約は,自動更新は行わないものとし,契約期間中に行われるオーディションに合格したものに限り来期の契約を締結することとしていることから,出演者間の人間関係は,友人関係があったとしても潜在的には競争関係にあり,来期の契 わないものとし,契約期間中に行われるオーディションに合格したものに限り来期の契約を締結することとしていることから,出演者間の人間関係は,友人関係があったとしても潜在的には競争関係にあり,来期の契約や員数に限りがある配役をめぐる軋轢を生じやすい性質があると考えられる。また,被告における出演者雇用契約は,疾病や事故等により契約後の業務の遂行が困難であると判断された場合は解除されるものとしていることから,自動更新は行わないものとしていることと相俟って,雇用の継続に関する不安を生じやすい性質があると考えられる。(甲B20,原告)⑵ 原告は,平成25年2月7日,【a】において【e】に従事していた際,男性客から右手の指を折り曲げられる暴行を受けた(本件出来事。前提事実⑶ア)。 被告セキュリティ部は,ショー運営部から,原告が暴行被害を受けたと報告を受け,加害者である男性客の特徴を基に捜索を行い,【a】が閉園するまで,加害者の捜索を行った(前提事実⑶ウ及びエ)。【A】SVは,セキュリティ部のオフィスで,原告と面談をした(前提事実⑶エ)ところ,その際,【A】SVの側から,労災申請への協力を求める原告の心の弱さを指摘するものともとれる発言があったものの(前提事実⑸アないしオ,甲B15),被告は,その後,療養の給付請求書に必要事項を記載するなど原告の労災申請に協力した(前提事実⑷エ)。被告は,本件出来事の後,原告が当面の間,ゲスト(来 園者)と触れ合う【e】への出演をしないようシフトの調整を行ったが,来期の契約締結の可否に影響を与えることを慮った原告の申出を受けて,【e】への出演を徐々に再開した(乙B15,【B】)。 ⑶ 原告は,本件出来事の後,うつ症状が発症し,過呼吸の症状が出るようになった(前提事実⑸アないしオ)が,来期の契 った原告の申出を受けて,【e】への出演を徐々に再開した(乙B15,【B】)。 ⑶ 原告は,本件出来事の後,うつ症状が発症し,過呼吸の症状が出るようになった(前提事実⑸アないしオ)が,来期の契約締結の可否に影響を与えることを慮り,できる限り人に知られないようにしていた。原告は,平成25年8月15日,被告の従業員相談窓口であるE-EARに対し,SVの対応に関する不満,評価及び契約体制に関する不満について本件相談をした(前提事実⑸イ)。 原告は,同月22日,被告が設置する健康管理センターの産業医である【M】医師,【N】医師と面接し,その後,何回か面接し,【M】医師の紹介を受けて【q】を受診した(前提事実⑸ウないしケ)ところ,【M】医師ら及び【q】の医師は,休職の上,療養に専念することを勧めたが,原告は,出演者雇用契約の継続にこだわり,出演者としての就労を継続しながら治療を受けることを望んだ。【M】医師らは,原告の希望により,原告が産業医面談を受けていることを所属部署の上司には内密にしていた(前提事実⑸カ及びク)が,原告の状況は,遅くとも同年11月28日及び12月18日の面談により,【K】部長,【L】MGRの知るところとなった(前提事実⑸イ)。原告は,同年9月,【o】の配役として,本件出来事の当時の配役(本件配役)を配役され,「なるべくその役のシフトには入れないでほしい」とSVに伝えておいたにもかかわらずされたものであり,嫌がらせであるかと考えていた(前提事実⑸キ)ところ,上記の【K】部長らとの面談の際,なるべくゲストに接することがないように配慮したポジションであることが説明された(前提事実⑸イ)。(甲B20,原告)⑷ 原告は,過呼吸の症状が出るようになったことから,配役について希望を述べることが多くなったところ,過呼吸の症状が 慮したポジションであることが説明された(前提事実⑸イ)。(甲B20,原告)⑷ 原告は,過呼吸の症状が出るようになったことから,配役について希望を述べることが多くなったところ,過呼吸の症状が出るようになったことを原告ができる限り人に知られないようにしていたこともあり(上記⑶),他の出演者 の中には,原告に対する不満を有するものが増えた。原告は,他の出演者の理解を得るため,60名ほどの同僚に対し,自らの過呼吸の事情を説明し謝罪する手書きの手紙を書き,各人のレターボックスに差し入れたことがあるところ,一部の者からは無理解を謝罪する言葉があったが,その手紙を破り捨てたものもいた(甲B16,17)。(甲B20,原告)⑸ 平成28年1月5日夜から同月6日午前1時頃にかけて,新浦安駅近くの居酒屋において本件懇親会が行われ,原告は一次会から,【D】UMは二次会から,本件懇親会に参加した(前提事実⑹イ)ところ,本件懇親会において,原告と【D】UMとの間には,職場におけるいじめなどについて,次のようなやり取りがあった。(甲B6)原告「予防するにはどうすればいいですか」【D】UM「学校じゃない。てめえらは稼いでるんだから,ちょっとは我慢しろよ」原告「我慢のピークを越えたときに,どうすればいいですか」【D】UM「だから,違うところに行きゃいいんじゃない」原告「例えば?」【D】UM「【b】さ」【D】UM「じゃあ,君を嫌だと思った人間がいたら,どうしたらいいの」原告「組まないようにするとか,できないんですか」【D】UM「じゃあ,■■■■がそれを言ったらどうするの?」「もう,ショーはできない。何もできない」「そんなさ,金もらってさ,おまえら 原告「組まないようにするとか,できないんですか」【D】UM「じゃあ,■■■■がそれを言ったらどうするの?」「もう,ショーはできない。何もできない」「そんなさ,金もらってさ,おまえら大人なんだから,ちょっとくらい我慢してやってるんだから,商売」「金もらってんだから,ちょっと我慢したらいいんだよ」原告「学生のようないじめをしている人を,このまま野放し」【D】UM「それは言えばいい。訴えればいい」原告「どこにですか」 【D】UM「だから,E-EARとか」【D】UM「俺だって,嫌な奴は一杯いる。でも,金もらって仕事してんだから,ちょっと我慢しちゃうかな」原告「ある程度は我慢しましたよ」【D】UM「自分だけが被害者みたいにさ,みんな言うんだけどさ,みんな被害者なんだよね,嫌な奴もいるし,気に入らない奴もいるし,それをさ,大人だから,それは,俺はここでやってんじゃねえよって思う」原告「人によって選択肢が違うというのは」【D】UM「いや,いや,だからいいんだよ。君の考え方があっても。全然オーケー。だから,それが■■■■の言うこと聞いたら,どうするの会社は」(脇から「いや,いや,いや,失礼します」「チアース」「チアース」)【D】UM「もう,今日は楽しい飲み会だから,楽しくしようよ」原告「切羽詰まっているから,人から聞いてほしかったんですよ」【D】UM「でも,俺の答え,それだな。俺はやってたから,よく分かる」原告「うーん。でも,その,ある人は」【D】UM「じゃあさ,もう,じゃあ,いいや,はっきり言おう。みんながそうやって言ってたら,どうしたらいいの,【a】は。もう【y】 く分かる」原告「うーん。でも,その,ある人は」【D】UM「じゃあさ,もう,じゃあ,いいや,はっきり言おう。みんながそうやって言ってたら,どうしたらいいの,【a】は。もう【y】やめた方がいい?」原告「辞めたくないんです」【D】UM「いや,違う。だから,みんなが嫌いだったらどうするの。キャスティング,どうするの。ショーはどうするの。やらなくていい?」原告「できないですね。それは」【D】UM「だから,それを,てめえらが,てめえらの好きなように言ってるだけでしょう,わがままでって,俺は言いたい。それだけの話。俺は,上司として言う。俺は,【y】としたら,金もらってやってんだから,ちょっと我慢しろよ。我慢できねえなら,とっとと辞めちゃえよ。でも,ほとんど答えは 一緒だと思う。どうにもできない。どうしようもする気はない。だったら,そういう人たちがいない,【b】に。それで十分。で,そこでうまくやっていけないのを他人のせいにするのか,自分のせいにするのか。全て他人のせいにする」原告「【b】に行くよりも,【a】の方が,症状とかも分かってもらえてるから」【D】UM「症状とか。自分は全然悪くない。自分はもうすっごいいい子で,周りが悪いの?え,症状って何」原告「病気の症状が」【D】UM「あ,病気なんだ。ふうん。それでこういう商売できるの?ずっと」原告「うーん。やりたいと思っているから」【D】UM「やりたいと思っているんだけど,ども,それが人間関係が駄目だったら,【b】に行った方がいいじゃん」原告「【b】に行くことによって悪化するんだったら,【a】にいたいというのもわがままですか」【D】UM「 ど,ども,それが人間関係が駄目だったら,【b】に行った方がいいじゃん」原告「【b】に行くことによって悪化するんだったら,【a】にいたいというのもわがままですか」【D】UM「それは分かんないじゃん。だから,もう,自分が全部100パー正解で,人がもうみんな悪いんだ」原告「全然そういうふうには思ってないです」【D】UM「俺は,あほな人間だから,よく分かんねえんだけどさ,でも,俺は,プロだったら,そんなわがまま言ってるんだったら,もおう,しようがねえよ。もう助けらんない。どうしたらいいか分かんない」【D】UM「どこでもできます。これでもできますっていうさ,あれにはなんない?」原告「限界超えちゃったから」【D】UM「だから,【b】に行った方がいいんじゃない。人間関係でさ, 誰々ちゃんが駄目,誰々さんが駄目なんてさ,誰も,誰も,知らないところに行った方がいいんじゃない」【D】UM「いいよねえ,それ。俺が聞いているところは,そう誰々ちゃんと誰々さんが駄目だから,じゃあ,いないところへ行っちゃえばいいじゃん。 行っちゃえニッサン」原告「でも,それが悪い方に行っちゃうから」【D】UM「それが駄目だったら,おまえ,何をすんの。おまえのわがまま,俺が聞いて,キャスティングした方がいい?俺はそう絶対しない。おまえが俺を訴えても,俺が首になっても,絶対しない。それやったら,俺が終わる」 3 被告の安全配慮義務違反について原告は,本件出来事に関連して,【A】SV,【B】SV,【C】SVにより,一連のパワハラを受け,うつ症状を発症し,増悪した上,【F】,【D】UM,【E】SV,【G】,【H】,【I】を始めとする他の出演者により,出演 事に関連して,【A】SV,【B】SV,【C】SVにより,一連のパワハラを受け,うつ症状を発症し,増悪した上,【F】,【D】UM,【E】SV,【G】,【H】,【I】を始めとする他の出演者により,出演者間の「カースト」に基づいた職場における常習的ないじめの一環としてのいじめを受けて,著しい精神的苦痛を受けたと主張するところ,【A】SVの発言について,本件出来事の後,セキュリティ部のオフィスで行われた原告との面談において,【A】SVの側から,労災申請への協力を求める原告の心の弱さを指摘するものともとれる発言があったという限度において認めることができることは,上記2⑵のとおりであるが,【B】SVの発言,【C】SVの発言については,これを認めるに足りる的確な証拠がなく,認めることができない。【A】SVの発言についても,社会通念上相当性を欠き違法となるとまでいうことはできない。 【F】の発言,【D】UMの発言,【E】SVの発言,【G】の発言,【H】の発言,【I】の発言についても,それらの発言がされたことを認めるに足りる的確な証拠がなく,一部認めることができる発言等(上記2⑸の【D】UMの発言,【H】の平成29年11月22日の発言)についても,それが社会通念上相当性を欠き違法となるとまでいうことはできない。 もっとも,原告は,これらのパワハラ及び職場における常習的ないじめがあったことを前提として,被告が,原告の仕事内容を調整する義務に違反し,職場環境を調整する義務に違反したと主張するものである。そして,原告の仕事内容を調整する義務の違反については,⑴ 原告は,本件出来事の後,うつ症状が発症し,過呼吸の症状が出るようになったが,来期の契約締結の可否に影響を与えることを慮り,できる限り人に知られないようにしていたこと,⑵【M】 反については,⑴ 原告は,本件出来事の後,うつ症状が発症し,過呼吸の症状が出るようになったが,来期の契約締結の可否に影響を与えることを慮り,できる限り人に知られないようにしていたこと,⑵【M】医師ら及び【q】の医師は,休職の上,療養に専念することを勧めたが,原告は,出演者雇用契約の継続にこだわり,出演者としての就労を継続しながら治療を受けることを望んでいたこと,⑶ 被告は,原告が出演者としての就労を継続することを前提として,なるべくゲストに接することがないように配慮したポジションである本件配役を配役したものであることからすると,被告が原告の仕事内容を調整する義務に違反したとまでいうことはできないが,職場環境を調整する義務の違反については,⑷ 原告は,過呼吸の症状が出るようになったことから,配役について希望を述べることが多くなったところ,過呼吸の症状が出るようになったことを原告ができる限り人に知られないようにしていたこともあり,他の出演者の中には,原告に対する不満を有するものが増えたのであって,原告は職場において孤立していたと認めることができるところ,⑸ 出演者間の人間関係は,来期の契約や員数に限りがある配役をめぐる軋轢を生じやすい性質があると考えられること,⑹ 原告は,本件出来事の後,うつ症状が発症し,過呼吸の症状が出るようになった後も,来期の契約締結の可否に影響を与えることを慮り,できる限り人に知られないようにしていたが,原告の状況は,遅くとも平成25年11月28日及び12月18日の面談により,【K】部長,【L】MGRの知るところとなったことによれば,被告は,他の出演者に事情を説明するなどして職場の人間関係を調整し,原告が配役について希望を述べることで職場において孤立することがないようにすべき義務を負っていたということができる たことによれば,被告は,他の出演者に事情を説明するなどして職場の人間関係を調整し,原告が配役について希望を述べることで職場において孤立することがないようにすべき義務を負っていたということができる。ところが,被告は,この義務 に違反し,職場環境を調整することがないまま放置し,それによって,原告は,周囲の厳しい目にさらされ,著しい精神的苦痛を被ったと認めることができるから,被告は,これによって原告に生じた損害を賠償する義務を負う。 4 原告の損害について原告は,被告の職場環境を調整する義務の違反によって,著しい精神的苦痛を受けたと認めることができるところ,この苦痛に対する慰謝料は80万円とするのが相当である。 原告は,報酬を支払うことを約して本件訴えの提起及び追行を原告代理人に委任したと認めることができるところ,その報酬のうち被告の職場環境を調整する義務の違反と相当因果関係があるのは8万円と認めるのが相当である。 第4 結論よって,原告の請求は88万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成30年9月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官内野俊夫裁判官川村理裁判官角田由佳)

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