令和4(行コ)34 保護変更決定処分取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和7年3月13日 福岡高等裁判所 佐賀地方裁判所 平成26(行ウ)3
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判決文本文39,458 文字)

主文 1 本件各控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨(以下の略語は、別紙略語表のとおりである。) 1 原判決を取り消す。 2 別紙処分一覧表の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁が「処分日」欄記載の各年月日付けで「控訴人・処分の名宛人」欄記載の各控訴人に対してした各保護変更決定処分(本件各保護変更決定)を取り消す。 第2 事案の概要 1 事案の要旨(1) 保護の基準の改定、保護変更決定処分等(基本的前提事実・争いがない。)厚生労働大臣は、平成25年告示等により、それぞれ「生活保護法による保護の基準」(昭和38年厚生省告示第158号〔保護基準〕)を改定した(本件保護基準改定)。 控訴人らは、平成25年7月以前から、佐賀県内で生活保護を受け、本件各保護変更決定(上記第1の2)を受けた。これにより、一部を除き、生活扶助が平成25年7月の額よりも減額された。 (2) 請求控訴人らは、本件保護基準改定は憲法25条、生活保護法(法)3条、8 条等に違反する、などとして、対応する被控訴人らを相手に、本件各保護変更決定の取消しを求める。 2 原判決及び各控訴原審は、控訴人らの請求をいずれも棄却した。控訴人らは、これを不服として各控訴をした。 3 関係法令の定め等、前提事実、主たる争点及び主たる争点に関する控訴人 ら・被控訴人らの各主張の要旨次のとおり補正し、後記4のとおり当審における当事者の補充主張を付加するほかは、原判決の「第2 事案の概要等」の2及び3、「第3 主たる争点」、「第4 主たる争 ら・被控訴人らの各主張の要旨次のとおり補正し、後記4のとおり当審における当事者の補充主張を付加するほかは、原判決の「第2 事案の概要等」の2及び3、「第3 主たる争点」、「第4 主たる争点に関する原告らの主張の要旨」並びに「第5主たる争点に関する被告らの主張の要旨」の記載を引用する。 (1) 原判決4頁10行目冒頭から同13行目末尾までを次のとおり改める。 「 控訴人Aを除いた控訴人らは、佐賀市に居住し、控訴人Aは、佐賀県西松浦郡a町に居住している。級地は、佐賀市は2級地-1、同a町は3級地-2である。(乙A1)」(2) 原判決7頁2行目冒頭から8頁2行目末尾までを次のとおり改める。 「(4) 本件保護基準改定に基づく本件各保護変更決定ア控訴人らは、本件各保護変更決定を受けた。 控訴人らのうち、平成25年から平成27年までの保護変更決定すべてを争う5名について、第1類費及び第2類費(冬季加算を除く。)の合計額は、別紙処分一覧表の「処分後の生活扶助1類+2 類」欄のとおりである。処分日等が空欄になっている行の額は、平成25年7月分の第1類費及び第2類費の合計額である。一部、平成26年3月の処分後の額が平成25年7月分より高いのは、消費税率の引き上げに伴い、平成25年改定における額をいずれも2. 9%引き上げたことによる。 イ控訴人らは、本件各保護変更決定を不服として、佐賀県知事に対し、それぞれ、別紙処分一覧表の「審査請求日」欄の各年月日に、審査請求を行ったが、同表の「裁決日」欄の各年月日に、これらを棄却する旨の裁決がされ、控訴人らは、その頃、その旨通知された。 控訴人らは、同表の訴え提起日欄の各年月日に、対応する処分の取 消しを求める訴えを たが、同表の「裁決日」欄の各年月日に、これらを棄却する旨の裁決がされ、控訴人らは、その頃、その旨通知された。 控訴人らは、同表の訴え提起日欄の各年月日に、対応する処分の取 消しを求める訴えを提起し又は取消請求を追加した(原審)。」 (3) 原判決27頁12行目冒頭から同13行目の「適否については、」までを次のとおり改める。 「 このような本件保護基準改定の内容、性質等に鑑みると、本件保護基準改定の適法性の判断枠組みについては、判断過程審査の手法を用いるべきでなく、厚生労働大臣の広範な裁量権がより一層尊重されるべきで ある。仮に、上記手法が採用されるとしても、」(4) 原判決27頁26行目末尾に改行して、次のとおり加える。 「 以下の(原判決第5の1)(2)から(6)までの主張は、多くは、判断過程審査を用いない場合にも適合する。上記主張のうち判断過程審査の手法にふれた部分は、同手法が採用された場合の予備的主張である。」 (5) 原判決33頁17行目冒頭から34頁2行目末尾までを以下のとおり改める。 「 そして、平成20年以降の経済動向を見ると、前記のとおり、一般国民の消費水準が下落し、平成16年全消調査と平成21年全消調査とで第1・十分位の生活扶助支出相当額を比べると、前者が14万8781 円、後者がその約11.6%減の13万1500円であった。しかし、当時の経済情勢から消費が過度に抑えられている可能性も考えられ、上記数値をそのまま基準の改定に用いると減額幅が過大となることも考えられた。他方、デフレ傾向、すなわち物価等の下落傾向にもかかわらず基準が据え置かれたことによって、基準額が実質的に引き上げられたと いう評価も可能な状況にあった。 物価を とも考えられた。他方、デフレ傾向、すなわち物価等の下落傾向にもかかわらず基準が据え置かれたことによって、基準額が実質的に引き上げられたと いう評価も可能な状況にあった。 物価を指標として水準の改定を行うことは、専門機関の検証結果(専門委員会の平成15年中間とりまとめ)でも指摘され、保護基準の各種加算においては、物価の伸び率を基礎とした改定が行われてきた。 厚生労働大臣は、以上のことを踏まえ、物価の変動を生活扶助基準に 反映させることとした。 この点につき、国及び被控訴人らは、従前、物価の下落と生活扶助の水準の維持による「可処分所得の相対的、実質的な増加」を調整した、という説明をした。しかし、それは、そのような見方も可能であることからそのように説明したのに過ぎず、可処分所得の実質的増加分に合わせて生活扶助の基準額を減額したのではない。後記生活扶助相当CPI の変動率が「受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加」の程度や最低生活の需要の減少の程度を正確に反映したものであるか否かは、本件改定における厚生労働大臣の判断過程としては、そもそも問題となり得ない。」(6) 原判決34頁3行目から4行目にかけての「相対的、実質的な可処分所 得の増加(基準の実質的な引上げ)による」及び同頁14行目から15行目にかけての「可処分所得の相対的、実質的な増加(基準の実質的な引上げ)による」をいずれも削る。 (7) 原判決35頁2行目から3行目にかけて及び同頁10行目から11行目にかけての各「生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加の 程度」をいずれも「生活保護世帯が購入する財やサービス等の物価水準が変動した程度」に改める。 (8) 原判決36頁最終行 かけての各「生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加の 程度」をいずれも「生活保護世帯が購入する財やサービス等の物価水準が変動した程度」に改める。 (8) 原判決36頁最終行から同37頁1行目にかけての「可処分所得が相対的、実質的に増加したことによる」及び原判決37頁9行目から10行目の「可処分所得が相対的、実質的に増加したこと(基準の実質的な引上げ) による」をいずれも削る。 4 当審における当事者の補充主張(1) 控訴人らの補充主張別紙1のとおり。 (2) 被控訴人らの補充主張 別紙2のとおり。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、原判決と同様、控訴人らの本件各保護変更決定の取消請求はいずれも理由がないと判断する。その理由については、次のとおり補正し、後記2のとおり当審における当事者の補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決の「第6 当裁判所の判断」の記載を引用する。 (1) 原判決50頁7行目の「減少が」を「現象が」に改める。 (2) 原判決65頁13行目の「-5.2%となるなど、」を「-5.2%、60歳以上の単身世帯では4.5%、ともに60歳以上の高齢夫婦世帯では1.7%となり、」に改める。 (3) 原判決67頁4行目末尾に改行して次のとおり加える。 「(エ) 平成25年検証の終盤近くにおける各方面からの指摘a 社会保障制度改革推進法(平成24年法律第64号)この法律は、平成24年8月に成立した。その附則は、政府が生活扶助の給付水準の適正化等を早急に行うことを要請する。 b 財政について聴く会 平成24年10月22日に開催された「財政につ 年8月に成立した。その附則は、政府が生活扶助の給付水準の適正化等を早急に行うことを要請する。 b 財政について聴く会 平成24年10月22日に開催された「財政について聴く会」(財務省財政制度等審議会財政制度分科会)は、厚生労働省に対し、以下のとおり指摘し、生活扶助につき国民の理解が得られる水準とするよう求めた。 (a) 平成19年検証は、生活扶助費の基準額が一般の低所得者の消 費実態よりも高いと評価した。それをルールどおり反映すべきである。 (b) そもそも生活保護を受ける世帯が全世帯の34分の1にすぎないことなどから、第1・十分位世帯を比較対象とすることが適当かについても検討が必要である。 (c) 平成13年度を100とした場合の生活扶助基準と民間最終消 費支出は、平成22年度には、それぞれ98.9と95.1であり、生活扶助基準は、割高である。そもそも、支出は、支出者が決定するもので、それを基準とすることには、納税者の理解が得難い。年金給付水準の改定率、賃金水準、物価水準を参考とすることも一案である。 c 内閣府行政刷新会議による「新仕分け」これは、平成24年11月17日に行われた。下方硬直性のある制度は見直すべき、年金同様に物価スライド制など客観的な基準の見直しメカニズムがあって良い、水準は引き下げ、下位10%とする(対比検討の対象を第1・十分位とする)のは妥当でない(国民 の1割が生活保護を受けられることになる。)、などの意見が提出された。(乙A125、126)」(4) 原判決68頁4行目冒頭から17行目末尾までを次のとおり改める。 「 民間最終消費支出の伸びの実績は、平成20年 ことになる。)、などの意見が提出された。(乙A125、126)」(4) 原判決68頁4行目冒頭から17行目末尾までを次のとおり改める。 「 民間最終消費支出の伸びの実績は、平成20年から平成24年にかけて、順に、-1.8%、-2.3%、0.0%、0.9%、0.6%で、 上記の約5年の間でみても、伸びているとはいえなかった。そして、平成21年の全消調査では、平成16年の全消調査に比べ、夫婦子1人世帯を含む2人以上世帯の消費支出が、約6.0%下落していた(平成16年報告書がいう全消調査による検証を行えば生活扶助の水準が平成19年検証以上に低下させられかねない状況であった、と推認できる。)。 厚生労働大臣は、そのような消費の状況下で、平成19年検証の結果及び平成20年以降の経済動向を基準に反映させることができなかった結果、生活扶助基準の水準と一般低所得世帯の消費水準との均衡が大きく崩れた状況にあり、水準を改めざるを得ないと判断した。平成24年8月には社会保障制度改革推進法が成立し、同年10月22日の「財政 について聴く会」及び同年11月17日の「新仕分け」において、水準 改定、物価の考慮が提案され、下方硬直性への批判もあった。厚生労働大臣は、デフレ傾向にもかかわらず生活保護基準の水準が据え置かれたことにより、生活保護基準が実質的に上昇したと評価し、生活保護世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加したとも評価した。 厚生労働大臣は、以下のとおり、生活扶助相当支出がされる品目に関 する平成20年から平成23年までの物価変動率を、-4.78%と算定し、生活扶助基準額につき、その数値分を減額する改定を行った。 (甲A7、127、乙A16、109、125、126)」(5) する平成20年から平成23年までの物価変動率を、-4.78%と算定し、生活扶助基準額につき、その数値分を減額する改定を行った。 (甲A7、127、乙A16、109、125、126)」(5) 原判決71頁16行目末尾に改行して、次のとおり加える。 「(7) 平成29年検証(甲A171、189、290、乙A87) ア概要基準部会は、本件保護基準改定後の平成29年、平成26年全消調査におけるデータを用いて、生活扶助基準について評価・検討し(平成29年検証)、平成29年12月、報告書を取りまとめた。 平成29年検証では、本件保護基準改定を含むこれまでの保護基準 の見直しによる影響を把握した上で、生活扶助基準に関する検証等が行われた。 イ保護基準の見直しによる影響に関する検討平成29年検証では、本件保護基準改定を含むこれまでの保護基準の見直しによる影響については、生活保護受給世帯と一般世帯に おける平成24年度から平成26年度にかけての各支出費目の比較を行った。その結果、支出割合は生活保護受給世帯と一般世帯との間で異なるものの、経年の支出割合の推移では大きな差が見られず、生活扶助基準の見直しによる家計への影響を評価するまでには至らなかった。 ウ水準に関する検討 本件保護基準改定後の生活扶助基準の「水準」(高さ)に関する検証では、夫婦子1人世帯の生活扶助基準額と一般低所得世帯(第1・十分位)の消費水準(生活扶助相当支出額)が概ね均衡することが確認された。 エ展開に関する検討 生活扶助基準の展開部分については、年齢階級別、世帯人員別、級地別にみた一般低所得世帯間における消費 支出額)が概ね均衡することが確認された。 エ展開に関する検討 生活扶助基準の展開部分については、年齢階級別、世帯人員別、級地別にみた一般低所得世帯間における消費支出の格差を示す指数と、生活扶助基準の「展開のための指数」との間にかい離する部分があることが確認された。 年齢階級別(第1類費)の基準額の検証では、全年齢平均の生活 扶助相当支出額を1とした場合の各年齢階級別の指数は、65~74歳は、当時の生活扶助基準が1.00、消費の実態が0.98、75歳以降は、当時の生活扶助基準が0.92、消費の実態が0. 89、などというものであった。 生活扶助基準の水準と展開部分の各検証結果を総合的に勘案し、 その結果を機械的に反映する場合の生活扶助基準額への影響をみると、その一部は次のとおりであった。 (ア) 世帯人員別の指数を実データで算出する場合a 高齢単身世帯(65歳) 1級地の1、-8.3%。2級地の1、-4.9%。3級地の2、-3.8%。 b 高齢夫婦世帯(共に65歳) 1級地の1、-0.8%。2級地の1、2.7%。3級地の2、7.3%。 c 若年単身世帯(50歳代) 1級地の1、-6.1%。2級地の1、-2.7%。3級地の2、1.9%。 (イ) 世帯人員別の指数を回帰分析で算出する場合 a 高齢単身世帯(65歳) 1級地の1、-6.8%。2級地 の1、-1.7%。3級地の2、3.2%。 b 高齢夫婦世帯(共に65歳) 1級地の1、-11.1%。 2級地の1、-6.5%。3級地の2、-2.3%。 c 若年単身世帯(50歳代) 7%。3級地の2、3.2%。 b 高齢夫婦世帯(共に65歳) 1級地の1、-11.1%。 2級地の1、-6.5%。3級地の2、-2.3%。 c 若年単身世帯(50歳代) 1級地の1、-4.7%。2級地の1、0.4%。3級地の2、5.2%。 オ展開に関する留意事項の指摘平成29年検証の結果に対する留意事項の中で、展開後の基準額が及ぼす影響について、次の旨が指摘されている。 平成29年検証では、世帯人員別の指数の算出方法について複数の方法を示したが、理論的にみていずれかの方法のみに絞り込めな かったことに鑑みると、従前からの検証方法やその結果を踏まえつつ、個々の世帯の生活に急激な変更を生じさせない視点からみた配慮が重要である。 カ生活保護基準の検討に関する委員の指摘複数の委員から、従前の、第1・十分位や第3・五分位との比較 については、全国消費実態調査に現れた各種データの特性に基づく限界や、高齢化等の社会の変化等を指摘し、新たな検証手法を考える必要などが指摘された。 (8) 平成29年検証より後の経過ア平成30年の改定 生活保護基準は、平成29年検証を受け、平成30年から令和2年まで、段階的に改定された。標準世帯の平均基準値(おおむね2級地-1に相当)は、据え置かれたが、年齢、世帯人員、居住地域(級地)の消費実態を反映した見直しがされた。 改定に先立ち、第196回国会衆議院予算委員会の平成30年1 月29日の議事において、平成29年検証の前提となる平成26年 の全消調査は、同年の消費税率引き上げに影響されて消費が落ち込んだ時期のもので、 会衆議院予算委員会の平成30年1 月29日の議事において、平成29年検証の前提となる平成26年 の全消調査は、同年の消費税率引き上げに影響されて消費が落ち込んだ時期のもので、それを分析して保護基準を引き下げることは相当でないという趣旨の質問があった。H厚生労働大臣(当時)は、これに対し、要旨、次の答弁をした。 (ア) 生活扶助基準の検証にあたって比較対象としている、年収階 級の下位の10%に当たる一般低所得者世帯、夫婦子1人の世帯については、生活扶助で賄う範囲の消費支出は、平成21年には約13万1500円であったが、平成26年には、約13万6600円であり、約5100円増加している。 (イ) 検証結果では、一般低所得者世帯の消費水準と生活扶助基準 とはおおむね均衡しており、今回の見直しは、生活扶助基準全体を引き下げるのではない。平成25年の改定と同様に、消費の実情との乖離、ゆがみを是正した結果、生活扶助基準額が上がる世帯、下がる世帯が生じた。(甲A282、295、乙A110、111) イ消費税率改定の反映消費税率が8%から原則10%に改定されたことを受け、生活扶助も、令和元年10月には、一般世帯における生活扶助相当支出に占める軽減税率の対象品目の支出割合を加味して、1.4%増額された。 なお、消費税の導入に伴う保護基準の改定は、平成26年3月や令和元年10月に限らず、消費税の導入及び税率改定の都度、行われてきた。(甲A295、乙A10、111)ウ令和4年の検証と令和5年以後の改定基準部会は、令和4年12月、消費実態の検証結果を取りまとめ た。生活保護基準は、その反映を基本とし 95、乙A10、111)ウ令和4年の検証と令和5年以後の改定基準部会は、令和4年12月、消費実態の検証結果を取りまとめ た。生活保護基準は、その反映を基本としつつ、足下の物価上昇の 影響等、社会経済情勢を総合的に勘案して、令和5年10月に見直された。令和6年度までの臨時的・特例的な措置として、一人当たり月額1000円を検証結果に加算するとともに、加算を行ってもなお、従前の基準額から減額となる世帯については、従前の基準額を保障することとされた。68歳の単身者世帯における生活扶助は、 2級地-1の場合、(Ⅵ区の冬季加算月額)×5/12を加えると、月額7万3090円となった。(乙A111、127)(9) 生活保護受給者数、生活保護費負担金の額、予算ア生活保護の受給者数等生活保護の受給者数は、昭和26年度には200万人を超えたが、 その後、日本の人口増加にもかかわらず、おおむね減少した。昭和54年から昭和58年の第二次石油危機の時期には、日本経済の状態が悪く、受給者数の増加傾向が続いて、昭和59年度(格差縮小方式から水準均衡方式に変更)には150万人に迫ったものの、いわゆるバブル景気の時期を中心に大きく減少し、平成7年には88 万2000人程度で史上最少となった。以後一貫して増加し、平成11年度には100万人を、平成23年度には200万人を、それぞれ超え、平成26年度には216万5000人を超えた。以後、若干減少し、令和3年度には、200万人強である。高齢者の比率も、増加した。 生活保護の受給世帯数は、昭和26年ころには、必ずしも多くはなかったが、平成後半には受給者数と同様に増加した。単身世帯、特に高齢者 万人強である。高齢者の比率も、増加した。 生活保護の受給世帯数は、昭和26年ころには、必ずしも多くはなかったが、平成後半には受給者数と同様に増加した。単身世帯、特に高齢者の単身世帯が増加した。(甲A41~43、55、71〔5頁〕、乙A125、127)イ生活保護費負担金 生活保護費負担金については、平成元年度以後、国の分担が4分 の3、地方の分担が4分の1である。これに関しては、平成15年、三位一体改革として国の地方に対する補助金削減の動きがあり、厚生労働省が所管する補助金が多かったことから、国の負担を3分の2に切り下げる構想があった。しかし、当時の社会保障審議会福祉部会でも反対意見が相次いだ。最終的には、内閣官房長官、総務大 臣、財務大臣、厚生労働大臣の4大臣並びに自民党及び公明党の各政調会長が協議し、国の負担切り下げは、されなかった。(甲A245、乙A43)生活保護費負担金(事業費ベース)(国は、その4分の3を負担する。)は、平成12年には、総額で2兆円弱、うち6400億円 程度が生活扶助費であったが、平成22年には、総額で3兆3000億円を超え、うち1兆1000億円強が生活扶助費となり、平成25年には、3兆6000億円を超え、うち約33.8%、1兆2000億円強が、生活扶助費であった。なお、生活保護費負担金の中で最も大きな割合を占めるのは、一貫して、医療扶助費である。 (乙A125、127)ウ国の予算全体国の一般歳出は、平成23年度の予算では、約54兆円であり、うち、厚生労働省が所管する社会保障関係のものは、約27兆円であった。平成21年度予算の一般歳出は、52兆円弱であり、平成 国の一般歳出は、平成23年度の予算では、約54兆円であり、うち、厚生労働省が所管する社会保障関係のものは、約27兆円であった。平成21年度予算の一般歳出は、52兆円弱であり、平成 23年度には、これより増えた。(甲A26、乙A85)平成23年2月10日に開催された第21回社会保障審議会では、経済学を専攻する大学の研究者の委員から、国と地方の債務、公債残高の対GDP比につき、欧米主要国やアメリカ合衆国は70~90%、当時財政危機のギリシャでも約120%であるのに、日本で は180%であって非常に危険水域である、という意見があった。 (甲A26)なお、上記の予算や日本の国債に関する各数値につき、平成24年度から平成27年度の間に大きく変わったとの証拠はない。 (10) 生活保護基準をめぐるさまざまな考え方ア基準の基本的な在り方 生活扶助基準検討会(第1回)(平成19年10月19日)においては、委員から、健康で文化的な最低限度の生活水準というのは絶対的な線ではない、それより1円でも下回ると憲法違反になるとか、1円でも上回ってはいけないというものではないと考える、裁判所も上記のように考えていると理解している、との意見が述べら れた。この会合では、事務局となる厚生労働省から、1990年代半ば以降の非常にデフレが続いた時期に消費水準が下がったという時期に、保護基準の方を下げなかったことはある、水準均衡方式からは理論的には出てこないが、かなり下方硬直性があると理解している、との発言があった。(甲A75、78) 生活扶助基準検討会(第4回)(平成19年11月20日)においては、委員から、相対的に決まると が、かなり下方硬直性があると理解している、との発言があった。(甲A75、78) 生活扶助基準検討会(第4回)(平成19年11月20日)においては、委員から、相対的に決まるとしても、賃金や消費水準が低下した場合には貧困を絶対化してとらえる算定方式を合わせて検討する必要があるのではないか、との意見が述べられた。同検討会においては、全体を通じ、右肩上がりではない経済状況における基準 の在り方についてさまざまな意見が出た。事務局となる厚生労働省側からは、絶対的水準としてマーケットバスケット方式を採用する国では保護費が低いという紹介がされた。(甲A78)なお、平成29年12月12日の第36回基準部会においても、複数の委員が、格差拡大、貧困、デフレ、高齢化の影響を受け、水 準均衡方式による扶助の基準の低下を懸念した。絶対確保すべき水 準を考えよとの意見があった。(甲A257)ただし、貧困を深く研究し、消費水準等の低下が生活保護の水準の低下に無制限に結びつくことを懸念する専門家からも、本件改定特にデフレ調整は不相当であるが、財政への配慮を全くおろそかにせよとはいわない、との意見がある。(甲A189) 第12回基準部会(平成25年1月16日)(平成25年検証)においては、貧困の連鎖の防止という見地を強調し、検討結果をそのまま生活保護基準に反映すると、多人数世帯、すなわち子がいることが多い世帯で、マイナスとなってしまい、それは、非常に懸念すべきことである、との意見が述べられた。(甲A81の1) また、平成25年検証の過程では、複数の委員が、生活保護の水準が他の多数の制度に影響することに懸念を示し、第13回基準部会(同年1月 、との意見が述べられた。(甲A81の1) また、平成25年検証の過程では、複数の委員が、生活保護の水準が他の多数の制度に影響することに懸念を示し、第13回基準部会(同年1月18日)には、ある委員が、万が一、例えば政府の、厚労省内の検討の結果、基準が下がれば、子供への貧困連鎖や最低賃金への影響など、大きく懸念する、と述べ、厚生労働省側から、 懸念を所管部局に伝えるとの回答がされた。(甲A82、189)イ考慮すべき指標、経済状況等の考慮経済状況の考慮に関し、専門委員会には、市長会を母体とする委員もいた。その委員からは、平成15年11月25日の第5回の会合において、経済が上昇局面のときと下降局面のときとの違いは意 識して、生活保護の財源が税であることを基盤において議論すべきであるとの意見が述べられた。また、同委員から、同年12月2日の第6回の会合において、海外視察の経験から、生活保護が社会秩序の維持に貢献していると感じた、としながらも、賃金や物価水準が下落又は生活保護の水準ほどには伸びない状況は考慮すべきだ、 不満が出たときの説得が難しい、との意見が述べられた。他方、別 の委員は、同じ日の会合において、消費ではなく物価を参酌することは、生活保護において保障すべき最低生活水準が一般国民の生活水準との関連において捉える相対的なものとする考え方と整合しないという意見を述べた。(甲A71~73)生活保護の水準に関する物価の考慮につき、第12回基準部会 (平成25年1月16日)において、事務局となる厚生労働省から、消費者物価指数や賃金の動向を考慮する可能性が述べられ、委員からは、基準部会では物価については何ら議論していないし、物価は地域、 (平成25年1月16日)において、事務局となる厚生労働省から、消費者物価指数や賃金の動向を考慮する可能性が述べられ、委員からは、基準部会では物価については何ら議論していないし、物価は地域、世帯類型、所得階級により異なる可能性があるから、全国一律の物価指数を当てはめることについては非常に慎重に考えなくて はいけない、との意見が述べられた。委員を経験した学者からは、一般的には、年金などと同じく、物価や賃金動向を考慮した保護基準の改定も考え得るが、水準均衡方式の考え方とは整合しない、との意見もある。最低生活に必要な財・サービスを特定した新しいマーケット・バスケット方式であれば、物価が大きい意味を有する、 しかし、何をバスケットに入れるかを決めるのが困難である、という趣旨の意見もある。(甲A81の1、甲A176、189)なお、生活保護の水準に関する物価の考慮の関係で、実質的な購買力の維持、実質的な可処分所得の維持、という説明について、物価動向の範囲内で改定することを言い換えたものに過ぎず、生活保 護受給世帯における消費構造を前提として実質的な可処分所得を維持することが必然的に求められるものではない、という意見もある。 (乙A118)ウ消費水準との比較生活扶助基準検討会(第5回)(平成19年11月30日)にお いては、昭和58年頃を含めた従前の議論を踏まえ、第3・五分位 は一応平均値と考えられ、3人世帯では、第1・十分位は第3・五分位の7割に達しているから比較の対象として適切であるが、単身世帯では、第1・十分位が第3・五分位の5割程度であり、本当に比較の対象として適切であるか、もう少し配慮が必要との意見があった。平成29年12月8日に開かれた第35 較の対象として適切であるが、単身世帯では、第1・十分位が第3・五分位の5割程度であり、本当に比較の対象として適切であるか、もう少し配慮が必要との意見があった。平成29年12月8日に開かれた第35回基準部会において も、平成29年検証に関し、複数の委員から、単身世帯における第1・十分位が第3・五分位の5割程度ということについての強い懸念が表明された。そもそも、第3・五分位にも所得がかなり低い世帯が入っているとの指摘もあった。(甲A79、256、278の2) 平成25年検証の過程では、全消調査に現れた世帯のデータを使う場合、生活保護受給世帯と考えられる世帯を除く必要があるかどうかについては、理由付けも含めて、平成24年5月8日の第9回基準部会において、委員の間で意見が分かれた。(乙117・5、6頁) エ科学的検証の非完全性消費に関する統計の活用に限らず、科学的検証といっても、完全なものはない。このことは、さまざまな委員会で多くの委員が共有している。特に、単身世帯については、全消調査においても標本数が少なく、その消費実態を所得、年齢、居住地等で区分けして検討 しようとすると、正確な把握検討は、簡単ではない。また、生活扶助基準につき検討した各委員会において、1類費、2類費という分類等につき、昭和20年代のマーケット・バスケット方式以来のもので、さまざまな問題点があるとされたが、令和4年の検証においてそれが達成されたという証拠はなく、従前の体系を抜本的に改め る新たな基準が開発されるには至っていない。(甲A77、81の 1、甲A176、乙A127)」(6) 原判決71頁19行目冒頭から73頁17行目末尾までを次のとおり改める。 「 基準が開発されるには至っていない。(甲A77、81の 1、甲A176、乙A127)」(6) 原判決71頁19行目冒頭から73頁17行目末尾までを次のとおり改める。 「ア憲法25条1項憲法25条1項は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生 活を営む権利を有する。」と規定する。この規定は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない。上記規定中の「健康で文化的な最低限度の生活」というものは、きわめて抽象的・相対的な概念であっ て、その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、上記規定を現実の立法として具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそ れに基づいた政策的判断を必要とする。したがって、憲法25条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられている。個々の国民に対しては、同条の趣旨を実現するために制定された生活保護法が具体的な権利を賦与している(朝日訴訟最高裁判決、堀木訴訟最高裁判決参照。)。 イ法3条及び8条(ア) 法の規定と文理解釈生活保護法(法)3条によれば、法により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならず、法8条2項によれば、保護基準は、要保護者(法に よる保護を必要とする者)の年齢別、性別 法により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならず、法8条2項によれば、保護基準は、要保護者(法に よる保護を必要とする者)の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域 別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えないものでなければならない。 もっとも、法3条には、「健康で文化的な生活水準」の具体的内容について、上記以上の文言はない。法8条2項には、「要保護者 の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮」という文言があるが、その考慮の具体的方法、例えば法8条1項にいう「厚生労働大臣の定める基準」を改定する際に基準とすべき統計等やその考慮の仕方など、を定めた文言はない。このような文理からは、厚生労働大臣の裁量の範囲は内容面で も手続面でも広いと解すべきことになる。 (イ) 最低限度の生活という概念の性質上記各規定にいう最低限度の生活は、上記のように、抽象的・相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件等との相関関係において判断決定されるべきもので あり、これを保護基準において具体化するに当たっては、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策判断を必要とする(堀木訴訟最高裁判決、老齢加算訴訟最高裁判決参照)。 現に、これまで認めた事実(補正後の原判決第6の1(7)及び(10))によれば、基準部会等の様々な委員会において、各分野の専門家か ら、「最低限度の生活」について様々な意見があり、完全な科学的検証はなく、現行の水準均衡方式や全消調査に基づく5年ごとの検証に によれば、基準部会等の様々な委員会において、各分野の専門家か ら、「最低限度の生活」について様々な意見があり、完全な科学的検証はなく、現行の水準均衡方式や全消調査に基づく5年ごとの検証に対する問題提起はあるものの、それに代わる判断の手法は、開発されていない。しかし、これまでの委員会で、様々な専門家や制度の担い手から、それぞれの学識経験を生かした様々な角度からの 意見が述べられ、平成25年改定後も平成29年検証や令和4年の 検証が行われ、定期的な検証により適切な方針を継続的に検討できる仕組みができていると評価することができる。 したがって、生活扶助基準の改定の必要があるか否か及び改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否かを判断するに当たっては、厚生労働大臣に 上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの広い裁量権が認められるというべきである。 また、生活扶助基準の減額改定がされた場合には、生活扶助費が現行の水準で支給されることを前提として生活を営んでいた被保護者にとっては、改定前の生活扶助基準によって具体化されていた期 待的利益の喪失を招く側面があるばかりでなく、その生活に多大な影響が生ずることになるから、厚生労働大臣は、生活扶助基準の改定の必要を踏まえつつ、その改定による被保護者のこのような期待的利益や生活への影響についても可及的に配慮するため、その改定の具体的な方法等を定めるに当たり、激変緩和措置を講ずることの 要否などを含め、上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているというべきである。 ウ本件の事実関係において裁量権の逸脱又は濫用となり得る場合生活扶助基準の改定 などを含め、上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているというべきである。 ウ本件の事実関係において裁量権の逸脱又は濫用となり得る場合生活扶助基準の改定の前提となる最低限度の生活の需要に関する評価及び同改定に伴う被保護者の生活への可及的な配慮は、上記のよう な専門技術的な考察に基づいた政策的判断であるものの、これまで認めた事実によれば、生活扶助基準の展開部分の不均衡の有無やその程度などは、各種の統計や専門家の作成した資料等に基づいて検討されたといえる。これらの経緯等に鑑みると、生活扶助基準の減額を内容とする保護基準の改定は、①当該改定を行う必要があり、当該改定後 の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持するのに足り るものであるとした厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に関する判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、あるいは、②生活扶助基準の減額に際し激変緩和等の措置を採るか否かについての方針及びこれを採る場合において現に選択した措置が相当で あるとした厚生労働大臣の判断に、被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に、法3条、8条2項に違反し、違法となるというべきである。 そして、生活扶助基準の減額の要否等の前提となる最低限度の生活 の需要に関する評価が、上記のような専門技術的な考察に基づいた政策的判断であることや、その評価については、各種の統計や専門家の作成した資料等に基づいて検討された経緯等に鑑みると、厚生労働大臣の上記①の裁量判断の適否に関する裁判所の審理においては、その判断の過程 的判断であることや、その評価については、各種の統計や専門家の作成した資料等に基づいて検討された経緯等に鑑みると、厚生労働大臣の上記①の裁量判断の適否に関する裁判所の審理においては、その判断の過程及び手続に過誤、欠落があるか否か等の観点から、統計等 の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等について審査されるべきであり、また、同大臣の上記②の裁量判断の適否に関する裁判所の審理においては、本件保護基準改定による激変緩和措置等の内容に鑑み、同改定に基づく生活扶助額の減額が被保護者の生活に看過し難い影響を及ぼすか否か等の観点から、同改定の被 保護者の生活への影響の程度やそれが上記の激変緩和措置等によって緩和される程度等について審査されるべきである(老齢加算訴訟最高裁判決参照)。 もっとも、上記各裁量判断の適否に関する裁判所の審理は、厚生労働大臣に上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権があ ることを前提とするから、判断の過程及び手続において過誤や欠落が あれば、程度の如何を問わず直ちに裁量権の範囲の逸脱又はその濫用がある、と判断するのは、相当でない。上記過誤や欠落が重大なものであって、そのために現実の生活条件を無視して著しく低い保護基準を設定した等の場合に、同大臣の判断が、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があって違法となる、と解するのが相当である。」 (7) 原判決75頁5行目冒頭から22行目末尾までを次のとおり改める。 「ア緒言厚生労働大臣は、認定事実(6)イのとおり、デフレ調整をした。」(8) 原判決76頁17行目の「及び平成25年検証」を「、平成25年検証、平成29年検証及び令和4年の検証」に改める。 (9 臣は、認定事実(6)イのとおり、デフレ調整をした。」(8) 原判決76頁17行目の「及び平成25年検証」を「、平成25年検証、平成29年検証及び令和4年の検証」に改める。 (9) 原判決79頁25行目の「一般国民との」を「一般低所得世帯の生活実態との」に改める。 (10) 原判決93頁1行目冒頭から同9行目末尾までを次のとおり改める。 「 しかし、証拠(甲A63、乙A36)によれば、「平成22年家庭の生活実態及び生活意識に関する調査結果概要」のうち「耐久財の保有 状況について」をみると、そのほとんどの項目につき、第1・十分位の普及率は、第3・五分位の普及率に及ばないものの、それに近似した値であることが認められる。これに照らすと、必需的な耐久消費財について、第1・十分位に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べて概ね遜色なく充足されているということができる。したがって、理 由③について、事実誤認があるとは認められない。」(11) 原判決98頁8行目の「サンプル世帯」を「世帯構成等」に改める。 (12) 原判決101頁26行目の「甲Bア2、」から102頁2行目の「同ス2」までを「甲Bイ2、同エ2、同キ2、同ス2」に改める。 (13) 原判決102頁3行目、同5行目、同6行目から7行目にかけて、同 8行目、同9行目、同11行目、同12行目から13行目にかけて及び同 16行目の「本件保護変更処分」をいずれも「本件各保護変更決定」に改める。 2 当審における当事者の補充主張に対する判断(1) 本件保護基準改定の適法性の判断枠組みについてア裁量の広狭及び財政事情等の考慮の可否 (ア) 控訴人らの主張及び沿う証拠 者の補充主張に対する判断(1) 本件保護基準改定の適法性の判断枠組みについてア裁量の広狭及び財政事情等の考慮の可否 (ア) 控訴人らの主張及び沿う証拠控訴人らは、生活保護についての厚生労働大臣の裁量権が認められているとしても、法が委任したのは「要保護者」の「需要」を測定するための基準を定める権限に限られ(需要充足原則)、保護基準の引下げにおける厚生労働大臣の裁量権の行使は、極めて慎重に行われる べきであり、生活扶助基準の改定において、厚生労働大臣は、法8条2項、9条の法定考慮事項の考慮義務があり、国の財政事情等を考慮事項とすることは許されない、などと主張する。 そして、証拠(甲A222、223)によれば、控訴人らの主張に沿う学説が存在することが認められる。 (イ) 検討引用した補正後の原判決第6の2(1)のとおり、法3条及び8条の文理からは、広い裁量権があるといえるほか、本件で認定した事実を考慮しても、法8条2項の「最低限度の生活」は、一義的に決められない性質のものである。そして、生活保護が予算措置を伴う以上、財政 事情を考慮せざるを得ないし、財源となる税収等は、国民の経済活動の水準に影響されざるを得ず、納税者の理解は、必須である。法の大臣への委任が要保護者の需要を測定するための基準を定める権限に限られるともいえない(もっとも、保護基準は、上記需要を測定する基準である。)。保護基準の引下げにつき、生存権に配慮して慎重であ るべきとはいえるが、それ以上に裁量権の範囲が狭まるともいえない。 (ウ) 小括以上によれば、生活扶助基準の改定に関する厚生労働大臣の裁量権を限定的に解することはできず、控 えるが、それ以上に裁量権の範囲が狭まるともいえない。 (ウ) 小括以上によれば、生活扶助基準の改定に関する厚生労働大臣の裁量権を限定的に解することはできず、控訴人らの上記主張は、採用することができない。 イ判断過程審査の当否及び程度 (ア) 双方の主張被控訴人らは、本件保護基準改定と老齢加算の廃止との違いを指摘し、判断過程審査の手法を用いることは適切でないなどと主張する。 他方、控訴人らは、本件保護基準改定のうち、デフレ調整については基準部会での検討を経ておらず、ゆがみ調整については基準部会の 了承なく2分の1処理をしており、専門機関による審議検討を経ていない、保護基準の引下げの必要性・許容性について、厳格な判断過程審査をすべきである、などと主張する。 (イ) 検討a 老齢加算廃止との違い 確かに、本件保護基準改定は、給付項目全体を全部廃止するものではないなど、老齢加算の廃止と異なる部分がある。しかし、本件保護基準改定も老齢加算等の廃止も、いずれも多くの世帯で生活保護給付を減額する結果となる点では共通する。老齢加算訴訟最高裁判決は、判断過程審査の対象となる厚生労働大臣の判断の内容とし て、「高齢者に係る当該改定後の生活扶助基準の内容が高齢者の健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであるとした」ことも挙げ、70歳以上の単身者の生活扶助額(老齢加算を除く。)の平均が、第1・五分位にある70歳以上の単身無職者の生活扶助相当消費支出額を上回る、などの知見が示されていた事実に基づき、 判断過程を審査した。本件保護基準改定においても、厚生労働大臣 は、改定後においても各世帯が 単身無職者の生活扶助相当消費支出額を上回る、などの知見が示されていた事実に基づき、 判断過程を審査した。本件保護基準改定においても、厚生労働大臣 は、改定後においても各世帯が健康で文化的な生活水準を維持するに足りると判断したと推認される。そうであれば、本件保護基準改定と老齢加算廃止との共通点は大きいと評価するのが相当であり、本件保護基準改定においても、改定の必要性及び内容(改定後においても各世帯が健康で文化的な生活水準を維持するに足りるかどう かも含む。)並びに手続の選択に関する厚生労働大臣の判断に関し、その過程及び手続における過誤、欠落の有無等につき裁判所の審査を及ぼすのが相当である。被控訴人らの上記主張は、採用できない。 b 専門家不関与と判断過程審査の深度引用した原判決第6の2(2)イのとおり、保護基準改定について専 門機関に諮ること等が不可欠であるとはいえない。現在の基準部会における5年ごとの検証は、水準が消費実態に整合するかの検証であり、保護基準の改定そのものへの意見を求めているのではない。 これまで認めた事実によれば、専門家のさまざまな意見が有益であったといえるが、保護基準の改定にもさまざまなものがあるから、 あらかじめ一般的に専門家の関与がないから判断過程審査の程度が細かくなるなどと決めることは、相当でない。 本件の事実関係に即した判断は、下記(2)ウ(イ)のとおりである。 (2) デフレ調整についてア平成19年検証の評価 (ア) 控訴人らの主張平成19年検証によって生活扶助基準の水準が一般低所得世帯の消費実態と比較して高いという結果が得られていたとはいえない。 (イ) 検 評価 (ア) 控訴人らの主張平成19年検証によって生活扶助基準の水準が一般低所得世帯の消費実態と比較して高いという結果が得られていたとはいえない。 (イ) 検討引用した原判決第6の1(4)ウのとおり、平成19年報告書では、第 1・十分位の消費水準は、平均的な世帯の消費水準に照らして相当程 度に達しており、第1・十分位に属する世帯における必需的な耐久消費財の普及状況は、平均的な世帯と比べて大きな差はなく、また、必需的な消費品目の購入頻度は、平均的な世帯と比較しても概ね遜色ない状況にあることから、生活扶助基準額を第1・十分位の消費水準と比較することを変更する理由は特段ないと考える、との意見が付され ている。これらに照らすと、平成19年検証において、第1・十分位の消費水準と比較した考察がされたことは相当であったといえ、これによると、生活扶助基準の水準が一般低所得世帯の消費実態よりはやや高い結果が得られていたと評価するのが相当である。 イ可処分所得の増加に関する検討 (ア) 控訴人らの主張生活保護受給世帯の可処分所得が平成23年に平成20年と比べて4. 78%も上昇していないことは、これまでの主張立証から、明らかである。平成20年以降のデフレ状況に関しても、食料等については平成19年よりも価格が上昇しており、平成23年の時点で可処分所得が実質 的に増加していたとはいえない。 (イ) 検討a 認定事実証拠(乙A11)によれば、次の事実が認められる。 (a) 消費者物価指数上昇率(全国、前年比)の「総合」をみると、 平成11年以降下降基調(平成11年から平成24年までに同上 証拠(乙A11)によれば、次の事実が認められる。 (a) 消費者物価指数上昇率(全国、前年比)の「総合」をみると、 平成11年以降下降基調(平成11年から平成24年までに同上昇率がプラスであったのは、平成18年の0.3%と平成20年の1.4%のみであった。)を示す中で、平成19年から平成20年にかけて1.4%上昇した後、同年から平成23年まで-1. 4%、-0.7%、-0.3%と毎年下落を続けた。 (b) 上記上昇率の「光熱・水道」をみると、平成19年は0. 8%、平成20年は6.0%、平成21年は-4.2%、平成22年は-0.2%、平成23年は3.3%であった。 (c) 全国勤労者世帯家計収支の可処分所得(実質)の増減率(前年比)の推移をみると、平成10年以降概ね減少基調(平成16年の1.3%、平成19年の0.1%、平成22年の1.3%、 平成24年の1.1%以外はいずれもマイナスであった。)となっており、平成20年は-1.5%、平成21年及び平成23年はいずれも-1.9%であった。 (d) 全国勤労者世帯家計収支の消費支出(実質)の増減率(前年比)の推移をみると、平成10年以降概ね減少基調(平成16年 の1.6%、平成19年の0.9%、平成22年の0.6%、平成24年の1.6%以外はいずれもマイナスであった。)となっており、平成20年は-1.1%、平成21年は-0.3%、平成23年は-2.7%であった。 b 検討 上記aによれば、平成19年から平成23年までの推移を見た場合、上記消費者物価指数上昇率(全国、前年比)の「総合」については差し引きで-1%にとどまり、同上昇率の「光熱・水道」については差し引 上記aによれば、平成19年から平成23年までの推移を見た場合、上記消費者物価指数上昇率(全国、前年比)の「総合」については差し引きで-1%にとどまり、同上昇率の「光熱・水道」については差し引きでプラス(上昇)となっている。これは、平成20年から平成23年の間に限ってみても、被保護世帯の実質的可処分 所得自体が、デフレ調整に関し参考とされた物価変動率-4.78%に相当する程度増加していたと認めるのを妨げるといえる。 しかし、後記ウで検討するように、平成25年改定においては、平成21年全消調査の結果を平成16年のそれと対比すると、相当の水準の下落が考えられる状況にあった。補正の上引用した原判決 第6の1(10)イのとおり、実質的な購買力の維持、実質的な可処分 所得の維持、という説明について、物価動向の範囲内で改定することを言い換えたものに過ぎず、生活保護受給世帯における消費構造を前提として実質的な可処分所得を維持することが必然的に求められるものではない、という意見もある。なお、生活扶助相当CPIにはさまざまな問題が指摘されるが、引用した原判決第6の2(2)の とおり、相応の合理性は、認められる。以上のことを考慮すれば、可処分所得に関する主張を考慮しても、判断過程の重大な欠落過誤とまではいえない。 ウ被控訴人らの主張の変遷に関する検討(ア) 控訴人らの主張 被控訴人らは、訴訟終盤に、可処分所得の増加が認められないことが明確になったので、それを争点化させないため不当に主張を変遷させた。 (イ) 検討a 変遷の内容被控訴人らは、原審において、デフレ調整の目的は可処分所得の 増加分の調整であると主張していたのに、当 不当に主張を変遷させた。 (イ) 検討a 変遷の内容被控訴人らは、原審において、デフレ調整の目的は可処分所得の 増加分の調整であると主張していたのに、当審では、その主張を取りやめ、平成16年から平成21年にかけて夫婦子1人の一般低所得世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額が約11.6%下落していたなどと主張した。そして、別訴で、令和5年3月16日、平成25年検証の過程における厚生労働省の担当者の尋問が行われ、 その証人調書等(乙A116)及び同担当者の陳述書(乙A115)の各写しが、同年7月18日に行われた当審第3回口頭弁論期日において書証として取り調べられた。しかも、被控訴人らは、控訴審の終結近くになり、それまで前提としてきた判断過程審査は本件に不適切であるとか、平成16年から平成21年にかけて夫婦子1人 の一般低所得世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額が約11. 6%下落していたことは平成25年改定前に把握されていたなどと主張するに至った。以上の事実は、記録上顕著である。 そして、これは、極めて大きな主張の変更であるから、後付けの虚偽のものではないかが強く疑われるべき状況にあるといえる。 b 関連する事実 この関係で、以下の事実が認められる。 上記元担当者は、大学で数学を専攻し、修士課程を終えた後当時の厚生省で働くようになり、保険数理等の事務を担当したのち、平成22年7月に社会・援護局保護課に課長補佐として配属され、平成25年改定に携わり、平成25年夏に他の部署に異動した。上記 元担当者は、基準部会にも事務方として出席し、所要の説明を担当した。平成25年改定の頃の保護課には、課長以下約 として配属され、平成25年改定に携わり、平成25年夏に他の部署に異動した。上記 元担当者は、基準部会にも事務方として出席し、所要の説明を担当した。平成25年改定の頃の保護課には、課長以下約30名の職員が在籍し、約10の係があり、各係を担当する課長補佐も決まっていた。平成25年改定を担当したのは、基準係であり、担当する課長補佐は、上記元担当者及び他の課長補佐1名であった。 平成25年検討に関しては、平成21年全消調査の特別集計の作業は、民間のシンクタンクに委任されていた。 上記元担当者は、別訴の証人尋問において、水準の検討に備え、準備段階の作業として平成21年の全消調査のデータを検討すると、平成16年から平成21年にかけて夫婦子1人の一般低所得世帯 (第1・十分位)の生活扶助相当支出額が約11.6%下落していたことに気付いたなどと証言した。この点に関しての反対尋問は、ごくわずかで、特に主尋問への答えを訂正するような証言はなかった。上記尋問においては、意思決定過程について等証言できないとされた部分がかなりある。(甲A99の1、163、168、21 8の1、乙A115、116の1) c 評価もし、仮に、平成25年改定以前に厚生労働省の所管課内で上記消費支出の11.6%下落が把握されていたならば、それは、生活保護の水準の低下を正当化する重要な事実であるから、本件訴えの早い段階、遅くとも平成30年の国会答弁(補正後の原判決第6の 1(8)ア)がされた頃には主張されてしかるべきともいえる。それが令和5年になって初めて主張され、しかも意思決定過程につき証言拒絶が多かったから、上記元担当者が、平成25年改定前に上記11.6%の下落を把握した された頃には主張されてしかるべきともいえる。それが令和5年になって初めて主張され、しかも意思決定過程につき証言拒絶が多かったから、上記元担当者が、平成25年改定前に上記11.6%の下落を把握したと証言したのは、さほどの反対尋問がされていないことを考慮しても、簡単には採用できない。 しかし、平成29年検証で第1・十分位の夫婦子1人世帯の生活扶助相当支出が低かったことや平成30年における大臣の答弁が虚偽であったと認め得る証拠はない。これまで認めたとおり、平成21年全消調査では、2人以上の世帯の支出が、平成16年全消調査よりも約6%減少した。この事実は、その時期及び内容からみて、 平成25年改定前に把握されていたと認めるのが相当である。可処分所得の増加分だけ生活保護の水準を下げたという趣旨の説明については、本件の主張及び証拠を前提とする限り、平成25年当時実際にそのようにも考えられていたと認めるのが相当であり、本件においても、可処分所得の増加や生活扶助相当CPIの算出あるいは 判断過程の過誤欠落は司法審査の対象になるといえる。 このような見地からすると、確かに、上記イのとおり、生活扶助相当CPIの算出過程や他の統計との整合性等、相当の疑問はある。 しかし、平成16年報告書のような手法で水準の検証をすれば、大幅な水準低下を避けられない状況であったとも推認できる。さらに、 補正の上引用した原判決第6の1(1)~(5)、(8)~(10)によれば、次 のことが指摘できる。 生活保護制度の創設以来、生活保護の水準は、貧困等を研究する専門家を委員とする各種委員会の議論もふまえ、平均的水準の6、7割程度に向上し、水準均衡方式が採用された後にも、消費の下落に比例して生 生活保護制度の創設以来、生活保護の水準は、貧困等を研究する専門家を委員とする各種委員会の議論もふまえ、平均的水準の6、7割程度に向上し、水準均衡方式が採用された後にも、消費の下落に比例して生活保護の水準が下げられたことは、ほとんどなかった。 厚生労働省(担当者)自体、水準均衡方式からは理論的には導けないが、保護の水準には下方硬直性がある、と考えた。国による生活保護費負担金の4分の3負担も、維持され、国としての予算が確保された。しかし、特に平成一桁半ばのバブル経済崩壊後、消費の下落など、水準の切り下げを示唆する統計的所見が相当数あり、平成 19年検証に至った。国家財政が危険水域と評される反面、生活保護事業費が増大し、平成24年にもさまざまな給付水準適正化の動きがあった。厚生労働大臣としては、貧困等を研究する専門家の間には、消費水準が下落しても確保すべき保護の水準がある、高齢単身世帯で第3・五分位の約5割という水準では不十分である、など との意見が強い中で、上記のような切り下げを基礎づける状況に対応するかどうかの決断を迫られ、従前とは異なり、生活保護受給者に相当の受忍を求め、生活保護法が施行されてから類例のない水準の切り下げに踏み切らざるを得なかった、と認めることができる。 なお、物価の考慮については、過去の各種報告書等で言及された部 分もあり、消費税率引き上げという、財やサービスの購入に要する金額の増加に対応して保護基準を改定した経過もあることから、不合理とはいえない。 以上のような、本件の事実関係を前提とすれば、被控訴人らの主張の変遷や、物価の安易な参酌を戒める専門家の意見(補正後の原 判決第6の1(10)イ)等を考慮しても、判断過程の重大な欠落過誤 及び裁量権の逸脱 を前提とすれば、被控訴人らの主張の変遷や、物価の安易な参酌を戒める専門家の意見(補正後の原 判決第6の1(10)イ)等を考慮しても、判断過程の重大な欠落過誤 及び裁量権の逸脱濫用を認めるには至らない。生活保護受給世帯の中で、単身高齢者世帯が多く、その単身高齢者世帯にかなり厳しい内容であるとの意見もあるが、健康で文化的な最低限度の生活という概念の多義性や、標準世帯からの展開につき平成25年検証において立ち入った検討がされたこと等を考慮すれば、改定後の水準に 関する判断についても、裁量権の逸脱濫用があるとはいえない。 (3) ゆがみ調整(2分の1処理)についてア控訴人らの主張2分の1処理は、生活扶助基準額が減額となる世帯の負担を軽減することのみを目的とした激変緩和措置には当たらないし、子のいる世帯の 負担を軽減することを目的とした激変緩和措置であるともいえない。2分の1処理は、展開部分の適正化という本質的部分と矛盾する。被控訴人らは、2分の1処理を秘していた。判断過程等に過誤等がある。 イ 2分の1処理の効果及び展開の適正化に関する検討(ア) 子がいる世帯への影響など 引用した補正後の原判決第6の1(5)イ(ウ)dのとおり、平成25年検証の結果を踏まえ、年齢階級別、世帯人員別、級地別の指数を反映した場合の影響をみると、夫婦と18歳未満の子1人世帯では-8. 5%、夫婦と18歳未満の子2人世帯では-14.2%、母親と18歳未満の子1人世帯では-5.2%などとなった。なお、証拠(甲A 96の1~3)によれば、「生活保護制度の見直しについて」と題する書面(開示請求により開示された厚生労働省の内部資料。その記載内容に照らし、平成25年報告書の作 どとなった。なお、証拠(甲A 96の1~3)によれば、「生活保護制度の見直しについて」と題する書面(開示請求により開示された厚生労働省の内部資料。その記載内容に照らし、平成25年報告書の作成前に作成されたと認められるもの。)では、「夫婦子1人」、「夫婦子2人」、「母子世帯(18歳未満の子1人)」等の世帯類型ごとに、平成25年検証の結果であ る年齢・世帯人員・地域差による影響を完全に調整した場合の生活扶 助基準額の平均値や、上記影響を2分の1とするなどした場合の同基準額の平均値が示されているが、後者の平均値は、上記2分の1とする処理のほか、平成20年から平成23年までの物価動向を勘案し、世帯ごとの増減幅を最大10%とした場合の値を示したものであることが認められる。そのため、この書面に記載の内容は、上記dに説示 のとおりの検証結果に関する内容を覆すものとは認められない。 また、平成25年報告書では、生活扶助基準の見直しの際には、とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要があるとされた(原判決第6の1(5)イ(ウ)e)。 これらのほか、上記書面(甲A96の3)の記載内容に照らしても、 ゆがみ調整における2分の1処理は、上記のとおり、平成25年検証の結果をそのまま年齢階級別、世帯人員別、級地別の指数として反映させると、子がいる世帯に大幅な減額の負担を強いることを踏まえ、その負担を緩和するためにされた措置という面があったと認められる。 (イ) 展開の適正化との整合性に関する検討 平成25年報告書では、平成25年検証の結果に関する留意事項(原判決第6の1(5)イ(ウ)e)として、採用した年齢、世帯人員、地域の影響 ) 展開の適正化との整合性に関する検討 平成25年報告書では、平成25年検証の結果に関する留意事項(原判決第6の1(5)イ(ウ)e)として、採用した年齢、世帯人員、地域の影響を検証する手法について、基準部会の委員による専門的議論の結果得られた透明性の高い一つの妥当な手法である一方、これまでの検証方法との継続性、整合性にも配慮したものであることから、こ れが唯一の方法ということでもない、今後、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には、今回の検証結果を考慮しつつも、同時に検証方法について一定の限界があることに留意する必要がある、などとされた。 また、証拠(乙A6)によれば、同報告書では、上記留意事項とし て、年齢、世帯人員の体系、居住する地域の組み合わせによる基準の 展開に関する指数の値と、一般低所得世帯の消費実態との間には、世帯構成によってさまざまに異なる差が生じうるが、これに関し、特定の世帯構成等に限定して分析する際にサンプルが極めて少数となるといった統計上の限界があったことなどから、全ての要素については分析・説明に至らなかった、などと指摘されたことが認められる。 このように、本件保護基準改定に当たっては、平成25年検証の結果を考慮しつつも、統計や検証上の限界等に留意して生活扶助基準を定める必要があったといえ、同検証の結果である数値や指数をそのまま生活扶助基準に反映させることが唯一の合理的な方法であったとはいえない。 そうすると、上記の限界等や上記(ア)の子のいる世帯への負担軽減の視点も踏まえ、平成25年検証の結果を反映する比率を減額幅・増額幅ともに2分の1にとどめてゆがみ調整をしたことが、合理性に反するとはいえないし 、上記の限界等や上記(ア)の子のいる世帯への負担軽減の視点も踏まえ、平成25年検証の結果を反映する比率を減額幅・増額幅ともに2分の1にとどめてゆがみ調整をしたことが、合理性に反するとはいえないし、平成25年報告書における考察や指摘された事項の本質的な部分に反するともいえない。 (ウ) 平成29年検証との対比なお、平成25年検証(補正後の原判決第6の1(5)イ(ウ)d)では、検証結果を年齢階級別、世帯人員別、級地別の指数に反映した場合、60歳以上の単身世帯や夫婦世帯では指数がプラス(増加)となるとされていた。他方、平成29年検証では、引用した補正後の原判決第 6の1(7)のとおり、検証の際の年齢の区分けが平成25年検証の際のものとは同一でない上、生活扶助基準の水準と展開部分の各検証結果を総合的に勘案したものであったが、その結果を指数に反映すると、高齢者世帯であっても、指数はプラス(増加)とはならず、むしろマイナス(減少)となった区分も相当数みられた。また、引用した補正 後の原判決第6の1(7)のとおり、平成29年検証においてもなお、展 開部分に関する指数の算出方法について絞り込みができていない状況にあり、急激な変更を生じさせない視点からの配慮が重要であったといえる。これらの検証結果は、本件保護基準改定における2分の1処理は、穏当な変動幅であって、合理性を欠くものではなかったことを推認させるものといえる。 (エ) 小括このようにみると、ゆがみ調整(2分の1処理)は、子のいる世帯の負担の軽減を図る激変緩和措置の側面を有していたといえるほか、平成25年検証の結果として示された考察等の本質的部分に反するとまではいえず、合理性を欠くものとはいえない。上記に関 )は、子のいる世帯の負担の軽減を図る激変緩和措置の側面を有していたといえるほか、平成25年検証の結果として示された考察等の本質的部分に反するとまではいえず、合理性を欠くものとはいえない。上記に関する判断の 過程及び手続が、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くとはいえず、また、本件全証拠によっても、ゆがみ調整(2分の1処理)の程度が、被保護者の生活に看過し難い影響を及ぼすとまでは認められない。控訴人らの上記アの主張は採用することができない。 ウ 2分の1処理の説明欠如に関する検討厚生労働省や被控訴人らが、本件訴訟手続の内外において、2分の1処理について従前明示的な説明をせず、これが手続上の観点から適切さを欠くものであったとしても、このことが本件保護基準改定の各判断過程や手続自体に過誤や欠落があったことを推認させるとまではいえない。 (4) デフレ調整とゆがみ調整を併せて行ったことについてア控訴人らの主張平成25年検証では、体系の検証と水準の検証が一体的にされた。平成25年検証に基づくゆがみ調整に加えてデフレ調整をすることが、平成25年検証の結果との整合性、妥当性を欠くことにならないかについ て、様々な組み合わせの検討をしないままデフレ調整による改定をした のは、専門的知見との整合性を欠く。 イ検討引用した補正後の原判決第6の1(5)イに説示のとおり、平成25年検証においては、水準の評価、検証が行われることはなかった。本件全証拠によってもこれを覆すことはできない。したがって、控訴人らの上記 主張は、前提を欠く。 また、平成29年検証の結果(補正後の原判決第6の1(7))によれば、 ことはなかった。本件全証拠によってもこれを覆すことはできない。したがって、控訴人らの上記 主張は、前提を欠く。 また、平成29年検証の結果(補正後の原判決第6の1(7))によれば、夫婦子1人世帯の生活扶助基準額と一般低所得世帯(第1・十分位)の消費水準(生活扶助相当支出額)が概ね均衡することが確認された一方、生活扶助基準の展開部分については、年齢階級別、世帯人員別、級地別 にみた一般低所得世帯間における消費支出の格差を示す指数と、生活扶助基準の「展開のための指数」との間にかい離する部分があることが確認された。ただし、平成29年検証の結果によると、生活扶助基準の水準と展開部分の各検証結果を総合的に勘案し、その結果を機械的に反映する場合の生活扶助基準額への影響(実データ又は回帰分析で算出する 場合)をみると、例えば、2級地の1の高齢単身世帯(65歳)はいずれにせよ減額となり、2級地の1の若年単身世帯(50歳代)は減額又は0.4%の増額となり、3級地の2の若年単身世帯(50歳代)は1. 9%又は5.2%の増額となった、などというものであり、調整すべき幅が小さいか、又は、減額すべき区分も相当数あったことが認められる (乙A87)。このような事後の検証結果をみても、これまでの説示のとおり、デフレ調整及びゆがみ調整並びにこの両調整を併せて行ったことについては、専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権の範囲内であったと推認され、本件全証拠によっても、これらの判断過程について、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠 くとまではいえず、上記裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があったと認 めることはできない。 (5) 控訴人らは、他にも種々主張するが、これらは、これまでの説 見との整合性を欠 くとまではいえず、上記裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があったと認 めることはできない。 (5) 控訴人らは、他にも種々主張するが、これらは、これまでの説示に照らし、本件の結論を左右しない。 3 よって、原判決は相当であり、本件各控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第3民事部 裁判長裁判官久留島群一 裁判官秋本昌彦 裁判官山下隼人 別紙略語表略語原判決初出頁元の語【生活保護、生活扶助に関する基本用語】法 2 生活保護法保護基準 2 生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省 告示第158号)第1類費 3 食費、被服費等の個人的経費第2類費 3 光熱水費、家具什器等の世帯経費展開 4 標準世帯の基準額を分解する過程(原判決第2の2(2)イ)(平成23年5月においては別紙「生活 保護基準の体系等について」〔乙A20〕のとおり)第1・十分位 5 年間収入階級第1・十分位層社会権規約 9 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約【本件で取消を求められる処分に関係する用語】本件各保護変更決定 7 控訴人らが本 年間収入階級第1・十分位層社会権規約 9 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約【本件で取消を求められる処分に関係する用語】本件各保護変更決定 7 控訴人らが本件訴えにおいて取消しを求める保護 変更決定の総称本件通知書 26 被控訴人らが控訴人らに本件各保護変更決定を通知した際の生活保護変更通知書平成25年告示 6 平成25年5月16日厚生労働省告示第174号平成25年改定 6 平成25年告示による同年8月1日付け生活保護 基準の改定平成26年告示 6 平成26年3月31日厚生労働省告示第136号平成26年改定 6 平成26年告示による同年4月1日付け生活保護基準の改定平成27年告示 6 平成27年3月31日厚生労働省告示第227号 平成27年改定 6 平成27年告示による同年4月1日付け生活保護 基準の改定平成25年告示等 101 平成25年告示、平成26年告示及び平成27年告示本件保護基準改定 6 平成25年改定、平成26年改定及び平成27年改定 ゆがみ調整 5 本件保護基準改定における、第1・十分位の消費実態と生活扶助基準の年齢・世帯人員・居住地域別の較差の調整2分の1処理 5 平成25年検証の結果を生活扶助基準に反映する比率を増額方向、減額方向共に2分の1としたこと 総務省CPI 5 総務省が公表する消費者物価指数消費者物価指数マニュアル 38 消費者物価指数マニュアル-理論と実践生活扶助相当CPI 6 総務省CPIのすべての消費品目から生活扶助以外の他扶助で賄われる品目(家 表する消費者物価指数消費者物価指数マニュアル 38 消費者物価指数マニュアル-理論と実践生活扶助相当CPI 6 総務省CPIのすべての消費品目から生活扶助以外の他扶助で賄われる品目(家賃、教育費、医療など)及び原則として保有が認められておらず又は免 除されるため生活保護受給世帯において支出することが想定されていない品目(自動車関係費、NHK受信料など)を除いて算出した消費者物価指数デフレ調整 5 基準生活費を改定する際に平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの下落率を考慮した こと【本件保護基準改定に先立つ専門家による検討に関する用語】基準部会 4 社会保障審議会生活保護基準部会(平成23年2月設置)平成25年検証 4 基準部会が平成21年の全消調査のデータを用い 行った検証 平成25年報告書 4 平成25年1月18日付け社会保障審議会生活保護基準部会報告書全消調査 4 全国消費実態調査理由① 20 これまでの検証に倣い、生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが今回 の検証では現実的であると判断したこと(平成25年報告書が第1・十分位を比較対象とした理由)理由② 20 第1・十分位の平均消費水準が、中位所得階層の約6割に達していること(同)理由③ 20 必需的な耐久消費財について、第1・十分位層に 属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べて概ね遜色なく充足されていること(同)理由④ 21 全所得階層における年間収入総額に占める第1・十 、第1・十分位層に 属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べて概ね遜色なく充足されていること(同)理由④ 21 全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向であるものの、高所得階層を除くその他の十分位の傾 向をみても等しく減少しており、特に第1・十分位層が減少しているわけではないこと(同)理由⑤ 21 第1・十分位層に属する世帯の大部分はOECDの基準では相対的貧困線以下にあること(同)理由⑥ 21 第1・十分位と第2・十分位との間で大きく消費 が変化していること(同)【専門家による平成25年検証より前又は後の検討】昭和39年中間報告 49 昭和39年12月16日付け社会福祉審議会生活保護専門分科会による中間報告昭和58年意見具申 50 生活扶助基準及び加算のあり方について(意見具 申)(中央社会福祉審議会、昭和58年12月) 専門委員会 30 生活保護制度の在り方に関する専門委員会平成16年検証 30 専門委員会における生活扶助基準の検証平成15年中間とりまとめ 52 生活保護制度の在り方についての中間とりまとめ(専門委員会、平成15年12月16日)平成16年報告書 53 生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書 (平成16年12月15日)生活扶助基準検討会 22 生活扶助基準に関する検討会平成19年検証 22 生活扶助基準検討会が行った検証平成19年報告書 55 生活扶助基準に関する検討会報告書(平成19年11月) 平成29年検証 22 平成29年に基準 証 22 生活扶助基準検討会が行った検証平成19年報告書 55 生活扶助基準に関する検討会報告書(平成19年11月) 平成29年検証 22 平成29年に基準部会が行った検証【関係する団体、人の名】自民党 13 自由民主党I教授 15 I教授【判例】(当審判決で定義) 朝日訴訟最高裁判決最高裁昭和42年5月24日大法廷判決(民集21巻5号1043頁)堀木訴訟最高裁判決最高裁昭和57年7月7日大法廷判決(民集36巻7号1235頁)老齢加算東京訴訟最高裁判決最高裁平成24年2月28日第三小法廷判決・民集 66巻3号1240頁老齢加算福岡訴訟最高裁判決最高裁平成24年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁老齢加算訴訟最高裁判決老齢加算東京訴訟最高裁判決及び老齢加算福岡訴訟最高裁判決 (以上) (別紙処分一覧表)(1枚) (※ 別紙のとおり。) 別紙1当審における控訴人らの補充主張 1 本件保護基準改定の適法性の判断枠組みについて(1) 法8条1項が、「保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基と」する旨を定めていること、同条2項が、「前項の基準は、要 保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、且つ、これを超えないものでなければならない。」と定めていることに加えて、法12条1号が、「生活扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持する を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、且つ、これを超えないものでなければならない。」と定めていることに加えて、法12条1号が、「生活扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの」 と定めていることに言及する。そのため、生活保護の内容・程度の未確定性について厚生労働大臣に裁量権が認められているとしても、あくまで法が委任したのは「要保護者」の「需要」を測定するための基準を定める権限に限られている(需要充足原則)。 厚生労働大臣が定める保護基準は、憲法25条1項が保障する「健康で文化 的な最低限度の生活を営む権利」を具体化する最も重要な制度であり、実質的にも様々な制度に制度上又は事実上連動しており、その影響は大きい。保護基準の引下げが、同項が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を営むことさえ困難にする可能性があるから、保護基準の引下げにおける厚生労働大臣の裁量権の行使は、極めて慎重に行われるべきである。したがって、その行使に 関する裁判所の司法審査においては、堀木訴訟最高裁判決や老齢加算訴訟最高裁判決よりも、厚生労働大臣の裁量権が限定されるものとして判断されるべきである。 生活扶助基準の改定において、厚生労働大臣は、法8条、12条1号による需要充足原則に拘束され、その際、法8条2項、9条の法定考慮事項の考慮義 務があり、それゆえ、国の財政事情等を考慮事項とすることは許されない。 (2) 本件保護基準改定のうち、デフレ調整については基準部会での検討を経ていないし、ゆがみ調整については、基準部会が相当とした数値について基準部会の了承なく2分の1処理をした。 このように専門機関による審 基準改定のうち、デフレ調整については基準部会での検討を経ていないし、ゆがみ調整については、基準部会が相当とした数値について基準部会の了承なく2分の1処理をした。 このように専門機関による審議検討を経ていないので、同改定について、一応の専門的知見等との整合性を推認することはできない。これは、判断過程審 査の精度を高めるべき事情となる。 同改定については、老齢加算訴訟最高裁判決が説示したように、①「最低限度の生活を維持するうえで引下げに見合った需要の減少が認められるか否か」(引下げの必要性)、②「改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否か」(引下げの許容性)について、 「統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性」の有無が厳格に審査されなければならない。 2 デフレ調整について(1) 平成19年検証について次のとおり、平成19年検証の結果によって、直ちに、本件保護基準改定当 時の生活扶助基準の水準が一般低所得世帯の消費実態と比較して高いという結果が得られていたということはできない。 ア平成19年検証は、平成16年全消調査を用いて生活扶助基準の水準の妥当性等を評価・検証した結果であるから、平成19年検証の結果から直ちにその3~4年後である平成19年又は平成20年当時における生活扶助基準 と生活扶助相当支出額との大小関係が裏付けられるものではない。 イまた、標準世帯とされている夫婦子1人世帯の生活扶助基準額と第1・十分位の生活扶助相当支出額との差は、1627円(約1.1%)にすぎない。 他方、単身世帯(60歳以上)の生活扶助基準額は、第1・十分位の生活扶助相当支出額より8378円(約13.3%)高いが、第1 生活扶助相当支出額との差は、1627円(約1.1%)にすぎない。 他方、単身世帯(60歳以上)の生活扶助基準額は、第1・十分位の生活扶助相当支出額より8378円(約13.3%)高いが、第1・五分位の同 支出額とは均衡していた。平成19年報告書では、単身世帯(60歳以上) の第1・十分位の消費水準は、第3・五分位の同水準の5割にとどまっている点に留意する必要があると指摘されていた。 (2) 4.78%もの可処分所得の増加の不存在標題のことは、多数の学者の意見書等、原審及び当審の主張及び立証により明らかである。 平成20年以降のデフレ状況について、総務省CPIは平成19年から平成20年にかけて1.4%上昇した後、同年から平成23年にかけて毎年下落したが、日常生活上の基本的かつ継続的な費用である食料や光熱・水費については、いずれも平成23年の時点で平成19年の時点よりも上昇していた。そのため、低所得世帯の必要経費が増え、生活扶助基準がその分相対的に低くなる ことは、容易に推認される。平成23年の時点で、生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加していた、などとはいえない。 (3) 許されない主張の変遷被控訴人らは、控訴審の終盤になって、消費の下落率が約11.6%であるなどと主張するに至った。しかし、この主張は、およそ採用に値しない。なぜ ならば、生活保護受給世帯に4.78%の可処分所得の実質的増加があったとは全く認められないことが明らかになった後に、この点を争点とさせないため、何ら客観的根拠なく、平成25年に当時の厚生労働省社会・援護局長がした国会答弁とも異なる内容に、主張を変遷させた、というほかないからである。 3 ゆがみ調整(2分の1処理)について め、何ら客観的根拠なく、平成25年に当時の厚生労働省社会・援護局長がした国会答弁とも異なる内容に、主張を変遷させた、というほかないからである。 3 ゆがみ調整(2分の1処理)について (1) 2分の1処理は、ゆがみ調整において、生活扶助基準額が減額となる年齢階層別・級地別・世帯人員別の各指数の減額幅を2分の1にする一方で、同様に増額となる年齢階層別・級地別・世帯人員別の各指数の増額幅を2分の1にしたから、生活扶助基準額が減額となる世帯の負担を軽減することのみを目的とした激変緩和措置には当たらない。2分の1処理は、大半の生活保護利用世帯 にとって、本来あるべき生活扶助基準額の減額をもたらした。 厚生労働省が提供した数値によっても、2分の1処理による子のいる世帯に対する緩和効果は、一切ないか、あっても極めて限定的であるから、2分の1処理が子のいる世帯の負担を軽減することを目的とした激変緩和措置であるとはいえず、2分の1処理の判断過程には過誤がある。 (2) 平成25年検証の結果の信頼性は高く、同検証によって判明した「展開のた めの指数」を反映することにより、生活扶助基準の展開部分の適正化を図ることは、ゆがみ調整の判断過程の本質的部分を構成する。しかし、2分の1処理は、上記本質的部分と矛盾し、これを変更するものであるから、2分の1処理の判断過程には、「統計等との客観的数値等との合理的関連性」及び「専門的知見との整合性」に照らして過誤がある。 (3) 被控訴人らは、ゆがみ調整において2分の1処理がされたことを長らく秘していた。被控訴人らは、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無が審査されるべき場面において、判断過程の極めて重要な部分を秘していたものであり、 理がされたことを長らく秘していた。被控訴人らは、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無が審査されるべき場面において、判断過程の極めて重要な部分を秘していたものであり、このような訴訟態度に照らしても、2分の1処理に関する判断過程及び手続に過誤、欠落が存在していたといえる。 4 デフレ調整とゆがみ調整を併せて行ったことについて平成25年検証では、生活扶助基準の展開の相違を消費実態に基づく指数に合わせた場合の値と、様々な世帯構成がある一般低所得世帯の消費実態との「残差」分析まではできなかったが、体系の検証と水準の検証が一体的にされた。平成25年検証では、徹底した相対比較によるきめ細やかな検証がされた。これによる ゆがみ調整に加えて全国全世帯一律にデフレ調整をすることが、平成25年検証の結果との整合性、妥当性を欠くことにならないか、様々な組み合わせについて検討されるべきであった。しかし、厚生労働大臣は、それをしないまま、デフレ調整による改定を併せて行っており、これは、専門的知見との整合性を欠く。 以上 別紙2当審における被控訴人らの補充主張 1 文理解釈法3条も8条2項も、厚生労働大臣の判断につき参酌すべき経済指標等や踏むべき手続を定めていない。手続や判断内容につき、広い裁量権があるといえる。 2 本件と老齢加算訴訟との相違及び本件における判断過程審査の不適切性(1) 老齢加算訴訟最高裁判決の事案は、いわば既得権に近い位置づけであった老齢加算の永続的廃止についてのもので、生活保護受給者の期待的利益や生活への影響等に配慮すべき必要性が高い事案であったといえる。 これに対し、本件は、生活扶助費のうち基準生活費の額(多寡)の改定 齢加算の永続的廃止についてのもので、生活保護受給者の期待的利益や生活への影響等に配慮すべき必要性が高い事案であったといえる。 これに対し、本件は、生活扶助費のうち基準生活費の額(多寡)の改定につ いての事案である。基準生活費の額については、水準均衡方式による改定が毎年度行われているほか、専門機関による検証やこれを踏まえた改定も行われており、こうした改定により前年度と比較して基準生活費の多寡の変動が生じることが当然に予定されている。一定時点の基準生活費の額には、少なくとも老齢加算のような既得権的な意味合いは、全くない。また、本件保護基準改定の 減額幅は、最大でも基準生活費の10%とされ、もとより永続的に減額されるものでもないのであって、老齢加算の廃止と比較すれば、同改定による生活保護受給者の生活への影響の程度は、限定的である。 このように、本件は、生活保護受給者の期待的利益や生活への影響等に配慮すべき必要性は、老齢加算訴訟の最高裁判決の事案と比較すると明らかに低い 事案であり、事案を異にする。 (2) 本件保護基準改定時には、専門家からなる基準部会による定期的な保護基準の評価及び検証が行われることが制度化されていた。他方、厚生労働大臣は、基準部会の検討結果を参照しつつも、その時々の社会情勢や財政状況に照らし、自らの専門技術的、政策的な裁量判断に従って保護基準の改定を行ってきた。 上記の基準部会による評価及び検証と同大臣による判断が繰り返されることに より、最低限度の生活を具体化したものとしての生活扶助基準の客観的妥当性が確保されるという仕組みができつつあった。しかも、本件保護基準改定後に基準部会がした平成29年検証では、同改定による生活扶助基準の「水準」(高さ)について一般低所得世 の生活扶助基準の客観的妥当性が確保されるという仕組みができつつあった。しかも、本件保護基準改定後に基準部会がした平成29年検証では、同改定による生活扶助基準の「水準」(高さ)について一般低所得世帯の消費水準と均衡することが確認された。 老齢加算の廃止に関する同大臣の裁量判断と本件保護基準改定に関する同大 臣の裁量判断とは専門機関の関与の仕方や程度が異なる。専門機関の検討結果に依拠したものではない保護基準の改定自体に関する同大臣の裁量判断は、老齢加算の廃止に関する同大臣の裁量判断と比較して、その裁量がより一層尊重されるべきである。 (3) 判断過程審査は、結論の適否を直接判断することが困難であって、➀政策判 断が特定の基礎資料の収集・調査あるいは考慮すべき要素についての調査・認定等の一定の定型的な判断過程を経て最終決定に至ることが必然的であると認められる場合、②専門機関の関与等、複合的段階的な行政過程を経て最終決定に至ることが予定されている場合など、一定の場合に、その判断過程に過誤、欠落がなかったかという形で審査されるものである。 しかし、保護基準の改定が違法となるのは、厚生労働大臣において、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定するなどの憲法及び生活保護法の趣旨、目的に反することが明らかな場合に限られる。この判断について、結論の適否を直接判断することが困難という事情はなく、特に判断過程を個別に判断する必要はない。判断過程審査をすることは、保護基準の改定における同大臣 の極めて広範な裁量権を実質的に制約する結果となりかねない。 (4) これらのとおり、本件は、老齢加算訴訟最高裁判決の事案とは大きく事案を異にし、同判決の射程が及ぶ事案ではない。 3 デフレ調整について平成20年9 に制約する結果となりかねない。 (4) これらのとおり、本件は、老齢加算訴訟最高裁判決の事案とは大きく事案を異にし、同判決の射程が及ぶ事案ではない。 3 デフレ調整について平成20年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機は、我が国の消 費等の実体経済に大きな影響を与え、賃金、物価、家計消費水準等は、いずれも 下落した。特に夫婦子1人の一般低所得世帯(第1・十分位)の消費水準(生活扶助相当支出額)については、平成21年時点の額が、平成16年から約11. 6%下落した。また、平成21年全消調査による消費水準(生活扶助相当支出額)は、平成19年検証時点における夫婦子1人世帯の生活扶助基準額を約12. 6%下回るものとなっていた。このような状況において、消費の構成要素の1つ である物価についても、総務省が公表している消費者物価指数(総務省CPI)を基に厚生労働大臣が算定した生活扶助相当品目に関する物価指数(生活扶助相当CPI)は、平成20年から平成23年にかけて4.78%下落した。 デフレ調整は、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)について、これら一般国民の生活水準の変化を示す統計等の合理的な根拠に基づきつつ、従前用いて きた消費に関する統計を基に改定率を定めると、減額幅が過大となり、生活保護受給者への影響も大きくなることから、生活扶助基準額を生活扶助相当CPIの変化率の限度で引き下げたものである。デフレ調整は、上記「水準」について、生活保護受給世帯への配慮をしつつ、統計等の根拠に基づいて合理的な範囲内において改定したものであり、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定す るものではなく、憲法及び生活保護法の趣旨、目的に反するものとはいえない。 4 ゆがみ調整(2分の1処理)につい 内において改定したものであり、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定す るものではなく、憲法及び生活保護法の趣旨、目的に反するものとはいえない。 4 ゆがみ調整(2分の1処理)について厚生労働大臣が2分の1処理を行うに当たって平成25年検証の結果の反映の程度を減額か増額かを問わず一律に2分の1とした理由は、世帯によって反映の程度を変えることは、平成25年検証が「世帯構成などが異なる生活保護受給者 間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点」、すなわち、生活保護受給世帯間における公平性を確保する観点から検証が行われたものであるにもかかわらず、検証結果の取扱いについて生活保護受給世帯間における公平性を欠くことになりかねないからである。また、増額又は減額のいずれかに偏った反映をすると、生活扶助基準の「水準」(高さ)にも影響を及ぼし かねず、生活扶助基準の展開部分(生活保護受給世帯間における相対的な格差) の検証という平成25年検証の本質的な趣旨を改変することになり、ひいては、生活扶助基準の展開部分を適正化するというゆがみ調整の趣旨や目的を逸脱する。 そのため、厚生労働大臣は、平成25年検証の結果の反映の程度を、減額幅か増額幅かを問わず、一律に2分の1とした。このような判断過程には、改訂後の保護基準が現実の生活条件を無視した著しく低いものとなりかねないような重大 な過誤、結果があるとはいえず、十分な合理性がある。 5 デフレ調整とゆがみ調整を併せて行ったことについてゆがみ調整は、平成20年以前から改定されていなかった生活扶助基準の展開部分(生活保護受給者間における相対的な較差)を適正化したものであるのに対し、デフレ調整は、平成20年以降の社会経済情勢等によ ゆがみ調整は、平成20年以前から改定されていなかった生活扶助基準の展開部分(生活保護受給者間における相対的な較差)を適正化したものであるのに対し、デフレ調整は、平成20年以降の社会経済情勢等によって生じた生活扶助基 準の「水準」(高さ)と一般国民の生活水準との間の不均衡を是正するため、上記「水準」を適正化したものである。両者はその趣旨や目的を異にしており、改定内容が重なるものとはいえない。 平成25年検証における生活扶助基準の「展開のための指数」についての検証結果を生活扶助基準に反映させることによって、その「水準」(高さ)について も影響が及ぶものではない。 ゆがみ調整に加えて生活扶助基準の「水準」(高さ)を適正化する必要があるとした厚生労働大臣の判断は、平成25年検証の目的及び検証方法、ゆがみ調整とデフレ調整の趣旨や目的の相違等を踏まえたものであって、その判断過程には十分な合理性があり、少なくとも、改定後の保護基準が現実の生活条件を無視し た著しく低いものとなりかねないような重大な過誤、欠落があるとはいえない。 したがって、ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行った厚生労働大臣の判断過程には、最低限度の生活の具体化に関する判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえない。 以上

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