主文 1 第1審被告の控訴に基づき,原判決中第1審被告敗訴部分を取り消す。 2 前項取消しに係る第1審原告の請求を棄却する。 3 第1審原告の控訴を棄却する。 4 訴訟費用は,第1,2審とも,第1審原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 第1審原告の控訴につき(1) 第1審原告ア原判決を次のとおり変更する。 イ第1審被告は,金沢市に対し,3580万9387円及びこれに対する平成13年4月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ウ訴訟費用は,第1,2審とも,第1審被告の負担とする。 (2) 第1審被告ア本件控訴を棄却する。 ただし,原判決中,第1審原告の訴えのうち平成11年度分剰余金の繰越金80万9387円に係る損害賠償請求に関する部分を取り消し,同損害賠償請求に関する訴えを却下する。 イ控訴費用は第1審原告の負担とする。 2 第1審被告の控訴につき(1) 第1審被告ア原判決中第1審被告敗訴部分を取り消す。 イ第1審原告の訴えのうち,平成11年度分剰余金の繰越金80万9387円に係る損害賠償請求に関する部分を却下する。 ウ上記アの取消しに係る第1審原告の請求を棄却する。 エ訴訟費用は,第1,2審とも,第1審原告の負担とする。 (2) 第1審原告ア本件控訴を棄却する。 イ控訴費用は第1審被告の負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,金沢市の住民である別紙選定者目録記載の選定者ら(以下「本件選定者ら」という。)の選定当事者である第1審原告が,金沢市において,同市から金沢市議会の会派に交付された金沢市議会市政調査研究費(以下「本件研究費」という。)の平成12年度分について,前年度よりも議員一人当たり月額7万円を増額した金額を交付した行為及び平成11年度分の剰余金を繰越 会の会派に交付された金沢市議会市政調査研究費(以下「本件研究費」という。)の平成12年度分について,前年度よりも議員一人当たり月額7万円を増額した金額を交付した行為及び平成11年度分の剰余金を繰越し使用させ,その返還請求を怠った行為がいずれも違法であり,これによって金沢市が上記増額交付分3500万円及び剰余金80万9387円の合計3580万9387円の損害を被ったとして,平成14年法律第64号による改正前の地方自治法(以下「法」という。原判決中に「地方自治法」又は「法」とあるのも,同様である。)242条の2第1項4号に基づき,金沢市に代位して,金沢市長である第1審被告に対し,上記損害金及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた住民訴訟である。 原審は,平成12年度の本件研究費の支出については違法はないが,第1審被告が平成11年度の本件研究費に生じた剰余金の繰越し使用を認めてその返還請求を怠った行為は違法であり,これにより金沢市に54万0344円の損害を与えたと判断し,第1審原告の請求のうち上記剰余金に係る請求の一部(54万0344円及びこれに対する平成13年4月15日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払請求部分)を認容し,その余を棄却したところ,当事者双方がそれぞれ自己の敗訴部分を不服として控訴を提起した。 2 前提事実次のとおり補正するほかは,原判決の事実及び理由の第2,1に記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)(1) 原判決2頁13行目と14行目の間に次のとおり加える。 「 なお,金沢市では,平成12年法律第89号による改正後の地方自治法100条12項及び13項に基づき,金沢市議会政務調査費の交付に関する条例(平成13年条例第2号)を制定し 間に次のとおり加える。 「 なお,金沢市では,平成12年法律第89号による改正後の地方自治法100条12項及び13項に基づき,金沢市議会政務調査費の交付に関する条例(平成13年条例第2号)を制定し,同条例は同年4月1日から施行されたため,それに伴って,本件要綱は廃止され,平成13年4月以降は,同条例により,市議会議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として,市議会の会派に対し,政務調査費が交付されることとなった。(乙65,66,弁論の全趣旨)」(2) 原判決4頁7行目と8行目の間に次のとおり加える。 「 平成11年度の本件研究費については,第1審被告から支出負担行為(本件研究費の交付金額の決定)の専決の権限を与えられた総務部長が,各会派に対する交付額を申請額どおり決定し,第1審被告から支出命令の専決の権限を与えられた議会事務局総務課長がその支出命令をした。(乙47ないし51,76ないし78)」(3) 原判決4頁19行目の「一般会計の歳出予算議案」を「第1号議案中の一般会計の歳出予算議案等」と改める。 (4) 原判決4頁25行目の「議会事務局総務部長」を「総務部長」と改め,同5頁1行目末尾に「(専決関係につき乙76,77)」を加え,同4行目の「乙4」を「乙76,78」と改める。 (5) 原判決5頁5行目及び6行目を次のとおり改める。 「 なお,平成12年度中に市議会の会派であるひびきが解散したため,本件要綱11条2項に基づく剰余金として5万3693円が金沢市に返還された。(甲9,乙38,39)」(6) 原判決5頁8,9行目の「新世紀フォーラム議員会」を「自由・フォーラム議員会」と改める。 (7) 原判決5頁14行目及び15行目を次のとおり改める。 「 第1審被告は,平成11年度の本件研究費の交付を受けた会派が本件要綱10条2項に基づい 議員会」を「自由・フォーラム議員会」と改める。 (7) 原判決5頁14行目及び15行目を次のとおり改める。 「 第1審被告は,平成11年度の本件研究費の交付を受けた会派が本件要綱10条2項に基づいて翌年度に繰り越した本件剰余金について,その返還を求めなかった。」(8) 原判決5頁21行目末尾に「本件選定者らは,平成13年4月3日,金沢地方裁判所に本件訴訟を提起した(記録上明白な事実)。」を加える。 3 当事者の主張次のとおり補正し,付加するほかは,原判決の事実及び理由の第2,2に記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)(1) 原判決9頁8行目の「議会事務局総務部長」を「総務部長」と改める。 (2) 原判決9頁22行目の「議会事務局職員」を「総務部長」と改める。 (当審における主張)(1) 第1審原告の主張ア本件増額(平成12年度に本件研究費を議員一人当たり月額7万円増額したこと)には公益上の必要がないこと原判決は,本件増額について,議員の減少により減った予算額と本件増額分とが見合っていること,増額後の本件研究費が全国の都道府県の議員会派に交付されている政務調査費の最低額を超えていないこと及び金沢市が起債比率等において健全財政を維持していることを理由として,本件増額を決定した第1審被告に裁量の逸脱や濫用がないというが,上記のような事項は本件研究費について議員一人当たり7万円も増額することを正当とする根拠とはならないから,原判決には理由不備の違法がある。 本件増額を正当とするためには,過去の本件研究費の使途や使用状況を調査し,議員からの要望を調査し,かつ,他の自治体の支給状況を調査し,市民にも意見を求め,しかも,金沢市の財政状況を十分に検討した上で,算出根拠を示してされるべきである。ところが,第1審被告は,上記 査し,議員からの要望を調査し,かつ,他の自治体の支給状況を調査し,市民にも意見を求め,しかも,金沢市の財政状況を十分に検討した上で,算出根拠を示してされるべきである。ところが,第1審被告は,上記のような手続を経ないで本件増額を決め,総務部長に専決させたのであるから,第1審被告には,本件増額に関して,その職務を怠り,その裁量権限を逸脱又は濫用した違法がある。 イ本件剰余金による損害額仮に平成11年度の本件研究費に係る本件剰余金が返還されずに繰り越されて費消されても,費消された額から返還された剰余金を控除した残額のみが金沢市の被った損害となるとの原判決の立場を前提としても,原判決には,会派から返還された剰余金の額を誤認することによって,金沢市に生じた損害額の認定を誤った違法がある。すなわち,平成11年度の本件研究費に係る市議会各会派の剰余金の額は,自民・フォーラム議員会が10万8132円,社会民主党金沢市議員団が2万6840円,日本共産党金沢市議員団が52万1098円,ひびきが15万3317円で,その合計は80万9387円となるところ,そのうち返還された金額は日本共産党金沢市議員団からの11万5726円,ひびきからの5万3693円にすぎないから,未填補損害額は63万円9968円となる。したがって,この金額が本件剰余金が翌年度に繰り越されて費消されたことによって金沢市が被った損害額である。 ウ第1審被告の主張に対する反論後記(2)の主張はいずれも争う。 第1審原告の本件剰余金80万9387円に係る損害賠償請求については適法な監査請求を経ている。すなわち,本件剰余金の発生は,平成11年度の年度末である平成12年4月1日から同月30日までに本件要綱10条所定の事業実績報告書が会派から第1審被告に提出されて初めて判明することであるから ている。すなわち,本件剰余金の発生は,平成11年度の年度末である平成12年4月1日から同月30日までに本件要綱10条所定の事業実績報告書が会派から第1審被告に提出されて初めて判明することであるから,第1審被告が本件剰余金返還請求権を行使できるのもその後でしかなく,したがって,法242条2項本文所定の1年の起算日は同年5月1日であるから,同日から1年内にした本件選定者らがした監査請求は適法なものであり,上記請求に係る訴えも適法である。 (2) 第1審被告の主張ア第1審原告の訴えの一部が適法な監査を経ない不適法な訴えであること第1審原告の訴えのうち本件剰余金80万9387円に係る損害賠償請求部分は,次の理由により,監査請求期間を徒過した不適法な訴えであるから,却下されるべきである。 (ア) 平成11年度の本件研究費は,平成11年5月に支出負担行為としての交付決定がされ,同月から平成12年1月にかけて,市議会の各会派に対し,4回に分割して前金払として支出され,最終の支出日は同月6日であった。 (イ) 本件選定者らが平成11年度の本件研究費の剰余金の繰越しについての監査請求をしたのは,上記平成12年1月6日から1年経過後の平成13年1月15日であった。 (ウ) ところで,怠る事実の前提として違法な財務会計上の行為が存在する場合には,怠る事実についても,法242条2項の期間制限の適用があり,同期間は怠る事実に係る請求権の発生原因たる当該行為のあった日又は終わった日から起算される(最高裁判所昭和62年2月20日判決参照)から,上記(イ)の監査請求は請求期間を徒過した不適法なものであった。 (エ) よって,第1審原告の訴えのうち本件剰余金80万9387円に係る損害賠償請求部分は,適法な監査を経ていない不適法な訴えであり,却下されるべきである。 求期間を徒過した不適法なものであった。 (エ) よって,第1審原告の訴えのうち本件剰余金80万9387円に係る損害賠償請求部分は,適法な監査を経ていない不適法な訴えであり,却下されるべきである。 イ本件研究費は前金払で支出され,そのことに違法はないこと本件研究費は,その交付決定通知書に明記されているとおり,前金払として市議会各派に対して支出されたのであり,これを概算払として支出されたとする原判決の認定は誤りである。 そして,普通地方公共団体の支出は,原則として,債務である金額が定まり,支払の期限が到来し,支払の相手方が債権者である場合にこれを行うことができるが,このような通常の支出方法に対して,特例として,資金前渡,概算払,前金払,繰替払,隔地払又は口座振替払の方法による支出が認められている(法232条の5第1項,第2項)。そして,前金払とは,債権者,債権金額とも確定しているものについて,支払うべき事実の確定又は期限の到来以前において,債務金額の全部又は一部を支払うことであり,法232条の5,地方自治法施行令163条により,補助金及び交付金は前金払できる経費とされている(同施行令163条2号)。 本件研究費については,債権者が市議会の各会派であることが確定していること,債権金額は,議員一人当たり月額18万円(平成11年度)あるいは25万円(平成12年度)という定額に各会派所属議員数を乗ずることで算出されるため,客観的に定まっていること,交付金であって,前金払できる性質の経費であることにより,これを前金払の方法で支出することは適法であり,実際にも,上記のとおり前金払で支出された。 ウ第1審被告が本件剰余金について返還を求めないことが違法でないこと等(ア) 本件研究費は前金払で支出されたが,前金払は,上記イのとおり,確定した債務 実際にも,上記のとおり前金払で支出された。 ウ第1審被告が本件剰余金について返還を求めないことが違法でないこと等(ア) 本件研究費は前金払で支出されたが,前金払は,上記イのとおり,確定した債務金額を支払うものであるから,金額の積算基礎に変動がある場合(積算の基礎となった単価や員数,事業量等に明らかな変動があった場合)以外には,精算を要しない。もっとも,「前金払に相当する部分まで翌年度に繰越しとなる場合も,当該年度において別段の精算をしないで,そのまま当該年度としての決算をするのかどうかの点については,従来から議論があり,説が分かれている。」とされているが,全然未履行の場合を除いては,前金払をした以上は,たとえ前金払に相当する部分が未履行となっても前金払としての精算は必要とせず,当該年度の支出として決算できるとしている(宮元義雄著「新版地方財務事務-理論と実際-」)。本件要綱10条2項は,このような考え方に従って,会派の代表者は,剰余金を翌年度に繰り越して使用することができる旨定めているのであり,前金払された交付金についてこのような処理をすることを許すことが違法であるとする根拠はない。なお,平成11年度の本件研究費に生じた本件剰余金は,前金払で支出された本件研究費のごく一部であって,前金払が,その支出された年度において全然使用目的に従って使用されなかった場合ではない。そして,本件要綱は,その11条及び12条において,剰余金の返還及び違法に使用された研究費の返還請求規定をおいて,違法状態を是正する方途も講じているから,剰余金の繰越しを認める本件要綱10条2項を違法とする理由はない。 本件要綱に繰越規定が設けられたことについては,その必要性があり,合理的なものである。すなわち,本件要綱による各会派は,各選挙により選出された議員により会 要綱10条2項を違法とする理由はない。 本件要綱に繰越規定が設けられたことについては,その必要性があり,合理的なものである。すなわち,本件要綱による各会派は,各選挙により選出された議員により会派届出が出され,遅くとも任期満了に伴い会派が消滅するまでの最長でも4年間存続し,本件研究費は,その間に所属する議員が調査研究するための経費に充てるために交付されるのである。平成11年度の本件研究費についても,上記趣旨で議員一人当たり月額18万円が各会派に交付されたのであり,その効果は,単年度ではなく,議員の任期を通じた期間全体で判断されるべきである。また,例年3月に開催される当初議会が会期延長等がされた場合には,議員の調査研究活動が会計年度を通じて継続されることもあるから,本件研究費を会計年度毎に精算することが困難なことがあり,繰越し使用を認めることが合理的である。 (イ) また,本件研究費に剰余金が生じた場合にその剰余金を翌年度に繰り越すのは,金沢市ではなく,本件研究費の交付を受けた各会派であるから,予算の繰越し使用を禁止した法220条3項にも抵触しない。 (ウ) そして,市長は,本件研究費について,本件要綱11条2項又は12条に基づき,各会派に対し,その返還を請求できるのであるが,市議会の各会派は,平成11年度に交付を受けた本件研究費について剰余を生じた本件剰余金をいずれも翌平成12年度の研究費として使用してしまっていることが明らかであるから,市長には,本件剰余金について,本件要綱11条2項又は12条に基づいてその返還を求めることはできないのであり,したがって,その返還を求めないことで金沢市に損害が生ずる関係にもない。 エ第1審被告に過失がないこと仮に本件研究費に関して前金払支出したこと,あるいは本件剰余金の繰越しを認めてその返還を求め したがって,その返還を求めないことで金沢市に損害が生ずる関係にもない。 エ第1審被告に過失がないこと仮に本件研究費に関して前金払支出したこと,あるいは本件剰余金の繰越しを認めてその返還を求めないことに違法があるとしても,次の理由により,第1審被告には過失がないから,損害賠償義務はない。 (ア) 本件要綱は,昭和52年当時の金沢市長Aの決裁により制定され,以後,金沢市では,本件要綱に基づき,本件研究費が前金払により市議会の各会派に交付されてきたが,本件選定者らによる監査請求まで,本件研究費の前金払支出及び剰余金の繰越し使用について,それが違法であるとの指摘は誰からもなされなかった。第1審被告においても,従前からの慣例に従って本件研究費の支出に関する事務処理をしてきたにすぎない。 (イ) 金沢市以外の相当数の地方公共団体(福岡市,広島市等)においても,市議会議員又は会派に対する調査研究費が,前金払で支出され,繰越し使用を認める取扱いがされていたものであり,本件研究費についての金沢市の上記(ア)の取扱いが特殊な取扱いであったわけではない。 (ウ) 本件研究費については,金沢市議会において予算承認され,違法性なしとして決算承認されてきたもので,第1審被告はもとより,金沢市議会の各会派及び議会事務局とも,前金払支出や剰余金の繰越しが違法であるとの認識がなく,また,認識の可能性もなかった。 (エ) 本件研究費について,前金払で支出すべきであるか,概算払で支出すべきであるか,また,前金払についても剰余金が発生し,繰越し問題が発生する余地があるのか否か,その剰余金について精算させ繰越しを認めないか,これを認めるか否か等に関しては,政策的な判断に属する面があり,判断及び解釈が分かれる事項であると考えられるが,このような場合には,政策判断者に重大な判断 の剰余金について精算させ繰越しを認めないか,これを認めるか否か等に関しては,政策的な判断に属する面があり,判断及び解釈が分かれる事項であると考えられるが,このような場合には,政策判断者に重大な判断の誤り,あるいは権利濫用的な判断がない限りは,過失があるとされるべきではない。第1審被告について,本件研究費の支出に関して,そのような重大な判断の誤りも権利濫用的な判断もない。 第3 当裁判所の判断 1 本件研究費の交付手続と平成11年度の本件研究費に係る本件剰余金(1) 本件研究費の交付手続前記前提事実並びに証拠(甲12,28,乙1,3,18,23,28,33,40,45,47ないし51,77,78,81,82)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア金沢市は,昭和52年度から平成12年度まで(昭和52年4月以降平成13年3月まで),毎年,本件要綱に基づき,金沢市議会(以下「市議会」ともいう。)議員が行う市政に関する調査研究を推進することを目的として,同調査研究に必要な資料の作成,図書等の購入などの調査研究のために必要な経費に充てさせるために,市議会の会派からの交付申請を受けて,会派に対し,金沢市一般会計歳出予算第1款議会費,第1項議会費,第1目議会費,第19節負担金,補助及び交付金,第13細節交付金から,本件研究費を前金払の方法で交付した。 イ平成11年度の本件研究費については,同年4月に実施された市議会議員選挙後に結成された7会派から本件要綱に基づいてされた交付申請を受けて,第1審被告から専決の権限を与えられていた金沢市総務部長が,平成11年5月6日,各会派に対し,交付申請どおり,平成11年5月から平成12年3月までの分(平成11年4月分は,本件要綱3条3項により,上記市議会議員選挙前の会派に交付済みであった。以下,上 が,平成11年5月6日,各会派に対し,交付申請どおり,平成11年5月から平成12年3月までの分(平成11年4月分は,本件要綱3条3項により,上記市議会議員選挙前の会派に交付済みであった。以下,上記11か月分を「平成11年度の本件研究費」という。)として,合計8316万円(1議員当たり月額18万円の11か月分の42議員分)を前金払の方法で交付する旨の支出負担行為をした(乙47)。 市長である第1審被告は,上記支出負担行為後,本件要綱7条に基づき,各会派の代表者に対し,これを平成11年5月,7月,10月及び平成12年1月に分割して前金払で交付する旨通知した(乙47)。 そして,平成11年度の本件研究費は,同通知のとおり,上記各月に各会派に対して交付され,その最終交付日は平成12年1月6日であった(乙48ないし51)。 ウ平成12年度の本件研究費についても,市議会の7会派から本件要綱に基づいてされた交付申請を受けて,専決の権限を有する金沢市総務部長が,平成12年4月1日,各会派に対し,交付申請どおり,平成12年4月から平成13年3月までの分として,合計1億2600万円(1議員当たり月額25万円の12か月分の42議員分)を前金払の方法で交付する旨の支出負担行為をした(甲12)。 そして,その後,市長である第1審被告が,本件要綱7条に基づき,各会派の代表者に対し,これを平成12年4月,7月,10月及び平成13年1月に分割して前金払で交付する旨通知し,同通知のとおり,上記各月に各会派に対して交付された。 (2) 本件研究費を前金払で支出することは違法か否かア金沢市から市議会各派に対する本件要綱に基づく本件研究費の交付が,歳出予算の節「負担金,補助及び交付金」の「交付金」として前金払で支出されたものであることは,上記(1)のとおりである。 か否かア金沢市から市議会各派に対する本件要綱に基づく本件研究費の交付が,歳出予算の節「負担金,補助及び交付金」の「交付金」として前金払で支出されたものであることは,上記(1)のとおりである。 イ上記(1)の事実並びに証拠(乙1)及び弁論の全趣旨によれば,金沢市による本件研究費の交付は,本件要綱に基づき,市議会の会派に対し,市議会議員の市政に関する調査研究を助成し,奨励する目的で,会派に属する議員が行う市政調査研究のために要する経費に充てる資金を援助するためにされるものであって,それに対応する対価的給付を会派又は議員に求めることは予定されていないのであり,また,本件研究費は,本件要綱に基づいて会派から交付申請が提出され,これに対して,本件要綱に基づき市長(その専決者を含む。以下,同じ。)による交付決定がされた後,本件要綱に基づき会派に交付されるものであるから,本件要綱の定める内容は,交付に係る本件研究費に関する金沢市と会派の間の権利義務関係の内容となり,交付に係る本件研究費の使途(8条)及び返還(11条,12条)等は本件要綱が定めるところに従って規律されるものである。したがって,本件研究費は,金沢市が市政に関する調査研究を助成し,奨励する目的で,その使途を上記経費に限定してされた,対価的給付を求めることなくされた金銭給付(民法上の贈与)である。 そして,法232条の2所定の「補助」とは,地方公共団体が特定の行政目的を促進するために,私人等に対し,対価的反対給付を求めることなくされる,使途を限定した財産的給付をいうものと解されるから,金沢市が市議会の会派に対して行う本件研究費の交付が上記「補助」としての補助金に該当することは明らかである。 ところで,法232条の5第2項,施行令163条によれば,地方公共団体が支出する補助金及び交 が市議会の会派に対して行う本件研究費の交付が上記「補助」としての補助金に該当することは明らかである。 ところで,法232条の5第2項,施行令163条によれば,地方公共団体が支出する補助金及び交付金については前金払をすることができるものとされている(施行令163条2号)から,本件研究費を前金払の方法で支出することも当然に許されるものである。すなわち,地方公共団体の経費の支出は,債務金額が確定し,支払期限到来後に債権者に支払うのを通常とするのであるが,前金払は,この通常の支払方法に対する例外的な支払方法の一つとして法が認める支払方法であり,施行令163条各号に列挙された経費について,債務金額及び債権者が確定しているが,支払期限が未到来の段階で,その支払をすることをいうものである。そして,前金払は,上記のとおり,その支出の時点では,その債務額が確定されているものについて行われる支払方法であるため,後日不履行その他の事由によって客観的に金額の異動を生ずる場合のほかは,その本質上精算を伴わないものとされている。 ウ第1審原告は,本件研究費は,金額の確定した債務ではないから,これを前金払することはできず,債務金額が確定する前に概算をもって支出し,事後の精算を予定する「概算払」(施行令162条)をするべきであった旨主張するので,検討する。 (ア) 本件要綱(乙1)は,市長が,市議会各会派からの交付申請を受けて,本件研究費の額を決定するものとし(7条),その額は,毎年度の予算の範囲内において各四半期の初日における会派の所属議員数に応じ算定した額とすると定めている(3条1項)から,本件研究費として交付される金額は市長の決定により確定するものということができる。 そして,本件研究費もそれに含まれる補助金は,前記のとおり,地方公共団体が特定の行政目 めている(3条1項)から,本件研究費として交付される金額は市長の決定により確定するものということができる。 そして,本件研究費もそれに含まれる補助金は,前記のとおり,地方公共団体が特定の行政目的を促進するために,私人等に対し,対価的反対給付を求めることなくされる,使途を限定した金銭的給付(民法上の贈与)であるから,その額が上記のとおり市長が決定することによって確定すると解することについて法理的に支障となる点はない。 なお,本件要綱は,市議会の会派の代表者に対し,本件研究費の交付された年度終了後30日以内に,当該年度に交付を受けた研究費に係る事業実績報告書を市長に提出することを求め,当該年度終了時に存在する剰余金についてはこれを翌年度に繰り越して使用することができると定めているが(10条),これは,本件研究費がその使途を調査研究のために必要な経費に限定して交付された補助金であることに関連して付された条件であって,本件研究費の使用状況を確認することにより,本件研究費がその指定どおりの使途に適正に使用されているか否かを検査し,確認する目的に出たものであるから,本件研究費の交付を受けた会派に上記事業実績報告書の提出義務があるからといって,本件研究費について一般的に精算を求めているものということはできず,かえって,剰余金の繰越し使用を許していることは,本件研究費についてそのような精算を求めていない趣旨の顕われであると解することができる。他方,本件要綱は,本件研究費の交付を受けた会派について解散等の事由が生じたときには,会派の代表者は,交付を受けた研究費に係る事業実績報告書を市長に提出し,剰余金はこれを返還すべき旨定めているが(11条),これは,経費の前金払に伴い,例外的に生ずる精算の場合と共通する精算の方法を定めたものであって,本件研究費 究費に係る事業実績報告書を市長に提出し,剰余金はこれを返還すべき旨定めているが(11条),これは,経費の前金払に伴い,例外的に生ずる精算の場合と共通する精算の方法を定めたものであって,本件研究費の額が本件要綱に基づく市長の決定によって確定すると解することに矛盾するものではない。 (イ) ところで,本件研究費の額が本件要綱に基づく市長の決定によって確定されるとし,しかも,本件研究費が補助金として対価的な給付を求めない金銭的給付(民法上の贈与)であると解するときには,本件研究費が本件要綱に基づき交付時期に会派に交付される時点では,その履行期が到来していると解するのが自然であるように思われ(すなわち,相手方からの対価的給付の履行後に支出される経費であれば,その対価的給付があるまでは当該経費の履行期が到来しないのであるが,本件研究費については,相手方からの対価的給付がないのであるから,その交付の時期と定められた日の到来により履行期が到来すると解するのが自然であると思われる。なお,補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律の適用がある国の補助金等については,同法15条により,同条が定める確定手続により交付すべき補助金等の額が確定するものとされているので,同法の適用がない本件研究費とは法律関係を異にする。),そうすると,前金払の方法ではなく,通常の支払方法で支出すべきものではないかとの疑問がないわけではない。しかし,この点は,本件研究費については,使途の限定があり,会派の解散等の交付の基礎となった事由の変更の場合(本件要綱11条の場合)には精算義務があるものとして交付されていること等において,通常の方法で支出される経費にはない特殊性があり,むしろ前金払の性格を有する面があるから,本件研究費を前金払の方法で支出することを違法ということはできない るものとして交付されていること等において,通常の方法で支出される経費にはない特殊性があり,むしろ前金払の性格を有する面があるから,本件研究費を前金払の方法で支出することを違法ということはできない。 (ウ) もっとも,本件研究費は,金沢市議会議員が行う市政に関する調査研究を推進するため交付されるのであり,市がそのために要する経費を補助することに公益上の必要があることは後記のとおりであるが,交付される本件研究費は,その議員が市政に関する調査研究のため,真に必要な用途に有効に使用されるべきであり,本件研究費交付制度も,そのようなものとして設計され,運用されるべきであることは,地方財政法4条1項の趣旨に徴して明らかである。ところで,本件研究費は,平成11年度における交付額が議員一人当たり月額18万円,年間216万円,平成12年度における交付額が議員一人当たり月額25万円,年間300万円といずれも相当に多額であり,このような金額がおよそ市議会の議員であれば市政に関する調査研究に当然に必要とする費用であるというには疑問がないわけではなく,実際にも,交付を受けた市議会の会派において従前から剰余金が生じることが相当あったのであるから,このような状況を考慮すると,本件研究費の額は,本件要綱に基づく市長の決定によって確定するとするのではなく,交付すべき額を確定させる手続(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律15条参照)を設けて同確定手続完了により確定するものとして,同確定手続前の本件研究費の交付は概算払の方法で行い,交付された年度毎の精算を行うものとするのが,本件研究費の使途の明確化,冗費発生の防止等の目的により適うものということができる(石川県政調査交付金交付要綱(甲17,乙53),金沢市議会政務調査費の交付に関する条例(乙65)及び石川県政 のが,本件研究費の使途の明確化,冗費発生の防止等の目的により適うものということができる(石川県政調査交付金交付要綱(甲17,乙53),金沢市議会政務調査費の交付に関する条例(乙65)及び石川県政務調査費の交付に関する条例(乙54)参照)。 しかし,本件研究費について,そのような方法によらず,本件要綱に従って前金払の方法によったからといって,交付された本件研究費については,その使途が調査研究のために必要な経費に限定され(本件要綱8条),その違反の場合には返還を求めることができるもの(同12条)とされ,また,会派の解散等の事由(交付金額算定の基礎となった事情に変更があった場合の意味と解される。)があった場合の剰余金は返還すべきもの(同11条)とされていることを考慮すると,当不当の問題はあるとしても,直ちに違法ということまではできない。 (エ) そうすると,本件研究費が前金払の方法で支出されたことに違法はなく,第1審原告の前記主張は採用できない。 (3) 平成11年度の本件研究費に係る本件剰余金前記前提事実(7)及び証拠(甲28,乙40)によれば,平成11年度の本件研究費の交付を受けた7会派のうち4会派について,年度末の平成12年3月31日までに使用されずに残った剰余金があり,その合計額は80万9387円であったこと,上記4会派は,いずれも,本件剰余金を金沢市に返還することなく,本件要綱10条2項に従って翌年度に繰り越して使用したことが認められる。 2 第1審原告の訴え中,本件剰余金に係る損害賠償請求の適否第1審被告は,第1審原告の訴えのうち本件剰余金に係る損害賠償請求については,監査請求期間徒過後の不適法な監査請求がなされたにすぎず,適法な監査請求を経ない不適法な訴えであるから,却下されるべきである旨主張する。 しかしながら,第1審原告 余金に係る損害賠償請求については,監査請求期間徒過後の不適法な監査請求がなされたにすぎず,適法な監査請求を経ない不適法な訴えであるから,却下されるべきである旨主張する。 しかしながら,第1審原告の本件剰余金に係る損害賠償請求は,第1審被告が,金沢市から交付された平成11年度の本件研究費についてその年度末である平成12年3月31日において生じた本件剰余金の返還を命ずることなく,その翌年度における繰越し使用を認めたことが違法であり,同違法行為により金沢市に本件剰余金相当額の損害を与えたとして,金沢市に代位して同損害の賠償を求める訴えであって,平成11年度の本件研究費の支出又はその手続という財務会計上の行為の違法を主張するものではなく,本件剰余金の返還請求権の不行使又は本件剰余金の翌年度への繰越し使用を認めた行為の違法を主張するものであるから,仮に上記不行使又は繰越し使用を認めた行為が財務会計上の行為に当たるとしても,法242条2項本文所定の1年の起算日は,本件剰余金が発生する平成12年3月31日が経過した日である同年4月1日以後(本件要綱10条1項は,本件研究費の交付を受けた会派の代表者に対して年度終了後30日以内に議長を経由して市長に事業実績報告書を提出すべき旨定めているから,本件剰余金の存在を第1審被告が把握するのは同年4月1日以後となる。)となることは明らかである。 ところで,本件選定者らは,前記前提事実(8)のとおり,平成13年1月15日には,本件剰余金の翌年度繰越し使用等に関する是正措置を求める監査請求をしたから,同監査請求は,法242条2項本文所定の監査請求期間内にされたものであることが明らかである。 そうすると,第1審原告の本件剰余金に係る損害賠償請求は適法な監査請求を経ていない旨の第1審被告の主張は採用できず,他に同損 2条2項本文所定の監査請求期間内にされたものであることが明らかである。 そうすると,第1審原告の本件剰余金に係る損害賠償請求は適法な監査請求を経ていない旨の第1審被告の主張は採用できず,他に同損害賠償請求を不適法とすべき事由を認めることはできない。 3 本件研究費の交付と公益上の必要の有無(1) 本件研究費が,市政に関する調査研究を助成し,奨励する目的で,その使途を上記経費に限定してされた,対価的給付を求めることなくされた金銭給付(民法上の贈与)であり,法232条の2所定の「補助」としての補助金に当たるものであることは,上記1(2)で説示したとおりである。 (2) 普通地方公共団体の議会である金沢市議会は,条例の制定,予算の議決,契約の締結,財産の取得,処分の決定等金沢市の市政の運営に関する広範な権限を有するところ,この権限を有効適切に行使するためには,同議会を構成する各議員の市政全般に対する深い理解が不可欠である。そして,議員は,その活動母体である議会の会派を通じて,各種案件についての立案,調査研究等の議員活動を行うのが通例であるから,金沢市がその会派に対して,市政に関する調査研究のために要する費用を補助することにより,同調査研究が活発にされて各議員の市政全般に対する理解が深まり,その結果,上記権限が有効適切に行使されて,市政の適切な運営に資することを期待することができる関係にあるので,金沢市が同議会の各会派に対して本件研究費を交付して上記費用を補助することはその公益上の必要に合致するというべきであり,このことは,昭和28年以降,国会における各会派に対する立法事務費の交付に関する法律(昭和28年法律第52号)に基づき,国会内の各会派に対して,国会議員の立法に関する調査研究の推進に資するため必要な経費の一部として立法事務費が交付され る各会派に対する立法事務費の交付に関する法律(昭和28年法律第52号)に基づき,国会内の各会派に対して,国会議員の立法に関する調査研究の推進に資するため必要な経費の一部として立法事務費が交付されてきた事実及び平成12年法律第89号による地方自治法の改正により,その100条12,13項(現在の同条13,14項)として,地方公共団体が,条例により,その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として,議会の会派又は議員に対し,政務調査費を交付することができる制度を新設するに至った経緯に照しても,明らかである。 (3) 本件増額された平成12年度の本件研究費の交付と公益上の必要の有無第1審原告は,平成12年度の本件研究費が平成11年度の本件研究費よりも議員一人当たり月額7万円の割合で増額して交付されたことに関して,平成12年度の本件研究費中この増額(本件増額)に係る金額分3500万円については,法232条の2の公益上の必要がない旨主張するので,以下検討する。 ア普通地方公共団体がなす補助については法232条の2が定めるとおり「その公益上必要がある場合」に限られるのであるが,本件研究費の交付は,金沢市議会議員が行う市政に関する調査研究を推進することを目的として,同調査研究に必要な経費の資金を援助するためのものであって,そのようなものとして公益上の必要があることは上記(2)で説示したとおりである。 イところで,特定の行政目的を促進するために地方公共団体がする補助について,その金額をいかほどとするのが相当であり,その公益の必要に適うものであるかは,当該補助金交付の目的,対象,補助金の交付によって期待される効果,交付を受ける側の需要の程度,当該地方公共団体の全般的な財政事情等の諸般の事情を総合考慮して決すべき優れて高度の政策的な判断事項で は,当該補助金交付の目的,対象,補助金の交付によって期待される効果,交付を受ける側の需要の程度,当該地方公共団体の全般的な財政事情等の諸般の事情を総合考慮して決すべき優れて高度の政策的な判断事項であるから,当該地方公共団体の有権者から選挙されてその適切な運営を委ねられた地方公共団体の首長が,その裁量により判断して決定すべき事項に属するのであり,したがって,その判断について裁量の逸脱又は濫用があり,そのため補助金の額が不相当に高額となったと認められる場合を除き,支出された補助金の全部又は一部について公益上の必要を欠くとして法232条の2に違反するものということはできない。 ウそこで,上記イの観点に立って,本件増額後の平成12年度の本件研究費の交付額について裁量の逸脱や濫用があったと認められるか否かについて検討する。 (ア) 地方自治体の自己決定権の拡充,自己責任の確立,国と地方自治体の役割分担の明確化等を目的とした地方分権一括法が平成12年4月1日に施行されたことにより,これまで国の事務として地方公共団体が処理していた機関委任事務が全廃されたが,証拠(乙6,32)によれば金沢市においても,これまでの機関委任事務が220の自治事務と152の法定受託事務に区分されて金沢市独自の事務となり,また,11の事務が石川県から委譲されたこと,平成12年定例第1回金沢市議会において,地方分権一括法の施行に伴う本格的な地方分権時代を迎えての取り組みについて,様々な質疑応答が行われ,議員から,本件研究費のあり方も含め,議会の機能の充実・強化等を求める意見書が議会に提出されたことが認められる。また,証拠(乙9,22,60)及び弁論の全趣旨によれば,平成11年定例第1回金沢市議会において,同年3月17日,次の一般選挙から議員定数を44名(当時の市議会の法定議員 出されたことが認められる。また,証拠(乙9,22,60)及び弁論の全趣旨によれば,平成11年定例第1回金沢市議会において,同年3月17日,次の一般選挙から議員定数を44名(当時の市議会の法定議員数は52名であったが,既に44名に減員されていた。)から42名に減少させることを内容とする「金沢市議会議員定数減少条例の一部を改正する条例」が可決されたこと,同年4月に同条例によって減少した議員定数で金沢市議会議員選挙が行われ,同議会議員が42名となったことが認められる。 上記事実によれば,平成12年度には,平成11年度までと比較して,地方分権一括法の施行により,金沢市においても,地方公共団体の自己決定権が拡大し,自己責任による施策の推進が強く求められ,これに対応して地方議会や議員の果たすべき役割が大きくなる状況にあったことに加え,議員定数の削減によって市議会議員一人一人の役割や負担が増大する状況にもあったから,金沢市議会における議員の調査活動の基盤を充実させて議員の調査活動機能を高めるために,この時期において本件研究費を増額することには相応の合理性があったものと認めることができる。 (イ) 証拠(甲30ないし32,乙6,32,63,64)及び弁論の全趣旨によれば,金沢市では,平成11年秋ころから,平成12年度当初予算案の作成に着手したが,その過程において,平成12年度以降に予想される上記(ア)の地方分権一括法の施行による金沢市の処理すべき行政事務の増加や議員定数の減少等により,一人一人の議員の議員活動の充実の観点から,金沢市議会の各会派代表者会議等において,平成8年以降据置きとなっている本件研究費の増額見直しの意見が表明されるようになり,平成12年2月16日の各会派代表者会議では,石川県の調査研究費が平成4年に議員一人当たり月額30万円と 等において,平成8年以降据置きとなっている本件研究費の増額見直しの意見が表明されるようになり,平成12年2月16日の各会派代表者会議では,石川県の調査研究費が平成4年に議員一人当たり月額30万円となっていることが参考とされるべきである等が議論され,議員一人当たり月額18万円の本件研究費の増額を求める意見が大多数であったこと,市議会議長Bは,上記結果を踏まえて,市長の第1審被告に対して口頭で本件研究費の増額を要請したため,これを受けた第1審被告において,平成12年度の本件研究費を議員一人当たり月額25万円とすることとし,そのことも内容とする一般歳入歳出予算案を作成して平成12年第1回定例議会に提案したところ,同予算案は原案のとおり可決されたことが認められる。 上記事実によれば,本件増額は,金沢市議会の要請によるものであり,同議会が予算として承認したものであることは明らかである。 (ウ) 証拠(乙12)によると,平成13年9月現在における全国の都道府県の議員会派に交付されている政務調査費の議員一人当たりの月額は,最高が東京都の60万円,最低が沖縄県外2県の25万円で,北陸3県においてはいずれも30万円であることが認められるから,本件増額後の金額は都道府県における最低額を超えるものではなく,また,証拠(乙7,61,62)によると,金沢市の平成11年度実質収支は15億5000万円余りの黒字であって,公債費比率は15.1パーセントと高いものの,起債にあたっては交付税措置のあるものを選ぶことによって起債制限比率(公債費比率から普通交付税事業費補正により基準財政需要額に算入された公債費を除いて計算したもの。15パーセント以上で公債費負担適正化計画が必要となり,20パーセント以上で一定の地方債の許可が受けられなくなる。)は8.4パーセントに押さえられ 財政需要額に算入された公債費を除いて計算したもの。15パーセント以上で公債費負担適正化計画が必要となり,20パーセント以上で一定の地方債の許可が受けられなくなる。)は8.4パーセントに押さえられていること等,その財政状態は一応健全な状態を維持していることが認められる。 (エ) 証拠(乙38ないし40)によれば,平成12年度の本件研究費については,本件研究費の交付を受けた8会派のうちの1会派(ひびき)は,会派解散により,平成13年1月19日付けで,本件要綱11条に基づく事業実績報告書を提出したが,その剰余金は5万3693円であったこと,その余の7会派は,同年3月31日付けで,本件要綱10条に基づく事業実績報告書を提出したが,7会派中1会派(日本共産党金沢市議員団)の剰余金が11万5726円であり,他の6会派には剰余金がなかったこと,上記各剰余金合計16万9419円は,平成12年度に本件研究費として交付された総額9095万7257円の0.2パーセントであったことが認められる。 (オ) もっとも,証拠(甲3)によれば,全国の中核市(法252条の22,金沢市も含まれる。)の市政調査研究費をみると,金額の基礎となる議員一人当たりの月額は,最高額が堺市の30万円で,金沢市の25万円がこれに次ぎ,他は20万円以下であり,10万円を下回る市も相当数あること,市政調査研究費による市民一人当たりの年間負担額は,最高額が金沢市の287円であり,これに次ぐのが堺市の237円であり,200円を上回るのはこれらを含めて6市であり,多くの市は100円台であり,100円を下回る市も相当数あることが認められる。 (カ) また,証拠(甲4,乙5)によれば,金沢市議会の各会派に対して平成4年度から平成11年度に交付された本件研究費について次のとおり剰余金が生じた会派及び金 回る市も相当数あることが認められる。 (カ) また,証拠(甲4,乙5)によれば,金沢市議会の各会派に対して平成4年度から平成11年度に交付された本件研究費について次のとおり剰余金が生じた会派及び金額があったこと,なお,本件研究費の議員一人当たりの月額は,平成4年度から平成6年度は10万円,平成7年度は13万円,平成8年度から平成11年度は18万円であったことが認められる。 a 平成4年度は,6会派全部において総額24万2207円b 平成5年度は,9会派中5会派において総額49万6733円c 平成6年度は,8会派中4会派において総額7万8475円d 平成7年度は,7会派中6会派において総額148万6564円e 平成8年度は,7会派中6会派において総額175万4720円f 平成9年度は,7会派中6会派において総額64万6912円g 平成10年度は,7会派中4会派において総額7万7639円h 平成11年度は,7会派中4会派において総額80万9387円上記(ア)ないし(エ)の諸事情によれば,上記(オ)及び(カ)の事情を考慮しても,議員一人当たり月額18万円から月額25万円に増額した後の平成12年度の本件研究費の額が不相当に高額であるということはできないのであって,本件増額に関しては,増額幅の点の判断について,第1審被告に裁量の逸脱又は濫用があったということはできない。 なお,交付された本件研究費についての交付に係る会計年度末における(カ)の剰余金については,最も多額の剰余金が発生した平成8年度分でも,議員一人当たりの剰余金の額は,議員一人当たり年額216万円(18万円×12月)に対して4万円弱(約1.8パーセント)にすぎないし,その剰余金は,各会計年度毎での精算はなく,翌年度に繰り越して使用されることになるのであるが,本件要綱が定める使途 216万円(18万円×12月)に対して4万円弱(約1.8パーセント)にすぎないし,その剰余金は,各会計年度毎での精算はなく,翌年度に繰り越して使用されることになるのであるが,本件要綱が定める使途に限定して使用できることには変りなく,また,会派の解散等の事由がある場合の剰余金は返還すべきものとされているのであるから,上記判断に当たっては,会計年度末の剰余金の存在をことさらに重視することは相当でない。 (4) 以上によれば,その余の点について検討するまでもなく,平成12年度の本件研究費に関する第1審原告の損害賠償請求は理由がない。 4 平成11年度の本件研究費の本件剰余金に対する返還請求をせず,翌年度に繰り越して使用させたことの違法性について(1) 平成11年度の本件研究費の支出手続と本件剰余金の存在ア平成11年度の本件研究費が,歳出予算の節「負担金,補助及び交付金」の「交付金」として前金払で支出されたこと及びこれを前金払で支出したことが違法でないことは,上記1で説示したとおりである。 イ平成11年度の本件研究費の交付を受けた7会派のうち4会派について,年度末の平成12年3月31日で使用されずに残った本件剰余金が80万9387円であり,上記4会派は,いずれも,これを金沢市に返還することなく,本件要綱に従って翌年度に繰り越して使用したことも,上記1で説示したとおりである。 (2) 第1審原告は,市長である第1審被告が,本件剰余金について,会派に対して,その返還を求めることなく,翌年度に繰り越して使用させたことが違法である旨主張するので,以下検討する。 ア平成11年度の本件研究費も前金払の方法で各会派に交付されたのであるが,前金払については,債務額が確定しているが,履行期限が未到来の経費の支払方法であるから,その性質上原則として精算の必要を 。 ア平成11年度の本件研究費も前金払の方法で各会派に交付されたのであるが,前金払については,債務額が確定しているが,履行期限が未到来の経費の支払方法であるから,その性質上原則として精算の必要を生じないものとされている。 もっとも,前金払で支出された補助金についても,その対象として計画されていた事業の取り止め等により前金払支出の基礎に変更があった場合には,支出の前提とされている確定債務の額に変動を生ずる事情が生じたものとして精算をする必要が生じるのであり,本件要綱が,本件研究費の交付を受けた会派について解散等の事由が生じたときには,会派の代表者は,交付を受けた研究費に係る事業実績報告書を市長に提出し,剰余金はこれを返還すべき旨定めている(11条)のは,上記趣旨に基づく精算を定めたものであり,金沢市財務規則83条(乙2)と同旨を定めたものと解することができる。しかし,本件剰余金は,本件要綱11条が定める事由により生じた剰余金ではなく,単に平成11年度の本件研究費について当該年度末までに使用し切れずに残った剰余金であるから,前金払にあって,精算の必要を生ずる上記事情が生じたことによるものでもない。 イところで,平成11年度の本件研究費について剰余金が生じた場合にこれを翌年度に繰り越すことができないとすることは,支出年度に属する年度末時点での剰余金については必ず精算を要するということにほかならないが,そのようなことは,平成11年度の本件研究費が前金払で支出されたことに矛盾するものである。 第1審原告は,それが概算払で支出された,あるいは支出されるべきものであった旨主張するが,平成11年度の本件研究費が前金払で支出されたものであって,概算払で支出されたものでないこと及び前金払での支出が違法でないことは,上記1で説示したとおりである。 ウな きものであった旨主張するが,平成11年度の本件研究費が前金払で支出されたものであって,概算払で支出されたものでないこと及び前金払での支出が違法でないことは,上記1で説示したとおりである。 ウなお,前金払された平成11年度の本件研究費について剰余金が生じた場合にこれを翌年度に繰り越すことができないとする根拠として会計年度独立の原則(法208条2項)が考えられないではない。しかし,平成11年度の本件研究費は,平成11年5月に同年度歳出予算の範囲で支出負担行為がされ,同月,同年7月,10月及び平成12年1月に分割して前金払の方法で支出されたのであって,支出負担行為及びそれに基づく支出のいずれもが平成11年度中に完了しているのであるから,その補助金としての性質に照して(本件研究費に交付の対象となっている市政調査研究事務は,各会派の事務であって,金沢市の事務ではなく,また,上記市政調査研究に要する費用は各会派の経費であって,金沢市の経費ではない。そして,補助金としての無償性の故に,平成11年度の本件研究費に係る金沢市の経費支出は,平成11年度の本件研究費を各会派に交付することで完了するのである。),各会計年度の歳出は当該年度の歳入をもって充てるべき旨定める会計年度独立の原則(法208条2項)に反するものではない。 また,平成11年度の本件研究費は,その算定方法及び交付時期に照し,当該年度の市政調査研究のための費用のみを対象として支出されたものと一応考えられないではない。しかし,平成11年度の本件研究費は,それ以前の本件研究費と同様,本件要綱に基づくものとして,本件要綱に定められた内容のものとして交付されたものであるところ,本件要綱では,本件研究費は市政調査研究のために必要な経費に充てるべきものとの使途についての限定はあるものの,それが交付さ ものとして,本件要綱に定められた内容のものとして交付されたものであるところ,本件要綱では,本件研究費は市政調査研究のために必要な経費に充てるべきものとの使途についての限定はあるものの,それが交付された当該年度の市政調査研究のために必要な経費に限ることは明記されておらず,かえって,年度末における剰余金を翌年度に繰り越して使用することを許す旨が定められているのであるから,年度末において剰余金があっても,当然に返還(精算)を要するものではないというべきである。そして,本件要綱が上記のとおり剰余金の翌年度繰越し使用を明示で認めている趣旨からすると,本件研究費は,当該交付年度のみの市政調査研究の費用のみならず,翌年度以降のそれの費用をも対象とするものとして支出されているものとみるほかない。 そして,本件要綱に従って年度末における剰余金を翌年度に繰り越して使用できるとして,その返還を求めないとすることも,交付された本件研究費については,その使途が調査研究のために必要な経費に限定され(本件要綱8条),その違反の場合には返還を求めることができるもの(同12条)とされ,また,会派の解散等の事由(交付金額算定の基礎となった事情に変更があった場合の意味と解される。)があった場合の剰余金は返還すべきもの(同11条)とされていることを考慮すると,当不当の問題はあるとしても,直ちに違法ということまではできない。 エ第1審原告は,平成11年度の本件研究費について精算を認めず,翌年度繰越しを認めることは金沢市財務規則84条に違反する旨主張する。 しかし,平成11年度の本件研究費は,それ以前の本件研究費の場合と同様,歳出予算の節「負担金,補助及び交付金」の「交付金」として前金払で支出されたものであって,「補助金」として支出されたものではないから,その精算については 研究費は,それ以前の本件研究費の場合と同様,歳出予算の節「負担金,補助及び交付金」の「交付金」として前金払で支出されたものであって,「補助金」として支出されたものではないから,その精算については金沢市財務規則(乙2)83条が適用されるのであり,同84条は適用されない(同84条は,「補助金」が前金払で支出された場合においても,精算額の不足があるときには,その不足額を請求できる旨定めるが,このような場合としては,「補助金」の一部が前金払として支出された場合が考えられるが,本件研究費は,本件要綱に従って算定された金額で「交付金」として支出されたのであり,不足があるからといって,その不足分を別途請求できるものではない。)。 オ以上を要するに,本件要綱に基づき交付された本件研究費について,市長が,その返還を求めることができるのは,本件研究費が前金払の方法で支払われることに伴う精算を定める本件要綱11条に基づく場合及び本件研究費の交付を受けた会派がその使途等において本件要綱に違反した場合に市長が当該会派に対して既交付研究費の返還を命ずることができる旨定める12条に基づく場合に限られ,年度末に剰余金が生じたからといって,その返還を求めることはできないのであり,また,本件要綱が本件研究費の翌年度繰越し使用を認めることとし,本件剰余金に係る市議会会派がこれを翌年度に繰り越して使用し,第1審被告がその返還を求めないことをもって違法ということもできないのである。 (3) なお,仮に本件研究費の前金払支出が違法であり,本件剰余金について返還を求めず,これを翌年度に繰り越して使用させたことに違法があったとしても,次の理由で,第1審被告について過失があるものということはできない。 ア証拠(甲2,10,乙52,67ないし71,74,75,79)及び弁論の全趣旨に り越して使用させたことに違法があったとしても,次の理由で,第1審被告について過失があるものということはできない。 ア証拠(甲2,10,乙52,67ないし71,74,75,79)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) 金沢市では,昭和52年4月以降,本件要綱に基づき,本件研究費が前金払金により市議会の各会派に交付されてきたが,本件選定者らによる監査請求まで,本件研究費の前金払支出及び剰余金の繰越し使用について,それが違法であるとの指摘がなされたことはなかったため,第1審被告及びその補助職員においても,平成11年度の本件研究費についても,従前からの慣例に従って,本件要綱に基づき交付等に関する手続が行われ,本件要綱に従って剰余金についての翌年度繰越し使用が行われることとなった。 (イ) 本件研究費については,金沢市議会において予算承認され,違法性なしとして決算承認されてきたもので,第1審被告はもとより,金沢市議会の各会派及び議員とも,前金払支出や剰余金の繰越しが違法であるとの認識はなかったし,そのことを明確に指摘する判例や文献もなかった。 (ウ) 平成11年度及び平成12年度当時においても,金沢市以外の相当数の地方公共団体(札幌市,広島市,福岡市等)においても,市議会議員又は会派に対する調査研究費について,前金払で支出され,繰越し使用を認める取扱いがされていたものであり,本件研究費についての金沢市の上記(ア)の取扱いが金沢市のみの特殊な取扱いであったわけではなかった。 イ上記アの事実によれば,少なくとも,平成11年及び平成12年当時において,第1審被告の補助職員が平成11年度の本件研究費について,繰越し使用を認める条件で支出負担行為をし,これを前金払の方法で支出したことについて重過失があったということはできないし,これを市 において,第1審被告の補助職員が平成11年度の本件研究費について,繰越し使用を認める条件で支出負担行為をし,これを前金払の方法で支出したことについて重過失があったということはできないし,これを市長として指揮監督する立場にあった第1審被告について過失があったということもできない。 第4 結論 1 以上のとおりであるから,その余の点について判断するまでもなく,第1審原告の請求はいずれも失当として棄却すべきであり,したがって,原判決中第1審被告敗訴部分の取消しを求める第1審被告の控訴は理由があり,第1審原告の控訴は理由がない。 2 よって,第1審被告の控訴に基づき,原判決中第1審被告敗訴部分を取り消し,取消しに係る第1審原告の請求を棄却し,第1審原告の控訴を棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法67条,61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所金沢支部第1部裁判長裁判官長門栄吉裁判官渡邉和義裁判官源孝治は転勤のため署名押印することができない。 裁判長裁判官長門栄吉
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