令和6年6月3日判決言渡令和6年(行ケ)第10003号審決取消請求事件口頭弁論終結日令和6年4月24日判決 原告一般社団法人国際カラープロフェッショナル協会 同訴訟代理人弁理士小川 清 被告特許庁長官同指定代理人阿曾裕樹同冨澤武志同鈴木雅也同須田亮一 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 特許庁が不服2023-4542号事件について令和5年11月30日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経過等(当事者間に争いがない。)(1) 原告は、令和4年4月6日、「骨格診断7タイプ」の文字を横書きして なる商標(本願商標)について登録出願した。その指定役務は、第41類 「技芸・スポーツ又は知識の教授、セミナーの企画・運営又は開催、電子出版物の提供、書籍の制作、教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)、興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)、娯楽施設の提供」である。 (2) 原告は、令和4年12月6日付けで、本願商標が商標法(以下、単に「法」という。)3条1項3号に該当することを理由に拒絶査定(原査定)を受けたため、令和5年3月16日、拒絶査定不服審判を請求した。 特許庁は、上記請求を不服2023-4542号事件として 下、単に「法」という。)3条1項3号に該当することを理由に拒絶査定(原査定)を受けたため、令和5年3月16日、拒絶査定不服審判を請求した。 特許庁は、上記請求を不服2023-4542号事件として審理を行い、令和5年11月30日、「請求の趣旨中、『原査定を取り消す。本願商標は登 録すべきものとする。』についての請求は、成り立たない。請求の趣旨中、『審判費用は特許庁の負担とする。』との請求は、却下する。」との審決(本件審決)をし、その謄本は同年12月14日原告に送達された。 (3) 原告は、令和6年1月15日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 本件審決の理由の要旨(1) 本願商標「骨格診断7タイプ」は、商標の構成やその指定役務に係る取引の実情を踏まえると、スタイリング方法などの診断方法の一種である、(骨格の特徴から)「7タイプに分類する骨格診断」程度の意味合いを想起させるから、その指定役務との関係で役務の質(内容)を表示記述するもの として取引に際し必要適切な表示であり、その指定役務に係る取引者、需要者をして、当該役務に使用された場合、役務の質(内容)を表示したものと一般に認識されるといえる。 したがって、本願商標は、その指定役務中「技芸・スポーツ又は知識の教授、セミナーの企画・運営又は開催、書籍の制作、教育・文化・娯楽・ス ポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」などにつ いて、単に役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示するにすぎないから、法3条1項3号に該当する。 (2) 請求人の「審判費用は特許庁の負担とする。」との請求については、拒絶査定不服審判に関する費用は請求人が負担する旨定められているから(法56条1項で準用する特許法169条3項)、実 当する。 (2) 請求人の「審判費用は特許庁の負担とする。」との請求については、拒絶査定不服審判に関する費用は請求人が負担する旨定められているから(法56条1項で準用する特許法169条3項)、実定法上の根拠を欠く不適法 な請求であり、却下すべきである。 3 取消事由法3条1項3号該当性の判断の誤り第3 取消事由に関する当事者の主張 1 原告の主張 (1) 法3条1項3号の「役務の質」については、本願商標が、願書に記載した役務の質を普通に用いられる方法で「表示」するものであるかどうかで判断すべきである。それにもかかわらず、本件審決は、取引者、需要者が役務の質を表示したものと認識するから本願商標が役務の質を表示すると判断しており、条文で要求されている上記の判断基準に従った判断をしていない。 法3条1項柱書及び3号は、同項6号や同条2項とは異なり、条文上、需要者の認識を何ら問題にしていない。 (2) 法3条1項3号の「役務の質」とは、「他人のために行う労働勤務、又は他人に利益があるようにする行為であって、独立して商取引の対象たり得るべきもの、の『質』」という意味である。しかし、本願商標は「7タイプ に分類する骨格診断」程度の意味合いを想起させるにすぎず、「労働勤務」や「他人に利益があるようにする行為」の「質」を表している言葉ではない。 本願商標が「役務の質」を普通に表示しているとする本件審決の判断は誤りである。 (3) 本件審決は、本願商標が「役務の質(内容)」を表しているとし、「役 務の質」の言葉の後に「(内容)」という意味不明の言葉を追加して解釈を しているが、現代用語としての「質」は「内容」という意味を含まない。辞書によれば「質」の現代用語としての意味は「内容の良否」であり、「質」 「(内容)」という意味不明の言葉を追加して解釈を しているが、現代用語としての「質」は「内容」という意味を含まない。辞書によれば「質」の現代用語としての意味は「内容の良否」であり、「質」を「内容、中身」と解釈するのは古い時代の解釈である。審査は現代用語の意味に基づいて行うべきであり、本願商標が「役務の質」を表示しているとする本件審決は誤りである。 2 被告の主張後記第4の1及び2と同趣旨である。 第4 当裁判所の判断 1 原告は、法3条1項柱書及び3号は条文上需要者の認識を何ら問題としていないのに、本件審決は、取引者、需要者の認識を基準として本願商標は役 務の質を表示したものと判断したとして、その誤りを主張する。 この点、法3条1項3号は「その役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」を商標登録できない商標として掲げているところ、出願商標が何を表示するものであるかを客観的に把握する上では、取引者、需要者の認識を基準として判断せざるを得ないことは当然であり、そのような解 釈は、法1条の趣旨にも沿うものといえる。 原告は、法3条1 項3号と、同項6号及び2項との条文の違いを上記主張の根拠としているが、同条1項6号の「前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」との文言、同条2項の「前項第3号から第5号までに該当する商標であっても、 使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては」の文言に照らすと、同条1項3号の解釈上も、需要者の認識が判断基準として想定されていると理解することができ、その趣旨をいう本件審決の判断に誤りはない。 2 原告は、①法3条1項3号における いては」の文言に照らすと、同条1項3号の解釈上も、需要者の認識が判断基準として想定されていると理解することができ、その趣旨をいう本件審決の判断に誤りはない。 2 原告は、①法3条1項3号における「役務の質」は「『労働勤務』や『他 人に利益があるようにする行為』の質」を指すとして、あるいは②「質」に ついて「内容、中身」の意味を含むと解釈するのは古い時代の解釈であるとして、本願商標は「役務の質」を表していないと主張する。 しかし、同号に掲げる商標が商標登録要件を欠くと規定されている趣旨は、このような商標は、指定役務との関係で、その役務の提供の場所、質等の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もそ の使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないなどの理由によるものである。このような趣旨に鑑みれば、同号の「役務の質」を原告主張のように限定的に解釈すべき理由はない。 しかも、証拠によれば、本願商標「骨格診断7タイプ」がその指定役務に使用された場合、そうした役務が労働の対価を得て有料でなされ得るもの(乙 6・骨格診断アドバイザー、乙7・骨格診断ファッションアナリスト、乙11・骨格診断士〔骨格診断資格〕)があることも認められ、原告の上記主張を前提にしても、本願商標が同号にいう「役務の質」を表示するものであるといえる。 3 以上のとおり、原告主張の取消事由はいずれも採用できず、原告の請求は 理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官宮坂昌利 裁判官 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官 宮坂昌利 裁判官 本吉弘行 裁判官 岩井直幸
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