平成27(行ウ)32 標準報酬改定請求却下処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成28年5月17日 東京地方裁判所 その他
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判決文本文21,953 文字)

平成28年5月17日判決言渡平成27年(行ウ)第32号標準報酬改定請求却下処分取消等請求事件 主文 1 本件訴えのうち,標準報酬改定の義務付けを求める部分を却下する。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告に対し,別紙2標準報酬改定請求書記載の請求に基づく標準報酬改定をせよ。 2 日本年金機構理事長が平成25年6月3日付けで原告に対してした標準報酬改定請求却下処分を取り消す。 3 被告は,原告に対し,639万7687円及びこれに対する平成27年2月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,原告が,厚生年金保険法の定めるいわゆる離婚時の年金分割制度に則り,家庭裁判所の審判を受けた上,年金事務所において標準報酬改定請求をしたところ,最初の請求については申請書の返還を受け,2回目の請求については請求期限(請求すべき按分割合を定めた審判が確定したときの翌日から起算して1か月)を経過したことを理由として当該請求を却下する処分を受けたことに関し,被告に対し,① 最初の請求について,上記審判の定める按分割合による標準報酬改定をすべき旨の義務付けを求め(以下「本件義務付けの訴え」という。),② 予備的に,上記却下処分の取消しを求める(以下「本件取消しの訴え」という)とともに,③ 国家賠償法1条1項に基づき,原告が上記請求に係る標準報酬改定を受けられなかったことにより得られなくなった 年金受給額相当額の損害賠償請求をした事案である。 2 関係法令の定め等関係法令は,別紙1「関係法令の定め」のとおりであり(以下,法令の名称並びに用語の表記及び略称については,同別紙の定めに従う。), 額相当額の損害賠償請求をした事案である。 2 関係法令の定め等関係法令は,別紙1「関係法令の定め」のとおりであり(以下,法令の名称並びに用語の表記及び略称については,同別紙の定めに従う。),その概要は,次のとおりである。 (1) 離婚時の年金分割制度厚年法は,離婚等をした場合における標準報酬の改定の特例として,当事者の婚姻期間中の厚生年金保険の標準報酬等を,当事者の一方からの請求により,婚姻期間中の厚生年金記録を当事者間で分割できる旨を定めており,平成19年4月1日以降に成立した離婚がその対象となる。この場合,同日以前の婚姻期間中の厚生年金保険の標準報酬等も分割の対象となる。 (2) 標準報酬の改定請求厚生年金保険の被保険者(被保険者であった者を含む。)又はその配偶者であった者は,離婚等をした場合であって,「当事者が標準報酬の改定又は決定の請求をすること及び請求すべき按分割合について合意しているとき」又は「家庭裁判所が請求すべき按分割合を定めたとき」のいずれかに該当するときは,厚生労働大臣に対して,当該離婚等について対象期間に係る被保険者期間の標準報酬の改定又は決定を請求(以下「標準報酬改定請求」という。)することができる(厚年法78条の2第1項(平成24年法律第63号による改正前のもの,以下同じ。))。 なお,以下,「家庭裁判所が請求すべき按分割合を定めたとき」に該当する場合における標準報酬の改定又は決定を「審判分割」ということがある。 (3) 按分割合按分割合は,当事者間の協議で按分割合について合意の上,厚生労働大臣に標準報酬改定請求をすることができ,「当事者の合意のための協議が調わないとき」,又は「協議をすることができないとき」は,当事者の一方の申 立てにより,家庭裁判所は,請求すべき按分割合を定 働大臣に標準報酬改定請求をすることができ,「当事者の合意のための協議が調わないとき」,又は「協議をすることができないとき」は,当事者の一方の申 立てにより,家庭裁判所は,請求すべき按分割合を定めることができる(厚年法78条の2第2項)。 (4) 標準報酬改定請求の請求期限ア原則「当該離婚等をしたときから2年を経過したときその他の厚生労働省令で定める場合に該当するとき」は,標準報酬改定請求をすることができない(厚年法78条の2第1項ただし書)。これを受けて,厚年法施行規則78条の3第1項は,上記の「厚生労働省令で定める場合」について,「離婚が成立した日」(同項1号)等の翌日から起算して2年を経過した場合と定めている。 イ請求期限の特例厚年法施行規則78条の3第2項は,「離婚が成立した日」(同条第1項1号)の翌日から起算して2年を経過した日以後に,又は「離婚が成立した日」の翌日から起算して2年を経過した日前1月以内に「請求すべき按分割合を定めた審判が確定したとき」(同条2項1号)に該当した場合(「離婚が成立した日」の翌日から起算して2年を経過した日前に請求すべき按分割合に関する審判又は調停の申立てがあったときに限る。)について,厚年法78条の2第1項ただし書に規定する「厚生労働省令で定める場合」(上記ア)は,上記アにかかわらず,「請求すべき按分割合を定めた審判が確定したとき」に該当することとなった日の翌日から起算して1月を経過した場合とするものと定めている。 (5) 標準報酬改定請求の方法標準報酬改定請求は,当事者が標準報酬の改定又は決定の請求をすること及び請求すべき按分割合について合意している旨が記載された公正証書の添付その他の厚生労働省令で定める方法によりしなければならない(厚年法78条の2第3項) 者が標準報酬の改定又は決定の請求をすること及び請求すべき按分割合について合意している旨が記載された公正証書の添付その他の厚生労働省令で定める方法によりしなければならない(厚年法78条の2第3項)。これを受けて,厚年法施行規則78条の4(平成27年 厚生労働省令第153号による改正前のもの,以下同じ。)は,標準報酬改定請求をする当事者は,請求書に次の各号のいずれかに掲げる書類を添付してこれを機構に提出しなければならないとし(同条1項),「請求すべき按分割合を定めた確定した審判の謄本又は抄本」(同項1号)と定めている。 また,請求期限の特例(上記(4)イ)が適用される場合にあっては,「請求すべき按分割合に関する審判又は調停の申立てをした日を証する書類」を添えなければならないとされている(同条6項)。 (6) 被告への事務の委任厚年法78条の2第1項及び78条の4第1項の規定による請求の受理,78条の6第1項の規定による標準報酬月額の改定又は決定及び同条2項の規定による標準賞与額の改定又は決定に係る厚生労働大臣の権限に係る事務は,機構に行わせるものとされている。(厚年法100条の4第1項21号及び23号) 3 前提事実(当事者間に争いがないか,文中記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)(1) 原告の離婚原告 (昭和32年▲月▲日生) は, 昭和57年▲月▲日, 訴外A(以下「元夫」という。)と婚姻し,平成23年▲月▲日,同人と離婚した。(争いがない事実)(2) 年金分割審判ア原告は,平成25年2月7日, ▲ 家庭裁判所 ▲ 支部(以下「家裁▲支部」という。)に対し,B弁護士を代理人として,元夫を相手方とする,年金分割のための請求すべき按分割合に関する処分の申立てをした。(争いがない事実 月7日, ▲ 家庭裁判所 ▲ 支部(以下「家裁▲支部」という。)に対し,B弁護士を代理人として,元夫を相手方とする,年金分割のための請求すべき按分割合に関する処分の申立てをした。(争いがない事実)イ家裁▲支部は,上記アの申立てに基づき,同年3月22日,請求すべき按分割合を0.5と定める審判(以下「本件審判」という。)をした。 (争いがない事実)ウ原告は,同年3月27日,B弁護士から本件審判に係る審判書謄本(以下「本件審判書」という。)を郵送にて受け取った。原告は,この時までに,B弁護士から,原告自身が本件審判書を用いて標準報酬改定請求を行うように伝えられており,その場合の請求期限については,「審判日から1か月以内」(同年4月22日まで)と認識していた。(甲4,6,14,乙2,原告本人,弁論の全趣旨)(3) 4月4日の標準報酬改定請求ア原告は, 平成25年4月4日, ▲ 年金事務所 (以下「本件年金事務所」という。)において,別紙2標準報酬改定請求書(以下「本件請求書」という。作成日付が平成23年4月4日であるのは,平成25年の誤記である。甲14)及び本件審判書等の添付書類を提出し,これにより標準報酬改定請求(以下「第1改定請求」という。)をした。(争いがない事実)なお,原告は,平成23年▲月▲日に元夫と離婚し,平成25年4月4日に第1改定請求をしたから,同請求時点で,請求期限の原則である離婚が成立した日の翌日から起算して2年を経過しているが,原告は,その経過前に本件審判の申立てをしており,上記離婚が成立した日の翌日から起算して2年を経過した日以後に本件審判が確定することになれば,請求期限の特例が適用され,この場合の請求期限は,請求すべき按分割合を定めた審判が確定した日の翌日から起算して1月となる(上記2( から起算して2年を経過した日以後に本件審判が確定することになれば,請求期限の特例が適用され,この場合の請求期限は,請求すべき按分割合を定めた審判が確定した日の翌日から起算して1月となる(上記2(4)参照)。 イ原告は,上記アの際,本件年金事務所の職員(以下「本件職員」という。)から,本件審判は確定していないので受け付けることができず,確定証明書を用意してまた来るようにと言われ,提出した申請書類の返還を受けたので,原告はこれらを持ち帰った。(争いがない事実,甲14,原告本人,弁論の全趣旨)(なお,原告が,第1改定請求を取り下げたといえるか否か,また,本件 職員が,原告に対し,請求期限が審判確定日の翌日から起算して1か月である旨を説明したか否かについては,当事者間に争いがある。)(4) 審判の確定証明書の交付依頼原告は,平成25年4月5日,B弁護士に対し,返礼の文章とともに「後日,審判の確定書をいただいたのち,社会保健事務所への手続きを行ないたいと予定しておりますので,何卒よろしくお願い致します。」と記載した自筆の手紙(以下「本件手紙」という。)を郵送した。B弁護士は,本件手紙を受領したが,原告が本件手紙の中で本件審判の確定証明書の送付を依頼していることを認識していなかった。(甲7,14,弁論の全趣旨)(5) 本件審判の確定本件審判は,平成25年4月9日,即時抗告期間である2週間(家事事件手続法86条)の経過により確定した。(争いがない事実)(6) 審判の確定証明書の交付B弁護士は,平成25年5月1日,家裁 ▲ 支部より,本件審判の確定証明書及び申立日証明書の交付請求がされていない旨連絡を受けたことから,翌2日,上記の確定証明書及び申立日証明書(以下「本件確定証明書等」という。)の交付申請をして交付を受 支部より,本件審判の確定証明書及び申立日証明書の交付請求がされていない旨連絡を受けたことから,翌2日,上記の確定証明書及び申立日証明書(以下「本件確定証明書等」という。)の交付申請をして交付を受け,同月7日,原告に対し,本件確定証明書等を郵送した。原告は,同月8日又は9日,本件確定証明書等を受け取った。(甲3,5,8,14,乙1,3,弁論の全趣旨)(7) 5月16日の標準報酬改定請求原告は,同年5月16日,本件年金事務所において,同年4月4日に返還された本件請求書を改めて提出し,添付書類として本件審判書のほか,本件確定証明書等を提出した(以下「第2改定請求」という)。(甲9,乙4)(8) 本件却下処分日本年金機構理事長は,平成25年6月3日,原告に対し,第2改定請求が審判確定日の翌日から起算して1月を経過しており,厚年法78条の2及 び厚年法施行規則78条の3第2項の規定により標準報酬改定請求ができないとして,第2改定請求を却下する処分(以下「本件却下処分」という。)をした。(争いがない事実)(9) 行政不服審査原告は,本件却下処分を不服として,平成25年8月2日,関東信越厚生局社会保険審査官に対し,本件却下処分の取消しを求める審査請求をしたが,同審査請求は,同年10月30日,棄却された。これに対し,原告は,同年12月20日,社会保険審査会に対し,再審査請求をしたが,同再審査請求は,平成26年7月31日,棄却された。(争いがない事実)(10) 訴訟提起原告は,平成27年1月24日,本件却下処分の取消し等を求める本件訴えを提起した。(当裁判所に顕著な事実)第3 争点主位的請求に係る争点は,① 原告が第1改定請求を取り下げたといえるか否か(すなわち,第1改定請求に対する応答は未だないとみるべき める本件訴えを提起した。(当裁判所に顕著な事実)第3 争点主位的請求に係る争点は,① 原告が第1改定請求を取り下げたといえるか否か(すなわち,第1改定請求に対する応答は未だないとみるべきか否か)(争点1。本件義務付けの訴えに係るもの),② 原告が第1改定請求を取り下げたと認められる場合,本件却下処分に取消事由があるか否か(争点2。本件取消しの訴えに係るもの)であり,予備的請求に係る争点は,③ 国家賠償法1条1項に基づく損害賠償義務の有無(争点3)である。 第4 争点についての当事者の主張 1 原告が第1改定請求を取り下げたといえるか否か(争点1)(1) 原告の主張ア原告は,本件審判後,その確定前である平成25年4月4日,第1改定請求をしたところ,第1改定請求は,行政手続法2条3号の「申請」に該当するから,同法7条により,被告は,第1改定請求の審査を開始し,審判の確定証明書が添付されていないという申請の形式上の要件に適合しな い不備があれば,速やかに相当の期間を定めて補正を求めるか又は拒否処分をしなければならず,これを不受理とすることはできない。しかるに,被告は,第1改定請求に係る本件申請書等を返戻してこれを不受理とした。 そうすると,原告は,平成25年4月4日,第1改定請求をした以上,被告がこれを不受理にしたとしても,本件審判に基づく標準報酬改定請求をしたことになるところ,その後,同年4月9日,本件審判が確定し,原告は,同年5月16日,本件請求書を改めて提出し,審判の確定証明書を追完したことにより(これは,第1改定請求の継続手続であったと評価されるべきである。),当該請求は,請求期限(審判確定日の翌日から起算して1か月)内に適法にされたものとなった。 イ原告が第1改定請求を取り下げていないこと原告は 求の継続手続であったと評価されるべきである。),当該請求は,請求期限(審判確定日の翌日から起算して1か月)内に適法にされたものとなった。 イ原告が第1改定請求を取り下げていないこと原告は,平成25年4月4日に第1改定請求をした際,本件職員から,審判の確定証明書の添付がないことなどを理由として,申請書類の全部を返戻されたものであるが,次のとおり,このことをもって原告が第1改定請求を取り下げたと評価することはできないというべきである。 (ア) 原告は,第1改定請求の際,本件職員から第1改定請求の取下げを求められたことも,第1改定請求を取り下げることに同意したこともない。このことは,第1改定請求に関する年金相談事跡個別詳細票(以下「本件相談事跡票」という。乙7)において,「審判の謄本があるが,確定証明書がないため,確定日から1か月以内で請求するよう指示。」などと記載されているのみで,第1改定請求の取下げという重要な行為が全く記載されていないことからも明らかである。 (イ) 原告は,同年5月16日,第1改定請求に必要な書類を追完するために本件年金事務所を訪れた際,本件請求書(原告が同年4月4日の第1改定請求の際に提出した標準報酬改定請求書)に本件確定証明書等を添付して提出したところ,原告が第1改定請求を取り下げていたとすれ ば,同年4月4日の手続と同年5月16日の手続は全く別個の申請手続であるから,同年5月16日の申請手続において,本件申請書を使用することはできず,新たに標準報酬改定請求書を記載する必要があった。 しかし,本件職員は,同年5月16日の申請手続において,原告に対し,新たな標準報酬改定請求書の提出を要求することなく,本件請求書の作成日付(平成23年(平成25年の誤記である。)4月4日)を訂正させることもなく,原 ,同年5月16日の申請手続において,原告に対し,新たな標準報酬改定請求書の提出を要求することなく,本件請求書の作成日付(平成23年(平成25年の誤記である。)4月4日)を訂正させることもなく,原告が再度提出した本件請求書を受け取った。このことは,同年5月16日の手続が,同年4月4日にされた第1改定請求とは別の申請手続ではなく,第1改定請求の継続手続であったことについて,原告と本件年金事務所の双方が認識していたことを示すものである。 ウ上記のとおり,原告は第1改定請求を取り下げておらず,被告はこれに対して何らの処分をしていない。よって,被告は,別紙2標準報酬改定請求書記載の請求に基づく標準報酬改定処分をすべきである(本件義務付けの訴え)。 (2) 被告の主張ア原告が第1改定請求を取り下げるに至る経緯について審判分割は,確定した審判に基づくものであることを実質的な要件とするところ,被告は,原告が平成25年4月4日に行った第1改定請求に対し,行政手続法7条に基づき,遅滞なく審査を開始した結果,同請求の当時,本件審判が確定していないことが判明した。このため,本件職員は,原告に対し,本件審判の確定後,審判確定日の翌日から起算して1か月以内に改めて標準報酬改定請求を行うように教示した上で,原告から提出された本件請求書,本件審判書等の関係書類一式を返戻したものであり,その際,原告は,同職員の説明を受けて第1改定請求を取り下げることに同意し,第1改定請求を取り下げ,返戻された関係書類一式を持ち帰ったも のである。 イ原告が第1改定請求を取り下げたことは,次のことからも明らかである。 (ア) 原告は,B弁護士に宛てた手紙において,「後日,審判の確定書をいただいたのち,社会保健事務所への手続きを行ないたいと予定しております…」 求を取り下げたことは,次のことからも明らかである。 (ア) 原告は,B弁護士に宛てた手紙において,「後日,審判の確定書をいただいたのち,社会保健事務所への手続きを行ないたいと予定しております…」と記載している上,原告本人尋問の結果によっても,原告は,本件審判が確定してから,審判の確定証明書とともに,戸籍謄本や住民票等を取り直した上で,再度本件年金事務所に来所して手続をする必要があると認識していた。このことからすれば,原告は,第1改定請求を取り下げた上で,本件審判が確定してから改めて標準報酬改定請求を行う意思があったと考えることが自然である。 (イ) 本件相談事跡票(乙7)には,原告の第1改定請求について,「離婚分割。審判の謄本があるが,確定証明書がないため,確定日から1か月以内で請求するよう指示。」と記載されている。このことからすれば,本件職員は,請求期限が審判確定日から1か月であり,本件審判の確定後,改めて請求するように教示したものであるところ,これを受けて,原告は,第1改定請求を取り下げたというべきである。 (ウ) これに対し,原告は,平成25年5月16日の第2改定請求の際,第1改定請求の時に使用した本件請求書が作成日付の訂正をすることなく受け付けられたことを理由として,第2改定請求は,新たな請求ではなく,同年4月4日の第1改定請求の継続手続であった旨主張する。 しかし,本件の標準報酬改定請求がされた日は,本件請求書の作成日付ではなく,「申請がその事務所に到達したとき」(行政手続法7条)である同年5月16日であるから,同日にされた第2改定請求が,第1改定請求の継続手続であったということはない。 2 本件却下処分に取消事由があるか否か(争点2)(1) 原告の主張 仮に,原告が平成25年4月4日の第1改定請求を取 第2改定請求が,第1改定請求の継続手続であったということはない。 2 本件却下処分に取消事由があるか否か(争点2)(1) 原告の主張 仮に,原告が平成25年4月4日の第1改定請求を取り下げたものであるとしても,第2改定請求に基づく本件却下処分には以下の取消事由がある。 ア教示義務違反(ア) 誤った教示を行ったこと(教示義務違反1)平成25年4月4日の時点では,原告の元夫が即時抗告権を放棄して本件審判が確定している可能性もあったから,審判の確定証明書の添付がないことをもって本件審判が確定していないと断定することはできなかったはずである。そうすると,本件職員が,審判の確定要件を満たしていないことを理由として第1改定請求の取下げを求めたことは,重大な手続違反であり,これを前提とした本件却下処分は取り消されるべきである。 (イ) 請求期限の教示を怠ったこと(教示義務違反2)a 本件職員は,平成25年4月4日,原告に対し,本件審判の確定証明書を用意するよう指示するにとどまり,改定請求の請求期限(審判確定日の翌日から起算して1か月)についての説明を全くしなかった。 b 原告は,上記の指示を受け,同日中に審判の確定証明書を請求する手紙を書き,B弁護士にそれを郵送し,同年5月8日にB弁護士から審判の確定証明書を受領した後は,1週間後の同月16日には本件年金事務所に赴いている。このように,原告は,指示されたことに対応して迅速に行動しており,仮に同年4月4日に本件職員から審判確定日の翌日から起算して1か月内に手続をしなければならないと教示されていれば,B弁護士に対し,審判確定がいつであるかを確認し,請求期限に間に合うように審判の確定証明書を渡してくれるように要請したはずである。しかし,原告が実際にB弁護士に宛てた手紙には いと教示されていれば,B弁護士に対し,審判確定がいつであるかを確認し,請求期限に間に合うように審判の確定証明書を渡してくれるように要請したはずである。しかし,原告が実際にB弁護士に宛てた手紙には,「後日,審判の確定書をいただいたのち,…」と書かれてあるだけであり,審判確定日の翌日から起算して1か月という短期間に手続をし なければならないという切迫感や焦燥感が全くない。 以上のことからすれば,同年4月4日に第1改定請求をした際,本件職員から請求期限について教示されていない旨の原告の供述は信用できるというべきである。 c 被告は,本件相談事跡票(乙7)の「審判の謄本があるが,確定証明書がないため,確定日から1か月以内で請求するよう指示。」との記載があることを根拠として,本件職員は,第1改定請求の際,原告に対し,請求期限について教示した旨主張する。 しかし,本件相談事跡票の処理概要欄(乙7の3枚目)には,手書きの記載が全くなく不自然である上,必要な教示をしなかった職員がそのことを自ら記載することは考えられず,その場合,マニュアルどおりの応対をした旨記載することも往々にして存在する。したがって,本件相談事跡票の上記記載には信用性がない。 d 原告が本件審判に基づく年金分割により得る金額が極めて多額であることや,請求期限が審判確定日の翌日から起算して1か月と極めて短いことからすれば,第1改定請求を受けた本件職員は,審判の確定証明書を添付する必要があることだけでなく,請求期限が審判確定日の翌日から起算して1か月と極めて短いことを教示すべきであった。 そうすると,本件職員が,第1改定請求の際,原告に対し,請求期限が審判確定日の翌日から1か月であることを全く教示しなかったことは,重大な手続違反であり,本件却下処分の取消事由になる。 べきであった。 そうすると,本件職員が,第1改定請求の際,原告に対し,請求期限が審判確定日の翌日から1か月であることを全く教示しなかったことは,重大な手続違反であり,本件却下処分の取消事由になる。 イ公平原則違反についてB弁護士が本件年金事務所に確認したところによると,原告が仮に本件審判の確定後に改定請求をしていたのであれば,確定証明書が請求期限内に提出できなかったとしても,一旦請求を受理し,後に確定証明書が追完されれば,同請求に基づく標準報酬改定ができたとのことである。 ところが,本件では,原告が,本件審判の確定前に改定請求をしていたため,上記の確定証明書の追完による救済を受けられない結果となった。 この取扱いは,より早く手続を行った者を不利に扱うもので公平性に著しく反するから,本件却下処分の取消事由となる。 ウしたがって,本件却下処分は違法であるから取り消されるべきである(本件取消しの訴え)。 (2) 被告の主張ア教示義務違反について(ア) 教示義務違反1原告は,第1改定請求の当時,元夫が即時抗告権を放棄することによって本件審判が確定している可能性もあった旨主張する。 しかし,それはあくまで可能性の話であり,被告としては,審判の確定証明書がない限り,審判分割の実質的要件である審判が確定した事実を確認できない上,審判分割は,当事者双方の利害が対立するものであるから,審判の確定前に他方当事者が即時抗告権を放棄する可能性は一般に低い。そして,標準報酬改定請求をした者において,他方当事者が即時抗告権を放棄したことを証明する書面を持参しなかった以上,審判確定後に改めて審判の確定証明書を持参して標準報酬改定請求をするように教示することは,本件職員として極めて自然なことであり,この点について教示義務違 したことを証明する書面を持参しなかった以上,審判確定後に改めて審判の確定証明書を持参して標準報酬改定請求をするように教示することは,本件職員として極めて自然なことであり,この点について教示義務違反があるとはいえない。 (イ) 教示義務違反2本件相談事跡票(乙7)には,「離婚分割。審判の謄本があるが,確定証明書がないため,確定日から1か月以内で請求するよう指示。」と記載されている。このことからすれば,本件職員は,原告に対し,請求期限が審判確定日の翌日から起算して1か月であることを説明しているというべきである。 イ公平原則違反についてB弁護士が本件年金事務所から確認したとされる内容については,そのような相談事跡が確認できないことから否認し,その余は争う。 3 国家賠償法1条1項に基づく損害賠償義務の有無(争点3)(1) 原告の主張ア公共団体の公権力の行使に当たる公務員である本件職員は,その職務である標準報酬改定請求の受付事務について上記2(1)の違法な教示義務違反及び公平原則違反を行い,同職員には過失が認められる。 イ本件審判に基づく標準報酬改定請求により改定された場合,原告は,60歳から64歳までに1年間当たり特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分として70万6000円の年金を受給することができたところ,この年金額は,同改定がされない場合の年金額である14万2500円と比較して56万3500円高い。また,第1改定請求に基づく標準報酬改定がされた場合,原告は,65歳から平均余命である84歳までの老齢厚生年金の報酬比例部分及び経過的加算部分並びに老齢基礎年金として合計129万2700円を受給することができたところ,この年金額は,同改定がされない場合の年金額である72万9100円と比較して56万3600円高 比例部分及び経過的加算部分並びに老齢基礎年金として合計129万2700円を受給することができたところ,この年金額は,同改定がされない場合の年金額である72万9100円と比較して56万3600円高い。原告が被った損害額を計算すると,合計639万7687円となる。 (計算式)563,500 円×(7.1078*-3.5460**)+563,600 円×(14.8981***-7.1078)=6,397,687 円* 年金原価表の喪失期間9年(原告が65歳に達する年数)のライプニッツ係数** 同期間4年(原告が60歳に達する年数)のライプニッツ係数*** 同期間28年(原告が84歳に達する年数)のライプニッツ係数ウしたがって,被告は,原告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,原告 が給付を受けられるはずであった年金額である639万7687円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成27年2月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うべきである。 (2) 被告の主張被告は,厚生労働大臣から委任,委託を受け,公的年金等に係る一連の運営業務を行う公法人であり,本件の損害賠償請求に関し,国家賠償法1条1項に規定する公共団体に該当することは認めるが,その余は否認ないし争う。 第5 当裁判所の判断 1 争点1(原告が第1改定請求を取り下げたといえるか否か)について(1) 審判分割における審判の確定の審査について厚年法は,厚生年金保険の被保険者(被保険者であった者を含む。)又はその配偶者であった者は,離婚等をした場合であって,「家庭裁判所が請求すべき按分割合を定めたとき」は,厚生労働大臣に対して,標準報酬改定請求することができる(78条の2第1項)ことを定めているところ,「家庭裁判所が請求すべき按分割合 場合であって,「家庭裁判所が請求すべき按分割合を定めたとき」は,厚生労働大臣に対して,標準報酬改定請求することができる(78条の2第1項)ことを定めているところ,「家庭裁判所が請求すべき按分割合を定めたとき」とは,家庭裁判所が家事審判により按分割合を定め,かつ,当該審判が確定していることをいうものと解される。 他方,厚年法78条の2第3項の委任を受けた厚年法施行規則78条の4(平成27年厚生労働省令第153号による改正前のもの)は,標準報酬改定請求の請求書に添付して,「請求すべき按分割合を定めた確定した審判の謄本又は抄本」(2号)を被告に提出しなければならない旨規定しているところ,同号は,審判の謄本又は抄本を添付書類とすべきことを定めるにとどまり,当該審判が確定したことを証する特定の書類(確定証明書)自体を添付書類とするものではない。 そうすると,上記の「家庭裁判所が請求すべき按分割合を定めたとき」という要件は,法令に定められた申請における添付書類から外形上明確に判断 し得るものではないこととなるから,申請の形式上の要件(行政手続法7条参照)ではなく,実質的な要件であると解される。したがって,行政庁は,申請がその事務所に到達したときは,遅滞なく当該申請の審査を開始すれば足りることとなる。 以上と異なる原告の主張は,採用することができない。 (2) 本件申請書等の返還の評価ア前提事実(2)ないし(4)及び証拠(原告本人)によれば,① 家裁 ▲ 支部は,平成25年3月22日,本件審判をしたところ,原告は,同年3月27日,B弁護士から本件審判書を受領したこと,② 原告は,同年4月4日,本件年金事務所において本件請求書を提出して第1改定請求を行い,その際,添付資料として本件審判書などを提出したこと,③ 本件職員は,同 弁護士から本件審判書を受領したこと,② 原告は,同年4月4日,本件年金事務所において本件請求書を提出して第1改定請求を行い,その際,添付資料として本件審判書などを提出したこと,③ 本件職員は,同日,原告に対し,本件審判は確定していないので申請を受け付けることができないこと,元夫が納得しない場合などには確定証明書がすぐに出ないケースもあること,もう一度申請する際には戸籍謄本や住民票を取り直すほうがよいことなどを説明したこと,④ 原告は,同日,原告が提出した本件申請書,本件審判書等の申請書類の全部の返還を受け,これらを持ち帰ったこと,⑤ 原告は,その直後,B弁護士に宛てて本件手紙を送付し,「後日,審判の確定書をいただいたのち,社会保健事務所への手続きを行ないたいと予定しております…」と記載したことがそれぞれ認められ,他方,原告が,同年4月4日,本件職員の上記③の説明に従う意思がない旨を表明したことを認めるに足りる証拠はない。 以上のような経緯に照らすと,本件職員は,本件請求書を審査した同年4月4日の時点では,本件審判が確定しているとはいえず,また,本件審判はいずれ確定するにせよ,速やかに確定するか否かは不明であるという状態にあることを考慮し,同日時点で申請の拒否処分をすることや申請を維持したまま補正を待つことはいずれも適切ではないとの判断にたって, 原告に対し,第1改定請求の取下げを求める行政指導(以下「本件行政指導」という。)を行い,他方,原告は,これに従って,本件請求書を含む申請書類全部の返還を受け,再度申請を行うこととし,もって第1改定請求を取り下げたものであると推認することができる。 イ原告の主張について(ア) 原告は,本件相談事跡票(乙7)に関し,処理概要欄(乙7の3枚目)に手書きで書かれた部分がない上,取下 第1改定請求を取り下げたものであると推認することができる。 イ原告の主張について(ア) 原告は,本件相談事跡票(乙7)に関し,処理概要欄(乙7の3枚目)に手書きで書かれた部分がない上,取下げという重要な行為について全く言及されていないことからすると,原告が第1改定請求を取り下げたと認めることはできない旨主張する。 しかしながら,本件相談事跡票の3枚目は,「年金相談・手続受付票」の裏面に当たり,担当者が手書きで記入する体裁になっているところ,被告の事務処理指針(乙10)によれば,「受付票(年金相談・手続受付票)裏面の相談事跡欄については,当システム(年金相談事跡管理システム)へ入力された事項については,記載を省略できる」とされていることが認められ,このことからすると,手書きの記載がないことが直ちに不自然であるとはいえないし,一般に,手書きの記載がないからといって,直ちに電磁的な記録を印刷した書面に信用性がないとはいえない。 (イ) また,原告は,同年4月4日の第1改定請求が取り下げられたとすれば,同年5月16日の第2改定請求において本件申請書を使用できないはずなのに,本件職員は,第2改定請求の際,作成日付を訂正させずに本件請求書を受け取っているのであり,このことからすると,第2改定請求は,第1改定請求の継続手続であったというべきである旨主張する。 しかしながら,同年4月4日に関する本件相談事跡票(乙7)の受付届出書欄が空欄とされていることや,本件申請書には,第2改定請求が 行われた平成25年5月16日の受付印のみが押されていること(乙4)からすると,本件年金事務所においては,同年4月4日にされた第1改定請求が維持されているという取扱いがされていなかったことが明らかである。 (ウ) よって,原告の上記主張はいず ていること(乙4)からすると,本件年金事務所においては,同年4月4日にされた第1改定請求が維持されているという取扱いがされていなかったことが明らかである。 (ウ) よって,原告の上記主張はいずれも採用できない。 (3) 小括以上によれば,原告は,平成25年4月4日,第1改定請求を取り下げたと認められるから,原告は,同日に標準報酬改定請求を行ったとはいえない。 そうすると,本件義務付けの訴えは,そもそも,その義務付けの対象となる処分の前提となる申請を欠くものであるから(行政事件訴訟法37条の3第1項1号),不適法なものといわざるを得ない。なお,本件義務付けの訴えは,第1改定請求に係る処分につき不作為の違法確認の訴えの提起を欠く(同条3項1号)点においても,不適法である。 2 争点2(本件却下処分に取消事由があるか)について(1) 原告の主張する取消事由についてア上記1によれば,原告は,平成25年4月4日,第1改定請求をした上でこれを取り下げたものであるところ,このことを踏まえると,第1改定請求とは別の新たな標準報酬改定請求として,同年5月16日,第2改定請求がされ,これに対し,第2改定請求を却下する処分(本件却下処分)がされたと認められる。 イ原告は,本件職員による教示義務違反及び公平原則違反をいうところ,この原告の主張は,第1改定請求の際における被告の誤った対応が,第2改定請求をするに当たり請求期限を徒過するという事態をもたらしたものであるとの趣旨であると理解できる。そこで,このような観点から,原告の主張する取消事由について検討する。 (2) 教示義務違反について ア教示義務違反1原告は,第1改定請求をした際,本件審判の相手方である元夫が即時抗告権を放棄して本件審判が確定している可能性もあったにも いて検討する。 (2) 教示義務違反について ア教示義務違反1原告は,第1改定請求をした際,本件審判の相手方である元夫が即時抗告権を放棄して本件審判が確定している可能性もあったにもかかわらず,本件審判が未確定であることを前提とし,本件職員において,原告に対し,第1改定請求の取下げと再度の申請を教示したことは,誤った判断に基づく重大な手続違反に当たり,本件却下処分の取消事由に当たる旨主張する。 しかしながら,第1改定請求の当時,本件審判は確定していなかったのであるから(前提事実(5)),本件職員の判断に誤りはなく,原告の主張はその前提を欠くものといわざるを得ない。 よって,この点に関する原告の主張は採用できない。 なお,請求すべき按分割合を定めた審判がされたが,同審判が確定するまでの間に,審判分割に基づく標準報酬改定請求がされた場合については,当該請求時点において,審判分割による標準報酬改定の実質的要件を満たしていないだけでなく,同審判に対して即時抗告がされる可能性があり,その場合には,同審判が未確定な状態が継続し,標準報酬改定請求の手続が不安定な状態に置かれることに鑑みると,審査の結果,審判が確定していることが判明しない場合には,申請者に対し,当該申請を取り下げた上,改めて同審判の確定後,請求期限内に標準報酬改定請求をすべき旨の行政指導を行うことは,不合理で違法な取扱いと断じることはできない。 そうすると,第1改定請求を審査した結果,本件審判が確定していないと判断した本件職員において,原告に対し,本件審判の確定後に確定証明書を添えて改めて標準報酬改定請求をすべきことを促し,第1改定請求の取下げを求める行政指導を行ったことについては,そのこと自体は,特段不合理で違法な措置であるとはいえないというべきである に確定証明書を添えて改めて標準報酬改定請求をすべきことを促し,第1改定請求の取下げを求める行政指導を行ったことについては,そのこと自体は,特段不合理で違法な措置であるとはいえないというべきである。 イ教示義務違反2原告は,第1改定請求をした際,本件職員が標準報酬改定請求の請求期 限(起算日)について全く説明しないで申請書類を全部返戻したことは,重大な手続違反に当たり,本件却下処分の取消事由に当たる旨主張する。 そこで検討するに,本件相談事跡票(乙7)には,第1改定請求に関し,「離婚分割。審判の謄本があるが,確定証明書がないため,確定日から1か月以内で請求するよう指示。(離婚後の請求)審判日3/22 婚姻期間S57.▲.▲ ~ H23.▲.▲」と記載されているところ,本件職員においては,第1改定請求の取り下げを求めるに際し,再度の申請を確定日から1か月以内に行うように指示したことがうかがわれる。 もっとも,原告の作成した本件手紙(甲7)の記載(前提事実(4))や,B弁護士から本件確定証明書等を受領した後の行動(前提事実(6),(7))からすると,原告が,再度の申請の期限の問題を明確に意識していたことはうかがわれない。 しかしながら,原告は,第1改定請求を行う前に,B弁護士から説明を受けて,「審判日から1か月以内」に標準報酬改定請求の申請をすべきであると理解しており(前提事実(2)ウ),申請には期限があることを知っていた上,原告は,B弁護士から平成25年5月9日に本件確定証明書等を受領した際,上記の確定証明書で証明された確定年月日が同年4月9日になっており,その1か月後だと同年5月9日になってしまうので,それはないだろうと自分の中で判断し,証明日である同年5月2日から1か月以内に手続をすればいいだろうと解釈し た確定年月日が同年4月9日になっており,その1か月後だと同年5月9日になってしまうので,それはないだろうと自分の中で判断し,証明日である同年5月2日から1か月以内に手続をすればいいだろうと解釈した(甲14,原告本人)というのであるから,原告自身,起算日がいつであるのかはともかく,申請には期限があることを認識していたといえるし,また,少なくとも当初の認識であった「審判日から1か月以内」という期限が,再度の申請に当たりどのように適用されるのかについて疑問を感じることができる状況に直面していたということができる。 以上の点に加え,本件職員において,原告に対し,再度の申請の期限に ついて何らかの誤った説明をしたことを認めるに足りる証拠はなく,原告が再度の申請を行うに当たり,その権利の行使を妨げるような行為に及んだとまではいえないこと(行政手続法33条参照)をも勘案すると,仮に,本件職員が,第1改定請求をの取下げを求める行政指導(本件行政指導)に際し,原告に対して,再度の請求に係る申請の期限の起算日を明確に説明していなかったとしても,そのことをもって,本件却下処分に係る手続につき重大な手続違反があったと評価することはできないと解することが相当である。 よって,この点に関する原告の主張は採用できない。 (3) 公平原則違反について原告は,① 審判確定後に標準報酬改定請求をしていれば,一旦請求を受理し,審判確定証明書を追完できたのに,② 本件審判の確定前に改定請求をしたために,審判確定証明書の追完による救済を受けられない結果となったとして,①と②の差異は,より早く手続を行った者を不利に扱うもので公平性に著しく反し,本件却下処分の取消事由となる旨主張する。 しかしながら,上記1(1)のとおり,審判の確定は,審判分割による標準報 て,①と②の差異は,より早く手続を行った者を不利に扱うもので公平性に著しく反し,本件却下処分の取消事由となる旨主張する。 しかしながら,上記1(1)のとおり,審判の確定は,審判分割による標準報酬改定請求の実質的要件であると解されるところ,原告の主張する上記①の場合は,審判の確定という実質的要件は満たしている以上,通常,これを受理した上で確定証明書の追完を求めることになるのに対し,上記②の場合には,そもそも審判が確定していない以上,上記1(2)のとおり,請求の取下げを求めた上で,審判確定後,請求期限内に改めて請求すべきことを求めることが,直ちに不合理で違法な取扱いと断じることはできないから,これをもって公平原則に反する取扱いとはいえない。 よって,この点に関する原告の主張は採用できない。 (4) 争点2のまとめ以上によれば,本件却下処分には,原告の主張するような取消事由がある とは認められない。 3 争点3(国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求権の成否)について原告は,本件職員が,その職務である標準報酬改定請求の受付事務について上記2の違法な教示義務違反及び公平原則違反を行った旨主張する。 しかしながら,上記2で検討したとおり,第1改定請求の際の本件職員の行為につき,原告の主張するような教示義務違反及び公平原則違反があるとはいえず,職務上の義務違反があるとは認められないし,また,当該行為と原告の主張する損害との間に因果関係があるともいえない。 したがって,原告の上記主張は採用することができず,損害額について判断するまでもなく,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求に係る原告の主張は理由がない。 4 結論よって,本件義務付けの訴えは不適法であるから却下し,その余の原告の主位的請求及び予備的請求はいずれ までもなく,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求に係る原告の主張は理由がない。 4 結論よって,本件義務付けの訴えは不適法であるから却下し,その余の原告の主位的請求及び予備的請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官谷口豊 裁判官工藤哲郎 裁判官和久一彦は転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官谷口豊 別紙1関係法令の定め 第1 厚生年金保険法(以下「厚年法」という。)(離婚等をした場合における標準報酬の改定の特例)78条の2[判決注,平成24年法律第63号による改正前のもの]1項第1号改定者(被保険者又は被保険者であつた者であつて,第78条の6第1項第1号及び第2項第1号の規定により標準報酬が改定されるものをいう。以下同じ。)又は第2号改定者(第1号改定者の配偶者であつた者であつて,同条第1項第2号及び第2項第2号の規定により標準報酬が改定され,又は決定されるものをいう。以下同じ。)は,離婚等(離婚(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者について,当該事情が解消した場合を除く。),婚姻の取消しその他厚生労働省令で定める事由をいう。以下この章において同じ。)をした場合であつて,次の各号のいずれかに該当するときは,厚生労働大臣に対し,当該離婚等について対象期間(婚姻期間その他の厚生労働省令で定める期間をいう。以下同じ。)に係る被保険者期間の標準報酬(第1号改定者及び第2号改定者(以下これらの者を「当事者」という。)の標準報酬をいう。以下この章において 間(婚姻期間その他の厚生労働省令で定める期間をいう。以下同じ。)に係る被保険者期間の標準報酬(第1号改定者及び第2号改定者(以下これらの者を「当事者」という。)の標準報酬をいう。以下この章において同じ。)の改定又は決定を請求することができる。ただし,当該離婚等をしたときから2年を経過したときその他の厚生労働省令で定める場合に該当するときは,この限りでない。 一当事者が標準報酬の改定又は決定の請求をすること及び請求すべき按分割合(当該改定又は決定後の当事者の次条第1項に規定する対象期間標準報酬総額の合計額に対する第2号改定者の対象期間標準報酬総額の割合をいう。以下同じ。)について合意しているとき。 二次項の規定により家庭裁判所が請求すべき按分割合を定めたとき。 2項前項の規定による標準報酬の改定又は決定の請求(以下「標準報酬改定請求」という。)について,同項第1号の当事者の合意のための協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,当事者の一方の申立てにより,家庭裁判所は,当該対象期間における保険料納付に対する当事者の寄与の程度その他一切の事情を考慮して,請求すべき按分割合を定めることができる。 3項標準報酬改定請求は,当事者が標準報酬の改定又は決定の請求をすること及び請求すべき按分割合について合意している旨が記載された公正証書の添付その他の厚生労働省令で定める方法によりしなければならない。 第2 厚生年金保険法施行規則(以下「厚年法施行規則」という。)(標準報酬改定請求の請求期限)78条の31項法第78条の2第1項ただし書に規定する厚生労働省令で定める場合は,次の各号に掲げる日の翌日から起算して2年を経過した場合とする。ただし,法第78条の4第1項の規定により対象期間の末日以後に提供を受けた 78条の2第1項ただし書に規定する厚生労働省令で定める場合は,次の各号に掲げる日の翌日から起算して2年を経過した場合とする。ただし,法第78条の4第1項の規定により対象期間の末日以後に提供を受けた情報について補正を要したと認められる場合における法第78条の2第2項に規定する標準報酬改定請求(以下「標準報酬改定請求」という。)の請求期間の計算については,当該補正に要した日数は,算入しない。 一離婚が成立した日二婚姻が取り消された日三第78条に定める事由に該当した日2項前項各号に掲げる日の翌日から起算して2年を経過した日以後に,又は同項各号に掲げる日の翌日から起算して2年を経過した日前1月以内に次の各号のいずれかに該当した場合(第1号又は第2号に掲げる場合に該当した場合にあつては,同項各号に掲げる日の翌日から起算して2年を経過した日 前に請求すべき按分割合(法第78条の2第1項第1号に規定する請求すべき按分割合をいう。以下同じ。)に関する審判又は調停の申立てがあつたときに限る。)について,同条第1項ただし書に規定する厚生労働省令で定める場合は,前項本文の規定にかかわらず,次の各号のいずれかに該当することとなつた日の翌日から起算して1月を経過した場合とする。 一請求すべき按分割合を定めた審判が確定したとき二請求すべき按分割合を定めた調停が成立したとき三人事訴訟法(平成15年法律第109号)第32条第1項の規定による請求すべき按分割合を定めた判決が確定したとき四人事訴訟法第32条第1項の規定による処分の申立てに係る請求すべき按分割合を定めた和解が成立したとき3項 (略)(法第78条の2第3項に規定する厚生労働省令で定める方法)78条の4[判決注,平成27年厚生労働省令第153号による改正前のも 係る請求すべき按分割合を定めた和解が成立したとき3項 (略)(法第78条の2第3項に規定する厚生労働省令で定める方法)78条の4[判決注,平成27年厚生労働省令第153号による改正前のもの]1項標準報酬改定請求をする当事者は,第78条の11第1項に規定する請求書に,次の各号のいずれかに掲げる書類を添付して,これを機構に提出しなければならない。 一当事者が標準報酬改定請求をすること及び請求すべき按分割合について合意している旨が記載された公正証書の謄本若しくは抄録謄本又は公証人の認証を受けた私署証書二請求すべき按分割合を定めた確定した審判の謄本又は抄本三請求すべき按分割合を定めた調停についての調停調書の謄本又は抄本四請求すべき按分割合を定めた確定した判決の謄本又は抄本五請求すべき按分割合を定めた和解についての和解調書の謄本又は抄本2項前項の規定によるほか,標準報酬改定請求をするときは,第78条の11第1項に規定する請求書に,次の各号に掲げる書類等を添付して,第1号 改定者(法第78条の2第1項に規定する第1号改定者をいう。以下同じ。)又はその代理人及び第2号改定者(同項に規定する第2号改定者をいう。以下同じ。)又はその代理人がともに年金事務所に直接持参することにより,機構に提出しなければならない。この場合においては,第97条の規定を適用しない。 一当事者が標準報酬改定請求をすること及び請求すべき按分割合について合意している旨を記載し,かつ,当事者自ら署名した書類二次のイ又はロに掲げる書類等を持参する者の区分に応じ,当該イ又はロに規定する書類等イ第1号改定者又は第2号改定者当該第1号改定者若しくは当該第2号改定者の氏名,生年月日及び住所と同一の氏名,生年月日及び住所が記載されて 参する者の区分に応じ,当該イ又はロに規定する書類等イ第1号改定者又は第2号改定者当該第1号改定者若しくは当該第2号改定者の氏名,生年月日及び住所と同一の氏名,生年月日及び住所が記載されている運転免許証,旅券若しくは住民基本台帳法第30条の44第1項に規定する住民基本台帳カード(住民基本台帳法施行規則(平成11年自治省令第35号)別記様式第2の様式によるものに限る。)(ロにおいて「運転免許証等」と総称する。)又は当該第1号改定者若しくは当該第2号改定者の印鑑及びその印鑑に係る印鑑登録証明書ロ第1号改定者の代理人又は第2号改定者の代理人(以下ロにおいて単に「代理人」という。) 当該第1号改定者若しくは当該第2号改定者の記名及び押印がある委任状(押印した印鑑に係る印鑑登録証明書が添付されている場合に限る。)並びに当該代理人の氏名,生年月日及び住所と同一の氏名,生年月日及び住所が記載されている運転免許証等又は当該代理人の印鑑及びその印鑑に係る印鑑登録証明書3項ないし5項 (略)6項前条第2項の規定が適用される場合にあつては,第1項第2号又は第3号に掲げる書類のほかに,請求すべき按分割合に関する審判又は調停の申立てをした日を証する書類を添えなければならない。

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