主文 被告人を懲役2年4か月に処する。 未決勾留日数中90日を刑に算入する。 理由 (犯罪事実)被告人は,パチンコ店Aの遊技客のB(当時22歳)から金員を喝取しようと考え,平成16年1月13日午後5時50分ころ,神戸市C区Da番地所在の同店内において,同人に対し,「コイン3枚入れとったん気付かへんかったんか。」などと告げて因縁をつけた上,そのころから同日午後7時過ぎころまでの間,同店内及び同店駐車場において,同人に対し,「どついたるから表に出ろ。」「今なんぼ持っとんや。」「お前が打っているとき,俺,別の台でなんぼ使ったと思っとんや。 4万5千円くらいつぎ込んだんや。」「お前,なんぼ出すんや。」などと語気鋭く告げて金員の交付を要求し,もしその要求に応じなければ同人の身体等にいかなる危害を加えるかもしれない気勢を示して脅迫し,同人をしてその旨畏怖させ,よって,同日午後9時30分ころ,同区Eb番地のc所在のF駐車場に駐車中の普通乗用自動車内において,同人から,自分の妻Gを介し,現金3万円の交付を受け,もって,人を恐喝して財物を交付させた。 (証拠)括弧内の番号は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す。 省略(補足説明) 1 弁護人は,恐喝罪の成立は認めるとしつつも,被告人は当初から恐喝の犯意を有していたのではなく,判示の脅迫文言も述べていない旨を主張し,被告人も判示脅迫文言を否認するとともに,金銭の交付を受ける際もBが怖がっているとは思っていなかった旨を供述をするが,当裁判所は判示のとおり認定したので以下補足して説明を加える。 2(1) 本件被害者であるBは,捜査段階での検察官による取調べや当公判廷での証人尋問において,要旨以下のとおり供述 た旨を供述をするが,当裁判所は判示のとおり認定したので以下補足して説明を加える。 2(1) 本件被害者であるBは,捜査段階での検察官による取調べや当公判廷での証人尋問において,要旨以下のとおり供述する。 本件パチンコ店の入り口に近い北斗の拳という遊技台(以下「本件遊技台」という。)でパチスロを始めると,いきなり被告人から「コイン3枚入れとったん気付かへんかったんか。」と怒った口調で言われた。機械にコインが入っていないことを確認してはいたが被告人が恐かったので謝ると,「どついたるから表に出ろ。」と言われた。そして,被告人が駆けつけた店員らに対しその胸倉をつかんで足を掛けて倒したり,「俺がコイン入れとったのを気付かんとこいつが打っとったんや。朝からなんぼつぎ込んだと思っとんや」と怒鳴るなどした後,店外の駐車場に出て被告人から「今なんぼ持っとんや。」と聞かれたので7000円である旨を答えると,被告人から本件遊技台でパチスロをして出た分の半分を渡すように言われ,住所,氏名,電話番号を確認された。そこで,渡されたコインも使い本件遊技台でパチスロを続けたが,途中で何度か帰らせてもらおうとしても許してもらえず,「お前が打っているとき,俺,別の台でなんぼ使ったと思っとんや。4万5000円くらいつぎ込んだんや。」と怒鳴られるなどした。その後,被告人はパチンコ店内で他の客の頭を肘で叩いたり,その場に来た被告人の妻に文句を言って飲みかけの缶コーヒーの中身を同女に掛けて蹴りつけるなどした。そして,被告人に呼ばれてパチンコ店の外の駐車場に連れて行かれ,被告人から「車に乗れ。」「誠意で乗れよ。」「なんぼ出すんや。」などと言われて被告人の車に乗り,Bの実家に行こうとした。しかし,途中でいったんパチンコ店に引き返し,被告人が同店の店員に立替払の形で金員を出 ら「車に乗れ。」「誠意で乗れよ。」「なんぼ出すんや。」などと言われて被告人の車に乗り,Bの実家に行こうとした。しかし,途中でいったんパチンコ店に引き返し,被告人が同店の店員に立替払の形で金員を出させようとしたが断られた。そして,被告人に言われて職場の同僚であるHに電話をし借金を申し入れ,同人から3万円を貸してもらうこととなり,Hに会って3万円を借り受けた。しかし,その場において被告人は3万円では足りないとして6万円を要求し,Hが6万円の支払の連帯保証をすることとなり,その後,被告人の指示で被告人の妻にHから借りた3万円を渡した。 (2) かかるBの供述内容を見るに,特に公判においては記憶が不明確となっている点は見受けられるものの,被告人の言動に畏怖して金員を支払うに至る経緯が自然でよく理解できるものである上,Bには意図的に虚偽の事実を述べてまで被告人を罪に陥れようとする理由は見受けられず,現に,Bの供述内容を検討しても殊更に被告人に不利益な内容を述べようとしているような態度も何ら見受けられない。 したがって,被告人から脅かされ,金員の支払を求められたことから現金3万円を支払うに至ったというBの供述は基本的に信用し得るものといえる。 3(1) これに対して被告人は,捜査及び公判の各段階において,要旨次のとおり述べる。 本件遊技台にコインを10枚から15枚程度置いて台を確保し,別の遊技台でパチスロを始めたところ,10秒ほどして見るとBが本件遊技台でパチスロをしているのに気付き,Bに対し自分がコインを置いていた旨を告げ,店長を呼んで事情を説明した後,Bと店外に出て話をした。すると,Bはちゃんとさせてくれと述べたが,被告人の提案により,被告人がコインを渡してBが本件遊技台でパチスロをし,コインが出ても出なくてもよいが出たら折半すると 説明した後,Bと店外に出て話をした。すると,Bはちゃんとさせてくれと述べたが,被告人の提案により,被告人がコインを渡してBが本件遊技台でパチスロをし,コインが出ても出なくてもよいが出たら折半するということで話がついたので,Bが本件遊技台でパチスロを続けた。しかし,Bがコインが100枚ほどの状態で時間がないので帰ると言い出し,約束が違う旨を告げると,Bはいったんはパチスロを続けたが,再び時間がないと言ってきた。そこで店の駐車場に出てBに対して話が違うと言うなどした際,Bに幾ら負けたか聞いたときにBが7000円か8000円持っているという話をした。そして,Bが親から借りるか友達から借りて後日払うというので住所と電話番号を教えてもらったが,駐車場を出て店内に戻ろうとすると店長がやって来た。既に店長に説明をしているのに状況を尋ねてきたので腹を立て,店長と揉み合いになったが,そのときに今日4万5000円負けたという愚痴を捨てぜりふのように述べた。その後,店の客とトラブルになったり興奮して妻に飲みかけのコーヒーを掛けたり蹴りつけたりしたが,Bはお金を払うためと思うが待っていた。車に乗るときにBに気持ちで払ってくれるんだろうと確認し,Bが親から借りると言っていたのでBを車に乗せてその実家に向かった。すると,途中でBが友達から借りると言い出したので,それならパチンコ店の店員から借りられるかもしれないと告げるとBが乗り気の様子だったのでパチンコ店に引き返し,店員のIに立替払を頼んだが断られた。そして今度は,Bが会社の人から借りると言うのでBの同僚のところに行き,Bが3万円を借り受けたが,受け取っていいものかという気持ちがあったので受け取らなかった。しかし,Bが何回かお金を受け取ってくれと封筒を差し出してきて,結局,5万円を支払うと言い,子供の病院代と ,Bが3万円を借り受けたが,受け取っていいものかという気持ちがあったので受け取らなかった。しかし,Bが何回かお金を受け取ってくれと封筒を差し出してきて,結局,5万円を支払うと言い,子供の病院代として受け取ってほしいと言ってきたので車に同乗していた妻に3万円を受け取らせた。なお,Bが怖がっていたということには気付かなかった。 (2) しかしながら,このような被告人の供述によると,被告人が10枚から15枚のコインを置いて確保していた本件遊技台でBがパチスロを始めてしまい,10秒ほどで被告人が指摘しBが謝罪したというのが発端であったにすぎないのに,被告人が供述するその後の経緯に照らしても,さほど所持金を有しておらず,早く帰りたがっていたBがなぜ金銭の支払を求められてもいなかったのに自ら支払を申し出て被告人を待ち,その後も受取を拒む被告人に対して額を3万円から5万円に引き上げてまで金員を支払おうとしたのか理解に苦しむところである。 そして,いずれにしても,Bが被告人に3万円を支払ったのは,Bが被告人を畏怖していたからとしか考えられないが,それにもかかわらず,被告人においては,当時はBが怖がっていたとは思わなかったなどという到底信じ難い供述に終始しており,その供述態度の真摯性には疑いを抱かざるを得ない。 また,被告人は,Bが同僚からお金を借りて3万円を支払おうとするに至った際にも,受け取っていいものかという気持ちがあってこれを拒んだと言うが,それまでにパチンコ店店員に立替払を求めたり,Bの同僚と自らも電話をするなどして同人のところまで行くなどしていたことに照らすと,かかる供述はにわかに信用し難く,現に,Bに3万円を貸したHは,被告人が3万円では足りないというので幾らなら納得するのか聞くと,被告人が6万円という金額を出した旨を で行くなどしていたことに照らすと,かかる供述はにわかに信用し難く,現に,Bに3万円を貸したHは,被告人が3万円では足りないというので幾らなら納得するのか聞くと,被告人が6万円という金額を出した旨を供述しており(甲3),また,被告人の妻も,Bから3万円を受け取った際に,被告人がBに対して積極的に残額の3万円の支払を求めていた様子を述べている(甲4)。 こうした事情に照らすと,自らは金銭の支払を求めていないのにBから金銭を支払う旨を言い出し,Bが受取を拒む被告人に対して繰り返し支払を申し出たために3万円の受領に至ったものであって,その際にBが怖がっていたとは思っていなかったなどという被告人の弁解内容は到底信用できるものではなく,被告人に脅されて金員の支払を求められたため3万円を支払うに至ったとのBの供述こそ信用できるものといえる。 4 したがって,被告人に脅され,金銭の支払を要求された旨のBの述べる判示脅迫文言はこれを信用することができ,また,Bに対して判示文言を申し向けつつ金銭を支払わせるに至ったその経緯に照らすと,被告人は当初からBから金員を脅し取る意図でBに対して因縁をつけたものと認めることができるのであるから,判示のとおりの恐喝の事実を認定した次第である。 (累犯前科) 1 事実平成12年1月28日神戸地方裁判所宣告恐喝,同未遂,傷害,器物損壊,逮捕監禁罪により懲役3年平成14年12月12日刑の執行終了 2 証拠前科調書(適用法令)罰条刑法249条1項累犯加重刑法56条1項,57条(再犯)未決勾留日数算入刑法21条訴訟費用の処理刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑事情)被告人は,パチンコ店で被害者に因縁をつけ,暴力を加えるかのごとき言辞も用いながら脅迫した )未決勾留日数算入刑法21条訴訟費用の処理刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑事情)被告人は,パチンコ店で被害者に因縁をつけ,暴力を加えるかのごとき言辞も用いながら脅迫した挙げ句,同僚から借金をさせてまでして金員を用立てさせて現金3万円を脅し取ったものであって,明らかに金銭目的であるその動機に酌量の余地はなく,態様も執拗かつ悪質であって,被害者に恐怖の念を抱かせて金員を脅し取ったその結果も軽視し得ず,被害感情にもいまだ厳しいものがある様子もうかがわれる。 しかも被告人は,自己の刑責を軽減せんがために,前記のごとく明らかに不合理な弁解を縷々述べていることに照らすと,公判廷での謝罪や反省の弁にもかかわらず,真摯な反省の念を有しているのか疑問を抱かざるを得ず,このような態度に照らすと,今後も同様の行為を繰り返すおそれは低いものではないといえる。 また,被告人には,平成12年には恐喝等により懲役3年の実刑判決を受けた前科があり,平成14年12月に刑の執行を終えたものであるにもかかわらず,それから1年余りで本件犯行に及んだものであって,規範意識の欠如も甚だしく,粗暴な傾向もうかがわれ,これらの諸事情に照らすと,強い非難を免れ得ない。 そこで,受領を拒絶されたもののBに対して現金8万円を送り,その他に謝罪文も送付していること,3万円の贖罪寄付をしていること,被告人の妻が当公判廷に出廷して今後の監督を誓っていること,被告人の中学時代の同級生が当公判廷で今後の雇用と監督を誓っていること,その他の被告人のために酌むべき事情も考慮の上,主文のとおり量刑した。 (求刑―懲役3年)平成16年7月14日神戸地方裁判所第1刑事部裁判官小倉哲浩 主文 のとおり量刑した。 (求刑―懲役3年) 平成16年7月14日 神戸地方裁判所第1刑事部 裁判官小倉哲浩
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