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平成27(ネ)10058 職務発明対価請求控訴事件

裁判所

平成27年10月1日 知的財産高等裁判所 4部 判決 控訴棄却 東京地方裁判所 平成26(ワ)162

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15,340 文字

平成27年10月1日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成27年(ネ)第10058号職務発明対価請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成26年(ワ)第162号)口頭弁論終結日平成27年8月25日判決 控訴人 X 同訴訟代理人弁護士寒河江孝允 同訴訟復代理人弁護士戸田順也 被控訴人 HOYA株式会社 同訴訟代理人弁護士永島孝明 安國忠彦 朝吹英太 安友雄一郎 野中信宏 主文 1 本件控訴を棄却する。2 控訴費用は控訴人の負担とする。事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。2 被控訴人は,控訴人に対し,金1億円及びこれに対する平成25年7月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。4 この判決は,仮に執行することができる。第2 事案の概要 1 訴訟の概要(略称は,特に断らない限り,原判決の略称に従う。) ⑴ 本件は,被控訴人の従業員であった控訴人が,被控訴人に在職中,被控訴人の業務範囲に属し,かつ,控訴人の職務に属する行為に 1 訴訟の概要(略称は,特に断らない限り,原判決の略称に従う。)⑴ 本件は,被控訴人の従業員であった控訴人が,被控訴人に在職中,被控訴人の業務範囲に属し,かつ,控訴人の職務に属する行為によってした発明(被控訴人による特許出願に基づき,原判決別紙本件各特許目録1から4項の各⑴記載の本件各特許として設定の登録をされた同各⑵記載の各請求項に係る本件第1発明,本件第2発明,本件第3発明及び本件第7発明)をし,それらについて特許を受ける権利を被控訴人に承継させた旨主張し,被控訴人に対し,①本件第1発明,本件第2発明及び本件第7発明に関しては,平成16年法律第79号による改正前の特許法(以下「平成16年改正前特許法」という。)35条4項に従って定められる額の相当の対価の一部として,特許法35条3項に基づき,②本件第3発明に関しては,主位的に,同法35条3項及び5項に基づき,相当の対価の一部として,予備的に,被控訴人における特許規程(被告特許規程)及び同法35条3項に基づき,評価期間を平成25年度までとする実績報奨金の一部として,①及び②の合計金1億円及びこれに対する請求の日の翌日である平成25年7月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 条3項に基づき,②本件第3発明に関しては,主位的に,同法35条3項及び5項に基づき,相当の対価の一部として,予備的に,被控訴人における特許規程(被告特許規程)及び同法35条3項に基づき,評価期間を平成25年度までとする実績報奨金の一部として,①及び②の合計金1億円及びこれに対する請求の日の翌日である平成25年7月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。⑵ 原判決は,控訴人は,①本件第1発明及び本件第3発明については,原審における弁論分離前の相被告AvanStrate株式会社(AvanStrate)が被控訴人から実施許諾を受けて実施することにより(AvanStrateが実施許諾を受けていない場合には,被控訴人において,AvanStrateに対し,特許権侵害に基づく損害賠償請求権を行使し得ることにより),②本件第2発明及び本件第7発明については,被控訴人自ら実施することにより,被控訴人が独占の利益を得て おいて,AvanStrateに対し,特許権侵害に基づく損害賠償請求権を行使し得ることにより),②本件第2発明及び本件第7発明については,被控訴人自ら実施することにより,被控訴人が独占の利益を得ている旨主張し,AvanStrate及び被控訴人の売上高を基礎として算定した相当の対価の支払を請求するものであるから,これを認めるためには,本 - 3 -件各発明の実施の事実並びに独占の利益の発生及びその額を主張し,立証しなければならないところ,本件第1発明,本件第3発明及び本件第7発明については実施の事実が認められず,また,本件第2発明については,実施に関する控訴人の主張を一部認め得るとしても,独占の利益があると認めるに足りないと判断するのが相当であるとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。控訴人は,原判決を不服として,本件控訴を提起した。2 前提事実以下のとおり付加訂正するほかは,原判決の事実及び理由第2の1記載のとおりである。⑴ 原判決3頁8行目「本件第1発明,」から10行目末尾までを,「いずれも職務発明に当たる。」と改める。⑵ 原判決3頁11行目冒頭から12行目末尾までを,以下のとおり改める。「イ控訴人は,被告特許規程に基づき,本件第1発明,本件第2発明及び本件第7発明については,原判決別紙本件各特許目録1,2及び4項の各⑴記載の各出願日までに,本件第3発明については,平成16年改正法の施行日である平成17年4月1日以降,前記目録3項⑴記載の出願日,すなわち,平成18年9月29日までに,それぞれの特許を受ける権利を被控訴人に承継させた(弁論の全趣旨)。 目末尾までを,以下のとおり改める。「イ控訴人は,被告特許規程に基づき,本件第1発明,本件第2発明及び本件第7発明については,原判決別紙本件各特許目録1,2及び4項の各⑴記載の各出願日までに,本件第3発明については,平成16年改正法の施行日である平成17年4月1日以降,前記目録3項⑴記載の出願日,すなわち,平成18年9月29日までに,それぞれの特許を受ける権利を被控訴人に承継させた(弁論の全趣旨)。したがって,職務発明の対価の額に関し,本件第1発明,本件第2発明及び本件第7発明については,平成16年改正前特許法35条4項が,本件第3発明については を被控訴人に承継させた(弁論の全趣旨)。したがって,職務発明の対価の額に関し,本件第1発明,本件第2発明及び本件第7発明については,平成16年改正前特許法35条4項が,本件第3発明については,現行の特許法35条4項,5項が適用される。」⑶ 原判決4頁6行目末尾の後に,行を改めて以下のとおり付加する。「⑹ 控訴人による請求控訴人は,平成25年7月29日,被控訴人に対し,本件第2特許及び本件第3特許について特許権ないし特許を受ける権利を被控訴人に譲渡したことの対価として,金3億円の支払を請求した(甲6の1・2)。」 3 争点 - 4 -原判決の事実及び理由第2の2記載のとおりである。4 争点についての当事者の主張以下のとおり付加訂正するほかは,原判決の事実及び理由第2の3記載のとおりである。⑴ 原判決6頁6行目末尾の後に,行を改め,以下のとおり付加する。「なお,控訴人は,本件第1発明及び本件第3発明を含む重要な職務発明をしたにもかかわらず,給与やポスト等において厚遇されることはなく,最終的にはAvanStrateに転籍を命じられるなどの冷遇を受けてきた。このような控訴人の処遇も,相当の対価の算定の一要素として考慮されるべきである。」⑵ 原判決6頁25行目「C棟に存するライン,」を削除する。⑶ 原判決7頁7行目「ほぼ全ての」の前に「D棟に存する徐冷炉及びMD-3炉を除く」を付加する。⑷ 原判決7頁10行目から11行目「HP-5及びNB-1」を,「HP-5,NB-1及びNB-3」と改める。⑸ 原判決7頁15行目「実施していた。」の後に,行を改めて以下のとおり付加する。「D棟に存するラインにおいては,電子材料用の特殊なガラスを製造しており,これらのガラスは繊細であることなどか 削除する。⑶ 原判決7頁7行目「ほぼ全ての」の前に「D棟に存する徐冷炉及びMD-3炉を除く」を付加する。⑷ 原判決7頁10行目から11行目「HP-5及びNB-1」を,「HP-5,NB-1及びNB-3」と改める。⑸ 原判決7頁15行目「実施していた。」の後に,行を改めて以下のとおり付加する。「D棟に存するラインにおいては,電子材料用の特殊なガラスを製造しており,これらのガラスは繊細であることなどか ⑸ 原判決7頁15行目「実施していた。」の後に,行を改めて以下のとおり付加する。「D棟に存するラインにおいては,電子材料用の特殊なガラスを製造しており,これらのガラスは繊細であることなどから,少なくとも控訴人が被控訴人を退職するまでは,「連続循環式の搬送部を有し,炉内の入り口側に往路・復路切り替え部分を有し,かつ搬送部の復路の一部は炉内を移動する」ように設計することはされておらず,D棟に存する徐冷炉及びMD-3炉を含む徐冷炉においては,本件第2発明(請求項1,4,5)の装置及び本件第2発明の製造方法(請求項6,8)が採用された。」⑹ 原判決7頁15行目「少なくとも,」から17行目「認識している。」までを,行を改め,以下のとおり改める。「控訴人は,被控訴人に在職中,生産技術部門(工場技術課)のマネジャーと成形 - 5 -技術開発グループのグループリーダーを兼任し,本件第2発明の実施に直接携わっており,少なくとも,BL-3,NB-1,NB-3,A-2,LA-3,LA-2,SK-4及びMD-3の各炉において本件第2発明が実施されたことは間違いないと認識している。」⑺ 原判決8頁1行目冒頭から3行目「特徴点を有し,」までを,以下のとおり改める。「本件第2特許は,ガラス物品の徐冷の際,①複数の熱処理室について,従来は設けていなかった断熱壁を設けたこと,②物品搬送経路の上方に,従来は設けていなかった耐熱性の均熱壁を設けたこと,③搬送部の復路の一部を炉内で移動させることといった特徴点を有し,」⑻ 原判決8頁8行目「また,」から12行目末尾までを,以下のとおり改める。「また,本件第2発明は,光学ガラス以外のガラス一般の除歪処理等においても,メッシュベルト循環式構造の熱処理炉であれば広く利用できる技術であり,同熱処理 から12行目末尾までを,以下のとおり改める。「また,本件第2発明は,光学ガラス以外のガラス一般の除歪処理等においても,メッシュベルト循環式構造の熱処理炉であれば広く利用できる技術であり,同熱処理炉は多数のガラス事業者において採用されていることから,被控訴人には,他社に対する実施許諾の可能性も十分にあったものといえる。 も,メッシュベルト循環式構造の熱処理炉であれば広く利用できる技術であり,同熱処理 から12行目末尾までを,以下のとおり改める。「また,本件第2発明は,光学ガラス以外のガラス一般の除歪処理等においても,メッシュベルト循環式構造の熱処理炉であれば広く利用できる技術であり,同熱処理炉は多数のガラス事業者において採用されていることから,被控訴人には,他社に対する実施許諾の可能性も十分にあったものといえる。被控訴人が前記のとおり中国の海外子会社に本件第2発明を実施させていたことも併せ考えると,被控訴人は,本件第2発明につき,独占の利益を得ていたものということができる。」⑼ 原判決8頁18行目末尾の後に,行を改めて以下のとおり付加する。「なお,D棟に存するラインで製造された電子材料用の特殊なガラスは,取引市場が小さいことから,控訴人の売上げに対する貢献度は,相対的に低いものである。また,前述した控訴人に対する処遇の点も,相当の対価の算定の一要素として考慮されるべきである。」⑽ 原判決9頁6行目末尾の後に,行を改めて以下のとおり付加する。「しかも,控訴人において本件第2発明が実施されたことは間違いないと認識している旨主張するBL-3等の炉は,いずれも既に廃炉となっており,また,控訴人において被控訴人が本件第2発明の実施により製造したと主張するBACD16等 - 6 -の製品は,いずれも前記主張に係る炉において製造されたものではない。加えて,控訴人は,消費電力削減効果を根拠として本件第2発明が実施されていた旨主張しているが,被控訴人において,消費電力削減効果の発生は確認されていない。また,「複数の熱処理室について,従来は設けていなかった断熱壁を設けたこと」など,控訴人が主張する本件第2特許の特徴点は,いずれも周知技術であり(甲2【0004】,乙A10),消費電力削減効果が発生していたとしても,それは,これら 来は設けていなかった断熱壁を設けたこと」など,控訴人が主張する本件第2特許の特徴点は,いずれも周知技術であり(甲2【0004】,乙A10),消費電力削減効果が発生していたとしても,それは,これらの周知技術によって達成されたものである。以上に鑑みれば,控訴人の前記主張は,失当である。」⑾ 原判決9頁10行目「また,」から13行目末尾までを,以下のとおり改める。「また,前記のとおり,控訴人が主張する本件第2特許の特徴点に係る技術は,いずれも周知技術であり,したがって,本件第2発明には,技術的優位性はなく,独占の利益を生じない。 乙A10),消費電力削減効果が発生していたとしても,それは,これらの周知技術によって達成されたものである。以上に鑑みれば,控訴人の前記主張は,失当である。」⑾ 原判決9頁10行目「また,」から13行目末尾までを,以下のとおり改める。「また,前記のとおり,控訴人が主張する本件第2特許の特徴点に係る技術は,いずれも周知技術であり,したがって,本件第2発明には,技術的優位性はなく,独占の利益を生じない。」⑿ 原判決9頁20行目「本件第7特許」を,「本件第7発明」と改める。⒀ 原判決9頁20行目「実施されていた。」の後に,「控訴人は,生産技術部門のマネジャーとして,本件第7発明の実施に携わり,」を付加する。⒁ 原判決10頁20行目末尾に,「なお,前述した控訴人に対する処遇の点も,相当の対価の算定の一要素として考慮されるべきである。」を付加する。⒂ 原判決11頁2行目「本件第7特許には」の後に,「,冷却板と鋳型の側壁の隙間からガラスがはみ出し,「カン」,「割れ」といった製品欠陥が発生することになる(乙A16【0004】)という」を付加する。第3 当裁判所の判断当裁判所も,原判決と同様に,控訴人の主位的請求及び予備的請求のいずれも理由がないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。1 争点⑴(被控訴人が支払うべき相当の対価の額(主位的請求))について⑴ 職務発明に係る「相当の対価」の意義について - 7 -ア前記第2の2⑵のとおり,控訴人は,被告特許規程に基づき,本件各発明について特許を受ける権利を被控訴人に承継させた。職務発明の対価の額に関し,本 当の対価」の意義について - 7 -ア前記第2の2⑵のとおり,控訴人は,被告特許規程に基づき,本件各発明について特許を受ける権利を被控訴人に承継させた。職務発明の対価の額に関し,本件第1発明,本件第2発明及び本件第7発明については,平成16年改正前特許法35条4項の規定が適用されるので,これらの発明に係る前記承継につき,被告特許規程による対価の額が同項の規定によって定められる対価の額に満たないときは,控訴人は,被控訴人に対し,特許法35条3項の規定に基づき,その不足する額に相当する対価の支払を求めることができるものと解される(最高裁平成13年(受)第1256号同15年4月22日第三小法廷判決・民集57巻4号477頁参照)。また,本件第3発明については,現行の特許法35条4項,5項の規定が適用されるので,被告特許規程の定めにより本件第3発明に係る前記承継の対価を支払うことが同法35条4項の規定により不合理と認められる場合において,被告特許規程に基づく上記対価の額が同条5項の規定に従って定められる上記対価の額に満たないときは,控訴人は,被控訴人に対し,同条3項の規定に基づき,その不足する額に相当する対価の支払を求めることができると解される。 いては,現行の特許法35条4項,5項の規定が適用されるので,被告特許規程の定めにより本件第3発明に係る前記承継の対価を支払うことが同法35条4項の規定により不合理と認められる場合において,被告特許規程に基づく上記対価の額が同条5項の規定に従って定められる上記対価の額に満たないときは,控訴人は,被控訴人に対し,同条3項の規定に基づき,その不足する額に相当する対価の支払を求めることができると解される。本件各発明について特許を受ける権利を承継させた対価の額の算定に当たっては,「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」(平成16年改正前特許法35条4項,特許法35条5項)を考慮する必要がある。使用者等は,職務発明について特許を受ける権利を承継しない場合であっても,当該発明をした従業者等又は上記特許を受ける権利を承継した者が当該職務発明について特許を受けたときは,特許法35条1項により,法定通常実施権を無償で有することになるから,「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」 者等又は上記特許を受ける権利を承継した者が当該職務発明について特許を受けたときは,特許法35条1項により,法定通常実施権を無償で有することになるから,「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」とは,使用者等が当該特許を受けた職務発明を実施することによって得られる利益の額ではなく,通常実施権を超えた独占権,すなわち,当該特許を受けた職務発明を独占的に実施できることによる利益(独占の利益)の額であると解すべきである。イそして,控訴人は,①本件第1発明及び本件第3発明については,Avan - 8 -Strateが実施しており,被控訴人は,同実施が被控訴人による実施許諾に基づく場合には,同許諾に係る対価を得ることにより,同実施が被控訴人による実施許諾に基づかない場合には,AvanStrateに対し,前記各発明に係る特許権侵害に基づく損害賠償請求権を行使し得ることにより,独占の利益を得ている,②本件第2発明及び本件第7発明については,被控訴人は,自社実施により独占の利益を得ている旨主張し,AvanStrate及び被控訴人の売上高を基礎として算定した相当の対価の支払を請求するものである。したがって,控訴人の請求が認められるためには,①本件第1発明及び本件第3発明については被控訴人のAvanStrateに対する実施許諾の事実又は同社による実施の事実,本件第2発明及び本件第7発明については被控訴人による実施の事実,②独占の利益の発生及びその額が,主張,立証されなければならない。 旨主張し,AvanStrate及び被控訴人の売上高を基礎として算定した相当の対価の支払を請求するものである。したがって,控訴人の請求が認められるためには,①本件第1発明及び本件第3発明については被控訴人のAvanStrateに対する実施許諾の事実又は同社による実施の事実,本件第2発明及び本件第7発明については被控訴人による実施の事実,②独占の利益の発生及びその額が,主張,立証されなければならない。⑵ 本件第1発明及び本件第3発明についてア控訴人の主張立証控訴人は,本件第1発明及び本件第3発明は,AvanStrateにより,原判決別紙炉目録(●●●●炉)記載のように●●●●炉等の各炉において実施されており,同社への出向中ないし転籍後,こ 張立証控訴人は,本件第1発明及び本件第3発明は,AvanStrateにより,原判決別紙炉目録(●●●●炉)記載のように●●●●炉等の各炉において実施されており,同社への出向中ないし転籍後,これらの発明の実施状況を直接見聞した旨主張し,自ら作成した陳述書等の書面及び以前同社に勤務していた従業員の陳述書を提出する。イしかしながら,控訴人自ら作成した陳述書等の書面(甲A21,甲A23~甲A25,甲A31,甲A40,甲A42)は,ガラス薄板製造工程等に関する一般的な技術説明や,本件第1発明及び本件第3発明に至る経緯,従来技術との相違点,上記各発明の効果等に関する記載が大半を占めており,上記書面のうち,実施状況に関連する記載は,甲A21号証,甲A25号証,甲A31号証及び甲A40号証の一部にあるにすぎない。しかも,その記載は,いずれも専ら控訴人の記憶に基づくもので,客観的な裏付けに乏しい。例えば「(他聞だが,競合他社に比べ,徐冷設備が長く,かつ徐冷炉室(分割)数が多いのがNHテクノグラス社(現Ava - 9 -nStrate社)の特徴となっていると聞く。)」(甲A21)など伝聞に基づくもの,「本件第1発明の請求項2~4については,温度設定条件によっては該当しないケースもあると思うが,これまでNHテクノグラス社,AvanStrate社で作られた全てのラインの全ての徐冷炉は本件第1発明の請求項1,8,本件第3発明の請求項1,請求項3,請求項7については,該当したものになっているはずである。」(甲A25)など控訴人の推測を交えたもの,「(●●●●炉につき)私自身は設備仕様の決定に関与していないと思うが,よく覚えてはいない。 ては,温度設定条件によっては該当しないケースもあると思うが,これまでNHテクノグラス社,AvanStrate社で作られた全てのラインの全ての徐冷炉は本件第1発明の請求項1,8,本件第3発明の請求項1,請求項3,請求項7については,該当したものになっているはずである。」(甲A25)など控訴人の推測を交えたもの,「(●●●●炉につき)私自身は設備仕様の決定に関与していないと思うが,よく覚えてはいない。」(甲A31)など控訴人が記憶の不確かさを自認しているものが見られるところである。なお,甲A40号証は,当審に提 ●●炉につき)私自身は設備仕様の決定に関与していないと思うが,よく覚えてはいない。」(甲A31)など控訴人が記憶の不確かさを自認しているものが見られるところである。なお,甲A40号証は,当審に提出された甲A42号証及び甲A43号証を除く控訴人自ら作成した陳述書等の書面を合てつして公証人の面前における宣誓供述書としたものにすぎない。AvanStrateの元従業員Aの陳述書(甲A41)においては,同社には,原判決別紙炉目録(●●●●炉)等記載のとおりの構造を有する炉が存在していた旨記載されているところ,同記載も,専ら同人の記憶に基づくものであり,客観的裏付けを欠く。以上によれば,控訴人において本件第1発明及び本件第3発明を実施するものとして主張する原判決別紙炉目録(●●●●炉)記載の炉等については,そもそも存在自体が立証されておらず,また,それらの炉の構造並びに本件第1発明及び本件第3発明に係る充足性も,立証されていないといわざるを得ない。さらに,控訴人は,本件第1発明及び本件第3発明はAvanStrateが実施している旨主張しながら,実施許諾契約及び実施料の額について何らの立証もしない。ウ以上に鑑みると,本件第1発明及び本件第3発明については,被控訴人のAvanStrateに対する実施許諾の事実及び同社による実施の事実のいずれも認めるに足りない。⑶ 本件第7発明についてア控訴人の主張立証 - 10 -控訴人は,本件第7発明は,被控訴人により,原判決別紙炉目録(A-1炉)記載のようにA-1炉等の各炉において実施されており,被控訴人に在職中,控訴人自ら上記実施に直接携わった旨主張し,自ら作成した陳述書等の書面を提出している。イしかしながら,控訴人自ら作成した陳述書等の書面(甲A20,甲A22 び同社による実施の事実のいずれも認めるに足りない。⑶ 本件第7発明についてア控訴人の主張立証 - 10 -控訴人は,本件第7発明は,被控訴人により,原判決別紙炉目録(A-1炉)記載のようにA-1炉等の各炉において実施されており,被控訴人に在職中,控訴人自ら上記実施に直接携わった旨主張し,自ら作成した陳述書等の書面を提出している。イしかしながら,控訴人自ら作成した陳述書等の書面(甲A20,甲A22 て実施されており,被控訴人に在職中,控訴人自ら上記実施に直接携わった旨主張し,自ら作成した陳述書等の書面を提出している。イしかしながら,控訴人自ら作成した陳述書等の書面(甲A20,甲A22,甲A23,甲A26,甲A28,甲A29,甲A32,甲A33,甲A40,甲A42)は,光学ガラス素子の製造工程等に関する一般的な技術説明や,本件第7発明に至る経緯,従来技術との相違点,本件第7発明の効果等に関する記載が大半を占めており,上記書面のうち,実施状況に関連する記載は,甲A20号証,甲A28号証,甲A29号証,甲A32号証,甲A33号証及び甲A40号証の一部にあるにすぎない。しかも,その記載は,いずれも専ら控訴人の記憶に基づくもので,客観的な裏付けに乏しい。例えば,「第7発明が適用可能なラインは,A棟内に5~6基,B棟内にもほぼ同数存在しており,生産に供するガラス粘度特性,板厚に応じて,第7発明が適用されていた。」(甲A20),「棒材(本件第7特許適用可能)」(甲A29,甲A32)など本件第7発明が適用可能な炉の存在を指摘するにとどまり,適用可能性の具体的根拠及び適用状況に関する具体的事実は何ら示されていないものや,「この発明の適用は,2002年頃からだと思うが,」(甲A28),「本件第7特許を適用したタッピングプレート(冷却板)は,(中略)安価なので月次の費用予算で十分購入できたため,はっきりは覚えていないが確か,製造費用で負担してもらったのではないかと思う。」(甲A33)など,控訴人の推測を交えたものが見られるところである。なお,甲A40号証は,前記⑵イのとおり当審に提出された甲A42号証及び甲A43号証を除く控訴人自ら作成した陳述書等の書面を合てつして公証人の面前における宣誓供述書としたものにすぎない。ウ以上によれば,本 号証は,前記⑵イのとおり当審に提出された甲A42号証及び甲A43号証を除く控訴人自ら作成した陳述書等の書面を合てつして公証人の面前における宣誓供述書としたものにすぎない。 のが見られるところである。なお,甲A40号証は,前記⑵イのとおり当審に提出された甲A42号証及び甲A43号証を除く控訴人自ら作成した陳述書等の書面を合てつして公証人の面前における宣誓供述書としたものにすぎない。ウ以上によれば,本 号証は,前記⑵イのとおり当審に提出された甲A42号証及び甲A43号証を除く控訴人自ら作成した陳述書等の書面を合てつして公証人の面前における宣誓供述書としたものにすぎない。ウ以上によれば,本件第7発明についても,控訴人において同発明を実施するものとして主張する原判決別紙炉目録(A-1炉)記載の炉等については,そもそも存在自体が立証されておらず,また,それらの炉の構造及び本件第7発明に係る - 11 -充足性も,立証されていないといわざるを得ない。したがって,本件第7発明については,実施の事実を認めるに足りない。⑷ 本件第2発明についてア本件第2発明につき,証拠(甲2,甲A22,甲A30,乙A18の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。(ア) 本件第2発明は,従来技術と比べ小さなスペースで,しかも少ないエネルギーでガラスの加熱及び徐冷を可能とする加熱方法及び徐冷方法並びにガラス成形品の製造方法の提供等を目的とするものである(甲2【0005】~【0007】)。(イ) 被控訴人は,平成18年頃,「省エネ型徐冷設備の導入」と題する書面(甲A30)を東京都に提出し,同書面において,温室効果ガスの排出削減を目的として,平成21年度までに被控訴人の工場に新たな徐冷設備を3台導入する計画がある旨申告するとともに,上記徐冷設備の構成として本件第2特許の特許公報に掲載されている実施例の図面(甲2の図3~図5)とほぼ同一のものを掲載した。(ウ) 被控訴人は,平成22年6月30日,「地球温暖化対策結果報告書」(乙A18の1)を東京都に提出し,上記徐冷設備の導入により推計313tの温室効果ガスの排出削減効果(削減率が1.19%)が確認されたものの,「『省エネ型徐冷設備の導入』に於いては設備費用が多額で (乙A18の1)を東京都に提出し,上記徐冷設備の導入により推計313tの温室効果ガスの排出削減効果(削減率が1.19%)が確認されたものの,「『省エネ型徐冷設備の導入』に於いては設備費用が多額であり,対策を施した設備はあるが継続的に実施を計る対策のため全体が完了するにはまだまだ時間が掛かる。 出削減効果(削減率が1.19%)が確認されたものの,「『省エネ型徐冷設備の導入』に於いては設備費用が多額で (乙A18の1)を東京都に提出し,上記徐冷設備の導入により推計313tの温室効果ガスの排出削減効果(削減率が1.19%)が確認されたものの,「『省エネ型徐冷設備の導入』に於いては設備費用が多額であり,対策を施した設備はあるが継続的に実施を計る対策のため全体が完了するにはまだまだ時間が掛かる。」と報告した。イこれらの事実によれば,被控訴人の工場内において本件第2発明の実施例に類似した徐冷設備が導入された可能性はあるものの,実際に導入された徐冷設備の構造は明らかではなく,それが被控訴人において本件第2発明を実施するものとして主張する原判決別紙炉目録(BL-3炉)記載の炉等のいずれに該当するかも特定されておらず,実際に本件第2発明に係る構成要件を充足するものであるか否かも不明である。ウ他に,本件第2発明の実施に関する証拠として,甲A34号証から甲A39 - 12 -号証及び控訴人自ら作成した陳述書等の書面がある。しかしながら,甲A34号証から甲A39号証は,控訴人において本件第2発明を実施している旨主張する他社の製品の写真にすぎず,本件第2発明の構成要件と当該製品の構成の対応関係については全く示されていない。控訴人自ら作成した陳述書等の書面(甲A20,甲A22,甲A23,甲A26,甲A27,甲A29,甲A32,甲A40,甲A42)も,光学ガラス素子の製造工程等に関する一般的な技術説明や,本件第2発明に至る経緯,従来技術との相違点,本件第2発明の効果等に関する記載が大半を占めており,上記書面のうち,実施状況に関連する記載は,甲A20号証,甲A22号証,甲A27号証,甲A29号証,甲A32号証及び甲A40号証の一部にあるにすぎない。しかも,その記載は,いずれも専ら控訴人の記憶に基づくもので,客観的な裏付けに乏しい 載は,甲A20号証,甲A22号証,甲A27号証,甲A29号証,甲A32号証及び甲A40号証の一部にあるにすぎない。しかも,その記載は,いずれも専ら控訴人の記憶に基づくもので,客観的な裏付けに乏しい。例えば,「2009年上期までにA棟では徐冷炉のうち3台,B棟ではうち3~4台ほど,MD棟では多分3台ないし6台が,第2発明を適用したものに更新されていたと思う。」(甲A20),「2009年にHOYA社から転籍することになり,その後新たに昭島工場及び中国工場で新規製作された徐冷炉が何ラインあるかを知る由は無いが,この本件第2発明を適用せず徐冷炉を新設することはありえないと確信するものである。 乏しい。例えば,「2009年上期までにA棟では徐冷炉のうち3台,B棟ではうち3~4台ほど,MD棟では多分3台ないし6台が,第2発明を適用したものに更新されていたと思う。」(甲A20),「2009年にHOYA社から転籍することになり,その後新たに昭島工場及び中国工場で新規製作された徐冷炉が何ラインあるかを知る由は無いが,この本件第2発明を適用せず徐冷炉を新設することはありえないと確信するものである。」(甲A27)など控訴人の推測を交えたもの,「第2発明は,(中略)稼働時の消費電力の大幅低減(1台当たり年間262千kwh/年の消費電力低減を実現→詳細は東京都に2006年に提出した別紙「省エネ型徐冷設備の導入」を参照ください)したものである。」(甲A22)など本件第2発明の効果を述べるのみで,そのような効果を上げるに至った具体的な実施状況については説明していないもの,「本件第2特許適用可能徐冷炉有無」(甲A29,甲A32)など本件第2発明が適用可能なものの存在を指摘するにとどまり,適用可能性の具体的根拠及び適用状況に関する具体的事実は何ら示されていないものが見られるところである。なお,甲A40号証は,前記⑵イのとおり当審に提出された甲A42号証及び甲A43号証を除く控訴人自ら作成した陳述書等の書面を合てつして公証人の面前におけ - 13 -る宣誓供述書としたものにすぎない。エ以上によれば,本件第2発明についても,控訴人において同発明を実施するものとして主張する原判決別紙炉目録(BL-3炉)記載の炉等については,そもそも存在自体が立証されてお たものにすぎない。エ以上によれば,本件第2発明についても,控訴人において同発明を実施するものとして主張する原判決別紙炉目録(BL-3炉)記載の炉等については,そもそも存在自体が立証されておらず,また,それらの炉の構造及び本件第2発明に係る充足性も,立証されていないというべきである。仮に,被控訴人が平成18年頃東京都に提出した前記「省エネ型徐冷設備の導入」と題する書面記載のとおり,平成21年度までに被控訴人の工場に新たな徐冷設備が導入され,それが本件第2発明の構成要件を充足するものであったとしても,同記載によれば,3台にすぎず,実施期間も,現在まで継続的に実施されていたとしても,高々10年にとどまる。そして,被控訴人がそのように本件第2発明を実施することによって,控訴人主張に係る消費電力の削減による電気料金の低減という利益を得ていたとしても,前記「地球温暖化対策結果報告書」の記載によれば,新たな徐冷設備の導入によって確認できた温室ガス排出の削減率は,わずか1パーセント余りであることに鑑みると,消費電力が大幅に削減されたとまではいえず,同削減による電気料金の低減が,本件第2発明の通常実施権によって得られる利益を超えるものであるとは考え難い。 することによって,控訴人主張に係る消費電力の削減による電気料金の低減という利益を得ていたとしても,前記「地球温暖化対策結果報告書」の記載によれば,新たな徐冷設備の導入によって確認できた温室ガス排出の削減率は,わずか1パーセント余りであることに鑑みると,消費電力が大幅に削減されたとまではいえず,同削減による電気料金の低減が,本件第2発明の通常実施権によって得られる利益を超えるものであるとは考え難い。被控訴人が本件第2発明の実施によってそのほかの利益を得ていたと認めるに足りる証拠はない。以上によれば,仮に,被控訴人が本件第2発明を実施していたとしても,本件証拠上,独占の利益を得ていたと認めるに足りないというべきである。オ控訴人の主張について控訴人は,本件第2発明に関し,被控訴人が中国の海外子会社に実施させていたこと,他社に対する実施許諾の可能性も十分にあったことを根拠として,被控訴人は,独占の利益を得ていた旨主張する。しかしながら,前記イ及びウによれば,海外子会社に 中国の海外子会社に実施させていたこと,他社に対する実施許諾の可能性も十分にあったことを根拠として,被控訴人は,独占の利益を得ていた旨主張する。しかしながら,前記イ及びウによれば,海外子会社による本件第2発明の実施の事実は,認めるに足りない。また,他社に対する実施許諾の可能性は,独占の利益の存在を直ちに基礎付ける - 14 -ものとはいえない。以上によれば,控訴人の前記主張は,採用できない。⑸ 小括以上のとおり,控訴人の主位的請求は,理由がない。2 争点⑵(平成25年度までの本件第3発明の実施による実績報奨金の額(予備的請求))について控訴人は,本件第3発明が実施されていることを前提として,被告特許規程及び特許法35条3項に基づいて相当の対価の支払を請求するが,被控訴人のAvanStrateに対する実施許諾の事実及び同社による実施の事実のいずれも認めるに足りないことは前記1⑵ウのとおりであり,被控訴人自身による実施の事実も認められないから,控訴人の予備的請求も理由がない。3 結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却した原判決は相当である。よって,本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官髙部眞規子 同社による実施の事実のいずれも認めるに足りないことは前記1⑵ウのとおりであり,被控訴人自身による実施の事実も認められないから,控訴人の予備的請求も理由がない。3 結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却した原判決は相当である。よって,本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官髙部眞規子 裁判官田中芳樹 裁判官鈴木わかな

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