昭和59(あ)1036 公務執行妨害、傷害

裁判年月日・裁判所
平成元年3月9日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄自判 大阪高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決及び差戻し後の第一審判決を破棄する。      被告人A、同Bをいずれも懲役二月に処する。      被告人両名に対し、この裁判の確定した日から一年間右各刑の執行を猶 予

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判決文本文2,534 文字)

主    文      原判決及び差戻し後の第一審判決を破棄する。      被告人A、同Bをいずれも懲役二月に処する。      被告人両名に対し、この裁判の確定した日から一年間右各刑の執行を猶 予する。      原審及び差戻し前の第一審における訴訟費用は、その二分の一ずつを各 被告人の負担とす     る。          理    由  一 検察官の上告趣意のうち、判例違反をいう点は、所論引用の各判例は、いず れも事案を異にして本件に適切でなく、その余は、単なる法令違反の主張であつて、 刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。  二 しかしながら、所論にかんがみ職権をもつて調査すると、原判決は、以下に 述べる理由により、結局破棄を免れない。  本件公訴事実につき、差戻し後の第一審判決は、公務執行妨害、傷害の事実を認 定し、被告人らをいずれも有罪としたが、原判決は、差戻し後の第一審判決には一 部事実誤認があるとした上、被告人らの行為と被害者の負傷との間には因果関係が 認められず、また、認定可能な被告人らの行為は、いまだ公務執行妨害罪あるいは 暴行罪における違法類型としての暴行に当たるものとは認め難いなどとして、犯罪 の成立を否定し、同判決を破棄して各被告人を無罪とした。  ところで、原判決の認定によれば、本件における事実関係の大要は、次のとおり である。すなわち、兵庫県は、昭和四四年度から、同和対策事業特別措置法に基づ く同和対策事業の一環として、同和地区中小企業振興資金融資制度を設けていたが、 昭和五一年度からは、右融資制度の運用方式を改めることとし、昭和五一年六月一 日、神戸市生田区下山手通五丁目一番地所在の兵庫県庁別館県民サロン室などにお - 1 - いて、新運用方式による融資申込みの受付事務を開始したところ、同月三日、被告 人Aは、新運用方式の内容の説明を聞く 日、神戸市生田区下山手通五丁目一番地所在の兵庫県庁別館県民サロン室などにお - 1 - いて、新運用方式による融資申込みの受付事務を開始したところ、同月三日、被告 人Aは、新運用方式の内容の説明を聞くため、また、被告人Bは、右融資制度に基 づく融資申込みをするため、それぞれ右県民サロン室に赴き、融資申込みの受付事 務の職務に従事していた兵庫県同和局企画調整課企画調整係長C(当時四五年)か ら、新運用方式に基づく融資手続などの説明を受けているうち、やがてその説明に 対する不満をあらわにして、同人に対し、こもごも「ぼけ」「どあほ」などと罵声 を浴びせながら一方的に抗議し、同日午後二時ないし三時ころ、被告人Aは、激高 した態度で所携のパンフレツトを丸めてCの座つていたいすのメモ台部分を数回た たいた上、丸めた右パンフレツトを同人の顔面付近に二、三回突きつけ、少なくと も一回その先端をあごに触れさせ、更に、約二回にわたり、同人が座つていたいす のメモ台部分を両手で持つて右いすの前脚を床から持ち上げては落とすことにより その身体を揺さぶり、また、被告人Bは、Cがいすのメモ台部分に両手をついて立 ち上がりかけたところ、これを阻止するため、その右手首を握つたというのである。  右事実を前提として、原判決における法令の解釈適用について検討すると、原判 決が認定した被告人両名の右各行為は、被告人らが罵声を浴びせながら一方的に抗 議する過程でなされたものであることをも考慮すれば、いずれも公務執行妨害罪に いう暴行に当たるものというべきであるから、これらが同罪にいう暴行に当たらな いとした原判断は、刑法九五条一項の解釈適用を誤つたものといわざるを得ない。し たがつて、差戻し後の第一審判決を破棄して被告人両名を無罪とした原判決には法 令違反があり、これが判決に影響を及ぼし、原判決を破棄しなければ著 刑法九五条一項の解釈適用を誤つたものといわざるを得ない。し たがつて、差戻し後の第一審判決を破棄して被告人両名を無罪とした原判決には法 令違反があり、これが判決に影響を及ぼし、原判決を破棄しなければ著しく正義に 反することは明らかである。  三 よつて、刑訴法四一一条一号により原判決を全部破棄し、なお、本件事案の 内容及び従前の訴訟経過等を考慮し、この際、当審において自判するのを相当と認 - 2 - め、同法四一三条但書により直ちに判決すべきところ、原判決において差戻し後の 第一審判決の認定事実中一部が否定されているので、同判決をも破棄した上、原判 決の認定事実の範囲内で、被告事件について更に次のとおり判決する。  原判決が認定した被告人A、同Bの前記各行為に法律を適用すると、被告人両名 の各行為は、それぞれ刑法九五条一項に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を 選択し、その刑期の範囲内で各被告人を懲役二月に処し、情状により、被告人両名 につき同法二五条一項を適用して、この裁判の確定した日から一年間右各刑の執行 を猶予し、原審及び差戻し前の第一審における訴訟費用については、刑訴法一八一 条一項本文により、その二分の一ずつを各被告人に負担させることとする。なお、 各被告人に対する本件公訴事実中その余の点は、前記認定の各公務執行妨害罪と一 罪の関係にあるとして起訴されたものであるから、主文において特に無罪の言渡し をしない。  よつて、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。  検察官廣畠速登 公判出席   平成元年三月九日      最高裁判所第一小法廷          裁判長裁判官    大   内   恒   夫             裁判官    角   田   禮 次 郎             裁判官    佐   藤   哲   郎            裁判長裁判官    大   内   恒   夫             裁判官    角   田   禮 次 郎             裁判官    佐   藤   哲   郎             裁判官    四 ツ 谷       巌 - 3 -

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