- 1 -主文 本件訴えを却下する。 訴訟費用及び参加費用は原告らの負担とする。 理由 第1請求被告が平成19年4月26日付けで被告参加人国に対してしたα港港湾区域内の水域における浚渫工事に係る工事協議応諾処分を取り消す。 第2事案の概要 事案の骨子本件は,α港港湾区域内の水域(以下「本件水域」という。)において漁業等をする原告らが,本件水域内において被告参加人国(以下「参加人」という。)が行う浚渫工事(以下「本件浚渫工事」という。)は有害物質によって汚染されたヘドロを拡散させ海洋を汚染するものである等主張し,被告が港湾法37条1項3号,同条3項に基づき,本件浚渫工事について参加人との協議に応じた行為(以下「本件協議応諾」という。)の取消しを求めた事案である。 基礎となる事実(1)当事者等ア原告aは,本件水域を含む海域に漁業権を有するb漁業協同組合(以下「本件漁業協同組合」という。)の組合員であり,本件水域において主に潜水漁業,底引き網漁を営む者である(甲4,60,96)。 イ原告c,同d,同e,同f,同g(以下,同原告らを「原告cら」とい- 2 -う。)は,「h」と称する団体の構成員であって,本件水域において,ヨットやボートを使った海洋レクリエーション,教育活動,海上デモ等の社会活動を定期的に行っている者である(甲7,8(枝番を含む。以下,枝番のあるものは,特に断りのない限り枝番を含む。),69)。 ウ原告i,同j,同k(以下,同原告らを「原告iら」という。)は,本件水域において海釣りを行っている者である(甲117)。 エ被告は,α港の港湾管理者(港湾法33条)である。 オ参加人は,本件浚渫工事の実施主体であり,被告から本件協議応諾を受けた者である。 (2)本件訴訟に至る経緯等ア参加人と在 (甲117)。 エ被告は,α港の港湾管理者(港湾法33条)である。 オ参加人は,本件浚渫工事の実施主体であり,被告から本件協議応諾を受けた者である。 (2)本件訴訟に至る経緯等ア参加人と在日米海軍は,平成18年6月15日,α港に隣接する在日米海軍β基地に空母○○に代わり原子力空母○○が配備されることに伴い,同空母交替のため,参加人が,本件水域の一部において,堆積したヘドロ及び海底の岩盤を掘削して浚渫する本件浚渫工事を行うことを合意した(甲31,99,丙1ないし4)。 イ本件水域に共同漁業権を有する本件漁業協同組合は,本件浚渫工事による漁業活動への影響を懸念していたが,平成19年3月28日,参加人(横浜防衛施設局長)に対し,本件浚渫工事に同意した(甲54,99,151,丙9)。 ウ参加人は,同年3月29日,本件浚渫工事が港湾法37条1項3号の水域施設の建設に該当するとして,同条1項,同3項に基づき,α港の港湾管理者である被告に協議を求め,被告は,同年4月26日付けでこれに応- 3 -じた(本件協議応諾,甲33,99,乙1)。 エ原告らは,同月6日,当裁判所に対し,本件協議応諾の差止めを求める本件訴訟を提起したが,被告が上記協議応諾をしたことから請求の趣旨を変更した。 オ本件浚渫工事の実施期間は,上記本件協議応諾の日から平成20年5月31日までの予定である(甲33,99,丙5)。 (3)関係法令等の定め(抜粋)ア港湾法37条1項港湾区域内において又は港湾区域に隣接する地域であつて港湾管理者が指定する区域(以下「港湾隣接地域」という。)内において,左の各号の一に掲げる行為をしようとする者は,港湾管理者の許可を受けなければならない。(中略)一港湾区域内の水域(政令で定めるその上空及び水底の区域を含む。以下同じ。) 」という。)内において,左の各号の一に掲げる行為をしようとする者は,港湾管理者の許可を受けなければならない。(中略)一港湾区域内の水域(政令で定めるその上空及び水底の区域を含む。以下同じ。)又は公共空地の占用二港湾区域内の水域又は公共空地における土砂の採取三水域施設,外郭施設,係留施設,運河,用水きよ又は排水きよの建設又は改良(第一号の占用を伴うものを除く。)四前各号に掲げるものを除き,港湾の開発,利用又は保全に著しく支障を与えるおそれのある政令で定める行為2項港湾管理者は,前項の行為が,港湾の利用若しくは保全に著しく支障を与え,又は第3条の3第9項若しくは第10項の規定により公示された港湾計画の遂行を著しく阻害し,その他港湾の開発発展に著し- 4 -く支障を与えるものであるときは,許可をしてはならず,また,政令で定める場合を除き,港湾管理者の管理する水域施設について前項第1号の水域の占用又は同項第4号の行為の許可をしてはならない。 3項国又は地方公共団体が,第1項の行為をしようとする場合には,第1項中「港湾管理者の許可を受け」とあるのは「港湾管理者と協議し」と,前項中「許可をし」とあるのは「協議に応じ」と読み替えるものとする。 イ同法3条の31項重要港湾の港湾管理者は,港湾の開発,利用及び保全並びに港湾に隣接する地域の保全に関する政令で定める事項に関する計画(以下「港湾計画」という。)を定めなければならない。 2項港湾計画は,基本方針に適合し,且つ,港湾の取扱可能貨物量その他の能力に関する事項,港湾の能力に応ずる港湾施設の規模及び配置に関する事項,港湾の環境の整備及び保全に関する事項その他の基本的な事項に関する国土交通省令で定める基準に適合したものでなければならない。 第3 争点 本件協議応諾が行政 港湾施設の規模及び配置に関する事項,港湾の環境の整備及び保全に関する事項その他の基本的な事項に関する国土交通省令で定める基準に適合したものでなければならない。 第3 争点 本件協議応諾が行政処分に当たるか。 原告らに本件協議応諾の取消しを求める法律上の利益(原告適格)が認められるか。 本件協議応諾は適法か否か。 第4争点に関する当事者及び参加人の主張- 5 - 争点1(本件協議応諾が行政処分に当たるか)について(原告らの主張)(1)ア港湾区域内等で私人あるいは国が水域を占用して工事を行う場合には,港湾法上,いずれも港湾管理者の許可が必要であり,国の立場は私人と何ら異ならない。 港湾法37条3項が同条1項中「港湾管理者の許可を受け」(以下,同許可を「許可処分」という。)とあるのを,「港湾管理者と協議し」(以下,港湾管理者が同協議に応じることを「協議応諾」という。)と読み替える趣旨は,国が地方自治体に許可を求めるというのは用語上適当ではないという配慮に過ぎず(甲78),同条3項が1項の許可処分を受けることを要しない旨の但し書きを置いていないこと,同条4項の占用料徴収の点以外で協議応諾に特別な効果を与えた規定が存在しないことからしても,協議応諾の法的性質は許可処分に他ならない。 このことは,協議応諾と許可処分の手続が実質的に何ら異ならないこと(甲61,62),被告が許可処分に関する標準処理期間を協議応諾にも適用していること(甲56,63),参加人が行政機関としての行政事件訴訟法23条ではなく,同22条に基づいて訴訟参加の申立てをしていることからしても明らかである。 イ平成16年の行政事件訴訟法改正の趣旨は,司法の行政に対するチェック機能を強化することにあり,原告適格のみならず行政処分性の認定においても,救済範囲を限 をしていることからしても明らかである。 イ平成16年の行政事件訴訟法改正の趣旨は,司法の行政に対するチェック機能を強化することにあり,原告適格のみならず行政処分性の認定においても,救済範囲を限定するような解釈は上記法改正の趣旨に反するものとしてなされるべきではない。 - 6 -そして,原告適格の認定におけるのと同様に,行政処分性の認定においても関連法令の趣旨や取扱いも参酌されねばならない。本件においては,港湾法と同様に本件浚渫工事に港則法と海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(以下「海洋汚染防止法」という。)とが適用されるが,両法律においては,工事の主体が国や地方公共団体であるか私人であるかを問わず,浚渫工事や海洋投入処分について許可処分を受けるものとしている。実際に,本件にあっては工事の主体が参加人であるとして,参加人を対象に許可処分等がされている(港則法につき甲138,海洋汚染防止法につき丙7)。 ウ同一の法律に基づく同種の工事について,それが民間の申請による場合と公法人の申請による場合とで手続を異にする例としては,建築基準法6条以下の確認処分に対する同法18条の特例が挙げられる。そして,平成10年法律100号による改正がされる前は,建築基準法18条3項において,公法人から建築工事前に建築主事に対し同条2項に基づき通知があった場合,建築主事は当該建築物の計画が建築関係法令に適合するか審査し,その結果を公法人に通知することが規定されていた。この同条3項の「通知」行為の取消しを求めた事案について,裁判所は処分性を認めている(大阪高裁昭和60年5月7日・行政事件裁判例集36巻5号633頁,水戸地裁昭和57年9月7日・判例タイムズ482号138頁参照)。 (2)ア一方,被告及び参加人は,協議応諾は行政組織相互間の内部的な行 高裁昭和60年5月7日・行政事件裁判例集36巻5号633頁,水戸地裁昭和57年9月7日・判例タイムズ482号138頁参照)。 (2)ア一方,被告及び参加人は,協議応諾は行政組織相互間の内部的な行為に過ぎないと主張する。 - 7 -しかしながら,港湾管理者は地方公共団体であり(港湾法2条,同33条),港湾法は国の港湾管理権を排除し,港湾の管理等について地方公共団体が一元的に決定すべきであるとの考え方に立っていることから,国は港湾管理者の権限行使について監督あるいは補助する立場にはないこと(甲77),地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(平成11年法律87号)359条により,港湾法37条の許可権者は従前の「港湾管理者の長」という機関から「港湾管理者」という公法人に変更されたこと,同法により地方自治法も改正され,地方公共団体の長に対する機関委任事務が全面的に廃止されたことから,国と港湾管理者との関係はもはや行政機関相互の関係ではない。 イまた,被告及び参加人は,国と港湾管理者との間で協議は不調となった場合には,是正の要求(地方自治法245条の5)や国地方係争処理委員会による審査(同法250条の13以下)による解決手段が予定されていると主張する。 しかしながら,このような解決手段が用意されていることは,行政処分性を否定する根拠にはならない。 すなわち,是正の要求については,国は,本件浚渫工事の主体である防衛大臣と,国土交通行政を監督する行政機関としての国土交通大臣の両性格を併有しており,当事者として行政訴訟により不許可処分を取り消すという手段と,行政機関として「その担当する事務」について是正の要求をするという手段の両方を執り得るに過ぎない。 また,同法250条の13における「国の関与」とは,国の行政機関が- 8 - り消すという手段と,行政機関として「その担当する事務」について是正の要求をするという手段の両方を執り得るに過ぎない。 また,同法250条の13における「国の関与」とは,国の行政機関が- 8 -行う同法245条各号所定の行為であるところ,本件における協議は水域施設建設工事を推進する事業主体としての国の行為に過ぎないので,本件は国地方係争処理委員会による審査とは無関係である。しかも,国の関与の一類型である「普通地方公共団体との協議」(同条2号)は,地方公共団体の自主性・自立的決定に対するやむを得ない制約として制度化されているものであり,港湾法37条の協議とは全く趣旨を異にする。 ウ(ア)さらに,被告及び参加人は,国が監督処分あるいは罰則の適用を受けないことを内部的行為の根拠として挙げているが,被告及び参加人の主張する条文解釈は誤りである。 (イ)すなわち,港湾法37条3項は,国又は地方公共団体が「第1項の行為」をしようとするときは読み替えると規定していることから,同項も「第1項の行為」の一場合であって,違う用語を用いているに過ぎない。また,同2項が「前項の行為」と規定するのみで「前項及び3項の行為」と規定していないにもかかわらず,同2項所定の要件が同3項の要件となることは争いがない。さらに,同4項はただし書で同3項について適用を排除していることから,港湾法は,明文の規定がない場合には同じ扱いとし,異なる扱いをする場合には,明文の規定で定めるという立法政策をとっているものと解される。被告及び参加人が主張する同法38条の2も,このように異なる扱いをする場合であるから,明文の規定で書き分けられているに過ぎない。同法56条も,1項の行為が基本行為とされ,同3項によって,同法37条2項ないし6項が「第1項の場合に」準用するとされ,同法37 扱いをする場合であるから,明文の規定で書き分けられているに過ぎない。同法56条も,1項の行為が基本行為とされ,同3項によって,同法37条2項ないし6項が「第1項の場合に」準用するとされ,同法37条と同じ構造になっている。 - 9 -したがって,同法56条の4所定の「第37条第1項(の規定ないしその)規定による許可に付した条件に違反した者」とは,建築基準法18条1項のような適用除外規定も設けられていない以上,扱いを異にする明文の規定のない場合なので,港湾法37条3項の場合も含まれ,協議応諾以前に工事を開始した場合や,協議に付された条件に違反した場合には,港湾管理者は国に対し工事の中止,是正を命ずることができると解さなければならない。 (ウ)被告及び参加人が指摘する道路法71条については,同法20条及び同法31条の「協議」は,道路の特定部分に関し,共同管理者としての地位を有する複数の機関に対し,管理権限の共同行使を促す規定であって,本件とは全く関係がない。同法35条は,法文自体が「道路管理者の同意」を占用要件と規定し,適法な道路の占用確保など,同意の実効性を確保するためには,協議条項上の是正請求権や協議破棄権を個別に規定しておくという,いわば契約法的対処をすることが立法趣旨とされている(丙13)。他方,同法71条1項及び同2項の各柱書は,同条の処分の対象を,道路法上の「許可若しくは承認」処分を受けた者ないしは本来受けるべき者に限定しているから,同意の相手方が対象から除外されることは文理上明らかである。 (エ)国や地方公共団体が主体となって行う工事の場合,実際に工事を行うのは民間業者であるから,その工事に対して即効性のある監督処分が行えないとすると,港湾法37条2項の趣旨を全うすることができず,港湾管理権を一元的に地方公共団体に帰 行う工事の場合,実際に工事を行うのは民間業者であるから,その工事に対して即効性のある監督処分が行えないとすると,港湾法37条2項の趣旨を全うすることができず,港湾管理権を一元的に地方公共団体に帰属させた同法の趣旨に反する。 - 10 -国の工事を請け負った民間業者が許可条件に違反した場合に,監督処分が必要であり,なされた実例がある(甲150)。 (オ)また,仮に監督処分の適用がないとしても,監督処分が発動されるか,罰則の適用があるか否か,また処分者が占用料等の対価を徴収する権限を取得するかなどの問題は,いわば行政処分の付随的効果に関する問題であって,行政処分性を根拠づける工事の解禁という本来的効果とは別問題である。 エ処分性が否定された例として被告及び参加人が指摘する2つの判例(後記(被告及び参加人の主張)(1)ア)は,いずれも当該行為が直接に行為の名宛人の権利義務を形成(又はその範囲を確定)するものではないという点に着目し,「行政機関」相互の関係を論じたのであり,本件のように独立した行政主体の相互関係に触れたものではない。 (3)以上によれば,本件協議応諾は,参加人に対し水域施設建設工事の禁止を解除するという法的効果を直接にもたらすものであり,行政処分である。 (被告及び参加人の主張)(1)ア行政処分とは,公権力の主体たる国又は地方公共団体が法令の規定に基づいて行う行為のうち,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうが,行政機関相互間における行為のように,直接国民に向けられたものではなく,行政組織内の内部的な行為に過ぎないものについては,原則として行政処分性は認められない(最高裁昭和34年1月29日第一小法廷判決・民集13巻1号32頁,最高裁昭和53年12月8日第二小法廷判決・民 行政組織内の内部的な行為に過ぎないものについては,原則として行政処分性は認められない(最高裁昭和34年1月29日第一小法廷判決・民集13巻1号32頁,最高裁昭和53年12月8日第二小法廷判決・民集32巻9号161- 11 -7頁参照)。 ただし,行政機関相互間あるいは行政主体間における行為のすべてが内部的行為として処分性を否定されるものではなく,当該行為の根拠となる法律が,当該行為を受けた行政機関(主体)について,国民がこれを受けた場合と同様の立場に立つとの立法政策を採っている場合には,処分性が認められ,当該行政機関は抗告訴訟で争うことができるというべきである。 イ上記の観点から港湾法37条を検討するに,同3項が,工事等を行おうとする者が国である場合には「許可」を「協議」と読み替えるとしている趣旨は,港湾区域及び公共空地は国の公所有権の対象となるものであるから,国がこれらについて一定の行為をしようとするときは,許可を受ける必要がなく,協議で十分であるとしたためであると考えられる(丙6)。 そもそも,海は古来より自然のままで一般公衆の共同使用に供されてきたところのいわゆる公共用物であって,国の直接の公法的支配管理に服するから(最高裁昭和61年12月16日第三小法廷判決・民集40巻7号1236頁参照),港湾の利用方法については本来国が決定すべきであって,港湾法は,単に港湾の管理について地方公共団体に委ねているに過ぎないというべきである。この観点からすれば,およそ国が行う港湾の利用について,何人かの許可処分を受けるとの立法政策は採られていないというべきである。 そうすると,港湾法は,公共用物である港湾区域等について,国が事業者として公益目的で使用する場合と私人がこれを使用する場合とを区別- 12 -し,法的取扱いを異にしたものとい というべきである。 そうすると,港湾法は,公共用物である港湾区域等について,国が事業者として公益目的で使用する場合と私人がこれを使用する場合とを区別- 12 -し,法的取扱いを異にしたものというべきである。 ウまた,港湾法上,国が港湾管理者との協議が調う前に協議に係る行為を行ったとしても,私人と異なり,監督処分を受けることや罰則を適用されることもないと解すべきである。 すなわち,同法56条の4第1項及び同61条2項1号は,同法37条1項に違反した者に対する措置を規定しており,同3項の協議に関しては何ら規制の対象としていない。これらの規定が同3項に違反した場合にも適用されるのであれば,同法38条の2のように,その旨を明示する規定を設けるものと考えられる。 なお,同法56条の4第1項と類似した規定である道路法71条においても,同法20条,31条,35条等の規定により「協議」の相手方となった者については,道路管理者の許可又は承認を得てそれぞれの規定による行為,工事等を行うものではないことを理由として,監督処分の適用はないとされている(丙13)。 エ仮に協議が調わない場合には,私人とは異なり,国は公益の調整という観点から港湾管理者との話し合いによってこれを解決することになり,これができない場合にも,地方自治法245条の5に基づく是正の要求,同法250条の13以下の国地方係争処理委員会による審査等,行政内部での紛争解決手段が予定されているのである。 (2)以上によれば,本件協議応諾は,国と港湾管理者たる地方公共団体との間において,それぞれが担っている公益を調整するための内部的な行為に過ぎないというべきであり,行政処分ではない。 - 13 - 争点2(原告らに本件協議応諾の取消しを求める法律上の利益が認められるか)について(原告らの ている公益を調整するための内部的な行為に過ぎないというべきであり,行政処分ではない。 - 13 - 争点2(原告らに本件協議応諾の取消しを求める法律上の利益が認められるか)について(原告らの主張)(1)ア平成16年行政事件訴訟法改正は,形式的かつ厳格な「法律上保護された利益説」とは決別したものであるから,同法9条2項所定の4つの考慮要素を原告適格を認める方向に考慮して,実質的に原告適格を広げる裁判実務が求められていると解すべきである(甲139)。 イ被告及び参加人は,根拠法規に利益を受ける者の範囲が特定されていなければ原告適格は原則として否定される旨主張するが,最高裁平成17年12月7日大法廷判決(民集59巻10号2645頁参照,以下「平成17年判決」という。)が定式化した原告適格要件は,法規自体に特定的に記載されているわけではなく,上告参加人が環境アセスメントを実施した際に,当該事業の実施によって「環境に著しい影響を及ぼすおそれのある地域」として,一定の範囲を特定した事実経過が,上記要件の適用に当たって考慮されたものに過ぎない。後述のとおり,港湾法は利益を受ける者の範囲を特定していないのではなく,下位規範である「港湾の開発,利用及び保全並びに開発保全航路の開発に関する基本方針」(平成16年10月14日国土交通省告示1309号。甲73。以下「基本方針」という。),「港湾計画の基本的な事項に関する基準を定める省令」(昭和49年運輸省令35号。甲74。以下「基準省令」という。),港湾計画,審査基準にそれを委任しているのであり,その範囲は最終的に具体的に特定されているのである。 - 14 -また,港湾法は港湾利用者があってこそ,その目的を達することができるものであり,港湾利用者は,一般に,港湾区域周辺に船舶や施設を有している は最終的に具体的に特定されているのである。 - 14 -また,港湾法は港湾利用者があってこそ,その目的を達することができるものであり,港湾利用者は,一般に,港湾区域周辺に船舶や施設を有している者,漁業権者であれば当該港湾区域に漁業権を有する漁業協同組合の組合員である者,船舶所有者であれば船舶検査証書(甲8)の定係港,航行区域欄や,α港内での行事許可申請書(甲7)の反復取得事実をもって,相当程度限定される。 (2)以上の観点をふまえて,本件協議応諾の根拠法令及び関連法令が原告らの利益を個別具体的利益として保護しているといえるかについて検討する。 ア(ア)港湾法3条の2に基づいて国土交通大臣が定めた基本方針(甲73)は,同法1条の目的と相まって各規定の趣旨を具体化し,同法37条2項の解釈指針となるものである。そして,同基本方針は,環境保全を目的とし,港湾に関連する海洋レクリエーションや漁業等多様な活動が滞りなく安全に行われるように自然環境の悪化によって影響を受ける個人の具体的利益への配慮を求め,港湾利用者,市民,NPOから意見を聴取するなど,港湾に関係する個人が環境保全等に参画できるように求めている。 また,基本方針と同様に,同法37条2項の解釈指針となる基準省令(同法3条の3,甲74)も,環境の保全を目的とし,港湾計画の策定に当たっては,周辺の自然的環境,生活環境,漁業に及ぼす影響等関係者の具体的利益を配慮すること,公害防止計画との整合性に配慮することなど,港湾及びその周辺の環境が良好に維持されるように求めている(同省令3条,11条,12条2項,13条等)。 - 15 -被告及び参加人は,基本方針及び基準省令の文言はいずれも抽象的であり,具体的利益の範囲が特定されていないと主張するが,十分特定されていることは明らかであり,さら 2条2項,13条等)。 - 15 -被告及び参加人は,基本方針及び基準省令の文言はいずれも抽象的であり,具体的利益の範囲が特定されていないと主張するが,十分特定されていることは明らかであり,さらに具体的港湾計画で特定されることを予定しているものであって,被告及び参加人の主張は,基本方針や基準省令の趣旨,港湾法の目的,平成17年判決に反する極めて乱暴なものとしか言いようがない。 港湾法37条2項の「港湾の利用若しくは保全に著しく支障を与え(る)」とは,同法3条の3の「当該港湾の開発,利用又は保全上著しく不適当」とほぼ同義であり,港湾法は,具体的港湾計画はともかく,当該工事等が基本方針又は基準省令に適合しない場合には,「港湾の利用若しくは保全に著しく支障を与え(る)」場合に該当するとしていると解さざるを得ない。 (イ)被告が同法37条について定めた審査基準(甲50)は,行政手続法5条という法的根拠に基づき,港湾法によって港湾管理権を与えられた地方自治体が,当該港湾において保護されるべき個別的利益の内容及び性質を具体化した法令の一部ないし関係法令である。 そして,同審査基準は,「環境を悪化させるおそれがないこと」を港湾法37条1項の審査基準として具体的に規定しており,環境の悪化によって被害を受けるおそれのある者の個別的利益を保護しようとするものと解される。 もし同法37条が水質汚染を許可の審査対象としていないとすると,被告が水質汚染が生ずるおそれがある工事を上記審査基準によって不許- 16 -可とすれば違法ということになるが,これは現在の港湾事務が自治事務として地方自治体の解釈権のもとで厳格適正に執行されている実務を根底から覆す解釈である。 (ウ)被告が同法3条の3に基づいて定めたα港港湾計画書及びα港港湾環境計画書(以下「α港港 事務が自治事務として地方自治体の解釈権のもとで厳格適正に執行されている実務を根底から覆す解釈である。 (ウ)被告が同法3条の3に基づいて定めたα港港湾計画書及びα港港湾環境計画書(以下「α港港湾計画」という。甲51,52)も,自然環境の保全を重要な柱とし,周辺事業者,船舶所有者,漁業者,市民等を港湾計画上配慮されるべき主体と位置づけており,同港湾計画の改訂の際には市民の意見を聴取し,環境影響評価手続も行われている(甲91ないし94)。 (エ)被告及び参加人は,港湾法の諸規定の中に意見聴取や異議申出の規定がないことを論拠として主張する。 しかしながら,環境問題,レクリエーション問題等について広く地域住民,学識経験者,港湾関係者等の意見を反映させる目的で地方港湾審議会が設置されていること(甲72,93),及び港湾計画改訂の際に被告のパブリック・コメント条例が適用されパブリック・コメントの手続が採られることによって(甲92),法律上の利益を有する者の保護が図られることになっている。 イ(ア)制定当初の港湾法1条には,環境の保全に配慮することを求める文言は存在しなかったが,昭和48年において港湾公害防止施設,廃棄物処理施設,港湾環境整備施設を港湾施設として追加し,港湾環境整備負担金制度(港湾法43条の5)が設けられるなど,港湾の環境保全を主目的とする改正が行われ(甲71,72,89),平成12年には,昭- 17 -和48年改正の趣旨を明確に示す目的で,同法1条に「環境の保全に配慮しつつ」の文言が加えられた(甲90)。 以上の経緯からして,港湾法は,港湾区域の環境の保全をその目的の一つとしていると考えるべきである。 この点,被告及び参加人は,環境の保全を港湾法の目的とまでいうのは困難であると反論するが,平成17年判決が,環境の保全に配 湾法は,港湾区域の環境の保全をその目的の一つとしていると考えるべきである。 この点,被告及び参加人は,環境の保全を港湾法の目的とまでいうのは困難であると反論するが,平成17年判決が,環境の保全に配慮する等の文言の全くない都市計画法の目的についてさえ,その基本理念には,健康で文化的な都市生活を確保することが含まれていることを理由に個人の環境上の利益まで保護していると判断したことが,本件でも重視されるべきである。 (イ)環境影響評価法は,規模の大きい港湾計画の変更には環境影響評価を行うものとしており,この点について環境保全を趣旨とする港湾法と目的が共通しており,関連法令であるといえる。 (ウ)神奈川県環境影響評価条例(昭和55年神奈川県条例36号。甲95)は,10ヘクタール以上の土砂の採取には環境アセスメントを要するが,港湾管理者が港湾の管理に資すると認めたときは除くとされており,その趣旨は,港湾法の手続によって環境アセスメントと同様の成果が得られるということであり,同条例と港湾法は環境保全を目的とする関連法規であるといえる。 (エ)公有水面埋立法及び海洋汚染防止法は,海洋の環境の保全を目的とし,港湾法と目的を共通にする関連法令であるといえる。 (オ)これら港湾法と趣旨及び目的を共通にする各法令が,周辺住民や関- 18 -係者の意見聴取手続等を設けていることからしても,港湾法も個人の環境上の個別具体的利益を保護していると判断されなければならない。 以上によれば,港湾法37条による許可制度は,港湾区域内等で活動する漁業者,船舶所有者が環境悪化による著しい被害を受けないという個別具体的利益を保護しようという趣旨を含んでいることが明らかである。 (3)ア原告aは,本件漁業協同組合の組合員として漁業を営む権利(漁業法8条1項)の主体であ 化による著しい被害を受けないという個別具体的利益を保護しようという趣旨を含んでいることが明らかである。 (3)ア原告aは,本件漁業協同組合の組合員として漁業を営む権利(漁業法8条1項)の主体であり,主として同組合の共同漁業権の設定海域内で漁業を営み(甲151,154),本件浚渫工事を実施している海域から僅かな距離の海域でミル貝等の潜水漁業及び底引き網漁,α港内の漁業制限のない海域でアナゴ漁をしている。 漁業を営む権利は,漁業権そのものではないが,これと不可分な権利であり,侵害された場合には,妨害排除請求権や妨害予防請求権等の物権的請求権が発生するものと考えられている(鹿児島地裁平成14年2月27日,佐賀地裁平成16年8月26日・判例時報1878号34頁,熊本地裁昭和52年2月28日・下級裁判所民事裁判例集28巻1~4号165頁参照)。本件では,本件漁業協同組合が本件浚渫工事に同意しているが,組合に所属する個々の漁業者が漁業を営む権利に基づいて法律上の利益を主張することを否定することはできない。上記同意は,単に浚渫工事に反対しないという趣旨であり,被害補償の合意がなされたわけでも,漁業権放棄の決議がなされたわけでもないからである。 また,原告aは,小型機船底びき網漁業許可証(甲96)を得て,法定知事許可漁業(漁業法66条1項)の許可を受けている。また,潜水器漁- 19 -業許可証(甲96)を得て,一般知事許可漁業(同法65条1項)の許可をも受けており,共同漁業権に基づかないで操業することができる。すなわち,原告aは,これら法定知事許可漁業,一般知事許可漁業を営む権利の主体でもある。 原告aの漁業の収入は年間約3500万円であり(甲149),その一番多い種目はミル貝,なまこの潜水漁業である。ミル貝は汚染や環境の悪化に弱く,本件浚渫工 一般知事許可漁業を営む権利の主体でもある。 原告aの漁業の収入は年間約3500万円であり(甲149),その一番多い種目はミル貝,なまこの潜水漁業である。ミル貝は汚染や環境の悪化に弱く,本件浚渫工事による汚染の拡散が大きな被害を与えるおそれは大きい。 また,原告aは,α港内の工事において警戒船業務を行っており,本件浚渫工事においても,警戒船に登録され,工事施工者側の一員でもある(甲147)。 以上のとおり,原告aは,漁業を営む権利,知事許可漁業を営む権利,人格権としての生命身体の権利という法律上の利益を有しており,原告適格を有することは明らかである。 イ原告cらはα港内で長年にわたりプレジャーボートによる海洋レクリエーション活動を継続しており,このうち原告eと同gはそれぞれ小型船舶を所有している。 本件浚渫工事及び狭いα港内の航路上での土運船からガット船への土砂の積替作業が行われることにより,原告cらの活動する航路が狭くなり,衝突の危険が増加して生命身体が危険にさらされる(甲31,98)。基本方針上も,海洋レクリエーション活動は他の事業活動と同格に港湾利用の主体として位置づけられ,その利益保護がはかられている。 - 20 -また,α港内の海底には終戦前後に,米軍の爆撃や旧海軍の弾薬投棄等によって不発弾が存在する可能性が否定できず,海底を浚渫すれば,それらが爆発して,原告cらに被害が及ぶ可能性が高い(甲79,80)。 さらに,本件浚渫工事によって,ヘドロに含まれる猛毒のダイオキシン類が気化すること,あるいは硫化物が攪拌され海水と混ざって硫化水素が発生することにより,原告らの生命身体に危険が及ぶおそれがある(甲14,15)。 したがって,α港を反復継続して利用する船舶の所有者ないし乗船者である原告らの原告適格は肯定されるべきである。 ウ が発生することにより,原告らの生命身体に危険が及ぶおそれがある(甲14,15)。 したがって,α港を反復継続して利用する船舶の所有者ないし乗船者である原告らの原告適格は肯定されるべきである。 ウ原告iらは,α本港に隣接するγ港内及びその周辺海域で海釣りをする者であるが,本件浚渫工事によって,ヘドロに含まれるダイオキシン,水銀,砒素,鉛,トリブチルスズなどの有害物質が潮流に乗って拡散され,食物連鎖等によって周辺海域の魚に蓄積され,それを食して生命身体の著しい危険にさらされるおそれがあり,原告適格が肯定されるべきである。 (4)ア港湾法の目的(1条),基準省令,基本方針によれば,同法37条2項「港湾の利用若しくは保全に著しく支障を与え」の要件においては,当該工事による環境悪化だけでなく,水域施設の建設によってその港湾を利用することになる船舶等による環境悪化も審査の対象とされていると解さなければならない。 本件浚渫工事は,原子力空母○○をα港に受け入れることを目的としており(甲25),同空母の原子炉が事故を起こした場合に,放射能汚染にさらされる地域住民や港湾利用者,風評被害や同空母から排出される温排- 21 -水による魚貝類の漁業被害を受ける漁業者等に原告適格が認められるべきである(甲34,35,39ないし44)。 原発や外国の商業用原子炉については核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律による国の審査があることとの関係で,そのような手続がなされない原子力空母の入港,港湾の利用について,港湾計画との整合性,港湾法37条の審査中に,そのような最低限の環境審査が求められていると解される(甲139)。 イ平成17年判決においても,鉄道の高架化工事そのものによって著しい被害を受ける者に限られず,高架化された鉄道を電車が走行すること のような最低限の環境審査が求められていると解される(甲139)。 イ平成17年判決においても,鉄道の高架化工事そのものによって著しい被害を受ける者に限られず,高架化された鉄道を電車が走行することによって騒音や振動等の被害を受けるおそれのある者の原告適格を肯定している。 この点,被告及び参加人は,同判決は鉄道事業認可の事案に関するものであり,本件とは事案を異にする旨主張する。しかしながら,同判決における都市計画事業認可とは,都市計画施設の整備を1つの事業と捉え,当該施設と都市計画との整合性を審査する手続であるところ(都市計画法4条15項,61条),その審査基準としての都市計画の内容が,関連法令としての環境法規の制限を受ける結果として,施設の適否がその施設を併用することによる環境への影響を含めて考慮されるとするのが同判決の眼目である。このことは,審査対象が鉄道事業であることに由来するのではない。鉄道事業そのものに対する許可制度は,都市計画法ではなく鉄道事業法によって定められている。 ウまた,被告及び参加人は,最高裁昭和57年9月9日判決を根拠に反論- 22 -しているが,同判決においては保安林指定解除処分の直接的効果は森林の伐採という作業の解除にとどまり,跡地の利用は森林伐採とは別の行為と把握する余地があったが,本件浚渫工事は,同最高裁判例になぞらえれば,森林の伐採とミサイル基地の建設工事を一体として行うのと同じことである。 上記判決は,「かかる跡地利用の内容及び性質は本件保安林の指定解除処分を適法にすることができるかどうかの実体上の問題において重要な論点となりうる」とも判示しており,本件事案に即して考えれば,協議応諾をするに際して水域施設の港湾計画との整合性が被告の定める審査基準に含まれ,またα港港湾計画では環境保全への配慮が において重要な論点となりうる」とも判示しており,本件事案に即して考えれば,協議応諾をするに際して水域施設の港湾計画との整合性が被告の定める審査基準に含まれ,またα港港湾計画では環境保全への配慮が求められている以上,住民の生命・健康の安全という最高の環境を保全する観点が工事の拒否を審査する基準に含まれることは当然である。 (被告及び参加人の主張)(1)ア処分の名あて人以外の第三者が原告適格を認められるための「法律上の利益」の考え方については,大別して「法律上保護された利益説」と「法的保護に値する利益説」の対立があるが,判例・通説は「法律上保護された利益説」に立っている(平成17年判決参照)。 行政事件訴訟法の平成16年改正によって,同法9条2項が新設されたが,同項の趣旨は,これまでも判例で配慮されていた事項について明文で考慮すべきこと等を定めることにより,すべての事案において,これらの事項が適切に考慮され,第三者の原告適格が実質的に広く認められることを期したものであり(丙11),これによって原告適格についての従来の- 23 -考え方が変更されたわけではない。 イ「法律上保護された利益説」においては,行政法規が特定の範囲の個人の権利利益(個別具体的利益)を保護することを目的として,行政権の行使に制約を課している,すなわち,処分の処分要件が個々人の個別具体的利益を保護することを目的としていると解することができる場合に,第三者の原告適格が認められる。 他方,処分の根拠となる行政法規が,他の目的,特に公益の実現を目的として行政権の行使に制約を課している結果,たまたま一定の者が受けることのできる利益は単なる反射的利益にとどまるから,処分によってこのような利益の侵害を受けるに過ぎない者には,処分の取消しを求めるにつき法律上の利益があるとは している結果,たまたま一定の者が受けることのできる利益は単なる反射的利益にとどまるから,処分によってこのような利益の侵害を受けるに過ぎない者には,処分の取消しを求めるにつき法律上の利益があるとはいえない。 また,処分の相手方以外の第三者の原告適格を判断するに当たっては,具体的な利益の保護を受ける者の範囲が特定できなければ,通常当該処分の根拠法規は一般的公益の保護のみを目的としているとしか考えられないから,利益を受ける者の範囲が特定されているか,あるいは,特定することができるかどうかが極めて重要である。 ウ道路,公園,公民館等の公共用物を,一般公衆が自由に利用する権利は,当該公共用物の管理者がこれらを公共の用に供していることによる一般的反射的利益であると解されており,利用者に原告適格が認められるのは特別な事情がある場合であるとされている。 本件港湾区域も公共用物であることは明らかであり,原告らはその一般的利用者であるから,特別の事情がない限り原告適格は認められない関係- 24 -にある。 (2)以上の観点をふまえて,本件協議応諾の根拠法令及び関連法令が原告らの利益を個別具体的利益として保護しているといえるかについて検討する。 ア(ア)港湾法37条2項「港湾の利用若しくは保全に著しく支障を与え」について,港湾法上,港湾を利用する者として予定されているのは,船舶を用いて旅客や貨物の運送をするため,港湾区域内等の海を航行する者や港湾に船を停泊させる者等である。そして,これらの者は全国,全世界から来航することが考えられるところ,港湾法は,港湾の利用者としてある特定の範囲の者を他の区別し,この者の何らかの個別具体的利益を保護する観点からこれに対する特別な配慮を定めた規定を置いていない。 次に,「港湾の保全」とは,広く港湾施設,設備としての 用者としてある特定の範囲の者を他の区別し,この者の何らかの個別具体的利益を保護する観点からこれに対する特別な配慮を定めた規定を置いていない。 次に,「港湾の保全」とは,広く港湾施設,設備としての機能の保全を意味するものであって,「環境の保全」を含んでおらず,個人の何らかの利益を保護する趣旨のものではない。このことは,同法3条の2第2項4号が「港湾の保全」と「環境の保全」を区別して用いており,港湾法上異なる概念であるとされていることからも明らかである。 また,港湾の「開発発展」も,港湾施設,設備の機能をさらに充実,整備していくといった概念であり,個人の何らかの個別具体的利益の保護が包含されているとは解されない。 (イ)基準省令及び基本方針について,基準省令には,自然環境に配慮すべきことを求める趣旨の規定が複数存在し(同省令11条ないし13条,22条等),基本方針の中には,「良好な港湾環境の形成」につい- 25 -て言及した部分がある。 しかしながら上記の文言が一般的抽象的であること,それらの利益を受ける者の範囲が特定し難いことからすれば,これらの規定が個人の個別具体的な利益を保護する趣旨で規定されたものと解することはできない。 基準省令の「漁業に及ぼす影響」についても,漁業のみを他の考慮要素と殊更に区別し,漁業従事者の利益を具体的に保護したとは考えられない。また,同省令が港湾区域外の漁業に対する影響を考慮するものであるとすれば,その考慮される漁業者の範囲は特定できない。さらに,漁業といってもその態様はさまざまなものがあるし,港湾区域に限ってもその面積は広大であり,この区域内で漁業するすべての者の個別的具体的な利益が港湾法で保護されていると解することは困難である。 (ウ)α港港湾計画の規定については,基準省令同様いずれも一般的抽象 てもその面積は広大であり,この区域内で漁業するすべての者の個別的具体的な利益が港湾法で保護されていると解することは困難である。 (ウ)α港港湾計画の規定については,基準省令同様いずれも一般的抽象的な表現をしているにすぎず,たとえこれらの利益が保護されるとしても,公益として保護されるというにとどまる。すなわち,α港内を船舶を航行させることによって利用する者や同港内で漁業する者は不特定多数存在し,航行や漁業の態様等もさまざまであるところ,上記の各規定振りからは,特定の船舶航行者や漁業者を他の港湾利用者と区別することはできず,これらの者が有する個別具体的利益を他と区別して保護していると読み取ることはできない。 (エ)横須賀市の審査基準(甲50)については,同基準は処分の運用方針や運用の実態,行政庁の法解釈を示すものとして参考にはなるもの- 26 -の,行政事件訴訟法9条における関連法令や法規範として位置づけられるものではない。また,この審査基準が港湾法37条1項を前提とする以上,個人の個別具体的な利益を保護する趣旨で定められているとは解されない。 (オ)港湾法の諸規定の中には,周辺住民や漁業者から意見聴取を行ったり,異議申出権を認めるなど,自然環境の悪化によって影響を受ける個人の具体的利益を観念し,これに配慮するような規定は一切設けられていない。 なお,同法35条の2は,諮問機関として地方港湾審議会の設置を要求しているが,これは流通近代化問題,環境問題,レクリエーション問題等について港湾と地域との関係に十分な配慮をする必要が生じたため,適正かつ円滑な港湾の開発,運営管理を行うには広く地域住民,学識経験者,港湾関係者,関係行政機関等の意見を反映させるべきとの趣旨に基づくものであって,港湾行政に有識者や市民の声を広く反映させること 適正かつ円滑な港湾の開発,運営管理を行うには広く地域住民,学識経験者,港湾関係者,関係行政機関等の意見を反映させるべきとの趣旨に基づくものであって,港湾行政に有識者や市民の声を広く反映させることに配慮した規定であるから,これをもって,自然環境の悪化によって影響を受ける特定個人の具体的利益に配慮した規定としてとらえることはできない。 以上のとおり,本件協議応諾の根拠規定は,個人の何らかの個別具体的な利益を保護する趣旨を含んでいないというべきであり,原告らの主張は失当である。 イ(ア)港湾法1条は「環境の保全に配慮しつつ」と規定しているが,その文言や同条改正の沿革等によれば,「環境の保全」が同条にいう「交通- 27 -の発達や国土の適正な利用」等と並ぶ港湾法の目的とまではいうことができない。 また,同条の文理からすれば,同条が一般公益たる環境の保全への配慮を求めていることは認められるものの,これを超えて,個人の享有する具体的利益としての環境上の利益を保護することを目的としているとは到底解し得ない。このことは,同法が港湾環境整備施設や廃棄物処理施設等の整備に関する規定を設けながら(同法43条,43条の5等),周辺住民や漁業者から意見聴取を行ったり,あるいは異議申し出を認める等,自然環境悪化によって影響を受ける可能性のある個人の具体的利益に配慮した規定を置いていないことからもうかがわれる。 (イ)原告らは,神奈川県環境影響評価条例,環境影響評価法,公有水面埋立法及び海洋汚染防止法を,当該法令と目的を共通にする関連法令であると主張しているが,港湾法の目的は上記のとおりであり,目的を異にする。 (ウ)環境影響評価法48条1項,同施行令17条については,本件協議応諾の前提となる本件浚渫工事は,港湾計画の決定又は決定後の港湾計画の変更には 湾法の目的は上記のとおりであり,目的を異にする。 (ウ)環境影響評価法48条1項,同施行令17条については,本件協議応諾の前提となる本件浚渫工事は,港湾計画の決定又は決定後の港湾計画の変更には該当しないことは明らかであり,またその規模も約30ヘクタールにとどまるものであって,およそ環境影響評価法が想定する事業には該当しないことは明らかである。したがって,本件浚渫工事と環境影響評価法は何ら接点がなく,このような観点からしても,環境影響評価法は港湾法と趣旨及び目的を共通にする法令であるとはいえない。 (エ)神奈川県環境影響評価条例についても,そもそも浚渫工事を環境影- 28 -響評価の対象としておらず(同条例2条1項,別表参照),また,本件浚渫工事は,管理者において,同条例の規制対象となる土石の採取に該当しないとされており,何ら接点はない。 (オ)公有水面埋立法は,埋立(ないし干拓)をその対象とする法律であり(同法1条及び2条),浚渫工事を対象とするものではないし,海洋汚染防止法も浚渫工事を対象とするものではない(同法1条)。 (3)原告らは,本件浚渫工事終了後の原子力空母交替による放射能汚染に基づく個々人の個人的利益の侵害について主張する。しかしながら,本件における港湾管理者の応諾の対象は本件浚渫工事に過ぎない。たしかに,原子力空母交替は本件浚渫工事を前提とするものではあるが,本件浚渫工事とは全く別の事実であり,本件協議応諾の要件があるかどうかを判断するに当たり,原子力空母の交替や交替後の事故が起こった場合の影響を検討の対象とすることはできないというべきである(最高裁昭和57年9月9日第一小法廷判決・民集36巻9号1679頁参照)。 原告らが主張する平成17年判決は,鉄道事業認可の事例であり,当然に鉄道として事業を展開した場合 はできないというべきである(最高裁昭和57年9月9日第一小法廷判決・民集36巻9号1679頁参照)。 原告らが主張する平成17年判決は,鉄道事業認可の事例であり,当然に鉄道として事業を展開した場合も考慮に入れた認可であるのに対し,本件は浚渫工事の応諾に過ぎず,浚渫工事後の港湾の利用については一切考慮の対象とならないというべきである。 したがって,原告らの主張は失当である。 争点3(本件協議応諾は適法か否か)について(原告らの主張)(1)本件協議応諾はα港の環境を悪化させるおそれがあり,被告が港湾法3- 29 -7条2項について定めた審査基準⑨(甲50)に違反する。 ア本件浚渫工事が行われる水域のヘドロは,ダイオキシン,トリブチルスズ,水銀,砒素,鉛等の有害物質及び猛毒の硫化水素を発生させる硫化物によって汚染されており(甲19,29,103),そこで採れる魚には高い確率で奇形が確認されている(甲23,24,102)。その汚染されたヘドロを60万平方メートルも大量に浚渫すれば,潮流に乗って周辺水域に汚染が拡散し,著しく環境を悪化させることは明らかである(甲9ないし12,17,22ないし24,29等)。 平成6年にδ港で行われた浚渫工事は重大な漁業被害をもたらしたが(甲10,11,17),同浚渫工事が約15万平方メートルのヘドロについて約3か月間行われたのに対し,本件浚渫工事は約60平方メートルのヘドロについて約1年間行われるのであり,漁業被害が発生する蓋然性は極めて高い(甲33)。 特に硫化物は,著しい漁業被害もたらす青潮の原因となり,硫化中毒による人の死亡等をもたらすが,本件浚渫工事が行われる水域のヘドロにはこれが水産用水基準の7倍も含まれている(甲12ないし15,29,30,60,69等)。 イしかし,以上の事態が予想され 化中毒による人の死亡等をもたらすが,本件浚渫工事が行われる水域のヘドロにはこれが水産用水基準の7倍も含まれている(甲12ないし15,29,30,60,69等)。 イしかし,以上の事態が予想されるにもかかわらず,参加人は本件浚渫工事が周辺海域に与える影響についての環境アセスメントを行っていない(甲99)。 また,汚染拡散を防止するための対策も極めて不十分である。すなわち,被告は参加人に汚濁防止膜を設置するように指導したというが(甲9- 30 -9),本件で使用される汚濁防止膜は合成樹脂製のものであり,濁りのもととなる粒子は遮断することができても,透水性のあるダイオキシン,水銀等の重金属,硫化水素イオン等を遮断することはできず(甲100,102,116),また,船上での溢れ水,浚渫された土砂が含む汚濁が海面に落下して拡散すること,潮流による拡散による被害発生には無力であり,環境悪化を防止することはできない(甲10,17,99,107)。 実際,本件浚渫工事開始後に参加人が行った海水の環境調査の結果,汚濁防止膜等にもかかわらず,汚染物質が拡散され,周辺海域の水質等が悪化し,環境悪化が現実化しつつあることが明らかとなった(甲103,140ないし142)。 今日,ヘドロ中の汚染物質が浚渫によって拡散されるのを防ぐため,浚渫する前にヘドロを現場で無害化処理する方法が有効な対策として一般化しつつある(甲16)。さらに,参加人は本件に先立つε号バースの汚染対策については,まず現地で汚染の不溶化,遮水工を施した上,整備工事を行っている(甲20)。しかし,本件においては,被告も参加人も,このような有効な対策をとっていないのである。 ウまた,航路開削行為である浚渫工事と,その目的である原子力空母のα港入港は不可分一体の関係にあり,港湾法37条に基 ,本件においては,被告も参加人も,このような有効な対策をとっていないのである。 ウまた,航路開削行為である浚渫工事と,その目的である原子力空母のα港入港は不可分一体の関係にあり,港湾法37条に基づく被告の審査基準中の「環境を悪化させるおそれ」には,水域施設建設工事そのものによる港湾の環境悪化だけでなく,水域施設の建設によって港湾を利用する船舶による環境悪化も含まれなければならない(甲155)。 - 31 -本件浚渫工事によってβ基地に原子力空母が配備されると,入港出港時に放射能漏れ事故を起こしたり,空母の原子炉のメンテナンス活動に伴って日常的に放射能漏れが起こるようになる。そして,放射能汚染物質がα港周辺の大気や海水,土壌に放出され,環境を汚染,悪化させる(甲27,28,34,35,38,41ないし44,46,85)。もし原子力空母の原子炉が事故を起こした場合,猛毒の放射性物質が周囲10キロ以内に居住,活動する原告らの生命を奪うことになる蓋然性は極めて高いとともに,放射能汚染によって首都圏一帯に100万人以上の死者と数十兆円もの経済的被害という償うことのできない損害をもたらすおそれがある(甲38ないし40,44ないし47,69)。 それにもかかわらず,これら環境悪化のおそれは本件協議の対象とされていないし,参加人も具体的な調査,防止対策を採っていないのである(甲27,47,48,54,55,59)。 (2)本件浚渫工事は港湾計画に位置づけられていない港湾施設の建設であるのに,港湾審議会を開いておらず,審査基準③(甲50)に違反する。 アα港港湾計画が本港地区に建設を予定している水域施設は,水深11メートル,面積6ヘクタールの泊地のみであるが(甲51),本件浚渫工事は本港地区において水深15.24メートル,面積30ヘクタールの浚渫 α港港湾計画が本港地区に建設を予定している水域施設は,水深11メートル,面積6ヘクタールの泊地のみであるが(甲51),本件浚渫工事は本港地区において水深15.24メートル,面積30ヘクタールの浚渫であり,原子力空母航行のために,その航路及び泊地を従前より約2メートル深く開削する水域施設の建設行為に他ならない。 したがって,本件浚渫工事は港湾計画に定めのない大規模な水域施設建設工事を港湾計画の裏付けなしに脱法的に実施する行為であり,港湾審議- 32 -会を開催して港湾計画等による位置づけを必要とする行為である(甲101)。 イ被告は,「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」(以下「日米地位協定」という。)3条を根拠に,基地内には一切日本法が及ばないかのような主張をしているが,α港の港湾区域は明らかに米海軍β基地周辺の制限水域を含んでいるのであり,また基地の存在故に港湾計画に制限水域を排除するような規定は,港湾法上も日米地位協定上も存在しないこと,本件浚渫工事は日本政府が行う工事であり,港湾法が適用され,協議が必要であることは争いがないこと,米軍が排他的管理権を有しているのは常時立入禁止区域内のみ(乙5)に過ぎず,本件浚渫工事はそれを超えて係船及び操業制限水域においても浚渫を行い,そこに航路及び泊地を建設しようとするものであることから,被告の主張は誤りである。 (3)本件浚渫工事は周辺の船舶航行に支障を与えるので,審査基準⑦(甲50)に違反する。 ア本件浚渫工事は,航路上で200メートル×100メートルの固定式汚濁防止膜を設置して,グラブ浚渫船と土運船が並んで長時間停船したまま行われるので,船舶の航路を著しく狭めて,周辺の船舶航行に支障を ア本件浚渫工事は,航路上で200メートル×100メートルの固定式汚濁防止膜を設置して,グラブ浚渫船と土運船が並んで長時間停船したまま行われるので,船舶の航路を著しく狭めて,周辺の船舶航行に支障を与えるものである(甲26,31,69,98,145)。 イまた,α港内の海底には,終戦前後に,米軍の爆撃や,旧海軍の爆薬等の投棄によって,不発弾が存在する可能性が否定できず,浚渫による海底- 33 -の不発弾の爆発等によって,周辺の船舶航行に支障を与えるおそれがある(甲99,105,144,146)。 (4)以上によれば,本件協議応諾は審査基準に違反しており,違法な処分として取消しを免れない。 (被告の主張)(1)本件浚渫工事における環境確認調査については,4地点で環境の変化を監視している。仮に,汚濁が汚濁防止膜の外に流出するなどの事態が生じた場合には,調査結果に明らかな差異が生じ,異常値が確認された場合には,速やかに報告し,横浜防衛施設局において責任をもって原因究明と対応の実施を求めることとしている(甲99,乙1)。 平成18年8月23日に実施された事前調査,平成19年5月8日の環境現況調査,同年8月29日の環境確認調査の各調査結果については,当該水域は地形が入り組んでおり,海水の交換性も低く,降雨,海水温等の自然的条件によって全窒素や全リン等の水質が大きく変動するので,数値の変動は本件浚渫工事の影響とは考えられない。 原告らは原子力空母の安全性を問題としているが,申請に係る工事が完了した後に入港停泊する船舶の動力源に対する安全性をも工事等を許可する際の審査対象とすることは港湾法37条2項の予定とするところではなく,原告らの同主張は本件訴訟の審理対象となるべきものではない。 (2)α港の在日米軍基地は,日米地位協定2条により米軍に提 許可する際の審査対象とすることは港湾法37条2項の予定とするところではなく,原告らの同主張は本件訴訟の審理対象となるべきものではない。 (2)α港の在日米軍基地は,日米地位協定2条により米軍に提供された施設・区域であり,同協定3条1,同協定について合意された議事録第3条(乙3),昭和35年海上保安庁告示(航)17号(乙4)により,在日米海軍- 34 -に提供された施設・区域は,使用も含めて管理・運営の権限を包括的に米国に委ねていることから,港湾法2条3項におけるα港港湾区域でありながら港湾管理者である被告の権限が制約を受けており,港湾計画を策定することは意味がなく,在日米海軍が管理権を有する施設・区域について港湾計画を定めるよう,国土交通大臣から港湾法3条の3第6項に基づく変更を求められたこともない(乙5)。また,同じ理由により,港湾管理者である被告の権限が制約されている区域におけるものなので,地方港湾審議会に諮問する必要はない。 第5当裁判所の判断 争点1(本件協議応諾が行政処分に当たるか)について(1)原告らは本訴において,本件協議応諾の取消しを求めており,この訴えは抗告訴訟の一類型である処分の取消しの訴え(行政事件訴訟法3条2項)として提起されたものと認められる。したがって,本件訴えにおける取消しの対象となる行為は,行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(以下「行政処分」という。)であることを要する。 そして,上記にいう行政処分とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうから(最高裁昭和39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照),本件訴えを適法と認めるためには,本件協議応諾が,これ し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうから(最高裁昭和39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照),本件訴えを適法と認めるためには,本件協議応諾が,これにより直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものでなければならないということになる。 - 35 -(2)そこで,まず本件協議応諾が上記行政処分に当たるかどうかについて検討する。 港湾法37条1項は,港湾区域内又は港湾隣接地域内(以下「港湾区域内等」という。)において同項所定の水域の占用,土砂の採取,水域施設等の建設又は改良等の行為(以下「工事等」という。)をしようとする者は港湾管理者の許可を受けなければならない旨規定しているところ,同許可は,工事等をしようとする私人に対し,港湾区域内等における工事等の一般的禁止を解除するという法的効果を生じさせるものであり,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているといえるから,行政処分であるということができる。 ところで,同3項は,国又は地方公共団体が工事等をしようとする場合には,同1項の「港湾管理者の許可を受け」を「港湾管理者と協議し」と,同2項の「(工事等が港湾の利用若しくは保全に支障を与える場合等には)許可をしてはならず」を「協議に応じてはならず」と,それぞれ読み替える旨定めている。 港湾法において,港湾管理者とは地方公共団体又は地方公共団体が設立した港務局である(同法2条1項,4条1項)。そして,被告及び参加人は,このような港湾管理者が同法37条1項ないし3項に基づき国又は地方公共団体に対してする協議応諾につき,行政機関ないし行政主体相互間における行政組織内の内部的行為にとどまり,それによって直接国民の権利義務を形成し又は 者が同法37条1項ないし3項に基づき国又は地方公共団体に対してする協議応諾につき,行政機関ないし行政主体相互間における行政組織内の内部的行為にとどまり,それによって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することはないため,行政処分には当たらない旨を主張する。 - 36 -そこで,上記協議応諾は,行政機関(主体)相互間の内部的行為に過ぎないのか,それとも,国や地方公共団体について私人と法的取扱いを異にしたものではなく,許可処分と同様に行政処分であると認められるのか,以下検討する。 (3)まず,同法37条3項は,同1項及び同2項の「許可」を「協議」という文言に読み替える旨を定めているが,国や地方公共団体について,許可処分に関する同1項,同2項の適用を除外することまで定めたものではない。 これは,同4項が,占用料又は土砂採取料の徴収について「但し,前項に規定する者の協議に係るものについては,この限りでない。」と定め,明確に国と地方公共団体について同項本文の適用を除外していることと比較しても明らかである。 また,港湾法には,占用料等に関する上記の同4項のほか,協議応諾について許可処分とは異なる審査基準,手続,取扱いなどを定める規定は置かれていない。 そうすると,港湾法上,たとえ国や地方公共団体であっても,港湾区域内等において自由に工事等を行うことは許されず,これを行うためには港湾管理者と協議しなければならないこと(同1項),また港湾管理者は工事等が同2項所定の事由に該当する場合には協議に応じることができず(同2項),その場合,国又は地方公共団体は適法に工事等を行うことができないという法的効果が生じることが認められる。 そして,許可処分も協議応諾も,港湾区域内等における工事等の一般的な禁止を解除するという法的効果において異なることはな 団体は適法に工事等を行うことができないという法的効果が生じることが認められる。 そして,許可処分も協議応諾も,港湾区域内等における工事等の一般的な禁止を解除するという法的効果において異なることはなく,また,占用料及- 37 -び土砂採取料の徴収の点を除いて,許可等の審査の基準(同2項)や手続について国や地方公共団体の場合と私人の場合とで異なる取扱いを設けた規定もないことからすると,港湾法37条1項に規定する工事等の行為主体としての国及び地方公共団体の立場は,実質的に私人と異ならないというべきである。 もっとも,協議応諾が上級行政機関の下級行政機関に対する監督手段の一環としての性質を有する場合や(最高裁昭和53年12月8日第二小法廷判決・民集32巻9号1617頁参照),協議に係る行為がおよそ私人には行い得ないものである場合には,その法的性質は行政機関(主体)相互間の内部的行為であると考えることもできる。 しかしながら,港湾法は,港湾の管理を基本的に,国ではなく港務局又は地方公共団体に委ねており,これら港湾管理者に対する国の監督については,港湾管理者の属する地方の利害以上に国家的規模で検討すべき事項(同法3条の3,44条,同条の2,49条,51条)や国が支出した事項(同法46条1項)等の一定の場合に限って,国土交通大臣による指揮監督の具体的態様を定めている(甲77)。これを港湾法37条についてみると,港湾管理者が国の機関に許可処分の結果を報告することを義務付ける,あるいは,一定の場合に国の機関が港湾管理者の判断に介入することを認めるといった,港湾管理者が国又はその機関の具体的な指揮監督下において許可権限を行使することを前提とする規定は設けられていない。 そうすると,港湾法37条1項所定の港湾管理者の許可処分が,国又はその機関の港湾管理 港湾管理者が国又はその機関の具体的な指揮監督下において許可権限を行使することを前提とする規定は設けられていない。 そうすると,港湾法37条1項所定の港湾管理者の許可処分が,国又はその機関の港湾管理者に対する具体的な指揮監督下にされるものであるとか,- 38 -国が工事等の行為主体である場合には,指揮監督権者が自ら行為するものである以上,港湾管理者による協議応諾も国又はその機関の指揮監督の一環にとどまる,といったような解釈を採ることは困難である。 協議応諾が上記のような港湾管理者と工事等の行為主体である国との指揮監督関係を前提とするものではないことは,当該港湾と関係のない地方公共団体が工事等の行為主体である場合についても,同3項において国の場合と同様に協議応諾の相手方とされていることからも明らかである。 また,同1項各号所定の行為(工事等)は,土砂の採取や水域施設等の建設といった事実行為であり,国又は地方公共団体でなければ行い得ないものではなく,同1項及び同2項は,むしろ私人がこれらの行為を行うことを基本としているといえる。加えて,これらの事実行為は,国や地方公共団体と私人との,いずれが行っても本質的な差異は生じないものと解される。 したがって,協議応諾には,その法的性質を行政機関(主体)相互間の内部的行為と考えるに足りる具体的な指揮監督関係や特殊性は認め難いというべきである。 (4)以上検討したところによれば,港湾法は,国や地方公共団体が工事等を行う場合の協議応諾について,私人が工事等を行う場合の許可処分と法的取扱いを異にしたものとは解されず,また,これを行政機関(主体)相互間の内部的行為と考える実質的な理由も見当たらない。 すなわち,港湾法37条1項各号所定の工事等の行為をしようとする場合において,港湾管理者の許可処分又は協議応諾を ,また,これを行政機関(主体)相互間の内部的行為と考える実質的な理由も見当たらない。 すなわち,港湾法37条1項各号所定の工事等の行為をしようとする場合において,港湾管理者の許可処分又は協議応諾を受けなければ当該行為をすることが法律上許されないことについて,私人と国の場合とで異なるところ- 39 -はなく,国は,国民と同様の地位において協議応諾の効果を受けるものというべきであるから,協議応諾は,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものとして,行政処分に当たると解するのが相当である。 なお,上記のことは,同3項において許可が協議に読み替えられている法的意義を否定するものではなく,例えば,国や地方公共団体が工事等の行為主体となる場合に港湾管理者の許可処分ではなく協議応諾を要することとして,国や地方公共団体が公益を目的に工事等を行う場合には,工事等の禁止の解除に係る港湾管理者の裁量を私人に対する場合よりも制限するという効果が期待されていると解する余地もあるが,このことは,協議応諾の行政処分性を否定する根拠になるものではない。 (5)アこれに対し,被告及び参加人は,国が港湾管理者との間で港湾法37条3項の協議が調う前に工事等を行ったとしても,私人と異なり,監督処分や罰則を適用されることはない旨主張し,その論拠として,監督処分に係る同法56条の4第1項及び罰則に係る同法61条2項1号が同法37条3項を対象としていないことを挙げる。 しかしながら,前述のとおり,同3項自体は,同1項及び同2項の文言を読み替えているにとどまり,また同1項及び同2項の適用を除外しているものでもないので,これのみを協議応諾の根拠条文と考えるのは困難である。結局,港湾管理者は同3項で読み替えたところに基づき,同1項を根拠に協議 るにとどまり,また同1項及び同2項の適用を除外しているものでもないので,これのみを協議応諾の根拠条文と考えるのは困難である。結局,港湾管理者は同3項で読み替えたところに基づき,同1項を根拠に協議応諾を行うのであり,協議応諾もまた許可処分と同様に同1項を根拠とすると解するのが相当である。 - 40 -そうすると,国や地方公共団体が行為主体として協議応諾を受けずに工事等を行った場合も,「第37条第1項の規定(中略)に違反」(同法56条の4第1項,61条2項1号)した場合に該当すると考えられ,これらの規定が協議に係る場合を除く旨の規定を設けていないことも勘案すると,国や地方公共団体が行為主体となる場合を監督処分あるいは罰則の対象から除外しているとまで解することができない。 このように,国が行為主体として協議応諾を受けずに工事等を行う場合についても,港湾法上の監督処分及び罰則の対象となるものと解されることからすれば(なお,国それ自体が監督処分又は罰則の対象となるかという問題は,別途の検討を要する。),協議応諾は,国が行為主体となる工事等が,これを経れば監督処分又は罰則の対象とならなくなるという意味において,行政組織内の内部的行為にとどまらない法的効果を付与されているものということができる。 イまた,被告及び参加人は,国には是正の要求(地方自治法245条の5),国地方係争処理委員会による審査(同法250条の13以下)等,行政内部での紛争解決手段が予定されているので,私人の立場とは異なる旨主張する。 しかしながら,国は,行政事務を処理する行政組織ないし機関としての一面と,私人と対等な一権利主体としての一面をいずれも持ち合わせているといえる。国の各大臣が地方公共団体に対して行う是正の要求(地方自治法245条の5)や,その後に予定されている国地 し機関としての一面と,私人と対等な一権利主体としての一面をいずれも持ち合わせているといえる。国の各大臣が地方公共団体に対して行う是正の要求(地方自治法245条の5)や,その後に予定されている国地方係争処理委員会による審査の手続(同法250条の13以下)は,国の行政機関による地方- 41 -公共団体の事務処理に対する関与の一類型である。そして,国が,その行政機関としての一面から,協議応諾について地方公共団体に対してこのような手段を採り得ることは当然であるが,これによって,港湾法37条3項における国が,一権利主体としての立場で協議応諾を受けるということが否定されるものではない。 是正の要求等の国の関与は,国の行政機関において地方公共団体の事務の処理の適正を確保するという観点から行われるものであって,工事等の主体が国又は地方公共団体の場合だけでなく,私人の場合,すなわち許可処分に関しても行われるものである。そうすると,協議応諾について是正の要求等の国の関与が可能であるとしても,それは工事等の主体が国であることに由来するものではなく,あくまでも上記観点からのものであるというべきである。したがって,国の行政機関が是正の要求等の関与の手段を有することをもって,工事等の行為に関し国が私人とは異なる立場にあるものということはできない。 このことは,港湾法37条3項が,港湾管理者に対して是正の要求等の手段を採り得ない市町村を,国と同列に扱っていることからしても,明らかである。 ウさらに,被告及び参加人は,同項の趣旨は,港湾は公共用物として国の法的支配管理に服するので,国が工事等を行う場合には許可を受ける必要がないことにあるとも主張するが,前述のとおり,同項が,当該港湾についておよそ何らの管理権も有さない場合を含め,あらゆる地方公共団体を国と同 理に服するので,国が工事等を行う場合には許可を受ける必要がないことにあるとも主張するが,前述のとおり,同項が,当該港湾についておよそ何らの管理権も有さない場合を含め,あらゆる地方公共団体を国と同列に扱っていることからすれば,このような解釈は採ることができ- 42 -ない。 (6)よって,被告及び参加人の上記主張はいずれも採用することができず,本件協議応諾は行政処分に当たるといえる。 争点2(原告らに本件協議応諾の取消しを求める法律上の利益が認められるか)について(1)行政事件訴訟法は,取消しの訴えの要件として,「当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り,提起することができる。」(同法9条1項)と定めている。そして,この「法律上の利益を有する者」とは,当該処分等により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害されるおそれがある者をいい,当該処分等を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益も上記にいう法律上保護された利益に当たり,当該処分等によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は原告適格を有すると解すべきである(平成17年判決参照)。 そして,処分等の相手方以外の者について上記の法律上の利益の有無を判断するに当たっては,当該処分等の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし,当該 き利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし,当該利益の内容及- 43 -び性質を考慮するに当たっては,当該処分等がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案することとなる(同法9条2項参照)。 (2)原告らは,本件浚渫工事による海洋汚染や工事完了後に配備される原子力空母による放射能汚染によって,漁業を営む利益や生命,健康を害される,あるいは同工事のための水域の占有が所有船舶の航行等に支障を生ずるなどとして,本件協議応諾の取消しを求める法律上の利益を有する旨主張する。 そこで,上記(1)の見地から,これらの点が原告らの法律上の利益を基礎付け,原告らに本件協議応諾の取消しを求める原告適格が認められるかどうかについて検討する。 ア(ア)まず,港湾法は,交通の発達及び国土の適正な利用と均衡ある発展に資するため,環境の保全に配慮しつつ,港湾の秩序ある整備と適正な運営を図るとともに,航路を開発し,及び保全することを目的とするものである(同法1条)。 (イ)上記目的の下,本件協議応諾の根拠規定である港湾法37条1項及び3項は,港湾区域内等において,工事等を行う場合には,港湾管理者の許可を受け又は協議をしなければならない旨定め,同2項は,工事等が「港湾の利用若しくは保全に著しく支障を与え,又は・・・公示された港湾計画の遂行を著しく阻害し,その他港湾の開発発展に著しく支障を与えるものであるとき」は許可をし又は協議に応じてはならないとして,許可処分及び協議応諾に係る審査の基準を規定している。 - 44 -(ウ)上記基準は,工 害し,その他港湾の開発発展に著しく支障を与えるものであるとき」は許可をし又は協議に応じてはならないとして,許可処分及び協議応諾に係る審査の基準を規定している。 - 44 -(ウ)上記基準は,工事等が港湾の利用又は保全に著しく支障を与えるかどうかに加え,工事等が当該港湾について定められた港湾計画の遂行を著しく阻害するものであるかどうかも審査すべきことを定めているところ,ここにいう港湾計画とは,港湾管理者である地方公共団体あるいは港務局が,重要港湾の開発,利用及び保全並びに当該港湾に隣接する地域の保全等について,基本方針及び国土交通省令(基準省令)で定める基準に適合するように定める計画である(同法3条の3第1項,第2項)。 そして,港湾管理者が港湾計画を定め又は変更しようとするときは地方港湾審議会の意見をきかなければならないところ(同法3条の3第3項),地方港湾審議会とは,港湾管理者としての地方公共団体の長の諮問に応じ,当該港湾に関する重要事項を調査審議させるため,当該地方公共団体に設置される組織であり(同法35条の2),広く地域住民,学識経験者,港湾関係者,関係行政機関等の意見を港湾の開発,管理運営に反映させることを目的とするものと解される(甲72)。α港についての地方港湾審議会である横須賀市港湾審議会の委員には,本件漁業協同組合の組合長,船主会会長,水先人会会長,公募市民等が名を連ねている(甲93)。 (エ)上記の基本方針とは,港湾の開発,利用及び保全,それらに際し配慮すべき環境の保全に関する基本的な事項等について,国土交通大臣が定めるものである(同法3条の2)。 そして,現行の基本方針(甲73)には「船舶の航行や停泊,海洋性- 45 -レクリエーション活動や漁業活動等,多様な活動が滞りなく安全に行われるように港湾区域を適 めるものである(同法3条の2)。 そして,現行の基本方針(甲73)には「船舶の航行や停泊,海洋性- 45 -レクリエーション活動や漁業活動等,多様な活動が滞りなく安全に行われるように港湾区域を適正に管理する」ことのほか,海洋汚染を防止することや,港湾の開発及び利用に当たって水質環境等に与える影響を事前に評価し,環境への影響の回避,低減に努めること等,良好な自然環境の保全に関する方針も定められている。 (オ)また,上記の基準省令とは,港湾施設の規模,配置,港湾の環境の整備及び保全に関する事項その他港湾計画の基本的事項について,国土交通大臣が定めるものである(同法3条の3第2項)。 そして,現行の基準省令(甲74)は,港湾計画の方針として,「港湾の開発,利用及び保全並びに港湾に隣接する地域の保全の方針は,自然条件,港湾及びその周辺地域の経済的及び社会的条件,港湾及びその周辺における交通の状況,港湾及びその周辺の自然的環境及び生活環境に及ぼす影響,漁業に及ぼす影響等を考慮して,適切なものとなるように,(中略)一体的かつ総合的に定める」ことを求めている(同省令3条1項)。 (カ)以上の港湾法の各規定及び基準省令は,協議応諾の根拠となる法令又はこれと目的を共通する関係法令といえ,また,港湾計画及び基本方針は,これらの法令の趣旨及び目的を具体化したものといえるから,協議応諾の趣旨の検討に際しては,これらの各規定の趣旨及び目的を考慮すべきものといえる。 (キ)なお,環境影響評価法は,規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価に係る手続等を定め,- 46 -これによる環境影響評価の結果をその事業に係る環境の保全のための措置その他のその事業の内容に関する決定に反映させるための措置をとること等により,その て環境影響評価に係る手続等を定め,- 46 -これによる環境影響評価の結果をその事業に係る環境の保全のための措置その他のその事業の内容に関する決定に反映させるための措置をとること等により,その事業に係る環境の保全について適正な配慮がなされることを確保することを目的とするものであり(同法1条),港湾計画の決定又は変更のうち300ヘクタール以上の埋立て及び土地を掘り込んで水面とする行為を内容とするものについて,港湾環境影響評価その他の手続を義務付けている(同法48条1項,同施行令17条)。そうすると,同法の上記規定は,港湾計画の決定又は変更に際して,一定規模以上の事業に関し,環境影響評価等の手続を通じて環境の保全について適正な配慮が図られるようにすることをその趣旨及び目的とするものということができる。 また,神奈川県環境影響評価条例(甲95)は,土地の形状の変更等の一定の事業の実施が環境に及ぼす影響についての環境影響評価に関する事項を定めることにより,これらの事業の実施に際し,環境保全上の見地から適正な配慮がなされることを期し,もって良好な環境の確保に資することを目的とするものであり(同条例1条),海域や海岸における一定規模以上の土石の採取について,環境影響評価手続を義務付けている(同条例2条1項,同別表,同条例施行規則(昭和56年神奈川県規則11号)1条,同別表第1)。そうすると,同条例の上記規定は,一定規模以上の土石の採取を内容とする事業に関し,環境影響評価の手続を通じて環境保全上の見地から適正な配慮がなされるようにすることをその趣旨及び目的とするものということができる。 - 47 -しかし,本件浚渫工事については,これが環境影響評価法又は神奈川県環境影響評価条例の対象とする事業に該当すると認めるに足りる証拠はなく,これに対 及び目的とするものということができる。 - 47 -しかし,本件浚渫工事については,これが環境影響評価法又は神奈川県環境影響評価条例の対象とする事業に該当すると認めるに足りる証拠はなく,これに対する協議応諾につき,同法又は同条例の規定の趣旨及び目的を踏まえて行われるべきものと直ちにいうことはできないから,本件協議応諾の趣旨の検討に際して,これらの規定の趣旨及び目的をも参酌することはできないというべきである。 イ以上に述べたところを踏まえて,港湾法37条所定の許可処分及び協議応諾の趣旨について検討すると,まず,同条は,港湾の利用あるいは保全に著しく支障を与える工事等を許可し又はその協議に応じてはならないと規定することにより(同2項),船舶等による港湾利用者が港湾を安全に利用する利益を一般的公益として保護の対象にしていることが認められる。 また,前記の協議応諾に係る根拠法令等に加えて,港湾法が,港湾公害防止施設,廃棄物処理施設,港湾環境整備施設を港湾施設と位置づけ,建設費用の一部を国が補助できる旨の規定を設けることによって,環境保全のための施設の整備推進を図っているとみられること(同法2条5項,43条)などを併せて考えると,同法37条は,基本方針及び基準省令に適合し自然環境への影響に配慮して定められた港湾計画について,工事等がその遂行を著しく阻害する場合には,港湾管理者は当該工事等の実施を許可し又はその協議に応じてはならないと定めることによって,良好な自然環境が保全されることで得られる不特定多数者の利益を,一般的公益として保護の対象としていると考えることができる。 - 48 -ウさらに,港湾法37条の規定が一定の具体的利益を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解されるかどうかについてみると,原告らが主張する ると考えることができる。 - 48 -ウさらに,港湾法37条の規定が一定の具体的利益を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解されるかどうかについてみると,原告らが主張する各種利益のうち,工事等の場所及びその周辺において漁業権に基づき漁業を営む者の利益については,次に述べるとおり,一般的公益の中に吸収解消されない個別的利益としても保護されていると解する余地がある。 (ア)すなわち,前記のとおり基本方針及び基準省令は,「漁業活動」「漁業」という文言を用い,良好な自然環境が保たれることによって得られる利益のうち,漁業を営む者が得る利益を具体的に特定し,同利益の保護について配慮を求めている。 また,港湾法は,港湾計画の決定又は変更に当たっては,漁業協同組合や船主会の代表者,付近住民ら,港湾の利害関係者等が構成員となり得る地方港湾審議会の意見をきかなければならないものとし(同法3条の3第3項),港湾区域内等において漁業を営む者の利益を港湾計画に反映し得る手段を確保している。 そして,同法37条2項は,工事等につき,上記基本方針や基準省令に適合するものとして定められる港湾計画に適合することまでは要件としていないものの,当該港湾計画の遂行を著しく阻害する場合には許可をし又は協議に応じてはならないと定めており,その限度において,上記港湾計画に関する諸規定で保護されていると解される漁業を営む者の利益が,許可処分及び協議応諾に当たっても考慮されていると考えることができる。 - 49 -(イ)また,港湾法又はその関係法令に違反した違法な工事等によって港湾区域等の水質が汚染されたような場合,当該工事等の場所の周辺の水域において,一時的な漁獲量の減少にとどまらず,当該水域における魚貝類の死滅等により,当該水域において漁業を営む 法な工事等によって港湾区域等の水質が汚染されたような場合,当該工事等の場所の周辺の水域において,一時的な漁獲量の減少にとどまらず,当該水域における魚貝類の死滅等により,当該水域において漁業を営む者が著しい経済的損失等の被害を直接的に被るおそれは否定できない。そして,このような被害を直接的に受けるのは,当該工事等の場所の周辺の一定範囲の水域において漁業を営む者に限られるところ,当該漁業が漁業法上の漁業権に基づくものである場合には,後述のとおり漁業権が都道府県知事の免許により一定の水面において排他的に一定の漁業を営むことを得る権利であることに照らせば,当該水域において当該漁業を営むに際してこのような被害を受けないという具体的利益は,一般的公益の中に吸収解消させることが困難なものといわざるを得ない。 以上のような許可処分及び協議応諾に関する港湾法等の規定の趣旨及び目的,並びに,工事等によって害されることとなる漁業を営む者の利益の内容及び性質等を勘案すると,港湾法37条は,当該工事等の場所の周辺において漁業権に基づき漁業を営み,当該工事等による水質の汚染等によって,当該漁業を行うにつき著しい被害を直接的に受けるおそれのある者に対して,このような被害を受けないという利益を,一般的公益の中に吸収解消されない個別的利益としてもこれを保護する趣旨を含むものであると解する余地があるというべきである。 これに対し,被告及び参加人は,港湾区域の面積は広大であり,漁業の態様もさまざまであるから,個別的利益として保護される漁業者の範囲を- 50 -特定できないと主張する。 しかしながら,後に述べるとおり,漁業法上の漁業権は特定の水域について排他的に漁業を営む権利であるところ,港湾区域内等に漁業権を有する者は当該水域に継続した個別具体的な利害関係を有すると 主張する。 しかしながら,後に述べるとおり,漁業法上の漁業権は特定の水域について排他的に漁業を営む権利であるところ,港湾区域内等に漁業権を有する者は当該水域に継続した個別具体的な利害関係を有するといえ,これを基準に個別的利益を保護される者とそうでない者を峻別することは可能であるから,被告及び参加人の上記主張は当を得ない。 エ(ア)他方,その他に原告が主張する,港湾利用者の船舶航行に関する利益や,漁業権に基づき漁業を営む者の利益を除いたその他の環境保全による利益等についてみると,基本方針及び基準省令の規定を含め,許可処分及び協議応諾に関する港湾法及びその関係法令上,保護しようとする利益の内容について,船舶の航行の安全や自然的・生活的環境への影響の回避という程度の,抽象的かつ包括的な定めがされているにとどまる。また,港湾法及びその関係法令は,許可処分又は協議応諾に際し,その内容について港湾利用者ないし周辺住民に説明し,意見を聴取したり異議申出権を認める等,不利益を被る個人の具体的利益に個別的配慮を求める規定を設けていない。 そして,港湾は不特定多数の者が自由に利用することができ,港湾が適正に維持管理されることによる利益は,基本的にこれら不特定多数の者が享受する性質のものであることからすれば,特定の者が,特定の水域又はその周辺地域と結びついた個別具体的な権利利益を有し,このような権利利益につき直接的な被害を受けるという関係にある場合は格別,そうでない限り,港湾法37条において,特定の具体的利益が一般- 51 -的公益の中に吸収解消されない個別的利益としても保護されていると解することは,困難であるというほかない。 (イ)原告らが指摘する横須賀市の審査基準(甲50)についても,その内容は基本方針及び基準省令と同様に抽象的かつ包括的であり 的利益としても保護されていると解することは,困難であるというほかない。 (イ)原告らが指摘する横須賀市の審査基準(甲50)についても,その内容は基本方針及び基準省令と同様に抽象的かつ包括的であり,上記の判断を左右するものとはいえない。 (ウ)また,原告らは,港湾法37条2項「港湾の利用若しくは保全に著しく支障を与え」の要件においては,当該工事等による環境悪化だけでなく,工事等完了後に入港・停泊する船舶による環境悪化についても審査の対象とされ,原子力空母の事故等によって放射能汚染にさらされる周辺住民,港湾利用者等の生命・健康の利益も個別具体的利益として保護されている旨主張する。 しかしながら,同法37条の審査及び許可又は協議の対象は,水域の占用や土砂の採取,水域施設等の建設といった工事等の行為それ自体であり,これらの行為に起因する影響については同2項による審査の対象となっているといえるが,これらの行為が完了した後に,完成した施設を利用して入港する船舶によって生ずる影響についてまで審査の対象になっていると解することはできず,原子力空母の事故等によって放射能汚染にさらされる周辺住民,港湾利用者等の生命・健康といったような利益が,同条において保護されているとまで考えることは困難である。 (3)以上の見解に立って,本件協議応諾の取消しを求める原告らの原告適格について検討する。 ア原告aについて- 52 -(ア)原告aは,本件浚渫工事が行われている海域を含むα港港湾区域の大部分について第1種ないし3種の共同漁業権を有する本件漁業協同組合l支所に所属する組合員であり(甲1,60,151),動力漁船を3隻所有し(甲148),以下のとおり潜水漁業,底引き網漁,土管漁とタコツボ漁を行っている(甲96)。 潜水漁業については,漁業法65条1項 所に所属する組合員であり(甲1,60,151),動力漁船を3隻所有し(甲148),以下のとおり潜水漁業,底引き網漁,土管漁とタコツボ漁を行っている(甲96)。 潜水漁業については,漁業法65条1項及び水産資源保護法4条1項の規定に基づき,神奈川県知事から,操業区域を共同漁業権が設定されていない東京内湾の神奈川県海面とする潜水器漁業許可を得ており,本件浚渫工事が行われているα港本港地区の入り口から1キロ弱の浅瀬2箇所において,ミル貝,タイラ貝,ナマコ等を採っている(甲4,60,96,原告本人)。 底引き網漁については,漁業法66条1項の規定に基づき,神奈川県知事から,操業海域を東京内湾の神奈川県海面とする小型機船底びき網漁業許可を得ており,α港本港地区の入り口付近に設定された制限水域(甲2)の外側で,主としてカレイ,ほかにクロダイ,マダイ,カサゴ,メバル,スズキなどを採っている(甲96,原告本人)。 アナゴ土管漁,タコツボ漁については,同本港地区の第1種制限水域を除く漁業が可能な周辺海域一帯で行っている(原告本人)。 原告aの漁業による収入は年間約3400万円であり,その大部分は潜水漁業による(甲60,149,原告本人)。 また,原告aは,従前からα港内等において警戒船業務にも従事しており,本件浚渫工事においても,その所有する船舶が警戒船として登録- 53 -されている(甲147,原告本人)。 (イ)ところで,漁業権とは,都道府県知事の免許に基づき一定の水面において一定の漁業を排他的に営む権利であり,漁業法上,定置漁業権,区画漁業権,共同漁業権の3種類が認められている(漁業法6条,10条)。 このうち共同漁業権は,一定の水面を共同利用して営む漁業権であり(同法6条5項),漁業協同組合又は同組合連合会のみがその免許の主体となり得(同法 権の3種類が認められている(漁業法6条,10条)。 このうち共同漁業権は,一定の水面を共同利用して営む漁業権であり(同法6条5項),漁業協同組合又は同組合連合会のみがその免許の主体となり得(同法14条8項),各組合員は,当該漁業協同組合又は組合連合会の定める漁業権行使規則に規定する資格を有する場合に限り,当該共同漁業権の範囲内において漁業を営む権利を有する(同法8条1項)。 この各組合員の漁業を営む権利の法的性質については,法人たる漁業協同組合が管理権を,組合員を構成員とする入会集団が収益権能を分有するという関係ではなく,共同漁業権が法人としての漁業協同組合に帰属するのは法人が物を所有する場合と全く同一であり,組合員の漁業を営む権利は,漁業協同組合という団体の構成員としての地位に基づき,組合の制定する漁業権行使規則に定めるところに従って行使することのできる社員権的権利であると解される(最高裁平成元年7月13日第一小法廷判決・民集43巻7号866頁参照)。 また,以上の漁業権による権利設定とは別に,漁業調整あるいは水産資源保護の目的から,一定の方法による漁業を行うためには農林水産大臣又は都道府県知事の許可を要する等の制限措置が定められている(6- 54 -5条,66条,水産資源保護法4条1項等。以下,このような許可を受けて行う漁業を「許可漁業」という。)。 (ウ)原告aは,本件漁業協同組合の組合員として,同組合の有する第1種共同漁業権の設定されているミル貝(みるくい),タイラ貝(たいらぎ),なまこ,たこ,海藻類を採取しており(甲60,151の1),当該漁業については,組合員としての漁業を営む権利(漁業法8条1項)を有している。また,神奈川県知事から潜水器漁業許可(同法65条1項,神奈川県海面漁業調整規則(昭和40年神奈川県規則1 1の1),当該漁業については,組合員としての漁業を営む権利(漁業法8条1項)を有している。また,神奈川県知事から潜水器漁業許可(同法65条1項,神奈川県海面漁業調整規則(昭和40年神奈川県規則109号)7条)及び小型機船底びき網漁業許可(同法66条1項)を得ており,これら許可漁業を営む利益も有しているといえる。一方,その他の漁業については,権利の設定又は制限の解除といった法的裏付けがないものであり,海が公共の用に供されこれを一般公衆が自由に利用することができる結果として,いわば事実上の行為として行っているものということができる。 そこで,これらの漁業を営む利益が港湾法37条によって個別的利益として保護されているといえるかについて検討する。 (エ)既に述べたとおり,港湾法37条は漁業権に基づき漁業を営む者の利益を個別的利益として保護していると解する余地があるところ,漁業権は一定の水面について排他的にこれを営む権利であり,特定の水域について固定した継続的利害関係を設定する権利であることから,少なくとも,港湾法37条1項所定の工事等が行われる水面を含む港湾区域内の水域に漁業権を有する者自体については,本件協議応諾の取消しを求- 55 -める法律上の利益を肯定することができるものといえる。 そして,漁業協同組合の漁業権に基づき漁業を営む権利を有する各組合員についても,当該漁業を営む権利が漁業権から派生する権利であり,漁業権と同様に上記性質を有すると認められることに加え,漁業権が物権とみなされていることに伴い(漁業法23条参照),漁業を営む権利を有する者にも妨害排除請求権,損害賠償請求権の行使が認められると解されていることを勘案すれば,社員権的権利としての法的性質に反しない限り,漁業権に準じた法律上の利益を肯定することが可能である。 を有する者にも妨害排除請求権,損害賠償請求権の行使が認められると解されていることを勘案すれば,社員権的権利としての法的性質に反しない限り,漁業権に準じた法律上の利益を肯定することが可能である。 しかしながら,本件においては,本件漁業協同組合が,参加人に対し本件浚渫工事につき同意しており(丙9),この同意の趣旨は,漁業権者としての立場から本件浚渫工事に異議を述べないことにあり,本件浚渫工事に対してこれと矛盾する法律上の利益を主張しない旨の意思表示を含むものと解される。 そして,各組合員の漁業を営む権利は漁業権から派生する社員権的権利にとどまることからすれば,漁業権の主体が漁業権に基づく一定の権利を行使した場合には,各組合員がこれに反する権利主張をすることはできないものといわざるを得ず,したがって,漁業権の主体である漁業協同組合が上記のような意思表示を行った場合,当該意思表示の効力が継続している限り,当該漁業権から派生する漁業を営む権利の主体である各組合員について,漁業権の主体である漁業協同組合とは独立して保護すべき法律上の利益を有していると解することはできない。 - 56 -そうすると,原告aにつき,本件漁業協同組合の有する共同漁業権に基づき漁業を営む権利を有することを理由として,本件協議応諾の取消しを求める法律上の利益を有するということはできない。 (オ)次に,許可漁業を営む利益について検討する。 漁業権が特定の水域において排他的に特定の漁業をすることができる権利であるのに対して,知事等による特定の方法による漁業の許可(漁業法65条,66条,水産資源保護法4条,神奈川県海面漁業調整規則7条)は,特定の水域に排他的な権利を設定する性質のものではなく,漁業調整ないし水産資源保護という観点から,一定の方法による漁業について一般的な禁止 条,水産資源保護法4条,神奈川県海面漁業調整規則7条)は,特定の水域に排他的な権利を設定する性質のものではなく,漁業調整ないし水産資源保護という観点から,一定の方法による漁業について一般的な禁止をかける一方,許可を得れば当該禁止が解除されるという性質のものである。そして,許可の対象が,主として船舶の総トン数や馬力数,網の構造や大きさといったような漁業の採取方法に対する制約の解除であることからすれば(漁業法65条,66条,神奈川県海面漁業調整規則7条),許可漁業を営む利益は,特定の水域から水産動植物を採取する利益という性質のものではなく,主として,広域な水域を対象として漁獲能率のよい漁業を行うことができる利益という性質を有するものといえる。このことは,原告aの受けている許可の対象水域が,「東京内湾の神奈川県海面」という極めて広い範囲で指定されていることにもあらわれている。 そうすると,許可漁業を営む利益は,漁業権の場合と異なり,特定の水域における水産動植物との関係が希薄なものといわざるを得ない。 そして,前記(2)ウのとおり,港湾法37条が個別的利益として保護- 57 -していると解する余地があるのは,工事等の周辺水域の水質が汚染され水産動植物が減少することによって影響を受ける利益であるが,前記のように許可漁業を営む利益は特定の水域との関係が希薄であり,原告aが東京内湾の神奈川県海面において潜水器漁業又は小型機船底びき網漁業の方法によって漁業をする法律上の利益を有することを前提としても,そのような利益が港湾法37条により個別的利益として保護されていると解することはできない。 (カ)さらに,漁業権又は許可漁業に関わりのないその他の漁業については,前記のとおり事実上行っているものにすぎないし,このような漁業をする利益があるとしても, されていると解することはできない。 (カ)さらに,漁業権又は許可漁業に関わりのないその他の漁業については,前記のとおり事実上行っているものにすぎないし,このような漁業をする利益があるとしても,それは不特定多数の者に帰属するものである。そうすると,このような漁業をする利益が,港湾法37条によって,一般的公益の中に吸収解消されない個々人の個別的利益として保護されていると解する余地はない。 以上によれば,原告aにつき,本件協議応諾の取消しを求める法律上の利益を有するとはいえず,原告適格を認めることはできない。 イ原告cらについて原告cらは,「h」と称する市民団体の構成員であり,月に1回,α港本港地区,γ港内,及びその周辺海域において,プレジャーモーターボート,ヨット,ゴムボート,カヤックなどを使ったヨット教室,海の清掃活動,クルージング,海上デモなどのレクリエーション及び社会活動を行う者である(甲7,69)。 そして,前述のとおり,港湾利用者が安全に船舶を航行させる利益,及- 58 -び良好な自然環境が維持されることにより得られる利益については,港湾法37条において,一般的公益として保護されているとは認められても,特定の者が,特定の水域又はその周辺地域と結びついた個別具体的な権利利益を有し,工事等によりこのような権利利益につき直接的な被害を受けるという関係にある場合を除き,一般的公益の中に吸収解消されない個別的利益として保護されているとは解することができない。 そして,原告cらにつき,本件水域又はその周辺地域と結びついた個別具体的な権利利益があるとは認められないから,原告cらが本件協議応諾の取消しを求める法律上の利益を有するとはいえず,同人らに原告適格を認めることはできない。 ウ原告iらについて(ア)原告iらは,「m」のメンバ があるとは認められないから,原告cらが本件協議応諾の取消しを求める法律上の利益を有するとはいえず,同人らに原告適格を認めることはできない。 ウ原告iらについて(ア)原告iらは,「m」のメンバーであり,長年にわたり,本件浚渫工事が行われているα港本港地区と水路で結ばれたγ港内及び同港周辺海域において,ハゼ,イシモチ,メバル,アイナメなどの海釣りを行っている(甲117)。 (イ)原告iらは,港湾区域内の水質が汚染されると汚染物質が周辺海域の魚に蓄積され,それを食して生命身体の著しい危険にさらされるおそれがあると主張するが,港湾法37条においてこのような水産動植物を食する者の生命身体の安全を直接的に保護していることをうかがわせる関係規定は見当たらず,この点は良好な自然環境が維持されることにより得られる一般的公益に含まれるというべきである。そして,原告iらにつき,本件水域又はその周辺地域と結びついた個別具体的な権利利益- 59 -があるとは認められないから,原告cらについて述べたのと同様,本件協議応諾の取消しを求める法律上の利益を有するということはできない。 なお,原告iらは,漁業に関連する利益として,漁業権にも知事等の許可にも基づかない水産動植物の採取活動による利益を得ているともいえるが,これは,海が公共の用に供されこれを一般公衆が自由に利用することができる結果としての事実上の行為によるものにすぎないし,このような利益があるとしても,それは不特定多数の者に帰属するものである。そうすると,このような利益が,港湾法37条によって,一般的公益の中に吸収解消されない個々人の個別的利益として保護されていると解する余地はない。 したがって,原告iらに本件訴えの原告適格を認めることはできない。 エその他その他,原告らは,本件浚渫工事自体 益の中に吸収解消されない個々人の個別的利益として保護されていると解する余地はない。 したがって,原告iらに本件訴えの原告適格を認めることはできない。 エその他その他,原告らは,本件浚渫工事自体により原告らの生命身体に危険が及ぶ等の主張もしているが,既に述べた港湾法及び関係法令等の規定においてこれらの利益に具体的に触れるところがないことからすれば,同法37条がこれらの利益を保護する趣旨を含むとしても,それは基本的には不特定多数の者が利用できる港湾において良好な自然環境が維持されることによる一般的公益に吸収される関係にあるというべきであり,原告aの漁業権に基づく漁業を営む権利を除き,原告らと本件水域又はその周辺地域とに個別具体的な法的結びつきがないことも考慮すると,原告らのこれら- 60 -の利益が,同条によって個別的利益として保護されているということはできない。 (4)以上によれば,原告らは,いずれも本件協議応諾の取消しを求める法律上の利益を有する者ではなく,本件訴えの原告適格は認められない。 第6 結論 以上のとおり,本件訴えは,その余の点について判断するまでもなく不適法であるから,これを却下することとして,主文のとおり判決する。 横浜地方裁判所第1民事部裁判長裁判官北澤章功裁判官植村京子裁判官沼野美香子
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