令和7(う)91 公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律違反被告事件

裁判年月日・裁判所
令和7年11月25日 仙台高等裁判所 棄却 仙台地方裁判所 令和4(わ)618
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判決文本文10,650 文字)

令和7年(う)第91号公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律違反被告事件令和7年11月25日仙台高等裁判所第1刑事部判決 主文 本件控訴を棄却する。 当審における訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 第1 事案の概要及び控訴の趣意 1 原判決が認定した罪となるべき事実の要旨は、被告人は、宮城県議会議員として、同県議会における議案提出、発言、質問及び表決等の権限を有していたものであるが、令和3年4月19日及び令和4年1月4日の2回にわたり、A株式会社の代表取締役であったBから、対面又は電話で、宮城県が実施する「令和3年福島県沖地震による災害」に係る中小企業等グループ補助金(なりわい再建支援事業)(以下「本件グループ補助金」という。)の交付に関し、同社が申請する金額で補助金の交付決定が受けられるように同県職員らに働きかけてほしい旨の請託を受け、別表記載のとおり、同月4日から同月12日までの間、3回にわたり、宮城県議会庁舎1階応接室(以下「議会応接室」という。)において、同補助金について、その交付の可否及び交付金額の決定等に関する事務を担当していた同県水産林政部水産業振興課(以下「水産業振興課」という。)の課長Cに対し、①「Bのやつをやらせないために調査をするんじゃなくさ、やるために調査をするような方向に、俺、変えてほしいなと思ってんだ。そんでなければこれは本会議問題にもなるからね、こんな調査の仕方やってたんでは。」「何で止まったのかなっていうのを、僕は本会議でだって聞く権利があるんだから。」「俺も本会議で人を潰すためにやることは、僕は本来は嫌だから。だから、課長も少し考え方、あんたね、今までのこと変えてかねえと、不振 たのかなっていうのを、僕は本会議でだって聞く権利があるんだから。」「俺も本会議で人を潰すためにやることは、僕は本来は嫌だから。だから、課長も少し考え方、あんたね、今までのこと変えてかねえと、不振興課になっちゃうからね。」、②「やっぱりうまくまとめよう。決裂したって何いいことあんの、あと本会議で部長が矢面に立てられて立ち往生なんかし たらどうなんの。」、③「俺、本会議でこいつはやろうと思ってるんだよ、2月定例会で。」等と申し向けて、同県議会議員の権限に基づく影響力を行使して、CをしてA株式会社が申請する金額での補助金の交付を受けられるための職務上の行為をさせるようにあっせんをし、同月13日、Bから、同社社員を介し、その報酬として、被告人がもっぱら管理するD政策研究会(以下「政策研究会」という。)名義の普通預金口座に現金50万円(以下「本件50万円」という。)の送金を受けてその供与を受け、もって自己の同県議会議員としての権限に基づく影響力を行使して、公務員にその職務上の行為をさせるようにあっせんをしたことにつき、その報酬として財産上の利益を収受したというものである。 原判決は、前記事実を認定した上で、公職者あっせん利得罪の成立を認め、被告人を懲役2年に処し、3年間その刑の執行を猶予することとし、金50万円を追徴する旨の判決を言い渡した。 2 本件控訴の趣意は、弁護人今野武博作成の控訴趣意書に記載されたとおりであり、論旨は、⑴公職者あっせん利得罪の成否に関する事実誤認の主張並びに⑵追徴額に関する事実誤認及び法令適用の誤りの主張である。 第2 原判決の判断の要旨等 1 原判決は、まず、本件の争点は、大要、①請託の有無、②権限に基づく影響力を行使したあっせん行為の有無、③本件50万円の性質、すなわち本件50万円が本件あっせん行為の 第2 原判決の判断の要旨等 1 原判決は、まず、本件の争点は、大要、①請託の有無、②権限に基づく影響力を行使したあっせん行為の有無、③本件50万円の性質、すなわち本件50万円が本件あっせん行為の報酬であると認められるか(対価性)、④被告人の故意の有無であるとした。 2 次に、原判決は、争点判断の前提として、本件グループ補助金の申請に関する主な経緯等について詳細に認定しているが、その大枠は、以下のようなものである。 ⑴ 本件グループ補助金において補助の対象となる費用は、令和3年福島県沖地震による災害のため損壊するなどした施設等のうち、事業を行うのに不可欠な施設等の復旧・整備等のための事業に要する経費であって、県知事が補助の対象と認め たものとされており、その申請等に対応する窓口は、水産業振興課であった。 ⑵ 令和3年4月7日、A株式会社の代表取締役であったBは、水産業振興課の職員に、地震で被災したEと称する冷蔵庫を本件グループ補助金で新分野事業での建替えを行いたいなどと述べたが、同職員からは、建替えを行うには市町村で発行する罹災証明において全壊・大規模半壊の判定が必要であるなどと回答された。 ⑶ 後日、被告人が、議会棟において、B同席の下、水産業振興課のCらに対し、新分野事業でのA株式会社の冷蔵庫の新築が可能か尋ねたが、前同様に、全壊・大規模半壊の判定が必要であるなどと回答され、Bは、グループ補助金の説明会の際に、手続の簡略化を検討すべき、罹災証明書の判定は素人が行うもの、建替えの可否は専門家による診断書によって対応すべきなどと述べた。 ⑷ 同月19日、被告人は、Bから専門家の見解書を受け取り、Cらに対し、市町村の職員は建築の専門知識がないのに判定を付けることはおかしい、専門家の診断書を持参したので確認し、問題がなければす た。 ⑷ 同月19日、被告人は、Bから専門家の見解書を受け取り、Cらに対し、市町村の職員は建築の専門知識がないのに判定を付けることはおかしい、専門家の診断書を持参したので確認し、問題がなければすぐにでも申請させる、新分野事業による建替えの場合、原資となる元の建物の取り壊しが必要であるとの県側の回答は間違いであるから、中小企業庁に確認するようになどと述べた。 ⑸ 同月28日、A株式会社は、水産業振興課に対し、補助事業に要する経費16億3401万円、補助金交付申請額12億2550万7500円とする申請書類等を提出した。 ⑹ 被告人は、同月19日以降、Cら県職員に対し、電話や面談を通じて、本件グループ補助金の進捗を確認するとともに、早期の補助金交付を求めることを繰り返していたほか、複数回にわたり、中小企業庁を訪問して本件グループ補助金の補助金交付に向けた働きかけをし、Bに対して、グループ認定が承認されたことに加え、申請が通るように動いている旨を伝えたりした。 ⑺ 同年9月29日及び同年11月26日の2回にわたり、水産業振興課の職員がA株式会社に赴き、現地確認を行ったが、大きな被災状況や申請にあるような被災状況は確認できなかった。 ⑻ 同年12月15日、Bは、現行建築基準法での修繕は認められないとの県の方針に基づき、耐震補強を行わない方法で修繕した場合の見積金額を9億0650万円とする見積書を提出した。同日、被告人は、Cに対して、「こんなに時間かけてんのねえんだぞ。」などと叱責し、年内に結論を出すように指示した。 ⑼ 同月24日、被告人は、電話で、Cに対し、本件グループ補助金の認定方針が決まったかどうかを尋ね、認定した補助金額を回答しないCに不満を述べた上、認定金額を繰り返し尋ね、Cがかなり低い旨を回答すると、Cに対し、査定す 人は、電話で、Cに対し、本件グループ補助金の認定方針が決まったかどうかを尋ね、認定した補助金額を回答しないCに不満を述べた上、認定金額を繰り返し尋ね、Cがかなり低い旨を回答すると、Cに対し、査定する権限があるのか、話にならないなどと述べるなどして、一方的に電話を切った。 ⑽ 同月28日、水産業振興課は、A株式会社に赴き、Bに対して、Eについて補助対象額を8699万5236円とする認定金額を伝えるとともに、令和4年1月5日までに、金額を修正した申請書等を提出するよう依頼した。なお、被告人は、打ち合わせ冒頭の5分程度同席したが途中退席し、認定金額は聞いていない。 ⑾ 令和4年1月4日、被告人は、議会応接室において、Cに対し、別表記載1の発言等をした。 ⑿ 同月5日、被告人は、Bに電話をし、15億の見積りを持って中小企業庁に行ってくる、建築基準法に従った見積りを押す旨を伝えた。 ⒀ 同月6日、A株式会社は、補助事業に要する経費15億3355万5251円、補助金交付申請額12億4542万9937円とする申請書等を提出した。同日、被告人は、中小企業庁に赴き、見積書を提供した上で現行の建築基準法による施工を認めてほしいなどと述べた。 ⒁ 同月7日、被告人は、議会応接室において、Cに対し、別表記載2の発言等をした。同日、水産業振興課は、A株式会社に対し、既に伝えている認定金額に基づき修正した申請書等を同月11日までに提出するように伝えた。 ⒂ 同月11日、被告人は、Bに対し、電話で、「政策研究会よろしくね」などといって政策研究会名義の口座への送金を依頼した。 ⒃ 同月12日、被告人は、議会応接室において、Cに対し、別表記載3の発言 等をした。同日、水産業振興課は、A株式会社に対し、被告人から①事業費の再精査の指示と、②A株式会社におい した。 ⒃ 同月12日、被告人は、議会応接室において、Cに対し、別表記載3の発言 等をした。同日、水産業振興課は、A株式会社に対し、被告人から①事業費の再精査の指示と、②A株式会社において設計業者による被害報告を準備していると伺っており、現在①の再確認をしているところであり、同月14日午後3時までに②を提出するように求める旨のメールを送付した。 ⒄ 同月13日、A株式会社は、補助事業に要する経費15億3355万5251円、補助金交付申請額12億4542万9937円とする申請書等を提出した。 同日、Bは、経理担当社員等に指示するなどして、政策研究会名義の口座に本件50万円を送金した。 3 なお、補足すると、争点判断の前提事実として、令和3年12月28日、Bが、被告人に対して、Eの補助対象額の認定金額等、県から言われた話を伝えたことも原審記録から容易に認められる。 4 原判決は、前記1記載の各争点について、要旨、以下のとおり判断して、被告人に対する公職者あっせん利得罪の成立を認めた。 ⑴ 権限に基づく影響力を行使したあっせん行為の有無について(前記1②)前記2及び3の前提事実、特に、令和4年1月4日、7日及び12日の被告人の発言内容等によれば、被告人が、Cに対し、暗にA株式会社に対し申請どおりに本件グループ補助金の交付を認めるように強い働きかけをしていることが明らかであるから、被告人が、県議会議員の権限に基づく影響力を行使して、あっせん行為をしたということができる。 ⑵ 請託の有無について(前記1①)Bは、捜査段階において、令和3年4月19日及び令和4年1月4日に、本件グループ補助金が申請どおりに交付されるように県に対する働きかけを依頼した旨供述しているが、この供述は、前記2の前提事実の事実経過等に照らし、信用できる。 3年4月19日及び令和4年1月4日に、本件グループ補助金が申請どおりに交付されるように県に対する働きかけを依頼した旨供述しているが、この供述は、前記2の前提事実の事実経過等に照らし、信用できる。 ⑶ 本件50万円の性質(対価性)について(前記1③)本件50万円は、令和4年1月11日に被告人から「政策研究会よろしくね」と言われたことに基づき、同月13日に送金されたものであるところ、これらの日時 は、被告人が現に県に対して働きかけを行っている中又はその直後である。また、同月12日、A株式会社は、県から、被告人の指示により事業費の再精査をしている旨の連絡を受け、翌13日には、既に大幅に減額する旨の査定がされているにもかかわらず、改めて補助事業に要する経費を15億円余りとする申請書を提出しており、被告人による働きかけが一定の進展をもたらしていることも踏まえると、本件50万円は、被告人による一連の働きかけの見返り又は謝礼であったと推認できる。 加えて、Bも、原審公判廷において、被告人が申請どおりに本件グループ補助金の交付決定が出るように県職員に働きかけるなどしてくれたことから、献金とお礼の趣旨で送金したと供述していることも併せ考えれば、本件50万円は、本件グループ補助金が申請どおりに交付されるように働きかけたことに対する見返り又は謝礼であったと認められる。 ⑷ 被告人の故意の有無について(前記1④)被告人は、政策研究会の会費が、規約どおりに定期的に支払われているといった状況もない中で、前記のとおり、Bから請託を受けて県職員に対して本件グループ補助金が申請どおり交付されるように強い働きかけをし、それに近接した日時に支払を求めて、それを受け取っていることからすれば、少なくとも被告人が本件50万円について働きかけの見返り又は謝礼を含 ループ補助金が申請どおり交付されるように強い働きかけをし、それに近接した日時に支払を求めて、それを受け取っていることからすれば、少なくとも被告人が本件50万円について働きかけの見返り又は謝礼を含む趣旨であることは当然に認識していたと推認できる。 第3 公職者あっせん利得罪の成否に関する事実誤認の論旨について 1 論旨の概要論旨は、①本件50万円をあっせん行為の報酬であると認定し、②被告人に報酬であるとの認識(故意)があると認定した原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があるというのである。 なお、所論によるも争点判断の前提となる事実(前記第2の2及び3)、請託の有無(同4⑵)及び権限に基づく影響力を行使したあっせん行為の有無(同4⑴)に 係る原判決の認定に対する論難はない。 2 本件50万円の性質(対価性)に関する事実誤認の論旨について論旨は、原判決は、被告人からの政策研究会名義の口座への入金依頼を契機とし、あっせん行為の時期と入金の時期が近接していること及びお礼の趣旨で入金した旨のBの供述という事実のみをもって、本件50万円を報酬であると認定しているが、本件50万円があっせん行為に対する報酬であることについては、種々の点から合理的な疑いを差し挟むことができ、これを報酬と認定したことには判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるというのである。そこで、以下、所論に即して具体的に検討する。 ⑴ 所論は、原判決が被告人による働きかけが一定の進展をもたらしていることを対価性を推認した根拠の1つとしているとした上で、令和4年1月12日における県からA株式会社に対する事業費の再精査の連絡(前記第2の2⒃)は、あくまでも県が主張する修繕を前提とした再精査であって、A株式会社の求めていた建替えを前提としたも 上で、令和4年1月12日における県からA株式会社に対する事業費の再精査の連絡(前記第2の2⒃)は、あくまでも県が主張する修繕を前提とした再精査であって、A株式会社の求めていた建替えを前提としたものではないから、「被告人による働きかけが一定の進展をもたらした」という事実は存在せず、Bがそのように誤信していたこともなかった旨主張する。 そこで検討すると、A株式会社の代表取締役であるBは、かねてより被告人に対して、本件グループ補助金の交付に関し、A株式会社が申請する金額で補助金の交付決定が受けられるよう宮城県職員に働きかけてほしい旨請託をしていたものであるが、令和3年12月15日に見積金額を9億0650万円とする見積書を提出したにもかかわらず、同月28日に補助対象額を約8700万円とする認定金額を伝えられるとともに、令和4年1月5日までに金額を修正した申請書等を提出するよう依頼されたことから、被告人に対して、県の認定金額等を伝えた上、同月4日に改めて前同様の請託をしたところ、同月5日、被告人から、15億の見積りを持って中小企業庁に行ってくるなどと伝えられ、同月6日、県の認定金額を無視した金額、すなわち、補助事業に要する経費15億円余り、補助金交付申請額12億円余 りとする申請書等を提出し、同月12日、水産業振興課から、A株式会社に対し、被告人から①事業費の再精査の指示と、②A株式会社において設計業者による被害報告を準備していると伺っており、現在①の再確認をしているところであること、同月14日午後3時までに②を提出するように求めるメールの送付を受けたものである。これらの事実経過のみからしても、本件グループ補助金の申請期限や認定金額の変更可能性等に関して、被告人による働きかけが一定の進展をもたらしていることは明らかである。Bにおいて 付を受けたものである。これらの事実経過のみからしても、本件グループ補助金の申請期限や認定金額の変更可能性等に関して、被告人による働きかけが一定の進展をもたらしていることは明らかである。Bにおいても、これらの事実の経過について認識していることは、Bが、同月13日に補助事業に要する経費を15億円余りとする申請書を改めて提出したことからも明らかである。 被告人による働きかけが一定の進展をもたらしているとした原判決に誤りはなく、所論は採用できない。 ⑵ 次に、所論は、①A株式会社等についてグループ認定がされたという成果があった令和3年7月21日に近接した時期には政策研究会名義の口座への入金がされていない、②Bは、本件50万円の入金の以前にも、政策研究会名義の口座に50万円を入金したことが複数回あるし、平成29年以降の政策研究会名義の口座への入金額をみても、本件50万円という入金額が突出して高額であるわけでもない、③Bは、被告人に対して政治献金をする動機があった上、現に過去に政治献金をしている、④A株式会社の従業員を介した振込入金という方法は、違法な金銭のやり取りを前提とした方法とはいえないとして、本件50万円の入金の時期、態様、動機等をみても、対価性を推認することはできない旨主張する。 しかしながら、まず、所論の①についてみると、Bは、グループ認定されたといっても、本件グループ補助金の申請が思うように進展していないから、令和3年7月には送金しなかった旨合理的な説明をしているところである。 所論の②③に関連して、原判決は、Bは、政策研究会について、規約どおりに定期的に会費を支払っていたわけではなく、被告人も、政策研究会の実態はなく、働きかけに対する謝礼をしたいという者に対して、政策研究会の会費として入金して もらったと供述している 規約どおりに定期的に会費を支払っていたわけではなく、被告人も、政策研究会の実態はなく、働きかけに対する謝礼をしたいという者に対して、政策研究会の会費として入金して もらったと供述していることからすると、そもそもBがこれまで政策研究会に支払ってきた各金員について、純然たる政治献金とはいい難いとしているが、この原判断に誤りはない。また、過去の入金状況に照らして本件50万円の送金が特異な態様のものとはいえないことからすると、所論が②から④までにおいて指摘する事情によっても、本件50万円が働きかけの見返り又は謝礼であることは否定されない。 ⑶ 所論は、Bの供述によれば、本件50万円の入金は、政治献金が主たる目的であり、また、「お礼」についても経費の精算の観点を含むものであって、令和4年1月6日に被告人が中小企業庁を訪れるため東京に出張したことが契機とされていることを踏まえると、5万円程度を出張のための実費とする考え方も想定されるのであるから、本件50万円についてあっせん行為との対価性を認めることはできない旨主張する。 そこで検討すると、原判決は、本件50万円は政治献金である旨の原審弁護人の主張に対して、過去の送金についても純然たる政治献金とはいい難いとして、本件50万円は、本件グループ補助金が申請どおりに交付されるように働きかけたことに対する見返り又は謝礼であったとの認定は左右されないと判断している。所論によるも、本件50万円が純然たる政治献金であるとはされておらず、原判決の前記判断が誤りであるとはいえない。次に、原判決は、Bは、働きかけの対価という趣旨で「お礼」と述べていると認められるとしているが、この原判断に誤りはない。 所論は、Bの供述を踏まえて、「お礼」には経費の精算という観点が含まれていると主張するものであるが、Bは、政策 対価という趣旨で「お礼」と述べていると認められるとしているが、この原判断に誤りはない。 所論は、Bの供述を踏まえて、「お礼」には経費の精算という観点が含まれていると主張するものであるが、Bは、政策研究会に送金するか否かは気分次第であり、本件50万円の金額も気分で決めた旨も供述しているところである。また、被告人も、「中小企業庁に行って費用が掛かっているから、政策研究会よろしくね」というようなことは言っていない、政策研究会の会費の金額は送金する側の判断に任せている旨供述しているところである。B及び被告人の各供述内容を踏まえると、本件50万円は本件グループ補助金が申請どおりに交付されるように働きかけたことに対する見返り又は謝礼であったとの原判決の認定が不合理であるなどということはで きない。 ⑷ その他、被告人の強い働きかけというあっせん行為の態様は、本件50万円の対価性を肯定するための事実関係ではないなどと所論が種々主張するところを踏まえてみても、本件50万円について、本件グループ補助金が申請どおりに交付されるように被告人が働きかけたことに対する見返り又は謝礼であったと認めた原判決に不合理なところはない。 3 被告人の故意に関する事実誤認の論旨について論旨は、本件50万円について働きかけの見返り又は謝礼を含む趣旨であることの認識はなかった旨の被告人の供述は信用できるものであり、被告人において、公職者あっせん利得罪の故意がないにもかかわらず、故意を認定した原判決には、判決に影響を及ぼす事実誤認があるというのである。 そこで検討すると、被告人は、かねてより、A株式会社代表取締役のBから、本件グループ補助金の交付に関し、A株式会社が申請する金額で補助金の交付が受けられるように宮城県職員に働きかけてほしい旨の請託を受けていたもので 、被告人は、かねてより、A株式会社代表取締役のBから、本件グループ補助金の交付に関し、A株式会社が申請する金額で補助金の交付が受けられるように宮城県職員に働きかけてほしい旨の請託を受けていたものであり、県職員に対して、本件グループ補助金の進捗を確認するとともに、早期の補助金交付を求めることを繰り返していたものであるが、県からA株式会社について申請どおりの被災状況が認められないことなどを繰り返し説明され、令和3年12月28日には、A株式会社の申請額を大幅に下回る県側の認定金額が伝えられるとともに、令和4年1月4日、Bから改めて前同様の請託を受け、同日、同月7日及び同月12日にA株式会社の申請どおりに本件グループ補助金の交付を認めるように強い働きかけをし、そのような状況下において、同月11日、「政策研究会よろしくね」と言ってBに現金送付を要求し、同月13日、被告人の要求に従ったBから政策研究会名義の口座に本件50万円の送金を受けたものであるところ、被告人において、これらの経過についての認識に欠けるところはない。 被告人において、本件50万円について、前記のような強い働きかけとは無関係に純然たる政治献金として送金されたものと誤信するような事情は見当たらず、B から請託を受けて県職員に対して本件グループ補助金が申請どおり交付されるよう強い働きかけをし、その近接した日時に現金の支払を求めてそれを受け取った被告人において、本件50万円が働きかけの見返り又は謝礼を含む趣旨であると認識していたと認め、被告人に公職者あっせん利得罪の故意が認められるとした原判決に誤りはない。 4 結論公職者あっせん利得罪の成否に関する事実誤認の論旨は理由がない。 (なお、原判決における「塩竃港」との記載は、「塩釜港」の誤記と認められ、その余の「塩竃」と した原判決に誤りはない。 4 結論公職者あっせん利得罪の成否に関する事実誤認の論旨は理由がない。 (なお、原判決における「塩竃港」との記載は、「塩釜港」の誤記と認められ、その余の「塩竃」との記載は、「塩竈」の誤記と認められる。)第4 追徴額に関する事実誤認及び法令適用の誤りの論旨について 1 論旨論旨は、本件50万円の一部は、被告人の東京への出張の経費の精算分であるから、その全額を本件公職者あっせん利得罪により収受した財産上の利益と認定して、その価額を追徴した原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認及び法令適用の誤りがあるというのである。 2 当裁判所の判断そこで検討すると、原審記録を調査しても、見返り又は謝礼と経費とが明確に分別されているとみることのできる証拠は見当たらず、本件50万円の全部が見返り又は謝礼という性質を不可分的に帯びるものといえる。本件50万円全体が本件公職者あっせん利得罪で収受した財産上の利益であると認めた原判決に誤りはない。 追徴額に関する事実誤認及び法令適用の誤りの論旨は、理由がない。 第5 結語よって、刑事訴訟法396条により本件控訴を棄却し、当審における訴訟費用を被告人に負担させることについて同法181条1項本文を適用して、主文のとおり判決する。 令和7年11月25日 仙台高等裁判所第1刑事部 裁判長裁判官加藤亮 裁判官柴田雅司 裁判官井草健太 裁判官井草健太

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