平成14(行ウ)9 行政処分取消請求

裁判年月日・裁判所
平成14年4月19日 名古屋地方裁判所
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判決文本文6,490 文字)

主文 1 本件訴えのうち,原告が被告に対し3万7800円及びこれに対する平成13年1月25日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める部分を却下する。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 平成12年7月28日に納付された自動車重量税について,原告が被告に対して平成13年1月25日付けでした還付の請求に対し,被告が平成13年2月22日付けで還付請求は理由がないとした通知処分を取り消す。 2 被告は原告に対し,3万7800円及びこれに対する平成13年1月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,自動車重量税を納付したと主張する原告が,当該自動車重量税に係る自動車が平成12年9月11日のいわゆる東海豪雨によって被害を受けたため,当該自動車の抹消登録をした上,被告に対し納付済みの自動車重量税の還付請求をしたところ,被告が還付請求は理由がないとの通知処分(以下「本件処分」という。)をしたので,その取消しを求めるとともに,上記自動車重量税相当額の支払を求めた事案である。 1 争いのない事実等・自動車の抹消登録自動車登録番号「習志野53ぬ1655」の小型乗用自動車(以下「本件自動車」という。)に係る自動車検査証の有効期間は,平成12年8月4日から平成14年8月3日までとされていたところ,本件自動車は,平成12年10月23日付けをもって抹消登録された。 ・自動車重量税の還付請求原告は,被告に対し,平成13年1月25日付け書面をもって,本件自動車は平成12年9月11日の東海豪雨により被災して自動車検査証の有効期間が1か月経過して間もなく使用不能となったが,このような場合,納付済みの自動車重量税を還 年1月25日付け書面をもって,本件自動車は平成12年9月11日の東海豪雨により被災して自動車検査証の有効期間が1か月経過して間もなく使用不能となったが,このような場合,納付済みの自動車重量税を還付すべきであるとして,本件自動車について同年7月28日に納付した自動車重量税の還付請求をした(甲1)。 ・本件自動車の登録上の所有者,使用者本件自動車の自動車検査証の「所有者の氏名又は名称」,「所有者の住所」,「使用者の氏名又は名称」及び「使用者の住所」の各欄には,次のような各記載がある(乙1)。 所有者の氏名又は名称  A所有者の住所千葉県柏市a-b使用者の氏名又は名称  ***使用者の住所 ***なお,上記の「***」の記号表示は,使用者の氏名又は名称,住所が所有者の氏名又は名称,住所とそれぞれ同一であることを示している(昭和62年12月15日運輸省告示第639号)。 ・本件処分被告は,原告に対し,平成13年2月22日付けで前記・の還付請求は理由がないとの本件処分を行った(乙4)。 ・異議申立て及び審査請求原告は,被告に対し,平成13年4月16日付けで,本件処分に対する異議申立てをした(甲2)ところ,被告は,同年6月11日付けで同異議申立てを棄却する旨の決定をした(乙2)。 さらに,原告は,国税不服審判所長に対し,平成13年7月12日付けで,審査請求をした(甲3)ところ,国税不服審判所長は,同年12月10日付けで同審査請求を却下するとの裁決をした(乙3)。 2 本件の争点及び当事者の主張・還付請求に係る訴えの被告適格(本案前の主張)(被告の主張)原告の被告に対する納付済み自動車重量税の還付請求に係る訴えは,不当利得返還請求あるいは国家賠償 の争点及び当事者の主張・還付請求に係る訴えの被告適格(本案前の主張)(被告の主張)原告の被告に対する納付済み自動車重量税の還付請求に係る訴えは,不当利得返還請求あるいは国家賠償法1条に基づく損害賠償請求であると解されるところ,同訴えについて被告適格を有するのは,実体法上の権利義務の帰属主体である国であって,被告ではない。 よって,上記訴えは被告を誤った不適法な訴えである。 (原告の主張)争う。 ・本件処分の適法性(被告の主張)ア自動車重量税は,道路その他社会資本の充実の要請を考慮し,自動車に対してその重量に応じ自動車重量税を課税するとしたものであり,このような自動車重量税の創設の趣旨は,自動車の増加に伴って道路整備や交通渋滞に対する問題が生じ,自動車の利用者に負担を求めることによって交通政策上の施策のための財源を生み出すため受益者負担あるいは原因者負担という考え方を導入したことにある。 そして,自動車重量税は,自動車が検査を受け,又は届出を行うことによって,走行可能となるという法的地位あるいは利益を受ける権利を取得することに着目して課税される一種の権利創設税であり,その後に生じた事情により自動車検査証(以下「検査証」という。)を返還したとしても,当該権利を取得した事実がなくなるわけではないから,同税を納付した原因が消滅するものではない。この点において,他の自動車に対する課税と異なっている。 自動車重量税法上も,適正に納付した自動車重量税の還付が認められるのは,当該権利を取得していない場合に限られている(16条1項1号)。また,自動車重量税法16条の例外を定めた災害被害者に対する租税の減免,徴収猶予等に関する法律(以下「災免法」という。)8条は,検査証の交付等を受けたものの ない場合に限られている(16条1項1号)。また,自動車重量税法16条の例外を定めた災害被害者に対する租税の減免,徴収猶予等に関する法律(以下「災免法」という。)8条は,検査証の交付等を受けたものの,現実に走行の用に供されておらず,いまだ自動車の販売業者又は自動車分解整備事業者のもとにとどまっている状態で,災害により使用が廃止された場合に限定して自動車重量税の還付を認めているところ,この場合は,使用者が,走行可能となるという法的地位あるいは利益を受ける権利を取得するに至っていないことから,自動車重量税の還付が受けられる旨を定めたものと解される。 本件自動車は,検査証の交付を受けた後に東海豪雨により被災したものであり,上記各法令が定める自動車重量税を還付する場合に該当しないことはもとより,そもそも,自動車重量税の法的性質が,当該自動車が道路運送車両法による検査を受け,走行可能となるという法的地位あるいは利益を受ける権利を取得することに着目して課税される一種の権利創設税であることにかんがみれば,本件自動車の所有者又は使用者は,有効期間において道路を走行することができる法的地位を取得したのであるから,有効期間が満了する以前にその責によらない自然災害等により用途廃止したとしても,当該権利を取得した事実がなくなることはないから,本件自動車について納付した自動車重量税の還付を求めることはできない。 イまた,自動車重量税の還付を受け得る者は,「自動車検査証の交付等又は車両番号の指定を受ける者」(自動車重量税法16条1項)であり,災免法により,自動車重量税の還付を受け得る者は,「当該被災自動車に係る自動車重量税の納税義務者」(同法8条1項)とされている。ここで,「自動車重量税の納税義務者」とは,自動車重量税法4条に規定する「自動車検査証の交付等を受 の還付を受け得る者は,「当該被災自動車に係る自動車重量税の納税義務者」(同法8条1項)とされている。ここで,「自動車重量税の納税義務者」とは,自動車重量税法4条に規定する「自動車検査証の交付等を受ける者及び車両番号の指定を受ける者」(1項)ないし当該自動車の所有者(2項)であり,「自動車検査証の交付等を受ける者及び車両番号の指定を受ける者」とは,当該車両の使用者(道路運送車両法59条,60条)である。そうすると,本件自動車についての使用者及び所有者はAであって,原告ではないから,原告には還付を受ける法令上の根拠がない。 ウよって,本件処分はいずれの観点からも適法である。 (原告の主張)ア自動車重量税は,自動車検査証の有効期間に合わせて税額が決定されるものであり,本件自動車について,平成12年7月28日に納付した自動車重量税は当該有効期間に対応する税の前払である。したがって,有効期間(終期平成14年8月3日)がわずか1か月経過した後に本件自動車が用途廃止されるに至った場合,自動車検査証の有効期間中の自動車重量税の支払義務は消滅したのであり,本件自動車について納付済みの自動車重量税は還付されるべきであって,これを返還しないことは社会正義に反し,憲法に規定する国民の財産権を不当に侵害するものである。したがって,還付の規定を欠く自動車重量税法は憲法に違反する。 イ原告は,Aと親子の関係にあり,同人が海外勤務のため,同人から本件自動車の管理を任され,当該自動車重量税も負担したのであって,納税義務者の一翼を担っている。また,自動車重量税法は納税義務者でなければ還付請求ができないとは規定していない。したがって,原告も自動車重量税の還付を受け得る者に当たる。 第3 当裁判所の判断 1 還付請求に係る訴えについて原告の納付済み自動車重量税の還付 でなければ還付請求ができないとは規定していない。したがって,原告も自動車重量税の還付を受け得る者に当たる。 第3 当裁判所の判断 1 還付請求に係る訴えについて原告の納付済み自動車重量税の還付請求に係る訴えは,相手方に対して実体法上の給付義務の履行を求めるものであるから,同訴えについて被告適格を有する者は,当該実体法上の権利義務の主体となり得る者,すなわち国であり,一定の行政処分の主体となり得るにすぎない被告でないことは明らかである。 したがって,同訴えは不適法といわざるを得ない。 2 本件処分の適法性について・自動車重量税は,道路を始めとする交通関係の社会資本を整備充実する目的で,昭和46年に導入されたものであり,同税の基礎には,自動車がその走行により道路の建設,改良,維持を始めとして,交通渋滞,交通安全,交通事故等に関連して社会に多くのコストをもたらしていることから,交通政策上,道路整備等に要する費用の負担を自動車の所有者又は使用者に求めるのが相当であるとの受益者負担あるいは原因者負担の考え方があり,そのような観点から,自動車の使用者等に対し,その自動車の重量に応じて課税することとしたものである。 ところで,自動車重量税法は,「検査自動車及び届出軽自動車には,この法律により,自動車重量税を課する。」(3条)と規定しているところ,上記検査自動車とは,道路運送車両法所定の規定による検査証の交付等を受ける自動車をいうとされ(2条1項2号),検査証の交付を受ける者等は,その検査証の交付等を受ける時までに,当該検査自動車につき課されるべき自動車重量税の額に相当する金額の自動車重量税印紙を政令で定める書類にはり付けて,当該検査証の交付等を行う国土交通大臣若しくはその権限の委任を受けた地方運輸局長若しくは地方運輸局陸運支局長又は軽自 自動車重量税の額に相当する金額の自動車重量税印紙を政令で定める書類にはり付けて,当該検査証の交付等を行う国土交通大臣若しくはその権限の委任を受けた地方運輸局長若しくは地方運輸局陸運支局長又は軽自動車検査協会に提出することにより,自動車重量税を納付しなければならないとされている(4条1項,8条,なお,届出軽自動車については同法9条)。 以上のような自動車重量税が創設された趣旨や同税の納税手続に係る規定に照らすと,自動車重量税は,自動車が検査を受け,又は届出を行うことによって,走行可能となるという法的地位あるいは利益を受ける権利を取得することに着目して課税される一種の権利創設税であると解するのが相当であり,この点は自動車重量税法の立法時の審議経過(乙5)からも裏付けられる。 ・そうすると,自動車の使用者が検査証の交付等を受けて当該自動車が走行可能になるという法的地位あるいは利益を受ける権利をいったん取得した以上,その後に生じた事情により検査証を返還したとしても,当該法的地位あるいは権利を取得した事実自体が消滅することはあり得ないから,納付した自動車重量税の還付を認める根拠はないといわざるを得ない。自動車重量税法が,「重量税を納付した後自動車検査証の交付等又は車両番号の指定を受けることをやめたとき」(16条1項1号)にのみ自動車重量税の還付するとしたのは,まさにこの趣旨によるものと考えられる。もっとも,災免法8条は,自動車の販売業者又は自動車分解整備事業者が自動車の使用者のために検査証の交付等又は車両番号の指定を受ける目的で保管している自動車のうち,当該保管をしている間に自動車重量税が納付され検査証の交付等又は車両番号の指定を受けたもので災害による被害を受けたことにより当該検査証の交付等又は車両番号の指定を受けた後,走行の用に供され のうち,当該保管をしている間に自動車重量税が納付され検査証の交付等又は車両番号の指定を受けたもので災害による被害を受けたことにより当該検査証の交付等又は車両番号の指定を受けた後,走行の用に供されることなく使用の廃止がされたもの(政令の定めるところにより使用の廃止がされたことが明らかにされる自動車に限る。以下「被災自動車」という。)については,政令の定めるところにより,当該被災自動車につき当該検査証の交付等又は車両番号の指定を受ける際に納付された自動車重量税の額に相当する金額を,当該被災自動車に係る自動車重量税納税義務者に還付すると定め,例外的に検査証の交付後であっても還付を認めているが,この場合は,上記のとおり,当該被災自動車は現実に走行の用に供されておらず,いまだ自動車の販売業者又は自動車分解整備事業者のもとにとどまっているため,使用者が,走行可能となるという法的地位あるいは利益を受ける権利を現実には取得するに至っていないと考えられることから,自動車重量税の還付が受けられることを特に定めたものと解される。したがって,災免法8条は,自動車重量税の上記性格と矛盾するものとはいえない。 ・本件自動車の場合,検査証の交付を受けた後に東海豪雨によって被災し,有効期間が経過しないうちに抹消登録されたというのであるから,前記の自動車重量税の還付を求められる場合に当たらないことは明らかである。 また,ある税の性格をどのように定めるかは,基本的には立法府の合理的な裁量に委ねられるところ,前記のような自動車重量税の趣旨及び税額等に照らせば,自動車重量税法が,検査証の交付を受けた後に自然災害によって当該自動車が被災し,抹消登録がされた場合に,当該自動車について自動車重量税の還付をする旨の規定を設けていないとしても,そのことから直ちに財産権について 法が,検査証の交付を受けた後に自然災害によって当該自動車が被災し,抹消登録がされた場合に,当該自動車について自動車重量税の還付をする旨の規定を設けていないとしても,そのことから直ちに財産権について規定した憲法29条に反するとまではいえないから,本件自動車について原告の自動車重量税の還付請求には理由がないとした本件処分は適法というべきである。 3 以上の次第で,原告が自動車重量税の還付を受けるべき適格があるか否かについて検討するまでもなく,原告の自動車重量税の還付請求に係る訴えは不適法であるから却下し,原告のその余の請求は理由がないから棄却し,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部裁判長裁判官加藤幸雄裁判官舟橋恭子裁判官富岡貴美

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