- 1 -令和元年9月12日判決言渡平成31年(行コ)第18号,同年(行コ)第70号公文書部分公開決定処分取消請求控訴事件,同附帯控訴事件(原審・東京地方裁判所平成30年(行ウ)第233号) 主文 1 本件控訴について原判決主文1,3項を次のとおり変更する。 板橋区長が平成29年12月11日付けで被控訴人に対してした別紙1文書目録記載1及びの公文書の部分公開決定のうち,同目録記載2ないし及びの部分を非公開とした部分を取り消す。 被控訴人のその余の請求を棄却する。 2 本件附帯控訴について 原判決主文2,3項を次のとおり変更する。 控訴人は,被控訴人に対し,5万円及びこれに対する平成29年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被控訴人のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用(控訴費用及び附帯控訴費用を含む。)は,第1,2審を通じてこれを20分し,その1を控訴人の負担とし,その余を被控訴人の負担とする。 4 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由 - 2 -第1 控訴の趣旨 1 原判決中控訴人敗訴部分をいずれも取り消す。 2 上記の部分につき,被控訴人の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審を通じて被控訴人の負担とする。 第2 附帯控訴の趣旨 1 原判決主文2項を次のとおり変更する。 控訴人は,被控訴人に対し,10万円及びこれに対する平成29年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用(附帯控訴費用を含む。)は,第1,2審を通じて控訴人の負担とする。 第3 事案 びこれに対する平成29年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用(附帯控訴費用を含む。)は,第1,2審を通じて控訴人の負担とする。 第3 事案の概要(以下,略語は,原判決の例による。) 1 本件は,被控訴人が東京都板橋区情報公開条例(本件条例)に基づき,処分行政庁に対し,別紙1文書目録記載1及びの公文書(本件請求対象文書)の公開請求をしたところ,平成29年12月11日付けで同目録記載2ないしの部分(本件非公開部分)を非公開とし,その余の部分を公開する旨の本件処分を受けたため,本件処分のうち本件非公開部分を非公開とした部分は違法であるとして,控訴人に対し,同部分の取消しを求めるとともに,本件非公開部分を非公開とされたことにより精神的苦痛を受けたと主張して,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償金10万円及びこれに対する違法行為の日である同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原審は,①本件処分のうち別紙1文書目録記載2ないしの部分を非公開とした部分を取り消し,②損害賠償金1万円及びこれに対する平成29年12月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で控訴人の請求を認容した。 控訴人は,原判決を不服として本件控訴を提起し,被控訴人は,原判 - 3 -決中上記②を不服として附帯控訴を提起した。 2 本件条例の定め,前提事実,争点及び争点に対する当事者の主張は,次のとおり付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1ないし4(原判決2頁19行目から15頁3行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正) 原判決5頁4行目中「甲4の1,乙 事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1ないし4(原判決2頁19行目から15頁3行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正) 原判決5頁4行目中「甲4の1,乙20」を「甲4の1,2,乙20,乙26の1,2」に改める。 原判決5頁7行目末尾に「なお,処分行政庁は,控訴人と私人との間の訴訟記録に編綴されていた被控訴人名義の閲覧謄写票を東京都板橋区個人情報保護条例8条1項2号及び民訴法91条3項に基づいて謄写し,被控訴人が本件請求対象文書を閲覧した事実を知るに至った。同閲覧謄写票には,①別件訴訟の控訴審判決の事件番号,②当該事件の原告の氏名が記載されていた(甲6,弁論の全趣旨)。」を加える。 同8頁4行目冒頭から16行目末尾までを次のとおり改める。 「別件訴訟原告の債権に関する情報本件請求対象文書のうち別紙1文書目録記載2には,別件訴訟原告の債権に関する情報(債務者の氏名,番号,種類等の情報)が記録されている。 これらは,当該債務者が法人であったとしても,債務者の氏名と番号とを組み合わせて公開することで,番号については,桁数,含まれる文字の種類,その位置等から,種類については,債務者の名称及び番号と組み合わせることで,債務者という別件訴訟原告と特殊な関係にある者からすれば別件訴訟原告を識別し得る。 - 4 - 所有第二種原動機付自転車に関する情報本件請求対象文書のうち別紙1文書目録記載2には,別件訴訟原告の所有第二種原動機付自転車に関する情報(車両番号,車名,型式,車台番号等の情報)が記録されており,次のとおり別件訴訟原告を識別し得る情報というべきである。 ① 車両番号車両番号は 二種原動機付自転車に関する情報(車両番号,車名,型式,車台番号等の情報)が記録されており,次のとおり別件訴訟原告を識別し得る情報というべきである。 ① 車両番号車両番号は,地方税法446条3項に基づき交付される原動機付自転車番号標(乙58,いわゆるナンバープレート)上の情報である。第二種原動機付自転車の所有者は,各自治体(市町村)の税条例によって,原動機付自転車番号標を取り付けることが義務付けられており,公道を自動車が走行する際には,常に原動機付自転車番号標が外部から容易に認識し得る状態となっている。また,車両番号は,一意性があり,当該原動機付自転車に固有のものであって,他の原動機付自転車に同じナンバープレートを用いることが禁じられている(乙58)。したがって,別件訴訟原告の所有する当該車両を目撃した者,特に近隣住民等は,別件訴訟原告の所有する当該車両の車両番号を知っているので,その情報と照らし合わせることで,別件訴訟原告が誰であるかが判明する。さらに,興信所がその具体的手法は不明であるが,ナンバープレート上の情報から,所有者の住所氏名を特定することができる(乙57)。 ② 車台番号車台番号は,同一性を示すために車台ごとに付される固有の番号である。そして,車台番号が記載されている車検証を見る機会のある者や整備士といった別件訴訟原告と特殊な関係にある者からは別件訴訟原告とわかる。そして,原動機付自転車の場合,外部から確認可能な部分に刻印されていることが - 5 -多いから(ただし,施錠可能な座席の中に刻印があるものもあり得る),別件訴訟原告と特殊な関係になくとも別件訴訟原告と判明する。 ③ 車名・型式乙26から判明する -多いから(ただし,施錠可能な座席の中に刻印があるものもあり得る),別件訴訟原告と特殊な関係になくとも別件訴訟原告と判明する。 ③ 車名・型式乙26から判明する別件訴訟原告に関する要素を組み合わせることで,別件訴訟原告と特殊な関係にある者は別件訴訟原告と識別できる。 所有二輪小型自動車本件請求対象文書のうち別紙1文書目録記載2には,別件訴訟原告の所有二輪小型自動車に関する情報(車両番号,車名,型式,車台番号等の情報)が記録されており,次のとおり別件訴訟原告を識別し得る情報というべきである。 ① 車両番号車両番号は,道路運送車両法60条1項に基づき交付され,同法73条1項に基づき表示義務が課される車両番号標上の情報である。二輪小型自動車の所有者は,上記法律によって表示が義務付けられており,公道を自動車が走行する際には,車両番号標が外部から容易に認識し得る状態となっている。車両番号は,一意性があり,当該車両に固有のものであって,他の車両に同じナンバープレートを用いることが禁じられている(乙58)。したがって,別件訴訟原告の所有する当該車両を目撃した者,特に近隣住民等は,別件訴訟原告の所有する当該車両の車両番号を知っているので,その情報と照らし合わせることで,別件訴訟原告が誰であるかが判明する。また,興信所がその具体的手法は不明であるが,ナンバープレート上の情報から,所有者の住所氏名を特定することができる(乙57)。 ② 車台番号車台番号は,同一性を示すために車台ごとに付される固有の - 6 -番号である。そして,車台番号が記載されている車検証を見る機会のある 57)。 ② 車台番号車台番号は,同一性を示すために車台ごとに付される固有の - 6 -番号である。そして,車台番号が記載されている車検証を見る機会のある者や整備士といった別件訴訟原告と特殊な関係にある者からは別件訴訟原告とわかる。そして,車台番号は,通常自動車又は車台の製作者がその製作過程において打刻するものであり,原則としてすべての自動車に適切な車台番号の打刻がされていることになり(道路運送車両法29条ないし31条),各自動車に固有の番号である。そして,車台番号が記載されている車検証を見る機会のある者や整備士といった別件訴訟原告と特殊な関係にある者からは別件訴訟原告とわかる。小型自動二輪車の場合,外部から確認可能な部分に刻印されていることが多いから(ただし,施錠可能な座席の中に刻印があるものもあり得る),別件訴訟原告と特殊な関係になくとも別件訴訟原告と判明する。 ③ 車名,型式乙26から判明する別件訴訟原告に関する要素を組み合わせることで,別件訴訟原告と特殊な関係にある者は別件訴訟原告と識別できる。 所有普通自動車本件請求対象文書のうち別紙1文書目録記載2には,別件訴訟原告の所有普通自動車に関する情報(登録番号,車名,型式,車台番号,使用の本拠の位置等の情報)が記録されており,次のとおり別件訴訟原告を識別し得る情報というべきである。 ① 登録番号登録番号は,道路運送車両法11条1項に基づき交付され,同法19条1項に基づき表示義務が課される自動車登録番号標上の情報である。普通自動車の所有者は,上記法律によって表示が義務付けられており,公道を自動車が走行する際には,車両番号標が外部から容易に認識し得る状態と き表示義務が課される自動車登録番号標上の情報である。普通自動車の所有者は,上記法律によって表示が義務付けられており,公道を自動車が走行する際には,車両番号標が外部から容易に認識し得る状態となっている。登録番号は, - 7 -一意性があり,当該車両に固有のものであって,他の車両に同じナンバープレートを用いることが禁じられている(乙58)。したがって,別件訴訟原告の所有する当該車両を目撃した者,特に近隣住民等は,別件訴訟原告の所有する当該車両の登録番号を知っているので,その情報と照らし合わせることで,別件訴訟原告が誰であるかが判明する。また,興信所がその具体的手法は不明であるが,ナンバープレート上の情報から,所有者の住所氏名を特定することができる(乙57)。 ② 車台番号車台番号は,同一性を示すために車台ごとに付される固有の番号である。そして,車台番号は,通常エンジンルームや自動車内に刻印され,外部からは知り難いので,車台番号が記載されている車検証を見る機会のある者や整備士といった別件訴訟原告と特殊な関係にある者からは別件訴訟原告とわかる。また,登録番号と車台番号が判明すれば,誰でも登録事項等証明書の交付を請求することができるので,これにより所有者である別件訴訟原告が判明する(乙59)。 ③ 車名,型式乙26から判明する別件訴訟原告に関する要素を組み合わせることで,別件訴訟原告と特殊な関係にある者は別件訴訟原告と識別できる。 その他の情報本件請求対象文書のうち別紙1文書目録記載2には,別件訴訟原告の経歴,別件訴訟原告と控訴人との間で発生した事実,控訴人が別件訴訟原告について,又は別件訴訟原告に対してした行為の内容,別件訴訟原告が体験した事実が記載され,次 文書目録記載2には,別件訴訟原告の経歴,別件訴訟原告と控訴人との間で発生した事実,控訴人が別件訴訟原告について,又は別件訴訟原告に対してした行為の内容,別件訴訟原告が体験した事実が記載され,次の事項が含まれており,いずれも別件訴訟原告を識別し得る情報である(甲4,乙26 - 8 -の各1,2,弁論の全趣旨)。 ① 別件訴訟原告が控訴人に対して請求した金額及びその内容② 別件訴訟原告が肩書住所地に転居した年月,性別,元号表記による生年,所得等の状況③ 別件訴訟原告と控訴人の職員とが面談した日付,当該職員の氏,同職員の別件訴訟原告に対する発言内容④ 別件訴訟原告が罹患した病名,当該疾患の健診に必要となる健診名,治療内容,診断を受けた病院名,当該病院への通院時期,別件訴訟原告の通院期間中の給与収入の金額,⑤ 別件訴訟原告が勤務していた会社名,各年度の給与収入の金額⑥ 別件訴訟原告が個人事業を開始した年,業種名,所得額⑦ 別件訴訟原告所有の不動産に関する毎月のローン支払金額 被控訴人は,別紙1文書目録記載2ないしの部分(以下「本件非公開部分のその余の部分」という。)に前記情報が記載されているとの控訴人の主張は信用できない旨主張する。しかし,本件処分により公開された判決書写し(甲4の1,2)と当審において一部開示した判決書写し(乙26の1,2)とは,黒塗り部分の文字数も黒塗り部分以外の部分も完全に一致しているから,両者は同一であるから,前記情報が記載されている。」同9頁21行目末尾に行を改め,次を加える。 「ウ控訴人が主張する本件請求対象文書のうち別紙1文書目録記載2ないしの情報は,本件非公開部分に含まれているとは認められない。控訴人は,当事者を同じくする複 末尾に行を改め,次を加える。 「ウ控訴人が主張する本件請求対象文書のうち別紙1文書目録記載2ないしの情報は,本件非公開部分に含まれているとは認められない。控訴人は,当事者を同じくする複数の訴訟において,我が国のどの自治体も採用せず,裁判例においても類例を把握できない独自の主張に固執しており,このような控訴人が上 - 9 -記のとおり別件訴訟原告を特定し得る情報がある旨主張しても,その主張自体が信用できない。 エ仮に控訴人が主張するとおりの情報が記載されている場合の主張は次のとおりである。 別件訴訟原告の債権に関する情報について別件訴訟原告の債権に関する情報のうち,債務者の氏名及び番号は本件条例6条1項2号所定の個人識別情報に該当する。他方,金融機関名,支店名及び口座種別等は,個人に関する情報であるが,債務者の氏名及び口座番号を非公開とすれば特定の個人を識別し得る具体的可能性はないし,別件訴訟原告に関する事情を知る特定の者においては,公開によって新規の有意な情報を付加されるものではないから,個人識別情報に該当しない。 第二種原動機付自転車に関する情報及び二輪小型自動車に関する情報について車両番号及び車台番号は,道路運送車両法に基づき1車両につき1つの番号が付与されるものであり,車両所有者の個人識別情報に該当する。上記以外の情報は,個人に関する情報であるが,車両番号及び車台番号に係る情報を非公開とすれば特定の個人を識別され得る具体的可能性はなく,別件訴訟原告に関する事情を知る特定の者においては,公開によって新規の有意な情報が付加されるものではないから,個人識別情報に該当しない。 普通自動車に関する情報について登録番号及び車台番 情を知る特定の者においては,公開によって新規の有意な情報が付加されるものではないから,個人識別情報に該当しない。 普通自動車に関する情報について登録番号及び車台番号は,道路運送車両法に基づき1車両につき1つの番号が付与されるものであり,車両所有者の個人識 - 10 -別情報に該当する。また,使用の本拠の位置は通常個人の住所又は居所に近いものであり,個人識別情報に該当する。上記以外の情報については,個人に関する情報ではあるが,上記の情報を非公開とすれば特定の個人を識別し得る具体的可能性はなく,別件訴訟原告に関する事情を知る特定の者においては公開によって新規の有意な情報が付加されるものではないから,個人識別情報に該当しない。 3 当審における当事者の主張(控訴人)本件処分の取消請求についてア本件条例17条は,他の法令の規定により,公文書の閲覧若しくは縦覧又は公文書の謄本,抄本その他の写しの交付の手続が定められている場合には,本件条例を適用しない旨定めているところ,判決書に関して民事訴訟法には,閲覧や謄本の交付に関する手続が定められているから,本件請求対象文書には本件条例は適用されない。 イ 「特定の個人が識別され得る」か否かの判断に当たっては当該個人と特殊な関係にある者が知り得る情報も斟酌するべきであり,かつ特定の個人が判別できる可能性がある場合も個人情報として保護するべきである。そうすると,別件訴訟判決書や開廷表上の情報も斟酌の対象となり,これらから得た情報を元にすれば,特定の個人が識別され得ることになる。 ウ情報公開請求権の内容は,各地方自治体が条例で定めるべき内容であり,いかなる公開制度を設計するかは各地 対象となり,これらから得た情報を元にすれば,特定の個人が識別され得ることになる。 ウ情報公開請求権の内容は,各地方自治体が条例で定めるべき内容であり,いかなる公開制度を設計するかは各地方自治体の立法政策に委ねられるべきである。そうすると,情報公開請求権に係る条例の解釈に当たっては文理解釈がされるべきであり,あたかも - 11 -条例の定めを創設するかのような解釈をすることは,地方公共団体の独立性の観点から相当ではない。 エ本件においては,別件訴訟原告の手続保障を考慮すべきであり,具体的には,職権による別件訴訟原告の訴訟参加(行訴法22条)や訴訟告知が検討されるべきである。 国家賠償請求についてア ①東京都情報公開審議会が訴訟記録は情報公開の対象外とすべきであるとしていること,②個人識別性の有無に当たっては「当定個人と特殊な関係にある者が知り得る情報」も斟酌するべきとした最高裁判所平成30年(行ツ)第298号,同年(行ヒ)第339号同30年10月25日第一小法廷決定(乙22の3。以下「最高裁平成30年決定」という。)があること,③「民訴法上訴訟記録は何人でも閲覧を請求することができるものである以上,訴訟記録に記録されている情報は,一般人が通常入手し得る情報といえるものである」と判示した東京地方裁判所平成28年11月29日判決(乙6。以下「東京地裁平成28年判決」という。)が存在すること,④本件条例の手引き(甲7)には,「氏名等を除いても,それ以外の部分の情報から特定の個人が推測できるものであれば,全体を非公開として扱う。」との記載があることからすると,本件処分について国家賠償法1条1項の故意過失はなく損害賠償責任を負うことはない。 イ控訴人 ら特定の個人が推測できるものであれば,全体を非公開として扱う。」との記載があることからすると,本件処分について国家賠償法1条1項の故意過失はなく損害賠償責任を負うことはない。 イ控訴人は,被控訴人が提出した公開請求書(甲2)の記載内容から,被控訴人が当該事件の訴訟記録を既に閲覧している可能性を慮り,「特定の個人が識別され得るか否か」の検討等のために被控訴人の閲覧謄写申請書を本件条例及び民訴法に基づき,情報公開に関する業務として謄写したのであるし,被控訴人も既に別件訴訟の判 - 12 -決書を閲覧済みであり,その内容を知っていたから,国家賠償法1条1項にいう違法とはいえない。 (被控訴人) 本件処分の取消請求について控訴人の主張は,本件条例の理念や趣旨,目的を踏まえて文理解釈を行うという本来の行政法の解釈からおよそかけ離れた独自の主張であり失当である。 国家賠償請求について被控訴人は,本件公開請求を行ったところ,控訴人が違法行為を繰り返したことにより,通常であれば平成28年9月23日の時点で得られるはずの公文書の写しの交付が受けられなかったのみならず,被控訴人の管理の及ばぬ権力の下で個人情報が恣意的に収集及び流用されていることに対して深い恐怖を覚え,一連の処分の違法を是正するために二度の訴訟の負担を余儀なくされ,筆舌に尽くし難い精神的苦痛を被った。これを慰謝するための慰謝料は10万円が相当である。 第4 当裁判所の判断 1 当裁判所は,控訴人の被控訴人に対する本件処分のうち本件非公開部分を非公開とした部分の取消請求については,別紙1文書目録記載 ないし及びの部分を非公開とした部分の取消しを求める限度でこれを認容し,国家賠償法1条 被控訴人に対する本件処分のうち本件非公開部分を非公開とした部分の取消請求については,別紙1文書目録記載 ないし及びの部分を非公開とした部分の取消しを求める限度でこれを認容し,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求については,損害賠償金5万円及びこれに対する平成29年12月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度でこれを認容するべきものと判断する。その理由は,次のとおり補正し,後記2のとおり当審における控訴人の主張に対する判断を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1ない - 13 -し5(原判決15頁5行目から30頁23行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正) 原判決15頁7行目中「本件条例」の前に「前記第2,1記載の本件条例の定めによると,」を加える。 同18頁25行目冒頭から23頁8行目末尾までを次のとおり改める。 「エ本件非公開部分のその余の部分に記載された情報について 被控訴人は,本件非公開部分のその余の部分に前記のとおりの情報が記録されているとする控訴人の主張は信用することができない旨主張する。 しかしながら,本件処分により公開された判決書写し(甲4の1,2)と当審において一部開示した判決書写し(乙26の1,2)とを対比すると,いずれも開示部分が同一であり,行数や配置も同一であること,その内容が具体的であることからすると,両者は同一の文書であると認められるから,本件非公開部分のその余の部分には,控訴人が主張する前記の情報が記載されているものと認めることができる。 そこで,控訴人が主張する前記の情報について検討する。 債権に関する情報について のその余の部分には,控訴人が主張する前記の情報が記載されているものと認めることができる。 そこで,控訴人が主張する前記の情報について検討する。 債権に関する情報について① 別紙1文書目録記載2には,別件訴訟原告の債権に関する情報(債務者の氏名,番号,種類等の情報)が記録されているものと認められ,これらの債権に関する情報は,「個人に関する情報」に当たるといえる。 しかしながら,これらの債権に関する情報はそれ自体で別件訴訟原告を識別し得る情報とはいえないし,当該債権の種 - 14 -類や債務者の属性もこれを特定するに足りる証拠がないことから,一般人が知り,あるいは知り得る他の情報とを照合することによって別件訴訟原告が識別され得るともいえない。また,別件訴訟原告と特定の関係にある者(別件訴訟原告の同僚や近隣住民等。以下同じ。)を想定しても,こうした特定の関係にある者が別件訴訟原告に関して通常入手可能な一定の情報(別件訴訟原告の住所地,経歴等の情報。以下同じ。)と照合したとしても,別件訴訟原告を識別し得る具体的可能性があるということはできない。 したがって,上記情報は,本件条例6条1項2号所定の個人識別情報に当たらない。 ② これに対し,控訴人は,債務者という別件訴訟原告と特殊な関係にある者からすれば別件訴訟原告を識別し得ると主張する。 しかしながら,債務者という特定少数の者が入手し得る情報までを照合の対象とすることは本件条例の制度趣旨との関係で疑問であるし,そもそも債務者にとっては,上記債権に関する情報により,別件訴訟原告が識別され得る新規の有意な情報が付加されるものでもない。 控訴人の上記主張は採用できない。 所有第二種原動機 問であるし,そもそも債務者にとっては,上記債権に関する情報により,別件訴訟原告が識別され得る新規の有意な情報が付加されるものでもない。 控訴人の上記主張は採用できない。 所有第二種原動機付自転車に関する情報について① 別紙1文書目録記載2には,別件訴訟原告の所有第二種原動機付自転車に関する情報(車両番号,車名,型式,車台番号等の情報)が記録されているものと認められ,これらの所有第二種原動機付自転車に関する情報は,「個人に関する情報」に当たるといえる。 証拠(乙58)及び弁論の全趣旨によれば,車両番号は, - 15 -地方税法446条3項に基づき交付される原動機付自転車番号標(ナンバープレート)上の情報であり,当該原動機付自転車に固有のものであること,第二種原動機付自転車の所有者は,各自治体(市町村)の税条例によって,原動機付自転車番号標を取り付けることが義務付けられていること,車台番号は,同一性を示すために車台ごとに付される固有の番号であることが認められる。 このように,車両番号及び車台番号は当該原動機付自転車に対して付されるものであって,所有者に対して付されるものではないから,上記情報自体で別件訴訟原告を識別し得るものとは必ずしもいい難い。そして,原動機付自転車番号標は,地方自治体の課税のための情報として付されるものであり,一般人が入手可能な情報ではないから,一般人が知り,あるいは知り得る他の情報とを照合することによって別件訴訟原告が識別され得るともいえない。また,前記別件訴訟原告と特定の関係にある者を想定しても,こうした特定の関係にある者が別件訴訟原告に関して通常入手可能な前記一定の情報と照合したとしても,別件訴訟原告を識別し得る具体的可能 。また,前記別件訴訟原告と特定の関係にある者を想定しても,こうした特定の関係にある者が別件訴訟原告に関して通常入手可能な前記一定の情報と照合したとしても,別件訴訟原告を識別し得る具体的可能性があるということはできない。 したがって,上記情報は,本件条例6条1項2号所定の個人識別情報に当たらない。 ② これに対し,控訴人は,別件訴訟原告の所有する当該車両を目撃した者,特に近隣住民は,別件訴訟原告の所有する当該車両の車両番号を知っているし,車台番号が記載されている車検証を見る機会のある者や整備士といった別件訴訟原告と特殊な関係にある者からすれば別件訴訟原告を識別し得るし,上記情報が判明すれば興信所を利用することで別件訴訟原告を識別し得ると主張する。 - 16 -しかしながら,別件訴訟原告の近隣住民等が別件訴訟原告所有の第二種原動機付自転車の車両番号を知っているとは必ずしもいい難いし,仮に知っていたとしても,近隣住民にとっては,上記情報により,別件訴訟原告が識別され得る新規の有意な情報が付加されるものではない。また,控訴人の主張する上記の者は余りにも特殊な立場にある者であり,このような者が入手し得る情報まで照合の対象とすることは,本件条例の制度趣旨に反するものといわざるを得ない。 控訴人の上記主張は採用できない。 ③ また,控訴人は,前記所有第二種原動機付自転車に関する情報に当審において開示した他の情報(乙26の1,2)を組み合わせれば,別件訴訟原告を識別し得ると主張する。 しかしながら,上記他の情報には別件訴訟原告を識別し得るだけの特徴的な情報は見当たらず,前記所有第二種原動機付自転車に関する情報について別件訴訟原告を識別し得るものではない以上,上記 しかしながら,上記他の情報には別件訴訟原告を識別し得るだけの特徴的な情報は見当たらず,前記所有第二種原動機付自転車に関する情報について別件訴訟原告を識別し得るものではない以上,上記他の情報と組み合わせても同様である。 控訴人の上記主張は採用できない。 所有二輪小型自動車に関する情報について① 別紙1文書目録記載2には,別件訴訟原告の所有二輪小型自動車に関する情報(車両番号,車名,型式,車台番号等の情報)が記録されているものと認められ,これらの所有二輪小型自動車に関する情報は,「個人に関する情報」に当たるといえる。 証拠(乙58)及び弁論の全趣旨によれば,車両番号は,道路運送車両法60条1項に基づき交付され,同法73条1項に基づき表示義務が課される固有の車両番号標上の情報であり,車台番号は,同一性を示すために車台ごとに付され - 17 -る固有の番号であると認められる。 このように,車両番号及び車台番号は二輪小型自動車に対して付されるものであって,所有者に対して付されるものではないから,上記情報自体で別件訴訟原告を識別し得るものとは必ずしもいい難い。そして,二輪小型自動車の場合,普通自動車と異なり,登録は行っておらず(道路運送車両法4条参照),一般人が入手可能な情報ではないから,一般人が知り,あるいは知り得る他の情報とを照合することによって別件訴訟原告が識別され得るともいえない。また,前記別件訴訟原告と特定の関係にある者を想定しても,こうした特定の関係にある者が別件訴訟原告に関して通常入手可能な前記一定の情報と照合したとしても,別件訴訟原告を識別し得る具体的可能性があるということはできない。 したがって,上記情報は,本件条例6条1項2号所定の個人識別情報 訟原告に関して通常入手可能な前記一定の情報と照合したとしても,別件訴訟原告を識別し得る具体的可能性があるということはできない。 したがって,上記情報は,本件条例6条1項2号所定の個人識別情報に当たらない。 ② これに対し,控訴人は,別件訴訟原告の所有する当該車両を目撃した者,特に近隣住民は,別件訴訟原告の所有する当該車両の車両番号を知っているし,車台番号が記載されている車検証を見る機会のある者や整備士といった別件訴訟原告と特殊な関係にある者からすれば別件訴訟原告を識別し得るし,上記情報が判明すれば興信所を利用することで別件訴訟原告を識別し得ると主張する。 しかしながら,別件訴訟原告の近隣住民等が別件訴訟原告所有の二輪小型自動車の車両番号を知っているとは必ずしもいい難いし,仮に知っていたとしても,近隣住民にとっては,上記情報により,別件訴訟原告が識別され得る新規の有意な情報が付加されるものではない。また,控訴人の主張する上記 - 18 -の者は余りにも特殊な立場にある者であり,このような者が入手し得る情報まで照合の対象とすることは,本件条例の制度趣旨に反するものといわざるを得ない。 控訴人の上記主張は採用できない。 ③ また,控訴人は,前記所有二輪小型自動車に関する情報に当審において開示した他の情報(乙26の1,2)を組み合わせれば,別件訴訟原告を識別し得ると主張する。 しかしながら,上記他の情報には別件訴訟原告を識別し得るだけの特徴的な情報は見当たらず,前記所有二輪小型自動車に関する情報について別件訴訟原告を識別し得るものではない以上,上記他の情報と組み合わせても同様である。 控訴人の上記主張は採用できない。 普通自動車に関する情報について本件非公開部分のうち別紙 る情報について別件訴訟原告を識別し得るものではない以上,上記他の情報と組み合わせても同様である。 控訴人の上記主張は採用できない。 普通自動車に関する情報について本件非公開部分のうち別紙1文書目録記載2には,別件訴訟原告の所有自動車に関する情報(登録番号,車名,型式,車台番号,使用の本拠の位置等の情報)が記載されているものと認められ,これらの所有普通自動車に関する情報は,「個人に関する情報」に当たるといえる。 また,自動車登録事項等証明書は何人でも取得可能であるから(道路運送車両法22条),上記情報については,一般人が知り,あるいは知り得る情報を照合対象とすることにより,別件訴訟原告が識別される具体的可能性があるといえる。 したがって,上記情報は,本件条例6条1項2号所定の個人識別情報に当たる。 その他の情報について① 別紙1文書目録記載2には,控訴人が主張する前記情報 - 19 -が記載されているものと認められるところ,別件訴訟原告と控訴人との間の法的紛争に関する情報であると認められるので,「個人に関する情報」に当たる。 しかしながら,別件訴訟原告の住所氏名,所有不動産及び所有普通自動車に関する情報並びに別件訴訟の事件番号を非公開とすれば,上記情報が開示されたとしても当該情報自体から別件訴訟原告を識別することはできないものと解される。また,一般人が知り,あるいは知り得る情報と照合したとしても,別件訴訟原告と特定の関係にある者が通常入手可能である情報と照合しても,別件訴訟原告が識別される具体的可能性があると認められるに足りる証拠はない。 したがって,上記情報は,本件条例6条1項2号所定の個人識別情報に当たらない。 ② これ である情報と照合しても,別件訴訟原告が識別される具体的可能性があると認められるに足りる証拠はない。 したがって,上記情報は,本件条例6条1項2号所定の個人識別情報に当たらない。 ② これに対し,控訴人は,開廷表の情報は何人でも取得することができること,民訴法上,何人でも訴訟記録の閲覧を請求することができると規定されていることを根拠に,別件訴訟の訴訟記録に記録されている情報は,一般人が知り得る情報に当たると主張する。 しかしながら,開廷表は,一般に,当該事件の口頭弁論等の期日が開かれる当日に,裁判所庁舎の受付付近及び法廷付近等一定の場所に限って閲覧の用に供されるものにすぎず,開廷表の情報が一般人の入手可能な情報であるとはいえない。また,訴訟記録を民訴法上の閲覧制度を利用して閲覧するためには,通常は当事者名や事件番号等により当該事件を特定して閲覧請求をする必要があり,本件非公開部分に記録された情報は,訴訟記録の閲覧請求において,事件を特定するために用いられているものでは - 20 -なく,このような特定のための情報を別件訴訟につき一般人が有していることをうかがわせる事情も認められないことからすると,別件訴訟の訴訟記録に記録されている情報が,一般人の知り得る情報に当たるとの控訴人の主張は採用できない。 ③ また,控訴人は,本件非公開部分の文字列と,ある者が別件訴訟の訴訟記録を閲覧して得た別件訴訟の判決書の文字列を比較することにより,別件訴訟原告を識別することができるから,本件非公開部分に記録された情報全体が,個人識別情報に当たる旨主張する。 しかしながら,別件訴訟の訴訟記録の情報を得た特定の範疇に属する者にとっては,本件非公開部分のその余の部分に記録された別件訴訟 開部分に記録された情報全体が,個人識別情報に当たる旨主張する。 しかしながら,別件訴訟の訴訟記録の情報を得た特定の範疇に属する者にとっては,本件非公開部分のその余の部分に記録された別件訴訟原告に係る情報が特定の個人に係る情報であることを識別することができるとしても,本件非公開部分のその余の部分に記録された情報からは,別件訴訟原告を識別することはできないのであって,既に別件訴訟につきより詳細な情報を知る又は知り得る立場にある上記のような特定の範疇に属する者にとっては,本件非公開部分のその余の部分に記録された情報により,特定の個人が識別され得る新規の有意な情報が付加されるものではない。そうすれば,前記アで述べた本件条例の趣旨に照らし,上記のような特定の範疇に属する者の有する情報を,公文書に記録された個人に関する情報が特定の個人が識別されるものであるか否かを判断する際に照合すべき情報に含めるのは相当ではないというべきである。 控訴人の上記主張は採用できない。」 同23頁9行目の「」を「」に改める。 同30頁12行目ないし13行目及び同21行目中「1万円」をい - 21 -ずれも「5万円」に改める。 2 当審における控訴人の主張について(前記1で補正したものを除く。) 本件処分の取消請求についてア控訴人は,本件請求対象文書には本件条例は適用されない旨主張する。 しかしながら,本件条例17条は「他の制度との調整等」に関して定めた規定であるところ,民訴法上の訴訟記録の閲覧等の制度(同法91条)は,裁判所に対して裁判所が保有する訴訟記録の閲覧等を求めるための制度であって,控訴人が保有する本件請求対象文書を対象とする請求の根拠となるものではない。よって,民訴法 閲覧等の制度(同法91条)は,裁判所に対して裁判所が保有する訴訟記録の閲覧等を求めるための制度であって,控訴人が保有する本件請求対象文書を対象とする請求の根拠となるものではない。よって,民訴法91条は本件条例17条にいう「他の法令の規定」には該当し得ないし,情報公開制度と民訴法上の訴訟記録の閲覧等の制度はその目的を異にし,それぞれの制度目的に沿った要件及び効果が定められていることからすれば,訴訟記録の閲覧等の制度があることをもって,本件請求対象文書に本件条例が適用されないと解することはできない。 控訴人の上記主張は採用できない。 イ控訴人は,被控訴人が別件訴訟の判決書を裁判所で閲覧した上で,本件請求対象文書について本件公開請求をしたとして,開廷表や別件訴訟の訴訟記録を閲覧して情報を得た特定の範疇に属する者において,本件非公開部分に記録された情報と,開廷表から得た情報との照合,又は別件訴訟の訴訟記録を閲覧して得た情報との照合により,別件訴訟原告を識別することができる旨主張する。 しかしながら,既に別件訴訟について詳細な情報を知り又は知り得る立場にある特定の範疇に属する者にとっては,本件非公開部分 - 22 -に記録された情報により,特定の個人が識別され得る新規の有意な情報が付加されるものではない。すなわち,開廷表や別件訴訟の訴訟記録によって別件訴訟原告を識別され得るのであって,本件非公開部分の開示自体によってこれに付加するものではないというべきである。 控訴人の上記主張は採用できない。 ウ控訴人は,情報公開請求権に係る条例の解釈に当たっては文理解釈がされるべきであり,あたかも条例の定めを創設するかのような解釈をすることは,地方公共団体の独立性の観点から相当ではないと主張する。 は,情報公開請求権に係る条例の解釈に当たっては文理解釈がされるべきであり,あたかも条例の定めを創設するかのような解釈をすることは,地方公共団体の独立性の観点から相当ではないと主張する。 しかしながら,本件においては本件条例の「特定の個人が識別され得る」の文言の解釈として,本件条例の趣旨,目的にしたがって合目的的に行った結果,開廷表や別件訴訟の情報を得た特定の範疇の者が有する情報を除外するというものであり,何ら条例の定めを創設する解釈を行うものとはいえない。 控訴人の上記主張は採用できない。 エ控訴人は,本件においては,別件訴訟原告の手続保障を考慮すべきであり,具体的には,職権による別件訴訟原告の訴訟参加(行訴法22条)や訴訟告知が検討されるべきであると主張する。 しかしながら,本件条例上,特定の個人が識別され得る情報を非公開とする一方,文書の公開に際して,当該個人の意思を確認するといった手続を定めた規定は存在しないのであるから,本件条例6条1項2号に該当する部分を非公開とする以上に,別件訴訟原告本人の意思を確認しなければ本件請求対象文書の公開請求に応じられないものとは認め難い。したがって,別件訴訟原告について,訴訟参加や訴訟告知を行う義務があるとは認められない。 - 23 -国家賠償請求についてア控訴人は,国家賠償法1条1項にいう故意過失はないと主張する。 しかしながら,①証拠(乙18の1,2)及び弁論の全趣旨によると,東京都情報公開審議会では,訴訟記録を情報公開の対象外とするか否かについて議論がされてきたが,いまだ結論が出されたわけではないこと,②個人識別性の有無に当たっては「当該個人と特殊な関係にある者が知り得る情報」も斟酌するべきとした最高裁 象外とするか否かについて議論がされてきたが,いまだ結論が出されたわけではないこと,②個人識別性の有無に当たっては「当該個人と特殊な関係にある者が知り得る情報」も斟酌するべきとした最高裁平成30年決定を前提に,開廷表や別件判決書の閲覧によって得た請求者固有の情報も上記情報に含め,かつ法令の定めすら個人識別情報に含めるという独自の理解の下で行った本件処分は,本件条例の制度趣旨に反するものであって誤りであること,③東京地裁平成28年判決の判示部分についても一般論としては肯定し得るものの,実際には対象事件の事件番号や当事者名を特定できていなければ閲覧はできないのであって,現にその点を指摘する他の裁判例も存在すること(甲18の2,乙7)からして,訴訟記録に記録されている情報は一般人が通常入手し得る情報であるとの見解についてはなお議論が分かれるものであること,③判決書正本に記録されているすべての情報を独立した一体的な情報であると解することができず,よって,本件条例の手引きの記載を形式的にあてはめて全体を非開示とした控訴人の理解は誤りであることが指摘できる。したがって,控訴人の主張する前記事実をもって控訴人の国家賠償法1条1項にいう故意又は過失を否定することはできない。 控訴人の上記主張は採用できない。 イ控訴人は,本件においては,被控訴人が「特定の個人が識別され - 24 -得るか否か」の検討等のために被控訴人の閲覧謄写申請書を本件条例及び民訴法に基づき,情報公開に関する業務として謄写したのであるし,被控訴人も既に別件訴訟の判決書を閲覧済みであり,その内容を知っていたから違法ではないと主張する。 しかしながら,本件条例は公文書の公開を請求できる者に制限を加えていないので あるし,被控訴人も既に別件訴訟の判決書を閲覧済みであり,その内容を知っていたから違法ではないと主張する。 しかしながら,本件条例は公文書の公開を請求できる者に制限を加えていないのであるから,被控訴人の閲覧謄写申請書の謄写はそれ自体必要な調査とはいえず,特定の個人が識別されるか否かの検討は一般的,客観的に行われるものであって,請求者の主観的事情を考慮するべきではないことは前記認定判断のとおりである。 控訴人の上記主張は採用できない。 3 結論以上によれば,控訴人が被控訴人に対してした処分のうち本件非公開部分を非公開とした部分の取消請求は,別紙1文書目録記載2ないし及びの部分を非公開とした部分を取り消す限度で理由があるから,これをその限度で認容し,被控訴人の控訴人に対する国家賠償請求は,5万円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却すべきである。 よって,本件控訴に基づき,原判決主文1,3項を本判決主文1項の,のとおりに変更し,附帯控訴に基づき,原判決主文2,3項を本判決主文2項の,のとおりに変更し,なお,本件においては,仮執行宣言を付すのを不必要とする事情はないから,民訴法310条により仮執行宣言を付し,控訴人の仮執行免脱宣言を求める申立てを却下し,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第8民事部 - 25 -裁判長裁判官阿部潤 裁判官上田洋幸 裁判官畑佳秀 - 26 -(別紙1)文書目録 東京地方裁判所平成 官上田洋幸 裁判官畑佳秀 - 26 -(別紙1)文書目録 東京地方裁判所平成28年1月26日判決(損害賠償請求事件)に係る判決文 東京高等裁判所平成28年9月1日判決(損害賠償請求控訴事件)に係る判決文2,のうち,以下に掲げる部分 事件番号(ただし,号数字部分)が記録された部分(原判決別紙2の各aの部分) 当該訴訟の原告(控訴人)の住所が記録された部分(原判決別紙2の各bの部分) 当該訴訟の原告(控訴人)の氏名が記録された部分(原判決別紙2の各cの部分) 原判決別紙2の東京地方裁判所平成28年1月26日判決に係る判決文別紙1の,当該訴訟の原告(控訴人)の所有不動産に関する情報(名称,構造,所在,地積,家屋番号,床面積等の情報)が記録された部分 原判決別紙2の東京地方裁判所平成28年1月26日判決に係る判決文別紙1の,当該訴訟の原告(控訴人)の債権に関する情報(債務者の氏名,番号,種類等の情報)が記録された部分 原判決別紙2の東京地方裁判所平成28年1月26日判決に係る判決文別紙1の,当該訴訟の原告(控訴人)の所有第二種原動機付自転車に関する情報(車両番号,車名,型式,車台番号等の情報)が記録された部分 原判決別紙2の東京地方裁判所平成28年1月26日判決に係る判決文別紙1の,当該訴訟の原告(控訴人)の所有二輪小型自動車に関する情報(車両番号,車名,型式,車台番号等の情報)が記録された部分 原判決別紙2の東京地方裁判所平成28年1月26日判決に係る判決文別紙1の,当該訴訟の原告(控訴人)の所有普通自動車に関する情報(登録番号,車名,型式,車台番号,使用 情報)が記録された部分 原判決別紙2の東京地方裁判所平成28年1月26日判決に係る判決文別紙1の,当該訴訟の原告(控訴人)の所有普通自動車に関する情報(登録番号,車名,型式,車台番号,使用の本拠の位置等の情報)が記録された部分 原判決別紙2のうち上記ないし部分を除く黒塗り部分
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