平成13(ワ)162 株主総会決議取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成14年4月25日 宮崎地方裁判所
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判決文本文23,658 文字)

主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告の平成12年12月15日の臨時株主総会における第58期(平成10年4月1日から平成11年3月31日まで)の貸借対照表,損益計算書及び利益金処分案を承認する旨の決議並びに退任取締役に対する退職慰労金贈呈を承認する旨の決議,第59期(平成11年4月1日から平成12年3月31日まで)の貸借対照表,損益計算書及び利益金処分案を承認する旨の決議並びに取締役及び監査役の選任の各決議をいずれも取り消す。 第2 事案の概要本件は,株式会社である被告の株主である原告が,平成12年12月15日に開催された被告の臨時株主総会について,① 被告の計算書類等の謄本交付請求を不当に拒絶された,② 株主名簿等の謄写を不当に拒絶された,③ 弁護士による株主権の代理行使を不当に拒絶された,④ 株主による株主権の代理行使を不当に拒絶された,⑤ 決議事項等に関する原告がした質問に対して被告の取締役等が説明を怠った,⑥ 原告の提出した修正動議の提案理由説明を議長が打ち切り,社員株主らが野次を飛ばして妨害するなど不当な議事進行を行ったなどの違法があり,これらは,招集手続又は決議方法が法令若しくは定款に違反し,又は著しく不公正なときに当たると主張して,商法247条に基づき,総会決議の取消しを求めた事案である。 1 前提となる事実等当事者間に争いがない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実は,次のとおりである。 (1) 被告は主に宮崎県内において日刊新聞を発行する株式会社であり,原告は,被告の発行済株式の2パーセントである1万6000株を有する株主である。 なお,被告には,株式は取締役会の承認がなければ譲渡することができない旨の規定があ 新聞を発行する株式会社であり,原告は,被告の発行済株式の2パーセントである1万6000株を有する株主である。 なお,被告には,株式は取締役会の承認がなければ譲渡することができない旨の規定がある。 (2) 被告は,平成11年6月16日に開催された第58期定時株主総会及び平成12年6月20日に開催された第59期定時株主総会において決議された事項について,原告から各株主総会決議取消請求訴訟(宮崎地方裁判所平成11年(ワ)第452号及び同平成12年(ワ)第524号。以下それぞれ「第1訴訟」,「第2訴訟」という。)が提起されたことから,上記訴訟において上記株主総会決議が取り消された場合に備えて,平成12年12月15日に臨時株主総会を開催し(以下「本件株主総会」という。),① 第58期(平成10年4月1日から平成11年3月31日まで)の貸借対照表,損益計算書及び利益金処分案を承認する旨の決議,② 退任取締役に対する退職慰労金贈呈を承認する旨の決議,③ 第59期(平成11年4月1日から平成12年3月31日まで)の貸借対照表,損益計算書及び利益金処分案を承認する旨の決議並びに④ 取締役及び監査役を選任する旨の決議をした。上記④決議によって,別紙取締役等目録のとおり取締役及び監査役が選任された。 2 本件の争点(1) 計算書類等の謄本交付請求(商法282条2項)について(原告の主張)ア原告は,本件株主総会前の平成12年12月8日に到達した代理人作成の書面により,被告に対し,別紙書類目録記載の各書類の謄本の交付を求めた(以下「本件第1請求」という。なお,以下では特に断らない限り「平成12年」は省略する。)。 これに対し,被告は,委任状がないとして原告の要求を拒否し,本件株主総会の前日である12月14日にようやく株主名簿並びに第 いう。なお,以下では特に断らない限り「平成12年」は省略する。)。 これに対し,被告は,委任状がないとして原告の要求を拒否し,本件株主総会の前日である12月14日にようやく株主名簿並びに第58期及び59期の定時株主総会議事録の謄写物を除く書類(以下「計算書類等」という。)が交付された。しかし,原告は,そのころ同月15日の本件株主総会に出席するため宮崎に向かっていたので,取得した計算書類等を入手検討することができなかった。そのため,原告が,本件株主総会の当日である12月15日午前10時30分ころ,被告の本社に出向き,被告に対して別紙書類目録記載の各書類の閲覧及び謄本交付を求めたところ(以下「本件第2請求」という。),被告は全ての書類について閲覧は認めたが謄本の交付は拒否した。 イ株式会社は,計算書類等の謄本交付義務を有し(商法282条2項),謄本交付義務違反は株主総会招集手続に関する法令違反として決議取消原因に当たる。なお,原告が再度謄本交付要求をしたのは上記アの事情により謄本を入手できなかったためであるから,被告は既に原告代理人に謄本を送付していることをもって本件第2請求を拒むことはできない。 (被告の主張)ア被告は,原告のした本件第1請求に応じ,株主名簿並びに第58期及び59期の定時株主総会議事録を除く計算書類等の謄本を遅滞なく交付したから,商法282条2項の違反はない。被告は,原告代理人が計算書類等の閲覧謄写請求に関する代理権を有しているか否かを知らないから,委任状の提出を求めるのは当然である。また,本件第1請求は12月8日(金曜日)に被告に到達したが,担当役員席に届けられたのは担当役員退社後であり,土日は現場以外は出社せず,12月11日(月曜日)に直ちに原告代理人宛に速達郵便で委任状送付を求めた。原告代理 2月8日(金曜日)に被告に到達したが,担当役員席に届けられたのは担当役員退社後であり,土日は現場以外は出社せず,12月11日(月曜日)に直ちに原告代理人宛に速達郵便で委任状送付を求めた。原告代理人から12月12日午後6時54分にファクシミリで委任状は追完するから謄本を送って欲しい旨の申し出がされたため,被告は,12月13日に原告代理人宛に謄本を速達で送付したのであって,被告が不当に謄本交付を遅延させたという事情はない。なお,その後謄本が原告代理人から原告に交付されたのがいつであるかについては被告は関知しない。 イ原告は,12月15日午前11時40分ころ被告に来店し,備置書類閲覧・謄写請求書を作成して閲覧謄写請求をした。原告は,20分程度書類を閲覧した後に,「コピーをいただきたい。」と述べた。 被告は既に原告代理人に対し計算書類等の謄本を送付していたから,原告の「コピーをいただきたい。」という申し出は,商法282条2項に基づく謄本交付請求ではなく,閲覧謄写の内容として被告がコピー機を使用して計算書類等の謄写物を作り交付して欲しいという要請であると理解すべきであるし,被告がそのように理解したことについて過失はない。これに対し,被告は,計算書類等の写真撮影又は書き写しの方法による謄写を認めたものであって,謄本交付請求を拒否したことはない。 被告は,原告に対して被告備え付けのコピー機を使用させることは拒否したが,コピー機を使用させることは秘密漏洩や業務に支障を来すおそれがあるから,これを拒否することは違法ではない。 ウ原告は計算書類等を既に取得しているか,又は内容を熟知しており,本件各請求は,被告に対するいやがらせ目的であるというべきであるから,本件第2請求は権利濫用であり被告は拒絶することができるというべきである は計算書類等を既に取得しているか,又は内容を熟知しており,本件各請求は,被告に対するいやがらせ目的であるというべきであるから,本件第2請求は権利濫用であり被告は拒絶することができるというべきである。 エ仮に被告の対応が違法であったとしても,上記のように原告は既に計算書類等の内容を事前に熟知しており,本件株主総会においては詳細に審議が行われているのであるから,同瑕疵は重大でなく決議に影響を及ぼさないものである。 (争点)ア本件第2請求は,商法282条2項に基づく謄本交付請求に当たるか。 イそうであるとして,謄本交付請求を拒否したことは違法か(本件の事実関係のもとで,原告の本件第2請求は権利濫用として拒絶しうるものか)。 ウ裁量棄却の当否。 (2) 株主名簿等の閲覧謄写請求(商法263条2項)について(原告の主張)ア株式会社は,株主に対して株主名簿及び株主総会議事録(以下「株主名簿等」という。)を閲覧謄写させる義務を有する(商法第263条2項,同法244条3項,同条4項)が,ここにいう「謄写」とは,現在においては,いわゆる写真コピーされたものを交付すること又はコピーを取ることを含む概念と解すべきである。本店まで出向いて,手書きによる書き写ししか認めないとすると,遠隔地に居住する株主においては,上記書面の謄写をするために多大な費用及び時間をかけることになり,株主の閲覧・謄写請求権を実質上著しく妨げるものである。 イしかるに,被告は,原告のした本件第2請求に対し,株主名簿等の閲覧及び原告による謄写は認めたものの,コピーの交付及びコピー機の利用を拒否した。 ウしたがって,被告は,株主名簿等の閲覧謄写に応じるべき義務の違反があり,これは株主総会招集手続に関する法令違反として決議取消の原因に当たる。 (被告 ピーの交付及びコピー機の利用を拒否した。 ウしたがって,被告は,株主名簿等の閲覧謄写に応じるべき義務の違反があり,これは株主総会招集手続に関する法令違反として決議取消の原因に当たる。 (被告の主張)ア商法263条2項に規定する「謄写」とは,コピーを取ることを含むと解することができるとしても,あくまでも株主自身が謄写する権利を有するというだけであり,会社に対して謄本ないしは謄写物の交付請求権を有するものではない。 これは,商法263条2項の文言が商法282条2項の文言と異なることから明らかである。また,原告が遠隔地に住んでいるとしても,遠隔地に居住する株主の存在は商法立法時から想定されたいたにもかかわらず,商法は謄本交付請求権を認めていないのだから,解釈上謄本ないし謄写物の交付請求権を肯定することも妥当ではない。 被告は,原告自身が写真撮影,手書きによる書き写し,ハンディコピー機を持ち込むなどの方法により謄写をすることまで拒否したことはない。したがって,被告が原告の謄写請求を不当に拒んだとはいえない。 イ原告は,第1訴訟及び第2訴訟等の経緯に鑑み,株主名簿等を既に取得しているか,又は内容を熟知しており,本件各請求は,被告に対するいやがらせ目的であるというべきであるから,権利濫用であり被告は拒絶することができるというべきである。 ウ仮に被告の対応が違法であったとしても,上記のように原告は既に株主名簿等の内容を事前に熟知しており,本件株主総会においては詳細に審議が行われているのであるから,同瑕疵は重大でなく決議に影響を及ぼさないものである。 (争点)ア商法263条2項に定められた株主の閲覧謄写請求権は,① 謄写物の交付請求権,又は,② 会社備付けのコピー機の利用請求権を含むか。 イ争点(1)イと同旨 ぼさないものである。 (争点)ア商法263条2項に定められた株主の閲覧謄写請求権は,① 謄写物の交付請求権,又は,② 会社備付けのコピー機の利用請求権を含むか。 イ争点(1)イと同旨。 ウ争点(1)ウと同旨。 (3) 弁護士による株主権代理行使について(原告の主張)ア A弁護士は,被告の株主であるB株式会社(以下「B社」という。)から,本件株主総会における議決権行使に関する委任を受け,代理人に就任した。 しかし,被告はA弁護士の代理人としての本件株主総会参加を拒絶した。 イ被告の定款には,「株主又は法定代理人が代理人をして議決権を行使せしめようとするときは当会社の株主に限る。」(16条)との規定があり,形式的には,株主以外の者が株主総会において議決権を行使する代理人に就任することはできないことになっている。しかし,上記規定の趣旨は,株主総会が株主以外の第三者によって個人的利益追求の場になったり,かく乱されたりすることを防止し,会社の利益を保護するというものであり,そのようなおそれのない場合にまで,一律に株主以外の代理人を拒否をできるという趣旨ではない。したがって,定款で代理人資格で株主に限定しているからといって,株主以外の代理人であれば,全て株主権の代理行使が認められないと解すべき必然性はなく,代理人として選任された者が株主総会に出席し,議決権を行使しても,株主総会がかく乱されるなど会社の利益が害されるおそれのない場合には,商法239条2項の原則に立ち戻り,その者による代理権行使が認められるものと解するべきである。 そして,株主総会への出席を委任された者が法律の専門家である弁護士である場合には,受任者である弁護士が本人たる株主の意図に反する行動をとることは通常考えられないことのみならず, べきである。 そして,株主総会への出席を委任された者が法律の専門家である弁護士である場合には,受任者である弁護士が本人たる株主の意図に反する行動をとることは通常考えられないことのみならず,株主権の行使をより効果的に行うことが可能であると考えられるのであるから,株主総会を混乱させる恐れがあることは認め難い。 ウなお,被告は,本件株主総会において,他の株主(C)については,株主以外の代理人(妻であるD)の議決権行使を認めているから,B社についてのみ認めないのは不当な差別行為である。 エ本件株主総会においてA弁護士を代理人とするB社の株主権の行使を拒絶した被告の行為は,商法239条2項に違反し,株主総会決議方法の法令違反として株主総会決議取消の原因となる。 (被告の主張)ア株式会社の機関である株主総会は本来構成員である株主のみによって運営するのが会議体の本則である。代理人資格は株主に限る旨の定款規定は合理的な制約であり,有効である(判例同旨)。 弁護士が総会をかく乱し会社の利益を害しないという保証はどこにもないし,実務的にも職種によって代理人資格を個別に確認することは極めて困難であり現実的でない。 株主の権利は共益権と自益権があるが,議決権などの共益権は自益権確保のために存在する。弁護士に共益権である議決権行使を依頼する場合は,自益権による利益よりも経費が大きくなるから,本来の自益権の確保以上に他の不当な目的があることが推認されるというべきである。 イなお,被告の担当者が誤ってDを入場させた事実はあったが,同人の入場は議決の対象となる出席株主数の発表後であり,同人は総会出席者に数えられておらず議決権を行使したとはいえない。また,Dは発言をしておらず,決議内容に影響を与えたこともない。 ウ が,同人の入場は議決の対象となる出席株主数の発表後であり,同人は総会出席者に数えられておらず議決権を行使したとはいえない。また,Dは発言をしておらず,決議内容に影響を与えたこともない。 ウ仮に,被告の対応が違法であったとしても,B社の持株数は少ないことを考慮すれば,同瑕疵は重大でなく決議に影響を及ぼさないものである。 (争点)ア定款において代理人資格を株主に限定している株式会社において,非株主の弁護士を代理人とする株主権行使を拒否することの違法性の有無。 また,他の株主については非株主代理人による権利行使がされたことがあるという事実関係のもとにおいてはどうか。 イ裁量棄却の当否。 (4) 株主による代理権行使について(原告の主張)ア原告は,本件株主総会における議決権行使を含む株主権の行使に関して,E,F及びGから委任を受け,委任状を持参した。 しかし,被告は,本件株主総会において原告を代理人とするEらの株主権の行使を拒絶した。被告は,届出印との印影相違など本人確認が出来ていないことを主張するが,本件株主総会の際に被告の受付担当者は印鑑照合をせず,本人に対して電話をするなどの本人確認手段を執ろうともしなかったのであるから,被告は経営陣の方針に反対する原告への委任状であることを理由に排斥したことは明らかである。 また,Eが本件総会当時死亡していたとしても,Eの相続人(H)が被相続人名義で作成した委任状は有効である。 イ本件株主総会において株主である原告を代理人とするEらの株主権の行使を拒絶した被告の行為は,商法239条2項に違反し,株主総会決議方法の法令違反として株主総会決議取消の原因となる。 (被告の主張)ア原告が被告の受付担当者に委任状を提出したときは,被告の役員らは既 した被告の行為は,商法239条2項に違反し,株主総会決議方法の法令違反として株主総会決議取消の原因となる。 (被告の主張)ア原告が被告の受付担当者に委任状を提出したときは,被告の役員らは既に総会会場に入場しており,内容を確認することはできなかった。受付担当者は役員に「委任状を持ってきていますがどうしますか。」という趣旨の記載をしたメモを渡したが,役員は,A弁護士宛の委任状であると思い,入場を拒否するように指示した。 イ株主が予め定型委任状を送付してきたり,当日定型委任状を持参した場合には,株主が自ら委任状を作成したとの推定が働くが,そうでない私製委任状の場合にはそのような推定は働かない。したがって,委任状に押捺された印影が届出印と一致するなどの方法で本人確認が必要となる。 しかるに,原告が持参した委任状は,被告が予め株主らに郵送した委任状(以下「定型委任状」という。)ではない私製委任状であり,押印された印影は届出印鑑のものと相違していた。また,Eらは,既に被告に定型委任状を提出済みであった。なお,Eは昭和56年に死亡しており,Eが委任状を作成することはあり得ない。 したがって,これらの委任状はいずれにせよ本人確認ができないため有効なものとは認められず,原告が代理権を行使することができた可能性はないから,Eらの株主権が侵害されたとはいえず,被告が原告の代理権を認めなかったことに違法はない。 ウ委任状は本来総会の前日までに提出すべきものである。当日開会直前の受付に定型委任状と重複した私製委任状を提出されると,印鑑照合等の方法により定型委任状の撤回の有無を調査し本人確認をすることが必要となり,総会の出席人数の速やかな確定が困難になるものであるから,原告提出の委任状が有効として扱われなかったのは原告の責任で 照合等の方法により定型委任状の撤回の有無を調査し本人確認をすることが必要となり,総会の出席人数の速やかな確定が困難になるものであるから,原告提出の委任状が有効として扱われなかったのは原告の責任であり,被告が原告の代理権を認めなかったことに過失はない。 エ仮に,原告主張のような決議方法の瑕疵があったとしても,Eらの持株数は少ないこと,原告は入場して発言をしていることを考慮すれば,同瑕疵は重大でなく決議に影響を及ぼさないものである。 (争点)ア ① 既に定型委任状が提出済,② 持参した委任状は非定型委任状,という事実関係のもとで,会社が印鑑照合等の本人確認手段を執ることなく委任状の受理を拒否したことの違法性の有無。 イ上記アが違法であるとして,後に,③ 印鑑が届出印と相違,④ 委任状作成名義人が死亡(相続人の作成)という事情が判明した場合は,瑕疵は治癒されるか。 ウ裁量棄却の当否。 (5) 説明義務違反について(原告の主張)原告は,本件株主総会に関して,事前に書面により質問をし,被告は本件株主総会の席上これに対する説明回答を行ったが,その内容は次のとおり不十分なものであり,決議方法の違法に当たる。 ア本件株主総会開催について本件株主総会開催の目的は,被告取締役らの違法行為により,株主総会決議が判決により取り消されたことを受けて,その瑕疵を治癒するために取り消された決議事項について再度決議をするものである。したがって,被告としては,出席株主に対して,なぜ本件株主総会を開催するのか,役員の責任の有無まで含めて誠実に説明する義務があるにもかかわらず,被告はそれらの説明を行っていない。 (ア) 裁判の状況について被告は裁判の状況について,第1訴訟第1審判決で決議取消判決を受けたこ で含めて誠実に説明する義務があるにもかかわらず,被告はそれらの説明を行っていない。 (ア) 裁判の状況について被告は裁判の状況について,第1訴訟第1審判決で決議取消判決を受けたこと,上記判決については控訴をしたこと及び第2訴訟については原告から株主総会決議取消訴訟が提起されたことのみを説明し,裁判の詳しい状況については,全く説明をしていない。 (イ) 株主総会決議の遡及効について通常,株主総会決議は,決議がなされた時点から将来に向かって有効となるのが原則であるが,今回の決議事項については,招集通知の中に決議の遡及効を認めるような記載があったため,原告は,遡及効の法的根拠について質問をしたが,被告はその根拠について,全く説明を行っていない。 (ウ) 本件株主総会開催の費用について本件株主総会開催は,上記のとおり,被告の取締役らの違法行為を治癒する目的でなされたものであり,開催費用については,違法行為を行った取締役らが負担すべき可能性の高いものである。そこで,原告は,本件株主総会開催費用の明細について被告に対して質問をしたが,被告はその金額について全く説明を行っていない。 (エ) 第58期定時株主総会決議に基づいて支出した費用について第58期株主総会決議に基づいて支出した費用については被告取締役らの違法行為による損害になる可能性があることから,原告は,第58期定時株主総会決議に基づいて支出した費用の総額について被告に対して質問をしたが,被告はその金額について全く説明を行っていない。 イ株主権の行使について株主権の行使について,被告は「当社としては法律に従って,正当に処理していく」とのみ説明し,株主の謄写請求権について,手書きで書き写すことに限るという理由について イ株主権の行使について株主権の行使について,被告は「当社としては法律に従って,正当に処理していく」とのみ説明し,株主の謄写請求権について,手書きで書き写すことに限るという理由については何らの説明をしていない。 ウ第58期分決議事項について(ア) 「固定負債」について固定負債について,原告は,長期借入金のみの返済を行っている理由,57期と比較して,約5億5000万円も減額になっているがその理由及び支払原資についての質問をしているが,上記質問に対して被告は,「長期借入金は,社屋建築,機械購入のために借り入れて,契約により毎年返済しているものです。原資は営業利益等によるものです。」と説明するのみである。上記の説明ではどのような条件で返済を行っているのか全く不明であり,原告の質問に対する回答とは到底いえない。 (イ) 「配当金の算定根拠」について原告は,株主に還元される配当金の額が,当期未処分利益の額に関わらず,毎年同額(配当総額320万円,1株あたり4円)であることに疑問を持ったことから,その算定基準に対する質問をしたが,上記質問に対して,被告は全く明らかにしない。持ち株に対していくらの利益配当を得られるかということは,株主の最も重要な権利の1つであり,会社側の提案が適正であるかどうかを検証するためにもその算定根拠を明らかにすることは,取締役及び監査役に課せられた重要な説明義務の1つである。被告取締役及び監査役は,上記義務を完全に放棄し,必要性や同業他社を参照して取締役会で決定をしているなどと株主として上記利益配当でよいのかどうかの判断材料とはなり得ない説明しか行っていない。 (ウ) 「配当準備積立金の算定根拠」について原告は,配当金の算定根拠ともに配当準備積立金の算定根 主として上記利益配当でよいのかどうかの判断材料とはなり得ない説明しか行っていない。 (ウ) 「配当準備積立金の算定根拠」について原告は,配当金の算定根拠ともに配当準備積立金の算定根拠についても質問をしているが,被告は,上記質問に対しても説明をしていない。 (エ) 「別途積立金の算定根拠」について原告は,配当準備積立金の算定根拠とともに別途積立金についても質問をしているが,被告は,上記質問に対しても説明をしていない。 エ第59期分決議事項について(ア) 「機械装置の内容,取得時期及び取得価格」についてこれについては,被告は,「新聞製作に要する機械装置で主なものは,輪転機などの印刷発送システムや製作システムなどで,その内訳は多岐にわたっております。取得時期と価格の回答は困難でございます。」と説明するのみで,取得時期及び取得価格を一切明らかにしていない。 (イ) 「固定負債」について固定負債について,原告は,長期借入金のみの返済を行っている理由,58期と比較して,約4億2600万円も減額になっている理由及び支払原資についての質問をしているが,上記質問に対して被告は,「長期借入金は,社屋建築,機械購入のために借り入れて,契約により毎年返済しているものです。原資は営業利益等によるものです。」と説明するのみである。上記の説明ではどのような条件で返済を行っているのか全く不明であり,原告の質問に対する回答とはいえない。 (ウ) 「損益計算書中の受取配当金」について原告は,損益計算書中の受取配当金に関して,「営業外収益の受取配当金の額はいくらか,上記配当金の額は,投資有価証券に関する配当金と考えてよいか,その投資効率はどうなっているのか,特にテレビ宮崎からの配当金の具 益計算書中の受取配当金に関して,「営業外収益の受取配当金の額はいくらか,上記配当金の額は,投資有価証券に関する配当金と考えてよいか,その投資効率はどうなっているのか,特にテレビ宮崎からの配当金の具体額を明らかにされたい。」との質問としたが,上記質問に対して,被告は,「受取利息を含め,約1400万円で,大部分が配当金でございます。個々の配当額については説明を控えさせていただきます。」と説明するのみであった。上記説明では,原告が質問している投資効率については一切明らかにされていないし,個別の配当金について具体的な額を説明することができない理由が全くないにも関わらず,被告は上記質問に対する説明を不当に拒絶している。 (エ) 「配当金の算定根拠」について原告は,株主に還元される配当金の額が,当期未処分利益の額にかかわらず,毎年同額(配当総額320万円,1株あたり4円)であることに疑問を持ち,その算定基準に対する質問をしたが,上記質問に対して,被告は,「算定は当社の実情を勘案して,取締役会で決定をしております。」と説明するのみでその算定基準を全く明らかにしようとしない。 持ち株に対していくらの利益配当を得られるかということは,株主の最も重要な権利の1つであり,会社側の提案が適正であるかどうかを検証するためにも,その算定根拠を明らかにすることは取締役及び監査役に課せられた重要な説明義務の1つである。被告の取締役及び監査役は,判断材料とはなり得ない説明しか行っていない。 (オ) 「配当準備積立金の算定根拠」について原告は,配当金の算定根拠ともに配当準備積立金の算定根拠についても質問をしているが,被告は一切説明していない。 (カ) 「営業報告書の内容」について原告は,営業報告書の内容に関して, 原告は,配当金の算定根拠ともに配当準備積立金の算定根拠についても質問をしているが,被告は一切説明していない。 (カ) 「営業報告書の内容」について原告は,営業報告書の内容に関して,リストラの実施の有無及びその内容について質問をしているが,被告は,「年次ごとに定年退職者の補充については,人数は変動しておりません。」としか回答しておらず,これでは上記質問に対する回答とは到底いえない。 (キ) 「取締役及び監査役の報酬額」について原告は,取締役及び監査役の報酬額に関して,取締役に支払った報酬の個別額(各取締役に関するもの,役員賞与を含む)及び監査役に支払った報酬の個別額(各監査役に関するもの,役員賞与を含む)並びにその算定根拠,また,使用人兼取締役については使用人分の給与相当額を明らかにするように質問した。上記質問に対して,被告は,「総額については附属明細書にあり,個々人についてはお答えをいたしかねます。算定は取締役会及び監査役会で決定いたしました。」とのみ説明し,その算定根拠を全く明らかにしていない。 (ク) 「推薦取締役候補者及び推薦監査役候補者」について招集通知書においては,推薦取締役候補者及び推薦監査役候補者の略歴のみが記載され,推薦の理由の説明すらなされていない。 株式会社の取締役及び監査役を選任するのは,株主による自己の権利の実現において,非常に重要な権限である。株主としては,適切な人物に経営を委託するためには,当然,会社側が推薦する人物の推薦理由を聴いて判断の基準とするのであり,それが全くされていない状況においては,その人物が取締役等にふさわしい人物であるか否かを判断することはおよそ不可能である。特に,候補者にどれだけの遵法精神があるかを知ることは取締役等を選任する上で ,それが全くされていない状況においては,その人物が取締役等にふさわしい人物であるか否かを判断することはおよそ不可能である。特に,候補者にどれだけの遵法精神があるかを知ることは取締役等を選任する上で非常に重要な情報であるところ,本件株主総会開催時点では被告において役員の義務違反が問われている訴訟(第1訴訟及び第2訴訟)が提起されており,第1訴訟については第1審で株主総会決議を取り消す旨の判決がなされ,現在は控訴審に係属している状況であったことから,原告は,各候補者の遵法精神の有無を確認すべく,上記訴訟に関して各候補者がいかなる意見をもっているかただす質問をしたが,それに関する説明は一切なかった。 (被告の主張)ア株主総会における取締役・監査役の説明義務は,総会の席上で株主が質問して初めて生じるものであり,事前質問状が提出されただけでは説明義務は生じない。原告が本件株主総会の席上でした質問は,① 第1訴訟の第1審判決についての株主に対する説明不足の指摘,② 取締役報酬の個別額,③ 第1訴訟の1審判決に対する取締役候補者の意見の3点であってそれ以外の事項についての説明義務違反の主張は理由がない。 イ会社の負う説明義務は無限定なものではなく,議題の合理的判断のために必要な事項のみについて説明すればよく,その説明の範囲程度も,議案の賛否の合理的判断のために必要な限度で説明すれば足りる。そして必要な限度は,平均的株主の立場を基準に判断される。 上記①については,具体的な質問であるとしても,本件株主総会招集の趣旨は招集通知及び同添付の「株主の皆様へ」と題する書面,並びに冒頭の議長挨拶の中で説明されている。 同②については,株主総会の決議で各取締役の報酬額を個別に定める必要はないから,この点について説明義務はない。 「株主の皆様へ」と題する書面,並びに冒頭の議長挨拶の中で説明されている。 同②については,株主総会の決議で各取締役の報酬額を個別に定める必要はないから,この点について説明義務はない。 同③については,取締役候補者に説明義務はなく,取締役候補者に関する説明の程度は大会社の株主総会の招集通知に添付すべき参考書類等に関する規則3条1項3号に定める事項を説明すれば足りるというべきである。 ウ仮に,説明義務違反があったとしても,その程度は軽微であり決議に影響を及ぼさない。 (争点)ア事前質問状に記載がある事項について,現実に総会において質問をしていない場合に,取締役等の説明義務は発生するか。 イ原告のした各質問につき,取締役等のした説明は十分といえるか。 ウ裁量棄却の当否。 (6) 不当な議事進行について(原告の主張)ア原告は,本件株主総会において,役員選任に関し修正動議を提出したが,議長は,その提案理由の説明をさせず採決を行った。また,被告会社の社員株主らが,「議事進行」,「異議なし」などと大声を張り上げて不規則発言をし,原告の発言を阻止した。これらの議事進行は,決議の方法が法令違反若しくは著しく不公正な場合にあたるものである。 イ決議の方法が著しく不公正である場合には裁量棄却の規定の適用はない。 (被告の主張)ア原告の提出した役員選任に関する修正動議は,L社長及びK常務取締役(以下「K取締役」という。)の退任並びにその他の取締役を選任しないという内容であって,招集通知に記載された目的事項の範囲を超え,かつ取締役は3人以上とする旨の商法の規定に反した法律上許容される余地のない動議であるから,提案理由説明を打ち切った議長の進行に違法性はない。 本件株主総会について一方的な議事 の範囲を超え,かつ取締役は3人以上とする旨の商法の規定に反した法律上許容される余地のない動議であるから,提案理由説明を打ち切った議長の進行に違法性はない。 本件株主総会について一方的な議事進行が行われたことはなく,株主の質問権が奪われたこともないから,原告主張の違法はない。 イ仮に原告主張の違法等があるとしても,その瑕疵の程度は軽微である。 (争点)ア原告の提出した役員選任に関する修正動議について,議長が提案理由の説明を打ち切らせて採決を行ったことは違法か。また,被告の社員株主が原告の発言を妨害した違法があるか。 イ裁量棄却の当否。 第3 当裁判所の判断 1 計算書類等の謄本交付請求(商法282条2項)について(1) 証拠により認定できる事実証拠(甲3ないし10,甲28,乙1,以下いずれも枝番は省略する。)及び弁論の全趣旨によれば,次のとおりの事実が認められる。 ア被告は,原告を含めた被告の株主らに対し,11月30日,本件株主総会の招集通知を送付し,原告は12月2日これを受領した。 イ原告は,被告に対して12月6日,代理人名の内容証明郵便にて計算書類等及び株主名簿等の謄本交付請求を行い(本件第1請求),同内容証明郵便は同月8日(金曜日)に被告に到達した。被告は,12月11日(月曜日)に,原告に対し,「委任状送付のお願い」(甲5)を書留速達にて送り返し,さらに12月12日に,原告代理人A弁護士に対して電話により後日委任状を送付する旨の文言を入れた書面をファクシミリ送信してくれれば書類の交付をする旨の連絡をした。これを受けて,A弁護士は,同日夕刻その旨の書面を被告にファクシミリ送信し,被告は12月13日,A弁護士宛に対して計算書類等の謄本を速達郵便で送付し,12月14日にA弁護士の事務所へ到達し をした。これを受けて,A弁護士は,同日夕刻その旨の書面を被告にファクシミリ送信し,被告は12月13日,A弁護士宛に対して計算書類等の謄本を速達郵便で送付し,12月14日にA弁護士の事務所へ到達したが,そのときには既に原告本人は宮崎へ向かっていたためこれらの謄本を手にすることはできなかった。また,送付された書類の中には株主名簿等は含まれていなかった。 ウ原告は,上記事情により計算書類等及び株主名簿等の謄本を入手できなかったため,本件総会当日,被告本社において,計算書類等及び株主名簿等の閲覧謄写を求めた。被告担当者はこれに応じて直ちに計算書類等及び株主名簿等を閲覧に供し,原告は,約20分間にわたりこれらの書類を閲覧した。 その後,原告は,被告担当者に対して「コピーをいただきたい。」と述べたが(本件第2請求),被告担当者は,「コピーはできないことになっています。 カメラをお持ちであれば撮影は構いません。」などと述べ,写真撮影の方法による謄写は許可したが被告が謄写物を交付すること及び備え付けのコピー機の使用は拒否した。 エ A弁護士は,被告から送付された計算書類等の謄本を持って同日午前10時15分ころ東京(羽田空港)を出発し,12時30分ころに被告本社へ到着して原告と合流し,計算書類等の謄本を原告に手渡した。 (2) 以上の認定事実に基づき,被告が計算書類等の謄本交付請求を不当に拒絶した違法の有無について検討する。 アまず,原告のした本件第2請求が商法282条2項に基づく計算書類等の謄本交付請求に該当するか否かについて検討する。 前掲各証拠によれば,原告は本件第1請求を含め以前から計算書類等の謄本交付請求をしたことがあること,本件株主総会についてもA弁護士ら法律専門家の指導助言を受けながら行動していたことが認めら 前掲各証拠によれば,原告は本件第1請求を含め以前から計算書類等の謄本交付請求をしたことがあること,本件株主総会についてもA弁護士ら法律専門家の指導助言を受けながら行動していたことが認められ,これによれば,原告は謄本交付請求権を有することを熟知していたことは明らかである。そうであるのに,このような原告があえて謄本交付請求をしないのは不自然であり,本件第2請求は,謄本交付請求であると解すべきものである。 イそして,原告の謄本交付請求が権利の濫用であるとはいえない。 確かに,株主がもっぱら会社を困惑させるためなどの不当な動機により繰り返し計算書類等の謄本交付を請求することは権利の濫用に当たるという余地があり,このような場合は会社は計算書類等の謄本交付を拒絶しても違法とはいえない。しかし,原告が再度の謄本交付請求に及んだのは,上記(1)認定のとおり本件第1請求により計算書類等の謄本を入手できなかったためであるから,被告がことさら本件第1請求による計算書類等の送付を遅らしたというような事情は見当たらないことを考慮しても,なお再度の謄本交付請求が権利の濫用に当たるということはできず,被告が本件第2請求に応じて計算書類等の謄本を交付しなかったことは違法であるというべきである。 ウしかしながら,原告が計算書類等を閲覧したことは当事者間に争いがなく,前記認定のとおり,被告が送付した計算書類等の謄本は12月14日のうちにA弁護士に到達し,12月15日12時30分ころには原告に手渡され,原告は本件第2請求による計算書類等の謄本交付拒絶の約30分後には計算書類等の謄本を入手することができたと認められる。 このような事情のもとでは,被告が本件第2請求に対して計算書類等の謄本交付を拒否したことは違法であるとしても,これによって原 30分後には計算書類等の謄本を入手することができたと認められる。 このような事情のもとでは,被告が本件第2請求に対して計算書類等の謄本交付を拒否したことは違法であるとしても,これによって原告の受けた不利益は,謄本を入手するのが約30分遅れたというにとどまり,その間も原告は計算書類等の謄本を閲覧することは可能であったというのであるから,違法の程度は重大なものであるとはいえず,かつ上記違法が決議に影響を及ぼさなかったことは明らかであり,商法251条により本件各決議を取り消さないことにする。 (3) したがって,計算書類等の謄本交付請求(商法282条2項)に関する違法を理由とする本件各決議取消請求には理由がない。 2 株主名簿等の閲覧謄写請求(商法263条2項)について(1) 上記1(1)認定のとおり,被告は,原告に対し,株主名簿等の閲覧及び自らの手による謄写は認めたものの,謄写物を交付すること及び被告所有のコピー機を使用させることを拒絶した。 (2) 株主は,会社に対して,商法263条1項に掲げる書類の閲覧又は謄写を求めることができ(同条2項),ここにいう謄写とは,手書きによる筆写のみならず,写真撮影又はコピー機による複写を含むものであると解するのが相当である。 しかしながら,商法263条2項と同法282条2項との規定のしかたの差異を考慮すると,商法263条2項は株主の会社に対する謄本ないし謄写物交付請求権まで認めたものと解するのは相当でない。したがって,被告が原告の謄本ないし謄写物交付請求を拒否したことに違法性はない。 (3) 被告が被告所有のコピー機を使用させることを拒否したことについては,株主の実質的な閲覧謄写権の保障の見地からは問題がないとはいえない。しかし,株主が会社のコピー機を使用して書類の謄写をする場合には,書類の 被告所有のコピー機を使用させることを拒否したことについては,株主の実質的な閲覧謄写権の保障の見地からは問題がないとはいえない。しかし,株主が会社のコピー機を使用して書類の謄写をする場合には,書類の分量,備え付けのコピー機の台数や使用状況によっては,会社の業務に支障を来すおそれがあることを考慮すると,株主が会社に対してコピー機を使用させるように求める権利はあるとしても,会社はコピー機を使用させる具体的方法については裁量を有していると解するのが相当であるから,会社が直ちにコピー機を使用させなければ当然に違法であるということはできず,特に本件においては原告が謄写請求をしたのは総会開始の直前であるというのであるから,被告が原告に対して被告所有のコピー機を使用させることを拒否したことは裁量を逸脱したものであるとはいえず,違法とはいえない。 (4) したがって,株主名簿等の閲覧謄写請求(商法263条2項)に関する違法を理由とする本件各決議取消請求には理由がない。 3 弁護士による株主権代理行使について(1) 被告の定款は,議決権行使の代理人を株主に限る旨を定めている(当事者間に争いがない)が,被告のように株式譲渡制限の規定を有する会社において同規定は商法239条2項に違反するものではない。被告は,定款にしたがって,株主ではないA弁護士による株主権代理行使を拒否したものであるから,所論の違法はない。 (2) 原告は,弁護士は株主総会をかく乱するおそれがないから,上記のような定款の規定にもかかわらず,弁護士については株主権の代理行使を認めるべきであるという解釈論を前提に,被告の上記対応は違法である旨主張するので,この点について検討する。 確かに,弁護士は一般に社会的信用が高く法律知識が豊富であるから違法・不当な行為をしない蓋然性が高いもの いう解釈論を前提に,被告の上記対応は違法である旨主張するので,この点について検討する。 確かに,弁護士は一般に社会的信用が高く法律知識が豊富であるから違法・不当な行為をしない蓋然性が高いものであるし,A弁護士についても,その社会的信用の高さ等を考慮すれば,総会をかく乱するおそれは非常に小さいというべきである。しかしながら,原告主張のように,株式会社は総会をかく乱するおそれのない職種の者であれば非株主であっても入場を許さなければならないと解すると,株式会社は,総会に非株主代理人が来場した際には,その都度その者の職種を確認し,総会をかく乱するおそれの有無について個別具体的に検討しなければならないことになる。どのような職種の者であれば総会をかく乱するおそれがないといえるかは,明確な基準がなく,極めて難しい判断である。また,株主数が多い株式会社は,総会開会前の限られた時間に多数の来場者に応対しなければならないところ,受付において非株主代理人が総会をかく乱するおそれの有無について個別具体的に判断することは,受付事務を混乱させ,円滑な総会運営を阻害するおそれが高いというべきである。 しかも,原告主張のような実質的基準を持ち込むと,かえって,経営陣が自らを支持する株主の代理人については総会をかく乱するおそれがないとして入場を許し,そうでない代理人については入場を許さないなど恣意的差別的判断を行い株主の権利が害されるおそれもある。 このように,非株主代理人による権利行使の可否について実質的基準を持ち込むことは弊害が多いから,原告の主張するような解釈論は相当ではなく,原告の上記主張は前提を誤ったものであり採用することができない。なお,他の株主(C)については株主以外の代理人(妻であるD)を誤って入場させた事実が認められ(当事者間に争い な解釈論は相当ではなく,原告の上記主張は前提を誤ったものであり採用することができない。なお,他の株主(C)については株主以外の代理人(妻であるD)を誤って入場させた事実が認められ(当事者間に争いがない),このことは違法であるという余地があるが,Dが入場したのは株主総会開始後しばらくしてからであり総会冒頭で出席株式数が確定発表されていることからCの持株は出席株式数に入っていないものと考えられること,Dは発言をしていないことなどを考慮すると,Dの入場が決議に影響を与えたとは考えられないから,上記結論を左右するに至らない。 (3) したがって,弁護士による株主権代理行使が拒否された違法を原因とする本件各決議取消請求には理由がない。 4 株主による株主権代理行使について(1) 証拠により認定できる事実証拠(甲17ないし20,甲22,甲27,甲28,甲36,乙3,乙27)及び弁論の全趣旨によれば,次のとおりの事実が認められる。 ア原告は,12月15日午後1時10分ころ,A弁護士を伴い被告本社10階の株主総会会場受付に行き,自己の出席票を提出して受付を済ますと同時に,Eら作成名義の委任状を提出し受け付けるように求めた。これらの委任状は,予め被告が株主らに送付した定型委任状ではない私製委任状であった。 イ被告の受付担当者は,私製委任状を有効と扱っていいかどうか判断しかねて受付済の出席票や委任状等を入れる箱に入れないでいたところ,被告役員室次長のJ(以下「J次長」という。)が来たため,原告はJ次長に対してEら作成名義の委任状を受け付けるように重ねて要求した。J次長は,既に総会会場内に入っていたK取締役に対して,「原告が委任状を持ってきていますがどうしますか。」という趣旨の記載をしたメモを差し入れてその判断を仰ごうとしたが,K取締役 うに重ねて要求した。J次長は,既に総会会場内に入っていたK取締役に対して,「原告が委任状を持ってきていますがどうしますか。」という趣旨の記載をしたメモを差し入れてその判断を仰ごうとしたが,K取締役は,A弁護士に対する委任状であると思い,拒否してよい旨の指示をした。そのため,J次長は,原告に対して,Eら作成名義の委任状の受け取りを拒否する旨を告げ,これらの委任状の余白に「拒絶します J」と書き込んだ上で原告に返還した。 この間,J次長を含む被告の受付担当者は,Eら作成名義の委任状について,届出印との印影照合など真正なものであるか否かの確認作業はしなかった。 ウ Eら作成名義の委任状は,真正に成立したものであったが(Eは本件総会当時既に死亡していたが,名義書換未了の間にその相続人であるE十一が被相続人名義で作成したものであるから,有効なものというべきである。大審院第3民事部昭和6年7月4日判決参照),押捺された印影は届出印鑑のそれとは異なるものであった。また,Eらは,既に被告に対して予め被告が株主らに送付した定型委任状を送付していた。 (2) 以上の認定事実に基づき,被告がEら作成名義の委任状の受け取りを拒絶したことの違法性の有無及び裁量棄却の当否について検討する。 ア一般に,株主総会では予め会社が送付した定型委任状が用いられることが多いが,定型委任状以外の私製委任状を用いてはならないという定めは法令にも定款にもないのであるから,株式会社は,持参された委任状が本人が作成した真正なものである限り,有効なものとして取り扱わなければならない。したがって,株式会社は,私製委任状が提出されたときは,提出者に対して印鑑証明書の提出を求めたり,届出印との印影照合をするなど作成名義が真正であることの確認のための手段を尽くし,それでも確認が い。したがって,株式会社は,私製委任状が提出されたときは,提出者に対して印鑑証明書の提出を求めたり,届出印との印影照合をするなど作成名義が真正であることの確認のための手段を尽くし,それでも確認ができない場合にはじめて代理人の入場を拒否することができるというべきであって,単に私製委任状であるというだけの理由で受け取りを拒否することはできないと解すべきである。したがって,印影照合等の確認手段を全く執らないままEら作成名義の委任状の受け取りを拒否した被告の対応は,同人らの株主権を侵害する違法なものであることが明らかである。 イしかしながら,Eら作成名義の委任状は,定型委任状ではないだけでなく,押捺された印影も届出印鑑によるそれとは異なるものであることに照らせば,仮に被告の受付担当者が印鑑証明書の提出を求めたり印影照合をするなどしても,その場で本人が作成したものであるか確認することができず,結局のところEらの委任状の受け取りは拒絶された蓋然性が高いものと考えられる。これに加えて,Eらの持株数は合計2020株(発行済株式総数80万株の約0.25パーセント)であること,原告は自らの株主という立場に基づいて本件総会会場に入場し発言をすることができたことを考慮すると,上記違法は重大でなく決議に影響を及ぼさなかったことは明らかであるから,商法251条に基づき裁量により本件各決議を取り消さないことにする。 (3) そうすると,株主による株主権代理行使が拒否された違法を理由とする本件各決議取消請求には理由がない。 5 説明義務違反について(1) まず,取締役等の説明義務の発生する範囲について判断する。 商法237条の3に規定する取締役等の説明義務が総会において説明を求められて初めて生じるものであることは同条第1項の文言上明らかであり, まず,取締役等の説明義務の発生する範囲について判断する。 商法237条の3に規定する取締役等の説明義務が総会において説明を求められて初めて生じるものであることは同条第1項の文言上明らかであり,株主が予め会社に対して質問状を提出しても,それは総会における質問の予告にすぎず要調査事項であることをもって取締役等が説明を拒むことができないという効果を有するに止まるのであって,株主が総会で実際に質問をしない限り取締役等に説明義務は生じないと解するのが相当である。 証拠(甲22)によれば,原告が本件株主総会において実際に質問をしたのは,上記争点(3)に関する原告の主張摘示の事実のうち,ア(ア)(本件前訴事件判決),エ(キ)(個別的な取締役報酬額)並びにウ(イ)及びエ(エ)(配当金の算定根拠)であると認められる(要旨は下記対照表の株主質問欄記載のとおりである。)。 そうすると,原告主張に係る説明義務違反の各点のうち,上記以外のものについては説明義務が発生していないというほかなく,これらに関する説明義務違反の主張は理由がない。 (2) 次いで,原告のした質問に対する取締役等の説明が十分なものであったかについて個別に判断する。 ア総会における原告に対する取締役等の説明は,要旨下記対照表の取締役等説明欄記載のとおりと認められる(甲22)。 記┌────────────────┬─────────────────┐│ 株主質問(要旨) │ 取締役等説明(要旨) │├────────────────┼─────────────────┤│ 次期輪転機システム構築の費用及│ 現在,新聞製作調査研究委員会を作り,││び進捗状況を明らかにされたい。 │来年度は新聞製作セ ────────────┼─────────────────┤│ 次期輪転機システム構築の費用及│ 現在,新聞製作調査研究委員会を作り,││び進捗状況を明らかにされたい。 │来年度は新聞製作センターをサテライト││ 多額の剰余金を株主へ配当せず同│で建築しようという話がまとまったとこ││システム構築に充てる必要性を明ら│ろである。経費については約60億円程││かにされたい。 │度である。 ││原告主張(3)ウ(イ)及びエ(エ)に対応│ 剰余金を配当しないのは健全な経営体││ │質とするためである。 │├────────────────┼─────────────────┤│ 個別的な取締役報酬を開示された│ 取締役の数と総額1200万円である││い。 │ということから推測して欲しい。個別的││同(3)エ(キ)に対応 │な額についてはプライバシーの見地から││ │回答できない。 │├────────────────┼─────────────────┤│ 本件前訴事件の第1審において被│(特に回答せず) ││告敗訴の判決が出たことを各役員ら│ ││はどのように考えるか。 │ ││同(3)ア(ア)に対応 ││はどのように考えるか。 │ ││同(3)ア(ア)に対応 │ │└────────────────┴─────────────────┘イこのうち,次期輪転機システム構築の費用及び進捗状況については,明確な回答がされており,説明義務違反がないことは明らかである。剰余金を同システム構築に充てる必要性については,取締役の説明は抽象的であるが,証拠(甲22の2・24頁から25頁)によれば,取締役は,新聞社は設備投資額が大きく言論の独立性を守る必要があることからできるだけ借入れを減らし剰余金により設備投資をしなければならず,他の新聞社でも配当額は少ないという趣旨の他株主の発言を受けて前記のような説明をしたものであることが認められるから,その当否はさておき,説明としては十分なものであるといえる。 ウ取締役報酬については,被告の取締役らは報酬総額を回答するに止まり,原告の求めた個別的報酬額については回答をしていないが,株主総会の決議では取締役の報酬総額を定めれば足り各取締役の報酬額を個別に定めることまでは必要でなく(最高裁判所第3小法廷昭和60年3月26日判決・裁判集民事144号247頁参照),本件総会においても各取締役の個別報酬額は決議事項になっていないことを考慮すると,取締役の人数及び報酬総額が明らかになっていれば,各取締役の個別の報酬額を開示しなかったからといって,株主が議決権を行使するためにさし当たって必要な情報は提供されているというべきであり,被告の取締役がそれ以上の説明をしなかったことをもって違 ば,各取締役の個別の報酬額を開示しなかったからといって,株主が議決権を行使するためにさし当たって必要な情報は提供されているというべきであり,被告の取締役がそれ以上の説明をしなかったことをもって違法ということはできない。 エ本件前訴事件判決に関する質問に対しては,被告の取締役らは特に回答をしていないが,取締役の説明義務は機関としての取締役が負うものであって各取締役ないしは候補者が個人として私的見解を述べるものではないから,各取締役の個別的意見を求める質問に対しては説明義務はない。 (3) そうすると,結局のところ,取締役等が説明義務に違反した違法はないというべきであるから,商法237条の3違反を理由とする本件各決議取消請求には理由がない。 6 不当な議事進行について(1) 原告の提出した修正動議のうち,別途積立金を取り崩して配当金を増やすべきであるという動議(甲22の2・23頁及び同50頁)については,議事妨害がされたと認めるに足りる証拠がない。 (2) L代表取締役及びK取締役の退任並びにその他の取締役候補者6名の選任を行わないことを求める動議(同51頁)については,証拠(甲22の2・51ないし55頁)によれば,株主席から原告の動議提案理由説明に対してこれを妨害するような野次が飛び,議長が原告の動議提案理由説明を途中で遮って採決を行ったことが各認められる。 しかしながら,証拠(甲3,乙4)及び弁論の全趣旨によれば,被告の従前の取締役は全員が任期満了を迎えることになることが認められるので,原告の上記修正動議は,取締役の人数は3人以上であることを要するという商法255条の規定に反し許容する余地のない修正動議であるといわざるを得ない。したがって,原告の上記修正動議について議長がこれを遮り採決を行ったことに違法はない。 (3 以上であることを要するという商法255条の規定に反し許容する余地のない修正動議であるといわざるを得ない。したがって,原告の上記修正動議について議長がこれを遮り採決を行ったことに違法はない。 (3) そうすると,不当な議事進行が行われたことを理由とする本件各決議取消請求にも理由がない。 第4 結論以上のとおり,原告の請求には理由がないからこれを棄却することにし,よって主文のとおり判決する。なお,文書提出命令申立て(平成13年(モ)第287号)は,必要性がないのでこれを却下する。 宮崎地方裁判所民事第2部裁判官中村心・書類目録株式会社宮崎日日新聞社に関する以下の書類 1 株主名簿 2 第58期及び第59期分の株主総会議事録 3 第58期分及び第59期分の(1) 貸借対照表(2) 損益計算書(3) 営業報告書(4) 利益処分案(5) 監査報告書 4 第54期から第59期の貸借対照表,損益計算書,営業報告書及び利益処分案に関する附属明細書以上

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