昭和45(ヨ)2335 東京都交通局懲戒免職

裁判年月日・裁判所
昭和46年4月6日 東京地方裁判所
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判決文本文11,686 文字)

主文 本件仮処分申請を却下する。訴訟費用は申請人の負担とする。事実 第一当事者双方の求める裁判一申請人申請人が被申請人に対し労働契約上の権利を有することを仮に定める。被申請人は、申請人に対し、毎月一五日限り一カ月三三、二六二円の割合による金員を仮に支払え。訴訟費用は被申請人の負担とする。二被申請人主文第一項と同旨第二申請の理由一(当事者)(一) 申請人は、昭和三八年五月一五日東京都交通局新宿電車営業所に都電の車掌として入局し、昭和三九年八月同営業所廃止に伴い大久保電車営業所所属となつたが、同営業所が東京都交通事業再建計画に基づき昭和四五年三月二六日廃止されたので、翌二七日電車部管理課勤務を命ぜられ、同年四月一日から地下鉄駅務員教習のため青山教習所に入所し、同年五月一六日右教習所を終了し、翌一七日付で同交通局新橋管理所浅草橋駅務区浅草駅駅務員を命ぜられ、勤務していた。また、申請人は、同交通局に勤務する職員等約一三、〇〇〇名で組織する東京交通労働組合(以下、「東交」という。)の組合員で、昭和四一年四月以来同組合新宿大久保支部青年部長等の役員をしていた。(二) 被申請人は、東京都の経営する交通事業における地方公営企業法(以下、「企業法」という。)七条に基づく管理者職員の任免、懲戒等の身分取扱いに関する事項を掌理する権限(同法九条二号)を有し、申請人の任命権者である。二(被保全権利)(一) 被申請人は、昭和四五年五月三一日申請人に対し、「昭和四五年二月二五日午後五時四〇分頃東京都港区<以下略>営団地下鉄赤坂見附駅一、二番線ホームで警視庁刑事部捜査第三課の警察官により、窃盗未遂の現行犯として逮捕され、身柄を警視庁愛宕警察署に引致され、以後三月五日まで留置された。かかる行為は社会人とし >営団地下鉄赤坂見附駅一、二番線ホームで警視庁刑事部捜査第三課の警察官により、窃盗未遂の現行犯として逮捕され、身柄を警視庁愛宕警察署に引致され、以後三月五日まで留置された。 後五時四〇分頃東京都港区<以下略>営団地下鉄赤坂見附駅一、二番線ホームで警視庁刑事部捜査第三課の警察官により、窃盗未遂の現行犯として逮捕され、身柄を警視庁愛宕警察署に引致され、以後三月五日まで留置された。かかる行為は社会人とし >営団地下鉄赤坂見附駅一、二番線ホームで警視庁刑事部捜査第三課の警察官により、窃盗未遂の現行犯として逮捕され、身柄を警視庁愛宕警察署に引致され、以後三月五日まで留置された。かかる行為は社会人として最も恥ずべき行為であり全体の奉仕者たるにふさわしくない非行である。また公務員はその職の信用を傷つけ、または職全体の不名誉となるような行為をしてはならないのであり、かかる行為は地方公務員法第三三条(信用失墜行為の禁止)の規定に違反するものである。よつて同法第二九条一項第一号及び第三号を適用して免職とする。」旨の意思表示をした。(二) しかし、右懲戒免職の意思表示(以下、「本件懲戒免職」という。)は、次の理由により無効である。1 申請人は被申請人のいうような懲戒事由が存在しない。すなわち、申請人が被申請人のいうような容疑で逮捕留置されたことはあるが、申請人には当時財物を窃取する意思はなかつたものである。2 また、本件懲戒免職は、次のような事情の下にされたものであるから、懲戒権の濫用というべきである。すなわち、(1) 申請人は、前記のように逮捕留置されたが、不起訴処分により釈放され、なんらの刑罰も加えられていない。(2) 駅務員としての職務は、改札、集札、清掃等を行なう、いわゆる現業部門であり、申請人が逮捕されたことがあるからといつて、業務の遂行になんらの支障も認められない。(3) 申請人が釈放されたのは昭和四五年三月五日であり、被申請人は、おそくとも同日申請人が右のように逮捕留置されたことを知りながら、なんらの処分もせず、その後、前記のように、申請人に地下鉄駅務員としての教習をうけさせて浅草駅駅務員として勤務させ、この間なんら不都合なこともないのに、同年五月三一日突然本件懲戒免職に及んだものである。(4) 申請人が逮捕留置されたことは 申請人に地下鉄駅務員としての教習をうけさせて浅草駅駅務員として勤務させ、この間なんら不都合なこともないのに、同年五月三一日突然本件懲戒免職に及んだものである。(4) 申請人が逮捕留置されたことは第三者が知る由もなかつたのに、同年三月五日大久保電車営業所職制は、意職的に、「申請人がスリで逮捕されたが、青年部長がこんな有様だから支部執行部などなにをしているのかわからない。 申請人が逮捕留置されたことは 申請人に地下鉄駅務員としての教習をうけさせて浅草駅駅務員として勤務させ、この間なんら不都合なこともないのに、同年五月三一日突然本件懲戒免職に及んだものである。(4) 申請人が逮捕留置されたことは第三者が知る由もなかつたのに、同年三月五日大久保電車営業所職制は、意職的に、「申請人がスリで逮捕されたが、青年部長がこんな有様だから支部執行部などなにをしているのかわからない。」と教宣した。(5) 大久保電車営業所廃止に関する当局と東交新宿大久保支部との団体交渉は難航したが、同月二五日の交渉で、A営業所長は、「申請人に対する処分は、所長の上申内容どおり結論づけられるはずであり、上申は、申請人が年も若いし、将来のこともあるので、寛大な措置にしてほしい旨の内容とする。」と確約したので、翌二六日円滑に同営業所が廃止された。さらに、同二七日東交新宿大久保支部組合員に電車部管理課勤務の辞令交付にきた電車部長の代理B管理課長は、組合員の質問にこたえ、「申請人は年も若いし、将来もあり、所長から話もあるので、駅務員として皆さんと一緒に教習所に入ることで円満解決する。」と言明した。しかるに、被申請人は、営業所廃止が終り、支部組合員が地下鉄の各駅に分散して同一職場で団結できなくなるや、本件懲戒免職に及んだもので、右交渉経緯からみて、同処分は著るしく信義則に反するものである。(6) 被申請人は、東交新宿大久保支部の青年部長で熱心な組合活動家である申請人を処分することによつて、同年六月四、五日の両日行われる予定の東交浅草橋駅支部の支部長選挙に、従来新宿大久保支部と同一歩調をとつてきた三の輪支部から配転されたCが立候補したことに牽制を加え、新宿大久保支部、三の輪支部から配転された者が配転先の職場で組合役員に当選したりして勢力を伸ばすことを抑えようとしたもので 一歩調をとつてきた三の輪支部から配転されたCが立候補したことに牽制を加え、新宿大久保支部、三の輪支部から配転された者が配転先の職場で組合役員に当選したりして勢力を伸ばすことを抑えようとしたものである。3(1) 本件懲戒免職は、労働基準法二〇条に違反した解雇である。すなわち、被申請人は、本件懲戒免職にあたり、申請人に対して、三〇日前にその旨予告もしなければ、また、三〇日分以上の平均賃金の提供もしなかつた。しかも、被申請人は、右懲戒免職につき同年七月一〇日頃行政官庁に対し、除外認定申請を行なつたが、同年八月下旬頃却下された。 職場で組合役員に当選したりして勢力を伸ばすことを抑えようとしたものである。3(1) 本件懲戒免職は、労働基準法二〇条に違反した解雇である。すなわち、被申請人は、本件懲戒免職にあたり、申請人に対して、三〇日前にその旨予告もしなければ、また、三〇日分以上の平均賃金の提供もしなかつた。しかも、被申請人は、右懲戒免職につき同年七月一〇日頃行政官庁に対し、除外認定申請を行なつたが、同年八月下旬頃却下された。(2) 仮に、同条違反の解雇の効果について右の見解が理由がないにしても、同条は労働者を解雇しようとする使用者に三〇日間の解雇予告をするか、予告手当を支給して即日解雇するかの選択権を与えたものであるが、使用者が予告ともいわないし、予告手当も支払わない解雇の意思表示は、右選択権を行使しておらず、この場合にはこの意思表示をどう受取るかは労働者の選択にまかされる。そして、労働者は予告がないことを主張して解雇の意思表示の無効を主張することもできるし、予告手当の支払いを請求することもできると解すべきである。三 (保全の必要)申請人は、被申請人から毎月一五日に同月一日より月末までの賃金三三、二六二円の支払いをうけ生計の資としていたものであるが、本件懲戒免職によつて右賃金の支払いをうけることができず、かつ、被申請人に雇傭される職員としての地位も否認されているので、被申請人に対し労働契約存続確認等請求の本案訴訟の提起を準備中であるが、その確定をまつていては著るしい損害をこうむる。第三訴訟要件に関する被申請人の主張一本件仮処分申請は不適法である。すなわち、本件懲戒免職は、以下述べるように行政事件訴訟法四四条にいう「行政庁の その確定をまつていては著るしい損害をこうむる。第三訴訟要件に関する被申請人の主張一本件仮処分申請は不適法である。すなわち、本件懲戒免職は、以下述べるように行政事件訴訟法四四条にいう「行政庁の処分」に該当するから、民事訴訟法上の仮処分によりその効力の停止を求めることは許されない。(一) 被申請人の経営しているような地方公営企業の職員も、一般地方公務員と同様、基本的には地方公務員法の適用を受ける地方公共団体の職員、すなわち、地方公務員である。そして、地方公務員法は、地方公務員が全体の奉仕者として公共の利益のために勤務するものであること等から、地方公務員の地方公共団体に対する勤務関係について、行政権によつて支配される権力関係として、これを公法的に規律しているものである。 ない。(一) 被申請人の経営しているような地方公営企業の職員も、一般地方公務員と同様、基本的には地方公務員法の適用を受ける地方公共団体の職員、すなわち、地方公務員である。そして、地方公務員法は、地方公務員が全体の奉仕者として公共の利益のために勤務するものであること等から、地方公務員の地方公共団体に対する勤務関係について、行政権によつて支配される権力関係として、これを公法的に規律しているものである。(二) ただ企業法は、地方公営企業が一般行政と異なる企業的特質を有することに着目して、地方公務員法の職階制、給与、勤務時間、その他の勤務条件、政治的行為の制限等に関する規定は、地方公営企業職員には適用しない(三九条)とするとともに、企業職員の労働関係については、地方公営企業労働関係法(以下、「地公労法」という)の定めるところによる(三六条)とし、地公労法は、地方公営企業職員の労働関係については、一般の地方公務員のそれと異なり、できるだけ当事者対等の趣旨を取入れて規律しているにすぎない。したがつて、地方公務員法の任用(一五ないし二二条)、分限および懲戒(二七ないし二九条)、服務(三〇ないし三五条、三八条)等に関する規定は地方公営企業の職員に対してもその適用があることはいうまでもない。(三) 以上のとおりであるから、地方公営企業職員の勤務関係のうち、労働関係については、例外的に地公労法に特則が定められているので、この労働関係を私法的関係とみる見解がありうるとしても、右特 ない。(三) 以上のとおりであるから、地方公営企業職員の勤務関係のうち、労働関係については、例外的に地公労法に特則が定められているので、この労働関係を私法的関係とみる見解がありうるとしても、右特則や企業法三九条に定められている以外の一般勤務関係については地方公務員法が適用されるので、同法に基づいてなされる企業職員に対する処分が行政処分の性格を有するものであることはいうまでもなく、本件懲戒免職ももとより行政処分である。二もつとも、一般論として、当該行政処分が当然無効であるらしいことが仮処分申請自体から一応明らかにうかがえるようなものについては、例外的に仮処分申請が不適法でない場合もありえよう。しかし、行政処分が当然無効であるためには、その内在する瑕疵が重大、かつ、明白でなければならず、そして、明白な瑕疵とは、その瑕疵が外観上一見して明白である場合をいうものと一般に解されている。 懲戒免職ももとより行政処分である。二もつとも、一般論として、当該行政処分が当然無効であるらしいことが仮処分申請自体から一応明らかにうかがえるようなものについては、例外的に仮処分申請が不適法でない場合もありえよう。しかし、行政処分が当然無効であるためには、その内在する瑕疵が重大、かつ、明白でなければならず、そして、明白な瑕疵とは、その瑕疵が外観上一見して明白である場合をいうものと一般に解されている。しかるに、本件懲戒免職については、申請の理由自体によつてみても、右に述べたような意味での当然無効と一応考えられるような重大かつ、明白な瑕疵らしいものはなに一つないから、例外的に仮処分申請が適法となる場合にも該当しない。第四申請の理由に対する被申請人の答弁一申請人主張の申請の理由のうち、一および二、(一)の各事実は認める。ただし、新宿電車営業所の廃止の日は昭和三八年一二月一日である。被申請人は、申請人が主張する「懲戒理由」前段記載のような窃盗未遂の事実があつたので、このような非行は、その後段記載のような理由により地方公務員法三三条の規定に違反することが明らかであるから、同法二九条一項一号および三号を適用して申請人を懲戒免職処分にしたものである。二同二、(二)、1の事実は否認し同2のうち、申請人が不起訴処分になつたこと、駅務員の職務が申請人の主張どおり るから、同法二九条一項一号および三号を適用して申請人を懲戒免職処分にしたものである。二同二、(二)、1の事実は否認し同2のうち、申請人が不起訴処分になつたこと、駅務員の職務が申請人の主張どおりであることおよび被申請人が、釈放後申請人をその主張のように勤務させたことは認めるが、(4)の事実は不知、その他の事実は否認する。三同二、(二)、3(1)の事実は認める。ただし、除外認定申請は却下されたのではなく、本申請の件を認定しないとの処分があつたものである。本件懲戒免職は、労働基準法二〇条一項但書の「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」に該当するから、三〇日前の解雇の予告をするとか、三〇日分以上の平均賃金を支払うことを必要としないいわゆる即時解雇に属するものである。そして除外認定は即時解雇の効力要件ではないから、たとえ、行政官庁から除外認定をしない旨の処分がなされた場合でも、即時解雇の正当事由が存する以上、その解雇は有効である。 ものである。本件懲戒免職は、労働基準法二〇条一項但書の「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」に該当するから、三〇日前の解雇の予告をするとか、三〇日分以上の平均賃金を支払うことを必要としないいわゆる即時解雇に属するものである。そして除外認定は即時解雇の効力要件ではないから、たとえ、行政官庁から除外認定をしない旨の処分がなされた場合でも、即時解雇の正当事由が存する以上、その解雇は有効である。第五被申請人の主張する申請人の反論地方公営企業職員の労働関係は、一般地方公務員のそれと異なり、私法的規律に服する契約関係とみるのが相当であり、これらの職員に対する分限および懲戒処分は、私企業の場合の懲戒処分となんら異なるところがない。すなわち、一地方公営企業は、その営む事業内容や社会的作用の実質において、私企業のそれと本質的に変わるところはない。もつとも、地方公営企業が一定限度において公的な規制に服することは、その経営主体や事業内容の公共的性質から避けられないところであるが、それだからといつて地方公営企業をめぐる法律関係の性格を地方公共団体一般のそれとすべて同視すべきではない。二企業法は、地方公営企業職員の身分取扱いについては、原則として地公労法の定めるところによるものとし(三六条)、地 営企業をめぐる法律関係の性格を地方公共団体一般のそれとすべて同視すべきではない。二企業法は、地方公営企業職員の身分取扱いについては、原則として地公労法の定めるところによるものとし(三六条)、地方公務員法の職階制、給与、勤務時間その他の勤務条件、政治的行為の制限等に関する協定は、職員に適用しない(三九条、)旨定めており、地公労法は、地方公営企業とその職員との間の平和的な労働関係の確立を図ることを目的とし(一条)、職員の労働関係については、原則的に労働組合法、労働関係調整法を適用するものとし(四条)、その労働条件に関して団体交渉および労働協約の締結を認め(七条)、右協定の内容が当該地方公共団体の条例、規則、予算に抵触する場合の措置をも定めている(八ないし一〇条)ほか、労使の共同構成機関による苦情処理(一三条)、労働委員会による調停仲裁(一四ないし一六条)の制度も設けている。もつとも、地方公務員法の任用(一五ないし二二条)、分限および懲戒(二七ないし二九条)、服務(三〇ないし三五条、三八条)等に関する規定は、地方公営企業職員に対してもその適用があるが、これらの事項でも、労働条件と目すべきものについては、なお、団体交渉、労働協約、苦情処理、調停、仲裁等の対象となりうるところである(地公労法七条)。 一三条)、労働委員会による調停仲裁(一四ないし一六条)の制度も設けている。もつとも、地方公務員法の任用(一五ないし二二条)、分限および懲戒(二七ないし二九条)、服務(三〇ないし三五条、三八条)等に関する規定は、地方公営企業職員に対してもその適用があるが、これらの事項でも、労働条件と目すべきものについては、なお、団体交渉、労働協約、苦情処理、調停、仲裁等の対象となりうるところである(地公労法七条)。三地方公営企業職員に対しては、地方公務員法の分限および懲戒に関する規定(二七ないし二九条)が適用されるが、不利益処分に関する不服申立てについての同法四九条に関する規定は適用されない(企業法三九条、地公労法一七条)。したがつて、地方公務員法が全面的に適用される一般地方公務員に対する分限および懲戒については行政不服審査法による不服申立の道を開きながら(地方公務員法四九条の二)、地方公営企業職員に対する分限及び懲戒については行政不服審査法による不 用される一般地方公務員に対する分限および懲戒については行政不服審査法による不服申立の道を開きながら(地方公務員法四九条の二)、地方公営企業職員に対する分限及び懲戒については行政不服審査法による不服申立を予定していないものというべく、このように法律は両者の区別を設けている。理由 第一申請人が東京都の経営する交通事業を行なう東京都交通企業(東京都交通局)の企業職員であり、その主張のように駅務員として勤務していたものであること、被申請人が東京都交通企業管理者として、申請人主張のような権限を有し、申請人の任免権者であること、および被申請人が、申請人に対し、その主張の日時にその主張のような理由で懲戒免職する旨の意思表示をしたことは、当事者間に争いがない。第二被申請人は、本件懲戒免職は、行政事件訴訟法四四条にいう「行政庁の処分」に該当するから、民事訴訟法に規定する仮処分による救済を求めることができない旨主張するので、まず、この点について判断する。一地方公営企業職員に対して適用される企業法二条一項、地公労法三条一項によれば、地方公営企業は、地方公共団体を経営の主体としているもので、企業法三条は、その経営の基本原則として、「常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されなければならない。」と規定している。そして、地公労法三条二項は、同法にいう職員を定義して、「地方公営企業に勤務する一般職に属する地方公務員をいう」と規定し、地方公営企業職員の身分は一般職に属する地方公務員であることを明らかにしている。 団体を経営の主体としているもので、企業法三条は、その経営の基本原則として、「常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されなければならない。」と規定している。そして、地公労法三条二項は、同法にいう職員を定義して、「地方公営企業に勤務する一般職に属する地方公務員をいう」と規定し、地方公営企業職員の身分は一般職に属する地方公務員であることを明らかにしている。二もつとも、申請人が主張するように、地方公営企業が、その営む事業内容や社会的作用の実質において、私企業のそれと異ならないことは否定できない。そして地方公営企業のこのような企業的特 かにしている。二もつとも、申請人が主張するように、地方公営企業が、その営む事業内容や社会的作用の実質において、私企業のそれと異ならないことは否定できない。そして地方公営企業のこのような企業的特質にかんがみ、企業法六条は、同法が、地方公営企業の経営に関して、地方公共団体に適用される地方自治法等の一般法規に対する特例を定めるものであることを明らかにし、これに基づき、地方公営企業職員については、同法三九条により地方公務員法の職階制、給与、勤務時間、その他の勤務条件、政治的行為の制限等に関する規定は適用がないとされ、また、企業法三六条は、地方公営企業職員の労働関係については原則として地公労法の定めるところによるものとし、地公労法上、地方公営企業職員の労働関係については、原則的に労働組合法、労働関係調整法が適用され、その労働条件につき団体交渉および労働協約の締結ができる等一般地方公務員とは異つた取扱いがなされていることは、申請人が前記第五、二において主張するとおりである。三しかし、前記のように、地方公営企業職員は、一般職に属する地方公務員であるから、一般地方公務員と同様、原則として地方公務員法の適用を受けるものであり、地方公務員法所定の任用(一五ないし二二条)、分限および懲戒(二七ないし二九条)、服務(三〇ないし三五条、三八条)等に関する規定はもとより地方公営企業職員に対してもその適用があるものである。そして、地方公務員法が、地方公務員の地方公共団体に対する勤務関係について、行政権によつて支配される権力関係として、これを公法的に規律していることは、被申請人が前記第三、一、(一)において主張するとおりである。 り、地方公務員法所定の任用(一五ないし二二条)、分限および懲戒(二七ないし二九条)、服務(三〇ないし三五条、三八条)等に関する規定はもとより地方公営企業職員に対してもその適用があるものである。そして、地方公務員法が、地方公務員の地方公共団体に対する勤務関係について、行政権によつて支配される権力関係として、これを公法的に規律していることは、被申請人が前記第三、一、(一)において主張するとおりである。四なお、申請人は、地方公営企業職員に対し地方公務員法の分限および懲戒に関する規定が適用されるとしても、企業法三九条、地公労法一七条 、被申請人が前記第三、一、(一)において主張するとおりである。四なお、申請人は、地方公営企業職員に対し地方公務員法の分限および懲戒に関する規定が適用されるとしても、企業法三九条、地公労法一七条により、不利益処分に関する不服申立てについての地方公務員法四九条に関する規定は適用されない旨主張する。しかし、(一) 企業法三九条第一項は、地方公務員法四九条(不利益処分に関する説明書の交付)の規定の適用を除外しているのみであるから、同法四九条の二(不服申立て)、四九条の三(不服申立期間)、五〇条(審査および審査の結果執るべき措置)、五一条(不服申立ての手続等)、五一条の二(不服申立てと訴訟との関係)の各規定はすべて地方公営企業職員に対しても適用がある。(二) したがつて、本件懲戒免職が、これらの条項にいう不利益処分であることは疑う余地のないところであるから、これに対する救済としては、一般地方公務員の場合と同様、同法四九条の二に基づき人事委員会または公平委員会に対してのみ審査請求または異義申立てができるものである。(三) しかも、同法五一条の二には、「第四九条第一項に規定する処分であつて人事委員会又は公平委員会に対して審査請求又は異義申立てをすることができるものの取消しの訴えは、審査請求又は異義申立てに対する人事委員会又は公平委員会の裁決又は決定を経た後でなければ、提起することができない。」旨規定され、いわゆる審査請求または異義申立ての前置主義が定められている。したがつて、右規定に前掲四九条の二、四九条の三の各規定を合わせ考えれば、これらの規定は、地方公営企業職員を含む地方公務員に対する前記不利益処分が行政不服審査法、行政事件訴訟法にいう「行政庁の処分」であることを前提としているものと解し得る。 対する人事委員会又は公平委員会の裁決又は決定を経た後でなければ、提起することができない。」旨規定され、いわゆる審査請求または異義申立ての前置主義が定められている。したがつて、右規定に前掲四九条の二、四九条の三の各規定を合わせ考えれば、これらの規定は、地方公営企業職員を含む地方公務員に対する前記不利益処分が行政不服審査法、行政事件訴訟法にいう「行政庁の処分」であることを前提としているものと解し得る。五以上、要するに、地方公営企業職員の労働関 地方公営企業職員を含む地方公務員に対する前記不利益処分が行政不服審査法、行政事件訴訟法にいう「行政庁の処分」であることを前提としているものと解し得る。五以上、要するに、地方公営企業職員の労働関係、特にいわゆる集団的労働関係の下における団結権、団体交渉権の行使等につき、現行実定法上私企業の従業員のそれと同一の法的規律に服する側面が存在することは否めないとしても、これをもつて、直ちに、申請人主張のように地方公営企業職員に対する分限および懲戒処分にいたるまで私法的規律に服し、私企業の場合の懲戒処分となんら異なることがないと断ずることは到底できない。すなわち、地方公営企業職員であつても、このような例外的措置の認められていない分野においては、いぜん地方公務員法の規定の適用を免れないのであつて、申請人に対する本件懲戒免職の如き公務員の信用保持義務の懈怠を理由としてなされた処分は、行政監督権の作用であり、行政処分としての性質を有し、行政事件訴訟法三条にいう「行政庁の処分」として抗告訴訟に服すべきものと解するのが相当である。第三そうすると、本件懲戒免職は、いわゆる行政庁の処分に該るから、これに対し民事訴訟法に基づく仮処分による救済を求めることはできないものといわなければならない。もつとも、被申請人が前記第三、二において主張するように、本件懲戒免職が重大、かつ、明白な瑕疵があるために、行政処分として本来具有すべき公定力を否定せられ、当然無効となるような事由が存在すれば、行政事件訴訟法四四条の規定の適用を受けず、仮処分による救済が許される余地もあるが、申請人の主張するような労働基準法二〇条違反の事実があつたとしても、右違反は、被申請人の主張するとおり、本件懲戒免職自体を無効とするものではなく、申請人の主張に照らしても、本件懲戒免職には、これを 申請人の主張するような労働基準法二〇条違反の事実があつたとしても、右違反は、被申請人の主張するとおり、本件懲戒免職自体を無効とするものではなく、申請人の主張に照らしても、本件懲戒免職には、これを当然無効とするような重大、かつ、明白な瑕疵は全く見当らない。 あつたとしても、右違反は、被申請人の主張するとおり、本件懲戒免職自体を無効とするものではなく、申請人の主張に照らしても、本件懲戒免職には、これを 申請人の主張するような労働基準法二〇条違反の事実があつたとしても、右違反は、被申請人の主張するとおり、本件懲戒免職自体を無効とするものではなく、申請人の主張に照らしても、本件懲戒免職には、これを当然無効とするような重大、かつ、明白な瑕疵は全く見当らない。第四よつて、本件仮処分申請は不適法として却下すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。(裁判官田宮重男長西英三島田礼介)

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