令和2年7月9日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成30年(ワ)第21448号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日令和2年3月12日判決 原告株式会社コプロス 同訴訟代理人弁護士神邊健司 同玉岡範久 同補佐人弁理士加藤久 被告株式会社スミテックエンジニアリング(以下「被告スミテック」という。) 被告大善建設株式会社(以下「被告大善」という。) 被告ら訴訟代理人弁護士利光洋 被告ら訴訟代理人弁理士松尾憲一郎 同市川泰央 被告ら補佐人弁理士今中崇之 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告らは,別紙物件目録記載の立坑構築機を譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 2 被告大善は,別紙物件目録記載の立坑構築機を使用してはならない。 3 被告スミテックは,別紙物件目録記載の立坑構築機を廃棄せよ。 4 被告大善は,別紙物件目録記載の立坑構築機を廃棄せよ。 5 被告らは,連帯して,原告に対し,1億2375万0051円及びこれに対する平成30年7月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (上記5に係る予備的請求)被告らは,連帯して,原告に対し,49 帯して,原告に対し,1億2375万0051円及びこれに対する平成30年7月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (上記5に係る予備的請求)被告らは,連帯して,原告に対し,4931万2800円及びこれに対する 平成30年7月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 被告大善は,原告に対し,2332万円及びこれに対する平成30年7月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要原告は,立坑構築機に係る特許発明の特許権者であるところ,別紙物件目録 記載の立坑構築機(後記の「被告製品」。以下も同様)は,上記特許発明の技術的範囲に属すると主張している。 そして,本件は,原告が,被告らに対し,被告らが被告製品を譲渡等することにより,また,被告大善が被告製品を使用することにより,上記特許権を侵害するおそれがあると主張して,上記特許権に基づき,被告らに対し被告製品 の譲渡,貸渡し等の,被告大善に対し被告製品の使用の差止めをそれぞれ求め,また,侵害の予防に必要な行為であるとして,被告らそれぞれに対し,被告製品の廃棄を求めるとともに,被告らによる被告製品の譲渡行為により原告に損害が発生したと主張して,共同不法行為による損害賠償請求として,被告らに対し連帯して主位的に1億2375万0051円(予備的に4931万280 0円)及びこれに対する平成30年7月26日(訴状送達の日の翌日)から支 払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,また,被告大善による被告製品の使用行為により原告に損害が発生したと主張して,不法行為による損害賠償請求として,同被告に対し2332万円及びこれに対する平成30年7月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済 告大善による被告製品の使用行為により原告に損害が発生したと主張して,不法行為による損害賠償請求として,同被告に対し2332万円及びこれに対する平成30年7月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 前提事実(証拠等を掲げた事実以外は,当事者間に争いがない。なお,枝番号の記載を省略したものは,枝番号を含む(以下同様)。)(1) 本件特許権原告は,発明の名称を「立坑構築機」とする特許権(特許第3694724号。請求項の数は4である。以下,このうち請求項1に係る特許発明を「本 件発明」という。)の特許権者である。原告は,本件発明につき,平成13年6月8日に特許出願(以下,その願書に添付した明細書(図面を含む。)を「本件明細書」といい,その該当部分の記載を段落【0001】などと表すこととする。)をして特許を受け(以下,この特許を「本件特許」という。),平成17年7月8日に特許権の設定の登録をした。 (2) 本件発明本件発明に係る特許請求の範囲(以下「本件特許請求の範囲」という。)の記載は,次のとおりであり,別紙特許公報の該当部分に記載されたとおりである。 「ベースフレームに昇降且つ回動可能に支持され,円筒状部材の外周部に着 脱される把持機構と,この把持機構を駆動する回転駆動装置とを備えた立坑構築機において,前記ベースフレームは組立可能に複数に分割された分割フレームを備え,前記把持機構は,それぞれの両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリングを構成する複数に分割された円弧状ベアリング片を備えていることを特徴とする立坑構築機。」 (3) 構成要件の分説 本件発明を構成要件に分説すると, 環状の歯車付ベアリングを構成する複数に分割された円弧状ベアリング片を備えていることを特徴とする立坑構築機。」 (3) 構成要件の分説 本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件A」などのようにいう。)。 A ベースフレームに昇降且つ回動可能に支持され,B 円筒状部材の外周部に着脱される把持機構と,C この把持機構を駆動する回転駆動装置とを備えた立坑構築機において, D 前記ベースフレームは組立可能に複数に分割された分割フレームを備え,E 前記把持機構は,それぞれの両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリングを構成する複数に分割された円弧状ベアリング片を備えているF ことを特徴とする立坑構築機。 (4) 被告製品 ア被告スミテックは,平成28年6月頃から,「LMV-4000DZR」(以下「被告製品Ⅰ」という。)1台,「LMV-5000DZR」(以下,「被告製品Ⅱ」といい,被告製品Ⅰと併せて「被告製品」という。なお,被告製品Ⅰと被告製品Ⅱの,本件発明と対比する上での構成は共通である。)1台をそれぞれ製造し,被告大善に対し,平成28年8月20日頃に被告 製品Ⅰ1台を,平成29年12月20日頃に被告製品Ⅱ1台をそれぞれ販売した。被告大善は,これらの被告製品Ⅰ1台,及び被告製品Ⅱ1台を使用している。 イ被告製品の構成を分説すると,次のとおりであるところ(以下,分説した構成をそれぞれの符号に従い「構成a」などという。),被告製品の構成 aないしd,fは,本件発明の構成要件AないしD,Fの各文言をそれぞれ充足する(構成e-1ないしe-4に係る構成要件Eへの充足性についてのみ争いがある。)。 a ベースフレーム40 の構成 aないしd,fは,本件発明の構成要件AないしD,Fの各文言をそれぞれ充足する(構成e-1ないしe-4に係る構成要件Eへの充足性についてのみ争いがある。)。 a ベースフレーム40(別紙1参照)に昇降且つ回動可能に支持され, b 円筒状部材の外周部に着脱される把持機構33(別紙1参照)と, c この把持機構33を駆動する回転駆動装置①(別紙2参照)とを備えた立坑構築機であって,d ベースフレーム40は組立可能に複数に分割された分割フレーム(別紙1,別紙3参照)を備えており,e-1 バンド部材50は,回転リングの上方に備え付けられており, 締め付けシリンダー13により,締め付けられることで円筒状ケーシングを掴む第1バンド部材50-1(可動バンド),第2バンド部材50-2(可動バンド),及び回転リング51と接続された第3バンド部材50-3(固定バンド),第4バンド部材50-4(固定バンド)の4つのバンド部材から構成され(別紙4,5参照), e-2 第3バンド部材50-3は回転リング部材51-3と接続され,第4バンド部材50-4は回転リング部材51-4と接続される。 また,第1バンド部材50-1と第3バンド部材50-3がそれぞれの端面で接続され,第2バンド部材50-2と第4バンド部材50-4がそれぞれの端面で接続される。そして,第1バンド部材50-1と第2 バンド部材50-2が締め付けシリンダー13を介して接続されることで,一つの環状のバンド部材を構成しており(別紙4参照),e-3 円弧状部材36,37は,回転リング部材51-3と回転リング部材51-4の下方に環状に設置されており(ただし,円弧状部材36,37の両端面間に隙間(クリアランス)が設けられているかについ ては 弧状部材36,37は,回転リング部材51-3と回転リング部材51-4の下方に環状に設置されており(ただし,円弧状部材36,37の両端面間に隙間(クリアランス)が設けられているかについ ては争いがある。),外歯部26が備えつけられた分割外輪部24,分割内輪部23及びボール25から構成される。また,2つある分割外輪部24は,それぞれ,回転リング部材51-3及び51-4に接続されており,2つある分割内輪部23はそれぞれ分割された分割フレーム14に接続されており(別紙5参照), e-4 分割外輪部24と分割内輪部23は接続されておらず,分割外 輪部24が分割外輪部24から外歯部26に向けた方向等に外れないよう,分割外輪部24に備え付けられた外歯部26と噛合するピニオンギヤ部で,分割外輪部24を支持しており,また,分割内輪部23と分割外輪部24の間には,ボール25が敷き詰められており,このボールが分割外輪部24に係る垂直方向の荷重を支持している(別紙5参照) f ことを特徴とする立坑構築機(5) 先行文献本件特許の特許出願日である平成13年6月8日より前に,次の文献等が存在した。 ア特開平9-203038号公報(乙2。以下,「乙2公報」といい,これ に記載された発明を「乙2発明」という。)イ特開昭59-55988号公報(乙3。以下,「乙3公報」といい,これに記載された発明を「乙3発明」という。)ウ特開平2-190599号公報(乙4。以下,「乙4公報」といい,これに記載された発明を「乙4発明」という。) エ乙5公報(ア) 実用新案登録第2521914号公報(乙5の1)(イ) 実開平2-87118号公報(乙5の2)(ウ) 実開平1-98917号公報(乙5の3)(エ) う。) エ乙5公報(ア) 実用新案登録第2521914号公報(乙5の1)(イ) 実開平2-87118号公報(乙5の2)(ウ) 実開平1-98917号公報(乙5の3)(エ) 実開平1-65925号公報(乙5の4。以下,乙5の1ないし3と 併せて「乙5公報」という。)オ特開平2-304216号公報(乙20。以下,「乙20公報」といい,これに記載された発明を「乙20発明」という。) 2 争点(1) 被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(争点1) ア構成要件Eの「把持機構は,(中略)円弧状ベアリング片を備えている」 との文言の充足性(上記「把持機構」は,歯車付の円弧状ベアリング片ないし環状の歯車付ベアリングと一体化したバンド部材と解すべきではなく,そのような一体化したバンド部材を備えないとしても,被告製品は上記文言を充足するといえるか否か)(争点1-1)イ構成要件Eの「両端部を各々接続して」との文言の充足性(被告製品は, そもそも円弧状ベアリング片間に隙間(クリアランス)が設けられている構成ではなく,仮にそうでないとしても,構成要件Eの「把持機構は,それぞれの両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリングを構成する」とは,被告製品のような,円弧状ベアリング片間に隙間(クリアランス)が設けられている構成を排斥しておらず,被告製品は上記文言を充足するといえ るか否か)(争点1-2)(2) 本件特許の無効の抗弁の成否(本件特許には,次のとおりの無効理由があり,特許無効審判により無効にされるべきものであるから,特許法104条の3第1項の規定により,原告は,被告らに対し,本件特許権を行使することができないとの被告らの主張の成否・争点2) ア乙2発明に乙3発明を適用す にされるべきものであるから,特許法104条の3第1項の規定により,原告は,被告らに対し,本件特許権を行使することができないとの被告らの主張の成否・争点2) ア乙2発明に乙3発明を適用することに基づく進歩性欠如の有無(争点2-1)イ乙2発明に乙4発明を適用することに基づく進歩性欠如の有無(争点2-2)ウ乙2発明に周知技術を適用することに基づく進歩性欠如の有無(争点2 -3)エ乙2発明に乙20発明を適用することに基づく進歩性欠如の有無(争点2-4)(3) 差止め及び廃棄の必要性の有無(被告らが被告製品の譲渡等をするおそれがあるか,また,被告スミテックは被告製品を保有しているか・争点3) (4) 共同不法行為責任の有無(被告スミテックによる被告製品の譲渡行為に つき被告大善が共同不法行為責任を負うか・争点4)(5) 因果関係の有無(被告スミテックによる被告製品の譲渡行為により原告は本件特許権の実施品を販売する機会を喪失したか・争点5)(6) 原告の損害額(争点6) 3 争点に関する当事者の主張 (1) 争点1-1(構成要件Eの「把持機構は,(中略)円弧状ベアリング片を備えている」との文言の充足性。上記「把持機構」は,歯車付の円弧状ベアリング片ないし環状の歯車付ベアリングと一体化したバンド部材と解すべきではなく,そのような一体化したバンド部材を備えないとしても,被告製品は上記文言を充足するといえるか否か) 【原告の主張】構成要件Eの「把持機構」は,「円弧状ベアリング片を備えている」との文言であるところ,「備えている」という文言は,物を不足なくそろえておく,設備として持つという意味であり,被告らが主張するように,把持機構が円弧状ベアリングと一体となった,という を備えている」との文言であるところ,「備えている」という文言は,物を不足なくそろえておく,設備として持つという意味であり,被告らが主張するように,把持機構が円弧状ベアリングと一体となった,というような意味はなく,上記「把持機構」 は,構成要件Bにあるように,円筒状部材の外周部に着脱される機能を持つものであればよい。また,本件明細書の記載(段落【0020】【0021】【0022】【0025】)に照らしても,本件発明における円弧状ベアリングとバンド部材とは,動きが連動する機械的な接続はあるものの一体としてなるものでないことは明らかである。そして,被告製品の円弧状部材の外輪 には回転リングが固定されており,更に,回転リングには固定側のバンド部材が固定されていることから,被告製品においても把持機構が円弧状部材を備えているといえ,上記文言を充足する。 【被告らの主張】構成要件Eの「把持機構」は,歯車付の円弧状ベアリング片ないし環状の 歯車付ベアリングと一体化したバンド部材と解すべきであり,本件発明にお ける環状の歯車付ベアリングは,バンド部材と一体となって,円筒状ケーシングを把持する機能を有すると解される。しかるに,被告製品における円弧状部材36,37には円筒状ケーシングを把持する機能はなく,バンド部材50と円弧状部材36,37との間には円筒状ケーシングを把持する機能を有しない回転リング51が存するのであって,円弧状部材36,37がバン ド部材50と一体であるということはできない。したがって,被告製品は上記文言を充足しない。 (2) 争点1-2(構成要件Eの「両端部を各々接続して」との文言の充足性。 被告製品は,そもそも円弧状ベアリング片間に隙間(クリアランス)が設けられている構成ではなく,仮にそうでないと 足しない。 (2) 争点1-2(構成要件Eの「両端部を各々接続して」との文言の充足性。 被告製品は,そもそも円弧状ベアリング片間に隙間(クリアランス)が設けられている構成ではなく,仮にそうでないとしても,構成要件Eの「把持機 構は,それぞれの両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリングを構成する」とは,被告製品のような,円弧状ベアリング片間に隙間(クリアランス)が設けられている構成を排斥しておらず,被告製品は上記文言を充足するといえるか否か)【原告の主張】 ア被告製品は,そもそも円弧状ベアリング片間に隙間(クリアランス)が設けられている構成ではない。被告らは,約1mmの隙間(クリアランス)を設けた旨主張するが,現実に,どのように隙間を形成したかについては判然とせず,設計図等に隙間を設けることを前提とした記載は存しない。 また,大型の機械において,上記の程度隙間が生じることは誤差の範疇と いうべきであり,被告スミテックが積極的に上記隙間を設けたと考え得る根拠はない。 イまた,仮にそうでないとしても,本件発明は,転動体が脱落することなく,ベアリングの本来の機能を果たす程度に円弧状ベアリング片の両端面を接続すれば足りるものであり,構成要件Eの「把持機構は,それぞれの 両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリングを構成する」とは,円弧状 ベアリング片間に製作誤差といえる程度の隙間(クリアランス)が設けられている構成を排斥しているものではない。 しかして,被告製品において,円弧状部材36,37のそれぞれの両端部に約1mmの隙間が存したとしても,これはベアリング内径4260mmのわずか0.023%にすぎず,製作誤差といえる程度のものである。な お,被告らは,遊び(バックラッシ)に起因する不具合を防ぐ 部に約1mmの隙間が存したとしても,これはベアリング内径4260mmのわずか0.023%にすぎず,製作誤差といえる程度のものである。な お,被告らは,遊び(バックラッシ)に起因する不具合を防ぐ機能について主張するが,回転リング部材51-3と51-4はボルトで接続されるので,それに固定されている分割外輪部も環状に接続されているものであり,これが遊び(バックラッシ)分動くことは考えられない。そうすると,被告製品が円弧状部材36,37間に1mm程度の隙間を設けられたもの であったとしても,「それぞれの両端部を各々接続して」いることに変わりはなく,被告製品は当該文言を充足する。 【被告らの主張】ア被告製品においては,円弧状部材36,37は回転リング51の下方に環状に設置されているものの,円弧状部材間には約1mm程度の隙間(ク リアランス)が設けられている。 しかして,「接続」とは,「つなぐこと。つながること。続けること。続くこと。」を意味するところ,構成要件Eにおいては,明確に「それぞれの両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリングを構成する複数に分割された円弧状ベアリング片」と記載されており,また,本件明細書の記載(段 落【0011】【0020】【0024】)においても,円弧状ベアリング片の両端面をノックピンやボルト等でつなぐことを技術内容とする旨が記載されるなどしているのであって,これらからすれば,構成要件Eの上記文言は,円弧状ベアリング片間に隙間(クリアランス)が生ずることを積極的に排斥しているものといえる。そうすると,被告製品は,構成要件E の「両端部を各々接続して」との文言を充足するものではない。 イなお,被告製品においては,合計8台あるピニオンギア部(旋回用油圧モーター る。そうすると,被告製品は,構成要件E の「両端部を各々接続して」との文言を充足するものではない。 イなお,被告製品においては,合計8台あるピニオンギア部(旋回用油圧モーター)が完全に同期して回転しない可能性があり,一方の分割外輪部24が他方の分割外輪部24よりも遊び(バックラッシ)分動いて接触面で損傷が生じ故障の原因となる可能性があるため,円弧状部材36,37間には,上記バックラッシを考慮した隙間(クリアランス)を設けている ものである。 (3) 争点2-1(乙2発明に乙3発明を適用することに基づく進歩性欠如の有無)【被告らの主張】本件発明は,次のとおり,乙2発明に乙3発明を適用することにより容易 に発明をすることができたものであるから,進歩性が欠如し,本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 ア乙2発明には,次の相違点に係る本件発明の構成を除き,本件発明のその余の構成が開示されている。 (相違点)本件発明は,環状の歯車付ベアリング片を構成する複数に分割 された円弧状ベアリング片を備えているのに対し,乙2発明は,把持機構が環状の歯車付ベアリングを備えているが,歯車付ベアリングは複数に分割された円弧状ベアリングを備えておらず,その両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリングを構成するようにもされていない点。 イ容易想到性 乙3発明(オールケーシング工法用回転式ボーリングマシンに関する発明)においては,円形状の割クランプ及び第1ライナー(把持機構)が複数個に等分割されているところ,その等分割された各ライナー素子は,各々,ラック歯車(本件発明の歯車付ベアリングに相当)を備えており,また,各ライナー素子が 割クランプ及び第1ライナー(把持機構)が複数個に等分割されているところ,その等分割された各ライナー素子は,各々,ラック歯車(本件発明の歯車付ベアリングに相当)を備えており,また,各ライナー素子が接続され円形状のライナーを構成することがあり, それに伴いラック歯車も環状のラック歯車を構成することが開示されて いる。 そうすると,上記相違点は,乙3発明に開示されており,また,乙2発明と乙3発明とは同じ技術分野に属し,解決しようとする課題も,機械が大型化することに伴う輸送時や施工時の問題解決にあり,同じものであるから,乙2発明に乙3発明を適用することにより,本件発明は,当業者(そ の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)であれば,容易に想到することができたものである。 【原告の主張】被告らの上記主張は,争う。 乙3発明は,各ライナー素子が離れた状態で回転可能となっているもので あるが,この状態では,ボール(転動体)はライナー4とクランプ3の間からこぼれ落ちて公転できないところ,乙3公報には,転動体の支承方法の具体的構造についての記載はない。そうすると,乙3発明における割ライナー4,割クランプ3と回転支承部材15とで構成される円弧状部材は,そもそも本件発明の,「環状の歯車付ベアリング片を構成する複数に分割した円弧 状のアリング片」に当たるものとはいえず,上記相違点が乙3発明に開示されているとはいえない。 また,乙2発明においては,これに乙3発明を適用して,旋回ベアリングを分解し,大型化した場合も輸送しやすいようにする構成とする動機付けがなく,また,乙3発明を適用すると乙2発明が機能しなくなるなど,ベアリ ングを分割するという発想に至る阻害要因がある。 し,大型化した場合も輸送しやすいようにする構成とする動機付けがなく,また,乙3発明を適用すると乙2発明が機能しなくなるなど,ベアリ ングを分割するという発想に至る阻害要因がある。 このように,上記相違点について,乙3発明には何ら開示されておらず,また,乙3発明を乙2発明に適用する動機付けもなく,阻害要因もあり,本件発明は,当業者であれば容易に想到することができたものとはいえない。 (4) 争点2-2(乙2発明に乙4発明を適用することに基づく進歩性欠如の 有無) 【被告らの主張】本件発明は,次のとおり,乙2発明に乙4発明を適用することにより容易に発明をすることができたものであるから,進歩性が欠如し,本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 ア上記(3)アと同じ イ容易想到性乙4発明(旋回座軸受の軌道輪およびその製造方法に関する発明)においては,一つの環状ベアリング(環状部材)が複数の円弧状のベアリング片で構成されること,同ベアリングは歯車付ベアリングであり,それが複数の円弧状の歯車付ベアリング片(軌道部材)で構成されることが開示さ れている(乙4公報の<課題を解決するための手段>3頁左下5行目以下,<実施例>4頁左上18行目以下)。また,乙4公報には,環状の歯車付ベアリングにより大径鋼管の把持機構を構成している旨の直接の記載はないが,乙4発明は,立坑構築機も含むトンネル掘進機のカッターヘッド用軸受や超大型建設機械のターンテーブル用軸受に関する発明であるため (乙4公報の<産業上の利用分野>1頁右欄9行目以下),上記把持機構については当然の前提とされているものである。 そうすると,上記相違点は,乙4発 ブル用軸受に関する発明であるため (乙4公報の<産業上の利用分野>1頁右欄9行目以下),上記把持機構については当然の前提とされているものである。 そうすると,上記相違点は,乙4発明に開示されており,また,乙2発明と乙4発明とは同じ技術分野に属し,解決しようとする課題も,乙4発明は乙2発明の機械に用いられる軸受に関するものであり,両者の課題は 類似するものであるから,乙2発明に乙4発明を適用することにより,本件発明は,当業者であれば容易に想到することができたものである。 【原告の主張】被告らの上記主張は,争う。 乙4発明は,内輪,外輪がそれぞれ複数のパーツで構成され,分割された 内輪,分割された外輪をそれぞれ組み立てることで,歯車付きベアリングを 完成させるものであり,内輪,外輪はそれぞれのパーツが位相を90度ずらして結合されているため円弧状にすることができないものであるから,円弧状の外輪,円弧状の内輪,球体を一体として構成した構成要件Eのベアリング片については,乙4公報には記載も示唆もされておらず,上記相違点が乙4発明に開示されているとはいえず,本件発明は,当業者であれば容易に想 到することができたものとはいえない。 (5) 争点2-3(乙2発明に周知技術を適用することに基づく進歩性欠如の有無)【被告らの主張】本件発明は,次のとおり,乙2発明に周知技術を適用することにより容易 に発明をすることができたものであるから,進歩性が欠如し,本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 ア上記(3)アと同じイ容易想到性乙5公報及び乙20公報には,環状ベアリングを円弧状に分割する旨の 分割ベアリングに関する周 (同法123条1項2号)がある。 ア上記(3)アと同じイ容易想到性乙5公報及び乙20公報には,環状ベアリングを円弧状に分割する旨の 分割ベアリングに関する周知技術が開示されており,また,乙2発明と上記周知技術とは同じ技術分野に属し,解決しようとする課題も同じものであるから,乙2発明に上記周知技術を適用することにより,上記相違点に係る本件発明の構成は,当業者であれば容易に想到することができたものである。 【原告の主張】被告らの上記主張は,争う。 乙5公報には,内輪,外輪が複数の分割パーツにより構成され,それぞれのパーツが位相を90度ずらして結合されていることが開示されているにすぎず,複数の部材で構成された内輪,外輪を円弧状に一体として形成したも のは開示されていない。すなわち,乙5公報に記載されている分割ベアリン グにおいては,内輪,外輪の結合位置を90度ずらしているため円弧状にすることはできないものであり,構成要件Eのベアリング片については,乙5公報には記載も示唆もされていないというべきである。また,乙20公報は周知技術といえるものではない。そうすると,上記相違点が周知技術であるとはいえず,本件発明は,当業者であれば容易に想到することができたもの とはいえない。 (6) 争点2-4(乙2発明に乙20発明を適用することに基づく進歩性欠如の有無)【被告らの主張】本件発明は,次のとおり,乙2発明に乙20発明を適用することにより容 易に発明をすることができたものであるから,進歩性が欠如し,本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 ア上記(3)アと同じイ容易想到性乙20公報には,「大形転がり軸 であるから,進歩性が欠如し,本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 ア上記(3)アと同じイ容易想到性乙20公報には,「大形転がり軸受の軸受セグメント」を発明の名称と し,特許請求の範囲(1)として,「複数個円形に組合わせることによって内輪が形成される円弧状の内輪セグメントと,同じく複数個円形に組合わせることによって外輪が形成される円弧状の外輪セグメントと,上記内輪セグメントと外輪セグメントの間に組込まれてスラスト荷動を支持するスラスト転動体およびラジアル荷重を支持するラジアル転動体と, 各転動体を保持する保持器とから成り,前記外輪セグメントと内輪セグメントのいずれか一方を軸方向に分割して第1分割輪と第2分割輪を形成し,その第1分割輪と第2分割輪とを締付ボルトで着脱自在に連結し,前記内輪セグメントと外輪セグメントを連結ボルトで連結し,その内輪セグメントおよび外輪セグメントの両端における2つの突き合わせ 面のうち,一方の突き合わせ面に突部を設け,他方の突き合わせ面に上 記突部が嵌合する位置決め用の凹部を形成し,かつ内輪セグメントおよび外輪セグメントのそれぞれに取付孔を設けた大形転がり軸受の軸受セグメント。」(1頁左下欄5行~右下欄3行)との記載があり,さらに,「ここで,転がり軸受は,内輪セグメント3および外輪セグメント4の取付けによって組立てるようにする。すなわち,軸受セグメント2 の内輪セグメント3および外輪セグメント4をねじ止めする工程と,次の軸受セグメント2を先に取付けられた軸受セグメント2の突き合わせ面23,26に突き合わせ,かつ突部24,27を凹部25,28に係合してその軸受セグメント2を取付ける工程とを順次行なって複数の軸受 の軸受セグメント2を先に取付けられた軸受セグメント2の突き合わせ面23,26に突き合わせ,かつ突部24,27を凹部25,28に係合してその軸受セグメント2を取付ける工程とを順次行なって複数の軸受セグメント2を円形に組立て,その後,連結ボルト22を取外して内 輪セグメント3と外輪セグメント4の連結を解除する。」(3頁左下欄18行~右下欄9行)との記載がある。これらの記載に照らせば,乙20発明には,本件発明の構成要件Eが開示されているといえ,これを否定する原告の主張はいずれも理由がない。 そして,乙2発明と乙20発明とは同じ技術分野に属し,解決しようと する課題も同じものであるから,乙2発明に,上記のような記載のある乙20公報により開示されている乙20発明を適用することにより,本件発明の構成は,当業者であれば容易に想到することができたものである。 【原告の主張】被告らの上記主張は,争う。 次のアないしウのとおり,乙20発明には,本件発明の構成要件Eについては開示されておらず,さらに,これを乙2発明と組み合わせる動機付けはなく,さらに,これを乙2発明と組み合わせたとしてもそのままでは本件発明を構成することができず,組み合わせる阻害要因があるものであるから,本件発明は,当業者であれば容易に想到することができたものとはいえない。 ア構成要件Eの非開示 次の(ア)ないし(ウ)に照らせば,乙20公報には,本件発明の構成要件Eの,軸受セグメントを構成する内輪,外輪,転動体は分離することなく一体のままとして,一体となったベアリング片を把持機構に接続するという技術事項については,記載も示唆もされていない。 (ア) 乙20発明は,大型化した転がり軸受の搬送を容易にするために,環 状の軸 して,一体となったベアリング片を把持機構に接続するという技術事項については,記載も示唆もされていない。 (ア) 乙20発明は,大型化した転がり軸受の搬送を容易にするために,環 状の軸受1を「内輪,外輪を,軸を含む同じ平面で複数に分割」して軸受セグメント2を構成し,さらに,この軸受セグメント2を内輪セグメント3及び外輪セグメント4にバラバラに分割したものであるにすぎない。この点,乙20公報の図2は,円形に組み上がったものの一部を仮想的に抜き出して表示したものにすぎず,装置の組み立てプロセスにお いて,一時的に現れる一つの状態であるにすぎない。 (イ) 乙20発明の軸受セグメントは,ベアリングの部品であり,そのままでは外輪と内輪と転動体がバラバラになるため,連結ボルト22で内輪セグメントと外輪セグメントを仮に固定する必要がある。すなわち,同軸受セグメントは,内輪と外輪と転動体が一体ではないため,連結ボル トが必要であり,この連結ボルトを外さなければ,ベアリングとして機能しない点で,本件発明の構成要件Eと異なる。 (ウ) 乙20発明は,外輪と内輪の分割位置は合うものの,転動体保持器が長尺構造であることと断面的に軌道が3か所あることによりほぼ同位置とはならず,解体が非常に困難な構成であるものであり,この点におい ても,分解,接続を頻繁に行う立坑構築現場で用いる本件発明の構成要件Eと異なる。 イ動機付けの欠如また,乙2発明においては,昇降フレーム4については,旋回ベアリング6の取付座4aを分断するように分割する一方,乙2公報中のその余の 記載を検討しても,旋回ベアリング6自体を分割することは一切記載され ておらず,この分割についての積極的な動機や示唆があるとはいえな 分断するように分割する一方,乙2公報中のその余の 記載を検討しても,旋回ベアリング6自体を分割することは一切記載され ておらず,この分割についての積極的な動機や示唆があるとはいえない。 そうすると,乙2発明に乙20発明を組み合わせる動機付けが存しない。 ウ阻害要因の存在さらに,仮に,乙20発明における,転がり軸受を内輪,外輪にバラバラに分割した軸受セグメントを,乙2発明における旋回ベアリングに入れ 替えたところで,単に,旋回ベアリング6をバラバラにしただけであって,さらに,回転リング7はそのままであるから,装置全体を搬送のため小型化するためには,回転リング7自体をバラバラにした旋回ベアリングの大きさに応じて分割可能なものにしなければならない。しかして,回転リング7にはバンド装置14が固定されていることから,バラバラにした旋回 ベアリングの両端位置に応じて任意の位置で分割することができない。また,旋回ベアリング6とバンド装置14の間に設けられた回転リング7を任意の位置で分割するということ自体が,技術常識又は周知慣用技術であるということもできない。 このように,バンド装置14と旋回ベアリング6との間に回転リング7 が存在する乙2発明の装置に,乙20発明のものをそのまま取り付けたとしても本件発明の効果を奏することはできず,乙2発明に乙20発明を組み合わせるためには,乙2発明の回転リング7の構成自体を大きく改変する必要が生ずると解されるから,乙20発明を乙2発明と組み合わせることには明らかな阻害要因があるといえる。 (7) 争点3(差止め及び廃棄の必要性の有無。被告らが被告製品の譲渡等をするおそれがあるか,また,被告スミテックが被告製品を保有しているか)【原告の主張】ア 要因があるといえる。 (7) 争点3(差止め及び廃棄の必要性の有無。被告らが被告製品の譲渡等をするおそれがあるか,また,被告スミテックが被告製品を保有しているか)【原告の主張】ア差止めの必要性について(ア) 被告スミテックは,少なくとも平成28年に被告製品Ⅰ1台,平成2 9年に被告製品Ⅱ1 台を継続して販売しているから,引き続き被告製品 を販売する蓋然性が高い。 (イ) 被告大善は,被告製品2台を保有して使用しているところ,その使用を差し止められた場合,利益を獲得するために,第三者に対して被告製品を譲渡等する蓋然性が高い。 イ廃棄の必要性について 被告スミテックが工場内に製造済みの被告製品を保有していれば,それを譲渡等する蓋然性が高いから,被告スミテックが保有する被告製品の廃棄を求める必要がある。 【被告らの主張】否認ないし争う。 (8) 争点4(共同不法行為責任の有無。被告スミテックによる被告製品の譲渡行為につき被告大善が共同不法行為責任を負うか)【原告の主張】被告スミテックは被告大善の指示に従って被告製品を製造し,被告大善に販売したものであり,被告スミテックによる製造販売行為と被告大膳の被告 スミテックに対する指示とは関連共同するものであるから,被告大善は,被告スミテックによる被告製品の譲渡行為につき共同して不法行為責任を負うものである。 【被告らの主張】否認ないし争う。 (9) 争点5(因果関係の有無。被告スミテックによる被告製品の譲渡行為により原告は本件特許権の実施品を販売する機会を喪失したか)【原告の主張】原告は,被告製品に相当する立坑構築機2台を外注して製作し,これを自ら使用している。被告スミテックが被告大善に被 渡行為により原告は本件特許権の実施品を販売する機会を喪失したか)【原告の主張】原告は,被告製品に相当する立坑構築機2台を外注して製作し,これを自ら使用している。被告スミテックが被告大善に被告製品を販売したことによ り,原告は,立坑構築機2台を販売する機会を喪失したことになる。 【被告らの主張】否認ないし争う。 (10) 争点4(原告の損害額)【原告の主張】ア被告らに対する連帯請求(請求の趣旨第5項)の損害額 (ア) 逸失利益原告が立坑構築機2台を販売する機会を喪失したことにより受けた損害の額は1億1250万0051円である。 (イ) 特許法102条2項により算定した損害額(前記(ア)の予備的主張)原告の損害額として推定される被告スミテックが受けた利益の額は4 931万2800円である。 (ウ) 弁護士費用相当額原告は被告らの共同不法行為によって本件訴訟の提起を余儀なくされ,弁護士費用相当額の損害を受けた。その額は1125万円を下らない。 イ被告大善に対する請求(請求の趣旨第6項)の損害額 (ア) 特許法102条2項により算定した損害額原告の損害額として推定される被告大善が受けた利益の額は2120万円である。 (イ) 弁護士費用相当額原告は被告大膳の不法行為によって本件訴訟の提起を余儀なくされ, 弁護士費用相当額の損害を受けた。その額は212万円を下らない。 【被告らの主張】否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか)について 本件事案に鑑み,争点1-2(構成要件Eの「両端部を各々接続して」との 文言の充足性。被告製品は,そもそも円弧状ベアリング片間に隙間( 品が本件発明の技術的範囲に属するか)について 本件事案に鑑み,争点1-2(構成要件Eの「両端部を各々接続して」との 文言の充足性。被告製品は,そもそも円弧状ベアリング片間に隙間(クリアランス)が設けられている構成ではなく,仮にそうでないとしても,構成要件Eの「把持機構は,それぞれの両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリングを構成する」とは,被告製品のような,円弧状ベアリング片間に隙間(クリアランス)が設けられている構成を排斥しておらず,被告製品は上記文言を充足す るといえるか否か)について判断する。 (1) 本件特許請求の範囲の記載は,前記第2の1(2)のとおりであるところ,本件明細書には,次の記載がある(甲5)。 ア発明の属する技術分野【0001】本発明は,鋼管等を回転して圧入する立坑構築機に関す る。 イ従来の技術【0002】(中略)装置の輸送に一般道路を使用する場合,現行の道路交通法では運搬物の幅を3200mm以内に収めなければならず,立抗構築機の外形をこれに合わせようとすると鋼管等の直径を2500mm 以下にする必要がある。 【0003】近年においては,使用する鋼管の直径が大型化しており,直径が2500mmを超えるものが要求される場合もある。図6に示すように,例えば,特開2000-073371号公報に記載されている鋼管類圧入引抜き装置70は,上フレーム71及び下フレーム72を油 圧シリンダ74によって上下に相対移動可能に設けられている。また,上フレーム71の上部には,回転体73を(判決注,「が」の誤記と認める。)配置されている。 【0004】上,下フレーム71,72は,コ字状の上,下フレーム片75,76の両端部を連結部材77,78でそれぞれ接続して矩形枠状 に を(判決注,「が」の誤記と認める。)配置されている。 【0004】上,下フレーム71,72は,コ字状の上,下フレーム片75,76の両端部を連結部材77,78でそれぞれ接続して矩形枠状 に形成されている。回転体73は,中心角が180度より小さい円弧状歯 車片79,80を隙間をあけて対向配置している。また,円弧状歯車片79,80は,上フレーム辺(判決注,「片」の誤記と認める。)75に2台ずつ設けられ同期回転する小歯車81~84にそれぞれ噛合している。 【0005】かかる構成によって,各円弧状歯車片79,80に固定され た図示しない複数のC形バンドを鋼管(図示せず)の外周に締め付けて固定して,その鋼管と共に回転することができる。また,上,下フレーム71,72及び回転体73は,幅方向に縮幅し,運搬時の幅を狭くすることができる。 ウ発明が解決しようとする課題 【0006】しかしながら,この従来の装置においては,円弧状歯車片79,80は,使用時に各両端部を当接させず,その間に隙間85,86を有して配置されている。従って,装置の使用時に,円弧状歯車片79,80は上,下フレーム71,72に対して相対的に回動することになるが,このときの円弧状歯車片79,80の支持方法が開示されていない。 【0007】内輪と外輪の間に多数の転動体を有するベアリングは,支持部材として一般的なものであるが,ベアリングを部分的に切断し,端部を当接させない状態で回転させると,内部の転動体が端部からこぼれ落ちてしまうので,使用することができない。(以下,略。)【0009】そこで本発明が解決しようとする課題は,幅方向の寸法を 狭くすることができ,標準的なベアリングを用いて回転を安定させることができる立坑構築機を提供する ができない。(以下,略。)【0009】そこで本発明が解決しようとする課題は,幅方向の寸法を 狭くすることができ,標準的なベアリングを用いて回転を安定させることができる立坑構築機を提供することにある。 エ課題を解決するための手段【0010】前記課題を解決するため,本発明の立坑構築機は,ベースフレームに昇降且つ回動可能に支持され,円筒状部材の外周部に着脱される 把持機構と,この把持機構を駆動する回転駆動装置とを備えた立坑構築機 において,前記ベースフレームは組立可能に複数に分割された分割フレームを備え,前記把持機構は,それぞれの両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリングを構成する複数に分割された円弧状ベアリング片を備えている。 【0011】円筒状部材には,例えば,鋼管や鉄筋コンクリートを用いた 管材を用いることができる。円弧状ベアリングは隙間なく接続して環状の歯車付ベアリングを構成し,内輪及び外輪の間に配置された球やころ等の転動体がこぼれ落ちない構造になっている。かかる構成によって,分割して幅方向の寸法を狭くすることができると共に,標準的なベアリングを使用して回転を安定させることができる。 オ発明の実施の形態【0018】ベースフレーム3は,コ字状に形成されて溝部を対向配置した対となる分割フレーム7,8を左右に備えている。また,それぞれの端部を水平シリンダ9で接続して幅方向に伸縮可能な矩形枠状に組立てられている。(以下,略。) 【0019】ベースフレーム3の上方位置には,左右に二分割された分割保持フレーム15,16を備えて把持機構5を支持する保持フレーム14が配置されている。保持フレーム14は拡幅時のベースフレーム3と同じ大きさの外形で,内周を円弧状に形成している。ベースフレー た分割保持フレーム15,16を備えて把持機構5を支持する保持フレーム14が配置されている。保持フレーム14は拡幅時のベースフレーム3と同じ大きさの外形で,内周を円弧状に形成している。ベースフレーム3と保持フレーム14の四隅は,昇降シリンダ10~13によって接続され,分割 保持フレーム15,16は,それぞれを支持する昇降シリンダ10,11,又は昇降シリンダ12,13によって異なる高さに昇降することができる。 【0020】把持機構5は,円弧状ベアリング片21,22を保持フレーム14の内側位置の左右両側に配置している。円弧状ベアリング片21,22は,それぞれの両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリング2を構 成する。円弧状ベアリング片21,22は同一形状に形成され,半円状の 分割内輪部23及び分割外輪部24と,その間に配置され転動体として使用される多数の球体25をそれぞれ有している。分割外輪部24の外周には,外歯部26が形成されている。(中略)分割内輪部23は,分割保持フレーム15,16にそれぞれ固定され,分割外輪部24は,分割内輪部23に球体25を介して回動自在に設けられている。 【0021】同期運転可能な油圧又は電動式の駆動モータ17~20は,分割保持フレーム15,16の昇降シリンダ10~13の内側にそれぞれ配置され,それぞれの駆動モータ17~20の先部には,把持機構5を構成するピニオン28~31が取り付けられている。ピニオン28~31は分割外輪部24の外歯部26に噛合している。(以下,略。) 【0022】円弧状ベアリング片21,22の下位置には,鋼管4に巻着固定されるC字状のバンド部材32が固定されている。バンド部材32は,多数の円弧状部材を回動可能に接続し,両端部をシリンダ部材37によって接 】円弧状ベアリング片21,22の下位置には,鋼管4に巻着固定されるC字状のバンド部材32が固定されている。バンド部材32は,多数の円弧状部材を回動可能に接続し,両端部をシリンダ部材37によって接続している。バンド部材32は使用時には鋼管4の外周に巻着して円形になり,移動時には,幅方向に縮幅した形状に変形することができる。 【0024】(中略)まず,立坑構築機1の使用時においては,(中略)水平シリンダ9のロッドを伸ばしてベースフレーム3を拡幅する。また,分割保持フレーム15,16は同じ高さに配置し,円弧状ベアリング片21,22の両端部を当接させる。 【0025】この状態で,バンド部材32で鋼管4を締結固定し,駆動モ ータ17~20を同期駆動すると,ピニオン28~31,円弧状ベアリング片21,22,バンド部材32を介して鋼管4を回転させることができる。また,昇降シリンダ10~13を同時に昇降させて鋼管4を昇降させることができる。 【0026】立坑構築機1の輸送時には,(中略)昇降シリンダ10,11 と昇降シリンダ12,13を別々に作動させ,左右の分割保持フレーム1 5,16にそれぞれ設けられた円弧状ベアリング片21,22の高さを段違いに配置する。(中略)次いで,水平シリンダ9を操作して,ロッドを縮めると,立坑構築機1全体を縮幅でき,一般道路上を輸送することができる。 カ発明の効果 【0028】(中略)(1)それぞれの両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリングを構成する複数の円弧状ベアリング片を備えているので,分割して幅方向の寸法を狭くすることができると共に,標準的なベアリングを使用して装置を安価に構成することができ,また回転を安定させることができる。(以下,略。) (2) 以上を前 るので,分割して幅方向の寸法を狭くすることができると共に,標準的なベアリングを使用して装置を安価に構成することができ,また回転を安定させることができる。(以下,略。) (2) 以上を前提として,争点1-2(被告製品は,そもそも円弧状ベアリング片間に隙間(クリアランス)が設けられている構成ではなく,仮にそうでないとしても,構成要件Eの「把持機構は,それぞれの両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリングを構成する」とは,被告製品のような,円弧状ベアリング片間に隙間(クリアランス)が設けられている構成を排斥しておらず, 被告製品は上記文言を充足するといえるか否か)について検討する。 ア被告製品の構成について(ア) 証拠(乙11ないし15)によれば,次の事実が認められる。 a 被告製品においては,円弧状ベアリング片である円弧状部材36,37の構成要素として,分割内輪部23及び分割外輪部24を有す る。 b 被告製品において,2つある分割内輪部23は2つある分割フレーム14に設けられた内外輪部ケースにそれぞれ接続されており,これらの内外輪部ケースそれぞれの両端部が接続されて環状の歯車付ベアリングの内輪が構成される。 c 被告製品においては,2つある分割フレームに設けられた内外輪部 ケースそれぞれの分割端面が2つある分割内輪部23それぞれの分割端面より出っ張っており,環状の歯車付ベアリングを構成したときに,2つある分割内輪部23の間に隙間が生じる。その隙間は,被告製品LMV-4000DZRではフロント側で0.8mm以上及びバック側で0.4mm以上のサイズであり,被告製品LMV-5000 DZRではフロント側で0.2mm以上及びバック側で0.1mm以上のサイズである。 d 被告製品において, 0.8mm以上及びバック側で0.4mm以上のサイズであり,被告製品LMV-5000 DZRではフロント側で0.2mm以上及びバック側で0.1mm以上のサイズである。 d 被告製品において,2つある分割外輪部24は回転リング部材51-3,51-4にそれぞれ接続されており,回転リング部材51-3,51-4それぞれの両端部が接続して,環状の歯車付ベアリング の外輪が構成される。 e 被告製品においては,回転リング部材51-3,51-4それぞれの端面は2つある分割外輪部24それぞれの分割端面より出っ張っており,環状の歯車付ベアリングを構成したときに,2つある分割外輪部24の間に隙間が生じる。その隙間は,被告製品LMV-4000 DZRではフロント側で2.1mm以上及びバック側で0.8mm以上のサイズであり,被告製品LMV-5000DZRではフロント側で1.1mm以上及びバック側で1.3mm以上のサイズである。 (イ) 以上によれば,被告製品においては,客観的に,円弧状ベアリング片間に,上記のサイズの隙間(クリアランス)が存する構成であるという ことができる。 イ本件発明の技術思想(課題解決手段)について前記(1)によれば,本件発明は,鋼管等を回転して圧入する立坑構築機に関し,輸送する際に幅を狭くする必要があったところ,従来技術においては,円弧状歯車片同士の端部が当接されず,その隙間から内部の転動体が こぼれ落ちてしまうため,標準的なベアリングを使用することができない という課題が生じていたので,これを解決するため,構成要件Eに係る構成を採用し,円弧状ベアリング片が隙間なく接続して環状の歯車付ベアリングを構成し,もって,分割して幅方向の寸法を狭くすることができると共に,転動体がこぼれ落ちなく を解決するため,構成要件Eに係る構成を採用し,円弧状ベアリング片が隙間なく接続して環状の歯車付ベアリングを構成し,もって,分割して幅方向の寸法を狭くすることができると共に,転動体がこぼれ落ちなくなり回転を安定させることができ,標準的なベアリングを使用して装置を安価に構成することができるようにした という技術的思想であるものと認められる。すなわち,本件発明において,円弧状ベアリング片は,それぞれ両端部を隙間なく接続して環状の歯車付ベアリングを構成するという技術的意義を有しているものというべきであり,このことは,前記のとおり,課題解決手段の欄(段落【0011】)において,「円弧状ベアリングは隙間なく接続して環状の歯車付ベアリン グを構成し,内輪及び外輪の間に配置された球やころ等の転動体がこぼれ落ちない構造になっている。かかる構成によって,分割して幅方向の寸法を狭くすることができると共に,標準的なベアリングを使用して回転を安定させることができる。」と記載されていることからも根拠付けられるものである。 ウ構成要件Eへの被告製品の充足性についてしかして,構成要件Eには,円弧状ベアリング片が「それぞれの両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリングを構成する」との文言が記載されているところ,「接続」とは「つなぐこと。つながること。続けること。続くこと。」を意味するものである(広辞苑第7版)。そうすると,その文言 の一般的意義,上記の本件発明の技術的思想(本件発明において,円弧状ベアリング片は,それぞれ両端部を隙間なく接続して環状の歯車付ベアリングを構成するという技術的意義を有しているものであること)に照らせば,環状の歯車付ベアリングを構成するために隙間なく接続する部品,すなわち,つなぐ部品が円弧状ベアリング片であっ 環状の歯車付ベアリングを構成するという技術的意義を有しているものであること)に照らせば,環状の歯車付ベアリングを構成するために隙間なく接続する部品,すなわち,つなぐ部品が円弧状ベアリング片であって初めて,円弧状ベアリ ング片が「それぞれの両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリングを構 成する」といえるものであると解するのが相当である。そうすると,環状の歯車付ベアリングを構成した際に,円弧状ベアリング片の両端部に隙間が有るならば,「接続」とは評価し難いものというべきである。 しかるに,前記アによれば,被告製品においては,環状の歯車付ベアリングは,2つある分割フレーム14に設けられた内外輪部ケースそれぞ れの両端部及び回転リング部材51-3,51-4それぞれの両端部を隙間なく接続して構成するものであって,分割内輪部23や分割外輪部24それぞれの両端部を隙間なく接続するものでも,つなぐものでもなく,円弧状ベアリング片である円弧状部材36,37それぞれの両端部には,客観的に隙間があるから,被告製品の円弧状部材36,37は 「それぞれの両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリングを構成する」ものであるとはいえず,被告製品は,構成要件Eを充足しないものというほかない。 エ原告の主張について(ア) 原告は,現実に,被告スミテックがどのように隙間を形成したかに ついては判然とせず,設計図等に隙間を設けることを前提とした記載は存しない上,大型の機械において,上記の程度隙間が生じることは誤差の範疇であって同被告が積極的に上記隙間を設けたと考え得る根拠はない旨主張する。また,原告は,仮にそうでないとしても,本件発明は,転動体が脱落することなく,ベアリングの本来の機能を果たす程度に円 弧状ベアリング片の両端面 上記隙間を設けたと考え得る根拠はない旨主張する。また,原告は,仮にそうでないとしても,本件発明は,転動体が脱落することなく,ベアリングの本来の機能を果たす程度に円 弧状ベアリング片の両端面を接続すれば足りるものであり,構成要件Eの文言は,被告製品における,円弧状ベアリング片間の,製作誤差といえる程度の約1mmの隙間(クリアランス)が設けられている構成を排斥しているものではない旨主張する。 (イ) しかしながら,上記説示のとおり,構成要件Eの文言の一般的意 義,本件発明の技術的思想(本件発明において,円弧状ベアリング片 は,それぞれ両端部を隙間なく接続して環状の歯車付ベアリングを構成するという技術的意義を有しているものであること)に照らし,構成要件Eの文言については,環状の歯車付ベアリングを構成するために隙間なく接続する部品,すなわち,つなぐ部品が円弧状ベアリング片であって初めて,円弧状ベアリング片が「それぞれの両端部を各々接続して環 状の歯車付ベアリングを構成する」といえるものであると解するのが相当であり,被告スミテックの主観的意図にかかわらず,客観的に,約1mmの隙間(クリアランス)が存する被告製品の構成は,これに含まれるものとはいい難い。 また,本件明細書の課題解決手段の欄(段落【0011】)の記載に照 らし,当業者は,本件発明は,「円弧状ベアリング片」が「隙間なく接続」することで,従来技術の課題を解決することを想定していたものとみるほかなく,そうである以上,たとえ後から振り返って見るならば「円弧状ベアリング片」の両端部に存在する隙間が狭ければ従来技術の課題を解決できるとしても,本件発明のクレーム解釈としては,円弧状ベア リング片である分割内輪部及び分割外輪部の両端部に隙間が有るならば ベアリング片」の両端部に存在する隙間が狭ければ従来技術の課題を解決できるとしても,本件発明のクレーム解釈としては,円弧状ベア リング片である分割内輪部及び分割外輪部の両端部に隙間が有るならば,円弧状ベアリング片の「両端部を各々接続して」いるとはいえないというほかない。 したがって,原告の上記各主張はいずれも採用することができない。 (3) 以上によれば,被告製品は,構成要件Eを充足しないものであって,その 余の点について判断するまでもなく,本件発明の技術的範囲に属するということができず,被告製品は,本件特許権を文言侵害しているものとはいえないから,原告の被告らに対する各請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも既に理由がないことに帰する。 2 争点2(本件特許の無効の抗弁の成否) (1) 上記のように,原告の被告らに対する各請求は,いずれも既に理由がない ものであるが,本件事案に鑑み,念のため,続いて争点2-4(乙2発明に乙20発明を適用することに基づく進歩性欠如の有無)についても判断する。 (2) 乙2発明(主引用発明)が記載された乙2公報,乙20発明(副引用発明)が記載された乙20公報には,それぞれ次の旨の記載を含んでいる。 ア乙2発明について(乙2公報の記載) (ア) 特許請求の範囲【請求項1】ジャッキにより水平に保持されるベースフレームに,スラストシリンダにより昇降自在に取付けられた昇降フレームと,該昇降フレームに旋回ベアリングを介して回転自在に取付けられ,昇降フレームに取付けられた油圧モータにより回転または揺動される回転リ ングと,該回転リング上に取付けられたケーシング掴み用バンド装置とを備えたケーシングドライバにおいて,前記昇降フレームを,前記 取付けられた油圧モータにより回転または揺動される回転リ ングと,該回転リング上に取付けられたケーシング掴み用バンド装置とを備えたケーシングドライバにおいて,前記昇降フレームを,前記旋回ベアリングの取付座を分断するように,複数個のフレームに分割したことを特徴とするケーシングドライバの昇 降フレーム。 (イ) 発明の属する技術分野本発明は,建築,土木の基礎工事に使用する大口径鋼管杭あるいは鋼管類(以下これらをケーシングと称す)の圧入,引抜きを行うための回転式ケーシングドライバにおける昇降フレームに関する(段落【000 1】)。 (ウ) 従来の技術ケーシングドライバにおいて,近年における建造物の高層化等に伴い,ケーシングの径も大きくなり,大型のものは,各構成部品ごとに分割輸送せざるを得なくなっている。構成部品のうち,昇降フレームは,さら に大型化すると単体では輸送できず,昇降フレームを複数のフレームに 分割して輸送することが行われる(段落【0004】)。 この昇降フレームにおいて,回転リングの回転駆動用の油圧モータが昇降フレーム外周部に位置する場合,旋回ベアリングの外輪に回転リングに取付けられ,内輪が昇降フレームに取付けられている。そして,昇降フレームの分割は,内輪の取付座を避け,ケーシングを通すための昇 降フレーム内周の円形開口部は非分割として,その円形開口部を含む中間分割フレームと,そのほかの分割フレームとに3分割し,現場において組立,分解を行う構成を有している(段落【0005】)。 (エ) 発明が解決しようとする課題近年の建造物の高層化,杭支持力増大の要求に伴うケーシングの径の 増大により,従来構造による円形開口部を有する中間分割フレームのサイズおよび重量が大とな (エ) 発明が解決しようとする課題近年の建造物の高層化,杭支持力増大の要求に伴うケーシングの径の 増大により,従来構造による円形開口部を有する中間分割フレームのサイズおよび重量が大となっており,このため,輸送が容易ではなく,またこのような従来の昇降フレームの分割構造を踏襲することが,ケーシングドライバの大型化の妨げになるという問題点があった(段落【0006】)。 本発明は,上述のような問題点に鑑み,ケーシングドライバを大型化しても昇降フレームを小さく分割でき,輸送が容易になると共に,ケーシングドライバのさらなる大型化が図れる構造の昇降フレームを提供することを目的とする(段落【0007】)。 (オ) 課題を解決するための手段 請求項1の発明は,前記目的を達成するため,ジャッキにより水平に保持されるベースフレームに,スラストシリンダにより昇降自在に取付けられた昇降フレームと,該昇降フレームに旋回ベアリングを介して回転自在に取付けられ,昇降フレームに取付けられた油圧モータにより回転または揺動される回転リングと,該回転リング上に取付けられたケー シング掴み用バンド装置とを備えたケーシングドライバにおいて,前記 昇降フレームを,前記旋回ベアリングの取付座を分断するように,複数個のフレームに分割したことを特徴とする(段落【0008】)。 (カ) 作用請求項1においては,昇降フレームを取付座を分断するように分割したので,中間分割フレームのサイズが昇降フレームの開口部の径に比例 して大きくなることはなく,分割フレームのサイズを従来より小さくすることができる(段落【0015】)。 (キ) 発明の実施の形態ケーシングドライバ1は,4隅のジャッキ2により水平に保持されるベースフレーム3を備え, く,分割フレームのサイズを従来より小さくすることができる(段落【0015】)。 (キ) 発明の実施の形態ケーシングドライバ1は,4隅のジャッキ2により水平に保持されるベースフレーム3を備え,該ベースフレーム3は4隅に縦ガイドフレー ム3a~3dを有する方形枠状をなすものであり,フランジ3eで分割される。4は前記縦ガイドフレーム3a~3dに沿って昇降自在に取付けられた昇降フレームであり,該昇降フレーム4は,前記ベースフレーム3と該昇降フレーム4との間に取付けられた複数本のスラストシリンダ5により昇降される(段落【0021】)。 前記昇降フレーム4には,旋回ベアリング6を介して回転リング7が取付けられる。(中略)旋回ベアリング6の外輪6bは外歯歯車6cを有し,図1(A),(B)に示すように,該外歯歯車6cが,昇降フレーム4に取付けられた油圧モータ10の出力歯車11に噛合し,油圧モータ10の回転により,外輪6bが回転する(段落【0022】)。 図2,図3に示すように,回転リング7上には,ケーシング13を掴むためのバンド装置14が取付けられる。該バンド装置14は,回転リング7に固定された略半円状の固定バンド14aと,該固定バンド14aの両端に枢着軸15,16を中心として開閉自在に取付けられた一対の可動バンド14b,14cと,これらの可動バンド14b,14cの 先端間に両端をピン17,18により連結して取付けたバンド開閉用の 油圧式バンドシリンダ14dとからなる(段落【0023】)。 (ク) 発明の効果請求項1によれば,昇降フレームを取付座を分断する構造で分割したので,中間分割フレームのサイズが昇降フレームの開口部の径に比例して大きくなることはなく,昇降フレームの分割設計の自由度が増し,輸 請求項1によれば,昇降フレームを取付座を分断する構造で分割したので,中間分割フレームのサイズが昇降フレームの開口部の径に比例して大きくなることはなく,昇降フレームの分割設計の自由度が増し,輸 送制限以下のサイズおよび重量の選択を容易に行うことができる。従って,分割フレームの重量およびサイズの制限によるケーシングドライバの大型化の障害がなくなり,ケーシングドライバの大型化が図れると共に,分割フレームの小型化により,輸送が容易となる(段落【0053】)。 イ乙20発明について(乙20公報の記載) (ア) 特許請求の範囲複数個円形に組合わせることによって内輪が形成される円弧状の内輪セグメントと,同じく複数個円形に組合わせることによって外輪が形成される円弧状の外輪セグメントと,上記内輪セグメントと外輪セグメントの間に組込まれてスラスト荷動(判決注,「スラスト荷重」の誤記と 認める。)を支持するスラスト転動体およびラジアル荷重を支持するラジアル転動体と,各転動体を保持する保持器とから成り,前記外輪セグメントと内輪セグメントのいずれか一方を軸方向に分割して第1分割輪と第2分割輪を形成し,その第1分割輪と第2分割輪とを締付ボルトで着脱自在に連結し,前記内輪セグメントと外輪セグメントを連結ボルト で連結し,その内輪セグメントおよび外輪セグメントの両端における2つの突き合わせ面のうち,一方の突き合わせ面に突部を設け,他方の突き合わせ面に上記突部が嵌合する位置決め用の凹部を形成し,かつ内輪セグメントおよび外輪セグメントのそれぞれに取付孔を設けた大形転がり軸受の軸受セグメント。(1頁左下欄5行目~右下欄3行目) (イ) 産業上の利用分野 この発明は,トンネル掘削機のカッタヘッド等を回転自在に支持する れに取付孔を設けた大形転がり軸受の軸受セグメント。(1頁左下欄5行目~右下欄3行目) (イ) 産業上の利用分野 この発明は,トンネル掘削機のカッタヘッド等を回転自在に支持する大形転がり軸受の軸受セグメントに関するものである。(1頁右下欄6行目~8行目)(ウ) 発明が解決しようとする課題ところで,大形転がり軸受の内輪および外輪が削り出しによって形成 された環状のものであると,転がり軸受が超大型化した場合に,その転がり軸受を輸送することができなくなる。 また,トンネル掘削機に組込まれた状態において,転がり軸受の破損等によってその転がり軸受を取り替える場合,その軸受を形成する内輪および外輪が極めて重量物であるため,トンネル掘削機を地上に運び出 して取り替える必要が生じ,転がり軸受の交換に非常に手間がかかる不都合がある。 そこで,この発明は上記の不都合を解消し,輸送および破損等による交換作業の容易な大形転がり軸受を形成することができる軸受セグメントを提供することを技術的課題としている。(2頁左上欄2行目~15 行目)(エ) 作用上記の構成から成る軸受セグメントを用いて大形転がり軸受を組立てるには,複数の軸受セグメントを円形に配置し,互に対向する突き合わせ面を当接して突部を凹部に係合したのち,内輪セグメントと外輪セグ メントを連結する連結ボルトを取外す。 上記のようにして形成される大形転がり軸受は,内輪セグメントおよび外輪セグメントに設けられた取付孔を利用してトンネル掘削機等の機械,装置に取付けるのであるが,この場合,軸受セグメントを回転部材と静止部材に取付ける工程と次に取付けられる軸受セグメントを先に取 付けた軸受セグメントに突き合わせ面を突き合わせてその軸受セグメン に取付けるのであるが,この場合,軸受セグメントを回転部材と静止部材に取付ける工程と次に取付けられる軸受セグメントを先に取 付けた軸受セグメントに突き合わせ面を突き合わせてその軸受セグメン トを取付ける工程とを順次行なって機械に対する取付けと,転がり軸受の組立てとを同時に行なうようにする。(2頁右上欄19行目~左下欄14行目)(オ) 実施例第1図は,大形の転がり軸受を示す。この転がり軸受1は複数の軸受 セグメント2から形成されている。 第2図乃至第4図は上記軸受セグメント2を示す。この軸受セグメント2は,内輪セグメント3と外輪セグメント4とを有し,内輪セグメント3の外周面における中央部にはフランジ5が設けられている。 一方,外輪セグメント4の内径面における両端部には一対のフランジ 6,7が設けられ,その一対のフランジ6,7間に軌道溝8が形成されている。一対のフランジ6,7のうち,一方のフランジ6と内輪セグメント2のフランジ5間には保持器9が組込まれ,その保持器9には,主のスラスト荷重を受けるスラスト転動体10が保持されている。また,他方フランジ7と内輪セグメント3のフランジ5間にも保持器11が組 込まれ,その保持器11に保持されたスラスト転動体12はスラスト反力を受けるようになっている。 さらに,軌道溝8と内輪セグメント3のフランジ5間にも保持器13が組込まれ,その保持器13に保持されたラジアル転動体14はラジアル荷重を支持するようになっている。(2頁左下欄18行目~右下欄2 0行目)実施例で示す軸受セグメントは上記の構造から成り,その軸受セグメントを用いて大形転がり軸受を形成するには,第1図に示すように,複数の軸受セグメント1(判決注,「2」の誤記と認める。)を円形に組み合わせ 例で示す軸受セグメントは上記の構造から成り,その軸受セグメントを用いて大形転がり軸受を形成するには,第1図に示すように,複数の軸受セグメント1(判決注,「2」の誤記と認める。)を円形に組み合わせ,内輪セグメント3の突部24をこれに隣接する内輪セグメン ト3の凹部25に係合させると共に,外輪セグメント4の突部27をこ れに隣接する外輪セグメント4の凹部28に係合して隣接する内輪セグメント3の突き合わせ面23同士および隣接する外輪セグメント4の突き合わせ面26同士を互に突き合わせ,次に,連結ボルト22の取外しにより,内輪セグメント3と外輪セグメント4の連結を解除する。(3頁右上欄18行目~左下欄10行目) (カ) 発明の効果以上のように,この発明においては,大形転がり軸受を形成する軸受セグメントが,上記転がり軸受を周方向に分割した構造であるため,輸送がきわめて容易であると共に,各軸受セグメントの両端の突き合わせ面には,位置決め用の突部と凹部とを設けてあるため,真円度の高い転 がり軸受を容易に組立てることができる。 また,軸受セグメントを円形に組み合わせて転がり軸受を形成するため,軸受セグメントは軸方向に分解可能であり,破損による軸受セグメントの取替えも容易である。(4頁左上欄16行目~右上欄6行目)(3) 主引用発明(乙2発明)への副引用発明(乙20発明)の適用 ア主引用発明(乙2発明)の認定前記(2)アによれば,主引用発明(乙2発明)は,建築,土木の基礎工事に使用する大口径鋼管類(ケーシング)の圧入,引抜きを行うための回転式ケーシングドライバという技術分野に関するものであり,従来技術においては,昇降フレームの分割は,旋回ベアリング(回転リングの回転駆動 用の油圧モータが昇降フレ の圧入,引抜きを行うための回転式ケーシングドライバという技術分野に関するものであり,従来技術においては,昇降フレームの分割は,旋回ベアリング(回転リングの回転駆動 用の油圧モータが昇降フレーム外周部に位置する場合には,その内輪)の取付座を避け,昇降フレーム内周の円形開口部は非分割としていたところを,近年における建造物の高層化等に伴うケーシングの径の増大により,円形開口部を有する中間分割フレームのサイズ及び重量が大となり,大型化すると輸送が容易ではなくなっているという技術的課題が生じていた ため,これを解決すべく,昇降フレームにつき,旋回ベアリングの取付座 を分断するように,昇降フレーム内周の円形開口部についても分割するという構成を採用し,もって,中間分割フレームのサイズが昇降フレームの開口部の径に比例して大きくなることを防止し,輸送制限以下のサイズ及び重量の選択を容易に行うことができるようにし,輸送が容易となるという効果を生ずるようにした技術的思想であると認められる。そして,前記 (2)アによれば,このような主引用発明(乙2発明)の構成は,本件発明の構成に引き直すと,ベースフレームに昇降且つ回動可能に支持され,円筒状部材の外周部に着脱される把持機構と,この把持機構を駆動する回転駆動装置とを備えた立坑構築機において,前記ベースフレームは組立可能に複数に分割された分割フレームを備え,前記把持機構は環状の歯車付ベア リングを備えていることを特徴とする立坑構築機,というものであると認められる。 イ本件発明と主引用発明(乙2発明)との対比本件発明と主引用発明(乙2発明)とは,本件発明の構成要件AないしD,Eの一部,Fが一致点となるものであるが,他方,本件発明は,環状 の歯車付ベアリングを構成する 用発明(乙2発明)との対比本件発明と主引用発明(乙2発明)とは,本件発明の構成要件AないしD,Eの一部,Fが一致点となるものであるが,他方,本件発明は,環状 の歯車付ベアリングを構成する複数に分割された円弧状ベアリング片を備えているのに対し,乙2発明は,把持機構が環状の歯車付ベアリングを備えているが,歯車付ベアリングは複数に分割された円弧状ベアリング片を備えておらず,その両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリングを構成するようにされていない点で相違するものであると認められる(以下, この相違点を「本件相違点」という。)。 ウ副引用発明(乙20発明)の認定(ア) 前記(2)イによれば,副引用発明(乙20発明)は,トンネル掘削機のカッタヘッド等を回転自在に支持する大形転がり軸受という技術分野に関するものであり,従来技術においては,大形転がり軸受の内輪及び 外輪が削り出しによって形成された環状のものであったが,転がり軸受 が超大型化すると,その転がり軸受を輸送することができなくなるという技術的課題が生じていたため,これを解決すべく,大形転がり軸受を周方向に分割して複数の軸受セグメントとするという技術的思想を採用したものであって,本件発明の構成要件Eに相当する構成が開示されていると認められる。 (イ) 原告の主張についてa この点,原告は,乙20発明は,環状の軸受1を「内輪,外輪を,軸を含む同じ平面で複数に分割」して軸受セグメント2を構成し,さらに,この軸受セグメント2を内輪セグメント3及び外輪セグメント4にバラバラに分割したものであるにすぎず,また,乙20公報の図 2は,円形に組み上がったものの一部を仮想的に抜き出して表示したものにすぎない旨主張する。 しかし,前記(2)イによれば ント4にバラバラに分割したものであるにすぎず,また,乙20公報の図 2は,円形に組み上がったものの一部を仮想的に抜き出して表示したものにすぎない旨主張する。 しかし,前記(2)イによれば,乙20公報の特許請求の範囲には,「複数個円形に組合わせることによって内輪が形成される円弧状の内輪セグメントと,同じく複数個円形に組合わせることで外輪が形成さ れる円弧状の外輪セグメントと,上記内輪セグメントと外輪セグメントの間に組込まれてスラスト荷動を支持するスラスト転動体およびラジアル荷重を支持するラジアル転動体と,各転動体を保持する保持器とから成」る「大形転がり軸受の軸受セグメント。」と記載されており,内輪セグメント,外輪セグメント及び転動体等から成る軸受セグ メントという,バラバラに分割したものでない,有機的なひとまとまりの技術事項を優に把握することができる。また,前記(2)イによれば,乙20公報の図2については,乙20公報の実施例に「第1図は,大形の転がり軸受を示す。この転がり軸受1は複数の軸受セグメント2から形成されている。第2図乃至第4図は上記軸受セグメント 2を示す。この軸受セグメント2は,内輪セグメント3と外輪セグメ ント4とを有し,内輪セグメント3の外周面における中央部にはフランジ5が設けられている。(中略)実施例で示す軸受セグメントは上記の構造から成り,その軸受セグメントを用いて大形転がり軸受を形成するには,第1図に示すように,複数の軸受セグメント1(判決注,「2」の誤記と認める。)を円形に組み合わせ」ると記載されて おり,転がり軸受は複数の軸受セグメントを円形に組み合せることにより形成されるものであって,図2は,当該軸受セグメントの具体的構成を示したものであり,円形に組み上がったも わせ」ると記載されて おり,転がり軸受は複数の軸受セグメントを円形に組み合せることにより形成されるものであって,図2は,当該軸受セグメントの具体的構成を示したものであり,円形に組み上がったものの一部を仮想的に抜き出して表示したものでないことは明らかである。 以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。 b また,原告は,乙20発明の軸受セグメントは,ベアリングの部品であり,そのままでは外輪と内輪と転動体がバラバラになるため,連結ボルトが必要であり,この連結ボルトを外さなければ,ベアリングとして機能しない点で,本件発明の構成要件Eと異なる旨主張する。 しかし,前記(ア)に説示したとおり,乙20公報は,大形転がり軸受 を輸送することができないという技術的課題を解決するため,大形転がり軸受を周方向に分割して複数の軸受セグメントとするという構成を採用した点において,本件発明の構成要件Eと技術的思想を共通にするものであるから,この軸受セグメントがベアリングの組立前の状態では外輪と内輪と転動体を一体とするために連結ボルトを用いるも のであるとしても,本件発明の構成要件Eが開示する構成と異なるということにはならない。 以上によれば,上記の点の指摘をもって,乙20発明に本件発明の構成要件Eが開示されていない旨をいう原告の上記主張は採用することができない。 c さらに,原告は,乙20発明は,外輪と内輪の分割位置は合うもの の,転動体保持器が長尺構造であることと断面的に軌道が3か所あることによりほぼ同位置とはならず,解体が非常に困難な構成であるものであり,この点においても,分解,接続を頻繁に行う立坑構築現場で用いる本件発明の構成要件Eと異なる旨主張する。 しかし,乙20発明につき,その解体が 位置とはならず,解体が非常に困難な構成であるものであり,この点においても,分解,接続を頻繁に行う立坑構築現場で用いる本件発明の構成要件Eと異なる旨主張する。 しかし,乙20発明につき,その解体が非常に困難な構成のもので あるとしても,前記説示のとおり,本件発明も,そもそも立坑構築機を簡単に解体することは課題としていないし,また,乙20発明において転動体保持器が長尺構造である点も,本件発明において転動体を「球」ではなく「ころ」とすることを排除していない(本件明細書の段落【0011】)ことも踏まえれば,乙20発明の,大形転がり軸受 を形成する軸受セグメントを周方向に分割し,複数に分割された軸受セグメントとし,これを複数個円形に組み合わせ,互いに対向する突合せ面を当接して転がり軸受を形成するという構成をもって,本件発明の,構成要件Eに係る構成に相当するものと評価することができるものといえる。 以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。 エ主引用発明(乙2発明)への副引用発明(乙20発明)の組合せの可否(ア) そこで両者の技術分野の関連性,課題の共通性,作用,機能の共通性等について検討するに,まず技術分野の関連性については,主引用発明(乙2発明)の技術分野は,建築,土木の基礎工事に使用する大口径鋼 管類(ケーシング)の圧入,引抜きを行うための回転式ケーシングドライバというものであり,副引用発明(乙20発明)の技術分野は,トンネル掘削機のカッタヘッド等を回転自在に支持する大形転がり軸受というものであって,いずれも土木作業において大口径の鋼管類を回転させて圧入し地盤に穴を開ける建設機械に関するものであるから,技術分野 の関連性が認められるものというべきである。また課題の共通性につい いずれも土木作業において大口径の鋼管類を回転させて圧入し地盤に穴を開ける建設機械に関するものであるから,技術分野 の関連性が認められるものというべきである。また課題の共通性につい ては,主引用発明(乙2発明)の課題は,近年における建造物の高層化等に伴うケーシングの径の増大により,円形開口部を分割せずこれをそのまま含んでいた中間分割フレームのサイズ及び重量が大となり,大型化すると輸送が容易ではなくなっていたというものであり,副引用発明(乙20発明)の課題は,転がり軸受の超大型化により,削り出しによ り形成された環状の内輪及び外輪を含む転がり軸受を輸送することができなくなるというものであって,いずれも,上記の建設機械が大型化して輸送できなくなるというものであるから,課題の共通性も認められるものというべきである。さらに作用,機能の共通性については,主引用発明(乙2発明)の作用,機能は,昇降フレームにつき,旋回ベアリン グの取付座についても分断するように,昇降フレーム内周の円形開口部についても分割し,中間分割フレームのサイズが昇降フレームの開口部の径に比例して大きくならないようにして,輸送制限以下のサイズ及び重量の選択を容易に行うことができるようにしたというものであり,副引用発明(乙20発明)の作用,機能は,大形転がり軸受を周方向に分 割して複数の軸受セグメントとするようにして,輸送が極めて容易となるようにしたというものであって,いずれも,輸送の容易化のため,上記の建設機械において,従来分割がされていなかった円形構成部分(乙2発明は旋回ベアリングの取付座,乙20発明は転がり軸受であり,いずれも環状のベアリングに関連する円形構成部分)を周方向に分割し, 輸送の容易化を図ったというものであるから,作用, 成部分(乙2発明は旋回ベアリングの取付座,乙20発明は転がり軸受であり,いずれも環状のベアリングに関連する円形構成部分)を周方向に分割し, 輸送の容易化を図ったというものであるから,作用,機能の共通性も認められるというべきである。 以上によれば,主引用発明(乙2発明)と副引用発明(乙20発明)の両者においては,技術分野の関連性,課題の共通性,作用,機能の共通性が認められ,当業者において,両者を組み合わせる動機付けがある ものと認められる。そして,その他,本件全証拠をみても,両者の組合 せを阻害する要因は見当たらない。そうすると,主引用発明(乙2発明)に副引用発明(乙20発明)を組み合わせることにより,上記ア,ウに照らし,当業者は,本件相違点に係る構成を容易に想到し,本件発明を容易に発明することができたものといわなければならない。 (イ) 原告の主張について a この点,原告は,乙2発明においては,昇降フレーム4については,旋回ベアリング6の取付座4aを分断するように分割する一方,乙2公報中のその余の記載を検討しても,旋回ベアリング6自体を分割することは一切記載されておらず,同分割についての積極的な動機や示唆があるとはいえないから,乙2発明に乙20発明を組み合わせる動 機付けが存しない旨主張する。 しかし,たとえ乙2公報に旋回ベアリング6自体を分割することが一切記載されていないとしても,前記説示のとおり,主引用発明(乙2発明)と副引用発明(乙20発明)の両者においては,技術分野の関連性,課題の共通性,作用,機能の共通性が認められるから,この 点からして,当業者において,両者を組み合わせる動機付けがあるものと優に認められる。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 b ま 作用,機能の共通性が認められるから,この 点からして,当業者において,両者を組み合わせる動機付けがあるものと優に認められる。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 b また,原告は,乙2発明に乙20発明を組み合わせるためには,乙2発明の回転リング7の構成自体を大きく改変する必要が生ずると解 されるから,乙20発明を乙2発明と組み合わせることには明らかな阻害要因があるといえる旨主張する。 しかし,前記(2)アの説示によれば,乙2発明において,回転リング7上には,ケーシング13を掴むためのバンド装置14が取り付けられ,該バンド装置14は,回転リング7に固定された略半円状の固定 バンド14aと,該固定バンド14aの両端に枢着軸15,16を中 心として開閉自在に取り付けられた一対の可動バンド14b,14cと,これらの可動バンド14b,14cの先端間に両端をピン17,18により連結して取り付けたバンド開閉用の油圧式バンドシリンダ14dとから成っている。そして,証拠(乙2)及び弁論の全趣旨によれば,乙2発明の回転リング7は,バンド装置14全体を固定する のではなく,そのうち任意の大きさである固定バンド14aを固定するとともに,ボルト12により旋回ベアリング6の外輪6bに一体化され,外輪6b及びバンド装置14とともに回転する部品であると認められる。そうすると,回転リング7に固定される固定バンド14aの大きさが任意であることに応じて,当業者は,固定先の回転リング 7を任意の位置で分割することも容易に認識するというべきであり,また,固定バンド14aの分割位置と,回転リング7の分割位置を揃えなければならない技術的根拠も見い出し難いから,当業者は,乙2発明の回転リング7を,乙20発明の軸受セグ に認識するというべきであり,また,固定バンド14aの分割位置と,回転リング7の分割位置を揃えなければならない技術的根拠も見い出し難いから,当業者は,乙2発明の回転リング7を,乙20発明の軸受セグメント2(旋回ベアリング6を分割したもの)の両端部に応じた任意の位置で分割すること も容易に認識するというべきである。そうすると,乙2発明の回転リング7の構成を改変する必要が生ずるからといって,そのことをもって,乙2発明に乙20発明を組み合わせる阻害要因となるとはいえないと解される。 この点,原告は,旋回ベアリング6とバンド装置14の間に設けら れた回転リング7を任意の位置で分割するということ自体が,技術常識又は周知慣用技術であるということもできない旨主張する。 しかし,回転リング7を任意の位置で分割することが技術常識又は周知慣用技術ではないとしても,当業者が,乙2発明に乙20発明を組み合わせるに当たり,このことを容易に認識することができる以上, 上記組合せの妨げとなるものとはいえない。また,乙2発明に乙20 発明を組み合わせて外輪6bを含む旋回ベアリング6を分割するのであれば,外輪6bに一体化されてバンド装置14を支持する回転リング7を外輪6bと同様に分割することは,設計的事項であると解するのが相当である。 以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。 (4) 小括以上によれば,本件特許は当業者が乙2発明に基づいて容易に発明することができたもの(特許法29条2項)であるから,特許無効審判により無効にされるべきもの(同法123条1項2号)である。 なお,本件特許については,知的財産高等裁判所令和2年(行ケ)第10 102号事件同2年3月24日判決(裁判所ホームページ)が,特許無効審 効にされるべきもの(同法123条1項2号)である。 なお,本件特許については,知的財産高等裁判所令和2年(行ケ)第10 102号事件同2年3月24日判決(裁判所ホームページ)が,特許無効審判請求の不成立審決に対する取消請求を棄却しているところ,原告は,これを理由として,口頭弁論再開の申立てをしているが,同判決は,乙2発明を主引用発明とし,乙20発明を副引用発明として適用することに基づく進歩性の欠如については判断しておらず,上記判断は同判決と矛盾するものでは ないから,再開の必要性は認められない。 3 結論原告は,その他縷々詳細に主張するが,その主張内容を証拠に照らしつつ慎重に検討するも,上記1,2の認定判断を左右するに足りるものはなく,いずれも採用の限りでない。 以上によれば,被告製品は本件発明の技術的範囲に属するものではなく,本件特許権の侵害(文言侵害)が成立しない上,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものであって,特許法104条の3第1項の規定により,原告は,被告らに対し,本件特許権を行使することができない。 よって,その余の争点について判断するまでもなく,原告の被告らに対する 各請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判 決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官田中孝一 裁判官横山真通 裁判官本井修平は,転補につき,署名押印することができない。 裁判長裁判官田中孝一 (別紙) 物件目録次の型名の立坑構築機型名「LMV-4000D 裁判長 裁判官田中孝一 (別紙) 物件目録 次の型名の立坑構築機 型名「LMV-4000DZR」 型名「LMV-5000DZR」 ※別紙特許公報及び別紙1乃至5は掲載省略
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