平成25(行ウ)196 給与等減額処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成27年12月21日 大阪地方裁判所
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判決文本文37,422 文字)

主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 A教育委員会が原告に対して平成25年3月27日付けでなした,地方公務員法29条1項1号及び3号により1月間給与及びこれに対する地域手当の合計額の10分の1を減ずる処分を取り消す。 2 被告は,原告に対し,200万円及びこれに対する平成25年10月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,大阪府立支援学校の教員である原告が,平成24年度の同校高等部の卒業式において,同校准校長から式場外での受付業務を命じられていたにもかかわらず,これを無断で放棄した上,式場内に勝手に立ち入って国歌斉唱時に起立して斉唱しなかったことを理由にA教育委員会から減給1か月の懲戒処分を受けたこと(以下「本件減給処分」という。)について,同処分が違法であると主張して,その取消しを求めるとともに(以下,この請求を「本件取消請求」という。),被告に対し,国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき,原告が被った精神的苦痛に相当する慰謝料として200万円及び不法行為の後の日である平成25年10月10日(本件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である(以下,この請求を「本件損害賠償請求」という。)。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,括弧内の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者 ア原告(ア) 原告は,昭和56年4月に大阪府公立高校教員に採用され,以後,B支援学校教諭,C高 拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者 ア原告(ア) 原告は,昭和56年4月に大阪府公立高校教員に採用され,以後,B支援学校教諭,C高等学校教諭,D高等学校教諭を経て,平成18年4月からB支援学校(以下,「中等部」「高等部」といった場合には,同校の中等部,高等部を示すものとする。)の教諭として勤務し,現在に至る。なお,原告は,平成24年度に,高等部1年生のクラス担任をしていた。 (イ) 原告は,キリスト教を信仰するクリスチャンである。 (以上につき,甲34,35,45,51,69,原告)イ被告等(ア) 被告は,地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)2条により,A教育委員会を設置している。 (イ) A教育委員会は,地教行法35条及び地方公務員法(以下「地公法」という。)6条に基づき,原告に対し任命,休職,免職及び懲戒等を行う権限を有している。 (2) 本件に関連する法規及び通達(要旨。以下同じ。)ア国旗及び国歌に関する法律(以下「国旗国歌法」という。)(ア) 国歌は,君が代とする(2条1項)。 (イ) 君が代の歌詞及び楽曲は,別記第二のとおりとする(同条2項。別記第二は省略。)。 イ大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例(乙1。以下「府国旗国歌条例」という。)(ア) 1条(目的)この条例は,国旗国歌法,教育基本法及び学習指導要領の趣旨を踏まえ,府の施設における国旗の掲揚及び教職員における国歌の斉唱について定めることにより,府民,とりわけ次代を担う子どもが伝統と文化を 尊重し,それらを育んできた我が国と郷土を愛する意識の高揚に資すると 設における国旗の掲揚及び教職員における国歌の斉唱について定めることにより,府民,とりわけ次代を担う子どもが伝統と文化を 尊重し,それらを育んできた我が国と郷土を愛する意識の高揚に資するとともに,他国を尊重し,国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと並びに府立学校及び府内の市町村立学校における服務規律の厳格化を図ることを目的とする。 (イ) 4条(国歌の斉唱) 1 府立学校及び府内の市町村立学校の行事において行われる国歌の斉唱にあっては,教職員は起立により斉唱を行うものとする。ただし,身体上の障がい,負傷又は疾病により起立,若しくは斉唱するのに支障があると校長が認める者については,この限りではない(1項)。 2 前項の規定は,市町村の教育委員会による服務の監督の権限を侵すものではない(2項)。 ウ A教育委員会の教育長(以下「教育長」という。)による通達(甲1)教育長が,平成24年1月17日付けで府立学校の教職員宛に発出した「入学式及び卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱について(通達)」と題する通達(以下「本件通達」という。)の内容は要旨以下のとおりである。 国旗掲揚及び国歌斉唱は,児童・生徒に国際社会に生きる日本人としての自覚を養い,国を愛する心を育てるとともに,国旗及び国歌を尊重する態度を育てる観点から学習指導要領に規定されているものである。また,府国旗国歌条例では,府立学校の行事において行われる国歌の斉唱の際に,教職員は起立して斉唱を行うことが定められている。 ついては,入学式及び卒業式等国旗を掲揚し,国歌斉唱が行われる学校行事において,式場内のすべての教職員は,国歌斉唱に当たっては,起立して斉唱すること。 エその他関係法規等(ア) 地公法 は,入学式及び卒業式等国旗を掲揚し,国歌斉唱が行われる学校行事において,式場内のすべての教職員は,国歌斉唱に当たっては,起立して斉唱すること。 エその他関係法規等(ア) 地公法 1 29条(懲戒)1項教員が次の各号に該当する場合においては,これに対し懲戒処分として戒告,減給,停職又は免職の処分をすることができる。 1号この法律若しくは57条に規定する特例を定めた法律又はこれに基づく条例,地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合2号職務上の義務に違反し,又は職務を怠った場合3号全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合 2 32条(法令等及び上司の職務上の命令に従う義務)職員は,その職務を遂行するに当たって,法令,条例,地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い,且つ,上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。 (イ) 大阪府職員基本条例(甲16。以下「府職員基本条例」という。) 1 27条(職務命令に違反した者に対する処分)1項職務命令(地公法32条に規定する上司の職務上の命令であって,文書によるものに限る。以下同じ。)に違反する行為をした職員に対する標準的な懲戒処分は,戒告とする。 2項任命権者が29条に規定する措置を講じた場合においても,なお職務命令に違反する行為を繰り返し,その累計が5回(職務命令に違反する行為の内容が同じ場合にあっては,3回)となる職員に対する標準的な法28条1項に規定する処分は,免職とする。 2 29条(職務命令に違反した職員に対し講ずべき措置)1項任命権 容が同じ場合にあっては,3回)となる職員に対する標準的な法28条1項に規定する処分は,免職とする。 2 29条(職務命令に違反した職員に対し講ずべき措置)1項任命権者は,27条1項に規定する懲戒処分を受けた職員に対し,指導,研修その他必要な措置を講じなければならない。 2項 27条1項に規定する懲戒処分を受けた職員が,再度職務命令に違反した場合は,地公法28条1項3号の規定により免職することがあることを文書で警告するものとする。 (3) 平成23年度卒業式における不起立及び処分等ア B支援学校E校長は,平成24年2月1日,職員会議において,B支援学校の全教員に対し,本件通達を読み上げた上,口頭で,高等部の卒業式の国歌斉唱時には式場内にいるすべての教職員が起立して斉唱すること及びその日配布された役割分担表に従い職務に専念するようにとの職務命令を発した。原告の分担は在校生席において在校生の指導(介助等)を行うものであった(以下「平成23年度職務命令」ということがある。)。 しかしながら,原告は,同年3月7日に行われた高等部の平成23年度卒業式(以下「平成23年度卒業式」という。)において,国歌斉唱時に起立しなかった(以下「平成23年度不起立」ということがある。)。 (甲2ないし6[各枝番を含む。],35,乙2,3,9,11,14,15,証人J,原告,弁論の全趣旨)イ A教育委員会は,平成24年3月27日付けで,地公法29条1項1号及び3号に基づき,原告に対し,戒告処分をした(以下「本件戒告処分」という。)。本件戒告処分の理由は,要旨,E校長から平成23年度職務命令を受けたにもかかわらず,これに違反して国歌斉唱の際に起立して斉唱しなかった行為は,地公 ,戒告処分をした(以下「本件戒告処分」という。)。本件戒告処分の理由は,要旨,E校長から平成23年度職務命令を受けたにもかかわらず,これに違反して国歌斉唱の際に起立して斉唱しなかった行為は,地公法32条に規定する上司の職務上の命令に従う義務に違反するものであり,学校教育に携わる公立学校職員として,全体の奉仕者たるにふさわしくない非行であり,その職の信用を著しく失墜するものであるから,地公法29条1項1号及び3号に該当するというものであった。 (甲7の1,2)ウ原告は,本件戒告処分に対し,平成24年5月23日付けで不服申立て を行ったが,F人事委員会は,同27年3月23日付けで同処分を承認するとの裁決を行った。 なお,原告は,平成23年度戒告処分について,当庁に戒告処分取消請求訴訟を提起している。 (甲8の1ないし3,64,弁論の全趣旨)(4) 平成24年度卒業式における不起立と処分等ア(ア) E校長は,平成25年2月7日,職員会議において,高等部の平成24年度卒業式(以下「平成24年度卒業式」という。)にあたり,本件通達に基づき,国歌斉唱時には会場内にいるすべての教職員が起立して斉唱するとともに,その場で配布した「役割分担表」(乙12。なお,役割分担は後日一部訂正がなされているが,原告の役割に変更はない。)に従って自らの職務に専念するように口頭で職務命令(以下,単に「E校長の職務命令」ということがある。)を発した。原告は,その時点においては式場内に参列して生徒の付添いを担当するということであった。 (イ) B支援学校G准校長は,E校長の命を受け,高等部に関する校務を掌理し,同部の所属職員を監督する業務等を行っていた(大阪府立高等学校等の管理運営に関する規則10条の2参照)ところ,同年 (イ) B支援学校G准校長は,E校長の命を受け,高等部に関する校務を掌理し,同部の所属職員を監督する業務等を行っていた(大阪府立高等学校等の管理運営に関する規則10条の2参照)ところ,同年3月7日午前8時30分頃,原告に対し,国歌斉唱時の起立斉唱についての意向確認を行った。これに対して,原告は,G准校長に対し,「迷っている,悩んでいる」などと答えたため,同准校長は,原告に対し,口頭で,式場外での受付業務に従事するよう命じた(以下,単に「G准校長の職務命令」といい,E校長の職務命令とG准校長の職務命令を併せて「本件職務命令」ということがある。)。 (以上につき,甲40の1,2,乙6,9,12ないし15,18,証人G,証人I,原告)。 イ原告は,同日午前9時頃から,H教諭と一緒に受付業務を担当していたところ,同日午前9時33分頃,来賓が着席した後に式場内に入り,小学部教員席に座った。 原告が着席して間もなく,それを認めた高等部I教頭及び同J教頭(以下,I教頭とJ教頭を併せて「I教頭ら」という。)は,G准校長の指示に従い,原告に対してG准校長の職務命令に係る受付業務に戻るように繰り返し説得したが,原告は,同説得に応じず式場内に留まり,同日午前9時45分頃,卒業式は開式し,原告は国歌斉唱時に起立斉唱しなかった(以下,この不起立行為を「本件不起立」という。)。 (甲63,乙10,14,17,18,証人G,証人I,原告,弁論の全趣旨)。 ウ(ア) A教育委員会は,同月27日,地公法29条1項1号及び3号に基づき,原告に対し,1か月間の給料及びこれに対する地域手当の合計額の10分の1を減ずる旨処分(本件減給処分)を行った。本件減給処分の理由は,要旨,原告は,G准校長による式場外での受付業務に従事するよ き,原告に対し,1か月間の給料及びこれに対する地域手当の合計額の10分の1を減ずる旨処分(本件減給処分)を行った。本件減給処分の理由は,要旨,原告は,G准校長による式場外での受付業務に従事するようにとの職務命令を自らの判断で途中で放棄し,本来参列すべき職員でないにもかかわらず,受付業務が終わったと勝手に判断して会場内に入り,受付業務に戻るようにとの教頭の指導に従わず,教育長及び学校長の職務命令に反して国歌斉唱時に起立して斉唱しなかったことは,地公法32条に規定する上司の職務上の命令に従う義務に違反するものであるばかりか,学校の儀式的行事としての式典の秩序や雰囲気を損なうものであり,また,平成23年度不起立により本件戒告処分を受けたにもかかわらず,職務違反行為を繰り返したものであり,これらの行為は,学校教育に携わる公立学校職員として,全体の奉仕者たるにふさわしくない非行であり,その職の信用を著しく失墜するものであるから,地公法29条1項1号及び3号に該当するというものであった。 (イ) 原告は,本件減給処分により,平成25年3月分の給与から3942円,同年4月分の給与から3万7644円の合計4万1586円を減額支給された(なお,3月分については返還請求があるが未納である。)。 (以上につき,甲14の1,2,17の1,2)エ本件減給処分の申し渡しが行われた後,原告を含む平成24年度卒業式における職務命令違反者を対象にした研修が実施された(甲19)。 オ原告は,本件減給処分に対し,平成25年4月3日付けで不服申立てを行った(甲15の1ないし3)。 第3 本件の争点 1 本件減給処分の違法性(1)ア本件通達及び本件職務命令(ただし,国歌斉唱時における起立斉唱を命じた部分)が原告の思想・良心の自由(憲法1 (甲15の1ないし3)。 第3 本件の争点 1 本件減給処分の違法性(1)ア本件通達及び本件職務命令(ただし,国歌斉唱時における起立斉唱を命じた部分)が原告の思想・良心の自由(憲法19条)を侵害するか(争点(1))イ本件通達及び本件職務命令(ただし,国歌斉唱時における起立斉唱を命じた部分)が原告の信教の自由(憲法20条)を侵害するか(争点(2))ウ本件通達及び本件職務命令(ただし,国歌斉唱時における起立斉唱を命じた部分)が児童・生徒の思想・良心の自由(憲法19条),教育を受ける権利(憲法26条)を侵害するか(争点(3))エ G准校長の職務命令が法の下の平等(憲法14条)を侵害するか(争点(4))(2) 被告主張に係る原告の職務命令違反行為があったか(争点(5))(3) 本件減給処分が裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものであるか(争点(6)) 2 本件国家賠償請求の成否並びに損害の有無及び額(争点(7))第4 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)(憲法19条[思想・良心の自由]違反)について(被告の主張)(1) 本件通達及び本件職務命令は,原告の思想・良心の自由を侵害するものではない。 (2) 最高裁平成23年6月6日判決は,全体の奉仕者として法令等及び上司の職務上の命令に従って職務を遂行すべきこととされている地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性に鑑みた場合,公立学校の教職員は法令上及び職務上の命令に従わなければならない立場にある,また,卒業式における国歌斉唱時の起立斉唱を職務命令とすることは,学校教育の目標や卒業式等の儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令上等の諸規定の趣旨に沿って,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえ,生徒たちへの配慮を 斉唱を職務命令とすることは,学校教育の目標や卒業式等の儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令上等の諸規定の趣旨に沿って,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえ,生徒たちへの配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに式典の円滑な進行を図るものであって,憲法19条に規定する思想・良心の自由の侵害に当たらない旨判示しているし,最高裁平成19年2月27日判決も同様に判示している。このように,原告を含む府立学校の教職員に府立学校の卒業式等における国歌斉唱の際に起立して斉唱することを命ずることが,原告の思想・良心の自由を侵害するものではないことは明らかである。 (3) なお,原告は,府国旗国歌条例1条の「目的」の規定中の文言を捉えて,同条例は,国旗国歌法の立法趣旨,学習指導要領の趣旨を逸脱するものである旨主張する。しかし,同条例は,その題名及び2条から4条までの規定内容から明らかなように,大阪府の施設における国旗の掲揚並びに大阪府立学校及び大阪府内市町村立学校の行事において行われる国歌の斉唱の際の教職員の起立斉唱に関する服務規律について規定したものであって,原告が主張するような教育課程の具体的な実施方法等に関するものではない。原告の上記主張は,同条例1条の文言の一部のみを捉えて同条例全体を違憲違法というものであって,何らの意味も認められないものである。 (原告の主張)(1) 府国旗国歌条例,それに基づく本件通達及び本件職務命令は,原告の思想・良心の自由を侵害し,違憲,違法である。 (2) 府国旗国歌条例は,国旗国歌法の立法趣旨,学習指導要領の趣旨,教育の本質・実践からして,教育課程の一環である卒業式・入学式等の具体的な実施方法について,原告を含む教員ないし児童・生徒を拘束する根拠とはなり得ない は,国旗国歌法の立法趣旨,学習指導要領の趣旨,教育の本質・実践からして,教育課程の一環である卒業式・入学式等の具体的な実施方法について,原告を含む教員ないし児童・生徒を拘束する根拠とはなり得ない。 (3) 原告は教師として,また,クリスチャンとして君が代が旧憲法下で国家神道による国民の精神の統制などに利用され,天皇制の下でアジア諸国への侵略戦争を支えてきた歴史的経緯も踏まえ,君が代の起立斉唱を職務命令にしてまで強制することは国民を戦争に駆り立てた戦前の教育につながるものであって,憲法で保障された思想・良心の自由に反し,個人の尊厳を踏みにじることに他ならないと考え,かかる考えを自らの規範,倫理として行動してきたのであり,これは原告の強固な思想であり,良心である。 したがって,教育長や校長が,卒業式において君が代を起立して斉唱することを原告に強制することは,原告にその思想・良心に反してできないことを強制するものであって,本件通達及び本件職務命令は原告の思想・良心の自由を侵害し,違憲,違法である。 2 争点(2)(憲法20条[信教の自由]違反)について(被告の主張)君が代が神社神道の宗教歌であるとする原告の主張には根拠がないし,卒業式等の式典における国歌斉唱時の起立斉唱行為は,慣例上の儀礼的な所作としての性質を有するものと解されており,一般的にも客観的にも宗教活動であるとは認識されておらず,卒業式等において,起立して国歌を斉唱することは,国家神道に深く結びつく行為には該当しない。したがって,本件通達及び本件職務命令は,原告の信教の自由を侵害するものではなく,憲法20条に違反し ないことは明らかである。 (原告の主張)(1) 卒業式において君が代の起立斉唱を命じる府国旗国歌条例,それに基づく本件通達及び本件 自由を侵害するものではなく,憲法20条に違反し ないことは明らかである。 (原告の主張)(1) 卒業式において君が代の起立斉唱を命じる府国旗国歌条例,それに基づく本件通達及び本件職務命令は,クリスチャンである原告の信教の自由を侵害するものである。 (2) 君が代は国家権力による国家神道という特定の宗教と深い結びつきをもって利用された歴史的事実があるところ,君が代を起立して斉唱することは,客観的にも国家神道という特定宗教に深く結びつく行為であり,クリスチャンである原告にはできない行為である。 信教の自由は単なる信仰の自由な選択が保障されるにとどまらず,選択した信仰に基づいた世界観の保持や信仰に基づく平穏な生活の獲得までをも保障するものである。卒業式に起立して国歌を斉唱することを強制することはクリスチャンである原告の価値観に照らしてできないことを強制することになると同時に,その信仰を保持することの否定でもある。 (3) 原告がクリスチャンとして,キリスト教の世界観に則った行動をすることが憲法20条で保障されている以上,府国旗国歌条例,それに基づく本件通達及び本件職務命令は,原告の信教の自由を不当に侵害し,憲法20条に反するというべきである。 3 争点(3)(児童・生徒に対する憲法19条[思想・良心の自由]及び憲法26条[教育を受ける権利]違反)について(被告の主張)(1) 府国旗国歌条例,それに基づく本件通達及び本件職務命令は,原告を含む教職員に対して卒業式等における国歌斉唱の際に起立して斉唱することを命じたものであり,児童・生徒に向けられたものではない。したがって,府国旗国歌条例,それに基づく本件通達及び本件職務命令が,生徒の思想・良心の自由や教育を受ける権利を侵害するということはあり得ない。 たものであり,児童・生徒に向けられたものではない。したがって,府国旗国歌条例,それに基づく本件通達及び本件職務命令が,生徒の思想・良心の自由や教育を受ける権利を侵害するということはあり得ない。 (2) 卒業式等の儀式的行事における国歌斉唱の際に生徒や教職員その他参列者全員が起立して国歌を斉唱するのは,誤った知識や一方的な観念を子どもに受けつけるような内容の教育を強制的に施すためでなく,一般に国旗国歌に対する敬意の表明が慣例上の儀礼的な所作として尊重され,また,国際社会では他国の国旗国歌に対する敬意の表明が国際常識,国際マナーとされ,これに反するような行動が国際礼譲の上で好ましくないとされていること,その他学習指導要領が定める国旗国歌条項の意義を生徒らに感得させるためである。このような合理的な目的に資するために発出された本件通達及び本件職務命令が児童・生徒の思想・良心の自由や教育を受ける権利を侵害するという原告の主張は誤りである。 (原告の主張)(1) 府国旗国歌条例,それに基づく本件通達及び本件職務命令は,平成24年度卒業式に参加していた生徒の思想・良心の自由,教育を受ける権利を侵害し,違憲,違法である。 (2) 憲法26条1項は,子どもの学習権の観念を前提に,国家に対して適切な教育の場を確保・提供することを要求することができる権利であるとされる。原告とともに卒業式に参加していた生徒も,国民・市民として思想・良心の自由(憲法19条),教育を受ける権利(学習権)を有するところ,国家による教育内容に対する決定権能について,国家が誤った知識や一方的な観念を子どもに植え付けるような内容の教育を施すことを強制するようなことは,憲法26条,13条の規定から許されないというべきである。 4 争点(4)(憲法14条[法 て,国家が誤った知識や一方的な観念を子どもに植え付けるような内容の教育を施すことを強制するようなことは,憲法26条,13条の規定から許されないというべきである。 4 争点(4)(憲法14条[法の下の平等])違反)について(被告の主張)(1) 教職員が国歌斉唱時に起立して斉唱しなかった場合にはその行為等の性質,態様は,卒業生・在校生の出席する重要な学校行事である卒業式において行われる教諭による職務命令違反行為となる。そして,当該職務命令違反行為 は,その結果,学校の儀式的行事としての式典の秩序や雰囲気を一定程度損なう作用をもたらし,それにより式典に参列する生徒への影響を伴うものとなる。 (2) G准校長が原告への意向確認を行ったり受付業務を命じたりしたのは,原告のこれまでの言動を踏まえて原告の非違行為を防止するとともに,卒業式の秩序や厳粛な雰囲気を損なうことを防止し,かつ,式典に参列する生徒への影響を防止することが目的であり,合理的かつ正当な理由に基づくものであり,思想・良心を理由とした不合理な差別ではないので,違憲,違法ではなく,また,思想・良心を理由とした職場からの差別,排除のハラスメントではないので,教育活動としての卒業式から意図的に排除する合理性のない差別にも該当しない。したがって,G准校長の職務命令は,憲法14条1項に違反するものではない。 (原告の主張)(1) 不起立が予想される教職員に対してことさら式場外での受付業務を命ずることは,思想・良心を理由とした不合理な差別であって,G准校長による職務命令は,違憲,違法である。 (2) 原告が式場外の受付業務に従事するように命じられたのは国歌斉唱時に起立斉唱するかの意向確認の際に,そのときにならないと分からないと答えたことによるものである。思想 令は,違憲,違法である。 (2) 原告が式場外の受付業務に従事するように命じられたのは国歌斉唱時に起立斉唱するかの意向確認の際に,そのときにならないと分からないと答えたことによるものである。思想・良心を理由とした職場からの差別,排除は,ハラスメントとして一般法上違法であるだけでなく,特定の思想・良心を有するゆえに意図的に教育活動としての卒業式から排除する何ら合理性のない差別であって,憲法14条1項に反し許されない。 5 争点(5)(本件減給処分の違法性)について(被告の主張)(1) 本件減給処分の理由となった職務命令違反行為は,1G准校長から式場外での受付業務を命じられたにもかかわらず,受付業務が終わったと勝手に判 断して開式前に会場内に入ったこと(無断入場),2受付業務に戻るようにとのI教頭らの指導に従わなかったこと(不退去),3教育長及び学校長の職務命令に反して国歌斉唱時に起立して斉唱しなかったこと(本件不起立)である(以下,1ないし3の行為をそれぞれ「行為1」,「行為2」,「行為3」ということがある。)。 (2)ア行為1(無断入場)について,G准校長は,平成24年度卒業式当日,従前のE校長の職務命令を取り消し,卒業式が終わるまで式場外において受付業務に従事することを命ずる職務命令を発しており,行為1が職務命令違反行為に当たることは明らかである。 その際,G准校長は,受付業務に従事する時間について明示しなかったが,原告が,平成23年度の中等部卒業式で式場外の業務を命じられたこと,B支援学校の平成24年度の入学式(以下「平成24年度入学式」という。)で午前9時からの受付業務及び式場内に入らないよう命じられていたこと,平成24年度卒業式の前日にG准校長に対し卒業式に出させてくれるよう再三依頼していることから 以下「平成24年度入学式」という。)で午前9時からの受付業務及び式場内に入らないよう命じられていたこと,平成24年度卒業式の前日にG准校長に対し卒業式に出させてくれるよう再三依頼していることから,原告自身,式場外での業務を命じられた場合には式場内に入場できないことを理解していたものであり,卒業式終了までの受付業務への従事を命じられていたことは理解していたはずである。 イまた,行為2(不退去)について,原告がI教頭らの指示に従わずに式場外の受付業務に戻らなかったことは明らかである。 ウさらに,行為3(本件不起立)についても,国歌斉唱時の起立斉唱を命ずる本件通達やE校長の職務命令に違憲,違法はなく,原告の行為は,職務命令違反行為である。 (3) そして,原告の上記各行為が,地公法32条が規定する上司の職務上の命令に忠実に従う義務に違反し,かつ,卒業式の式典の秩序や雰囲気を損なう不適切な行為であること,原告は,本件戒告処分を受けたにもかかわらず1 年後に同様の違反行為を繰り返したこと,さらに,本件不起立(行為3)だけでなく,G准校長の職務命令にもかかわらず,受付業務を無断で放棄して勝手に式場内に立ち入り,I教頭らの退場指示にも従わなかった(行為1,2)という,二重に上司の職務命令に違反したことなどの事情を考慮し,平成24年度卒業式における義務違反の程度が平成23年度卒業式の行為に比べて著しいと判断したのである。このような原告の行動は全体の奉仕者たるにふさわしくない非行であり,教員の信用を著しく失墜するものであることは明らかである。 (4) なお,原告は,本件通達は原告に対する正当な職務命令ではないと主張するが,本件通達は卒業式等に参列する地方公務員たる教育職員の服務規律の厳格化のために発出されたもので,生徒に対する教 る。 (4) なお,原告は,本件通達は原告に対する正当な職務命令ではないと主張するが,本件通達は卒業式等に参列する地方公務員たる教育職員の服務規律の厳格化のために発出されたもので,生徒に対する教育内容や方法に関して発出されたものでなく,教育長は原告の上司として服務監督について職務命令を発出する権限を有しているから,本件通達は原告に対する職務命令といえる。 また,原告は,本件通達及び本件職務命令は違憲,違法であるから,これらに従う義務はなく,本件通達及び本件職務命令違反を理由とする本件減給処分も違憲,違法であると主張するが,上記第4の1ないし4(被告の主張)のとおり,原告の同各主張はいずれも失当である。 (5) したがって,本件減給処分は適法であり,違法はない。 (原告の主張)(1) そもそも府国旗国歌条例及びそれに基づく本件通達は,原告に対する正当な職務命令とはならないので,本件通達との関係で職務命令違反が問題となることはない。すなわち,卒業式は教育過程の一環として位置付けられていることからすると,教職員に対し卒業式での国歌斉唱時に起立斉唱を義務付ける府国旗国歌条例をもって処分の根拠,前提とすることはできない。また,教育の具体的内容・方法については教諭が決定,実践するものであるか ら,教育長や教育委員会がその具体的な実践方法について,同条例に基づいて通達を出しても,個々の教職員に対する関係では,有効な職務命令とはならない。また,本件通達を服務規律に関するものと解しても,服務規律については教育委員会から教育長に委任できない事務であり,教育長は職員の服務規律に関して専決で事務をつかさどることは許されないから,教育長からの本件通達は原告ら各教員との関係で職務命令とはならない。 (2) 行為1(無断入場)について,G准校 務であり,教育長は職員の服務規律に関して専決で事務をつかさどることは許されないから,教育長からの本件通達は原告ら各教員との関係で職務命令とはならない。 (2) 行為1(無断入場)について,G准校長が原告に対して,平成24年度卒業式終了まで式場外で受付業務に従事するよう命じた事実はない(卒業式終了まで式場外で受付業務に従事するよう明示していないことはG准校長も認めている。)し,原告が,受付業務終了後も式場内に入ってはいけないことを理解していた事実もないから,黙示の職務命令とも評価できない。したがって,行為1は職務命令違反とはいえず,法令違反にも非行,信用失墜行為にも当たらない。 (3) 行為2(不退去)について,原告は,来場予定者が全員来場したことを確認し,受付業務が終了したので,教員の本来的業務としての生徒の介助のために式場内に入ったものであるし,このような判断は従前の受付業務の在り方とも合致するものである。I教頭らの指示は不合理に原告を退場させようとするものであった。このような事情を踏まえれば,原告には,退場することについての期待可能性がなく,法令違反にも非行にも該当しない。 (4) 行為3(本件不起立)については,第4の1ないし4(原告の主張)のとおり,そもそも,国歌斉唱時の起立斉唱行為を命ずる本件通達及びE校長の職務命令は違憲,違法であり,そのような職務命令に従う義務はない。 そして,原告は,自らの信仰と子どもの安全からどうしても起立できなかったのであり,このようなやむにやまれぬ行為を法令違反,非行と評価すべきではない。また,原告の不起立により式典の秩序や雰囲気は損なわれておらず,進行も妨害されていないとの観点からも,法令違反,非行とはいえな い。 (5) 以上のように,本件減給処分の理由とされた行為1ないし3 の不起立により式典の秩序や雰囲気は損なわれておらず,進行も妨害されていないとの観点からも,法令違反,非行とはいえな い。 (5) 以上のように,本件減給処分の理由とされた行為1ないし3は,いずれも法令違反,非行,信用失墜行為には該当せず,かかる行為を理由に懲戒処分を行うことは許されず,本件減給処分は違法である。 6 争点(6)(本件減給処分に係る裁量権の範囲の逸脱又は濫用の有無)について(被告の主張)(1) 地公法に定められた懲戒事由がある場合に,懲戒処分を行うかどうか,懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは,懲戒権者の裁量に任されており,懲戒権者がその裁量の行使としてした懲戒処分は,それが社会通念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し,これを濫用したと認められる場合でない限り,その裁量権の範囲内にあるものとして,違法とはならない。 (2) 本件減給処分の理由となった原告の各行為は,地方公務員である原告が負う地公法32条による上司の職務上の命令に忠実に従う義務に違反する行為であるとともに,学校の儀式的行事としての厳粛な雰囲気のもとに行われるべき卒業式の式典の秩序や雰囲気を損なうという不適切な行為である。また,原告は,本件戒告処分を受けたにもかかわらず,1年後に行われた平成24年度卒業式において同様の行為を繰り返し行ったものである。さらに,原告の行為は,国歌斉唱時に起立斉唱する旨の本件通達及びE校長の職務命令に違反するとともに,G准校長の職務命令にも違反するという,二重に上司の職務上の命令に従わない行為であり,平成24年度卒業式における行為の非違の程度は,平成23年度卒業式の行為に比べて著しいものである。このように原告の平成24年度卒業式における行為は,学校教育に携わる公立学校教員としてその職の信 り,平成24年度卒業式における行為の非違の程度は,平成23年度卒業式の行為に比べて著しいものである。このように原告の平成24年度卒業式における行為は,学校教育に携わる公立学校教員としてその職の信用を著しく失墜させ,また,全体の奉仕者たるにふさわしくない非行であり,地公法29条1項1号及び3号の懲戒事由に当たる と判断し,さらに前述の事情を総合的に判断して本件減給処分としたものである。これらの事情に照らせば,学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点からも,減給処分を選択することの正当性を基礎付ける具体的な事情が認められる。したがって,本件減給処分は社会通念上著しく妥当を欠くものではなく,A教育委員会に付与された裁量権の範囲内にあるのであって,裁量権の逸脱又は濫用はない。 なお,原告が主張する憲法31条(適正手続の保障)違反についても理由がない。 (原告の主張)(1) 本件減給処分により,原告は様々な不利益を被ることとなり,他の教職員への影響も小さくない。 そして,国歌斉唱時の不起立を理由に減給以上の処分を選択するには,事案の性質を踏まえた慎重な考慮が必要となり,処分の対象となった不起立等の対応や不起立によって式典にどのような影響が生じたのかを個別具体的に認定し,想定される処分がなされた場合に生じる個人的な影響や社会的な影響等をも慎重に検討した上で,それぞれの非違行為にふさわしい処分を決するべきである。 被告の主張する理由は,いずれも事実の前提及び評価に誤りがあり,原告の各行為はいずれも悪質とまでは評価できないことは上記5(原告の主張)において主張したとおりである。原告の行為は,卒業式の秩序や雰囲気を損なうものではなかった。 さらに,本件減給処分は,卒業式終了まで受付業務に従事すること では評価できないことは上記5(原告の主張)において主張したとおりである。原告の行為は,卒業式の秩序や雰囲気を損なうものではなかった。 さらに,本件減給処分は,卒業式終了まで受付業務に従事することを内容とする職務命令があったという誤った事実認定を前提に,十分な審議も尽くされずに減給という過重処分をなしており,憲法31条(適正手続の保障)の観点からも裁量を逸脱しており,違法である。 (2) 以上のとおりで,本件減給処分には裁量権を逸脱又は濫用した違法があり, 同処分は取り消されるべきである。 7 争点(7)(本件国家賠償請求の成否及び損害の内容)について(原告の主張)(1)ア原告は,違法な本件減給処分により,経済的不利益のみならず,府職員基本条例の下で免職処分となり生活の糧を失う恐れや大きな精神的不安を感じるなど,多大な精神的苦痛を被った。 イまた,平成24年度卒業式や平成24年度入学式に際し,G准校長らが原告に対し執拗かつ継続的に起立斉唱するかの意向確認を行い,回答を迫った行為は思想・良心の自由等の人格的自律に関わる問題について内心を表明させ,事実上,踏み絵を踏ませるに等しいものである。原告を式場外へ排除する行為も,嫌がらせ,パワーハラスメント(以下「パワハラ」という。)行為といえる。これらは,国歌斉唱時の不起立の意思の表明を理由に,職務の執行に際し,職場の上司としての優越的地位を背景になされた言動や措置であり,このような違法な言動や措置により,原告は精神的・肉体的に追い込まれて多大なストレスを被った。 ウさらに,本件減給処分通知後の研修は,事実に反する報告書等に基づき,十分な事情聴取や弁明の機会も与えられないまま,不当な処分を行ったもので,結果,原告は,意にそぐわない受講を職務命令として強要されたもので 本件減給処分通知後の研修は,事実に反する報告書等に基づき,十分な事情聴取や弁明の機会も与えられないまま,不当な処分を行ったもので,結果,原告は,意にそぐわない受講を職務命令として強要されたものである。その内容も,職務命令遵守を強要するだけのものであったし,その際の職員の言動は指導や注意に名を借りた,人事担当者としての優越的地位をもとに,業務の適正な範囲を超えて,原告に精神的・肉体的苦痛を与え,かつ職場環境をさらに悪化させるパワハラ行為であり,原告の人格権を侵害する不法行為に他ならない。 エ被告は,以上のような違法な行為について,原告に対して国賠法1条1項に基づき損害賠償責任を負う。 (2) そして,上記違法行為により原告が被った精神的苦痛を慰謝する慰謝料 としては200万円を下らない。 (被告の主張)(1) 原告の主張は否認ないし争う。 (2) 本件減給処分が適法であることは上記1ないし5(被告の主張)のとおりである。 平成24年度入学式や平成24年度卒業式に際して,G准校長らは,教職員による非違行為を防止し,国歌斉唱を円滑に支障なく実施することで式典の秩序や厳粛な雰囲気が損なわれることや式典に参列する生徒に対する影響を防ぐために,原告に粘り強く意向確認と指導を行い,式場外での受付業務などを命じたのである。これら一連の行為は,いずれも,合理的かつ正当な理由による適法な職務命令であって,原告が主張するようなパワハラ行為には該当しない。 また,本件減給処分通知後に実施された研修についても地方公務員の服務規律に関して行われたものであり,私語を禁止することは社会通念上当然であるし,職員が質問を受け付ける必要性や理由が認められないと考えて質問を受けつけないことがパワハラ行為には当たらないことは明らかで 規律に関して行われたものであり,私語を禁止することは社会通念上当然であるし,職員が質問を受け付ける必要性や理由が認められないと考えて質問を受けつけないことがパワハラ行為には当たらないことは明らかである。 その他,原告が主張する行為はいずれも適法であり,原告の被告に対する国賠法1条1項に基づく損害賠償(慰謝料)請求権は発生しない。 第5 当裁判所の判断 1 争点(1)(憲法19条[思想・良心の自由]違反)について(1)ア原告は,卒業式等における国歌斉唱時に起立斉唱を拒否する理由について,君が代が旧憲法下で国家神道による国民の精神の統制などに利用され,アジア諸国への侵略戦争を支えてきた歴史的経緯を踏まえ,起立斉唱を強制することは国民を戦争に駆り立てた戦前の教育につながるものであり,教師として,また一クリスチャンとしての良心が許さないという考えを有している旨主張するところ,原告の同主張は,原告の歴史観ないし世界観 から生ずる社会生活上ないし教育上の信念等ということができる。 イしかしながら,本件通達や本件職務命令当時,公立学校における卒業式等の式典において,国家としての君が代の斉唱が広く行われていたことは周知の事実であって,学校の儀式的行事である卒業式等の式典における国歌斉唱の際の起立斉唱行為は,一般的,客観的に見て,これらの式典における慣例上の儀礼的な所作としての性質を有するものであり,かつ,そのような所作として外部からも認識されるものというべきである。したがって,上記起立斉唱行為は,その性質からみて,原告の有する歴史観ないし世界観を否定することと不可分に結び付くものとはいえず,原告に起立斉唱を求める本件通達や本件職務命令は,上記の歴史観ないし世界観それ自体を否定するものということはできない。また,上記起立斉唱行 いし世界観を否定することと不可分に結び付くものとはいえず,原告に起立斉唱を求める本件通達や本件職務命令は,上記の歴史観ないし世界観それ自体を否定するものということはできない。また,上記起立斉唱行為は,その外部からの認識という点から見ても,特定の思想又はこれに反する思想の表明として外部から認識されるものと評価することは困難であり,職務上の命令に従ってこのような行為が行われる場合には,上記のように評価することは一層困難であるといえるのであって,本件通達や本件職務命令は,特定の思想を持つことを強制したり,これに反する思想を持つことを禁止したりするものではなく,特定の思想の有無について告白することを強要するものということもできない。そうすると,本件通達及び本件職務命令は,これらの観点において,個人の思想・良心の自由を直ちに制約するものと認めることはできないというべきである。 もっとも,上記起立斉唱行為は,一般的,客観的に見ても,国旗及び国歌に対する敬意の表明の要素を含む行為であるということができる。そうすると,自らの歴史観ないし世界観との関係で否定的な評価の対象となる日の丸や君が代に対して敬意を表明することには応じ難いと考える者が,これらに対する敬意の表明の要素を含む行為を求められることは,その行為が個人の歴史観ないし世界観に反する特定の思想の表明に係る行為その ものではないとはいえ,個人の歴史観ないし世界観に由来する行動(敬意の表明の拒否)と異なる外部的行為(敬意の表明の要素を含む行為)を求められることとなり,その限りにおいて,その者の思想・良心の自由について間接的な強制となる面があることは否定し難い。 しかしながら,個人の歴史観ないし世界観には多種多様なものがあり得るのであり,それが内心にとどまらず,それに由来する行動の 者の思想・良心の自由について間接的な強制となる面があることは否定し難い。 しかしながら,個人の歴史観ないし世界観には多種多様なものがあり得るのであり,それが内心にとどまらず,それに由来する行動の実行又は拒否という外部的行動として現れ,当該外部的行動が社会一般の規範等と牴触する場面において制限を受けることがあるところ,その制限が必要かつ合理的なものである場合には,その制限を介して生ずる上記の間接的な制限も許容され得るものというべきである。そして,このような間接的な制約が許容されるか否かは職務命令等の目的及び内容並びに上記制限を介して生ずる制約の態様等を総合的に衡量して,上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるか否かという観点から判断するのが相当である(最高裁平成23年5月30日第二小法廷判決・民集65巻4号1780頁,同平成23年6月6日第一小法廷判決・民集65巻4号1855頁,同平成23年6月14日第三小法廷判決・民集65巻4号2148頁,同平成23年6月21日第三小法廷判決・裁判集民事237号53頁参照)。 (2)ア以上を踏まえて本件についてみると,確かに,国歌斉唱時に起立斉唱することは,原告の歴史観ないし世界観との関係で否定的な評価の対象となるものに対する敬意の表明の要素との関係において,その歴史観や世界観に由来する行動との相違を生じさせることになるという点では原告の思想・良心の自由を間接的に制約する面があるということができる。 イしかしながら,他方で,学校の卒業式等という教育上の特に重要な節目となる儀式的行事においては,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序を確保して式典の円滑な進行を図ることが必要であるといえ る。そして,法令等においても,学校教育法が高等学校教育の目的として においては,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序を確保して式典の円滑な進行を図ることが必要であるといえ る。そして,法令等においても,学校教育法が高等学校教育の目的として我が国と郷土の現状や歴史についての正しい理解や伝統文化の尊重,他国の尊重や国際社会の平和と発展に寄与する態度の滋養涵養を掲げ(同法72条,51条1号,21条3号),同法52条及び平成19年文部科学省令第40号による同法施行規則82条に基づく高等学校学習指導要領も学校の儀式的行事の意義を踏まえて国旗国歌条項(入学式や卒業式などにおいては,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するように指導するものとする。)を定め(甲24の1,63),国旗国歌法は,従来の慣習を法文化して国旗は日の丸とし,国歌は君が代とする旨定め,府国旗国歌条例は,国旗国歌法や学習指導要領等の趣旨を踏まえ,伝統と文化の尊重,我が国と郷土を愛する意識の高揚,国際社会の平和と発展に寄与する態度の滋養及び府立学校等における服務規律の厳格化を目的として,国歌斉唱の際に起立して斉唱することを定めている(前提事実(2)ア,イ)。 なお,原告は,府国旗国歌条例について,君が代の起立斉唱を義務付けるものであり,国旗国歌法の制定経緯や学習指導要領の内容,教育の本質・実践の観点等からして,憲法94条に違反する旨主張する。しかしながら,府国旗国歌条例は,伝統と文化の尊重,我が国と郷土を愛する意識の高揚,国際社会の平和と発展に寄与する態度の滋養及び府立学校等における服務規律の厳格化を目的として,国歌斉唱の際に起立して斉唱することを定めているところ,かかる定めは,上記学校教育法及び国旗国歌法の趣旨とするところに従い,かつ,卒業式等教育上の特に重要な節目となる儀式的行事においては,生徒等への配慮を含め,教育 して斉唱することを定めているところ,かかる定めは,上記学校教育法及び国旗国歌法の趣旨とするところに従い,かつ,卒業式等教育上の特に重要な節目となる儀式的行事においては,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序を確保して式典の円滑な進行を図ることが必要であるという観点から,上記のとおり,儀礼的な所作としての国家斉唱時の起立を行うこととしたものと認めることができる。したがって,憲法94条に違反する旨の府国旗国歌条例に関する原告の主張は理由がないといわざるを得ない。 ウそして,全体の奉仕者として法令等及び上司の職務上の命令に従って職務を遂行すべきこととされている地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性(憲法15条,地公法30,32条)に鑑み,A支援学校の教員である原告は,法令等及び職務上の命令に従わなければならない立場にあり,地公法に基づき,学習指導要領を踏まえて,その勤務する学校の校長らから学校行事である卒業式に関して職務命令等を受けたものである。 エ以上の点に照らすと,本件通達及び本件職務命令は,高等学校教育の目標や卒業式等儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿って,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえ,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに当該式典の円滑な進行を図る目的を有するものということができる。 (3) 以上認定説示した点からすれば,本件通達及び本件職務命令は,上記(1)イで述べたように外部的行動の制限を介して原告の思想・良心の自由についての間接的な制約となる面はあるものの,その目的及び内容並びに上記制限を介して生ずる制約の態様等を総合的に衡量すれば,上記制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められ,これらの根拠となった府国旗国 の間接的な制約となる面はあるものの,その目的及び内容並びに上記制限を介して生ずる制約の態様等を総合的に衡量すれば,上記制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められ,これらの根拠となった府国旗国歌条例についても,違憲・違法であるということはできないというべきである。 (4) したがって,本件通達及び本件職務命令は,その根拠ないし前提となった府国旗国歌条例も含めて,原告の思想・良心の自由を侵害し,憲法19条に違反するとはいえないと解するのが相当であり,本争点に関する原告の主張は,いずれも採用することができない。 2 争点(2)(憲法20条[信教の自由]違反)について(1) 原告は,キリスト教を信仰するクリスチャンである原告に対し,天皇を神として礼賛する楽曲,いわば天皇の賛美歌である君が代の起立斉唱を強制することは,憲法20条で保障される原告の信教の自由を侵害するものである旨主張し,キリスト教の信仰と起立斉唱行為とは相容れないもので,自ら の信仰に対する踏み絵のように感じられる旨供述する(甲69,原告)。 (2)ア確かに,原告の信仰に由来する上記考え方ないし心情は了解可能なものであり,卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱行為が国歌や国旗に対する敬意の表明の要素を含むものであることも否定できないものである。 イしかしながら,上記1(1)イのとおり,卒業式等における起立斉唱行為は,儀式的行事における教員という社会的立場にある者としての行動にすぎず,一般的,客観的に見て,儀式的行事における儀礼的所作に当たる行為ということができるのであって,それを超えて,宗教的意味合いを持つ行為であるとまでいうことはできない。そうすると,本件通達及び本件職務命令をもって,キリスト教信者の信仰を否定したり,その信仰の有無について告白を強 るのであって,それを超えて,宗教的意味合いを持つ行為であるとまでいうことはできない。そうすると,本件通達及び本件職務命令をもって,キリスト教信者の信仰を否定したり,その信仰の有無について告白を強要したりするものであるということはできないといわざるを得ない。 また,クリスチャンである原告は,本件通達及び本件職務命令によって,その信仰に由来する行動(敬意の表明の拒否)と異なる外部的行動を求められることとなり,その限りにおいて,その信教の自由についての間接的な制約となる面があることは否定し難いものの,上記1(1)のとおり,このような信教の自由に関する間接的制約は許容されるのであって,本件通達及び本件職務命令の目的及び内容並びに上記制限を介して生ずる制約の態様等を総合的に衡量すれば,上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるというべきである。 (3) したがって,本件通達及び本件職務命令は,その根拠ないし前提となった府国旗国歌条例も含めて,原告の信教の自由を侵害し,憲法20条に違反するとはいえないと解するのが相当である。 3 争点(3)(児童・生徒に対する憲法19条[思想・良心の自由]及び憲法26条[教育を受ける権利]違反)について(1) 原告は,平成24年度卒業式に参加していた生徒も思想・良心の自由, 教育を受ける権利(学習権)を有するところ,国家による教育内容に対する決定権能について,国家が誤った知識や一方的な観念を子どもに植え付けるような内容の教育を施すことを強制するようなことは,憲法26条等の規定から許されないなどと主張する。 (2)アしかしながら,そもそも本件通達及び本件職務命令は,平成24年度卒業式において,原告を含む教職員に対し,国歌斉唱の際に起立斉唱することを命じたもので から許されないなどと主張する。 (2)アしかしながら,そもそも本件通達及び本件職務命令は,平成24年度卒業式において,原告を含む教職員に対し,国歌斉唱の際に起立斉唱することを命じたものであって,生徒に宛てて発出されたものではなく,上記1で認定説示したとおり,その内容が憲法19条に違反するとはいえない。 その限りにおいて,原告の同主張は失当といわざるを得ない。 イまた,上記の点を措くとしても,憲法26条が子どもの学習権を認め,教育はこの学習権を充足すべき責務として行われるべきものであることに照らせば,子どもが自由かつ独立の人格として成長することを妨げるような国家的介入,例えば,誤った知識や一方的な観念を子どもに植え付けるような内容の教育を施すことは許されないというべきであるが,本件通達及び本件職務命令は,君が代が国歌と規定され,一般に国旗国歌に対する敬意の表明が慣例上の儀礼的な所作として尊重されことやその他学習指導要領が定める国旗国歌条項の意義を生徒らに感得させることを目的とするものであり,誤った知識や一方的な観念を子どもに受けつけるような内容の教育を強制的に施すことを目的とするものではない。したがって,これらの点に鑑みても,本件通達及び本件職務命令が,生徒の思想・良心の自由及び教育を受ける権利を侵害するとの原告の主張は理由がないというべきである。 ウなお,原告は,府国旗国歌条例が定める教職員らの君が代の起立斉唱は,究極的に児童・生徒らに向けられたものである旨主張するが,同条例の題名及び同条例4条の文言からすれば,同条例が,原告を含む教職員を名宛人とするものであることは明らかであり,上記1(2)イで認定説示した同条 例の趣旨目的をも併せ鑑みると,卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱が,究極的に児童・生徒 ,原告を含む教職員を名宛人とするものであることは明らかであり,上記1(2)イで認定説示した同条 例の趣旨目的をも併せ鑑みると,卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱が,究極的に児童・生徒に向けられたものと評価することはできない。したがって,原告の同主張は理由がない。 (3) 以上によれば,原告の上記主張は,理由がない。 4 争点(4)(憲法14条[法の下の平等]違反)について(1) 原告は,不起立が予想される教職員に対してことさら式場外での受付業務を命ずるG准校長の職務命令は,思想・良心を理由とした不合理な差別であって,憲法14条に違反する違法なものである旨主張する。 (2)アこの点,式場外での受付業務を命じられることは,結果的に卒業式に出席できなくなるということは否定できない。 イしかしながら,前記前提事実(4)ア及び証拠(乙14,17,証人G)によれば,G准校長は,高等部の校務を掌理し,同部の所属職員を監督する業務等を担っていたこと,原告のこれまでの言動等から,平成24年度卒業式において,原告が国歌斉唱時の不起立という職務命令違反行為を行うおそれが高いと考え,職務命令違反者を出さないようにするために,原告への意向確認を行い,受付業務を命じたこと,以上の事実が認められ,これらの事実に,上記1ないし3で認定説示したとおり,国歌斉唱時における起立斉唱を命じた本件通達や本件職務命令が府立学校の教職員の思想・良心の自由や信教の自由などを侵害するものとは認められないこと,卒業式等という重要な学校行事における教職員による国歌斉唱時における不起立行為という職務命令違反行為は,その結果,学校の儀式的行事としての式典の秩序や雰囲気を一定程度損なう作用(影響)をもたらすことは否定し難く,それにより式典に参列する 員による国歌斉唱時における不起立行為という職務命令違反行為は,その結果,学校の儀式的行事としての式典の秩序や雰囲気を一定程度損なう作用(影響)をもたらすことは否定し難く,それにより式典に参列する生徒への影響も伴うことは否定し難いこと,さらには,式場外の業務(受付のほか,駐車場,警備,庶務も同様である[乙6,11ないし13参照]。)は教職員の誰かが担当しなければならないものであることをも併せ鑑みると,G准校長による原告に 対する意向確認や同卒業式における原告の担当業務を受付業務へ変更したことは,学校教育の目的や卒業式の儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿って,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえ,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに式典の円滑な進行を図ることを目的とするものであり,合理的かつ正当な理由に基づくものである認められる。 ウ以上認定説示した点に鑑みれば,その他の原告が主張する点を踏まえても,G准校長の職務命令が憲法14条に違反するものであると認めることはできない。 (3) したがって,G准校長の職務命令は,原告の法の下の平等を侵害し,憲法14条に違反するとはいえないと解するのが相当である。 5 争点(5)(本件減給処分の違法性)について(1) 前記前提事実及び上記4で認定説示した点に加え,後掲各証拠及び弁論の全趣旨に照らせば,以下の事実が認められる。 ア原告は,平成23年度卒業式に在校生の指導(介助等)のために出席していたが,国歌斉唱時に起立斉唱せず,平成24年3月27日,本件戒告処分を受けた(前提事実(3))。 イ原告は,同月13日に行われた平成23年度の小中等部の卒業式において,式場外での駐車場係を命じられて 斉唱時に起立斉唱せず,平成24年3月27日,本件戒告処分を受けた(前提事実(3))。 イ原告は,同月13日に行われた平成23年度の小中等部の卒業式において,式場外での駐車場係を命じられていたところ,卒業式の途中で駐車場係の業務は終了したと考えたものの,式場内に入ることなく職員室に戻り,式場内の児童・生徒の介助や付添を行うことはなかった(甲63,原告)。 ウ原告は,平成24年度の新入生の担任として,同年4月6日に予定されていた平成24年度入学式において,新入生の隣に着席することが予定されていたが,平成23年度不起立による本件戒告処分がなされたこともあり,G准校長らは,原告に対して,国歌斉唱時に起立するかどうかの意向確認を行った。 原告は,一旦は「立ちます」と答えたものの,最終的に起立できない旨告げたため,G准校長は,原告に対し,式場外での受付業務及び式場には入らないようとの職務命令を出した。もっとも,原告が新入生の担任であったことから,交渉の結果,原告は,入学式の終盤に予定されていた担任の紹介の時点からの入場を許可された。 (甲18,63,52の1ないし3,証人G,原告)エ本件不起立に至る経緯及び状況(ア) 平成25年2月7日にE校長の職務命令が発出された後,G准校長は,原告が平成23年度卒業式で国歌斉唱時に起立斉唱しなかったことや平成24年度入学式においても国歌斉唱時に起立できないと述べていたことから,平成24年度卒業式において職務命令違反者を出したくないとの考えから,平成25年2月7日から同年3月6日の間,5回にわたり,原告に対して,平成24年度卒業式における国歌斉唱の際に起立斉唱するかどうかの意向確認を行った。 (イ) G准校長は,同月6日(平成24年度 5年2月7日から同年3月6日の間,5回にわたり,原告に対して,平成24年度卒業式における国歌斉唱の際に起立斉唱するかどうかの意向確認を行った。 (イ) G准校長は,同月6日(平成24年度卒業式前日)の意向確認の際,E校長及びI教頭同席の下で,原告に対して,本件通達及びE校長の職務命令に従わないのであれば,役割分担を式場内における在校生の付添(なお,在校生の付添を担当する者は,在校生席に座って生徒の介助に当たることが予定されていた。)から式場外での受付に変更する旨を伝えた。これに対して,原告は,同卒業式における国歌斉唱時に起立斉唱するかどうかについては,迷っている旨答えるとともに,「明日は卒業式に出させてください」などと述べた。 (ウ) G准校長は,翌7日(平成24年度卒業式当日)午前8時30分頃,原告に対し,国歌斉唱の際の起立斉唱について意向確認をしたところ,原告は,「迷っている,悩んでいる」などと答えた。そこで,G准校長は,原告が国歌斉唱時の起立斉唱を命じたE校長の職務命令に違反する 可能性が高いと考え,原告に対し,従前担当するよう命じていた在校生の付添業務を取り消し,式場外での受付業務に従事するよう命じた。 その際,G准校長は,卒業式終了まで会場内に入ってはいけないことや従前の在校生の付添業務については行う必要がないことなどを明言することはなかったものの,G准校長の職務命令は,卒業式終了までの受付業務を内容とするものであり,そのことは原告においても認識していた。 (以上につき,前提事実(4),乙7,14,17,証人G,原告)オ(ア) 原告は,平成24年度卒業式において,式場外でH教諭と共に受付業務を担当していたところ,出席予定の保護者(受付の名簿に記載されている保護者) 4),乙7,14,17,証人G,原告)オ(ア) 原告は,平成24年度卒業式において,式場外でH教諭と共に受付業務を担当していたところ,出席予定の保護者(受付の名簿に記載されている保護者)が全員受付を済ませたことを確認し,同日午前9時33分頃,来賓が着席した後に式場内に入り,小学部の教員席に座った(なお,在校生席にも空席があった。)。 (イ) 原告が式場内に入ったことを確認したI教頭らは,G准校長の指示に従い,その頃から約15分間にわたり,原告に対し,受付業務が終了したことの確認を行う必要があることや受付の名簿に記載がない保護者が急遽来場する可能性があることなどを告げるとともに,G准校長から式場外へ出るようにとの職務命令が出ていることなどを告げて式場外に出るように指示,説得をした。しかし,原告は,生徒の介助の必要性などを理由にこれを拒否し続けた。以上のようなやりとりの中,午前9時45分頃に卒業式が開式し,国歌斉唱の際(午前9時48分頃),原告は,J教頭から起立を求められ,起立しないのであれば式場外へ出るように指示されたが,これを拒否し,国歌斉唱時に起立斉唱しなかった。 なお,原告の不起立行為により,平成24年度卒業式の進行が妨げられるなどといった現実的な支障は生じていない。 (ウ) 原告と一緒に受付業務を担当していたH教諭は,受付業務と並行し て在校生代表による送る言葉の際にマイクを渡す業務も担当することになっていたことから,卒業式開始後の午前9時50分頃まで受付業務を行った後,式場内に入り同業務を行った。 なお,H教諭が受付業務を離れ,式場内に入ったことについて,問題視されたことはなかった。 (エ) 平成24年度卒業式において卒業生席で卒業生の介助,付添を担当 業務を行った。 なお,H教諭が受付業務を離れ,式場内に入ったことについて,問題視されたことはなかった。 (エ) 平成24年度卒業式において卒業生席で卒業生の介助,付添を担当していたK教諭は,国歌斉唱時に起立しなかったが,同教諭は,その理由について,生徒が興奮して大発作になりかねない状態だったので興奮を抑えるために座って言葉かけを行っていた旨の申告を行った。G准校長は,同申告の内容を踏まえて,同教諭の不起立の点に関し,処分対象とはしなかった。 (以上につき,前提事実(4),甲62,63,乙5,7,10,14,16,17,18,証人G,証人I,原告,弁論の全趣旨)(2) 判断ア原告に対する本件通達の有効性の点について原告は,府国旗国歌条例について,卒業式での国歌斉唱時に起立斉唱を義務付ける根拠,前提とすることはできないことを踏まえて,同条例に基づく本件通達は,そもそも原告に対する正当な職務命令とはならない旨主張する(前記第4の5[原告の主張](1))。 (ア) しかしながら,府国旗国歌条例の有効性については,上記1(2)イで説示したとおりであり,同条例が違憲,違法である旨の原告の主張は理由がない。 (イ) また,本件通達は,府国旗国歌条例の定める府立学校の行事において行われる国歌斉唱の際に,式場内の教職員は起立斉唱しなければならないという服務規律を具体化するために発出されたものであり(前提事実(2)ウ),直接に児童・生徒に対する教育内容や方法に関して発出され たものではない。そして,教育長はA教育委員会の指揮監督の下にA教育委員会の権限に属するすべての事務をつかさどると規定されているところ(平成26年法律第76号による改正前の地教行法17条1項),A教育委員会の権限には教職員の服務の監 育委員会の指揮監督の下にA教育委員会の権限に属するすべての事務をつかさどると規定されているところ(平成26年法律第76号による改正前の地教行法17条1項),A教育委員会の権限には教職員の服務の監督に関する事務が含まれているのであるから,教育長は,府立学校の教職員に対する服務の監督について執行権限を付与されており,地方公務員法32条の「上司」(当該地方公務員との関係において,これを指揮監督する権限を有する者)として,府立学校の教職員に対して本件通達を発する権限を有するものと解するのが相当である。以上からすると,原告の上記主張はいずれも理由がなく,本件通達は,原告に対する関係で正当な職務命令であると認められる。 (ウ) したがって,原告の上記主張は理由がない。 イ行為1(G准校長の職務命令に違反し,受付業務が終わったと勝手に判断して卒業式開始前に会場内に入ったこと)について原告は,G准校長の職務命令について,卒業式終了時点まで受付業務に従事するよう命じるものではなく,受付業務を終了すれば,教職員の本来の業務である生徒の介助等のために式場内に入場することは同職務命令に違反するものではない旨主張する。 (ア) しかしながら,1原告が式場外での受付業務を担当することになったのは,原告が,G准校長からの複数回にわたる意向確認に対して国歌斉唱時に起立する意向を明らかにしなかったことから,職務命令違反者を出したくないと考えたG准校長の判断により担当業務の変更がなされたためであり,同経緯について,原告は,十分に認識理解していたと認められること(上記5(1)エ),2原告は,平成24年度入学式においても国歌斉唱時に起立斉唱する旨の意向を明らかにしなかったために,式場外での受付業務を命じられ,式場内に入らないように命じられていた ること(上記5(1)エ),2原告は,平成24年度入学式においても国歌斉唱時に起立斉唱する旨の意向を明らかにしなかったために,式場外での受付業務を命じられ,式場内に入らないように命じられていた こと(上記5(1)ウ),3原告は,卒業式前日に受付業務への変更の可能性を示唆された際に,G准校長に対して「明日の卒業式には出してください」と要請していること(上記5(1)エ(イ)),4卒業式では,開式後に遅れて来たり急遽出席したりする保護者等(名簿に記載がない者や名簿記載者の親族等)も予想され,受付名簿に記載された出席予定者の来場により受付業務が終了するものではなく,原告と一緒に受付業務に従事していたH教諭は,出席予定者が来場した後も,自らの担当業務(式場内でのマイクの受渡業務)までの間受付業務に従事していたこと(上記5(1)オ(ウ),証人G,証人I,弁論の全趣旨。この点は,出席者が確定している結婚式などとは異なる。),5G准校長の職務命令に立ち会ったI教頭も,原告が担当する業務は,卒業式終了までの受付業務であると認識理解していたこと(乙18,証人I),以上の点が認められ,これらの点に照らせば,G准校長は,原告に対し,卒業式が終了する時点まで,式場外における受付業務に従事するよう命じたと認めるのが相当である。したがって,これに反する原告の上記主張は採用できない。 なお,原告は,平成24年度入学式の際には受付業務を離れて途中から式場内に入っていることなどを理由に,受付業務終了後も式場内に入ることが許されないと理解していた事実はないと主張する。しかしながら,上記5(1)ウで認定したとおり,同入学式における原告の式場内への入場については,当初式終了まで式場外での業務を命じられていた原告が,交渉の結果,新入生の担任であることに と主張する。しかしながら,上記5(1)ウで認定したとおり,同入学式における原告の式場内への入場については,当初式終了まで式場外での業務を命じられていた原告が,交渉の結果,新入生の担任であることに鑑みて,担任紹介時点からの入場が許可されたという経緯がある。他方,平成24年度卒業式においては,上記したような経緯や許可があったとは認められず,上記認定説示したG准校長による職務命令発出の経緯をも併せ鑑みれば,原告は,卒業式終了時点まで式場内に入場できないと認識理解していたと認めるのが相当である。したがって,原告の同主張は採用できない。 (イ) 以上認定説示したとおり,G准校長の職務命令は,原告について,卒業式終了時点まで,式場外で受付業務に従事するよう命じたものであり,また,式場内への入場が予定されていない以上,式場内における在校生の付添業務を命じる職務命令は取り消されたと認めるのが相当であり,原告もそのことは当然認識していたものと認められる。そして,原告は,G准校長らの判断ないし許可を仰ぐこともなく,受付業務が終わったと勝手に判断して卒業式開始前に会場内に立ち入っており,原告の同行為(行為1)は,G准校長の職務命令に違反すると認めるのが相当である。 ウ行為2(受付業務に戻るようにとのI教頭らの指導に従わなかったこと)について(ア) 平成24年度卒業式の式場内に入った原告が,G准校長から指示を受けたI教頭らの退場指示に従わずに式場内に留まったことについては当事者間に争いがない。 (イ) この点,原告は,受付業務が終了したため生徒の介助という教員の本来的業務のために式場内に残ったものであり,退場することについての期待可能性がなかった旨主張する。 しかしながら,1卒業式等の学校 原告は,受付業務が終了したため生徒の介助という教員の本来的業務のために式場内に残ったものであり,退場することについての期待可能性がなかった旨主張する。 しかしながら,1卒業式等の学校行事においては,予め受付名簿に記載された保護者以外に,同保護者の親族等が急遽来場する可能性は十分に考えられるところ,名簿に記載されている保護者が来場したことで受付業務が終了するものではないこと,2原告については,式場内における生徒の付添業務を内容とする職務命令が取り消されたと認められること(上記5(1)エ(ウ)),3同卒業式において,原告が付き添ったり介助したりしなければならない具体的な必要性のある児童・生徒が存在したことを認めるに足りる的確な証拠はないこと,4在校生の付添教員が本来着席すべき在校生席には空席があり,在校生席に着くことができな い具体的な事情がなかったにもかかわらず(なお,原告は,座っている人や車椅子の間を通ることによる混乱を避けた方がよいと考えたと供述するが[原告本人12頁],さしたる事情とは解されない。),小学部教員席という本来の着席位置とは異なる位置に着席したこと(上記5(1)オ(ア)),5平成23年度の小中学部の卒業式の際には,式の途中で業務を終えながら,式場内での児童・生徒の付添や介助を行わず,職員室に戻っていたこと(上記5(1)イ),以上の各事情に照らせば,原告が生徒(在校生)の付添や介助のために式場内に入場する必要があったとは認め難く,原告が,I教頭らからの退場指示にもかかわらず,退場することが期待できないことを根拠付ける個別具体的な事情は認められない。したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。 (ウ) 原告は,同じ受付業務を担当していたH教諭が何ら処分されていないこと(上記5( ことを根拠付ける個別具体的な事情は認められない。したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。 (ウ) 原告は,同じ受付業務を担当していたH教諭が何ら処分されていないこと(上記5(1)オ(ウ))との相違の点を挙げて,行為2については,法令違反や非行には該当しない旨主張するが,上記5(1)オ(ウ)で認定したとおり,H教諭は,式場外での受付業務の他に,式場内において送辞朗読時にマイクを渡すという具体的な役割(業務)があり,同役割(業務)のために式場内に入ったと認められる。他方,原告は,式場外において,卒業式終了時点まで受付業務に従事することを内容とする職務命令を受け,具体的な役割がないにもかかわらずに式場内に入場し,G准校長らからの明確な退場指示に従わなかったものであって,原告とH教諭の取扱いが異なることについて不合理であるとは認められない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (エ) 以上のとおりであって,G准校長の職務命令や受付業務に戻るようにとのI教頭らの指示に従わずに退場しなかった原告の行為2は,職務命令違反行為であると認められる。 エ行為3(本件不起立)について (ア) 上記5(1)オ(イ)で認定したとおり,原告は,平成24年度卒業式の国歌斉唱時に起立斉唱をしておらず,行為3(本件不起立)は,本件通達及びF校長の職務命令に違反することは明らかである。 (イ) この点,原告は,信仰上の理由から国歌斉唱時にどうしても立てなかったのであり,そのようなやむにやまれぬ不起立については法令違反や非行と評価すべきでないと主張する。しかしながら,上記5(1)オで認定したとおり,原告は,開式前の式場に勝手に入場した上,I教頭らからの退場指示を拒否して場内に居座り続けたために,国歌斉唱が始ま や非行と評価すべきでないと主張する。しかしながら,上記5(1)オで認定したとおり,原告は,開式前の式場に勝手に入場した上,I教頭らからの退場指示を拒否して場内に居座り続けたために,国歌斉唱が始まり,本件不起立に至ったという経緯に照らせば,行為3(本件不起立)について,法令違反や非行と評価すること自体不当違法とはいえない。 したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。 また,原告は,消極的で不作為の態様で黙っていただけの本件不起立によって式の秩序が乱されたり雰囲気が損なわれたりはしておらず,進行の妨害もなされていないから法令違反,非行はないとも主張する。しかしながら,上記4(2)イで認定説示したとおり,卒業式等という重要な学校行事における教職員による不起立という職務命令違反行為は,その結果,学校の儀式的行事としての式典の秩序や雰囲気を一定程度損なう作用をもたらすものであって,それにより式典に参列する生徒への影響も伴うことは否定し難いところである。したがって,原告の上記主張は採用できない。 さらに,原告は,同じように生徒に付き添っていて起立しなかったK教諭が処分の対象とされていないこととの相違の点を挙げて本件不起立が職務命令に反していない旨主張するが,上記(1)オ(エ)で認定したとおり,G准校長は,生徒の介助のために起立しなかったとの同教諭の申告内容を踏まえて処分の対象としなかったと認められ,この点については合理的な理由が認められる。そうすると,K教諭との対比において, 原告のみを恣意的に取り扱ったとは評価できず,原告の同主張は失当といわざるを得ない。 オ小括(ア) 以上のとおり,本件減給処分の理由となった行為1ないし3は,いずれも職務命令違反行為であると認められる。 (イ とは評価できず,原告の同主張は失当といわざるを得ない。 オ小括(ア) 以上のとおり,本件減給処分の理由となった行為1ないし3は,いずれも職務命令違反行為であると認められる。 (イ) そして,原告の上記各職務命令違反行為は,地公法32条が規定する上司の職務上の命令に忠実に従う義務に違反する行為であり,法令違反が認められる。また,本件戒告処分を受けながら,1年後に同様の行為を繰り返したこと,さらに,本件不起立(行為3)だけでなく,受付業務を放棄して勝手に式場内に立ち入り,I教頭らの退場指示にも従わない(行為1,2)という二重に上司の職務上の命令に従う義務に違反した行為であることなどの事情に照らせば,原告の行動が教員の信用を著しく失墜する,全体の奉仕者たるにふさわしくない非行であると認めるのが相当である。 (3) 以上のとおり,行為1ないし3は,いずれも法令違反及び全体の奉仕者たるにふさわしくない非行に該当するものと認められ,これらを理由として懲戒処分を行うことは適法というべきである。 6 争点(6)(本件減給処分に係る裁量権の範囲の逸脱又は濫用の有無)について(1) 公務員に対する懲戒処分について,懲戒権者は,懲戒事由に該当すると認められる行為の原因,動機,性質,態様,結果,影響等のほか,当該公務員の前記行為の前後における態度,懲戒処分等の処分歴,選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等,諸般の事情を考慮して,懲戒処分をすべきかどうか,また,懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきかを決定する裁量権を有しており,その判断は,それが社会通念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したと認められる場合に,違法と なるものと解される(最高裁昭和52年12月20日第三小法廷判決・民集 ,その判断は,それが社会通念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したと認められる場合に,違法と なるものと解される(最高裁昭和52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号1101頁,最高裁平成2年1月18日第一小法廷判決・民集44巻1号1頁参照)。 (2) ところで,上記1ないし4において認定説示したとおり,本件職務命令等は,憲法19条等憲法の規定に違反するものではなく,学校教育の目的や卒業式の儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿って,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえ,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに式典の円滑な進行を図るものであって,このような観点から,その遵守を確保する必要性があるものということができる。 もっとも,本件で問題となっている減給処分は,処分それ自体によって教員の法的地位に一定期間における本給の一部の不支給という直接の給与上の不利益が及び,将来の昇給等にも相応の影響が及ぶ上,毎年度2回以上の卒業式や入学式等の式典のたびに懲戒処分が累積して加重されると短期間で反復継続的に不利益が拡大していくことが懸念されるところである。また,府職員基本条例は,職務命令に違反した職員の標準的な懲戒処分は戒告とする旨規定している(前提事実(5)イ(ア))。そうすると,懲戒処分として戒告を超えて減給の処分を選択することが許容されるのは,過去の非違行為における懲戒処分等の処分歴や不起立行為等の前後における態度(以下,併せて「過去の処分歴等」という。)に鑑み,学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合であることを要すると解すべきで 」という。)に鑑み,学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合であることを要すると解すべきである。 そして,上記の相当性を基礎付ける具体的な事情が認められるためには,例えば過去の1回の卒業式等における不起立行為等による懲戒処分の処分歴がある場合に,これのみをもって直ちにその相当性を基礎付けるには足りず, 前記の場合に比べて過去の処分歴に係る非違行為がその内容や頻度等において規律や秩序を害する程度の相応に大きいものであるなど,過去の処分歴等が減給処分による不利益の内容との権衡を勘案しても規律や秩序の保持等の必要性の高さを十分に基礎付けるものであることを要するというべきである(最高裁平成24年1月16日第一小法廷判決・裁判集民事239号253頁参照)。 (3)ア以上を踏まえて,本件についてみると,原告の過去の懲戒処分歴は本件戒告処分1回のみであり,同処分の内容は,本件不起立と同様に卒業式の国歌斉唱時における不起立不斉唱であって,態様も,卒業式において生徒の指導(介助等)を担当していた原告が,国歌斉唱時に起立斉唱しなかったというもので,積極的に式典の進行を妨害したものではない。また,原告の不起立不斉唱行為は,原告の信仰と結合した歴史観(以下「信仰等」ということがある。)に由来する君が代に対する否定的評価等のゆえに,国歌斉唱時に起立斉唱を求める職務命令と自らの信仰等に由来する外部的行為とが相違することであり,個人の信仰等に起因するという面を有していることをも併せ鑑みると,原告の過去の非違行為における処分歴は,本件減給処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情とは認め難い。また,原告による不起立行為等は積極的,物理的 いう面を有していることをも併せ鑑みると,原告の過去の非違行為における処分歴は,本件減給処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情とは認め難い。また,原告による不起立行為等は積極的,物理的に式典の進行を妨害するものではなく,具体的に平成24年度卒業式が混乱した事実も認められない。 イしかしながら,上記5(2)エ(イ)で認定説示したとおり,本件減給処分の理由となった非違行為(行為1ないし3)の性質,態様は,重要な学校行事である卒業式において,卒業式終了まで式場外での受付業務を命じられながら,これを放棄して勝手に式場内に立ち入り,本来着席すべきではない小学部教員席に座った上,I教頭らから繰り返し受付業務に戻るべく式場外へ退場するよう指示されながら,これを拒否し続けて本件不起立に及 んだというものであり,原告の同各行為は,本件通達及びE校長の職務命令に違反するだけでなく,G准校長の職務命令にも違反するものである。 また,本件不起立は,原告が勝手に式場内に立ち入り,退場指示を拒否して式場内に居座ったことが端緒となって発生したものであり,平成23年度不起立のように卒業式への出席が予定されていた者が国歌斉唱時に起立斉唱しなかった事案とは事情を大きく異にするものと認められる。 さらに,そもそも,G准校長の職務命令は,平成23年度卒業式や平成24年度入学式などにおける原告の一連の言動に照らして,原告が平成24年度卒業式の国歌斉唱時に起立斉唱しない可能性が高いとの判断に基づき,職務命令違反者を出さないようにとの配慮からなされたものであるところ,原告は,そのような経緯を十分に認識理解しながら,割り当てられた受付業務を自己の判断だけで終了したとして(この点,原告は,一緒に同業務に従事していたH教諭に確認や相談等もしなかった[原告] ところ,原告は,そのような経緯を十分に認識理解しながら,割り当てられた受付業務を自己の判断だけで終了したとして(この点,原告は,一緒に同業務に従事していたH教諭に確認や相談等もしなかった[原告]。),勝手に場内に立ち入った上,あえて本来着席すべきでない小学部教員席に座り,I教頭らが式場外に出て受付業務にもどるように指示,説得したにもかかわらず,これを拒否し続けた後に不起立に及んでいるのであって,原告の同行為は,自ら積極的に卒業式の式典としての秩序や雰囲気を損なわせようとしたものと評価するのが相当である。 そして,原告は,平成23年度不起立により本件戒告処分を受けたにもかかわらず,1年後の平成24年度卒業式においても同様に本件通達及び本件職務命令に違反する不起立行為を繰り返したものであること,原告は,本件不起立に関するA教育委員会による事情聴取において,本件不起立について反省していない旨を述べる(乙10)など自らの非違行為を省みることもしていないこと(弁論の全趣旨),以上の点も認められる。 ウ以上のとおり,本件減給処分の理由となった原告の非違行為は,卒業式における国歌斉唱時の起立斉唱を命じた本件通達及びE校長の職務命令に 違反するだけでなく,卒業式終了時までの受付業務を命じたG准校長の職務命令にも違反するものであること,その内容をみても,勝手に式場内に入って無関係の席に居座り不起立に及ぶなど,卒業式という重要な学校行事の秩序や雰囲気を損なうような行為に積極的に及んだものと評価できること,これら本件不起立前後における原告の態度等の諸事情を総合的に勘案すると,本件減給処分による不利益の内容を踏まえてもなお,学校の規律や秩序の保持等の必要性の観点から,減給処分が重きに失するものということはできず,本件減給処分が裁量権の範囲 の諸事情を総合的に勘案すると,本件減給処分による不利益の内容を踏まえてもなお,学校の規律や秩序の保持等の必要性の観点から,減給処分が重きに失するものということはできず,本件減給処分が裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たると解することはできない。 エなお,本件は,原告が勤務する支援学校の卒業式における事案であるところ,同学校の特殊性等から,式典中に声を上げたり,起立できなかったりする生徒・児童がいることがうかがわれるものの,これらの事情は,上記認定説示した点を左右するものとまでは認められない。 また,原告は,憲法31条との関係で本件減給処分の違法を主張するが,同条の定める法定手続の保障は,直接には刑事手続に関する規定であり,解釈上,行政処分の相手方に対して告知・聴聞の機会を保障したものではないし,本件減給処分は,A教育委員会による事情聴取を踏まえ(乙10),審議の上で決せられたものであり(甲13の4),原告の主張は採用できない。 (4) 以上のとおりであって,本件通達及び本件職務命令の違反を理由として原告に対して減給処分をしたA教育委員会の判断は,社会通念上著しく妥当を欠くものとはいえず,懲戒権者としての裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとして違法であるとはいえないと解するのが相当である。 7 争点(7)(本件国家賠償請求の成否及び損害の内容)について原告は,違法な本件減給処分を受けたことや,G准校長による意向確認,本件減給処分後の研修などにより精神的苦痛を被ったとして,国賠法1条1項に 基づいて,損害賠償(慰謝料)の支払を求めている。 (1) しかしながら,上記6で認定説示したとおり,本件減給処分は違法とはいえず,減給処分による経済的不利益や,今後も同様の処分が繰り返され,府職員基本条例により免職処分され生活 払を求めている。 (1) しかしながら,上記6で認定説示したとおり,本件減給処分は違法とはいえず,減給処分による経済的不利益や,今後も同様の処分が繰り返され,府職員基本条例により免職処分され生活の糧を失うかもしれないなどといった精神的不安を理由とする請求には理由がない。 (2) また,上記4及び5において認定説示したとおり,G准校長やE校長が,原告に対し,国歌斉唱時に起立斉唱するか否かの意向確認を繰り返し,式場外での受付業務を命じた理由は,国歌斉唱時に起立して斉唱するか否かという点に関する原告の従前の言動や原告が平成23年度不起立により本件戒告処分を受けていることなどから,平成24年度入学式や平成24年度卒業式において不起立という職務命令違反行為を行うおそれが高いと考えたことにあると認められ,教職員の非違行為を防止するなど合理的な理由に基づくものであると認められる。 (3) さらに,原告が主張する本件減給処分後の研修(前提事実(4)エ)についてみると,上記のとおり,本件減給処分は適法になされたものであるところ,同研修は,規則(府職員基本条例29条1項(前提事実(2)エ(イ)))に則って行われたものであること,その際の職員の言動が慰謝料請求権を発生させるほどに原告に対して精神的・肉体的苦痛を与えるものであったことを認めるに足りる的確な証拠もないこと,以上の点に鑑みれば,上記研修に関して,原告に慰謝料請求権を発生させるような事実は認められない。 (4) その他,原告の主張を踏まえて本件全証拠を精査しても,G准校長らの言動が,原告に対する嫌がらせやパワハラに該当すると認めるに足りる的確な証拠は認められない。 (5) 以上のとおりであって,原告の国賠法1条1項に基づく本件損害賠償請求は認められない。 8 結論 以 らせやパワハラに該当すると認めるに足りる的確な証拠は認められない。 以上のとおりであって,原告の国賠法1条1項に基づく本件損害賠償請求は認められない。 8 結論 以上のとおりで,原告の本件各請求はいずれも理由がないからいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第5民事部 裁判長裁判官内藤裕之 裁判官笹井三佳 裁判官新城博士

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