平成23(行ケ)10258 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成24年9月27日 知的財産高等裁判所 1部 判決 審決取消
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平成24年9月27日判決言渡平成23年(行ケ)第10258号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成24年6月28日判決原告カースル株式会社訴訟代理人弁護士村林隆一同栗本知子同井上裕史訴訟代理人弁理士安倍逸郎被告東洋アルミエコープロダクツ株式会社訴訟代理人弁護士山上和則同藤川義人同雨 宮 沙耶花訴訟代理人弁理士藤井 淳同山崎裕史 主文 1 特許庁が無効2010-800183号事件について,平成23年7月8日にした審決のうち「特許第2791553号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は,被請求人の負担とする。」との部分を取り消す。 2 訴訟費用は,被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨主文同旨第2 争いのない事実 1 特許庁における手続 (1) 原告は,発明の名称を「通気口用フィルター部材」とする特許(特許第2791553号。以下「本件特許」という。)の特許権者である。 (2) 被告は,平成22年10月10日,原告を被請求人として,本件特許について無効審判請求(無効2010-800183)をした。これに対し,原告は,平成22年12月24日付 の特許権者である。 (2) 被告は,平成22年10月10日,原告を被請求人として,本件特許について無効審判請求(無効2010-800183)をした。これに対し,原告は,平成22年12月24日付けで訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)をした。特許庁は,平成23年7月8日,訂正を認め,特許第2791553号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする旨の審決(以下「審決」という。)をし,同月19日,審決謄本が原告に送達された。 2 特許請求の範囲の記載本件訂正請求による訂正後の本件特許の特許請求の範囲(請求項は1項のみ。)は,次のとおりである(以下,この発明を「本件訂正発明」という。)。 「幅広の不織布を取り付けようとするレンジフードの角形の通気口に合わせて切断し,切断した不織布の周囲を前記通気口に仮固定してこの通気口を不織布で直接覆って使用する通気口用フィルター部材であって,前記不織布として,一軸方向にのみ非伸縮性で,かつ該一軸方向とは直交する方向へ伸ばした状態で仮固定して使用したとき,120~140%まで自由に伸びて縮む合成樹脂繊維からなるものを使用し,前記不織布を前記一軸方向とは直交する方向へ伸ばして,この不織布により前記通気口を覆うことを可能としたことを特徴とする通気口用フィルター部材。」 3 審決の内容(1) 審決の内容は,別紙審決書写しのとおりである。要するに,本件訂正発明は,甲1(特開平3-229608号公報)記載の発明(以下「甲1発明」という。)及び本件出願前周知の事項に基づいて当業者であれば容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項により特許を受けることができないとするものである。 (2) 審決が認定した甲1発明の内容 ア幅広の不織布を取り付けようと ば容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項により特許を受けることができないとするものである。 (2) 審決が認定した甲1発明の内容 ア幅広の不織布を取り付けようとするレンジフード12の角形の排気口に合わせて切断し,切断した不織布の周囲を前記排気口に固定してこの排気口を不織布で直接覆って使用する排気口用フィルターであって,イこの不織布により前記排気口を覆うことを可能とした排気口用フィルター。 (3) 審決が認定した本件訂正発明と甲1発明との一致点「幅広の不織布を取り付けようとするレンジフードの角形の通気口に合わせて切断し,切断した不織布の周囲を前記通気口に固定してこの通気口を不織布で直接覆って使用する通気口用フィルター部材であって,この不織布により前記通気口を覆うことを可能とした通気口用フィルター部材。」(4) 審決が認定した本件訂正発明と甲1発明との相違点本件訂正発明では,不織布を「仮固定」すると共に,「不織布として,一軸方向にのみ非伸縮性で,かつ該一軸方向とは直交する方向へ伸ばした状態で仮固定して使用したとき,120~140%まで自由に伸びて縮む合成樹脂繊維からなるものを使用し,不織布を一軸方向とは直交する方向へ伸ばして」通気口を覆うのに対して,甲1発明では,上記のようにしていない点。 第3 審決取消事由に関する当事者の主張 1 原告の主張(1) 取消事由1(手続的違法)審決は,審判請求人(被告)の提出しない,特開平7-300752号公報(甲42)と特開平1-266260号公報(甲43)に基づき周知事項を認定し,容易想到性等の判断をした。周知事実を立証するための証拠であっても特許法153条2項が適用されるべきであるから,被請求人(原告)の意見を聴取することな 260号公報(甲43)に基づき周知事項を認定し,容易想到性等の判断をした。周知事実を立証するための証拠であっても特許法153条2項が適用されるべきであるから,被請求人(原告)の意見を聴取することなく,証拠を採用した審決の上記手続には,同項に反する違法がある。 (2) 取消事由2(刊行物に記載された技術事項及び周知事項の認定の誤り)刊行物に記載された技術事項についての審決の認定には,以下のとおりの誤りがある。 ア甲4及び甲5に記載された技術事項の認定の誤り審決は,甲4及び甲5から「不織布をフィルター部材として伸ばして使用する際,一方向に伸ばすことによる直交する方向の縮みができる限り抑制されるべきものであることは,・・・当然のことであり」と認定する。 しかし,審決の上記認定には,以下のとおり誤りがある。 すなわち,甲4に記載された技術内容は,直交する方向が縮むことを前提に,あらかじめ中央部分を幅広くすることにより,縮んだ後の中央部分の幅が狭くなりすぎることを防止することについての技術である。甲4は,「直交する方向が縮むこと」を前提としているのであり,「直交する方向の縮みをできる限り抑制する」との技術を開示するものではない。また,「縮みが抑制されるべき」との記載も示唆もない。 また,甲5には,レンジフード用のフィルター部材の不織布として「適度の伸縮性を有している」との記載があるのみであり,伸縮する方向と直交する方向で「不織布が縮む」及び「縮みを抑制すべき」との記載及び示唆もない。 イ甲18,甲20,甲42及び甲43に記載された技術事項の認定の誤り甲18,甲20,甲42及び甲43(以下「甲18等」という。)には,いずれも特定の構成において,「一軸方向の伸縮性が抑制された不織布」が開示されているものの 43に記載された技術事項の認定の誤り甲18,甲20,甲42及び甲43(以下「甲18等」という。)には,いずれも特定の構成において,「一軸方向の伸縮性が抑制された不織布」が開示されているものの,一般的に「幅広の不織布として・・・を使用するとき」,当該構成の不織布が当然に使用されることは,開示されていない。 本件訂正発明では,不織布にかけられる引っ張り力は100g程度のわずかなものであるのに対し,甲18等に記載された不織布は,極めて大きな張力を負荷したときに伸びるものである。 ウ 「周知の事項」の認定の誤り審決は,甲4及び甲5に記載された「技術事項(Ⅰ)」と甲18等に記載された「技術事項(Ⅱ)」から,「幅広の不織布として,伸縮する(自由に伸びて縮む)と共に合成樹脂繊維からなるものを使用するとき,一軸方向の伸縮性が抑制されて(一軸方向の伸縮性が僅かで),かつ該一軸方向とは直交する方向へ伸縮するものをフィル ター部材として伸ばして使用する」ことが,本件出願前周知の事項であると認定する。 しかし,審決の上記認定には,以下のとおり誤りがある。 すなわち,周知の事項と認定されるためには,当該技術事項が断片的に刊行物に記載されていることでは足らず,当該「技術事項そのもの」が,一般的に知られていることが必要である。しかし,審決の認定に係る「周知の事項」は,技術事項(Ⅰ)と技術事項(Ⅱ)を組み合わせることによって,初めて達成されるものであり,そのような技術について,周知事項と認定することはできない。 のみならず,甲18等に記載された不織布の特性と甲4及び甲5に記載されたフィルターの特性は,全く相違するから,甲18等に記載された不織布についての技術事項(Ⅱ)を,フィルター部材に関する技術事項(Ⅰ)と組み合わせることはできず, 不織布の特性と甲4及び甲5に記載されたフィルターの特性は,全く相違するから,甲18等に記載された不織布についての技術事項(Ⅱ)を,フィルター部材に関する技術事項(Ⅰ)と組み合わせることはできず,この点においても,審決の認定は誤っている。 (3) 取消事由3(相違点に係る容易想到性判断の誤り)ア甲1発明に甲18等の公知技術を適用することの動機付けがない点について(ア) 甲18等に記載された不織布は,甲1に記載されたレンジフード用のフィルター部材の用途として不適切であり,甲18等に記載された不織布を甲1発明に適用するのは相当でない。 すなわち,甲18等には,不織布が感熱性孔版印刷用原紙の支持体などの産業資材,カーペット,マット,トリコット編物,衣服,モップ等として使用されることが記載されている。これらの用途では,一般的に不織布を伸ばして使用することはない。また,甲18等は,不織布を強い力で引っ張ったときに伸びることが記載されているものの,不織布を伸ばして使用することについては記載も示唆もされていない。 これに対して,本件訂正発明の不織布は,幅広の不織布を取り付けようとするレンジフードの角形の通気口に合わせて切断し,切断した不織布の一端部を仮固定し,このような使用状態で一般成人が手を使って不織布を引っ張ることができる程度の 力(例えば100~150g)で,一軸方向(非伸縮方向)とは直交する方向(伸縮方向)へ不織布を120~140%伸ばして,通気口を覆うものである。 さらに,本件訂正発明において規定された不織布の,伸び率120~140%は,破断を伴わない伸び率を意味するもので,甲18等に記載されている伸度の数値は本件訂正発明における伸度と大きく相違する。 (イ) 甲1又は甲4及び甲5には,甲18等に記載された不 20~140%は,破断を伴わない伸び率を意味するもので,甲18等に記載されている伸度の数値は本件訂正発明における伸度と大きく相違する。 (イ) 甲1又は甲4及び甲5には,甲18等に記載された不織布を適用することについての示唆ないし動機付けがない。 すなわち,甲18等に記載された不織布は,不織布の用途,使用方法,使用態様,特性が,レンジフード用フィルターとして使用される不織布とは,大きく異なる。 甲1には,甲1発明に甲18等に記載の発明を適用することについての示唆はなく,甲18等にも同様の示唆はない。また,甲4及び甲5には,甲4及び甲5に記載の発明に甲18等に記載の発明を適用することについての示唆はなく,甲1,甲18等にも同様に示唆はない。 (ウ) 本件訂正発明の解決課題は,「レンジフードの開口に不織布を取り付ける際に,垂れ下がりが生じないフィルターであって,不織布を大雑把に切断してレンジフードの開口に取り付けて使用可能とし,かつ,不織布を短く切断した場合でもレンジフードの開口に取り付け可能とすることで不織布の無駄をなくすこと」である。 これに対し,甲1には,レンジフード用のフィルター部材には,縦方向及び横方向のいずれの方向にも伸縮しない非伸縮性の不織布のみが採用されており,多方向伸縮性の不織布や一軸非伸縮性の不織布は採用されていない。よって,甲1には,本件訂正発明の解決課題の記載及び示唆はない。 以上のとおり,本件訂正発明における上記課題は,レンジフード用のフィルターを扱う当業者において,全く認識されていなかった。 イ 「120~140%まで自由に伸びて縮む」ことを設計事項であるとした判断の誤り審決は「自由に伸びて縮む程度をどれくらい(中略)にするかは,フィルター部 材を通気口に取り付ける操作性を向上さ 120~140%まで自由に伸びて縮む」ことを設計事項であるとした判断の誤り審決は「自由に伸びて縮む程度をどれくらい(中略)にするかは,フィルター部 材を通気口に取り付ける操作性を向上させる観点,通気口全体が覆えない等の不都合を回避する観点より,当業者であれば適宜決定する設計的事項である」と判断した。 しかし,上記構成は,不織布の繊維の太さ,繊維の長さ,繊維素材の材質,これらの繊維の配合割合による不織布の引っ張り強度の変化,不織布の引っ張りによる繊維密度の変化,通気性と汚煙除去率,消防基準の難燃度合いと油滴のボタ落ちの関係,販売に適した寸法等の条件の下において,一軸方向にのみ非伸縮性の不織布であって,その一軸方向とは直交する方向の一端部をレンジフードに仮固定した状態で,自由に伸びて縮む最適な伸縮率として,120~140%を選択したのであり,適宜選択する設計事項ではない。 2 被告の反論(1) 取消事由1(手続的違法)に対して審決は,「幅広の不織布として伸縮すると共に合成樹脂繊維からなるものを使用するとき,一軸方向の伸縮性が抑制されて,かつ該一軸方向とは直交する方向へ伸縮するものを伸ばして使用する」との周知技術について,審判請求人(被告)の提出に係る甲18,甲20に基づいて認定した上で,甲42,甲43を補助的,補強的に示した。したがって,審決のした認定に手続上の違法はない。 仮に,審決の認定過程における手続に瑕疵があったとしても,被請求人に対し,実質的に反論の機会が与えられていたから,意見申立ての機会を与えなくても,被請求人の不利益は生じない。 (2) 取消事由2(刊行物に記載された技術事項及び周知の事項の認定の誤り)に対してア甲4及び甲5に記載された技術事項の認定の誤りに対して甲4は,不 ,被請求人の不利益は生じない。 (2) 取消事由2(刊行物に記載された技術事項及び周知の事項の認定の誤り)に対してア甲4及び甲5に記載された技術事項の認定の誤りに対して甲4は,不織布を左右に引張って(すなわち,「一方向に伸ばして」)使用する際に中央部分が狭くなる(すなわち,「直交する方向が縮む」)という問題点に鑑み,フィルター部材の中央部分を幅広く形成するものであると理解することができる。 また,甲5において,「『若干小さい』シート状フィルターを伸ばした状態で取り付けできる」と記載しているのは,不織布を一方向に伸ばして使用する際に直交する方向が縮むという問題認識があるからである。 このように,当業者が甲4及び甲5を普通に読めば,不織布を一方向に伸ばして使用する際に,直交する方向が縮むという認識(問題意識)が存在することは容易に理解できるから,「伸ばすことによる縮みができる限り抑制されるべき・・・」と摘示し,その上で,「フィルター部材として伸ばして使用する」ことが甲4及び甲5に開示されているとした審決の認定に誤りはない。 イ甲18等に記載された技術事項の認定の誤りに対して甲18等には,「一軸方向の伸縮性が抑制されており,その直交する方向に伸縮する不織布」が記載されている。したがって,その不織布の使用時に,そのような特徴的な伸縮性を利用することは当然予定されているといえる。 原告の主張に係る「引っ張り力100g程度」との測定基準は,明細書には記載されていないから,主張自体失当である。 ウ周知事項の認定の誤りに対して甲4,甲5及び甲18等に記載された技術事項を周知とした審決の認定に誤りはない。 (3) 取消事由3(相違点に係る容易想到性判断の誤り)に対してア甲1発明に甲18等の公知技 りに対して甲4,甲5及び甲18等に記載された技術事項を周知とした審決の認定に誤りはない。 (3) 取消事由3(相違点に係る容易想到性判断の誤り)に対してア甲1発明に甲18等の公知技術を適用することの動機付けがないとの主張に対して(ア) 原告は,甲18等の不織布は,レンジフード用のフィルター部材の用途として,不適切である旨主張する。しかし,不織布をフィルターとして用いることは,不織布の製造に係る当業者においては,周知技術ないしは技術常識であるから,原告の主張は,失当である。 原告は,本件訂正発明では,破断を伴わない伸び率であることを目的として不織布の伸び率120~140%を採用したのに対し,甲18等の不織布の伸度と比較 できない旨を主張する。しかし,伸び率の測定方法は,特許請求の範囲及び本件明細書に記載されていないから,原告の上記主張は根拠がなく,失当である。 (イ) 原告は,甲1,甲4,甲5及び甲18等のいずれにも,甲1 発明に甲18等に記載の発明を適用することに関する示唆がない旨主張する。しかし,甲4は「換気扇用フィルター」に関するものであり,甲5は「レンジフード用フィルター装置」に関するものであるから,甲4,甲5には,「幅広の不織布として,伸びる(伸縮する)と共に合成樹脂繊維からなるものを使用するとき,伸ばすことによる縮みについて,できる限り抑制されたものをフィルター部材として伸ばして使用する」旨の示唆がされているといえる。 (ウ) 原告は,甲1には,本件訂正発明の課題である「レンジフードの開口に不織布を取り付ける際に,垂れ下がりが生じないフィルターであって,不織布を大雑把に切断してレンジフードの開口に取り付けて使用可能とし,かつ,不織布を短く切断した場合でもレンジフードの開口に取り付け可能とす を取り付ける際に,垂れ下がりが生じないフィルターであって,不織布を大雑把に切断してレンジフードの開口に取り付けて使用可能とし,かつ,不織布を短く切断した場合でもレンジフードの開口に取り付け可能とすることで不織布の無駄をなくす」との解決課題は存在しないと主張する。 しかし,容易想到であるか否かは,課題の共通性のみで判断されるものではない。 原告主張に係る本件訂正発明の解決課題は,客観性がなく,採用の限りでない。 イ 「120~140%まで自由に伸びて縮む」ことが設計事項であるとした判断の誤りに対して原告主張に係る「120~140%まで自由に伸びて縮む」ことの効果は,本件明細書の記載に基づくものでなく,また数値範囲の臨界的意義は認められない。 したがって,120~140%の数値を選択したことが設計事項であることを前提として,本件訂正発明に容易想到性がないとした審決の判断に誤りはない。 第4 当裁判所の判断当裁判所は,本件訂正発明の甲1との相違点に係る構成,すなわち「不織布を『仮固定』すると共に,『不織布として,一軸方向にのみ非伸縮性で,かつ該一軸方向とは直交する方向へ伸ばした状態で仮固定して使用したとき,120~140%まで 自由に伸びて縮む合成樹脂繊維からなるものを使用し,不織布を一軸方向とは直交する方向へ伸ばして』通気口を覆う」との構成は,甲1 発明に甲4,甲5及び甲18等に記載の発明を適用することにより,容易に想到することができたとはいえないものと判断する(取消事由2及び取消事由3)。 その理由は,以下のとおりである。 1 事実認定(1) 本件訂正発明について本件訂正発明の特許請求の範囲の記載は,第2の2記載のとおりである。また,本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明には,次のとおりの記載があ る。 1 事実認定(1) 本件訂正発明について本件訂正発明の特許請求の範囲の記載は,第2の2記載のとおりである。また,本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明には,次のとおりの記載がある。 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,レンジフードの通気口を覆って使用する通気口用フイルター部材に関する。」「【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,公報記載の排気口へのフィルター取付け方法に使用されている不織布には平面方向に伸びない不織布を使用しているので,取付けようとする通気口に合わせて不織布を切断する必要があり,所定の幅より短い場合にはフィルターとして使用することができず,長い場合には再度切断し直す必要があり,極めて面倒であるという問題があった。本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので,比較的簡便に取付けが可能な通気口用フイルター部材を提供することを目的とする。」「【0005】請求項1記載の通気口用フイルター部材においては,一軸方向にのみ非伸縮性の不織布を使用しているので,角形の通気口の一方の幅aにのみ長さを合わせて不織布を切断し,通気口の他方の幅bについては,概略長さで不織布を切断してフィルター部材を用意する。次に,フィルター部材となる不織布の所定の幅aで切断した側の端部を,通気口の幅aの部分に合わせて固定し,該不織布の反対側の端部を,幅aの通気口の反対側の端部に固定する。この場合,概略長さで切断した不織布が幅bより短い場合には,不織布を少し引っ張って伸ばすことにより通 気口全体を覆い,概略長さで切断した不織布が幅bより長い場合には,一旦不織布の端部を固定した後,そのはみ出し部分を切断する(なお,余剰部分を折り曲げてもよい)。」「【0010】不織布13が弛んだ状態で取付けられ 略長さで切断した不織布が幅bより長い場合には,一旦不織布の端部を固定した後,そのはみ出し部分を切断する(なお,余剰部分を折り曲げてもよい)。」「【0010】不織布13が弛んだ状態で取付けられている場合には,伸縮性のないA方向に不織布13を引っ張った状態で固定することによって,見栄えが良く不織布13を通気口12に固定できる。 また,不織布13の幅dが通気口12の幅bより長い場合には,再度切断して適当な長さにするか,あるいは不織布13の余分な端部を内側に折り曲げた状態で取っ手付き磁石15によって固定する。なお,取っ手付き磁石15の内面側には鉄板が設けられているものとする。 【0011】ここで,図3(A),(B)に示すように,比較実験のために,A,B何れの方向にも自由に伸びる不織布16を使用し,その周囲を取っ手付き磁石15で固定した状態でフィルター部材として使用したところ,時間の経過と共に油等の汚れが不織布16に付着し,通気口12の下方に垂れ下がることが確認された(図3(A)参照)。また,レンジフード11のファンの風力が強い場合には,ファンによって内側に吹き寄せられる(図3(B)参照)。従って,自由に伸びる不織布16の場合には,中央部分が上下に弛み易いという欠点が判明した。 【0012】一方,直交する何れの方向にも伸びない不織布を使用して通気口12を覆った場合には,図3(A),(B)のようには中弛みはしないが,所定の寸法に切断しないと通気口12に収まらず,収まっても丁度に取付けることは難しく,特に,幅が短い場合には全く使用できないという欠点があった。」(2) 甲1の記載甲1(特開平3-229608号公報)には,次のとおりの記載がある。 「2 特許請求の範囲(1) 所定広さのフィルターで排気口を覆い,周囲をマグネットホル があった。」(2) 甲1の記載甲1(特開平3-229608号公報)には,次のとおりの記載がある。 「2 特許請求の範囲(1) 所定広さのフィルターで排気口を覆い,周囲をマグネットホルダーによって押さえた排気口カバーの取り付け方法」「第1図,第2図に示すように第1の実施例に係る排気口カバーの取付け方法においては,ま ず第2図に示すようにフィルターの一例である難燃性の不織布10を鋏11等で所定長に切断し,排気口の一例であるレンジフード12の周囲に被せ,第1図に示すように周囲を適当数のマグネットホルダー13によって固定する。」(2頁左下欄18行目から右下欄4行目)(3) 甲4の記載甲4(特開平8-196843号公報)には,次のとおりの記載がある。 「【特許請求の範囲】【請求項1】 換気扇等の吸気側開口全体を覆い,着脱自在に装着される四角形状の換気扇用フィルターにおいて,該フィルターはフィルター部材の少なくとも両端にホルダー部が設けられているとともに,該フィルター部材は中央部が端部に比べ幅広く形成されていることを特徴とする換気扇用フィルター。」「【発明の詳細な説明】【0001】【産業上の利用分野】本発明は台所用換気扇やレンジフードなどのフィルターの装着を必要とする換気扇本体や換気扇本体の前面全体を覆うフィルターカバーの吸気側開口全体を覆い,着脱自在に取り付け可能とした換気扇用フィルターに関するものである。」「【0005】しかしながら,フィルターカバー20 にフィルター21 が装着された状態では図6に示すように両方向に引張られたような状態で装着されている。よって,図5に示すような形状のフィルター21 では中央部分の幅が両端に比べて片側でA寸法だけ狭くなる。特にフィルター部材22 として不織布を用い ように両方向に引張られたような状態で装着されている。よって,図5に示すような形状のフィルター21 では中央部分の幅が両端に比べて片側でA寸法だけ狭くなる。特にフィルター部材22 として不織布を用いた場合は上記現象がより顕著である。」「【0014】フィルター部材9は図1に示すように中央部分が両端に比べて片側でA寸法だけ幅広く形成されているために,装着において左右に引張った状態でも従来のように中央部分が狭くなり,開口2全体を防ぐことができないということはない。またフィルター部材として不織布を用いた場合は,図6に示すような現象が顕著であることから本発明のような形状はより効果的である。」図1 図6 (4) 甲5の記載甲5(実願平3-31109号(実開平4-118119号)のCD-ROM)には,次のとおりの記載がある。 「【0012】【実施例】本考案の実施例を図面に従って説明すると,図1,図2は本考案のレンジフード用フィルター装置Aの一実施例を示し,ポリエステル繊維あるいはポリプロピレン繊維を適宜結合剤で3次元の網目構造に結合させた厚さが約0.3mmの不織布1を縦寸法および横寸法が42×27cmの短形体とし,その上端部を折り返すとともに折り返し部の両端を接着もしくは融着によって接合して深さが5cmの袋状端部2aを形成したシート状フィルター2と,上記不織布1と同じ材料で深さが約5cmで開口幅が27cmの浅い袋体3aよりなる係止部材3とから構成してあり,レンジフードの吸気口に配設された金網等からなるフィルター部材4に,前記シート状フィルターの袋状端部2aを被せるとともに,フィルター部材4の他端部にシート状フィルター2の他方の自由端部2bを巻き込み,この巻き込み状態のままで袋体よりなる からなるフィルター部材4に,前記シート状フィルターの袋状端部2aを被せるとともに,フィルター部材4の他端部にシート状フィルター2の他方の自由端部2bを巻き込み,この巻き込み状態のままで袋体よりなる係止部材3を装着してある。」「【0016】この変形例によれば,係止部材3が環状体3bで形成してあるので,シート状フィルター2 の自由端部2bを内側に引っ張ると,シート状フィルターの弛みが防止されて,フィルター部材4に容易に密着させて取り付けることができる。 【0017】図4は,本考案の第2変形例に係るレンジフード用フィルター装置を示し,前記変形例が係止部材3として環状体3bを用いたのに対して,このものは,フィルター部材にマジックテープ(商品名)などの係止爪を植設させたテープ材3c,3c,が貼着してあり,このテープ材3cの係止爪にシート状のフィルター2の自由端部2bを巻き込み状態に係止してある。 【0018】この変形例によれば,テープ材3cの係止爪がシート状フィルターに食い込み状態で係止されるので,該シート状フィルター2が油煙の吸着で重くなっても,シート状フィルターに弛みや垂れ下がりが発生し難いものとなる。」「【0022】また,不織布は繊維の結合によって適度の伸縮性を有しているので,既存の深型レンジフードのフィルター部材のサイズに完全に合致していなくても,若干小さいシート状フィルターを伸ばした状態で取り付けできるものであり,既存のフィルター部材のサイズが多少異なったものに対しても取り付けが容易である。」(5) 甲18の記載甲18(特開平8-60515号公報)には,次のとおりの記載がある。 「【発明の詳細な説明】【0001】【産業上の利用分野】本発明は,メルトブロー不織布およびその製造方法に 甲18の記載甲18(特開平8-60515号公報)には,次のとおりの記載がある。 「【発明の詳細な説明】【0001】【産業上の利用分野】本発明は,メルトブロー不織布およびその製造方法に関する。さらに詳しくは,高強力,細繊度,低目付,良好な均一性等の特徴を有することから,産業資材用途,特に感熱性孔版印刷用原紙の支持体用途に適するメルトブロー不織布およびその製造方法に関する。」「【0020】本発明において,不織布の巻取方向(縦方向)の最大引張強力と巻取方向に垂直な方向(横方向)の最大引張強力の比とは,不織布の巻取方向(縦方向)の最大引張強力を不 織布の巻取方向に垂直な方向(横方向)の最大引張強力で除した値をいう。この強力比が4より大きい場合,横方向の強力が不足し本発明の目的を満たさない。(中略)不織布の巻取方向の最大引張強力と不織布の巻取方向に垂直な方向の最大引張強力の比は0.5~4である必要がある。全方向により均一な強力を示すためには,強力比は0.8から2であることが好ましく,0.9~1.5であることがさらに好ましい。」「【0071】比較例2は縦方向の強力は高いものになったが横方向の強力が低く,縦横の強力比が6.0と本発明の範囲を外れるものであった。繊維の複屈折率は0~0.152の範囲で大きくばらついていた。」(【0085】項の表1には,比較例2の伸度が,縦20パーセント,横153パーセント,強力比6.0と記載されている。)「【0078】実施例5の繊維径分布のCV値は43.7であった。実施例5は非常に細繊度の繊維でありながら従来に無い高い強力を示し,フィルター用途,ワイパー用途等のの産業資材用途に適したものである。」(【0085】項の表1には,実施例5の伸度が,縦14パーセント,横17パーセントと記載されてい ながら従来に無い高い強力を示し,フィルター用途,ワイパー用途等のの産業資材用途に適したものである。」(【0085】項の表1には,実施例5の伸度が,縦14パーセント,横17パーセントと記載されている。)(6) 甲20の記載甲20(特開昭和61-132666)には,次のとおりの記載がある。 「本発明は従来公知のループ付き布帛の有する問題点を解消して立体感があって嵩高であり,ループ状態の繊維が抜けることなく且つ使用中における耐久力の優れたバルキー性不織布とその製造方法を提供することを目的とする。」(2頁左下欄17行目から右下欄1行目)第3表には,「実施例-6」について,タテ方向の引張強力が29.5kg/3cm で破断伸度が9.2%で,ヨコ方向の引張強力が20.3kg/3cm で破断伸度が116%であることの記載がある。 (7) 甲42の記載甲42(特開平7-300752号公報)には,次のとおりの記載がある。 「【要約】【目的】 この出願発明は,タテの伸縮性が制限されている伸縮性不織布により,着用時の伸縮性不織布のタテ方向への伸長をおさえ,安価であって簡単に取り付けることができ,しかも容 易に着用することができる締めつけ材及びそれらの製造方法を提供することを目的とするものである。 【構成】 この出願発明は,タテ方向の伸縮性が抑制されている伸縮性不織布,とくに,ループ状捲縮繊維によりタテ方向の伸縮性が抑制されている伸縮性不織布,その伸縮性不織布からなる締めつけ材及びそれらの製造方法に関する。」「【発明の詳細な説明】【0001】【産業上の利用分野】この出願発明は,伸縮性不織布,衣料用締めつけ材及びそれらの製造方法に関するものである。」「【0004】【課題を解決するための手段】上記課題を解 明】【0001】【産業上の利用分野】この出願発明は,伸縮性不織布,衣料用締めつけ材及びそれらの製造方法に関するものである。」「【0004】【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため,この出願発明は,タテ方向の伸縮性が抑制された,伸縮性および伸長後の弾性回復性が高い不織布(中略)である。(中略)この出願発明の伸縮性不織布は衣料用締めつけ材として好適であり,衣料の袖,裾,襟または帽子,手袋等の締めつけ部分に於いて使用するのがとくに好適である。」(8) 甲43の記載甲43(特開平1-266260号公報)には,次のとおりの記載がある。 「本発明は,かかるポリアミド,ポリエステルを主体とする極細繊維からなる不織布で構成された吸水性布帛である。」(2頁右上欄16行目から18行目)「かかる一軸配向不織布は,たて方向に対するよこ方向の伸度が1.5~8.0倍の範囲にある程度の配向のものが吸水性,布帛強度ならびに風合の3つのバランスがとれていて好ましい。」(2頁右下欄18行目から3頁左上欄1行目)「[発明の効果]本発明の吸水性布帛は,極めて吸水特性に優れた布帛であって,さらに柔軟で,しかも布帛強度の高い性質を有するものであるので,水の吸収を必要とする各種用途,たとえば肌着やスポーツ衣料などの衣料用,ワイピングクロスなどのクリーナー用,モップなどの掃除用,壁材,床材などの建装用,シーツ,マットなどの寝装用,ガーゼ,包帯,オムツ,ナプキンなどの医 療衛生用,カバー類,各種敷物類などに極めて好適な素材である。」(4頁右上欄7行目から16行目) 2 判断上記認定に基づいて,本件訂正発明の相違点に係る構成を容易に想到することができたか否かについて,判断する。 (1) 甲4及び甲5の記載に基づく容易 頁右上欄7行目から16行目) 2 判断上記認定に基づいて,本件訂正発明の相違点に係る構成を容易に想到することができたか否かについて,判断する。 (1) 甲4及び甲5の記載に基づく容易想到性の有無について審決は,甲4及び甲5から,「幅広の不織布として,伸びる(伸縮する)と共に合成樹脂繊維からなるものを使用するとき,伸ばすことによる縮みができる限り抑制されたものをフィルター部材として伸ばして使用する」との事項が示されていると認定,判断する。 しかし,当裁判所は,以下のとおり,甲4及び甲5には,「伸ばすことによる縮みができる限り抑制されたものを」使用することが記載又は示唆されておらず,したがって,甲1発明に甲4及び甲5に記載の技術を適用しても,本件訂正発明の相違点に係る構成に到達することはないと判断するものである。 ア甲4について(ア) 甲4に記載された「換気扇用フィルター部材」は,直交する2つの軸方向ともに伸縮性を有した不織布を用いており,張った状態では,フィルター部材の中央部分は狭くなるから,甲4に基づいて,伸ばした方向と直交する方向の縮みを抑制する技術思想を読み取ることはできない。甲4には「図5に示すような形状のフィルター21では中央部分の幅が両端に比べて片側でA寸法だけ狭くなる。」,「フィルター部材9は図1に示すように中央部分が両端に比べて片側でA寸法だけ幅広く形成されているために,装着において左右に引張った状態でも従来のように中央部分が狭くなり,開口2全体を防ぐことができないということはない。」と記載されている(前記1(3))。同記載からすると,甲4の「換気扇用フィルター部材」は,左右に引っ張った状態でも従来のように中央部分が狭くなり,開口全体を防ぐことができないことが生じないように,予め中央部分 いる(前記1(3))。同記載からすると,甲4の「換気扇用フィルター部材」は,左右に引っ張った状態でも従来のように中央部分が狭くなり,開口全体を防ぐことができないことが生じないように,予め中央部分が両端に比べて片側でA寸法だけ幅広 く形成しておくものであるから,使用する不織布は直交する2つの軸方向ともに伸縮性を有した不織布を用いることを前提としていると理解できる。そうすると,甲4に記載された「換気扇用フィルター」は張った状態では,中央部分が狭くなるフィルター部材であるから,甲4には,縮みを抑制する技術は記載されていないと解される。 (イ) この点,審決では,不織布をフィルター部材として伸ばして使用する際,伸ばすことによる縮みができる限り抑制されるべきであることは,甲4の段落【0014】の記載からしても当然であるとする。しかし,甲4に記載されているのは,上記(ア)のとおり,直交する2つの軸方向ともに伸縮性を有した換気扇用フィルター部材であって,伸ばした方向と直交する方向で縮みが生じることを前提として,予め直交する方向で幅広に不織布を形成する点に特徴があり,甲4には,伸ばした際の縮みを抑制することに関する記載及び示唆はない。 イ甲5について甲5には,その段落【0022】に「若干小さいシート状フィルターを伸ばした状態で取り付けできる」との記載があり(前記1(4)), 当該フィルターは少なくとも一軸方向への伸縮性を有していることが見て取れるが,これを超えて,この軸と直交する方向についての伸縮性についての記載はない。なお,甲5の段落【0018】には,シート状フィルター2が油煙の吸着で重くなっても,シート状フィルターに弛みや垂れ下がりが発生し難いものとなることが記載されている(前記1(4))。 同記載に係る弛みや垂れ下がりは, 【0018】には,シート状フィルター2が油煙の吸着で重くなっても,シート状フィルターに弛みや垂れ下がりが発生し難いものとなることが記載されている(前記1(4))。 同記載に係る弛みや垂れ下がりは,テープ材3cの係止爪がシート状フィルターに食い込み状態で係止されることに関連して生じるものであって,シート状フィルターが油煙の吸着で重くなったために,その自由端部がずれて発生する弛みや垂れ下がりを防止していると解される。よって,弛みや垂れ下がりの防止の効果はシート状フィルターの伸縮性の有無あるいは,伸縮の方向性により得られるものではない。 ウ小括以上によれば,甲4及び甲5には,「伸ばすことによる縮みができる限り抑制され たものを」使用することは,記載又は示唆されているものではないから,甲1発明に甲4及び甲5に記載の技術を適用しても,本件訂正発明の相違点に係る構成に到達することはない。 (2) 甲18等に基づく容易想到性の有無審決は,甲18等から,「幅広の不織布として,伸縮すると共に合成樹脂繊維からなるものを使用するとき,一軸方向の伸縮性が抑制されて,かつ該一軸方向とは直交する方向へ伸縮するものを伸ばして使用する」との事項が示され,甲4及び甲5から認定される事項と併せると,「幅広の不織布として,伸縮する(自由に伸びて縮む)と共に合成樹脂繊維からなるものを使用するとき,一軸方向の伸縮性が抑制されて(一軸方向の伸縮性が僅かで),かつ該一軸方向とは直交する方向へ伸縮するものをフィルター部材として伸ばして使用する」ことは周知であると判断する。しかし,当裁判所は,甲18等には,それぞれに記載の不織布をフィルター部材として用いることは示されておらず,甲4及び甲5によって認定される事項と組み合わせることによって,本件訂正発明の相違点 する。しかし,当裁判所は,甲18等には,それぞれに記載の不織布をフィルター部材として用いることは示されておらず,甲4及び甲5によって認定される事項と組み合わせることによって,本件訂正発明の相違点に係る構成に至ることが容易であるとはいえないと判断する。その理由は次のとおりである。 ア甲18甲18に記載された発明は,「特に感熱性孔版印刷用原紙の支持体用途に適するメルトブロー不織布およびその製造方法に関する」発明であって,フィルター部材として使用することは開示されていない。 なお,甲18の段落【0078】には,実施例5の不織布について,「フィルター用途,ワイパー用途等の産業資材用途に適したものである」と記載がされているが,実施例5の不織布は,伸度が縦14パーセント,横17パーセントであって,一軸方向の伸縮性が抑制されてかつこれと直交する方向へ伸縮するものとはいえない。 また,甲18の比較例2は,伸度が縦20パーセント,横153パーセントで,一軸方向への伸縮性が大きい不織布ではある。しかし,比較例2の強力比は6.0とされており,段落【0020】には,強力比について,「0.5~4である必要があ る」とされていることからすれば,甲18には比較例2の不織布について何らかの用途に用いることは示されていない。 イ甲20甲20に記載された発明は,「ループ付き布帛の有する問題点を解消して立体感があって嵩高であり,ループ状態の繊維が抜けることなく且つ使用中における耐久力の優れたバルキー性不織布とその製造方法を提供することを目的とする」もので,この不織布をフィルター用途に用いることについての言及はない。 ウ甲42甲42に記載された発明は,衣類の締めつけ材及びそれらの製造方法に関する発明であって,この不織布をフィルタ 」もので,この不織布をフィルター用途に用いることについての言及はない。 ウ甲42甲42に記載された発明は,衣類の締めつけ材及びそれらの製造方法に関する発明であって,この不織布をフィルター用途に用いることについての言及はない。 エ甲43甲43に記載された発明は,「不織布で構成された吸水性布帛」に関する発明である。その「[発明の効果]」の項目には,「水の吸収を必要とする各種用途,たとえば肌着やスポーツ衣料などの衣料用,ワイピングクロスなどのクリーナー用,モップなどの掃除用,壁材,床材などの建装用,シーツ,マットなどの寝装用,ガーゼ,包帯,オムツ,ナプキンなどの医療衛生用,カバー類,各種敷物類などに極めて好適な素材である」(前記1(8))との記載があるものの,フィルター部材として使用することについての言及はなく,フィルター部材に吸水性が必要となると認めるべき事情もない。 オ小括以上によれば,甲18等には,フィルター部材として用いることは示されておらず,甲4及び甲5によって認定される事項と組み合わせることによって,本件訂正発明の相違点に係る構成に至ることが容易であるとはいえない。 被告は,その他縷々主張するが,いずれも採用の限りでない。 3 結論上記のとおり,本件訂正発明における甲1発明との相違点に係る構成は,甲1発 明に,甲4,甲5及び甲18等に記載の事項を組み合わせることにより容易に想到することはできないから,これと異なる認定,判断をした審決には,その余の点を判断するまでもなく,誤りがある。よって,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官飯 主文 のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官飯村敏明 裁判官八木貴美子 裁判官小田真治

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