平成7(ワ)4923 損害賠償等請求事件(通称 岡谷鋼機男女昇格差別)

裁判年月日・裁判所
平成16年12月22日 名古屋地方裁判所
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判決文本文63,191 文字)

平成16年12月22日判決言渡平成7年(ワ)第4923号損害賠償等請求事件判決 主文 1 原告Aの,原告Aが,被告との雇用契約上,平成7年4月1日から総合職管理職2級に配置され昇格したものとして取り扱われる地位にあることの確認を求める訴え,平成10年4月1日から総合職管理職1級に配置され昇格したものとして取り扱われる地位にあることの確認を求める訴え及び平成7年4月1日から総合職指導職1級に配置され昇格したものとして取り扱われる地位にあることの確認を求める訴えをいずれも却下する。 2 被告は,原告Aに対し,550万円及びこれに対する平成11年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告Aのその余の主位的請求及び予備的請求並びに原告Bの主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,被告に生じた費用の5分の3と原告Aに生じた費用を12分し,その1を被告の負担とし,その余を原告Aの負担とし,被告に生じた費用の5分の2と原告Bに生じた費用を原告Bの負担とする。 5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 原告A(1) 主位的請求ア原告Aが,被告との雇用契約上,平成7年4月1日から総合職管理職2級に配置され昇格したものとして取り扱われる地位にあること,平成10年4月1日から総合職管理職1級に配置され昇格したものとして取り扱われる地位にあること並びに平成15年6月1日から総合職S4等級の役割等級及びマネジメントコースマネジメント認定者の種類を付与されたものとして取り扱われる地位にあることを,それぞれ確認する。 イ被告は,原告Aに対し,6818万6800円並びにうち2183万0890円に対する平成8年1月13日から,うち1592万5820円に対する平成1 扱われる地位にあることを,それぞれ確認する。 イ被告は,原告Aに対し,6818万6800円並びにうち2183万0890円に対する平成8年1月13日から,うち1592万5820円に対する平成11年8月11日から,うち1203万3840円に対する平成13年1月18日から,うち1092万8070円に対する平成14年12月12日から及びうち746万8180円に対する平成16年2月13日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 予備的請求ア原告Aが,被告との雇用契約上,平成7年4月1日から総合職指導職1級に配置され昇格したものとして取り扱われる地位にあること及び平成15年6月1日から総合職S3等級の役割等級を付与されたものとして取り扱われる地位にあることを,それぞれ確認する。 イ被告は,原告Aに対し,5500万4020円並びにうち4961万9060円に対する平成14年12月21日から及びうち538万4960円に対する平成16年2月13日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告B(1) 主位的請求被告は,原告Bに対し,4090万3900円及びこれに対する平成8年1月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 予備的請求被告は,原告Bに対し,4014万9600円及びこれに対する平成14年12月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告の女性従業員である原告Aが,同標準年齢男性従業員(年齢を標準とした原告らと比較すべき男性従業員)は総合職に配置され職能資格又は役割等級が付与されたのに,原告Aが事務職に配置され担当職1級という職能資格しか付与されていないのは,被告による違法な男女差別に基づくためであるとして, き男性従業員)は総合職に配置され職能資格又は役割等級が付与されたのに,原告Aが事務職に配置され担当職1級という職能資格しか付与されていないのは,被告による違法な男女差別に基づくためであるとして,被告に対し,主位的に,被告との雇用契約上,①平成7年4月1日から総合職管理職2級に配置され昇格したものとして取り扱われる地位にあること,②平成10年4月1日から総合職管理職1級に配置され昇格したものとして取り扱われる地位にあること並びに③平成15年6月1日から総合職S4等級の役割等級及びマネジメントコースマネジメント認定者の種類を付与されたものとして取り扱われる地位にあること,予備的に,被告との雇用契約上,④平成7年4月1日から総合職指導職1級に配置され昇格したものとして取り扱われる地位にあること及び⑤平成15年6月1日から総合職S3等級の役割等級を付与されたものとして取り扱われる地位にあることの各確認を求めている。 さらに,原告A及び被告の元女性従業員である原告Bが,同標準年齢男性従業員との間に賃金格差及び退職金格差があるのは,被告による違法な男女差別に基づくためであるとして,以下のとおりの差額賃金及び差額退職金若しくは債務不履行又は不法行為に基づく差額賃金相当額及び差額退職金相当額の損害賠償金並びに慰謝料及び弁護士費用の支払を求めている。 すなわち,原告Aは,被告に対し,主位的に,雇用契約に基づく同標準年齢で平均的に昇格した男性従業員との差額賃金若しくは債務不履行又は不法行為に基づく差額賃金相当額の損害賠償金(別表9のとおり6121万6800円),慰謝料500万円及び弁護士費用197万円の合計6818万6800円並びに遅延損害金の支払を求め,予備的に,雇用契約に基づく同標準年齢で昇格が最下位である男性従業員との差額賃金若しくは債務不履行又は 謝料500万円及び弁護士費用197万円の合計6818万6800円並びに遅延損害金の支払を求め,予備的に,雇用契約に基づく同標準年齢で昇格が最下位である男性従業員との差額賃金若しくは債務不履行又は不法行為に基づく差額賃金相当額の損害賠償金(別表10のとおり4803万4020円),慰謝料500万円及び弁護士費用197万円の合計5500万4020円並びに遅延損害金の支払を求めている。 また,原告Bは,被告に対し,主位的に,雇用契約に基づく同標準年齢で平均的に昇格した男性従業員との差額賃金及び差額退職金若しくは債務不履行又は不法行為に基づく差額賃金相当額及び差額退職金相当額の損害賠償金(差額賃金については別表11のとおり504万3200円,差額退職金については別表12のとおり2715万0700円),慰謝料500万円及び弁護士費用371万円の合計4090万3900円並びに遅延損害金の支払を求め,予備的に,雇用契約に基づく同標準年齢で昇格が最下位である男性従業員との差額賃金及び差額退職金若しくは債務不履行又は不法行為に基づく差額賃金相当額及び差額退職金相当額の損害賠償金(差額賃金については別表13のとおり439万4600円,差額退職金については別表14のとおり2710万5000円),慰謝料500万円及び弁護士費用365万円の合計4014万9600円並びに遅延損害金の支払を求めている。 1 争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実(1) 当事者等ア原告ら(ア) 原告Aa 原告A(昭和24年2月24日生)は,昭和42年C高等学校卒業後,同年4月被告に入社し,名古屋店鉄鋼部事務課勤務(その後,組織変更により,同課は,昭和44年9月鉄鋼本部名古屋鉄鋼部事務課,昭和45年3月鉄鋼本部名古屋鉄鋼第1部事務課となった 年C高等学校卒業後,同年4月被告に入社し,名古屋店鉄鋼部事務課勤務(その後,組織変更により,同課は,昭和44年9月鉄鋼本部名古屋鉄鋼部事務課,昭和45年3月鉄鋼本部名古屋鉄鋼第1部事務課となった。),昭和46年1月鉄鋼本部名古屋鉄鋼第1部鋼材第3課勤務(その後,組織併合及び組織変更により,同課は,昭和46年9月鉄鋼本部名古屋鉄鋼第1部鋼材第1課,昭和47年3月鉄鋼本部鉄鋼第1部名古屋鉄鋼第1部鋼材第1課,昭和48年4月鉄鋼第1部名古屋鉄鋼第1部鋼材第1課,昭和49年3月鉄鋼第1部名古屋鉄鋼第1部鋼材厚板課,昭和50年8月名古屋鉄鋼部厚板課,昭和51年3月鉄鋼本部名古屋鉄鋼部厚板課となった。),昭和51年4月鉄鋼本部名古屋鉄鋼部形鋼課勤務(その後,組織変更により,同課は,昭和52年9月鉄鋼本部名古屋鉄鋼部鋼材第2課,昭和62年6月名古屋本店鉄鋼部鋼材第2課,昭和63年6月名古屋本店鉄鋼部鋼材室,平成3年4月名古屋本店鉄鋼部鋼材・原料室となった。),平成5年9月名古屋本店化成品本部化成品室勤務,平成7年9月名古屋本店業務部第2室勤務,平成14年3月名古屋本店業務部第1室勤務を経て,現在に至っている(乙64)。 b 原告Aは,被告に入社した昭和42年4月書記見習の資格を付与され,同年10月書記3級に,昭和46年書記2級に,昭和51年書記1級に,それぞれ昇格した。その後,原告Aは,昭和63年6月事務職に配置されるとともに主事の資格を付与され,平成7年担当職1級の資格を付与された(甲147)。 (イ) 原告Ba 原告B(昭和18年1月1日生)は,昭和36年D高等学校卒業,昭和37年E学院F科修了後,同年10月1日被告に入社し,総務部庶務課勤務(その後,組織変更により,同課は,昭和45年3月総務部庶務第2課,昭和49年7月 1月1日生)は,昭和36年D高等学校卒業,昭和37年E学院F科修了後,同年10月1日被告に入社し,総務部庶務課勤務(その後,組織変更により,同課は,昭和45年3月総務部庶務第2課,昭和49年7月人事総務本部名古屋総務部庶務第2課,昭和50年3月人事総務本部名古屋総務部庶務課,昭和62年6月名古屋本店人事総務部庶務課,昭和63年6月名古屋本店人事総務部となった。)を経て,平成5年12月31日,被告を退職した(乙83)。 b 原告Bは,被告に入社した昭和37年10月書記見習の資格を付与され,昭和38年4月書記3級に,昭和42年4月書記2級に,昭和47年4月書記1級に,それぞれ昇格した。その後,原告Bは,昭和63年6月事務職に配置されるとともに主事の資格を付与された。 イ被告(ア) 被告は,寛文9年(1669年)創業の専門商社であり,主として,鉄鋼,特殊鋼,非鉄金属,これらの原料・製品等の売買,輸出入等を業とする株式会社である。被告は,昭和12年4月25日,「株式会社岡谷商店」として設立され,昭和18年,商号を「岡谷鋼機株式会社」に変更し,今日に至っている。 (イ) 被告は,本社を名古屋に置き,平成9年2月末当時,名古屋本店,東京本店及び大阪店を中核として,8支店,11営業所,7出張所,3駐在員事務所にわたる国内事業所及び海外支店1か所,海外事務所4か所,海外現地法人8社の海外拠点を擁していた。また,29の子会社及び8の関連会社を有していた(乙34の1)。 (ウ) 平成9年2月末当時の,被告の資本金は91億2809万円,従業員総数は930人であり,うち総合職が703人,事務職が197人,その他の職掌が30人であった。また,男女別の内訳は,男性従業員が733人,女性従業員が197人であった(乙34の1)。 (エ) 総数は930人であり,うち総合職が703人,事務職が197人,その他の職掌が30人であった。また,男女別の内訳は,男性従業員が733人,女性従業員が197人であった(乙34の1)。 (エ) 被告の,平成8年度(平成8年3月1日から平成9年2月28日まで)の売上高は5461億円,経常利益は22億円,当期利益は15億円であった。そして,売上構成比率としては,国内取引が売上高の約89パーセントを占めていた(乙34の1)。また,被告では,鉄鋼,特殊鋼,非鉄金属,機械関係の売上げが売上高の90パーセント以上を占めていた。 ウ労働組合被告には,昭和44年9月9日結成された岡谷鋼機労働組合(以下「組合」という。)があり,原告Aは,その組合員である。原告Bも組合の組合員であったが,退職と同時に組合を脱退した(弁論の全趣旨)。 (2) 被告の人事制度の概要ア職掌別人事制度等導入(昭和63年6月)以前について(ア) 資格制度等被告の就業規則上,社員は,一般職,技能職,倉庫作業職,運転職,保安職及び特務職にあるもののすべてをいう旨定義されていたが,各社員区分の定義は必ずしも明らかではなかった(乙11の1)。 また,就業規則の資格制規程において,社員には従事する職種並びにその学識・経験・能力及び人物により,それぞれ資格を付する旨の定めがあり,一般職員と一般職以外の社員を区別してそれぞれ資格が定められていたが,一般職員の資格としては,「参事一級」,「参事二級」,「参事三級」,「主事一級」,「主事二級」,「主事三級」,「書記一級」,「書記二級」,「書記三級」,「書記見習」の各資格が列挙されていた(乙11の1)。 (イ) 賃金体系昭和40年代後半ころから昭和63年までの間,被告の給料は本俸と各種手当から成って 」,「書記二級」,「書記三級」,「書記見習」の各資格が列挙されていた(乙11の1)。 (イ) 賃金体系昭和40年代後半ころから昭和63年までの間,被告の給料は本俸と各種手当から成っていた。このうち本俸については,被告と組合との団体交渉によって定められた18歳から55歳までの標準年齢給に基づき,被告が従業員各人について人事考課を行い,管理職については標準年齢給対比プラス,マイナス約5パーセント,組合員については,標準年齢給対比プラス,マイナス約3パーセント程度を上下限として,確定していた。 イ職掌別人事制度の導入等(ア) 新人事制度の導入被告は,就業規則を改定し,昭和63年6月1日,新人事制度(以下「職掌別人事制度」という。)を実施したが,同人事制度の概要は以下のとおりである。 a 職掌区分の設定「総合職」,「事務職」,「保健衛生職」,「技能職」,「倉庫作業職・特殊作業職」の各職掌区分を定めた(就業規則2条)。 なお,上記職掌区分のうち,「総合職」の職掌基準は「国内外にわたる商社活動各分野における基幹的業務を主として担当し,かつ,将来にわたり国内,海外の各事業所において勤務することを予定される職掌。」と定められ,「事務職」の職掌基準は「基幹的業務に関する事務的又は補助的業務を主として担当し,かつ,将来にわたり住居移転を伴わない一定地域内の各事業所において勤務することを予定される職掌。」と定められた(乙12)。 b 資格の設定「総合職」,「事務職」,「保健衛生職」,「技能職」,「倉庫作業職・特殊作業職」の区分にそれぞれ3ないし9段階の資格を設けた。 このうち,総合職の資格は,理事,副理事,参事,副参事,課長役,課長補,主事,書記1級,書記2級から成り,事 職」,「倉庫作業職・特殊作業職」の区分にそれぞれ3ないし9段階の資格を設けた。 このうち,総合職の資格は,理事,副理事,参事,副参事,課長役,課長補,主事,書記1級,書記2級から成り,事務職の資格は,主務,主事,書記1級,書記2級から成る(資格制規程2条)が,このうち理事,副理事,参事,副参事,課長役,課長補,主務の各資格に関する資格基準は,別表1のとおりである(乙12)。 c 昇格昇格は,原則として年1回4月に行うものとされ(資格制規程7条),別表2の昇格基準の最低年数を経過した者を対象とし,勤務成績を基に資格基準に照らして,被告が判断し行うものとされた。ただし,主事までは昇格基準の最低年数を経過した者は自動昇格するとされた(資格制規程9条。乙12)。 d 職掌への配置及び資格の付与被告は,大半の男性従業員を「総合職」に配置し,女性従業員(電話交換手,テレタイピスト,英文・邦文タイピストを含む。)を「事務職」に配置する措置をとった。そして,職掌別人事制度導入時点で在籍した従業員に対し,別表3のとおり資格を付与した(乙45の1)。 (イ) 職掌変更制度の新設被告は,併せて職掌変更制度を設けた。これは,各職掌で一定の条件を充足した従業員について職掌変更を認める制度であるところ,職掌変更規程1条は,変更の条件につき「各職掌で一定資格以上(一定資格とは総合職は課長補,事務職(略)は主務(略))を有し,一定資格における経験年数が5年を超える者で会社が知識,能力,資質いずれの面よりも新職掌の一定資格への転換が妥当であると判断し,且つ本人の同意を得た場合,所定の手続きを経て,新職掌に変更させる。」と定めていた。 また,上記職掌変更規程2条は,職掌変更後の資格につき,変更後の資 の一定資格への転換が妥当であると判断し,且つ本人の同意を得た場合,所定の手続きを経て,新職掌に変更させる。」と定めていた。 また,上記職掌変更規程2条は,職掌変更後の資格につき,変更後の資格は一定資格(上記1条の規定のとおり,事務職が総合職に職掌変更した場合は,課長補)の1年目とする旨定めており,職掌変更後の給与につき,初年度は新職掌の本俸表の標準年齢34歳を適用する旨定めていた(乙12)。 (ウ) 給与制度の改定被告は,職掌別人事制度の導入に伴い,各職掌ごとに標準年齢テーブル方式による本俸及び各資格ごとに一定の資格手当を定めた。 (エ) 職掌別人事制度に関する労使協定被告は,平成元年6月13日,組合と,職掌別人事制度等のうち,給与制度に関する協定を締結した。 その後,被告は,平成5年6月14日,組合と,昭和63年度実施の職掌別人事制度等に関する協定を締結し,協定書を取り交わした(以下「平成5年協定」という。)。 ウトータル人事システムの導入等(ア) 被告は,平成7年3月30日,組合との間で,新人事制度(以下「トータル人事システム」という。)導入に関する協定を締結し(以下「平成7年協定」という。),トータル人事システム導入について合意した上,就業規則を改定し,同年4月1日,トータル人事システムを実施した。 トータル人事システムの概要は以下のとおりである。 (イ) 職掌の再編従来の「倉庫作業職・特殊作業職」を統合して「作業職」という職掌を新設するとともに,その職掌基準を定めた。 (ウ) 職能資格制度の導入従来の資格制度を廃止し,新たに職能資格制度を導入したが,これに伴い新資格が設けられた。総合職の新資格は,経営職1級,経営職2級,管理職1級,管理職 た。 (ウ) 職能資格制度の導入従来の資格制度を廃止し,新たに職能資格制度を導入したが,これに伴い新資格が設けられた。総合職の新資格は,経営職1級,経営職2級,管理職1級,管理職2級,管理職3級,指導職1級,指導職2級,担当職1級,担当職2級,担当職3級から成り,事務職の新資格は,指導職1級,指導職2級,担当職1級,担当職2級,担当職3級から成るが,このうち,総合職管理職1級,管理職2級,指導職1級(以上営業部門のみ),担当職1級(営業部門及び管理部門),事務職指導職2級及び担当職1級の各職能資格の職能資格基準は別表4のとおりである(乙19)。 なお,職能資格制度の導入に伴い,総合職及び事務職の各従業員は,原則として別表5のとおり従来の資格から新資格に移行した(乙44,47)。ただし,事務職指導職1級という資格は職能資格制度の導入に伴い新設された資格であったため,これに該当する者については,格付の改正(昇格)を行った。 (エ) 昇格制度の改定及び降格制度の導入a 昇格制度の改定職能資格制度の導入に伴い,昇格に当たっては,職掌ごとに以下の要件をすべて満たした者を対象に昇格判定を行い,昇格者を決定するとされた。なお,各資格ごとの必要年数は別表6のとおりである(乙19,47)。 (a) 総合職① 各資格ごとの必要年数を経過していること② 人事考課の評定結果が所定水準以上であることなお,管理職2級,管理職3級,指導職2級への昇格時には,①,②に加え,次の③から⑤までの要件をすべて満たした者を対象に昇格判定を行い,昇格者を決定するとされた。 ③ 所定の通信教育を修了していること④ 所定の昇格前研修に参加していること⑤ 試験( までの要件をすべて満たした者を対象に昇格判定を行い,昇格者を決定するとされた。 ③ 所定の通信教育を修了していること④ 所定の昇格前研修に参加していること⑤ 試験(ペーパーテスト,レポート,面接等)の結果が所定水準以上であること。また,指導職2級への昇格については日商簿記検定3級に合格していること(b) 事務職① 各資格ごとの必要年数を経過していること② 人事考課の評定結果が所定水準以上であることなお,指導職1級,指導職2級への昇格時には,①,②に加え,次の③から⑤までの要件をすべて満たした者を対象に昇格判定を行い,昇格者を決定するとされた。 ③ 所定の通信教育を修了していること④ 所定の昇格前研修に参加していること⑤ 試験(ペーパーテスト,レポート,面接等)の結果が所定水準以上であること。また,指導職2級への昇格については日商簿記検定3級に合格していることb 降格制度の導入新たに降格制度が導入され,総合職管理職3級以上の者で,人事考課(昇給・昇格考課)において考課ランクがD考課であった者について,被告から本人に通告し,2年目においても考課ランクがD考課であった者については,1等級下の資格に降格するものとされた。 (オ) 給与制度の変更a 月例給従来の本俸(調整手当を含む。)を廃止するとともに,本俸部分を年齢給と職能給に分け,各職掌ごとに年齢給及び職能給間の配分金額を定めた。また,資格手当(職能資格手当)の金額を改定した。 そして,本俸の廃止に伴い,地域手当,寒冷地手当,別居手当に関し,従来本俸に対する定率で定めていたものを各職掌・職能資格ごとの定額に改定した。 b 賞与 格手当)の金額を改定した。 そして,本俸の廃止に伴い,地域手当,寒冷地手当,別居手当に関し,従来本俸に対する定率で定めていたものを各職掌・職能資格ごとの定額に改定した。 b 賞与賞与の計算方法につき,各人の基礎額(年齢給+職能給+調整給)に,資格別支給月数及び一定の考課係数を乗ずることとした。 (カ) 職掌変更制度の改定職掌変更規程が改定され,職掌変更は,「(1) 本人の申請および上長の推薦による事務職から総合職への職掌変更」及び「(2) 会社が,変更が妥当であると判断し,かつ本人の同意に基づく職掌変更」の2種類とする旨規定された(職掌変更規程2条。乙20)。このうち,上記(1)の事務職から総合職への職掌変更制度の概要は以下のとおりである(乙20)。 a 申請要件等(職掌変更規程3条(1))申請対象者について「標準年齢29才以上かつ資格等級が担当職1級以上の事務職」と定められたほか,「職掌変更についての上長による推薦」が申請要件とされた(その後,被告は,平成12年6月,申請対象者の標準年令を「29才以上」から「25才以上」に引き下げた。)。 また,選考の結果,職掌変更をなし得なかった場合,次年度以降も継続して申請することができると定められた一方,申請希望者が申請を中断した場合には,中断の事由が傷病等のやむを得ない場合であると被告が判断した場合を除き,次年度以降の申請の権利を喪失する旨定められた(その後,被告は,平成12年6月,職掌変更申請を中断してもなお翌年以降の申請を認めるよう職掌変更制度を改めた。)。 b 選考方法(職掌変更規程3条(3))被告が職掌変更の申請者に対し,①通信教育,②職掌変更前研修,③レポート,④面接を課し,これに基づき職掌変更の可否を 職掌変更制度を改めた。)。 b 選考方法(職掌変更規程3条(3))被告が職掌変更の申請者に対し,①通信教育,②職掌変更前研修,③レポート,④面接を課し,これに基づき職掌変更の可否を判断するものとされた。 c 職掌変更後の資格,給与(職掌変更規程4条)事務職が総合職へ職掌変更した場合の職掌変更後の資格につき,総合職担当職1級の1年目とする旨及び職掌変更後の給与につき,職掌変更直前の職能給及び調整給の合計額を総合職担当職1級の職能給表に当てはめ,職能給表上の最も近い上位金額を職掌変更後の職能給とする旨定められた。 エ平成15年6月の人事制度の改定(ア) 被告は,平成15年6月1日,人事制度を改定した(以下,改定後の人事制度を「平成15年人事制度」という。)が,同人事制度の概要は以下のとおりである。 (イ) 総合職に関する役割等級制度の導入総合職について,職能資格制度を廃止し,新たに「役割等級・資格制規程」(乙97の1)を制定して,役割等級制度を導入した。上記役割等級には,S4等級,S3等級,S2等級,S1等級の各等級が存在するが,各等級の定義については,別表7のとおりである(乙97の1)。 また,総合職S4等級には,マネジメントコースとスペシャリストコースという2種類のコースがあるが,S4等級へ昇格すると,まず,上記2種類のコースのいずれにも該当しないS4等級者であるS4スタッフとなり,その後,自らの意志でコースを選択していくこととなる。そして,マネジメントコースには,役職登用者,出向代表者,マネジメント認定者の3種類があり,スペシャリストコースは,スペシャリスト認定者である(乙98)。このうち,マネジメント認定者とは,S4等級のうち職制登用に足る資質を有していると被告により 代表者,マネジメント認定者の3種類があり,スペシャリストコースは,スペシャリスト認定者である(乙98)。このうち,マネジメント認定者とは,S4等級のうち職制登用に足る資質を有していると被告により認定された者をいうが(役割等級・資格制規程15条),マネジメント認定に当たっては,次の要件をすべて満たした者を対象に判定を行い,認定者を決定するものと定められている(役割等級・資格制規程17条。乙97の1)。 a 自己申告していることb 所定の通信教育を修了していることc 所定の昇格前研修に参加し,その評価が所定水準以上であることd 認定試験(面接)の結果が所定水準以上であることなお,従来の職能資格制度における総合職管理職1級の者は,役割等級制度における総合職S4等級に移行し,従来の職能資格制度における総合職管理職2級以上の者並びに役職への登用経験がある総合職管理職3級以上の者で制度移行時に役職登用者及び出向代表者でない者は,役割等級制度における総合職S4等級マネジメントコースマネジメント認定者に移行した。また,従来の職能資格制度における総合職指導職1級の者は役割等級制度における総合職S3等級に移行した。 (ウ) 給与制度の変更成果主義の徹底を図るため,役割等級制度の導入に伴い,総合職S4等級についてはすべて年俸制とされるとともに,総合職S1等級ないしS3等級については役割給+成果給という給与体系に変更された。 そして,役割等級制度の移行初年度に総合職S4等級に移行した者については,従来どおりの賞与考課を実施し,決定した考課結果と賞与月数に基づいて算出された賞与及び現行月例給の年間支給額を「年俸額」とし,その年俸額を月例支給部分と賞与時支給部分に分けて支給することとされた。また,総合職S1 考課を実施し,決定した考課結果と賞与月数に基づいて算出された賞与及び現行月例給の年間支給額を「年俸額」とし,その年俸額を月例支給部分と賞与時支給部分に分けて支給することとされた。また,総合職S1等級ないしS3等級に適用される役割給は,従業員の役割等級及びバンド(同じ等級内における昇給区分)に応じて決定され,成果給は,毎年の成果を反映させるべく,従業員の役割等級,バンド及び人事考課の結果に応じて支給することとされた(乙97の2,98)。 (エ) 昇格制度の変更総合職の昇格に関し,以下の要件をすべて満たした者を対象に昇格判定を行い,昇格者を決定するものとされた(役割等級・資格制規程9条。乙97の1)。 aS4等級への昇格(a) 人事考課の評定結果が所定水準以上であること(b) 自己申告していること(c) 所定の通信教育を修了していること(d) 所定の昇格前研修に参加し,その評価が所定水準以上であること(e) 昇格試験(面接)の結果が所定水準以上であることbS3等級への昇格(a) 人事考課の評定結果が所定水準以上であること(b) 所定の通信教育修了または資格取得をしていることcS2等級への昇格(a) 大卒入社後3年を経過していること(b) 試験(ペーパーテスト)の結果が所定水準以上であること(c) 日商簿記検定3級試験に合格していること(d) TOEICにおいて500点以上のスコアを有していること(オ) 職掌変更制度の改定事務職が総合職に職掌変更した場合,変更後の資格については総合職S2等級の1年目(バンド1)に格付されるものと定められた。ただし,S2等級への昇格基準である①TOEIC500点以 制度の改定事務職が総合職に職掌変更した場合,変更後の資格については総合職S2等級の1年目(バンド1)に格付されるものと定められた。ただし,S2等級への昇格基準である①TOEIC500点以上の獲得,②簿記3級の取得,③社内経理・審査試験の合格のいずれかの基準をクリアできていない場合,S1等級の3年目(バンド3)に格付すると定められた(職掌変更規程4条(1)。乙97の3,98)。 また,職掌変更後の給与について,職掌変更後に格付けられた役割等級及びバンドの給与を適用する旨並びに職掌変更後の役割給が変更直前の職能給,資格手当,調整給及び移行手当の合計額を下回る場合,その差額を調整手当として支給する旨定められた(職掌変更規程4条(2)。乙97の3,98)。 (3) 被告の平成5年当時の退職金制度ア被告においては,平成5年当時,退職者の退職時の本俸に計算勤続年数に応じて定められた一定の支給率を乗じて算出した額の50パーセント相当額を退職一時金として支給し,残り50パーセントについては退職年金として支給する旨の定めがあった(退職金規程2条1項。甲22)。 被告では,上記退職年金を第2年金と呼称していたが,被告は,第2年金のほか,被告拠出金による年金制度を設けており,これを第1年金と呼称していた。これは,勤続1年以上の者を支給対象とし,その者が勤続20年以上かつ満50歳以上で退職する場合に,10年保証の年金(適格年金)として支給し,上記条件を満たさない者については一時金として支給するものである。そして,両年金とも,原則として退職者が満60歳に達した月の翌月から支給する旨定められていた(退職年金規程8条3項。甲22)。 もっとも,一定の条件の下,受給者の希望により,年金に代わる一時金を受給することが選択できる旨定めら 者が満60歳に達した月の翌月から支給する旨定められていた(退職年金規程8条3項。甲22)。 もっとも,一定の条件の下,受給者の希望により,年金に代わる一時金を受給することが選択できる旨定められていた(同規程20条1項)。そして,年金支給開始前に受給者の選択により一時金として支給する場合には,第1年金に関しては,その者に支給すべき当該年金の月額に92.29626を乗じて得た金額に,更にその者の選択時年齢に応じた一定の割引率を乗じた金額を支給し,第2年金に関しては,その者に支給すべき当該年金の月額に133.33671を乗じて得た金額に,更にその者の選択時年齢に応じた一定の割引率を乗じた金額を支給するとされていた(同条3項)。 イ被告には早期退職割増金制度が存在したが,これは,勤続15年以上かつ満50歳の者を支給対象とし,本俸に計算勤続年数に応じて定められた一定の支給率を乗じて算出した額及び職掌別に定められた一定の金額(総合職は1500万円,事務職は800万円)の合計額を,退職時に早期退職割増金として,一時金として支給するものであった(早期退職割増金規程1条,5条。甲22)。 (4) 原告らと同標準年齢の男性従業員の昇格状況平成4年から平成14年までの,原告Aの比較対象となる同標準年齢の男性従業員(ただし,「男性従業員」とは,職掌別人事制度導入以降,総合職となった男性従業員のみをいう。以下同様とする。)の資格別人員の推移は別表8のとおりである(甲233の1,2,320,321,乙67の1から3まで,68・69の各1から4まで,70の1から3まで,71の1,2,72の1から3まで,73・74の各1,2)。 また,原告Bが退職した平成5年12月当時,原告Bの比較対象となる男性従業員34人のうち,32人が課長役以上の資格,2人が課 から3まで,71の1,2,72の1から3まで,73・74の各1,2)。 また,原告Bが退職した平成5年12月当時,原告Bの比較対象となる男性従業員34人のうち,32人が課長役以上の資格,2人が課長補の資格にあった(乙76の1から3まで)。 他方,原告Bが退職した平成5年12月当時,女性従業員は全員事務職であり,平成14年当時も,被告が総合職として新規に採用した女性従業員及び総合職に職掌変更した女性従業員1人を除く大半の女性従業員が事務職であった(弁論の全趣旨)。 (5) 原告らの賃金等と同標準年齢の男性従業員との差額上記(2),(3)の被告の人事制度,退職金制度によれば,被告では,職掌区分及び職掌区分ごとに設けられた資格(職能資格,役割等級を含む。)と月例賃金,一時金,退職金,退職年金等の支給額が連動しているため,職掌区分の差異及び職掌区分ごとに設けられた資格の差異に対応して,その大半が総合職である男性従業員と,事務職である女性従業員との間で格差が生じていくことになる(弁論の全趣旨)。 原告らに生じた格差は以下のとおりである。 ア原告A(ア) 原告Aの平成5年1月から平成16年1月までの月例賃金(平成5年1月から平成7年3月までは本俸及び調整手当を合計したもの,平成7年4月から平成12年5月までは年齢給,職能給及び調整手当を合計したもの,平成12年6月から平成16年1月までは職能給,移行手当及び調整給を合計したものをいう。)及び一時金(夏期手当及び年末手当から成る。以下同様とする。)の合計額は,別表9のとおり,6249万8870円である(甲16の1から44まで,203の1から42まで,341の1から14まで,342の1から15まで,343の1から14まで,344の1から12まで,403の1から17まで)。 (イ) 他方, ある(甲16の1から44まで,203の1から42まで,341の1から14まで,342の1から15まで,343の1から14まで,344の1から12まで,403の1から17まで)。 (イ) 他方,原告Aと同標準年齢で平均的に昇格した男性従業員(平成7年3月までは総合職課長補の資格を有しており,平成7年4月1日総合職管理職2級に,平成10年4月1日総合職管理職1級にそれぞれ昇格し,平成15年6月1日総合職S4等級の役割等級を付与された男性従業員をいう。)の平成5年1月から平成16年1月までの月例賃金(平成5年1月から平成7年3月までは本俸,資格手当及び調整手当を合計したもの,平成7年4月から平成12年5月までは年齢給,職能給及び資格手当を合計したもの,平成12年6月から平成15年5月までは職能給及び資格手当を合計したもの,平成15年6月から平成16年1月までは月例給をいう。)及び一時金の合計額は,別表9のとおり,1億2371万5670円である(甲233の1,2,234,320,321,乙67の1から3まで,68・69の各1から4まで,70の1から3まで,71の1,2,72の1から3まで,73・74の各1,2,82)。 また,原告Aと同標準年齢で昇格が最下位である男性従業員(平成7年3月までは総合職課長補の資格を有しており,平成7年4月1日総合職指導職1級に格付され,平成15年6月1日総合職S3等級の役割等級を付与された男性従業員をいう。)の平成5年1月から平成16年1月までの月例賃金(平成5年1月から平成7年3月までは本俸,資格手当及び調整手当を合計したもの,平成7年4月から平成12年5月までは年齢給,職能給,資格手当及び調整手当を合計したもの,平成12年6月から平成15年5月までは職能給,移行手当及び資格手当を合計したもの,平 整手当を合計したもの,平成7年4月から平成12年5月までは年齢給,職能給,資格手当及び調整手当を合計したもの,平成12年6月から平成15年5月までは職能給,移行手当及び資格手当を合計したもの,平成15年6月から平成16年1月までは役割給,移行手当,標準考課による成果給及び新移行手当を合計したものをいう。)及び一時金の合計額は,別表10のとおり,1億1053万2890円である(甲5,6,121,204から206まで,233の1,2,320,321,345,346,402,乙67の1から3まで,68・69の各1から4まで,70の1から3まで,71の1,2,72の1から3まで,73・74の各1,2,79から81まで)。 (ウ) したがって,原告Aと,原告Aと同標準年齢で平均的に昇格した男性従業員との平成5年1月から平成16年1月までの賃金の差額は,別表9のとおり,6121万6800円となり,原告Aと同標準年齢で昇格が最下位である男性従業員との同期間における賃金の差額は,別表10のとおり,4803万4020円となる。 イ原告B(ア) 原告Bの平成5年1月から同年12月までの月例給(本俸及び調整手当を合計したものをいう。)及び一時金は,別表11のとおり,合計574万7700円である(甲19の1から15まで)。 また,原告Bが支給された退職金等(退職金,早期退職割増金,第2年金及び第1年金の合計額をいう。以下同様とする。)は,別表12のとおり,合計3650万7900円である(甲18)。 (イ) 他方,原告Bと同標準年齢で平均的に昇格した男性従業員(平成5年当時,総合職課長役の資格を有していた男性従業員をいう。)の平成5年1月から同年12月までの月例給(本俸,資格手当及び調整手当を合計したものをいう。)及び一時金の合計額は 格した男性従業員(平成5年当時,総合職課長役の資格を有していた男性従業員をいう。)の平成5年1月から同年12月までの月例給(本俸,資格手当及び調整手当を合計したものをいう。)及び一時金の合計額は,別表11のとおり,合計1079万0900円であり(甲5,121,乙75・76の各1から3まで),退職金等の額は,別表12のとおり,合計6365万8600円である(甲18,乙12)。 また,原告Bと同標準年齢で昇格が最下位の男性従業員(平成5年当時,総合職課長補の資格を有していた男性従業員をいう。)の平成5年1月から同年12月までの月例給(本俸,資格手当及び調整手当を合計したものをいう。)及び一時金の合計額は,別表13のとおり,合計1014万2300円であり(甲5,121,乙75・76の各1から3まで),退職金等の額は,別表14のとおり,合計6361万2900円である(甲18,乙12)。 (ウ) したがって,原告Bと,原告Bと同標準年齢で平均的に昇格した男性従業員との平成5年1月から同年12月までの賃金の差額は,別表11のとおり,504万3200円となり,退職金等の差額は,別表12のとおり,2715万0700円となる。 また,原告Bと,原告Bと同標準年齢で昇格が最下位である男性従業員との上記期間における賃金の差額は,別表13のとおり,439万4600円となり,退職金等の差額は,別表14のとおり,2710万5000円となる。 2 争点本件の主たる争点は,(1)被告において,男性従業員と女性従業員との間に昇格,賃金等処遇上の格差があるか。格差があるとして,それが違法な男女差別に基づく差別的取扱いであるか,(2)原告Aが,被告との雇用契約上,平成7年4月1日から総合職管理職2級に配置され昇格したものとして取り扱われる地位 差があるか。格差があるとして,それが違法な男女差別に基づく差別的取扱いであるか,(2)原告Aが,被告との雇用契約上,平成7年4月1日から総合職管理職2級に配置され昇格したものとして取り扱われる地位,平成10年4月1日から総合職管理職1級に配置され昇格したものとして取り扱われる地位並びに平成15年6月1日から総合職S4等級の役割等級及びマネジメントコースマネジメント認定者の種類を付与されたものとして取り扱われる地位又は平成7年4月1日から総合職指導職1級に配置され昇格したものとして取り扱われる地位及び平成15年6月1日から総合職S3等級の役割等級を付与されたものとして取り扱われる地位にあるか,(3)原告らに差額賃金等の請求権があるか,(4)原告らに差額賃金等相当損害金の請求権があるか,(5)原告らに慰謝料及び弁護士費用の請求権があるかの5点である。 3 争点に関する当事者の主張争点に関する当事者の主張の骨子は以下のとおりであるが,それぞれの主張の詳細については,別紙主張対比表のとおりである。 (1) 争点(1)(差別の有無及びその違法性)について(原告らの主張)ア女性従業員に対する差別の存在(ア) 被告においては,昭和63年の職掌別人事制度導入に至るまで,別紙主張対比表(原告らの主張)第1のとおり,女性従業員に対する賃金差別,昇格差別,退職に関する差別等あらゆる女性差別が強行されてきた。 (イ) 被告は,別紙主張対比表(原告らの主張)第2のとおり,従来からの女性差別を維持固定化する目的で,昭和63年6月,職掌別人事制度の導入を強行し,男性従業員の大半を総合職に配置する一方,女性従業員を強制的に事務職に配置した。その後,平成7年4月,トータル人事システムの導入により,被告における女性差別は一層固定化された。 度の導入を強行し,男性従業員の大半を総合職に配置する一方,女性従業員を強制的に事務職に配置した。その後,平成7年4月,トータル人事システムの導入により,被告における女性差別は一層固定化された。 (ウ) このように,被告が女性差別を強行,維持してきた結果,別紙主張対比表(原告らの主張)第3のとおり,被告においては,原告らと同標準年齢の男性従業員との間で,資格・昇格,賃金,退職金等処遇に関する格差が存在するに至った。 イ原告らに対する差別の違法性(ア) 原告らは,別紙主張対比表(原告らの主張)第4のとおり,男性同様「正社員」又は「一般職員」として被告に雇用された。また,別紙主張対比表(原告らの出張)第5のとおり,原告らが従事してきた業務は,男性従業員の業務と同一内容又は同等の業務であった。 したがって,原告らは,被告との間で,男性と同一内容の労働契約を締結したものである。 それにもかかわらず,被告が,前記ア(イ)のとおり,職掌別人事制度の導入を強行し,男性従業員の大半を総合職に,原告ら女性従業員を強制的に事務職に配置した結果,被告における女性差別は維持固定化され,前記ア(ウ)のとおり,原告らは,男女間の処遇格差による不利益を被った。 したがって,別紙主張対比表(原告らの主張)第6のとおり,被告の原告らに対する性差に基づく差別的取扱いは,労働基準法3条及び4条に違反し,民法90条の公序,憲法14条等に反し,無効,違法である。 (イ) 仮に,被告が主張するように,原告らが被告に採用された当時,男女の別による採用区分又は職種区分が存在したとしても,これらの区分は,性差に基づく不合理な差別であるから,別紙主張対比表(原告らの主張)第7のとおり,労働基準法3条及び4条,民法90条の公序に反し,無効 による採用区分又は職種区分が存在したとしても,これらの区分は,性差に基づく不合理な差別であるから,別紙主張対比表(原告らの主張)第7のとおり,労働基準法3条及び4条,民法90条の公序に反し,無効,違法である。 (被告の主張)ア別紙主張対比表(被告の主張)第4のとおり,被告は,原告らを男性とは異なる職掌として採用したのであり,また,別紙主張対比表(被告の主張)第5のとおり,原告ら事務職の担当業務と総合職の担当業務とは,厳然とした差があった。 このように,男女間の資格・昇格,賃金,退職金等処遇の差異は,性差によるものではなく,職掌区分に基づくものである。 したがって,被告においては,原告らが主張するような性差に基づく差別的取扱いは存在しない。 イ上記アのとおり,被告における男女間の処遇の差異は,職掌区分によるものであり,性差に基づくものではないことから,何ら違法ではない。また,別紙主張対比表(被告の主張)第2のとおり,被告が昭和63年に導入した職掌別人事制度及び平成7年に導入したトータル人事システムは,従来から存在した職掌区分を整理,明確化したにすぎないのであって,これらを違法であるとする原告らの主張(別紙主張対比表(原告らの主張)第2及び第6)は誤りである。 ウ別紙主張対比表(被告の主張)第7のとおり,男女別の職種区分は,被告が原告らを採用した当時においても,合理的な雇用管理区分だったのであり,男女差別ではなかったことから,やはり違法ではない。 (2) 争点(2)(原告Aの地位の確認)について(原告らの主張)ア被告が強行導入した職掌別人事制度の下では,職掌区分が賃金格差のもっとも大きな原因となった。さらに,トータル人事システムによって職能給制度が導入されたため,資格によって賃金額が決 らの主張)ア被告が強行導入した職掌別人事制度の下では,職掌区分が賃金格差のもっとも大きな原因となった。さらに,トータル人事システムによって職能給制度が導入されたため,資格によって賃金額が決定されることになった。このように,被告における賃金は,職掌区分と資格に連動することになった。 かかる制度下において,原告Aに総合職及び管理職の地位確認の請求権が認められないとすれば,賃金や退職金ばかりか,年金額についても,将来にわたって男女格差が継続することになってしまう。 したがって,原告Aには地位確認を求める訴えの利益がある。 イ別紙主張対比表(原告らの主張)第8のとおり,被告は,労働契約上の債務として男女を平等に取り扱うべき義務を負っているため,男女について同一の処遇をしなければならない。また,前記のとおり,違法な差別的取扱いである職掌別人事制度を定めた就業規則及び労働協約は無効,違法であるが,労働基準法13条の類推適用又は労働組合法16条及び労働基準法93条の適用により,就業規則及び労働協約のうち無効とされた女性従業員に関する部分について,男性従業員に関する基準が女性従業員にも適用されると解される。 したがって,原告Aは,別紙主張対比表(原告らの主張)第8の3のとおり,対象となる同標準年齢の男性従業員と同一の地位にあるものである。 (被告の主張)ア原告Aの地位確認請求は,昇格請求権や職掌変更請求権なるものを根拠としていると解されるところ,これらについては,被告と原告Aの雇用契約の内容となっておらず,また,被告の就業規則にも定められていない。したがって,原告Aは,雇用契約上,被告に対する地位確認請求権や職掌変更請求権なるものを有していない。 また,使用者の裁量の範囲である昇格等の人事権行使につ 告の就業規則にも定められていない。したがって,原告Aは,雇用契約上,被告に対する地位確認請求権や職掌変更請求権なるものを有していない。 また,使用者の裁量の範囲である昇格等の人事権行使については,労働者側に昇格請求権や職掌変更請求権なるものは認められない。 よって,実体法上,訴訟法上のいかんを問わず,雇用契約自体又は法律により上記請求権は発生しないのであるから,確認の利益をうんぬんするまでもない。 イ被告は,職掌区分という合理的な雇用管理区分に基づき,従業員を処遇するものであり,そもそも労働契約上の債務として男女を平等に取り扱うべき義務を負っていない。また,被告の就業規則並びに職掌別人事制度及びトータル人事システムに関する労使協定に無効となる部分は存在しないことから,原告Aの主張は失当である。 (3) 争点(3)(差額賃金等の請求権)について(原告らの主張)別紙主張対比表(原告らの主張)第9のとおり,原告らは,被告に対し,差額賃金等の請求権を有している。 (被告の主張)ア差額賃金等の不存在総合職と事務職とでは労務内容が異なる以上,その対価である賃金額が異なるのは当然であることから,そもそも原告らが請求する差額賃金等は存在しない。 イ消滅時効仮に,原告らの差額賃金請求権が認められるとしても,別紙主張対比表(被告の主張)第9の2のとおり,原告らの請求する差額賃金等請求権の一部は,労働基準法115条所定の消滅時効により消滅した。そして,被告は,原告らに対し,本件口頭弁論期日において,上記消滅時効を援用する旨の意思表示をした。 したがって,別紙主張対比表(被告の主張)第9の2記載の差額賃金請求権の存否のみが審理の対象となる。 (4) 争点(4)(差額賃金相当損害金 て,上記消滅時効を援用する旨の意思表示をした。 したがって,別紙主張対比表(被告の主張)第9の2記載の差額賃金請求権の存否のみが審理の対象となる。 (4) 争点(4)(差額賃金相当損害金の請求権)について(原告らの主張)別紙主張対比表(原告らの主張)第10のとおり,原告らは,被告に対し,債務不履行又は不法行為に基づき,前記(3)(原告らの主張)記載の差額賃金等に相当する損害賠償金を請求することができる。 (被告の主張)前記(3)(被告の主張)のとおり,そもそも差額賃金相当額の損害自体が存在しておらず,仮に原告らの損害賠償請求権が認められるとしても,別紙主張対比表(被告の主張)第10の2のとおり,その一部は消滅時効により消滅した。 (5) 争点(5)(慰謝料及び弁護士費用の請求権)について(原告らの主張)別紙主張対比表(原告らの主張)第11のとおり,原告らは,被告に対し,それぞれ慰謝料請求権及び弁護士費用請求権を有する。 (被告の主張)争う。別紙主張対比表(被告の主張)第11のとおりである。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(差別の有無及びその違法性)について(1) 男女間の格差の有無についてア前記争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実(4)のとおり,原告Aの比較対象となる男性従業員の資格別人員の推移は別表8のとおりであり,平成14年当時,48人のうち約85パーセントの男性従業員が総合職管理職1級以上の資格を有していた。また,平成5年12月当時,原告Bの比較対象となる同標準年齢の男性従業員34人のうち,約94パーセントの男性従業員が課長役以上の資格を有していた。 他方,原告Bが退職した平成5年12月当時,女性従業員は全員事務職であ 原告Bの比較対象となる同標準年齢の男性従業員34人のうち,約94パーセントの男性従業員が課長役以上の資格を有していた。 他方,原告Bが退職した平成5年12月当時,女性従業員は全員事務職であり,平成14年当時も,被告が総合職として新規に採用した女性従業員及び総合職に職掌変更した女性従業員1人を除く大半の女性従業員が事務職であった。 イ被告では,職掌区分及び職掌区分ごとに設けられた資格と月例賃金,一時金,退職金,退職年金等の支給額が連動しているため,職掌区分の差異及び職掌区分ごとに設けられた資格の差異に対応して,その大半が総合職である男性従業員と,事務職である女性従業員との間で格差が生じていくことになるものであって,原告らと比較対象となる男性従業員との賃金等の格差は,前記争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実(5)のとおりである。 ウ以上によれば,被告においては,男性従業員と女性従業員との間では,賃金等について著しい格差があると認めることができる。 (2) 格差が生じた理由についてア原告らは前記(1)のような格差が生じたのは違法な男女差別によるものであると主張するのに対し,被告は従事する業務に対応する職掌区分の差異によるものであると主張するところ,前記(1)のようにほぼ同時期に入社した同年齢の男女の従業員間において,昇格,賃金等について著しい格差がある場合には,その格差が生じたことについて合理的な理由が認められない限り,性の違いによって生じたものと推認することができると解されるから,以下において,まずこれらの格差が生じた理由について検討する。 イ前提事実前記争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実に,後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下 て,まずこれらの格差が生じた理由について検討する。 イ前提事実前記争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実に,後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 (ア) 被告の業務について被告は主として鉄鋼製品及び原料を取り扱う専門商社であるが,その取扱商品は,鉄鋼製品等にとどまらず,配管材料を中心とする住宅設備機器,合成樹脂原料等の化成品,工作機械等多岐にわたる。また,取引機能のみならず,販売代行機能,情報収集伝達機能,在庫管理機能,輸送・保管・加工機能等多様な機能を有している(甲382,乙66)。 そして,商社としての基本的な機能である取引機能とは,メーカーが製造する上記商品を仕入れ,これをユーザーや特約店に販売することにより利益を上げることを基本とするものであり,メーカーとユーザーといった業者と業者をつなぐ契約を成立させること,すなわち成約業務が中心的な業務である。そして,成約業務においては,受注活動,発注計画,メーカーとの生産量の交渉,他商社や特約店への在庫融通の折衝,納期管理,クレーム処理,集金,与信管理等が必要となり(乙64,65,証人G・第20回口頭弁論調書),高度の交渉能力,商品知識,情報収集能力等が要求されることから,一般的にみて,処理の困難度が高い業務であるということができる。 (イ) 原告らが入社した当時の被告女性従業員の就業実態,退職状況等a 昭和48年ころ当時,愛知県における高等学校卒業の女性の全就職者(総数1万5184人)のうち,76.8パーセントに当たる1万1670人が事務的職業に従事していた(乙25)。 b 昭和36年から昭和40年までの間,被告の女性従業員の数は257人から413人まで増加した一方,296人( 76.8パーセントに当たる1万1670人が事務的職業に従事していた(乙25)。 b 昭和36年から昭和40年までの間,被告の女性従業員の数は257人から413人まで増加した一方,296人(年間平均約60人)の女性従業員が退職したが,うち約9割5分(283人)が高等学校卒業者であり,156人が退職事由として結婚を挙げていた。また,同期間の女性従業員の平均年齢は21歳1か月から22歳9か月までの間で推移しており,平均勤続年数は3年9か月から4年7か月までの間で推移した(乙21,22)。 昭和41年から昭和45年までの間,被告の女性従業員の数は427人から518人に増加した一方,478人(年間平均約96人)の女性従業員が退職したが,高等学校卒業者がその約9割(438人)を占め,232人が結婚を退職事由として挙げていた。また,同期間の女性従業員の平均年齢は,21歳3か月から22歳11か月までの間で推移しており,平均勤続年数は3年2か月から3年11か月までの間で推移した(乙21,22)。 昭和46年から昭和50年までの間,被告の女性従業員の数は508人から645人までの間で推移した。他方,上記期間に590人(年間平均約118人)の女性従業員が退職したが,高等学校卒業者がその約7割(410人),短大卒業者が約3割(179人)を占め,291人が結婚を退職事由として挙げていた。また,同期間の女性従業員の平均年齢は,21歳4か月から23歳11か月までの間で推移しており,平均勤続年数は3年から4年1か月までの間で推移した(乙21,22)。 (ウ) 原告らが入社した当時の募集,選考,採用についてa 募集について(a) 被告は,原告らが入社した昭和37年から昭和42年当時,男性については,大学及び高等学 2)。 (ウ) 原告らが入社した当時の募集,選考,採用についてa 募集について(a) 被告は,原告らが入社した昭和37年から昭和42年当時,男性については,大学及び高等学校の新卒者の定期採用を,女性については高等学校の新卒者の定期採用を行っていた。また,電話交換手,邦文・英文タイピスト等特殊技能職の女性については,人員の不足が生じた場合,随時採用を行っていた。 大学卒男性の採用については,被告が指定大学の就職担当部門に求人票を提出し,学内に掲示してもらったり,就職担当部門の窓口に備え付けてもらっていた。また,高等学校卒男性の採用については,職業安定所所定の高卒用求人票に,職種として「男子一般職」と,作業内容として「営業,経理等」とそれぞれ記載し,更に現行給与その他の必要事項を記載し,職業安定所の受付印を押印してもらった上で,高等学校の就職担当部門に求人依頼をした。 他方,高等学校卒女性の採用については,上記高等学校卒男性と同様の手続で求人依頼をしたが,高卒用求人票に,職種として「一般事務」と,作業内容として「台帳(売掛,仕入,契約)整理,計算事務,伝票起票,電話応対等」とそれぞれ記載した(乙34の1)。また,就業場所については,それぞれの事業所における地域限定勤務職員として採用することを前提としていた(乙34の1)。ちなみに,昭和49年当時の高卒用求人票においては,就業場所として「本社および補足事項欄による」と記載し,補足事項欄において「名古屋店」,「豊田営業所」,「富山営業所」,「静岡営業所」,「東海出張所」を掲げている(乙35)。したがって,原告らが入社した当時の高卒用求人票にも,乙35と同様,就業場所として,一定地域内の事業所が記載されていたものと推認することができる。 営業所」,「東海出張所」を掲げている(乙35)。したがって,原告らが入社した当時の高卒用求人票にも,乙35と同様,就業場所として,一定地域内の事業所が記載されていたものと推認することができる。 英文・邦文タイピスト等の採用については,所定の用紙に,職種として邦文・英文タイピスト等と,作業内容として当該業務に必要な具体的技術をそれぞれ記載し,更に現行給与その他の必要事項を記載して,職業安定所又は各種学校に対し,求人依頼をした(乙34の1)。 (b) 原告Bが入社した当時,被告は,タイピスト募集のため,E学院進路指導部に求人票を提出したが,同求人票の勤務地欄には「名古屋(栄又は柳橋)」と記載し,採用条件の職種欄では「和文」を丸で囲み,その他希望条件の欄には「自宅より通勤可能な者」と記載した(乙36。なお,乙36は昭和49年当時の求人票であるが,記載内容は昭和37年当時のものとほぼ同一であったと推認できる。)。 b 選考,採用について(a) 原告らが入社した当時,被告の社内通達である「採用規程」には,一般職員の採用手続に関し,4条に「一般職員を採用する時はあらかじめ総務部人事課においてその人物・学識・身体・身元その他必要な事項を考査の上,総務部人事課長が申請手続をとるものとする。」,「ただし女子一般職員の採用に関しては各部店の人事主管課において前項に準じて考査の上,当該人事主管課長が申請手続をとるものとする。」との定めがあった(乙10)。 (b) 原告らが入社した当時,被告は,上記「採用規程」に基づき,採用のための選考を,筆記試験,面接試験等により行っていた。 男性従業員の選考,採用については,本社総務部人事課が担当していたが,採用に当たり,勤務地について,国 基づき,採用のための選考を,筆記試験,面接試験等により行っていた。 男性従業員の選考,採用については,本社総務部人事課が担当していたが,採用に当たり,勤務地について,国内の全事業所のほか海外勤務もあり得る旨説明していた。他方,女性従業員の選考,採用については,各部店,具体的には,名古屋地区については名古屋店,東京地区については東京支店,大阪地区については大阪支店の人事主管課が担当していた(乙34の1,証人H・第11回口頭弁論調書)。また,男性従業員と女性従業員とでは,面接試験等の実施日及び会場も異なっていた(原告A本人・第28回口頭弁論調書)。 なお,原告らが入社した当時,被告本社及び名古屋店の両者が名古屋にあったことから,名古屋店の人事主管課を兼ねる本社総務部人事課が,名古屋店として,中部地区の女性従業員の選考,採用手続を管轄しており,名古屋店管内の各営業所において採用する女性従業員については,その実際の選考,採用手続は各営業所ごとにそれぞれの営業所において行っていた(乙34の1,証人H・第11回口頭弁論調書,弁論の全趣旨)。 (エ) 入社式,研修,配属についてa 入社式について被告における新入社員の入社式については,男性,女性を問わず,毎年4月1日に実施されていたが,男性の新入社員については名古屋の本社で入社式が行われ,他方,女性の新入社員については東京,名古屋,大阪の各店において入社式が行われていた(証人I・第7回口頭弁論調書)。 b 新入社員研修について原告らの入社当時,被告の社内通達である「教育訓練規程」の「① 新入社員教育訓練要項」には,採用後の集合研修に関し,「集合教育は,男子新入社員に対しては本社において各店人事主管課長が教育 原告らの入社当時,被告の社内通達である「教育訓練規程」の「① 新入社員教育訓練要項」には,採用後の集合研修に関し,「集合教育は,男子新入社員に対しては本社において各店人事主管課長が教育内容・担当講師等細部の内容を協議の上計画し,4月1日より実施するものとする。 女子新入社員に対しては各店人事主管課が各店の事情に応じ教育内容を計画し,3月中旬より同月末日までの間に実施するものとする。」旨の定めがあった(乙10)。 被告は,上記規定に基づき,男性従業員については,大学卒,高等学校卒を問わず,採用年の4月1日から3か月又は4か月にわたり,集合教育及び巡回実習教育から成る新入社員研修を実施した。なお,上記通達では,巡回実習教育については大学卒男性の新入社員のみを対象とする旨の定めがあったが,上記のとおり,高等学校卒の男性新入社員に対しても巡回実習教育を実施した。 他方,被告は,女性従業員については,採用年の3月中旬から同月31日までの間,集合教育による新入社員研修を実施した(甲43,証人I・第7回口頭弁論調書)。 c 配属について被告は,採用後,男性従業員を本社,国内の支店・営業所・出張所,駐在員事務所,海外事務所及び海外現地法人のいずれかに配属した。また,被告は,男性従業員の大部分を営業部門に配属し,その余を人事総務部門,経理部門,審査部門の管理部門等に配属した。 他方,被告は,女性従業員については,当該従業員を採用した事業所に配属した(乙34の1)。 (オ) 原告らが入社した当時の被告の給与体系等a 原告Bが被告に入社した昭和37年ころ,被告の給与における本俸は年齢給及び能力給によって構成されていた。 年齢給については,被告の社内通達である「給与規 当時の被告の給与体系等a 原告Bが被告に入社した昭和37年ころ,被告の給与における本俸は年齢給及び能力給によって構成されていた。 年齢給については,被告の社内通達である「給与規程内規」3条において,「男子正社員」については「給与規程内規」別表(1)の年令給表(甲)が,「女子社員及び準社員」については年令給表(乙)がそれぞれ適用されるものと定められていた。 また,能力給については,「給与規程内規」4条で,「別表(2)の能力給表の通りこれを定め職員の資格に応じ,その能力,成績及び資格経過年数を勘案の上各等級を適用する」と定められていたが,別表(2)の能力給表は,「<イ>能力給表(男子正社員)」,「(ロ)能力給表(女子社員)」及び「<ハ>能力給表(準社員)」に区分されていた。そして,各能力給表では,資格ごとに等級とそれに対応する能力給が定められていたが,「男子正社員」の資格としては,「書記見習」,「書記三級」,「書記二級」,「書記一級」,「主事三級」,「主事二級」,「主事一級」,「参事三級」,「参事二級」,「参事一級」の各資格が,「女子社員」の資格としては,「書記見習」,「書記三級」,「書記二級」,「書記一級」の各資格が掲げられていた。 さらに,「給与規程内規」6条では,新規学校卒業者に対する初任本俸について,「男子正社員」,「女子社員」,「男子準社員」に区分され,それぞれにつき学歴に対応する本俸額が定められていた(乙6)。 b 原告Aが被告に入社した昭和42年,年齢給について,「給与規程内規」3条が改正され,「男子及び女子一般職」については「給与規程内規」別表(1)の年令給表(甲)が,「一般職以外の社員」については年令給表(乙)が適用されるものとされた。しかし,能力給については,前記aと が改正され,「男子及び女子一般職」については「給与規程内規」別表(1)の年令給表(甲)が,「一般職以外の社員」については年令給表(乙)が適用されるものとされた。しかし,能力給については,前記aとほぼ同様に,「男子一般職員」と「女子一般職員」を区別し,それぞれ異なる能力給表に基づいて決定されており,各能力給表の資格の種類についても,前記aと同様,「男子一般職員」については「書記見習」から「参事一級」まで,「女子一般職員」については「書記見習」から「書記一級」までの各資格が掲げられていた。また,新規学校卒業者に対する新卒初任本俸についても,「男子一般職員」と「女子一般職員」が区別され,それぞれにつき学歴に対応する本俸額が定められていた(乙8)。 (カ) 原告らが入社後従事した業務等a 原告A(a) 原告Aは,被告に入社後,名古屋店鉄鋼部事務課に配属されて以来,平成5年9月に名古屋本店化成品本部化成品室に異動するまで,被告の鉄鋼部門で勤務した。 被告の鉄鋼部門は,鉄鋼製品を使用する自動車,造船,電機などのユーザー及び特約店に対し,鉄鋼メーカーから仕入れた製品を供給する業務を行う部門であり,取扱商品ごとに,鋼板(薄板類),鋼管(パイプ類),鋼材(薄板やパイプ以外の厚板を含む鉄鋼品類)及び原料の各部署に区分されている。 また,鉄鋼製品の取引形態について,ユーザーから注文を受けた商社がメーカーから鉄鋼製品を仕入れユーザーに販売するひも付き取引と商社が自己のリスクにおいて鉄鋼製品をメーカーから仕入れ,販売する店売り取引とに区分される。また,メーカーから商社の倉庫へ納入される形態の在庫取引とメーカーからエンドユーザーへ直接納入される形態の直送取引に区分される(甲294,乙64)。 (b) 原告A 売り取引とに区分される。また,メーカーから商社の倉庫へ納入される形態の在庫取引とメーカーからエンドユーザーへ直接納入される形態の直送取引に区分される(甲294,乙64)。 (b) 原告Aが所属した鉄鋼部門のうち,昭和63年6月から平成3年3月まで所属した名古屋本店鉄鋼部鋼材室及び平成3年4月から平成5年8月まで所属した名古屋本店鉄鋼部鋼材・原料室では,鉄鋼製品のうち鋼材・原料関係の丸棒,形鋼,H型鋼,厚板等の取引を担っており,主要な仕入先メーカーは,新日本製鐵株式会社,日本鋼管株式会社,王子製鉄株式会社,共英製鋼株式会社,山口鋼業株式会社等であり,主要なユーザーは,大手土木建設会社,地元建設会社,特約店等であった(甲294,乙64)。 鋼材・原料室は,平成4年10月1日当時,総合職17人,事務職7人(うち1人が原告A)から成り,店売チーム,原料チーム,土木・建材チーム及び建築・建材チームの4つのチームで構成されていたが,原告Aは,店売チーム,土木・建材チーム及び建築・建材チームを担当していた(乙64)。 (c) 原告Aは,鉄鋼部門において,鉄鋼製品の取引に関する業務に従事したが,その具体的内容は,以下のとおりである。 ① 集金業務の集中により繁忙であった営業担当者を手伝うため,昭和46年以前の3,4年の間,集金業務に携わった。主として愛知県知立市にある取引先に定期的に赴いて集金をしていたが,営業担当者から指示されて,単発的に集金業務を行った取引先もあった(甲148の1,294,原告A本人・第18回及び第19回口頭弁論調書)。 ② 昭和45年ころの1年間ほど,J等被告の特約店とのスポット取引(継続的な取引商品以外の商品についての取引)に関する受発注業務に携わった。具体的には,特約 及び第19回口頭弁論調書)。 ② 昭和45年ころの1年間ほど,J等被告の特約店とのスポット取引(継続的な取引商品以外の商品についての取引)に関する受発注業務に携わった。具体的には,特約店から電話による注文を受けた際,営業担当者があらかじめ決定,作成したユーザー別の価格表の範囲内で,特約店と交渉し,販売価格を決定した上,被告の倉庫又は社外委託の倉庫若しくは仕入先メーカーに受注品の在庫の有無を確認し,納期までに在庫品を特約店に納入するよう連絡又は発注をした。ほとんどの場合,被告が保有する在庫の中から受注品を調達することができたが,調達することができない場合でも,従前からの取引先であるメーカーに発注し,調達することが可能であった(甲148の1,294,原告A本人・第25回口頭弁論調書)。 ③ 入社2年目ころから昭和54年ころまでの間,営業担当者が決定した売買条件について,その指示に基づき売買約票を起票する業務に携わった。そして,売買約票を起票した際には,営業担当者に回付し,そのチェックを受けた上で,上司の決裁を受けるという流れになっていた(甲294,原告A本人・第25回口頭弁論調書)。 ④ 営業担当者がメーカーとの間で発注総量を折衝,決定後,その指示に基づき,メーカーの指定注文書を起票する業務に携わった。また,ユーザーから見積り依頼がなされた場合,営業担当者の指示に基づき,見積書の起票又は清書をする業務にも携わった(甲148の1,294,乙64)。 ⑤ 昭和46年以降,売上・仕入計上,売掛金勘定元帳管理,売掛金残高照合,入金処理,請求書作成,商品台帳管理の各業務に携わった(甲148の1及び2,294,原告A本人・第18回口頭弁論調書)。 ⑥ 特約店等のユーザー等から取扱商品に対する 理,売掛金残高照合,入金処理,請求書作成,商品台帳管理の各業務に携わった(甲148の1及び2,294,原告A本人・第18回口頭弁論調書)。 ⑥ 特約店等のユーザー等から取扱商品に対するクレームがあった場合,原告Aが即時に対応が可能であり,かつ,電話対応で済ますことができる程度のクレームであるときには,自らの判断に基づき,電話によるクレーム対応をしていた。取扱商品の納期に関する問い合わせについても,同様であった(乙294,原告A本人・第18回及び第25回口頭弁論調書)。 ⑦ その他,課長・部長の書類箱の整理,郵便物等の配付,来客へのお茶だし,食券・通勤用定期券の配付等所属部署内の庶務的業務に従事した(甲148の1及び2)。 他方,鉄鋼部門の男性従業員は,主として成約業務全般を担当しており,具体的には,発注計画の策定業務やメーカー・ユーザーとの契約条件に関する折衝業務,売買約票の作成業務等に携わっていた。 また,取扱商品の納期に関する問い合わせや取引に関するクレームのうち,電話による対応では解決することができないような深刻,重大なものについては,これに対応する業務にも従事していた。 さらに,売上代金の集金業務や取引先の与信管理等の業務に携わっていた(乙64)。 (d) その後原告Aは,平成5年9月,名古屋本店化成品本部化成品室に異動した。 被告の化成品本部は,化学メーカーから仕入れた化成品原料をプラスチックの原料を使用する製造業及び成型・加工ユーザーに供給する業務並びに成型・加工メーカーからプラスチック製品を仕入れ,ユーザーに供給する業務を担当する部門であり,取引のある主要なメーカーは,三菱レイヨン株式会社,大日本インキ化学工業株式会社,三菱樹脂株式 務並びに成型・加工メーカーからプラスチック製品を仕入れ,ユーザーに供給する業務を担当する部門であり,取引のある主要なメーカーは,三菱レイヨン株式会社,大日本インキ化学工業株式会社,三菱樹脂株式会社等であり,主要なユーザーは,INAX株式会社,国城金型工業株式会社,エイシン株式会社,カイインダストリー株式会社等であった。 化成品本部化成品室は,平成5年10月1日当時,総合職6人,事務職3人(うち1人が原告A)から成っていた(乙64)。 原告Aは,化成品の取引に関する業務に従事したが,その具体的内容は,以下のとおりである。 ① 受発注業務,具体的には,ユーザーからファクシミリ又は電話により注文を受け,品物の数量,納入先,仕入先メーカーを確認の上,これらをオンライン端末に入力する業務,オンライン入力作業により売買約票の作成及びメーカーに対する注文連絡票の送付が自動的になされた後,メーカーから在庫数,納期等に関する連絡をもらい,必要に応じて納期の調整等を行った上,その内容をユーザーに連絡する業務に携わった(甲294,原告A本人・第18回口頭弁論調書)。 ② ユーザー等から納期に関する問い合わせ,化成品原料用の袋の破袋等のクレームがあった場合,原告Aが即時に対応でき,かつ,電話対応で済ますことができる程度のクレームであるときには,自らの判断に基づき,電話によって納期に関する問い合わせやクレームに対応する業務に携わった。また,クレーム対応に伴い,ユーザーからの早期の納入要請に応えるため,総合職に相談の上,運送業者の手配をしたこともあった(甲294,原告A本人・第25回口頭弁論調書)。 ③ 総合職の指示に基づき,在庫商品の量が,あらかじめ総合職が設定した在庫商品の下限を下回った場 の上,運送業者の手配をしたこともあった(甲294,原告A本人・第25回口頭弁論調書)。 ③ 総合職の指示に基づき,在庫商品の量が,あらかじめ総合職が設定した在庫商品の下限を下回った場合,メーカーに対し在庫商品の生産を発注する業務に携わった(証人G・第20回口頭弁論調書)。 ④ 売上・仕入計上業務,売掛金勘定元帳管理,売掛金残高照合,請求書作成,入金処理等の各業務に携わった(甲148の1,294)。 ⑤ その他,所属部署の庶務的業務に従事した(甲148の1及び2)。 他方,化成品室の総合職は,主として,いわゆる商流作り,すなわち,化成品,化成品原料のユーザー及びメーカーを仲介し,商品の需給ルートを作り上げる業務及び成約業務に従事した。 また,取扱商品の納期に関する問い合わせや取引に関するクレームのうち,電話による対応では解決できない深刻,重大なものについては,これらに対応する業務にも携わっていた。 その他売上代金の集金業務や取引先の与信管理業務にも従事していた(乙64,証人G・第20回口頭弁論調書)。 (e) その後原告Aは,平成7年9月,名古屋本店業務部第2室に異動した。 名古屋本店業務部は,各営業部門に共通する事務処理業務を集中化することによって事務効率化の推進及び営業戦略の強化を図ることなどを目的として,平成7年9月に発足した部署であり,第2室は,非鉄金属部の売上仕入計上業務,買掛金勘定元帳業務,配管住設部の売上仕入計上業務,売掛金勘定元帳業務,買掛金勘定元帳業務及び化成品本部の受発注業務,売上仕入計上業務,売掛金勘定元帳業務,買掛金勘定元帳業務等を担当していた。 同室は,平成7年9月当時,配管住設部所属の総合職1人を室長と 買掛金勘定元帳業務及び化成品本部の受発注業務,売上仕入計上業務,売掛金勘定元帳業務,買掛金勘定元帳業務等を担当していた。 同室は,平成7年9月当時,配管住設部所属の総合職1人を室長とし,非鉄金属部所属の事務職1人,配管住設部所属の事務職3人及び化成品本部所属の事務職5人(うち1人が原告A)の合計10人で構成されていた(乙64)。 原告Aの業務部第2室における担当業務は,化成品室における業務と同じであった。 他方,業務部第2室の総合職は,室長として,業務配分・室員の勤怠等の管理業務に従事するとともに,各営業部の損益計画に関する業務等に従事した(乙64)。 (f) その後原告Aは,平成14年3月,名古屋本店業務部第1室に異動した。 原告Aが業務部第1室で従事した業務の具体的内容は,以下のとおりである。 ① 売掛金に関する業務として,売上計上,納品書・請求書の作成,計上伝票処理,入金処理,売元帳残高確認,売上伝票のファイリング等の業務に携わった(甲294)。 ② 買掛金に関する業務として,請求書の内容確認,請求書と買掛金元帳との消込照合等の業務に携わった(甲294)。 b 原告B(a) 原告Bは,入社後,本社総務部庶務課に配属されて以来,退職するまで,被告の人事総務部門に勤務した。 原告Bが昭和63年6月から退職する平成5年12月まで所属していた名古屋本店人事総務部では,①人事・総務チーム及び②厚生・営繕チームの2つのチームが編成されていた。このうち①人事・総務チームの人事担当は,東京にある人事総務本部と連携をとりながら,従業員の人事を管理すべく,長期的な人員計画,組織・制度の制定・改廃,採用,配置,異動,処遇,人事考課, れていた。このうち①人事・総務チームの人事担当は,東京にある人事総務本部と連携をとりながら,従業員の人事を管理すべく,長期的な人員計画,組織・制度の制定・改廃,採用,配置,異動,処遇,人事考課,社員教育・研修等に関する業務を担当し,総務担当は,株式,法務,許認可,広報,文書管理等に関する業務を担当していた。 他方,原告Bが所属していた②厚生・営繕チームは,安全衛生,福利厚生,営繕・修繕,庶務関係の業務を担当していた。 同チームは,平成5年当時,Kチームリーダーを含む総合職4人,事務職2人(原告B及びL),保健衛生職1人,特務職1人及び運転職1人の合計9人で構成されていた(乙83)。 (b) 原告Bは,入社後,邦文タイピストとして,タイプ業務に携わった。 その後,原告Bは,頚肩腕症にり患し,昭和43年ころ,邦文タイピストから庶務的業務の担当に変わったが(甲333,原告B本人・第14回口頭弁論調書),担当した主要な庶務的業務の具体的内容は以下のとおりである。 ① 購入した物資やサービス費用に関する入出金及び資産価値の変動に伴い会計伝票を発行する業務に従事した(甲333)。 ② 4万円から8万円程度の現金を保管し,日常発生する少額の出費に関する請求に対し,現金を渡す業務(小口現金管理業務)に従事した(甲333)。 ③ 被告の保有する資産に関し,手書きの資産台帳を作成し,保管する業務に従事した(甲333)。原告Bは,各資産ごとの台帳を作成する際に不動産について現地で現況を確認するなどといったことまではせず,被告に存した各種の帳簿に基づいてこれを整理する形で各台帳を作成したものである(原告B本人・第15回口頭弁論調書)。 ④ 電話加入権台帳を作成し, 況を確認するなどといったことまではせず,被告に存した各種の帳簿に基づいてこれを整理する形で各台帳を作成したものである(原告B本人・第15回口頭弁論調書)。 ④ 電話加入権台帳を作成し,保管する業務に従事した(甲333)。 ⑤ 乗用車,複写機等のリース物件につき,リース料支払報告書作成業務,リース物件管理台帳作成業務に従事した(甲333)。 ⑥ 役員の社用車等につき,その走行距離等について秘書課等に報告する業務,秘書課等の買換決定に基づき,秘書課・経理課等の買換りん議に関する承認を得て,社用車の売買に関する契約書を作成する業務に従事した(原告B本人・第25回口頭弁論調書)。 ⑦ 自動車保険等の契約手続,更改手続に関し,契約書類等の作成・とりまとめ等の事務処理業務に従事した(原告B本人・第24回及び第25回口頭弁論調書)。 ⑧ 物故者法要に関する業務被告の物故者法要は,在職中逝去した役員及び従業員並びにM会(被告従業員のOB組織)会員の逝去者を対象としており,毎年1回執り行われているものであるが,原告Bは,物故者法要につき,あらかじめ定められた掲載基準に基づく物故者法要名簿の作成,関係部署長・出席者に対する同名簿の配付,遺族等に対する案内状の送付,庶務課長に相談した上で,法要用のまんじゅう,遺族に送るため等のお茶,お墓に供える花等の手配,法要に欠席した遺族等に対する法要を施行した旨の手紙の作成・送付,物故者法要名簿の訂正等の業務に携わった。 他方,物故者法要の日時の決定とこれに関する寺と秘書室との日程調整,寺とのお経料の交渉,法要の司会進行等は,庶務課長が行っていた(甲219,原告B本人・第25回口頭弁論調書)。 ⑨ 福利厚生に関する業務 の日時の決定とこれに関する寺と秘書室との日程調整,寺とのお経料の交渉,法要の司会進行等は,庶務課長が行っていた(甲219,原告B本人・第25回口頭弁論調書)。 ⑨ 福利厚生に関する業務厚生行事である海の家に関する業務,厚生大会(ほとんどが社員旅行)に関する業務,クラブ活動補助等の業務,給料引きカード作成の業務,福利厚生施設の会員証等の発行の業務等に携わった(甲219)。原告Bは,海の家として新たな物件について契約するときは,現地で物件の確認をし,その経営者と交渉した上で,適当な物件を2,3件探し出し,これを上司に報告して,上司と相談して決めていた(原告B本人・第14回口頭弁論調書)。 ⑩ 諸団体管理加入に関する業務町内会,神社,特殊法人等の会費の支払を要する団体の会費支払状況の管理業務に携わった。原告Bは,団体への加入,脱退について,自ら決定することはなく,各決裁権者の決裁を得ていた(原告B本人・第14回及び第15回口頭弁論調書)。 (c) 原告Bは,以下のとおり,その担当業務を引き継いだ。 ① 昭和43年ころ,Nという女性従業員から庶務的業務の引継ぎを開始し,昭和44年12月に同人が退職した際,同人の担当業務をすべて引き継いだ(甲94,333)。 ② 昭和47年ころ,庶務課長のOが健康保険組合に異動した際,同人から,主として福利厚生に関する業務((b)⑨),小口現金管理業務((b)②)等の業務を引き継いだ(甲94,333,原告B本人・第14回及び第24回口頭弁論調書)。 ③ 昭和54年ころ,課長補のPから,手書きの資産台帳作成・管理業務((b)③),リース物件管理台帳等作成業務((b)⑤),社用車に関する業務((b)⑥),物故者法要に関する業務(( 。 ③ 昭和54年ころ,課長補のPから,手書きの資産台帳作成・管理業務((b)③),リース物件管理台帳等作成業務((b)⑤),社用車に関する業務((b)⑥),物故者法要に関する業務((b)⑧)を引き継いだ(甲94,333)。 ④ Qが,昭和63年に人事総務部の課長補に異動してきた際(甲221,222の1,2),同人に対して,手書きの資産台帳作成・管理業務((b)③),リース物件に関する業務((b)⑤)のうち,リース車及び事務機器に関する業務を引き継いだ(甲94,原告B本人・第24回口頭弁論調書)。 ⑤ 原告Bが平成5年に退職した際,Pに対して物故者法要に関する業務((b)⑧)を,Qに対してリース料支払報告書作成業務((b)⑤)を,主任役のR(甲222の2)に対して電話加入権台帳作成業務((b)④)を,それぞれ引き継いだ(甲94,98,原告B本人・第14回及び第24回口頭弁論調書)。 (d) 被告の管理部門における原告B以外の者の担当業務等は以下のとおりであった。 L(昭和26年12月21日生)は,昭和45年S高等学校卒業後,昭和49年11月被告に入社し,人事総務本部名古屋総務部庶務第1課勤務(その後,組織変更により,同課は,昭和50年3月人事総務本部名古屋人事総務部庶務課,昭和62年6月名古屋本店人事総務部庶務課,昭和63年6月名古屋本店人事総務部,平成9年3月名古屋本店人事総務部総務室となった。),平成13年10月開発本部新商品・新事業開発室勤務を経て,現在に至っている(甲123,384,乙83)。 Lは,被告に入社した昭和49年11月書記見習の資格を付与され,昭和50年10月書記3級に,昭和54年4月書記2級に,昭和59年4月書記1級に,それぞれ昇格した。その後,Lは,昭和63年 Lは,被告に入社した昭和49年11月書記見習の資格を付与され,昭和50年10月書記3級に,昭和54年4月書記2級に,昭和59年4月書記1級に,それぞれ昇格した。その後,Lは,昭和63年6月事務職に配置されるとともに主事の資格を付与され,平成7年4月担当職1級に,平成8年4月指導職2級に,それぞれ昇格した(甲123)。Lは,平成15年6月1日,職掌変更制度により,総合職に職掌変更され,S2等級の役割等級を付与された(甲384)。 Lは,平成5年当時,原告Bと同じく,名古屋本店人事総務部の厚生・営繕チームに所属していた(乙83)。 Lは,総務部庶務第1課等において,社宅使用料の給料天引き手続,社宅申請書類・台帳の管理業務,転勤に伴う引っ越し手配,印鑑・名刺の発注及び代金の支払等の業務に携わった(甲124,381)。 他方,人事総務部門のうち,庶務担当部門の男性従業員は,主として,社内外の公式行事,社宅・寮の運用管理,賃貸不動産の運営管理,各種保険の契約管理等に関する全社にまたがる長期的な基本方針の策定,年度計画の立案,個々のテーマについての具体的な企画案の作成及びこれらに関し役員会の決裁を得る業務等に従事していた。 なお,被告は,心身の故障等により営業部門で客先対応ができなくなったなどの男性従業員については,社内的な対応業務が中心となる庶務部門に配属することが多かった(乙83)。 (キ) 転勤の実績被告では,総合職の男性従業員の90パーセント以上が,転居を伴う異動を経験しているが,他方,女性従業員のほとんどが,転居を伴う異動を経験していない(証人H・第12回口頭弁論調書,弁論の全趣旨)。 (ク) 被告の人事制度変更の経緯等a 被告は,商社活動の高度化,多 るが,他方,女性従業員のほとんどが,転居を伴う異動を経験していない(証人H・第12回口頭弁論調書,弁論の全趣旨)。 (ク) 被告の人事制度変更の経緯等a 被告は,商社活動の高度化,多様化に対処すべく「組織の活性化」及び「人の活性化」を図るとして,昭和63年2月16日,東京で行われた団体交渉において,組合に対し,文書により組織・人事制度変更について提案し,その内容について説明した。また,被告は,組合に対し,同年6月1日を目途に組織・人事制度の変更を実施したい旨申し入れた(甲26,乙39)。 上記提案のうち,人事制度変更案の主たる目的は,従来おおまかであった職掌区分を整理してその内容を明確化すること,職掌区分ごとに資格制度を設け,これに基づき従業員の待遇を決定すること等であった(乙45の1)。 なお,上記提案に先立つ昭和60年,「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律」(以下「旧均等法」という。)が制定され,同法7条において,「事業主は,労働者の募集及び採用について,女子に対して男子と均等な機会を与えるように努めなければならない。」と,同法8条において,「事業主は,労働者の配置及び昇進について,女子労働者に対して男子労働者と均等な取扱いをするよう努めなければならない。」とそれぞれ定められたところ(当裁判所に顕著),被告の上記人事制度変更案には,旧均等法の制定も少なからぬ影響を及ぼしていた(弁論の全趣旨)。 これに対し,組合は,「職掌区分」に関しては,現存する職種間の賃金格差を正当化・固定化するものであり,また,「資格制度」に関しては,将来的に資格と賃金が結びつく可能性があるなどとして,被告の上記提案に反対する旨の組合見解を述べるとともに,被告 存する職種間の賃金格差を正当化・固定化するものであり,また,「資格制度」に関しては,将来的に資格と賃金が結びつく可能性があるなどとして,被告の上記提案に反対する旨の組合見解を述べるとともに,被告に対し,組織・人事制度の変更を強行しないよう申し入れた(甲26,乙34の1)。 組合は,昭和63年3月11日及び翌12日に代議員総会を開催し,組織・人事制度変更対策委員会を設置した(甲184)。 その後,被告の前記提案に関し,組合は,組織・人事制度変更対策委員会を中心として,同年4月5日,同月11日,同月20日の3回にわたり,被告と団体交渉を重ねたが,同月5日及び同月11日は,新人事制度に関する質疑応答をするにとどまり,また,同月20日は,組合が組織・人事制度の変更と給与改定交渉を切り離して交渉するように求めたことなどから,被告の提案の具体的な内容に踏み込んで交渉するには至らなかった(乙34の1)。 組合と被告は,同年5月11日,団体交渉を開催し,ようやく被告の提案に関する実質的な交渉を始めることができたが,組合は,資格制度を導入すれば,資格給与に移行する懸念があるなどとして,被告の提案に反対意見を表明した(甲30,乙34の1)。 組合は,同月18日開催の団体交渉において,被告の提案につき,職掌区分の新設を認めず,総合職,事務職,保健衛生職を一般職に一本化すること,その給与テーブルを男性・女性の二本立てとすること及び全資格につき最長滞留年数を設け自動昇格制とすることを内容とする対案を示した。しかし,被告は,組合の上記対案は被告の提案の根幹を否定するものであるとして,上記対案を受け入れることはできないと回答し,組合見解との隔たりが大きいことから,組織・人事制度の変更に関する事前交渉は断 かし,被告は,組合の上記対案は被告の提案の根幹を否定するものであるとして,上記対案を受け入れることはできないと回答し,組合見解との隔たりが大きいことから,組織・人事制度の変更に関する事前交渉は断念せざるを得ないと判断した(乙34の1)。 そこで,被告は,組合に対し,同月20日付けで組織・人事制度変更後の就業規則を送付するとともに,内容証明郵便で,同年6月1日付けで組織・人事制度の変更に踏み切る旨及び就業規則変更に関する組合見解を同年5月27日までに提出するよう求める旨の書面を送付した(甲33,34)。 その後,同月24日に開催された団体交渉において,組合は,被告に対し,労使争議中の案件について交渉未成立の段階であるにもかかわらず内示を強行することは不当労働行為にほかならない,同月18日の団体交渉で組合が示した対案の内容につき職場討議において過半数の支持を得たが代議員総会で否決されたため,今回は交渉できないが,被告の提案を受け入れた訳ではないなどと組合見解を述べた。これに対し,被告は,再度組織・人事制度の変更を同年6月1日に実施する旨表明した(甲36,乙34の1)。 組合が被告に対し,同年5月27日,職掌別人事制度は旧均等法違反であるなどとしたためた意見書を提出したため,被告は,同月30日,中央労働基準監督署に対し,同意見書を添付の上,就業規則変更届を提出した(乙34の1,40の1から3まで)。なお,その後組合が同年6月3日付けで追加意見書を提出したため,被告は,同追加意見書も中央労働基準監督署に提出した(乙34の1,41)。 そして,被告は,前記争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実(2)イのとおり,同年6月1日,職掌別人事制度を含む組織・人事制度の変更を実 乙34の1,41)。 そして,被告は,前記争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実(2)イのとおり,同年6月1日,職掌別人事制度を含む組織・人事制度の変更を実施した。 b 職掌別人事制度実施後,組合は,組織変更は認めるが,人事制度の変更は認めない旨主張し,同年6月1日実施した就業規則の変更を直ちに撤回の上交渉するよう要求して,同月23日ストライキ権を確立し,同年7月25日,時限ストライキを実施した(甲113,185,の1,2,乙34の1)。 その後,平成元年ころまでの間,被告と組合は,組織・人事制度の変更について,十数回にわたる団体交渉を実施したが,前記争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実(2)イ(エ)のとおり,職掌別人事制度等のうち給与制度に関する協定は締結したものの,職掌区分及び資格制度については依然として双方の見解が平行線をたどったままだった(甲199,乙34の1)。 被告は,平成2年以降も,組合に対し,職掌別人事制度等に関する団体交渉の開催を呼び掛けたが,組合はこれに応じないまま,平成5年になるまで協定ができない状態が継続した(乙34の1)。 被告が,平成5年2月,組合との団体交渉において,再度,人事・組織制度の変更に関する協定化を早急に実現するための団体交渉を再開したいと申し入れたところ,組合は,これに応じ,その後数回の団体交渉を経て,前記争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実(2)イ(エ)のとおり,同年6月14日,平成5年協定を締結した(乙34の1,42)。 c 被告は,急激な社会環境の変化及び従業員意識の変化に対応すべく,職能資格制度を機軸としたトータル人事システムの導入を企図し ,同年6月14日,平成5年協定を締結した(乙34の1,42)。 c 被告は,急激な社会環境の変化及び従業員意識の変化に対応すべく,職能資格制度を機軸としたトータル人事システムの導入を企図した(乙45の1)。そこで,被告は,平成5年10月,組合に対し,トータル人事システムの骨子を提案するとともに,その具体的内容について検討するため被告及び組合が労使検討委員会を設置することを提案したところ,組合もこれに同意し,労使検討委員会が設置された(乙34の1)。 その後,被告と組合は,合計7回にわたる労使検討委員会を開催した後,労使検討委員会の検討結果を団体交渉で協議することとした。そして,平成6年10月から翌平成7年3月まで10回にわたる団体交渉を実施した結果,同年3月1日双方が合意に至り,前記争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実(2)ウ(ア)のとおり,同月30日に平成7年協定を締結した(乙34の1,44)。 d 被告は,平成14年1月,組合に対し,人事制度の改定を検討している旨伝え,同年7月新人事制度の具体的内容について検討すべく被告と組合とで検討委員会を設置することを申し入れたところ,組合もこれに同意し,労使検討委員会が設置された。そして,被告と組合が,同年8月から同年9月にかけて4回にわたる労使検討委員会を開催した後,被告は,管理職の意見及び労使検討委員会における組合側委員の意見・提案を踏まえた上で,新人事制度案を作成し,平成15年1月,組合に対し,人事制度の改定を申し入れた。 その後,被告と組合は,同年3月24日及び同年4月17日に,団体交渉を実施した結果合意に達したため,同年5月26日新人事制度改定に関する協定を締結し,前記争いのない事実並びに証拠及び弁論の全 その後,被告と組合は,同年3月24日及び同年4月17日に,団体交渉を実施した結果合意に達したため,同年5月26日新人事制度改定に関する協定を締結し,前記争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実(2)エのとおり,同年6月1日,平成15年人事制度を実施した(乙98,99)。 (ケ) 職掌変更の実績等a 原告Aについて原告Aは,トータル人事システムの職掌変更制度に基づき,平成8年4月,平成9年4月,平成10年4月の3回にわたり職掌変更の申請をしたが,いずれの場合も上長の推薦を得られず,職掌変更することができなかった(甲171,173,175,原告A本人・第18回口頭弁論調書)。なお,原告Aは,平成7年4月当時,職掌変更の申請資格があったにもかかわらず,規定を誤解し,申請できないと思っていたため,職掌変更申請をしなかった(甲171,原告A本人・第19回口頭弁論調書)。 原告Aは,平成11年4月,配偶者が長期入院療養生活に入ることになったため,職掌変更申請を見合わせたところ,被告は,原告Aに対し,原告Aが申請をしない理由を証明する資料として医師の診断書等説明資料の提出を求めた(甲176,177)。その後,被告は,原告Aが医師の診断書を添付した介護休業の申出をしたため,原告Aの職掌変更不申請の理由は「中断の事由が傷病等のやむを得ない場合」と同程度であると判断し,以後の原告Aによる再申請を認めることにした(乙85)。 原告Aは,平成12年4月にも職掌変更の申請をしたが,やはり上長の推薦を得ることができなかった(原告A本人・第28回口頭弁論調書)。 その後,原告Aは,平成13年6月18日,被告に対し,職掌変更申請書を提出した(甲241)。そして,同年7月1 り上長の推薦を得ることができなかった(原告A本人・第28回口頭弁論調書)。 その後,原告Aは,平成13年6月18日,被告に対し,職掌変更申請書を提出した(甲241)。そして,同年7月18日の本件訴訟の和解期日において,当裁判所が,被告に対し,和解を前提として,原告Aの職掌変更手続につき,オーバールールとして上長の推薦無しで実施することを勧めた(当裁判所に顕著)。被告は,原告Aに対する面接を行った上で,裁判所の勧告に従って職掌変更手続を開始することとし,その選考手続の一環として,同年9月13日から同月15日まで集合研修を,同月18日及び19日に営業職業基礎実務研修を,また,同年10月からケースで学ぶ中堅社員研修という通信教育を実施した(原告A本人・第28回口頭弁論調書)。しかし,同年11月和解交渉が決裂したため,被告は,原告Aの職掌変更手続を打ち切った(乙96,原告A本人・第28回口頭弁論調書)。 原告Aは,翌平成14年も職掌変更の申請をしたが,上長の推薦を得ることができなかった(原告A本人・第28回口頭弁論調書)。 b TについてTは,平成8年4月,職掌変更申請を行い,上長の推薦を得て,職掌変更手続を開始したが,不適格とされ,職掌変更することができなかった。Tは,翌平成9年4月,再度職掌変更の申請をし,上長の推薦を得た上職掌変更手続を実施した結果,平成10年4月事務職から総合職に職掌変更した(証人T・第16回口頭弁論調書)。 cLについてLは,平成12年6月,職掌変更の申請をしたところ,上長の推薦を得られず,職掌変更することができなかった。Lは,翌平成13年6月,再び職掌変更申請をしたところ,上長の推薦を得ることができたため,職掌変更手続を開始したが,平成14年5月 したところ,上長の推薦を得られず,職掌変更することができなかった。Lは,翌平成13年6月,再び職掌変更申請をしたところ,上長の推薦を得ることができたため,職掌変更手続を開始したが,平成14年5月不適格とされ,職掌変更することができなかった(証人L・第28回口頭弁論調書)。Lは,同年6月,3度目の職掌変更の申請をしたところ,平成15年6月1日事務職から総合職に職掌変更した(弁論の全趣旨)。 d 職掌変更の実績上記のとおり,被告においては,現在まで,原告A,T及びLの3人が事務職から総合職への職掌変更申請をし,うちT及びLの2人が総合職に職掌変更したが,その他の事務職は職掌変更申請すらしていない(弁論の全趣旨)。 (コ) 均等法の成立及びこれに関する通達a 平成9年6月,旧均等法を改正した「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(以下「均等法」という。)が成立し,平成11年4月1日から施行された。 均等法では,「事業主は,労働者の募集及び採用について,女性に対して男性と均等な機会を与えなければならない。」(5条),「事業主は,労働者の配置,昇進及び教育訓練について,労働者が女性であることを理由として,男性と差別的取扱いをしてはならない。」(6条)とされ,それまでの努力義務の規定が強行規定・禁止規定となった(当裁判所に顕著)。 b 労働省婦人局は,コース別雇用管理につき,平成3年10月,「コース別雇用管理の望ましいあり方」と題する通達を発出した(甲73の1,2)。また,労働省女性局は,均等法の成立・施行後,平成12年6月16日,均等法等の規定内容に照らし事業主が留意すべき事項について,「コース等で区分した雇用管理についての留意事項」と題する通達(女発185号 ,労働省女性局は,均等法の成立・施行後,平成12年6月16日,均等法等の規定内容に照らし事業主が留意すべき事項について,「コース等で区分した雇用管理についての留意事項」と題する通達(女発185号)を発出した。同通達では,企画的業務や定型的業務等の業務内容や,転居を伴う転勤の有無等によって幾つかのコースを設定して,コースごとに異なる配置・昇進,教育訓練等の雇用管理を行うシステムを「コース別雇用管理」と呼称し,次に挙げるような事項については,それを行うと明らかに均等法に違反することになるとしている(甲229)。 (a) 「総合職」(基幹的業務又は企画立案,対外折衝等総合的な判断を要する業務に従事し,転居を伴う転勤があるコース)は男性のみ,「中間職」(「総合職」に準ずる業務に従事するが転居を伴う転勤はないコース)や「一般職」(主に定型的業務に従事し,転居を伴う転勤はないコース)は女性のみといった制度を作るなど,一方の性の労働者のみを一定のコース等に分けるといった制度運営を行うこと。 (b) 「総合職」をはじめとするいずれのコース等についても男女とも配置することがあり得る制度とするなど,形式的には男女双方に開かれた制度になっているが,例えば,「総合職」は男性のみとする慣行があるなど,実際の運用において男女異なる取扱いを行うこと。 (c) コース等の各区分における募集,採用の際に,男女別で選考基準や採用基準に差を設けた上で行うこと(例えば,転勤があることが条件になっているコース等に応募した者のうち,女性に対してのみ,面接等において転勤の意思を確認すること等)。 (d) コース等の各区分における配置,昇進,教育訓練等の雇用管理について,男女別で運用基準に差を設けた上で行うこと(例えば,「総合職」であっても女性について おいて転勤の意思を確認すること等)。 (d) コース等の各区分における配置,昇進,教育訓練等の雇用管理について,男女別で運用基準に差を設けた上で行うこと(例えば,「総合職」であっても女性については営業業務から排除すること等)。 (e) コース等で区分した雇用管理を導入,変更又は廃止するに当たって既存の労働者をコース等の各区分に分ける際に,性別を理由に一律に分けたり,一定のコース等に分ける場合に女性にのみ特別な要件を課す等,男女で異なる取扱いをすること(例えば,女性労働者をすべて「一般職」に分けること,男性は全員「総合職」とするが,女性は希望者のみ「総合職」とすること等)。 ウ検討上記イの認定事実に基づき,検討する。 (ア) 被告は,男女の処遇の差異は,その職掌及び業務の違い(総合職は基幹的業務,事務職は定型的・補助的業務)によって採用を異にしたことによるものであると主張する。 被告は,取引機能を中心に,多様な機能を有する専門商社であるが,取引機能としての成約業務が中心的業務であり,成約業務においては,高度の交渉能力,商品知識,情報収集能力等が要求されるから,一般的にみて処理の困難度が高い業務であるということができる(イ(ア))。 被告は,営業部門においては,原則として,この成約業務を総合職(ただし,職掌別人事制度導入前については,職掌別人事制度導入以降の総合職と実質的に同様の業務に従事した男性従業員を指す。以下,単に「総合職」という。)に担当させ(イ(カ)a(c),(d)),事務職(ただし,職掌別人事制度導入前については,職掌別人事制度導入以降の事務職と実質的に同様の業務に従事した女性従業員を指す。以下,単に「事務職」という。)については成約後の取引完了に至るまでの契約履行に関する様々 別人事制度導入前については,職掌別人事制度導入以降の事務職と実質的に同様の業務に従事した女性従業員を指す。以下,単に「事務職」という。)については成約後の取引完了に至るまでの契約履行に関する様々な業務に従事させている(イ(カ)a(c)⑤,イ(カ)a(d)④等)。 なお,原告Aは,鉄鋼部門において受発注業務(イ(カ)a(c)②),売買約票及び指定注文書の起票(イ(カ)a(c)③,④)等の業務,化成品室において受発注業務(イ(カ)a(d)①),在庫商品の発注業務(イ(カ)a(d)③)等の各業務に従事した経験があるが,これらの具体的業務内容について認定したとおり,これらは,あらかじめ定められた一定範囲内の成約業務又は成約に必要な書類の起票業務に従事したものであり,成約業務を広範囲にわたって恒常的に行っていたものであるとはいえない。 被告においては,営業部門のほかに,原告B及びLが所属する庶務部門を含む管理部門における業務が存在するが,管理部門の業務は多種多様にわたるところ(イ(カ)b),その中には高度な業務知識,交渉能力等を必要とするものから,そのような知識・能力をさほど必要としないものまで様々なものが存在しているということができる。そして,被告は,管理部門においては,原則として,総合職については前者を,事務職については後者を,それぞれ担当させたと認められる(イ(カ)b(d))。 以上によれば,原告らが担当した業務と総合職が担当した業務を比較すると,被告が重要度が高い業務と位置づけた業務は総合職に,さほど重要度が高くないと位置づけた業務は事務職に担当させていたということができる。 もっとも,原告Aが被告の特約店とのスポット取引に関する受発注業務に携わるなど前記イ(カ)の原告らが従事してきた業務に照らせ いと位置づけた業務は事務職に担当させていたということができる。 もっとも,原告Aが被告の特約店とのスポット取引に関する受発注業務に携わるなど前記イ(カ)の原告らが従事してきた業務に照らせば,被告の主張するように,原告らが専ら単なる定型的・補助的業務のみに従事していたとまでは認め難いし,営業部門の事務職が担当した成約後の履行に関する業務も,取引を円滑に完了させ,被告の信用を高めるという意味においては重要な業務であるといえること,管理部門の総合職が担当していた業務を事務職に担当させたことがあり,担当業務にある程度の互換性があることに照らせば,被告における業務について,被告主張のように基幹的業務と定型的・補助的業務とを明確かつせつ然と区別することは困難であり,被告においては,処理の困難度の高いものから低いものまで,その程度が異なるものが存在するという程度で,両者の差異は相対的なものであるというべきである。 したがって,被告は,総合職については,営業部門における成約業務を中心とする比較的処理の困難度の高い業務に,事務職については,それ以外の業務を中心とする比較的処理の困難度の低い業務に,それぞれ従事させてきたということはできるが,両者の境界は明らかではなく,また,その一部は重なり合っていたと認めるのが相当である。 そして,被告は,原告らの採用に当たり,原告らに対して,原告らが従事する業務が専ら定型的・補助的業務である旨明示的な説明をしたものではない。 したがって,原告らを定型的・補助的業務に従事するものとして採用したとの被告の主張は,それが原告らを同業務のみに従事するものとして採用したという趣旨であれば,採用できないというべきである。 (イ) しかしながら,被告は,高等学校卒業の従業員の募集,採用 用したとの被告の主張は,それが原告らを同業務のみに従事するものとして採用したという趣旨であれば,採用できないというべきである。 (イ) しかしながら,被告は,高等学校卒業の従業員の募集,採用においては,男性については,職種として「男子一般職」,作業内容として「営業,経理等」としており,勤務地について特段限定しないものとしているのに対し,女性については,職種として「一般事務」,作業内容として「台帳(売掛,仕入,契約)整理,計算事務,伝票起票,電話応対等」とし,就業場所を一定地域内の事業所としているほか(イ(ウ)a,イ(ウ)b),男女では,選考・採用手続も異にしていたのであって(イ(ウ)b),少なくとも勤務地については両者をしゅん別していたということができる。また,被告は,タイピスト等の特殊技能職の女性については,人員の不足が生じた都度,所定の求人票に,職種としての作業内容,当該業務に必要な具体的技術,具体的勤務地,自宅からの通勤可能な者等の希望条件等を記載して,随時,募集,採用を行っていたものである(イ(ウ)a)。 したがって,上記の募集,採用により,原告らと被告の労働契約は,職種及び作業内容を前記のとおりとし,かつ,勤務地を原告Aについては名古屋店,原告Bについては本社とする勤務地限定のものとして締結されたと認めるのが相当であり,このことは,採用後の配置において,男性従業員については国内外の支店・営業所等に配属し,しかも大部分を営業部門に配属し,その後もほとんどの男性従業員が転居を伴う異動を行っているのに対し,女性従業員については当該従業員を採用した事業所に配属し,その後も転居を伴う異動の対象とはされていないこと(イ(エ)c,イ(キ))からも裏付けられる。 以上のような,男性従業員,女性従業員の募集,採用条 いては当該従業員を採用した事業所に配属し,その後も転居を伴う異動の対象とはされていないこと(イ(エ)c,イ(キ))からも裏付けられる。 以上のような,男性従業員,女性従業員の募集,採用条件,採用後の配置,異動状況のほか,入社式の差異(イ(エ)a),採用後の男女の研修体系が異なっていたこと(イ(エ)b),全国的な異動をするものとして予定されている者(男性従業員)と勤務地に限定のある者(女性従業員)とでは,入社後の経験,獲得される知識もおのずから異なってくるものと考えられること,原告らが入社した当時の高等学校卒業の女性の就職者の8割弱が事務的職業に従事していたこと及び原告らが入社した当時の女性従業員の平均勤続年数は5年に満たない短いものであったこと(イ(イ))を併せ考えると,被告は,当時の社会情勢を踏まえた企業としての効率的な労務管理を行うため,男性従業員については,商社の中心的業務である成約業務を中心とする主として処理の困難度の高い業務を担当し,将来幹部社員に昇進することが予定されているものとして処遇し,また,その勤務地も限定しないものとし,他方,女性従業員については,タイピスト等の特殊技能職はもちろんのこと,一般事務を職種とする者についても,そのような処遇をすることを予定せず,主として処理の困難度の低い業務に従事する者として処遇し,また,勤務地を限定することとしたものというべきであり,従業員の採用に当たっても,このように男女で異なった処遇をすることを予定していたことから,男女別に異なった募集,採用方法をとっていたと認めるのが相当である。 したがって,被告は,男女の就労実態の差異を前提にその差異が専ら性差に基づくものであるとして,男女をコース別に採用し,その上でそのコースに従い,男性従業員については,主として処理 ある。 したがって,被告は,男女の就労実態の差異を前提にその差異が専ら性差に基づくものであるとして,男女をコース別に採用し,その上でそのコースに従い,男性従業員については,主として処理の困難度の高い業務を担当させ,勤務地も限定しないものとし,他方,女性従業員については,主として処理の困難度の低い業務に従事させ,勤務地を限定することとしたものと認めるのが相当である。そして,その結果,被告の給与体系(イ(オ))からも明らかなように,被告においては,入社後の昇格,賃金についても,その決定方法,内容が男女のコース別に行われていたもので,それに伴い,昇格時期,昇格内容及びこれに伴って賃金にも格差が生じていたということができる。 (3) 格差の合理性についてア前記(2)ウ(イ)のとおり,被告は,入社後男女別に予定する処遇と全国的な異動の有無等により,男女をコース別に採用,処遇していたということができるが,このような採用,処遇の仕方は,その採用,処遇を性によって異にするというものであるから,法の下の平等を定め,性による差別を禁止した憲法14条の趣旨には反するものといわざるを得ない。 しかし,憲法14条は,私人相互の関係を直接規律することを予定したものではなく,民法90条の公序良俗規定のような私的自治に対する一般的制限規定の適用を介して間接的に適用されるにとどまると解するのが相当である。そして,性による差別待遇の禁止は,民法90条の公序をなしていると解されるから,その差別が不合理なものであって公序に反する場合に,無効,違法となるというべきである。 以下,この見地から検討する。 イ原告らの入社当時(ア) 原告らが入社した当時,性による差別を禁じた実体法の規定としては,労働基準法4条があり,「使用者は,労 というべきである。 以下,この見地から検討する。 イ原告らの入社当時(ア) 原告らが入社した当時,性による差別を禁じた実体法の規定としては,労働基準法4条があり,「使用者は,労働者が女性であることを理由として,賃金について,男性と差別的取扱いをしてはならない。」と定めている(当時の文言は,「女性」,「男性」ではなく,「女子」,「男子」)。また,同法3条は,「使用者は,労働者の国籍,信条又は社会的身分を理由として,賃金,労働時間その他の労働条件について,差別的取扱をしてはならない。」と定めている。 労働基準法3条は,その文言から明らかなように,性による差別の禁止を規定したものではなく,労働条件についての差別的取扱いを禁止しているにとどまるところ,募集,採用に関する条件は労働条件に含まれないから,被告のとった男女のコース別採用,処遇が労働基準法3条に違反するものとはいえない。 また,労働基準法4条は,性による賃金差別を禁止しているにとどまるから,被告が行った男女のコース別の採用,処遇の違いにより男女間の賃金に差異が生じても,それが採用,配置,その後の昇進の差異によるものである以上,同条に直接違反するものではないというべきである。そして,前記(2)ウ(ア)のとおり,男性従業員と女性従業員とでは,その従事する業務は一部重なり合ってはいたものの,全く同一というわけではないから,被告のした男女のコース別の採用,処遇が,労働基準法4条違反の不合理な差別として公序に反するということはできないというべきである。 さらに,昭和60年に制定された旧均等法は,募集,採用,配置,昇進についての男女の差別的取扱いに関して規定しているが,それをしないことを使用者の努力義務にとどめており,その禁止が使用者の法的義務に さらに,昭和60年に制定された旧均等法は,募集,採用,配置,昇進についての男女の差別的取扱いに関して規定しているが,それをしないことを使用者の努力義務にとどめており,その禁止が使用者の法的義務にまで高められたのは,均等法が平成9年6月に制定され,平成11年4月1日に施行されてからである。 (イ) 原告らが入社した当時において,被告が従業員の募集,採用について,男性については,主として処理の困難度の高い業務を担当し,将来幹部社員に昇進することが予定される者であることから,勤務地に限定のない者として,他方,女性については,主として処理の困難度の低い業務に従事することが予定される者であることから,勤務地に限定のある者として,男女別に行ったことは,女性に男性と均等の機会を与えなかった点で男女を差別するもので,法の下の平等に反するものとして公序に反するのではないかが問題となる。 しかしながら,前記(ア)のとおり,社員の募集,採用に関する条件は,労働基準法3条の定める労働条件ではなく,また,前記アのような形態の男女のコース別の採用,処遇が労働基準法4条に直接違反するともいえないこと,原告らの入社当時,募集,採用,配置,昇進についての男女の差別的取扱いをしないことを使用者の努力義務とする旧均等法のような法律もなかったこと,企業には労働者の採用について広範な採用の自由があることからすれば,被告が,原告らの入社当時,従業員の募集,採用について男女に均等の機会を与えなかったからといって,それが直ちに不合理であるとはいえず,公序に反するものとまではいえない。 (ウ) 以上によれば,原告らが入社した当時は,女性従業員の勤続年数は短く,一般的にみて,企業においては,女性について全国的な異動や海外赴任を行うことは考え難かったといえるから ではいえない。 (ウ) 以上によれば,原告らが入社した当時は,女性従業員の勤続年数は短く,一般的にみて,企業においては,女性について全国的な異動や海外赴任を行うことは考え難かったといえるから,企業においても効率的な労務管理を行うためには,女性従業員の採用,処遇についても,そのことを考慮せざるを得ず,これを考慮した被告の男女のコース別の採用,処遇が,原告らの入社当時において,不合理な差別として公序に反するとまでいうことはできない。 なお,原告らは,女性差別撤廃条約,国際人権規約,ILO条約等を根拠に,原告らが入社した当時,両性平等が国際的公序として確立していたことから,被告のした男女差別は,国際的公序に反し違法であるとも主張する。 しかしながら,これらの条約が国内法の制定を待つまでもなく当然に自動執行力を有すると認めることはできないし,以上検討した被告の男女のコース別の採用,処遇の経緯,内容からすれば,これがこれらの条約に直ちに違反するとすることもできないことから,原告らの主張は採用できない。 ウ職掌別人事制度導入(昭和63年)以降その後被告は,昭和63年から人事制度を改め,総合職と事務職の区別を設けた職掌別人事制度を導入しているが,男性従業員の大半を総合職に,女性従業員すべてを事務職に配置しているのであるから,被告の男女のコース別の処遇が職掌別人事制度の導入によって変わったとすることはできない。被告の昭和63年の職掌別人事制度の導入は,昭和60年に旧均等法が制定され,昭和61年4月から施行されたことから,これに対処し,男女のコース別の処遇を引き続き維持するため,総合職,事務職の区別を設けたにすぎないと認めるのが相当である。 しかしながら,旧均等法は,前記イ(ア)のとおり男女で差別 ことから,これに対処し,男女のコース別の処遇を引き続き維持するため,総合職,事務職の区別を設けたにすぎないと認めるのが相当である。 しかしながら,旧均等法は,前記イ(ア)のとおり男女で差別的取扱いをしないことを努力義務にとどめているのであり,前記イ(イ),(ウ)で述べたことを併せ考慮すると,旧均等法が制定,施行されたからといって,被告の男女のコース別の処遇が公序に反して違法であるとまでいうことはできない。 エ均等法施行以降(ア) その後,平成9年に均等法が制定され,平成11年4月1日から施行されているところ,同法が定めた男女の差別的取扱いの禁止は使用者の法的義務であるから,この施行時点以降において,被告が,それ以前に被告に入社した従業員について,男女のコース別の処遇を維持し,男性従業員の大半を総合職に位置づけ,女性従業員を事務職に位置づけていることは,配置及び昇進について,女性であることを理由として,男性と差別的取扱いをするものであり,均等法6条に違反するとともに,公序に反して違法であるというべきである。 ところで,原告Bは,均等法施行前の平成5年12月31日に既に被告を退職しているから,原告Bについて,均等法施行以降の処遇の違法が問題となる余地はない。 したがって,以下,原告Aについて,均等法施行以降の処遇の違法について検討することとする。 原告Aが被告と締結した,職種を一般事務とし,勤務地を名古屋に限定した労働契約のうち,勤務地に関する部分は配置に関するものであり,同部分は,被告が男女という性の別によりコース別での配置等の処遇をするためのものであるというほかなく,原告Aにつき,均等法施行後もなおそれまでの男女の性の別によるコース別の処遇を維持することは,均等法の施行以降においては,均等法が配置における男女差別 等の処遇をするためのものであるというほかなく,原告Aにつき,均等法施行後もなおそれまでの男女の性の別によるコース別の処遇を維持することは,均等法の施行以降においては,均等法が配置における男女差別を禁止したことにより,違法となり,無効となったものというべきである。 (イ) 被告は,昭和63年,職掌別人事制度の導入と併せて,女性従業員が属する事務職から男性従業員の大半が属する総合職への職掌変更制度を設け,現に少数ながらも事務職から総合職へ職掌変更させた実績もあることから,女性従業員についても職域の拡大を図る努力をしているといえなくもない。 しかし,前記争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実(2)のとおり,被告の職掌変更制度は,一応事務職・総合職相互間の職掌変更を認める制度とはなっているものの,事務職から総合職への職掌変更については,上長による推薦を申請要件そのものとしており,事務職が総合職への職掌変更を希望しても,上長の推薦がない限り職掌変更手続そのものを開始することができず,職掌変更の機会それ自体を奪われることになってしまう。しかも,上長が推薦するに際して必ずしも明確な推薦基準があるわけではないため,推薦に至る判断過程についての透明性が確保されているとはいえず,し意的な運用を許容する余地がある。さらに,上長の推薦を申請要件とすることで,職掌変更を希望する事務職に申請そのものをちゅうちょさせるなど事実上の抑制効果を及ぼす可能性も否定できない。 したがって,被告の職掌変更制度は,女性従業員が属する事務職と男性従業員の大半が属する総合職との間で差異を設け,また,女性に対して特別の条件を課する不合理なものといわざるを得ない((2)イ(コ)b)。 (ウ) これに対し,被告は,職掌変更に する事務職と男性従業員の大半が属する総合職との間で差異を設け,また,女性に対して特別の条件を課する不合理なものといわざるを得ない((2)イ(コ)b)。 (ウ) これに対し,被告は,職掌変更に伴う研修の実効性及び総合職への転換可能性を見極めるため,上長の推薦が不可欠であり,また,複数人が関与することによって,推薦の可否の判断に関する客観性は確保されている旨主張するが,上長の推薦を申請要件とする目的自体が明らかに不合理であるとはいえないものの,現に被告においては,事務職から総合職への職掌変更の実績がごく少数にとどまるばかりか,職掌変更申請そのものの実績が極めて低いと認められることから,上長の推薦という申請要件が,職掌変更を希望する事務職に少なからぬ影響を及ぼし,職掌変更の申請をちゅうちょさせ,又は,断念させたものと推認することができる。 したがって,被告の上記主張によっても,上記判断を左右するに足りない。 (エ) この点,配置に関する被告の労務管理権のほか,事務職における職掌変更申請対象者の標準年令を引き下げたり,職掌変更申請権利喪失規定を廃止するなど被告が職掌変更制度の要件緩和措置を執ったことを併せ考慮しても,上記のとおり上長の推薦という不合理な申請要件によって,被告の職掌変更制度は十分に機能していないと認められることから,職掌変更制度の存在により,配置における男女の違いが正当化されるとすることはできない。 オ以上によれば,前記(1)の男女間の格差は,被告が,男性従業員については,主として処理の困難度の高い業務を担当し,将来幹部社員に昇進することが予定され,勤務地に限定のない者として,他方,女性従業員については,主として処理の困難度の低い業務に従事することが予定され,勤務地に限定のある者として,男女のコース別に採用 幹部社員に昇進することが予定され,勤務地に限定のない者として,他方,女性従業員については,主として処理の困難度の低い業務に従事することが予定され,勤務地に限定のある者として,男女のコース別に採用,処遇してきたことによるものであるが,原告らが入社した当時において,男性は前者に,女性は後者に属するものとしたことには一定の合理性があり,それが公序に反するものとまではいえないものの,その後,均等法が施行されるに至った平成11年4月1日以降は,原告Aと被告の労働契約中,前記の処遇部分は,同法6条に違反するとともに,不合理な差別として公序に反することになったというべきである。 一方,原告Bについては,前記のとおり,均等法施行前の平成5年12月31日に既に被告を退職しているから,原告Bと被告との労働契約が無効又は違法であったということはできない。 カ(ア) これに対して,原告らは,採用手続の同一性,原告らが従事してきた業務と男性従業員の業務との同一性等を根拠に原告らが被告との間で男性従業員と同一の労働契約を締結した旨主張する。 確かに,原告らが主張するとおり,原告らが被告に入社した当時の被告の就業規則には,職掌区分に関する明確な定めがなかったものの,前記認定のとおり,被告は,男女で異なった処遇をすることを前提に,男女をコース別に採用していたと認められることから,原告らが被告との間で男性従業員と同一の労働契約を締結したと認めることはできない。また,原告ら女性従業員の従事する業務と男性従業員が従事する業務とは,被告が主張するように明確に区別することができず,一部について重なり合っていたというべきではあるが,前記認定のとおり,被告は,男性従業員については比較的処理の困難度の高い業務に,女性従業員については比較的処理の困難度の低い業務に従事さ ができず,一部について重なり合っていたというべきではあるが,前記認定のとおり,被告は,男性従業員については比較的処理の困難度の高い業務に,女性従業員については比較的処理の困難度の低い業務に従事させてきたと認められるため,原告ら女性従業員の業務が男性従業員の業務と全く同一であったとは認めることができない。 また,原告らは,被告が原告らと労働契約を締結する際,原告らに対し,労働基準法15条に基づき労働条件を明示すべき義務を負うところ,被告は原告らに対し男性と女性とで労働契約の内容が異なる旨の説明等をしなかったとして,規定上男女の区別をしていない就業規則が男性従業員,女性従業員を問わず適用された結果,女性従業員も,男性従業員と同一の労働契約を締結したと主張する。 なるほど,被告は,採用後も男女従業員について異なる処遇をしているのであるが,原告らの採用時にその旨を説明していないし,原告らの採用時の被告の就業規則にもその旨の規定はない。 しかしながら,使用者である企業は,労働者を雇用するに当たり,個別に労働者と労働契約を締結するのであるから,企業が当該労働者に対して説明義務を負う範囲は,当該労働者との労働契約の内容となる労働条件にとどまると解するのが相当であり,当該労働者に対し,他の労働者の労働条件についてまで説明すべき義務があるとすることはできない。また,就業規則そのものが規定上男女の区別をしていないからといって,就業規則を受けて制定された社内通達の「採用規程」等に基づいて締結された個別的な労働契約の内容について,それが就業規則に定める具体的な労働条件の基準に達しないものとして無効となるということはできず,就業規則の規定により当然に男女同一の労働契約を締結したことになるということはできない。 したが が就業規則に定める具体的な労働条件の基準に達しないものとして無効となるということはできず,就業規則の規定により当然に男女同一の労働契約を締結したことになるということはできない。 したがって,原告らの上記主張は,いずれも採用することができない。 (イ) 原告らは,被告が昭和63年に導入した職掌別人事制度及び平成7年に導入したトータル人事システムは女性差別を維持固定化するものであるから無効,違法である旨主張する。 確かに,被告が旧均等法の制定,施行に対処し,男女のコース別の処遇を引き続き維持するため,職掌別人事制度を導入したにすぎないということができるが,前記ウで説示したとおり,旧均等法が男女で差別的取扱いをしないことを努力義務にとどめていることなどに照らせば,男女のコース別の処遇が直ちに公序に反して無効,違法であるとはいえない。 また,原告らは,職掌別人事制度の導入に伴い被告がした就業規則の変更は,原告ら女性従業員の労働契約上の既得の諸権利を一方的に奪い,不利益を課すものであることから,無効である旨主張する。 しかし,前記認定のとおり,被告は,従前行ってきた男女のコース別の処遇を引き続き維持するため,就業規則を変更し,総合職と事務職の区別を設けたにすぎないのであり,これによって,女性従業員の従事する業務の内容や賃金に関する定め等が変更されたとは認められないことから,職掌別人事制度の導入に伴う就業規則の変更が,女性従業員に対し特段の不利益を及ぼすと認めることはできない。 したがって,原告らの主張はその前提を欠くものといわざるを得ない。 さらに,原告らは,平成5年協定及び平成7年協定は,被告の不当労働行為により御用組合化した組合により,女性従業員の反対意見を無視して締結されたもの はその前提を欠くものといわざるを得ない。 さらに,原告らは,平成5年協定及び平成7年協定は,被告の不当労働行為により御用組合化した組合により,女性従業員の反対意見を無視して締結されたものであるから,無効,違法であるとも主張する。 しかし,証人Iの証言によっても,組合が被告の不当労働行為により御用組合化したと認めるに足りるものではなく,他にこれを認めるに足りる的確な証拠はない。また,前記(2)イ(ク)のとおり,被告と組合は,職掌別人事制度導入後も交渉を重ねた結果,平成5年協定の締結に至ったものであり,平成7年協定も,合計7回にわたる労使検討委員会の開催,10回にわたる団体交渉を経て,締結されたものであることから,これらの協定の締結に至る過程に手続的瑕疵があったとは認められず,女性従業員の反対意見が組合の平成5年協定及び平成7年協定に関する意思決定に反映されなかったからといって,直ちにこれらの協定を無効,違法とすべき理由もない。 したがって,原告らの上記主張も採用することができない。 (ウ) 原告らは,被告における違法な男女の差別的取扱いとして,新入社員研修に関する差別,供花差別,名刺の不支給,事務服の強制,お茶くみ等を挙げる。 しかし,前記認定のとおり,被告においては,男性従業員については,商社の中心的業務である成約業務を中心とする主として処理の困難度の高い業務を担当し,将来幹部社員に昇進することが予定されている者として処遇し,他方,女性従業員については,主として処理の困難度の低い業務に従事する者として処遇していたものであるから,原告らが主張する上記差別的取扱いとは,そのような担当業務の違いによる処遇の違いによるものが主たるものであると認められ,性別のみを根拠とした違法な差別的取扱いということはできない たものであるから,原告らが主張する上記差別的取扱いとは,そのような担当業務の違いによる処遇の違いによるものが主たるものであると認められ,性別のみを根拠とした違法な差別的取扱いということはできない。また,女性従業員には,派遣社員も含めて事務服が貸与されていたのに対し,男性従業員には,総合職のみならず,被告へ出向してきた従業員に対しても事務服の貸与がされていなかったが,事務服については,組合の要望によって設置された事務職制服改善委員会のアンケート調査の結果でも,私服を希望する女性従業員は10パーセント程度の少数であったものであり(証人L・第17回口頭弁論調書),そのような状況下における女性従業員のみの事務服の着用が,原告らに対する関係で慰謝料請求権を生じさせるような違法な男女差別であったと認めるに足りるものではない。 (エ) 原告らは,退職における違法な男女差別として,女性についてのみの結婚退職優遇制度が存在したこと,結婚や妊娠出産を契機とした退職勧奨があったことを挙げる。 しかし,被告において,結婚や妊娠出産を契機とした退職勧奨があったと認めるに足りる的確な証拠はなく,原告ら主張の結婚退職優遇制度は,女性従業員のみを優遇するものであるが,女性であるが故に不利益を課すものではなく,その存在をもって,これが原告らに対する関係で慰謝料請求権を生じさせるような違法な男女差別であったと認めることはできない。 (オ) その他,原告らは,均等法施行前の被告における違法な男女差別の存在や各人事制度導入に際しての違法性等についてるる主張しているが,男女間の処遇上の差異は,前記認定の男性従業員と女性従業員の担当業務の違いによるものといえるのであり,また,各人事制度導入の経過も前記認定のとおりであって,原告らが主張するような違法があるということはできず, 上の差異は,前記認定の男性従業員と女性従業員の担当業務の違いによるものといえるのであり,また,各人事制度導入の経過も前記認定のとおりであって,原告らが主張するような違法があるということはできず,原告らの上記主張は,前記結論を覆すに足りるものではなく,いずれも採用することができない。 2 争点(2)(地位の確認)について(1) 確認の利益についてア一般に,確認の利益は,原告の権利又は法律的地位に危険・不安定が現存し,その危険・不安定を除去する方法として確認の判決をすることが有効適切である場合に認められる。 そして,原告が,当該確認請求に係る請求権に基づき給付訴訟を提起できるときは,それによることで紛争の解決が図られるから,その請求権の確認の利益は原則として認められないが,基本たる権利又は法律関係から派生する給付請求権について給付訴訟が可能な場合でも,基本たる権利又は法律関係を確認することが現存する原告の権利又は法律的地位についての危険・不安定を除去する方法として有効適切であるときは,確認の利益があるというべきである。 他方,私人間の権利又は法律関係は,法律行為,その他法律に定められた事由により変動することから,過去の権利又は法律関係の存否を確認したところで,現在の原告の権利又は法律的地位の危険・不安定を除去することにはならない。 したがって,過去の権利又は法律関係の確認が現在の権利又は法律的地位をめぐる紛争解決に有効適切であるという特段の事情がない限り,確認の利益が認められないと解するのが相当である。 イ原告Aは,原告Aが,被告との雇用契約上,主位的に,①平成7年4月1日から総合職管理職2級に配置され昇格したものとして取り扱われる地位にあること,②平成10年4月1日から総合職管理職1級に配置され昇 原告Aは,原告Aが,被告との雇用契約上,主位的に,①平成7年4月1日から総合職管理職2級に配置され昇格したものとして取り扱われる地位にあること,②平成10年4月1日から総合職管理職1級に配置され昇格したものとして取り扱われる地位にあること並びに③平成15年6月1日から総合職S4等級の役割等級及びマネジメントコースマネジメント認定者の種類を付与されたものとして取り扱われる地位にあること,予備的に,④被告との雇用契約上,平成7年4月1日から総合職指導職1級に配置され昇格したものとして取り扱われる地位にあること及び⑤平成15年6月1日から総合職S3等級の役割等級を付与されたものとして取り扱われる地位にあることの確認を求めているところ,原告Aは,上記③及び⑤に係る地位に基づいて賃金の支払請求又は損害賠償請求ができるとしても,原告Aが現在その地位にあることは,賃金の支払請求又は損害賠償請求の基本たる法律関係であるということができ,被告がこれを争っていることは明らかであるから,原告Aはその地位についての危険・不安定を除去するために,その地位にあることの確認を求めることができるというべきである。 他方,上記①,②及び④に係る地位は現存する法律関係とはいえず,過去の法律関係にほかならないところ,上記のとおり,原告Aの現在の権利又は法律的地位の危険・不安定を除去するためには,現在の地位の確認を求めれば十分であり,原告Aの主張によっても,既存分の差額賃金又は損害賠償請求については給付の訴えを提起すれば足り,前記特段の事情を認めることはできない。 したがって,原告Aの上記①,②及び④に係る地位の確認を求める訴えは,確認の利益を欠くものというべきである。 (2) そこで,以下において,原告Aの,原告Aが③平成15年6月1日から総合職S4等 したがって,原告Aの上記①,②及び④に係る地位の確認を求める訴えは,確認の利益を欠くものというべきである。 (2) そこで,以下において,原告Aの,原告Aが③平成15年6月1日から総合職S4等級の役割等級及びマネジメントコースマネジメント認定者の種類を付与されたものとして取り扱われる地位にあること並びに⑤同日から総合職S3等級の役割等級を付与されたものとして取り扱われる地位にあることの確認請求について検討する。 ア前記争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実(2)のとおり,被告は,人事考課,選抜の結果,従業員の昇格を決定しているものであり,この昇格の決定についての使用者の総合的裁量的判断は尊重されるべきであるから,一般的には,昇格決定のない段階で「あるべき昇格」を認めるのは困難である。そして,前記1(3)イで説示したとおり,原告Aが入社した当時,被告のとっていた男女のコース別の採用,処遇が公序に反するものとまではいえないのであり,入社後の勤務地,担当職務の内容を異にすること等により,男性従業員と女性従業員との間で入社後に積まれた知識,経験に差異があったと考えられ,したがって,直ちに女性従業員についても男性従業員と同様の昇格をさせるべきであったということはできない。そうすると,被告が原告Aに同標準年齢の男性従業員と同じ役割等級を付与しなかったからといって,そのことが違法とはいえず,原告Aにその昇格請求権があるともいえない。 したがって,原告Aが,当然総合職に配置され昇格されたものとして,同標準年齢の男性従業員と同じ役割等級を付与されるべき地位にあると認めることはできない。 イこれに対して,原告Aは,被告が労働契約上男女を平等に取り扱うべき義務を負うことから,平等取扱義務に基づく完全履行と 性従業員と同じ役割等級を付与されるべき地位にあると認めることはできない。 イこれに対して,原告Aは,被告が労働契約上男女を平等に取り扱うべき義務を負うことから,平等取扱義務に基づく完全履行として男女を同一に処遇すべきであり,また,就業規則等の事務職に関する部分が無効となった場合,平等取扱義務に基づき,無効とされた部分が補充される結果,やはり男女を同一に処遇すべき義務を負うとして,原告Aと同標準年齢の男性従業員と同じ役割等級が原告Aに付与されるべきであると主張する。 しかしながら,労働契約は,使用者と労働者との個別の契約であり,前記1(2)ウ(イ)の原告Aと被告間の労働契約の内容からすれば,原告Aが被告と締結した労働契約において,労働契約上の具体的な法的義務として使用者たる被告に男女を平等に取り扱うべき義務があったと解することは困難であり,被告が,労働契約上原告Aに同標準年齢の男性従業員と同じ役割等級を付与すべき義務を負うとはいえない。 また,原告Aは,就業規則,平成5年協定等の労使協定のうち,事務職に関する部分が,労働基準法3条,同法4条,民法90条に違反し,無効となるところ,無効とされた部分については,労働基準法13条の類推適用又は労働基準法93条及び労働組合法16条の適用により,就業規則及び労使協定における総合職に関する基準が適用されることから,原告Aについても男性従業員と同様の昇格をさせるべきであると主張する。  しかしながら,前記1(3)カ(イ)で説示したとおり,そもそも被告の就業規則及び労使協定が無効であるとは認められないことから,就業規則及び労使協定のうち事務職に関する部分が無効であることを前提とする原告Aの主張は,その前提を欠くものといわざるを得ない。 したがって,原告Aの上記主張は,いずれも採用 認められないことから,就業規則及び労使協定のうち事務職に関する部分が無効であることを前提とする原告Aの主張は,その前提を欠くものといわざるを得ない。 したがって,原告Aの上記主張は,いずれも採用することができない。 ウ以上によれば,原告Aの,原告Aが③平成15年6月1日から総合職S4等級の役割等級及びマネジメントコースマネジメント認定者の種類を付与されたものとして取り扱われる地位にあること並びに⑤同日から総合職S3等級の役割等級を付与されたものとして取り扱われる地位にあることの確認請求はいずれも理由がない。 3 争点(3)(差額賃金等の請求権)について(1) 前記1(3)で説示したところによれば,原告Bに差額賃金及び差額退職金の請求権があるとはいえず,この点に関する原告Bの主位的請求及び予備的請求はいずれも理由がない。 また,前記1(3)で説示したところによれば,原告Aの差額賃金の請求権は,均等法施行前の平成11年3月31日までのものについてはその請求権があるとはいえず,この点に関する原告Aの主位的請求及び予備的請求のいずれも理由がない。 したがって,原告Aについては,均等法が施行された平成11年4月1日以降のものが問題となるので,以下これについて検討する。 (2) 前記1(3)イで説示したとおり,原告Aが入社した当時,被告のとっていた男女のコース別の採用,処遇が公序に反するとまではいえないこと,入社後の勤務地や職務内容を異にすること等により,男性従業員と女性従業員との間で積まれた知識,経験にも差異があったと考えられ,この知識,経験の差異が昇格にも反映すると考えられることからすれば,原告Aが,当然総合職に配置され昇格したものとして,同標準年齢の男性従業員との差額賃金の請求権を有しているとは認められない。したがって,前記争 験の差異が昇格にも反映すると考えられることからすれば,原告Aが,当然総合職に配置され昇格したものとして,同標準年齢の男性従業員との差額賃金の請求権を有しているとは認められない。したがって,前記争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実(5)にあるとおり,均等法施行以降において原告Aと比較対象となる同標準年齢の男性従業員との賃金格差があるからといって,それをそのまま原告Aが請求権を有する差額賃金であるとすることはできない。 (3) これに対して,原告Aは,被告が労働契約上男女を平等に取り扱うべき義務を負うことから,平等取扱義務に基づく完全履行として男女を同一に処遇すべきであり,また,就業規則等の事務職に関する部分が無効となった場合,平等取扱義務に基づき,無効とされた部分が補充される結果,やはり男女を同一に処遇すべき義務を負うとして,同標準年齢の男性従業員との差額賃金請求権を有していると主張する。 しかしながら,前記2(2)イで説示したとおり,被告に労働契約上男女を平等に取り扱うべき義務があったと解することはできない。 また,原告Aは,原告Aと被告との労働契約,就業規則及び平成5年協定等の労使協定のうち,事務職に関する部分が,労働基準法3条及び同法4条に違反し,無効であるとして,労働基準法13条の類推適用により,同標準年齢の男性従業員との差額賃金請求権を有していると主張する。 しかしながら,前記2(2)イで説示したとおり,就業規則及び労使協定のうち,事務職に関する部分が無効であることを前提とした原告Aの主張は,その前提を欠くものである。 また前記(2)で説示したところからすれば,仮に原告A主張のように,原告Aに対する賃金,資格等に関する定めが無効であり,原告Aに対し事務職の賃金体系を適用するこ ,その前提を欠くものである。 また前記(2)で説示したところからすれば,仮に原告A主張のように,原告Aに対する賃金,資格等に関する定めが無効であり,原告Aに対し事務職の賃金体系を適用することが無効であるとしても,原告Aと同標準年齢の男性従業員の基準が原告Aに適用されるべき基準であるとすることはできないといわざるを得ない。したがって,原告Aの労働契約が無効となった部分を補充する,原告Aに適用すべき明確な基準があるということはできず,この点からしても,原告Aに差額賃金の請求権があるとはいえない。 (4) 以上によれば,原告らの差額賃金等の請求は,主位的請求及び予備的請求のいずれも理由がない。 4 争点(4)(差額賃金等相当損害金の請求権)について(1) 前記1(3)オで説示したところによれば,原告Bに差額賃金等相当損害金の請求権があるとはいうことはできず,原告Bの主位的請求及び予備的請求のいずれも理由がない。 また,原告Aの差額賃金等相当損害金の請求権は,前記のとおり,均等法が施行された平成11年4月1日以降のものが問題となる。 そして,前記1(3)エ(ア)で説示したところによれば,被告は,均等法が施行された平成11年4月1日以降も,同法により禁止されているにもかかわらず,それまでの原告Aに対する男女のコース別の処遇を維持していたのであるから,少なくとも男女のコース別の処遇を維持することを容認していたものというべきであり,被告には,違法な男女差別を維持したことについて少なくとも過失があると認められる。 (2) したがって,被告は,原告Aに対し,違法な男女差別という不法行為によって原告Aが被った損害を賠償すべき義務を負う。 原告Aについては,違法な男女差別により賃金等について男性従業員と格差が生じているのであるから,原告 告Aに対し,違法な男女差別という不法行為によって原告Aが被った損害を賠償すべき義務を負う。 原告Aについては,違法な男女差別により賃金等について男性従業員と格差が生じているのであるから,原告Aに損害が生じたこと自体は認められるといえるが,原告Aと同標準年齢の男性従業員との賃金等の格差が前記争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実(5)のとおりであるからといって,それまでの違法とはいえない男女のコース別の処遇により,男性従業員と女性従業員とでは,知識,経験を異にしていると考えられることは前記2(2)アのとおりであるから,その格差分がそのまま原告Aの損害額であるとすることはできず,原告Aの具体的損害額を確定することは困難である。 そこで,この点は,原告Aの慰謝料の算定に当たって考慮することとする(後記5(1)のとおり,被告には慰謝料支払義務がある。)。 5 争点(5)(慰謝料及び弁護士費用の請求権)について(1) 慰謝料についてア前記4で判断したところによれば,原告Aは,被告のした違法な男女差別により,性により差別されないという人格権を侵害されたものということができるから,被告は,原告Aが被った精神的苦痛に対する慰謝料を支払うべき義務を負う。 そして,被告のした男女差別の態様,その期間(平成11年4月1日以降),この期間における原告Aと比較対象の同標準年齢男性従業員との賃金の格差の額,その他本件に現れた諸般の事情を総合すると,原告Aの慰謝料額は500万円と認めるのが相当であり,この部分についての原告Aの主位的請求は理由がある。 イなお,被告は,原告らの慰謝料請求権についても,その要件事実が差額賃金請求権の要件事実と重なり合う以上,労働基準法115条所定の消滅時効により消滅した旨主 原告Aの主位的請求は理由がある。 イなお,被告は,原告らの慰謝料請求権についても,その要件事実が差額賃金請求権の要件事実と重なり合う以上,労働基準法115条所定の消滅時効により消滅した旨主張する。 しかし,性により差別されないという人格権侵害を理由とする損害賠償請求権は,差額賃金の支払がなかったこと自体を損害とするものではなく,差額賃金請求権とは別個の保護法益というべきであるから,後者について消滅時効が完成しているからといって,前者についても当然に消滅時効が完成しているものということはできない。したがって,被告の主張は独自の見解といわざるを得ず,採用することができない。 ウ他方,均等法施行前に被告を退職した原告Bに対しては,違法な男女差別があったとはいえないから,原告Bの慰謝料請求は理由がない。 (2) 弁護士費用についてア弁論の全趣旨によれば,原告Aは,本件訴訟の追行を原告ら訴訟代理人弁護士に委任したと認められるところ,本件訴訟追行の難易,前記(1)アの認容額その他諸般の事情を総合すると,弁護士費用相当額50万円をもって,被告の違法な男女差別の不法行為と相当因果関係のある損害と認めることができる。したがって,この部分についての原告Aの主位的請求は理由がある。 イしかしながら,前記(1)ウのとおり,原告Bに対しては,違法な男女差別があったとはいえないから,原告Bの弁護士費用相当額の請求は理由がない。 (3) よって,被告は,原告Aに対し,前記(1)ア及び(2)アの合計額550万円とこれに対する不法行為日である平成11年4月1日(均等法施行の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うべき義務を負う。 6 結論以上によれば,原告らの訴えのうち,原告Aの,原告Aが,被告との雇用契約上, 年4月1日(均等法施行の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うべき義務を負う。 6 結論以上によれば,原告らの訴えのうち,原告Aの,原告Aが,被告との雇用契約上,平成7年4月1日から総合職管理職2級に配置され昇格したものとして取り扱われる地位にあることの確認を求める訴え,平成10年4月1日から総合職管理職1級に配置され昇格したものとして取り扱われる地位にあることの確認を求める訴え及び平成7年4月1日から総合職指導職1級に配置され昇格したものとして取り扱われる地位にあることの確認を求める訴えは,不適法であるからいずれも却下し,原告Aの慰謝料及び弁護士費用に関する主位的請求は,前記5(1)ア及び5(2)アの限度で理由があるから認容し,原告らのその余の請求は主位的請求及び予備的請求のいずれも理由がないから棄却し,被告の仮執行免脱宣言の申立てについては,相当ではないからこれを却下することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第1部裁判長裁判官橋本昌純裁判官上村考由裁判官鈴木基之別紙主張対比表及び別表は掲載省略

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