【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 被告人を懲役一年六月に処する。 原審における未決勾留日数中二七〇日を右刑に算入する。 理 由 本件控訴の趣意は
主文 原判決を破棄する。 被告人を懲役一年六月に処する。 原審における未決勾留日数中二七〇日を右刑に算入する。 理由 本件控訴の趣意は、弁護人長谷川英二及び被告人提出の各控訴趣意書に記載されたとおりであるから、これらを引用する。 各論旨について判断するに先立つて、職権によつて調査すると、原判決には、左記のとおり、審判の請求を受けない事件について判決をした違法があり、原判決は破棄を免れない。 <要旨>本件起訴状に記載された公訴事実は、「被告人は、法定の除外事由がないのに、昭和五七年一月三〇日ころ</要旨>から同年二月二日ころまでの間、札幌市内において、覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパンを含有する水溶液若干量を自己の腕部に注射し、もつて覚せい剤を使用したものである。」というのであるが、これに対し、原判決は、「罪となるべき事実」として、「被告人は、法定の除外事由がないのに、昭和五七年一月三〇日ころから同年二月二日ころまでの間、札幌市内において、覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパンを含有するもの若干量を自己の身体に注射又は服用し、もつて覚せい剤を使用したものである。」旨認定し、このような選択的(択一的)認定をした理由を「補足説明二」において詳細に判示している。これによると、原判決は、要するに、(一)本件公訴事実は、右起訴状の記載にかかわらず、昭和五七年一月三〇日ころから同年二月二日ころまでの間における被告人の注射又は嚥下(服用)の方法による、最後の覚せい剤使用の事実であると解すべきであるとしたうえ、(二)証拠によれば、右期間内における被告人の注射による覚せい剤使用の事実の存在を疑うことができるがこれを断定することができないとするとともに、被告人が逮捕以来公判終結にい 解すべきであるとしたうえ、(二)証拠によれば、右期間内における被告人の注射による覚せい剤使用の事実の存在を疑うことができるがこれを断定することができないとするとともに、被告人が逮捕以来公判終結にいたるまで一貫して「警察官が周辺で見張つているものと感じてビニール袋入りのまま覚せい剤を嚥下した」旨供述していること等に照らすと、被告人は右期間内に注射による使用をしていなければ嚥下による覚せい剤の使用の事実を認めることができ、しかも、「注射、嚥下による使用は互いに他を排斥する関係にあるとはいえない」もので、右期間内に両者が並存した可能性もあるがその先後関係は不明であり、(三)このような事実関係の下では、「罪となるべき事実」として前記のとおりの選択的認定をすべきである、と判断したものと解される。 しかしながら、本件起訴状の「公訴事実」において覚せい剤使用の方法を注射によると明示されていること、被告人の前掲嚥下による覚せい剤使用の弁解について、検察官は、原審公判を通じ終始、右弁解は虚偽であり注射による使用の事実は明白である旨主張立証し、論告求刑もこれを前提としていることに徴すると、検察官が本件公訴提起の対象としている事実は、被告人が弁解しているような嚥下による覚せい剤使用の事実ではなく、注射による使用の事実であり、「公訴事実」記載の期間内において注射使用の事実が数個ある場合にはその最後の事実を訴追しているものと解するのほかはない。ことに、被告人の弁解する嚥下による覚せい剤使用の態様、状況は特異なものであり、これと検察官の主張する注射による覚せい剤使用とはその基本的事実関係を異にし、それぞれ別個の公訴事実に属することはいうまでもないが、検察官がこのような別個の公訴事実を選択的に公訴提起の対象としているとは考えられない。 要するに、本件公訴事実は はその基本的事実関係を異にし、それぞれ別個の公訴事実に属することはいうまでもないが、検察官がこのような別個の公訴事実を選択的に公訴提起の対象としているとは考えられない。 要するに、本件公訴事実は、前記の期間内における最後の注射による覚せい剤使用の事実であり、訴因として表示されているところも右に尽きるものである。したがつて、原審としては、右期間内における注射使用の事実を認めることができるかどうかについて審理し、これを認めることができなければ無罪を言い渡し、一回又は二回以上の注射使用の事実を認めることができるならば、その一個又は最後の注射使用の事実について有罪を言い渡すべきものであり、注射使用の事実を認めることができない場合これに代えて別個の公訴事実である被告人の前掲弁解に現われでいる嚥下による使用の事実を認定することは許されないというべきである。原判決は、結局、本件公訴事実だけでなく、公訴事実以外の事実をも審判の対象とし、本件公訴事実が認められないならば他の事実について有罪を言い渡すべきものとしたことに帰するものであり、刑事訴訟法三七八条三号後段にいう「審判の請求を受けない事件について判決をした」場合に該当し、原判決は破棄を免れない。 なお、原審記録の各証拠を精査し当審における事実取調べの結果を合わせて検討すると、原判決の「補足説明一」に記載された諸事実を優に認めることができ、したがつて、本件における尿の採取などの捜査手続にはなんらの違法もなく、右採尿に関連して作成された各証拠の証拠能力もこれを肯認することができ、かつ、被告人のこれまでの覚せい剤使用の態様は、前科関係からも明らかなとおり、いずれも注射によるものであり、本件においても警察官が被告人の居室を捜索した際、被告人の両腕に注射痕が認められ、右肘の内側には、一両日内のものと思われ い剤使用の態様は、前科関係からも明らかなとおり、いずれも注射によるものであり、本件においても警察官が被告人の居室を捜索した際、被告人の両腕に注射痕が認められ、右肘の内側には、一両日内のものと思われる注射痕が二個存したこと、中央警察署において採取した被告人の尿中から覚せい剤が検出されたこと、本件において採用された鑑定方法によると、尿採取の三、四日前までに身体に施用された覚せい剤が検出されることが認められるので、公訴事実記載の日時、場所における注射による覚せい剤使用の事実を認定することができる。 よつて、刑事訴訟法三九七条一項、三七八条三号後段により、原判決を破棄したうえ、同法四〇〇条但書を適用して、更に次のとおり判決する。 (当裁判所の認定した罪となるべき事実)被告人は、法定の除外事由がないのに、昭和五七年一月三〇日ころから同年二月二日ころまでの間、札幌市内において、覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパンを含有する水溶液若干量を自己の右腕部に注射し、もつて覚せい剤を使用したものである。 (証拠の標目)(省略)(累犯前科)原判決の「累犯前科」の項の記載と同一であるから、これを引用する。 (法令の適用)被告人の判示所為は覚せい剤取締法四一条の二第一項三号、一九条に該当するところ、前記各累犯前科があるので、刑法五九条、五六条一項、五七条により累犯の加重をし、その所定刑期の範囲内において量刑すべきところ、被告人はこれまで傷害、恐喝未遂等の前科八犯を有し、そのうち本件と同種の覚せい剤取締法違反事件で既に二回服役し、出所後も怠堕な生活を送り、約七ケ月後に再び本件を犯すに至つたもので、犯行に至る経緯、犯行の動機等に酌むべき事由に乏しく、覚せい剤との親和性は強いものがあると認められること等を考慮し、被告人を懲役一年六月に処し、原審 送り、約七ケ月後に再び本件を犯すに至つたもので、犯行に至る経緯、犯行の動機等に酌むべき事由に乏しく、覚せい剤との親和性は強いものがあると認められること等を考慮し、被告人を懲役一年六月に処し、原審における未決勾留日数の算入につき同法二一条を、原審及び当審における訴訟費用を負担させないことにつき刑事訴訟法一八一条一項但書を各適用して、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官渡部保夫裁判官横田安弘裁判官平良木登規男)
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