令和7年8月5日宣告令和6年(う)第183号判決 主文 本件控訴を棄却する。 理由 第1 原判決の認定事実及び本件控訴の趣意(以下、略称は、別途定めない限り、原判決のそれに従う。) 1 原判決の認定事実の要旨 原判決が認定した罪となるべき事実の要旨は、被告人は、窃盗の目的で、令和2年2月2日午後7時22分頃から同日午後7時56分頃までの間に、大分県宇佐市a町内のA(以下「女性被害者」という。)方(以下「被害者方」という。)に侵入した後、女性被害者及び女性被害者の長男であるB(以下「男性被害者」といい、女性被害者と男性被害者を併せて「被害者両名」という。)を殺害して金品を強奪し ようと考え、その頃から同日午後10時20分頃までの間に、いずれも殺意をもって、女性被害者(当時79歳)に対し、その頸部、頭部等を本件はさみ、本件菜切り包丁等で多数回突き刺すなどし、男性被害者(当時51歳)に対し、その左右肩甲上部、頸部等を本件はさみ、本件菜切り包丁等で多数回突き刺すなどし、よって、その場で、女性被害者を左総頸動脈刺創に基づく失血により、男性被害者を左右深 頸動脈刺創に基づく失血により、それぞれ死亡させて殺害した上、女性被害者所有又は管理の現金少なくとも5万4000円を奪った、というものである。 2 本件控訴の趣意本件控訴の趣意は、弁護人Q作成の令和6年11月25日付け控訴趣意書、令和7年6月11日付け控訴趣意補充書及び同月12日付け控訴趣意補充書⑵各記載の とおり、事実誤認の主張であり、その論旨は、①犯人が女性被害者所有又は管理の 現金を奪ったと認め、②被告人が犯人であると認めた原判決には、判決に影響を及ぼすことが明ら 充書⑵各記載の とおり、事実誤認の主張であり、その論旨は、①犯人が女性被害者所有又は管理の 現金を奪ったと認め、②被告人が犯人であると認めた原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある、というものである。これに対する検察官の答弁は、検察官山本保慶作成の答弁書記載のとおりであり、控訴趣意には理由がないから、本件控訴は棄却されるべきである、というものである。 第2 事実誤認の控訴趣意について (以下、日付は、別途断らない限り、全て令和2年である。) 1 原判決の判断内容⑴ 争点原審における主たる争点は、被告人の犯人性であった。また、原審弁護人は、犯人が公訴事実記載の現金約8万8000円を強奪した事実は認められない旨も主張 していた。 ⑵ 原判決の判断の要旨原判決は、被告人が犯人であると認めた上で、被告人が強奪した現金については、公訴事実記載の約8万8000円を強奪したとは認められないものの、少なくとも5万4000円を強奪したと認めた。 ⑶ 犯人性に関する原判決の「争点に対する判断」の要旨犯人性に関する直接証拠は存在しないので、原判決は、複数の間接事実を個別に検討した上で総合評価し、被告人の原審公判供述及び原審弁護人の主張を検討した上で、被告人が犯人であると認定した。その判断の要旨は、次のとおりである。 ア被告人車両に関する積極的間接事実 ① 被告人車両は、本件当日午後7時22分頃から同日午後10時20分頃までの間、被害者方の北方約550m付近に存在していた。同日午後5時18分頃と同日午後11時52分頃に被告人が被告人車両を運転していたことに加え、個人が所有する普通乗用自動車を一時的にせよ第三者に貸し渡すことは通常ないことを考慮すると、同日午後7時22分頃から 時18分頃と同日午後11時52分頃に被告人が被告人車両を運転していたことに加え、個人が所有する普通乗用自動車を一時的にせよ第三者に貸し渡すことは通常ないことを考慮すると、同日午後7時22分頃から同日午後10時20分頃までの間も被告人車両 を使用していたのは被告人であったと合理的に推認できる。この時間帯が、犯人が 被害者方に存在していた時刻(同日午後7時56分頃)を含んでいることを踏まえると、被告人には本件犯行に及ぶ機会があった。 ② 被告人車両が、本件当日午後7時22分頃から同日午後10時20分頃までの間、被害者方の北方約550m付近に存在していたことに加え、女性被害者は被告人と面識がなく、本件犯行時以外の機会に女性被害者由来のDNA型が被告人車 両内に遺留される可能性が低いことを併せて考慮すると、同月9日、被告人車両のトランクから女性被害者の血液等が、運転席ヘッドレストから女性被害者と被告人の各DNA型の混合である可能性が極めて高いDNA型のヒト由来成分がそれぞれ採取されたことは、被告人には本件犯行に及ぶ機会があったこととも相まって、本件犯行の機会に、同犯行によって生じた女性被害者の血液等の成分が被告人車両に 持ち込まれたこと、ひいては、それを持ち込んだのは当時被告人車両を使用していた被告人であったこと、すなわち、被告人の犯人性を強く推認させる。 イ被害者方に遺留された血液靴下痕に関する積極的間接事実(本件フットプリントとの同一性)被害者方に遺留された血液靴下痕と被告人の足裏のフットプリント(本件フット プリント)の同一性に関する鑑定を行ったD証人の意見は十分に尊重できる。D証人によると、被害者方に遺留された血液靴下痕と本件フットプリントは、同証人が指摘する3点(①小指付け根下部の外側部輪郭に局 プリント)の同一性に関する鑑定を行ったD証人の意見は十分に尊重できる。D証人によると、被害者方に遺留された血液靴下痕と本件フットプリントは、同証人が指摘する3点(①小指付け根下部の外側部輪郭に局所的な飛び出しがある、②小指が内側に傾いている角度が非常に大きい、③足長に対して足幅が広い)において特徴的な形状が共通する。このことは、被告人が本件当時被害者方に存在したことを 推認させる事情となり得るが、同証人が用いた比較資料が十分でないので、推認力は限定的である。 ウ被害者方に遺留された運動靴痕に関する積極的間接事実(本件靴との同一性)被害者方に遺留された運動靴痕と、被告人が1月31日に購入した靴(本件靴。 以下、これらを「両靴」ともいう。)の靴底の特徴が酷似していたことは、被告人が 本件当時被害者方に存在したことを推認させる事情となり得るが、固有の特徴が一 致しているとはいえず、本件靴は量販店で販売され広く流通していたと考えられる商品であるため、この事情単独での推認力は限定的である。もっとも、被告人は、本件の2日前(1月31日)に購入した本件靴を、本件の2日後(2月4日)に捨てたことが合理的に推認できるところ、被害者方に遺留された運動靴痕と本件靴の靴底の特徴が酷似していることに、こうした被告人の不審な行動が加わると、その 時間的近接性にも照らし、推認力は高まるといえる。 エ本件前の被告人の行動に関する積極的間接事実① 本件の2日前(1月31日)の午後5時21分頃、被告人は、被告人車両を運転して大分県中津市内のアウトレット商品販売店を訪れ、同所でジャンパー1着(本件ジャンパー)を購入し、同日午後9時46分頃、被告人車両を運転して大分 市内の量販店を訪れ、同所で靴1足(本件靴)を購入し、その後帰宅した ウトレット商品販売店を訪れ、同所でジャンパー1着(本件ジャンパー)を購入し、同日午後9時46分頃、被告人車両を運転して大分 市内の量販店を訪れ、同所で靴1足(本件靴)を購入し、その後帰宅した。 ② 被告人車両は、同日、午後6時4分頃から午後7時18分頃までの間は本件駐車場(被害者方の北北東約2.9km)に、午後7時32分頃から午後7時43分頃までの間は被害者方の北方約250m付近に、午後7時51分頃から午後8時35分頃までの間は被害者方の北方約550m付近にそれぞれ存在し、その後、高 速道路を走行した。 ③ 上記①に照らすと、上記②(同日午後6時4分頃から同日午後8時35分頃まで)の間も、被告人が被告人車両を使用していたと合理的に推認できる。 ④ 被告人車両は、本件当日、午後7時2分頃から午後7時6分頃までの間は本件駐車場の南方約700m付近に、午後7時22分頃から午後10時20分頃まで の間は被害者方の北方約550m付近にそれぞれ存在した。上記ア①記載のとおり、この間、被告人が被告人車両を使用していたと合理的に推認できる。 ⑤ 本件の2日前、午後7時18分頃から午後8時36分頃までの間、被告人車両の位置情報と被告人のスマートフォンのロケーション履歴が連動しておらず、被告人のスマートフォンは本件駐車場に存在していた。本件当日、午後7時7分頃か ら午後10時21分頃までの間、被告人車両の位置情報と被告人のスマートフォン のロケーション履歴が連動しておらず、被告人のスマートフォンは本件駐車場に存在していた。 ⑥ 本件の2日前における本件駐車場付近及び被害者方付近における被告人車両の動静とその際の被告人のスマートフォンのロケーション履歴の位置関係が、本件当日におけるそれらと共通していることを考慮すると、被 本件の2日前における本件駐車場付近及び被害者方付近における被告人車両の動静とその際の被告人のスマートフォンのロケーション履歴の位置関係が、本件当日におけるそれらと共通していることを考慮すると、被告人のこれらの行動は、 被害者方及びその周辺の下見やスマートフォンのロケーション履歴を利用したアリバイ工作を図ったものとも評価でき、被告人が犯人であることと整合的な事情といえる。 オ本件後の被告人の行動(インターネットの検索等)に関する積極的間接事実被告人は、本件の翌日(2月3日)午前1時52分頃以降、インターネットで、 「灯油に火をつける」と検索し、「事件などで犯人が床に灯油をまき、火をつけ」などのインターネットサイトを閲覧した。 被告人は、インターネットで、同日午後2時53分頃から、「宇佐警察署」、「宇佐市ニュース速報」と検索して、「宇佐警察署」等のインターネットサイトを閲覧し、同日午後5時34分頃から、「殺人犯が捕まるまで」と検索して、「警察に逮捕され る前兆と流れ(逮捕前に電話が来る?)」、「殺人罪で逮捕。死刑となる可能性は?死刑回避の為の弁護活動とは?(福岡の刑事事件に強い弁護士による無料相談)」などのインターネットサイトを閲覧し、同日午後8時6分頃から、「殺人犯が捕まるまで」などと検索して、「a町の住宅で男女2人の遺体(2020/02/03(月)」などのインターネットサイトを閲覧した。 被告人は、2月4日、ガソリンスタンドで、被告人車両内を清掃し、その後、インターネットで、「血液車落とすには」と検索して、「車のシートに血液などの汚れ・シミがついた時の染み抜きの方法」などのインターネットサイトを閲覧した。 以上のような被告人の不審行動は、被告人車両内に女性被害者の血液等が遺留されていたこと 索して、「車のシートに血液などの汚れ・シミがついた時の染み抜きの方法」などのインターネットサイトを閲覧した。 以上のような被告人の不審行動は、被告人車両内に女性被害者の血液等が遺留されていたこととも相まって、本件犯行の発覚を恐れ、それを免れるために種々の罪 証隠滅工作を図るなどしたものとも評価でき、被告人が犯人であることと整合的な 事情といえる。 カ本件後の被告人の行動(口座入金及び返済)に関する積極的間接事実被告人は、本件の翌日(2月3日)午後3時56分頃から同日午後3時58分頃までの間、被告人名義の2つの口座に各2万円を入金し(同入金前の各口座の残高は3823円と1899円)、消費者金融業者に1万4000円を返済する一方、同 日午後6時2分頃、母に対し、月額7万円の家賃の援助を願い出るメッセージを送信した。 犯人は相当額の現金を奪ったと推認できるところ、その当時、被告人に特段の臨時収入があったことを窺わせる事情がないことを踏まえると、それにもかかわらず、口座残高が乏しく、消費者金融業者からの借入れがあり(令和元年12月末の借入 残高167万円余)、母に家賃の援助を依頼するような経済状況であった被告人が、本件の翌日という犯行に近接した時期に、5万4000円もの原資不明の現金を手にしていたことは、被告人が犯人であることと整合的な事情といえる。 被告人が、金銭的に逼迫した状況、特に、消費者金融業者からの借入れがあることを妻や両親に話せずにいた事情は、借金の返済に充てる資金等欲しさに侵入窃盗 に及ぶことを計画したと考えて不自然でないという意味で、被告人の犯人性と矛盾しない。 キ被告人の供述の信用性被告人の供述内容は、余りに不自然、不合理で、およそ了解し難い。被告人が供述する真犯人の行動は、犯 したと考えて不自然でないという意味で、被告人の犯人性と矛盾しない。 キ被告人の供述の信用性被告人の供述内容は、余りに不自然、不合理で、およそ了解し難い。被告人が供述する真犯人の行動は、犯人のものとして不自然、不合理である。2月4日から同 月6日にかけ、被告人が上司、妻及び警察官に話した内容は、公判供述の内容と大きく異なる。そのような経過自体が供述の信用性を低下させる事情となり得る。供述の変更に関する被告人の弁解は了解し難い点が散見される。被告人の公判供述は信用できない。 ク弁護人の主張について (ア)弁護人は、被害者方に多数の種類の足跡が遺留されているから、複数人が 本件犯行に関与した可能性を否定できない旨主張する。 しかし、下足箱がある玄関付近にも血液足跡を含む足跡が遺留されており、下足箱内は履物が入れられるスペースが空いていたこと、ダイニングにあった掃除機は、本体、カップカバー、ダストカップが散乱し、ヘッド部分は見当たらず、ダストカップから女性被害者又は男性被害者の血痕が付着した人毛が採取されたことに照ら せば、犯人は、被害者両名の殺害後、掃除機をかけるなどの罪証隠滅工作を図ったと合理的に推認できるから、その一環として、複数人による犯行に見せかけるため、被害者方の履物を順次履き替えるなどして多種の足跡を残した可能性が考えられる。 被告人が、本件の2日後に5足以上の靴が入ったゴミ袋を捨てたことなどの事情は、その可能性と整合的である。他方、仮に犯人が複数人であったとすると、掃除機を かけるなどの罪証隠滅工作を図る一方で、複数人が犯行に関与していることを示す多種の足跡をそのまま残していったことになり、むしろ不自然ともいえる。 (イ)弁護人は、2月9日、被告人車両のトランクから、被害者両名及び 証隠滅工作を図る一方で、複数人が犯行に関与していることを示す多種の足跡をそのまま残していったことになり、むしろ不自然ともいえる。 (イ)弁護人は、2月9日、被告人車両のトランクから、被害者両名及び被告人と異なる第三者の血痕が発見されており、被告人以外の第三者が本件犯行に及んだ可能性がある旨主張する。 しかし、科学捜査研究所技術職員の証言によれば、様々な荷物や人が乗る自動車内から第三者のDNA型が検出されることはありふれた事象であり、関係証拠によれば、被告人は、サッカークラブに通う子の送迎のために被告人車両を使用することがあり、他の子の荷物を被告人車両に載せることもあったことが認められるから、例えば、被告人の子らがサッカー中に負傷して出血し、その血痕が荷物に付着して 被告人車両のトランクに持ち込まれて遺留された可能性も考えられる。上記第三者の血痕が被害者方に遺留されていたことを窺わせる事情はない。 (ウ)弁護人は、犯人は不必要に本件はさみ以外の複数の凶器を使用した可能性があり、単独犯が抵抗する被害者両名を被害者方から逃さずに殺害するのは至難の業であるから、複数犯の可能性がある旨主張する。 しかし、被害者両名の遺体を解剖した法医学者の証言によれば、被害者両名の創 傷は、単独犯による犯行では合理的に説明することができない、あるいは、説明が極めて困難であるものはなかったと認められる。また、手近にあった本件はさみ等の物を手当たり次第に凶器として用いた可能性、複数人による犯行に見せかけるため、被害者両名の死亡前後にあえて複数の凶器で攻撃した可能性、被害者両名の不意を突いた可能性など、単独犯であることと矛盾しない犯行状況が様々に想定し得 る。 (エ)弁護人は、被害者方から、被告人の毛髪、血痕、指紋が発見され 複数の凶器で攻撃した可能性、被害者両名の不意を突いた可能性など、単独犯であることと矛盾しない犯行状況が様々に想定し得 る。 (エ)弁護人は、被害者方から、被告人の毛髪、血痕、指紋が発見されていないことは、被告人が犯人であれば不自然である旨主張する。 しかし、犯人は、被害者両名の殺害後、掃除機をかけるなどの罪証隠滅工作を図ったと合理的に推認できる。その上、犯行前に手袋を着用するなどの工夫をしてい れば、被害者方に犯人の特定につながる痕跡を残さないことも可能である。被告人が本件当時出血していたと窺わせる事情もない。したがって、被害者方から被告人の毛髪等が発見されなかったことは、被告人が犯人であっても不自然な事情とはいえない。 (オ)弁護人は、本件後に一見して犯人であると疑われるインターネットの検索 をしたこと、コインランドリーの防犯カメラ等の記録に残る行動をしていることなどは、被告人が犯人であれば不自然である旨主張する。 しかし、これらの事情は、被告人がその毛髪等が被害者方に遺留された可能性を懸念し、捜査機関が発見した場合に備え、虚偽の弁解を考え出し、それに沿う行動をとったとの見方も成り立ち得る。被告人は、最初に上司に虚偽弁解の説明をした 後、警察に相談したか確認されて、妻に伝えてから警察に相談しようと思う旨答え、妻に同様の説明をしたところ、警察官に相談するよう勧められたことが認められるから、必ずしも自発的に妻及び警察官に説明したわけではなく、説明せざるを得ない状況に追い込まれたものといえる。 ケ総合評価及び結論 本件犯行当時、被害者方付近に存在する被告人車両を使用していたのは被告人で あったところ、その機会に、犯行によって生じた女性被害者の血液等の成分が被告人車両に持ち込まれたことは 本件犯行当時、被害者方付近に存在する被告人車両を使用していたのは被告人で あったところ、その機会に、犯行によって生じた女性被害者の血液等の成分が被告人車両に持ち込まれたことは、被告人の犯人性につき強い推認力を有する。それ以外の諸事情、すなわち、被害者方に遺留された血液靴下痕と運動靴痕に関する積極的間接事実及び本件前後の被告人の行動に関する積極的間接事実は、その推認力を補強し、あるいは支えるものと評価できる。被告人が犯人であることを前提とすれ ば、これらの事情を矛盾なく説明できる。これに対し、女性被害者の血液等の成分を被告人車両に持ち込んだのは、甲なる人物らである旨の被告人の公判供述は信用できず、弁護人の主張も含め、それ以外に前記の推認を妨げるような事情も見当たらない。前記のような被告人車両に関する積極的間接事実は、まさに被告人が犯人でないとしたならば合理的な説明が極めて困難な事実といえる。 以上によれば、被告人が犯人であると優に認められ、この認定に合理的な疑いを差し挟む余地はない。 ⑷ 現金の強取に関する原判決の「争点に対する判断」の要旨ア被告人の犯人性を判断する前の説示検察官は、女性被害者の日記や残されていたレシート等から算出すると、本件当 時、女性被害者は少なくとも約9万円の現金を所持していたと推定されるところ、被害者両名の遺体発見後、女性被害者の財布に在中していた現金は約2000円のみであったことから、犯人は差額の現金約8万8000円を奪ったと主張する。 しかし、上記の約9万円という金額は推計にとどまり、同日記に記載されず、レシート等の記録にも残らない使途での現金の支出が全くなかったとは言い切れない から、女性被害者の犯行当時の所持金が約9万円より少なかった疑いを差し挟む余 推計にとどまり、同日記に記載されず、レシート等の記録にも残らない使途での現金の支出が全くなかったとは言い切れない から、女性被害者の犯行当時の所持金が約9万円より少なかった疑いを差し挟む余地がある。もっとも、同日記には万単位の収支の記載が複数あることに照らすと、それらの記載以外に万単位の現金支出がありながら、同日記に記載されず、レシート等の記録にも残らなかった可能性は低く、現にそのような支出があったことを具体的に疑わせる事情も見当たらない。また、上記約8万8000円が、捜査機関に 発見されないまま被害者方等に残されていることを具体的に疑わせる事情も見当た らない。さらに、女性被害者のショルダーバッグ(本件ショルダーバッグ)の内側等に男性被害者の血痕が付着していた状況に照らすと、その血痕は、犯人が男性被害者を襲い始めた後、犯人又は男性被害者がそこに触れて付着した可能性が高いが、被害者両名の負傷状況を踏まえると、その段階で被害者両名がそこを触るとは考えにくいから、この付着は犯人が本件ショルダーバッグの内側等を物色したことを相 当程度推認させる。 以上の諸事情を総合考慮すると、犯人が、現金約8万8000円を奪ったとは認められないが、相当額の現金を奪ったという限度では推認できる。 イ被告人の犯人性を認定した後の説示被告人が犯人であると認められることを踏まえると、被告人は、被害者両名を殺 害した上で、女性被害者所有又は管理の現金少なくとも5万4000円(上記⑶カ)を奪ったと認められる。 ⑸ 住居侵入の目的及び強盗殺人の故意に関する原判決の「争点に対する判断」の要旨被告人が犯人であると認められることを踏まえると、被告人は、当時、金銭的に 逼迫した状況であったところ、凶器を携えず、面識がない被害者方 殺人の故意に関する原判決の「争点に対する判断」の要旨被告人が犯人であると認められることを踏まえると、被告人は、当時、金銭的に 逼迫した状況であったところ、凶器を携えず、面識がない被害者方に侵入し、現金を奪ったのであるから、侵入時、窃盗の目的を有していたことが合理的に推認できるし、侵入後の犯行態様に照らすと、強盗殺人の故意に欠けるところはなかったと認められる。 2 当裁判所の判断 ⑴ 序論原判決の認定、判断は、その説示に一部適切でない部分があるものの、被告人が犯人であると認定し、被告人が女性被害者所有又は管理の現金少なくとも5万4000円を奪ったと認定した結論が、論理則、経験則等に照らして不合理であるとは認められない。 以下、所論に鑑み、補足して説明する。 ⑵ 犯人性についてア被告人車両に関する積極的間接事実について(ア)所論所論は、犯人は、本件はさみ等を使用して被害者両名を殺害した際、手を負傷したことが認められることに加え、被告人車両のトランクから採取された微物には人 血が付着したものがあり、その微物から被告人でも男性被害者でもない男性のDNA型が検出されたことを踏まえると、被告人ではない第三者が本件犯行に及んだ上で、被告人車両のトランク等に女性被害者の血液等を持ち込んだ可能性が十分ある、DNA型が検出された微物について、原判決は、被告人がサッカークラブに通う子の送迎のために被告人車両を使用することがあり、他の子の荷物を載せることもあ ったので、例えば、サッカー中に負傷して出血し、その血痕が荷物に付着して被告人車両のトランクに持ち込まれて遺留された可能性も考えられると説示するが、そうした際に被告人車両のトランク内に男性の血液が持ち込まれる機会があったかは不明で して出血し、その血痕が荷物に付着して被告人車両のトランクに持ち込まれて遺留された可能性も考えられると説示するが、そうした際に被告人車両のトランク内に男性の血液が持ち込まれる機会があったかは不明であるから、同説示は論理の飛躍があり、本件以外の機会に付着した血痕のDNAであれば、熱等の影響により分解した可能性も考えられる、したがって、被告 人車両のトランクから女性被害者の血液等が検出された事実の推認力は決して強いとはいえず、被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明できないものではない、という。 (イ)判断被告人車両のトランクから女性被害者の血液等が、運転席ヘッドレストから女性 被害者と被告人の各DNA型の混合である可能性が極めて高いDNA型のヒト由来成分がそれぞれ採取されたことは、犯人が被害者方にいた時間帯に被告人が使用していたと推認される被告人車両が被害者方の北方約550m付近にあった事実等から認められる、被告人には犯行に及ぶ機会があったことと相まって、被告人の犯人性を強く推認させるとした原判決の判断は、それ単体で、「被告人が犯人でないとし たならば合理的な説明が極めて困難な事実である」旨を説示すること(原判決17 頁)の当否はさておき、間接事実の指摘及び上記推認力の評価については、相当なものであり、当裁判所も賛同できる。 被告人車両のトランクから採取された人血が付着した微物から被告人でも男性被害者でもない男性のDNA型が検出された事実について検討するに、まず、所論は、犯人が本件犯行時に手を含む身体を負傷したことを前提としているが、具体的な犯 行状況が明らかでないものの、所論が指摘する諸事情を踏まえたとしても、少なくとも犯人が本件犯行時に手を含む身体を負傷した可能性が高いとは認められない。 次に たことを前提としているが、具体的な犯 行状況が明らかでないものの、所論が指摘する諸事情を踏まえたとしても、少なくとも犯人が本件犯行時に手を含む身体を負傷した可能性が高いとは認められない。 次に、所論は、原判決が、被告人が被告人車両でサッカークラブに通う子を送迎する際、サッカー中に負傷して出血した、その血痕が荷物に付着して被告人車両のトランクに持ち込まれて遺留された可能性に言及した点について、「論理の飛躍」と論 難するが、原判決は、「例えば」と明記しており、あり得る遺留原因の一つとして挙げたにすぎない。原判決は、その可能性に加え、被告人車両のトランクから検出された第三者の血痕が付着した微物は1つだけで、直径が一、二mmと非常に小さく、この程度の人血が付着した微物であれば、様々な荷物や人が乗る自動車内のトランク内から検出されることは、日常生活上あり得ること、原審弁護人がいう第三者(真 犯人)の血痕が被害者方に遺留されたことを窺わせる事情がないことも併せ考慮した上で、被告人車両のトランクから女性被害者の血液等が、運転席ヘッドレストから女性被害者と被告人の各DNA型の混合である可能性が極めて高いDNA型のヒト由来成分がそれぞれ採取された事実が被告人の犯人性について有する強い推認力は、被告人車両のトランクから採取された人血が付着した微物から被告人でも男性 被害者でもない男性のDNA型が検出されたことを考慮しても揺らがないと判断したものと解され、この判断は相当である。所論は、熱等の影響によりDNAが分解された可能性を指摘するが、自動車のトランク内という環境におけるDNAの分解等の状況は不明であるものの、少なくとも、採取前の数日以内に付着したものでなければ分解されて残らないことを窺わせる事情は認められない。被告人車両のトラ のトランク内という環境におけるDNAの分解等の状況は不明であるものの、少なくとも、採取前の数日以内に付着したものでなければ分解されて残らないことを窺わせる事情は認められない。被告人車両のトラ ンクから女性被害者の血液等が、運転席ヘッドレストから女性被害者と被告人の各 DNA型の混合である可能性が極めて高いDNA型のヒト由来成分がそれぞれ採取された事実が認められる本件においては、被告人車両のトランク内に遺留された第三者の血痕が付着した微物について、それが遺留された具体的な機会を明らかにすることではなく、本件時以外に遺留された可能性を否定する例外的な事情(例えば、当日に納車されたばかりの新車であったなど)が認められるかが重要となるといえ るが、本件において、そうした事情は認められないから、所論の指摘は当を得ない。 イ被害者方に遺留された血液靴下痕に関する積極的間接事実(本件フットプリントとの同一性)について(ア)所論所論は、被害者方に遺留された血液靴下痕と被告人の足裏のフットプリント(本 件フットプリント)は特徴的な形状が共通する旨のD証人の証言は、基準とした比較資料やその計測方法が適切でなく、血液靴下痕がそれを印象した者の素足の状態を正確に表したものとは限られず、素足の状態と靴下を履いた状態を比較すること自体、正確性を欠くから、信用性を欠く、仮に、血液靴下痕と本件フットプリントが、特徴的な形状が共通するとしても、鑑定に用いた比較資料が本件発生時におけ る日本人男性の足跡の形状を適切に代表するものであるか、外国人の足跡の形状と比較しても稀といえるのかが明らかでないから、被告人の犯人性を推認する力は皆無である、という。 (イ)判断被害者方に遺留された血液靴下痕と本件フットプリントに共通する3つの 外国人の足跡の形状と比較しても稀といえるのかが明らかでないから、被告人の犯人性を推認する力は皆無である、という。 (イ)判断被害者方に遺留された血液靴下痕と本件フットプリントに共通する3つの特徴的 な形状は、長さや角度を厳密に測らずとも、目視による比較対照によって認め得るものである。D証人も、足の長さや幅などの計測数値の一致等を比較しているのではなく、上記特徴に着目して比較検討していることに照らしても、素足の状態と靴下を履いた状態の違い等を指摘する所論の指摘は当たらない。 他方で、比較資料に関する所論の指摘には首肯できる点がある。しかし、原判決 も、比較資料が十分でないことを明示し、それを前提とした上で、形状が共通する ことの推認力が限定的である旨説示しており、所論指摘の点を適切に考慮に容れている。 被害者方に遺留された血液靴下痕と本件フットプリントは特徴的な形状が共通し、このことは、被告人が本件当時被害者方に存在したことを推認させる事情となり得るが、その推認力は限定的であるとした原判決の判断は相当である。 ウ被害者方に遺留された運動靴痕に関する積極的間接事実(本件靴との同一性)について(ア)所論所論は、被害者方に遺留された運動靴痕と本件靴を比較対照したE警察官は、共通する特徴の位置等を厳密に計測しておらず、摩耗の程度も主観に基づく評価であ るので、同人の証言をもって、両靴の特徴が酷似しているとするのは相当でなく、単に似ているという程度にとどまり、かつ、本件靴は、量販店で販売され、広く流通していたと考えられる商品であるから、両靴は別物である可能性が十分残り、被告人が、本件当時、被害者方に存在したことを推認する力はほとんどない、また、1月31日に本件靴を購入してから2月16日に被告人 していたと考えられる商品であるから、両靴は別物である可能性が十分残り、被告人が、本件当時、被害者方に存在したことを推認する力はほとんどない、また、1月31日に本件靴を購入してから2月16日に被告人方等の捜索が終わるまでの 間に、被告人が、本件靴を第三者に交付したり紛失したりするなどして、被告人が2月4日に廃棄したゴミ袋の中に本件靴が入っていたとは限らないので、被告人が、同日、本件靴を捨てたとは認められないから、両靴の類似による推認力を高めるものとはいえない、という。 (イ)判断 まず、被害者方に遺留された運動靴痕と本件靴の対照結果やE警察官の証言から認められる両靴の類似点又は共通点をもって、被害者方に遺留された運動靴痕と本件靴の特徴が「酷似」しているとする原判決の評価には賛同し難いが(なお、原判決は、酷似している旨の説示の直前に、「E証人が供述するとおり」と説示しているが、同証人は、両靴の特徴につき、「酷似」との表現は用いていない。)、本件靴の大 きさが28.0cmであるところ、遺留された運動靴痕のつま先からかかと部後端 の印象が分かる範囲までの長さが27.8cmであること、つま先部からかかと部まで全体が格子状で、親指の下辺りの踏み付け部の丸の模様4つが概ね同じ位置にあり、かかと部の丸模様の2つが概ね同じ位置にあるとの特徴が符合しており、異なる特徴は見当たらないことからすれば、被害者方に遺留された運動靴痕と本件靴の底の類似性は相応に高いといえ、両靴の特徴が「類似」しているという限度では、 原判決の判断を是認することができる。これは、被告人が被害者方にいたことを推認させる事情となり得るが、原判決も、固有の特徴が一致しているとはいえず、本件靴は量販店で販売されていたように広く流通していたと考えられる商品 することができる。これは、被告人が被害者方にいたことを推認させる事情となり得るが、原判決も、固有の特徴が一致しているとはいえず、本件靴は量販店で販売されていたように広く流通していたと考えられる商品であることを指摘し、この事情のみでの推認力は限定的である旨説示しており、これは、両靴が別物である可能性を適切に考慮に容れたものと認められ、その判断は相当であ る。 次に、原判決は、「被告人は、本件の2日前(1月31日)に購入した本件靴を、本件の2日後(2月4日)に捨てたことが合理的に推認できるところ、両靴の特徴が酷似していた事情に、かかる被告人の不審な行動が加わると、その時間的近接性にも照らし、その推認力は高まる」旨説示するが(8頁)、この説示については、慎 重な検討を要する。原判決は、8頁で、「本件靴を本件の2日後に捨てたことが合理的に推認できる」と説示する一方で、11頁では、「本件の2日後にその靴を捨てるという不審な行動をしていた」と説示する。後者の説示が積極的間接事実の「小括」(原判決11ないし12頁)でされていることを踏まえると、原判決は、最終的には、被告人が2月4日に本件靴を捨てた事実を認定したと解される。しかし、その 判断過程の説示には疑問がある。すなわち、原判決は、被告人の原審公判供述は信用できないとする一方で(14頁)、この事実については、被告人の原審公判供述のうち、「2月4日に自宅最寄りのごみ収集所に靴を捨てた」旨の部分(原審第9回被告人供述調書119頁等)に限って、「2月4日、7日、11日、14日のいずれかの日に、被告人方付近地区のゴミ収集所で収集したビニール袋の中に5足以上の靴 が入っていたと思う」旨のゴミ収集業者の供述(原審甲148)によって裏付けら れているとみて、その信用性を認め に、被告人方付近地区のゴミ収集所で収集したビニール袋の中に5足以上の靴 が入っていたと思う」旨のゴミ収集業者の供述(原審甲148)によって裏付けら れているとみて、その信用性を認めた上で、被告人は、2月4日の朝、被告人方付近地区のゴミ収集所に5足以上の靴が入ったゴミ袋を捨てたと認定したものと解される。この認定を前提にすると、被告人が、その際に、本件靴も捨てた可能性を認めることはできる。しかし、原判決には、可能性にとどまらず、本件靴を捨てた事実を認定した判断過程が説示されていない。上記事実は、判断過程を示すまでもな く明らかに認定できるものとはいえないから、この点において、原判決の説示は疑問がある。しかし、翻って検討するに、被告人が2月4日の朝、被告人方付近地区のゴミ収集所に5足以上の靴が入ったゴミ袋を捨てたと認定し、これを前提にすると、被告人がその際に本件靴を捨てた可能性があり、2月7日から同月16日までの間に実施された被告人方及び被告人車両の捜索において、本件靴が発見されなか ったこと(原審甲140)も併せ考慮すると、被告人が2月4日に本件靴を捨てたと認定したことが誤りとはいえず、原判決は、黙示的に、このような認定過程を経たと解することもできなくはない。したがって、被告人が2月4日に本件靴を捨てたとする原判決の認定が、論理則、経験則等に照らして不合理であるとはいえない。 そうすると、被告人は、本件の2日前に購入した本件靴を、購入した日から僅か4 日後に当たる、本件の2日後に捨てたことが認められ、このような不審な行動が加わると、被害者方に遺留された運動靴痕と本件靴の特徴が類似することが有する推認力が高まるとした原判決の判断は不合理でない。 エ本件前の被告人の行動に関する積極的間接事実について(ア)所 動が加わると、被害者方に遺留された運動靴痕と本件靴の特徴が類似することが有する推認力が高まるとした原判決の判断は不合理でない。 エ本件前の被告人の行動に関する積極的間接事実について(ア)所論 所論は、被告人は、1月31日午後6時4分頃から午後7時18分頃までの間、本件駐車場付近にいたものの、原判決は、その間、被告人が本件駐車場でいかなる行動をしていたかを合理的に説明できておらず、また、被告人は、2月2日午後6時19分頃から同日午後6時55分頃までの間、大分県宇佐市a町bの空き地(被害者方の東南東)にいたところ、仮に被告人が犯人であれば30分以上もそこに滞 在する合理的な理由が見いだせないことなどから、原判決が指摘する被告人の本件 前の行動は、被告人が犯人であることと整合するとはいえない、という。 (イ)判断被告人が、本件の2日前に本件当日と概ね共通する行動をとっていることが認められ、その行動が、後に供述される被告人の弁解(特に、本件駐車場で待機していた旨の供述変更前の弁解)と整合することも併せ考慮すると、1月31日の行動は 犯行の準備行為と推測できるから、この事情を被告人の犯人性を推認させる事情と評価した原判決の判断は不合理ではない。 1月31日及び2月2日における被告人の行動について、客観的証拠に基づき、所在地や滞在時刻は部分的に認定できるものの、被告人による合理的な説明がなく、その他の証拠もないことから、それらの場所における具体的な行動を解明できない としても、やむを得ないものであり、その点が解明できていないことが、被告人が、本件の2日前に、本件当日と概ね共通する行動をとっていたことを、被告人の犯人性を推認させる事情と評価することの妨げとなるものではない。 オ本件後の被告人の行動( 解明できていないことが、被告人が、本件の2日前に、本件当日と概ね共通する行動をとっていたことを、被告人の犯人性を推認させる事情と評価することの妨げとなるものではない。 オ本件後の被告人の行動(インターネットの検索等)に関する積極的間接事実について (ア)所論所論は、①被告人が、インターネットで、「灯油に火をつける」等と検索、閲覧した行動について、被告人が罪証隠滅を図るために被害者方に火をつけようとしたのであれば、実際にその機会があったにもかかわらず、その行為に及んでいないから、被告人が犯人であることと整合するとはいえない、原判決は、被告人が複数人によ る犯行に見せかけるために被害者方で偽装工作をしたとするが、その結果を無駄にすることになる被害者方の放火を考えるのは矛盾している、②「宇佐警察署」等と検索、閲覧した行動について、単に、身近な事故や事件を知るためであった可能性がある、犯人は、捜査状況が気になり、事件報道や関連するインターネットサイトを閲覧するのが合理的だが、被告人が本件に関するインターネットサイトを閲覧し たのは1回にとどまることは、被告人が犯人であることと整合しない、被告人が犯 人であれば、「事故」と検索する理由がない、③「血液車落とすには」と検索等した行動について、被告人は、真犯人から女性被害者の血液が付着した衣類等の処分を依頼されたことが考えられ、被告人車両に血液が付着していて、それを掃除しようとしたとしても、不合理とはいえない、したがって、これらの被告人のインターネットの検索等は、被告人が犯人であることと整合する事情とはいえない、とい う。 (イ)判断本件後の被告人によるインターネットの検索等を、被告人車両内から女性被害者の血液等が採取された事実と相まって、犯行の発 告人が犯人であることと整合する事情とはいえない、とい う。 (イ)判断本件後の被告人によるインターネットの検索等を、被告人車両内から女性被害者の血液等が採取された事実と相まって、犯行の発覚を恐れ、それを免れるために種々の罪証隠滅工作を図るなどしたものとみて、被告人の犯人性を推認させる事情と評 価した原判決の判断は相当である。 まず、①「灯油に火をつける」等の検索、閲覧については、被告人にとって、いつ被害者両名の殺害が警察等に認知され、警察官等が被害者方に臨場するかは不明であるから、放火のため再度被害者方に赴くのは、非常に危険な行為でもあり、実行を躊躇することは十分あり得る。また、被告人が、犯行直後、被害者方で、偽装 工作や罪証隠滅工作を行ったが、インターネットを検索するなどして、それらでは不十分と考え、更なる罪証隠滅工作を思案することも十分あり得る。所論指摘の事情は、上記検索、閲覧の有する被告人の犯人性の推認力を低減させない。 次に、②「宇佐警察署」等の検索、閲覧については、被告人は、2月3日午後5時34分頃から同日午後5時48分頃までの間に、「殺人犯が捕まるまで」と複数回 検索し、「警察に逮捕される前兆と流れ(逮捕前に電話が来る?)」、「殺人罪で逮捕。 死刑となる可能性は?死刑回避の為の弁護活動とは?(福岡の刑事事件に強い弁護士による無料相談)」などのインターネットサイトを閲覧しているところ、その時点では、死体の発見について報道発表がされているものの(同日午後零時20分)、同日午後6時以降に遺体発見のインターネットニュースが配信されるまで、一般視聴 者向けの報道がなされていた旨の証拠はない(原審甲154)。特に、被告人は、同 日午後5時34分頃、「殺人犯が捕まるまで」と検索した後、「警察 ットニュースが配信されるまで、一般視聴 者向けの報道がなされていた旨の証拠はない(原審甲154)。特に、被告人は、同 日午後5時34分頃、「殺人犯が捕まるまで」と検索した後、「警察に逮捕される前兆と流れ(逮捕前に電話が来る?)」、「殺人罪で逮捕。死刑となる可能性は?死刑回避の為の弁護活動とは?(福岡の刑事事件に強い弁護士による無料相談)」などのインターネットサイトを閲覧しているが、犯人以外の者が、その時点で、殺人事件が発生したと考え、更に死刑の可能性や刑事弁護についてまで検索するのは余りに不 自然であり、所論がいう身近な事故、事件を知るための閲覧としてもそぐわない。 確かに、被告人は、同日午後10時20分頃、「事故」と検索しているが、インターネットの検索時には、入力予測により様々な関連用語が表示されるものであり、被告人がその前に「宇佐市事件」と検索していることに照らしても(原審甲154)、「事故」と検索したことが、少なくとも、上記検索、閲覧の有する被告人の犯人性 の推認力を低減させるものとはならない。 また、③「血液車落とすには」などの検索等については、被告人車両のトランクから女性被害者の血液等が、運転席ヘッドレストから女性被害者と被告人の各DNA型の混合である可能性が極めて高いDNA型のヒト由来成分がそれぞれ採取されているが、被害者両名の負傷状況を踏まえると、DNA型鑑定等の結果を待た ずとも、被害者の血液が被告人車両の中に付着した又は付着した可能性があると十分認識し得たといえるから、この検索は、被告人の犯人性を推認させる事情となる。 後記のとおり、「被告人が、真犯人から被害者両名の血液が付着した衣類等の処分を依頼された」事実は認められないから、所論は、その前提において採り得ない。 カ本件後の被告 人性を推認させる事情となる。 後記のとおり、「被告人が、真犯人から被害者両名の血液が付着した衣類等の処分を依頼された」事実は認められないから、所論は、その前提において採り得ない。 カ本件後の被告人の行動(口座入金及び返済)に関する積極的間接事実につい て(ア)所論所論は、そもそも、被害者方から相当額の現金が奪われたとは認められない、また、現金5万4000円は、成人男性が所持していても、何ら不自然とはいえない金額であり、例えば、自宅に元々あった現金から工面したり、家族の財布から拝借 したりするなどして所持する方法がいくらでもある、したがって、被告人が本件の 翌日に5万4000円を所持していたことは、被告人が犯人であることと整合する事情とはいえない、という。 (イ)判断被告人が、本件の翌日という近接した時期に現金5万4000円を所持していたことを、被告人の犯人性を推認させる事情と評価した原判決の判断は相当である。 後記のとおり、被害者方から現金約8万8000円が奪われたとは認められないものの、相当額の現金が奪われたという限度で推認できるとした原判決の判断は是認できる。 また、確かに、一般論として、5万4000円という金額だけをみれば、成人男性が本件犯行と関係なく所持していることは十分あり得る。しかし、消費者金融業 者からの借入残高が約1年間にわたり160万円以上のまま変動のない状況にあり(原審甲150)、本件翌日の入金及び返済の前における被告人名義の2つの銀行口座の残高が、いずれも、僅か数千円程度(3933円と2009円。なお、原判決は同残高を3823円と1899円と認定するが、各入金に係る手数料を考慮すると、正しくは3933円と2009円である。)であった(原審甲147資料1図面 3933円と2009円。なお、原判決は同残高を3823円と1899円と認定するが、各入金に係る手数料を考慮すると、正しくは3933円と2009円である。)であった(原審甲147資料1図面 7写真㉟、㊲)などの、被告人の当時の経済状況に照らすと、その金額の評価は異なってくる。しかも、本件犯行の翌日という近接した時期に、このように経済的にかなり困窮していた被告人が、原資不明の入金、返済をしたことを併せ考慮すると、上記事実は、被告人の犯人性を推認させる事情といえる。 なお、原判決は、被告人の犯人性に関する積極的間接事実を検討する中で、被告 人が当時金銭的に逼迫した状況にあったとの事情につき、「借金の返済に充てる資金等欲しさに侵入窃盗に及ぶことを計画したと考えて不自然ではないという意味で、被告人の犯人性と矛盾しない」旨説示する(11頁)。しかし、被告人が犯人であると仮定した場合に矛盾しないとしか評価され得ない事情を、被告人の犯人性の積極的間接事実を検討する中で摘示することは、間接事実の過大評価になり得、少なく とも、そのように評価したとの疑念を生じさせ得るものであるから、適切とはいえ ない説示である。しかし、「小括」(原判決11頁)又は「総合評価」(同17頁)においては、上記説示部分に言及されていないから、上記説示は原判決の結論に影響していないものと解される。 キ被害者方から被告人のDNA等が検出されていないとの指摘について(ア)所論 所論は、犯人は、成人である被害者両名を相手にし、相当程度の攻撃を加えているので、犯人のDNAや指紋が現場に残存するはずであるが、被害者方から被告人のDNAや指紋等の痕跡が検出されたと証拠上認められないことは、被告人の犯人性を強く否定する事情となる、原判決は、「犯人が、 るので、犯人のDNAや指紋が現場に残存するはずであるが、被害者方から被告人のDNAや指紋等の痕跡が検出されたと証拠上認められないことは、被告人の犯人性を強く否定する事情となる、原判決は、「犯人が、被害者両名の殺害後、掃除機をかけるなどの罪証隠滅工作を図ったと合理的に推認でき、犯行前に手袋を着用する などの工夫をしていれば、被害者方に特定につながる痕跡を残さないことも可能であり、被告人が本件当時出血していたと窺わせる事情もない」と指摘するが、犯罪捜査に関する知識が全くない被告人が、的確に自身のDNA等の痕跡を残さないように工作できたとは考えにくい、という。 (イ)判断 犯人は、被害者両名の殺害後、掃除機をかけるなどの罪証隠滅工作を行ったと合理的に推認できるところ、犯行前に手袋を着用するなどの工夫をしていれば、被害者方に犯人の特定につながる痕跡を残さないことも可能であり、被告人が本件当時出血していたと窺わせる事情はないから、被害者方から被告人の毛髪、血痕、指紋が発見されていないことは、被告人が犯人であっても不自然な事情とはいえない旨 の原判決の判断は相当である。 現場に存在していた者のDNAや指紋が、その現場に必ず残されるというものではなく、被害者両名の負傷状況等から推測される犯行状況を踏まえても、犯人のDNAや指紋が被害者方に残されていなければ不自然であるとはいえない。犯行後の罪証隠滅を行ったのが犯罪捜査に精通していない被告人であったとしても、原判決 指摘の諸事情を併せ考慮すると、被害者方から被告人の毛髪等が発見されなかった ことが、被告人の犯人性を強く否定する事情とはならない。 ク本件直後に被告人が負傷していないとの指摘について(ア)所論所論は、犯人は、凶器である本件はさみ等を使用した際 なかった ことが、被告人の犯人性を強く否定する事情とはならない。 ク本件直後に被告人が負傷していないとの指摘について(ア)所論所論は、犯人は、凶器である本件はさみ等を使用した際に、手を負傷したことが認められ、かつ、仮に被告人が犯人であれば、男性被害者と面識がないことなどか ら、少なくとも、男性被害者から相当の抵抗を受け、手以外にも怪我やあざが生じるはずであるが、被告人は、本件の4日後の2月6日に警察署において身体検査を受けた際、手を含めて身体を負傷していたと認められないことは、被告人が犯人であることを強く否定する、という。 (イ)判断 犯行時に犯人が手を含む身体を負傷したと認めるに足りる証拠は見当たらず、その可能性が高いとも認められない。 確かに、被害者両名の抵抗を受けて、犯人の身体にあざ等が生じる可能性はあるが、犯行の4日後においても残存しているようなあざ等を犯人が負ったことを窺わせる事情は認められない。 したがって、2月6日に警察署において身体検査を受けた際、被告人が手を含めて身体を負傷していたとは認められないことは、被告人の犯人性を強く否定する事情とはならない。 ケ被害者方に遺留された足跡等から複数人による犯行と窺われるとの主張について (ア)所論所論は、被害者方から5種類の足跡が採取されたこと、血液靴下痕からすると、男性被害者は玄関から外に出る機会があったにもかかわらず、それができなかったことを踏まえると、犯人は複数人であると推認されるが、第三者との共謀等を窺わせる事情のない被告人は、その中に含まれない、原判決は、被害者方の下足箱内は 履物が入れられるスペースが空いていたことなどを根拠に、複数人による犯行に見 せかけるため、被害者方の履物を順次履き替 い被告人は、その中に含まれない、原判決は、被害者方の下足箱内は 履物が入れられるスペースが空いていたことなどを根拠に、複数人による犯行に見 せかけるため、被害者方の履物を順次履き替えるなどして多種の足跡を残した可能性が考えられるとするが、同スペースが空いているからといって、本件前にそこに履物が置いてあったとは認められないし、複数人による犯行に見せかけるために足跡を残したのであれば、明らかに複数人と分かるような足跡を残すのが自然であるが、血液足跡痕ではなく、血液が付着していない足跡痕を多数残しているのは不合 理である、したがって、被害者方の履物を順次履き替えるなどして多種の足跡を残した可能性があるとするのは不合理である、という。 (イ)判断被害者方の掃除機のダストカップから、女性被害者又は男性被害者の人血が付着した人毛が採取されたことなどを根拠に、犯人は、被害者両名を殺害後、掃除機を かけるなどの罪証隠滅工作を図ったと合理的に推認できるとし、その一環として、複数人による犯行に見せかけるため、被害者方の履物を順次履き替えるなどして多種の足跡を残した可能性が考えられることなどを踏まえ、本件が複数人による犯行である可能性を否定した原判決の判断は相当である。 被害者方の掃除機には、女性被害者又は男性被害者の人血が付着した人毛が吸引 されていたところ、その人毛を吸引した際の掃除機の使用としては、犯人による罪証隠滅目的での使用以外に考え難く、犯人が、被害者両名の殺害後に、掃除機を使って罪証隠滅を行ったと認められる。その上で、足跡痕についてみると、被害者や通報者等の関係者の足跡は除かれているので、採取された足跡痕は犯人が残したものと認められるところ、その中には、室内用スリッパや鼻緒が付いたビーチサンダ ル様 で、足跡痕についてみると、被害者や通報者等の関係者の足跡は除かれているので、採取された足跡痕は犯人が残したものと認められるところ、その中には、室内用スリッパや鼻緒が付いたビーチサンダ ル様の物が含まれているが、2月という時期に、屋外から住宅に侵入する犯行時に着用する履物としては、不自然である。この不自然さに加え、犯人が被害者両名の殺害後に掃除機をかけるなどの罪証隠滅を行ったことを併せ考えると、足跡痕は、犯人による罪証隠滅の一環として、被害者方にあった履物を用いて印象された可能性が高いといえる。したがって、被害者方に多数の種類の足跡があったことが、複 数人による犯行を窺わせ、被告人の犯人性に合理的な疑いを生じさせる事情とはい えない。 なお、原判決は、被害者方の下足箱内は履物が入れられるスペースが空いていた事実を、犯人が被害者方の履物を順次履き替えるなどして多種の足跡を残した可能性が考えられるとして、罪証隠滅工作を図ったと合理的に推認できることの根拠の一つにしている。しかし、下足箱の下に数個の履物が置かれてあるなど(原審甲1 12資料1図面4写真⑬-1)、下足箱内の空いている数個のスペース(同⑬-2、3)に履物が入れられていたことを窺わせる事情もあるとはいえ、犯行前の下足箱内の収納状況は証拠上不明であるから、上記事実は格別重要とはいえないが、犯行後の下足箱内に履物を入れるスペースが空いていなかった場合には、被害者方にあった履物を用いて足跡を残して複数人による犯行であると偽装する行為がなされた 可能性が低減することになるともいえることから、原判決は、被害者方の下足箱内は履物が入れられるスペースが空いていたことを指摘したとも解され、この意味であれば、その説示は不合理でない。 所論は、罪証隠滅のために掃除機 とになるともいえることから、原判決は、被害者方の下足箱内は履物が入れられるスペースが空いていたことを指摘したとも解され、この意味であれば、その説示は不合理でない。 所論は、罪証隠滅のために掃除機をかけたのであれば、ヘッド部分のみならず、パイプ部分やダストカップ部分も持ち去らなければ不合理であるから、犯人が犯行 後に掃除機をかけるなどの罪証隠滅工作を図ったとするのは不合理である、ともいう。確かに、罪証隠滅に用いた掃除機内に犯人自身の毛髪等があることを懸念して持ち去るのであれば、吸引したものが残る可能性が高いと思われるダストカップ部分を持ち去るのが自然とも思われ、掃除機のうちヘッド部分だけを持ち去った点は不可解ではある。しかし、犯人が掃除機を使用したことが認められるとすると、犯 人が罪証隠滅を行ったことが認められ、そうすると、被害者方に遺留された多数の足跡痕は、その一環として印象された可能性が高いこととなるから、多数の種類の足跡は、複数人による犯行の可能性を示すものではなく、それが被告人の犯人性に合理的な疑いを生じさせる事情にはならない。被告人が掃除機のうちヘッド部分だけを持ち去った理由が不明であることは、この認定に影響を及ぼすものとはならな い。所論は、ヘッド部分のみが持ち去られた理由として、被害者らが掃除機で応戦 し、その中で掃除機の電源が入り、血などを吸い込んだ上、ダストカップ及びカップカバー部分が外れ、犯人がヘッド部分で殴打されたため、痕跡が付着した可能性を考慮して現場から持ち去ったと考えるのが自然であるとするが、これは、掃除機の状態と整合しない上、偶然が重ならなければ起こり得ない事実経過といえ、これが自然であるなどとはいえない。 なお、原判決は、「仮に犯人が複数人であったとすると、掃除機をかけ が、これは、掃除機の状態と整合しない上、偶然が重ならなければ起こり得ない事実経過といえ、これが自然であるなどとはいえない。 なお、原判決は、「仮に犯人が複数人であったとすると、掃除機をかけるなどの罪証隠滅工作を図る一方、複数人が犯行に関与していることを示す多種の足跡をそのまま残していったことになり、むしろ不自然ともいえる」と説示するが、複数人で犯行に及び、罪証隠滅を図る場合、当然に、犯行に関与したのが複数人であることを示す痕跡を消すとまではいい難いので、この説示に直ちに賛同することはできな い。しかし、この点は、多数の種類の足跡は複数人による犯行の可能性を示すものではなく、被告人の犯人性に合理的な疑いを生じさせる事情にはならないとする原判決の判断には影響しない。 コ被害者両名の防御創が少ないことから複数人による犯行と窺われるとの主張について (ア)所論所論は、被害者両名の負傷状況に比して、被害者両名の身体に残された防御創が少ないのは、被害者両名が複数人によって容易かつ早期に制圧されたためであると考えることができ、犯人が複数人であったことと整合する、という。 (イ)判断 被害者両名の遺体を解剖した法医学者(C)の証言によれば、被害者両名の創傷は、単独犯による犯行では合理的に説明することができない、あるいは、説明が極めて困難であるものはなかったと認められ、単独犯であることと矛盾しない犯行状況が様々に想定し得ると説示した原判決は、「合理的に説明することができない、あるいは、説明が極めて困難である」との表現をこの部分で用いることには疑問があ るものの、その判断内容自体は相当である。 被害者両名の負傷状況に比して、被害者両名の身体に残された防御創が少ないことを考慮に容れても、被害者両名 の部分で用いることには疑問があ るものの、その判断内容自体は相当である。 被害者両名の負傷状況に比して、被害者両名の身体に残された防御創が少ないことを考慮に容れても、被害者両名の不意を突いた可能性、被害者両名が早々に反抗を抑圧されていた可能性、被害者両名を順次殺害した可能性等、原判決が列挙する様々な可能性が考えられ、被害者両名の防御創が少ないことが、犯人が複数人であることと直ちに結びつくものではなく、原判決の判断は不合理ではない。 サ被告人が、犯人とすれば通常すべき下準備を行っていないとの指摘について(ア)所論所論は、犯人が被害者方に侵入したのは日曜日の午後7時22分頃から同日午後7時56分頃までの間であり、通常住人が在宅していることが予想される時間帯であるから、窃盗目的で侵入する場合、住人の抵抗を予想して何らかの凶器を準備し て侵入するといえるが、被告人は、犯人であるとすれば通常予想される、凶器になり得る物などを事前に準備したとは認められないことは、被告人の犯人性が相当程度否定される、という。 (イ)判断住居侵入窃盗を企図する者は、住人の抵抗を予想して必ず何らかの凶器を準備す るとはいえない。したがって、被告人が凶器になり得る物を事前に準備したとは認められないことは、被告人の犯人性を否定する事情とはならない。 シ被告人が、本件後、不用意に洗濯しているとの指摘について(ア)所論所論は、被告人は、本件当日深夜、コインランドリーに持ち込んだ袋の中身を洗 濯機に投入した後、退店し、約5時間後に再度入店して、洗濯機の中身を取り出して持ち帰っており、その様子が店内の防犯カメラに映されているが、仮に、被告人が犯人で、被害者両名の返り血等が付いた衣類をコインランドリーで洗濯したのであ 時間後に再度入店して、洗濯機の中身を取り出して持ち帰っており、その様子が店内の防犯カメラに映されているが、仮に、被告人が犯人で、被害者両名の返り血等が付いた衣類をコインランドリーで洗濯したのであれば、その場を離れることは不自然であるし、防犯カメラに映るコインランドリーで洗濯すること自体、不自然であるから、被告人が犯人でないことと整合する事 情といえる、という。 (イ)判断コインランドリーの防犯カメラ等の記録に残る行動をとった点は、被告人がその毛髪等が被害者方に遺留された可能性を懸念し、捜査機関がそれを発見した場合に備え、虚偽の弁解を考え出し、その弁解に沿う行動をとったとの見方も成り立ち得るとして、被告人の犯人性につき合理的な疑いを生じさせるものではないとした原 判決の判断は不合理ではない。 本件犯行との関連が窺われる衣類や靴を、コインランドリー内の洗濯機に投入した後、長時間その場を離れた点については、同所の防犯カメラ映像によれば、被告人以外の者が同所にいたことは窺われないし(原審甲147資料1図面1写真①ないし⑧)、他の客が、洗濯機内にある被告人の衣類等を取り出して持ち去るなどする ことは通常考え難いから、この事情は、被告人の犯人性につき合理的な疑いを生じさせるものではない。 ス被告人に動機が認められないとの主張について(ア)所論所論は、被害者方には現金や指輪等が相当残されていたなど、物色された痕跡が ないこと、被害者両名の頭部等に多数回攻撃し、死戦期や死後にも執拗に攻撃した犯行態様、被害者両名の防御創が少ないなど、犯人が被害者両名と面識があった可能性があることなどを踏まえると、犯人の殺害目的は怨恨であり、財物奪取を目的としていなかった可能性が十分あり、被害者両名と面識がない被告人には 名の防御創が少ないなど、犯人が被害者両名と面識があった可能性があることなどを踏まえると、犯人の殺害目的は怨恨であり、財物奪取を目的としていなかった可能性が十分あり、被害者両名と面識がない被告人には怨恨目的で犯行に及ぶ動機がない、また、被告人は、一定額の借金はあったものの、取立て が厳しくなったなど、逼迫した状況にはなく、実母から金銭的援助も得られていたので、被告人には、窃盗目的で被害者方に侵入する動機があったとはいえない、という。 (イ)判断女性被害者のショルダーバッグ(本件ショルダーバッグ)の内側等に男性被害者 の血痕が付着していたことから、犯人が本件ショルダーバッグ等を物色したことが 相当程度推認されるとした原判決の判断は相当である。 犯人は、被害者両名の殺害後、手近にあった本件ショルダーバッグを物色したものの、更なる物色に時間を費やして被害者方の滞在時間が延びることは危険と考え、更なる物色はあきらめ、物色よりも罪証隠滅を優先させた上で、被害者方を離れた可能性が十分にある。したがって、犯人が本件ショルダーバッグ等を物色したこと が相当程度推認されることも併せ考慮すると、被害者方に現金や指輪等が残されていたことは、犯人が被害者方に侵入した目的が窃盗であったとの認定を妨げない。 確かに、犯人は、被害者両名の死戦期や死後にも執拗に攻撃したことが窺われ、被害者両名の負傷状況に比して被害者両名の身体に残された防御創は少ないが、犯行態様については、原判決が指摘するとおり、手近にあった物を手当たり次第に凶 器として用いた、複数人による犯行と見せかけるために被害者両名の死亡前後にあえて複数の凶器で攻撃した、被害者両名の不意を突いたなど、様々な可能性が想定される。被告人が、窃盗目的で被害者方に侵入したものの、予 用いた、複数人による犯行と見せかけるために被害者両名の死亡前後にあえて複数の凶器で攻撃した、被害者両名の不意を突いたなど、様々な可能性が想定される。被告人が、窃盗目的で被害者方に侵入したものの、予想に反して、女性被害者又は男性被害者に発見されたことで、気が動転し、必ずしも殺傷能力が高いとはいえない本件はさみ等を凶器として用いる中で、被害者両名の死亡後を含め、過 剰に加害し、被害者両名は、不意を突かれるなどしたため、多数の防御創が残るような抵抗をする暇もなく、殺害されたという経緯であったことが、合理的に推認できる。被害者両名の負傷状況やそれに比して被害者両名の身体に残された防御創の少ないことから、直ちに、犯人が被害者両名を怨恨目的で殺害したとか、犯人と被害者両名との間に面識があったと推認されるものではなく、これらは、被告人の犯 人性に合理的な疑いを生じさせる事情とはならない。 さらに、前記のとおり、本件当時、被告人が経済的に逼迫していたことは、原判決が認定するとおりであるから、被告人に住居侵入窃盗に及ぶ動機になり得る事情があったといえる。 以上のとおり、動機の点でも、被告人の犯人性に合理的な疑いを生じさせる事情 は認められない。 セ被告人の原審公判供述について(ア)所論所論は、被告人の原審公判供述について、①供述内容は具体的であり、一見して受け入れ難い内容であるのは、被告人の記憶に基づく供述であるからにほかならず、原判決が不自然、不合理と指摘する点は、不自然、不合理であるとは認められない、 ②供述内容は、スマートフォンのロケーション履歴や検索履歴等の客観的証拠と整合する、③被告人が上司、妻又は警察官に対し、2月4日から同月6日までの間に、本件当日等の経緯について、原審公判供述と異なる内容を述 容は、スマートフォンのロケーション履歴や検索履歴等の客観的証拠と整合する、③被告人が上司、妻又は警察官に対し、2月4日から同月6日までの間に、本件当日等の経緯について、原審公判供述と異なる内容を述べた理由、経緯は不合理とはいえず、これを理由に原審公判供述の信用性は否定されない、④被告人が供述する真犯人のDNAが被害者方から検出されていないとしても不自然でなく、そ の存在は直ちに否定されるものとはいえない、という。 (イ)判断被告人の原審公判供述は信用できないとする原判決の判断は相当である。 すなわち、被告人の原審公判供述は、被告人が、警戒してしかるべきであるのに、見ず知らずの者の依頼に応じ、スマートフォンを屋外に放置し、見知らぬ場所への 送迎や被告人車両の鍵を預けることを承諾したとする点や、被告人の述べる真犯人らが、重要な証拠となる被害者の血痕が付着した衣類等の処分を被告人に依頼し、依頼を受けた被告人がそれに応じたとする点など、その内容は極めて不自然、不合理なものである。 また、本件当日の行動といった最も重要な部分に関する供述内容が、被告人質問 において変更されたものであり、その変更について合理的な理由は認められない。 所論は、上司、妻及び警察官に対して原審公判供述と異なる内容を述べた点について、重要と考えた点を伝えることができれば、その他の点は、体験した事実と異なる内容を伝えても不合理といえない、という。しかし、重要とは考えなかった事実を同人らに話さないことはあり得ても、同人らに虚偽の事実を伝えることは考え難 い。 また、被告人は、真犯人が別にいるという話を作出し、それを裏付ける工作を行ったと窺われるから、被告人の原審公判供述の内容が、一部、客観的証拠と整合することは、信用性を高めるものとは 。 また、被告人は、真犯人が別にいるという話を作出し、それを裏付ける工作を行ったと窺われるから、被告人の原審公判供述の内容が、一部、客観的証拠と整合することは、信用性を高めるものとはならない。 なお、原判決は、被告人が供述する真犯人のDNAが被害者方から検出されていないことを理由に、その存在を否定したものではない。 以上のとおり、所論指摘の諸事情を考慮に容れても、被告人の原審公判供述は信用できないとした原判決の判断が不合理とはいえない。 ソ総合評価、結論について(ア)所論所論は、上記の各所論を前提にした上で、被告人車両に関する積極的間接事実は、 被告人の犯人性を推認させる事情といえるものの、推認力は決して強いものとはいえず、その他の積極的間接事実は、推認力が皆無であるか、被告人が犯人であることと整合するものとはいえず、本件においては、間接事実の中に、被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは、少なくとも説明が極めて困難である)事実関係も含まれていない、被告人の犯人性を否定する事情、 特に、被害者方から被告人のDNA等の痕跡が検出されていないこと、被告人が本件直後に怪我を負っていないこと、犯人は複数人であり、被告人がその中に含まれないことなど、被告人の犯人性を強く否定する事情も認められ、被告人の原審公判供述は信用できるので、被告人が犯人であるとは認められない、という。 (イ)判断 本件の数日後に、被告人車両のトランクから被告人と面識のなかった女性被害者の血液等が、運転席ヘッドレストから女性被害者と被告人の各DNA型の混合である可能性が極めて高いDNA型のヒト由来成分がそれぞれ採取されたことは、被告人には犯行に及ぶ機会があったことと相まって、被告人の犯人性を強 転席ヘッドレストから女性被害者と被告人の各DNA型の混合である可能性が極めて高いDNA型のヒト由来成分がそれぞれ採取されたことは、被告人には犯行に及ぶ機会があったことと相まって、被告人の犯人性を強く推認させ、その他の積極的間接事実は、その推認力を補強し、あるいは支えるものと評価した 上で、それらを総合すると、被告人の原審公判供述や原審弁護人の主張を踏まえて も、被告人が犯人であると認められるとした原判決の認定が、論理則、経験則等に照らして不合理であるとはいえない。 被告人車両に関する積極的間接事実(上記ア)以外の各積極的間接事実に関する原判決の判断については、単に被告人が犯人であることと整合的な事情と説示するなど、被告人車両に関する積極的間接事実の推認力を補強し得るものと評価したの か否かが判然としない部分もあるが、少なくとも、各積極的間接事実の有する推認力を過大に評価したものは認められない。所論が主張、指摘する諸事情(上記キないしス)がいずれも採用できないことは、既に説明したとおりであり、それらを総合的に検討しても、その評価は変わらない。 ただし、原判決の「総合評価」(原判決17頁)には、措辞に適切、相当とはいえ ない箇所がある。 まず、「前記のような被告人車両に関する積極的間接事実は、まさに被告人が犯人でないとしたならば合理的な説明が極めて困難な事実といえる」との説示は、最高裁平成19年(あ)第80号平成22年4月27日第三小法廷判決・刑集64巻3号233頁(以下「本判例」という。)の判示を踏まえたものと解される。しかし、 本判例は、認定された間接事実中に被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは、少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれていることを要すると る。しかし、 本判例は、認定された間接事実中に被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは、少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれていることを要するとしており、決め手となる一つの間接事実の存在を要するとするものではない。原判決は、複数の間接事実の総合評価の結果として、本判例の判示を引用するのでなく、総合評価と切り離して、複数の間接事実のうちの一 つについて本判例の判示を引用したと推測させる説示をしており、相当でない。 また、原判決は、「総合評価」の中で、「被告人が犯人であることを前提とすれば、これらの事情を矛盾なく説明できる」と説示する。しかし、被告人が犯人であると仮定した場合に矛盾なく説明できるとしか評価されない事実は、犯人性に関する有意な積極的間接事実とはなり得ない。また、被告人が犯人であると仮定して間接事 実の推認力を測ることは、推認力の過大評価を招きかねないため、適切でない。し たがって、被告人が犯人であるという結論を導き出す部分において、被告人が犯人であると仮定して間接事実の推認力を測り、上記のような説示をすることは相当でない。 しかしながら、翻ってみるに、前記のとおり、本件においては、被告人車両に関する積極的間接事実(上記ア)の有する推認力は強く、かつ、原判決が各積極的間 接事実の推認力を過大に評価したものは認められないから、これらの説示が、被告人が犯人であるとする原判決の認定、判断に影響を及ぼすものではない。 タ小括その他、所論が縷々主張する諸点を踏まえて検討しても、被告人が犯人であるとする原判決の認定において、論理則、経験則等に照らして不合理な点は認められな い。 ⑶ 現金の強取についてア所論所論は、①原判決は、「女性被害者 えて検討しても、被告人が犯人であるとする原判決の認定において、論理則、経験則等に照らして不合理な点は認められな い。 ⑶ 現金の強取についてア所論所論は、①原判決は、「女性被害者の日記には万単位の収支に関する記載が複数あることに照らすと、それらの記載以外に万単位の現金支出がありながら、同日記に 記載されず、レシート等の記録にも残らなかった可能性は低い」旨説示するが、同日記が、少なくとも、支出の点に関しては正確に記載されていたとは認められないことなどを踏まえると、同日記に記載されていない万単位の現金支出や、レシート等の記録が残っていない相当額の支出があった可能性がある、②女性被害者のショルダーバッグ(本件ショルダーバッグ)の内側等に男性被害者の血痕が付着してい た点については、負傷して絶命前の男性被害者が、助けを呼ぶためスマートフォンや、犯人に抵抗するための物を探すために、同バッグ内を探し、その際に血痕が付着した可能性があるので、犯人が同バック内を物色したとは断言できない、③犯人の殺害目的は怨恨であり、財物奪取を目的としていなかった可能性が十分あるから、犯人が相当額の現金を奪ったとは認められない、という。 イ判断 被告人が女性被害者所有又は管理の現金少なくとも5万4000円を奪ったとの原判決の認定が、論理則、経験則等に照らして不合理であるとはいえない。 ただし、その認定過程には、一部、十分でない点がある。 すなわち、原審検察官が、女性被害者の日記等に依拠して、犯人が現金約8万8000円を奪ったと主張した点について、原判決は、同日記に記載されず、レシー ト等の記録も残らない使途での現金の支出はあり得るとの理由で、同主張を排斥しており、この判断は相当である。しかし、同日記に万単位の収 たと主張した点について、原判決は、同日記に記載されず、レシー ト等の記録も残らない使途での現金の支出はあり得るとの理由で、同主張を排斥しており、この判断は相当である。しかし、同日記に万単位の収支の記載が複数あるとしても、それらが女性被害者による万単位の現金支出を完全に又はほぼ完全に網羅するものであると推認させる事情は見当たらないから、同日記には万単位の収支の記載が複数あることに照らし、それらの記載以外に万単位の現金支出がありなが ら同日記に記載されず、レシート等の記録にも残らなかった可能性は低いとする説示は賛同できない。 他方で、同日記やレシート等を含めてされた原審検察官の推計結果(原審甲136)を踏まえると、具体的な金額は不明であるが、本件犯行前に、女性被害者が、犯行後に発見された2355円を超える相当額の現金を所持していたことが推認さ れ、これに、前記のとおり、犯人が本件ショルダーバッグ等を物色したことが相当程度推認されることも併せ考慮すると、犯人が相当額の現金を奪ったと推認できるとした原判決の判断は、その結論においては是認できる。 しかし、原判決が、被告人が犯人であると認定した後、何らの説明もすることなく、被告人が本件翌日に入金又は返済した合計5万4000円の全てが、被告人が 奪取した現金であると認定した点は、被告人が犯人であることを前提とした場合に、被告人が本件翌日に入金又は返済した現金が女性被害者から奪ったものであるか否かは、その認定過程を説明するまでもなく明らかであるとはいえないから、その説明を欠く点において、原判決の説示は適切とはいえない。 もっとも、前記のとおり、犯人は相当額の現金を奪ったと推認できるところ、被 告人が犯人であること、本件犯行の翌日という近接した時期に、経済的にかなり困 て、原判決の説示は適切とはいえない。 もっとも、前記のとおり、犯人は相当額の現金を奪ったと推認できるところ、被 告人が犯人であること、本件犯行の翌日という近接した時期に、経済的にかなり困 窮していた被告人が原資不明の合計5万4000円を入金、返済したこと、被告人は、この5万4000円の原資につき、真犯人からもらったものである旨供述するが(原審第9回被告人供述調書111頁)、被告人の原審公判供述は信用できないことを総合すると、この5万4000円は全て被告人が被害者両名を殺害した上で女性被害者から奪取したものと認定することが、論理則、経験則等に照らして不合理 とはいえない。そして、上記の推計結果(原審甲136)を踏まえると、具体的な金額は不明であるが、本件犯行前、女性被害者は、犯行後に発見された2355円を超える相当額の現金を所持していたものと推認され、かつ、被告人が本件翌日に入金、返済した合計5万4000円が奪取した現金の全てであると認めるに足りる証拠はないことから、少なくとも5万4000円を奪取したと認めた原判決の判断 は、論理則、経験則等に照らして不合理とはいえない。 上記のとおり、原判決には、被告人の奪取金額を少なくとも5万4000円と特定した理由が示されていないが、以上のような認定過程を経た上で認定したものと解され、その結論において誤りはない。 ⑷ 住居侵入の目的及び強盗殺人の故意について ア論旨には、構成要件に関するその他の主張が含まれていないが、事案の重大性等に鑑み、原判決が「争点に対する判断」の末尾において説示した、住居侵入の目的及び強盗殺人の故意についても、念のため、職権により検討する。 イ住居侵入の目的について、被告人は、当時、金銭的に逼迫した状況であったところ、凶器を携えず、 の末尾において説示した、住居侵入の目的及び強盗殺人の故意についても、念のため、職権により検討する。 イ住居侵入の目的について、被告人は、当時、金銭的に逼迫した状況であったところ、凶器を携えず、面識がない被害者方に侵入し、現金を奪ったのであるから、 侵入時、窃盗の目的を有していたと認定した原判決の判断は相当である。 次に、強盗殺人の故意について、原判決は、「侵入後の犯行態様に照らすと、強盗殺人の故意に欠けるところはなかったと認められる」と説示する。強盗殺人の故意を認定した結論自体に、論理則、経験則等に照らして不合理な点はないが、「侵入後の犯行態様」だけでは、強盗殺人の故意は認定できないといえ、その認定理由の説 示は十分なものではない。しかし、本件において、被告人が、窃盗目的で被害者方 に侵入したこと、侵入後、女性被害者のショルダーバッグ内を物色したこと、面識のない被害者両名を殺害したこと、女性被害者所有又は管理の現金少なくとも5万4000円を奪取したことが認められ、これらの事実を総合すると、強盗殺人の故意が認定できる。上記の認定根拠となる事実は、いずれも原判決も認定しており、強盗殺人の故意に関する原判決の理由の説示は十分でないものの、それらを踏まえ て同故意を認めた結論に、論理則、経験則等に照らして不合理な点はない。 ⑸ 小括事実誤認の論旨は理由がない。 第3 原審の訴訟手続について(職権判断) 1 序論 控訴趣意には訴訟手続の法令違反の主張が含まれていない。しかし、原審は、原審公判前整理手続の中で、捜査報告書の一部(原審甲111ないし123、133、134、136、137、139ないし155。以下、これらを一括して「本件書証」という。)及び証拠物(原審甲103ないし108。以下、これらを一 、捜査報告書の一部(原審甲111ないし123、133、134、136、137、139ないし155。以下、これらを一括して「本件書証」という。)及び証拠物(原審甲103ないし108。以下、これらを一括して「本件証拠物」という。)について、原審弁護人による同意ないし「しかるべく」(以下、 両方を合わせて「同意等」という。)の証拠意見の撤回を許可せず(原判決も、「証拠の標目」において、この旨を判示している。)、本件書証及び本件証拠物を罪となるべき事実の認定に用いた。本件事案の重大性及びこれらの証拠の重要性等に鑑み、原審の上記措置の適法性について、職権で検討する。 2 関連する原審の訴訟手続の経緯 本件は、令和3年11月5日に起訴され、同月25日に原審検察官から証明予定事実記載書と証拠調べ請求書が提出された後、同月30日以降、打合せや公判前整理手続期日が実施され、争点及び証拠の整理が進められ、原審検察官は、令和6年3月4日(以下、「第3」における日付は、いずれも令和6年のものである。)、本件証拠物を証拠調べ請求し、4月26日から5月9日までの間に、本件書証を順次証 拠調べ請求した。同月13日、裁判員及び補充裁判員が選任された後、同月14日、 原審弁護人は、本件書証について全部同意、本件証拠物について「しかるべく」とする証拠意見書を提出した。しかし、同月16日、原審弁護人は、同証拠意見書については全て撤回する、現時点の同証拠意見書記載の証拠については全て不同意とする旨記載した「証拠意見撤回書」を提出し、同日の第21回公判前整理手続期日(最終の公判前整理手続期日)において、証拠意見の撤回等の趣旨として、①従前 の主張のとおり、加工前の統合証拠(原審甲111、113ないし119)を取り調べてほしい、②同意した加工 整理手続期日(最終の公判前整理手続期日)において、証拠意見の撤回等の趣旨として、①従前 の主張のとおり、加工前の統合証拠(原審甲111、113ないし119)を取り調べてほしい、②同意した加工前の統合証拠の写真を除いた部分と不同意としている加工後の統合証拠の写真をそれぞれ採用し、それらを組み合わせた形で取り調べる場合、その証拠は請求されていない新たな証拠である、③上記②のような取調べ方法をとるのであれば、加工後の統合証拠を刑訴法321条3項書面として採用し て取り調べればよいと考える旨述べ、これに対し、原審検察官は、同意等の撤回の許否については裁判所の判断に委ねると述べた。原審は、原審弁護人による同意等の撤回を不許可とした上で、原審甲111、113ないし116、119、121、131及び132の各一部を採否留保とし、採否留保とした部分を除いて本件書証及び本件証拠物を全て採用したところ、原審弁護人は、同期日において、採用決定 に対する異議を申し立てた。異議の理由は、①本件が公判前整理手続に付されてからは長期間が経過しているものの、統合証拠の整理は直近数か月のことであること、②同意等の撤回の原因である証拠の採否及び取調べ方法に関する話は、5月15日の電話が契機であること、③同意等の撤回による訴訟関係人の影響については、未加工の統合証拠に弁護側が同意している状況で、訴訟関係人の不利益は、刺激証拠 による精神的負担という裁判員に対するもの以外にないと思料されるが、それは真実発見の原則よりも優先されるべきものではないこと、④弁護側は、統合捜査報告書を一体のものとして証拠意見を明らかにしているところ、同意した書証の一部と他の統合捜査報告書の一部をつまみ食い的に組み合わせて取り調べるのは、裁判所が裁判員の目に触れる前に新たな証 、統合捜査報告書を一体のものとして証拠意見を明らかにしているところ、同意した書証の一部と他の統合捜査報告書の一部をつまみ食い的に組み合わせて取り調べるのは、裁判所が裁判員の目に触れる前に新たな証拠を自ら作り上げるに等しいと考えられること を考慮すると、同意等の撤回の不許可決定は違法であるから、それを前提とする採 用決定も違法である、というものであった。この異議について、原審検察官は「しかるべく」と陳述したが、原審は同異議を棄却した。 本件書証の採用部分及び本件証拠物は、原審第1回ないし第6回の各公判期日において全て取り調べられた。取調べ時に、原審弁護人から異議を申し立てたり、証拠排除の職権発動を求めたりすることはなかった。 6月12日の原審第11回公判期日において、原審検察官は、採否未了証拠のうち、一部のみを撤回した。原審は、採否未了証拠のうち、撤回されなかった部分を全て必要性がないとして却下したところ、原審検察官は、原審甲111、113ないし116、119及び121に係る却下決定について異議を申し立てた。異議の理由は、原審弁護人も同意した証拠であり、現時点では評議のための必要性を判断 できないはずであるから、証拠採否に関する裁判所の裁量を逸脱した違法がある、というものであった。これに対し、原審弁護人は、原審検察官の意見に賛成である旨陳述したが、原審は、同異議を棄却した。なお、論告、弁論において、上記不許可決定に関する主張はなかった。 3 当裁判所の判断 ⑴ 刑訴法326条1項が規定する同意の撤回は、相手方の訴訟上の利害に重大な影響を与えることや、手続を著しく混乱させるおそれのあることなどを考えると、裁判所が撤回の必要性を裏付ける特別の合理的な理由があると認めて、その裁量により許可した場合に限 手方の訴訟上の利害に重大な影響を与えることや、手続を著しく混乱させるおそれのあることなどを考えると、裁判所が撤回の必要性を裏付ける特別の合理的な理由があると認めて、その裁量により許可した場合に限って許されるというべきである(東京高等裁判所平成23年(う)第980号同年12月1日判決・東京高等裁判所判決時報刑事62巻126 頁参照)。 ⑵ その前日に裁判員及び補充裁判員を選任し、原審第1回公判期日(5月20日)まで1週間もない状況であったにもかかわらず、原審弁護人が、原審検察官が当初に請求した書証(原審甲1ないし84及び乙1ないし5)と証人を除く大半の証拠に対する意見を初めて表明したのは5月14日である。それにもかかわらず、 その僅か2日後、しかも、最終の公判前整理手続期日の当日になって、原審弁護人 は、従前表明した証拠意見の全て(本件証拠物に関する「しかるべく」の意見を含む。)を撤回した上で、そこで証拠意見を表明した証拠全てに関する証拠意見を不同意等に変更する旨を述べたものである。しかも、原審弁護人は、同意等の撤回の前後で、予定主張の内容を変更しておらず、かつ、同意等を撤回した書証及び証拠物の内容の真実性等は争っていなかったものと認められる(現に、それらの証拠の取 調べ時には、異議を申し立てておらず、弁論でもその点に関する主張をしていない。)。 そうすると、原審弁護人による同意等の撤回には、合理的な理由は認め難く、かつ、同意等の撤回が許可されなかったからといって、被告人及び原審弁護人に実質的な不利益が生じたことは窺われない。 他方で、同意等の撤回を許可していた場合に生じたと想定される影響を検討する と、本件が被害者2名の強盗殺人等被告事件であり、被告人の犯人性等が争点とされたという事案の内容、証人8名 れない。 他方で、同意等の撤回を許可していた場合に生じたと想定される影響を検討する と、本件が被害者2名の強盗殺人等被告事件であり、被告人の犯人性等が争点とされたという事案の内容、証人8名の尋問など、予定されていた公判審理の内容に加え、3名の被害者参加人等が参加予定であったことなどを考慮すると、指定済みの公判期日を全て取り消し、再度の証拠整理に相応の期間を要し、改めて日程を調整することになるなど、事件関係者及び選任された裁判員等に甚大な影響や負担を及 ぼし、手続が著しく混乱することが必至であったことが想定される。 以上の事情に加えて、その時点で公訴提起から既に2年半以上が経過し、その間、被告人が勾留されていたことなども考慮すると、原審弁護人による同意等の撤回について、その必要性を裏付ける特別の合理的な理由があるとは認められないとして、同意等の撤回を許可しなかった原審の判断に、裁量の逸脱、濫用があるとは認めら れない。 ⑶ 以上によれば、原審弁護人による同意等の証拠意見の撤回を許可しなかった原審の措置は、何ら違法の廉はないものと認められる。 第4 量刑について(職権判断) 1 序論 控訴趣意には、量刑不当の主張が含まれていないものの、本件事案の重大性を踏 まえ、被告人を死刑に処した原判決の量刑の当否について、職権で判断を加える。 2 原判決の「量刑の理由」の要旨原判決は、「量刑の理由」において、要旨、次のように説示して、被告人を死刑に処した。 ① 殺害の態様は、女性被害者に対し、頸部、頭部、胸部といった急所を有尖鋭 利な本件はさみ等を用いて頭蓋骨が貫通したり肋骨骨折が生じたりするほどの力で40回以上突き刺したり、切りつけたりする攻撃を加えて殺害し、男性被害者に対し、致命傷を負わせ 部といった急所を有尖鋭 利な本件はさみ等を用いて頭蓋骨が貫通したり肋骨骨折が生じたりするほどの力で40回以上突き刺したり、切りつけたりする攻撃を加えて殺害し、男性被害者に対し、致命傷を負わせた左右肩甲上部のほか、頸部、頭部、顔面、背部といった急所を、本件はさみ等を用いて頭蓋骨骨折が生じたり木製の箸が後頭部に突き刺さったままの状態になったりするほどの力で50回以上突き刺したり、切りつけたりする 攻撃を加えて殺害したというものである。 被告人は、侵入当初から殺害を計画していたものではなかったのであるから、女性被害者に出くわした際や男性被害者の帰宅を認識した際の心理状態は少なからず切迫したものと考えられ、各殺害態様に相応の影響が及んだ可能性は否定できない。 しかし、その点を踏まえて検討しても、防御創が少なく早々に反抗を抑圧されてい たと考えられる被害者両名に対して行った各殺害の態様は、瀕死の状態となった後も攻撃を加え続けてとどめを刺すという、いずれも極めて強固な殺意に基づく執拗かつ残酷なものであり、生命侵害の危険性が高く、生命軽視の度合いが甚だしい。 ② 何ら落ち度のない2名の生命が奪われた結果は重大であり、本件の深刻な被害状況を前提にすると、遺族らの悲痛な感情は十分理解できる。 ③ 被告人は、減らすことができなくなった自身の借金や苦しい経済状況について、家族に打ち明け、特に実母から一定の援助を得ることが可能であったにもかかわらず、それをしないまま、場当たり的な生活を送った末、面識のない被害者方から金品を窃取して利息分の返済に充てる資金等を得ようとしたものであり、その自己中心的で身勝手な動機に酌量の余地はない。 ④ 被告人は、女性被害者と出くわした際、逃走することが可能であったのに、 その の返済に充てる資金等を得ようとしたものであり、その自己中心的で身勝手な動機に酌量の余地はない。 ④ 被告人は、女性被害者と出くわした際、逃走することが可能であったのに、 その選択をせず、居直り強盗を意図するとともに、口封じのため、女性被害者に対する殺害行為に着手し、その後帰宅した男性被害者に対しても、同様の目的で殺害行為に及んだものであり、かかる意思決定は強い社会的非難に値する。 ⑤ 被告人は、被害者両名を殺害した直後から種々の罪証隠滅工作に及び、不合理な弁解を続け、反省の態度を示していないのであって、犯行後の事情に何ら有利 に斟酌すべき点がない。 ⑥ 以上の諸事情に照らすと、被告人の刑事責任は極めて重大である。 ⑦ 死刑は究極の刑罰であり、その適用は慎重に行われなければならないという観点及び公平性の観点(特に、死刑が求刑された死亡被害者2名の単独犯による強盗殺人事件のうち、同一機会における犯行で、一連の犯行の前には強盗殺人の犯意 のない類型の裁判例の検討結果を裁判体の共通認識とした。)を踏まえ、侵入当初から殺害を計画していたものではないこと、前科がないことなど、被告人のために酌むべき事情を十分に考慮しても、死刑を選択することは真にやむを得ない。 3 当裁判所の判断⑴ 前記のとおりの本件犯行の結果、殺害の態様、犯行の動機に関する原判決の 認定、評価(上記①ないし③)は相当である。また、殺害に関する意思決定が強い社会的非難に値し、犯行後の事情に何ら有利に斟酌すべき点がないとした上で、被告人の刑事責任は極めて重大であるとした原判決の評価(上記④ないし⑥)も相当である。 ⑵ 他方、特に、死刑を選択するか否かを判断する上では、公平性の観点からの 検討も重要であるところ、強盗殺人又は殺人の 任は極めて重大であるとした原判決の評価(上記④ないし⑥)も相当である。 ⑵ 他方、特に、死刑を選択するか否かを判断する上では、公平性の観点からの 検討も重要であるところ、強盗殺人又は殺人の事案において、死刑が求刑され、死刑の当否が争点になった裁判では、殺害に関する計画性の有無は、量刑上非常に重要な要素とされている。死亡被害者が2名の強盗殺人の事案においても、一連の犯行の前には強盗殺人の犯意がなかったことも考慮されて無期懲役が選択されたと解される裁判例も少なからず存在する。これらの事情を踏まえると、被告人が被害者 方に侵入した当初は被害者両名の殺害を計画していたとは認められない本件におい て、被告人を死刑に処することが相当であると明らかに認められるとはいえない。 被告人が被害者方に侵入した当初は被害者両名の殺害を計画していたとは認められないことについての評価は、本件において死刑を選択するか否かを判断する上で重要であって、被告人が被害者方に侵入した当初から被害者両名の殺害を計画していたとは認められないにもかかわらず、被告人を死刑に処することが相当であるとす る理由を明示することは、本件において必要不可欠である。 原判決は、被告人が被害者方に侵入した当初は被害者両名の殺害を計画していたとは認められない事実を量刑の事情として挙げてはいる(上記①)。しかし、原判決は、死刑は究極の刑罰であり、その適用は慎重に行わなければならないと説示していながら(上記⑦)、被告人が被害者方に侵入した当初は被害者両名の殺害を計画し ていたとは認められない事実の評価については、それが殺害態様に及ぼした影響の可能性を指摘したほかは、「被告人のために酌むべき事情」として、被告人に前科がないことと並べて挙げるだけであり(上記⑦)、被告人が被 は認められない事実の評価については、それが殺害態様に及ぼした影響の可能性を指摘したほかは、「被告人のために酌むべき事情」として、被告人に前科がないことと並べて挙げるだけであり(上記⑦)、被告人が被害者方に侵入した当初は被害者両名の殺害を計画していたとは認められないにもかかわらず、被告人を死刑に処することが相当であるといえる理由を十分に示したとはいい難い。 また、原判決は、公平性の観点から、死刑が求刑された死亡被害者が2名の単独犯による強盗殺人事件のうち、同一機会における犯行で、一連の犯行の前には強盗殺人の犯意のない類型の裁判例の検討結果を裁判体の共通認識にした、と説示する(上記⑦)。本件の事件類型の把握として、原判決が選択した要素自体は相当なものといえるが、仮に、原判決が共通認識にしたものが、「裁判員量刑検索システム」に おいてそれらの検索条件に該当する事例に限られていたのであれば、量刑資料として必ずしも十分とはいえない(同システムにおいて当該条件に該当する事例は、僅か数件にすぎないが、その中では死刑に処した事例が多い。原判決が、被告人は被害者方に侵入した当初は被害者両名の殺害を計画していたとは認められないにもかかわらず、それでもなお被告人を死刑に処することが相当であるとする理由を十分 に示したとはいい難く、しかも、被告人が被害者方に侵入した当初は被害者両名の 殺害を計画していたとは認められない事実の評価を、被告人に前科がないことと並べて挙げ、それと同程度の評価をしたにすぎないともとられかねない説示をしていることに照らすと、原判決が量刑資料としたのは、同システムに該当する上記数件の事例に限られていたのではないかとの疑いが拭えない。)。 以上の点で、原判決の「量刑の理由」の説示は十分なものではないといわざる に照らすと、原判決が量刑資料としたのは、同システムに該当する上記数件の事例に限られていたのではないかとの疑いが拭えない。)。 以上の点で、原判決の「量刑の理由」の説示は十分なものではないといわざるを 得ない。 ⑶ そこで、原判決が認定した量刑事情を前提にしつつ、公平性の観点に照らしても、被害者方に侵入した当初は被害者両名の殺害を計画していたとは認められない被告人を死刑に処することが相当であるといえるか否かについて、更に検討する。 死刑選択の当否が争点になったこれまでの裁判例を分析すると、死亡被害者が2 名の強盗殺人の事案においては、強盗殺人について計画性が認められる場合のほか、計画性が認められなくとも、強固な殺意に基づく犯行であり、かつ、殺害態様の残酷さなど、犯情の重大性、悪質性を特に高める事情が認められる場合には、死刑が選択される傾向にあることが窺える。 強盗殺人罪が極めて重大な犯罪類型であることを前提として、上記傾向を念頭に 置いて、改めて本件についてみるに、原判決が説示するとおり、被害者両名に対する殺害態様は、極めて強固な殺意に基づく、執拗かつ残酷なものであり、生命侵害の危険性が高く、生命軽視の度合いが甚だしいものである。この事情を前提にすると、被告人が被害者方に侵入した当初は被害者両名の殺害を計画していたとは認められず、侵入後に被害者両名と遭遇し、強盗殺人の犯意を生じたという事情を考慮 に容れても、被告人の刑事責任は極めて重大であり、罪刑の均衡からも一般予防の見地からも、極刑がやむを得ないものと認められる。 ⑷ 以上のとおり、原判決の「量刑の理由」の説示は必ずしも十分なものとはいえないが、その点も踏まえて更に慎重に検討した結果、被告人を死刑に処した原判決の量刑は正当なものとして、当裁判所としても、その ⑷ 以上のとおり、原判決の「量刑の理由」の説示は必ずしも十分なものとはいえないが、その点も踏まえて更に慎重に検討した結果、被告人を死刑に処した原判決の量刑は正当なものとして、当裁判所としても、その結論を是認することができる。 第5 結論 よって、刑訴法396条により、主文のとおり判決する。 令和7年8月7日福岡高等裁判所第3刑事部 裁判長裁判官平塚浩司 裁判官中山登 裁判官檀上信介
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