昭和57(行ウ)26 登記申請却下処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和57年12月23日 大阪地方裁判所 その他
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【DRY-RUN】○ 主文 原告らの請求を棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 ○ 事実 第一 当事者の求めた裁判 一 請求の趣旨(原告ら) 1 原告らの大阪法務局北出張所昭和五六年九月二一日受付第四六五一五号抵

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判決文本文7,158 文字)

○ 主文原告らの請求を棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一請求の趣旨(原告ら) 1 原告らの大阪法務局北出張所昭和五六年九月二一日受付第四六五一五号抵当権設定登記申請につき、被告が同年一〇月六日付でした却下処分を取消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 二請求の趣旨に対する答弁主文と同旨。 第二当事者の主張一請求の原因(原告ら) 1 原告らは、昭和五六年九月一八日、司法書士である原告Aに対し、別紙抵当権目録記載の抵当権設定登記申請の代理権を授与し、別紙のとおりの代理権限授与証明書(以下本件証明書という)を作成して同人に交付した。 2 原告Aは、昭和五六年九月二一日大阪法務局北出張所に出頭して、同原告及びその余の原告の代理人として右抵当権設定登記の申請をなし、その申請書に添付にて本件証明書を提出した。 3 右申請は同出張所同日受付第四六五一五号をもつて受付けられたが、同出張所登記官Bは、同年一〇月六日付で右登記申請に不動産登記法(以下、法という)三五条一項五号に定める代理権限を証する書面の添付がないことを理由として右登記申請を却下する処分をした。 4 右却下処分は次の理由により違法である。 (一) 法三五条一項五号は、代理人によつて登記の申請をする場合、その権限を証する書面を添付しなけれぼならない旨定めているが、右書面の形式、内容についての具体的な定めはなされていないから、右書面は登記申請の代理人が当該代理権限を有している事実を証明する書面であれば足り、委任状の形式によらなければならないものではない。 (二) しかも、原告らが登記申請にあたり代理人に交付した本件証明書は、授与者である本人らが代理すべき事項と期間を明示して自ら作成した書面であつて、代理権限の存在を証するという点において最も ない。 (二) しかも、原告らが登記申請にあたり代理人に交付した本件証明書は、授与者である本人らが代理すべき事項と期間を明示して自ら作成した書面であつて、代理権限の存在を証するという点において最も直接的で確実な書面といえるから、委任状と比べてその証明力に劣る点はなく、いわゆる処分証書でないことのゆえに前記条項の解釈上委任状と異なる扱いを受けるいわれはない。なお、作成日、有効期間の起算日を示す本日という文言から代理権授与の日が作成日であることの事実も証明している。 現に実務にあつても、法定代理権限を証する書面と1して戸籍橙本、代表権限を証する書面とし)ていわゆる資格証明がそれぞれ添付されており、法三五条一項五号にいうところの代理権限を証する書面がいわゆる処分証書に限られないことを示している。 さらに、処分証書は本来いつまでも受任者が所持しでいるべきもので、第三者に交付することを予想していないものであるから、法三五条が法務局に提出を求めている書面について処分証書を求めていると解することはできない。 二請求の原因に対する認否 1 請求の原因1項中、原告Aが司法書士の資格を有することは認めるが、その余は不知。 2 同2、3項は認める。 3 同4項は争う。 三被告の主張原告Aが大阪法務局北出張所に提出した本件証明書は、次に述べるとおり法三五条一項五号にいう代理権限を証する書面に該当しないから、その添付がないことを理由として原告らの登記申請を却下した被告の却下処分には何らの違法もない。 1 法三五条一項五号にいう代理権限を証する書面が具体的にどのような書面であるかについての法令の定めはないが、そのことのゆえに代理権限の存在を証明するという書面のすべてがこれに該当することになるわけではなく、同条の趣旨や不動産登記制度の趣旨等を考察し、同条項がどのよ であるかについての法令の定めはないが、そのことのゆえに代理権限の存在を証明するという書面のすべてがこれに該当することになるわけではなく、同条の趣旨や不動産登記制度の趣旨等を考察し、同条項がどのような書面を予定しているかを検討しなければならない。 2 即ち、法が代理人によつて登記の申請をする場合に代理権限を証する書面を添付させる趣旨は、登記官に形式的審査権限しか与えず、大量かつ迅速な処理が予定されている不動産登記制度のもとで、登記の申請が真正な代理人によつてなされることを担保することにあるから、右代理権限を証する書面についても、登記官の形式的審査によつて代理権限の有無を判断しえるだけの十分に証明力の高い書面が要求されているものといえる。 この点、同じく代理権限を証する書面の提出が必要とされる場合であつても、訴訟代理権限の存否が受訴裁判所の職権調査事項に属し、民訴法八〇条二項により私文書である訴訟代理人の権限を証する書面について公証人の認証を受けることを命ずるなど、受訴裁判所において訴訟代理権限の存否について事実調査を行ないうることから、訴訟代理人の権限について、訴訟委任状に限らず他の書面で授権の事実を明らかにしてもよいとされている(大審院昭和一七年三月二六日判決、民集二一巻二七三頁)民事訴訟の場合とは対照的である。 3 ところで、一般に代理人によつて登記申請をする場合、代理権限を証する書面として委任状が用いられており、これが法三五条一項五号に該当する書面であることに異論はない。 委任状は本人の代理人に対する代理権授与行為そのものを記載した文書であり、その記載日時に、その記載内容の代理権授与行為があつたことを代理人をして証明させるものであり、処分証書であるがゆえに同時に提出される印鑑登録証明書等により文書の成立が認められれば、その文書記載 り、その記載日時に、その記載内容の代理権授与行為があつたことを代理人をして証明させるものであり、処分証書であるがゆえに同時に提出される印鑑登録証明書等により文書の成立が認められれば、その文書記載の法律行為がなされたことが認められることとなり、その意味で直接的な証明力を有するものである。なお、処分証書であることから、委任の終了等により代理権限が消滅した場合にはその回収等の処置がとられることが予定されている。 本件証明書は授権者本人によつて証明されているものではあるが、本人が代理人をして代理権限授与行為そのものを証明させるものではなく、法務局に対し本人が代理人に代理権限を授与した法律効果を証明するものにすぎず、それゆえ代理権授与行為が行われた日時等を明らかにすることはなく、また、代理権限の消滅に伴つて代理権限授与証明書の回収等の処置がとられることを予定した文書でもない。 したがつて、代理権限授与証明書の証明力は委任状と比較してかなり低いものといわざるを得ない。 4 さらに、法が代理権限を証する書面として私人作成の証明書を原則として許容していないことは、次の点からも明らかである。 不動産登記法施行細則(以下、細則という)は、法三五条一項五号の規定により提出すべき代理権限を証する書面にして官庁又は公署の作成するものはその作成後三か月以内のものに限る旨定めているが(細則四四条)、私人が作成する証明書等について何ら有効期限を定めていない。私人作成の証明書よりもその証明力が高いと考えられる官公署作成の証明書等にことさら有効期限を設け、私人作成の証明書等に触れなかつたのは、そもそも法三五条一項五号の代理権限を証する書面として私人作成の証明書を予想しておらず、委任状が右書面に該当し、これが処分証書にあたることから有効期限を定めることになじまないと考えてい なかつたのは、そもそも法三五条一項五号の代理権限を証する書面として私人作成の証明書を予想しておらず、委任状が右書面に該当し、これが処分証書にあたることから有効期限を定めることになじまないと考えていると思われる。 第三証拠(省略)○ 理由一司法書士の資格を有する原告Aが、昭和五六年九月二一日大阪法務局北出張所に出頭して、同原告及びその余の原告の代理人として別紙抵当権目録記載の抵当権設定登記の申請をし、その申請書に添付して本件証明書を提出したこと、その申請が同出張所同日受付第四六五一五号として受付けられ、被告が同年一〇月六日付で登記申請書に必要な書面の添付がないという理由で右申請を却下したこと及びその添付がないとされた書面が法三五条一項五号に定める代理権限を証する書面であることは当事者間に争いがない。 二本訴の争点は本件証明書が法三五条一項五号の書面にあたるか否かであるから、以下この点について判断する。 1 法は代理人によつて登記を申請する時はその権限を証する書面の提出を義務づけているが(法三五条一項五号)、その書面の方式、内容について特に規定するところがない(但し、法七七条一項参照)。ここで代理人とは法定代理人、任意代理人及び法人の機関をいうものと解せられているが、弁論の全趣旨によれば、登記実務上一般に代理権限を証する書面として、法定代理人の場合については戸籍謄本、任意代理人については委任状、法人の機関についてはその法人の代表者資格を証するもの、例えば登記簿謄本又は資格証明書が用いられていることが認められる。 しかし、法文が単に権限を証する書面とのみ定め、その書面の方式、内容について特に規定せず、右登記実務上の取扱いからも明らかなように、代理権限を証する書面といつても、公文書も私文書もあり、また報告文書の場合も処分証書の場合もある 書面とのみ定め、その書面の方式、内容について特に規定せず、右登記実務上の取扱いからも明らかなように、代理権限を証する書面といつても、公文書も私文書もあり、また報告文書の場合も処分証書の場合もあることからすると、法三五条一項五号の書面として、任意代理の場合処分証書である委任状以外の文書が全く排除されていると解釈することは同条の文言からだけではできない。 そこで、任意代理の場合いかなる内容の書面が求められているかは、登記手続の関係法規との関連で更に検討を要する。 2 登記は不動産に関する権利関係を公証するものであるから、実体上の物権変動を正確かつ迅速に公示することが望まれる。登記は登記官によつて扱われ、登記申請がなされると、登記官が管轄、登記適格、当事者、申請意思、登記原因について確認をし、登記の許否を決することになる(法四九条)。その確認のための審査は原則として申請書主義をとつているから(例外は表示に関する登記)、提出された書類のみにもとづいて実体法上及び手続法上の問題を審査することになる(書面審査主義)。 3 代理人によつて登記申請がなされた場合、登記官は申請書に添付して提出された代理権限を証する書面自体及び他の添付書類を審査して、当事者が代理人によつて登記する意思を有することの確認をしなければならないから(一旦登記がなされると、代理権限の瑕疵を理由として当該登記の無効を主張するためには当事者間ー登記権利者・義務者間ーで代理人に代理権限を授与したか否かが争われることになるが、登記官が登記申請を受理する際に審査すべき点もまさに右の代理権限授与の意思表示の存否である)、代理権限を証する書面はその確認に資する内容を包含し、しかも書面審査の建前からも後日疑問を残さないような信用性のあるものであることが要求され、その意味で証拠価値の高いものでな 意思表示の存否である)、代理権限を証する書面はその確認に資する内容を包含し、しかも書面審査の建前からも後日疑問を残さないような信用性のあるものであることが要求され、その意味で証拠価値の高いものでなければならない。 法定代理人及び法人の機関の場合に用いられている戸籍騰本、登記簿騰本等はその記載の身分事項、登記事項等が公簿に登記されている事実が明らかにされ、その事実から法定代理権や代表者資格を肯定させ、これを公証するための公簿の騰本で、しかも細則四四条により作成後三か月以内のものに限られているから、右要求を満す書面であることに異論をみない。 4 任意代理人の場合、委任状が提出されると、それが処分証書であり、証明すべき法律行為が文書自体に包含されていることから、その文書が真正に成立したと認められると、経験則上内容である法律行為(登記申請の場合申請にかかる当該登記の申請行為の授権)の存在が認められ(反証をあげて争うことが容易でない)、法律行為のなされたことが証明される。そして、登記申請書には登記義務者の印鑑証明書が添付されるから(細則四二条、四二条ノ二)、登記官はその印鑑証明書の印影と委任状の印影とを対照することにより、少くとも登記義務者に関する限り容易に委任状の成立を確認し得る。 5 本件の証明書はいわゆる報告文書といわれるもので、文書の内容をなす作成者の表現された思想を資料として法律行為の存在を証明しようとするものであるから、それが真正に成立したと認められても、作成者の表現する思想の存在が認められるにすぎず、証明しようとする法律行為の存在とは観念上別個(証明しようとする法律行為が存在しないことも考えられる)なものである。この点処分証書が即法律行為を包含し、その真正な成立が認められると内容である法律行為の存在が認められ、その書面に法律行為が存 個(証明しようとする法律行為が存在しないことも考えられる)なものである。この点処分証書が即法律行為を包含し、その真正な成立が認められると内容である法律行為の存在が認められ、その書面に法律行為が存在するがゆえに、その撤回、取消あるいは無効の主張等に制限が存することと対比すると、報告文書は登記官の書面審査のもとで登記申請の代理権限を証明する方法としては、処分証書である委任状と比べて証明すべき法律行為の存否の判断につき証拠価値に格段の差があるといわねばならない。 さらに本件証明書についていえば、その記載内容は原告らが原告Aを代理人と定めて、別紙抵当権目録記載の抵当権設定登記申請をする一切の件に関する代理権限を授与しているという観念の通知と、証明書の有効期間を作成日(昭和五六年九月一八日)から向う三か月間とする意思の通知がなされているもので、その原因をなす授権の意思表示が何時誰に対していかなる方式でなされたかの事実について何ら触れるところがない。したがつて、本件証明書の記載内容からは、登記官において代理権限発生の原因事実を確認し得る資料がないといわねばならない(登記官は単に代理権を与えた旨の観念の通知の存在のみを認識しうる)。 原告らは証明書発行日が授権の日である旨主張するが、証明書の有効期間の記載があることから証明書発行日に授権がなされたと認めるべきであるとする経験法則はない(現に本訴において、原告C及び同Dが弁護士岡田尚明に訴訟代理権限を授権した旨の代理権授与証明書を裁判所に提出しているが、当裁判所が訴訟代理人に対し授権が何時、どのような方式でなされたかを釈明したところ、同弁護士は裁判所へ提出した代理権授与証明書の作成日付の数日前に原告Cについてはその夫Aを通じ、原告Dについてはその夫Eを通じ、それぞれ口頭で授権の意思表示がなされた旨釈明 れたかを釈明したところ、同弁護士は裁判所へ提出した代理権授与証明書の作成日付の数日前に原告Cについてはその夫Aを通じ、原告Dについてはその夫Eを通じ、それぞれ口頭で授権の意思表示がなされた旨釈明していることからみれば、証明書作成日付と授権の意思表示がなされた時とは区別されるべきものであり、右証明書の記載内容からだけでは代理権限授与の方式等を明確にしえないことが明らかである)。 6 以上の検討により明らかなように、任意代理人の場合その権限を証する書面として、処分証書である委任状と報告文書である証明書とではその証拠価値に著しい差のあること、殊に本件証明書は登記官において代理権限の発生を確認し得る資料に値いしないものであること、したがつて、本件証明書が委任状あるいは法定代理人及び法人の機関の場合に提出される戸籍謄本、登記簿謄本等の証明文書と対比して、その記載内容及び信用性の両面からみて著しく証明力の劣るものであることは明らかである。任意代理の場合代理権限授与の証明が公正証書によつてなされているような場合は格別、本件証明書のように授権行為の存在を証明するに十分でない書面は法三五条一項五号の書面にあたらないといわざるを得ない。 三そうすると、被告が原告らの登記申請の審査に際し、登記申請書に添付されて提出された本件証明書について法三五条一項五号に定める代理権限を証する書面にあたらないと判断し、登記申請に必要なる書面の添付がないという理由で登記申請を却下したことに違法な点はなく、原告Aが本件証明書以外に授権を証する書面を提出していないことは弁論の全趣旨により明らかであるから、右登記申請却下処分は適法なものと認められる。 四よつて、原告らの本訴請求は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条、九三条に従い主文のとおり判決する り明らかであるから、右登記申請却下処分は適法なものと認められる。 四よつて、原告らの本訴請求は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条、九三条に従い主文のとおり判決する。 (裁判官志水義文宮岡章中川博之)別紙抵当権目録(省略)

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