平成23年3月11日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成22年(レ)第531号,同年(レ)第687号損害賠償請求控訴,同附帯控訴事件(原審・名古屋簡易裁判所平成21年(ハ)第7127号)判 決主 文 1 本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人の,附帯控訴費用は被控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1 控訴及び附帯控訴の趣旨 1 控訴の趣旨(1) 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 (2) 被控訴人は,控訴人に対し,20万円及びこれに対する平成21年6月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 訴訟費用は第1,2審を通じ被控訴人の負担とする。 2 附帯控訴の趣旨(1) 原判決中被控訴人敗訴部分を取り消す。 (2) 控訴人の請求を棄却する。 (3) 訴訟費用は第1,2審を通じ控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,Aオークションのインターネットサイト(以下「本件サイト」という。)においてB株主優待券を落札した控訴人が,出品者である被控訴人に対して,控訴人へのB株主優待券の配送について,被控訴人が合意に反する発送方法を採り,その結果,控訴人に配達されなかったとして,債務不履行による損害賠償請求権に基づき,同優待券の落札代金,送料,振込手数料,被控訴人に対して返 金を求めるために要した通信費及び同優待券が届かなかったことにより発生した損害(合計11万6467円)の賠償,被控訴人が,本件サイトに控訴人の名誉を毀損する内容の書き込みを行い,これによって控訴人を公然と侮辱したとして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,慰謝料(8万3533円)の支払及びこれらの合計額20万円に対する訴状送達 訴人の名誉を毀損する内容の書き込みを行い,これによって控訴人を公然と侮辱したとして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,慰謝料(8万3533円)の支払及びこれらの合計額20万円に対する訴状送達の日の翌日である平成21年6月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 原審は,控訴人の請求を,優待券の落札代金及び送料並びにこれらの振込手数料相当額(合計4787円)の損害賠償及びこれに対する平成21年6月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余の請求を棄却したため,控訴人が,控訴人敗訴部分を不服として控訴し,被控訴人も,被控訴人敗訴部分を不服として附帯控訴した。 3 前提事実(当事者間に争いがないか,括弧内に掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 被控訴人は,平成21年3月ころ,本件サイトに,B株主優待券4枚を出品し,その際,商品説明文の欄に「簡易書留郵便も可能です。Cメール送料にて送ります。」と記載した(甲1)。 (2) 控訴人(本件当時の住所は,札幌市d区ef 丁目g-h-i)は,平成21年4月1日,被控訴人が出品したB株主優待券4枚のうち2枚(以下「本件優待券」という。)を代金4602円で落札し(甲2),同日,本件サイト上で,被控訴人に対し,「はじめまして商品を2個落札しました。発送方法について,簡易書留郵便を希望します。」という内容のメッセージを書き込んだ(甲4の1)。 (3) これに対して,被控訴人は,同日,本件サイト上で,控訴人に対し,「落札いただき,ありがとうございました。C・メール便(80円)(簡易書留郵便です)にてお送りします。よろしくお願いします。」という内容のメッセージを書き込ん ,同日,本件サイト上で,控訴人に対し,「落札いただき,ありがとうございました。C・メール便(80円)(簡易書留郵便です)にてお送りします。よろしくお願いします。」という内容のメッセージを書き込んだ(甲4の1)。 (4) 控訴人は,平成21年4月1日,本件優待券の代金等4682円(落札代金4602円及び送料80円)を,Aオークション株式会社あてに振込送金した(甲7)。なお,振込手数料は105円であった(甲7)。 (5) 被控訴人は,平成21年4月2日ころ,本件優待券を,宅配業者であるJ株式会社が行うCメール便(以下「メール便」という。)で発送した(乙1,2)。 (6) 被控訴人は,本件優待券の送付について控訴人と被控訴人との間でトラブルが生じた後の平成21年4月21日,本件優待券の落札,送付等に関して,本件サイト内の控訴人の評価欄に,「悪い落札者です」と評価をした上,評価コメントとして,「二度と取引したくないです。」(以下,これら被控訴人による評価及び評価コメントを「本件コメント等」という。)と記載した(乙12)。 4 本件の争点及びこれに関する当事者の主張は以下のとおりである。 (1) 被控訴人による債務の本旨に従った履行があったか。 (被控訴人の主張)被控訴人は,平成21年4月2日ころ,本件優待券を,メール便(識別番号k― l― m)にて発送し,本件優待券は,同月5日午後3時ころ,控訴人宅に到着している。したがって,被控訴人は,債務の本旨に従った履行を行っており,債務不履行はない。 Aオークションにおける配送方法に,簡易書留郵便の選択はなく,メール便は通常の配送方法であり,今回は,被控訴人がメール便の配送方法を選択したものである。 (控訴人の主張等)被控訴人の主張は,否認ないし争う。 控訴人 送方法に,簡易書留郵便の選択はなく,メール便は通常の配送方法であり,今回は,被控訴人がメール便の配送方法を選択したものである。 (控訴人の主張等)被控訴人の主張は,否認ないし争う。 控訴人は,本件優待券を受け取っていない。 被控訴人は,本件サイトに本件優待券を出品する際,「簡易書留郵便も可能です。」との記載を行い,これに対して,控訴人は,配送方法として簡易書留郵便を指定した。それにもかかわらず,被控訴人は,本件優待券をメール便で発送し,その結果,本件優待券は,控訴人に配達されなかった。控訴人は,配達中の事故等を考慮して,簡易書留郵便での発送を指定して商品を落札しているのであり,異なる方法で配送したことによる責任は,被控訴人にある。 (2) 被控訴人に債務不履行があった場合に賠償すべき損害(控訴人の主張)控訴人は,被控訴人の前記(1)の債務不履行により,以下の損害を被った。 ア本件優待券の落札代金及び送料 4682円イアの振込手数料 105円ウ被控訴人に対して繰り返し返金を求めるために要した通信費 7680円エ本件優待券と他の航空券を組み合わせて旅程を組んでいたところ,本件優待券が届かなかったことにより発生した損害(ア)航空会社に支払ったキャンセル料 2000円(イ)他の航空券代金 1万2000円 (ウ)欠席せざるをえなくなった札幌での理事会の損害 5万円(エ)ホテルの宿泊をキャンセルし,スケジュールを変更せざるをえなくなったために生じた損害 4万円オ以上合計 11万6467円(被控訴人の主張等)控訴人の主張は,否認ないし争う。 (3) 控訴人に対する名誉毀損の不法行為が成立するか。 (控訴人の じた損害 4万円オ以上合計 11万6467円(被控訴人の主張等)控訴人の主張は,否認ないし争う。 (3) 控訴人に対する名誉毀損の不法行為が成立するか。 (控訴人の主張)被控訴人は,平成21年4月21日,本件優待券の落札,送付等に関して,本件サイト内の控訴人の評価欄に,「悪い落札者です」と評価をした上,評価コメントとして,「二度と取引したくないです。」との虚偽の内容を書き込み(本件コメント等),控訴人を誹謗中傷して,その名誉を著しく毀損した。本件コメント等は第三者も閲覧が可能であったため,当時控訴人が出品していた商品の入札を検討していた者が,本件コメント等を見て,入札を取りやめたことも考えられる。 被控訴人の上記行為によって,控訴人は精神的苦痛を受け,その苦痛に対する慰謝料としては8万3533円が相当である。 (被控訴人の主張)控訴人の主張は,否認ないし争う。 本件優待券の取引において,被控訴人が,控訴人を落札者として評価し投稿した本件コメント等は,被控訴人の正直な気持ちを記載したものであり,虚偽の内容でも,中傷でもない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,以下のとおり,控訴人の請求は,原判決が認容した 限度で理由があり,その余は理由がないものと判断する。 2 争点(1)について(1) 前記前提事実によれば,被控訴人は,本件サイトに本件優待券を出品するに際して,配送方法として簡易書留郵便によることが可能である旨を特に表示し,本件優待券を落札した控訴人は,被控訴人に対し,簡易書留郵便による配送を希望したものであり,以上によって,被控訴人は,控訴人との間で,控訴人の住所において本件優待券を引き渡すこと(持参債務),その方法として,簡易書留郵便によ 被控訴人に対し,簡易書留郵便による配送を希望したものであり,以上によって,被控訴人は,控訴人との間で,控訴人の住所において本件優待券を引き渡すこと(持参債務),その方法として,簡易書留郵便によることを合意したものと認められる。 (2) しかるに,本件優待券が,被控訴人から,平成21年4月2日ころ,簡易書留郵便ではなく,メール便で発送された後,J株式会社の札幌Nセンターまで届いた事実は認められる(乙3)ものの,控訴人が本件優待券を受領したことを認めるに足りる的確な証拠はない。 (3) そうすると,被控訴人が,本件優待券を簡易書留郵便ではなくメール便で送付したことは,それ自体被控訴人の債務不履行を構成するものであるし,被控訴人には,控訴人に本件優待券を引き渡す債務の不履行が認められるのであって,被控訴人は,控訴人に対し,これら債務不履行によって発生した損害を賠償する責任を負うというべきである。 (4) なお,被控訴人は,Aオークションにおける配送方法は,簡易書留郵便の選択はなく,メール便は通常の配送方法であり,これによって発送した被控訴人には,債務不履行はない旨主張する。 しかし,被控訴人が,控訴人との間で,本件優待券の発送方法として,簡易書留郵便の方法による旨合意したと認められることは,前記(1)のとおりであるし,弁論の全趣旨によれば,簡易書留郵便は, メール便と異なり,受取人が目的物を受け取るについて,受取人の受領の証印又は署名が必要とされ,受取人が現実に目的物を受領することを前提とする制度であり,控訴人は,このような簡易書留郵便制度の信頼性に鑑みて,「簡易書留郵便も可能です。」とした被控訴人に対し,前記前提事実(2)のとおり,簡易書留郵便での発送を指定したことが認められるのであり,被控訴人が,控訴人に対し,メー 留郵便制度の信頼性に鑑みて,「簡易書留郵便も可能です。」とした被控訴人に対し,前記前提事実(2)のとおり,簡易書留郵便での発送を指定したことが認められるのであり,被控訴人が,控訴人に対し,メール便で,本件優待券を発送したことをもって,「債務の本旨に従った履行」(民法415条1項)があったということはできない。 また,前記前提事実(3)のとおり,被控訴人は,簡易書留郵便による配送を希望した控訴人に対して,「C・メール便(80円)(簡易書留郵便です)にてお送りします。」などと回答しており,本件優待券を送付するに際して,メール便が簡易書留郵便と同一のものである旨誤解していた可能性がないではない。しかし,証拠(甲24の3)によれば,本件サイトへの出品者は,「商品等の出品にあたり,情報発信機能を用いて商品等に関する正確かつ十分な情報を掲示する」義務を負っていること(Aオークション利用規約7条2項)が認められ,上記認定のとおり,メール便は,簡易書留郵便と比べて,配達の確実性・信頼性において劣ることが明らかであることからすると,仮に,被控訴人が上記のような誤解をしていたとしても,それ自体が,前記前提事実(1)のとおり,本件サイトへ,自ら「簡易書留郵便も可能です。」と記載した本件優待券の出品者として果たすべき被控訴人の注意義務に違反するものというべきであり,以上の認定,判断を左右するものではない。 3 争点(2)について(1) そこで,被控訴人の前記債務不履行によって控訴人に生じた損害について検討すると,控訴人が原審及び当審において主張する損害 のうち,本件優待券の落札代金及び送料並びにこれらの振込手数料相当額(合計4787円)については,被控訴人の債務不履行と相当因果関係のある損害と認めることができる。 (2)ア控訴人が主張 のうち,本件優待券の落札代金及び送料並びにこれらの振込手数料相当額(合計4787円)については,被控訴人の債務不履行と相当因果関係のある損害と認めることができる。 (2)ア控訴人が主張する損害のうち,被控訴人に対して繰り返し返金を求めるために要した通信費(7680円)については,その発生を基礎付ける事実を認めるに足りる証拠がない。 イまた,控訴人が主張する損害のうち,本件優待券が届かなかったことにより,控訴人が予定していた旅行をキャンセルしたこと等により生じた損害(航空会社に支払ったキャンセル料2000円,株主優待券を利用して旅程を組んでいたが,入手できなかったため搭乗できず,払戻しも受けられなかった航空券代金1万2000円,欠席せざるをえなくなった札幌での理事会の損害5万円及びホテルの宿泊をキャンセルし,スケジュールを変更せざるを得なくなった損害4万円)については,いずれもその発生を基礎付ける事実を認めるに足りる的確な証拠もないし,被控訴人の前記債務不履行との間に相当因果関係があるとは認められないものである。 (3) 以上によると,被控訴人の債務不履行と相当因果関係があるものとして,被控訴人が控訴人に賠償すべき損害は,前記(1)に認定の4787円のみである。 4 争点(3)について(1) 控訴人は,本件コメント等が,控訴人の名誉を毀損するものである旨主張する。 (2) しかし,前記前提事実並びに証拠(甲21の1ないし6)及び弁論の全趣旨を総合すると,本件サイトにおいては,オークション取引が成立し,目的物の授受,代金支払等の取引が全て終了した段階 で,出品者(売主)及び落札者(買主)が,それぞれ相手方を「良い」,「普通」,「悪い」の3段階で評価し,あわせて評価コメントを記載するシステムとなって 受,代金支払等の取引が全て終了した段階 で,出品者(売主)及び落札者(買主)が,それぞれ相手方を「良い」,「普通」,「悪い」の3段階で評価し,あわせて評価コメントを記載するシステムとなっており,これらの評価及び評価コメントは,全てハンドルネーム(別名)をもって行われるものであることが認められる。そして,本件コメント等のうち,「悪い落札者です」との評価は,上記3段階の評価のうちの1つを記載したものにほかならず,また,「二度と取引したくないです。」との評価コメントも,被控訴人が控訴人との本件サイトのオークション取引を通じて形成した感想,心情を吐露したものにすぎず,表現方法も,オークションの落札者(控訴人)を評価するコメントとして,直ちに相当性を欠くということはできない。 以上からすると,本件コメント等は,控訴人の一般社会における評価を低下させるものとは認められないし,本件サイト内において出品者や落札者を評価する際に用いる表現として,違法ということはできない。 したがって,被控訴人が,本件サイトに本件コメント等を書き込んだことは,控訴人に対する不法行為に該当しない。 5 結論以上のとおり,控訴人の請求は,本件優待券の落札代金及び送料並びにこれらの振込手数料相当額(合計4787円)の損害賠償並びにこれに対する訴状送達の日の翌日である平成21年6月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がない。 よって,控訴人の請求を上記の限度で認容した原判決は相当であり,本件控訴及び附帯控訴は,いずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第8部 裁判長裁判官長谷川 恭 弘 裁判 訴及び附帯控訴は,いずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 主文 名古屋地方裁判所民事第8部 裁判長裁判官長谷川恭弘 裁判官堀田次郎 裁判官中畑章生
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