判決平成15年1月29日神戸地方裁判所平成12年(ワ)第1519号損害賠償請求事件 主文 一原告らの請求をいずれも棄却する。 二訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び争点第一申立一被告は原告甲に対し,金1億0635万7693円及びこれに対する平成10年7月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 二被告は原告乙,同丙及び同丁に対し,それぞれ金5893万6643円及びこれに対する平成10年7月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 三仮執行の宣言第二事案の概要本件は,原告らが被告に対し,国家賠償法1条1項の規定ないしは民法715条1項,709条の規定に基づき,さらに,予備的に債務不履行に基づき,損害賠償請求をした事件である。 一前提事実(争いがないか,弁論の全趣旨ないしは関係箇所に掲記した証拠により容易に認定できる事実) 1 別紙物件目録1記載の土地(以下,「本件1土地」という。)は,原告甲が持分5分の2,他の原告らが持分各5分の1の割合で共有していた。同目録2記載の各土地(以下,「本件2土地」という。)は,原告らが持分各4分の1の割合で共有していた。 2 平成10年7月13日,原告らと被告は,本件1,2土地(以下,併せて「本件土地」という。)を原告らが被告に次の価格で売り渡すとの売買契約(以下,「本件売買契約」という。)を締結した。 (1) 1㎡あたり単価1万2500円(2) 本件1土地につき代金1億6647万8750円,本件2土地につき代金3234万2625円 3 経過(1) 被告は,三田市内の各地区にコミュニティセンター設置を進めてきていたが,A地区でも平 件1土地につき代金1億6647万8750円,本件2土地につき代金3234万2625円 3 経過(1) 被告は,三田市内の各地区にコミュニティセンター設置を進めてきていたが,A地区でも平成5年頃から同センターの設置を被告に要望するため対策委員会を設けて活動をし,その結果,平成6年には被告もA地区に市民センターを設置する方針を決めた(甲16)。被告は同年12月頃,同市民センター設置委員会(以下,「設置委員会」という。)の設立を地元に依頼し,地元のA地区では,区長会,地元市会議員,老人会,婦人会,体育振興会からなる設置委員会を平成7年3月に(甲16,証人戊)設立した。(被告が同委員会に市民センターの用地選定を依頼したか否かについては,争いがある。)(2) 平成7年4月2日① 設置委員会の委員長戊ほか4名は,本件土地を含む3候補地につき,現地調査をした(甲6,証人戊)。 ② 戊ら5名は,地区の中心部に所在し中学校にも近い本件土地を最適地と判断し,原告甲に,地域のためとして,1坪10万円内外で被告に売却することへの内諾を求め,原告甲は内諾した(甲7,16,20,証人戊,原告甲本人)。 設置委員会は本件土地を被告に推挙した。 (3) 平成8年2月25日設置委員会は,重ねて,本件土地を最適地として選定し,被告に伝えた。 (4) 同年5月1日① 被告は,「三田市花と緑と水のまちづくり指導要綱」(以下,「まちづくり指導要綱」という。)を作成した。 ② まちづくり指導要綱には,適用しない開発事業として,9条4号で,公益上必要な建築物の用に供する目的のもの,同条5号で,国,県,市等の行うものを規定している。 (5) 同年6月12日被告の己総務部長(以下,「己部長」 業として,9条4号で,公益上必要な建築物の用に供する目的のもの,同条5号で,国,県,市等の行うものを規定している。 (5) 同年6月12日被告の己総務部長(以下,「己部長」という。)が原告甲宅を訪問した。 (6) 同年7月10日戊と市民センター建築委員長庚は,原告甲宅を訪れ,市民センター建築用地の売買を長らく放置したことを詫び,協力を要請し,原告甲は了解した(甲20,原告甲本人)。 (7) 同年9月26日己部長,被告の辛コミュニティ課長(以下,「辛課長」という。)と壬コミュニティ振興係長(以下,「壬係長」という。)が原告甲宅を訪問し,調査のための本件土地への立ち入りと,必要な場合の立木の伐採を承認してほしいと要請した。(本件土地購入が決定されたこと等が告知されたかについては,争いがある。)(8) 同年12月25日己部長,辛課長及び壬係長の3名が原告甲宅を訪問し,原告甲に本件土地の買取価格として坪単価4万1250円を提示し,同原告は承諾した。(原告甲の承諾が,1㎡あたりの単価と誤解したことに基づくものであるか否かについては,争いがある。)(9) 同月26日原告甲は己部長に電話し,昨日の提示価格には納得できないので,承諾を撤回すると述べた。 (10) 平成9年2月20日己部長,辛課長及び壬係長の3名が原告甲宅を訪問し,何とか前記の提示価格でお願いしたいと述べた。 (11) 同年11月13日① 己部長らは,株式会社資産評価研究所作成の平成9年10月13日付け調査報告書(甲12。以下,「本件報告書」という。)の内容を原告甲に示して説明した。 ② 同報告書には,対象不動産として本件1土地をほとんど全部とする 評価研究所作成の平成9年10月13日付け調査報告書(甲12。以下,「本件報告書」という。)の内容を原告甲に示して説明した。 ② 同報告書には,対象不動産として本件1土地をほとんど全部とする土地が記載され,また,同土地の価格として,1㎡あたり1万2500円と記載されていた。 ③ 己部長,辛課長は,同報告書に基づき,原告甲に,残置森林又は造成森林を配置する旨定められており,本件土地もその規制を受けると説明した。(己部長らがまちづくり指導要綱に基づき開発規制がなされること等を説明したか否かについては,争いがある。)二争点に関する双方の主張(原告ら) 1 責任原因(1) 事実主張① 己部長及び辛課長は,原告らの代表者である原告甲に対し,本件土地の買取価格を低く抑える目的で,次のような欺罔行為をした。 ア平成9年11月13日,まちづくり指導要綱によって開発事業の規制がなされ,宅地開発が困難となっていると述べ,単なる行政指導の基準にすぎないまちづくり指導要綱が法的拘束力を有するかのように述べた。 イ上記事実は,被告が事業主体となる市民センター建築の開発事業に,まちづくり指導要綱は適用されないのに,これが適用されると述べ,本件土地における開発事業が同指導要綱による規制を受け,困難となったと述べたことになる。 ウ同日,本件土地は,森林法による残置森林,造成森林の規制を受けないのに,受けると述べた。 ② 己部長及び辛課長らは,本件土地の買取価格を低く抑えるため,鑑定書を仮装した本件報告書の作成を株式会社資産評価研究所に指示した。その際,地目山林の土地の固定資産評価額が格段に低いことに着目して,本件1土地を中心として評価するよう指示し,その結果,これらの指示に沿った本件 た本件報告書の作成を株式会社資産評価研究所に指示した。その際,地目山林の土地の固定資産評価額が格段に低いことに着目して,本件1土地を中心として評価するよう指示し,その結果,これらの指示に沿った本件報告書が作成され,原告甲に示された。 しかも,株式会社資産評価研究所代表者の癸は,三田市固定資産評価審査委員会の委員であるなど被告と強い利害関係を有するものであり,本件報告書は,このような者により作成された不公正なものである。実際にも,まちづくり指導要綱による開発規制の影響及び森林法に基づく規制の影響を減価要因とする誤りを犯している。 原告らと被告間には,公平・公正な不動産鑑定士1名による鑑定結果を基に被告が本件土地代金額を提示して売買契約を締結するという合意ができていた。しかるに,己部長らは,この合意に従わないで,上記のような本件報告書を基に代金額の提示をした。また,同部長らには,公平・公正な不動産鑑定士を選任すべき注意義務があるのに,地方税法425条2項の規定により被告から仕事を受けてはならない癸に鑑定を依頼した。 ③ 原告甲は,以上のような欺罔行為により,本件土地の価格が1㎡あたり1万2500円で適正であると誤解し,本件売買契約を締結するに至った。 (2) 被告の責任① 己部長らの上記欺罔行為は,被告の職務を行うについて故意によりなされた違法行為であるから,被告は国家賠償法1条1項ないしは民法715条1項,709条の規定に基づき,これらの違法行為により原告らが被った損害を賠償すべき責任がある。 ② まちづくり指導要綱は,法律に抵触するばかりか,条例の形式にもよらずに,恣意的な方法で都市計画区域外の地区を規制区域としようとするものであり,憲法29条,都市計画法7条,地方自治法14条に違反 ② まちづくり指導要綱は,法律に抵触するばかりか,条例の形式にもよらずに,恣意的な方法で都市計画区域外の地区を規制区域としようとするものであり,憲法29条,都市計画法7条,地方自治法14条に違反する。被告は,まちづくり指導要綱を原告ら土地所有者の土地取引価格に関する権利,利益を制約し,事実上売買代金の自由な設定を妨げる根拠として利用した。したがって,このようなまちづくり指導要綱を利用して原告らに本件売買契約を締結させた被告職員の行為は違法である。 ③ 被告は,公平・公正な不動産鑑定士による鑑定結果を基に本件土地代金額を提示して売買契約を締結するという債務を履行しなかった。 2 損害本件土地の1坪あたりの単価は10万円が正当であるところ,被告職員の前記違法行為により,本件売買契約を締結して1㎡あたり1万2500円で売却させられた結果,原告甲は1億0635万7639円の,その余の原告らはそれぞれ5893万6643円の損害を被った。 3 森林法による規制森林法10条の2第1項は,地域森林計画の対象となっている民有林において開発行為をしようとする者は知事の許可を得なければならないと規定しているが,本件の場合,地方公共団体である被告が開発行為を行う場合に該当するから,同項但書により,許可は不要である。 被告主張の本件誓約書については,申請者が原告甲他5名・代表者原告甲とされているのに,委任状が添付されていないとか,図面が添付されていないなどの問題があり,いずれも無効な文書である。 (被告) 1 原告らの主張事実は否認する。 平成8年12月25日,己部長らは原告甲に,残置及び造成森林を除く1万2480㎡を,1㎡あたり1万2500円で購入したいと申し入れ,一旦承諾を得たが,同原告は翌日に承諾を撤 事実は否認する。 平成8年12月25日,己部長らは原告甲に,残置及び造成森林を除く1万2480㎡を,1㎡あたり1万2500円で購入したいと申し入れ,一旦承諾を得たが,同原告は翌日に承諾を撤回した。その後,被告では原告甲と再交渉し,同原告が申し出た様々な附帯条件も大半受け入れることとした結果,原告らは納得して本件土地を被告に上記単価で売却することを決定した。 2 森林法による規制(1) 森林法は,地域森林計画の対象となっている民有林において開発行為をしようとする場合は,知事の許可を受けなければならないとし,環境保全機能からみて,開発行為により森林周辺の地域における環境を著しく悪化させるおそれのないことを許可条件の1つにしている。 周辺地域の環境悪化を防止するため,開発行為をしようとする森林の区域に,相当面積の森林又は緑地の残置又は造成が行われること(昭和49年10月31日農林省事務次官通知),残置・造成森林又は緑地は,開発行為をしようとする森林の区域の周辺部に原則として20メートル以上の幅をもって配置されること(同日林野庁長官通知)として運用されている。この場合,その所有者等から一切転用しないこと等を誓約した「残置森林等の管理に関する誓約書」(本件については,乙14の1・2。以下,「本件誓約書」という。)が差し入れられることになっている。前記運用は,行政指導にすぎないが,誓約書により法的拘束力をもつに至るのである。 (2) 本件土地については,大倉建設株式会社が開発したつつじが丘団地のための残置・造成森林が含まれており,原告らは誓約書も差し入れている。被告が本件土地を取得した後も,この規制を承継しており,造成工事については,神戸農林事務所と20回を超える協議を重ねた結果,誓約緑地部分は植栽工事を行い,他の ており,原告らは誓約書も差し入れている。被告が本件土地を取得した後も,この規制を承継しており,造成工事については,神戸農林事務所と20回を超える協議を重ねた結果,誓約緑地部分は植栽工事を行い,他の目的に転用しないでいる。 3 まちづくり指導要項について(1) 被告は,内陸新都市の中核都市として,それに相応しい道路網,鉄道等都市基盤の整備を重点課題として計画的にすすめてきた。これらの整備により,主に北摂三田ニュータウンへの入居が増大し,昭和62年から平成8年までの10年間人口増加率日本一という状況が続いた。都市計画区域外においても,このニュータウン人気を追い風に民間開発による住宅がいたる所で乱開発されるようになり,飲料水,生活雑排水,コミュニティ等各種の矛盾が生じる状況となった。 そこで,まちづくり指導要綱を制定し,これ以上都市計画区域外での開発をされては困るという意思を明確に表明するとともに,市民らに強く協力方を求めることとした。 (2) まちづくり指導要綱の実施期間は,平成8年5月1日から平成11年3月31日までであったが,実質的には都市計画区域の変更により平成10年7月31日から対象区域が消滅し,その時点で終了している。 (3) 同要綱は,本件土地だけでなく,当時の都市計画区域外のすべてを対象としたものであり,原告ら主張のような目的でないことは明らかである。 理由 一本件売買契約締結に至る経過 1 本件売買契約締結にいたる経過について,証拠(甲7,12,16,乙1,2,4,5,20,証人戊,同辛,同子,原告甲本人)と弁論の全趣旨によれば,前記前提事実3の事実のほか,次の事実が認められる。 (1) 平成7年2月17日,被告の丑総務部長及び辛課長はA地区の会合に出席して 20,証人戊,同辛,同子,原告甲本人)と弁論の全趣旨によれば,前記前提事実3の事実のほか,次の事実が認められる。 (1) 平成7年2月17日,被告の丑総務部長及び辛課長はA地区の会合に出席して,市民センター用地として複数の候補地を選定していただけるよう地元に要請した。その際,地元側から,A地区に近い広野市民センターの用地買収価格を参考のため聞かせてほしいという要望があり,丑部長は,同用地は,一部宅地が含まれていたこと,JR広野駅前に近いという立地条件にあったこと等から10万円であったと話した。この価格は,1㎡あたりの価格であったが,地元では坪単価と誤解していた。 (2) 同年3月18日,A地区は設置委員会を設立し,市民センター候補地として3か所を決めたが,同時に戊ら5名の委員に選定を一任した。 (3) 戊らは,同年12月18日付け文書で被告総務部長に対し,同年4月以降原告らに何の連絡もないようであるが,我々としては原告らに迷惑をかけたまま越年するわけにはいかないので,早急に原告らに説明できるようにしていただきたいと,文書で要望した。そして,平成8年2月25日,己部長及び辛課長は,地元代表者の戊らに対し,本件土地以外にできればもう1,2か所候補地を提案してほしいと述べたが,地元側では本件土地が最適であるとの判断を変更しなかった。そこで,己部長は,地元の意向を了解し,その方向で被告としても検討していきたいと答えた。同年6月12日,己部長は原告甲を訪れ,これまでの経過等を報告し,被告と設置委員会との間に誤解が生じたことから,同原告に迷惑をかけたことを詫びた。 (4) 同年9月26日,己部長らが原告甲を訪れた際,市民センター用地として同原告ら所有の土地に内定したことを伝えた。そして,誓約緑地を除外した部分の売買とするとの話がされ けたことを詫びた。 (4) 同年9月26日,己部長らが原告甲を訪れた際,市民センター用地として同原告ら所有の土地に内定したことを伝えた。そして,誓約緑地を除外した部分の売買とするとの話がされた。 (5) 同年12月25日,己部長らが原告甲に買収価格を伝えた際,同原告は1㎡あたり4万1250円との提示であると誤解し承諾した。しかし,同部長らが残したメモを見て誤解に気付き,承諾を撤回した。 (6) その後,原告甲は被告側の再交渉の要請にも容易に応じなかった。 (7) 平成9年8月1日,原告甲はA地区を地元とする市会議員と会い,その後被告助役(現市長)らも加わって話し合った結果,土地価格の鑑定をした上で売買交渉を継続することとなった。 (8) 同年9月頃,被告建設部用地課は,株式会社資産評価研究所の代表者癸に本件報告書の作成を依頼した。その際,同課参事子(以下,「子参事」という。)は,まちづくり指導要綱及び誓約森林(後記二1(4)参照)の話を癸にした。 癸は,三田市固定資産評価審査委員会委員及び用地課土地評価顧問に就任している者であった。 (9) 本件報告書が完成したので,同年11月13日,己部長らは原告甲を訪れ,同報告書のほぼ全文を読み上げる方法で同報告書の内容を説明した。子参事は,本件報告書が助役から依頼を受けてとった鑑定書であると原告甲に説明した。 宅地見込み的なことは考えられるが,誓約森林が含まれることやまちづくり指導要綱のことを考えると,山林的な見方をしなければならないとも説明した。これに対し原告甲は,まちづくり指導要綱は時代の要請で変化するものであること,誓約緑地は法的な裏付けがないことを主張し,鑑定価格はいい加減なものであり,3個位とってほしかったとか,鑑定士から被告にお伺いがあったに違いない等,本件報 導要綱は時代の要請で変化するものであること,誓約緑地は法的な裏付けがないことを主張し,鑑定価格はいい加減なものであり,3個位とってほしかったとか,鑑定士から被告にお伺いがあったに違いない等,本件報告書の内容に疑義を述べ,その結果を受け入れなかった。 (10) 本件報告書は,本件1土地(当時の1307番27の山林14,536㎡・甲1)を対象とするもので,まちづくり指導要綱により宅地開発が困難となっていること,森林法に基づく残置森林・造成森林の規制も受けていることを前提としていた。 (11) 原告甲は同月14日,被告用地課を訪れ,鑑定書と調査報告書の相異について質問した。子参事は,後日,鑑定書は鑑定評価基準・不動産鑑定評価に関する法律に基づき作成されるもので,調査報告書は添付書類等が省略されるが,評価額については鑑定書と同質であること等を書面で説明した。 (12) 被告では,戊に原告甲との交渉の窓口になってもらうよう依頼し,同年12月初旬頃,戊が同原告に道路に面した150坪の土地を取引対象外とすることを提案し,再び交渉が再開された。そして,同原告の希望で,市道に面した1307番45の土地約200坪を取引対象外とすること,同土地に隣接する被告所有の法面(同番43)を原告ら側所有地同番46と交換すること,同番27の土地約138坪を取引対象外とし,被告において造成すること,同土地までの上水道用地について原告らの車両通行を被告は認めること等の附帯条件が付けられ,被告もこれを受け入れることとした結果,同月12日,己総務部長と原告ら代表者の原告甲との間で,上記附帯条件の一部も盛り込まれた本件土地売買に関する確認書が取り交わされた。 (13) 本件売買契約は,上記確認書に基づき締結された。 2 上記事実によれば,被告では,市民センターの設 の間で,上記附帯条件の一部も盛り込まれた本件土地売買に関する確認書が取り交わされた。 (13) 本件売買契約は,上記確認書に基づき締結された。 2 上記事実によれば,被告では,市民センターの設置場所を巡って地域内で後に揉め事が起こった例があり,そのため複数の候補地を地元に推薦してもらうこととしたが,一方では地元中心にセンターを設置する必要があり,地元に用地選定のイニシャティブをとってもらおうと考えていた(証人辛)ことから,被告側と設置委員会側で一時期用地選定及びその進め方を巡って行き違いが生じたものと推認される。しかし,いずれにしろ,原告ら代表者である原告甲と被告間の売買交渉は,平成8年12月25日に被告から価格提示がなされ,同原告が一旦承諾したものの,翌日に撤回されたことで一時頓挫したものである。それが,平成9年8月1日に被告側で鑑定をすることになって再開されたもので,その後の経過が本件では重要であるというべきである。 二被告の責任について 1 本件報告書について以下の認定,説示を総合すれば,被告職員らは,原告ら代表者である原告甲に,被告が提示した坪単価4万1250円に近い価格で納得してもらう手段として,本件報告書を利用しようとしたものと認められる。 (1) 本件報告書の価格の評価は,1㎡あたり1万2500円であり,上記提示価格にほぼ一致している。 (2) 本件土地には地目が雑種地の土地も含まれているが,前記のとおり,本件報告書は地目が山林の土地のみを対象としている。証人子は,地目が雑種地の土地についても現況は山林であると供述するが,甲26によれば,明確ではないものの現況が山林であるといえるか疑問がある。しかも,甲14ないし16により明らかなように,地目が山林の土地の固定資産評価額は地目が雑種地の土地のそれより遙 と供述するが,甲26によれば,明確ではないものの現況が山林であるといえるか疑問がある。しかも,甲14ないし16により明らかなように,地目が山林の土地の固定資産評価額は地目が雑種地の土地のそれより遙かに低いことを考えると,本件土地全体の評価の方法として,地目山林の土地のみを対象としたのは不相当である。 (3) まちづくり指導要綱(甲9)は,「三田市の豊かな自然環境や歴史的環境,風土,景観を守るため,都市計画区域外における開発事業を規制することにより,緑豊かな自然環境を保全し,市民の健康で文化的な生活の保護に寄与することを目的」(1条)とし,「市長は,まちづくり委員会の意見等を踏まえ,この要綱の目的達成のため必要な限度において,22条の規定する開発事業の適合通知を受けた事業者に対して,報告書若しくは資料の提出を求め,又は勧告若しくは助言をすることがある。」(23条),「市長は,この要綱に協力しない事業者,設計者,工事施工者等の氏名及び勧告内容を公表することがある。市長は,この要綱に従わない事業者に対し,開発に伴って必要となる行政サービスを提供しないことがある。」(28条)等と規定して,市長の勧告に従わないときは一定の制裁的措置がとられることはあるものの,基本はあくまで行政指導により目的の達成を図るという性質のものである。 したがって,本件土地における開発事業が同要綱の定める規制対象になるとしても,それはあくまで行政指導に基づくものであり,このような性質を有する開発規制を,土地価格評価に反映させるについては,慎重でなければならず,まして,同要綱が施行されたのが平成8年5月1日であり,その運用実績も十分積み重ねられたとはいえない時期において,同要綱に基づく開発規制を前提として評価をすることは相当ではない。 なお,被告が本件 ,同要綱が施行されたのが平成8年5月1日であり,その運用実績も十分積み重ねられたとはいえない時期において,同要綱に基づく開発規制を前提として評価をすることは相当ではない。 なお,被告が本件土地を低価格で取得する目的でまちづくり指導要綱を策定したことを認めるに足りる証拠はない。 (4) 乙14と弁論の全趣旨によれば,大倉建設株式会社が開発したつつじが丘団地のための残置・造成森林とするため,森林法10条の2の規定に沿う目的のための行政指導の結果として,原告ら代表者としての原告甲が兵庫県知事に対し差し入れた「残置森林等の管理に関する誓約書」(昭和61年3月24日付け及び昭和63年2月16日付けの本件誓約書)が存在し,本件土地の一部も同誓約書により残置森林等として他目的に転用せず現況保存することを誓約した土地とされていること,同誓約書には「残置森林等の所有権その他森林等を利用する権利を他に譲渡したときは,この誓約事項を当該権利者に承継する」との条項が含まれていることが認められる。 原告らは,本件誓約書には委任状が添付されていないとか,図面が添付されていないなどの問題があり,本件誓約書は無効な文書であると主張するが,弁論の全趣旨によれば,原告甲が原告らを代表して本件誓約書を作成したことが認められるのであり,また図面が添付されていなかったとしても,当事者間で有効に合意されたものである以上,これに一定の拘束力を認めるべきであるし,承継の合意についても同様である。したがって,本件報告書が森林法に基づく残置森林・造成森林の規制を受けていることを前提としていることについては,結果的に誤りであるとまではいえない。 (5) 前記のとおり,子参事は癸に対し,本件報告書の作成を依頼する際,まちづくり指導要綱及び誓約森林の話をしているのであり を前提としていることについては,結果的に誤りであるとまではいえない。 (5) 前記のとおり,子参事は癸に対し,本件報告書の作成を依頼する際,まちづくり指導要綱及び誓約森林の話をしているのであり,被告用地課において,これらによる利用制約を評価に反映させようとの意図があったものと推認される。(4)のとおり,誓約森林による利用制約自体が誤りであるとはいえないが,被告用地課がこの制約を評価要因とする意図を有しており,それを癸に積極的に伝達したものというべきである。 (6) 癸は前記のとおり三田市固定資産評価審査委員会委員に就任していた者であったところ,地方税法425条2項は同委員が当該市町村に対して請負することを禁止しており,本件報告書の作成を癸が代表者を務める会社に依頼することは適法でないといえる。 (7) 前記のとおり,平成9年11月13日に子参事は原告甲に対し,本件報告書の内容を説明した際,誓約森林及びまちづくり指導要綱のことを考えると,本件土地については宅地見込み的な考え方よりは山林的な見方をするのが相当であるという趣旨の話をしている。これは,本件報告書を原告らとの売買交渉において被告側に有利に利用する目的を有していたことを示すものであるということができる。 (8) 以上の検討によれば,癸が被告用地課の意図を汲んで本件報告書を作成した疑いもあるものというべきである。特に,被告の提示代金額と本件報告書の評価額がほぼ一致しているのを偶然の一致であるとするのは,極めて不自然である。 2 原告らは被告職員の違法行為の結果本件売買契約を締結したか(1) 一般に,不動産の売買において,売主側は代金を高くするため,買主側は低くするため,種々の方法で相手方と交渉することとなる。そして,相手方から示された誤った情報を信じた結果売買契約 したか(1) 一般に,不動産の売買において,売主側は代金を高くするため,買主側は低くするため,種々の方法で相手方と交渉することとなる。そして,相手方から示された誤った情報を信じた結果売買契約が締結された場合には,その情報の重要度,情報伝達方法,その動機,故意によるか過失によるか等の事情を総合して,相手方の行為の違法性を判断するべきであり,このことは売買の一方の当事者が自治体である場合も原則として異なるところはない。もっとも,自治体側には,法律等による制約があり,法律等に基づかない場合はそのことのみで違法と判断される場合があるということになろう。 本件においては,証拠(乙6ないし8,17ないし19,21,22,証人子)と弁論の全趣旨によれば,被告は,法律上要求される議会の議決等の手続は履践したこと,部内の「用地取得及び物件補償事務執行フロー」に従って手続を進めたことが認められる。なお,本件土地売買については,三田市不動産評価審査会の審査を経る必要はなく,価格の鑑定を経る必要もなかったものと認められる。 (2) ところで,前記認定によれば,原告甲は,本件報告書に基づく説明を受けた際,まちづくり指導要綱及び誓約緑地による制約について被告職員の説明に納得せず異議を唱えただけでなく,本件報告書そのものについて鑑定士から被告にお伺いがあったに違いない等疑義があることを述べて,本件報告書の内容,結果は信用できないとの意見を表明していた。また,その翌日である平成9年11月14日には鑑定書と調査報告書の相異について被告用地課職員に質問し,後日説明を受けたが,納得したものではなく,戊が原告甲との交渉の窓口となり,道路に面した150坪の土地を取引対象外とすることを提案して,交渉が再開されたものである。その後,原告甲から種々の附帯条件が提示さ を受けたが,納得したものではなく,戊が原告甲との交渉の窓口となり,道路に面した150坪の土地を取引対象外とすることを提案して,交渉が再開されたものである。その後,原告甲から種々の附帯条件が提示され,これを被告が受け入れることとした結果,同年12月12日に確認書を取り交わすに至った。 以上の経過によれば,原告甲が本件報告書の内容,同報告書についての被告職員の説明に納得したことを窺うのは困難である。原告甲本人は,最初に公平・公正な鑑定書が出されれば契約すると約束していたこと及び売却を拒否すると地元の皆様が自分のために辛い思いをされることになると考えたことが,確認書締結を決断した理由であると供述しているが,一方で,本件報告書には納得しておらず,その中身がきっちりとは分かっていなかったとも供述している。しかし,上記経過の中での原告甲の対応を見ると,同原告は本件報告書の内容を大半正しく理解していたと見ることができるのであり,本件報告書の内容を信じて確認書締結に至ったものと認めることはできない。むしろ,本件報告書の評価額には納得できず,本件土地の価格はもっと高いはずであると考えてはいたが,附帯条件が受け入れられたことや地元の期待を裏切ることはできないことを考慮し,総合的に判断して確認書締結を決断したものと推認できる。 本件売買契約は確認書に基づき締結されたのであるから,原告ら代表者である原告甲が本件報告書及びこれに関する被告職員の説明を信じた結果本件売買契約が締結されたと認めることはできない。 (3) 原告らは債務不履行の主張もしているが,以上の認定,説示によれば,被告の債務不履行により原告らが本件売買契約を締結したと評価することはできない。 三鑑定について 1 鑑定人寅の鑑定は,本件土地の平成10年7月13日時点の評価を, が,以上の認定,説示によれば,被告の債務不履行により原告らが本件売買契約を締結したと評価することはできない。 三鑑定について 1 鑑定人寅の鑑定は,本件土地の平成10年7月13日時点の評価を,概ね次のとおりであるとしている。 (1) 価格時点における本件土地の現況は雑木林地及び雑種地である。 (2) 本件土地の形状は南西間口約180メートル,奥行約100メートルのほぼ整形の中間画地で,北西部分から南西部分にかけてと南端部分においては路面とほぼ等高な緩傾斜地であるが,その他の部分は西向き下り傾斜地であり,画地規模としては約15,900㎡と判断される。 (3) 接面街路は南西幅員約6.5メートル舗装市道である。 (4) 行政的条件として,森林法に基づく残置森林・緑地として部分指定の問題があるが,兵庫県の担当部署の見解によれば,誓約当事者は開発等の転用はできないが,売却された場合は森林法による開発許可が可能であるとのことであったので,評価上考慮しない。 (5) 最有効利用の判定としては,早急な宅地的利用と判断することは困難であるが,将来的に転換後・造成後は分割しての一般住宅の敷地等の宅地的利用と判断される。 (6) 本件のような宅地見込地の価格を求める手法には,取引事例比較法と控除方式による方法があり,2手法を併用し,さらに公的評価を規準とする価格との均衡も考慮した。 (7) 鑑定結果は,1㎡あたり1万7100円である。 2 原告らは,上記鑑定手法のうち控除方式による方法について,鑑定では,残置森林20%を控除して有効宅地化率57%としていることを非難している。しかし,前記二1(4)のとおり,本件誓約書に一定の拘束力を認めることができるのであり,現に乙12と弁論の全趣旨によれば,被告は本件誓約書に基づく合意を承継す 化率57%としていることを非難している。しかし,前記二1(4)のとおり,本件誓約書に一定の拘束力を認めることができるのであり,現に乙12と弁論の全趣旨によれば,被告は本件誓約書に基づく合意を承継することとして,該当部分に植栽工事を行い他目的には転用していないことが認められることを考慮すれば,上記鑑定の手法を不相当であるということはできない。また,原告らは,鑑定が,控除方式による試算にあたり,開発行為の蓋然性並びに分譲地に対する需給動向及びその地価動向等を勘案して,熟成度修正を施している点について,価格時点では開発行為の蓋然性が高かったもので,後の動向を勘案することは相当でない等と非難している。しかし,補充鑑定書の記載にあるように,価格時点での経済動向や本件土地の立地条件等から熟成度修正を採用しているのであり,これを不相当ということはできない。さらに,原告らは鑑定が採用した取引事例が相当でないと非難しているが,鑑定人が敢えて不相当な取引事例を採用したことを認めるに足りる証拠はなく,この非難もあたらない。 その他被告による鑑定に対する意見等を考慮しても,鑑定は,全体として相当なものであると評価できる。 3 上記鑑定の評価額は1平方あたり1万7100円であり,本件売買契約における代金額の136%である。 本件売買契約交渉の中で,前記二1で指摘したような問題はあったものの,前記のとおり,種々の附帯条件を付して本件売買契約が締結されたことも考慮すれば,被告が正常価格を無視した低価格で本件土地を取得しようとしたとまでは評価できないというべきである。 四結論以上のとおりであり,原告らは被告職員の欺罔等の違法行為ないしは債務不履行により本件売買契約を締結したものとはいえないから,原告らの請求は理由がない。 神戸地方裁判所 ある。 四結論以上のとおりであり,原告らは被告職員の欺罔等の違法行為ないしは債務不履行により本件売買契約を締結したものとはいえないから,原告らの請求は理由がない。 神戸地方裁判所第5民事部裁判官前坂光雄
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