主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人は,控訴人に対し,4821万4357円及び内金349万5794円につき平成2年8月25日から,内金385万0942円につき同年10月3日から,内金3446万7621円につき平成3年9月21日から,内金210万円につき平成4年2月26日から,各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 (4) (2),(3)項につき仮執行宣言 2 被控訴人主文同旨第2 事案の概要等事案の概要,前提事実及び争点(当事者の主張を含む。)は,次のとおり付加するほか,原判決「事実及び理由」の「第二事案の概要」の各該当欄に記載のとおりであるから,これを引用する。 (控訴人の当審主張) 1 本件第一取引(インデックス・ファンド)(1) 本件第一取引につき,原判決は,① 投資信託を買い付けた顧客からの買取請求に応じて保有することになった投資信託を顧客に転売する際,顧客の便宜のため,前日の売却価格で取引を行う例がある。 ② 平成2年8月24日午後2時過ぎ,買いの約定を得た。同日午後3時過ぎに当日の基準価格の概算が分かった。手数料を差し引くと損がでる状況になったが,Aは今日売ってくれと指示した。 ③ 控訴人は,平成2年8月15日インデックスファンド及びシステム・オープンファンドで前日基準価格で買付け利益を得た。本件取引後も,インデックス・ファンド1回,システム・オープンファンド3回につき前日基準価格で買付,即日売却した。 ④ 「不当日商い」という言葉を平成2年8月24日(本件取引 買付け利益を得た。本件取引後も,インデックス・ファンド1回,システム・オープンファンド3回につき前日基準価格で買付,即日売却した。 ④ 「不当日商い」という言葉を平成2年8月24日(本件取引日)以前に聞いたことがないとするAの供述は,前記平成2年8月15日の取引から不自然であり,その後の取引についても記憶がないと供述したり,何もないのに2日や3日で売買するという非常識なことはありえませんと供述していることは不自然,不合理である。 当日午後3時過ぎには,株式の立会が終了して基準価格の概算が可能であったから,この時点で利益があがると勧誘することは考えられない。 ⑤ 甲11,12はAの指示どおり口述筆記したものであるから,この書面の記載は直ちに採用できない。 としている。 (2) しかしながら,同認定は「証券会社保有の投資信託は顧客の便宜のために前日基準価格で売却する」ことにつき,何ら制限がなく取引ルール上も問題がないという誤った理解を前提とするものである。 投資信託を前日基準値で売却できるのは,ブロックオファーの場合に限られ,ブロックオファーについては大蔵省(平成2年当時)への届出を要し,無制限に行うことができなかったことにつき,理解を欠くものである。 ちなみに,Fも証券マンとして,そのことを本来は当然に知っている(少なくとも知るべき)から,原審において,インデックス・ファンドの前日基準値での売買につき,FはEからの指示であると責任を転嫁する旨の証言をしている。 一方,Eは,原審において,本件取引につき,何故に平成2年8月24日買付けたものが,顧客口座元帳上(乙4・№28726)は,平成2年8月23日と記帳されたかにつき,「インデックス・ファンドについては前日の値段で買えるということがあり つき,何故に平成2年8月24日買付けたものが,顧客口座元帳上(乙4・№28726)は,平成2年8月23日と記帳されたかにつき,「インデックス・ファンドについては前日の値段で買えるということがありましたように,実際前日に買ったという形になりますので,そういうことで,こういう形になっているんだと思います。実際には8月24日に買ってるのに,前日の値段で買えるときには,さかのぼってそのように操作しているかのどうかの事情は分かりません。」「ブロックオファーという制度以外に,前日の値段で売買できるという制度はありません。イレギュラーな形として,お客様の便宜を図るというような形で来たと思います。勝手に前日の値段で売買することが,投資信託の取引としては禁じられているのか否かの事情は分かりません。」旨述べ,回答を避けている。 原判決は,被控訴人の主張を鵜呑みにして,本件取引前後にも前日基準価格での即日売買があった旨認定しているが,以上に指摘の取引のいずれもが取引日記帳上は即日売買となっていない(乙4参照)。 本件取引の前後にも,前日基準値による購入,即日売却の事実があったと認定するならば,これに沿う証拠が必要である。確かに,Fは原審における被告代理人の主尋問に対して,乙27をもとに,本件取引前後にも前日基準価格での即日売買があった旨を供述したが,原告代理人の反対尋問では,乙27を初めて見るものと前供述を翻し,かつ,Fは前記のとおり取引日記帳の記載が即日売買となっていない理由,取引日記帳以外のどのような資料に基づいて前述のような取引があったと述べたかについても,何ら明らかにしていない。これらからすれば,本件以前にインデックス・ポートフォリ・ファンドの前日基準値売買があったとする原判決の認定は採証法則にも反するものである。 (3) 本件 たかについても,何ら明らかにしていない。これらからすれば,本件以前にインデックス・ポートフォリ・ファンドの前日基準値売買があったとする原判決の認定は採証法則にも反するものである。 (3) 本件取引前後の前日基準価格買付けの事実が証明できない以上,本件取引当日にはじめて「不当日商い」の言葉を聞いたとすることは,不自然とした原判決は取り消されるべきである。 また,原判決は,Aが何もないのに2,3日で売買するという非常識なことはないと供述したことを捉え,不自然,不合理とするが,その供述は被控訴人の勧誘があったからこそ,これらの短期売買をしたと述べているにすぎず,この取引にあたり前日基準価格の購入ができるという勧誘を受けてした取引でなくとも,何ら不自然,不合理はない。 (4) また,原判決は,当日午後3時過ぎに基準価格の概算が可能であったから,「確実に利益が上がると勧誘するとは考えられない」とするが,基準価格は,当日午後6時に概算値が判明し,翌日に確定するものであること,午後3時過ぎに概算値を算出しようとすれば担当者自らが筆算するほかない。 しかるに,Fは,原審における原告代理人の質問に対し,「午前中の日経500種の指数,1時過ぎぐらいに,投資信託部が毎日午前中の各株価の引け値に対してインデックスの試算というのを出すんですけれども,500種が前日より午前中で何パーセント上がってる,下がっている,それに対してインデックスの単価が何パーセント上がっていると。ですので,連動性が何パーセントぐらいあるということから,じゃあ,2時半とか3時ぐらいで大体このぐらい500種が動いていれば,インデックスのほうもこのぐらい動いているんじゃないかなあという,あくまでも憶測というんですか,大体の概算の形で,いつも計算はしておりました。」などと憶 ぐらいで大体このぐらい500種が動いていれば,インデックスのほうもこのぐらい動いているんじゃないかなあという,あくまでも憶測というんですか,大体の概算の形で,いつも計算はしておりました。」などと憶測で計算した旨を証言している。また,インデックス・ポートフォリ・ファンドは乙5によれば日経500種平均株価に採用された銘柄を投資対象とするものであり,日経500種の値動きだけでは正確な試算もできない。Fは日経500種との連動比率も認識していないのであり,このようなFが概算値を告げられる筈もない。また,投資信託は複数銘柄の株式,債券等の組合せにより構成されたものであり,構成比等の内訳を知らないFに計算ができる筈もない。 原判決は,本来,控訴人の注文が午後3時過ぎの時点での買付と同時売付けであったにもかかわらず,午後2時に買い約定とし,Fが午後3時過ぎに概算値を告げたとした点においても事実誤認を侵している。 (5) さらに,原判決は,買付け注文の時刻につき,Fの証言に基づき午後2時過ぎと認定しているが,控訴人が買付注文伝票(乙6)に受注時刻の打刻がないのは不自然だと再三に亘り主張している点につき,何ら判断をしていない。 そもそも,証券会社の勧誘により買付けた銘柄を即日に損失発生が確実な状態で売却指示することは経験則上からも考えられない。 本件は,株価等の推移を告げられず,確実に利益が上がると勧誘され,買い注文と売り注文を同時に出したところ,手数料により損失となったというのが実態である。 (6) また,甲11,甲12につき,原判決は,Aの指示で口述筆記をしたとするが,この書面の作成時期は,Fの話しによっても既にAから弁償を求められていた時期であり,証券マンが単に顧客から指示されただけで,事実と反する記載をそのまま筆記する は,Aの指示で口述筆記をしたとするが,この書面の作成時期は,Fの話しによっても既にAから弁償を求められていた時期であり,証券マンが単に顧客から指示されただけで,事実と反する記載をそのまま筆記することは考えられない。Fの原審における供述からもAが違法に書面作成を強要したという場面は出てこない。 (7) 以上のとおり,原判決の認定は,Fの証言と証拠に基づかない被控訴人の主張(本件以外にも前日基準値買付けがあるとの主張)を鵜呑みにしたものといわざるを得ない。 2 本件第二取引(システムオープン・ブロックオファー)(1) 本件第二取引につき,原判決は,「① 申込みの総量が860万0392口に上がり,追加設定口数595万口を超過する事態となった。 ② F,EはAに減額を依頼したところ,Aは2万口に減額することの同意をした。そこでFは控訴人の2万口の売り注文について執行した。 ③ Eの「借りを作らせてほしい。」との言葉は,これだけでは減額分の賠償を約束したものと解することはできない」とし,控訴人の,「当日に1136万2392口の買付約定が成立している。超過募集は被控訴人の杜撰さに起因するものであり損失は被控訴人が負担すべきである。当日残った買付口数は設定口数を下廻るものであったから減額依頼の必要がない。」との主張をいずれも独自の見解として排除している。 (2) しかしながら,原判決の認定は,取引日記帳(甲25,甲30)の「買付欄記載の口数」を「買受け申込み数」としていることにつき,そもそもの誤解がある。取引日記帳は成立した売買を記帳するものであり,申込数を記帳するものではない。 (3) そもそも投資信託は,投資家からの投資により信託財産を形成し,それを運用するものであり,募集予定口数は信託財産の規模を定めるものであ 買を記帳するものであり,申込数を記帳するものではない。 (3) そもそも投資信託は,投資家からの投資により信託財産を形成し,それを運用するものであり,募集予定口数は信託財産の規模を定めるものである。ブロックオファーは追加設定型投資信託の募集方法であり,特別の手続により設定価格(前日基準値)での募集(顧客の立場からは買付け)を可能とするものである。したがって,ブロックオファーにおける募集にあたっては,募集予定口数の定めがあることから,証券会社としては応募状況を把握しながら買付け注文を受付けるべきであることは当然である。しかし,予定口数を上まわる買付けがなされても即日売却がなされれば,募集した信託財産は減少することとなる。すなわち,予定口数を買付けが一旦超過しても,即日売付けにより残った買付け口数は予定口数を下廻ることがある。この場合は,投資信託の性質上,結果として募集予定口数を上廻る信託財産は形成されない。原判決は,こうした理解に欠けている。 (4) また,原判決は,2万口に減額することの同意を得て,2万口の売り注文を執行したと認定するが,取引日記帳(甲25,38頁)では,控訴人の取引欄には,「2万口の買い」と「3万口の売り」「2万口の売り」との記帳がなされ,本来ありうべくもない「3万口の売り越し」(控訴人が保有していない口数を売却し売りすぎとなっている)となっていることにつき,何ら触れていない。また,2万口の売買の注文伝票(乙9,10)に受注時刻が打刻されていない点についても,何ら言及していない。客観的取引資料である筈の注文伝票に,受注時刻の記載がないことから,原判決の取引経過の認定は客観的裏付けに基づかないことになる。 取引日記帳(甲25,30)からすれば,本件の10月2日の取引は予定募集口数を上廻る買付け申込みがあった 刻の記載がないことから,原判決の取引経過の認定は客観的裏付けに基づかないことになる。 取引日記帳(甲25,30)からすれば,本件の10月2日の取引は予定募集口数を上廻る買付け申込みがあったが,同日売付け申込みも多数に及んだことから,結局,予定募集口数を上廻る買付けは残らなかったと見るべきである。 (5) 原判決は,減額(一部解約)がされたからこそ,買付約定が成立したとするが,そもそも,取引日記帳(甲25,30)には買付けの解約(取消し)の記帳は一切ない。何を称して,一部解約と認定したのか明らかでない。 ブロックオファーにおいて,結果的に予定募集口数を上廻る買付けがなされて何らかの減額措置が必要な場合が生じたとしても,被控訴人主張のように,取引終了時刻まで最終応募状況が分からないので買付け申込みを受付けていたとすれば,取引終了時刻の時点では既に投資信託の基準価格の概算ができることからすれば,当日の株価等の値動きにより,利益が出ている場合は誰も買付け口数減額には応じず,値下がりの場合は誰もが競って買付け口数の減額を求める事態となる。 こうした混乱事態は証券会社としては努めて避けなければならないことから,自衛手段として応募状況を逐次チェックすることになるのが取引の常識である。 前記原判決の認定は,こうした理解に欠けている。 (6) 本件取引の経過につき,甲13の会話録取書(本件第二取引日のAとFの会話)によれば,Fは控訴人注文の3万口の売注文は2時58分に達した時には,何ともなかった(減額問題はなかった)と述べている。その供述は,控訴人の午前中の3万口買付け,午後3時前の3万口売付けは成立していることを裏付けるものである。顧客口座元帳(乙4・№25643)でも3万口の買い,3万口の売りが一旦記帳され取消しが 。その供述は,控訴人の午前中の3万口買付け,午後3時前の3万口売付けは成立していることを裏付けるものである。顧客口座元帳(乙4・№25643)でも3万口の買い,3万口の売りが一旦記帳され取消しがされている。 控訴人は3万口買付け,即日3万口売付けの注文であることから,本来,減額を求められる立場にはなかったのである。いわば,F,Eの「ブロックオファーが成立しない。」「借りを作らせて貰う。」という詐術により,1万口の値上がり利益を逸失したというのが本件の実態である。 (7) 本件取引では,顧客口座元帳(乙4,№25643)と取引日記帳(甲25,38頁)の記帳の相違,2万口の売買注文伝票(乙9,10)の受注時刻の打刻のないこと,3万口の売買注文伝票が被控訴人から提出されない理由(少なくとも不出来,もしくは取消し伝票があるはずである),募集第2日目(10月3日)の募集の有無,一旦買付けが予定口数を上廻れば必ず解約を必要とするか,等の点に取引実態を解明する鍵があるところ,原判決は被控訴人の表層的な弁解を鵜呑みにして,事実誤認をしたものである。 3 本件第三取引(THK株)(1) 本件第三取引について,原判決は,クロス売買はAからの情報,インサイダー云々は購入後の話しであるとし,Aが本件取引に前後して日興証券,野村證券でTHK転換社債,THK株を売買したことを取り上げて,独自の判断で本件取引を行ったと認定している。 また,甲5の念書は,Aから執拗に要求された上,「覚えとして残しておく」「表には出さない」といわれやむなく署名押印したもの,甲11,12もAの指示どおり口述筆記したものであり,これら書面の記載は採用できないとし,「クロス売買」については,控訴人の1万株は日本店頭証券を相手方に成立しているので,クロス取引とは断定 もの,甲11,12もAの指示どおり口述筆記したものであり,これら書面の記載は採用できないとし,「クロス売買」については,控訴人の1万株は日本店頭証券を相手方に成立しているので,クロス取引とは断定できず,この事実をもってFがクロス商いと述べて勧誘した裏付けにはならないとしている。 (2) しかしながら,前記取引経過につき,真実は,THKのK社長とのクロス売買であることを述べて勧誘したのはFであること,FがL専務から値下がりしたらインサイダーと言われる等と述べたことは値下がり後ではなく,勧誘時であること(甲5,11,12)から,原判決の認定は,事実と異なる。 (3) 甲5,11,12などの書面を,事実に反した内容をFが記載したとする認定は,経験則にも反するものである。 甲5は,Fは一旦は被控訴人代理人に署名・押印を認めながら,後に署名につき否定し,作成を曖昧にした供述をしていること,甲11,12の作成時期は平成4年3月12日,6月15日であり,取引後かなりの時間的経過を経ていること,既に本件取引による損害の弁償をAが求めていた時期であること,なおかつ,Fはこの書面の作成を上司Eにも何ら告げられていないこと等からすれば,執拗に作成を求められた,口述筆記をしただけである等の弁解は措信しがたいものである。 (4) 甲10,11,12の各書面は,Aが本件各取引の損害の賠償を求めていたところ,Aが被控訴人に対して書面で賠償請求をするための資料として,Fが事実経過を自らの記憶に基づき作成してきたものである。それらの書面は,Fが自宅近くの名東図書館でまとめて作成したものを控訴人会社事務所に持参したものであり,Aの口述筆記ではない。 原判決が指摘する「F氏」などの表現は,Aが被控訴人に提出するための文書としてFが起案していること 図書館でまとめて作成したものを控訴人会社事務所に持参したものであり,Aの口述筆記ではない。 原判決が指摘する「F氏」などの表現は,Aが被控訴人に提出するための文書としてFが起案していることにより生じたものであり,何ら不自然なものではない。 顧客に念書などを書くことを禁止されている証券マンが,さしたる脅迫等の強要もされない状況で書くということ自体の意味に着眼すべきである。 本件各取引は,前記各種書面作成者であるF自身は控訴人に直接勧誘行為を行った担当者であっても,本件各取引の損害発生の主因は,いずれも被控訴人の組織としての対応それ自体に一層の問題がある事例ばかりであり,当時F自身,自らのみの責任ではなく会社が賠償すべき事案と認識していたものと推認される。そうであるからこそ,この書面をFが,さしたる抵抗もなく作成したものであることが理解できる。 (5) なお,本件THK株の買付けは,日本店頭証券においてなされているが,売付け注文を出したのも被控訴人であること,甲15による日本店頭証券からの成立時刻の回答内容からすれば,被控訴人において,売り買い同時に日本店頭証券にて売買執行をしたものと評価するのが相当である。こうした取引が形式的に市場を介していてもクロス取引の範疇に入ることは明らかである。また,こうしたクロス取引の情報については,後日司法上の紛争が発生した場合にも,弁護士照会,裁判所からの調査嘱託に対しても,日本店頭証券は他社取扱いの売買については守秘義務を根拠に回答を拒否するのが常である。かようにクロス情報はガードされているのであるから,この種の情報は取引証券会社から告げられなければ一般投資家としては知る術もない。 (6) 原判決は,こうした取引上の常識を欠き,被控訴人が控訴人から提出された他社との取引に関す いるのであるから,この種の情報は取引証券会社から告げられなければ一般投資家としては知る術もない。 (6) 原判決は,こうした取引上の常識を欠き,被控訴人が控訴人から提出された他社との取引に関する顧客口座元帳からはじめて知った,いわば後付けで知ったTHK株取引を取り出し,本件取引は控訴人の独自判断によるとの被控訴人の主張をそのまま採用したり,クロス売買情報,インサイダー情報等につき,誰から言い出したのか,誰が何時そのような話しが出たのかを,被控訴人が事実を逆さにして主張しているのを,鵜呑みにして事実誤認をしている。 4 本件第四取引(未来工業株)(1) 本件第四取引について,原判決は「① Aは,平成3年11月12日午前11時直前,4400円の値がついた時点で,Fに対し,買い付けた未来工業株1万6000株の売却を希望したところ,Fが,指値4400の買付注文については,比例配分となるため売付注文は受けられないと説明したため,Aもこれを了解して,6000株の売却を指示し,Fはこれを執行した。 ② 同日後場の取引は,4400円の買い気配で始まり,4410円で寄り,その後4400円に戻った後,4390円の値がついたことから,4400円の指値買付注文が出来たことが分かったため,Fは電話で伝えたが,Aは少し様子を見ようと言って売付注文を出さなかった。 ③ Fは甲10の記載につき記憶間違いじゃないかと思うと供述していること,乙19(注文伝票)に6000株の売り注文の受注日時が10時53分と打刻されていること等に照らすと甲10の記載は採用し難い。 ④ 午前11時頃に6000株についての売却指示をしたとすれば,Aはわざわざ損が明らかな売却指示をしたことになり,控訴人は不自然と主張するが,控訴人の主張の時刻に売却指示をしても, 用し難い。 ④ 午前11時頃に6000株についての売却指示をしたとすれば,Aはわざわざ損が明らかな売却指示をしたことになり,控訴人は不自然と主張するが,控訴人の主張の時刻に売却指示をしても,損となること同様であり,理由がない。」と認定している。 (2) しかしながら,この原判決の認定は,次の点において事実誤認をしている。 ① 名古屋証券取引所からの平成7年5月31日付調査嘱託の回答によれば,平成3年11月12日における約定価格4400円の被控訴人執行にかかる売買成立株式数は,次のとおりである。 株価時刻売株数買株数 4400 10:50 40900010:50 84000012:30 13400012:30 15000012:31 100012:32 100012:32 100012:33 300012:33 300012:35 400012:35 400012:36 100012:36 100012:36 100012:36 1000 12:36 100012:36 100012:36 100012:38 100012:38 100012:38 100012:39 100012:39 100012:39 100012:42 1000合計株数 554000 1007000すなわち,後場開始直後の午後12時30分には売り13万4000株,買い15万株が成立し,以後,12時42分までの間において数回に亘り約定価格4400円の売買が成立している。 仮に,原判決認定のように控訴人が午前中に売却指示を出したのに対し,比例配分作業未了のため,1万株の売り注文を受付けることができなかったとすれば,午後開始後,直ちに相場状況を控訴人に報告し,午前中の売り注文を維持するかにつき確認すべき義務があったものというべきである。このことは,午前10時53分に売り注文を受けたとすれば,この売注文の成立は前記調査嘱託の回答によれば12時30分であり,出来通知とともに午前の売注文を維持するかを確認すべきであるからである。 被控訴人は同準備書面においてFは,午後12時43分頃になり,株価が4390円をつけたことを自分のモニターで確認して控訴人に対して出来通知を行ったとするが,仮に,そうした経過であるとするならば,売注文の出来通知 準備書面においてFは,午後12時43分頃になり,株価が4390円をつけたことを自分のモニターで確認して控訴人に対して出来通知を行ったとするが,仮に,そうした経過であるとするならば,売注文の出来通知,後場の株価連絡のいずれも怠っており怠慢といわざるを得ない。 午前中の4400円の指値買い注文の成立が不明のまま後場が開始したという事態であれば,取引担当者としては,後場開始直後から相場状況を注視し,前場の取引の成否を直ちに顧客に報告すべきである。現に被控訴人では前述のように午後12時30分から12時42分までの間に,約定価格4400円の売買を数回に亘り成立させているのであるから,相場を注視していれば,相場が4400円をつけている時点において,直ちに控訴人の売注文の執行できないはずがない。 ② 原判決は他取引と同様,本件第四取引についても,F作成の念書(甲6),書面(甲10)の信憑性に関する評価を誤っている。 いずれの書面作成にあたっても,Fの証言からもAが不当な圧力を加えて作成を強要したと認められないことは,前述のとおりである。 ベテラン証券マンがFの証言のように,上司E部長が約束を守らない,表に出さないから覚えのために書いてくれ等という顧客からの要求に対して事実及び自らの記憶に反する内容を書面化することは経験則からも考えられない。 顧客から理不尽な書面要求があれば直ちに上司に報告する筈であるし,自らが作成した書面の具体的内容,数通を失念する筈もない。 本件訴訟の初期段階において,被控訴人からF作成の書面の通数,内容について執拗な求釈明がなされたが,そもそもこの事項はFとの打ち合わせで即座に判明することである。それにも関わらず,予め書面作成の経過につき被控訴人からは何ら具体的な主張をせず,念 書面の通数,内容について執拗な求釈明がなされたが,そもそもこの事項はFとの打ち合わせで即座に判明することである。それにも関わらず,予め書面作成の経過につき被控訴人からは何ら具体的な主張をせず,念書,書面の提出がなされてから,文章の細部をあげつらい,Aの口述筆記であると主張するに至った経過がある。 こうした訴訟進行経過からしても,前記書面よりFの証言を重視する原判決の認定は経験則,採証法則に反するものである。 ③ 原判決は,Aが午前11時前に売却指示を出したと認定しながら,一転して後場には売却指示をしなかった理由,翌11月13日に念書(甲6)をFが作成していること,11月13日に5000株を4230円で売却していることについて何ら言及していない。 原判決は乙19(注文伝票)に打刻された受注時刻を根拠にAが売却指示をしたのは午前11時直前と認定しているが,証券取引所からの調査嘱託回答(甲9の2)によれば,被控訴人執行にかかる4400円の売り注文成立時刻は午前10時50分であり,前記受注時刻と矛盾している。そもそも注文伝票の受注時刻の打刻については,控訴人がインデックス・ファンド,システムオープン・ブロックオファーの注文伝票(乙6,9,10)につき,受注時刻の打刻がないのは不自然であり,何らかの作為がなされている旨,再三に亘り主張してきたにも関わらず,その点については不問にし,本件未来工業株の注文伝票の打刻のみ証拠として採用するという点は,原判決の認定のアンバランスを感じざるを得ない。 ④ 甲6は,11月12日後場に入っても,被控訴人の事務処置が未了(実際に配分作業があったか否かは不明であるが,Fは集計に手間取って遅れたと説明していた)であり,4400円の指値買注文の成否が不明であったことから,後場4400 入っても,被控訴人の事務処置が未了(実際に配分作業があったか否かは不明であるが,Fは集計に手間取って遅れたと説明していた)であり,4400円の指値買注文の成否が不明であったことから,後場4400円時点でのAからの売却指示にも関わらず,時期を逸したことから,その詫びとしてFが任意に記載したものである。 11月12日の未来工業株の値動きは,平成7年3月30日付調査嘱託に対する名古屋証券取引所からの同年4月4日付回答からも明らかなとおり,後場に入ってから短時間で目まぐるしく変動している。こうした値動き状況と合致した内容となっている甲10の記載は,実際の経験に即したものとして信憑性が高いものといわなければならない。 甲10には「後場寄り後,4400円,買い気配でスタート。この時点でも4400円指値買い注文1万株についての買付け状況不明(株式集計まだ出来ていない為),4400円買い気配が4410円で寄りその後4400円にもどる。この時点で手持ち株式の売却指示。しかし,4450円指値買いの5000株分は,買付出来ているのは判明しているが,まだ株式部集計が出来ていない為,4400円指値買いの分が出来通知不明の為,判明分の5000株と公募株1000株分の計6000株を4400円で売りに出し出来る。この後,株価4400円を割り込みはじめ,この時点で4400円指値買い分の出来を確認。4400円買い注文の1000(ママ)(1万株の誤記)を4400円指値で売りに行くが,当日は不出来。」と記載され,具体的かつ詳細である。甲10は,Fが作成したものであるから,一見して被控訴人の主張と似ているが,12時43分頃,4400円の指値買注文の成立を告げたか否かが大きく異なる。 この点については,控訴人代表者Aは「午後の相場で4400円にきた時点で るから,一見して被控訴人の主張と似ているが,12時43分頃,4400円の指値買注文の成立を告げたか否かが大きく異なる。 この点については,控訴人代表者Aは「午後の相場で4400円にきた時点で全部売ってくれ。」と指示した,それに対しFは「分かりました」との返事であり,4400円の指値買注文についての成立の成否は,「1時時点でも分からなかった」,6000株しかできませんという連絡は「1時10分」であったと証言し,大筋において甲10の記載の経過と一致している。 また,名古屋証券取引所の平成7年4月4日付(4月6日受付)の調査嘱託回答書によれば,取引当日(11月12日)の歩値は,10時50分 4400円,12時31分 4410円,12時32分 4400円,12時43分 4390円とされている。店頭銘柄の株価については,始値,終値,高値,安値が発表されるのみであり,歩値については一般投資家としては簡単に入手しうるものではない。 それにもかかわらず,この歩値に沿って甲10の記載がなされていることは,甲10が,Aの誘導によるものではなく,取引担当者であるFが当時の相場状況を想起して主体的・自発的に記載したものであることを根拠づけるものといわなければならない。 ⑤ 原判決は後場に入ってからであっても,4400円指値買注文分を4400円で売却すれば損失が発生するのは同様であると認定しているが,11月12日は控訴人名義以外に個人名義の新規公募分(5000株)(G,A,H,I,J名義の各1000株)(買付4160円)を売却しているのであり,4400円の指値買注文分の売却は手数料等でマイナスとなっても,新規公募分の売却と併せた場合,利益計算となる。 5 まとめ(1) 原判決の認定は,Fの原審における証言を信用した点に事実誤認の原因がある。 値買注文分の売却は手数料等でマイナスとなっても,新規公募分の売却と併せた場合,利益計算となる。 5 まとめ(1) 原判決の認定は,Fの原審における証言を信用した点に事実誤認の原因がある。Fの陳述書,証言,各種書面の変遷状況を比較すれば,本件各取引の経過が被控訴人主張のような内容でないことは明らかである。 (2) 本件各取引につき,原判決の認定によった場合,A,Fとも極めて一貫性のない行動をとったものとしなければならない。 すなわち,① 本件第一取引では,Aは損が出ることを承知で売買しながら,損失の賠償を求め,それにもかかわらず,Fは事実と異なる各種書面を書いたことになる。 ② 本件第二取引では,Fはブロック・オファーの性質上やむを得ない事態として,Aから減額の了解を得ながら,これに対し,上司のEが「借りを作らせて欲しい」と発言したことになる。 ③ 本件第三取引では,Aは自らの情報でKのクロス売買を知り,それをFに教えながら,値下がり後,株券を取り寄せ被控訴人の裏書きを知り,Fに問いつめ,FがKの売買をLに確認したことになる。 それにも関わらず,Fは甲5に署名・押印したことになる。 ④ 本件第四取引では,12日後場に,Fから確認されながら午前中に4400円で買い付けた株の売却を断りながら,翌日さらに低い価格で売却指示をしたことになる。それにも関わらず,Fは念書(甲6)を作成したことになる。 (3) 原判決の前記認定は,証券マンと投資家の行動パターンとして,あまりにも一貫性,連続性を欠き,常識からかけ離れた行動様式となっている。 結局,原判決は,本件第一取引について売買注文を控訴人主張の同時注文を認めず以前にも不当日商いがあると認定したこと,本件第二取引について控訴人注文の3万口の かけ離れた行動様式となっている。 結局,原判決は,本件第一取引について売買注文を控訴人主張の同時注文を認めず以前にも不当日商いがあると認定したこと,本件第二取引について控訴人注文の3万口の売買が成立していないと認定したこと,本件第三取引についてクロス売買情報を控訴人から先に言い出したと認定したこと,本件第四取引について後場4400円時点でAが売却を断ったと認定したことに,根本的な事実誤認があるといわざるを得ない。 (同主張に対する被控訴人の応答) 1 控訴人の属性控訴人の本業は不動産業であるが,控訴人は証券会社等との金融取引に本業並みに傾注して億円単位で証券取引等を行い,具体的には被控訴人において控訴人,控訴人代表者,代表者の妻,代表者の子,代表者が別に経営する別会社名義各取引口座を開設し,また他証券会社(野村證券,大和證券,日興證券,山一證券,新日本証券,千代田証券,メリルリンチ証券等)にも取引口座を開設し,株式取引(現物,信用)はもちろん,外国証券,債券,投資信託,ワラント,オプションといったあらゆる金融商品の取引を行い,しかも手法的にも信用取引のつなぎ売り,ワラントのブラックマーケットでの売買,国債先物取引等を行い,会社事務所に株価等の投資情報をリアルタイムで入手できる機械を設置して情報を収集し,いかなる角度からみても機関投資家並みの知識・経験を備えた投資家である。このような投資家が支店の一営業マンの断定的判断の提供や内部情報の提供に踊らされて投資判断を誤ったり,あるいは証券取引に関して詐欺を受けるような状況は想像すらし得ない。 控訴人は,日興證券に対し,被控訴人に対する請求とほぼ同じ理由で損害賠償請求を行い,1審及び2審とも排斥されている。同一銘柄について異なる証券会社から同時期に断定的判断の提供を受け し得ない。 控訴人は,日興證券に対し,被控訴人に対する請求とほぼ同じ理由で損害賠償請求を行い,1審及び2審とも排斥されている。同一銘柄について異なる証券会社から同時期に断定的判断の提供を受けて投資したとの控訴人の主張は,自己責任回避のための強弁としか言いようがない。 2 本件各取引の中心的争点について本件第一取引における中心的争点は,被控訴人営業担当者Fが控訴人代表者に「不当日商いで前日の値段で買えるから確実に儲かる。」等と違法な勧誘を行ったか否かであり,当該投資信託の販売方法及び販売価格の設定が自主規制ルールに違反しているか否かは損害発生とは何ら因果関係がなく,その判断が結論に影響を及ぼすことはない。また本件第二取引における中心的争点は,当該投資信託取引につき3万口から2万口への減額に控訴人代表者が応諾した点において被控訴人に詐欺取消若しくは欺罔による不法行為に相当する行為が存在したか否かであり,ブロックオファーの法的性質論や注文伝票・取引日記帳等の法定帳簿の記載が証券取引法等に違反するか否かの判断が結論に影響を及ぼすことはない。 また本件第三取引における中心的争点は,前記Fが控訴人代表者に「クロス取引であるから値下がりは絶対にない。」等と違法な勧誘を行ったか否かであり,当該取引がクロス取引か否かではない。また本件第四取引における中心的争点は,控訴人の平成3年11月11日に発注された未来工業株4400円の1万株の指し値買付注文の同月12日の取扱状況(具体的には板寄せ状態となった後の被控訴人の処理,前記買付注文の成否が判明した時刻及び状況,控訴人代表者に対する連絡及びその後の指示)において債務不履行と言えるような事実が存在するか否かであり,その余は判断するまでもない。勿論中心的争点以外の争点に関する原審の判断に誤りはない 及び状況,控訴人代表者に対する連絡及びその後の指示)において債務不履行と言えるような事実が存在するか否かであり,その余は判断するまでもない。勿論中心的争点以外の争点に関する原審の判断に誤りはないが,その判断は結論に影響を及ぼすものではない。 3 F作成の念書等についてF作成の念書等(口述筆記したメモ書きを含む)については,控訴人が自己に不都合な念書を意図的に証拠提出していないこと,Fの自署部分(甲5)については偽造と思われること等もあって,全体的な評価は到底困難である。しかしながらAは日興證券の営業担当者にも念書を作成させ,またF等に大和證券の損失補填の話を持ち出す等証券会社に損失補填をさせる方策に極めて長けた投資家であり,その手段として念書及び録音テープを常套手段として駆使していたことは明らかである。そのようなAの執拗かつ狡猾な手口にかかって(具体的には前記Aは前記Fを控訴人会社事務所に毎回数時間にわたり拘束し,また「あなたは悪くない,部長は約束した」等と述べていた)Fが作成した文書の一部に控訴人の主張に沿う記載があったとしても,控訴人の主張を認定する証拠と評価することは凡そ不可能である。 また,控訴人は,当審において突然F作成のメモ書き(甲10ないし12)について千種もしくは名東図書館で作成したと主張するが,原審においてそのような主張は全くなく,寧ろ控訴人代理人は甲11についてFに「会社で作ったんじゃないですか」と質問しており,控訴人の当審における主張は原審での主張と明らかに齟齬がある。また上申書(乙78)にあるとおり,Fは再三にわたる執拗なAの要請を受けていたため,やむを得ず書面作成にとりかかっているかのように取り繕うための回答をせざるをえなかったのであり,実際にFが賠償請求書を作成したことはない(その証拠にF作 再三にわたる執拗なAの要請を受けていたため,やむを得ず書面作成にとりかかっているかのように取り繕うための回答をせざるをえなかったのであり,実際にFが賠償請求書を作成したことはない(その証拠にF作成の「賠償請求書」なる書面は存在しない)。控訴人提出の会話録音反訳書(甲33,34)によれば,Fは平日の勤務中に片道小1時間もかかる図書館にわざわざ出向いて賠償請求書を作成したことになるが,そのような事実はあり得ない(それに対して被控訴人名古屋支店から控訴人会社事務所までは徒歩で数分である)。 4 本件第一取引について控訴人は,本件第一取引の直前の平成2年8月15日にインデックス・ファンド及びシステム・オープンにつき,前日の基準価格で買付を行い,即日売り付ける取引で利益を獲得したこと,そのためFから本件第一取引の勧誘を受けて考慮した上で買付を行ったこと,売付の際も納得して売付注文を行ったこと,その後も即日売買の取引を行っていることは証拠上明らかである。そもそも不当日商い及びブロック・オファーは前日の基準価格で購入できるというだけで必ず儲かる取引ではなく(確実に儲かる取引であれば違法な利益提供になってしまう),Fが「必ず利益が出る」等と述べて勧誘することはあり得ない。 控訴人は,原判決の認定についてFの証言以外に証拠はない等と論難するが,筋違いの主張である。原判決は,Fの証言とAの証言の信用性を検討した結果,Fの証言が事実経過に即応して信用性が高く,それに対してAの証言が不自然極まりない点から信用性がないと排斥し,結果的にFの証言を証拠として事実認定を行っているのである。この点に関する原判決の判断は具体的かつ合理的であり,正当性に疑いの余地はない。 5 本件第二取引についてブロックオファーは予め定められた追加設定口数に応じ て事実認定を行っているのである。この点に関する原判決の判断は具体的かつ合理的であり,正当性に疑いの余地はない。 5 本件第二取引についてブロックオファーは予め定められた追加設定口数に応じて買付申込を募る取引であるから,追加設定口数を超過した買付申込について確定的に売買成立を認めることは制度上不可能であり,顧客の買付注文伝票を集計した結果,買付申込口数が追加設定口数を超過した場合,超過部分について売買が成立することは不可能であり,よって顧客の買付注文段階での売買は解除条件付売買と解さざるを得ない。なおブロックオファーの法的性質論は注文伝票,取引日記帳及び顧客口座元帳等の帳票類の記載によって導かれるものではなく,制度の性質から当然に導かれる結論であり,取引日記帳等の記載を検討する必要性はない。 また,そもそも本件第二取引における損害賠償請求の可否に関する結論がブロックオファーの法的性質論から導かれることはあり得ない。なぜなら本件第二取引では控訴人がF及びその上司である企業部長Eの減額依頼に応じて1万口分の減額依頼に応じたことは争いがなく,争点は控訴人が減額依頼に応じた過程においてEが「損害を賠償する」等の欺罔行為を行ったか否かである。そしてこの点について原審は関係当事者(F,E及び控訴人代表者A)の証拠調べ結果に基づいて欺罔行為の存在を否定しており,その判断は合理的であり誤りはない。すなわちEは事情を説明して減額を依頼したにすぎず,損害が発生しているわけでもないのに証券取引上違法とされる損害賠償約束までして控訴人に減額の応諾を迫る理由もなく事実もない旨を明確に証言しているし,控訴人が主張するような損害賠償約束が存在すれば当然にその具体的内容(時期や方法等)にまで言及されるべきところ,そのような具体的な話はAの証言にもない。 由もなく事実もない旨を明確に証言しているし,控訴人が主張するような損害賠償約束が存在すれば当然にその具体的内容(時期や方法等)にまで言及されるべきところ,そのような具体的な話はAの証言にもない。要は控訴人は,E等が予想外に顧客の買付申込が多く,顧客に減額を依頼せざるをえなくなった立場を逆手に取ってEが損害賠償の約束した等と強弁しているにすぎず,その主張は到底認めることはできない。 控訴人は3万口の売付注文のキャンセルの記載が取引日記帳に記載がないとも主張するが,同取引の取引日記帳上の取扱については平成2年10月5日作成の取引日記帳に約定日同月2日で3万口の売付注文取消として記帳されている(乙79)。なお被控訴人は控訴人の申立に基づき既に同月2日作成分の取引日記帳を証拠として提出しているが(甲25),取引日記帳への記載ができなかったため,同月5日作成の取引日記帳に記載したものであり,この取扱は控訴人のみならず他の顧客も同じである。 6 本件第三取引について控訴人は,Fから本件第三取引の勧誘を受ける前に他証券会社においてTHK株及び同CBの買付を行っていたこと,控訴人が被控訴人専務取締役Lから「K社長の売りクロスであり絶対に大丈夫です」等と言われたと主張する時以前に他証券会社においてTHK株及び同CBの売付を行っていた事実は証拠上明らかであり(乙74),Aは他証券会社から収集した情報等に基づいて本件第三取引を行ったのであり,F等からの情報が控訴人の投資根拠となっていないことは疑いがない。一営業マンにすぎないFが事前にクロス取引といったインサイダー情報を入手して顧客に勧誘を行うことは凡そ考えられず,Fはクロス取引に関する話が勧誘後にAから出た旨を明確に証言している。 また,本件第三取引について被控訴人がK社長の売付注文 ったインサイダー情報を入手して顧客に勧誘を行うことは凡そ考えられず,Fはクロス取引に関する話が勧誘後にAから出た旨を明確に証言している。 また,本件第三取引について被控訴人がK社長の売付注文を意図的に控訴人に合致させたクロス取引ではあり得ないことは既に主張したとおりである。補足するに,本件第三取引が行われた平成3年4月22日に被控訴人は多数の顧客からTHK株の買付及び売付注文の委託を受けており(甲24),また当然ながら日本店頭証券は他証券会社を通じてそれ以外の多数の顧客から多数の買付及び売付注文を受けており,どの顧客のどの注文とどの注文が合致したのかは判明しようがない。 7 本件第四取引について平成3年11月12日は未来工業株式の名古屋証券市場への上場日であり,当日被控訴人名古屋支店では事務体制を整えていたこと,当日前場終了間際(午前11時直前)に4400円で寄り付いて板寄せ状態になったため比例配分作業に入ったこと,しかし,被控訴人全店分の比例配分作業であったため膨大な作業量になったこと,そのため被控訴人の4400円での1万株の指し値買付注文の成否が判明したのは後場開始後であり,Fは判明した直後(午後12時43分頃)に架電してAの意向を確認したところ売付注文の指示はなかったことは,原判決の認定のとおりである。被控訴人は,控訴人の本件買付注文に対して可能な限りの事務処理を行っており,債務不履行をいえるような事実は存在しない。 本件のような事実経過で証券会社の債務不履行責任が認められた判決例は全くなく,例えば証券会社が顧客の注文内容を誤って執行した場合等はともかく,通常の事務処理を行っている場合において善管注意義務違反を問われることはあり得ない。 第3 当裁判所の判断 1 控訴人代表者Aの投資知識及び経験等について 文内容を誤って執行した場合等はともかく,通常の事務処理を行っている場合において善管注意義務違反を問われることはあり得ない。 第3 当裁判所の判断 1 控訴人代表者Aの投資知識及び経験等について(1) 証拠(乙74,76,原審証人F,原審における控訴人代表者A)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 ① 控訴人代表者Aは,学生時代から株式の売買を経験し,野村証券,大和証券,日興証券,山一証券,新日本証券,千代田証券のほか,三洋証券,メリルリンチ証券等とも取引歴があり,取引内容についても株式では現物取引,信用取引はもちろん,転換社債,国債,金融債,投資信託,ワラント,オプション等証券会社で扱うほぼ全ての商品に及び,取引手法についても,株式の入札や「つなぎ売り」,ワラントのブラックマーケットでの売買,国債の先物取引,債券の短期損切り取引のほか,日興証券等において,投資信託の短期売買等,多数の証券会社から投資情報を積極的に収集していた。 ② また,控訴人は不動産業であるが,事務所には「四季報」や「会社情報」,株価チャートブックの他に株価をリアルタイムで表示できる機械も備え付けていた。控訴人は,銀行との間でも,現先取引等の資金運用取引を頻繁に行っていたほか,平成2年当時,2,3億円もの資金で有価証券投資をしており,証券投資の方が事業といってもよい状態であった。 (2) 上記認定の事実からすれば,控訴人は,一般の投資家レベルを遙かに超える投資知識及び経験を有していたということができる。 2 本件第一取引について(1) 前記前提事実に,証拠(甲8,11,12,43の1,2,乙4ないし7,27,36,37,原審証人F,同E,原審における控訴人代表者A。ただし,甲8,乙36,37,原審証人F,同E,原審におけ (1) 前記前提事実に,証拠(甲8,11,12,43の1,2,乙4ないし7,27,36,37,原審証人F,同E,原審における控訴人代表者A。ただし,甲8,乙36,37,原審証人F,同E,原審における控訴人代表者Aの各供述中,後記採用できない部分を除く。)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実を認めることができる。 ① 被控訴人においては,投資信託を買い受けた顧客からの買取請求に応じて保有することとなった投資信託を顧客に転売する際,前日の売却価格で取引を行う例があった。もっとも,かかる取扱いは,転売と転売以外の顧客へ投資信託を売却する場合(ただし,ブロックオファーの方法での売却を除く。),販売価格が異なることになって,当該投資信託の販売価格の計算方式を定めた受益証券説明書の記載に抵触するうえに,証券投資業務規定9条2号(手数料の割引,基準価額の値引若しくはこれに類する過剰サービス等の割引販売の行為又は割増買取の行為の禁止)に違反するものである。被控訴人は,かかる取扱いを粉塗するために,証券会社の命令60条で,原則として受注時に作成し,受注日時の記載を要するとされる注文伝票に,受注時刻の記載をせず,その受注時も前日にさかのぼって記載するという操作をしていた。 ② 控訴人は,被控訴人からかかる取扱いをするとの申し入れを受け,平成2年8月15日に,インデックス・ファンド及びシステム・オープンファンドにつき,前日の投資信託の基準価格で買い付け,即日売り付ける取引を行い,それぞれ利益を得ていた。 ③ 平成2年8月24日,Fは,被控訴人の本部からインデックス・ファンドが前日の価格で買い付けられるとの連絡があり,当日の株式市場も高くなっていたので,同日午前中に,Aに電話して,「先日購入して利益を出した投資信託が,前日の値段で買えるのが からインデックス・ファンドが前日の価格で買い付けられるとの連絡があり,当日の株式市場も高くなっていたので,同日午前中に,Aに電話して,「先日購入して利益を出した投資信託が,前日の値段で買えるのがあります。」と言って,本件インデックス・ファンドの購入を勧誘した。Aは,また考えてみるということで,電話を切った。 同日午後1時過ぎ頃,Fは,午前中の株式市場の引け値を試算し,Aに対し再度購入を勧誘したが,その際も,Aは承諾の回答をしなかった。 ④ 同日午後3時過ぎ頃,Fは,さらにAに電話をし,「今日相場は上がっているので,買ってすぐ売却すれば,手数料等を差し引いても利益になる。」旨言って購入を勧誘したところ,Aから買い及び売りの約定を得た。 ⑤ ところが,その後,本件インデックス・ファンドの当日の基準価格は,概算で,上がってはいるものの手数料等を差し引くと損が出る状況になることが判明した。そこで,同日午後6時過ぎ頃,Fとその上司のEが控訴人の事務所を訪れ,Eが「今回の結果は誠に残念で,申し訳ございません。早いうちに挽回させていただきたいと思っています。」と挨拶した。 ⑥ 控訴人は,その後も,インデックス・ファンドについては1回,システム・オープンファンドについては3回,前日の基準価格で買い付け,即日売り付けるという取引を行った。 (2) なお,控訴人は,「本件取引の前後に,前日基準値による購入,即日売却の取引はなかった。」旨主張し,原審における控訴人代表者Aの供述及び陳述書(甲8)には,その主張に沿う部分がある。しかしながら,この事実を裏付ける的確な証拠はなく,原審における控訴人代表者Aの供述自体,「本件第一取引と同様の前項②,⑥の取引について記憶がない。」とか,「何もないのに2日や3日で売買する非常識なことはあり ,この事実を裏付ける的確な証拠はなく,原審における控訴人代表者Aの供述自体,「本件第一取引と同様の前項②,⑥の取引について記憶がない。」とか,「何もないのに2日や3日で売買する非常識なことはありません。」とするなど不合理な点があることから,採用できない。 被控訴人は,Aによる本件インデックス・ファンドの買い注文は,同日午後2時過ぎで,売り注文は同日午後3時過ぎである。」旨主張し,原審証人Fの供述及び陳述書(乙36)には,その主張に沿う部分がある。しかしながら,この事実を裏付ける的確な証拠はなく,前項②,⑥の取引がいずれも売り注文と買い注文が同時になされたことが窺えること,反対趣旨の「買い注文を受けたのは午後3時過ぎ頃であり,売り注文と買い注文を同時にした。」旨のAの原審における供述に照らし,採用できない。 また,控訴人は,同日午後6時過ぎ頃,F及びEが控訴人事務所を訪れて謝罪し,その際Eが本件第一取引による損害の賠償を約したと主張するところ,原審における控訴人代表者Aの供述及び陳述書(甲8)には,その主張に沿う部分があるほか,甲12にも「E部長が訪問され,この損失分の埋め合わせは必ずやるとの約束をされた。」との記載があるが,Eが「早いうちに挽回させていただきたいと思っています。」と述べたのを損害の賠償を約束した趣旨に理解して供述もしくは記載された可能性を否定できないから,採用できない。 (3) 上記認定の事実によれば,Fは,本件第一取引につき,顧客に前日の基準価格で本件インデックス・ファンドを購入できるとの特別の利益を与えるもので,当日の相場状況から利益が出ることがほぼ確実な取引であるとして,勧誘したものであるといえる。しかし,本件第一取引は,実際にも顧客に前日の基準価格で本件インデックス・ファンドを購入できるとの もので,当日の相場状況から利益が出ることがほぼ確実な取引であるとして,勧誘したものであるといえる。しかし,本件第一取引は,実際にも顧客に前日の基準価格で本件インデックス・ファンドを購入できるとの特別の利益を与えるもので,当日の相場状況から利益が出ることがほぼ確実な取引であると予想された(午後3時過ぎの時点においては正確な試算は困難であって,結果的に誤っていたものの,おおよその概算では利益が見込まれていた。)うえに,第3,1の認定事実により控訴人において相場状況からその損益を判断する能力があり,これに従った取引であったことが認められるから,投資信託会社との関係において本件第一取引が違法になるか否かの点はさておくとして,控訴人との関係においては,これを違法とする余地はないというべきである。 3 本件第二取引について(1) 前記前提事実に,証拠(甲13,17,25ないし27,30,37,乙4,8ないし11,36,37,69,79.原審証人F,同E,原審における控訴人代表者A)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 ① 被控訴人は,平成2年10月2日及び同月3日の2日間,システム・オープンファンドをブロック・オファーにより,販売価格6743円,追加募集口数595万口として販売した。 ② Fは,平成2年10月2日午前9時過ぎ,Aに対し,「ブロック・オファーで前日の値段でシステム・オープンファンドが買える。今日は株価が上がっているので間違いなく利益が出る。午前9時40分締め切りですから買うなら早く買ってください。」と勧誘した。 そこで,Aは,同日午前9時40分前に,システム・オープンファンド3万口の買い注文をなすと同時に,購入後直ちに売却する手続も一緒にとるよう指示した。 ところが,被控訴人の金融 た。 そこで,Aは,同日午前9時40分前に,システム・オープンファンド3万口の買い注文をなすと同時に,購入後直ちに売却する手続も一緒にとるよう指示した。 ところが,被控訴人の金融センターから,控訴人の事務所宛に午前10時30分を過ぎてもシステム・オープンファンド購入を勧誘するファクス案内が送付されていた。 ③ 被控訴人においては,平成2年10月2日午後2時58分頃には,控訴人のシステム・オープンファンド3万口の買い注文と売り注文の双方の手続が完了していた。 ④ その後,申込みの総量が860万0392口に上り,追加設定口数595万口を超過する事態となり,被控訴人の投資信託部から,Eに,申込みが多すぎたので,減額しないとブロック・オファー自体の売出ができなくなるとの連絡があった。 そこで,Fは,Eからの指示により,平成2年10月2日午後4時頃,控訴人に対し,電話で「本社が集計ミスをしたので買付をしたシステム・オープンファンドを減額していただけないか。」と依頼した。これに対し,Aが,システム・オープンファンド3万口の売買が成立したか確認したところ,Fは3万口の買い,売りともできたことを認めた。そこで,Aは,減額の依頼を断ると,Fは控訴人の事務所を訪ねる旨言った。 ⑤ Fは,控訴人の事務所を訪れ,Aに対し,システム・オープンファンドの買付の減額を依頼し,さらに,控訴人の事務所からEに電話をし,EからもAに減額を依頼してもらった。 すると,Aは,Fに対し,「1万口分は貸しということではっきりさせてもらえば,買付を2万口にするのを了解する。」旨言った。Fが,またEに電話をし,「買付3万口を1万口カットして,買付2万口というところで,OKはいただいたんです。 それで,買えなかった1万口分は,当社が えば,買付を2万口にするのを了解する。」旨言った。Fが,またEに電話をし,「買付3万口を1万口カットして,買付2万口というところで,OKはいただいたんです。 それで,買えなかった1万口分は,当社がまた借金を作ったというふうな気持ちでいてくれということです。」等と言った。それから,FがAと電話を替わり,EがAに対し「借りを作らせてほしい。」と言ったところ,Aは,「今回はEとFの顔を立てる。」と言って,2万口に減額することに同意した。 そこで,被控訴人において,3万口買い,3万口売りの伝票を2万口買い,2万口売りの伝票に書き換える等の手続がとられた。取引日記帳(甲25,乙79)には,10月2日3万口買い単価7267円,同日2万口買い単価7267円,同日2万口売り単価6743円,同日3万口売り単価7267円の記載がなされた。 (2) ところで,控訴人は,EはAに対し減額分の賠償を約束したと主張し,控訴人代表者Aは,「Eが必ず弁償すると言った。」旨供述する。確かに,前記認定のとおり,Eが「借りを作らせてほしい。」と述べたことは認められるものの,Eが「必ず弁償する。」と言ったことを認めるに足る的確な証拠はない。そして,「借りを作らせてほしい。」という言葉も,それだけで減額分の賠償を約束したものと認めることはできない。したがって,控訴人の同主張は採用できない。 また,控訴人は,「当日に1136万2392口の買付約定が成立しているから,募集予定口数を超えた買付注文があるとブロック・オファーが成立しないとの被控訴人の主張は不合理である。申込み口数が設定口数を超過する募集となったことは被控訴人の集計管理のずさんさに起因し,その損益処理は被控訴人が負担すべきである。設定口数が超過しても,時間優先の原則に基づき処理すべきである。当日残った 口数が設定口数を超過する募集となったことは被控訴人の集計管理のずさんさに起因し,その損益処理は被控訴人が負担すべきである。設定口数が超過しても,時間優先の原則に基づき処理すべきである。当日残った買付口数は設定口数を下回るものであったから,控訴人に減額依頼をする必要はなかった。本件第二取引は,投資信託販売におけるシステムについて,一般投資者が知識に乏しいことに乗じた利益金不払いのための会社ぐるみの詐術である。」と主張し,確かに申込み口数が設定口数を超過する募集となったことは被控訴人の集計管理のずさんさに起因するとはいいうる。しかし,証拠(原審証人F,同E)及び弁論の全趣旨によれば,ブロック・オファーにおいて募集予定口数を超えた買付注文があった場合の取扱いについては明確なルールがなく,ブロック・オファー自体が無効となるのか,時間優先の原則に基づいて処理されるのか,それとも募集した証券会社の責任で処理されるべきであるのか必ずしも明らかではなかったところ,当日の申込み口数(正しくは860万0392口)が募集予定口数を超えていたため,被控訴人において各顧客と減額(一部解約)の交渉をし,その同意を得て当日の買付口数を設定口数以下にしたものであることが認められる。かかる経緯からすれば,FやEによるAへの減額依頼が,投資信託販売におけるシステムについて,一般投資者が知識に乏しいことに乗じてした利益金を不払いとするための会社ぐるみの詐術であるとはとうてい認められず,控訴人の同主張は採用できない。 (3) そうとすると,Aが減額を承諾するにつき,控訴人が主張するような欺罔行為があったとはいえないから,詐欺による取消しの主張は理由がなく,また,不法行為の主張も理由がない。 4 本件第三取引について(1) 前記前提事実に,証拠(甲11,12,15 するような欺罔行為があったとはいえないから,詐欺による取消しの主張は理由がなく,また,不法行為の主張も理由がない。 4 本件第三取引について(1) 前記前提事実に,証拠(甲11,12,15,19,24,28,29,41,乙4,12,13,36,65ないし68,74,Fの氏名がFの自署であることに争いがないから真正に成立したものと推定すべき甲5,原審証人F,同L,原審における控訴人代表者A。ただし,乙36,原審証人F,同Lの供述中,後記採用できない部分を除く。)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 ① Aは,平成3年4月10日に,日興証券において廣潤社名義の口座で,同月11日に野村証券において控訴人の口座で,いずれもTHK転換社債を買い付け,同月17日に日興証券において控訴人名義の口座でTHK株5000株を,同月18日に日興証券の廣潤社名義の口座でTHK株3000株をそれぞれ買い付け,同年5月15日に日興証券の,同年6月14日に野村証券の各THK転換社債を売り付け,同年8月29日に日興証券のTHK株を売り付けた。 ② Fは,平成3年4月18日頃,Aに対し,「L専務からの指示で大切な大口のお客さんにクロス商いで割り当てる。THKのK社長の売りクロスであり,絶対間違いない。THKには特別な好材料がある。4月18日の終値の1万3500円でクロスを4月19日の朝1番に出す。」等と言って,THKの株式購入の勧誘をしたところ,Aは,「ほかでも調べてみる。」と言った。 Aは,4月19日の寄付で1万3500円となり,高値1万4600円,終値1万4400円,出来高77万1000株(この内被控訴人は,売り17万株,買い23万5000株)であったことや,L専務が被控訴人の代表取締役専務であったこと等から,実際にクロス 1万4600円,終値1万4400円,出来高77万1000株(この内被控訴人は,売り17万株,買い23万5000株)であったことや,L専務が被控訴人の代表取締役専務であったこと等から,実際にクロス取引がなされたと判断した。 ③ Fが,平成3年4月22日,Aに電話して,同様にTHK株の購入を勧めたところ,Aからいくらで買えるのかと尋ねられた。Fが,株式部に連絡した上,1万4200円で買えると報告すると,Aから1万4100円で買えないかと言われた。Fが,株式部に確認すると,買えそうだと言われたため,Aから,同日午後9時52分に1万株買付の注文を受け,日本店頭証券でその売買の執行をした(本件第三取引)。 被控訴人の日本店頭証券での1万4100円での売買執行時刻は,午前10時2分と10時19分であり,それぞれ各4万6000株と各3万5000株売り買い同数となっている。本件第三取引の買い注文に対応する売り注文は,THKのK社長によるものであった。 ④ ところが,その後,THK株の株価が下落し続けたことから,Aは不審に思い,Fに対し,THK株の本件の出庫を依頼し,その返還を受けた。その結果,Aは,その株券の裏書が被控訴人になっているのを知り,Fに対し,「大丈夫か。君のところが売り逃げしたのじゃないか。L専務に聞いてください。」と言った。 FがL専務にこの点を尋ねたところ,L専務は「K社長が売却して,値下がりすれば,インサイダーに抵触するので値下がりは絶対にない。K社長がクロス商いで売り逃げできない。」と答えた。Fは,L専務のこの回答を控訴人に伝えた。 ⑤ Lは,平成3年6月に大阪に転任になり,その際の挨拶回りとして控訴人の事務所も訪問した。その際,Aが「専務がおっしゃっていたTHK株の特別の好材料とは何ですか。TH 回答を控訴人に伝えた。 ⑤ Lは,平成3年6月に大阪に転任になり,その際の挨拶回りとして控訴人の事務所も訪問した。その際,Aが「専務がおっしゃっていたTHK株の特別の好材料とは何ですか。THKのK社長のクロス商いということで買ったけれども,間違いありませんか。」等と尋ねると,L専務は,「THKは業績がよい。今しばらく待ってください。絶対大丈夫です。迷惑はかかりません。THKのK社長の売りクロス商いであり,売り逃げは絶対ありません。」と言った。 ⑥ しかし,その後もTHKの株価は低迷したため,Aは,平成3年7月に三洋証券からTHK株の手口表(甲19)を取り寄せ,同年4月18日,同月19日,同月22日の被控訴人及び系列の野村証券の取扱量が他の証券会社と比較し圧倒的に大量の売買数量となっていたことを確認した。 そのため,Aは,Fに対し,この手口表を見せ,被控訴人の売り逃げの可能性について問いただしたところ,FもK社長のクロス商いにつき疑問があると言うようになった。そして,FがAにTHK株を一旦売却することを勧めたことから,平成3年8月26日に500株,同月27日に3500株,同月30日に3000株,同年9月19日に1000株,同月20日に2000株を売却し,その結果,合計3446万7621円の売却差損を出した。 ⑦ Fは,平成3年10月7日頃,Aがワープロで作成した「平成3年4月22日,当社よりTHK株式1万株につきクロス商いにて買いを勧めました。上記勧誘にあたっては,クロス商いの相手方はTHKの社長であるK博殿と説明しましたが,実際は当社が売手であり,そのことを秘匿し,貴社に多大の損害を被らせたことにつき謝罪します。損害の賠償については,後日具体的条件等について当社より提示させて頂きますので宜しくお願いします。」と が,実際は当社が売手であり,そのことを秘匿し,貴社に多大の損害を被らせたことにつき謝罪します。損害の賠償については,後日具体的条件等について当社より提示させて頂きますので宜しくお願いします。」との念書(甲5)に署名押印し,Aに交付した。 (2) なお,被控訴人は,「Fがクロス商いという言葉を使ったことはない。Fは,Aに対し,THK株について,L専務の一般的推薦もあり,業績がいいこと及び株式分割による流通量増大が見込まれたことなどから,勧誘した。ところが,Aは,Fに対し,THK株購入の数日前からも情報を収集し,他の証券会社から入手した手口表を示して野村証券と被控訴人がTHK株のクロス商いを行っている,THKのK社長がTHK株を売りに出しているらしい等と説明した。L専務も,控訴人のTHK株買付後において,インサイダーの点からみてもK社長が売り逃げをするはずがないとの一般常識論を述べたのにすぎない。」と主張し,これに沿う乙36,65,原審証人F及び同Lの各供述部分があるが,念書(甲5),F作成の「A氏との商い状況について」と題する書面(甲11),F作成の「THK株売買に対する疑惑」と題する書面(甲12),反対趣旨の原審における控訴人代表者Aの供述に照らし,採用できない。 被控訴人は,「念書(甲5),F作成の「A氏との商い状況について」と題する書面(甲11),F作成の「THK株売買に対する疑惑」と題する書面(甲12)は,Aが控訴人の事務所でFを2時間以上にわたって執拗にその作成を要求し,精神的に追い詰められたFが最終的に根負けして作成したものであるから,任意かつ真意に基づいて作成されたものではない。これらは,自分をF氏,控訴人を当方と記載し,当事者の表示方法が逆転しているところがあり,内容も被控訴人に不利なものであり一営業マンの ものであるから,任意かつ真意に基づいて作成されたものではない。これらは,自分をF氏,控訴人を当方と記載し,当事者の表示方法が逆転しているところがあり,内容も被控訴人に不利なものであり一営業マンの判断で結論として述べることが不可能な記載である。」と主張し,原審証人Fは,「Aから要求されて作成した念書は,いずれもAが用意した書面につき執拗に要求された上,覚えとして残しておく,表には出さないと言われて,やむなく署名押印したものである。F作成の「A氏との商い状況について」と題する書面(甲11),F作成の「THK株売買に対する疑惑」と題する書面(甲12)は,Aの指示どおり口述筆記したものであり,自分で考えた文章は含まれておらず,記憶と異なる部分もある。」と供述する。しかし,証拠(甲33,34)によれば,Aは,Fに対し,Fが図書館で作成しているという損害賠償請求書の完成を督促していることが認められ,Aが控訴人の事務所で執拗にその作成を要求したものとは認め難い。また,F作成の「THK株売買に対する疑惑」と題する書面(甲12)中には,自分をF氏,控訴人を当方と記載している部分もあるが,これは,同書面が,その内容から,控訴人が被控訴人に対し損害賠償請求をするための資料として作成されたものであることが窺えるから,Aの言うままにFが作成したものとも認め難い。そして,そもそも証券会社の従業員が,顧客の言うままに事実と異なる念書等を作成したとも直ちに認め難いところである。したがって,被控訴人の同主張は採用できない。 控訴人は,「会話録音反訳書(甲33,34)は,時機に後れた攻撃又は防御の方法であるから,却下されるべきである。」とも主張するが,同証拠を採用しても,それにより訴訟の完結を遅延させるとは認められないから,控訴人の同主張は採用できない。 ,時機に後れた攻撃又は防御の方法であるから,却下されるべきである。」とも主張するが,同証拠を採用しても,それにより訴訟の完結を遅延させるとは認められないから,控訴人の同主張は採用できない。 (3) 上記認定の事実からすれば,Fは「L専務からの指示で大切な大口のお客さんにクロス商いで割り当てる。THKのK社長の売りクロスであり,絶対間違いない。」等とTHK株を勧誘したと認められるが,実際に,控訴人の取引とK社長との取引は,対応しており,クロス商いであったと認められることからして,Fの述べたことはおおむね真実であったと認められる。また,上記認定の事実や第3,1の認定事実からして,Aは,他の証券会社からの情報もあわせ,FやLからの情報の適否を判断する能力があったと認められる。 そうとすれば,FがAに対し,「THKのK社長の売りクロスであり,絶対間違いない。」と勧誘したことは,控訴人に対する関係では,断定的判断提供,不実表示,誤解表示を伴う勧誘に該当するとは認められない。もっとも,Fが控訴人に特別の利益を提供する趣旨で,上記の勧誘をしたとみる余地はあるが,そうであるとしても,それがただちに控訴人に対する不法行為を構成するとはいえない。 また,Fもしくは被控訴人が不正の手段,計画,又は技巧をなしたとも,重要な事項について虚偽の表示をしたとも認められない。 控訴人は,「本件取引当日は,被控訴人及び系列の野村証券の取扱量が他の証券会社に比較し圧倒的大量になっていること,本来営業ラインではない代表権を有するL専務が営業担当者にTHK株を推奨していること等から,大量推奨販売の一環として行われた可能性がある。」とも主張するが,そうであるとしても,ただちに控訴人に対する不法行為が成立するとはいえない。 (4) そうすると,被控訴 を推奨していること等から,大量推奨販売の一環として行われた可能性がある。」とも主張するが,そうであるとしても,ただちに控訴人に対する不法行為が成立するとはいえない。 (4) そうすると,被控訴人の本件第三取引の勧誘が違法であるとの控訴人の主張は理由がない。 5 本件第四取引について(1) 前記前提事実に証拠(甲8,9の1,2,10,16,乙4,14ないし21,36,71ないし73,Fの氏名がFの自署であることに争いがないから真正に成立したものと推定すべき甲6,原審証人F,原審における控訴人代表者A。ただし,甲8,乙36,原審証人F,原審における控訴人代表者Aの各供述中,後記採用できない部分を除く。)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実を認めることができる。 ① 控訴人は,未来工業の新規上場に当たり,Fの勧誘により,未来工業株1000株を新規公募価格4160円で取得した。 上場時の前日である平成3年11月11日,Aは,Fの勧誘に基づき,翌12日に未来工業株を4450円,4400円,4350円で各1万株の指値買い注文をした。 ② 平成3年11月12日,未来工業株の取引は,買い気配で始まり,4350円の買い気配になった。その時点で,Aは,4350円の指値買い注文を取り消し,4450円の指値買い注文を5000株に変更した。 同日の前場終了直前の午前10時50分頃4400円の初値がついて板寄せ状態となり,4400円の指値買い注文は比例配分となった。その時点で,控訴人の4400円の指値買い注文の成否は不明の状態であった。 Aは,同日午前10時53分頃,Fに対し,買い付けた未来工業株全株の売却を指示した。Fは,指値4400円の買い注文については,比例配分となり,控訴人の買い注文が成立しているかどうか判 た。 Aは,同日午前10時53分頃,Fに対し,買い付けた未来工業株全株の売却を指示した。Fは,指値4400円の買い注文については,比例配分となり,控訴人の買い注文が成立しているかどうか判明しなかったため,その売り注文を執行せず,公募の1000株と指値4450円の買付5000株の合計6000株についてのみ売り注文を執行した。 ③ 被控訴人における比例配分作業は時間を要し,未了のまま後場が開始したところ,同日の後場の取引は,4400円の買い気配で始まり,午後12時31分頃4410円で寄り,午後12時32分頃4400円に戻った後,午後12時43分頃4390円の値が付いた。 Fは,午後12時31分頃の時点で4400円の指値売り注文6000株ができたことが分かったため,Aに電話をしその旨を伝えた。また,Aは,午後12時43分頃の時点で4400円の指値買い注文1万株が成立したことが分かったため,Aに電話をし,その旨を伝えたところ,Aは,引き続き4400円の指値売り注文をした。 ④ その後,相場は下落し,控訴人は,平成3年11月13日に5000株を4230円で,平成4年2月5日に5000株を4150円で売却し,結局210万円の損失となった。 ⑤ Fは,平成3年11月13日,控訴人に対し,被控訴人の作業が遅れ,控訴人が未来工業株の売却の機会を失ったことを詫び,「この度の未来工業㈱の売買につき,約250万円という多大なごめいわくをおかけしました。この分につきましては,早急に対処すべく,上司に相談し,行動をとるつもりでございます。」との内容の念書(甲6)を交付した。 (2) なお,控訴人は,「Aが売却指示をしたのは,1万6000株の全部につき,平成3年11月12日午後12時35分頃から40分頃である。仮に,Aが同日午 す。」との内容の念書(甲6)を交付した。 (2) なお,控訴人は,「Aが売却指示をしたのは,1万6000株の全部につき,平成3年11月12日午後12時35分頃から40分頃である。仮に,Aが同日午前11時頃に6000株について売却指示したとすれば,Aはわざわざ損が明らかな売却指示をしたことになり不自然である。」と主張し,甲10(F作成の「未来工業」と題する書面)には,「後場より後,4400円買い気配でスタート。・・・4400円買い気配が4410円で寄り,その後4400円に戻る。この時点で手持ち株式の売却の指示。」との記載があるほか,控訴人代表者Aも原審において同様の供述をする。しかし,乙19(注文伝票)に,同日の控訴人による未来工業株6000株の売り注文の受注日時が10時53分と打刻されていること,Aはわざわざ損が明らかな売却指示をしたにしても,株式の保有状況や相場の状況等についての判断次第でそれは十分にあり得ることからして,ただちに採用できない。 被控訴人は,「控訴人は,午前11時直前,Fに対し,未来工業株全株を4400円の指値で売りつけるよう指示したので,Fは,募集買付の1000株と指値4450円での買付5000株の合計6000株について売り注文を執行した。しかし,4400円の指値買い注文については比例配分となり,控訴人の買い注文が成立しているかどうか判明していないから,Aに対し,4400円の指値買い注文分は売り注文を執行できないと伝え,Aもこれを了解した。後場に入った午後12時43分に未来工業株が4390円の株価をつけて指値4400円の買い注文も成立したことが判明したので,Fはその旨をAに伝えたが,Aは,損失発生が明らかであったため,暫く様子を見ることとし,再度の売り注文の指示はしなかった。」旨主張し,乙36(Fの陳述書 0円の買い注文も成立したことが判明したので,Fはその旨をAに伝えたが,Aは,損失発生が明らかであったため,暫く様子を見ることとし,再度の売り注文の指示はしなかった。」旨主張し,乙36(Fの陳述書)及び原審証人Fの供述中には,この主張に沿う部分がある。 しかし,控訴人代表者Aの原審における「未来工業株全株を4400円の指値で売りつけるよう指示したところ,Fはわかりましたと答えた。Fが,Aに対し,指値4400円の買い注文については比例配分となり,控訴人の買い注文が成立しているかどうか判明していないから,4400円の指値買い注文分は売り注文を執行できないと伝えてきたことはない。募集買付の1000株と指値4450円での買付5000株の合計6000株について売り注文ができたことの連絡があった後に,4400円の1万株の指値買付注文分ができたことの連絡があった。」旨の供述部分,甲10(F作成の「未来工業」と題する書面)の記載は,未来工業株6000株の売り注文の受注日時以外は,おおむね未来工業株の相場の状況と符合していること,Fが,同取引の翌日である平成3年11月13日に,控訴人に対し,前記のとおりの念書(甲6)を交付していることに照らし,ただちに採用できない。 (3) 上記認定の事実を前提として,控訴人主張にかかる本件第四取引についての債務不履行ないし不法行為の成否(控訴人による未来工業株の4400円の指値買い注文が,前場が終了し,後場に入ってからも買付の成否が判明しないとして,控訴人の売り注文を執行しなかったことにより,控訴人の売却時期を失わさせたことが違法か否か)につき検討する。 控訴人は,「証券取引所における売買成立の順位決定は時間優先の原則が適用されるのであって,証券会社内部においても,顧客からの注文数を出来高で満たすことができな が違法か否か)につき検討する。 控訴人は,「証券取引所における売買成立の順位決定は時間優先の原則が適用されるのであって,証券会社内部においても,顧客からの注文数を出来高で満たすことができない場合には,時間優先の原則が取られることがあるが,顧客間の公平から言っても望ましいと言うべきである。そして,これによれば,控訴人の4400円の指値注文は割り振りを要せず,ただちに売買成立が告知されてしかるべきであった。」と主張する。しかし,証拠(甲16,乙71ないし73,原審証人E)及び弁論の全趣旨によれば,比例配分については,名古屋証券取引所業務規定10条3項においては,売買立会の始めの約定値段が決定されるまでに行われたすべての呼値はそれぞれ同時に行われたものとみなす旨が規定され,その他の各取引所も同様の業務規定を定めており,これを受けて各取引所における各会員証券会社に対する出来約定の配分方法が取り決められているが,その基本原理は,初値決定までの呼値についてはすべて同時に行うものとみなされ,会員証券会社毎の呼値の数量に比例配分して配分を決める点にあること,本件については,平成3年11月12日午前10時50分に未来工業株の初値が決定したため,名古屋証券取引所は,この原理にしたがい,被控訴人の4400円での23万6000株での23万6000株の買い指値注文に対して17万3000株を割り当てたこと,そこで,被控訴人において,初値決定までの同一呼値注文について比例配分を基本原則とするこの証券取引所の建前及び実際の取扱方法に準じて,顧客からの注文につき比例配分作業を実施したことが認められる。したがって,控訴人の同主張は採用できない。 控訴人は,「証券会社としては後場の開始までに,前場での割り振りを完了させ,後場の取引に遅延なく臨む体勢をとるべ 分作業を実施したことが認められる。したがって,控訴人の同主張は採用できない。 控訴人は,「証券会社としては後場の開始までに,前場での割り振りを完了させ,後場の取引に遅延なく臨む体勢をとるべき義務がある。事務作業の遅延により取引時刻開始後も注文の受付ができないということ自体,証券会社の債務不履行状態であることは明らかである。」と主張する。しかし,証拠(原審証人E)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人においては,比例配分作業が手作業となるために,未来工業株の上場日である当日は本店株式部から応援要員を派遣して,処理体制を整えていたことが認められ,後場の開始までに前場での割り振りを完了させることができず,株価が4390円をつけた午後12時43分頃まで,4400円での買付約定の成否が判明しなかったとしても,後場開始からさほどの時間が経過したものではないから,ただちに被控訴人に債務不履行があったということはできない。したがって,控訴人の同主張は採用できない。 控訴人は,「4400円の指値買い注文による1万株分の売付注文伝票は売買成否不明であるから受け付けられないとして,控訴人の売り注文を執行しなかったのは違法である。被控訴人は,本件第二取引では,解除条件付きで買付注文3万口を受け付け,条件成就未定ではあるが,とりあえず3万口の売付注文を執行したと主張している。また,取引日記帳(甲25)によれば,控訴人の同3万口の売付注文は成立したと記載されている。」とも主張する。しかし,株式取引においては,仮に買付注文の存否が不明の段階で売付注文を受注して執行を行ったが,後に買付約定が成立していないことが判明した場合,証券会社としては,受託契約準則に基づき,顧客の計算において反対売買を行い,なお損害が発生する場合には顧客に請求することになり,顧客が 行を行ったが,後に買付約定が成立していないことが判明した場合,証券会社としては,受託契約準則に基づき,顧客の計算において反対売買を行い,なお損害が発生する場合には顧客に請求することになり,顧客が任意の支払に応じなければ,当該顧客に対して訴訟を提起するなどの対応に迫られるのに対し,本件第二取引のような投資信託取引にはかかる事態が生ずることはない(弁論の全趣旨)。そのため,かかる取扱が相当であるか否かは別論として,本件第二取引では,伝票に注文の時刻を打刻されず,また,取引日記帳(甲25)にも,控訴人の3万口の売付注文は成立したと記載されているものの,後に3万口の売付注文の取り消しの記載がある(乙79)。したがって,控訴人の同主張は採用できない。 控訴人は,「前場に板寄せで買付約定の成否が不明であり,売付注文を受けられなかったとすれば,被控訴人は証券取引の取次の専門家である証券会社の善管注意義務として,後場の動向を直ちに顧客である控訴人に確認し,前場での売付注文を維持するのか否かを確認すべき義務を負う。」旨主張する。しかし,前場に板寄せで買付約定の成否が不明であり,売付注文を受けられないとしても,後場の動向を確認し,前場での売付注文を維持するのか否かを決するのはもっぱら投資家である控訴人の自己責任であるというべきであるから,被控訴人に控訴人主張にかかる同義務があるとは認め難い。したがって,控訴人の同主張は採用できない。 6 以上によれば,控訴人の請求は理由がないから,これを棄却すべきである。 第4 結論よって,原判決は相当であって,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,控訴費用の負担につき民訴法67条1項,61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第3部 ,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,控訴費用の負担につき民訴法67条1項,61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第3部裁判長裁判官福田晧一裁判官内田計一裁判官倉田慎也
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