平成22年7月21日判決言渡同日原本受領裁判所書記官平成21年(行ケ)第10377号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成22年7月7日判決原告 X同訴訟代理人弁理士重信和男清水英雄中野佳直溝渕良一秋庭英樹被告株式会社水道技術開発機構同訴訟代理人弁理士北村修一郎東邦彦中条均 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1請求特許庁が無効2008-800280号事件について平成21年10月15日にした審決を取り消す。 第2事案の概要本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,被告の本件特許に対する原告の特許無効審判の請求について,特許庁が,本件訂正を認め,本件特許に係る発明の要旨を下記2のとおり認定した上,同請求は成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は,下記3のとおり)には,下記4のとおり の取消事由があると主張して,その取消を求める事案である。 特許庁における手続の経緯(1)本件特許(甲14)発明の名称:「流体配管系統の流路遮断方法及び管内流路遮断装置」出願日:平成16年11月16日(特願2004-331801)登録日:平成20年7月18日特許番号:第4155966号(2)審判手続及び本件審決審判請求日:平成20年12月8日(甲15。無効2008-800280号)訂正請求日:平成21年3月11日(甲21。甲24により同年9月4日に手続補正があり,この手続補正を含めて,以下,「本件 決審判請求日:平成20年12月8日(甲15。無効2008-800280号)訂正請求日:平成21年3月11日(甲21。甲24により同年9月4日に手続補正があり,この手続補正を含めて,以下,「本件訂正」という。)審決日:平成21年10月15日審決の結論:「訂正を認める。本件審判の請求は,成り立たない。」原告に対する審決謄本送達日:平成21年10月26日 本件発明の要旨本件審決が判断の対象とした発明は,本件訂正後のものであって,その要旨は,次のとおりである。以下,【請求項1】ないし【請求項5】に係る発明を順に「本件発明1」ないし「本件発明5」といい,併せて「本件発明」という。 【請求項1】流体配管系統において,両連結フランジ部の接合面間にシール材を介装した状態で上記両連結フランジ部に貫通状態で設けられた締結具にて締付け連結されている両管部の両連結フランジ部に,上記締結具の緩み操作を許容する状態で両連結フランジ部の外周を密封状態で囲繞可能で,かつ,両管部の流路を遮断可能な薄板状の仕切板弁が抜き差し操作自在に設けられている遮断作業カバーを装着し,上記締結具の緩み操作に伴う流体圧による両連結フランジ部間の押し広げと,上記遮断作業カバーの周方向複数箇所に設けられた隙間形成手段による両連結フランジ 部の接合面間の外周面側に開口形成された環状凹部に付与される強制押し広げ力とによって,上記締結具の緩み操作代の範囲内で両連結フランジ部間を押し広げ,上記遮断作業カバーの仕切板弁を,上記締結具の緩み操作によって発生した両連結フランジ部間の隙間を通して流路遮断位置にまで差し入れることにより,両連結フランジ部間において流路を遮断することを特徴とする流体配管系統の流路遮断方法【請求項2】両連結部フランジ部の接合面間にシール材を介装した状態で上記両連結フラ 位置にまで差し入れることにより,両連結フランジ部間において流路を遮断することを特徴とする流体配管系統の流路遮断方法【請求項2】両連結部フランジ部の接合面間にシール材を介装した状態で上記両連結フランジ部に貫通状態で設けられた締結具にて締付け連結されている両管部の両連結フランジ部に対して,それらの両連結フランジ部の外周を密封する状態で装着自在な遮断作業カバーに,上記締結具の緩み操作に伴う流体圧による押し広げによって両連結フランジ部間に発生した隙間を通して管内流路を遮断する位置にまで差込み移動自在な薄板状の仕切板弁と,この仕切板弁を密封状態で流路遮断位置と流路開放位置とに摺動案内する摺動ガイド手段が設けられているとともに,上記遮断作業カバーの周方向複数箇所には,両連結フランジ部の接合面間の外周面側に開口形成された環状凹部において上記締結具の緩み操作代の範囲内で両連結フランジ部間を強制的に押し広げるための強制押し広げ力を付与する隙間形成手段が設けられている管内流路遮断装置【請求項3】前記隙間形成手段が,遮断作業カバーの周方向複数箇所において,両連結フランジ部間の隙間に対して径方向外方から入り込み移動するテーパー面を備えた複数の分離ボルトから構成されている請求項2記載の管内流路遮断装置【請求項4】前記隙間形成手段の分離ボルトは,そのボルト軸芯が仕切板弁の移動平面を通る平面上又はその近傍に位置する状態で締付け輪に取付けられている請求項3記載の管内流路遮断装置【請求項5】前記締結具が,一方の連結フランジ部の外面との間を密封するためのOリングを頭部の当接面に設けてあるボルトと,他方の連結フランジ部の外面との間を密封するためのOリングを当接面に設けてある袋ナットから構成されている請求項2ないし4のいずれか1項に記載の管内流路遮断装置 本件審 面に設けてあるボルトと,他方の連結フランジ部の外面との間を密封するためのOリングを当接面に設けてある袋ナットから構成されている請求項2ないし4のいずれか1項に記載の管内流路遮断装置 本件審決の理由の要旨(1)本件審決の理由は,要するに,本件発明が,いずれも下記アないしケの引用例1ないし9に記載された各発明(以下,引用例1に記載された発明を,その請求項ごとに「引用発明1」及び「引用発明2」という。)及び下記コないしスの各周知例に記載された各技術事項に加えて,本件発明1及び2については下記イないしエ及びケの各引用例に記載された各技術事項に基づき,本件発明3及び4については下記イないしエ及びケの各引用例に記載された各技術事項のほか,下記オ及びカの各引用例に記載された各技術事項に基づき,本件発明5については下記イないしエの各引用例に記載された各技術事項のほか,下記キ及びクの各引用例に記載された各技術事項に基づき,いずれも当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから,本件発明に係る本件特許を無効にすることができない,というものである。 ア引用例1:実願昭60-104452号(実開昭62-12090号)のマイクロフィルム(甲1)イ引用例2:特公昭49-20325号公報(甲2)ウ引用例3:特開2003-322289号公報(甲3)エ引用例4:米国特許第5,797,423号明細書(甲4)オ引用例5:実願昭60-92429号(実開昭62-802号)のマイクロフィルム(甲5)カ引用例6:実願平5-63554号(実開平7-33553号)のCD-ROM(甲6)キ引用例7:実願平2-96041号(実開平4―54318号)のマイクロフィルム(甲7)ク引用例8:特開2002-250446号公報(甲8)ケ引用例 -33553号)のCD-ROM(甲6)キ引用例7:実願平2-96041号(実開平4―54318号)のマイクロフィルム(甲7)ク引用例8:特開2002-250446号公報(甲8)ケ引用例9:特開平10-68105号公報(甲9)コ周知例1:特開平11-108228号公報(甲10) サ周知例2:特開平9-66082号公報(甲11)シ周知例3:特開平10-135698号公報(甲12)ス周知例4:特開平10-123271号公報(甲13)(2)なお,本件審決が認定した引用発明1及び2は,次のとおりである。 ア引用発明1:水道管等の配管系統において,両フランジの接合面間にシール材を介装し,両フランジに貫通状態で設けられるフランジ連結ボルトの挿通用孔を閉塞具にて水密状態に閉塞した両フランジに,両フランジの外周を密封状態で囲繞可能で,かつ,両フランジの流路を遮断可能な弁板が抜き差し操作自在に設けられている環状のマウントを介して水密状態で軸芯方向にスライド自在に外嵌可能な筒状本体を装着し,この筒状本体の周方向複数箇所に設けられ,水道管側(下側)のマウントに水道管側から当接させた操作ボルトを介して上記筒状本体を水道管側のフランジに対してスライドさせて,消火栓側(上側)のフランジを水道管側のフランジから離間させ,上記弁板を両フランジ間の隙間に差し入れることにより,両フランジ間において流路を遮断する水道管等の配管系統の流路遮断方法イ引用発明2:両フランジの接合面間にシール材を介装し,両フランジに貫通状態で設けられるフランジ連結ボルトの挿通用孔を閉塞具にて水密状態に閉塞した両フランジに対して,それらの両フランジの外周を環状のマウントを介して水密状態で軸芯方向にスライド自在に外嵌可能な筒状本体に,両フランジ間の隙間を通して管内流路を遮 孔を閉塞具にて水密状態に閉塞した両フランジに対して,それらの両フランジの外周を環状のマウントを介して水密状態で軸芯方向にスライド自在に外嵌可能な筒状本体に,両フランジ間の隙間を通して管内流路を遮断する位置にまで差込み移動自在な弁板と,この弁板を密封状態で流路遮断位置と流路開放位置とに摺動案内する部材が設けられているとともに,上記筒状本体の周方向複数箇所には,水道管側(下側)のマウントに水道管側から当接させた操作ボルトが設けられている水道管等の流路遮断装置(3)また,本件審決が認定した本件発明1と引用発明1との一致点1及び相違点1は,次のとおりである。 ア一致点1:流体配管系統において,両連結フランジ部の接合面間にシール材を介装した状態で上記両連結フランジ部に貫通状態で設けられた締結具で連結さ れる構造の両連結フランジ部に,連結フランジ部の軸芯方向の移動を許容する状態で,両連結フランジ部の外周を密封状態で囲繞可能で,かつ,両管部の流路を遮断可能な薄板状の仕切板弁が抜き差し操作自在に設けられている遮断作業カバーを装着し,上記遮断作業カバーの周方向複数箇所に設けられた操作手段を操作して,両連結フランジ部間に隙間を形成し,上記遮断作業カバーの仕切板弁を,両連結フランジ部間の隙間を通して流路遮断位置にまで差し入れることにより,両連結フランジ部間において流路を遮断する流体配管系統の流路遮断方法イ相違点1(ア)相違点1-1:両連結フランジ部に貫通状態で設けられる締結具で連結される構造の両連結フランジ部に関し,本件発明1では,「両連結フランジ部に貫通状態で設けられた締結具にて締付け連結されている」のに対し,引用発明1では,「両フランジに貫通状態で設けられるフランジ連結ボルトの挿通用孔を閉塞具にて水密状態に閉塞し」ている点(イ)相違点 貫通状態で設けられた締結具にて締付け連結されている」のに対し,引用発明1では,「両フランジに貫通状態で設けられるフランジ連結ボルトの挿通用孔を閉塞具にて水密状態に閉塞し」ている点(イ)相違点1-2:「連結フランジの軸芯方向の移動を許容する状態」で遮断作業カバーを装着する態様に関し,本件発明1では,「締結具の緩み操作を許容する状態で」あるのに対し,引用発明1では,「軸芯方向にスライド自在」である点(ウ)相違点1-3:遮断作業カバーの周方向複数箇所に設けられた操作手段を操作して,両連結フランジ部間に隙間を形成する態様に関し,本件発明1では,「締結具の緩み操作に伴う流体圧による両連結フランジ部間の押し広げと,遮断作業カバーの周方向複数箇所に設けられた隙間形成手段による両連結フランジ部の接合面間の外周面側に開口形成された環状凹部に付与される強制押し広げ力とによって,上記締結具の緩み操作代の範囲内で両連結フランジ部間を押し広げ」るのに対し,引用発明1では,流体圧による両連結フランジ部間の押し広げについては明らかでなく,「筒状本体(「遮断作業カバー」に相当)の周方向複数箇所に設けられ,水道管側(下側)のマウントに水道管側から当接させた操作ボルトを介して筒状本体を水道管側のフランジに対してスライドさせて,消火栓側(上側)のフランジを 水道管側のフランジから離間させ」る点(4)また,本件審決が認定した本件発明2と引用発明2との一致点2及び相違点2は,次のとおりである。 ア一致点2:両連結フランジ部の接合面間にシール材を介装した状態で上記両連結フランジ部に貫通状態で設けられる締結具で連結される構造の両連結フランジ部に対して,それらの両連結フランジ部の外周を密封状態で装着自在な遮断作業カバーに,両連結フランジ部間の隙間を通して管内流路を遮断 ランジ部に貫通状態で設けられる締結具で連結される構造の両連結フランジ部に対して,それらの両連結フランジ部の外周を密封状態で装着自在な遮断作業カバーに,両連結フランジ部間の隙間を通して管内流路を遮断する位置にまで差込み移動自在な薄板状の仕切板弁と,この仕切板弁を密封状態で流路とともに,上記遮断作業カバーの周方向複数箇所には,操作手段が設けられている管内流路遮断装置イ相違点2(ア)相違点2-1:両連結フランジ部に貫通状態で設けられる締結具で連結される構造の両連結フランジ部に関し,本件発明2では,「両連結フランジ部に貫通状態で設けられた締結具にて締付け連結されている」のに対し,引用発明2では,「両フランジに貫通状態で設けられるフランジ連結ボルトの挿通用孔を閉塞具にて水密状態に閉塞し」ている点(イ)相違点2-2:仕切板弁が両連結フランジ部間の隙間を通して管内流路を遮断する位置にまで差込み移動自在な態様に関して,本件発明2では,「締結具の緩み操作に伴う流体圧による押し広げによって両連結フランジ部間に発生した隙間を通して管内流路を遮断する位置にまで差込み自在」であるのに対し,引用発明2では,隙間が「締結具の緩み操作に伴う流体圧による押し広げによって」発生したものか否か明らかでない点(ウ)相違点2-3:遮断作業カバーの周方向複数箇所に設けられている操作手段に関して,本件発明2では,「両連結フランジ部の接合面間の外周面側に開口形成された環状凹部において締結具の緩み操作代の範囲内で両連結フランジ部間を強制的に押し広げるための強制押し広げ力を付与する隙間形成手段」であるのに対し, 引用発明2では,「水道管側(下側)のマウントに水道管側から当接させた操作ボルト」である点 取消事由相違点1-3を相違点として認定し,本件発明が容易に想到す る隙間形成手段」であるのに対し, 引用発明2では,「水道管側(下側)のマウントに水道管側から当接させた操作ボルト」である点 取消事由相違点1-3を相違点として認定し,本件発明が容易に想到することができないとした判断の誤り第3当事者の主張〔原告の主張〕(1)連結フランジ間のパッキンが経年変化で劣化し連結フランジ間が糊で接着したような固着状態になる場合があることは,引用例1の出願当時(昭和60年7月8日),技術常識であった(甲26,27)ところ,引用例1の記載は,引用発明1が,操作ボルトの螺合回動による強制力(ボルト操作力)により,消火栓側(上側)のフランジが水道管側(下側)のフランジに対して遠近移動なるスライド操作が行われること及び離間固定状態を得ることを明確に表現している。すなわち,引用例1の記載によれば,消火栓側のフランジを水道管側のフランジに対して遠ざける方向に移動(遠移動)させているのも,スライド操作ボルトを用いた強制押し広げ力(ボルト操作力)であるととらえるのが自然であり,合理的である。 そして,引用例1は,上記スライド操作及び離間固定状態の作出のために操作ボルトの先端部が水道管側のマウントに水道管側から「当接」させる旨記載しているから,ここにいう「当接」させるとは,「当たり接すること」に加えて,「当接状態の維持」も含まれる。現に,操作ボルトの先端をマウントに固定しながら操作ボルトの回動を許容する技術は,周知であるし,これに関連して,「ねじ駆動で物体を移動させるに際し,ねじ端部において回転は許容するが,その移動を規制させる」技術も,出願時の技術常識であった(周知例1ないし4)。 また,消火栓側のマウントは,消火栓側のフランジに遠近移動を与えるための補助具であり,マウントとフランジとの水密状態や,消火栓の重さ及びこ る」技術も,出願時の技術常識であった(周知例1ないし4)。 また,消火栓側のマウントは,消火栓側のフランジに遠近移動を与えるための補助具であり,マウントとフランジとの水密状態や,消火栓の重さ及びこれに対する水道管側からの流体圧(水圧)をも考慮すると,両者は,強固に固定され,消火 栓側のマウントは,消火栓側のフランジの一部として機能していることが明らかである。現に,引用例1は,筒状本体,マウント及びフランジをセットボルトで「固定」する旨記載しており,この「固定」との文言は,機械的な固定を意味するものと解釈すべきである。 以上によれば,引用発明1の操作ボルトは,「強制押し広げ力」を作用させる本件発明1の「隙間形成手段」そのものである。 したがって,操作ボルトと「隙間形成手段」との同一性を否定し,引用発明1の「筒状本体(「遮断作業カバー」に相当)の周方向複数箇所に設けられ,水道管側のマウントに水道管側から当接させた操作ボルトを介して筒状本体を水道管側のフランジに対してスライドさせて,消火栓側のフランジを水道管側のフランジから離間させ」る点を相違点1-3とした本件審決の認定には,誤りがある。 (2)このように,引用発明1に関する引用例1の記載からは,遠移動なるスライド操作において,螺合回動を伴う操作ボルトの先端部の当接(及び当接維持状態)で離間固定状態を得ること(又は得たいとする発明者の意図)が明確に把握されるところ,本件発明1は,このような引用発明1に,引用例2ないし4記載の技術である「締結具を取り外すことなく締結具を緩めた状態で仕切板弁を流路遮断位置まで差し入れる」技術及び「両連結フランジ部に貫通状態で設けられた締結具」並びに引用例9記載の技術である「隙間形成手段の強制押し広げ力を環状凹部に直接作用させる」技術を適用することで,当業者が 位置まで差し入れる」技術及び「両連結フランジ部に貫通状態で設けられた締結具」並びに引用例9記載の技術である「隙間形成手段の強制押し広げ力を環状凹部に直接作用させる」技術を適用することで,当業者が容易に発明できたものである。 (3)なお,本件審決は,流体圧による両連結フランジ部間の押し広げについては本件発明1と引用発明1との間に実質的な相違はなく,引用例1には「操作ボルトを(下方向に)操作することにより,筒状本体が上方向に移動することを許容し,消火栓側のフランジが水圧により上方向に移動し,水道管側のフランジと離間する」趣旨が記載されているとする。しかしながら,引用例1では,「流体圧による両連結フランジ部間の押し広げ」力の存在や,当該力のみを引用発明1に適用しようとする意図も実施例も,一切開示されていないから,本件審決のこの認定判断も, 誤りである。 〔被告の主張〕(1)引用発明1は,不断水状態で消火栓を交換するものであるから,両連結フランジ接合部には,水道からの流体圧(水圧)がかかっており,したがって,両フランジ部間の締結具を緩めると,両フランジを離間させる方向に流体圧がかかることは,引用例1の記載から当業者に明らかであり,引用発明1の考案者も,流体圧の存在を前提にしていたことを認めている(乙1)。 したがって,引用例1の記載によれば,操作ボルトの先端が水道管側のマウントの下面に単に当たり接している状態でも,操作ボルトの操作により,両連結フランジ部を遠移動又は近移動させることが可能であり,引用例1の「当接」との文言が「当接状態を維持する構成」を積極的に含むと解釈すべき事情は存在しない。 (2)また,引用例1の記載のとおり,引用発明1は,セットボルトで筒状本体と消火栓側のマウントを係合(固定)し,更に,消火栓側のフランジが流水圧を 構成」を積極的に含むと解釈すべき事情は存在しない。 (2)また,引用例1の記載のとおり,引用発明1は,セットボルトで筒状本体と消火栓側のマウントを係合(固定)し,更に,消火栓側のフランジが流水圧を受けて上方に移動しようとする際,このフランジと筒状本体とが消火栓側のマウントの係合片を介して係合(固定)される構成であるにすぎない。すなわち,ここにいう「固定」とは,水道管側からの流水圧を受けて,消火栓側のフランジ及び筒状本体とが,消火栓側のマウントを介してともに消火栓側に移動し得る関係を意味するもので,マウントとフランジを直接固定するものと解する必然性はない。 (3)このように,引用発明1の操作ボルトは,流水圧により消火栓側のフランジが持ち上がることを許容する機能を備え,両フランジを流体圧を用いて離間方向にスライド操作することが可能に構成されているが,両連結フランジ間を強制的に押し広げる機能を有せず,したがって,本件発明1及び2にいう「隙間形成手段」には相当しない。 また,引用例1は,引用発明1の操作ボルトと水道管側のマウントの下面の当接状態を維持する必要性を全く開示していないから,周知例1ないし4記載の各技術事項を適用するという発想を示唆しない。 第4当裁判所の判断 相違点1-3の認定について(1)原告は,引用発明1の操作ボルトが消火栓側(上側)のフランジと水道管側(下側)のフランジを強制的に押し広げるもので,本件発明1の「隙間形成手段」に当たるから,これを相違点1-3として本件審決の認定は誤りである旨主張する。 しかしながら,操作ボルトが隙間形成手段であるといえるためには,操作ボルトを緩めることで増加する流体圧によってフランジが押し広げられるのではなく,操作ボルトを螺合回動させるだけで,消火栓側のフランジと水道管側のフラン ボルトが隙間形成手段であるといえるためには,操作ボルトを緩めることで増加する流体圧によってフランジが押し広げられるのではなく,操作ボルトを螺合回動させるだけで,消火栓側のフランジと水道管側のフランジが強制的に押し広げられる必要があるというべきところ,そのような効果をもたらすためには,引用発明1において,①操作ボルトの先端が水道管側のマウントに固定されていること,②水道管側のマウントと水道管側のフランジとが固定されていること,③操作ボルトと螺合した筒状本体と消火栓側のマウントとが固定されていること,④消火栓側のマウントと消火栓側のフランジとが固定されていること,以上の4つの条件を充足し,もって,水道管側のマウント及びフランジが一体となるほか,上記螺合回動のみにより,流体圧によらず,消火栓側のマウント及びフランジが一体として上方に動く構成である必要がある。 (2)そこで,前記①の条件との関係で引用発明1の操作ボルトの構成をみると,引用例1の記載によれば,操作ボルトは,水道管側(下側)のマウントに水道管側から「当接」しているものとされている(引用例1の11頁17行)。 そして,ここにいう「当接」の意義について検討すると,そもそも引用例1にいう「当接」との文言は,上記部分を除くいずれの用例においても,ある部材と他の部材とが「当たり接している」状態を表現しているのみであって,上記部分だけが原告の主張するような「当接状態の維持」を含むものとは直ちに解されない。かえって,引用例1では,例えば消火栓側(上側)のフランジを筒状本体にセットボルトで「固定」する(引用例1の11頁14行)など,ある部材と他の部材とが原 告の主張するような当接状態を維持する構成である場合には,「当接」とは明確に異なる文言が使用されていることに照らすと,操作ボルトとマウント 引用例1の11頁14行)など,ある部材と他の部材とが原 告の主張するような当接状態を維持する構成である場合には,「当接」とは明確に異なる文言が使用されていることに照らすと,操作ボルトとマウントとの上記「当接」が「当接状態の維持」を含むものと解するのは困難である。 次に,原告が主張するように,操作ボルトの先端をマウントに固定しながら操作ボルトの回動を許容する技術が周知であるとしても,引用発明1の操作ボルトの先端にそのような技術が採用されているとするならば,引用例1にそれを説明ないし示唆する記載があってもしかるべきである。しかしながら,引用例1には,図面を含めてそのような記載は,何ら見当たらず,むしろ,引用例1の各図面は,いずれも操作ボルトの先端部をごく単純に描写しており,これらの図面から,原告主張に係るような技術を採用しているものと理解することにはそれ自体無理がある。 さらに,連結フランジ間のパッキンが経年変化で劣化し連結フランジ間が糊で接着したような固着状態になる場合があることは,引用例1の出願当時(昭和60年7月8日)の技術常識であったものと認められる(甲26,27)が,そうだとしても,引用例1には,上記固着状態を前提とした記載がなんら見当たらず,むしろ,引用発明1が解決すべき技術課題についても,「水道管への給水を止めることなく,つまり,不断水の状態で消火栓等の栓を交換する」(引用例1の3頁3~5行)場合に,「連結が解除されたフランジの挿通用孔の閉塞が不完全であると,水が噴出するため,確実に止水するには,挿通用孔を水圧に抗して確実に閉塞する」(引用例1の4頁9~12行)といった記載があるにとどまる。したがって,上記のとおり,操作ボルトの先端とマウントとの関係が「固定」などではなく,単に「当接」と表現されていること及び引用例1の記載 」(引用例1の4頁9~12行)といった記載があるにとどまる。したがって,上記のとおり,操作ボルトの先端とマウントとの関係が「固定」などではなく,単に「当接」と表現されていること及び引用例1の記載によっても,操作ボルトの先端にマウントとの当接状態を維持する技術が採用されているとは理解しがたいことを併せ考えると,引用例1は,もともと連結フランジ間が固着状態にある場合を想定しておらず,かえって,専ら連結フランジ間が固着状態になく,上下のフランジが離れる際に両者の間に流体圧がかかる場合のみを前提として,引用発明1及び2について記載しているものと認めるのが相当である。 そして,そのような前提の下では,上下のフランジを離合しさえすれば流体圧の存在により消火栓側のフランジは上方に向かってスライドするのが自然であるから,本件審決が,引用例1には「操作ボルトを(下方向に)操作することにより,筒状本体が上方向に移動することを許容し,消火栓側のフランジが水圧により上方向に移動し,水道管側のフランジと離間する」趣旨が記載されていると認定したことに誤りはないといわなければならない。 (3)以上によれば,引用発明1の操作ボルトが水道管側(下側)のマウントに水道管側から「当接」しているとは,単に「当たり接している」状態を表現するのみであって,「当接状態の維持」を含まず,引用発明1は,前記①の条件を充足しないものと認めるのが相当である。したがって,前記②ないし④の各条件について検討するまでもなく,操作ボルトが本件発明1にいう「隙間形成手段」に相当するとはいえず,この点を相違点1-3と認定した本件審決に誤りはない。 よって,以上に反する原告の主張は,いずれも採用できない。 本件発明の進歩性について(1)前記認定のとおり,連結フランジ間のパッキンが経年変化で 点を相違点1-3と認定した本件審決に誤りはない。 よって,以上に反する原告の主張は,いずれも採用できない。 本件発明の進歩性について(1)前記認定のとおり,連結フランジ間のパッキンが経年変化で劣化し連結フランジ間が糊で接着したような固着状態になる場合があることは,引用例1の出願当時の技術常識であったである。しかしながら,引用例1は,そのような固着状態にある場合を想定しておらず,かえって,専ら連結フランジ間が固着状態になく,上下のフランジが離れる際に両者の間に流体圧がかかる場合を前提としている以上,引用例1から,操作ボルトの先端部の当接及び当接維持状態で離間固定状態を得ること又は得たいとする発明者の意図を把握することはできない。したがって,引用例1には,上記固着状態にある連結フランジを離間させる隙間形成手段については,何らの示唆も動機付けもないというべきである。そして,引用例2ないし9にも,同様の示唆又は動機付けが見当たらない。 したがって,引用発明1を相違点1-3に係る本件発明1の構成とすることは,引用例2ないし9を参照したとしても,当業者が容易に想到し得るものではない。 (2)また,本件発明2及び本件発明2と引用発明2との相違点2-3も,本件発明1と引用発明1との相違点1-3と同様,隙間形成手段の有無が問題となっているから,引用発明2についても,その相違点2-3に係る部分を本件発明2の構成とすることは,引用例2ないし9を参照したとしても,当業者が容易に想到し得るものではないというほかない。 (3)さらに,本件発明3ないし5は,いずれも本件発明2を引用する発明であり,本件発明2が進歩性を有する以上,本件発明3ないし5も,進歩性を有する。 (4)このように,本件発明はいずれも当業者が容易に発明をすることができたものということ れも本件発明2を引用する発明であり,本件発明2が進歩性を有する以上,本件発明3ないし5も,進歩性を有する。 (4)このように,本件発明はいずれも当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから,本件審決の判断には,何ら誤りはない。 (5)なお,甲26及び27には,いずれも,前記固着状態にある連結フランジ間に隙間形成手段を差し込むことで,フランジ間の間隔を広げる手段についての技術が開示されている。 しかしながら,本件発明1の隙間形成手段がフランジ部の外周を密封状態で囲繞する遮断カバーに取り付けられているものであるのに対し,甲26記載の技術は,フランジのボルト孔に取り付けるものであり,また,甲27記載の技術も,フランジに取り付けるものであって,いずれも,本件発明1とはその構成を異にしており,甲26及び27の記載には,本件発明1の構成に関する示唆や動機付けが見当たらない。また,前記のとおり,引用例1にも,固着状態にある連結フランジを離間させる隙間形成手段については,何らの示唆も動機付けも見当たらない。 したがって,引用例1と甲26及び27の記載が開示する技術を組み合わせることが当業者に容易であったと認めることはできない。 結論 以上の次第であるから,原告の請求は棄却されるべきものである。 知的財産高等裁判所第4部裁判長裁判官滝澤孝臣 裁判官高部眞規子裁判官井上泰人
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