平成11(ワ)25757 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成14年1月31日 東京地方裁判所
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判決文本文19,122 文字)

平成11年(ワ)第25757号損害賠償請求事件口頭弁論終結の日平成13年10月29日判決原告 A同訴訟代理人弁護士大野幹憲同塩谷崇之被告国同指定代理人森脇江津子同澁谷勝海同巣山真須美同向山輝人同柳田裕義同鍛治場慎二同馬場一成同佐藤和秀同中島克之同原弘憲同峰一史被告補助参加人 B被告補助参加人 C被告補助参加人 D被告補助参加人 人 B被告補助参加人 C被告補助参加人 D被告補助参加人 E被告補助参加人 F上記5名訴訟代理人弁護士野上邦五郎同杉本進介同冨永博之同補佐人弁理士志賀正武同船山武同渡辺隆同青山正和同鈴木三義 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨被告は,原告に対し,2億6779万円及びこれに対する平成11年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要原告の主張は,被告の機関である社会保険庁は,各種年金の支払通知書等の葉書の表面に年金額等の文字を隠蔽する目隠し用のシールを使用していたところ,この目隠しシールは,葉書の文面隠蔽用複層化アタッチメントの考案に係る実用新案権を侵害するものであり,原告は上記考案の実用新案 書の表面に年金額等の文字を隠蔽する目隠し用のシールを使用していたところ,この目隠しシールは,葉書の文面隠蔽用複層化アタッチメントの考案に係る実用新案権を侵害するものであり,原告は上記考案の実用新案権者から補償金請求権及び損害賠償請求権を譲り受けたというものであり,原告はこれらの合計約186億円の請求の一部請求として前記請求の趣旨記載の金額の支払を求めている。 1 当事者間に争いのない事実等(証拠により認定した事実については,末尾に認定に用いた証拠を掲げた。)(1) G(以下「G」という。)は,下記の実用新案権を有していた(以下,これを「本件実用新案権」といい,本件実用新案権に係る考案を「本件考案」という。)。 登録番号第2528204号考案の名称葉書の文面隠蔽用複層化アタッチメント出願年月日昭和60年11月25日出願番号実願平3-271(実願昭60-180888号の分割出願。以下,これを「原考案」という。)登録年月日平成8年12月2日(2) 本件実用新案権の登録名義は,平成11年11月15日,Gから原告に移転され,Gは同年12月21日社会保険庁長官に到達した内容証明郵便で,上記登録名義が移転した事実及びGが本件考案に関して有していた一切の権利を原告に譲渡した事実を通知した(甲12,13の1,2,14の1,2)。 (3) 本件実用新案権に係る明細書(平成10年3月13日付け訂正請求による訂正後のもの。以下「本件明細書」という。本判決末尾の実用新案公報〔甲2の1。以下「本件公報」という。〕及び全文訂正明細書〔甲2の3〕を参照)の実 に係る明細書(平成10年3月13日付け訂正請求による訂正後のもの。以下「本件明細書」という。本判決末尾の実用新案公報〔甲2の1。以下「本件公報」という。〕及び全文訂正明細書〔甲2の3〕を参照)の実用新案登録請求の範囲のうち,【請求項1】の記載は次のとおりである。 「透明フィルムと,該透明フィルムの上面に剥離可能に貼着し,葉書の文面文字が読取り不能な不透明な表葉紙と,前記透明フィルムの下面に塗布する葉書表面への接着用の透明粘着剤とからなり,前記透明フィルムに対する前記表葉紙の剥離強度は,葉書に対する前記透明フィルムの剥離強度より小さく,前記表葉紙の表面には,剥離用の案内表示を記入するとともに任意の通信文面が記載可能であり,前記表葉紙,透明フィルムは,縁を揃えて同形同大に形成し,葉書より小さくして全周に余裕を生じさせるとともに葉書の文面文字を隠蔽可能な大きさにすることを特徴とする葉書の文面隠蔽用複層化アタッチメント。」(4) 被告は,平成元年10月から,年金受給者等に対して,支払通知書等貼付用シール(以下「本件シール」という。)を貼付して別紙1(甲3の1)のような形式の支払通知書等を発送している。 (5) 被告補助参加人らは,現在,本件シールを製造し,社会保険庁に納入している。 各補助参加人ごとの納入期間及び納入している商品の具体的な名称等は,以下のとおりである。 ① B(旧商号H)平成7年1月から同年6月シークレットキープラベル平成8年4月から平成12年シークレットラベル捺印タイプ② C平成7年1月から同年3月しんてんシールパートⅡタイプ平成7年12月から平成12年2月しんてんシールパ シークレットラベル捺印タイプ② C平成7年1月から同年3月しんてんシールパートⅡタイプ平成7年12月から平成12年2月しんてんシールパートⅢLタイプ③ D平成7年度から平成8年度しんてんシールパートⅢLタイプ平成9年度から平成11年度 MSシール④ E平成7年5月から平成8年3月シクレラベル黒印刷タイプB⑤ F(旧商号I)平成7年1月から同年12月プライベートシールⅡ平成8年1月から同年12月メクルシールTGⅡ平成10年1月から同年12月メクルシールT 2 本件の争点(1) 本件シールの具体的な構成はどのようなものか。(争点1)(2) 本件シールは,本件考案の各構成要件を充足するか。(争点2)(3) 本件考案には無効理由が存在することが明らかであり,本件実用新案権に基づく原告の補償金及び損害賠償の請求は権利の濫用に当たり許されないか。(争点3)(4) 被告は平成5年法律第26号による改正前の実用新案法(以下「改正前実用新案法」という。)13条の3第1項後段の「出願公開がされた実用新案登録出願に係る考案であることを知つて出願公開前に業としてその考案を実施した者」に当たるか。(争点4)(5) 補償金及び損害賠償の額(争点5)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件シールの構成)について【原告の主張】被告補助参加人らが被告(社会保険庁)に納入している本件シールの具体 害賠償の額(争点5)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件シールの構成)について【原告の主張】被告補助参加人らが被告(社会保険庁)に納入している本件シールの具体的な構成は,別紙原告目録(以下「原告目録」という。)記載のとおりである。 【被告及び被告補助参加人の主張】被告補助参加人らが被告(社会保険庁)に納入している本件シールの具体的な構成は,別紙被告目録(以下「被告目録」という。)記載のとおりである。 このうち,イ号-1及びイ号-2は,補助参加人Bが,ロ号-1及びロ号-2は,補助参加人Cが,ハ号-1及びハ号-2は,補助参加人Dが,ニ号物件は,補助参加人Eが,ホ号-1,ホ号-2及びホ号-3は,補助参加人Fが,それぞれ被告に納入した物である。 2 争点2(本件シールの構成要件充足性)について【原告の主張】(1) 本件明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載を分説すると,次のとおりである。 A 透明フィルムと,B 該透明フィルムの上面に剥離可能に貼着し,葉書の文面文字が読取り不能な不透明な表葉紙と,C 前記透明フィルムの下面に塗布する葉書表面への接着用の透明粘着剤とからなり,D 前記透明フィルムに対する前記表葉紙の剥離強度は,葉書に対する前記透明フィルムの剥離強度より小さく,E 前記表葉紙の表面には,剥離用の案内表示を記入するとともに任意の通信文面が記載可能であり,F 前記表葉紙,透明フィルムは,縁を揃えて同形同大に形成し,葉書より小さくして全周に余裕を生じさせるとともに葉書の文面文字を隠蔽可能な大きさにするG ことを特徴とする葉書の文面隠蔽用複層化アタッチメント フィルムは,縁を揃えて同形同大に形成し,葉書より小さくして全周に余裕を生じさせるとともに葉書の文面文字を隠蔽可能な大きさにするG ことを特徴とする葉書の文面隠蔽用複層化アタッチメント(2) 被告の使用している本件シールの具体的な構成は原告目録のとおりであるところ,これと本件考案の構成要件とを比較すると,以下のとおり本件シールは本件考案の構成要件をすべて充足する。 上記目録の構成aにある「透明性のある合成樹脂フィルム(f)」は,構成要件Aの「透明フィルム」に該当する。 構成bにある「該合成樹脂フィルムの上面に剥離可能に粘着し,年金の種類,年金証書の記号番号,基本額などの葉書(n)の文面文字が読取り不能な不透明な合成紙(l)」は,構成要件Bの「該透明フィルムの上面に剥離可能に貼着し,葉書の文面文字が読取り不能な不透明な表葉紙」に該当する。 構成cにある「前記合成樹脂フィルム(f)の下面に塗布する葉書表面への接着用の透明粘着剤(11)」は,構成要件Cの「前記透明フィルムの下面に塗布する葉書表面への接着用の透明粘着剤」に該当する。 構成dにある「前記合成樹脂フィルム(f)に対する前記合成紙(l)の剥離強度は,葉書(n)に対する前記合成樹脂フィルム(f)の剥離強度より小さ」い点は,構成要件Dの「前記透明フィルムに対する前記表葉紙の剥離強度は,葉書に対する前記透明フィルムの剥離強度より小さ」いことに該当する。 構成eにある「前記合成紙(l)の表面には,剥離用の案内表示である『ここから開けてください。』の文字(15)を記入するとともに『大切なお知らせです』(q)及び『社会保険庁』(r)の通信文面が記載してあ」る点は,構成要件Eの「前記表葉紙の表面には,剥離用の案内表示を記入 から開けてください。』の文字(15)を記入するとともに『大切なお知らせです』(q)及び『社会保険庁』(r)の通信文面が記載してあ」る点は,構成要件Eの「前記表葉紙の表面には,剥離用の案内表示を記入するとともに任意の通信文面が記載可能であ」ることに該当する。 構成fにある「前記合成紙(l)と合成樹脂フィルム(f)は,縁を揃えて同形同大に形成し,葉書(n)より小さくして全周に余裕を生じさせるとともに年金の種類などの葉書の文面文字を隠蔽可能な大きさにし」てある点は,構成要件Fの「前記表葉紙,透明フィルムは,縁を揃えて同形同大に形成し,葉書より小さくして全周に余裕を生じさせるとともに葉書の文面文字を隠蔽可能な大きさにする」ことに該当する。 以上のことを特徴とする「葉書(n)の文面文字の隠蔽用複層化アタッチメント(m)」である点で,構成要件Gの前記AないしFの構成を備える 「ことを特徴とする葉書の文面隠蔽用複層化アタッチメント」という要件を満たす。 したがって,被告の使用する本件シールは,本件実用新案権を侵害するものである。 【被告の主張】本件シールが,本件考案の構成要件を充足することは,争う。 【被告補助参加人の主張】本件シールの構成は被告目録記載のとおりであって,補助参加人により,また,同じ補助参加人でも被告に納入した時期により構成を異にするが,そのいずれも本件考案の構成要件を充足しない。 すなわち,本件シールは,構成要件A,B,C,Dにいう「透明フィルム」の構成を有していない。また,本件シールの紙基材は構成要件Bにいう「葉書の文面文字が読取り不能な不透明な表葉紙」との構成を有しないし,しかも,粘着されているものでもない。さらに,本件シールに印刷されている文面は,構成要 。また,本件シールの紙基材は構成要件Bにいう「葉書の文面文字が読取り不能な不透明な表葉紙」との構成を有しないし,しかも,粘着されているものでもない。さらに,本件シールに印刷されている文面は,構成要件Eにいう「任意の通信文面」とは異なる。構成要件Fについては,本件シールの大きさは葉書よりも小さいが,「全周に余裕を生じさせる」という構成とは異なる。 したがって,本件シールは,本件実用新案権を侵害しない。 【被告補助参加人の主張に対する原告の反論】仮に,本件シールの構成が被告目録に記載されたとおりであるとしても,次のとおり,本件考案の構成要件を充足する。 (1) 構成要件Aについて別紙対応表は原告目録と被告目録との対応関係を表したものである。 これによると,原告目録の構成aに対応する被告目録の各層は,いずれも合成樹脂性のものであり,さらに「半透明」又は「透明」という異なる表現を用いているにしても,いずれも透明性のあるものである。この透明性という性質を通じて表葉紙の剥離により葉書の表面が損傷してしまうおそれが全くなく,その表面には葉書の文面文字が鮮明に表出されるという作用効果を奏する。そして,本件シールは,同時に,前記の各層を残して表葉紙のみを容易に剥離することができるとともに,葉書の文面文字が鮮明に表出される上,葉書の表面に透明フィルムが残るために,葉書の文面文字を改ざんすることが難しく,仕上がりも美麗であり,しかも,ラミネート加工用の特別な装置を要せずして簡単に葉書の複層化をすることができるという優れた効果をも有している。 以上によれば,原告目録の構成aに対応する被告目録の各層は,構成要件Aの「透明フィルム」に該当する。 (2) 構成要件Bについて とができるという優れた効果をも有している。 以上によれば,原告目録の構成aに対応する被告目録の各層は,構成要件Aの「透明フィルム」に該当する。 (2) 構成要件Bについて原告目録の構成bに対応する被告目録の各層には,いずれも「紙基材①」が含まれ,これにそれぞれ「黒インキ層②」又は「墨インキ層②」や「黒色(又は濃紺色,暗褐色)ポリエチレン樹脂層②」が付加されている。そして,「紙基材①」については,実施例にある紙であるのか合成紙であるのか判断できないが,これにそれぞれ黒(墨)インキ層や黒色(濃紺色,暗褐色)ポリエチレン樹脂層を付加することによって,葉書の文面文字を宛先に至るまで有効に隠蔽して秘密にしておくことができるという作用効果を奏する。なお,被告目録では上記の2層以外に「ポリエチレン樹脂層③」などが存在するが,これらは単なる付加的な構成であり,「表葉紙」としての作用効果を変更するものではない。 したがって,原告目録の構成bに対応する被告目録の各層は,構成要件Bの「不透明な表葉紙」に該当する。 (3) 構成要件Cについて原告目録の構成cに対応する被告目録の層は,「感圧性透明粘着層」又は「感圧性透明粘着剤層」であるが,このうち「感圧性」の部分は本件考案の「葉書の文面隠蔽用複層化タッチメント」を葉書に粘着させる手段である。そして,「透明」の部分は,該粘着層を通じて葉書の文面文字を鮮明に表出させるために必然的に要請される性質を示している。 したがって,原告目録の構成cに対応する被告目録の層は,構成要件Cの「前記透明フィルムの下面に塗布する葉書表面への接着用の透明粘着剤」に該当する。 (4) その余の構成要件について被告目録 目録の構成cに対応する被告目録の層は,構成要件Cの「前記透明フィルムの下面に塗布する葉書表面への接着用の透明粘着剤」に該当する。 (4) その余の構成要件について被告目録の記載によっても,本件シールは,少なくとも被告による使用形態においては構成要件DないしGを充足する。 3 争点3(本件考案の明らかな無効理由の存否)について【被告及び被告補助参加人の主張】(1) 一般に,特許に無効理由が存在することが明らかであるときは,その特許権に基づく差止め,損害賠償等の請求は,特段の事情がない限り,権利の濫用に当たり許されないと解するのが相当である(最高裁平成10年(オ)第364号同12年4月11日第3小法廷判決・民集54巻4号1368頁)。 そして,この理は,実用新案権に基づく損害賠償等の請求についても同様に当てはまるものである。 (2) 本件考案の構成は,「透明フィルムと,該透明フィルムの上面に剥離可能に貼着し,葉書の文面文字が読取り不能な不透明な表葉紙と,前記透明フィルムの下面に塗布する葉書表面への接着用の透明粘着剤とからなり,前記透明フィルムに対する前記表葉紙の剥離強度は,葉書に対する前記透明フィルムの剥離強度より小さく,前記『表葉紙の表面には,剥離用の案内表示を記入するとともに任意の通信文面が記載可能』(以下「構成α」という。)であり,前記『表葉紙,透明フィルムは,縁を揃えて同形同大に形成し,葉書より小さくして全周に余裕を生じさせるとともに葉書の文面文字を隠蔽可能な大きさにする』(以下「構成β」という。)ことを特徴とする葉書の文面隠蔽用複層化アタッチメント」というものであるが,上記構成α,β以外の構成については,原考案に係る実用新案登録出願前の公知文献に記載されている。 構成β」という。)ことを特徴とする葉書の文面隠蔽用複層化アタッチメント」というものであるが,上記構成α,β以外の構成については,原考案に係る実用新案登録出願前の公知文献に記載されている。 (3) そこで,構成α,βについて検討するに,まず,構成αについては,実願昭56-32505号のマイクロフィルムに収録されている考案(丙4。以下,この項において「考案1」という。)は,本件考案の表葉紙に相当する剥離可能紙(3)に剥離用の案内表示が記入されているとともに任意の通信文面が記載可能とされているというべきであり,本件考案の構成αを備えるものである。 そして,本件考案の「表葉紙」に相当する考案1の剥離可能紙(3)を葉書の全周に余裕を生じさせる程度の大きさにすることは当業者が適宜行い得る設計的事項であり,このことは,実願昭57-41070号に係るマイクロフィルム(丙10)に収録された明細書に「上記実施例では葉書1の裏面略全域を隠紙2で封状する状態を図示しているが,封状する文面の量等に応じて隠紙2の大きさを自由に決定し…該大きさの隠紙2で葉書1裏面の所望範囲を適宜封状できることは言うまでもない」(4頁15行目~20行目)という記載があることからも裏付けられる。 したがって,構成βのうちの「表葉紙は,葉書より小さくして全周に余裕を生じさせるとともに葉書の文面文字を隠蔽可能な大きさにする」こと(以下「構成β1」という。)は,考案1の設計的事項として当業者が容易に想到し得るものである。 さらに,特開昭56-127446号の公報(丙3)に記載されている考案は,葉書の文面隠蔽用としても採用可能な積層構造物であって,かつ「表葉紙」に相当する「面材料シート」と「透明フィルム」に相当する「重合物材料層」を縁をそろえて同形 の公報(丙3)に記載されている考案は,葉書の文面隠蔽用としても採用可能な積層構造物であって,かつ「表葉紙」に相当する「面材料シート」と「透明フィルム」に相当する「重合物材料層」を縁をそろえて同形同大に形成する構成を備えるものであるから,当該構成を,同じく葉書の文面隠蔽用として用いられる考案1に適用し,構成βのうちの「表葉紙,透明フィルムは,縁を揃えて同形同大に形成」するという構成(以下「構成β2」という。)に至ることに,何ら困難性はないというべきである。 そして,本件明細書に記載されている本件考案の作用効果も,本件考案の効果であるとは認められないか,前記2つの公知技術を組み合わせることにより極めて容易に予測できる程度の効果にすぎない。 (4) 以上によれば,本件考案は,その出願前に頒布されていた公報等に記載された公知技術に基づき当業者が極めて容易に考案することができたものであり,本件考案には進歩性欠如(改正前実用新案法37条1項1号,3条2項)という明らかな無効理由がある。 したがって,本件実用新案権に基づく原告の本訴請求は,権利の濫用に当たり許されない。 【原告の主張】(1) 被告及び被告補助参加人は,本件考案の構成α及び構成βはそれぞれ出願前の公知文献に記載されていたこと,これらを組み合わせることは当業者において極めて容易に想到可能であったことを根拠に,本件考案は進歩性を欠く旨主張する。 しかし,本件考案の要旨を認定するに際しては,実用新案登録請求の範囲に記載されている構成αと構成βとを組み合わせる点について,その技術的意義を正確に理解することが不可欠であるのに,被告及び被告補助参加人はこの点について十分に検討せず,本件明細書の「考案の詳細の説明」の記載を断片的に参酌し 構成βとを組み合わせる点について,その技術的意義を正確に理解することが不可欠であるのに,被告及び被告補助参加人はこの点について十分に検討せず,本件明細書の「考案の詳細の説明」の記載を断片的に参酌して,本件考案の構成要件にいう「余裕」を「接着時の困難性」を解決するためのわずかなものであると誤って解釈し,それを前提として構成β1は,考案1の設計的事項として当業者が極めて容易に想到できる旨の誤った結論を導いており,構成β1自体の意義についての理解を欠いている。 これを詳述するに,本件考案においては,構成αと構成βとを組み合わせることの技術的意義を実用新案登録請求の範囲の記載から一義的に明確に理解することは困難であるので,本件明細書の「考案の詳細な説明」の記載を参酌してこれを理解するべきである。そこで,本件明細書の「考案の詳細な説明」の記載をみるに,構成αと構成βとを組み合わせることの技術的意義について,「この考案は,表葉紙を葉書より小さくし,表葉紙の表面に剥離用の案内表示を記入するので,…葉書に対する貼着位置が変動しても,表葉紙と案内表示との相対位置関係が一定に保たれ,アタッチメントとしての汎用性を一層大きくすることができる。」(本件公報6欄44行目~50行目)と記載されている。すなわち,本件考案において,構成αと構成βとを組み合わせることの技術的意義は,「葉書に対する貼着位置が変動しても,表葉紙と案内表示との相対位置関係が一定に保たれ」る点にあり,かかる技術的意義を有する本件考案において,構成βのうちのβ1にいう「余裕」は,仮に案内表示が表葉紙側でなく葉書側にあると,表葉紙と案内表示との相対位置関係が大きく乱れてしまい,「表葉紙と案内表示との相対位置関係が一定に保たれ」得なくなるような大きな「余裕」を想定していることが明らかで 示が表葉紙側でなく葉書側にあると,表葉紙と案内表示との相対位置関係が大きく乱れてしまい,「表葉紙と案内表示との相対位置関係が一定に保たれ」得なくなるような大きな「余裕」を想定していることが明らかである。つまり,本件考案の構成β1にいう「余裕」は,「接着時の困難性」を解決するためのわずかなものではあり得ない。 (2) 被告及び被告補助参加人は,本件考案の作用効果は本件考案の効果であるとは認められないか,公知文献に記載された考案から予測できる程度のものであって,格別の作用効果ということはできない旨主張する。 しかし,本件明細書に記載されている「考案の効果」は,本件考案の内容を明確に第三者に理解させるために,本件考案の特有の効果であるとして本件考案の考案者が認識しているところが記載されているのであるから,これを本件考案の効果でないとして安易に否定することは許されない。 本件明細書に記載されている考案の効果のうち「葉書に対する貼着位置が変動しても,表葉紙と案内表示との相対位置関係が一定に保たれ」るという効果は,本件考案の構成β1の「余裕」がわずかなものではなく,葉書に対して表葉紙の貼着位置が大きく変動することを当然の前提としているのに対し,考案1では,「剥離可能紙3は本体紙2と同一面積」であり,本体紙2に対して剥離可能紙3の貼着位置が変動する余地が全くない。したがって,上記記載の本件考案の効果は,考案1に無縁の効果であり,これから当業者が予測し得るものであるとは到底いえない。 また,「アタッチメントとしての汎用性を一層大きくする」という効果も,同様に,葉書に対するアタッチメントの貼着位置が大きく変動することを想定した場合に限った効果であって,葉書に対するアタッチメントの貼着位置が変動する余地がない 汎用性を一層大きくする」という効果も,同様に,葉書に対するアタッチメントの貼着位置が大きく変動することを想定した場合に限った効果であって,葉書に対するアタッチメントの貼着位置が変動する余地がない場合に無縁の効果である。一方,考案1の剥離可能紙3は,本体紙2と同一面積であって,葉書に対する貼着位置が変動する余地がないことが明らかであるから,上記記載の効果が考案1の効果と異ならないということはあり得ない。 4 争点4(改正前実用新案法13条の3第1項後段の該当性)について【原告の主張】(1) 社会保険庁は,昭和63年2月5日ころ,訴外J(以下「J」という。)から,「プライバシー保護を目的とした,ラベルによる葉書の複層化に関連した製造特許及び実用新案出願に伴う事項」(甲5の1)と題する書面などを受領して,Jから原考案の内容について説明を受け,原考案を含むプライバシー保護を目的としたラベルによる葉書の複層化に関連した製造特許及び実用新案の出願状況について十分な認識を得ていた。 (2) そして,社会保険庁は,前同日付けでJから提出された「郵便はがき用しんてんシール貼付機械設置案」(甲5の2)と題する書面などを検討し,本件考案の実施品である「目隠しシール」を導入することとし,平成元年10月支払分からの遺族・障害年金の支払通知書,未支給決定通知書について本件考案を無断で実施し,その後も現在に至るまで公的年金保険受給者に対して様々な通知書について継続して実施している。 その間,Gは社会保険庁長官に対する平成11年4月16日到達の内容証明郵便で,本件実用新案権侵害の事実を指摘して補償金及び損害賠償の支払を請求したが,社会保険庁からは何らの応答もなかった。 (3) 前項で述べた目隠しシールの貼着された各種 16日到達の内容証明郵便で,本件実用新案権侵害の事実を指摘して補償金及び損害賠償の支払を請求したが,社会保険庁からは何らの応答もなかった。 (3) 前項で述べた目隠しシールの貼着された各種の通知書は,いずれも原告目録のとおりの構成であり,本件考案の構成要件を充足するから,被告は,改正前実用新案法13条の3第1項後段の「出願公開がされた実用新案登録出願に係る考案であることを知つて出願公告前に業としてその考案を実施した者」に当たる。 【被告及び被告補助参加人の主張】改正前実用新案法13条の3第1項後段の「考案であることを知つて」いること,すなわち,悪意者であるというためには,考案の実施者が当該考案について出願公開されたこと,当該考案の同一性を認識できる程度に考案を知っていることが必要であるところ,被告はこのいずれの事実についても知り得る立場になかった。 すなわち,被告はJから同社が取得している特許に基づき製造している製品について説明を受けたにすぎない。被告は,「プライバシー保護を目的とした,ラベルによる葉書の複層化に関連した製造特許及び実用新案出願に伴う事項」と題する文書の提示を受けたことを確認できないが,仮に,被告がJからこの文書及び「郵便はがき用しんてんシール貼付機械設置案」と題する文書を受け取っていたとしても,これにより,本件考案につき平成7年1月6日に出願公開がされたこと,被告が印刷業者から一般競争入札の方法により調達したシールが本件考案と同一の考案であるとの認識を持ち得るはずもないことは,上記各書面の記載内容からも明らかである。 しかも,Jが上記各書面を交付し,説明をしたという昭和63年2月の時点では,本件考案につき実用新案登録出願はされておらず,同社が説明をしたという原考案に係る 記載内容からも明らかである。 しかも,Jが上記各書面を交付し,説明をしたという昭和63年2月の時点では,本件考案につき実用新案登録出願はされておらず,同社が説明をしたという原考案に係る出願については異議により取り消され,その判断は審決取消訴訟を経て確定している。 したがって,被告は,改正前実用新案法13条の3第1項後段の「出願公開がされた実用新案登録出願に係る考案であることを知つて出願公告前に業としてその考案を実施した者」に当たらず,原告の被告に対する補償金請求権は発生しない。 5 争点5(補償金及び損害賠償の額)について【原告の主張】被告(社会保険庁)は,各種年金の支払通知書の送付という事務に本件シールを採用することにより,その採用前に同じ事務を封書で行っていた当時と比べ,通知書1通につき21円のコストを削減することができた。 この額は,Gの有していた本件考案を侵害することによって被告が得た利益の額であるとともに,改正前実用新案法13条の3第1項前段の「その実施に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額」にも該当すると解すべきである。なぜなら,被告は本件考案の出願公開期間中,これを実施することによって前記のとおり通知書1通当たり21円の不法な利益を得ていたものであり,被告は公的機関として営業活動などの経費を全く必要としないことからして,この利益を留保させるに足りる理由が存在しないからである。 これを前提にすると,原告が被告に対して請求できる補償金及び損害賠償(請求の根拠は,主位的には国家賠償法1条1項,予備的には民法709条である。)の総額は,別紙計算書のとおりとなるが,本訴においては,一部請求として,補償金に相当する部分の約1.5パーセントに当たる1億3779万円(被告 には国家賠償法1条1項,予備的には民法709条である。)の総額は,別紙計算書のとおりとなるが,本訴においては,一部請求として,補償金に相当する部分の約1.5パーセントに当たる1億3779万円(被告補助参加人5名がそれぞれ2755万8000円に相当する商品を被告に納入した計算になる。)及び損害賠償については,被告補助参加人Bが平成8年4月から同12年にかけて被告に納入した「シークレットラベル捺印タイプ」という商品を用いて,被告が平成8年12月2日から同月31日までに国民年金・厚生年金用葉書を送付した行為に相当する損害の額である1億3000万円並びにこれらを合計した2億6779万円に対する平成11年4月17日(Gが社会保険庁長官に対して補償金及び損害賠償の支払を求める旨の内容証明郵便が到達した日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 【被告の主張】被告は,会計法をはじめとする関係法令に従い,一般競争に参加した者から決定された落札者との間でシール納品についての契約を締結し,落札した業者からこれを購入したにすぎず,原告に対し損害賠償等の義務を負う立場にはない。 通知書1通当たり21円という原告主張の利益額の算定根拠については,否認し,争う。 この額は,改正前実用新案法13条の3第1項前段の実施料相当額とならないことはもちろん,損害額の根拠となるものでもない。被告は,行政サービスとして支払通知書等の年金額等の記載部分にシールを貼ることにしたのであって,これにより利益を受けているわけではない。 第4 当裁判所の判断 1 争点3(本件考案の明らかな無効理由の存否)について(1) 本件考案についての無効審判及び審決取消訴訟について証拠(甲15,25の1,2,丙 ない。 第4 当裁判所の判断 1 争点3(本件考案の明らかな無効理由の存否)について(1) 本件考案についての無効審判及び審決取消訴訟について証拠(甲15,25の1,2,丙1~10)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア本件実用新案権の実用新案登録に対しては,Kから無効審判の請求(平成10年審判第35625号)がされたが,特許庁は,平成12年1月5日,「本件審判の請求は,成り立たない。」旨の審決をした。 この審決に対して,Kは本訴の原告を被告として東京高等裁判所に審決取消訴訟(平成12年(行ケ)第89号)を提起したところ,同裁判所は,平成13年8月27日,「特許庁が平成10年審判第35625号事件について平成12年1月5日にした審決を取り消す。」との判決をした(以下,この判決を「本件取消判決」という。)。 イ本件取消判決の判決書(丙1)には,次の趣旨の記載がある。 (ア)構成αについて「引用例1(丙4号証)記載の考案は,本件考案の表葉紙に相当する剥離可能紙(3)に剥離用の案内表示が記入されているとともに任意の通信文面が記載可能とされているというべきであり,本件考案の構成αを備えるものである。」(11頁21行目~24行目)(イ)構成β1について「本件考案の構成β1は,引用例1記載の考案の設計的事項として当業者がきわめて容易に想到し得るものというべきである。」(14頁15行目~16行目)(ウ)構成β2について「引用例2(丙3号証)記載の考案は,葉書の文面隠蔽用としても採用の可能な積層構成物であって,かつ,『表葉紙』に相当する『面材料シート』と『透明フィルム』に相当する『重 β2について「引用例2(丙3号証)記載の考案は,葉書の文面隠蔽用としても採用の可能な積層構成物であって,かつ,『表葉紙』に相当する『面材料シート』と『透明フィルム』に相当する『重合物材料層』を縁をそろえて同形同大に形成する構成を備えるものであるから,当該構成を,同じく葉書の文面隠蔽用として用いられている引用例1記載の考案に適用し,本件考案の『表葉紙,透明フィルムは,縁を揃えて同形同大に形成』との構成β2に至ることには,何ら困難性はないというべきである。」(15頁24行目~16頁4行目)(エ)本件考案の進歩性について「以上のとおり,構成αを備える引用例1記載の考案に,構成βを組み合わせることは,当業者がきわめて容易に想到し得ることというべきである。」(16頁5行目~6行目)(オ)本件考案の作用効果について「結局,審決の掲げる本件考案の作用効果は,本件考案の効果であるとは認められないか,引用例1,2記載の考案から予測し得る程度のものであって,格別の作用効果ということはできない。また,被告の主張する作用効果も上記の各作用効果を詳述したものにすぎないから,本件考案の進歩性を基礎付けるものとはいえない。」(17頁10行目~14行目)(カ)結論「本件考案が引用例1,2を含む甲第7~第14号証(丙2~9号証)記載の各考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではないとする審決の判断は誤りというべきである。」(17頁15行目~17行目)ウ上記の内容の本件取消判決に対して,原告は,最高裁判所に上告の申立て(平成13年(行サ)第176号)及び上告受理の申立て(同年(行ノ)第172号)をした。 (2) 本件 目)ウ上記の内容の本件取消判決に対して,原告は,最高裁判所に上告の申立て(平成13年(行サ)第176号)及び上告受理の申立て(同年(行ノ)第172号)をした。 (2) 本件考案の進歩性について当裁判所もまた,本件取消判決と同様の理由から,本件考案はその登録出願前に頒布された刊行物に記載された考案に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであり,明らかな無効理由があるものと解する。その理由は次のとおりである。 ア公知技術の存在について証拠(甲2の1,丙3,4,10)によれば,次の事実が認められる。 (ア)実願昭56-32505号のマイクロフィルム(丙4)には,「略同一面積を有する複数枚の紙を剥離可能な接着層を介して積層して成り,上記接着面を通信用に使用することを特徴とする郵便はがき。」に係る考案(以下,「公知技術1」という。)が収録されている。この考案は,本体紙(本件考案の「葉書」に相当する。以下,括弧内の記載は,同様に,本件考案において対応する部材等を指す。)に,合成樹脂膜(透明フィルム)が塗布され,その上に接着剤を介して剥離可能紙(表葉紙)が貼られているというものである。そして,上記剥離可能紙には剥離用の案内表示がある。 (イ)特開昭56-127446号の公報(丙3)には,「剥離可能な自己非粘着化積層構成物」に係る考案(以下,「公知技術2」という。)が記載されている。この考案は,荷札,ステッカー,レッテル等を対象とし,保護剥離地(剥離紙)の上に,接着剤(粘着剤)を介して重合物フィルム(透明フィルム)が接着され,その上に面材料シート(表葉紙)が剥離可能に貼り付けられているというものである。 (ウ)実願昭和57-4107 )の上に,接着剤(粘着剤)を介して重合物フィルム(透明フィルム)が接着され,その上に面材料シート(表葉紙)が剥離可能に貼り付けられているというものである。 (ウ)実願昭和57-41070号のマイクロフィルム(丙10)には,郵便葉書に係る考案(以下,「公知技術3」という。)が収録されている。この考案に係る実施例は,一端を除き葉書と同じ長さの辺を有するが,明細書中には文面の量に応じて隠紙(表葉紙)の大きさを自由に決定でき,それにより所望する範囲を隠すことができる旨の記載がある。 (エ)本件考案の構成要件と,上記の公知技術1~3とを対比すると,公知技術1には,本件考案の構成要件のうちのA,B,D及びEの構成が,公知技術2には,本件考案の構成要件のうちのA,B,C,D及びG(ただし,葉書のためのものではない。)の構成が,公知技術3には,本件考案の構成要件のうちB及びFの構成が,それぞれ開示されている。 イ無効理由の存否について上記ア認定の事実をもとに,無効理由の存否について判断する。 (ア)公知技術1について公知技術1は,明細書及び図面の記載からみて,葉書に合成樹脂膜を塗布して,その上に剥離可能紙を接着又は粘着したものと考えられる。これは,葉書を複層化したものであるが,葉書の表面に合成樹脂膜を塗布している点で本件考案の従来技術に相当する技術である。 他方,本件考案は,従来技術のもとでは,ラミネート加工のできる装置が不可欠であって,複層化葉書を差し出したいときには,その装置を備える印刷業者等に発注することが必要であり,実際上私信には使用できないという問題点を解決し,葉書の複層化を特別な装置を要することなく簡単に行えるようにした点において技術的 たいときには,その装置を備える印刷業者等に発注することが必要であり,実際上私信には使用できないという問題点を解決し,葉書の複層化を特別な装置を要することなく簡単に行えるようにした点において技術的意義を有するが(本件公報3欄9行目~25行目),公知技術1も私製葉書の複層化に関するものであり,その工程は単純なものであることが要請されるはずであるから,本件考案の解決すべき課題と同様の課題を内在するものであることが明らかである。 (イ)公知技術2について公知技術2は,葉書を対象とするものではないが,本件考案と同一の課題を解決した技術である。すなわち,公知技術2は,明細書及び図面の記載からみて,保護剥離地の上に,接着剤を介して重合物フィルムが接着され,その上に面材料シートが剥離可能に貼り付けられたものであると認められるから,本件考案と同じ複層化アタッチメントについての考案である。 (ウ)本件考案の進歩性について以上によれば,公知技術2のアタッチメントを公知技術1の考案に適用して,葉書に直接合成樹脂膜を塗布することなく,その部分を葉書と切り離して,葉書の文面隠蔽用複層化アタッチメントとすることは,上記各考案が解決しようとする課題に照らして,極めて容易であると認められる。 また,公知技術2に係る公報(丙3)には「面材料を構成物の残りの部分から取除きたいとき,例えば予め印刷したカードを大型の基体から取除きたいときは,重合物が面材料からはがれて接着剤被覆上に永久的に留まる」(公報3頁目左上欄13行目~17行目)と記載されていることから,アタッチメントより大きい基体を使用する場合についても記載があるということができる。 さらに,公知技術3に係るマイクロフィルム( 目左上欄13行目~17行目)と記載されていることから,アタッチメントより大きい基体を使用する場合についても記載があるということができる。 さらに,公知技術3に係るマイクロフィルム(丙10)に収録された明細書には「上記実施例では葉書1の裏面略全域を隠紙2で封状する状態を図示しているが,封状する文面の量等に応じて隠紙2の大きさを自由に決定し…該大きさの隠紙2で葉書1裏面の所望範囲を適宜封状できることは言うまでもない」(4頁15行目~20行目)と記載されているから,このことは当業者における技術常識であったと認められ,アタッチメントの大きさを葉書の長辺,短辺より共に短くすることは,極めて容易に想到し得るものである。 このアタッチメントの大きさを葉書の長辺,短辺より共に短くするという点に関し,本件考案の構成Fには,「葉書より小さくして全周に余裕を生じさせる」ことが規定されている。本件考案はアタッチメント自体に係るものであるから,この規定の趣旨は,本件考案にいうアタッチメントは,「葉書より小さくして全周に余裕を生じさせる」程度に葉書より小さいことを要するという点にあると解される。そして,本件明細書及び図面の記載によれば,本件考案のアタッチメントは,葉書の文面文字を全面的に隠蔽可能なように貼着されるものであり,私信を含むあらゆる用途に好適なものである以上,その場合の葉書の文面文字は,上下左右にある程度の余裕を残しつつ,その全面にわたって記載されることも当然想定されるから,上記構成Fの規定は,アタッチメントの長辺及び短辺が,葉書の長辺及び短辺より短いものの,その差は,葉書の文面文字の上下左右の余白として通常想定される範囲に収まる程度のものを含む趣旨であると解される。 (エ)まとめ上記の認 書の長辺及び短辺より短いものの,その差は,葉書の文面文字の上下左右の余白として通常想定される範囲に収まる程度のものを含む趣旨であると解される。 (エ)まとめ上記の認定判断によれば,公知技術1の葉書に係る考案に公知技術2のアタッチメントを適用して,本件考案の葉書の文面隠蔽用複層化アタッチメントを考案することは当業者にとって極めて容易であると認められる。したがって,本件考案には,改正前実用新案法3条2項の規定に違反して実用新案登録がされたという同法37条1項1号所定の明らかな無効理由がある。 ウ原告の主張について(ア)構成要件Fの「余裕」の意味する内容について原告は,本件考案の構成要件Fにいう「余裕」は表葉紙と案内表示との相対位置関係が大きく乱れて,これが一定に保たれなくなるような大きな余裕を想定していることが明らかであるところ,この余裕がわずかなものであることを前提にして,公知技術1と公知技術2を組み合わせることを極めて容易と判断することはできない旨主張する。 しかし,本件明細書の実用新案登録請求の範囲には「余裕」と記載されているだけで,大きい余裕を有するとの趣旨の規定はなく,本件考案の実施例として余裕のわずかなものも示されているのであるから(本件公報の図3,8参照),本件考案にはこのような実施例も当然に含まれるし,このような解釈が妥当であることは前記イ(ウ)記載のとおりである。そうすると,本件考案には,原告主張の余裕の十分あるものも含まれるかもしれないが,余裕のわずかなものも当然に含まれているので,このようなものについて考案することが極めて容易であったのであれば,本件考案について考案することが極めて容易であったということができる。原告の れないが,余裕のわずかなものも当然に含まれているので,このようなものについて考案することが極めて容易であったのであれば,本件考案について考案することが極めて容易であったということができる。原告の上記主張は理由がない。 (イ)本件考案の作用効果について原告は,本件明細書に「葉書に対する貼着位置が変動しても,表葉紙と案内表示との相対位置関係が一定に保たれる」という効果が明確に記載されているのに,これが本件考案の効果でないとして本件考案の要旨を認定することはできないと主張する。 しかし,上記の効果は,葉書とアタッチメントの間の余裕がわずかであれば奏されないのであるから,これ自体を本件考案の効果とは認めることはできない。 原告は,さらに,「アタッチメントとしての汎用性を一層大きくする」という効果は葉書に対するアタッチメントの貼着位置が大きく変動する場合を想定した効果であるから,公知技術1の効果からは導くことはできない旨主張する。 しかし,この効果が葉書に対するアタッチメントの貼着位置が変動する場合に限った効果であるとすれば,上記のとおり,本件考案には余裕がわずかなものも含まれるから,そもそも本件考案の有する効果であるとはいえないし,このような抽象的な効果は,本件明細書の「私信を含むあらゆる用途に好適に適用でき,…ラミネート加工に劣らぬ美粧性を有する」(本件公報3欄21行目~23行目)に対応するものであり,独立した作用効果と認めるに足りないものである。 よって,作用効果の点に関する原告の主張も理由がない。 2 結論以上によれば,本件実用新案権に基づく原告の補償金請求及び損害賠償請求は,権利の濫用に当たり許されないという よって,作用効果の点に関する原告の主張も理由がない。 2 結論以上によれば,本件実用新案権に基づく原告の補償金請求及び損害賠償請求は,権利の濫用に当たり許されないというべきである(最高裁平成10年(オ)第364号同12年4月11日第3小法廷判決・民集54巻4号1368頁参照)。したがって,本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官三村量一 裁判官和久田道雄 裁判官田中孝一別紙1原告目録図面被告目録イ号-1物件目録図面イ号-2物件目録図面ロ号-1物件目録図面ロ号-2物件目録図面ハ号-1物件目録図面ハ号-2物件目録図面ニ号物件目録図面ホ号-1物件目録図面ホ号-2物件目録図面ホ号-3物件目録図面対応表計算書

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