主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 (以下,略語は,原判決に準ずる。ただし,被控訴人株式会社セルフ舎建設を「被控訴人セルフ舎建設」という。)第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人ら(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人知事が,同セルフ舎建設及び同Aに対し,284万8980円及びこれに対する平成7年11月9日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求しないことは違法であることを確認する。 (3) 被控訴人セルフ舎建設及び同Aは,三重県に対し,連帯して284万8980円及びこれに対する平成7年11月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4) 被控訴人B,同C及び同D(以下「被控訴人Bら3名」という。)は,三重県に対し,連帯して284万8980円及びこれに対する平成7年11月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (5) 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人らの負担とする。 (6) (3)及び(4)につき,仮執行宣言 2 被控訴人ら主文同旨第2 事案の概要 1 本件は,三重県が,本件河川区域の境界を特定するために測量業者(E)との間で測量等の業務を委託する契約(以下「本件業務委託契約」という。)を締結し,支出命令を経て,委託料284万8980円(本件測量費用)を支出したことに関し,控訴人らを含む住民(以下「1審原告」という。)らが,(1)被控訴人Aにおいて,被控訴人セルフ舎建設の従業員をして産業廃棄物を河川区域内に埋め立てる等させ,河川区域を不明確にした不法行為があり,三重県は,被控訴人Aに対し民法709条又は同法715条2項に基づき,被控訴人セルフ舎建設に対し同法44条1項又は同法715条1項に基づき,それぞれ本件測量費用 川区域を不明確にした不法行為があり,三重県は,被控訴人Aに対し民法709条又は同法715条2項に基づき,被控訴人セルフ舎建設に対し同法44条1項又は同法715条1項に基づき,それぞれ本件測量費用相当額の損害賠償請求権(損害発生日以降の遅延損害金を含む。)を有するとして,被控訴人知事に対し,その行使を怠る事実の違法確認請求(地方自治法242条の2第1項3号),(2)当該怠る事実の相手方である被控訴人A及び同セルフ舎建設に対し,住民が普通地方公共団体に代位して行う上記請求権に基づく同額の損害賠償の請求(同条項4号後段),(3)本件業務委託契約の締結,支出命令,支出につき,いずれも違法であるとして,被控訴人B(知事),同C(専決者・土木事務所長)及び同D(支出者・県民局駐在出納監)に対し,住民が普通地方公共団体に代位して当該職員に対して行う上記同額の損害賠償の請求(同条項4号前段)をしたのに対し,被控訴人らが,訴えの利益,責任原因等を争った事案である。 原審において,本件の訴えはいずれも適法であるが,上記(1),(3)につき違法性等がなく,上記(2)につき不法行為と損害との間の因果関係がない等として,1審原告らの請求をいずれも棄却したところ,控訴人らが控訴した。 2 前提となる事実及び被控訴人知事の本案前の主張は,次に改めるほか,原判決「事実及び理由」の「第二事案の概要」の一及び二のとおりであるから,これを引用する。 原判決7頁3行目の「その代表取締役である」を「平成7年当時その代表取締役であった」と改め,6行目の「河川管理者である被告知事の許可を受けず、」を削り,8頁6行目の「被告Bは、」の次に「本件河川区域の河川管理者であるところ,」を加え,10行目の「二八四万四九八〇円」を「284万8980円」と改め,9頁2行目の「被告Bは、」 可を受けず、」を削り,8頁6行目の「被告Bは、」の次に「本件河川区域の河川管理者であるところ,」を加え,10行目の「二八四万四九八〇円」を「284万8980円」と改め,9頁2行目の「被告Bは、」の次に「被控訴人Cの専決により,同年11月1日,」を加える。 3 被控訴人セルフ舎建設及び同Aの本案前の主張本件測量費用の支出に関する監査請求においては,三重県に代位して被控訴人セルフ舎建設ないし同Aに対し,直接,損害賠償を求める旨の請求は含まれていないから,同被控訴人らに対する本件訴えは,いずれも適法な監査請求を経ていない不適法な訴えである。 4 本案についての争点及び争点についての当事者双方の主張(1) 被控訴人セルフ舎建設及び同Aの不法行為責任,使用者責任及び代理監督者責任の成否ア控訴人らの主張(ア) 被控訴人セルフ舎建設による埋立て等の行為(平成元年ころから平成7年ころまでの間になされた,本件埋立区域における,原判決24頁(一)項記載の石積み,掘削,埋立て,盛土行為,以下これらの行為をまとめて「本件埋立行為」という。)は,その代表者である被控訴人Aが,河川区域内の土地における建設系産業廃棄物の最終処分(埋立てと積み上げ)を企図し,被控訴人セルフ舎建設の従業員をしてこれを行わせた,河川法27条(土地の掘削等の許可),29条(河川の流水等について河川管理上支障を及ぼすおそれのある行為の禁止等),廃棄物処理法16条(不法投棄禁止)に反する違法行為である。 本件埋立行為の結果,河川の流水が継続して存する等する部分(河川法6条1項1号に該当する河川区域,以下これを「1号地」という。)が産業廃棄物等で埋め立てられてしまい,従前,本件河川区域とそれ以外の土地とを区別していた標識というべき自然護岸が破壊され,本件河川区域の範囲が分からなくな 河川区域,以下これを「1号地」という。)が産業廃棄物等で埋め立てられてしまい,従前,本件河川区域とそれ以外の土地とを区別していた標識というべき自然護岸が破壊され,本件河川区域の範囲が分からなくなってしまったものである。 被控訴人A及び同セルフ舎建設の従業員ら(以下「被控訴人Aと従業員ら」という。)においては,上記河川区域侵害を知り又は容易に知り得たのにこれを行ったものである。 上記河川区域侵害行為により,三重県は,河川区域明示のために河川告示図等から現地復元作業をせざるを得なくなり,本件測量費用相当の損害を被った。 (イ) 以上につき,被控訴人Aは,民法709条の不法行為責任を負い,そうでないとしても,従業員の選任・監督者として同法715条2項の代理監督者責任を負う。 (ウ) また,被控訴人セルフ舎建設は,同Aが代表者として行った上記不法行為について,民法44条1項の法人の不法行為責任を負うものであり,そうでないとしても,同社の被用者である従業員が同社の業務の執行についてなした上記不法行為につき,同法715条1項の使用者責任を負う。 (エ) 被控訴人セルフ舎建設及び同Aの主張する平成元年ころにおける三重県職員による河川区域の指示は,明白かつ著しい違法行為であり,三重県尾鷲土木事務所(以下「尾鷲土木事務所」という。)と同被控訴人らとの癒着,結託によるものであるから,これに基づいて同被控訴人らの不法行為責任を免責することはできない。 イ被控訴人セルフ舎建設及び同Aの主張(ア) 被控訴人セルフ舎建設は,平成元年3月ころ,同Aにおいて三重県職員から河川区域の指示を受け,その指示に従って本件埋立行為をしたのであって,河川区域侵害につき,同Aと従業員らに故意又は過失はない。 (イ) 三重県の本件測量費用の支出は,河川法59条に基づく河川管理費 から河川区域の指示を受け,その指示に従って本件埋立行為をしたのであって,河川区域侵害につき,同Aと従業員らに故意又は過失はない。 (イ) 三重県の本件測量費用の支出は,河川法59条に基づく河川管理費用であり,不法行為に基づいて支出されたものでなく,したがって,損害賠償請求を怠る事実はあり得ないし,その相手方に対する代位請求もあり得ない。 (ウ) 自然的な河川区域と河川区域図により再現する法律上の河川区域とは,法律的には別個のものであり,これを同一視する控訴人らの主張は,その前提に誤りがある。 ウ被控訴人知事の主張本件埋立区域付近は,広く平たい土地で,護岸がなく,又口川の氾濫地であって,河川の流水が継続して存する等していないもので,1号地ではなく,堤外の土地のうち1号地と一体管理が必要として河川管理者が指定した区域,すなわち,河川法6条1項3号に該当する河川区域(以下これを「3号地」という。なお,上記「堤外」は,河川法上の用語であり,堤防からみて流水の存する側を意味する。)であり,現地における外観から河川区域を具体的に特定できる土地ではなかったから,三重県は,被控訴人セルフ舎建設の本件埋立行為の有無にかかわらず,現地において河川区域の明示を求められたときには,測量費用の負担をする必要があった。したがって,被控訴人セルフ舎建設による本件埋立行為と三重県の本件測量費用の負担との間には相当因果関係がない。 (2) 被控訴人B,同C及び同D(被控訴人Bら3名)の責任の有無ア本件業務委託契約の締結,支出命令,支出の違法(ア) 控訴人らの主張本件において復元すべき境界は,1号地と河川区域外の土地との境界であるべきところ,被控訴人Bの専決者である同Cは,上記と異なる境界〔すなわち,昭和50年に河川区域を指定告示した際の本件河川区域付近に関 件において復元すべき境界は,1号地と河川区域外の土地との境界であるべきところ,被控訴人Bの専決者である同Cは,上記と異なる境界〔すなわち,昭和50年に河川区域を指定告示した際の本件河川区域付近に関する付属図面(乙イ25の1,以下「本件告示付属図面」という。乙イ1の5,6は,同図面の部分図である。)に示された境界〕を復元する目的で本件業務委託契約を締結したものであって,同契約締結行為は,その目的において裁量を著しく逸脱した違法があり,その後の支出命令も,違法な契約に基づくもので違法であり,同様に支出も違法である。 仮にそうでないとしても,Eは,現地測量の結果と本件告示付属図面との重ね合わせの際,永久構造物の2点を基点とするという測量業務の常識を大きく逸脱した作業を行い,その結果,本件告示付属図面が示していた河川区域とは異なる区域を復元・明示したものであり,履行においても不完全なものであるから,被控訴人Cは,本件測量費用の支出命令をすべきではなかったものであり,同支出命令及びこれに基づく被控訴人Dによる公金の支出は違法である。 (イ) 被控訴人Bら3名の主張上記(1)ウのとおり,本件埋立区域付近は,3号地に該当する河川区域であり,現地における外観から河川区域を特定できる土地ではなかったから,三重県は,現地において河川区域の明示のために,本件業務委託契約を締結する必要があったものであり,本件業務委託契約は目的において正当である。 また,Eは,適切な測量を行っており,不完全履行はない。 イ被控訴人Bら3名の過失に関する当事者双方の主張は,当審における控訴人らの主張を次に加えるほか,原判決15頁10行目から21頁6行目までのとおりであるから,これを引用する(なお,引用範囲の「河川区域図」のうち,本件事案についての特定の図面の趣旨で使用 における控訴人らの主張を次に加えるほか,原判決15頁10行目から21頁6行目までのとおりであるから,これを引用する(なお,引用範囲の「河川区域図」のうち,本件事案についての特定の図面の趣旨で使用されているものは,「本件告示付属図面」である。)。 (控訴人らの当審における主張)(ア) 被控訴人Cは,本川である銚子川の河川現況図を参照し,ここから合理的推認を働かせれば,支川である又口川の河川区域として1号地しか存せず,復元すべき境界は,3号地と河川区域外の土地との境界ではなく,1号地と河川区域外の土地との境界であることを容易に知り得たものであるから,本件業務委託契約の締結及び支出命令の職務執行につき,重大な過失がある。 (イ) 被控訴人Cは,Eが,現地測量の結果と本件告示付属図面との重ね合わせの際,永久構造物の2点を基点とするという方法をとらない等により契約上の債務を不完全に履行したことにつき,Eに対する監督者として重大な過失があるから,本件測量費用の支出命令をしたことにつき,重大な過失がある。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,本件訴えはいずれも適法であるが,控訴人らの請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,次のとおりである。 2 本案前の主張について(1) 被控訴人知事の本案前の主張についての当裁判所の判断は,原判決21頁9行目から23頁7行目までのとおりであるから,これを引用する(ただし,21頁11行目から22頁2行目の「変わりはなく,」までを「第三者に対する損害賠償請求権も財産的価値を有することが明らかであって,」と改める。)。 (2) 被控訴人セルフ舎建設及び同Aの本案前の主張について住民訴訟においては,その対象とする財務会計上の行為又は怠る事実について監査請求を経ていると認められる限り,監査請求において求め る。)。 (2) 被控訴人セルフ舎建設及び同Aの本案前の主張について住民訴訟においては,その対象とする財務会計上の行為又は怠る事実について監査請求を経ていると認められる限り,監査請求において求められた具体的措置の相手方とは異なる者を相手方として,同措置の内容と異なる請求をすることも許されると解される(最高裁平成6年(行ツ)第53号同10年7月3日第二小法廷判決・判例時報1652号65頁)。 これを本件についてみるに,証拠(甲1)によれば,控訴人らが行った監査請求においては,被控訴人知事が,同セルフ舎建設に対して,二級河川又口川の河川区域の復元のために要する一切の費用について損害賠償請求をしないことが監査対象事項の1つとされていたことが認められ,これによれば,本件埋立行為が不法行為となることに基づく損害賠償請求権の行使を怠る事実も上記監査請求の対象とされたものと解されるところ,被控訴人セルフ舎建設及び同Aに対する本件訴えにおいても,これと同一の不法行為に基づく損害賠償請求権の不行使が怠る事実とされているものであるから,同被控訴人らに対する本件訴えが監査請求前置主義の要件に欠けるということはできず,同被控訴人らに対する本件訴えは適法というべきである。 したがって,同被控訴人らの主張は採用できない。 3 本案の判断の前提となる認定事実(1) 本件に関する事実経緯,河川管理に関する一般的事項及び又口川における河川管理の実状は,次に改めるほか,原判決23頁9行目から33頁4行目までのとおりであるから,これを引用する。 原判決24頁3行目の「同F」の次に「,当審被控訴人A」を加え,7行目の「平成四年ころ」を「平成元年ころ」と,29頁9行目の「三重県知事として、」を「被控訴人Cの専決により,」と,32頁8行目の「によれば」から33頁2行目の「 の次に「,当審被控訴人A」を加え,7行目の「平成四年ころ」を「平成元年ころ」と,29頁9行目の「三重県知事として、」を「被控訴人Cの専決により,」と,32頁8行目の「によれば」から33頁2行目の「備え置かれたこと、」までを「及び弁論の全趣旨によれば,又口川は昭和40年4月1日二級河川に指定され,三重県知事の管理の下におかれてきたところ,昭和50年11月4日,三重県告示第713号により,又口川についても上記の取扱いと同じように,別紙図面(注,同告示の「別紙図面」)の茶色で着色した部分に該当する土地の区域のうち,1号地及び2号地以外の区域として河川区域の指定,変更が行われ,同図面として尾鷲市及び海山町の森林基本図(昭和42年7月測図,縮尺5000分の1)に河川区域の範囲として茶色で着色したものが作成され,尾鷲土木事務所に備え置かれたこと,」とそれぞれ改める。 (2) 本件測量の方法及び結果は,原判決36頁6行目から37頁11行目までのとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決36頁7行目の「一八、一九、」の次に「39,」を,「取下げ前被告G」の次に「,当審証人H」を加える。)。 (3) 証拠(甲12,13,25,乙イ25の1,乙イ41の1,2,乙ハ1,原審証人I,当審被控訴人A)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア本件埋立行為前において,本件埋立区域付近の又口川には中州状の土地が存し,その中州状の土地の南側付近には又口川の分流の水路の跡とみられる部分(以下「本件南側水路」という。)が存していた。 本件河川区域につき,昭和50年11月4日の又口川を含む河川の河川区域の指定告示の際には,森林基本図(昭和40年9月ころ撮影された航空写真に基づいて上記中州状の土地及び本件南側水路の形状を記載し,昭和42年7月測図したもの)に 11月4日の又口川を含む河川の河川区域の指定告示の際には,森林基本図(昭和40年9月ころ撮影された航空写真に基づいて上記中州状の土地及び本件南側水路の形状を記載し,昭和42年7月測図したもの)に基づき,現地調査の上,その水路の南端付近に沿って,別紙図面(本件告示付属図面と同じものの部分図)のとおり,本件河川区域と河川区域外の土地との境界が定められ,指定告示された。 イ本件埋立行為前において,本件南側水路は,上記中州状の土地の北側の河道(本流部分の土地)より高位に位置し,直上流にクチスボダムが建設された後には,表流水が継続して存する状況にはなかった(甲第12号証,同第13号証によれば,本件南側水路に継続して途切れなく表流水が存するものとは認められないし,乙イ第41号証の2の図面の記載からみても,尾鷲土木事務所側は,平成元年当時,本件南側水路に継続して表流水が存するものではないとの認識を有していたとみられる。)。 ウ被控訴人Aは,昭和63年後半ころ,被控訴人セルフ舎建設を代表し,本件河川区域に隣接する私有地を産業廃棄物等の処分場とするため,尾鷲土木事務所長に対し,河川区域と私有地との間の石積みを要請したところ,石積みは同被控訴人側が行うが,尾鷲土木事務所側で河川区域の境界を明示することとなった。 そして,尾鷲土木事務所において,平成元年3月30日,又口川の本流部分を中心に河川区域北側を県道南浦海山線の手前までとし,河川区域南側を上記中州状の土地の北側まで(河川区域南側と同一の高位)とする内容の決裁書類を作成し,尾鷲土木事務所長が内部決裁し,その前後ころ尾鷲土木事務所の課長らが被控訴人Aに対し上記内容に沿って河川区域の範囲を指示した。 被控訴人セルフ舎建設が行った本件埋立行為は上記指示範囲を逸脱したものではなかった。 4 被控訴人 その前後ころ尾鷲土木事務所の課長らが被控訴人Aに対し上記内容に沿って河川区域の範囲を指示した。 被控訴人セルフ舎建設が行った本件埋立行為は上記指示範囲を逸脱したものではなかった。 4 被控訴人セルフ舎建設及び同Aの不法行為責任の成否について(1) 上記認定によれば,本件埋立行為が,客観的には,河川区域を侵害する行為であったとしても,当該河川を管理していた尾鷲土木事務所側の河川区域の指示に従ってなされたものであり,当時,被控訴人Aと従業員らにおいて当該指示が誤りであることを知っていたり,あるいはこれを疑い独自に河川区域の範囲を調査すべき注意義務が発生したと認めるに足りる事実は存しないから,河川区域を侵害することにつき,被控訴人Aと従業員らの故意又は過失を認めることはできない。 控訴人らは,同被控訴人らによる河川法違反ないし廃棄物処理法違反の点も主張するが,控訴人ら主張の被控訴人Aと従業員らの不法行為の要点は,故意又は過失により,河川区域を侵害する本件埋立行為を行い,河川区域の境界を不明確にしてその測量を必要とさせ,三重県に測量費用相当額の損害を与えたというものであるところ,その指摘する河川法27条,同29条はいずれも,河川区域内の形状変更行為や管理上の支障行為等につき規制しているものであって,それらの法規が河川区域の範囲を侵害することについての注意義務の発生根拠となるものではなく,本件不法行為を論ずる上で,上記法規違反を問題とする余地はない。また,控訴人らの指摘する廃棄物処理法16条(不法投棄禁止)についても,上記河川区域侵害を不法行為として,これによる測量費用の賠償請求権を代位行使する本件において,同法条が同不法行為の過失の要件たる注意義務発生の根拠となるものではない。したがって,控訴人らの上記主張は,その主張する不法行為の成 して,これによる測量費用の賠償請求権を代位行使する本件において,同法条が同不法行為の過失の要件たる注意義務発生の根拠となるものではない。したがって,控訴人らの上記主張は,その主張する不法行為の成否に影響しないものであって失当である。 また,控訴人らは,乙イ第41号証の1,2の提出が時期に遅れた攻撃防御方法で却下されるべきである旨主張するが,同書証の提出は,それにより訴訟の完結を遅延させるものではないから,上記書証の提出が民訴法157条1項に該当するとはいえず,これを却下すべきものではない。 なお,控訴人らは,原審において,本件測量費用につき,条理上,河川法67条の原因者負担金に含まれるとして,最終的に被控訴人セルフ舎建設が負担すべき費用である旨も主張したが,上記のとおり,本件埋立行為が境界に関する尾鷲土木事務所側の指示範囲を逸脱したものではない以上,境界を明示するための本件測量費用が,被控訴人セルフ舎建設の本件埋立行為によって必要を生じた費用に当たるとは認められないから,上記主張も採用できない。 (2) そうすると,その余の点につき判断するまでもなく,本件埋立行為による河川区域の侵害を理由とする不法行為に関しては,被控訴人Aと従業員らの三重県に対する不法行為責任を認めることができず,これを前提とする被控訴人Aの代表者責任,同セルフ舎建設の法人の不法行為責任ないし使用者責任も認めることができない(ちなみに,本件において,三重県職員が自ら河川区域の境界を指示し,これに従ってなされた本件埋立行為につき,三重県において,後日,上記指示を誤りとして埋立行為者に対し測量費用相当の損害賠償責任を問うことは,信義に反し,許されないところと解され,この点からみても,控訴人ら主張の三重県を権利者とする不法行為に基づく各損害賠償請求権は認め難いところで 立行為者に対し測量費用相当の損害賠償責任を問うことは,信義に反し,許されないところと解され,この点からみても,控訴人ら主張の三重県を権利者とする不法行為に基づく各損害賠償請求権は認め難いところである。)。 5 被控訴人B,同C及び同D(被控訴人Bら3名)の責任の有無(1) 本件業務委託契約締結の違法についてア地方自治法242条の2第1項4号前段に基づく代位請求に係る当該職員に対する損害賠償請求につき,当該職員の財務会計上の行為をとらえて損害賠償責任を問うことができるのは,当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られると解される(最高裁昭和61年(行ツ)第133号平成4年12月15日第三小法廷判決・民集46巻9号2753頁参照)。 この点からみると,河川管理者である地方公共団体の執行機関が,随意契約の方法により,河川区域の境界を明示するための測量等に関し業務委託契約を締結することは,地方自治法2条14項,138条の2,地方財政法4条1項等の地方財務会計に関する諸規定に照らし,当該行政上の目的達成のために必要がない場合,当該行政上の目的達成のために通常要する額を超えて過大な費用を要する場合,財務会計職員が財務会計上の職務権限を誠実に執行したものではない場合などに,財務会計法規上の義務に違反する違法なものとなることがあるが,そのような場合でなければ,直ちに財務会計法規上の義務に違反する違法な債務負担行為となるものではないと解され,控訴人らは上記法条を特定して主張してはいないが,その主張は上記法条違反の主張を含むものと善解して以下判断する。 イこれを本件についてみるに,上記認定(原判示)によれば,本件業務委託契約は,本件埋立行為後,本件河川区域の境界が現地において不明となり,河川管理上の支障となって 含むものと善解して以下判断する。 イこれを本件についてみるに,上記認定(原判示)によれば,本件業務委託契約は,本件埋立行為後,本件河川区域の境界が現地において不明となり,河川管理上の支障となっていたことから,その境界を明らかにする目的で締結されたものであって,河川の適切な管理という行政目的を達成するために必要であると認められ,その契約金額も通常要する額を超えて過大なものとは認められない。また,本件業務契約の締結につき,執行機関において財務会計上の職務権限を誠実に執行していないとみるべき事実,その他,財務会計法規上の義務の違反の事実を認めるに足りる証拠は存しない。 ウ控訴人らは,復元すべき境界は,1号地と河川区域外の土地との境界であるべきで,本件においては,本件南側水路の南側における自然の護岸の喫水線がこれに該当するもので,その境界は航空写真や道路台帳付図等をも参照して具体的に復元されるべきところ,本件業務委託契約は,その境界の復元を目的とせず,もっぱら本件告示付属図面における河川区域の境界の復元を目的とし,復元の方法も本件告示付属図面のみを資料とし,これを拡大する方法を用いるなど,その手法において不合理な業務内容を委託したものであるから,違法である旨主張する。 しかし,明示すべき境界をどのように定め,どのような資料に基づき,どのような手法で現地に明示すべきかの具体的な方針は,第一次的には,当該河川の流水や地形等の状況(これらが時の経過により変動する点を含む。),関係資料の状況,河川法を始めとする関係行政法規等に基づき,河川管理者が専門技術的な裁量により判断すべきものであって,仮に河川管理者が採用した上記事項に関する行政上の方針において,明示すべき境界の認定判断が不当であり,あるいは,境界明示に用いる資料の取捨選択や境界確定の手 術的な裁量により判断すべきものであって,仮に河川管理者が採用した上記事項に関する行政上の方針において,明示すべき境界の認定判断が不当であり,あるいは,境界明示に用いる資料の取捨選択や境界確定の手法が不当であったとしても,これに基づく業務委託契約の締結が,直ちに財務会計法規上の義務に違反する違法なものとなるとは解されない。 そして,上記認定に照らし,本件埋立行為以前において,本件南側水路は,表流水が継続して存する土地でないことはもちろん,そのような土地に類する土地であるか否かも確定が困難であり(甲第10号証の航空写真によれば,本件南側水路に表流水が存するが,直上流のクチスボダムが激しく放流しているとみられることや撮影月日が9月19日であることからみて,大雨等の異常な天然現象により一時的に表流水が存する状況を呈している土地である可能性も残る。甲第11号証の航空写真によるも上記確定は困難である。),結局,本件南側水路を1号地(法律上当然の河川区域)であったと断定するには証拠が十分ではない。また,河川管理行政の観点からは,本件南側水路が明らかに1号地であったとまでは断定できない場合に,本件埋立区域を少なくとも3号地であるとみて,本件告示付属図面に示された境界を現地において明示してその範囲内の河川区域を管理下に収めれば,河川管理権の行使に対する支障は一応除去できるものということもできなくはない。 このような事情を考慮すると,本件埋立行為開始から約6年経過した平成7年の本件業務委託契約締結当時,三重県側において,本件埋立区域を本件南側水路部分を含めて3号地と認定判断し,その境界を本件図面に示された境界とし,その明示につき河川区域指定告示の際に用いられた本件告示付属図面のみを資料とし,その電算機による拡大図を用いるなどの方法により境界の明示を 3号地と認定判断し,その境界を本件図面に示された境界とし,その明示につき河川区域指定告示の際に用いられた本件告示付属図面のみを資料とし,その電算機による拡大図を用いるなどの方法により境界の明示をするといった河川管理行政上の方針をとったことは,未だ河川管理者の専門技術的裁量の範囲内のことであって,そのような行政上の方針をとった点に他事考慮,重大な事実誤認等に基づく専門技術的裁量の逸脱濫用があることを認めることのできる証拠はない(なお,三重県職員の河川区域侵害行為加功の事実隠蔽目的によるものであることが認められないこと後記のとおりである。)。 そうすると,上記方針に沿った内容で本件業務委託契約を締結したことが財務会計法規上の義務に違反する違法なものとなるということはできないから,控訴人らの上記主張は採用できない。 エ以上によれば,本件業務委託契約の締結が,財務会計法規上の義務に違反する違法な債務負担行為であるということはできず,したがって,これに後続する支出命令及び支出も,直ちに財務会計法規上の義務に違反してなされた違法な財務会計行為であるということはできない。 (2) 本件業務委託契約の不完全履行を理由とする支出命令の違法についてア控訴人らは,Eによる本件業務委託契約上の義務の履行につき,測量業務の常識を大きく逸脱した作業を行い,本件告示付属図面が示していた河川区域とは異なる区域を復元・明示した不完全履行があり,本件測量費用の支出命令及び支出が違法である旨主張する。 イしかし,上記認定(原判示)のとおり,平成7年10月30日,三重県土木部検査監室のJ検査主幹により,本件業務委託契約に基づく委託業務が完成されたことが認定されている上,証拠(乙イ3,14,15,24,34ないし39,原審取下げ前相被告G,当審証人H)及び弁論の全趣旨 検査監室のJ検査主幹により,本件業務委託契約に基づく委託業務が完成されたことが認定されている上,証拠(乙イ3,14,15,24,34ないし39,原審取下げ前相被告G,当審証人H)及び弁論の全趣旨によれば,Eは,本件業務委託契約において委任された作業は,変更契約による分を含め,すべて終了したものと認められ,履行していない作業が残存するものとは認められず,また,作業の遂行に当たっては尾鷲土木事務所職員の指示に従い,現地測量の結果と本件図面との重ね合わせの際,永久構造物の2点を基点としなかったのも尾鷲土木事務所職員との協議の結果に基づくものと認められ,遂行した作業の内容が,三重県側が本件業務委託契約において予定していた作業の内容と異なるものであったと認めることもできない。そして,本件業務委託契約において,Eが,契約上義務づけられた作業を三重県側の指示に基づき契約の趣旨に従って遂行した結果,仮に,本件告示付属図面が本来示していた河川区域と客観的には多少異なる区域を明示したとしても,そのことが直ちに本件業務委託契約上の受任者の債務の不完全履行となるものではないと解される。 ウそうすると,Eによる本件業務委託契約上の債務の履行につき,不完全履行が存するものではなく,Eは三重県に対し,本件業務委託契約上の債務を履行したことに基づき,本件測量費用の支払請求権を有するに至ったというべきであるから,本件測量費用の支出命令及びこれに基づく支出につき,財務会計法規上の義務に違反する違法な財務会計行為であるとは認められない。 (3) 控訴人らが上記被控訴人らの過失として主張する点についてア控訴人らは,被控訴人セルフ舎建設が尾鷲土木事務所職員の指示を受けて本件河川区域の侵害行為を行っており,本件測量は,三重県職員の加功の事実を覆い隠すために実施されたもの として主張する点についてア控訴人らは,被控訴人セルフ舎建設が尾鷲土木事務所職員の指示を受けて本件河川区域の侵害行為を行っており,本件測量は,三重県職員の加功の事実を覆い隠すために実施されたもので,その目的において違法である旨主張する。 しかし,本件測量が,三重県職員の加功の事実を覆い隠すために実施されたことを具体的に認定し得る的確な証拠は存しない。既に判示の本件埋立行為の経緯によれば,尾鷲土木事務所職員の河川区域の範囲の指示にはいささか不適切な点があったということはできるとしても,上記認定によれば,本件業務委託契約は,そのような指示による河川区域侵害の状態から河川管理権の回復を図る目的で締結されたというべきであるから,本件業務委託契約の締結が財務会計法規上の義務に違反する違法なものとなるということはできない。 イまた,控訴人らは,三重県職員が,被控訴人セルフ舎建設において河川敷から取水することを容認するために,その取水場所を河川区域内から外すべく,故意に河川区域を約5m河川側に後退させる目的で,本件業務委託契約を締結した旨主張する。 しかし,証拠(甲64ないし66,乙イ19,34ないし39,当審証人H)及び弁論の全趣旨によれば,本件測量の成果図における境界は,本件告示付属図面に基づき控訴人らが再現した境界よりも河川側に後退した位置に存するものであるが,控訴人らの上記境界再現方法においても,本件図面を500%拡大複写した図面を用いたなどの点で,他に航空写真や道路現況図を参考にしたことを考慮しても,必ずしもその正確性が担保されているとは認め難く,上記成果図の境界が,正確性において控訴人らの再現した境界に明らかに劣る恣意的なものであるとまでは認められない上,本件業務委託を受けたEは,本件告示付属図面上の境界を現地に明示する作業を 認め難く,上記成果図の境界が,正確性において控訴人らの再現した境界に明らかに劣る恣意的なものであるとまでは認められない上,本件業務委託を受けたEは,本件告示付属図面上の境界を現地に明示する作業を行った際,故意に河川区域を約5m河川側に後退させるような指示を受け,その他恣意的に境界を明示するような指示を受けて作業を行ったものとまでは認められないところである。 そうすると,本件の証拠からは,本件業務委託契約の締結に当たり,三重県職員に,上記主張にかかる目的があったことを具体的に認定することはできない。 ウ控訴人らは,本件業務委託契約において,河川区域の境界復元作業をする際に,三重県職員が本件告示付属図面しか参照しなかった点,精度の低い地図から精度の高い地図を作成する方法を用いた点等で,測量に当たり誤った指示をした旨主張するが,具体的作業の遂行方法の指示に関する技術的な誤りは,仮にそれが認められるとしても,直ちに財務会計法規上の義務の違反となるものではないというべきであるから,これによって本件の各財務会計行為の違法性が基礎付けられるとは認められない。 エ控訴人らは,本件測量においては,測量の結果として,6つの点がプロットされ,それが線で結ばれているだけであって,どこで,それが従前の河川区域と一致するのかを明らかにしなければ,河川区域を復元したことにはならないとし,この点においても,本件測量は不十分なものである旨主張する。 しかし,上記主張の点を踏まえて検討しても,本件業務委託契約締結の必要性自体が欠けることにはならず,また,上記5(2)のとおり,本件業務委託契約において三重県がEに委託した業務自体は遂行されたものであって,契約上,三重県の委託料支払債務は発生しており,その支払は同債務の履行行為として財務会計法規上適法なものであると おり,本件業務委託契約において三重県がEに委託した業務自体は遂行されたものであって,契約上,三重県の委託料支払債務は発生しており,その支払は同債務の履行行為として財務会計法規上適法なものであると認められるから,上記主張にかかる点から本件の各財務会計行為につき財務会計法規上の義務の違反を認めることはできない。 オ控訴人らは,復元すべき境界は1号地と河川区域外の土地の境界であるのに,3号地として測量を依頼した点を主張するが,既に判示のとおり本件南側水路が1号地であったと認められないし,3号地であるとして測量依頼した点に財務会計法規上の違法を認めることはできない。 カしたがって,控訴人らが上記被控訴人らの過失として主張する点について検討しても,本件業務委託契約の締結,支出命令,支出の各財務会計行為につき,財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるとは認められないというほかない。そうすると,上記被控訴人らの財務会計行為遂行の際における個々の過失等(ただし,被控訴人Bについては指揮監督上の故意又は過失,被控訴人C及び同Dについては財務会計行為における故意又は重過失に限る。)の有無を検討するまでもなく,控訴人らの主張は採用できない。 6 以上によれば,三重県の被控訴人セルフ舎建設及び同Aに対する不法行為責任,使用者責任及び代理監督者責任に基づく本件測量費用相当額の損害賠償請求権は,その発生を認めることができないから,被控訴人知事に対する,同損害賠償請求権の行使を怠る事実の違法確認請求及び当該怠る事実の相手方である被控訴人A及び同セルフ舎建設に対する,住民が普通地方公共団体に代位して行う損害賠償の請求は,いずれも理由がない。また,本件業務委託契約の締結,支出命令,支出につき,いずれも財務会計法規上の義務に違反してなされた違法なものというこ る,住民が普通地方公共団体に代位して行う損害賠償の請求は,いずれも理由がない。また,本件業務委託契約の締結,支出命令,支出につき,いずれも財務会計法規上の義務に違反してなされた違法なものということはできないから,被控訴人Bら3名に対する,住民が普通地方公共団体に代位して当該職員に対して行う損害賠償の請求も,いずれも理由がない。 第4 結論よって,控訴人らの請求をいずれも棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからいずれも棄却し,控訴費用は控訴人らに負担させることとして,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第1部裁判長裁判官田村洋三裁判官小林克美裁判官戸田久(別紙図面は添付省略)
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