- 1 - 主文 原判決を破棄する。 本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。 理由 上告代理人高田洋平ほかの上告受理申立て理由(ただし、排除された部分を除く。)について 1 原審の確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。 ⑴ 被上告人らは、市町村又は一般廃棄物の処理に関する事務を共同処理するために市町村によって設置された一部事務組合(以下、併せて「市町村等」という。)であり、その区域(一部事務組合についてはこれを組織する市町村の区域。 以下同じ。)内で生じた一般廃棄物について、廃棄物処理業者であるキンキクリーンセンター株式会社に委託して、上告人の区域内に存する廃棄物最終処分場(以下「本件最終処分場」という。)において処分していた。 ⑵ キンキクリーンセンターは、平成8年5月以降、本件最終処分場において、平成4年5月の福井県知事への届出に係る埋立容量を大幅に超える量の廃棄物を埋め立てたが、平成12年8月、福井県の行政指導を受け、本件最終処分場への廃棄物の搬入を停止した。 ⑶ 福井県及び上告人によって設置された敦賀市民間最終処分場環境保全対策協議会は、平成18年2月、本件最終処分場において、埋立地からの浸出液が混入した地下水が処理されないまま周辺の河川に流出しており、本件最終処分場から流出する地下水に複数の有害物質が基準値を超えて含まれ、上記河川の下流域の農作物や井戸水等に影響を生ずるおそれがある旨を報告した。 ⑷ 上告人の市長は、平成18年5月、本件最終処分場において廃棄物の処理及令和5年(受)第606号事務管理費用償還等請求事件令和7年7月14日第一小法廷判決- 2 -び清掃に関する法律(以下「法」とい 長は、平成18年5月、本件最終処分場において廃棄物の処理及令和5年(受)第606号事務管理費用償還等請求事件令和7年7月14日第一小法廷判決- 2 -び清掃に関する法律(以下「法」という。)6条の2第2項に規定する一般廃棄物処理基準に適合しない処分が行われたことにより、生活環境の保全上支障が生じ又は生ずるおそれがあり、その支障の除去又は発生の防止のために必要な措置(以下「支障の除去等の措置」という。)を講ずべきであるとして、法(平成18年法律第5号による改正前のもの)19条の4第1項に基づき、キンキクリーンセンターに対し、本件最終処分場から外部への漏水防止対策、埋立地からの浸出液の浄化対策等を講ずべきことを命じた。上告人は、同年7月以降、上告人の市長による上記の命令に係る法19条の7第1項に基づく措置として、福井県と共に諸施設の設置工事等を実施した。 2 本件は、上告人が、上記工事等の実施により被上告人らの事務の管理をしたなどと主張して、被上告人らに対し、事務管理に基づく費用償還請求等として、上記工事等の費用の一部に相当する金員の支払を求める事案である。本件では、被上告人らが支障の除去等の措置を講ずる法的義務を負い上告人が民法697条1項所定の他人の事務の管理をしたといえるかが争われている。 3 原審は、要旨次のとおり判断して、上告人の事務管理に基づく費用償還請求を棄却すべきものとした。 市町村等から一般廃棄物の処分の委託を受けた者が、当該市町村等の区域外において上記一般廃棄物の不適正な処分を行い、これに起因して生活環境の保全上支障が生じ又は生ずるおそれがある場合、上記市町村等がその支障の除去等の措置を講ずる法的義務を負うことを具体的に定める法令の規定が見当たらないことなどからすれば、上記市町村等が上記法的義務を負う 上支障が生じ又は生ずるおそれがある場合、上記市町村等がその支障の除去等の措置を講ずる法的義務を負うことを具体的に定める法令の規定が見当たらないことなどからすれば、上記市町村等が上記法的義務を負うということはできない。したがって、この場合に、上記処分の場所がその区域内に含まれる市町村が、その支障の除去等の措置を講じたとしても、上記委託をした市町村等の事務の管理をしたものとはいえず、事務管理は成立しない。 4 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。 - 3 -⑴ 法は、廃棄物の適正な処理をし生活環境を清潔にすることなどにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする(1条)。そして、法は、市町村は、その区域内における一般廃棄物の適正な処理に必要な措置を講ずるよう努め、その区域内で生ずる一般廃棄物について、発生量及び処理量の見込み、適正な処理及びこれを実施する者に関する基本的事項等を定めた一般廃棄物処理計画を策定し、これに従って、自ら又は市町村以外の者に委託するなどして、生活環境の保全上支障が生じないうちに処理しなければならないものとし、その処理は政令で定める一般廃棄物処理基準に従って行うべきものとする(4条1項、6条1項、2項、6条の2第1項、2項)。 これらの規定は、市町村の区域内で生ずる一般廃棄物について、排出者である個々の住民にその処理の責任を負わせたのでは継続的かつ安定的な処理が行われることが期待できないことから、一般廃棄物の適正な処理により生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図るため、個々の排出者に代わって、住民の福祉の増進を図る役割を広く担う市町村に、その区域内の一般廃棄物を適正に処理する責任を負わせたものと解される。 そして、これらの規定は、市町村が市 生の向上を図るため、個々の排出者に代わって、住民の福祉の増進を図る役割を広く担う市町村に、その区域内の一般廃棄物を適正に処理する責任を負わせたものと解される。 そして、これらの規定は、市町村が市町村以外の者に委託して当該市町村の区域外で行った一般廃棄物の処分が一般廃棄物処理基準に適合せず、これに起因して生活環境の保全上支障が生じ又は生ずるおそれがある場合も当然に想定していると考えられるところ、この場合においても、上記の委託をした市町村が一般廃棄物の処理について個々の排出者に代わってその処理の主体として負っている責任を全うするためには、上記委託をした市町村が自らその支障の除去等の措置を講ずる必要があるというべきである。 上記の場合には、立地市町村(上記処分の場所がその区域内に含まれる市町村をいう。以下同じ。)において、当該立地市町村の住民の健康や生活環境への影響を防ぐといった観点から、その支障の除去等の措置を講ずることが求められることもあるが、そのようなときであっても、上記委託をした市町村は、個々の排出者に代- 4 -わって一般廃棄物の適正な処理に関する責任を負うものであって、その区域内において処分を行うことに伴う様々な事実上の負担を免れるという利益を得ているのであるから、本来的にその支障の除去等の措置を講ずべき地位にあるというべきであり、そのように解することが一般廃棄物の円滑な処理に資するものであり、関係市町村間の衡平にもかなうと考えられる。そうすると、上記委託をした市町村は、その支障の除去等の措置を講ずる法的義務を負うというべきである。 このように、市町村がその区域内の一般廃棄物を当該市町村の区域外において処分する場合にもその適正を確保する責任を負うことは、一般廃棄物の処分を市町村以外の者に委託した市町村は、上記処分の場所が 。 このように、市町村がその区域内の一般廃棄物を当該市町村の区域外において処分する場合にもその適正を確保する責任を負うことは、一般廃棄物の処分を市町村以外の者に委託した市町村は、上記処分の場所がその区域内に含まれる市町村に対し、あらかじめ、受託者の氏名又は名称等に加え、埋立処分を委託する場合にあっては埋立地の所在地及び残余の埋立容量等を通知し(廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令4条9号イ)、1年以上にわたり継続して委託するときは、当該委託に係る処分の実施の状況の確認を1年に1回以上実地に行う(同号ロ、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則1条の8)とされていることからも裏付けられる。 ⑵ 以上によれば、市町村から一般廃棄物の処分の委託を受けた者が、当該市町村の区域外において一般廃棄物処理基準に適合しない処分を行い、これに起因して生活環境の保全上支障が生じ又は生ずるおそれがある場合に、立地市町村がその支障の除去等の措置を講じたときは、当該立地市町村が上記委託をした市町村の事務の管理をしたものとして、事務管理が成立し得ると解するのが相当である。立地市町村が法19条の7第1項に基づきその支障の除去等の措置を講じた場合には、その措置は当該立地市町村の事務としての性質を有するところ、この場合であっても、上記委託をした市町村が本来的にその支障の除去等の措置を講ずべき地位にあるものとしてこれを講ずる法的義務を負うことに変わりはなく、事務管理の成立が否定されるものではない。そして、以上のことは、上記委託をした者が一般廃棄物の処理に関する事務を共同処理するために市町村によって設置された一部事務組合であっても異なるものではない。 - 5 - 5 以上と異なる見解の下に、上告人の事務管理に基づく費用償還請求を棄却すべきものとした原審の判断には 理するために市町村によって設置された一部事務組合であっても異なるものではない。 - 5 - 5 以上と異なる見解の下に、上告人の事務管理に基づく費用償還請求を棄却すべきものとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、以上を踏まえて、上告人が事務管理に基づく費用償還請求として被上告人らに償還を求めることができる費用の額等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官中村愼裁判官安浪亮介裁判官岡正晶裁判官堺徹裁判官宮川美津子)
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