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主文 1 原告らの請求を棄却する。2 訴訟費用は原告らの負担とする。事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告ら(1) 被告は,A町に対し,20億円を支払え。(2) 訴訟費用は被告の負担とする。2 被告(1) 本案前の答弁① 本件訴えを却下する。② 主文2項と同旨(2) 本案に対する答弁主文同旨第2 事案の概要等 1 本件は,A町の住民である原告らが,A町長である被告に対し,A町下水道事業に関する請負契約の締結及び公金の支出が違法であるとして,A町への損害賠償を求めた住民訴訟である。2 争いのない事実等(1) 原告らは,A町民であり,被告はA町長である。(2) A町下水道計画の概要A町は,平成5年9月,A町B地区とC地区に下水道を設置することを計画し,平成8年5月16日,三重県と国にA町特定環境保全公共下水道事業計画(以下「A町下水道計画」という。)を提出し,C処理区につき事業認可申請をし,同年6月,認可された。平成6年7月にA町議会全員協議会に報告された計画によるとC処理区の総事業費は22億4800万円であったのが平成8年6月に認可された計画によるとC処理区の総事業費は35億0300万円となった。A町は平成10年9月21日,三重県に対しA町下水道計画の変更認可申請を行い,同年10月8日認可された。変更されたA町下水道計画によるとC処理区の総事業費は36億3700万円となった。その財源内訳は国費15億8500万円,起債18億4300万円,町費2億0900万円となっており,計画人口は,処理区域内人口が2360人,観光人口が150人で,合計2510人となっている(甲1)。A町の人口は,昭和60年を100とすると平成12年は約88.5であり,C地 900万円となっており,計画人口は,処理区域内人口が2360人,観光人口が150人で,合計2510人となっている(甲1)。A町の人口は,昭和60年を100とすると平成12年は約88.5であり,C地区の平成4年の人口を100とすると,平成12年の人口は約85となり,いずれも減少しつつある(甲45の1・2)。 っている(甲1)。A町の人口は,昭和60年を100とすると平成12年は約88.5であり,C地 900万円となっており,計画人口は,処理区域内人口が2360人,観光人口が150人で,合計2510人となっている(甲1)。A町の人口は,昭和60年を100とすると平成12年は約88.5であり,C地区の平成4年の人口を100とすると,平成12年の人口は約85となり,いずれも減少しつつある(甲45の1・2)。(3) A町は,平成9年度にC処理区の下水道工事(以下「本件下水道工事」という。)に着手し,被告は,この事業の費用として,平成12年3月末日までに11億9953万4860円につき,請負契約を締結し,支払った。(4) 監査請求と監査結果原告らは,平成10年10月16日と19日に,A町監査委員に対し,地方自治法242条1項に基づき,被告がA町に対し損害賠償することとA町下水道事業の差止めの監査請求をしたところ,同監査委員は,平成10年12月10日監査請求を棄却した。3 原告らの主張(1) A町下水道計画の違法性① 地方自治法,地方財政法の原則地方自治法2条14項は地方公共団体に対し,「その事務を処理するに当っては,・・・・最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」ことを義務づけており,また地方財政法4条1項は「地方公共団体の経費は,その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて,これを支出してはならない」と定めている。右各規定は単なる訓示規定ではなく,予算執行機関に法的義務を課している。② A町下水道計画は次の理由により,上記の規定に反し違法である。ア合併処理浄化槽は,下水道に比べて,浄化効果は勝るとも劣らず,経費は下水道より格段に安価(約5分の1)で建設することができる。C処理区の下水道設置の認可時点での総事業費は36億3700万円(管渠20億9400万 は,下水道に比べて,浄化効果は勝るとも劣らず,経費は下水道より格段に安価(約5分の1)で建設することができる。C処理区の下水道設置の認可時点での総事業費は36億3700万円(管渠20億9400万円,処理場15億4300万円)であったが,A町は,平成12年5月時点で総事業費を28億6900万円と推定している(乙41)。他方,合併処理浄化槽事業による総事業費は5億6500万円程度である(甲58)。A町の人口は減少し続けている上,C地区の多くの住民は費用負担にたえられず下水道事業に参加しない意思を表明しており,公費負担はますます増加する。 点での総事業費は36億3700万円(管渠20億9400万円,処理場15億4300万円)であったが,A町は,平成12年5月時点で総事業費を28億6900万円と推定している(乙41)。他方,合併処理浄化槽事業による総事業費は5億6500万円程度である(甲58)。A町の人口は減少し続けている上,C地区の多くの住民は費用負担にたえられず下水道事業に参加しない意思を表明しており,公費負担はますます増加する。イ A町C地区は,その周辺地域に斜面が多く,谷が入り組み,宅地が狭くて建替えが不可能な家が多くあり,道路が狭く,車が入らないので若者が住まない。その結果家の建替えをしない老人だけの世帯や空家空地が増えている。便所の水洗化や宅内配管の金がない,大金をつぎ込むメリットがないなどの理由で水洗化や宅内配管をしない家がかなりある。道路を整備し,家を建てられるよう区画整理しなければならない状態である。したがって,すぐに下水道を整備しても,水洗化したり,宅内配管をする費用が無駄になり,加入できない家が極めて多く無駄になる可能性が高い。下水道が完成しても加入する住民は30%ないし50%程度と推定される。このような地区では合併処理浄化槽事業を選択すべきである。なぜならば,合併処理浄化槽による整備は,設置可能な家庭から順次設置することができて柔軟性があるからである。これに比べ,下水道事業は,現在の人口と狭い道,狭い宅地,地形を前提として,巨額な金を使って,管を布設し,処理場を設置してしまうため,取り返しがつかず,現時点で巨大な費用を投入することは,無謀である。ウ C処理区の下水道処理水の放流先はK湾奥部の 形を前提として,巨額な金を使って,管を布設し,処理場を設置してしまうため,取り返しがつかず,現時点で巨大な費用を投入することは,無謀である。ウ C処理区の下水道処理水の放流先はK湾奥部のDとEの2カ所であり,この潮流がない浅い狭隘な海域へ毎日800トンないし1000トンもの処理水を放流すると淡水化が著しくなり,付近の真珠養殖業者は操業不能となる。毎日の放流で合成洗剤などによりK湾の汚染が進み,漁業も観光もだめになる。B地区の下水道設置の総事業費は基本計画によると59億9700万円とされているが,C処理区のように当初22億4800万円であったのが36億3700万円となったように値上がりすると97億0200万円となり,C処理区の事業費と併せると合計130億円を超えることになると推定される。 水化が著しくなり,付近の真珠養殖業者は操業不能となる。毎日の放流で合成洗剤などによりK湾の汚染が進み,漁業も観光もだめになる。B地区の下水道設置の総事業費は基本計画によると59億9700万円とされているが,C処理区のように当初22億4800万円であったのが36億3700万円となったように値上がりすると97億0200万円となり,C処理区の事業費と併せると合計130億円を超えることになると推定される。A町は下水道事業をすると莫大な借金を抱えることになり,これからの財政に重大な圧迫を与えることとなる。したがって,A町は,下水道事業に比べ格段に安くでき(約5分の1),環境によい合併処理浄化槽事業を実施すべきである。F大学のG教授は「下水道は1人当り130万円かかるが,合併処理浄化槽は約37万円である」としており(甲24),志摩郡H町では,下水道事業だと1人当りの経費は180万円だが,合併浄化事業は30万円であるとし(甲4),秋田県I町は,下水道事業だと40年間の総事業費は204億2000万円だが,合併浄化事業は51億8630万円であると算出している(甲14の1)ことからしても,下水道事業の事業費は合併処理浄化槽事業の4倍ないし6倍になることが分かる。しかるに,A町は,下水道事業を採用するにつき,下水道事業か合併処理浄化槽事業かの費用対効果を検討したこともなく,合併処理浄化槽事業を実施してい 業の4倍ないし6倍になることが分かる。しかるに,A町は,下水道事業を採用するにつき,下水道事業か合併処理浄化槽事業かの費用対効果を検討したこともなく,合併処理浄化槽事業を実施している自治体の状態を視察検討したり,人口が減少し,投資効率が悪くなることを検討したりすることなく,下水道事業が莫大な財政赤字を生み,町の財政を大きく圧迫すること(甲57の3)を,検討することもなく,下水道事業を実施したのであって,その違法性は大きい。(2) A町下水道計画の実施の違法性と被告の責任及びA町の損害① 本件における「原因行為」はA町下水道計画であり,原告らが主張する違法な財務会計行為はこれに基づくC処理区下水道施設建設のための請負契約の締結,公金の支出などである。原因行為の違法性と財務会計行為の違法性(及び義務違反)を別々に考える必要性があるのは,独立の権限を有する行政執行機関の行った処分に関する執行行為を行う場合である。 大きい。(2) A町下水道計画の実施の違法性と被告の責任及びA町の損害① 本件における「原因行為」はA町下水道計画であり,原告らが主張する違法な財務会計行為はこれに基づくC処理区下水道施設建設のための請負契約の締結,公金の支出などである。原因行為の違法性と財務会計行為の違法性(及び義務違反)を別々に考える必要性があるのは,独立の権限を有する行政執行機関の行った処分に関する執行行為を行う場合である。本件においては原因行為であるA町下水道計画はA町長が策定した計画であり,請負契約もA町長の専決行為であるから,違法性及び義務違反を別々に考える必要性はない。下水道計画を自ら策定した被告は下水道計画の違法性を十分知り得る立場にあり,下水道計画が違法であれば,その執行行為も違法であり,被告に義務違反があることは当然である。下水道事業に関する予算については,議会の決議を経ているが,その予算案は被告が提出したもので,その内容を最も知り得る立場にあり,この点でも執行行為たる請負契約などが原因行為の違法性を承継することや,A町長である被告の義務違反を問うことに何の問題もない。② A町は,平成9年度に本件下水道工事に着手し,被告は,この事業の費用として,平成12年3月末日までに11億9953万4860円につき, 町長である被告の義務違反を問うことに何の問題もない。② A町は,平成9年度に本件下水道工事に着手し,被告は,この事業の費用として,平成12年3月末日までに11億9953万4860円につき,請負契約を締結し,支払った。平成13年10月時点で,管渠工事,処理場工事はほとんど完成し,25億8280万7752円につき契約し,平成14年3月31日までに,同額の支払が完了する予定である(甲60)。平成13年10月時点では,本件下水道工事はほとんど完成しているのであるから,本件下水道工事のため,28億6900万円を使用せざるを得ず,後戻りできない状態である。上記のとおり,本件下水道工事の実施・請負契約,これに基づく支払いは違法であり,被告は,合併処理浄化槽事業であれば,総経費約5億6500万円で実施できるにもかかわらず,本件下水道工事のための請負契約を締結し,ほとんど完成させ,その費用28億6900万円を支払い,あるいは義務を負担し,A町に少なくとも20億円の損害を与えた。(3) よって,原告はA町に代位して,地方自治法242条の2第1項に基づき,被告がA町に対し,損害賠償金20億円を支払うことを求める。 く支払いは違法であり,被告は,合併処理浄化槽事業であれば,総経費約5億6500万円で実施できるにもかかわらず,本件下水道工事のための請負契約を締結し,ほとんど完成させ,その費用28億6900万円を支払い,あるいは義務を負担し,A町に少なくとも20億円の損害を与えた。(3) よって,原告はA町に代位して,地方自治法242条の2第1項に基づき,被告がA町に対し,損害賠償金20億円を支払うことを求める。4 被告の主張(1) 本件訴訟は財務会計行為を対象とするものではなく,不適法として却下されるべきである。すなわち,地方自治法242条の2第1項に基づく訴訟は同条に列記されている財務会計上の行為を対象とするものでなければならず,ここでいう財務会計上の行為とは,地方公共団体の財務的処理を直接の目的とする行為であって,それが同時に他の行政目的を達成するための必要不可欠な行為である場合には,それを住民訴訟の対象とすることはできない。なぜならば,同条の趣旨は,地方公共団体の行政一般の公正さを担保 であって,それが同時に他の行政目的を達成するための必要不可欠な行為である場合には,それを住民訴訟の対象とすることはできない。なぜならば,同条の趣旨は,地方公共団体の行政一般の公正さを担保するものではなく,地方公共団体の財務会計の公正さを担保するための制度であるからである。本件において,原告らの主張する契約の締結,公金の支出は,A町特定環境保全公共下水道事業という行政目的を達成するために必然的に伴うものであって,地方公共団体の財務的処理を直接の目的とするものではないから,地方自治法242条の2第1項にいう財務会計行為に該当しない。原告らは,A町の財務を問題としているのではなく,下水道事業の是非を争っている。このように,直接的に財務的処理を目的とせず,下水道事業等の他の行政目的を達成するために必然的に伴う行為についても,地方自治法242条の2によって争うことができるとするのは,本来,選挙や議会での審議等の政治によって処理されるべき行政上の政策の是非を裁判所で争うことを許すことになり,同条の趣旨に反することは明らかである。(2) 住民訴訟の制度目的は地方公共団体が財産上の損害を被ることを防止することにあるから,住民訴訟の対象とされている行為が,客観的にみて,これによって地方公共団体が確実に損害を被る場合でなければ,その行為を住民訴訟の対象とすることはできないというべきである。 ,選挙や議会での審議等の政治によって処理されるべき行政上の政策の是非を裁判所で争うことを許すことになり,同条の趣旨に反することは明らかである。(2) 住民訴訟の制度目的は地方公共団体が財産上の損害を被ることを防止することにあるから,住民訴訟の対象とされている行為が,客観的にみて,これによって地方公共団体が確実に損害を被る場合でなければ,その行為を住民訴訟の対象とすることはできないというべきである。本件において原告らが訴訟の対象としている行為は,A町特定環境保全公共下水道事業に伴う支出行為であるが,この事業は,「A町下水道事業に地方公営企業法の一部を適用する条例」により,地方公営企業として経営されており,しかもその事業費の大部分が国の補助金をもって行われ,町の負担となる部分についても,起債と住民負担金によるのであり,起債 方公営企業法の一部を適用する条例」により,地方公営企業として経営されており,しかもその事業費の大部分が国の補助金をもって行われ,町の負担となる部分についても,起債と住民負担金によるのであり,起債は,地方交付税,下水道料金によって償還されることが予定されている。また,本件下水道事業は,企業体として独立採算制のもとに費用に見合う部分を全て回収することが予定されているから,その将来の収支予測をして損害を論ずることは無意味である。したがって,本件訴訟は,将来収支の予測不可能な事業についてその損害の発生を前提とするものであるから,住民訴訟の対象となり得ず,却下されるべきである。なお,原告らは,下水道事業においてA町支出予定の金額と合併処理浄化槽費用との差額を損害としてとらえているが,A町支出費用は,支出に見合う設備等が固定資産として存在し,支出についても,その資金の大部分は補助金によるものであり,補助金以外の部分は将来回収することが予定されているのであるから,単純に支出額との差額を損害としてとらえることはできない。これは,本件下水道工事における損害を把握する余地がないことを物語っており,そもそも,本件下水道工事のような,補助金と収入支出の合理的計算のもとに独立採算によって実施される事業については,その個別的な財産の取得や個別支出の高低について損害発生の余地があるとしても,事業全体について損害を論じること自体ができず,このような事業に伴う支出行為を住民訴訟の対象とすることはできない。 てとらえることはできない。これは,本件下水道工事における損害を把握する余地がないことを物語っており,そもそも,本件下水道工事のような,補助金と収入支出の合理的計算のもとに独立採算によって実施される事業については,その個別的な財産の取得や個別支出の高低について損害発生の余地があるとしても,事業全体について損害を論じること自体ができず,このような事業に伴う支出行為を住民訴訟の対象とすることはできない。(3) 原告らの主張(1)に対する反論① 原告らは,本件下水道計画の違法性を主張し,その根拠として地方自治法2条14項及び地方財政法4条1項をあげるが,下水道計画とその後の財務会計行為は別個独立のものであり,原告らは財務会計行為の違法性 原告らは,本件下水道計画の違法性を主張し,その根拠として地方自治法2条14項及び地方財政法4条1項をあげるが,下水道計画とその後の財務会計行為は別個独立のものであり,原告らは財務会計行為の違法性を主張しているとはいえない。地方自治法2条14項及び地方財政法4条1項は,所定の目的を前提として目的達成のための経費額の相当性を規律する規定であって,本件における違法性の根拠とはなりえない。また,原告らは下水道計画の違法性がそのまま財務会計行為の違法性に承継されるとし,A町下水道計画の決定権限を有する者と財務会計行為の執行行為者が同一であるかの如く主張をするが,財務会計行為の違法とその先行行為との違法性との関係は,その財務会計行為の執行者が先行行為を前提としていかなる行為義務を負担するかを考えなければならない。原告らの主張はA町長が予算議決を経た下水道計画に対していかなる行為義務を負うかの主張をしておらずこの点において失当であるが,A町下水道計画は議会において予算決議されているのであるから,町長にはその執行義務があり,下水道計画を取消変更しうる権限など存しない。したがって,計画決定者と予算執行者を同一視している原告らの主張は失当である。② 仮に本件損害賠償代位請求において本件下水道計画の内容が問題となることがあるとしても,それが不当性を越えて違法性を帯びるというためには本件下水道計画が著しく合理性を欠き,そのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合でなければならない。なぜならば,本件下水道事業計画は,水浄化等による生活環境の改善や公共水域の水質保全を図るという高度の公共的必要性に基づいて構想され,特定環境保全公共下水道事業として実施され,かつ,既にその事業実施の裏付けとしての予算措置について議会 当性を越えて違法性を帯びるというためには本件下水道計画が著しく合理性を欠き,そのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合でなければならない。なぜならば,本件下水道事業計画は,水浄化等による生活環境の改善や公共水域の水質保全を図るという高度の公共的必要性に基づいて構想され,特定環境保全公共下水道事業として実施され,かつ,既にその事業実施の裏付けとしての予算措置について議会 化等による生活環境の改善や公共水域の水質保全を図るという高度の公共的必要性に基づいて構想され,特定環境保全公共下水道事業として実施され,かつ,既にその事業実施の裏付けとしての予算措置について議会の議決を経ているのであるから,本件下水道計画は政策的にも財政的にも必要性・合理性あるものと考えなければならず,それにもかかわらず,これを違法というためには,その計画に重大明白な不合理があって絶対に実行に移すべきではないといえる程の瑕疵が必要であると考えられるからである。しかるに,原告らの主張は,単に本件下水道計画と合併処理浄化槽とを比較してA町下水道計画の不当性を述べているにすぎず,その主張自体において,A町下水道計画の法的違法性を主張しているということはできない。③ 仮に本件においてA町下水道計画の内容が問題とされるとしても,以下のとおり,その内容は合理性に欠けるところはない。まず,原告らは,合併処理浄化槽事業との比較を主張するが,A町において合併処理浄化槽事業を施行することは不可能である。すなわち,合併処理浄化槽事業をA町の事業として実施するためには施行対象地区の全戸において合併処理浄化槽の設置が可能でなければならないが,下水道事業対象地区は,道路幅員が狭く槽の持込み不可能なところがあること,道路側溝がなく合併処理浄化槽からの処理排水ができないところがあること,浄化槽の大きさは小さなものでも長さ3メートル,幅1.3メートルあり,その設置スペースが確保できない世帯があること等の理由により,合併処理浄化槽設置不可能な世帯が相当数あり,これでは町の事業として実施することはできない。また,合併処理浄化槽事業には国庫補助がなく,起債発行もできず,その財源は全額A町負担となるが,補助金もなく起債もせずにその財源を調 数あり,これでは町の事業として実施することはできない。また,合併処理浄化槽事業には国庫補助がなく,起債発行もできず,その財源は全額A町負担となるが,補助金もなく起債もせずにその財源を調達することはできない。 帯が相当数あり,これでは町の事業として実施することはできない。また,合併処理浄化槽事業には国庫補助がなく,起債発行もできず,その財源は全額A町負担となるが,補助金もなく起債もせずにその財源を調 数あり,これでは町の事業として実施することはできない。また,合併処理浄化槽事業には国庫補助がなく,起債発行もできず,その財源は全額A町負担となるが,補助金もなく起債もせずにその財源を調達することはできない。なお,旧厚生省による特定地域生活排水処理事業実施要綱の対象地域に該当すれば国の補助を受けられる可能性があるが,A町が対象地域として指定されたのは既に下水道事業が認可を受けて工事も開始されている時期である平成11年3月31日のことであり,旧厚生省要綱に基づく合併処理浄化槽事業との比較は不可能であった。また,旧厚生省要綱に基づく補助対象事業の要件として,事業対象地域の全戸に戸別の合併処理浄化槽の設置が可能でなければならないとされ,集合処理合併処理浄化槽は含まれておらず,したがって,要綱に基づく補助事業の適用対象となっていたと仮定しても,A町に要綱に基づく合併処理浄化槽事業を実施することは不可能であった。以上のとおり,A町において浄化槽事業を実施することは物理的にも財政的にも不可能であって,これとの比較において下水道事業の不合理性を主張することは無意味である。④ 仮に本件下水道事業の違法性の有無の判断について原告らが主張する地方自治法2条14項,地方財政法4条に基づき本件下水道事業と合併処理浄化槽事業の各費用の多寡が問題となり,かつ,全戸に合併処理浄化槽の設置が可能であるとしても,本件訴訟は地方自治法242条の2第1項に基づく住民訴訟であるから,違法というためにはA町が下水道事業により実際に負担する額が合併処理浄化槽により実際に負担する額より高くなければならない。しかるに,A町が下水道事業により実際に負担する額は総事業費約28億6938万円の内,町費の1億5771万円と起債の元利金約 合併処理浄化槽により実際に負担する額より高くなければならない。しかるに,A町が下水道事業により実際に負担する額は総事業費約28億6938万円の内,町費の1億5771万円と起債の元利金約7億3983万円の合計8億9754万円であるのに対し,原告らが主張する合併処理浄化槽事業は,し尿処理場の用地費,造成費及び外構費を除いても29億7500万円を要する。 万円の内,町費の1億5771万円と起債の元利金約 合併処理浄化槽により実際に負担する額より高くなければならない。しかるに,A町が下水道事業により実際に負担する額は総事業費約28億6938万円の内,町費の1億5771万円と起債の元利金約7億3983万円の合計8億9754万円であるのに対し,原告らが主張する合併処理浄化槽事業は,し尿処理場の用地費,造成費及び外構費を除いても29億7500万円を要する。この費用はA町が下水道事業に着手した平成8年当時にはA町は特定地域生活排水処理事業の対象地域となっていなかったので,同事業による補助金等は受けられず,その大部分がA町の負担となったものであるから,下水道事業よりも数倍の費用を負担しなければならなかったのである。仮に原告らが主張するようにA町長は本件下水道事業をA町が特定地域生活排水処理事業の対象地区に指定されるまで延期し,下水道と合併処理浄化槽整備にかかる費用についてのA町の実質的負担額を検討する義務があったとしても,合併処理浄化槽の負担額は起債分約1億9553万円,町費約15億9800万円の合計約17億9353万円であり,下水道事業による負担額約8億9754万円の2倍近い負担となる。いずれにしても本件下水道事業の方が合併処理浄化槽事業よりもA町の実質的負担額は少ないのであるから,本件下水道事業に違法性がないことは明白である。⑤ 環境問題についても,A町としては,下水道事業を進める場合の最重要課題であることを認識し,下水道計画の構想段階から現在に至るまで繰り返し調査検討を行い,処理水放流による淡水化及び合成洗剤による湾内汚染については,漁場の塩分に及ぼす影響はほとんどないこと,合成洗剤もほとんどが除去されるとの結果を得ている。また,今後も放流水域の海水調査を続け,供用開始後の対応策も検討 化及び合成洗剤による湾内汚染については,漁場の塩分に及ぼす影響はほとんどないこと,合成洗剤もほとんどが除去されるとの結果を得ている。また,今後も放流水域の海水調査を続け,供用開始後の対応策も検討することとしている。なお,原告らは下水道事業によるK湾の淡水化,合成洗剤による汚染を主張するが,合併処理浄化槽からの処理水の放流水量は下水道の場合とほぼ同等と見込まれるし,合成洗剤の処理については下水道の方が汚染物質の除去率が高い。(4) 原告らの主張(2)に対する反論(損害の不発生について)① 仮に本件下水道事業の方が合併処理浄化槽事業よりもA町が実際に負担する額が高くなるとしても本件訴訟は上記のとおり住民訴訟であるから,被告に対する損害賠償請求が認められるためには,本件下水道事業によりA町に損害の発生することが必要である。 は下水道の場合とほぼ同等と見込まれるし,合成洗剤の処理については下水道の方が汚染物質の除去率が高い。(4) 原告らの主張(2)に対する反論(損害の不発生について)① 仮に本件下水道事業の方が合併処理浄化槽事業よりもA町が実際に負担する額が高くなるとしても本件訴訟は上記のとおり住民訴訟であるから,被告に対する損害賠償請求が認められるためには,本件下水道事業によりA町に損害の発生することが必要である。② 本件下水道事業によるA町の負担については,財政計画によれば受益者負担金と下水道料金により起債償還が終わる平成45年度末で約5385万円の赤字にとどまり,平成46年以降は毎年度1514万円の利益が発生するから,この赤字も4年弱で解消するのであり,A町にはなんらの損害も発生しない。第3 当裁判所の判断 1 A町下水道事業の経緯について,上記争いのない事実等に証拠(乙2ないし16,23ないし28,31,証人J)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実を認めることができる。(1) K湾水域流域別下水道整備総合計画下水道法2条の2は「都道府県は,環境基本法(平成5年法律第91号)第16条第1項の規定に基づき水質の汚濁に係る環境上の条件について生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準(以下「水質環境基準」という。)が定められた河川その他の公共の水域又は海域で政令で定める要件に該当するも づき水質の汚濁に係る環境上の条件について生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準(以下「水質環境基準」という。)が定められた河川その他の公共の水域又は海域で政令で定める要件に該当するものについて,その環境上の条件を当該水質環境基準に達せしめるため,それぞれの公共の水域又は海域ごとに,下水道の整備に関する総合的な基本計画(以下「流域別下水道整備総合計画」という。)を定めなければならない。」と規定している。K湾水域は,環境基本法16条1項及び2項に基づき,水質環境基準が定められている水域であり,このため,三重県は,平成6年4月に,下水道法2条の2に基づく流域別下水道整備総合計画としてのK湾水域流域別下水道整備総合計画を策定し,同年4月21日に,同法2条の2第4項(改正前)に基づき建設大臣の承認を受けている。なお,流域別下水道整備総合計画は,下水道の整備に関する総合的な基本計画であり,この総合計画が定められる地域にあっては,これらの地域に係わる公共下水道又は流域下水道の事業計画はこの総合計画に適合しなければならないことになっており(下水道法6条5号,同25条の5第4号),個別事業計画の上位計画である。 備総合計画を策定し,同年4月21日に,同法2条の2第4項(改正前)に基づき建設大臣の承認を受けている。なお,流域別下水道整備総合計画は,下水道の整備に関する総合的な基本計画であり,この総合計画が定められる地域にあっては,これらの地域に係わる公共下水道又は流域下水道の事業計画はこの総合計画に適合しなければならないことになっており(下水道法6条5号,同25条の5第4号),個別事業計画の上位計画である。したがって,A町下水道計画もK湾水域流域別下水道整備総合計画を上位計画としている。(2) 伊勢志摩地域新地方生活圏計画同計画は,日常の社会経済圏を同じくする市町村が圏内の都市と周辺の農山漁村を一体的な生活の場としてとらえ,住民の全てが都市の高度な機能と農山漁村の豊かな自然を同時に享受することができる調和のとれた地域社会の形成を目指したものである。(3) A町下水道基本構想A町は,平成元年3月より第3次総合計画において,(ア)健康でうるおいのある町づくり,(イ)活力に満ちた快適な町づく れた地域社会の形成を目指したものである。(3) A町下水道基本構想A町は,平成元年3月より第3次総合計画において,(ア)健康でうるおいのある町づくり,(イ)活力に満ちた快適な町づくり,(ウ)豊かな人間性を育てる町づくりを基本目標として掲げ,上記(1),(2)の各計画との整合性を図りながら町づくりをすすめていた。下水道は,これらの施策を推進するうえで,かつ,都市施設として,水洗化等による生活環境の改善及び公共用水域の水質保全に大きく寄与するとして,A町は,平成4年3月に,A町下水道基本構想を策定した。そして,この基本構想の策定にあたっては,下水道関連制度の概要として,下水道類似施設の制度比較がなされており,特定環境保全公共下水道(公共下水道のうち,自然公園区域内の水系の水質保全及び農山漁村の生活環境の改善を目的とするもの)と,合併処理浄化槽との比較もなされた。(4) 平成4年当時における住民意思平成4年11月,議会全員協議会において,下水道基本構想を基本的に承認し,平成5年9月には,町内下水道アンケート調査を実施したところ,約90%の住民が特に必要もしくは必要とする回答をした。(5) A町特定環境保全公共下水道基本計画A町は,平成6年に,第4次A町総合計画を策定し,A町の将来像として「太陽と海と緑がかがやく,しあわせと活力に充ちたA」とし,基本目標として,(ア)町土基盤の充実した町,(イ)安全でうるおいのある緑の町,(ウ)産業を伸ばし豊かで活力のある町,(エ)健康で生きがいのある福祉の町,(オ)文化を高める心豊かな教育の町を掲げた。 特に必要もしくは必要とする回答をした。(5) A町特定環境保全公共下水道基本計画A町は,平成6年に,第4次A町総合計画を策定し,A町の将来像として「太陽と海と緑がかがやく,しあわせと活力に充ちたA」とし,基本目標として,(ア)町土基盤の充実した町,(イ)安全でうるおいのある緑の町,(ウ)産業を伸ばし豊かで活力のある町,(エ)健康で生きがいのある福祉の町,(オ)文化を高める心豊かな教育の町を掲げた。下水道は,これらの基本目標を推進するうえで,かつ,都市施設として水洗化等による生活環境の改善及び公共用水域の水質保全に大きく寄与するものであるとして,A町は,平成6 める心豊かな教育の町を掲げた。下水道は,これらの基本目標を推進するうえで,かつ,都市施設として水洗化等による生活環境の改善及び公共用水域の水質保全に大きく寄与するものであるとして,A町は,平成6年3月に,A町特定環境保全公共下水道基本計画を策定した。もっとも,下水道法上の下水道だけで早期に下水道整備を完備するには困難なところもあり,今後の下水道事業は,長期的な観点から下水道整備の促進を図るためには,下水道整備関連制度を把握し下水道類似施設を用いて柔軟で機動的な整備計画を立案する必要があるともされ,この基本計画においても下水道関連制度を総合的に視野に入れて,C地区,B地区等の6箇所が,家屋の混み具合により浄化槽による個別処理より公共下水道で集合処理した方が経済的に有利であるとして集合処理区域とされ,下水道等集合処理区域のうち,同一処理場で下水を処理する区域つまり処理区として,CとBが最適処理区であるとされた。(6) 基本計画策定から事業認可申請に至るまでの経緯A町は,この基本計画策定後も,住民の理解,協力を得るため,平成6年7月から,同8年3月にかけて,議会全員協議会の開催,住民代表による下水道視察の実施,下水道課の設置,C地区公共下水道推進協議会委員の委嘱,C出身議員との協議,漁業関係組合役員との協議会の開催,地元説明会に係わる事前協議会の開催,C地区公共下水道推進協議会の開催,C地区住民説明会の開催等を経た。A町議会は,平成8年3月18日に,公共下水道費を組み込んだ平成8年度A町一般会計予算を可決し,同月29日には地方自治法138条の4に基づきA町下水道事業審議会設置条例を制定した。A町は,同年4月1日に,この条例によりA町下水道事業審議会を設置した。 身議員との協議,漁業関係組合役員との協議会の開催,地元説明会に係わる事前協議会の開催,C地区公共下水道推進協議会の開催,C地区住民説明会の開催等を経た。A町議会は,平成8年3月18日に,公共下水道費を組み込んだ平成8年度A町一般会計予算を可決し,同月29日には地方自治法138条の4に基づきA町下水道事業審議会設置条例を制定した。A町は,同年4月1日に,この条例によりA町下水道事業審議会を設置した。この審議会は,A町下水道事業に関する重要な事項について 地方自治法138条の4に基づきA町下水道事業審議会設置条例を制定した。A町は,同年4月1日に,この条例によりA町下水道事業審議会を設置した。この審議会は,A町下水道事業に関する重要な事項について総合的に調査,審議する機関であり,審議会のメンバーは,議員5名,学識経験者2名,受益者代表3名であった。(7) A町下水道計画の認可下水道法3条1項は「公共下水道の設置,改築,修繕,維持その他の管理は,市町村が行なうものとする。」とし,同法4条1項(改正前)は,「前条の規定により公共下水道を管理する者は,公共下水道を設置しようとするときは,あらかじめ,政令で定めるところにより,事業計画を定め,建設大臣の認可を受けなければならない。認可を受けた事業計画の変更をしようとするときも,同様とする。」とし,同法40条(改正前)は,「この法律の規定により厚生大臣又は建設大臣の権限に属する事項は,政令で定めるところにより,その一部を都道府県知事に委任することができる。」と規定しているところ,A町は,平成8年5月16日付けで,「本計画は,当該地区における都市化の進展に伴う生活雑排水及び産業排水の増大に対して,K湾をはじめとする公共用水域の水質汚濁を防止し,良好な居住環境の整備向上に資するものである。今回,基本計画区域約56haのうち,K湾に面したC地区の事業効果の最も高い既成市街地約49haを事業認可区域と定め,公共用水域の水質保全,都市の健全な発展に寄与しようとするものである。」ことを申請理由として,三重県知事に事業認可申請を行い,同年6月19日に三重県知事の認可を得て,事業に着手した。また,平成10年9月21日付で「本事業は,基本計画区域約56haのうち,K湾に面したC地区の事業効果の最も高い既成市街地約49haを第一期事業として平成8年度 事業効果の最も高い既成市街地約49haを事業認可区域と定め,公共用水域の水質保全,都市の健全な発展に寄与しようとするものである。」ことを申請理由として,三重県知事に事業認可申請を行い,同年6月19日に三重県知事の認可を得て,事業に着手した。また,平成10年9月21日付で「本事業は,基本計画区域約56haのうち,K湾に面したC地区の事業効果の最も高い既成市街地約49haを第一期事業として平成8年度 重県知事の認可を得て,事業に着手した。また,平成10年9月21日付で「本事業は,基本計画区域約56haのうち,K湾に面したC地区の事業効果の最も高い既成市街地約49haを第一期事業として平成8年度に事業着手し,今日まで鋭意その整備に努めてきたところである。今回,幹線延長の変更,処理場位置の変更,水処理方式の変更,滅菌方式の変更,吐口位置変更等を行い,より合理的な公共投資に努め,K湾を始めとする公共用水域の水質保全,都市の健全な発展に寄与しようとするものである。」ことを変更理由として,変更認可申請を行い,平成10年10月8日に三重県知事の変更認可を得た。(8) 条例の制定A町議会は,平成8年12月25日に,「A町下水道事業の設置等に関する条例」及び「A町下水道事業に地方公営企業法の一部を適用する条例」を制定した。2 そこで,まず,本件訴訟の対象(原告らの主張(2)①,被告の主張(1),(2))について検討する。被告は,「本件訴訟が財務会計行為を対象とするものでないから不適法である。」旨主張するが,原告らは,違法な財務会計行為として,A町下水道計画に基づくC処理区下水道施設建設のための請負契約の締結,公金の支出を主張しているのであるから,本件訴訟が財務会計行為を対象とするものであることは明らかである。したがって,被告の同主張は採用できない。また,被告は,「住民訴訟の対象とされている行為が,客観的にみて,これによって地方公共団体が確実に損害を被る場合でなければ,その行為を住民訴訟の対象とすることはできない。」とも主張するが,公金の支出,義務の負担ないしは財産上の損失を伴う財務会計行為であれば,住民訴訟の対象となるというべきであるから,被告の同主張も採用できない。3 次に,財務会計行為(A町下水道計画に基づ するが,公金の支出,義務の負担ないしは財産上の損失を伴う財務会計行為であれば,住民訴訟の対象となるというべきであるから,被告の同主張も採用できない。 ,その行為を住民訴訟の対象とすることはできない。」とも主張するが,公金の支出,義務の負担ないしは財産上の損失を伴う財務会計行為であれば,住民訴訟の対象となるというべきであるから,被告の同主張も採用できない。3 次に,財務会計行為(A町下水道計画に基づ するが,公金の支出,義務の負担ないしは財産上の損失を伴う財務会計行為であれば,住民訴訟の対象となるというべきであるから,被告の同主張も採用できない。3 次に,財務会計行為(A町下水道計画に基づくC処理区下水道施設建設のための請負契約の締結,公金の支出)の違法性(原告らの主張(1),(2),被告の主張(3))について検討する。(1) 原告らは,「A町下水道計画が違法であるから,同計画に基づくC処理区下水道施設建設のための請負契約の締結,公金の支出もその違法性を承継する。原因行為の違法性と財務会計行為の違法性(及び義務違反)を別々に考える必要性があるのは独立の権限を有する行政執行機関の行った処分に関する執行行為を行う場合である。本件においては原因行為であるA町下水道計画はA町長が策定した計画であり,請負契約もA町長の専決行為であるから,違法性及び義務違反を別々に考える必要性はない。下水道計画を自ら策定した被告は下水道計画の違法性を十分知り得る立場にあり,下水道計画が違法であれば,その執行行為も違法であり,被告に義務違反があることは当然である。下水道事業に関する予算については,議会の決議を経ているが,その予算案は被告が提出したもので,その内容を最も知り得る立場にあり,この点でも執行行為たる請負契約などが原因行為の違法性を承継すること,A町長である被告の義務違反を問うことに何の問題もない。」旨主張する一方,被告は,「下水道計画の違法性がそのまま財務会計行為の違法性に承継されることはない。A町下水道計画は議会において予算決議されているのであるから,町長にはその執行義務があり,下水道計画を取消変更しうる権限など存しない。」旨主張する。この点,一般的には,長その他の職員の公金の支出等は,一方において議会の予算の議決に基づくことを から,町長にはその執行義務があり,下水道計画を取消変更しうる権限など存しない。」旨主張する。この点,一般的には,長その他の職員の公金の支出等は,一方において議会の予算の議決に基づくことを要するとともに,他面法令の規定に従わなければならず,議会の予算の議決があったからといって法令上違法な支出が適法な支出になることはないということはできる。 の公金の支出等は,一方において議会の予算の議決に基づくことを から,町長にはその執行義務があり,下水道計画を取消変更しうる権限など存しない。」旨主張する。この点,一般的には,長その他の職員の公金の支出等は,一方において議会の予算の議決に基づくことを要するとともに,他面法令の規定に従わなければならず,議会の予算の議決があったからといって法令上違法な支出が適法な支出になることはないということはできる。しかし,もともとA町長は,A町のし尿や生活排水をどのように処理するかについて広範な行政裁量を有している。また,A町下水道計画は,A町長が策定した計画ではあるものの,A町下水道事業審議会設置条例により設置されたA町下水道事業審議会の審議を経て,下水道法4条1項(改正前)に定める三重県知事の認可も受けていること,「A町下水道事業の設置等に関する条例」及び「A町下水道事業に地方公営企業法の一部を適用する条例」も制定されていることなどからして,下水道法に適合し,A町議会の承認も得られている事業計画であるといい得る。これらの事情からすれば,A町下水道計画が著しく合理性を欠き,そのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過できない瑕疵がある場合でなければ,A町下水道計画に基づくC処理区下水道施設建設のための請負契約の締結,公金の支出が違法となることはないというべきである。(2) そこで,かかる観点からA町下水道計画が著しく合理性を欠き,そのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過できない瑕疵がある場合であるか否かにつき検討する。① 原告らは,「合併処理浄化槽は,下水道に比べて,浄化効果は勝るとも劣らず,経費は下水道より格段に安価(約5分の1)で建設することができる。」旨主張する。しかし,証拠(甲58,乙41,42の1ないし4,証人L)及び弁論の全趣旨によれば,(ア)A町 とも劣らず,経費は下水道より格段に安価(約5分の1)で建設することができる。」旨主張する。しかし,証拠(甲58,乙41,42の1ないし4,証人L)及び弁論の全趣旨によれば,(ア)A町下水道計画は施行対象地区の全戸を対象としているのに対し,原告らの主張する合併処理浄化槽事業は,道路幅員が狭く槽の持込み不可能なところがあること,道路側溝がなく合併処理浄化槽からの処理排水ができないところがあること,浄化槽の大きさは小さなものでも長さ3メートル,幅1.3メートルあり,その設置スペースが確保できない世帯があること等の理由により,設置不可能な世帯が相当数あることを前提としていること,(イ)A町下水道計画が策定された当時合併処理浄化槽事業には国庫補助がなく,起債発行もすることはできず,その財源は全額A町負担となるが,補助金もなく起債もせずにその財源を調達することはできなかったこと,(ウ)厚生省が平成11年3月31日に特定地域生活排水事業の要綱を変更し,A町が制度上は合併処理浄化槽の設置主体となり補助金を得ることができるようになったものの,A町が同補助金を得るためには,全体計画において事業実施区域内の全戸に戸別の合併処理浄化槽を設置することが必要とされる一方,A町C地区には合併処理浄化槽を設置することが不可能な世帯が相当数あって,事実上この補助金を得ることが不可能であることが認められ,単純な経費の比較によってはその当否を判断できないといい得る。 ,A町が制度上は合併処理浄化槽の設置主体となり補助金を得ることができるようになったものの,A町が同補助金を得るためには,全体計画において事業実施区域内の全戸に戸別の合併処理浄化槽を設置することが必要とされる一方,A町C地区には合併処理浄化槽を設置することが不可能な世帯が相当数あって,事実上この補助金を得ることが不可能であることが認められ,単純な経費の比較によってはその当否を判断できないといい得る。また,証拠(乙41,証人L)及び弁論の全趣旨によれば,A町が下水道事業により実際に負担する額は総事業費約28億6938万円のうち,町費の1億5771万円と起債の元利金約7億3983万円の合計約8億9754万円にとどまることが認められる一方,M株式会社作成の報告書(乙42の1ないし4。以下 は総事業費約28億6938万円のうち,町費の1億5771万円と起債の元利金約7億3983万円の合計約8億9754万円にとどまることが認められる一方,M株式会社作成の報告書(乙42の1ないし4。以下「報告書」という。)の試算によると,合併処理浄化槽事業の総事業費は29億7500万円であり,原告らがその主張の根拠とするN作成の陳述書(甲58。以下「陳述書」という。)の試算によっても,合併処理浄化槽事業による総事業費は約5億6500万円である。なお,報告書(乙41)の試算と,陳述書(甲58)の試算との相違点は,次の点にあり,同じく合併処理浄化槽事業とはいってもその事業内容に大きな違いがあって,いずれが相当かについては設置対象の範囲,安全性(土崩落の防止や止水にどの程度の工事が必要か。)や衛生面(逆流が起きれば不衛生になるため,逆流防止にどの程度の工事をするか。)等の観点から,見解の相違があり得るところである。ア海水の逆流についての対策費用について,報告書は排水管渠及び道路側溝整備計画の費用として計上しているが,陳述書は計上していない。イ合併処理浄化槽規模及び設置対象戸数について,報告書は事業計画が認可された平成10年8月時点における必要な人槽を採用しているが,陳述書は平成12年3月17日付け官報にあるし尿浄化槽の処理対象人員算定基準の改正に基づき人槽を論じている。また,報告書は浄化槽を全戸に設置するとの前提にたって設置戸数を630戸としたが,陳述書は工事面と費用面等から浄化槽を設置することが不可能な住宅も多いとして,設置戸数を総計476戸として算定している。 戸数について,報告書は事業計画が認可された平成10年8月時点における必要な人槽を採用しているが,陳述書は平成12年3月17日付け官報にあるし尿浄化槽の処理対象人員算定基準の改正に基づき人槽を論じている。また,報告書は浄化槽を全戸に設置するとの前提にたって設置戸数を630戸としたが,陳述書は工事面と費用面等から浄化槽を設置することが不可能な住宅も多いとして,設置戸数を総計476戸として算定している。さらに,報告書は集合処理費用を算定しているが,陳述書はこれを除外している。報告書は公共施設の人槽を個々の施設の施設規模からの定員で算定しているが,陳述 ,設置戸数を総計476戸として算定している。さらに,報告書は集合処理費用を算定しているが,陳述書はこれを除外している。報告書は公共施設の人槽を個々の施設の施設規模からの定員で算定しているが,陳述書は複数の施設をまとめた形で算定している。ウ設置工事費及び特殊条件工事費について,報告書は止水もしくは土崩落防止のため鋼矢板工法や水替工を採用すべきであるとするが,陳述書は簡易矢板工法で足りるとしている。また,報告書は三重県の環境部価格に基づいて本体価格,水替工費用及び設備工事費を積算しているが,陳述書は本体価格及び水替工費用につき報告書と同一の価格,費用を採用しながら設備工事費について積算資料及び建築施工単価に基づいて算定している。エ諸経費について,報告書は建設省等が採用している建築の設備工事における率をもとに25%を採用したが,陳述書は10%が相当であるとしている。オその他,報告書は既存浄化槽撤去費,し尿処理場建設費を計上しているが,陳述書はこれらを計上していない。これらの事情からすれば,原告らの主張する合併処理浄化槽事業が安価であるとしても,A町下水道計画が著しく合理性を欠き,そのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過できない瑕疵があるとは認められない。② 原告らは,「すぐに下水道で整備しても,水洗化したり,宅内配管をする費用が無駄になり,加入できない家が極めて多く無駄になる可能性が高く,下水道が完成しても加入する住民は30%ないし50%程度と推定される。このような地区では合併処理浄化槽事業を選択すべきである。」旨主張する。しかし,証拠(甲15,乙22の1ないし437,32ないし36,証人L)及び弁論の全趣旨によれば,A町では地域住民への説明会が延べ9日間開催されており 道で整備しても,水洗化したり,宅内配管をする費用が無駄になり,加入できない家が極めて多く無駄になる可能性が高く,下水道が完成しても加入する住民は30%ないし50%程度と推定される。このような地区では合併処理浄化槽事業を選択すべきである。」旨主張する。しかし,証拠(甲15,乙22の1ないし437,32ないし36,証人L)及び弁論の全趣旨によれば,A町では地域住民への説明会が延べ9日間開催されており 業を選択すべきである。」旨主張する。しかし,証拠(甲15,乙22の1ないし437,32ないし36,証人L)及び弁論の全趣旨によれば,A町では地域住民への説明会が延べ9日間開催されており,住民代表による下水道視察も実施され,平成9年9月時点においては,対象世帯数708戸のうち446戸が下水道加入承諾書を提出していること,加入承諾書を提出しない人の中には,高齢であるとか,先のことまでは約束できないというもので,将来絶対に加入しないではないという人もいることが認められる。そうとすれば,この点に関する原告らの主張は,その前提を欠くものである。③ 原告らは,「C処理区の下水道処理水の放流先はK湾奥部のDとEの2カ所であり,この潮流がない浅い狭隘な海域へ毎日800トンないし1000トンもの処理水を放流すると淡水化が著しくなり,付近の真珠養殖業者は操業不能となる。毎日の放流で合成洗剤などによりK湾の汚染が進む。」旨主張する。しかし,証拠(乙25,26,証人L)及び弁論の全趣旨によれば,M株式会社が平成7年にA町下水道計画の環境影響調査をしていること,同調査結果では,E流域については,半径59mの範囲内において現行濃度より最大でも2.6‰濃度が薄くなるにすぎず,D流域については,半径45mの範囲内において最大でも1.1‰薄められるにすぎないとされたこと,O株式会社が平成8年7月から9月にかけて,A町下水道計画と同規模のK湾のPの放水口前での放流水が養殖漁場の塩分に及ぼす影響の範囲を把握する調査を実施したが,ほとんど影響を及ぼさないとの調査結果であったことが認められ,A町下水道計画による放流水によるK湾の淡水化の影響は微々たるものにすぎないと推測される。また,証拠(L)及び弁論の全趣旨によれば,A町下水道計画は を及ぼさないとの調査結果であったことが認められ,A町下水道計画による放流水によるK湾の淡水化の影響は微々たるものにすぎないと推測される。 漁場の塩分に及ぼす影響の範囲を把握する調査を実施したが,ほとんど影響を及ぼさないとの調査結果であったことが認められ,A町下水道計画による放流水によるK湾の淡水化の影響は微々たるものにすぎないと推測される。また,証拠(L)及び弁論の全趣旨によれば,A町下水道計画は を及ぼさないとの調査結果であったことが認められ,A町下水道計画による放流水によるK湾の淡水化の影響は微々たるものにすぎないと推測される。また,証拠(L)及び弁論の全趣旨によれば,A町下水道計画は,K湾の汚染物質を除去し,水質環境を良好にすることをも目的として実施されており,海水を現状よりも汚染させるものではないことが認められる。したがって,この点に関する原告らの同主張は採用できない。④ 上記の①ないし③からすれば,A町下水道計画が著しく合理性を欠き,そのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過できない瑕疵がある場合に当たらないというべきである。4 以上によれば,A町下水道計画に基づくC処理区下水道施設建設のための請負契約の締結,公金の支出が違法であるとは認められない。したがって,原告らの請求は理由がないからこれを棄却すべきである。よって,主文のとおり判決する。津地方裁判所民事部裁判長裁判官内田計一裁判官後藤隆裁判官大竹貴
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