令和1(ネ)801 損害賠償請求各控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和5年11月22日 名古屋高等裁判所 名古屋地方裁判所 平成25(ワ)2710
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判決文本文697,450 文字)

- 1 - 主文 1 原判決主文第1項及び第2項中、本判決別紙6「一覧表」の「区分」欄に「【2】」、「【3】」、「【4】」又は「【5】」と記載する同「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らの一審被告東京電力に対する請求に係る部分を次のように変更する。 (1) 一審被告東京電力は、本判決別紙6「一覧表」の「区分」欄に「【2】」、「【3】」又は「【4】」と記載する同「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らに対し、それぞれの一審原告に対応する同「認容額(控訴審)」欄記載の金員及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 (2) 本判決別紙6「一覧表」の「区分」欄に「【5】」と記載する同「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らの一審被告東京電力に対する各請求及び同「区分」欄に「【2】」、「【3】」又は「【4】」と記載する同「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らの一審被告東京電力に対するその余の各請求をいずれも棄却する。 2(1) 一審原告らの一審被告国に対する各控訴をいずれも棄却する。 (2) 本判決別紙6「一覧表」の「区分」欄に「【3】」、「【5】」又は「【6】」と記載する同「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らの一審被告東京電力に対する各控訴及び同「区分」欄に「【2】」又は「【4】」と記載する同「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らの 一審被告東京電力に対するその余の各控訴をいずれも棄却する。 (3) 一審被告東京電力の本判決別紙6「一覧表」の「区分」欄に「【1】」又は「【2】」と記載する同「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らに対する各控訴及び同「区分」欄に「【3】」と記載する同「控訴人 一審被告東京電力の本判決別紙6「一覧表」の「区分」欄に「【1】」又は「【2】」と記載する同「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らに対する各控訴及び同「区分」欄に「【3】」と記載する同「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らに対するその余の各控訴をいずれも棄却す る。 - 2 - 3 原判決を本判決別紙7「更正目録」のとおり更正する。 4 一審原告らの一審被告国に対する控訴費用は一審原告らの負担とし、本判決別紙6「一覧表」の「区分」欄に「【6】」と記載する同「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らの一審被告東京電力に対する控訴費用は同一審原告らの負担とし、一審被告東京電力の同「区分」欄に「【1】」と記載する同 「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告に対する控訴費用は一審被告東京電力の負担とし、同「区分」欄に「【2】」、「【3】」又は「【4】」と記載する同「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らそれぞれと一審被告東京電力との間の訴訟費用は、第1審、第2審を通じてこれを20分し、うち対応する同「訴訟費用負担割合(控訴審)」欄記載の割合を同一審原告らそ れぞれの負担とし、その余をそれぞれ一審被告東京電力の負担とし、同「区分」欄に「【5】」と記載する同「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らそれぞれと一審被告東京電力との間の訴訟費用は、第1審、第2審を通じ全部同一審原告らそれぞれの負担とする。 5 この判決主文第1項(1)は、仮に執行することができる。ただし、一審被告 東京電力が本判決別紙6「一覧表」の「区分」欄に「【2】」、「【3】」又は「【4】」と記載する同「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らそれぞれに対し、対応する同「担保額(控訴審)」欄記載の額の担保を供するときは、それ 覧表」の「区分」欄に「【2】」、「【3】」又は「【4】」と記載する同「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らそれぞれに対し、対応する同「担保額(控訴審)」欄記載の額の担保を供するときは、それぞれその仮執行を免れることができる。 事実 及び理由 本判決の「事実及び理由」中(原判決の記載を引用する部分を除く。)では、本判決で別に定義するもの以外は、原判決が原判決別紙「略語・用語一覧」ほかで定義した略語を使用する。 第1部各控訴の趣旨及び事案の概要第1章各控訴の趣旨 第1 一審原告ら - 3 -原判決を次のように変更する。 1 一審被告東京電力は、本判決別紙6「一覧表」の「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らそれぞれに対し、対応する同「一審被告東京電力に対する請求額(控訴審)」欄記載の各金員及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし、対応する同「一審被告 国に対する請求額(控訴審)」欄記載の各金員及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で一審被告国と連帯して)を支払え。 2 一審被告国は、一審被告東京電力と連帯して、本判決別紙6「一覧表」の「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らそれぞれに対し、対応する同「一審被告国に対する請求額(控訴審)」欄記載の各金員及びこれに対する平 成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 一審被告東京電力 1 原判決中、一審被告東京電力敗訴部分をいずれも取り消す。 2 上記取消し部分に係る一審原告らの請求をいずれも棄却する。 第2章事案の概要 第1 本件(原審)は、平成23年3月11日に発生した本件地震及びこれに伴 敗訴部分をいずれも取り消す。 2 上記取消し部分に係る一審原告らの請求をいずれも棄却する。 第2章事案の概要 第1 本件(原審)は、平成23年3月11日に発生した本件地震及びこれに伴う本件津波の影響で、一審被告東京電力が設置し運営する福島第一原発から放射性物質が放出されるという事故(本件事故)が発生したことにより、福島県内から愛知県、岐阜県若しくは静岡県へ避難を余儀なくされたと主張する者又はその相続人である原審における原告ら(元原審原告25-1から同25-4ま でを含まない。)が、一審被告東京電力に対しては、福島第一原発の敷地高を超える津波の発生等を予見しながら、福島第一原発の安全対策を怠ったと主張して、原賠法3条1項、民法709条又は717条1項に基づき、一審被告国に対しては、経済産業大臣が同東京電力に対して電気事業法に基づく規制権限を行使しなかったこと等が違法であると主張して、国賠法1条1項、4条に基 づき、損害賠償として、本判決別紙6「一覧表」の「控訴人番号」欄記載の控 - 4 -訴人番号の一審原告らに対応する同「一審被告らに対する請求額(原審)」欄記載の各金員及びこれらに対する平成23年3月11日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金を連帯して支払うことを求めた事件である。 第2 原審は、原審における原告らのうち、一審原告1-4、同3-1から同3-4まで、同8-7、同13-4、元原審原告18-2、同19、一審原告20-1、同20-3、元原審原告21-1、一審原告24-1、同24-2、同30-1から同30-4まで及び同41-2の各請求をいずれも棄却し、その余の原審における原告らの請求のうち、一審被告東 原告20-1、同20-3、元原審原告21-1、一審原告24-1、同24-2、同30-1から同30-4まで及び同41-2の各請求をいずれも棄却し、その余の原審における原告らの請求のうち、一審被告東京電力に対しては、損害賠 償として、本判決別紙6「一覧表」の「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らに対応する同「認容額(原判決)」欄記載の各金員及びこれらに対する平成23年3月11日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、一審被告国に対する請求をいずれも棄却する旨の判決(原判決)をしたところ、一審原告ら(同21-3を除 く。)及び元原審原告21-1並びに一審被告東京電力が、それぞれ敗訴部分を不服として控訴した。なお、同一審原告ら及び同元原審原告は、当審において、本判決別紙6「一覧表」の「一審被告東京電力に対する請求額(控訴審)」及び「一審被告国に対する請求額(控訴審)」の各欄記載のとおり、不服の範囲を限定した。また、原審における原告らのうち元原審原告18-2及び同1 9は控訴しておらず、原判決中、同人らに係る部分は確定している。元原審原告21-1は当審係属中に死亡し、一審原告21-3が承継した。 - 5 -第2部前提事実本件における前提事実は、次のとおり補正するほかは、原判決第2部(12頁20行目から93頁24行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (原判決の補正) 1 原判決13頁20行目から21行目にかけての「O.P.+10mであり、」を「O.P.(小名浜港工事基準面)+10mであり、」と改める。 2 原判決15頁7行目の「原子力施設の」を「原子炉施設の」と改める。 3 原判決19頁24行目の「理由として」を「原因 mであり、」を「O.P.(小名浜港工事基準面)+10mであり、」と改める。 2 原判決15頁7行目の「原子力施設の」を「原子炉施設の」と改める。 3 原判決19頁24行目の「理由として」を「原因として」と改める。 4 原判決20頁10行目の「機能が」を「格納機能が」と改める。 5 原判決28頁1行目の「最大加速度」の次に「値」を加える。 6 原判決42頁5行目の「規程に」を「規定に」と改める。 7 原判決62頁1行目の「電気、」を「空気、」と改める。 8 原判決64頁4行目の「平成14年から」を「平成13年1月6日から」と改める。 9 原判決66頁4行目の「約13万5000人が」を「約11万6000人が」と改める。 10 原判決66頁9行目の「暴風雨の影響で」から11行目の「喪失したが、」までを「暴風雨の影響による高潮と満潮とが重なりジロンド河口に波が押し寄せた結果、河川が増水し、川の水が洪水防水壁を越えて浸入し、送電網にも擾 乱が生じ電源が喪失したが、非常用電源が起動したため、」と改める。 11 原判決67頁24行目の「海のプレート内部に蓄積されたひずみにより、」を「プレート境界付近では、」と改める。 12 原判決70頁19行目の「甲1の1」を「甲A1の1」と改める。 13 原判決72頁14行目から15行目にかけての「地震・地盤ワーキンググ ループ」を「地質・地盤ワーキンググループ」と改める。 - 6 - 14 原判決77頁10行目の「津波災害マニュアルに」を「津波災害予測マニュアルに」と改める。 15 原判決80頁23行目に掲げる証拠に乙A第20号証の1及び2を加える。 16 原判決82頁11行目の「数cm程度」を「数m程度」と改める。 17 原判決86頁19行目に掲げる証拠に丙A第90 15 原判決80頁23行目に掲げる証拠に乙A第20号証の1及び2を加える。 16 原判決82頁11行目の「数cm程度」を「数m程度」と改める。 17 原判決86頁19行目に掲げる証拠に丙A第90号証を加える。 - 7 -第3部争点及び当事者の主張第1章争点及び当事者の主張争点及び当事者の主張は、後記第2章から第10章までのとおり当事者双方の当審における主張を補充するほかは、原判決の「事実及び理由」中の第3部に記載のとおりであるからこれを引用する。 第2章一審被告国の責任に関する一審原告らの当審における主張第1 一審原告らの主張の骨子規制権限の不行使については、その権限を定めた法令の趣旨、目的に照らして判断がされなければならないし、そのような判断がされれば、原判決のように、万が一にも事故が起こらないようにするため、最新の科学技術水準に即応 するよう適時かつ適切に規制権限を行使することが求められるとの判断に至るべきことは明らかである。そして、その判断の際には、一定の調査義務が生じないかも検討されねばならない。 「津波評価技術による計算手法」は、既に平成14年には確立していた。そして、2008年推計と同等の試算は、長期評価の公表と津波評価技術の公表 がされた平成14年時点で既に可能であったのであり、同時点で予見可能性が認められなければならない。 次に、原判決は、防潮堤等の設置以外の措置(一審原告らが主張する①から③までの措置(①タービン建屋等の人の出入口、大物(機器)搬入口などに強度強化扉の二重扉等を設置すること、タービン建屋等の換気空調系ルーバーな どの外壁開口部の水密化等の対策を採ること、タービン建屋等の貫通部からの浸水防止等の対策を採ることにより、タービン建屋等自体 化扉の二重扉等を設置すること、タービン建屋等の換気空調系ルーバーな どの外壁開口部の水密化等の対策を採ること、タービン建屋等の貫通部からの浸水防止等の対策を採ることにより、タービン建屋等自体の防護措置を採ること、②非常用ディーゼル発電機及び配電盤等の重要機器が設置されている機械室への浸水防止等の対策を採ることによりタービン建屋等内の重要な安全機能を有する設備の部屋の防護措置を採ること、③既設の非常用ディーゼル発電機 (水冷式)を冷却するための海水系ポンプを津波から防護するための防水構造 - 8 -の建屋を設置し、電気系統の配線の貫通口を水密化する対策を採ること))を結果回避措置として選択すること自体は否定しておらず、その点では、法令の趣旨、目的を踏まえたものであると評価できる。もっとも、①から③までの措置の合理性について、本件では、原判決の判断にとどまらず、一審被告国は規制権限を行使し防潮堤等の設置以外の措置(水密化等の防護措置)を採らせる べきであった(同一審被告が規制権限を行使すれば一審被告東京電力においてかかる措置をとる蓋然性があった)ことが認定されなければならない。そして、本件では、①から③までの措置を講じることによって本件事故の結果を回避することが可能であった。 したがって、一審被告国は、本件事故について、国賠法1条1項の責任を負 う。以下、これらについて詳述する。 第2 本件で問題となる規制権限及びその行使 1 問題となる規制権限一審被告国が有していた主な具体的な規制権限は、電気事業法40条(平成24年法律第47号による改正前のもの。以下、同条及び39条について同 じ。)に基づく技術基準適合命令であり、事業用電気工作物が経済産業省令で定める技術基準に適合していないと認めるときは 平成24年法律第47号による改正前のもの。以下、同条及び39条について同 じ。)に基づく技術基準適合命令であり、事業用電気工作物が経済産業省令で定める技術基準に適合していないと認めるときは、電気事業者に対し、技術基準に適合するように事業用電気工作物の修理、改造、移転、使用の一時停止を命じ、使用の制限をすることができるというものである。そして、この技術基準を定めた経済産業省令が省令62号であり、その4条1項(防護措置等)で、 津波により損傷を受けるおそれがある場合は、防護施設の設置、基礎地盤の改良その他の適切な措置を講じなければならないと定め(甲A76、丙A13の2)、設置許可基準である平成13年安全設計審査指針(丙A14)の指針2. 第2項「安全機能を有する構築物、系統及び機器は、地震以外の想定される自然現象によって原子炉施設の安全性が損なわれない設計であること」と整合的 に解釈されていたところ、同指針はこれに続く部分で「重要度の特に高い安全 - 9 -機能を有する構築物、系統及び機器は、予想される自然現象のうち最も苛酷と考えられる条件、又は自然力に事故荷重を適切に組み合わせた場合を考慮した設計であること」とされていた(丙A14)。そして、この「自然現象のうち最も苛酷と考えられる条件」とは「対象となる自然現象に対応して、過去の記録の信頼性を考慮の上、少なくともこれを下回らない苛酷なものであって、か つ、統計的に妥当とみなされるもの」をいうと解釈されていた。これらのように、省令62号は想定される津波が原子炉の安全性を損なうおそれがある場合は、適切な防護措置等をとることを電気事業者に義務づけており、経済産業大臣は、電気事業者がこれを怠る時は、技術基準適合命令を発する権限を有していた。 したがって、 損なうおそれがある場合は、適切な防護措置等をとることを電気事業者に義務づけており、経済産業大臣は、電気事業者がこれを怠る時は、技術基準適合命令を発する権限を有していた。 したがって、規制権限を定めた法令の趣旨、目的に照らして、具体的な状況の下で、省令62号4条1項「津波により損傷を受けるおそれがある」か否か、すなわち、福島第一原発が津波により損傷を受けるおそれがあることを経済産業大臣において認識し又は認識し得たといえるかが本件における最大の争点である。 2 技術基準適合命令の趣旨原子力発電所の事故により放射性物質が漏えいした場合には、広範囲かつ長期間にわたって住民の生命や身体に影響を及ぼすおそれがあり、放射能による健康被害に対する不安を抱えながら生活することを余儀なくされるなどの重大な結果をもたらし得る。このように、一たび原子力発電所において事故が発生 すれば、その被害は非常に重大であり、取り返しのつかないものといえるから、原子力発電所の稼働に当たっては、具体的に想定される危険性のみならず、抽象的な危険性をも考慮した上で、広域・多数の国民の生命・健康・財産や環境が侵害されないための万全な安全対策の確保が求められるというべきであり、上記事故が万が一にも起こらないようにすることを目的とする炉規法の趣旨は、 原子炉の設置後の措置である技術基準適合命令についても及ぶというべきであ - 10 -る。 かかる趣旨・目的に照らせば、電気事業法40条が経済産業大臣に省令62号で定める技術基準に適合するように電気事業者に対し命令する権限を委任した趣旨は、原子力発電所から万が一にも災害が発生しないようにするために、適時かつ適切に安全規制の基準を作り、かつ適時かつ適切に監督権限を行使す ることによっ 電気事業者に対し命令する権限を委任した趣旨は、原子力発電所から万が一にも災害が発生しないようにするために、適時かつ適切に安全規制の基準を作り、かつ適時かつ適切に監督権限を行使す ることによって原子力発電所の原子炉の安全性の確保に万全を期しているところにあり、同法39条の規定に基づく省令制定権限及び同法40条の技術基準適合命令は、原子力の利用に伴い発生するおそれのある受容不能なリスクから国民の生命・健康・財産や環境に対する安全を確保することを主要な目的として、万が一にも事故が起こらないようにするため、技術の進歩や最新の地震、 津波等の知見に適合したものにすべく、適時にかつ適切に行使することが求められる。 第3 規制権限不行使の違法性の判断要件 1 規制権限不行使事案における国賠法の判断要件国又は地方公共団体の公務員による規制権限の不行使は、その規制権限を定 めた法令の趣旨、目的、被害法益の性質、重大性、予見可能性、結果回避可能性のほか、規制権限行使における専門性、裁量性などの諸事情を総合的に検討して、具体的な事情の下において、その不行使がその許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められる場合には、その不行使により被害を受けた者との関係において、国賠法1条1項の適用上違法となる。 2 本件の国賠法1条1項の違法の判断にあたって、①「国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違反すること」、②「当該公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認めうるような事情があること」が必要であるか否か 原判決は、上記の規制権限不行使事案における国賠法の判断要件に付加して、 - 11 -国賠法1条1項の違法は、上記①及 行為をしたと認めうるような事情があること」が必要であるか否か 原判決は、上記の規制権限不行使事案における国賠法の判断要件に付加して、 - 11 -国賠法1条1項の違法は、上記①及び②を要する旨判示しているところ、①は、従来、最高裁が、国会・国会議員の「立法不作為」に対する国賠請求のほか、課税処分や建築確認という「作為」に関する調査・審査の違法が争われた国賠請求で示したものであり、②は、過大に所得金額を認定した更正処分が後にその処分の取消訴訟において一部認容された後の慰謝料等の国賠請求で示したも のであり、いずれも本件とは事案を異にするものであって、本件には妥当しないものである。したがって、上記①及び②については、本件においては不要な要件である。 第4 省令62号4条1項該当性の判断及びその効果 1 事前警戒・予防の考え方の採否 原子力安全規制法制においては、警察規制と異なり、「危険があるのに誤って規制しない」ことを避ける必要があり、事前警戒・予防の考え方を徹底する必要がある。 そのため、具体的には、①典型的な警察規制においては、「危険がないのに誤って規制する」ことを避けるため一般経験則や確定的な科学的知見によって 具体的危険の存否を判断することとなるが、原子力安全規制法制においては、「危険があるのに誤って規制しない」ことを避ける必要があり、事前警戒・予防の考え方を徹底する必要がある(下山意見書、丁A8。)、②そのため、最新の科学・技術水準への即応が要請されることとなり、確立した科学的知見に限定されることなく生成途上の科学的知見(相当程度の科学的信頼性のある仮 説を含む。)を踏まえて抽象的危険の段階でも規制措置を講じることが求められる、③規制権限を行使する発動要件としての危険の程度に れることなく生成途上の科学的知見(相当程度の科学的信頼性のある仮 説を含む。)を踏まえて抽象的危険の段階でも規制措置を講じることが求められる、③規制権限を行使する発動要件としての危険の程度についても、「危険の切迫性」を求めることは制度趣旨に反することとなり、原発の安全性に対する合理的な疑いがある段階で、最新の科学・技術水準に準拠し、即応する結果回避措置をできる限り先取り的に講じることが求められる。 2 科学的知見の確立の程度(具体的危険の存在の要否) - 12 -原子炉施設の安全確保のための規制権限行使に関しては、伊方原発最高裁判決が明らかにした「深刻な災害が万が一にも起こらないようにする」という炉規法等の趣旨・目的に照らして当然に考慮すべき知見と評価されるだけの科学的な知見であれば十分であり、通説的見解として確立していることまでは要しない。 3 予見義務経済産業大臣に継続的な情報収集を踏まえた津波対策に関する予見義務があり、義務の懈怠の効果として、①義務が果たされていたであれば判明したであろう事項は、予見可能性の考慮要素となり、②義務懈怠の事情はそのまま違法性(結果回避可能性)判断の考慮要素にもなる。①について、予見可能性は、 経済産業大臣の規制権限不行使の違法を基礎づける一要素であるところ、これは法的な判断要素であるため、規範的要素として、現実に認識されていた事項だけでなく、認識することが可能であった事実があれば、これを加えることによって初めて法的責任の有無を判断することが可能となるからである。 4 省令62号4条1項「津波により損傷を受けるおそれ」が予見可能であった 場合の効果省令62号は想定される津波が原子炉の安全性を損なうおそれがある場合は、適切な防護措置等をとること 4 省令62号4条1項「津波により損傷を受けるおそれ」が予見可能であった 場合の効果省令62号は想定される津波が原子炉の安全性を損なうおそれがある場合は、適切な防護措置等をとることを電気事業者に義務づけており、経済産業大臣は、電気事業者がこれを怠る時は、技術基準適合命令を発する権限を有していた。 したがって、省令62号4条1項「津波により損傷を受けるおそれ」が予見可 能であることは、電気事業法40条の技術基準適合命令を発すべき要件である。 5 予見すべき事象本件事故における規制権限不行使の違法性を判断する際の一審被告国の予見可能性の対象は、主要建屋の敷地高であるO.P.+10mを超える津波の到来である。 6 予見可能性の程度 - 13 -規制権限を定めた法令の趣旨目的、被害法益の性質・その重大性、長期評価の信用性から判断すれば、抽象的なおそれであるにせよ「O.P.+10mを超える津波の到来」の予見可能性が認められるのならば、当然、技術基準適合命令を発しなければならず、予見可能性の程度云々を論ずべき余地は全くない。 第5 省令62号4条1項の「津波による損傷のおそれ」に関する予見についての 事情 1 長期評価の示した知見により「津波により損傷を生ずるおそれ」があるといえるか否か(1) 地震調査研究推進本部と長期評価の意義過去の地震の知見を集約し専門家の議論を経て将来の地震の長期的な予測 を取りまとめた公的判断が長期評価である。 長期評価は、政府の特別の機関として設置された推進本部が、約20名もの専門研究者らによる1年以上にわたる活発な議論を経て、当時の地震学・津波学の最新の知見に基づいて取りまとめたものであった。その議論の過程では、様々な意見が交換されたが、最終的に、「三 、約20名もの専門研究者らによる1年以上にわたる活発な議論を経て、当時の地震学・津波学の最新の知見に基づいて取りまとめたものであった。その議論の過程では、様々な意見が交換されたが、最終的に、「三陸沖北部から房総沖まで の海溝寄り」を一つの領域として評価すること及び明治三陸地震のような津波地震が三陸沖北部から房総沖の日本海溝寄りのどこでも発生しうることについて研究者らの見解が一致して(少なくとも積極的な異論はなく)取りまとめられたものであり、長期評価は科学的信頼性が認められるものであった。 (2) 慶長三陸地震、延宝房総沖地震について 海溝型分科会において、異論も含めての議論の末に、慶長三陸地震及び延宝房総沖地震が津波地震であることが確認された。 (3) 領域設定の合理性、領域を区別すべき南北の差異がないこと日本海溝寄りを一つの領域として区分することは合理的な判断である。 津波地震は付加体タイプの特殊な領域だけで生じるものではなく、その点 で領域を南北に区別すべき差異はない。 - 14 -(4) 発生領域・発生確率の信頼度について推進本部が、平成15年3月24日に公表した「プレートの沈み込みに伴う大地震に関する長期評価の信頼度について」(丙A36)において、「長期評価の見解」の「発生領域の評価の信頼度」及び「発生確率の評価の信頼度」が「C(やや低い)」とされているのは、明治三陸地震の震源域の位置 が南北については厳密に定まらないことによるものであって、津波地震が起きない、あるいは起きるかどうか曖昧であるということを意味するものではない。 (5) 中央防災会議及び専門家の見解ア中央防災会議 中央防災会議は、長期評価の地震学上の合理性を肯定した上で、財政的・時間的な要請から、 であるということを意味するものではない。 (5) 中央防災会議及び専門家の見解ア中央防災会議 中央防災会議は、長期評価の地震学上の合理性を肯定した上で、財政的・時間的な要請から、これを専門調査会の審議の対象から除外したに過ぎない。 イ佐竹の見解について佐竹は、慶長三陸地震の波源は千島海溝ではないか等の意見をもち、慶 長三陸地震及び延宝房総沖地震が津波地震であるという点について懐疑的な意見を述べており、海溝型分科会において自身の意見を述べている。しかし、佐竹は、最終的には同分科会に参加した地震学者の意見集約として、三つの津波地震の存在を確認し、長期評価の最終的な結論について異議を述べず、その結論に賛同をした。 ウ津村の意見について津村の長期評価の信頼性についての評価は、①自ら責任者として長期評価を取りまとめ公表した立場と矛盾するものであり、また、②地震地体構造論などの最新の知見に基づいて過去に縛られることなく将来の地震の想定が可能になっていたとの7省庁手引等が示す地震学上の到達を無視し、 ③長期評価の基礎とされた津波地震が海溝寄りで発生するという確立した - 15 -知見を無視し、④さらに海溝型分科会において日本海溝寄りで過去に3つの津波地震の存在が確認されたという事実も踏まえないものである。したがって、津村の長期評価の信頼性についての評価は、長期評価の論拠についての慎重な検討を経ないもので、そうした不十分な認識を下にして疑義を呈しているに過ぎないものであり、同人の意見は長期評価の信頼性を否 定するものとは到底いえない。 エ松澤の見解について松澤は、海溝型分科会における延宝房総沖地震等の歴史地震についての詳細な議論のプロセスを把握していなかったために、同分 の信頼性を否 定するものとは到底いえない。 エ松澤の見解について松澤は、海溝型分科会における延宝房総沖地震等の歴史地震についての詳細な議論のプロセスを把握していなかったために、同分科会が延宝房総沖地震を津波地震と判断するに至った論拠を十分に把握できなかった。そ して、松澤は、日本海溝の最南部でも津波地震の発生があったという地震学上の事実を踏まえないことから、海溝軸付近の未固結の堆積物の存在による津波地震の発生メカニズムの基礎づけ及びこのメカニズム論を前提として、日本海溝の南北において津波地震の発生可能性の差異を基礎づけるという仮説に拘泥しているに過ぎないものである。しかし、松澤自身が自 認するように津波地震の発生メカニズム自体は未解明なものであるし、またこの仮説は延宝房総沖地震の存在によって否定される関係に立つものである。したがって、全体として、松澤の意見及び松澤・内田論文(丙A38)の存在は、長期評価の信頼性を否定するものとはいえない。 オ谷岡の意見について 谷岡は、佐竹との共同論文(谷岡・佐竹論文)である「ホルスト・グラベン構造」説を挙げて意見を主張するところ、同説は津波地震の発生メカニズムに関する一つの仮説に過ぎないこと及び海溝型分科会において延宝房総沖地震が津波地震とされたことによって採用されなかったこと、谷岡が地震調査委員会の委員として長期評価の判断に異議を述べていないこと に照らすと、谷岡の意見は、長期評価の信頼性を否定するものとは到底言 - 16 -えないものである。 カ笠原の意見について笠原は、地震調査委員会の委員として「長期評価」を支持していたのであるから、長期評価の公表から10年以上経った後に一審被告国の要請に応じて作成された、長期評価に異を唱え カ笠原の意見について笠原は、地震調査委員会の委員として「長期評価」を支持していたのであるから、長期評価の公表から10年以上経った後に一審被告国の要請に応じて作成された、長期評価に異を唱える内容の笠原の意見書(丙A13 4)は中立性を欠き信頼性を低下させるものであり、同人の意見は採用できない。また、谷岡とともに関与した中央防災会議・日本海溝等専門調査会の北海道ワーキンググループは、「長期評価」について地震学上の合理性の検証を目的としたものではなく、現に、その検証を行ってその結果を取りまとめることをしていない。 キ今村の意見について今村は、津波工学の専門家であり、理学としての地震学上の専門的な知見を有するものではないこと、長期評価の津波地震を想定したGPS波浪計設置の合理性を承認していること、同人の意見において、地震地体構造論において陸寄りと海溝寄りを区別しない見解が定説であったかのように 述べているのは不正確であること、津波地震が海溝寄りで発生するという確立した知見が長期評価の論拠となっていることの理解が前提となっていないこと、延宝房総沖地震についての海溝型分科会の結論を正しく理解していないこと、プレートの固着の強弱と堆積物の差異を理由として福島沖・茨城沖では津波地震が起こらないとする指摘に理由がないことからす れば、同人の意見は、長期評価の信頼性を否定するに足りないものである。 さらに、今村は、津波防護措置が不要であると進言した当事者であり、中立性に欠けるのであって、本件の訴訟において、中立的な第三者専門家として意見を述べる適格性に疑義があるものといわざるを得ない。 ク首藤の意見について 首藤は津波工学の専門家であり、理学としての地震学上の専門的な知見 - 17 -を 者専門家として意見を述べる適格性に疑義があるものといわざるを得ない。 ク首藤の意見について 首藤は津波工学の専門家であり、理学としての地震学上の専門的な知見 - 17 -を有するものではなく、同人の意見は長期評価の信頼性を否定するに足りないものである。 (6) 平成9年に策定された4省庁報告書(甲A16、丙A第30の1)及び7省庁手引(甲A15。以下、4省庁報告書と併せて「4省庁報告書等」という。)について 4省庁報告書等が「想定される最大規模の地震・津波」対策を求めており、これを受けて一審被告国も認識していた平成10年3月頃の一審被告東京電力作成に係る「太平洋沿岸部地震津波防災計画手法調査に対する発電所の安全性について」(甲A134)では福島県沖に津波地震が想定されていた。 (7) 平成14年8月以降の知見・経緯 一審被告国は、平成14年8月以降に何らの調査・検討も行っていないから、同月以降、長期評価を否定する知見があったとしても、同一審被告がそれを検討してない以上、同一審被告の主張は無意味である。 ア垣見マップ(丙A155)について「垣見マップ」は、雑誌「地震」に平成14年4月5日に「投稿(Re ceived)」されたものであり、同年7月の長期評価の策定・公表前の知見である。したがって、津波地震の知見の進展が得られる以前の古い知見に基づく「垣見マップ」の領域区分が、津波地震の知見の進展を踏まえた長期評価の領域区分と異なるとしても、そのことをもって長期評価の領域区分の信頼性を減殺することにはならない。 イ鶴論文(鶴ほか「日本海溝域におけるプレート境界の弧沿い構造変化:プレート間カップリングの意味」(丙A144の1・2))について鶴論文は、平成14年1 減殺することにはならない。 イ鶴論文(鶴ほか「日本海溝域におけるプレート境界の弧沿い構造変化:プレート間カップリングの意味」(丙A144の1・2))について鶴論文は、平成14年12月に公表されたものであり、鶴らの見解は、南部では北部と異なり海溝軸から少し入ったところのプレート境界間に付加体が一様に分布していることにより固着(カップリング)が弱くなって おり南北で違いが出るという仮説に基づくものであった。しかし、このよ - 18 -うな見解は、同年の「長期評価」策定当時における仮説に過ぎず(甲A104)、しかも、1677年に延宝房総沖地震という日本海溝寄りの津波地震が現に発生しているという客観的事実を説明できないという点で、およそ採用しえない仮説であった。 ウ松澤・内田論文(丙A38)について 松澤•内田論文は、最新の調査結果等を踏まえれば福島県沖で低周波地震が発生しても津波地震に至る可能性が低いことを指摘しているが、津波地震の発生メカニズムが解明の途上であることを示すものではあるものの、他方で、津波地震が海溝軸付近で発生する巨大な低周波地震であり、かつ日本海溝の南北を通じて海溝軸付近において低周波地震の発生が確認され ているという点において、津波地震が日本海溝の南北を通じて発生する可能性を基礎づけるものと言える。津波地震が海溝寄りの巨大な低周波地震であるとの知見は、平成14年の長期評価以前に確立しており、長期評価策定の基礎になっていた(甲A86、103、和達淸夫論文(甲A110)、深尾・神定論文(甲A111の1・2))。 一審被告国は、平成14年当時、津波地震は特殊な海底構造でのみ発生するとの考え方が支配的であったと主張する。しかし、ペルー地震(昭和35年)、ニカラグア 論文(甲A111の1・2))。 一審被告国は、平成14年当時、津波地震は特殊な海底構造でのみ発生するとの考え方が支配的であったと主張する。しかし、ペルー地震(昭和35年)、ニカラグア地震(平成4年)など、海溝付近に付加体が形成されていない領域でも津波地震が発生しているとの知見が、平成14年当時すでに明らかになっていた(甲A112、188、189、丙A293)。 このように、日本海溝でも、また世界的に見ても、津波地震は海溝寄りの付加体のない領域でも発生していることが長期評価策定当時、明らかになっていたのであり、同一審被告の主張はおよそ事実に反する。 エ長期評価公表後の大竹政和(以下「大竹」という。)名誉教授の意見について 大竹は、海溝型分科会のメンバーではなく、議論の経過を認識しないま - 19 -まに意見したものに過ぎず、それは一研究者の意見にとどまるのであるから、推進本部・地震調査委員会という行政機関として、地震学上の知見を網羅的に収集し、かつ最先端の地震学者による集団的な討議を踏まえて最大公約数的な結論を取りまとめた公文書である長期評価と対比されるべきものではない。 オ石橋論文(平成15年に公表された石橋「史料地震学で探る1677年延宝房総沖津波地震」(丙A40))について長期評価が延宝房総沖地震を取り込んだことについて石橋論文において異論が述べられているが、海溝型分科会で異論が取り上げられ、検討されたうえで根拠をもって退けられ、延宝房総沖地震が日本海溝寄りの津波地 震であるとの結論に達し、長期評価が策定されたものであるから、上記異論は織込み済みものである。 カ都司論文(平成15年に公表された都司「慶長16(1611)年三陸津波の特異性」(丙A39))について るとの結論に達し、長期評価が策定されたものであるから、上記異論は織込み済みものである。 カ都司論文(平成15年に公表された都司「慶長16(1611)年三陸津波の特異性」(丙A39))について都司は、平成7年の論文で、1611年慶長三陸地震について海底地滑 りによる可能性を既に指摘しており(甲A172)、この見解は平成14年の長期評価の議論の前提となっていたといえる。そして、同人は、長期評価策定を行う海溝型分科会の委員として参加していたところ、長期評価の取りまとめにあたっては、上記のような見解は示しておらず、慶長三陸津波を津波地震によるものと扱うことに同意している。 また、長期評価は津波地震を、「断層が通常よりゆっくりとずれて、人が感じる揺れが小さくても、発生する津波の規模が大きくなる地震のことである。この報告書では、Mtの値がMの値に比べ0.5以上大きい(阿部、1988参照)か、津波による顕著な災害が記録されているにも係わらず顕著な震害が記録されていないものについて津波地震として扱うこと にした」と定義しており(甲A131(丙A33))、津波地震の意義に - 20 -ついて、特定の原因やメカニズム(例えば海底地すべりかどうか)を前提としていない。したがって、都司の上記見解は長期評価と異なる考え方ではない(甲A86、103、104)。 キ今村•佐竹•都司論文等(今村•佐竹•都司ら「延宝房総沖地震津波の千葉県沿岸〜福島県沿岸での痕跡高調査」(平成19年)(甲A116)、推 進本部「日本の地震活動」(第2版)(平成21年3月)(丙A142))について今村•佐竹•都司論文では、1677年の津波についての具体的な調査とシミュレーションにより延宝房総沖(日本海溝より南部)で津波地震が起き (第2版)(平成21年3月)(丙A142))について今村•佐竹•都司論文では、1677年の津波についての具体的な調査とシミュレーションにより延宝房総沖(日本海溝より南部)で津波地震が起きたことを確認しているし、「日本の地震活動」(第2版)における記述 の点は、すでに平成11(1999)年4月1日に発行された旧版「日本の地震活動-被害地震から見た地域別の特徴-<追補版>」以来の記述が、平成14(2002)年の長期評価の策定後も、編集の怠りによってそのまま残されたものに過ぎない。 ク全国を概観した地震動予測地図(丙A230の1から3まで)について 「全国を概観した地震動予測地図」は地震動の評価が目的であり津波の影響は考慮されていない。また、「震源断層を特定した地震動予測地図」は、そもそも専ら地震動の評価が対象となっており津波の影響は検討対象とはなっていないものであって、かつ信頼性の高い地震想定を網羅したものでもないのであり、長期評価の津波地震が同地図の対象に選抜さ れなかったことを理由として、推進本部自身が長期評価の信頼性は低いと判断していたということにはならない。 ケ平成21年の長期評価の改訂について平成14年7月の長期評価公表後、三陸沖から房総沖にかけての日本海溝寄りの津波地震の予測については、その後、複数回の見直しの機会があ ったものの、長期評価において、津波地震の評価の変更は一切されていな - 21 -い。 コ第4期津波評価部会について第4期津波評価部会においては、決定論を前提として日本海溝寄りの津波地震の発生可能性を初めて詳細に検討した結果として、「海溝寄りのプレート間大地震(津波地震)については、北部と南部を分割して、各活動 域内のどこでも津波地震は発 論を前提として日本海溝寄りの津波地震の発生可能性を初めて詳細に検討した結果として、「海溝寄りのプレート間大地震(津波地震)については、北部と南部を分割して、各活動 域内のどこでも津波地震は発生する」との考え方が異論なく確認された。 この第4期津波評価部会の結論は、長期評価の判断のうちの核心ともいうべき、「(津波)地震の発生領域」についての「三陸沖北部から房総沖の日本海溝寄りのどこでもM8クラスのプレート間地震(津波地震)」が起こりうるという判断と完全に合致する。また、上記結論は、想定される地 震の規模についても、長期評価の想定に(過小評価の可能性は残しつつも)十分に合理性があることを確認している。 2 津波評価技術によって敷地高を超える津波が想定されないことは「津波による損傷のおそれ」を否定する事情になるか(1) 津波評価技術の概要 津波評価技術は、波源の不確定性や津波推計計算上の誤差・ばらつきに対する対応として、パラメータスタディを中心として津波シミュレーションの手法の体系化を主とするものであった。 (2) 津波評価技術策定の目的土木学会・津波評価部会の構成メンバーに多数の電力関係者が含まれるこ と、資金はすべて原子力事業者が負担したこと、事務局も原子力事業者が担ったこと、審議過程が公開されず批判的な見解にさらされることもなかったことなど、全て電力事業者側の意向に沿うものであった。そうであるからこそ、津波評価技術は、波源の調査、すなわち波源の規模、位置等を検討範囲から除外し、波源の不確定性や津波推計計算上の誤差・ばらつきに対する対 応を行うことのみをその目的としたもので、電力事業者側の意向に沿うもの - 22 -であった。 (3) 第1期津波評価部会での検討・議論第1期 計算上の誤差・ばらつきに対する対 応を行うことのみをその目的としたもので、電力事業者側の意向に沿うもの - 22 -であった。 (3) 第1期津波評価部会での検討・議論第1期津波評価部会では、日本海溝寄りの津波地震の発生可能性については検討・議論がされなかった。 (4) 津波評価技術と想定最大津波 津波評価技術がパラメータスタディなどの手法を用いることによって想定最大津波を評価したものとはいえない。 第6 省令62号4条1項の「津波により損傷を生ずるおそれ」が認められる時期及び一審被告国において講ずべきであった対応 1 予見可能性が認められ、電気事業法40条に定める技術基準適合命令を発す べきであった時期長期評価の示した知見に基づき推計すれば、平成14年末には技術基準適合命令を発することが可能であった。一審被告東京電力は、溢水勉強会での検討状況として保安院から指摘されて気付くようなものではなく当然の結果として機能を失うものと認識していたのであり(甲A31)、津波評価技術による計 算手法は既に同年に確立していたのであるから、予見可能性の時期は同年である。 そして、平成14年に、長期評価(地震の発生可能性の評価)と津波評価技術(その地震による津波推計手法)が相次いで公表されたことにより、遅くとも同年末までには、福島第一原発の敷地高を上回る津波の襲来を予見すること が可能となった。すなわち、一審被告東京電力は、平成20年に、関連会社である東電設計株式会社(以下「東電設計」という。)に依頼し、「三陸沖北部から房総沖の海溝寄り」の領域のどこでも津波地震が発生しうるとの長期評価の知見に基づき、明治三陸地震の波源モデル(長期評価で引用されている谷岡・佐竹論文に示された断層モデル)を 依頼し、「三陸沖北部から房総沖の海溝寄り」の領域のどこでも津波地震が発生しうるとの長期評価の知見に基づき、明治三陸地震の波源モデル(長期評価で引用されている谷岡・佐竹論文に示された断層モデル)を福島県沖の日本海溝寄りに適用した上 で津波評価技術に示された手法を用いて津波高の推計を行い、福島第一原発の - 23 -敷地南側で最大でO.P.+15.7mとなるとの推計結果(2008年推計)を得ていた(甲A141)。これは、まさに、長期評価と津波評価技術をあわせて適用した結果であり、一審被告東京電力であれ同国であれ、推計計算に一定の時間を要するとしても(平成20年に東電設計に推計を委託したときでも推計計算に要した期間は約3か月であった。)、遅くとも平成14年末までに は、2008年推計と同様の結果を得られたといえる。 これに対し、原判決は、予見可能性を平成18年において認めているところ、一審被告東京電力は、溢水勉強会での検討状況として、建屋敷地が浸水すると建屋開口部から水が浸入し電源設備などが水没し機能を喪失するという結果となることは、保安院から指摘されて気付くような知見ではなく当然の結果とし て機能を失うものと認識していた(甲A31)のであるから、予見可能性の時期を、原判決のように平成18年とすること、ましてや平成20年と認めることは、明らかに失当である。 2 予見可能である場合に講ずべき対応として、技術基準適合命令において、防護措置として具体的にいかなる措置をとるべきかの特定が必要か 省令62号4条1項は構造物に要求される性能を規定する性能規定であり、原子力設備において「万が一にも」事故が生じないようにするための規定であることに鑑みれば、技術基準適合命令において津波対策・措置の特定は可能な範囲内 構造物に要求される性能を規定する性能規定であり、原子力設備において「万が一にも」事故が生じないようにするための規定であることに鑑みれば、技術基準適合命令において津波対策・措置の特定は可能な範囲内で行えばよい。 第7 結果回避措置 1 「津波による損傷のおそれ」を防ぐために必要な措置としての結果回避措置の具体的内容防潮堤の設置、重要機器室の水密化、タービン建屋等の水密化が講じられるべきである。このうち、とくに時間を要する防潮堤の設置に先立ち、重要機器室の水密化等の策が優先して講じられる必要がある。 2 「ドライサイト」が本件事故前の敷地内浸水への対策の基本であったか - 24 -「ドライサイト」は、米国原子力規制委員会において敷地内浸水を防ぐため、敷地を想定浸水高より高く確保する策のことである。これができない場合には、次善の策として敷地内浸水を前提に水密化等の策を講じる必要があった。一審被告国は、ドライサイトコンセプトが本件事故前の原子力発電所に関する安全の指針であった旨主張するが、そもそもドライサイトコンセプトが本件事故前 の原子力発電所に関する安全確保のための諸法令において明示されていたことを示す証拠はない。 そして、敷地内浸水を前提とした水密化策では安全上問題があるというならば、敷地高を超える津波到来が予想できた時点で、技術基準適合命令により防潮堤・防波堤完成まで一時停止命令を発するべきであった。 3 建屋及び機械設備の水密化は本件事故以前に確立された知見であったか建屋及び機械設備の水密化は、本件事故以前から、確立された知見であった。 水密化技術は、確立して安定的な技術であった。想定される水圧に応じて設計が可能であり、パナマ運河内の扉や潜水艦など、主要建屋の敷地に津波が到 水密化は、本件事故以前から、確立された知見であった。 水密化技術は、確立して安定的な技術であった。想定される水圧に応じて設計が可能であり、パナマ運河内の扉や潜水艦など、主要建屋の敷地に津波が到来して浸水する場合よりもさらに過酷と考えられる条件下でも水圧に耐えうる。 そして、福島第一原発においては、平成3年10月の溢水事故を機に、原子炉建屋最地下階の残留熱除去系機器室等の入口扉、原子炉建屋1階の電線管貫通部とランチハット、非常用D/G(非常用ディーゼル発電機)の設置された建屋の出入口扉の水密化が行われ(丁A47から50まで)、平成18年5月の第3回溢水勉強会において建物の水密化が議題となるなどしている。 4 防護策は単一的なものでよいか原判決の発想は、複数ある選択肢のうちから単一的な防護策を選択すれば良いとの誤った前提を勝手に定立し、次の①から③までの措置(①タービン建屋等の人の出入口、大物(機器)搬入口などに強度強化扉の二重扉等を設置すること、タービン建屋等の換気空調系ルーバーなどの外壁開口部の水密化等の対 策を採ること、タービン建屋等の貫通部からの浸水防止等の対策を採ることに - 25 -より、タービン建屋等自体の防護措置を採ること、②非常用ディーゼル発電機及び配電盤等の重要機器が設置されている機械室への浸水防止等の対策を採ることによりタービン建屋等内の重要な安全機能を有する設備の部屋の防護措置を採ること、③既設の非常用ディーゼル発電機(水冷式)を冷却するための海水系ポンプを津波から防護するための防水構造の建屋を設置し、電気系統の配 線の貫通口を水密化する対策)の着手に時間を要してもやむを得ないとの結論を安易に導いているが、多重防護、深層防護という国際的にも確立されている知見及び一審被告国の の建屋を設置し、電気系統の配 線の貫通口を水密化する対策)の着手に時間を要してもやむを得ないとの結論を安易に導いているが、多重防護、深層防護という国際的にも確立されている知見及び一審被告国の選択肢としての一時停止命令(電気事業法40条)の存在からすれば、津波対策として防潮堤の設置等も十分に考えられるからといって、上記①から③までの措置に着手することが遅くなってもやむを得ないなど ということはない(単一の防護策では不十分である)。 5 「防潮堤の設置」に先立ち、又はその設置と共に、防護の多重化のために建屋の水密化が求められるか一審被告国は、敷地高を超える津波が予見された場合に導かれる対策は、防潮堤・防波堤等の設置によってドライサイトを維持するというものに限られる と主張しているが、保安院が一審被告東京電力に対し、平成18年耐震バックチェック指示において長期評価の考慮とそれを踏まえた津波推計を指示していれば、その指示から1年程度のうち、又はどんなに遅くとも平成20年11月までには、長期評価等の地震想定によって福島第一原発の主要建屋敷地を超える津波の態様を具体的に認識し、福島第一原発がウェットサイトに転化してい る事実を認識することができたといえること、建屋の水密化は代表的な防護措置であること、事後的な防潮堤の設置には解決すべき技術的課題も大きく施工期間はより長期とならざるを得ないこと、防潮堤の防護機能にも限界があり防護の多重化を図る必要があること、東海第二発電所においては本件事故の前から建屋の水密化が検討・実施されていたこと、溢水勉強会及び耐震バックチェ ック対応に際し、長期評価の津波を想定した対策として、一審被告東京電力の - 26 -土木調査グループ等において、防潮堤以外の水密化等の対策が現に いたこと、溢水勉強会及び耐震バックチェ ック対応に際し、長期評価の津波を想定した対策として、一審被告東京電力の - 26 -土木調査グループ等において、防潮堤以外の水密化等の対策が現に検討された実例があり、また保安院との折衝においても防潮堤以外の水密化による防護措置があり得ることが確認されていること、原子力規制委員会の平成25年の新規制基準も重要な安全機能を有する施設の隔離(内郭防護)を要求していることからすれば、まずは短期で施工可能な「重要機器室の水密化」及び「タービ ン建屋等の水密化」の措置が講じられるべきであり、それにとどまらず、その後に完成する「防潮堤の設置」によって、更に多重の防護を確保するべきである。 第8 結果回避可能性又は因果関係 1 結果回避可能性又は因果関係 (1) 時間的余裕を検討する際の起点(予見可能性が認められる時期)及び本件津波までの時間的余裕原判決は、一審被告国が規制権限を行使すべき時期の起点が平成18年であるとしているが、平成14年に、長期評価(地震の発生可能性の評価)と津波評価技術(その地震による津波推計手法)が相次いで公表されたことに より、遅くとも同年末までには、福島第一原発の敷地高を上回る津波の襲来を予見することが可能となったのであるから、同一審被告に予見可能性が認められる時期は同年末である。この時点から平成23年3月の本件津波の襲来までには、8年3か月もの時間的な余裕がある。 (2) 防護措置実施までに必要な時間 前記第7、4の①から③までの措置について、原判決は「地元の了解」や「工事の設計」の時間が必要だとするが、①から③までの措置について「地元の了解」は不要であり、「工事の設計」は「許認可」の時間の一部である。 日本原子力発電株 について、原判決は「地元の了解」や「工事の設計」の時間が必要だとするが、①から③までの措置について「地元の了解」は不要であり、「工事の設計」は「許認可」の時間の一部である。 日本原子力発電株式会社の東海第二発電所では1年10か月で盛土工事とともに建屋の水密化も行っている。 福島地方裁判所の判決でも認められているとおり、平成14年末までに規 - 27 -制権限を行使すれば、本件津波までに上記①から③までの措置が完了したことは明らかである。 具体的には、今村証言(丙A293)、渡辺意見書(甲A143)、東海第二発電所等の施工例からすれば「重要機器室の水密化」及び「タービン建屋等の水密化」の工事期間は1年程度を見れば十分であった。 (3) 本件事故前後での緊急性の変化「万が一にも起こらないように」しなければならない原発災害対策の緊急性は、本件事故前後で変わるものではない。現に本件事故前にも、東海第二発電所では長期評価により想定できる津波を前提に建屋水密化工事が平成21年9月に完了し(工事施工期間約10か月)、日本原子力発電株式会社の 敦賀発電所1号機は建屋水密化工事が平成21年9月に(工事施工期間約9か月)、同2号機は同年6月に(工事施工期間6か月)それぞれ完了している。 (4) 想定できる津波を前提とした「重要機器室の水密化」及び「タービン建屋等の水密化」によって、本件津波に対しても非常用電源設備等の被水を回避 することが可能であったか本件事故の原因は、原子炉建屋に隣接するタービン建屋等の内部に設置されていた非常用電源設備等(非常用ディーゼル発電機、配電盤等)が被水し機能喪失したことによる全交流電源喪失(SBO)であるところ、建屋の駆体部分(外壁)は本件津波に耐えたこと、主 屋等の内部に設置されていた非常用電源設備等(非常用ディーゼル発電機、配電盤等)が被水し機能喪失したことによる全交流電源喪失(SBO)であるところ、建屋の駆体部分(外壁)は本件津波に耐えたこと、主要な浸水経路となった「大物搬 入口」、「入退域ゲート」は津波対策が全く講じられていなかったにも関わらず相当程度の防護機能を果たしており水密化による防護措置が講じられていれば十分な防護機能(1階への浸水防止)が期待できたこと、地下階への直接の浸水経路となったと想定される「給気ルーバー」は津波による損傷が見られず水密化措置を講じていれば全体として建屋内部への浸水を防ぐこと が十分に期待できたこと、仮に一部において建屋内部への浸水が生じたとし - 28 -ても建屋内部間仕切壁の防護機能を踏まえると水密扉の設置等の水密化措置を講じていれば配電盤等の被水を防止できたことからすれば、「重要機器室の水密化」及び「タービン建屋等の水密化」によって、本件津波に対しても非常用電源設備等の被水を回避することが可能であった。すなわち、本件事故の際、共用プール建屋周辺では少なくとも約32cmの浸水深が観測され、 建屋東側の出入り口部分、東側側面の通風口から内部への浸水が生じたが、1階部分では出入口付近で約20cm、西側壁面近くで約14cmの浸水深に留まったこともあり、共用プール建屋1階に設置されていた空冷式の非常用ディーゼル発電機2台(2号機B系及び4号機B系)は、いずれもその機能を維持した。しかし、地下1階にあった配電盤が被水して機能喪失したこ とにより、空冷式の非常用ディーゼル発電機による電源を利用することができなくなった。したがって、共用プール建屋やその内部についても水密化をしておけば本件事故を防ぐことができた可能性はより高まったも とにより、空冷式の非常用ディーゼル発電機による電源を利用することができなくなった。したがって、共用プール建屋やその内部についても水密化をしておけば本件事故を防ぐことができた可能性はより高まったものと認められる。 なお、一審被告国は、一審原告らの主張を「建屋等の全部の水密化」と整 理しているが誤りである。 (5) 2008年推計で想定できる津波と本件津波の差異の程度2008年推計で想定できる津波によっても、場所によって違いはあるものの、最大で5mを超える浸水深が予測されていたこと、本件津波の東側からの海水の遡上による影響が限定的なものであったことからすれば、浸水深 及びそれによって推定される津波の動水圧について、上記想定できる津波と本件津波の間に結果回避可能性を否定するほどの大きな差異があるとはいえない。 (6) 小括平成20年以前に現に実施されていた水密化の措置を踏まえれば、平成1 9年9月、あるいはどんなに遅くとも平成20年11月までに経済産業大臣 - 29 -が技術基準適合命令を発していれば、一審被告東京電力は、主要建屋や重要機器室の水密化の具体的な措置として、①タービン建屋(T/B)の開口部(ルーバー等)への防潮板又は防潮壁の設置、②タービン建屋の扉の水密化、③タービン建屋内の壁の貫通部(配管や電気ケーブル等)の止水処理、④機器ハッチ(柏崎刈羽原子力発電所と異なり建屋外にある)に対する止水処理 等を実施した蓋然性が高い。同一審被告が上記の水密化を実施したであろうと仮定することは、本件事故後、同一審被告によって、柏崎刈羽原子力発電所における敷地に遡上する津波の対策として、①原子炉建屋とタービン建屋の開口部(ルーバー等)の防潮板又は防潮壁の設置、②原子炉建屋とタービン建屋の扉の水密 後、同一審被告によって、柏崎刈羽原子力発電所における敷地に遡上する津波の対策として、①原子炉建屋とタービン建屋の開口部(ルーバー等)の防潮板又は防潮壁の設置、②原子炉建屋とタービン建屋の扉の水密化、③原子炉建屋内とタービン建屋内の壁の貫通部(配管 や電気ケーブル等)の止水処理が行われていることからも、十分な根拠がある。これらの措置について、同一審被告は、主要建屋のある敷地に津波が遡上することを前提とした津波対策の必要性を認識した後、特段の時間も要せず、速やかにかつ自然に発想し、実施している。したがって、経済産業大臣から技術基準適合命令がなされれば、本件事故前の福島第一原発においても、 主要建屋の敷地に遡上する津波の対策として、速やかに上記の具体的措置が講じられた蓋然性が高いといえる。 2 防護措置を実施したとしても、本件津波による事故を回避できなかったか(1) 結果回避措置を講じることによって現実に到来した本件津波による事故を防ぐことができたことの立証の程度 原判決は、防護措置を実施したとしても「本件事故の発生を防止することができたと直ちに認めることはできない」というだけで結果回避可能性(又は因果関係)を否定するようであるが、結果回避可能性(又は因果関係)があると言えるには「結果を回避できた可能性があった」だけで十分である。 (2) 想定されるべきであった津波 想定されるべきであった津波は、2008年推計により、次のとおりであ - 30 -る。 ① 浸水深は、敷地南側で5.7m、共用プール立地点で5m以上、4号機立地点で2.6m。 ② 波圧は、共用プール建屋や敷地南側では150kN/㎡を超える。 ③ 津波の流況(流れの方向)は、南北方向。 (3) 想定されるべきであった津波と 点で5m以上、4号機立地点で2.6m。 ② 波圧は、共用プール建屋や敷地南側では150kN/㎡を超える。 ③ 津波の流況(流れの方向)は、南北方向。 (3) 想定されるべきであった津波と本件津波との間に有意な差異があるか想定されるべきであった津波と本件津波の異同の検討に際して、地震のメカニズムと規模(マグニチュード、断層領域、すべり量)の差異を強調する一審被告国の主張及び原判決の認定には理由がない。 実際にも、想定されるべきであった津波による浸水深は敷地南側で本件津 波の浸水深5m程度と大きく異なるものではなかった。むしろ想定されるべきであった津波に基づいて推定可能だった動水圧は、本件事故の大きな原因となった1号機タービン建屋東側前面における動水圧を大きく上回るものであった。他方で東側からの遡上する流れは、その影響をもっとも受けた1号機周辺においても限定的である。 想定されるべきであった津波と本件津波との間には、浸水深、波圧及び流況の対比において、結果回避可能性を否定する有意な差はない。 加えて、東電設計は、長期評価の想定する津波に対する防潮堤の設置について試算するに際し、津波がいったん防潮堤によって堰き止められるとそこで堰き止められた津波が周囲に流れることになり、その結果、1号機から4 号機までの主要建屋の東側周辺の津波の高さがO.P.+10mを超える、すなわち敷地東側からも主要建屋敷地に遡上することになる可能性を否定することができないとして、津波の想定のシミュレーションでは、まずは敷地東側も含めて主要建屋敷地前面に鉛直壁を仮定している(乙A20の1)。 このとおり、東電設計の試算にしたがって長期評価の想定する津波に対する 防潮堤の設置を検討する場合、東側からの津波流入について 側も含めて主要建屋敷地前面に鉛直壁を仮定している(乙A20の1)。 このとおり、東電設計の試算にしたがって長期評価の想定する津波に対する 防潮堤の設置を検討する場合、東側からの津波流入についても流入津波対策 - 31 -として検討され、対応がなされていた可能性が高い。その場合、本件津波による敷地高を超える津波流入に際しても、当該対応は一定の効果を有することが明らかである。 また、長期評価を前提に、経済産業大臣が技術基準適合命令を発した場合、一審被告東京電力としては、速やかに、本件敷地の東側からも津波が遡上し ないよう、適切な防潮堤等を設置する措置を講じ、想定される遡上波が本件敷地に到達することを防止する必要があったというべきであり、その実施を妨げる事情もうかがわれず、それが実施された蓋然性が高いということができる。津波に関する知見が進化し、貞観津波の知見等、最新の知見を踏まえた対応を同一審被告に講じさせるべきであるし、この貞観津波を想定した場 合、本件敷地の東側からの津波流入も当然に前提とされたものである。 (4) 原発構造物の安全裕度本件事故前において、原発構造物の安全裕度は3であった。このことは、平成15年4月の時点において、一審被告東京電力を中核とする電事連と保安院の間で確認されている。 (5) 「重要機器室水密化」及び「タービン建屋等の水密化」により本件事故が回避できたか水密化策が講じられていなかった結果の本件事故時の状況に照らし、最大でO.P.+15m程度の津波高さとなる2008年推計で想定できる津波を前提とし、かつ「安全上の余裕」を確保した上で、「重要機器室の水密化」 及び「タービン建屋等の水密化」を講じていれば、本件津波に対しても非常用電源設備等の被水を回避するこ 計で想定できる津波を前提とし、かつ「安全上の余裕」を確保した上で、「重要機器室の水密化」 及び「タービン建屋等の水密化」を講じていれば、本件津波に対しても非常用電源設備等の被水を回避することが可能であった。すなわち、建屋の水密化による防護措置が講じられていれば、1階への浸水を防ぐことができたし、仮に浸水した場合も、配電盤等の重要機器が設置された部屋について水密扉の設置等の水密化措置が講じられていれば、重要機器の被水を防止すること は十分に可能であったといえる。そして、経済産業大臣により技術基準適合 - 32 -命令がなされていれば、一審被告東京電力は本件水密化の措置、すなわち、①タービン建屋の開口部(ルーバー等)への防潮板又は防潮壁の設置、②タービン建屋の扉の水密化、③タービン建屋内の壁の貫通部(配管や電気ケーブル等)の止水処理、④機器ハッチに対する止水処理等を、一律の浸水深の想定(波圧の検討も含む)にもとづき、十分な裕度をもって実施したはずで ある。その結果、本件津波の建屋内への浸水を防げた蓋然性が高く、漂流物の衝突等により万が一建屋に一部浸水したとしても、さらに重要機器室の水密化によって浸水を阻むという多層的な津波対策となっているのであるから、電源設備への浸水、それによる全交流電源喪失の事態を防ぐことができた高度の蓋然性がある。そして、重要機器室及びタービン建屋等の水密化の設 計・工事については、どんなにかかっても2年程度の期間で済む。 したがって、経済産業大臣が平成19年9月、あるいはどんなに遅くとも平成20年中に技術基準適合命令を発していれば、本件事故を回避することができたと判断することには合理性がある。 第9 国賠法上違法であるかの判断にあたって求められるその他の事情 平成1 平成20年中に技術基準適合命令を発していれば、本件事故を回避することができたと判断することには合理性がある。 第9 国賠法上違法であるかの判断にあたって求められるその他の事情 平成14年の長期評価公表後、本件事故までの間に一審被告国において規制権限行使を検討したか否かについては次のとおりである。 1 長期評価を確率論的安全評価により取り入れるという一審被告東京電力の方針について一審被告東京電力の方針は、長期評価を確率論的津波ハザード解析の手法確 立に向けての研究の素材として取り扱うにとどまるものであり、現に稼働している原子炉(福島第一原発)について具体的な対策を講じることを想定するものではなくその安全性を高める実効性を持つものでもないから、規制権限の不行使を合理化するものではない。 2 長期評価公表後の一審被告国の調査・対応(平成14年8月保安院対応) 一審被告国は、平成14年8月に何らの調査・検討も行っておらず、長期評 - 33 -価公表後の同一審被告の調査・対応(同月保安院対応)によって長期評価の信頼性が否定されることはない。 3 平成14年8月以降の一審被告国の対応一審被告国は平成14年8月以降においても、長期評価の科学的根拠について十分な調査・審議を行うことはなく、本件事故に至るまで長期評価の津波地 震の想定を検証の対象として取り上げることは一切なかった。 4 平成14年8月、長期評価に基づき、一審被告東京電力に対して津波シミュレーションを命じたにもかかわらず、これを撤回した同国の対応に合理性があるか一審被告国は、平成14年8月、長期評価に基づく津波シミュレーションを 同東京電力に命じたものの、その抵抗を受けて何ら検討せずこれを撤回した。 同国は、長期評価の津波 対応に合理性があるか一審被告国は、平成14年8月、長期評価に基づく津波シミュレーションを 同東京電力に命じたものの、その抵抗を受けて何ら検討せずこれを撤回した。 同国は、長期評価の津波地震の想定に地震学上の客観的かつ合理的根拠があるか否かについての知見・専門家への確認を自ら行わず、同東京電力に確認させた。同東京電力は、専門家一人にのみ、確認の目的を秘してメールで問い合わせ、慶長三陸地震等の評価についての反対意見であるとの回答を得たことにつ いて、海溝型分科会の結論への反対意見であるかのように同国へ伝えた。同国は、その回答を受けて、長期評価に基づく対応をしないこととした。この経過は、規制権限行使者が規制対象者の意見に「唯々諾々」と従ったものといえ、規制権限行使者としての責任をまったく果たしていないというべきである。 5 その後本件事故発生まで技術基準適合命令を発しなかった一審被告国の対応 に合理性があるか平成14年8月の保安院対応以後、平成16年のスマトラ沖地震によるマドラス原発被水事故に関する平成18年8月頃の安全情報検討会における検討、同年5月から6月の溢水勉強会における敷地浸水の危険の再確認、同年9月の耐震設計審査指針改訂時の地震随伴現象としての位置付けの明確化など、長期 評価に基づく一審被告国の対応を検証し、改める機会が複数あったが、同一審 - 34 -被告は、一貫して長期評価に基づく対応を検討対象に入れず、何ら対応をしなかった。 6 切迫性(明白性)の存在の要否危険の切迫性(明白性)は、本件のような原子力安全規制の場合には求められないのであり、規制権限の不行使を正当化する事情にならない。 7 津波到来の切迫性の要否原判決は「切迫性」を欠くことを、回避措置を急がなくても 本件のような原子力安全規制の場合には求められないのであり、規制権限の不行使を正当化する事情にならない。 7 津波到来の切迫性の要否原判決は「切迫性」を欠くことを、回避措置を急がなくてもよい理由としているが、地震は、長期的に観察すれば、いつも切迫した予見や前触れなしに、いずれ、どこかの時点で発生している。放射能汚染のような大惨事を万が一にも生じさせないという強い必要性がある以上、長期的観点から、いずれ、どこ かの時点で発生することが予見できるだけでも、それに対する防護措置を採る義務が生ずると解釈しなければならない。したがって、防護措置を採る義務の発生について、津波到来の切迫性は不要である。 8 津波対策と地震対策の優劣原判決は、平成18年当時の状況として、津波対策は地震対策に比して優先 度の低いものであったと指摘しているが、保安院は「敷地高さを超える津波」が直ちに全交流電源喪失、すなわち本件事故のような苛酷事故の原因となることを認識していたのであるから、「万が一にも深刻な災害が起こらないようにする」という観点からは、「不確定性が大きい自然現象に対する設計」(伊方原発最高裁判決)として、全く裕度のない津波について至急防護措置を講じる べきであった。したがって、津波対策が地震対策に比して優先度が低いとはいえない。 第10 まとめ 1 一審被告国の国賠法1条1項責任以上のとおり、一審被告国は規制権限を定めた法令の趣旨、目的に照らして 適切に規制権限を行使すべきであったところ、平成14年末には予見可能性が - 35 -認められ、前記第7、4の①から③までの措置を講じることによって本件事故の結果を回避することが可能であったのであるから、同一審被告は、規制権限を行使せず本件事故を発生させたこ が - 35 -認められ、前記第7、4の①から③までの措置を講じることによって本件事故の結果を回避することが可能であったのであるから、同一審被告は、規制権限を行使せず本件事故を発生させたことについて、国賠法1条1項の責任を負う。 2 一審被告国の責任の重大性(一審原告7-1らの主張)一審原告らは、憲法上保障された人格権として「被ばくを避ける権利」を有 する。そして、本件事故により、一審原告らは、①本件事故により被ばくし、その後も被ばくし続けていることにより物理的具体的な生命・身体・健康への被害を受け続けていること、②仮にそれが現実には被害として発生していない(事故後健康被害を生じたが原因が明らかでなく、現時点において因果関係が不明な場合も含む。)としても、被害が発生する現実的なおそれは、科学的・ 経験的に認められること、③事故を起こした原発周辺から未だ放射線を出し続けていることによって、一審原告らが享受できた「平穏生活権」が侵害され続けており、自己及び子どもや家族の生命、健康への被害発生のおそれが高まり続けることは堪え難いものであること、④原発事故という未曾有の事故に遭遇した被害者として、出続けている放射線による自己及び子どもや家族の生命、 身体の安全、健康被害に対する不安を感じることは「内心の平穏」を侵害するものとして一審原告らの人格権を侵害し続けていることという人格権侵害を被っている。 この人格権侵害は、一審被告国が適時適切に規制権限を行使しなかったことにより生じているものであり、この点でも同一審被告の責任は重大である。 第3章一審被告国の責任に関する同一審被告の当審における主張第1 一審被告国の主張の骨子本件における一審被告国の公務員による規制権限の不行使が国賠法1条1項の適用上違法 大である。 第3章一審被告国の責任に関する同一審被告の当審における主張第1 一審被告国の主張の骨子本件における一審被告国の公務員による規制権限の不行使が国賠法1条1項の適用上違法となるのは、炉規法や電気事業法の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、権限を行使すべきであったとされる当時の具体的事情の下にお いて、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠く場合に限ら - 36 -れるところ、規制権限の不行使が「許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠く」というためには、同一審被告が規制権限を行使しなければならない状況、すなわち、作為義務を負っている状況にあったにもかかわらず、その規制権限を行使しなかったといえなければならないから、少なくとも、規制権限の行使を正当化するだけの予見可能性と結果回避可能性があったといえなければなら ない。 そして、原子力基本法及び炉規法が想定する原子力発電所の安全性は、いわゆる「相対的安全性」を意味すると考えられるところ、原子力規制機関は、設置許可処分時だけでなく、同処分後も、原子力発電所が「相対的安全性」を確保できているか否かの判断について一定の裁量(高度に専門的・技術的な判断 に認められる裁量。)を有していると解されるから、裁判所が、使用開始後の原子炉施設に関する原子力規制機関の規制権限不行使が国賠法上違法となるか否かを審理判断するに当たっては、少なくとも予見可能性については、その当時の科学技術水準に照らし、①使用開始後の原子炉施設に関して用いられた安全性の審査又は判断の基準に不合理な点があるか否か、②当該原子炉施設がそ の基準に適合するとした原子力規制機関の判断の過程に看過し難い過誤、欠落があるか否か、という二段階の観点から審査が行われるべきで 査又は判断の基準に不合理な点があるか否か、②当該原子炉施設がそ の基準に適合するとした原子力規制機関の判断の過程に看過し難い過誤、欠落があるか否か、という二段階の観点から審査が行われるべきである。 また、原子炉施設の設置許可処分のように専門家の意見を聴く手続が法定されている場合だけでなく、そのような手続が法定されていない場合であっても、原子炉施設の安全性に係る原子力規制機関の判断が、専門家の意見・判断を尊 重して行われる仕組みが採られている限り、伊方原発最高裁判決が採用したのと同様の判断枠組みによって原子力規制機関の判断の適否が審査されるべきである。そして、保安院は、本件事故前において、長期評価の見解を原子力規制に取り入れてはおらず、その必要がないものと判断していたということができるところ、保安院の設立の経緯のほか、その基本理念や行動規範からうかがわ れる原子炉施設の安全性判断において求められる判断姿勢や手法、我が国の原 - 37 -子力安全について原子力安全委員会が専門的・中立的な立場から原子力規制機関が実施する安全体制をチェックする体制となっていたことからすると、前記の判断は、多方面にわたる科学的、専門技術的知見を備える専門家ないし専門家集団の意見・判断を尊重して行われる仕組みの下でされたものであるというべきである。そうだとすると、長期評価の見解を原子力規制に取り入れる必要 がないとの保安院の判断は、極めて高度な最新の科学的、専門技術的知見を用いて将来の予測に係る総合的判断を行うものであり、また、その判断に当たっては、多方面にわたる科学的、専門技術的知見を備える専門家ないし専門家集団の意見・判断を尊重して行われており、原子炉施設の設置許可処分段階における原子炉施設の安全性判断に係る司法審査の手法と特段 っては、多方面にわたる科学的、専門技術的知見を備える専門家ないし専門家集団の意見・判断を尊重して行われており、原子炉施設の設置許可処分段階における原子炉施設の安全性判断に係る司法審査の手法と特段異なるものではない から、その判断(長期評価の見解について、福島第一原発の主要建屋の敷地高(O.P.+10m)を超える津波の到来を予見させる科学的知見として、津波評価技術の考え方に取り入れる必要がないとの判断)の当否については、前記の二段階審査の手法によって判断されるべきである。 したがって、少なくとも、設定した審査基準等に不合理な点があるか、又は その基準への適合性の判断の過程に看過し難い過誤、欠落があるといえない限り、原子力規制機関による規制権限の不行使が、許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠き、国賠法1条1項の適用上違法となる余地はないというべきである。 福島第一原発の設置許可処分時の安全審査における津波対策に係る基本設計 ないし基本的設計方針は、主要建屋の敷地への津波の浸入を阻止するというものであったし、技術基準適合命令の発令が想定される当時においても、津波対策としては、ドライサイトコンセプトに基づく防潮堤・防波堤等の設置が基本であったため、規制行政庁としては、一審被告東京電力が主要建屋の敷地高(O.P.+10m)を超える想定津波の浸入を阻止する防潮堤・防波堤等を 設置することをもって不適合状態の解消と判断した可能性が高い。他方で、電 - 38 -気事業者がドライサイトコンセプトを放棄して敷地内への津波の浸入を容認するような水密化の措置を講じようとする場合には、一審原告らが技術基準適合命令の発令義務があったと主張する当時の科学的、専門技術的知見に照らせば、規制行政庁において、これらの措置によって不 入を容認するような水密化の措置を講じようとする場合には、一審原告らが技術基準適合命令の発令義務があったと主張する当時の科学的、専門技術的知見に照らせば、規制行政庁において、これらの措置によって不適合状態が解消されると判断することはできなかったのであるから、電気事業者がそのような措置を講じると は考え難く、規制行政庁がそのような措置を念頭に置いて規制権限を行使するとも考え難いというべきである。 仮に、一審被告東京電力が、2008年推計で試算した津波への対策として、ドライサイトコンセプトに基づき、主要建屋の敷地高を超える津波の到来が予測される場所に防潮堤・防波堤等を設置する対策を講じたとしても、多方面か ら到来・浸入した本件津波による本件事故の発生を防止することができるとは認められず、本件事故の発生を回避することができなかった。 さらに、一審被告東京電力が、主要建屋の敷地高を超える津波の到来が予測される場所(敷地の南北側)に防潮堤・防波堤等を設置することに加えて水密化措置を講じたとしても、多方面から到来・浸入した本件津波による本件事故 の発生を防止することができるとは認められず、とりわけ、本件津波が敷地の東側から流入するのを防ぐことができなかった蓋然性が高い。したがって、本件事故の発生を回避することはできず、防潮堤等が完成する前の単独の水密化措置を講じることを選択したとしても、同様に、本件事故の発生を回避することはできなかった。 以上から、本件事故に関し、一審被告国には、国賠法1条1項の適用上の違法はない。以下、これらについて詳述する。 第2 本件で問題となる規制権限及びその行使 1 問題となる規制権限一審原告らが主張する結果回避措置は、福島第一原発の基本設計ないし基本 的設計方針に関わる問題 らについて詳述する。 第2 本件で問題となる規制権限及びその行使 1 問題となる規制権限一審原告らが主張する結果回避措置は、福島第一原発の基本設計ないし基本 的設計方針に関わる問題であり、経済産業大臣は、当該問題につき、電気事業 - 39 -法40条に基づく技術基準適合命令により是正する規制権限を有していなかった。 2 技術基準適合命令の趣旨技術基準適合命令は、設置許可処分段階で安全審査を受けた基本設計ないし基本的設計方針の枠組みの範囲内で、後段規制により原子炉施設の安全確保を 図る方策として、技術基準の不適合を是正するものとしてのみ規定されていた。 電気事業法40条はもとより、同法のその他の規定を見ても、実用発電用原子炉施設の基本設計ないし基本的設計方針が炉規法24条1項4号の設置許可の基準に適合しないことが明らかになった場合に、技術基準適合命令を発して当該基本設計ないし基本的設計方針の変更を命じ、設置許可に係る基準適合性を 回復させることができると解し得るような規定は存在しなかった。 第3 規制権限不行使の違法性の判断要件 1 規制権限不行使事案における国賠法の判断要件規制権限不行使が、その権限を定めた法令の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、具体的事情の下において、その不行使が許容される限度を逸脱し て著しく合理性を欠くと認められるときに限り、その不行使により被害を受けた者との関係において、国賠法1条1項の適用上違法となると解される。 2 本件の国賠法1条1項の違法の判断にあたって、①「国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違反すること」、②「当該公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすこと なく漫然と当該行為をした 「国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違反すること」、②「当該公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすこと なく漫然と当該行為をしたと認めうるような事情があること」が必要であるか否か公務員の規制権限の不行使が国賠法1条1項の適用上違法となるのは、当該規制権限の不行使によって損害を受けたと主張する特定の国民との関係において、当該公務員が当該規制権限を行使すべき義務(作為義務)を負うにもかか わらず、これを行使しなかったことにより、当該特定の国民に被害(損害)が - 40 -発生した場合である。 第4 省令62号4条1項該当性の判断及びその効果 1 事前警戒・予防の考え方の採否本件は、一審原告らが、経済産業大臣において規制権限を行使すべきであったとする時期において、いまだ一審原告らに現実的な被害が発生しておらず、 また、かかる現実的な被害をもたらす原因となった事象(地震やこれに伴う津波)も、その発生の機序の解明がいまだ研究途上にあり、多くの点で科学的に判明していなかったという事案である。そのため、本件では、規制権限不行使が問題とされた当時の具体的事情の下で、一審原告らに実際に発生した被害又はその被害発生の危険を経済産業大臣が職務として予見すべきであったか否か が慎重に検討される必要がある。 被害をもたらす原因事象の発生可能性や確率等を示唆する見解が存在するだけで、僅かでも予見可能性が否定し得ない以上、結果回避措置を講じることが義務付けられるとすると、社会経済活動に極めて深刻な萎縮効果を及ぼすこととなるから、そのような見解が存在することだけでは、前記予見可能性を肯定 することはできない。 2 科学的知見の確立の程度(具体的危険 とすると、社会経済活動に極めて深刻な萎縮効果を及ぼすこととなるから、そのような見解が存在することだけでは、前記予見可能性を肯定 することはできない。 2 科学的知見の確立の程度(具体的危険の存在の要否)原子炉施設の使用開始後に、規制権限不行使の違法性の考慮要素として、津波によって原子力災害が引き起こされることの予見可能性の有無を判断するに当たっても、炉規法の定め及び設置許可処分に関する伊方原発最高裁判決の趣 旨に鑑みれば、どの程度の危険に対する安全性を確保すべきかについて、専門分野の学識経験者等の科学的、専門技術的知見に基づく意見を尊重した規制判断が求められることを前提にする必要があるというべきである。 また、本件事故前の原子力規制実務においては、ある科学的知見を原子力規制に取り入れようとする場合には、審議会(原子炉安全専門審査会)等におい て、各専門分野の学識経験者等が、当該科学的知見が原子力規制に取り入れる - 41 -だけの客観的かつ合理的根拠に裏付けられているかを審議した上で、その取捨の判断をしていた。 そうすると、ある科学的知見を原子力規制に取り入れようとする場合には、それは、少なくとも各専門分野の学識経験者等の間で当該科学的知見が原子力規制に取り入れるべき精度及び確度を備えた正当な見解として是認される知見 でなければならないというべきである。 3 予見可能性の意義原子炉施設の位置、構造及び設備の安全性に関する規制権限の不行使が国賠法上の違法性を問われる場面において、ある科学的知見に基づいて予見可能性が認められるためには、少なくとも、各専門分野の学識経験者等の間で、当該 科学的知見が原子力規制に取り入れるべき精度及び確度を備えた正当な見解として是認される知見でなけ 見に基づいて予見可能性が認められるためには、少なくとも、各専門分野の学識経験者等の間で、当該 科学的知見が原子力規制に取り入れるべき精度及び確度を備えた正当な見解として是認される知見でなければならず、これに当たるか否かについては、当該知見の形成過程や同知見に対する専門家による評価等に基づいて判断されるべきであり、単に国の機関が発表した見解や意見であるというだけでは原子力規制に取り入れることはできない。 4 省令62号4条1項「津波により損傷を受けるおそれ」が予見可能であった場合に採ることができる対応本件で問題とされるドライサイトコンセプトの下での津波対策は、正に基本設計ないし基本的設計方針の安全性に関わる事項に当たることから、電気事業法40条の技術基準適合命令によって是正することはできないものというべき であるところ、仮に、既設の実用発電用原子炉施設において、基本設計ないし基本的設計方針の安全性に関わる事項に変更を生じさせるような問題が生じた場合には、経済産業大臣は、原子力事業者に対して設置変更許可申請を促す行政指導を行い、当該申請があればこれを許可するか否かを審査することとなる。 原子力事業者が行政指導に従わず、当該申請を行わない場合には、経済産業大 臣は、電気事業法40条に基づく技術基準適合命令を発して是正することはで - 42 -きず、設置許可処分の撤回によりその是正を図るほかない。 5 予見すべき事象本件において予見の対象となる結果は、津波がもたらす浸水により現に稼働している原子炉施設の電源が喪失し、原子炉の冷却機能が失われることであるから、予見の対象となる津波としては、電源喪失をもたらした本件津波ないし、 少なくとも電源喪失をもたらすような津波、すなわち、本件津波と同等の津 電源が喪失し、原子炉の冷却機能が失われることであるから、予見の対象となる津波としては、電源喪失をもたらした本件津波ないし、 少なくとも電源喪失をもたらすような津波、すなわち、本件津波と同等の津波である。 6 予見可能性の程度「社会通念上の純然たる可能性としての予見可能性」の根拠となる知見の精度及び確度が十分でなく、当該予見可能性の程度が低いと評価される場合には、 規制権限を行使するか否か、行使する場合の内容・程度等について、規制行政庁に、より広い裁量が認められる。 本件においては、当該予見可能性の根拠となる科学的知見の精度及び確度が十分でないから、当該予見可能性が認められるとしても、直ちに一審原告らの主張する規制措置(結果回避措置)をとることが法的に義務付けられることに はならない。 第5 省令62号4条1項の「津波による損傷のおそれ」に関する予見についての事情 1 長期評価の示した知見により「津波により損傷を生ずるおそれ」があるといえるか否か (1) 地震調査研究推進本部と長期評価の意義推進本部自身が、自らが公表する長期評価等について、その全てが直ちに防災対策に活用することができるような精度及び確度を備えたものではないことを当然の前提としていた。 (2) 慶長三陸地震、延宝房総沖地震について 長期評価の見解の公表当時、地震・津波の専門家の間において、慶長三陸 - 43 -地震及び延宝房総沖地震については、その発生機序や震源域について有力な異説が複数存在していたのであるから、慶長三陸地震及び延宝房総沖地震が三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの領域で発生した津波地震であるとする見解が確立していたとはいえない。 (3) 領域設定の合理性、領域を区別すべき南北の差異がないこ 、慶長三陸地震及び延宝房総沖地震が三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの領域で発生した津波地震であるとする見解が確立していたとはいえない。 (3) 領域設定の合理性、領域を区別すべき南北の差異がないこと 日本海溝寄りのプレート間において、津波地震は特定の領域(明治三陸地震の震源域である三陸沖のような、特殊な海底構造を有する領域)でのみ発生する特殊な地震であるとする見解が大勢を占めていた上、三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの領域の北部(明治三陸地震が発生したとされる領域)と南部(福島県沖が含まれる領域)とでは地震地体構造が異なること等が客観 的な観測事実等として明らかになっていた。 (4) 発生領域・発生確率の信頼度について受け手はもとより、推進本部自身が、明治三陸地震、慶長三陸地震及び延宝房総沖地震の三つの地震を日本海溝寄りの領域の津波地震であると整理するか否かという点をおいてもなお、根拠となるデータの不十分さから、長期 評価の見解の信頼度が、低いものにとどまると判断していた。 (5) 中央防災会議及び専門家の見解ア中央防災会議平成18年に公表された日本海溝・千島海溝報告書において、福島県沖海溝沿いの領域における津波地震が検討対象から除外されたのは、その作 成過程において長期評価の見解の信頼性が低いと評価されたためである。 イ佐竹の見解について平成14年当時、地震学者の間では、巨大地震が発生する沈み込み帯として、M9クラスの巨大地震が発生するチリ型の沈み込み帯と、巨大地震が発生しないマリアナ型の沈み込み帯を両極端とする考え方が有力な見解 とされていて、日本海溝南部はマリアナ型に近いと考えられていたところ、 - 44 -佐竹は、「福島県沖では、太平洋プレートは巨大地震は発 ナ型の沈み込み帯を両極端とする考え方が有力な見解 とされていて、日本海溝南部はマリアナ型に近いと考えられていたところ、 - 44 -佐竹は、「福島県沖では、太平洋プレートは巨大地震は発生しないで沈み込んでいると考えられ、多くの地震学者はそのように思っていた。」、「多くの地震学者は、今回の地震発生当時、福島沖で大規模な地震が起こるとは考えていなかった。」と述べている。(丙A99、308の1)ウ津村の意見について 津村は、長期評価の見解は「過去に津波地震の発生が確認されていない福島県沖や茨城県沖の日本海溝沿いも含めた日本海溝沿いの領域が単に陸側のプレートに太平洋プレートが沈み込んでいる点で構造が同じであるという極めておおざっぱな根拠で、三陸沖から房総沖までの広大な日本海溝沿いの領域を一括りにして、津波地震が発生する可能性があると評価した。 このような評価は、地震学の基本的な考え方からすると、異質である」、「基本的には、過去に発生した領域で、同じ規模のものが同じ周期で繰り返し発生することを前提に地震を予測するという判断手法がとられていたので、過去に津波地震の発生が確認されていない領域(福島県沖の日本海溝寄りの領域等)を含めて津波地震が発生する可能性があるとする評価は、 地震学の基本的な考え方にはなじまない」と述べている。(丙A101)エ松澤の見解について松澤は、三陸北部と南部はいろんなものが違っていると思った、過去に何が起こったかということを積み上げていくのが長期評価だが、過去に全く起こっていないところに今言った手法は使えない、しかし、海溝沿いが 全部同じだと仮定してみれば、福島沖で起こっていなくても、三陸沖あるいは房総沖で起こったようなデータを基にして福島沖も同じ確率と言うこと いところに今言った手法は使えない、しかし、海溝沿いが 全部同じだと仮定してみれば、福島沖で起こっていなくても、三陸沖あるいは房総沖で起こったようなデータを基にして福島沖も同じ確率と言うことができる、それは非常に乱暴な議論だと思った、不十分なデータを基にしたものであり、それは信頼度がCであることや、長期評価本文の記載からも明らかだったので、少なくとも私は、その調査委見解が出たからとい って、これを新たな知見として取り入れて、切迫性をもって対策を講じる - 45 -べきとまでは考えていなかったと述べている。(丙A102の1、314の1)オ谷岡の意見について谷岡は、明治三陸地震のほかにも、1611年の慶長三陸地震や1677年の延宝房総沖地震なども津波地震だったのではないかという可能性が 指摘されているが、これらについては、明治三陸地震と比べても、データが少ないため、具体的な波源モデルの特定に至っていない上、地震学者の中でもそもそも津波地震と捉えるべきかどうかについて、現在でも争いがある、本件地震まで、私を含む多くの地震学者が津波地震を研究し、様々な仮説を提唱してきたが、総じて、明治三陸地震のような津波地震は、限 られた領域や特殊な条件が揃った場合にのみ発生しうるというものが大勢を占めていた、可能性が否定できない以上、地震調査委員会の立場ではひとまず防災行政的な警告をするためにも、明治三陸地震と同様の地震が、三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの領域内のどこでも発生する可能性があるという見解を出す意義はあると思う、もっとも、そのような見解がある としても、中央防災会議などで実際にこの見解に依拠した防災対策をさせるべきかと聞かれれば、十分な理学的根拠があるのかを検証した上で判断していく必要があると思 、もっとも、そのような見解がある としても、中央防災会議などで実際にこの見解に依拠した防災対策をさせるべきかと聞かれれば、十分な理学的根拠があるのかを検証した上で判断していく必要があると思うので、実際の防災対策をしていく上で、明治三陸地震と同じような津波地震が福島県沖で発生すると考えることには少し無理があるのではないかと考える旨述べている。(丙A133) カ笠原の意見について笠原は、理学的知見というものは、多くの資料が得られて精度の高いものから、資料が少なく精度が低いものまで数多くの知見があった、長期評価の見解は推進本部が理学的知見を基に議論した結果として理学的に否定できないものとして出された見解である、北海道ワーキンググループでは、 推進本部が示した津波地震に関する見解は、理学的に否定できないという - 46 -ものであることに間違いはないものの、それ以上の具体的な根拠があるものという意見は出なかったと述べている。(丙A134)キ今村の意見について今村は、長期評価の見解は、日本海溝付近のどこでも津波地震が起きる可能性があるということについて、従来なかった新たな理学的知見を提示 するものではなく、メカニズム的に否定できないという以上の理学的根拠を示していなかったし、津波地震が起きるとしても、その規模としてなぜ明治三陸地震と同程度のものが起こりうるのかということについては何らの具体的根拠も示していない、福島沖・茨城沖でも三陸沖や房総沖と同様の津波地震の発生が否定できないというのは、発生をうかがわせる科学的 なコンセンサスは得られておらず、単に理学的根拠をもって発生を否定することができないだけの津波であって、理学的根拠から発生がうかがわれるという科学的なコンセンサスが得られてい がわせる科学的 なコンセンサスは得られておらず、単に理学的根拠をもって発生を否定することができないだけの津波であって、理学的根拠から発生がうかがわれるという科学的なコンセンサスが得られている津波であるとは考えられていなかったと述べている。(丙A105)ク首藤の意見について 首藤は、当時の福島沖に関する長期評価の見解は専門家の間でもコンセンサスが得られていなかったものなので、この見解は確定論に取り入れ、直ちに対策を取らせるような説得力のある見解とは考えられていなかったと述べている。(丙A112)(6) 平成9年に策定された4省庁報告書(甲A16、丙A30の1)及び7省 庁手引(甲A15。4省庁報告書等)について4省庁報告書等では、既往最大の津波だけでなく、想定し得る最大規模の地震津波を設定して防災対策を行うという方向性が示されたが、具体的な津波評価方法までは示されていなかった。 (7) 平成14年8月以降の知見・経緯 平成14年8月以降も、地震地体構造の同一性に関し、長期評価の見解を - 47 -裏付ける科学的根拠が示されることはなく、むしろ、同見解に整合しない知見が集積されていた。 長期評価の見解の公表後の地震・津波の専門家の見解及び反応並びに専門家により構成される推進本部以外の公的機関や民間の専門機関の反応等を見ても、長期評価の見解は、地震・津波の専門家の間でおおむね消極的ないし 懐疑的に見られており、本件事故が発生する前の科学技術水準の下では、理学的に否定することができないという以上の積極的な評価をすることは困難であって、必ずしも信頼性の高いものとは評価されていなかった。 ア垣見マップ(丙A155)について平成15年に公表された垣見マップは、東北太平 きないという以上の積極的な評価をすることは困難であって、必ずしも信頼性の高いものとは評価されていなかった。 ア垣見マップ(丙A155)について平成15年に公表された垣見マップは、東北太平洋側の領域について、 「8A1」から「8A4」まで四つに区分しているところ、福島県沖を含む「8A3」領域については、当該領域における地震の例として1938年に発生した福島県東方沖地震が挙げられており、明治三陸地震が代表格に挙げられている「8A2」領域や、延宝房総沖地震等が例に挙げられている「8A4」領域とは異なる領域の区分とされている。 このように、垣見マップは、三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの領域を、「8A1」から「8A4」までの四つの異なる地震地体構造に区分し、明治三陸地震及び慶長三陸地震と延宝房総沖地震をそれぞれ福島県沖以外の領域の地震とする見解を前提とするものである。 イ鶴論文について 平成14年12月に公表された鶴論文は、日本海溝の北部海溝軸付近では堆積物が厚く積み上がりプレートに挟まれた部分が楔形を作っているのに対し、南部ではプレート内の奥まで堆積物が薄く広がり楔形構造が見られないという地域差があるため、特に10から13km超の深度で南部よりも北部のプレート間カップリングが強く、このカップリングの 違いが、日本海溝域でのプレート境界地震発生の地域差(北部で発生し - 48 -たM7.5超の大規模なプレート境界地震のほぼ全て)を説明することができる可能性を示唆している(丙A144の1・2)。 鶴論文は、海溝寄りの領域について、北部の海溝軸付近と南部の海溝軸付近とに違いを見いだし、南部である福島県沖に津波地震が発生する可能性が北部である三陸沖よりも相対的に低い可能性を理学的に示唆し 鶴論文は、海溝寄りの領域について、北部の海溝軸付近と南部の海溝軸付近とに違いを見いだし、南部である福島県沖に津波地震が発生する可能性が北部である三陸沖よりも相対的に低い可能性を理学的に示唆した 論文であり、明治三陸地震と同様の津波地震は福島県沖の海溝軸付近では発生しない可能性がある旨の見解を示したものである。 ウ松澤・内田論文(丙A38)について平成15年に公表された松澤・内田論文は、鶴論文を踏まえた上で、福島県沖の海溝近傍では、三陸沖のような厚い堆積物は見つかっていない ため、大規模な低周波地震が起きても大きな津波を引き起こさないかもしれないとしている(丙A38)。この論文は、明治三陸地震と同様の津波地震は福島県沖の海溝軸付近では発生しない可能性がある旨の見解を示したものである。 エ長期評価公表後の大竹の意見について 日本地震学会会長兼地震予知連絡会会長(当時)であった大竹は、長期評価の見解の公表直後の平成14年8月、地震調査委員会に対し、長期評価の見解について意見書を送付している(丙A390)ところ、これは、慶長三陸地震を津波地震とした長期評価の見解に疑問を呈するものであるとともに、同見解が不確実性の高いものであることを指摘するも のである。 オ石橋論文について平成15年に公表された石橋論文は、延宝房総沖地震の規模はM6.5程度かもしれないとして、長期評価の見解が同地震をM8クラスとして、慶長三陸地震(1611年発生)や明治三陸地震(1896年発生)と 同じグループのものとして扱ったことに疑問を呈している(丙A40)。 - 49 -これは、長期評価の見解が三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの領域におけるプレート間大地震(津波地震)として過去400年間に3回発生し として扱ったことに疑問を呈している(丙A40)。 - 49 -これは、長期評価の見解が三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの領域におけるプレート間大地震(津波地震)として過去400年間に3回発生したものの一つとして挙げた延宝房総沖地震について、同地震が津波地震であることに正面から異論を呈したものである。 カ都司論文について 平成15年に公表された都司論文は、慶長三陸地震は津波地震ではなく、地震によって誘発された大規模な海底地滑りによるものであった可能性が高いとしている(丙A39)。これは、長期評価の見解が三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの領域におけるプレート間大地震(津波地震)として過去400年間に3回発生したものの一つとして挙げた慶長三陸地 震について、同見解とは異なる見解を示したものである。 キ今村・佐竹・都司論文等について平成19年に公表された今村・佐竹・都司論文は、延宝房総沖地震について、津波被害を受けた各地の津波浸水高について、福島県沿岸では3. 5から7m等と推定し、この推定した津波浸水高を再現できる波源モデ ルを設定したものである(丙A393)。同論文は、延宝房総沖地震の波源モデルの設定には更なる課題があることも指摘しており、長期評価の見解が三陸沖北部から房総沖の海溝寄りのプレート間大地震(津波地震)に該当すると判断した延宝房総沖地震について、なお波源モデルの設定(震源域の設定)には課題があることを指摘したものである。 推進本部は、平成21年3月に発行した「日本の地震活動-被害地震から見た地域別の特徴-<第2版>」において、延宝房総沖地震について、震源域の詳細や、プレート間地震であったか沈み込むプレート内地震であったかは不明であり、津波地震であった可能性が指摘されているなど ら見た地域別の特徴-<第2版>」において、延宝房総沖地震について、震源域の詳細や、プレート間地震であったか沈み込むプレート内地震であったかは不明であり、津波地震であった可能性が指摘されているなどとしている(丙A392)。この記載は、平成11年当時の追補版の記載から 大きな変更はなく、かかる事実は、推進本部自身が、長期評価の見解で - 50 -示された延宝房総沖地震を三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの領域で発生した津波地震であるとする見解について、飽くまで一つの仮説と位置づけ、積極的な理学的根拠に基づくものではないと考えていたことを示すものである。 ク全国を概観した地震動予測地図(丙A230の1から3まで)について 推進本部は、平成17年に、「全国を概観した地震動予測地図」を作成した。この「全国を概観した地震動予測地図」は、「震源断層を特定した地震動予測地図」(決定論的地震動予測地図)と「確率論的地震動予測地図」の2種類の地図から成るところ、その公表当時、前者の「震源断層を特定した地震動予測地図」(決定論的地震動予測地図)について は、具体的な構造物への耐震設計に活用することを想定していた(丙A230の1)。そして、この「震源断層を特定した地震動予測地図」(決定論的地震動予測地図)では、推進本部が実施する長期評価において、研究機関等が実施した海溝型地震や主要活断層帯の調査・研究結果に基づいて、過去に発生した地震の系列を調べ、将来(次回)発生する であろう地震の位置・規模・確率等の特性を評価する過程において、科学的実証的根拠を基に将来(次回)発生するであろう地震の震源断層が特定できた地震については、「震源断層を特定した地震動予測地図」(決定論的地震動予測地図)に取り入れることとされていた。しかると 、科学的実証的根拠を基に将来(次回)発生するであろう地震の震源断層が特定できた地震については、「震源断層を特定した地震動予測地図」(決定論的地震動予測地図)に取り入れることとされていた。しかるところ、長期評価の見解が示した明治三陸地震と同様の津波地震は、「震 源断層を特定した地震動予測地図」(決定論的地震動予測地図)において強震動評価の対象とされた宮城県沖の地震や三陸沖北部の地震に比べて科学的データが少なく、震源断層も特定されていなかったことから、「震源断層を特定した地震動予測地図」(決定論的地震動予測地図)の基礎資料にされなかったものであり(丙A230の1から3まで)、か かる事実は、推進本部自身が、長期評価の見解を決定論的に取り扱うこ - 51 -とができるだけの精度及び確度を備えた知見として考えていなかったことを示すものである。 これに対し、一審原告らは、「「全国を概観した地震動予測地図」においては、専ら地震動の評価が対象となっており、津波の影響は検討対象とはなっていない。」と主張するが、そもそも長期評価も、その評価対 象は地震であって、津波ではない。したがって、「全国を概観した地震動予測地図」の目的と長期評価の目的とは同一であり、これが異なるものであるとする一審原告らの前記主張には、理由がない。 ケ平成21年の長期評価の改訂について推進本部は、平成21年3月、長期評価を一部改訂したが、長期評価の 見解に係る記載に大きな変更はなく、地震の発生確率の更新も行われなかった(丙A375)。かかる事実は、平成14年7月以降も、長期評価の見解を裏付ける新たな科学的知見の集積がなかったため、推進本部が、新たな記述や評価を加えず、確率評価手法も変更しなかったことを示すものである。 コ 事実は、平成14年7月以降も、長期評価の見解を裏付ける新たな科学的知見の集積がなかったため、推進本部が、新たな記述や評価を加えず、確率評価手法も変更しなかったことを示すものである。 コ第4期津波評価部会について平成21年度から平成23年度にかけて開催された第4期津波評価部会では、三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの領域について、その北部と南部を区別せず一体として見る長期評価の見解とは異なり、北部と南部を区別すべきであるという方向で議論が進んだ。そして、津波評価部会が、 長期評価の見解を採用せず、日本海溝沿いの領域を南北に区分し、北部の基準断層モデルとして明治三陸地震の断層モデルを、南部の基準断層モデルとして延宝房総沖地震の断層モデルをそれぞれ用いることとしたのは、長期評価の見解の公表後の地震・津波の専門家の見解等(明治三陸地震と同様の津波地震は福島県沖の海溝軸付近では発生しない可能性 があるとの見解、日本海溝寄りの領域を四つに区分し、明治三陸地震、 - 52 -慶長三陸地震及び延宝房総沖地震をいずれも福島県沖以外の領域の地震であるとする見解、津波地震は特定の条件がそろった場合にのみ発生する可能性が高いとの見解は提唱されたが、長期評価の見解と同様に、海溝軸近傍であればどこでも明治三陸地震と同様の津波地震が発生し得るとの見解や、三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの領域をどこでも明治三 陸地震と同様の津波地震が発生し得る一つの領域として扱うことを支持する見解が発表されることはなかった。)の状況を踏まえたものであると評価することができる。 土木学会津波評価部会(第4期)における議論状況は、三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの領域について、当該領域の北部と南部とを区別した 上で、福島県沖海溝沿い領域 と評価することができる。 土木学会津波評価部会(第4期)における議論状況は、三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの領域について、当該領域の北部と南部とを区別した 上で、福島県沖海溝沿い領域では明治三陸地震と同様の津波地震は発生しないとの立場に立つものであり、三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの領域を一つの領域として扱った上で、当該領域内のどこでも明治三陸地震と同様の津波地震が発生するとする長期評価の見解とは相容れないものである。したがって、土木学会津波評価部会(第4期)における議論 状況が長期評価の見解に沿うものであったとする一審原告らの主張は、長期評価の見解の内容や土木学会津波評価部会(第4期)における議論状況についての誤った理解を前提とするものであり、失当というほかない。 2 津波評価技術によって敷地高を超える津波が想定されないことは「津波によ る損傷のおそれ」を否定する事情になるか(1) 津波評価技術の概要「津波評価技術の考え方」は、具体的な根拠を持った津波の発生可能性を余すところなく取り入れて設計上の想定津波を推計することを目的として、「既往津波」にとどまらず、「想定し得る最大規模の津波」をも決定論的安 全評価に取り込むことを可能とした当時唯一の津波評価方法であった。 - 53 -津波評価技術は、原子力施設の津波に対する安全性評価技術の体系化及び標準化について検討することを目的として土木学会原子力土木委員会に設置された津波評価部会により、平成14年2月に取りまとめられた。 (2) 津波評価技術策定の目的津波評価技術は、土木学会が、高い安全性が求められる原子炉施設につい て、科学的根拠に基づく「想定し得る最大規模の地震津波」の評価方法を整備するべく、策定したものである。 価技術策定の目的津波評価技術は、土木学会が、高い安全性が求められる原子炉施設につい て、科学的根拠に基づく「想定し得る最大規模の地震津波」の評価方法を整備するべく、策定したものである。土木学会原子力土木委員会津波評価部会は当時の第一線の専門研究者を構成員とし、高い安全性が求められる原子炉施設について、「想定し得る最大規模の地震津波」の評価方法を先行的に整備すべく研究を重ね、それらの成果を集大成し、4省庁報告書等を補完する ものとして津波評価技術を策定した。 (3) 第1期津波評価部会での検討・議論第1期津波評価部会は、津波評価技術の体系化に際し、決定論的に取り扱う地震津波の発生メカニズムや発生領域、規模等に関する理学的知見をあらかじめ網羅的に検討、整理した上で、これに基づく想定津波の波源の位置や 断層モデルの設定方法等について議論・検討を行った。 (4) 津波評価技術と想定最大津波上記津波評価部会が作成した津波評価技術に基づいて算出される津波の高さは、パラメータスタディなどの手法を用いることにより、平均で、既往津波の痕跡高の約2倍となっており(丙A31の2)、より高い安全性が求め られる原子炉施設に用いられることを踏まえた安全寄りの考え方に基づいていた。そして、原子力安全委員会も、津波評価技術の合理性を認め、津波評価技術に基づく評価を前提に原子力事業者による新設炉の設置許可申請の内容を確認していたものである。 第6 省令62号4条1項の「津波により損傷を生ずるおそれ」について一審被告 国において講ずべきであった対応 - 54 -予見可能である場合に講ずべき対応として、技術基準適合命令において、防護措置として具体的にいかなる措置をとるべきかの特定が必要かについて、規制権限 おいて講ずべきであった対応 - 54 -予見可能である場合に講ずべき対応として、技術基準適合命令において、防護措置として具体的にいかなる措置をとるべきかの特定が必要かについて、規制権限不行使が問題となっている時点で、当該結果回避措置を採ることが物理的に可能であっただけでは足りず、当時の確立した科学的・工学的知見によって、当該結果回避措置が、問題となっている被害を回避できる措置として導 かれる状況にあったことが必要となる。原子力規制の実務上、技術基準適合命令の内容は、ある程度抽象的なものとならざるを得ず、かつそれで足りる。 第7 結果回避措置 1 「津波による損傷のおそれ」を防ぐために必要な措置としての結果回避措置の具体的内容 ドライサイトコンセプトに基づく福島第一原発の敷地又はその周辺における防潮堤・防波堤の設置が講じられるべきである。 2 「ドライサイト」が本件事故前の敷地内浸水への対策の基本であったか想定津波に対してドライサイトを維持することが、津波に対して原子炉施設の安全性を確保するための最も合理的で信頼性が高く、確実性のある対策であ るので、規制機関は、ドライサイトを維持することを津波防護策の基本としていた。少なくとも本件事故当時まで、津波対策としては、ドライサイトコンセプト、すなわち、安全上重要な全ての機器が設計想定津波の水位より高い場所に設置されること等によって、それらの機器が津波で浸水するのを防ぎ、津波による被害の発生を防ぐという考え方が主流であり、我が国においては、設計 想定津波が敷地に浸入することが想定される場合には、防潮堤・防波堤等の設置により津波の敷地への浸入を防止してドライサイトを維持することが津波対策の基本的な考え方であった。 そして、ドライサイトコンセプトか 敷地に浸入することが想定される場合には、防潮堤・防波堤等の設置により津波の敷地への浸入を防止してドライサイトを維持することが津波対策の基本的な考え方であった。 そして、ドライサイトコンセプトからすれば、防潮堤・防波堤等の設置により敷地内への津波の浸入を完全に防ぐというのがまず第一義であり、また、主 要建屋等が存在する敷地内に津波がそのまま浸入する事態を容認した上での津 - 55 -波対策は大きな不確実性を伴って信頼性に欠ける上、事故対応等に支障が生じることも想定されること、本件事故前の科学技術水準として、主要建屋等が存在する敷地内に津波がそのまま浸入する事態を容認した上で水密化措置のみによってこれを防護する技術は確立されていなかったこと、規制行政庁としても、仮に、電気事業者が、津波対策として、防潮堤・防波堤等を設置せず、水密化 措置のみを講じることを選択した場合、かかる措置をもって不適合状態の解消と判断することはあり得ないことなどからすれば、一審被告東京電力が福島第一原発において講じたであろう防護措置の内容として水密化措置が考えられたとしても、防潮堤・防波堤等を設置することなく水密化措置のみを講じることはあり得ない。 3 建屋及び機械設備の水密化は本件事故以前に確立された知見であったか敷地内への浸水を前提とする不確実な状態で、建屋等の全部の水密化を行うことによって原子炉施設の安全性が確保できるというだけの具体的な措置を事前に特定して必要な対策を講じることは著しく困難であった。 本件事故前の科学技術水準として、主要建屋等が存在する敷地内に津波がそ のまま浸入する事態を容認した上で水密化のみによってこれを防護する技術は確立されていなかった。 本件事故当時の科学的、専門技術的知見に照らした場合、 、主要建屋等が存在する敷地内に津波がそ のまま浸入する事態を容認した上で水密化のみによってこれを防護する技術は確立されていなかった。 本件事故当時の科学的、専門技術的知見に照らした場合、防潮堤・防波堤等の設置により敷地内への津波の浸入を防ぐという前記のドライサイトコンセプトは、合理的で確実なものとして、我が国における津波対策の基本とされてい たのに対し、防潮堤等の設置により敷地内への津波の浸入を防ぐことを前提とせず、主要建屋等が存在する敷地内に津波が浸入することを前提とする防護措置(水密化措置を含む。)が主たる津波対策として採用された実績があったことはうかがわれないことや、その指針となる知見が存在していたことはうかがわれないことから、一審被告東京電力又は規制機関が、防潮堤等の設置と併せ て他の対策を検討した蓋然性は認められず、その結果、経済産業大臣が規制権 - 56 -限を行使していれば本件事故又はこれと同様の事故が発生しなかったであろうという関係を認めることはできないことになる。 なお、一審原告らは、福島第一原発における水密化の施工実績として、福島第一原発における平成3年溢水事故を機に講じられた水密化措置を指摘するが、これらの措置は、いずれも内部溢水対策にすぎず、外部溢水対策(津波対策) として実施されたものではない。 4 防護策は単一的なものでよいか規制行政庁が本件事故当時に津波対策に係る不適合状態の解消を判断することができる措置は、ドライサイトコンセプトに基づく福島第一原発の敷地又はその周辺における防潮堤・防波堤の設置であり、水密化の措置は、せいぜい事 業者が自主的に講じる措置にとどまる。 すなわち、福島第一原発の設置許可処分時の安全審査における津波対策に係る基本設計ないし基本 ける防潮堤・防波堤の設置であり、水密化の措置は、せいぜい事 業者が自主的に講じる措置にとどまる。 すなわち、福島第一原発の設置許可処分時の安全審査における津波対策に係る基本設計ないし基本的設計方針は、主要建屋の敷地への津波の浸入を阻止するというものであったし、技術基準適合命令の発令が想定される当時においても、津波対策としては、ドライサイトコンセプトに基づく防潮堤・防波堤等の 設置が基本であったため、規制行政庁としては、一審被告東京電力が主要建屋の敷地高(O.P.+10m)を超える想定津波の浸入を阻止する防潮堤・防波堤等を設置することをもって不適合状態の解消と判断した可能性が高い。他方で、電気事業者がドライサイトコンセプトを放棄して敷地内への津波の浸入を容認するような水密化の措置を講じようとする場合には、一審原告らが技術 基準適合命令の発令義務があったと主張する当時の科学的、専門技術的知見に照らせば、規制行政庁において、これらの措置によって不適合状態が解消されると判断することはできなかったのであるから、電気事業者がそのような措置を講じるとは考え難く、規制行政庁がそのような措置を念頭に置いて規制権限を行使するとも考え難いというべきである。 5 「防潮堤の設置」に先立ち、又はその設置と共に、防護の多重化のために建 - 57 -屋の水密化が求められるか規制行政庁が本件事故当時に津波対策に係る不適合状態の解消を判断することができる措置は、ドライサイトコンセプトに基づく福島第一原発の敷地又はその周辺における防潮堤・防波堤の設置であり、水密化の措置は、せいぜい事業者が自主的に講じる措置にとどまる。 第8 結果回避可能性又は因果関係 1 結果回避可能性又は因果関係(1) 想定されるべき津波を前提と ・防波堤の設置であり、水密化の措置は、せいぜい事業者が自主的に講じる措置にとどまる。 第8 結果回避可能性又は因果関係 1 結果回避可能性又は因果関係(1) 想定されるべき津波を前提とした「重要機器室の水密化」及び「タービン建屋等の水密化」によって、本件津波に対しても非常用電源設備等の被水を回避することが可能であったかについては、想定されるべき津波と本件津波 は相当程度異なるので、一審原告ら主張の水密化策を講じていても本件事故は回避できなかった。 電気事業者が防潮堤・防波堤等の設置に加えて「タービン建屋等の水密化及び重要機器室の水密化」の措置を講じたとしても、「長期評価の見解」を踏まえて試算される津波を想定したこれらの津波対策(敷地南北に防潮堤を 設置する対策や一審被告東京電力が自主的対策として行う局所的・部分的な水密化)では、津波の規模(津波の流量、流況、水圧、浸水域、浸水深等)、到来の方向等が全く異なる本件津波を防ぐことは不可能である。 その上、主要建屋等が存在する敷地内に津波がそのまま浸入する事態を容認した上での津波対策(津波に対する水密化の技術)は、本件事故が発生し た時点においても研究途上にあり、想定する津波の波力評価や、自動車等の比較的複雑な形状の物体の漂流物の評価が確立していなかった(丙A105)。したがって、2008年推計で試算できる津波に対し、防潮堤・防波堤等の設置に加えて水密化措置を講じたとしても、本件津波が敷地の東側から流入するのを防ぐことができなかった蓋然性が高い上、本件津波の波力や 自動車等の漂流物との衝突によって水密機能が失われ、重要機器室やタービ - 58 -ン建屋(T/B)への本件津波の浸入を阻止できず、本件事故の発生を避けることはできなかった蓋然性 力や 自動車等の漂流物との衝突によって水密機能が失われ、重要機器室やタービ - 58 -ン建屋(T/B)への本件津波の浸入を阻止できず、本件事故の発生を避けることはできなかった蓋然性が高かったというべきである。そうすると、仮に、一審被告東京電力が、上記試算できる津波への対策として、防潮堤等の設置に先立ち(防潮堤等が設置されない状態で)、主要建屋等が存在する敷地内に津波がそのまま浸入する事態を容認した上で水密化措置のみによって 防護すること、すなわち防潮堤等が完成する前の単独の水密化措置を講じることを選択したとしても、本件事故当時の科学的、専門技術的知見の下においては、同様に、ここで講じられる水密化措置は、防潮堤・防波堤等の設置を前提とした上で、これらの設置によっても阻止し得ない軽微な浸水に対する局所的・部分的なものにとどまることになり、本件事故を回避することが できなかったことは明らかである。 一審原告らは共用プール建屋の水密化についても主張するが、共用プール建屋内の配電盤が浸水を免れても、それのみでは本件事故を回避することはできず、上記の「タービン建屋等の水密化及び重要機器室の水密化」の措置では本件事故を回避することができたとは認められない。 (2) 防護措置を実施したとしても、本件津波による事故を回避できなかったかについて、仮に、原子炉施設の津波防護措置について、電気事業者である一審被告東京電力に対し、技術基準適合命令を発することができるとしても、規制行政庁がいかなる状態をもって不適合状態の解消と判断するかは、技術基準適合命令の発令が想定される当時の科学的、専門技術的知見の到達点等 を踏まえて判断せざるを得ないところ、本件事故当時、津波対策としては、設計想定津波が敷地に浸入することが想 するかは、技術基準適合命令の発令が想定される当時の科学的、専門技術的知見の到達点等 を踏まえて判断せざるを得ないところ、本件事故当時、津波対策としては、設計想定津波が敷地に浸入することが想定される場合には、防潮堤・防波堤等の設置により津波の敷地への浸入を防止してドライサイトを維持するというドライサイトコンセプトに基づく防潮堤・防波堤等の設置が基本であった。 そのため、規制行政庁としては、同一審被告が主要建屋の敷地高(O.P. +10m)を超える想定津波の浸入を阻止する防潮堤・防波堤等を設置する - 59 -ことをもって不適合状態の解消と判断した可能性が高く、他方で、規制行政庁において、ドライサイトコンセプトを放棄して敷地内への津波の浸入を容認するような水密化の措置によって不適合状態が解消されると判断することはできなかったのであるから、同一審被告がそのような措置を講じるとは考え難く、規制行政庁がそのような措置を念頭に置いて規制権限を行使すると も考え難いというべきである。 2 結果回避措置を講じることによって現実に到来した本件津波による事故を防ぐことができたことの立証の程度規制権限の行使により講じられると想定される防止策の具体的な内容を見て、現実に生じた被害(損害)である本件津波によって引き起こされた本件事故に よる被害の発生を回避し得るかどうかを判断すべきである。 3 想定されるべきであった津波結果回避可能性を検討する際に想定されるべき津波は、電源喪失をもたらした本件津波ないし少なくとも電源喪失をもたらすような津波、すなわち本件津波と同等の津波である。 4 想定できる津波と本件津波との間に有意な差異があるか一審被告東京電力によって、2008年推計で試算できる津波の防護措置と たらすような津波、すなわち本件津波と同等の津波である。 4 想定できる津波と本件津波との間に有意な差異があるか一審被告東京電力によって、2008年推計で試算できる津波の防護措置として防潮堤・防波堤等の設置が行われたとしても、福島第一原発の敷地の南側周辺を中心に、上記試算できる津波を阻止可能な範囲で設置されるにすぎないから、多方面から到来・浸入した本件津波による本件事故の発生を防止するこ とができるとは認められない。 実際、一審被告東京電力は、平成28年7月22日、上記試算できる津波を前提に福島第一原発の敷地への浸水を防ぐための対策として敷地の南北側に防潮堤を設置した場合、本件津波による浸水を防ぐことができたか否かについてのシミュレーションを行っているが、上記試算できる津波を前提として防潮堤 を設置していたとしても、本件津波が敷地の東側から流入することを防ぐこと - 60 -ができず、その結果、1号機から4号機までの主要建屋付近の浸水深は、本件事故時の現実のものと比べてほとんど変化がないことが明らかとなっているから(丙A153、154)、上記試算できる津波を想定した防潮堤・防波堤等の設置によって、本件事故の発生を避けることはできないと考えるのが自然かつ合理的である。 5 「重要機器室水密化」及び「タービン建屋等の水密化」により本件事故が回避できたか仮に、2008年推計に基づきタービン建屋大物搬入口に水密扉を設置したとしても、本件津波による波力に耐え得るようなものであったか疑問である。 設置される水密扉自体が想定される地震動に対して十分な耐震性を有するか否 かの計算も経ていない。本件事故が回避できたという主張には疑問がある。 電気事業者が防潮堤・防波堤等の設置に加えて「タービ れる水密扉自体が想定される地震動に対して十分な耐震性を有するか否 かの計算も経ていない。本件事故が回避できたという主張には疑問がある。 電気事業者が防潮堤・防波堤等の設置に加えて「タービン建屋等の水密化及び重要機器室の水密化」の措置を講じたとしても、長期評価の見解を踏まえて試算される津波を想定したこれらの津波対策(敷地南北に防潮堤を設置する対策や一審被告東京電力が自主的対策として行う局所的・部分的な水密化)では、 津波の規模(津波の流量、流況、水圧、浸水域、浸水深等)、到来の方向等が全く異なる本件津波を防ぐことは不可能である。 第9 国賠法上違法であるかの判断にあたって求められるその他の事情平成14年の長期評価公表後、本件事故までの間に一審被告国において規制権限行使を検討したか否かについては次のとおりである。 1 長期評価を確率論的安全評価により取り入れるという一審被告東京電力の方針について一審被告国(保安院)は、平成14年の長期評価公表後、同東京電力が長期評価の見解を確率論的手法において取り扱う方針を確認し、保安院の規制課題全体への上記取組と整合するものとして了承した。 長期評価の見解については、推進本部自身も決定論的に取り扱うことができ - 61 -るだけの精度及び確度を備えた信頼性の高いものとして考えておらず、確率論的にのみ取り扱われるものと評価していた上、確率論的安全評価手法それ自体は、原子力規制に直ちに取り入れるべきものとまで解されていなかったものの、専門家で構成される原子力安全委員会からも安全評価に活用し得るものとして一定の評価を受けていた。 2 長期評価公表後の一審被告国の調査・対応(平成14年8月保安院対応)平成14年8月に、長期評価の見解が客観的かつ合 委員会からも安全評価に活用し得るものとして一定の評価を受けていた。 2 長期評価公表後の一審被告国の調査・対応(平成14年8月保安院対応)平成14年8月に、長期評価の見解が客観的かつ合理的根拠に裏付けられたものであるかどうかについて調査を行い、その結果、規制基準に直ちに取り込むだけの根拠はないと判断した。 一審被告東京電力からのヒアリング等を経て、長期評価の見解が原子力規制 に取り入れるだけの精度及び確度を備えた知見ではなく、津波評価技術の考え方が長期評価の見解により否定されるものではないことが確認され、長期評価の見解を直ちに原子力規制に取り入れる必要はないと判断し、同一審被告の方針を了承した。 3 平成14年8月以降の一審被告国の対応 一審被告国は、平成14年8月以降、確率論的安全評価手法を取り入れた安全規制に向けた取組や、耐震バックチェック、地震や津波等の科学的、専門技術的知見を収集する仕組みの構築などを行っていた。 4 平成14年8月、長期評価に基づき、一審被告東京電力に対して津波シミュレーションを命じたにもかかわらず、これを撤回した同国の対応に合理性があ るか一審被告国は、平成14年8月時点において、同東京電力に対するヒアリングを行い、同東京電力において、津波評価技術及び長期評価の見解の双方の策定に関与するとともに谷岡・佐竹論文の共著者である佐竹に対し、長期評価の見解の科学的根拠の有無・程度について問い合わせるなどした結果に基づき、 長期評価の見解を決定論的安全評価には取り入れず、確率論的安全評価の中で - 62 -取り入れていく方針である旨の報告を受け、その方針を了解しているところ、長期評価の見解を裏付ける科学的根拠が存在していなかったことに照らせば、その時点におけ 率論的安全評価の中で - 62 -取り入れていく方針である旨の報告を受け、その方針を了解しているところ、長期評価の見解を裏付ける科学的根拠が存在していなかったことに照らせば、その時点における調査を十分に行ったと評価されるべきである。 一審被告東京電力からのヒアリング等を経て、長期評価の見解が原子力規制に取り入れるだけの精度及び確度を備えた知見ではなく、津波評価技術の考え 方が「長期評価の見解」により否定されるものではないことが確認された上、平成14年当時、確率論的安全評価手法それ自体が一定の評価を受けていたことからすれば、保安院が、長期評価の見解を直ちに原子力規制に取り入れる必要はないと判断し、同一審被告に対して長期評価の見解を踏まえたシミュレーションを実施させずに、確率論的津波ハザード解析に基づく安全対策の中で取 り入れていくとの同一審被告の方針を了承したという対応は、長期評価の見解に認められる科学的信頼性の程度からすれば、合理性が認められる。 5 その後本件事故発生まで技術基準適合命令を発しなかった一審被告国の対応に合理性があるか中央防災会議日本海溝等調査会平成18年報告においても、新たな科学的知 見の収集・評価をして耐震安全評価に反映させる検討をしていた保安院においても、長期評価の見解は採用されていない。信用性が高くない長期評価の知見を踏まえなかったとしても、一審被告国の対応に問題はない。 一審被告国(保安院)が福島第一原発を含めた原子炉施設の津波に対する安全性を確保するために現実に講じていた措置は、合理性を有するものであった。 6 切迫性(明白性)の存在の要否規制措置(結果回避措置)を行使するか否か、行使する場合の内容・程度、時期等には、当該知見の精度及び確度が十分である場合と比 理性を有するものであった。 6 切迫性(明白性)の存在の要否規制措置(結果回避措置)を行使するか否か、行使する場合の内容・程度、時期等には、当該知見の精度及び確度が十分である場合と比較して規制行政庁により広い裁量が認められるべきであり、当該知見の精度及び確度を踏まえたリスクの大きさに照らして対策の優先度を判断し、優先度の高いものにリソー ス(資源)を割くという「グレーデッドアプローチ」の考え方が妥当する。 - 63 -本件においては、予見可能性を肯定する根拠となる知見である長期評価の見解の精度及び確度は十分ではなく、長期評価の見解の公表直後、一審被告東京電力から、同見解を確率論的津波ハザード解析に基づく安全対策の中で取り入れていくとの方針が保安院に伝えられて、保安院としてこれを了承し、その前後を通じ、確率論的津波ハザード解析の実用化に向けた検討を進めるとともに、 平成18年9月には、同一審被告を含む原子力事業者に対して耐震バックチェックの実施を求めるに際し、津波に対する安全性の評価結果の妥当性を確認することを求め、さらに、耐震バックチェックの実施と並行して、津波に対する知見の収集を継続し、規制に取り入れるべき知見があるかどうかを検討するといった一連の措置を講じていた。ところが、平成19年7月に新潟県中越沖地 震が発生したため、それ以降、原子力発電所における安全性については、津波対策よりも地震動についての安全対策が急務とされていた状況下に置かれることになり、結果として、津波対策の優先順位は必ずしも高くはないものとされ、結果回避措置としての津波対策を直ちに講じるべき状況に至らなかった。 7 津波対策と地震対策の優劣 平成19年7月に新潟県中越沖地震が発生したため、それ以降、原子力発電所 いものとされ、結果回避措置としての津波対策を直ちに講じるべき状況に至らなかった。 7 津波対策と地震対策の優劣 平成19年7月に新潟県中越沖地震が発生したため、それ以降、原子力発電所における安全性については、津波対策よりも地震動についての安全対策が急務とされていた状況下に置かれることになり、結果として、津波対策の優先順位は必ずしも高くはないとされた。 第10 まとめ 以上のとおり、炉規法や電気事業法の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、権限を行使すべきであったとされる当時の具体的事情の下において、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠く場合にあたらないのであるから、一審被告国には、本件事故に関し、国賠法1条1項の適用上の違法はない。 第4章一審被告東京電力の責任に関する一審原告らの当審における主張 - 64 -一審原告らは、一審被告東京電力の「責任」の所在、すなわち過失責任があるからこそ賠償責任を負うことを明らかにすることを求めており、責任の究明を踏まえて損害を填補するに足りる賠償を受ける固有の利益を有している。 そして、一審原告らが、民法709条の過失責任の規定に基づいて、一審被告東京電力の過失を踏まえた賠償額の算定を求めることは十分な実益を伴って いる。 第5章一審被告東京電力の責任に関する同一審被告の当審における主張そもそも、一審原告らが上記第4章で主張する「責任の究明を踏まえて損害を填補するに足りる賠償を受ける固有の利益」の理論的根拠や法的性質が明らかでなく、その意味で失当である。 この点を措くとしても、原賠法と民法の適用関係については、原賠法が原子力事業者の無過失責任を定める(同法3条1項)一方で、原子力事業者に責任を集中させて、それ以外 、その意味で失当である。 この点を措くとしても、原賠法と民法の適用関係については、原賠法が原子力事業者の無過失責任を定める(同法3条1項)一方で、原子力事業者に責任を集中させて、それ以外の者は損害賠償義務を負わないと定めて(同法4条1項)、原子力事業者から第三者に対する求償権を制限する(同法5条)など、民法上の不法行為責任に対する特則として一般不法行為法体系とは異なる損害 賠償制度として定められている。したがって、原子力損害の賠償責任は原賠法に基づいて規律されることが想定されており、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求は排除されていると考えられる。 第6章一審原告らの損害に関する同1-1らの当審における主張(弁済の抗弁に対する主張を含む。) 第1 はじめに 1 本件事故の発生平成23年3月11日、東日本大震災が発生し、津波が数回にわたって、一審被告東京電力が設置運営していた福島第一原発を襲い、本件事故が発生した。 本件事故の結果は、極めて甚大なもので、莫大な量の放射能が施設外に放出 された。本件事故は、国際原子力・放射線事象評価尺度(INES)で「レベ - 65 -ル7」という、チェルノブイリに並ぶ歴史上最大級の原子力発電所の深刻な事故であり、福島県を中心として、住民に深刻な損害を与えた。 平成23年3月15日及び同月16日には、上空に巻き上げられた放射性物質の雲状の塊「放射性プルーム(放射性雲)」が、福島県を中心に拡散し、極めて広範囲の住民を襲った。同月20日及び同月21日にも、東北・関東地方 に拡散し、都市部、農地、山林を問わず福島県の大半の大地が汚染され、一審原告らは、その際、大量の放射線被ばくを受けた。 放射能は、目に見えず臭いもしないので、汚染状況を実感することができな に拡散し、都市部、農地、山林を問わず福島県の大半の大地が汚染され、一審原告らは、その際、大量の放射線被ばくを受けた。 放射能は、目に見えず臭いもしないので、汚染状況を実感することができないが、低線量の被ばくであっても、確率論的に、被ばくした人々についてがんその他の重篤な病気を惹起する可能性を確実に高めるものである。 一審原告らは、福島県において、大量の放射性物質ないし放射線に被ばくし、更なる被ばくを避けるために当地に避難してきたものである。 ふるさとから避難することを余儀なくされた一審原告らは、被ばくによる健康不安、避難行動自体、その後の避難生活、そしてふるさとを失ったことにより、極めて深刻な苦痛を被った。そこで、提起したのが本件訴訟であるが、原 判決は、避難指示区域外からの避難者に対する被害の賠償について、極めて低い金額であり、およそ納得できるものではない。 2 一審被告らの責任(1) 一審原告らの平穏な生活が失われたこと一審原告らは、本件事故以前は、福島県のそれぞれの居住地において、豊 かな自然環境の下、それぞれの生業を営み、家族や知人、友人との人間関係の中で、平穏な生活を送っていた。東日本大地震ないし大津波だけの被害にとどまれば、一審原告らは、地元を離れる必要はなく、地元での生活を続け、地元の復興とともに、生活も順次改善していったはずである。 しかし、本件事故によりすべてが失われた。 (2) 一審原告らがなぜ避難をし、避難を継続しているか - 66 -一審原告らは、「福島第一原発を含む日本の原発は絶対に安全である」という「安全神話」を信じて生活してきた素朴な人々である。それ故、一審原告らは、水素爆発を含む本件事故による、大量の放射性物質の外部 一審原告らは、「福島第一原発を含む日本の原発は絶対に安全である」という「安全神話」を信じて生活してきた素朴な人々である。それ故、一審原告らは、水素爆発を含む本件事故による、大量の放射性物質の外部放出とそれによる汚染という深刻な事態は、到底受け入れられないものである。 一審原告らは、ふるさとを本件事故前の放射能のない状態に戻してもらい たいと切に願っているが、残念ながらそれは不可能である。除染が都市部ないし住居地域でなされたが、土壌汚染は依然として深刻である。山林やその他の多くの地域は、全く手つかずの状況で、将来も十分な除染がなされる可能性はない状況にある。 (3) 一審被告らの責任 一審被告らは、一審原告らを含む住民の信頼を裏切り、深刻な被害を与えたのであるから、その損害賠償をすることは当然のことである。 3 本件訴訟における司法の役割について(1) 原判決の判断について原判決は、避難指示区域の内外で賠償額に差を設ける判断をしている。 しかし、福島第一原発から放出された放射性物質は避難指示区域外にも影響を与えている。除染が行われたとしても、ふるさと全体について放射性物質がなくなったことを意味するものではない。土壌汚染は、除染がされた地域においても、依然として解消されていない。周囲の山林については、全く手つかずであり、将来除染が完全になされることはない。また、避難してい る一審原告らが福島へ帰った場合は、内部被ばくの可能性が高まり、それは体内に蓄積されるものである。一審原告らのふるさとは、決して事故前の状況に戻ったわけではないのである。 (2) 一審原告らの避難生活についてまた、一審原告らは、事故後長期間が経過する中で、避難先である愛知県 一審原告らのふるさとは、決して事故前の状況に戻ったわけではないのである。 (2) 一審原告らの避難生活についてまた、一審原告らは、事故後長期間が経過する中で、避難先である愛知県 や岐阜県等の避難先において、必死で生活をしてきた。当然のことであるが、 - 67 -避難先での生活、特に収入は、一般的に福島県におけるレベルに達することはできないレベルにある。それぞれの避難先において、一審原告らはギリギリの生活をしているというのが実情である。 他方、福島県へ帰ったとしても、本件事故前の生活が自動的に回復されるわけでは決してない。同県へ帰還した際には、同県において仕事を探すこと を含めて新たな生活を再建することが必要となる。一審原告らの中には同県へ帰還した者もいるが、そうした者は、再度自らの力で新たな生活基盤を構築する必要があり、その負担は重いものである。一審被告らが、同県における生活の再建を保障するわけではない。 (3) 原判決は改められるべきであること 原判決の極めて低い認容金額は、一審原告らが置かれた状況を十分理解しているものではない。一審原告らに、司法が適正かつ十分な補償をして救済の道を開くことは極めて重要なことである。 4 控訴審に対して一審被告らは、日本の原子力発電所が絶対に安全であり、大事故を起こすこと はないと説明し、一審原告らは、そうした説明を信じてきた。しかし、本件事故は実際に発生したのである。そうした場合に、一審被告らは、被害者である一審原告らに対し、適正かつ十分な補償をすることが当然である。 一審被告らは、真の意味では、その責任を認めようとはしていない。また、中間指針は、区域外避難者の救済という観点からすると、ほとんど意味がないもの 正かつ十分な補償をすることが当然である。 一審被告らは、真の意味では、その責任を認めようとはしていない。また、中間指針は、区域外避難者の救済という観点からすると、ほとんど意味がないもの であり、区域外避難者にとって極めて不公平である。 しかしながら、原判決は、被害を受けた一審原告らに対し、適正な損害賠償を認めていない。控訴審においては、改めて上記被害を被っている一審原告らに対し、適正な判決がされることを切望するものである。 第2 一審原告1-1らの控訴審における主張の要旨 1 原判決は、一審原告らの損害賠償請求について、大部分の一審原告らの請求 - 68 -を認めているが、その額は著しく低く不当である。また、旧緊急時避難準備区域の一審原告らについては請求を全く認めておらず、不当である。 2 まず、原判決の被侵害利益の捉え方は不十分である。 原判決の被侵害利益の捉え方は、「生活を丸ごと破壊された」という観点が欠如していること、一審原告らは従来の平穏生活権とは比較にならないほど重 大な利益を侵害されたことを看過していること、人格発達権が取り入れられていないこと、原状回復が不可能である点を理解していないこと、避難者が被った権利侵害の態様は避難指示区域内外によって異なるものではないにもかかわらず避難指示区域内外で権利侵害の程度に差を設けていることなど、被侵害利益の捉え方が狭小に過ぎ、一審原告らの被害の評価として不十分である。そし て、その結果、損害額の評価が極めて不十分なものとなっている。これらは控訴審において是正されるべきである。 3 また、原判決は本件の被害事実のごく一部を形式的表面的に認定したのみで、深刻な被害実態に正対していない。事実認定が不十分、不正確であることが著しく低廉な慰 訴審において是正されるべきである。 3 また、原判決は本件の被害事実のごく一部を形式的表面的に認定したのみで、深刻な被害実態に正対していない。事実認定が不十分、不正確であることが著しく低廉な慰謝料の原因となっており、控訴審において是正されるべきである。 次に、原判決は、特に避難指示区域外の一審原告らの避難継続の相当性についての判断が不当なものとなっている。その結果、認められるべき損害額が著しく低くなっているので是正される必要がある。 加えて、原判決は、一審原告らが主張した中間指針等の問題点を全く検討しないまま、安直に中間指針等をそのまま踏襲し、その結果、認定された損害額 が著しく低くなっており、是正される必要がある。 4 また、原判決は旧緊急時避難準備区域に居住していた一審原告らの避難継続の合理性について、平成24年8月31日までと限定している。しかし、同区域に居住していた一審原告らの置かれた状況からすると、避難継続の合理性は同日までに限定されるべきではなく、個別の事情に基づき慰謝料が認められる べきである。 - 69 - 5 さらに、原判決は、本件事故発生時に出生していなかった一審原告らについて請求を棄却しているが、これらの一審原告らにおいても、出生後に避難先での不便な生活を強いられ、その父母らが元々いた場所での平穏に生活する利益を侵害されており、本件事故時に出生していた一審原告らと同様の苦痛を味わっているのであるから、慰謝料が認められるべきである。 6 最後に、原判決は、弁済充当の判断において、一審原告らが請求する本件事故と因果関係のある損害と重なり合いのない既払い金を弁済充当している点に事実誤認がある。 第3 被侵害利益の捉え方についての不当性 1 原判決が認定した被 断において、一審原告らが請求する本件事故と因果関係のある損害と重なり合いのない既払い金を弁済充当している点に事実誤認がある。 第3 被侵害利益の捉え方についての不当性 1 原判決が認定した被侵害利益(原判決522頁) 原判決は、避難の相当性が認められる一審原告らについて、いずれも、住み慣れた自宅や地域に帰れない苦痛を感じること、不便な避難生活を強いられること、先の見通しがつかない不安を感じること、放射能に対する恐怖や不安を感じることなどにより精神的苦痛を被ったことを認定しており、一審原告らが侵害された利益は、これらの要素を総合した平穏な生活を送る権利である旨認 定している。そして、この権利は憲法13条、22条1項等に照らして、原賠法上も保護されるものである、としている。 しかし、この原判決が認定した被侵害利益は、一部において一審原告らの主張が取り入れられてはいるものの、その他の重要な利益、観点が抜け落ちており、一審原告らが原審で主張した被侵害利益についての理解が不十分である。 本件の損害を判断するにあたっては、被害実態を把握することが必要不可欠である。 2 原判決の問題点(1) 「生活を丸ごと破壊された」という観点が欠如していること一審原告らは、本件事故によって避難を余儀なくされたことにより、それ ぞれが住み慣れた環境で築き上げてきた生活基盤を奪われ、また、仕事等の - 70 -事情によりやむを得ず現地に滞在している者も、家族や周りの者が避難するなどしたことにより、多かれ少なかれ、それまで築き上げてきた生活基盤を奪われることになった。すなわち、一審原告らは、本件事故によって生活基盤を丸ごと破壊されたのである。 原判決においては、住み慣れた地域に帰 、多かれ少なかれ、それまで築き上げてきた生活基盤を奪われることになった。すなわち、一審原告らは、本件事故によって生活基盤を丸ごと破壊されたのである。 原判決においては、住み慣れた地域に帰れない精神的苦痛や不便な避難生 活に対する精神的苦痛など、断片的な精神的苦痛は認定しているものの、一審原告らの生活が丸ごと破壊されたことについての精神的苦痛を看過しているため、これが慰謝料額に反映されておらず、認容された慰謝料額は極めて低いものとなっている。 一審原告らにとって生活を丸ごと破壊されることは非常に深刻な事態であ り、このような観点を持ち合わせなければ、本件事故によって一審原告らが被った被害の全貌を理解することは到底不可能であるが、原判決はこの点において理解が不十分であり、不当である。 (2) 従来の平穏生活権と同等のものとして捉えていることア平穏生活権侵害は、従来、騒音、水質汚濁、大気汚染などの公害分野に おいて問題とされてきた。これらの従来の平穏生活権侵害の事例では、騒音等の公害によって平穏安全な生活が妨害されるにとどまり、それによって生命、身体に対する侵害のおそれが生じたり、生活基盤そのものが破壊されたりすることまでは想定されていない。 しかし、本件における被侵害利益はこれら従来の平穏生活権とは全く異 なる。すなわち、本件では、放射線被ばくによる健康被害の不安が存在するという点において、生命、身体に対する侵害のおそれが存在するといえるが、放射性物質は五感で捉えることができないため、どの地域がどの程度汚染されているのか、住民がどの程度の被ばくをしたのかが分からない。また、どの程度の被ばくによりどのような影響がいつ出るか が科学的に十分解明されていない。そのために ため、どの地域がどの程度汚染されているのか、住民がどの程度の被ばくをしたのかが分からない。また、どの程度の被ばくによりどのような影響がいつ出るか が科学的に十分解明されていない。そのために、汚染された地域の住民 - 71 -らは自身や家族が被ばくをしたかもしれない、健康被害が生じるかもしれない、将来子どもができたときに生まれてくる子どもに影響があるかもしれない、などの恐怖や不安を抱き、その不安を打ち消すことができないために大きな被害が生じている。 さらに、上記のとおり、本件事故によって一審原告らは生活を丸ごと破 壊されたのであり、これは単なる生活妨害とは異なる極めて重大な侵害態様であるという特質を有している。 イこのように、本件事故によって一審原告らは、従来の平穏生活権とは比較にならないほど重大な利益を侵害されたのであって、この点を看過すべきではない。原判決は、本件における被侵害利益を従来の平穏生活権 と同様に理解していると思われ、それが認容慰謝料額の低額化に直結しているものと考えられ、不当である。 (3) 人格発達権が取り入れられていないこと一審原告らが被侵害利益として主張する包括的生活利益としての平穏生活権は、人格発達権を包摂するものである。その内容は、後述のとおり、住み 慣れた環境で築き上げてきた生活基盤の中で成長発達し、自己実現をはかる権利であり、人の人格形成にとって非常に重要な権利である。 一審原告らは、本件事故によってこの人格発達権を含む包括的生活利益としての平穏生活権を侵害されたものであるが、原判決では当該権利については全く触れられておらず、被侵害利益として認定されていない。この点でも、 原判決は、一審原告らの被害実態を十分に把握していない ての平穏生活権を侵害されたものであるが、原判決では当該権利については全く触れられておらず、被侵害利益として認定されていない。この点でも、 原判決は、一審原告らの被害実態を十分に把握していない。 (4) 原状回復が不可能である点を理解していないこと本件事故によって、一審原告らが従前居住していた地域に多量の放射性物質が降り注いだことにより、一審原告らは、被ばくあるいは被ばくの可能性による健康被害に対する恐怖や不安を抱えたまま生きていかなければならな くなった。たとえホールボディカウンターによる検査で被ばく量が規定数値 - 72 -以下であったといわれたとしても、健康調査等で異常が発見されなかったとしても、被ばく等による健康被害に対する恐怖や不安は打ち消すことはできず、一生続くことになる。そのため、被ばくの不安にさらされない平穏で安全な生活を営む権利については、原状回復はほぼ不可能である。 また、住み慣れた環境の中で居住することを自らの意思で選択する権利、 住み慣れた環境で築いた生活基盤で社会生活を享受する権利、その生活基盤の中で成長発達し、自己実現を図る権利は、住み慣れた地域に居住できるようになり、地域共同体から様々な利益を享受し、その中で成長発達し自己実現を図ることができなければ原状回復はできない。 これらの原状回復のためには、人間関係や地域とのつながりを含めた地域 共同体の再生・復興が必要不可欠であるが、一度失われたこれらの関係やつながりを回復させることは極めて困難であり、原状回復はほぼ不可能である。 このように、一審原告らが本件事故によって侵害された権利は原状回復が不可能であり、侵害の程度は極めて重大であるにもかかわらず、原判決はこの点を踏まえておらず、その結果、 ほぼ不可能である。 このように、一審原告らが本件事故によって侵害された権利は原状回復が不可能であり、侵害の程度は極めて重大であるにもかかわらず、原判決はこの点を踏まえておらず、その結果、慰謝料認容額が低額になっている。 (5) 避難指示区域内外で権利侵害の程度に差を設けていること原判決は、「自主的避難等対象区域に居住していた者は、避難指示等により避難している者とは異なり、避難すべきかについて苦悩せざるを得なかったという事情は認められるものの、避難指示等により避難している者と比較すれば、居住地を自ら決定する権利の侵害の度合いは低い」と判示している (原判決526頁)。 確かに、本件事故前に避難指示区域外に居住していた者は、従前の居住地から強制的に避難させられる不利益は被っていないものの、本件事故発生により大量の放射性物質が飛散し、様々な情報が交錯する混乱の中で、避難すべきか留まるべきか苦渋の決断を下さざるを得なかったのであり、その権利 侵害の程度は避難を強制されることに匹敵するものである。 - 73 -また、一旦避難を決断した後は、その後の避難生活での苦痛、健康被害に対する不安、将来に対する不安、従前所属していた生活基盤からの離脱など、避難者が被った権利侵害の態様は、個別の事情によって多少の差はあるものの、基本的には避難指示区域内外によって異なるものではない。 したがって、原判決はこの点において判断を誤っている。 3 一審原告らが主張する被侵害利益(包括的生活利益としての平穏生活権)このように、原判決は、本件事故により一審原告らが受けた損害を理解するための大前提となる一審原告らの権利侵害の内容に対する理解が不足している。 一審原告らが主 利益としての平穏生活権)このように、原判決は、本件事故により一審原告らが受けた損害を理解するための大前提となる一審原告らの権利侵害の内容に対する理解が不足している。 一審原告らが主張する本件における被侵害利益は、包括的生活利益としての平穏生活権であり、その主な内容としては、以下に述べるように、(1)被ばく の不安にさらされない平穏で安全な生活を営む権利、(2)住み慣れた環境の中で居住することを自らの意思で選択する権利、(3)住み慣れた環境で築き上げてきた生活基盤で社会生活や家庭生活を享受する権利、(4)住み慣れた環境で築き上げてきた生活基盤の中で成長発達し、自己実現をはかる権利が挙げられる。 (1) 被ばくの不安にさらされない平穏で安全な生活を営む権利本件事故により、一審原告らが従前居住していた地域に多量の放射性物質が飛散し、深刻な被害を受けた。 一審原告らは、自身や家族がどの程度の被ばくをしたかわからないことや、低線量被ばくであっても健康被害が発生する危険性があること、また、健康 被害がいつ発生するかも分からないことから、被ばくによる健康被害に対する恐怖や不安を抱えたまま生きていかなければならなくなった。避難したとしても、被ばくによる今後の健康への恐怖や不安を打ち消すことはできず、それらの恐怖や不安は一生続くことになる。 他方、避難せずに被災地に留まっている者は、現在もなお、日々放射性物 質が放つ放射線によって被ばくを続けており、その健康被害への恐怖や不安 - 74 -は甚大である。一度避難した後に戻った者も、被災地に戻ることで被ばくによる健康被害への恐怖や不安を再び感じている。 このように、一審原告らのうち、本件事故を契機として避難した者も、 4 -は甚大である。一度避難した後に戻った者も、被災地に戻ることで被ばくによる健康被害への恐怖や不安を再び感じている。 このように、一審原告らのうち、本件事故を契機として避難した者も、避難せず現地に留まった者も、避難後に現地に帰還した者も、いずれも、被ばくの不安にさらされない平穏で安全な生活を営む権利を侵害された。 そして、この被ばくの不安にさらされない平穏で安全な生活を営む権利は「恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利」(憲法前文)を標榜した憲法上の基本理念を前提とし、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」(憲法13条後段)として、憲法上保障された権利である。 (2) 住み慣れた環境の中で居住することを自らの意思で選択する権利 一審原告らは本件事故前、それぞれの住み慣れた地域において居住し生活を営んでいた。しかし、本件事故により、避難指示区域に居住していた者は、強制的に避難を強いられた。 また、避難指示区域外であっても放射性物質の飛散によって汚染された地域に居住していた者は、被ばくに関する様々な情報が飛び交う中で、被ばく による健康被害の危険や被ばくに対する不安を抱えた生活から逃れるために別の地域に避難するか、被ばくの危険があっても慣れ親しんだ地域での生活を続けるか、という究極の選択を強いられた。そして、避難をした者は、苦渋の決断として避難することを余儀なくされた。また、避難をしなかった者の中には、避難することを希望していたにもかかわらず、仕事や親族との関 係など様々な事情から避難することができずに地元に滞在せざるを得なかった者も少なくない。 本来、自己の欲する地に住所又は居所を定め、あるいはそれを変更する自由及び自己の意思に反して居住地を 係など様々な事情から避難することができずに地元に滞在せざるを得なかった者も少なくない。 本来、自己の欲する地に住所又は居所を定め、あるいはそれを変更する自由及び自己の意思に反して居住地を変更させることのない自由は、居住・移転の自由として憲法上保障されている権利である(憲法22条1項)。そし て、この居住・移転の自由は、単に経済的自由としての性格のみならず、自 - 75 -己の移動したいところに移動できるという人身の自由としての側面や、自由な移動による様々な自然、文化、人々との接触・交流による精神的活動に必須であるという観点からすれば精神的自由としての性格も有している。 一審原告らが主張する住み慣れた環境の中で居住することを自らの意思で選択する権利はこの居住・移転の自由に基づくものであるが、本件事故によ り避難を強制された者、苦渋の決断により避難を余儀なくされた者、避難を希望するにもかかわらず避難ができなかった者のいずれについても、この権利が侵害されたものである。 (3) 住み慣れた環境で築き上げてきた生活基盤で社会生活や家庭生活を享受する権利 原審で主張してきたように、一審原告らは、それぞれの住み慣れた場所で、家族や親族とともに、職場や学校、地域の人々との関係性の中で生活していた。そこには、長い時間をかけて培ってきた人間関係があり、慣れ親しんだ地域の文化や伝統があり、長年親しんだ自然環境や景観があり、それらが一体となって地域共同体を形成していた。このような中で、一審原告らは、地 域共同体の一員として、様々な利益を享受しながら、放射線被ばくの不安を感じることなく、平穏で安全な社会生活や家庭生活を営んできた。 地域共同体から享受される利益としては、①生活費代替機能、② 域共同体の一員として、様々な利益を享受しながら、放射線被ばくの不安を感じることなく、平穏で安全な社会生活や家庭生活を営んできた。 地域共同体から享受される利益としては、①生活費代替機能、②相互扶助・共助・福祉機能、③行政代替・補完機能、④人格発展機能、⑤環境保全・自然維持機能などが挙げられる(甲B57・24頁以下)。一審原告ら は、本件事故前、住み慣れた環境で築き上げてきた生活基盤で社会生活や家庭生活を営み、地域共同体からこれらの生活利益を享受してきた。 しかし、本件事故によって、家族や地域住民は引き裂かれ、地域共同体の機能は失われた。避難指示区域では、避難指示により住民が強制的に避難をさせられて地域共同体が破壊された。避難指示区域以外の地域においても、 避難したことによって地域共同体からの離脱を余儀なくされ、そこから享受 - 76 -していた利益を失った。また、一審原告らの中には、様々な事情から、父親・夫だけが現地に残り、母親・妻と子どものみで避難している者がいるが、このような者は家族という最小単位の共同体が引き離され、破壊された。 このように、一審原告らは、住み慣れた環境で築き上げてきた生活基盤で社会生活や家庭生活を享受する権利を本件事故により侵害された。 (4) 住み慣れた環境で築き上げてきた生活基盤の中で成長発達し、自己実現をはかる権利人は、幼少期から青年期、壮年期を経て老年期に至るまで、人や環境との接触・交流を通じて変化し発達していくものである。子どもは地域共同体の中で大人や友達から学び、青年期にはそうした場を家庭や学校のみならず職 場や趣味の場に持つことができる。さらに成長すれば社会的役割にも変化が生じ、様々な社会的貢献をするとともに、結婚・出産があれ で大人や友達から学び、青年期にはそうした場を家庭や学校のみならず職 場や趣味の場に持つことができる。さらに成長すれば社会的役割にも変化が生じ、様々な社会的貢献をするとともに、結婚・出産があれば新しい命を育み、家族と地域に新しい構成員が生まれる。そして壮年期・老年期になれば自らの家庭や地域での蓄積を次世代の者に引き継ぐ。このように、人は生を受けてから死に至るまで、自己実現のために、あらゆる発達可能性を持ちな がら生きていくものである。このような権利を人格発達権と呼ぶことができるが、これは、居住・移転・職業選択の自由(憲法22条1項)、財産権(憲法29条1項)、生存権(憲法25条1項)、家族生活における個人の尊厳(憲法24条2項)、教育を受ける権利(憲法26条1項)、勤労の権利(憲法27条1項)、さらには子どもの権利条約6条2項、9条1項本文、 24条、28条によって保障されるものとして位置付けることが可能である。 一審原告らは、この人格発達権として、住み慣れた環境で築き上げてきた生活基盤の中で成長発達し、自己実現をはかる権利を本件事故によって侵害された。 (5) 明治大学政治経済学部の大森正之(以下「大森」という。)教授の検討結 果について - 77 -大森の意見書(甲B201)における「ふるさと剥奪損害」及び「ふるさと剥奪慰謝料」は、一審原告らが主張する「平穏で安全な生活を奪われたことに対する損害(慰謝料)」に包摂されるものであり、その算定にあたっては、一審原告らに生じた損害が過去に前例のない未曽有の損害であり、かつ、個別に金銭的評価を行なうことが非常に困難であることを踏まえ、従来の法 的な判断枠組みにとどまらず、経済学等の様々な知見を用いた多面的な検討が不可欠である。そし のない未曽有の損害であり、かつ、個別に金銭的評価を行なうことが非常に困難であることを踏まえ、従来の法 的な判断枠組みにとどまらず、経済学等の様々な知見を用いた多面的な検討が不可欠である。そして、大森は、「ふるさと剥奪損害」の実態を、本件事故・避難以前に被害者が享受していた「ふるさと」(農山村及び市街地における生活と生産の場)からの有形・無形の既得利益の不可逆的な消失として捉え、対象地区につき、被災の程度の重い福島県内12市町村を、「ふるさ と機能」が発揮される形態の違いから、農山村自治体(第1次産業生産額比率2%以上の田村市、南相馬市、川俣町、川内村、浪江町、葛尾村、飯館村の7市町村)と市街化自治体(同2%未満の広野町、楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町の5町)に分け、さらに、両自治体との比較対象地として、主要な避難地とされた都市部自治体(福島市、いわき市、郡山市の3市)を選定 するなどして、「ふるさと剥奪慰謝料」を約967万円から約1686万円の範囲と推計している。 大森の上記のような検討結果を踏まえると、一審原告らは、福島県内のいずれの地域に居住していた場合であっても、地域生活享受権を侵害されたことによって少なくとも約967万円の損害を被ったものである。 4 他判決の状況(1) 同種事件における判決本件と同種訴訟について全国各地で判決が出されているが、それらのうち、千葉地裁平成29年9月22日判決、東京地裁平成30年2月7日判決、東京地裁同年3月16日判決、横浜地裁平成31年2月20日判決、松山地裁 同年3月26日判決、山形地裁令和元年12月17日判決では、包括的生活 - 78 -利益としての平穏生活権について触れられている。 (2) 上記(1)の各判決に対する 決、松山地裁 同年3月26日判決、山形地裁令和元年12月17日判決では、包括的生活 - 78 -利益としての平穏生活権について触れられている。 (2) 上記(1)の各判決に対する評価上記(1)の各判決はいずれも、包括的生活利益ないしは包括的生活利益としての平穏生活権について言及したものである。 これらの判決については、避難者らの包括的生活利益が被侵害利益として 認定されている点は評価することができる。 ただ一方で、避難指示区域内外で被侵害利益を区別し、避難指示区域外避難者については被侵害利益として包括的生活利益を認定していないもの(上記(1)横浜地裁判決)や、包括的生活利益としての平穏生活権侵害を居住地決定権侵害の結果としての重大性をとらえるものと位置付けるにとどめてい るもの(上記(1)の東京地裁平成30年3月16日判決)なども存在しており、避難者の被害実態を正確に捉えているとまではいい難い。また、避難者らにとって包括的生活利益は非常に重要な権利であり、その侵害を認定した以上、権利侵害の程度は重大であるというべきものであるが、いずれの判決においても結論として慰謝料額は低額にとどまっており、過小評価されてい る。 本件事故による避難者が、避難前、避難中、帰還後のいずれの時点においても多様な苦痛を被っていることは、宇都宮大学国際学部の髙橋若菜准教授の意見書(甲B198)、意見書(追補)(甲B199)及び同准教授の別件訴訟(新潟地方裁判所令和3年6月2日判決)における尋問調書(甲B2 00)によって明らかとなっている。 本件においては、これら各地の訴訟の判決の内容を踏まえた上で、一審原告らが被った被害の実情を正確に捉え、それを適切に慰謝料額に反映させる (甲B2 00)によって明らかとなっている。 本件においては、これら各地の訴訟の判決の内容を踏まえた上で、一審原告らが被った被害の実情を正確に捉え、それを適切に慰謝料額に反映させるべきである。 第4 事実認定が不正確であること 1 個別の事実認定の問題点 - 79 -(1) 汚染状況の事実認定が不正確であることア原判決は、環境放射能状況として各市町村が公表した空間線量のみを認定し、空間線量のみをもって汚染状況を捉えている(原判決404頁以下)。 しかし、線量計の測定値が公表された空間線量より高いことや、モニタ リングポストの数値以上の汚染(いわゆるホットスポット)が認められることも多くある。一審原告らは甲B第137号証において市町村が設置したモニタリングポストと線量計の数値が一致せず、線量計の方が高い数値を示していることを立証した。にもかかわらず、原判決はこのような実態には一切触れず、各市町村が公表した空間線量のみを認定して いる。 イまた、放射線による汚染は体外にある線源から発生した放射線による被ばく(外部被ばく)のみではなく、体内に取り込まれた放射性物質の内部被ばくもあるから、空間線量のみをもって汚染状況を正確に把握することはできない。原判決はこの点を無視している。 (2) 避難者数の推移が不正確であること原判決は本件事故による避難者数の推移を認定している(原判決418頁以下)が、原判決が認定する避難者数は「市町村が把握している人数」(乙B199等)に過ぎず、実際の避難者数ではない。本件事故による避難者、特に避難指示区域外から自主的に避難した者には、被ばくに対する偏見や避 難元に滞在する親戚・友人らとの確執を避けるた 」(乙B199等)に過ぎず、実際の避難者数ではない。本件事故による避難者、特に避難指示区域外から自主的に避難した者には、被ばくに対する偏見や避 難元に滞在する親戚・友人らとの確執を避けるため「避難者」として登録していない者も多い。また、本件事故から長期間経過したために避難元への帰還をあきらめ、「避難者」としての登録を辞めた者もいる。 したがって、実際の避難者は市町村に登録された人より相当多いが、原判決はこれらの実態を全く見ようとせず、被害の実態を過小評価している。 (3) 新聞報道の状況の把握が不十分であること - 80 -原判決は本件事故後の新聞報道等の状況を認定しているが(原判決425頁)、認定したのは平成23年及び平成24年のごく一部の報道に過ぎない。 一審原告らは平成25年以降の汚染水問題や除染廃棄物の不適切管理、がれき撤去作業による放射性物質拡散などを報じた新聞記事や、一審原告らの避難生活の状況や避難元の住民の不安などを特集した新聞記事やニュース番 組、避難指示が解除された地域で児童生徒が減少していることを報じた新聞記事など、平成25年以降の被害実態を報じた新聞記事やニュース番組等を多数提出したが、原判決はこれらには一切言及していない。また、一審原告らが提出した平成26年3月2日の福島民友の新聞記事「「除染」再除染求める住民要望続出都路や川内」(甲B128)を平成24年の記事と誤っ て認定している。 このように、原判決は、平成25年以降も様々な被害実態が報道されていることを無視しており、不当である。 (4) 除染の状況の認定が不正確であること原判決は各市町村の発表を元に除染が何%終了した、として除染状況を認 定している(原判決4 れていることを無視しており、不当である。 (4) 除染の状況の認定が不正確であること原判決は各市町村の発表を元に除染が何%終了した、として除染状況を認 定している(原判決428頁以下)が、これらの数値は各市町村が計画した除染計画に基づくものにすぎず、全ての土地のことではない。そのため、たとえ除染が完了したとしても、被ばくのおそれが消滅したわけではない。 除染計画では住居や農地等に隣接する森林は林縁から約20mの範囲で行われているに過ぎず、それ以外の広大な森林の除染は行われていない。その ため、一旦除染をしても風雨によって森林内の放射性物質が流れ込み、線量の低下が得られないことも懸念される。一審原告らがこの点について主張立証し、原判決も新聞記事(甲B126)を引用しながら(原判決428頁)、再除染が必要とされることについて全く触れず、あたかも一度除染をすれば被ばくのおそれがなくなったかのような誤った認定をしている。 (5) 事業所や学校等の再開状況の認定が不十分である。 - 81 -原判決は、富岡町、浪江町、南相馬市小高区、同市旧緊急時避難準備区域、田村市、いわき市、福島市、郡山市、須賀川市、川俣町、国見町、白河市、伊達市の事業所や学校等の再開状況を認定しているが(原判決429頁以下)、これらの地域が本件事故前の状況とはほど遠い状況であることを無視し、一部の事業所や学校が再開すれば本件事故前の生活ができるようになっ ているかのような認定をしており、不当である。 一審原告らが詳細に主張立証したように、福島県では現在でも様々な被害が回復せず続いている。避難指示区域では避難指示が解除されても人口が回復していない。学校は児童・生徒数の減少が著しく、休校や統廃合も少な 原告らが詳細に主張立証したように、福島県では現在でも様々な被害が回復せず続いている。避難指示区域では避難指示が解除されても人口が回復していない。学校は児童・生徒数の減少が著しく、休校や統廃合も少なくない。医療施設は再開しても診療日や診療科目を減らすなどし、医療体制は 回復していない。商業施設は一部再開したものの、本件事故前の状況と比べると十分ではない。住民が帰還しないためにインフラが回復せず、インフラが回復しないために住民が帰還しない状況となっており、帰還が進む見通しは立っていない。そのため、避難指示が解除されても本件事故前の生活やコミュニティが回復したとはいえない。 一審原告らが上記について詳細に主張立証したにも関わらず、原判決は一切無視し、本件事故後の福島県の状況や被害の実態を正しく捉えていない。 (6) 将来の被ばくのおそれを無視していること原判決は、一審原告らが主張した汚染水や放射性廃棄物による被ばくの危険性や、福島第一原発の廃炉作業による放射性物質の拡散のおそれがあるこ とについて、一切触れていない。 原審で主張したように、福島第一原発から発生する汚染水は現在も大量に発生し続けており、貯蔵タンクから汚染水が漏れ出す事故が度々起きるなど、汚染水による汚染の危険性が現在も続いている。また、除染によって発生した放射性廃棄物は野ざらしで積み置かれているだけであり(甲B137)、 子どもが容易に近付けるような状態にされていたり、除染袋が劣化して破れ - 82 -中身が漏れ出たり、大雨で除染袋が流されて中身が消失したりなど、ずさんな管理による放射性物質の流出・被ばくの危険性がある。令和元年の台風19号の大雨の影響でフレコンバックが流出したように、広範囲な汚染の危険性は現 、大雨で除染袋が流されて中身が消失したりなど、ずさんな管理による放射性物質の流出・被ばくの危険性がある。令和元年の台風19号の大雨の影響でフレコンバックが流出したように、広範囲な汚染の危険性は現在も続いている。また、福島第一原発の廃炉作業は少なくとも40年かかるとされているが、原子炉内部の状態や燃料デブリの位置、状態などは 未だ分かっておらず、燃料デブリの取出しや搬出方法も決まっていないなど、今後の廃炉作業には様々な重大な問題がある。平成25年8月のがれき撤去作業で大量の放射性物質が拡散したり、平成31年1月までの1年間の放射性物質の放出量が前年と比べて2倍近くに増加したりするなど、今後廃炉作業によって大量の放射性物質が拡散するおそれもある。 将来の被ばくのおそれがあることは一審原告らの避難継続の合理性の判断の重要な要素であり、一審原告らはこれらの事実を証拠に基づいて主張したにもかかわらず、原判決はこの点を一切検討しないまま、安易に避難継続の合理性を平成24年までに限定しており、不当である。 2 避難の合理性及び被害の分析が不十分であること 原判決は、避難の合理性及び被害の分析として、黒田の意見書及び尋問内容を引用しているが、分析としては到底不十分なものである。 (1) 黒田の意見書、尋問内容の検討が不十分であることア避難継続の合理性の分析を無視していること黒田は、本件事故から数か月が経ち本件事故の状況がある程度社会に明 らかになった段階において、避難指示区域外の住民の「状況の定義」は、1mSv以上被ばくしても将来健康上の被害がないということは科学的に立証されておらず、もしも将来がんに罹患したとしても、それが本件事故に伴う被ばくが原因であることをその時点で証明す 状況の定義」は、1mSv以上被ばくしても将来健康上の被害がないということは科学的に立証されておらず、もしも将来がんに罹患したとしても、それが本件事故に伴う被ばくが原因であることをその時点で証明することは極めて困難だと予想され、したがってそれら起こりうる健康被害に対する一審 被告東京電力からの損害賠償や政府の公的サポートはほとんど期待でき - 83 -ないと考えられ、病気で苦しむのは自分だし、治療にかかる費用等一切も自分たち家族の負担となり、その後の教育や職業キャリアに少なからぬ制約がかかる、とし、避難生活の継続を選択したとしても十分に合理的な行動であったと評価することができる、と述べている(甲B148・10頁以下、証人黒田由彦(原審)10頁以下)。しかし、原判決 はこの意見を完全に無視し、その重要な点を看過している。 イ区域外避難者特有の被害の分析を無視していること黒田は、区域外避難の特徴として、避難するか避難せず福島に留まるかという二つの真逆の選択肢が存在し被ばくのリスクをどう捉えるかを軸にして異論が生じ、争いが起きるため、家族、親族、職場の同僚、友 人・知人などの人間関係が壊れ、人生の土台を構成していた社会関係が剥奪されたこと、避難した後に自責感情と周囲への警戒心という二次被害を受けていることを述べている(甲B148・20頁以下、証人黒田由彦(原審)19頁以下)。しかし、原審はこの点にも一切言及していない。 (2) 黒田以外の専門家の意見や調査報告書を一切検討していないこと本件事故は未曾有の事故であり、他に類をみない多様かつ複雑な被害が発生した。その被害の実態は十分に解明されていないため、社会学者、経済学者、法学者、心理学者、精神保健医学者、県市町村や民間研究 本件事故は未曾有の事故であり、他に類をみない多様かつ複雑な被害が発生した。その被害の実態は十分に解明されていないため、社会学者、経済学者、法学者、心理学者、精神保健医学者、県市町村や民間研究機関などにより様々な調査分析が行われている。 一審原告らはこれらの調査を元に被害実態を主張し、各意見書や調査報告書を提出したが、原判決はこれらを全く検討しておらず、不当である。 3 まとめ原判決は事実認定が不十分、不正確であり、被害事実を十分に捉えていないため、前述のように被侵害利益の捉え方が不十分、不正確となり、一審原告ら の精神的苦痛や慰謝料の評価が実態に即さないものとなっている。 - 84 -第5 区域外居住者である一審原告らの避難の相当性と、特に避難継続の相当性についての判断の不当性 1 避難の相当性及び避難継続の相当性は社会通念に照らして判断すべきこと原審で主張したように、避難継続の合理性は科学的見地だけではなく、社会通念に照らして判断すべきところ、一審原告らには低線量被ばくの危険性から も、社会学的見地等からも、社会通念に照らして避難継続の合理性が認められる。ところが、原判決では、この点についての適切な理解・評価がなされておらず不当である。以下、その点を詳述する。 2 低線量被ばくの評価の不当性(1) 区域外避難者の避難の合理性の判断について 原判決は、本件事故直後に避難指示等によらずに避難した人々についての避難の合理性について、①本件事故や自らが置かれている状況について十分な情報がなく、平成23年3月頃には、本件事故について、「第一原発3号機も『炉心溶融』」、「米スリーマイル島に匹敵する原発史上まれな大事故」、「メルトダウンの恐れ」と、放射性物 いる状況について十分な情報がなく、平成23年3月頃には、本件事故について、「第一原発3号機も『炉心溶融』」、「米スリーマイル島に匹敵する原発史上まれな大事故」、「メルトダウンの恐れ」と、放射性物質の拡散について「放射性物質 大量放出」、「放射線量、極めて危険」、「水道、基準上回る放射能」などと新聞報道されたこと、②放射線被ばくを防ぐため、同月11日から避難指示等が出され、同月15日までの間にその地域が3度拡大されたこと、③保安院は、同年4月12日、本件事故の放射性物質の放出量に関してレベル7と判断していること、④このような状況下で、自主的避難者数は同年5月頃 から同年9月頃までにかけて増加し、同月には福島県全体で5万人を超えていること、⑤ICRP勧告では、年間約100mSvを下回る線量においては、生物学的/疫学的知見に基づく根拠が得られていないが、ある一定の線量の増加に正比例して放射線起因の発がんまたは遺伝性影響の確率が増加するというLNTモデルが採用されていること、⑥年間100mSv以下であ っても放射線量が増加するに従って発がんの確率も増加するという見解も存 - 85 -在していたこと、⑦一審被告国がICRPの勧告を踏まえて避難指示の基準を年間20mSvと定めたのは本件事故後の平成23年7月19日のことであることを挙げ、本件事故発生当初の時期は、自らの置かれている状況について十分な情報がない中で、大量の放射性物質の放出による放射線被ばくへの恐怖や不安を抱き、その危険を回避するために避難することには一定の合 理性が認められるとした上で(原判決512頁、513頁)、中間指針第一次追補が定める自主的避難等対象者は類型的に避難することが合理的であると評価することができるとしてその避難の合理性を認めるとともに 理性が認められるとした上で(原判決512頁、513頁)、中間指針第一次追補が定める自主的避難等対象者は類型的に避難することが合理的であると評価することができるとしてその避難の合理性を認めるとともに(同513頁)、中間指針等や一審被告東京電力の賠償基準において自主的避難等対象区域に指定されていなかったとしても、本件事故当時の居住地と福島第一 原発及び避難指示区域との位置関係、放射線量、避難者の年齢、家族構成及び心身の状況、避難者が入手した放射線量に関する情報、本件事故から避難を選択するまでの期間等の諸事情を総合的に考慮して避難及びその継続に合理性が認められる場合には、かかる避難及びその継続によって生じた損害は本件事故と相当因果関係が認められるとしている(同514頁)。 原判決の判断については、避難指示等によらない避難であることのみを理由に避難の合理性を否定しなかったという点において正当である。 (2) 区域外避難者の避難継続の合理性に関する判断についてア原判決の判断しかし、原判決はこのように評価されるべき点がある一方で、避難継続 の合理性について適切な判断がなされていない。すなわち、原判決は、旧居住制限区域や旧避難指示解除準備区域に居住していた者の避難の継続の合理性が認められるのは平成30年3月31日までであるとする一方(原判決510頁、511頁)で、自主的避難等対象区域に居住していた者らについては、平成23年12月の時点で「放射性物質の放出が 管理され、放射線量が大幅に抑えられている」というステップ2が完了 - 86 -するなど本件事故は収束に向かっていることが確認できたといえるなどという理由から、妊婦・子ども以外の者の避難の継続の合理性が認められるのは平成23年 いる」というステップ2が完了 - 86 -するなど本件事故は収束に向かっていることが確認できたといえるなどという理由から、妊婦・子ども以外の者の避難の継続の合理性が認められるのは平成23年12月31日まで、妊婦・子どもについては放射線に対する感受性が高いと一般に認識されているとの理由で平成24年8月31日までとした(原判決513頁、514頁)。 このように、避難指示等によらない避難者にはごく短期間しか避難の継続の合理性を認めず、これにより損害の範囲も著しく限定されるという結果を生じさせている。 イ原判決の不当性本件の避難指示区域外からの避難者にあたる一審原告らは、自身が接し た報道の内容や放射性物質による汚染を意識した生活を強いられたことなどの事情があって、放射線被ばくや被ばくによる不安から避難を余儀なくされたものであり、皆それぞれに困難を抱えながら避難をした。そして、一審原告らは、事故時の居住地が放射性物質の汚染によって変容したこと、今後の廃炉作業に伴う再度の放射性物質拡散への不安、避難 先での定着や帰還先の喪失等各一審原告の現状から避難を継続せざるを得ない状況にあり、避難の合理性と避難継続の合理性を主張立証した。 しかし、原判決は一審原告らの上記主張には一切言及せず、年間積算線量が20mSv以下の地域は安全であるという何ら証明のない一審被告らの主張に基づき機械的に設定された区域指定をことさらに重視するの みで、低線量被ばくの危険性を軽視し、結果として区域内避難者と区域外避難者との間で大きな差を生じさせ、不合理な結果を招いている。 (3) 低線量被ばくのリスクと避難の合理性ア低線量被ばくのリスクに関する原判決の認定原判決は、低線 区域外避難者との間で大きな差を生じさせ、不合理な結果を招いている。 (3) 低線量被ばくのリスクと避難の合理性ア低線量被ばくのリスクに関する原判決の認定原判決は、低線量被ばく(年間100mSv以下の放射線量による被ば く)のリスクに関し、概略以下のとおり認定している(原判決515 - 87 -頁)。 (ア) 100mSv以下の被ばく線量では、放射線による発がんのリスクは他の要因による発がんの影響によって隠れてしまうほど小さいため、放射線による発がんリスクの明らかな増加傾向を証明することは難しい。 (イ) 少なくとも100mSvを超えない限り、がん発症のリスクが高まる との確立した知見は得られておらず、LNTモデルは、科学的な不確かさを補う観点から、公衆衛生上の安全サイドに立った判断として採用されているものに過ぎない。 (ウ) ICRPの勧告において、公衆被ばくに対する線量限度年1mSvは緊急時被ばく状況においては適用されず、緊急時被ばく状況における参 考レベルは予測線量20mSvから100mSvまでの範囲にあるものとし、事故による汚染が残存する現存被ばく状況においては、年間1mSvから20mSvまでの範囲に設定すべきであるとしている。 (エ) これらの科学的知見等に照らすと、年間20mSvを下回る被ばくが健康に被害を与えると認めることは困難であるといわざるを得ない。 しかし、原判決のこうした姿勢は、そもそもLNTモデルに対する不正確な理解を前提とするものであるうえ、確定的影響や低線量被ばくの特性についての理解を欠くものである。 イ LNTモデルを「安全サイドに立った考え方」とした原判決の誤り(ア) 同モデルは生物 を前提とするものであるうえ、確定的影響や低線量被ばくの特性についての理解を欠くものである。 イ LNTモデルを「安全サイドに立った考え方」とした原判決の誤り(ア) 同モデルは生物学的・細胞学的知見により裏付けられていること LNTモデルは、種々の実験や理論的裏づけに基づいて採用されたものであって、原判決が言うように、安全サイドに立った判断として国際的に採用されているものではない。すなわち、ICRPの2007年勧告においては、100mSv以下の放射線被ばくの影響に関し、「がんの場合、約100mSv以下の線量において不確実性が存在するにして も、疫学研究及び実験的研究が放射線リスクの証拠を提供している」 - 88 -(甲B3の本文16頁)と述べ、疫学データのみならず実験データにも裏付けられていることを明言している。 また、米国科学アカデミーの「電離放射線の生物影響に関する委員会(BEIR)」が公表した報告書「低線量電離放射線による健康リスク(BEIR VII)においても、同委員会がLNTモデルを採用し、他の モデルを採用しない理由として「LNTモデルが最近の研究が示す科学的証拠と矛盾しない」ことを挙げている(甲B192)。 細胞レベルにおける知見を一例挙げると、人間の線維芽細胞(真皮に存在し、コラーゲンやヒアルロン酸を産出する細胞)に放射線を照射してDNAの二重鎖切断を発生させる実験によれば、線量とDNAの二重 鎖切断の関係は1.3mGyから100mGyまできれいな直線関係を示しており、そうすると低線量領域においても、線量と効果の比例関係は一目瞭然である。 このように、LNTモデルは、「疫学データからは100mSv以下の領域では有意な結果 いな直線関係を示しており、そうすると低線量領域においても、線量と効果の比例関係は一目瞭然である。 このように、LNTモデルは、「疫学データからは100mSv以下の領域では有意な結果が得られないが、安全サイドからこれを採用する」 という消極的な意味合いのものではなく、生物学的・細胞学的な実験データからも裏付けられたものであり、だからこそ、各種国際機関でも採用されているのである。 (イ) 「100mSv以下では有意なリスクが認められない」ことの意味原判決も認定するように、疫学データによると100mSv以下の被 ばく線量では統計的に有意ながん死の影響が認められていないことの意味は、被ばく影響がなかったということではなく、他の要因によるがん死に被ばく影響がまぎれてしまい、統計的に有意な増加としては観察されなかったということである。 これを言い換えると、疫学的研究方法によって発がんリスクの増加が 証明できるぎりぎりの点は100mSvまでであるが、それ以下の被ば - 89 -く線量の領域でも、生物実験や細胞レベルでの知見を総合的に考慮すれば、LNTモデルが成り立つということである。 (ウ) まとめ低線量被ばくの健康影響を考えるに際しては、以上のようにLNTモデルの意義を正しく理解した上で、放射線被ばくによる確率的影響(晩 発障害)にしきい値はないこと、すなわち放射線に「安全量」は存在しないことを重視すべきである。 原判決にはこうした視点が完全に欠如しており、不当である。 ウ年間20mSvでは健康被害が認められないとする原判決の誤り低線量の放射線を被ばくしたことによる健康影響は、確率的影響(晩発 障害)に 完全に欠如しており、不当である。 ウ年間20mSvでは健康被害が認められないとする原判決の誤り低線量の放射線を被ばくしたことによる健康影響は、確率的影響(晩発 障害)に分類されるものであり、固形がんや白血病という病気の性質上、症状が明らかになるまで数年から数十年の歳月を必要とする。 そして、こうした晩発障害に関して疫学調査を実施し、統計的に有意な結論を導き出すためには、大規模な被ばく集団を対象とした長期間にわたる調査が必要不可欠である。 このような知見を前提とすれば、原判決が述べるように、年間20mSvを下回る被ばくが健康に影響を与えると認めることは困難である、あるいは、年間積算線量20mSvをもって避難指示区域等を指定・解除する基準とすることには一応の合理性が認められると断定することは、時期尚早と言わざるを得ない。 特に、本件事故のように、未成年者の大規模な集団(福島県民健康調査の対象者は30万人を超える。)が低線量放射線に被ばくした疑いがある事故は前例がなく、より慎重な姿勢が要求されて然るべきである。 3 社会学的見地から避難継続の合理性が認められること前述のように、黒田は、本件事故から数か月が経ち原発事故の状況がある程 度社会に明らかになった段階において、避難指示区域外の住民の「状況の定義」 - 90 -は、1mSv以上被ばくしても将来健康上の被害がないということは科学的に立証されておらず、仮に将来がんに罹患したとしても、それが本件事故に伴う被ばくが原因であることをその時点で証明することは極めて困難だと予想され、したがってそれら起こりうる健康被害に対する一審被告東京電力からの損害賠償や政府の公的サポートはほとんど期待できないと考え う被ばくが原因であることをその時点で証明することは極めて困難だと予想され、したがってそれら起こりうる健康被害に対する一審被告東京電力からの損害賠償や政府の公的サポートはほとんど期待できないと考えられ、病気で苦しむの は自分だし、治療にかかる費用等一切も自分たち家族の負担となり、その後の教育や職業キャリアに少なからぬ制約がかかる、とし、避難生活の継続を選択したとしても十分に合理的な行動であったと評価することができる、と述べ(甲B148・10頁以下、証人黒田由彦(原審)10頁以下)、社会学的見地からも避難継続の合理性が認められるとしている。 また、黒田は、生活環境の被ばく水準が本件事故前の水準に戻るか、年間1mSv以下になるまで避難者が避難を継続することは合理的と評価できるとし、年間1mSvを超える線量が測定される限り、避難継続の合理性が認められ、その間に生じた損害は本件事故と因果関係があるものとして賠償されるべきと述べる(証人黒田由彦(当審)4頁)。さらに、黒田は、平成26年頃に、そ れまでの帰還する状況ではないという社会的現実が変化し、多様化し始めたと述べる。黒田の上記各発言からすれば、年間1mSvを超える線量が測定される限り避難継続の合理性が認められ、どんなに早くても同年頃までは避難継続の合理性が認められるべきである。 原判決は、こうした黒田の指摘について何ら考慮・検討できていない。 4 原発事故後の避難者数、除染の状況からも平成24年以降の避難継続の合理性が認められること(1) 平成24年以降も相当数の避難者がいたこと前述のように、原判決は、避難者数の推移の認定を実態より過小評価しているが、原判決の認定によっても、自主的避難等対象区域であるいわき市、 福島市、白 年以降も相当数の避難者がいたこと前述のように、原判決は、避難者数の推移の認定を実態より過小評価しているが、原判決の認定によっても、自主的避難等対象区域であるいわき市、 福島市、白河市、郡山市、須賀川市、川俣町、国見町、伊達市において、平 - 91 -成24年以降も相当数の避難者がいたことになり、平成24年以降も自主的避難等対象区域の避難継続の合理性が認められる。にもかかわらず、原判決が避難継続の合理性を平成24年までしか認めなかったことはおよそ不合理であり、不当である。 (2) 除染が終わっていないこと 前述のように、除染は一度実施されても被ばくのおそれが消滅するものではないが、原判決の認定によっても、平成28年6月時点でいわき市、郡山市、福島市の除染は完了しておらず、特にいわき市では住宅の3割強が除染未了(原判決429頁)であり、被ばくのおそれがないと言える状況ではなかった。にもかかわらず、原判決が避難継続の合理性を平成24年までしか 認めなかったことはおよそ不合理であり、不当である。 (3) まとめこのような状況に鑑みれば、一審原告らが避難を継続することは社会通念上相当であって、これを看過している点においても原判決は不当である。 第6 損害額の不当性について 1 一審原告らの損害は中間指針等が定める額より大きいこと(1) 原判決の問題点原判決は、中間指針等について、「当事者による自主的な解決に資する一般的な指針に過ぎないから、その内容は裁判所を拘束するものではない」としながら、「法学者及び放射線の専門家等の委員で構成された原賠審におい て多数の被害者への迅速、公平かつ適正な賠償を行うとの見地から、過去の裁判例並びに慰謝料額の基準も 束するものではない」としながら、「法学者及び放射線の専門家等の委員で構成された原賠審におい て多数の被害者への迅速、公平かつ適正な賠償を行うとの見地から、過去の裁判例並びに慰謝料額の基準も踏まえて定めた基準であるから一応の合理性を有するものである」と認定して中間指針等と同じような賠償基準で慰謝料額を決めている。具体的には、本件事故当時居住していた区域が避難指示区域に該当するか否かに応じて、本件事故当時の居住地が帰還困難区域であっ た者は1500万円、本件事故当時の居住地が旧居住制限区域と旧避難指示 - 92 -解除準備区域であった者は平成30年3月31日まで月額10万円、本件事故当時の居住地が旧緊急時避難準備区域であった者は平成24年8月31日まで月額10万円、本件事故当時の居住地が自主的避難等対象区域であった者は平成23年12月まで月額6万円、加えて妊婦・子どもは平成24年1月1日から8月31日まで月額5万円を加算するとし、本件事故当時の居住 地が帰還困難区域であった者、自主的避難等対象区域であった者の慰謝料額を若干変更したものの、賠償基準の基本的な考え方は中間指針等の考え方をそのまま踏襲している。 しかし、一審原告らが原審で主張したように、中間指針等は暫定的に定められた最低限の指針にすぎず、自主的解決のための指針としての性格をもつ ものであり、被害実態を十分に把握せず、一審被告東京電力の帰責性も考慮しないまま策定されたものであり、裁判規範とするに足りるものではない。 原判決は一審原告らが主張した中間指針等の問題点を全く検討しないまま、安直に中間指針等をそのまま踏襲しており、不当である。 以下、中間指針等の問題点を改めて主張する。 (2) 中間指針等は自主的解決に した中間指針等の問題点を全く検討しないまま、安直に中間指針等をそのまま踏襲しており、不当である。 以下、中間指針等の問題点を改めて主張する。 (2) 中間指針等は自主的解決に資する一般的な指針であり、最低限の賠償基準であること原判決が認定しているように、中間指針等は「当事者による自主的な解決に資する一般的な指針」として策定されており、一方当事者である一審被告東京電力も抵抗せず応じる内容とすることを前提に策定されている。 中間指針等のこのような位置づけについては、原賠審の審議中にも委員から繰り返し言及されている。このように、中間指針等で定められている損害賠償の範囲やその金額は、迅速な救済の実現を図る狙いと、そもそも当事者間の合意を促進するための指針であるという性質上の制限から、賠償金を支払う側の一審被告東京電力さえも納得せざるを得ない水準で定められたもの である。そのため、中間指針等は、その成り立ちや性質上、必然的に損害賠 - 93 -償の範囲や金額において、一審被告東京電力さえも反対しにくいような極めて限定的なものであるという特徴を持つこととなり、このような性質に十分な留意が必要である。 以上のとおり中間指針等は、裁判規範たる賠償基準を策定することを目的として策定されたわけではなく、あくまで賠償を負担する一方当事者たる一 審被告東京電力の支払に対する意思をも考慮した上で、迅速かつ画一的な賠償を実現するという目的のもとで賠償額を限定的に考えるものであり、このような目的が公にも宣言され、指針自体にも明示されている。当然ながら中間指針等の策定にあたり個々の被害の実態も十分に検討されていない。これが司法における賠償法理と相容れないことは明白である。 公にも宣言され、指針自体にも明示されている。当然ながら中間指針等の策定にあたり個々の被害の実態も十分に検討されていない。これが司法における賠償法理と相容れないことは明白である。 したがって、中間指針等は、加害者である一審被告らに配慮し、低廉に抑えられた賠償金額が示されたものであるから、原判決が、その基準をそのまま踏襲し、損害を認定していることは不当である。 (3) 一審被告東京電力の帰責性が考慮されておらず、被害実態の反映が不十分であること 一審原告らが原審で主張したように、中間指針等では一審被告東京電力の加害行為及びその悪質性が考慮されておらず、民法学者から不十分さが指摘されている。また、原審で主張したように、その策定に際して被災住民の被害の実態調査や本件事故の関係市町村の首長の意見聴取も十分になされたとは言えず、被害の実態が十分に反映されているとは到底いえない。 (4) 交通事故方式を採用することの不合理さ一審原告らが原審で主張したように、中間指針等では交通事故方式(個別積算により損害の全てが捕捉されているという考え方)が採用されているが、交通事故方式を採用することの合理性、妥当性については一切検討されておらず、合理的理由が認められない。 原審で繰り返し主張したように、本件事故は未曾有の災害であり、これま - 94 -でに生じたことのない広範かつ複雑な被害、すなわち包括的生活利益としての平穏生活権を被侵害利益とする非典型の被害が発生した。従前の典型的被害類型を想定して建てられた個別損害の積算では被害の全体を捕捉することは困難であり、交通事故方式を採用したことは不合理である。 (5) 自賠責を基準とし、かつ自賠責基準よりも減額していることの不合 類型を想定して建てられた個別損害の積算では被害の全体を捕捉することは困難であり、交通事故方式を採用したことは不合理である。 (5) 自賠責を基準とし、かつ自賠責基準よりも減額していることの不合理さ 一審原告らが原審で主張したように、中間指針等では自賠責基準が採用されているが、自賠責の傷害慰謝料自体に明確な根拠はない。強制的な避難生活の精神的苦痛としては、自賠責基準は極めて低額であり不十分である。 にもかかわらず、中間指針等は慰謝料額を自賠責基準からさらに減額し、かつ、中間指針等は、自賠責基準を採用しながら慰謝料を逓減している。中 間指針等のこのような考え方は、本件の被害実態に全く即しておらず、暫定的に定められた最低限の指針に過ぎないことを示している。 (6) 健康不安という要素が考慮されていないこと一審原告らが原審で繰り返し主張したように、本件事故によって、一審原告らは被ばくによる健康不安を一生抱えて生きなければならなくなった。低 線量被ばくの影響は未だ科学的に解明されていないことはこれまで繰り返し主張してきたところであり、一審原告らを含む一般人が被ばくによる健康被害をより深刻に受け止めるのは当然のことであって、その不安感は社会通念に照らして到底看過できない精神的苦痛であり、慰謝料の考慮要素として当然に含まれるべきである。しかし、中間指針等は、被ばくによる健康不安に ついて慰謝料を基礎づける要素から除外しており、重大な欠陥がある。 (7) 区域による区分には合理性がないこと(特に区域内外の区別)中間指針は、避難指示対象区域ごとに賠償基準を策定しているが、区域による区分には合理性がない。 原審で主張したように、避難指示対象区域は、被ばくによる健康被害が否 区域内外の区別)中間指針は、避難指示対象区域ごとに賠償基準を策定しているが、区域による区分には合理性がない。 原審で主張したように、避難指示対象区域は、被ばくによる健康被害が否 定できない区域すべてに発せられるのではなく、原発事故という緊急時に、 - 95 -切迫した国民への害悪の危険から、最低限この範囲の住民はその意思に反しても避難させるべきという政策的判断に基づき設定されたものである。他方、本件において一審原告らに発生した損害を評価するにあたっては、個々の一審原告について存在する各事情を個別具体的に検討すべきものであって、このような避難指示対象区域の線引きとは全く関連性はない。したがって、避 難指示対象区域内か区域外かは、住民に発生した損害を算定するにあたっての基準とはならないのである。 いずれの区域に居住していた一審原告らも、一旦避難した以上は同様の苦痛・損害を被っているのであって、その間で損害賠償額に差を設ける合理的理由は存在しない。中間指針等はこの点を見誤っている。 (8) 中間指針第四次追補で認められた慰謝料は故郷喪失慰謝料とはいえないこと一審原告らが原審で主張したように、中間指針第四次追補では「長年住み慣れた住居及び地域が見通しのつかない長期間にわたって帰還不能となり、そこでの生活の断念を余儀なくされた精神的苦痛等」に対する慰謝料が示さ れたが、これは、実質的には中間指針及び第二次追補で示された「避難等に係る精神的損害」に対する慰謝料や「いつ自宅に戻れるか分からないという不安な状態が続くことによる精神的苦痛」に対する慰謝料と同質のものであり、これらの慰謝料の支払期間を延長した上で、将来支払分を一括払いすることで慰謝料額を増額したにすぎないもので か分からないという不安な状態が続くことによる精神的苦痛」に対する慰謝料と同質のものであり、これらの慰謝料の支払期間を延長した上で、将来支払分を一括払いすることで慰謝料額を増額したにすぎないものである。そのため、中間指針等で は故郷喪失慰謝料が含まれておらず、重大な欠陥がある。 なお、中間指針の第五次追補が出されたが、同追補も自主避難者に関してはほとんど踏み込まず、ふるさと変容に対する賠償では緊急時避難準備区域が少額であるなど、被災者間の格差は縮まっておらず、被災者の救済としてはなお不十分といわざるを得ない。自主的避難等対象区域や区域外の被災者 にも緊急時避難準備区域の被災者と同水準の日常生活阻害慰謝料、生活基盤 - 96 -変容による精神的損害が認められるべきである。 (9) まとめ以上のとおり、中間指針等で認められた避難慰謝料は一審原告らが避難生活で受けた精神的苦痛を慰謝するには不十分である上、避難指示区域によって不当に差を設けていることや、健康不安に対する精神的苦痛に対する慰謝 料や故郷喪失慰謝料を含めていないことなど、一審原告らの損害の填補には極めて不十分である。原判決がこれらの問題点を検討することなく中間指針等を踏襲していることは不当である。 2 避難区域内外による賠償額の差の不当性(1) 原判決の判断基準について 前述のように、原判決は、一審原告らの居住区域ごとに慰謝料に差異を設け、帰還困難区域については1人あたり1500万円、旧居住制限区域及び旧避難指示解除準備区域は平成30年3月31日を終期として月額10万円、旧緊急時避難準備区域は平成24年8月31日を終期として月額10万円、自主的避難等対象区域は平成23年12月31日を終期として月額6万円 除準備区域は平成30年3月31日を終期として月額10万円、旧緊急時避難準備区域は平成24年8月31日を終期として月額10万円、自主的避難等対象区域は平成23年12月31日を終期として月額6万円 (ただし妊婦と子どもについては平成24年8月31日を終期としてその間は月額5万円)、区域外避難者は諸事情を考慮して避難の合理性が認められれば自主的避難等対象区域に準じるとしている(原判決523頁から526頁まで、終期については509頁から514頁まで)。しかし、かかる原判決の掲げる基準及びそれに基づく慰謝料額の認定は、前述のとおり中間指針 を踏襲し損害額が低額である上、以下のような問題点がある。 (2) 算定根拠が明らかでないこと原判決は、慰謝料額の検討にあたって、「最終的には慰謝料額は各原告の個別事情を具体的に考慮して算定すべきである」としつつ、上記の区分は「慰謝料算定の目安」としている(原判決523頁)。 確かに一定の基準となる「目安」が必要であることは否定しないが、そも - 97 -そも原判決が目安とした居住区域ごとの金額の算出根拠が明らかでない。 また、原判決も認めるように「原告ごとに」「侵害の有無及び程度は異なる」のであるから、本来は地域が同一であっても個々の一審原告ごとに金額の相違が発生するのが自然であるが、原判決は、判決の中で各一審原告の個別事情を列挙はしているものの、慰謝料額は上記区分に従い決められており、 個々の一審原告ごとの個別事情を詳細に検討・考慮しているとは思えない。 かかる結果は、原判決は各一審原告の事情は理解しているかのように装いつつ、実際にはそれらの事情を慰謝料額に適切に反映させていないことの表れであることは明らかであり、極めて杜撰な事実認定と かかる結果は、原判決は各一審原告の事情は理解しているかのように装いつつ、実際にはそれらの事情を慰謝料額に適切に反映させていないことの表れであることは明らかであり、極めて杜撰な事実認定といわざるを得ない。 (3) 区域による区分には合理性がないこと(特に区域内外の区別) 前述のように、中間指針等が避難指示対象区域ごとに賠償基準を定めていることに合理的な理由はなく、原判決が中間指針等と同様に避難指示対象区域ごとに賠償基準を定めたことにも合理的な理由はない。 したがって、本件において損害の内容及び損害額を認定するにあたっては、中間指針等の基準にとらわれず、一審原告らそれぞれの個別の事情に応じて 認定すべきである。 (4) 被害の実態を理解していないこと既に述べたように、原判決は被ばくによる恐怖と不安が長期間続くこと、生活を丸ごと破壊されたことを考慮していない。 黒田の分析として、避難がもたらした被害について「住み慣れたコミュニ ティから引き離されたことは、個々人にとって意味のある人生を成り立たせている中核的な条件が剥奪されるという重大な結果をもたらした」と認定しながら、損害額に反映していないのは不合理というほかない。 3 旧緊急時避難準備区域の一審原告らについて(1) はじめに 原判決は、旧緊急時避難準備区域に居住していた一審原告らの避難継続の - 98 -合理性について、平成24年8月31日までと限定した判断をしており、その結果、同区域に居住していた一審原告ら全員の損害を低額に評価し、請求を棄却している。原判決は、中間指針等どおりの損害賠償の水準となっているが、旧緊急時避難準備区域に居住していた一審原告らの置かれた状況からすると 居住していた一審原告ら全員の損害を低額に評価し、請求を棄却している。原判決は、中間指針等どおりの損害賠償の水準となっているが、旧緊急時避難準備区域に居住していた一審原告らの置かれた状況からすると、避難継続の合理性は同日までに限定されるべきではなく、中間指針 等による水準を超え、個別の事情に基づき慰謝料が認められるべきである。 なお、一審原告1-1らの中では、福島県南相馬市原町区からの避難者は一審原告3-1から同3-4まで、同18-1、同20-1から同20-3まで、同21-3の被承継人ら及び一審原告30-1から同30-4までが該当し、福島県田村市都路町地区からの避難者は一審原告41-1及び2が 該当するものである。 (2) 避難継続の合理性ア原判決の内容(原判決511頁から512頁まで)原判決は、旧緊急時避難準備区域は、常に避難のための立退き又は屋内への退避が可能な準備を行うことなどとされている地域であるところ、 ①避難指示等がなくとも、緊急時には立退き又は屋内退避を行う必要がある状態では安心した生活を送ることができないこと、②旧緊急時避難準備区域に隣接した区域では避難指示等が行われていることから、放射性物質による影響から身を守るために避難を開始することには合理性が認められると述べ、本件事故と避難開始との間に相当因果関係を認めて いる。 しかし、原判決は、旧緊急時避難準備区域は、③平成23年9月30日に指定の解除がされていること、④指定の解除が本件事故から約半年後に行われ避難してからそれほど時間が経過していないことから、帰還することは比較的容易であると考えられること、⑤同年12月16日には 「放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている」と 避難してからそれほど時間が経過していないことから、帰還することは比較的容易であると考えられること、⑤同年12月16日には 「放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている」と - 99 -いうステップ2の目標達成と完了を確認したことが発表されたことなどを根拠に、避難の継続の合理性が認められるのは平成24年8月31日までであるとして、同日以降についての損害については本件事故との間に相当因果関係を否定しているようである。 原判決は一審被告東京電力の賠償基準ないし中間指針第二次追補の考え 方をそのまま踏襲したものと考えられる。この点、中間指針第二次追補が賠償範囲を平成24年8月31日までに限定した理由は、⑥インフラ復旧が同年3月末までに概ね完了する見通しであること、⑦同年度第2学期が始まる同年9月までには関係市町村において、当該市町村内の学校に通学できる環境が整う予定であること、⑧避難者が従前の住居に戻 るための準備に一定の期間が必要であることなどにあるとされており、原判決も同様の理解に立つものと考えられるところである。 イ原判決の問題点(ア) はじめに原判決は、第一に、暫定的判断に過ぎない中間指針第二次追補の考え 方に追従し、避難者全体に共通する事情、区域ごとに共通する事情、各一審原告固有の事情を把握し、複合的に審理することを怠った点に大きな問題がある。この点については前記で批判したとおりである。 第二に、原判決は、上記③から⑤までの事情を根拠として、要するに、遅くとも平成24年8月末頃には、旧緊急時避難準備区域での生活は平 穏を取り戻し、かつ、帰還の準備も十分に可能であると判示したものと考えられるが、同時点では、旧緊急時避難準備区 て、要するに、遅くとも平成24年8月末頃には、旧緊急時避難準備区域での生活は平 穏を取り戻し、かつ、帰還の準備も十分に可能であると判示したものと考えられるが、同時点では、旧緊急時避難準備区域での生活は平穏なものなどとは到底いえないため、全ての避難者について避難継続の合理性が認められるべきである。 本項では、特に第二の点につき論じる。 (イ) 原判決が考慮すべき旧緊急時避難準備区域固有の事情 - 100 -a 旧緊急時避難準備区域の指定政府は、本件事故が発生した平成23年3月11日、福島第一原発から半径3km圏内の住民に対して避難の指示をし、半径3kmから10km圏内を屋内退避指示区域として指定した(乙B15)。しかし、避難指示区域及び屋内退避指示区域はその後拡張されていった。 同月12日には、福島第二原発から半径10km圏内の区域及び、福島第一原発から半径20km圏内に変更した(乙B16、乙B17)。 さらに、同月15日には、屋内退避指示区域は福島第一原発から半径20km以上、30km圏内とされた(乙B18)。 平成23年4月22日、政府は福島第一原発から半径20kmから 30km圏内に指示されていた屋内退避指示を解除し、同区域について緊急時避難準備区域と指定した。これにより、緊急時避難準備区域における居住者は常に緊急時に避難のための立退き又は屋内への退避が可能な準備を行うこととされ、かつ、子ども、妊婦、要介護者、入院患者等は事実上立入りを制限されており、保育所、幼稚園、小中学 校及び高等学校は休所、休園又は休校とすること、勤務等のやむを得ない用務等を果たすために当該区域内に入ることは妨げられないが、その場合においても常に避難のた れており、保育所、幼稚園、小中学 校及び高等学校は休所、休園又は休校とすること、勤務等のやむを得ない用務等を果たすために当該区域内に入ることは妨げられないが、その場合においても常に避難のための立退き又は屋内への退避を自力で行えるようにしておくことが求められた(乙B21の2枚目から3枚目まで)。 なお、南相馬市においては、同市独自の判断に基づいて、平成23年3月16日に、同市の住民に対する一時避難の要請がなされた。同年4月22日に、政府による屋内退避区域の指定が解除された後も、同市からは自宅への帰宅を許容する旨の見解が示されたにとどまった(乙B1の1・8頁参照)。 b 旧緊急時避難準備区域指定の解除とその後の除染 - 101 -平成23年8月4日、原子力安全委員会は、指定解除の条件として、緊急時避難準備区域については屋内退避、避難の対応を要する事態が発生する可能性が極めて低く、かつ仮にそのような事態が発生しても対応のための十分な時間的余裕があると判断されることを条件として示した。もっとも、新たな防護措置については、地元の自治体・住民 等が関与できる枠組みを構築し、適切に運用するものとされ、住民が受ける被ばくの低減を図るために必要な除染とモニタリングも継続的に行うこととされていた。 上記の原子力安全委員会の示した考え方を受け、政府は、平成23年9月30日、緊急時避難準備区域の指定を解除したが、その後、モ ニタリングおよびその結果を踏まえての除染等が順次、実施されていった。田村市においては、平成25年6月に面的除染が終了したものの、南相馬市においては、平成27年7月末時点においても除染の実施率が宅地は26%、農地は15%、森林は46%、道路 順次、実施されていった。田村市においては、平成25年6月に面的除染が終了したものの、南相馬市においては、平成27年7月末時点においても除染の実施率が宅地は26%、農地は15%、森林は46%、道路は6%にとどまっていた(甲B30)。 c 避難指示区域との距離そもそも、旧緊急時避難準備区域は福島第一原発から20kmから30km圏内と、福島第一原発に近接した地点である。緊急時避難準備区域の指定の解除後も、南相馬市、田村市が共に隣接する浪江町はその大部分が帰還困難区域(指定時に、5年間を経過してもなお、年 間積算線量が20mSvを下回らないおそれがあり、指定時に年間積算線量が50mSv超の地域)であった。 5年を経過してもなお、帰還することができない町に隣接し、かつ、福島第一原発とも最大30km程しか離れていない地域で平穏な生活を営むことができないことは明らかである。 d 避難者の推移 - 102 -南相馬市においては、本件事故直後の総避難者2万9315人のうち、原判決が避難継続の合理性を否定した平成24年8月の時点でも2万人弱が避難を継続している。また、田村市においては本件事故直後の平成23年5月11日時点で総人口4495人のうち、2627人が避難をしていたところ、平成24年8月末日時点においても20 67人が避難を継続している。旧緊急時避難準備区域からの避難者全体は、平成24年8月14日時点では約2.5万人であったところ、平成26年10月1日時点となってもなお約2万人が避難生活を続けているのである(甲B42から51まで)。 (ウ) 避難継続の合理性は平成24年8月末日以降も認められること 以上のとおり、 日時点となってもなお約2万人が避難生活を続けているのである(甲B42から51まで)。 (ウ) 避難継続の合理性は平成24年8月末日以降も認められること 以上のとおり、旧緊急時避難準備区域は、福島第一原発から20から30kmの範囲内の区域であり、住民が事故直後に抱いた被ばくへの不安や日常生活への支障は極めて大きいものであったと認められる。 また、その後、緊急時避難準備区域の指定が解除されたとはいえ、指定の解除は防護措置をとることが不要となったことを意味するものでは なく、住民らの不安が解消されたわけではない。 旧緊急時避難準備区域は、5年を経過してもなお、帰還することができない町に隣接し、かつ、福島第一原発とも最大30km程しか離れていない地域であるから、客観的に平穏な生活を営むことができないことは明らかであるし、現実に避難者の多くは政府が緊急時避難準備区域の 指定を解除したのちも帰還していないことに鑑みれば、平成24年8月末日までに帰還を選択することが通常であるとは到底いえない。 したがって、旧緊急時避難準備区域における避難継続の合理性は平成24年8月末以降も認められるというべきである。 よって、原判決が旧緊急時避難準備区域に居住していた一審原告ら全 員の損害を低額に評価し、請求を棄却したことは不当である。 - 103 - 4 本件事故時に出生していなかった一審原告らについて(1) 本件事故時に胎児であった一審原告らについては母胎内で被ばくしており、既に出生していた子どもと同様に大量の放射線に被ばくしている。その結果、このような一審原告らは、放射線被ばくにより将来健康被害が発生するのではないかという不安にさいなまれている。この点 くしており、既に出生していた子どもと同様に大量の放射線に被ばくしている。その結果、このような一審原告らは、放射線被ばくにより将来健康被害が発生するのではないかという不安にさいなまれている。この点は、当時、赤ん坊 であった一審原告らと基本的に変わりがない。 (2) また、こうした一審原告らは、親が避難したことにより、当然、避難先にて出生した。このような一審原告らは、本来、福島において安定した状況において普通の生活ができたはずであり、親が当地に避難したことにより、生活が不安定となり、また生活レベルも低下した。この点も、当時、赤ん坊と して出生していた原告と、基本的に変わりはない。 (3) しかしながら、原判決は、こうした一審原告らについて、避難を体験していないという理由で権利侵害自体を否定しており、不当というほかない。 このような一審原告らについても、相当額の慰謝料が認められるべきである。 (4) 本件事故後に懐胎し、出生した子についても、両親が被ばくしたことにより、両親の放射線被ばくを承継しており、将来、長期にわたって、健康被害が発生するのではないかと不安にさいなまれているのであるから、親の慰謝料とは別個に観念されるべきである。 一審原告28の世帯の原告となっていない子らは避難先で出生している が、甲状腺検査でA2判定が出ており(甲C52、53)、本件事故後避難先で懐胎し出生した子についても放射性物質の影響の有無に不安を抱かざるを得ない状況にあるのは事故前に出生した子と同様である。 第7 弁済の充当について原判決は、「具体的な立証が困難な生活費増加費用についても慰謝料増額事 由として加味」して一審原告らの慰謝料額を認定したうえで(原判決523 - 104 -頁)、原判決別紙「損害一 原判決は、「具体的な立証が困難な生活費増加費用についても慰謝料増額事 由として加味」して一審原告らの慰謝料額を認定したうえで(原判決523 - 104 -頁)、原判決別紙「損害一覧表」に慰謝料に対する弁済として記載されている金額を弁済充当しているが、このような充当処理は、本件訴訟の慰謝料と中間指針等に基づく慰謝料の性質に対する正しい理解を欠いており、誤っている。 すなわち、これまで述べてきたとおり、本件訴訟における慰謝料は、生活基盤そのものを永続的に破壊されたという被災者の被害の本質に着目したもので あって、そこには多種多様な権利・利益が複雑かつ密接に結びついている。 他方、中間指針等に基づく一審被告東京電力からの慰謝料は、生活費増加費用を含めているとはいえ、単に避難に伴う日常生活上の不便さという狭い範囲での損害しか考慮していない。 このように、両者には量的な差にとどまらない質的な相違があり、両者には 基本的には重なり合いは認められないのであるから、弁済充当は認められない。 したがって、原判決の判断は誤っている。 第8 結論以上のとおり、原判決の被侵害利益の捉え方、損害の捉え方、避難継続の合理性の判断、損害額の評価等には誤りがあるため、これらの点については控訴 審において是正されるべきである。 第9 一審被告東京電力の主張に対する反論 1 原賠法にいう「原子力損害」について(1) 一審被告東京電力は、原賠法にいう「原子力損害」について概ね次のとおり主張する。 ア原賠法において「原子力損害」とは「核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し、又は吸入することにより人体に中毒及びその続発症 ア原賠法において「原子力損害」とは「核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し、又は吸入することにより人体に中毒及びその続発症を及ぼすものをいう。)により生じた損害をいう」(同法2条2項)とされており、「原子力損害」が認められるためには本件事故に関して何らかの損害を 被っただけでは不十分であり、「放射線の作用」と相当因果関係のある - 105 -損害が発生したことの主張立証が必要である。 イ受忍限度を超えるような水準の「放射線の作用」がない場所であるのに主観的な不安感・懸念によって転居等した場合の精神的苦痛は原子力損害に当たらない。 ウ自主的避難等対象区域の一審原告が事故直後の不安感で一時的な避難を 選択することの相当性が認められたとしても、避難の場所、期間、どのような生活を送るかは各人の選択であり、いつでも帰還できたから、避難生活の苦痛は本件事故と相当因果関係がなく、放射線の作用から生じたものではない。 (2) 反論 しかし、一審被告東京電力の主張のうち、「原子力損害」を放射線の作用と相当因果関係のある損害に限定する点は、判例及び中間指針等と明らかに異なる見解であり、本件事故後の賠償経過にも合致しないものであって、およそ採用できない。 原賠法は原子力事業者に無限責任を負わせているが、その賠償範囲につい て規定をしていない。放射線による被害は広範かつ多種多様であるため、その機序を制限すべきではなく、原発事故と相当因果関係が認められる損害は全て原子力損害として賠償の対象とすべきである。 この点、JCO臨界事故に関する東京地裁平成18年4月19日判決は、原賠法が「賠償されるべき損害の範囲 発事故と相当因果関係が認められる損害は全て原子力損害として賠償の対象とすべきである。 この点、JCO臨界事故に関する東京地裁平成18年4月19日判決は、原賠法が「賠償されるべき損害の範囲について何ら限定を付していないこと からすれば、当該事故と相当因果関係が認められる損害である限り、これを『核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し、又は吸引することにより人体に中毒及びその続発症を及ぼすものをいう。)により生じた損害』(同法2条2項)と認めて妨げないというべき」として、臨界事故による納豆の製造販売業者 の風評被害による営業損害を原子力損害として認めている。 - 106 -また、中間指針は、「原子力損害」について、「その損害の範囲につき、一般の不法行為に基づく損害賠償請求権における損害の範囲と特別に異なって解する理由はない。」として「本件事故と相当因果関係のある損害、すなわち社会通念上当該事故から当該損害が生じるのが合理的かつ相当であると判断される範囲のものであれば、原子力損害に含まれる」(中間指針第2、 1)とし、「原子力損害」は一般の不法行為に基づく損害と同じと捉え、本件事故と相当因果関係のあるものであれば原子力損害として賠償の対象になると定め、放射線の作用によって生じたものではない風評被害も原子力損害に該当することを認めている。 一審被告東京電力はこの考えに従ってこれまで風評被害の損害賠償にも応 じており、一審被告東京電力自身も原子力損害を放射線の作用により生じたものに限定しない対応をしていた。 したがって、本件事故と相当因果関係がある損害は全て「原子力損害」として損害賠償の対象になると解すべきであり、放射線 も原子力損害を放射線の作用により生じたものに限定しない対応をしていた。 したがって、本件事故と相当因果関係がある損害は全て「原子力損害」として損害賠償の対象になると解すべきであり、放射線の作用によるものに限定すべきとする一審被告東京電力の主張は不当である。 2 受忍限度を超えて法律上保護される利益に対する侵害の有無について(1) 一審被告東京電力は、受忍限度を超えて法律上保護される利益に対する侵害が生じたかについて、「本件事故発生当初の時期」に放出された放射性物質に起因した自主的避難等対象区域における放射線の作用により被った精神的苦痛が、それが具体的な恐怖や不安であったと仮定しても 「受忍限度」 を超えて法律上保護される利益の侵害に該当するのか疑問が存すると主張する。 (2) 反論しかし、受忍限度論は一般的に、生活妨害の事例において違法性の判断をするために用いられるが、放射線による被害は、①騒音と異なり放射線は五 感では感知しえず、また、その影響についても未知の部分が多いし、②本件 - 107 -では地域生活が根こそぎ損壊されており、仮に除染等で放射線量が低減しても元の生活が容易には戻らず、これらの点は、騒音等が収束すれば損害自体が発生しなくなるなどといった、従来の生活妨害事例とは大きく異なっており、従来の生活妨害の事案とは同列視できない。 また、受忍限度論においては、加害行為の原因となる施設等の経済活動と 周辺住民の権利とを比較衡量して違法性の有無を判断することになるが、本件では原子力発電所が正常に稼働している場合ではなく、事故が発生している場合であるから、事故自体に利益はなく、本件事故と周辺住民の権利との比較衡量は意味をなさない。 3 中間指針等による が、本件では原子力発電所が正常に稼働している場合ではなく、事故が発生している場合であるから、事故自体に利益はなく、本件事故と周辺住民の権利との比較衡量は意味をなさない。 3 中間指針等による賠償額を超える損害の発生 (1) 原賠審の定めた指針に関する一審被告東京電力の主張一審被告東京電力は、中間指針等に関して、原賠法に基づき策定された中間指針等は、実質的に、主に原子力事業者と被害者との間の紛争を解決する基準として原子力損害の有無、損害の性質から導かれる妥当な賠償水準などを被害者それぞれの具体的な状況に照らして実質的に判断する際の拠り所と して機能することが社会的にも期待され、現にその役割を果たしているのであるから、同指針等に定める賠償指針及び同指針を踏まえた自主賠償基準は、その内容自体が被害者の損害を慰謝するに著しく不十分でない限り、裁判手続においても社会通念上相当な範囲を検討するにあたって十分に尊重されるべきものであると主張する。 (2) 反論(中間指針等は損害の範囲や額を限定するものではないこと)しかし、原賠審の示す中間指針等は、切迫した生活状況にある被害者らに対し可能な限り迅速な救済を実現するために、原子力損害に該当する蓋然性の高いものから提示したものである。そのため、原賠審の指針において示されなかったものが直ちに賠償の対象とならないわけではなく、個別具体的な 事情に応じて損害と認められるべきものが存することは当然の前提とされて - 108 -いる。実際、中間指針の冒頭では、「この度の指針(以下「中間指針」という。)は、本件事故による原子力損害の当面の全体像を示すものである。この中間指針で示した損害の範囲に関する考え方が、今後、被害者と東京電力株式会社との間 頭では、「この度の指針(以下「中間指針」という。)は、本件事故による原子力損害の当面の全体像を示すものである。この中間指針で示した損害の範囲に関する考え方が、今後、被害者と東京電力株式会社との間における円滑な話し合いと合意形成に寄与することが望まれるとともに、中間指針に明記されない個別の損害が賠償されないということ のないように留意されることが必要である。東京電力株式会社に対しては、中間指針で明記された損害についてはもちろん、明記されなかった原子力損害も含め、多数の被害者への賠償が可能となるような体制を早急に整えた上で、迅速、公平かつ適正な賠償を行なうことを期待する。」(乙B1の1)と述べられている。 また、中間指針第一次追補においても、「なお、中間指針追補で対象とされなかったものが直ちに賠償の対象とならないというものではなく、個別具体的な事情に応じて相当因果関係のある損害と認められることがあり得る。」(乙B1の2)と述べられている。 さらに、中間指針第四次追補においても、「なお、本審査会の指針におい て示されなかったものが直ちに賠償の対象とならないものではなく、個別具体的な事情に応じて相当因果関係のある損害と認められるものは、指針で示されていないものも賠償の対象となる。また、本指針で示す損害額の算定方法が他の合理的な算定方法の採用を排除するものではない。東京電力株式会社には、被害者からの賠償請求を真摯に受け止め、本審査会の指針で賠償の 対象と明記されていない損害についても個別の事例又は類型毎に、指針の趣旨を踏まえ、かつ、当該損害の内容に応じて、その全部又は一定の範囲を賠償の対象とする等、合理的かつ柔軟な対応と同時に被害者の心情にも配慮した誠実な対応が求められる」(乙B1の4)と述べられて 針の趣旨を踏まえ、かつ、当該損害の内容に応じて、その全部又は一定の範囲を賠償の対象とする等、合理的かつ柔軟な対応と同時に被害者の心情にも配慮した誠実な対応が求められる」(乙B1の4)と述べられている。 前記のとおり、中間指針等で定められている損害賠償の範囲やその金額は、 一審被告東京電力さえも納得せざるを得ない水準で定められたものであり、 - 109 -中間指針等が迅速な救済の実現を図る狙いとそもそも当事者間の合意を促進するための指針であるという性質上の制限から導かれるものである。それゆえ、これらの原賠審の示す中間指針等は、その成り立ちや性質上、必然的に損害賠償の範囲や金額において、一審被告東京電力さえも反対しにくいような極めて限定的なものとして算出される特徴を持つこととなるため、この点 に十分な留意が必要である。 したがって、原賠審の示す中間指針等は、具体的な財産的損害に関する損害項目やその評価額に関して、認められるべき最低限を明らかにしたものとしての意味を持つとはいえるものの、本件訴訟において認容されるべき損害の範囲等を限定する意味を持つものでないことは明らかである。 4 区域外(県南地域)から避難した一審原告らに生じた損害(1) 一審被告東京電力の主張一審被告東京電力は、一審原告らのうち、本件事故当時、県南地域に居住していた者(一審原告26の世帯)について、その居住していた地域が中間指針第一次追補において自主的避難等対象区域から除外されていることを根 拠として、同区域に居住していた一審原告らと同額の慰謝料を認めた原判決には誤りがある旨主張する。 (2) 反論しかし、本件事故発生により、様々な情報が錯綜する中で、福島県内及びその周辺地域に居住し に居住していた一審原告らと同額の慰謝料を認めた原判決には誤りがある旨主張する。 (2) 反論しかし、本件事故発生により、様々な情報が錯綜する中で、福島県内及びその周辺地域に居住していた者たちは皆同様に混乱や不安を感じ、避難をす べきかどうかの決断を迫られた。一方、中間指針第一次追補によって定められた自主的避難等対象区域は、避難指示対象区域とは異なり、本件事故発生から一定期間が経過した後に、主に行政管区単位で設定されたものである。 この区域設定に当たっては、放射線量や原子力発電所からの距離等の考慮については十分に議論されることなく、専ら行政管区という形式的区画を基準 として事後的に設定されたものに過ぎないから、賠償基準の線引きとしては - 110 -一切合理性のあるものではない。したがって、本件において、損害発生の有無及びその程度については、その居住地域の区域設定にとらわれることなく、個々の一審原告らについて存在する各事情を個別具体的に検討すべきものであって、避難指示対象区域内に居住していた者らや自主的避難等対象区域に居住していた者らが被った精神的苦痛に劣るものではないから、区域の別の みによって賠償額の多寡を決定すべきではない。 (3) 一審被告東京電力の自主賠償基準についてさらに、一審被告東京電力は、仮に何らかの「法律上保護される利益に対する侵害」があるとしても、自主賠償額を超える損害は認められない旨主張するが、一審被告東京電力の主張する自主賠償基準は、その賠償範囲及び金 額のいずれも一審被告東京電力が一方的に決定したものであり、中間指針等の基準による賠償額よりもさらに客観性、合理性が劣るというべきである。 5 居住制限区域から避難した一審原告らに生じた損害一審 れも一審被告東京電力が一方的に決定したものであり、中間指針等の基準による賠償額よりもさらに客観性、合理性が劣るというべきである。 5 居住制限区域から避難した一審原告らに生じた損害一審被告東京電力は、本件事故後に居住制限区域から避難した一審原告らに係る慰謝料について、原判決が、中間指針基準により算出される金額850万 円に50万円を上乗せした900万円を認めたことが不当である旨主張する。 しかし、中間指針等は、「当事者による自主的な解決に資する一般的な指針」として、一方当事者である一審被告東京電力も抵抗せず応じる内容とすることを前提に策定されたものであって、裁判規範たる賠償基準を策定することを目的としたものではない。 中間指針等がこのような性格を有するものに過ぎないことを前提とすると、本件における損害額の認定に当たっては、一審被告東京電力の主張のように中間指針等の基準をそのまま用いるのは妥当ではなく、一審原告らの被った損害を十分に吟味し、それを反映した金額とすべきである。 6 帰還困難区域から避難した一審原告らに対する慰謝料について 一審被告東京電力は、自主賠償基準は具体的な立証が困難な生活費増加費用 - 111 -を考慮して策定されているから、具体的な立証が困難な生活費増加費用の存在は、自主賠償基準を超えて慰謝料を認定する根拠とはなり得ないと主張する。 しかし、そもそも慰謝料の算定に際し、裁判所は自主賠償基準を基礎とする必要はなく、裁判所は自主賠償基準にとらわれず弁論の全趣旨に従って慰謝料を算定すれば足りる。 また、自主賠償基準は低廉に失するからこれを基礎とするべきではない。一審原告らが負った精神的苦痛は極めて多様であり、一応、健康被害に対する精神的苦 に従って慰謝料を算定すれば足りる。 また、自主賠償基準は低廉に失するからこれを基礎とするべきではない。一審原告らが負った精神的苦痛は極めて多様であり、一応、健康被害に対する精神的苦痛、避難生活における諸々の生活上の負担を強いられたことに対する精神的苦痛、平穏で安全な生活が失われたことに対する精神的苦痛に分類することができるが、それぞれの精神的苦痛は独立して存在しているのではなく、相 互に絡み合って一層深刻な精神的苦痛を一審原告らに与えているのである。自主賠償基準は、一審原告らに生じた上記精神的苦痛の実態を十分に考慮したものとはいえず、低廉に失する。 7 平成23年4月22日を超えて避難する必要性について(1) 一審被告東京電力は、平成23年4月22日を超えて権利侵害はなく、避 難及び避難継続の相当性は認められないと主張するが、本件事故の規模、事故直後の混乱、平成23年4月22日当時の放射線量や被ばくに関する情報不足などからすれば、権利侵害がなく避難や避難継続をしなくてもいい状態だったとは到底いえない。以下に述べる点からすると、一審被告東京電力の主張は事実を極端に矮小化するものであり、全く容認できない。 (2) 本件事故当時、情報や科学的知見等が不十分であった。 本件事故直後は放射線量に関する情報も十分ではなく、また、被ばくについての科学的知見も明らかではなかった。政府や専門家は「直ちに健康に影響を与えるレベルではない」と発表するものの、将来健康に影響が生じる可能性については明確な説明はなかった。地域がどの程度の放射線量で、住民 らがどの程度被ばくし、それがどれだけ健康に影響するのかについての情報 - 112 -はなかった(甲A3・407頁)。そのため一審原告ら住民は なかった。地域がどの程度の放射線量で、住民 らがどの程度被ばくし、それがどれだけ健康に影響するのかについての情報 - 112 -はなかった(甲A3・407頁)。そのため一審原告ら住民は大きな健康不安を抱き続けることになった。 (3) 本件事故後、原発事故の収束作業は遅々として進んでいなかった。 福島第一原発の事故収束作業については、一審被告東京電力は平成23年4月17日に工程表を発表してはいるが、その際、格納容器からの放射性物 質の漏出や2号機からの放射性物質を含む水漏れが指摘され、放射性物質の漏出が今後も強く懸念されていた。また、原子炉建屋の中の様子も十分に把握されておらず、工程表通りに作業が進められるかは未知数の状態であった。 (4) 再開後の学校では子どもたちの活動が制限されていた。 平成23年4月に学校等が再開されたものの屋外活動は制限され、多くの 子供達が車での送り迎えで登園・登校をするなど屋外の滞在時間を減らして被ばくしないよう注意を払いながら生活をしていた。文部科学省は同月19日、20mSv/年を校舎・校庭等の利用判断における暫定的な目安とし、学校の校庭・園庭において3.8μSv/時以上を示した場合は児童生徒の屋外活動をなるべく制限することが適当である旨を発表した(甲B196)。 しかし、この基準については原子力安全委員会の委員が平成23年4月13日に記者会見で内部被ばくを考慮すると10mSv/年くらいを目指すことが望ましいと述べ(甲A3・428頁)、日弁連や日本医師会が校庭利用制限に対する慎重な対応を求める声明を発表し(同429頁)、小佐古敏荘内閣官房参与が20mSv/年の基準に抗議して辞任するなど(甲B19 7)、専門家からも批判があり、子どもた 師会が校庭利用制限に対する慎重な対応を求める声明を発表し(同429頁)、小佐古敏荘内閣官房参与が20mSv/年の基準に抗議して辞任するなど(甲B19 7)、専門家からも批判があり、子どもたちの健康への影響が強く懸念される状況であった。 (5) 本件事故後の除染作業もほとんど行われておらず除染計画も策定されていなかった。 (6) 一審原告らが不安を抱く状況であった。 一審被告東京電力は、本件事故前生活を取り戻すための前提となる平穏な - 113 -日常生活を送ることができる状況であったと主張するが、子どもを抱える一審原告らは、一向に進まない除染など様々な事情を基に、平成23年4月22日を超えても放射線被ばくの大きな不安を抱えた生活を続けていたのであり、同日の時点で「平穏な日常生活ができる状況であった」はずがない。 (7) これらの状況から、平成23年4月22日以降も権利侵害は継続しており、 避難及び避難継続の合理性が認められることは明らかである。 8 慰謝料への充当について(1) 同一人に対する損害費目間の融通についてア一審被告東京電力の主張一審被告東京電力は、損害費目間の融通(弁済の充当)について、本件 事故という同一の不法行為により生じた財産上の損害と精神上の損害とは、その賠償の請求権は一個であるとしたうえで、最高裁昭和48年4月5日判決を根拠に、財産上の損害と精神的損害は同一の請求権を構成するものであって、その細目ごとにそれぞれ独立の損害としてそれぞれに損害賠償請求権が成立するという扱いは取られておらず、費目相互間 の融通も認められているから、精神的損害と財産的損害の賠償額の総額が弁済の抗弁として認められるべきであると主張する。 に損害賠償請求権が成立するという扱いは取られておらず、費目相互間 の融通も認められているから、精神的損害と財産的損害の賠償額の総額が弁済の抗弁として認められるべきであると主張する。 イ反論(ア) しかし、そもそも上記最高裁判決は、「同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実およ び被侵害利益を共通にするものであるから、訴訟において両者をあわせて請求する場合の訴訟物は一個である」旨を述べたものである。 ところが、本件における一審原告らの請求は、包括的生活利益としての平穏生存権の侵害を原因とする精神的損害と財産権侵害を原因とする財産的損害であって、被侵害利益は異なるのであるから、各損害で訴訟 物は異なり、上記最高裁判決がそのまま妥当するものではない。 - 114 -(イ) また、一審被告東京電力への直接請求やADRにおいては厳密な主張立証が求められていないところ、その背景には被害者の早期救済という視点があり、その前提として実際の損害額が支払額より少ない可能性があることを見越しており、その場合でも後に清算・返金を求められないことが当事者の合理的意思である。 それにも関わらず弁済の抗弁が認められると、救済を受けるべき被災者に対する不意打ちとなり、また、直接請求だけをした者と異なり訴訟までした者については清算を強いられる結果となって極めて不公平かつ不合理な結果となる。 (ウ) さらに、これまで原賠審における中間指針等に関する議論の経緯とし て、費目ごとに議論がなされ、かつ賠償水準が定められてきており、一審被告東京電力もまた損害項目ごとに請求書の書式等を分けるなどし、ADRでも同様に精神的損害と財産的損害は別個 議論の経緯とし て、費目ごとに議論がなされ、かつ賠償水準が定められてきており、一審被告東京電力もまた損害項目ごとに請求書の書式等を分けるなどし、ADRでも同様に精神的損害と財産的損害は別個の損害であることを当然の前提としてきた。 しかるに、今回の一審被告東京電力の主張は、このような自らが関わ る損害項目ごとに賠償が行われてきた経過を根底から覆すものであって、信義則という観点から到底許されるものではない。 (2) 生計を共通にする同一世帯単位での支払いについてア一審被告東京電力の主張原判決は、世帯のうち一人の一審原告が代表して請求している場合は、 当事者の合理的意思に鑑み、その損害は代表した一審原告の損害と認め、弁済の抗弁も代表一審原告に対する弁済の抗弁と認めるとしているが、一審被告東京電力は、代表した一審原告に支払った額が、その一審原告の損害認定額を上回っていた場合は、当該超過額は当該世帯の他の構成員である一審原告の慰謝料等に対する弁済として充当されるべきである と主張する。 - 115 -イ反論しかし、そもそも「同一世帯」という基準は曖昧なものであり、世帯の構成はその人ごとに異なるものである。それにも関わらず弁済の抗弁を認めれば、「同一世帯」という各個人の社会内における帰属という偶然の事情により、弁済の抗弁がされることになり不公平かつ不意打ちとな る。 また、同一世帯でも訴訟当事者になっていない者がいる場合、訴訟当事者以外の者との間での利害関係の問題が発生し、主張立証活動を要することになりかねず、訴訟手続の混乱を招くことは避けられない。 そもそも、不法行為法における保護法益である権利や利益は、個人を単 位として考 害関係の問題が発生し、主張立証活動を要することになりかねず、訴訟手続の混乱を招くことは避けられない。 そもそも、不法行為法における保護法益である権利や利益は、個人を単 位として考えるのが近代法としての不法行為法における基本であることは言うまでもなく、損害賠償請求権は個々人に発生するものであるから、損害の賠償についても、世帯単位ではなく、個々人に対してなされるべきである。 したがって、同一世帯内での弁済の抗弁を認めるべきとの一審被告東京 電力の主張は失当である。 第7章一審原告らの損害に関する同7-1らの当審における主張(弁済の抗弁に対する主張を含む。)第1 はじめに原判決は、本件事故が収束しており、一審原告らの生活は本件事故前の状況 に戻ることができるということを前提に、一審原告らの損害を認定した。しかしながら、以下でも述べるとおり、本件事故は未だに収束しておらず、一審原告らの被害は継続し拡大し続けている。 一審原告らは、避難指示がなされている地域の者らに止まらず、避難指示がなされていない者らであっても、本件事故によって放出された放射性物質によ る健康被害を回避する必要から避難を余儀なくされたものであり、ひとたび避 - 116 -難を余儀なくされれば、それぞれの生活基盤が失われ、避難元で生活し続ける場合に想定されていた将来が変容させられた。本件事故により失われた事柄は一審原告らにより様々ではあるが、その根本は、被ばくを避ける権利(人格権、憲法13条)の侵害である。そして、本件事故による放射能汚染とそれによる被ばく被害の実態は、原判決がした判示内容よりもはるかに深刻であり、かつ 現在まで継続しており、その実態に照らせば、本件においては、一審被告国がしたように、福島第一 による放射能汚染とそれによる被ばく被害の実態は、原判決がした判示内容よりもはるかに深刻であり、かつ 現在まで継続しており、その実態に照らせば、本件においては、一審被告国がしたように、福島第一原発からの距離に応じた同心円状に区分して、賠償における取扱いを変えることは不合理な差別(憲法14条)に当たるものである。 第2 一審原告らが現在に至るまで避難を余儀なくされている事情 1 本件事故の全容は未解明であること 本件事故は、事故後長期間が経過した現在でもなお、その全容すら解明されておらず、令和元年12月12日、原子力規制委員会が福島第一原発の調査を再開したが、これは一例にすぎず、本件事故がどのような事故であったのかに関する詳細は、なお解明すべき事柄である。 2 高線量放射性物質放出の全容が明らかにされていないこと 事故全容の解明を阻んでいる要因の1つは、高線量の放射性物質の存在である。これら放射性物質は未だに福島第一原発の原子炉建屋内から除去もされていなければ処理もされておらず、事故現場に立ち入りができないのである。 本件事故全容の解明が進んでいないため、結局、本件事故によってどれだけの放射性物質が、いつ、どのように飛散したのかも判明していない。 この点について、政府が本件事故による放射性物質の飛散を隠していた(実態を過小に発表していた)疑いが濃厚にもたれている。 3 本件事故に起因する放射性物質による放射能汚染が収束していないこと(1) 本件事故から一定期間が経過した後にも、福島第一原発からの放射能漏れが度々生じている。一例として、放射能汚染水問題がある。福島第一原発の 敷地内の地下には豊富な地下水が存在し、西側(山側)から東側(海側)に - 117 -向 島第一原発からの放射能漏れが度々生じている。一例として、放射能汚染水問題がある。福島第一原発の 敷地内の地下には豊富な地下水が存在し、西側(山側)から東側(海側)に - 117 -向けて常に流れているが、原子炉建屋の地下部分は地震でダメージを受けて、き裂等が発生しており、地下水はその隙間から流入する。メルトダウンした燃料については常時注水して冷却をしている状態だが、その冷却水は核燃料と接触しているのでそこから放射性物質が溶け出して高濃度の放射能汚染水となっており、原子炉建屋のき裂のためにこの高濃度放射能汚染水もき裂か ら漏れて流出している。放射能汚染水を建屋外に漏らさないために、地下水の水位が必ず原子炉建屋の水位より高くなるようにサブドレンで地下水水位を制御しているが、同時に周辺の地下水が建屋内に流入しやすくなるため、汚染水が増量しつづけるという問題がある。平成25年8月21日、原子力規制委員会は高濃度汚染水が大量に漏れ出たことについて、国際原子力・放 射線事象評価尺度(INES)で8段階の上から5番目の「レベル3」(重大な異常事象)に相当すると発表した。その際に漏れ出た高濃度の汚染水300tに含まれる放射性物質は24兆Bqと推計されている。 その後、凍土壁が設けられ、サブドレンによる地下水水位調整と併せ、汚染水は日々180tの発生に抑えられたとされるが、これによっても地下水 の流入は防ぐことができず、日々発生する汚染水はタンク内に溜まる一方であり、一審被告東京電力が用意している保管場所の限界を超える日が近いといわれている。 (2) また、本件事故後11年が経過した後でも放射性のセシウム137が土壌中に78%も残存しているため、土とともにこれが巻き上げられて呼気とし て吸い込まれたり、野 近いといわれている。 (2) また、本件事故後11年が経過した後でも放射性のセシウム137が土壌中に78%も残存しているため、土とともにこれが巻き上げられて呼気とし て吸い込まれたり、野菜などに付着してこれを摂取したりすることにより内部被ばくをもたらす。しかも、一審原告らの避難元である福島県においては、本件事故後、放射性降下物の量が事故前の水準に戻らない状況が続いている。 さらに、土壌汚染度についても、一審原告らの各避難元において令和元年12月頃に調査したところでは、いずれも放射線管理区域の基準を超え ており、現時点でも相当程度放射能汚染が残存しているといえる。上記と - 118 -同時期に検査した空間線量率についても高い値を示している。 このように、未だに放射性物質による放射能汚染は収束していない。 4 小括原判決は、一審被告国が「放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている」というステップ2の目標達成と完了を平成23年12月16 日に発表したことなどを踏まえ、避難の相当性を判断したが、実態は、上記のとおり一審被告国の発表とかけ離れたものである。 福島が一審被告国の発表する「放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている」状態とは到底言えないことは明らかである。 第3 避難元の状況 1 福島市の状況一審原告らの避難元は様々であるが、福島市の一例を挙げると以下のとおりである。 (1) 福島市は本件事故直後より、自主的避難等対象区域とされ、強制避難の対象とされていない地域である。しかしながら、強制避難の対象となっていな いからといって、避難した一審原告ら以外の家庭が本件事故前と同じ生活を送っている訳ではない。 (2) 放射能に関 対象とされていない地域である。しかしながら、強制避難の対象となっていな いからといって、避難した一審原告ら以外の家庭が本件事故前と同じ生活を送っている訳ではない。 (2) 放射能に関する市民意識調査(甲B75)福島市は、平成24年5月及び平成26年5月、2回にわたり放射能に関する市民意識調査を行った。原判決は、自主的避難等対象区域においては、 平成23年12月、一審被告国が「ステップ2」を宣言した時点で本件事故が収束したとの事実認定を前提に判断しているところ、平成26年5月の調査結果は、外部被ばく及び内部被ばくによる自分の健康への影響に関しては、いずれも7割以上の人が不安だと回答しており、到底収束したといえる状況にはないことが明らかである。 (3) 家庭用食品の放射能測定の実施(丁B2及び3) - 119 -福島市は、平成24年度以後現在に至るまで、家庭用食品(出荷販売を目的としない食品等)の放射能測定を実施しており、令和2年6月の測定結果によれば、タケノコ、ウメ、ネマガリタケ、セリ、ウド、ミズナについてそれぞれ放射能が検出されている。本件事故以前は、一審原告らにおいて野山の山菜をとり、畑で自家用に作物を育て、それらを食することは日常生活の 一部であったが、現在に至るまで、原災法に基づく出荷制限及び摂取制限等の指示が一審被告国からなされている産地及び食品が多数ある(丁B1)。 そこで、福島市も出荷制限対象食品は放射能測定を実施してから摂取することを推奨している。食品の放射能測定のため、福島市内には現在にいたるまで、食品を刻んで測定を実施する「きざむ測定」と食品を刻まないで測定を 実施する「まるごと測定器配置場所」がそれぞれ市内19箇所にもうけられている(令和2年4月 め、福島市内には現在にいたるまで、食品を刻んで測定を実施する「きざむ測定」と食品を刻まないで測定を 実施する「まるごと測定器配置場所」がそれぞれ市内19箇所にもうけられている(令和2年4月現在)。本件事故による放射能漏れが発生しなければ、このような日常的に自家用食品の放射能検査を行う必要などなかった。 本件事故前の日常生活は自主的避難等対象地域である福島市においても、決して戻っていないのである。 2 本件事故によって放出された放射性物質が除去されていないこと(1) 放射性物質汚染対処特措法(平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法)は、本件事故後1年間の積算線量が20mSvを超えるおそれがあるとされた計画的避難区域と、福島第一原発 から半径20km圏内の警戒区域については、除染特別地域として、国が除染の計画を策定し除染事業を進める地域として指定しており、対象とされている市町村は、双葉郡楢葉町、同郡富岡町、同郡大熊町、同郡双葉町、同郡浪江町、同郡葛尾村、相馬郡飯舘村、並びに田村市、南相馬市、伊達郡川俣町、双葉郡川内村で警戒区域又は計画的避難区域であったことのある地域で ある。 - 120 -これらの市町村においては、国が直轄して除染実施計画に基づく除染を実施し、平成29年3月末までに、帰還困難区域を除く地域については、除染実施計画に基づく除染が完了したとされている。 (2) 7町村の除染状況についてア双葉郡楢葉町 楢葉町は、総土地面積1万0364ha、耕地面積681ha、林野面積7752haであるところ(丁B4)、除染実施計画に基づき除染が 町村の除染状況についてア双葉郡楢葉町 楢葉町は、総土地面積1万0364ha、耕地面積681ha、林野面積7752haであるところ(丁B4)、除染実施計画に基づき除染が実施された面積は、耕地(農地)830ha、林野(森林)740haであり、全体で2100haである(丁B5)。 イ双葉郡富岡町 富岡町は、総土地面積6839ha、耕地面積1010ha、林野面積4080haであるところ(丁B6)、除染実施計画に基づき除染が実施された面積は、耕地(農地)750ha、林野(森林)790haであり、全体で2800haである(丁B7)。 ウ双葉郡大熊町 大熊町は、総土地面積7871ha、耕地面積1110ha、林野面積4974haであるところ(丁B8)、除染実施計画に基づき除染が実施された面積は、耕地(農地)170ha、林野(森林)200haであり、全体で400haである(丁B9)。 エ双葉郡双葉町 双葉町は、総土地面積5142ha、耕地面積722ha、林野面積3001haであるところ(丁B10)、除染実施計画に基づき除染が実施された面積は、耕地(農地)100ha、林野(森林)25haであり、全体で200haである(丁B11)。 オ双葉郡浪江町 浪江町は、総土地面積2万2314ha、耕地面積2400ha、林野 - 121 -面積1万6064haであるところ(丁B12)、除染実施計画に基づき除染が実施された面積は、耕地(農地)1400ha、林野(森林)510haであり、全体で3300haである(丁B13)。 カ双葉郡葛尾村葛尾村は、総土地面積8437ha、耕地面積607ha、林野面積6 地(農地)1400ha、林野(森林)510haであり、全体で3300haである(丁B13)。 カ双葉郡葛尾村葛尾村は、総土地面積8437ha、耕地面積607ha、林野面積6 910haであるところ(丁B14)、除染実施計画に基づき除染が実施された面積は、耕地(農地)570ha、林野(森林)690haであり、全体で1700haである(丁B15)。 キ相馬郡飯舘村飯舘村は、総土地面積2万3013ha、耕地面積2220ha、林野 面積1万7323haであるところ(丁B16)、除染実施計画に基づき除染が実施された面積は、耕地(農地)2400ha、林野(森林)2100haであり、全体で5600haである(丁B17)。 ク小括以上のとおり、除染実施計画に基づく除染は完了したとされているもの の、対象区域は各自治体の全域とはなっておらず、極めて限定された範囲に止まっている。特に、除染が原状回復に向けた中核的な措置として位置づけられており、除染特別地域においては森林の占める割合が高いことからしても、生活圏の森林に限って除染対象とする方針は、不十分としかいいようがない。 (3) 国際環境NGO(非政府組織)による調査ア平成30年10月、国際環境NGO・グリーンピースが浪江町、飯舘村の旧帰還困難区域の放射線レベル等を調査したところ、浪江町の旧帰還困難区域については、全測定地点で政府の除染基準毎時0.23μSvを上回っており、飯舘村の旧帰還困難区域についても、平成28年から平 成30年の間に放射線量の大きな低下を示したゾーンは一つもないとさ - 122 -れた。 イ以上のとおり、放射性物質汚染対処特措法に基づいて国が直轄して除染 、平成28年から平 成30年の間に放射線量の大きな低下を示したゾーンは一つもないとさ - 122 -れた。 イ以上のとおり、放射性物質汚染対処特措法に基づいて国が直轄して除染を行い、平成29年3月末までに除染を終えた、とされている7町村の状況は、到底、「除染を終えた」と評価できない。 本件事故が未だに収束していないにもかかわらず、すでに放射性物質を 十分に除去して本件事故前と同じ生活を送ることができると一審被告らが強弁していることは明らかである。 上記7町村以外の市町村のうち一審原告らの避難元自治体は、いずれも汚染状況重点調査地域に指定され、各市町村において除染実施計画を立て、平成30年3月19日までに除染を終えたものとされている。しか しながら、一審原告らの避難元の生活の場には高線量が観測されるスポット(ホットスポット)が点在している。 第4 放射線被ばくによる健康被害 1 原判決の判示原判決は、低線量被ばくによる健康被害について、年間20mSv未満の放 射線被ばくについては、本件事故後においては基準値以下の被ばくといえるとの見解を前提に、本件事故後の健康調査の結果においても健康に影響を及ぼすような放射線被ばくは認められていないとし、一審被告国が年間20mSvの被ばく線量を超えないと判断した場合に順次、警戒区域及び避難指示区域を見直したことに追随し、一審原告らの避難元の地域設定に応じて(旧避難指示解 除準備区域、旧緊急時避難準備区域、自主的避難等対象区域等)一定期間を区切って避難の相当性を肯定した。 2 原判決の誤りしかし、原判決の放射線被ばくに関する判示には次のとおり誤りがある。 第一に、本件事故後、年間20mSvの放射線被ばくを被 期間を区切って避難の相当性を肯定した。 2 原判決の誤りしかし、原判決の放射線被ばくに関する判示には次のとおり誤りがある。 第一に、本件事故後、年間20mSvの放射線被ばくを被ばく限度線量とし て設定した一審被告国の判断を追認し、避難の相当性の判断を行った点である。 - 123 -第二に、低線量被ばくのリスクについて、死亡率の上昇に有意な原因となるかどうかのみを問題とし、また日常生活上の他のリスク要因と比較対照可能なものと捉える見解を前提としたことにより、その被害を矮小化した点である。 第三に、種々の健康調査結果に基づき、誤った事実判断を行ったことである。 原判決はこれらの誤った判断の結果、一審原告らの放射線被ばくによる被害 を実質的に無視して、本件事故直後の混乱時における放射線被ばくに対する不安のみを認める判断を行った。 3 本件における放射線被ばくの位置づけ本件において損害を検討するにあたり、放射線被ばくの位置づけを整理すると次の3点である。 第一に、本件事故により、予期していなかった放射性物質に強制的に被ばくさせられたことをきっかけに、強制避難を指示された一審原告らはもちろん、それ以外の一審原告らも避難を余儀なくされた。この点は、本件で一審原告らが請求しているあらゆる損害発生の原因となっている。 第二に、一審原告らはいずれも本件事故直後に初期被ばくをしている。初期 被ばくと相当因果関係が明らかとなった健康障害の発生は現時点において立証されていないものの、初期被ばく自体、一審原告らが被ばくする必要のなかった放射線を被ばくしたものであって、一審原告らの健康を損なった。被ばくによる相当因果関係が明らかに立証できる健康障害が生じていないとして ないものの、初期被ばく自体、一審原告らが被ばくする必要のなかった放射線を被ばくしたものであって、一審原告らの健康を損なった。被ばくによる相当因果関係が明らかに立証できる健康障害が生じていないとしても、被ばく自体が損害であり、慰謝料請求の根拠となる。 第三に、現在にいたるまで、避難元における放射線被ばくの状況が本件事故前の状況に戻らないことである。一審原告らは避難生活を終えることができないという損害を増大させ続ける要因となっている。 4 事故による放射線被ばくが回避されるべきこと(1) 放射線による健康障害は全容が解明され尽くしていないこと 放射線被ばくによる人体への影響については、外部被ばくと内部被ばくが - 124 -あり、それぞれ人体への作用が異なる。外部被ばくの場合は皮膚を透過して人体へ影響を与えるガンマ線の線量に留意する必要がある一方、内部被ばくの場合は透過力の低いアルファ核種・ベータ核種が体内に留まり続けて放射線を発生し続けるため留意が必要である。また、健康被害は、身体的影響と遺伝的影響に分けられ、身体的影響には急性症状とがんなどの晩発障害があ る。さらに、身体的影響には確定的影響(しきい値あり)と確率的影響(しきい値なし)がある。そして、遺伝的影響は確率的影響である。 人類が放射線を積極的に活用し始めてから今日まで、わずか1世紀程度でしかなく、その中で放射性物質による健康障害の全容が解明しているとはいえない。今日の放射性物質による健康障害の解明に大きく寄与しているのは、 広島・長崎の被爆者を対象に原爆傷害調査委員会(ABCC)及びその後継機関である放射線影響研究所(放影研)が実施した調査であるが、確率的影響、とりわけ内部被ばくの影響については原爆被爆者を対象 広島・長崎の被爆者を対象に原爆傷害調査委員会(ABCC)及びその後継機関である放射線影響研究所(放影研)が実施した調査であるが、確率的影響、とりわけ内部被ばくの影響については原爆被爆者を対象とした大規模な上記疫学調査の結果によっても、全容が解明されているとはいい難い。そもそも、内部被ばくをもたらす残留放射能及び放射性降下物について、十分な 実測値が得られておらず、どのような核種から発せられる放射線がどのような形で体内に吸収され、内部被ばくしているかが分からないのである(甲B95・89頁に引用されている原爆症認定に関する東京地裁平成19年3月23日判決参照)。また、晩発障害については、放射線被ばく以外の要因によっても生じるため、実際には放射線被ばくの影響によって発症していたの だとしても明確な因果関係の証明が難しく、放射線被ばくの影響であると認識されていない事例が多い可能性がある。 内部被ばくはそもそも被ばく実態を明らかにしにくく、事実として被ばくによって発がんした場合でも、相当因果関係が明確には証明されにくい。放射線被ばくによる健康被害は未だ、全容が解明されておらず、今後も科学的 な全容解明は容易ではない。 - 125 -当初は国際社会も耐容線量、すなわち何らの生物・医学的悪影響を及ぼさないと考えられた被ばくの防護基準を放射線防護基準とすることを目指したものの、実際には、そのような線量基準を策定することはできなかった。それにもかかわらず、「原子力の平和利用」を進めるために、行為の正当化・防護の最適化ができる場合に限り、線量限度までの被ばくを許容するという 許容線量の考え方によって基準を定めざるを得なくなっているのが、20世紀後半以後の国際社会の状況である。このように、許容線量にお の最適化ができる場合に限り、線量限度までの被ばくを許容するという 許容線量の考え方によって基準を定めざるを得なくなっているのが、20世紀後半以後の国際社会の状況である。このように、許容線量における線量限度も、放射線被ばくによる健康障害の影響を全て明白にした上で、その影響を考慮し尽くして定められたものではない。 本件についても、そもそも初期被ばくの状況を確定する前提となる、本件 事故による放射性物質の放出量、飛散ルート及びその土壌・水等への滞留状況は一審被告らによって十分明らかにされているとはいえない。その中で、一審原告らについて本件事故による初期被ばくの影響がないと断じることはできない。これに対し、現時点までに明らかになっている一審原告らの避難元における本件事故直後の空間線量データ、事故後9から10年が経過した 時点の空間線量、土壌中放射能濃度調査結果、測定されていないものの避難時に遭遇した放射性プルームによる吸引・摂取による内部被ばく及び衣服や皮膚への放射能の付着による外部被ばくなどを勘案すれば、一審原告らが初期被ばくしていることは明らかである。そして、LNTモデルに従えば、一審原告らについて健康障害が現実化するリスクは本件事故前(被ばく前)よ り高まっている。これが被ばくの被害である。 (2) ICRP(国際放射線防護委員会)においても被ばく限度線量基準が引き下げられてきたことア ICRPの成り立ちICRPは医療放射線作業従事者に対する放射線被ばく管理と、原爆開 発組織における労働者に対する放射線被ばく管理とを統一する必要から、 - 126 -昭和25年、国際放射線防護委員会として発足した組織である。 すでに昭和3年、放射線技師等を放射線被ばくによる ける労働者に対する放射線被ばく管理とを統一する必要から、 - 126 -昭和25年、国際放射線防護委員会として発足した組織である。 すでに昭和3年、放射線技師等を放射線被ばくによる職業病から守るための学術組織として国際X線およびラジウム防護諮問委員会(IXCRP)が設立され、「耐容線量(何らの生物・医学的悪影響をおよぼさないと考えられた被ばくの防護基準)」概念(甲B94・26頁)を採用し ていた。しかし、耐容線量については、1920年代からすでに放射線に曝される産業分野の労働者、放射線の治療・診断を受けた患者の間で放射線障害が発生し始めていたため、IXCRPの耐容線量の考え方に対し疑問が呈されていたにもかかわらず、放射線利用産業に加え、新たに巨大産業として急成長していた原子力産業の利益を重視し、何よりも 原子爆弾の開発のために耐容線量の見直しは後回しにされた(甲B94・26から28頁)。 原子爆弾の投下直後以降、遺伝学者から耐容線量に対する批判が出され、この批判は原子爆弾と核戦争に反対する広範な人々に広がった。これに対し、米国、英国を中心に、原子力開発を円滑に進めるべく、放射線被 ばくに否定的な世論を抑え国際的な放射線防護基準作りの協力体制を構築するため、1948年以降、米国主導でIXCRPの再建が進められ、核兵器と原子力開発の推進者たちにより、その推進体制に沿う組織へと改編された。ICRPは、かつてのIXCRPが放射線防護のための科学者組織であったものから、科学者集団を隠れ蓑とする原子力開発推進 者による国際的協調組織へと変質させられた(甲B94・32から36頁)。 このようなICRP誕生及びその後の経緯によれば、ICRP勧告の正当性、公正性は大きく損なわれているにも 者による国際的協調組織へと変質させられた(甲B94・32から36頁)。 このようなICRP誕生及びその後の経緯によれば、ICRP勧告の正当性、公正性は大きく損なわれているにもかかわらず、ICRPは放射線防護に関する世界的権威である。このことを踏まえれば、放射線被ば く被害者の健康、生命、人権を最大限保護するための司法の役割は重大 - 127 -である。 なお、正当性と公正性に疑問のあるICRPといえども、様々なデータの積み重ねから被ばく限度を次々と下方修正してきたことは、被ばくによる健康被害について、曲げられない事実が積み重なってきた結果である。 イ ICRPの1950年勧告における「可能な最低レベル」の基準ICRPは、IXCRPが採用していた耐容線量の概念に代えて、許容線量の概念を取り入れた。許容線量の概念は、核兵器工場などの原子力・放射線施設の存在と運転の必要性を軍事的・政治的および経済的理由から認めた上で、放射線作業従事者あるいは一般公衆に対して、それ らの被ばくを受忍させるために、政府などが法令等の規則で定めた放射線被ばくの基準(狭くはそれらの線量限度)を意味する(甲B94・37から40頁)。 ICRPは、1950年勧告において放射線被ばくについて「可能な最低レベルまで」との放射線被ばく基準を打ち出した。その要因は、放射 線による遺伝的影響の問題であった。遺伝的影響については、それが被ばく線量に比例することが否定できないがゆえに、被ばく量を可能な限り低くすべきであるとの勧告になったのである(甲B94・45から48頁)。 また、ICRPは遺伝的影響を少なくするには、被ばく人口を少なくす るとともに、公衆に対しても被 可能な限り低くすべきであるとの勧告になったのである(甲B94・45から48頁)。 また、ICRPは遺伝的影響を少なくするには、被ばく人口を少なくす るとともに、公衆に対しても被ばく線量の限度を設定することにより、個々人の被ばく量の総合計である総被ばく線量(人・rem)を抑える必要があると考えた。これに対し、核戦争への実践的準備を進め、かつ核兵器開発にかかる費用を削減するべく国内での核実験を準備していた米国は、公衆の被ばく線量限度を設定することに強い反対を示した。米 国内での核実験を行えば、自国民が被ばくすることは不可避である。核 - 128 -戦争政策を国民に認めさせるために、米国原子力委員会が大衆向けに、核兵器や原子力開発の必要性と利益を協調し、それらに伴う放射線障害は問題となるほどではないとの宣伝を大々的に行っていた。公衆の被ばく線量限度が設定されれば、これら国内の世論が核戦争勝利政策の展開を困難にすることが明らかであったためである。米国の強い反対を受け、 結果として、ICRP1950年勧告においては具体的な公衆の被ばく線量基準は書き込まれなかったが、公衆の被ばく線量そのものを低く抑えるという考え自体は否定できなかった。そのため、「可能な最低レベル」の文言が1950年勧告に盛り込まれた。リスク受忍論などが勧告に入る余地はなかった(甲B94・43から45頁)。 ウ ICRPの変節ところが、ICRPはその1958年勧告において、放射線被ばくの基準を「実行可能な限り低く」と変更した。その前提として、ICRPは1950年勧告では取り入れなかった「リスク-ベネフィット論」(原子力開発等によって新たにつけ加えられる放射線被ばくのリスクは「原 子力の実際上の応用を拡大する た。その前提として、ICRPは1950年勧告では取り入れなかった「リスク-ベネフィット論」(原子力開発等によって新たにつけ加えられる放射線被ばくのリスクは「原 子力の実際上の応用を拡大することから生じると思われる利益を考えると、容認され正当化されてよい」という考え方)を放射線防護の基本的考えとして採用した。このリスク-ベネフィット論のもとで、許容線量は「個人および集団全般の許容不能ではないような危険を伴う」線量と定義された。「身体的障害を防止する」ものではなく、ベネフィットと の関係でどの程度のリスクまでならば許容できるかが問題とされるようになった。その結果、放射線被ばく線量限度について「可能な限り最低レベルまで引き下げるあらゆる努力を払うべきである」とした1950年勧告を根本的に変更し、「実行可能な限り低く」という線量限度に関する勧告になった。そして、労働者と公衆について、それぞれ許容線量 として具体的な線量を明記した(甲B94・82から84頁)。この勧 - 129 -告に影響を与えたのは、米国のみならず先進工業国がこぞって原子力開発へ動き出したことである。それらの国々の総意としてリスク-ベネフィット論に基づく放射線防護基準が採用されることになった。また、1955年国連総会決議によって設立された「原子放射線の影響に関する国連科学委員会」(UNSCEAR)も、「原子力の平和利用」を促進 するための「いわばもう1つのICRP」(甲B94・88頁)としてICRPの方針転換に影響を与えた。 以上のようにICRPは「原子力の平和利用」促進のための国際協調体制において、重要な役割を果たす機関としての側面を有するようになった。 エ ICRPの放射線防護に関する考え方このよう CRPは「原子力の平和利用」促進のための国際協調体制において、重要な役割を果たす機関としての側面を有するようになった。 エ ICRPの放射線防護に関する考え方このように「原子力の平和利用」促進のための国際協調体制に組み込まれ、リスク-ベネフィット論に基づく「許容線量」の考え方を受け入れざるを得なくなったICRPであるが、放射線被ばくが人体へ及ぼす影響に鑑み、放射線防護において無用な放射線被ばくを回避するべく、放 射線防護に関し、①正当化、②最適化、③線量限度の3つを基本原則としている。 ①の正当化は、行為の正当化のことであり「人を放射線被ばくから守るために、国際的に勧告され、放射線防護の基本的概念として定められている種々の考え方の中で用いられている用語の一つであり、人が放射線 に被ばくする行為は、それにより、個人あるいは社会全体に利益がもたらされる場合でないと行うことはできないとするものである。行為の正当化を判断するには、被ばく行為が害に比べて利益が大きいか、また経済的に適正であるかなどについて検討される。」というものである(丁B19)。 ②の最適化は、防護の最適化のことであり、放射線防護においては、集 - 130 -団の被ばく線量を経済的及び社会的な考慮を計算に入れた上で、合理的に達成可能な限り低く保つようにすることをいう。1977年、ICRPにより、正当化、線量制限などと共に提出された考え方のひとつである。1990年の勧告でも防護の最適化の重要性を再び強調している。 ③の線量限度は、個人の線量限度のことであり、放射線被ばくの制限値 としての個人に対する線量の限度で、ICRPの線量制限体系の一つの要件である。線量限度は、確定的影響に対する いる。 ③の線量限度は、個人の線量限度のことであり、放射線被ばくの制限値 としての個人に対する線量の限度で、ICRPの線量制限体系の一つの要件である。線量限度は、確定的影響に対する線量に対してはしきい値以下で、がんなどの確率的影響に対しては、しきい値がなく、そのリスクが線量に比例するという仮定の下に、容認可能な上限値として設定されている。線量限度には、自然放射線と医療による被ばくは含まれない。 実効線量と等価線量の限度が、職業人と一般公衆の個人に対してそれぞれ勧告されており、日本をはじめ、各国の法令に採用されている。当初は線量当量限度と表記されていたが、平成12年にICRP勧告の取り入れにより、「線量限度」に改正された。組織線量当量も同様に「等価線量」に改正された。 上記三原則は、ICRP1977年勧告において放射線防護の三原則として示され、その後の勧告においてもこの原則に基づいて放射線防護の具体的指針が示されている。このうち、行為の正当化は、放射線被ばくを伴ういかなる行為も、その導入が正味でプラスの便益を生むことを求めている。また、防護の最適化は、社会的・経済的要因を考慮に入れな がら合理的に達成できる限り低く被ばく線量を制限することを求めるものである。個人の線量限度については、実効線量限度の概念が導入され、放射線被ばく影響に関する知見を踏まえて線量限度が改定されてきている。 オ被ばく線量限度基準の引き下げ ICRPは順次、その勧告において被ばく線量限度基準を引き下げてき - 131 -た。この点ICRPの1990年勧告は「年間1mSvまでの放射線被ばく(自然被ばく、医療被ばく以外)を許容している」という趣旨で援用されることがある。しかしながら、こ 下げてき - 131 -た。この点ICRPの1990年勧告は「年間1mSvまでの放射線被ばく(自然被ばく、医療被ばく以外)を許容している」という趣旨で援用されることがある。しかしながら、この1mSv/年という基準は、自然放射線レベル(年間1mSv程度。ただしラドンからの被ばくを除く)と同程度の放射線に追加被ばくしても許容できる、職業被ばくのリ スクの1/10(1万人に1人の過剰死亡)を社会は容認できる、という見解が基盤となって定められた基準である。しかし、仮に1万人に1人の過剰死亡であったとしても、被ばくによって発がん等の健康被害を生じ、死亡することになった当事者にとっては100%の死亡である。 これは決して「健康被害が生じない」安全なレベルという意味での「許 容」ではない。 カ小括以上のとおり、「原子力の平和利用」を国際的に協調して進展させていくための機関であるICRPであっても、放射線防護の三原則において「正当化の原則」を挙げ、その許容線量(被ばく限度線量)を随時引き 下げてきた。その前提として、確率的影響に関しては、放射線作業で通常起こる被ばく条件の範囲内では、線量とある影響の確率(がん死亡リスク)との間にしきい値のない直線関係が存在するというLNTモデル(直線的しきい値なしモデル)が採用されている。人為的な放射線被ばくは、基本的には回避されるべきものであり、ICRP1950年勧告 に示されていたように「可能な限り最低レベルまで引き下げるあらゆる努力を払うべき」ものである。 仮に許容線量の考え方(リスクとベネフィットを天秤にかけて受忍限度を定める考え方)を受け入れるとしても、本件事故によって一審原告らを含む住民らが被ばくしたことについて、何ら「正当化の原則」が作用 仮に許容線量の考え方(リスクとベネフィットを天秤にかけて受忍限度を定める考え方)を受け入れるとしても、本件事故によって一審原告らを含む住民らが被ばくしたことについて、何ら「正当化の原則」が作用 する余地はない。本件事故によってベネフィットを得る者はいないので - 132 -あるから、本件事故による被ばくを正当化することができないのは当然であるが、仮に、福島第一原発が平常運転していた時期を通じて考えたとしても、本件事故による一審原告らの被ばくを正当化できる理由は何一つ存在しない。一審原告らの被ばくはまったく不要な、正当化できない被ばくである。 原判決は一審原告らにも一定限度の許容すべき被ばくがあるかのような判示をし、避難の相当性を判断しているが、このような判示はICRPが依拠する放射線防護の考え方によっても明確に誤りである。 なお、LNTモデルはICRPのほか、全米科学アカデミー(NAS)や米国放射線防護審議会(NCRP)でも採用されており、環境省もI CRPによるLNTモデルを採用していることからすれば、同モデルの考え方を否定することはできない。原判決は、LNTモデルは科学的に証明された真実として受け入れられているのではなく、科学的な不確かさを補う観点から、公衆衛生上の安全サイドに立った判断として採用されていると判示しているが、科学的な正しさを欠いたものといわざるを 得ない。 (3) 日本における放射線被ばくに関する規制ア公衆に関する放射線防護の基準日本国内における日常的な放射線防護に関し、法令上、公衆の被ばく線量限度については、放射線障害防止法、炉規法のいずれにおいても実効 線量1mSv/年(時間単位では0.11μSv/時)とされている。 この公衆の 日常的な放射線防護に関し、法令上、公衆の被ばく線量限度については、放射線障害防止法、炉規法のいずれにおいても実効 線量1mSv/年(時間単位では0.11μSv/時)とされている。 この公衆の被ばく線量限度を定めるにあたっては前述のLNTモデルが採用され、放射線審議会において国民の意見を聴取した上で決定された。 イ放射性廃棄物に関する線量規制(規制除外線量)このほか、放射性廃棄物に関する線量規制も存在する。原子力安全委員 会が示した「放射性廃棄物埋設施設の安全審査の基本的考え方」(昭和6 - 133 -3年3月原子力安全委員会決定)は、放射性廃棄物埋設事業において、「原子炉施設」から発生する「低レベル放射性固体廃棄物」を浅地中に埋設処分する場合を対象とし、安全審査に際しての基本的考え方をまとめたものである。廃棄物埋設施設において講じられる安全対策は、通常の原子力施設に対して採られているものと異なり、埋設した廃棄物は時 間の経過に伴って放射能の減衰が期待できることから、管理の内容を時間の経過とともに段階的に変更していくことが妥当であるとされている。 つまり管理の期間を第1段階から第3段階までとし、その後の第4段階で埋設物を放射性物質としての規制から免除するという安全確保策である。この基本的考え方では、管理期間として300から400年、規制 除外放射線量として年間10μSv未満が目安とされている(丁B20)。 なお、年間10μSvは、年間0.01mSv(時間単位では0.001μSv/時)と同義である。この年間0.01mSvを規制除外線量とすることは、1985年ICRP勧告においても示されていた考え方で あり、国際機関の動向を踏まえたものである。本件事故を起こした福島第一原発 同義である。この年間0.01mSvを規制除外線量とすることは、1985年ICRP勧告においても示されていた考え方で あり、国際機関の動向を踏まえたものである。本件事故を起こした福島第一原発のような放射性廃棄物を常時生み出す施設において生じた放射性廃棄物が規制の対象から外れるのは、年間0.01mSvにまでその線量が低下してから、というのが原子力安全委員会(当時)が定めた基準である。放射線量がごく微量にならなければ、規制免除にはならないの である。この防護基準に従って、放射性廃棄物処理施設の事業許可が行われている。 ウ放射線管理区域さらに、公衆に対する防護基準ではないが、放射性物質を取り扱う施設等における職業的作業従事者に対する放射線防護については、関係諸法 令において放射線管理区域を設けて厳重な管理を行うほか、作業従事者 - 134 -に対する安全教育の徹底、定期健康診断などの対策を講じることを事業主に対して義務づけている。このうち、管理区域の設定については、法令(例えば、文部科学省所管の放射性障害防止法、同施行令及び同施行規則等)において、線量、空気中放射能濃度及び表面汚染密度について、以下の基準を超えるおそれのある場所について設定するように定められ ている。 ① 外部放射線に係る線量については、実効線量が3月あたり1.3mSv② 空気中の放射性物質の濃度については、3月についての平均濃度が空気中濃度限度の10分の1 ③ 放射性物質によって汚染される物の表面の放射性物質の密度については、表面汚染密度(アルファ線を放出するもの:4Bq/cm2、アルファ線を放出しないもの:40Bq/cm2)の10分の1④ 外部放射線による外部被ばくと空 の表面の放射性物質の密度については、表面汚染密度(アルファ線を放出するもの:4Bq/cm2、アルファ線を放出しないもの:40Bq/cm2)の10分の1④ 外部放射線による外部被ばくと空気中の放射性物質の吸入による内部被ばくが複合するおそれのある場合は、線量と放射能濃度のそれぞれの 基準値に対する比の和が1(以上、丁B21)この放射線管理区域の考え方のうち、①外部放射線に係る線量については、実効線量が3月あたり1.3mSvを時間あたりの線量に換算すると0.6μSv/時であるが、この線量の場所は放射線管理区域として指定され、必要ある者以外の立ち入り禁止等の措置を講じなければならない。 エ放射線作業従事者に対する放射線防護放射線作業に従事する労働者に対する放射線防護は、より具体的に労働安全衛生法に基づく電離放射線障害防止規則(電離則)において定められている。すなわち、放射線業務従事者の被ばく限度(電離則第4条、第5条)においては前掲ICRP1990年勧告同様、5年100mS v未満かつ1年50mSv未満、女性の放射線業務従事者の実効線量は - 135 -3月につき5mSv未満等の基準が定められている(女性について、妊娠期間中に限っていない点は前掲ICRP勧告より規制が厳重である。)。 そのほか、線量の測定・記録(電離則8条及び9条)、退去者の汚染検査(電離則31条及び32条)、保護具の支給・着用・汚染除去(電離 則38条から41条まで)などが定められている。このうち、測定に関しては、外部被ばくによる線量のみならず内部被ばくによる線量も測定しなければならない(電離則8条)とされている。 内部被ばくの危険を低減させるべく、電離則は事業主に対して「 うち、測定に関しては、外部被ばくによる線量のみならず内部被ばくによる線量も測定しなければならない(電離則8条)とされている。 内部被ばくの危険を低減させるべく、電離則は事業主に対して「事業者は、放射性物質取扱作業室その他の放射性物質を吸入摂取し、又は経口 摂取するおそれのある作業場で労働者が喫煙し、又は飲食することを禁止し、かつ、その旨を当該作業場の見やすい箇所に表示しなければならない。」(電離則41条の2第1項)と規制するのみならず「労働者は、前項の作業場で喫煙し、又は飲食してはならない。」(同条2項)として労働者に対しても放射性物質が飛散する場所での喫煙・飲食を禁止し ている。 また、労働基準法62条2項においては「有害放射線を発散する場所」において満18歳に満たない労働者を就業させることを禁止している。 満18歳未満の労働者は、前述の放射線管理区域内において就労させてはならない。なお、一審被告東京電力は平成20年6月5日、同一審被 告の原子力発電所定期点検において満18歳未満の労働者を就労させたことに関し、保安院より放射線管理区域内で就労する従業者の管理の徹底に関する指示文書を受け取っている。 オ小括以上のとおり、日本の放射線防護に関する諸法令においても、放射線被 ばく線量をできる限り低減化させるための措置が講じられている。また、 - 136 -公衆については1mSv/年未満の実効線量とすることが厳格に要求され、他方で職業的被ばくについては線量基準こそ緩和されているものの厳重に管理された放射線管理区域内での被ばくに限ることが前提とされている上、その被ばく線量も測定・記録が徹底されて管理されている。 そもそも未成年者(満18歳未満)の就労が禁止されている上 いるものの厳重に管理された放射線管理区域内での被ばくに限ることが前提とされている上、その被ばく線量も測定・記録が徹底されて管理されている。 そもそも未成年者(満18歳未満)の就労が禁止されている上、放射線 管理区域内での飲食・喫煙が禁止されるなど、職業的被ばくといえどもそのリスクを低減するため法令での規制がなされている。 これらは平常時の放射線防護に関する法令であるが、本件事故によって平常時以上の被ばくを強いられる理由は全く存在せず、かつ平常時以上の被ばくを正当化できる理由も全く存在しない。 (4) まとめ以上のとおり、放射線被ばくに関するLNTモデルに従い、被ばく線量が増えれば健康障害のリスクが高まること、未だに内部被ばくを含めた健康被害の全容は明らかにされていないことから、公衆である一審原告らにおいては、正当化できない事故による放射線被ばくをできる限り回避する必要があ る。それにもかかわらず、一審原告らが本件事故により初期被ばくさせられてしまったことは重大な損害である。 原判決はこの点、被ばくの事実を極めて軽視しており、不当である。 5 年間20mSvを被ばく線量限度として設定すべきではないこと(1) 緊急時の一般公衆に対する放射線防護の基準は法制化されていなかったこ とICRPは、1990年勧告(甲B5、99)を出し、わが国は、この勧告を国内法令に取り込み、前述のような法制化をおこなってきた。 1990年勧告では、一般公衆に対する線量限度を年間1mSvと定めていた。なお、ICRPの2007年勧告(甲B101)については、本件事 故時には、国内法への取り込みについて関連審議会で検討中であった。 - 137 -本件事故以前 vと定めていた。なお、ICRPの2007年勧告(甲B101)については、本件事 故時には、国内法への取り込みについて関連審議会で検討中であった。 - 137 -本件事故以前には、緊急時の一般公衆の放射線防護に関する法令については、原子力安全委員会が、原子力事故の際の屋内退避及び避難等の指標として、予測線量が10から50mSvの場合には自宅等の屋内退避、50mSv以上の場合にはコンクリート建屋内への屋内退避又は避難を定めていたが(防災指針)、これは緊急事態において、公衆が一時的に大量の被ばくを余 儀なくされるような事態が予測される場合の緊急避難等の措置の指標にすぎなかった。このように、原子力事故後の放射性物質による広範な地域汚染により、公衆が長期間にわたって被ばくを余儀なくされるような状況を想定して、公衆の線量限度値を定めるような法令自体は制定されていなかった。 (2) 本件事故後、一審被告国が緊急措置として使用した基準はICRP200 7年勧告に依拠したものとして正当化できないこと本件事故後、一審被告国は、避難指示を出すために依拠すべき法令上の基準がないことから、ICRP2007年勧告(乙B68)の内容を基にして避難指示を出した。また除染特措法を制定するときにもこれに依拠した。 ICRP2007年勧告は、計画された状況を運用する間に、もしくは悪 意ある行動から、あるいは他の予想しない状況から発生する可能性がある状況で、好ましくない結果を避けたり減らしたりするために緊急の対策を必要とする状況を「緊急時被ばく状況」とし、このようなごく限定された状況の下、公衆に対する被ばく線量について、各国の当局は参考レベルを実効線量で 20から100mSv/年の間に設定すべきであるとしており とする状況を「緊急時被ばく状況」とし、このようなごく限定された状況の下、公衆に対する被ばく線量について、各国の当局は参考レベルを実効線量で 20から100mSv/年の間に設定すべきであるとしており、また、 緊急時の計画策定にあたっては、公衆を含むステークホルダー(利害関係者)との協議が不可欠であるとしている。しかしながら、一審被告国は、本件事故後、ステークホルダーである一審原告ら住民に対して必要な情報開示を行うことなく、20mSv/年の被ばく線量限度基準を設けた。ICRPは、放射線防護についても正当化、最適化の原則が適用されることを確認し、緊 急時被ばく線量として20から100mSv/年という基準を示しており、 - 138 -正当化・最適化の前提としてステークホルダーの関与を求めている。その必要な手続的前提を欠き、線量限度基準のみを持ち出した手法は、ICRP勧告に依拠したものとはいえない。 加えて、ICRPは2007年勧告において、被ばくによる健康障害の影響が大きいと考えられるグループについてはその属性に応じて適切な防護戦 略を立てるようにと勧告している。本件事故直後、一審被告国は、妊婦、子どもを除外することなく一律、年間20mSv基準を打ち立てた。個々人の放射線感受性の問題とは別に、放射線被ばくに敏感と考えられる集団についても何ら考慮せず一律年間20mSvの基準を打ち立てた点においても、本件事故直後の一審被告国による上記基準がICRP勧告に依拠したものとし て正当化できる余地はない。 (3) 被ばくによる健康影響は、住民がその地域において長期間生活し続けることを前提に評価されるべきこと本件事故が福島県及びその周辺に全面的に放射性物質をまき散らしたことから、住民は避難をしない限り くによる健康影響は、住民がその地域において長期間生活し続けることを前提に評価されるべきこと本件事故が福島県及びその周辺に全面的に放射性物質をまき散らしたことから、住民は避難をしない限り、常時放射線に被ばくすることを強いられる こととなった。 一審被告らは、被ばくによる健康影響について、「年間20mSvを下回る」という基準をあたかも被害のメルクマール(事実上の受忍限度)であるかのように主張し、原判決は一審被告らの主張を受け入れた。しかし、そもそも住民の地域における居住は単年限りというようなものではなく、生涯に わたって数十年単位で続き得るものである以上、被ばくによる健康影響も、住民がその地域において一生涯にわたって生活し続けることを前提に、少なくとも数十年というスパンで評価されるべきである。原判決が、年間20mSvを下回るかどうかを一つの大きな基準として避難の相当性に関する判断をしていることは、生活の実態にそぐわないものであり、汚染の実態を直視 していない。 - 139 -(4) 年間20mSvの被ばくを許容した場合の健康障害本件事故由来の放射性物質汚染による放射線被ばくは、比較的低線量の被ばくである。このような低線量の放射線被ばくによる健康影響として想定されるのは、一般的には、晩発性の(将来の)がん(固形がん)による死亡リスクの上昇である。がんは、現在でも致死性の高い疾患であり、そのリスク は極めて重大である。 ICRP等は、100mSvを下回る被ばく領域における健康影響については不確実性が否定できず実証はされていないものの、疫学研究や放射線被ばくによる細胞内でのDNA損傷反応等についての研究の進展から、100mSvを下回る被ばく領域においても、被ばく線量と 影響については不確実性が否定できず実証はされていないものの、疫学研究や放射線被ばくによる細胞内でのDNA損傷反応等についての研究の進展から、100mSvを下回る被ばく領域においても、被ばく線量とがんのリスクとの間に は比例関係があると仮定するのが科学的に合理的であると判断し、LNT(直線的しきい値なし)モデルを採用して、放射線防護の方策を定めている。 一審被告らは「年間20mSvを下回る被ばく量であれば、これによるリスクは、野菜不足や運動不足など、他の健康リスクと比較しても小さい」などとして、健康影響リスクが小さければ被害はないかのように主張している。 長期間の累積被ばく線量としてみた場合、例えば、年間1mSvの被ばくを10年間受けたと仮定すれば、累積追加被ばく線量は10mSvとなるが、これにLNTモデルを単純にあてはめれば、がん死亡リスクは0.05%上昇することになる。これは、同様の被ばくを余儀なくされた人が1万人いたとすれば、そのうち5人が被ばくに起因するがんで死亡するというリスクで あるが、発がん性化学物質の環境基準が10万分の1から100万分の1で設定されていることと比べると、被ばく者にとっては過酷な基準である。さらに、瞬間的には年間20mSvを下回る線量であったとしても、長期間同じ地点に居住すれば累積被ばく線量は100mSvを超える可能性が高い。 そして「100mSvの被ばくにより、がん死亡のリスクが0.5%高まる」 との知見からすれば、累積被ばく線量が100mSvを超えた住民200人 - 140 -に1人の割合で被ばくに原因するがんによって死亡する確率となるのである。 この確率は無視できる数値ではない。 また、一審被告らが述べる野菜不足や運動不足による健康被害のリスク - 140 -に1人の割合で被ばくに原因するがんによって死亡する確率となるのである。 この確率は無視できる数値ではない。 また、一審被告らが述べる野菜不足や運動不足による健康被害のリスクは、個々人が自発的に選択するものであり、個々人がそれを引き受けることができるのに対し、本件事故による放射線被ばくは、放射性物質が降り注いだ地 域に居住している限り個人の努力では避けられないリスクであり、一審原告ら個々人が選択することができない強制リスクである。強制的な被ばくと、個々人の嗜好を並列し、強制的な被ばくのリスクを小さく見せようとするのは欺瞞的議論である。 6 原判決が依拠した健康調査結果は被ばくの実相を示していないこと (1) 原判決の認定原判決は、本件事故後に福島県において実施された種々の健康調査結果(乙B76、77、251、252、354、418)に依拠し、一審原告ら住民の健康に影響を与える放射線被ばくは本件事故によって生じなかったと認定する(原判決500から502頁)。しかし、上記県民健康管理調査 (問診及び甲状腺診断)やホールボディーカウンター調査は、いずれも放射線被ばくによる健康への影響を適切に認定できる証拠にはならない。 (2) ホールボディーカウンター調査についてアホールボディーカウンター調査の結果(乙B77、251、354、418)は、以下のとおり、生物学的半減期の問題、検出限界値の問題、 ガンマ線だけしか検出できない等の問題があり、内部被ばくがなかったことの証拠にすることはできない。 イ生物学的半減期についてホールボディーカウンター調査は、それが行われた時点において、すでにヨウ素131(半減期8日間)などのように生体内にて物理的半減期 することはできない。 イ生物学的半減期についてホールボディーカウンター調査は、それが行われた時点において、すでにヨウ素131(半減期8日間)などのように生体内にて物理的半減期 を越えて放射能が減衰しているか、体外に排出されている場合には検出 - 141 -できない。しかしながら、被ばくした事実は身体への影響として残る(放射線による生体内分子の傷は残る。)し、生物学的半減期は、核種、子ども・大人(子どもの方が早い)、及び体内でどの器官に取り込まれたかによって異なる。ヨウ素131の生物学的半減期は80から140日とされており、セシウム137は約70から100日とされている。 これに対し、最も早い時期のホールボディーカウンター調査の結果(乙B77)は、本件事故から約1年9か月後の平成25年12月に実施されたものであり、すでに放射性物質による内部被ばくが生じ、かつ放射性物質自体は放射能が減衰しているか、体外に排出されるなどしており検出できなかった可能性が高い。内部被ばくによってひとたびDNAが 傷つけられ、修復に異常が生じた状態に至っていれば、仮に調査時点で放射性物質自体が体外へ排出されていたとしても健康被害は生じ得る。 つまり、本件事故から約2年経過した後のホールボディーカウンター調査において調査できるのは、検査対象の放射性物質が体内に調査時点で現存しているかどうかでしかなく、内部被ばくの有無や程度は、そもそ も検出できないのである。 なお、物理的半減期及び生物学的半減期がいずれも長期であることで知られるストロンチウム90(カルシウムと同族であり、骨に沈着して骨髄が被ばくする。)は、ガンマ線が出ないためにホールボディーカウンター調査における検出対象外であるから、本調査によっても あることで知られるストロンチウム90(カルシウムと同族であり、骨に沈着して骨髄が被ばくする。)は、ガンマ線が出ないためにホールボディーカウンター調査における検出対象外であるから、本調査によっても検出できな い。 ウ検出限界の問題さらに、ホールボディーカウンター調査時点において体内に存在する放射性物質を検出するといっても、検出限界の問題がある。 福島県が公表している資料(平成23年7月24日開催「平成23年度 第3回福島県「県民健康管理調査」検討委員会」)によると、ホールボ - 142 -ディーカウンター調査の検出限界は、ヨウ素131について38Bq/人、セシウム134について320Bq/人、セシウム137について570Bq/人であり、これだけの大量の検出限界値を超えるだけの放射性物質が体内に存在しないと、そもそも検出されない調査である。しかも、もともと体が小さく、体内に取り込む放射性物質の量が大人より 少ない子どもについても同じ検出限界値が用いられているのであり、検出は極めて困難であり、測定値として現れることはない。また、前述した生物学的半減期を考慮すると、検出限界値が高すぎる問題はより一層深刻である。生物学的半減期を迎え、放射線量(Bq)が低下した放射性物質の体内残留が検出できない。そのため、本件事故によって生じ、 調査時点まで体内では続いている内部被ばくをホールボディーカウンターによって測定することは不可能である。 なお、内部被ばくについては、し尿などの排泄物中の放射能を計測するバイオアッセー法により、本件事故直後も測定が可能であった。しかし、一審被告国はこの調査を怠り、行わなかった。 エ放射線の種類の問題内部被ばくにおいて 放射能を計測するバイオアッセー法により、本件事故直後も測定が可能であった。しかし、一審被告国はこの調査を怠り、行わなかった。 エ放射線の種類の問題内部被ばくにおいては、透過力が低く、飛程(飛ぶ距離)が短いアルファ線、ベータ線がより重要な役割を果たすが、ホールボディーカウンターではそもそもこれらを検出できない。これは、本調査を担当した独立行政法人放射線医学総合研究所(放医研)の「放射線医学総合研究所に おけるホールボディーカウンターの測定方法について」でも明らかである。 オ小括以上のとおり、ホールボディーカウンター調査結果をもって、原判決が認定したような、健康障害を生じさせる放射線被ばくがなかった(放射 線被ばくによる健康障害の損害は生じていない。)、及び今後もない - 143 -(避難の相当性が失われている。)という認定は行い得ない。 (3) 福島県民健康管理調査についてア福島県民健康管理調査の問題点福島県民健康管理調査における基本調査は、そもそも平成23年3月11日から同年7月11日までの4か月間に限り、住民らの記憶に基づく 自己申告によって外部被ばく線量を推計するという調査であるが、以下のように、本件事故から時間が経過した後の住民らの自己申告に基づくこと、線量推計には文部科学省のモニタリングデータが用いられていること、回収率が低く調査としての信頼性に欠けることの各問題点がある。 イ本件事故から時間経過後の住民らの記憶に基づく自己申告による推計で あること基本調査は、本件事故から時間が経過した後に、平成23年3月11日から同年7月11日までの行動を住民の記憶に基づく自己申告によって推計するものである 己申告による推計で あること基本調査は、本件事故から時間が経過した後に、平成23年3月11日から同年7月11日までの行動を住民の記憶に基づく自己申告によって推計するものである。福島県民健康管理調査に関する説明のホームページには「ご提出いただいた問診票の行動パターンの結果と線量率マップ を組み合わせて、外部被ばく線量評価が行われています。線量率マップは文部科学省のモニタリングデータが用いられています。」との説明がなされており、この問診票には詳細版と簡易版がある。簡易版は自宅・勤務先(通学先)のほかによく立ち寄る先(店など)を記入し、各立ち寄り先での滞在時間を記入するほか、避難地域への立ち入りの有無を尋 ねるものである。逆にいうと、これだけの情報で文部科学省が設置したモニタリングポストのデータを用いて外部線量を推計するものであり、勤務先(通学先)へ徒歩で通うのか、自転車で通うのか、自家用車で通うのかの質問すらない。本件事故は地震直後であったから、給水を受けるために外へ並ぶなど、普段と異なる行動をとっていた住民らも少なく なかったはずであるが、そのような住民の本件事故直後の行動を適切に - 144 -拾うことができる項目ではなく、あくまでも簡易な自己申告による推計である。これに対し、詳細版は行動記録をより具体的に拾うことが可能にはなっているものの、逆に、詳細に当時の行動を記録することは難しい。本件事故直後から記入用に配布されていたならばともかく、本件事故後3か月経過後に始められた調査であり、その限界がある。 一審被告東京電力が二度にわたり、基本調査結果を提出しているが(乙B76、252)、いずれも平成23年3月11日から同年7月11日までの4か月間に関する調査である。回答者数 ある。 一審被告東京電力が二度にわたり、基本調査結果を提出しているが(乙B76、252)、いずれも平成23年3月11日から同年7月11日までの4か月間に関する調査である。回答者数が若干ずつ増えたので、データを出し直したというものである。この点、本件事故から時間が経過した後に、住民らの記憶に基づいて自己申告によって行動記録を調査 することについて、国連特別報告者グローバー報告(甲B186)においては次のとおり指摘されている。すなわち、「早期の情報収集は、放射線被ばくによる健康への影響を効果的に監視するために、非常に重要である。」「しかし基本調査は原発事故から3ヶ月後に行われ、回答者の事故当時の活動に関する記憶だけに頼るものであった。」(甲B18 6・12から13頁)。 ウ外部被ばく線量の推計には文部科学省のモニタリングデータが用いられているという問題点福島県民健康管理調査における外部被ばく線量の推計には、平成23年3月11日から同月15日まではSPEEDⅠのデータが、その後は文 部科学省によるモニタリングデータが用いられているとされている。しかしながら、同月11日から同月15日までの放射線量については、福島県によって実際に移動式、固定モニタリングの少なくとも二つの方法により実測され、データの公開もなされている。実測値があれば実測値を用いて推計するのが相当である。実測値上、同月12日から同月15 日頃までの初期の放射線量は、ピーク値が極めて高く(双葉郡双葉町上 - 145 -羽鳥における1590μSv/時が最高値)、いくつかのピーク線量は少し時間をおいて連続に発生しているが、このようなピーク線量の特徴は実測値でないとわからない。また、双葉町の測定実績に特に顕著であ 羽鳥における1590μSv/時が最高値)、いくつかのピーク線量は少し時間をおいて連続に発生しているが、このようなピーク線量の特徴は実測値でないとわからない。また、双葉町の測定実績に特に顕著であるが、モニタリング測定場所が少し離れるとピーク線量は大きく異なるところ、かかるピーク線量の空間的変動もモデル計算では再現できない。 実測値があるにもかかわらず、放射性物質放出量に基づきSPEEDIによって外部被ばく線量を算定する方法は、外部被ばく線量の過小評価をもたらす。 また、平成23年3月16日以降同年7月11日までの期間については、文部科学省によるモニタリングデータに従って算出したとされる。この 時期、文部科学省の実施したモニタリングの基本は、モニタリングカーによる測定である(平成24年7月27日文部科学省「東日本大震災からの復旧・復興に関する文部科学省の取組についての検証結果のまとめ(第二次報告書)」参照)。平成23年4月8日までに積算線量計が設置されたのは福島県内15か所のみであり、24時間を通じた実測値 (ピーク値を含む)とのかい離が生じ、線量が過小評価されている可能性がある。 なお、文部科学省において、可搬型モニタリングポストの運用が始まったのは平成23年9月以後のことである(当初20台。平成24年4月に増設し合計675台)。文部科学省設置の可搬型モニタリングポスト については設置方法等の問題により実際の線量より低い測定値しか測定できないという批判がなされ、その批判を文部科学省も認めたことがあった。 このように基本調査は、放射線量に関するデータがそもそも実測値とかい離し、過小評価となっている上、ごく簡易な問診でしか外部線量推計 が行われていない。したがって、外部被 あった。 このように基本調査は、放射線量に関するデータがそもそも実測値とかい離し、過小評価となっている上、ごく簡易な問診でしか外部線量推計 が行われていない。したがって、外部被ばく線量の推計についても、デ - 146 -ータを信頼して、健康被害が生じなかったと結論づけることはできない。 エ回収率が低い問題福島県民健康管理調査の回収率は結局3割にとどかない(乙B252)。 このような回収率が低い問題点については、国連特別報告者グローバー報告(甲B186)にも指摘されている。同報告では、「この低い回答 率と、」基本調査開始が本件事故から3か月後と遅い時期に始められ(住民らの記憶が曖昧になる。)、「3か月という時間差が生んだ回答の不明瞭な性質により、原発事故の健康への影響を、正確に把握し、評価することができない可能性がある。」と指摘されている(甲B186・13頁)。 オ小括以上のとおり、福島県民健康管理調査の基本調査は、本件事故による事故直後の外部被ばく線量について、原判決のように健康被害をもたらすものではなかったと結論付けられるほど信頼性の高い資料ではない。 7 国による施策は実際の放射能汚染度を踏まえていないこと (1) 一審被告国は放射線被ばく線量の実測結果を踏まえることなく政策を決定してきたこと一審原告らが被った精神的損害について、原判決は中間指針の枠組みに依拠し、一審被告国による本件事故後の避難指示の有無及びその指示内容に応じて避難の相当性を決した。しかし、そもそも一審被告国が本件事故後の避 難指示を決する際、実際の放射能汚染度は考慮に入れられておらず、そのため、放射能汚染度が高くても避難指示が出されていない地域が発生 の相当性を決した。しかし、そもそも一審被告国が本件事故後の避 難指示を決する際、実際の放射能汚染度は考慮に入れられておらず、そのため、放射能汚染度が高くても避難指示が出されていない地域が発生している。 (2) 本件事故による放射性物質の拡散状況は同心円状ではないこと本件事故による放射性物質の拡散状況は同心円状ではなかった。放射性ヨウ素については、避難指示が出されていない区域にも広範な放射性プルーム (原子力発電所施設等から放出された微細な放射性物質が、大気に乗って煙 - 147 -のように流れていく現象)の拡散があり、かつ、区域及び時間帯によっては相当高濃度の放射性プルームの通過があったことが明らかになっている。放射性ヨウ素131のプルームの通過があった区域には、避難指示が出されていない地域が多数含まれている。政府による避難指示においては、実際の放射能汚染度が高いにもかかわらず福島第一原発からの直線距離が遠いという ことで避難指示等の対象にされなかった地域が存在しており、この点が直視されなければならない。 (3) 初期被ばく段階において政府に実測値に基づく対策を行う体制と発想がなかったことア環境測定の不足 本件事故後、初期被ばくが生じる段階での環境測定は放射線被ばくによる健康被害を防ぐのに資する内容・量では行われていなかった。そのため、後に健康被害との関係等を推測するための数値が不足している。 イ SPEEDIによる予測データを被ばく防護に活かさなかったことSPEEDIは、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムのこ とであり、原子力発電所などから大量の放射性物質が放出された場合や、そのおそれがある場合に、放出源情報(放射性物質の種類 SPEEDIは、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムのこ とであり、原子力発電所などから大量の放射性物質が放出された場合や、そのおそれがある場合に、放出源情報(放射性物質の種類ごとの放出量の時間的変化など)や気象条件、地形データに基づいて、周辺環境における放射性物質の大気中濃度や被ばく線量などを予測するためのシステムである。 本件事故後、SPEEDIによる放射性物質の拡散予測データは、平成23年3月23日、瞬間的にその一部が公表されたほかは、本件事故後約2か月たってからようやく公表されるに至った。初期被ばくを回避すべく避難する住民らに対し、放射性物質の拡散予測データは提供されなかったため、拡散予測を知らされないまま放射性物質とともにこれが流 れていく風下方向へ逃げてしまい、被ばく量を増やしてしまった住民も - 148 -いる。 ウ政府はアメリカ政府提供の実測値を対策に活かさなかったことSPEEDIによる放射性物質の拡散予測データはあくまでシミュレーションによる予測であるが、本件事故直後、米国政府(具体的には米国エネルギー省国家核安全保障局(NNSA))による実測も行われており、 平成23年3月19日の段階で、福島第一原発から30km圏内の計測をほぼ完全に終えており(丁B61)、このデータによれば、自主的避難等対象区域とされている地域(伊達市の相当程度の部分、福島市の東側、いわき市の一部)は高濃度汚染に達していたということが確認できる。このデータは同日頃には政府に提供されており、遅くとも同年4月 以降にはこのデータを踏まえることが可能であった。 一審被告国は、住民の被ばくによる健康被害を防ぐためには実際の放射能汚染に応じた対策が必要であった 供されており、遅くとも同年4月 以降にはこのデータを踏まえることが可能であった。 一審被告国は、住民の被ばくによる健康被害を防ぐためには実際の放射能汚染に応じた対策が必要であったにもかかわらず、上記のような実測データを含む放射能汚染に関する実際の状況に応じて、住民の放射線防護のための対策を講じなかった。そして、緊急時被ばく状況にあるとし て、年間20mSv以下の線量の区域では一般公衆の居住はもちろん、子どもたちの学校生活も可能であるとの方針を示した。本件事故後の福島県について被ばく線量限度を引き上げることによって、一審被告国は、法令によっては本来許容され得ない線量の被ばくを住民に強いた。 この一審被告国の方針によって、放射性物質による汚染を受けていなが ら、いわゆる自主的避難等対象区域に設定されてしまった地域が多数生じた。同区域に設定された地域には、通常であれば放射線管理区域として18歳未満の子どもの立ち入りや、飲食が禁止される区域が含まれていたにもかかわらず、そのことは政策においてまったく顧みられなかった。 エ文部科学省のデータに依拠した場合にも放射線管理区域相当の汚染度の - 149 -広がりが明らかであったこと文部科学省が、平成23年10月18日に公開したセシウムなどの「汚染地図」および、平成24年10月1日に公開した航空機による「測定データ」によれば、福島県内の浜通り及び中通り、さらに県南地域から栃木県北、茨城県北、さらには群馬県にまで、放射線管理区域に指定さ れる値を超える汚染が広がっており、北は宮城県南側の地域にまで広がっていることがわかる。区域外の県南・白河市を含め、避難指示を受けずに避難を余儀なくされた一審原告らの避難元(福島市渡利、伊 さ れる値を超える汚染が広がっており、北は宮城県南側の地域にまで広がっていることがわかる。区域外の県南・白河市を含め、避難指示を受けずに避難を余儀なくされた一審原告らの避難元(福島市渡利、伊達市、いわき市、白河市)が広く、放射線管理区域に指定されるのに相当する状況にあったことが明らかとなっている。そうすると、無用な被ばくを 回避するために避難継続を余儀なくされている一審原告らについて、政府による避難指示がない(あるいは一旦出された避難指示が解除された)ことをもって損害が発生しなくなったという評価はあまりに不当である。 (4) 初期の避難指示に基づいて中間指針における賠償方針を決したこと本件事故直後の政府による避難指示は、本件事故によって拡散した放射性 物質の実態に必ずしも即したものではなかった。一審被告国は、拡散した放射性物質の状況についての実測データが種々明らかとなったことを受け、本件事故直後の避難指示の範囲を超えて放射性物質が拡散した地域につき追加で避難指示を行ったり、自らの判断によって避難した者についての補償等の施策を避難指示に基づく避難者と同等のものに引き上げたりすることが可能 であったが、一審被告国は、その検討すら行わなかった。 (5) 小括一審被告国はそもそも本件事故を予防できたにもかかわらず、規制権限を適切に行使せず、本件事故の発生を招き、大量の放射性物質を拡散させた。 その結果、被災前の居住地の放射能汚染度が高くなったため、自ら多大な犠 牲(経済的、精神的)をはらって避難の継続を余儀なくされている一審原告 - 150 -らの被害について、一審被告国の中間指針は、本件事故直後の混乱期を過ぎれば単なる杞憂であるとして避難の相当性を認める期間を極めて短く限って 避難の継続を余儀なくされている一審原告 - 150 -らの被害について、一審被告国の中間指針は、本件事故直後の混乱期を過ぎれば単なる杞憂であるとして避難の相当性を認める期間を極めて短く限っている。一審被告東京電力にいたっては、事故後1か月(平成23年4月22日まで)以上の避難は正当化されないと主張している。これらの主張はいずれも誤った主張である。 8 一審原告らの損害として放射線被ばく被害を受けたことが前提とされるべきこと(1) 短い半減期をもつ放射性核種等による初期被ばくがあったことまず、前提として、一審原告らが避難を開始する前に、それぞれ既に本件事故により被ばくしていた点を看過してはならない。 本件事故によって大気中に放出されたのは、本件事故後の空間線量率あるいは土壌汚染度の測定において、本件事故後一定期間経過後まで、測定可能であったセシウム134、セシウム137に限られない。 群馬県高崎市のCTBT(包括的核拡散防止条約)監視測定所において、クラウドシャイン(モニタリングポストの放射線量率測定器周辺の空気中に 存在する放射性核種から放出されるガンマ線。甲B179・71頁)を構成する核種が100万分の1Bq(μBq/㎥)のレベルで23種類、測定されている。測定されている主要な核種(その半減期)は、①キセノン133(半減期約5日)、キセノン135(半減期約9時間)、②テルル132(半減期3日)、ヨウ素132(テルル132の核崩壊によって生じる核種、 半減期2時間)、③ヨウ素131(半減期約8日)、④セシウム134(半減期約2年)、セシウム137(半減期約30年)、⑤セシウム136(半減期約13日)である(甲B179・73頁以下)。短い半減期の放射性核種が放出す ウ素131(半減期約8日)、④セシウム134(半減期約2年)、セシウム137(半減期約30年)、⑤セシウム136(半減期約13日)である(甲B179・73頁以下)。短い半減期の放射性核種が放出する放射線が福島県内を中心として、本件事故直後にどれだけの量が発生し、どのように拡散されたのかについては、測定・把握がされていな い。 - 151 -一審原告らが避難を開始することがまだできない段階での、短半減期の放射性核種による放射線被ばく(放射性ヨウ素によるものを含む。)及び水素爆発以前に適切に測定されていないセシウム137による放射線被ばく(初期被ばく)がある。この初期被ばくは、後に福島県から県外へ避難した一審原告らにおいても、免れ得ていない被ばく被害である。 (2) 初期被ばく自体が被害であること放射線被ばくについては、あらゆる健康被害を生じさせない絶対安全な被ばく線量限度というものを設けることができない。しきい値がないというのが、しきい値なし直線仮説(放射線被ばくと、がん疾患を念頭においた健康被害との関係については、これ以下の放射線被ばくであれば生じることがな いというしきい値がない関係であり、放射線に被ばくすればするほど健康障害(がん疾患を念頭においている)の生じる確率が高まるという仮説。LNTモデル)であり、種々の調査結果においてその正しさが示されている。 これらの調査結果によれば、少なくともがん発症リスクについては、100mSv未満の被ばく線量であっても、線量が増加するに伴い直線的にその 発症リスクが増加することを示すデータが複数そろっているのであり、原判決判示のように「少なくとも100mSvを超えない限り、がん発症のリスクが高まるとの確立した知見は得られて」いな 的にその 発症リスクが増加することを示すデータが複数そろっているのであり、原判決判示のように「少なくとも100mSvを超えない限り、がん発症のリスクが高まるとの確立した知見は得られて」いないという状況にはない。 放射線被ばくの線量が増加すればするだけ、少なくともがん発症リスクが高まるのであるから、一審原告らが本件事故直後の段階で初期被ばくをさせ られたことにより、今後のがん発症リスクも高まるものである。本件事故によって将来のがん発症リスクを高める被ばくをしたこと自体が一審原告らの健康被害といえる。損害算定にあたってこの点が踏まえられなければならない。しかるに、中間指針においても、この初期被ばくによって将来の健康リスクが高まった状態にすでにおかれたことは考慮されていない。 (3) 追加被ばくを回避すべき必要性からの避難継続であること - 152 -一審原告らにおいては、本件事故直後の段階で初期被ばくを強いられており、そのため、今後のがん発症リスクが高まった。放射線被ばく線量が増加すればそれに伴い、直線的にがん発症リスクが高まるのであるから、一審原告らにおいては自らの生命・健康を保持するべく、追加被ばくを回避する措置として、避難を継続せざるを得ない。また、未だ放射線管理区域の基準を 満たす放射能汚染度を示している避難元に帰ることは不可能である。 一審原告らが避難元へ戻ることができない理由には、国の避難指示及び高い放射能汚染度のために本件事故前にあった地域のコミュニティが壊されてしまい、避難元では日常生活を送ることができるだけの状況が確保できないとか、事故によってそれまでの生業を奪われたとか、その後に思い描いてい た将来設計が大きく変容を余儀なくされてしまい再び福島へ戻っ 、避難元では日常生活を送ることができるだけの状況が確保できないとか、事故によってそれまでの生業を奪われたとか、その後に思い描いてい た将来設計が大きく変容を余儀なくされてしまい再び福島へ戻っても生活の糧を得ることができない等の理由もあるが、共通する理由としては何より、自身の生命・健康を守るために追加被ばくを回避しなければならないことがある。自主的避難等対象区域であるからといって、本件事故前の放射能汚染度よりずっと状況が悪い状態が継続しているのに、避難元へ戻ることなどで きない。原判決による避難の相当性判断の期間はいずれの一審原告らについても短過ぎる。 9 小括以上のとおり、原判決の判断は、一審原告らが本件事故によって強制的に被った放射線被ばくについて、損害の発生という点においても、避難の相当性 (損害発生と本件事故との相当因果関係の継続)という点においても、事実に反する誤ったものといわざるを得ない。 第5 突然の強いられた避難によって一審原告らが被った損害 1 一審原告らが本件事故前に福島で営んでいた生活は様々である。 先祖代々の土地(家屋、田畑)を譲り受けて守っていた者もあれば、借家住 まいをしていた者もいる。家族の状況も、妊娠中であったり、幼い子どもがい - 153 -たり、進学を控えた子どもがいたり、高齢の親族と同居していたり、状況は様々である。仕事の状況も、自営を行っていた者、人を雇用して事業を展開していた者、雇われて働いていた者、様々であった。 一審原告らは、本件事故によって突然の避難を強いられ、その時点で避難元での生活を根本から失った。親族と断絶せざるを得なくなった者もおり、借家 を解約しなければならなくなった者もおり、仕事を失った者もいる。それだけの生活の て突然の避難を強いられ、その時点で避難元での生活を根本から失った。親族と断絶せざるを得なくなった者もおり、借家 を解約しなければならなくなった者もおり、仕事を失った者もいる。それだけの生活の変容を選択せざるを得なくなったのは、本件事故によって放射性物質が一審原告らの生活場所へ降り注いできたためである。強制避難を命じられた一審原告らも、それ以外の一審原告らも、放射性物質が降り注いできたために避難を余儀なくされた点は変わらない。 一審原告らは生活の状況こそ様々であったが、福島を生活の本拠地にして生きていく見通しを持っていた。避難によって、一審原告らは過去からつながっていくと信じていた未来を奪われた。また、避難によって、避難元で営んできた生活の質は大きく引き下げられ、今日に至るまでそれは回復していない。その背景には、親族や知人、友人と突然の断絶(物理的な距離のみならず、心理 的な親密さも含めて)を余儀なくされたこと、仕事を失ったこと、将来設計を突然変えられたことに対応しきれないことがある。そして、望まない初期被ばくをさせられ、初期被ばくによる健康障害が発現する不安を常に抱えなければならなくなった。これは将来にわたり、世代を超えて継続する被害である。 2 一審原告らの被った被害は人格権(憲法13条)の侵害である。 一審原告らは、本件事故前、それぞれの生活基盤を避難元に置いており、表面的な金銭収入の多寡にとらわれない、豊かな生活を送っていた。その生活は、豊かな自然の恵み、親戚との距離の近さ、近隣との「お裾分け」を行う間柄、あるいは長い先祖の歴史などに支えられたものであり、避難元の地を離れては成り立たないものであった。一審原告らは、年代も様々であるが、将来、引き 続き避難元で居住しながら、自身らあ を行う間柄、あるいは長い先祖の歴史などに支えられたものであり、避難元の地を離れては成り立たないものであった。一審原告らは、年代も様々であるが、将来、引き 続き避難元で居住しながら、自身らあるいはその子・孫らとともに生活する将 - 154 -来を思い描いていた。一審被告国が規制権限を適切に行使すべき義務を怠った結果、本件事故が発生し、一審原告らは「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」(憲法13条後段)をまさに侵害された。これは憲法上の人格権侵害である。 3 一審原告らは、被ばくを避ける権利も侵害されている。 一審原告らが本件事故によって放射線被ばくを強いられたこと及び放射線被ばくを回避するために避難を余儀なくされたことは、被ばくを避ける権利の侵害であり、憲法13条に定める人格権の侵害である。仮に、現実には被害として発生していないとしても、生命、身体、健康への被害が発生する現実的なおそれは、科学的、経験的に認められる。さらに、原発事故という未曽有の事故 に遭遇した被害者として、出続けている放射能による自己及び子どもや家族の生命、身体の安全、健康被害に対する不安を感じることは「内心の平穏」を侵害するものとして、一審原告らの人格権を侵害し続けている。 第6 本件の被侵害利益 1 原判決は、一審原告らの侵害された権利利益について、「避難の相当性の認 められる者については、いずれの原告も、本件事故を原因として、住み慣れた自宅や地域に帰れない苦痛を感じること、不便な避難生活を強いられること、先の見通しがつかない不安を感じること、放射能に対する恐怖や不安を感じることなどにより、平穏な日常生活を喪失し、精神的苦痛を被った点では共通しているといえる。」、「避難していない者についても、放射線被ばくに対する かない不安を感じること、放射能に対する恐怖や不安を感じることなどにより、平穏な日常生活を喪失し、精神的苦痛を被った点では共通しているといえる。」、「避難していない者についても、放射線被ばくに対する 恐怖と不安の中での生活を余儀なくされたことなどからすれば、避難した者と同程度の精神的苦痛を被ったと考えられる。」、「本件における原告らが侵害された利益は上記各要素を総合した平穏な日常生活を送る権利と解するのが相当であり、かかる権利は憲法13条、憲法22条1項等に照らして、原賠法上も保護されるものというべきである。」と判示した(原判決522頁)。 各地の同種訴訟においても、平穏生活権が侵害された権利利益であるという - 155 -内容の判断がなされているが、改めてどのような権利なのか検討する。 2 被害の内容本件の被害の実態として、「地域での生活を根底からまるごと奪われたこと」、「家族離散による生活の破壊」「故郷を失ったこと」などがあげられる。 本件事故は、地域において営まれていた生活の全てを丸ごと破壊し、その結 果、人々の生活を成立させていた地域の共同性も奪った。そうした事態は、人と自然のかかわり、人と人のつながり、そうした営みが持つ永続性や持続性という故郷の根本的な価値や機能をあらゆる場面で全面的に破壊した。 本件事故の被害はまさに広範かつ全面的なものであり、取り返しのつかない全人格的で生活全般に及ぶ深刻な被害であることが特徴である。なぜならば、 地域において生活してきた住民にとって、地域での生活は人格的生存、自己実現そのものを意味しているからである。そうした地域における生活の全てを丸ごと奪われることは、まさに全人格的で生活全般に及ぶ被害というほかない。 このように、本件 域での生活は人格的生存、自己実現そのものを意味しているからである。そうした地域における生活の全てを丸ごと奪われることは、まさに全人格的で生活全般に及ぶ被害というほかない。 このように、本件では、地域での元の生活を根底からまるごと奪われており、地域において平穏な生活(家庭生活、地域生活、職業生活など)を送ることが できる生活利益そのものが侵害されているから、本件事故によって侵害された法益は、生存権、身体的・精神的人格権(身体権に接続した平穏生活権を含む。)及び財産権を包摂した「包括的生活利益としての平穏生活権」といえる。 3 侵害された権利利益の重大性大飯原発差止訴訟第一審判決(福井地判平成26年5月21日判時2228 号72頁)や大阪国際空港訴訟控訴審判決(大阪高判昭和50年11月27日)が判示するとおり、生命を守り生活を維持する利益は人格権の中でも根幹部分をなす根源的な権利ということができ、すべての法分野において、最高の価値を持つのであり、絶対的に保護されるべきである。 人の生活は地域コミュニティの中において存在する。このようなコミュニテ ィの生活諸条件に支えられて人間は生存(生物的、社会的生存)している。こ - 156 -の生存が脅かされたとき、健康やさらには生命が危機にさらされる。今回の事故は人々から生活の基盤であるコミュニティの支えを奪い、そしてそのことが生存の条件を脅かし、ひいては生命や健康被害につながっていく。このように、本件では、生命に直結する生活全般が侵害されたといえ、まさに生命を守り生活を維持する利益が侵害されたといえる。 本件で侵害された生命を守り生活を維持する利益、すなわち「包括的生活利益としての平穏生活権」は、憲法13条、25条により保障される権利利 を守り生活を維持する利益が侵害されたといえる。 本件で侵害された生命を守り生活を維持する利益、すなわち「包括的生活利益としての平穏生活権」は、憲法13条、25条により保障される権利利益の中でも根源的な権利であり、すべての法分野において最高の価値を持つのであり、絶対的に保護されるべきでものである。 このように日本の法体系において、最高の価値を持つ権利利益が本件では侵 害されているのである。 第7 中間指針に依拠した原判決損害認定の根本的な誤り原判決が中間指針に依拠した損害認定をしたことは誤りである。 1 中間指針(乙B1の1)が放射線被害を無視していること(1) 政府の避難指示に起因する損害への補償を基本に据えていること 中間指針の基本的な考え方として、本件事故への対処としての政府の避難指示に起因する損害を補償するという発想がある。具体的には、本件事故に起因して実際に生じた被害の全てが原子力損害として賠償の対象となるものではないが、本件事故から国民の生命や健康を保護するために合理的理由に基づいて出された政府の指示等に伴う損害、市場の合理的な回避 行動が介在することで生じた損害、さらにこれらの損害が生じたことで第三者に必然的に生じた間接的な損害を対象とすることが明言されている。 上記の考え方については、政府が市民の行動の自由を制約したことに対する国家補償の要素を見て取ることができる(甲B58・104頁)との批判がある上、国民全体又は住民全体の負担において本件事故の被害者に 生じた犠牲に対して補償をするという観点は、慰謝料の積極的活用に対す - 157 -る制約要因として作用する可能性もあるとの指摘がされている(甲B59・41頁)。 さらに、より本質的な批判として、政府の指示の 補償をするという観点は、慰謝料の積極的活用に対す - 157 -る制約要因として作用する可能性もあるとの指摘がされている(甲B59・41頁)。 さらに、より本質的な批判として、政府の指示の有無が危険の切迫性にとって絶対のものとはいえない(甲B58・104頁)点がある。本件事故によって放出された放射性物質は、避難指示区域内に留まった訳でも、 福島第一原発から同心円状に広がった訳でもなく、その時々の風の状況により拡散方向や拡散する地域を変えているし、その時々の雨雪の状況により、放射性降下物として地上に降り注いで森林の樹木や土壌等に沈着したか否かの状況も異なる。放射性プルームが通過している最中に、当該区域に雨雪があれば、放射性降下物として沈着する放射性物質の量が多くなる ため、本件事故によって放出・拡散された放射性物質は、政府による避難指示区域外であれば低いという関係にはない。中間指針は、科学的に考えれば当然の、放射性物質の拡散状況・放射性物質による汚染状況に応じて補償を行うという考え方をとらず、政府による避難指示の有無及び内容(帰還困難区域等、避難指示の対象となった地域内での区域分け)に応じ て補償額の多寡を決している。 一審原告らは、政府が市民の行動の自由を制約したことに対する国家補償を行うことに反対するものではないが、本件が原子力発電所の事故であり、事故によって大気中に大量の放射性物質が拡散され、その放射性物質による健康被害等を避けるために避難を余儀なくされ、かつ現在まで避難 元に戻れない状況が続き、しかも現在まで健康被害に不安を抱えながらの生活を余儀なくされているという性質の事案であるにもかかわらず、放射性物質の拡散状況や汚染状況に即した補償が検討されず、政府による避難指示のみを基礎として補償が決 在まで健康被害に不安を抱えながらの生活を余儀なくされているという性質の事案であるにもかかわらず、放射性物質の拡散状況や汚染状況に即した補償が検討されず、政府による避難指示のみを基礎として補償が決せられている点は不当であるといわざるを得ない。 (2) 政府の避難指示によらない損害の発生について、避難の必要性・相当性 - 158 -への疑いを基本に据えていること中間指針の基本的な考え方につき、制定時の原賠審委員の一人は、自主的避難の費用については、①政府がICRPの勧告による防護基準によって避難指示を出した区域の外側の居住者であるという点で「危険が切迫」していたといえるのか、②政府の避難指示に基づかないという点で「避難 の決定・判断に合理性が担保」されているのかを問題とする(丁B60・25頁)。 しかるに、この考え方に対しては、前述の政府の指示の有無は危険の切迫性にとって絶対のものとはいえないといった批判(甲B58・104頁)が妥当する。自己の権利や法益に対する危険が現実化する場面における事 前の回避措置費用を責任主体に帰責するという中間指針の考え方を前提にしても、権利保全費用の賠償可能性の判断において決定的に重要なことは、自主的避難等の費用が自己の権利や法益に対する危険の現実化を回避するための予防措置として合理的なものであったか否かであり、その判断にあたって政府指示の有無を過大評価すべきではない(甲B59・42頁)。 原発事故による自己の権利や法益に対する危険は、放射能によってもたらされる放射線被ばく被害が第一に挙げられるものであるから、放射能汚染度や放射線被ばくに感受性の高い子どもかどうか等、放射線被ばくによる被害の危険に応じて判断されなければならない。 (3) 中間指針は放射能汚染と避難指 害が第一に挙げられるものであるから、放射能汚染度や放射線被ばくに感受性の高い子どもかどうか等、放射線被ばくによる被害の危険に応じて判断されなければならない。 (3) 中間指針は放射能汚染と避難指示の不一致を片面的にしか考察していな いこと中間指針においては、放射能によって汚染された地域と国による避難指示が出された地域が一致しないことを考慮に入れている。国による避難指示は放射線被ばくによる被害を網羅的にとらえることができないという問題意識自体は必要なものであるが、中間指針の問題は、かかる不一致を片 面的にしか考察していないことである。すなわち、政府の避難指示と放射 - 159 -線量の不一致の問題については、政府の避難指示の対象地域ではあっても、本件事故当時の風向き等の事情により放射線量が実際には少なかったことが後から判明し、結果的には避難する必要がなかった地域があるとした場合しか検討されていない(丁B60・24頁下から6行目以降)。中間指針は、政府の指示によらない避難について、危険が切迫していたといえる のか、政府の避難指示に基づかないという点で避難の決定や判断に合理性が担保されていたといえるのかを厳しく問う一方で、政府の避難指示が出されていないにもかかわらず放射能汚染度が高いことが判明した地域について、どのように損害を判定すべきかという検討を欠いている。 この点において、中間指針は放射線被ばく被害を無視しており、政府の 避難指示による自由の制約についてのみ検討しているとの批判を免れない。 (4) 年間20mSvの放射線被ばくは健康被害をもたらさないという建前は成り立たないこと中間指針が、仮に放射線被ばくによる健康被害を検討して策定されているとすれば、政府が本件事故後に定めた被ばく線量限度年間2 mSvの放射線被ばくは健康被害をもたらさないという建前は成り立たないこと中間指針が、仮に放射線被ばくによる健康被害を検討して策定されているとすれば、政府が本件事故後に定めた被ばく線量限度年間20mSvま での放射線被ばくであれば健康被害をもたらさないから、避難の必要性を認めないということを考えの基礎においているということになる。しかし、年間20mSvに達しない放射線被ばくが健康被害をもたらさないとの考え方がICRP勧告によっても基礎付けられていないことは前述のとおりである。 にもかかわらず、中間指針は、政府による避難指示は出されていないが放射能汚染度が健康被害上無視できないと考えられる場合について、避難の正当性を無条件に認めていない。 この点、中間指針においても、年間20mSvより低い線量の被ばくを懸念して回避する行動を不合理と断じることができるのかが問題とされて いるところであり(丁B60・9頁上から11行目以降)、ICRPの勧 - 160 -告に従ったとしても、政府による低線量ワーキンググループ報告書(乙A3)によったとしても、年間20mSv未満の被ばくであれば健康被害が生じないとはいえない。ところが、中間指針では、いわゆる自主的避難等対象区域からの避難についても、避難指示が出された区域と同等の放射能汚染度があれば避難指示が出された区域と同様の補償を行うという基準に なっておらず、避難指示がない避難については避難指示が出された区域とは賠償水準を大きく変えており、中間指針が政府による避難指示に基づく避難(自由等の制限)に対する国家補償の役割ということを基礎に置いていることの限界が表れている。 2 中間指針に対しては、本件事故のようなかつて類をみない被害(被害を及 ぼす地域の広さ、被害の 難(自由等の制限)に対する国家補償の役割ということを基礎に置いていることの限界が表れている。 2 中間指針に対しては、本件事故のようなかつて類をみない被害(被害を及 ぼす地域の広さ、被害の多様性・深刻性)の評価にあたって、既に一定程度類型化され保険制度が機能している交通事故損害賠償方式の個別損害積み上げ方式をなぜ採用したのか、慰謝料算定に際しなぜ一審被告東京電力の帰責性が考慮されないのか等、種々の批判がなされており、もっともな批判である。 また、中間指針は、根本において、本件事故による放射性物質による被ばく被害を踏まえた損害算定を全く行っておらず、この点が決定的な問題点である。 3 原判決は、一審原告らの被害の全容を直視せず、避難元地域毎に避難の相当性を一審被告国の方針に従って設定し、主として中間指針に挙げられた項目ご との損害について立証の有無を判断し、避難の相当性が認められる期間内についての損害を認容するという判断を行った。しかしながら、このような原判決の判断は一審原告らの被害を切り捨て、矮小化するものであって不当である。 4 令和4年12月、原陪審は中間指針第五次追補を決定、公表し、「過酷避難状況による精神的損害、生活基盤の喪失・変容による精神的損害、相当量の線 量地域に一定期間滞在したことによる健康不安に基礎を置く精神的損害、自主 - 161 -的避難等に係る損害等」について、「指針に加えて損害の範囲を示す」として、従前、原陪審で考慮されてこなかった損害項目を加えるなどの追加・増額を示した。そして、一審被告東京電力はこれを受け、追加賠償の方針を示した。第五次追補においてもいわゆる自主的避難等対象区域及び区域外の住民については極めて低額に据え置かれているものの、その中で認められ、同一審被告 て、一審被告東京電力はこれを受け、追加賠償の方針を示した。第五次追補においてもいわゆる自主的避難等対象区域及び区域外の住民については極めて低額に据え置かれているものの、その中で認められ、同一審被告も認 めている生活基盤変容や健康不安に関する慰謝料などは本件の賠償額の算定に当たっても十分考慮されるべきである。 第8 一審被告東京電力に慰謝料増額事由にあたる強い非難に値する過失が認められること 1 原判決の判示 原判決は、本件事故の重大性からすれば、一審被告東京電力の対応は遅く、不十分なものといえるものの、何らの対策も講じていなかった訳ではなく、利益を優先させるために対策を遅らせたという事情も認められないとして、故意またはこれに匹敵する重大な過失があったとはいえず、同一審被告の過失を慰謝料増額事由として考慮すべきであるとはいえないとした(原判決528頁)。 2 一審被告東京電力には強い非難に値する過失が認められることしかしながら、2002年(平成14年)長期評価を受けて津波対策を講じる義務が生じていたのにもかかわらずこれを怠った一審被告東京電力の対応には強い非難に値する過失が認められるし、平成20年に長期評価に基づくO.P.+15.7mの津波を予見したにもかかわらず防護措置を講じなかった点 においても、強い非難に値する過失が認められる。 3 他社の対応に照らし、一審被告東京電力も津波対策を十分に行い得たこと他社(日本原電株式会社の東海第二原子力発電所)建屋の水密化の防護措置を取ったこと等を踏まえると、一審被告東京電力においても同様の対応を講じることは十分可能であった。にもかかわらず、平成14年の長期評価の後、本 件事故に至るまでの約9年にわたり、同一審被告の事情(財政的な理由等)に - 162 京電力においても同様の対応を講じることは十分可能であった。にもかかわらず、平成14年の長期評価の後、本 件事故に至るまでの約9年にわたり、同一審被告の事情(財政的な理由等)に - 162 -より、長期評価の津波地震の想定を前提とした津波対策は全く講じず、同一審被告の強い非難に値する過失の存在は明らかである。 4 小括以上のとおり、一審被告東京電力には強い非難に値する過失が認められ、これは慰謝料の増額事由として考慮すべきものであり、これを認められない とした原判決は誤りである。 第9 結語本件事故は、一審原告らが当たり前に過ごしてきた日常生活を根底から覆したものであり、一審原告らは、その意思とは全く関係なく、それぞれの人生を一審被告らの責任によって変容させられた。一審原告らが奪われた生活や人生、 放射線被ばくの事実とそのもたらす健康被害は甚大なものである。責任を認めるべき者が責任の所在を正面から認めることが、一審原告らの精神的苦痛を慰謝する最低限の条件であるが、本件ではそれが行われていない上、原判決の認定した精神的苦痛の慰謝料も被害の実態からはかけ離れている。裁判所は、司法の役割を果たし、本件事故による被害に正面から向き合った判決をすべきで ある。 第8章一審原告らの個別の損害に関する一審原告らの当審における主張第1 一審原告6の世帯 1 避難の合理性、避難継続の合理性一審原告6の世帯が住んでいた福島市渡利地区は、本件事故後に20μSv /時以上になり、本件事故から3か月経過した平成23年6月中旬でも3. 5μSv/時を超え、文部科学省が同年3月12日から平成24年3月11日までの積算線量が10mSv以上と予測されると公表した地域であった。 このように、一審原告6の世帯の 3年6月中旬でも3. 5μSv/時を超え、文部科学省が同年3月12日から平成24年3月11日までの積算線量が10mSv以上と予測されると公表した地域であった。 このように、一審原告6の世帯の居住地域は福島市内でも放射線量が高い地域であり、少なくとも除染が完了しなければ被ばくのおそれが解消したとは いえない。同地域は平成28年6月末時点には除染は完了していないから、 - 163 -少なくともこの期間までは避難継続の合理性が認められるべきである。 2 慰謝料以外の損害について(1) 一審原告6-1の就労不能による損害一審原告6-1は、避難前、福島薬剤師会から派遣されて、Bで夜間アルバイトをしていた。同診療所は本件事故後も継続して業務を行っており、薬 剤師の派遣も行われていた。同6-1はこのアルバイトを平成22年4月から毎月継続して行っていたものであり、本件事故による避難がなければ中止する理由はなく、平成23年4月以降も継続して毎月1回の夜間アルバイトを行っていたはずである。以上から、同年3月分の給与減額分及び同年8月分の賞与減額分に加え、夜間アルバイトの減給分についても、就労不能損害 として評価すべきである。 (2) 生活費増加費用一審原告6-3は本件事故当時生後8か月であり、同6-2は平成25年4月に妊娠したため、通常以上に生活費を要した。生活費増加分である54万円(同6-3につき月2万円の21か月分、同6-2につき月2万円の6 か月分)は、一般的に子どもや妊婦は放射線に対する感受性が高く、避難生活において通常以上に被ばく予防の対策を要すること、住み慣れない避難先で家族らの協力なく出産準備や子育てをするには様々な費用がかさむことによる。したがって、これら生活費増加費用を損害と 高く、避難生活において通常以上に被ばく予防の対策を要すること、住み慣れない避難先で家族らの協力なく出産準備や子育てをするには様々な費用がかさむことによる。したがって、これら生活費増加費用を損害として認めるべきである。 3 慰謝料について 一審原告6の世帯が居住していた地域は放射線量が高かったものの、本件事故直後には放射線量の情報が得られず、後に被ばくしたとの不安を強く抱くようになり、今後も不安を感じながら生きていかなければならなくなった。また、同6-1と同6-2は、幼い同6-3を連れて福島市から名古屋市まで転々とし、避難自体が大きな負担であったし、地縁血縁のない避難先での子育てや出 産、同6-1の就職など、避難生活の苦労は相当なものであった。さらに、避 - 164 -難によって福島県の親や親族、友人らと会う機会が減り、避難や放射線に対する考え方の違いから人間関係が悪化した。名古屋での人間関係は、本件事故で失われた親や親戚、友人、会社の同僚らとの人間関係を穴埋めするものにはなり得ない。 一審原告6-2は双葉郡浪江町出身であり、結婚後も二、三か月に一度は同 6-3を連れて浪江町に戻っていたが、本件事故によりふるさとを失い、帰ることができなくなり、その喪失感は筆舌に尽くしがたい。同6の世帯の慰謝料については、これらの精神的苦痛を十分に考慮する必要がある。 第2 一審原告7の世帯 1 本件事故発生前から現在までの生活状況 (1) 一審原告7-1の自宅は、福島第一原発から●へ約 km、いわき市の中心から約 km に位置し、妻(同7-2)、長女(同7-3)、二女(同7-4)とともに平穏に暮らしていた。同7-1の先祖は代々農家で、2.5haの農地、3haの山林を所有し、600坪の宅地に65坪 中心から約 km に位置し、妻(同7-2)、長女(同7-3)、二女(同7-4)とともに平穏に暮らしていた。同7-1の先祖は代々農家で、2.5haの農地、3haの山林を所有し、600坪の宅地に65坪の平家の母屋と物置、土蔵の備えがあった。また、地域の行事等にも深くかかわり、 地域での役職も務めるなど、当該地域での生活、つながりを大切にしていた。 一審原告7-1は、消費者に安全な農産物を供給したい思いで「●●●●●●●●●●」を立ち上げ、いわゆるの研究と実践を始めた。 (2) 一審原告7の世帯は、本件事故後、福島第一原発が危険な状況にあるとの情報を得て、平成23年3月12日に避難を開始し、愛知県への避難を決 め、その後、知人が借りたアパートに滞在するなどし、同年7月からは、愛知県が提供した避難者向けの県営住宅に入居し、平成25年には中古マンションを購入した。 (3) 現在、一審原告7-1は、同7-2(妻)、同7-4(二女)と3人で、上記(2)のマンションに住んでいる。 一審原告7-3(長女)はしていた大学を退学し、名古屋の会 - 165 -社で働き始めた。同7-4(二女)は、避難後にに転校して寮生活を送り、卒業と同時に平成26年4月から公務員として働き始めた。長男は、本件事故のため福島での就職活動ができなくなり、現在は静岡県浜松市の会社で働いている。 一審原告7-1は、現在で勤務する傍ら、同7- 2とともに、年間8回から10回程度いわき市に通い、農地と自宅建物の維持管理をしているが、自宅建物は地震によりひどく壊れており、再度住めるようなものではなく、取壊し費用もない。農地については適切な除染が進んでいないため、以前のように き市に通い、農地と自宅建物の維持管理をしているが、自宅建物は地震によりひどく壊れており、再度住めるようなものではなく、取壊し費用もない。農地については適切な除染が進んでいないため、以前のようにはできない。 一審原告7-1は、以前の 、 、 という安定した 仕事が完全に失われ、収入は避難前に比べ激減した。同7の世帯の被害はまさに、包括的生活利益としての平穏生活権の侵害と評するにふさわしいものである。 (4) 一審原告7-3、同7-4に生じた被害ア一審原告7-3は、 から大学の3年次へのが認めら れて、平成23年4月には同大学での3年生の授業が始まるという段階で本件事故が発生し、その後しばらく休学していたが、 大学へ行くか、同大学を諦めるかという選択を迫られる中で退学し、その後、就職した。 同7-3は本件事故によって勉学の機会を奪われ、教育を受ける自由、自己実現の機会を奪われたものであり、その権利侵害は重大である。 イ本件事故当時、一審原告7-4はの2年生であり、成績が非常に優秀であったが、避難したことでに通学できなくなった。転校することが困難な中、同7-4はに転入できたものの、両校のカリキュラムが異なっていたため、 することは叶わず、卒業後は就職した。同7-4もまた、本件事故によって勉学の機会、自己実現の道 を奪われ、人生設計自体を狂わされるという被害を被った。 - 166 -ウなお、本件事故発生の直後、一審原告7の世帯は、屋外で様々な行動をしており、家族全員が相当量の被ばくをしたことは明らかである。同7-3及び同7-4はいずれも甲状腺にのう胞が発見され、経過観察になっている。 (5) 避 一審原告7の世帯は、屋外で様々な行動をしており、家族全員が相当量の被ばくをしたことは明らかである。同7-3及び同7-4はいずれも甲状腺にのう胞が発見され、経過観察になっている。 (5) 避難継続の必要性 平成30年6月に一審原告7-1が所有する水田の土壌の汚染状況を調べたところ、1kg当たり14000Bqという放射線管理区域以上の数値が測定されたが、全く除染されずに放置されている。放射能汚染された水田ではを作って売ることはもはや不可能である。同7-1は、帰りたくても帰れないというのが実情で、地域において平穏な生活を送ることが できる生活利益そのものの侵害を被っている。 (6) 生活と未来とコミュニティの破壊避難の道を選んだ一審原告7の世帯と、福島に残った人たちとの間には大きな溝ができてしまった。このようなコミュニティ、人間関係もまた、地域において平穏な生活を送る利益の内実をなすものであり、それを破壊して しまったことについて、一審被告らは責任を取るべきである。 (7) 人格的生存権の侵害一審原告7の世帯はそれぞれの人格的生存に不可欠な権利(憲法13条)を侵害されたものであり、その侵害の程度は重大である。 2 一審被告東京電力の主張に対する反論 (1) 一審被告東京電力は、そもそも、自主的避難等対象区域においては、本件事故発生当初の時期において法律上保護される利益の侵害が生じていたか疑問があるし、仮に認められるとしても、遅くとも平成23年4月22日頃には平穏な日常生活を送れるようになっていたから、その期間は長くとも同日頃までと考えられると主張するが、同一審被告の独自の見解であ り、全く信用性、合理性を欠くものである。 - 167 -(2) 活を送れるようになっていたから、その期間は長くとも同日頃までと考えられると主張するが、同一審被告の独自の見解であ り、全く信用性、合理性を欠くものである。 - 167 -(2) 個別の財産損害ア交通費一審被告東京電力は、一審原告7-4がに転校し、入寮したことに伴う交通費(高速代3840円及びガソリン代3000円)は認められないと主張する。しかし、平成23年4月22日をもって避難の相 当性(本件事故と損害発生との因果関係)を否定する一審被告東京電力の主張は暴論であって、到底認められない。 また、一審被告東京電力は、 のあるいわき市の空間放射線量は健康に影響を与える水準にはなく、 は同年5月8日に入学式が行われたことから、本件事故によって転校を余儀なくされたとは評価でき ないとも主張するが、空間放射線量は健康に影響を与える水準にないとの主張は事実に反する。そして、 の開校の有無は放射線被ばくを避ける必要とは必ずしも関係がない。 イ引越し費用一審被告東京電力は、引越し代の領収証の日付が平成25年4月13日 となっているから、平成23年4月11日の引越し費用の証拠とすることは論理矛盾であると主張する。しかしながら、一審原告7-1の世帯について引越しの事実は認められるところ、引越しに相応の費用を要することは経験則上明らかであり、その上で、引越しに要した費用額の認定にあたり、他の同種資料から類推、推認することは十分可能であって、 何ら論理矛盾ではない。 ウ一時立入り・帰省費用この点に関する一審被告東京電力の主張は独自の見解であり、全く信用性、合理性を欠くものである。 エ家財道具購入費 何ら論理矛盾ではない。 ウ一時立入り・帰省費用この点に関する一審被告東京電力の主張は独自の見解であり、全く信用性、合理性を欠くものである。 エ家財道具購入費 一審被告東京電力は、いわき市の自宅において使用していたものを搬出 - 168 -し、使用することも可能だったのだから、新たに購入する必要性も合理性もないと主張する。しかしながら、放射能汚染の可能性のある家具・家財をそのまま愛知県の住居において使用することは、放射線被ばくを避ける見地から、到底不可能であった。 オ家賃増加分 一審被告東京電力は、平成23年4月22日以降は避難継続の相当性が認められず、領収証もないと主張する。しかし、一審原告7の世帯は現に平成23年3月から同年7月までは賃貸物件に居住している事実が認められるから、経験則に照らし十分に家賃増加分を認定することが可能である。家賃の金額についてことさら領収証の欠如が問題とされるべき ではない。 カ就労不能損害一審被告東京電力は、一審原告7-1について農業収入の証拠資料がないと論難する。しかし、同7-1は本件事故後、従前営んできた農地を本件事故により汚染され、農業ができていないから、確定申告を行う必 要がない。同7-1が愛知県に避難し続けている事実から、同7-1には本件事故後の農業収入がないことを認定するのは当然である。 この点、一審被告東京電力は、一審原告7-1についてが不可能であったとはいえない、いわき市で農業を継続しなかったのは同7-1の自己判断なので、相当因果関係がないと主張する。しかし、安心、 安全な食べ物の提供を使命として、 同7-1において、本件事故に 、いわき市で農業を継続しなかったのは同7-1の自己判断なので、相当因果関係がないと主張する。しかし、安心、 安全な食べ物の提供を使命として、 同7-1において、本件事故による放射性物質の沈着した土壌で農業などできるはずがない。現に、土壌からは高濃度の放射性物質が検出されており、同7-1の顧客が放射能汚染された土壌で栽培された米や作物を選ぶことは考えられないし、そのような米や作物を提供することは同7-1の矜恃 が許さない。一審被告東京電力は、一審原告7-1の損害を直視してい - 169 -ない。 また、一審被告東京電力は、一審原告7―1の損害額算定にあたり、収入額ではなく経費控除後の所得で見るべきとも主張する。しかるに、農家としての種々の経費(例えば、耕作できなくても、除草等、農地の手入れをせずに放置することはできない。)は、営農できない期間でも発 生している。したがって、本件において農業ができないことに伴う損害は「収入額」で算定すべきである。 キ被ばく検査費用一審被告東京電力は、原判決が平成27年9月27日の検査費用を損害として認めたことにつき、平成23年4月22日以降のものは損害に含 めるべきではないと主張するが、同一審被告独自の見解というべきである。 第3 一審原告8-2から同8-7まで 1 福島での生活一審原告8-2は、名古屋市で生まれ育ち、結婚を機に岐阜県、千葉県と転 居したが、夫婦で福島を訪れた際、自然豊かな福島で生活したいという気持ちが高まり、平成20年3月、家族で福島に移住し、地域に密着した生活を営んできた。しかし、本件事故により、同8-2の世帯が大切にしてきた時間も場所も人のつながりも全てが奪われた。 2 過酷な避難 ちが高まり、平成20年3月、家族で福島に移住し、地域に密着した生活を営んできた。しかし、本件事故により、同8-2の世帯が大切にしてきた時間も場所も人のつながりも全てが奪われた。 2 過酷な避難生活 一審原告8-2は、本件事故により、子らの健康への影響を不安に感じ、避難するしかないと決断した。同8-2の夫であった同8-1は、仕事の関係で福島に残り、同8-2は、子どもたちを連れて、平成23年3月22日に名古屋市に避難した。当時、同8-2は同8-7を妊娠しており、出産する場所や子らの学校をどうするのか等を何一つ決めずに避難せざるを得なかったため、 避難後は毎日が決断の連続となり焦燥感に追われた。同月下旬には子どもたち - 170 -が次々と体調を崩し、常に病院に通わざるを得なくなり、同年4月下旬には、同8-5が川崎病と診断されて入院した。避難後、同8-1は多忙で休みがとれず、家族と会えない日が続き、同8-2と喧嘩になることが増えた。 一審原告8-1はその後勤務先を退職したが、同8-2は、避難したことや同8-1が退職したことで思い悩む中、放射能の人体への影響について他人に 理解してもらえないことも辛さに拍車をかけた。同8-1の退職に反対していた同8-2の父親との関係も悪化した。同8-2は精神的に病んでしまい、家事も全くできなくなった。同8-2が落ち着いて自分たちの状況を把握できるようになるまでには、避難直後から3年以上を要した。 3 身体・生命に対する危険にさらされたこと 本件事故前における一般公衆の放射線被ばくの限度は1mSv/年であったが、本件事故直後の平成23年4月19日、通達により、子どもたちの放射線被ばく限度は20mSv/年に引き上げられ、しかも、この数値は内部被ばくを換算し 公衆の放射線被ばくの限度は1mSv/年であったが、本件事故直後の平成23年4月19日、通達により、子どもたちの放射線被ばく限度は20mSv/年に引き上げられ、しかも、この数値は内部被ばくを換算したものではない。本件事故により一審原告8-2から同8-7までの世帯が被った健康被害を現時点で明確に立証することはできないが、現代医学 では解明できないという限界を考えると、一審原告らに本件事故による健康被害はないと断言することはできない。したがって、避難の相当な期間について制限をすることは許されない。 また、本件事故後、一審原告8-2の家族はそれぞれ何らかの病気を患っており、同8-2は平成28年に乳がんを発症し、右乳房の全摘出手術を受け、 抗がん剤治療を3か月行ったが、令和2年4月に乳がんを再発し、今も治療中である。 4 一審原告8-7の損害一審原告8-2が同8-7を妊娠していることがわかったのは、平成23年3月9日であり、一般論として胎児への被ばくが最も甚大であると理解されて おり、同8-7にも損害が生じていることは明らかである。 - 171 - 5 本件事故後に生じた人の分断避難した者は、避難したことに自責の念を感じることが多く、避難しなかった者との間で分断が生じた。これは、一審原告8-2の夫婦においても同様であり、避難に関する意見の相違から、同8-2は同8-1と離婚した。 6 権利侵害について 一審原告8-2から同8-7まではそれぞれの人格的生存に不可欠な権利(憲法13条)を侵害されたものであり、その侵害の程度は重大である。 第4 一審原告9の世帯 1 本件事故そのものによる一審原告9の世帯の心理的被害(1) 本件事故直後から続く心理的被害 本件事故直 されたものであり、その侵害の程度は重大である。 第4 一審原告9の世帯 1 本件事故そのものによる一審原告9の世帯の心理的被害(1) 本件事故直後から続く心理的被害 本件事故直後、一審原告9の世帯は、原発に対する原初的な恐怖感や不安感を抱いた。このような恐怖感や不安感は否定し得ないものである。 (2) 今後も解消されない不安の存在一審原告9-2は、すぐにでも避難をしたいという気持ちを抱きつつも、妊娠中であったため簡単に動けず不安な日々を過ごし、ようやく避難したも のの、平成25年1月25日に受けた検査の結果、同9-1の甲状腺には数個の小のう胞があることが判明し、同9-2及び同9-3も血液検査の結果、白血球の数が多いことが判明した。健康に対する不安感と恐怖感は解消できず、これは本件事故により引き起こされた不利益に他ならない。 2 本件事故による人間関係の遮断(ふるさとの喪失)という損害 (1) 避難前の住所地の風土が、一審原告9の世帯の人格(アイデンティティ)をはぐくんだことア一審原告9-2は、高校を卒業し就職によって離れるまで、避難前の住所地に近いいわき市内で過ごしていたが、そこでは、血縁や契約関係といった個人主義的な関係ではなく、「その土地に生きているもの」とい う共通の感覚によって規定された関係が重要であった。 - 172 -イ一審原告9-2は、平成18年頃、避難前の住所にて整体の事業を開業したが、生活原資を稼ぐための金銭調達手段という以上に、その事業自体が、人間関係形成の結節点であった。 ウ一審原告9の世帯は、心地よく自分らしく生きることができる環境、社会にいたが、本件事故によって避難前の住所地を追われ、人間関係が分 断されてしまっ が、人間関係形成の結節点であった。 ウ一審原告9の世帯は、心地よく自分らしく生きることができる環境、社会にいたが、本件事故によって避難前の住所地を追われ、人間関係が分 断されてしまった。 (2) 本件事故による人間関係の遮断(ふるさとの喪失)一審原告9の世帯は、本件事故により人間関係が分断されただけでなく、自分らしく生きることができると感じる環境、社会が分断されてしまったのであり、慰謝料の算定においてはこのことを直視すべきである。 (3) 本件事故によるふるさとの喪失という損害上記のように、本件事故による避難により、一審原告9の世帯は、心地よいと感じ、自分らしく生きることができると感じる環境ではない環境での生活を余儀なくされており、特に同9-2は、避難後1年ほどの間、最悪な精神状態での生活を余儀なくされた。 3 権利侵害一審原告9の世帯はそれぞれの人格的生存に不可欠な権利(憲法13条)を侵害されたものであり、その侵害の程度は重大である。 4 一審被告東京電力の主張に対する反論(1) 一審原告9-1の廃業 一審原告9-1が整体院を閉鎖(廃業)することを余儀なくされたのは、本件事故による放射線被害からの避難を余儀なくされたからである。一審被告東京電力は、「一審原告9-1が、本件地震に伴う津波により客の家が壊れたり、そもそも出張に行くためのガソリンもなかったためであることを自認している(甲C9の1、一審原告9-1本人(原審))」と主張するが、 誤っている。本件地震やこれに伴う津波に起因する被害は、本件事故に起因 - 173 -して今も生じ続けている放射線被害を除けば、本件地震あるいは津波のまさにそのときに一回的に発生したものである。これに る。本件地震やこれに伴う津波に起因する被害は、本件事故に起因 - 173 -して今も生じ続けている放射線被害を除けば、本件地震あるいは津波のまさにそのときに一回的に発生したものである。これに対し、本件事故に起因する放射線被害は、今に至るも継続的に発生し続けている。そのため、その被害を避けるためには、一時的ではなく継続的に被害地を離れることが必要となる。同9-1は、それゆえ整体院を閉鎖(廃業)し、避難することとした。 つまり、同9-1が、整体院を一時的に休業するのではなく閉鎖(廃業)することを余儀なくされたのは、本件事故による放射線被害からの避難を余儀なくされたからである。 (2) 個別の費目に対する反論ア交通費 一審原告9-1は、現在に至るも継続的に発生し続けている本件事故による放射線被害からの避難を余儀なくされ、そのために交通費の支出を余儀なくされたのであり、これと本件事故との間には因果関係がある。 イ引越し費用一審被告東京電力は、仮に一審原告らに避難の相当性が認められるとし ても、長くとも平成23年4月22日頃までと考えられるから、引越し費用について本件事故との相当因果関係は認められないとするが、本件事故と因果関係を有する損害の範囲を上記の時期で区切る根拠がない。 また、避難すなわち生活の本拠の移転のためには、当然、車両の陸送や住居の退去補修が必要になる。 したがって、本件事故と避難との間に因果関係がある以上、本件事故と避難のために必要なこれらの費用支出行為との間にも因果関係がある。 これらの行為が具体的に行われた時期は関係がない。 ウ退去補修費用一審原告9-1は、現在に至るまで継続的に発生し続けている本件事故 用支出行為との間にも因果関係がある。 これらの行為が具体的に行われた時期は関係がない。 ウ退去補修費用一審原告9-1は、現在に至るまで継続的に発生し続けている本件事故 による放射線被害からの避難を余儀なくされ、整体院を閉鎖(廃業)す - 174 -ることを余儀なくされた。それゆえに退去補修工事費用の支払が必要となったのであるから、これと本件事故との間には因果関係がある。 第5 一審原告11の世帯及び同29一概に旧居住制限区域といってもその範囲はいびつな形状で広範囲に及び、同じ旧居住制限区域に分類される場所であっても、福島第一原発からの距離は 大きく異なっており、同原発からの距離によって、放射能に対する恐怖や不安を感じる度合いや、住み慣れた住居及び地域が帰還不能となり、本件事故前の地域の人々とのつながりを失う度合いは異なる。旧居住制限区域内からの避難者について、別途、同原発からの距離を考慮要素とすることは正当である。 そして、本件事故当時、一審原告11の世帯及び同29が居住していた自宅 は、福島第一原発から距離8.17kmという旧居住制限区域の中でも福島第一原発に非常に近接していた場所にあったのであるから、これを慰謝料の増額要素とすることは合理的である。同11の世帯及び同29の個別事情に鑑みれば、原判決が認定した慰謝料額は低廉すぎる。 第6 一審原告12の世帯 1 避難の合理性、避難継続の合理性本件事故当時、一審原告12の世帯が居住していた伊達郡国見町の環境放射能は、平成24年4月には0.21から1.07μSv/時、平成25年4月には0.12から1.03μSv/時、平成26年4月には0.11から0. 94μSv/時であったから、当時小学校低学年の同12-2がいた 平成24年4月には0.21から1.07μSv/時、平成25年4月には0.12から1.03μSv/時、平成26年4月には0.11から0. 94μSv/時であったから、当時小学校低学年の同12-2がいた同12の 世帯が避難を中止することは困難である。 また、少なくとも、一審原告12-1については、平成24年3月までは避難の必要性を認めるべきであるし、成人である同12-1と18歳未満であった同12-2の避難継続の時期を区別するのも相当ではない。 2 慰謝料以外の損害について (1) 家財道具購入費 - 175 -家財道具が消耗品に該当するかどうかを具体的に精査すべきである。 (2) 水道光熱費一審原告12の世帯に認められるべき避難継続の期間に応じた水道光熱費を損害と認めるべきである。 3 慰謝料について (1) 一審原告12の世帯は、本件事故による避難生活によって、これまで負担する必要がなかった家賃等の負担を強いられただけでなく、当時小学校低学年の女児であった同12-2の健康被害等、今後も強い不安を感じて生きることを余儀なくされた。また、本件事故後、同12-1には、甲状腺のう胞が確認されている。 (2) 一審原告12の世帯は、本件事故前同居していた同12-1の父と会うことができなくなり、また、避難当初、中傷を受けるなどした。慰謝料の算定にあたっては、このような同12の世帯の精神的苦痛を十分に評価すべきである。 4 一審被告東京電力の主張に対する反論 (1) 一審原告12-1が避難を余儀なくされた理由は、本件事故当時、まだ幼い女児を抱えており、我が子の健康や将来を考え、避難を決意したこと、その一方で、高齢の父が故郷を捨て、新しい土地での生活を始めるこ 一審原告12-1が避難を余儀なくされた理由は、本件事故当時、まだ幼い女児を抱えており、我が子の健康や将来を考え、避難を決意したこと、その一方で、高齢の父が故郷を捨て、新しい土地での生活を始めることができなかったことはいずれもやむを得なかったというべきであり、その結果、両者がいかに苦渋の思いで別居を選択するにいたったか、その苦しみは計り 知れない。自主的避難等対象区域とは、そもそも避難が検討されるべきことを前提にしているのに、これを加害当事者である一審被告東京電力自身が、避難を余儀なくされたものではないとか、現に、一審原告12-1の父は居住地に住み続けているなどと非難することは許されない。 (2) このように、一審原告12-1の避難にも、その結果父と別居を余儀な くされたことにもそれぞれ理由があり、同12-1の主張する損害はいずれ - 176 -も本件事故との相当因果関係が認められるというべきである。 第7 一審原告13の世帯 1 避難の経緯本件事故の発生により、一審原告13の世帯が居住していた郡山市も確実に放射能で汚染されており、当時1歳2か月の同13-3(長女)には鼻血が出 たり、高熱が出たりするなどの影響が生じ、同13-2も顔に発疹が出たりしたため、避難を決意し、夫である同13-1とともに名古屋に転居した。 2 二女も同様の被害を受けていること避難後に出生した一審原告13―4(二女)は震災を経験していないが、同13-1及び同13-2は被ばくしており、子にどのような影響を与えるかは 不明である。実際、二女の左右の甲状腺にのう胞が見られて経過観察となっており、二女の権利が侵害されていることは明らかである。また、避難後、福島県在住の祖父母、曾祖父母らにも、ほとんど会えていない。 3 一審被 実際、二女の左右の甲状腺にのう胞が見られて経過観察となっており、二女の権利が侵害されていることは明らかである。また、避難後、福島県在住の祖父母、曾祖父母らにも、ほとんど会えていない。 3 一審被告東京電力の主張に対する反論一審被告東京電力は、避難継続の相当性が認められるのは長くとも平成23 年4月22日頃までであると主張し、一審原告13-1が同年8月25日に支出した15万7500円の引越し費用について、本件事故と相当因果関係が認められないと主張する。 この点、原判決が認めた避難継続の合理性を認めた期間が正当であるかは別にして、一審原告13の世帯が居住していた郡山市における環境放射能は1. 32μSv/時あったものであり、このことからすれば、平成23年8月25日時点においても当然に避難継続の合理性は認められるべきであり、原判決が引越し費用を認めたことは正当である。 第8 一審原告14の世帯 1 避難継続の必要性について (1) 一審原告14の世帯は、本件事故後、平成23年6月に福島市での生活 - 177 -継続を断念し、同年12月には、まず同14-3及び同14-4が愛知県内に転居・転校し、続いて平成24年3月に同14-1及び同14-2も同県内に転居・転職し、世帯全員での生活を再開させた。さらに、同年6月には同県内の分譲マンションを購入した。 (2) このように、避難に関して比較的早い段階で判断しているのは、福島市 内で安定した仕事に就き、居宅を構えていたにもかかわらず、本件事故によって一瞬にしてそれが奪われ、現状で、被害回復を見通すことができず、他の地域での生活の可能性を模索したからである。 (3) したがって、一審原告14の世帯の損害について、平成23年12月31日又は 一瞬にしてそれが奪われ、現状で、被害回復を見通すことができず、他の地域での生活の可能性を模索したからである。 (3) したがって、一審原告14の世帯の損害について、平成23年12月31日又は平成24年8月31日を基準にして、それ以降の損害につき因果関 係がないとの判断することは不当である。 2 一審原告14の世帯に関する新たな事情(1) 一審原告14-1と同14-2の勤務状況は原審当時と変わりはないものの、非常勤講師である同一審原告の年収は200万円程度であり、避難前の年収からは、少なくとも年間300万円以上の収入減が続いている。非常勤 講師として勤務するには限界があり、今後、年収額が減ることはあっても、増える可能性はない。 (2) 一審原告14-3については、令和2年の甲状腺検査の結果は「B(20.1mm以上ののう胞や5.1mm以上の結節を認めた場合)」であり、詳細な二次検査が推奨されるレベルである。 (3) 一審原告14-1の母は震災後も福島県内で生活をしていたところ、令和2年5月▲▲日に82歳で死亡した。新型コロナウイルス感染拡大のため、県を跨いでの移動も控えるような状況であったこともあり、同14の世帯は十分に同14-1の母の最期に接することができなかった。 第9 一審原告16の世帯 1 一審被告東京電力は、本件事故発生当初の時期において避難の必要性が認め - 178 -られるか疑問があると主張するが、本件事故発生当初は原発事故の危険性に関する情報が錯綜していた時期であったのであるから、かかる避難の必要性が否定されることはない。 一審被告東京電力は、交通費が損害として認められる期間は平成23年4月22日頃までで、それ以降は相当因果関係が認められないとも主張する であるから、かかる避難の必要性が否定されることはない。 一審被告東京電力は、交通費が損害として認められる期間は平成23年4月22日頃までで、それ以降は相当因果関係が認められないとも主張するが、期 間を区切ることに合理的な理由はなく、原判決の判断は維持されるべきである。 また、一審被告東京電力は、一審原告16の世帯が、損害額に関し、領収証などを証拠として提出していないことを主張するが、一般市民が各種のレシート類をきちんと保存していることはごくまれであり、事後的に損害額を算定しようとしたときに、自車の性能、ガソリン価格の一般的な推移から損害額を算 出することには十分な妥当性が認められるから、上記主張は失当である。 2 一審被告東京電力は、宿泊費についても損害として認められる期間は平成23年4月22日頃までで、それ以降の分については相当因果関係が認められないと主張するが、そのような期間を区切ることに合理的な理由はない。 3 一審被告東京電力は、引越し費用についても、仮に避難の必要性が認められ るとしても、損害として認められる期間は平成23年4月22日頃までであり、それ以降の分は相当因果関係が認められないと主張するが、期間を区切ることに合理的な理由はなく、原判決の判断は維持されるべきである。 4 一審被告東京電力は、一時立入り・帰省費用についても、損害として認められる期間は平成23年4月22日頃までであり、それ以降の分には相当因果関 係が認められないと主張するが、上記3と同じ理由から、原判決の判断は維持されるべきである。 5 一審被告東京電力は、家財道具購入費が損害として認められる期間は平成23年4月22日頃までであり、それ以降の分は相当因果関係が認められないと主張するが、前記3と同じ理由から、 るべきである。 5 一審被告東京電力は、家財道具購入費が損害として認められる期間は平成23年4月22日頃までであり、それ以降の分は相当因果関係が認められないと主張するが、前記3と同じ理由から、原判決の判断は維持されるべきである。 また、一審被告東京電力は、一審原告16の世帯が損害額に関し、領収証な - 179 -どを証拠として提出していないことを指摘するが、上記のとおり、一般市民が各種のレシート類を保存していることはまれであり、同16の世帯が日々の暮らしの中で記録していた家計簿には十分な信用性が認められる。 6 一審被告東京電力は、光熱費が損害として認められる期間は平成23年4月22日頃までで、それ以降の分は相当因果関係が認められないと主張するが、 前記のとおり期間を区切ることに合理的な理由はない。 7 一審被告東京電力は、通信費が損害として認められる期間は平成23年4月22日頃までで、それ以降の通信費には相当因果関係が認められないと主張するが、前記のとおり期間を区切ることに合理的な理由はない。 また、一審被告東京電力は、両親と同居している者でも自己の通信費を負担 することはあるから、通信費の増加は認められないと主張するが、現実に一審原告16の世帯は避難前に通信費を負担しておらず、避難により通信費の発生という負担が生じている。 さらに、一審被告東京電力は、一審原告16の世帯が損害額に関し、領収証などを証拠として提出していないことを指摘するが、前記のとおり、一般市民 が各種のレシート類を保存しているのはまれなことであり、同16の世帯が日々の暮らしの中で記録していた家計簿は十分な信用性が認められる。 8 一審被告東京電力は、家賃増加分が損害として認められる期間は平成23年4月2 保存しているのはまれなことであり、同16の世帯が日々の暮らしの中で記録していた家計簿は十分な信用性が認められる。 8 一審被告東京電力は、家賃増加分が損害として認められる期間は平成23年4月22日頃までで、それ以降の家賃増加分には相当因果関係が認められないと主張するが、前記のとおり期間を区切ることに合理的な理由はないから、原 判決の判断は維持されるべきである。 第10 一審原告17の世帯 1 本件事故前の生活(1) 一審原告17-2は、昭和30年11月、原町市(現在の福島県南相馬市原町区)に生まれ、祖父母、両親、兄二人、弟一人の中で育った。同17 -2の生家は田畑を有し、相馬野馬追の馬も飼っており、地域のつながりの - 180 -中で、日々の暮らしを築いており、そこには地域社会の中での強い信頼関係があった。 (2) 一審原告17-2は、結婚後は、南相馬市小高地区にて、夫である同17-1とその両親と一緒に生活し、二人の子どもに恵まれ、豊かな自然の中で、地域の人々にかわいがられながら子育てができた。しかし、本件事故で、 地域の人たちとのつながりや自然豊かな町での暮らしが破壊された。 2 本件事故後の状況(1) 本件事故当時、一審原告17-2は膝と腰を痛めており、また、アニサキスアレルギーのため、そばやうどんも食べられず、避難に耐えられる健康状態ではなかった。 (2) 名古屋市への避難後、一審原告17-2は、慣れない集合住宅での生活により、かなり気を遣わざるを得ず、気晴らしもできず、膝や腰が悪いため家の中で過ごすことがほとんどになった。自室からの眺めはビルとドブ川と国道であり、気持ちが晴れることはなかった。 一審原告17-2は、現在も小高に戻りたいという気持ちは強いが、避 が悪いため家の中で過ごすことがほとんどになった。自室からの眺めはビルとドブ川と国道であり、気持ちが晴れることはなかった。 一審原告17-2は、現在も小高に戻りたいという気持ちは強いが、避難 指示が全面的に解除になり、住むことが許されるようになったのは平成29年7月であり、小高にあった公立の病院もなくなり、通院できる病院もなく、薬局や個人商店もなくなったため、とても生活ができる環境ではない。今でも小高地区を離れたままの人が多く、以前のような野馬追もできていない。 以前の小高に戻ることはもはやあり得ない。 小高での家族との暮らし、地域の中での暮らし、豊かな自然の中での暮らしは一審原告17-2の人生そのものを支えていた基盤であり、人格的生存に不可欠な権利そのものであるが、同一審原告は本件事故により、人格的生存に不可欠な権利を奪われたのであり、その権利侵害の深刻さは甚大である。 3 一審被告東京電力の主張に対する反論 一審被告東京電力は、原判決が就労不能損害を認定したことを批判し、一審 - 181 -原告17-1が原審本人尋問において、「自分の気持ちに揺らぎが、そういう形で出たんだというふうに思います」と述べたことをもって、元の居住地に戻ることを想定して就職先を探さなかった旨を供述したと主張する。しかし、同17-1は、上記尋問において就職先を探したことを明言しており、就職先を見つけられなかった結果について、自分の気持ちの揺らぎが出た旨を供述した に過ぎないから、一審被告東京電力の上記評価は誤っている。一審原告17-1がハローワークなどを通して就職先を探していたことは事実であり、どこからも年齢などを理由に断られてしまい、避難先である名古屋での就職はかなわなかったのである。就労しなかったの いる。一審原告17-1がハローワークなどを通して就職先を探していたことは事実であり、どこからも年齢などを理由に断られてしまい、避難先である名古屋での就職はかなわなかったのである。就労しなかったのは、専ら自身の任意の判断などということは断じてない。 また、一審原告17―1は、短期のアルバイトは考えておらず、アルバイトをしていないことは正規の就職活動をしていたためであるが、結局は年齢などによって採用されなかったのであるから、アルバイトをしていないことについてことさらに問題とされるべきではない。 第11 一審原告18-1 1 引越し費用について一審原告18-1は、旧緊急時避難準備区域に居住していたが、同区域であっても、避難を開始する合理性がある限り、避難の必要性は認められるべきである。 2 家財道具購入費について 一審原告18-1が小牧市で避難生活を始める際には、家財道具や電化製品を新たに購入する必要があったことは明らかである。 第12 一審原告20の世帯 1 避難の合理性、避難継続の合理性一審原告20の世帯の避難継続の合理性を判断するためには、その居住して いた南相馬市の放射線量や除染の進捗状況が重要な要素となるところ、南相馬 - 182 -市においては、少なくとも平成29年3月までの間、市民の住居に加え、日々の生活で利用が不可欠である道路等の除染が終わっていなかった。また、同年4月1日時点で依然3837人もの18歳未満者が避難を強いられており、同20の世帯につき、平成24年4月には避難を中止せよというのは酷であり、少なくとも、平成29年4月までの避難継続の合理性が認められるべきである。 さらに、同20-3は平成23年4月に南相馬市に引っ越す予定であったが、 4年4月には避難を中止せよというのは酷であり、少なくとも、平成29年4月までの避難継続の合理性が認められるべきである。 さらに、同20-3は平成23年4月に南相馬市に引っ越す予定であったが、これが叶わなくなったものの、他の避難者と何ら事情が異なるものでないから、これを本件事故による避難と認めるべきである。 2 慰謝料以外の損害について(1) 引越し費用 上述のとおり、一審原告20の世帯の避難継続の合理性は、少なくとも平成29年4月まで認められるべきであるから、同月までに生じた費用を損害と認めるべきである。 (2) 敷金・礼金入居に際し敷金礼金を支払うことは一般的であり、かつ、避難の混乱の中、 領収証の保存の負担を一審原告20の世帯に課すのは相当ではなく、同20の世帯が支払った敷金及び礼金を損害と認めるべきである。 (3) 一時立入り・帰省費用、水道光熱費、家賃・駐車場代増加分、保険料一審原告20の世帯の避難継続の合理性は少なくとも平成29年4月まで認められるべきであるから、同月までの費用を損害として認めるべきである。 (4) タイヤ保管・交換費一審原告20の世帯は平成24年当時、手狭な集合住宅へ引っ越す形で避難生活を送っており、タイヤ保管料については損害と認めるべきである。 (5) 家財道具家財道具のカビ等は、避難後初めて南相馬市に一時帰宅できた頃に既に発 生していたものであるし、月に1回程度帰省していても、常時生活するのと - 183 -同様に管理することはおよそ不可能である。また、カビが発生した家具をそのままにしておけば、さらに別の家具等にカビが移ってしまい、廃棄せざるを得ないことも常識の範囲内といえる。したがって、家 3 -同様に管理することはおよそ不可能である。また、カビが発生した家具をそのままにしておけば、さらに別の家具等にカビが移ってしまい、廃棄せざるを得ないことも常識の範囲内といえる。したがって、家財道具の購入費用を損害と認めるべきである。 (6) 不動産 少なくとも、本件事故後の南相馬市内の不動産価格が下落していることは明白であるから、価格下落分を損害として認めるべきである。 (7) 補修費用長期間避難を余儀なくされ、また、業者不足により早期の補修ができなかった結果、漆喰の腐食等が進行したものであり、本件事故がない平常時に必 要な除湿剤及び除草剤の量と避難生活ゆえに必要となるそれらの量(金額)が異なることも当然であって、これらの費用を損害と認めるべきである。 (8) 生命・身体的損害一審原告20-2が右変形性股関節症を発症するに至ったのは、本件事故により市営住宅での避難生活を強いられたこと以外に原因たる事情がない。 したがって、これに関する費用を損害と認めるべきである。 3 慰謝料について本件事故当時、一審原告20-1及び同20-2は、同20-1の退職を機に南相馬市に自宅を購入して移住したばかりであった。まもなく同20-3も移住し、親子3人での生活を楽しみにしていた矢先、本件事故に見舞われた。 本件事故により、上記の生活や人生設計を絶たれたばかりか、老後のために備えていた預貯金の取り崩しを余儀なくされたり、同20-2においては明確な健康被害まで負うこととなったりしたものであって、同人らの被った精神的苦痛は極めて大きい。また、同20の世帯において、自身及びその家族の健康についての心配の大きさは、18歳未満の子がいる世帯と変わらない。慰謝料額 の算定に たものであって、同人らの被った精神的苦痛は極めて大きい。また、同20の世帯において、自身及びその家族の健康についての心配の大きさは、18歳未満の子がいる世帯と変わらない。慰謝料額 の算定にあたっては、これらの点を適正に評価すべきである。 - 184 - 4 一審被告東京電力の主張に対する反論(1) 一審原告20の世帯が避難を強いられたことは既に主張したとおりであり、その居住地域が緊急時避難準備区域であるからといって、避難の必要がなかったかのような一審被告東京電力の主張は許されるものではない。 一審被告東京電力は、原判決が一審原告20-2につき認定した平成23 年3月から平成24年8月までの一時立入り・帰省費用36万円につき、既に支払済みであると主張する。しかしながら、原判決はあくまでも、一審被告東京電力が一審原告20-1に支払った183万1838円分の帰省とは別に、同20-2には一時帰省等する必要があったと認定したものであって、同20-1も、同20-2について認定した上記額と同額(同頻度)の帰省 しかしなくてよかったと認定したわけでもないし、上述の同20-1に支払われた金員が同20-2の帰省費用等にも充てられることを前提とした認定をしたわけでもないから、一審被告東京電力の批判はあたらない。 むしろ、一審原告20の世帯のように18歳以下の子どもがいない世帯につき、平成24年8月から10月までしか一時立入・帰省費用が支払われて いないことの方が問題である。すなわち、未成年の子がいる場合に避難の必要性が認められる場所であれば(それだけ危険性が高いことが前提である。)、成人についても身体に影響があり得ることは同じであり、にもかかわらず、未成年者の有無によって避難の必要性の判断に差異を設ける 要性が認められる場所であれば(それだけ危険性が高いことが前提である。)、成人についても身体に影響があり得ることは同じであり、にもかかわらず、未成年者の有無によって避難の必要性の判断に差異を設けることは、命の選別をしているのと同様であって、許されない。 (2) 一審原告20の世帯は、平成23年3月から現在に至るまで避難生活を続けており、借家住まいをしている間、駐車場代金が継続して必要となったことは当然である。一審被告東京電力は避難期間中の入出金履歴等の提出がないことをいうが、この主張は一審原告20の世帯に無理を強いる主張であり、およそ容れられない。一審被告東京電力が主張する平成24年3月から 同年8月までの入出金履歴によれば、駐車場代として毎月合計5700円が - 185 -引き落とされており、これらは本件事故と相当因果関係のある損害である。 第13 一審原告22の世帯 1 ふるさと喪失について(1) 一審原告22の世帯は、いわき市から避難しているものの、以下のとおり、双葉郡双葉町や同郡浪江町(相双地域)の出身であり、かつ、同地域と 密接に関連する生活実態を有することから、自主的避難等対象区域であるいわき市からの避難者として扱われるべきではない。 ア一審原告22-1一審原告22-1は、平成9年に就職したことを機にいわき市へ転居したが、それまで、大学時代を除く約30年間、相双地域にて生活してお り、定年退職後は双葉町の両親宅に戻り、農業を継ぐつもりであった。 しかし、同22-1は、本件事故を原因として職を失い、避難後、いわき市に戻る理由はなく、仮に戻るとすれば相双地域であるが、双葉町にある両親宅は本件事故によって帰還困難区域となった。 イ一審原告22-2 本件事故を原因として職を失い、避難後、いわき市に戻る理由はなく、仮に戻るとすれば相双地域であるが、双葉町にある両親宅は本件事故によって帰還困難区域となった。 イ一審原告22-2 一審原告22-2は浪江町の出身であり、短大卒業後、浪江町に戻って町内のスーパーマーケットで働き、その後、結婚するまで、南相馬市の市立病院に勤務していた。結婚後、同22-1とともにいわき市に転居するまで約20年間、相双地域にて生活をしていた。 ウ一審原告22-3から同22-5まで 一審原告22-3から同22-5までは皆、福島県で産まれ、同22-3は南相馬市で、同22-4及び同22-5はいわき市で産まれており、同人らにとっても、相双地域は、慣れ親しんだふるさとであった。 (2) 一審原告22の世帯は、避難当時はいわき市内に住んではいたが、相双地域を出身地及び生活圏としていたから、自主的避難等対象区域の避難者と して扱うべきではなく、相双地域の帰還困難区域の避難者に準じて損害額を - 186 -認定すべきである。 2 避難の必要性について前記のとおり、一審原告22の世帯は、帰還困難区域の避難者であるとして損害額を認定すべきである。 一審原告22-1は本件事故により職を失っており、本件事故当時46歳で あったことから、求人の多くない福島県内で再就職先を探すのは困難であり、いわき市の自宅については職を失った際に手放しているため、福島県内に住居はない。また、同22-3から同22-5までは、いずれも愛知県内で通勤・通学しており、福島県への帰還による再転居は生活環境等へのダメージが大きい。したがって、避難を継続すべき合理性が存在し、帰還困難区域同様の避難 の必要性が認められ、 、いずれも愛知県内で通勤・通学しており、福島県への帰還による再転居は生活環境等へのダメージが大きい。したがって、避難を継続すべき合理性が存在し、帰還困難区域同様の避難 の必要性が認められ、時期についても同様に定められるべきである。 3 個別損害について(1) 避難費用一審原告22の世帯はいわき市に戻ることができず、避難を継続する理由は十分にあるから、避難費用のうち、同市の不動産売却に関するものについ ては損害と認めるべきである。 (2) 生活費増加分一審原告22の世帯が避難を継続する理由は十分にあるから、平成24年9月以降の家財道具購入費用及び家賃増加分についても因果関係を認めるべきである。 (3) 財産損害(不動産)、その他(不動産買換諸費用)一審原告22の世帯が避難を継続する理由は十分にあることから、不動産の価値の低下及び不動産買換の費用についても本件事故と因果関係がある。 (4) 慰謝料上記のとおり、一審原告22の世帯は自主的避難等対象区域からの避難者 とはいえず、平成23年12月31日又は平成24年8月31日以降も避難 - 187 -を継続すべき事情があるから、慰謝料額の算定にあたっては、これらの個別の事情を考慮すべきである。 第14 一審原告23の世帯 1 避難の継続の合理性の期間について一審原告23の世帯は、本件事故時点では、親族の援助が期待できるいわき 市において、同23-1及び同23-2ともに安定した仕事に従事し、子どもたち(同23-3から同23-5まで)とともに親族との交流も可能で安心した生活を送っていた。しかし、本件事故の発生により、同23の世帯においては、将来にわたって子どもたちに健康被害が及ぶような どもたち(同23-3から同23-5まで)とともに親族との交流も可能で安心した生活を送っていた。しかし、本件事故の発生により、同23の世帯においては、将来にわたって子どもたちに健康被害が及ぶような環境で生活してはならないと考え、避難を決断した。 そして、一審原告23の世帯は、できれば故郷の福島に戻りたいという気持ちを持ちながらも、放射能の不安によって避難の継続を余儀なくされていたのであって、かかる事情を無視して避難継続の合理性を平成23年12月31日又は平成24年8月31日までに限るのは不当である。 2 個別の項目について (1) 引越し費用引越し費用はレンタカー代1万円に限定される理由はなく、全額の2万1600円が認められるべきである。 (2) 家財道具購入費用一審原告23の世帯は5人家族であり、原判決認定の10万円で5人分の 家財道具を賄うことは困難であるから、家財道具購入費用として50万円全額が認められるべきである。 (3) 食費一審原告23-1は、親族から野菜の提供等を受けており、食費が相当低額であったが、避難先ではそのような親族はおらず食費が増加した。したが って、食費について少なくとも月額1万円の損害が認められるべきである。 - 188 -(4) 家賃増加分避難継続の合理性が肯定される期間における賃料増加分を損害として認めるべきである。 (5) 車両と自転車車両や自転車は避難先で必要となったものであり、これらの購入費用は、 避難との相当因果関係がある損害である。 (6) 廃棄した家財道具家財道具を廃棄したのは、避難の際に荷物を極力少なくすることを強いられたためであり、家財道具の廃棄費用を損害として認めるべきである。 (7) 就労不能 損害である。 (6) 廃棄した家財道具家財道具を廃棄したのは、避難の際に荷物を極力少なくすることを強いられたためであり、家財道具の廃棄費用を損害として認めるべきである。 (7) 就労不能損害 ア一審原告23-1本件事故が発生しなければ、いわき市在住当時の状況が変動する可能性はなく、収入に変動は生じなかった。したがって、一審原告23-1の就労不能損害は、状況の変動による収入減少分が本件事故と相当因果関係を有する損害である。 イ一審原告23-2本件事故による避難によって、一審原告23―2は仕事を辞め、避難のストレスにより子ら(同23-3及び同23-4)が不登校になったために就労が不可能となったのであり、就労不能による損害と本件事故との因果関係は認められるべきである。 (8) 慰謝料慰謝料の算定に当たっては、一審原告23-1が脱毛や不眠、同23-3及び同23-4が不登校になったことを考慮すべきである。 3 一審被告東京電力の主張に対する反論一審被告東京電力は、原判決が一部を認めた交通費、引越し費用、家財道具 購入費及び被ばく検査費用について、避難の相当性が認められず、支出を認め - 189 -るに足りる立証がないと主張する。しかし、一審原告23-1は、原審で提出した陳述書において、本件事故発生からの移動の経路や本件事故により三人の子に生じるかもしれない放射能の影響についての不安な心情について詳細に述べており、これらの損害と本件事故についての相当因果関係は認められ、また、立証としても十分である。 この点、一審被告東京電力は、費用の客観的な証拠がないことを理由に損害自体の発生が認められないと主張するが、当時の領収証がないことは、むしろ避難当時に、後の 立証としても十分である。 この点、一審被告東京電力は、費用の客観的な証拠がないことを理由に損害自体の発生が認められないと主張するが、当時の領収証がないことは、むしろ避難当時に、後の賠償請求のために領収証を取っておこうと考える余裕がないほど放射能の汚染に対する恐怖を強く感じていたということであって、領収証がないから損害自体の発生もないと主張するのは一方的である。 第15 一審原告26の世帯 1 避難前の生活状況一審原告26-2は平成8年頃から白河市に居住していたが、同26-1と平成10年3月に結婚し、そのまま同市に定住することになった。 一審原告26-2は白河市での生活を楽しみ、交友関係を広げ、様々な活動 をするなどしていた。 一審原告26の世帯は家賃10万円の一軒家の借家に住んでおり、将来はこれを買い取る予定であった。同26-1は結婚後設立したが軌道に乗っており、同26-1の母と同26の世帯との関係は非常に良好であった。 2 本件事故と避難後の生活(1) 本件事故当時、一審原告26の世帯は自宅でテレビを見ることができず、同26-2は、大阪の友人からのメールで本件事故を知り、同26-1と相談の上、一家で白河市から避難することになった。もっとも、避難先の同26-2の実家は手狭だったこと、同26-3の小学校の卒業式があっ たため、平成23年3月27日、同26の世帯は再び同市の自宅に戻った。 - 190 -しかし、一審原告26-2は放射能の影響に不安を覚え、放射能汚染と被ばくに怯えながら毎日を過ごした。また、従業員を置いたまま白河市を離れた同26-1には、厳しい言葉と視線が投げられた。平成23年5月中旬、自宅の室内の放射線量を測定した に不安を覚え、放射能汚染と被ばくに怯えながら毎日を過ごした。また、従業員を置いたまま白河市を離れた同26-1には、厳しい言葉と視線が投げられた。平成23年5月中旬、自宅の室内の放射線量を測定したところ0.6μSv/時であったため、自主避難することとし、同年6月4日、同26-2と同26-3の2 人で避難し、一方、同26-1は同市に留まった。 避難先は、一審原告26-2の知人から名古屋市内の一軒家を賃借したが、古い物件で平穏な日常生活を送れず、平成24年2月に、別の賃貸住宅に転居した。同26-2は避難後、ホームシックでノイローゼ気味になり、些細なことにヒステリックに反応し、毎日のように激しい疲労感に襲われ 円形脱毛症にもなった。内科を受診したところ、橋本病の手前であると指摘され、被ばくとの関係を疑った。 (2) 一審原告26-3は、名古屋で通い始めた中学校に馴染めず、孤立し、いじめにあった。また、同26-3は避難から1年過ぎた頃、学校の健康診断で甲状腺が腫れていると指摘され、その後、バセドウ病と診断された。 一審原告26-3の上記の転校先でいじめにあい、平穏な学校生活を送ることができなかったことも本件事故による被害である。すなわち、一審被告国は、避難指示区域の内外で被害者の線引きを行い、差別的な政策を行うことによって、被害の切捨てを図ったため、区域外避難者は、「政府が指示していないのに、勝手に逃げた人」というレッテルを貼られ、本件 事故直後の義援金の分配、災害救助法上の応急仮設住宅(公営住宅などの応急仮設住宅扱いの住宅を含む)への入居や医療費・介護費用の免除など、様々な面で公的な支援を制限される差別を受けてきた。一審被告東京電力も、こうした一審被告国による被害者線引き政策にそのまま乗り、区域外避 住宅扱いの住宅を含む)への入居や医療費・介護費用の免除など、様々な面で公的な支援を制限される差別を受けてきた。一審被告東京電力も、こうした一審被告国による被害者線引き政策にそのまま乗り、区域外避難者に対しては、区域内避難者の場合と異なり、本件事故直後の賠償金 の仮払い(いわゆる「仮払補償金」)は行わず、賠償金についても極端に - 191 -低い金額しか支払おうとしない。このような一審被告らによる区域外避難者に対する被害の切り捨て政策が、最も弱い立場にある区域外避難者世帯の子どものいじめ被害となって現れているのである。したがって、一審原告26-3が避難後に経験したいじめ被害についても、本件事故による被害として、一審被告らの責任が追及されなければならない。 3 まとめこのように、本件事故により、一審原告26の世帯は人格的生存に不可欠な権利(憲法13条)を侵害されたものであり、その侵害の程度は重大である。 第16 一審原告28の世帯 1 一審原告28-1 (1) 慰謝料以外の損害ア交通費、生活費増加費用一審原告28の世帯は、同28-2が妊娠したものの、勤務先から転勤希望を断られたことから、母体と胎児を被ばくから守るべく、放射線量の低い地域の社宅に転居したものであり、その際、放射線量がより高い 従前の社宅にあった家具、中でも寝具など身体に長時間接する家財道具等を買い替えるのは当然の選択である。したがって、避難の際に購入したベッドの費用相当額を損害として認めるべきである。 イ就労不能損害一審原告28-1は、妻である同28-2と生後約2か月の同28-3 とともに避難し、初めての育児をする中で、避難先の住居を整えること、福島県から避難してきたことを周囲に知られないように 損害一審原告28-1は、妻である同28-2と生後約2か月の同28-3 とともに避難し、初めての育児をする中で、避難先の住居を整えること、福島県から避難してきたことを周囲に知られないように過ごすこと、家族3人が暮らしていける収入を得られる就職先を探すことを一度に行う必要があった。そのため、就労不能損害を平成25年3月までに限定するのは相当ではない。 (2) 慰謝料 - 192 -一審原告28-1は、本件事故により、それまでに有していた包括的生活基盤とそこから享受していた利益を丸ごと失った。また、単に年齢によって避難継続の合理性が認められる期間を区別できるものではない。慰謝料の算定に当たっては、これらの点を考慮すべきである。 2 一審原告28-2 (1) 本件事故当時の一審原告28-2の生活状況本件事故当時、一審原告28-2は、両親及び兄とともに4人で双葉郡浪江町に住んでいた。同28-2は郡山市に居住していた同28-1と結婚を前提とした交際をしており、郡山市内での就職を探し、住民票も同市に移していたが、引き続き浪江町の自宅に住んでいた。同28-2が自動車を運転 して同28-1宅に向かっている途中で本件地震が発生した。同28-2は同28-1宅にたどり着いたものの、それ以降浪江町の自宅に帰れなくなった。同28-2の居住証明書(甲C28の14の1)における「平成22年3月11日当時」とあるのは「平成23年3月11日当時」の誤記である。 直接請求は住民登録に従ってひとまず行ったものに過ぎない。また、同28 -1との婚姻も、同28-1の社宅が単身用であり、同28-1の勤務先から、家族でない同28-2を引き続き入居させるなら入籍するよう指示されたため、やむを得ず入籍したものである。 ( 同28 -1との婚姻も、同28-1の社宅が単身用であり、同28-1の勤務先から、家族でない同28-2を引き続き入居させるなら入籍するよう指示されたため、やむを得ず入籍したものである。 (2) 慰謝料以外の損害一審原告28の世帯が郡山市内で転居避難をしたのは、同28-2が妊娠 し、母体と胎児の安全・安心を少しでも確保しなければならなかったからであり、その避難先で、同28-2が就寝するために必要なベッドを購入することは、避難に必要な家財道具の購入費用として、本件事故と相当因果関係にある損害である。 (3) 慰謝料 一審原告28-2は、本件事故により、それまでに有していた包括的生 - 193 -活基盤とそこから享受していた利益を丸ごと失った。また、同28-2は、本件事故により、転居や婚姻の時期・方法等に関する選択の余地を失い、一審原告28-1の社宅で避難生活を送ることを余儀なくされ、生活を維持するために婚姻届を提出せざるを得なくなった。慰謝料額の算定に当たっては、本件事故前の包括的な生活基盤と生活利益、自らの生活を自らの意思で選択 し、営んでいくこと自体を奪われた点を過小評価すべきではない。 3 一審原告28-3慰謝料の月額評価、相当因果関係にある期間(避難の合理性が認められる期間)の評価のいずれについても適切に評価すべきである。 第17 一審原告31の世帯 1 避難開始の合理性、避難継続の合理性一審原告31の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域であるいわき市で生活していたが、居住地は避難対象となった地域から五、六kmしか離れておらず、放射能の影響に対する不安は大きかった。また、同31―3は、本件事故当時わずか1歳半と幼く、放射線に対する感受性が高いと考えられた。 同3 避難対象となった地域から五、六kmしか離れておらず、放射能の影響に対する不安は大きかった。また、同31―3は、本件事故当時わずか1歳半と幼く、放射線に対する感受性が高いと考えられた。 同31―1及び同31―2は、同31―3の健康を守りたいとの強い思いはもとより、自分たちの健康も考えて避難を開始し、避難を継続したのであって、決して自主的に避難したのではなく、当時の状況では避難せざるを得なかったのである。 2 一審原告31―1の転職について 一審原告31―1は、避難前はいわき市で美容師として働いており、自分の店を持つことが夢であったが、避難後の平成23年5月からは、毛髪製品の製造販売会社で勤務し始めた。同社は、美容師と関連ある職種ではあったものの、結局、自分の店を持つことは諦めざるを得なかった。そこで、平成31年2月、異なる職種ではあるが条件を考慮して現職に転職したものである。 第18 一審原告32の世帯 - 194 - 1 避難の合理性、避難継続の合理性一審原告32の世帯の居住地は、本件事故当時、自主的避難等対象区域であるいわき市であり、避難対象となった地域にも比較的近く、放射能の影響に対する不安は大きかった。また、同32-3から同32-5までは本件事故当時幼く、特に同32―5はわずか1歳7か月であった。このように年齢の低い者 は放射線に対する感受性が高いと考えられ、実際に平成24年8月に行った甲状腺検査及び血液検査の結果、同32-3から同32-5までの甲状腺にのう胞ができており、同32-5には血液検査でも甲状腺ホルモンが上昇しているとの結果が出た。 将来に大きな不安を抱える中で、一審原告32-1及び同32-2が、自身 の健康はもちろん、子である同32-3から同32-5までの健康を守りたい も甲状腺ホルモンが上昇しているとの結果が出た。 将来に大きな不安を抱える中で、一審原告32-1及び同32-2が、自身 の健康はもちろん、子である同32-3から同32-5までの健康を守りたいと思うことは当然である。加えて、上記のとおり同32-3から同32-5までに客観的な身体の異変ないし異常が生じていたのであるから、いわき市の自宅に戻り生活を行うことができず、現在に至るまで避難継続の合理性がある。 2 慰謝料以外の損害 (1) 面会交通費一審原告32の世帯は、本件事故発生まで、いわき市の自宅で一緒に生活をしており、同32-1は転勤の可能性もなかったから、本件事故がなければ家族が離れて生活する可能性は一切なかった。したがって、週に1回の面会では少なく、同32-1が週に1回の面会のために要した交通費は、すべ て本件事故と相当因果関係のある損害である。 (2) 車両メンテナンス費いわき市から群馬県安中市までは距離にして262kmは下らない。一審原告32-1は、家族との面会のために、少なくとも月4回の往復を17か月間行っていたから、いわき市から安中市までの片道262kmの距離を最 低68往復していたことになる。他方、タイヤの溝は約3万2000kmの - 195 -走行で道路運送車両法の保安基準に定める1.6mmにまで摩耗し、これを下回ると車検を通せなくなるから、上記移動によって摩耗したタイヤの購入費用は本件事故と相当因果関係を有する損害である。また、エンジンオイルは3000kmから5000km程度で交換するのが目安であり、上記移動によってエンジンオイルを少なくとも10回程度交換する必要が生じたから、 この交換費用も本件事故と相当因果関係を有する損害である。 (3) 交通費、引越し費用、 するのが目安であり、上記移動によってエンジンオイルを少なくとも10回程度交換する必要が生じたから、 この交換費用も本件事故と相当因果関係を有する損害である。 (3) 交通費、引越し費用、就労不能損害一審原告32の世帯の避難継続の合理性は、現在まで認められるべきであるから、いずれの損害も現在までの分全部が認められるべきである。 3 慰謝料 慰謝料の月額及び避難の合理性が認められる期間の双方につき、一審原告32の世帯が本件事故により事故前に有していた包括的生活基盤とそこから享受していた利益を丸ごと失った事実を適切に評価すべきである。 4 一審被告東京電力の主張に対する反論(1) 一審被告東京電力は、避難の相当性が仮に認められるとしても、その期 間は長くとも平成23年4月22日頃までと考えられ、それ以後は避難の相当性が認められず、一審原告32-2の請求する駐車場使用料については本件事故と相当因果関係がない旨主張する。しかし、原判決が避難継続の合理性を認めた期間は短過ぎ、この点を措いても、少なくとも原判決が認めた期間は避難継続の合理性が認められるのは明らかである。 (2) また、一審被告東京電力は、群馬県避難者向け借上げ住宅入居者募集要領によると、同県において借上げ住宅の駐車場使用料は県が負担することとなっていることから、一審原告32-2の請求する駐車場使用料は損害自体の発生が認められない旨主張する。しかし、上記募集要領は平成23年8月1日施行であるのに対し、同32-2らが借上げ住宅で生活し始めたのは、 上記募集要領の施行日前である同年5月からである。したがって、一審被告 - 196 -東京電力の上記主張はその前提を欠き、失当である。 第19 一審原告33の世帯 1 避 めたのは、 上記募集要領の施行日前である同年5月からである。したがって、一審被告 - 196 -東京電力の上記主張はその前提を欠き、失当である。 第19 一審原告33の世帯 1 避難の合理性、避難継続の合理性(1) 一審原告33の世帯の本件事故当時の居住地は、自主的避難等対象区域であるいわき市であったが、避難対象となった地域にも比較的近く、放射能 の影響に対する不安は大きかった。また、同33-1及び同33-2は同32の世帯と同居していたところ、同33の世帯は、同32-1が自身の事業を継いでくれることを楽しみにしており、同32-1も継ぐ意思を有しており、両世帯は互いに離れて生活することはあり得ない状況であった。 (2) 一審原告33の世帯と同居していた同32-3から同32-5までは、 本件事故当時幼く、特に同32―5はわずか1歳7か月であり、年齢の低い者は放射線に対する感受性が高いと考えられており、実際に平成24年8月に行った甲状腺検査及び血液検査の結果、同32-3から同32-5までの甲状腺にのう胞ができており、同32-5には血液検査でも甲状腺ホルモンが上昇しているとの結果が出た。 (3) 将来に不安を抱える中で、一審原告33-1及び同33-2が、自身の健康はもちろんのこと、孫ら(同32-3から同32-5まで)の健康を守りたいと思うのは当然であり、上記のとおり同32-3から同32-5までに客観的な身体の異変ないし異常が生じていたのだから、いわき市の自宅に戻り生活を行うことができないのは明らかであり、現在に至るまで避難継続 の合理性がある。 2 慰謝料以外の損害(1) 面会交通費一審原告33-2の長女である同36-1は群馬県に避難しており、同36-1が仕事のためにいわき市に 現在に至るまで避難継続 の合理性がある。 2 慰謝料以外の損害(1) 面会交通費一審原告33-2の長女である同36-1は群馬県に避難しており、同36-1が仕事のためにいわき市に行けば、同36-1の子らの世話をするた め、同33-2が月4回、群馬県に行く必要があった。また、同33-2に - 197 -精神的、肉体的な余裕がなく、そのせいで高速道路の利用明細等を保存していなかったとしても何ら不自然なことではない。 (2) 交通費、引越し費用、福島の自宅を売却するのに伴って要した費用、岐阜の自宅を購入する際に要した費用、就労不能損害一審原告33の世帯の避難継続の合理性は現在まで認められるべきである から、上記各費用等及び就労不能損害については、いずれも現在までの避難継続の合理性を認め、これらを認めるべきである。 3 慰謝料慰謝料の月額及び避難の合理性が認められる期間のいずれの点についても、一審原告33の世帯が、事故前に有していた包括的生活基盤とそこから享受し ていた利益を丸ごと本件事故により失った事実を適切に評価すべきである。 第20 一審原告34の世帯 1 慰謝料額について一審原告34の世帯においては、同34-3及び同34-4が広汎性発達障害・注意欠陥多動性障害を有しているところ、発達障害を有する者に適切な支 援が行われない場合、社会生活への不適応、不登校、鬱病等の二次的障害が発現することが有り得るとされ、早期の発見及び支援の実施が重要とされる。発達障害という特性を有しながらの避難生活や、発達障害という特性を有する幼い子らとの父子家庭での避難生活が、そのような事情がない者との比較で大変であることは明らかであり、慰謝料の算定にあたっては十分に考慮されるべき ながらの避難生活や、発達障害という特性を有する幼い子らとの父子家庭での避難生活が、そのような事情がない者との比較で大変であることは明らかであり、慰謝料の算定にあたっては十分に考慮されるべき 事情である。 2 避難継続の合理性について同一世帯の構成員について、避難継続の合理性が認められる終期が異なるのは相当ではなく、一審原告34の世帯においては、子らが幼年であり、同人らだけで生活することなどあり得ないし、上記のとおり同34-3及び同34- 4については発達障害等があり、家族の関わりが重要であるから、同34-1 - 198 -の存在が不可欠であった。したがって、同34-1の避難継続の合理性が認められる終期は、同34の世帯の他の一審原告らと同時期とすべきである。 3 その他の損害について一審原告34-1は平成22年2月に失業し、失業から1年以上経過した本件事故時点においても就職していなかったが、同34の世帯は幼い複数の子を 抱えた父子家庭であり、発達障害の特性を有する子も含まれており、避難先という不安定な状態の中で子どもとの生活を優先する結果、十分な収入を得ることができる仕事に就き、これを継続することが難しい状況にあった。 一審原告34-1は、本件事故がなければ福島の実家でそのまま生活を送ることができ、子ら(同34-2から同34-4まで)の母親代わりとして同3 4-1の母の援助も受けられ、不安定な状態で仕事を探す必要もなかった。したがって、避難先での生活と福島での生活との相違が同34-1の収入に現れるのであれば、それは本件事故と相当な因果関係のある損害ということになるはずである。 一審原告34-1は、本件事故による避難がなければ、従前と同程度の月額 22万円から23万円程 現れるのであれば、それは本件事故と相当な因果関係のある損害ということになるはずである。 一審原告34-1は、本件事故による避難がなければ、従前と同程度の月額 22万円から23万円程度の収入の仕事にそう遠くない時期に就くことは十分に可能であったものであって、これと本件事故後の現実の収入との差額については、本件事故による避難と因果関係ある損害となることは明らかである。 第21 一審原告35の世帯 1 一審原告35-1の被害について (1) 一審原告35-1は、本件事故発生当時、生まれ育った福島市地区において、元妻である同35-2、娘である同35-3及び母とともに生活していた。同35-1は、本件事故後、平成23年11月頃に単身で岐阜市へ避難したが、その際、家を守るために福島市に残った母と離れ、父からは福島を捨てるのかと言われ、家族との断絶を経験した。また、元妻との間で も、避難をめぐって半年以上にわたり葛藤があった。それでも同35-1は、 - 199 -福島市地区の空間放射線量などが高かったことから、同35-3に放射線被害が及ぶことを避けるため、やむなく避難を選択した。 (2) 一審原告35-1は、避難後に母と死別した。福島市地区は依然として空間放射線量などが高く、同35-1はへ戻ることができないため、家は住む者がいなくなり、売却を余儀なくされた。同35-1にとって福島 市地区はふるさとであるが、本件事故によって帰ることができなくなってしまった。同35-1のふるさとや本件事故前の生活は本件事故によって奪われた。また、同35-1は、本件事故により放射性物質が大量放出された時期、放射性物質の危険性を知らないまま、同35-3を戸外へ連れ出していた。放射能についての知識を得て、 生活は本件事故によって奪われた。また、同35-1は、本件事故により放射性物質が大量放出された時期、放射性物質の危険性を知らないまま、同35-3を戸外へ連れ出していた。放射能についての知識を得て、制限の多い日常生活を送る中、同3 5-1は家族で岐阜へ避難することを考えるようになったが、闘病していた母の看病と職場を重視した同35-2は避難に消極的であった。 (3) しかし、居住していた福島市地区はホットスポットが点在し、全体として放射線量が高い地域であったことから、平成23年11月、まずは一審原告35-1が岐阜に避難し、その後、平成24年3月に同35-2も岐 阜に避難した。避難後の同35の世帯による生活は大変であり、看護師であった同35-2の収入により何とか生活できたが、同35-1がカウンセラーとして働くようになり、何とか食べていけるようになるのに5年を要した。 (4) 一審原告35-1はホールボディカウンター検査を受けたところ、セシウムとストロンチウムの値が検出され、また、平成26年の甲状腺検査の結 果、のう胞(1mm)でA2との判定を受け、経過観察が必要と指摘されるなど、被ばくによる健康不安を抱えて生活している。 (5) 一審原告35-3が高校に入学した後、同35-1及び同35-2の夫婦は離婚した。本件事故がなければ離婚しなかったはずである。なお、同35-3にも、避難後の甲状腺検査でのう胞が見つかり、経過観察中である。 2 一審原告35-2の被害について - 200 -(1) 一審原告35-2は、昭和48年に福島県伊達郡桑折町に生まれ、平成3年頃に家族で福島市に引っ越した。同35-2は、専門学校卒業後は看護師となり、福島市内の病院で働き始めた。その後、元夫である同35-1と知 35-2は、昭和48年に福島県伊達郡桑折町に生まれ、平成3年頃に家族で福島市に引っ越した。同35-2は、専門学校卒業後は看護師となり、福島市内の病院で働き始めた。その後、元夫である同35-1と知り合って結婚し、平成21年1月には同35-1の実家である福島市●●地区に引っ越し、同35-1の母と同居した。福島には、古くからの友人や 心を許せる友人が多くおり、人間関係も豊かであった。また、一審原告35-2は自然豊かな同地区での暮らしを大切にしていた。 本件事故当時、一審原告35-2は、看護師として福島市内で勤務し、仕事にやりがいを感じていたが、本件事故によって、かけがえのない職場を失った。また、本件事故後、当時小学1年生だった同35-3の生活は、制限 の多いものとなった。同35の世帯は、常に緊張感を持って日常生活を送るようになり、被ばくについても不安に感じ、同35-2には精神的な疲労感が募った。 (2) 一審原告35-2は、平成23年夏頃になって、歯茎の痛みを感じるなど体調に異変を感じ、同年9月以降も改善せず、内部被ばくの不安が高まり、 同年11月末頃、同35-1と一緒に避難することを決め、体調不良の中、平成24年3月まで福島市内での仕事を続け、その後、岐阜市に避難した。 同35-2は、本件事故により避難を余儀なくされたため、良好な関係にあった同35-1の母と離別することとなり、多大な苦しみを覚えた。同35-2は岐阜市へ避難したことで健康状態は改善したが、義母を一人福島に残 してしまったことに対する罪悪感に悩まされた。同35-2は、パートタイムで勤務できる看護師の仕事に就くことができたが、福島の頃のような収入を得るのは今後も困難である。 3 一審原告35-3の被害について(1) 一審原 された。同35-2は、パートタイムで勤務できる看護師の仕事に就くことができたが、福島の頃のような収入を得るのは今後も困難である。 3 一審原告35-3の被害について(1) 一審原告35-3は同35-1と同35-2の娘であり、平成16年1 月に新潟で生まれ、平成21年、福島市地区にあった父の実家に転居し、 - 201 -両親と父方の祖母、曾祖母と暮らし始め、令和4年、岐阜県の高校を卒業した。 一審原告35-3は、 地区において、震災前は外で思う存分遊ぶことができ、また同居する祖母と多くの時間を過ごした。 (2) 一審原告35-3は、本件事故後、数日間は何ら対策もせずに外出し、 無防備に外で給水の列などに長時間並んだこともあり、平成23年4月には、小学2年生に進級して再び学校が始まり、同年7月の終業式まで通常通り通学した。本件事故後、登下校時にはマスクを着用したが、外にある物を触ったり、外で遊んだりした時期もあった。平成23年中には、土壌汚染を取り除くために学校の運動場が全面立入禁止となった期間もあった。 このように、一審原告35-3は、本件事故直後長時間外で過ごし、高い線量の放射線にさらされただけでなく、放射線のことが正確に理解できないため、外で遊んだり、外にある物に触れたりすることが全くなくなることはなく、被ばくし続けた。 また、それまでの生活は一変し、外で体を動かして活発に遊ぶことが制限 され、マスクを着用するか、学校給食を食べるか等について家庭で意見や対応が異なり、否が応でも人々が分断される環境に置かれた。 さらに、本件事故後、一審原告35-3は、突然、鼻血が出たり、喉がかゆくなったりする症状が出たが、これらの症状も本件事故前にはなかった 応が異なり、否が応でも人々が分断される環境に置かれた。 さらに、本件事故後、一審原告35-3は、突然、鼻血が出たり、喉がかゆくなったりする症状が出たが、これらの症状も本件事故前にはなかった。 (3) 一審原告35-3は、本件事故によって家族が離れて暮らさざるを得な い時期を過ごしたが、当時同35-3が小学2年生であったことからすると過酷であったといえる。 (4) 一審原告35-3は、親の提案により、平成24年3月末、放射能による影響が不安視される福島市地区から引っ越すこととなったが、祖母は同地区に残った。その後、祖母とは、平成26年7月に亡くなるまで3 回程度しか会えなかった。 - 202 -(5) 一審原告35-3は、岐阜では知り合いもなく、日常生活に不安があり、容易に人間関係を構築することができなかった。岐阜は、福島と違って何のゆかりもない一時的な避難場所でしかなく、いつか福島に戻れるという意識がなくならなかった。同35-3は、避難後、転校先でいじめを疑わせるような境遇にあり、高校生になる頃まで親しい友人ができなかった。 同35-3は、岐阜弁に慣れようと試みるなど複雑な心境を抱えながら小学校生活を送ることを余儀なくされた。また、自分たちだけが逃げてきたという自責の念があった。さらに、どれだけ仲良くなっても、福島市出身の自分は他の同級生たちとは少し違うという感覚が抜けず、現在でもその感覚を抱えたまま暮らしている。 このように、一審原告35-3は、通常の小学校生活とは比べものにならないほど精神的な負担を負った。 (6) 一審原告35-3は、本件事故後、同居していた父方の祖母と引き離され、そのまま死別することとなった。また、同35-3は、原発事故後、岐阜へ引っ越 にならないほど精神的な負担を負った。 (6) 一審原告35-3は、本件事故後、同居していた父方の祖母と引き離され、そのまま死別することとなった。また、同35-3は、原発事故後、岐阜へ引っ越すまでの約1年間福島市地区で過ごし、通学や外出等をした ことにより少なくない被ばくをした。他方で、本来なら外での遊びが健やかな成長に欠かせない時期であるのに、両親や教諭からの助言で外出や外での遊びを大幅に控え、岐阜に避難するまでストレスを抱えて暮らすことを余儀なくされた。 このように、一審原告35-3は、本件事故により、避難までの1年間被 ばくし続けた上、家族や同級生たちなど大切な人たちと切り離され、安心して過ごせる環境を一方的に奪われた。 4 まとめこのように、本件事故により、一審原告35の世帯は人格的生存に不可欠な権利(憲法13条)を侵害されたものであり、その侵害の程度は重大である。 第22 一審原告36の世帯 - 203 - 1 避難の合理性、避難継続の合理性一審原告36の世帯の居住地は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島県いわき市であり、避難対象となった地域にも比較的近く、放射能の影響に対する不安は大きかった。また、同36-3は、本件事故当時7歳と幼く、年齢の低い者の放射線に対する感受性が高いと考えられており、実際に、 平成24年8月に行った甲状腺検査の結果、同36-3の甲状腺にのう胞ができているとの結果が出た。将来に大きな不安を抱える中で、同36-1が、自身の健康はもちろんのこと、子らの健康を守りたいと思うことは当然である。 加えて、上記のとおり同36-3に客観的な身体の異変ないし異常が生じているのであるから、いわき市の自宅に戻り生活を行うことなどできないことは明 こと、子らの健康を守りたいと思うことは当然である。 加えて、上記のとおり同36-3に客観的な身体の異変ないし異常が生じているのであるから、いわき市の自宅に戻り生活を行うことなどできないことは明 らかであり、現在に至るまで避難継続の合理性がある。 2 慰謝料以外の損害(1) 生活費増加費用(家財道具購入費)本件事故直後に避難し、エアコンをはじめ各種家具家電製品を購入すること自体一般的なことであり、その費用が15万円程度で収まらないこともま た明らかである。避難の混乱の中、領収証等を保存していなかったことはやむを得ないことであり、不利益に評価すべきではない。 また、一審原告36の世帯の避難の合理性は現在まで認められるべきであるから、転居の際の家財道具購入費用も損害と認めるべきである。 (2) 車庫証明手数料 一審原告36の世帯は、避難先である群馬県での生活のためには自動車が必要であり、そのためには駐車場の確保、すなわち車庫証明の手続をすることが必要であったことは明らかである。避難の混乱の中、領収証等を保存していないことはやむを得ないことであり、これを不利益に評価するのは相当ではない。 (3) 交通費、引越し費用、福島の自宅の売却に要した費用、岐阜の自宅の購 - 204 -入費用、引越し先探しのための交通費、就労不能損害一審原告36の世帯の避難の合理性は現在まで認められるべきであるから、上記各費用等のそれぞれについて、現在までの分を損害として認めるべきである。 3 慰謝料 一審原告36の世帯が、本件事故により、事故前に有していた包括的生活基盤とそこから享受していた利益を丸ごと失った事実を適切に評価して慰謝料を算定すべきである。 4 一審被告東京電力の主張に対する反 一審原告36の世帯が、本件事故により、事故前に有していた包括的生活基盤とそこから享受していた利益を丸ごと失った事実を適切に評価して慰謝料を算定すべきである。 4 一審被告東京電力の主張に対する反論(1) 一審被告東京電力は、避難の相当性が仮に認められるとしても、長くと も平成23年4月22日頃までであり、それ以後は避難の相当性が認められないため、一審原告36-1の請求する宿泊費については本件事故と相当因果関係がない旨主張する。しかし、原判決が避難継続の合理性を認めた期間は短過ぎ、この点を措いても、少なくとも原判決が認めた期間は避難継続の合理性は明らかに認められる。一審被告東京電力の上記主張は失当である。 (2) また、一審被告東京電力は、一審原告36-1がルームシェアに係る月額3万円を支出したことについて、客観的な証拠がないため、損害自体の発生が認められない旨主張する。しかし、長期間の避難において、滞在費用が生じるのは当然のことであり、月額3万円という居住費はむしろ低額であって相当の範囲内である。知人の厚意によりルームシェアという形で長期間滞 在させてもらっていた状況で、当該知人に領収証の発行を求め、さらにそれを保管しておく負担を同36-1に課すのはあまりに酷である。 加えて、一審被告東京電力は、ADRにおいて一審原告36-1に賠償を行ったところ、その明細には当該宿泊費の一部が含まれていた。したがって、一審被告東京電力自身、当該宿泊費が損害に当たることを自認している。し たがって、同一審被告の上記主張は失当である。 - 205 -第23 一審原告38の世帯 1 避難の合理性、避難継続の合理性一審原告38の世帯が居住していた福島市においては、平成28年6月の時点で、通学等に用 記主張は失当である。 - 205 -第23 一審原告38の世帯 1 避難の合理性、避難継続の合理性一審原告38の世帯が居住していた福島市においては、平成28年6月の時点で、通学等に用いる道路ですら100%の除染がされていなかったのであるから、少なくとも平成29年4月1日までの避難継続の合理性が認められるべ きである。 2 慰謝料以外の損害について(1) 家財道具購入費一般的な母子が生活するための家財道具等を揃えたときに30万円で足りるはずはなく、また一審原告38-1は福島県内での勤務を継続しており、 別居を強いられていたのであるから、住居から家財道具を運び出せる状況にもなかった。避難の混乱の中、領収証を保存していないことはやむを得ないことであり、これを不利益に評価すべきではない。 (2) 水道光熱費上述のとおり、一審原告38-1が福島県内での勤務を継続しており、別 居を強いられていたから、水道光熱費を二重に負担していたことは明白であり、この領収証が保管されていないことを不利益に評価すべきではない。 (3) 食費上記のとおり、一審原告38の世帯では別居を強いられていたのであるから、食費も二重に負担していたことは明らかである。この領収証を保管して いないことを不利益に評価するのは相当でない。 (4) 教育費本件事故以前は、近所に複数の親族が生活する環境で一審原告38-3の子育てをしており、少なくとも3歳から保育園等に通園させる必要はなかった。したがって、教育費も本件事故と相当因果関係のある損害である。 (5) 就労不能損害 - 206 -一審原告38-2は、少なくとも平成29年4月1日まで避難継続の合理性が認められるという 費も本件事故と相当因果関係のある損害である。 (5) 就労不能損害 - 206 -一審原告38-2は、少なくとも平成29年4月1日まで避難継続の合理性が認められるというべきであり、その避難期間中、幼い同38-3を抱えながら、本件事故以前と同等の給与を得ることは不可能である。 (6) 生命・身体的損害一審原告38-2が本件事故に起因して通院したことについては医師作成 の診断書があり、本件事故と長引く避難生活によって不眠症、頭痛、胃痛、不安神経症を患い得ることは、一般常識に照らしてもさほど不可思議でない。 したがって、これも本件事故に起因する損害であると認めるべきである。 3 慰謝料について一審原告38の世帯は、本件事故以前、親族皆が福島県内に居住し、頻繁に 交流していたが、本件事故によって、その絆が断たれてしまった。また、同38-1は、長引く妻子との別居生活から体調を崩し、同38-2は避難した後ろめたさから、福島県内に残る友人らとの関係が崩れてしまった。同38-3は、自然豊かな福島県内でのびのび過ごすことができなくなり、母等との極めて狭いコミュニティの中で幼児時代を過ごすことになった。現在、同38-2 は乳がん闘病中であるが、その状況下にあっても夫婦の溝は埋まらず、家庭内別居の状態が続いている。このように、本件事故によって、同38の世帯が負った孤独感、ストレス、失った家族の絆、それにより被った精神的苦痛は甚大であり、これらの点を適正に評価すべきである。 第24 一審原告40 1 慰謝料以外の損害について一審原告40は、いわき市に在住の頃、日常生活において夫名義の自動車を使用し、この自動車の任意保険契約を自身の名で行っていた。同40にとって日常生活等のた 1 慰謝料以外の損害について一審原告40は、いわき市に在住の頃、日常生活において夫名義の自動車を使用し、この自動車の任意保険契約を自身の名で行っていた。同40にとって日常生活等のために自動車は必要不可欠であり、同40が支出した中古車購入代金29万円及び駐車場代金23万0400円(平成24年1月から平成26 年3月まで月額3600円、平成26年4月から平成29年3月まで3700 - 207 -円)と本件事故との相当因果関係を認めるべきである。 2 慰謝料について一審原告40は、知的障害及び身体障害を有する子を連れて、いわき市から郡山市、郡山市から大垣市へと転々と避難をしなければならず、避難行動自体が大きな負担であった。また、地縁のない避難先での子と二人きりの生活、自 身の就職など、避難生活の苦労は相当なものであった。さらに、同40及び子は、本件事故前は夫や近所の友人・支援者ら、障がい者施設などの支援機関が近くに存在する中で生活していたが、避難により、いわき市の夫や友人、支援者らと会う機会がなくなり、人間関係が失われた。また、同40が死亡した場合は、障がいを有する子を生涯にわたりケアすることを約束していた支援機関 の支援も望めなくなった。さらに、環境の変化に伴い、子にはチック症状が現れ、笑顔がなくなり、手話をしなくなった。 一審原告40は、本件事故によりふるさとを失い、帰ることができなくなっただけでなく、子の積極性や笑顔、子のケアに対する将来的な安心感をも失ったものであり、その喪失感は筆舌に尽くしがたい。 このような一審原告40の精神的苦痛を十分に評価すべきである。 第25 一審原告41の世帯 1 避難の継続の合理性について一審原告41の世帯は福島第一原発から20.99kmの距離 い。 このような一審原告40の精神的苦痛を十分に評価すべきである。 第25 一審原告41の世帯 1 避難の継続の合理性について一審原告41の世帯は福島第一原発から20.99kmの距離に居住しており、旧避難指示解除準備区域(20km圏内)の被害状況と何ら差異はない。 避難継続の合理的期間は、旧避難指示解除準備区域と同様に認められるべきである。 2 不動産の損害について一審原告41-1の不動産に係る固定資産評価額298万1218円は時価よりも低額である上、同41-1が行った造成等も考慮すれば、不動産の価値 は300万円を下らない。そして、雑木林等の除染がなされていない以上、安 - 208 -心安全な自給自足の生活拠点としては無価値になったといわざるを得ない。したがって、上記不動産の価値下落による損害は100万円にとどまらない。 3 慰謝料について一審原告41の世帯があえて移住してきたこと、本件事故が自給自足に向けての20年近い労力を無にしたこと、現実に心身の疾病につき医師の診断がな されていること、居住場所からしても旧避難指示解除準備区域に準じた精神的苦痛を被っていること等、同41の世帯の個別事情を適切に評価すべきである。 4 一審被告東京電力の主張に対する反論(1) 光熱費一審被告東京電力は、電気代及びガス代の増加分につき、相当因果関係が 認められない旨主張する。しかし、エアコンを使用せず薪ストーブを使用する等の当時の生活状況からすれば(一審原告41-1本人(原審))、増加分は、避難しなければ発生しなかった損害であり、本件事故と相当因果関係を有する損害であることは明らかであり、原判決は正当である。 (2) 不動産 一審被告東京電力は、不動産に関す は、避難しなければ発生しなかった損害であり、本件事故と相当因果関係を有する損害であることは明らかであり、原判決は正当である。 (2) 不動産 一審被告東京電力は、不動産に関する原判決の認定について、損害の発生が立証されておらず、民事訴訟法248条の解釈適用を誤ったものであり、自宅は滅失していないとか、損害額の主張立証がない等と主張する。しかし、そもそも損害とは財産的な不利益をいい、物理的な滅失に限られない。また、一審原告41-1は自宅建物のみならず、植林等を施した雑木林や湧き水で の生活本拠全体を失っているのであり、損害の発生に関する主張立証は十分であるし、損害額の立証困難性も優に認められる。裁判所は損害が生じたことが認められる以上、同条により相当な損害額を認定しなければならないと解される。したがって、原判決の認定は正当である。 第26 一審原告42の世帯 1 一審原告42-1 - 209 -(1) 慰謝料以外の損害一審原告42-1は、掛川市に避難するに当たり、子ら(同42-2から同42-4まで)の学用品等の購入を余儀なくされた。 公立の学校であっても各々の学校で使用している学用品は異なるものであり、転校や入学の際、新たに学校所定の学用品が必要となるのは明らかであ る。仮に転校前の学用品を流用できるとしても一部に限られ、どうしても購入しなければならない学用品は複数あり、これらの購入費用についても損害と認めるべきである。 (2) 慰謝料一審原告42-1は、本件事故により、事故前に有していた包括的生活基 盤とそこから享受していた利益を丸ごと失っており、この点を適切に評価すべきである。また、18歳以下の者がその年齢に応じた生活を送るためには親権者や監護者による適切な監護 していた包括的生活基 盤とそこから享受していた利益を丸ごと失っており、この点を適切に評価すべきである。また、18歳以下の者がその年齢に応じた生活を送るためには親権者や監護者による適切な監護が必要不可欠であるから、同一世帯における18歳以下の者とその親権者について、避難継続の合理性が認められる期間が相違することは極めて不合理である。さらに、同42-1には、本件事 故前から結婚を視野に入れて交際していた男性がおり、本件事故後、同男性との間の子を妊娠したものの、胎児への放射性物質の影響を考えて中絶し、結婚も諦めなければならなかった。同42-1はその男性と、同42-2から同42―4までとともに家庭を築くことを予定していたが、その人生設計も実現不可能となった。加えて、同42-1は、掛川市への避難のため、本 件事故前に勤務していた福島市内の病院を退職する際、奨学金の返済として100万円もの支払いを余儀なくされた。このように、中絶という大きな負担を強いられたことや、多額の出費を余儀なくされたことも、慰謝料の算出において適切に斟酌されるべきである。 2 一審原告42-2から同42-4まで 一審原告42-2から同42-4までは、本件事故により、事故前に有して - 210 -いた包括的生活基盤とそこから享受していた利益を丸ごと失っており、この点を適切に評価すべきである。 第9章一審原告らの損害(個別のものも含む。)に関する一審被告東京電力の当審における主張(弁済の抗弁の主張を含む。)第1 総論 1 はじめに一審被告東京電力は、迅速、公平かつ適切な範囲の損害を賠償するために、原賠法に基づき原陪審が定めた中間指針等を踏まえて自主賠償基準を策定し、本件事故の被害者らに対し損害賠償を行ってきた。 同一事故に 審被告東京電力は、迅速、公平かつ適切な範囲の損害を賠償するために、原賠法に基づき原陪審が定めた中間指針等を踏まえて自主賠償基準を策定し、本件事故の被害者らに対し損害賠償を行ってきた。 同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産的損害と精神的損害 とは、原因事実及び被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は1個であると解される(最判昭和48年4月5日民集27巻3号419頁)ところ、本件訴訟では、科学的・客観的に見て現実に健康影響を生じる程度の被ばくを受けた一審原告はおらず、本件事故による一審原告らの損害に対する賠償は、本件事故により平穏な生活基盤が損なわれたことによる損害の全体を 「原子力損害」(原賠法3条1項)としてひとまとめにして賠償したものであり、その請求権の個数は、損害全体に対する損害賠償請求権についてまとめて1個である。 一審原告らの請求は、結局のところ、本件事故により平穏な生活が損なわれたことによる損害に対する損害賠償請求権1個のうち、一審被告東京電力が全 ての賠償金を支払っておらず未だ残部があると主張して、その残部を請求しているものにほかならない。しかしながら、一審原告らに対する十分な賠償実態に加え、一審原告らそれぞれの個別事情を踏まえれば、一審原告らには一審被告東京電力による既払賠償額を超える損害は認められない。 2 自主的避難等対象区域に居住していた一審原告らに既払賠償額を超える損害 は認められないこと - 211 -(1) 原判決は、自主的避難等対象区域に居住していた一審原告らについて、本件事故発生当初の時期に避難することには一定の合理性が認められるとし、避難継続の合理性が認められるのは、原則として本件事故が収束に向かっていることが確認できた平成23年12月 一審原告らについて、本件事故発生当初の時期に避難することには一定の合理性が認められるとし、避難継続の合理性が認められるのは、原則として本件事故が収束に向かっていることが確認できた平成23年12月31日までとしつつ、妊婦・子どもについては平成24年8月31日までと判示した。また、被侵害利益は平穏 な日常生活を送る権利と解するのが相当であるとした上で、避難に伴う慰謝料は、平成23年3月から12月まで月額6万円、妊婦又は子どもは更に平成24年1月から8月まで月額5万円とするのが相当であると判示した。 (2) しかしながら、平成23年4月17日には、原子炉の冷温停止を目指すスケジュールが公表されて収束に向けての方向性が示されたこと、自主的避 難等対象区域の空間放射線量率は、国際的な合意がされた科学的知見である年間20mSVを超えないこと、本件事故による被ばくが健康影響を増加させる見込みはないという県民健康管理調査及び国際機関の報告が出され、これらの情報が信用性の高い媒体や自治体の広報等を通じて周知されていたこと、自主的避難等対象区域の住民の大部分は避難しなかったこと、同年3月 中には、社会的活動・経済活動が再開していたことなど、同区域における本件事故後の客観的状況等からすれば、本件事故当初の時期の被ばくへの不安を抱いたことについて法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る利益)の侵害の程度は、もし存在するとしても軽微なものであるし、後続事故に対する不安についても、法律上保護される利益の侵害の程度は、もし存在する としても軽微なものである。 (3) また、裁判所は裁量により慰謝料額を算定・評価できると解されているものの、その裁量権の行使は社会通念により相当と認められるものでなければならない。しかるに、原判決は、中間指 なものである。 (3) また、裁判所は裁量により慰謝料額を算定・評価できると解されているものの、その裁量権の行使は社会通念により相当と認められるものでなければならない。しかるに、原判決は、中間指針等及びこれを踏まえた一審被告東京電力の賠償基準が一応の合理性を有すると判示しながら、一審原告ら全 員に一律に、大人に60万円、妊婦・子どもに100万円の慰謝料額を認定 - 212 -したが、これらはこれまでの裁判例や中間指針等の基準に比べ、かけ離れて高額であり、もはやその裁量権の限界を超えているといわざるを得ない。 (4) 加えて、一審被告東京電力は、自主的避難等対象区域から避難した者に対して、訴訟であれば法律上損害賠償義務を負うとは認められない範囲・額であっても、迅速、公平かつ適切な賠償のために、直接請求及びADR手続 において十分過ぎる賠償を実施してきた。同区域に居住していた一審原告らの各世帯は既に十分な賠償金を受領済みであり、各世帯が転居した事情、転居の時期、転居後の生活状況等の個々の具体的な事情をも踏まえても、既払いの賠償額を超える損害は全く認められない。 3 区域外(県南地域・白河市)に居住していた一審原告ら(一審原告26の世 帯)に既払賠償額を超える損害は認められないこと原判決は、本件事故後に区域外(県南地域)から避難をした一審原告らについて、自主的避難等対象区域から避難した者と同期間の避難継続の合理性を認めて、同区域から避難した者と同額の慰謝料を認めた。 しかし、福島県白河市を含む県南地域は、原陪審が指針において自主的避難 等対象区域に含めなかった地域である。にもかかわらず原判決では、居住地と福島第一原発との距離、空間放射線量率をどのように評価して、区域外の住民について自主的避難等対象区域と同 いて自主的避難 等対象区域に含めなかった地域である。にもかかわらず原判決では、居住地と福島第一原発との距離、空間放射線量率をどのように評価して、区域外の住民について自主的避難等対象区域と同額の慰謝料を認定したのか全く明らかでないし、「避難者の年齢、家族構成及び心身の状況」として認定した内容が具体的にいかなる意味で区域外の住民の利益侵害を基礎づけるのかも明らかでない。 県南地域の住民については法律上保護される利益に対する侵害は認められず、仮に法益侵害が生じたとしても一審被告東京電力が既に支払った賠償額を超える損害は認められない。 4 その他の区域の一審原告らについても既払い金を超える賠償額は認められないこと 旧緊急時避難準備区域に居住していた一審原告ら、旧避難指示解除準備区域 - 213 -に居住していた一審原告ら、旧居住制限区域に居住していた一審原告ら、帰還困難区域に居住していた一審原告についても、既に一審被告東京電力から十分過ぎる賠償金を受領しているから、これらの者について既払賠償額を超える損害は認められない 5 弁済の抗弁に関して、原判決が慰謝料以外での過払額を認定しながら、慰謝 料に充当しない判断の誤り(1) 原判決の内容原判決は、弁済の抗弁について、各一審原告の損害額を認定し、かかる損害額全体から一審被告東京電力から各一審原告に対する本件事故についての賠償金として支払われた金額を控除し、一審被告東京電力による賠償金を控 除してもなお残額が存在する場合には、残額に相当因果関係が認められる範囲の弁護士費用を上乗せした金額を認容額とすると判示した。それにもかかわらず、原判決は、「慰謝料のみを請求している原告ら」と「(慰謝料に加え)慰謝料以外の請求をしている原告ら」との「公平の見地」 範囲の弁護士費用を上乗せした金額を認容額とすると判示した。それにもかかわらず、原判決は、「慰謝料のみを請求している原告ら」と「(慰謝料に加え)慰謝料以外の請求をしている原告ら」との「公平の見地」から、ADRにおいて「避難雑費」や「自主的避難等対象者に対する賠償金」として支払 われた金銭を慰謝料に充当することを認めなかった。そして、原判決は、一審被告東京電力が、一審原告らのうち15名に対して、原判決が慰謝料以外の損害項目について認定した損害額を超える額を支払ったにもかかわらず、当該超過分を慰謝料に対する弁済に充当することを否定した。 (2) 原判決の誤り しかし、原判決の結論によれば、一審被告東京電力が一審原告に対して慰謝料以外の損害として支払った額が、慰謝料以外の損害として認定された額を上回る場合には、当該超過額の分だけ、当該一審原告が利得を得ることとなる。不法行為に基づく損害賠償制度の目的からすると、このように一審原告が被った損害分を超える賠償がなされる結果となることは明らかに不当で ある。 - 214 -また、本件は通常共同訴訟であって、共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為は、民事訴訟法39条により他の共同訴訟人に影響を及ぼさない。 それにもかかわらず原判決は、ある一審原告(慰謝料のみを請求している一審原告ら)に対して一審被告東京電力が弁済の抗弁という攻撃防御方法を主張しなかったことを、他の一審原告(慰謝料に加え、それ以外の請求をして いる一審原告ら)に影響を及ぼしているのであって、同条に反する。 (3) 財産的損害と精神的損害の賠償額の総額が、弁済の抗弁として認められるべきことア本件事故による財産的損害と精神的損害は同一の請求権を構成するものであり、一審被告東京電力から一審原告らへ (3) 財産的損害と精神的損害の賠償額の総額が、弁済の抗弁として認められるべきことア本件事故による財産的損害と精神的損害は同一の請求権を構成するものであり、一審被告東京電力から一審原告らへの支払は、全て弁済として充 当されるべきこと原判決が判示したとおり、各一審原告の損害額を認定し、かかる損害額全体から一審被告東京電力から各一審原告に対する本件事故についての賠償金として支払われた金額を控除した残額が損害額であるとの一般論からすれば、どの名目の損害に対する弁済なのかといった検討自体が不 要なはずである。 そして、同一の不法行為により生じた財産的損害と精神的損害とは、その賠償の請求権は一個であり(最判昭和48年4月5日民集27巻3号419頁)、その細目ごとに独立の損害としてそれぞれ損害賠償請求権が成立するという扱いは取られておらず、費目相互間の融通も認められ ている。また、慰謝料の算定にあたって、裁判所は、諸般の事情を斟酌して慰謝料の賠償を命じることができ(最判昭和47年6月22日判時673号41頁)、それゆえ、請求額の範囲内であれば裁判所は原告が提示した財産的損害と精神的損害の内訳に拘束されず、請求額を超えない範囲であれば原告の主張する慰謝料額を超えて慰謝料を認容すること もできる。したがって、本件事故に係る一審被告東京電力から一審原告 - 215 -らへの支払は、財産的損害であると精神的損害であるとを問わず、全て弁済として充当されなければならない。 イ特に自主的避難等対象区域に関しては、精神的損害に対する賠償と生活費増加分等の実費の賠償を一体として賠償しており、実態としても精神的損害と財産的損害を明瞭に区分しがたいこと 特に一審被告東京電力による自主的避難等対象区域に居住していた 害に対する賠償と生活費増加分等の実費の賠償を一体として賠償しており、実態としても精神的損害と財産的損害を明瞭に区分しがたいこと 特に一審被告東京電力による自主的避難等対象区域に居住していた者に対する賠償は、対象者各人の避難の有無や費用の増加の有無・額を問わずに包括慰謝料として一定額を支払うものであって、精神的損害に対する賠償と生活費増加分等の実費の賠償が一体として行われている実情にあり、実際の被害発生のありようにおいても、精神的損害と財産的損害 とを明瞭に区分しがたいという特徴がある。 そして、精神的損害の請求に対して裁判所が財産上の損害と精神的損害の内訳に拘束されることなく損害を認定する可能性が否定できない以上、これに対応する弁済の抗弁の対象としても、精神的損害と財産的損害の賠償額の総額が弁済の抗弁として認められなければならない。 (4) 生計を共通にする同一世帯単位での充当を認めるべきこと原判決は、各一審原告の世帯が被った損害について、当該世帯の構成員のうち一人の一審原告が代表して請求している場合には、当事者の合理的意思に鑑み、上記損害は当該世帯を代表した一審原告の損害と認め、一審被告東京電力の当該世帯に対する弁済の抗弁についても、当該一審原告に対する弁 済の抗弁として認めることとすると判示した。しかし、原判決の判断では、世帯代表者に対する財産的損害の超過払い分が同人の精神的損害やその余の世帯構成員の損害に充当されず、当該超過払い分の利得が当該世帯に生じ、損害の回復という損害賠償制度の趣旨・目的からすれば、明らかに妥当でない。 そして、本件事故に関する一審被告東京電力から一審原告らに対する支払 - 216 -額の算定及び実際の支払の実態として、①受領権限のある世帯の代表者が、世帯 、明らかに妥当でない。 そして、本件事故に関する一審被告東京電力から一審原告らに対する支払 - 216 -額の算定及び実際の支払の実態として、①受領権限のある世帯の代表者が、世帯分の賠償金を一括して受領しており、②世帯構成員全員に共通する損害の填補として支払われた部分があり、③一審被告東京電力による賠償の受益者が不可分であることからすれば、当事者の合理的意思に鑑みて、生計を共通にする同一世帯単位での充当を認められなければならない。 (5) 一審原告1-1らの主張に対する反論ア一審原告1-1らは、本件事故が未曾有の大災害であったことや本件事故による放射能の影響は未だ科学的に定まったものではないこと等を理由に、信義則上、本件において充当は認められるべきではないと主張する。 しかし、本件事故に関連して、一審被告東京電力が一審原告らに対して 弁済をした事実が存在し、一審原告らもこれを認めているにもかかわらず、弁済の効力を一切認めるべきでないという主張は暴論といわざるを得ず、失当である。 イまた、一審原告1-1らは、一審被告東京電力が避難雑費や自主的避難等対象者に対する賠償金として支払った金銭は財産的損害等に対する賠償 の趣旨で支払われたと解するのが相当であり、当該既払い金を慰謝料に充当しなかった原判決は不当ではない旨主張するが、かかる主張の根拠については一切具体的な主張立証をしない。この点については、前記判例や、本件事故に関する一審被告東京電力を被告とする他の事件の裁判例の考え方に鑑みれば、既払い金は精神的損害か財産的損害かを問わずに充当され るべきであるのは明らかである。 6 一審原告らのその他の主張について(1) 黒田の意見書(甲B239)及び証言は、一審原告らが主張する原判決の不 的損害か財産的損害かを問わずに充当され るべきであるのは明らかである。 6 一審原告らのその他の主張について(1) 黒田の意見書(甲B239)及び証言は、一審原告らが主張する原判決の不当性等を何ら裏付けるものではないこと一審原告1-1らは、黒田の令和4年9月3日付け意見書(甲B239。 以下「補足意見書」という。)及びその証人尋問における証言(原審及び当 - 217 -審)に基づき、自主的避難等対象区域の一審原告ら及び旧緊急時避難準備区域の一審原告らについて原判決が避難継続の合理性を認めた期間は不当に短く、また、原判決が認めた慰謝料額は余りに少なく実態を反映した慰謝料額とはなっておらず不当である旨を主張している。しかしながら、補足意見書は結局のところ、一審原告らの陳述書の内容をまとめた上で分析したもので、 一審原告らの主張そのものに過ぎない上、避難の合理性について客観的・科学的な分析を行うのであれば当然に考慮すべき点を何ら考慮しておらず、また、低線量被ばくによる健康への影響に関する科学的知見に反する前提に拠っており、さらに黒田の専門外である科学的知見に基づいて法的妥当性について述べており、信用性がない。 したがって、補足意見書及び黒田の証言は、原判決が避難継続の合理性を認めた期間が不当に短いこと及び慰謝料額が不当に少ないことを裏付けるものではない。 (2) 山田國廣(以下「山田」という。)の意見書(甲B180、丁B66)及び証言は、避難の必要性及び避難継続の合理性等を裏付けるものではない こと一審原告らは、山田の意見書及びその証人尋問における証言(当審)に基づき、一審原告らについて、一審被告国による区域分けにかかわらず、避難の必要性が強く認められ、かつ、現時点まで避難継続の必要性が認 一審原告らは、山田の意見書及びその証人尋問における証言(当審)に基づき、一審原告らについて、一審被告国による区域分けにかかわらず、避難の必要性が強く認められ、かつ、現時点まで避難継続の必要性が認められる旨を主張する。 しかしながら、そもそも山田は被ばく線量や放射線被ばくによる健康への影響に関して何ら専門的な知見を有しておらず、山田が意見書で行った外部被ばく放射線量の推計方法には正確性及び信頼性に重大な疑義が存する上、意見書において述べられている放射線被ばくによる健康への影響に関する見解は、国際的に合意された科学的知見に反する独自の見解にすぎない。 したがって、山田の意見書及び証言は、一審原告らの避難の必要性及び避 - 218 -難継続の合理性等を何ら裏付けるものではない。 (3) 一審被告東京電力に重過失は認められない一審原告らは、一審被告東京電力に故意とも同視し得る重過失があり、そのような事情は慰謝料の算定に影響を及ぼすと主張している。 しかしながら、本件において、本件事故を回避するための前提となる予見 可能性は、当時一般に認められていた客観的かつ合理的な科学的知見に照らして、「本件津波ないし本件津波と同程度の津波の発生」を一審被告東京電力が客観的かつ合理的に予見できたか否かによって判断されねばならないと解されるところ、本件事故は、専門家の想定すらもはるかに上回る天災地変の発生によって引き起こされたものである。また、仮に長期評価の見解に基 づく対策を講じたとしても、本件事故以前の科学的知見の下では「防潮堤の設置」が検討されたのであり、長期評価の見解をそのまま用いて防潮堤を設置したとしても、当該防潮堤では本件津波を防ぐことはできなかったのであるから、一審被告東京電力は、本件津波ないし本件津波と 潮堤の設置」が検討されたのであり、長期評価の見解をそのまま用いて防潮堤を設置したとしても、当該防潮堤では本件津波を防ぐことはできなかったのであるから、一審被告東京電力は、本件津波ないし本件津波と同程度の津波を予見することはできず、当該津波を防ぐこともできなかったものであり、同一 審被告に重過失は認められない。したがって、同一審被告に、慰謝料の増額を基礎づけるような故意又は重大な過失があったなどとはおよそいうことはできない。 第2 一審原告1の世帯 1 一審原告1の世帯に既払い金を超える精神的損害は認められないこと (1) 一審原告1-1から同1-3までは、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島県須賀川市に家族3名で居住しており、その住所と福島第一原発との直線距離は60.21kmである。同1-1及び同1-2は、平成23年3月12日に同1-3を白河市内の同1-1の両親宅に預け、同月14日に宇都宮市へ移動し、その後、同1-3を含む家族3人で、埼玉県幸手 市、栃木県小山市を経て、同月30日に愛知県一宮市のホテルに移動し、同 - 219 -年4月5日には同市内にアパートを借りて生活を開始し、同1-1は、同年5月に飲食店にアルバイトとして就職した。 (2) 須賀川市の空間放射線量率は、客観的に健康に影響を及ぼす状況にはなく、そのことが周知もされていた。同市においては、本件地震によるインフラ被害があったが、平成23年4月には復旧し、社会的活動も同年中には再 開していた。一審原告1-1及び同1-2の各両親も本件事故後一時的に移動したものの、同年3月下旬には同市に戻ったし、同1-3の通学先の小学校は仮校舎での授業が再開し、同1-2の本件事故前の勤務先も、震災後の混乱が落ち着いた後は営業を再開していた。 件事故後一時的に移動したものの、同年3月下旬には同市に戻ったし、同1-3の通学先の小学校は仮校舎での授業が再開し、同1-2の本件事故前の勤務先も、震災後の混乱が落ち着いた後は営業を再開していた。さらに、同1-1が飲食店を営業していた同じ場所では、同年7月には新たに飲食店が開店していた(乙C 1の4)。 また、福島県が実施した県民健康調査における須賀川市民についての内部被ばく検査及び外部被ばく線量推計の結果は、健康に影響が及ぶ数値ではなかった。一審原告1-1らは、同1の世帯には健康被害に対する不安があると主張するが、同1-3の甲状腺検査の結果は「A2」であり、二次検査ま で実施する必要はなく、定期的な経過観察で特段の治療は必要ないし、のう胞についても健康な人にも見つかることの多い良性のもので学童期から中高生に多く見られるものであった。さらに、同1-3が受けたホールボディカウンターの検査結果によれば放射性物質は不検出であった(一審原告1-2本人(原審))。 一審原告1-1らは、胎児への影響や小学生である同1-3への影響に対する不安を主張するが、本人や胎児、母乳を飲んでいる乳幼児への悪影響について心配する必要はないとする記事や日本産科婦人科学会の見解等が明らかにされていた。 (3) 以上によれば、一審原告1の世帯について、その転居は客観的根拠に基 づく不安によるものではなく、また上記のとおり、遅くとも平成23年5月 - 220 -には新たな環境で日常生活を送ることができる状態になっており、法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害があったとしてもその程度は軽微であるから、一審被告東京電力の既払い金を超える精神的損害は認められない。 2 一審原告1の世帯の移動に起因する財産的損 護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害があったとしてもその程度は軽微であるから、一審被告東京電力の既払い金を超える精神的損害は認められない。 2 一審原告1の世帯の移動に起因する財産的損害は何ら立証されていないこと 一審原告1-1らは、本訴訟において、同1の世帯の移動に起因する財産的支出について何ら客観的証拠を提出しておらず、財産的損害は何ら立証されていない。 3 小括以上より、一審原告1の世帯に本件事故に起因して生じたと考え得る損害は、 多くとも一審被告東京電力の既払い金(世帯合計720万2642円)を超えるものではないから、同1の世帯の請求を認める余地はない。 第3 一審原告2-2 1 本件事故後、徐々に平穏な生活を回復し、平成25年12月には避難生活を終えて新たな生活基盤を確保していること 元原審原告2-1及び一審原告2-2は、本件事故後、平成23年7月に愛知県愛西市の家を借りて生活を始めたが、平成25年11月▲▲日に同元原審原告が肝臓がんで死亡した後の同年12月、同一審原告は、子らの住所に近い大阪府富田林市に転居し、以後、現在まで暮らしている。したがって、同元原審原告及び同一審原告は、愛西市で生活を始めた平成23年7月以降は生活の 平穏を徐々に回復し、富田林市に転居した平成25年12月以降は避難生活を終え、一定の生活基盤を確保したものと考えられる。 2 元原審原告2-1及び一審原告2-2は実損害を超える多額の賠償を受けていること(1) 不動産について 一審被告東京電力は、元原審原告2-1に対し、田畑について交換価値の - 221 -下落分を超える額である157万9600円、ログハウス及びその構築物庭木について154万9368円、牧場について53万5840円を各賠 審原告2-1に対し、田畑について交換価値の - 221 -下落分を超える額である157万9600円、ログハウス及びその構築物庭木について154万9368円、牧場について53万5840円を各賠償した。 また、一審被告東京電力は、元原審原告2-1がその購入費用を拠出したにもかかわらず形式的に登記上の所有者を訴外の子としていた土地の賠償と して、固定資産税評価額に土地係数1.43を乗じた算出額に加え、造成等に係る費用として157万3131円を上乗せした額を賠償した。この費用は、一審被告東京電力が、早期解決の観点から和解仲介案を尊重して賠償したものである。さらに、一審被告東京電力は、同元原審原告がその購入費用の大部分を拠出したにもかかわらず形式的に登記上の所有者を訴外の子ら3 名にしていた建物の賠償として時価よりも遥かに高額な2416万3311円を賠償した。加えて、一審被告東京電力は同元原審原告に対し、平成30年3月までの間のアパートの賃料全額も支払った。 このように、一審被告東京電力は、元原審原告2-1の不動産に関する損害賠償として十分な額を賠償済みである。 (2) 家財について一審被告東京電力は、家財について、家族構成に応じ、法律上認められる損害額として通常想定される額よりも十分に多い額を、自主賠償基準により定額で一律に賠償しており、元原審原告2-1及び一審原告2-2についても、迅速な賠償のため領収証等の確認をせずに595万円を賠償した。さら に、一審被告東京電力は、同元原審原告及び同一審原告が避難先で購入した電化製品等の実費を請求したのに対し、生活費増加費用の名目で107万6007円を賠償した。この際、定額賠償との清算はせず、領収証等の提出がないものも支払われており、同元原審原告及び同一審原告に対 た電化製品等の実費を請求したのに対し、生活費増加費用の名目で107万6007円を賠償した。この際、定額賠償との清算はせず、領収証等の提出がないものも支払われており、同元原審原告及び同一審原告に対する生活費増加費用の支払が法律上認められる損害額を超えた賠償であることは明らかで ある。 - 222 -(3) 死亡後の避難・帰宅等に係る費用相当額の賠償一審被告東京電力は、元原審原告2-1及び一審原告2-2に対して、避難・帰宅等に係る費用相当額の名目で262万4257円を賠償したが、このうち153万2007円は同元原審原告及び同一審原告の平成25年6月1日から平成29年5月31日まで分の相当額として包括請求方式により請 求され、賠償したものである。しかしながら、同元原審原告は平成25年11月▲▲日に死亡していたのであるから、一審被告東京電力が賠償した同日から平成29年5月31日までの同元原審原告分の避難・帰宅等に係る費用相当額は、法律上損害の発生が認められないか、あるいは本件事故との相当因果関係が認められない。 3 小括以上のように、一審被告東京電力は、元原審原告2-1及び一審原告2-2に対し、実損害を大きく超えた十分な賠償(合計7827万9958円)を既に実施済みである。 一審原告2-2は、本件訴訟において、一審被告東京電力から元原審原告2 -1に対して賠償した財物賠償に係る既払額のうち、交通費、宿泊費・謝礼、生活費増加費用(家財道具購入費)等の賠償金として2235万2292円を請求するが、原判決は、上記請求に対応する損害としては1048万5503円に限り認定した。上記請求項目に限っただけでも、一審被告東京電力による既払額は裁判所が認定した損害額よりも1186万6789円も超過している。 、上記請求に対応する損害としては1048万5503円に限り認定した。上記請求項目に限っただけでも、一審被告東京電力による既払額は裁判所が認定した損害額よりも1186万6789円も超過している。 第4 一審原告3の世帯一審原告3の世帯は、本件事故当時、旧緊急時避難準備区域に居住していた者であり、原判決で請求を棄却され、控訴審においてはそれぞれ330万円を請求しているものの、何らの追加の主張立証もしていないから、更なる反論の必要はない。 なお、一審被告東京電力は、令和4年7月1日までに一審原告3の世帯に対 - 223 -し、合計2033万6121円を賠償しており、全体として十分な賠償を実施済みであり、同3の世帯の一審被告東京電力に対する損害賠償請求権は弁済により消滅している。 したがって、一審原告3の世帯の請求は、控訴審においても、いずれも棄却される必要がある。 第5 一審原告4 1 一審原告4に損害は認められないことそもそも、一審原告4は、自主的避難等対象区域である福島県伊達郡川俣町に居住していたが、本件地震の影響で自宅が傾いて生活できない状態となり、生活の拠点を失ったために自宅を出たものであり、その避難について本件事故 との相当因果関係が認められないことは明らかである。また、以下のとおり、各損害についても本件事故との間に相当因果関係がないことが明らかである。 2 個別の損害について(1) 交通費原判決は、新潟空港から中国の実家までの移動及び中国の実家から愛知県 高浜市までの移動に要した交通費として7万8440円を認めたが、前記のとおり、そもそも本件事故発生当初の時期において法律上保護される利益の侵害が生じていたかという点には疑問が存する。また、日本に再 高浜市までの移動に要した交通費として7万8440円を認めたが、前記のとおり、そもそも本件事故発生当初の時期において法律上保護される利益の侵害が生じていたかという点には疑問が存する。また、日本に再入国をする必要があるとしても、その移動が本件事故に基づく避難から生じた別離を解消するための移動でなければ本件事故との相当因果関係は認められないとこ ろ、一審原告4は元夫や娘が居住している地に移動することもなく、また近隣ともいえない高浜市に移動している。かかる移動は、本件事故に基づく避難から生じた別離を解消するための移動とはいえないから、本件事故との相当因果関係は認められない。さらに同1-1らは、同4が交通費を支出したことに関する領収証等の客観的な証拠を何ら提出していない。 (2) 引越し費用 - 224 -原判決は、平成23年7月の県営住宅への引越し費用として、民事訴訟法248条に基づき3万円を認めたが、仮に本件事故発生当初の時期においては避難の相当性が認められるとしても、その期間は長くとも愛知県で就職して会社の寮に入った平成23年6月4日までと考えられ、それ以後は避難継続の相当性は認められないから、上記引越費用について本件事故との相当因 果関係は認められない。 (3) 一時立入り・帰省費用原判決は、平成23年8月頃の2回にわたる一時立入り費用として7万7520円を認めたが、仮に避難の相当性が認められるとしても、その期間は長くとも平成23年6月4日頃でと考えられ、それ以後は避難継続の相当性 は認められないから、上記一時立入り費用については本件事故との相当因果関係は認められない。また、一審原告4の高浜市への移動と本件事故との相当因果関係は認められないから、この移動に伴い生じた一時立 は認められないから、上記一時立入り費用については本件事故との相当因果関係は認められない。また、一審原告4の高浜市への移動と本件事故との相当因果関係は認められないから、この移動に伴い生じた一時立入り費用も本件事故との相当因果関係は認められない。 加えて、一審原告4は2回分の一時立入り費用を請求するが、避難後自宅 に戻ったのは1回である旨供述している(一審原告4本人(原審))。さらに原判決は電車とバスの料金が記載された甲C4の8、9を証拠として認定しているが、同4は家財道具を持ち出すため車で戻ったと供述している(一審原告4本人(原審))。 また、一審原告1-1らは、同4が一時立入り費用を支出したことに関す る領収証等の客観的な証拠を何ら提出しておらず、損害の発生自体が認められない。 (4) 家財道具購入費原判決は、家財道具購入費として、5万円を認めたが、前記のとおり、そもそも法律上保護される利益の侵害が生じていたか疑問があり、それが仮に 認められるとしても、その期間は長くとも平成23年6月4日までと考えら - 225 -れるところ、当初避難したのは一審原告4の中国の実家である以上、上記家財道具購入費は、同年7月に高浜市の県営住宅に転居した際に発生したものと考えられ、本件事故との相当因果関係は認められない。 (5) 家賃増加分原判決は、県営住宅に転居した平成23年7月から同年12月までの家賃 増加分として7万2000円(1万2000円×6か月)を認めたが、前記のとおり、そもそも法律上保護される利益の侵害が生じていたか疑問があり、仮に避難の相当性が認められるとしてもその期間は長くとも同年6月4日までと考えられ、それ以後は避難継続の相当性は認められないことから、 り、そもそも法律上保護される利益の侵害が生じていたか疑問があり、仮に避難の相当性が認められるとしてもその期間は長くとも同年6月4日までと考えられ、それ以後は避難継続の相当性は認められないことから、上記家賃増加分について本件事故との相当因果関係は認められない。 また、一審原告4は、隣の住民がうるさく睡眠できないために県営住宅に引っ越したと供述している(一審原告4本人(原審))から、本件事故との相当因果関係が認められないことは明らかである。さらに、同1-1らは、同4の家賃増加分の支出に関する領収証等の客観的な証拠を何ら提出しておらず、損害自体の発生が認められない。 (6) 就労不能損害原判決は、平成23年3月16日から同年6月4日までの81日間就労できなかった就労不能損害として、42万9381円(本件事故前6か月間の平均月収15万9031円÷30日×81日)を認めたが、前記のとおり、そもそも法律上保護される利益の侵害が生じていたか疑問があり、仮に法律 上保護される利益があるとしても軽微なものに過ぎず、上記就労不能損害について本件事故との相当因果関係は認められない。 第6 一審原告5の世帯 1 一審原告5の世帯に既払い金を超える精神的損害は認められないこと(1) 一審原告5-1及び同5-2は、避難をせず仕事を継続し、同5-3及 び同5-4は、平成23年3月16日には同5-1の実家で生活を送ってい - 226 -たこと一審原告5の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島市に居住しており、その住所と福島第一原発との直線距離は61.67kmである。同5の世帯は、平成23年3月12日及び同月13日、福島県会津若松市に移動しては自宅に戻るなどし、同5-3及び同5-4は 市に居住しており、その住所と福島第一原発との直線距離は61.67kmである。同5の世帯は、平成23年3月12日及び同月13日、福島県会津若松市に移動しては自宅に戻るなどし、同5-3及び同5-4は、同月16日 から、愛知県知多郡a町にある同5-1の実家で生活を送った。同5-1及び同5-2は、避難することなく福島市の自宅で生活し、いずれも小学校の教諭として仕事を継続したが、平成24年3月末に退職し、同年4月1日から転居して同5-3及び同5-4と生活を開始した。現在、同5の世帯は、同5-1の実家の家をリフォームして生活をしている。 (2) 福島市における状況一審原告5の世帯が本件事故当時居住していた福島市は自主的避難等対象区域であり、同5の世帯は本件事故により避難を余儀なくされたものではなく、空間放射線量率は健康に影響しないレベルであり、空間放射線量率の健康への影響等については周知されていた。また、同市内の大多数の者は避難 せずに生活を続けており、平成23年3月中にはインフラも復旧し、同年4月には学校も通常どおり始まり、その他の社会的活動も行われていた。 また、一審原告5の世帯の自宅から近いモニタリングポストの福島西インターチェンジの空間放射線量率は、平成23年4月1日において1.32μSⅴ/時、平成24年4月1日において0.48μSⅴ/時、平成25年4 月1日において0.42μSⅴ/時であって、避難指示の基準となる3.8μSⅴ/時を大きく下回る水準であり、客観的に健康に影響を及ぼすような空間放射線量率ではなかった。さらに、同5-1及び同5-2が福島市内及び福島県二本松市内で各々勤務していた小学校はいずれも平成23年4月6日の入学式より再開し、同5-3が通っていた幼稚園も再開された。しかも、 同5-2 さらに、同5-1及び同5-2が福島市内及び福島県二本松市内で各々勤務していた小学校はいずれも平成23年4月6日の入学式より再開し、同5-3が通っていた幼稚園も再開された。しかも、 同5-2の親は福島市に近い福島県伊達郡桑折町に居住していたが、本件事 - 227 -故直後に同県会津若松市に移転した後は移動していない。 (3) 本件事故による具体的な健康被害は生じていないこと福島県が実施した県民健康調査における福島市民に対する内部被ばく検査及び外部被ばく線量推計の結果は、健康に影響が及ぶ数値ではなかった。一審原告5-3は甲状腺検査やホールボディカウンターを受けたことがなく、 また、同5-4については、のう胞が若干あると診断されたものの、医師からは本件事故の影響であるといわれたことはない。なお、のう胞は、健康な人にも見つかることの多い良性のものとされている。 (4) 法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害があったとしてもその程度は軽微であること 一審原告5-1は、本件事故直後から多くの放射線に関する新聞報道に触れており、厚生労働省のパンフレットなども読んでおり、水道水や店頭に並ぶ食べ物には子どもの健康には影響がないこと、更には放射線に関する副読本を読むなどしており、福島市においては子どもであっても避難の必要がないことについて十分な知識を有していたと認められる。また、同5-2は、 本件事故直後から同5-3及び同5-4を避難させて二重生活を送る必要はなく、福島市の自宅で一緒に生活すればよいと考えており、子らの避難に反対していた。さらに、上記2及び3の状況等をも踏まえれば、同5の世帯の抱いていた不安感は客観的根拠に基づくものではなく、法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権 よいと考えており、子らの避難に反対していた。さらに、上記2及び3の状況等をも踏まえれば、同5の世帯の抱いていた不安感は客観的根拠に基づくものではなく、法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害が生じたとしてもその程度は軽微で あり、同5の世帯には、既払い金を超える精神的損害は認められない。 2 小括以上より、一審原告5の世帯において、本件事故に起因して生じたと考え得る損害は、多くとも一審被告東京電力の既払い金(世帯合計912万5638円)を超えないから、既払い金を超えて賠償されるべき損害を認める余地はな い。 - 228 -第7 一審原告6の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと一審原告6の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島市に居住しており、そもそも本件事故による法律上保護される利益に対する侵害があったとは認められない。したがって、同6の世帯に本件事故と相当因果関係 のある精神的損害は認められないし、避難に起因する財産的な支出についても、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 また、仮に何らかの法律上保護される利益の侵害が認められる場合があると敢えて想定するとしても、一審原告6の世帯はどんなに遅くとも、平成23年5月4日頃には新たな環境で平穏な日常生活を送ることができる状態となり、 これ以降、法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害はない。 さらに、本件事故発生当初の時期に放出された放射性物質による影響は健康に影響を与えるものではなかったこと、平成23年3月から同年4月にかけて、ただちに健康に影響を与えるレベルではないとの専門家や政府の説明等が繰り返し新聞報道等で報じられており、同年3月下旬から同年4月以降、学校や企 ったこと、平成23年3月から同年4月にかけて、ただちに健康に影響を与えるレベルではないとの専門家や政府の説明等が繰り返し新聞報道等で報じられており、同年3月下旬から同年4月以降、学校や企 業活動が再開され、同月17日には、原子炉の冷温停止を目指すスケジュールが公表され、収束に向けた方向性が示され、同月22日には、避難指示区域と接する20から30km圏内においても屋内退避区域の指定が解除されたこと、また、自主的避難等対象区域の大部分の住民は18歳未満の住民も含めて避難しなかったこと等に照らせば、そこで問題とされるべき侵害は、あくまでも本 件事故発生当初の時期における、放出された放射性物質による放射線の作用や健康への影響についての情報不足による不安感・危惧感に基づく精神的苦痛に限られる。避難に起因する財産的な支出についても、一審原告6の世帯については、同年5月4日までのものに限られることとなり、かつ、下記のとおり本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 他方、一審被告東京電力は、令和4年7月1日までに、一審原告6の世帯に - 229 -対して合計330万3125円を支払っており、同6の世帯に対し、十分な賠償を実施済みであり、同6の世帯の損害賠償請求権は弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について仮に、慰謝料(精神的損害)を基礎付ける事情として一審原告1-1らが同6の世帯について主張する、①将来放射能の影響が出るかもしれないという不 安を感じながら生きていかなければならなくなったこと、②幼い同6-3を連れた避難が大きな負担であったこと、③親戚や友人らと会う機会が減り、人間関係が悪化したことを考慮しても、以下のとおり、同6-1及び同6-2についての慰謝料額並びに本件事故時 こと、②幼い同6-3を連れた避難が大きな負担であったこと、③親戚や友人らと会う機会が減り、人間関係が悪化したことを考慮しても、以下のとおり、同6-1及び同6-2についての慰謝料額並びに本件事故時18歳以下であった同6-3についての慰謝料額は、それぞれ一審被告東京電力による賠償額である8万円及び48万円を 超えるものではない。 まず、一審原告6の世帯が居住していた福島市の空間放射線量は、前記のとおり避難指示の基準を大きく下回る水準であって、客観的に健康に影響を及ぼすような空間放射線量ではなかった。したがって、同6の世帯が上記①の不安を感じていたとしても、客観的証拠に基づかない漠然とした不安感にとどまる ものといえ、上記①の事情は、本件事故と相当因果関係のある精神的損害の発生を基礎づける事情とは認められない。 また、一審原告6の世帯は、自主的避難等対象区域に居住していた以上、同6-3を連れて避難を行なったことは、専ら同6の世帯の任意の判断に基づくものであり、上記②の事情は、本件事故と相当因果関係を有する精神的損害の 発生を基礎づける事情ではない。 さらに、賠償を求め得るべき精神的利益は、ある程度重要であり、直接的であり、かつ客観性を持つものでなければならないが、地域における人間関係(つながり)は変容するものであるから、上記③の親戚や友人との人間関係は、極めて主観的・抽象的で漠然としたものに過ぎず、慰謝料請求を基礎づける被 侵害利益たり得ない。さらに、仮に親戚や友人との人間関係が被侵害利益たり - 230 -得るとしても、一審原告6の世帯が居住地を離れたことは避難を余儀なくされたものではなく、同6の世帯の任意の判断の結果によるものであり、また、会う機会が減少しても人間関係が悪化するわけではないから、当該事 としても、一審原告6の世帯が居住地を離れたことは避難を余儀なくされたものではなく、同6の世帯の任意の判断の結果によるものであり、また、会う機会が減少しても人間関係が悪化するわけではないから、当該事情は、本件事故と相当因果関係のある原子力損害に該当しない。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について (1) 交通費原判決は、一審原告6の世帯の平成23年3月15日から同年5月4日までの交通費として民事訴訟法248条に基づき4万0500円を認めたが、本件事故発生当初の時期において法律上保護される利益の侵害が生じていたか疑問があり、上記交通費は本件事故と相当因果関係が認められない。仮に 法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害が生じたとしてもその程度は軽微であり、既払い金を超える損害は認められない。 また、そもそも一審原告6の世帯は、平成23年5月4日頃、異動に伴い群馬県伊勢崎市に引っ越しており、同市への本件事故の影響は皆無であるから、上記の時点で避難は終了しており、なお本件事故の影響について不安を 感じて交通費等の出費等をしたとしても、それは専ら同6の世帯の独自の考えに基づくものであるから、同1-1ら主張の上記転居時点以降の同6の世帯の損害については明らかに本件事故との相当因果関係が認められない。 (2) 避難のための住居選定・就職活動のための交通費原判決は、平成23年4月、同年12月及び平成24年1月の避難のため の住居選定・就職活動のための交通費として計6万8000円を認めたが、本件事故発生当初の時期において法律上保護される利益の侵害が生じていたか疑問があり、仮に法律上保護される利益の侵害が生じたとしてもその程度は軽微なものに過ぎないから、上記避難のための住 を認めたが、本件事故発生当初の時期において法律上保護される利益の侵害が生じていたか疑問があり、仮に法律上保護される利益の侵害が生じたとしてもその程度は軽微なものに過ぎないから、上記避難のための住居選定・就職活動のための交通費について本件事故との相当因果関係は認められない。 (3) 就労不能損害 - 231 -一審原告1-1らは、同6の世帯の就労不能損害の一部を認めなかった原判決を非難するが、同1-1らは、控訴審において請求を裏付ける新たな事実の主張や立証を全くしない。 原判決は、平成23年3月14日から4日間の就労不能損害として計20万5042円を認めたが、本件事故発生当初の時期において法律上保護され る利益の侵害が生じていたか疑問があり、会社を欠勤せざるを得ない事情はなく、上記就労不能損害について本件事故との相当因果関係は認められない。 (4) 生活費増加費用一審原告1-1らは、同6の世帯の生活費増加費用を認めなかった原判決を非難するが、同1-1らは、控訴審において請求を裏付ける新たな事実の 主張や立証を全くしない。 第8 一審原告7の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと(1) 一審原告7の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島県いわき市に居住していた者であり、本件事故による法律上保護される利益 に対する侵害があったとは認められない。また、同7の世帯は、自宅建物が地震で損壊し、住める状態ではなくなっていたのであるから、地震という本件事故以外の要因により自宅を離れることを余儀なくされたのであり、自宅を離れたことと本件事故との間には相当因果関係は認められない。したがって、同7の世帯に本件事故による放射線の作用等と相当因果関係のある精神 的損害は を離れることを余儀なくされたのであり、自宅を離れたことと本件事故との間には相当因果関係は認められない。したがって、同7の世帯に本件事故による放射線の作用等と相当因果関係のある精神 的損害は認められないし、避難に起因する財産的な支出についても、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (2) また、仮に何らかの法律上保護される利益の侵害が認められると想定しても、一審原告7の世帯は、平成23年3月末には新たな環境で平穏な日常生活を送ることができる状態となり、これ以降、法律上保護される利益(平 穏な日常生活を送る権利)の侵害はない。また、避難に起因する財産的な支 - 232 -出についても、同月末までのものに限られることとなるが、同日までの財産的な支出であっても、下記のとおり、いずれも、本件事故による放射線の作用等と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (3) 他方、一審被告東京電力は、令和4年7月1日までに、一審原告7の世帯に対して合計3024万2840円を既に支払っており、同7の世帯の損 害賠償請求権は弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について(1) 一審原告7の世帯は、控訴審においてそれぞれ550万円又は330万円の慰謝料を請求しているところ、その被った被害の具体的な内容として、一審原告7-1らは、①同7-1について本件事故によって福島県双葉郡広 野町における及び並びにいわき市におけるという仕事を喪失した、②同7-3について本件事故によって大学での勉学の機会を奪われた、③同7-4について本件事故によってする機会を奪われた、また、④同7-3及び同7-4について甲状腺検査でのう胞が発見され本件事故による被ばくによる健 によって大学での勉学の機会を奪われた、③同7-4について本件事故によってする機会を奪われた、また、④同7-3及び同7-4について甲状腺検査でのう胞が発見され本件事故による被ばくによる健康被害について不安があるなどとそれぞれ 主張し、さらに控訴審で、⑤同7-2について、本件事故時の自宅付近に暮らしている両親と離ればなれになり、認知症が悪化しても介護をしてやれない親不孝な状態になってしまったなどと主張している。 (2) しかし、一審原告7-1らの同7の世帯に関する主張は以下のとおりいずれも理由がない。 ア ①一審原告7-1は、本件事故後、広野町で及びを継続することも、いわき市において農業を継続することもできたにもかかわらず、自ら同市を離れ、転居先での生活を継続することにしたために上記の仕事の継続が困難となったのであり、これは同7-1の任意の判断の結果によるものであって、本件事故との相当因果関係は認められない。 イまた、②一審原告7-3が平成23年4月にした大学は、同年 - 233 -5月12日から授業が再開されていたし、同大学は、同年6月8日には、学生向けに「地震と放射線対策に関する説明会」を開催し、学生のための放射線に関する相談窓口を設けたり、同年7月には「放射線ガイドブック」を作成し学生へ配布したりするなどしていた。また、同大学は、キャンパス内の空間放射線量も公開し、大学構内の側溝やホットスポットの除染工 事も実施するなど(乙C7の7)、積極的に学生の不安を低減させる取組みを行っていた。それにもかかわらず、同7-3は、同大学が開催した上記説明会に参加せず、上記放射線の相談窓口にも相談せずに、同大学から退学したのであって、これは、同7-3の任意の判断に基づくも 取組みを行っていた。それにもかかわらず、同7-3は、同大学が開催した上記説明会に参加せず、上記放射線の相談窓口にも相談せずに、同大学から退学したのであって、これは、同7-3の任意の判断に基づくものであって、本件事故との相当因果関係は認められない。 ウさらに、③一審原告7-4についても、 は平成23年5月8日には入学式が行われ、その後も通常どおりに授業が行われていた(乙C7の3)のであるから、同7-4がへ転校したことは、同7-4の任意の判断に基づくものである上に、 に転校した後も大学に進学できる可能性は十分にあったのに大学へ進学しなかったことも、同7-4 の任意の判断に基づくものであって、本件事故との相当因果関係は認められない。 エそして、④一審原告7-3及び同7-4について甲状腺検査でのう胞が発見されたとしても、のう胞は細胞のない良性のもので、健康な人にも見つかることが多く、特に学童期から中高生に多く見られ(乙B296)、 これを理由とする不安は、法律上保護された利益に対する侵害と評価することはできない。 オまた、⑤一審原告7-2が、本件事故後、その両親の介護がしにくい状況となったとしても、いわき市での居住も客観的には可能であったにもかかわらず、同市を離れ、転居先での生活を継続することにしたことによる ものであり、これは同7-2の任意の判断の結果によるものであって、本 - 234 -件事故との相当因果関係は認められない。 (3) 仮に認められるとしても、一審原告7-1から同7-3までについての慰謝料額及び本件事故時18歳以下であった同7-4についての慰謝料額は、一審被告東京電力の自主賠償基準による賠償額である8万円又は48万円を超えるものではない。 -1から同7-3までについての慰謝料額及び本件事故時18歳以下であった同7-4についての慰謝料額は、一審被告東京電力の自主賠償基準による賠償額である8万円又は48万円を超えるものではない。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について(1) 交通費原判決は、一審原告7-4がに転入することは本件事故と相当因果関係を有するとし、同7-4がに転校し、入寮したことに伴って必要となった高速道路代3840円、ガソリン代3000円について、証拠 はないものの、愛知県から富山県までの交通費として合理的であるとして損害を認めた。 しかし、そもそも本件事故発生当初の時期において法律上保護される利益の侵害が生じていたかという点には疑問があり、仮に認められるとしても、同年3月末までのもので、領収証等の客観的証拠により認められるものは、 避難費用の交通費についていわき市から愛知県に移動した際の高速道路代8100円とガソリン代5935円の計1万4035円(甲C7の2)に限られる。 また、 はいわき市に所在するところ、同市における空間放射線量は本件事故直後の時期を含め、健康に影響を与える水準にはなく、同校にお いては本件事故後、平成23年5月8日に入学式が行われ、その後閉校したことはない(乙C7の3)から、一審原告7-4が本件事故によって●●●●からの転校を余儀なくされたとはいえず、転校に伴い支出した高速代及びガソリン代について本件事故との相当因果関係は認められない。 (2) 引越し費用 原判決は、引越し代の領収証(甲C7の5)が平成25年4月13日付で - 235 -あるため、平成23年4月11日の引越しの際に要した費用とはいえないとしながらも、一審 費用 原判決は、引越し代の領収証(甲C7の5)が平成25年4月13日付で - 235 -あるため、平成23年4月11日の引越しの際に要した費用とはいえないとしながらも、一審原告7-1がいわき市から愛知県に引越しをしている以上、相応の費用を支出したと認められるとして、3万9900円を本件事故と相当因果関係を有する損害と認めた。 しかしながら、そもそも本件事故発生当初の時期において法律上保護され る利益の侵害が生じていたかという点には疑問があり、上記引越し費用について本件事故との相当因果関係は認められない。また、甲C第7号証の5は平成23年の引越費用に関する証拠とは認められないとしながら、同額を損害として認めている点は明らかに論理矛盾で失当である。 (3) 一時立入り・帰省費用 原判決は、交通費として、24万円(1万円×2(往復)×12回)を認めたが、そもそも本件事故発生当初の時期において法律上保護される利益の侵害が生じていたかという点には疑問があり、仮に認められるとしても、その期間は長くとも平成23年3月末までと考えられるから、上記一時立入り・帰省費用について本件事故との相当因果関係は認められない。 (4) 家財道具購入費原判決は、家財道具購入費として10万円を認めたが、そもそも本件事故発生当初の時期において法律上保護される利益の侵害が生じていたかという点には疑問があり、仮に認められるとしても、その期間は長くとも平成23年3月末までと考えられるから、上記家財道具購入費用について本件事故と の相当因果関係は認められない。また、この点を措くとしても、一審原告7の世帯においては、いわき市の自宅において使用していたものを搬出し、使用することも可能であったの 入費用について本件事故と の相当因果関係は認められない。また、この点を措くとしても、一審原告7の世帯においては、いわき市の自宅において使用していたものを搬出し、使用することも可能であったのだから、新たに購入する必要性も合理性もない。 実際に同7の世帯は、本件事故発生から平成23年12月31日までの約8か月半の間に12回、計73日間いわき市に帰省したと主張している。した がって、本件事故により愛知県での生活のために家財道具を購入せざるを得 - 236 -なくなったものではなく、上記家財道具購入費について本件事故との相当因果関係は認められない。 (5) 家賃増加分原判決は、家賃増加分として平成23年3月の1DKのアパートの家賃9万円、同年4月から7月までの3LDKのアパートの家賃21万円及び駐車 場代1万2600円を負担していた31万2600円を認めたが、そもそも本件事故発生当初の時期において法律上保護される利益の侵害が生じていたかという点には疑問があり、もし仮に避難の相当性が認められるとしても、その期間は長くとも平成23年3月末日頃までと考えられ、それ以後は、避難継続の相当性は認められない上、領収証等の客観的証拠の提出もないこと から、上記家賃増加分について本件事故との相当因果関係が認められない。 (6) 就労不能損害原判決は、自主的避難等対象区域における避難の継続の合理性が認められる期間を経過し、空間放射線量は低下し、一般的な農家は稲作を開始していたとしても、 を掲げて農業を行ってきた一審原告7-1が本件事故 前と同様にを掲げて農業を行い、収益をあげることは困難であり、同7-1がいわき市において本件事故前と同様の事業を再開することはできないとし、平成23 ってきた一審原告7-1が本件事故 前と同様にを掲げて農業を行い、収益をあげることは困難であり、同7-1がいわき市において本件事故前と同様の事業を再開することはできないとし、平成23年3月から平成29年12月までの損害として1070万9282円(減収率100%)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認めた。 しかしながら、原判決は、就労不能損害について、本件事故前の収入を基礎とし、就労不能期間について、本件事故がなければ得られたであろう収入を相当因果関係のある損害と認めるとするが、そもそも、一審原告7-1の本件事故後における農業収入額は客観的証拠の提出がなく明らかでないから、原判決は審理不尽といわざるを得ない。 また、仮に一審原告7-1に農業収入の減少が生じていたとしても、原判 - 237 -決は、就労不能期間について、一般的な農業と対比した上での場合にはいわき市内で事業を再開することができないとして平成29年12月まで減収率100%の損害を認定したが、同7-1がを行うことが不能である理由は何ら示されていない。この点、同7-1が農業を営んでいたいわき市では、平成23年4月12日の段階で福島県農林水産部から稲の作 付けは可能とされており(乙B458)、同市の平成23年産の水稲作付面積(4190ha)は本件事故前(平成22年産)の(4610ha)の約91%(総務省統計局ホームページ「農林水産関係市町村別統計」(水稲福島県))であることからして、同市内の営農業者は大多数が本件事故にかかわらず作付けを継続しているということができる。また、 につい ても、実際に同市内において平成23年から●●●●●●●●●●●●●●●●●が生産されていたこと(乙B459) 件事故にかかわらず作付けを継続しているということができる。また、 につい ても、実際に同市内において平成23年から●●●●●●●●●●●●●●●●●が生産されていたこと(乙B459)から、同市内において一般的農業のみならずができないという客観的状況にはなかった。さらに、農地が除染されない限り健康志向の高い顧客が購入するはずがないという同7-1らの主張を踏まえても、いわき市内の空間線量又は土壌線量が客観的 にに適さない数値であるという事実はなく、また風評被害を懸念した作付けの断念が相当であるという点については立証がない。 したがって、一審原告7-1が農業を継続しなかったのは自己の判断によるものであって、仮に農業収入の減少が生じていたとしても本件事故と相当因果関係を有するものではない。 この点を措くとしても、原判決は、平成20年から平成22年までの3年間の平均年収156万7217円を基準額として損害額を算定するが、この基準額は一審原告7-1の農業の収入金額等に係る金額に基づいて算出されたものであり(甲C7の183から185までの「収入金額等」の欄)、仮に損害額を算定するとしても経費を控除した所得金額の平均額58万795 0円を基礎とすべきである(甲C7の183から185までの「所得金額」 - 238 -の欄)。また、仮に上記平均年収額で計算するとしても、同7の世帯は遅くとも平成23年3月末には新たな環境で日常生活を送ることができるようになっていたのであるから、同月の1か月分13万0601円に限られる。 したがって、原判決がいわき市内で平成29年12月までを行うことが不能であるとして農業継続不能損害1070万9282円を認定した ことは誤りである 13万0601円に限られる。 したがって、原判決がいわき市内で平成29年12月までを行うことが不能であるとして農業継続不能損害1070万9282円を認定した ことは誤りである。 (7) 被ばく検査費用原判決は、平成27年9月27日に受けた被ばく検査費用として9000円を認めたが、そもそも本件事故発生当初の時期においても法律上保護される利益の侵害の発生又は避難の相当性が認められることには疑問があり、も し仮に避難の相当性が認められるとしても、その期間は長くとも平成23年3月末までと考えられ、それ以後は、避難継続の相当性は認められないから、上記検査費用について本件事故との相当因果関係は認められない。 第9 一審原告8の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと (1) 一審原告8の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島県伊達市に居住していた者であり、そもそも本件事故による法律上保護される利益に対する侵害があったとは認められず、一審原告8の世帯に本件事故と相当因果関係のある精神的損害は認められない。なお、本件事故時に胎児であり、平成23年9月▲▲日に出生した同8-7に慰謝料が認められない ことは、原判決が判示したとおりである。 (2) 仮に何らかの法律上保護される利益の侵害が認められる場合があるとしても、一審原告8-1から同8-6までについては、どんなに遅くとも、平成23年6月頃には新たな環境で平穏な日常生活を送ることができる状態となり、これ以降、法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵 害はない。 - 239 -(3) そして、本件事故発生当初の時期に放出された放射性物質による放射線の作用による影響は健康に影響を与えるもので 益(平穏な日常生活を送る権利)の侵 害はない。 - 239 -(3) そして、本件事故発生当初の時期に放出された放射性物質による放射線の作用による影響は健康に影響を与えるものではなかったこと、そのことに関する報道等も繰り返し行われたこと、社会活動の再開等の事故後の状況に照らせば、そこで問題とされるべき侵害は、あくまでも本件事故発生当初の時期における、放出された放射性物質による放射線の作用や健康への影響に ついての情報不足による不安感・危惧感による精神的苦痛に限られる。 (4) 他方、一審原告8の世帯の慰謝料(精神的損害)請求は、本件事故により平穏な生活基盤が損なわれたことによる損害に対する損害賠償請求権1個のうちの残部(一部)請求であり、この残部(一部)請求の成否を判断するためには、当該請求の対象となる債権の総額、すなわち、本件事故により被 った損害の総額から、一審被告東京電力による既払い金を控除した残額に基づいて判断する必要がある。同一審被告は、令和4年7月1日までに、一審原告8の世帯に対して合計653万6703円を支払っており、十分な賠償を実施済みであるから、同8の世帯の損害賠償請求権は弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について(1) 一審原告8の世帯は、それぞれ330万円の慰謝料を請求しているところ、同7-1らは、①原判決が本件事故当時胎児であった同8-7の賠償請求を認めなかったことは、一人の人間として認識されなかったということであること、②同8-3は甲状腺の検査を定期的に受けており、のう胞が多め だと指摘されていて不安であること、③同8-4は、「放射能は良くないものだと分かっているが、具体的には分からず、具体的に分からないからといって、影響があると 定期的に受けており、のう胞が多め だと指摘されていて不安であること、③同8-4は、「放射能は良くないものだと分かっているが、具体的には分からず、具体的に分からないからといって、影響があると思っている」ことなどを主張している。 (2) しかしながら、①本件事故当時胎児であり、平成23年9月▲▲日に出生した一審原告8-7に精神的損害(慰謝料)が認められないことは、原判 決が判示したとおりである。 - 240 -(3) また、仮に精神的損害を基礎付ける事情として上記②及び③の事情を考慮するとしても、②のう胞は細胞のない良性のもので、健康な者にも見つかることが多く、特に学童期から中高生に多く見られるものである(乙B296)し、③一審原告8-4の不安は、客観的科学的根拠のない漠然とした不安であって、いずれも法律上保護される利益に対する侵害が生じていると評 価することはできない。 (4) したがって、仮に認められるとしても、一審原告8-1についての慰謝料額並びに本件事故当時妊婦であった同8-2及び本件事故時18歳以下であった同8-3から同8-6までの各慰謝料額は、それぞれ一審被告東京電力の賠償額である8万円及び48万円を超えるものではない。 第10 一審原告9の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと(1) 一審原告9の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島県いわき市に居住していた者であり、そもそも本件事故による法律上保護される利益に対する侵害があったとは認められない。したがって、同9の世帯 に本件事故と相当因果関係のある精神的損害は認められないし、避難に起因する財産的な支出についても、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (2) また、仮に何らかの法 に本件事故と相当因果関係のある精神的損害は認められないし、避難に起因する財産的な支出についても、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (2) また、仮に何らかの法律上保護される利益の侵害があるとしても、一審原告9の世帯については、どんなに遅くとも、平成23年6月頃には新たな 環境で平穏な日常生活を送ることができる状態となり、これ以降、法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害はない。 (3) そして、本件事故発生当初の時期に放出された放射性物質による放射線の作用による影響は、健康に影響を与えるものではなかったこと、そのことに関する報道等も繰り返し行われたこと、社会活動の再開等、事故後の状況 に照らせば、そこで問題とされるべき侵害は、あくまでも本件事故発生当初 - 241 -の時期における、放出された放射性物質による放射線の作用や健康への影響についての情報不足による不安感・危惧感による精神的苦痛に限られる。避難に起因する財産的な支出についても、一審原告9の世帯については、平成23年6月までのものに限られることとなるが、下記のとおり、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (4) 他方、一審被告東京電力は、令和4年7月1日までに、一審原告9の世帯に対して、個人事業主としての営業損害を含め合計215万6778円を支払っており、十分な賠償を実施済みであって、同9の世帯の損害賠償請求権は弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について (1) 一審原告9の世帯はそれぞれ330万円の慰謝料を請求しているところ、同7-1らは、その被った被害の具体的な内容として、①本件事故により自らあるいは家族に取り返しのつかない健康被害が生じた (1) 一審原告9の世帯はそれぞれ330万円の慰謝料を請求しているところ、同7-1らは、その被った被害の具体的な内容として、①本件事故により自らあるいは家族に取り返しのつかない健康被害が生じたかもしれないとの思いを抱かされ、これを今後完全に解消することは原理的にできない状態に強いられていること、②本件事故以前の避難前の住所における、自らを取り囲 む「社会」の喪失などと主張している。 (2) しかしながら、①については、一審原告9の世帯の本件事故による健康被害に対する不安は、客観的科学的根拠のない漠然とした不安であり、法律上保護される利益に対する侵害が生じていると評価することはできず、同7-1らの主張は理由がない。 (3) また、②については、慰謝料請求における被侵害利益は一定程度の重要性や直接性、客観性を有しなければならないものであるところ、地域のありようや当該地域における人間関係(つながり)は変容するものであることからすれば、一審原告7-1らが主張する、自らを取り囲む「社会」なるものは極めて主観的・抽象的で漠然としており、慰謝料請求を基礎づける被侵害 利益たり得ない。仮に被侵害利益たり得るとしても、自主的避難等対象区域 - 242 -に居住していた同9の世帯が本件事故時の住所を離れたことは、避難を余儀なくされたものではなく、同9の世帯の任意の判断の結果によるものであるため、自らを取り囲む「社会」なるものの喪失は、本件事故と相当因果関係のある原子力損害に該当しない。 (4) 仮に認められるとしても、一審原告9-1についての慰謝料額並びに本 件事故当時妊婦又は胎児であった同9-2及び同9-3(平成23年3月2▲日出生)についての各慰謝料額は、それぞれ、一審被告東京電力の自主賠償基準による賠償 原告9-1についての慰謝料額並びに本 件事故当時妊婦又は胎児であった同9-2及び同9-3(平成23年3月2▲日出生)についての各慰謝料額は、それぞれ、一審被告東京電力の自主賠償基準による賠償額である8万円及び48万円を超えるものではない。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について原判決は、一審原告9の世帯の個別の財産的損害として、同9-1の交通費 と引越し費用を認容したが、同9の世帯は本件事故により避難を余儀なくされたものではなく、任意の判断に基づく避難であるから、いずれも以下のとおり本件事故と相当因果関係のある原子力損害に該当しない。 4 一審原告9-1の個別損害及び原判決の認定について(1) 就労不能損害 そもそも、一審原告9-1は、本件事故後、自身が経営する整体院を閉鎖(廃業)しているが、これは本件地震やこれに伴う津波により、「お客さんの家が壊れたり、そもそも出張に行くためのガソリンもなかった」ためであることを自認している(甲C9の1、一審原告9-1本人(当審))。したがって、同9-1の就労不能損害と本件事故との相当因果関係が認められな いことは明らかである。 (2) 交通費原判決は、平成23年4月10日のガソリン代及び高速道路代を交通費として計8458円を認めているが、そもそも本件事故発生当初の時期において法律上保護される利益の侵害が生じていたか疑問があるから、上記交通費 について本件事故との相当因果関係は認められない。 - 243 -(3) 引越し費用原判決は、平成23年4月10日の引越し費用、同年6月10日の車両の陸送費、同年3月31日の退去補修工事費用として計28万1500円を認めているが、そもそも法律上保護される利益の侵害が生 原判決は、平成23年4月10日の引越し費用、同年6月10日の車両の陸送費、同年3月31日の退去補修工事費用として計28万1500円を認めているが、そもそも法律上保護される利益の侵害が生じていたか疑問があることは前記のとおりであり、上記引越し費用について本件事故との相当因 果関係は認められない。また、退去補修工事費用については一審原告9-1がこれを支払ったかどうか明らかではなく、仮に賃貸人に対してこの費用を支払っていたとしても、前記のとおり同9-1は本件事故とは無関係に整体院を廃業しており、当該費用は本件事故の有無にかかわらず退去の際に生じる費用であるから、相当因果関係を有する損害とは認められない。さらに、 同9-1は、平成23年4月10日頃、自動車で愛知県一宮市に移動しているところ(甲C9の1)、上記自動車は同9-1の所有物と思われるが、なぜ同年6月10日に車両陸送費を要したのか、主張も立証もない。したがって、本件事故と車両陸送費との因果関係は認められない。 第11 一審原告10の世帯 1 一審原告10の世帯に既払い金を超える精神的損害は認められないこと(1) 平成23年10月から世帯全員が愛知県津島市の被災者支援住宅へ入居したこと一審原告10の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島県いわき市に居住しており、住所と福島第一原発との直線距離は52.00 kmであった。 一審原告10-2、同10-3及び同10-4は、平成23年8月15日、愛知県愛西市の県営住宅に入居し、同年10月からは同10-1もともに、同県津島市の被災者支援住宅へ入居した。 (2) いわき市における状況 いわき市においては、その空間放射線量率は客観的に健康に影響を及ぼす - 244 -状況 10-1もともに、同県津島市の被災者支援住宅へ入居した。 (2) いわき市における状況 いわき市においては、その空間放射線量率は客観的に健康に影響を及ぼす - 244 -状況にはなく、その情報は周知されていた。また、いわき市においては本件地震によるインフラ被害があったが、平成23年4月には復旧し、夏祭りなどの社会的活動も同年8月には再開していた。 (3) 本件事故により一審原告10-1の生活設計が失われたのではないこと一審原告1-1らは、同10-1のとび職として独立するという将来の生 活設計の夢が失われたと主張するが、同10の世帯の自宅から最も近いリアルタイム線量測定システムの空間放射線量率はいずれの時点においても基準を大きく下回るものであって、客観的に健康に影響のある空間放射線量率ではなかった。また、同10-1は平成23年10月までは移動しておらず、同10-2から同10-4までは、一度移動した後、同年4月22日頃にい わき市に帰宅し、同年8月15日頃まで生活しており、同市における社会活動の再開の状況については十分認識していたと考えられるから、同10-1の将来の生活設計が本件事故によって失われたという関係にはない。 (4) 本件事故による具体的な健康被害は生じていないこと福島県が実施した県民健康調査におけるいわき市民についての、内部被ば く検査及び外部被ばく線量推計の結果は健康に影響が及ぶ数値ではなかった。 一審原告1-1らは、同10-2は、避難に伴って心的外傷後ストレス障害が悪化し、うつ病にもかかったと主張するが、本件事故前の幼少期における親からの虐待による心的外傷後ストレス障害が既にあり、障害等級2級であった上、避難に伴うストレスで上記障害が悪化した等の主張については何 ら客観 かったと主張するが、本件事故前の幼少期における親からの虐待による心的外傷後ストレス障害が既にあり、障害等級2級であった上、避難に伴うストレスで上記障害が悪化した等の主張については何 ら客観的証拠による立証がなされておらず、本件事故との相当因果関係は認められない。 一審原告10の世帯は一度も甲状腺の検査を受けたことがないとのことであり、放射線被ばくによる健康影響は客観的に明らかとはなっておらず、健康被害に対する不安は合理的なものでない。同10-3及び同10-4が本 件事故後に突然鼻血を出したことについても、かかる事実があったこと及び - 245 -本件事故との因果関係を示す診断書等の客観的証拠の提出はない。 (5) 法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害があったとしてもその程度は軽微であること上記(2)及び(3)の状況等を踏まえれば、一審原告10の世帯の転居は客観的根拠に基づく不安によるものではなく、また、上記1のとおり、平成23 年10月には新たな環境で日常生活を送ることができる状態になっていたのであるから、法律上保護される利益の侵害が生じたとしてもその程度は軽微であり、同10の世帯には、既払い金を超える精神的損害は認められない。 2 小括以上のように、一審原告10の世帯が述べる本件事故後の生活状況を踏まえ ても、本件事故に起因して生じたと考え得る損害は、少なくとも一審被告東京電力の既払い金(世帯合計178万円)を超えるものではない。 第12 一審原告11の世帯及び同29 1 請求はいずれも棄却されるべきこと一審原告11の世帯及び元原審原告11-2並びに一審原告29は、本件事 故当時、旧居住制限区域である福島県双葉郡富岡町に居住していたところ、一審被告東京電力は いずれも棄却されるべきこと一審原告11の世帯及び元原審原告11-2並びに一審原告29は、本件事 故当時、旧居住制限区域である福島県双葉郡富岡町に居住していたところ、一審被告東京電力は、一審原告11の世帯及び元原審原告11-2並びに一審原告29に対して、法律上損害賠償義務が認められる範囲・額を大幅に超えた賠償を行ってきたのであり、既払額は、総額3909万7600円の慰謝料を含め、合計1億3700万4961円で、十分な賠償を実施済みであるから、一 審原告11の世帯及び同29の損害賠償請求権は弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について(1) 一審原告1-1らは、同11の世帯及び元原審原告11-2並びに一審原告29が①避難場所を転々とした避難開始後の経緯、②ストレスの多い避難後の生活状況、③その後家族が離れ離れになったこと、④本件事故当時の 住所地の状況を挙げ、これら一連の事情が、原判決が基本的な基準として認 - 246 -定した月額10万円から算出される額(1人あたり850万円)からの増額要素になると主張している。 (2) しかし、一審原告1-1らが主張する上記①から④までの事情は、以下のとおり、いずれも慰謝料を増額させる理由にはならない。 アまず、一審原告11の世帯及び元原審原告11-2並びに一審原告29 は、平成23年3月12日、富岡町所在の自宅から福島県双葉郡川内村へ移動し、同月15日から17日頃に同県郡山市へ移動し、同月21日頃に川崎市に移動しているが、これらの移動が、旧居住制限区域の他の住民が行った避難と比較して特に精神的苦痛が強いものであったことは何ら立証されておらず、上記①の事情は、一審被告東京電力が支払った 慰謝料額3909万7600円を超 動が、旧居住制限区域の他の住民が行った避難と比較して特に精神的苦痛が強いものであったことは何ら立証されておらず、上記①の事情は、一審被告東京電力が支払った 慰謝料額3909万7600円を超える慰謝料の算定根拠にはならない。 イまた、一審原告11の世帯及び元原審原告11-2並びに一審原告29は、本件事故後、川内村及び郡山市のそれぞれの避難所へ避難しているところ、避難当初の避難所における避難生活は、他の宿泊場所と比較して生活環境・利便性・プライバシー確保の点から相対的にストレスの多 い生活状況であったかもしれないが、これについては一審被告東京電力の自主賠償基準においても損害額の加算要素として考慮され、その結果、一審原告11の世帯及び元原審原告11-2並びに一審原告29は総額3909万7600円の慰謝料の賠償を受けている。したがって、一審被告東京電力による賠償額は、上記②の事情に関し、一審原告11の世 帯及び元原審原告11-2並びに一審原告29の精神的苦痛を十分に慰謝するものである。そして、本件事故後に避難所へ避難した事情を除き、同11の世帯及び元原審原告11-2並びに一審原告29の避難後の生活状況が、旧居住制限区域の他の住民と比較して特に精神的苦痛が強いものであったとする立証は何らなされていないから、上記②の事情は一 審被告東京電力が支払った額を超える慰謝料の算定根拠にはなり得ない。 - 247 -ウそして、一審原告11の世帯及び元原審原告11-2並びに一審原告29は任意の判断で避難先及び移住先を選択し、その結果家族の別離が生じたのであるから、上記③の事情と本件事故との間に相当因果関係は認められない。すなわち、同11-3は、本件事故当時の年齢からして、就職や結婚等により自宅から転居する を選択し、その結果家族の別離が生じたのであるから、上記③の事情と本件事故との間に相当因果関係は認められない。すなわち、同11-3は、本件事故当時の年齢からして、就職や結婚等により自宅から転居する可能性があったものであり、実際 に同11-3は任意の判断により、平成23年3月末、当時交際していた男性がいた東京に転居した。また、同29も、本件事故当時の年齢からして、就職や結婚等により自宅から転居する可能性があったものであり、実際に同29は任意の判断により、同年4月10日頃以降、家族と別れて東京で就職して一人暮らしをすることを選択し、その後、交際相 手の女性を呼び寄せて同居を開始し、同年夏頃には埼玉県の借上げ住宅に転居し、平成25年8月には上記女性と結婚して、平成26年12月には千葉県柏市に転居している。また、元原審原告11-2が愛知県豊橋市に転居したのは、神奈川県に借上住宅の申請をしたものの、社宅に入居しているとの理由で受け入れられなかったためである(一審原告1 1-1本人(原審))。そして、避難指示が解除された現在において、一審原告11-1のいわき市の自宅で同居できるにもかかわらず、同29や同11-3は、未だ別々に生活していることからすれば、同11の世帯及び元原審原告11-2並びに一審原告29はそれぞれ任意の判断で避難先及び移住先を選択し、その結果として家族別離が生じたのであ り、同11の世帯及び元原審原告11-2並びに一審原告29に家族別離が生じたことと本件事故との間に相当因果関係は認められず、上記③の事情は、一審被告東京電力が支払った慰謝料総額3909万7600円を超える慰謝料の算定根拠にはなり得ない。 エさらに、上記④の事情について、そもそも、一審原告1-1らが賠償を 求める「原子力損害」 告東京電力が支払った慰謝料総額3909万7600円を超える慰謝料の算定根拠にはなり得ない。 エさらに、上記④の事情について、そもそも、一審原告1-1らが賠償を 求める「原子力損害」は、「核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は - 248 -核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し、又は吸入することにより人体に中毒及びその続発症を及ぼすものをいう。)により生じた損害をいう」と定められ(原賠法2条2項)、本件事故の「放射線の作用」の影響は、福島第一原発からの地理的な近接性や空間放射線量の多寡等によってその度合いが異なるものであるが、政府によ る避難指示区域は、まさに福島第一原発との地理的な近接性や本件事故における侵害行為の中心というべき放射線の作用の影響(年間積算線量の推計)に基づき設定された(乙B26・10頁)。そして、一審被告東京電力による自主賠償基準は当該区域ごとに算定されたものであるから、旧居住制限区域から避難した者に対する自主賠償基準においては、 福島第一原発との地理的な近接性等の上記④の事情が考慮要素として既に含まれている。したがって、一審原告11の世帯及び元原審原告11-2並びに一審原告29の本件事故当時の住所と福島第一原発との距離が近接しているという上記④の事情は、一審被告東京電力が支払った慰謝料総額3909万7600円を超える慰謝料の算定根拠にはなり得な い。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について一審原告1-1らは、控訴審において、原判決が一審原告11の世帯及び同29について認容した個別の財産的損害については追加の主張をしていない。 4 一審被告東京電力による賠償 一審被告東京電力は、直接請求手続において、一審原告11の世帯及び元原審 び同29について認容した個別の財産的損害については追加の主張をしていない。 4 一審被告東京電力による賠償 一審被告東京電力は、直接請求手続において、一審原告11の世帯及び元原審原告11-2並びに一審原告29に対して、1人当たり852万円ずつの慰謝料を含め、合計9873万2385円を賠償した(乙C11の5、乙29の3)。 さらに、上記賠償とは別に、一審被告東京電力は、一審原告11-1が営ん でいた法人に関する逸失利益や財物賠償(償却資産)の名目で、合計1712 - 249 -万7498円を賠償済みである(乙C11の5)。 以上のとおり、一審被告東京電力は、一審原告11の世帯及び元原審原告11-2並びに一審原告29に対し、少なくとも「就労不能損害」、「不動産等(「建築物」・「構築物・庭木」・「借地権」)」及び「家賃にかかる費用」の名目で明らかに法律上損害賠償義務が認められる範囲及び額を大幅に超えた 賠償を実施したものであり、さらに追加の慰謝料を賠償する義務を負わない。 第13 一審原告12の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと(1) 一審原告12の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島県伊達郡国見町に居住していた者であり、そもそも本件事故による法律上 保護される利益に対する侵害があったとは認められない。したがって、同12の世帯に本件事故と相当因果関係のある精神的損害は認められないし、避難に起因する財産的な支出についても、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (2) また、仮に何らかの法律上保護される利益に対する侵害があるとしても、 一審原告12-1及び同12-2については、どんなに遅くとも、平成23年11月には新たな環境で日常生活を れない。 (2) また、仮に何らかの法律上保護される利益に対する侵害があるとしても、 一審原告12-1及び同12-2については、どんなに遅くとも、平成23年11月には新たな環境で日常生活を送ることができる状態となり、これ以降、法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害はない。 (3) そして、本件事故発生当初の時期に放出された放射性物質による放射線の作用による影響は健康に影響を与えるものではなかったこと、そのことに 関する報道等も繰り返し行われたこと、社会活動の再開等の事故後の状況に照らせば、そこで問題とされるべき侵害は、あくまでも本件事故発生当初の時期における、放出された放射性物質の作用や健康への影響についての情報不足による不安感・危惧感に基づく精神的苦痛に限られる。避難に起因する財産的な支出についても、平成23年11月までのものに限られるが、下記 のとおり、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 - 250 -(4) 他方、一審被告東京電力は、令和4年7月1日までに、一審原告12の世帯に対して合計252万7413円(訴外である同12-1の父に関するものを併せると合計260万7413円)を支払っており十分な賠償を実施済みであって、同12の世帯の損害賠償請求権は弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について (1) 一審原告1-1らは、同12の世帯は①健康被害や何らかの差別を受けないか等、今後に強い不安を感じて生きていかなければならなくなった、②同12-1に甲状腺のう胞が確認されたと主張している。 (2) しかし、上記①は、客観的科学的根拠のない漠然とした不安であり、法律上保護される利益に対する侵害が生じていると評価することはできないし、 上記 状腺のう胞が確認されたと主張している。 (2) しかし、上記①は、客観的科学的根拠のない漠然とした不安であり、法律上保護される利益に対する侵害が生じていると評価することはできないし、 上記②は、細胞のない良性のもので、健康な者にも見つかることが多く(乙B296)、これを理由とする不安は法律上保護された利益に対する侵害とはいえない。したがって、これらの事情をもって本件事故と相当因果関係のある精神的損害が発生しているとはいえない。 (3) 仮に認められるとしても、一審原告12-1についての慰謝料額並びに 本件事故時18歳以下であった同12-2についての慰謝料額は、それぞれ一審被告東京電力の賠償額である8万円及び48万円を超えるものではない。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について(1) 一審原告1-1らは、同12の世帯の家財道具購入費についてADRによる賠償額を超える金額を損害として認めず、また、水道光熱費について一 審被告東京電力が賠償済みの金額を超える損害の発生を認めなかった原判決は不当である旨主張するが、控訴審において新たな事実の主張や立証を全くしない。 原判決が認容した一審原告12の世帯の個別の財産的損害は、以下のとおりいずれも本件事故と相当因果関係のある原子力損害に該当しない。 (2) 原判決は、一審原告12-1が請求する財産的損害のうち家財道具購入 - 251 -費について、避難前の住所には同12-1の父が住み続けており、父が生活するために必要な主な家財道具を持ち出すことができず、比較的大型の家財道具については父が使用する必要性や輸送費用との兼ね合いから、避難先で新たに購入することに合理性があるとして、一審被告東京電力が弁済の抗弁を主張した既払い分40万円を超える69万072 的大型の家財道具については父が使用する必要性や輸送費用との兼ね合いから、避難先で新たに購入することに合理性があるとして、一審被告東京電力が弁済の抗弁を主張した既払い分40万円を超える69万0727円を損害として認定し た。 しかしながら、一審原告12-1は、本件事故当時、自主的避難等対象区域に居住し、避難を余儀なくされたのではない(現に同12-1の父は同住所に住み続けている。)ため、家財道具の購入を強いられたとはいえない。 また、同12-1は、線量等の客観的な指標によることなく、知人の考えを 根拠に避難を決断しており(一審原告12-1本人(原審))、このような独自の考えに基づく避難をしなければ家財道具の購入を迫られることはなかったのであるから、家財道具購入費用と本件事故との相当因果関係は認められない。家族の一部が避難せずに居住し続けたという偶然の事情をもって、本件事故との相当因果関係がある損害が発生したとは認められない。 第14 一審原告13の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと(1) 一審原告13の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島県郡山市に居住しており、そもそも本件事故による法律上保護される利益に対する侵害があったとは認められない。したがって、同13の世帯に本件 事故と相当因果関係のある精神的損害は認められないし、避難に起因する財産的な支出についても、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。なお、本件事故後の平成25年2月▲▲日に出生した同13-4に慰謝料が認められないことは、原判決が判示したとおりである。 (2) また、仮に何らかの法律上保護される利益に対する侵害があるとしても、 一審原告13-1から同13-3までは、どんなに遅くとも、平成 められないことは、原判決が判示したとおりである。 (2) また、仮に何らかの法律上保護される利益に対する侵害があるとしても、 一審原告13-1から同13-3までは、どんなに遅くとも、平成23年8 - 252 -月26日には新たな環境で日常生活を送ることができる状態となり、これ以降、法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害はない。 (3) そして、本件事故発生当初の時期に放出された放射性物質による放射線の作用による影響は健康に影響を与えるものではなかったこと、そのことに関する報道等が繰り返し行われたこと、社会活動の再開等、事故後の状況に 照らせば、そこで問題とされるべき侵害は、あくまでも本件事故発生当初の時期における、放出された放射性物質による放射線の作用や健康への影響についての情報不足による不安感・危惧感による精神的苦痛に限られる。避難に起因する財産的な支出についても、どんなに遅くとも上記の平成23年8月26日までのものに限られることとなるが、下記のとおり、本件事故と相 当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (4) 他方、一審被告東京電力は、令和4年7月1日までに、一審原告13の世帯に対して合計160万6125円を支払っており、十分な賠償を実施済みであって、同13の世帯の損害賠償請求権は弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について 仮に本件事故時に出生していなかった一審原告13-4を除く同13の世帯について何らかの法律上保護される利益に対する侵害があるとしても、同13-1及び同13-2についての慰謝料額並びに本件事故時18歳以下であった同13-3についての慰謝料額は、それぞれ、一審被告東京電力の賠償額である8万円及び48万円を超えるものではな としても、同13-1及び同13-2についての慰謝料額並びに本件事故時18歳以下であった同13-3についての慰謝料額は、それぞれ、一審被告東京電力の賠償額である8万円及び48万円を超えるものではない。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について(1) 一審原告1-1らは、控訴審において、同13の世帯について、郡山市における環境放射能は1.32μSv/時あったことからして、平成23年8月25日時点においても当然に避難継続の合理性が認められるべきであり、同日に支出した引越し費用15万7500円について相当因果関係が認めら れると主張する。 - 253 -(2) しかし、上記主張に係る環境放射能の測定時期は不明であり、本件事故発生当初の時期においてすら、郡山市においては、放出された放射性物質による放射能の影響は健康に影響を与えるものではなかった。また、一審原告1-1らは、同13-1の引越し費用について客観的な証拠を提出しておらず、損害自体の立証がない。 (3) 原判決は、一審原告13-1が平成23年8月25日に支出した(甲C13の2)15万7500円の引越し費用を本件事故と相当因果関係のある損害と認定したが、前記のとおり、そもそも本件事故発生当初の時期においてすら放射性物質による放射能の影響が健康に影響を与えるものであったとはいえない上、同13-1は上記引越し費用について客観的な証拠を提出し ておらず、本件事故との相当因果関係は認められない。これは、ADR手続において、上記引越し費用が損害として認められていないこと(乙C13の1)からも明らかである。 第15 一審原告14の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと (1) 一審原告14の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対 められていないこと(乙C13の1)からも明らかである。 第15 一審原告14の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと (1) 一審原告14の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島市に居住しており、そもそも本件事故による法律上保護される利益に対する侵害があったとは認められない。したがって、同14の世帯に本件事故と相当因果関係のある精神的損害は認められないし、避難に起因する財産的支出についても本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (2) また、仮に何らかの法律上保護される利益に対する侵害があるとしても、一審原告14-1及び同14-2については、どんなに遅くとも、原判決が認定した平成23年12月31日を超えては認められず、また、本件事故時に18歳以下であった同14-3及び同14-4については、平成24年3月には新たな環境で平穏な日常生活を送ることができる状態となり、これ以 降、法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害はない。 - 254 -(3) そして、本件事故発生当初の時期に放出された放射性物質による影響は健康に影響を与えるものではなかったこと、そのことに関する報道等も繰り返し行われたこと、社会活動の再開等、事故後の状況に照らせば、問題とされるべき侵害は、あくまでも本件事故発生当初の時期における、放出された放射性物質による放射線の作用や健康への影響についての情報不足による不 安感・危惧感に基づく精神的苦痛に限られる。避難に起因する財産的支出についても、一審原告14-1及び同14-2については、平成23年12月31日までのもの、また、本件事故時に18歳以下であった同14-3及び同14-4については、平成24年3月までのものにそれぞれ限ら ついても、一審原告14-1及び同14-2については、平成23年12月31日までのもの、また、本件事故時に18歳以下であった同14-3及び同14-4については、平成24年3月までのものにそれぞれ限られる。 (4) 他方、一審被告東京電力は、令和4年7月1日までに、一審原告14の 世帯に対して合計538万7691円を支払っており、十分な賠償を実施済みであって、同14の世帯の損害賠償請求権は全て弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について(1) 一審原告1-1らは、控訴審において、①同14-2における年収の減少が継続していること、②令和2年度の甲状腺検査において、同14-3が B判定を受けたこと、③令和2年5月▲▲日に亡くなった同14-1の母を看取ることができなかったことの各事情が新たに生じた旨を主張し、これに沿う同14-1の陳述書(甲C47)及び同14-3に係る甲状腺検査の診断書(甲C48)を提出する。 (2) しかし、上記各事情の主張を慰謝料(精神的損害)を基礎付ける事情と しての主張と解するとしても、以下のとおり、上記各事情は慰謝料(精神的損害)を基礎付けるものではなく、一審原告14の世帯の慰謝料は、一審被告東京電力の賠償額である8万円又は48万円を超えるものではない。 アすなわち、①一審原告14-2の年収の減少については、同14-2が本件事故当時の勤務先を退職したのは、同14-1らとともに平成23年 6月頃に福島市の自宅を売却し、愛知県に転居することを決意したことに - 255 -伴うものであるが、そもそも同14の世帯は本件事故当時、自主的避難等対象区域に居住しており、避難を余儀なくされたものではない。しかも、同14-1の母は福島県本宮市での居住を継続していること、親 -伴うものであるが、そもそも同14の世帯は本件事故当時、自主的避難等対象区域に居住しており、避難を余儀なくされたものではない。しかも、同14-1の母は福島県本宮市での居住を継続していること、親戚もほとんど福島に残っていること、同14-1の所有不動産についても買い手が現れ、居住の需要があったといえること、具体的な科学的専門的知見に基 づき転居を決意したものでもないことなどからすると、同月頃の時点で福島市の自宅を売却して愛知県に転居するとの同14-1の判断は任意の判断によるものであり、慰謝料を基礎づけるものではない。 イまた、②一審原告14-3の令和2年度の甲状腺検査のB判定の結果については、同14-3は二次検査を受けたものの経過観察となっていると のことであり、具体的に健康被害が生じているわけではなく、本件事故との関連性も不明であるから、仮に、同14-1から同14-3までが何らかの不安を感じたとしても漠然とした不安感にとどまり、慰謝料を基礎づける事情とはいえない。 ウさらに、③一審原告14-1の母を看取ることができなかったことにつ いては、上記のとおり、同14の世帯は愛知県への転居を余儀なくされたのではなく、あくまで任意の判断で転居し、愛知県での生活を継続していたものであり、慰謝料の発生を基礎づけるものとはいえない。この点を措くとしても、同14-1は、母の最期を看取ることができなかったと主張する一方で新型コロナウイルス感染防止の観点から見舞いに制限があった 等とも主張しており、当該事情がいかなる意味で本件事故と相当因果関係のある精神的損害であるのか何ら主張立証しておらず、失当である。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について(1) 一審原告1-1らは、控訴審において、原判決が同14の世帯の 件事故と相当因果関係のある精神的損害であるのか何ら主張立証しておらず、失当である。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について(1) 一審原告1-1らは、控訴審において、原判決が同14の世帯の損害として認容した被ばく検査費用(平成28年3月15日受診)について、将来 的に症状が出る可能性に対する不安感を払しょくするための定期的な検査を - 256 -受けることは、平穏な生活を継続するための社会的に相当な行為であると主張している。 また、原判決は、一審原告14-1及び同14-2が請求した財産的損害のうち、平成28年3月15日に受診した(甲C14の11・14)被ばく検査費用について、避難の継続の合理性が認められる期間を過ぎてからも放 射線被ばくによる影響の検査を受けることには合理性が認められるとして、同14-1については4万8850円の、同14-2については5280円の損害を認定した。 (2) しかし、仮に本件事故発生当初の時期に何らかの法律上保護される利益の侵害が認められるとしても、前記第1のとおり、一審原告14-1及び同 14-2においては、平成23年12月31日以降、また、同14-3及び同14-4においては、平成24年3月以降、法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害は認められない。また、遅くとも平成23年4月22日頃までには自主的避難等対象区域における年間積算線量は20mSvに達しないことや、その程度の積算放射線量であれば健康に被害を与え るものではないことが明らかになっていた。 (3) したがって、これらの各時期以降に受診したものである上記被ばく検査費用は、本件事故と相当因果関係のある原子力損害と認められない。 第16 一審原告15の世帯 1 一審原告15の世帯に既払 (3) したがって、これらの各時期以降に受診したものである上記被ばく検査費用は、本件事故と相当因果関係のある原子力損害と認められない。 第16 一審原告15の世帯 1 一審原告15の世帯に既払い金を超える精神的損害は認められないこと (1) 平成23年5月に名古屋市の県営住宅に転居したこと一審原告15の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島県伊達郡川俣町に同15-1の両親と祖母の家族5名で居住しており、住所と福島第一原発との直線距離は46.0kmである。 本件事故後、一審原告15の世帯は、平成23年3月16日に福島市内の 友人宅に避難し、同月17日に名古屋市の知人宅へ避難後、同年5月に愛知 - 257 -県が被災者向けに無償貸出を行っていた県営住宅に引っ越した。同県営住宅の居住については、平成29年3月まで家賃補助が受けられた。このように同15の世帯は、平成23年5月の時点で新たな環境で日常生活を送ることができる状態になっていた。その後、同15-1は平成25年5月に離婚した後、平成27年3月に再婚し、平成28年12月に名古屋市内で転居して 生活を始め、現在は同所において居住している。 (2) 川俣町における状況川俣町の空間放射線量率は健康に影響しないレベルであり、この情報は周知されていた。また、同町の大多数の者は避難することなく生活を続けており、むしろ他の地域からの避難者を受け入れている状況であった。同町にお いては、学校も通常どおり運営され、社会的活動も行われていた。実際、一審原告15-1の両親や祖母は本件事故後も避難せず、 友人も川俣町に残っていた。 (3) 本件事故による具体的な健康被害は生じていないこと福島県が実施した県民健康調査における川俣町民についての内部被ば -1の両親や祖母は本件事故後も避難せず、 友人も川俣町に残っていた。 (3) 本件事故による具体的な健康被害は生じていないこと福島県が実施した県民健康調査における川俣町民についての内部被ばく検 査、及び外部被ばく線量推計の結果は健康に影響が及ぶ数値ではなかった。 また、川俣町では、本件事故後から子供の甲状腺被ばく調査が行われており、平成23年4月2日までの甲状腺被ばくの調査結果では川俣町の946名の子どもについていずれも問題はなかった。さらに、平成23年6月から平成30年12月に行ったホールボディカウンターによる内部被ばく検査の結果 は、川俣町で検査を受けた2542人全員が、健康に影響が及ぶ数値ではなかった。 一審原告15の世帯は甲状腺検査を受けたものの、問題はなかった。 (4) 法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害があったとしてもその程度は軽微であること 上記(2)及び(3)の状況等を踏まえれば、一審原告15の世帯の抱いていた - 258 -不安感は客観的根拠に基づくものではなく、また、上記(1)のとおり、遅くとも平成23年5月には新たな環境で日常生活を送ることができる状態になっており、法律上保護される利益の侵害が生じたとしてもその程度は軽微であって、同15の世帯には既払い金を超える精神的損害は認められない。 2 小括 一審原告1-1らが主張する同15の世帯の本件事故後の生活状況等を踏まえても、本件事故に起因して生じたと考え得る損害は、少なくとも一審被告東京電力の既払い金(世帯合計174万6160円)を超えるものではないから、一審原告15の世帯について、既払い金を超えて賠償されるべき損害を認める余地はない。 第17 一審原告16の世帯 1 請求はいずれも棄却さ 計174万6160円)を超えるものではないから、一審原告15の世帯について、既払い金を超えて賠償されるべき損害を認める余地はない。 第17 一審原告16の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと(1) 一審原告16の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島市に居住しており、そもそも本件事故による法律上保護される利益に対する侵害があったとは認められず、避難の相当性は認められない。したがって、 同16の世帯に本件事故と相当因果関係のある精神的損害は認められないし、避難に起因する財産的な支出についても、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (2) また、実際に一審原告16の世帯が平成23年8月から同年9月に愛知県豊橋市に移動した理由は、同16-1が本件事故時の勤務先から解雇され たことに伴う再就職によるものであり、その解雇の理由は本件地震により施設が倒壊したためであって、本件事故により解雇されたのではない。 (3) さらに、仮に何らかの法律上保護される利益に対する侵害があるとしても、一審原告16-1については、平成23年8月頃から福島県から遠い勤務地を自ら希望し、新たな就職先の勤務地である豊橋市内のアパートに引っ 越し、同16-2についても、同年9月頃に当該アパートに引っ越している - 259 -から、どんなに遅くとも、同16-1については同年8月以降、同16-2については同年9月以降、法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害はない。 (4) 本件事故発生当初の時期に放出された放射性物質による影響は健康に影響を与えるものではなかったこと、そのことに関する報道等も繰り返し行わ れたこと、社会活動の再開等、事故後の状況に照らせば、そこで 本件事故発生当初の時期に放出された放射性物質による影響は健康に影響を与えるものではなかったこと、そのことに関する報道等も繰り返し行わ れたこと、社会活動の再開等、事故後の状況に照らせば、そこで問題とされるべき侵害は、あくまでも本件事故発生当初の時期における、放出された放射性物質による放射線の作用や健康への影響についての情報不足による不安感・危惧感に基づく精神的苦痛に限られる。避難に起因する財産的な支出についても、一審原告16-1については平成23年8月頃、同16―2につ いては同年9月頃までのものに限られるが、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (5) 他方、一審被告東京電力は、令和4年7月1日までに、一審原告16の世帯に対して合計35万7894円を支払っており、十分な賠償を実施済みであって、同16の世帯の損害賠償請求権は弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について仮に認められるとしても、一審原告16の世帯の慰謝料額は、それぞれ一審被告東京電力の賠償額8万円を超えるものではない。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について(1) 財産的損害及び相当因果関係の立証がないこと 一審原告1-1らは、同16の世帯の交通費、宿泊費、引越費用、一時立入り・帰省費用、家財道具購入費、光熱費、通信費及び家賃増加分について、損害として認められる期間を区切ることに合理的な理由はないと主張するが、その根拠については何ら具体的な主張をしない。そもそも、同16の世帯は、本件事故と相当因果関係のある原子力損害に該当する財産的損害につき何ら の客観的証拠も提出しておらず、本件事故と相当因果関係のある財産的損害 - 260 -は全く立証されていない。 本件事故と相当因果関係のある原子力損害に該当する財産的損害につき何ら の客観的証拠も提出しておらず、本件事故と相当因果関係のある財産的損害 - 260 -は全く立証されていない。 (2) 交通費原判決は、一審原告16の世帯が平成23年9月22日まで千葉県に避難した際の交通費、週末避難の際の交通費、愛知県豊橋市に避難する際の交通費について、同1-1らの算定方法に合理性を認め、7万7776円の損害 の発生を認定したが、そもそも本件事故発生当初の時期においても、避難の相当性が認められるのか疑問が存するから、上記交通費は本件事故との相当因果関係が認められない。また、同1-1らは、同16-1のガソリン代に関する損害について、独自に算定した金額に基づく請求をしているところ、ガソリン代を支出したことについて、領収証等の証拠の提出していない。 (3) 宿泊費原判決は、週末避難の宿泊費として一審原告16の世帯が支出したとする費用のうち9750円を本件事故と相当因果関係のある損害と認定したが、その内訳は、平成23年3月20日に支出した2000円(甲C16-5)及び同年7月29日に支出した7550円(甲C16-4)と考えられる。 しかしながら、前記のとおり、そもそも本件事故発生当初の時期においても、避難の相当性が認められるのか疑問があり、既払い金を超える損害は認められないから、上記宿泊費のいずれも本件事故との相当因果関係は認められない。 (4) 引越し費用 原判決は、一審原告16-2が平成23年9月に福島市から豊橋市に引っ越した際の荷物の運送費用5万8000円及び同16の世帯が平成26年3月に豊橋市から福島市へ戻った際の引越し費用68万4479円の合計74万 一審原告16-2が平成23年9月に福島市から豊橋市に引っ越した際の荷物の運送費用5万8000円及び同16の世帯が平成26年3月に豊橋市から福島市へ戻った際の引越し費用68万4479円の合計74万2479円について、本件事故と相当因果関係のある損害と認定したが、前記のとおりそもそも本件事故発生当初の時期においても、避難の相当性が 認められるのか疑問があり、既払い金を超える損害は認められないから、上 - 261 -記引越し費用はいずれも相当因果関係が認められない。 (5) 一時立入り・帰省費用原判決は、平成23年12月26日に一審原告16-1が豊橋市から福島市に帰省した際の帰省費用としての交通費8990円を本件事故と相当因果関係のある損害と認定したが、前記のとおりそもそも本件事故発生当初の時 期においても、避難の相当性が認められるのか疑問があり、既払い金を超える損害は認められないから、上記帰省費用は相当因果関係が認められない。 (6) 家財道具購入費原判決は、一審原告16-2が作成した家計簿(甲C16の5)の信用性を認め、家財道具購入費のうち、平成23年8月17日以後に支出した16 万1406円を本件事故と相当因果関係のある損害と認定したが、前記のとおりそもそも本件事故発生当初の時期においても、避難の相当性が認められるのか疑問があり、既払い金を超える損害は認められないから、上記家財道具購入費は本件事故との相当因果関係が認められない。また、上記家計簿は同16-2が作成したものに過ぎず、信用性が認められない。 (7) 光熱費原判決は、一審原告16の世帯が平成23年9月から同年12月までの間に支出した電気代、水道代、ガス代及び灯油代の合計4万4213円をいずれ が認められない。 (7) 光熱費原判決は、一審原告16の世帯が平成23年9月から同年12月までの間に支出した電気代、水道代、ガス代及び灯油代の合計4万4213円をいずれも相当因果関係のある損害と認定したが、前記のとおりそもそも本件事故発生当初の時期においても、避難の相当性が認められるのか疑問があり、既 払い金を超える損害は認められないから、上記支出は本件事故と相当因果関係のある損害とは認められない。 (8) 通信費原判決は、一審原告16-2が作成した前記家計簿に基づき、平成23年9月22日から同年12月22日までに同16の世帯が支出した通信費を4 800円であると認め、相当因果関係のある損害と認定したが、前記のとお - 262 -りそもそも本件事故発生当初の時期においても、避難の相当性が認められるのか疑問があり、既払い金を超える損害は認められないから、上記支出は本件事故と相当因果関係のある損害とは認められない。また、原判決は、避難によりそれまで両親との同居により負担していなかった通信費の負担が発生したと特段の根拠もなく安易に認定しており、誤りがある。さらに、上記家 計簿は同16-2が作成したものに過ぎず、信用性が認められない。 (9) 家賃増加分原判決は、一審原告16の世帯が平成23年8月に豊橋市のアパートに引っ越してから同年12月分までの各月の家賃(月額3万1980円)及び、同市から福島県に戻った際に要した居所の仲介手数料5万3550円の合計 20万6749円を本件事故と相当因果関係のある損害と認定したが、前記のとおりそもそも本件事故発生当初の時期においても、避難の相当性が認められるのか疑問があり、既払い金を超える損害は認められないから、上記 6749円を本件事故と相当因果関係のある損害と認定したが、前記のとおりそもそも本件事故発生当初の時期においても、避難の相当性が認められるのか疑問があり、既払い金を超える損害は認められないから、上記支出は本件事故と相当因果関係のある損害とは認められない。 第18 一審原告17の世帯 1 損害については個別事情に基づき個別具体的に判断されるべきこと(1) 一審原告17の世帯は、本件事故当時、避難指示解除準備区域である福島県南相馬市小高区に居住していたところ、一審被告東京電力は、一審原告17の世帯に対し、法律上損害賠償義務が認められる範囲・額を大幅に超えた賠償を行っており、令和4年7月1日までに合計2767万2481円の 賠償をした。 なお、一審原告17の世帯は一審被告東京電力に対する直接請求手続及びADR手続において慰謝料(精神的損害)の請求をしていないため、慰謝料(精神的損害)名目での賠償実績はない。同一審被告は直接請求手続において、避難指示解除準備区域に居住していた者に対し、自主賠償基準に基づき 一人当たり850万円を慰謝料(精神的損害)名目で支払うこととしている - 263 -が、直接請求手続は極めて多数の対象者への迅速な賠償の実施を通じ、訴訟によらない紛争の早期解決を図ることを目的とし、そのため個別事情のいかんにかかわらず一律の賠償を実施しているものであって、直接請求手続において慰謝料名目で一律に850万円の賠償を実施しているからといって当然に一審原告17の世帯の各人に850万円の精神的損害が認められることに はならない。直接請求手続を通じた訴訟外での紛争解決がなされず、訴訟が提起され、裁判上の損害認定が求められている以上は、同17の世帯の個別事情を踏まえて請求の当否が判断される必 められることに はならない。直接請求手続を通じた訴訟外での紛争解決がなされず、訴訟が提起され、裁判上の損害認定が求められている以上は、同17の世帯の個別事情を踏まえて請求の当否が判断される必要がある。そして、次に述べるとおり、同7-1らが主張する同17の世帯の個別事情によっても、一人当たり850万円の慰謝料(精神的損害)額の賠償請求が基礎付けられるもので はない。 (2) 一審被告東京電力は、一審原告17の世帯に対して、慰謝料(精神的損害)以外の名目で各種の賠償金を支払い、十分な賠償を実施済みであり、それでもなお同17の世帯に対してさらに賠償されるべき損害があるか否かは、個別事情を踏まえた慎重な検討を要する。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について(1) 一審原告17の世帯は、控訴審においてそれぞれ1100万円の慰謝料(精神的損害)を請求しているところ、その被った被害の具体的な内容の主張は①同17-1が、今もなおふるさとでは放射性物質が強く濃く残存している、②同17-2は、生活基盤が壊れてしまい小高に戻りたくとも戻れな いなどというものである。 (2) しかし、①南相馬市の避難指示解除準備区域の指定は、平成28年7月12日に解除されて帰還が可能となり、一審原告17の世帯が本件事故時に居住していた南相馬市小高区内の空間放射線量は、同年3月8日時点及び平成29年3月8日時点ともに、概ね0.2μSv/時を下回っていることか らすると、放射性物質が強く濃く残存している状況ではない。 - 264 -また、②南相馬市小高区では、平成28年7月12日の避難指示解除以降、事業活動を含む活動が回復しつつあり、特に医療については、同年4月から再開した小高病院を含め、複数の医院や接骨院が診 -また、②南相馬市小高区では、平成28年7月12日の避難指示解除以降、事業活動を含む活動が回復しつつあり、特に医療については、同年4月から再開した小高病院を含め、複数の医院や接骨院が診療を再開し(乙B398)、令和元年8月には市立総合病院附属小高診療所が設置され、令和3年12月には新たな小高診療所が開所しているのであって(乙B551)、生 活基盤が壊れているために帰還できないものではない。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について(1) 一審原告17-1が名古屋市に避難後、就職活動をしなかった理由は、今後も名古屋市に居住し続けるかは不確定であるからという同17-1自身の任意の判断によるものであり、現に同17-1は、原審本人尋問において、 本件事故後、就労先が一時閉鎖を経て再開するに際し、本件事故時の就労先の社長から、戻ってきてくれないかと要請されたが、南相馬市やいわき市を中心にアパートや空き家が全て埋まっていたために住むところがなかったと供述する一方で、同17-1の知人などには仙台市から通っていた人間がいた旨を供述しており、同17-1が本件事故時の就労先に戻らなかったこと も、やはり同17-1自身の任意の判断によるものであった。 したがって、一審原告17-1が名古屋市への転居後に就労していないことは、本件事故による放射線の作用等と相当因果関係のある原子力損害とは認められず、同17-1に就労不能損害は認められない。 (2) 原判決は、一審原告17-1は平成23年3月27日に名古屋市に避難 しているが、避難から1年経過後は避難前と同様の給与水準の就職先に就職することは不可能ではないとして、避難後1年間の就労不能損害を本件事故と相当因果関係のある損害と認定し、同17-1の就労不能損害 しているが、避難から1年経過後は避難前と同様の給与水準の就職先に就職することは不可能ではないとして、避難後1年間の就労不能損害を本件事故と相当因果関係のある損害と認定し、同17-1の就労不能損害232万8492円を認定した。 しかし、一審原告17-1は、陳述書(甲C17の1の2)において、ハ ローワークに行って就業先を探してみたが、高齢だったこともあり、希望に - 265 -沿うような勤務先をみつけることはできなかった旨を述べ、就業先を探していたことを示唆する陳述をする一方、原審本人尋問において、避難前の住所地に戻ることを想定して就職先を探さなかったと供述した。また、同17-1は、避難先である名古屋市において就職先を探す時間を割くことができなかった理由として、妻である一審原告17-2の看病及び自身の持病である 糖尿病の悪化を挙げた(甲C17の1の2)が、同17-1の看病については、四六時中ついていなければならない状態ではなく、また、自身の持病の糖尿病についても、20年ほど前からの持病であり、本件事故当時も事故後も1か月に1度程度通院し、その頻度は本件事故の前後で変化はなかった(甲C17の1、一審原告17-1本人(原審))。 以上の事情に加え、一審原告17-1は、名古屋市に転居してからは何ら仕事をしていないと陳述するが(一審原告17-1本人(原審))、持病の状態や通院頻度も月1回程度で、本件事故前後で変化がないこと等からすれば、本件事故前と同様の給与水準の就職先で就労し収入を得ることも可能であったと考えられ、むしろ同17-1が名古屋市に転居した後に何ら就労を しなかったのは、専ら自身の任意の判断によるものであって、転居後1年間、本件事故のために収入を得ることができなかったと認めることは 考えられ、むしろ同17-1が名古屋市に転居した後に何ら就労を しなかったのは、専ら自身の任意の判断によるものであって、転居後1年間、本件事故のために収入を得ることができなかったと認めることはできない。 したがって、本件事故と相当因果関係のある就労不能損害の発生を認めた原判決の判断には誤りがある。 4 一審被告東京電力による賠償 一審被告東京電力は一審原告17の世帯に対し、直接請求手続において合計2767万2481円を賠償した(乙C17の3)。これは、同17の世帯に対し、法律上損害賠償義務が認められる範囲・額を大幅に超えるものである。 また、同17の世帯は、自主賠償基準に基づき慰謝料を請求すれば、合計1700万円を受領することができる。 したがって、一審被告東京電力は追加の慰謝料を賠償する義務を負わない。 - 266 -第19 一審原告18-1 1 請求は棄却されるべきこと一審原告18-1は、本件事故当時、旧緊急時避難準備区域である福島県南相馬市原町区に居住していたが、同区域では避難を強制されておらず、また、同区域の指定は平成23年9月30日をもって解除されたにもかかわらず、一 審被告東京電力は一審原告18-1に対し、平成24年8月末までの精神的損害の賠償金を支払うなど法律上損害賠償義務が認められる範囲・額を大幅に超えた賠償を行っており、賠償した既払額は合計291万3533円である。 したがって、一審原告18-1の損害賠償請求権は弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について 一審原告18-1は、控訴審において330万円の慰謝料(精神的損害)を請求しているものの、個別損害について何らの追加の主張立証もしていない。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求 いて 一審原告18-1は、控訴審において330万円の慰謝料(精神的損害)を請求しているものの、個別損害について何らの追加の主張立証もしていない。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について(1) 引越し費用一審原告1-1らは、同18-1の引越し費用について、愛知県小牧市か ら南相馬市までの引越作業を同18-1が自ら行ったことを前提に、業者に依頼せずに自ら作業を行ったとしても、車両レンタルやガソリン代、人件費等を要するので損害が発生した旨を主張している。 しかし、一審原告18-1は本件事故当時、旧緊急時避難準備区域に居住していたところ、同区域の住民は強制的な避難を求められていなかったので あるし、小牧市から南相馬市への引越しは、本件事故から6年が経過した平成29年3月に行われたものであるから、上記引越し費用は本件事故と相当因果関係のある損害であるとは認められない。 また、一審原告1-1らは、同18-1の引越し費用の支出を裏付ける領収証等の客観的な証拠を何ら提出しておらず、損害の発生について何ら立証 していない。そして、上記の引越し費用については、同18-1は平成23 - 267 -年3月に南相馬市から小牧市へ自家用車で移動しており、レンタカーを使用していないと考えられるため、原判決が、同18-1がレンタカーを使用して引越しを行ったことを前提に民事訴訟法248条を適用したことは誤りである。 (2) 家財道具購入費 一審原告1-1らは、同18-1の家財道具購入費について、平成24年3月までには南相馬市の自宅の家財道具及び電化製品を処分しており、同一審原告が小牧市で生活を始める際には家財道具等を購入する必要があったと主張する。 しかし、一審原告18-1が 、平成24年3月までには南相馬市の自宅の家財道具及び電化製品を処分しており、同一審原告が小牧市で生活を始める際には家財道具等を購入する必要があったと主張する。 しかし、一審原告18-1が小牧市の県営住宅に引っ越したのは平成23 年4月29日であり、同1-1らの主張によっても、当該引越しの当時、南相馬市の同18-1の自宅には、家財道具等が存在したのであり、しかも、当該家財道具等は、これを処分しなければならない程度に放射能に汚染されていた等の事情はなかった。そして、同1-1らは、同18-1は本件事故前の住所から小牧市の県営住宅に引っ越す際に自らトラックを運転したと主 張しており、さらには、同18-1は避難した後の同年5月から平成25年2月まで毎月、避難前の住所に戻っていたのであるから、家財道具等を持ち出すことは容易であったといえる。 したがって、一審原告18-1には新たに家財道具等を購入する必要性も合理性もなく、家財道具購入費と本件事故との間に相当因果関係は認められ ない。 第20 一審原告20の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと一審原告20-1及び同20-2は、本件事故当時、旧緊急時避難準備区域である福島県南相馬市原町区に居住していたが、同区域では避難は強制されて おらず、また、同区域の指定は平成23年9月30日をもって解除されたにも - 268 -かかわらず、一審被告東京電力は、一審原告20-1及び同20-2に対して、平成24年8月末までの精神的損害の賠償金を支払うなど法律上損害賠償義務が認められる範囲・額を大幅に超えた賠償を行った。一審被告東京電力が一審原告20-1に対して賠償した既払額は合計767万9040円、同20-2に対して賠償した既払額は合計392万2167 害賠償義務が認められる範囲・額を大幅に超えた賠償を行った。一審被告東京電力が一審原告20-1に対して賠償した既払額は合計767万9040円、同20-2に対して賠償した既払額は合計392万2167円である。 また、一審原告20-3は、本件事故当時、滋賀県甲賀市に居住しており、本件事故発生時には、平成23年4月から南相馬市に引っ越す予定があったに過ぎず、自主的な避難すら行っていないが、それにもかかわらず、一審被告東京電力は一審原告20-3に対し、本来、法律上損害賠償義務が認められない範囲・額についても賠償を行い、その既払額は、慰謝料180万円を含め、合 計463万0825円である。 一審被告東京電力は、一審原告20の世帯に対し、十分な賠償を実施済みであり、同20の世帯の損害賠償請求権は弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について(1) 一審原告1-1らは、①南相馬市では、平成29年3月まで、同意を得 られたものについての除染も完了していなかったこと、②同年4月1日時点で、依然3837人の18歳未満者が避難していることから、同20-1及び同20-2については、平成24年8月を超えて、避難の合理性又は避難継続の合理性が認められると主張している。 また、一審原告1-1らは、居住を希望していた南相馬市に居住できなく なった点は他の避難者と異ならないとして、同20-3について、南相馬市から避難したと認定すべきであると主張している。 (2) しかしながら、南相馬市における空間放射線量は基準を下回る数値であり(乙B172の1、2)、一審原告20-1及び同20-2の南相馬市内の自宅に近い南相馬市役所の環境放射能についても、計画的避難区域に設定 される基準であった年間積 線量は基準を下回る数値であり(乙B172の1、2)、一審原告20-1及び同20-2の南相馬市内の自宅に近い南相馬市役所の環境放射能についても、計画的避難区域に設定 される基準であった年間積算線量20mSV(屋外では3.8μSV/時が - 269 -年間積算線量20mSVの目安)に達するおそれのない状況であった。したがって、南相馬市における空間放射線量は、そもそも同市の住民の避難を必要とするものではなく、除染を実施しなければ住民の健康に影響が生じるという客観的状況にもなかったから、上記①の除染活動の進捗状況は、避難継続の合理性を認める根拠にはなり得ない。 次に、旧緊急時避難準備区域については政府により避難が強制されたわけではないこと、平成23年9月30日をもって旧緊急時避難準備区域の全部の指定が解除されたこと、さらに、上記のとおり、南相馬市における空間放射線量は、本件事故後も一貫して、年間積算線量20mSVに達するおそれのない状況であること等に鑑みれば、本件事故から約6年が経過した平成2 9年4月1日時点で本件事故以前の居住地に戻っていない18歳未満の者は、自ら又は保護者の任意の判断により、転居先での居住継続を選択したものと考えられる。また、これらの避難者には、本件事故ではなく、本件地震及び本件津波によって居住していた家屋が損壊した等の事情で避難した者も含まれると考えられる。一審原告1-1らは、これらの事情を何ら考慮すること なく、上記②の避難者の人数のみを強調しているに過ぎず、避難継続の合理性を認める根拠にはなり得ない。 さらに、一審原告20-3は、愛知県で生まれ育ち、大学卒業後もしばらくは同県で生活した後、滋賀県において就職し、本件事故当時も同県で生活し、本件事故後は南相馬市に行く 根拠にはなり得ない。 さらに、一審原告20-3は、愛知県で生まれ育ち、大学卒業後もしばらくは同県で生活した後、滋賀県において就職し、本件事故当時も同県で生活し、本件事故後は南相馬市に行くことなく愛知県に転居したということであ るから、同20-3の生活の本拠が南相馬市でないことは明らかである。同20-3が平成23年4月から南相馬市に転居する予定であったから南相馬市に居住していた避難者と異ならないという主張は、到底認められない。 (3) なお、一審原告1-1らは、同20-1及び同20-2の慰謝料(精神的損害)の請求に関して、上記のほか、本件事故によって東北地方での穏や かな老後生活や人生設計が絶たれた、明確な健康被害を負ったなどと主張し - 270 -ている。 しかしながら、旧緊急時避難準備区域の住民には政府の指示による避難の強制はなく、実際に一審原告20-1及び同20-2が居住していた南相馬市における空間放射線量は住民の避難を必要とするものではなかったことは前述のとおりであり、また、同20-1及び同20-2が現在においても南 相馬市で生活をしていないのは、平成22年9月に南相馬市に転居するまで名古屋市で生活をしており、親族の多くが愛知県やその周辺に居住していることなどを考慮した自身の任意の判断によるものであるし、同1-1らが主張する同20-1及び同20-2の健康被害は、避難生活との関連性は不明であり、本件事故との相当因果関係は認められないから、同1-1らの主張 は理由がない。 また、一審原告1-1らは、同20-1及び同20-2が老後のために備えていた預貯金の取崩しを余儀なくされたなどとも主張しているが、一審被告東京電力は、一審原告20-1に対して合計767万9040円を、同2 一審原告1-1らは、同20-1及び同20-2が老後のために備えていた預貯金の取崩しを余儀なくされたなどとも主張しているが、一審被告東京電力は、一審原告20-1に対して合計767万9040円を、同20-2に対して合計392万2167円を賠償しており、これ以外の損害に ついても、一審被告東京電力からの既払い金によって全て弁済済みである。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について(1) 一審原告1-1らは、同20の世帯について①引越し費用、②敷金・礼金、③一時立入り・帰省費用、④水道光熱費、⑤タイヤ保管・交換費、⑥家賃増加分(駐車場代)、⑦保険料、⑧家財道具、⑨不動産、⑩補修費用、⑪ 生命・身体的損害の全部又は一部を認めなかった原判決の不当性を主張する。 (2) しかしながら、上記の各主張のうち、①引越し費用、④水道光熱費、⑦保険料に関する主張は、避難継続の合理性が認められる平成24年8月31日以降に生じた費用であるから、本件事故との相当因果関係は認められない。 また、その余の主張についても、以下のとおり理由がない。 (3) 敷金・礼金 - 271 -一審原告1-1らは、②敷金・礼金に関して、入居に際し敷金・礼金を支払うことが一般的であると主張するが、礼金の支払いを要することが一般的とは認められないし、敷金は居住している住居を退去する際に返還されるものであるから、そもそも損害とは認められない。 (4) 一時立入り・帰省費用 一審原告1-1らは、同20-2が一時立入り・帰省費用として330万6240円を支出したと主張するところ、原判決は、原則として月1回の帰省の相当性を認めた上、帰省に要する費用として、同20-2の帰省の手段が自動車、電車及び飛行機のいずれかであることを考慮し、平均して片 40円を支出したと主張するところ、原判決は、原則として月1回の帰省の相当性を認めた上、帰省に要する費用として、同20-2の帰省の手段が自動車、電車及び飛行機のいずれかであることを考慮し、平均して片道1万円程度であると推認し、避難した平成23年3月から平成24年8月まで の一時立入り・帰省費用として36万円の損害を認定した。 しかし、一審原告20-2は本件事故当時、旧緊急時避難準備区域に居住していて避難を強制されたわけではなく、避難した上で定期的に帰省することを強いられたわけではないため、本件事故と相当因果関係のある損害の発生は認められない。 仮に一審原告20-2について一時立入り・帰省費用の損害が認められるとしても、原判決は、同20-1が主張する一時立入り・帰省費用についても月1回の帰省の相当性を認めた上、帰省に要する費用について片道1から2万円であると認定し、同20-2に対して認めた一時立入り・帰省費用の額(片道1万円)とは異なる額を認定したが、同じ住居に帰省する同20- 1と同20-2とで異なる帰省費用を認定した理由について何ら合理的理由を示していない上、上記説示を前提としても、同20-1について認められる一時立入り・帰省費用は36から72万円なのであって、同20-2について認められる一時立入り・帰省費用と併せても72から108万円程度に過ぎない。しかるに、一審被告東京電力は一審原告20の世帯に対し、一時 立入り・帰省費用として183万1838円を賠償しているところ、世帯主 - 272 -に代表して賠償し、余った分は同20の世帯の他の一審原告に認められる損害に充当すべきであるから、原判決が認定する同20-2に係る36万円の一時立入・帰省費用は既に賠償されているというべきである。 し 代表して賠償し、余った分は同20の世帯の他の一審原告に認められる損害に充当すべきであるから、原判決が認定する同20-2に係る36万円の一時立入・帰省費用は既に賠償されているというべきである。 したがって、一時立入り・帰省費用について、36万円の損害を認定した原判決は誤りである。 (5) タイヤ保管・交換費一審原告20-1は、タイヤ保管・交換費の作成年が記載されていない領収証(甲C20の9)を受け取った時期について、「平成25年又は平成26年」と供述しており、これと異なる時期であると認定すべき理由はない。 また、上記領収証には、そもそも南相馬市に居住していなかった同20-3 が宛名に記載されているから、当該領収証の作成年にかかわらず、タイヤ保管・交換費と本件事故との間に相当因果関係は認められない。 (6) 家賃増加分(駐車場代)原判決は、平成23年4月から平成24年8月までの駐車場代9万6900円を本件事故と相当因果関係を有する損害と認定した。しかし、原判決引 用の証拠(甲C20の14)は、平成25年9月から平成26年2月までの入出金歴を示すものであり、平成23年4月から平成24年8月までの駐車場代を支出したことを証するものではない。したがって、駐車場代9万6900円の支出があるかどうかは不明であり、本件事故との相当因果関係は認められない。 (7) 家財道具一審原告1-1らは、同20の世帯の家財道具に関して、初めてメンテナンスに訪れた頃には既に家財道具にカビ等が発生していたと主張しているが、同20の世帯は、平成23年4月頃に避難した後、月1回程度南相馬市の自宅を定期的に訪れ、1週間程度滞在してメンテナンスを行っていたのである から、初めてメンテナンスに訪れた時点でカビ等が発生し 同20の世帯は、平成23年4月頃に避難した後、月1回程度南相馬市の自宅を定期的に訪れ、1週間程度滞在してメンテナンスを行っていたのである から、初めてメンテナンスに訪れた時点でカビ等が発生していたとすれば、 - 273 -同20の世帯が自宅に居住していた頃からカビ等が発生していたと考えられ、そのような家財道具の廃棄費用と本件事故との間に相当因果関係は認められない。また、同1-1らは、同20の世帯は別の家具等にカビが移らないよう家財道具を廃棄したと主張しているが、家財道具にカビが発生したとしても除去することは可能であり、月に1度、1週間程度メンテナンスを行って いたにもかかわらず、家財道具を廃棄しなければならなかったとの主張は到底認められない。 (8) 不動産一審原告1-1らは、同20の世帯の⑨不動産に関して、南相馬市内の不動産価格が下落を余儀なくされたと主張しているが、そのことを裏付ける客 観的証拠を何ら提出していない。 (9) 補修費用一審原告1-1らは、同20の世帯の⑩補修費用に関して、屋根の漆喰を補修する業者が不足していたことにより早期に補修できなかったと主張しているが、業者不足については何ら立証されていない上、そもそも南相馬市内 の業者に依頼する必然性もなく、仮に業者不足であったとしても、本件地震及び本件事故により避難した可能性があるから、業者の不足が本件事故と関連するか否かも明らかでない。また、同1-1らは、同20の世帯の除湿剤や除草剤の量が平常時と比較して異なると主張しているが、具体的にどのように異なるのかについて何ら主張立証をしない上、同20の世帯は、月1回 の頻度で南相馬市内の自宅へ戻り、1週間程度の期間をかけてメンテナンスをしていたのであり、除草剤等を平常時以 体的にどのように異なるのかについて何ら主張立証をしない上、同20の世帯は、月1回 の頻度で南相馬市内の自宅へ戻り、1週間程度の期間をかけてメンテナンスをしていたのであり、除草剤等を平常時以上に購入・使用すべき必然性は認められない。 (10) 生命・身体的損害一審原告1-1らは、同20-2が右変形性股関節症を発症した原因とし て、本件事故による避難生活以外に考えられないと主張しているが、変形性 - 274 -股関節症は、発育性股関節形成不全の後遺症や股関節の形成不全といった幼少時の病気や発育障害の後遺症が主な原因と考えられる(乙C60)のであり、同20-2が右変形性股関節症を発症したとしても、本件事故との間に相当因果関係は認められない。 第21 一審原告21-3 1 原判決は、元原審原告21-1及び同21-2について、それぞれ180万円の慰謝料(精神的損害)を認定したが、かかる認定は正当である。 一審原告1-1らは、元原審原告21-1及び同21-2の個別損害について、控訴審において何らの追加の主張立証もしていない。 2 なお、一審被告東京電力は、元原審原告21-1及び同21-2に対して合 計622万3395円を賠償済みであり、十分な賠償を実施済みであって、一審原告21-3の損害賠償請求権は弁済により消滅している。 第22 一審原告22の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと(1) 一審原告22の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福 島県いわき市に居住しており、そもそも本件事故による法律上保護される利益に対する侵害があったとは認められず、避難の相当性は認められない。したがって、同22の世帯に本件事故による精神的損害は認められないし、避難に起因する財産的な支出に 本件事故による法律上保護される利益に対する侵害があったとは認められず、避難の相当性は認められない。したがって、同22の世帯に本件事故による精神的損害は認められないし、避難に起因する財産的な支出についても、本件事故と相当因果関係のある損害とは認められない。 また、一審原告22の世帯は、どんなに遅くとも、平成23年3月23日には新たな環境で日常生活を送ることができる状態となっており、これ以降、法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害は認められない。 さらに、避難に起因する財産的な支出についても同月22日までのものに限られるが、同日までの財産的な支出であっても以下に述べるとおり、いずれ も本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 - 275 -(2) 他方、一審被告東京電力は、令和4年7月1日までに、一審原告22の世帯に対して合計337万4070円を支払っており、十分な賠償を実施済みであって、同22の世帯の一審被告東京電力に対する損害賠償請求権はいずれも弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について 一審原告22-1及び同22-2についての慰謝料額並びに本件事故時18歳以下であった同22-3、同22-4及び同22-5についての慰謝料額は、それぞれ一審被告東京電力の賠償額8万円及び48万円を超えるものではない。 一審原告1-1らは、控訴審において、同22-1及び同22-2が相双地区出身であり、同22-3、同22-4及び同22-5は相双地区に多くの親 戚がいることから、帰還困難区域の避難者に準じて損害額を認定すべきである旨主張するが、かかる理由で、同22の世帯について、帰還困難区域に居住していた者に準じて損害額を認定すべき理由はない。 戚がいることから、帰還困難区域の避難者に準じて損害額を認定すべきである旨主張するが、かかる理由で、同22の世帯について、帰還困難区域に居住していた者に準じて損害額を認定すべき理由はない。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について(1) 平成23年の宿泊費 原判決は、原審における一審原告22-1の本人尋問の結果から、同22の世帯が平成23年3月15日から同月21日までの間に、いわき市から名古屋市に避難するまでの間にホテル等で5泊したことを認め、一般的なビジネスホテルの宿泊代金等を考慮し、一人当たり1泊5000円、合計12万5000円(5000円×5人×5泊=12万5000円)の損害を認定し た。 しかしながら、そもそも、本件事故発生当時において自主的避難等対象区域に居住していた一審原告22の世帯に避難の相当性が認められるかという点には疑問がある。仮に避難の相当性が認められるとしても、同1-1らは、いわき市から名古屋市へと避難する間にホテル等に宿泊したことに関する同 22-1の領収証等の客観的な証拠を提出していない。 - 276 -また、一審原告22の世帯が避難の際にホテル等に宿泊したことを前提とするとしても、同22-1によれば、同22の世帯が避難の際に宿泊したのは宇都宮市内のビジネスホテルや長野県松本市の民宿のようなホテル、愛知県一宮市のラブホテルとのことである(甲C22の1)ところ、これらのホテルの宿泊費は、複数人用の客室の場合、宿泊者の人数による等倍よりも低 額になるのが通常であるから、同22の世帯が上記のホテル等に宿泊した費用が世帯合計1泊2万5000円であると原判決が認定したのは、経験則上明らかに過大である。同22の世帯は、同22-1及び同22-2の になるのが通常であるから、同22の世帯が上記のホテル等に宿泊した費用が世帯合計1泊2万5000円であると原判決が認定したのは、経験則上明らかに過大である。同22の世帯は、同22-1及び同22-2の夫婦並びにその子ら3名(同22-3から同22-5まで)の計5名であるから、同22の世帯が宿泊する際に要する費用としては、どんなに多く見積もって も1泊1万5000円程度であるというべきである。 したがって、本件事故と相当因果関係のある損害として認められる宿泊費は一審被告東京電力がADR手続において避難費用(宿泊費)として賠償済みの8万円(乙C22の1)を超えることはなく、これを超える損害を認定した原判決は失当である。 (2) 家賃増加分原判決は、一審原告22-3から同22-5までについての避難継続の合理性が認められるのが平成24年8月31日までであることから、避難先での家賃負担について相当因果関係が認められるのは同月分までとした上で、同月分までの県営住宅での駐車場代、自治会費及び平成23年8月から平成 24年3月までの同22-1の社宅家賃並びに同年4月から同年8月までの愛知県豊田市での家賃の合計15万1100円を損害として認定した。 しかしながら、そもそも本件事故発生直後においても避難の相当性が認められるのか疑問があり、平成23年4月分の県営住宅での駐車場代(4000円)及び自治会費(2800円)は、本件事故と相当因果関係のある損害 とは認められない。また、本件事故発生当初の時期においては避難の相当性 - 277 -が認められるとしても、その期間は長くとも平成23年4月22日頃までと考えられ、それ以後は避難継続の相当性は認められないから、同月以降に発生した上記駐車場代、自治会費 の相当性 - 277 -が認められるとしても、その期間は長くとも平成23年4月22日頃までと考えられ、それ以後は避難継続の相当性は認められないから、同月以降に発生した上記駐車場代、自治会費はもとより、一審原告22-1の社宅家賃及び愛知県豊田市の家賃は相当因果関係が認められない。さらに、自治会費については、同1-1らは、同22の世帯が本件事故前に負担していた費用と 本件事故後に負担した費用との差額について、主張も立証もしていない。 したがって、県営住宅の家賃、駐車場代、自治会費、社宅家賃及び愛知県豊田市の家賃に係る損害を認定した原判決は誤りである。 (3) 平成27年の交通費及び宿泊費一審原告1-1らは、控訴審において、原判決が同22の世帯の損害とし て認めなかった平成27年9月12日以降のいわき市の自宅売却のための交通費及び宿泊費の合計15万0112円について、同22の世帯はいわき市に戻ることができないから自宅売却の必要は認められると主張する。 しかし、仮に本件事故発生当初の時期に何らかの法律上保護される利益の侵害が認められるとしても、上記第1のとおり、一審原告22の世帯におい ては、平成23年3月22日以降の法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害は認められない。 したがって、平成27年9月12日以降にいわき市の自宅を売却するための交通費及び宿泊費は、本件事故と相当因果関係のある損害に該当しない。 第23 一審原告23の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと(1) 一審原告23の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島県いわき市に居住しており、そもそも本件事故による法律上保護される利益に対する侵害があったとは認められない るべきこと(1) 一審原告23の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島県いわき市に居住しており、そもそも本件事故による法律上保護される利益に対する侵害があったとは認められない。したがって、同23の世帯に本件事故と相当因果関係のある精神的損害は認められないし、避難に起因する 財産的な支出についても、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認 - 278 -められない。仮に何らかの法律上保護される利益の侵害があるとしても、同23-1が平成23年10月から愛知県新城市の会社に採用されることが決まっており、また、同月初旬にはいわき市の自宅の売却が決まり、同23の世帯が同月24日には新城市に引っ越しているという事情に鑑みると、同23の世帯については、どんなに遅くとも同日には、新たな環境で日常生活を 送ることができる状態となっていたといえるから、これ以降、法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害はない。 (2) 仮に何らかの法律上保護される利益に対する侵害があるとしても、本件事故発生当初の時期に放出された放射性物質による放射線の作用による影響は健康に影響を与えるものではなかったこと、そのことに関する報道等も繰 り返し行われたこと、社会活動の再開等、事故後の状況に照らせば、そこで問題とされるべき侵害は、あくまでも、本件事故発生当初の時期における放出された放射性物質による放射線の作用や健康への影響についての情報不足による不安感・危惧感による精神的苦痛に限られる。避難に起因する財産的な支出についても、一審原告23の世帯については、どんなに遅くとも平成 23年10月24日までのものに限られるが、後記3のとおり、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (3) 他 ても、一審原告23の世帯については、どんなに遅くとも平成 23年10月24日までのものに限られるが、後記3のとおり、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (3) 他方、一審被告東京電力は、令和4年7月1日までに、一審原告23の世帯に対して合計240万円を支払っており、十分な賠償を実施済みであって、同23の世帯の損害賠償請求権は弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について(1) 一審原告23-1及び同23-2についての慰謝料額並びに本件事故時18歳以下であった同23-3から同23-5までについての慰謝料額は、それぞれ一審被告東京電力の賠償額である8万円及び48万円を超えるものではない。 (2) 一審原告1-1らは、控訴審において、同23の世帯は、できれば生ま - 279 -れ故郷の福島に戻りたいという気持ちを持ちながらも、放射能の不安によって避難の継続を余儀なくされていたのであり、原判決の判断は、本件事故の発生を受けてから避難に至るまでの心理状態や避難継続中の慣れない環境での生活状況を軽視するものであって極めて不合理であると主張する。 しかし、まず、一審原告23の世帯が居住していたいわき市の空間放射線 量は、避難指示の基準である年間20mSV(3.8μSV/時に相当)を大きく下回る水準であって、客観的に健康に影響を及ぼすような空間放射線量ではなかった。実際に、同23-1は、放射能の影響について気になるとしつつも、同23の世帯の健康状態に特に変化がないことを自認しており、同23-3から同23-5までについては、平成26年1月に受けた甲状腺 検査において「問題はない」との結果が出ている。 また、本件事故当時、一審原告23-1が勤めて とを自認しており、同23-3から同23-5までについては、平成26年1月に受けた甲状腺 検査において「問題はない」との結果が出ている。 また、本件事故当時、一審原告23-1が勤めていた自動車会社は、平成23年3月末をもって自宅待機命令を解除している。さらに、同23-1の親、兄弟、親戚は避難をしておらず、また、同23-1の子らの同級生の親にも「避難をするのは大げさだ」などの反応をする者がおり、実際に避難を した家族は、同23-1が知る限り2家族にとどまっている。 このように、空間放射線量が客観的に健康に影響を及ぼすようなものではなかった上に、一審原告23の世帯の誰にも具体的な健康被害は生じておらず、さらに、同23の世帯と関係のある住民のほとんどは事態を冷静に受け止め、避難をしなかった。 したがって、仮に一審原告23の世帯が何らかの不安を感じていたとしても、客観的証拠に基づかない漠然とした不安感にとどまるものといえ、本件事故と相当因果関係のある精神的損害が生じているとは認められない。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について(1) 一審原告1-1らが主張立証をしていないこと 一審原告1-1らは、同23の世帯の個別の財産的損害として、①引越費 - 280 -用、②家財道具購入費用、③食費、④家賃増加分の費用、⑤車両、自転車の購入費用、⑥廃棄した家財道具の費用及び⑦就労不能損害の全部又は一部を認めなかった原判決が不当である旨主張する。 しかし、一審原告1-1らは、上記請求が認められるべきであるという主張を繰り返すにとどまり、それらを裏付ける新たな事実の主張や立証を全く しない。 (2) 交通費原判決は、一審原告23-1が、平成23年3 上記請求が認められるべきであるという主張を繰り返すにとどまり、それらを裏付ける新たな事実の主張や立証を全く しない。 (2) 交通費原判決は、一審原告23-1が、平成23年3月15日にいわき市から茨城県龍ケ崎市に自動車で避難したこと、同月31日に同市からいわき市に自動車で戻ったこと、同年9月に自動車で愛知県へ就職の面接に行ったこと、 同年10月24日に新城市へ自動車で引っ越したことが認められるとした上で、これらの移動に要したと同1-1らが主張する3万8060円を本件事故と相当因果関係を有する損害と認定した。 しかし、そもそも、本件事故発生当初の時期においても避難の相当性が認められるか疑問がある上、仮に法律上保護される利益の侵害が生じたとして も軽微なものに過ぎず、既払い金を超える損害は認められないから、本件事故との相当因果関係は認められない。 また、一審原告1-1らは、同23-1が避難のための交通費を支出したことに関する領収証等の客観的な証拠を何ら提出せず、損害自体の発生が認められない。 (3) 引越し費用原判決は、平成23年10月24日の引越しの際に、2tトラックのレンタカーを利用したことが認められるとした上で、レンタカーに要した費用として、1万円の損害を認めたが、前記のとおりそもそも本件事故発生当初の時期においても避難の相当性が認められるのか疑問があり、既払い金を超え る損害は認められないから、上記引越し費用について本件事故との相当因果 - 281 -関係は認められない。 また、一審原告1-1らは、同23-1が避難のための引越し費用を支出したことに関する領収証等の客観的な証拠を何ら提出せず、損害自体の発生が認められない。 (4 関係は認められない。 また、一審原告1-1らは、同23-1が避難のための引越し費用を支出したことに関する領収証等の客観的な証拠を何ら提出せず、損害自体の発生が認められない。 (4) 家財道具購入費用 原判決は、避難先で生活するために家財道具を購入する必要があったといえるとして、10万円の損害を認めたが、前記のとおり、仮に法律上保護される利益の侵害が生じたとしても軽微なものに過ぎず、既払い金を超える損害は認められないから、上記家財道具購入費について本件事故との相当因果関係は認められない。 また、原判決の認定を前提としても、一審原告23の世帯は、引越しの際に家財道具の全てを移動させている。さらに、同23-1がいわき市の自宅にあった家財を廃棄しているが、その理由は転居に用いたトラックに積載できなかったからに過ぎず、家財を選別した上で別の機会に搬出することも可能であった。それにもかかわらず、同23-1は、任意の判断により家財を 廃棄したのであるから、家財道具を購入する必要性は認められないし、領収証は一切提出されておらず購入の必要性について何らの立証もなされていない。したがって、家財を新たに購入することについて、本件事故と相当因果関係のある損害の発生は認められない。 (5) 被ばく検査のための交通費及び宿泊費 原判決は、一審原告23の世帯が平成24年6月に被ばく検査を受ける際に要した移動費用7万4670円を本件事故と相当因果関係を有する損害と認定したが、遅くとも平成23年4月22日頃までには、自主的避難等対象区域における年間積算放射線量は20mSVに達しないことや、その程度の積算放射線量であれば健康に被害を与えるものではないことについての情報 提供がなされてい 22日頃までには、自主的避難等対象区域における年間積算放射線量は20mSVに達しないことや、その程度の積算放射線量であれば健康に被害を与えるものではないことについての情報 提供がなされていたのであるから、同日から1年以上も経過した後の被ばく - 282 -検査のための支出について、本件事故との相当因果関係のある損害とは認められない。 第24 一審原告24の世帯 1 一審原告24の世帯は、本件事故当時、旧緊急時避難準備区域である福島県南相馬市原町区に居住していた者であり、原判決で請求を棄却され、控訴審に おいては、それぞれ330万円の慰謝料(精神的損害)を請求しているものの、個別損害について何らの追加の主張立証もしていない。 2 一審被告東京電力が令和4年7月1日までに一審原告24の世帯に対して賠償した既払額は合計1183万0604円であり、全体として十分な賠償を実施済みであって、同24の世帯の一審被告東京電力に対する損害賠償請求権は 弁済により消滅している。 第25 一審原告26の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと(1) 一審原告26の世帯は、本件事故当時、区域外の県南地域である福島県白河市に居住していた者であり、そもそも本件事故により法律上保護される 利益に対する侵害があったとは認められない。したがって、同26の世帯に本件事故と相当因果関係のある精神的損害は認められない。 (2) 仮に何らかの法律上保護される利益の侵害が認められるとしても、区域外の県南地域に居住していた妊婦・子供について自主賠償基準を超える損害は認められず、本件事故時18歳以下であった一審原告26-3についての 慰謝料額は、一審被告東京電力の賠償額である24万円を超えるものではない。 (3) 他方、一審 賠償基準を超える損害は認められず、本件事故時18歳以下であった一審原告26-3についての 慰謝料額は、一審被告東京電力の賠償額である24万円を超えるものではない。 (3) 他方、一審原告26の世帯の慰謝料(精神的損害)の賠償請求は、本件事故により平穏な生活基盤が損なわれたことによる損害に対する損害賠償請求権1個のうちの残部請求であり、この残部請求の成否を判断するためには、 本件事故により被った損害の総額から、一審被告東京電力による既払い金を - 283 -控除した残額に基づいて判断する必要がある。一審被告東京電力は、一審原告26の世帯に対し、法律上損害賠償義務が認められる範囲・額を大幅に超えた賠償を行っており、令和4年7月1日までの賠償額は合計260万2207円であり、法人に対する営業損害を含めると、同26の世帯には合計433万1588円を既に支払っている(乙C26の3)。一審被告東京電力 は、一審原告26の世帯に対し、全体として十分な賠償を実施済みであって、同26の世帯の一審被告東京電力に対する損害賠償請求権は弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について(1) 一審原告7-1らは、同26の世帯が被った被害の具体的な内容として、 ①別居生活の継続、②同26-3が避難後に経験したいじめ、③被ばくによる健康不安などを主張している。 (2) しかしながら、そもそも一審原告26の世帯の住所は福島第一原発から●●●●●kmも離れ、自主的避難等対象区域よりもさらに遠い位置にあった。そして、同26の世帯の住所地である県南地域(白河市)においては、 同じ福島県中通り地方に属する県北及び県中の各地域と比較しても空間放射線量が低く(乙B349の1及び2)、本件事故発生当初の時期に て、同26の世帯の住所地である県南地域(白河市)においては、 同じ福島県中通り地方に属する県北及び県中の各地域と比較しても空間放射線量が低く(乙B349の1及び2)、本件事故発生当初の時期に放出された放射性物質の放射線量の影響は健康に影響を与えるものではなかった。また、福島県の会津、いわき、県北及び県中の各地域と比べても、白河市からの本件事故に起因する避難者数は圧倒的に少なく、その人口に占める割合も 低かった(乙B348の1・5、6枚目)。さらに、平成23年3月から同年4月にかけて、ただちに健康に影響を与えるレベルではないとの専門家や政府の説明等が繰り返し新聞報道等で報じられていた。このように、同26の世帯は避難を要する状況になかったのであって、同26-2及び同26-3の名古屋市への移転及びそれに伴う同26-1との別居生活は、同26の 世帯の任意の判断の結果であるため、本件事故と相当因果関係のある原子力 - 284 -損害には該当しない。 (3) また、学校におけるいじめ等については、これを裏付ける客観的証拠の提出はなく、本件事故との因果関係についても何ら主張立証がなされていない。 (4) さらに、一審原告26-3のバセドウ病及び同26-2の橋本病の疑い については、いずれも本件事故との因果関係の立証がないし、前記の白河市の状況からは、同26-2及び同26-3の被ばくによる健康被害への不安感は、法律上保護された利益に対する侵害と評価することはできない。 したがって、一審原告7-1らの主張は理由がない。 第26 一審原告27の世帯 1 一審原告27の世帯は、自主的避難等対象区域である福島県いわき市に居住していたが、いわき市では空間放射線量率は客観的に健康に影響を及ぼす状況にはな ない。 第26 一審原告27の世帯 1 一審原告27の世帯は、自主的避難等対象区域である福島県いわき市に居住していたが、いわき市では空間放射線量率は客観的に健康に影響を及ぼす状況にはなく、そのことが周知されていた。同27の世帯は、同27-1の友人夫妻からの連絡や職場の友人からの意見を聞いて転居を決意したが、上記のいわき市の状況を踏まえれば、客観的根拠に基づく不安による転居ではなかった。 同27の世帯は、そもそも本件事故によって避難を余儀なくされたものではない。しかも、同27の世帯は、平成23年4月頃には新たな環境で日常生活を送ることができる状態になっていたのであり、法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害が生じたとしてもその程度は軽微である。 2 原判決は、平成24年8月の帰省に要した交通費として、3万1512円を 損害として認めたが、もし仮に本件事故当初においては避難の相当性が認められるとしても、その期間は長くとも平成23年4月22日頃までと考えられ、移動に起因する財産的支出についても同月頃までのものに限られるが、一審原告1-1らはこれについて何ら客観的証拠を提出していない。 3 一審原告27の世帯については、本件事故後の生活状況を踏まえても、本件 事故に起因して生じたと考え得る損害は、一審被告東京電力の既賠償額136 - 285 -万0954円を超えるものではない。 第27 一審原告28の世帯 1 一審原告28-2は自主的避難等対象区域に居住していた者として評価されるべきであること原判決は、一審原告28-2について、本件事故当時の住所を旧避難指示解 除準備区域にある福島県双葉郡浪江町所在の実家と認定した。しかしながら、証拠のうち、平成25年9月20日付けの居住証明書 原判決は、一審原告28-2について、本件事故当時の住所を旧避難指示解 除準備区域にある福島県双葉郡浪江町所在の実家と認定した。しかしながら、証拠のうち、平成25年9月20日付けの居住証明書(甲C28の14の1)については、本件事故の1年前の時点である平成22年3月11日に同一審原告が浪江町の実家に居住していたことを示すのみであって、本件事故当時の住所を裏付けるものではない。 翻って、本件事故当時、一審原告28-2の住民票は同28-1の福島県郡山市の住所にあり、また、同28-1の戸籍の附票(乙C28の2)にも、平成23年1月20日に同28-2が同28-1の郡山市の住所に住定した旨記載されていることもあわせて考慮すると、同28-2の本件事故当時の居住地が郡山市であったことは客観的に明らかである。また、同28-2は、実家に 居住していた父、母、兄が旧避難指示解除準備区域の居住者として仮払補償金を請求した際(乙C62)、当該仮払補償金を請求せず、自主的避難等対象区域の居住者の賠償制度が始まると、平成24年及び平成25年の2回、自主的避難等に係る賠償金ご請求書に自ら署名して賠償金を請求し受領した(乙C28の10)。したがって、同28-2が本件事故当時、浪江町所在の実家に居 住していたと認定した原判決には事実誤認があり、仮に同28-2に本件事故と相当因果関係のある損害が発生していると想定するとしても、その賠償については、自主的避難等対象区域である郡山市に居住していた者として評価されるべきである。 2 請求はいずれも棄却されるべきこと (1) 一審原告28の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である郡 - 286 -山市に居住しており、そもそも本件事故による法律上保護される利益に対する 却されるべきこと (1) 一審原告28の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である郡 - 286 -山市に居住しており、そもそも本件事故による法律上保護される利益に対する侵害があったとは認められない。したがって、同28の世帯に本件事故による精神的損害は認められないし、避難に起因する財産的な支出についても、本件事故と相当因果関係のある損害とは認められない。 (2) また、一審原告28-1及び同28-2は、本件事故直後は一時的に同 28-1の実家である名古屋市に避難したものの、平成23年3月28日、本件事故当時に同28-1及び同28-2が居住していた郡山市の社宅に戻り、当該社宅で二人での共同生活をするようになり、同年4月2日に婚姻した。その後、同年6月には同28-2の妊娠が判明し、同年9月には郡山市内の家族向けの社宅に引っ越し、平成24年1月▲▲日には同28-3が生 まれた。かかる経緯に鑑みれば、同28-1及び同28-2は、新たに社宅において二人での共同生活を再開した平成23年3月28日以降、平穏な日常生活を送ることができる状態となっていたものであり、もし仮に法律上保護される利益の侵害が認められる場合があるとしても、同日以降の法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害はない。 (3) 仮に何らかの「法律上保護される利益に対する侵害」があるとしても、本件事故発生当初の時期に放出された放射性物質による放射線の作用による影響は健康に影響を与えるものではなかったこと、また、自主的避難等対象区域の大部分の住民は避難を実施しなかったこと等に照らせば、そこで問題とされるべき侵害は、あくまでも本件事故発生当初の時期における、放出さ れた放射性物質による放射線の作用や健康への影響につい 区域の大部分の住民は避難を実施しなかったこと等に照らせば、そこで問題とされるべき侵害は、あくまでも本件事故発生当初の時期における、放出さ れた放射性物質による放射線の作用や健康への影響についての情報不足による不安感・危惧感による精神的苦痛に限られる。避難に起因する財産的な支出についても、一審原告28の世帯については、平成23年3月28日までのものに限られるが、下記のとおり、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (4) 他方、一審被告東京電力は、令和4年7月1日までに、一審原告28の - 287 -世帯に対して合計388万4214円を支払っており、十分な賠償を実施済みであって、同28の世帯の一審被告東京電力に対する損害賠償請求権は弁済により消滅している。 3 慰謝料(精神的損害)の請求について(1) 一審原告28-1について 一審原告1-1らは、原判決は、同28-1が、本件事故により、事故前に有していた包括的生活基盤とそれから享受していた利益を丸ごと失ったことを適切に評価しておらず、慰謝料の月額評価及び相当因果関係にある期間(避難の合理性が認められる期間)の評価のいずれについても不当である旨主張する。 しかし、まず、本件事故当時、一審原告28-1が居住していた郡山市の空間放射線量は、避難指示の基準である年間20mSv(3.8μSV/時に相当)を大きく下回る水準であって、客観的に健康に影響を及ぼすような空間放射線量ではなかった。実際に、同28の世帯は、毎年1回、甲状腺の検査を受けているとのことであるが(甲C51)、同28-1について健康 への悪影響が判明した事実は一切主張されておらず、現に、令和2年7月及び令和4年7月に実施された検査においても、 甲状腺の検査を受けているとのことであるが(甲C51)、同28-1について健康 への悪影響が判明した事実は一切主張されておらず、現に、令和2年7月及び令和4年7月に実施された検査においても、結節やのう胞が認められないことを示す「A1」との判定が出ている(甲C52の1の1・2、甲C53の1の1・2)。 したがって、一審原告28-1が何らかの不安を感じていたとしても、客 観的証拠に基づかない漠然とした不安感にとどまる。 (2) 一審原告28-2について一審原告1-1らは、本件事故当時、同28-2が浪江町に居住していたことを前提として、原判決は、本件事故により、事故前に有していた包括的生活基盤とそれから享受していた利益を丸ごと失ったことを適切に評価して おらず、不当である等と主張する。 - 288 -しかし、上記のとおり、本件事故当時、一審原告28-2が浪江町に居住していたことを示す客観的証拠はない。 また、上記のとおり、本件事故当時、一審原告28-2が居住していた郡山市の空間放射線量は避難指示の基準を大きく下回る水準であって、客観的に健康に影響を及ぼすようなものではなかった。実際に、同28の世帯 は、毎年1回、甲状腺の検査を受けているところ(甲C51)、同28-2について健康への悪影響が判明した事実は一切主張されておらず、令和2年7月及び令和4年7月に実施された検査においても、「A2」の判定が出ている(甲C52の2の1・2、甲C53の2の1・2)。 したがって、仮に、一審原告28-2が何らかの不安を感じていたとして も、客観的証拠に基づかない漠然とした不安感にとどまる。 (3) 一審原告28-3について一審原告1-1らは、同28-1及び 、一審原告28-2が何らかの不安を感じていたとして も、客観的証拠に基づかない漠然とした不安感にとどまる。 (3) 一審原告28-3について一審原告1-1らは、同28-1及び同28-2について主張したことは、同28-3にも当てはまると述べて、原判決が不当であると主張する。 しかし、まず、一審原告28-3が平成24年1月に出生した郡山市の空 間放射線量は、避難指示の基準である年間20mSV(3.8μSV/時に相当)を大きく下回る水準であって、客観的に健康に影響を及ぼすような空間放射線量ではなかった。また、同28-3は、出生して2か月後の同年3月には、同28-1及び同28-2とともに愛知県に引っ越し、以後、同県又は岐阜県に居住している。 また、一審原告28の世帯は、毎年1回、甲状腺の検査を受けているところ(甲C51)、同28-3について健康への悪影響が判明した事実は一切主張されておらず、現に、令和2年7月及び令和4年7月に実施された検査においては、結節やのう胞が認められないことを示す「A1」との判定が出ている(甲C52の3の1・2、甲C53の3の1・2)。 したがって、仮に、一審原告28-3が何らかの不安を感じていたとして - 289 -も、客観的証拠に基づかない、漠然とした不安感にとどまる。 (4) 慰謝料額について一審原告28-1及び同28-2についての慰謝料額並びに本件事故後の平成24年1月に出生した同28-3についての慰謝料額は、それぞれ一審被告東京電力の賠償額である8万円及び48万円を超えるものではない。 4 慰謝料(精神的損害)以外の請求について(1) 一審原告28-1ア交通費原判決は、一審原告28-1 力の賠償額である8万円及び48万円を超えるものではない。 4 慰謝料(精神的損害)以外の請求について(1) 一審原告28-1ア交通費原判決は、一審原告28-1が平成23年3月28日の避難復路に要した交通費として1万7320円及び平成24年3月の避難に要した費用 として1万円を損害として認めたが、そもそも本件事故発生当初の時期においても避難の相当性が認められるか疑問がある上、仮に認められるとしても、その期間は長くとも平成23年3月28日までと考えられるから、少なくとも平成24年3月の交通費については、本件事故との相当因果関係は認められない。 この点を措いても、一審被告東京電力は、一審原告28-1に対して避難交通費として2万1600円を賠償しているが、同1-1らは、同28-1が上記既払い金を超えて交通費を支出したことについて領収証等の客観的証拠を提出していない。 イ修繕費 原判決は、平成24年3月19日に一審原告28-1が祖父の家を修繕したとして、排水管コックの8924円を損害として認めたが、同一審原告が祖父の家を修繕したのはそれが古かったためであり、本件事故によって修繕を必要としたのではない。したがって、当該修繕費用については本件事故とは無関係であるから、相当因果関係のある損害とは認め られない。 - 290 -また、前記のとおり、避難の相当性が認められるとしてもその期間は平成23年3月28日までと考えられ、それ以後は避難継続の相当性は認められないことからも、上記修繕費については認められない。 ウ家財道具購入費原判決は、一審原告28-1は、平成24年3月に祖父の家に避難して 以降、家財道具を購 相当性は認められないことからも、上記修繕費については認められない。 ウ家財道具購入費原判決は、一審原告28-1は、平成24年3月に祖父の家に避難して 以降、家財道具を購入する必要性が生じたと推認できるとして10万円を損害として認めたが、前記のとおり避難の相当性が認められるとしてもその期間は平成23年3月28日までであるというべきであるから、上記家財道具購入費は本件事故との相当因果関係は認められない。 エ就労不能損害 原判決は、一審原告28-1が、平成24年3月に避難するにあたって勤務先を退職したと認定し、同年4月から平成25年3月までに本件事故による避難がなければ得られたであろう収入が本件事故と相当因果関係を有する損害であるとして、同一審原告の避難前の年収345万7448円から、平成24年9月から平成25年2月までの収入約57万円 を控除した288万7448円を損害として認めた。しかしながら、そもそも本件事故発生当初の時期においても避難の相当性が認められるか疑問が存する上、仮に認められるとしても、その期間は長くとも平成23年3月28日までと考えられるから、本件事故から1年も経過した後に避難した場合の減収分については、本件事故との相当因果関係は認め られない。 また、一審原告28-2の妊娠が判明したのは平成23年6月であるが、同月頃から、同28-1は、同28-2のための避難及び転職の検討が可能であったはずであるから、就職までに約1年を要するとした原判決を前提としても、同28-1は、遅くとも同月の約1年後である平成2 4年4月頃までには再就職が可能であったと認めるのが相当であり、同 - 291 -月以降について減収があったとしても、それは同一審原 も、同28-1は、遅くとも同月の約1年後である平成2 4年4月頃までには再就職が可能であったと認めるのが相当であり、同 - 291 -月以降について減収があったとしても、それは同一審原告が転職の準備をせず、就職先の当てもないのに任意の判断で避難をしたからにすぎないのであって、当該減収について、本件事故と相当因果関係のある損害とは認められない。 (2) 一審原告28-2 ア交通費原判決は、一審原告28-2の避難について、平成23年3月18日の往路及び同月28日の復路に要した交通費として、合計9万4630円を損害として認めたが、そもそも、本件事故発生当初の時期においても、上記交通費について、本件事故との相当因果関係が認められるのかは疑 問が存する。 また、一審原告1-1らは、同28-2が交通費を支出したことについて領収証等の客観的な証拠を提出していない。 イ家財道具購入費一審原告1-1らは、母体と胎児の安全のために避難する先で、妊婦で ある同28-2が就寝のために必要なベッドを購入することは、避難に必要な家財道具の購入費用として、本件事故と相当因果関係にある損害である等と主張している。しかしながら、同28-2は、ベッドを購入する前の平成23年4月から同年9月までの間は、単身者用の社宅で生活をしており、就寝に必要な環境は整っていたものと容易に推測できる。 さらに、同一審原告は、妊娠が判明した同年6月以降も3か月間は、ベッドを購入せずに上記単身者用の社宅で生活していたといえ、母体と胎児の安全の確保がベッドの購入理由とはいえない。その点を措いても、同28-2がベッドを購入したのは妊娠が原因であって、本件事故の発生やその後の避難生活とは関連性が認められな していたといえ、母体と胎児の安全の確保がベッドの購入理由とはいえない。その点を措いても、同28-2がベッドを購入したのは妊娠が原因であって、本件事故の発生やその後の避難生活とは関連性が認められない。 したがって、家財道具購入費(ベッドの購入費用)は、本件事故と相当 - 292 -因果関係のある損害とは認められない。 第28 一審原告30の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと(1) 一審原告30の世帯は、それぞれ330万円の慰謝料(精神的損害)を請求しているものの、個別損害について何らの追加の主張もしていない。 (2) 一審原告30-2から同30-4までは、本件事故当時、旧緊急時避難準備区域である福島県南相馬市原町区に居住していたが、同区域では避難が強制されておらず、また、同区域の指定は平成23年9月30日をもって解除されたにもかかわらず、一審被告東京電力は、一審原告30-2から同30-4までに対し、平成24年8月末までの精神的損害の賠償金を支払うな ど法律上損害賠償義務が認められる範囲・額を大幅に超えた賠償を行ってきた。一審被告東京電力が一審原告30-2に対して賠償した既払額は合計1180万0660円、同30-3に対しては合計625万8800円、同30-4に対しては合計510万円である。 また、一審原告30-1は、本件事故当時、岐阜県下呂市に居住しており、 同30-1が単身赴任を終えて南相馬市の自宅へ帰宅する時期は平成24年9月の予定であったのであるから、同30-1には、本件事故により慰謝すべき精神的苦痛は生じていない。それにもかかわらず、一審被告東京電力は、本来、法律上損害賠償義務がない範囲・額についても賠償を行い、その既払額は合計694万0627円である。 本件事故により慰謝すべき精神的苦痛は生じていない。それにもかかわらず、一審被告東京電力は、本来、法律上損害賠償義務がない範囲・額についても賠償を行い、その既払額は合計694万0627円である。 (3) このように、一審被告東京電力は一審原告30の世帯に対し、十分な賠償を実施済みであって、同30の世帯の損害賠償請求権は弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について(1) 一審原告1-1らは、提出した陳述書(甲C49)により、①同30- 3が避難先の中学校でいじめを受けたこと、②南相馬市の自宅周辺の除染状 - 293 -況、③食品の出荷制限が現在も継続していること等を指摘する。 (2) しかし、上記の各指摘は、一審原告30の世帯に関する慰謝料(精神的損害)について、原判決の認定金額より増額させる理由にはならない。 アすなわち、①一審原告30-3が避難先の中学校でいじめを受けていたことについて何ら客観的証拠の提出はないし、仮にそのような事実があ ったとしても、学校におけるいじめ等は第三者の行為等によるものであるから、本件事故と相当因果関係がある原子力損害に該当するということはできない。 イまた、南相馬市のうち旧緊急時避難準備区域における空間放射線量は、平成23年4月1日時点で0.9μSV/時が計測され(乙B172の 1)、同年9月30日時点においても、概ね1μSV/時を下回っており、0.5μSV/時を下回る地点も複数存在しており(乙B172の2)、計画的避難区域に設定される基準であった年間積算線量20mSV(屋外では3.8μSV/時が目安となる。)に達するおそれのない状況であった。したがって、南相馬市のうち旧緊急時避難準備区域にお ける空間放射線量 設定される基準であった年間積算線量20mSV(屋外では3.8μSV/時が目安となる。)に達するおそれのない状況であった。したがって、南相馬市のうち旧緊急時避難準備区域にお ける空間放射線量は、そもそも同市の住民の避難を必要とするものではなく、上記②の除染活動の進捗状況は、避難継続の合理性を認める根拠にはなり得ない。 ウさらに、一審原告1-1らが指摘する上記③の出荷制限は、そのほとんどが帰還困難区域で産出された作物に関するものであり、同30の世帯 とは関連性がない。また、帰還困難区域でない南相馬市で産出された作物に関する摂取や出荷の差控えは、平成24年に産出されたものか、又は、検査の結果、基準値を超える放射性物質が検出されたものに限ったものであり、南相馬市で産出された作物一般について広く摂取や出荷が制限されていたのではない。さらに、出荷制限等があったとしても、南 相馬市以外の地で産出された物を購入したり、別の作物を作ったりする - 294 -ことはできたのであって、それによって平穏かつ正常な日常生活が相当程度阻害されたわけではないから、「法律上保護される利益」に対する侵害は認められない。 3 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、一審原告30の世帯に対し、直接請求手続及びADR 手続における支払として、合計3230万0087円を賠償した(乙C30の5)。 したがって、一審被告東京電力は十分な賠償を実施しており、既に賠償済みの1人当たり180万円の慰謝料に加えて、さらに追加の慰謝料を賠償する義務を負わない。 第29 一審原告31の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと(1) 一審原告31の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島県いわき市 を賠償する義務を負わない。 第29 一審原告31の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと(1) 一審原告31の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島県いわき市に居住しており、そもそも本件事故により法律上保護される利益に対する侵害があったとは認められない。したがって、同31の世帯に本 件事故と相当因果関係のある精神的損害は認められないし、避難に起因する財産的な支出についても、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (2) 仮に何らかの法律上保護される利益の侵害があるとしても、一審原告31の世帯は、平成23年4月下旬には愛知県小牧市内の県営住宅に入居し、 同31-1については、同年5月半ばから正社員として働いていることから、どんなに遅くとも同月半ば以降、法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害はない。 (3) なお、一審原告1-1らは、同31の世帯の平成23年12月31日(本件事故当時18歳以下であった同31-3については平成24年8月3 1日)以降の避難継続の相当性を基礎づける具体的な主張立証をしない。 - 295 -(4) 仮に何らかの法律上保護される利益に対する侵害があるとしても、本件事故発生当初の時期に放出された放射性物質による放射線の作用による影響は健康に影響を与えるものではなかったこと、そのことに関する報道等も繰り返し行われたこと、社会活動の再開等、事故後の状況に照らせば、そこで問題とされるべき侵害は、あくまでも本件事故発生当初の時期における、放 出された放射性物質による放射線の作用や健康への影響についての情報不足による不安感・危惧感による精神的苦痛に限られる。避難に起因する財産的な支出についても、一審原告31の 初の時期における、放 出された放射性物質による放射線の作用や健康への影響についての情報不足による不安感・危惧感による精神的苦痛に限られる。避難に起因する財産的な支出についても、一審原告31の世帯については平成23年5月半ばまでのものに限られることとなるが、下記のとおり、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (5) 他方、一審被告東京電力は令和4年7月1日までに、一審原告31の世帯に対して合計136万6316円を支払っており、十分な賠償を実施済みであって、同31の世帯の一審被告東京電力に対する損害賠償請求権は弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について (1) 一審原告1-1らは、控訴審において、同31の世帯が避難を開始し、継続したのは合理的であり、決して自主的に避難したのではなかったなどと主張するのみで、これを具体的に裏付ける新たな主張立証をしていない。 (2) 一審原告31-1は、避難前はいわき市で美容師として働いており、自分の店を持つことが夢だったものの、避難後は美容師とは異なる仕事につき、 店を持つことを諦めざるを得なくなったと主張するが、そもそも同31-1は自らの意思で避難したのであって、避難を強いられたものではなく、まして転職を強いられたものでもない。また、そもそも、避難前に同31-1が美容師として自分の店を持つことができる具体的な可能性や見通し等については何ら具体的な主張立証がない上、避難先でも美容師を転職先として探す ことも十分に考えられるが、異なる職についたことは、同31-1の任意の - 296 -判断によるものである。 したがって、仮に一審原告31-1が、美容師から転職したことや自分の店を持つことを諦めたことによ が、異なる職についたことは、同31-1の任意の - 296 -判断によるものである。 したがって、仮に一審原告31-1が、美容師から転職したことや自分の店を持つことを諦めたことによって精神的苦痛を受けていたとしても、その苦痛は本件事故とは相当因果関係がなく、同31-1に本件事故と相当因果関係のある精神的損害が生じているとは認められない。 (3) 一審原告31-1及び同31-2についての慰謝料額並びに本件事故時18歳以下であった同31-3についての慰謝料額は、それぞれ一審被告東京電力の賠償額である8万円及び48万円を超えるものではない。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について(1) 一時立入り・帰省費用 原判決は、平成23年6月14日の一審原告31-2の実家への電車での帰省、同年の年末から平成24年の年始までの同31-1の実家への電車での帰省及び同年夏の同31-1の実家への電車での帰省の3回の帰省に要した交通費10万1640円を損害として認めたが、仮に本件事故発生当初の時期においては避難の相当性が認められるとしても、その期間は長くとも平 成23年5月半ば頃までと考えられ、それ以降の避難継続の相当性は認められないから、上記交通費については、本件事故との相当因果関係は認められない。 また、一審原告1-1らは、同31-1の一時立入り・帰省費用の支出について、平成25年8月以降の一部しか領収証等を提出せず、損害自体の立 証がなされていない。 (2) 引越し準備費用原判決は、平成23年3月下旬又は4月上旬に一審原告31-1が引越し準備のために自動車でいわき市に帰ったとして、ガソリン代等の費用1万円を損害として認めたが、そもそも自主的避難等対象区域に居住し 原判決は、平成23年3月下旬又は4月上旬に一審原告31-1が引越し準備のために自動車でいわき市に帰ったとして、ガソリン代等の費用1万円を損害として認めたが、そもそも自主的避難等対象区域に居住していた同3 1-1について、本件事故発生当初の時期においても避難の相当性が認めら - 297 -れるのか、また上記ガソリン代等の費用について本件事故との相当因果関係が認められるのかは疑問がある。 また、一審原告1-1らは、同31-1の引越し準備費用の支出について、客観的な証拠を提出しておらず、損害自体の発生が認められない。 第30 一審原告32の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと(1) 一審原告32の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島県いわき市に居住しており、そもそも本件事故による法律上保護される利益に対する侵害があったとは認められない。したがって、同32の世帯に本件事故と相当因果関係のある精神的損害は認められないし、避難に起因する 財産的な支出についても、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。仮に何らかの法律上保護される利益の侵害があるとしても、同32-1については、どんなに遅くとも、平成23年12月31日を超えて侵害が認められるものではなく、また、同32-2から同32-5までについては、同年5月には、群馬県の借上げ住宅に入居し、新たな環境で平穏な 日常生活を送ることができる状態となっていたから、これ以降法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害はない。 (2) そして、仮に何らかの法律上保護される利益に対する侵害があるとしても、本件事故発生当初の時期に放出された放射性物質による放射線の作用による影響は健康に影響を与えるものではなかったこと い。 (2) そして、仮に何らかの法律上保護される利益に対する侵害があるとしても、本件事故発生当初の時期に放出された放射性物質による放射線の作用による影響は健康に影響を与えるものではなかったこと、そのことに関する報 道等も繰り返し行われたこと、社会活動の再開等、事故後の状況に照らせば、そこで問題とされるべき侵害は、あくまでも本件事故発生当初の時期における、放出された放射性物質による放射線の作用や健康への影響についての情報不足による不安感・危惧感による精神的苦痛に限られる。避難に起因する財産的な支出についても、一審原告32-1については、平成23年12月 31日までのもの、また、同32-2から同32-5までについては、同年 - 298 -5月までのものにそれぞれ限られることとなるが、下記のとおり、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (3) 他方、一審被告東京電力は、令和4年7月1日までに一審原告32の世帯に対して合計292万8583円を支払っており、十分な賠償を実施済みであって、同32の世帯の損害賠償請求権は弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について(1) 一審原告1-1らは、同32の世帯の①本件事故当時の住所が、避難対象となった地域にも比較的近く、放射能の影響に対する不安が大きかったこと、②子ら(同32-3から同32-5まで)に対する健康の不安があり、甲状腺にのう胞が見つかったこと、血液検査で甲状腺ホルモンが上昇してい るとの結果が出たことを主張する。 (2) しかし、一審原告32の世帯が居住していたいわき市の空間放射線量は、前記第26のとおり客観的に健康に影響を及ぼすような空間放射線量ではなかった。また、同32の世帯は、平成23年3月13日に群馬県 ) しかし、一審原告32の世帯が居住していたいわき市の空間放射線量は、前記第26のとおり客観的に健康に影響を及ぼすような空間放射線量ではなかった。また、同32の世帯は、平成23年3月13日に群馬県安中市へ避難したが、同市の測定開始当初の各施設測定結果(同年6月13日から平成 24年1月13日)によれば、最大でも0.319μSV/時程度であり(乙B462)、いわき市同様、避難指示の基準となる年間20mSVを大きく下回る水準であって、客観的に健康に影響を及ぼすような空間放射線量ではない。したがって、仮に、同32-1らが何らかの不安を感じていたとしても、客観的証拠に基づかない漠然とした不安感にとどまる。 (3) また、子ら(一審原告32-3から同32-5まで)に対する健康の不安についても、甲状腺にのう胞が見つかったこと及び血液検査で甲状腺ホルモンが上昇しているとの結果が出たことと本件事故との因果関係は何ら立証がない。 (4) また、一審原告1-1らは、原判決は、同32の世帯が、本件事故によ り事故前に有していた包括的生活基盤とそこから享受していた利益を丸ごと - 299 -失った事実を適切に評価していないと主張する。しかし、同32の世帯は、自主的避難等対象区域に居住しており、避難を強制されたものではないし、上記主張事実についても具体的に立証しておらず、失当である。 (5) したがって、一審原告32の世帯について、本件事故と相当因果関係のある精神的損害が生じているとは認められない。 (6) 一審原告32-1及び同32-2についての慰謝料額並びに本件事故時18歳以下であった同32-3から同32-5までの慰謝料額は、それぞれ一審被告東京電力の賠償額である8万円及び48万円を超えるものではない。 32-1及び同32-2についての慰謝料額並びに本件事故時18歳以下であった同32-3から同32-5までの慰謝料額は、それぞれ一審被告東京電力の賠償額である8万円及び48万円を超えるものではない。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について(1) 一審原告1-1らは、一審被告東京電力が一審原告32-1に支払った 額以上の面会交通費を認めなかった原判決は不当であり、家族との面会は、週1回必要であった旨を主張する。しかしながら、同1-1らは、そもそも同32-1が家族と週1回の面会をしていた事実を全く立証しない。したがって、そもそも週1回の面会の事実が認められないから損害の発生も認められず、同1-1らの上記主張は失当である。 (2) また、一審原告1-1らは、同32-1は、安中市に避難した家族と会うため、いわき市から安中市の間を、少なくとも月4回(週1回)、17か月間で最低68往復しており、それにより自動車のタイヤ交換やオイル交換を通常より多くしなければならず、車両メンテナンス費を損害として認めなかった原判決は不当であると主張する。しかし、そもそも、同32-1が1 7か月間でいわき市から安中市の間を最低68往復した事実についての立証がなく、最低68往復する必要があったことについても何ら立証がない。したがって、車両メンテナンス費に係る同1-1らの主張は立証のない事実を前提とするものであり、失当である。 (3) さらに、一審原告1-1らは、同32-1及び同32-2の交通費、引 越し費用、就労不能損害の全部又は一部を認めなかった原判決は不当である - 300 -旨主張する。しかし、交通費について、これを要したこと自体の立証がない。 また、仮に本件事故発生当初の時期に何らかの法律上保護される利 部を認めなかった原判決は不当である - 300 -旨主張する。しかし、交通費について、これを要したこと自体の立証がない。 また、仮に本件事故発生当初の時期に何らかの法律上保護される利益の侵害が認められるとしても、上記のとおり、一審原告32-1については、遅くとも平成23年12月31日以降、法律上保護される利益の侵害は認められない。 したがって、平成23年12月31日以降に発生した交通費、引越し費用、就労不能損害は、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とはいえない。 (4) 原判決は、平成23年5月から平成24年8月まで一審原告32-2が群馬県内の借上げ住宅に居住し、駐車場代の月額1000円を支払っていたとして、合計1万6000円を損害として認めた。 しかし、一審原告32の世帯は避難を強いられたものではなく、自主的かつ任意の判断によって避難したものであるから、これに伴って発生した駐車場使用料は本件事故と相当因果関係のある原子力損害と認められないし、同1-1らは、同32-2が駐車場代を支出したことについて客観的な証拠を提出しておらず、損害の発生が認められない。 一審原告1-1らは、同32-2の駐車場代について、平成23年4月23日以降も避難継続の相当性が認められること、借上げ住宅の駐車場使用料を県が負担するとの住宅入居者募集要領が施行されたのは同年8月1日であるが、同32の世帯はそれより前の同年5月から入居した旨を主張する。 しかし、仮に本件事故発生当初の時期においては避難の相当性が認められ るとしても、その期間は長くとも平成23年5月までと考えられ、それ以後は避難継続の相当性は認められないから、上記駐車場代について、本件事故との相当因果関係は認められな 避難の相当性が認められ るとしても、その期間は長くとも平成23年5月までと考えられ、それ以後は避難継続の相当性は認められないから、上記駐車場代について、本件事故との相当因果関係は認められない。また、駐車場代の支出について客観的な証拠を提出せず、損害自体の発生が認められない。 (5) 以上のとおり、一審原告32-1及び同32-2について、本件事故と 相当因果関係のある財産的損害が生じているとは認められない。 - 301 -第31 一審原告33の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと(1) 一審原告33の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島県いわき市に居住しており、そもそも本件事故による法律上保護される利益に対する侵害があったとは認められない。したがって、同33の世帯に本 件事故と相当因果関係のある精神的損害は認められないし、避難に起因する財産的な支出についても、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 また、仮に何らかの法律上保護される利益の侵害があるとしても、一審原告33の世帯については、どんなに遅くとも、平成23年12月31日を超 えて侵害が認められるものではなく、これ以降、法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害はない。 (2) そして、仮に何らかの法律上保護される利益に対する侵害があるとしても、本件事故発生当初の時期に放出された放射性物質による放射線の作用による影響は健康に影響を与えるものではなかったこと、そのことに関する報 道等も繰り返し行われたこと、社会活動の再開等、事故後の状況に照らせば、そこで問題とされるべき侵害は、あくまでも本件事故発生当初の時期における、放出された放射性物質による放射線の作 関する報 道等も繰り返し行われたこと、社会活動の再開等、事故後の状況に照らせば、そこで問題とされるべき侵害は、あくまでも本件事故発生当初の時期における、放出された放射性物質による放射線の作用や健康への影響についての情報不足による不安感・危惧感による精神的苦痛に限られる。避難に起因する財産的な支出についても、一審原告33の世帯については、平成23年12 月31日までのものに限られるが、下記のとおり、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (3) 他方、一審被告東京電力は、令和4年7月1日までに、一審原告33の世帯に対して合計1486万7652円を支払っており、さらに、同33-1が代表取締役を務めていた会社に対しても合計1404万5347円を支 払済みである(乙C33の4)。つまり、一審被告東京電力は一審原告33 - 302 -の世帯に対し、十分な賠償を実施済みであって、同33の世帯の損害賠償請求権は弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について(1) 一審原告1-1らは、同33の世帯の①本件事故当時の住所が、避難対象となった地域にも比較的近く、放射能の影響に対する不安が大きかったこ と、②同居していた孫(同32-3から同32-5まで)に対する健康の不安があり、甲状腺にのう胞が見つかったこと、血液検査で甲状腺ホルモンが上昇しているとの結果が出たことを主張し、避難継続の合理性を平成23年12月31日までしか認めなかった原判決は不当である旨主張する。 (2) しかし、前記のとおり、一審原告33の世帯が居住していたいわき市の 空間放射線量は客観的に健康に影響を及ぼすようなものではなく、同33-1及び同33-2が何らかの不安を感じていたとしても、それは客観的 前記のとおり、一審原告33の世帯が居住していたいわき市の 空間放射線量は客観的に健康に影響を及ぼすようなものではなく、同33-1及び同33-2が何らかの不安を感じていたとしても、それは客観的証拠に基づかない漠然とした不安感にとどまる。また、同居していた孫(同32-3から同32-5まで)に対する健康の不安についても、甲状腺にのう胞が見つかったこと及び血液検査で甲状腺ホルモンが上昇しているとの結果が 出たことと本件事故との因果関係は、何ら立証されていない。 (3) 一審原告1-1らは、原判決が同33の世帯が本件事故により、事故前に有していた包括的生活基盤とそこから享受していた利益を丸ごと失った事実を適切に評価していない旨を主張する。しかしながら、前記のとおり、同33の世帯は避難を強制されたものではないし、同1-1らは、同33の世 帯が事故前に有していた包括的生活基盤とそこから享受していた利益を丸ごと失った事実を具体的に主張立証しておらず、上記主張は失当である。 (4) したがって、一審原告33の世帯について、本件事故と相当因果関係のある精神的損害が生じているとは認められない。 (5) 仮に認められるとしても、一審原告33の世帯についての慰謝料額は、 それぞれ一審被告東京電力の賠償額である8万円を超えるものではない。 - 303 - 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について(1) 一審原告1-1らは、一審被告東京電力が一審原告33-2に支払った額以上の面会交通費を認めなかった原判決は不当である旨を主張するが、同1-1らは、同33-2が実際に月4回、長女の子の面倒を見るために群馬県に行っていたことについて一切立証しない。 (2) また、一審原告1-1らは、同33-1の交通費、引越 主張するが、同1-1らは、同33-2が実際に月4回、長女の子の面倒を見るために群馬県に行っていたことについて一切立証しない。 (2) また、一審原告1-1らは、同33-1の交通費、引越し費用、福島の自宅を売却するのに伴って要した費用、岐阜の自宅を購入する際に要した費用、就労不能損害の全部又は一部を認めなかった原判決は不当である旨主張する。しかし、仮に本件事故発生当初に何らかの法律上保護される利益の侵害が認められるとしても、前記のとおり、同一審原告には、平成23年12 月31日以降、法律上保護される利益の侵害は認められない。この点について、一審原告1-1らは、単に避難継続の合理性は現在まで認められるべきであると主張するのみで、これを裏付ける新たな立証をしていない。 したがって、一審原告1-1らが主張する同33-1の上記各費用のうち、平成23年12月31日以降に発生したものは、本件事故と相当因果関係の ある原子力損害とは認められない。 (3) 以上のとおり、一審原告33の世帯について、本件事故と相当因果関係のある財産的損害が生じているとは認められない。 第32 一審原告34の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと (1) 一審原告34の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島県伊達郡国見町に居住していた者であり、そもそも本件事故による法律上保護される利益に対する侵害があったとは認められない。したがって、同34の世帯に本件事故と相当因果関係のある精神的損害は認められないし、避難に起因する財産的な支出についても本件事故と相当因果関係のある原子力 損害とは認められない。 - 304 -(2) 仮に何らかの法律上保護される利益に対する侵害があるとしても、一審 起因する財産的な支出についても本件事故と相当因果関係のある原子力 損害とは認められない。 - 304 -(2) 仮に何らかの法律上保護される利益に対する侵害があるとしても、一審原告34-1については、どんなに遅くとも、平成23年12月31日を超えては侵害が認められず、また本件事故時に18歳以下であった同34-2から同34-4までについては、平成24年3月28日には新たな環境で平穏な日常生活を送ることができる状態となり、これ以降の法律上保護される 利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害はない。 (3) また、仮に何らかの法律上保護される利益に対する侵害があるとしても、本件事故発生当初の時期に放出された放射性物質による放射線の作用による影響は健康に影響を与えるものではなかったこと、そのことに関する報道等も繰り返し行われたこと、社会活動の再開等、事故後の状況に照らせば、そ こで問題とされるべき侵害は、あくまでも本件事故発生当初の時期における、放出された放射性物質による放射線の作用や健康への影響についての情報不足による不安感・危惧感による精神的苦痛に限られる。避難に起因する財産的な支出についても、一審原告34-1については平成23年12月31日までのもの、また同34-2から同34-4までについては平成24年3月 28日までのものにそれぞれ限られることとなるが、下記のとおり、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (4) 他方、一審被告東京電力は、令和4年7月1日までに、一審原告34の世帯に対して合計641万7651円を支払っており、十分な賠償を実施済みであって、同34の世帯の一審被告東京電力に対する損害賠償請求権は弁 済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求 に対して合計641万7651円を支払っており、十分な賠償を実施済みであって、同34の世帯の一審被告東京電力に対する損害賠償請求権は弁 済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について(1) 一審原告1-1らは、同34の世帯が父子家庭で、かつ同34-3及び同34-4は広汎性発達障害・注意欠陥多動性障害を有している中で避難生活が行われたものであり、このような事情がない世帯と比較すると避難生活 が大変であり、当該事情は慰謝料の増額事由に該当する旨主張する。しかし、 - 305 -仮に本件事故発生当初に何らかの法律上保護される利益の侵害が認められるとしても、同34-3及び同34-4が広汎性発達障害・注意欠陥多動性障害と診断されたことと本件事故との間に因果関係を認めることはできない。 したがって、当該事情によって本件事故と相当因果関係のある精神的損害が発生しているということはできない。 (2) この点に関し、一審原告1-1らは、同34-3及び同34-4が広汎性発達障害・注意欠陥多動性障害と診断されたという事情は、民法416条が規定する損害賠償の範囲の問題であって、発達障害が一定の割合で確認される障害であり、本件事故の影響が広範囲に及んでいることからすれば、「通常の事情」又は少なくとも「予見可能な特別の事情」に該当する旨を主 張する。しかし、同34-3及び同34-4が広汎性発達障害・注意欠陥多動性障害と診断されたという事情は、上記各発達障害の児童の割合が6. 5%であることからすれば「通常の事情」とはいえず、また、一審被告東京電力が予見可能であったともいえない。その点を措いても、上記のとおり、本件で問題とされるべき侵害は、あくまでも本件事故発生当初の時期におけ る、放出された 事情」とはいえず、また、一審被告東京電力が予見可能であったともいえない。その点を措いても、上記のとおり、本件で問題とされるべき侵害は、あくまでも本件事故発生当初の時期におけ る、放出された放射性物質による放射線の作用や健康への影響についての情報不足に基づく不安感・危惧感による精神的苦痛に限られるところ、一審原告34-3及び同34-4が上記各発達障害であることで転居先での生活に通常に比して労苦が伴うという事情は上記侵害と相当因果関係が認められず、本件事故と相当因果関係のある精神的損害の発生を基礎づけるものではない。 (3) 仮に認められるとしても、一審原告34-1についての慰謝料額並びに本件事故時18歳以下であった同34-2から同34-4までについての慰謝料額は、それぞれ一審被告東京電力の賠償額である8万円及び48万円を超えるものではない。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について 一審原告1-1らは、同34-1の就労不能損害につき、①本件事故がなけ - 306 -れば福島の実家で同34-2から同34-4までの家事・育児を担っていた同34-1の母と生活を送ることができていたこと、②就労意欲のある者が就職活動をした場合、就職活動を行う時間が長くなれば就職できる人数も増えるということが通常の経験則であること、③交通事故の事案において、事故当時定職に就いていなかった者でも休業損害が認められた事案があることを理由に、 本件事故による避難がなければ、同一審原告は従前と同程度の収入が得られる仕事に就くことが十分に可能であった旨主張する。 しかし、仮に本件事故発生当初に何らかの法律上保護される利益の侵害が認められるとして、かつ、上記①の点や②の経験則が認められるのか否かの問題を措くとしても、そもそも一 能であった旨主張する。 しかし、仮に本件事故発生当初に何らかの法律上保護される利益の侵害が認められるとして、かつ、上記①の点や②の経験則が認められるのか否かの問題を措くとしても、そもそも一審原告34-1は、平成22年2月に失職した後 から、3名の子を養育しながら仕事を探していたものの、採用面接に至ることも余りなく(甲C34の1、一審原告34-1本人(原審))、失業後1年以上が経過した本件事故当時においても就労していなかったのであるから、同一審原告が居住地を離れなければそう遠くない時期に従前と同程度の収入が得られる仕事に就くことが十分に可能であったとは到底いえない。 また、上記③のような事案があるとしても、それによって一審原告34-1が居住地を離れなければ、そう遠くない時期に従前と同程度の収入が得られる仕事に就くことが十分に可能であったことにはならない。 したがって、一審原告34-1の請求する就労不能損害は、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 第33 一審原告35の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと(1) 一審原告35の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島市に居住していた者であり、そもそも本件事故による法律上保護される利益に対する侵害があったとは認められない。したがって、同35の世帯に本 件事故と相当因果関係のある精神的損害は認められないし、避難に起因する - 307 -財産的な支出についても、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (2) 仮に何らかの法律上保護される利益の侵害が認められる場合があるとしても、一審原告35-1及び同35-2については、どんなに遅くとも、平成23年12月31日を超えて侵害が められない。 (2) 仮に何らかの法律上保護される利益の侵害が認められる場合があるとしても、一審原告35-1及び同35-2については、どんなに遅くとも、平成23年12月31日を超えて侵害が認められるものではなく、また、本件 事故時に18歳以下であった同35-3については、平成24年3月末には新たな環境で平穏な日常生活を送ることができる状態となり、これ以降法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害はない。 (3) 仮に何らかの法律上保護される利益に対する侵害があるとしても、本件事故発生当初の時期に放出された放射性物質による放射線の作用による影響 は健康に影響を与えるものではなかったこと、そのことに関する報道等も繰り返し行われたこと、社会活動の再開等、事故後の状況に照らせば、そこで問題とされるべき侵害は、あくまでも本件事故発生当初の時期における、放出された放射性物質による放射線の作用や健康への影響についての情報不足による不安感・危惧感による精神的苦痛に限られる。避難に起因する財産的 な支出についても、一審原告35-1及び同35-2については平成23年12月31日までのもの、また本件事故時に18歳以下であった同35-3については平成24年3月末までのものにそれぞれ限られるが、下記のとおり、いずれも本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (4) 他方、一審被告東京電力は、令和4年7月1日までに、一審原告35の 世帯に対して合計296万6398円を既に支払っており、全体として十分な賠償を実施済みであって、同35の世帯の損害賠償請求権は弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について(1) 一審原告7-1らは、同35の世帯の慰謝料請求に係る被害の具体的な 償を実施済みであって、同35の世帯の損害賠償請求権は弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について(1) 一審原告7-1らは、同35の世帯の慰謝料請求に係る被害の具体的な 内容として、①本件事故によって平穏で安全な生活が喪失したこと、②被ば - 308 -くによる健康被害に対する不安、③同35-3が避難先で同級生から中傷を受け、精神的苦痛を受けたことなどを主張している。 (2) しかし、一審原告7-1らの上記主張はいずれも理由がない。 アすなわち、①一審原告35の世帯が本件事故時居住していた福島市の空間放射線量は本件事故後時間の経過とともに低減しており、避難指示の 基準である20mSV/年(3.8μSV/時)を大きく下回っていることや、ホットスポットがあるとされた同市地区でも除染が開始されていること、同市で自主避難を実施したのは平成23年3月15日の時点で人口比1.1%にとどまり、他方で同市は他の地域からの避難者を受け入れていたこと、その他社会活動の状況からすると、同35の世 帯が平成24年3月に岐阜市に移転したのは任意の判断によるものであるため、本件事故と相当因果関係のある損害に該当しない。 イまた、②一審原告35の世帯の被ばくによる健康被害に対する不安は、客観的、科学的根拠のない漠然とした不安であり、法律上保護される利益に対する侵害が生じていると評価することはできない。 ウさらに、③避難先での中傷等は第三者の行為等によるものであるから、それにより精神的苦痛を負ったとしても、本件事故と相当因果関係のある損害には該当しない。 (3) 仮に認められるとしても、一審原告35-1及び同35-2についての慰謝料額並びに本件事故時18歳以下であった同 的苦痛を負ったとしても、本件事故と相当因果関係のある損害には該当しない。 (3) 仮に認められるとしても、一審原告35-1及び同35-2についての慰謝料額並びに本件事故時18歳以下であった同35-3についての慰謝料 額は、それぞれ一審被告東京電力の賠償額である8万円及び48万円を超えるものではない。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について原判決が認容した一審原告35の世帯の個別の財産的損害(同35-1の避難費用1万円、引越し費用1万円、面会交通費11万7500円、その他(避 難雑費)54万円、家財道具購入費10万円、教育費2万2500円、その他 - 309 -(ADR弁護士費用)7万7132円、同35-2の就労不能損害116万6666円)に関して、一審で提出された客観証拠は、子ども会への会費納入の領収書(甲C35の2)、同35-3のスイミングクラブへの入会金等の支払いの領収証(甲C35の3)、駐車場賃貸借契約書(甲C3の4)のみである。 前記のとおり、同35-1及び同35-2については平成23年12月31日 には、また、本件事故時に18歳以下であった同35-3については平成24年3月末にはそれぞれ新たな環境で日常生活を送ることができる状態となり、これ以降、法律上保護される利益の侵害はなかったのであるから、上記各証拠は同35の世帯の財産的損害を立証するものではない。したがって、同35の世帯に本件事故と相当因果関係のある原子力損害に該当する財産的損害が生じ たことについては、何らの客観的証拠がなく、財産的損害は全く立証されていないから、原判決が同35の世帯の財産的損害の一部を認容した判断は誤っている。 第34 一審原告36の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと (1) 一 産的損害は全く立証されていないから、原判決が同35の世帯の財産的損害の一部を認容した判断は誤っている。 第34 一審原告36の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと (1) 一審原告36の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島県いわき市に居住していた者であり、そもそも本件事故による法律上保護される利益に対する侵害があったとは認められない。したがって、同36の世帯に本件事故と相当因果関係のある精神的損害は認められないし、避難に起因する財産的な支出についても、本件事故と相当因果関係のある原子力損 害とは認められない。 (2) 仮に何らかの法律上保護される利益に対する侵害があるとしても、一審原告36の世帯は、どんなに遅くとも、平成23年5月には群馬県の借上げ住宅に入居し、新たな環境で平穏な日常生活を送れる状態となり、これ以降、法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害はない。 (3) 仮に何らかの法律上保護される利益に対する侵害があるとしても、本件 - 310 -事故発生当初の時期に放出された放射性物質による放射線の作用による影響は健康に影響を与えるものではなかったこと、そのことに関する報道等も繰り返し行われたこと、社会活動の再開等、事故後の状況に照らせば、そこで問題とされるべき侵害は、あくまでも本件事故発生当初における、放出された放射性物質による放射線の作用や健康への影響についての情報不足による 不安感・危惧感による精神的苦痛に限られる。避難に起因する財産的な支出についても、一審原告36の世帯については、どんなに遅くとも上記の平成23年5月までのものに限られるが、下記のとおり、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (4) 他方、一審被告東京電力は 一審原告36の世帯については、どんなに遅くとも上記の平成23年5月までのものに限られるが、下記のとおり、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (4) 他方、一審被告東京電力は、令和4年7月1日までに、一審原告36の 世帯に対して合計181万6487円を支払っており、全体として十分な賠償を実施済みであって、同36の世帯の一審被告東京電力に対する損害賠償請求権は弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について(1) 一審原告1-1らは、同36の世帯の①本件事故当時の住所が福島第一 原発に比較的近く、放射能の影響に対する不安が大きかったこと、②同36-3が平成24年8月の甲状腺検査でのう胞ができているとの結果であったこと等を理由に、平成23年12月31日以降(本件事故当時18歳以下の同36-2及び同36-3については平成24年8月31日以降)も避難継続の合理性があると主張する。しかし、同36の世帯の本件事故当時の住所 は福島第一原発から約45kmの距離にあり、本件事故発生当初に放出された放射性物質による放射線の作用による健康影響はないと認められている自主的避難等対象区域にある。また、同36の世帯が居住していたいわき市の空間放射線量は、前記第30のとおり、客観的に健康に影響を及ぼすようなものではなく、仮に、同36の世帯が何らかの不安を感じていたとしても、 客観的証拠に基づかない漠然とした不安感にとどまる。 - 311 -また、一審原告36-3の甲状腺検査の結果は、当初は「A1」判定であり、平成29年には「A2」判定であったところ、「A2」判定であった場合でも二次検査までの必要はなく、定期的に経過を観察するほかは特段の治療等は必要ないとされ、また、のう胞は「 初は「A1」判定であり、平成29年には「A2」判定であったところ、「A2」判定であった場合でも二次検査までの必要はなく、定期的に経過を観察するほかは特段の治療等は必要ないとされ、また、のう胞は「健康な方にも見つかることの多い、良性のもの」とされており、のう胞の発生と本件事故による放射線の作用等 との間に相当因果関係は認められない。 したがって、一審原告1-1らの上記主張は理由がない。 (2) また、一審原告1-1らは、原判決が、同36の世帯が本件事故により事故前に有していた包括的生活基盤とそこから享受していた利益を丸ごと失った事実を適切に評価していない旨主張する。 しかしながら、既に述べたとおり、一審原告36の世帯は自主的避難等対象区域に居住しており、避難を強制されたものではないし、上記事実について具体的に主張立証していないから、上記主張は失当である。 (3) したがって、一審原告36の世帯について、本件事故と相当因果関係のある精神的損害が生じているとは認められない。 (4) 仮に認められるとしても、一審原告36-1についての慰謝料額並びに本件事故時18歳以下であった同36-2及び同36-3についての慰謝料額は、それぞれ一審被告東京電力の賠償額である8万円及び48万円を超えるものではない。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について (1) 一審原告1-1らは、原判決が証拠の不存在を理由に損害として認めなかった同36の世帯の家財道具購入費用及び車庫証明手数料について、避難の混乱の中、領収証の保存の負担を課すのは酷である旨主張する。しかし、上記のとおり、同36の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域に居住していて避難を強いられたものではなく、また、同1-1らは、同3 乱の中、領収証の保存の負担を課すのは酷である旨主張する。しかし、上記のとおり、同36の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域に居住していて避難を強いられたものではなく、また、同1-1らは、同36の 世帯が転居に際して家財道具を新たに購入する必要性があったことや、転居 - 312 -先での生活にあたり自動車を利用することが必要不可欠であったことを何ら立証していない。また、この点を措くとしても、結局のところ同36の世帯が家財道具購入費用及び車庫証明手数料を支出した事実を何ら立証しておらず、本件事故と相当因果関係のある損害として認められない。 (2) 原判決は、一審原告36-1が平成23年3月から平成24年8月まで の18か月間、友人宅でルームシェアをして月額3万円を負担していたとして、宿泊費及び謝礼として合計54万円を損害として認めた。しかしながら、そもそも本件事故発生の当初においても避難の相当性が認められるのか疑問がある上、仮に認められるとしても、その期間は長くとも平成23年5月までと考えられるから、上記宿泊費及び謝礼について、本件事故との相当因果 関係は認められない。また、同1-1らは、同36-1が上記月額3万円を支出したことについて客観的な証拠を提出しておらず、損害の発生自体が認められない。 第35 一審原告37の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと 一審原告37の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島県いわき市に居住していた者であり、そもそも本件事故による法律上保護される利益に対する侵害があったとは認められず、避難の相当性は認められない。したがって、同37の世帯に本件事故と相当因果関係のある精神的損害は認められないし、避難に起因する財産的な支出についても、本件事 利益に対する侵害があったとは認められず、避難の相当性は認められない。したがって、同37の世帯に本件事故と相当因果関係のある精神的損害は認められないし、避難に起因する財産的な支出についても、本件事故と相当因果関係 のある原子力損害とは認められない。 2 一審原告37の世帯に既払い金を超える精神的損害は認められないこと(1) 一審原告37の世帯は、平成23年3月15日に避難したが、同月25日には同37-4及び同37-2の祖母はいわき市へ帰宅し、同年5月21日には同37-1らもいわき市に戻り、同37-3は同市の保育園への通園 を再開した。 - 313 -(2) また、いわき市の空間放射線量率は客観的に健康に影響を及ぼすようなものでなかったし、同市民についての、内部被ばく検査や外部被ばく線量推計の結果は、健康に影響が及ぶ数値ではなかった。一審原告37-3は、甲状腺検査でのう胞が見つかったとのことだが「健康な方にも見つかることの多い、良性のもの」とされている。 (3) 一審原告37の世帯は、平成23年12月25日には名古屋市の借上げ住宅に入居し、遅くとも同日には新たな環境で日常生活を送ることができる状態になっていたのであるから、法律上保護される利益の侵害が生じたとしてもその程度は軽微である。なお、同37の世帯及び同37-2の祖母は本件事故後ほとんど同居していないが、その主たる要因は、同37-1の転勤 にあり、本件事故により離別を余儀なくされたものではない。 (4) したがって、一審原告37の世帯には、一審被告東京電力の既払い金を超える精神的損害は認められない。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について(1) 一審原告37-2 ア宿泊費原判決は、一審原 は、一審被告東京電力の既払い金を超える精神的損害は認められない。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について(1) 一審原告37-2 ア宿泊費原判決は、一審原告37-2の平成23年3月18日から同月24日までの間のホテルの宿泊費として2万1000円を認めた。しかしながら、同1-1らは、原審及び控訴審を通じ、その客観的な証拠を提出しない。 しかも、同37-2は自主的避難等対象区域に居住していた者であり、 そもそも本件事故発生当初の時期においても、上記宿泊費について本件事故との相当因果関係が認められるのかは疑問がある。また、原判決は、同年12月25日のホテルの宿泊費として5000円を認めたが、これを裏付ける客観的な証拠は提出されていないし、同37-2について、仮に本件事故発生当初の時期においては避難の相当性が認められるとし ても、その期間はどんなに長くとも同日までと考えられるから、上記宿 - 314 -泊費については本件事故との相当因果関係は認められない。 イその他原判決は、一審原告37-2が平成23年12月下旬頃に愛知県の避難者用のアパートの下見に行った際の交通費及び宿泊費として3万5000円を認めたが、裏付けとなる証拠は提出されておらず、損害の発生自 体が認められない。 (2) 一審原告37-3原判決は、一審原告37-2に対するのと同様の理由から、同37-3につき宿泊費として1万3000円、その他として1万7500円を認めたが、同37-2と同様に、損害の発生及び相当因果関係は認められない。 (3) 一審原告37-4原判決は、一審原告37-4について平成23年12月25日の避難途中のホテルの宿泊費として5000円を認めたが、同37-2及び 生及び相当因果関係は認められない。 (3) 一審原告37-4原判決は、一審原告37-4について平成23年12月25日の避難途中のホテルの宿泊費として5000円を認めたが、同37-2及び同37-3と同様、その支出を示す客観的な証拠の提出がないから、上記宿泊費については損害の発生自体が認められない。 第36 一審原告38の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと(1) 一審原告38の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島市に居住していた者であり、そもそも本件事故による法律上保護される利益に対する侵害があったとは認められず、避難の相当性は認められない。し たがって、同38の世帯に本件事故と相当因果関係のある精神的損害は認められないし、避難に起因する財産的な支出についても、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (2) また、仮に本件事故発生当初の時期に何らかの法律上保護される利益の侵害が認められるとしても、一審原告38-2及び同38-3については、 平成23年3月20日には新たな環境で平穏な日常生活を送ることができる - 315 -状態となり、これ以降、法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害はない。避難に起因する財産的な支出についても、同38の世帯については同日までのものに限られるが、下記のとおり、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (3) さらに、一審原告38の世帯について、平成23年3月20日頃を超え て法律上保護される利益の侵害が認められる場合があるとしても、どんなに遅くとも、原判決が認定したとおり同年12月31日を超えて、また同38-3については平成24年8月31日を超えて侵害が認められるものではな 護される利益の侵害が認められる場合があるとしても、どんなに遅くとも、原判決が認定したとおり同年12月31日を超えて、また同38-3については平成24年8月31日を超えて侵害が認められるものではなく、これ以降、法律上保護される利益の侵害はない。 (4) 仮に何らかの法律上保護される利益に対する侵害があるとしても、本件 事故発生当初の時期に放出された放射性物質による放射線の作用による影響は、健康に影響を与えるものではなかったこと、そのことに関する報道等も繰り返し行われたこと、社会活動の再開等、事故後の状況に照らせば、そこで問題とされるべき侵害は、あくまでも本件事故発生当初の時期における、放出された放射性物質による放射線の作用や健康への影響についての情報不 足による不安感・危惧感による精神的苦痛に限られる。避難に起因する財産的な支出についても、どんなに遅くとも平成23年12月31日までのものに限られ、かつ下記のとおり、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (5) 他方、一審被告東京電力は、令和4年7月1日までに、一審原告38の 世帯に対して合計737万4265円を支払っており、十分な賠償を実施済みであって、同38の世帯の損害賠償請求権は弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について(1) 一審原告1-1らは、①同38-1が同38-2及び同38-3との別居生活の長期化から体調を崩したこと、②避難したことにより福島県内に残 る親しい友人との関係が崩れたこと、③同38-3が避難したことで、福島 - 316 -県内で幼児時代を過ごすことができなくなり、これにより、同38-1及び同38-2との間に軋轢が生まれたことという事情を挙げ、原判決の認定した慰謝料額が低額で 難したことで、福島 - 316 -県内で幼児時代を過ごすことができなくなり、これにより、同38-1及び同38-2との間に軋轢が生まれたことという事情を挙げ、原判決の認定した慰謝料額が低額である旨主張する。 (2) しかし、一審原告38-1の平成27年9月の虚血性大腸炎については食生活とストレスが原因であって(一審原告38-2本人(原審))、本件 事故による放射線の作用等とは相当因果関係はなく、その他に同38-1が具体的に健康を害した事実(上記①)について同1-1らは何ら主張立証していない。 (3) また、一審原告38の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域に居住し、本件事故により避難を余儀なくされたものではないし、同38-2 自身も避難の必要がない旨の報道や被ばくの影響に関して「微量→まず心配なし」といった記事も見たことがあるとしており(一審原告38-2本人(原審)等)、避難の必要がないことを認識していたから、仮に上記②の事情が認められるとしても、それは本件事故と相当因果関係のある精神的損害の発生を基礎づける事情ではない。 (4) さらに、一審原告1-1らは、同38の世帯の上記③の軋轢について何ら具体的に主張立証していない。 (5) 仮に認められるとしても、一審原告38-1及び同38-2についての慰謝料額及び本件事故時18歳以下であった同38-3についての慰謝料額は、それぞれ一審被告東京電力の自主賠償基準による賠償額である8万円及 び48万円を超えるものではない。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について(1) 一審原告1-1らは、①同38の世帯の家財道具購入費、水道光熱費及び食費について、同38の世帯が二重生活により支出を強いられたことは明白であるにも関わらず、領収 害)以外の請求について(1) 一審原告1-1らは、①同38の世帯の家財道具購入費、水道光熱費及び食費について、同38の世帯が二重生活により支出を強いられたことは明白であるにも関わらず、領収証等がないことを理由に一審被告東京電力が賠 償済みの金額を超える損害を認めないのは不当である、②一審原告38-3 - 317 -は、本件事故により3歳から保育園等に通園させなければならなくなった、③同38-2が患った不安神経症及び不眠症の治療費(生命・身体的損害)について、診断書があるのに本件事故との因果関係を否定するのは不当であると主張する。 (2) しかし、①一審原告38の世帯の家財道具購入費、水道光熱費及び食費 についての同1-1らの主張は、同38-2の記憶に従って値段を特定して主張したとのことであるが(一審原告38-2本人(原審))、同1-1らは、領収証等を保存しておくことが同38の世帯にとって酷であることや同38の世帯が既払い金を超える額を支出したことについて何ら主張立証していない。 (3) また、②一審原告38-3の保育園に係る保育料については、同38-1及び同38-2は本件事故前に保育園等に入れるかどうかについて特段決めていなかったのであるから(一審原告38-2本人(原審))、本件事故の有無にかかわらず3歳になれば保育園等に入園させていた可能性は当然あり、また、そもそも領収証等も提出されていない。 (4) さらに、③一審原告38-2が患った不安神経症及び不眠症の治療費について、同1-1らが本件事故との相当因果関係の根拠として提出する診断書(甲C38の5)は、本件事故から3年以上も経過した平成27年1月に作成されたものであり、これにより直ちに本件事故との間に相当因果関係を認めること 本件事故との相当因果関係の根拠として提出する診断書(甲C38の5)は、本件事故から3年以上も経過した平成27年1月に作成されたものであり、これにより直ちに本件事故との間に相当因果関係を認めることはできない。また、当該診断書には「2011年原発事故によ るため名古屋へ避難、就労、育児困難」との記載があるが、同38-2は、平成25年4月以前から同38-3を保育園に通わせていたのであるから(一審原告38-2本人(原審))、「就労、育児困難」な状況にあったとは認められず、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とはいえない。 第37 一審原告39の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと - 318 -(1) 一審原告39の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島県いわき市に居住していた者であり、そもそも本件事故による法律上保護される利益に対する侵害があったとは認められず、避難の相当性は認められない。したがって、同39の世帯に本件事故と相当因果関係のある精神的損害は認められないし、避難に起因する財産的な支出についても、本件事故と 相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (2) また、仮に何らかの法律上保護される利益に対する侵害があるとしても、一審原告39の世帯は、どんなに遅くとも平成24年5月には新たな環境で平穏な日常生活を送ることができる状態となっており、これ以降、法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)に対する侵害があったとは認め られない。したがって、同39の世帯についての慰謝料額は、一審被告東京電力の賠償額を超えるものではないし、避難に起因する財産的な支出についても、平成24年5月までのものに限られ、かつ、いずれも下記のとおり本件事故と相当因果関係のある原子 ての慰謝料額は、一審被告東京電力の賠償額を超えるものではないし、避難に起因する財産的な支出についても、平成24年5月までのものに限られ、かつ、いずれも下記のとおり本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (3) 他方、一審被告東京電力は、令和4年7月1日までに、一審原告39の 世帯に対し合計270万5283円を支払っており、十分な賠償を実施済みであって、同39の世帯の損害賠償請求権は弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)について(1) 一審原告39の世帯は、本件事故後、平成23年3月15日に愛知県尾張旭市にある同39-2の実家へ移動し、同39-1は同月26日にいわき 市に戻った。その後、同39の世帯は、平成24年5月、尾張旭市内の同39-2の実家近くにアパートを借りて生活を開始した。 (2) いわき市においては、前記第35のとおり、空間放射線量率は客観的に健康に影響を及ぼす状況になく、それが周知されており、平成23年4月にはインフラが復旧するなどしていた。実際、一審原告39-1の勤務先もほ どなく再開し、同39-1も同年3月26日以降に復帰した。また、福島県 - 319 -が実施した県民健康調査における同市民についての内部被ばく検査及び外部被ばく線量推計の結果は健康に影響が及ぶ数値ではなく、同39の世帯が受けた検査でも異常はなかった。 (3) 以上によれば、一審原告39の世帯の転居は客観的根拠に基づく不安によるものではなく、そもそも本件事故により転居を余儀なくされたものでは ない。同39の世帯は遅くとも平成24年5月には新たな環境で日常生活を送ることができる状態になっていたのであり、法律上保護される利益の侵害が生じたとしてもその程度は軽微であるから、仮に同 では ない。同39の世帯は遅くとも平成24年5月には新たな環境で日常生活を送ることができる状態になっていたのであり、法律上保護される利益の侵害が生じたとしてもその程度は軽微であるから、仮に同39の世帯の慰謝料が認められるとしても、一審被告東京電力の賠償額を超えるものではない。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について 上記のとおり、一審原告39の世帯は遅くとも平成24年5月には新たな環境で日常生活を送ることができる状態になっていたため、同39-1及び同39-2の移動に起因する財産的支出のうち本件事故と相当因果関係が認められ得るのは平成23年12月31日までの支出分、18歳未満であった同39-3及び同39-4については遅くとも平成24年5月までものに限られる。ま た、同1-1らは、本件訴訟において、移動に起因する財産的支出について何ら客観的証拠を提出せず、損害は立証されていない。 第38 一審原告40 1 請求は棄却されるべきこと(1) 一審原告40は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島県い わき市に居住していた者であり、そもそも本件事故による法律上保護される利益に対する侵害があったとは認められず、避難の相当性は認められない。 したがって、同40に本件事故と相当因果関係のある精神的損害は認められないし、避難に起因する財産的な支出についても、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (2) 仮に何らかの法律上保護される利益に対する侵害があるとしても、一審 - 320 -原告40は、どんなに遅くとも平成23年3月29日には新たな環境で平穏な日常生活を送ることができる状態となっており、これ以降、法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)に対する侵害が 0 -原告40は、どんなに遅くとも平成23年3月29日には新たな環境で平穏な日常生活を送ることができる状態となっており、これ以降、法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)に対する侵害があったとは認められない。また、避難に起因する財産的な支出についても、同日までのものに限られるが、同日までの財産的な支出であっても、下記のとおり、いずれも本 件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (3) 他方、一審被告東京電力は、令和4年7月1日までに、一審原告40に対して合計175万8587円を支払っており、十分な賠償を実施済みであって、同40の一審被告東京電力に対する損害賠償請求権は弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)について(1) 一審原告1-1らは、同40について、①知的障害及び身体障害を有する子を連れた避難自体が大きな負担であったこと、②避難により、子の生涯にわたるケアを約束していた支援機関の支援が望めなくなったこと、③避難後に子にチック症状が現れるなど、日々、子の状態を心配せざるを得なくな ったこと等の事情を挙げ、原判決が認定した慰謝料額60万円が低額であると主張する。 (2) しかし、本件事故当時に一審原告40の子が通っていた障がい者施設は本件事故後も閉鎖されておらず、同施設の職員や利用者は一時的に避難をしたものの、その後同施設に戻っており、平成25年4月ごろからは福島県か ら「被災した障がい児に対する相談・援助事業」の委託を受け、同事業を実施している(乙C40の4)。また、同40の夫や同40の近隣住民は避難することなくいわき市内で居住を継続していた。同40は、知人からの意見を聞いて避難を決意し、いわき市の空間放射線量も確認しないまま岐阜県大垣市に転居し 4)。また、同40の夫や同40の近隣住民は避難することなくいわき市内で居住を継続していた。同40は、知人からの意見を聞いて避難を決意し、いわき市の空間放射線量も確認しないまま岐阜県大垣市に転居したものであるから(一審原告40本人(原審))、専ら独自の 判断に基づくものであり、上記①及び②の事情は、本件事故と相当因果関係 - 321 -を有する精神的損害の発生を基礎づける事情ではない。 (3) また、上記③の避難後の子の症状について、一審原告40は医師等の専門家に相談しておらず(一審原告40本人(原審))、原因は不明であるから、上記症状の発生についても本件事故と相当因果関係を有する精神的損害の発生を基礎づける事情とはいえない。 (4) 仮に認められるとしても、一審原告40についての慰謝料額が、一審被告東京電力の賠償額である8万円を超えることはない。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について(1) 一審原告1-1らは、原判決が損害として認めなかった岐阜県の借上げ住宅の家賃及び共益費について、その約半額は同40が負担していたと主張 し、これに沿う証拠(甲C45)を提出する。 しかし、仮に本件事故発生当初の時期に何らかの法律上保護される利益の侵害が認められるとしても、上記のとおり、平成23年3月29日以降については法律上保護される利益の侵害は認められない。 したがって、仮に上記家賃及び共益費が本件事故と相当因果関係を有する 損害であるとしても、平成23年3月に支出した6590円に限られる。 (2) また、一審原告1-1らは、同40がいわき市に居住していた頃夫名義の自動車の任意保険契約を自らの名義で締結していたことから(甲C46)、同40にとって転居後の日常生活や通勤に自動 る。 (2) また、一審原告1-1らは、同40がいわき市に居住していた頃夫名義の自動車の任意保険契約を自らの名義で締結していたことから(甲C46)、同40にとって転居後の日常生活や通勤に自動車が不可欠であったとして、中古車購入代金及び平成23年9月から平成26年3月までの駐車場料金に ついて、本件事故と相当因果関係を有する損害であると主張する。 しかし、一審原告40が本件事故当時夫名義の自動車の任意保険契約を自らの名義で締結していたことと、転居後の自動車の必要性とは関係がない。 同1-1らは、このほかに、同40の転居後、日常生活及び通勤に自動車が不可欠であったことについて何ら立証していない。 したがって、上記中古車購入代金及び駐車場料金は、本件事故と相当因果 - 322 -関係のある原子力損害とは認められない。 第39 一審原告41の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと一審原告41の世帯は、本件事故当時、旧緊急時避難準備区域である福島県田村市に居住していた者であるところ、同区域では避難が強制されておらず、 また、同区域の指定は平成23年9月30日をもって解除された。それにもかかわらず、一審被告東京電力は一審原告41の世帯に対し、法律上損害賠償義務が認められる範囲・額を大幅に超えた賠償を行ってきたのであり、その既払額は合計744万7493円である。このとおり、一審被告東京電力は、一審原告41の世帯に対して十分な賠償を実施済みであって、同41の世帯の一審 被告東京電力に対する損害賠償請求権は弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について(1) 一審原告1-1らは、①同41の世帯が本件事故当時、福島第一原発から20.99kmの距離に居住しており、 賠償請求権は弁済により消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)の請求について(1) 一審原告1-1らは、①同41の世帯が本件事故当時、福島第一原発から20.99kmの距離に居住しており、その被害状況は旧避難指示解除準備区域(20km圏内)の被害状況と比べて合理的な差異がないこと、②同 41の世帯は田村市に敢えて移住してきたこと、③本件事故が同41の世帯の自給自足に向けた20年近い労力を無にしたこと、④現実に心身の疾病につき医師の診断があることといった事情を挙げ、同41の世帯の慰謝料(精神的損害)の金額は、原判決が認定した180万円を超えると主張する。 (2) しかし、以下のとおり、上記主張はいずれも理由がない。 アまず、一審原告41の世帯が居住していたのは、旧緊急時避難準備区域という政府による避難の強制がなかった区域であったのに対し、旧避難指示解除準備区域は政府による避難の強制があった区域であり、両区域は明らかに状況が異なる。そして、避難指示等の区分等による差異や実情を踏まえ、区域ごとに精神的損害の賠償の終期等について検討して賠 償することは本件事故による放射線の影響の有無及び程度の実情に鑑み - 323 -合理的なのは明らかであるから、上記①の事情は慰謝料の金額を増額させる理由にはなり得ない。 イまた、田村市の旧緊急時避難準備区域指定は平成23年9月30日に解除され、その後のインフラ復旧や社会的活動の再開状況等も踏まえれば、一審原告41の世帯が岐阜県内に中古住宅を購入して平成26年1月か ら居住し、現在も居住しているのは、同41の世帯の任意の判断によるものであり、本件事故が原因で田村市に居住できなくなったとは認められない。したがって、上記②及び③の事情は、慰謝料の金額を 月か ら居住し、現在も居住しているのは、同41の世帯の任意の判断によるものであり、本件事故が原因で田村市に居住できなくなったとは認められない。したがって、上記②及び③の事情は、慰謝料の金額を増額させる理由にはなり得ない。 ウさらに、一審原告1-1らが提出した証拠(甲C41の19、甲C41 の23)によれば、同41-1の片頭痛については本件事故に伴う放射線の影響は何ら言及されていないし、同41-2が主張する適応障害についても「夫との意見のくいちがいによるストレス」も発症要因とされており、上記④の疾病と本件事故との相当因果関係は認められない。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について (1) 光熱費ア一審原告1-1らは、同41の世帯の電気代及びガス代が避難後に増加したのは、本件事故以前の薪ストーブを使用する等の生活状況からエアコンを使用するように変わったためであると主張している。 しかし、電気代及びガス代の増加額が本件事故によりやむを得ず生じた ものであることについては、何らの立証がない。 イ原判決は、一審原告41-1について、本件事故に伴う避難によって、電気代は月額平均約2000円、ガス代は月額約600円、水道代は月額平均約1800円増加したことが認められるとし、これら差額の合計に同41-1の避難継続の合理性が認められる平成24年8月31日までの1 8か月という期間を乗じて、合計7万9200円が相当因果関係を有する - 324 -損害であると認定した。 ウしかし、一審被告東京電力はADR手続において、一審原告41の世帯に対し、本件事故前は浄化水槽を有し水道料金を要しない生活であったこと等を考慮して、和解案尊重の観点から、平成23年3月から平成2 ウしかし、一審被告東京電力はADR手続において、一審原告41の世帯に対し、本件事故前は浄化水槽を有し水道料金を要しない生活であったこと等を考慮して、和解案尊重の観点から、平成23年3月から平成24年8月までの水道料金増加費用として3万3578円を賠償している(乙C 41の1)。また、電気代及びガス代について、同1-1らは、同41-1が平成22年と平成26年に支払った電気代及びガス代の差額を主張するだけで、当該差額が避難によりやむを得ず生じたものであることを何ら主張立証していないから、同41-1について主張する電気代及びガス代の差額は本件事故と相当因果関係を有する損害であるとは認められず、一 審被告東京電力の既払い金額を超える部分についての同1-1らの主張は理由がない。 (2) 不動産ア一審原告1-1らは、①同41-1は本件事故によって自宅を失った、②雑木林等の除染がなされておらず、安心安全な自給自足の生活拠点とし ては不動産が無価値になったと主張する。 イしかし、一審原告41-1が本件事故当時居住していたのは旧緊急時避難準備区域であり、同地域は立入りが制限される区域ではなく、自宅及び自宅内の家財道具の管理は可能であった。したがって、本件事故により同41-1の自宅の全部が滅失した事実は認められない。 また、一審原告1-1らが主張する同41-1の「安心安全な自給自足の生活拠点」の趣旨は明らかでないものの、令和4年10月31日時点の、同41の世帯の不動産が存在していた田村市都路町から自主的に避難していた者の帰還率は93.2%であること(乙C61)からすれば、現在、上記不動産が無価値であるとは到底認められない。また、そもそも同41 の世帯が居住していた同市の空間放射線量は 主的に避難していた者の帰還率は93.2%であること(乙C61)からすれば、現在、上記不動産が無価値であるとは到底認められない。また、そもそも同41 の世帯が居住していた同市の空間放射線量は、平成23年7月の調査時点 - 325 -において、多くの測定地点で1.9μSV/時以下となっており(乙B169・5頁のモニタリング結果参照)、それ以降も計画的避難区域に設定される基準であった年間積算線量20mSV(屋外では3.8μSV/時が年間積算線量20mSVの目安となる。)に達するおそれのない状況であった。したがって、同市における空間放射線量は健康被害を生じさせる ものではないから、自給自足の生活を妨げるものではなく、自宅周辺の雑木林の除染が完了していないとしても、放射線の作用により上記不動産が無価値になったとも交換価値が下落したとも到底認められない。そして、同1-1らは、上記不動産が無価値となり滅失したと主張するほかには、同41-1の自宅に関する損害の発生及び金額について何ら主張・立証し ておらず、損害が生じたことも何ら立証されていない。 ウ原判決は、一審原告41-1の自宅が雑木林に囲まれており、雑木林の除染は済んでいない可能性が高いこと等を考慮すると、同自宅は本件事故前と同様の価値を維持しているとはいえないとして、本件事故により下落した価値を100万円と認定した。 しかし、下記エで述べるとおり、一審原告1-1らは、損害賠償請求の要件事実たる損害の発生を主張・立証していないから、民事訴訟法248条が適用される基礎を欠く。また、本件事故後における田村市における空間放射線量は、健康被害を生じさせるものではないことから、仮に同41-1の自宅周辺の雑木林の除染が完了していないとしても、放射線の作用 が適用される基礎を欠く。また、本件事故後における田村市における空間放射線量は、健康被害を生じさせるものではないことから、仮に同41-1の自宅周辺の雑木林の除染が完了していないとしても、放射線の作用 により上記不動産の交換価値が下落したとは認められない。 エ一般に、不法行為に基づく損害賠償を請求する場合には、請求者において、不法行為や故意又は過失とともに、損害の発生及びその金額を主張・立証することを要するところ、原賠法3条1項に基づく損害賠償請求においても、請求者(一審原告ら)において、損害の発生及び金額を主張・立 証すべきことは同様である。そして、民事訴訟法248条では、「損害が - 326 -生じたことが認められる場合において」とされ、損害賠償の請求者により損害の立証が尽くされることが適用の前提条件となっている。 この点、一審原告1-1らは、同41-1の自宅が本件事故によって滅失したとし、土地建物合わせて298万1218円という平成23年1月時点の固定資産税評価額の全額が損害と主張するにとどまる。しかし、本 件事故により上記自宅の全部が滅失した事実は認められない。そして、同1-1らは、上記主張以外に同41-1の自宅に関する損害の発生及びその金額について何ら主張立証しないから、民事訴訟法248条は、その適用の基礎を欠く。 しかるに、原判決は民事訴訟法248条を適用して、損害額の算定を行 っているが、同条の解釈・適用を誤っている。損害の発生は立証されていない以上、自宅に係る損害賠償請求は棄却されるべきである。 第40 一審原告42の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと(1) 一審原告42の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福 島市に居住して は棄却されるべきである。 第40 一審原告42の世帯 1 請求はいずれも棄却されるべきこと(1) 一審原告42の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福 島市に居住していた者であり、そもそも本件事故による法律上保護される利益に対する侵害があったとは認められない。したがって、同42の世帯に本件事故と相当因果関係のある精神的損害は認められないし、避難に起因する財産的支出についても相当因果関係のある損害とは認められない。 (2) 仮に何らかの法律上保護される利益に対する侵害があるとしても、一審 原告42の世帯については、どんなに遅くとも平成23年3月20日には静岡県掛川市の市営住宅に入居して、新たな環境で平穏な日常生活を送ることができる状態となり、これ以降、法律上保護される利益(平穏な日常生活を送る権利)の侵害はない。 (3) 仮に何らかの法律上保護される利益に対する侵害があるとしても、本件 事故発生当初の時期に放出された放射性物質による放射線の作用による影響 - 327 -は健康に影響を与えるものではなかったこと、そのことに関する報道等も繰り返し行われたこと、社会活動の再開等、事故後の状況に照らせば、そこで問題とされるべき侵害は、あくまでも本件事故発生当初の時期における、放出された放射性物質による放射線の作用や健康への影響についての情報不足による不安感・危惧感による精神的苦痛に限られる。避難に起因する財産的 な支出についても、平成23年3月20日までのものに限られるが、下記のとおり、本件事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (4) 他方、一審被告東京電力は、令和4年7月1日までに、一審原告42の世帯に対して合計645万3762円を支払っており、十分な賠償を実施 事故と相当因果関係のある原子力損害とは認められない。 (4) 他方、一審被告東京電力は、令和4年7月1日までに、一審原告42の世帯に対して合計645万3762円を支払っており、十分な賠償を実施済みであって、同42の世帯の損害賠償請求権は弁済によって消滅している。 2 慰謝料(精神的損害)について(1) 一審原告1-1らは、原判決が、同42の世帯が本件事故により事故前に有していた包括的生活基盤とそこから享受していた利益を丸ごと失ったことを適切に評価していない旨主張する。 しかし、一審原告42の世帯は自主的避難等対象区域に居住していた者で あって避難を強制されたわけではないし、同1-1らは「事故前に有していた包括的生活基盤とそれから享受していた利益を丸ごと失った事実」を具体的に主張立証しておらず、上記主張は失当である。 (2) 一審原告1-1らは、同42-1の慰謝料を基礎づける事情として、①同42-1の静岡県掛川市への転居に伴い、本件事故当時勤務していた病院 を退職する際、奨学金返済として100万円の支払を余儀なくされたこと、②同42-1が、本件事故前から結婚を視野に入れて交際していた男性との間で身籠った子について、胎児への放射性物質の影響を考慮して中絶し、同男性との結婚を諦めたことを主張する。 しかし、前記のとおり、福島市の空間放射線量は、本件事故後時間の経過 とともに低減し、いずれも避難指示の基準を大きく下回っていたことや、同 - 328 -市で自主避難を実施したのは平成23年3月15日の時点で人口比1.1%にとどまり、他方で福島市には他の地域から避難者を受け入れていること、その他社会活動の状況に加え、一審原告42-1が本件事故当時勤務していた職場は本件事故後も事業 年3月15日の時点で人口比1.1%にとどまり、他方で福島市には他の地域から避難者を受け入れていること、その他社会活動の状況に加え、一審原告42-1が本件事故当時勤務していた職場は本件事故後も事業を継続し、同42-1自身も同月25日には職場に復帰したことからすると、同42の世帯は本件事故によって避難を余儀な くされたものではないから、上記①の事情は本件事故と相当因果関係のある精神的損害の発生を基礎づける事情とは認められない。 また、一審原告42-1は、医師から、被ばくと胎児への影響については、どういう影響が出るかは分からないから、自分で判断するよう言われた上で中絶しており(一審原告42-1本人(原審))、中絶は任意の判断による ものであるし、仮に本件事故に伴う何らかの不安感等から中絶に至ったとしても、上記のような本件事故後の福島市の状況からすれば、客観的証拠に基づかない漠然とした不安感にとどまる。したがって、上記②の事情は、本件事故と相当因果関係のある精神的損害の発生を基礎づける事情とは認められない。 (3) 仮に認められるとしても、一審原告42-1についての慰謝料額並びに本件事故時18歳以下であった同42-2から同42-4までの慰謝料額は、それぞれ、一審被告東京電力の賠償額である8万円及び48万円を超えない。 3 慰謝料(精神的損害)以外の請求について(1) 一審原告1-1らは、原判決が認めなかった同42-1の学用品等の購 入費用(教育費)について、同42-2から同42-4までが転居先の掛川市の転校先の学校から指示された学用品のうち最低限必要なものであり、これらの購入の事実は明らかである旨を主張する。しかし、仮に本件事故発生当初の時期に何らかの法律上保護される利益の侵害が認められるとし の転校先の学校から指示された学用品のうち最低限必要なものであり、これらの購入の事実は明らかである旨を主張する。しかし、仮に本件事故発生当初の時期に何らかの法律上保護される利益の侵害が認められるとしても、前記のとおり、同42の世帯においては、平成23年3月20日以降、法律 上保護される利益の侵害は認められない。 - 329 -(2) この点を措いても、一審原告42-1が請求する学用品等の購入費用(教育費)は新入生が購入を学校から指示された学用品であるところ(甲C42の8)、同42の世帯が掛川市に転居した時点で同42-2及び同42-3は既に小学校に入学しており、上記学用品の購入を余儀なくされたものではない。また、同42-1は掛川市に転居する以前に、同42-4が平成 23年4月から入学する予定だった福島市内の小学校の入学準備を済ませており(甲C42の1の1)、掛川市の小学校への通学に必要となる物品の中には、既に準備していた物も含まれると思われる。そのため、転居の際に新たに学用品を購入し直したのは、同42-1の任意の判断によるものである。 (3) したがって、上記の学用品等の購入費用(教育費)は、本件事故と相当 因果関係のある原子力損害とはいえない。 第41 一審原告43の世帯について 1 一審原告43の世帯は、控訴審において追加の主張立証をしない。 2 一審原告43の世帯は、平成23年4月、名古屋市にある同43-1の実家近くの住居に転居した。同43-1の夫は、勤務を継続するため福島市に残り、 現在まで継続して居住している。 3 福島市においては、空間放射線量率が健康に影響しないレベルであり、大多数の者は避難せずに生活を継続し、社会的活動も通常どおり行われ、福島市民に対する内部被ばく検査の結果 続して居住している。 3 福島市においては、空間放射線量率が健康に影響しないレベルであり、大多数の者は避難せずに生活を継続し、社会的活動も通常どおり行われ、福島市民に対する内部被ばく検査の結果、健康に影響が及ぶ数値ではなかった。 4 一審原告43-2及び同43-3には甲状腺検査の結果のう胞が認められた が、これは細胞のない良性のものであり、治療の必要はなく経過観察とされているもので、具体的な健康被害はない。 5 一審原告43の世帯は、これまで、面会のための交通費として、何ら客観的な証拠を提出しなかったにもかかわらず和解で323万7920円の認定を受けてこれを受領した上、生活費増加費用として147万円も既に受領している。 6 以上の事情によれば、一審原告43の世帯には既払い金を超える損害は認め - 330 -られず、これ以上の損害を認める余地はない。 第42 各一審原告らに対する弁済の抗弁一審被告東京電力は各一審原告の世帯に対し、別紙8「賠償額一覧表(一審被告東京電力)」の「世帯合計賠償額」欄記載の額を合計額(一審原告ごとの内訳は同「個人別賠償額」欄記載の額)とする賠償を行った。 この額について弁済の抗弁を主張する。 第10章一審原告らの損害(個別のものも含む。)に関する一審被告国の当審における主張中間指針等は裁判規範性を有しないものの、中間指針等は、原賠法18条1項に基づき文部科学省に設置された原賠審における法律、医療又は原子力工学 等に関する学識経験を有する者らによる審議を経た上で策定されたものであり、低線量被ばくに関する合理的な知見を基に設定した避難区域等を前提として、自動車損害賠償責任保険における慰謝料や民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準による期間経過に伴う慰謝料の変動状 されたものであり、低線量被ばくに関する合理的な知見を基に設定した避難区域等を前提として、自動車損害賠償責任保険における慰謝料や民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準による期間経過に伴う慰謝料の変動状況等を参考に賠償額を定めていることから、その内容は合理的なものである。 また、中間指針等は、類型化が可能で一律に賠償すべき損害の範囲や項目の目安を示した上で、更に個別具体的な事情に応じて、中間指針等で示された以外の損害や賠償額が認められることがあり得ることを基本的な考え方とするものではあるが、原賠審における中間指針等に関する策定経過の議事録を子細に検討すると、被災者救済に力点を置いた政策的判断も加味されており、一般的 に認められている損害賠償の範囲や額と比較してみても、中間指針等における賠償の範囲や額の目安は被災者に配慮したものである。 したがって、中間指針等で示された賠償の目安を超える部分については、個別事情に基づく主張立証がない限り、本件事故との間に相当因果関係が認められる損害とはいえないし、これまで一審被告東京電力が支払ってきた賠償額に 照らせば、既に一審原告らの精神的損害については弁済により補填されている - 331 -というべきである。 一審原告らの損害についてのその余の主張は、前記第9章の一審被告東京電力の主張を援用する。 - 332 -第4部責任に関する当裁判所の判断第1章認定事実当裁判所の認定する事実は、次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」中の第4部、第1章に記載のとおりであるからこれを引用する。 (原判決の補正) 1 原判決331頁7頁の「影響で外部電源が失われ、非常用電源が起動したが、」までを「影響による」と改め、9行目の「浸入し、」の次に 記載のとおりであるからこれを引用する。 (原判決の補正) 1 原判決331頁7頁の「影響で外部電源が失われ、非常用電源が起動したが、」までを「影響による」と改め、9行目の「浸入し、」の次に「送電網にも擾乱が生じ」を加える。 2 原判決341頁24行目から25行目にかけての「平成14年当時は文部科学省」とあるのを「平成14年当時。現在は文部科学省。」と改める。 3 原判決342頁2行目から3行目にかけての「上記地震本部」を「推進本部」と改める。 4 原判決346頁8行目の「証言」の次に「等」を加える。 5 原判決346頁25行目から26行目にかけての「副主席主任研究員であり、」を「副首席主任研究員であり、」と改める。 6 原判決359頁9行目に掲げる証拠に甲A第140号証を加える。 7 原判決359頁18行目に掲げる証拠に乙A第20号証の1及び2を加える。 第2章本件設置等許可処分の違法性本件設置等許可処分の違法性についての判断は、原判決の「事実及び理由」中の第4部、第2章に記載のとおりであるからこれを引用する。 第3章経済産業大臣が規制権限を行使しなかったことの違法性第1 規制権限不行使の違法性の判断枠組み規制権限不行使が国賠法上違法というためには、その権限を定めた法令の趣旨、目的や、その権限の性質、被害法益の性質、重大性、予見可能性等に照らし、具体的な事情の下において、その不行使がその許容される限度を逸脱して 著しく合理性を欠くと認められるときは、その不行使により被害を受けた者と - 333 -の関係において、国賠法1条1項の適用上違法となるものと解するのが相当である。そして、国又は公共団体が、公務員が規制権限を行使しなかったことを理由として同項に基づく損害賠償責任 - 333 -の関係において、国賠法1条1項の適用上違法となるものと解するのが相当である。そして、国又は公共団体が、公務員が規制権限を行使しなかったことを理由として同項に基づく損害賠償責任を負うというためには、上記公務員が規制権限を行使していれば上記の者が被害を受けることはなかったであろうという関係が認められなければならない。 第2 省令62号4条1項に反することを理由とした技術基準適合命令を発しなかったことの違法性 1 一審原告らの主張する措置を講ずることを命ずる技術基準適合命令を発する権限の有無(1) 電気事業者は、実用発電用原子炉について、電気事業法39条に基づき、 実用発電用原子炉施設に係る事業用電気工作物につき技術基準維持義務を負い、経済産業大臣は、同法40条に基づき、事業用電気工作物が経済産業省令で定める技術基準に適合していないと認めるときは、電気事業者に対し、技術基準に適合するように事業用電気工作物の修理、改造、移転、使用の一時停止を命じ、又は使用を制限することができる(技術基準適合命令)。そ して、一審原告らは、経済産業大臣は、平成14年末の時点において、一審被告東京電力に対し、①から③までの措置(①タービン建屋等の人の出入口、大物(機器)搬入口などに強度強化扉の二重扉等を設置すること、タービン建屋等の換気空調系ルーバーなどの外壁開口部の水密化等の対策を採ること、タービン建屋等の貫通部からの浸水防止等の対策を採ることにより、タービ ン建屋等自体の防護措置を取ること、②非常用ディーゼル発電機及び配電盤等の重要機器が設置されている機械室への浸水防止等の対策を採ることによりタービン建屋等内の重要な安全機能を有する設備の部屋の防護措置を採ること、③既設の非常用ディーゼル発電機(水冷式 電機及び配電盤等の重要機器が設置されている機械室への浸水防止等の対策を採ることによりタービン建屋等内の重要な安全機能を有する設備の部屋の防護措置を採ること、③既設の非常用ディーゼル発電機(水冷式)を冷却するための海水系ポンプを津波から防護するための防水構造の建屋を設置し、電気系統の配線 の貫通口を水密化する対策を採ること)を採ることを含めた技術基準適合命 - 334 -令を発するべきであった旨主張する。これに対し、一審被告国は、技術基準適合命令は、基本設計又は基本的設計方針の是正を命ずることはできず、原子炉施設の具体的な工事方法の妥当性等の審査(後段規制)として、技術基準の不適合を是正するものであるところ、一審原告らの主張する上記各措置はいずれも基本設計又は基本的設計方針に関するものであるから、経済産業 大臣には上記各措置を命ずる技術基準適合命令を発する権限がなかった、すなわち、本件設置等許可処分に係る安全審査において、敷地高と想定津波との間に十分な高低差があってドライサイトが維持されることをもって津波対策に係る基本設計又は基本設計方針とされていたところ、一審原告らが主張するタービン建屋の水密化等の措置は、いずれもウェットサイトであること を前提とした措置であるから、基本設計ないし基本的設計方針に関わる事項であり、経済産業大臣において、一審原告ら主張の措置に関し技術基準適合命令を発する規制権限を有しない旨主張する。そこで、経済産業大臣が上記各措置を命ずる技術基準適合命令を発する権限を有していたか、以下検討する。 (2) 原子力は、通常の科学技術のレベルを超えた制御不能な異質な危険を内包し、原子力発電所は、一たび事故を引き起こすと広域・多数の国民の生命・健康・財産や環境に対し甚大かつ不可逆的な被害を (2) 原子力は、通常の科学技術のレベルを超えた制御不能な異質な危険を内包し、原子力発電所は、一たび事故を引き起こすと広域・多数の国民の生命・健康・財産や環境に対し甚大かつ不可逆的な被害をもたらすことからすると、原子力発電所の稼働に当たっては、具体的に想定される危険性のみならず、抽象的な危険性をも考慮した上で、広域・多数の国民の生命・健康・財産や 環境が侵害されないための万全な安全対策の確保が求められるというべきである。 そして、旧炉規法及び電気事業法が、具体的措置を省令に包括的に委任した趣旨は、原子力発電所が国民の生命・健康及び財産を保護するに足りる技術基準に適合しているかの判断は、多方面にわたる極めて高度な最新の科学 的、専門技術的知見に基づいてされる必要があるところ、科学技術は不断に - 335 -進歩し発展しているのであるから、原子力発電所の技術基準適合性に関する基準を具体的かつ詳細に法律で定めることは困難であるだけでなく、最新の科学技術水準への即応性の観点からみて適当でないという点にあると解される。 以上からすると、経済産業大臣の電気事業法39条の規定に基づく省令制 定権限(技術基準を定める権限)は、原子力の利用に伴い発生するおそれのある受容不能なリスクから国民の生命・健康・財産や環境に対する安全を確保することを主要な目的として、万が一にも事故が起こらないようにするため、技術の進歩や最新の地震、津波等の知見等に適合したものにすべく、適時にかつ適切に行使することが求められ、原子炉(電気工作物)をこの新た な技術基準に適合させるため、技術基準に適合させる権限(同法40条)を適時にかつ適切に行使し、国民の生命・健康・財産や環境に対する安全を確保することが求められるというべきで 作物)をこの新た な技術基準に適合させるため、技術基準に適合させる権限(同法40条)を適時にかつ適切に行使し、国民の生命・健康・財産や環境に対する安全を確保することが求められるというべきである。 (3) もっとも、技術の進歩や最新の地震、津波等の知見の発展等により当該原子炉の基本設計又は基本的設計方針の安全性に影響が及ぶ可能性があるとこ ろ、上記のとおり、経済産業大臣は、原子炉施設を、技術の進歩や最新の地震、津波等の知見等に適合したものにすべく、技術基準適合命令を適時にかつ適切に行使し、国民の生命・健康・財産や環境に対する安全を確保することが求められる。このような場合に、経済産業大臣が原子炉の設置許可の取消し又は撤回をしない限り行政指導によらざるを得ないと解することは、段 階的規制を通じて原子炉の安全性を確保しながら原子力を利用するという法体系全体に通底する考え方に反するというべきである。したがって、経済産業大臣は、原子炉施設の基本設計又は基本的設計方針の安全性に関する事項についても、電気事業法40条に基づく技術基準適合命令を発することにより是正する権限を有していたと解するのが相当である。 一審被告国は、前記第3部第3章第2、1のとおり、一審原告らが主張す - 336 -る①から③までの措置は、福島第一原発の基本設計又は基本的設計方針に関わる問題であり、経済産業大臣は、当該問題につき、電気事業法40条に基づく技術基準適合命令により是正する権限を有していなかった旨主張するが、上述のとおりであり採用できない。 (4) また、一審被告国は、平成24年改正後の炉規法43条の3の23は、発 電用原子炉施設が技術基準に適合しない場合に加え、最新の科学技術的知見を反映した設置許可要件として原子力規制委員会 (4) また、一審被告国は、平成24年改正後の炉規法43条の3の23は、発 電用原子炉施設が技術基準に適合しない場合に加え、最新の科学技術的知見を反映した設置許可要件として原子力規制委員会規則で定める基準に適合しないと認められる場合にも、使用停止等処分ができることを明文化したところ、基本設計又は基本的設計方針の是正を図ることが可能になったのはこの法改正によるものであると主張する。 たしかに、平成24年改正後の炉規法43条の3の23は、使用停止等処分を行い得る場合として、同年法律第47号による改正前の電気事業法40条に相当する「発電用原子炉施設が第43条の3の14の技術上の基準に適合していないと認めるとき」に加え、「発電用原子炉施設の位置、構造若しくは設備が第43条の3の6第1項第4号の基準に適合していないと認める とき」を規定しており、原子炉施設が技術基準に適合しない場合に加え、原子炉施設が設置許可基準に適合しない場合にも使用停止等の処分ができることを明文で規定した。しかし、これらは、いずれも上記の電気事業法40条に関する解釈と同様の趣旨に基づくものと解されるのであり、上記法改正は、上記の技術基準適合命令を発する権限の有無に影響を及ぼすものではない。 一審被告国の上記主張は採用できない。 2 規制権限を定めた法令の趣旨、目的技術基準適合命令を定めた電気事業法40条は、事業用電気工作物が技術基準に適合していないと認めるときは技術基準適合命令を発することができる旨を定め、同法39条2項1号は、事業用電気工作物は人体に危害を及ぼし、又 は物件に損傷を与えないようにすることを技術基準に定めることを求め、同条 - 337 -1項は、事業用電気工作物を設置する者に事業用電気工作物を技術基準に適合する 体に危害を及ぼし、又 は物件に損傷を与えないようにすることを技術基準に定めることを求め、同条 - 337 -1項は、事業用電気工作物を設置する者に事業用電気工作物を技術基準に適合するように維持する義務を課している。また、旧炉規法は、設計及び工事の方法の認可や検査に関する同法27条から29条までの規定において、電気事業法に基づく検査等を受ける原子炉施設であって実用発電用原子炉に係るものについては適用除外としているが(旧炉規法73条)、これに相当する電気事業 法に基づく規制が適用され、実用発電用原子炉については炉規法及び電気事業法の規定が矛盾のないように適用されており、原子炉の安全に関する法律として、原子炉の設置後の措置である技術基準適合命令についても炉規法の趣旨は及ぶというべきである。そして、旧炉規法1条は、「原子力基本法の精神にのっとり、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の利用が平和の目的に限られ、か つ、これらの利用が計画的に行われることを確保するとともに、これらによる災害を防止し、及び核燃料物質を防護して、公共の安全を図るために、製錬、加工、貯蔵、再処理及び廃棄の事業並びに原子炉の設置及び運転等に関する必要な規制等を行うほか、原子力の研究、開発及び利用に関する条約その他の国際約束を実施するために、国際規制物資の使用等に関する必要な規制等を行う こと」としており、原子炉施設の安全性が確保されないときは、当該原子炉施設の周辺住民等の生命、身体に重大な危害を及ぼし、周辺の環境を放射能によって汚染するなど、深刻な災害を引き起こすおそれがあることに鑑み、上記災害が万が一にも起こらないようにすることを目的としているといえる。これらの規定からすれば、規制権限を定めた法は、国民の生命、身体、財産等を保護 するこ 引き起こすおそれがあることに鑑み、上記災害が万が一にも起こらないようにすることを目的としているといえる。これらの規定からすれば、規制権限を定めた法は、国民の生命、身体、財産等を保護 することを目的としているものと認められ、これらの利益は国民が平穏な生活を営む上で必要不可欠な重要な利益といえる。 3 被害法益の性質、重大性原子力発電所において事故が発生した場合、原子力発電所の作業員のみならず、原子力発電所の周辺住民等の生命や身体にも被害を及ぼし得るものである。 とりわけ、原子力発電所の事故により放射性物質が漏えいした場合には、広範 - 338 -囲かつ長期間にわたって住民の生命や身体に影響を及ぼすおそれがあり、本件事故で明らかになったように、放射能で汚染された地域には長期間にわたって帰還できず、放射線による健康被害に対する不安を抱えながら生活することを余儀なくされるなどの重大な結果をもたらし得るものである。このように、一たび原子力発電所において事故が発生すれば、その被害は非常に重大であり、 取り返しのつかないものといえる。 4 予見可能性(1) 予見可能性の対象ア前記前提事実によれば、原子炉施設の安全確保のため、異常等が発生すれば停止機能が働くものの、原子炉が停止したとしても燃料棒内に残存す る多量の放射性物質の崩壊により発熱が続くことから、燃料の破損を防止するために炉心の冷却を続ける必要があり、そのための注水系等の施設が備え付けられている。そして、これら注水系の施設を作動させるためには多くの電力が必要となるところ、何らかの原因で原子炉が停止し発電が停止している間には外部の主に新福島変電所から供給を受ける仕組みとなっ ていた。しかし、この外部電源設備が喪失した時には、非常用ディーゼル 必要となるところ、何らかの原因で原子炉が停止し発電が停止している間には外部の主に新福島変電所から供給を受ける仕組みとなっ ていた。しかし、この外部電源設備が喪失した時には、非常用ディーゼル発電機及びその供給のための電気設備によって電力が供給される仕組みとなっていた。 そして、本件事故は、本件地震の発生により原子炉が停止する等し、外部の新福島変電所等からの電源供給が途絶えた中で、本件津波が1号機 から4号機側主要建屋設置エリアの敷地(O.P.+10m。以下、「本件敷地」という。)に到達し、上記の非常用電源の供給設備が被水によって機能喪失する等に至り、炉心の冷却ができなくなって燃料の損傷に至るなどして、各原子炉施設から放射性物質が大量に放出されたものである。 以上のように、外部電源が失われた状態で、上記の非常用電源の供給設 - 339 -備の機能の喪失等が生じると、本件事故と同様の事態に陥る可能性が高いといえる。そうすると、経済産業大臣の規制権限不行使の違法性を判断するにあたっては、津波が福島第一原発に到達し、本件敷地が浸水して上記の非常用電源の供給設備の機能の喪失等が生じることを予見できたであろうといえるかという事情を考慮すべきといえる。したがって、 予見可能性の対象としては、本件敷地に浸水する津波、つまり本件敷地の高さであるO.P.+10mを超える津波の到来というべきである。 イこれに対し、一審被告国は、原審及び当審において、規制権限不行使の国賠法上の違法は、結果発生の原因となる事象に対する防止策に係る法的義務違反を問うものであるから、その前提となる予見可能性は、結果 発生の原因となる事象について判断されるべきであり、本件敷地の高さであるO.P.+10mを超える津波が発生、到来したと 係る法的義務違反を問うものであるから、その前提となる予見可能性は、結果 発生の原因となる事象について判断されるべきであり、本件敷地の高さであるO.P.+10mを超える津波が発生、到来したということだけで本件事故が発生したと認めることはできないから、予見可能性の対象はO.P.+10mを超える津波の到来ではなく、本件地震及びこれに伴う津波と同程度の地震及び津波の発生、到来である旨主張する。 しかし、予見可能性は、結果回避措置を講じるための前提であるところ、結果回避措置を講じることを義務付けるために必要な限度でその対象が特定されていれば足りるのであり、現実に生じた事実経過を前提にその原因となった事象を予見することまで必要とはいえない。そして、前記のとおり、本件においては、福島第一原発1号機から4号機までの主要 建屋の敷地高であるO.P.+10mを超える津波が到来した場合には、全交流電源喪失という本件事故と同様の事故が発生する現実的危険性があったと認められるのであるから、予見可能性の対象はO.P.+10mを超える津波の到来で足りるというべきである。したがって、一審被告国の上記主張は採用できない。 (2) 予見可能性の有無 - 340 -前記第1章で認定した事実(引用に係る原判決「事実及び理由」中の第4部、第1章、第1から第5までの認定事実(補正後)。以下、この章において単に「前記認定事実第1、1(1)」のように原判決における見出し番号を付していう。)によれば、推進本部は、平成14年7月、日本海溝付近のプレート間大地震(津波地震)について、日本海溝付近のプレート間で発生し たM8クラスの地震は、1611年の慶長三陸地震、1677年の延宝房総沖地震、1896年の明治三陸地震が知ら 本海溝付近のプレート間大地震(津波地震)について、日本海溝付近のプレート間で発生し たM8クラスの地震は、1611年の慶長三陸地震、1677年の延宝房総沖地震、1896年の明治三陸地震が知られているが、これらの地震は、同じ場所で繰り返し発生しているとは言い難いため、固有地震であるとは特定できないとし、1896年の明治三陸地震についてのモデルを参考にし、断層の長さが日本海溝に沿って200km程度、幅が約50kmの地震が、同 じ構造をもつ日本海溝付近の領域内のどこでも発生する可能性があるとした上で、M8クラスのプレート間大地震は過去400年間に3回発生していることから、この領域全体では約133年に1回の割合でこのような大地震が発生すると推定されるとし、ポアソン過程により、今後30年以内の発生確率は20%程度、今後50年以内の発生確率は30%程度と推定されるとの 見解(長期評価の見解)を公表したことが認められる。そして、推進本部は、全国にわたる総合的な地震防災対策を推進するため、一審被告国が法律に基づいて設置した公的な機関であり、長期評価の見解は少なくとも理学的根拠に基づくものといえるから、長期評価の見解には信用性があったといえる。 そして、原子力発電所においては、一旦苛酷事故が起きれば国民の生命身体 に不可逆的で深刻な被害をもたらすおそれがあり、炉規法等の一連の安全規制の法制度も、原子炉事故による深刻な災害が万が一にも起こらないようにするという目的を達する点にあることからすると、どこにどの程度の規模の地震が発生し、どこにどの程度の規模の津波が発生するかについて、専門研究者間で正当な見解として通説的見解といえる知見が確立するまで、結果回 避措置をとる前提としての予見可能性が全く認められないとすると、国民の の程度の規模の津波が発生するかについて、専門研究者間で正当な見解として通説的見解といえる知見が確立するまで、結果回 避措置をとる前提としての予見可能性が全く認められないとすると、国民の - 341 -生命身体に対する深刻な危険を放置することになりかねず、上記法制度の目的にも反しかねない。以上によれば、一審被告国は、福島第一原発における津波対策を採るに当たっては、長期評価の見解を考慮に入れる必要があったといえる。そして、前記認定事実第4、5のとおり、津波評価部会は、平成14年2月に津波評価技術を策定、公表しており、長期評価が公表された同 年7月の時点では、津波評価技術による計算手法が既に確立していたといえるから、この時点で一審被告国が、自ら又は一審被告東京電力に指示して長期評価の見解に基づいて試算を行っていれば、一審被告東京電力が後に津波評価技術を用いて行った2008年推計(前記認定事実第4、9(6))と同様に、敷地南側で最大でO.P.+15.7mの津波高さとなる津波(以下 「本件想定津波」という。)の到来を予見することができたといえる。2008年推計については、証拠(甲A140、乙A20の1・2)によれば、平成19年11月頃、一審被告東京電力の原子力設備管理部新潟県中越沖地震対策センター土木調査グループにおいて耐震バックチェックの最終報告における津波評価について長期評価の取扱いに関する検討を開始し、以後、東 電設計との間で津波水位の試算に関する打合せがされ、平成20年3月から4月にかけて同社から試算の結果が示されたことが認められる。そうすると、一審被告国が、平成14年7月に長期評価が公表された時点で直ちに、自ら又は一審被告東京電力に指示して試算を行っていれば、遅くとも同年末の時点では2008年推計と同等 たことが認められる。そうすると、一審被告国が、平成14年7月に長期評価が公表された時点で直ちに、自ら又は一審被告東京電力に指示して試算を行っていれば、遅くとも同年末の時点では2008年推計と同等の試算結果を得ることができたものといえる。 したがって、一審被告国は、遅くとも平成14年末の時点で、本件敷地の高さを超える本件想定津波の到来を予見することができたというべきであり、この時に、一審被告東京電力に対し、電気事業法40条に基づく技術基準適合命令を発する必要があることを認識することができたというべきである。 これに対し、一審被告国は、前記第3部第3章第4、2のとおり、原子力 規制に取り入れるべき科学的知見としては、少なくとも、各専門分野の学識 - 342 -経験者等の間で、当該科学的知見が原子力規制に取り入れられるべき精度及び確度を備えた正当な見解として是認されるべきものであり、単に国の機関が発表した見解や意見であるというだけでは原子力規制に取り入れることはできない旨主張する。 しかし、上記のような精度及び確度まで求めると、前記2の法制度の目的 にも反しかねず、長期評価の見解を考慮に入れ、想定津波の試算を行わせるべきであったことは上記で述べたとおりである。 また、一審被告国は、前記第3部第3章第5、1のとおり、長期評価の信用性に関して様々主張する。 たしかに、前記認定事実第4、6(4)から(6)までのように、長期評価の信 頼度について、評価結果の中にはC(やや低い)とされたものや、長期評価の見解に沿わない専門家の意見があったことが認められる。 しかし、前記認定事実第4、6(1)、(3)及び(6)のとおり、推進本部は、全国にわたる総合的な地震防災対策を推進するため、一審被告国が法律に基づいて設置した公的 の意見があったことが認められる。 しかし、前記認定事実第4、6(1)、(3)及び(6)のとおり、推進本部は、全国にわたる総合的な地震防災対策を推進するため、一審被告国が法律に基づいて設置した公的な機関であり、長期評価の見解は、部会において専門家 が協議、検討した上で出されたものであるから、理学的根拠に基づくものとして信用性があるものというべきである。一審被告国の上記主張は採用できない。 他方、一審原告らは、本件敷地の高さであるO.P.+10mを超える津波の到来を予見することができる根拠として、平成9年3月の4省庁報告書 及び平成11年3月の津波浸水予測図を挙げる。しかしながら、前記認定事実第4、2及び4のとおり、4省庁報告書は、福島第一原発の1号機から4号機までが所在する福島県双葉郡大熊町の想定津波の計算値をO.P.+6. 4mとするものであるし、津波浸水予測図は、「個々の海岸における事前の津波対策を検討するための基礎資料」として作成されたものであり、福島第 一原発の沿岸部に設定波高の津波が到来することを具体的に予測したもので - 343 -はない。したがって、4省庁報告書及び津波浸水図を根拠として本件敷地の高さであるO.P.+10mを超える津波の到来を予見することはできず、一審原告らの上記主張は採用できない。また、平成13年の「西暦869年貞観津波による堆積作用とその数値復元」についても、前記認定事実第4、8(3)のとおり、これをもって直ちに本件敷地の高さであるO.P.+10 mを超える津波の到来を予見することはできないというべきである。 5 因果関係(1) 以上によれば、本件においては、前記のとおり、一審被告国は、遅くとも平成14年末には、本件敷地の高さを超える本件想定津波を予見するこ することはできないというべきである。 5 因果関係(1) 以上によれば、本件においては、前記のとおり、一審被告国は、遅くとも平成14年末には、本件敷地の高さを超える本件想定津波を予見することができたのであるから、本件想定津波を前提に、一審被告国が電気事業法40 条に基づく技術基準適合命令を発することによって講じられるであろう結果回避措置及びその措置を講ずることによって平成23年3月11日において本件津波の到来による全交流電源喪失という事態を回避することができたか否か、すなわち、前記第1で述べたとおり、本件においては、経済産業大臣が電気事業法40条に基づく規制権限である技術基準適合命令を発令しなか ったことによって、国が国賠法1条1項の損害賠償責任を負うというためには、経済産業大臣が技術基準適合命令を発していれば一審原告らが損害を受けることはなかったであろうという関係が認められる必要があるので、これについて検討する。 (2) 証拠(丙A105、152)によれば、原子力安全基盤機構(独立行政法 人原子力安全基盤機構の解散に関する法律(平成25年法律第82号)1条の施行により平成26年3月1日解散。)の平成26年1月の「津波に対する構造設計・リスク評価手引き」において、本件事故以前における我が国の既往の津波に対する評価は、基準津波による津波水位に基づく防潮堤の設置及び敷地高の確保と、津波の引き波時における非常用海水設備の冷却水の確 保だけを対象としており、基準津波及びこれを超える事象に対しての構造的 - 344 -な評価に関してはほとんどなされていなかったと説明していること、東北大学災害科学国際研修所長の今村は、本件事故以前の我が国における原子炉施設の津波対策は、津波により安全設備等が設置された原子 -な評価に関してはほとんどなされていなかったと説明していること、東北大学災害科学国際研修所長の今村は、本件事故以前の我が国における原子炉施設の津波対策は、津波により安全設備等が設置された原子炉施設の敷地が浸水することが想定される場合、防潮堤等を設置することにより上記敷地への海水の浸入を防止することを基本とするものであった旨説明していることが 認められる。このうち、上記手引きは、原子力施設及び原子炉施設に関する検査等を行うとともに、原子力施設及び原子炉施設の設計に関する安全性の解析及び評価等を行うことにより、エネルギーとしての利用に関する原子力の安全の確保のための基盤の整備を図ることを目的とする(平成25年法律第82号附則2条による廃止前の独立行政法人原子力安全基盤機構法4条) 原子力安全基盤機構が、事業者が実施した津波に対する構造設計・リスク評価結果に係る審査支援を実施する際に用いるものとして策定したものであり、上記説明はその中において我が国の動向としてまとめたものである。また、今村は、津波防災、減災技術開発、津波数値解析の津波工学を専門とし、30年以上にわたって津波に関する研究をしており、所属する津波工学研究室 は、工学的な立場から津波を研究する世界で唯一の研究組織である。以上のような専門性に照らすと、本件事故以前における我が国の既往の津波に対する評価が上記認定したものであったということについて信用できるというべきである。そうすると、経済産業大臣が、長期評価を前提に、電気事業法40条に基づく規制権限を行使して、津波による福島第一原発の事故を防ぐた めの適切な措置を講じることを一審被告東京電力に義務付けていた場合には、長期評価に基づいて想定される最大の津波が本件敷地に到来しても本件敷地への海水の浸入を防 よる福島第一原発の事故を防ぐた めの適切な措置を講じることを一審被告東京電力に義務付けていた場合には、長期評価に基づいて想定される最大の津波が本件敷地に到来しても本件敷地への海水の浸入を防ぐことができるように設計された防潮堤等を設置するという措置が講じられた蓋然性が高いということができる。そして、2008年推計は、前記認定事実第4、9(6)のとおり、長期評価が今後同様の地震 が発生する可能性があるとする明治三陸地震の断層モデルを福島県沖の日本 - 345 -海溝寄りの領域に設定した上、津波評価技術が示す設計津波水位の評価方法に従って、上記断層モデルの諸条件を合理的と考えられる範囲内で変化させた数値計算を多数実施し、本件敷地の海に面した東側及び南東側の前面における波の高さが最も高くなる津波を試算したものであると認められるところ、安全性に十分配慮して余裕を持たせ、当時考えられる最悪の事態に対応した ものとして、合理性を有する試算であったといえる。したがって、同様に本件想定津波についても合理性を認めることができる。 そうすると、経済産業大臣が上記の規制権限を行使していた場合には、本件想定津波と同じ規模の津波による本件敷地の浸水を防ぐことができるように設計された防潮堤等を設置するという措置が講じられた蓋然性が高いとい うことができる。 他方、一審原告らは、後記のとおり、津波により安全設備等が設置された原子炉施設の敷地が浸水することが想定される場合には、水密化を始めとして、想定される津波による上記敷地の浸水を防ぐことができるように設計された防潮堤等を設置する措置以外の方策を講じるべきであると主張する。 これに関し、例えば佐藤暁が平成30年7月に作成した意見書(丁A26)では、基本的には欧米の先例等を参考 きるように設計された防潮堤等を設置する措置以外の方策を講じるべきであると主張する。 これに関し、例えば佐藤暁が平成30年7月に作成した意見書(丁A26)では、基本的には欧米の先例等を参考に本件事故の回避措置についての提言がされていることが認められる(丁A27)。また、このほかにも上記防潮堤等の設置以外の措置について指摘するものもある(丁A48から50まで等)。 しかし、これらについては、本件事故を受けてその回避の方策を検討し、その方策自体は本件事故以前にも存在する技術であったことを示すものではあるが、これらによって、本件事故以前において、津波により安全設備等が設置された原子炉施設の敷地が浸水することが想定される場合に、想定される津波による上記敷地の浸水を防ぐことができるように設計された防潮堤等 を設置するという措置を講じるだけでは対策として不十分であるとの考え方 - 346 -が有力であったと評価することができるものではない。また、平成18年5月11日開催の第3回溢水勉強会において、福島第一原発の5号機について、その敷地高を超える津波の到来により建屋への浸水が生じ、その結果、電源設備の機能を喪失する可能性の指摘がされたこと(前記認定事実第3、4(2)イ(イ))、同勉強会において、津波の水位だけでなく波力による損傷も考 えなければならないことや水密性についての指摘がされたこと(甲A193)、平成20年3月頃には、一審被告東京電力において、福島第一原発・第二原発の耐震設計審査指針の改訂に伴う中間報告に関し、津波に対する評価の結果、施設への影響が無視できない場合の対策として、電動機予備品準備、水密化した電動機の開発、建屋の水密化等が考えられるとしていたこと (甲A157、194)も認められるが、こ に対する評価の結果、施設への影響が無視できない場合の対策として、電動機予備品準備、水密化した電動機の開発、建屋の水密化等が考えられるとしていたこと (甲A157、194)も認められるが、これらの事情に照らしても、上記のような考え方が有力であったと評価することができるものでもない。その他、本件全証拠によっても、本件事故以前の知見の下において、想定される津波による敷地の浸水を防ぐことができるように設計された防潮堤等を設置するという措置が原子炉施設の津波対策として不十分なものであったと解す べき事情はうかがわれない。したがって、本件事故以前に経済産業大臣が上記の規制権限を行使していた場合に、本件想定津波と同じ規模の津波による本件敷地の浸水を防ぐことができるように設計された防潮堤等を設置するという措置に加えて他の対策が講じられた蓋然性があるということはできない。 そして、前記前提事実第2、1(4)イ(i)(イ)、前記認定事実第4、9(6)イ 及び証拠(乙A6の1、20の1・2、丙A33)のとおり、長期評価が今後発生する可能性があるとした地震の規模は、津波マグニチュード(津波の高さの空間分布を使って算出する地震の大きさの指標)8.2前後であったのに対し、本件地震の規模は、津波マグニチュード9.1であり、本件地震は、長期評価において想定された地震よりも、津波の高さの分布を使って算 出した大きさで見てもはるかに規模が大きいものであったこと、本件想定津 - 347 -波による主要建屋付近の浸水深は約2.6m又はそれ以下とされたのに対し、本件津波による主要建屋付近の浸水深は最大で約5.5mに及んだこと、本件想定津波の高さは、本件敷地の南東側前面において本件敷地の高さを超えていたものの、東側前面においては本件敷地の高さを のに対し、本件津波による主要建屋付近の浸水深は最大で約5.5mに及んだこと、本件想定津波の高さは、本件敷地の南東側前面において本件敷地の高さを超えていたものの、東側前面においては本件敷地の高さを超えることはなく、本件想定津波と同じ規模の津波が本件敷地に到来しても、海水がその東側から 浸入することは想定されていなかったが、現実には、本件津波の到来に伴い、本件敷地の南東側のみならず東側からも大量の海水が本件敷地に浸入していることが認められる。これらの事情に照らすと、本件想定津波と同じ規模の津波による本件敷地の浸水を防ぐことができるものとして設計される防潮堤等は、本件敷地の南東側からの海水の浸入を防ぐことに主眼を置いたものと なる可能性が高く、一定の裕度を有するように設計されるであろうことを考慮しても、本件津波の到来に伴って大量の海水が本件敷地に浸入することを防ぐことができるものにはならなかった可能性が高いといわざるを得ない。 以上によれば、仮に、経済産業大臣が、長期評価を前提に本件想定津波の到来を予見し、直ちに電気事業法40条に基づく規制権限を行使して、津波 による福島第一原発の事故を防ぐための適切な措置を講じることを一審被告東京電力に義務付けていたとしても、それによって講じられる措置の内容は本件想定津波を前提に本件敷地の南東側からの海水の浸入を防ぐことに主眼を置いた防潮堤等の設置となった可能性が高く、そして、一審被告東京電力がその義務を履行してそのような防潮堤等を設置していたとしても、本件津 波の到来に伴って大量の海水が本件敷地に浸入することは避けられなかった可能性が高く、その大量の海水が主要建屋の中に浸入し、非常用電源設備が浸水によりその機能を失うなどして各原子炉施設が電源喪失の事態に陥り、本件事故と同様の が本件敷地に浸入することは避けられなかった可能性が高く、その大量の海水が主要建屋の中に浸入し、非常用電源設備が浸水によりその機能を失うなどして各原子炉施設が電源喪失の事態に陥り、本件事故と同様の事故が発生するに至っていた可能性が相当にあるといわざるを得ない。 そうすると、本件の事実関係の下においては、経済産業大臣が上記の規制 - 348 -権限を行使していれば本件事故又はこれと同様の事故が発生しなかったであろうという関係を認めることはできないことになるといわざるを得ない。 (3)アこれに対し、一審原告らは、前記第3部第2章第7、2のとおり、そもそもドライサイトコンセプトが本件事故前の原子力発電所に関する安全の指針であったことを諸法令上明示するものはないし、これができない場合 には、次善の策として敷地内浸水を前提に水密化等の策を講じる必要があった旨主張する。 たしかに、本件事故以前の関係法令において、原子力発電所に関する安全の指針としてドライサイトコンセプトを定めていたものはない。 しかし、上記(2)で述べたとおり、本件事故以前の我が国における原子 炉施設の津波対策は、津波により安全設備等が設置された原子炉施設の敷地が浸水することが想定される場合、防潮堤等を設置することにより上記敷地への海水の浸入を防止することを基本とするものであり、本件事故以前の知見の下において、上記措置が原子炉施設の津波対策として不十分なものであったと解すべき事情はうかがわれず、本件事故以前に 経済産業大臣が上記の規制権限を行使していた場合に、本件想定津波と同じ規模の津波による本件敷地の浸水を防ぐことができるように設計された防潮堤等を設置するという措置に加えて他の対策が講じられた蓋然性があるということはできない。 イ一審原 場合に、本件想定津波と同じ規模の津波による本件敷地の浸水を防ぐことができるように設計された防潮堤等を設置するという措置に加えて他の対策が講じられた蓋然性があるということはできない。 イ一審原告らは、保安院が、一審被告東京電力に対し、平成18年の耐震 バックチェック指示において長期評価の考慮とそれを踏まえた津波推計を指示していれば、どんなに遅くとも平成20年11月までには福島第一原発がウェットサイトに転化している事実を認識することができ、また、建屋及び機械設備の水密化は本件事故以前から確立していた知見であったことなどからすれば、まずは短期で施工可能な重要機器室の水密化及びター ビン建屋等の水密化の措置が講じられるべきであり、さらにその後に完成 - 349 -する防潮堤の設置によって多重の防護を確保すべきである、重要機器室の水密化及びタービン建屋等の水密化の措置が講じられれば本件津波に対しても非常用電源設備等の被水を回避することが可能であったなどと主張する。 たしかに、本件事故前に国内外において水密化の技術そのものは存在し ていたし、海外の原子力発電所において重要機器のある部屋の水密化等の措置が講じられている例もあったことは認められる(甲A3、182から184まで、丁A32の1から3まで、33の1・2)。また、証拠(丁A26から28まで、48から50まで)によれば、水密化等の方策が本件事故の回避のため有用であった可能性があることを示唆する 考えもあることが認められる。 しかし、上記で述べたとおり本件事故以前の我が国における原子炉施設の津波対策は、津波により安全設備等が設置された原子炉施設の敷地が浸水することが想定される場合、防潮堤等を設置することにより上記敷地への海水の浸入を防止することを基本とする 我が国における原子炉施設の津波対策は、津波により安全設備等が設置された原子炉施設の敷地が浸水することが想定される場合、防潮堤等を設置することにより上記敷地への海水の浸入を防止することを基本とするものであったし、また、 下記のとおり国内における水密化の例は、いずれも前提が異なるか、部分的な水密化についての検討等であり、本件事故以前に経済産業大臣が上記の規制権限を行使していた場合に、本件想定津波と同じ規模の津波による本件敷地の浸水を防ぐことができるように設計された防潮堤等を設置するという措置に加えて他の対策が講じられた蓋然性があるという ことはできない。 ウ一審原告らは、本件事故前において我が国でも水密化の実例がある旨主張する。証拠(丙A327)によれば、日本原子力発電株式会社が平成20年12月に東海第二発電所及び敦賀発電所において津波対策工事のうち建屋津波対策工事として、防水扉、防潮シャッター、防潮堰等の対策工事 を始め、平成21年9月には竣工したことが認められるところ、これは、 - 350 -評価上津波が建屋に遡上しないことを前提としてのものであった。また、証拠(丙A243)によれば、浜岡発電所(敷地レベルT.P.(東京湾平均海面)+6m)については、水位上昇側として土木学会手法による評価においてT.P.+6.8mと最大の値が出され、原子炉建屋及び海水熱交換器の出入口には腰部防水構造の防護扉等の設置がされていたことが 認められるが、そもそも浜岡発電所の敷地前面にはT.P.+10から15m、幅60から80mにわたる砂丘が存在していることから、主要建屋等が存在する敷地に津波が浸入することが前提となっていたものとは解されない。以上のように、これらについては想定される津波がそもそも主要建屋等の存在する敷地 わたる砂丘が存在していることから、主要建屋等が存在する敷地に津波が浸入することが前提となっていたものとは解されない。以上のように、これらについては想定される津波がそもそも主要建屋等の存在する敷地内に浸入しないことが前提となっての措置であった といえる。 また、前記認定事実第4、9(4)及び証拠(乙A6の1)によれば、一審被告東京電力は、2002年推計の策定を基に、福島第一原発については、同6号機の非常用ディーゼル発電機冷却系海水ポンプ用モーターのかさ上げ、建屋貫通部等の浸水防止策等を実施したこと及び福島第二 原発については、海水熱交換器建屋等の水密化をしていることがいずれも認められるところ、証拠(乙A6の1)によれば、これらは、2002年推計によりO.P.+5.7m(福島第一原発)又は+5.2m(福島第二原発)という津波の評価を受けて対策を施したものと認められる。これらがいずれも主要建物の敷地高(福島第一原発1号機から4 号機までについてO.P.+10m、福島第二原発についてO.P.+12m(乙A6の2))を超えない津波評価に基づく対策であることに照らすと、局所的、部分的な対策を講じたにすぎないというべきである。 なお、前記認定事実第3、3(1)のとおり、福島第一原発においては、平成3年10月30日、1号機補機冷却水系海水配管からの海水漏えいに 伴う原子炉手動停止の事故が発生したが、その原因は、海水配管のライ - 351 -ニング表面が貝等の異物で傷つけられ、これが徐々に拡大し、そこに海水が浸透して材料の腐食減肉が内面より徐々に進行し、局所的に貫通し海水漏えいに至ったものと考えられるのであり、これは津波等による外部溢水とは異なるものであるから、この件及びそれへの対応は本件事故の結果回避措置を検討する 減肉が内面より徐々に進行し、局所的に貫通し海水漏えいに至ったものと考えられるのであり、これは津波等による外部溢水とは異なるものであるから、この件及びそれへの対応は本件事故の結果回避措置を検討するにあたっては参考にならないというべきであ る。 エさらに、一審原告らは、一審被告東京電力が、本件事故前に福島第一原発の水密化を検討することができた旨主張する。 たしかに、前記認定事実第3、4(2)イ及び証拠(甲A194、丙A367)によれば、平成18年5月11日開催の第3回溢水勉強会におい て、福島第一原発5号機の津波水位による機器影響評価が検討され、その中で「水密扉」という発言があったこと、平成20年12月10日に一審被告東京電力の担当者が阿部に対し福島第一原発の津波対策等について相談した際、阿部から浜岡発電所で最近津波対策として壁の設置、水密化等を実施したようなので参考に調べておいた方がよいと助言を受 けたこと、平成22年8月以降の福島地点津波対策ワーキンググループが実施され、そこにおいて、提示された津波水位について、構成員がそれぞれ受け持っている構造物に対して必要な対策を検討すること、その中で第1回において建屋扉の水密化の問題が出たことが認められる。 しかし、溢水勉強会における検討は、敷地高を超える津波が来た場合に 機器が水没しないように対策を検討する必要があることを確認したものであり、その協議内で水密扉という発言があったにすぎず、更に進んで具体的に水密扉の対策を検討し講じることまで要求されていたわけではないし(甲A193、丙A377)、阿部からの助言についても更に進んで具体的に水密化することを求められたものでもなく、福島地点津波 対策ワーキンググループで検討されていたのは4m盤にある海水ポンプ A193、丙A377)、阿部からの助言についても更に進んで具体的に水密化することを求められたものでもなく、福島地点津波 対策ワーキンググループで検討されていたのは4m盤にある海水ポンプ - 352 -の電動機及びポンプを収納する建屋の水密化措置であり、検討をしても技術的に困難な面があることを確認したものであった(丙A311の2・4)。これらのことからすれば、本件事故前において検討された水密化は、局所的、部分的なものに留まり、福島第一原発全体についての水密化を検討すべきことが前提となっていたものではなく、それが要求 されていたものでもない。したがって、これらのことがあったからといって直ちに前記判断が左右されるものではない。このことは、一審原告らが主張する一審被告東京電力が水密化について検討していたことに関する他の点を踏まえても同様である。 オ一審原告らは、平成20年以前に現に実施されていた水密化の措置から すれば、遅くとも同年11月までに経済産業大臣が技術基準適合命令を発していれば、一審被告東京電力はタービン建屋の扉の水密化等を実施した蓋然性が高いなどと主張する。 しかし、上述のとおり、平成20年以前に他の発電所で講じられたいくつかの措置も、想定される津波がそもそも主要建屋等の存在する敷地内 に浸入しないことが前提となっての措置であったのであり、仮に平成20年11月までに経済産業大臣が本件想定津波を前提に技術基準適合命令を発していたとしても、防潮堤等を設置するという措置に加えて他の対策が講じられた蓋然性があるとか、そのような対策が講じられなければならなかったということはできないから、一審被告東京電力がタービ ン建屋の扉の水密化等を実施した蓋然性が高いとは認められない。 カ一審原告らは、想定津 とか、そのような対策が講じられなければならなかったということはできないから、一審被告東京電力がタービ ン建屋の扉の水密化等を実施した蓋然性が高いとは認められない。 カ一審原告らは、想定津波と本件津波との間には、結果回避可能性を否定する有意な差はなく、東電設計の試算にしたがって長期評価の想定する津波に対する防潮堤の設置を検討する場合、東側からの津波流入についても検討され、対策がされた可能性が高い旨主張する。 前記(2)で認定したとおり本件想定津波と本件津波とは、津波マグニチ - 353 -ュードが異なり本件津波の方がはるかに規模は大きく、浸水深も異なっており有意な差があったといえることに加え、証拠(乙A20の1)によれば、東電設計が平成20年に行った試算においては、仮に敷地南側及び北側に防潮堤を設置すると、そこで堰き止められた津波が周囲に流れることになり、敷地東側周辺からも主要建屋敷地に遡上することにな る可能性が否定できなかったので、敷地東側を含めて主要建屋敷地全面に鉛直壁を仮定してシミュレーションを行ったが、シミュレーションの結果は、敷地南側では仮定的鉛直壁による津波の跳ね上がりにより鉛直壁前面の津波の高さがO.P.+19.933mとなるのに対し、敷地東側では、これらの仮定的鉛直壁による津波の挙動変化を踏まえても敷 地高のO.P.+10mを超えないとの評価結果が得られ、それ以降の評価においては敷地東側の鉛直壁前面の津波高さに着目した検討をしなかったことが認められ、これらを併せ考えると、東電設計の試算にしたがって長期評価の想定する津波に対する防潮堤の設置を検討する場合、東側からの津波流入についても対策がされた可能性が高かったとはいえ ない。 キ一審原告らは、建屋の水密化による防護措置が講 がって長期評価の想定する津波に対する防潮堤の設置を検討する場合、東側からの津波流入についても対策がされた可能性が高かったとはいえ ない。 キ一審原告らは、建屋の水密化による防護措置が講じられていれば、1階への浸水を防ぐことができたし、仮に浸水した場合も、配電盤等の重要機器が設置された部屋について水密化がされていれば、重要機器の被水を防止することが十分に可能であった旨主張する。 水密化の方策の有用性については前記イのとおりであるが、上記で述べたとおり、本件事故以前に経済産業大臣が上記の規制権限を行使していた場合に、本件想定津波と同じ規模の津波による本件敷地の浸水を防ぐことができるように設計された防潮堤等を設置するという措置に加えて他の対策が講じられた蓋然性があるということはできない。 クさらに、一審原告らは、前記第3部第2章第8、2(3)のように、長期 - 354 -評価を前提に、経済産業大臣が技術基準適合命令を発した場合、一審被告東京電力としては、すみやかに、本件敷地の東側からも津波が遡上しないよう、適切な防潮堤等を設置する措置を講じ、想定される遡上波が本件敷地に到達することを防止する必要があったというものであり、その実施を妨げる事情もうかがわれず、それが実施された蓋然性が高いということが できる、津波に関する知見が進化し、貞観津波の知見等、最新の知見を踏まえた対応を一審被告東京電力に講じさせるべきであるし、この貞観津波を想定した場合、本件敷地の東側からの津波流入も当然に前提とされた旨主張し、それに沿う証拠として、貞観津波に関し平成21年6月24日及び同年7月13日開催の合同WGの会合内容を援用する(丁A75の2、 76の1)。 たしかに、平成14年7月の長期評価を受けて直ちに津波評 沿う証拠として、貞観津波に関し平成21年6月24日及び同年7月13日開催の合同WGの会合内容を援用する(丁A75の2、 76の1)。 たしかに、平成14年7月の長期評価を受けて直ちに津波評価技術に基づく検討を始めれば、同年末には本件敷地の高さを超えるO.P.+15.7mの津波を予見することが可能であったといえることは前記4(2)で述べたとおりである。また、仮に貞観津波に関する具体的かつ的確な 知見があれば、それを基にさらに想定できる津波について試算し、それにより本件敷地の東側からも津波が遡上することを試算し、それを前提に措置を講じることが検討された可能性は肯定できる。 しかし、前記認定事実第4、8及び証拠(甲A1の1、乙A6の1)によれば、貞観津波についての検討は、平成20年10月頃に一審被告東 京電力の担当者が土木学会の委員を務める有識者らを訪ね、社内検討結果について理解を求め、その中で佐竹から貞観津波に関する研究成果を同年度内に発表できる見込みであると聞き、その際に提供された貞観津波のシミュレーションを基に福島第一原発における波高を試算したところ、8.6mから9.2mとの結果を得たこと、佐竹の論文では波源モ デルを確定させるために福島県沖等の津波堆積物調査が必要であると指 - 355 -摘し、その調査を行ったが、本件地震発生当時においても貞観津波の発生位置及び規模等(波源モデル)は確定されていなかったことが認められる。したがって、本件事故前において、貞観津波を具体的に想定して検討することは困難であったというべきである。 ケ以上のとおり、一審原告らの上記主張はいずれも採用できず、その他、 一審原告らが前記第3部第2章で主張する点を併せ検討しても、上記判断は左右されない。 6 まとめ以 いうべきである。 ケ以上のとおり、一審原告らの上記主張はいずれも採用できず、その他、 一審原告らが前記第3部第2章で主張する点を併せ検討しても、上記判断は左右されない。 6 まとめ以上より、被害法益である国民の生命、身体、財産等は極めて重要なものであり、原子力発電所で事故が発生した場合の被害は広範囲かつ長期間にわたっ て住民の生命や身体に影響を及ぼす恐れがあり非常に重大なものであることが認められ、平成14年末にはO.P.+10mを超えるO.P.+15.7mの津波の到来を予見することは可能であったと認められるものの、本件事故以前の我が国における原子炉施設の津波対策の状況を踏まえると、経済産業大臣が電気事業法40条に基づく規制権限である技術基準適合命令を発令したとし ても、本件津波による全交流電源喪失という結果を回避することができたものとは認められない。すなわち、本件においては、経済産業大臣が電気事業法40条に基づく規制権限である技術基準適合命令を発令しなかったことによって、国が国賠法1条1項の損害賠償責任を負うというためには、経済産業大臣が技術基準適合命令を発令していれば一審原告らが損害を受けることはなかったで あろうという関係が認められる必要があるところ、前記のとおり、経済産業大臣が電気事業法40条に基づく規制権限である技術基準適合命令を発令しても、本件津波による全交流電源喪失という結果を回避することができたとはいえず、一審原告らが損害を受けることはなかったであろうという関係が認められない。 したがって、本件において、経済産業大臣が技術基準適合命令を発しなかっ たという規制権限の不行使により、一審被告国が国賠法1条1項の責任を負う - 356 -とはいえない。 第3 省令62号33条4項に おいて、経済産業大臣が技術基準適合命令を発しなかっ たという規制権限の不行使により、一審被告国が国賠法1条1項の責任を負う - 356 -とはいえない。 第3 省令62号33条4項に反することを理由とした技術基準適合命令を発しなかったことの違法性省令62号33条4項に反することを理由とした技術基準適合命令を発しなかったことの違法性についての判断は、原判決の「事実及び理由」中の第4部、 第3章、第3に記載のとおりであるからこれを引用する。 第4 シビアアクシデント対策についての規制権限不行使の違法性シビアアクシデント対策についての規制権限不行使の違法性についての判断は、次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」中の第4部、第3章、第4に記載のとおりであるからこれを引用する。 (原判決の補正) 1 原判決399頁18行目の「前記のとおり、」の次に「平成14年末にはO. P.+15.7mの本件想定津波の到来を予見することが可能であったとしても、」を加える。 2 原判決399頁20行目から21行目にかけての「O.P.+10mを」か ら同行目から22行目にかけての「なかった上、」までを削る。 第5 本件設置等許可処分を取り消さなかったことの違法性本件設置等許可処分を取り消さなかったことの違法性についての判断は、次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」中の第4部、第3章、第5に記載のとおりであるからこれを引用する。 (原判決の補正) 1 原判決400頁7行目の「原告らは、」の次に「遅くとも」を加える。 2 原判決400頁23行目の「前記第2のとおり、」から26行目の「また、」までを「たしかに、前記第2のとおり、平成14年末の時点では、本件敷地の高さを超えるO.P.+15.7m とも」を加える。 2 原判決400頁23行目の「前記第2のとおり、」から26行目の「また、」までを「たしかに、前記第2のとおり、平成14年末の時点では、本件敷地の高さを超えるO.P.+15.7mの本件想定津波の到来を予見することが可 能であった。しかし、」と改める。 - 357 - 3 原判決401頁3行目の「O.P.+10mを」を「本件敷地の高さを」と改める。 4 原判決401頁10行目から11行目にかけての「旧炉規法24条1項4号の要件が充足されていないとして」を削る。 第6 結論 以上より、一審被告国の規制権限不行使が国賠法上違法ということはできない。 第4章一審被告国の本件事故後の対応の違法性第1 本件事故後の避難指示の違法性本件事故後の避難指示の違法性についての判断は、原判決の「事実及び理由」 中の第4部、第4章、第1に記載のとおりであるからこれを引用する。ただし、原判決401頁25行目の「本件事故後に」から402頁1行目の「ないし、」までを削り、2行目の「いうことも」を「いうことは」と改める。 第2 本件事故後の放射性物質拡散予測に関する情報の不開示及び隠避の違法性本件事故後の放射性物質拡散予測に関する情報の不開示及び隠避の違法性に ついての判断は、次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」中の第4部、第4章、第2に記載のとおりであるからこれを引用する。 (原判決の補正) 1 原判決402頁8行目の「前記認定事実によれば、」の次に「たしかに、」を加え、9行目の「認められるが、」から12行目の「また、」までを「認め られる。しかし、」と改め、15行目の「否か」の次に「及びその時期等」を加える。 2 原判決402頁21行目の「不開示及び隠避を行ったこと」を れるが、」から12行目の「また、」までを「認め られる。しかし、」と改め、15行目の「否か」の次に「及びその時期等」を加える。 2 原判決402頁21行目の「不開示及び隠避を行ったこと」を「取扱い」と改める。 第5章一審被告国の責任に関するまとめ 以上のとおり、一審被告国に国賠法1条1項の責任は認められない。 - 358 -第6章一審被告東京電力の責任(民法709条及び717条1項に基づく請求の可否)一審被告東京電力の責任(民法709条及び717条1項に基づく請求の可否)についての判断は、原判決の「事実及び理由」中の第4部、第6章に記載のとおりであるからこれを引用する。 これに関し、一審原告らは、前記第3部第4章のように主張するが、上述のとおりであり採用できない。 - 359 -第5部損害(弁済の抗弁を含む。)に関する当裁判所の判断第1章損害(弁済の抗弁を含む。)に関する考え方(一審原告ら共通)第1 相当因果関係がある損害の主張立証責任 1 不法行為に基づく損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し、加害者にこれを賠償させることにより、被害者が被った不利益を補てん して、不法行為がなかった時の状態に回復させることを目的とするものである。 2 一方、「原子力損害」(原賠法2条2項)とは、核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用により生じた損害をいうところ、「原子力損害」の範囲について原賠法には規定が存在しないから、民法上の損害賠償責任に関する一般原則に従って、原子炉の運転等と相 当因果関係のある損害全てがこれに含まれると解される。そして、原子力損害とは、不法行為における損害と同様に、「核燃料物質の原子 民法上の損害賠償責任に関する一般原則に従って、原子炉の運転等と相 当因果関係のある損害全てがこれに含まれると解される。そして、原子力損害とは、不法行為における損害と同様に、「核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用」が発生しなければあったであろう状態と現状の差額を金銭的に評価したものであると解され、本件事故と相当因果関係のある損害の発生及び金額については、一審原告らが具体 的に主張立証しなければならない。 3 しかし、本件事故の影響が極めて広範囲に及び、個々の避難者も突然の避難を余儀なくされた場合もあるということも踏まえると、損害の内容によっては、損害の主張立証をすることが極めて困難である場合があり得る。 中間指針等(第五次追補を含む。以下同じ。)及び一審被告東京電力の賠償 基準の考え方は、このような観点から、多数の避難者に共通する損害の賠償基準を策定し、同一審被告は、中間指針等及び賠償基準の考え方を踏まえて策定した賠償基準により、一定の資料の確認ができた場合には賠償を行い、本件でも同基準に基づき一定の範囲では争わず賠償することを認めている。 4 前記2のような損害の主張立証責任を踏まえるとともに、上記3のような中 間指針等及び一審被告東京電力の賠償基準の考え方及び賠償の過程も考慮すれ - 360 -ば、各一審原告の本件事故と相当因果関係ある損害については一審原告らにおいて具体的に主張し、かつ証拠により立証しなければならないことを原則としつつ、ある損害事項に関する一審原告(又は元原審原告)の請求に対し一審被告東京電力が原子力損害賠償紛争解決センターにおいて行われた和解仲介手続(ADR)で成立した合意にもとづいて行われた賠償(以下「ADRによる賠 する一審原告(又は元原審原告)の請求に対し一審被告東京電力が原子力損害賠償紛争解決センターにおいて行われた和解仲介手続(ADR)で成立した合意にもとづいて行われた賠償(以下「ADRによる賠 償」という。)や、一審原告又は元原審原告からの直接請求に基づく直接賠償(以下「ADR以外による賠償」という。)により既に賠償を行っている場合には、証拠により認められるその賠償の具体的対象事項及び金額を見た上で、当事者双方の当該賠償事項及び金額に対する本件訴訟における態度により相当と認める場合には、既に行われた賠償事項及び金額の全部又は一部の限度で、 弁論の全趣旨により本件事故と相当因果関係ある損害として認定する余地があるというべきであり、それを超える損害の発生又は損害額の主張がある場合に、超過分の損害の発生又は金額の立証がされているかどうかをさらに判断するものとすることもできると解される。 5 なお、一審原告ら及び一審被告東京電力は、それぞれ中間指針等の内容の合 理性の有無や中間指針等を踏まえた一審被告東京電力の賠償基準の内容の合理性の有無等について主張するところ、中間指針等は、原賠法18条2項2号に依拠して、法学者及び放射線の専門家等の委員で構成された原賠審において、多数の被害者への迅速、公平かつ適正な賠償を行うとの見地から、過去の裁判例並びに慰謝料額の基準も踏まえて定めた基準であるから、これを踏まえた一 審被告東京電力の賠償基準も含め、そのようなものとして一応の合理性を有するものであり、相当と認められる場合にこれを弁論の全趣旨として考慮することは許されるというべきである。 もっとも、中間指針等や賠償基準は、その性質上、当裁判所の判断を拘束するものではないことは当然であり、各一審原告の具体的な損害項目について、 として考慮することは許されるというべきである。 もっとも、中間指針等や賠償基準は、その性質上、当裁判所の判断を拘束するものではないことは当然であり、各一審原告の具体的な損害項目について、 中間指針等やそれに基づく既賠償額を超えて相当因果関係ある損害を証拠上認 - 361 -めることができる場合にはそれを認め、逆に、中間指針等によれば賠償が認められる場合であったり既に賠償が行われている場合であったりしても、証拠上、そのような損害の発生が認められなかったり、相当因果関係が認められなかったりするときは、弁論の全趣旨により損害を認定することを相当と認める場合を除き、損害を認定しないこともありうる。 第2 本件事故と相当因果関係ある避難及び避難生活等 1 基本的考え方一審原告らの主張する各損害項目について本件事故との相当因果関係が認められるか否かを判断する前提として、当該一審原告がした避難及び避難生活が、本件事故と相当因果関係が認められるかどうかを決する必要がある。 この点、一審原告らの中には、政府による避難指示等により避難を余儀なくされた区域から避難した者と政府の避難指示等の対象とされなかった区域から避難した者とがあり、前者においても、本件事故当時の住所が、現時点においても避難指示等の解除の見込みが立っていない区域にある場合と、既に避難指示等が解除された区域にある場合があり、後者においても、その住所地に係る 原災法並びに中間指針第一次追補及び一審被告東京電力プレスリリースによる区域の設定状況、並びに本件事故以降の環境放射能の推移、避難者数の推移、除染状況、内部被ばく検査の結果及び社会経済活動の再開状況等は様々である。 また、避難を行った一審原告でも避難の理由や時期は個別に異なるし、避 況、並びに本件事故以降の環境放射能の推移、避難者数の推移、除染状況、内部被ばく検査の結果及び社会経済活動の再開状況等は様々である。 また、避難を行った一審原告でも避難の理由や時期は個別に異なるし、避難後、現在でも避難先等に留まり、本件事故当時の住所その他福島県内に帰還してい ない者もあれば、既に本件事故当時の住所その他福島県内に帰還している者、一度帰還したが再度県外に避難、転居した者がある。さらに、一審原告の中には、避難せずに同県内に留まった者、本件事故当時は同県内には居住していなかった者もある。 したがって、一審原告がした避難が本件事故と相当因果関係が認められるか どうか、またその後の避難生活が本件事故と相当因果関係が認められるか、認 - 362 -められるとしてその期間をいつまでとするのが相当かについては、当該一審原告が本件事故当時に居住していた場所がいかなる区域であるかのみならず、避難及び避難生活に関する個別の事情を考慮した上で判断するべきである。 そこで、後記第2章で認定する事実のうち一審原告らの本件事故当時の各住所地の状況に関する事実(原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第 2及び第3(いずれも補正した後のもの))を後記第3章において市町村ごとに要約、再掲し、後記第4章においては、一審原告の世帯等ごとに、後記第3章の該当部分を引用するほか、それぞれの本件事故前の状況、避難開始の経緯、避難生活の状況、必要に応じてその後の状況等についての事実認定を行い、これらを総合した上で、一審原告ごとに相当因果関係の判断を行うものとする。 2 本件事故と避難との相当因果関係(1) 以上のとおりであるから、一審原告らが各一審原告について避難であると主張するものが本件事故と相当因果関係が 果関係の判断を行うものとする。 2 本件事故と避難との相当因果関係(1) 以上のとおりであるから、一審原告らが各一審原告について避難であると主張するものが本件事故と相当因果関係が認められる避難であるかどうかについては、個別の事情にもとづいて判断することになるが、主として、本件事故当時の住所、避難の時期、避難の理由などが考慮されることになる。 (2) もっとも、影響が極めて広範囲に及ぶという本件事故の特質や、本件事故直後は本件事故に関する情報が十分ではなく、当時、一般人においてその後の経過を予測することは容易ではなかったこと、本件事故後は本件地震による被害の影響とも相まって社会全体の混乱期が続いていたといえることを考えると、本件事故当時の住所が政府による避難指示等が行われた区域内に はなかったとか、現時点から後方視的にみれば客観的に避難の必要があったとはいえない区域であったとかいうだけで本件事故と避難との相当因果関係を否定することは適切ではなく、当時、避難を行ったことが本件事故によるものとして社会通念上相当であるか否かを個別の事情にもとづいて判断する必要があり、例えば、本件事故に関する必ずしも確実でない情報を聞いて避 難を決めた場合であっても、それが当時の状況において社会通念上やむをえ - 363 -ないことであったときは、そのような避難も本件事故と相当因果関係ある避難とみる余地があるというべきである。 3 本件事故と避難生活との相当因果関係(1) ある一審原告が本件事故によりその住所から避難を行った場合、その避難先における生活は、その避難を継続する必要性が認められる限度で、本件 事故との相当因果関係が認められる。逆にいえば、社会通念上、避難継続の必要性がなくなった場合は、 ら避難を行った場合、その避難先における生活は、その避難を継続する必要性が認められる限度で、本件 事故との相当因果関係が認められる。逆にいえば、社会通念上、避難継続の必要性がなくなった場合は、避難生活を終了して、本件事故当時の住所又は住所地内若しくはその周辺の他所に帰還することが可能であり、当該一審原告の判断によりその住所等に帰還することなく避難先その他での生活を続行した場合、本件事故との相当因果関係が認められる避難生活は、避難継続の 社会通念上の必要性が認められる期間に限られることになる。 (2) この避難継続の社会通念上の必要性の判断は、本件事故から一定の期間が経過した時期を基準時として行われるものであり、本件事故に関する情報の入手が本件事故直後ほど困難ではなくなってきていたと考えられること、本件事故と本件地震が相まっての社会全体の混乱も月日の経過とともに収束 する傾向にあったといえることからすれば、この判断はある程度客観的に行う必要があり、基本的には、本件事故当時の住所地についての区域の設定状況並びに本件事故以降の環境放射能の推移、避難者数の推移、除染状況、内部被ばく検査の結果及び社会経済活動の再開状況等を見た上で、ある時点で住所地に帰還することに支障がなくなったと判断される時点までの避難生活 を限度に、本件事故との相当因果関係を認めるべきである。 (3) もっとも、この点に関しても、各一審原告個別の事情を踏まえた判断も必要となる。 例えば、一般的に若年層、子ども、幼児、乳児、妊娠した女性(その胎児)は放射線による影響を受けやすいとされていることから、通常は、本件事故 当時の住所等に帰還することに支障がなくなったと判断される時期であって - 364 -も、一審原告の家族内にそ 児)は放射線による影響を受けやすいとされていることから、通常は、本件事故 当時の住所等に帰還することに支障がなくなったと判断される時期であって - 364 -も、一審原告の家族内にそのような者がある場合には、より慎重な行動をとることも社会通念上あることであり、帰還に支障があると解する期間を通常よりも長くとるべきと判断されることもありうる。なお、そのような場合には、例えば子どもを残して親だけが帰還することはできないのであるから、帰還に支障がなくなったといえる時期については、家族全体について一律に 認定するのが相当である。 逆に、通常であれば本件事故と相当因果関係がある避難生活と認められる期間内であっても、一審原告自身の判断により本件事故当時の住所等に帰還しないことを決め、避難先等を以後の生活の本拠と定めたときは、本件事故と相当因果関係がある避難生活をその時点までを限度とすべきこともあり うる。 このような個別の事情による相当因果関係がある避難生活の期間の認定は、個別性も大きいことから、第4章の各一審原告の世帯の損害の判断の中で、各認定事実に応じて個別に判断、説示することとする。 4 一審原告らの主張に対する判断 (1) これに関し、一審原告1-1らは、前記第3部第4章第6、2のように、原判決は避難の合理性の分析が不十分である旨主張し、これに関して甲B第66号証以下の証拠を提出するが、本件事故と避難及び避難生活との相当因果関係については上記1から3までのように検討すべきである。 (2) また、一審原告らは、現在も避難の相当性があることを前提とする主張 をし、これに沿うものとして後記第2章で認定する事実(原判決の「事実及び理由」中の第5部第1章第4、11(補正した後のもの ) また、一審原告らは、現在も避難の相当性があることを前提とする主張 をし、これに沿うものとして後記第2章で認定する事実(原判決の「事実及び理由」中の第5部第1章第4、11(補正した後のもの))を指摘し、また証人黒田由彦及び同山田國廣の当審における証言を援用する。 しかし、避難継続の必要性については、上述のとおり、本件事故当時の住所地の客観的な状況を踏まえた帰還可能性を基本としつつ一審原告の個別の 事情をも踏まえて判断すべきであり、上記指摘に係る外部被ばくの回避のみ - 365 -をもって直ちに現在も避難の相当性があると認められるものとはいえないというべきである。 (3) また、一審原告らは、少なくとも実効線量年間1mSvを超える線量が測定された地域から避難することには合理性又は社会的相当性が認められる旨主張し、証人黒田由彦は当審においてこれに沿う証言をする。 しかし、後記第2章で認定する事実のとおり、国際的な合意に基づく科学的な知見によれば、放射線による発がんのリスクは、100mSv以下の被ばく線量では、他の要因による発がんの影響によって隠れてしまうほど小さいため、放射線による発がんリスクの明らかな増加を証明することは難しいとされ、少なくとも100mSvを超えない限り、がん発症のリスクが高ま るとの確立した知見は得られておらず、ICRPの勧告等で述べられているLNTモデルも、あくまで科学的な不確かさを補う観点から、公衆衛生上の安全サイドに立った判断として採用されているものにすぎないことが明言されている。 そして、ICRPの勧告において、公衆被ばくに対する線量限度年1mS vについては、本件事故の発生後のような緊急時被ばく状況においては適用されず、緊急時被ばく状況に 言されている。 そして、ICRPの勧告において、公衆被ばくに対する線量限度年1mS vについては、本件事故の発生後のような緊急時被ばく状況においては適用されず、緊急時被ばく状況における参考レベルは予測線量年間20mSvから100mSvまでの範囲にあるものとし、また、事故による汚染が残存する現存被ばく状況においては、年間1mSvから20mSvまでの範囲に設定すべきであるとしている。 これらの科学的知見等に照らすと、一審原告らの主張立証を考慮しても、年間20mSvを下回る被ばくが健康に被害を与えると認めることは困難であるといわざるを得ない。そして、一審被告国は、本件事故後、年間積算線量20mSvをもって、避難指示区域等を指定し、解除する基準としているが、これは、平成23年3月21日のICRPによる勧告を踏まえ、200 7年の勧告の緊急時被ばく状況の参考レベルである年間20から100mS - 366 -vの下限値を適用することが適切と判断して決定した基準であって、上記科学的知見等に照らしても、合理性を有すると考えられる。これに関し、一審原告らが指摘する低線量被ばくに関する知見等を踏まえても、上記避難指示区域等の指定や解除が不相当ということはできず、一審原告らの主張は採用できない。また、一審原告らは、モニタリングポストにおける環境放射能の 測定値は正確ではない旨主張し、それに沿う証拠を提出するが、一審原告らの用いた測定方法が必ずしも正確なものとは直ちに認められない上、一審原告らの測定値を前提としても必ずしも年間20mSvを超えるとは直ちに認められないから、一審原告らの上記主張は避難の合理性に関する判断を左右しない。 第3 損害の種類 1 不法行為に基づく損害賠償請求権の個数 必ずしも年間20mSvを超えるとは直ちに認められないから、一審原告らの上記主張は避難の合理性に関する判断を左右しない。 第3 損害の種類 1 不法行為に基づく損害賠償請求権の個数(1) 不法行為に基づく損害賠償請求における請求権の個数に関し、同一の行為によって被害者に財物損害とそれ以外の損害が生じた場合、例えば、同一の交通事故により同一の被害者に車両等の損害と生命、身体の損害が生じた 場合については、財物損害とそれ以外の損害(人的損害)とでは被侵害利益を異にすることが明らかであるから、財物損害の賠償請求権と財物損害以外の損害の賠償請求権は2個の異なる請求権であると解される。 (2) しかし、同一の不法行為によって被害者に財物損害以外の損害が生じ、それによって種々の項目の損害が発生した場合、例えば、同一の交通事故に より同一の被害者に身体傷害が生じ、それによって被害者に経済的損害(逸失利益、治療費等)と精神的損害(慰謝料)とが発生した場合は、それらの損害項目は、原因事実及び被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は包括して1個であると解される。 2 本件事故による損害の種類 (1) 上記1を本件事故に照らして考えると、まず、本件事故による「核燃料 - 367 -物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用」によって、一審原告の所有する不動産又は家財道具、庭木その他の動産の財物としての価値が喪失又は低下したことによる損害は、財物損害というべきであり、これらの財物損害を包括した1個の損害賠償請求権が発生する。 (2) 他方、一審原告が本件事故と相当因果関係がある避難及び避難生活をしたことに伴って、当該一審原告には、交通費や宿 であり、これらの財物損害を包括した1個の損害賠償請求権が発生する。 (2) 他方、一審原告が本件事故と相当因果関係がある避難及び避難生活をしたことに伴って、当該一審原告には、交通費や宿泊費等の避難費用、避難先での家財道具購入費等の積極的な経済的損害や、就労不能による逸失利益などの消極的な経済的損害が発生するとともに、避難及び避難生活による精神的苦痛すなわち精神的損害(慰謝料)が発生するところ、これらはいずれも 人が本件事故と相当因果関係がある避難及び避難生活をしたことに起因する人的損害であり、これらの、財物損害以外の損害を包括した1個の損害賠償請求権が発生する。 (3) したがって、本件において各一審原告の損害を検討するにあたっても、また後記第6、3(2)のとおり一審被告東京電力の弁済の抗弁を検討するに あたっても、財物損害と財物損害以外の損害とを区別して認定判断する必要がある。 第4 財物損害の損害額認定 1 不法行為による物の滅失、毀損に対する損害賠償額は、特段の事由のない限り、その物の交換価格によるべきであり、それは本件のような原子力損害でも 変わりはないというべきである。 2 これを本件についてみると、上記1の特段の事由は主張されていないことから、財物損害については、本件事故当時の対象物の交換価格に基づき、本件事故がなければあったであろう価格と本件事故により滅失毀損した当該物の価格との具体的な差額をもって損害額を認定するのが相当である。 第5 財物損害以外の損害の損害額認定 - 368 - 1 経済的損害(1) 避難費用ア交通費(ア) 本件事故と相当因果関係がある避難の際に実際に支出した交通費のうち、必要かつ合理的な範囲の支出が本件事故 368 - 1 経済的損害(1) 避難費用ア交通費(ア) 本件事故と相当因果関係がある避難の際に実際に支出した交通費のうち、必要かつ合理的な範囲の支出が本件事故と相当因果関係のある 損害と認められる。なお、避難先から帰還する際に支出した交通費は、本件事故と相当因果関係ある避難を行った以上、遅かれ早かれ必要となる費用であるから、帰還の時期が相当因果関係の認められる避難生活の期間を過ぎた後であっても、本件事故との相当因果関係が認められる場合がある。 (イ) 損害の発生及び損害額については、領収証等の証拠に基づいて認定するのが原則であるが、前記第1、4で述べたとおり、一審原告の請求に対して一審被告東京電力が既に交通費を賠償している場合、その賠償の全部又は一部を本件事故と相当因果関係のある損害と認める余地がある場合があり、相当と認める場合には、弁論の全趣旨により、 損害を認定することがある。また、一審原告らの避難は本件事故直後の混乱の中で行われたものが多く、避難に要した交通費を具体的に立証する証拠が提出されていない場合もあるが、避難のために交通機関又は自動車により移動した事実自体が認められ、その事実から交通費が発生したこと及びその額を一般経験則により推認することができる ときは、移動の事実から少なくとも発生したであろう交通費の額を推認した上で損害額を算定することがある。 (ウ) ある一審原告の世帯が家族で避難を行う場合、その中の特定の一審原告(例えば世帯主や家計を管理する一審原告)が他の一審原告の分も含めて交通費を支出、負担することは必ずしも特異なことではない といえるから、その一審原告の世帯共通の交通費全部(本件事故と相 - 369 -当因果関係 る一審原告)が他の一審原告の分も含めて交通費を支出、負担することは必ずしも特異なことではない といえるから、その一審原告の世帯共通の交通費全部(本件事故と相 - 369 -当因果関係が認められる範囲に限る。)を、一審原告らが本件訴訟において世帯共通の費用を誰が支出、負担したと主張しているかなどを勘案した上で、特段の事情のない限り、特定の一審原告の損害として認定することにする。 (エ) 上記(イ)及び(ウ)で述べたことは、本件事故と相当因果関係が認めら れる避難及び避難生活により一審原告に発生した下記イ以降の積極的な経済的損害についても同様である。 イ宿泊費・謝礼本件事故と相当因果関係がある避難の際又は避難生活中に実際に支出した宿泊費・謝礼のうち、必要かつ合理的な範囲の支出が本件事故と相当 因果関係のある損害と認められる。 ただし、親族宅や知人宅に一時的に宿泊させてもらった場合の親族や知人に対する謝礼については、親族や知人の情誼に対して一審原告自らの判断によって任意的に支払ったものであると認められる場合には、本件事故と相当因果関係を有する損害と認めることはできない。 ウ引越し費用本件事故と相当因果関係がある避難の際又は避難生活中に実際に支出した引越し費用のうち、本件事故との関係で必要かつ合理的と認められる範囲の支出が本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。 しかし、避難先で行った引越しのための費用であっても、その引越しを 行った理由が本件事故によるものといえない場合には、本件事故との相当因果関係は否定される。 エ敷金・礼金本件事故との相当因果関係がある避難生活のためにアパート等に入居するために支 た理由が本件事故によるものといえない場合には、本件事故との相当因果関係は否定される。 エ敷金・礼金本件事故との相当因果関係がある避難生活のためにアパート等に入居するために支払った敷金・礼金のうち必要かつ合理的な範囲の支出が本件 事故と相当因果関係のある損害と認められる。 - 370 -ただし、敷金に関しては、支出があったとしてもそれが返還されるものである場合には、損害の発生自体が認められない。 オ一時立入り・帰省費用本件事故との相当因果関係がある避難生活中に、避難先から本件事故当時の住所に一時立入り又は帰省するために要した費用は、必要かつ合理 的と認められる範囲で、その支出を本件事故と相当因果関係のある損害と認める。 例えば、ある一審原告が多数回にわたって避難先から本件事故当時の住所に帰省を行っている事実が認められるとしても、当該一審原告が帰省を行った個別事情を勘案した上で、社会通念上、必要かつ合理的と認め られる範囲の限度で、本件事故と相当因果関係ある帰省費用の損害を認める。 なお、本件事故との相当因果関係が認められる避難生活の期間を経過した後に避難先から本件事故当時の住所に帰省を行ったとしても、それが帰還である場合を除き(前記ア(ア))、その費用は、本件事故と相当因果 関係は認められない。 カ面会交通費ある一審原告が行った避難が本件事故と相当因果関係があると認められる一方で、避難前に同居していた他の一審原告や近隣に居住していた近親者が本件事故当時の住所に留まったためにこれらの者と離れ離れにな り二重生活となった場合、そのような二重生活状態の発生は本件事故によるものといえ、その間で面会交通を行う 近隣に居住していた近親者が本件事故当時の住所に留まったためにこれらの者と離れ離れにな り二重生活となった場合、そのような二重生活状態の発生は本件事故によるものといえ、その間で面会交通を行うために一審原告が支出した面会交通費は、必要かつ合理的と認められる範囲で、本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。 面会交通費がどの範囲で必要かつ合理的と認められるかについては、各 一審原告の個別事情を勘案して社会通念に従って判断することとする。 - 371 -なお、本件事故との相当因果関係が認められる避難生活の期間を経過した後に面会交通を行った場合に、その費用につき本件事故と相当因果関係が認められないことは、前記オと同様である。 (2) 生活費増加費用ア家財道具購入費 本件事故と相当因果関係がある避難に際し、必要な家財道具を持参することが困難であった場合は、避難先で家財道具を購入しなければ避難生活を送ることができなかったと考えられるから、本件事故による避難先で必要な家財道具を購入した費用のうち相当な範囲の家財道具購入費が本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。 イ生活費増加分(ア) 光熱費増加分本件事故と相当因果関係がある避難生活を行ったことにより、本件事故がなかった場合に比して光熱費が増加した事実が認められる場合には、その増加分は、本件事故と相当因果関係ある損害と認められるが、 避難先で光熱費を支出した事実はあっても、上記のような増加分が具体的に立証されない場合は、それを損害と認めることはできない。 (イ) 通勤交通費増加分上記(ア)と同様の考え方により損害を認定する。 (ウ) 通 ような増加分が具体的に立証されない場合は、それを損害と認めることはできない。 (イ) 通勤交通費増加分上記(ア)と同様の考え方により損害を認定する。 (ウ) 通信費増加分 前記(ア)と同様の考え方により損害を認定する。 (エ) 被服費増加分前記(ア)と同様の考え方により損害を認定する。 (オ) 食費前記(ア)と同様の考え方により損害を認定する。 ウ家賃増加分 - 372 -本件事故による避難を行う前は家賃(駐車場代も含む。)負担の必要がなかった者で、本件事故と相当因果関係ある避難生活のために家賃負担が必要となったものについては、その家賃を、従前も家賃負担があり、本件事故と相当因果関係ある避難生活のために二重に家賃負担が必要となった者についてはその増加分の家賃を、従前の家賃の負担はなくなっ たが、避難生活のために従前家賃よりも高額の家賃を負担している者についてはその差額を、それぞれ相当な範囲で本件事故と相当因果関係のある損害と認める。 エ教育費増加分本件事故と相当因果関係ある避難を行ったことにより、子のための学用 品を持ち出すことができなかったり、子が転校したために新たに転校先用のものが必要となったりしたために学用品等を購入し、教育費が増加した場合には、相当な範囲で本件事故と相当因果関係のある損害と認める。 (3) 就労不能損害 本件事故と相当因果関係ある避難又は避難生活のために就労が不能となった場合には、本件事故前の収入を基礎として、就労が不能であった期間につき、本件事故がなければ得られたであろう収入を本件事故と相当因果関係のある損害と認め ある避難又は避難生活のために就労が不能となった場合には、本件事故前の収入を基礎として、就労が不能であった期間につき、本件事故がなければ得られたであろう収入を本件事故と相当因果関係のある損害と認める。 もっとも、就労不能となった原因が本件地震又は本件津波であり、本件事 故がなくとも就労不能となっていた場合には就労不能損害は認められない。 また、本件事故当時就労していなかった場合には、近い将来就労することが予定されていたなど、就労する蓋然性が認められる場合に限り、就労不能損害として損害を認めることとする。 さらに、本件事故と相当因果関係ある避難又は避難生活により収入が減少 したと認められる場合には、本件事故前の収入と本件事故後の収入との差額 - 373 -のうち相当と認められる範囲で本件事故と相当因果関係のある損害と認める。 なお、就労不能損害は、本件事故と相当因果関係ある避難生活期間中のものに限り、本件事故との相当因果関係を認める。 また、就労不能損害は、消極的な経済的損害であり、本件事故により就労不能となり又は収入が減少した当該一審原告の損害として認める。 (4) 生命・身体的損害本件事故と相当因果関係がある避難又は避難生活によって、ある一審原告に疾病等の生命・身体的損害が生じたと認められる場合には、そのために要した医療費、通院交通費等を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 (5) その他(被ばく検査費用、線量計購入費用、除染費用等) 被ばく検査を受ける等のために一審原告らが実際に支出したと認められる費用(交通費を含む。)は、本件事故により支出することが社会通念上相当な範囲のものである限り、本件事故と相当因果関係のある損害と認められる 検査を受ける等のために一審原告らが実際に支出したと認められる費用(交通費を含む。)は、本件事故により支出することが社会通念上相当な範囲のものである限り、本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。 なお、本件事故により避難した一審原告が、避難前に本件事故当時の住所において被ばくしたことを懸念し、それによる健康被害を案じて被ばく検査 を受けることは社会通念上相当と認められ、その相当性は、避難先から帰還した後又は本件事故と相当因果関係がある避難生活の期間を経過した後であってもなお認められる場合があるから、避難後等のものについては個別の事情を勘案して相当因果関係の有無を判断する。 2 精神的損害 (1) 本件事故と相当因果関係がある避難及び避難生活を行った一審原告は、個別の事情は様々であるものの、いずれも、本件事故を原因として、社会全体が混乱した中で避難先に移動し、住み慣れた自宅や地域を離れ、不慣れな避難先において不便な避難生活を送り、先の見通しが不透明な中で不安な日々を過ごしたことにより、本件事故がなかった場合の平穏な日常生活が侵 害されたといえる。 - 374 -したがって、本件事故と相当因果関係がある避難及び避難生活を行った一審原告は、本件事故により平穏な日常生活を送る権利が侵害されたと解するのが相当であり、かかる権利は憲法13条、22条1項等に照らして、原賠法上も保護されるものというべきである。 これに関し、一審原告らは、前記第3部第6章第3、3及び第7章第6の ように、被侵害利益は包括的生活利益としての平穏生活権であると主張するが、被侵害利益としては上述のとおり解するのが相当であり、一審原告らの主張するところは、具体的な損害額(平穏な日常生活を送る権利が侵害され 被侵害利益は包括的生活利益としての平穏生活権であると主張するが、被侵害利益としては上述のとおり解するのが相当であり、一審原告らの主張するところは、具体的な損害額(平穏な日常生活を送る権利が侵害されたことによる精神的苦痛に対する慰謝料額)の検討において考慮すれば足りるというべきである。 (2) ある一審原告が本件事故と相当因果関係がある避難及び避難生活を行ったといっても、先に述べたとおり、一審原告それぞれの避難及び避難生活の状況は様々であり、各一審原告が本件事故と相当因果関係ある避難及び避難生活により受けた精神的苦痛に対する慰謝料額は、当該一審原告の本件事故当時の住所をみるだけではなく、避難の必要性、困難性、無形の不利益の大 小、相当因果関係ある避難生活の期間の長短、その間の生活の困難性や不便性その他各一審原告について認められる一切の事情を考慮して相当と認める額を認定するべきである。 (3) この点に関し、一審原告1-1らは、前記第3部第6章第3、3(5)のように、故郷喪失慰謝料又はふるさと剥奪慰謝料を主張し、一審原告らは福島 県内のいずれの地域に居住していた場合であっても少なくとも約967万円の損害を被ったと主張する。 しかし、これについては、上記(2)のとおり、本件事故との相当因果関係がある避難及び避難生活による精神的苦痛に対する慰謝料の額は、本件事故当時の住所をみるだけではなく、各一審原告について認められる一切の事情 を考慮して相当と認める額を定めるべきであり、故郷喪失又はふるさと剥奪 - 375 -による一定の固定額の慰謝料を認めるべきとの主張は採用できない。 (4) 一審原告らは、前記第3部第1章(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第3部第2、2(原告らの主張の要旨 375 -による一定の固定額の慰謝料を認めるべきとの主張は採用できない。 (4) 一審原告らは、前記第3部第1章(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第3部第2、2(原告らの主張の要旨)及び第3、1(原告らの主張の要旨)(3))並びに前記第3部第7章第8のとおり、本件事故の発生につき、一審被告東京電力には故意又はこれに匹敵する重大な過失があり、かかる点 が慰謝料増額事由となる旨主張する。 これについて、前記第4部第3章第2、4で述べたとおり、一審被告国において遅くとも平成14年末には本件敷地の高さを超える本件想定津波を予見することができたところ、このことは同東京電力においても同じようにいうことができる。そして、後記第2章で認定する事実を踏まえると、同一審 被告における本件における対応が迅速かつ十分であったといえない部分があったと指摘することができるものの、同一審被告が何らの対策も講じていなかったわけではなく、自己の利益を優先するためにあえて対策を遅らせたといった事情は認められないから、本件事故の発生につき、故意又はこれに匹敵する重大な過失があったということはできない。 したがって、一審被告東京電力の過失を慰謝料増額事由として考慮すべきであるとはいえないから、一審原告らの上記主張は採用できない。 第6 弁済の抗弁について 1 弁済の抗弁の当否について(1) 一審被告東京電力は、これまで一審原告ら又は元原審原告らに対し、中 間指針等を踏まえて定められた自主賠償基準に従いADR以外による賠償又はADRによる賠償として、一定額の賠償を行っており、本件訴訟において、この賠償分について弁済の抗弁を主張している。 (2) この点、一審原告らは、一審被告東京電力のした賠償は、被害者の早期 はADRによる賠償として、一定額の賠償を行っており、本件訴訟において、この賠償分について弁済の抗弁を主張している。 (2) この点、一審原告らは、一審被告東京電力のした賠償は、被害者の早期救済の観点から厳密な主張立証が求められておらず、実際の損害額が一審被 告東京電力の支払額よりも少ない可能性があることも見越してなされており、 - 376 -その場合でも後に清算や返金を求められないことが当事者の合理的意思であるから、弁済の抗弁が認められてしまうと救済を受けるべき被災者に対する不意打ちとなり、訴訟をした者については清算を強いられる結果ともなって極めて不公平かつ不合理な結果となるから、そもそも弁済の抗弁は認められるべきではない旨の主張をする。 しかし、一審被告東京電力がADR以外により又はADRにより賠償を行った趣旨が被害者の早期救済にあったことを考慮しても、損害賠償制度の趣旨が損害の回復にあり、一審原告又は元原審原告が実際に賠償金の支払いを受けたことにより、損害の回復が図られたとみるべき場合もあるというべきであるから、弁済の抗弁は一律に許されないとする一審原告らの上記主張は 採用できない。 2 弁済の抗弁の判断方法についての基本的考え方一審被告東京電力の弁済の抗弁の成否については、基本的に、以下のような判断方法により行うのが相当である。これ以外に説明を要する事項がある場合には、後記第4章中で、それぞれ個別に説示する。 (1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額一審被告東京電力が、各一審原告に対して主張している弁済の抗弁の額は、後記第4章に各一審原告の世帯ごとに摘示するとおりである。 したがって、弁済の抗弁については、この主張額を限度として判断する。 東京電力が、各一審原告に対して主張している弁済の抗弁の額は、後記第4章に各一審原告の世帯ごとに摘示するとおりである。 したがって、弁済の抗弁については、この主張額を限度として判断する。 (2) 一審被告東京電力による賠償に関する認定 一審被告東京電力は、ADR以外により又はADRにより各一審原告又は元原審原告に対して賠償を行っているところ、この賠償のうち各一審原告又は元原審原告に対する弁済として扱うことができるのはどの部分であるか(後記3(1))、またそれが財物損害に対する弁済として扱うべきものであるのか財物損害以外の損害に対する弁済として扱うべきものであるのか(後 記3(2))をそれぞれ判断するために、まずADR以外による賠償及びAD - 377 -Rによる賠償に関する事実をできる限り具体的に証拠により認定する。 (3) 各一審原告又は元原審原告に対する弁済額の認定ア ADR以外による賠償ADR以外による賠償は、証拠上、特定の一審原告に対する賠償であることが認定できるため、これを個々の一審原告に対する弁済として扱う のが相当である。 また、ADR以外による賠償は、証拠上、その費目により、財物損害に対する賠償であるのか、財物損害以外の損害(自主避難等に係る損害)に対する賠償であるのかを区別することができるため、前者は財物損害に対する弁済として扱い、後者は財物損害以外の損害に対する弁済とし て扱うのが相当である。 イ ADRによる賠償(ア) ADRは、一審被告東京電力と、各一審原告の世帯との間で行われている場合が多いものの、一審原告の世帯に一審原告ではない親族等を含めた者らとの間で行われている場合もあり、この場合は、証拠上 ) ADRは、一審被告東京電力と、各一審原告の世帯との間で行われている場合が多いものの、一審原告の世帯に一審原告ではない親族等を含めた者らとの間で行われている場合もあり、この場合は、証拠上 可能な限り、当該ADRの内容から一審原告の世帯に関する部分を抽出して認定する。 (イ) また、ADRでは、複数の損害項目ごとの金額を積算して、一審原告の世帯に対する和解金額を合意している。 この損害項目の中には、特定の一審原告の損害に対する賠償であるこ とが明示されているものがあり、その項目に対する賠償については、当該一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。特定の一審原告に対することが明示されていないけれども、事実経過からみてその損害の主体となる一審原告を特定できる場合も同様である。 (ウ) しかし、避難費用など一審原告を特定することなくその世帯に対す る賠償として合意された項目は、その世帯共通の費用に対する賠償と - 378 -しての性質を有するけれども、本件訴訟において世帯共通の費用を前記第5、1(1)ア(ウ)のとおり特定の一審原告に発生した損害としてみることとの均衡を考慮する必要もある。そこで、その世帯共通の費用に対する賠償は、その特定の一審原告に対する弁済とみることを原則としつつ、後記(オ)の既払い金の控除においては、その特定の一審原告 以外の一審原告に対する既払い金の控除の対象ともするものとする。 (エ) 損害項目に関する認定により、財物損害に対する賠償と財物損害以外の損害に対する賠償とを区分し、前者は財物損害に対する弁済として扱い、後者は財物損害以外の損害に対する弁済として扱うのが相当である。 (オ) ADRにおいては、前記(イ)のとおり和解金 害に対する賠償とを区分し、前者は財物損害に対する弁済として扱い、後者は財物損害以外の損害に対する弁済として扱うのが相当である。 (オ) ADRにおいては、前記(イ)のとおり和解金額を合意した上で、既払い金、すなわち前記アのADR以外による賠償額の全部又は一部を控除した金額を支払い額と定めて、その額の賠償が行われている。 そこで、まず、控除された既払い金の額の一審原告ごとの金額内訳をADR以外の賠償に関する証拠により認定する。 そして、一審原告ごとの既払い金の控除は、ADRによる賠償の和解金額のうち、まず当該一審原告に係る損害項目から行い、これで足らざる場合には、前記(ウ)のとおりその世帯共通の費用に対する賠償としての性質を有する損害項目からも行われたものとみるのが相当である。 (カ) このようにして、ADRによる賠償の既払い金控除後の支払額を、 各一審原告に対する弁済として扱う額並びに財物損害に対する弁済として扱う額及び財物損害以外の損害に対する弁済として扱う額に振り分ける。 ウ合算前記ア及び上記イのとおり、ADR以外による賠償及びADRによる賠 償で支払われた賠償金を、それぞれ、各一審原告に対する弁済として扱 - 379 -う額並びに財物損害に対する弁済として扱う額及び財物損害以外の損害に対する弁済として扱う額に振り分け、これを合算して、それぞれ弁済として認めることのできる額を認定する。 (4) 各弁済の抗弁の成否の判断一審原告ごと、また財物損害とそれ以外の損害ごとに、一審被告東京電力 の弁済の抗弁の主張額と弁済として認めることのできる額とを比較し、弁済認定額が抗弁主張額以上であれば、同一審被告の弁済の抗弁は全部 原告ごと、また財物損害とそれ以外の損害ごとに、一審被告東京電力 の弁済の抗弁の主張額と弁済として認めることのできる額とを比較し、弁済認定額が抗弁主張額以上であれば、同一審被告の弁済の抗弁は全部認められ(抗弁主張額を限度とする。)、弁済認定額が抗弁主張額未満であれば、弁済の抗弁は一部のみ認められるか全部認められないかのいずれかとなる。 3 損害額からの弁済額の控除についての考え方 一審被告東京電力の弁済の抗弁の全部又は一部が認められる場合の、その各一審原告又は元原審原告について認められる損害額からの控除についての考え方は、以下のとおりである。 (1) 各一審原告の損害額から当該一審原告に対する弁済額を控除すること一審被告東京電力は、本件事故に関する一審原告らに対する支払額の算定 及び実際の支払いの実態として、受領権限のある世帯の代表者が、世帯分の賠償金を一括して受領しており、世帯構成員全員に共通する損害の填補として支払われた部分があり、一審被告東京電力による賠償の受益者が不可分であることからすれば、当事者の合理的意思に鑑みて、生計を共通にする同一世帯単位での充当(いわゆる世帯内融通)が認められなければならないと主 張する。 しかし、そもそも不法行為法の保護法益である権利や利益は個人を単位として考慮するのが基本であり、損害賠償請求権も個人について発生するものであるから、それに対する抗弁としての弁済についても個人を単位として判断すべきである。 また、生計を共通にする同一世帯単位という基準は曖昧であり、これを基 - 380 -準に一審被告東京電力の弁済の抗弁を認めれば、同一世帯に帰属するかどうかという偶然の事情により弁済の有無、額が判断されることになりかねず、 単位という基準は曖昧であり、これを基 - 380 -準に一審被告東京電力の弁済の抗弁を認めれば、同一世帯に帰属するかどうかという偶然の事情により弁済の有無、額が判断されることになりかねず、不公平であるし、生計を共通にする可能性があるとみられる同一世帯の中にも本件の訴訟当事者(一審原告)となっている者と訴訟当事者になっていない者とがいる場合もあり、訴訟当事者となっていない者について生じた損害 に対する賠償が、訴訟当事者となっている一審原告に対する弁済として扱われるとすれば、やはり不公平が生じるおそれがある。 この点、たしかにADRにおいては、一審被告東京電力は世帯の構成員全員と和解しており、また、ADRにおける費目の中には、世帯の構成員全員について共通に要したと考えられる避難費用や生活費増加費用等が含まれて おり、一見すると個々の一審原告らに対する賠償というよりは、当該世帯に対する賠償と見えなくもない。しかし、前記2のとおり、ADR以外による賠償及びADRによる賠償の内実を子細に検討すれば、その賠償をいずれの一審原告に対する弁済として扱うのが相当であるのかを判断することができるのであり、これを判断することのないまま、一審原告の世帯のいずれの構 成員に対する弁済としても扱うことができるとするのは、発生した損害の主体と、賠償された損害の項目から判断できる賠償の対象者との対応を無視し、上述の個人を基本とする損害賠償の法理に反し、一審原告らと一審被告東京電力との公平をも失することとなる。 また、一審被告東京電力は、世帯構成員間の弁済の充当の融通を認めない 場合、世帯代表者に対する財産的損害の超過払い分がその他の世帯構成員の損害に充当されず、当該超過払い分の利得が当該世帯に生じることになるが、そう は、世帯構成員間の弁済の充当の融通を認めない 場合、世帯代表者に対する財産的損害の超過払い分がその他の世帯構成員の損害に充当されず、当該超過払い分の利得が当該世帯に生じることになるが、そうすると当該一審原告が被った損害分を超える賠償がなされる結果となりかねず、損害の回復という損害賠償制度の趣旨・目的からすれば、明らかに妥当でないと主張するが、これも上述の個人を基本とする損害賠償の法理に 反する見解であるといわざるを得ない主張である。 - 381 -したがって、一審被告東京電力の生計を共通にする同一世帯単位での充当(いわゆる世帯内融通)の主張は採用できず、各一審原告について認められる損害額から、当該一審原告に対する弁済の抗弁のうち弁済が行われたと認めてよい額を控除することとし、仮に後者の認められる弁済の抗弁額が、前者の認められる損害額を上回る場合でも、その剰余額を同一世帯の他の一審 原告について認められる損害額から控除することはしない。 (2) 財物損害と財物損害以外の損害を区別すること前記第3のとおり、本件事故により各一審原告に発生した損害のうち、財物損害と財物損害以外の損害とでは被侵害利益を異にし、別個の損害賠償請求権を構成することから、一審被告東京電力がした弁済についても、財物損 害に対する弁済と人的損害に対する弁済についてはこれを区別して、対応する損害賠償請求権に対する弁済として扱うべきである。 なお、一審被告東京電力は、上記の区別を考慮せずに弁済の抗弁を主張しているところ、賠償額のうち財物損害に対する弁済として扱うことができる額と財物損害以外に対する弁済として扱うことができる額を前記2(3)のと おり判断することができることから、必要がある場合には、同一審被 、賠償額のうち財物損害に対する弁済として扱うことができる額と財物損害以外に対する弁済として扱うことができる額を前記2(3)のと おり判断することができることから、必要がある場合には、同一審被告の主張を、それぞれの額において財物損害に対する弁済の抗弁と財物損害以外に対する弁済の抗弁を主張するものと善解することとするが、その場合でも、ある一審原告について、認められる財物損害の額を、認められる財物損害に対する弁済の抗弁額が上回る場合の剰余、又は認められる財物損害以外の損 害の額を、認められる財物損害以外の損害に対する弁済の抗弁額が上回る場合の剰余を、それぞれ他の損害から控除することはしない。 (3) 財物損害以外の損害の中においては個別の項目による区別をしないこと前記第3、2(2)のとおり、一審原告が本件事故と相当因果関係ある避難及び避難生活をしたことに伴って生じた損害については、それが経済的損害 であると精神的損害であるとを問わず、包括して1個の損害賠償請求権が発 - 382 -生する。 したがって、一審被告東京電力のある一審原告に対する弁済の抗弁のうち、当該一審原告の財物損害以外の損害に対する弁済として認められる額は、これを同一審原告について認められるすべての財物損害以外の損害額からこれを控除することができ、その際には、そこに含まれる個々の損害項目の別は もちろん、経済的損害と精神的損害との別も考慮しないものとするのが相当である。 この点、一審原告らは、人身損害のうち経済的損害と精神的損害は別個のものであり、これまでの原賠審における議論においても費目ごとに議論がなされ、かつ賠償水準が定められてきており、一審被告東京電力も損害項目ご とに請求書の書式等を分けるなどしてき 的損害は別個のものであり、これまでの原賠審における議論においても費目ごとに議論がなされ、かつ賠償水準が定められてきており、一審被告東京電力も損害項目ご とに請求書の書式等を分けるなどしてきたにもかかわらず、これらを同一の損害として弁済充当を認めることは、これまでの経過を根底から覆すものであり、信義則の観点から到底許されるものではないと主張する。 しかし、人身に対する不法行為により各種の経済的損害と精神的損害が生じた場合に、その損害項目ごとに損害の発生とその額が論じられることは当 然としても、損害賠償請求権はこれらを包括した1個のものが発生するのであり、弁済の抗弁についてもこれに対応した取扱いを行うのが一般的であるところ、原子力損害の賠償であってもこれと異なる取扱いをすべき理由はなく、また、これまでの経過に、このような取扱いを行うことが信義則に反して許されないと評価するに足りる事情があるとも認められないから、一審原 告らの上記主張は採用できない。 第2章認定事実(一審原告ら共通)当裁判所の認定する事実については、後記第3章を追加するほかは、原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章の記載を次のとおり補正して引用する。 (原判決の補正) 1 原判決407頁24行目の「0.05」を「0.04」と改める。 - 383 - 2 原判決414頁2行目の「0.26」を「0.28」と改める。 3 原判決415頁22行目の「国見町及び」を削り、同行目の次に次を加える。 「 平成23年3月31日1.7ないし4.47μSv/時(乙B198)平成23年4月30日 0.74μSv/時(乙B198)平成23年5月31日0.72μSv/時(乙B198)平成23年6月3 し4.47μSv/時(乙B198)平成23年4月30日 0.74μSv/時(乙B198)平成23年5月31日0.72μSv/時(乙B198)平成23年6月30日0.67μSv/時(乙B198) 平成23年7月31日0.56μSv/時(乙B198)平成23年8月31日0.53μSv/時(乙B198)平成23年9月30日 0.57μSv/時(乙B198)平成23年10月31日0.7μSv/時(乙B198)平成23年11月30日0.71μSv/時(乙B198) 平成23年12月31日0.67μSv/時(乙B198)平成24年1月31日0.57μSv/時(乙B198)平成24年2月16日 0.57μSv/時(乙B198)」 - 384 - 4 原判決415頁24行目の「1.07」を「1.59」と、416頁10行目の「0.06」を「0.10」と、12行目の「0.06」を「0.08」と、14行目の「0.05」を「0.08」とそれぞれ改める。 5 原判決418頁9行目の次に次を加える。 「(12) 国見町の環境放射能は以下のとおりであった。 平成23年3月31日1.15μSv/時(乙B198)平成23年4月30日0.69μSv/時(乙B198)平成23年5月31日 0.55μSv/時(乙B198)平成23年6月30日0.51μSv/時(乙B198)平成23年7月31日0.39μSv/時(乙B198) 平成23年8月31日0.48μSv/時(乙B198)平成23年9月30日0.44μSv/時(乙B198 (乙B198)平成23年7月31日0.39μSv/時(乙B198) 平成23年8月31日0.48μSv/時(乙B198)平成23年9月30日0.44μSv/時(乙B198)平成23年10月31日 0.44μSv/時(乙B198)平成23年11月30日0.43μSv/時(乙B198)平成23年12月31日0.4μSv/時(乙B198) 平成24年1月31日 - 385 -0.3μSv/時(乙B198)平成24年2月16日0.35μSv/時(乙B198)平成24年4月25日から同月30日まで0.23ないし0.25μSv/時(乙B154の1) 平成24年10月25日から同月31日まで0.21ないし0.22μSv/時(乙B154の2)平成25年4月25日から同月30日まで0.18ないし0.22μSv/時(乙B154の3)平成25年10月25日から同月31日まで 0.15μSv/時(乙B154の4)平成26年4月25日から同月30日まで0.14μSv/時(乙B154の5)平成26年10月25日から同月31日まで0.12μSv/時(乙B154の6) 平成27年4月25日から同月30日まで0.06μSv/時(乙B154の7)平成27年10月25日から同月31日まで0.06μSv/時(乙B154の8)平成28年4月25日から同月30日まで 0.05ないし0.06μSv/時(乙B154の9)平成28年10月25日から同月31日まで0.05μSv/時(乙B154の10)平成29年4月25日から同月30日まで0.05ないし0.06μSv/時(乙B154の11) 平成29年10月25日から同月 から同月31日まで0.05μSv/時(乙B154の10)平成29年4月25日から同月30日まで0.05ないし0.06μSv/時(乙B154の11) 平成29年10月25日から同月31日まで - 386 -0.05ないし0.07μSv/時(乙B154の12)平成30年4月1日から同月30日まで0.05μSv/時(乙B414)」 6 原判決428頁10行目の「「住宅などの」から13行目の「(甲128)、」までを削る。 7 原判決431頁10行目の「弁論の全趣旨」を「190の1」と改める。 8 原判決434頁26行目及び435頁1行目の各「幼児の」をいずれも「乳児の」と改める。 9 原判決451頁4行目の次に次を加える。 「5 中間指針第五次追補及びこれを受けた一審被告東京電力の追加賠償方針 (1) 原陪審は、令和4年12月20日、本件事故に関する各集団訴訟の確定判決を調査・分析等した上で、中間指針第五次追補を策定した。その中では、「過酷避難状況による精神的損害、生活基盤の喪失・変容による精神的損害、相当量の線量地域に一定期間滞在したことによる健康不安に基礎を置く精神的損害、自主的避難等に係る損害等」について、 「指針に加えて損害の範囲を示す」として、従前、原陪審で考慮されてこなかった損害項目を加える等の追加・増額が示された(弁論の全趣旨)。 (2) 上記を受け、一審被告東京電力は、以下のような追加賠償の基準を公表した。 ア帰還困難区域及び大熊町・双葉町(警戒区域及び計画的避難区域のいずれも) 1580万円(従前基準との差額+130万円)イ居住制限区域又は避難指示解除準備区域(警戒区域及び計画的避難区域のいずれも) 1130万円(同+280万円)ウ特定 的避難区域のいずれも) 1580万円(従前基準との差額+130万円)イ居住制限区域又は避難指示解除準備区域(警戒区域及び計画的避難区域のいずれも) 1130万円(同+280万円)ウ特定避難勧奨地点 (ア) 南相馬市 520万円(同+30万円) - 387 -(イ) 川内村 280万円(同+30万円)(ウ) 伊達市 280万円(同+30万円)エ緊急時避難準備区域(ア) 福島第二原発から8kmから10kmまでの圏内 245万円(同+65万円) (イ) 上記(ア)以外の区域 230万円(同+50万円)オ屋内退避区域及び南相馬市の一部 90万円(同+20万円)カ自主的避難等対象区域 20万円(同+20万円)キ福島県県南地域及び宮城県丸森町 10万円(同+10万円)」 10 原判決451頁5行目の「5」を「6」と、454頁24行目の「6」を 「7」と、それぞれ改める。 11 原判決476頁4行目の「300円/㎡」を「30円/㎡」と改める。 12 原判決497頁12行目の「2013年」を「の」と、13行目の冒頭に「(1) 」を加え、15行目の「(1)」を「ア」と、16行目の「ア」を「(ア)」と、498頁8行目の「イ」を「(イ)」と、20行目の「(2)」を「イ」と、2 1行目の「ア」を「(ア)」と、499頁2行目の「イ」を「(イ)」と、4行目の「ウ」を「(ウ)」と、12行目の「エ」を「(エ)」と、15行目の「オ」を「(オ)」と、18行目の「カ」を「(カ)」とそれぞれ改め、同行目の次に次を加える。 「(2) UNSCEARは2020年にも報告書を提出した(乙B477、5 38の1及び2)。 上記報告書は、2019年末までに公表された、本件事故による放射線被ばくのレ に次を加える。 「(2) UNSCEARは2020年にも報告書を提出した(乙B477、5 38の1及び2)。 上記報告書は、2019年末までに公表された、本件事故による放射線被ばくのレベルと影響に関連するすべての科学的知見をとりまとめたものであり、2013年の報告書について、これらの知見の影響を評価するのが目的である。 この10年間で、被ばく線量評価に関する新規知見が相当数明らかにな - 388 -ったが、これにより線量評価を確認し、見直したところ、見直された公衆の線量は2013年報告書に比べ減少、または同程度であった。よって、UNSCEARとしては、放射線被ばくが直接の原因となるような将来的な健康影響は見られそうにないと見ている。また、放射線被ばくの推定値から推測されうる甲状腺がんの発生を評価したところ、子ども を含む、対象としたいずれの年齢層においても甲状腺がんの発生は見られそうにないと結論付けた。 さらに、UNSCEARは、放出された放射性物質の陸域、淡水域、海洋域環境への移行・拡散に関する知見も評価したところ、2012年までに、福島第一原発沖の沿岸域の海水でさえ、セシウム137の濃度は 本件事故前のレベルを超えることはほとんどなく、また、野生生物集団に対する地域限定的な影響もあり得そうになく、放射線レベルが増加した地域では有害な影響が見られた植物や動物も観察されているものの、検査された食物のほとんどで、放射性物質の濃度は本件事故後の時間経過とともに急速に減衰したと結論付けた。」 13 原判決502頁4行目の末尾に掲げる証拠を「甲B第148号証、第239号証、証人黒田由彦(原審及び当審)」と改める。 14 原判決505頁7行目の次に次を加える。 「11 一審原告6の世帯が本件事 原判決502頁4行目の末尾に掲げる証拠を「甲B第148号証、第239号証、証人黒田由彦(原審及び当審)」と改める。 14 原判決505頁7行目の次に次を加える。 「11 一審原告6の世帯が本件事故前の住居に住み続けた場合の外部被ばく線量と避難行動により回避できた外部被ばく線量の算定に関する意見(甲B 179、180、乙B555、556、丁B66、証人山田國廣(当審))山田は、昭和44年頃から水環境問題に、昭和60年代からゴルフ場環境破壊に、平成23年5月から放射能汚染問題にそれぞれ取り組んだ京都精華大学名誉教授である。山田は、一審原告7、8、9、17、26及び35の6世帯について、本件事故前の住居に住み続けた場合の外部 被ばく線量と、避難したことによって回避することができた外部被ばく - 389 -線量を算定した旨の意見書を作成した。山田は、同意見書等において、平成23年3月は時間単位で、それ以外の期間は日単位で被ばく線量を算出し、1日の行動パターンを屋外8時間、木造の屋内16時間とし、自然放射線量は無視し、高汚染地の外部被ばく線量は全て本件事故によるものと、低汚染地の外部被ばく線量は0とするなどの条件設定の下で 算定すると、本件事故前の住居に住み続けた場合の外部被ばく線量を100とした場合、一審原告26-1を除き、避難したことによって上記の場合と比べ77%から100%の割合で外部被ばくを回避することができた旨算定できたとしている。」第3章一審原告らの本件事故時の各住所地の状況 ここでは、一審原告らそれぞれの損害について判断するのに先立ち、一審原告らの本件事故時の住所地(ただし、福島県内のものに限る。)について、原災法並びに中間指針第一次追補及び一審被告東京電力プレスリリースによる区域 告らそれぞれの損害について判断するのに先立ち、一審原告らの本件事故時の住所地(ただし、福島県内のものに限る。)について、原災法並びに中間指針第一次追補及び一審被告東京電力プレスリリースによる区域の設定状況、並びに本件事故以降の環境放射能の推移、避難者数の推移、除染状況、内部被ばく検査の結果等に関する事実を認定する(以下、本章では県 名(福島県)を省略する。順序は、福島県における地域順及び行政区画順に従う。)。 第1 県北地域 1 福島市(一審原告5、6、14、16、35、38、42及び43の各世帯関係) 福島市は、平成23年12月6日、中間指針第一次追補により自主的避難等対象区域とされた。(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第3、2(1)))福島市における環境放射能は、平成23年3月には0.64ないし2.61μSv/時、平成24年4月には0.03ないし1.40μSv/時、平成2 5年4月には0.08ないし0.64μSv/時、平成26年4月には0.0 - 390 -3ないし0.36μSv/時、平成27年4月には0.03ないし0.30μSv/時、平成28年4月には0.05ないし0.25μSv/時、平成29年4月には0.05ないし0.23μSv/時と推移しており(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、1(6)))、年々低下している。 なお、福島市における環境放射能は、平成23年6月には1.30ないし1.53μSv/時、平成24年4月には0.46ないし0.48μSv/時、平成25年4月には0.31ないし0.32μSv/時、平成26年4月には0.18ないし0.20μSv/時、平成27年4月には0.14ない v/時、平成24年4月には0.46ないし0.48μSv/時、平成25年4月には0.31ないし0.32μSv/時、平成26年4月には0.18ないし0.20μSv/時、平成27年4月には0.14ないし0.16μSv/時、平成28年4月には0.12μSv/時、平 成29年4月には0.09μSv/時と推移しており(甲C6の16)、これも年々低下している。 また、福島市における18歳未満の避難者数は、平成24年4月1日時点で3174人、平成25年4月1日時点で3034人、平成26年4月1日時点で2398人、平成27年4月1日時点で2059人、平成28年4月 1日時点で1561人、平成29年4月1日時点で1379人と推移しており(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、2(3)カ))、年々減少している。 福島市の平成28年6月末時点の除染状況は、住宅は完了し、公共施設等98.8%、道路81.5%、農地67.4%、森林40.0%の実施率で あった(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、4(2)))。 平成23年6月27日から平成30年12月31日までに行ったホールボディカウンターによる内部被ばく検査の結果は、福島市で検査を受けた2万4713人全員が、預託実効線量が1mSv未満となっており、健康に影響 が及ぶ数値ではなかったとされている(乙B418)。 - 391 - 2 伊達市(一審原告8の世帯関係)伊達市は、平成23年12月6日、中間指針第一次追補により自主的避難等対象区域とされた(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第3、2(1)))。 伊達市における環境放射能は、平成23年3月 中間指針第一次追補により自主的避難等対象区域とされた(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第3、2(1)))。 伊達市における環境放射能は、平成23年3月には2.25μSv/時、 平成24年4月には0.17ないし0.98μSv/時、平成25年4月には0.12ないし0.58μSv/時、平成26年4月には0.09ないし0.38μSv/時、平成27年4月には0.07ないし0.31μSv/時、平成28年4月には0.06ないし0.26μSv/時、平成29年4月には0.05ないし0.24μSv/時と推移しており(前記第2章の認 定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、1(11)))、年々低下している。 また、伊達市における18歳未満の避難者数は、平成24年4月1日時点で428人、平成25年4月1日時点で401人、平成26年4月1日時点で312人、平成27年4月1日時点で246人、平成28年4月1日時点 で230人、平成29年4月1日時点で156人と推移しており(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、2(3)シ))、年々減少している。 伊達市の平成29年5月末時点の除染状況は、住宅、公共施設、道路、農地及びその他の全てで完了した(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決 の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、4(4)))。 平成23年6月27日から平成30年12月31日までに行ったホールボディカウンターによる内部被ばく検査の結果は、伊達市では預託実効線量が1mSv未満の者が7907人/7910人(約99.9%)となっており、全員、健康に影響が及ぶ数値ではなかったとされている(乙B418)。 ばく検査の結果は、伊達市では預託実効線量が1mSv未満の者が7907人/7910人(約99.9%)となっており、全員、健康に影響が及ぶ数値ではなかったとされている(乙B418)。 3 伊達郡国見町(一審原告12の世帯関係) - 392 -国見町は、平成23年12月6日、中間指針第一次追補により自主的避難等対象区域とされた(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第3、2(1)))。 国見町における環境放射能は、平成23年4月には0.69μSv/時、平成24年4月には0.23ないし0.25μSv/時、平成25年4月に は0.18ないし0.22μSv/時、平成26年4月には0.14μSv/時、平成27年4月には0.06μSv/時、平成28年4月には0.05ないし0.06μSv/時、平成29年4月には0.05ないし0.06μSv/時と推移しており(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、1(12))(補正後))、低下 傾向にある。 また、国見町における18歳未満の避難者数は、平成24年4月1日時点で56人、平成25年4月1日時点で57人、平成26年4月1日時点で26人、平成27年4月1日時点で25人、平成28年4月1日時点で21人、平成29年4月1日時点で18人と推移しており(前記第2章の認定事実 (引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、2(3)サ))、平成26年以降、年々減少している。 平成23年6月27日から平成30年12月31日までに行ったホールボディカウンターによる内部被ばく検査の結果は、国見町で検査を受けた5701人全員が、預託実効線量が1mSv未満であり、健康に影響が及ぶ数値 ではな ら平成30年12月31日までに行ったホールボディカウンターによる内部被ばく検査の結果は、国見町で検査を受けた5701人全員が、預託実効線量が1mSv未満であり、健康に影響が及ぶ数値 ではなかったとされている(乙B418)。 4 伊達郡川俣町(一審原告4、同15の世帯関係)川俣町は、平成23年12月6日、中間指針第一次追補により自主的避難等対象区域とされた(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第3、2(1)))。 川俣町における環境放射能は、平成23年4月には0.74μSv/時、 - 393 -平成24年4月には0.21ないし1.59μSv/時、平成25年4月には0.12ないし1.03μSv/時、平成26年4月には0.11ないし0.94μSv/時、平成27年4月には0.10ないし0.68μSv/時、平成28年4月には0.08ないし0.53μSv/時、平成29年4月には0.04ないし0.46μSv/時と推移しており(前記第2章の認 定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、1(10))(補正後))、概ね低下傾向にある。 また、川俣町における18歳未満の避難者数は、平成24年4月1日時点で242人、平成25年4月1日時点で225人、平成26年4月1日時点で200人、平成27年4月1日時点で176人、平成28年4月1日時点 で165人、平成29年4月1日時点で189人と推移している(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、2(3)コ))。 そして、川俣町の平成27年7月末時点の除染状況は、宅地100%、農地32%、森林77%、道路6%の実施率であり、平成27年12月には、 除染対象の 第5部、第1章、第2、2(3)コ))。 そして、川俣町の平成27年7月末時点の除染状況は、宅地100%、農地32%、森林77%、道路6%の実施率であり、平成27年12月には、 除染対象のうち同意を得られたものに対する面的除染が完了した(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、4(1)、(5)))。 平成23年6月27日から平成30年12月31日までに行ったホールボディカウンターによる内部被ばく検査の結果は、川俣町で検査を受けた25 42人全員が、預託実効線量が1mSv未満となっており、健康に影響が及ぶ数値ではなかったとされている(乙B418)。 第2 県中地域 1 郡山市(一審原告13及び28の各世帯関係)郡山市は、平成23年12月6日、中間指針第一次追補により自主的避難 等対象区域とされた(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及 - 394 -び理由」中の第5部、第1章、第3、2(1)))。 郡山市における環境放射能は、平成23年3月には1.00ないし2.12μSv/時、平成24年4月には0.06ないし1.32μSv/時、平成25年4月には0.06ないし0.94μSv/時、平成26年4月には0.05ないし0.33μSv/時、平成27年4月には0.04ないし0. 26μSv/時、平成28年4月には0.05ないし0.19μSv/時、平成29年4月には0.04ないし0.17μSv/時と推移しており(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、1(8)))、年々低下している。 また、郡山市における18歳未満の避難者数は、平成24年4月1日時点 で2801人、平成25年4月1日時点で2590人、平成26年4 の第5部、第1章、第2、1(8)))、年々低下している。 また、郡山市における18歳未満の避難者数は、平成24年4月1日時点 で2801人、平成25年4月1日時点で2590人、平成26年4月1日時点で2311人、平成27年4月1日時点で2032人、平成28年4月1日時点で1880人、平成29年4月1日時点で1707人と推移しており(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、2(3)ク))、年々減少している。 そして、郡山市の平成28年6月末時点の除染状況は、森林は完了し、住宅94.3%、公共施設等97.3%、道路34.1%、農地75.6%の実施率であった(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、4(2)))。 平成23年6月27日から平成30年12月31日までに行ったホールボ ディカウンターによる内部被ばく検査の結果は、郡山市で検査を受けた3万4035人全員が、預託実効線量が1mSv未満であり、健康に影響が及ぶ数値ではなかったとされている(乙B418)。 2 須賀川市(一審原告1の世帯関係)須賀川市は、平成23年12月6日、中間指針第一次追補により自主的避 難等対象区域とされた(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実 - 395 -及び理由」中の第5部、第1章、第3、2(1)))。 須賀川市における環境放射能は、平成23年3月には0.43μSv/時、平成24年4月には0.12ないし0.45μSv/時、平成25年4月には0.09ないし0.34μSv/時、平成26年4月には0.08ないし0.25μSv/時、平成27年4月には0.07ないし0.19μSv/ 時、平成28年4月には0.06ないし0.15μS 月には0.09ないし0.34μSv/時、平成26年4月には0.08ないし0.25μSv/時、平成27年4月には0.07ないし0.19μSv/ 時、平成28年4月には0.06ないし0.15μSv/時、平成29年4月には0.05ないし0.13μSv/時と推移しており(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、1(9)))、概ね低下傾向にある。 また、須賀川市における18歳未満の避難者数は、平成24年4月1日時 点で182人、平成25年4月1日時点で169人、平成26年4月1日時点で264人、平成27年4月1日時点で247人、平成28年4月1日時点で196人、平成29年4月1日時点で137人と推移しており、平成27年以降、年々減少している(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、2(3)ケ))。 そして、須賀川市の平成29年3月末時点の除染状況は、住宅、公共施設、道路、農地及びその他の全てで完了した(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、4(3)))。 平成23年6月27日から平成30年12月31日までに行ったホールボディカウンターによる内部被ばく検査の結果は、須賀川市で検査を受けた9 220人全員が、預託実効線量が1mSv未満となっており、健康に影響が及ぶ数値ではなかったとされている(乙B418)。 3 田村市(一審原告41の世帯関係)田村市の一部(一審原告41の世帯が居住していた同市都路町を含む。)については、平成23年4月22日に緊急時避難準備区域に指定されたが、 同年9月30日に解除された(前記第2部の前提事実(引用に係る原判決の - 396 -「事実及び理由」 町を含む。)については、平成23年4月22日に緊急時避難準備区域に指定されたが、 同年9月30日に解除された(前記第2部の前提事実(引用に係る原判決の - 396 -「事実及び理由」中の第2部、第2、4))。 田村市における環境放射能は、平成23年8月から同年9月にかけて1. 0ないし1.3μSv/時であったが(ただし上位10地点の観測データ。 乙B198)、平成24年4月には0.12ないし0.27μSv/時、平成25年4月には0.10ないし0.11μSv/時、平成26年4月には 0.07ないし0.26μSv/時、平成27年4月には0.06ないし0. 19μSv/時、平成28年4月には0.05ないし0.16μSv/時、平成29年4月には0.05ないし0.14μSv/時と推移しており(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、1(4)))、概ね低下傾向にある。 また、田村市における18歳未満の避難者数は、平成24年4月1日時点で387人、平成25年4月1日時点で367人、平成26年4月1日時点で289人、平成27年4月1日時点で206人、平成28年4月1日時点で139人、平成29年4月1日時点で42人と推移しており(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第 2、2(3)エ))、年々減少している。 田村市では、平成27年7月末時点で宅地、農地、森林及び道路での除染は完了した(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、4(1)))。 平成23年6月27日から平成30年12月31日までに行ったホールボ ディカウンターによる内部被ばく検査の結果は、田村市で検査を受けた4603人全員が、預託実 、第1章、第2、4(1)))。 平成23年6月27日から平成30年12月31日までに行ったホールボ ディカウンターによる内部被ばく検査の結果は、田村市で検査を受けた4603人全員が、預託実効線量が1mSv未満であり、健康に影響が及ぶ数値ではなかったとされている(乙B418)。 第3 県南地域白河市(一審原告26の世帯関係) 白河市は、平成24年12月5日の一審被告東電のプレスリリースにより、 - 397 -賠償をする地域として追加された(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第3、6(9)イ))。 白河市における環境放射能(県南合同庁舎)は、平成23年3月15日には7.56μSv/時を観測したものの、同月20日には2.2μSv/時、同月25日には1.2μSv/時、同月31日には0.80μSv/時、同 年4月19日には0.67μSv/時まで低下した(乙B350の2)。また、平成24年4月には0.10ないし0.45μSv/時、平成25年4月には0.08ないし0.37μSv/時、平成26年4月には0.07ないし0.23μSv/時、平成27年4月には0.06ないし0.20μSv/時、平成28年4月には0.06ないし0.17μSv/時、平成29 年4月には0.06ないし0.16μSv/時と推移しており(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、1(7)))、年々低下している。 また、白河市における18歳未満の避難者数は、平成24年4月1日時点で119人、平成25年4月1日時点で254人、平成26年4月1日時点 で275人、平成27年4月1日時点で238人、平成28年4月1日時点で225人、平成29年4月1日時点で43人 1日時点で119人、平成25年4月1日時点で254人、平成26年4月1日時点 で275人、平成27年4月1日時点で238人、平成28年4月1日時点で225人、平成29年4月1日時点で43人と推移しており(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、2(3)キ))、平成27年以降、年々減少している。 平成23年6月27日から平成30年12月31日までに行ったホールボ ディカウンターによる内部被ばく検査の結果は、白河市で検査を受けた2万2153人全員が、預託実効線量が1mSv未満であり、健康に影響が及ぶ数値ではなかったとされている(乙B418)。 第4 相双地域 1 南相馬市(一審原告3、17から21まで、24及び30の各世帯関係) (1) 南相馬市においては、平成23年3月12日に福島第一原発から半径2 - 398 -0km圏内が避難区域に、同月15日に半径20km以上30km圏内が屋内退避区域に指定されたが(前記第2部の前提事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第2部、第2、4(10)、(11)))、同年4月22日に屋内退避区域の指定は解除され、代わりに計画的避難区域と緊急時避難準備区域(同市原町区など。上記各世帯のうち、一審原告17の世帯を 除く各世帯の住所がこれに含まれる。)の指定がされた(前記第2部の前提事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第2部、第2、5(2)))。そしてその後、緊急時避難準備区域は平成23年9月30日に解除された(前記第2部の前提事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第2部、第2、6(2)))。 また、計画的避難区域については、平成23年12月16日にステップ2の目標達成と完了が公表されたことを受け、 提事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第2部、第2、6(2)))。 また、計画的避難区域については、平成23年12月16日にステップ2の目標達成と完了が公表されたことを受け、同月26日、年間積算線量が20mSv以下となることが確実であることが確認された地域については避難指示解除準備区域に設定された(同市小高区など。一審原告17の世帯の住所がこれに含まれる。前記第2部の前提事実(引用に係る原判決 の「事実及び理由」中の第2部、第2、6(4)))。そして、平成28年7月12日、避難指示解除準備区域は解除された。(前記第2部の前提事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第2部、第2、7(10)))。 (2) 南相馬市原町区においては、緊急時避難準備区域が解除された後の平成23年10月以降、小中学校や高校が授業を再開し、平成24年4月以降 には小中学校の屋外活動時間の制限も解除された。平成24年5月時点で医療機関等も活動を再開している(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、5(4)))。また、南相馬市役所において測定した環境放射能は、平成24年4月1日午前8時には0.38μSv/時、平成25年4月1日午前8時には0.29μS v/時、平成26年4月1日午前8時には0.22μSv/時、平成27 - 399 -年4月1日午前8時には0.17μSv/時、平成28年4月1日午前8時には0.14μSv/時、平成29年4月1日午前8時には0.11μSv/時と推移しており(乙B171の1から5まで、269)、年々低下している。 一方、南相馬市小高区では、避難指示解除準備区域の解除前である平成 27年8月15日時点で、同区内の488事業所のうち210事業所が り(乙B171の1から5まで、269)、年々低下している。 一方、南相馬市小高区では、避難指示解除準備区域の解除前である平成 27年8月15日時点で、同区内の488事業所のうち210事業所が再開し、そのうち44事業所が同区内で事業を再開し、同年12月には、同月までに再開した224事業所のうち52事業所が同区内で事業所を再開した。平成27年4月には、小高病院が診療を開始するなどしている(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、 第1章、第2、5(3)))。また、小高中学校(一審原告17の世帯の本件事故当時の住所近くに所在する。)の環境放射能は、平成24年4月1日午前8時には0.33μSv/時、平成25年4月1日午前8時には0. 26μSv/時、平成26年4月1日午前8時には0.09μSv/時、平成27年4月1日午前8時には0.08μSv/時、平成28年4月1 日午前8時には0.07μSv/時、平成29年4月1日午前8時には0. 06μSv/時と推移しており(乙B171の1ないし5、乙B269)、年々低下している。 (3) 南相馬市における18歳未満の避難者数は、平成24年4月1日時点で5606人、平成25年4月1日時点で5820人、平成26年4月1日 時点で5155人、平成27年4月1日時点で4729人、平成28年4月1日時点で4299人、平成29年4月1日時点で3837人と推移しており(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、2(3)ウ))、平成26年以降、年々減少している。 南相馬市の平成27年7月末時点の除染状況は、宅地26%、農地1 - 400 -5%、森林46%、道路6%の実施率であり、平成29年3月には、除染対象 6年以降、年々減少している。 南相馬市の平成27年7月末時点の除染状況は、宅地26%、農地1 - 400 -5%、森林46%、道路6%の実施率であり、平成29年3月には、除染対象のうち同意を得られたものに対する面的除染が完了した(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、4(1)、(5)))。 平成23年6月27日から平成30年12月31日までに行ったホール ボディカウンターによる内部被ばく検査の結果は、南相馬市で検査を受けた4240人全員が、預託実効線量が1mSv未満となっており、健康に影響が及ぶ数値ではなかったとされている(乙B418)。 2 双葉郡富岡町(一審原告11の世帯及び同29関係)富岡町については、平成23年3月12日に福島第一原発から半径20k m圏内としてその全域が避難区域に指定されたが、その後、同年12月16日にステップ2の目標達成と完了が公表されたことを受け、年間積算線量の状況に応じ、避難指示解除準備区域、居住制限区域及び帰還困難区域の3区域に分けられた。そして、平成29年4月1日、居住制限区域及び避難指示解除準備区域についてはこれが解除された(前記第2部の前提事実(引用に 係る原判決の「事実及び理由」中の第2部、第2、4(10)、6(4)及び7(12))。 富岡町における環境放射能は、平成24年4月には1.62ないし5.95μSv/時、平成25年4月には1.14ないし4.25μSv/時、平成26年4月には0.32ないし3.36μSv/時、平成27年4月には 0.25ないし2.61μSv/時、平成28年4月には0.18ないし1. 22μSv/時、平成29年4月には0.12ないし1.11μSv/時と推移しており(前記第2章の 時、平成27年4月には 0.25ないし2.61μSv/時、平成28年4月には0.18ないし1. 22μSv/時、平成29年4月には0.12ないし1.11μSv/時と推移しており(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、1(1)))、年々低下している。 また、富岡町における18歳未満の避難者数は、平成24年4月1日時点 で2597人、平成25年4月1日時点で2382人、平成26年4月1日 - 401 -時点で2279人、平成27年4月1日時点で2194人、平成28年4月1日時点で2096人、平成29年4月1日時点で1977人と推移しており(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、2(3)ア))、年々減少している。 富岡町の平成27年7月末時点の除染状況は、宅地48%、農地12%、 森林82%、道路78%の実施率であり、平成29年1月には、除染対象のうち同意を得られたものに対する面的除染が完了した(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、4(1)、(5)))。 平成23年6月27日から平成30年12月31日までに行ったホールボ ディカウンターによる内部被ばく検査の結果は、富岡町では預託実効線量が1mSv未満の者が4333人/4334人(約99.9%)となっており、全員、健康に影響が及ぶ数値ではなかったとされている(乙B418)。 3 双葉郡浪江町(一審原告2の世帯及び同28-2関係)浪江町については、平成23年3月12日に福島第一原発から半径20k m圏内が避難区域に、同月15日に半径20km以上30km圏内が屋内退避区域に指定された。そして、同年4月21日,福島第一原発か 町については、平成23年3月12日に福島第一原発から半径20k m圏内が避難区域に、同月15日に半径20km以上30km圏内が屋内退避区域に指定された。そして、同年4月21日,福島第一原発から半径20km圏内が警戒区域に設定され、半径20kmから30km圏内の地域については屋内退避指示を解除され、計画的避難区域に設定された(前記第2部の前提事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第2部、第2、4 (10)、(11)、(13)、5(1)、(2)))。 その後、平成23年12月16日にステップ2の目標達成と完了が公表されたことを受け、同月26日、年間積算線量の状況に応じ、避難指示解除準備区域、居住制限区域及び帰還困難区域の3区域に分けられた(前記第2部の前提事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第2部、第2、6 (4))。本件事故当時の住所は一審原告2の世帯については帰還困難区域に含 - 402 -まれ、同28-2については避難指示解除準備区域に含まれる。)。 そして、平成29年3月31日、浪江町における避難指示解除準備区域が解除された(前記第2部の前提事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第2部、第2、7(11)))が、帰還困難区域については未だに避難指示が解除されていない。 浪江町における環境放射能は、平成24年4月1日午前8時には0.20μSv/時、平成25年4月1日午前8時には0.14μSv/時、平成26年4月1日午後5時には0.12μSv/時、平成27年4月1日午前8時には0.10μSv/時、平成28年4月1日午前8時には0.08μSv/時、平成29年4月1日午前8時には0.07μSv/時と推移してお り(乙B171の1ないし5、乙B269)、年々低下している。 また、浪 /時、平成28年4月1日午前8時には0.08μSv/時、平成29年4月1日午前8時には0.07μSv/時と推移してお り(乙B171の1ないし5、乙B269)、年々低下している。 また、浪江町における18歳未満の避難者数は、平成24年4月1日時点で3298人、平成25年4月1日時点で3276人、平成26年4月1日時点で3133人、平成27年4月1日時点で3039人、平成28年4月1日時点で2960人、平成29年4月1日時点で2846人と推移してお り(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、2(3)イ))、年々減少している。 そして、浪江町の平成27年7月末時点の除染状況は、宅地19%、農地18%、森林34%、道路40%の実施率であり、平成29年3月には、除染対象のうち同意を得られたものに対する面的除染が完了した(前記第2章 の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、4(1)、(5)))。 平成23年6月27日から平成30年12月31日までに行ったホールボディカウンターによる内部被ばく検査の結果は、浪江町では預託実効線量が1mSv未満の者が1万2299人/1万2306人(約99.9%)であ り、全員、健康に影響が及ぶ数値ではなかったとされている(乙B418)。 - 403 -第5 いわき地域いわき市(一審原告7、9、10、22、23、27、31、32、33、36、37及び39の各世帯並びに同40関係)いわき市は、平成23年12月6日、中間指針第一次追補により自主的避難等対象区域とされた(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び 理由」中の第5部、第1章、第3、2(1)))。 いわき市における環境放 年12月6日、中間指針第一次追補により自主的避難等対象区域とされた(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び 理由」中の第5部、第1章、第3、2(1)))。 いわき市における環境放射能は、平成23年3月には0.39ないし1. 46μSv/時、平成24年4月には0.05ないし0.84μSv/時、平成25年4月には0.05ないし0.61μSv/時、平成26年4月には0.04ないし0.31μSv/時、平成27年4月には0.04ないし 0.30μSv/時、平成28年4月には0.03ないし0.24μSv/時、平成29年4月には0.03ないし0.12μSv/時と推移しており(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、1(5)))、年々低下している。 また、いわき市における18歳未満の避難者数は、平成24年4月1日時 点で3641人、平成25年4月1日時点で2803人、平成26年4月1日時点で2107人、平成27年4月1日時点で1690人、平成28年4月1日時点で1358人、平成29年4月1日時点で884人と推移しており(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、2(3)オ))、年々減少している。 そして、いわき市の平成28年6月末時点の除染状況は、公共施設等、農地及び森林は完了し、住宅65.7%、道路13.6%の実施率であった(前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5部、第1章、第2、4(2)))。 平成23年6月27日から平成30年12月31日までに行ったホールボ ディカウンターによる内部被ばく検査の結果は、いわき市で検査を受けた5 - 404 -万9429人全員が、預託実効線量が1mSv未満 27日から平成30年12月31日までに行ったホールボ ディカウンターによる内部被ばく検査の結果は、いわき市で検査を受けた5 - 404 -万9429人全員が、預託実効線量が1mSv未満となっており、健康に影響が及ぶ数値ではなかったとされている(乙B418)。 第4章各一審原告の損害第1 一審原告1の世帯 1 認定事実(甲C1の1、一審原告1-2本人(原審)のほか後掲のもの。) (1) 本件事故前の状況等一審原告1-1(本件事故当時35歳)、その妻である同1-2(本件事故当時27歳)、同1-1及び同1-2の長女である同1-3(本件事故当時8歳)は、本件事故当時、福島県須賀川市内の、同1-2の父が所有し、父が経営する会社の事務所が1階にある不動産(福島第一原発からの距離6 0.21km(乙C1の1))の2階を同会社の社宅として借りて居住していた。同1-2の両親は、その近くの同市内に居住していた。本件事故当時、同1-1は、福島県郡山市で和食店を経営しており、同1-2は、その父が経営する一般廃棄物の収集運搬、浄化槽管理等を業務とする会社で正社員として勤務していた。同1-3は、本件事故当時、小学2年生で、幼稚園から 一緒の同級生が多く、学校行事には、同1-2の両親も参加していた。また、同1-2は、本件事故当時、同1-4を妊娠しており、出産予定日は平成23年10月であった。 (2) 避難開始の経緯等本件地震発生当時、一審原告1-1は経営する和食店に、また、同1-2 は勤務先の会社に、同1-3は小学校にいた。同1-1から1-3までの自宅は半壊状態であり、本件地震発生後、被害の少なかった同1-2の両親宅(須賀川市内)で世話になることにした。 一審原告1-1及び同1-2は 同1-3は小学校にいた。同1-1から1-3までの自宅は半壊状態であり、本件地震発生後、被害の少なかった同1-2の両親宅(須賀川市内)で世話になることにした。 一審原告1-1及び同1-2は、平成23年3月12日までに、本件事故の十分な情報を得られず、同1-2が妊娠中の同1-4や、小学生であった 同1-3への影響が心配されたことから、福島第一原発から離れた場所へ避 - 405 -難することにした。 一審原告1-1から同1-3までは、平成23年3月12日夜、福島県白河市の同1-1の両親宅に自動車で避難した。もっとも、同1-1は経営する和食店の片付けをしなければならず、同1-2も勤務する会社の業務再開のために仕事に戻らなければならなかったため、同月13日夜、同1-3を 同1-1の両親に預け、須賀川市に戻った。 一審原告1-1及び同1-2は、平成23年3月14日、福島第一原発3号機で爆発が発生し、同1-2の勤務する会社の従業員の中にも出勤しない者が出てくるなどしたことから、遠くへ避難することにした。同1-1及び同1-2は、同1-1の両親が同1-3を連れて先に宇都宮市まで避難して いたため、自動車で宇都宮市を目指すこととした。そして、同1-1及び同1-2は、同日は宇都宮市内のいわゆるラブホテルに宿泊し、同月15日、同1-1の両親及び同1-3と合流した。同1-1の両親は白河市に戻り、同1-1から同1-3までは、同日中に埼玉県まで避難し、一つのベッドに3人で寝るなどしてホテルに4泊した。同1-1及び同1-2は、ホテルに 宿泊するよりマンスリーアパートを借りた方がいいと考え、同月19日、栃木県小山市に単身者用の賃貸アパートを賃借した。同1-2は、同月28日頃、妊婦健診のため福島県に戻ったが、この 、ホテルに 宿泊するよりマンスリーアパートを借りた方がいいと考え、同月19日、栃木県小山市に単身者用の賃貸アパートを賃借した。同1-2は、同月28日頃、妊婦健診のため福島県に戻ったが、この際、病院の医師から、避難している人が多くいるということを聞いたことや本件事故の状況も改善したようには見えなかったことから、同1-1らは、福島県から離れることを決め、 同月30日、小山市から愛知県一宮市へ避難し、ホテルに3泊した後、同年4月5日、同市内に1LDKのアパートを借りて生活を開始した。 (3) 避難生活の状況一審原告1-1は、一宮市の1LDKのアパートでの生活に必要な物を買い揃えるなどした。同1-1は、経営する和食店については、家賃の支払を 継続することができず、平成23年5月又は6月頃に賃貸借契約を解約した。 - 406 -同1-1は、ハローワークに通い、同年5月、飲食店にアルバイトとして就職した。同1-2は、同年10月▲▲日、一宮市で、二女となる同1-4を出産した。同1-1は、同1-2の産前産後の世話をするため、同年7月末に上記アルバイトを一旦辞め、平成24年3月から、企業給食を提供する全国規模の会社で調理師として働いている。 その後、一審原告1の世帯は、同1-3及び同1-4の成長に伴い、借りていた1LDKのアパートが手狭になったため、平成26年4月、3LDKの分譲マンションを購入し、同マンションに引っ越した。同1-2は、平成28年頃から一宮市内でパートタイム勤務をしている。 一審原告1-1及び同1-2は、福島県内に、住宅を建てるための土地を ローンで購入していたが、住宅を建てる目途がつかないままローンの支払を継続することができなかったため、同土地を600万円で売却し、ローンを完済した。 、福島県内に、住宅を建てるための土地を ローンで購入していたが、住宅を建てる目途がつかないままローンの支払を継続することができなかったため、同土地を600万円で売却し、ローンを完済した。 なお、一審原告1-1及び同1-2の各両親は、いずれも現在も福島県内に居住している。 (4) 本件事故時住所地の状況等一審原告1-1から同1-3までの本件事故時の住所地は須賀川市で、同市は自主的避難等対象区域に該当するところ、同市における環境放射能等の状況は前記第3章、第2、2のとおりである。 2 損害 (1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告1-1から同1-3までは、本件事故当時、自主的避難等対象区域である須賀川市に居住していたところ、本件事故直後は本件事故に関する情報が少なく、妊娠中の同1-2、子どもである同1-3、胎児である同1-4に対する影響が心配であったことなどからまず白河市へ避難し、いった ん須賀川市に戻ったものの、その後、宇都宮市、埼玉県、小山市を経て一宮 - 407 -市に避難したものであり、同1-1から同1-3までが避難を行ったことは本件事故によるものと認められる。 一方、須賀川市における環境放射能等の状況は上記第1(4)のとおりであり、本件事故直後は情報が少なく放射線に対する心配があったとしても、通常、遅くとも平成23年12月31日までには同市に帰還することについて 支障はなかったといえ、当時、一審原告1-1及び同1-2が同1-3及び同年10月に出生した同1-4を養育しており、一般に子どもや乳児は放射線の影響を受けやすいとされていること考慮したとしても、遅くとも平成24年8月31日までには帰還することに支障はなくなったとみるべきである。 したがっ 1-4を養育しており、一般に子どもや乳児は放射線の影響を受けやすいとされていること考慮したとしても、遅くとも平成24年8月31日までには帰還することに支障はなくなったとみるべきである。 したがって、一審原告1-1から同1-3までの避難及びその後の避難生 活は、平成24年8月31日までの限度で本件事故との相当因果関係を認めるのが相当である。 (2) 一審原告1-1の損害ア避難費用(ア) 交通費 一審原告1-1らが本件事故による同1-1の損害と主張する交通費3万8400円については、ADRにおいて同1の世帯の請求に対して一審被告東京電力が平成23年分の避難費用(避難交通費)3万8400円を既に賠償したことが認められ(甲C1の2)、本件事故と相当因果関係を有する交通費の損害の額をこの額と認めるのが相当である(弁 論の全趣旨)。 (イ) 宿泊費・謝礼一審原告1-1らが本件事故による同1-1の損害と主張する宿泊費・謝礼13万1745円については、ADRにおいて同1の世帯の請求に対して一審被告東京電力が平成23年分の避難費用(宿泊費)13 万1745円を既に賠償したことが認められ、本件事故と相当因果関係 - 408 -を有する宿泊費・謝礼の損害の額をこの額と認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。 (ウ) 引越し費用一審原告1-1らが本件事故による同1-1の損害と主張する引越し費用17万円については、ADRにおいて同1の世帯の請求に対して一 審被告東京電力が平成23年分の避難費用(引越費用)17万円を既に賠償したことが認められ(甲C1の2)、本件事故と相当因果関係を有する引越し費用の損害の額をこの額と認めるのが相当である して一 審被告東京電力が平成23年分の避難費用(引越費用)17万円を既に賠償したことが認められ(甲C1の2)、本件事故と相当因果関係を有する引越し費用の損害の額をこの額と認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。 (エ) 一時立入り・帰省費用 一審原告1-1らは、本件事故により同1-1に一時立入り・帰省費用50万5296円の損害が発生したと主張する。 この点については、ADRにおいて同1の世帯の請求に対し一審被告東京電力が既に避難費用(一時帰宅費用)として平成23年分20万6712円、平成24年分20万6712円を賠償していることが認めら れ(甲C1の2・3)、その平成23年分20万6712円及び平成24年分のうち8か月分に相当する13万7808円の合計の34万4520円の限度で本件事故と相当因果関係のある一時立入り・帰省費用の損害と認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。 (オ) 合計 68万4665円 イ生活費増加費用(ア) 家財道具購入費用一審原告1-1らが本件事故による同1-1の損害と主張する家財道具購入費用95万1471円については、同1の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した家財道具購入費用15万円(甲C1の2) については本件事故と相当因果関係を有する損害として認めることがで - 409 -きるが(弁論の全趣旨)、これを超える損害が発生したと認めるに足りる証拠はない。 したがって、15万円の限度で本件事故と相当因果関係ある家財道具購入費用の損害と認める。 (イ) 通信費 通信費の増加についての具体的な立証がなく、本件事故と相当因果関係を有する損害が発生した 度で本件事故と相当因果関係ある家財道具購入費用の損害と認める。 (イ) 通信費 通信費の増加についての具体的な立証がなく、本件事故と相当因果関係を有する損害が発生したと認めることはできない。 (ウ) 食費食費の増加についての具体的な立証がなく、本件事故と相当因果関係を有する損害が発生したと認めることはできない。 (エ) 家賃増加分一審原告1-1らは、本件事故により同1-1に家賃増加分197万2000円の損害が生じたと主張する。 この点については、ADRにおいて同1の世帯の請求に対し一審被告東京電力が既に避難費用(家賃増加分)として平成23年分61万20 00円、平成24年分81万6000円を賠償した事実が認められ(甲C1の2)、その平成23年分61万2000円及び平成24年分のうち8か月分に相当する54万4000円の合計の115万6000円の限度で本件事故と相当因果関係のある家賃増加分の損害と認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。 (オ) 合計 130万6000円ウ被ばく検査費用一審原告1の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した被ばく検査費用2万2770円(甲C1の2)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 エその他(ADR弁護士費用) - 410 -一審原告1の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償したADR弁護士費用20万0465円(甲C1の2・3)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 オ慰謝料一審原告1-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及 び避難 65円(甲C1の2・3)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 オ慰謝料一審原告1-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及 び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、前記の転々避難の状況、妊娠中の同1-2や子どもである同1-3を伴っての避難であったこと、子どもや乳児である同1-3及び同1-4を避難先で養育しなければならなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 カ合計 321万3900円(3) 一審原告1-2の損害ア就労不能損害一審原告1-1らが本件事故による同1-2の損害と主張する就労不能損害197万1966円については、ADRにより同1の世帯の請求に 対して一審被告東京電力が既に平成23年分の就労不能損害として上記額を賠償したことが認められ(甲C1の2)、これを本件事故と相当因果関係を有する損害と認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。 イ慰謝料一審原告1-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及 び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、前記の転々避難の状況、避難時に妊娠中で放射線の影響等に対する不安があったこと、子どもである同1-3を伴っての避難であったこと、避難先での出産となったこと、子どもや乳児である同1-3及び同1-4を避難先で養育しなければならなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを 100万円と認めるのが相当である。 - 411 -ウ合計 297万1966円(4) 一審原告1-3の損害一審原告1-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活 のが相当である。 - 411 -ウ合計 297万1966円(4) 一審原告1-3の損害一審原告1-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、前記の転々避難の状況、通学していた小学校に行けなくなったことその他前記認定の一切の事情を考慮す れば、これを100万円と認めるのが相当である。 (5) 一審原告1-4の損害一審原告1-4は、本件事故時においても、同1-1から同1-3までが一宮市に避難した平成23年3月末時点においても胎児であり、自ら避難時や避難先到着直後などの困難を実際に体験したわけではない。また、同1- 4は、同年10月に同市において出生したが、本件事故前に須賀川市における日常生活の経験があったわけではなく、本件事故がなかった場合にそのまま平穏に同市での日常生活を続けられた利益を観念することはできないから、一宮市で出生、生活したことにより本件事故と相当因果関係ある精神的損害が生じたとは認められない。 したがって、一審原告1-4について本件事故と相当因果関係の認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛があるとは認められない。 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額ア一審原告1-1について 207万0676円 イ一審原告1-2について 261万1966円ウ一審原告1-3について 126万円エ一審原告1-4について 126万円(2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、これまで一審原告1の世帯について、以下のとおり 賠償したことが認められる(甲C1の1から3まで、乙C1の3、弁論の全 - 412 -趣旨)。 ア ADR以外による 一審被告東京電力は、これまで一審原告1の世帯について、以下のとおり 賠償したことが認められる(甲C1の1から3まで、乙C1の3、弁論の全 - 412 -趣旨)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告1-1に対し自主避難等に係る損害 12万円(イ) 一審原告1-2に対し自主避難等に係る損害 64万円(ウ) 一審原告1-3に対し自主避難等に係る損害 72万円 (エ) 一審原告1-4に対し自主避難等に係る損害 72万円(オ) 合計 220万円イ ADRによる賠償ADRにより、一審原告1の世帯に対する和解金額が688万2642円と合意され、そこからADR以外による賠償額のうち188万円を控除 した500万2642円が支払われた。 (内訳)(ア) 避難費用、生活費増加費用、避難雑費、検査費用、ADR弁護士費用427万0676円 (イ) 一審原告1-2の就労不能損害 197万1966円(ウ) 精神的損害 64万円(エ) 合計(和解金額) 688万2642円(オ) 既払い金 188万円(一審原告1-1分8万円、同1-2から同1-4まで分各60万円) (カ) 合計(支払い額) 500万2642円ウ合計 720万2642円(3) 一審原告1の世帯に対する弁済額ア一審原告1-1に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 12万円 ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし - 413 -て扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 303万0676円ADRによる和解金額からの前記(2) R以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし - 413 -て扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 303万0676円ADRによる和解金額からの前記(2)イ(オ)の既払い金188万円の控除は、まず同(ウ)の精神的損害64万円から全額が、次いで同(ア)の一審原告1の世帯共通の避難費用等から124万円が控除されたものとみる と、その余の同(ア)の支払額は303万0676円となる。 そして、一審原告1-1らは、同1の世帯共通の避難費用等の損害を同1-1の損害として主張していることから、これを同1-1に対する弁済として扱うこととすると、ADRによる賠償による同1-1に対する弁済額は303万0676円である。 (ウ) 合計 315万0676円したがって、一審被告東京電力の一審原告1-1に対する弁済の抗弁207万0676円は全部認められる。 イ一審原告1-2に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 64万円 ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 197万1966円ADRによる和解金額のうち前記(2)イ(イ) の就労不能損害は、一審原告1-2に対する賠償であることが明らかであり、同(ウ)の精神的損 害の同1-2に係る部分は既払い金により控除済みなので、ADRによる賠償による同1-2に対する弁済額を197万1966円とする。 (ウ) 合計 261万1966円したがって、一審被告東京電力の一審原告1-2に対する弁済の抗弁は全部認められる。 ウ一審原告1-3に対する弁済額 - 414 -(ア) ADR以外による賠償額 72万円 したがって、一審被告東京電力の一審原告1-2に対する弁済の抗弁は全部認められる。 ウ一審原告1-3に対する弁済額 - 414 -(ア) ADR以外による賠償額 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償ADRによる和解金額のうち前記(2)イ(ウ)の精神的損害の一審原告1 -3に係る部分は既払い金により控除済みなので、ADRによる賠償による同1-3に対する弁済額を0円とする。 (ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告1-3に対する弁済の抗弁は一部認められる。 エ一審原告1-4に対する弁済額一審原告1-4については、損害が認められないため、弁済の抗弁について判断を要しない。 4 認容額等(1) 一審原告1-1 ア損害額 321万3900円イ弁済額(弁済の抗弁について認められる額をいう。以下、同じ。)207万0676円ウ弁済額控除後の損害額 114万3224円エ弁護士費用 12万円 一審原告1-1が本件訴訟を弁護士に委任して提起及び追行した事実は当裁判所に顕著であり(以下、他の一審原告についても同じ。)、弁護士費用のうち上記の額を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(以下、弁済額控除後の損害額が認められる一審原告についても、弁護士費用として記載する額は、当裁判所が本件事故と相当因果関係を有す る損害と認めた額である。)。 - 415 -オ認容額(請求について理由がある額のうち元本額をいう。以下同じ。)126万3224円(2 本件事故と相当因果関係を有す る損害と認めた額である。)。 - 415 -オ認容額(請求について理由がある額のうち元本額をいう。以下同じ。)126万3224円(2) 一審原告1-2ア損害額 297万1966円イ弁済額 261万1966円 ウ弁済額控除後の損害額 36万円エ弁護士費用 4万円オ認容額 40万円(3) 一審原告1-3ア損害額 100万円 イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害額 28万円エ弁護士費用 3万円オ認容額 31万円(4) 一審原告1-4 ア損害額 0円イ認容額 0円第2 一審原告2-2 1 認定事実(甲C2の1のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等 元原審原告2-1(本件事故当時69歳)及びその妻である同2-2(本件事故当時68歳)は、本件事故当時、福島県双葉郡浪江町所在のログハウス(福島第一原発からの距離31.54km(乙C2の4))に平成15年から居住していた。 元原審原告2-1及び一審原告2-2は、同元原審原告の仕事の関係で転 勤することが多かったが、同元原審原告の定年退職を機に、浪江町に見つけ - 416 -た土地にログハウスを建築し、自ら整地をして多数の樹木を植えるなどして住居を作り上げた。同元原審原告及び同一審原告は、浪江町に住み始めてからは定職に就いておらず、現金収入は年金のみであったが、自ら山林の開墾・手入れをし、農作業を行い、自給自足の生活を送っていた。 (2) 避難開始の経緯等 本件地震発生当時、一審原告2-2はたまたま大阪 、現金収入は年金のみであったが、自ら山林の開墾・手入れをし、農作業を行い、自給自足の生活を送っていた。 (2) 避難開始の経緯等 本件地震発生当時、一審原告2-2はたまたま大阪府に居住する子らのところにいたが、元原審原告2-1は福島県にいた。同元原審原告は、平成23年3月12日に福島第一原発が爆発する様子をテレビで見て避難することを決め、同月13日には福島空港まで自動車で移動し、福島空港から名古屋まで飛行機で移動し、そこから大阪府まで新幹線で移動した。 元原審原告2-1及び一審原告2-2は、平成23年3月13日以降は大阪で避難生活をし、浪江町の自宅に一時的に帰宅した際も、いつ避難先から帰還できるかわからない状態であったため、落ち着いて生活できる避難先を探すこととし、同年7月に愛知県愛西市の家を借りて生活を始めた。もっとも、同元原審原告及び同一審原告は、同所での生活は一時的なものと考えて おり、それからも定住地となる場所を探していた。 (3) 避難生活の状況元原審原告2-1及び一審原告2-2は、愛西市に避難後、慣れない土地で新しい人間関係を築くのに苦労した。 元原審原告2-1は、肝臓がんを患って平成25年11月▲▲日に死亡し た。また、一審原告2-2は、難聴を患い、同元原審原告の死亡後は、一人での避難生活に不安を覚えたため、子らの住む場所に近い大阪府富田林市のアパートに転居して独り暮らしをしている。もっとも、同一審原告は、現在も浪江町で生活することを希望している。 (4) 本件事故時住所地の状況等 元原審原告2-1及び一審原告2-2の本件事故時の住所地は浪江町であ - 417 -り、同町の区域設定、環境放射能等の状況は前記第3章、第4、3のとお (4) 本件事故時住所地の状況等 元原審原告2-1及び一審原告2-2の本件事故時の住所地は浪江町であ - 417 -り、同町の区域設定、環境放射能等の状況は前記第3章、第4、3のとおりである。同元原審原告及び同一審原告の本件事故時の住所は帰還困難区域に該当し、本件訴訟の口頭弁論終結時においてもその指定は解除されていない。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分 元原審原告2-1及び一審原告2-2は、浪江町に居住していたところ、福島第一原発の爆発を受けて平成23年3月13日に同町から避難したものであり、同元原審原告及び同一審原告の避難は本件事故によるものと認められる。 そして、元原審原告2-1及び一審原告2-2の本件事故当時の住所は浪 江町の中でも帰還困難区域に該当し、その指定は未だ解除されていないから、同元原審原告が死亡するまでの大阪府、愛西市での避難生活及び同一審原告の大阪府、愛西市、富田林市での現在までの避難生活はいずれも本件事故によるものと認められる。 (2) 元原審原告2-1の損害 元原審原告2-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、本件事故当時、浪江町に居住して、本件事故直後から、大阪府、愛西市と転々と避難することを余儀なくされ、その後、一時帰宅以外、浪江町に帰還できないまま、平成25年11月に避難先で病気により死亡したことその他前記認定の一切の事情を考慮 すれば、これを1500万円と認めるのが相当である。 (3) 一審原告2-2の損害ア財物損害以外の損害(ア) 避難費用① 交通費 一審原告1-1らは、同2-2が、本件事故により、 認めるのが相当である。 (3) 一審原告2-2の損害ア財物損害以外の損害(ア) 避難費用① 交通費 一審原告1-1らは、同2-2が、本件事故により、原判決954 - 418 -頁別紙「交通費一覧」(一審原告2-2に係るもの)のとおり、避難、避難先の選定及び浪江町の自宅への一時帰宅のための交通費合計84万6310円を要したと主張する。 このうち、一審原告2-2の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した61万7697円(乙C2の1)については、本件事故と相 当因果関係を有する損害と認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。 しかし、一審原告2-2の愛西市から富田林市への転居は、避難継続の必要は認められるものの、転居自体は、元原審原告2-1の死亡や自身の持病に伴うものであり、これに関する費用は本件事故によるものとはいえない。その他、同一審原告の体調不良による交通費、弁 護士への相談のための交通費、必要とする具体的理由が明らかでない交通費も本件事故によるものとは認められない。 したがって、本件事故との相当因果関係がある交通費は前記61万7697円の限度となる。 ② 宿泊費 一審原告1-1らは、同2-2が、原判決955頁別紙「宿泊費一覧」(同2-2に係るもの)のとおり、避難、避難先の選定及び浪江町の自宅への一時帰宅のために宿泊費合計48万9465円を要したと主張する。 このうち、一審原告2-2の請求に対して一審被告東京電力が既に 賠償した31万9553円(乙C2の1)については本件事故と相当因果関係を有する損害と認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。 しかし、前記①と同様、愛西市から転居するための避難先選定に要した宿泊費は、本件事故と相当因果関係を C2の1)については本件事故と相当因果関係を有する損害と認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。 しかし、前記①と同様、愛西市から転居するための避難先選定に要した宿泊費は、本件事故と相当因果関係を有するものとはいえず、本件事故による避難及び一時帰宅のための宿泊費が上記額を超えると認 めるに足りる証拠はない。 - 419 -したがって、本件事故と相当因果関係がある宿泊費は前記31万9553円の限度となる。 ③ 合計 93万7250円(イ) 生活費増加費用(家財道具購入費)一審原告1-1らは、同2-2が、本件事故による避難及び避難後の 新たな生活のために家財道具購入費332万5397円を要したと主張する。 このうち、一審原告2-2の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した106万1407円(乙C2の1)については本件事故と相当因果関係を有する損害と認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。 しかし、眼鏡、時計、携帯電話通信費、肥料、園芸品、避難先や下見先での食事代、親類へのお土産等については、自宅から持ち出さずに避難先で購入した理由、自宅で使用していなかったのに避難先で必要となった理由又は本件事故による避難がなければ支出する必要がなかった理由についての具体的な立証があるとはいえず、避難のためやむなく支出 した家財道具購入費その他生活費の増加が、上記額を超えると認めるに足りる証拠はない。 したがって、本件事故と相当因果関係ある生活費増加費用は前記106万1407円の限度となる。 (ウ) 生命・身体的損害(補聴器) 一審原告2-2の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した補聴器購入費用1万4600円(乙C2の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁 (ウ) 生命・身体的損害(補聴器) 一審原告2-2の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した補聴器購入費用1万4600円(乙C2の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (エ) 慰謝料一審原告2-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難 及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、本件事故当時、帰還 - 420 -困難区域である浪江町に居住していて、本件事故により避難を余儀なくされたこと、その避難生活は、新たな土地で人間関係の形成に苦労したり、夫である元原審原告2-1を亡くしたり、自身も難聴を患ったりと精神的苦痛の大きいものであったこと、現在でも同町に帰還することはできないことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを150 0万円と認めるのが相当である。 (オ) 合計 1701万3257円イ財物損害(ア) 家財道具一審原告1-1らは、同2-2が本件事故により浪江町に残してきた 家財道具や機械工具類を使用できなくなった損害として1413万6400円を主張する。 この点について一審原告2-2の請求に対して一審被告東京電力がADRにより既に家財関係304万2025円の賠償を行ったことが認められ(乙C2の6)、この限度では、一審原告2-2に本件事故と相当 因果関係がある家財関係の損害が生じていることを認めることができる(弁論の全趣旨)。しかし、これを超える損害が生じたことについての立証はなされていない。 したがって、本件事故との相当因果関係がある家財道具の財物損害は前記304万2025円の限度となる。 (イ) その他(樹木)一審原告1-1らは、同2-2が浪江町の自宅の敷地内に植樹した樹木が本件事故に 事故との相当因果関係がある家財道具の財物損害は前記304万2025円の限度となる。 (イ) その他(樹木)一審原告1-1らは、同2-2が浪江町の自宅の敷地内に植樹した樹木が本件事故による避難により枯れたりその価値を喪失したりして354万0120円の損害を被ったと主張する。 このうち、一審原告2-2の請求に対して一審被告東京電力が既に賠 償した20万6064円(乙C2の2・3)については、本件事故と相 - 421 -当因果関係を有する損害と認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。 しかし、本件事故による避難により樹木が枯れたりその価値を喪失したりしたことで一審原告2-2に上記額を超える損害が発生したと認めるに足りる証拠はない。 したがって、本件事故との相当因果関係がある樹木の財物損害は前記 20万6064円の限度となる。 (ウ) 合計 324万8089円 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額ア元原審原告2-1について 2432万7562円 イ一審原告2-2について 2510万4162円(2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、これまで元原審原告2-1及び一審原告2-2に対し、以下のとおり賠償を行ったことが認められる(乙C2の1・2・6)。 ア ADR以外による賠償 (ア) 元原審原告2-1に対し避難費用、精神的損害(避難生活)、その他(財物以外)、実費 1553万2007円(イ) 一審原告2-2に対し① 避難費用、精神的損害(避難生活)、その他(財物以外)、実費1534万1790円 ② 財物(田畑、宅地・田畑以外の土地及び立木)211万5440円 避難費用、精神的損害(避難生活)、その他(財物以外)、実費1534万1790円 ② 財物(田畑、宅地・田畑以外の土地及び立木)211万5440円③ 合計 1745万7230円(ウ) 合計 3298万9237円イ ADRによる賠償 (ア) 元原審原告2-1に対し - 422 -ADRにより、元原審原告2-1に対する和解金額が1009万5555円と合意され、そこからADR以外による賠償額130万円を控除した879万5555円が支払われた。 ① その他(財物以外)、一時立入り費用、精神的損害(避難生活)、避難・帰宅費用、ADR弁護士費用 414万5555円② 財物 595万円③ 合計(和解金額) 1009万5555円④ 既払い金 130万円(避難費用仮払金)⑤ 合計(支払い額) 879万5555円(うち財物損害以外の損害 に対する賠償額284万5555円、財物損害に対する賠償額595万円)(イ) 一審原告2-2に対しADRにより、一審原告2-2に対する和解金額が794万6932円と合意され、そこからADR以外による賠償額30万円を控除した7 64万6932円が支払われた。 ① その他(財物以外)、精神的損害(避難生活)、ADR弁護士費用280万2539円② 財物(その他(財物)、家財、建物) 514万4393円③ 合計(和解金額) 794万6932円 ④ 既払い金 30万円(避難費用仮払金)⑤ 合計(支払い額) 764万6932円(うち財物損害以外の損害に対する賠償額250万25 ③ 合計(和解金額) 794万6932円 ④ 既払い金 30万円(避難費用仮払金)⑤ 合計(支払い額) 764万6932円(うち財物損害以外の損害に対する賠償額250万2539円、財物損害に対する賠償額514万4393円)(ウ) 合計 1644万2487円 ウ合計 4943万1724円 - 423 -(3) 元原審原告2-1及び一審原告2-2に対する弁済額ア元原審原告2-1に対する弁済額(ア) 財物損害以外の損害① ADR以外による賠償 1553万2007円② ADRによる賠償 284万5555円 ③ 合計 1837万7562円(イ) 財物損害① ADR以外による賠償 0円② ADRによる賠償 595万円③ 合計 595万円 (ウ) 合計 2432万7562円したがって、一審被告東京電力の元原審原告2-1に対する弁済の抗弁2432万7562円は、財物損害以外の損害に対する弁済の抗弁1837万7562円及び財物損害に対する弁済の抗弁595万円をいうものとして、いずれも全部認められる。 イ一審原告2-2に対する弁済(ア) 財物損害以外の損害① ADR以外による賠償 1534万1790円② ADRによる賠償 250万2539円③ 合計 1784万4329円 (イ) 財物損害① ADR以外による賠償 211万5440円② ADRによる賠償 514万4393円③ 合計 725万9833円(ウ) 合計 2510万4162円 したがって、一審被告東京電力の一審原告2-2に対する弁 ADRによる賠償 514万4393円③ 合計 725万9833円(ウ) 合計 2510万4162円 したがって、一審被告東京電力の一審原告2-2に対する弁済の抗弁2 - 424 -510万4162円は、財物損害以外の損害に対する弁済の抗弁1784万4329円及び財物損害に対する弁済の抗弁725万9833円をいうものとして、いずれも全部認められる。 4 認容額等(1) 元原審原告2-1 ア財物損害以外の損害(ア) 損害額 1500万円(イ) 弁済額 1837万7562円(ウ) 弁済額控除後の損害額 0円イ財物損害 (ア) 損害額 0円(イ) 弁済額 595万円(ウ) 弁済額控除後の損害額 0円ウ弁済額控除後の損害額合計 0円(2) 一審原告2-2 ア財物損害以外の損害(ア) 損害額 1701万3257円(イ) 弁済額 1784万4329円(ウ) 弁済額控除後の損害額 0円イ財物損害 (ア) 損害額 324万8089円(イ) 弁済額 725万9833円(ウ) 弁済額控除後の損害額 0円ウ認容額(ア) 弁済額控除後の損害額合計 0円 (イ) 元原審原告2-1からの承継分(前記(1)ウ) 0円 - 425 -(ウ) 認容額 0円第3 一審原告3の世帯 1 認定事実(甲C3の1のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等一審原告3-1(本件事故当時35歳)、その妻である同3-2(本件事 故当時36歳 3 一審原告3の世帯 1 認定事実(甲C3の1のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等一審原告3-1(本件事故当時35歳)、その妻である同3-2(本件事 故当時36歳)、同3-1及び同3-2の長男である同3-3(本件事故当時13歳)、長女である同3-4(本件事故当時10歳)は、本件事故当時、福島県南相馬市原町区の持ち家(福島第一原発からの距離25.67km(乙C3の1))に居住していた。 本件事故当時、一審原告3-1は南相馬市内の電気工事会社に勤務し、同 3-2は派遣会社の契約社員として同市内の病院の医療事務員として勤務しており、同3-3は中学1年生、同3-4は小学4年生であった。同3の世帯の自宅の近くには、同3-3及び同3-4の祖父母が住んでいたため、祖父母が同3-3及び同3-4の面倒を見るなどしていた。 (2) 避難開始の経緯等 一審原告3-2は、本件地震の翌日の平成23年3月12日に勤務先の病院に出勤したところ、同病院が被ばく者の受入れ先に指定されたと聞いて不安を覚え、同日は午前中に帰宅した。同3の世帯は全員で公民館に避難したが、同所に避難していた福島第一原発で勤務している人の家族を通じて、福島第一原発が爆発して危ないから避難した方がよいと聞き、福島市内の友人 宅へ避難することとした。しかし、自動車のガソリンがほとんど残っていなかったため、一旦南相馬市に戻り、同3の世帯は、同日及び同月13日は同市内の同3-2の実家で過ごした。同3-2は、同月14日、勤務先の病院に出勤したが、正面玄関には線量を測定する機器を持った職員が防護服を着て立っており、放射線量を測定すると、靴が異常に高い数値を示し、このま までは建物に入れないと言われたり、病院の裏側にある警察 出勤したが、正面玄関には線量を測定する機器を持った職員が防護服を着て立っており、放射線量を測定すると、靴が異常に高い数値を示し、このま までは建物に入れないと言われたり、病院の裏側にある警察署と消防署で敷 - 426 -地に入る際に自動車を1台ずつ高圧洗浄しているのを見たり、福島第一原発が2回目の爆発をした際に病院の院長から「病院に残っても避難してもよい。 あとは自分の判断で。」と言われたりしたことなどから、異常な状況にあると考え、避難することを決断した。 一審原告3の世帯は、平成23年3月14日から5日間は福島市内の友人 宅へ避難し、同月19日からは山形県内の避難所へ自動車で避難した。避難所での生活ではプライバシーがなく、物資も十分ではなかった上、風呂はなく、洗濯もできず、食事も足りないという状況で、同3-4が胃腸炎に感染するなどした。同3の世帯は、名古屋市は避難者の受入れが早く、住宅を無償で提供してもらえるという話を聞いたため、同市への避難を決断し、同月 24日に南相馬市の自宅に戻り、子らの学用品や着替えを自動車に積み込んだが、ガソリンがなかったため、3日間は自宅に留まり、同月26日、自動車で名古屋市に向けて出発し、同月27日に到着した。 (3) 避難生活の状況一審原告3-1は、平成23年5月頃、仕事のために一人で福島県に戻っ たが、仕事の目途がついた同年7月下旬には名古屋市で家族と同居するようになり、愛知県内で就職した。同3-2は、名古屋市に避難後、福島県で勤務していた派遣会社の名古屋支店に就職したが、同年9月には仕事を辞めた。 同3-3及び同3-4は、避難先で学校に通うようになったが、同級生から心ない言葉を言われるなどした。 一審原告3の世帯は、避難前は一戸建てで生活していた 職したが、同年9月には仕事を辞めた。 同3-3及び同3-4は、避難先で学校に通うようになったが、同級生から心ない言葉を言われるなどした。 一審原告3の世帯は、避難前は一戸建てで生活していたため、団地での生活は初めてで戸惑うことが多く、避難後は食品の産地を確認し、北関東産の物は買わないようにしていた。また、同3の世帯は、南相馬市には年に2回程度は一時帰宅していたが、自宅は住むことができない状態になっていた。 その後、一審原告3-4が福島県内の高校への進学を希望したため、平成 27年8月に同3-1が、平成28年3月に同3-2から同3-4までが南 - 427 -相馬市に戻った。しかし、元の自宅はそのままでは住むことができない状態であったため、新たに家を建てた。建替えに当たっては、土壌の放射能による汚染が心配であったため、80㎝の土盛りをしたが、建替えをしていた約1年間は仮設住宅での生活を強いられた。 (4) 本件事故時住所地の状況等 本件事故前の一審原告3の世帯の住所地は南相馬市で、同市原町区は旧緊急時避難準備区域であり、同市の環境放射能等の状況は、前記第3章、第4、1のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分 一審原告3の世帯は、本件事故当時、旧緊急時避難準備区域である南相馬市原町区に居住していたところ、本件事故直後は本件事故に関する情報が不足し、勤務先の病院の院長から自己判断で避難するかどうか決めるよう言われたことなどから名古屋市に避難したものであり、同3の世帯が避難を行ったこと(平成23年5月頃に福島県に戻った同3-1が同年7月下旬に名古 屋市に再避難したことを含む。)は本件事故によるものと認められる。 他方、上記1(4)のとおり、南相 3の世帯が避難を行ったこと(平成23年5月頃に福島県に戻った同3-1が同年7月下旬に名古 屋市に再避難したことを含む。)は本件事故によるものと認められる。 他方、上記1(4)のとおり、南相馬市原町区における緊急時避難準備区域が平成23年9月30日に解除されたことや、同区の環境放射能の状況、社会経済活動の復旧状況等に照らせば、遅くとも平成24年8月31日までには、一審原告3の世帯が同区に帰還することについて支障はなくなっていた とみるべきである。 したがって、一審原告3の世帯の避難及び避難生活は、平成24年8月31日までの部分の限度で、本件事故との相当因果関係が認められるというべきである。 (2) 一審原告3-1の損害 ア財物損害以外の損害 - 428 -(ア) 避難費用① 交通費一審原告1-1らは、同3-1が交通費220万9000円の損害を被ったと主張し、同3の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した11万3000円(乙C3の3)については本件事故と相 当因果関係ある交通費損害と認める余地はあるが(弁論の全趣旨)、同1-1らは、同3-1がこの額を超えて交通費の支出をしたことを示す領収証等を提出していない。 したがって、11万3000円の限度で本件事故と相当因果関係を有する交通費の損害と認める。 ② 引越し費用一審原告3-1は、平成28年に名古屋市から南相馬市に引っ越す際に引越費用等25万9200円を支出したと認められ(甲C3の2の1・2)、本件事故と相当因果関係ある避難をした以上、避難先からの帰還費用は遅かれ早かれ必要となるものであるから、この25万 9200円を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 ③ 、本件事故と相当因果関係ある避難をした以上、避難先からの帰還費用は遅かれ早かれ必要となるものであるから、この25万 9200円を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 ③ 一時立入り・帰省費用まず、一審原告3の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した平成23年分の帰省費用63万6000円(乙C3の3)については、本件事故と相当因果関係を有する損害と認められる(弁論の 全趣旨)。また、証拠(甲C3の3の3)によれば、一審原告3-2は、平成24年3月27日から同年4月2日にかけて帰省し、その際に7万9500円を要したことが認められる(なお、帰省したのは一審原告3-2であるが、その費用を支出したのは同3-1と認められる。)。 しかし、前記のとおり、一審原告3の世帯のした避難について本件 - 429 -事故と相当因果関係の認められる期間は平成24年8月31日までというべきであるから、同年9月以降の帰省費用については本件事故と相当因果関係を有する損害とはいえない。 したがって、合計71万5500円を本件事故と相当因果関係を有する一時立入り・帰省費用の損害と認める。 ④ 合計 108万7700円(イ) 生活費増加費用① 家財道具購入費一審原告1-1らは、同3-1が家財道具購入費として310万2943円を要し、これが本件事故による損害であると主張する。 まず、同3-1の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した172万3138円(乙C3の3)については、本件事故と相当因果関係ある損害と認めることができる(弁論の全趣旨)。 それ以外のうち、寝具、折畳みテーブル、電子ピアノ、自転車、家財道具、ミシン・灯油缶については、南相馬市の自宅から持っ いては、本件事故と相当因果関係ある損害と認めることができる(弁論の全趣旨)。 それ以外のうち、寝具、折畳みテーブル、電子ピアノ、自転車、家財道具、ミシン・灯油缶については、南相馬市の自宅から持ってくる よりも購入した方が安いということもあり得るから、その購入代金は本件事故と相当因果関係を有する損害と認められる。一方で、一審原告3-1の職業訓練のためのスーツは南相馬市の自宅から持ち出しが可能であり、掃除機についても壊れたために購入したものであり、冷風除湿器についてもその必要性についての主張立証がないから、いず れの購入費用も本件事故と相当因果関係を有するものとはいえず、平成24年11月に購入したスタッドレスタイヤについても、この頃には南相馬市に帰還することが可能であったから、この購入費用は本件事故と相当因果関係を有するものとはいえない。また、後記のとおり、同3-1は自宅を建て替える必要性はなく、単身で南相馬市に転居し 二重生活をする必要性もなかったのであるから、ローテーブル、キッ - 430 -チン用品、タオル等、毛布等の購入代金は本件事故と相当因果関係を有するものとはいえない。 したがって、寝具(甲C3の4の3・4)、折畳みテーブル(甲C3の4の6)、電子ピアノ(甲C3の4の7)、自転車(甲C3の4の8)、家財道具(甲C3の4の9)及びミシン・灯油缶(甲C3の 4の10)の購入費用合計35万8903円を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 以上のとおり、前記172万3138円と35万8903円の合計208万2041円を本件事故と相当因果関係を有する家財道具購入費の損害と認める。 ② 光熱費一審原告1-1らは、同3-1は、南相馬市の家屋を建て替えることを計画し、金融機 208万2041円を本件事故と相当因果関係を有する家財道具購入費の損害と認める。 ② 光熱費一審原告1-1らは、同3-1は、南相馬市の家屋を建て替えることを計画し、金融機関から融資を受けるに当たって、南相馬市周辺で勤務することが条件となっていたため、平成27年夏頃から同3-1のみが同市の仮設住宅で生活していたことにより余分に生じた費用と して6万6095円の損害が発生したと主張する。しかしながら、後記のとおり自宅を建て替える必要はなかったのであり、上記費用は本件事故と相当因果関係を有するものとはいえず、上記主張は採用できない。 ③ その他(駐車場代) 一審原告3-1の本件事故との相当因果関係が認められる避難生活期間中である平成23年12月から平成24年8月までの駐車場代3万5100円(=3900円×9か月。甲C3の6の1)の限度で、本件事故と相当因果関係を有する駐車場代の損害と認める。 ④ 合計 211万7141円 (ウ) 就労不能損害 - 431 -一審原告3の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した669万0750円(乙C3の3)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (エ) 慰謝料一審原告3-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難 及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、前記の避難の状況、同3-1が平成23年5月に仕事のためにいったん福島県に戻ったものの同年7月には家族がいる名古屋市に再度避難していることその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを180万円と認めるのが相当である。 (オ) 合計 1169万5591円イ財物損害(自宅建替え 古屋市に再度避難していることその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを180万円と認めるのが相当である。 (オ) 合計 1169万5591円イ財物損害(自宅建替え費用)一審原告3-1は、南相馬市の自宅の建替え費用を請求するが、元の自宅が健康に影響を及ぼすほど放射性物質により汚染されていたと認めるに足りる証拠はなく、また、同3の世帯の避難の継続の本件事故との相 当因果関係が認められるのは前記のとおり平成24年8月31日までであるから、自宅の管理が不十分で居住不能となるほど長期間にわたって自宅を空ける必要はなかったといえる。したがって、自宅を建て替える必要はなく、自宅の建替え費用は本件事故と相当因果関係を有する損害とはいえない。 (3) 一審原告3-2の損害一審原告3-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、前記の避難の状況その他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを180万円と認めるのが相当である。 (4) 一審原告3-3の損害 一審原告3-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び - 432 -避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、前記の避難の状況、通学先での人間関係その他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを180万円と認めるのが相当である。 (5) 一審原告3-4の損害一審原告3-4について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び 避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、前記の避難の状況、通学先での人間関係その他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを180万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張 る慰謝料額は、前記の避難の状況、通学先での人間関係その他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを180万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額 ア一審原告3-1について 1163万5888円イ一審原告3-2について 276万6233円ウ一審原告3-3について 296万7000円エ一審原告3-4について 296万7000円(2) 一審被告東京電力による賠償 一審被告東京電力は、これまで一審原告3の世帯について、ADR以外により、以下のとおり賠償したことが認められる(乙C3の3)。 ア一審原告3-1に対し避難費用、その他(財物損害以外)、一時立入り費用、就労不能損害、精神的損害(避難生活)、避難・帰宅費用、実費、通院交通費等の生活費の増加分 1163万5888円 イ一審原告3-2に対し避難費用、その他(財物損害以外)、一時立入り費用、精神的損害(避難生活)、実費、通院交通費等の生活費の増加分276万6233円ウ一審原告3-3に対し避難費用、精神的損害(避難生活)、自主避難 等に係る損害、実費、通院交通費等の生活費の増加分、精神的損害(学 - 433 -童)296万7000円エ一審原告3-4に対し避難費用、精神的損害(避難生活)、自主避難等に係る損害、実費、通院交通費等の生活費の増加分、精神的損害(学童) 296万7000円オ合計 2033万6121円(3) 一審原告3の世帯に対する弁済額ア一審原告3-1ADR以外による賠償 1163万5888円 これは、前記(2)アのとおり財物損害以外の 21円(3) 一審原告3の世帯に対する弁済額ア一審原告3-1ADR以外による賠償 1163万5888円 これは、前記(2)アのとおり財物損害以外の損害に対する賠償であり、一審被告東京電力の一審原告3-1に対する弁済の抗弁は、財物損害以外の損害に対する弁済をいうものとして全部認められる。 イ一審原告3-2に対しADR以外による賠償 276万6233円 したがって、一審被告東京電力の一審原告3-2に対する弁済の抗弁は全部認められる。 ウ一審原告3-3に対しADR以外による賠償 296万7000円したがって、一審被告東京電力の一審原告3-3に対する弁済の抗弁は 全部認められる。 エ一審原告3-4に対しADR以外による賠償 296万7000円したがって、一審被告東京電力の一審原告3-4に対する弁済の抗弁は全部認められる。 4 認容額等 - 434 -(1) 一審原告3-1ア財物損害以外の損害(ア) 損害額 1169万5591円(イ) 弁済額 1163万5888円(ウ) 弁済額控除後の損害額 5万9703円 イ財物損害(ア) 損害額 0円(イ) 弁済額 0円(ウ) 弁済額控除後の損害額 0円ウ弁済額控除後の損害額合計 5万9703円 エ弁護士費用 1万円オ認容額 6万9703円(2) 一審原告3-2ア損害額 180万円イ弁済額 276万6233円 ウ弁済額控除後の損害額 0円エ認容額 0円(3) 9703円(2) 一審原告3-2ア損害額 180万円イ弁済額 276万6233円 ウ弁済額控除後の損害額 0円エ認容額 0円(3) 一審原告3-3ア損害額 180万円イ弁済額 296万7000円 ウ弁済額控除後の損害額 0円エ認容額 0円(4) 一審原告3-4ア損害額 180万円イ弁済額 296万7000円 ウ弁済額控除後の損害額 0円 - 435 -エ認容額 0円第4 一審原告4 1 認定事実(甲C4の1、一審原告4本人(原審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等一審原告4は、本件事故当時、夫(当時。以下、第4において「元夫」と いう。)とともに福島県伊達郡川俣町所在の自宅(福島第一原発からの距離45.44km(乙C4の1))に居住していた。同4には娘がいたが、本件事故当時は東京の大学に通っていた。 一審原告4は中国吉林省の出身で、平成15年3月に元夫と結婚し、同年10月に来日した。本件事故当時は中国籍であった。同4は、来日後、川俣 町に中古住宅を購入し、本件事故まで同住宅で元夫と共に生活していた。また、同4は、本件事故当時、川俣町にある制服の製造会社に正社員として勤務していた。 (2) 避難開始の経緯等一審原告4は、平成23年3月15日、中国人の友人から本件事故のこと や中国に避難するためのバスや飛行機が用意されることを聞き、元夫と避難について話し合った結果、同4が一人で避難することにした。同4は、同日午後3時頃、福島駅から新潟県に向かうバスに乗り、同日午後10時頃、同県に着き、その日は体育館のような場所 ことを聞き、元夫と避難について話し合った結果、同4が一人で避難することにした。同4は、同日午後3時頃、福島駅から新潟県に向かうバスに乗り、同日午後10時頃、同県に着き、その日は体育館のような場所で宿泊し、同月16日夜、上海行きの飛行機に乗り、中国に避難した。同4は、同月17日に上海に到着した後、 長春まで移動して実家に戻り、そこで約3か月間、日本での働き口を探しながら過ごし、その間、日本にいる家族とは週に1回程度連絡を取っていたが、元夫の姉からは福島に戻って来ない方がいいと言われた。 (3) 避難生活の状況一審原告4は、平成23年5月頃、愛知県にある自動車会社の関連会社で 働けることになり、同年6月4日に再来日して就職し、会社の寮に住むこと - 436 -になったが、騒音がひどかったため、同年7月に同県高浜市の県営住宅に転居した。同4は、平成25年12月には上記会社との契約期間が終了したが、同県岡崎市の病院で働けることとなったので、平成26年3月、高浜市から岡崎市に引っ越した。同4は、元夫とは本件事故以来ずっと別居状態だったが、元夫が病気になって老人ホームに入ることとなり、平成26年4月、元 夫と離婚した。その後、同4は、友人の紹介で現在の夫と出会い、同年11月、現在の夫と結婚して岐阜市に引っ越した。同4は、平成28年1月から同年3月まで、介護士の資格を得るための学校に通い、同月末に介護士の資格を取得し、現在は有料老人ホームで働いている。 なお、元夫は、平成23年6月頃、同人の姉が居住する神奈川県に避難し、 平成26年頃に死亡した。 (4) 本件事故時住所地の状況等一審原告4の本件事故当時の住所地は川俣町で、同町は自主的避難等対象区域であり、同町の環境放射能の状況等は前記第3章、第1、4 平成26年頃に死亡した。 (4) 本件事故時住所地の状況等一審原告4の本件事故当時の住所地は川俣町で、同町は自主的避難等対象区域であり、同町の環境放射能の状況等は前記第3章、第1、4のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告4は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である川俣町に居住していたところ、本件事故の4日後に、母国への避難手段が用意されたという話を聞いて新潟県を経由して中国に避難したものであり、同4が避難を行 ったことは本件事故によるものと認められ、同4の避難は本件地震によるものとの一審被告東京電力の主張は採用できない。また、一審原告4の元夫や娘はいずれも日本にいたことから、同4は中国へ避難してから約2か月後に再来日しているところ、その際、自宅のある川俣町ではなく愛知県内に居住しているが、これは、元夫の姉に福島県には戻らない方がいいと言われたこ とや上記避難により川俣町での職を失っていたことからやむなく愛知県内に - 437 -居住していたということができ、再来日して愛知県に居住したことも本件事故によるものということができる。 しかし、川俣町の環境放射能等の状況は前記認定のとおりであり、本件事故直後の混乱期は別として、遅くとも平成23年12月31日までには、本件事故の影響に対する不安や就職先の問題を解消して、同町の自宅に帰還す ることに支障はなかったというべきである。 したがって、一審原告4が、平成23年3月15日以降行った新潟県、中国、愛知県での避難及び避難生活のうち本件事故との相当因果関係が認められるのは、同年12月31日までの部分に限られるというべきである。 (2) 避難費用 ア交 以降行った新潟県、中国、愛知県での避難及び避難生活のうち本件事故との相当因果関係が認められるのは、同年12月31日までの部分に限られるというべきである。 (2) 避難費用 ア交通費一審原告4は、平成23年3月16日、新潟空港から上海浦東国際空港に飛行機で移動し、同月17日、同空港から長春龍嘉国際空港に飛行機で移動し、同空港から吉林市まで鉄道で移動し、その後タクシーで実家まで移動したことが認められる(弁論の全趣旨)。そして、同1-1ら は、同4が交通費を支出したことを示す領収証等の証拠を提出していないものの、上記移動の事実によれば、交通費を要したことは明らかであり、その額は、新潟空港から上海浦東国際空港までの航空費については3万円、同空港から長春龍嘉国際空港までの航空費については1万円、同空港から吉林駅までの鉄道代は475円、同駅から実家までのタクシ ー代は600円と認められ(甲C4の3から5まで)、その合計額4万1075円を支出したと認めることができる。 また、一審原告4の再入国の際に要した交通費は、実家から吉林駅までのタクシー代金が600円、同駅から長春龍嘉国際空港までの電車代が475円、同空港から中部国際空港までの航空費が3万5000円、同 空港から高浜市への電車代が1290円であると認められ(甲C4の - 438 -6・7)、その合計額3万7365円を支出したと認めることができる。 したがって、以上の合計の7万8440円を本件事故と相当因果関係を有する交通費の損害と認める。 イ引越し費用一審原告1-1らは、同4の引越し費用14万5000円が損害である と主張する。 しかし、前記のとおり、一審原告4の本件事故との相当因果関係が認められる避難は平成23年 引越し費用一審原告1-1らは、同4の引越し費用14万5000円が損害である と主張する。 しかし、前記のとおり、一審原告4の本件事故との相当因果関係が認められる避難は平成23年12月31日までの部分に限られるから、本件事故と相当因果関係の認められる引越し費用は同年7月の引越しに関するもののみであり、平成26年3月の高浜市から岡崎市への引越しに関 するものは本件事故と相当因果関係が認められない。また、平成23年7月の引越しについて、同4は本人尋問(原審)において、隣人がうるさかったことを理由に引越しをした旨供述していることからすれば、この引越しについても本件事故と相当因果関係があるとは認められない。 したがって、上記の引越し費用の損害の主張は採用できない。 ウ一時立入り・帰省費用一審原告4は、平成23年8月頃、2度にわたって川俣町の自宅に家財道具を取りに戻ったと認められるところ(弁論の全趣旨)、この同町への移動に要した交通費は7万7520円と認められる(甲C4の8・9)。 したがって、7万7520円を本件事故と相当因果関係を有する帰省費用の損害と認める。 エ合計 15万5960円(3) 生活費増加費用ア家財道具購入費 一審原告1-1らは、同4が家財道具購入費として17万2000円を - 439 -要したと主張する。そして、同1-1らは、同4が実際にこれらの支出をしたことを示す証拠を提出していないものの、同4が避難後、再来日して愛知県に居住したこと、川俣町の自宅にはしばらくは元夫が居住し、同人が生活を継続する可能性があったことは認められるのであるから、これらの事実によれば、再来日後の避難先である愛知県において家 来日して愛知県に居住したこと、川俣町の自宅にはしばらくは元夫が居住し、同人が生活を継続する可能性があったことは認められるのであるから、これらの事実によれば、再来日後の避難先である愛知県において家財道 具の購入を余儀なくされ、その購入費用は5万円を下らなかったことを推認することができる。 したがって、5万円を本件事故と相当因果関係を有する家財道具購入費の損害と認める。 イ家賃増加分 前記のとおり、一審原告4の避難に本件事故との相当因果関係が認められるのは平成23年12月31日までの部分であるから、家賃増加分として本件事故と相当因果関係を有するのは県営住宅に転居した平成23年7月から同年12月までの家賃に限られる。 したがって、7万2000円(=1万2000円(弁論の全趣旨)/月 ×6か月)を本件事故と相当因果関係を有する家賃増加分の損害と認める。 ウ合計 12万2000円(4) 就労不能損害一審原告4の本件事故前6か月間の平均月収は15万9031円(甲C4の10)であったところ、同4は本件事故による避難により平成23年3月 16日から同年6月4日までの81日間就労することができなかった。 したがって、この間に得られたはずの収入である42万9383円(=15万9031円÷30日×81日。1円未満の端数切捨て)は本件事故と相当因果関係を有する損害と認められる。 一方で、一審原告4が愛知県の会社で勤務し始めた後については、本件事 故前よりも収入が減少したと認めるに足りる証拠はないから、就労不能損害 - 440 -を認めることはできない。 (5) 慰謝料一審原告4について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦 認めるに足りる証拠はないから、就労不能損害 - 440 -を認めることはできない。 (5) 慰謝料一審原告4について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、一人母国へ避難した状況、再来日時も川俣市に戻らなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、 これを60万円と認めるのが相当である。 (6) 損害合計 130万7343円 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額一審原告4について 12万円 (2) 一審被告東京電力による賠償一審原告1-1らは、同4が上記(1)の12万円のうち8万円の賠償を受けたことは認めるものの、うち4万円の賠償を受けたことを否認する。しかし、証拠(乙C4の6)によれば、一審被告東京電力は、一審原告4に対し、精神的損害等に対する賠償として8万円、追加的費用等に対する賠償として 4万円の賠償を行ったことが認められる。 したがって、一審被告東京電力の一審原告4に対する弁済の抗弁は全部認められる。 4 認容額等(1) 損害額 130万7343円 (2) 弁済額 12万円(3) 弁済額控除後の損害額 118万7343円(4) 弁護士費用 12万円(5) 認容額 130万7343円第5 一審原告5の世帯 1 認定事実(甲C5の1、一審原告5-1本人(原審)のほか後掲のもの) - 441 -(1) 本件事故前の状況等一審原告5-1(本件事故当時39歳)、その妻である同5-2(本件事故当時38歳)、同5-1及び同5-2の長男である同5-3(本件事故当時5歳)、長女である同5-4(本件事故当時2歳)は、本件事故当時、 原告5-1(本件事故当時39歳)、その妻である同5-2(本件事故当時38歳)、同5-1及び同5-2の長男である同5-3(本件事故当時5歳)、長女である同5-4(本件事故当時2歳)は、本件事故当時、福島市内の自宅(福島第一原発からの距離61.67km(乙C5の2))に 居住していた。 一審原告5-2は福島県出身で、同5-2の両親は一同5の世帯の近くに住んでいた。また、同5-1及び同5-2は、本件事故当時、いずれも福島県の小学校教諭として勤務し、同5-3は幼稚園の年中児であった。 (2) 避難開始の経緯等 一審原告5-1及び同5-2は、平成23年3月12日、本件事故により福島市内の自宅にも放射性物質が飛散することは間違いないと考え、同5の世帯全員で福島第一原発から離れ、余震にも耐えられる安全な場所に避難しようと、同5-2の両親と共に福島県会津若松市の施設に1泊した。同5の世帯は、同月13日、福島市の自宅に一旦戻ったが、大きな余震が続いたた め、会津若松市に戻り、同市内のホテルに宿泊した。同5の世帯は、同月14日、愛知県から駆け付けた同5-1の母を新潟県まで迎えに行き、その後、福島市の自宅に戻った。同5-1及び同5-2は、同月15日、同5-1の母に同5-3及び同5-4の面倒を見てもらうこととし、それぞれの勤務先に午前中から出勤した。同5-1は、出勤後、福島第一原発の4号機建屋が 爆発したことをニュースで知り、風向きから考えると福島市に放射性物質が大量に飛散し、同5-3及び同5-4が被ばくするのではないかと考え、同5-1の両親が暮らす愛知県知多郡a町に避難させることを決めた。同5-1及び同5-2は、同5-3及び同5-4を同5-1の父に預けることにし、同5-1の父が迎えに来た新潟県まで同5-3及 かと考え、同5-1の両親が暮らす愛知県知多郡a町に避難させることを決めた。同5-1及び同5-2は、同5-3及び同5-4を同5-1の父に預けることにし、同5-1の父が迎えに来た新潟県まで同5-3及び同5-4を送り届けた。 同5-1の父は、同月16日、自動車で新潟県から愛知県まで同5-3及び - 442 -同5-4を連れて行き、同日より、同5-1及び同5-2は福島市の自宅で、同5-3及び同5-4は愛知県の同5-1の実家で生活することとなった。 同5-1及び同5-2は、同月16日から同月20日までは、会津若松市の施設に避難したが、小学校での仕事もあったため、同月20日、福島市の自宅に戻り、放射能汚染の恐怖に怯えながら生活していた。また、同5-1及 び同5-2は、二人合わせて月に6回程度は愛知県に住む同5-3及び同5-4のところに行くという生活を送った。 一審原告5-1及び同5-2は、平成23年の後半には二重生活を続けることに限界を感じ始め、愛知県に転居することを決めた。同5-1及び同5-2は、同年12月頃、同5-1の実家の町内に家族4人が住むのに適した 賃貸物件を見つけ、同月23日、この物件を借りる契約をした。もっとも、同5-1及び同5-2は、平成24年3月末までは福島市での教員の仕事を辞めることができなかったため、同月末までは、同5-1の両親に上記物件で同5-3及び同5-4の面倒を見てもらった。そして、同5-1及び同5-2は、同年4月に愛知県に引っ越し、家族4人での生活を再開した。 (3) 避難生活の状況一審原告5-1は、避難後、常勤の小学校教諭の職に就くことができたが、同5-2は、平成24年度は仕事に就けず、平成25年4月から、小学校の非常勤講師として働いている。同5-3は、避難後は、地元 況一審原告5-1は、避難後、常勤の小学校教諭の職に就くことができたが、同5-2は、平成24年度は仕事に就けず、平成25年4月から、小学校の非常勤講師として働いている。同5-3は、避難後は、地元の保育園、小学校、中学校等に通い、同5-4も地元の保育園、小学校等に通った。また、 同5の世帯は、平成24、25年頃、同5-1の実家をリフォームし、現在は、同実家に同5-1の両親と共に暮らしている。 一審原告5-1らは、平成28年ないし平成29年頃、福島市の自宅を売却し、現在は、福島県内に同5の世帯の自宅はない。 (4) 本件事故時住所地の状況等 本件事故前の一審原告5の世帯の住所地は福島市で、同市は自主的避難等 - 443 -対象区域であり、同市における環境放射能等の状況は、前記第3章、第1、1のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分前記1の認定事実のとおり、一審原告5の世帯は、平成23年3月12日、 本件事故による放射性物質の飛散をおそれ、全員で会津若松市に避難し、同月14日、福島市の自宅に戻ったが、同月15日、福島第一原発で爆発があったことから、同5-3及び同5-4の被ばくを心配し、同5-3及び同5-4を新潟県経由でa町に避難させ、同月16日以降、同5-1及び同5-2は会津若松市を経て福島市の自宅で、同5-3及び同5-4はa町での生 活となり、以後、同5-1及び同5-2が福島市からa町へ往来していたものの、二重生活が困難となり、平成24年4月に愛知県へ転居したものである。 これによれば、一審原告5の世帯の平成23年3月12日の避難並びに同月15日の再避難及びそれ以降の同5-3及び同5-4の避難生活は、本件 事故によるもの 知県へ転居したものである。 これによれば、一審原告5の世帯の平成23年3月12日の避難並びに同月15日の再避難及びそれ以降の同5-3及び同5-4の避難生活は、本件 事故によるものというべきである。 そして、一審原告5の世帯のうち同5-3及び同5-4が本件事故当時、一般的に放射能の影響を受けやすいとされる子どもであったこと、同5-3及び同5-4と両親である同5-1及び同5-2の二重生活が約1年に及び同5-1及び同5-2も愛知県に転居して同5の世帯全員での同居を回復す る必要があったことを考慮すると、同5-1及び同5-2の上記の二重生活並びに愛知県への転居及び同県での生活も、本件事故によるものというべきである。 しかし、福島市の環境放射能等の状況が前記1(4)のとおりであったことからすれば、上記の事情を考慮しても、遅くとも平成24年8月31日まで には一審原告5の世帯全員で福島市の自宅に帰還することに支障はなかった - 444 -というべきであり、同5の世帯の避難(再避難を含む。)及び避難生活並びに二重生活のうち本件事故との相当因果関係が認められるのは、平成24年8月31日までの部分に限られるというべきである。 (2) 一審原告5-1の損害ア避難費用 (ア) 交通費一審原告5の世帯の請求に対してADRにより一審被告東京電力が既に避難費用(交通費)9万7780円を賠償したことが認められ(乙C5の1)、これを本件事故と相当因果関係を有する損害と認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。 (イ) 宿泊費・謝礼一審原告5の世帯の請求に対してADRにより一審被告東京電力が既に平成23年分の避難費用(宿泊費)10万4425円を賠償したことが認められ(乙 の全趣旨)。 (イ) 宿泊費・謝礼一審原告5の世帯の請求に対してADRにより一審被告東京電力が既に平成23年分の避難費用(宿泊費)10万4425円を賠償したことが認められ(乙C5の1)、これを本件事故と相当因果関係を有する損害と認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。 (ウ) 引越し費用一審原告1-1らは、本件事故により同5-1に引越し費用として27万5000円の損害が生じたと主張する。 この点については、ADRにおいて一審原告5の世帯の請求に対し一審被告東京電力が既に避難費用(引越し関連費用)として平成23年分 12万7000円、平成24年分・平成25年分として14万8000円を賠償した事実が認められるところ(乙C5の1)、前記認定のとおり、同5の世帯については、まず平成23年3月に同5-3及び同5-4が避難し、その後平成24年4月に同5-1及び同5-2も引っ越したものであるから、上記の引越し関連費用の平成23年分及び平成24 年分・平成25年分の合計27万5000円を本件事故と相当因果関係 - 445 -のある損害と認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。 (エ) 一時立入り・帰省費用一審原告1-1らは、本件事故により同5-1に一時立入り・帰省費用として9万5760円の損害が生じたと主張する。 この点については、ADRにおいて一審原告5の世帯の請求に対し一 審被告東京電力が既に避難費用(一時帰宅費用)として平成24年分・平成25年分の9万5760円を賠償した事実が認められるが(乙C5の1)、前記のとおり、同5の世帯については本件事故と相当因果関係の認められる避難は平成24年8月31日までの部分に限られるから、上記の8か月分に相当する3万1920円の限度で本 められるが(乙C5の1)、前記のとおり、同5の世帯については本件事故と相当因果関係の認められる避難は平成24年8月31日までの部分に限られるから、上記の8か月分に相当する3万1920円の限度で本件事故と相当因果 関係のある一時立入り・帰省費用の損害と認めるべきである(弁論の全趣旨)。 (オ) 面会交通費一審原告1-1らは、本件事故により同5-1に面会交通費208万8930円の損害が生じたと主張する。 この点については、ADRにおいて一審原告5の世帯の請求に対し一審被告東京電力が既に避難費用(面会交通費)として平成23年分150万7800円、平成24年分・平成25年分58万1130円を賠償した事実が認められる(乙C5の1)ところ、前記認定のとおり、一審原告5-1及び同5-2は二重生活を送っていた平成23年3月から平 成24年4月までにかけて、月に2人合わせて6回程度は同5-3及び同5-4に面会しに行っていたのであるから、一審被告東京電力が賠償した上記合計額208万8930円をもって本件事故と相当因果関係のある面会交通費の損害と認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。 (カ) その他(住居費) 一審原告1-1らは、本件事故により同5-1に住居費として58万 - 446 -0170円の損害が生じたと主張する。 この点については、ADRにおいて一審原告5の世帯の請求に対し一審被告東京電力が既に避難費用(住居費)として平成23年分35万1080円、平成24年分・平成25年分22万8640円を賠償した事実が認められ(乙C5の1)、その平成23年分35万1080円及び 平成24年分・平成25年分のうち8か月分におよそ相当する7万6220円の合計の42万7300 年分22万8640円を賠償した事実が認められ(乙C5の1)、その平成23年分35万1080円及び 平成24年分・平成25年分のうち8か月分におよそ相当する7万6220円の合計の42万7300円の限度で本件事故と相当因果関係のある住居費の損害と認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。 (キ) 合計 302万5355円イ生活費増加費用 (ア) 家財道具購入費一審原告5の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した15万円(乙C5の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (イ) その他(家財道具購入費) 一審原告5の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した52万円(乙C5の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (ウ) 教育費一審原告5の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した7 万9000円(乙C5の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (エ) その他(追加的費用等)一審原告1-1らが主張する同5-1の追加的費用については、いかなる損害が発生したかについて具体的に立証されていないため、主張を 認めることはできない。 - 447 -(オ) 合計 74万9000円ウ線量計購入費一審原告5の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した6万4210円(乙C5の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 エその他(ADR弁護士費用)一審原告5の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した26万 の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 エその他(ADR弁護士費用)一審原告5の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した26万5795円(乙C5の1)の限度で本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 オ慰謝料 一審原告5-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難(再避難を含む。)及び避難生活並びに二重生活中及び転居の精神的苦痛に対する慰謝料額は、自身及び子らの被ばくに対する不安を持ちながら、会津若松市に避難したり、同5-3及び同5-4をa町に避難させたりしたこと、約1年間、避難させた子らとの二重生活を続け、平成2 4年4月、子らと同居するため愛知県に転居したこと、そのため勤務先を変える必要があったことその他の前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを60万円と認めるのが相当である。 カ合計 470万4360円(3) 一審原告5-2の損害 ア就労不能損害一審原告5の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した304万5018円(乙C5の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 イ慰謝料 一審原告5-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難 - 448 -(再避難を含む。)及び避難生活並びに二重生活中及び転居の精神的苦痛に対する慰謝料は自身及び子らの被ばくに対する不安を持ちながら、会津若松市に避難したり、同5-3及び同5-4をa町に避難させたりしたこと、約1年間、避難させた子らとの二重生活を続け、平成24年4月、子らと同居するため愛知県に転居したこと、そのため勤務先を変 える必要が 難したり、同5-3及び同5-4をa町に避難させたりしたこと、約1年間、避難させた子らとの二重生活を続け、平成24年4月、子らと同居するため愛知県に転居したこと、そのため勤務先を変 える必要があったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを60万円と認めるのが相当である。 ウ合計 364万5018円(4) 一審原告5-3の損害ア避難雑費 避難雑費についての具体的な立証がなく、本件事故と相当因果関係を有する損害が発生したと認めることはできない。 イ慰謝料一審原告5-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、会津若松市や新潟県を 経てa町に転々避難した状況、約1年間、両親と離れて生活しなければならなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 ウ合計 100万円(5) 一審原告5-4の損害 ア避難雑費避難雑費についての具体的な立証がなく、本件事故と相当因果関係を有する損害が発生したと認めることはできない。 イ慰謝料一審原告5-4について本件事故との相当因果関係が認められる避難及 び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料は、会津若松市や新潟県を経 - 449 -てa町に転々避難した状況、約1年間、両親と離れて生活しなければならなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 ウ合計 100万円 3 弁済の抗弁 (1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額ア一審原告5-1について 356万0620円イ一審原告 0万円と認めるのが相当である。 ウ合計 100万円 3 弁済の抗弁 (1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額ア一審原告5-1について 356万0620円イ一審原告5-2について 316万5018円ウ一審原告5-3について 120万円エ一審原告5-4について 120万円 (2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、これまで一審原告5の世帯について、以下のとおり賠償したことが認められる(乙C5の1・4)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告5-3に対し自主避難等に係る損害 60万円 (イ) 一審原告5-4に対し自主避難等に係る損害 60万円(ウ) 合計 120万円イ ADRによる賠償ADRにより、一審原告5の世帯に対する和解金額が912万5638円と合意され、そこからADR以外による賠償額120万円を控除した7 92万5638円が支払われた。 (内訳)(ア) 避難費用、生活費増加費用、ガイガーカウンター購入費用、避難雑費、追加的費用等、ADR弁護士費用 544万0620円(イ) 一審原告5-2の就労不能損害 304万5018円 (ウ) 精神的損害等 64万円(うち32万円は一審原告5の世帯それぞ - 450 -れに各8万円)(エ) 合計(和解金額) 912万5638円(オ) 既払い金 120万円(前記ア(ウ))(カ) 合計(支払い額) 792万5638円ウ合計 912万5638円 (3) 一審原告5の世帯に対する各弁済額ア一審原告5-1に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 0円(イ) ADRによる賠償 480万 ウ合計 912万5638円 (3) 一審原告5の世帯に対する各弁済額ア一審原告5-1に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 0円(イ) ADRによる賠償 480万0620円ADRによる和解金額からの前記(2)イ(オ)の既払い金120万円の 控除は、まず同(ウ)の精神的損害64万円から48万円(一審原告5-1及び同5-2の精神的損害に対することが明確である16万円を除く額。)が控除され、次いで同(ア)の一審原告5-1が支出した同5の世帯共通の避難費用等544万0620円から72万円が控除されたものとみると、その余の同(ア)の支払額は472万0620円となる。 そして、一審原告1-1らは、同5の世帯共通の避難費用等の損害を同5-1の損害として主張していることから、この472万0620円を同5-1に対する弁済として扱うこととする。 また、前記(2)イ(ウ)のうち8万円は、一審原告5-1の精神的損害に対する賠償であることが明確である。 したがって、ADRによる賠償による一審原告5-1に対する弁済額は、これらの合計480万0620円となる。 (ウ) 合計 480万0620円したがって、一審被告東京電力の一審原告5-1に対する弁済の抗弁356万0620円は全部認められる。 イ一審原告5-2に対する弁済額 - 451 -(ア) ADR以外による賠償 0円(イ) ADRによる賠償 312万5018円ADRによる賠償のうち前記(2)イ(イ)の304万5018円は、一審原告5-2に対する弁済として扱うのが相当である。 また、前記(2)イ(ウ)のうちの8万円も、一審原告5 ADRによる賠償のうち前記(2)イ(イ)の304万5018円は、一審原告5-2に対する弁済として扱うのが相当である。 また、前記(2)イ(ウ)のうちの8万円も、一審原告5-2に対する弁済 として扱うのが相当である。 したがって、ADRによる賠償による一審原告5-2に対する弁済額は、これらの合計312万5018円となる。 (ウ) 合計 312万5018円したがって、一審被告東京電力の一審原告5-2に対する弁済の抗弁は 一部認められる。 ウ一審原告5-3に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 60万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償ADRによる和解金額のうち前記(2)イ(ウ)の精神的損害の一審原告5-3に係る部分は既払い金により控除済みであり、ADRによる賠償による同5-3に対する弁済額は0円である。 (ウ) 合計 60万円 したがって、一審被告東京電力の一審原告5-3に対する弁済の抗弁は一部認められる。 エ一審原告5-4に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 60万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として 扱うのが相当である。 - 452 -(イ) ADRによる賠償ADRによる和解金額のうち前記(2)イ(ウ)の精神的損害の一審原告5-4に係る部分は既払い金により控除済みであり、ADRによる賠償による同5-4に対する弁済額は0円である。 (ウ) 合計 60万円 したがって、一審被告東京電力の一審原告5-4に対する弁 部分は既払い金により控除済みであり、ADRによる賠償による同5-4に対する弁済額は0円である。 (ウ) 合計 60万円 したがって、一審被告東京電力の一審原告5-4に対する弁済の抗弁は一部認められる。 4 認容額等(1) 一審原告5-1ア損害額 470万4360円 イ弁済額 356万0620円ウ弁済額控除後の損害額 114万3740円エ弁護士費用 12万円オ認容額 126万3740円(2) 一審原告5-2 ア損害額 364万5018円イ弁済額 312万5018円ウ弁済額控除後の損害額 52万円エ弁護士費用 6万円オ認容額 58万円 (3) 一審原告5-3ア損害額 100万円イ弁済額 60万円ウ弁済額控除後の損害額 40万円エ弁護士費用 4万円 オ認容額 44万円 - 453 -(4) 一審原告5-4ア損害額 100万円イ弁済額 60万円ウ弁済額控除後の損害額 40万円エ弁護士費用 4万円 オ認容額 44万円第6 一審原告6の世帯 1 認定事実(甲C6の1・10・19、一審原告6-1本人(原審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等 一審原告6-1(本件事故当時33歳)、その妻である同6-2(本件事故当時27歳)、同6-1及び同6-2の長女である同6-3(本件事故当時0歳)は、本件事故当時、福島市所在の賃貸マンション(福島第一原発からの距離60.75km(乙C6の2))に居住していた。 一審原告 27歳)、同6-1及び同6-2の長女である同6-3(本件事故当時0歳)は、本件事故当時、福島市所在の賃貸マンション(福島第一原発からの距離60.75km(乙C6の2))に居住していた。 一審原告6-1は、福島市出身で、同市内の実家には両親が住んでいる。 同6-1の実家は、同6の世帯の上記自宅から車で10分ほどのところにあり、同6の世帯は、上記自宅と同6-1の実家を頻繁に行き来し、同6-1の両親が子育てを手伝っていた。同6-2の実家は、福島県双葉郡浪江町にあり、同6-2の父、妹2人、弟及び祖母が浪江町に住んでおり、同6-2は実家で作った米や野菜を送ってもらっていた。同6-2は、高校卒業まで の間及び就職後半年間は浪江町に住んでおり、結婚後も二、三か月に1回、同6-3を連れて2週間程度浪江町の実家に帰っていた。 一審原告6-1は薬剤師であり、本件事故前は福島市内にある調剤薬局で店長として働いており、1か月に1回ほど、福島薬剤師会からの派遣でBでアルバイトをしていた。同6-2も薬剤師であり、平成22年3月まで同6 -1と同じ会社で勤務していたが、出産のため退職し、本件事故当時は専業 - 454 -主婦であった。 (2) 避難開始の経緯等一審原告6-1及び同6-2は、平成23年3月12日の福島第一原発での爆発と官房長官の会見を見て危ないのではないかと思い、同月13日夜、同6-1はその父に対し、同6-2及び同6-3だけでも避難させようと思 うと話したが、同6-1の父は、政府が大丈夫と言っているから大丈夫であるとして、すぐに避難はしなかった。しかし、同6-1及び同6-2は、同月15日、同6-1の父が子どもは避難させた方がいいと勤務先で聞いたとの連絡を受け、これをきっかけに避難することを決断し 丈夫であるとして、すぐに避難はしなかった。しかし、同6-1及び同6-2は、同月15日、同6-1の父が子どもは避難させた方がいいと勤務先で聞いたとの連絡を受け、これをきっかけに避難することを決断した。 一審原告6の世帯は、平成23年3月15日午後2時頃、福島市を自動車 で出発し、同日午後11時頃、宇都宮市内の同6-1の叔母の友人宅に避難し、同月16日、電車で埼玉県川越市の同6-1の友人宅に避難し、同月17日、電車で川崎市内の同6-1のいとこの家に避難した。同6-1は、同月20日、会社に出勤するため、電車と新幹線を乗り継いで那須塩原駅まで行き、那須塩原駅に親族に自動車で迎えに来てもらって、福島市の実家に戻 った。同6-2及び同6-3は、同年4月2日まで上記のいとこの家に滞在した後、新幹線で名古屋市に住む同6-1の妹の家に避難した。 一審原告6-1は、平成23年3月21日から福島市の職場に復帰したが、家族と一緒に避難するため、勤務先に異動を申し出たところ、同年5月に群馬県伊勢崎市に異動になり、同6-2及び同6-3も同月4日頃に同市に引 っ越し、同市内で同6の世帯3人で暮らし始めた。もっとも、同6-1及び同6-2は、同市に引っ越した後も、同6-3への放射線の影響を心配し、同6-3を屋外で遊ばせない、食べ物を通信販売で購入する、スーパーマーケットは使用しないようにするなどしていた。同6-2は、同6-1の母が参加した放射線被ばくの講演会の内容を聞いて、毎日リビングダイニングを 雑巾がけするなどしていた。同6の世帯は、同市でも被ばくの不安を感じな - 455 -がらストレスの大きい生活を続け、同6-3の成長にもよくないと感じていた。そこで、同6-1及び同6-2は、放射線の影響を心配しなくてもよく、同6-3 市でも被ばくの不安を感じな - 455 -がらストレスの大きい生活を続け、同6-3の成長にもよくないと感じていた。そこで、同6-1及び同6-2は、放射線の影響を心配しなくてもよく、同6-3を自由に遊ばせることができるところへ避難することを検討し、同6-1は、妹が住んでいる名古屋市で仕事を探すこととした。 一審原告6-1は、平成23年12月25日及び平成24年1月14日、 新幹線で名古屋市に行き、引越し先の選定及び就職活動をした。具体的には、伊勢崎市からバス、電車、新幹線を乗り継いで名古屋駅まで行き、帰りは、新幹線、電車を乗り継いで伊勢崎市まで戻った。同6-1は、名古屋市内の薬局に転職することが決まり、当該会社が借り上げた賃貸マンションを社宅として借りることにし、平成24年3月20日(同月4日から同月20日ま では有給休暇扱い)で従前勤務していた薬局を退職し、同月21日からは名古屋市内の薬局で勤務することになった。 (3) 避難生活の状況一審原告6の世帯が名古屋市に転居した後、同6-1の妹家族は転勤のため引っ越してしまい、同6の世帯は同市に知り合いがいなくなった。同6の 世帯は、名古屋市に来た当初は、同6-1の勤務先の借上げ社宅である賃貸マンションに住んでいたが、家賃負担が増加したことや今後福島県に戻って生活することはないと考えたことなどから、平成25年3月に住宅ローンを組んで土地を購入して家を建て、同年9月に転居した。また、平成26年1月には同6-1及び同6-2の間に二女が生まれた。 一審原告6-1は、名古屋市内の上記薬局を平成28年10月に退職し、同月から別の薬局に就職して勤務しており、同6-2は、平成29年10月からパートタイム勤務をしている。 (4) 本件事故時住所地の状況等一 、名古屋市内の上記薬局を平成28年10月に退職し、同月から別の薬局に就職して勤務しており、同6-2は、平成29年10月からパートタイム勤務をしている。 (4) 本件事故時住所地の状況等一審原告6の世帯の本件事故当時の住所地は福島市で、同市は自主的避難 等対象区域であり、その環境放射能等の状況は前記第3章、第1、1のとお - 456 -りである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分前記1の認定事実のとおり、一審原告6の世帯は、平成23年3月12日の福島第一原発の爆発等を見て危険を感じ、乳児である同6-3もいたこと から避難を決め、同月15日、宇都宮市内へ、同月16日、川越市内へ、同月17日、川崎市内へ転々とし、同6-1は、同月20日、福島市の実家に戻ったが、同6-2及び同6-3は川崎市内での避難生活を続けた後、同年4月2日、名古屋市内に避難し、同6-1の異動を機に、同年5月から伊勢崎市内で同6の世帯全員で生活し、同市での生活でも被ばくの不安を感じた ことから、平成24年3月、名古屋市内に転居することにしたものである。 これによれば、一審原告6の世帯の平成23年3月15日の避難及びそれ以降の避難生活は本件事故によるものというべきであり、同6-3が本件事故当時0歳の乳児であったことからすると、同6-1が一時福島市に戻ったにせよ、同6の世帯全員の同居を模索して、平成23年5月に伊勢崎市に転 居し、その後、平成24年3月に名古屋市に転居したことも、本件事故によるものであったといえる。 そして、一審原告6の世帯には、一般的に放射能の影響を受けやすいとされる乳児である同6-3がいたことを考えると、同6の世帯が平成24年3月以降、名古屋市で避難生活を送 よるものであったといえる。 そして、一審原告6の世帯には、一般的に放射能の影響を受けやすいとされる乳児である同6-3がいたことを考えると、同6の世帯が平成24年3月以降、名古屋市で避難生活を送ったことも本件事故後の対応としてやむを 得なかったといえるが、福島市の環境放射能等の状況が前記1(4)のとおりであったことからすれば、同6の世帯の上記の事情を考慮しても、遅くとも同年8月31日までには同6の世帯全員で福島市の自宅に帰還することに支障はなかったというべきであり、同6の世帯の避難及び避難生活のうち本件事故との相当因果関係が認められるのは、同日までの部分に限られるという のが相当である。 - 457 -(2) 一審原告6-1の損害ア避難費用(ア) 交通費上記(1)のとおりであるから、一審原告6の世帯について平成24年8月31日までに避難のために要した交通費については、本件事故と因 果関係を有する一審原告6-1の損害と認めるのが相当である。 一審原告1-1らは、同6-1が実際に支払った交通費についての領収証等を提出していないが、前記認定事実のとおり、電車や自動車を利用して避難している以上、相応の交通費が発生していることは推認できるから、平成23年3月15日に福島市から宇都宮市に自動車で避難し た際の交通費は5000円、同月16日に宇都宮市から川越市に電車で避難した際の交通費3000円(=1500円×2人分)、同月17日に川越市から川崎市に電車で避難した際の交通費2000円(=1000円×2人分)、同月20日に同6-1が川崎市から福島市に電車で戻った際の交通費5500円、同年4月2日に同6-2及び同6-3が川 崎市から名古屋市に避難した際の交通費1万円(= 円(=1000円×2人分)、同月20日に同6-1が川崎市から福島市に電車で戻った際の交通費5500円、同年4月2日に同6-2及び同6-3が川 崎市から名古屋市に避難した際の交通費1万円(=1万円×1人分)、同年5月4日に同6-2及び同6-3が伊勢崎市に引っ越した際の交通費1万5000円(=1万5000円×1人分)を本件事故と因果関係を有する損害と認めるのが相当である。また、平成24年3月12日に同6の世帯が伊勢崎市から名古屋市に引っ越した際の交通費については、 同6の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償したと認められる1万5200円(甲C6の3)の限度で本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 したがって、以上の合計である5万5700円を本件事故と相当因果関係を有する一審原告6-1の交通費の損害と認める。 なお、一審原告6-1は、同6-3が電車で避難した際の交通費も請 - 458 -求するが、避難した当時、同6-3は0歳であり、交通費はかからなかったと考えられるから、損害が発生したと認めることはできない。また、同6-1は、一審被告東京電力の作成した賠償基準(甲C6の2)に基づいて、交通費を算定しているが、上記基準は実際に発生する交通費よりも高めに設定されているものと認められ、上記基準に基づいて交通費 を算定するのは相当でない。 (イ) 宿泊費・謝礼一審原告6-1は、平成23年3月17日から同年4月2日まで避難のため滞在した川崎市の親戚に3万円、同6-2及び同6-3が同年4月2日から同年5月4日まで避難のため滞在した同6-1の妹に3万円 をそれぞれ謝礼として支払ったことが認められる(甲C6の10)。もっとも、これらの謝礼は支払を余儀なくされた 同6-3が同年4月2日から同年5月4日まで避難のため滞在した同6-1の妹に3万円 をそれぞれ謝礼として支払ったことが認められる(甲C6の10)。もっとも、これらの謝礼は支払を余儀なくされたものではなく、親族の情誼に対して同6-1の判断で任意に支払ったものといえるから、本件事故と相当因果関係を有する損害ということはできない。 (ウ) 引越し費用 一審原告6の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した12万8500円(甲C6の3)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (エ) 敷金・礼金一審原告1-1らは、同6-1が敷金・礼金として9万4943円を 要したとしてこれが損害であると主張する。しかし、同6-1が敷金・礼金を支出したことを認めるに足りる証拠はないから、上記主張は認められない。 (オ) 一時立入り・帰省費用一審原告1-1らが本件事故による同6-1の損害と主張する一時立 入り費用・帰省費用40万3620円については、ADRにおいて同6 - 459 -の世帯の請求に対し一審被告東京電力が平成24年1月から同年8月31日まで分の避難費用(帰省等費用)として15万3600円を既に賠償していることが認められ(甲C6の3)、平成23年3月12日から平成24年8月31日までの間に同6-1がこれを超える額の一時立入り・帰省費用を支出したと認めるに足りる証拠はないから、15万36 00円を本件事故と相当因果関係のある一時立入り・帰省費用の損害と認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。 (カ) その他(避難のための住居選定・就職活動のための交通費)一審原告1-1らは、同6-1の交通費の領収証等を提出しな 省費用の損害と認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。 (カ) その他(避難のための住居選定・就職活動のための交通費)一審原告1-1らは、同6-1の交通費の領収証等を提出しないが、前記のとおり、電車や自動車を利用して避難している以上、相応の費用 が発生した事実は推認することができ、同6-1が平成23年4月に住居選定のために伊勢崎市に電車で行った際に要した交通費1万6000円(=8000円×2回(往復))、同年12月及び平成24年1月に住居選定及び就職活動のために名古屋市に行った際に要した費用5万2000円(=1万3000円×2回(往復)×2回=5万2000円) を本件事故と因果関係を有する損害と認めるのが相当である。 したがって、これらの合計6万8000円を本件事故と相当因果関係を有する交通費の損害と認める。 (キ) 合計 40万5800円イ生活費増加費用 (ア) 家財道具購入費一審原告6の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した30万円(甲C6の3)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (イ) 食費 一審原告1-1らは、同6の世帯は本件事故前は同6-2の実家から - 460 -米や野菜を送ってもらっていたが、避難により食費が月額2万円(米約7000円、野菜約1万3000円)増加した旨主張する。 しかし、本件事故前に一審原告6-2の実家から米等をもらっていた事実は前記のとおり認められるものの、これがなくなったことによる食費増加について具体的な立証がされているとはいえないから、同1-1 らの上記主張は認められない。 (ウ) 家賃増加分一 り認められるものの、これがなくなったことによる食費増加について具体的な立証がされているとはいえないから、同1-1 らの上記主張は認められない。 (ウ) 家賃増加分一審原告1-1らが本件事故による同6-1の損害と主張する家賃増加分100万4000円については、ADRにおいて同6の世帯の請求に対し一審被告東京電力が既に避難費用(住居費)として平成24年1 月及び2月分2万2200円、同年3月から8月まで分28万2000円、同年4月に要した伊勢崎のマンションの退去費用として9万4943円の合計39万9143円を賠償した事実が認められ(甲C6の3)、本件事故と相当因果関係ある避難生活中にこれを超える額の家賃増加が発生したと認めるに足りる証拠はないから、本件事故と相当因果関係の ある家賃増加分の損害の額をこの額と認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。 (エ) その他一審原告1-1らは、同6-3が本件事故当時生後8か月であったこと、同6-2が平成25年4月に妊娠したことから、同6-1は通常以 上に避難の生活費を要した旨主張するが、平成24年8月以前の生活費について同6-3がいたために本件事故がなかった場合と比較して増加したことについて具体的な立証はなく、また、同年9月以降の名古屋市における生活については本件事故との相当因果関係が認められないから、同1-1らの上記主張を認めることはできない。 (オ) 合計 69万9143円 - 461 -ウ就労不能損害一審原告6-1は、本件事故による避難により平成23年3月14日から4日間にわたって会社を欠勤したこと、同6-1の給料は、同年2月分は37万1425円であったのに対して同年3月分は 損害一審原告6-1は、本件事故による避難により平成23年3月14日から4日間にわたって会社を欠勤したこと、同6-1の給料は、同年2月分は37万1425円であったのに対して同年3月分は27万5532円であったこと(甲C6の6)、同6-1の勤務先では、賞与として、 8月に給与の2か月分、12月に給与の2.5か月分が支給されており、同年8月の賞与は36万2572円、同年12月の賞与は58万9652円であったことが認められる(甲C6の7、8、弁論の全趣旨)。そして、同6-1が同年3月に欠勤したのは本件事故による避難が原因であるから、同月分の給与の減額分9万5893円(=37万1425円 -27万5532円)及び同年8月の賞与の減額分10万9149円(=58万9652円÷2.5か月×2か月-36万2572円)は本件事故がなければ同6-1が得られていたであろう利益といえ、20万5042円が本件事故と相当因果関係を有する就労不能損害と認められる。 一方で、一審原告1-1らは、同6-1は平成23年5月に伊勢崎市に 避難するまでは夜間救急のアルバイトをしており、月額1万2500円の収入を得ていたが、同市に避難したことによりアルバイトができなくなり、その分の収入が得られなくなった旨主張する。しかし、上記業務はアルバイトであり、本件事故後も継続できたと認めるに足りる証拠はなく、また、同市に避難後に一切アルバイト等の仕事ができなかったと いう事情も認められないから、夜間救急のアルバイトの減収分については本件事故と相当因果関係を有する損害と認めることはできない。 エその他(ADR弁護士費用)一審原告6の世帯の請求に対し一審被告東京電力が既に賠償した9万0382円(甲C6の3)を本件 因果関係を有する損害と認めることはできない。 エその他(ADR弁護士費用)一審原告6の世帯の請求に対し一審被告東京電力が既に賠償した9万0382円(甲C6の3)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認め る(弁論の全趣旨)。 - 462 -オ慰謝料一審原告6-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、宇都宮市、川越市、川崎市、名古屋市、伊勢崎市、名古屋市を転々と避難した状況、乳児である同6-3を伴っての避難であったこと、家族同居のために勤務先を変 えなければならなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 カ合計 240万0367円(3) 一審原告6-2の損害一審原告6-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び 避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、宇都宮市、川越市、川崎市、名古屋市、伊勢崎市、名古屋市を転々と避難した状況、乳児である同6-3を伴っての避難であったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 (4) 一審原告6-3の損害について 一審原告6-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、宇都宮市、川越市、川崎市、名古屋市、伊勢崎市、名古屋市を転々と避難した状況その他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁 (1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額ア一審原告6-1について 196万3125円イ一審原告6-2につい 、これを100万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁 (1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額ア一審原告6-1について 196万3125円イ一審原告6-2について 20万円ウ一審原告6-3について 114万円(2) 一審被告東京電力による賠償 一審被告東京電力は、これまで一審原告6の世帯について、以下のとおり - 463 -賠償したことが認められる(乙C6の1・5)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告6-1に対し自主避難等に係る損害 12万円(イ) 一審原告6-2に対し自主避難等に係る損害 12万円(ウ) 一審原告6-3に対し自主避難等に係る損害 72万円 (エ) 合計 96万円イ ADRによる賠償 234万3125円ADRにより、一審原告6の世帯に対する和解金額が310万3125円と合意され、そこからADR以外による賠償額のうち76万円を控除した234万3125円が支払われた。 (内訳)(ア) 精神的損害 28万円(イ) 生活費増加費用、移動費用、避難費用、ADR弁護士費用228万3125円(ウ) 一審原告6-2及び同6-3の避難雑費 54万円 (エ) 合計(和解金額) 310万3125円(オ) 既払い金 76万円(一審原告6-1及び同6-2分各8万円、同6-3分60万円)(カ) 合計(支払い額) 234万3125円ウ合計 330万3125円 (3) 一審原告6の世帯に対する各弁済額ア一審原告6-1に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱 (3) 一審原告6の世帯に対する各弁済額ア一審原告6-1に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 - 464 -ADRによる和解金額からの前記(2)イ(オ)の既払い金76万円の控除は、同(ウ)の一審原告6-2及び同6-3の損害54万円から全額、ついで同(ア)の同6の世帯の損害28万円から22万円が順次控除されたものとみると、その余の同(ア)の支払い額は6万円となり、これは同6-1から同6-3までの精神的損害に対するものであるから、便宜、 同6-1に1万円、同6-2に1万円、同6-3に4万円支払われたものとみることとする。 一審原告1-1らは、同6-1が支出した同6の世帯に共通の費用を同6-1の損害として主張していることから、ADRによる賠償のうち前記(2)イ(イ)の228万3125円は、同6-1に対する弁済とし て扱うのが相当である。 したがって、ADRによる賠償のうち一審原告6-1に対する弁済額は229万3125円となる。 (ウ) 合計 241万3125円したがって、一審被告東京電力の一審原告6-1に対する弁済の抗弁1 96万3125円は全部認められる。 イ一審原告6-2に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償前記ア(イ)のとおり、前記(2)イ(ア)のうち1万円が一審原告6-2に対する弁済額となる。 (ウ) 合計 13万円したがって、一審被告東京電力の一 (イ) ADRによる賠償前記ア(イ)のとおり、前記(2)イ(ア)のうち1万円が一審原告6-2に対する弁済額となる。 (ウ) 合計 13万円したがって、一審被告東京電力の一審原告6-2に対する弁済の抗弁は 一部認められる。 - 465 -ウ一審原告6-3に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 前記ア(イ)のとおり、前記(2)イ(ア)のうち4万円が一審原告6-3に対する弁済額となる。 (ウ) 合計 76万円したがって、一審被告東京電力の一審原告6-3に対する弁済の抗弁は一部認められる。 4 認容額等(1) 一審原告6-1ア損害額 240万6367円イ弁済額 196万3125円ウ弁済額控除後の損害額 43万7242円 エ弁護士費用 5万円オ認容額 48万7242円(2) 一審原告6-2ア損害額 100万円イ弁済額 13万円 ウ弁済額控除後の損害額 87万円エ弁護士費用 9万円オ認容額 96万円(3) 一審原告6-3ア損害額 100万円 イ弁済額 76万円 - 466 -ウ弁済額控除後の損害額 24万円エ弁護士費用 3万円オ認容額 27万円第7 一審原告7の世帯 1 認定事実(甲C7の1、丁C1、12、13、一審原告7-1本人(原審) のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等一審原 認容額 27万円第7 一審原告7の世帯 1 認定事実(甲C7の1、丁C1、12、13、一審原告7-1本人(原審) のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等一審原告7-1(本件事故当時51歳)、その妻である同7-2(本件事故当時48歳)、同7-1及び同7-2の長女である同7-3(本件事故当時20歳)、二女である同7-4(平成5年7月▲▲日生まれ、本件事故当 時17歳)は、本件事故当時、福島県いわき市の自宅(福島第一原発からの距離 km(乙C7の1))に居住していた。 一審原告7-1は、本件事故当時、福島県双葉郡広野町で建物を借りて●●●及びほか、昭和59年からいわき市で●●●●●●●●●●。 で収穫した作物は、農協を通さずに、食物の安全に関心 の高い幼稚園及び家庭に直接販売していた。 一審原告7-3は、本件事故当時、 から大学学部3年への試験に合格し、進学の準備をしていた。同7-4は、本件事故当時、●●●●に在学中であり、卒業後は東北大学経済学部へのを目指していた。なお、同7-1と同7-2の長男は、本件事故当時、岩手県に住み、● ●大学の学生であった。 (2) 避難開始の経緯等一審原告7の世帯は、本件地震の発生後の平成23年3月11日午後7時半頃、いわき市の自宅で合流した。同7の世帯は、身内が一審被告東京電力で働いているという広野町の大家から、「原発が大変なことになっているか ら、すぐに逃げた方がいい。私たちも逃げる。東京電力の家族たちも逃げる - 467 -そうだ。」と聞いた。また、同月12日午後、テレビで、原子炉の温度が上昇し、その後に原子炉が爆発した映像を見た。そこで、同7の世帯 い。私たちも逃げる。東京電力の家族たちも逃げる - 467 -そうだ。」と聞いた。また、同月12日午後、テレビで、原子炉の温度が上昇し、その後に原子炉が爆発した映像を見た。そこで、同7の世帯は、避難することを決め、同日午後7時頃、自動車に身の回りの物だけを積み、家族4人で茨城県北茨城市の親戚宅を目指して出発した。避難途中で千葉県柏市に住む同7-1の姉と連絡が取れ、目的地を同市に変更し、同月13日午前 2時頃、同市に到着した。 一審原告7の世帯は、平成23年3月14日、愛知県知多郡b町で接骨院を営む知人からすぐに同県に避難した方がいいと言われ、さらに同県に避難することにし、同月15日午後、自動車で柏市から愛知県に向けて出発し、同日午後8時頃に上記知人のところに到着し、上記知人が借りてくれたb町 の6畳一間のアパートに同月末まで滞在した。同月末、大学を卒業した長男も合流したため、新しく3DKのアパートを借り、同年7月からは、同県が避難者向けに無償提供する県営住宅に入居した。 (3) 避難生活の状況一審原告7-1は、現在はとして勤務し、同7-2とと もにいわき市に通い、残してきた農地と半壊状態の自宅建物の維持管理をしているが、以前のようなはできないと考え、稲作は再開していない。 同7-3は、避難後は、3年次が認められていた大学を休学していたが、同市に戻る見通しがつかないため、平成23年8月に大学を中退し、企業に一般事務職として就職した。同7-4は、愛知県に避難したことによ ってに通えなくなったため、 に転入した。同7-4は、転入後、カリキュラムの違いや慣れない一人暮らし等に苦しみ、ノイローゼ状態になったため、一審原告7-2が同7-4のサポートのために ってに通えなくなったため、 に転入した。同7-4は、転入後、カリキュラムの違いや慣れない一人暮らし等に苦しみ、ノイローゼ状態になったため、一審原告7-2が同7-4のサポートのために富山県と愛知県を往復するようになった。同7-4は大学に進学せず、同卒業後は就職した。 一審原告7の世帯は、平成25年、広野町での事業を完全に諦める前提で、 - 468 -ADRにより、一審被告東京電力との間で事業損害について和解し、800万円余りの和解金を受け取った。同7の世帯は、上記和解金に貯金を加えて中古マンションを購入し、居住していたが、その後、同7-3が結婚して家を出た。 (4) 本件事故時住所地の状況等 一審原告7の世帯の本件事故時の住所地はいわき市で、同市は自主的避難等対象区域であり、同市における環境放射能等の状況は前記第3章、第5のとおりである。 平成23年4月12日、福島県農林水産部が農用地の放射性物質の調査等を行い、これに基づき、避難区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域以 外の区域で、稲の作付けを行っても良いとの発表がされた(乙B458)。 いわき市においては、同年度には、農薬・化学肥料を減らした特別栽培米が生産されている(乙B459)。一審原告7の世帯が本件事故当時居住していた地域でも稲作が再開されている(乙C7の10の1から11まで)。 また、一審原告7-1が自営業を営んでいた広野町は旧緊急時避難準備区 域であり(乙B104)、同区域については平成23年9月30日に同区域の指定が解除され、同年12月16日にはステップ2の目標達成と完了の確認が発表された(前記第2部の前提事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第2部、第2、6(2)及び(3)))。 2 損害 解除され、同年12月16日にはステップ2の目標達成と完了の確認が発表された(前記第2部の前提事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第2部、第2、6(2)及び(3)))。 2 損害 (1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告7の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域であるいわき市に居住していたところ、福島第一原発や本件事故に関する情報が少ない中、避難することを決めて柏市を経てb町に避難したものであり、同7の世帯が避難を行ったことは本件事故によるものと認められる。 しかし、いわき市の環境放射能等の状況は前記認定のとおりであり、本件 - 469 -事故直後の混乱期は別として、一審原告7の世帯に一般的には放射能の影響を受けやすいとされる若年層であった同7-4がいたことを考慮しても、同7-4が19歳に達した後の遅くとも平成24年8月31日までには、避難先からいわき市に帰還することに支障はなくなったというべきである。 したがって、一審原告7の世帯の避難生活については、平成24年8月3 1日までを限度として、本件事故との相当因果関係が認められるというべきである。 なお、一審原告7-4が、上記の事情から愛知県に避難したところ、●●●●で専攻していた学科と同様の学科が近隣ではにしかなかったこと等の事情に鑑みれば、同7-4が同に転入したことは避難に伴うもの といえ、上記転入は本件事故と相当因果関係を有するものといえる。 (2) 一審原告7-1の損害ア避難費用(ア) 交通費一審原告7-1は、いわき市から柏市を経て愛知県に避難した際、高 速道路代8100円、ガソリン代5935円を支出したことが認められ(甲C7の2)、これらの (ア) 交通費一審原告7-1は、いわき市から柏市を経て愛知県に避難した際、高 速道路代8100円、ガソリン代5935円を支出したことが認められ(甲C7の2)、これらの支出は合理性を有するものといえるから、計1万4035円を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。また、同7-4の転入に伴い、同7の世帯が愛知県から富山県まで行った事実は認められ、この事実によれば、同7-1に同7-1らが主張 する高速道路代3840円及びガソリン代3000円程度の交通費の出費があった事実を推認することができるから、その合計6840円を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 一方で、岩手県にいた一審原告7-1の長男が愛知県に合流した際の交通費については、長男が本件事故による避難を行う必要性は認められ ず、仮に同7-1がその交通費を負担したとしても、本件事故と相当因 - 470 -果関係を有する損害とはいえない。また、カーナビ(カーナビゲーション機器及びソフト)の購入費用については、本件事故前はカーナビを利用していなかったにもかかわらず、本件事故後に避難したことでカーナビが必要になったとはいえず、上記購入費用は本件事故と相当因果関係を有する損害とはいえない。 したがって、2万0875円を本件事故と相当因果関係を有する交通費の損害と認める。 (イ) 宿泊費・謝礼一審原告7-1らは、同7-1が、柏市の親族宅に宿泊した際の謝礼3万円及び知人への謝礼5000円の合計3万5000円を支払ってお り、これも本件事故による損害であると主張する。 しかし、上記の各謝礼の支払いがあったとしても、これは親族、知人の情誼に対し一審原告7-1の 0円の合計3万5000円を支払ってお り、これも本件事故による損害であると主張する。 しかし、上記の各謝礼の支払いがあったとしても、これは親族、知人の情誼に対し一審原告7-1の判断で任意に支払ったものと認められ、同7-1が支払を余儀なくされたものとはいえないから、本件事故と相当因果関係を有する損害とはいえない。 (ウ) 引越し費用一審原告7-1らは、同7-1の支出した引越し費用3万9900円が損害であると主張し、同7-1らは、その証拠として引越し代の領収証(甲C7の5)を提出するが、この領収証の日付は平成25年4月13日となっており、平成23年4月11日の引越しの際に要した費用を 示すものとはいえない。しかし、同7の世帯がいわき市から愛知県への引越しを行っている以上、それに際して相応の支出をしたと認められ、その額は、平成25年4月の領収証記載額を参考として、3万9900円と推認するのが相当である。 したがって、3万9900円を本件事故と相当因果関係を有する損害 と認める。 - 471 -(エ) 一時立入り・帰省費用前記のとおり、一審原告7の世帯の避難について本件事故との相当因果関係が認められるのは平成24年8月31日までの部分であるから、本件事故と相当因果関係を有する帰省は同月までのものに限られる。そして、同7の世帯は、平成23年4月30日から同年5月3日頃まで、 同月27日から同月30日頃まで、同年6月18日から同月22日頃まで、同年7月13日から同月17日頃まで、同年8月7日から同月17日頃まで、同月15日から同月26日頃まで、同年10月5日から同月14日頃まで、同年11月1日から同月9日頃まで、同年12月5日から で、同年7月13日から同月17日頃まで、同年8月7日から同月17日頃まで、同月15日から同月26日頃まで、同年10月5日から同月14日頃まで、同年11月1日から同月9日頃まで、同年12月5日から同月8日頃まで、同月29日から平成24年1月5日頃まで、同年2 月9日から同月11日頃まで、同年3月10日から同月12日頃まで、同月13日から同月16日頃まで、同年4月10日から同月15日頃まで、同月28日から同年5月2日頃まで、同年6月9日から同月10日頃まで、同年8月11日から同月18日頃までの17回にわたって自動車又は鉄道でいわき市へ帰省したことが認められる(甲C7の6から2 3まで、弁論の全趣旨)。 もっとも、一審原告7-1らは、同7の世帯が上記帰省の際に要した高速道路代及びガソリン代又は鉄道代の領収証等を提出するが、これには印刷が不鮮明なものや、上記帰省から愛知県に戻った後に給油した際のものも含まれている上、帰省の頻度についても、本件事故と相当因果 関係を有する一時帰省としては月1回と認めるのが相当であるから、領収証等の提出がある分の全てについて本件事故と相当因果関係を有する損害と認めることはできない。そこで、愛知県から福島県まで移動した事実により、これに少なくとも片道1万円の交通費を要したと推認し(弁論の全趣旨)、帰省の頻度については、上記のとおり月1回の帰省 を本件事故と相当因果関係を有する一時帰省と認め、これを基に算定す - 472 -ると、34万円(=1万円×2(往復)×17回)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 (オ) その他一審原告7-1らは、同7の世帯が、本件事故による避難後、いわき市に帰省した際の食費及び雑費として合計208万8440円を要し、 関係を有する損害と認める。 (オ) その他一審原告7-1らは、同7の世帯が、本件事故による避難後、いわき市に帰省した際の食費及び雑費として合計208万8440円を要し、 これが同7-1の損害であると主張するが、同市に滞在していた際に要した食費及び雑費は、本件事故による避難がなくても発生し得るものであり、避難がなかった場合よりも多額の費用がかかったと認めるに足りる証拠はないから、上記主張は認められない。 (カ) 合計 40万0775円 イ生活費増加費用(ア) 家財道具購入費一審原告7-1らは、同7-1は、本件事故による避難をしたことにより避難先において布団、電化製品の、同7-4の転校に当たり制服等一式の、平成25年以降の新居用の家具等の各購入費用として 合計168万8036円を要し、これが損害となると主張する。 しかし、平成23年4月頃に引っ越した際に購入した家財道具としては、甲C7の105記載の電気ケトル、パソコン、プリンタ、ヘアードライヤー、カラーテレビ、炊飯ジャー、クリーナーを購入したことが認められるにとどまり、電気ケトル及びクリーナーを除き購入金額も不明 である。もっとも、家財道具をいわき市の自宅に置いたまま避難している以上、ある程度の家財道具の購入は必要であったと推認することができるから、平成23年4月頃に購入した家財道具の購入費用として10万円を本件事故と相当因果関係を有する損害と認めるのが相当である。 一方で、一審原告7-4のへの転校に当たっての制服等一式の 購入費用については、同7-1が実際に制服等一式の購入を余儀なくさ - 473 -れ、そのために支出したことを認めるに足りる証拠はない 告7-4のへの転校に当たっての制服等一式の 購入費用については、同7-1が実際に制服等一式の購入を余儀なくさ - 473 -れ、そのために支出したことを認めるに足りる証拠はないから、上記費用は本件事故と相当因果関係を有する損害と認めることはできない。また、平成25年に新居に引っ越した際に購入した家財道具の購入費用については、上記引越しは本件事故により余儀なくされたものではなく、同7-1の判断により任意に行われたものであるから、本件事故と相当 因果関係を有する損害と認めることはできない。 したがって、10万円を本件事故と相当因果関係を有する家財道具購入費の損害と認める。 この点、一審被告東京電力は、上記費用について、仮に一審原告7の世帯に法律上保護されるべき利益の侵害があったと認められるとしても 平成23年4月22日頃までと考えられるから、本件事故との相当因果関係は認められないし、いわき市の自宅の家財道具を搬出して使用することも可能であったから、新たに購入する必要性も合理性もないし、引越し費用や一時立入り・帰宅費用を損害として認めるのであれば尚更、本件事故との相当因果関係は認められないと主張する。しかし、前記の とおり、同7の世帯の避難生活は平成24年8月までは本件事故との相当因果関係が認められる上、本件事故により急きょ避難した場合に避難先で一定の家財道具を調達するのはやむをえないことと考えられるから、上記主張は採用できない。 (イ) 光熱費 一審原告7-1らは、同7-1がいわき市の自宅と農地の管理のために同市の自宅の電気と水道を使用しており平成23年5月から平成28年12月までに支払った水道光熱費が損害となると主張するが、避難後は同7の世帯の自宅に居 、同7-1がいわき市の自宅と農地の管理のために同市の自宅の電気と水道を使用しており平成23年5月から平成28年12月までに支払った水道光熱費が損害となると主張するが、避難後は同7の世帯の自宅に居住している者はおらず、自宅及び農地の管理の必要があったとしても長期間滞在する必要性は認められず、電気及び水 道の契約を維持しておく必要はないといえる。したがって、水道光熱費 - 474 -を二重に支払った費用については、本件事故と相当因果関係を有するものとはいえないから、上記主張は認められない。 (ウ) 交通費一審原告7-1らは、同7-1がに通う同7-4のサポート等のために愛知県から富山県まで行った際に要した交通費等37万72 46円が本件事故による損害となると主張する。 この点、前記認定のとおり、同7-4のサポート等のために同7-2が富山県に行ったことは認められるが、本件事故と相当因果関係ある避難は平成24年8月31日までに限られ、愛知県から富山県まで移動した事実により、少なくとも片道1万円の交通費を要したと推認し(弁論 の全趣旨)、頻度としては月1回の往訪を本件事故と相当因果関係を有するものと認め、同7-4がに転校した平成23年4月からサポート等に行き始めたとしてこれを基に算定すると、34万円(=1万円×2(往復)×17か月(平成23年4月から平成24年8月))を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 (エ) 通信費一審原告7-1らは、同7-1の平成23年3月分及び同年4月分の携帯電話料金として7万円を損害として主張するが、これは本件事故がなくとも発生した料金であり、本件事故と相当因果関係を有する損害とはいえない。したがって、上記主張は 平成23年3月分及び同年4月分の携帯電話料金として7万円を損害として主張するが、これは本件事故がなくとも発生した料金であり、本件事故と相当因果関係を有する損害とはいえない。したがって、上記主張は認められない。 (オ) 被服費一審原告7-1らは、同7の世帯が避難後に購入した被服の購入費用を同7-1の損害として主張するが、家財道具とは異なり、一時帰省の際に同7の世帯の自宅から被服を持ち出すことは可能であったと考えられるから、本件事故により被服の購入を余儀なくされたということはで きない。 - 475 -したがって、避難後に購入した被服の購入費用は本件事故と相当因果関係を有するものとはいえず、上記主張は認められない。 (カ) 食費一審原告7-1らは、同7-1の平成23年3月20日に購入した保存食品の購入費用及び同年4月末に同7-4を見舞った際の食費を損害 として主張するが、これらの食費の類は本件事故がなくとも支出されるものであり、本件事故と相当因果関係を有するものとはいえず、上記主張は認められない。 (キ) その他一審原告7-1らは、同7-1の避難時雑貨購入費、避難直後雑貨購 入費、クリーニング代、田畑除草剤、いわき市の建物管理・設備代、農機具修理代、自動車修理代、タイヤバルブ交換費及びタイヤ交換費合計33万4744円が本件事故による損害であると主張する。しかし、避難時雑貨購入費及び避難直後雑貨購入費については、いかなる物品をいくらで購入したか不明であり、消耗品等は本件事故がなくとも購入する 必要のあるものであるし、クリーニング代についても本件事故との関連が認められないから、いずれも本件事故と相当因果関係を有する損 くらで購入したか不明であり、消耗品等は本件事故がなくとも購入する 必要のあるものであるし、クリーニング代についても本件事故との関連が認められないから、いずれも本件事故と相当因果関係を有する損害とはいえない。また、田畑の除草、同市の建物の管理等は本件事故がなくとも行う必要のあるものであるから、本件事故と相当因果関係を有するものとはいえない。さらに、本件事故の影響で農機具や自動車の修理が 必要となったという事情もうかがわれないから、農機具修理代、自動車修理代、タイヤバルブ交換費及びタイヤ交換費についても、本件事故と相当因果関係を有するものとはいえない。したがって、上記主張は認められない。 (ク) 家賃増加分 一審原告7-1らは、同7-1の家賃増加分合計44万8600円を - 476 -損害と主張するところ、同7-1が平成23年3月15日から同月末までb町の6畳一間のアパートを借りた事実及び同月末から同年7月まで3DKのアパートを借りた事実、同月に愛知県の無償県営住宅に入居した事実が認められるから、これらの事実によれば、本件事故と相当因果関係ある避難生活期間中に少なくとも合計30万円を下らない家賃の支 出を要したと推認することができる。上記各支出は本件事故と相当因果関係を有する期間内の損害として相当な損害といえる。一方で、敷金については、その性質上退去する際に返金が予定されているものであるから、敷金を支払ったことで同7-1に損害が発生したと認めることはできない。 したがって、30万円を家賃増加分として本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 (ケ) 教育費一審原告7-1らは、同7-1が同7-4のでの韓国留学の費用及び退寮の費用 て、30万円を家賃増加分として本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 (ケ) 教育費一審原告7-1らは、同7-1が同7-4のでの韓国留学の費用及び退寮の費用として合計33万円を要し、これが損害となると主 張する。しかし、 において留学は必修科目ではなく、同7-4は韓国留学に行かなくとも卒業することは可能であったと認められるから(乙C7の14、15)、本件事故によって韓国留学の費用を支出することを余儀なくされたという関係にはなく、本件事故と相当因果関係があるとはいえない。退寮の費用については、実際に支出したことを認 めるに足りる証拠はない。したがって、上記主張は認められない。 (コ) その他一審原告7-1らは、同7-1が同7-4のの卒業式出席に要した宿泊費及び貸衣装費並びに同7-4のの寮費合計93万5625円を本件事故による損害と主張する。しかし、前記のとおり、 そもそも同7の世帯について本件事故と相当因果関係を有する避難は平 - 477 -成24年8月31日までの分に限られるところ、同7-4の卒業式は同日よりも後であることは明らかであるから、これに関連する費用(宿泊費、貸衣装費)は相当因果関係のある損害とは認められない。また、同7-4のの寮費についても同7-1が実際にこれを支出したと認めるに足りる証拠がない。 したがって、上記主張は認められない。 (サ) 合計 74万円ウ就労不能損害一審原告7-1は、 及びを広野町でところ、前記認定事実のとおり、同町の緊急時避難準備区域の指定は平成23年9 月30日に解除され、同年12月16日にはステップ2の目標達成と 審原告7-1は、 及びを広野町でところ、前記認定事実のとおり、同町の緊急時避難準備区域の指定は平成23年9 月30日に解除され、同年12月16日にはステップ2の目標達成と完了の確認が発表されているのであり、また従前の住所地のいわき市の状況も前記のとおりであるから、いわき市への帰還及び広野町における営業再開の準備等に要する時間を考慮しても、同7-1は、遅くとも平成24年8月末までには広野町で及びを再開することも可能 であったというべきである。 そうすると、一審原告7の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に営業損害(ADR弁護士費用を含む。)として賠償した2552万5425円(乙C7の4・11)については本件事故と相当因果関係ある損害とする余地があるが(弁論の全趣旨)、この額を超えて本件事故と相 当因果関係を有する就労不能損害が発生したと認めることはできない。 したがって、本件事故と相当因果関係のある及び分の就労不能損害は2552万5425円を限度に認めるのが相当である。 一方で、いわき市における農業収入については、一審原告7-1は、本件事故当時までを営んでいたものであるところ、同市において は、一般的な農家では本件事故後も稲の作付けは継続されていた(同7 - 478 --1本人(原審))のであるし、平成23年度には●●●●●●●●●●●●も栽培されていたのであるから、同7-1が平成24年8月までに同市に帰還し、準備期間を考慮しても平成25年4月頃からは●●●●を行い、収益を上げることは可能であったといえる。したがって、同7-1が請求する農業収入の損害のうち、同7-1が平成23年3月か ら平成25年3月までの間、いわ も平成25年4月頃からは●●●●を行い、収益を上げることは可能であったといえる。したがって、同7-1が請求する農業収入の損害のうち、同7-1が平成23年3月か ら平成25年3月までの間、いわき市でを行えなくなったことにより得られなくなった収入を本件事故と相当因果関係を有する損害と認めることとする。そして、同7-1の平成20年から平成22年までの3年間の農業に係る平均年収は156万7217円であるから(甲C7の183から185まで)、平成23年3月から平成25年3月まで の間に326万5035円(=156万7217円÷12か月×25か月(平成23年3月から平成25年3月まで))の損害が生じており、これを本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 したがって、一審原告7-1の本件事故との相当因果関係がある就労不能損害は、前記の及び分と農業分とを合わせた2879万 0460円となる。 エ被ばく検査費用一審原告7-1らは、同7-1が同7-3及び同7-4の平成27年9月27日の被ばく検査費用として9000円を要したと主張するが、これを支出したことを裏付ける証拠がなく、上記主張を認めることはでき ない。 オその他一審原告7-1らは、同7-1が農機具等の修理代、草刈り作業代、お寺への支払い、水田水利費等のいわき市の自宅で要した費用合計153万7702円を損害として主張する。しかし、農機具等の修理代につい ては、前記イ(キ)で述べたとおり、本件事故の影響で農機具が故障したと - 479 -認めるに足りる証拠はなく、本件事故が発生しなくとも支出を余儀なくされていたものであるから、本件事故と相当因果関係を有する損害ということはできない。ま 影響で農機具が故障したと - 479 -認めるに足りる証拠はなく、本件事故が発生しなくとも支出を余儀なくされていたものであるから、本件事故と相当因果関係を有する損害ということはできない。また、草刈り作業代については、同7-1の判断で任意に依頼し支払ったものであり、これについても本件事故と相当因果関係を有する損害ということはできない。さらに、お寺への支払い、水 田水利費等については、本件事故がなくとも同市の自宅に居住していれば支払っていたと考えられる金銭であり、本件事故と相当因果関係を有する損害ということはできない。 カ慰謝料一審原告7-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及 び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、前記の転々避難の状況、職業を変更せざるを得なかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 キ合計 3093万1235円(3) 一審原告7-2の損害 一審原告7-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、前記の転々避難の状況その他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 (4) 一審原告7-3の損害 ア大卒と卒の年間賃金差額一審原告7-3は、平成23年3月に大学を中退しているが、現在は就職しており、実際に大学卒業程度の収入が得られなかったと認めるに足りる証拠はない。 イ慰謝料 一審原告7-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及 - 480 -び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、遠隔地に避難したためにが イ慰謝料 一審原告7-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及 - 480 -び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、遠隔地に避難したためにが決まっていた大学を中退せざるを得なかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 ウ合計 100万円 (5) 一審原告7-4の損害ア大卒と卒の年間賃金差額一審原告7-4は、本件事故後、 に転入しているところ、本件事故がなければ大学に進学していたのに本件事故により大学に進学することができなかったという事情を認めるに足りる証拠はなく、また、同 7-4は、現在は就職しているところ、実際に大学卒業程度の収入が得られなかったと認めるに足りる証拠もない。 イ慰謝料一審原告7-4について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、遠隔地に避難したため に避難先からさらに離れたに転入せざるをえなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 ウ合計 100万円 3 弁済の抗弁 (1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額ア一審原告7-1について 2928万2840円イ一審原告7-2について 12万円ウ一審原告7-3について 12万円エ一審原告7-4について 72万円 (2) 一審被告東京電力による賠償 - 481 -一審被告東京電力は、これまで一審原告7の世帯に対し、以下のとおり賠償したことが認められる(乙C7の4・5・6・11・12、弁論の全趣旨)。 ア ADR以外 力による賠償 - 481 -一審被告東京電力は、これまで一審原告7の世帯に対し、以下のとおり賠償したことが認められる(乙C7の4・5・6・11・12、弁論の全趣旨)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告7-1に対し ① 自主的避難等に係る損害 12万円② 立木に関する損害 14万1230円③ 合計 26万1230円(イ) 一審原告7-2に対し自主避難等に係る損害 12万円(ウ) 一審原告7-3に対し自主避難等に係る損害 12万円 (エ) 一審原告7-4に対し自主避難等に係る損害 72万円(オ) 合計 122万1230円イ ADRによる賠償 2902万1610円ADRにより、一審原告7-1に対する及びと農業の廃業に関する逸失利益等として2902万1610円が賠償された。 ウ合計 3024万2840円(3) 一審原告7の世帯に対する各弁済額ア一審原告7-1に対する弁済額(ア) 財物損害以外の損害に対する弁済① ADR以外による賠償 12万円 ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当であり、ADR以外による一審原告7-1に対する賠償のうち財物損害以外の損害に係るものは、前記(2)ア(ア)①の12万円である。 ② ADRによる賠償 2902万1610円 ADRによる賠償のうち前記(2)イの及びと農業の廃 - 482 -業に関する逸失利益等2902万1610円は一審原告7-1の逸失利益に対する賠償として支払われたものであるから、同7-1の財物損害以外の損害に対する弁済 及びと農業の廃 - 482 -業に関する逸失利益等2902万1610円は一審原告7-1の逸失利益に対する賠償として支払われたものであるから、同7-1の財物損害以外の損害に対する弁済として扱う。 ③ 合計 2914万1610円(イ) 財物損害に対する弁済 14万1230円 ADR以外による賠償のうち前記(2)ア(ア)②は一審原告7-1の財物損害に対する賠償であり、これを同7-1の財物損害に対する弁済として扱う。 したがって、一審被告東京電力の一審原告7-1に対する弁済の抗弁は、財物損害以外の損害に対する弁済2914万1610円及び財物損害に 対する弁済14万1230円をいうものとしていずれも全部認められる。 ただし、同7-1については財物損害が認定できないので、後者についてはこれ以上の判断を要しない。 イ一審原告7-2に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 12万円 ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円(ウ) 合計 12万円したがって、一審被告東京電力の一審原告7-2に対する弁済の抗弁は 全部認められる。 ウ一審原告7-3に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円 - 483 -(ウ) 合計 12万円したがって、一審被告東京電力の一審原告7-3に対する弁済の抗弁は全部認められる。 エ一審原告7-4に対する弁済額 - 483 -(ウ) 合計 12万円したがって、一審被告東京電力の一審原告7-3に対する弁済の抗弁は全部認められる。 エ一審原告7-4に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 72万円 ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円(ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告7-4に対する弁済の抗弁 は全部認められる。 4 認容額等(1) 一審原告7-1ア財物損害以外の損害(ア) 損害額 3093万1235円 (イ) 弁済額 2914万1610円(ウ) 弁済額控除後の損害額 178万9625円イ財物損害損害額 0円ウ弁済額控除後の損害額合計 178万9625円 エ弁護士費用 18万円オ認容額 196万9625円(2) 一審原告7-2ア損害額 100万円イ弁済額 12万円 ウ弁済額控除後の損害額 88万円 - 484 -エ弁護士費用 9万円オ認容額 97万円(3) 一審原告7-3ア損害額 100万円イ弁済額 12万円 ウ弁済額控除後の損害額 88万円エ弁護士費用 9万円オ認容額 97万円(4) 一審原告7-4ア損害額 100万円 イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害額 28万円エ弁護士費用 3万円オ認容額 31万円第 ) 一審原告7-4ア損害額 100万円 イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害額 28万円エ弁護士費用 3万円オ認容額 31万円第8 一審原告8の世帯 1 認定事実(甲C8の1、丁C2、14、16、17、一審原告8-2本人(原審)、同8-3本人(当審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等一審原告8-1(本件事故当時37歳)、その妻(当時)である同8-2(本件事故当時32歳)、同8-1及び同8-2の長女である同8-3(本 件事故当時7歳)、二女である同8-4(本件事故当時5歳)、長男である同8-5(本件事故当時3歳)、三女である同8-6(本件事故当時1歳)は、本件事故当時、福島県伊達市内にある同8-1が勤める公益財団法人の職員住宅(福島第一原発からの距離61.05km(乙C8の1))に居住していた。これは、同8-1らがもともと千葉県に居住していたところ、か つて訪れた福島県を気に入って転勤の希望を出し、平成20年3月、同8- - 485 -1の転勤によって伊達市に居住するようになったものである。 本件事故当時、一審原告8-1は、公益財団法人に事務職員として勤務していた。同8-2は、同8-7(平成23年9月▲▲日生)を妊娠中であった。同8-3は、伊達市内の公立小学校の1年生であり、同8-4及び同8-5は幼稚園児であった。 (2) 避難開始の経緯等一審原告8-1らは、本件事故後、放射能に対する恐怖と不安を感じ、子どもたちや胎児の安全を優先するため、平成23年3月15日頃、同8-1だけが伊達市に残り、同8-2から同8-6までが同8-2の出身地である名古屋市に避難することを決めた。 安を感じ、子どもたちや胎児の安全を優先するため、平成23年3月15日頃、同8-1だけが伊達市に残り、同8-2から同8-6までが同8-2の出身地である名古屋市に避難することを決めた。 自動車で避難するのに伊達市ではガソリンが手に入りにくくなっていたため、平成23年3月16日、まず、山形県内の一審原告8-1の知人宅に向かい、そこに1週間ほど滞在した後、名古屋市から迎えに来た同8-2の妹の運転で名古屋市に向かい、14時間かけて同月22日深夜に名古屋市に到着し、同8-2の妹の家で生活することとなった。 (3) 避難後の状況等一審原告8-2から同8-6までは、名古屋市に避難して2か月余りは同8-2の妹の家に寝泊まりしていたが、その後借上げの賃貸住宅の部屋(3DK)に入居し、平成27年3月下旬まで生活を続けた。その後、同8の世帯は、同月末に広さ約80㎡の3LDKの分譲マンションを購入して転居し た。 一審原告8-2は、避難後、同8-5が平成23年4月末に高熱を出して川崎病と診断されたり、他の子らも熱を出したりして、避難生活の中で精神的に追い詰められるようになった。これを見兼ねた同8-1は、同年6月、勤務していた法人を退職して伊達市から名古屋市に転居し、同8-2らと同 居した。同8-2は、同月下旬、心療内科の診察を受けてうつ病及びパニッ - 486 -ク障害と診断され、同年7月20日には解離性障害を疑われるまでに病状は悪化した。そのような中、同8-2は、同年9月▲▲日、二男である一審原告8-7を名古屋市内で出産した。 一審原告8-1は、名古屋市への転居後、同8-2の世話をしながら就職先を探し、警備会社のアルバイトの職に就いたが、遠方の原子力発電所の警 備を打診される都度断っていたために居 市内で出産した。 一審原告8-1は、名古屋市への転居後、同8-2の世話をしながら就職先を探し、警備会社のアルバイトの職に就いたが、遠方の原子力発電所の警 備を打診される都度断っていたために居づらくなり、平成28年3月末で退職し、同年4月1日からは愛知県の公立高校で産休教員の補助講師となり、その後、同県知多市の公立中学校で常勤講師をしている。 避難後、一審原告8-3は、避難先近くの公立小学校に転校し、同8-4及び同8-5は名古屋市内の幼稚園に入園した。現在は、同8-3は大学生、 同8-4は高校生、同8-5から同8-7までは、中学生又は小学生である。 一審原告8-3は、高校3年生の頃、甲状腺の検査を受け、医師からのう胞が多く、経過観察が必要と指摘され、その後、年に1回程度の診察を受けている。 一審原告8-1と同8-2は、本件訴訟係属中に離婚した。 (4) 本件事故時住所地の状況等一審原告8-1から同8-6までの本件事故時の住所地は伊達市で、同市は自主的避難等対象区域であり、同市における環境放射能等の状況は前記第3章、第1、2のとおりである。 2 損害 (1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告8-1から同8-6までは、本件事故当時、自主的避難等対象区域である伊達市に居住していたところ、放射能に対する不安から、平成23年3月、まず妊娠中であった同8-2及び子どもである同8-3から同8-6までが山形県を経て名古屋市に避難し、その約3か月後である同年6月、 避難先で不調となった同8-2と同居するため、同8-1も名古屋市に転居 - 487 -したものであり、同8-2から同8-6までの避難とそれに続く同8-1の避難は、本件事故によるものといえる。 一審原告8-1は た同8-2と同居するため、同8-1も名古屋市に転居 - 487 -したものであり、同8-2から同8-6までの避難とそれに続く同8-1の避難は、本件事故によるものといえる。 一審原告8-1は平成23年6月に上記避難のため伊達市の勤務先を退職しその職員住宅も利用できなくなっていると考えられるが、同8-1及び同8-2はもともと希望して福島県に移住したものであり、もとの職員住宅が 利用できなくなっていたとしても本件事故による支障がなくなれば、同市又はその周辺への帰還の希望はあったと思われるところ、同市における環境放射能等の状況は上記1(4)のとおりであり、本件事故直後の混乱期は別として、一般的に放射線の影響を受けやすいとされる子ども、幼児、乳児である同8-3から同8-6までがいたこと、避難先で同8-7が出生しこれを養 育する必要があったことを考慮しても、遅くとも平成24年8月31日までには、同8-1から同8-6までが同8-7を連れて避難先から伊達市に帰還する支障はなくなっていたというべきである。 したがって、一審原告8-2から同8-6までが避難したこと及びそれに続いて同8-1が避難したことは、本件事故との相当因果関係が認められる が、その後の同8-1から同8-7までの避難生活の継続について本件事故との相当因果関係が認められるのは、平成24年8月31日までの部分に限られるとするのが相当である。 一審被告東京電力は、一審原告8-1から同8-6までは、本件事故当時、自主的避難等対象区域に居住しており、仮に何らかの侵害が認められるとし ても、同8-1らは平成23年6月頃には新たな環境で平穏な日常生活を送ることができる状態となったのであるから、同月以降の侵害はない等と主張し、自主賠償基準による賠償額を超える損害はないと し ても、同8-1らは平成23年6月頃には新たな環境で平穏な日常生活を送ることができる状態となったのであるから、同月以降の侵害はない等と主張し、自主賠償基準による賠償額を超える損害はないと主張する。しかしながら、前記のとおり、同8-2が、本件事故による放射能の胎児や子らに対する影響に不安を抱いて同8-3から同8-6までを連れて名古屋市へ避難し たことは本件事故によるものというべきであるし、避難先で精神面を崩した - 488 -同8-2のために同8-1も避難に至ったこともやむをえないことであったし、同8-3から8-6まで及び後に出生した同8-7までの乳児を含む子らを養育していた同8-1及び同8-2の避難生活のうち、平成24年8月までの部分は本件事故による避難継続として社会通念上相当といえるから、上記主張は採用できない。 (2) 一審原告8-1の損害一審原告8-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、本件事故後、まず同8-2から同8-6までを避難させ、その後、平成23年6月に自らも名古屋市に避難したこと、そのため元の住所地における勤務先を退職する必要があったこ と、子どもである同8-3から同8-6まで及び避難先で出生した同8-7を避難先で養育しなければならなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを80万円と認めるのが相当である。 (3) 一審原告8-2の損害一審原告8-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び 避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、当時、同8-7を妊娠していた中で同8-3から同8-6までの子らを連れて、山形県を経て名古屋市へ自動車で避難した状況、避難先で精神状態が悪化してしまった 避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、当時、同8-7を妊娠していた中で同8-3から同8-6までの子らを連れて、山形県を経て名古屋市へ自動車で避難した状況、避難先で精神状態が悪化してしまったこと、同8-7を出産して避難先で乳児を養育しなければならなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 一審原告7-1らは、同8-2について、本件事故前に伊達市へ移住してからの地域での生活のすべてが本件事故により奪われ、過酷な避難生活を余儀なくされ、精神的に病んでしまったものであって、同8-2の法律上保護される利益の侵害は重大であると主張するが、これらの主張を最大限考慮しても、本件事故と相当因果関係ある避難及び避難生活による精神的苦痛に対 する慰謝料としては、上記認定額をもって相当というべきである。 - 489 -また、一審被告東京電力は、一審原告7-1らの主張はいずれも客観的科学的根拠がない漠然としたもので、同8の世帯に法律上保護された利益に対する侵害が生じていると評価することはできないものであるから、仮に慰謝料が認められるとしても、一審被告東京電力の既賠償額を超えるものではないと主張する。しかしながら、前記認定の避難の状況及び避難後の生活状況 等により生じた精神的苦痛は小さくないというべきであり、上記のとおり慰謝料額を認めるのが相当であるから、上記主張は採用できない。 (4) 一審原告8-3の損害一審原告8-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、山形県を経て名古屋市へ自動 車で避難した状況、通学していた小学校から避難先の小学校に転校しなければならなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば 生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、山形県を経て名古屋市へ自動 車で避難した状況、通学していた小学校から避難先の小学校に転校しなければならなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 一審原告7-1らは伊達市における生活のすべてが本件事故により奪われ、過酷な避難生活で子らにとっても辛い生活を余儀なくされたものであって、 同8-3の法律上保護される利益の侵害は重大であると主張するが、これらの主張を最大限考慮しても、本件事故と相当因果関係ある避難及び避難生活による精神的苦痛に対する慰謝料としては、上記認定額をもって相当というべきである。また、同7-1らは、同8の世帯は本件事故により被ばくしており、同8-3が後に甲状腺にのう胞が多いとの診断がされていることも考 慮すべきである旨主張するが、これと本件事故との関係は明らかではなく、同8-3に現に健康被害が生じているとも認められない。 (5) 一審原告8-4の損害一審原告8-4について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、山形県を経て名古屋市へ自動 車で避難した状況、通園していた幼稚園に行けなくなったことその他前記認 - 490 -定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 一審原告7-1らは伊達市における生活のすべてが本件事故により奪われ、過酷な避難生活で子らにとっても辛い生活を余儀なくされたものであって、同8-4の法律上保護される利益の侵害は重大であると主張するが、これらの主張を最大限考慮しても、本件事故と相当因果関係ある避難及び避難生活 による精神的苦痛に対する慰謝料としては、上記認定額をもって相当というべきである 利益の侵害は重大であると主張するが、これらの主張を最大限考慮しても、本件事故と相当因果関係ある避難及び避難生活 による精神的苦痛に対する慰謝料としては、上記認定額をもって相当というべきである。 (6) 一審原告8-5の損害一審原告8-5について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、山形県を経て名古屋市まで自 動車で避難した状況、通園していた幼稚園に行けなくなったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 一審原告7-1らの主張に対する判断は上記(5)と同じである。 (7) 一審原告8-6の損害一審原告8-6について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び 避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、山形県を経て名古屋市まで自動車で避難した状況その他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 一審原告7-1らの主張に対する判断は前記(5)と同じである。 (8) 一審原告8-7の損害 一審原告8-7は、本件事故時においても、同8-2から同8-6までが名古屋市に避難した平成23年3月下旬時点においても、同8-1が名古屋市に転居した同年6月時点においても胎児であり、自ら避難時や避難後の困難な生活状況等を実際に体験したわけではない。また、同8-7は、同年9月に同市において出生したが、本件事故前に伊達市における日常生活の経験 があったわけではなく、本件事故がなかった場合にそのまま平穏に同市での - 491 -日常生活を続けられた利益を観念することはできないから、名古屋市で出生、生活したことにより本件事故と相当因果関係ある精神的 はなく、本件事故がなかった場合にそのまま平穏に同市での - 491 -日常生活を続けられた利益を観念することはできないから、名古屋市で出生、生活したことにより本件事故と相当因果関係ある精神的損害が生じたとは認められない。 一審原告7-1らは、同8の世帯は本件事故により被ばくしており、特に胎児であった同8-7は最も被ばくしており、その損害が甚大であると主張 する。しかし、同8-7が本件事故により健康に影響を及ぼすような被ばくをしたことを認めるに足りる証拠はないから、上記主張は採用できない。 したがって、一審原告8-7について本件事故と相当因果関係の認められる避難及び避難期間中の精神的苦痛があるとは認められない。 3 弁済の抗弁 (1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額ア一審原告8-1について 159万6703円イ一審原告8-2について 74万円ウ一審原告8-3について 84万円エ一審原告8-4について 84万円 オ一審原告8-5について 84万円カ一審原告8-6について 84万円キ一審原告8-7について 84万円(2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、これまで一審原告8の世帯に対し、以下のとおりの 賠償を行ったことが認められる(甲C8の1、乙C8の3)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告8-1に対し自主避難等に係る損害 8万円(イ) 一審原告8-2に対し自主避難等に係る損害 60万円(ウ) 一審原告8-3に対し自主避難等に係る損害 60万円 (エ) 一審原告8-4に対し自主避難等に係る損害 60万円 - 492 -(オ) 一審原告8-5に対し自主避難等に係る損害 60万円(カ) 一 主避難等に係る損害 60万円 (エ) 一審原告8-4に対し自主避難等に係る損害 60万円 - 492 -(オ) 一審原告8-5に対し自主避難等に係る損害 60万円(カ) 一審原告8-6に対し自主避難等に係る損害 60万円(キ) 一審原告8-7に対し自主避難等に係る損害 60万円(ク) 合計 368万円イ ADRによる賠償 ADRにより、一審原告8-1から同8-7までに対する和解金額が653万6703円と合意され、そこからADR以外による賠償額368万円を控除した285万6703円が支払われた。 (内訳)(ア) 避難交通費 4万1395円 (イ) 面会交通費 10万6380円(ウ) 引越し費用 49万6500円(エ) 生活費用 92万8429円(オ) 生命身体損害(通院慰謝料) 10万円(カ) 就労不能損害 275万2610円 (キ) 精神的損害 164万円(一審原告8-1分4万円、同8-2分20万円、同8-3から同8-7まで分各28万円)(ク) 追加費用等、文書開示手数料、ADR弁護士費用47万1389円(ケ) 合計(和解金額) 653万6703円 (コ) 既払い金(前記ア) 368万円(サ) 合計(支払額) 285万6703円ウ合計 653万6703円(3) 一審原告8の世帯に対する各弁済額ア一審原告8-1に対する弁済額 (ア) ADR以外による賠償 8万円 - 493 -ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 142万8351円ADRによる和解金額 3 -ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 142万8351円ADRによる和解金額653万6703円からの前記(2)イ(コ)の既払い金368万円の控除は、同(キ)の一審原告8-1から同8-7まで の損害164万円から全額、ついでその余(同(ア)から(カ)まで、(ク))の489万6703円から204万円が順次控除されたものとみると、その余(同(ア)から(カ)まで、(ク))の支払額は285万6703円となる。 一審原告7-1らは、同8の世帯において共通の費用をいずれが支出 したかを主張していないから、これを同8-1と同8-2において均等に分担したものとみて、上記285万6703円のうち各142万8351円(円未満の端数切捨て)を同8-1と同8-2に対する弁済として扱うのが相当である。 したがって、ADRによる賠償のうち一審原告8-1に対する弁済額 は142万8351円となる。 (ウ) 合計 150万8351円したがって、一審被告東京電力の一審原告8-1に対する弁済の抗弁は一部認められる。 イ一審原告8-2に対する弁済額 (ア) ADR以外による賠償 60万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 142万8351円前記ア(イ)のとおり、ADRによる賠償額のうち142万8351円 を一審原告8-2に対する弁済として扱うのが相当である。 - 494 -(ウ) 合計 202万8351円したがって、一審被告東京電力の一審原告8-2に対する弁済の抗 51円 を一審原告8-2に対する弁済として扱うのが相当である。 - 494 -(ウ) 合計 202万8351円したがって、一審被告東京電力の一審原告8-2に対する弁済の抗弁74万円は全部認められる。 ウ一審原告8-3に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 60万円 ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円(ウ) 合計 60万円したがって、一審被告東京電力の一審原告8-3に対する弁済の抗弁は 一部認められる。 エ一審原告8-4に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 60万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円(ウ) 合計 60万円したがって、一審被告東京電力の一審原告8-4に対する弁済の抗弁は一部認められる。 オ一審原告8-5に対する弁済額 (ア) ADR以外による賠償 60万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円(ウ) 合計 60万円 したがって、一審被告東京電力の一審原告8-5に対する弁済の抗弁は - 495 -一部認められる。 カ一審原告8-6に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 60万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円(ウ) 合計 ) ADR以外による賠償 60万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円(ウ) 合計 60万円したがって、一審被告東京電力の一審原告8-6に対する弁済の抗弁は一部認められる。 キ一審原告8-7に対する弁済額 一審原告8-7については、損害が認められないため、弁済の抗弁について判断を要しない。 4 認容額等(1) 一審原告8-1ア損害額 80万円 イ弁済額 150万8351円ウ弁済額控除後の損害額 0円エ認容額 0円(2) 一審原告8-2ア損害額 100万円 イ弁済額 74万円ウ弁済額控除後の損害額 26万円エ弁護士費用 3万円オ認容額 29万円(3) 一審原告8-3 ア損害額 100万円 - 496 -イ弁済額 60万円ウ弁済額控除後の損害額 40万円エ弁護士費用 4万円オ認容額 44万円(4) 一審原告8-4 ア損害額 100万円イ弁済額 60万円ウ弁済額控除後の損害額 40万円エ弁護士費用 4万円オ認容額 44万円 (5) 一審原告8-5ア損害額 100万円イ弁済額 60万円ウ弁済額控除後の損害額 40万円エ弁護士費用 4万円 オ認容額 44万円(6) 一審原告8-6ア損害額 100万円イ弁済額 60万円ウ弁済額控除 害額 40万円エ弁護士費用 4万円 オ認容額 44万円(6) 一審原告8-6ア損害額 100万円イ弁済額 60万円ウ弁済額控除後の損害額 40万円 エ弁護士費用 4万円オ認容額 44万円(7) 一審原告8-7ア損害額 0円イ認容額 0円 第9 一審原告9の世帯 - 497 - 1 認定事実(甲C9の1・11、丁C3、9、18、一審原告9-1本人(当審)、同9-2本人(原審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等一審原告9-1(本件事故当時42歳)、その妻である同9-2(本件事故当時40歳)は、本件事故当時、福島県いわき市内の借家(福島第一原発 からの距離54.87km(乙C9の2))に居住していた。同9-2は、本件事故当時、長女である同9-3を妊娠中であり、平成23年3月2▲日、同9-3を出産した。 一審原告9-1及び同9-2は、平成18年頃からいわき市で居住し始め、平成22年頃から借家の一室を使って整体院を開業し、主に出張で整体を行 っており、固定客が付き、収入は安定していた。 一審原告9-2は、平成22年7月に妊娠が判明し、震災直前の平成23年3月2日まで整体院で業務を継続し、それ以降は出産のため家事に専念していた。出産予定日は、同月21日であった。 一審原告同9-1及び同9-2は、いわき市では、近所の人から野菜やそ の他の食料品を物々交換でもらうことがあった。 (2) 避難開始の経緯等一審原告9-1及び同9-2は、平成23年3月12日夜頃、テレビで本件事故による避難を呼びかけていることを知り、その1週間後 を物々交換でもらうことがあった。 (2) 避難開始の経緯等一審原告9-1及び同9-2は、平成23年3月12日夜頃、テレビで本件事故による避難を呼びかけていることを知り、その1週間後にはテレビ等を通じてヨウ素剤の頒布の話等が出始めたが、どう対処すればよいか分から なかった。同9-2は、当時は妊娠中で家にいたうえ、政府が大丈夫であると発表していたこともあり、放射線の影響については余り気にしていなかった。しかし、同9-2は定期検診から帰ってきた後、通院先の産婦人科から、電話で、「浜通りの産婦人科は全て閉鎖となりました。浜通り以外の産婦人科を自分で探してください。」と言われたため、産婦人科を探さなければな らなくなり、整体院の客の紹介で水戸市の産婦人科を受診することとなった。 - 498 -同9-1及び同9-2は、同月18日、自動車で水戸市まで向かい、同9-2は水戸市の産婦人科で検査を受けたところ、高血圧及び妊娠中毒症であることが判明し、入院することとなった。その後、同9-2は、同月2▲日、帝王切開により、同9-3を出産した。同9-2は、手術中も出産後も容態が改善せず、退院が認められたのは同年4月9日であった。 一審原告9-2は、産婦人科の医師から、子どもには放射線の影響がよく出ると言われ、避難することを決断した。同9の世帯は愛知県一宮市の友人に避難の話をしたところ、協力してもらえることになり、同9-1が事前に引越しの段取りをした上で、同9-2及び同9-3が一旦福島県に戻った上で、平成23年4月10日夕方、福島県を出発した。同9-1が自動車を運 転し、同9-2及び同9-3並びに同9-2の叔母を乗せ、犬2匹と荷物を積んで愛知県に向かった。同9-3にミルクを与えるためにサービスエリアに立ち寄りなが 島県を出発した。同9-1が自動車を運 転し、同9-2及び同9-3並びに同9-2の叔母を乗せ、犬2匹と荷物を積んで愛知県に向かった。同9-3にミルクを与えるためにサービスエリアに立ち寄りながら、12時間かけて深夜に一宮市に到着した。 一審原告9-3は、避難後約3か月は食欲がなく、排便も悪く、体調が悪い状態が続いた。 (3) 避難後の状況等ア避難生活の状況一審原告9-1は、平成23年6月頃、友人の紹介で就職が決まり、ジュース製造のラインの仕事を始めたが、震災の影響で仕事が減ったため退職し、同年10月頃に別の友人の紹介で建設業に就職したが、これも 半年過ぎた頃から仕事が減り始め、平成24年5月に退職した。同9-1は、同年6月からは喫茶店で働くようになったが、ここも売上げ減少に伴い、同年8月に退職し、同年9月には苗木屋に就職した。ここでは、被ばく検査や弁護士との打合せで仕事を休まなければならないことが続いたことで、「いつまでも被害者面するな。」などと他の従業員から誹 謗中傷され、同年11月には退職した。同9-1は、同年12月からは - 499 -派遣社員として車関係の仕事を始めたが、平成25年5月に派遣が終了となった。同年6月には新しく工場に就職したが、残業代の支給が不十分であったため、同年8月頃に退職した。同9-1は、同年10月からデイケアで1年半勤務したが、正社員になれないため、平成27年3月に退職し、同年4月には、同9-2が平成25年10月から勤めている 就労支援の職場で勤務し始めた。しかし、同9-1は、給与条件等が当初の話と食い違っていたり、上司との人間関係もうまくいかなくなったりしたため、半年後には退職し、同9-2も上記勤務先を平成27年9月に退職した。 一審 し始めた。しかし、同9-1は、給与条件等が当初の話と食い違っていたり、上司との人間関係もうまくいかなくなったりしたため、半年後には退職し、同9-2も上記勤務先を平成27年9月に退職した。 一審原告9-1は、平成27年11月から名古屋市内の社会福祉法人で 生活支援員として勤務し、同9-2は、同月から岐阜市にある特定非営利活動法人が運営する事務所で正社員の指導員として勤務している。 一審原告9-2は、平成26年9月、長男を出産し、同9の世帯及び長男は現在、岐阜市内において4人で生活している。 一審原告9-1及び同9-2が本件事故当時居住していた借家は解約し た。 イ本件事故時住所地の状況等一審原告9-1及び同9-2の本件事故当時の住所地はいわき市で、同市は自主的避難等対象区域であり、同市における環境放射能等の状況は前記第3章、第5のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告9-1及び同9-2は、本件事故当時、自主的避難等対象区域であるいわき市に居住しており、本件事故直後は同市にとどまっていたが、同9-2の出産予定日が平成23年3月21日であったのに通院していた産婦 人科や地域の産婦人科が本件事故の影響で閉鎖となってやむなく水戸市内の - 500 -産婦人科を受診し、そのまま入院、出産となり、同年4月9日に退院したが、医師から子どもに対する放射線の影響を聞いて避難を決め、いったんいわき市の自宅に戻った後に同月10日に出発して自動車で一宮市まで避難したというのであるから、同9の世帯が避難を行ったことは本件事故によるものと認められる。なお、同9-3は本件事故当時胎児であったところ、父母であ る同 同月10日に出発して自動車で一宮市まで避難したというのであるから、同9の世帯が避難を行ったことは本件事故によるものと認められる。なお、同9-3は本件事故当時胎児であったところ、父母であ る同9-1及び同9-2がいわき市から避難する前に出生し、同市から一宮市へ同9-1及び同9-2が本件事故により避難する際に一緒に非難したものであり、同9-3の避難も本件事故による避難である。また、本件事故がなければ同9-3はそのままいわき市で平穏な日常生活を送ることができたのであるから、同9-3についても本件事故による避難及び避難生活により、 平穏な日常生活を送る権利を侵害されたといえる。 しかし、いわき市の環境放射能等の状況は前記認定のとおりであり、本件事故直後の混乱期は別として、一審原告9の世帯には一般的には放射能の影響を受けやすいとされる乳児である同9-3がいることを考慮しても、遅くとも平成24年8月31日までには、いわき市に帰還することに支障はなか ったというべきである。 したがって、一審原告9の世帯が、平成23年4月10日に行った一宮市への避難及びそれ以降の避難生活のうち本件事故との相当因果関係が認められるのは平成24年8月31日までの部分に限られるというのが相当である。 (2) 一審原告9-1の損害 ア避難費用(ア) 交通費一審原告9-1は、いわき市から一宮市に自動車で移動した際のガソリン代8138円及び高速道路代320円を支払ったことが認められ(甲C9の2、3)、これらの費用は本件事故と相当因果関係を有する ものといえる。したがって、上記合計8458円を本件事故と相当因果 - 501 -関係を有する交通費の損害と認める。 (イ) 引越し費用 用は本件事故と相当因果関係を有する ものといえる。したがって、上記合計8458円を本件事故と相当因果 - 501 -関係を有する交通費の損害と認める。 (イ) 引越し費用一審原告9-1は、引越し費用として15万7500円(甲C9の5)、車両の陸送費として8万4000円(甲C9の6)を支払ったことが認められる。また、同9-1は、いわき市の自宅の賃貸人に退去補 修工事費用として4万円を支払ったと主張し、その証拠として甲C第9号証の4を提出するが、同号証の4は平成23年4月分の家賃の領収証であり、上記退去補修工事費用の領収証ではないから、同9-1が4万円の退去補修工事費用を支払ったと認めることはできない。もっとも、甲C第9号証の9の末尾には「H23.4.21 総務AからTEL ハウスクリーニング済残りの4万円ですべて終了しましたとのこと」との書き込みがあり、退去補修工事費用として4万円を支払ったことが認められる。したがって、上記支出の合計28万1500円を本件事故と相当因果関係を有する引越し費用の損害と認める。 (ウ) 一時立入り・帰省費用 一審原告7-1らは、同9-1が平成23年11月24日から同月26日にかけていわき市でホールボディカウンターによる検査を受けるために帰省した際の交通費等4万2144円が損害となると主張し、その証拠として甲C第9号証の7及び8を提出するが、これらの証拠は平成24年11月のものであり、平成23年11月の帰省の事実を認めるこ とはできない。また、仮に同7-1らが同9-1が平成24年11月に帰省した事実を主張するものとしても、前記のように、同9の世帯の避難のうち本件事故との相当因果関係が認められるのは同年8月31日までの部 できない。また、仮に同7-1らが同9-1が平成24年11月に帰省した事実を主張するものとしても、前記のように、同9の世帯の避難のうち本件事故との相当因果関係が認められるのは同年8月31日までの部分に限られるというべきであるから、同年9月以降の帰省に要した費用は本件事故と相当因果関係を有するものとはいえない。 (エ) 合計 28万9958円 - 502 -イ生活費増加費用(ア) 交通費一審原告7-1らは、同9-1が避難前は自宅で仕事をしていたが、避難後は通勤しなければならなくなったため通勤交通費が必要となったとして交通費損害24万8850円を主張する。しかし、前記認定事実 によれば、同9-1は避難前にも出張で整体を行うなどしていたのであり、交通費が全く発生していなかったわけではなく、また避難後に避難前よりも交通費が増加したと認めるに足りる証拠もない。したがって、本件事故と相当因果関係を有する損害が発生したと認めることはできず、上記主張は認められない。 (イ) 食費一審原告7-1らは、同9-1が、避難前は、食料品のうち、野菜、魚、酒等については物々交換だけで生活しており、それらについての食費がかかっていなかったが、避難後は、1月当たり合計8000円程度の食費がかかるようになったとして、平成23年3月から平成29年1 2月までの食費増加分の合計65万6000円が損害であると主張する。 しかし、一審原告9-1が、本件事故前は、野菜、魚、酒等については物々交換だけで生活していたと認めるに足りる証拠はなく、避難後に避難前よりも食費が増加したと認めることはできない。したがって、本件事故と相当因果関係を有する損害が発生したと認めること 酒等については物々交換だけで生活していたと認めるに足りる証拠はなく、避難後に避難前よりも食費が増加したと認めることはできない。したがって、本件事故と相当因果関係を有する損害が発生したと認めることはできず、 上記主張は認められない。 (ウ) 家賃増加分一審原告7-1らは、平成29年3月に住宅の借上げ制度が終了したことによる家賃の増加分が同9-1の損害となると主張するが、前記のとおり、同9の世帯の避難について本件事故との相当因果関係が認めら れるのは平成24年8月31日までの部分に限られるから、平成29年 - 503 -4月以降の家賃の増加分については本件事故と相当因果関係を有するとはいえない。したがって、上記主張は認められない。 (エ) その他(再度の引越し費用)一審原告7-1らは、同9-1が平成29年3月末に引っ越した際の引越し費用を損害として主張するが、前記のとおり、同9の世帯の避難 について本件事故との相当因果関係が認められるのは平成24年8月31日までの部分に限られるから、上記の引越しは本件事故と相当因果関係を有するとはいえず、上記主張は認められない。 (オ) 合計 0円ウ就労不能損害 一審原告9-1の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した53万7066円(乙C9の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 エ慰謝料一審原告9-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及 び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、出産して退院直後の同9-2及び出生したばかりの同9-3を伴っての避難であったこと、避難先で乳児である同9-3を養育しなければならなかったこと 及 び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、出産して退院直後の同9-2及び出生したばかりの同9-3を伴っての避難であったこと、避難先で乳児である同9-3を養育しなければならなかったこと、避難により従前の整体業ができなくなり避難先でジュース製造、建設業、喫茶店の職に転々と従事しなければならなかったことその他前記認定の一切 の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 オ合計 182万7024円(3) 一審原告9-2の損害ア生活費増加費用(交通費)一審原告7-1らは、同9-2が避難前は自宅で仕事をしていたが、避 難後は通勤しなければならなくなったため、通勤交通費が必要になった - 504 -として、平成25年10月1日以降の通勤交通費が損害であると主張する。しかし、同9の世帯の避難について本件事故との相当因果関係が認められるのは平成24年8月31日までの部分に限られるから、平成25年10月以降の避難先での通勤交通費は、仮にそれを要したとしても、本件事故と相当因果関係を有するとはいえず、上記主張は認められない。 イ生命・身体的損害一審原告7-1らは、同9-2は、避難後、情緒不安定、不眠等のうつ症状が出ており、平成29年10月25日に神経症と診断され、その際に治療費4360円を要したとしてこれを損害と主張する。しかし、同9-2が神経症の診断を受けたのは本件事故から6年以上が経過した平 成29年10月であり、同9-2の上記症状が本件事故と相当因果関係を有すると直ちに認めることはできず、上記主張は認められない。 ウ慰謝料一審原告9-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦 故と相当因果関係を有すると直ちに認めることはできず、上記主張は認められない。 ウ慰謝料一審原告9-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、出産のため入院してい た水戸市の産婦人科を退院した直後の避難であったこと、出生したばかりの同9-3を伴っての避難であり避難先で乳児を養育しなければならなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 エ合計 100万円 (4) 一審原告9-3の損害一審原告9-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、生後間もない時期に、いわき市から自動車で長時間かけて一宮市まで移動したという避難の状況、一般的に放射線の影響を受けやすいとされる乳児であったことその他前記認定の一 切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 - 505 - 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額ア一審原告9-1について 67万6778円イ一審原告9-2について 64万円ウ一審原告9-3について 84万円 (2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、これまで一審原告9の世帯について、以下のとおり賠償したことが認められる(乙C9の1・4)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告9-1に対し自主避難等に係る損害 12万円 (イ) 一審原告9-2に対し自主避難等に係る損害 64万円(ウ) 一審原告9-3に対し自主避難等に係る損害 72万円(エ) 合計 148万円イ ADRによる賠償(内訳) イ) 一審原告9-2に対し自主避難等に係る損害 64万円(ウ) 一審原告9-3に対し自主避難等に係る損害 72万円(エ) 合計 148万円イ ADRによる賠償(内訳) (ア) 一審原告9-3の精神的損害 12万円(イ) 一審原告9-1及び同9-2の営業損害 53万7066円(ウ) ADR弁護士費用 1万9712円(エ) 合計 67万6778円ウ合計 215万6778円 (3) 一審原告9の世帯に対する弁済額ア一審原告9-1に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 55万6778円 - 506 -ADRによる賠償のうち前記(2)イ(イ)の営業損害は一審原告9-1及び同9-2が営んでいた整体院に関するものであるが、同7-1らは、同9-1及び同9-2の営業損害を同9-1の就労不能損害として主張しているから、これを同9-1に対する弁済として扱うのが相当である。 前記(2)イ(ウ)は、一審原告9の世帯共通の弁護士費用の損害に対して 支払われたとみられるところ、同7-1らにおいても同9の世帯の共通の費用等の損害については同9-1の損害として主張していることから、これを同9-1に対する弁済として扱うのが相当である。 これらの合計額は55万6778円である。 (ウ) 合計 67万6778円 したがって、一審被告東京電力の一審原告9-1に対する弁済の抗弁は全部認められる。 イ一審原告9-2に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 64万円ADR以外による賠償について したがって、一審被告東京電力の一審原告9-1に対する弁済の抗弁は全部認められる。 イ一審原告9-2に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 64万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし て扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円前記(3)ア(イ)のとおり扱うから、ADRによる賠償による一審原告9-2に対する弁済額は0円となる。 (ウ) 合計 64万円 したがって、一審被告東京電力の一審原告9-2に対する弁済の抗弁は全部認められる。 ウ一審原告9-3に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし て扱うのが相当である。 - 507 -(イ) ADRによる賠償 12万円ADRによる賠償のうち前記(2)イ(ア)の精神的損害は一審原告9-3に対するものであるから、これを同9-3に対する弁済として扱うのが相当である。 (ウ) 合計 84万円 したがって、一審被告東京電力の一審原告9-3に対する弁済の抗弁は全部認められる。 4 認容額等(1) 一審原告9-1ア損害額 182万7024円 イ弁済額 67万6778円ウ弁済額控除後の損害額 115万0246円エ弁護士費用 12万円オ認容額 127万0246円(2) 一審原告9-2 ア損害額 100万円イ弁済額 64万円ウ弁済額控除後の損害額 36万円エ弁護士費用 4万円オ認容額 40万円 (3) 一審原告9-3ア損害額 100 イ弁済額 64万円ウ弁済額控除後の損害額 36万円エ弁護士費用 4万円オ認容額 40万円 (3) 一審原告9-3ア損害額 100万円イ弁済額 84万円ウ弁済額控除後の損害額 16万円エ弁護士費用 2万円 オ認容額 18万円 - 508 -第10 一審原告10の世帯 1 認定事実(甲C10の1のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等一審原告10-1(本件事故当時35歳)、その妻である同10-2(本件事故当時33歳)、同10-1及び同10-2の長女である同10-3 (本件事故当時2歳)、長男である同10-4(本件事故当時0歳)は、本件事故当時、福島県いわき市所在の同10-1の実家近くの賃貸アパート(福島第一原発からの距離52.00km(乙C10の1))に居住していた。 一審原告10-1は、本件事故前はとびとして働いており、特殊な高速道 路、橋等の重量のある物の足場を設置する仕事をしており、出張で遠方に行くこともあったが、基本的には福島県内で仕事をしていた。同10-2は、地元の愛知県にいた際に人間関係で悩み、精神病を患ったことがあり、心機一転のために福島県に転居したものであり、同10-1と結婚する前はいわき市で居酒屋を営んでいたが、結婚後は専業主婦となり、本件事故当時も専 業主婦であった。 (2) 避難開始の経緯等一審原告10の世帯は、平成23年3月12日に福島第一原発1号機が爆発した際に被ばくの危険性を感じ、同月14日に同原発3号機が爆発した際は更に被ばくの危険を感じた。そして、同10-1は、当時勤務していた会 社の上司から、同原発の爆発後 福島第一原発1号機が爆発した際に被ばくの危険性を感じ、同月14日に同原発3号機が爆発した際は更に被ばくの危険を感じた。そして、同10-1は、当時勤務していた会 社の上司から、同原発の爆発後の風向きから被ばくの危険があるから幼い子がいるなら避難した方がよいと勧められたこともあり、被ばくの危険を更に認識するようになった。同10-1は仕事をすぐに辞めることはできなかったため、同10-2が同10-3及び同10-4を連れて避難することにした。 一審原告10-2から同10-4までは、同月14日、いわき市の自宅を - 509 -自動車で出発し、国道で東京に向かい、約7時間かけて東京に入った。その後、同10-2らは、高速道路を利用して愛知県に向かい、途中の静岡県のサービスエリアで自動車を停めて車中で一泊した。その後、同10-2から同10-4までは、同10-2の実家に向かい、そこでしばらく生活することになった。 避難後、一審原告10-2から同10-4までは、同10-2の実家で肩身の狭い思いをし、また、福島県で生活する同10-1とは別に愛知県で生活するのは家計的に大きな負担であったため、同10-2から同10-4までは、同年4月22日、一旦福島県に戻った。 しかし、一審原告10-2から同10-4までは、テレビや新聞を見て、 核燃料を取り出せず放射能漏れは続いており被ばくの危険は改善される気配がないと考え、平成23年8月15日、再び愛知県に避難し、同県愛西市の県営住宅に入居した。 一審原告10-1は、仕事の都合でしばらくは同10-2らと一緒に避難することはできなかったが、同年10月に愛知県に避難し、同10の世帯は、 同県津島市の被災者支援のための住宅を借りて転居した。 (3) 避難後の状況等ア避 0-2らと一緒に避難することはできなかったが、同年10月に愛知県に避難し、同10の世帯は、 同県津島市の被災者支援のための住宅を借りて転居した。 (3) 避難後の状況等ア避難生活の状況一審原告10-1は、平成26年4月からはとびとして会社に勤めているが、愛知県に引っ越してからは親しくしていた友人がいないこともあ ってストレスが溜まるようになった。 一審原告10-2は、愛知県に戻ってからは再びストレスを抱えるようになり、うつ病を発症し、精神安定剤等の薬を服用し始めた。さらに、同10-2は、愛知県に来てから煙草を吸い始め、飲酒の量も増えた。 同10-2は、平成24年4月から1年間は津島市の臨時職員として中 学校の特別養護クラスの補助の仕事をしていたが、結局、精神状態が不 - 510 -安定になり、仕事ができなくなった。 一審原告10-3及び同10-4は、転居した津島市の学校に通学したが、同10-3らは福島から転居したことを隠して生活してきた。 一審原告10の世帯が入居した上記の被災者支援の住宅は平成28年3月まで居住できることになっていたが、同月以降については不明であっ たため、同年4月、津島市内の別の住宅に転居した。 イ本件事故時住所地の状況等一審原告10の世帯の本件事故当時の住所地はいわき市で、同市は自主的避難等対象区域であり、同市の環境放射能等の状況は前記第3章、第5のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告10の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域であるいわき市に居住していたところ、福島第一原発の爆発により被ばくの危険を感じ、同10-2から同10- 当因果関係が認められる部分一審原告10の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域であるいわき市に居住していたところ、福島第一原発の爆発により被ばくの危険を感じ、同10-2から同10-4までは、平成23年3月14日から同年4月22 日まで愛知県に避難し、いったんいわき市に戻った後、なお被ばくの危険があると考えて、同年8月15日、愛西市に避難し、同年10月、同10-1もいわき市から避難して、同10の世帯全員が津島市で生活するに至ったものである。 このうち、一審原告10-2から同10-4までの最初の避難については、 本件事故直後に被ばくの危険を感じたことによるものであり、本件事故によるものといえる。また、同10-2から同10-4までの2回目の避難については、いったんいわき市に戻ってから4か月近く経ってからの再避難ではあるが、同10の世帯には、幼児である同10-3及び乳児である同10-4がおり、一般的に幼児及び乳児は放射線の影響を受けやすいとされている ことから、被ばくへの不安を強く抱いてのことと考えられ、これもまた本件 - 511 -事故によるものとみることができるし、同10-2から同10-4までが避難している以上、これに合流する形で同10-1が平成23年10月に避難して同居を回復したこともやむをえないことであったといえ、これも本件事故によるものというのが相当である。 他方、いわき市の環境放射能等の状況は前記認定のとおりであり、本件事 故直後の混乱期は別として、一般的には放射能の影響を受けやすいとされる幼児である一審原告10-3及び乳児である同10-4がいたことを考慮しても、遅くとも平成24年8月31日までには、避難先からいわき市に帰還することに支障はなくなっていたというべきである。 される幼児である一審原告10-3及び乳児である同10-4がいたことを考慮しても、遅くとも平成24年8月31日までには、避難先からいわき市に帰還することに支障はなくなっていたというべきである。 したがって、一審原告10の世帯の避難及び避難生活については、平成2 4年8月31日までを限度として、本件事故との相当因果関係が認められると解するのが相当である。 (2) 一審原告10-1の損害一審原告10-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、同10-1が本件事故から 約7か月経った平成23年10月に先に避難した同10-2から同10-4までと合流する形での避難であったこと、避難先で乳幼児を養育しなければならなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを40万円と認めるのが相当である。 (3) 一審原告10-2の損害 一審原告10-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、本件事故直後に避難したもののやむなく自宅に戻り、その後再び避難していること、避難により精神状態が不安定になったこと、乳幼児を伴った避難で、避難先で乳幼児を養育しなければならなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これ を80万円と認めるのが相当である。 - 512 -(4) 一審原告10-3の損害一審原告10-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、本件事故直後の避難とその後の再避難を経験していることその他前記認定の一切の事情に照らせば、これを80万円と認めるのが相当である。 (5) 一審原告10 中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、本件事故直後の避難とその後の再避難を経験していることその他前記認定の一切の事情に照らせば、これを80万円と認めるのが相当である。 (5) 一審原告10-4の損害一審原告10-4について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、本件事故直後の避難とその後の再避難を経験していることその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを80万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額ア一審原告10-1について 12万円イ一審原告10-2について 22万円ウ一審原告10-3について 72万円 エ一審原告10-4について 72万円(2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、これまで一審原告10の世帯に対し、以下のとおり賠償を行ったことが認められる(乙C10の3、6、弁論の全趣旨)。 ア ADR以外による賠償 (ア) 一審原告10-1に対し自主避難等に係る損害 12万円(イ) 一審原告10-2に対し自主避難等に係る損害 12万円(ウ) 一審原告10-3に対し自主避難等に係る損害 72万円(エ) 一審原告10-4に対し自主避難等に係る損害 72万円(オ) 合計 168万円 イ ADRによる賠償 10万円 - 513 -ADRにより一審原告10-2の精神的損害(避難生活)として10万円が賠償された。 ウ合計 178万円(3) 一審原告10の世帯に対する各弁済額ア一審原告10-1に対する弁済額 (ア) ADR以外による賠償 生活)として10万円が賠償された。 ウ合計 178万円(3) 一審原告10の世帯に対する各弁済額ア一審原告10-1に対する弁済額 (ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円(ウ) 合計 12万円 したがって、一審被告東京電力の一審原告10-1に対する弁済の抗弁は全部認められる。 イ一審原告10-2に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし て扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 10万円ADRによる賠償は、その内訳上、一審原告10-2に対して行われたことが明らかである。 (ウ) 合計 22万円 したがって、一審被告東京電力の一審原告10-2に対する弁済の抗弁は全部認められる。 ウ一審原告10-3に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし て扱うのが相当である。 - 514 -(イ) ADRによる賠償 0円(ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告10-3に対する弁済の抗弁は全部認められる。 エ一審原告10-4に対する弁済額 (ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円(ウ) 合計 (ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円(ウ) 合計 72万円 したがって、一審被告東京電力の一審原告10-4に対する弁済の抗弁は全部認められる。 4 認容額等(1) 一審原告10-1ア損害額 40万円 イ弁済額 12万円ウ弁済額控除後の損害額 28万円エ弁護士費用 3万円オ認容額 31万円(2) 一審原告10-2 ア損害額 80万円イ弁済額 22万円ウ弁済額控除後の損害額 58万円エ弁護士費用 6万円オ認容額 64万円 (3) 一審原告10-3 - 515 -ア損害額 80万円イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害額 8万円エ弁護士費用 1万円オ認容額 9万円 (4) 一審原告10-4ア損害額 80万円イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害額 8万円エ弁護士費用 1万円 オ認容額 9万円第11 一審原告11の世帯及び同29 1 認定事実(甲C11の1・2、甲C29の1、一審原告11-1本人(原審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等 一審原告11-1(本件事故当時52歳)、その妻である元原審原告11-2(本件事故当時47歳)、一審原告11-1及び元原審原告11-2の長男である一審原告29(本件事故当時21歳)、長女である同11-3(本件事故当時18歳)は、本件事故当時、福 ある元原審原告11-2(本件事故当時47歳)、一審原告11-1及び元原審原告11-2の長男である一審原告29(本件事故当時21歳)、長女である同11-3(本件事故当時18歳)は、本件事故当時、福島県双葉郡富岡町所在の自宅(福島第一原発からの距離8.1km(乙C11の1、乙C29の1))に 居住していた。 一審原告11-1は、富岡町で生まれ、昭和55年頃から電気工事の自営業を始め、本件事故当時もこの仕事を続けていた。一審原告11-1及び元原審原告11-2は、平成3年に、富岡町で、それぞれの実家にも近い土地を借りて一軒家の住居を建築した。 元原審原告11-2は、長女である一審原告11-3が小学生になった頃 - 516 -から、自宅で託児所を始め、また、同11-3が高校に進学した頃から、実家の居酒屋の手伝いをしていた。同29は、富岡町の小中学校を卒業後、いわき市内の高校に進学し、高校卒業後は警備会社に就職し、その後、一審被告東京電力の関連会社に勤務し、本件事故当時は福島第一原発4号機の中で仕事をしていた。同11-3は、富岡町の高校を中退後は、元原審原告11 -2の託児の仕事の手伝い及び同元原審原告の実家の居酒屋の手伝いの仕事をしていた。 一審原告11の世帯及び同29並びに元原審原告11-2は、本件事故前は、近所の人から野菜や果物をもらうなどしており、肉や米を除いては食材をスーパーマーケット等で購入することはほとんどなかった。一審原告11 -1は、地域の青年会OBや消防団にも入っており、消防団では月に少なくとも2回は訓練をし、消防団の大会の前は2か月前くらいから毎日のように練習をしていた。その他にも、一審原告11の世帯、同29、元原審原告11-2は、祭り等を通じて地域の人と強い繋がりを有していた。 とも2回は訓練をし、消防団の大会の前は2か月前くらいから毎日のように練習をしていた。その他にも、一審原告11の世帯、同29、元原審原告11-2は、祭り等を通じて地域の人と強い繋がりを有していた。 (2) 避難開始の経緯等 一審原告11-1は、平成23年3月11日の本件地震発生当時、広野火力発電所の地下でケーブルを通線する工事をしていたが、地上に上った後、津波を回避するために高台に避難していたところ、本件津波が襲来した。同11-1は、自宅にたどり着き、家族と合流したが、消防団に所属していたため、すぐに震災の対応のために自宅を出て、同日夜になって富岡町の見回 りをすることになり、まだ家に残っている住民にまた津波が来るかもしれないから高い所へ避難するよう指示するなどした。同11-1は、消防団が一旦解散となり、自宅に戻って一夜を明かした後、同月12日午前8時頃、災害対策本部に行ったところ、福島第一原発が危険なので、富岡町の住民は避難することになったと聞いた。そこで、同11-1は、同日、地域の人々に 富岡町の住民は避難することになったことを伝え、西方向に逃げるように伝 - 517 -えて回った。同日夕方、消防団の団長から、見回りや住民への避難指示も一段落したため消防団員も避難するようにとの指示があり、同11-1も福島県双葉郡川内村の避難所へ行くことにし、同避難所でも消防団の団員として毛布の配布等の仕事をしていた。同11-1は本件事故があったことを川内村の避難所で知り、同月16日頃には川内村からも避難しなければならなく なったため、同月17日、家族のいる郡山市の避難所で家族と合流した。 元原審原告11-2、一審原告11-3及び同29は、平成23年3月11日の本件地震後、元原審原告11-2の実家に一旦避難した。し なったため、同月17日、家族のいる郡山市の避難所で家族と合流した。 元原審原告11-2、一審原告11-3及び同29は、平成23年3月11日の本件地震後、元原審原告11-2の実家に一旦避難した。しかし、津波が来るかもしれないと伝えられたため、深夜になって富岡町の体育館に向かった。その後、元原審原告11-2、一審原告11-3及び同29は、無 線放送で西方向に逃げるよう伝えられたことから、同月12日、西方の川内村の避難所へ行き、同村の親戚の家に同月15日頃まで避難していたが、その家には、他にもたくさんの親戚が避難していたため、食べ物も余りなく、風呂にも入れない状態であった。一審原告11の世帯及び同29並びに元原審原告11-2は、同月15日、郡山市の避難所に行ったが、富岡町民は受 け入れられないと言われて避難所に入れず、駐車場で車中泊をしていた。 元原審原告11-2、一審原告11-3及び同29は、車中での生活を続けるわけにもいかず、一審原告11-1が以前働いていた川崎市の会社の社長から避難してきてもよいと言われたため、同市に避難することにし、同月21日頃、同市に自動車で避難した。 (3) 避難後の状況等一審原告11の世帯及び同29並びに元原審原告11-2は、川崎市では、一審原告11-1の知り合いの社長の会社の社宅で暮らすことになったが、6畳一間の部屋は大人4人で生活するには狭く、居室は3階にあったにもかかわらずエレベーターがなかったため、膝の調子の悪い同元原審原告は不便 な生活を強いられた。一審原告11の世帯及び同29並びに元原審原告11 - 518 --2は、4人で暮らせるような借上げ住宅を探したが、社宅に入っていることを理由に借上げ住宅への入居を拒否された。 一審原告11-1は、平成30年2月まで 9並びに元原審原告11 - 518 --2は、4人で暮らせるような借上げ住宅を探したが、社宅に入っていることを理由に借上げ住宅への入居を拒否された。 一審原告11-1は、平成30年2月までは川崎市で生活していたものの、同月、同11-1の兄が居住するいわき市の家に転居し、現在は兄と二人で生活し、いわき市内で仕事をしている。 元原審原告11-2は、平成23年4月末に、川崎市から愛知県豊橋市の借上げ住宅に一人で転居したが、平成28年12月、心筋梗塞で死亡した。 一審原告29は、平成23年4月半ばに東京都小平市でビルの設備管理会社の仕事が決まったことから、川崎市から小平市に転居した。その後、福島県在住の頃から交際していた女性と同居するようになり、同年夏頃には埼玉 県の借上げ住宅に転居した。同29は、平成25年8月に上記女性と結婚し、平成26年12月に千葉県柏市に転居した。同29は、引き続き上記会社に勤務している。 一審原告11-3は、平成23年3月末頃、当時交際していた男性が東京に避難していたことから東京に転居したが、平成24年1月頃に上記交際相 手と別れ、元原審原告11-2のいる豊橋市に転居し、平成26年3月▲▲日には長男を出産した。 一審原告11-1は、平成30年5月頃、本件事故前に居住していた自宅を取り壊し、その敷地を更地にして地主に返還した。 (4) 本件事故時住所地の状況等 一審原告11の世帯及び同29並びに元原審原告11-2の本件事故当時の住所地は富岡町で、同町は旧居住制限区域であり、旧居住制限区域(大熊町の居住制限区域を除く。)の指定が解除されたのは平成29年4月1日であり、富岡町における環境放射能等の状況は前記第3章、第4、2のとおりである。 2 損害 - 519 - (大熊町の居住制限区域を除く。)の指定が解除されたのは平成29年4月1日であり、富岡町における環境放射能等の状況は前記第3章、第4、2のとおりである。 2 損害 - 519 -(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告11の世帯及び同29並びに元原審原告11-2が本件事故当時、富岡町に居住し、同町が福島第一原発に近接していて旧居住制限区域となって避難を余儀なくされたことに加え、旧居住制限区域の指定は、平成29年4月1日まで続き、約6年もの長期間にわたって居住制限されて帰還できな かった地域に指定解除により直ちに帰還できるというものでもなく、一般に、居住制限が解除されてから帰還が可能となるまでに少なくとも1年は要すると考えられる。 したがって、一審原告11-1が、消防団員として稼働しつつまず避難した川内村の避難所において本件事故があったことを知り、平成23年3月1 7日に郡山市の避難所に避難したこと、同避難所では車中生活を余儀なくされ、同月21日に知り合いを頼って川崎市に避難したこと及び同市における避難生活を継続したことは本件事故によるものであるが、富岡町の旧居住制限区域の指定が解除された後である平成30年2月にいわき市の同11-1の兄方に転居し、一般に帰還が可能になったと考えられる同年4月以降も富 岡町に帰還することなく同年5月に自宅を取り壊していることからすると、同年2月のいわき市への転居の段階で本件事故による避難生活を終え、同市への転居後は、自らの意思で富岡町に帰還せずいわき市で新生活を始めることを選択したとみるべきであるから、本件事故と相当因果関係ある避難生活は同月までの部分に限るのが相当である。 元原審原告11-2が、平成23年3月12日、本件地震後避難 市で新生活を始めることを選択したとみるべきであるから、本件事故と相当因果関係ある避難生活は同月までの部分に限るのが相当である。 元原審原告11-2が、平成23年3月12日、本件地震後避難していた富岡町の体育館から川内村の避難所及び同村の親戚の家に避難したこと、同月15日、そこから郡山市の避難所の駐車場に避難したこと、同月21日に夫や子らとともに川崎市に避難したこと、そこは狭く、エレベーターもなかったため、同年4月末に、川崎市から豊橋市の借上げ住宅に一人で転居した ことは、いずれも本件事故によるものと認められる。そして、平成29年4 - 520 -月1日の旧居住制限区域の指定解除を見ることなく、平成28年12月に死亡したのであり、同月の死亡までの避難生活は本件事故と相当因果関係がある。 一審原告29が、平成23年3月12日、富岡町の体育館から川内村の避難所及び同村の親戚の家に避難したこと、同月15日、そこから郡山市の避 難所の駐車場に避難したこと、同月21日に父母や妹とともに川崎市に避難したこと、そこが狭く、小平市での仕事も決まったことから、同年4月半ばに川崎市から小平市に転居したことは、いずれも本件事故によるものと認められる。同29が、同年夏頃に埼玉県の借上げ住宅に転居し、平成25年8月に結婚して、平成26年12月に千葉県柏市に転居した時点では、未だ富 岡町の旧居住制限地域は解除されていなかったから、埼玉県や柏市で生活を続けることとなったが、一般に富岡町への帰還が可能になったと考えられる平成30年4月以降も富岡町に帰還せず柏市での生活を続けたことは、自らの意思による選択であったといえる。したがって、同29の避難及び避難生活は、同年3月31日までの限度で本件事故との相当因果関係が認められる。 富岡町に帰還せず柏市での生活を続けたことは、自らの意思による選択であったといえる。したがって、同29の避難及び避難生活は、同年3月31日までの限度で本件事故との相当因果関係が認められる。 一審原告11-3が、平成23年3月12日、富岡町の体育館から川内村の避難所及び同村の親戚の家に避難したこと、同月15日、そこから郡山市の避難所の駐車場に避難したこと、同月21日に父母や兄とともに川崎市に避難したこと、そこが狭かったことから同月末頃に交際男性の避難先である東京に避難していたことは本件事故によるものといえる。同11-3が、平 成24年1月頃に元原審原告11-2のいる豊橋市に転居したことも、未だ富岡町の旧居住制限区域が解除されていない時期のことであり、本件事故によるものといわざるを得ない。しかし、一般に富岡町への帰還が可能になったと考えられる平成30年4月以降も富岡町に帰還せず豊橋市での生活を続けたことは、自らの意思による選択であったといえる。したがって、一審原 告11-3の避難及び避難生活は、平成30年3月31日までの限度で本件 - 521 -事故との相当因果関係が認められる。 (2) 一審原告11-1の損害一審原告11-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、住所に近い福島第一原発で本件事故が発生して避難を余儀なくされたこと、緊迫した状況で川崎市まで 転々と避難しなければならなかったこと、避難先が狭いなどの事情により家族が離れ離れの避難生活となったこと、その状況下で妻である元原審原告11-2を亡くしたこと、職を変わらざるを得なかったこと、富岡町が旧居住制限区域となりその指定が約6年間解除されなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、こ その状況下で妻である元原審原告11-2を亡くしたこと、職を変わらざるを得なかったこと、富岡町が旧居住制限区域となりその指定が約6年間解除されなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを900万円と認めるのが相当である。 (3) 元原審原告11-2の損害元原審原告11-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、住所に近い福島第一原発で本件事故が発生して避難を余儀なくされたこと、緊迫した状況で川崎市まで転々と避難しなければならなかったこと、避難先が狭いなどの事情により 家族が離れ離れの避難生活となったこと、託児の仕事ができなくなったこと、富岡町の旧居住制限区域の指定の解除を見ることなく病気により死亡したことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを900万円と認めるのが相当である。 (4) 一審原告29の損害 ア避難費用(ア) 交通費一審原告29の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した8万2000円(乙C29の3)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (イ) 一時立入り・帰省費用 - 522 -一審原告1-1らは、同29が一時立入り・帰省費用として12万3772円の損害を有すると主張するが、一審被告東京電力が既に賠償した5万6000円(乙C29の3)を超えて同29が一時立入り・帰省費用を支出したことを認めることはできないから、5万6000円を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 イ就労不能損害一審原告29の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した97万7741円(乙C29の3)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 の全趣旨)。 イ就労不能損害一審原告29の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した97万7741円(乙C29の3)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 ウ被ばく検査費用 一審原告29の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した3万4000円(乙C29の3)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 エ慰謝料一審原告29について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び 避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、住所に近く仕事場でもあった福島第一原発で本件事故が発生して避難を余儀なくされたこと、緊迫した状況で川崎市まで転々と避難しなければならなかったこと、避難先が狭いなどの事情により家族が離れ離れの避難生活となったこと、富岡町の旧居住制限区域の指定が約6年間解除されず婚姻後も帰還できな かったこと、職を変わらざるをえなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを900万円と認めるのが相当である。 オ合計 1014万9741円(5) 一審原告11-3の損害一審原告11-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及 び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、住所に近い福島第一原発で - 523 -本件事故が発生して避難を余儀なくされたこと、緊迫した状況で川崎市まで転々と避難しなければならなかったこと、避難先が狭いなどの事情により家族が離れ離れの避難生活となったこと、元原審原告11-2の託児所やその実家の居酒屋の手伝いができなくなったこと、富岡町の旧居住制限区域の指定が約6年間解除されず、出生した子を避難先で養育しなければならなかっ たことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを900万円と認 の手伝いができなくなったこと、富岡町の旧居住制限区域の指定が約6年間解除されず、出生した子を避難先で養育しなければならなかっ たことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを900万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額ア一審原告11-1について 5990万3842円 イ元原審原告11-2について 3014万3229円ウ一審原告29について 2407万0156円エ一審原告11-3について 1708万5734円(2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、これまで一審原告11の世帯及び同29並びに元原 審原告11-2に対し、ADR以外により、以下のとおりの賠償を行ったことが認められる(乙C11の5、29の3、45の1から25まで、弁論の全趣旨)。 (内訳)ア一審原告11-1に対し (ア) その他(財物以外)、一時立入り費用、精神的損害(避難生活)、避難・帰宅費用、実費 971万6400円(イ) 財物(建物、建築物、構築物・庭木、借地権・諸費用)1996万2385円(ウ) 合計 2967万8785円 イ元原審原告11-2に対し - 524 -(ア) その他(財物以外)、就労不能損害、精神的損害(避難生活)、避難・帰宅費用、実費 2426万0529円(イ) 財物(祭祀にかかる費用、諸費用、仏壇・仏具一式、家財)608万2700円(ウ) 合計 3034万3229円 ウ一審原告29に対し(ア) その他(財物以外)、一時立入り費用、検査費用(人)、精神的損害(避難生活)、避難・帰宅費用、就労不能損害、実費2367万5157円(イ) 財物(家財、仏壇・仏具一式、 告29に対し(ア) その他(財物以外)、一時立入り費用、検査費用(人)、精神的損害(避難生活)、避難・帰宅費用、就労不能損害、実費2367万5157円(イ) 財物(家財、仏壇・仏具一式、祭祀にかかる費用、諸費用) 608万2700円(ウ) 合計 2975万7857円エ一審原告11-3に対し(ア) その他(財物以外)、精神的損害(避難生活)、避難・帰宅費用、生命・身体的損害、就労不能損害、実費 1708万5734円(イ) 財物 0円(ウ) 合計 1708万5734円(3) 一審原告11の世帯及び同29並びに元原審原告11-2に対する弁済額 ア一審原告11-1に対する弁済額(ア) 財物損害以外の損害に対する賠償 971万6400円(イ) 財物損害に対する賠償 0円一審原告11-1が本件で請求している損害は財物損害以外の損害であり、財物損害とは訴訟物を異にするから、同11-1の財物損害に対 する賠償を弁済とみることはできない。 - 525 -(ウ) 合計 971万6400円したがって、一審被告東京電力の一審原告11-1に対する弁済の抗弁は一部認められる。 イ元原審原告11-2に対する弁済額(ア) 財物損害以外の損害に対する賠償 2426万0529円 (イ) 財物損害に対する賠償 0円元原審原告11-2が死亡前に本件で請求していた損害は財物損害以外の損害であり、財物損害とは訴訟物を異にするから、同元原審原告の財物損害に対する賠償を弁済とみることはできない。 (ウ) 合計 2426万0529円 したがって、一審被告東京電力の元原審原告11-2に対する弁済の抗弁は一部認められる。 ウ一審原告29に対する弁済額(ア) 財物損害以外 ない。 (ウ) 合計 2426万0529円 したがって、一審被告東京電力の元原審原告11-2に対する弁済の抗弁は一部認められる。 ウ一審原告29に対する弁済額(ア) 財物損害以外の損害に対する賠償 2367万5157円(イ) 財物損害に対する賠償 0円 一審原告29が本件で請求している損害は財物損害以外の損害であり、財物損害とは訴訟物を異にするから、同29の財物損害に対する賠償を弁済とみることはできない。 (ウ) 合計 2367万5157円したがって、一審被告東京電力の一審原告29に対する弁済の抗弁は一 部認められる。 エ一審原告11-3に対する弁済額(ア) 財物損害以外の損害に対する賠償 1708万5734円(イ) 財物損害に対する賠償 0円(ウ) 合計 1708万5734円 したがって、一審被告東京電力の一審原告11-3に対する弁済の抗弁 - 526 -は全部認められる。 4 認容額等(1) 一審原告11-1ア損害額 900万円イ弁済額 971万6400円 ウ弁済額控除後の損害額 0円エ元原審原告11-2からの承継額 0円(下記(2)ウ)オ認容額 0円(2) 元原審原告11-2ア損害額 900万円 イ弁済額 2426万0529円ウ弁済額控除後の損害額 0円(3) 一審原告29ア損害額 1014万9741円イ弁済額 2367万5157円 ウ弁済額控除後の損害額 0円エ元原審原告11-2からの承継額 0円(上記(2)ウ)オ認容額 0円(4) 一審原告11-3ア損害額 900万円 イ弁済額 1708万5734円ウ弁済額控除後の損害額 0円 の承継額 0円(上記(2)ウ)オ認容額 0円(4) 一審原告11-3ア損害額 900万円 イ弁済額 1708万5734円ウ弁済額控除後の損害額 0円エ元原審原告11-2からの承継額 0円(前記(2)ウ)オ認容額 0円第12 一審原告12の世帯 1 認定事実(甲C12の1、一審原告12-1本人(原審)のほか後掲のもの) - 527 -(1) 本件事故前の状況等一審原告12-1(本件事故当時34歳)及びその長女である同12-2(本件事故当時8歳)は、本件事故当時、同12-1の父と共に福島県伊達郡国見町所在の同12-1の父の持ち家(福島第一原発からの距離66.40km(乙C12の2))に住んでいた。 一審原告12-1は、平成23年1月まで医療事務職の契約社員として薬局で勤務しており、同年4月1日からは、Cで嘱託医療事務職員として勤務することになっていた。同12-2は小学2年生であった。同12-1は、実家で父と同居していたため、経済的にも子育てについても父の援助を受けることができ、近所には幼なじみや知り合いが多く、米や野菜を分けてもら うこともあった。 (2) 避難開始の経緯等一審原告12-1は、本件事故後、同12-2の健康被害等を心配していたが、避難する当てもなく、平成23年4月1日からCでの勤務が決まっていたことなどから、なるべく外出しないようにしながら実家での生活を続け ていた。しかし、同12-1は、愛知県弥富市に住む知人から避難を強く勧められ、同年3月19日頃、一審原告12の世帯での避難を決断し、福島空港から中部国際空港へ飛行機で移動し、上記の弥富市の知人宅へ避難した。 しかし、同12-1は、同年4月1日からCでの勤務が を強く勧められ、同年3月19日頃、一審原告12の世帯での避難を決断し、福島空港から中部国際空港へ飛行機で移動し、上記の弥富市の知人宅へ避難した。 しかし、同12-1は、同年4月1日からCでの勤務が決まっており、生活費を捻出する必要があったため、同年3月28日、同12-2を上記知人に 託し、一人で国見町の実家に戻ることとした。同12-1は、当時は除染作業等に時間が掛かるとは思っておらず、状況が落ち着いたら同12-2を実家に呼び寄せて一緒に生活できると思っていた。 一審原告12-1は、平成23年4月1日からCでの勤務を開始したが、間もなく、同12-2を預かってもらっていた上記知人から、同12-2が 精神的に不安定なので医師に診せたところ、PTSDのような症状と説明さ - 528 -れたとの連絡を受けた。同12-1は、同12-2を一人で見知らぬ土地の知人宅で避難生活させることに限界を感じ、やむなくCを退職し、同12-2と一緒に避難することを決断した。一方で、同12-1の父は、知人宅に住まわせてもらうわけにもいかず、また、自宅を残し、住み慣れた福島県を離れる決断をすることができなかったため、実家に残ることになった。同1 2-1は、同月25日頃、Cを退職し、同月28日、同12-2を預かってもらっている知人宅に一緒に住まわせてもらうことになったが、上記知人宅にいつまでも住まわせてもらうわけにもいかず、同年6月30日、同12の世帯は賃貸アパートを見つけて転居し、さらに、同年12月24日には愛知県の借上げ住宅に転居した。 (3) 避難後の状況等一審原告12-1は、平成23年11月から医療事務の仕事に就いていたが、平成28年1月に再婚し、同年6月に長男を出産した。同12の世帯は、再婚に伴って愛知県春日井市に転居し、 3) 避難後の状況等一審原告12-1は、平成23年11月から医療事務の仕事に就いていたが、平成28年1月に再婚し、同年6月に長男を出産した。同12の世帯は、再婚に伴って愛知県春日井市に転居し、同12-1は、平成29年3月には上記医療事務の仕事を退職した。同12-2は、平成23年4月から弥富市 内の公立小学校に転校し、同校を卒業後は私立中学校、愛知県内の高校に進学した。同12の世帯は、避難後は、国見町の実家にいる同12-1の父には年に1回程度しか会っていない。また、同12-2は、友達と離れ、全く知らない土地へ転校することになり、避難当初は、福島へ一時帰宅するたびに衣服を全部捨てるよう迫られるなど、傷つくこともあった。 なお、国見町の自宅には一審原告12-1の父が現在も居住している。 (4) 本件事故時住所地の状況等一審原告12の世帯の本件事故当時の住所地は国見町で、同町は自主的避難等対象区域であり、同町における環境放射能等の状況は前記第3章、第1、3のとおりである。 2 損害 - 529 -(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告12の世帯は、自主的避難等対象区域である国見町に居住していたところ、小学生であった同12-2の本件事故による健康被害を心配していた折から同12-1の知人から避難を勧められ、平成23年3月19日頃に弥富市に避難したものであり、同12-1は同12-2を残して一 旦は国見町に戻ったものの、同12-2が不調を来したため、同12-1も同年4月28日、弥富市に再避難しており、同12の世帯の避難(同12-1の再避難を含む。)は本件事故によるものと認められる。 他方、国見町の環境放射能の状況等は前記認定のとおりであり、本件事故直後の混乱期は別として、一審 再避難しており、同12の世帯の避難(同12-1の再避難を含む。)は本件事故によるものと認められる。 他方、国見町の環境放射能の状況等は前記認定のとおりであり、本件事故直後の混乱期は別として、一審原告12の世帯には一般的には放射能の影響 を受けやすいとされる子どもであった同12-2がいたことを考慮しても、遅くとも平成24年8月31日までには、避難先から国見町に帰還することに支障はなくなったというべきである。 したがって、一審原告12の世帯の避難及び避難生活のうち本件事故と相当因果関係が認められるのは平成24年8月31日までの部分に限られると するのが相当である。 (2) 一審原告12-1の損害ア避難費用(ア) 交通費一審原告12の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した 8万4750円(乙C12の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (イ) 引越し費用一審原告12の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した11万9150円(乙C12の1)を本件事故と相当因果関係を有する 損害と認める(弁論の全趣旨)。 - 530 -(ウ) 合計 20万3900円イ生活費増加費用(ア) 家財道具購入費一審原告1-1らは、原判決998頁から999頁までの別紙「家財道具一覧(原告番号12-1)」の「原告の請求」欄記載のとおり同1 2の世帯の家財道具購入費75万4991円が同12-1の損害であると主張する。しかし、消耗品については本件事故による避難がなくとも必要となるものであるから、その購入費用は本件事故と相当因果関係を有するとは直ちにいえない。一方で、同12の世帯の避難前の住所には同12-1の父が住み続けていたのであるから、父が生活する がなくとも必要となるものであるから、その購入費用は本件事故と相当因果関係を有するとは直ちにいえない。一方で、同12の世帯の避難前の住所には同12-1の父が住み続けていたのであるから、父が生活するために必 要な主な家財道具を持ち出すことはできず、比較的大型の家財道具については、父が使用する必要性や輸送費用との兼ね合いから、避難先で新たに購入したことにも合理性があり、比較的大型の家財道具の購入費用は本件事故と相当因果関係を有するといえる。したがって、上記別紙の「認定額」欄記載のとおり、同12-1の家財道具購入費用69万07 27円(甲C12の5から12の16の2まで)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 (イ) 光熱費一審原告1-1らは、同12の世帯は本件事故による避難前は同12-1の父と同居しており水道光熱費が発生していなかったが避難後は水 道光熱費を負担する必要が生じたとして、98万5608円が同12-1の損害であると主張する。しかし、同12の世帯について本件事故と相当因果関係が認められる避難生活は平成24年8月31日までの部分に限られ、同12の世帯の請求に対して一審被告東京電力が生活費増加費用(二重生活に伴う生活費増加分)として既に賠償した平成23年分 18万円及び平成24年分36万円(乙C12の1)のうち42万円 - 531 -(平成23年分18万円、平成24年1月から8月までの分24万円)については避難と相当因果関係ある損害と認める余地があるが(弁論の全趣旨)、これを超えて本件事故と相当因果関係を有する水道光熱費増加の損害が発生したと認めるに足りる証拠はない。 したがって、42万円の限度で本件事故と相当因果関係を有する生活 費(水道光熱費)増加の損害と認める。 (ウ) 家 因果関係を有する水道光熱費増加の損害が発生したと認めるに足りる証拠はない。 したがって、42万円の限度で本件事故と相当因果関係を有する生活 費(水道光熱費)増加の損害と認める。 (ウ) 家賃増加分一審原告12の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した62万5864円(乙C12の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (エ) 合計 173万6591円ウ就労不能損害一審原告12の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した12万5200円(乙C12の1)を本件事故と相当因果関係を有する就労不能損害と認める(弁論の全趣旨)。 エ慰謝料一審原告12-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、小学生である同12-2の健康被害を心配しての避難であったこと、一時的に同12-2と離れて生活しなければならなかったこと、同12-2と同居するため転 職先を辞めなければならなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 オ合計 306万5691円(3) 一審原告12-2の損害一審原告12-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及 び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、知らない土地で母である同 - 532 -12-1と離れて生活しなければならないこととなり精神的にも不安定となったこと、避難に伴い小学校を転校しなければならなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、本件事故と相当因果関係ある慰謝料額については、これを100万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁 (1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額 認定の一切の事情を考慮すれば、本件事故と相当因果関係ある慰謝料額については、これを100万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁 (1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額ア一審原告12-1について 160万7413円イ一審原告12-2について 88万円(2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、これまで一審原告12の世帯に対し、以下のとおり 賠償を行ったことが認められる(乙C12の1・4、乙C53の1から3まで、弁論の全趣旨)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告12-1に対し自主避難等に係る損害 12万円(イ) 一審原告12-2に対し自主避難等に係る損害 64万円 (ウ) 合計 76万円イ ADRによる賠償 172万7413円ADRにより、一審原告12の世帯及び同12-1の父に対する和解金額が248万7413円と合意され、そこからADR以外による賠償額76万円を控除した172万7413円が支払われた。 (内訳)(ア) 避難費用、生活費増加費用、避難雑費 200万9764円(イ) 一審原告12-1の就労不能損害 12万5200円(ウ) 精神的損害 28万円(エ) ADR弁護士費用 7万2449円 (オ) 合計(和解金額) 248万7413円 - 533 -(カ) 既払い金 76万円(前記ア(ウ))(キ) 合計(支払い額) 172万7413円上記(イ)は、一審原告12-1に対するものであることが明示されており、同12-1の父は国見町の自宅にとどまり避難していないから、上記(ア)の費用を支出したのは同12-1であり、上記(ウ)も同12の 上記(イ)は、一審原告12-1に対するものであることが明示されており、同12-1の父は国見町の自宅にとどまり避難していないから、上記(ア)の費用を支出したのは同12-1であり、上記(ウ)も同12の世帯に対 するものであり、上記(エ)も同12-1が支出した同12の世帯の弁護士費用であるといえる。したがって、和解金額248万7413円は同12の世帯の損害を対象としたものであり、ADRによる賠償172万7413円は全額が同12の世帯に対するものである。 ウ合計 248万7413円 (3) 一審原告12の世帯に対する各弁済額ア一審原告12-1に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償ADRで合意した和解金額のうち前記(2)イ(ア)及び(イ)は同12-1の損害に対するもの、同(ウ)は同12の世帯の損害に対するもの、同(エ)は同12-1が支出した同12の世帯共通の損害に対するものであるが、この和解金額から前記(2)ア(ア)の同12-1に対する12万円 及び同(イ)の同12-2に対する64万円が控除されて支払われた関係で、同12-2に対する賠償はすべて既払い金により控除済みとみて、ADRによる賠償の全額172万7413円を同12-1に対する弁済額とする。 (ウ) 合計 184万7413円 したがって、一審被告東京電力の一審原告12-1に対する弁済の - 534 -抗弁160万7413円は全部認められる。 イ一審原告12-2に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 64万円ADR以外によ -1に対する弁済の - 534 -抗弁160万7413円は全部認められる。 イ一審原告12-2に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 64万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRによる和解金額のうち一審原告12-2の損害に係る部分は既払い金により控除済みであり、ADRによる賠償額のうち同12-2に対する弁済額を0円とする。 (ウ) 合計 64万円 したがって、一審被告東京電力の一審原告12-2に対する弁済の抗弁は一部認められる。 4 認容額等(1) 一審原告12-1ア損害額 306万5691円 イ弁済額 160万7413円ウ弁済額控除後の損害額 145万8278円エ弁護士費用 15万円オ認容額 160万8278円(2) 一審原告12-2 ア損害額 100万円イ弁済額 64万円ウ弁済額控除後の損害額 36万円エ弁護士費用 4万円オ認容額 40万円 第13 一審原告13の世帯 - 535 - 1 認定事実(甲C13の1、一審原告13-2本人(原審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等一審原告13-1(本件事故当時25歳)、その妻である同13-2(本件事故当時25歳)、同13-1及び同13-2の長女である同13-3(本件事故当時1歳)は、本件事故当時、福島県郡山市所在の自宅(福島第 一原発からの距離54.84km(乙C13の2))に居住していた。 本件事故当時、一審原告13-1 2の長女である同13-3(本件事故当時1歳)は、本件事故当時、福島県郡山市所在の自宅(福島第 一原発からの距離54.84km(乙C13の2))に居住していた。 本件事故当時、一審原告13-1は運送会社に正社員として勤務しており、同13-2は専業主婦であった。同13-1は福島県石川郡玉川村出身、同13-2は同県須賀川市の出身であり、20年以上にわたって同県に居住しており、今後も同県に住み続けるつもりであった。 (2) 避難開始の経緯等本件事故当時、一審原告13-1は仕事中であり、同13-2及び同13-3は郡山市の自宅にいた。同13-1及び同13-2は、本件事故発生当初は、メディアで「直ちに問題はない。」との報道が繰り返されていたことから、福島第一原発から50km以上離れた自宅に放射性物質が到達するは ずがないと思っていた。しかし、各地で放射線の数値が発表されるようになると、放射性物質が同13-1から同13-3までのところまで到達しているのではないかと感じるようになり、必要な用事以外では外出せず、窓もドアも開けない、水道水も飲まないようになった。同13-1は、平成23年4月頃に異動願いを提出したがすぐには認められず、本件事故から約5か月 後に異動の申請が認められ、同13-1から同13-3までは、同年8月26日に名古屋市の市営住宅に引っ越した。 (3) 避難後の状況等一審原告13-1から同13-3までは、避難当初は名古屋市の市営住宅に居住していたが、平成24年10月に同市内に新居を購入した。また、 同13-2は、平成25年2月▲▲日、二女である同13-4を出産し、 - 536 -同13の世帯は現在は4人で生活している。同13-1らが郡山市に所有していた住居は平成24年3 また、 同13-2は、平成25年2月▲▲日、二女である同13-4を出産し、 - 536 -同13の世帯は現在は4人で生活している。同13-1らが郡山市に所有していた住居は平成24年3月24日に1298万円で売却し、売却金額をローンの返済に充てたものの約70万円の借金が残った。同13の世帯は、年に2回程度福島県の実家に帰省するという生活をしている。 (4) 本件事故時住所地の状況等 一審原告13-1から同13-3までの本件事故当時の住所地は郡山市で、同市は自主的避難等対象区域に該当し、同市の環境放射能等の状況は前記第3章、第2、1のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分 一審原告13-1から同13-3までは、自主的避難等対象区域である郡山市に居住していたところ、本件事故による放射性物質が飛来するのではないかと不安を感じ、平成23年4月に勤務先に異動を願い出、それが認められた同年8月に名古屋市に避難したものであり、同13-1から同13-3までの避難は本件事故によるものと認められる。 他方、郡山市の環境放射能の状況等は前記認定のとおりであり、平成23年から平成24年にかけても環境放射能の値は低下しており、本件事故直後の混乱期は別として、通常、遅くとも平成23年12月31日までに、一般的に放射能の影響を受けやすいとされる乳児がいる場合でも遅くとも平成24年8月31日までには、避難先から郡山市に帰還することに支障はなくな っていたというべきところ、一審原告13-1らは、同年3月24日に郡山市の自宅を売却し、その後、同年10月に名古屋市内に住居を購入しているから、同13-1から同13-3までが郡山市に帰還しなかったのは、同13-1らが同 ろ、一審原告13-1らは、同年3月24日に郡山市の自宅を売却し、その後、同年10月に名古屋市内に住居を購入しているから、同13-1から同13-3までが郡山市に帰還しなかったのは、同13-1らが同市の状況にかかわらず同市には帰還しないことを決めて自宅を売却したことによるものとみるのが相当である。 したがって、一審原告13-1から同13-3までの避難生活のうち本件 - 537 -事故と相当因果関係が認められるのは平成24年3月24日までの部分に限られるとするのが相当である。 (2) 一審原告13-1の損害ア財物損害以外の損害(ア) 避難費用 ① 交通費一審原告13の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した1万2000円(乙C13の1)を本件事故と相当因果関係を有する交通費の損害と認める(弁論の全趣旨)。 ② 引越し費用 一審原告13-1から同13-3までが郡山市の自宅から名古屋市に引っ越す際に引越し費用として同13-1が引越し業者に対して15万7500円を支払ったことが認められ(甲C13の2)、これを本件事故と相当因果関係を有する引越し費用の損害と認める。 ③ 一時立入り・帰省費用 一審原告13の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した10万8000円(乙C13の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 ④ その他(避難雑費)一審原告13の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償し た30万円(乙C13の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 ⑤ 合計 57万7500円(イ) 生活費増加費用一審原告1-1らが、本件事故に た30万円(乙C13の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 ⑤ 合計 57万7500円(イ) 生活費増加費用一審原告1-1らが、本件事故による同13―1の損害と主張する生 活費増加費用76万円については、ADRにおいて同13の世帯の請求 - 538 -に対して一審被告東京電力が平成23年分の生活費増加費用、移動費用及び精神的損害として76万円を既に賠償したことが認められるが(乙C13の1)、その内訳は明確ではない上、同13の世帯の各精神的損害として賠償されたと認める余地があることにも照らせば、上記主張は認められない。 (ウ) 被ばく検査費用一審原告13の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した5万4000円(乙C13の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (エ) その他(ADR弁護士費用) 一審原告13の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した3万8625円(乙C13の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (オ) 慰謝料一審原告13-1について本件事故との相当因果関係が認められる避 難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、乳児である同13-3を伴っての避難であったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを40万円と認めるのが相当である。 (カ) 合計 107万0125円イ財物損害 (ア) 不動産前記のとおり、一審原告13-1らが平成24年3月24日に郡山市の自宅を売却したのは、同13-1らが同市の状況にかかわらず同市には帰還しないと決めたことに (ア) 不動産前記のとおり、一審原告13-1らが平成24年3月24日に郡山市の自宅を売却したのは、同13-1らが同市の状況にかかわらず同市には帰還しないと決めたことによるものであるから、本件事故による自宅の売却を余儀なくされたとはいえず、それによって何らかの損害が生じ たとしても、本件事故と相当因果関係がある財物損害であるということ - 539 -はできない。 (イ) その他(仲介手数料等)郡山市の自宅の売却に要した仲介手数料は、上記(ア)と同様に、本件事故と相当因果関係を有する財物損害であるということはできない。 (ウ) 合計 0円 (3) 一審原告13-2の損害一審原告13-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、乳児である同13-3を伴っての避難であったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを40万円と認めるのが相当である。 (4) 一審原告13-3の損害一審原告13-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを40万円と認めるのが相当である。 (5) 一審原告13-4の損害 一審原告13-4が出生したのは、本件事故後、かつ同13-1らが郡山市に帰還しないことを決めた後である平成25年2月▲▲日であり、本件事故と相当因果関係ある避難及び避難生活を体験したわけではなく、本件事故により精神的苦痛を被ったということはできない。したがって、同13-4の損害は認められない。 一審原告1-1らは、同13-4の左右の甲状腺にのう胞が見られること したわけではなく、本件事故により精神的苦痛を被ったということはできない。したがって、同13-4の損害は認められない。 一審原告1-1らは、同13-4の左右の甲状腺にのう胞が見られることから、本件事故による損害を認めるべきと主張するが、かかるのう胞が本件事故による放射能の汚染によるものと認めるに足りる証拠はないから、上記主張は採用できない。 3 弁済の抗弁 (1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額 - 540 -ア一審原告13-1について 38万6125円イ一審原告13-2について 30万円ウ一審原告13-3について 92万円(2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、一審原告13の世帯に対し、以下のとおり賠償を行 ったことが認められる(乙C13の1・5・6、弁論の全趣旨)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告13-1に対し自主避難等に係る損害 12万円(イ) 一審原告13-2に対し自主避難等に係る損害 20万円(ウ) 一審原告13-3に対し自主避難等に係る損害 72万円 (エ) 合計 104万円イ ADRによる賠償 56万6125円ADRにより、一審原告13-1から同13-3までに対する和解金額が132万6125円と合意され、そこからADR以外による賠償額のうち76万円を控除した56万6125円が支払われた。 (内訳)(ア) 一審原告13-1の精神的損害 8万円(イ) 一審原告13-2の精神的損害 8万円(ウ) 一審原告13-3の精神的損害 60万円(エ) 避難費用、検査費用、避難雑費、ADR弁護士費用 (イ) 一審原告13-2の精神的損害 8万円(ウ) 一審原告13-3の精神的損害 60万円(エ) 避難費用、検査費用、避難雑費、ADR弁護士費用 56万6125円(オ) 合計(和解金額) 132万6125円(カ) 既払い金 76万円(キ) 合計(支払い額) 56万6125円上記(ア)から(ウ)までは一審原告13-1から同13-3までそれぞれに 対する金額であると認められ、かつこれはADR以外による賠償額に含 - 541 -まれる。また、上記(エ)は同13-1が支出した同13の世帯共通の費用に対する賠償であると認められる。 ウ合計 160万6125円(3) 一審原告13の世帯に対する各弁済額ア一審原告13-1に対する弁済額 (ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 56万6125円ADRによる和解金額のうち一審原告13-1の精神的損害に対する 金額はADR以外による同13-1に対する賠償額に含まれており、前記(2)イ(エ)の賠償額が同13-1に対する弁済額となる。 (ウ) 合計 68万6125円したがって、一審被告東京電力の一審原告13-1に対する弁済の抗弁38万6125円は全部認められる。 イ一審原告13-2に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 20万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円 ADRによる和解金額のうち一審原告13-2の精神的損害に 0万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円 ADRによる和解金額のうち一審原告13-2の精神的損害に対する金額は既払い金により控除済みであり、ADRによる賠償による同13-2に対する弁済額を0円とする。 (ウ) 合計 20万円したがって、一審被告東京電力の一審原告13-2に対する弁済の抗弁 は一部認められる。 - 542 -ウ一審原告13-3に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円 ADRによる和解金額のうち一審原告13-3の精神的損害に対する金額は既払い金により控除済みであり、ADRによる賠償による同13-3に対する弁済額を0円とする。 (ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告13-3に対する弁済の抗弁 は一部認められる。 4 認容額等(1) 一審原告13-1ア損害額 107万0125円イ弁済額 38万6125円 ウ弁済額控除後の損害額 68万4000円エ弁護士費用 7万円オ認容額 75万4000円(2) 一審原告13-2ア損害額 40万円 イ弁済額 20万円ウ弁済額控除後の損害額 20万円エ弁護士費用 2万円オ認容額 22万円(3) 一審原告13-3 ア損害額 40万円 - 543 -イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害 護士費用 2万円オ認容額 22万円(3) 一審原告13-3 ア損害額 40万円 - 543 -イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害額 0円エ認容額 0円(4) 一審原告13-4ア損害額 0円 イ認容額 0円第14 一審原告14の世帯 1 認定事実(甲C14の1、一審原告14-1本人(原審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等一審原告14-1(本件事故当時43歳)、その妻である同14-2(本 件事故当時38歳)、同14-1及び同14-2の長女である同14-3(本件事故当時10歳)、二女である同14-4(本件事故当時10歳)は、本件事故当時、福島市内の自宅(福島第一原発からの距離61.71km(乙C14の2))に居住していた。 一審原告14-1は、本件事故当時、Dで勤務しており、同14-2は、 福島市内の私立高校の教師をしていた。同14-3及び同14-4は、同市内の小学校に通っていた。 (2) 避難開始の経緯等一審原告14-3及び同14-4は、平成23年3月末、一時的に同14-2の実家のある愛知県豊川市に避難したが、同年4月中旬には福島市に戻 った。獣医師の資格を有する同14-1は、本件事故後は警戒区域内における動物の保護活動を行う業務を任され、福島県双葉郡浪江町、同郡双葉町等の放射線被害の著しい地域に頻繁に出向き、同地域での動物の保護活動業務に早朝から深夜まで従事しており、業務に懸命に取り組んではいたが、内部被ばく等による将来の健康に対する不安を抱いていた。同14-2は、勤務 先において教員自ら学校施設の除染作業等を行わなければならず、それらの 事しており、業務に懸命に取り組んではいたが、内部被ばく等による将来の健康に対する不安を抱いていた。同14-2は、勤務 先において教員自ら学校施設の除染作業等を行わなければならず、それらの - 544 -作業に追われていた。 一審原告14-1及び同14-2は、同14-3及び同14-4への放射能の影響を心配し、外で遊ばせないようにしていた。また、同14-3及び同14-4の小学校では、運動会や水泳大会も中止になった。 一審原告14-1及び同14-2は、平成23年6月頃には、福島市での 生活を断念し、同14の世帯で、同14-2の出身地である愛知県に避難することを決断し、同14-1は、同年10月に同県内の就職先が決まった。 そして、同14-3及び同14-4は、同年12月26日、豊川市に引っ越し、同14-1及び同14-2は、平成24年3月までに福島市での仕事や自宅の売却等を終えてから愛知県に転居し、同14の世帯は、同県岡崎市の 賃貸マンションで生活を始めた。 (3) 避難後の状況等岡崎市に転居した後、一審原告14-1は、豊橋市での勤務を開始し、同14-2は、浜松市内の専門学校や岡崎市内の高校で非常勤講師として勤務を始め、現在でも同様の仕事をしている。同14-1らは、平成24年6月 に分譲マンションを3600万円で購入し、平成25年3月に入居したが、上記福島市内の前の自宅のローンが同自宅の売却代金を返済に充てた後も残っており、二重にローンを支払うこととなった。同14-3及び同14-4は、愛知県内の中学校及び高校に進学した。 (4) 本件事故時住所地の状況等 一審原告14の世帯の本件事故当時の住所地は福島市で、同市は自主的避難等対象区域であり、同市の環境放射能等の状 の中学校及び高校に進学した。 (4) 本件事故時住所地の状況等 一審原告14の世帯の本件事故当時の住所地は福島市で、同市は自主的避難等対象区域であり、同市の環境放射能等の状況は、前記第3章、第1、1のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分 一審原告14の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島 - 545 -市に居住していたところ、子どもである同14-3及び同14-4が平成23年3月末から同年4月中旬まで豊川市に避難し、いったんは福島市に戻ったものの、放射線の影響に対する不安などから、同年12月に再び豊川市に避難したものであり、同14-3及び同14-4が一般に放射線の影響を受けやすいとされる子どもであったことを考えると、同14―3及び同14- 4の避難(再避難を含む。)は本件事故によるものということができる。 しかし、福島市の環境放射能の状況等は前記認定のとおりで、平成23年から平成24年にかけても環境放射能の値は低下しており、本件事故直後の混乱期は別として、通常、遅くとも平成23年12月31日までに、一般的に放射能の影響を受けやすいとされる子どもでも遅くとも平成24年8月3 1日までには、避難先から福島市に帰還することに支障はなくなっていたというべきところ、一審原告14-1らは、同年3月までに同市の自宅を売却し、その後、同年6月に岡崎市内に住居を購入しているから、同14-3及び同14-4が福島市に帰還できなかったのは、同14-1らが同市の状況にかかわらず同14-3及び同14-4を同市には帰還させないことを決め て自宅を売却したことによるものとみるのが相当である。 したがって、一審原告14-3及び同14-4の避難及 らが同市の状況にかかわらず同14-3及び同14-4を同市には帰還させないことを決め て自宅を売却したことによるものとみるのが相当である。 したがって、一審原告14-3及び同14-4の避難及び避難生活のうち本件事故と相当因果関係が認められるのは、平成23年3月末から同年4月中旬までの避難及び避難生活並びに同年12月の再避難及びその後の避難生活のうち平成24年3月までの部分とするのが相当である。 他方、一審原告14-1及び同14-2は、平成24年3月までに岡崎市に転居しているものの、前記の福島市の状況を考えれば、同14-1らは、同市の状況にかかわらず同市を離れることを決めて自宅を売却して岡崎市に転居したものとみるべきであり、同14-1及び同14-2については、本件事故との相当因果関係がある避難及び避難生活は認められない。このこと は、豊川市に再避難していた同14-3及び同14-4と同居するための転 - 546 -居であったとみられることを考慮しても変わらない。 もっとも、一審原告14-1及び同14-2は、同14-3及び同14-4が豊川市で本件事故との相当因果関係が認められる避難生活をしていた間、子らとの二重生活となっており、このことによる損害は、相当な範囲で本件事故との相当因果関係が認められるというべきである。 (2) 一審原告14-1の損害ア避難費用(ア) 交通費一審原告14の世帯の請求に対して一審被告東京電力が平成24年分の交通費として8万8890円(乙C14の1)を賠償したことは認め られるものの、前記のとおり、本件事故と相当因果関係を有する同14-3及び同14-4の避難及び再避難は平成23年12月までの分に限られ、上記交通費は同14-1及び同14-2の分 たことは認め られるものの、前記のとおり、本件事故と相当因果関係を有する同14-3及び同14-4の避難及び再避難は平成23年12月までの分に限られ、上記交通費は同14-1及び同14-2の分と認められる(弁論の全趣旨)から、上記の一審被告東京電力の賠償額を損害と認めることはできない。 (イ) 宿泊費・謝礼一審原告14の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した避難費用(宿泊謝礼)15万円(乙C14の1)を本件事故と相当因果関係を有する同14-3及び同14-4の避難及び再避難による宿泊費・謝礼の損害と認める(弁論の全趣旨)。 (ウ) 引越し費用本件事故と相当因果関係ある引越し費用が発生したとは認められない。 (エ) 面会交通費一審原告1-1らが本件事故による同14-1の損害と主張する面会交通費29万5130円については、ADRにおいて同14の世帯の請 求に対し一審被告東京電力が平成24年1月から9月まで分の避難費用 - 547 -(面会交通費)として17万1630円を既に賠償していることが認められ(乙C14の1)、このうち同年1月から3月まで分におよそ相当する5万7210円を、本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。 (オ) その他(避難雑費) 一審原告14の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した12万円(乙C14の1)を本件事故と相当因果関係を有する同14-3及び同14-4の避難及び再避難により同14-1が負担した避難雑費の損害と認める(弁論の全趣旨)。 (カ) 合計 32万7210円 イ生活費増加費用(ア) その他 び同14-4の避難及び再避難により同14-1が負担した避難雑費の損害と認める(弁論の全趣旨)。 (カ) 合計 32万7210円 イ生活費増加費用(ア) その他(二重生活による生活費増加分、移動費用、生活費増加分)一審原告14の世帯における二重生活による生活費増加分については、同14の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した12万円(乙C14の1)の限度で本件事故と相当因果関係を有する同14-3 及び同14-4の避難及び再避難による二重生活に伴う生活費増加分の損害と認める。 その他の移動費用及び生活費増加分については、損害の発生について具体的な立証がないから、一審原告14-1の損害を認めることはできない。 (イ) 福島市の自宅の売却費用等一審原告1-1らは、福島市の不動産売却の仲介料、抵当権抹消費用、車両登録変更手数料を同14-1の損害と主張するが、前記のとおり、自宅の売却は本件事故によるものとはいえないから、同14-1の損害は認められない。 (ウ) 岡崎市の分譲マンションへの転居費用等 - 548 -一審原告1-1らは、岡崎市の分譲マンションに転居した際に要した費用を同14-1の損害と主張するが、前記のとおり、岡崎市のマンションを購入してここへ転居したことは本件事故によるものとはいえないから同14-1の損害は認められない。 (エ) 合計 12万円 ウ就労不能損害前記のとおり、一審原告14-1には本件事故と相当因果関係のある避難が認められないから、本件事故と相当因果関係のある就労不能が発生したとは認められない。 エ被ばく検査費用 前記のとおり、一審原告14-1には本件事故と相当因果関係のある避難が認められないから、本件事故と相当因果関係のある就労不能が発生したとは認められない。 エ被ばく検査費用 本件事故の態様や事故状況、その後の福島第一原発の事故処理状況等に照らせば、避難について本件事故との相当因果関係が認められる期間を過ぎても、放射線被ばくによる影響の検査を受けることには合理性が認められるというべきである。 一審被告東京電力は、被ばく検査費用について、本件事故との相当因果 関係が認められる避難期間以後の検査費用については、本件事故と相当因果関係ある損害とは認められないと主張するが、採用できない。 したがって、まず、一審原告14の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した被ばく検査費用4万4040円(乙C14の1)は本件事故との相当因果関係がある損害であり(弁論の全趣旨)、また、平成28 年3月に被ばく検査を受検した際に4810円を要したと認められ(甲C14の11)、これらの合計4万8850円を本件事故と相当因果関係を有する被ばく検査費用の損害と認める。 オ線量計購入費一審原告14の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した1 万3800円(乙C14の1)を本件事故と相当因果関係を有する線量 - 549 -計購入費の損害と認める(弁論の全趣旨)。 カその他(ADR弁護士費用)一審原告14の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した14万7602円(乙C14の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 キ慰謝料一審原告14-1について本件事故との相当因果関係がある避難は認められないが、本件 乙C14の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 キ慰謝料一審原告14-1について本件事故との相当因果関係がある避難は認められないが、本件事故との相当因果関係が認められる同14-3及び同14-4の避難生活並びに再避難生活中、子らと二重生活になったことによる精神的苦痛に対する慰謝料額を20万円とするのが相当である。 一審原告1-1らは、同14-1の母が令和2年5月▲▲日に亡くなったところ、本件事故による避難のため、同人の最期に接することができなかったと主張するが、本件事故との相当因果関係がある避難が認められないので、この主張も失当である。 ク合計 85万7462円 (3) 一審原告14-2の損害ア就労不能損害一審原告14-2は、本件事故により避難したことから、非常勤講師となったため収入が減少したとして、就労不能損害を被ったと主張するが、本件事故と相当因果関係ある避難が認められないので、避難による就労 不能損害も認められない。 イ被ばく検査費用平成28年3月に被ばく検査を受検した際に要した5280円(甲C14の14)を、本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 ウ慰謝料 一審原告14-2について本件事故との相当因果関係がある避難は認め - 550 -られないが、本件事故との相当因果関係が認められる同14-3及び同14-4の避難生活並びに再避難生活中、子らと二重生活になったことによる精神的苦痛に対する慰謝料額を20万円とするのが相当である。 エ合計 20万5280円(4) 一審原告14-3の損害 一審原告14-3について本件事故との相当因果関係 る精神的苦痛に対する慰謝料額を20万円とするのが相当である。 エ合計 20万5280円(4) 一審原告14-3の損害 一審原告14-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難(再避難を含む。)及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、両親である同14-1及び同14-2と離れての避難であったこと、小学校の転校を要したことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを40万円と認めるのが相当である。 一審原告1-1らは、同14-3の令和2年の甲状腺検査の結果がB(詳細な二次検査が推奨されるレベル)であったことから、より損害が認められるべきと主張するが、その検査結果が本件事故による放射能の影響によるものか明らかでないから、上記主張は採用できない。 (5) 一審原告14-4の損害 一審原告14-4について本件事故との相当因果関係が認められる避難(再避難を含む。)及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、両親である同14-1及び同14-2と離れての避難であったこと、小学校の転校を要したことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを40万円と認めるのが相当である。 一審原告1-1らは、同14-3の令和2年の甲状腺検査の結果がBであったから双子である同14-4についても健康被害が心配されるとして、より損害が認められるべきと主張するが、そもそも同14-1について健康被害があったという証拠はなく、上記主張は採用できない。 3 弁済の抗弁 (1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額 - 551 -ア一審原告14-1について 157万2691円イ一審原告14-2について 225万5000円ウ一審原告14-3について 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額 - 551 -ア一審原告14-1について 157万2691円イ一審原告14-2について 225万5000円ウ一審原告14-3について 78万円エ一審原告14-4について 78万円(2) 一審被告東京電力の賠償について 一審被告東京電力は、これまで一審原告14の世帯に対し、以下のとおりの賠償を行ったことが認められる(乙C14の1・4、弁論の全趣旨)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告14-1に対し自主避難等に係る損害 12万円(イ) 一審原告14-2に対し自主避難等に係る損害 12万円 (ウ) 一審原告14-3に対し自主避難等に係る損害 72万円(エ) 一審原告14-4に対し自主避難等に係る損害 72万円(オ) 合計 168万円イ ADRによる賠償 370万7691円ADRにより、一審原告14の世帯に対する和解金額が506万769 1円と合意され、そこからADR以外による賠償額のうち136万円を控除した370万7691円が支払われた。 (内訳)(ア) 移動費用、避難費用、生活費増加費用、検査費用、線量計購入費用、避難雑費、ADR弁護士費用 217万6962円 (イ) 精神的損害 48万円(ウ) 一審原告14-1の就労不能損害 27万5729円(エ) 一審原告14-2の就労不能損害 213万5000円(オ) 合計(和解金額) 506万7691円(カ) 既払い金 136万円 (キ) 合計(支払い額) 370万7691円 - 552 -上記(ア)は一審原告14の世帯に共通する費用である 506万7691円(カ) 既払い金 136万円 (キ) 合計(支払い額) 370万7691円 - 552 -上記(ア)は一審原告14の世帯に共通する費用であるがそれを支出したのは同14-1であり、上記(ウ)及び(エ)は同14-1及び同14-2に対するものであることが明示されているから、それぞれの一審原告に対する賠償であるといえ、上記(イ)は同14の世帯それぞれの各精神的損害に対する賠償であるといえる。 ウ合計 538万7691円(3) 一審原告14の世帯に対する各弁済額ア一審原告14-1(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし て扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償ADRで合意した和解金額からの既払い金136万円の控除は、まず、前記(2)イ(イ)の精神的損害48万円から全額が控除され、次いで、同(ア)の一審原告14-1が支出した同14の世帯共通の費用から88 万円が控除されたものとみて、その余の同(ア)の129万6962円と同(ウ)の同14-1の就労不能損害27万5729円の合計額である157万2691円をADRによる賠償のうち同14-1に対する弁済額とする。 (ウ) 合計 169万2691円 したがって、一審被告東京電力の一審原告14-1に対する弁済の抗弁は全部認められる。 イ一審原告14-2(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし て扱うのが相当である。 - 553 -(イ) ADRによる賠償A 賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし て扱うのが相当である。 - 553 -(イ) ADRによる賠償ADRで合意した和解金額の内訳のうちの前記(2)イ(イ)の精神的損害の一審原告14-2に係る部分は既払い金により控除済みとみて、同(エ)の同14-2の就労不能損害分213万5000円をADRによる賠償のうち同14-2に対する弁済額とする。 (ウ) 合計 225万5000円したがって、一審被告東京電力の一審原告14-2に対する弁済の抗弁は全部認められる。 ウ一審原告14-3(ア) ADR以外による賠償 72万円 ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRで合意した和解金額の内訳のうちの前記(2)イ(イ)の精神的損害の一審原告14-3に係る部分は既払い金により控除済みとみて、A DRによる賠償のうち同14-3に対する弁済額を0円とする。 (ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告14-3に対する弁済の抗弁は一部認められる。 エ一審原告14-4 (ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRで合意した和解金額の内訳のうちの前記(2)イ(イ)の精神的損害 の一審原告14-4に係る部分は既払い金により控除済みとみて、A - 554 -DRによる賠償のう 円ADRで合意した和解金額の内訳のうちの前記(2)イ(イ)の精神的損害 の一審原告14-4に係る部分は既払い金により控除済みとみて、A - 554 -DRによる賠償のうち同14-4に対する弁済額を0円とする。 (ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告14-4に対する弁済の抗弁は一部認められる。 4 認容額等 (1) 一審原告14-1ア損害額 85万7462円イ弁済額 157万2691円ウ弁済額控除後の損害額 0円エ認容額 0円 (2) 一審原告14-2ア損害額 20万5280円イ弁済額 225万5000円ウ弁済額控除後の損害額 0円エ認容額 0円 (3) 一審原告14-3ア損害額 40万円イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害額 0円エ認容額 0円 (4) 一審原告14-4ア損害額 40万円イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害額 0円エ認容額 0円 第15 一審原告15の世帯 - 555 - 1 認定事実(甲C15の1のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等一審原告15-1(本件事故当時25歳)及びその長女である同15-2(本件事故当時3歳)は、本件事故当時、福島県伊達郡川俣町所在の同15-1の実家(福島第一原発からの距離46.00km(乙C15の2))に 同15-1の両親及び祖母とともに居住していた。 一審原告15-1は、本件事故当時は仕事をしていなかったが、近いうちに父の介護の仕事の手伝 第一原発からの距離46.00km(乙C15の2))に 同15-1の両親及び祖母とともに居住していた。 一審原告15-1は、本件事故当時は仕事をしていなかったが、近いうちに父の介護の仕事の手伝いの仕事をしようと考えていた。同15-1は、本件事故当時、当時の夫と別居して離婚協議中であり、その後、平成25年5月に離婚が成立し、平成27年3月に再婚した。 (2) 避難開始の経緯等一審原告15-1は、本件事故直後は、避難するかどうか迷って、川俣町の実家にとどまって同15-2を外に出さない、水道水を飲まない、自宅の畑で獲れた野菜を食べないという生活をしていたが、福島県双葉郡双葉町等から強制的に避難させられている人々がバスで移動するのを見て異常な事態 であると感じ、また、福島第一原発に勤務する知人のいる友人からの電話で「今から南相馬を出る。大変なことになった。危ないから逃げた方がいい。」と言われるなどしたため、避難することにした。 一審原告15の世帯は、平成23年3月16日、福島市内の友人宅に泊まり、同月17日、飛行機で名古屋市の友人宅へ避難し、しばらく生活してい たが、友人に気を遣いながら生活することにストレスを感じ、同年5月、愛知県が被災者に対して無償貸出しをしていた県営住宅に転居した。 なお、一審原告15-1の両親は仕事のため、また祖母は川俣町を離れないことを希望したため、いずれも避難しなかった。 (3) 避難後の状況等 一審原告15-1は、県営住宅に転居後、家財道具を買う金銭的余裕がな - 556 -いため、人から家財道具をもらうなどしていた。また、同15-2はIGA欠損症を患っており、週に1回は通院が必要であったが、愛知県に避難してからは病院を探すのに う金銭的余裕がな - 556 -いため、人から家財道具をもらうなどしていた。また、同15-2はIGA欠損症を患っており、週に1回は通院が必要であったが、愛知県に避難してからは病院を探すのにも苦労し、地理が分からず、やむを得ずタクシーを利用することも多くなった。 一審原告15-1は、県営住宅に転居後は生活保護を受けながら仕事を探 していたが、地理も分からず、同15-2の面倒を見てくれる人もいなかったため、なかなか仕事を見つけることができず、また、見知らぬ土地で孤独を感じる生活が続き、精神的に不安定になり、平成25年夏頃には適応障害及びパニック障害と診断された。同15-2は、名古屋市に来てからすぐに高熱を出したり、歯ぎしりや爪噛みの行動が出たりした。 一審原告15-1は、職業訓練で介護士の資格を取り、平成26年頃にパートタイム勤務で介護士の仕事に就いた。同15-1は、最初は1日1時間程度の勤務しかできなかったが、その後、月額6万円ないし10万円程度の収入を得られるようになった。同15-1は、平成27年3月に再婚し、平成28年8月に二女を出産し、平成28年12月に県営住宅から転居した。 (4) 本件事故時住所地の状況等一審原告15の世帯の本件事故当時の住所地は川俣町で、同町は自主的避難等対象区域であり、同町の環境放射能等の状況は、前記第3章、第1、4のとおりである。 2 損害 (1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告15の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である川俣町に居住しており、本件事故直後は同町にとどまっていたが、避難者を見たことや危ないから逃げた方がいいという友人の助言があったことから避難を決め、平成23年3月16日、福島市内 難等対象区域である川俣町に居住しており、本件事故直後は同町にとどまっていたが、避難者を見たことや危ないから逃げた方がいいという友人の助言があったことから避難を決め、平成23年3月16日、福島市内の友人宅を経由して、同月17日、 名古屋市の友人宅へ避難し、同年5月、愛知県の被災者向け県営住宅に移っ - 557 -たというのであるから、同15の世帯が避難を行ったことは本件事故によるものと認められる。 しかし、川俣町の環境放射能等の状況は前記認定のとおりであり、本件事故直後の混乱期は別として、通常、平成23年12月31日までには同町に帰還することに支障はなく、一審原告15の世帯に一般的には放射能の影響 を受けやすいとされる幼児である同15-2がいたことを考慮しても、遅くとも平成24年8月31日までには同町に帰還することに支障はなかったというべきである。 したがって、一審原告15の世帯の避難及び避難生活のうち本件事故との相当因果関係が認められるのは平成24年8月31日までの部分に限られる というのが相当である。 (2) 一審原告15-1の損害ア避難費用(ア) 一時立入り・帰省費用一審原告15の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に平成24 年1月1日から平成27年3月9日まで分の一時立入り・帰省費用として31万8960円を賠償していることが認められ(乙C15の1・4)、このうち平成24年1月から8月までの分におよそ相当する6万6870円の限度では本件事故と相当因果関係を有する損害と認める余地があるが(弁論の全趣旨)、本件事故と相当因果関係ある避難生活中 にこれを超える一時立入り・帰省費用を同15-1が支出したと認めるに足りる証拠はない。 したがって、6万6870円の限 る余地があるが(弁論の全趣旨)、本件事故と相当因果関係ある避難生活中 にこれを超える一時立入り・帰省費用を同15-1が支出したと認めるに足りる証拠はない。 したがって、6万6870円の限度で本件事故と相当因果関係がある一時立入り・帰省費用の損害を認める。 (イ) 避難雑費 一審原告15の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に平成24 - 558 -年1月1日から平成27年3月9日まで分の避難雑費として58万7200円を賠償していることが認められ(乙C15の1・4)、このうち平成24年1月から8月までの分におよそ相当する12万3100円の限度では本件事故と相当因果関係を有する損害と認める余地があるが(弁論の全趣旨)、本件事故と相当因果関係ある避難生活中にこれを超 える避難雑費を同15-1が支出したと認めるに足りる証拠はない。 したがって、12万3100円の限度で本件事故と相当因果関係がある避難雑費の損害を認める。 (ウ) 合計 18万9970円イ生活費増加費用 一審原告1-1らは同15-1に生活費増加費用及び移動費用68万円の損害が生じたと主張する。 一審原告15の世帯の請求に対し一審被告東京電力が既に平成23年分精神的損害、生活費増加費用及び移動費用として68万円を賠償していること、このうち48万円が精神的損害に相当することが認められ(乙 C15の1・4)、その差額の20万円の限度では本件事故と相当因果関係がある生活費増加費用及び移動費用の損害と認める余地があるが(弁論の全趣旨)、同15-1が本件事故と相当因果関係がある避難生活中にこれを超える額の増加生活費や移動費用を支出したことを認めるに足りる領収書その他の証拠はない。 したがって、20万 が(弁論の全趣旨)、同15-1が本件事故と相当因果関係がある避難生活中にこれを超える額の増加生活費や移動費用を支出したことを認めるに足りる領収書その他の証拠はない。 したがって、20万円の限度で本件事故と相当因果関係がある生活費増加費用及び移動費用の損害を認める。 ウ慰謝料一審原告15-1について本件事故との相当因果関係の認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、幼児を伴っての避難 であったこと、一時友人宅に間借りしていた時期はストレスがあったこ - 559 -と、県営住宅に移っても、避難先で両親や祖母の助けもなく病気を抱えていた同15-2を一人で養育しなければならなかったこと、そのため精神的にも不調を来したことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 エ合計 138万9970円 (3) 一審原告15-2の損害一審原告15-2について本件事故との相当因果関係の認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、持病がありしばしば通院の必要がある中避難先で生活しなければならなかったこと、避難の影響とみられる心身の症状が出たことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これ を100万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額ア一審原告15-1について 43万8960円イ一審原告15-2について 130万7200円 (2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、これまで一審原告15の世帯に対し、以下のとおり賠償を行ったことが認められる(乙C15の1・4・5、弁論の全趣旨)。 ア ADR以外による賠償 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、これまで一審原告15の世帯に対し、以下のとおり賠償を行ったことが認められる(乙C15の1・4・5、弁論の全趣旨)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告15-1に対し自主避難等に係る損害 12万円 (イ) 一審原告15-2に対し自主避難等に係る損害 72万円(ウ) 合計 84万円イ ADRによる賠償 90万6160円ADRにより、一審原告15の世帯に対する和解金額が158万6160円と合意され、そこからADR以外による賠償額のうち68万円を控除 した90万6160円が支払われた。 - 560 -(内訳)(ア) 精神的損害、生活費増加費用、移動費用 68万円(イ) 一時立入り、帰宅費用、避難雑費 90万6160円(ウ) 合計(和解金額) 158万6160円(エ) 既払い金 68万円(一審原告15-1分8万円、同15-2分6 0万円)(オ) 合計(支払額) 90万6160円上記(ア)のうち精神的損害は、一審原告15の世帯それぞれに対するものとみられ、上記(ア)のうちその余の部分と上記(イ)は同15の世帯のために同15-1が支出した費用に対するものであるとみられる。 ウ合計 174万6160円(3) 一審原告15の世帯に対する各弁済額ア一審原告15-1に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし て扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償ADRで合意した和解金額からの既払い金68万円の控除は、前記(2)イ(ア)の損害68万円から全額が控除された 一審原告に対する弁済とし て扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償ADRで合意した和解金額からの既払い金68万円の控除は、前記(2)イ(ア)の損害68万円から全額が控除されたものとみて、同(イ)の90万6160円をADRによる賠償のうち一審原告15-1に対する弁 済額とする。 (ウ) 合計 102万6160円したがって、一審被告東京電力の一審原告15-1に対する弁済の抗弁43万8960円は全部認められる。 イ一審原告15-2に対する弁済額 (ア) ADR以外による賠償 72万円 - 561 -ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRで合意した和解金額のうち前記(2)イ(ア)中の精神的損害の一審原告15-2に係る部分は既払い金により控除済みとみて、ADRによ る賠償のうち同15-2に対する弁済額を0円とする。 (ウ) 合計72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告15-2に対する弁済の抗弁は一部認められる。 4 認容額等 (1) 一審原告15-1ア損害額 138万9970円イ弁済額 43万8960円ウ弁済額控除後の損害額 95万1010円エ弁護士費用 10万円 オ認容額 105万1010円(2) 一審原告15-2ア損害額 100万円イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害額 28万円 エ弁護士費用 3万円オ認容額 31万円第16 一審原告16の世帯 1 認定事実(甲C16の1のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状 後の損害額 28万円 エ弁護士費用 3万円オ認容額 31万円第16 一審原告16の世帯 1 認定事実(甲C16の1のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等 一審原告16-1(本件事故当時22歳)は、本件事故当時、福島市所在 - 562 -の同16-1の実家(福島第一原発からの距離64.94km(乙C16の2))に両親と共に居住していた。同16-1が結婚を前提に交際していた同16-2(本件事故当時22歳)は、本件事故当時、同市所在の同16-2の実家(福島第一原発からの距離64.89km(乙C16の4))に両親と共に居住していた。 本件事故当時、一審原告16-1は結婚式場を営む会社にし、同16-2は自動車学校にそれぞれ勤務していた。 (2) 避難開始の経緯等一審原告16-1の勤務先の結婚式場は本件地震の影響で損壊したが、次の日から片付け等のために出勤することを求められ、同16-2も同様に片 付け等のために勤務先に出勤することを求められた。しかし、同16-1は本件事故による影響を心配して、同16-1の母、姉、姉の子、同16-2と5人で千葉県のおばの家に1週間ほど避難することにした。同16-1及び同16-2らは、平成23年3月14日夜、福島市を出発し、自動車で千葉県に向かったが、高速道路が通行止めで、一般道で南下したところ、非常 に渋滞しており、コンビニエンスストアの駐車場などで休憩を取りながら、同月15日午後0時頃、上記おばの家に到着した。 本件事故から1週間が経過し、本件事故による影響は明らかではなかったが、おばに対する申し訳ない気持ちもあり、一審原告16-1及び同16-2は、平成23年3月21日に福島市の自宅に戻った。一方で、同16-1 の が経過し、本件事故による影響は明らかではなかったが、おばに対する申し訳ない気持ちもあり、一審原告16-1及び同16-2は、平成23年3月21日に福島市の自宅に戻った。一方で、同16-1 の母、姉及び姉の子は同年4月まで上記千葉のおばの家に滞在することになった。 ところが、平成23年3月31日、一審原告16-1が勤務していた結婚式場の店舗の従業員が震災の影響で全員解雇となり、同16-1は、再就職をして福島県を離れることを決めた。同16-1は、中古車販売会社に就職 し、本件事故の影響を避けるため同県から遠い勤務地を希望したところ、愛 - 563 -知県豊橋市が勤務地となったので、同年8月頃、同市内のアパートに転居した。 そして、一審原告16-2も、平成23年9月頃に、勤めていた自動車学校を退職して上記アパートに引っ越した。 (3) 避難後の状況等 一審原告16-1は、平成23年12月1日には自動車部品製造会社に転職し、同16-1と一審原告16-2は、同月、上記会社の借上げ社宅に転居し(甲C16の5)、平成24年1月11日、結婚した。 その後、一審原告16の世帯は福島県に戻ることを決め、平成26年3月に同県に戻った。同16-1は、その後、かつて勤務していた結婚式場を経 営する会社に再就職した。同16-2は、同年5月に第一子を、平成28年11月に第二子を出産した。 (4) 本件事故時住所地の状況等一審原告16の世帯の本件事故当時の住所地は福島市で、同市は自主的避難等対象区域であり、同市における環境放射能等の状況は、前記第3章、第 1、1のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告16の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域 射能等の状況は、前記第3章、第 1、1のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告16の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島市にそれぞれ居住していたところ、本件事故直後に千葉県に避難した後、い ったんは福島市に戻ったものの、同16-1は、震災の影響で解雇となったことを契機として、福島県から離れるべく平成23年8月に豊橋市で再就職し、同16-2は、同年9月に同16-1の豊橋市の住居へ転居したものであり、避難後の就労状況や福島市の環境放射能等の状況は前記認定のとおりである。本件事故直後の千葉県への一時的な避難並びに同16-1が震災に より職を失ったことを契機に福島県を離れる趣旨で豊橋市で再就職したこと - 564 -及び同16-1と結婚を前提に交際していた同16-2が同居のため豊橋市へ転居したことは、いずれも本件事故によるものと認められる。 他方、福島市における環境放射能等の状況は上記1(4)のとおりであり、本件事故直後の混乱期は別として、一般的に遅くとも平成23年12月31日までには、転居先の豊橋市から福島市に帰還することに支障はなくなって いたというのが相当であり、一審原告16-1が同月1日に避難先で転職し、同月、同16-2とともに転職先の社宅に入居したことを考慮してその後に必要となる帰還準備期間を加味したとしても、遅くとも平成24年5月31日までに帰還の支障はなくなったというべきである。 したがって、一審原告16の世帯の避難(再避難を含む。)及び避難生活 は、平成24年5月31日までの限度で、本件事故との相当因果関係が認められるというべきである。 (2) 一審原告16-1の損害ア避難費用(ア) 交 む。)及び避難生活 は、平成24年5月31日までの限度で、本件事故との相当因果関係が認められるというべきである。 (2) 一審原告16-1の損害ア避難費用(ア) 交通費 一審原告1-1らは、同16-1は、本件事故後、平成23年9月22日までの千葉県に避難した際の交通費、週末避難の際の交通費、愛知県豊橋市に避難する際の交通費等として合計7万7776円を支出し、これが同16-1の損害にあたると主張する。 このうち、一審原告16-1が平成23年3月14日から15日にか けて福島市から千葉県に向けて自動車で移動したこと、同月21日に福島市に戻ったこと、同年8月頃に福島市から豊橋市に移動したことは前記のとおり認められ、その交通費は本件事故との相当因果関係が認められる。 一審原告1-1らが提出する同16-1及び同16-2の家計簿(甲 C16の5)によっても、千葉県への避難に要した交通費は判然としな - 565 -いし、上記証拠には、「豊橋へ引越し 58000円」の記載はあるものの、これは後述のとおり引越し費用であり交通費ではないが、上記の各移動の事実によれば、同16-1が少なくとも3万円の交通費を要した事実を推認することができる。 他方、一審原告1-1らが主張する同16-1及び同16-2の週末 避難の交通費については、千葉県から福島市に戻って以降の同16-1及び同16-2の生活状況が証拠上判然とせず、同1-1らが主張する週末避難の実態を認定することができないから、その交通費の発生も認められない。 したがって、3万円の限度で、本件事故との相当因果関係がある交通 費の損害を認める。 (イ) 宿泊費・謝礼一審原告1-1らは、同16-1が千葉県の親戚宅に避難した際の られない。 したがって、3万円の限度で、本件事故との相当因果関係がある交通 費の損害を認める。 (イ) 宿泊費・謝礼一審原告1-1らは、同16-1が千葉県の親戚宅に避難した際の謝礼、週末避難のために同16-1の兄宅に避難した際の謝礼、週末避難の際のホテルの宿泊費等として7万3750円を支出したのが損害であ ると主張する。 まず、千葉県のおばに対する謝礼は、一審原告16-1が親族の情誼に対して自らの判断で任意に支払ったものであり、本件事故により支払を余儀なくされたものとはいえない。また、週末避難については、上記(ア)で述べたとおり、これを認めるに足りる証拠がない。 したがって、上記主張は認められない。 (ウ) 引越し費用一審原告1-1らは、同16-1が平成23年8月に福島市から豊橋市に引っ越した際に要した費用合計10万9450円が損害であると主張する。しかし、同16-1が実際に上記の支出をしたことを示す証拠 はなく、むしろ、甲C第16号証の5の平成23年10月の同16-1 - 566 -の給与所得の欄には「引越手当て込み」と記載されており、同16-1には再就職先から引越しの手当が支給されていたものと認めることができる。したがって、仮に同16-1に平成23年8月の引越しの費用が発生したとしても損害としてはてん補済みのものといえる。 他方で、一審原告16-2が平成23年9月に福島市から豊橋市に引 っ越した際に荷物を送るために要した費用は5万8000円であったと認められ(甲C16の5)、この支出は本件事故と相当因果関係を有すると認められる。この点、上記支出は同16-2の荷物の輸送のためのものではあるが、同16-1は上記転居後に同16-2と婚姻していること、本件において避難費 )、この支出は本件事故と相当因果関係を有すると認められる。この点、上記支出は同16-2の荷物の輸送のためのものではあるが、同16-1は上記転居後に同16-2と婚姻していること、本件において避難費用はすべて同16-1の損害として主張され ていることから、上記引越し費用は同16-1の損害と認めるのが相当である。 また、一審原告16の世帯が平成26年3月に豊橋市から福島市に戻った際の引越し費用については、車両の輸送費と合わせて68万4479円を支払ったことが認められ(甲C16の8)、福島市から豊橋市へ の転居について本件事故との相当因果関係が認められる以上、そこから福島市への帰還に要する費用も本件事故と相当因果関係を有するというべきであり、そのような帰還費用は、帰還が本件事故と相当因果関係が認められる避難期間内に行われた場合に限らず、期間後に行われた場合であっても発生するものであるから、平成26年の帰還費用についても 相当因果関係ある損害といえる。 したがって、74万2479円を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 (エ) 一時立入り・帰省費用一審原告1-1らは、同16-1に一時立入り・帰省費用として35 万1590円の損害が生じたと主張する。この点、前記のとおり、同1 - 567 -6-1について本件事故と相当因果関係が認められる避難は平成24年5月31日までの分であるから、平成23年12月26日から平成24年1月2日までと、同年3月29日から同年4月4日までの二度、豊橋市から福島市に帰省した(甲C16の5、6)際の交通費は本件事故と相当因果関係を有する損害と認められる。そして、上記証拠によれば、 上記2回の帰省に4万8549円(平成23年12月帰省分の高速代9250円、ガ 省した(甲C16の5、6)際の交通費は本件事故と相当因果関係を有する損害と認められる。そして、上記証拠によれば、 上記2回の帰省に4万8549円(平成23年12月帰省分の高速代9250円、ガソリン代1万2549円、平成24年3月帰省分の高速代1万4750円、ガソリン代1万2000円)を要したことが認められるから、これを本件事故と相当因果関係のある一時立入り・帰省費用と認めるのが相当である。 したがって、4万8549円を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 もっとも、その余の一時立入り・帰省費用については、これを認めるに足りる証拠がない。 (オ) その他(避難用雑品) 一審原告1-1らは、同16-1が、原判決1012頁の別紙「避難用雑品一覧」の「原告の請求」欄記載のとおり、避難用雑品の購入費等として合計16万2125円を要したと主張する。しかし、消耗品については、本件事故がなくとも購入していた可能性があり、本件事故がなければ購入しなかったということはできない。両親が引越しの手伝いに 来た際の駐車場代(甲C16の5)についても必ずしも必要なものとはいえないから、本件事故と相当因果関係を有する損害ということはできない。また、車両の修理費用(甲C16の5)についても、本件事故がなければ故障が発生しなかったとは認められず、本件事故と相当因果関係を有する損害ということはできない。さらに、借上げ社宅のための諸 費用についても、同16-1の上記借上げ社宅への転居(甲C16の5) - 568 -は同16-1の転職によるものであり、本件事故と相当因果関係を有するものとはいえない。したがって、上記請求は認められない。 もっとも、車両のナンバーの変更については、証拠(甲C16の6)によれば、一 同16-1の転職によるものであり、本件事故と相当因果関係を有するものとはいえない。したがって、上記請求は認められない。 もっとも、車両のナンバーの変更については、証拠(甲C16の6)によれば、一審原告16-1は平成24年2月に変更費用として4100円を支出したことが認められるところ、通常、転居の際には自動車の ナンバーを変更しなければならないとされている上(道路運送車両法12条1項)、これを交換したのが平成24年2月であり、本件事故と相当因果関係のある避難期間内であること、金額も相当と認められることから、上記4100円については本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。また、法律事務所への提出書類の取得費用600円につい ても、一審被告東京電力に対する賠償請求のためのものと認められるから、これも本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。 したがって、4700円の限度で本件事故との相当因果関係がある避難用雑品費の損害と認める。 (カ) その他(退職・謝礼) 一審原告16-1は、平成23年9月に勤務先の同僚への謝礼として栄養ドリンクを購入した際の費用5248円を請求するが、これは同16-1自らの判断で任意に謝礼を渡したものであり、本件事故により支出を余儀なくされたものとはいえない。したがって、本件事故と相当因果関係を有する損害が発生したとはいえず、上記請求は認められない。 (キ) 合計 82万5728円イ生活費増加費用(ア) 家財道具購入費一審原告16-1は、家財道具購入費として38万4488円の支出を余儀なくされたとして同額の請求をし、その証拠としてクレジットカ ードの明細書(甲C16の4)や家計簿(甲C16の5から7まで)を - 569 - 道具購入費として38万4488円の支出を余儀なくされたとして同額の請求をし、その証拠としてクレジットカ ードの明細書(甲C16の4)や家計簿(甲C16の5から7まで)を - 569 -提出する。しかし、クレジットカードの明細書ではどのような商品を購入したか不明であり、生活に必要な商品を購入したと直ちに認めることはできない。一方で、上記家計簿については、その記載内容や体裁等からすれば、同16-2が支出の都度記載したものと推認することができるから、上記家計簿の記載内容は信用できる。そして、購入した家財道 具の必要性及び本件事故と相当因果関係ある避難が平成24年5月31日までの部分に限り認められること、もっとも、平成23年12月に同16の世帯が転居したのは同16-1の転職に基づくものであるところ、この転居に際して費消したと認められる家財道具購入費については本件事故と相当因果関係のある損害とは認められないことからすれば、原判 決1013頁の別紙「家財道具一覧(原告番号16-1)」の認容額欄記載のとおり、合計16万1406円が本件事故と相当因果関係を有する損害と認められる。 (イ) 光熱費一審原告16-1及び同16-2は、避難前は両親等と同居しており、 水道光熱費の負担はしていなかったと認められるところ、本件事故による避難を行ったことにより水道光熱費の負担が発生したといえる。また、同16の世帯の避難のうち本件事故との相当因果関係が認められるのは平成24年5月31日までの部分に限られるところ、上記家計簿(甲C16の5、6)によれば、同16-1は平成23年9月から同年12月 までの電気代1万3962円、水道代8477円、ガス代2万0226円、灯油代1548円の計4万4213円、また、平成24年1月 16の5、6)によれば、同16-1は平成23年9月から同年12月 までの電気代1万3962円、水道代8477円、ガス代2万0226円、灯油代1548円の計4万4213円、また、平成24年1月から同年5月までの電気代1万7448円、水道代8796円、ガス代4万3943円、灯油代6216円の計7万6403円を負担したことが認められる。 したがって、これらの合計12万0616円を本件事故と相当因果関 - 570 -係を有する損害と認める。 (ウ) 再就職活動のための交通費、宿泊費その他の費用一審原告1-1らは、同16-1が、本件事故による再就職活動等のための交通費8万1169円、友人宅に宿泊するための宿泊代1万2000円、その他の費用6万3689円を要したと主張するが、同16- 1が本件事故前の勤務先を解雇されたのは、本件地震により同勤務先の施設が倒壊したことも理由となっており、本件事故により解雇されたものではないから、同16-1が上記各支出をしたとしても本件事故と相当因果関係を有するものとはいえない。 (エ) 通信費 一審原告16-1及び同16-2は、避難前は両親等と同居しており、通信費の負担はしていなかったと認められるところ、本件事故による避難を行ったことにより通信費の負担が発生したといえる。また、前記のとおり、同16の世帯の避難について本件事故と相当因果関係が認められるのは平成24年5月31日までであるところ、家計簿(甲C16の 5、6)によれば、同16-1は平成23年9月22日から同年12月22日までの間に4800円、また、平成24年1月から同年5月までの間に1万6345円(3269円×5か月)の通信費を負担したことが認められる。 したがって、これらの合計2万114 から同年12月22日までの間に4800円、また、平成24年1月から同年5月までの間に1万6345円(3269円×5か月)の通信費を負担したことが認められる。 したがって、これらの合計2万1145円が本件事故と相当因果関係 を有する損害と認められる。 (オ) 家賃増加分一審原告16-1は、豊橋市内のアパートに避難した平成23年8月から同年12月までの間に月額3万1980円の家賃等の負担をしていたと認められるから(甲C16の16)、同16-1が支出した家賃の うち少なくとも15万9900円は、本件事故と相当因果関係を有する - 571 -損害と認められる。一方で、同16-1及び同16-2は、同年12月に豊橋市内で当初居住していたアパートから同市内の借上げ社宅に転居したことが認められる(甲C16の5)が、この転居は、前記のとおり同16-1の転職によるものであり、本件事故と相当因果関係を有するものとはいえない。また、平成26年3月の豊橋市から福島市への帰還 費用のうち、敷金についてはその性質上返還されることが予定されているものであり損害と認めることはできないが、仲介手数料5万3550円(甲C16の18)については本件事故と相当因果関係を有する損害と認められる。 したがって、上記合計21万3450円を本件事故と相当因果関係を 有する損害と認める。 (カ) 合計 51万6617円ウその他(ADR弁護士費用)一審原告16の世帯の請求に対し一審被告東京電力が既に賠償した8094円(乙C16の1・6)の限度で本件事故と相当因果関係を有する 損害と認める(弁論の全趣旨)。 エ慰謝料一審原告16-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難(再避難を含む。)及 6の1・6)の限度で本件事故と相当因果関係を有する 損害と認める(弁論の全趣旨)。 エ慰謝料一審原告16-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難(再避難を含む。)及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、避難及び再避難の状況その他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これ を40万円と認めるのが相当である。 オ合計 175万0439円(3) 一審原告16-2の損害一審原告16-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難(再避難を含む。)及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、避難 及び再避難の状況その他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを40万 - 572 -円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額ア一審原告16-1について 27万7894円イ一審原告16-2について 8万円 (2) 一審被告東京電力の賠償一審被告東京電力は、これまで一審原告16の世帯に対し、以下のとおり賠償を行ったことが認められる(乙C16の1・6・9、弁論の全趣旨)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告16-1に対し自主避難等に係る損害 12万円 (イ) 一審原告16-2に対し自主避難等に係る損害 12万円(ウ) 合計 24万円イ ADRによる賠償ADRにより、一審原告16の世帯に対する和解金額が27万7894円と合意され、そこからADR以外による賠償額のうち16万円を控除し た11万7894円が支払われた。 (内訳)(ア) 避難費用(避難交通費・宿泊費)、生活費増加費用(車中泊に伴う生活費増加分・家財道具購入 る賠償額のうち16万円を控除し た11万7894円が支払われた。 (内訳)(ア) 避難費用(避難交通費・宿泊費)、生活費増加費用(車中泊に伴う生活費増加分・家財道具購入費)、ADR弁護士費用 19万7894円 (イ) 精神的損害 8万円(ウ) 合計(和解金額) 27万7894円(エ) 既払い金 16万円(一審原告16-1及び同16-2分各8万円)(オ) 合計(支払い額) 11万7894円上記(ア)は一審原告16の世帯のために同16-1が支出した費用の 損害に対するものとみられ、上記(イ)は同16の世帯の精神的損害各4 - 573 -万円に対するものであるとみられるから、ADRにおける和解金額のうち同16-1に対する額は23万7894円であり、同16-2に対する額は4万円となる。 ウ合計 35万7894円(3) 一審原告16の世帯に対する各弁済額 ア一審原告16-1に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 15万7894円 ADRにおける和解金額のうち一審原告16-1に対する額23万7894円から、既払い金のうち同16-1に対する8万円が控除されたので、ADRによる賠償による同16-1に対する弁済額は15万7894円となる。 (ウ) 合計 27万7894円 したがって、一審被告東京電力の一審原告16-1に対する弁済の抗弁は全部認められる。 イ一審原告16-2に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償について 、一審被告東京電力の一審原告16-1に対する弁済の抗弁は全部認められる。 イ一審原告16-2に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし て扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償ADRにおける和解金額のうち一審原告16-2に対する額4万円から、既払い金のうち同16-2に対する8万円が控除されたので、ADRによる賠償による同16-2に対する弁済額は0円となる。 (ウ) 合計 12万円 - 574 -したがって、一審被告東京電力の一審原告16-2に対する弁済の抗弁8万円は全部認められる。 4 認容額等(1) 一審原告16-1ア損害額 175万0439円 イ弁済額 27万7894円ウ弁済額控除後の損害額 147万2545円エ弁護士費用 15万円オ認容額 162万2545円(2) 一審原告16-2 ア損害額 40万円イ弁済額 8万円ウ弁済額控除後の損害額 32万円エ弁護士費用 4万円オ認容額 36万円 第17 一審原告17の世帯 1 認定事実(甲C17の1の1、2、甲C17の15、丁C4、5、一審原告17-1本人(原審)、同17-2本人(当審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況一審原告17-1(本件事故当時57歳)、その妻である同17-2(本 件事故当時55歳)は、本件事故当時、福島県南相馬市小高区所在の自宅(福島第一原発からの距離15.97km(乙C17の1))に居住していた。 一審原告17-1は、平成4年から平成20 (本 件事故当時55歳)は、本件事故当時、福島県南相馬市小高区所在の自宅(福島第一原発からの距離15.97km(乙C17の1))に居住していた。 一審原告17-1は、平成4年から平成20年頃まで、警備会社の従業員として、福島第一原発において、管理区域に出入りする人や物品の放射性物 質の付着を確認する仕事等に従事していたが、本件事故当時は上記会社とは - 575 -別の警備会社の従業員としてEで勤務していた。同17-2は、本件事故当時、専業主婦であった。 一審原告17-1は、糖尿病の持病があり、約20年前から現在に至るまで、月に1回程度通院している。同17-2は、約10年前から現在に至るまで、アニサキスによるアレルギー症状があり、魚介類全般及び魚介系の出 汁を含む食品を一切口にすることができない状態である。 一審原告17-1は、30坪ほどの一戸建ての自宅及び南相馬市小高区内の1000坪ほどの田畑を所有していたほか、本件事故の12年ほど前に同区内に自宅を建てるための280坪ほどの土地を約500万円で購入し、約400万円を費やして住宅を建てられるように土地改良をしていた。 (2) 避難開始の経緯等一審原告17-1は、本件地震発生当時はEで勤務中であったが、自分の自動車が本件津波により流されたため、同僚の自動車に乗せてもらい、自宅に一時帰宅したところ、家の中はあらゆる物が倒れて散乱し、玄関のガラス戸は割れ、廊下側のサッシ戸も倒れていた。同17-1は、同17-2が不 在であったため、避難したものと判断し、一旦勤務に戻った。同17-1は、平成23年3月12日、自宅に帰宅した後、避難先(小高工業高校)で同17-2の無事を確認した。同17の世帯は、その後自宅に戻ったものの、生活できる状況ではなかっ し、一旦勤務に戻った。同17-1は、平成23年3月12日、自宅に帰宅した後、避難先(小高工業高校)で同17-2の無事を確認した。同17の世帯は、その後自宅に戻ったものの、生活できる状況ではなかったため、南相馬市原町区に住む友人からの誘いに応じて同友人宅に赴いたが、夕方頃、再び自宅に戻り、結局、同日は自宅で一 夜を過ごした。同17の世帯は、同日中は本件事故のことや同日午後6時25分に20km圏内の住民に避難指示が出たこと等は全く知らなかった。同17の世帯は、同月13日、上記友人宅を訪問した。同17-1は、同月14日、Eに出社し、津波で流された東北電力の従業員の捜索の手伝いをしていた。同日午前11時頃、福島第一原発での爆発が報じられ、自動車の入退 管理が立哨による確認から守衛所建屋内からの確認に切り替えられた。同1 - 576 -7の世帯は、同月15日にはEが閉鎖になったとの連絡を受け、さらに、福島第一原発から20kmから30km圏内の居住者に対し、屋内退避の指示が出されたことを知った。同17の世帯は、同月16日に福島第一原発の4号機で火災が発生したことを報道で知り、また、名古屋市に住む同17の世帯の長男から三重県及び愛知県で県営住宅の提供の話があるとの連絡を受け た。同月17日夕方には、近所の小学校で福島第一原発についての説明会があり、町全体で他所にバスで避難することが決定事項として示され、同日夜までに、翌日に出るバスに乗って避難するかどうかの意思表示をするよう言われたが、同17の世帯は上記バスでの避難の申込みはしなかった。同17の世帯は、同月18日、名古屋市に住んでいる長男から、同市で住居が確保 できたとの連絡を受け、同月19日、同市に避難する準備を開始した。同17の世帯は、同月23日、同17-2の自動 た。同17の世帯は、同月18日、名古屋市に住んでいる長男から、同市で住居が確保 できたとの連絡を受け、同月19日、同市に避難する準備を開始した。同17の世帯は、同月23日、同17-2の自動車で福島駅に行き、同駅からバスに乗って新宿に向かい、新宿を経由して同17-2の兄のいる川崎市に行き、そこで4日間ほど過ごした後、同月27日に新幹線で名古屋に到着した。 (3) 避難後の状況 一審原告17の世帯は、避難後は名古屋市内で生活しているが、同17-1は持病の糖尿病が悪化し、一時入院を勧められたこともあった。同17-2は熱中症及び気管支喘息により10日間入院したことがあり、また、同17-2は膝と腰を痛めていて歩行等に支障を来し、同17-1の介助を得なければならない状況であったが、平成27年又は28年頃、足の手術を受け、 多少改善した。 一審原告17-1は、名古屋に避難した後は就職せず、避難直後にはハローワークで就職先を探したこともあったものの、今後も名古屋に居住し続けるかは不確定のため、現在は就職活動を行っていない。同17-2は、従前の勤務先(E)から復職の誘いを受けたが、同17-2の前記アレルギー症 状等もあるため、これを断った。 - 577 -一審原告17-1は、平成27年7月頃には前記自宅を解体することを決断し、平成28年11月23日には解体を完了した。 一審原告17の世帯は、現在、年に二、三回程度、葬式や法事等で福島を訪れることがある。 (4) 本件事故当時住所地の状況 一審原告17の世帯の本件事故当時の住所地は南相馬市で、同17の世帯の住所があった同市小高区は避難区域、平成23年12月26日から避難指示解除準備区域であり、同区の避難指示解除準備区域は、平成28年7月12日午 世帯の本件事故当時の住所地は南相馬市で、同17の世帯の住所があった同市小高区は避難区域、平成23年12月26日から避難指示解除準備区域であり、同区の避難指示解除準備区域は、平成28年7月12日午前0時に解除された。同市の環境放射能等の状況は前記第3章、第4、1のとおりである。 一審原告17の世帯の住所があった町内には本件事故当時は12軒の世帯があったが、現在、戻って来ている世帯は2軒程度であり、その他の世帯は戻っていない(一審原告17-2本人(当審))。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分 一審原告17の世帯の本件事故当時の住所は、福島第一原発から半径20km圏内であり、平成23年3月12日、避難区域に指定され、同17の世帯は、同月18日の集団避難には参加しなかったものの、同月23日に南相馬市小高区を離れ、川崎市を経由して、同月27日、名古屋市に避難したものであり、同17の世帯の避難は本件事故によるものと認められ、南相馬市 小高区は、平成23年12月26日、避難指示解除準備区域に設定されたものの、同区域の指定が解除されたのは平成28年7月12日であるから、同17の世帯の名古屋市におけるその後の避難生活の継続も本件事故によるものと認められる。 他方、南相馬市小高区の避難指示解除準備区域は平成28年7月12日に 解除されたから、通常、それから帰還準備期間に要する一定の期間を経れば、 - 578 -同市同区へ帰還することに支障はなくなるというべきところ、一審原告17-1は、本件事故当時の勤務先からの復職の誘いを同17-2の体調を考慮して断り、同市同区で事業所が再開したり病院が診療を開始したりしていた平成27年7月頃には同市同区の自宅を解体することを決め、避難指示 は、本件事故当時の勤務先からの復職の誘いを同17-2の体調を考慮して断り、同市同区で事業所が再開したり病院が診療を開始したりしていた平成27年7月頃には同市同区の自宅を解体することを決め、避難指示解除準備区域の指定が解除された後の平成28年11月23日にその解体を終え ており、同17の世帯が現在でも同区に帰還していないのは、同17の世帯が同市同区の状況にかかわらず同市同区には帰還しないことを決めて自宅を解体したことによるものとみるのが相当である。 したがって、一審原告17の世帯の避難生活のうち、本件事故と相当因果関係が認められるのは平成28年11月23日までの部分に限られるとする のが相当である。 (2) 一審原告17-1の損害ア財物損害以外の損害(ア) 就労不能損害一審原告17-1の本件事故当時の賃金は日額6362円であったこ とが認められる(甲C17の2)。 まず、一審原告17-1が本件事故から避難までの間の給料が得られなかったことについては、同17-1が本件事故当時勤務していたEが本件地震及び本件津波によって一時閉鎖されたことが原因であり、本件事故によるものとは認められない。 また、一審原告17-1は、平成23年3月27日に名古屋市に避難して以降、就職していないところ、避難から1年程度は生活環境の整備及び就職活動のため就職することが困難であるとして本件事故による就労不能とみることができるとしても、避難から1年経過後以降は、避難前と同様の給与水準の就職先に就職することが不可能であるとは認めら れないから、避難から1年を経過した時点以降の就労不能損害は本件事 - 579 -故と相当因果関係を有する損害と認めることはできない。 したがって、本件事故と相当因果関係を有する めら れないから、避難から1年を経過した時点以降の就労不能損害は本件事 - 579 -故と相当因果関係を有する損害と認めることはできない。 したがって、本件事故と相当因果関係を有する就労不能損害は、平成23年3月27日から平成24年3月26日までの366日分である232万8492円(=日額6362円×366日)と認めるのが相当である。 一審被告東京電力は、一審原告17-1が、避難後に就労しなかったのは再び福島に戻ることを想定していたためであると本人尋問で供述していることや、同17-2の看病といっても付きっ切りである必要はなかったことなどから、就労は可能であり、本件事故と就労不能との因果関係は認められない旨主張する。しかし、前記認定のとおり、従前は警 備会社の従業員として各発電所で勤務していた同17-1が、本件事故により突然、自宅を離れて遠隔地の名古屋市に避難することとなり、その後の見通しも立たないままにわかに就労先を見つけて就労することは困難であり、上記のとおり避難後1年程度の就労不能は本件事故との因果関係を認めるべきであるから、上記主張は採用できない。 (イ) 慰謝料一審原告17-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料は、福島第一原発で本件事故が発生して住所が避難区域となり避難を余儀なくされたこと、避難先で持病を抱えながら生活しなければならなかったこと、南相馬市小高 区の避難指示解除準備区域の解除は平成28年7月であり、同年11月に自宅を解体するまでの避難期間が約5年8月に及んでいることその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを850万円と認めるのが相当である。 一審原告7-1らは、同17の世帯は、本件事故により、人生 自宅を解体するまでの避難期間が約5年8月に及んでいることその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを850万円と認めるのが相当である。 一審原告7-1らは、同17の世帯は、本件事故により、人生そのも のを支えていた基盤である地域での暮らしや豊かな自然の中での暮らし - 580 -を奪われ、人格的生存に不可欠な権利そのものを奪われ、その被害は甚大であるから、かかる点は慰謝料額算定において考慮されるべきと主張するが、前記のとおり、同7-1らが主張する内容は平穏生活権に含まれ、同17-1が本件事故により住所からの避難及び避難先での生活を余儀なくされたことによる精神的苦痛を十分考慮しても、上記の慰謝料 額が相当である。 (ウ) 合計 1082万8492円イ財物損害(ア) 家財道具一審原告17の世帯の請求に対し一審被告東京電力が既に賠償した4 45万円(乙C17の3)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (イ) 不動産一審原告17の世帯の請求に対し一審被告東京電力が既に賠償した2226万4401円(乙C17の3)を本件事故と相当因果関係を有す る損害と認める(弁論の全趣旨)。 (ウ) 仏壇仏具一審原告17-1が請求し、一審被告東京電力が既に賠償した51万円を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (エ) 合計 2722万4401円 (3) 一審原告17-2の損害一審原告17-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料は、福島第一原発で本件事故が発生して住所が避難区域となり避難を余儀なくされたこと、避難先で持病を抱えな -2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料は、福島第一原発で本件事故が発生して住所が避難区域となり避難を余儀なくされたこと、避難先で持病を抱えながら生活しなければならなかったこと、南相馬市小高区の避難指示解除 準備区域の解除は平成28年7月であり、同年11月に自宅を解体するまで - 581 -の避難期間が約5年8月に及んでいることその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを850万円と認めるのが相当である。 一審原告7-1らの主張に対する判断は、前記(2)ア(イ)で述べたとおりである。 3 弁済の抗弁 (1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額ア一審原告17-1について 2758万8001円イ一審原告17-2について 8万4480円(2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、これまで一審原告17の世帯に対し、ADR以外に より2767万2481円の賠償(仮払金160万円を含む。)を行ったことが認められる(乙C17の3、乙C46の1から4まで)。 (内訳)ア生命・身体的損害として 44万8080円(ア) 一審原告17-1に対し 36万3600円 (イ) 一審原告17-2に対し 8万4480円(ウ) 合計 44万8080円イ一審原告17-1の財物損害として 2722万4401円ウ合計 2767万2481円(3) 一審原告17の世帯に対する各弁済額 ア一審原告17-1に対する弁済額(ア) 財物損害以外の損害に対する賠償36万3600円(前記(2)ア(ア))(イ) 財物損害に対する賠償 2722万4401円(前記(2)イ) 7-1に対する弁済額(ア) 財物損害以外の損害に対する賠償36万3600円(前記(2)ア(ア))(イ) 財物損害に対する賠償 2722万4401円(前記(2)イ)(ウ) 合計 2758万8001円 したがって、一審被告東京電力の一審原告17-1に対する弁済の抗 - 582 -弁2758万8001円は、財物損害以外の損害に対する弁済の抗弁36万3600円及び財物損害に対する弁済の抗弁2722万4401円をいうものとして、いずれも全部認められる。 イ一審原告17-2に対する弁済額(ア) 財物損害以外の損害に対する賠償 8万4480円(前記(2)ア(イ)) (イ) 財物損害に対する賠償 0円(ウ) 合計 8万4480円したがって、一審被告東京電力の一審原告17-2に対する弁済の抗弁は全部認められる。 4 認容額等 (1) 一審原告17-1ア財物損害以外の損害(ア) 損害額 1082万8492円(イ) 弁済額 36万3600円(ウ) 弁済額控除後の損害 1046万4892円 イ財物損害(ア) 損害額 2722万4401円(イ) 弁済額 2722万4401円(ウ) 弁済額控除後の損害額 0円ウ弁済額控除後の損害額合計 1046万4892円 エ弁護士費用 105万円オ弁護士費用加算後の損害額 1151万4892円カ認容額 1100万円(一審原告17-1の請求元本額と同額)(2) 一審原告17-2ア損害額 850万円 イ弁済額 8万4480円 - 892円カ認容額 1100万円(一審原告17-1の請求元本額と同額)(2) 一審原告17-2ア損害額 850万円 イ弁済額 8万4480円 - 583 -ウ弁済額控除後の損害額 841万5520円エ弁護士費用 85万円オ認容額 926万5520円第18 一審原告18-1 1 認定事実(甲C18の1のほか後掲のもの、弁論の全趣旨) (1) 本件事故前の状況等一審原告18-1(本件事故当時72歳)及びその妻である元原審原告18-2(本件事故当時73歳)は、本件事故当時、福島県南相馬市原町区所在の市営住宅(福島第一原発からの距離23.90km(乙C18の1))に居住していた。 元原審原告19(本件事故当時44歳)は、一審原告18-1及び元原審原告18-2の長男であり、本件事故当時、南相馬市原町区所在の同一審原告の持ち家(福島第一原発からの距離24.35km(乙C19の1))に祖母(同一審原告の母)と共に居住していた。同一審原告及び同元原審原告の二男は福島県双葉郡楢葉町に住んでいた。 一審原告18-1及び元原審原告18-2はともに年金生活者で、うち同元原審原告は本件事故の約7年前にヘルニアの手術をしており、歩行が困難で、常に杖を使う状態であった。同一審原告は、自宅近くに約200坪の畑を借りて、毎日農作業を行っており、野菜は全て自給しており、味噌も自家で作っていた。また、同一審原告はタンス職人で建具屋やサッシ屋で働いて いたこともあり、大工仕事や家具の製作ができるため、知人や近所の人に頼まれて大工仕事をすることもあった。さらに、同一審原告は、同元原審原告がヘルニアの手術を受けた後、歩くと痛みで歩行が続 て いたこともあり、大工仕事や家具の製作ができるため、知人や近所の人に頼まれて大工仕事をすることもあった。さらに、同一審原告は、同元原審原告がヘルニアの手術を受けた後、歩くと痛みで歩行が続けられない状態となったため、同元原審原告の身の回りの世話をしていた。 元原審原告19は、本件事故当時、製材業に従事していたが、本件事故に より会社が閉鎖されて、解雇された。 - 584 -(2) 避難開始の経緯等一審原告18-1は、平成23年3月12日、福島第一原発が爆発したと聞いて元原審原告18-2及び同19とともに避難することに決め、まず、福島市渡利地区の同一審原告の弟の家に自動車で避難した。さらに、同一審原告は、同月21日、元原審原告18-2及び同19並びに合流した二男と ともに、横浜市の同一審原告の妹の家に、同月23日、静岡県伊豆の国市の同一審原告の叔父の家に、同月25日、愛知県小牧市の同一審原告の姪の家に、順次、自動車で避難した。 一審原告18-1は、同年4月29日、元原審原告18-2及び同19並びに二男とともに小牧市の県営住宅に引っ越した。 (3) 避難後の状況等一審原告18-1は、小牧市への避難後、元原審原告18-2がうつ病及びメニエール病と診断されて入退院を繰り返したり、平成27年7月に膝の病気となって同年11月まで入院したりしたことから、同元原審原告の身の回りの世話をしながら生活をしており、避難先では農作業もできず、知人も 近くにいないので大工仕事を頼まれることもなかった。また、同一審原告は、平成23年5月から平成25年2月まで毎月、同一審原告の母(平成24年1月死亡)の様子や自宅の様子を見るために小牧市から南相馬市原町区の自宅に帰っていた。 一審原告18-1は、 た、同一審原告は、平成23年5月から平成25年2月まで毎月、同一審原告の母(平成24年1月死亡)の様子や自宅の様子を見るために小牧市から南相馬市原町区の自宅に帰っていた。 一審原告18-1は、愛知県の県営住宅の補助金が平成29年3月に打ち 切られるため、同月、小牧市から南相馬市原町区に戻り、元原審原告19が平成27年に同市同区に購入した中古住宅に入居した。その際の引越し作業については、小牧市の社会福祉協議会から紹介を受けた作業員を雇い、トラックはレンタカーを借りて、二度にわたって行った。 一審原告18-1が所有し、元原審原告19が本件事故当時に住んでいた 家は、本件地震で8割倒壊し、雨漏りもしている状態であったため、同一審 - 585 -原告は、平成25年3月、借地契約を解約して家を解体した。 (4) 本件事故時住所地の状況等本件事故当時の一審原告18-1の住所地は南相馬市で、住所があった同市原町区は旧緊急時避難準備区域であり、緊急時避難準備区域は平成23年9月30日に解除され、同年10月以降、小中学校や高校が授業を再開し、 平成24年5月時点で医療機関等も活動を再開している。そのほか、同区を含め同市の環境放射能等の状況は前記第3章、第4、1のとおりである。 2 一審原告18-1の損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告18-1は、旧緊急時避難準備区域である南相馬市原町区に居住 していたところ、福島第一原発で発生した爆発を受けて、平成23年3月12日以降、福島市、横浜市、伊豆の国市の各親族宅を経て、同月25日、小牧市まで避難したものであり、この避難は本件事故によるものと認められる。 他方、南相馬市原町区の緊急時避難準備区域は平成23年9月に解除され、そ 、横浜市、伊豆の国市の各親族宅を経て、同月25日、小牧市まで避難したものであり、この避難は本件事故によるものと認められる。 他方、南相馬市原町区の緊急時避難準備区域は平成23年9月に解除され、その後の同市同区の状況は上記1(4)のとおりであるから、帰還準備に要す る期間を考慮しても、遅くとも平成24年8月31日までには、避難先から同市同区に帰還することに支障はなくなっていたというべきである。 したがって、一審原告18-1の避難生活のうち本件事故と相当因果関係が認められるのは平成24年8月31日までの部分に限られるとするのが相当である。 (2) 財物損害以外の損害ア避難費用(ア) 交通費一審原告18-1及び元原審原告18-2の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した避難・帰宅費用4万7000円(乙C18の3) を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 - 586 -(イ) 宿泊費・謝礼一審原告18-1及び元原審原告18-2の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した10万9000円(乙C18の3)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (ウ) 引越し費用 一審原告1-1らは、同18-1が小牧市から南相馬市への引越しの際に要したレンタカー代及び謝礼代として24万5000円を支払い、これが損害となると主張する。 一審原告18-1がこのような金額を実際に支出したことを直接に示す証拠はないが、同18-1がレンタカーを使用して引越しを行った事 実は認められ、この事実からは、同18-1がレンタカー代として少なくとも1万円を要した事実を推認することができる。 したがって、1万円を本件事故と相当因果関係を有す 使用して引越しを行った事 実は認められ、この事実からは、同18-1がレンタカー代として少なくとも1万円を要した事実を推認することができる。 したがって、1万円を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 一審被告東京電力は、一審原告18-1の小牧市から南相馬市への引越し費用について、そもそも証拠がない上、本件事故と相当因果関係が 認められる避難期間を超えており、本件事故と相当因果関係の認められない損害であると主張する。しかし、上記のとおり少なくとも1万円を要した事実は推認可能で、この額が不当なものともいえないし、本件事故と相当因果関係ある避難をした以上、避難先から避難元に帰還することもまた必要となるのであるから、この帰還のための引越し費用も本件 事故に伴う損害と考えられ、同18-1の南相馬市への帰還は相当因果関係ある避難生活期間である平成24年8月31日より後の平成29年3月であったけれども、相当因果関係ある避難生活期間内に帰還してもその後に帰還しても費用を要することに変わりはないから、同18-1の帰還のための引越し費用は本件事故と相当因果関係ある損害となると いうべきである。 - 587 -(エ) 一時立入り・帰省費用一審原告18-1は、平成23年5月から平成25年2月まで、毎月1回、自動車で南相馬市に帰省していたこと、同月27日に脳梗塞で倒れた同一審原告の母の様子を見に自動車で同市に行ったこと、同年8月7日に自動車で南相馬市に行ったことが認められる(甲C18の1、弁 論の全趣旨)。そして、これらの帰省のうち平成24年8月までの部分は、いずれも必要な範囲内のものといえる。 もっとも、その際に要した交通費については、一審原告18-1及び元原審原告18-2の請求に対して一審被告東 して、これらの帰省のうち平成24年8月までの部分は、いずれも必要な範囲内のものといえる。 もっとも、その際に要した交通費については、一審原告18-1及び元原審原告18-2の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した平成23年3月11日から平成24年8月31日まで分の一時立入り費用 56万8116円(乙C18の3)の限度では本件事故と相当因果関係を有する損害が発生したと認めることができるものの(弁論の全趣旨)、それを超える一時立入り費用を同一審原告又は同元原審原告が実際に支出したと認めるに足りる証拠はない。 (オ) 合計 73万4116円 イ生活費増加費用(ア) 家財道具購入費一審原告1-1らは、同18-1に家財道具購入費65万2000円の損害が生じたと主張する。同1-1らは、同18-1が家財道具を購入したことを示す領収証等の証拠を提出していないが、同18-1が、 元原審原告18-2や長男(同19)、二男とともに避難先で新たに生活を始めた事実は認められ、その事実によれば、避難先用に家財道具を購入した事実、その購入に少なくとも10万円を要した事実を推認することができる。 したがって、本件事故と相当因果関係を有する損害は10万円である。 一審被告東京電力は、これについて、一審原告18-1は避難を強い - 588 -られた訳でもないし、トラックを使用して家財道具を搬出することも可能であるから、新規購入の必要はない等と主張する。しかし、同18-1の避難が本件事故と相当因果関係があることは前記のとおりであり、また同18-1が平成23年3月12日に南相馬市から福島市に避難した際には、混乱した状況下で、その後の避難がどうなるかもわからない 状態であったと考えられ、実際、その ことは前記のとおりであり、また同18-1が平成23年3月12日に南相馬市から福島市に避難した際には、混乱した状況下で、その後の避難がどうなるかもわからない 状態であったと考えられ、実際、その後、転々と小牧市まで避難することになるのであるから、その際にトラックで家財道具を運び出すことは困難であったというべきであり、避難後の新生活に際して家財道具を購入することもまた、本件事故と相当因果関係があるというべきである。 (イ) 食費 一審原告1-1らは、同18-1が避難したことにより少なくとも月1万円食費が増加したと主張する。しかし、同18-1及び元原審原告18-2の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した平成23年3月11日から平成24年8月31日まで分の8万円(甲C18の7)の限度では本件事故と相当因果関係を有する損害が発生したと認めること ができるものの(弁論の全趣旨)、それを超えて食費が増加したことを認めるに足りる証拠はできない。 したがって、本件事故と相当因果関係を有する食費の損害は8万円である。 (ウ) 家賃増加分 一審原告1-1らは、同18-1の南相馬市の市営住宅の平成23年4月から平成30年2月までの家賃相当額が同18-1の損害となると主張する。しかし、同18-1は、本件事故前から同市営住宅に居住していたのであるから、本件事故による避難がなくとも同市営住宅の家賃は発生していたといえ、これは本件事故と相当因果関係を有する損害と は認められない。 - 589 -(エ) その他(駐車場代)一審原告18-1は、避難前は駐車場代がかからなかったものの、避難後には月額2700円の駐車場代を支払う必要が生じたと認めることができる(甲C18の2、弁論の全趣旨)。 エ) その他(駐車場代)一審原告18-1は、避難前は駐車場代がかからなかったものの、避難後には月額2700円の駐車場代を支払う必要が生じたと認めることができる(甲C18の2、弁論の全趣旨)。 したがって、本件事故と相当因果関係が認められる避難生活中である 平成23年5月から平成24年8月までの駐車場代4万3200円(=2700円/月×16か月)を本件事故と相当因果関係を有する駐車場代の損害と認める。 (オ) 合計 22万3200円ウ ADR弁護士費用 一審原告18-1の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した7万8091円(甲C18の8・9)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 エ慰謝料一審原告18-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難 及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、家族を伴い、南相馬市から、福島市、横浜市、伊豆の国市の各親族宅を転々としながら小牧市まで避難したこと、南相馬市に残った母の様子を見るためにしばしば帰省する必要があったこと、その他前記認定に係る一切の事情を考慮すれば、これを180万円と認めるのが相当である。 オ合計 283万5407円(3) 財物損害ア家財道具一審原告1-1らは、本件事故から1年後の平成24年2月でも、同18-1の自宅(市営住宅)の中の放射線量は0.28μSv/時を超え、 年間放射線量では1mSvを超える値であったことから、被ばくを避け - 590 -るべく、同月3日に、同自宅と元原審原告19が住んでいた家のそれぞれ家財道具や電化製品、衣類や生活用品の大半の処分を余儀なくされたと主張し、同一審原告に家財道具相当額172万4000円の損害が生じ るべく、同月3日に、同自宅と元原審原告19が住んでいた家のそれぞれ家財道具や電化製品、衣類や生活用品の大半の処分を余儀なくされたと主張し、同一審原告に家財道具相当額172万4000円の損害が生じたと主張する。 しかし、一審原告18-1の家財道具が、処分しなければならない程度 に放射性物質に汚染されていた事実を認めるに足りる証拠はなく、また、同1-1らは、同18-1が処分した家財道具の内容や金額について具体的な主張立証をしていない。 したがって、一審原告18-1に本件事故と相当因果関係を有する家財道具の財物損害が発生したと認めることはできない。 イその他(電化製品処分費)一審原告1-1らは、同18-1が電化製品の処分費用として3万1815円を要し、これが本件事故による損害にあたると主張するが、同18-1が使用していた電化製品が放射性物質に汚染されていた事実を認めるに足りる証拠はなく、同18-1が被ばくを避けるために電化製品 を処分する必要があったと認めることはできない。 したがって、一審原告18-1に本件事故と相当因果関係を有する電化製品処分費の財物損害が発生したと認めることはできない。 ウ合計 0円 3 弁済の抗弁 (1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額一審原告18-1について 291万3533円(2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、これまで一審原告18-1に対し、次のとおりの賠償を行ったことが認められる(乙C18の3、弁論の全趣旨)。 ア ADR以外による賠償仮払い避難費用 130万円 - 591 -イ ADRによる賠償ADRにより、一審原告18-1に対する和解金額が291万3533円と合意され、 ア ADR以外による賠償仮払い避難費用 130万円 - 591 -イ ADRによる賠償ADRにより、一審原告18-1に対する和解金額が291万3533円と合意され、そこからADR以外による賠償額130万円を控除した161万3533円が支払われた。 (内訳) (ア) その他(財物以外)、一時立入り費用、精神的損害(避難生活)、避難・帰宅費用、ADR弁護士費用 291万3533円(イ) 既払い金 130万円(ウ) 支払額 161万3533円ウ合計 291万3533円 (3) 一審原告18-1に対する弁済額ア財物損害以外の損害(ア) ADR以外による賠償 130万円(イ) ADRによる賠償 161万3533円(ウ) 合計 291万3533円 イ財物損害(ア) ADR以外による賠償 0円(イ) ADRによる賠償 0円(ウ) 合計 0円したがって、一審被告東京電力の一審原告18-1に対する弁済の抗弁 291万3533円は財物損害以外の損害に対する弁済の抗弁として全部認められる。 4 認容額等(1) 財物損害以外の損害ア損害額 283万5407円 イ弁済額 291万3533円 - 592 -ウ弁済額控除後の損害額 0円(2) 財物損害ア損害額 0円イ弁済額 0円ウ弁済額控除後の損害額 0円 (3) 認容額 0円第19 一審原告20の世帯 1 認定事実(甲C20の1、一審原告20-1本人(原審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状 弁済額控除後の損害額 0円 (3) 認容額 0円第19 一審原告20の世帯 1 認定事実(甲C20の1、一審原告20-1本人(原審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等一審原告20-1(本件事故当時63歳)及びその妻である同20-2 (本件事故当時63歳)は、本件事故当時、福島県南相馬市原町区所在の自宅(福島第一原発からの距離22.47km(乙C20の2))に居住していた。 一審原告20-1及び同20-2は、長年、名古屋市内に居住していたが、残りの人生を自然に囲まれた土地で過ごしたいと考え、同市内の自宅を処分 し、平成22年7月、南相馬市原町区に新たに土地及び中古建物を購入し、同年9月、同所に移住していたものである。 一審原告20-1及び同20-2の長女である同20-3(本件事故当時32歳)は、名古屋市で出生し、大学卒業後しばらくまで愛知県内に居住していたが、本件事故当時は勤務先のある滋賀県甲賀市内に居住していた。同 20-3は、本件事故以前から、勤務先を平成23年3月末に退職して同年4月から南相馬市原町区の両親の住所で同居することを予定していた。 (2) 避難開始の経緯等一審原告20-1及び同20-2の自宅は、平成23年3月11日の本件地震では一時断水した程度で大きな損傷等はなく、同月12日、本件事故が 発生したものの、南相馬市原町区は避難の必要はないなどの報道を信じ、避 - 593 -難はしなかった。しかし、同月14日、福島第一原発で2回目の爆発が起こり、その際、自宅のガラス戸が揺れるのを聞いて不安を覚え、避難することに決めた。 一審原告20-1及び同20-2は、平成23年3月15日午前0時頃、自動車で会津方面へ出発し、同日は西会津の宿泊施設に1泊した。 自宅のガラス戸が揺れるのを聞いて不安を覚え、避難することに決めた。 一審原告20-1及び同20-2は、平成23年3月15日午前0時頃、自動車で会津方面へ出発し、同日は西会津の宿泊施設に1泊した。同20- 1及び同20-2は、同月16日、高速道路で、少しずつ給油を繰り返しながら名古屋市に向かい、同月17日午前0時過ぎ、同市に到着した。 (3) 避難後の状況等一審原告20-1及び同20-2は、平成23年4月初旬まで、名古屋市内の親類や知人の家を転々とし、同月初旬以降、名古屋市の借上げ住宅であ る市営住宅に入居した。 その市営住宅にはエレベーター等がなく、居室内にも階段があり、風呂場は旧式で浴槽は非常に高さのあるものであったが、一審原告20-2は、平成24年1月、股関節を痛めて人工股関節置換術を受け、同月18日から同年2月9日まで入院していたので、同20-1及び同20-2は、同月、そ の市営住宅から同じく借上げ住宅である名古屋市e区のアパートに引っ越した。なお、同20-2は、同年7月まで週に1回通院し、その後は半年に1回通院した。 一審原告20-3は、平成23年3月末で甲賀市の勤務先を退職する予定であったところ、本件事故を受けて退職願を一旦撤回し、平成24年10月 まで上記勤務先で勤務し、同月、名古屋市内に転職先を見つけて転職し、同市内で生活するようになった。 その後、一審原告20の世帯は、愛知県愛西市に、住宅ローンで中古の一軒家を購入し、転居した。また、同20-1及び同20-2は、避難生活中、月1回程度の頻度で南相馬市の自宅に戻り、1週間程度滞在して自宅のメン テナンスを行っている。 - 594 -(4) 本件事故時住所地の状況等本件事故当時の一審原告20-1及び同20-2の住 で南相馬市の自宅に戻り、1週間程度滞在して自宅のメン テナンスを行っている。 - 594 -(4) 本件事故時住所地の状況等本件事故当時の一審原告20-1及び同20-2の住所地は南相馬市で、住所があった同市原町区は旧緊急時避難準備区域に該当するところ、緊急時避難準備区域は平成23年9月30日に解除され、同年10月以降、小中学校や高校が授業を再開し、平成24年5月時点で医療機関等も活動を再開し ている。そのほか、同区を含め同市の環境放射能等の状況は、前記第3章、第4、1のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告20-1及び同20-2は、本件事故当時、旧緊急時避難準備区 域である南相馬市原町区に居住していたところ、本件事故で2回の爆発があり、平成23年3月14日には自宅のガラス戸が揺れるなどしたことから、避難することを決めて、同市に移住する前に居住していた名古屋市に避難したものであり、同20-1及び同20-2の避難は本件事故によるものと認められる。 他方、南相馬市原町区の緊急時避難準備区域は平成23年9月に解除され、その後の同市同区の状況は上記1(4)のとおりであるから、帰還準備に要する期間を考慮しても、遅くとも平成24年8月31日までには、避難先から同市同区に帰還することに支障はなくなっていたというべきである。 したがって、一審原告20-1及び同20-2の避難生活のうち本件事故 と相当因果関係が認められるのは平成24年8月31日までの部分に限られるとするのが相当である。 一審原告1-1らは、南相馬市においては平成29年3月までの間、道路等の除染が終わっていなかった上、同月時点でも多数の者が避難を強いられていたから、同月まで 部分に限られるとするのが相当である。 一審原告1-1らは、南相馬市においては平成29年3月までの間、道路等の除染が終わっていなかった上、同月時点でも多数の者が避難を強いられていたから、同月までは避難継続の合理性を認め、同月分までの費用なども 本件事故と相当因果関係ある損害として認めるべきと主張する。しかし、前 - 595 -記のような同市原町区の生活環境の復旧状況等に照らせば、本件事故と相当因果関係ある避難生活の期間は上記のとおり平成24年8月31日までとするのが相当であり、同1-1らの主張は採用できない。 また、一審原告20-3は、名古屋市で出生後、本件事故当時は甲賀市に居住しており、本件事故当時までに南相馬市に居住したことはなかった(一 審原告20-1本人)。同20-3が、平成23年4月に同市に転居することを予定しており、それが本件事故によりできなくなったことは認められるものの、本件事故により住所から他所への避難を余儀なくされたわけではないし、その後の甲賀市、名古屋市、愛西市における生活が、住所から避難しての生活であったということもできない。 したがって、一審原告20-3については、本件事故と相当因果関係ある避難又は避難生活は認められない。 (2) 一審原告20-1の損害ア財物損害以外の損害(ア) 避難費用 ① 交通費一審原告20-1の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した平成23年11月30日までの分の避難・帰宅費用15万7000円(乙C20の6)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 ② 引越し費用一審原告1-1らは、同20-1の避難時の引越し費用6300円と、平成29年3月に借上げ住宅制度が終了した と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 ② 引越し費用一審原告1-1らは、同20-1の避難時の引越し費用6300円と、平成29年3月に借上げ住宅制度が終了したことにより中古の一軒家を購入して引越しを余儀なくされた際に要した15万円の合計15万6300円が損害であると主張する。 一審原告20-1及び同20-2の請求に対して一審被告東京電力 - 596 -が既にADRで賠償した平成24年2月5日分の引越し挨拶代6300円(乙C20の1)については、本件事故と相当因果関係ある避難生活中における本件事故による転居に係る費用と認められることから、本件事故と相当因果関係ある損害と認めるのが相当である。 しかし、前記のとおり、本件事故との相当因果関係が認められる一 審原告20-1の避難生活は平成24年8月31日までであるから、平成29年3月の転居については上記期間を越えており、その費用が本件事故と相当因果関係のある損害となるとは認められない。 したがって、一審原告1-1らが主張する同20-1の引越し費用のうち、6300円が本件事故と相当因果関係を有する損害と認めら れる。 ③ 敷金・礼金一審原告1-1らは、同20-1が支払った敷金・礼金42万6300円が本件事故による損害であると主張する。 しかし、一審原告20-1が敷金・礼金を支払った事実を認めるに 足りる証拠はない上、前記認定事実によれば、一審原告20の世帯は借上げ住宅に居住した後、中古住宅を購入しており、敷金及び礼金を必要としたのか判然としない。 したがって、上記主張は採用できない。 ④ 一時立入り・帰省費用 一審原告1-1らは、同20-1が一時立入り・帰省費用として330万6240 金を必要としたのか判然としない。 したがって、上記主張は採用できない。 ④ 一時立入り・帰省費用 一審原告1-1らは、同20-1が一時立入り・帰省費用として330万6240円を要したと主張する。 しかし、一審原告20-1の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した183万1838円(乙C20の6)については、本件事故と相当因果関係ある損害と認める余地があるものの(弁論の全趣旨)、 避難生活中の社会通念上相当といえる帰省は月1回程度であり、一審 - 597 -原告20-1についてそれ以上の帰省が必要であったという事情は証拠上うかがわれず、同20-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難生活は平成24年8月31日までであるから、帰省の相当性が認められるのは多くても18回程度である。同20-1の帰省手段は自動車、電車及び飛行機のいずれかであったところ(一審原 告20-1本人(原審))、1回の帰省に5万円程度を要したと推認することはできるとしても、1回に10万円以上を要したとまで推認することはできず、上記183万1838円を超えて本件事故と相当因果関係ある帰省費用が発生したと認めることはできない。 したがって、上記183万1838円を限度に本件事故と相当因果 関係を有する損害と認める。 一審被告東京電力は、一審原告20-1の一時立入り・帰省費用について、そもそも避難を強制されたわけではないと主張するが、同20-1の避難が本件事故によるものと認められることは既に述べたとおりである。また一審被告東京電力は、一審原告20-1と同20- 2とで異なる帰省費用を認めるのは不合理であると主張するが、一審被告東京電力が一審原告20-1の請求に応じて本件事故と相当因果関係ある一時立入り・帰 告東京電力は、一審原告20-1と同20- 2とで異なる帰省費用を認めるのは不合理であると主張するが、一審被告東京電力が一審原告20-1の請求に応じて本件事故と相当因果関係ある一時立入り・帰省費用を183万1838円と認めて賠償した事実を当事者双方が主張又は立証しており、このような弁論の全趣旨からすれば、これを本件事故と相当因果関係ある損害と認めること も必ずしも不当とはいえない。 ⑤ その他一審原告1-1らは、同20-1が本件事故による避難により自宅の補修費用73万8239円が必要となったと主張する。しかし、同20-1及び20-2の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償し た平成24年3月9日から同年12月18日分自宅補修費48万40 - 598 -57円(乙C20の1。うち同日の屋根補修代46万1250円も、同年8月までの約1年半の避難に伴う補修と考えられる。)については、本件事故と相当因果関係ある避難費用の損害と認める余地があるものの(弁論の全趣旨)、同20-1の自宅について、本件事故により同20-1が避難したために自宅のメンテナンスに関して上記を超 える費用を要したと認めるに足りる証拠はない。 したがって、上記48万4057円を限度に本件事故と相当因果関係を有する自宅補修費の損害と認める。 ⑥ 合計 247万9195円(イ) 生活費増加費用 ① 家財道具購入費一審原告1-1らは、同20-1のエアコン購入費用20万0471円が損害であると主張するところ、証拠(甲C20の3)によれば、同20-1が、平成24年7月頃、エアコンを工事費込みで7万4000円で購入したことが認められるから、この限度で本件事故と相当 因果関係を有する損害と認めるのが相当である。 )によれば、同20-1が、平成24年7月頃、エアコンを工事費込みで7万4000円で購入したことが認められるから、この限度で本件事故と相当 因果関係を有する損害と認めるのが相当である。 ② 光熱費一審原告1-1らは、同20-1が南相馬市の自宅と名古屋市の自宅を行き来する生活であるため水道光熱費の二重負担を強いられ、水道光熱費の増加分として27万4471円の損害を被ったと主張する。 しかし、一審原告20-1及び同20-2の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した平成23年3月15日から平成24年8月31日まで分の光熱費20万円(乙C20の1)については本件事故と相当因果関係ある水道光熱費増加分の損害と認める余地はあるものの(弁論の全趣旨)、これを超えて水道光熱費の増加があったと認める に足りる証拠はない。 - 599 -したがって、20万円を限度に本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 ③ タイヤ保管・交換費一審原告1-1らは、同20-1が本件事故により冬用スタッドレスタイヤを購入しその代金9万8000円を支出したと主張する。 しかし、本件事故による避難がなく南相馬市に居住を続けていたとしても一審原告20-1が冬用スタッドレスタイヤを購入していた可能性があり、そもそも同1-1らが証拠として提出する領収書(甲C20の9)は購入年が不明かつ同20-3名義であることから、同20-1が本件事故により冬用スタッドレスタイヤの代金を支出したと 認めるには不十分である。 また、一審原告1-1らが主張する同20-1のタイヤの保管料29万円は、一審被告東京電力が既に賠償した1万4800円(争いがない。)については本件事故と相当因果関係あるタイヤ保管料の損害が発生したと認 、一審原告1-1らが主張する同20-1のタイヤの保管料29万円は、一審被告東京電力が既に賠償した1万4800円(争いがない。)については本件事故と相当因果関係あるタイヤ保管料の損害が発生したと認める余地はあるものの(弁論の全趣旨)、同20-1 がこれを超えてタイヤの保管料を支払ったと認めるに足りる証拠はない。 したがって、上記1万4800円を限度に本件事故と相当因果関係を有するタイヤ保管料の損害と認める。 ④ 家賃増加分 一審原告1-1らは、同20-1が本件事故による避難により駐車場代を支払う必要が出てきたため、平成29年12月までの駐車場代83万2200円の損害を被ったと主張する。 一審原告20-1が、避難生活中、月額5700円を駐車場代として支払っていたことが認められ(甲C20の14、弁論の全趣旨)、 同20-1の平成24年8月31日までの避難生活は本件事故との相 - 600 -当因果関係が認められるから、平成23年4月から平成24年8月までの駐車場代9万6900円(=月額5700円×17か月)を本件事故と相当因果関係のある損害と認める。 一審被告東京電力は、証拠(甲C20の14)からは家賃増加分が認められないと主張するが、一審原告20-1及び同20-2は自動 車で避難していて、避難当初から駐車場所を確保する必要はあり、その金額は上記のとおり月額5700円であると認められ、これは社会通念上不相当な額ではないから、上記主張は採用できない。 ⑤ その他一審原告1-1らは、同20-1が借上げ住宅で居住するに当たり 年2万円の保険に加入することを義務付けられていたから平成24年2月から平成29年3月までの5年分の保険料合計10万円が損害であると主張する。 一審原告2 1が借上げ住宅で居住するに当たり 年2万円の保険に加入することを義務付けられていたから平成24年2月から平成29年3月までの5年分の保険料合計10万円が損害であると主張する。 一審原告20-1が、避難生活中、年2万円の保険料の支払いをしていることが認められ(甲C20の15、弁論の全趣旨)、同20- 1の平成24年8月31日までの避難生活は本件事故との相当因果関係が認められるから、同年2月から1年分の保険料2万円を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 ⑥ 合計 40万5700円(ウ) 慰謝料 一審原告20-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、会津を経て名古屋まで自動車で避難した状況、借上げ住宅での不便な生活その他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを180万円と認めるのが相当である。 一審原告1-1らは、同20-1は退職を機に南相馬市に自宅を購入 して移住したばかりであったのに、本件事故によりその後の生活や人生 - 601 -設計を壊された上、老後に備えていた預貯金の取崩しを余儀なくされるなど、精神的苦痛は極めて大きいから、これを慰謝料に適正に反映させるべきと主張するが、遅くとも平成24年8月31日までには同市に帰還することが可能であったことを考慮すれば、慰謝料額が前記認定額を上回るとはいえない。 (エ) 合計 468万4895円イ財物損害(ア) 家財道具一審原告1-1らは、同20-1の南相馬市の自宅は人が日常的に出入りすることがなくなったため、家具等にカビが発生し、廃棄を余 儀なくされ319万1000円の損害が発生したと主張する。 しかし、一審原告20-1及び同20-2 南相馬市の自宅は人が日常的に出入りすることがなくなったため、家具等にカビが発生し、廃棄を余 儀なくされ319万1000円の損害が発生したと主張する。 しかし、一審原告20-1及び同20-2の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した家財(滅失分)159万5500円(乙C20の1)については本件事故と相当因果関係ある家財道具の損害と認める余地はあるものの(弁論の全趣旨)、そもそも家具等にカビが発 生して廃棄を余儀なくされたことを裏付ける証拠がない上、避難期間中に月1回程度は自宅のメンテナンスのために帰省することができたのであるから、仮に家具等にカビが発生していたとしても本件事故により上記額を超える家財道具の滅失があったと直ちに認めることはできない。 したがって、上記159万5500円を限度に本件事故と相当因果関係を有する財物損害と認める。 (イ) 不動産一審原告1-1らは、同20-1の南相馬市の自宅にはほとんど居住しておらず、売却できる見込みもないから、自宅の購入代金995万3 892円が損害であると主張する。 - 602 -しかし、自宅の周辺にある不動産については、現在では取引が行われており(乙C20の5の1・2)、必ずしも売却の見込みがないとはいえないし、本件事故により自宅の価値が低下したことの具体的な主張立証もなく、本件事故により自宅の価値が低下したと認めることはできない。 仮に、自宅の売却の見込みがないのが自宅の保存状態が悪いことによるものとしても、一審原告20-1は、月1回程度は南相馬市の自宅にメンテナンスのために帰省することができ、現に前記認定のとおり毎月帰省して1週間程度滞在していたというのであるから、本件事故によって自宅の としても、一審原告20-1は、月1回程度は南相馬市の自宅にメンテナンスのために帰省することができ、現に前記認定のとおり毎月帰省して1週間程度滞在していたというのであるから、本件事故によって自宅の保存状態が悪くなったとは認められない。 したがって、一審原告20-1の不動産の財物損害は認められない。 (ウ) 合計 159万5500円ウ合計 628万0395円(3) 一審原告20-2の損害ア避難費用(一時立入り・帰省費用) 一審原告1-1らは、同20-2が一時立入り・帰省費用として330万6240円を要したと主張する。 避難生活中の社会通念上相当といえる帰省は月1回程度であり、一審原告20-2についてそれ以上の帰省が必要であったという事情は証拠上うかがわれず、同20-2について本件事故との相当因果関係が認めら れる避難生活は平成24年8月31日までであるから、帰省の相当性が認められるのは多くても18回程度である。同20-2の帰省手段は自動車、電車及び飛行機のいずれかであったところ(一審原告20-1本人(原審))、1回の帰省に5万円程度を要したことが推認でき(飛行機利用の場合はより高額であるが、自動車利用の場合は一審原告20- 1とは別に費用が発生しないものとして、平均してこのように推認す - 603 -る。)、この18回分は90万円となる。 したがって、90万円を本件事故と相当因果関係を有する帰省費用の損害と認める。 イ生命・身体的損害一審原告1-1らは、同20-2が避難先の名古屋市の市営住宅におい て毎日階段の上り下りを強いられるなどしたことにより右変形性股関節症を発症し、その後遺症が後遺障害等級10級に相 害一審原告1-1らは、同20-2が避難先の名古屋市の市営住宅におい て毎日階段の上り下りを強いられるなどしたことにより右変形性股関節症を発症し、その後遺症が後遺障害等級10級に相当するとして、1390万7671円の損害を被ったと主張する。 しかし、一審原告20の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した同20-2の生命・身体的損害及び通院交通費等の生活費の増加 分計63万4712円について本件事故と相当因果関係ある損害と認める余地はあるものの(弁論の全趣旨)、同20-2が平成23年6月に診断された右変形性股関節症については、証拠(甲C20の65から67まで)によっても避難生活との関連性は明らかではなく、本件事故により行った避難により、上記額を超える生命・身体的損害が生じたと認 めることはできない。 したがって、63万4712円の限度で本件事故と相当因果関係を有する生命・身体的損害と認める。 ウ慰謝料一審原告20-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難 及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、会津を経て名古屋まで自動車で避難した状況、借上げ住宅における不便な生活、とりわけ右変形性股関節症発症後の不自由その他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを180万円と認めるのが相当である。 エ合計 333万4712円 (4) 一審原告20-3の損害 - 604 -前記のとおり、一審原告20-3については、本件事故と相当因果関係ある避難及び避難生活が認められない。 また、南相馬市の一審原告20-1及び同20-2の自宅に同20-3の所有物が存在していたとしても、同20-3は、本件事故当時は甲賀市に居 と相当因果関係ある避難及び避難生活が認められない。 また、南相馬市の一審原告20-1及び同20-2の自宅に同20-3の所有物が存在していたとしても、同20-3は、本件事故当時は甲賀市に居住していたのであるから、南相馬市に所有物を取りに行く必要性が本件事故 により生じたとは認められない。さらに、同20-3が、本件事故により予定どおり同市に転居できなくなったとしても、金銭をもって慰謝しなければならない程度の精神的苦痛を被ったということはできない。 したがって、一審原告20-3について本件事故による損害は認められない。 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額ア一審原告20-1について 767万9040円イ一審原告20-2について 392万2167円ウ一審原告20-3について 463万0825円 ただし、同20-3については、本件事故と相当因果関係ある損害が認定できないので、弁済の抗弁について検討することを要しない。 (2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、これまで、一審原告20-1及び同20-2に対して、以下のとおり賠償を行ったことが認められる(乙C20の1・6)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告20-1に対しその他(財物以外)、一時立入り費用、精神的損害(避難生活)、避難・帰宅費用、通院交通費等の生活費の増加分523万3847円 (イ) 一審原告20-2に対し精神的損害(避難生活)、その他(財物 - 605 -以外)、生命・身体的損害、通院交通費等の生活費の増加分287万1567円(ウ) 合計 810万5414円イ ADRによる賠償(ア) 一審 、その他(財物 - 605 -以外)、生命・身体的損害、通院交通費等の生活費の増加分287万1567円(ウ) 合計 810万5414円イ ADRによる賠償(ア) 一審原告20-1の避難費用、ADR弁護士費用に対し 84万9693円(イ) 一審原告20-1の家財(滅失分)に対し 159万5500円(ウ) 一審原告20-2の精神的損害、ADR弁護士費用に対し105万0600円(エ) 合計 349万5793円 ウ合計 1160万1207円(3) 一審原告20-1及び同20-2に対する各弁済額ア一審原告20-1に対する弁済額(ア) 財物損害以外の損害① ADR以外による賠償 523万3847円 ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 ② ADRによる賠償 84万9693円前記(2)イ(ア)の額は、一審原告20-1の財物損害以外の損害に対して支払われたことが明らかである。 ③ 合計 608万3540円(イ) 財物損害① ADR以外による賠償 0円② ADRによる賠償 159万5500円前記(2)イ(イ)の額は、一審原告20-1の財物損害に対して支払わ れたことが明確である。 - 606 -③ 合計 159万5500円(ウ) 合計 767万9040円したがって、一審被告東京電力の一審原告20-1に対する弁済の抗弁767万9040円は、財物損害以外の損害に対する弁済の抗弁608万3540円及び財物損害に対する弁済の抗弁159万5500円をい うものとしていずれも全部認められる。 0-1に対する弁済の抗弁767万9040円は、財物損害以外の損害に対する弁済の抗弁608万3540円及び財物損害に対する弁済の抗弁159万5500円をい うものとしていずれも全部認められる。 イ一審原告20-2に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 287万1567円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 105万0600円前記(2)イ(ウ)の額は、一審原告20-2の財物損害以外の損害に対して支払われたことが明確である。 (ウ) 合計 392万2167円したがって、一審被告東京電力の一審原告20-2に対する弁済の抗弁 は全部認められる。 4 認容額等(1) 一審原告20-1ア財物損害以外の損害(ア) 損害額 468万4895円 (イ) 弁済額 608万3540円(ウ) 弁済額控除後の損害額 0円イ財物損害(ア) 損害額 159万5500円(イ) 弁済額 159万5500円 (ウ) 弁済額控除後の損害額 0円 - 607 -ウ弁済額控除後の損害額合計 0円エ認容額 0円(2) 一審原告20-2ア損害額 333万4712円イ弁済額 392万2167円 ウ弁済額控除後の損害額 0円エ認容額 0円(3) 一審原告20-3ア損害額 0円イ認容額 0円 第20 一審原告21-3(元原審原告21-1及び同21-2) 1 認定事実(甲C21の1のほか後掲のもの)(1) 本 20-3ア損害額 0円イ認容額 0円 第20 一審原告21-3(元原審原告21-1及び同21-2) 1 認定事実(甲C21の1のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等元原審原告21-1(本件事故当時71歳)及び同21-2(本件事故当時68歳)は、本件事故当時、福島県南相馬市原町区所在の借家(福島第一 原発からの距離23.59km(乙C21の1))に居住していた。 元原審原告21-1及び同21-2は、本件事故当時、年金受給者であった。 (2) 避難開始の経緯等元原審原告21-1及び同21-2の自宅の周囲では、本件事故後、コン ビニエンスストアやスーパーマーケットが閉鎖され、平成23年3月12日からは電話が不通になった。同元原審原告らは、友人から、同月18日以降、高速道路も無料になり、レンタカーの手配もつくから、常磐線やバスの便がなくても福島第一原発から30km圏外に出られると聞いたので、同月18日までは自宅から外に出ないように気を付けながら過ごすことにした。同元 原審原告らは、同月15日昼頃、電話が通じるようになったため、愛知県岡 - 608 -崎市在住の子である一審原告21-3と連絡を取り、同市に避難することに決めた。同元原審原告らは、同月18日早朝、車で友人宅まで向かい、友人の娘の自動車に同乗させてもらって宇都宮市まで行きそこから新幹線を乗り継いで名古屋駅まで行き、岡崎市の同一審原告の夫婦のマンションに到着した。 (3) 避難後の状況等元原審原告21-1及び同21-2は、避難後、当初は一審原告21-3のマンションで生活していたが、平成23年5月、同21-3の夫の妹の部屋を間借りし、同年6月、岡崎市内の借家に引っ越した。同 況等元原審原告21-1及び同21-2は、避難後、当初は一審原告21-3のマンションで生活していたが、平成23年5月、同21-3の夫の妹の部屋を間借りし、同年6月、岡崎市内の借家に引っ越した。同元原審原告らは、避難後は、食べ物の味付け等の違いや言葉の違いに慣れるのに苦労した。 元原審原告21-2は、避難後、食道がんが見つかり、入退院して抗がん剤による治療を受けていたが、平成28年11月▲▲日に死亡した。同21-1は、令和2年9月▲▲日に死亡した。 (4) 本件事故時住所地の状況等元原審原告21-1及び同21-2の本件事故当時の住所地は南相馬市で、 住所があった同市原町区は旧緊急時避難準備区域に該当するところ、同市における社会経済活動の再開状況、環境放射能等の状況は、前記第3章、第4、1のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分 元原審原告21-1及び同21-2は、本件事故当時、旧緊急時避難準備区域である南相馬市に居住していたところ、本件事故直後、自宅周囲の商店が閉まり、友人から福島第一原発から30km圏外への避難についての話を聞いて、岡崎市に一審原告21-3が住んでいたことから、これを頼って同市に避難したものであり、同元原審原告らの避難は本件事故によるものと認 められる。 - 609 -他方、南相馬市原町区を含む同市の状況は前記1(4)のとおりであり、元原審原告21-1及び同21-2の住所は、屋内退避区域、次いで緊急時避難準備区域に指定されたものの、同区域は平成23年9月30日に解除され、同年10月、学校が授業を再開し、平成24年5月、医療機関等も活動を再開し、同年以降、環境放射能の値も年々減少しているのであるから、遅くと 定されたものの、同区域は平成23年9月30日に解除され、同年10月、学校が授業を再開し、平成24年5月、医療機関等も活動を再開し、同年以降、環境放射能の値も年々減少しているのであるから、遅くと も同年8月31日までには、避難先から同市に帰還することに支障はなくなっていたというべきである。 したがって、元原審原告21-1及び同21-2の避難生活のうち本件事故と相当因果関係が認められるのは平成24年8月31日までの部分に限られるというのが相当である。 (2) 元原審原告21-1の損害ア避難費用(ア) 宿泊費・謝礼一審原告1-1らは、元原審原告21-1は平成23年3月18日から約2か月間、一審原告21-3の夫婦のマンションに滞在させてもら った謝礼として20万円を支払っており、これが本件事故による損害であると主張するが、同元原審原告の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した同年3月18日から同年5月22日までの知人・親戚宅への宿泊実費分18万円(乙C21の4)については本件事故と相当因果関係を有する損害と認める余地があるものの(弁論の全趣旨)、これを超 える損害が発生したと認めるに足りる証拠はない。 したがって、18万円を本件事故と相当因果関係を有する宿泊費・謝礼の損害と認める。 (イ) 引越し費用元原審原告21-1の請求に対して一審被告東京電力が既に引越し費 用29万8400円を賠償しており(争いがない。)、これを本件事故 - 610 -と相当因果関係を有する引越し費用の損害と認める(弁論の全趣旨)。 (ウ) 敷金・礼金一審原告1-1らは、元原審原告21-1が避難の際に敷金・礼金155万5750円を要し、これが本件事故による損害であると主 る引越し費用の損害と認める(弁論の全趣旨)。 (ウ) 敷金・礼金一審原告1-1らは、元原審原告21-1が避難の際に敷金・礼金155万5750円を要し、これが本件事故による損害であると主張するが、同元原審原告の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した7万 円(争いがない。)については本件事故と相当因果関係を有する損害と認める余地があるものの(弁論の全趣旨)、これを超える損害が発生したと認めるに足りる証拠はない。 したがって、7万円を本件事故と相当因果関係を有する敷金・礼金の損害と認める。 (エ) 一時立入り・帰省費用一審原告1-1らは、元原審原告21-1が避難先から避難元に一時立入りをしており、その費用は本件事故による損害となると主張する。 しかし、一審原告1-1らは、元原審原告21-1が一時立入りをした事実、時期やその費用等について具体的な主張立証をしておらず、そ の事実を認めることができない。 したがって、上記主張は認められない。 (オ) 合計 54万8400円イ生活費増加費用(ア) 家財道具購入費 元原審原告21-1の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した32万6090円(争いがない。)を本件事故と相当因果関係を有する家財道具購入費の損害と認める。 (イ) 家賃増加分元原審原告21-1が、平成23年6月から岡崎市で借家を借りてい たことは前記認定のとおりであるが、本件事故と相当因果関係が認めら - 611 -れる避難生活期間である平成24年8月31日までの間は、同元原審原告は家賃補助を受けていたと認められ(弁論の全趣旨)、同元原審原告に家賃増加の損害は発生していないというべきである。 (ウ) 合計 32万 間である平成24年8月31日までの間は、同元原審原告は家賃補助を受けていたと認められ(弁論の全趣旨)、同元原審原告に家賃増加の損害は発生していないというべきである。 (ウ) 合計 32万6090円ウ慰謝料 元原審原告21-1について本件事故と相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、高齢者であったこと、親族宅での間借りを経て借家に避難した状況、慣れない土地で苦労したことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを180万円と認めるのが相当である。 エ合計 267万4490円(3) 元原審原告21-2の損害元原審原告21-2について本件事故と相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、親族宅での間借りを経て借家に避難した状況、慣れない土地で苦労したことその他前記認定の一切の事 情を考慮すれば、これを180万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東電の弁済の抗弁の主張額ア元原審原告21-1について 410万6395円イ元原審原告21-2について 211万7000円 (2) 一審被告東電による賠償一審被告東電は、これまで、元原審原告21-1及び同21-2に対し、以下のとおりADR以外による賠償を行ったことが認められる(乙C21の3)。 ア元原審原告21-1に対しその他(財物損害以外)、精神的損害(避 難生活)、避難・帰宅費用、実費、通院交通費等の生活費の増加分 - 612 -410万6395円イ元原審原告21-2に対し精神的損害(避難生活)、実費、通院交通費等の生活費の増加分 211万7000円ウ合計 増加分 - 612 -410万6395円イ元原審原告21-2に対し精神的損害(避難生活)、実費、通院交通費等の生活費の増加分 211万7000円ウ合計 622万3395円(3) 元原審原告21-1及び同21-2に対する各弁済額 ア元原審原告21-1 410万6395円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 したがって、一審被告東京電力の元原審原告21-1に対する弁済の抗弁は全部認められる。 イ元原審原告21-2 211万7000円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 したがって、一審被告東京電力の元原審原告21-1に対する弁済の抗弁は全部認められる。 4 認容額等(1) 元原審原告21-1ア損害額 267万4490円イ弁済額 410万6395円ウ弁済額控除後の損害額 0円 (2) 元原審原告21-2ア損害額 180万円イ弁済額 211万7000円ウ弁済額控除後の損害額 0円(3) 一審原告21-3(訴訟承継の事実については別紙5「元原審原告目録」 の原審原告番号21-1及び同21-2の「備考」欄記載のとおり。) - 613 -ア元原審原告21-1からの承継額 0円イ元原審原告21-2からの承継額 0円ウ認容額 0円第21 一審原告22の世帯 1 認定事実(甲C22の1、甲C41、一審原告22-1本人(原審)のほか 後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等一審原告22-1(本件事故当時46歳)、その妻である同22-2(本 1 認定事実(甲C22の1、甲C41、一審原告22-1本人(原審)のほか 後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等一審原告22-1(本件事故当時46歳)、その妻である同22-2(本件事故当時36歳)、同22-1及び同22-2の長女である同22-3(本件事故当時13歳)、長男である同22-4(本件事故当時7歳)、二 男である同22-5(本件事故当時3歳)は、本件事故当時、福島県いわき市所在の自宅(福島第一原発からの距離57.99km(乙C22の2))に、居住していた。同自宅は、平成12年に建てた戸建て住宅である。 一審原告22-1は、平成9年にいわき市内の製紙会社に正社員として就職して勤務を続けており、平成23年2月頃には、同年4月から課長に昇進 する旨の打診を受けていた。平成22年頃の同22-1の収入は月額26万円程度、年収は430万円程度であった。 本件事故当時、一審原告22-2は専業主婦、同22-3は中学1年生、同22-4は小学1年生であり、同22-5は平成23年4月から幼稚園に通う予定であった。 (2) 避難開始の経緯等一審原告22-1は、本件事故後、福島県双葉郡大熊町に住んでいる同22-1の妹から同県から逃げるようにとの連絡を受けたり、同県双葉郡双葉町に住む同22-1の親や同22-3から同22-5までを避難させなければと思ったりしていたが、会社に出勤して従業員の安否確認や被害状況の把 握などに追われていた。会社では、平成23年3月14日、作業後に今後の - 614 -対応についての会議が行われ、同22-1は、30kmの概念を捨てて避難すべきだと主張したが、会社からは避難の指示等はなされなかった。 一審原告22-1及び同22-2は、平成23年3月15日朝のニュースで、 いての会議が行われ、同22-1は、30kmの概念を捨てて避難すべきだと主張したが、会社からは避難の指示等はなされなかった。 一審原告22-1及び同22-2は、平成23年3月15日朝のニュースで、同日午前6時頃に茨城県のモニタリングポストで観測した放射性物質の値が通常の100倍であったことを知り、同22の世帯で自宅から避難する ことを決めた。当時、放射性物質が南へ放出されていると認識していたため、国道4号線を使って西へと向かい、同日午後2時頃、宇都宮市付近にいた際に雨が降ってきたため、放射性物質を浴びないよう同市付近のビジネスホテルに宿泊した。さらに、同月16日、栃木県を出て長野県松本市のホテルに宿泊し、同月17日に名古屋市に到着した。同22の世帯は、同市付近で避 難先を確保することにし、同日夜は愛知県一宮市内のいわゆるラブホテルに宿泊し、同月18日から同月21日までは、上記ラブホテルや高速道路のパーキングエリアで宿泊していた。同22の世帯は、同月20日、愛知県豊川市で甲状腺の無料検査があると聞いて同市へ行き、同月21日、被災者のために同県の県営住宅を開放するとの情報を得て住宅供給公社に申込みに行き、 同月22日、県営住宅の鍵を受け取り、同月23日、名古屋市c区所在の県営住宅に入居した。 (3) 避難後の状況等一審原告22-1は、平成23年4月初旬、いわき市に戻ったが、同年5月中旬、上記勤務先を自己都合退職した。同22-1は、県営住宅に住むこ とができるのは半年間と聞いていたため、ハローワークで社宅のある会社を探し、同年7月、愛知県豊田市のガス会社に採用され、同年8月16日から勤務を開始した。同日以降は、同22-2から同22-5までが名古屋市にある県営住宅に、同22-1が豊田市にある会社の寮に住むという 探し、同年7月、愛知県豊田市のガス会社に採用され、同年8月16日から勤務を開始した。同日以降は、同22-2から同22-5までが名古屋市にある県営住宅に、同22-1が豊田市にある会社の寮に住むという二重生活となった。また、同22-1は、平成24年6月から平成29年6月まで、 胃や背中の激痛で救急外来に駆け込むことがあり、同年8月には直腸がんが - 615 -発見され、同年10月に手術を受けた。 一審原告22-2は、平成23年5、6月頃、愛知県内でパートタイム勤務を始めた。 一審原告22-3から同22-5までは、平成23年4月から名古屋市c区の学校及び幼稚園に通った。 平成24年4月、一審原告22-2から同22-5までが同22-1の会社の寮に移って二重生活を解消し、同22-3から同22-5までは豊田市内の学校及び幼稚園に通うことになった。 一審原告22-1は、平成27年11月、豊田市内に中古住宅を2170万円で購入し、代金は住宅ローンを組んで支払った。そのため、いわき市の 自宅は売りに出したが、なかなか買い手がつかず、最終的に、平成28年4月、1500万円で売却した。 (4) 本件事故時住所地の状況等一審原告22の世帯の本件事故当時の住所地はいわき市で、同市は自主的避難等対象区域であり、同市における環境放射能等の状況は、前記第3章、 第5のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告22の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域であるいわき市に居住していたところ、大熊町に住む同22-1の妹からの連絡や、茨 城県における放射線の値が急増したとのニュースを受けて避難を決めたものであり、同22の世帯が避難を行ったことは本件事故によるものと認め ていたところ、大熊町に住む同22-1の妹からの連絡や、茨 城県における放射線の値が急増したとのニュースを受けて避難を決めたものであり、同22の世帯が避難を行ったことは本件事故によるものと認められる。 他方、いわき市の環境放射能の状況等は前記認定のとおりであり、平成23年から平成24年にかけても環境放射能の値は低下しており、本件事故直 後の混乱期は別として、通常、遅くとも平成23年12月31日までには避 - 616 -難先から同市に帰還することに支障はなくなっていたというべきであり、一審原告22-1が同年8月に豊田市の会社に就職したこと、同22の世帯には一般的に放射能の影響を受けやすいとされる若年層、子ども、幼児である同22-3から同22-5までがいたこと、同22-3から同22-5までが平成24年4月に同市の学校、幼稚園に転校、転園したことを考慮しても、 同年8月31日までには帰還の支障はなくなっていたというのが相当である。 したがって、一審原告22の世帯の避難生活については、平成24年8月31日までの限度で本件事故との相当因果関係を認める。 一審原告1-1らは、同22の世帯は避難当時はいわき市内に居住していたが、相双地区を出身地及び生活圏としていたから、相双地区の帰宅困難区 域の避難者に準じて損害を認定すべき旨主張するが、同22の世帯の本件事故と相当因果関係がある避難及び避難生活による損害は、同22の世帯が本件事故当時居住していたいわき市の状況やその避難に関する事情を考慮して検討すべきであり、上記主張は採用できない。 (2) 一審原告22-1の損害 ア財物損害以外の損害(ア) 避難費用① 交通費一審原告1-1らは、同22-1がいわき市から栃木県や長野県を経由して名古屋市まで避難す ない。 (2) 一審原告22-1の損害 ア財物損害以外の損害(ア) 避難費用① 交通費一審原告1-1らは、同22-1がいわき市から栃木県や長野県を経由して名古屋市まで避難する際に交通費4万5960円を要したと 主張するが、同22の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した平成23年3月分移動交通費3万5200円(乙C22の1)については本件事故と相当因果関係ある損害と認める余地があるものの(弁論の全趣旨)、自動車で避難するについてこれを超える額の費用を要したことを認めるに足りる証拠はない。 また、一審原告1-1らは、同22-1が親の避難のために要した - 617 -1万6740円も本件事故による損害であると主張するが、同22-1がその親の避難の交通費を負担すべき事情が認められず、仮にこれを負担したとしても本件事故と相当因果関係を有する損害と認めることはできない。 したがって、3万5200円を本件事故と相当因果関係を有する交 通費の損害と認める。 ② 宿泊費・謝礼前記認定のとおり、一審原告22の世帯がいわき市から名古屋市に避難するまでの間にホテル等で5泊していることは認められ、この事実によれば、同22-1が、避難のため、一般的なビジネスホテルの 宿泊代金一人1泊当たり5000円を下らない宿泊費を支出したと推認することができる。 したがって、12万5000円(=5000円×5人×5泊)を本件事故と相当因果関係を有する宿泊費の損害と認める。 ③ 一時立入り・帰省費用 一審原告22の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した平成23年4月分一時帰宅費3万0640円、引越し費用12万2560円の合計15万3200円(乙C22の1)を本件事故と相当因果関係を 一審原告22の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した平成23年4月分一時帰宅費3万0640円、引越し費用12万2560円の合計15万3200円(乙C22の1)を本件事故と相当因果関係を有する一時立入り、帰省費用(引越し費用を含む。)の損害と認める(弁論の全趣旨)。 ④ その他(いわき市の不動産売却に関するもの)一審原告1-1らは、同22-1が、平成27年9月12日、同月22日及び同年10月30日にいわき市の自宅の売却のため片付けを行った際の同市までの往復の交通費、同年11月13日から同月14日まで及び同月21日から同月22日までの2度に分けて自宅からの 荷物の搬出作業に要した交通費、平成28年4月10日から同月11 - 618 -日に掛けて自宅売却に必要な売買契約締結のためにいわき市まで往復した際の交通費及びそれに伴う宿泊費の合計15万0112円を本件事故による損害であると主張する。 しかし、前記のとおり、一審原告22の世帯の避難について本件事故との相当因果関係が認められるのは平成24年8月31日までの部 分に限られ、上記の自宅の売却のためのいわき市への往復等は本件事故によるものとはいえないから、上記の交通費等は本件事故により必要となった交通費とは認められない。 ⑤ 合計 31万3400円(イ) 生活費増加費用 ① 家財道具購入費一審原告1-1らは、同22-1が原判決1026頁から1029頁までの別紙「生活費増加一覧「生活用品関係」」の「費目」欄記載の物品を購入する必要がありこれが損害となると主張する。 しかし、一審原告22の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既 に賠償した平成23年3月から同年12月まで分の家財道具購入費15万 載の物品を購入する必要がありこれが損害となると主張する。 しかし、一審原告22の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既 に賠償した平成23年3月から同年12月まで分の家財道具購入費15万円(乙C22の1)については本件事故と相当因果関係を有する損害と認める余地はあるものの(弁論の全趣旨)、これを超える額を平成24年8月31日までの間に同22-1が支出をしたと認めるに足りる証拠はなない。 したがって、15万円の限度で本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 ② 家賃増加分一審原告22-1が平成24年8月31日までの間に要した避難先家賃について本件事故と相当因果関係が認められる。 a 県営住宅の駐車場代(平成23年4月から平成24年3月まで) - 619 -4000円/月×12か月=4万8000円(甲C22の3、17)b 県営住宅の自治会費(平成23年4月から平成24年3月まで)2800円/月×12か月=3万3600円(甲C22の17、弁論の全趣旨) c 一審原告22-1の会社の寮の家賃(平成23年8月16日から平成24年3月まで)3500円/月×8か月=2万8000円(弁論の全趣旨)d 豊田市での家賃(寮費)負担開始後(平成24年4月から同年8月まで) 9000円/月×5か月=4万5000円(甲C22の15、弁論の全趣旨)e 固定資産税自宅の固定資産税については、本件事故がなくても必要であったものであるから、本件事故と相当因果関係ある損害ということはで きない。 f 合計 15万4600円③ 合計 30万4600円(ウ) 就労不能損害一審原告22-1は、正社員として10年以上いわき市の会 ある損害ということはで きない。 f 合計 15万4600円③ 合計 30万4600円(ウ) 就労不能損害一審原告22-1は、正社員として10年以上いわき市の会社に勤め ていたから、本件事故による避難がなければ同勤務先で働き続けていたと認めることができ、本件事故による避難がなければ同勤務先で得られたであろう収入と同22-1の実際の収入との差額が本件事故と相当因果関係を有する損害と認められる。 そして、この点については、一審原告22の世帯の請求に対して一審 被告東京電力が既に賠償した平成23年5月から同年10月まで分の就 - 620 -労不能損害151万0312円(乙C22の1)については、本件事故と相当因果関係ある損害と認めることができるので(弁論の全趣旨)、同22-1にこれを超える就労不能損害があるかどうかを検討する。 ① 失業期間(平成23年5月中旬から同年8月15日まで)一審原告22-1の平成22年11月分の給与支給額が24万39 17円、平成23年4月分の給与支給額が21万0367円であったこと(甲C22の14の1・2)からすると、同22-1は、本件事故がなければ少なくとも月額22万円の収入を得られたと認められ、平成22年夏季賞与が37万4069円であったこと(甲C22の14の3)からすると、同22-1は、本件事故がなければ平成23年 7月には少なくとも同額の賞与を得られたと認められる。 したがって、失業期間に得られたであろう給与及び賞与は次の額となる。 22万円/月×3か月+37万4069円=103万4069円② 豊田市の会社に就職後(平成23年8月16日以降) 一審原告1-1らは、同22-1が本件事故による避難により月額1万36 22万円/月×3か月+37万4069円=103万4069円② 豊田市の会社に就職後(平成23年8月16日以降) 一審原告1-1らは、同22-1が本件事故による避難により月額1万3683円の給料の減額を被ったと主張するが、避難前と同程度の収入を得られる職業に就くことができなかった事情を認めるに足りる証拠はない。 ③ 合計 103万4069円 そうすると、一審原告22-1の就労不能損害が一審被告東京電力が既に賠償した額を超えるとは認められない。 以上によれば、本件事故と相当因果関係を有する就労不能損害は151万0312円である。 (エ) 線量計購入費 一審原告22の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した - 621 -平成23年3月分のガイガーカウンター購入費用7900円(乙C22の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (オ) 慰謝料一審原告22-1について本件事故との相当因果関係が認められる避 難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、いわき市から宇都宮市、松本市、名古屋市、一宮市、豊川市、名古屋市、豊田市と転々避難した状況、幼少の子ら(同22-3から5まで)を連れての避難であったこと、住所地の会社から避難先の会社に転職したこと、一時期二重生活となったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを1 00万円と認めるのが相当である。 (カ) 合計 313万6212円イ財物損害(ア) 不動産一審原告22-1のいわき市の自宅の価値が本件事故により低下した と認めるに足りる証拠はない。したがって、不動産の価値の低下について本件事故と相当因果関係を有する損害が発生している 不動産一審原告22-1のいわき市の自宅の価値が本件事故により低下した と認めるに足りる証拠はない。したがって、不動産の価値の低下について本件事故と相当因果関係を有する損害が発生しているとはいえない。 (イ) 不動産買換え諸費用前記認定のいわき市の状況、一審原告22の世帯が遅くとも平成24年8月31日までには同市への帰還が可能であったといえることから、 同22-1の平成27年11月の豊田市の住宅購入及び平成28年4月のいわき市の自宅の売却は本件事故によるものとはいえず、不動産の買換えに要した費用は本件事故と相当因果関係を有する損害とはいえない。 なお、一審原告1-1らは、同22の世帯は相双地区居住者と同視できるから不動産買換え費用等を損害として認めるべきと主張するが、上 記のとおりであり、採用できない。 - 622 -(ウ) 合計 0円ウ合計 313万6212円(3) 一審原告22-2の損害一審原告22-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、いわき市から宇都宮市、松 本市、名古屋市、一宮市、豊川市、名古屋市、豊田市と転々避難した状況、幼少の子ら(同22-3から5まで)を連れての避難であったこと、一時期二重生活となったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 (4) 一審原告22-3の損害 一審原告22-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難期間中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、いわき市から宇都宮市、松本市、名古屋市、一宮市、豊川市、名古屋市、豊田市と転々避難した状況、中学校を転校しなければならなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを 対する慰謝料額は、いわき市から宇都宮市、松本市、名古屋市、一宮市、豊川市、名古屋市、豊田市と転々避難した状況、中学校を転校しなければならなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 (5) 一審原告22-4の損害一審原告22-4について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、いわき市から宇都宮市、松本市、名古屋市、一宮市、豊川市、名古屋市、豊田市と転々避難した状況、小学校を転校しなければならなかったことその他前記認定の一切の事情を考 慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 (6) 一審原告22-5の損害一審原告22-5について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、いわき市から宇都宮市、松本市、名古屋市、一宮市、豊川市、名古屋市、豊田市と転々避難した状況、 幼稚園を転園しなければならなかったことその他前記認定の一切の事情を考 - 623 -慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東電の弁済の抗弁の主張額ア一審原告22-1について 109万4070円イ一審原告22-2について 12万円 ウ一審原告22-3について 72万円エ一審原告22-4について 72万円オ一審原告22-5について 72万円(2) 一審被告東電による賠償一審被告東電は、これまで一審原告22の世帯に対し、以下のとおりの賠 償を行ったことが認められる(乙C22の1・4)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告22-1に対し自主避難等に係る損害 12万円(イ) 一審原告22-2に対し自主避 りの賠 償を行ったことが認められる(乙C22の1・4)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告22-1に対し自主避難等に係る損害 12万円(イ) 一審原告22-2に対し自主避難等に係る損害 12万円(ウ) 一審原告22-3に対し自主避難等に係る損害 72万円 (エ) 一審原告22-4に対し自主避難等に係る損害 72万円(オ) 一審原告22-5に対し自主避難等に係る損害 72万円(カ) 合計 240万円イ ADRによる賠償ADRにより、一審原告22の世帯に対する和解金額が293万407 0円と合意され、そこからADR以外による賠償額のうち196万円を控除した97万4070円が支払われた。 (内訳)(ア) 避難費用、生活費増加費用、ガイガーカウンター購入費用、ADR弁護士費用 74万3758円 (イ) 精神的損害 68万円 - 624 -(ウ) 就労不能損害 151万0312円(エ) 合計(和解金額) 293万4070円(オ) 既払い金 196万円(自主的避難等に係る損害の一審原告22-1分及び同22-2分各8万円、同22-3から同22-5まで分各60万円) (カ) 合計(支払い額) 97万4070円ウ合計 337万4070円(3) 一審原告22の世帯に対する各弁済額ア一審原告22-1(ア) 財物損害以外の損害 ① ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 ② ADRによる賠償 97万4070円ADRによる和解金額からの前記(2)イ(オ)の既払い金196万円の 控除は、まず同(イ)の精神的損害68万円から全額が、次いで同(ア)の 当である。 ② ADRによる賠償 97万4070円ADRによる和解金額からの前記(2)イ(オ)の既払い金196万円の 控除は、まず同(イ)の精神的損害68万円から全額が、次いで同(ア)の一審原告22-1が負担した同22の世帯共通の避難費用等74万3758円から全額が、さらに同(ウ)の同22-1の就労不能損害151万0312円のうち53万6242円が控除されたものとみると、その余の同(ウ)の支払額は97万4070円となり、これは同22- 1に対する弁済とみることができる。 ③ 合計 109万4070円したがって、一審被告東京電力の一審原告22-1に対する弁済の抗弁は財物損害以外の損害に対する弁済の抗弁をいうものとして全部認められる。 (イ) 財物損害 - 625 -① ADR以外による賠償 0円② ADRによる賠償 0円③ 合計 0円イ一審原告22-2(ア) ADR以外による賠償 12万円 ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRによる賠償の和解金額のうち、一審原告22-2に対する弁済とみ得るものは既払い金により控除済みである。 (ウ) 合計 12万円したがって、一審被告東京電力の一審原告22-2に対する弁済の抗弁は全部認められる。 ウ一審原告22-3(ア) ADR以外による賠償 72万円 ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRによる賠償の和解金額のうち、一審原告22-3に対する弁済とみうるものは既払い金により控除済みである。 (ウ) 合計 72万円したがって、 る。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRによる賠償の和解金額のうち、一審原告22-3に対する弁済とみうるものは既払い金により控除済みである。 (ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告22-3に対する弁済の抗弁は全部認められる。 エ一審原告22-4(ア) ADR以外による賠償 72万円 ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし - 626 -て扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRによる賠償の和解金額のうち、一審原告22-4に対する弁済とみ得るものは既払い金により控除済みである。 (ウ) 合計 72万円 したがって、一審被告東京電力の一審原告22-4に対する弁済の抗弁は全部認められる。 オ一審原告22-5(ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし て扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRによる賠償の和解金額のうち、一審原告22-5に対する弁済とみうるものは既払い金により控除済みである。 (ウ) 合計 72万円 したがって、一審被告東京電力の一審原告22-5に対する弁済の抗弁は全部認められる。 4 認容額等(1) 一審原告22-1ア財物損害以外の損害 (ア) 損害額 313万6212円(イ) 弁済額 109万4070円(ウ) 弁済額控除後の損害額 204万2142円イ財物損害(ア) 損害額 0円 (イ) 弁済額 0円 - 627 -(ウ) 弁済額控除後の損害額 0円ウ弁済額控除後の損害額合計 204万2142円エ弁護士費用 21万円オ認容額 225万2 円 (イ) 弁済額 0円 - 627 -(ウ) 弁済額控除後の損害額 0円ウ弁済額控除後の損害額合計 204万2142円エ弁護士費用 21万円オ認容額 225万2142円(2) 一審原告22-2 ア損害額 100万円イ弁済額 12万円ウ弁済額控除後の損害額 88万円エ弁護士費用 9万円オ認容額 97万円 (3) 一審原告22-3ア損害額 100万円イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害額 28万円エ弁護士費用 3万円 オ認容額 31万円(4) 一審原告22-4ア損害額 100万円イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害額 28万円 エ弁護士費用 3万円オ認容額 31万円(5) 一審原告22-5ア損害額 100万円イ弁済額 72万円 ウ弁済額控除後の損害額 28万円 - 628 -エ弁護士費用 3万円オ認容額 31万円第22 一審原告23の世帯 1 認定事実(甲C23の1、一審原告23-1本人(原審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等 一審原告23-1(本件事故当時46歳)、その妻である同23-2(本件事故当時42歳)、同23-1及び同23-2の長女である同23-3(本件事故当時8歳)、二女である同23-4(本件事故当時7歳)、長男である同23-5(本件事故当時3歳)は、本件事故当時、福島県いわき市所在の自宅(福島第一原発からの距離43.22km(乙C23の1))に 居住していた。 一審原告23-1は、平成21年9、10月頃からいわき市内の自動車工場で契約社員として勤務し、同23-2は、かまぼこ工場で派遣社員として勤務 .22km(乙C23の1))に 居住していた。 一審原告23-1は、平成21年9、10月頃からいわき市内の自動車工場で契約社員として勤務し、同23-2は、かまぼこ工場で派遣社員として勤務していた。 上記の自宅は、一審原告23-1の母親が近くに住んでいること、親戚と の繋がりがあること、同23-3から同23-5までの学校もいわき市にあること等から、将来的にも同市に居住するつもりで、平成9年に約1500万円で購入し、その後、増築に400万円をかけた。 (2) 避難開始の経緯等一審原告23-1及び同23-2は、テレビで本件事故についての報道を 見て心配になり、インターネットで放射能のことを調べ、いわき市にいることが不安になった。本件事故直後には詳しい情報もなく、同23-3から同23-5までを家の外に出さないように心掛け、外出も必要最小限にし、飲料水はミネラルウォーターを使用していた。福島第一原発1号機の原子炉建屋が水素爆発した映像や平成23年3月14日に同3号機建屋が水素爆発し た映像を見て、これらの爆発で大量の放射能がまき散らされ、いわき市にも - 629 -放射能が届くのではないかと不安になった。いわき市の放射線量は、同月15日に大きく上昇し、テレビでの報道や放射線量を測定して公開しているウェブサイトを見たところ、20μSv/時を記録したとの記事を見つけた。 そこで、一審原告23の世帯は、平成23年3月15日、同23-1の祖母方の親戚が住んでいる茨城県龍ケ崎市へ自動車で一時的に避難したが、同 23-1の勤務先の工場が稼働を再開し、従業員の自宅待機命令が解除され、同23-1がいわき市に戻らなければならなくなったため、同23の世帯は、同月31日、自動車で同市の自宅に戻った。 一審原告23-1及び の勤務先の工場が稼働を再開し、従業員の自宅待機命令が解除され、同23-1がいわき市に戻らなければならなくなったため、同23の世帯は、同月31日、自動車で同市の自宅に戻った。 一審原告23-1及び同23-2は、いわき市に戻ってからも放射能の影響が心配であったため、同23-3から同23-5までについて、福島県産 の食品を食べさせないようにしたり、登下校以外では外に出さないようにしたり、体育の授業についても、外での授業は欠席させたりした。同23-1は、同23-3から同23-5までの給食についてもできるだけ同県産のものは避けさせたかったため、同県産の牛乳だけは飲まないように注意していた。 一審原告23-1及び同23-2は、平成23年6月頃、いわき市の自宅を売却し、当時の勤務先を辞めて移住しようと考えた。同23-1は転職先を探し、同年8月頃に愛知県新城市の会社が見つかり、同年10月に正社員として採用されることが決まった。同月初旬には自宅の売却が決まり、明渡しのため、同23の世帯は同23-1の実家に移り、同月24日、新城市に 引っ越した。いわき市の自宅から同23-1の実家への引越し及び実家から新城市への避難の際には、引越し費用を抑えるために同23-1ら自身で荷物の積み下ろしを行い、2tトラックを借りて家財道具の全てを移動させた。 (3) 避難後の状況等一審原告23の世帯は、平成23年10月以降、新城市で同居して生活し ているが、同市に土地勘もなく、知り合いもいなかったため、市役所や病院 - 630 -の場所さえ分からず非常に苦労した。同23-1は、慣れない避難生活によるストレスから脱毛や不眠に悩まされるようになった。同23-3及び同23-4は、避難先の学校に馴染むことができず、不登校になった。 (4) 本 らず非常に苦労した。同23-1は、慣れない避難生活によるストレスから脱毛や不眠に悩まされるようになった。同23-3及び同23-4は、避難先の学校に馴染むことができず、不登校になった。 (4) 本件事故時住所地の状況等一審原告23の世帯の本件事故当時の住所地はいわき市で、同市は自主的 避難等対象区域であり、同市における環境放射能等の状況は、前記第3章、第5のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告23の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域であるいわ き市に居住していたところ、本件事故による放射能汚染に対する不安を持っていたところに、福島第一原発の水素爆発の映像を見て、避難を決め、まず、平成23年3月15日から同月31日まで龍ケ崎市に避難したものであり、本件事故の直後で情報も少なかったことを考えれば、この避難は本件事故によるものというべきである。 一審原告23の世帯は、同23-1の仕事の都合でいわき市に戻り、平成23年6月、仕事を辞め自宅も売却して同市の外へ移住することに決め、同年8月、同23-1の新城市の就職先が見つかり、同年10月、自宅の売却もできて、同月24日、同市に移住したものであるところ、同23の世帯の自宅を処分しての移住は、その後、いわき市の状況がどうなろうとももはや 同市へは帰還しないという自らの意思による移住であり、これは、本件事故を考慮すれば一時的に住所を離れて生活することが社会通念上相当といえるような避難とは異なるものというべきである。前記のとおり、龍ケ崎市からいわき市に戻った後も同23の世帯が放射能の影響を心配しながら生活していたことは認められるが、同年6月又は10月の時点では、同市がその後一 般に帰還が困難な状況に 。前記のとおり、龍ケ崎市からいわき市に戻った後も同23の世帯が放射能の影響を心配しながら生活していたことは認められるが、同年6月又は10月の時点では、同市がその後一 般に帰還が困難な状況になるとみられていたという証拠はなく、本件事故に - 631 -よる放射能の影響を心配して一時的な避難を行うことはともかく、帰還しない前提での移住を行うことが社会通念上相当であったとまではいえない。 したがって、一審原告23の世帯について本件事故と相当因果関係ある避難及び避難生活は平成23年3月15日から同月31日までの龍ケ崎市への避難であり、同年10月24日以降の新城市への移住はこれに含まれない。 (2) 一審原告23-1の損害ア財物損害以外の損害(ア) 避難費用① 交通費前記のとおり、一審原告23-1が、同23-2から同23-5ま でとともに、平成23年3月15日、いわき市から龍ケ崎市に自動車で避難したこと、同月31日、同市からいわき市に自動車で戻ったことが認められ、これらの事実によれば、少なくとも2万円の費用を要した事実を推認することができる。 他方、一審原告1-1らは、同23-1が、同年9月、就職面接の ため自動車で愛知県へ行ったこと、及び同年10月24日、新城市へ自動車で引越しを行ったことによる交通費を同23-1の損害と主張するが、これらは自らの意思による移住を前提とする移動であり、本件事故と相当因果関係ある交通費とはいえない。 したがって、2万円を本件事故と相当因果関係を有する交通費の損 害と認める。 ② 引越し費用前記のとおり、一審原告23-1がいわき市から新城市への引越しに、2tトラックのレンタカーを利用したことは認められるが、この引越しは本件事故と相当因果関係があるとはい と認める。 ② 引越し費用前記のとおり、一審原告23-1がいわき市から新城市への引越しに、2tトラックのレンタカーを利用したことは認められるが、この引越しは本件事故と相当因果関係があるとはいえない。 ③ 合計 2万円 - 632 -(イ) 生活費増加費用① 家財道具購入費一審原告1-1らは、同23-1が避難先で新たに購入した家財道具の購入費用は50万円を下らないと主張するが、同1-1らは同23-1が家財道具を購入したことを示す領収証等を提出しておらず、 また龍ケ崎市の親戚宅での半月間の避難生活で家財道具を購入する必要があったとも認められない。 ② 食費一審原告1-1らは、同23-1が本件事故による避難により1か月当たり1万円の食費の増加があったと主張するが、本件事故前より も食費が増加したことについて具体的な立証がないから、この主張は認められない。 ③ 家賃増加分一審原告1-1らは、家賃補助のなくなった平成29年4月から同年12月までの同23-1の家賃増加分を損害と主張するが、本件事 故と相当因果関係が認められる家賃増加とはいえず、この主張は認められない。 ④ その他(車両)一審原告1-1らは、同23-1が避難先で新たに購入した自動車及びバイクの購入費用が損害であると主張するが、本件事故と相当因 果関係ある避難生活中に自動車及びバイクを買換える必要があったとは認められない。 ⑤ その他(自転車)一審原告1-1らは、同23-1が避難先で購入した子ども用自転車の購入費用が損害であると主張するが、本件事故と相当因果関係あ る避難生活中に子ども用自転車を購入する必要があったとは認められ - 633 -ない。 ⑥ 合計 0円(ウ) 就労不能損害一審 損害であると主張するが、本件事故と相当因果関係あ る避難生活中に子ども用自転車を購入する必要があったとは認められ - 633 -ない。 ⑥ 合計 0円(ウ) 就労不能損害一審原告1-1らは、同23-1が本件事故による避難により月額平均5万4527円の減収を被ったと主張する。しかし、同23-1の龍 ケ崎市への避難により同一審原告に減収があったと認めるに足りる証拠はない。 (エ) 被ばく検査費用一審原告1-1らは、同23-1が被ばく検査費用として7万4670円を要し、これが損害であると主張し、証拠(甲C23の8の1から 4まで)を提出する。しかし、上記証拠によっても実際に被ばく検査を受検したかどうかも判然とせず、同23-1が被ばく検査費用を支出したことを認めることはできない。 (オ) 慰謝料一審原告23-1について本件事故との相当因果関係が認められる避 難及び避難期間中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、放射能に対する不安からの避難であったこと、子どもや幼児を伴っての避難であったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを15万円と認めるのが相当である。 (カ) 合計 17万円 イ財物損害(家財道具)一審原告1-1らは、同23-1がいわき市の自宅を処分する際に処分した家財道具が損害であると主張するが、これは同23-1の意思による移住のために任意に家財道具の処分を行ったものといえ、家財道具に関する損害は本件事故と相当因果関係を有するものとはいえない。 ウ合計 17万円 - 634 -(3) 一審原告23-2の損害ア就労不能損害一審原告1-1らは、同23-2が新城市に引っ越して以降、不登校となった同23-3及び同23-4の世話などのために就労するこ - 634 -(3) 一審原告23-2の損害ア就労不能損害一審原告1-1らは、同23-2が新城市に引っ越して以降、不登校となった同23-3及び同23-4の世話などのために就労することができなくなり、就労不能損害を被ったと主張するが、新城市への移住自体 に本件事故との相当因果関係が認められず、同23-3及び同23-4の不登校による同23-2の就労不能により損害が発生したとしても、これが本件事故と相当因果関係ある損害とはいえない。 イ慰謝料一審原告23-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難 及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、放射能に対する不安からの避難であったこと、子どもや幼児を伴っての避難であったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを15万円と認めるのが相当である。 ウ合計 15万円 (4) 一審原告23-3の損害一審原告23-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを15万円と認めるのが相当である。 (5) 一審原告23-4の損害 一審原告23-4について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを15万円と認めるのが相当である。 (6) 一審原告23-5の損害一審原告23-5について本件事故との相当因果関係が認められる避難及 び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、前記認定の一切の事情を考 - 635 -慮すれば、これを15万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額ア一審原告23-1につ 料額は、前記認定の一切の事情を考 - 635 -慮すれば、これを15万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額ア一審原告23-1について 12万円イ一審原告23-2について 12万円 ウ一審原告23-3について 72万円エ一審原告23-4について 72万円オ一審原告23-5について 72万円カ合計 240万円(2) 一審被告東電による賠償 一審被告東電は、これまで一審原告23の世帯に対し、以下のとおりの賠償を行ったことが認められる(乙C23の3)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告23-1に対し自主避難等に係る損害 12万円(イ) 一審原告23-2に対し自主避難等に係る損害 12万円 (ウ) 一審原告23-3に対し自主避難等に係る損害 72万円(エ) 一審原告23-4に対し自主避難等に係る損害 72万円(オ) 一審原告23-5に対し自主避難等に係る損害 72万円(カ) 合計 240万円イ ADRによる賠償 0円 ウ合計 240万円(3) 一審原告23の世帯に対する各弁済額ア一審原告23-1(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし て扱うのが相当である。 - 636 -(イ) ADRによる賠償 0円(ウ) 合計 12万円したがって、一審被告東京電力の一審原告23-1に対する弁済の抗弁は財物損害以外に対する弁済の抗弁をいうものとして全部認められる。 イ一審原告23-2 (ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うの 外に対する弁済の抗弁をいうものとして全部認められる。 イ一審原告23-2 (ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円(ウ) 合計 12万円 したがって、一審被告東京電力の一審原告23-2に対する弁済の抗弁は全部認められる。 ウ一審原告23-3(ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし て扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円(ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告23-3に対する弁済の抗弁は全部認められる。 エ一審原告23-4(ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円 (ウ) 合計 72万円 - 637 -したがって、一審被告東京電力の一審原告23-4に対する弁済の抗弁は全部認められる。 オ一審原告23-5(ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし て扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円(ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告23-5に対する弁済の抗弁は全部認められる。 4 認容額等(1) 一審原告23-1ア損害額 17万円イ弁済額 12万円ウ弁済額控除後の損害額 5万円 エ弁護士費用 1万円オ認容額 6万円(2) 一審原告23-2ア損害額 15万円イ弁済額 12万 17万円イ弁済額 12万円ウ弁済額控除後の損害額 5万円 エ弁護士費用 1万円オ認容額 6万円(2) 一審原告23-2ア損害額 15万円イ弁済額 12万円 ウ弁済額控除後の損害額 3万円エ弁護士費用 1万円オ認容額 4万円(3) 一審原告23-3ア損害額 15万円 イ弁済額 72万円 - 638 -ウ弁済額控除後の損害額 0円エ認容額 0円(4) 一審原告23-4ア損害額 15万円イ弁済額 72万円 ウ弁済額控除後の損害額 0円エ認容額 0円(5) 一審原告23-5ア損害額 15万円イ弁済額 72万円 ウ弁済額控除後の損害額 0円エ認容額 0円第23 一審原告24の世帯 1 認定事実(甲C24の1・4、一審原告24-2本人(原審)のほか後掲のもの) (1) 本件事故前の状況等一審原告24-1(本件事故当時49歳)及びその妻である同24-2(本件事故当時33歳)は、本件事故当時、福島県南相馬市原町区所在の同24-1の実家近くのアパート(福島第一原発からの距離24.55km(乙C24の2))に居住していた。 一審原告24の世帯は、平成19年10月に結婚し、平成22年まで岐阜県羽島市に居住しており、いずれも警備員の仕事をしていた。同24の世帯は、平成22年秋頃、同24-1の父から同24の世帯に面倒を見てもらいたいと言われ、同24-2は宮崎県の出身であり南相馬市に居住したことはなかったものの、同24の世帯で同市に移住することにし、平成23年1月 初旬、羽島市から同市に引っ越し、同24-1の実家近くのアパートで生活 - 639 -を始めた。 に居住したことはなかったものの、同24の世帯で同市に移住することにし、平成23年1月 初旬、羽島市から同市に引っ越し、同24-1の実家近くのアパートで生活 - 639 -を始めた。 一審原告24の世帯は、本件事故当時は、引っ越して間もない時期であり、いずれもハローワークへ行くなどして求職中であった。 (2) 避難開始の経緯等一審原告24の世帯は、本件地震直後、人から福島第一原発が爆発し、1 0km圏内は避難し始めていると聞き、その後、20km圏外でも避難する人がいることを知り、小学校に避難のバスが何台も来るのを見た。同24の世帯の住所のある地域は屋内退避の指示がされており、同24の世帯には物資が届かず、冷蔵庫の中は空に近い状態で、商店も閉店していて、食料もガソリンもない状況だった。同24の世帯は、食料を分けてもらうために避難 所へ行ったが、避難所では、避難所に避難していない人には食料は分けられないと拒否された。同24の世帯は、ボランティアの炊き出しや食料配布により何とか食料を確保し、その都度、同24-1の実家へ赴いて両親とともに食事をしていた。 一審原告24の世帯は、収入も物資もない中、何とか生活していたが、外 にいる自衛隊員や警察官が防護服を着ているのを見て、かなり危険な事態だと感じ、また、情報も入りづらくなって食料や水の調達にも支障が生じるようになっていたので、南相馬市で生活を続けることに限界を感じていたところ、羽島市の知人から同人のところへ来ないかとの誘いを受けたため、同人を頼って同市に避難することとした。同24-1の両親は、他の人に迷惑を かけるから避難したくないといって、避難せずに南相馬市に残ることになった。 一審原告24の世帯は、平成23年3月26日午前10時頃、自動車で羽島 とした。同24-1の両親は、他の人に迷惑を かけるから避難したくないといって、避難せずに南相馬市に残ることになった。 一審原告24の世帯は、平成23年3月26日午前10時頃、自動車で羽島市に向かい、翌27日午前1時頃、同市の知人宅に到着した。同24の世帯は、上記知人宅に滞在中、知人に食事や身の回りのことで世話になったも のの、気を遣うため疲弊していた。 - 640 -一審原告24の世帯は、平成23年5月、愛知県が被災者に対し、2年間借上げ住宅を提供するという情報を得て、名古屋市の市営住宅に入居した。 一審原告24の世帯は、前記のとおり平成23年1月初旬に南相馬市へ転居したばかりで、同24-1の両親も同市に残っていたので、放射線量が落ち着けば同市に戻るつもりであったため、名古屋市では思うような求職活動 はできず、南相馬市のアパートも解約せず、家賃の支払いを継続した。 (3) 避難後の状況等一審原告24の世帯は、仕事が決まらないこと、同24-1の両親が南相馬市に残っていること、自宅のアパートもそのままにしていることを心配しながら避難生活を続けた。同24-1は、平成23年11月、左低音障害型 感音難聴と診断された(甲C24の5)。 一審原告24の世帯は、同24-1の父が入院したので、平成23年8月28日から30日までの3日間、福島県に戻った。また、同父が名古屋に避難する意向を示したので、同年10月、その避難準備のために福島県に戻ったが、結局、父は避難しないこととなった。平成24年7月、同父が死亡し たので、その葬儀のため同月15日から同月18日まで福島に戻った。その後も、同24の世帯は、平成25年1月、同年2月、同年6月(2回)及び同年7月に福島県に一時的に戻った。同24-1の母は、平成26年8 で、その葬儀のため同月15日から同月18日まで福島に戻った。その後も、同24の世帯は、平成25年1月、同年2月、同年6月(2回)及び同年7月に福島県に一時的に戻った。同24-1の母は、平成26年8月に死亡した。父及び母の墓は、福島県にある。 一審原告24-1は、平成25年7月、未だ契約中であった南相馬市のア パートを解約した。 (4) 本件事故時住所地の状況等本件事故前の一審原告24の世帯の住所地は南相馬市であり、住所のあった同市原町区は旧緊急時避難準備区域に該当するところ、同市における環境放射能等の状況等は、前記第3章、第4、1のとおりである。 2 損害 - 641 -(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告24の世帯は、本件事故当時、南相馬市原町区に居住していたところ、本件事故直後は屋内退避の指示が出され、食料も燃料も不足する中、羽島市の知人を頼って同市に避難し、その後愛知県に避難したものであり、同24の世帯の避難は、本件事故によるものと認められる。 他方、南相馬市原町区の環境放射能等の状況や社会経済活動の再開状況は前記のとおりであり、遅くとも平成24年8月31日までには、避難先から同市同区に帰還することに支障はなくなっていたというべきである。 したがって、一審原告24の世帯の避難生活のうち本件事故と相当因果関係が認められるのは、平成24年8月31日までの部分に限られるというの が相当である。 (2) 一審原告24-1の損害ア避難費用(ア) 交通費一審原告24の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に平成23 年3月26日から平成25年7月17日まで分の避難交通費等29万7390円を賠償した事実が認められ(乙C24の1・4)、このうち平成2 24の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に平成23 年3月26日から平成25年7月17日まで分の避難交通費等29万7390円を賠償した事実が認められ(乙C24の1・4)、このうち平成23年3月26日から平成24年8月31日までの分におよそ相当する18万4770円については本件事故と相当因果関係を有する損害と認める余地があるが(弁論の全趣旨)、本件事故と相当因果関係がある 避難及び避難生活中にこれを超える額の交通費を支出したと認めるに足りる証拠はない。 したがって、18万4770円を本件事故と相当因果関係がある交通費の損害と認める。 (イ) 宿泊費・謝礼 一審原告24の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に平成23 - 642 -年3月26日から平成25年7月16日まで分の宿泊費用14万2800円を賠償した事実が認められ(乙C24の1・4)、このうち平成23年3月26日から平成24年8月31日までの分におよそ相当する8万8830円については本件事故と相当因果関係を有する損害と認める余地があるが(弁論の全趣旨)、本件事故と相当因果関係がある避難及 び避難生活中にこれを超える額の宿泊費を支出したと認めるに足りる証拠はない。 したがって、8万8830円を本件事故と相当因果関係がある宿泊費の損害と認める。 (ウ) 引越し費用 一審原告24の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に平成25年2月21日分の引越し費用2万4800円を賠償した事実は認められるが(乙C24の1・4)、そのような引越しが行われたとしても、本件事故と相当因果関係がある避難生活中の引越しではないから、損害とは認められない。 (エ) その他一審原告7-1らは、同24-1が、平成26年7月、同年 しが行われたとしても、本件事故と相当因果関係がある避難生活中の引越しではないから、損害とは認められない。 (エ) その他一審原告7-1らは、同24-1が、平成26年7月、同年8月及び同年9月に同24-1の母や叔父の見舞いや葬儀のために福島県に帰省した際の費用合計35万3800円が損害であると主張する。 しかし、一審原告24の世帯の避難について本件事故と相当因果関係 が認められるのは平成24年8月31日までの部分に限られるから、平成26年に同24-1が帰省費用を要したとしても、本件事故と相当因果関係を有する損害とはいえない。 (オ) 合計 27万3600円イ生活費増加費用 (ア) 家財道具購入費 - 643 -一審原告7-1らは、同24-1の家財道具購入費46万3737円が損害であると主張するが、同24の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した平成23年5月7日から平成24年7月9日までの家具・家電製品等購入費用46万0824円(乙C24の1・4)については本件事故と相当因果関係ある損害と認める余地があるものの(弁 論の全趣旨)、これを超えて同24-1が本件事故により家財道具購入費を支出したと認めるに足りる証拠はない。 したがって、46万0824円の限度で本件事故と相当因果関係を有する家財道具購入費の損害と認める。 なお、上記の主張額のうち認められる損害額を超える部分2913円 は、証拠(甲C24の2)を勘案すると、一審原告24-1の通院交通費増加分と解する余地があるので、下記(エ)において判断する。 (イ) その他(衣類購入費用等)一審原告24の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した平成23年3月26日から同年5月6日まで分の衣類購入費用10万円 で、下記(エ)において判断する。 (イ) その他(衣類購入費用等)一審原告24の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した平成23年3月26日から同年5月6日まで分の衣類購入費用10万円 (乙C24の1・4)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (ウ) 家賃増加分一審原告24の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した平成23年5月1日から平成24年8月31日まで分の駐車場代8万円 及び平成23年3月26日から平成24年8月31日まで分の南相馬市の住宅賃料60万1775円の合計68万1775円(乙C24の1・4)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (エ) その他(生活費増加費用)前記(ア)のとおり、一審原告7-1らは、同24-1の通院交通費増 加分2913円を損害として主張しているものと解されるところ、前記 - 644 -認定事実のとおり、同24-1は名古屋市に避難後、難聴の治療で通院しており、通院交通費を要したことが認められ、同24の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した平成23年10月17日から平成24年2月10日まで分の通院交通費増加分2913円(乙C24の1・4)は、その他の生活費増加費用として、本件事故と相当因果関係 を有する損害と認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。 (オ) 合計 124万5512円ウ就労不能損害一審原告24の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に平成23年4月1日から平成24年12月31日分の就労不能損害608万037 5円を賠償した事実が認められ(乙C24の1・4)このうち平成23年4月1日から平成24年8月31日までの分におよそ相当する492万312 成24年12月31日分の就労不能損害608万037 5円を賠償した事実が認められ(乙C24の1・4)このうち平成23年4月1日から平成24年8月31日までの分におよそ相当する492万3120円については本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 エ慰謝料一審原告24-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難 及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、本件事故当時、福島第一原発から30km圏内に居住していて、屋内退避指示が出されたり食料、物資が不足したりする中での避難であったこと、当初は知人宅で気を遣う生活であったこと、避難生活中に住所地に残した父と死別したことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを180万円と認 めるのが相当である。 オ合計 824万2232円(3) 一審原告24-2の損害一審原告24-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、本件事故当時、福島第一原 発から30km圏内に居住していて、屋内退避指示が出されたり食料、物資 - 645 -が不足したりする中での避難であったこと、当初は知人宅で気を遣う生活であったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを180万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額 ア一審原告24-1について 695万2354円イ一審原告24-2について 487万8250円ウ合計 1183万0604円(2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、これまで一審原告24の世帯に対し、以下のとおり の賠償を行ったことが認められる(甲C24の2、乙C24の1・4)。 ア 604円(2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、これまで一審原告24の世帯に対し、以下のとおり の賠償を行ったことが認められる(甲C24の2、乙C24の1・4)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告24-1に対し精神的損害(避難生活) 180万円(イ) 一審原告24-2に対し精神的損害(避難生活) 180万円(ウ) 合計 360万円 イ ADRによる賠償ADRにより、一審原告24の世帯に対する和解金額が823万0604円と合意され、同額が支払われた。 (内訳)(ア) 避難費用、生活費増加費用 171万0502円 (イ) 一審原告24-1の就労不能損害 300万2125円(ウ) 一審原告24-2の就労不能損害 307万8250円(エ) 一審原告24-1の精神的損害(避難生活) 20万円(オ) ADR弁護士費用 23万9727円(カ) 合計 823万0604円 ウ合計 1183万0604円 - 646 -(3) 一審原告24の世帯に対する各弁済額ア一審原告24-1(ア) ADR以外による賠償 180万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 515万2354円ADRによる賠償のうち、前記(2)イ(イ)及び(エ)は一審原告24-1に対する賠償であることが明らかであり、同(ア)及び(オ)は同7-1らが同24-1が支出した同24の世帯に共通の費用を同24-1の損害として主張していることから、同24-1に対する弁済として扱うのが相 当である。 (ウ) 合計 695万2354円したがって、一審被告東京電力の一審原告24-1に対する弁済の 4-1の損害として主張していることから、同24-1に対する弁済として扱うのが相 当である。 (ウ) 合計 695万2354円したがって、一審被告東京電力の一審原告24-1に対する弁済の抗弁は全部認められる。 イ一審原告24-2 (ア) ADR以外による賠償 180万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 307万8250円ADRによる賠償のうち、前記(2)イ(ウ)は一審原告24-2に対する 賠償であることが明らかであり、これを同24-2に対する弁済として扱う。 (ウ) 合計 487万8250円したがって、一審被告東京電力の一審原告24-2に対する弁済の抗弁は全部認められる。 4 認容額等 - 647 -(1) 一審原告24-1ア損害額 824万2232円イ弁済額 695万2354円ウ弁済額控除後の損害額 128万9878円エ弁護士費用 13万円 オ認容額 141万9878円(2) 一審原告24-2ア損害額 180万円イ弁済額 487万8250円ウ弁済額控除後の損害額 0円 エ認容額 0円第24 一審原告26の世帯 1 認定事実(甲C26の1、丁C6、10、15、一審原告26-1本人(当審)、同26-2本人(原審)、同26-3本人(当審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等 一審原告26-1(本件事故当時49歳)、その妻である同26-2(本件事故当時44歳)、同26-1及び同26-2の長女である同26-3(本件事故当時12歳)は、本件事故当時、福島県白河市内の一戸建ての借家(福島第一原発からの距離 km(乙C2 26-2(本件事故当時44歳)、同26-1及び同26-2の長女である同26-3(本件事故当時12歳)は、本件事故当時、福島県白河市内の一戸建ての借家(福島第一原発からの距離 km(乙C26の1))に居住していた。 一審原告26-1は白河市出身であり、本件事故当時から現在に至るまで●●●●●●●●し、同市に居住している。同26-2は岐阜県出身で、本件事故当時はであり、同26-3は白河市内の小学校に通っていた。 (2) 避難開始の経緯等一審原告26-1は、本件地震当時、東京に出張していたが、翌平成23 年3月12日の早朝に東京を離れ、同日夕方に白河市の自宅に着いた。しか - 648 -し、同日の夕方に福島第一原発で爆発があったとの報道を受け、同26-1と同26-2は相談して、福島第一原発の安全が確認されるまでは避難することにし、同26-2の母が居住する愛知県津島市に避難するため、同日午後7時頃、白河市を出発した。同26の世帯は、同月13日、津島市に到着し、同月27日まで同市で生活していたが、同月28日に同26-3の小学 校の卒業式が行われたため、同月27日、白河市に戻った。同26-1は、経営する店の従業員から、相談せずに自分だけが避難したことを責められ、謝罪した。 白河市に戻った一審原告26の世帯は、放射線被ばくによる健康被害を恐れて自宅の窓は開けず、洗濯物は外には干さず、外出は控え、外出する際に は必ずマスクを着用し、飲料水はペットボトルのものにしていた。 一審原告26-2は、平成23年4月中旬頃、友人から名古屋市所在の住宅を無償で貸してくれるとの話を聞き、同年5月の連休に下見に行き、自主避難を選択する知り合いも増えていたことから、同26-3とともに同市に避難することに 成23年4月中旬頃、友人から名古屋市所在の住宅を無償で貸してくれるとの話を聞き、同年5月の連休に下見に行き、自主避難を選択する知り合いも増えていたことから、同26-3とともに同市に避難することにした。他方、同26-1は、 を継続する必 要があったため、白河市に残ることにした。 一審原告26-2及び同26-3は、平成23年6月、名古屋市d区●●の住宅に引っ越したが、同所は過去に水害があったことや南海トラフ地震があった場合には津波が来る可能性が高いことから、平成24年2月29日に同区の住宅に引っ越した。 (3) 避難後の状況等白河市に残った一審原告26-1は、2か月に1回程度、同26-2及び同26-3に会うために名古屋市に来ていた。 一審原告26-2は、名古屋で仕事を探したものの、良い条件の仕事を見つけることができなかった。同26-2は、避難直後に精神に不調を来して 体調も悪化し、医師から、橋本病に罹患する寸前の状態と言われた。 - 649 -一審原告26-3は、平成23年6月、入学していた白河市内の中学校から名古屋市内の中学校に転校したが、クラスメートから陰口をたたかれるなどしたため、学校になじめず不登校のような状態になった。また、同26-3は、中学2年生の時にバセドウ病と診断されたが(甲C26の2)、医師からは、放射線によるものかストレスによるものかは判断できないと言われ た。同26-3は、白河市に帰りたいと考えたことがあり、同26-1からもいつでも帰って来るよう言われていたが、同26-2がそれを許さなかったため、同市に戻ることはなかった。その後、同26-3は、名古屋市内の高校を卒業して京都の大学に進学し、大学進学後は同26-1が同26-3に会いに京都に行くという生活をしてい -2がそれを許さなかったため、同市に戻ることはなかった。その後、同26-3は、名古屋市内の高校を卒業して京都の大学に進学し、大学進学後は同26-1が同26-3に会いに京都に行くという生活をしていた。同26-3は令和3年4月に就 職した。 (4) 本件事故時住所地の状況等一審原告26の世帯の本件事故当時の住所地は白河市で、同市は避難区域外(福島県県南地域)であり、同市における環境放射能等の状況は、前記第3章、第3のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告26の世帯は、本件事故当時、避難区域外の白河市に居住していたところ、福島第一原発の爆発を受けてその安全が確認されるまで避難することを決め、平成23年3月13日から同月27日まで津島市に避難してい たものであり、本件事故直後の混乱期であることを考えれば、この避難及び避難生活は本件事故によるものというべきである。 また、一審原告26-2及び同26-3は、白河市に戻っても被ばくによる健康被害を恐れて生活していたことから、再度の避難を決めて、平成23年6月、名古屋市に避難したものであり、当時は未だ十分な情報が不足して いた時期であることを考えると、同26-2及び同26-3の再避難も本件 - 650 -事故によるものと認められる。 しかし、白河市の状況は前記のとおりで、事後的に見れば避難する必要性が客観的に認められる地域とはいえなかったのであり、帰還の準備に期間を要することや一審原告26-3が転校したことを考慮したとしても、遅くとも平成23年12月31日までには、同26-2及び同26-3が避難先の 名古屋市から白河市に帰還することに支障はなくなっていたというべきである。なお、白河市の状況を見れば、 したとしても、遅くとも平成23年12月31日までには、同26-2及び同26-3が避難先の 名古屋市から白河市に帰還することに支障はなくなっていたというべきである。なお、白河市の状況を見れば、当時、同26-3が一般に放射線による影響を受けやすいとされる子どもであったことを考慮してもこの判断は変わらない。 したがって、一審原告26-2及び同26-3の再避難生活のうち本件事 故と相当因果関係が認められるのは、平成23年12月31日までの部分に限られるとするのが相当である。 この点について、一審被告東京電力は、そもそも一審原告26の世帯は避難区域外の地域に居住していた者であり、仮に何らかの法律上の利益の侵害が認められるとしても、同26-2及び同26-3が同26-1と別居して 生活したことは同26の世帯の任意の判断であると主張する。 しかし、避難が本件事故によるものか否かは、個々の一審原告について、居住していた地域だけでなく、避難の時期や避難に至った経緯その他一切の事情を考慮して社会通念上の相当性を判断して決すべきであり、一審原告26の世帯については、上記の各限度において本件事故との相当因果関係が認 められるというべきである。 (2) 一審原告26-1の損害一審原告26-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、その避難期間その他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを15万円と認めるのが相当である。 一審原告7-1らは、同26-1は、再避難した同26-2及び同26- - 651 -3との別居生活を余儀なくされたと主張する。 しかし、一審原告26-2及び同26-3が再避難した平成23年6月の時点において、当時の白河市の状況を考えれば、同26の世 同26- - 651 -3との別居生活を余儀なくされたと主張する。 しかし、一審原告26-2及び同26-3が再避難した平成23年6月の時点において、当時の白河市の状況を考えれば、同26の世帯には、健康被害を避けるために全員で再避難するか、同26-1の仕事の関係で全員で白河市にとどまるかを選択する余地もあったといえ、別居の形で同26-2及 び同26-3が再避難したことは同26の世帯が同26-1の仕事上の必要性と同26-2及び同26-3の健康に対する不安とのバランスをとる判断をした結果であって、本件事故により別居を余儀なくされたということはできない。 (3) 一審原告26-2の損害 一審原告26-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び再避難並びに避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、本件事故直後に津島市に避難し、いったんは白河市に戻ったものの平成23年6月に名古屋市への再避難に至っていること、避難先で不調を来したことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを50万円と認めるのが相当である。 一審原告7-1らは、同26-2が、本件事故による被ばくから免れるべく、故郷である白河市から避難しなければならなくなり、同26-1との別居生活を余儀なくされたにもかかわらず、一審被告東京電力は同国による被害者線引き政策に乗り、区域外避難者に対しては区域内避難者と比較して極端に低額の賠償しかしようとしないと主張する。 しかし、当時の情報の不足等から一審原告26-2が再避難したこと自体は本件事故によるものと認めることはできるものの、避難先から帰還しないことがいつまでも本件事故によるものと認めることはできず、同26-2の個別の事情を考慮しても、本件事故との相当因果関係が認められる避難生活は平成 ものと認めることはできるものの、避難先から帰還しないことがいつまでも本件事故によるものと認めることはできず、同26-2の個別の事情を考慮しても、本件事故との相当因果関係が認められる避難生活は平成23年12月31日を限度とし、また再避難による同26-1との別 居も同26の世帯の判断というべきことは前記のとおりであり、他の一審原 - 652 -告らとはまたそれぞれ事情が異なるから、本件においても、それぞれの事情に応じた慰謝料額の算定となることは当然というべきである。 (4) 一審原告26-3の損害一審原告26-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び再避難並びに避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額については、本件 事故直後に津島市に避難し、いったんは白河市に戻ったものの平成23年6月に名古屋市への再避難に至っていること、再避難により転校したこと、転校先での学校生活に苦労したものの、同26-2との関係で白河市に戻ることができなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを50万円と認めるのが相当である。 一審原告7-1らは、同26-3が、本件事故による被ばくから免れるべく故郷である白河市から避難しなければならなくなり、同26-1との別居生活を余儀なくされ、同26-3は学校でのいじめやバセドウ病の発症等、困難な避難生活を強いられたと主張する。 しかし、一審原告26-3のバセドウ病の発症が本件事故によるものと認 めるに足りる証拠はなく、再避難による同26-1との別居も同26の世帯の判断であり、その余の事情を考慮しても、相当因果関係が認められる避難生活の期間が平成23年12月31日までであることも踏まえると、上記のとおり慰謝料額を算定するのが相当である。 3 弁済の抗弁 り、その余の事情を考慮しても、相当因果関係が認められる避難生活の期間が平成23年12月31日までであることも踏まえると、上記のとおり慰謝料額を算定するのが相当である。 3 弁済の抗弁 (1) 一審被告東電の弁済の抗弁の主張額ア一審原告26-1について 194万2207円イ一審原告26-2について 8万円ウ一審原告26-3について 58万円(2) 一審被告東電による賠償 一審被告東電は、これまで一審原告26の世帯に対し、以下のとおり賠償 - 653 -を行ったことが認められる(乙C26の3・4)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告26-1 自主避難等に係る損害 4万円(イ) 一審原告26-2 自主避難等に係る損害 4万円(ウ) 一審原告26-3 自主避難等に係る損害 28万円 (エ) 合計 36万円イ ADRによる賠償 224万2207円ADRにより、一審原告26の世帯に対する和解金額が244万2207円と合意され、そこからADR以外による賠償額のうち20万円を控除した224万2207円が支払われた。 (内訳)(ア) 避難費用、生活費増加費用、避難雑費、ADR弁護士費用216万2207円(イ) 精神的損害 28万円(ウ) 合計(和解金額) 244万2207円 (エ) 既払い金 20万円(一審原告26-3の自主的避難等に係る損害)(オ) 合計(支払い額) 224万2207円ウ合計 260万2207円(3) 一審原告26の世帯に対する各弁済額ア一審原告26-1 (ア) ADR以外による賠償 4万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) 26の世帯に対する各弁済額ア一審原告26-1 (ア) ADR以外による賠償 4万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 220万2207円ADRによる和解金額からの前記(2)イ(エ)の既払い金20万円の控除 は、同(イ)の精神的損害からされたものとみると、その余の同(イ)の支払 - 654 -額は8万円となり、これは一審原告26-1及び同26-2の各精神的損害に4万円ずつ賠償されたものとみることとする。 そして、一審原告26の世帯で収入を得ているのは同26-1であり、同26の世帯の避難費用等を負担したのは同26-1と考えられるから、前記(2)イ(ア)の避難費用等216万2207円は同26-1に対する弁 済として扱うこととする。 したがって、ADRによる賠償のうち220万2207円が一審原告26-1に対する弁済額となる。 (ウ) 合計 224万2207円したがって、一審被告東京電力の一審原告26-1に対する弁済の抗弁 194万2207円は全部認められる。 イ一審原告26-2(ア) ADR以外による賠償 4万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 4万円前記ア(イ)のとおり、ADRによる賠償のうち、前記(2)イ(イ)の精神的損害のうち4万円を同26-2の精神的損害に対する賠償とみて、同26-2に対する弁済として扱うのが相当である。 (ウ) 合計 8万円 したがって、一審被告東京電力の一審原告26-2に対する弁済の抗弁は全部認められる。 ウ一審原告26-3(ア) ADR以外による賠償 28万円AD る。 (ウ) 合計 8万円 したがって、一審被告東京電力の一審原告26-2に対する弁済の抗弁は全部認められる。 ウ一審原告26-3(ア) ADR以外による賠償 28万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし て扱うのが相当である。 - 655 -(イ) ADRによる賠償 0万円ADRによる和解金額のうち、一審原告26-3の精神的損害に対する部分は、既払い金により控除済みである。 (ウ) 合計 28万円したがって、一審被告東京電力の一審原告26-3に対する弁済の抗弁 は一部認められる。 4 認容額等(1) 一審原告26-1ア損害額 15万円イ弁済額 194万2207円 ウ弁済額控除後の損害額 0円エ認容額 0円(2) 一審原告26-2ア損害額 50万円イ弁済額 8万円 ウ弁済額控除後の損害額 42万円エ弁護士費用 5万円オ認容額 47万円(3) 一審原告26-3ア損害額 50万円 イ弁済額 28万円ウ弁済額控除後の損害額 22万円エ弁護士費用 3万円オ認容額 25万円第25 一審原告27の世帯 1 認定事実(甲C27の1・8、一審原告27-1本人(原審)のほか後掲の - 656 -もの)(1) 本件事故前の状況等一審原告27-1(本件事故当時36歳)及びその長男である同27-2(本件事故当時11歳)は、本件事故当時、福島県いわき市所在の一戸建ての借家(福島第一原発からの距離42.62km(乙C27の1))に居住 しており、同27-1の母である同27-3(本件事故当時69歳)及び姉である同27-4(本件事故当時40歳)も、本件 戸建ての借家(福島第一原発からの距離42.62km(乙C27の1))に居住 しており、同27-1の母である同27-3(本件事故当時69歳)及び姉である同27-4(本件事故当時40歳)も、本件事故当時、同市所在の家(福島第一原発からの距離42.66km(乙C27の3))に居住していた。 一審原告27-1はいわき市出身で、平成20年頃に看護師の資格を取り、 本件事故当時まで看護師として働いていた。同27-2は、本件事故当時、小学5年生であった。同27-3は、本件事故当時まで長年美容院を経営していた。同27-4は、本件事故まで20年近くにわたって同じ職場で医療事務の仕事をしていた。 (2) 避難開始の経緯等 一審原告27の世帯は、平成23年3月12日に福島第一原発が爆発したと聞いた際には詳しい状況がよく分からなかったが、同月14日、知人の放射線技師の夫婦から、「勤務先であるいわき市の福島労災病院の敷地の放射線量を測定したら、とんでもなく高い。余りに危険なので私たち家族は長野に逃げる。あなたたちも行けるところがあったら一刻も早く逃げた方がいい。 特に子どもはここにいたら絶対にだめだ。」などと連絡を受けたので、名古屋市の親戚のところに避難することにした。 一審原告27の世帯は、平成23年3月15日、自動車2台に最低限度の生活用品を積んで福島空港へ行ったが、同空港から避難しようとする人が多く、航空券を入手できる状況ではなかった。そこで、そのまま自動車で名古 屋市まで行くこととしたが、栃木県まで行ったところで、太平洋側ではガソ - 657 -リンを入れられない状況であることがわかったため、いったん福島県まで戻り、新潟、長野、岐阜を経由するルートに変更して、同月16日夜に名古屋市に到着した。 (3) 避 ではガソ - 657 -リンを入れられない状況であることがわかったため、いったん福島県まで戻り、新潟、長野、岐阜を経由するルートに変更して、同月16日夜に名古屋市に到着した。 (3) 避難後の状況等一審原告27の世帯は、名古屋市に到着後約1か月間は親戚の家に滞在し、 平成23年4月頃、県営住宅に入居し、同年12月、愛知県の借上げ住宅に転居した。避難後も同27-1が家賃を支払っていたいわき市の借家は、同年8月に解約した。 一審原告27-1は、名古屋市への避難後、看護師のアルバイト先を見つけ、平成23年12月の借上げ住宅への転居後、正社員として病院に転職し た。 一審原告27-2は、名古屋市への避難後、近くの小学校に仮入学することができ、転校先で多くの友人ができ、中学校・高校生活まで特に大きな問題なく過ごすことができた。 一審原告27-3は、避難後、家に閉じこもる生活をしていたが、平成2 6年頃からはコミュニティセンターでの活動に参加するようになった。 一審原告27-4は、メニエール病を発症して入通院するなどしたが、平成26年1月から食品工場でアルバイトを始めた。 平成29年3月で住宅の借上げ制度が終了し、同年4月からは家賃半額の補助制度となるが、一審原告27の世帯は家賃の負担ができなかったため、 同年1月に名古屋市e区のマンションに転居した。 (4) 本件事故時住所地の状況等一審原告27の世帯の本件事故当時の住所地はいわき市で、同市は自主的避難等対象区域であり、同市の環境放射能等の状況は、前記第3章、第5のとおりである。 2 損害 - 658 -(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告27の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域であるいわき 第5のとおりである。 2 損害 - 658 -(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告27の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域であるいわき市に居住していたところ、本件事故直後に、同市の放射線量を測定した放射線技師から避難を勧められ、放射線の影響、特に子どもである同27-2への影響を心配して名古屋市に避難したものであり、この避難は本件事故に よるものと認められる。 他方、いわき市の状況は前記のとおりであり、平成23年から平成24年にかけても環境放射能の値が低下しており、本件事故直後の混乱期は別として、遅くとも平成23年12月31日までには、避難先から同市に帰還することに支障がなかったというべきである。 なお、一審原告27-1には、一般的に放射線による影響を受けやすいとされる子どもである同27-2がおり、子どもへの影響についてより不安を抱くことはやむを得ないことであること、また同27-2は名古屋市への避難に伴って避難先の小学校に転校しており帰還の準備に一定の期間を要すること、同27-1自身も平成23年12月に避難先で正社員として就職して いることを考慮しても、いわき市の状況を考えれば、同27-1及び同27-2は、遅くとも平成24年8月31日までには、避難先から同市に帰還することに支障がなかったというべきである。 したがって、一審原告27-1及び同27-2の避難生活のうち本件事故と相当因果関係が認められるのは平成24年8月31日までの部分に限られ るとするのが相当であり、同27-3及び同27-4の避難生活のうち本件事故と相当因果関係が認められるのは平成23年12月31日までの部分に限られるというのが相当である。同27-3及び同27-4は、本件事故前におい であり、同27-3及び同27-4の避難生活のうち本件事故と相当因果関係が認められるのは平成23年12月31日までの部分に限られるというのが相当である。同27-3及び同27-4は、本件事故前においても同27-1及び同27-2とは別の家で生活していたのであり、同27-1及び同27-2と別々に帰還することに支障はないと考えられる。 (2) 一審原告27-1の損害 - 659 -ア財物損害以外の損害(ア) 一時立入り・帰省費用一審原告1-1らは、同27-1が平成24年8月から平成28年11月までの間に5回福島に帰省し、その際に要した交通費合計21万6000円が損害であると主張する。 しかし、一審原告27-1の避難生活について本件事故と相当因果関係が認められるのは平成24年8月31日までの部分に限られるから、帰省費用のうち本件事故と相当因果関係を有する損害は、同月の帰省に要した費用に限られるというべきであり、同月に帰省した事実及びその費用が3万1512円である事実が認められる(甲C27の2)。 したがって、帰省費用3万1512円を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 (イ) 生活費増加費用① 家財道具購入費一審原告1-1らは、同27-1が借りて使用していた冷蔵庫の修 理費用が損害となると主張するが、同27-1がこの修理費用を支払ったと認めるに足りる証拠はない。 ② 被服費一審原告1-1らは、同27-1の冬物衣類・雑貨購入費6237円が損害となると主張するが、同27-1がこの購入費を支払ったと 認めるに足りる証拠はない。 ③ 合計 0円(ウ) 慰謝料一審原告27-1について本件事故との相当因果関係が認めら ると主張するが、同27-1がこの購入費を支払ったと 認めるに足りる証拠はない。 ③ 合計 0円(ウ) 慰謝料一審原告27-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、空港まで行っても 航空機による避難ができず、自動車でガソリン確保のために遠回りしな - 660 -がら名古屋市まで避難した状況、子どもである同27-2を伴っての避難であったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 (エ) 合計 103万1512円イ財物損害 一審原告1-1らは、同27-1が負担した福島県の自宅の除草剤購入費用や修理材料代1万1308円が損害となると主張する。 しかし、本件事故により除草や家の修理が必要となったことを認めるに足りる証拠はなく、仮に費用を要したとしても、それが本件事故と相当因果関係を有する損害となるとはいえない。 ウ合計 103万1512円(3) 一審原告27-2の損害一審原告27-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、混乱の中、長距離を自動車で避難した前記の状況、本件事故前と違う小学校に通わなければならなかっ たことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 (4) 一審原告27-3の損害一審原告27-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、混乱の中、長距離を自動車 で避難した前記の状況、避難先でしばらく家に閉じこもる生活をしていたことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを60万円と認めるのが相当 痛に対する慰謝料額は、混乱の中、長距離を自動車 で避難した前記の状況、避難先でしばらく家に閉じこもる生活をしていたことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを60万円と認めるのが相当である。 (5) 一審原告27-4の損害一審原告27-4について本件事故との相当因果関係が認められる避難及 び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、混乱の中、長距離を自動車 - 661 -で避難した前記の状況、避難先で入通院しなければならなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを60万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東電の弁済の抗弁の主張額 ア一審原告27-1について 39万8147円イ一審原告27-2について 72万円ウ一審原告27-3について 12万2807円エ一審原告27-4について 12万円(2) 一審被告東電による賠償 一審被告東電は、これまで一審原告27の世帯に対し、以下のとおりの賠償を行ったことが認められる(乙C27の5・6)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告27-1に対し自主避難等に係る損害 12万円(イ) 一審原告27-2に対し自主避難等に係る損害 72万円 (ウ) 一審原告27-3に対し自主避難等に係る損害 12万円(エ) 一審原告27-4に対し自主避難等に係る損害 12万円(オ) 合計 108万円イ ADRによる賠償ADRにより、一審原告27の世帯に対する和解金額が112万095 4円と合意され、そこからADR以外による賠償額のうち84万円を控除した28万0954円が支払われた。 (内訳)(ア) 避難費用、生活費増加費用、ADR弁護士費用 48万2807円 4円と合意され、そこからADR以外による賠償額のうち84万円を控除した28万0954円が支払われた。 (内訳)(ア) 避難費用、生活費増加費用、ADR弁護士費用 48万2807円(イ) 就労不能損害 31万8147円 (ウ) 一審原告27-1、同27-3及び同27-4の精神的損害 - 662 -12万円(エ) 一審原告27-2の精神的損害 20万円(オ) 合計(和解金額) 112万0954円(カ) 既払い額 84万円(一審原告27-1分8万円、同27-2分60万円、同27-3及び同27-4分各8万円) (キ) 合計(支払い額) 28万0954円ウ合計 136万0954円(3) 一審原告27の世帯に対する各弁済額ア一審原告27-1(ア) ADR以外による賠償 12万円 ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 14万8856円ADRによる和解金額112万0954円のうち、前記(2)イ(ウ)及び(エ)の精神的損害についてはそれぞれの一審原告に対する賠償であるこ とが明らかである(同(ウ)については各4万円と解する。)。同(イ)の就労不能損害については、証拠上、いずれの一審原告に対する賠償であるかが明らかではなく、一審原告27-1、同27-3及び同27-4にはそれぞれ職があったことから、均分して各10万6049円がこれらの一審原告に賠償されたとみることとする。同(ア)については、一審原 告1-1らにおいて、同27の世帯に共通の費用を同27-1において支出したものとして主張していることから、既払い金の控除後の額は、同27-1に対する賠償とみることとする。 そうすると、まず、前記 告1-1らにおいて、同27の世帯に共通の費用を同27-1において支出したものとして主張していることから、既払い金の控除後の額は、同27-1に対する賠償とみることとする。 そうすると、まず、前記(2)イ(カ)の既払い金84万円のうち、一審原告27-1、同27-3及び同27-4分の各8万円は同(イ)から各4 万円、同(ウ)から各4万円をそれぞれ控除し、同27-2分の60万円 - 663 -は同(ア)から40万円、同(エ)から20万円を控除することとなり、同(キ)の支払い額28万0954円の内訳は、同27-1に対する同(ア)の賠償8万2807円、同27-1、同27-3及び同27-4に対する同(イ)の賠償各6万6049円(10万6049円から4万円を控除した額。3名合計19万8147円)となる。 したがって、ADRによる賠償額のうち一審原告27-1に対する弁済額となるのは、8万2807円と6万6049円の合計である14万8856円である。 (ウ) 合計 26万8856円したがって、一審被告東京電力の一審原告27-1に対する弁済の抗弁 は一部認められる。 イ一審原告27-2(ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRによる和解金額のうち、一審原告27-2に対する賠償となりうるものはすべて既払い金により控除済みである。 (ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告27-2に対する弁済の抗弁 は全部認められる。 ウ一審原告27-3(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当 7-2に対する弁済の抗弁 は全部認められる。 ウ一審原告27-3(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 6万6049円 - 664 -ADRによる和解金額のうち、既払い金の控除後、一審原告27-3に対する弁済とみられるのは、前記(2)イ(イ)の就労不能損害のうち6万6049円である。 (ウ) 合計 18万6049円したがって、一審被告東京電力の一審原告27-3に対する弁済の抗弁 12万2807円は全部認められる。 エ一審原告27-4(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 6万6049円ADRによる和解金額のうち、既払い金の控除後、一審原告27-4に対する弁済とみられるのは、前記(2)イ(イ)の就労不能損害のうち6万6049円である。 (ウ) 合計 18万6049円 したがって、一審被告東京電力の一審原告27-4に対する弁済の抗弁12万円は全部認められる。 4 認容額等(1) 一審原告27-1ア損害額 103万1512円 イ弁済額 26万8856円ウ弁済額控除後の損害額 76万2656円エ弁護士費用 8万円オ認容額 84万2656円(2) 一審原告27-2 ア損害額 100万円 - 665 -イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害額 28万円エ弁護士費用 3万円オ認容額 31万円(3) 一審原告27-3 ア損害額 60万円イ弁済額 12万2 -イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害額 28万円エ弁護士費用 3万円オ認容額 31万円(3) 一審原告27-3 ア損害額 60万円イ弁済額 12万2807円ウ弁済額控除後の損害額 47万7193円エ弁護士費用 5万円オ認容額 52万7193円 (4) 一審原告27-4ア損害額 60万円イ弁済額 12万円ウ弁済額控除後の損害額 48万円エ弁護士費用 5万円 オ認容額 53万円第26 一審原告28の世帯 1 認定事実(甲C28の1の1・2、甲C28の12、一審原告28-2本人(当審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等 一審原告28-1(本件事故当時25歳)は、本件事故当時、福島県郡山市内の当時の勤務先の社宅アパート(福島第一原発からの距離59.96km(乙C28の3))で居住しており、同28-1の交際相手である同28-2(本件事故当時23歳)は、福島県双葉郡浪江町所在の実家(福島第一原発からの距離8.31km(乙C28の5))に両親、兄とともに居住し ていた。同28-1と同28-2の結婚の時期等は、本件事故前は、まだ決 - 666 -まっていなかった。 一審原告28-2は、本件事故当時、無職で、いずれ同28-1とともに郡山市内に居住しようと考えていたため、同市内で正社員として働けるところを探していた。そうしたところ、同28-2は、同市内の団体が平成23年2月から正社員の募集を始めることを知り、同団体から、同市で勤務した い場合、面接は同じ地域で受けることが望ましく、同市に住所を移した住民票を持参するように言われたため、同年1月、浪江町に住みながら住民票だけを同28-1 ことを知り、同団体から、同市で勤務した い場合、面接は同じ地域で受けることが望ましく、同市に住所を移した住民票を持参するように言われたため、同年1月、浪江町に住みながら住民票だけを同28-1の郡山市の社宅に移した。 一審被告東京電力は、一審原告28-2は本件事故当時、浪江町ではなく郡山市に居住していたと主張し、これに沿う証拠を提出する(乙C28の 2・10、乙C62)。しかし、証拠(同28-2本人(当審))によれば、同28-2は本件事故当時、同28-1と結婚することを考えてはいたが具体的ではなかった上、同28-2が郡山市に住民票(乙C28の2)を移したのは就職を予定していた会社から郡山市に居住していることがわかる資料の提出を求められたからに過ぎないことが認められる。また、同28-2が 浪江町に居住していた両親らと共に賠償金を請求せず、自主的避難等に係る賠償金を請求したこと(乙C28の10)については、証拠(同28-2本人(当審))によれば、当初相談した弁護士から住民票が基準になる旨説明を受けていたことから自主的避難等に係るものとして請求したものであり、同28-2はこの賠償請求と並行して、浪江町に居住していたことを前提に ADRの申立てをしたことが認められ、その際に一審被告東京電力から求められて、知り合いであったJの会長に居住証明書(甲C28の14の1)を作成してもらったことも認められる。一審被告東京電力は、上記居住証明書は平成22年3月11日時点のものであり、本件事故当時に居住していたことを裏付けるものではない旨主張するが、証拠(同28-2本人(当審)) によれば、上記証明書は一審被告東京電力が同28-2に渡したものであり、 - 667 -「平成22年3月11日当時」の部分があらかじめ印字され 主張するが、証拠(同28-2本人(当審)) によれば、上記証明書は一審被告東京電力が同28-2に渡したものであり、 - 667 -「平成22年3月11日当時」の部分があらかじめ印字されていることからすれば、同一審被告の上記主張は採用できず、同居住証明書(甲C28の14の1)は平成23年3月11日時点の居住の事実に関するものと解される。 したがって、一審原告28-2は本件事故当時、浪江町の実家に居住していたと認められる。 (2) 避難開始の経緯等一審原告28-2は、平成23年3月11日、翌日に同28-2の両親に挨拶をする予定であった同28-1をその郡山市の社宅まで迎えに行こうと、自動車で浪江町の家を出たところ、出発してすぐに本件地震が発生した。同28-2は、まず、自宅近くに住む祖母宅に寄ってその無事を確認し、その 後、同28-1の社宅に行ってそこで泊まったが、翌日以降も浪江町の家に帰ることはできず、同28-2が家族の安否を把握したのは、避難所に避難していた両親については同月13日、町役場に勤務する兄については同月15日であった。 このような中、一審原告28-1は勤務先から避難するように指示された。 同28-2は、家族となかなか連絡が取れない状況で県外避難することについては迷いもあったが、一人で残るわけにもいかず、同28-1とともに、同28-1の名古屋市にある実家に避難することにした。同28-1及び同28-2は、平成23年3月18日、飛行機で福島空港から千歳空港を経由して中部国際空港に着き、同日から同月28日まで名古屋市の同28-1の 実家に滞在した。 一審原告28-1及び同28-2は、平成23年3月28日、同28-1の仕事の都合で郡山市に戻ることになった。同28-1及び同28-2は、同日、 まで名古屋市の同28-1の 実家に滞在した。 一審原告28-1及び同28-2は、平成23年3月28日、同28-1の仕事の都合で郡山市に戻ることになった。同28-1及び同28-2は、同日、新幹線で名古屋駅から那須塩原駅まで行き、同駅から郡山市までは臨時バス及びタクシーを使って戻った。同28-2の浪江町の実家は戻れるよ うな状況ではなく、両親と合流することもできなかったので、二人で同28 - 668 --1の社宅に居住していた。ただし、同28-1の社宅は社員とその家族しか住むことができないことになっていたので、同28-1と同28-2は、同年4月2日に結婚した。 平成23年6月、一審原告28-2が妊娠していることがわかり、同28-2は、病院から、外出は最低限必要なものに限るよう指導されたので、外 出は妊婦健診等どうしても必要なものに限っていた。同28-1は、妊娠した同28-2のことを考え、勤務先に転勤希望を出したが、同年度中の転勤ができないと言われた。同28-1及び同28-2は、同年9月、同28-1の勤務先の郡山市f町にある家族向け社宅に引っ越した。 一審原告28-2は、平成24年1月▲▲日、長女である同28-3を出 産した。同28-2は、その後は乳児健診以外の外出を避け、母乳への影響を考え食材にも気を配って生活した。しかし、それでも、同28-1及び同28-2は、同28-3の健康への不安を拭うことはできず、将来的に同28-3に放射線の影響が出ることを恐れ、同28-1は勤務先を退職し、同28の世帯で名古屋市に転居することにし、同年3月、自動車で同市g区に 移動し、空き家になっていた同28-1の祖父の家に入居した。 (3) その後の状況等名古屋市への転居後、一審原告28-1は、就職活動をしながら、平成 ことにし、同年3月、自動車で同市g区に 移動し、空き家になっていた同28-1の祖父の家に入居した。 (3) その後の状況等名古屋市への転居後、一審原告28-1は、就職活動をしながら、平成24年9月から平成25年2月まで、福島県からの避難者を対象とするパートタイム職として勤務した。同28の世帯は、同年3月に借上げ住宅に引っ越 し、同28-1が、平成26年4月、Fに刑務官として就職したので、その官舎に移った。 (4) 本件事故時住所地の状況等一審原告28-1の本件事故当時の住所地は郡山市で、同市は自主的避難等対象区域であり、同市の環境放射能等の状況は、前記第3章、第2、1の とおりである。 - 669 -また、一審原告28-2の本件事故当時の住所地は前記のとおり浪江町と認められ、同町は旧避難区域、旧避難指示解除準備区域に該当し、同町の環境放射能等の状況は、前記第3章、第4、3のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分 一審原告28-1は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である郡山市に居住していたところ、同28-1は勤務先から避難を指示されたため、その場にいた同28-2とともに、平成23年3月18日から同月28日まで名古屋市の同28-1の実家に避難したものであり、本件事故直後の混乱期であったことを考えると、同28-1及び同28-2の避難は本件事故によ るものといえる。 しかし、一審原告28-1及び同28-2は、その後、郡山市に戻り、結婚して同市で生活しており、同28-2が同28-3を妊娠、出産した後の平成24年3月に愛知県に転居したものであり、郡山市における居住期間は1年弱に及んでおり、その間、無用の外出を避けたり、同市内でもより放射 生活しており、同28-2が同28-3を妊娠、出産した後の平成24年3月に愛知県に転居したものであり、郡山市における居住期間は1年弱に及んでおり、その間、無用の外出を避けたり、同市内でもより放射 線量の低い地域へ転居したりと気を遣った生活はしていたものの、同28-1の仕事を理由に福島県外への具体的な避難行動には出ていない。そして、前記1(4)のように同市における環境放射能の値が平成23年から平成24年にかけても低下する中、同28-1が勤務先を退職して愛知県に転居することを決めたのであって、本件事故によりやむなく郡山市を離れたというよ りは、同28-3の出生を機に同28-1及び同28-2が子どもにとってより好ましいと考える環境を求めて名古屋市に移り住んだものというべきであり、これをもって本件事故と相当因果関係がある避難というのは困難である。この判断は、同28の世帯の同県への転居が同28-1及び同28-2が放射線による同28-3の健康に対する将来的な影響を憂慮してのことで あったとしても変わらない。 - 670 -また、一審原告28-2は、本件事故当時、旧避難指示解除準備区域である浪江町に居住していたものの、たまたま平成23年3月11日に同28-1の住む郡山市に向かっていた時に本件地震に遭い、その後、前記のとおり名古屋市に避難した後、郡山市に戻って同28-1と結婚し、同市で生活していたものであり、平成23年3月18日から同月28日までの名古屋市へ の避難及び避難生活は本件事故によるものと認められるが、平成24年3月の名古屋市への転居は、前記同様、本件事故と相当因果関係がある避難とはいえない。さらに、同28-2の本件事故当時の住所が浪江町にあったことは前記のとおり認められるが、平成23年4月に結婚して郡山市に の名古屋市への転居は、前記同様、本件事故と相当因果関係がある避難とはいえない。さらに、同28-2の本件事故当時の住所が浪江町にあったことは前記のとおり認められるが、平成23年4月に結婚して郡山市に同28-1と住むことを自ら決めているのであるから、同28-1が同月以降浪江町 に戻っていないことが本件事故による避難であるということもできない。 したがって、一審原告28-1及び同28-2について本件事故と相当因果関係がある避難及び避難生活は、平成23年3月18日から同月28日までの名古屋市への避難である。 (2) 一審原告28-1の損害 ア避難費用(ア) 交通費前記認定事実のとおり、一審原告28-1は、平成23年3月18日、郡山市から名古屋市の実家に飛行機で一時避難し、同月28日、新幹線、バス、タクシーを乗り継いで郡山市に戻っている。そして、往路の航空 費は同28-1の会社が負担したため同28-1の支出はなく、復路の交通費として少なくとも1万7320円(新幹線1万5320円(甲C28の16)及びバス2000円(甲C28の17))を支出したと認められ、これが本件事故と相当因果関係を有する損害として認められる。 他方、平成24年3月の名古屋市への転居は、本件事故による避難と は認められないから、その交通費は本件事故による損害とは認められな - 671 -い。 (イ) 引越し費用一審原告28-1が平成23年3月の避難において引越し費用を要したとは認められない。 (ウ) その他(名古屋市g区の避難先の修繕費) 一審原告28-1が名古屋市g区の祖父の空き家に居住したことは本件事故との相当因果関係が認められず、その修繕費も本件事故による損害とはならない。 (エ) 合計 1万7320円イ 費) 一審原告28-1が名古屋市g区の祖父の空き家に居住したことは本件事故との相当因果関係が認められず、その修繕費も本件事故による損害とはならない。 (エ) 合計 1万7320円イ生活費増加費用 (ア) 家財道具購入費一審原告1-1らは、同28-1が同28-2のために買い換えたベッドの購入代金17万2200円が損害であると主張する。しかし、同28-1が従前使用していたベッドの放射線量が健康に影響を及ぼす程度のものであったと認めるに足りる証拠はなく、本件事故によりベッド の買換えを余儀なくされたということはできない。 また、一審原告1-1らは、同28-1が祖父の家に避難した際に購入したエアコン2台、エアコン工事代、照明器具、ダイニングセット、ガス給湯器及び網戸の購入費用が損害であると主張するが、祖父の家への入居は本件事故と相当因果関係があるとはいえないから、この主張も 認められない。 (イ) 食費一審原告1-1らは、同28-1は本件事故前は同28-2の実家から食材を送ってもらっていたが、本件事故後は店舗等で購入する必要が生じ、少なくとも月額1万円、本件事故後3年間にわたって食費が余分 にかかったと主張する。しかし、本件事故により食費が増加したことに - 672 -ついて具体的な立証があるとはいえない。 (ウ) その他(駐車場代)一審原告1-1らは、同28-1が平成25年3月から平成26年3月まで支払っていた駐車場代9万7500円が損害であると主張するが、本件事故との相当因果関係が認められる避難生活中のものではなく、本 件事故による損害とは認められない。 (エ) 合計 0円ウ就労不能損害一審原告1-1らは、同28-1の平成24年4月から平成26年4月までの就労 められる避難生活中のものではなく、本 件事故による損害とは認められない。 (エ) 合計 0円ウ就労不能損害一審原告1-1らは、同28-1の平成24年4月から平成26年4月までの就労不能損害を主張するが、同28-1が名古屋市に移り住むた め勤務先を退職したことは本件事故によるものとはいえず、本件事故と相当因果関係のある就労不能とはいえない。 エ被ばく検査費用一審原告28の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した検査費用2580円(乙C28の1・9)を本件事故と相当因果関係を有 する損害と認める。 オ慰謝料一審原告28-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、勤務先の指示もあってあわただしく名古屋市へ避難した状況その他前記認定の一切の事情を 考慮すれば、これを15万円と認めるのが相当である。 カ合計 16万9900円(3) 一審原告28-2の損害ア避難費用(ア) 交通費 一審原告28-2は、平成23年3月18日、郡山市から名古屋市の - 673 -同28-1の実家に飛行機で一時避難し、同月28日、新幹線、バス、タクシーを乗り継いで郡山市に戻ったことが認められ、この事実によれば、同28-2が往路の交通費として少なくとも7万7310円を、復路の交通費として少なくとも1万7320円を要した事実を認めることができる(甲C28の16・17、甲C28の1・2)。 したがって、上記合計である9万4630円を本件事故と相当因果関係を有する交通費の損害と認める。 (イ) 宿泊費・謝礼一審原告1-1らは、同28-2が平成24年8月、10月及び平成25年4月に一時帰省した際の宿泊費として8万0790円の損害を と相当因果関係を有する交通費の損害と認める。 (イ) 宿泊費・謝礼一審原告1-1らは、同28-2が平成24年8月、10月及び平成25年4月に一時帰省した際の宿泊費として8万0790円の損害を被 ったと主張する。しかし、前記のとおり、同28-2について本件事故と相当因果関係を有する避難は平成23年3月28日までの分に限られるから、これ以降のものは損害とは認められず、上記主張は採用できない。 (ウ) 一時立入り・帰省費用 一審原告28-2が、本件事故と相当因果関係ある避難生活中に、浪江町又は郡山市に一時戻った事実は認められない。 (エ) 合計 9万4630円イ生活費増加費用(ア) 家財道具購入費 一審原告1-1らは、同28-2が郡山市内で同28-1の単身者用の社宅から家族向けの社宅に引っ越す際に購入したベッドの購入費用が損害であると主張する。 しかし、そもそも家族向け社宅への引越しの時期は、一審原告28-1と同28-2との婚姻後で、同28-2に出産予定があって3人家族 になることが見込まれた時期であり、家族構成の変化が転居の一因であ - 674 -ったとみられ、本件事故により余儀なくされた引越しとはいえない。同28-1らは、家族向けの社宅がある郡山市f町の方が単身者用社宅がある地域よりも放射線量が低かったから引っ越した旨供述するけれども(一審原告28-2本人(当審))、この供述を客観的に裏付ける証拠はないし、前記1(4)の同市の環境放射能等の状況も併せ考慮すれば、 上記供述部分は採用できない。 したがって、上記ベッド購入費も本件事故による損害とは認められない。 (イ) 食費前記(2)イ(イ)と同様、本件事故により食費が増加したことについて具 体的に立証されていると きない。 したがって、上記ベッド購入費も本件事故による損害とは認められない。 (イ) 食費前記(2)イ(イ)と同様、本件事故により食費が増加したことについて具 体的に立証されているとはいえない。 (ウ) 合計 0円ウ慰謝料一審原告28-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、あわただしく名古屋 市へ避難した状況その他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを15万円と認めるのが相当である。 一審原告1-1らは、同28-2の慰謝料額の算定に関し、本件事故当時の住所が浪江町であり同町に帰れなかったことを考慮すべきと主張するが、同28-2は、平成23年4月、婚姻により郡山市に居住するこ とを決めたのであり、同月以降、浪江町に帰還できなかったとしても、本件事故により同町から郡山市に避難した状態とは異なるというべきである。 エ合計 24万4630円(4) 一審原告28-3の損害 一審原告28-3は、本件事故後の平成24年1月に郡山市において出生 - 675 -し、同28の世帯は、同年3月に名古屋市に転居しているが、これが本件事故による避難とはいえないことは前記のとおりであり、同28-3には本件事故と相当因果関係がある避難及び避難生活は認められない。 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額 ア一審原告28-1について 250万4214円イ一審原告28-2について 126万円ウ一審原告28-3について 12万円(2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、これまで一審原告28の世帯に対し、以下のとおり の賠償を行ったことが認められる(乙C28の1・9・10、弁論の全趣旨)。 12万円(2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、これまで一審原告28の世帯に対し、以下のとおり の賠償を行ったことが認められる(乙C28の1・9・10、弁論の全趣旨)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告28-1 自主避難等に係る損害 12万円(イ) 一審原告28-2 自主避難等に係る損害 72万円 (ウ) 一審原告28-3 自主避難等に係る損害 12万円(エ) 合計 96万円イ ADRによる賠償 292万4214円ADRにより、一審原告28の世帯に対する和解金額が360万4214円と合意され、そこからADR以外による賠償額のうち68万円を控 除した292万4214円が支払われた。 (内訳)(ア) 生活費増加費用、移動費用、避難交通費、一時帰宅費用、宿泊費、引越し費用、検査費用、避難雑費、ADR弁護士費用163万0948円 (イ) 一審原告28-1の精神的損害 4万円 - 676 -(ウ) 一審原告28-2の精神的損害 30万円(エ) 就労不能損害 163万3266円(オ) 合計(和解金額) 360万4214円(カ) 既払い金 68万円(一審原告28-1分8万円、同28-2分60万円) (キ) 合計(支払い額) 292万4214円ウ合計 388万4214円(3) 一審原告28の世帯に対する各弁済額ア一審原告28-1(ア) ADR以外による賠償 12万円 ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 240万8740円ADRによる和解金額360万4214円のうち、前記(2)イ(イ)及び(ウ)の精神的損害については の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 240万8740円ADRによる和解金額360万4214円のうち、前記(2)イ(イ)及び(ウ)の精神的損害については一審原告28-1及び同28-2に対する 賠償であることが明らかであり、同(エ)の就労不能損害は同28-1に対するものと認められる(弁論の全趣旨)。同(ア)は、同28-1と同28-2のいずれの支出に対する賠償であるのか明らかでないから、双方に対する賠償とみるほかない。 前記(2)イ(カ)の既払い金のうち、同28-1に対するものは、まず同 (イ)から、その余が同(エ)から控除され、同28-2に対するものは、まず同(ウ)から、その余が同(ア)から控除されたものとみることとする。そうすると、同(キ)の支払い額292万4214円の内訳は、以下のとおりとなる。 ① 前記(2)イ(エ)の同28-1の就労不能損害について、既払い金のう ち4万円を控除した後の残額159万3266円 - 677 -② 前記(2)イ(ア)については同28-1及び28-2が均等に負担するものとして163万0948円を均分する。同28-1については81万5474円、同28-2について既払い金のうち30万円を控除した後の残額51万5474円。 したがって、ADRによる賠償額のうち一審原告28-1に対する弁 済額となるのは、上記①の159万3266円と上記②のうち81万5474円を合計した240万8740円である。 (ウ) 合計 252万8740円したがって、一審被告東京電力の一審原告28-1に対する弁済の抗弁250万4214円は全部認められる。 イ一審原告28-2(ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による がって、一審被告東京電力の一審原告28-1に対する弁済の抗弁250万4214円は全部認められる。 イ一審原告28-2(ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 51万5474円 ADRによる賠償額のうち一審原告28-2に対する弁済額となるのは、前記ア(イ)のとおり、前記(2)イ(ア)のうち51万5474円である。 (ウ) 合計 123万5474円したがって、一審被告東京電力の一審原告28-2に対する弁済の抗弁は一部認められる。 ウ一審原告28-3一審原告28-3については損害額が認められないので、弁済の抗弁については判断を要しない。 4 認容額等(1) 一審原告28-1 ア損害額 16万9900円 - 678 -イ弁済額 250万4214円ウ弁済額控除後の損害額 0円エ認容額 0円(2) 一審原告28-2ア損害額 24万4630円 イ弁済額 123万5474円ウ弁済額控除後の損害額 0円エ認容額 0円(3) 一審原告28-3ア損害額 0円 イ認容額 0円第27 一審原告30の世帯 1 認定事実(甲C30の1、甲C49、一審原告30-2本人(原審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等 一審原告30-1(本件事故当時42歳)、その妻である同30-2(本件事故当時39歳)、同一審原告らの長女である同30-3(本件事故当時11歳)、長男である同30-4(本件事故当時9歳)は、本件事故当 審原告30-1(本件事故当時42歳)、その妻である同30-2(本件事故当時39歳)、同一審原告らの長女である同30-3(本件事故当時11歳)、長男である同30-4(本件事故当時9歳)は、本件事故当時、福島県南相馬市原町区所在の同30-1の実家(福島第一原発からの距離22.91km(乙C30の3))に居住していた。 一審原告30-1及び同30-2は、いずれも福島県旧原町市(現南相馬市原町区)に生まれ、平成4年に結婚し、平成11年に同30-3が、平成13年に同30-4が生まれた。同30の世帯は上記の自宅で、同30-1の両親及び弟二人と生活していた。同30-1は、同自宅では、家賃、水道光熱費や電話代を負担する必要がなかった。また、同自宅では、同30-1 の両親が野菜を作っていたため、野菜を買うことはほとんどなかった。 - 679 -一審原告30-1は、本件事故当時は岐阜県下呂市に単身赴任中で、平成24年9月には単身赴任を終えて自宅に戻る予定であった。同30-2は、本件事故前はパートタイム勤務をしていた。 (2) 避難開始の経緯等本件事故後、福島第一原発から20km圏内は、道路が封鎖され、平成2 3年3月15日に屋内退避指示が出たので、一審原告30-2は、自宅周辺が異常な事態になっていると感じた。また、南相馬市内では、本件事故発生から同日頃までの間に、スーパーやコンビニの食料がなくなり、ガソリンの給油もできなくなった。同30-2は、情報が伝えられず自宅周辺の放射能の被ばく状況が判断できなかったことや、食料やガソリンの調達の目途が立 たなかったことから、同30-3及び同30-4を被ばくや食料不足から守るため、同30-1の単身赴任先へ避難することとした。 一審原告30-2は、平成23年3月15日、自動車に同 達の目途が立 たなかったことから、同30-3及び同30-4を被ばくや食料不足から守るため、同30-1の単身赴任先へ避難することとした。 一審原告30-2は、平成23年3月15日、自動車に同30-3及び同30-4を乗せ、下呂市へ向けて避難を開始し、渋滞する道路を14時間かけて同市に到着した。なお、同30-1の両親及び弟二人は、避難をあきら めた。 (3) 避難後の状況等一審原告30の世帯は、同30-1が当時生活していた会社の宿直室では生活できないため、下呂市の市営住宅に入居した。 一審原告30-1は、会社に相談の上、平成24年9月以降も下呂市で勤 務することにした。 一審原告30-2の本件事故前のパートタイム勤務先は、本件事故により事業を中止したので退職となり、平成23年8月から平成24年4月まで、Gで臨時職員として働いた。同年5月から平成27年1月までは、同30-3の世話のため、働きに出ることができなかった。同30-2は、本件事故 後、生活環境と人間関係の変化、同30-3の受けたいじめ等で強いストレ - 680 -スを受け、平成23年12月1日から平成24年12月7日までの間に歯が6本抜けた。 一審原告30-3は、本件事故前には健康診断で異常を指摘されたことはなく、バレーボールやドッジボールをするなど活発に運動しており、健康であった。しかし、本件事故による避難後、転校先の中学校で「放射能がうつ る。」、「言葉が変。」などと言われ、無視されるなどのいじめを受けたこともあって不登校になり、登校してもスクールカウンセラーの先生と一緒に保健室で過ごすなどしており、自殺未遂をしたこともあった。同30-3は、平成23年6月以降、自宅に引き籠もり、昼夜が逆転した生活を送るようになり、体重が急激に増加し クールカウンセラーの先生と一緒に保健室で過ごすなどしており、自殺未遂をしたこともあった。同30-3は、平成23年6月以降、自宅に引き籠もり、昼夜が逆転した生活を送るようになり、体重が急激に増加し、平成26年3月にはⅡ型糖尿病、脂肪肝、高尿 酸血症の診断を受けた。同30-3は、全日制の高校に進学することはできず、同年4月、岐阜県内の通信制高校に進学し、卒業後も正社員としての就職はできなかった。 一審原告30-4は、平成26年2月に交通事故に遭い、後遺症が残ったが、同年4月、岐阜県内の中学校に、平成29年4月、岐阜県高山市内の全 日制の高校に進学し、同30の世帯はこれに伴って同市内のアパートに引っ越した。 一審原告30の世帯は、南相馬市では同30-1の両親との同居で家賃や水道光熱費の負担がなかったが、下呂市への避難後は家賃や水道光熱費を負担する必要が生じた。 (4) 本件事故時住所地の状況等本件事故当時の一審原告30の世帯の住所地は南相馬市であり、住所があった同市原町区は旧緊急時避難準備区域に該当するところ、同市同区における環境放射能等の状況、区域設定の状況、緊急時避難準備区域における社会経済活動の再開状況等は前記第3章、第4、1のとおりである。 なお、本件事故当時の一審原告30-1の単身赴任先である下呂市は区域 - 681 -外である。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分ア一審原告30-2から同30-4までは、本件事故当時、南相馬市の、福島第一原発から20km超、30km以内圏内の自宅に居住しており、 本件事故による影響で、自宅周辺では食料やガソリンが入手しづらい状況になり、放射線に関する情報も十分に得られなかったことから、同30-1が単身赴任をし 、30km以内圏内の自宅に居住しており、 本件事故による影響で、自宅周辺では食料やガソリンが入手しづらい状況になり、放射線に関する情報も十分に得られなかったことから、同30-1が単身赴任をしていた下呂市への避難を決めたものであり、同30-2から同30-4までが南相馬市から下呂市への避難を行ったことは本件事故によるものというべきである。 他方、南相馬市のうち、一審原告30の世帯の自宅があった原町区の環境放射能等の状況や社会経済活動の再開状況は前記のとおりであり、同30-3及び同30-4が一般的に放射線による影響を受けやすいとされる子どもであったことを考慮してもなお、遅くとも平成24年8月31日までには同市の自宅への帰還に支障はなくなったというべきである。 そして、一審原告30の世帯が、同30-1の勤務先と相談して、下呂市への単身赴任期間が平成24年9月までの予定であったところを、引き続き同市で勤務するように変更してもらい、同30の世帯全員で同市に定住し、南相馬市には帰還しないことを決めたことも考えると、同30-2から同30-4までの避難生活のうち本件事故との因果関係が認 められるのは同年8月31日までの部分に限られるというべきである。 したがって、一審原告30-2から同30-4までの平成23年3月15日の避難及び平成24年8月31日までの避難生活について、本件事故との相当因果関係が認められる。 この点、一審原告30-2は、南相馬市の自宅周辺の除染について調査 や作業が進んでいないこと、食品の出荷制限が現在も継続していること - 682 -等を陳述するが(甲C30の1)、これを考慮しても、上記判断は左右されない。 イなお、一審原告30-1は、本件事故当時、単身赴任により下呂市に居住しており 継続していること - 682 -等を陳述するが(甲C30の1)、これを考慮しても、上記判断は左右されない。 イなお、一審原告30-1は、本件事故当時、単身赴任により下呂市に居住しており、本件事故の影響により同市へ移動したのではないから、同30-1が本件事故により避難したということはできないし、仮に同30- 2から同30-4までが本件事故と相当因果関係ある避難として同市に移動して来なくとも、予定の単身赴任期間中は同市に滞在していたはずであり、また、自身の生活の本拠であり両親や弟らが残る南相馬市が、本件事故によって一時的にも帰省しがたい状況になっていたと認めることもできないから、同30-1について本件事故による避難若しくは避難生活又は それに準じる状態を観念することはできない。 (2) 一審原告30-1の損害上記(1)イのとおり、一審原告30-1について本件事故による避難若しくは避難生活又はそれに準じる状態を観念することはできないから、本件事故による精神的苦痛に対する慰謝料は認められない。 (3) 一審原告30-2の損害ア避難費用(ア) 宿泊費・謝礼一審原告30-2が、平成23年3月15日から平成24年8月31日までの避難帰還中に宿泊費等を要したことを認めるに足りる具体的な 証拠はない。なお、ADRにおいて同30の世帯と一審被告東京電力が平成23年4月から平成27年3月までの滞在費を52万9350円と合意して同一審被告が賠償しているが(乙C30の1)、これは同30-1に対して賠償されたものと認められる(同30-2に対するADRによる賠償額は、就労不能損害161万4660円、生命身体的損害5 万2000円、精神的損害457万0000円の合計623万6660 - 683 -円 められる(同30-2に対するADRによる賠償額は、就労不能損害161万4660円、生命身体的損害5 万2000円、精神的損害457万0000円の合計623万6660 - 683 -円で、費用損害の賠償は行われていない。乙C30の1・5)。 (イ) 一時立入り・帰省費用一審原告30-2は、平成23年から平成29年までの南相馬市に居住する同30-1の両親らとの年2回程度の面会の際に要した費用として36万5904円を請求する。 一審原告30-2が、平成23年3月15日から平成24年8月31日までの避難帰還中に一時立入り費用等を要したことを認めるに足りる具体的な証拠はないが、同30の世帯の請求に対して一審被告東京電力が平成23年3月から同年11月までの一時立入り費用として10万8000円を、避難・帰宅費用として3万2000円を、平成24年3月 から同年5月までの一時立入り費用として5万4000円を既に賠償していることから(乙C30の5)、その合計である19万4000円を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (ウ) 合計 19万4000円イ生活費増加費用 (ア) 家財道具購入費ADRにおいて、一審原告30の世帯と一審被告東京電力が平成23年9月の家財等購入費を10万6841円と合意しているが、これは、前記ア(ア)同様、一審原告30-1に対して賠償されたものと認められ(乙C30の1・5)、他に同30-2が家財道具購入費を支出したと 認めるに足りる証拠はない。 (イ) 光熱費一審原告1-1らは、同30-2の平成24年4月から平成29年12月までの水道光熱費の増加分28万4211円が損害であると主張するが、同30-2が平成24年4月から同年8月までの間に水道光熱費 一審原告1-1らは、同30-2の平成24年4月から平成29年12月までの水道光熱費の増加分28万4211円が損害であると主張するが、同30-2が平成24年4月から同年8月までの間に水道光熱費 を負担したことを認めるに足りる証拠はない。 - 684 -(ウ) 通信費一審原告1-1らは、同30-2がインターネット契約をした平成26年7月から平成29年12月までのインターネット料金が損害であると主張するが、本件事故との相当因果関係が認められる避難生活中に要した費用ではないから、本件事故と相当因果関係を有する損害の主張と 認められない。 (エ) 食費一審原告30の世帯と一審被告東京電力のADRにおいて生活費増加費用(米・野菜の自家消費分)を31万5000円と合意した事実は認められるが(乙C30の1)、これは、前記ア(ア)同様、一審原告30 -1に対して賠償されたもので、かつ平成23年3月から平成27年3月までの分と認められ(乙C30の1・5)、他に同30-2が平成23年3月から平成24年8月までの間に米・野菜の自家消費分に相当する増加生活費を支出したと認めるに足りる証拠はない。 (オ) 家賃増加分 一審原告1-1らは、同30-2の平成26年4月以降の家賃増加分が損害であると主張するが、前記のとおり、同30-2から同30-4までの避難のうち本件事故との相当因果関係が認められるのは平成24年8月31日までの部分に限られるから、平成26年4月以降の家賃増加分を損害という主張は認められない。 (カ) その他(自治会費、ケーブルテレビ料金)一審原告30-2が自治会費等を支出したことについて具体的な立証はないから、本件事故と相当因果関係を有する損害の発生が認められない。 (キ) 合計 0円 その他(自治会費、ケーブルテレビ料金)一審原告30-2が自治会費等を支出したことについて具体的な立証はないから、本件事故と相当因果関係を有する損害の発生が認められない。 (キ) 合計 0円 ウ就労不能損害 - 685 -一審原告30-2について、平成23年3月から平成24年8月までの間に就労不能損害が発生したことについて、明確な立証はない。なお、ADRにおいて一審原告30の世帯と一審被告東京電力が一審原告30-2の就労不能損害を161万4660円と合意しているが(乙C30の1)、これは平成25年1月から平成26年3月までの期間に関する ものである。 エ生命・身体的損害一審原告1-1らは、同30-2が本件事故による避難を原因とするストレスで歯が抜けたとして通院慰謝料を請求する。ADRにおいて一審原告30の世帯と一審被告東京電力が一審原告30-2の平成23年1 2月10日から平成24年12月7日までの生命身体的損害として合意し、同一審被告が既に賠償した5万2000円(乙C30の1)については、本件事故による平成23年3月15日から平成24年8月31日までの避難生活により発生した生命・身体的損害と認める余地があるが(弁論の全趣旨)、同30-2にこれを超える生命・身体的損害が発生 した事実を認めるに足りる証拠はない。 したがって、5万2000円を本件事故と相当因果関係を有する生命・身体的損害と認める。 オその他(ADR弁護士費用)一審原告30-2がADR弁護士費用を負担したと認めるに足りる証拠 はない。なお、同30の世帯と一審被告東京電力とのADRにおいて42万3010円が、一審原告30-1と一審被告東京電力とのADRにおいて9万0965円が、それぞれADR弁護士費用と合意さ 拠 はない。なお、同30の世帯と一審被告東京電力とのADRにおいて42万3010円が、一審原告30-1と一審被告東京電力とのADRにおいて9万0965円が、それぞれADR弁護士費用と合意され、同一審被告が既に賠償したことは認められるが、いずれも同30-1に対して賠償されたものである(前記ア(ア)。乙C30の1・2・5) カ慰謝料 - 686 -一審原告30-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、本件事故直後に自動車で南相馬市から下呂市まで避難した状況、避難生活でストレスを受けたことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを180万円と認めるのが相当である。 キ合計 204万6000円(4) 一審原告30-3の損害一審原告30-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額については、本件事故直後に自動車で南相馬市から下呂市まで避難した状況、避難により転校しなければな らなかったこと、環境の変化で不登校になったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを180万円と認めるのが相当である。 (5) 一審原告30-4の損害一審原告30-4について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額については、本件事故直後に自 動車で南相馬市から下呂市まで避難した状況その他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを180万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東電の弁済の抗弁の主張額ア一審原告30-1について 694万0627円 イ一審原告30-2について 1180万0660円ウ一審原告30-3につ 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東電の弁済の抗弁の主張額ア一審原告30-1について 694万0627円 イ一審原告30-2について 1180万0660円ウ一審原告30-3について 625万8800円エ一審原告30-4について 510万円(2) 一審被告東電による賠償一審被告東電は、これまで一審原告30の世帯に対し、以下のとおりの賠 償を行ったことが認められる(乙C30の1・2・5、弁論の全趣旨)。 - 687 -ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告30-1に対しその他、一時立入り費用、精神的損害(避難生活)、避難・帰宅費用通院交通費等の生活費の増加分218万9662円(イ) 一審原告30-2に対しその他、一時立入り費用、就労不能損害、 精神的損害(避難生活)、避難・帰宅費用、通院交通費等の生活費の増加分 556万4000円(ウ) 一審原告30-3に対し精神的損害(避難生活・学童)、通院交通費等の生活費の増加分 235万円(エ) 一審原告30-4に対し精神的損害(避難生活・学童)、通院交 通費等の生活費の増加分 235万円(オ) 一審原告30の世帯に対し避難費用 100万円(カ) 合計 1345万3662円イ ADRによる賠償ADRにより、一審原告30の世帯に対する和解金額が1452万33 17円と、同30-1に対する和解金額が312万3108円とそれぞれ合意され、それぞれの額が支払われた。 (内訳)(ア) 一審原告30-1の避難費用、面会交通費、ADR弁護士費用162万7857円 (イ) 一審原告30-2の就労不能損害、生命身体的損害、精神的損害623万6660円(ウ) 一審原告30-3の生命身体的 避難費用、面会交通費、ADR弁護士費用162万7857円 (イ) 一審原告30-2の就労不能損害、生命身体的損害、精神的損害623万6660円(ウ) 一審原告30-3の生命身体的損害、精神的損害390万8800円(エ) 一審原告30-4の精神的損害 275万円 (オ) (ア)から(エ)までの合計 1452万3317円 - 688 -(カ) 一審原告30-1の生活費増加費用、精神的損害、ADR弁護士費用 312万3108円(キ) 合計 1764万6425円(3) 一審原告30の世帯に対する各弁済ア一審原告30-1 一審原告30-1については損害額が認められないから、弁済の抗弁について判断することを要しない。 イ一審原告30-2(ア) ADR以外による賠償 581万4000円ADR以外による賠償のうち前記(2)ア(イ)の556万4000円につ いては、一審原告30-2に対する弁済として扱い、同(オ)の同30の世帯全体に対する賠償は、同30-1から同30-4までに均分し、25万円を同30-2に対する弁済額とみるのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 623万6660円ADRによる賠償のうち、前記(2)イ(イ)の額は一審原告30-2に対 する弁済とみるのが相当である。 (ウ) 合計 1205万0660円したがって、一審被告東京電力の一審原告30-2に対する弁済の抗弁1180万0660円は全部認められる。 ウ一審原告30-3 (ア) ADR以外による賠償 260万円ADR以外による賠償のうち前記(2)ア(ウ)の235万円については、一審原告30-3に対する弁済として扱い、同(オ)の同30の世帯全体に対する賠償は、同30-1から R以外による賠償 260万円ADR以外による賠償のうち前記(2)ア(ウ)の235万円については、一審原告30-3に対する弁済として扱い、同(オ)の同30の世帯全体に対する賠償は、同30-1から同30-4までに均分し、25万円を同30-3に対する弁済額とみるのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 390万8800円 - 689 -ADRによる賠償のうち、前記(2)イ(ウ)の額を一審原告30-3に対する弁済とみるのが相当である。 (ウ) 合計 650万8800円したがって、一審被告東京電力の一審原告30-3に対する弁済の抗弁625万8800円は全部認められる。 エ一審原告30-4(ア) ADR以外による賠償 260万円ADR以外による賠償のうち前記(2)ア(エ)の235万円については、一審原告30-4に対する弁済として扱い、同(オ)の同30の世帯全体に対する賠償は、同30-1から同30-4までに均分し、25万円を 同30-4に対する弁済額とみるのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 275万円ADRによる賠償のうち、前記(2)イ(エ)の額を一審原告30-4に対する弁済とみるのが相当である。 (ウ) 合計 535万円 したがって、一審被告東京電力の一審原告30-4に対する弁済の抗弁510万円は全部認められる。 4 認容額等(1) 一審原告30-1ア損害額 0円 イ認容額 0円(2) 一審原告30-2ア損害額 204万6000円イ弁済額 1180万0660円ウ弁済額控除後の損害額 0円 エ認容額 0円 - 690 -(3) 一審原告30-3ア損害額 180万円イ弁済額 625万8800円ウ弁済額控除 0660円ウ弁済額控除後の損害額 0円 エ認容額 0円 - 690 -(3) 一審原告30-3ア損害額 180万円イ弁済額 625万8800円ウ弁済額控除後の損害額 0円エ認容額 0円 (4) 一審原告30-4ア損害額 180万円イ弁済額 510万円ウ弁済額控除後の損害額 0円エ認容額 0円 第28 一審原告31の世帯 1 認定事実(甲C31の1・7、一審原告31-1本人(原審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等一審原告31-1(本件事故当時27歳)、その妻である同31-2(本 件事故当時27歳)、同31-1及び同31-2の長女である同31-3(本件事故当時1歳)は、本件事故当時、福島県いわき市内の賃貸アパート(福島第一原発からの距離36.13km(乙C31の2))に居住していた。 一審原告31-1はいわき市出身で、本件事故当時は美容室で正社員とし て働き、将来的には福島県内に自分の店を持ちたいと考えていた。同31-2もいわき市出身で、本件事故当時はパソコン事務のパートタイム勤務をしていた。 (2) 避難開始の経緯等一審原告31-1及び同31-2は、本件地震が発生した平成23年3月 11日、テレビで、福島第一原発が危ない、関東も放射能の影響で危ないと - 691 -の報道があったことから、同31-1の兄や同31-2の弟がいる愛知県への避難を考えるようになった。同31の世帯の住むアパートの近くで活動していた自衛隊員が「放射能の影響があるかもしれないから、雨に触れない方がよい。」などと言っており、また、同31の世帯の居住地域は、避難の対象となった区域から5kmしか離れていな パートの近くで活動していた自衛隊員が「放射能の影響があるかもしれないから、雨に触れない方がよい。」などと言っており、また、同31の世帯の居住地域は、避難の対象となった区域から5kmしか離れていなかったこともあって、同31-1 及び同31-2は不安を募らせた。そして、同31-1及び同31-2は、福島第一原発3号機の爆発をライブ映像で見たこと、余震もあったこと、自衛隊員が避難を呼びかけていたこと、アパートの住人が一斉に避難したこと等から、避難することを決断した。 一審原告31の世帯は、平成23年3月14日、親族を頼って愛知県に避 難することとし、避難を開始した。同31の世帯は、同日、千葉県の親戚の家に泊めてもらう予定だったが泊めてもらうことができず、車中泊をした。 その後、同31の世帯は、高速道路を使って愛知県に移動し、名古屋市にいた同31-2の弟のアパートに同月15日から同年4月末まで居住させてもらった。 避難当初は、一審原告31-2及び同31-3が名古屋市に残り、同31-1はいわき市に戻るつもりで、平成23年3月下旬又は4月上旬頃、同市に戻ったが、勤務先の美容室の従業員の間で放射能に対する考え方の相違が大きかったこと等から、同月上旬に勤務先を退職し、引越しの準備やアパートの解約の手続を行った。同31-1は、いわき市滞在中に実家の畑で作っ た野菜を食べるなどしたため、これにより被ばくがひどくなったのではないかと不安を感じた。 一審原告31の世帯は、避難者に対する住宅貸与制度を利用して、平成23年4月下旬に愛知県小牧市内の県営住宅に入居した。 (3) 避難後の状況等 一審原告31-1は、平成23年4月後半に就職の面接を受け、各種毛髪 - 692 -製品の製造販売の大 下旬に愛知県小牧市内の県営住宅に入居した。 (3) 避難後の状況等 一審原告31-1は、平成23年4月後半に就職の面接を受け、各種毛髪 - 692 -製品の製造販売の大手会社に正社員としての採用が決まり、同年5月半ばから現在まで上記会社で働いている。同31-2は、避難後は同31-3の面倒を見る親族が近くにいなくなったため、外に出て仕事をすることができず、精神的な負担が増大したが、平成25年秋から在宅での仕事を始めてからは精神的な落ち着きを取り戻した。また、同31-1及び同31-2は、避難 から1年程度は、同31-3には、インターネットで取り寄せた安全そうな食品を食べさせており、購入したガイガーカウンターで自ら放射線量を測るなどしていた。 一審原告31の世帯は、避難時にペットを連れてきていたが、入居した小牧市内の県営住宅はペット禁止であり、ペット飼育を黙認してもらってはい たが、禁止されているのにペットを飼っていることがストレスで、入居してから約半年後に、ペットが飼える岐阜市内のアパートに引っ越した。同31の世帯は、その後の平成26年6月、同市内に中古住宅を購入した。 なお、一審原告31-1の両親は、現在もいわき市に居住している。同31-2の両親は、同市に居住していたが、平成29年秋頃、岐阜市に転居し た。 (4) 本件事故時住所地の状況等一審原告31の世帯の本件事故当時の住所地であるいわき市は自主的避難等対象区域であり、同市における環境放射能等の状況は前記第3章、第5のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告31の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域であるいわき市に居住していたと 第5のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告31の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域であるいわき市に居住していたところ、本件事故直後、福島第一原発が危ないという報道や、近所で自衛隊員による避難の呼びかけがあったことから、愛知県に避 難したものであり、本件事故直後の混乱期であることを考えれば、同31の - 693 -世帯が避難を行ったことは本件事故によるものと認められる。 他方、いわき市における環境放射能等の状況等は前記認定のとおりであり、平成23年から平成24年にかけても環境放射能の値は低下しており、通常、遅くとも平成23年12月31日までに、一般的に放射能の影響を受けやすいとされる幼児がいる場合でも遅くとも平成24年8月31日までには、避 難先からいわき市に帰還することに支障はなくなっていたというべきである。 なお、一審原告31-1は、平成23年4月上旬に、いわき市における自宅であったアパートを解約し、勤務先を退職して、同年5月からは避難先で会社に正社員として就職して勤務しているのであるから、同31の世帯にあっては、今後、いわき市の状況がどうなろうとももはや同市には帰還しない 前提で愛知県に移住したとみる余地もあるが、同年4、5月の時点は未だ本件事故直後の混乱期で十分な情報がなく、その後、事態が落ち着いて再びいわき市に帰還することを考えて、同市に住居及び勤務先を確保して帰還するということもありうるから、上記アパート解約及び勤務先退職によって、本件事故と避難生活との因果関係が直ちに切断されるとはいえない。 したがって、一審原告31の世帯の避難生活は、平成24年8月31日までの限度で、本件事故との相当因果関係が認められるとす て、本件事故と避難生活との因果関係が直ちに切断されるとはいえない。 したがって、一審原告31の世帯の避難生活は、平成24年8月31日までの限度で、本件事故との相当因果関係が認められるとするのが相当である。 (2) 一審原告31-1の損害ア避難費用(ア) 交通費 一審原告31の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した交通費3万0400円(乙C31の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (イ) 引越し費用一審原告31の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した 転居費用28万8000円(乙C31の1)を本件事故と相当因果関係 - 694 -を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (ウ) 一時立入り・帰省費用一審原告31の世帯の避難について本件事故との相当因果関係が認められるのはいずれも平成24年8月31日までの部分に限られるから、平成23年6月14日の同31-2の実家への電車での帰省、同年年末 から平成24年年始までの同31-1の実家への電車での帰省及び同年夏の同31-1の実家への電車での帰省の計3回の帰省に要した交通費に限り、本件事故と相当因果関係があると認められる。 したがって、10万1640円(=1万6940円(甲C31の5)×2(往復)×3回)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 (エ) その他(仲介手数料・敷金等)一審原告31の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した住居費11万4850円(乙C31の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (オ) その他(引越し準備費用) 1の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した住居費11万4850円(乙C31の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (オ) その他(引越し準備費用) 一審原告1-1らは、同31-1が平成23年3月下旬又は4月上旬に引越し準備のために自動車でいわき市に一時帰宅した際に要した交通費3万円が損害となると主張する。 一審原告31-1が、一時帰宅した事実は前記のとおり認められ、これに要した費用についての具体的な立証はないが、一時帰宅のため名古 屋市からいわき市に移動した事実からは少なくとも片道1万円の交通費を要した事実を推認することができる。 したがって、2万円(=1万円×2)の限度で本件事故と相当因果関係を有する引越し準備交通費の損害と認める。 (カ) 合計 55万4890円 イ生活費増加費用 - 695 -(ア) 家財道具購入費一審原告31の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した家財道具購入費用5万円(乙C31の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (イ) 食費 一審原告31-1が愛知県での避難生活中に、放射線の影響を抑えるために通信販売を利用する必要性は認められない。 (ウ) その他(名古屋市の弟宅での生活準備)一審原告1-1らは、同31-1が名古屋市の同31-2の弟宅での生活準備のために購入した雑貨、日用品等の購入費6万4011円の損 害が生じたと主張する。 しかし、一審原告1-1らが、同31-1が上記支出をした証拠として提出する個人情報開示等報告書(甲C31の3)及びカード取引明細(甲C31の4)には具 害が生じたと主張する。 しかし、一審原告1-1らが、同31-1が上記支出をした証拠として提出する個人情報開示等報告書(甲C31の3)及びカード取引明細(甲C31の4)には具体的な商品名の記載がなく、いつどのような物を購入したか不明であり、その他名古屋市の同31-2の弟宅での生活 準備のために必要な物を購入したと認めるに足りる証拠はない。 したがって、上記主張は認められない。 (エ) その他(小牧での入居準備)一審原告1-1らは、同31-1に平成23年4月の小牧市内の県営住宅への入居準備費用10万4631円の損害が生じたと主張する。 しかし、前記(ア)において認められる家財道具購入費以外に、一審原告31-1が入居準備費用を支出したと認めるに足りる証拠はなく、上記主張は認められない。 (オ) その他(岐阜での入居準備)一審原告1-1らは、同31-1に平成23年10月の岐阜市への引 越しの際の雑貨等購入費用9万3025円の損害が生じたと主張する。 - 696 -しかし、一審原告31-1が小牧市の県営住宅から岐阜市に引っ越したのはペットを飼うことが可能な場所に住むという目的のためであり、本件事故により必要な避難のための転居とはいえないから、その際に要した費用は本件事故と相当因果関係を有するとはいえず、上記主張は認められない。 (カ) 合計 5万円ウ就労不能損害一審原告31の世帯が請求し一審被告東京電力が同31-1の就労不能損害として既に賠償した40万3066円(乙C31の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 エ線量計購入費避 が請求し一審被告東京電力が同31-1の就労不能損害として既に賠償した40万3066円(乙C31の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 エ線量計購入費避難先である愛知県で放射線量を計測する必要性は認められず、線量計購入費は本件事故と相当因果関係を有する損害とはいえない。 オ慰謝料一審原告31-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難 及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、親族を頼って自動車で愛知県まで避難した状況や乳児である同31-3を伴っての避難及び避難生活であったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 カ合計 200万7956円 (3) 一審原告31-2の損害一審原告31-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、親族を頼って自動車で愛知県まで避難した状況や乳児である同31-3を伴っての避難及び避難生活であったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と 認めるのが相当である。 - 697 -(4) 一審原告31-3の損害一審原告31-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、自動車で愛知県まで避難した状況その他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額ア一審原告31-1について 52万6316円イ一審原告31-2について 12万円ウ一審原告31-3について 72万円 (2) 1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額ア一審原告31-1について 52万6316円イ一審原告31-2について 12万円ウ一審原告31-3について 72万円 (2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東電は、これまで一審原告31の世帯に対し、以下のとおりの賠償を行ったことが認められる(乙C31の1・4)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告31-1に対し自主避難等に係る損害 12万円 (イ) 一審原告31-2に対し自主避難等に係る損害 12万円(ウ) 一審原告31-3に対し自主避難等に係る損害 72万円イ ADRによる賠償 40万6316円ADRにより、一審原告31の世帯に対する和解金額が116万6316円と合意され、そこからADR以外による賠償額のうち76万円を控除 した40万6316円が支払われた。 (内訳)(ア) 避難費用、生活費増加費用 48万3250円(イ) 一審原告31-1の就労不能損害 40万3066円(ウ) 精神的損害 28万円 (エ) 合計(和解金額) 116万6316円 - 698 -(オ) 既払い金 76万円(一審原告31-1分8万円、同31-2分8万円、同31-3分60万円)(カ) 合計(支払い額) 40万6316円ウ合計 136万6316円(3) 一審原告31の世帯に対する各弁済額 ア一審原告31-1(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 40万6316円 告31-1(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 40万6316円 ADRで合意した和解金額の内訳は前記(2)イのとおりであるが、この和解金額から同ア(ア)から(ウ)までのADR以外による賠償額のうち76万円が控除されて支払われた関係で、76万円のうち28万円は前記(2)イ(ウ)の精神的損害28万円が控除され、その余の48万円は同(ア)の一審原告31-1が支出した同31の世帯共通の費用から控除された ものとみて、同(ア)のうち3250円と同(イ)の同31-1の就労不労損害40万3066円の合計額である40万6316円をADRによる賠償のうち同31-1に対する弁済額とする。 (ウ) 合計 52万6316円したがって、一審被告東京電力の一審原告31-1に対する弁済の抗弁 は全部認められる。 イ一審原告31-2(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円 - 699 -ADRで合意した和解金額の内訳のうちの前記(2)イ(ウ)の精神的損害の一審原告31-2に係る部分は既払い金により控除済みとみて、ADRによる賠償のうち同31-2に対する弁済額を0円とする。 (ウ) 合計 12万円したがって、一審被告東京電力の一審原告31-2に対する弁済の抗弁 は全部認められる。 ウ一審原告31-3(ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) A 全部認められる。 ウ一審原告31-3(ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRで合意した和解金額の内訳のうちの前記(2)イ(ウ)の精神的損害の一審原告31-3に係る部分は既払い金により控除済みとみて、ADRによる賠償のうち同31-3に対する弁済額を0円とする。 (ウ) 合計 72万円 したがって、一審被告東京電力の一審原告31-3に対する弁済の抗弁は全部認められる。 4 認容額等(1) 一審原告31-1ア損害額 200万7956円 イ弁済額 52万6316円ウ弁済額控除後の損害額 148万1640円エ弁護士費用 15万円オ認容額 163万1640円(2) 一審原告31-2 ア損害額 100万円 - 700 -イ弁済額 12万円ウ弁済額控除後の損害額 88万円エ弁護士費用 9万円オ認容額 97万円(3) 一審原告31-3 ア損害額 100万円イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害額 28万円エ弁護士費用 3万円オ認容額 31万円 第29 一審原告32の世帯 1 認定事実(甲C32の1・5、33の1、34、36の1、一審原告32-2本人(原審)、同36-1本人(原審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等一審原告32-1(本件事故当時37歳)、その妻である同32-2(本 件事故当時40歳)、同32-1及び同32-2の長男である 審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等一審原告32-1(本件事故当時37歳)、その妻である同32-2(本 件事故当時40歳)、同32-1及び同32-2の長男である同32-3(本件事故当時6歳)、二男である同32-4(本件事故当時5歳)、長女である同32-5(本件事故当時1歳)は、本件事故当時、福島県いわき市所在の自宅(福島第一原発からの距離46.31km(乙C32の3))に、同32-1の両親である同33の世帯とともに居住していた。 一審原告32-1は、本件事故当時、両親である同33の世帯や姉である同36-1とともに、父である同33-1が社長である有限会社で、自動車の整備、新車・中古車の販売等の事業を行っていた。同33-1は、本件事故当時、子である同32-1に事業を受け継がせようとしていた。同32-2は、平成12年頃から、上記の会社で、経理の仕事の手伝いをしていた。 同32-1の姉である同36-1の知人が板金業を営んでいたり、同36- - 701 -1自身が保険外交員をしていたりしたことから、自動車の販売から維持・管理まで上記の会社に任せることができるとして地元では評判であり、仕事は順調で、生活にも不自由はなかった。同32-3及び同32-4はいわき市内の幼稚園に通い、同32-1及び同32-2は、同居する両親である同33の世帯に育児のサポートを受けながら生活していた。 (2) 避難開始の経緯等一審原告32-1及び同32-2は、本件地震が発生した平成23年3月11日は仕事を切り上げ、同33の世帯とともに帰宅し、同36-1も自分の家に帰った。翌12日も仕事ができるような状態ではなく、皆不安であったため、同36の世帯も同32-1らの家に泊まることとなった。同日 日は仕事を切り上げ、同33の世帯とともに帰宅し、同36-1も自分の家に帰った。翌12日も仕事ができるような状態ではなく、皆不安であったため、同36の世帯も同32-1らの家に泊まることとなった。同日、同 33-2及び同36-1が買い物に出かけたところ、近所の魚屋の主人から「原発、危ないよ。東電に勤めている友人が、『夜中のうちに逃げろという電話が入った。』と言っていたよ。」などと言われた。これを同32-1及び同32-2並びに同33―1も聞き、同32の世帯は、同33の世帯及び同36の世帯とともにすぐに避難することを決めた。 一審原告32の世帯、同33の世帯、同36の世帯(同36-1とその子ら2名)は、計10名で、平成23年3月12日午後3時頃、福島県郡山市に避難し、同日はホテルで1泊した。当初は一時的に避難するつもりであったが、ホテル滞在中に、福島第一原発が爆発したとか、メルトダウンにより原子炉から放射性物質が漏れたといったニュースが流れていたため、同32 -1及び同32-2、並びに同33の世帯及び同36-1は怖くなり、本件事故が落ち着くまではいわき市に戻らず、できるだけ福島県から遠ざかろうということになり、同月13日、上記10名で群馬県安中市に避難した。同32の世帯は、同日及び翌14日は同市内の民宿で宿泊し、同月15日からは同36-1の友人のアパートをルームシェアして、6畳の部屋で10名で 生活していた。 - 702 -一審原告32-1及び同33の世帯は、仕事を再開するため、平成23年3月末頃、いわき市の自宅に戻ったが、同32-2から同32-5までは安中市での避難生活を続けることにした。同32-3は、いわき市の幼稚園から安中市の小学校に入学し、同32-4は、いわき市の幼稚園年中組から安 、いわき市の自宅に戻ったが、同32-2から同32-5までは安中市での避難生活を続けることにした。同32-3は、いわき市の幼稚園から安中市の小学校に入学し、同32-4は、いわき市の幼稚園年中組から安中市の幼稚園年長組に転園、進級した。同32-2から同32-5までは、 同市内の群馬県の借上げ住宅に住めることとなったため、同年5月、上記アパートを出て借上げ住宅に入居した。同32-1は、毎週末、いわき市から安中市まで、同32-2から同32-5までに会いに行っていた。 一審原告32-2から同32-5までは、平成23年7月及び平成24年7月に岐阜県で開催された保養プログラムに参加し、同32-2は、そこで 知り合った人から多くの話を聞くとともに、本件事故が収束しないことや除染がなかなか進まないことも考慮して、いわき市では同32-3から同32-5までを育てられないと判断し、同年8月頃、岐阜県への転居を決断した。 そして、同32-2から同32-5まで並びに同36-1及び同36-3は、同月、岐阜県への転居の準備のためにいわき市に戻った。 一審原告33の世帯は、平成24年夏頃に線量計を購入して毎日放射線量を測定していたが、その値が高く、水たまりなどでは線量計の警報音が鳴るなどしたため、同32-1は、福島県で生活していては常に被ばくしてしまうと感じるようになった。また、同32-3から同32-5までは、同年8月に甲状腺検査及び血液検査を受けたが、その結果、同32-3から同32 -5までの甲状腺にのう胞ができており、同32-5は血液検査でも甲状腺ホルモンが上昇しているとの結果が出た。そこで、同32-1も同年9月には岐阜県に避難すると決めた。同32-1、同33の世帯及び同36-1は、岐阜県に避難するため、4人で三、四回、同 液検査でも甲状腺ホルモンが上昇しているとの結果が出た。そこで、同32-1も同年9月には岐阜県に避難すると決めた。同32-1、同33の世帯及び同36-1は、岐阜県に避難するため、4人で三、四回、同県に赴いて引越し先を探し、最終的には、同33-1が岐阜市に中古の一軒家を購入し、これをリフォーム して居住することとした。そして、同32の世帯及び同36の世帯は、平成 - 703 -25年3月に岐阜市に転居した。同33の世帯は、同年秋に自宅を処分し、会社の残務を処理した後の同年12月、いわき市から岐阜市に転居した。 一審原告32-1及び同32-2は、群馬県の赤城山付近に本件事故後に放射性物質が溜まってこの地域の川は放射線量が高く禁漁になっていることを、岐阜市に転居してから知った。 (3) その後の状況等一審原告32-1は、岐阜市への転居後の平成25年4月、会社員として自動車整備の仕事に就いた。同32-1は、いわき市で行っていた事業を再開しようと、岐阜市内で開業の準備を進めた。同32-1は、平成27年9月末、勤めていた上記会社を退職し、同33-1らとともに、同年12月、 自動車の整備及び販売業等を営む会社を設立し、開業した。同社では、いわき市で事業を行っていた時と同様、同33-1が営業活動を、同32-1が修理・整備等の実働を、同36-1が保険関係と車両販売を、同32-2及び同33-2が経理や事務一般を分担している。 (4) 本件事故時住所地の状況等 一審原告32の世帯の本件事故時の住所地はいわき市で、同市は自主的避難等対象区域であり、同市における環境放射能等の状況は前記第3章、第5のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分 住所地はいわき市で、同市は自主的避難等対象区域であり、同市における環境放射能等の状況は前記第3章、第5のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分 一審原告32の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域であるいわき市に居住していたところ、本件事故直後に近隣の者から不確実な情報を聞き、不安になってまず郡山市に避難し、その後、福島第一原発の爆発などのニュースを見てさらに不安になって安中市に避難したものであり、本件事故直後の混乱期に本件事故に関する情報が不足していたことを考えると、同3 2の世帯が避難を行ったことは本件事故によるものと認められる。 - 704 -他方、いわき市における環境放射能等の状況等は前記認定のとおりであり、平成23年から平成24年にかけても環境放射能の値は低下しており、通常、遅くとも平成23年12月31日までに、一般的に放射能の影響を受けやすいとされる子ども、乳児がいる場合でも遅くとも平成24年8月31日までには、避難先からいわき市に帰還することに支障はなくなっていたというべ きである。現に、一審原告32-1と同33の世帯は事業のため平成23年3月末にいわき市に戻り、同32-1は平成25年3月に、同33の世帯は同年12月に岐阜市に転居するまでいわき市に居住していたのであり、安中市での避難生活を継続した同32-2から同32-5までについても、平成24年8月31日までには、いわき市の自宅に戻ることについて支障はなく なっていたといえる。 そして、一審原告32-2から同32-5までは、知人からの話を聞くなどして岐阜市に転居することを決め、平成24年8月に安中市からいわき市の自宅に戻り、平成25年3月に岐阜市に転居しているところ、まず、安中 、一審原告32-2から同32-5までは、知人からの話を聞くなどして岐阜市に転居することを決め、平成24年8月に安中市からいわき市の自宅に戻り、平成25年3月に岐阜市に転居しているところ、まず、安中市が平成24年当時、本件事故により避難を要するような状況にあったとは 認められず(乙B462)、同32-1及び同32-2が述べる赤城山のエピソードも、仮に同年当時、それを認識していたとしても同市からも避難を要することを基礎づけるような内容とはいえない。実際、同32-2から同32-5までは、直ちに岐阜市に転居するのではなく平成24年8月にいわき市に戻っているのであり、同32-3から同32-5までの甲状腺にのう 胞ができたり、同32-5の甲状腺ホルモン値が上昇したりしたといっても、同32-3から同32-5までは、平成23年3月13日から平成24年8月までは福島県外にいたのであるから本件事故との因果関係は不明であり、同32の世帯の平成25年3月のいわき市から岐阜市への転居は本件事故による避難とはいえず、その後の岐阜市での生活も本件事故による避難生活と はいえない。 - 705 -したがって、一審原告32―2から同32-5までについて本件事故との相当因果関係が認められる避難生活は郡山市及び安中市における平成24年8月までものに限られる。 また、一審原告32-1は、平成23年3月末に、事業の継続のために避難を切り上げていわき市の自宅に戻っており、避難生活は同月末で終了して いるといわざるをえないが、避難を続ける同32-2から同32-5までを安中市に残しての帰宅であり、平成24年8月まで二重生活を送らざるを得なくなったことや家族と会うためにいわき市から安中市に通ったことは相当な範囲では本件事故によるものといえる。 ( 32-5までを安中市に残しての帰宅であり、平成24年8月まで二重生活を送らざるを得なくなったことや家族と会うためにいわき市から安中市に通ったことは相当な範囲では本件事故によるものといえる。 (2) 一審原告32-1の損害 ア避難費用(ア) 交通費一審原告1-1らは、同32-1が平成23年3月にいわき市から安中市に避難した際の交通費として7万0800円、平成25年3月にいわき市から岐阜市に避難した際の交通費として2万7000円を要し、 これが損害であると主張する。 前記のとおり、一審原告32の世帯の平成23年3月のいわき市から安中市への避難は本件事故と相当因果関係が認められ、それに要した交通費は、同32-1の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した7万0800円(乙C32の1・2)と認められるから(弁論の全趣旨)、 これは本件事故と相当因果関係を有する損害といえる。 一方、一審原告32の世帯の平成25年3月のいわき市から岐阜市への転居は本件事故と相当因果関係を有するものとはいえないから、その交通費も損害と認めることはできない。 したがって、7万0800円を本件事故と相当因果関係を有する交通 費の損害と認める。 - 706 -(イ) 宿泊費・謝礼一審原告1-1らは、同32-1が安中市に避難していた際に宿泊した民宿や知人宅への謝礼として支払った12万円が損害であると主張する。 一審原告32の世帯が、平成23年3月13日及び14日に安中市内 の民宿に宿泊した事実及び同月15日からは同32-1が同月末まで、同32-2から同32-5までが同年5月まで知人のアパートをルームシェアしていた事実は前記のとおり認められ、こ 14日に安中市内 の民宿に宿泊した事実及び同月15日からは同32-1が同月末まで、同32-2から同32-5までが同年5月まで知人のアパートをルームシェアしていた事実は前記のとおり認められ、この事実からすれば、民宿代及びルームシェア代の支払いが必要となるものといえ、その額は、同32-1の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した10万60 00円(乙C32の1・2)の限度では弁論の全趣旨により認められるが、これを超える額を支出したと認めるに足りる証拠はない。 したがって、安中市の民宿及び友人宅の宿泊費等10万6000円を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 (ウ) 引越し費用 一審原告1-1らは、同32-1に引越し費用35万4500円の損害が生じたと主張する。しかし、上記費用は平成25年3月に同32の世帯がいわき市から岐阜市へ転居したことに関するものであり、前記のとおり、この転居は本件事故との相当因果関係が認められないから、その費用も本件事故と相当因果関係を有する損害とはならない。 (エ) 面会交通費一審原告1-1らは、同32-1が面会交通費として176万8000円を要し、これが損害であると主張する。 前記のとおり、一審原告32-1が平成23年4月から平成24年8月までの間、同32-2から同32-5までと二重生活となり、同32 -1がいわき市から安中市に家族に会いに行ったことは相当な範囲では - 707 -本件事故と相当因果関係が認められる。 そして、一審原告32-1の請求に対して一審被告東京電力が既に面会交通費35万3600円を賠償しており(乙C32の1・2)、この限度では本件事故と相当因果関係がある面会交通費が発 る。 そして、一審原告32-1の請求に対して一審被告東京電力が既に面会交通費35万3600円を賠償しており(乙C32の1・2)、この限度では本件事故と相当因果関係がある面会交通費が発生したと認める余地があるところ(弁論の全趣旨)、本件事故と相当因果関係がある上 記の二重生活期間、いわき市と安中市の距離関係及び交通手段、相当な面会の頻度は月1回程度と認められることを考慮すれば、これを超える額の相当因果関係ある面会交通費が発生したとはいえない。 したがって、35万3600円を本件事故と相当因果関係を有する面会交通費の損害と認める。 (オ) 合計 53万0400円イ生活費増加費用(ア) 家財道具購入費一審原告1-1らは、同32-1が家財道具購入費として45万6000円を要し、これが損害であると主張するが、同32-1の請求に対 して一審被告東京電力が既に賠償した30万円(乙C32の1・2)の限度では本件事故と相当因果関係を有する損害が発生したと認める余地があるが(弁論の全趣旨)、同1-1らは、同32-1が実際にこれを超える額の家財道具を購入したことを示す領収証等の証拠を提出しておらず、これを超える額の損害の発生を認めることはできない。 したがって、30万円を本件事故と相当因果関係を有する家財道具購入費の損害と認める。 (イ) 生活費増加分一審原告32-1の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した27万円(乙C32の1・2)を本件事故と相当因果関係を有する損害と 認める(弁論の全趣旨)。 - 708 -(ウ) 教育費一審原告1-1らは、同32-1が同32-3及び同32- の1・2)を本件事故と相当因果関係を有する損害と 認める(弁論の全趣旨)。 - 708 -(ウ) 教育費一審原告1-1らは、同32-1が同32-3及び同32-4が避難先で幼稚園や小学校に通うために必要となった体操服や鞄等の購入費として22万4700円を要し、これが損害であると主張する。 しかし、一審原告32-1の請求に対して一審被告東京電力が既に賠 償した7万9700円(乙C32の1・2)の限度では本件事故と相当因果関係を有する教育費の損害が発生したと認める余地があるが(弁論の全趣旨)、同32-1がこれを超える額の教育費を本件事故による避難のために支出したという具体的な立証はない。 したがって、7万9700円を本件事故と相当因果関係を有する教育 費の損害と認める。 (エ) その他(車両メンテナンス費)一審原告1-1らは、同32-1が毎週、同32-2から同32-5までに面会するためにいわき市と安中市の間を移動しており、通常よりもタイヤの消耗が激しく新しくタイヤを購入せざるを得なくなり、タイ ヤの消耗による価値減少は10万円を下らない、面会のために自動車の移動距離が増大したため、面会交通中の17か月間は通常よりも10回以上多くオイル交換をしなければならず、7万円以上の追加的な出費が生じたなどとして17万円の損害が生じたと主張する。 しかし、一審原告1-1らは、そもそも同32-1がタイヤの購入や オイル交換の費用を負担したことに係る具体的な証拠を提出していない上、前記のとおり二重生活中の面会交通も相当な範囲に限り本件事故との相当因果関係が認められるのであり、相当な範囲の面会交通によって通常以上のタイヤの消耗やオイルの に係る具体的な証拠を提出していない上、前記のとおり二重生活中の面会交通も相当な範囲に限り本件事故との相当因果関係が認められるのであり、相当な範囲の面会交通によって通常以上のタイヤの消耗やオイルの劣化が生じたか否かも明らかであるとはいえず、上記主張は認められない。 (オ) 合計 64万9700円 - 709 -ウ就労不能損害一審原告1-1らは、同32-1が本件事故後、平成25年3月にいわき市から岐阜市に引っ越した際に1か月間無収入となったこと、岐阜市で勤めていた会社を退職して開業する際に2か月間無収入となったこと、開業後も避難前と同水準の収入を得られていないことから、276万6 676円の就労不能損害を被ったと主張する。 しかし、前記のとおり、一審原告32の世帯の平成25年3月のいわき市から岐阜市への転居については本件事故との相当因果関係が認めらず、同市への転居に際して収入がなかったり、同市への居住中に収入が減少したりした期間があったとしても、それが本件事故による損害であると はいえず、上記主張は採用できない。 エ慰謝料一審原告32-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活並びに家族との二重生活による精神的苦痛に対する慰謝料額は、いわき市から郡山市を経て安中市に避難した状況、同市で民宿や 知人宅のルームシェアで生活したこと、二重生活の期間も約1年5か月に及んだことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを50万円と認めるのが相当である。 オ合計 168万0100円(3) 一審原告32-2の損害 ア交通費一審原告1-1らは、同32-2が安中市に避難中に岐阜県に保養プロ のが相当である。 オ合計 168万0100円(3) 一審原告32-2の損害 ア交通費一審原告1-1らは、同32-2が安中市に避難中に岐阜県に保養プログラムに行った際に要した交通費6万4000円も損害であると主張する。 しかし、一審原告32-3から同32―5のための保養プログラムに参 加することが本件事故と社会通念上相当な関係があるとはいえず、同プ - 710 -ログラム参加のための交通費が発生したとしても、これが本件事故と相当因果関係を有する損害であるとはいえず、上記主張は認められない。 イその他(駐車場代)一審原告1-1らは、同32-2が平成23年5月から平成24年8月まで群馬県の借上げ住宅に居住し、駐車場代として月額1000円を支 払っており、この駐車場代1万6000円が損害であると主張する。 一審原告32-2が上記期間、借上げ住宅に入居していた事実は前記のとおり認められ、駐車場代月額1000円を支払っていたことも弁論の全趣旨により認められるところ、これは本件事故による避難がなければ発生しなかった費用であるから、上記期間の駐車場代1万6000円 (1000円/月×16か月=1万6000円)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 一審被告東京電力は、「群馬県避難者向け借上住宅入居者募集要領」によると、同県において借上げ住宅の駐車場使用料は同県が負担することとなっているから、一審原告1-1らの主張する同32-2の駐車場使 用料は損害自体の発生が認められないと主張するが、同募集要領は平成23年8月1日施行のものであることがうかがわれ、同32-2が借上げ住宅に入居したのは、上記募集要領の施行前の同年5 駐車場使 用料は損害自体の発生が認められないと主張するが、同募集要領は平成23年8月1日施行のものであることがうかがわれ、同32-2が借上げ住宅に入居したのは、上記募集要領の施行前の同年5月であるから、同要領が同32-2に適用されたとの一審被告東京電力の主張は直ちには採用できない。 ウ慰謝料一審原告32-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、郡山市を経由して安中市に避難した状況、安中市において民宿やルームシェアで不自由な期間があったこと、子ども、幼児、乳児である同32-3から32-5ま でを伴っての避難であったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれ - 711 -ば、これを100万円と認めるのが相当である。 エ合計 101万6000円(4) 一審原告32-3の損害一審原告32-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、郡山市を経由して安中市に 避難した状況、安中市において民宿やルームシェアで不自由な期間があったこと、避難先で小学校に通わなければならなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 (5) 一審原告32-4の損害一審原告32-4について本件事故との相当因果関係が認められる避難及 び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、郡山市を経由して安中市に避難した状況、安中市において民宿やルームシェアで不自由な期間があったこと、避難先の幼稚園に転園しなければならなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 (6) 一審原 て民宿やルームシェアで不自由な期間があったこと、避難先の幼稚園に転園しなければならなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 (6) 一審原告32-5の損害 一審原告32-5について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、郡山市を経由して安中市に避難した状況、安中市において民宿やルームシェアで不自由な期間があったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東電の弁済の抗弁の主張額ア一審原告32-1について 16万8583円イ一審原告32-2について 60万円ウ一審原告32-3について 72万円 エ一審原告32-4について 72万円 - 712 -オ一審原告32-5について 72万円(2) 一審被告東電による賠償一審被告東電は、これまで一審原告32の世帯に対し、以下のとおりの賠償を行ったことが認められる(乙C32の1・2・5)。 ア ADR以外による賠償 (ア) 一審原告32-1に対し自主避難等に係る損害 12万円(イ) 一審原告32-2に対し自主避難等に係る損害 12万円(ウ) 一審原告32-3に対し自主避難等に係る損害 72万円(エ) 一審原告32-4に対し自主避難等に係る損害 72万円(オ) 一審原告32-5に対し自主避難等に係る損害 72万円 (カ) 合計 240万円イ ADRによる賠償ADRにより、一審原告32の世帯に対する和解金額が248万8583円と合意され、そこからA に係る損害 72万円 (カ) 合計 240万円イ ADRによる賠償ADRにより、一審原告32の世帯に対する和解金額が248万8583円と合意され、そこからADR以外による賠償額のうち196万円を控除した52万8583円が支払われた。 (内訳)(ア) 避難費用、生活費増加費用、ADR弁護士費用132万8583円(イ) 一審原告32-2の就労不能損害 48万円(ウ) 精神的損害 68万円(一審原告32-1及び同32-2各4万円、 同32-3から同32-5まで各20万円)(エ) 合計(和解金額) 248万8583円(オ) 既払い金 196万円(一審原告32-1及び同32-2分各8万円、同32-3から同32-5まで分各60万円)(カ) 合計(支払い額)52万8583円 ウ合計 292万8583円 - 713 -(3) 一審原告32の世帯に対する各弁済額ア一審原告32-1(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 4万8583円ADRで合意した和解金額の内訳は前記(2)イのとおりであるが、この和解金額から同ア(ア)から(オ)までのADR以外による賠償額のうち196万円が既払い金として控除されて支払われた関係で、196万円のうち68万円は前記(2)イ(ウ)の精神的損害68万円が控除され、 その余の128万円は同(ア)の一審原告32-1が支出した同31の世帯共通の費用から控除されたものとみて、同(ア)のうち4万8583円をADRによる賠償のう の精神的損害68万円が控除され、 その余の128万円は同(ア)の一審原告32-1が支出した同31の世帯共通の費用から控除されたものとみて、同(ア)のうち4万8583円をADRによる賠償のうち同32-1に対する弁済額とする。 (ウ) 合計 16万8583円したがって、一審被告東京電力の一審原告32-1に対する弁済の抗弁 は全部認められる。 イ一審原告32-2(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 48万円ADRで合意した和解金額の内訳のうちの前記(2)イ(ウ)の一審原告32-2に係る部分は既払い金により控除済みであり、同32-2に対するものであることが明示されている同(イ)の就労不能損害分48万円をADRによる賠償のうち同32-2に対する弁済額として扱うのが 相当である。 - 714 -(ウ) 合計60万円したがって、一審被告東京電力の一審原告32-2に対する弁済の抗弁は全部認められる。 ウ一審原告32-3(ア) ADR以外による賠償 72万円 ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRで合意した和解金額の内訳のうちの前記(2)イ(ウ)の一審原告32-3に係る部分は既払い金により控除済みとみると、ADRによる賠 償のうち32-3に対する弁済額は0円となる。 (ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告32-3に対する弁済の抗弁は全部認められる。 エ一審原 による賠 償のうち32-3に対する弁済額は0円となる。 (ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告32-3に対する弁済の抗弁は全部認められる。 エ一審原告32-4 (ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRで合意した和解金額の内訳のうちの前記(2)イ(ウ)の一審原告3 2-4に係る部分は既払い金により控除済みとみると、ADRによる賠償のうち同32-4に対する弁済額は0円となる。 (ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告32-4に対する弁済の抗弁は全部認められる。 オ一審原告32-5 - 715 -(ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償ADRで合意した和解金額の内訳のうちの前記(2)イ(ウ)の一審原告3 2-5に係る部分は既払い金により控除済みとみると、ADRによる賠償のうち同32-5に対する弁済額は0円となる。 (ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告32-5に対する弁済の抗弁は全部認められる。 4 認容額等(1) 一審原告32-1ア損害額 168万0100円イ弁済額 16万8583円ウ弁済額控除後の損害額 151万1517円 エ弁護士費用 16万円オ認容額 167万1517円(2) 一審原告32-2ア損害額 101万6000円イ弁済額 額 151万1517円 エ弁護士費用 16万円オ認容額 167万1517円(2) 一審原告32-2ア損害額 101万6000円イ弁済額 60万円 ウ弁済額控除後の損害額 41万6000円エ弁護士費用 5万円オ認容額 46万6000円(3) 一審原告32-3ア損害額 100万円 イ弁済額 72万円 - 716 -ウ弁済額控除後の損害額 28万円エ弁護士費用 3万円オ認容額 31万円(4) 一審原告32-4ア損害額 100万円 イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害額 28万円エ弁護士費用 3万円オ認容額 31万円(5) 一審原告32-5 ア損害額 100万円イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害額 28万円エ弁護士費用 3万円オ認容額 31万円 第30 一審原告33の世帯 1 認定事実(前記第29、1の認定事実と重複する事実を含む。甲C32の1・5、甲C33の1・34、一審原告32-2本人(原審)、同36-1本人(原審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等 一審原告33-1(本件事故当時62歳)及びその妻である同33-2(本件事故当時62歳)は、本件事故当時、福島県いわき市の自宅(福島第一原発からの距離46.31km(乙C33の2))に同32の世帯とともに居住していた。 一審原告33-1は、本件事故当時、自動車の整備、新車・中古車の販売 等の事業を営む有限会社の代表取締役であり、上記会社は地元の固定客を掴 - 717 -んでおり、経営も順調であった。また、同33- -1は、本件事故当時、自動車の整備、新車・中古車の販売 等の事業を営む有限会社の代表取締役であり、上記会社は地元の固定客を掴 - 717 -んでおり、経営も順調であった。また、同33-1は、上記会社を同32-1に継がせるつもりであった。同33-2は、子である同36-1も上記有限会社で働いていたことから、同36-1の子である同36-2及び同36-3の面倒をみることもあった。 (2) 避難開始の経緯等 一審原告33の世帯は、同32の世帯(長男家族)及び同36の世帯(長女家族)とともに、平成23年3月12日午後3時頃、福島県郡山市に移動し、同月13日には群馬県安中市に避難した。同33の世帯は、本件地震直後に仕事を中断してそのまま避難していたが、本件地震直後はいわき市の自動車関連の会社等も活動を中断していたため、その間は同33-1らの会社 も仕事ができず、安中市に避難していても仕事に影響のない状態であった。 しかし、本件地震の2週間後にはいわき市の自動車関連の会社等が仕事を再開したため、同33の世帯も仕事を再開する必要が生じた。そこで、同33の世帯及び同32-1は、同月末頃、同市に戻り、仕事を再開した。しかし、上記会社の再開後は、同32-1は週末には安中市に避難している家族に会 いに行くため仕事を空けてしまい、保険業務を担当している同36-1が同市から会社に来ている間は、同33-2が同36-1と入れ替わりで同市に行き、同36-2及び同36-3の面倒をみるという生活であった。そして、同33-2は、同年4月又は5月頃、高血圧で倒れて病院へ搬送され、現在も高血圧の症状がある。 一審原告33の世帯は、平成24年秋頃、同32の世帯及び同36の世帯がいずれも岐阜市へ転居すると決めたことから、子 5月頃、高血圧で倒れて病院へ搬送され、現在も高血圧の症状がある。 一審原告33の世帯は、平成24年秋頃、同32の世帯及び同36の世帯がいずれも岐阜市へ転居すると決めたことから、子や孫に囲まれて生活するため、また、同32-1及び同36-1がいなければ会社の事業継続が困難であるため、同市に転居することにした。そして、同33の世帯は、平成25年12月、自動車で岐阜市に行き、同32の世帯が住み始めていた家で同 居を開始した。 - 718 -一審原告33の世帯のいわき市の自宅は、平成25年秋に売却された。 (3) 現在の状況等一審原告33の世帯は、岐阜市内に一軒家を購入し、同32の世帯と計7人で生活している。 一審原告33-1は特に大きな病気等はしていない。同33-2は、本件 事故前は健康であったが、本件事故後は高血圧による吐き気、頭痛、倦怠感等の症状があり、定期的に通院している。また、同33の世帯は岐阜市に転居したことにより、親族との関係も疎遠になった。 一審原告33-1は、いわき市で長年続けてきた会社を閉鎖し、岐阜市に来てからは土木関係のアルバイトで働くなどしながら、いわき市で続けてき た事業を岐阜市で開業するための準備を進め、平成27年12月、同市で自動車の整備及び販売業等を営む会社を設立した。 (4) 本件事故時住所地の状況等一審原告33の世帯の本件事故当時の住所地はいわき市で、同市は自主的避難等対象区域であり、同市における環境放射能等の状況は前記第3章、第 5のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分本件事故当時、一審原告33の世帯は、自主的避難等対象区域であるいわ 前記第3章、第 5のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分本件事故当時、一審原告33の世帯は、自主的避難等対象区域であるいわき市に居住していたところ、本件事故直後に近隣の者から不確実な情報を聞 き、不安になってまず郡山市に避難し、その後、福島第一原発の爆発などのニュースを見てさらに不安になって安中市に避難したものであり、本件事故直後の混乱期に本件事故に関する情報が不足していたことを考えると、同33の世帯が避難を行ったことは本件事故によるものと認められる。 他方、いわき市における環境放射能等の状況等は前記認定のとおりであり、 平成23年から平成24年にかけても環境放射能の値は低下しており、遅く - 719 -とも平成23年12月31日までには、避難先からいわき市に帰還することに支障はなくなっていたというべきところ、現に、一審原告33の世帯と同32-1は事業のため同年3月末にいわき市に戻り、同市で生活と事業を営んでいる。 そして、安中市での避難生活を続けていた一審原告32-2から同32- 5までが平成24年8月にいわき市に戻り、同32の世帯が岐阜市に転居することを決めたので、同33の世帯も同市に転居することにし、同市における住居の確保やいわき市における事業の整理、自宅の処分等の準備をした上で、同32の世帯は平成25年3月に、同33の世帯は同年12月に岐阜市に転居しているが、同32-2から同32-5までが安中市からいわき市に 戻り同32-1とともに岐阜市に転居したことが本件事故による避難とはいえないことは前記第29、2(1)で述べたとおりであり、同様に、安中市への避難後、平成23年4月から平成25年12月までいわき市で生活し 32-1とともに岐阜市に転居したことが本件事故による避難とはいえないことは前記第29、2(1)で述べたとおりであり、同様に、安中市への避難後、平成23年4月から平成25年12月までいわき市で生活していた同33の世帯が、同月、岐阜市に転居したことは本件事故による避難とはいえず、その後の岐阜市での生活も本件事故による避難生活とはいえない。 したがって、一審原告33の世帯について本件事故との相当因果関係が認められる避難生活は平成23年3月末までものに限られる。 また、一審原告33-2が、いわき市に帰った平成23年4月以降、安中市に避難している孫である同36-2及び同36-3の面倒を見るために同市に行ったことについては、本件事故まで、同36-1に職があるため、同 33-2が孫である同36-2及び同36-3の面倒を見ることもあったことからすれば、同36-3が本件事故により安中市に避難していた平成24年8月までは相当な範囲では本件事故によるものといえる。 (2) 一審原告33-1の損害ア避難費用 (ア) 交通費 - 720 -一審原告1-1らは、同33の世帯が平成23年3月にいわき市から安中市に避難した際の交通費、同月末に安中市からいわき市の自宅に戻った際の交通費及び平成25年12月に岐阜市に引っ越した際の交通費として5万3000円を要し、これが同33-1の損害であると主張する。 まず、一審原告33の世帯の岐阜市への転居は本件事故と相当因果関係があるとは認められないから、その交通費が損害となるとの主張は失当である。 他方、一審原告33の世帯がいわき市から安中市への避難及びいわき市への帰還に要した交通費は本件事故と相当因果関係を有する損害とい え、同33の世帯の請求 が損害となるとの主張は失当である。 他方、一審原告33の世帯がいわき市から安中市への避難及びいわき市への帰還に要した交通費は本件事故と相当因果関係を有する損害とい え、同33の世帯の請求に対して一審被告東京電力がADRにより既に平成23年分の避難交通費4万0800円を賠償していることが認められるから(乙C33の1・4)、本件事故と相当因果関係を有する交通費の損害の額はこの額と認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。 したがって、4万0800円を本件事故と相当因果関係を有する損害 と認める。 (イ) 宿泊費・謝礼一審原告33の世帯の請求に対して一審被告東京電力がADRにより既に賠償した平成23年分宿泊費8万9835円(乙C33の1・4)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 (ウ) 引越し費用一審原告1-1らは、同33の世帯が平成25年12月に岐阜市に引っ越す際に費用として23万3000円を要し、これが損害であると主張する。 しかし、この転居は本件事故との相当因果関係が認められないから、 その費用も本件事故と相当因果関係を有する損害ということはできない。 - 721 -(エ) 合計 13万0635円イ生活費増加費用(ア) 家財道具購入費一審原告1-1らは、同33-1が家財道具購入費として27万8000円を要し、これが損害であると主張するが、同33の世帯の請求に 対して一審被告東京電力が既に賠償した平成23年分家財道具購入費用15万円については本件事故と相当因果関係を有する損害と認める余地があるものの(乙C33の1・4、弁論の全趣旨)、同1-1らは、同33-1がこれを超える額の家財道具購入費を支出したことを示す領収証等の証拠を提 いては本件事故と相当因果関係を有する損害と認める余地があるものの(乙C33の1・4、弁論の全趣旨)、同1-1らは、同33-1がこれを超える額の家財道具購入費を支出したことを示す領収証等の証拠を提出していない。 したがって、15万円の限度で本件事故と相当因果関係を有する家財道具購入費の損害と認める。 (イ) その他(いわき市の自宅を売却するのに伴ってかかった費用)前記のとおり、一審原告33の世帯のいわき市から岐阜市への転居は本件事故との相当因果関係が認められないから、いわき市の自宅売却に 要した費用は本件事故と相当因果関係を有する損害とはいえない。 (ウ) その他(岐阜市の自宅を購入する際に掛かった費用)前記のとおり、一審原告33の世帯のいわき市から同市への転居は本件事故との相当因果関係が認められないから、岐阜市の自宅購入に要した費用は本件事故と相当因果関係を有する損害とはいえない。 (エ) その他(引越し先を探すための交通費、宿泊費)前記のとおり、一審原告33の世帯のいわき市から岐阜市への転居は本件事故との相当因果関係が認められないから、同市における引越し先を探すための交通費、宿泊費は本件事故と相当因果関係を有する損害とはいえない。 (オ) 合計 15万円 - 722 -ウ就労不能損害一審原告1-1らは、同33-1が平成25年11月までに140万円、同年12月から平成27年4月までに306万円、同年5月から再開業までに45万円の合計491万円の就労不能損害を被ったと主張する。 そもそも、一審原告33の世帯の自動車整備・販売業の事業主体は会社 であり、上記主張が同33-1が会社から受ける給与の減少をいうものであるとし 万円の就労不能損害を被ったと主張する。 そもそも、一審原告33の世帯の自動車整備・販売業の事業主体は会社 であり、上記主張が同33-1が会社から受ける給与の減少をいうものであるとしても、いわき市の自動車業全体が本件地震による影響を受けた平成23年3月中は別として、同33の世帯及び同32-1が避難先の安中市からいわき市に戻った同月末以降、会社の営業は再開しており、前記第2章の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第5 部第1章第2、5(6))のような同市における本件事故後の社会経済生活状況によれば、同33-1が会社から受ける給与の減少があったとしても、それが本件事故を原因とするものとは認めがたいし、会社は会社で一審被告東京電力に対して逸失利益の賠償請求をして約1405万円の賠償を受けているのであるから(乙C33の4)、それとは別に一審原 告33-1に就労不能損害が生じたと認めることもできない。 また、同33の世帯の岐阜市への転居は本件事故によるものではないから、同市への転居に伴っていわき市における事業を整理したり岐阜市において再開したりしたことにより同33-1自身に減収が生じたとしても、それは本件事故と相当因果関係ある損害とは認められない。 したがって、上記主張は採用できない。 エ線量計購入費一審原告33の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償したガイガーカウンター購入費用13万1250円(乙C33の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 オ慰謝料 - 723 -一審原告33-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、郡山市を 弁論の全趣旨)。 オ慰謝料 - 723 -一審原告33-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、郡山市を経由して安中市に避難した状況、安中市では民宿やルームシェアで不自由な生活であったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを20万円と認めるのが相当である。 カ合計 61万1885円(3) 一審原告33-2の損害ア面会交通費一審原告1-1らは、同33-2が同36-1が仕事のためにいわき市に戻っている際に、同36-1に代わって同36-2及び同36-3の 面倒を見るために安中市に行く必要があり、そのために176万8000円の面会交通費を要し、これが損害であると主張する。 一審原告33-2のいわき市から安中市への面会交通費については、前記のとおり相当な範囲では本件事故による損害といえるが、同1-1らは、同33-2が安中市への面会交通費として上記主張額を支出したこ とを示す領収証等の証拠を提出しておらず、また面会交通の頻度が社会通念上相当な範囲であったか否かや、相当な頻度を超えて面会交通をしなければならない特別の必要性があったか否かについての具体的な主張立証をしていない。そうすると、同33の世帯の請求に対して一審被告東京電力がADRにより既に賠償した平成23年分の「その他交通費」 22万8800円(乙C33の1)の限度では本件事故と相当因果関係を有する面会交通費の損害と認める余地があるものの(弁論の全趣旨)、それを超える損害が発生したことは認めることができない。 したがって、22万8800円を本件事故と相当因果関係を有する面会交通費の損害と認める。 余地があるものの(弁論の全趣旨)、それを超える損害が発生したことは認めることができない。 したがって、22万8800円を本件事故と相当因果関係を有する面会交通費の損害と認める。 イ生命・身体的損害 - 724 -一審原告1-1らは、本件事故により同33-2が高血圧になり、めまい等の症状が出たと主張する。しかし、同33-2の高血圧が本件事故と相当因果関係を有すると認めるに足りる証拠はなく、上記主張は認められない。 ウ慰謝料 一審原告33-2について本件事故と相当因果関係が認められる避難及び避難生活並びにいわき市から安中市への相当な範囲での面会交通による精神的苦痛に対する慰謝料額は、郡山市を経由して安中市に避難した状況、安中市では民宿やルームシェアで不自由な生活であったこと、面会交通による身体的負担があったことその他前記認定の一切の事情を 考慮すれば、これを55万円と認めるのが相当である。 エ合計 77万8800円 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額ア一審原告33-1について 1478万7652円 イ一審原告33-2について 8万円(2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、これまで一審原告33の世帯に対し、以下のとおりの賠償を行ったことが認められる(乙C33の1・4)。 ア ADR以外による賠償 (ア) 一審原告33-1に対し自主避難等に係る損害 12万円(イ) 一審原告33-2に対し自主避難等に係る損害 12万円(ウ) 合計 24万円イ ADRによる賠償 58万2305円ADRにより、一審原告33の世帯に対する和解金額が74 ) 一審原告33-2に対し自主避難等に係る損害 12万円(ウ) 合計 24万円イ ADRによる賠償 58万2305円ADRにより、一審原告33の世帯に対する和解金額が74万2305 円と合意され、そこからADR以外による賠償額のうち16万円を控除 - 725 -した58万2305円が支払われた。 (内訳)(ア) 避難交通費、宿泊費、その他交通費、生活費増加費用、ガイガーカウンター購入費用、ADR弁護士費用 66万2305円(イ) 精神的損害 8万円 (ウ) 合計(和解金額) 74万2305円(エ) 既払い金 16万円(一審原告33の世帯各8万円)(オ) 合計(支払い額)58万2305円上記(ア)は一審原告33の世帯に共通する費用であるがそれを支出したのは同33-1であるから、同33-1に対する賠償であるといえ、 また、上記(イ)は同33の世帯それぞれの各精神的損害に対する賠償であるといえる。 ウ合計82万2305円(3) 一審原告33の世帯に対する各弁済額ア一審原告33-1 (ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 58万2305円ADRで合意した和解金額の内訳は前記(2)イのとおりであるが、同 イ(ウ)の和解金額から同ア(ア)及び(イ)のADR以外による賠償額のうち16万円が既払い金として控除されて支払われた関係で、16万円のうち8万円は同イ(イ)の精神的損害8万円から控除され、その余の8万円は同(ア)の一審原告33-1が支出した同33の世帯共通の費用から控除されたものとみて、同(ア)の て支払われた関係で、16万円のうち8万円は同イ(イ)の精神的損害8万円から控除され、その余の8万円は同(ア)の一審原告33-1が支出した同33の世帯共通の費用から控除されたものとみて、同(ア)のうち58万2305円をADRによる賠 償のうち同33-1に対する弁済額と扱うこととする。 - 726 -(ウ) 合計 70万2305円したがって、一審被告東京電力の一審原告33-1に対する弁済の抗弁は一部認められる。 イ一審原告33-2(ア) ADR以外による賠償 12万円 ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRで合意した和解金額の内訳のうちの前記(2)イ(イ)の精神的損害の一審原告33-2に係る部分は既払い金により控除済みとみると、A DRによる賠償のうち同33-2に対する弁済額は0円となる。 (ウ) 合計 12万円したがって、一審被告東京電力の一審原告33-2に対する弁済の抗弁8万円は全部認められる。 4 認容額等 (1) 一審原告33-1ア損害額 61万1885円イ弁済額 70万2305円ウ弁済額控除後の損害額 0円エ認容額 0円 (2) 一審原告33-2ア損害額 77万8800円イ弁済額 8万円ウ弁済額控除後の損害額 69万8800円エ弁護士費用 7万円 オ認容額 76万8800円 - 727 -第31 一審原告34の世帯 1 認定事実(甲C34の1、一審原告34-1本人(原審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等一審原告34-1(本件事故当時31歳)、その長 第31 一審原告34の世帯 1 認定事実(甲C34の1、一審原告34-1本人(原審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等一審原告34-1(本件事故当時31歳)、その長女である同34-2(本件事故当時7歳)、長男である同34-3(本件事故当時5歳)、二男 である同34-4(本件事故当時4歳)は、本件事故当時、福島県伊達郡国見町の同34-1の実家(福島第一原発からの距離65.94km(乙C34の2))に、同34-1の両親及び祖父母とともに居住していた。 一審原告34-1は、平成22年2月頃までは精密機械の工場で契約社員として勤務していたが、同月頃に失業し、同年11月頃までは失業保険を受 給しており、本件事故当時も無職で就職活動中であった。 (2) 避難開始の経緯等一審原告34-3は、左耳下部皮下に膿瘍ができ、その治療のために、平成23年4月7日から同月19日まで入院した(甲C34の13・14)。 同34-1及びその両親は、同34-3の上記症状が本件事故と無関係のも のとは思われなかったこと、自宅周辺の放射線量が高いと感じたこと、既に避難していた友人等と連絡を取り合う中で放射能の危険性や恐ろしさを聞いたこと、同34-1自身もインターネットで調べるうちに放射能が恐ろしいものであると知り、同34-2から同34-4までのためにも放射能の危険性がなく、精神的に落ち着けるような場所に避難しなければならないと考え たことなどから、避難することに決めた。 一審原告34-1は、避難先は中部地方より西にしようと漠然と考え、インターネットで探した受入れ先の中から岐阜県を選択し、同年5月6日、最低限必要な物のみを自動車に乗せて同34の世帯で同県への移動を開始した。 同34-1は、関東方面を避けて 西にしようと漠然と考え、インターネットで探した受入れ先の中から岐阜県を選択し、同年5月6日、最低限必要な物のみを自動車に乗せて同34の世帯で同県への移動を開始した。 同34-1は、関東方面を避けて、新潟を経由するルートを選択し、高速道 路は通行止めの場所もあると聞いていたため、一般道を利用し、2泊の車中 - 728 -泊をしながら、同月8日早朝、岐阜市に到着した。 なお、一審原告34-1の父は運転手の仕事があること、同祖父は寝たきりで自宅介護が必要であること、同祖母は認知症の症状が出始めていたこと等から、同34-1の両親及び祖父母は避難しなかった。 (3) 避難後の状況等 一審原告34の世帯は、岐阜市への避難後、平成23年5月8日から平成24年3月27日までは、同市内にある信長苑公民館で、同月28日から平成26年10月6日頃までは、同市内の借上げ住宅で生活した。また、隣人とのトラブルから、同月頃、岐阜県本巣市のアパートに引っ越し、現在もそこで生活している。 一審原告34-1は、同34-2から同34-4までの下記のような不安定な状況を考慮するとフルタイムでの仕事に就くことは難しいと考え、平成23年5月23日から、Hの半年契約の臨時職員となり、月額約10万円程度の給与収入を得ている。 一審原告34-2は、本巣市に引っ越して以降、環境の変化等によるスト レスから精神的に不安定になり、平成28年1月頃からは岐阜県中央子ども相談センターが関与するようになり、同年3月からは岐阜県関市にある情緒障害児短期治療施設で生活するようになった。 一審原告34-3は、平成24年4月、岐阜市内の小学校に入学したが、小学1年生の始め頃から、学校から広汎性発達障害・注意欠陥多動性障害の 疑いを指摘され、平成25 設で生活するようになった。 一審原告34-3は、平成24年4月、岐阜市内の小学校に入学したが、小学1年生の始め頃から、学校から広汎性発達障害・注意欠陥多動性障害の 疑いを指摘され、平成25年5月には医師から広汎性発達障害・注意欠陥多動性障害と診断され、その頃から週に一回程度、特別学級で授業を受けるようになった。 一審原告34-4は、岐阜市内の小学校に通っているときは落ち着いていたが、本巣市の小学校に転校した後に注意欠陥多動性障害と指摘され、週に 一、二回は特別学級で授業を受けるようになった。 - 729 -(4) 本件事故時住所地の状況等一審原告34の世帯の本件事故当時の住所地は国見町であり、同町は自主的避難等対象区域で、同町における環境放射能等の状況は、前記第3章、第1、3のとおりである。 2 損害 (1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告34-1らは、本件事故当時、自主的避難等対象区域である国見町に居住していたところ、同34-3に膿瘍ができたことなどから本件事故による放射線の影響を疑い、本件事故に関する情報が不足していること等もあって避難することとし、平成23年5月6日、岐阜県に向けて避難を開始 したものであり、本件事故直後に避難を開始したわけではないものの、同年4月中に同34-3の入院があったこと、同年5月は未だ本件事故後の混乱期であったことを考えると、同34の世帯が国見町から岐阜市への避難を行ったことは本件事故によるものと認められる。 他方、国見町の状況は前記のとおりであり、通常、遅くとも平成23年1 2月31日までに、一般的に放射能の影響を受けやすいとされる子ども、幼児がいる場合でも遅くとも平成24年8月31日までには、避 方、国見町の状況は前記のとおりであり、通常、遅くとも平成23年1 2月31日までに、一般的に放射能の影響を受けやすいとされる子ども、幼児がいる場合でも遅くとも平成24年8月31日までには、避難先から同町に帰還することに支障はなくなっていたというべきであり、実際、一審原告34-1の両親及び祖父母も避難せずに同町の自宅にとどまっていたのであるから、同34の世帯に子ども、幼児である同34-2から同34-4まで がいたことを考慮しても、本件事故と相当因果関係が認められる同34の世帯の避難生活は平成24年8月31日までの部分に限られるというのが相当である。 (2) 一審原告34-1の損害ア就労不能損害 一審原告1-1らは、同34-1が平成22年2月に失業するまでは月 - 730 -額22万円ないし23万円の収入を得ていたが、本件事故による避難を行ったため、同34-2から同34-4までの世話について両親の援助を受けられなくなり、同34-3は広汎性発達障害・注意欠陥多動性障害を指摘され、同34-4にも発達障害があって、避難生活の困難さがより増大し、従前のような収入を得られなくなったとして、925万2 158円の就労不能損害が生じたと主張する。 しかし、一審原告34-1は、平成22年2月に失業しており、失業から1年以上経過した本件事故時点においても就職していなかったことからすれば、本件事故により就労できなかったものとは直ちに認められない。また、同34-3が広汎性発達障害・注意欠陥多動性障害と診断さ れたことと本件事故との因果関係を認めるに足りる証拠もなく、本件事故がなければ平成22年2月以前と同程度の収入を得られていたと認めることはできない。また、同34-4の発達障害の問題は、 断さ れたことと本件事故との因果関係を認めるに足りる証拠もなく、本件事故がなければ平成22年2月以前と同程度の収入を得られていたと認めることはできない。また、同34-4の発達障害の問題は、平成26年10月の本巣市への転居後のことであり、それによる就労不能があったとしても、本件事故との相当因果関係は認められない。 したがって、上記主張は採用できない。 イ慰謝料一審原告34-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、関東を迂回したり一般道を利用したりして車中泊もしながら岐阜市まで自動車で避難した状 況、避難先で相当の期間を公民館で生活したこと、子ども、幼児である同34-2から同34-4までを伴っての避難及び避難生活であったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 一審原告1-1らは、同34-3及び同34-4が発達障害を抱えてい ることが同34-1の避難生活の困難さをより増大させたものであるから、 - 731 -慰謝料の算定に際して考慮されるべきと主張する。しかし、同34-3が平成24年4月以降、学校から広汎性発達障害等の疑いを指摘されたことが本件事故によるものであることを示す証拠はないし、同34-4の発達障害の問題は、平成26年10月の本巣市への転居後のことであり、本件事故と相当因果関係ある避難生活中のことではないから、上記主張は採用 できない。 ウ合計 100万円(3) 一審原告34-2の損害一審原告34-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、岐阜市まで自動車で避難し 万円(3) 一審原告34-2の損害一審原告34-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、岐阜市まで自動車で避難し た状況、避難先で相当の期間を公民館で生活したことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 (4) 一審原告34-3の損害一審原告34-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、岐阜市まで自動車で避難し た状況、避難先で相当の期間を公民館で生活したことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 (5) 一審原告34-4の損害一審原告34-4について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、岐阜市まで自動車で避難し た状況、避難先で相当の期間を公民館で生活したことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額ア一審原告34-1について 218万7651円 イ一審原告34-2について 125万円 - 732 -ウ一審原告34-3について 125万円エ一審原告34-4について 125万円(2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、これまで一審原告34の世帯に対し、以下のとおりの賠償を行ったことが認められる(乙C34の1・4、弁論の全趣旨)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告34-1に対し自主避難等に係る損害12万円(うち精神的損害 ことが認められる(乙C34の1・4、弁論の全趣旨)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告34-1に対し自主避難等に係る損害12万円(うち精神的損害8万円)(イ) 一審原告34-2に対し自主避難等に係る損害72万円(うち精神的損害48万円) (ウ) 一審原告34-3に対し自主避難等に係る損害72万円(うち精神的損害48万円)(エ) 一審原告34-4に対し自主避難等に係る損害72万円(うち精神的損害48万円)(オ) 合計 228万円 イ ADRによる賠償ADRにより、一審原告34の世帯及び同34-1の父母に対する和解金額が569万7651円と合意され、そこから既払い金204万円を控除した365万7651円が支払われたが、和解金額569万7651円のうち、同34の世帯分が381万7651円、既払い金204万 円のうち同34の世帯分が188万円であると認められる。 (内訳)(ア) 生活費増加費用、避難費用、避難雑費、ADR弁護士費用 253万7651円(イ) 精神的損害 128万円 (ウ) 合計(和解金額) 381万7651円 - 733 -(エ) 既払い金 188万円(一審原告34-1分8万円(うち精神的損害8万円)、同34-2から同34-4まで分各60万円(うち精神的損害各40万円))(オ) 合計(支払い額) 193万7651円上記(ア)は、一審原告34の世帯に共通する費用であるが、それを支出 したのは同34-1であるから、同34-1に対する賠償であるといえる。また、上記(イ)は一審原告3 額) 193万7651円上記(ア)は、一審原告34の世帯に共通する費用であるが、それを支出 したのは同34-1であるから、同34-1に対する賠償であるといえる。また、上記(イ)は一審原告34の世帯それぞれの各精神的損害に対する賠償であるといえる。 ウ合計 421万7651円(3) 一審原告34の世帯に対する各弁済額 ア一審原告34-1に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 193万7651円 ADRによる和解金額の内訳は前記(2)イのとおりであるが、同(エ)の既払い金188万円の控除は、まず同(イ)の128万円から全額、次いで一審原告34-1が支出した同34の世帯共通の費用である同(ア)から60万円が順次控除されたものとみると、その余の同(ア)の支払額は193万7651円となるが、これは同34-1が支出した費用に対す る賠償であるから、同34-1に対する弁済と扱うのが相当である。 (ウ) 合計 205万7651円したがって、一審被告東京電力の一審原告34-1に対する弁済の抗弁は一部認められる。 イ一審原告34-2に対する弁済額 (ア) ADR以外による賠償 72万円 - 734 -ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRによる和解金額のうち一審原告34-2の精神的損害に係る部分は既払い金により控除済みとみて、ADRによる賠償のうち同34- 2に対する弁済額を0円とする。 イ) ADRによる賠償 0円ADRによる和解金額のうち一審原告34-2の精神的損害に係る部分は既払い金により控除済みとみて、ADRによる賠償のうち同34- 2に対する弁済額を0円とする。 (ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告34-2に対する弁済の抗弁は一部認められる。 ウ一審原告34-3に対する弁済額 (ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRによる和解金額のうち、一審原告34-3の精神的損害に係る 部分は既払い金により控除済みとみて、ADRによる賠償のうち同34-3に対する弁済額を0円とする。 (ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告34-3に対する弁済の抗弁は一部認められる。 エ一審原告34-4対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円 ADRによる和解金額のうち、一審原告34-4の精神的損害に係る - 735 -部分は既払い金により控除済みとみて、ADRによる賠償のうち同34-4に対する弁済額を0円とする。 (ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告34-4に対する弁済の抗弁は一部認められる。 4 認容額等(1) 一審原告34-1ア損害額 100万円イ弁済額 205万7651円ウ弁済額控除後の損害額 0円 エ認容額 0円(2) 一審原告34 4 認容額等(1) 一審原告34-1ア損害額 100万円イ弁済額 205万7651円ウ弁済額控除後の損害額 0円 エ認容額 0円(2) 一審原告34-2ア損害額 100万円イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害額 28万円 エ弁護士費用 3万円オ認容額 31万円(3) 一審原告34-3ア損害額 100万円イ弁済額 72万円 ウ弁済額控除後の損害額 28万円エ弁護士費用 3万円オ認容額 31万円(4) 一審原告34-4ア損害額 100万円 イ弁済額 72万円 - 736 -ウ弁済額控除後の損害額 28万円エ弁護士費用 3万円オ認容額 31万円第32 一審原告35の世帯 1 認定事実(甲C35の1、丁C7の1・2、8、一審原告35-1本人(当 審)、同35-2本人(原審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等一審原告35-1(本件事故当時37歳)、その妻である同35-2(本件事故当時38歳)、同35-1及び同35-2の長女である同35-3(本件事故当時7歳)は、本件事故当時、福島市所在の同35-1の実家 (福島第一原発からの距離 km(乙C35の2))に、同35-1の母とともに居住していた。 一審原告35-1及び同35-2は、平成13年に結婚後約7年間は新潟県で生活していたが、教師をしていた同35-1がうつ病になり、療養のために、平成21年頃に福島市にある同35-1の実家に移り住み、同35- 1の母と同居するようになった。 そして、一審原告35-1は、上記実家で静養し、本件事故当時には症状は回 なり、療養のために、平成21年頃に福島市にある同35-1の実家に移り住み、同35- 1の母と同居するようになった。 そして、一審原告35-1は、上記実家で静養し、本件事故当時には症状は回復し、自宅で同じような悩みを持つ人たちに対してカウンセリングを行うなどして若干の収入を得るようになっていた。同35-2は福島市内で看護師として稼働していた。同35-3は福島市内の小学校に入学した。なお、 同35-1の母は、同35-3の面倒を見たり、家事全般を担ったりしていた。 (2) 避難開始の経緯等一審原告35-1及び同35-2は、本件事故後、同35の世帯の住む福島市地区が、線量の高い地域、いわゆるホットスポットとして報道され るようになったことから、放射能汚染について不安を感じるようになった。 - 737 -同35-2は、平成23年4月、市役所から線量計を借りて自宅の放射線量を測定したところ、庭先では2.0μSv/時、室内でも0.5μSv/時という数値が出て、その後数日間にわたり放射線量を計測したところ、上記の数値から下がる気配がなかったことから、同35-3をできるだけ家から外に出さないようにした。同35-1らは除染のために自宅建物を洗浄し、 外壁を塗り替えたが、放射線量が下がらなかったため、同35-3のためにも避難した方がよいのではないかと考えるようになった。 一審原告35-1及び同35-3は、平成23年7月頃、岐阜県高山市で行われた被災者の避難を支援する保養プログラムに参加した。同35-2は、同年8月末、同35-1及び同35-3が保養プログラムに参加している同 市に行き、二、三日を過ごした。その後、同35の世帯は福島市の自宅に戻ったが、同35-3を放射能の危険のない場所で育てた 同年8月末、同35-1及び同35-3が保養プログラムに参加している同 市に行き、二、三日を過ごした。その後、同35の世帯は福島市の自宅に戻ったが、同35-3を放射能の危険のない場所で育てたいという思いで、同市から岐阜市に避難することに決めた。 まず一審原告35-1が岐阜市に行って避難後の生活の準備を整えた後、同35-2及び同35-3が避難することになり、同35-1は、平成23 年11月末、自動車で同市に避難し、平成24年3月末まで同市内の市営住宅を借りて生活し、平成23年12月頃には塾講師として働くようになった。 一審原告35の世帯は、平成23年11月末から平成24年3月末までは、福島市と岐阜市を行き来する生活を送っていたが、同月、同35-1が家族3人が暮らすためのアパートを見つけてそこに入居し、いったん福島に戻っ て引越しの準備をした。そして、同月末、支援者が出してくれたトラックに荷物を積み込み、同35の世帯もそれに乗り込んで、岐阜市のアパートに引っ越した。 (3) 避難後の状況等一審原告35-1は、同35-2及び同35-3が岐阜市に引っ越してき た平成24年3月末の少し前頃に、働いていた塾の閉鎖により失職しており、 - 738 -その後は、塾講師のアルバイトをするようになった。平成26年11月頃には、このアルバイトも退職し、フリースクールの講師のアルバイトを経て、現在ではカウンセラーとして活動している。 一審原告35-2は、岐阜市に避難してからしばらくは仕事が見つからず、平成24年9月に看護師のパートタイム勤務の仕事を見つけて働き始めた。 同35-2は、平成27年8月、同パートタイム勤務を退職したが、同年12月に別の看護師のパートタイム勤務の仕事を見つ らず、平成24年9月に看護師のパートタイム勤務の仕事を見つけて働き始めた。 同35-2は、平成27年8月、同パートタイム勤務を退職したが、同年12月に別の看護師のパートタイム勤務の仕事を見つけ、現在まで働いている。 一審原告35-3は、岐阜県に避難後、同県の小学校に転校したが、当初は同級生から「(避難者だからと言って)調子乗ってんじゃねえぞ。」などと言われることもあった。 一審原告35-1と同35-2は、本件訴訟継続中の令和2年6月、離婚し、現在は、同35-2と同35-3が同居している。 なお、福島市の自宅に残っていた一審原告35-1の母は、がんによる手術、入院を経て、平成26年7月、死亡した。同35の世帯が本件事故当時居住していた自宅は、同35-1の母の死亡後に処分された。 (4) 本件事故時住所地の状況等一審原告35の世帯の本件事故当時の住所地は福島市で、同市は自主的避難等対象区域であり、同市における環境放射能等の状況(同市地区の状況を含む。)は前記第3章、第1、1で認定したとおりである。 2 損害 (1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告35の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島市に居住していたところ、本件事故後、同35の世帯の居住する同市地区がホットスポットとして報道されるなどしたことから放射能汚染に対する懸念や不安を抱くようになり、悩んだ末に岐阜市に避難することに決め、同 35-1が平成23年11月に一足先に同市に行って準備をし、平成24年 - 739 -3月末頃、同35-2及び同35-3も同市に避難したものであり、同35-1の平成23年11月の避難並びに同35-2及び同35-3の平 月に一足先に同市に行って準備をし、平成24年 - 739 -3月末頃、同35-2及び同35-3も同市に避難したものであり、同35-1の平成23年11月の避難並びに同35-2及び同35-3の平成24年3月末の避難は本件事故によるものと認められる。なお、同35-1の避難は本件事故の約8か月後、同35-2及び同35-3の避難は本件事故の約1年後であるが、本件事故直後から本件事故による放射線の影響に不安を 感じ、その後、その思いをさらに強くして同35の世帯で避難することを決め、平成23年11月に同35-1が先行して避難して家族を受け入れる準備をし、その約4か月後に残る同35-2及び同35-3も避難したという経緯であるから、これらの避難と本件事故との相当因果関係を認めることはできるというべきである。 しかし、福島市の環境放射能等の状況は前記認定のとおりであり、同市●●地区の状況を考慮したとしても、一般的に放射線の影響を受けやすいとされる子どもがいる場合でも遅くとも平成24年8月31日までには、避難先から同市同地区に帰還することに支障はなくなっていたというべきところ、同35の世帯には、本件事故当時、一般的には放射能の影響を受けやすいと される子どもである同35-3がおり、これへの影響を避けるために同35の世帯全体で避難する前提で、まず平成23年11月に同35-1が避難し、平成24年3月末に同35-2と同35-3が合流したという経過を考えると、本件事故と相当因果関係が認められる避難生活は、同35-1については平成23年11月から平成24年8月31日まで、同35-2及び同35 -3については同年3月末から同年8月31日までの各部分に限られるとするのが相当である。 また、平成23年11月から平成24年3月末までの間の 平成24年8月31日まで、同35-2及び同35 -3については同年3月末から同年8月31日までの各部分に限られるとするのが相当である。 また、平成23年11月から平成24年3月末までの間の二重生活は、一審原告35-1と同35-2及び同35-3とがそれぞれ本件事故と相当因果関係ある避難を行ったが、同35-1が家族受入れ準備のため先行したこ とにより時期が異なったことによるものであるから、これも本件事故と相当 - 740 -因果関係を認めることができる。 (2) 一審原告35-1の損害ア避難費用(ア) 交通費一審原告7-1らは、同35-1が避難のための交通費8万1000 円を要し、これが損害となると主張する。 しかし、一審原告7-1らが主張する同35-1の交通費のうち平成23年7月の分は、同35-1及び同35-3が保養プログラムに参加するためのものであり、同プログラムへの参加が本件事故によるものとはいえないから、この主張は認められない。 他方、上記主張のうち、平成23年11月の一審原告35-1の岐阜市への交通費は、同35-1の本件事故と相当因果関係ある避難に要した費用であり、同35-1が福島市から岐阜市へ自動車で移動した事実によれば、少なくとも1万円のガソリン代、高速道路代等の費用を要した事実を推認することができる。 したがって、上記主張のうち、本件事故と相当因果関係を有する交通費の損害1万円の部分は認められるが、その余は採用できない。 (イ) 引越し費用一審原告7-1らは、同35-2及び同35-3が平成24年3月に岐阜市に引っ越す際に、同35-1が支援者への謝礼として8万700 0円を支払 ない。 (イ) 引越し費用一審原告7-1らは、同35-2及び同35-3が平成24年3月に岐阜市に引っ越す際に、同35-1が支援者への謝礼として8万700 0円を支払ったとして、これが損害となると主張する。 しかし、引越しを支援してくれた人への謝礼は、業者の費用などとは異なり、支援者の情誼に対して一審原告35-1が自らの判断で任意に支払ったといわざるをえないから、仮にこれを支払ったとしても、直ちに本件事故との相当因果関係を認めることはできない。 他方、一審原告35の世帯の平成24年3月の岐阜市への自動車での - 741 -移動の事実によれば、少なくとも1万円のガソリン代、高速道路代等の費用を要した事実は推認することができる。 したがって、1万円を本件事故と相当因果関係を有する引越し交通費の損害と認める。 (ウ) 面会交通費 一審原告7-1らは、①平成23年8月に同35-2が電車で福島市から高山市に来た際の交通費、②同年12月12日に同35-2及び同35-3が電車で福島市から岐阜市に来た際の交通費、③平成24年1月1日に同35の世帯が自動車で同市から福島市に戻った際の交通費、④同月初めに同35-1が自動車で福島市から岐阜市に行った際の交通 費、⑤同月末に同35-1が電車で岐阜市から福島市に戻った際の交通費、⑥平成24年2月に同35-1が電車で岐阜市から福島市に戻った際の交通費、⑦同年3月に同35-1が電車で岐阜市から福島市へ戻った際の交通費が同35-1の損害となると主張する。 まず、①の主張については、保養プログラムに参加していた一審原告 35-1及び同35-3を同35-2が訪ねた際の交通費の主張であり た際の交通費が同35-1の損害となると主張する。 まず、①の主張については、保養プログラムに参加していた一審原告 35-1及び同35-3を同35-2が訪ねた際の交通費の主張であり、本件事故との相当因果関係が認められず、失当である。 他方、②から⑦までの主張については、前記のとおり一審原告35-1が平成23年11月に岐阜市に先行避難してから同35-2及び同35-3が平成24年3月末に合流するまでの間の二重生活は前記のとお り本件事故と相当因果関係が認められ、その間に互いに往来した事実も認められるから、相当な範囲での面会交通に要した交通費は本件事故との相当因果関係が認められる。そして、②から⑦までの面会交通の頻度は相当な範囲のものといえ、福島市と岐阜市の間を自動車で移動した事実によれば少なくとも片道1万円の、鉄道で移動した事実によれば少な くとも片道大人1万5000円、子ども7500円の交通費を要した事 - 742 -実を推認することができるので、これらにもとづき同35-1の本件事故と相当因果関係ある面会交通費の損害額を算定すると11万7500円(②平成23年12月12日分:1万5000円+7500円=2万2500円(片道)、③平成24年1月1日分:1万円(片道)、④平成24年1月初め分:1万円(片道)、⑤平成24年1月末分:1万5 000円×2=3万円(往復)、⑥平成24年2月分:1万5000円×2=3万円(往復)、⑦平成24年3月分:1万5000円(片道))となる。 したがって、11万7500円を本件事故と相当因果関係を有する面会交通費の損害と認める。 (エ) その他(避難雑費)一審原告7-1らは、同35-1がその他の避難雑費60万円 って、11万7500円を本件事故と相当因果関係を有する面会交通費の損害と認める。 (エ) その他(避難雑費)一審原告7-1らは、同35-1がその他の避難雑費60万円を要し、これが損害となると主張する。 この点、一審原告35の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に避難雑費54万円を賠償し、このうち平成24年分避難雑費が18万円 であった事実が認められ(乙C35の1・4)、この18万円については本件事故と相当因果関係を有する避難雑費が発生したと認める余地があるものの(弁論の全趣旨)、一審原告7-1らは、同35の世帯の相当因果関係が認められる避難生活の期間中に同35-1にこれを超える避難雑費が発生したことを具体的に主張立証していない。 したがって、上記主張のうち18万円の限度で本件事故と相当因果関係を有する避難雑費の損害と認める。 (オ) 合計 31万7500円イ生活費増加費用(ア) 家財道具購入費 一審原告7-1らは、同35-1が家財道具購入費として30万円の - 743 -損害を被ったと主張する。 しかし、一審原告7-1らは、同35-1が家財道具を購入したことを示す領収証等の証拠を一切提出しておらず、同35-1が避難先で生活するために家財道具を購入した事実を認めることができない。 (イ) その他(二重生活による生活費増加分) 一審原告7-1らは、同35-1が二重生活により生活費が増加したとして増加分の損害を主張するが、実際に生活費が増加したと認めるに足りる証拠はなく、上記主張は認められない。 (ウ) 家賃増加分一審原告7-1らは、同35-1の 費が増加したとして増加分の損害を主張するが、実際に生活費が増加したと認めるに足りる証拠はなく、上記主張は認められない。 (ウ) 家賃増加分一審原告7-1らは、同35-1の家賃増加分58万5000円が損 害であると主張する。 しかし、前記のとおり、一審原告35の世帯の避難について本件事故との相当因果関係が認められるのは平成24年8月31日までであるところ、同35の世帯が居住していたアパートは平成29年3月までは家賃補助があり、同35-1の家賃負担はなかったのであるから(一審原 告35-2本人(原審))、本件事故と相当因果関係を有する損害が発生したと認めることはできない。 (エ) 教育費一審原告7-1らは、同35-1の子ども会費及び学用品等の購入費として4万9830円が損害であると主張する。 この点、一審原告35の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した平成24年分生活費増加費用(教育費)1万5000円(乙C35の1)の限度では本件事故と相当因果関係を有する教育費増加の損害が生じたと認める余地があるものの(弁論の全趣旨)、教育費、子ども会費は本件事故による避難の有無にかかわらず発生する可能性がある もので、本件事故と相当因果関係ある避難生活中に、避難したことによ - 744 -る教育費の増加分が上記額を超えて発生したと認めるに足りる証拠はない。 したがって、上記主張のうち1万5000円の限度で本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 (オ) その他(駐車場代) 一審原告7-1らは、同35-1が平成24年4月から同年6月まで及び平成26年7月から平成29年12月まで、月額3150 有する損害と認める。 (オ) その他(駐車場代) 一審原告7-1らは、同35-1が平成24年4月から同年6月まで及び平成26年7月から平成29年12月まで、月額3150円又は3240円の駐車場代の損害を被ったと主張する。 この点、一審原告35の世帯の本件事故と相当因果関係のある避難は平成24年8月31日までの部分に限られるから、避難によって駐車場 の負担が生じたとしても、損害となるのは上記主張のうち同年4月から8月までの分に限られる。そして、同35の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に平成24年分避難費用(駐車場代)として2万5200円を賠償した事実が認められ(乙C35の1)、一審原告35-1が同年4月から8月までの間にこれを超える駐車場代を支出したと認める に足りる証拠もないから、この限度で本件事故と相当因果関係ある駐車場代の損害が発生したと認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。 したがって、上記主張のうち2万5200円の限度で本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 (カ) 合計 4万0200円 ウその他(ADR弁護士費用)一審原告35の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償したADR弁護士費用7万7132円を本件事故と相当因果関係を有する一審原告35-1の損害と認める。 エ慰謝料 一審原告35-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難 - 745 -及び避難生活中並びに二重生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、当初、一人で避難し二重生活の期間を経て同35-2及び同35-3を迎え入れた状況その他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを50万円と認めるのが相当である。 活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、当初、一人で避難し二重生活の期間を経て同35-2及び同35-3を迎え入れた状況その他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを50万円と認めるのが相当である。 オ合計 93万4832円 (3) 一審原告35-2の損害ア就労不能損害一審原告35の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した同35-2の平成24年分の就労不能損害116万6666円(乙C35の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣 旨)。 イ慰謝料一審原告35-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中並びに二重生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、同35-1が先行避難し二重生活の期間があったこと、仕事を辞めての避 難であったこと、子どもである同35-3を伴っての避難及び避難生活であったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを35万円と認めるのが相当である。 ウ合計 151万6666円(4) 一審原告35-3の損害 一審原告35-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中並びに二重生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、避難により転校せざるをえなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを35万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁 (1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額 - 746 -ア一審原告35-1について 41万9732円イ一審原告35-2について 128万6666円ウ一審原告35-3について 126万円(2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力 1について 41万9732円イ一審原告35-2について 128万6666円ウ一審原告35-3について 126万円(2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、これまで一審原告35の世帯に対し、以下のとおり の賠償を行ったことが認められる(乙C35の1・4、弁論の全趣旨)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告35-1に対し自主避難等に係る損害 12万円(イ) 一審原告35-2に対し自主避難等に係る損害 12万円(ウ) 一審原告35-3に対し自主避難等に係る損害 72万円 (エ) 合計 96万円イ ADRによる賠償 188万8198円ADRにより、一審原告35の世帯に対する和解金額が264万8198円と合意され、そこからADR以外による賠償額のうち76万円を控除した188万8198円が支払われた。 (内訳)(ア) 生活費増加費用、移動費用、避難費用、避難雑費、ADR弁護士費用 120万1532円(イ) 一審原告35-2の就労不能損害 116万6666円(ウ) 精神的損害 28万円 (エ) 合計(和解金額) 264万8198円(オ) 既払い金 76万円(一審原告35-1及び同35-2分各8万円、同35-3分60万円)(カ) 合計(支払い額) 188万8198円ウ合計 284万8198円 (3) 一審原告35の世帯に対する各弁済額 - 747 -ア一審原告35-1に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当であ する各弁済額 - 747 -ア一審原告35-1に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 72万1532円 ADRで合意した和解金額264万8198円からの前記(2)イ(オ)の既払い金76万円の控除は、まず同(イ)の一審原告35の世帯の精神的損害から28万円が、次いで同(ア)の同35-1が支出した同35世帯共通の費用から48万円が控除されたものとみると、同(ア)の控除後の額は72万1532円となり、これは同35-1が負担した費用に対す る賠償であるから同35-1に対する弁済として扱うのが相当である。 (ウ) 合計 84万1532円したがって、一審被告東京電力の一審原告35-1に対する弁済の抗弁41万9732円は全部認められる。 イ一審原告35-2に対する弁済額 (ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 116万6666円ADRによる和解金額のうち、前記(2)イ(イ)の一審原告35-2の就 労不能損害116万6666円は同35-2に対する賠償であることが明らかであり、同(ウ)の精神的損害の同35-2に係る部分は既払い金により控除済みであるから、ADRによる賠償のうち116万6666円を同35-2に対する弁済額とする。 (ウ) 合計 128万6666円 したがって、一審被告東京電力の一審原告35-2に対する弁済の抗弁 - 748 -は全部認められる。 ウ一審原告35-3に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 666円 したがって、一審被告東京電力の一審原告35-2に対する弁済の抗弁 - 748 -は全部認められる。 ウ一審原告35-3に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRによる和解金額のうち、前記(2)イ(ウ)の精神的損害の一審原告35-3に係る部分は既払い金により控除済みとみて、ADRによる賠償のうち同35-3に対する弁済額を0円とする。 (ウ) 合計 72万円 したがって、一審被告東京電力の一審原告35-3に対する弁済の抗弁は一部認められる。 4 認容額等(1) 一審原告35-1ア損害額 93万4832円 イ弁済額 41万9732円ウ弁済額控除後の損害額 51万5100円エ弁護士費用 6万円オ認容額 57万5100円(2) 一審原告35-2 ア損害額 151万6666円イ弁済額 128万6666円ウ弁済額控除後の損害額 23万円エ弁護士費用 3万円オ認容額 26万円 (3) 一審原告35-3 - 749 -ア損害額 35万円イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害額 0円エ認容額 0円第33 一審原告36の世帯 1 認定事実(前記第29、1及び第30、1の各認定事実と重複する事実を含む。甲C32の1・5、33の1・34、36の1、一審原告32-2本人(原審)、同36-1本人(原審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等 30、1の各認定事実と重複する事実を含む。甲C32の1・5、33の1・34、36の1、一審原告32-2本人(原審)、同36-1本人(原審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等一審原告36-1(本件事故当時40歳)、その長男である同36-2 (本件事故当時18歳)、二男である同36-3(本件事故当時7歳)は、本件事故当時、福島県いわき市の一戸建ての自宅(福島第一原発からの距離44.81km(乙C36の2))に居住していた。 一審原告36-1は、いわき市で生まれ育ち、平成元年、父である同33-1が設立した自動車の整備等の事業を営む会社に就職し、保険一般、車両 販売、事務一般等の仕事を担当していた。同36-1の弟である同32-1も上記会社で働いており、同36-1は同32-1に代表を譲るつもりであった。 一審原告36-2は、本件事故当時、高校を卒業し、いわき市内で就職するべく就職活動中であり、同36-3は、同市の市立小学校の1年生であっ た。 (2) 避難開始の経緯等一審原告36-1は、本件地震後の平成23年3月12日に出勤したものの、仕事ができる状態ではなかったため、仕事を早々に切り上げ、両親である同33-1及び同33-2並びに弟家族である同32-1から同32-5 までが住む実家に同36-2及び同36-3とともに行った。同36の世帯、 - 750 -同32の世帯及び同33の世帯は、同日午後3時頃、福島県郡山市に避難し、同日はホテルに宿泊し、同月13日、自動車で群馬県安中市に避難し、同月13日及び同月14日は民宿に宿泊し、同月15日からは同36-1の友人のアパートでルームシェアを始めた。 一審原告33の世帯及び同32-1は、仕事を再開するため で群馬県安中市に避難し、同月13日及び同月14日は民宿に宿泊し、同月15日からは同36-1の友人のアパートでルームシェアを始めた。 一審原告33の世帯及び同32-1は、仕事を再開するため、平成23年 3月末頃、いわき市に戻ったが、同36の世帯は、同32-2から同32-5までとともに安中市での避難生活を続けることにした。 一審原告36-1は、平成23年4月以降、安中市に生活の拠点を置きながらも、週3回はいわき市にある会社に出勤し、場合によっては数日間滞在するという生活をした。 一審原告36-2は群馬県で友人の会社に就職した。同36-3は、平成23年4月から新学期が始まるため、臨時で群馬県の小学校に通うための手続をして同県の小学校に通い始めた。 一審原告36-1及び同36-3は、同32-2から同32-5までと共に、平成23年7月及び平成24年7月に保養プログラムに参加するために 岐阜県に行った。また、同36-3は、平成24年8月に甲状腺の検査を受けたところ、のう胞があると診断された。 (3) その後の状況等一審原告36の世帯は、保養プログラムに参加したことをきっかけに、平成24年8月頃、岐阜県への転居を決断し、同県での住居を探し始めた。同 36-1及び同36-3は同県への転居の準備のためにいわき市に戻った。 群馬県にいた同36-2も平成25年2月には岐阜県へ一緒に引っ越すことを決め、その準備のためいわき市の自宅に戻った。そして、同36の世帯は、同年3月、岐阜市内のマンションに引っ越した。同36-1は、同年4月頃、いわき市の自宅を売却し、平成26年3月、岐阜市内に一戸建ての家をロー ンで購入した。 - 751 -一審原告36-1は、平成25年6月にデ 越した。同36-1は、同年4月頃、いわき市の自宅を売却し、平成26年3月、岐阜市内に一戸建ての家をロー ンで購入した。 - 751 -一審原告36-1は、平成25年6月にデイサービスの仕事に正社員として就職した。同33-1や同32-1が、平成27年12月に岐阜市で自動車の整備及び販売等の業を営む会社を設立したので、同36-1は、平成28年4月、同会社の正社員となり、デイサービスの仕事はパートタイム勤務扱いにしてもらい、それ以降、火曜日及び土曜日はデイサービスのパートタ イム勤務に出て、月曜日、水曜日から金曜日までは上記会社において、保険、車両販売、事務一般等の仕事をするという生活をしている。 一審原告36-2は、岐阜市への引越し後、自動車整備士の資格を取るため、愛知県一宮市の専門学校に通い、平成27年3月に同学校を卒業し、同年4月から自動車販売店で働いている。 一審原告36-3は、岐阜市へ引っ越してから、平成25年12月に同33の世帯が同市に引っ越してくるまでの間は、学校から帰宅しても一人だけで過ごす状態が続いた。 (4) 本件事故時住所地の状況等一審原告36の世帯の本件事故当時の住所地はいわき市で、同市は自主的 避難等対象区域であり、同市における環境放射能等の状況は前記第3章、第5のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告36の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域であるいわ き市に居住していたところ、本件事故直後に、不確実な情報を聞いて不安になって同32の世帯や同33の世帯とともにまず郡山市に避難し、その後、さらに不安になって安中市に避難したものであり、本件事故直後の混乱期に 住していたところ、本件事故直後に、不確実な情報を聞いて不安になって同32の世帯や同33の世帯とともにまず郡山市に避難し、その後、さらに不安になって安中市に避難したものであり、本件事故直後の混乱期に本件事故に関する情報が不足していたことを考えると、同36の世帯が避難を行ったことは本件事故によるものと認められる。 他方、いわき市における環境放射能等の状況等は前記認定のとおりであり、 - 752 -平成23年から平成24年にかけても環境放射能の値は低下しており、通常、遅くとも平成23年12月31日までに、一般的に放射能の影響を受けやすいとされる子どもがいる場合でも遅くとも平成24年8月31日までには、避難先からいわき市に帰還することに支障はなくなっていたというべきである。現に、一審原告32-1と同33の世帯は事業のため平成23年3月末 にいわき市に戻り、同32-1は平成25年3月に、同33の世帯は同年12月に岐阜市に転居するまでいわき市に居住していたのであり、安中市での避難生活を継続した同36の世帯についても、同年8月31日までには、いわき市の自宅に戻ることについて支障はなくなっていたといえる。 そして、一審原告36の世帯は、岐阜県における保養プログラムに参加し たことをきっかけに岐阜市に転居することを決め、平成24年8月(同36-1及び同36-3)または平成25年2月(同36-2)に安中市からいわき市の自宅に戻り、平成25年3月に岐阜市に転居しているところ、まず、安中市が平成24年当時、本件事故により避難を要するような状況にあったとは認められず(乙B462)、実際、同36の世帯は、直ちに安中市から 岐阜市に転居するのではなく平成24年8月又は平成25年2月にいわき市に戻っているのであり、同 を要するような状況にあったとは認められず(乙B462)、実際、同36の世帯は、直ちに安中市から 岐阜市に転居するのではなく平成24年8月又は平成25年2月にいわき市に戻っているのであり、同36-3が平成24年8月の甲状腺検査でのう胞があると診断されたといっても、同36-3は、平成23年3月13日から平成24年8月までは福島県外にいたのであるから本件事故との因果関係は不明であり、同36の世帯の平成25年3月のいわき市から岐阜市への転居 は本件事故による避難とはいえず、その後の岐阜市での生活も本件事故による避難生活とはいえない。 したがって、一審原告36の世帯について本件事故との相当因果関係が認められる避難生活は郡山市及び安中市における平成24年8月まで(同36-1及び同36-3についてはいわき市に帰還するまで、同36-2につい ては同月31日まで)のものに限られる。 - 753 -(2) 一審原告36-1の損害ア避難費用(ア) 交通費一審原告1-1らは、同36の世帯がいわき市から安中市に避難した際に要した交通費及び同市からいわき市に戻る際に要した交通費のほか、 岐阜県へ保養プログラムに行く際に要した交通費及びいわき市から岐阜県への転居の際に要した交通費11万7000円が同36-1の損害であると主張する。 まず、一審原告36の世帯のいわき市から安中市への避難のための交通費及びいわき市へ帰還するための交通費は、本件事故による損害とい うことができ、その額については、同36の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した平成23年3月13日分の避難交通費1万0400円(乙C36の1)の倍額の2万0800円の限度で弁論の全趣旨により認められるが、同36-1がこれ 6の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した平成23年3月13日分の避難交通費1万0400円(乙C36の1)の倍額の2万0800円の限度で弁論の全趣旨により認められるが、同36-1がこれを超える交通費を負担したと認めるに足りる証拠はない。 他方、一審原告36-1及び同36―3が保養プログラムに参加するために安中市から岐阜県に移動した際に要した交通費は本件事故による損害とはいえず、また同36の世帯のいわき市から岐阜市への転居も本件事故との相当因果関係があるとはいえない。 したがって、上記の交通費損害の主張は、2万0800円の限度で認 められる。 (イ) 宿泊費・謝礼一審原告36の世帯は、平成23年3月から平成24年8月までの18か月間、友人宅でルームシェアをしており、同36-1が月額3万円を負担した事実が認められ(一審原告36-1本人(原審)、弁論の全 趣旨)、本件事故がなければかかる負担はなかったといえるから、54 - 754 -万円(3万円/月×18か月=54万円)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 (ウ) 引越し費用一審原告36の世帯のいわき市から岐阜市への転居は本件事故との相当因果関係があるとはいえないから、その引越し費用は本件事故と相当 因果関係を有するとはいえない。 (エ) 一時立入り・帰省費用一審原告1-1らは、同36-1及び同36-2が平成23年10月及び同年11月に甲状腺検査を行うために、安中市から福島県に行った(甲C36の28・29)際の交通費として5万2000円を要し、こ れが損害であると主張する。 しかし、一審原告36の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した検査交通費4万1600円(甲C36の28・29 )際の交通費として5万2000円を要し、こ れが損害であると主張する。 しかし、一審原告36の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した検査交通費4万1600円(甲C36の28・29、乙C36の1)の限度では本件事故と相当因果関係を有する損害と認めることができるが(弁論の全趣旨)、同1-1らは同36-1がこの額を超える 交通費を支出した具体的な証拠を提出していない。 したがって、4万1600円の限度で本件事故と相当因果関係を有する帰省費用の損害と認める。 (オ) 合計 60万2400円イ生活費増加費用 (ア) 家財道具購入費一審原告1-1らは、同36-1に家財道具購入費として116万6288円の損害が生じたと主張する。 このうち、安中市に避難した際に購入したエアコン等については、一審原告36の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した平成 23年分家財道具購入費15万円の限度でその支出及び額を認めること - 755 -ができるが(弁論の全趣旨)、これを超える額を支出したことを示す領収証等の証拠は存在しない。 また、いわき市から岐阜市への転居に伴う家財道具購入は、本件事故との相当因果関係があるとはいえない。 したがって、15万円を本件事故と相当因果関係を有する家財道具購 入費の損害と認める。 (イ) 交通費一審原告1-1らは、同36-1が平成23年4月から平成24年8月まで安中市からいわき市に仕事のため月に4回は通わなければならず、そのための交通費として176万8000円を要し、これが損害である と主張する。 一審原告36-1が、平成23年6、7月頃から同33-1が経営していた会社に週に三、四日の頻度で出勤していた事実は認められ(前記 して176万8000円を要し、これが損害である と主張する。 一審原告36-1が、平成23年6、7月頃から同33-1が経営していた会社に週に三、四日の頻度で出勤していた事実は認められ(前記認定事実のほか、一審原告36-1本人(原審))、同36-1の安中市への避難は本件事故によるものであるから、同市からいわき市への通 勤も合理的な範囲では本件事故によるものといえるところ、同36の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した平成23年分通勤費増加費用42万2180円についてはその支出及び額を認めることができるけれども(弁論の全趣旨)、同36-1がこの額を超えて通勤交通費を支出し、かつそれが合理的な範囲のものであったと認めるに足りる 証拠はない。 したがって、42万2180円の限度では本件事故と相当因果関係を有する通勤交通費増加の損害が発生したと認められるが、その余の主張は採用できない。 (ウ) その他(いわき市の自宅の売却に要した費用) 一審原告36-1が平成24年8月にいわき市に帰還した後、平成2 - 756 -5年4月に同市の自宅を売却したことは、本件事故による避難のためとはいえないから、その売却に要した費用は本件事故と相当因果関係を有するとはいえない。 (エ) その他(岐阜の自宅の購入費用)一審原告36の世帯の岐阜市への転居は本件事故との相当因果関係が あるとはいえないから、同市における自宅の購入費用は本件事故と相当因果関係を有するとはいえない。 (オ) その他(引越し先探しのための交通費)一審原告36の世帯の岐阜市への転居は本件事故との相当因果関係があるとはいえないから、引越し先を探すための交通費は本件事故と相当 因果関係を有するとはいえない。 引越し先探しのための交通費)一審原告36の世帯の岐阜市への転居は本件事故との相当因果関係があるとはいえないから、引越し先を探すための交通費は本件事故と相当 因果関係を有するとはいえない。 (カ) その他(車庫証明手数料)一審原告1-1らは、同36-1が車庫証明手数料として2万8000円を要し、これが損害であると主張するが、実際にこの支出をしたと認めるに足りる証拠はない。 (キ) その他(自動車購入費)一審原告1-1らは、同36-1の自動車が本件事故後に通勤のために走行距離が急激に増えたことから故障し、それに伴い同36-1が新しい自動車を購入せざるを得なくなったとして、かかる自動車購入費も損害である旨主張する(一審原告1-1らは、この主張を、財物に係る 損害として主張するが、性質上、交通費の増加に類似する生活費増加費用と位置付けられる。)。 しかし、新しい自動車を購入しなければならなくなった原因が本件事故による避難により通勤距離が増えたことにあると認めるに足りる証拠はなく、上記主張は認められない。 (ク) 合計 57万2180円 - 757 -ウ就労不能損害一審原告1-1らは、同36-1が平成25年2月に同33-1の会社を退職してから同年6月に岐阜県で再就職するまでの収入の減少により同36-1に就労不能損害96万8000円が生じたと主張する。しかし、岐阜市への転居は本件事故との相当因果関係が認められないから、 その転居のための退職による収入の減少も本件事故と相当因果関係を有するものとはいえない。 エ被ばく検査費用一審原告1-1らが、本件事故による同36-1の損害と主張する検査費用4万4030円については、ADRにおいて同36-1の請求に対 して 係を有するものとはいえない。 エ被ばく検査費用一審原告1-1らが、本件事故による同36-1の損害と主張する検査費用4万4030円については、ADRにおいて同36-1の請求に対 して一審被告東京電力が平成23年分及び平成24年以降分の検査費用(検査交通費を含む)として合計8万5630円を既に賠償したことが認められ(乙C36の1)、そのうち検査交通費は4万1600円であることが認められるから(甲C36の28・29、弁論の全趣旨)、本件事故と相当因果関係を有する検査費用の損害の額を4万4030円と認 めるのが相当である。 オ線量計購入費一審原告36の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償したガイガーカウンター購入費13万1250円(乙C36の1)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 カ慰謝料一審原告36-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、郡山市を経由して安中市に避難した状況、安中市においては民宿やルームシェアでの生活であったこと、子どもである同36-3を伴っての避難及び避難生活であ ったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円 - 758 -と認めるのが相当である。 キ合計 234万9860円(3) 一審原告36-2の損害一審原告36-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、郡山市を経由して安中市に 避難した状況、安中市においては民宿やルームシェアでの生活であったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 (4) 一審原告36-3の損害 避難した状況、安中市においては民宿やルームシェアでの生活であったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 (4) 一審原告36-3の損害一審原告36-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及 び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、郡山市を経由して安中市に避難した状況、安中市においては民宿やルームシェアでの生活であったこと、小学校の転校を要したことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁 (1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額ア一審原告36-1について 45万6487円イ一審原告36-2について 64万円ウ一審原告36-3について 72万円(2) 一審被告東京電力による賠償 一審被告東電は、これまで一審原告36の世帯に対し、以下のとおりの賠償を行ったことが認められる(乙C36の1・4)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告36-1に対し自主避難等に係る損害 12万円(イ) 一審原告36-2に対し自主避難等に係る損害 64万円 (ウ) 一審原告36-3に対し自主避難等に係る損害 72万円 - 759 -(エ) 合計 148万円イ ADRによる賠償 33万6487円ADRにより、一審原告36の世帯に対する和解金額が161万6487円と合意され、そこからADR以外による賠償額のうち128万円を控除した33万6487円が支払われた。 (内訳)(ア) 避難費用、生活費増加費用、検査費用、ガイガーカウンター購入費、ADR弁護士費用 75万4307円 外による賠償額のうち128万円を控除した33万6487円が支払われた。 (内訳)(ア) 避難費用、生活費増加費用、検査費用、ガイガーカウンター購入費、ADR弁護士費用 75万4307円(イ) 一審原告36-1の就労不能損害 42万2180円(ウ) 精神的損害 44万円 (エ) 合計(和解金額) 161万6487円(オ) 既払い金 128万円(一審原告36-1分8万円、同36-2及び同36-3分各60万円)(カ) 合計(支払い額)33万6487円ウ合計 181万6487円 (3) 一審原告36の世帯に対する各弁済額ア一審原告36-1に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 33万6487円ADRにおける和解金額161万6487円からの前記(2)イ(オ)の既払い金128万円の控除は、まず一審原告36の世帯にそれぞれ支払われたとみられる同(ウ)の精神的損害44万円から全額、次いで同36-1が支出した同36の世帯の共通の費用である同(ア)の費用損害75 万4307円から全額を控除し、その余の8万5693円はADRの - 760 -その余の和解金額である同(イ)の42万2180円から控除されたものとみると、同(カ)のADRによる賠償の支払い額33万6487円は、同36-1に対する弁済額と扱うのが相当である。 (ウ) 合計 45万6487円したがって、一審被告東京電力の一審原告36-1に対する弁済の抗弁 は全部認められる。 イ一審原告36-2に対する弁済額(ア) A 。 (ウ) 合計 45万6487円したがって、一審被告東京電力の一審原告36-1に対する弁済の抗弁 は全部認められる。 イ一審原告36-2に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 64万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRにおける和解金額のうち前記(2)イ(ウ)の精神的損害の一審原告36-2に係る部分は既払い金により控除済みとみて、ADRによる賠償のうち同36-2に対する弁済額を0円とする。 (ウ) 合計 64万円 したがって、一審被告東京電力の一審原告36-2に対する弁済の抗弁は全部認められる。 ウ一審原告36-3に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし て扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRにおける和解金額のうち前記(2)イ(ウ)の精神的損害の一審原告36-3に係る部分は既払い金により控除済みとみて、ADRによる賠償のうち同36-3に対する弁済額を0円とする。 (ウ) 合計 72万円 - 761 -したがって、一審被告東京電力の一審原告36-3に対する弁済の抗弁は全部認められる。 4 認容額等(1) 一審原告36-1ア損害額 234万9860円 イ弁済額 45万6487円ウ弁済額控除後の損害額 189万3373円エ弁護士費用 19万円オ認容額 208万3373円(2) 一審原告36-2 ア損害額 100万円イ弁済 額控除後の損害額 189万3373円エ弁護士費用 19万円オ認容額 208万3373円(2) 一審原告36-2 ア損害額 100万円イ弁済額 64万円ウ弁済額控除後の損害額 36万円エ弁護士費用 4万円オ認容額 40万円 (3) 一審原告36-3ア損害額 100万円イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害額 28万円エ弁護士費用 3万円 オ認容額 31万円第34 一審原告37の世帯 1 認定事実(甲C37の1・2、一審原告37-2本人(原審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等 一審原告37-1(本件事故当時34歳)、その妻である同37-2(本 - 762 -件事故当時36歳)、同37-1及び同37-2の長男である同37-3(本件事故当時3歳)は、本件事故当時、福島県いわき市所在の賃貸アパート(福島第一原発からの距離53.64km(乙C37の1))に居住していた。また、同37-2の母である同37-4(本件事故当時63歳)は、本件事故当時、同37-2の祖母と共に、同市内の実家(福島第一原発から の距離52.59km(乙C37の3))に居住していた。 本件事故当時、一審原告37-1は、総合化学メーカーの正社員として茨城県北茨城市の工場に勤務しており、同37-2は主婦で、同37-3は保育園に通っていた。同37-4は無職であった。 (2) 避難開始の経緯等 一審原告37の世帯は、平成23年3月12日頃、福島第一原発で爆発があったことをテレビで知り、さらに同月14日及び15日に別の爆発もあったので、家族で (2) 避難開始の経緯等 一審原告37の世帯は、平成23年3月12日頃、福島第一原発で爆発があったことをテレビで知り、さらに同月14日及び15日に別の爆発もあったので、家族で話し合った結果、とにかくいわき市から離れるため、避難することにした。 一審原告37の世帯は、東京都北区に住む同37-2の叔母(同37-4 と姉妹)から避難することの了承を得たので、平成23年3月15日、同37の世帯4名と同37―2の祖母との計5名で自動車で同区まで行き、上記叔母宅に避難した。 その後、一審原告37-1から同37-3までは、平成23年3月18日まで上記叔母宅に滞在した後、同日から同月25日までの間、東京都大田区 のホテルに泊まり、同日、同37-1の勤務先から同37-1から同37-3までのために岐阜市にあるホテルを予約したとの連絡があったので、同市のホテルに行くことにした。 他方、平成23年3月18日以降も上記叔母の家に滞在していた一審原告37-4及び上記祖母(同37-4及び上記叔母の母)は、いつまでもその 家にいるわけにもいかなかったため、いわき市の自宅に戻ることとし、同月 - 763 -25日、同37-1の運転する自動車で同市に戻った。 いわき市に一審原告37-4らを送り届けた同37-1と同37-2及び同37-3とは東京駅で合流し、電車で岐阜市のホテルまで行き、平成23年3月25日から同年5月21日までは同ホテルに宿泊した。このホテル代は同37-1の勤務先が負担した。 一審原告37の世帯は、同37-1の勤務先の工場が再開したこと、長いホテル生活で精神的及び肉体的に疲労がたまっていたこと等から、いったんいわき市の自宅に戻ることにした。そこで、平成23年5 一審原告37の世帯は、同37-1の勤務先の工場が再開したこと、長いホテル生活で精神的及び肉体的に疲労がたまっていたこと等から、いったんいわき市の自宅に戻ることにした。そこで、平成23年5月21日、同37-1が岐阜市からいわき市まで新幹線等を利用して自動車を取りに行って自動車で岐阜市に戻り、同37-2及び同37-3を乗せていわき市に帰った。 一審原告37-1から同37-3までがいわき市に戻ってから、同37-3は保育園に通っていたが、放射能の影響を心配しながらの生活で、同37-1と同37-2は、いつまでもいわき市にいては同37-3の健康に良くないと考え、受入れ先の自治体を探したところ、愛知県が受け入れてくれるという情報を知り、同県に避難することにした。 一審原告37の世帯と同37-2の祖母は、平成23年12月25日、自動車で愛知県に行き、同37-1から同37-3までと同37-4及び上記祖母とが、それぞれ名古屋市の借上げ住宅に入居した。同37の世帯は、その際、家財道具を全て買い換えた。 (3) 避難後の状況等 一審原告37-1は、転勤により、平成24年1月1日から平成26年7月31日までマレーシアで勤務した。同37-2及び同37-3は同行することも検討したが、同国で居住する場所の放射線量が自然放射線量としては高めであると思い、同行しなかった。同37-1はマレーシアから戻ると東京の本社勤務になり、同年8月1日から平成28年12月31日まで東京都 武蔵野市に単身赴任した。 - 764 -一審原告37-2及び同37-3は、名古屋市の借上げ住宅の家賃補助が平成29年3月31日に終了する予定であったことから、平成28年12月末に名古屋市内のアパートに引っ越し、三 764 -一審原告37-2及び同37-3は、名古屋市の借上げ住宅の家賃補助が平成29年3月31日に終了する予定であったことから、平成28年12月末に名古屋市内のアパートに引っ越し、三重県四日市市の工場勤務になった同37-1と、平成29年1月1日から同居した。 一審原告37-4及び上記祖母(同37-4の母)は、名古屋市の借上げ 住宅に住んでいたが、同祖母は平成24年10月に死亡した。同37-4は家賃補助が終了した後も引き続き同じ借上げ住宅に住んでいる。同37-4のいわき市の自宅は、現在は貸家にしている。 (4) 本件事故時住所地の状況等一審原告37の世帯の本件事故当時の住所地であるいわき市は自主的避難 等対象区域であり、同市における環境放射能等の状況は前記第3章、第5のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告37の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域であるいわ き市に居住していたところ、本件事故直後、福島第一原発の爆発を知り、同市から離れるために、平成23年3月15日、まず東京都北区の親族宅に避難したものであり、この避難は本件事故によるものである。また、これに引き続く、同37-1から同37-3までの同月18日までの同親族宅、同日から同月25日までの東京都大田区のホテル及び同日から同年5月21日ま での岐阜市のホテルにおける各避難生活並びに同37-4の同年3月25日までの同親族宅における避難生活もいずれも本件事故による避難生活であるといえる。 次に、一審原告37-1から同37-3までは平成23年5月21日に、同37-4は同年3月25日にそれぞれいわき市の各自宅に戻っているとこ ろ、同3 故による避難生活であるといえる。 次に、一審原告37-1から同37-3までは平成23年5月21日に、同37-4は同年3月25日にそれぞれいわき市の各自宅に戻っているとこ ろ、同37の世帯は、同年12月25日に再び名古屋市に転居しているので、 - 765 -この点について検討する。 いわき市における環境放射能等の状況は前記のとおりであり、平成23年から平成24年にかけても環境放射能の値は低下しており、本件事故直後の混乱期は別として、通常、遅くとも平成23年12月31日までに、一般的に放射能の影響を受けやすいとされる幼児がいる場合でも遅くとも平成24 年8月31日までには、避難せずに同市に居住することや、避難先から同市に帰還することに支障はなくなっていたというべきである。 そして、まず、一審原告37-1については、平成23年12月25日の名古屋市への転居は、同37-1が平成24年1月からマレーシア勤務となる前提で同37-2及び同37-3とともに転居したものに過ぎず、実際、 同月以降は、勤務の都合で同国、武蔵野市、名古屋市に居住しているのであり、平成23年12月25日以降の生活には本件事故による避難生活としての実態はないというべきである。 一審原告37-2及び同37-3については、同37-3が一般的に放射線の影響を受けやすいとされる幼児であったことを考慮すれば、同37-3 の健康への不安から行った平成23年12月25日の名古屋市への再避難も本件事故によるものとみる余地があるが、それでも遅くとも平成24年8月31日までにはいわき市へ帰還することに支障はなかったというべきであり、本件事故と相当因果関係ある避難生活は同日までの分に限られるとするのが相当である。 も遅くとも平成24年8月31日までにはいわき市へ帰還することに支障はなかったというべきであり、本件事故と相当因果関係ある避難生活は同日までの分に限られるとするのが相当である。 また、一審原告37-4については、本件事故前も同37-1から同37-3までとは別の家に同37-2の祖母(同37-4の母)と住んでおり、平成23年12月25日の時点では、子どもである同37-3を連れて名古屋市に避難した同37-2と必ずしも行動をともにする必要はなかったというべきであり、同37-4の同市への転居は、本件事故との相当因果関係が 認められないというべきである。 - 766 -したがって、一審原告37-1については、平成23年3月15日から同年5月21日までの東京都北区の親族宅、同大田区のホテル及び岐阜市のホテルにおける生活が、同37-2及び同37-3については、これに加えて同年12月25日から平成24年8月31日までの名古屋市の借上げ住宅における生活が、同37-4については、平成23年3月15日から同年5月 21日までの東京都北区の親族宅における生活が、それぞれ本件事故と相当因果関係が認められる避難生活となる。 (2) 一審原告37-1の損害ア避難費用(ア) 交通費 一審原告1-1らは、①平成23年3月15日に同37の世帯がいわき市から東京都北区まで自動車で避難した際の交通費、②同月25日に同37-1から同37-3までが電車で東京駅から岐阜市まで移動した際の交通費、③同日に同37-1が同37-4及び同37-2の祖母をいわき市まで自動車で送り、電車で東京に戻ってきた際の交通費、④同 年5月21日に同37-1がいわき市に電車で戻った際の交通費、⑤同日に同37-1がいわ -1が同37-4及び同37-2の祖母をいわき市まで自動車で送り、電車で東京に戻ってきた際の交通費、④同 年5月21日に同37-1がいわき市に電車で戻った際の交通費、⑤同日に同37-1がいわき市から岐阜市まで自動車で同37-2及び同37-3を迎えに行った際の交通費及び岐阜市からいわき市まで自動車で戻ってくる際の交通費、⑥同年12月25日に同37の世帯がいわき市から名古屋市に自動車で移動した際の交通費として、同37-1が合計 11万2856円を要したとして、これらが損害であると主張するところ、①から⑤まではいずれも同37の世帯の本件事故と相当因果関係がある避難又は避難先からの帰還のための移動であり、⑥は同37-1が同37-2及び同37-3に本件事故と相当因果関係がある再避難をさせるのための移動であり、これらに要した交通費は本件事故による損害 といえる。 - 767 -交通費の金額としては、自動車で移動した事実によれば、いわき市から東京までは片道8000円、いわき市から岐阜市又は名古屋市までは片道1万円を少なくとも要した事実を推認することができ、鉄道代は、東京駅から岐阜駅までは片道1万0580円(甲C37の5)、岐阜駅からいわき駅までは片道1万3710円(甲C37の6)と認められる から、上記①から⑥までの交通費の合計は8万4000円となる(①8000円、②1万0580円、③2万1710円(=8000円+1万3710円)、④1万3710円、⑤2万円(=1万円×2(往復))、⑥1万円)。 したがって、本件事故と相当因果関係を有する交通費の損害を8万4 000円と認める。 (イ) 宿泊費・謝礼一審原告37-1が平成23年3月18日から同月25日まで東京都大田区のホテルに滞在した事実によれ 当因果関係を有する交通費の損害を8万4 000円と認める。 (イ) 宿泊費・謝礼一審原告37-1が平成23年3月18日から同月25日まで東京都大田区のホテルに滞在した事実によれば、同37-1分として同1-1らが主張する2万1000円を下らない額の宿泊費が同37-1に発生 した事実を推認することができる。 また、一審原告37―1が平成23年12月25日に神奈川県のホテルで宿泊したことも認められ(一審原告37-2本人(原審)、弁論の全趣旨)、領収証等の証拠の提出はないものの、宿泊の事実によれば同37-1に少なくとも宿泊費5000円の負担が生じた事実は推認する ことができ、これは本件事故と相当因果関係ある同37-2及び同37-3の再避難のための移動中の宿泊費であるから、本件事故による損害と認められる。 したがって、2万6000円を本件事故と相当因果関係を有する宿泊費の損害と認める。 (ウ) 引越し費用 - 768 -一審原告1-1らは、同37-1がいわき市から名古屋市への引越し費用として20万円を要し、これが損害であると主張する。 前記のとおり、一審原告37-2及び同37-3が再避難のためいわき市から名古屋市に転居した事実は認められ、この事実によれば、少なくとも5万円の引越し費用が同37-1に発生した事実を推認すること ができるが、この転居と同時に、同37-1及び同37-4が同市に転居しているとしても、それは前記のとおり本件事故による避難とはいえず、上記推認額を超える領収証等の証拠があるわけでもない。 したがって、5万円を本件事故と相当因果関係を有する引越し費用の損害と認める。 (エ) 一時立入り・帰省費用一審原告1-1らは、同37-1が平成25年 があるわけでもない。 したがって、5万円を本件事故と相当因果関係を有する引越し費用の損害と認める。 (エ) 一時立入り・帰省費用一審原告1-1らは、同37-1が平成25年10月中旬頃にいわき市に帰省した際の費用が損害であると主張する。 しかし、一審原告37-2及び同37-3に限っても本件事故との相当因果関係が認められる名古屋市における避難生活は平成24年8月3 1日までの部分であるから、同日より後の帰省費用については本件事故と相当因果関係を有するとはいえない。 (オ) その他(引越しの準備等)一審原告1-1らは、同37-1が平成23年12月下旬頃に名古屋市の避難者用のアパートの下見に電車で行った際の交通費及び宿泊費が 損害であると主張するところ、これについては同37-2及び同37-3の再避難の準備のために必要なものであったといえ、本件事故と相当因果関係を有するといえる。 その費用の額については、いわき市から東京までは在来線の利用であったので(一審原告37-2本人(原審))、いわき市から名古屋市ま での交通費は片道1万3000円を下らず、宿泊費は1泊5000円を - 769 -下らないと推認でき、3万1000円(交通費1万3000円×2(往復)+宿泊費5000円=3万1000円)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 一方、一審原告1-1らは、同37-1が東京に単身赴任中の平成26年8月から平成28年12月までの間、名古屋市に同37-2及び同 37-3に会うために交通費等を要したと主張するが、同37-1の単身赴任は本件事故によるものではないから、主張自体失当である。 (カ) 合計 19万1000円イ線量計購入費一審原告1-1 通費等を要したと主張するが、同37-1の単身赴任は本件事故によるものではないから、主張自体失当である。 (カ) 合計 19万1000円イ線量計購入費一審原告1-1らは、同37-1の線量計購入費も損害であると主張す るが、実際に線量計を購入したと認めるに足りる証拠がなく、認められない。 ウ慰謝料一審原告37-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛(同37-2から同37-4までの避難に係 る精神的苦痛を含む。)に対する慰謝料額は、東京都北区の親族宅や同大田区、岐阜市のホテルを転々としたこと、幼児である同37-3を伴っての避難及び避難生活であったこと、同37-4のいわき市への帰還や同37-2及び同37-3の再避難に関してたびたび長距離の移動をしたことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを30万円と認めるのが 相当である。 エ合計 49万1000円(3) 一審原告37-2の損害ア避難費用(ア) 宿泊費・謝礼 一審原告37-2が平成23年3月18日から同月25日まで東京都 - 770 -大田区のホテルに滞在した事実によれば、同37-2分として同1-1らが主張する2万1000円を下らない額の宿泊費が同37-2に発生した事実を推認することができる。 また、一審原告37-2が平成23年12月25日に神奈川県のホテルで宿泊したことも認められ(一審原告37-2本人(原審)、弁論の 全趣旨)、領収証等の証拠の提出はないものの、宿泊の事実によれば同37-2に少なくとも宿泊費5000円の負担が生じた事実は推認することができ、これは本件事故と相当因果関係ある同37-2及び同37-3 趣旨)、領収証等の証拠の提出はないものの、宿泊の事実によれば同37-2に少なくとも宿泊費5000円の負担が生じた事実は推認することができ、これは本件事故と相当因果関係ある同37-2及び同37-3の再避難のための移動中の宿泊費であるから、本件事故による損害と認められる。 したがって、2万6000円を本件事故と相当因果関係を有する宿泊費の損害と認める。 (イ) 一時立入り・帰省費用前記のとおり、一審原告37-2の再避難後の避難生活について本件事故との相当因果関係が認められるのは平成24年8月31日までの部 分に限られるから、同1-1らが同37-2の損害として主張する同年10月中旬、平成25年10月中旬及び平成28年8月中旬に帰省した際に要した費用は、本件事故と相当因果関係を有するとはいえない。 (ウ) その他(引越しの準備等)一審原告1-1らは、同37-2が平成23年12月下旬頃に名古屋 市の避難者用のアパートの下見に行った際に交通費及び宿泊費を要し、これらも損害であると主張するところ、これは同37-2及び同37-3の再避難の準備のために必要であったといえるから、前記(2)ア(オ)と同様、3万1000円を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 (エ) 合計 5万7000円 イ慰謝料 - 771 -一審原告37-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難(再避難を含む。)及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、当初の避難で東京都北区の親族宅や同大田区、岐阜市のホテルを転々としたこと、幼児である同37-3を伴っての避難及び再避難並びに避難生活であったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを70万円と 認め 都北区の親族宅や同大田区、岐阜市のホテルを転々としたこと、幼児である同37-3を伴っての避難及び再避難並びに避難生活であったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを70万円と 認めるのが相当である。 ウ合計 75万7000円(4) 一審原告37-3の損害ア避難費用(ア) 宿泊費・謝礼 一審原告37-3が平成23年3月18日から同月25日まで東京都大田区のホテルに滞在した事実、同37-3が当時3歳であった事実によれば、同37-3分と同37-1又は同37-2について認定できる宿泊費の半額である1万0500円が同37-3に発生した事実を推認することができる。 また、一審原告37-3が平成23年12月25日に神奈川県のホテルで宿泊したことも認められ(一審原告37-2本人(原審)、弁論の全趣旨)、領収証等の証拠の提出はないものの、宿泊の事実によれば同37-3に同37-1又は同37-2について認定できる宿泊費の半額である2500円が発生した事実は推認することができ、これ は本件事故と相当因果関係ある同37-2及び同37-3の再避難のための移動中の宿泊費であるから、本件事故による損害と認められる。 したがって、1万3000円を本件事故と相当因果関係を有する宿泊費の損害と認める。 (イ) 一時立入り・帰省費用 一審原告1-1らが主張する、同37-3が平成24年10月中旬、 - 772 -平成25年10月中旬及び平成28年8月中旬に帰省した際に要した費用については、同37-3の再避難について本件事故との相当因果関係が認められる平成24年8月31日より後の帰省に関する主張であるから失当である。 及び平成28年8月中旬に帰省した際に要した費用については、同37-3の再避難について本件事故との相当因果関係が認められる平成24年8月31日より後の帰省に関する主張であるから失当である。 (ウ) その他(引越しの準備等) 一審原告1-1らは、同37-3が平成23年12月下旬頃に愛知県の避難者用のアパートの下見に行った際に交通費及び宿泊費を要し、これらも損害であると主張するところ、同37-3は当時4歳(甲C37の1)であり、同37-3自身が下見を行う必要があったわけではないが、同37-1及び同37-2が同37-3を同伴することも やむをえないことと考えられ、本件事故と相当因果関係を有する再避難のための費用といえ、同37-1又は同37-2について認定できる交通費及び宿泊費の半額である1万5500円を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 (エ) 合計 2万8500円 イ慰謝料一審原告37-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難(再避難を含む。)及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、当初の避難で東京都北区の親族宅や同大田区、岐阜市のホテルを転々としたこと、再避難で環境の変化があったことその他前記認定の一切の事情を考 慮すれば、これを70万円と認めるのが相当である。 ウ合計 72万8500円(5) 一審原告37-4の損害ア避難費用(ア) 宿泊費・謝礼 一審原告1-1らは、同37の世帯が同37-2の叔母の家に避難さ - 773 -せてもらった謝礼として、同37-4が3万円を支払ったとして、これが損害となると主張するが、その支払いの事実を証する証拠はなく、仮に支払ったとして 同37-2の叔母の家に避難さ - 773 -せてもらった謝礼として、同37-4が3万円を支払ったとして、これが損害となると主張するが、その支払いの事実を証する証拠はなく、仮に支払ったとしても、本件事故直後に姉妹関係にある親族の情誼で避難させてもらったものに対して同37-4が自らの判断で任意に支払ったものであり、本件事故と相当因果関係を有するものとはいえな い。 一方で、一審原告37-4が、平成23年12月25日、神奈川県のホテルに宿泊したことは認められるものの(一審原告37-2本人(原審)、弁論の全趣旨)、同37-4については本件事故により再避難することの相当性は認められず、この宿泊費は損害とは認められ ない。 (イ) 一時立入り・帰省費用一審原告37-4の名古屋市への転居は、本件事故と相当因果関係がある再避難とは認められないから、平成24年10月中旬、平成25年10月中旬及び平成28年8月中旬に帰省した際に要した費用が損害と なるとの主張は失当である。 (ウ) 合計 0円イ慰謝料一審原告37-4について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、本件事故直後に母を伴 っていわき市から東京都まで避難した状況、姉妹宅で避難生活を送ったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを30万円と認めるのが相当である。 ウ合計 30万円 3 弁済の抗弁 (1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額 - 774 -ア一審原告37-1について 8万円イ一審原告37-2について 8万円ウ一審原告37-3について 60万円エ一審原 弁済の抗弁の主張額 - 774 -ア一審原告37-1について 8万円イ一審原告37-2について 8万円ウ一審原告37-3について 60万円エ一審原告37-4について 12万円(2) 一審被告東京電力による賠償 一審被告東電は、これまで一審原告37の世帯に対し、以下のとおりADR以外による賠償を行ったことが認められる(乙C37の5・6、弁論の全趣旨)。 ア一審原告37-1に対し自主避難等に係る損害 8万円イ一審原告37-2に対し自主避難等に係る損害 8万円 ウ一審原告37-3に対し自主避難等に係る損害 60万円エ一審原告37-4に対し自主避難等に係る損害 12万円オ合計 88万円(3) 一審原告37の世帯に対する各弁済額ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱 うのが相当であり、前記(2)アからエまでが一審原告37の世帯それぞれに対する弁済額となる。 したがって、一審被告東京電力の一審原告37の世帯に対する弁済の抗弁はいずれも全部認められる。 4 認容額等 (1) 一審原告37-1ア損害額 49万1000円イ弁済額 8万円ウ弁済額控除後の損害額 41万1000円エ弁護士費用 5万円 オ認容額 46万1000円 - 775 -(2) 一審原告37-2ア損害額 75万7000円イ弁済額 8万円ウ弁済額控除後の損害額 67万7000円エ弁護士費用 7万円 オ認容額 74万7000円(3) 一審原告 額 75万7000円イ弁済額 8万円ウ弁済額控除後の損害額 67万7000円エ弁護士費用 7万円 オ認容額 74万7000円(3) 一審原告37-3ア損害額 72万8500円イ弁済額 60万円ウ弁済額控除後の損害額 12万8500円 エ弁護士費用 2万円オ認容額 14万8500円(4) 一審原告37-4ア損害額 30万円イ弁済額 12万円 ウ弁済額控除後の損害額 18万円エ弁護士費用 2万円オ認容額 20万円第35 一審原告38の世帯 1 認定事実(甲C38の1・2、一審原告38-2本人(原審)のほか後掲の もの)(1) 本件事故前の状況等一審原告38-1(本件事故当時43歳)、その妻である同38-2(本件事故当時38歳)、同38-1及び同38-2の長女である同38-3(本件事故当時0歳)は、本件事故当時、福島市所在の賃貸アパート(福島 第一原発からの距離66.33km(乙C38の2))に居住していた。 - 776 -一審原告38-1及び同38-2はいずれも福島県出身で、双方の実家も福島県内にあり、互いの兄弟姉妹も含め、頻繁に交流していた。特に同38-2の姉家族は同じアパートに住み、困った時にはすぐに協力し合える状況であった。 一審原告38-1は、本件事故当時、福島県内の運送会社に勤務していた。 同38-2は、福島県内の会社で勤務していたが、平成22年8月に同38-3が出生し、本件事故当時は育児休業中であった。 (2) 避難開始の経緯等平成23年3月12日、本件事故が発生 同38-2は、福島県内の会社で勤務していたが、平成22年8月に同38-3が出生し、本件事故当時は育児休業中であった。 (2) 避難開始の経緯等平成23年3月12日、本件事故が発生したものの、福島市については避難の必要はないとの報道がされていたため、一審原告38の世帯は自宅での 生活を継続していた。しかし、同月14日、福島第一原発で2回目の爆発が発生し、同38-1及び同38-2は、特に同38-3の健康を心配し、親族とも相談の上、福島市から避難すると決めた。 避難は、同じアパートに住む同38-2の姉(二女)の家族及びその義父母、同38-2の実家の母及び同38-2の妹(五女)並びに同38-2の もう一人の妹(四女)夫婦の合計12名で行うことになり、避難先は、特に地縁等があったわけではないが、東京よりさらに遠方の都市である名古屋市とした。 一審原告38の世帯とその親族ら計12名は、平成23年3月14日の深夜から同月15日の未明にかけて、自動車に分乗して福島県を出発し、同日 午前、栃木県那須塩原市に到着した。12名は、自動車を那須塩原駅前に駐車したまま新幹線に乗り、同日夕方、名古屋市に到着し、ビジネスホテル5部屋に合計5泊した。 一審原告38の世帯とその親族ら計12名は、平成23年3月20日、名古屋市から市営住宅等が無料で提供されることを聞き、同市内の市営住宅へ 入居した。しかし、同38-1のほか親族6名は、それぞれ仕事の都合等に - 777 -より、同月末頃までに福島県内の自宅に戻り、同38-2及び同38-3のほか、同38-2の姉とその子や同38-2の妹は名古屋市内に残り、避難生活を継続した。 (3) 避難後の状況等一審原告38-2及び同38-3は、 宅に戻り、同38-2及び同38-3のほか、同38-2の姉とその子や同38-2の妹は名古屋市内に残り、避難生活を継続した。 (3) 避難後の状況等一審原告38-2及び同38-3は、平成23年12月、上記の市営住宅 から名古屋市内の借上げ住宅(マンション)に引っ越し、同38-2の姉とその子及び同38-2の妹も同じマンションの別室へ引っ越した。 一審原告38の世帯は、同38-1が福島市内の自宅で、同38-2及び同38-3が名古屋市内のマンションで生活する二重生活となり、同38-1は、勤務先での仕事を続けながら月2回程度名古屋市に来ていた。同38 -2は、同市へ避難したため本件事故前に勤務していた会社を退職したが、避難後、慢性的な不眠、頭痛、胃痛、不安神経症を患うなど体調を崩して通院する生活であり、再就職先を見つけることはできなかった。同38-3は、平成25年4月、保育園に入園した。 一審原告38-1が、平成27年9月に体調を崩し、3週間ほど入院した こともあり、同38-2及び同38-3は、平成28年2月、福島市内の自宅に戻り、同38の世帯で生活するようになった。 (4) 本件事故時住所地の状況等一審原告38の世帯の本件事故当時の住所地は福島市で、同市は自主的避難等対象区域であり、同市における環境放射能等の状況は前記第3章、第1、 1のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告38の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島市に居住していたところ、福島第一原発における爆発の発生という事態を受 けて、乳児である同38-3の健康を心配して、本件事故直後に親族ともど - 778 -も名 避難等対象区域である福島市に居住していたところ、福島第一原発における爆発の発生という事態を受 けて、乳児である同38-3の健康を心配して、本件事故直後に親族ともど - 778 -も名古屋市に避難したものであり、この避難は本件事故によるものと認められる。 他方、福島市の環境放射能の状況等は前記認定のとおりであり、平成23年から平成24年にかけても環境放射能の値は低下しており、本件事故直後の混乱期は別として、通常、遅くとも平成23年12月31日までに、一般 的に放射能の影響を受けやすいとされる乳児がいる場合でも遅くとも平成24年8月31日までには、避難先から同市に帰還することに支障はなくなっていたというべきである。 そうすると、一審原告38-2及び同38-3の名古屋市における避難生活については、同38-3が乳児であったことを考慮しても、本件事故との 相当因果関係が認められるのは平成24年8月31日までを限度とするのが相当である。 一方、一審原告38-1は、平成23年3月末までに仕事の都合で福島市内の自宅に戻っており、本件事故と相当因果関係が認められる避難生活は同月31日までに限られるが、同38-2及び同38-3の相当因果関係ある 避難期間中の福島市と名古屋市との二重生活により発生した相当な範囲の損害については、これも本件事故との相当因果関係を認めることができる。 (2) 一審原告38-1の損害一審原告38-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中並びに二重生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、自動車、 新幹線を乗り継いで名古屋まで避難した状況、ビジネスホテル、市営住宅を転々とした避難生活であったこと、乳児である38-3を伴っての避難及び に二重生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、自動車、 新幹線を乗り継いで名古屋まで避難した状況、ビジネスホテル、市営住宅を転々とした避難生活であったこと、乳児である38-3を伴っての避難及び避難生活であったこと、二重生活中に名古屋市まで同38-2及び同38-3に会いに行っていたことその他前記認定に係る一切の事情を考慮すれば、これを15万円と認めるのが相当である。 (3) 一審原告38-2の損害 - 779 -ア避難費用(ア) 交通費一審原告38の世帯の請求に対し一審被告東京電力が既に平成23年3月15日の避難交通費3万2060円を賠償した事実が認められ(乙C38の1・4)、これを本件事故と相当因果関係を有する同3 8-2の交通費の損害と認める(弁論の全趣旨)。 (イ) 宿泊費・謝礼一審原告38の世帯の請求に対し一審被告東京電力が既に平成23年3月15日から同月20日までの宿泊費3万9000円を賠償した事実が認められ(乙C38の1・4)、これを本件事故と相当因果関係 を有する同38-2の宿泊費の損害と認める(弁論の全趣旨)。 (ウ) 合計 7万1060円イ生活費増加費用(ア) 家財道具購入費一審原告1-1らは、同38-2が家財道具購入費として109万円 を要し、これを損害であると主張する。 しかし、一審原告38の世帯の請求に対し一審被告東京電力が既に賠償した平成23年3月から同年12月までの家財道具購入費用30万円(乙C38の1・4)については本件事故と相当因果関係を有する損害と認める余地があるが、同1-1らは同38-2がこれを超える 額の家財道具購入費を支出したことを までの家財道具購入費用30万円(乙C38の1・4)については本件事故と相当因果関係を有する損害と認める余地があるが、同1-1らは同38-2がこれを超える 額の家財道具購入費を支出したことを示す領収証等の証拠を提出していない。 したがって、30万円の限度で本件事故と相当因果関係を有する家財道具購入費の損害と認める。 (イ) 光熱費 一審原告1-1らは、同38-2が二重生活を強いられたことにより - 780 -月額約2万円程度水道光熱費が増加したと主張するが、実際に水道光熱費が増加したことについての具体的な立証はなく、同1-1らの上記主張は認められない。 (ウ) 食費一審原告1-1らは、同38-2が二重生活を強いられたことにより 月額約3万円程度食費が増加した旨主張するが、実際に食費が増加したことについての具体的な主張立証がなく、上記主張は認められない。 (エ) 教育費一審原告38-2は、同38-3の面倒を実姉に見てもらうつもりであり、本件事故がなければ同38-3を保育園に通園させる必要はな かったが、本件事故により親族に同38-3の面倒を見てもらうことができなくなり、また、同38-2が体調を崩したこともあって、同38-3を保育園に通園させる必要が生じたと主張する。 しかし、一審原告38-3の保育園入園は平成25年4月であり、本件事故との相当因果関係ある避難生活中のことではないから、上記主 張は失当である。 (オ) 合計 30万円ウ就労不能損害一審原告38-2は、本件事故当時、育児休業中であり、平成23年9月頃に復帰し本件事故前と同程度の給与が得られる見込みがあったが、本 (オ) 合計 30万円ウ就労不能損害一審原告38-2は、本件事故当時、育児休業中であり、平成23年9月頃に復帰し本件事故前と同程度の給与が得られる見込みがあったが、本 件事故による退職によりそれが得られなくなったといえるから、平成23年9月から平成24年8月までの分の就労不能損害を認めるのが相当である。 一審原告38-2の平成22年1月から同年7月までの給与は平均月額10万0251円と認められるから(甲C38の3・4)、平成23年9 月から平成24年8月までの就労不能損害は120万3012円(=10 - 781 -万0251円/月×12か月)となり、これを本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 エ生命・身体的損害一審原告1-1らは、同38-2が長期に及ぶ避難生活により慢性的な不眠症、頭痛、胃痛、不安神経症を患い、通院を強いられたと主張し、そ の原因は本件事故であると記載された診断書(甲C38の5)を提出するが、この診断書の記載だけから同38-2の身体症状が本件事故による避難を原因とするものとは直ちに認められない。 オ慰謝料一審原告38-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難 及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、自動車、新幹線を乗り継いで名古屋まで避難した状況、ビジネスホテル、市営住宅、借上げ住宅を転々とした避難生活であったこと、乳児である38-3を伴っての避難及び避難生活であったこと、同38-1との二重生活となったこと、体調を崩す中での避難生活であったことその他前記認定の一切の事情を考慮す れば、これを100万円と認めるのが相当である。 カ合計 257万4072円(4) 重生活となったこと、体調を崩す中での避難生活であったことその他前記認定の一切の事情を考慮す れば、これを100万円と認めるのが相当である。 カ合計 257万4072円(4) 一審原告38-3の損害一審原告38-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、自動車、新幹線を乗り継い で名古屋まで避難した状況、ビジネスホテル、市営住宅、借上げ住宅を転々とした避難生活であったこと、父である同38-1と離れての生活となったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁 (1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額 - 782 -ア一審原告38-1に対し 503万0489円イ一審原告38-2に対し 84万3776円ウ一審原告38-3に対し 150万円(2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、これまで一審原告38の世帯に対し、以下のとおり の賠償を行ったことが認められる(乙C38の1・4、49の1から7まで、弁論の全趣旨)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告38-1に対し自主避難等に係る損害 12万円(イ) 一審原告38-2に対し自主避難等に係る損害 12万円 (ウ) 一審原告38-3に対し自主避難等に係る損害 72万円(エ) 合計 96万円イ ADRによる賠償ADRにより、一審原告38の世帯に対する和解金額が717万4265円と合意され、そこからADR以外による賠償額のうち76万円を控除 した641万4265円が支払われ Rによる賠償ADRにより、一審原告38の世帯に対する和解金額が717万4265円と合意され、そこからADR以外による賠償額のうち76万円を控除 した641万4265円が支払われた。 (内訳)(ア) 避難費用、生活費増加費用、避難雑費、ADR弁護士費用611万4459円(イ) 一審原告38-2の就労不能損害 73万3776円 (ウ) 一審原告38-1の帰宅費用 1万6030円(エ) 精神的損害 31万円(オ) 合計(和解金額) 717万4265円(カ) 既払い金 76万円(一審原告38-1及び同38-2分各8万円、同38-3分60万円) (キ) 合計(支払い額) 641万4265円 - 783 -ウ合計 737万4265円(3) 一審原告38の世帯に対する各弁済額ア一審原告38-1に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし て扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 1万6030円ADRによる和解金額の内訳は前記(2)イのとおりであるが、同(カ)の既払い金76万円の控除は、まず同(エ)の精神的損害31万円から全額、次いで一審原告38の世帯共通の費用である同(ア)から45万円が控除 されたものとみることにする。同38の世帯においては、各種の費用を同38-2が支出したと主張しており、当事者の意思を合理的に解釈して、同(ア)のその余の額566万4459円は同38-2に対する弁済額と扱うこととする。 そうすると、ADRによる賠償額のう 8-2が支出したと主張しており、当事者の意思を合理的に解釈して、同(ア)のその余の額566万4459円は同38-2に対する弁済額と扱うこととする。 そうすると、ADRによる賠償額のうち一審原告38-1に対する弁 済額と扱うことができるのは同38-1に対する賠償であることが明らかな前記(2)イ(ウ)の1万6030円である。 (ウ) 合計 13万6030円したがって、一審被告東京電力の一審原告38-1に対する弁済の抗弁は一部認められる。 イ一審原告38-2に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 639万8235円 前記ア(イ)のとおり、ADRによる賠償のうち、既払い金控除後の前 - 784 -記(2)イ(ア)の566万4459円は一審原告38-2に対する弁済と扱うのが相当であり、また同(イ)の就労不能損害分73万3776円も同38-2に対する賠償であることが明らかであるから、これらの合計である639万8235円をADRによる賠償による同38-2に対する弁済額とする。 (ウ) 合計 651万8235円したがって、一審被告東京電力の一審原告38-2に対する弁済の抗弁84万3776円は全部認められる。 ウ一審原告38-3に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 72万円 ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRによる賠償のうち、一 2万円 ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRによる賠償のうち、一審原告38-3に係る精神的損害は既払い金により控除済みであり、同38-3に対する弁済額は0円となる。 (ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告38-3に対する弁済の抗弁は一部認められる。 4 認容額等(1) 一審原告38-1 ア損害額 15万円イ弁済額 13万6030円ウ弁済額控除後の損害額 1万3970円エ弁護士費用 1万円オ認容額 2万3970円 (2) 一審原告38-2 - 785 -ア損害額 257万4072円イ弁済額 84万3776円ウ弁済額控除後の損害額 173万0296円エ弁護士費用 18万円オ認容額 191万0296円 (3) 一審原告38-3ア損害額 100万円イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害額 28万円エ弁護士費用 3万円 オ認容額 31万円第36 一審原告39の世帯 1 認定事実(甲C39の1、一審原告39-1本人(原審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等一審原告39-1(本件事故当時34歳)、その妻である同39-2(本 件事故当時34歳)、同39-1及び同39-2の長男である同39-3(本件事故当時3歳)、長女である同39-4(本件事故当時1歳)は、本件事故当時、同39-1の実家から車で10分ほどの場所にある福 件事故当時34歳)、同39-1及び同39-2の長男である同39-3(本件事故当時3歳)、長女である同39-4(本件事故当時1歳)は、本件事故当時、同39-1の実家から車で10分ほどの場所にある福島県いわき市内の借家(福島第一原発からの距離36.24km(乙C39の2))に居住していた。 一審原告39-1はいわき市で生まれ、地元の高校を卒業後、森林に関わる仕事を目指して大学で森林の研究をし、その後、熱帯雨林関係のNGOに就職し、平成13年、愛知県豊田市の同NGOの施設に異動した。同39-1は、豊田市で同39-2と婚姻し、同39-3をもうけ、平成20年頃、同39-1の父の体調が悪くなったこと等をきっかけに、同NGOを辞めて いわき市の実家に戻り、同39-1から同39-3まで及び同39-1の父 - 786 -母の5人で暮らし始めた。同39-1は、他の仕事を経て、平成22年4月、森林組合職員となり、同年3月に同39-4も生まれたので、実家から上記借家に転居し、同39の世帯で生活していた。 いわき市で生活している間は、一審原告39-1の祖父母から野菜をもらっていたので、季節の野菜はほとんど買わなかった。 (2) 避難開始の経緯等一審原告39の世帯は、本件地震後の平成23年3月12日の朝、同39-1の実家に行った。テレビで、本件事故を報道しており、福島第一原発から5km以上離れていれば大丈夫であると言われていたが、同39-2は、同39-3及び同39-4への悪影響に不安を感じていた。同月15日、同 39-1の勤務先が休みになり、同39-2は広報車の屋内退避の呼びかけを聞き、同39-1及び同39-2は放射能に対する不安が払拭できなかったため、同39-2の実家がある愛知県尾張旭市に避 同 39-1の勤務先が休みになり、同39-2は広報車の屋内退避の呼びかけを聞き、同39-1及び同39-2は放射能に対する不安が払拭できなかったため、同39-2の実家がある愛知県尾張旭市に避難することに決めた。 一審原告39の世帯は、平成23年3月15日午後3時頃、自動車で福島空港へ行き、同日は空港のロビーで一夜を過ごし、翌16日、飛行機で中部 国際空港に到着し、同日中に病院で外部被ばくの検査を受け、尾張旭市の同39-2の実家に入った。 一審原告39-1は、森林組合で仕事を続けたかったことや両親のことが心配だったことから、平成23年3月26日、一人でいわき市の自宅に戻って単身生活となり、平成24年3月、自宅を引き払い、実家に移った。 一審原告39-2から同39-4までは尾張旭市に残ったが、同39-2は被ばくの影響が明らかでないのでいわき市に戻ることはできないと考えていた。 一審原告39-1は、同39-2から同39-4までと一緒に暮らすため、森林組合の仕事を辞めて尾張旭市に転居することにした。同39の世帯は、 平成24年5月、同39-2の実家近くの借上げ住宅のアパートに入居し、 - 787 -4人での生活を始めた。 (3) 避難後の状況等一審原告39-1は、平成24年6月、測量の会社に就職し、平日は愛知県岡崎市の寮で生活していたが、平成28年11月に退職し、平成29年1月、Iに就職した。 一審原告39の世帯が入居した尾張旭市のアパートは、平成29年3月までは借上げ住宅で家賃は必要なかったが、同月から家賃がかかるようになったので、同月下旬に、同市にある一軒家の借家に引っ越した。同39-1及び同39-2は、同39-3及び同39-4の内部被ばく 3月までは借上げ住宅で家賃は必要なかったが、同月から家賃がかかるようになったので、同月下旬に、同市にある一軒家の借家に引っ越した。同39-1及び同39-2は、同39-3及び同39-4の内部被ばくを少しでも減らしたいため、食材の産地が分からない給食は食べさせず弁当を持たせた。 (4) 本件事故時住所地の状況等一審原告39の世帯の本件事故当時の住所地はいわき市で、同市は自主的避難等対象区域であり、同市における環境放射能等の状況は前記第3章、第5のとおりである。 2 損害 (1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告39の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域であるいわき市に居住していたところ、本件事故直後、福島第一原発の爆発の報道を見たり、屋内退避の呼びかけを聞いたりして同39-3及び同39-4への放射能の影響を危惧し、尾張旭市へ避難したものであって、同39の世帯が避 難を行ったことは本件事故によるものと認められる。 他方、いわき市における環境放射能等の状況は前記のとおりであり、平成23年から平成24年にかけても環境放射能の値は低下しており、本件事故直後の混乱期は別として、通常、遅くとも平成23年12月31日までに、一般的に放射能の影響を受けやすいとされる幼児、乳児がいる場合でも遅く とも平成24年8月31日までには、避難先から同市に帰還することに支障 - 788 -はなくなっていたというべきである。 もっとも、一審原告39の世帯は、平成23年3月16日に尾張旭市に避難し、同39-1だけが同月26日、避難先からいわき市の自宅に戻っており、幼児、乳児である同39-3及び同39-4のために避難を続ける同39-2と同居するために平 平成23年3月16日に尾張旭市に避難し、同39-1だけが同月26日、避難先からいわき市の自宅に戻っており、幼児、乳児である同39-3及び同39-4のために避難を続ける同39-2と同居するために平成24年5月、いわき市の勤務先を退職して尾張 旭市に転居し、同39の世帯で借上げ住宅に入居し、同39-1は、同年6月、同市で就職しているから、前記の同年8月31日までにいわき市に帰還することは困難であり、帰還準備に一定の期間を要したと考られ、その期間は遅くとも同年12月31日までというのが相当である。 したがって、一審原告39-2から同39-4までについては、避難を開 始した平成23年3月15日から平成24年12月31日までの避難生活について本件事故との相当因果関係を認め、同39-1については、平成23年3月15日から同月26日までの避難生活及び平成24年5月から同年12月31日までの同39-2から同39-4までとの同居のための再避難生活並びに両期間の間の二重生活について本件事故との相当因果関係を認める のが相当である。 (2) 一審原告39-1の損害ア避難費用(ア) 交通費一審原告39の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した 平成24年分交通費2万1600円(乙C39の1・4)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 なお、平成23年分の移動費用については、下記イ(ア)で判断する。 (イ) 引越し費用一審原告39の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した 平成24年分引越し費用17万8500円(乙C39の1・4)を本 - 789 -件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全 39の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した 平成24年分引越し費用17万8500円(乙C39の1・4)を本 - 789 -件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (ウ) 一時立入り・帰省費用一審原告1-1らは、同39の世帯が平成26年12月29日及び平成27年12月29日にいわき市に一時帰宅した際に要した費用を同39-1の損害であると主張する。 しかし、前記のとおり、一審原告39の世帯の本件事故との相当因果関係が認められる避難生活は平成24年12月31日までの部分に限られるから、上記の一時帰宅費用が損害となるとの主張は失当である。 (エ) 面会交通費一審原告39の世帯の請求に対し一審被告東京電力が既に賠償した平 成24年分面会交通費10万8000円(乙C39の1・4)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (オ) 避難雑費一審原告39の世帯の請求に対し一審被告東京電力が既に賠償した平成24年分避難雑費32万円(乙C39の1・4)を本件事故と相当 因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (カ) 自主避難等に係る損害一審原告1-1らは、同39の世帯の自主避難に伴う生活費の増加分や避難及び帰宅に要した移動費用等32万円が同39-1の損害となると主張する。 しかし、これらの費用の支出を認めるに足りる証拠はないから、上記主張は採用できない。 (キ) 合計 62万8100円イ生活費増加費用(ア) 平成23年分 一審原告39の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した きない。 (キ) 合計 62万8100円イ生活費増加費用(ア) 平成23年分 一審原告39の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した - 790 -平成23年分生活費増加費用及び移動費用88万円(乙C39の1・4)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (イ) 平成24年分一審原告39の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した 平成24年分生活費増加費用15万円(乙C39の1・4)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 (ウ) 合計 103万円ウ就労不能損害一審原告39の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した同 39-1の平成24年分の就労不能損害16万3788円(乙C39の1・4)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 エ被ばく検査費用一審原告39の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した平 成23年分検査費用1万3920円(乙C39の1・4)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 オ ADR弁護士費用一審原告39の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償したADR弁護士費用6万9475円(乙C39の1・4)を本件事故と相当因 果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 カ慰謝料一審原告39-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難(再避難を含む。)及び避難生活中並びに二重生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、本件事故直後の混乱期に自動車と飛行機で尾張旭市まで避 難した状況、幼児、 事故との相当因果関係が認められる避難(再避難を含む。)及び避難生活中並びに二重生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、本件事故直後の混乱期に自動車と飛行機で尾張旭市まで避 難した状況、幼児、乳児である同39-3及び同39-4を伴っての避難 - 791 -であったこと、約1年2か月の間、同39-2から同39-4までと二重生活となったこと、避難中の同39-2から同39-4までと同居するための再避難で勤めていた森林組合を辞めなければならなかったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、50万円と認めるのが相当である。 キ合計 240万5283円 (3) 一審原告39-2の損害一審原告39-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、本件事故直後の混乱期に自動車と飛行機で尾張旭市まで避難した状況、幼児、乳児である同39-3及び同39-4を伴っての避難であったこと、約1年2か月の間、同39-1 と二重生活となったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを120万円と認めるのが相当である。 (4) 一審原告39-3の損害一審原告39-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、自動車と飛行機で尾張旭市 まで避難した状況、約1年2か月の間、同39-1と二重生活となったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを120万円と認めるのが相当である。 (5) 一審原告39-4の損害一審原告39-4について本件事故との相当因果関係が認められる避難及 び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、自動車と飛行機で尾張旭市まで避難した状況、約1年2か月 9-4の損害一審原告39-4について本件事故との相当因果関係が認められる避難及 び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、自動車と飛行機で尾張旭市まで避難した状況、約1年2か月の間、同39-1と二重生活となったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを120万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁 (1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額 - 792 -ア一審原告39-1について 82万5283円イ一審原告39-2について 12万円ウ一審原告39-3について 88万円エ一審原告39-4について 88万円(2) 一審被告東京電力による賠償 一審被告東京電力は、これまで一審原告39の世帯に対し、以下のとおりの賠償を行ったことが認められる(乙C39の1・4・5)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告39-1に対し自主避難等に係る損害 12万円(イ) 一審原告39-2に対し自主避難等に係る損害 12万円 (ウ) 一審原告39-3に対し自主避難等に係る損害 72万円(エ) 一審原告39-4に対し自主避難等に係る損害 72万円(オ) 合計 168万円イ ADRによる賠償ADRにより、一審原告39の世帯に対する和解金額が238万528 3円と合意され、そこからADR以外による賠償額のうち136万円を控除した102万5283円が支払われた。 (内訳)(ア) 生活費増加費用及び移動費用、検査費用、避難費用、避難雑費、ADR弁護士費用 174万1495円 (イ) 一審原告39-1の就労不能損 払われた。 (内訳)(ア) 生活費増加費用及び移動費用、検査費用、避難費用、避難雑費、ADR弁護士費用 174万1495円 (イ) 一審原告39-1の就労不能損害 16万3788円(ウ) 精神的損害 48万円(エ) 合計(和解金額)238万5283円(オ) 既払い金 136万円(一審原告39-1及び同39-2分各8万円、同39-3及び同39-4分各60万円) (カ) 合計(支払い額)102万5283円 - 793 -ウ合計 270万5283円(3) 一審原告39の世帯に対する各弁済額ア一審原告39-1に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし て扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 102万5283円ADRで合意した和解金額238万5283円からの前記(2)イ(オ)の既払い金136万円の控除は、まず同(ウ)の精神的損害48万円から全額が、次いで同39-1が負担した同39の世帯共通の費用である同 (ア)から88万円分が順次控除されたものとみると、その余の同(ア)の支払い額は86万1495円となり、これと同39-1に対する賠償であることが明らかな同(イ)の就労不能損害16万3788円の合計102万5283円をADRによる賠償による同39-1に対する弁済として扱うこととする。 (ウ) 合計 114万5283円したがって、一審被告東京電力の一審原告39-1に対する弁済の抗弁82万5283円は全部認められる。 イ一審原告39-2に対する弁済額 (ウ) 合計 114万5283円したがって、一審被告東京電力の一審原告39-1に対する弁済の抗弁82万5283円は全部認められる。 イ一審原告39-2に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 12万円 ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRで合意した和解金額のうち前記(2)イ(ウ)の精神的損害の一審原告39-2に係る部分は既払い金により控除済みとみて、ADRによ る賠償による同39-2に対する弁済額を0円とする。 - 794 -(ウ) 合計 12万円したがって、一審被告東京電力の一審原告39-2に対する弁済の抗弁は全部認められる。 ウ一審原告39-3に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 72万円 ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRで合意した和解金額のうち前記(2)イ(ウ)の精神的損害の一審原告39-3に係る部分は既払い金により控除済みとみて、ADRによ る賠償による同39-3に対する弁済額を0円とする。 (ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告39-3に対する弁済の抗弁は一部認められる。 エ一審原告39-4に対する弁済額 (ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円 (ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRで合意した和解金額のうち前記(2)イ(ウ)の精神的損害の一審原 告39-4に係る部分は既払い金により控除済みとみて、ADRによる賠償による同39-4に対する弁済額を0円とする。 (ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告39-4に対する弁済の抗弁は一部認められる。 4 認容額等 - 795 -(1) 一審原告39-1ア損害額 240万5283円イ弁済額 82万5283円ウ弁済額控除後の損害額 158万円エ弁護士費用 16万円 オ認容額 174万円(2) 一審原告39-2ア損害額 120万円イ弁済額 12万円ウ弁済額控除後の損害額 108万円 エ弁護士費用 11万円オ認容額 119万円(3) 一審原告39-3ア損害額 120万円イ弁済額 72万円 ウ弁済額控除後の損害額 48万円エ弁護士費用 5万円オ認容額 53万円(4) 一審原告39-4ア損害額 120万円 イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害額 48万円エ弁護士費用 5万円オ認容額 53万円第37 一審原告40 1 認定事実(甲C40の1・2、一審原告40本人(原審)のほか後掲のもの) - 796 -(1) 本件事故前の状況 万円オ認容額 53万円第37 一審原告40 1 認定事実(甲C40の1・2、一審原告40本人(原審)のほか後掲のもの) - 796 -(1) 本件事故前の状況等一審原告40(本件事故当時56歳)は、本件事故当時、いわき市所在の自宅(福島第一原発からの距離52.99km(乙C40の2))に夫(当時。以下、(1)から(3)までにおいて同じ。)及び長男(本件事故当時21歳)と共に居住していた。 一審原告40は、もと韓国籍であり、同国ソウル市に住んでいたが、平成元年1月に夫と結婚し、平成2年に長男を出産し、平成17年8月に帰化し、本件事故当時まで、夫及び長男と3人で、夫がローンで購入したいわき市の自宅に居住していた。なお、長男はダウン症による知的障害、難聴で身体障がい者2級の判定を受けている。 一審原告40は、平成22年6月頃から、上記長男が利用していた障がい者施設でパートタイム職員として勤務していた。また、同40は、自宅から徒歩1分のところにある畑を借りて野菜を作り、近所の人に分けるなどしていた。 (2) 避難開始の経緯等 一審原告40は、本件事故後の平成23年3月14日又は同月15日頃、韓国の親戚からマスクをしているように言われて、放射線被ばくの危険性を認識するようになった。しかし、夫とは避難について意見が合わなかったことから、夫を残し、長男を連れて避難することとした。同40は、長男を連れて、同月17日から同月20日までは福島県郡山市の知人宅に避難し、同 月21日から同月23日までは一度いわき市の自宅に戻り、同月24日から再び同市から避難して、同月26日までは郡山市のホテルに宿泊した。さらに、同40は、長男とともに、同月26日、 避難し、同 月21日から同月23日までは一度いわき市の自宅に戻り、同月24日から再び同市から避難して、同月26日までは郡山市のホテルに宿泊した。さらに、同40は、長男とともに、同月26日、福島空港から中部国際空港まで飛行機で行き、電車やバスを利用して岐阜県大垣市の知人宅に避難した。 (3) 避難後の状況等 一審原告40は、長男と大垣市の知人宅に避難した後、平成23年3月2 - 797 -9日、同市内の借上げ住宅のアパートに入居した。長男は、同年5月、施設に入所した。 一審原告40は、避難後なかなか就職先を見つけられなかったが、平成25年9月、岐阜県瑞穂市の福祉作業所にパートタイムで就職した。しかし、平成27年3月以後は、同40はパートタイム職員と無職を短期間で繰り返 している。 一審原告40は、避難後は、いわき市の自宅でしていたような野菜作りができなくなった。また、いわき市に住んでいた時は、近所の人が同40や長男に親切に話しかけたり惣菜を分けてくれたりしていたが、避難先ではそのようなこともなくなった。 長男は、本件事故による避難前は、少し手話ができたが、避難先で通う施設の職員は手話ができず、長男の相手をしていた父(同40の夫)もいないため、長男はふさぎ込むことが多くなった。 一審原告40は、平成27年5月、夫と離婚した。同40は、平成29年4月3日、家賃の安い大垣市内の県営住宅に引っ越した。 (4) 本件事故時住所地の状況等一審原告40の本件事故当時の住所地はいわき市で、同市は自主的避難等対象区域であり、同市における環境放射能等の状況は前記第3章、第5のとおりである。 2 損害 (1) 避難のうち本件事故と相 の本件事故当時の住所地はいわき市で、同市は自主的避難等対象区域であり、同市における環境放射能等の状況は前記第3章、第5のとおりである。 2 損害 (1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告40は、本件事故当時、自主的避難等対象区域であるいわき市に居住していたところ、親戚からの話で放射線被ばくの可能性を認識し、障がいのある長男とともに避難することを決めたものであり、本件事故直後の混乱期であることを考えると、同40が避難を行ったことは本件事故によるも のと認められる。 - 798 -他方、いわき市の環境放射能の状況等は前記認定のとおりであり、平成23年から平成24年にかけても環境放射能の値は低下しており、本件事故直後の混乱期は別として、通常、遅くとも平成23年12月31日までには、避難先から同市に帰還することに支障はなくなっていたというべきである。 したがって、一審原告40について本件事故との相当因果関係が認められ る避難生活は、平成23年3月17日から同月20日までの郡山市におけるもの及び同月24日から同年12月31日までの同市及び大垣市におけるものに限られるというのが相当である。 (2) 一審原告40の損害ア避難費用 (ア) 交通費一審原告1-1らは、同40がいわき市から大垣市に避難する際に要した交通費が損害でありその額は3万9790円であると主張する。 一審原告40が避難をした事実は認められ、同40の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した平成23年分避難交通費3万1200円 (乙C40の1・5)の限度ではその支出額を認めることができるものの(弁論の全趣旨)、これを超える交通費の支出をしたことを示す領 被告東京電力が既に賠償した平成23年分避難交通費3万1200円 (乙C40の1・5)の限度ではその支出額を認めることができるものの(弁論の全趣旨)、これを超える交通費の支出をしたことを示す領収証等の証拠は提出されていない。 したがって、3万1200円を本件事故と相当因果関係を有する交通費の損害と認める。 (イ) 宿泊費・謝礼一審原告1-1らは、同40が避難の途中で要した宿泊費が損害でありその額は3万5800円であると主張する。 一審原告40が避難のため宿泊した事実は認められ、同40の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した平成23年分宿泊費及び宿泊謝 礼計3万5000円(乙C40の1・5)の限度ではその支出額を認め - 799 -ることができるものの(弁論の全趣旨)、これを超える支出をしたことを示す領収証等の証拠は提出されていない。 したがって、3万5000円を本件事故と相当因果関係を有する宿泊費等の損害と認める。 (ウ) 合計 6万6200円 イ生活費増加費用(ア) 家財道具購入費一審原告1-1らは、同40は本件事故による避難により家財道具購入費10万4373円を支出し、これが損害となると主張する。この点、同40の請求に対して一審被告東京電力が既に平成23年分の家財道具 購入費30万円を賠償した事実が認められるから(乙C40の1・5)、上記主張額の限度で、本件事故と相当因果関係を有する家財道具購入費の損害を認める(弁論の全趣旨)。 (イ) 光熱費一審原告1-1らは、同40が本件事故による避難により夫(当時) との二重生活を余儀なくされ、水道光熱費が月額1万円増加し、平成23年3月から平成27年5月まで合計50万円増加し、これ 熱費一審原告1-1らは、同40が本件事故による避難により夫(当時) との二重生活を余儀なくされ、水道光熱費が月額1万円増加し、平成23年3月から平成27年5月まで合計50万円増加し、これが損害であると主張する。 この点、前記認定のとおり避難により夫との二重生活となり、水道光熱費を含め生活費が増加したものと認められ、また、証拠(乙C40の 1)によれば、一審被告東京電力は一審原告40に対し、ADRにおいて平成23年3月から同年12月までの二重生活に伴う生活費増加分として23万円を賠償したことが認められることも併せれば、生活費増加分の損害として、上記主張の月額1万円の10か月分(平成23年3月から同年12月まで)に相当する10万円の限度で、本件事故と相当因 果関係のある損害と認める。 - 800 -(ウ) 食費一審原告1-1らは、同40が本件事故前には自ら野菜等を作ったり近所の人と食糧を物々交換したりしていたが、避難したことにより平成23年3月から平成29年12月まで月額6500円食費が増加した旨主張する。 食費の具体的な増加額についての立証はないが、一審原告40がいわき市では野菜を作っていたのに避難後はそれができなくなったことは前記認定のとおりであり、同40の請求に対して一審被告東京電力が既に平成23年分の自家消費野菜に係る生活費増加費用5万8500円を賠償していること(乙C40の1・5)から、この額の限度で本 件事故と相当因果関係を有する食費増加の損害と認める(弁論の全趣旨)。 (エ) 家賃増加分一審原告40の避難生活のうち本件事故との相当因果関係が認められるのは平成23年12月31日までの部分であるが、同40がその間 (弁論の全趣旨)。 (エ) 家賃増加分一審原告40の避難生活のうち本件事故との相当因果関係が認められるのは平成23年12月31日までの部分であるが、同40がその間 に入居したのは大垣市の岐阜県の借上げ住宅であり、その家賃及び共益費等は同県知事が負担していたと認められる(甲C40の5)。 そうすると、一審原告40が、本件事故との相当因果関係ある避難生活の期間中に家賃等の負担をしたとは認められず、平成24年1月以降に家賃を負担したとしても本件事故と相当因果関係を有するものと はいえないから、同1-1らが主張する同40の家賃増加分の損害は認められない。 (オ) その他(駐車場代金)一審原告1-1らは、駐車場代金25万9380円が同40の損害であると主張するところ、同40は避難前には自動車を所有しておらず、 避難後に自動車を所有する必要性が生じた具体的な事情を認めるに足 - 801 -りないことから、駐車場代金を支出したとしても本件事故と相当因果関係を有する損害になるとはいえない。 (カ) その他(中古車購入代金)一審原告1-1らは、同40が中古車購入代金として29万円を支出し、これも損害であると主張するが、上記(オ)と同様、避難後に自動車 を所有する必要性が生じた具体的な事情を認めるに足りないから、中古車購入代金を支出したとしても本件事故と相当因果関係を有する損害になるとはいえない。 (キ) 合計 26万2873円ウ就労不能損害 一審原告40が本件事故前に月額約8万円の収入を得ていたことが認められ(甲C40の9)、本件事故による避難がなければ本件事故前と同程度の収入を得ることができたと ウ就労不能損害 一審原告40が本件事故前に月額約8万円の収入を得ていたことが認められ(甲C40の9)、本件事故による避難がなければ本件事故前と同程度の収入を得ることができたと推認することができる。また、障がいのある長男とともに避難して直ちに新たな就職先を見つけるのは困難であったといえるから、本件事故との相当因果関係ある平成23年12月 31日までの避難生活中の就労不能を本件事故と相当因果関係がある損害ということができる。 したがって、72万円(=8万円/月×9か月(平成23年4月から同年12月まで))を本件事故と相当因果関係を有する就労不能損害と認める。 エその他(ADR弁護士費用)一審原告1-1らは同40の損害としてADR弁護士費用70万3481円を主張する。 しかし、一審原告40の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した平成23年分ADR弁護士費用3万8265円(乙C40の1・5)を 超えて同40がADR弁護士費用を支出したと認めるに足りる証拠はな - 802 -く、この3万8265円の限度で本件事故と相当因果関係を有するADR弁護士費用の損害と認める(弁論の全趣旨)。 オ慰謝料一審原告40について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、本件事故直後の混乱期に 郡山市の知人宅、ホテル、大垣市の知人宅、借上げ住宅を飛行機や電車、バスで避難した状況、夫を残し障がいを持つ長男を連れての避難及び避難生活であったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを60万円と認めるのが相当である。 カ合計 168万7338円 3 弁済の抗弁(1) れての避難及び避難生活であったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを60万円と認めるのが相当である。 カ合計 168万7338円 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額一審原告40について 163万8587円(2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、これまで一審原告40に対し、以下のとおりの賠償 を行ったことが認められる(乙C40の1・5、弁論の全趣旨)。 ア ADR以外による賠償 12万円イ ADRによる賠償 123万3765円ADRにより、一審原告40に対する和解金額が131万3765円と合意され、そこからADR以外による賠償額のうち8万円を控除した12 3万3765円が支払われた。 ウ合計 135万3765円(3) 一審原告40に対する弁済額上記(2)ウが一審原告40に対する弁済額となり、一審被告東京電力の一審原告40に対する弁済の抗弁は一部認められる。 4 認容額等 - 803 -(1) 損害額 168万7338円(2) 弁済額 135万3765円(3) 弁済額控除後の損害額 33万3573円(4) 弁護士費用 4万円(5) 認容額 37万3573円 第38 一審原告41の世帯 1 認定事実(甲C41の1、一審原告41-1本人(原審)のほか後掲のもの)(1) 本件事故前の状況等一審原告41-1(本件事故当時62歳)及びその妻である同41-2(本件事故当時59歳)は、本件事故当時、福島県田村市所在の自宅(福島 第一原発からの距離20.99km(乙C41の2))に居住していた。 1(本件事故当時62歳)及びその妻である同41-2(本件事故当時59歳)は、本件事故当時、福島県田村市所在の自宅(福島 第一原発からの距離20.99km(乙C41の2))に居住していた。 一審原告41-1は、40歳の頃、田舎でシンプルな自給自足の生活を営むため、田村市都路町に雑木林を含む1500坪余りの土地を購入し、自らデザインの監修をした家を建て、仙台市内のマンションを処分して、平成5年に家族とともに移り住んだ。同41-1は、移住後、地下室、ベランダ、 薪小屋等を設ける改装をし、庭木を配置し、畑を設け、薪ストーブや自ら作った家具などを揃えるなど、多くの手間と時間をかけて家を作り上げた。 一審原告41-1は、平成22年11月に仕事を退職した。 一審原告41-2は地元の会社でパートタイム勤務をしており、60歳まで働く予定だった。 (2) 避難開始の経緯等平成23年3月12日の夕食後、避難指示の放送があり、防寒具を持って同日午後8時半までに集会場に来るよう指示されたので、一審原告41の世帯はその指示に従って集会所に行き、そこからバスで30km先の船引中学校に設けられた避難所に避難した。 一審原告41の世帯は、東京に住む長男や親戚から避難するよう再三言わ - 804 -れたこともあり、できるだけ遠いところへ避難しようと決めた。同41の世帯は、平成23年3月13日朝、避難所を出て、まず自動車を取りに自宅に戻り、長男の住む東京に向けて出発し、渋滞を避けて裏道を行き、途中のコンビニエンスストアで地図を買うなどしながら移動し、まず長男の住むアパートに2泊した。 一審原告41の世帯は、同41-2の実家がある岐阜県に行くことにし、平成23年3月15日、 のコンビニエンスストアで地図を買うなどしながら移動し、まず長男の住むアパートに2泊した。 一審原告41の世帯は、同41-2の実家がある岐阜県に行くことにし、平成23年3月15日、東京から岐阜県に向かい、同41-2の実家において、一部屋間借りして生活した。その後、同県各務原市の市営住宅に応募し、同月下旬に入居した。 (3) 避難後の状況等 一審原告41の世帯が入居した各務原市の市営住宅には風呂、洗濯機がなく、生活が不便であったので、平成23年6月、県営住宅に引っ越した。この県営住宅では、同40の世帯の自動車が福島ナンバーであったせいか、自動車に関するトラブルが絶えなかった。 一審原告41-2は、度重なる生活環境の変化等から、平成24年6月頃、 心療内科で中度のうつ病及び睡眠障害と診断され、平成25年5月頃から、睡眠障害の他に三叉神経痛なども併発して通院する必要が生じ、平成30年1月にはPTSDと診断された。 一審原告41の世帯は、岐阜県山県市に中古住宅を購入し、平成26年1月から居住している。 一審原告41の世帯は、田村市の自宅には思い入れがあって処分することができず、本件事故時のままにしているが、ベランダは雪の重みで崩れかけ、布団や衣類はカビで使い物にならない状態で、バイクは運搬費用がかかるため持ち出すことができない。 (4) 本件事故時住所地の状況等 一審原告41の世帯の本件事故当時の住所地は田村市で、同市のうち都路 - 805 -町を含む地域は旧緊急時避難準備区域であり、同市における環境放射能等の状況は前記第3章、第2、3のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審 町を含む地域は旧緊急時避難準備区域であり、同市における環境放射能等の状況は前記第3章、第2、3のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告41の世帯は、本件事故当時、旧緊急時避難準備区域である田村 市に居住していたところ、本件事故直後に避難指示を受けて船引中学校の避難所まで行き、東京にいた長男らから言われてさらに遠くに避難することにしたものであり、本件事故直後の混乱期であったことを考えれば、同41の世帯が避難所への避難の後、東京の長男宅、岐阜県の同41-2の実家、各務原市の市営住宅、県営住宅へと避難したことは本件事故によるものと認め られる。 他方、田村市の状況は前記のとおりであり、緊急時避難準備区域の指定も平成23年9月30日には解除されていることや、平成24年における環境放射能の値を考えると、遅くとも同年8月31日までには同市に帰還することに支障がなかったというべきである。 一審原告1-1らは、同41の世帯の自宅のある田村市都路町は旧避難指示解除準備区域に近接しているから、避難継続の合理性については同区域の住民と同程度の期間を認めるべきと主張する。しかし、上記の各事情によれば、自宅が同町にあるからといって、平成24年8月31日より後も帰還に支障があるような状況であったとはいえない。 したがって、一審原告41の世帯の避難生活について本件事故と相当因果関係が認められるのは、平成24年8月31日までの部分に限られるとするのが相当である。 (2) 一審原告41-1の損害ア財物損害以外の損害 (ア) 避難費用 - 806 -① 交通費一審原告41の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した11 審原告41-1の損害ア財物損害以外の損害 (ア) 避難費用 - 806 -① 交通費一審原告41の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した11万1000円(乙C41の5)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 ② 宿泊費・謝礼 一審原告1-1らは、同41-1が山県市への引越しを手伝ってくれた知人や親戚に対する謝礼として合計8000円を支払ったとしてこれが損害であると主張する。 しかし、一審原告41の世帯の本件事故との相当因果関係が認められる避難生活は平成24年8月31日までの部分に限られるから、平 成26年1月の山県市への引越しは本件事故によるものとはいえず、その謝礼が本件事故による損害であるとの主張は失当である。 ③ 引越し費用一審原告1-1らは、同41-1の山県市への引越し費用12万6000円が損害であると主張するが、上記②のとおり、この引越しは 本件事故によるものとはいえず、主張は認められない。 ④ 一時立入り・帰省費用a 平成23年3月11日から平成24年8月31日まで一審原告1-1らは、同41-1の一時立入り・帰省費用の100万7540円が損害であると主張する。しかし、同41-1の請 求に対して一審被告東京電力が既に賠償した一時立入り・帰省費用89万3240円(乙C41の5)の限度では本件事故と相当因果関係のある損害の発生を認める余地があるが、これを超えて同41-1が一時立入り・帰省費用を負担したとは認められない。 したがって、89万3240円の限度で本件事故と相当因果関係 を有する一時立入り・帰省費用の損害と認める。 - 807 -b 平 り・帰省費用を負担したとは認められない。 したがって、89万3240円の限度で本件事故と相当因果関係 を有する一時立入り・帰省費用の損害と認める。 - 807 -b 平成24年9月1日から平成28年5月まで一審原告41の世帯の本件事故との相当因果関係が認められる避難生活は平成24年8月31日までの部分に限られるから、同年9月1日以降の一時立入りに要した費用は、本件事故と相当因果関係を有するものとはいえず、一審原告1-1らが主張する上記期間分 の損害は認められない。 ⅽ 合計 89万3240円⑤ 合計 100万4240円(イ) 生活費増加費用① 家財道具購入費 一審原告1-1らは、同41-1が山県市に転居した際の家財道具の購入費用65万4636円が損害であると主張するが、山県市への転居は本件事故と相当因果関係を有するものではないから、この主張は認められない。 ② 光熱費 一審原告1-1らは、同41の世帯が本件事故による避難をしたため、光熱費が避難前よりも36万3187円増加し、これが同41-1の損害であると主張する。 この点、避難によって、電気代については月額平均約2000円、ガス代については月額約600円増加したことが認められる(甲C4 1の1・5から9まで、一審原告41-1本人(原審)、弁論の全趣旨)。もっとも、一審原告40の避難生活について本件事故との相当因果関係が認められるのは平成24年8月31日までの部分に限られるから、本件事故と相当因果関係を有する損害についても平成23年3月から平成24年8月までの増加分に限られるというべきである。 また、上掲証拠によれば、水道代については、同月までに3万405 るから、本件事故と相当因果関係を有する損害についても平成23年3月から平成24年8月までの増加分に限られるというべきである。 また、上掲証拠によれば、水道代については、同月までに3万405 - 808 -8円を要したことが認められる。 したがって、8万0858円(=(電気代2000円/月+ガス代600円/月)×18か月+水道代3万4058円)を本件事故と相当因果関係を有する光熱費の損害と認める。 ③ 交通費 一審原告1-1らは、同41-2が平成25年に親戚の法要のために交通費を要したとして、同41-1の損害として3万5940円を主張するが、同41の世帯の避難生活について本件事故との相当因果関係が認められるのは平成24年8月31日までの部分に限られるから、その後の上記交通費は本件事故と相当因果関係を有するものとは いえず、主張は認められない。 ④ 食費一審原告1-1らは、同41の世帯が、避難後、店舗等で野菜を購入する必要が生じたことにより食費が増加したとして40万0593円の増加分を同41-1の損害として主張する。 しかし、一審原告41の世帯が自宅に畑を作っていた事実は前記のとおり認められるけれども、避難による食費の増加について具体的に認めるに足りる証拠はなく、同41の世帯の請求に対し一審被告東京電力が既に平成23年3月から平成25年11月分の食費増加費用22万円を賠償したこと(乙41の1・5)から、うち12万円を本件 事故と相当因果関係がある避難期間中の食費増加額と認める(弁論の全趣旨)。 したがって、12万円を本件事故と相当因果関係を有する食費の損害と認める。 ⑤ 合計20万0858円 (ウ) その他(住宅購入費用) - (弁論の全趣旨)。 したがって、12万円を本件事故と相当因果関係を有する食費の損害と認める。 ⑤ 合計20万0858円 (ウ) その他(住宅購入費用) - 809 -一審原告1-1らは、同41-1が平成25年に山県市で中古住宅を購入した際の費用40万1091円が損害であると主張するが、山県市における住宅の購入は本件事故と相当因果関係を有するとはいえないから、その購入費用の損害の主張は認められない。 (エ) その他(車両買換え費用) 一審原告1-1らは、同41の世帯が田村市から岐阜県へ荷物を移動させるために自動車の買換えを余儀なくされたとして、買換え費用29万円が同41-1の損害であると主張する。 しかし、避難のために荷物を移動する必要があったとしても、そのために自動車を買い換えなければならないとはいえず、自動車の買換え費 用は本件事故と相当因果関係を有するものではなく、上記主張は認められない。 (オ) 生命・身体的損害一審原告1-1らは、同41-1の生命・身体的損害の5万6490円が損害であると主張する。しかし、同41-1の請求に対して一審被 告東京電力が既に賠償した生命・身体的損害3978円(乙C41の1・5)の限度では本件事故と相当因果関係のある損害の発生を認める余地があるが、これを超えて同41-1が医療費等の生命・身体的損害を負担したとは認められない。 したがって、3978円の限度で本件事故と相当因果関係を有する生 命・身体的損害と認める。 (カ) 慰謝料一審原告41-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、避難指示を端緒に避難所へ避難したこと、さらに遠くに避難するため (カ) 慰謝料一審原告41-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、避難指示を端緒に避難所へ避難したこと、さらに遠くに避難するため本件事故直後の混乱 期に東京の長男宅まで自動車で避難したこと、その後は、岐阜県の同4 - 810 -1-2の実家、各務原市の市営住宅、県営住宅を転々とする避難生活であったこと、間借りや風呂なしなど不自由な生活があったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを180万円と認めるのが相当である。 (キ) 合計 300万9076円 イ財物損害(ア) 家財道具一審原告1-1らは、同41-1が本件事故により田村市の自宅の家財道具を処分せざるを得なくなったとして、処分した家財道具の購入費用427万8100円が損害であると主張する。 しかし、一審原告41の世帯の自宅は旧緊急時避難準備区域に所在し、一時的に自宅から避難したとしても平成24年8月31日より後には帰還することができたのであるし、避難生活中も一時帰宅して必要な家財道具を持ち出すことも不可能ではなかったというべきであるから、本件事故により家財道具を処分せざるを得なくなったということはで きず、上記主張は認められない。 (イ) 不動産一審原告1-1らは、本件事故により田村市の自宅が使用できなくなったとして、上記自宅の平成23年1月時点の固定資産評価額である298万1218円が同41-1の損害であると主張する。 しかし、上記自宅は旧緊急時避難準備区域に所在し、一時帰宅して自宅の管理を行うことも不可能ではなかったといえるから、本件事故により上記自宅の価値が全く の損害であると主張する。 しかし、上記自宅は旧緊急時避難準備区域に所在し、一時帰宅して自宅の管理を行うことも不可能ではなかったといえるから、本件事故により上記自宅の価値が全くなくなったとまではいえない。また、水が使えなくなっているとしても、その原因が本件地震によるものであるのか本件事故によるものであるのかは不明であり、本件事故により自 宅が完全に使用不能になったということはできない。 - 811 -一方で、田村市における森林の除染の完了は遅ければ平成27年7月末であり(前記第3章、第2、3)、一審原告41の自宅を取り囲む雑木林の除染には時間がかかったであろうことを考慮すると、本件事故により、その固定資産評価額の約3分の1である100万円相当の価値下落があったと認めるのが相当である。 一審原告1-1らは、雑木林の除染がなされていない以上、同41の世帯の自宅に生活拠点としての価値はないから、100万円以上の損害を認めるべき旨主張するが、同41の世帯の自宅の価値が全損した又は100万円を超える価値の下落があったと認めるに足りる証拠が見当たらず、上記主張は採用することができない。 したがって、100万円を本件事故と相当因果関係を有する不動産の財物損害と認める。 (ウ) その他(屋根修理代)一審原告1-1らは、同41-1が田村市の自宅の屋根の修理代として2万6250円の支出を余儀なくされ、これが損害であると主張す るが、屋根修理を要する状態になったとしても、その原因が本件地震によるものであるのか本件事故によるものであるのかは不明であり、上記修理代が本件事故と相当因果関係を有すると直ちに認めることはできない。 (エ) る状態になったとしても、その原因が本件地震によるものであるのか本件事故によるものであるのかは不明であり、上記修理代が本件事故と相当因果関係を有すると直ちに認めることはできない。 (エ) 合計 100万円 ウ合計 400万9076円(3) 一審原告41-2の損害一審原告41-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、避難指示を端緒に避難所へ避難したこと、さらに遠くに避難するため本件事故直後の混乱期に東京の長 男宅まで自動車で避難したこと、その後は、岐阜県の同41-2の実家、各 - 812 -務原市の市営住宅、県営住宅を転々とする避難生活であったこと、間借りや風呂なしなど不自由な生活があったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを180万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額 ア一審原告41-1について 363万7375円イ一審原告41-2について 381万0118円(2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、これまで一審原告41の世帯に対し、以下のとおりの賠償を行ったことが認められる(乙C41の1・5から8まで)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告41-1に対しその他(財物損害以外)、一時立入り費用、精神的損害(避難生活)、避難・帰宅費用、通院交通費等の生活費の増加分 330万5487円(イ) 一審原告41-2に対しその他(財物損害以外)、一時立入り費 用、就労不能損害、生命・身体的損害、精神的損害(避難生活)、通院交通費等の生活費の増加分 378万6 487円(イ) 一審原告41-2に対しその他(財物損害以外)、一時立入り費 用、就労不能損害、生命・身体的損害、精神的損害(避難生活)、通院交通費等の生活費の増加分 378万6918円イ ADRによる賠償 35万5088円ADRにより、一審原告41の世帯に対する和解金額が35万5088円と合意され、同額が支払われた。 (内訳)(ア) 一審原告41-1の避難費用、生活費増加費用、ADR弁護士費用33万1888円(イ) 一審原告41-2の生命・身体的損害(通院慰謝料)2万3200円 (ウ) 合計(和解金額) 35万5088円 - 813 -(エ) 既払い金 0円(オ) 合計(支払い額) 35万5088円ウ合計 744万7493円(内訳)(ア) 財物損害以外の損害 744万7493円 (イ) 財物損害 0円(3) 一審原告41の世帯に対する各弁済額ア一審原告41-1に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 330万5487円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし て扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 33万1888円ADRによる賠償額のうち、一審原告41-1に対する賠償であることが明らかであるか同41の世帯のために同41-1が支出したものと認められる前記(2)イ(ア)の33万1888円が同41-1に対する 弁済額と認められる。 (ウ) 合計 363万7375円したがって、一審被告東京電力の一審原告41-1に められる前記(2)イ(ア)の33万1888円が同41-1に対する 弁済額と認められる。 (ウ) 合計 363万7375円したがって、一審被告東京電力の一審原告41-1に対する弁済の抗弁は財物損害以外の損害に対する弁済をいうものとして全部認められる。 イ一審原告41-2に対する弁済額 (ア) ADR以外による賠償 378万6918円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 2万3200円ADRにおける賠償額のうち、一審原告41-2に対する賠償である ことが明らかな前記(2)イ(イ)の2万3200円が同41-2に対する弁 - 814 -済額となる。 (ウ) 合計 381万0118円したがって、一審被告東京電力の一審原告41-2に対する弁済の抗弁は全部認められる。 4 認容額等 (1) 一審原告41-1ア財物以外の損害(ア) 損害額 300万9076円(イ) 弁済額 363万7375円(ウ) 弁済額控除後の損害額 0円 (エ) 認容額 0円イ財物損害(ア) 損害額 100万円(イ) 弁済額 0円(ウ) 弁済額控除後の損害額 100万円 (エ) 弁護士費用 10万円(オ) 認容額 110万円ウ合計認容額 110万円(2) 一審原告41-2 ア損害額 180万円イ弁済額 381万0118円ウ弁済額控除後の損害額 0円エ認容額 0円第39 一審原告42の世帯 (2) 一審原告41-2 ア損害額 180万円イ弁済額 381万0118円ウ弁済額控除後の損害額 0円エ認容額 0円第39 一審原告42の世帯 1 認定事実(甲C42の1の1・2、一審原告42-1本人(原審)のほか後 - 815 -掲のもの)(1) 本件事故前の状況等一審原告42-1(本件事故当時33歳)、その長女である同42-2(本件事故当時10歳)、長男である同42-3(本件事故当時8歳)、二女である同42-4(本件事故当時6歳)は、本件事故当時、福島市内の自 宅(福島第一原発からの距離63.39km(乙C42の2))に居住していた。 本件事故当時、一審原告42-1は福島市内にある病院に看護師として勤務しており、同42-2は小学4年生、同42-3は小学2年生、同42-4は保育園の年長であった。同42-1は、同42-2から同42-4まで の親権者であり、同42-1の収入のみで家族4人の生計を立てていた。 (2) 避難開始の経緯等一審原告42-1は、本件地震発生後の平成23年3月12日、夜勤の仕事に行くために、同42-2から同42-4までを託児所に預けた。同42-1の両親は福島県南相馬市原町区に居住していたが、母が、同日、同42 -1の家に避難してきて、本件地震発生時に東京に行っていた父も、同月13日、同42-1の家に避難してきた。同42-1は、同月14日、テレビで福島第一原発が爆発する映像を見て、この爆発により放射性物質が広範囲に放出されるとの報道を聞いて、放射線による被ばくを避けるため、福島市外へ避難することを決めた。 一審原告42-1は、平成23年3月14日、自動車に同42-2から同42-4まで及び両親を乗せ、新潟市に との報道を聞いて、放射線による被ばくを避けるため、福島市外へ避難することを決めた。 一審原告42-1は、平成23年3月14日、自動車に同42-2から同42-4まで及び両親を乗せ、新潟市に避難し、同市内のホテルに2泊した。 宿泊中に本件事故のニュースを見るうち、同42-1とその両親は福島県に帰ることはできないと考え、静岡県掛川市に住んでいる同42-1の弟の家近くに避難することにした。同42の世帯及び同42-1の両親は、同月1 6日、自動車で新潟市から掛川市へ向かい、同市内のホテルに4泊し、ホテ - 816 -ルに宿泊している間に同市役所に相談し、同月20日、市営住宅に移った。 同42の世帯は家財道具等を何も持たない状態で避難していたため、最低限の家財道具や子らの学用品を買い揃えた。 一審原告42-1は、平成23年3月25日、仕事に復帰するため自動車で福島市の自宅に戻り、同42-1の両親と同42-2から同42-4まで が掛川市に残り、両親が同42-2から同42-4までの面倒を見た。同42-1は、毎月、1度は1週間近い連休を取るようにして、掛川市に行っていたが、福島市と掛川市の二重生活に限界を感じるようになり、同年11月頃に同市内にマンションを借り、同年12月に勤務先の病院を退職し、平成24年1月から同マンションで同42-2から同42-4までと一緒の生活 を始めた。なお、同42-1の両親は、その頃、同市内の別の場所に転居した。 (3) 避難後の状況等一審原告42-1が平成23年3月末に職場に復帰したところ、勤務先からは一時的とはいえ避難したことを責められた。また、同42-1が掛川市 に行くため勤務先を退職した際、奨学金の返済として100万円の支払いを求められた。 一審原 したところ、勤務先からは一時的とはいえ避難したことを責められた。また、同42-1が掛川市 に行くため勤務先を退職した際、奨学金の返済として100万円の支払いを求められた。 一審原告42-1は、掛川市に引っ越した後しばらくは無収入で貯金を切り崩して生活していたが、平成24年4月から同市内の病院で看護師として勤務するようになった。同病院では、同僚から言葉の違いを言われて、辛い 思いをしたこともあった。 一審原告42-2から同42-4までは、特に問題なく学校に通った。 一審原告42-1は、平成29年5月、掛川市内に自宅を購入し、同42の世帯はそこに転居した。 (4) 本件事故時住所地の状況等 一審原告42の世帯の本件事故当時の住所地は福島市で、同市は自主的避 - 817 -難等対象区域であり、同市における環境放射能等の状況は前記第3章、第1、1のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告42の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島 市に居住していたところ、福島第一原発が爆発するニュースを見るなどしたことから本件事故直後に新潟市へ、さらにそこから掛川市へ避難したものであり、この避難は本件事故によるものと認められる。 他方、福島市の環境放射能の状況等は前記認定のとおりであり、平成23年から平成24年にかけても環境放射能の値は低下しており、本件事故直後 の混乱期は別として、通常、遅くとも平成23年12月31日までに、一般的に放射能の影響を受けやすいとされる子ども、幼児がいる場合でも遅くとも平成24年8月31日までには、避難先から同市に帰還することに支障はなくなっていたというべき 平成23年12月31日までに、一般的に放射能の影響を受けやすいとされる子ども、幼児がいる場合でも遅くとも平成24年8月31日までには、避難先から同市に帰還することに支障はなくなっていたというべきである。 したがって、子ども、幼児である一審原告42-2から同42-4までの 避難生活について本件事故との相当因果関係が認められるのは平成24年8月31日までの部分に限られるというのが相当である。 また、一審原告42-1については、まず平成23年3月14日から同月25日までの新潟市及び掛川市における避難生活が本件事故との相当因果関係が認められる。また、平成24年1月の掛川市への転居は、上記のとおり 本件事故と相当因果関係ある避難生活を同市で続けていた同42-2から同42-4までと同居するためであったから、これも本件事故による再避難とみることができ、その後の避難生活は同年8月31日までの限度で本件事故との相当因果関係が認められ、平成23年3月25日から同年12月頃までの福島市と掛川市の二重生活に要した費用等も相当な範囲で本件事故と相当 因果関係のある損害と認めるのが相当というべきである。 - 818 -(2) 一審原告42-1の損害ア避難費用(ア) 交通費一審原告1-1らは、同42の世帯が福島市から新潟市へ避難する際の交通費及び新潟市から掛川市に避難する際の交通費として計3万80 00円を要したとして、これが同42-1の損害であると主張する。 一審原告42-1が実際に上記金額を支出したことを示す証拠はないものの、同42の世帯がその主張のとおり自動車で移動した事実は前記のとおり認められ、この事実によれば、同42-1に少なくとも2万円の交通費が発生した事実を推認することが 支出したことを示す証拠はないものの、同42の世帯がその主張のとおり自動車で移動した事実は前記のとおり認められ、この事実によれば、同42-1に少なくとも2万円の交通費が発生した事実を推認することができる。 したがって、2万円を本件事故と相当因果関係がある交通費の損害と認める。 (イ) 宿泊費・謝礼一審原告1-1らは、同42の世帯が福島市から新潟市へ避難する際の宿泊費及び新潟市から掛川市に避難する際の宿泊費として10万80 00円を要し、これが同42-1の損害となると主張する。 一審原告42-1が実際に上記金額を支出したことを示す証拠はないものの、同42の世帯が新潟市のホテルで2泊、掛川市のホテルで4泊した事実は前記のとおり認められ、この事実によれば、同42-1に上記主張額を下らない宿泊費が発生した事実を推認することができる。 したがって、10万8000円を本件事故と相当因果関係を有する宿泊費の損害と認める。 (ウ) 引越し費用一審原告42-1が引越し費用として15万7950円を要した事実が認められ(甲C42の4)、この15万7950円を本件事故と相当 因果関係を有する引越し費用の損害と認める。 - 819 -(エ) 敷金・礼金一審原告1-1らは、同42-1が避難先である掛川市の市営住宅の賃貸借契約締結に際して一時金等として19万8000円を要し、これが損害となると主張するが、同市営住宅の賃貸借契約書(甲C42の5)では一時金等の負担者は静岡県知事となっており、同42-1がこれを 負担したとは認めるに足りず、上記主張は認められない。 (オ) 一時立入り・帰省費用一審原告1-1らは、同42-1が平成23年3月25日に掛川市から福島市内の自宅に自動車で戻 れを 負担したとは認めるに足りず、上記主張は認められない。 (オ) 一時立入り・帰省費用一審原告1-1らは、同42-1が平成23年3月25日に掛川市から福島市内の自宅に自動車で戻った際の費用として2万2000円を要したとして、これが損害であると主張する。 一審原告42-1が実際に上記金額を支出したと認めるに足りる証拠はないが、同42-1が上記のとおり移動した事実は前記のとおり認められ、この事実によれば少なくとも1万円の費用を要した事実を推認することができる。 したがって、1万円を本件事故と相当因果関係を有する帰宅費用の損 害と認める。 (カ) 面会交通費一審原告42-1が本件事故と相当因果関係がある二重生活期間中である平成23年4月から同年12月までの間、月1回、福島市と掛川市を往復していた事実は前記のとおり認められ、月1回は相当な範囲の面 会交通であるといえ、前記(オ)のとおり福島市、掛川市間の移動に要する費用は少なくとも1万円と推認できる。 したがって、18万円(=1万円×2(往復)×9回(平成23年4月から同年12月まで))を本件事故と相当因果関係を有する面会交通費の損害と認める。 (キ) 合計 47万5950円 - 820 -イ生活費増加費用(ア) 家財道具購入費一審原告1-1らは、同42-1が家財道具購入費として54万4376円を要し、これが損害となると主張する。 一審原告1-1らは、同42-1が家財道具を購入したことを示す領 収証等の証拠を一切提出しないが、同42-1が家財道具を持ち出さないまま新潟市を経て掛川市に避難し、同市において最低限の家財道具や子らの学用品を買い揃えたこと、同42の世帯は大人1名と子ども3名 収証等の証拠を一切提出しないが、同42-1が家財道具を持ち出さないまま新潟市を経て掛川市に避難し、同市において最低限の家財道具や子らの学用品を買い揃えたこと、同42の世帯は大人1名と子ども3名の家族であることの各事実は前記のとおり認められ、この事実によれば、生活のための家財道具及び子らの学用品の購入費用として少なくとも1 0万円を要した事実を推認することができる。 したがって、10万円の限度で本件事故と相当因果関係を有する家財道具購入費の損害と認める。 (イ) 光熱費一審原告1-1らは、二重生活により水道光熱費が増加し同42-1 が13万5000円の損害を被ったと主張するが、実際に水道光熱費が増加したことについて具体的な立証がなく、上記主張は認められない。 (ウ) 交通費一審原告1-1らは、同42-1が越境通学をしていた子らの送迎に要した交通費として7万5600円を要し、これが損害であると主張す る。 しかし、そのような交通費が発生したとしても、それは本件事故による避難のために発生した費用ではなく、一審原告42-1が子らを越境通学させたことにより発生した費用であり、本件事故と相当因果関係を有するものとはいえないから、上記主張は認められない。 (エ) 通信費 - 821 -一審原告1-1らは、二重生活により同42-1の通信費が増加したとして9万円の損害を主張するが、実際に通信費が増加したことについて具体的な立証がなく、上記主張は認められない。 (オ) 被服費一審原告1-1らは、同42の世帯の避難後1年程度は同42-1が 避難先で同42-2から同42-4までの被服を買い足さなければならなかったとして、被服費5万4000円の損害を主張する。 しか 一審原告1-1らは、同42の世帯の避難後1年程度は同42-1が 避難先で同42-2から同42-4までの被服を買い足さなければならなかったとして、被服費5万4000円の損害を主張する。 しかし、一審原告42-1は月に1回は福島市から掛川市に行っていたのであるから、その際に同42-2から同42-4までの服を自宅から持っていくことも可能であり、被服を買い足す必要があったとしても、 それが本件事故による避難のためであるとは直ちには認められない。 (カ) 食費一審原告1-1らは、本件事故による避難前は同42-1が実家から野菜や米などをもらっていたがそれができなくなったことや同42-1が二重生活となったことから食費が増加し同42-1が135万円の損 害を被ったと主張するが、実際に食費が増加したことについて具体的な立証がなく、上記主張は認められない。 (キ) 教育費一審原告1-1らは、本件事故により避難したため同42-1が同42-2から同42-4までの教材等を新たに買い揃える必要性が生じ、 同42-1に13万2000円の損害を被ったと主張するが、前記(ア)で認めた避難直後の学用品の購入以外に、同42-1が実際に上記の支出をしたと認めるに足りる証拠はなく、上記主張は認められない。 (ク) 合計 10万円ウ就労不能損害 一審原告42の世帯の請求に対して一審被告東京電力が既に賠償した一 - 822 -審原告42-1の平成24年1月から同年3月までの就労不能損害120万7439円(乙C42の1・4)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 エ被ばく検査費用一審原告1-1らは、同42-1が平成24年から平成29年まで、同 42-2から (乙C42の1・4)を本件事故と相当因果関係を有する損害と認める(弁論の全趣旨)。 エ被ばく検査費用一審原告1-1らは、同42-1が平成24年から平成29年まで、同 42-2から同42-4までに甲状腺検査を受けさせた際の交通費として2646円を支出し、これが同42-1の損害となると主張する。 この点、証拠(甲C42の1の2)によれば、一審原告42-1は、同42-2から同42-4までに被ばく検査を受検させるために自動車で浜松医科大学附属病院に3回赴いたことが認められ、その際、1kmあ たり15円で片道29.4kmとして15円×2(往復)×29.4km×3回=2646円の交通費を要したことが認められる。 そして、一審原告42-1が、一般的に放射線の影響を受けやすいとされる子ども、幼児である同42-2から同42-4までが、福島市から避難する前に被ばくし、その影響が出現することを懸念し、後日、相当 な範囲で甲状腺検査を受検させることは社会通念上相当な行動といえ、そのための交通費は本件事故と相当因果関係を有するものといえる。 したがって、2646円を本件事故と相当因果関係ある被ばく検査費用の損害と認める。 オ慰謝料 一審原告42-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難(再避難を含む。)及び避難生活中並びに二重生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、本件事故直後の混乱期に自動車でまず新潟市へ、次いで掛川市に向かい、ホテル住まいの後、市営住宅に入居した避難の状況、子ども、幼児である同42-2から同42-4までを伴っての避難であ ったこと、看護師の仕事に復帰するため同42-2から同42-4まで - 823 -を両親に委ねて福島市の自宅に帰らなければならなかったこと、その後、月に1度 -4までを伴っての避難であ ったこと、看護師の仕事に復帰するため同42-2から同42-4まで - 823 -を両親に委ねて福島市の自宅に帰らなければならなかったこと、その後、月に1度掛川市に通う二重生活の期間が続いたこと、同42-2から同42-4までと同居するため仕事を辞めなければならなかったこと、新旧の勤務先でそれぞれ辛い思いをしたことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを80万円と認めるのが相当である。 カ合計 258万6035円(3) 一審原告42-2の損害一審原告42-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、新潟市を経て掛川市まで自動車で移動し、ホテル住まいの後、市営住宅に入居した避難の状況、母であ る同42-1と二重生活の期間が続いたことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 (4) 一審原告42-3の損害一審原告42-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、新潟市を経て掛川市まで自 動車で移動し、ホテル住まいの後、市営住宅に入居した避難の状況、母である同42-1と二重生活の期間が続いたことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 (5) 一審原告42-4の損害一審原告42-4について本件事故との相当因果関係が認められる避難及 び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、新潟市を経て掛川市まで自動車で移動し、ホテル住まいの後、市営住宅に入居した避難の状況、母である同42-1と二重生活の期間が続いたことその他前記認定の一切の事情を考 の精神的苦痛に対する慰謝料額は、新潟市を経て掛川市まで自動車で移動し、ホテル住まいの後、市営住宅に入居した避難の状況、母である同42-1と二重生活の期間が続いたことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを100万円と認めるのが相当である。 3 弁済の抗弁 (1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額 - 824 -ア一審原告42-1について 202万3762円イ一審原告42-2について 147万6667円ウ一審原告42-3について 147万6667円エ一審原告42-4について 147万6666円(2) 一審被告東京電力による賠償 一審被告東京電力は、これまで一審原告42の世帯に対し、以下のとおりの賠償を行ったことが認められる(乙C42の1・4)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告42-1に対し自主避難等に係る損害 64万円(イ) 一審原告42-2に対し自主避難等に係る損害 72万円 (ウ) 一審原告42-3に対し自主避難等に係る損害 72万円(エ) 一審原告42-4に対し自主避難等に係る損害 72万円(オ) 合計 280万円イ ADRによる賠償 365万3762円ADRにより、一審原告42の世帯に対する和解金額が605万376 2円と合意され、そこからADR以外による賠償額のうち240万円を控除した365万3762円が支払われた。 (内訳)(ア) 生活費増加費用、移動費用、避難雑費、ADR弁護士費用404万6323円 (イ) 就労不能損害 120万7439円(ウ) 精神的損害 訳)(ア) 生活費増加費用、移動費用、避難雑費、ADR弁護士費用404万6323円 (イ) 就労不能損害 120万7439円(ウ) 精神的損害 80万円(エ) 合計(和解金額) 605万3762円(オ) 既払い金 240万円(一審原告42-1から同42-4まで分各60万円) (カ) 合計(支払い額) 365万3762円 - 825 -ウ合計 645万3762円(3) 一審原告42の世帯に対する各弁済額ア一審原告42-1に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 64万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし て扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 365万3762円ADRにおける和解金額からの既払い金240万円の控除は、まず前記(2)イ(ウ)の精神的損害80万円から全額が控除され、次いで一審原告42-1が支出した同42の世帯共通の費用である同(ア)から160万 円が控除されたものとみて、その余の同(ア)の244万6323円と同42-1に対する賠償であることが明らかな同(イ)の120万7439円の合計額である365万3762円をADRによる賠償のうち同42-1に対する弁済額とする。 (ウ) 合計 429万3762円 したがって、一審被告東京電力の一審原告42-1に対する弁済の抗弁202万3762円は全部認められる。 イ一審原告42-2に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし て扱うのが相当である。 (イ) ADRに 告42-2に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし て扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRにおける和解金額のうち前記(2)イ(ウ)の精神的損害の一審原告42-2に係る部分は既払い金により控除済みとみて、ADRによる賠償による同42-2に対する弁済額を0円とする。 (ウ) 合計 72万円 - 826 -したがって、一審被告東京電力の一審原告42-2に対する弁済の抗弁は一部認められる。 ウ一審原告42-3に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済とし て扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRにおける和解金額のうち前記(2)イ(ウ)の精神的損害の一審原告42-3に係る部分は既払い金により控除済みとみて、ADRによる賠償による同42-3に対する弁済額を0円とする。 (ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告42-3に対する弁済の抗弁は一部認められる。 エ一審原告42-4に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 72万円 ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRにおける和解金額のうち前記(2)イ(ウ)の精神的損害の一審原告42-4に係る部分は既払い金により控除済みとみて、ADRによる賠 償による同42-4に対する弁済額を0円とする。 (ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審 審原告42-4に係る部分は既払い金により控除済みとみて、ADRによる賠 償による同42-4に対する弁済額を0円とする。 (ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告42-4に対する弁済の抗弁は一部認められる。 4 認容額等 (1) 一審原告42-1 - 827 -ア損害額 258万6035円イ弁済額 202万3762円ウ弁済額控除後の損害額 56万2273円エ弁護士費用 6万円オ認容額 62万2273円 (2) 一審原告42-2ア損害額 100万円イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害額 28万円エ弁護士費用 3万円 オ認容額 31万円(3) 一審原告42-3ア損害額 100万円イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害額 28万円 エ弁護士費用 3万円オ認容額 31万円(4) 一審原告42-4ア損害額 100万円イ弁済額 72万円 ウ弁済額控除後の損害額 28万円エ弁護士費用 3万円オ認容額 31万円第40 一審原告43の世帯 1 認定事実(甲C43の1、一審原告43-1本人(原審)のほか後掲のもの) (1) 本件事故前の状況等 - 828 -一審原告43-1(本件事故当時34歳)、その長女である同43-2(本件事故当時8歳)、その長男である同43-3(本件事故当時5歳)、同43-1の夫(同43-2及び同43-3の父。本件事故当時37歳)は、本件事故当時、福島市所在の社宅(福島第一原発からの距 -2(本件事故当時8歳)、その長男である同43-3(本件事故当時5歳)、同43-1の夫(同43-2及び同43-3の父。本件事故当時37歳)は、本件事故当時、福島市所在の社宅(福島第一原発からの距離50.45km(乙43の1))に居住していた。 一審原告43-1は、夫と平成13年に結婚し、本件事故当時は主婦であった。夫は福島市内の地方銀行に勤務していた。 (2) 避難開始の経緯等一審原告43-1は、平成23年3月12日、名古屋市の実家にいる母や妹から、同市に避難したらどうかと誘われた。同月13日、福島県双葉郡富 岡町に住んでいた同43-1の夫の父が同43の世帯の福島市の社宅に避難してきた。同43-1は、同月15日頃、夫と相談し、放射能の影響を考慮して、夫以外で名古屋市へ避難することを決めた。同43の世帯及び夫の父は、同月16日、タクシーで那須塩原駅に行き、同駅から新幹線で東京を経由して名古屋市に向かい、同日夜、同43-1の実家に到着した。 (3) 避難後の状況等一審原告43の世帯は、避難当初は同43-1の実家で生活していたが、その後実家の近くに転居した。同43-1は主婦として、同43-2及び同43-3の世話をしながら生活している。 一審原告43-2及び同43-3は、平成23年5月から名古屋市内の小 学校に転入した。 一審原告43の世帯が本件事故当時居住していた社宅はなくなっており、同43-1の夫は、現在は、勤務先の福島県内の支店の近くにある別の社宅に居住し、月に2回程度、名古屋市との間を往復している。 (4) 本件事故時住所地の状況等 一審原告43の世帯の本件事故当時の住所地は福島市で、同市は自主的避 - 829 -難等対象区域であり、同市における環境放射能等の状 ている。 (4) 本件事故時住所地の状況等 一審原告43の世帯の本件事故当時の住所地は福島市で、同市は自主的避 - 829 -難等対象区域であり、同市における環境放射能等の状況は前記第3章、第1、1のとおりである。 2 損害(1) 避難のうち本件事故と相当因果関係が認められる部分一審原告43の世帯は、本件事故当時、自主的避難等対象区域である福島 市に居住していたところ、同43-1は、本件事故直後、名古屋市に住む母や妹から避難の誘いがあったり、夫の父が富岡町から福島市に避難してきたりという切迫した状況で、放射線の子らへの影響を心配して名古屋市への避難を決めたもので、本件事故直後で情報が十分でなかったことを考えると、同43の世帯が避難を行ったことは本件事故によるものと認められる。 他方、福島市の環境放射能の状況等は前記認定のとおりであり、平成23年から平成24年にかけても環境放射能の値は低下しており、本件事故直後の混乱期は別として、通常、遅くとも平成23年12月31日までに、一般的に放射能の影響を受けやすいとされる子ども、幼児がいる場合でも遅くとも平成24年8月31日までには、避難先から同市に帰還することに支障は なくなっていたというべきであり、このことは一審原告43-1の夫が避難せずに福島市に残っていたことを考慮しても明らかである。 したがって、一審原告43-2及び同43-3が本件事故当時、子ども、幼児であったことを考慮すれば、同43の世帯の避難生活のうち本件事故との相当因果関係が認められるのは平成24年8月31日までの部分に限られ るとするのが相当である。 (2) 一審原告43-1の損害一審原告43-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中 るのは平成24年8月31日までの部分に限られ るとするのが相当である。 (2) 一審原告43-1の損害一審原告43-1について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、同43-2及び同43-3を伴っての避難及び避難生活であったこと、夫と離れての避難生活とな ったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを80万円と認 - 830 -めるのが相当である。 (3) 一審原告43-2の損害一審原告43-2について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、避難先の小学校への転入となったこと、父と離れての避難生活であったことその他前記認定の一切の事 情を考慮すれば、これを80万円と認めるのが相当である。 (4) 一審原告43-3の損害一審原告43-3について本件事故との相当因果関係が認められる避難及び避難生活中の精神的苦痛に対する慰謝料額は、父と離れての避難生活であったことその他前記認定の一切の事情を考慮すれば、これを80万円と認め るのが相当である。 3 弁済の抗弁(1) 一審被告東京電力の弁済の抗弁の主張額ア一審原告43-1について 12万円イ一審原告43-2について 145万8000円 ウ一審原告43-3について 145万8000円(2) 一審被告東京電力による賠償一審被告東京電力は、これまで一審原告43の世帯及び同43-1の夫に対し、以下のとおりの賠償を行ったことが認められる(乙C43の3、乙C50の1から14まで)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告43-1に対し自主避難等に係る損害 12万円 とおりの賠償を行ったことが認められる(乙C43の3、乙C50の1から14まで)。 ア ADR以外による賠償(ア) 一審原告43-1に対し自主避難等に係る損害 12万円(イ) 一審原告43-2に対し自主避難等に係る損害 72万円(ウ) 一審原告43-3に対し自主避難等に係る損害 72万円(エ) 合計 156万円 イ ADRによる賠償 605万1798円 - 831 -ADRにより、一審原告43の世帯及び同43-1の夫に対する和解金額が741万1798円と合意され、そこからADR以外による賠償額のうち136万円を控除した605万1798円が支払われた。 (内訳)(ア) 避難費用、生活費増加費用、避難雑費、ADR弁護士費用 689万1798円(イ) 一審原告43-1の夫の追加的費用等 4万円(ウ) 精神的損害 48万円(エ) 合計(和解金額) 741万1798円(オ) 既払い金 136万円(一審原告43-1分8万円、同43-2及 び同43-3分各60万円、同43-1の夫分8万円)(カ) 合計(支払い額) 605万1798円ウ合計 761万1798円(3) 一審原告43の世帯に対する各弁済額ア一審原告43-1に対する弁済額 (ア) ADR以外による賠償 12万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRにおける和解金額からの既払い金136万円の控除は、まず前 記(2)イ(ウ)の精神的損害48万円から全額が、次いで一審原告43- が相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRにおける和解金額からの既払い金136万円の控除は、まず前 記(2)イ(ウ)の精神的損害48万円から全額が、次いで一審原告43-1の夫が支出した同43の世帯及び同43-1の夫共通の費用である同(ア)から88万円が順次控除されたとみると、ADRによる賠償のうち同(ア)の控除後の残額の部分は同43-1の夫に対する弁済とみるべきであり、同(ウ)の精神的損害の同43-1に係る部分は既払い金により 控除済みであり、ADRによる賠償による同43-1に対する弁済額は - 832 -0円となる。 (ウ) 合計 12万円したがって、一審被告東京電力の一審原告43-1に対する弁済の抗弁は全部認められる。 イ一審原告43-2に対する弁済額 (ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円ADRにおける和解金額のうち前記(2)イ(ウ)の精神的損害の一審原告 43-2に係る部分は既払い金により控除済みとみて、ADRによる賠償による同43-2に対する弁済額を0円とする。 (ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告43-2に対する弁済の抗弁は一部認められる。 ウ一審原告43-3に対する弁済額(ア) ADR以外による賠償 72万円ADR以外による賠償については、個々の一審原告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円 ADRにおける和解金額のうち前記(2)イ(ウ)の精神的損害の一審原告43-3に係る部分は既払い金により 告に対する弁済として扱うのが相当である。 (イ) ADRによる賠償 0円 ADRにおける和解金額のうち前記(2)イ(ウ)の精神的損害の一審原告43-3に係る部分は既払い金により控除済みとみて、ADRによる賠償による同43-3に対する弁済額を0円とする。 (ウ) 合計 72万円したがって、一審被告東京電力の一審原告43-3に対する弁済の抗弁 は一部認められる。 - 833 - 4 認容額等(1) 一審原告43-1ア損害額 80万円イ弁済額 12万円ウ弁済額控除後の損害額 68万円 エ弁護士費用 7万円オ認容額 75万円(2) 一審原告43-2ア損害額 80万円イ弁済額 72万円 ウ弁済額控除後の損害額 8万円エ弁護士費用 1万円オ認容額 9万円(3) 一審原告43-3ア損害額 80万円 イ弁済額 72万円ウ弁済額控除後の損害額 8万円エ弁護士費用 1万円オ認容額 9万円 - 834 -第6部結論第1章一審原告らの請求に対する判断第1 以上によれば、一審原告らの一審被告国に対する請求はいずれも理由がないからこれらを棄却すべきである。 第2 また、一審原告らの一審被告東京電力に対する請求については、一審原告1 7-1のものは理由があるからこれを認容し、本判決別紙6「一覧表」の「区分」欄に「【2】」、「【3】」又は「【4】」と記載する同「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らのものはそれぞれの一審原告に対応する同「認容額(控訴審)」欄記載の金員及び 紙6「一覧表」の「区分」欄に「【2】」、「【3】」又は「【4】」と記載する同「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らのものはそれぞれの一審原告に対応する同「認容額(控訴審)」欄記載の金員及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求 める限度でいずれも理由があるからこれらを認容し、その余はいずれも理由がないからこれらを棄却し、同「区分」欄に「【5】」又は「【6】」と記載する同「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らのものはいずれも理由がないからこれらを棄却すべきである。 第2章結語 よって、原判決中、上記第1章、第2の判断に反する部分は相当でなく、その余の部分は相当であるから、原判決主文第1項及び第2項中、本判決別紙6「一覧表」の「区分」欄に「【2】」、「【3】」、「【4】」又は「【5】」と記載する同「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らの一審被告東京電力に対する各請求に係る部分を上記第1章、第2の判断に従って変更し、一 審原告らの一審被告国に対する各控訴はいずれも理由がないからこれらを棄却し、同別紙の「区分」欄に「【3】」、「【5】」又は「【6】」と記載する同「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らの一審被告東京電力に対する各控訴及び同「区分」欄に「【2】」又は「【4】」と記載する同「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らの一審被告東京電力に対するその余の 各控訴をいずれも棄却し、一審被告東京電力の同「区分」欄に「【1】」又は - 835 -「【2】」と記載する同「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らに対する各控訴及び同「区分」欄に「【3】」と記載する同「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らに対する - 835 -「【2】」と記載する同「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らに対する各控訴及び同「区分」欄に「【3】」と記載する同「控訴人番号」欄記載の控訴人番号の一審原告らに対するその余の各控訴をいずれも棄却し、原判決中、当審における訴訟承継により更正を要する部分を本判決別紙7「更正目録」記載のとおり更正することとして、主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第1部 裁判長裁判官松村徹 裁判官入江克明 裁判官本松智

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