平成19(行ウ)11 営業休止補償適用基準の具体的根拠の開示等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成22年3月25日 大分地方裁判所 棄却
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判決文本文14,883 文字)

- 1 -平成22年3月25日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成19年(行ウ)第11号営業休止補償適用基準の具体的根拠の開示等請求事件口頭弁論終結の日平成22年1月28日判決主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求被告は,原告に対し,3000万円を支払え。 第2事案の概要 本件は,コンビニエンスストア経営会社が賃借している店舗でフランチャイズ契約に基づいて営業していた原告が,都市計画道路の建設事業(以下「本件事業」という)のため,被告との間で,営業補償契約及び物件移転。 補償契約(以下,合わせて「本件補償契約」という)を締結し,これに基。 づいて補償金を受領したところ,上記各契約が完全な補償を求める憲法29条3項に反するとともに,補償額について誤信がある等とし,同項に基づく完全な補償金(5636万5401円)を請求する権利を有すると主張して,被告に対し,既払補償金額との差額5038万2701円のうち3000万円の支払を求めている事案である。 前提事実(証拠を掲記しない事実は争いがない)。 ⑴原告は,本件当時,コンビニエンスストアである店(以下「原告店Aa舗」という)でBのフランチャイジーとして営業していた。 。 ⑵原告店舗は,大分都市計画道路事業3・2・67号線(本件事業)に関bして被告が施行する都市計画道路線(以下「本件道路」という)道路改b。 築工事(以下「本件工事」という)の計画においてループ式歩道橋を設置。 - 2 -する予定地上にあった(本件事業名に関し乙7。 )⑶そのため,原告は,原告店舗から立ち退くこととし,被告との間で,平成17年3月28日,本件補償契約を締結した。その後,被告は,本件補償契約に基づき,原告に対 にあった(本件事業名に関し乙7。 )⑶そのため,原告は,原告店舗から立ち退くこととし,被告との間で,平成17年3月28日,本件補償契約を締結した。その後,被告は,本件補償契約に基づき,原告に対し,営業休止補償として530万1300円,物件移転補償として68万1400円を支払った。 ⑷関連法規等の概要ア土地収用法〔88条(通常受ける損失の補償〕)71条,72条,74条,75条,77条,80条及び80条の2に規定する損失の補償の外,離作料,営業上の損失,建物の移転による賃貸料の損失その他土地を収用し,又は使用することに因つて土地所有者又は関係人が通常受ける損失は,補償しなければならない。 〔88条の2(損失の補償に関する細目〕)71条,72条,74条,75条,77条,80条,80の2及び前条の規定の適用に関し必要な事項の細目は,政令で定める。 イ土地収用法第88条の2の細目等を定める政令(以下「政令」という)。 〔20条(営業の廃止に伴う損失の補償〕)土地等の収用又は使用に伴い,営業(農業及び漁業を含む。以下同じ)の継続。 が通常不能となるものと認められるときは,次に掲げる額を補償するものとする。 (省略)〔21条(営業の休止等に伴う損失の補償〕) 土地等の収用又は使用に伴い,営業の全部又は一部を通常一時休止する必要があるものと認められるときは,次に掲げる額を補償するものとする。 ①休業を通常必要とする期間中の営業用資産に対する公租公課その他- 3 -の当該期間中においても発生する固定的な経費及び従業員に対する休業手当相当額②休業を通常必要とする期間中の収益の減少額③休業することにより,又は営業を行う場所を変更することにより,一時的に顧客を喪失することによって通常生ずる損失額(前号に掲げるものを除く) 当相当額②休業を通常必要とする期間中の収益の減少額③休業することにより,又は営業を行う場所を変更することにより,一時的に顧客を喪失することによって通常生ずる損失額(前号に掲げるものを除く)。 ④営業を行う場所の移転に伴う輸送の際における商品,仕掛品等の減損,移転広告費その他移転に伴い通常生ずる損失額(省略)ウ大分県が施行する公共事業に伴う損失補償基準(以下「県補償基準」という)及び同損失補償基準細則(以下「県補償細則」という(乙3)。 。)(営業廃止補償について)〔県補償基準43条(営業廃止の補償〕)土地等の取得又は土地等の使用に伴い通常営業の継続が不能と認められるときは,次の各号に掲げる額を補償するものとする。 (省略)〔県補償細則26条〕基準43条(営業廃止の補償)は,次により処理する。 通常営業の継続が不能と認められるときとは,営業所,店舗等が次の各号のいずれかに該当し,かつ,個別的な事情を調査の上,社会通念上当該営業所,店舗等の妥当な移転先がないと認められるときとする。 ①法令等により営業場所が限定され,又は制限される業種に係る営業所等②特定地に密着した有名店③公有水面の占有を必要とする業種その他の物理的条件により営業場所が限定される業種に係る営業所等- 4 -④騒音,振動,臭気等を伴う業種その他の社会的条件により営業場所が限定される業種に係る営業所等⑤生活共同体を営業基盤とする店舗等であって,当該生活共同体の外に移転することにより顧客の確保が特に困難になると認められるもの(省略)(営業休止補償について)〔県補償基準44条(営業休止等の補償〕) 土地等の取得又は土地等の使用に伴い通常営業を一時休止する必要があると認められるときは,次の各号に掲げる額を補償するものとする。 ⑴ 休止補償について)〔県補償基準44条(営業休止等の補償〕) 土地等の取得又は土地等の使用に伴い通常営業を一時休止する必要があると認められるときは,次の各号に掲げる額を補償するものとする。 ⑴通常休業を必要とする期間中の営業用資産に対する公租公課等の固定的な経費及び従業員に対する休業手当相当額⑵通常休業を必要とする期間中の収益減(個人営業の場合においては所得減)⑶休業することにより,又は店舗等の位置を変更することにより,一時的に得意を喪失することによって通常生じる損失額(前号に掲げるものを除く)。 ⑷店舗等の移転の際における商品,仕掛品等の減損,移転広告費その他店舗等の移転に伴い通常生ずる損失額(省略)〔県補償細則27条〕基準44条(営業休止等の補償)は,土地等を取得する場合においては,次により処理する。 本条1項の補償については,次による。 ⑴通常休業を必要とする期間は,別表第4(建物移転工法別補償期間表)による期間に前後の準備期間を加えた期間を標準とし,借家人が移転する場合又は建物の移転が構外再築工法による場合は,その規模,- 5 -業種設備等の移転期間及び準備期間等を考慮し,2か月の範囲内で相当と認める期間とする。 (省略) 当事者の主張⑴原告ア憲法29条3項と任意の補償契約との関係土地の収用について任意の補償契約が締結された場合であっても,直接的には「用いる(収用)には当たらないものの,この契約は,背後に土」地収用法が控えているから,憲法29条3項の適用ないし類推適用によって,同項所定の補償が受けられる。 また,①任意の補償契約の内容が憲法29条3項所定の「正当な補償」すなわち完全な補償に著しく反する場合には,同条1,3項の趣旨に照らし,ないし公序良俗に反するものとして,補償契約の効力 受けられる。 また,①任意の補償契約の内容が憲法29条3項所定の「正当な補償」すなわち完全な補償に著しく反する場合には,同条1,3項の趣旨に照らし,ないし公序良俗に反するものとして,補償契約の効力は否定され,憲法29条3項に基づいて完全な補償を請求でき,②補償契約の締結過程において行政側が優越的な地位を濫用したと認められる場合や,③当事者の意思表示に要素の錯誤等の瑕疵がある場合にも,同様であると解すべきである。 イ本件補償契約が憲法29条3項に反すること憲法29条3項が求めている完全な補償とは,具体的には,その補償内容が収用の前後を通じて被収用者の財産価値を等しくならしめるような補償をいう。しかし,原告は,原告店舗が本件補償契約当時年間1億8000万円余の売上があったにもかかわらず,本件補償契約の履行により営業を廃止し,これにより,リース料の清算や残在庫商品の処分損として700万円余の出費を強いられた。これに対して被告から支払われた補償金は598万2700円であるから,原告は,100万円余の実損害を被った。 これには営業を継続していた場合の逸失利益等は一切含まれていない。 - 6 -原告の営業形態はフランチャイズ契約によるコンビニエンスストアであり,その維持は原告とBとの合意が成立しない限り,営業存続は不可能となるし,また,店舗の賃借を含めた複雑なフランチャイズ契約の形態に照らせば,加盟店が利益を挙げるのは至難の業であって,Bにおいても立地の選定は慎重にならざるをえない。このように,社会的・法的制限から移転が困難な本件のようなコンビニエンスストアに関する補償の場合であり,本件補償契約締結までに原告店舗を移転することが不可能であることが確定していた事案においては,被告は,原告に対し,県補償細則26条ないしこれに準じるものとして,営 スストアに関する補償の場合であり,本件補償契約締結までに原告店舗を移転することが不可能であることが確定していた事案においては,被告は,原告に対し,県補償細則26条ないしこれに準じるものとして,営業休止補償ではなく,営業廃止補償をすべきであったし,営業休止補償期間は,移転地点の確保に6か月,工事に1か月の計7か月とすべきであった(営業休止期間の主張も維持されているものと解される。 。)したがって,被告がした営業休止補償は,その補償内容が被収用者の財産価値を等しくならしめるような補償とは到底いい難く,憲法29条3項に反することは明らかである。 なお,被告は,本件においては,営業休止補償をすれば足りると主張するが,原告店舗を移転することが不可能であることが確定し,そのことを被告担当者が熟知していたのであるから,そうした事情を考慮しないまま,基準に従って営業休止補償金を支給しても,その内容の違法性が正当化されることはない。 ウ本件補償契約締結の意思表示に問題があること及び優越的地位の濫用被告担当者は,調査会社が事前に行った見積の金額と同額の補償額を提示し,これを増額することはなかったし,理屈の立たない補償は1円でも払えない旨明らかにしたなど,原告に対し,頑な交渉態度をとり続けた。 これにより,原告は,平成17年3月末までに本件補償契約を締結しなければ,収用手続に移行して,被告から提示された額以下の補償しか受け- 7 -られなくなると誤信した。 したがって,このことから原告の意思表示が錯誤無効となるかどうかは別にしても,少なくとも原告が,真意に基づいて本件補償契約の締結をしたものではなく,原告が憲法29条3項に基づいて認められる損失補償請求権を放棄したものではない。 また,これらの事情からすれば,契約締結の過程において行政側が優越的な 基づいて本件補償契約の締結をしたものではなく,原告が憲法29条3項に基づいて認められる損失補償請求権を放棄したものではない。 また,これらの事情からすれば,契約締結の過程において行政側が優越的な地位を濫用したというべきであって,同項に基づいて,完全な補償との差額を請求できる。 ⑵被告ア憲法29条3項と任意の補償契約との関係土地収用法に基づく収用と異なり,私法上の契約として補償契約は,当事者間の合意に法律効果発生の根拠を置く点において私人間の契約と本質的に異ならないから,同契約における補償額も契約に基づいて発生するものである。したがって,仮に強制収用が控えているとしても,憲法29条3項の規定に基づき,当事者においてされた合意によって確定されていない対価を請求することはできない。 イ本件補償契約と憲法29条3項の基準営業廃止補償は,機能回復を基本とする損失補償の原則からすれば例外的な補償であるので,これが認められるためには法令等により営業場所が限定され,又は制限される業種に係るなどの所定の営業所,店舗等であり,かつ,個別的な事情により,社会通念上営業所等の妥当な移転先がないと認められることが必要であるが,フランチャイズ契約によるコンビニエンスストアの場合,これに当たらないから,被告は,本件の場合の補償内容として,営業休止補償とした。原告は,移転先についてBが最終的な決定権を持っているかの主張をするが,原告は,自ら適切な移転先を確保したうえで,Bとのフランチャイズ契約を更新し,新たな移転先で営業を再開- 8 -することが可能であった。 そして,本件補償契約における補償金額は,大分県内における公共用地の任意買収における統一的基準である,県補償基準及び県補償細則に基づき適切に算定されている。仮に原告店舗が土地収用法に基づく収用の対 そして,本件補償契約における補償金額は,大分県内における公共用地の任意買収における統一的基準である,県補償基準及び県補償細則に基づき適切に算定されている。仮に原告店舗が土地収用法に基づく収用の対象となったとしても,収用に当たっての補償要件も,上記の統一的基準と同じ考え方に基づいて定められている。 なお,営業休止期間については,退去期限までは原告店舗での営業が可能であるから,1か月あれば十分である。 したがって,本件補償契約は憲法29条3項に反しない。 ウ本件補償契約締結の意思表示に問題がないこと等本件補償契約においては,契約金額について何らの錯誤も原告には見られない。また,本件契約を早急に締結しなければならないとの説明や,交渉期限を徒過すれば収用手続に移行するとか,収用されれば補償額が減少する等の虚偽の事実を被告担当者が告げた事実はなく,原告には意思表示に何らかの錯誤があったとはいい難い。これらにつき,仮に錯誤があったとしても,原告に重大な過失があるから,錯誤に基づく意思表示の無効を主張し得ない。 また,本件補償契約締結に至る交渉過程において,原告が主張するような行政側の優越的な地位の濫用は存在しない。 第3当裁判所の判断 認定事実前提事実,証拠(甲12(一部,乙26,証人C,原告代表者(一部,後))掲証拠)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ⑴原告店舗の営業ア原告は,原告代表者であるD(以下「原告代表者」という)によって。 平成4年9月に設立された(弁論の全趣旨(現在事項全部証明書)株式)- 9 -会社であり,大分市町の店舗で酒類販売業を営んでいたが,平成9年8ca月,Bとの間でフランチャイズ契約を締結し,Eが所有する大分市大字字22番の土地(以下「本件土地」という)上にある,(この2名 あり,大分市町の店舗で酒類販売業を営んでいたが,平成9年8ca月,Bとの間でフランチャイズ契約を締結し,Eが所有する大分市大字字22番の土地(以下「本件土地」という)上にある,(この2名dF。 を以下「Eら」という)が所有し,Bが賃借し,転貸を受けた建物であ。 る原告店舗で,フランチャイジーとして営業し始めた(前提事実⑴,甲11〔資料235~243頁,12〔1頁,乙13,14。 〕〕)),イ原告店舗は,駅の近くに存し(甲6の1・2,24時間年中無休でa役員2名,パート15ないし16名で営業を行っており,同駅の利用者等により大分県内のBの店舗の中でも高い売上げを計上し,売上高が増大してきていたが,営業利益は平成12年会計年度(平成12年9月1日から平成13年8月31日まで)から同14年会計年度に至るまで赤字であった。また,平成14年会計年度においては,競争の激化により,営業成績が前年度に比して5ないし7%下落した(甲11〔1,32頁)。 〕⑵本件事業の策定及び説明等被告は,本件道路についての都市計画変更及び街路事業を行い,その内容として本件工事を行うことを計画し,平成9年5月ころには地元説明会を開催し,その後も平成12年9月及び11月にこれを開催し,本件工事の対象用地を確保するため,用地交渉及び用地買収を始めた(乙10,11の1・2,12,26〔1頁。 〕)⑶調査会社による原告の調査ア被告は,平成15年11月21日,G株式会社(以下「調査会社」という)に対し,原告店舗に係る本件土地の買収についての補償額の算定や。 その前提となる原告店舗の営業状況等について,調査を委託し,調査会社は,平成15年12月3日から,上記各調査を行った(甲11,乙25,26〔5頁。 〕)イその結果,調査会社は,県補 算定や。 その前提となる原告店舗の営業状況等について,調査を委託し,調査会社は,平成15年12月3日から,上記各調査を行った(甲11,乙25,26〔5頁。 〕)イその結果,調査会社は,県補償基準44条及び県補償細則27条に従い,- 10 -被告に対し,①店舗を移転するとフランチャイズ契約が一時的に解除された状態となるので,ロイヤリティー,賃借料はBに対して,②休業期間中の収益減補償,得意先喪失に伴う損失補償,固定的経費の補償,移転広告費等の補償,加盟金分の補償は,これを原告に対して行うべきことを報告するとともに,原告に対する補償金額は,工作物移転料20万6500円,動産移転料42万9000円,移転雑費補償金4万5900円,営業休止補償金については,移転に必要な期間が1か月であると評価のうえ,530万1300円とするのが適切である旨報告した(甲10,11。 )そこで,被告H部I課(以下,単に「I課」という)所属の主任であ。 ったCは,これをもとに,原告との間で補償契約を締結する際の補償額を598万2700円とし,平成16年10月12日ころ,この条件で契約交渉をする旨の上記所長の決裁を経た(甲7,8。 )ウ他方,Cは,本件土地の所有者及び原告店舗たる建物所有者であるEらと本件土地の買収について交渉をしたところ,上記2名から,おおむね承諾が得られた(乙4の1,26〔5頁。 〕)⑷原告との用地交渉アCと,I課主幹であったJは,平成16年11月30日,原告代表者と,ファミリーレストランにおいて面会し,Eらのおおむねの了解が得られたので,補償について話をさせてもらいたいと述べ,Eらに別の土地を求めて同土地に店舗を建設してもらい,B及び原告がその店舗で営業を再開するという補償における基本的な考え方を説明した。また,この際,被 ので,補償について話をさせてもらいたいと述べ,Eらに別の土地を求めて同土地に店舗を建設してもらい,B及び原告がその店舗で営業を再開するという補償における基本的な考え方を説明した。また,この際,被告としては,契約を平成17年3月末,建物の取壊しを遅くとも平成18年の3月末にできるようにしたいと考えている旨を表明した。 これに対し,原告代表者は,Bからは,直営店である町店へ移って欲eしいと打診されており,原告店舗で独自に導入しているコピー機,ダビング機のリース期間が残っているが,町店には同様の機器が既に存在するe- 11 -ため,上記リース契約を解約した際の残リース料分を補償してもらいたいと要望した。 (以上につき乙4の1)イ平成17年1月25日,原告代表者とC,J及びI課長であったKは,上記アと同様に交渉を行った。その際,Cが,コピー機の残リース料を補償の対象にできないと述べたところ,原告代表者は,他の名目でもよいから補償してほしい,そうしてもらえれば3月に契約して同月に店舗を移転してもよいと答えた。 Cが,Bとしては新店舗に原告が移転することを考えているようであったので,早急に代替地を探してもらうよう被告が要望したことを伝えたところ,原告代表者は,代替地が見つかることに悲観的な意見を表明し,リース機器をBに引き継いでもらうよう被告からもBに対して働きかけて欲しいと述べるとともに,町店への移転の打診を断ったことを述べ,さらeに,残リース料について何らかの補償を検討して欲しいと重ねて述べた。 これに対して,Cは,原告が要請した点は再度Bから話を聞く意向であること,被告としては同年3月末までに契約の締結をし,土地の引渡しを遅くとも平成18年3月末として欲しいことを再度伝えるとともに,新しい店舗ができるまでは既存の原告店舗 は再度Bから話を聞く意向であること,被告としては同年3月末までに契約の締結をし,土地の引渡しを遅くとも平成18年3月末として欲しいことを再度伝えるとともに,新しい店舗ができるまでは既存の原告店舗で営業を続けるのが最良であると考えている旨を述べた。 (以上につき乙4の2)ウ同年2月28日にも,原告代表者とCが,電話で交渉を行った。その際,Cは,上記残リース料を補償することができないと再度回答したところ,原告代表者は,一度電話を切った後,弁護士と電話連絡を取り,Cに対して電話を架け,弁護士に連絡が付かず,妻とも相談したが,いつまでも粘っても仕方がないので契約をしようと思う,ただし,Bに店を閉めて既存店に移ると連絡を入れたところ,それには3か月程度の期間が必要だとい- 12 -われたため,その期間だけでもリース料を補償してほしいと述べた。 これに対し,Cは,理屈の立たない補償は1円でも払えないと回答したため,原告代表者は,面会して交渉を行うことを提案し,Cがこれに応じた。 ファミリーレストランにおいて,原告代表者とC,J及びKが面会した。 原告代表者は,上記3か月分のコピー機のリース料を補償して欲しいと再度要請したのに対し,Cらは,できない旨回答したほか,Bからも承諾をもらい,原告,Eら及びBの三者が同時に契約をすることを依頼した。原告代表者は,自分が出て行けばBも嫌とは言わないから,来週に契約書に調印する旨述べた。 (以上につき乙4の3・4)エ同年3月11日,原告代表者とC及びJは,原告店舗内において交渉した。原告代表者は,Cらの説明した補償額では移転できない,営業補償については契約するが,移転費用は要らないから被告で行うか,これを行ってくれる業者を紹介して欲しいと述べた。 また,原告代表者は,仕入れ値で400万円,売値で700万 補償額では移転できない,営業補償については契約するが,移転費用は要らないから被告で行うか,これを行ってくれる業者を紹介して欲しいと述べた。 また,原告代表者は,仕入れ値で400万円,売値で700万円分の商品在庫の扱いについて相談に乗って欲しいと述べたが,Cらは,現店舗でできる限り売ってもらい,残りを新店舗に移すしかないのではないかと回答し,契約締結を依頼したところ,原告代表者は,契約をすると述べ,Cらから契約書を預かった。 (以上につき乙4の5)オ事実認定の補足説明以上のア~エに関し,乙4の1~5は,公務員が大分県H部I事務取扱要領38条2項(乙22)に基づいて職務上作成して上司に対して決裁を求めた文書であること,その内容に不自然な点が見当たらないことなどに照らせば,この文書の内容が一般に交渉の相手方である原告代表者の確認- 13 -を経ていないものであることを考慮しても,十分に信用することができる。 これに対して,原告代表者は,①平成15年ころから被告職員と補償額eについて協議を続けてきたこと,②平成16年11月30日の時点では町店へ移転するというBからの打診を断っており,同日,営業廃止補償をしてくれなければ契約に応じないと述べたこと,③契約に応じなければ強制収用になり,その場合には補償金がないか,雀の涙程度のものになると被告職員が述べたことなどを供述する(原告代表者〔8,12~14,16頁。甲12も同旨。 〕)しかし,①の点は,これを裏付ける的確な証拠がないし,補償協議伺書(甲7)の作成時期(平成16年10月12日,証人Cの反対趣旨の証)言(2,3,5頁)に照らして採用できない。 〔〕また,②の点は,平成20年10月22日付け準備書面6頁で原告の主張するところと矛盾するほか,同日においてリース料の補償を求めたとの 対趣旨の証)言(2,3,5頁)に照らして採用できない。 〔〕また,②の点は,平成20年10月22日付け準備書面6頁で原告の主張するところと矛盾するほか,同日においてリース料の補償を求めたとの供述(原告代表者〔32頁)と符合しないし,仮にこのような発言があ〕ったとすれば用地交渉における被告の考えに明らかに反するものであるから,これを用地交渉日誌に記載して上司に報告し,I課において以後の交渉についての協議のための資料とするのが通常であるし,そうすることについて何らかの障害があったとは認められないにもかかわらず,こうした記載が同日誌にないこと(乙4の1~5)などに照らし,採用できない。 ③の点についても,被告職員としては必ずしも年度内に補償契約を締結することを要せず,しかも予算の繰越しができるとの認識を有していたこと(証人C〔24,25,34頁)からしても,平成16年度中に予算〕を執行する必要もなかったのであるし,強制収用になれば補償金が出ないなどと述べること自体が不自然であるというべきであるから,採用できない。 そして,他に,上記①ないし③の点を認めるに足りる証拠はない。 - 14 -なお,Cから,原告代表者に対し,原告店舗からの退去時期等について最長平成18年3月末でよいとの提示があった点については,前記乙4の1,2のほかに,証人C〔17,18,31頁,原告代表者〔18,1〕9頁〕によって認められる。このように,原告代表者も説明があった時期はともかくこれを認める供述をしている。 ⑸本件補償契約の締結原告は,被告との間で,平成17年3月28日,本件補償契約を締結した。 もっとも,原告店舗からの退去期限については,同月30日付けで,原告と被告との間で,同年4月30日とすることと合意し,原告は,これに従い,)。 同月20日,原 年3月28日,本件補償契約を締結した。 もっとも,原告店舗からの退去期限については,同月30日付けで,原告と被告との間で,同年4月30日とすることと合意し,原告は,これに従い,)。 同月20日,原告店舗からの退去を完了した(乙16の1の移転完了日欄その後,被告は,原告からの請求に基づき,原告に対し,本件補償契約に基づき,同年4月21日に営業休止補償として530万1300円,同年5月19日に物件移転補償として68万1400円を支払った。 (以上につき前提事実⑶,乙2の1・2,15,16の1・2,被告〔17頁,弁論の全趣旨)〕 そこで,憲法29条3項に基づく原告の主張について判断する。 ⑴地方公共団体が土地の所有権を得るに当たって締結される損失等の補償契約は,土地収用法に基づく収用等に当たってなされる補償とは異なり,当事者間の意思表示の合致がその法律効果を生じる基礎となるから,私法上の契約である。したがって,上記補償契約が締結された場合には,同契約の内容が公序良俗に反する場合や,同契約に係る意思表示に瑕疵がある場合,契約締結の過程において地方公共団体がその優越的地位を濫用した場合などの特段の事情のない限り,憲法29条3項の適用の基礎を欠くものである。 この点に関し,原告は,このような補償契約については,背後に強制収用が控えていることから,上記契約の内容が同項に反している場合には,同項に基づき,上記契約の無効を主張して,補償の不足額を請求できると主張す- 15 -るが,独自の見解であって,採用の限りではない。 ⑵本件においては,前記認定事実(1⑸)のとおり,原告と被告との間で本件補償契約が締結されたものであるから,上記の特段の事情のない限り,本件補償契約は有効であって,憲法29条3項に基づく請求権は生じない。 そこで,上記特段の事情の 1⑸)のとおり,原告と被告との間で本件補償契約が締結されたものであるから,上記の特段の事情のない限り,本件補償契約は有効であって,憲法29条3項に基づく請求権は生じない。 そこで,上記特段の事情の有無について検討する。 アまず,原告は,本件補償契約の内容が,憲法29条3項所定の完全な補償に著しく反するから,同項ないし公序良俗に違反すると主張する。 ,(ア)憲法29条3項所定の完全な補償の内容は,土地の収用においてはこれを具体化した土地収用法88条が,営業上の損失を補償の対象とすべきことを定め,これを受けて,同法第88条の2の細目等を定める政令(政令)は,前記のとおり,営業の廃止に伴う場合(20条,営業)の休止等に伴う場合(21条)等について定め,政令20条では営業の廃止に伴う場合とは「営業(農業及び漁業を含む)の継続が通常不能,。 となるものと認められるとき」をいうものとされ,これは,具体的状況に照らし,客観的に見て移転先がないと認められるときをいうものと解される(乙29参照。 )そして,被告においては,上記政令20条の規定を受けて,営業廃止の補償に関し,県補償基準43条,県補償細則26条が定められているところ,同26条は「通常営業の継続が不能と認められるときとは,,営業所,店舗等が法令等により営業場所が限定され,又は制限される業種に係る営業所等,所定の各号のいずれかに該当し,かつ,個別的な事情を調査の上,社会通念上当該営業所,店舗等の妥当な移転先がないと認められるときとする」と規定している。この規定は,上記政令20。 条を具体化したものとして相応の合理性を有するものといえる(甲2,乙29~31及び弁論の全趣旨によれば,公共用地の任意買収における統一的基準として「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」が閣議決- 16 化したものとして相応の合理性を有するものといえる(甲2,乙29~31及び弁論の全趣旨によれば,公共用地の任意買収における統一的基準として「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」が閣議決- 16 -定され,これを参考に他県でも同様の規定を定めていることが認められる。 。)(イ)ところで,フランチャイズ契約に基づくコンビニエンスストアを経営する場合,大別して,地主が自ら経営にあたるオーナー型,フランチャイザーから店舗設備を賃借したフランチャイジーが経営にあたる賃借型,フランチャイザーが直接経営にあたる直営方式が存するところ(甲12,原告店舗の場合はBが所有者から店舗を借り受け,これをさら)に原告が賃借する賃借型であり,店舗所有者が移転先で新たに店舗を建設する場合はもとより,既存店があったとしても同様ないし類似の条件の移転先を探すのが必ずしも容易ではないということができるが,これらの事情を十分に考慮したとしても,前記認定の交渉の経緯等も合わせ考慮すれば,県補償細則26条所定の各号に該当するとも,これに準じるとも認め難いし,また,上記政令20条でいう「営業(農業及び漁業を含む)の継続が通常不能となるものと認められるとき」とも言い難。 い。 仮に,コンビニエンスストアであっても,売上高が突出する等して他の場所で代替することができないような場合,県補償細則26条所定の各号に該当しないが,これに準じ,又は上記政令20条に該当しうる場合があると解する余地があるとしても,原告店舗の売上高が他の大分県内のBの店舗よりも大きいといった事情があるものの(1⑴イ,特別)に売上高が大きい店舗であるとまでは認め難いし,他にそのように解すべき特段の事情は存しない。 (ウ)そうすると,被告が,原告に対し,営業補償の内容として,廃止補償ではなく休止補 (1⑴イ,特別)に売上高が大きい店舗であるとまでは認め難いし,他にそのように解すべき特段の事情は存しない。 (ウ)そうすると,被告が,原告に対し,営業補償の内容として,廃止補償ではなく休止補償をしたことについて違法な点はない。 (エ)この点,原告は,本件補償契約締結までに,原告店舗を移転することが不可能であることが確定しており,そのことを被告担当者が熟知し- 17 -ていた旨主張するが,これを認めるに足りる的確な証拠はないし(むしろ,原告代表者自ら移転先があることを前提とした発言に終始していること等に照らせば,原告代表者の供述にかかわらず,移転を断念したのは本件補償契約の締結以後の事情によるものであることが窺われ,その事情は明らかではない,仮に,本件補償契約締結の際に移転を断念し。)ていたような事実があるとしても,政令20条でいう「営業の継続が通常不能となるものと認められるとき」に当たるものではない。 なお,被告は,営業休止期間を県補償細則27条所定の2か月の範囲),内で1か月と評価して営業休止補償金を算出しているところ(1⑶イ被告担当者は前記のとおり退去期限について約1年間の猶予を与えていたうえ(1⑷ア,イ,原告代表者は移転を前提とした発言をしていた)ものであること等を合わせ考慮すれば,必ずしも不合理であるということはできない。 したがって,本件補償契約の内容が憲法29条3項ないし公序良俗に反するということはできず,原告の主張は採用できない。 イ次に,原告は,①本件補償契約締結の経緯におけるCらの言動に照らして,被告がその優越的地位を濫用したと主張するとともに,②これにより原告が平成17年3月末までに本件補償契約を締結しなければ,収用手続に移行して,被告から提示された額以下の補償しか受けられなくなると誤信した旨主 優越的地位を濫用したと主張するとともに,②これにより原告が平成17年3月末までに本件補償契約を締結しなければ,収用手続に移行して,被告から提示された額以下の補償しか受けられなくなると誤信した旨主張し,この誤信の存在から本件補償契約に係る意思表示が錯誤無効となるか否かは別として,少なくとも憲法29条3項の請求権を放棄していないと主張する。 しかし,まず,①の点については,前記認定事実(1⑶~⑸)により認められる本件補償契約締結に至る経緯に照らし,被告が優越的地位を濫用したといえるかは疑問であり,他にこれを基礎付ける事実を認めるに足りる的確な証拠はない。 - 18 -また,②の点については,本来営業廃止補償を受けられたはずであるにもかかわらず,営業休止を前提とした被告が提示した額以下の補償しか受けられないと誤信したという意味であるとすれば,本件の場合は前記のとおり営業廃止補償を受けられるケースではないうえ,前記交渉の経緯に照らし,そのような誤信があったといいうるのか極めて疑問であるし(原告が営業廃止補償がなければ補償契約に応じないと被告職員に述べたと認めるに足りないことは前記1⑷オのとおりである,他にそのような誤信が。)あったことを認めるに足りる的確な証拠はない。また,誤信の内容が,強制収用になれば,全く補償金がないか,被告の提示額より著しく減額されると誤信した場合を含むものであるとしても,これに副う原告代表者の供述はその内容等に照らしにわかに採用し難く(被告職員がそのような説明をしていないことは前記1⑷オのとおりである,他にそのような誤信が。)あったことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告に誤信があることを前提とする原告の主張はいずれも採用できない。 ウよって,原告と被告の間では,本件補償契約が締結され,その効力 誤信が。)あったことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告に誤信があることを前提とする原告の主張はいずれも採用できない。 ウよって,原告と被告の間では,本件補償契約が締結され,その効力を否定することができる特段の事情を認めるに足りないから,原告は,直接,憲法29条3項に基づいて請求することはできない。 結論 以上によれば,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大分地方裁判所民事第1部裁判長裁判官金光健二- 19 -裁判官野村武範裁判官萩原孝基

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