平成6(う)246 窃盗(変更後の訴因は強制わいせつ致死、強盗致死、認定罪名は強制わいせつ致死、窃盗)尊属監禁、恐喝未遂、傷害、死体遺棄、強盗致傷、強制わいせつ、監禁、逮捕監禁致傷、強姦被告事件

裁判年月日・裁判所
平成8年1月31日 名古屋高等裁判所
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判決文本文21,610 文字)

主文 原判決を破棄する。 被告人を懲役一六年に処する。 原審における未決勾留日数中一三〇〇日を右刑に算入する。 理由 本件控訴の趣意は、弁護人加藤隆一郎、同新海聡作成の控訴趣意書及び控訴趣意書訂正書(なお、同訂正書による訂正に伴い、控訴趣意書の(三)は(四)と、(四)は(五)と、(五)は(六)と順次繰り下がる旨第一回公判期日で釈明)に、控訴趣意に対する答弁は、検察官田子忠雄提出の検察官寺坂衛作成の答弁書に記載のとおりであるから、これらを引用する。 第一審判の請求を受けない事件につき判決したとの主張について所論の要旨は、原判決は審判の請求を受けないのに原判示第四の事実を判決した、という。すなわち、被告人はA所有の普通乗用自動車(以下、自動車という。)等の窃盗で起訴され、その後同訴因からAに対する強制わいせつ致死及び右自動車等の強盗致死の訴因に変更されたが、原判決は自動車等の強取行為を認定できないとして、強制わいせつ致死(原判示第四)と自動車等の窃盗(同第五)を認定した。強盗致死と窃盗とは公訴事実の同一性があるとしても、強制わいせつ致死はAに加えた暴行が強盗致死の暴行と重なっているため公訴事実の同一性が認められたにすぎず、強盗致死の暴行が否定されたならば、窃盗とAに対する強制わいせつ致死とはもともと別の事実であるから、強制わいせつ致死の訴因の追加を許すべきではなかったことになる。そうすると、原審が強制わいせつ致死の事実を審判するためには改めて起訴を要するのに、原審が起訴を待たないで強制わいせつ致死を認定したから審判の請求を受けない事実について判決した違法がある、というのである。 そこで、記録を調査して検討すると、原判決は適法に訴因変更された事実を審理した結果、証拠上認定 強制わいせつ致死を認定したから審判の請求を受けない事実について判決した違法がある、というのである。 そこで、記録を調査して検討すると、原判決は適法に訴因変更された事実を審理した結果、証拠上認定できる事実を認定したものにすぎず、所論のように審判の請求を受けない事実を判決したとはいえない。すなわち、記録によれば、被告人は、原判決摘示の窃盗の公訴事実(原判決六一丁裏六行目から一一行目。同丁裏七行目「A」は「A」の誤記と認める。以下、原判決の丁数は、原判決書右下の算用数字に従って記載する。それには一三丁の次は一五丁と記載されているので原判決書の枚数とは一致しない。記載に当たっては、特に必要のない限り丁数とその表裏の別のみで特定し、「原判決」の記載は省略する。なお、以下において、原判決の「補足説明」というのは、二一丁裏から一〇二丁裏までの説示部分である。)で起訴され、原審第四回公判期日において、原判決摘示の強盗致死、強制わいせつ致死の訴因(二九丁表から三〇丁表)に変更されたが、原判決は、原判示第四及び第五のとおり認定し(七丁表から八丁表)、(判示第四ないし第六の事実に関する事実認定及び犯罪の成否について)の補足説明(以下、特に断らない限り補足説明とは、この項の補足説明である。)「第三の三の3窃取行為、強取行為に関する供述部分」の項(九二丁裏から九四丁表)、「第五結論の一の3」の項(一〇〇丁表裏)、「第五の三被告人に成立する犯罪」の項(一〇二丁表裏)のように説示し、強制わいせつ致死、強盗致死の事実のうち、強盗致死の事実は認定できないとした。ところで、当初の窃盗と変更された訴因中の強盗致死とは、公訴事実の同一性があることは明らかであるし、変更された強制わいせつ致死と強盗致死は、Aに暴行を加えてその反抗を抑圧したうえ、自動車等を強取し、Aにわいせ 当初の窃盗と変更された訴因中の強盗致死とは、公訴事実の同一性があることは明らかであるし、変更された強制わいせつ致死と強盗致死は、Aに暴行を加えてその反抗を抑圧したうえ、自動車等を強取し、Aにわいせつ行為をし、右暴行によりAを死亡させたというのであるから、強盗致死と強制わいせつ致死とは公訴事実の同一性があると認められる。そうすると、原審が窃盗と強盗致死及び強制わいせつ致死との間に公訴事実の同一性を認めて訴因変更を許可したことは相当である。そして、原審が変更された訴因に基づき審理したものの、証拠上強制わいせつ致死と窃盗が認定できるにとどまり、その結果認定された両罪は併合罪の関係にあり、両罪だけみれば公訴事実の同一性がないようにみえるとしても、遡って右訴因変更許可が誤っていたとか、強制わいせつ致死の訴因の訴訟係属がなかったことになるものではないから、同事実を認定するために改めて起訴を要するとはいえない。論旨は理由がない。 第二理由不備の主張について所論の要旨は、原判決の罪となるべき事実の認定は、「1」第四の暴行の日時場所、第五の窃盗の日時場所の特定、「2」第四のAに対する暴行とAの死亡との因果関係の特定に欠けており、理由不備の瑕疵があるという。 そこで、記録を調査して検討すると、原判決の各認定は特定していると認められ、所論のような理由不備の瑕疵があるとは認められない。以下、補足して説明する。 1 「1」の日時場所の点につき、犯罪の日時場所はできる限り具体的に特定するのが相当であるが、もともと他の事実と区別できる程度に特定して摘示すれば足りるというべきである。原判決は、第四及び第五につき原判示のとおり認定し、第六につき平成元年(以下、平成元年を省略する。年号の記載のない月日は同年である。)六月二七日ころAの死体を処分するため、岐阜市 るというべきである。原判決は、第四及び第五につき原判示のとおり認定し、第六につき平成元年(以下、平成元年を省略する。年号の記載のない月日は同年である。)六月二七日ころAの死体を処分するため、岐阜市内又はその周辺から滋賀県高島郡a町内の原判示の山林まで自動車を運転して運んだうえ、山林斜面に死体を投棄したと認定(八丁表裏)し、「第二の七Bの死体遺棄への関与」の項の補足説明(五五丁裏から五八丁表)、「第三の三の4死体遺棄行為に関する供述部分」の項の補足説明(九四表裏)によれば、同日午後四時過ぎころ当時の妻Bに電話する前にAの死体を投棄したと説明している。原判示の各事実と右補足説明によれば、第四の各暴行の日時は六月二六日午後一一時過ぎから翌二七日未明の間、第五の窃盗の日時は同月二七日未明から同日午後四時過ぎの前であるから、いずれも特定していると認められる。犯行場所も、第四の暴行場所は岐阜市内又はその周辺、場所を移した岐阜市内又はその周辺、第五の窃盗の場所は右場所を移した岐阜市内又はその周辺であり、岐阜市の周辺が岐阜県と隣接する滋賀県、福井県などを含む広範囲の地域ではないことは明らかであり、いずれも特定していると認められる。本件では被害者のAが死亡し、各犯行の目撃者もなく、被告人の供述もあいまいであるから、右の日時場所を原判示以上に具体的に特定するのはそもそも困難な事案であり、原判示の認定はやむを得ないものである。そして、後記のとおり被告人以外の者がAに暴行やわいせつ行為を加えた疑いはないから、第三者が介在した疑いを払拭するために、具体的に特定する必要があるともいえない。 2 「2」の因果関係の点につき、原判決は、第四で原判示の各暴行とAの死亡を認定し、「第五の二暴行と死亡との因果関係」の項(一〇〇丁裏から一〇二丁表)の補足説明では、顔面を手 があるともいえない。 2 「2」の因果関係の点につき、原判決は、第四で原判示の各暴行とAの死亡を認定し、「第五の二暴行と死亡との因果関係」の項(一〇〇丁裏から一〇二丁表)の補足説明では、顔面を手拳で数回強打した暴行、両手首と両足首を緊縛しその状態で自動車後部座席に放置する暴行は、そのいずれもがその一方のみであっても、Aの死亡原因たりうるものであることが認められると説示している。そうすると、原判示の事実と右補足説明を合わせてみれば、被告人の加えた各暴行中Aの死亡を招いた暴行も明らかであり、被告人の加えた暴行とAの死亡との因果関係は特定している。 論旨はいずれも理由がない。 第三訴訟手続の法令違反の主張について一所論は、原判示第四ないし第六の証拠である被告人の九月八日以降の司法警察員及び検察官に対する各供述調書(乙三九ないし六五)はいずれも任意性がなく、憲法三八条二項、刑訴法三一九条一項に反するものであるのに、原審がこれらを証拠として採用し、原判決の事実認定に供したのは、判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反である、というのである。 そこで、記録を調査し当審における事実調べの結果を合わせて検討すると、前記各供述調書の任意性に疑いはなく、いずれも憲法三八条二項、刑訴法三一九条一項に反するものとはいえないし、この点に関する「第三の二被告人の一部自白に任意性について」の項の補足説明(七七丁裏から八三丁表、なお、七七丁裏一一行目の「窃っとらん」は「盗っとらん」の誤記と認める。)も相当として是認することができる。 1 すなわち、原審証人(以下、証人という。)Cの証言、同Dの証言など関係各証拠によれば、次の経過を認定することができる。すなわち、(1)被告人は、七月一五日逮捕監禁、傷害の被疑事実で逮捕され、同月一七日久居警察署 審証人(以下、証人という。)Cの証言、同Dの証言など関係各証拠によれば、次の経過を認定することができる。すなわち、(1)被告人は、七月一五日逮捕監禁、傷害の被疑事実で逮捕され、同月一七日久居警察署に勾留され、八月五日強盗致傷、強制わいせつ、監禁事件で起訴され、同日同事実で同署に勾留され、同月七日強盗殺人の被疑事実で逮捕され、同月一〇日岐阜北警察署に勾留され、同月二九日死体遺棄の被疑事実で逮捕され、九月一日同署に勾留され、同月二〇日窃盗事件で起訴され、同署に勾留され、一一月六日尊属監禁、恐喝未遂、傷害で起訴され、同事実で同署に勾留された。(2)Aに対する事件を捜査する岐阜北警察署は、捜査本部を設置し、岐阜県警察本部などから捜査官の派遣を受けて捜査することにした。被告人は、八月七日から同月二九日まで岐阜北警察署のC警察官、羽島警察署のE警察官、岐阜県警察本部のD警察官らC班警察官(六三丁裏五行目から六行目にかけて「C班警察官」とあるのは「C班警察官」の誤記と認める。)の取調べを受け、Aの顔面にX字型の金属製のものを投げつけたことなどを述べたが、その他のことは知らないと述べた(乙二三、二四、二六ないし三三、三五、三六)。C警察官らは、同月二九日から上司の指示で取調べから外れることになったが、C警察官は、もし話があるならいつでもいいから連絡すれば来ると言った。被告人は、八月二九日から岐阜県警察本部のF、G警察官らの取調べを受けたが、F警察官らに激しく反発し、思い出してもお前には言わないと述べ、新たな供述をせず、一通の供述調書が作成されたにとどまった(乙三七)。 被告人は、これらの期間岐阜地方検察庁の園部典生検察官の取調べも受けたが、格別新たな供述をしなかった(乙二五、三四)。(3)被告人は、九月六、七日同検察庁次席検察官阿津地勲の取調べを受 乙三七)。 被告人は、これらの期間岐阜地方検察庁の園部典生検察官の取調べも受けたが、格別新たな供述をしなかった(乙二五、三四)。(3)被告人は、九月六、七日同検察庁次席検察官阿津地勲の取調べを受けた(乙三八)が、その供述態度は素直であり、同月八日午前零時一五分ころ岐阜北警察署の留置場勤務員にC警察官にどうしてもすぐに話したいことがあるので連絡を取って欲しいと申し入れ、連絡を受けたC警察官は、自宅から同署に行き、同日午前一時一五分ころ取調室で事情を聞くことにした。被告人は、Aを殺したのではないが気付いたときは死亡していたので、その死体を自動車で運んで滋賀県の方に捨てた、これらのことはF警察官らには話したくないなどと供述し、これを聞いたC警察官は改めて後刻事情を聞くなどと述べ、約一時間で聴取を終えて上司にその旨報告した。(4)被告人は、九月八日昼間F警察官らの取調べを受け、これまで同様死体遺棄も否認したが、同日午後七時四〇分ころから上司の指示で再び関与することになったC警察官らの取調べを受け、Aに暴行を加えその死体を山林に投棄したなどと供述した(乙三九)。 (5)被告人は、九月九日阿津地検察官の取調べを受け、右とほぼ同様な供述をしたほか、Aの死体を捨てた後東尋坊に行き、車内にあったAの現金を盗み、Aの下着等を捨てたなどと供述した(乙四〇)。(6)被告人は、九月一〇日から同月一七日、二二日、二五日死体遺棄現場などの引当(同月二九日には実況見分)に行き、そのうち一〇日、一五日から一七日には阿津地あるいは園部検察官も同行したが、被告人の態度には真剣な面がみられ、一〇日には福井県坂井郡b町内でAのストンキッグなどが、翌一一日には同町内の別の場所から被告人のトレーナーなどが、二五日にはa町の前記山林でAの遺骨が発見された。被告人は、一〇月六日、七 がみられ、一〇日には福井県坂井郡b町内でAのストンキッグなどが、翌一一日には同町内の別の場所から被告人のトレーナーなどが、二五日にはa町の前記山林でAの遺骨が発見された。被告人は、一〇月六日、七日、二八日、一一月九日、一〇日、一二日、一七日、一八日被告人の供述する水路の引当に行き、そのうち一〇月七日、一一月一二日には園部検察官も同行したが、被告人の態度には真剣さがなく、水路も発見できなかった。被告人は、一〇月二八日の引当中に関市内の飲食店で鰻料理を食べさせてもらい、接見禁止中であるのにC警察官らの許しを得て三重県伊勢市内の母の家に電話をかけ、同家にいたBや母と話しをした。(7)被告人は、その間の九月一一日、一三日から二〇日、一〇月四日、五日、二一日、三〇日、一一月四日、七日から一一日、一三日、一四日、一六日から一八日、二〇日、二一日、二三日、二四日、三〇日に阿津地あるいは園部検察官の取調べを受けた(乙四一ないし五五、五七ないし六五)が、そのうち相当回数は警察官の取調べや引当後になされた。そして、多数回にわたりC警察官らの取調べを受けた(乙五六)。以上の事実が認定できる。なお、証人C、同E、同D、同F、同Gの各証言は、相互に合致し不自然な点はなく、右認定の経過と符合し、いずれも信用することができるが、被告人の原審及び当審における各供述中、右認定に反する部分は信用できない。 右認定の経過によれば、C警察官らが所論のように働きかけたとか、飲酒させたなどとは認められないし、その他検察官や警察官の取調べに任意性を疑わしめる事情は認められない。 2 これに対し、所論は、「1」F警察官は、供述しないのなら、Bやその父Hを毎日呼びつけて責めまくる、叔母の家に毎日聞きに行くなどと脅迫した、C警察官は、九月八日午前一時過ぎころHが仕事もできないように これに対し、所論は、「1」F警察官は、供述しないのなら、Bやその父Hを毎日呼びつけて責めまくる、叔母の家に毎日聞きに行くなどと脅迫した、C警察官は、九月八日午前一時過ぎころHが仕事もできないようになるぞと脅迫し、長期の勾留により相当の心理的圧迫を受けていた被告人には強度の脅迫となった、「2」C警察官は、右日時ころAを殴ったら死亡し、金も取ったと言ってくれたら、BやHを呼び出したり責めたりしないし、ビールの面倒もみると利益誘導した、その後取調べや引当の機会をとらえてたびたび飲酒をさせ、接見禁止中であるのに家族に電話をさせ、九月一〇日過ぎから三回にわたり(九月一三、四日ころ、一六、七日ころ、一〇月九日ころ)Bと面会させた、「3」C警察官は、九月八日午前一時過ぎころ強盗殺人罪か強盗致死罪で起訴されるより、Aを殴ったら死んだのでその後金品を盗んだことにして傷害致死と窃盗にもっていく方が得だと偽ったため、被告人はこれらに応じて供述をした、という。 (一) 「1」のF警察官らの脅迫の点につき、所論のような事実は認められず、「第三の二の2の(一)脅迫による自白の主張について」の項の補足説明(七九丁表裏)も相当として是認できる。若干補足すると、被告人はF警察官らの取調べでは激しく反発して新たな供述をしていないし、九月八日昼間の取調べでも同日午前一時過ぎに既にC警察官には述べたことさえ供述していない。C警察官は、九月八日当時被告人の取調べ担当から離れていたのに、前記のとおり被告人の求めで短時間事情を聞いたにすぎない。これらによれば、F警察官らが脅迫したとか、被告人が畏怖して供述したとはいえない。なお、被告人は、七月一五日逮捕監禁、傷害事件、八月七日強盗殺人事件、同月二九日死体遺棄事件で逮捕され引き続き勾留されているが、異なる事件で身柄を拘束されたもの 告人が畏怖して供述したとはいえない。なお、被告人は、七月一五日逮捕監禁、傷害事件、八月七日強盗殺人事件、同月二九日死体遺棄事件で逮捕され引き続き勾留されているが、異なる事件で身柄を拘束されたものであり、その勾留が不当に長いものともいえない。 (二) 「2」の利益誘導の点につき、所論のような事実は認められず、「第三の二の2の(二)約束及び利益誘導による自白の主張について」の項の補足説明(七九丁裏から入三丁表)も相当として是認できる。若干補足すると、C警察官は、被告人の求めで九月八日午前一時過ぎに会ったにすぎないから、捜査機関を代表して今後Bらを取調べないとか、自ら取調べを担当することを前提に被告人に飲酒させるなどと約束するとは考えられないし、同日夜上司の指示を受けて再び取調べることになった際も、警察本部などから派遣された捜査員と取調べをし、検察庁では次席検察官も加わって取調べがなされている状況のもとで右のような約束をするとは考えられない。補足説明指摘の点とこれらを考慮すれば、所論のような事実は認められず、所論に沿う被告人の供述は信用できない。なお、被告人は一〇月二八日警察官の了解を得て母の家に電話しているが、それだからといって所論指摘の約束をしたとは認められない。 次に、被告人の飲酒の点につき、所論のような事実は認められないし、「第三の二の2の(二)約束及び利益誘導による自白の主張についての(2)」の補足説明(八一丁裏から八二丁裏)も概ね相当として是認することができる。すなわち、証人C、同E、同Dの各証言は、相互に合致し、不自然不合理な点もない。本件捜査は前記のとおり共同捜査がなされ、岐阜北警察署の警察官のほか警察本部から派遣された警察官も加わっていること、検察庁では次席検察官らが並行して捜査し、警察官の取調べ後や検察官が同行して ない。本件捜査は前記のとおり共同捜査がなされ、岐阜北警察署の警察官のほか警察本部から派遣された警察官も加わっていること、検察庁では次席検察官らが並行して捜査し、警察官の取調べ後や検察官が同行していない引当後も被告人を取調べたり、死体遺棄現場などの引当にも相当回同行していること、取調べや引当時に被告人に飲酒させれば他の警察官や検察官に露顕するおそれは著しく高いが、検察官らは飲酒に気が付いた様子もない。これらによれば、右各証言は十分信用することができる。他方、取調べ中や引当の機会に何度も飲酒させてもらったとの被告人の供述や電話で話した際酔っていたとの証人Bの証言(三二回)は、右Cら捜査官の各証言及び次に面会について指摘する点と対比し信用できない。 更に、被告人は、当審でC警察官に依頼し三回にわたりBに面会したなどと供述し、Bも当審でその月日は若干異なるがほぼ同様な証言をする。しかし、右供述及び証言は、面会した月日(殊に三回目の面会)や面会時のやり取り(殊に一回目の面会でC警察官との約束の事実を述べたか否か)は相互に相違し、原審でこれらを供述しなかった理由も納得できない。二回目の面会が九月一六、七日のいずれかであれば、その両日は阿津地検察官が引当に同行し、三回目の面会が一〇月六、七日のいずれかであれば、その両日はC警察官が出張中で引当に参加しておらず、一〇月九日であれば引当に出ていない。三回目に面会して約一週間したころ引当に行った際も面会を頼んだというが、そのころも引当に出ていない。これらによれば、右供述や証言は信用できない。 (三) 「3」の偽計を用いた点につき、所論のような事実は認められず、「第三の二の2の(三)偽計による自白の主張について」の項の補足説明(八三丁表)も相当として是認できる。若干補足すると、この時期は、F警察官らAに 偽計を用いた点につき、所論のような事実は認められず、「第三の二の2の(三)偽計による自白の主張について」の項の補足説明(八三丁表)も相当として是認できる。若干補足すると、この時期は、F警察官らAに対する犯行を追求し、被告人がAの死体遺棄を自供したら、早速遺棄場所を指示案内させ、死体や付近にある証拠の発見に努め、発見した証拠等を鑑定嘱託し、その鑑定結果とこれまで収集した証拠の分析結果などからAの死因などを解明しようと躍起になっている段階なのに、取調べから外れていたC警察官が真相追求を断念したように傷害致死と窃盗の限度で自白するように説得するとは到底考えられないし、指示案内させた遺棄場所付近から犯行態様をうかがわせる証拠を発見できることもあるから、Aの死体はもはや白骨となり、付近に残された証拠を鑑定しても犯行態様をうかがわせる証拠も発見されないと見込んで説得することも考えられない。被告人の所論に沿う供述は信用できない。 以上によれば、九月八日付司法警察員調書(乙三九)の任意性に疑いはないし、同月九日付検察官調書(乙四〇)を始めその後の検察官調書や司法警察員調書の任意性に疑いもないから、原審が右各供述調書を証拠として採用し、原判決がこれらを事実認定に供したことにつき、訴訟手続の法令違反はない。 二所論は、第六の公訴事実は、被告人は六月二七日ころAの死体を処分するため、岐阜市内又はその周辺から岐阜県関市cd番地のe先路上まで自ら運び、同所からa町の前記山林まで事情を知らないBに自動車を運転させたうえ、山林の斜面に死体を投棄して遺棄したというものであるのに、原判決が訴因変更の手続をしないで原判示第六の事実を認定したのは、判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反である、というのである。 そこで記録を調査して検討すると、公訴事実は原 あるのに、原判決が訴因変更の手続をしないで原判示第六の事実を認定したのは、判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反である、というのである。 そこで記録を調査して検討すると、公訴事実は原判決摘示のとおり(三〇丁裏)であるが、原判決は原判示のとおり認定し(八丁表裏)、補足説明では前記のとおり六月二七日午後四時過ぎBに電話する前にAの死体を遺棄したとみられると説示している。そうすると、原判決は、公訴事実と同じ月日であるが時刻が早まり、運搬方法は公訴事実と異なり当初から被告人が一人で運転して運搬したとなったが、被告人が同月二七日ころ岐阜市又はその周辺からa町内の前記山林までAの死体を自動車で運搬し、山林斜面に投棄したという基本的事実関係は同一であり、原判決の認定は被告人に不利益な認定をしたともいえない。そして、原判決の認定は、被告人の捜査段階及び原審の供述に沿ったものであり、被告人に不意打ちを加えたとかその防御に実質的な不利益を与えたともいえない。これらによれば、原判決が訴因変更の手続をしないで原判示の事実を認定したことにつき、訴訟手続の法令違反があるとはいえない。論旨は理由がない。 第四事実誤認の主張について一原判示第一の事実につき、所論は、被告人はIから金員を恐喝する意思もないし、Iに金員の交付を要求したこともない、Iに金員の借用を依頼したがいやみを言われ、酔っていたこともあって喧嘩になっただけであるのに、原判決が原判示の事実を認定したのは、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認である、というのである。 そこで、記録を調査し当審における事実調べの結果を合わせて検討すると、原判示の認定は相当として是認でき(なお、原判決後の刑法改正に伴う点は後記第五で触れる。)、原判決の(判示第一、第三の事実に関する事実認定及び犯罪の し当審における事実調べの結果を合わせて検討すると、原判示の認定は相当として是認でき(なお、原判決後の刑法改正に伴う点は後記第五で触れる。)、原判決の(判示第一、第三の事実に関する事実認定及び犯罪の成否について)の補足説明(以下、特に断らない限り補足説明とは、この項の補足説明である。)「第一判示第一の事実について」の項(二一丁裏から二三丁裏)も相当として是認することができるのであり、原判決に所論のような事実誤認があるとは認められない。 若干補足すると、Iの各供述調書(甲一ないし三)は、補足説明指摘のJの司法巡査調書(甲一四)のほか、スナック「K」の隣接店の経営者L(甲一三)、医師M(甲八)の各司法警察員調書など関係各証拠と合致しており、十分信用することができる。他方、被告人の供述は、捜査段階の各供述調書(乙三ないし七)とも相違し、金員借用を依頼する者の行動として不自然であり、その後NをIとの待ち合わせ場所に行かせた行動とも符合していないから、右認定に反する供述は信用できない。そして、原判決挙示の証拠によれば原判示の事実を認定できるのであり、原判決に事実誤認はない。論旨は理由がない。 二原判示第三の事実につき、所論は、被告人はOから金員を強取する意思もないし、Oに一〇〇〇万円を出せとも言っていない、Oに対しわいせつの目的もないし、陰毛を抜いて口に詰め込んだり、肛門にビール瓶の先端を挿入したこともない、過去の恨みをはらすため暴行を加えて裸にしただけであるのに、原判決が原判示の事実を認定したのは、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認である、というのである。 そこで、記録を調査し当審における事実調べの結果を合わせて検討すると、原判示の事実は相当として是認でき、原判決の「第二判示第三の事実について」の項の補足説明(二三丁裏から二八丁表 いうのである。 そこで、記録を調査し当審における事実調べの結果を合わせて検討すると、原判示の事実は相当として是認でき、原判決の「第二判示第三の事実について」の項の補足説明(二三丁裏から二八丁表)も相当として是認することができるのであり、原判決に所論のような事実誤認があるとは認められない。 若干補足すると、Oの各供述調書(同事件甲一〇ないし一五、同意部分)、証人Oの尋問調書は、ホテル手伝P(同甲二四)、消防吏員Q(同甲一)、医師R(同甲二)の各司法警察員調書、負傷状況の六月二八日付写真撮影報告書(同甲六)など関係各証拠と合致し、十分信用することができる。他方、被告人の供述は、捜査段階の各供述調書(同乙三ないし八)とも相違し、Iに対する恨みの主張は補足説明指摘のとおり納得できないから、右認定に反する供述は信用できない。そして、原判決挙示の証拠によれば原判示の事実を認定できるのであり、原判決に事実誤認はない。論旨は理由がない。 三原判示第四の事実につき、所論は、被告人はAの意思に反して自動車内でパンティ等を脱がせたり上半身を裸にし、車外でAの顔面を手拳で強打し、更に車内に押し込み、その両手首や両足を緊縛し、後部座席に放置するなどの暴行を加えたり、陰毛を引き抜くことをしていない、被告人がどぶ川か用水みたいな所(以下、用水路という。)で嘔吐しているとき、Aが後ろから背中を押したのでとっさにAの手をつかんだら、一緒に用水路に落ちて動かなくなり死亡したものであるのに、原判決が原判示の事実を認定したのは、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認である、というのである。 そこで、記録を調査し当審における事実調べの結果を合わせて検討すると、原判示の事実は相当として是認することができるのであり、原判決の補足説明も、概ね相当として是認することができ 、というのである。 そこで、記録を調査し当審における事実調べの結果を合わせて検討すると、原判示の事実は相当として是認することができるのであり、原判決の補足説明も、概ね相当として是認することができる(なお、三九丁表一一行目から同丁裏二行目の「Hの司法警察員調書(甲三一五ないし甲三一七)、H(甲三一八、甲三一九)、S(甲三六二)の各司法巡査調書」は「H(甲三一五ないし甲三一七)、S(甲三六二)の各司法警察員調書、H(甲三一八、甲三一九)の各司法巡査調書」の、五八丁裏九、一〇行目の「中濃西高駅前付近」は「中濃西高前駅付近」の、六三丁表二行目「平成四年一〇日二〇日」は「平成四年一〇月二〇日」の、同表五行目「G」は「G」の、七五丁裏九行目「中濃西高駅」は「中濃西高前駅」の誤記と認める。)のであり、原判決に所論のような事実誤認があるとは認められない。 すなわち、原判決挙示の証拠によれば、次の事実を認定することができる。 (1)被告人は、六月二六日午後一〇時ころ原判示のスナック「T」にBと行き、同日午後一一時過ぎころAが店を出たのに続いて外に出て、同店付近でAに対し知り合いの店にゲーム機を置いてもらいたいなどと話しかけ、運転している自動車に乗り込み、走行している車内で話すうち強いてわいせつ行為をしょうと考、えた。 (2)被告人は、岐阜市内又はその周辺においてAと口論となり、車内にあった食パンをAに投げつけ、顔面を平手で殴打し、顔面にX字型の金属製のものを投げつけたところ出血した。(3)被告人は、A運転の自動車で一五分位走行した岐阜市内又はその周辺で、外で小便がしたいと言いだしたAに対し服を脱ぐよう要求し、畏怖したAの意思に反してパンティ等を脱がせその上半身を裸にさせ、スカートだけで車外に出たAが逃げようとしたため、その顔面を手拳で数回強打するなどし がしたいと言いだしたAに対し服を脱ぐよう要求し、畏怖したAの意思に反してパンティ等を脱がせその上半身を裸にさせ、スカートだけで車外に出たAが逃げようとしたため、その顔面を手拳で数回強打するなどした。(4)被告人は、Aを車内に押し込み、その両手首をストッキング様のもので後ろ手に縛り、両足首をブラウスで縛るなどの暴行を加えその後部座席に移したりなどし、その間に陰毛を引き抜くなどのわいせつ行為をしたうえ、後部座席足元の床上にAを落として放置するなどの暴行を加えた。(5)Aは、六月二七日未明ころ岐阜市内又はその周辺の車内で、被告人から顔面を強打され、車内後部座席足元に右の状態で放置されたことなどが原因で死亡した。(6)被告人は、六月二七日未明Aが車内で死亡したことを知り、そのころ自動車を運転して山林にAの死体を投棄することにし、ブランデーや現金等が積載されている自動車を窃取して発進させ、a町の前記山林まで運搬し、車から死体を出し山林斜面に死体を投棄して遺棄し、その後b町方面に行きAのストッキング等を捨て、再び自動車で岐阜県に戻り、同日午後四時過ぎころBに電話し、同日午後六時前ころ関市内の中濃西高前駅付近でBと会った。以上の事実を認定することができる。右認定に反する被告人の捜査段階、原審及び当審における供述は信用できない。 1 これに対し、所論は、Aは被告人と用水路に落ちて死亡したものであり、同旨の被告人の供述は、証人Bの六月二七日午後六時前ころ会った際被告人のトレーナーの袖口や足元などが泥水に入って乾いたようになっていたとの証言、Uら作成の鑑定書のトレーナーの汚斑の記述により裏付けられる、という。 しかし、所論のような事実は認められないし、原判決が「第四の二信用性について」の項で、所論に沿う供述は信用できないとした補足説明(九八丁表裏)、「 トレーナーの汚斑の記述により裏付けられる、という。 しかし、所論のような事実は認められないし、原判決が「第四の二信用性について」の項で、所論に沿う供述は信用できないとした補足説明(九八丁表裏)、「第三の三の1暴行態様に関する供述部分の(四)」の項で、用水路にAと一緒に落ちたとの供述は信用できないとした補足説明(八八丁裏から九一丁表)も関係各証拠に照らし相当として是認することができる。若干補足すると、被告人の用水路の形状の供述は、捜査段階、原審及び当審でそれぞれ著しく相違するし、捜査段階や原審では裁判で警察官との取引が認められると思いどうでもいいと考え詳しく供述しなかったとの当審の供述も決して納得できるものではない。落ちたAが突然動かなくなったとの供述も不自然であり、証人Vの高さ約一・二メートル下に落ちたとしても頭などを打って死亡することは考えられないとの証言とも符合しない。補足説明の疑問点と右点を合わせ考慮すれば、右認定に反する供述は信用できない。 ところで、証人Bは、六月二七日午後六時ころ会った際、被告人のトレーナーの両腕の肘より下や足の膝より下に付いていた泥が乾いたように汚れていたなどと証言(第七回)する。しかし、被告人は岐阜市又はその周辺において自動車の外でもAに暴行を加えているし、前記山林では車内からAの死体を出して山林斜面まで運んで投棄したから、これらの際着用していたトレーナーに泥が付着することもあるから、右証言が右供述を裏付けているとはいえない。また、Uら作成の鑑定書(甲二五二)のトレーナーに関する記述も、被告人が投棄したトレーナーは九月一一日に発見されるまで野天に放置されており、その間に泥が付着して汚れることもあるから、右供述を裏付けているともいえない。 2 所論は、被告人の九月八日以降の各供述調書は信用性がない、とい ーは九月一一日に発見されるまで野天に放置されており、その間に泥が付着して汚れることもあるから、右供述を裏付けているともいえない。 2 所論は、被告人の九月八日以降の各供述調書は信用性がない、という。 しかし、被告人は、警察官や検察官にAに加えた暴行やわいせつ行為の全容を供述しているとは到底認められないが、少なくとも原判示の認定に沿う供述部分は信用することができるのであって、「第三の三被告人の一部自白の信用性について」の項の補足説明(八三丁表から九四丁裏)も、関係各証拠に照らし概ね相当として是認することができる。すなわち、補足説明では供述の一貫性、関係証拠との符合性、不自然な点の有無、具体性の有無などの諸点から、供述が信用できるか否か個別に検討したが、その検討方法は相当であるし、右検討方法を通じて信用できるとした具体的な供述も、関係各証拠に照らし相当として是認することができる。若干補足すると、同項1の(一)の車内での顔面殴打、X字型の金属製のものを投げつけたとの供述部分は、車内の争いが高じたものとして不自然ではないこと、(二)の服を脱ぐように述べたなどの供述部分は、被告人が深夜に、それまで全く面識もないA運転の自動車に乗り込み長時間降りようとしなかった経過と符合し、第一でIに対し服を脱いで裸になるようにした言動、第三でOを全裸にした言動とも符合すること、(三)のAを助手席で緊縛して後部座席に移し足元の床下に放置したとの供述部分は、助手席にAのものとみられる相当数の人頭毛が付着している事実、助手席シート背もたれや後部座席足元付近にAと同じA型の血痕が多量に付着している事実などと符合する。Aに車内で小便をするように述べたとの供述部分は、助手席シートの尿反応と符合し、Aの死体や着衣を投棄したとの供述部分は、被告人が案内した場所からこれらが 血痕が多量に付着している事実などと符合する。Aに車内で小便をするように述べたとの供述部分は、助手席シートの尿反応と符合し、Aの死体や着衣を投棄したとの供述部分は、被告人が案内した場所からこれらが発見された事実と符合する。これらによれば、原判示認定に沿う供述は信用することができる。 3 これに対し、所論は、右各供述調書は次の事由があって信用性がない、という。すなわち、「1」C警察官らは前記のとおり脅迫、利益誘導、偽計を用いた、「2」C警察官は九月八日午前一時過ぎ前記のとおり利益誘導などしたから、同月六、七日の検察官の取調べに素直に応じ、同月八日午前零時一五分過ぎころC警察官を呼んだとしても、その後の供述調書の信用性を認めることにならないし、その後遺体捜索の引当時の態度が真剣であったとしても、暴行やわいせつ行為の供述の信用性があるとはいえない、「3」警察官らは、九月八日当時行方不明のAが既に白骨化し、その遺骨から死因を特定することは困難であると推測できたから、傷害と窃盗の犯意で認めるように持ちかけることは容易であった、「4」C警察官らは、被告人が迎合的な供述をした見返りに飲酒させたり鰻料理を食べさせ、Bと面会させたり母方に電話をさせた、という。 しかし、「1」の脅迫などの点につき、前記のとおり脅迫、利益誘導、偽計があったとは認められないから、前提を欠いている。 「2」 のC警察官の利益誘導などの点につき、前記のとおり利益誘導の事実は認められないから、前提を欠いている。なお、「第三の二の2の(二)約束及び利益誘導による自白の主張についての(1)」の項の補足説明では検察官の取調べ時の態度(八〇丁表)や引当時の態度(八一丁表)に触れているが、これらは捜査段階の供述の任意性の関係で触れたものである。なお、九月六、七日の検察官の取調べに素直な 」の項の補足説明では検察官の取調べ時の態度(八〇丁表)や引当時の態度(八一丁表)に触れているが、これらは捜査段階の供述の任意性の関係で触れたものである。なお、九月六、七日の検察官の取調べに素直な供述態度であった点は、翌八日午前零時過ぎC警察官に話したいと申し出た経過と相まって、その後の同警察官らに対する供述の信用性を認める一つの事情と認められるし、遺体の引当時の態度に真剣なものがあった点は、案内した場所からAの遺骨などが発見されたことと相まって、死体などを投棄したとの供述の信用性を認める一つの事情と認められる。 「3」 の傷害と窃盗の範囲で認めるように持ちかけた点につき、前記のとおりそのような事実は認められないから、前提を欠いている。 「4」 の飲酒や面会などの点につき、前記のとおりC警察官らが被告人に飲酒させたり、Bと面会させたとは認められない。なお、C警察官らは前記のとおり飲食店で鰻料理を食べさせ母方に電話をさせているが、それだからといって右各供述調書の信用性を損なうものとはいえない。 4 所論は、被告人の暴行行為につき、「1」Aの顔面を殴打し、手足を緊縛し、後部座席に放置したことを裏付ける客観的証拠はない、自動車の後部座席周辺等の血痕は、被告人が用水路に落ちたAを車内に載せた際出血していた血液が付着したとも考えられる、「2」V作成の鑑定書(甲四八一)、証人Vの証言は、被告人の暴行を裏付けるとはいえない、「3」W作成の鑑定書(甲一五九)、証人Wの証言によれば、自動車内で発見された七本の抜去毛とされる陰毛のうち旧型の一本は被告人、BやAのものではないから、被告人以外の人物がAに暴行をした疑いがある、という。 しかし、「1」の客観的証拠などの点につき、被告人がAの自動車に乗り込んだ後a町の山林にスカートだけを身に付けたAの死体を のものではないから、被告人以外の人物がAに暴行をした疑いがある、という。 しかし、「1」の客観的証拠などの点につき、被告人がAの自動車に乗り込んだ後a町の山林にスカートだけを身に付けたAの死体を投棄し、パンティ等の下着を別の場所に投棄した事実によれば、生前のAに対し暴行やわいせつ行為をしたものと優に推認できるうえ、自動車の助手席シート付近にも相当数のAの人頭毛があること、車内各所にAの血痕が付着し、車内各所にAから抜去したと認められる陰毛があることは、右暴行やわいせつ行為を裏付ける客観的証拠である。殊に、Aが普段利用しない助手席にAの人頭毛が相当数あり、助手席シート背もたれや後部座席足元付近にAの血痕が多量に付着している事実は、Aに暴行を加えて出血させ、出血したAを助手席に乗せたり、助手席で手足を緊縛するなどの暴行を加え、そこから後部座席に移し、その足元に落として放置したとの供述を裏付けている。なお、Aとともに用水路に落ちたとの供述は、前記のとおり信用できないし、車内各所に血痕が付着していることは右供述を裏付けるものともいえない。 「2」 のV作成の鑑定書などの点につき、鑑定書(甲四八一)は、被告人の九月九日付、一一月一一日付、二〇日付、二一日付、二四日付、三〇日付検察官調書などを前提に、Aの死体所見に関する供述に法医学上矛盾はないか、自動車の血痕、尿などの付着状況との間に矛盾はないか、その供述から推定されるAの死因は何かなどを検討したものであり、証人Vの証言もこれに関するものである。これらは、Aに対する暴行を直接裏付けるものではないが、原判示の認定に沿う供述は法医学上もに矛盾するものはないというのであるから、その信用性を裏付けている。 そして、顔面を強打した暴行と手足を緊縛して後部座席足元に放置した暴行は、いずれもAを死亡させるに 判示の認定に沿う供述は法医学上もに矛盾するものはないというのであるから、その信用性を裏付けている。 そして、顔面を強打した暴行と手足を緊縛して後部座席足元に放置した暴行は、いずれもAを死亡させるに足る暴行であるとの点は、Aの死因を裏付けている。 「3」 の第三者の関与の可能性の点につき、確かに自動車内には一本のAB型の抜去毛があるが、被告人はAの自動車に乗り込んだ後Aの死体を投棄するまでの間に、第三者が車内に入ったなどとは述べていないし、全証拠を検討しても第三者がその間に被告人に知られないでAに暴行やわいせつな行為をした疑いはない。 5 所論は、わいせつ行為につき、「1」自動車内のA型の陰毛の抜去毛がAのものとはいえない、自動車を放置してから発見されるまで相当月日を経過し、車内にはAB型の陰毛の抜去毛もあるから、AB型の被害者の存在若しくは被告人以外の加害者の存在も疑われる、「2」わいせつ行為を立証する客観的証拠はない、A型の陰毛の抜去毛がAのものとしても、被告人が陰毛を抜いたと認定することには根本的に無理があり、抜いたとすれば車内の一部に集中して発見されるはずである。被告人が用水路に落ちたAを引き上げようとして陰毛が抜け、死体を遺棄する際にパンティを脱がしたときその陰毛が車内に残ったとも考えられる、という。 しかし、「1」の抜去毛の点につき、関係各証拠によれば、Aと同じA型の抜去したとみられる陰毛が自動車のダッシュボード内、運転席座席シート右下床上、助手席シート左下床上、運転席を取り除いた床上に各一本、サイドブレーキ付近に二本の合計六本あるが、これらは被告人やBの陰毛とは類似しないから、Aのものと認定することができる。なお、前記のとおり被告人が自動車に乗り込んだ後Aの死体を投棄するまでに、第三者が車内に入った疑いはないし、被告人が自 が、これらは被告人やBの陰毛とは類似しないから、Aのものと認定することができる。なお、前記のとおり被告人が自動車に乗り込んだ後Aの死体を投棄するまでに、第三者が車内に入った疑いはないし、被告人が自動車を放置した後七月一日警察官に発見されるまでの間に、第三者が血痕が付着しピーナツ様のものなどが散乱している車内に入り、自己の陰毛を抜きあるいは他の者の陰毛を抜いて車内に遺留したとも考えられないから、右認定に合理的疑問はない。 「2」 の客観的証拠の点につき、前記の外形的事実からも被告人がわいせつ行為に及んだことは優に推認できるところ、Aにパンティ等を脱がせ上半身を裸にさせた点については、被告人はAの死体やスカート等とは別の場所にストッキング、パンティ等を投棄しているが、衣服を着用している死体を投棄する際、スカート、ネックレス等をそのままにしながら、わざわざパンティ等を脱がせて異なる場所に捨てるとは考えられないから、右事実はAの生前に上半身を裸にさせパンティ等を脱がせたとの供述を裏付けている。陰毛を抜いた点も、前記のとおり車内には右Aの抜去毛があるところ、通常女性が自分の利用する自動車内で陰毛を抜き、抜いた陰毛をダッシュボードに入れるようなことはしないと考えられるから、被告人がAの生前その意思に反して車内でAの陰毛を抜いたと認定するのが合理的である。なお、抜いた陰毛を一か所にまとめて捨てるとは限らないし、ある程度まとめて捨てたとしても、被告人はb町内で車内の助手席用マット及び後部座席用マットを捨てており(乙六二)、その際マット上の陰毛が動くこともあるから、原判示の認定に合理的疑いはない。もとより右陰毛があることが、Aが用水路に落ちたとの供述を裏付けるとはいえない。 以上の次第で、論旨は理由がない。 第五尊属監禁の法改正について<要旨 から、原判示の認定に合理的疑いはない。もとより右陰毛があることが、Aが用水路に落ちたとの供述を裏付けるとはいえない。 以上の次第で、論旨は理由がない。 第五尊属監禁の法改正について<要旨>原判決後の刑法改正について職権で検討する。平成七年六月一日から平成七年法律第九一号刑法の一部を</要旨>改正する法律が施行された。改正後の刑法(以下、新法という。)には改正前の刑法(以下、旧法という。)二二〇条二項に相応する尊属監禁の加重規定がないが、自己又は配偶者の尊属を監禁した場合の処罰を廃止したものではなく、この場合も新法二二〇条の監禁罪(旧法二二〇条一項と同旨)の成立を認める趣旨と解される。そして、前記法律第九一号附則二条一項ただし書が尊属加重規定の適用について同条項本文前段の例外を定めた結果、右改正前に犯した尊属監禁の行為についても新法二二〇条の適用が考慮されることになった。これを本件についてみるに、原判示第一の行為中、当時の妻の母であるIを監禁した点は、行為時においては旧法二二〇条二項(六か月以上七年以下の懲役刑)に、裁判時においては新法二二〇条(三か月以上五年以下の懲役刑)に該当するが、右は犯罪後の法令により刑の変更があったときに当たるから、右附則二条一項本文前段により旧法六条、一〇条を適用して右両者を比照し、軽い裁判時の新法二二〇条を適用することになった。 原判決は平成六年六月三〇日右監禁につき旧法二二〇条二項を適用したが、原判決後の法律改正により刑の軽い新法二二〇条が適用されることになったから、刑訴法三八三条二号の控訴理由である「判決があった後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があったこと」のうちの刑の変更があったことになる。ところで、被告人は、原判示第一において右監禁のほかに傷害、恐喝未遂も犯しており、後記のとおり監禁と恐 判決があった後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があったこと」のうちの刑の変更があったことになる。ところで、被告人は、原判示第一において右監禁のほかに傷害、恐喝未遂も犯しており、後記のとおり監禁と恐喝未遂との間には手段結果の関係があり、恐喝未遂と傷害とは一個の行為で二個の罪名に触れる関係にあるから、結局以上を一罪として刑及び犯情の最も重い恐喝未遂罪の刑で処断すると、右刑の変更は原判示第一の関係では処断刑の短期に影響を及ぼすことになるが、本件では被告人は併合罪の関係にある原判示第二ないし第六の罪をも犯しており、再犯加重したうえこれらの罪のうち最も重い罪の刑に法定の加重をすると、右刑の変更は結論として処断刑の短期のうえでも影響を及ぼさないことになる。しかしながら、刑訴法三八三条二号では刑の変更とのみ規定し、それが判決に影響を及ぼすことの明らかな場合に限定していないから、科刑上の一罪の処理及び併合罪加重の処理を経た結果処断刑の範囲に影響を及ぼさないときでも、なお同条号の刑の変更に当たると解すべきである。そうすると、原判示第一の事実について破棄理由が認められるところ、原判決は原判示第一の罪とその余の各罪とは併合罪の関係にあるとして一個の刑を科しているから、結局原判決は全部破棄を免れない。そこで、刑訴法三九七条一項、三八三条二号により原判決を破棄し、同法四〇〇条ただし書により更に判決するが、新法二二〇条は旧法二二〇条二項とは構成要件及び罪名が異なるので、原判示第一の事実に代えて新たに事実認定をする。 (原判示第一の事実に代えて当裁判所が新たに認定した事実)原判決の(罪となるべき事実)第一の事実中、原判決三丁表一、二行目の「もって、配偶者の直系尊属を不法に監禁し」とあるのを、「もって、同女を不法に監禁し」と改めるほかは、原判示と同一である。 )原判決の(罪となるべき事実)第一の事実中、原判決三丁表一、二行目の「もって、配偶者の直系尊属を不法に監禁し」とあるのを、「もって、同女を不法に監禁し」と改めるほかは、原判示と同一である。 (証拠の標目)省略(法令の適用)当裁判所の認定した被告人の判示第一の所為のうち、監禁の点は新法二二〇条に、恐喝未遂の点は右附則二条一項本文前段により旧法二五〇条、二四九条一項に、傷害の点は平成三年法律第三一号による改正前の刑法二〇四条、同改正前の罰金等臨時措置法三条一項一号に(裁判時においては右附則二条一項本文前段により旧法二〇四条に該当するが、旧法一〇条により軽い行為時法の刑による。)、原裁判所の認定した判示第二の所為のうち逮捕監禁致傷の点は旧法六〇条、二二一条(二二〇条一項)に、強姦の点は同法六〇条、一七七条前段に、原判示第三の所為のうち監禁の点は同法二二〇条一項に、強盗致傷の点は同法二四〇条前段に、強制わいせつの点は同法一七六条前段に、原判示第四の所為は同法一八一条(一七六条前段)に、原判示第五の所為は同法二三五条に、原判示第六の所為は同法一九〇条にそれぞれ該当する。 判示第一の所為の監禁と恐喝未遂との間には手段結果の関係があり、恐喝未遂と傷害は一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるので、同法五四条一項前段、後段、一〇条を適用し結局以上を一罪として刑及び犯情の最も重い恐喝未遂の罪の刑(ただし、短期は監禁罪の刑のそれによる。)で処断し、同法一〇条を適用し、原判示第二の逮捕監禁致傷罪については同法二二〇条一項所定の刑と平成三年法律第三一号による改正前の刑法二〇四条、同改正前の罰金等臨時措置法三条一項一号所定の刑とを比較し、重い傷害罪について定めた懲役刑(ただし、短期は監禁罪の刑のそれによる。)によって処断するが、逮捕監禁致傷と強姦 による改正前の刑法二〇四条、同改正前の罰金等臨時措置法三条一項一号所定の刑とを比較し、重い傷害罪について定めた懲役刑(ただし、短期は監禁罪の刑のそれによる。)によって処断するが、逮捕監禁致傷と強姦は一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるので、旧法五四条一項前段、一〇条を適用して一罪として重い強姦罪の刑で処断し、原判示第三の監禁、強盗致傷、強制わいせつは一個の行為で三個の罪名に触れる場合であるので、同法五四条一項前段、一〇条を適用して一罪として最も重い強盗致傷罪の刑で処断する。原判示第三、第四の各罪については所定刑中いずれも有期懲役刑を選択する。 被告人には原判示の累犯前科があるので、同法五六条一項、五七条を適用して判示第、原判示第二ないし第六の各罪の刑についてそれぞれ再犯の加重(ただし、原判示第二ないし第四の各罪について同法一四条の制限内)をし、以上の罪は、同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により最も重い原判示第三の罪の刑に同法一四条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で諸般の事情を考慮し、被告人を懲役一六年に処し、同法二一条を適用して原審における未決勾留日数中一三〇〇日を右刑に算入し、原審及び当審における訴訟費用は刑訴法一八一条一項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 よって、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官土川孝二裁判官松村恒裁判官柴田秀樹)

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