平成31年4月17日判決言渡平成30年(行ウ)第10号生活保護返還金決定処分取消等請求事件平成30年(行ウ)第293号追加的併合事件 主文 1 本件訴えのうち,東久留米市福祉事務所長がした障害者加算を削除する旨の 保護決定処分の無効確認を求める部分を却下する。 2 東久留米市福祉事務所長が平成28年9月15日付けで原告に対してした生活保護法63条に基づく返還金額の決定処分を取り消す。 3 被告東久留米市は,原告に対し,3万5060円及びこれに対する平成28年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告の被告東久留米市に対するその余の請求及び被告東京都に対する請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,原告に生じた費用の10分の7と被告東久留米市に生じた費用を被告東久留米市の負担とし,原告に生じたその余の費用と被告東京都に生じた費用を原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 東久留米市福祉事務所長が平成28年9月15日付けで原告に対してした同年10月1日から障害者加算を削除する旨の保護決定処分が無効であることを確認する。 2 主文第2項と同旨 3 被告らは,原告に対し,連帯して15万5060円及びこれに対する平成28年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,生活保護法(以下「法」という。)による保護を受け,生活扶助に ついて障害者加算の認定を受けていた原告が,保護の実施機関である東久留米 市長の委任を受けた東久留米市福祉事務所長から,法25条2項に基づき平成28年10月1日から障害者加算を削除する旨の保護決定処分(以下「本件加算削除処分」という。)及び,法6 ある東久留米 市長の委任を受けた東久留米市福祉事務所長から,法25条2項に基づき平成28年10月1日から障害者加算を削除する旨の保護決定処分(以下「本件加算削除処分」という。)及び,法63条に基づき平成27年7月1日から平成28年9月30日までの障害者加算の額合計26万2950円の全額を返還すべき額とする返還金額の決定処分(以下「本件返還処分」という。)を受けた ことから,原告の精神障害の程度が国民年金法施行令(以下「国年令」という。)別表に定める障害等級2級に該当するにもかかわらず,精神障害者保健福祉手帳の有効期限が経過したことのみをもって行われた上記各処分は違法である旨主張して,被告東久留米市に対し,①本件加算削除処分の無効確認及び②本件返還処分の取消しを求めるとともに,本件加算削除処分により,本来支給され るべきであった平成28年10月1日から同年11月30日までの障害者加算の額合計3万5060円の損害及び精神的な損害を被ったとして,被告東久留米市及び同市に対して助言・指導を行う立場にある被告東京都に対し,③国家賠償法1条1項に基づき連帯して15万5060円及びこれに対する平成28年10月1日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の 支払を求める事案である。 1 関係法令等の定めの概要(1) 保護の変更・費用返還に関する定めア法25条2項は,保護の実施機関は,常に,被保護者の生活状態を調査し,保護の変更を必要とすると認めるときは,速やかに,職権をもってそ の決定を行い,書面をもって,これを被保護者に通知しなければならない旨を定める。 イ法56条は,被保護者は,正当な理由がなければ,既に決定された保護を,不利益に変更されることがない旨を定める。 ウ法63条は,被保 って,これを被保護者に通知しなければならない旨を定める。 イ法56条は,被保護者は,正当な理由がなければ,既に決定された保護を,不利益に変更されることがない旨を定める。 ウ法63条は,被保護者が,急迫の場合等において資力があるにもかかわ らず,保護を受けたときは,保護に要する費用を支弁した都道府県又は市 町村に対して,速やかに,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない旨を定める。 (2) 障害者加算に関する定めア法8条1項は,保護は,厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし,そのうち,その者の金銭又は物品で満たすことので きない不足分を補う程度において行うものとする旨を定める。 イ法の定めを受けた「生活保護法による保護の基準」(昭和38年厚生省告示第158号。以下「保護基準」という。)は,生活扶助(法11条1項1号)の基準を定めた別表第1の第2章2において,障害者加算の加算額及び対象者を定め,同(2)において,障害者加算を行う者を,①身体障害 者福祉法施行規則別表第5号に掲げる身体障害者障害程度等級表の1級若しくは2級又は国年令別表に定める1級のいずれかに該当する障害のある者及び②同等級表の3級又は国年令別表に定める2級のいずれかに該当する障害のある者と定めている。 ウ 「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発 第246号厚生省社会局長通知。以下「局長通知」という。)第7の2(2)エ(ア)は,障害の程度の判定は,原則として身体障害者手帳,国民年金証書,特別児童扶養手当証書又は福祉手当認定通知書(以下「身体障害者手帳等」という。)により行うべき旨を定め,同(イ)は,身体障害者手帳等を所 障害の程度の判定は,原則として身体障害者手帳,国民年金証書,特別児童扶養手当証書又は福祉手当認定通知書(以下「身体障害者手帳等」という。)により行うべき旨を定め,同(イ)は,身体障害者手帳等を所持していない者については,障害の程度の判定は,保護の実施機関の 指定する医師の診断書その他障害の程度が確認できる書類に基づき行うべき旨を定めている(乙A4)。 エ 「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和38年4月1日社保第34号厚生省社会局保護課長通知)第7の問65には,局長通知第7の2(2)エ(イ)にいう「障害の程度が確認できる書類」には,精神 保健及び精神障害者福祉に関する法律45条に基づく精神障害者保健福祉 手帳が含まれるものと解して差し支えなく,この場合において,同手帳の1級に該当する障害は国年令別表に定める1級の障害と,同手帳の2級に該当する障害は同別表に定める2級の障害とそれぞれ認定するものとする旨の記載がある(乙A5)。 2 前提事実(掲記の各証拠のほか,弁論の全趣旨により認められる。) ⑴ 原告の保護の受給の経緯等原告は,平成14年2月25日,保護の受給を開始し,それ以降,保護を受けている者である。原告は,同年4月26日,障害等級を1級とする精神障害者保健福祉手帳の交付を受け,平成19年6月29日から平成27年6月30日まで,2年ごとに,障害等級を2級とする同手帳の更新を続けた。 原告は,平成19年7月1日から生活扶助について障害者加算の認定を受け,平成28年9月30日まで障害者加算の額を支給されていた。 平成27年7月1日から平成28年9月30日までの間に原告に支給されていた障害者加算の額は,国年令別表に定める2級に該当する 受け,平成28年9月30日まで障害者加算の額を支給されていた。 平成27年7月1日から平成28年9月30日までの間に原告に支給されていた障害者加算の額は,国年令別表に定める2級に該当する障害のある者として,月額1万7530円であった。 (2) 本件加算削除処分及び本件返還処分に至る経緯等ア原告の精神障害者保健福祉手帳は,平成27年6月30日の有効期限が経過した後,更新されなかった。 イ東久留米市福祉事務所長は,平成28年9月7日頃,原告の精神障害者保健福祉手帳が平成27年7月1日以降,更新されていないことを認識し た。 ウ被告東久留米市福祉保健部福祉総務課保護2係は,平成28年9月7日,被告東京都生活福祉部保護課指導係に対し,「主は,精神障害者手帳2級を所持しているため,障害者加算17,530円(居宅基準)を認定している。ただ,主は平成27年6月に精神障害者手帳2級が切れたが,主の個人的な 理由により手帳の更新はできておらず,医師の診断書も未提出の状態であ る。」「主が精神障害手帳2級を更新できない,医師の診断書が提出できない理由は,主は精神疾患を患っており,常に通院先の病院でトラブルを起こし,当市を含めた近隣自治体の医療機関より受診拒否を申しつけられているからである。」「この場合,主の精神障害者手帳2級が切れた平成27年6月の翌月1日をもって,直ちに主の障害者加算を削除しなくてはなら ないか。ある程度の期間の猶予は認められないのか。また主が今後精神障害者手帳2級の更新,医師の診断書を提出した際には,更新,提出した翌月から障害者加算を認定すべきであるのか。 (仮に平成28年9月に手帳の更新,提出した際には,平成28年10月から障害者加算を認定。平成27年7 更新,医師の診断書を提出した際には,更新,提出した翌月から障害者加算を認定すべきであるのか。 (仮に平成28年9月に手帳の更新,提出した際には,平成28年10月から障害者加算を認定。平成27年7月から平成28年9月までの空白期間については,障害者加算は認 定しないものなのか)」との照会を行った(甲4。以下「本件照会」という。)。 被告東京都生活福祉部保護課は,平成28年9月9日,本件照会に対し,認定期限が過ぎているため,障害者加算の事由に該当せず,保護費の返還が生じる旨を口頭で回答した(甲5。以下「本件回答」という。)。 エ東久留米市福祉事務所長は,原告に対し,平成28年9月15日付けで, 法25条2項に基づき,同年10月1日から障害者加算を削除する旨の本件加算削除処分をするとともに,障害者加算の事由に該当しないものの平成27年7月から誤って加算が継続されていたことを理由として,法63条に基づき,同月1日から平成28年9月30日までの障害者加算の額合計26万2950円の全額を返還すべき額とする本件返還処分をした。 (3) 本件加算削除処分及び本件返還処分後の経緯ア原告は,平成28年11月28日,改めて障害等級を2級とする精神障害者保健福祉手帳の交付を受け,平成29年2月9日頃,東久留米市福祉事務所長から,平成28年12月1日から障害者加算(月額1万7530円)を認定する旨の保護決定処分を受けた。 イ原告は,平成28年12月12日付けで,東京都知事に対し,本件返還 処分についての審査請求をしたが,同知事は,平成29年8月2日付けで,同審査請求を棄却する旨の裁決をした。 ウ原告は,平成30年1月12日,前記第1の2及び3の各請求に係る訴えを提起し,同年7月2 ての審査請求をしたが,同知事は,平成29年8月2日付けで,同審査請求を棄却する旨の裁決をした。 ウ原告は,平成30年1月12日,前記第1の2及び3の各請求に係る訴えを提起し,同年7月24日,同1の請求に係る訴えを追加した(顕著な事実)。 3 争点及び争点に関する当事者の主張(1) 本件加算削除処分の無効確認の訴えの適法性(争点(1))(被告東久留米市の主張)原告は,本件訴えにおいて,国家賠償法に基づく損害賠償及び本件返還処分の取消しを請求しており,これらの請求で本件加算削除処分の無効確認の 訴えの目的を達成することができるのであって,「当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができない」者(行政事件訴訟法36条)に該当しないから,本件加算削除処分の無効確認の訴えは不適法である。 (原告の主張) 原告が本件加算削除処分の無効確認の訴えで求めているのは,本件加算削除処分の無効又は障害者加算の保護を受ける地位にあることの確認であるのに対し,国家賠償請求で求めているのは,違法な障害者加算の削除をされたことにより被った損害の賠償であり,根本的に異なる。また,国家賠償請求では,処分の適法・違法については判断されるものの,処分の有効・無効に ついては判断されるものではないから,当該処分の無効を前提とする民事訴訟には該当しない。さらに,本件加算削除処分の取消訴訟の出訴期間が経過していることから,無効確認訴訟が最も直截的である。 したがって,本件加算削除処分の無効確認の訴えは,適法である。 (2) 本件加算削除処分の適法・有効性(争点(2)) (原告の主張) ア保護の実施機関が職権での保護の変更を行うの たがって,本件加算削除処分の無効確認の訴えは,適法である。 (2) 本件加算削除処分の適法・有効性(争点(2)) (原告の主張) ア保護の実施機関が職権での保護の変更を行うのは,「保護の変更を必要とすると認めるとき」(法25条2項)に該当する場合であるから,一度決定された障害者加算を削除するには,障害の程度の判定を行い,加算対象となる障害のないことが確認される必要があり,これを欠く場合には,法56条の「正当な理由」のない不利益処分として,違法となる。 イ原告の精神障害は,精神障害者保健福祉手帳の有効期限が経過した平成27年7月以降も病状が軽くなることはなく,むしろ悪化している状況にあり,被告東久留米市の担当ケースワーカーもそのことは認識していた。 原告の精神障害の状況が改善していなかったのは,精神障害者保健福祉手帳の2級と判断される精神障害が長年継続している場合に,その状態が良 くなることは通常起こるものではないこと,原告は,平成28年4月まで主治医が見付からず,その精神障害に対する適切な治療を継続的に安定して受けることができなかったこと,同年11月28日に再度障害等級2級の手帳の交付を受けていることからも明らかである。 したがって,本件では,原告の精神障害の程度が障害者加算の対象で あったにもかかわらず,本件加算削除処分がされたものであり,「正当な理由」がない不利益変更であり違法である。 ウ保護の実施機関としては,第一次的には被保護者の精神障害者保健福祉手帳の有効期限を適切に把握した上で,当該被保護者に更新手続を行わせることが求められ,仮に更新手続ができなかった場合には,医師の診断等 による障害の程度の判定を行うことが必要となる。局長通知においても,身体障害者手帳等がなけれ 当該被保護者に更新手続を行わせることが求められ,仮に更新手続ができなかった場合には,医師の診断等 による障害の程度の判定を行うことが必要となる。局長通知においても,身体障害者手帳等がなければ,医師の診断書その他障害の程度が確認できる書類によって障害の程度の判定を行うべきとされている。 上記原告の精神障害の状況からすれば,東久留米市福祉事務所長は,検診命令(法28条1項)を行った上で医師の診断等により,原告の精神障 害について「障害の程度の判定」を行って,原告の障害が障害者加算の対 象となるか否かを検討すべきであった。 それにもかかわらず,東久留米市福祉事務所長は,原告の障害の程度の判定を行わないまま,原告の精神障害者保健福祉手帳の有効期限が経過したという,その1点のみを理由として,障害者加算の対象となる障害はないと判断し,本件加算削除処分を行った。 以上のとおり,本件では東久留米市福祉事務所長が原告の障害の程度の判定を行わなかったという点でも「正当な理由」のない不利益変更であり,違法である。 エ障害者にはより多くの費用が必要となる特別需要が存在することから,障害者加算は,生存権の保障に不可欠のものであって,その権利性を尊重 すべきであるところ,原告は,東久留米市福祉事務所長の違法な本件加算削除処分により,憲法25条1項及び法1条,3条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を下回る生活を強いられたものであり,その違法性は重大かつ明白であるから,本件加算削除処分は無効である。 (被告東久留米市の主張) ア保護の実施機関は,被保護者の精神障害者保健福祉手帳が更新されなかった事実を知った場合には,その事実に基づいて障害者加算の削除決定をすべきであり,それが局長通知の素直な解釈である。こ ア保護の実施機関は,被保護者の精神障害者保健福祉手帳が更新されなかった事実を知った場合には,その事実に基づいて障害者加算の削除決定をすべきであり,それが局長通知の素直な解釈である。これまでの実務も精神障害者保健福祉手帳の障害等級を重要な根拠として取り扱ってきたものであり,少なくともこのような取扱いが違法又は不当とされる理由はな い。 イ原告は,障害者加算を削除する場合にも障害の程度の判定が必要である旨主張するが,障害者加算を削除する場合に,障害の程度の判定が必要である旨を規定する法律及び通達はない。また,仮に,障害の程度の判定が必要であるとしても,精神障害の状態が継続していれば精神障害者保健福 祉手帳が更新されると解されるから,更新されなかったという事実は障害 者加算の削除決定をする重要な判断要素となる。したがって,精神障害者保健福祉手帳が更新されなかったことを理由に障害者加算の削除を決定することは実質的にも不当ではない。 ウ原告は,精神障害者保健福祉手帳を有しない者については,医師の診断が得られない限りは障害者加算の削除決定をすることはできない旨主張す るが,障害者加算を認定する場合には精神障害者保健福祉手帳のみをもって判断を行いながら,削除する場合には検診命令等による医師の診断を必要とするのは不均衡であり,障害者加算の削除を過度に制限し,処分庁の判断をいたずらに加重し複雑化するものであり妥当ではない。 エ以上のとおり,本件加算削除処分における東久留米市福祉事務所長の判 断は局長通知に合致するものであり,法56条の「正当な理由」を有し,違法ではなく,その違法が重大であるとの評価を受けるものでもない。 (3) 本件返還処分の適法性(争点(3))(原告の主張)ア 合致するものであり,法56条の「正当な理由」を有し,違法ではなく,その違法が重大であるとの評価を受けるものでもない。 (3) 本件返還処分の適法性(争点(3))(原告の主張)ア主位的主張 前記(2)(原告の主張)のとおり,原告の障害の程度が平成27年7月以降,障害者加算の事由に該当しなくなったとはいえないから,原告の精神障害者保健福祉手帳の有効期限経過後に原告が給付を受けた障害者加算の額は適法に支給されたものである。したがって,本件は,「資力があるにもかかわらず,保護を受けたとき」(法63条)に該当しないから,本件返還 処分は違法であり,取り消されるべきである。 イ予備的主張①法63条は,最低限度の生活の保障が確保されることを前提に,その余の資力の範囲内で返還を義務付けるものであり,返還義務が生じる保護費の対象は,返還金額決定の時点において現に存在し活用し得る資力の範囲 に限られると解すべきである。原告は,本件返還処分を受けた当時,最低 生活費以外に資力はなかったから,本件返還処分を受けることで,最低限度の生活を送ることができない事態に追い込まれることになる状況にあった。したがって,そのような資力のない原告に対する法63条に基づく本件返還処分は,同条の解釈を誤るものであり,違法である。 ウ予備的主張② 原告は,上記のとおり,本件返還処分を受けた当時,本件返還処分を受ければ,憲法25条1項が保障する最低限度の生活を送ることができない事態に追い込まれる状態にあった。しかし,東久留米市福祉事務所長は,分割によってでも保護費を返還させることが原告の最低限度の生活の保障の趣旨に実質的に反することとなるおそれがあるか否か,原告の自立を 阻害することとなるおそ しかし,東久留米市福祉事務所長は,分割によってでも保護費を返還させることが原告の最低限度の生活の保障の趣旨に実質的に反することとなるおそれがあるか否か,原告の自立を 阻害することとなるおそれがあるか否か等について,具体的な検討を一切行っていない。また,同福祉事務所長は,精神障害者保健福祉手帳の有効期限経過後も障害者加算の額の支給を受ける原因となる誤った対応を行ったケースワーカーに対し,当該支給相当額の全部又は一部を負担させるべきか否かについても検討していない。同福祉事務所長は,これらの事 情を考慮することなく,障害者加算の全額について本件返還処分を行ったものであり,本件返還処分は,判断の過程において考慮すべき事情を考慮しておらず,法の目的や社会通念に照らし著しく妥当性を欠き,保護の実施機関に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法である。 (被告東久留米市の主張)ア原告は,平成27年7月以降,精神障害者保健福祉手帳の更新を受けておらず,障害者加算の対象とはならないにもかかわらず,それ以降も障害者加算の額の支給を受けていたことから,障害者加算の額に相当する保護費を返還する必要性が生じたものである。 イ生活保護制度においては,自己申告が原則とされ,精神障害者保健福祉 手帳の更新の有無も被保護者が保護の実施機関に届け出る必要があり,これは被告東久留米市の「生活保護のしおり」にも記載され,周知されている。一方,被告東久留米市において精神障害者保健福祉手帳の交付事務と生活保護に関する事務は異なる課で扱っているものであり,ケースワーカーが精神障害者保健福祉手帳の更新時期について直接に情報を取得する ことは行っていない。このように,東久留米市福祉事務所長においては,原告 する事務は異なる課で扱っているものであり,ケースワーカーが精神障害者保健福祉手帳の更新時期について直接に情報を取得する ことは行っていない。このように,東久留米市福祉事務所長においては,原告が申告しない限り,精神障害者保健福祉手帳の更新の有無を確認することはできないのであって,本件で障害者加算が打ち切られず過支給となったのは,精神障害者保健福祉手帳の更新手続及び東久留米市福祉事務所長への報告を行わなかったという原告の過失が原因であり,このような 場合に原告が本来得られるはずのなかった利益の返還を免れさせることは,社会通念に照らし妥当性を欠く。 また,原告は,本件返還処分をするには,返還対象期間中の原告の精神障害について障害の程度の判定を行い,障害が消失していたか否かを検討することが必要である旨主張するが,医師は過去の状況については診断で きないから,原告の主張は非現実的である。 ウ東久留米市福祉事務所長は,本件返還処分の前後に,原告と面談を実施するなどして,原告の資産状況や返還可能性を具体的に検討し,分割払いを提案するなど,本件返還処分が過酷なものとならないように配慮していたし,その返還額と原告に給付されていた保護費を比較しても,分割払い とすれば,原告の最低生活を脅かすようなものではない。 また,原告は,本件返還処分時に,原告の生活が困窮していた旨主張するが,原告が仮に困窮していたとしても,それは原告が浪費していたか,少なくとも金銭管理に問題があった可能性がある。 エ以上によれば,本件返還処分は法の趣旨や社会通念にも反せず,妥当性 を有するものであり,東久留米市福祉事務所長の裁量権の範囲を逸脱し又 はこれを濫用する場合には当たらず,適法である。 (4) 国家賠償請求 法の趣旨や社会通念にも反せず,妥当性 を有するものであり,東久留米市福祉事務所長の裁量権の範囲を逸脱し又 はこれを濫用する場合には当たらず,適法である。 (4) 国家賠償請求の当否(争点(4))(原告の主張)ア被告東久留米市の責任の根拠前記(2)(原告の主張)で述べたとおり,東久留米市福祉事務所長が行っ た本件加算削除処分は違法である。そして,東久留米市福祉事務所長は,被告東京都からの本件回答が局長通知等に反していたのであるから,再度被告東京都に問い合わせたり,原告の状態を確認したりする義務があった。 それにもかかわらず,同福祉事務所長は,漫然と本件回答に従って本件加算削除処分に及んだものであり,これは違法な行為であって,過失も認め られる。 イ被告東京都の責任の根拠被告東京都の職員が行った本件回答は,法23条1項に基づく監査の一環としての積極的助言に当たるものであり,当該職員は,法に則った適切な回答をする高度の注意義務を負う。仮に本件回答が地方自治法245条 の4に規定する技術的な助言であったとしても,被告東京都は被告東久留米市を監督する立場にあり,その回答は強い影響力をもつから,同様に法に則った回答をする注意義務を負う。しかし,被告東京都の当該職員は,上記注意義務に違反し,精神障害者保健福祉手帳の有効期限の経過のみをもって障害者加算を削除してよい旨の局長通知等に反する本件回答を行っ たものであり,これは違法な行為であって,過失も認められる。 ウ原告の損害原告は,上記ア及びイの行為により,平成28年10月1日から同年11月30日までの障害者加算の額合計3万5060円の支給を受けられなかった。 また,原告は,上記ア及びイ の損害原告は,上記ア及びイの行為により,平成28年10月1日から同年11月30日までの障害者加算の額合計3万5060円の支給を受けられなかった。 また,原告は,上記ア及びイの行為により,平成28年10月から平成 29年1月までの4か月間(平成28年12月1日からの障害者加算の額が遡って支給されるまでの期間),著しい生活困窮状態に追い込まれたのであって,憲法25条1項で保障された健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を侵害された。このような,最低限度を下回る生活を強いられた原告の精神的苦痛に対する慰謝料は,月額3万円,合計12万円を下ること はない。 したがって,被告らは,共同不法行為者の関係にあり,連帯して,原告の被った損害合計15万5060円(支給されなかった期間の障害者加算の額及び慰謝料)を賠償する責任を負う。 (被告東久留米市の主張) 本件加算削除処分は,前記(2)(被告東久留米市の主張)のとおり,違法なものではない。 また,東久留米市福祉事務所長は,被告東京都に対し,本件照会を行って本件回答を得て,その回答を尊重し,かつ,局長通知等に基づき妥当な判断を行ったものであり,注意義務違反はなく,過失はない。 (被告東京都の主張)本件回答は,被告東京都において原告に対してした行政処分ではなく,地方自治法245条の4に規定する法的拘束力を持たない非権力的な関与としての助言であるから,本件回答を行った被告東京都の職員は,原告の個別具体的な利益を直接保護する職務上の法的義務は負わない。また,本件回答は, 本件照会の事例として示された内容に関して,国の通知等に照らして妥当と解される判断基準等を助言するにとどまるものであって,被告東京都が本件加 る職務上の法的義務は負わない。また,本件回答は, 本件照会の事例として示された内容に関して,国の通知等に照らして妥当と解される判断基準等を助言するにとどまるものであって,被告東京都が本件加算削除処分に係る共同不法行為をしたとする原告の主張は理由がない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件加算削除処分の無効確認の訴えの適法性)について (1) 行政事件訴訟法36条は,「無効等確認の訴えは,当該処分又は裁決に続 く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で,当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないものに限り,提起することができる。」と定めている。そして,ここでいう処分の無効確認の訴えを提起し得るための要件 の一つである「当該処分の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができない」場合とは,当該処分に基づいて生ずる法律関係に関し,処分の無効を前提とする当事者訴訟又は民事訴訟によっては,その処分のために被っている不利益を排除することができない場合のほか,当該処分に起因する紛争を解決するための争訟形態として,当該 処分の無効を前提とする当事者訴訟又は民事訴訟との比較において,当該処分の無効確認を求める訴えの方がより直截的で適切な争訟形態であるとみるべき場合をいうものと解するのが相当である(最高裁平成元年(行ツ)第131号同4年9月22日第三小法廷判決・民集46巻6号1090頁参照)。 (2) そこで検討すると,本件加算削除処分がされたことにより,平成28年1 0月1日から同年11月30日まで,原告に対する障害者加算が行 2日第三小法廷判決・民集46巻6号1090頁参照)。 (2) そこで検討すると,本件加算削除処分がされたことにより,平成28年1 0月1日から同年11月30日まで,原告に対する障害者加算が行われていないことからすれば,本件加算削除処分の無効確認を求める訴えの目的は,原告の同期間の障害者加算の額の支給を求めることにあるものと解される。 そして,本件加算削除処分が無効であることを主張する原告としては,当該障害者加算の額を支弁すべき被告東久留米市を相手として,本件加算削除処 分が無効であることを前提に,従前の保護決定の効果として既に発生している障害者加算の額の支給を受ける権利を行使して,同期間の障害者加算の額の給付を求める訴え(当事者訴訟)を提起することにより,より直截的に上記の目的を達成することができる。そうすると,本件加算削除処分に基づいて生ずる法律関係に関し,同処分の無効を前提とする当事者訴訟又は民事訴 訟によっては,同処分のために被っている不利益を排除することができない ということはできないし,同処分に起因する紛争を解決するための争訟形態として,上記給付の訴えとの比較において,同処分の無効確認を求める訴えの方がより直截的で適切な争訟形態であるということもできない。 したがって,本件訴えのうち本件加算削除処分の無効確認を求める部分は,行政事件訴訟法36条所定の要件を満たしておらず,不適法である。 2 争点(3)(本件返還処分の適法性)について(1) 本件返還処分は,法63条に基づき,原告が保護を受けた平成27年7月1日から平成28年9月30日までの間の障害者加算の額の全額を返還すべき額と定めるものであるところ,東久留米市福祉事務所長により,原告が同期間において保護基準に定める障害者加算の要件に該当 7年7月1日から平成28年9月30日までの間の障害者加算の額の全額を返還すべき額と定めるものであるところ,東久留米市福祉事務所長により,原告が同期間において保護基準に定める障害者加算の要件に該当していなかったにも かかわらず,障害者加算の額の支給を受けたことが,同条にいう「資力があるにもかかわらず,保護を受けたとき」に該当するものと判断されて,行われたものと解される。 すなわち,保護基準における加算制度は,基準生活費において配慮されていない個別的な特別需要を補填することを目的として設定されたものであり, そのうちの障害者加算は,障害により最低生活を営むのにより多くの費用を必要とする障害者に対し,そのような特別の需要に着目して基準生活費に上積みをすることにより,加算がない者と実質的に同水準の生活を保障するものであると解される(乙A3参照)。したがって,保護基準が定める障害者加算の要件に該当しない者に障害者加算の額を支給した場合には,当該障害 者加算の額に相当する「資力」がある部分に誤って保護を実施したことになるから,当該障害者加算の額に相当する金額が法63条に基づく費用返還の対象となり得るのである。 しかしながら,本件のように,従前から障害者加算を受けていた者に対し,障害者加算の要件該当性が失われるに至ったとして,その要件該当性喪失後 に支給されていた障害者加算の額の返還を求める場合には,実質的には遡っ て保護の変更の効果を生じさせるものといえる。一方,職権によって保護の変更を行うためには,「保護の変更を必要とすると認めるとき」に該当することが求められ(法25条2項),かつ,既に決定された保護を被保護者の不利益に変更する場合には,「正当な理由」が必要であるとされている(法56条)。これらの規定か 必要とすると認めるとき」に該当することが求められ(法25条2項),かつ,既に決定された保護を被保護者の不利益に変更する場合には,「正当な理由」が必要であるとされている(法56条)。これらの規定からすれば,上記のような場合に障害者加算の額の 返還請求が認められるためには,積極的に障害者加算の要件該当性が失われたことを基礎付ける事由の存在が認められる必要があると解すべきであって,そのような事由が存在することについては,返還金額を決定する保護の実施機関側において立証責任を負うものというべきである。 (2) そこで,本件において,原告につき,障害者加算の要件該当性が失われた ことを基礎付ける事由の存在が認められるか否かを検討すると,前記前提事実のほか,掲記の各証拠によれば,以下の事実を認めることができる。 ア原告の平成27年7月1日以後の通院状況等(ア) 原告は,平成27年10月27日及び平成28年3月10日,Cクリニック(東京都豊島区)において,精神科・心療内科医の診療を受け た(甲21~23)。 (イ) 原告は,平成28年4月7日,Dクリニック(東京都杉並区)において,心療内科医の診療を受けた(甲23)。 (ウ) 原告は,平成28年4月4日,同月25日,同年8月1日及び同月29日,Eクリニック(東京都α市)において,精神科医の診療を受け た(甲11,23,乙B2,3)。 (エ) 東久留米市福祉事務所長は,平成28年6月29日及び同年10月6日,Eクリニックに対し,原告の検診を依頼した。原告は,同月24日,同クリニックで受診し,主たる精神障害を身体表現性障害,従たる精神障害を不安性人格障害と診断され,その旨の診断書(精神障害者保 健福祉手帳用)が作成された。(甲11,15の1,2) 同クリニックで受診し,主たる精神障害を身体表現性障害,従たる精神障害を不安性人格障害と診断され,その旨の診断書(精神障害者保 健福祉手帳用)が作成された。(甲11,15の1,2) イ原告に対する東久留米市福祉事務所長の対応等(ア) 原告は,平成27年6月12日,被告東久留米市の担当ケースワーカーに対し,通院先の医師とすぐに口論となるため,今のところ通院している病院がなく,診断書の提出は難しい旨述べた(乙B1)。 (イ) 東久留米市福祉事務所長は,平成28年3月17日,原告が精神的 に安定していない様子であったことから,心療内科への定期的な通院を促していくこととした(甲9)。 (ウ) 被告東久留米市の担当ケースワーカーは,平成28年4月11日,原告宅を訪問し,原告から,現在は心療内科であるDクリニックで受診しているが,コスト面を考えて今後の通院は考えていない旨,以前通院 していたCクリニックは,担当医との相性が悪かったため,通院をやめた旨,今後はEクリニックでの受診を継続していく予定である旨の説明を受けた(甲23)。 (エ) 東久留米市福祉事務所長は,前記ア(ア)~(ウ)の通院について,原告に対し,医療移送費を支給した(甲22,23,乙B2,3)。 (オ) 新たに原告の担当となった被告東久留米市のケースワーカーは,平成28年9月12日,原告に対し,保護費の計算に誤りがあったため返還が生じる説明を行いたい旨の連絡をした(甲5)。 (カ) 被告東久留米市の新旧の担当ケースワーカー2名は,平成28年9月15日,原告と面談し,原告に対し,精神障害者保健福祉手帳の認定 期限後は障害者加算を削除すべきところ,現在まで計上していた旨,同年10月からの保護費を減額し,平成27年7月から平成28年9月 15日,原告と面談し,原告に対し,精神障害者保健福祉手帳の認定 期限後は障害者加算を削除すべきところ,現在まで計上していた旨,同年10月からの保護費を減額し,平成27年7月から平成28年9月までの過支給分を返還する必要がある旨を説明し,返還方法については,原告に預貯金がないため,返還金決定の決裁後に再度協議することとした(甲6,乙B2)。 (キ) 被告東久留米市の担当ケースワーカーは,平成28年10月6日, 原告と面談し,原告に対し,法63条に基づく返還を通知した上で,預貯金がないことを考慮し,月々1万円の分割返済を提案した(乙B3)。 (3) 被告東久留米市の主張によれば,原告の精神障害者保健福祉手帳が平成27年6月30日の有効期限を経過し,更新されていなかったことから,東久留米市福祉事務所長において,原告が障害者加算を要する障害の程度に該当 しないと判断して,本件加算削除処分及び本件返還処分を行ったというのであり,なるほど,精神障害の状態が従前どおり継続していれば,通常,精神障害者保健福祉手帳が更新されるものと解されることからすれば,原告の精神障害者保健福祉手帳が更新されなかったという事実は,原告の精神障害の状態が障害者加算を要する障害の程度に該当しなくなったことを一応推認さ せる事実であるということができる。 しかしながら,逆に,原告が平成19年6月から平成27年6月まで継続して障害等級を2級とする精神障害者保健福祉手帳の更新を続けていたという事実は,この間,原告の精神障害の状態が障害者加算を要する障害の程度に該当していたことを推認させる事実であり,さらに,前記事実関係によれ ば,原告が精神障害者保健福祉手帳を更新できなかったのは,原告の精神障害の状態が所定の障害等級に該当しないとの 障害の程度に該当していたことを推認させる事実であり,さらに,前記事実関係によれ ば,原告が精神障害者保健福祉手帳を更新できなかったのは,原告の精神障害の状態が所定の障害等級に該当しないとの医師の診断があったからではなく,単に原告と通院先の医師との関係が良好でなかったことによるものであること,原告は平成27年7月以降も断続的に精神科や心療内科に通院していたことが認められ,これらの事情は,同月以降の原告の精神障害の状態が 障害者加算を要する障害の程度に該当しなくなったとの認定に合理的な疑いを生じさせる事情であるということができる。 このような本件加算削除処分及び本件返還処分が行われた当時の状況に鑑みれば,原告の精神障害者保健福祉手帳が更新されなかったという一事をもって,原告の精神障害の状態が障害者加算を要する障害の程度に該当しな くなったと推認することはできず,他に,原告について,障害者加算の要件 該当性が失われたことを基礎付ける事由の存在を認めるに足りる証拠はないものといわざるを得ない。 したがって,本件返還処分は,原告について「資力があるにもかかわらず,保護を受けた」との返還の要件がないのに行われたものとして違法な処分であり,取消しを免れない。 3 争点(4)(国家賠償請求の当否)について(1) 被告東久留米市に対する請求についてア本件加算削除処分の違法等本件加算削除処分は,職権による保護の変更処分であり,かつ,既に決定された保護を被保護者の不利益に変更する処分であるから,これが適法 であるためには,「保護の変更を必要とすると認めるとき」との要件に該当し(法25条2項),「正当な理由」がある(法56条)と認められることが必要である。しかしながら,前記2の説示のとおり, であるためには,「保護の変更を必要とすると認めるとき」との要件に該当し(法25条2項),「正当な理由」がある(法56条)と認められることが必要である。しかしながら,前記2の説示のとおり,原告について,障害者加算の要件該当性が失われたことを基礎付ける事由の存在を認めるに足りる証拠はないから,本件加算削除処分にこれらの処分要件が備わって いると認めることはできず,本件加算削除処分は違法というべきである。 そして,前記事実関係によれば,東久留米市福祉事務所長は,前記のとおりの原告が精神障害者保健福祉手帳を更新できなかった理由やその後の原告の通院の状況を認識していたと認められるから,検診命令を発したり(法28条1項),通院先の医師の意見を求めたりするなどの必要な調査 を行うなどして,原告の障害の程度の把握に努めるべき義務があったというべきであり(常に被保護者の生活状態を調査すべき旨を定めた法25条2項参照),この程度の義務を課すことが処分行政庁に過度の負担を強いることになるものとはいえない。したがって,これらの義務を尽くすことなく漫然と違法な本件加算削除処分を行った東久留米市福祉事務所長の行 為は,原告に対して負う職務上の法的義務に違反するものであって,国家 賠償法1条1項の適用上も違法であるといわざるを得ず,また,この行為については少なくとも過失があるというべきである。 これに対し,被告東久留米市は,東久留米市福祉事務所長においては,被告東京都からの本件回答を尊重したものであるから,過失はない旨主張する。しかし,後記のとおり,本件回答には法的拘束力はないこと,本件 加算削除処分は,原告に対する保護の実施機関としての職務を行う東久留米市福祉事務所長が自らの権限と責任において行うべきものであることか かし,後記のとおり,本件回答には法的拘束力はないこと,本件 加算削除処分は,原告に対する保護の実施機関としての職務を行う東久留米市福祉事務所長が自らの権限と責任において行うべきものであることからすれば,本件回答に漫然と従ったことが,東久留米市福祉事務所長の過失を否定する事情とはならないというべきであり,被告東久留米市の主張は採用できない。 イ原告の損害前記事実関係によれば,原告は,本件加算削除処分がされたことにより,平成28年10月1日から同年11月30日までの障害者加算の額の支給を受けることができなかったことが認められるから,これらの額の合計額3万5060円(1万7530円×2か月)を損害と認めることができる。 したがって,原告は,被告東久留米市に対し,国家賠償法1条1項に基づき,3万5060円及びこれに対する不法行為(本件加算削除処分)の日の後である平成28年10月1日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求することができる。 なお,原告は,慰謝料の請求もしているが,本件の被告東久留米市に対 する国家賠償の請求が,実質的には,平成28年10月1日から同年11月30日までの障害者加算の額の支給という金銭債務の履行遅滞の責任を問うものであると解されることからすれば,上記の障害者加算の額及びこれに対する遅延損害金の額を超える損害の賠償を請求することはできないものというべきである(最高裁昭和45年(オ)第851号同48年10 月11日第一小法廷判決・裁判集民事110号231頁参照)。 (2) 被告東京都に対する請求について被告東京都の職員が行った本件回答は,被告東久留米市からの本件照会に基づいて行われたものであるところ,本件照会(甲4 10号231頁参照)。 (2) 被告東京都に対する請求について被告東京都の職員が行った本件回答は,被告東久留米市からの本件照会に基づいて行われたものであるところ,本件照会(甲4)は,その担当する事務の管理及び執行について技術的な助言を求めたもの(地方自治法245条の4第3項),本件回答(甲5)は,その技術的な助言(同条1項)に該当 するものであり,本件回答は,被告東久留米市やその機関である東久留米市福祉事務所長を法的に拘束するものではないと解される。そして,前記のとおり,本件加算削除処分が,原告に対する保護の実施機関としての職務を行う東久留米市福祉事務所長が自らの権限と責任において行うべきものであり,本件回答を採用したのも同福祉事務所長の判断であることからすれば,被告 東京都の職員による本件回答と原告の上記損害との間に相当因果関係を認めることはできない。 よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の被告東京都に対する国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求は理由がない。 4 以上によれば,本件訴えのうち本件加算削除処分の無効確認を求める部分は 不適法であるから却下することとし,本件返還処分の取消請求は理由があるから認容することとし,国家賠償請求については,被告東久留米市に対して,3万5060円及びこれに対する平成28年10月1日から支払済みまでの年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからその限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官古田孝夫 裁判官中野晴行 東京地方裁判所民事第3部 裁判長 裁判官古田孝夫 裁判官中野晴行 裁判官古屋勇児は,転補のため,署名押印することができない。 裁判長 裁判官古田孝夫
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