令和2(ネ)10038 実用新案権侵害差止等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和3年2月17日 知的財産高等裁判所 1部 判決 控訴棄却 東京地方裁判所 平成29(ワ)22010
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令和3年2月17日判決言渡令和2年(ネ)第10038号実用新案権侵害行為差止等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成29年(ワ)第22010号)口頭弁論終結日令和2年12月22日判決控訴人株式会社空調服訴訟代理人弁護士鮫島正洋高橋正憲永島太郎被控訴人株式会社サンエス訴訟代理人弁護士林いづみ堀籠佳典加治梓子訴訟代理人弁理士福田伸一水 﨑 慎補佐人弁理士高橋克宗 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。 2 前項の部分につき,被控訴人の請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要(略称は,特に断りのない限り,原判決に従う。) 1 事案の要旨本件は,考案の名称を「ハーネス型安全帯の着用可能な空調服」とする実用 新案登録(登録第3198778号。この実用新案登録を「本件実用新案登録」といい,本件実用新案登録の登録実用新案を「本件登録実用新案」と,本件実用新案登録に係る実用新案権を「本件実用新案権」という。)の実用新案権者である被控訴人が,控訴人及び株式会社セフト研究所(以下「セフト社」という。)による別紙物件目録記載1ないし6の各製品(以下「被告各製品」と総称し,同目録記載の 実用新案権」という。)の実用新案権者である被控訴人が,控訴人及び株式会社セフト研究所(以下「セフト社」という。)による別紙物件目録記載1ないし6の各製品(以下「被告各製品」と総称し,同目録記載の番号に対応させて,それぞれを「被告製品1」などという。)の製造及び販売が本件実用新案権の侵害又は間接侵害(実用新案法28条1号)に該当する旨主張して,控訴人に対し,同法27条1項及び2項に基づき,被告各製品の製造,譲渡,輸出,輸入及び譲渡の申出の差止め及び廃棄を求めるとともに,本件実用新案権侵害の共同不法行為に基づく損害賠償として,損害金1億0478万1600円の一部である9185万4000円及びうち36万円に対する平成29年7月25日から,うち9149万4000円に対する平成31年3月1日から各支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下,単に「民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審は,被控訴人の請求のうち,被告各製品の譲渡及び譲渡の申出の差止め並びに廃棄,損害賠償として1537万5027円及びうち36万円に対する平成29年7月25日から,うち1306万6381円に対する平成31年3月1日から,うち194万8646円に対する令和元年5月31日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で一部認容し,その余の請求をいずれも棄却した。 控訴人は,原判決中,控訴人の敗訴部分を不服として,本件控訴を提起した。 2 前提事実以下のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第2の2記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 原判決3頁23行目から4頁6行目までを次のとおり改める。 「ウ被控訴人は,平成29年1月10日付け訂正書(甲4)により,本件実 の第2の2記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 原判決3頁23行目から4頁6行目までを次のとおり改める。 「ウ被控訴人は,平成29年1月10日付け訂正書(甲4)により,本件実用新案登録の実用登録新案請求の範囲について,請求項1を削除し,請求項2ないし4を訂正する訂正(以下「本件訂正」という。)をした。 エ本件訂正後の実用登録新案請求の範囲の請求項2ないし4の記載は,次のとおりである(以下,請求項2に係る考案を「本件考案」という。 下線部は訂正箇所である。)。 【請求項2】空調服の一部に設けられた開口部と,この開口部に臨んで配設したファンと,前記ファンを駆動するモータと,前記モータを駆動する携帯可能な電源と備え,前記ファンを駆動することにより,外気を空調服内に取り入れ,袖口或いは首周りから排出する空調服であって,前記空調服の背中部分に命綱取出し用の先端の開口した取出し筒を設け,前記取出し筒は,筒部先端近傍に口紐が設けられており,前記口紐により取出し筒から引き出した命綱の周囲を緊縛して,取出し筒の開口部を密閉することを特徴とするハーネス型安全帯の着用可能な空調服。 【請求項3】空調服の一部に設けられた開口部と,この開口部に臨んで配設したファンと,前記ファンを駆動するモータと,前記モータを駆動する携帯可能な電源と備え,前記ファンを駆動することにより,外気を空調服内に取り入れ,袖口或いは首周りから排出する空調服であって,前記空調服の背中部分に命綱取出し用の先端の開口した取出し筒を設け,前記取出し筒は,筒部先端近傍に口紐が設けられており,前記口紐に より取出し筒から引き出した命綱の周囲を緊縛して,取出し筒の開口部を密閉し,前記取出し筒の周囲には,非使用時に取出し筒を収納可能 記取出し筒は,筒部先端近傍に口紐が設けられており,前記口紐に より取出し筒から引き出した命綱の周囲を緊縛して,取出し筒の開口部を密閉し,前記取出し筒の周囲には,非使用時に取出し筒を収納可能な収納片が設けられたことを特徴とするハーネス型安全帯の着用可能な空調服。 【請求項4】空調服の一部に設けられた開口部と,この開口部に臨んで配設したファンと,前記ファンを駆動するモータと,前記モータを駆動する携帯可能な電源と備え,前記ファンを駆動することにより,外気を空調服内に取り入れ,袖口或いは首周りから排出する空調服であって,前記空調服の背中部分に命綱取出し用の先端の開口した取出し筒を設け,前記取出し筒は,筒部先端近傍に口紐が設けられており,前記口紐により取出し筒から引き出した命綱の周囲を緊縛して,取出し筒の開口部を密閉し,前記取出し筒の周囲には,非使用時に取出し筒を収納可能な収納片が設けられ,前記収納片は,面ファスナーにより空調服本体に対して開閉可能であることを特徴とするハーネス型安全帯の着用可能な空調服。」⑵ 原判決5頁3行目から6行目までを次のとおり改める。 「アセフト社は,平成28年5月から,被告各製品を製造及び販売している(乙49,59)。 イ控訴人は,平成28年5月から,セフト社から購入した被告各製品を販売している(甲5ないし7,乙49,50)。」⑶ 原判決5頁12行目の「被告製品の構成」を「被告製品1,2,4及び5の構成」と,同頁15行目の「被告製品3及び6は」から16行目の「もの となり,」までを「被告製品3又は6にファン等を取り付け,又は収納した空調服は,」と改める。 3 争点⑴ 被告製品1,2,4及び5についての構成要件Dの充足性(争点1)⑵ 被告製品1,2,4及び5は,本 でを「被告製品3又は6にファン等を取り付け,又は収納した空調服は,」と改める。 3 争点⑴ 被告製品1,2,4及び5についての構成要件Dの充足性(争点1)⑵ 被告製品1,2,4及び5は,本件考案と均等なものとして,その技術的範囲に属するか(争点2)⑶ 被告製品3及び6は本件登録実用新案に係る物品の製造にのみ用いる物(実用新案法28条1号)か(争点3)⑷ 無効の抗弁の成否(争点4)ア冒認出願の無効理由(争点4-1)イ共同出願違反の無効理由(争点4-2)⑸ 控訴人は先使用による通常実施権を有するか,又はセフト社の先使用による通常実施権を援用することができるか(争点5)⑹ 控訴人は黙示の実施許諾による実施権を有するか(争点6)⑺ 被控訴人の権利行使が権利の濫用に当たるか(争点7)(8) 差止めの必要性(争点8)(9) 被控訴人の損害額(争点9)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告製品1,2,4及び5についての構成要件Dの充足性),争点2(被告製品1,2,4及び5は,本件考案と均等なものとして,その技術的範囲に属するか)及び争点3(被告製品3及び6は本件登録実用新案に係る物品の製造にのみ用いる物(実用新案法28条1号)か)について以下のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第3の1ないし3記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決7頁25行目,8頁8行目,20行目,24行目,9頁2行目,9行目,20行目及び10頁5行目の各「被告製品」を「被告製品1,2,4 及び5」と改める。 (2) 原判決10頁12行目「被告製品と同様の」を「被告製品1,2,4及び5と同様の」と改める。 2 争点4(無効の抗弁の成否)について以下のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び 改める。 (2) 原判決10頁12行目「被告製品と同様の」を「被告製品1,2,4及び5と同様の」と改める。 2 争点4(無効の抗弁の成否)について以下のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第3の4記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 原判決10頁23行目の「(本件実用新案登録は冒認出願に対してされたものか)」を「(冒認出願の無効理由)」と改め,同頁25行目から11頁2行目までを次のとおり改める。 「 以下のとおり,本件考案は,控訴人ら代表者(X1。以下同じ。)が考案したものであって,被控訴人の従業員のA及びBが考案したものではなく,被控訴人は本件考案について実用新案登録を受ける権利を有していなかったから,本件出願は冒認出願に当たるものであり,本件実用新案登録は,実用新案登録無効審判により無効とされるべきものである(実用新案法37条1項5号)。 したがって,被控訴人は,同法30条において準用する特許法104条の3第1項の規定により,控訴人に対し,本件実用新案権を行使することができない。」⑵ 原判決12頁2行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「 この点について補足すると,以下のとおりである。 (ア) A及びBは,原審の証人尋問において,シフトノブカバーに本件考案の着想を得たという具体的な考案の経過を供述したが,この点については,尋問前の被控訴人の主張にも上記両名の陳述書にも記載されていなかったものであり,本件考案の着想の具体的な経過は重要な事実であるにもかかわらず,このような主張立証の経過となるのは不自然であるから,上記供述はそもそも信用することができない。また,Aは,内側 タイプを着想した経過について,Bと2人で考えた,代理店から話があった,Bがシフトレバーについて言及した,このア は不自然であるから,上記供述はそもそも信用することができない。また,Aは,内側 タイプを着想した経過について,Bと2人で考えた,代理店から話があった,Bがシフトレバーについて言及した,このアイデアを選択したのが誰かはよく覚えていない,シフトレバーを模すことについてはBから話が出たなどと供述し,その供述に一貫性がない。 (イ) 被控訴人は,サンプル作成中にピースに修正が必要になったことなどにより,サンプル作成後に,製品に合わせてCAD上でピースを修正した場合には,CAD上のピースの作成日時や更新日時がサンプル上り日よりも後になるとして,ピース一覧表における本件依頼書1に基づくサンプルに係るピース作成日時(平成27年2月6日)がCがサンプルを作成した日(同月2日)より後の日付であることは,不自然ではない旨主張する。 しかし,ピース一覧表の「KI−A60−B」及び「KI−A60−F」については更新日時(同月5日)と作成日時(同月3日)が異なり,更新日時と作成日時が連動して変更されていないことに照らすと,ピースデータを修正した場合に,作成日時及び更新日時が必ずしも連動して変更されるとはいえないから,被控訴人の上記主張は,その前提を欠くものであって,失当である。 (ウ) A及びBが本件考案の考案者であることを示す証拠の大部分は,被控訴人の内部資料にすぎず,客観性を欠くから,このような証拠により,A及びBが本件考案の考案者であると認めることはできない。」(3) 原判決13頁2行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「ウ控訴人の主張の「ウ」に対する反論は,以下のとおりである。 (ア) B及びAの陳述書(甲25,26)に,シフトノブカバーに着想を得たことの記載がないことについては,Bは,陳述書作成時にシフトノブカバーについて思い出 」に対する反論は,以下のとおりである。 (ア) B及びAの陳述書(甲25,26)に,シフトノブカバーに着想を得たことの記載がないことについては,Bは,陳述書作成時にシフトノブカバーについて思い出したが,その後は特に意識することなく忘れていたものの,尋問に向けた打合せの中で再度思い出したという にすぎないし,Aは,陳述書作成時には思い出さなかったが,その後,尋問準備の中でBや訴訟代理人らと話をしているうちに,シフトノブカバーの話が出て,これを思い出し,その旨を供述したにすぎない。 また,Aは,Bと2人で考えて本件考案の具体的形状に至ったこと,販売店の見本が広い意味で内側タイプであったこと,シフトノブカバーはBが言い出したこと,紐で縛る方法はどちらが提案したか覚えていないことを述べたものであり,その供述内容に矛盾はない。 (イ) ピース一覧表においては,サンプル作成中にピースの修正が必要になったことなどにより,サンプル作成後に,製品に合わせてCAD上でピースデータを修正した場合には,CAD上のピースの作成日時や更新日時がサンプル上り日よりも後となり,また,サンプル作成開始時にピース変更を行って,その後ピース変更を行うことなく,サンプル作成が完了すれば,CAD上のピースの作成日時や更新日時がサンプル上り日よりも前となり,いずれの場合も,作成日時や更新日時が自動的に保存される。 したがって,例えば,ピース一覧表における本件依頼書1に基づくサンプルに係るピース作成日時(平成27年2月6日)がサンプル上り日(同月2日)より後の日付であることについては,サンプル作成後にCADデータ(サンプル縫製中に不具合のあったところを修正したパターンのデータ)が作成・入力されたというだけのことであり,何ら不自然なことではない。」(4) 原判決1 ついては,サンプル作成後にCADデータ(サンプル縫製中に不具合のあったところを修正したパターンのデータ)が作成・入力されたというだけのことであり,何ら不自然なことではない。」(4) 原判決13頁3行目の「(本件実用新案登録は共同出願違反によりされたものか)」を「(共同出願違反の無効理由)」と改め,同頁17行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「 よって,被控訴人は,同法30条において準用する特許法104条の3第1項の規定により,控訴人に対し,本件実用新案権を行使することがで きない。」(5) 原判決13頁19行目の「原告が」から20行目「共同考案ではないから,」までを「被控訴人の従業員のA及びBが考案したものであり,控訴人ら代表者は考案者ではないから,」と改める。 3 争点5(控訴人は先使用による通常実施権を有するか,又はセフト社の先使用による通常実施権を援用することができるか)について次のとおり原判決を訂正し,当審における当事者の補充主張を付加するほか,原判決の「事実及び理由」の第3の5記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 原判決の訂正ア原判決14頁20行目の「アイディア」を「アイデア」と改める。 イ原判決15頁3行目から5行目までを次のとおり改める。 「 そして,控訴人は,セフト社から同社が製造した被告各製品を全て購入して他に販売したものであるから,本件実用新案権についてのセフト社の先使用による通常実施権を援用する。」⑵ 当審における当事者の補充主張【控訴人の主張】原判決は,控訴人らが被告各製品の製造,販売等を開始したのは平成28年5月であり,本件試作品が作成され,試着された平成27年3月及び同年4月から1年以上を要したことにも照らせば,本件出願日である同年5月11日当時, が被告各製品の製造,販売等を開始したのは平成28年5月であり,本件試作品が作成され,試着された平成27年3月及び同年4月から1年以上を要したことにも照らせば,本件出願日である同年5月11日当時,本件考案の実施に当たる被告各製品の事業に係る控訴人らの即時実施の意図が客観的に認識される態様,程度に表明されていたと認めることはできないから,控訴人らにおいて,その「事業の準備」をしていたということはできない旨判断したが,以下のとおり,原判決の判断は誤りである。 ア特許法79条の先使用権制度の趣旨は,独自発明者による実施の促進と過度の出願を抑止することにあることに鑑みると,「事業の準備」(実用新 案法26条,特許法79条)の有無は,過度に実施がためらわれることがないように,当該発明又は考案を実施できないのであれば無駄となる投資(関係特殊的投資)がされているか否かをメルクマールとして判断すべきであるから(乙108,123),「事業の準備」についての原判決の判断手法には誤りがある。 しかるところ,控訴人は,本件試作品の作成費用として4万円及び本件試作品の試着会の開催に向け人件費を含めた諸経費を支出したこと(乙9,16の8,109),本件試作品(乙18)と現実に販売された販売品(甲7)は,共に本件考案の技術的範囲に含まれるものであり,構成要件部分については,本件試作品から販売品へ全く変更がなく同一であることからすれば,控訴人は,本件試作品に具現された考案を実施できないのであれば無駄となる投資(関係特殊的投資)をしたものといえるから,本件試作品の完成及び試着会の実施の時点においては,控訴人は本件考案の実施である「事業の準備」をしていたというべきである。 イ(ア) また,仮に本件考案の実施である「事業の準備」をしていたというためには 完成及び試着会の実施の時点においては,控訴人は本件考案の実施である「事業の準備」をしていたというべきである。 イ(ア) また,仮に本件考案の実施である「事業の準備」をしていたというためには,即時実施の意図が客観的に認識される態様,程度に表明されていることを要するとしても,控訴人は,本件試作品の完成から被告各製品の製造及び販売までを最短のスケジュールで行っているから,被告各製品の販売開始時期が平成28年5月であることは,控訴人が本件出願日時点に「事業の準備」をしていたことを否定すべき理由にはならない。 すなわち,空調服は,春夏シーズンに販売される季節物商品であり,しかも,製造を製造委託先に発注してから入荷までに通常8か月,最短でも6か月は必要である。「空調服の製造・販売スケジュール」の一例を挙げると,「製品の発注」は,翌年1月からの販売が可能となるよう4月中旬頃(年内入荷分)に開始されて,11月中旬まで行われ,「カタログ 作成」(9月頃~翌年2月頃),「製品の製造」(1月頃~翌年6月頃),「製品の入荷」(12月頃~翌年7月頃)を経て,「製品の販売」(翌年1月頃~8月頃)に至る。このように空調服の製造委託先への発注から入荷まで最短でも6か月は必要であり,控訴人が平成27年3月31日に本件試作品を完成した時点では,本件試作品を同年製品モデルとして販売することは不可能であったため,次年度の平成28年製品モデルとして,最短のスケジュールで間に合わせて同年5月から被告各製品の販売を行ったものである。 また,控訴人ら代表者は,平成27年3月4日に乙11図面をゼハロスに送付した後,ゼハロスのDに電話で,フルハーネス対応空調服の量産化を行う意思表示をし(乙110),同月26日,空調服の会で,フルハーネス対応空調服の量産 ,平成27年3月4日に乙11図面をゼハロスに送付した後,ゼハロスのDに電話で,フルハーネス対応空調服の量産化を行う意思表示をし(乙110),同月26日,空調服の会で,フルハーネス対応空調服の量産化を行う意思表示をした(乙60,110)。 (イ) 以上のとおり,①控訴人ら代表者は,少なくとも平成27年3月には,本件試作品の量産化の確定的意思を,社内のみならず,外部にも表明し,かつ,その意思に基づいて,最短のスケジュールで量産が実行されたこと(前記(ア)),②本件試作品と現実に販売された販売品(甲7)は,共に本件考案の技術的範囲に含まれるものであり,構成要件部分については,本件試作品から販売品へ全く変更がなく同一であること(前記ア)からすると,本件試作品の完成及び試着会の実施後の本件出願日(同年5月11日)の時点には,本件試作品は即時実施可能な状況にあり,即時実施の意図が客観的に認識される態様,程度に表明されていたといえるから,控訴人は,本件考案の実施である「事業の準備」をしていたというべきである。 これと異なる原判決の判断は誤りである。 (ウ) この点に関し被控訴人は,本件試作品と販売品とは,①逆玉ポケット,②ファン落下防止用メッシュ,③取出筒の固定,④取出し筒が長方 形という4点の相違点が存在するから,本件試作品が作成されたからといって,「事業の準備」があったとはいえない旨主張する。 しかし,①は「ポケットにいれたものが落ちない」というもの,②は「ファンが落下しないようにする目的」のもの,③は「取出し筒の固定手段」,④は命綱を通す便宜の目的のものであり,①ないし④の本件試作品から販売品への変更点は,いずれも,ファン付き作業服の背中に命綱取出し用の取出し筒を設けるとともに,この取出し筒を 取出し筒の固定手段」,④は命綱を通す便宜の目的のものであり,①ないし④の本件試作品から販売品への変更点は,いずれも,ファン付き作業服の背中に命綱取出し用の取出し筒を設けるとともに,この取出し筒を密閉可能にし,取出し筒から空気が漏れるのを防止するという本件考案の意義(【0005】)とは無関係であり,格別の技術的意義を有しないから,被控訴人の上記主張は失当である。 【被控訴人の主張】ア 「事業の準備」の有無は,研究開発から事業の開始に至る一連の経緯を総合考慮して,即時実施の意図が客観的に認識される態様,程度に表明されているかどうかによって判断すべきであり,「投資」は考慮要素の1つにすぎず,「関係特殊的投資」なるものを特別に重視する根拠はないから,「事業の準備」の有無についての原判決の判断手法の誤りをいう控訴人の主張は失当である。 イ控訴人は,本件試作品の完成及び試着会の実施後の本件出願日の時点には,本件試作品は即時実施可能な状況にあり,即時実施の意図が客観的に認識される態様,程度に表明されていたといえるから,本件考案の実施である「事業の準備」をしていた旨主張する。 しかしながら,まず,平成27年3月の本件試作品の作成から平成28年5月の被告各製品の販売開始までの期間は,約14か月であり,控訴人の主張する通常8か月(最短6か月)の約2倍であって,被告各製品の販売開始月である5月は,一般に空調服の販売を開始するとされる2月ないし3月を過ぎている。これは,本件試作品から製品化までに多数の技術上, 工程上の問題を解決する必要があったなどの理由で仕様書の確定に時間がかかったことを示唆するものであり,少なくとも本件出願日(平成27年5月11日)の時点で,本件考案につき即時実施の意図の客観的表明があったとはいえない。ま 要があったなどの理由で仕様書の確定に時間がかかったことを示唆するものであり,少なくとも本件出願日(平成27年5月11日)の時点で,本件考案につき即時実施の意図の客観的表明があったとはいえない。また,本件出願日の時点において,控訴人が挙げる「空調服の製造・販売スケジュール」記載の製品発注,カタログ作成,委託先での製造,製品の入荷,製品の販売はいずれも行われていない。 次に,空調服の製品化に当たっては,本件考案の構成要件の構造だけでなく,それ以外の構造の問題もクリアする必要があり,本件試作品を作成した時点では,これらの点は不確定であり,実際,販売品には,本件試作品にはない,逆玉ポケット,ファン落下防止用メッシュ,取出筒の固定手段,取出筒が長方形(元は,台形)という,種々の付加・変更がされている(乙54)。こうした付加・変更は,フルハーネス対応型空調服が高所作業用であることや,本件試作品の技術的問題を踏まえたものであり,製品化までに,幾多もの設計変更,実験,試作が必要であったことを示すものであるから,本件出願日に即時実施可能な状況にあったとはいえない。 さらに,控訴人ら代表者が送付したとする乙11図面は詳細不明なポンチ絵レベルの図面であり,控訴人ら代表者において,乙11図面の作成から一足飛びにゼハロスDに電話をして量産化について述べたとは考え難く,仮にそのように述べたとしても,非現実的な絵空事にすぎず,およそ即時実施の意図の客観的表明には当たらない。 したがって,控訴人の上記主張は理由がない。 4 争点6(控訴人は黙示の実施許諾による実施権を有するか)について原判決の「事実及び理由」の第3の6記載のとおりであるから,これを引用する。 5 争点7(被控訴人の権利行使が権利の濫用に当たるか)について次のとおり当審における当事者の補 有するか)について原判決の「事実及び理由」の第3の6記載のとおりであるから,これを引用する。 5 争点7(被控訴人の権利行使が権利の濫用に当たるか)について次のとおり当審における当事者の補充主張を付加するほか,原判決の「事実 及び理由」の第3の7記載のとおりであるから,これを引用する。 (当審における当事者の補充主張)【控訴人の主張】本件取引基本契約の当事者であるセフト社は,控訴人の親会社であり,両者の本店所在地は同一であり,かつ,セフト社の代表取締役及び専務取締役はいずれも控訴人の代表取締役であるから,両者は実質的に一体であり,被控訴人も,かかる事実を前提として,控訴人とセフト社を特に区別することなく,控訴人らとの取引を継続してきたことからすると,本件取引基本契約の保護範囲は控訴人にも及ぶと解すべきである。 そして,①被控訴人は,本件取引基本契約14条及び5条6項に違反して,本件実用新案登録を得たこと,②被控訴人は,自らが控訴人らの製造委託先であることを奇貨として,本件実用新案登録を得た事実を秘したまま,控訴人から被告各製品に関する情報を取得し,それを原告製品に利用し,開発費用の抑制やその製品価値の向上に利用したこと,③同時に,被控訴人は,控訴人らがフルハーネス対応空調服を開発していることを知りながら,本件実用新案登録を得た事実を秘匿し続け,最終的に,契約違反を媒介として取得した本件実用新案権に基づく権利行使を控訴人らに行い,自らの製品価値の向上に利用した被告各製品の販売停止や損害賠償を請求していることを総合考慮すると,被控訴人による本件実用新案権に基づく権利行使は,権利の濫用に当たり,許されないというべきである。 【被控訴人の主張】控訴人とセフト社は,役員等が一部共通していても,別法人である以上,契約 ,被控訴人による本件実用新案権に基づく権利行使は,権利の濫用に当たり,許されないというべきである。 【被控訴人の主張】控訴人とセフト社は,役員等が一部共通していても,別法人である以上,契約当事者として同一視されることはないし,被控訴人が,両社を区別せず取引してきた事実はないことなどからすると,本件取引基本契約の効力は,そもそも控訴人に及ばない。 控訴人が権利濫用の根拠として挙げる①及び③の事情については,本件取引 基本契約14条,5条6項は,被控訴人による知的財産権の取得を制限する内容ではないから,本件実用新案権の取得が上記条項違反であるということはあり得ないし,被控訴人が契約違反を媒介として本件実用新案権を取得したということもできない。 また,②の事情については,被控訴人は本件考案を完成させて本件出願を行い,本件実用新案権を取得したものであり,その後の被控訴人による原告製品の開発は,本件実用新案権の取得とは別個の問題であるから,原告製品の開発に関する事情は本件実用新案権の権利行使が権利濫用に当たることの根拠とはならない。 したがって,被控訴人による本件実用新案権に基づく権利行使が権利の濫用に当たるとの控訴人の主張は,理由がない。 6 争点8(差止めの必要性)について【被控訴人の主張】控訴人らによる被告製品1,2,4及び5の販売は本件実用新案権侵害に,被告製品3及び6の販売は本件実用新案権の間接侵害に該当するから,控訴人による被告各製品の譲渡(販売)及び譲渡の申出の差止めの必要性がある。 これに対し控訴人は,控訴人らが被告各製品の仕様について設計変更をしたことにより,被告各製品は,本件考案の技術的範囲に属さなくなったから,控訴人による被告各製品の譲渡又は譲渡の申出の差止めの必要性はない旨主張する。 しかし が被告各製品の仕様について設計変更をしたことにより,被告各製品は,本件考案の技術的範囲に属さなくなったから,控訴人による被告各製品の譲渡又は譲渡の申出の差止めの必要性はない旨主張する。 しかし,控訴人のウェブサイト(甲82)には,被告各製品が掲載されたままになっており,控訴人が設計変更を行った形跡はなく,控訴人が被告各製品を販売している事実も販売するおそれも否定されないというべきであるから,控訴人の上記主張は失当である。 【控訴人の主張】控訴人らは,報告書(乙122)記載のとおり,被告各製品の仕様について 設計変更を実施し,設計変更後の被告各製品は,本件考案の構成要件Dを充足せず,本件考案の技術的範囲に属さなくなったから,控訴人による被告各製品の譲渡又は譲渡の申出は,本件実用新案権を侵害せず,そのおそれも存在しない。また,控訴人らは,被告各製品の仕様を設計変更前のものに戻すことはない。 したがって,控訴人による被告各製品の譲渡又は譲渡の申出の差止めの必要性はない。 7 争点9(被控訴人の損害額)について以下のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第3の8記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 原判決17頁12行目の「本件対象期間」を「平成29年6月13日から令和元年5月31日までの期間(以下「本件対象期間」という。)」と改める。 ⑵ 原判決19頁16行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「カ小括以上によれば,被控訴人は,控訴人に対し,本件実用新案権侵害の共同不法行為による損害賠償請求権に基づき,被控訴人の損害額1億0478万1600円の一部である9185万4000円及びうち36万円に対する平成29年7月25日(訴状送達日の翌日)から,うち9149万4000円に対する平 償請求権に基づき,被控訴人の損害額1億0478万1600円の一部である9185万4000円及びうち36万円に対する平成29年7月25日(訴状送達日の翌日)から,うち9149万4000円に対する平成31年3月1日(同月22日付け原審原告準備書面(6)により拡張された対象期間の末日の翌日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。」第4 当裁判所の判断 1 本件明細書の記載事項について⑴ 本件明細書(甲2)の「考案の詳細な説明」には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図1ないし7については,別紙明細書図面を参照)。 ア 【技術分野】【0001】本考案は,高温,高湿度の環境下にあっても熱中症等を心配することなく作業のできる空調服,特に高所作業の際に落下防止用ハーネスを着用したまま使用することのできるハーネス型安全帯の着用可能な空調服の構造に関するものである。 【背景技術】【0002】従来,高温条件下の空調服は,種々提案されている。例えば,空調服の両側面に開口部を設け,この開口部にファンを臨ませて配設し,携帯可能な電源により駆動されるモータにより前記ファンを駆動することにより,外気を空調服内に取り入れ,袖口或いは首周りから排出して冷却する形式のものが存在する。 更に,空調服の一部に外気取り入れ口を設け,空調服の開口部に配設したファンで,外気取り入れ口,袖口,首周りから取り入れた外気を服内を循環させた後に排出する形式のものも存在する。 【考案が解決しようとする課題】【0004】安全帯には,腰ベルト型安全帯と図7に示すようなハーネス型安全帯の2種類が有り,高所作業等に使用されるハーネス型安全帯を装着しようとした場合に背中部分に 決しようとする課題】【0004】安全帯には,腰ベルト型安全帯と図7に示すようなハーネス型安全帯の2種類が有り,高所作業等に使用されるハーネス型安全帯を装着しようとした場合に背中部分に命綱(ランヤード)16が配置されている為に従来の空調服では使用することができないと云う欠点が存在した。 【0005】この考案は,上記したような不都合を解消するためになされたもので,空調服の背中部分に命綱取出し用の取出し筒を設けると共に,この取出し筒を密封可能に構成し,取出し筒から空気が漏れるのを防止して,冷 却効率を損なうことのないハーネス型安全帯の着用可能な空調服を提供するものである。 イ 【課題を解決するための手段】【0006】この考案は,以下のような内容である。 (1)空調服の一部に設けられた開口部と,この開口部に臨んで配設したファンと,前記ファンを駆動するモータと,前記モータを駆動する携帯可能な電源と備え,前記ファンを駆動することにより,外気を空調服内に取り入れ,袖口或いは首周りから排出する空調服であって,前記空調服の背中部分に命綱取出し用の先端の開口した取出し筒を設けたことを特徴とする。 (2)(1)に記載のハーネス型安全帯の着用可能な空調服において,前記取出し筒は,筒部先端近傍に口紐が設けられており,前記口紐により取出し筒から引き出した命綱の周囲を緊縛して,取出し筒の開口部を密閉することを特徴とする。 (3)(1)または(2)に記載のハーネス型安全帯の着用可能な空調服において,前記取出し筒の周囲には,非使用時に取出し筒を収納可能な収納片が設けられたことを特徴とする。 (4)(3)に記載のハーネス型安全帯の着用可能な空調服において,前記収納片は,面ファスナーにより空調服本体に対し 周囲には,非使用時に取出し筒を収納可能な収納片が設けられたことを特徴とする。 (4)(3)に記載のハーネス型安全帯の着用可能な空調服において,前記収納片は,面ファスナーにより空調服本体に対して開閉可能であることを特徴とする。 ウ 【考案の効果】【0007】本願考案によれば,空調服の一部に設けられた開口部と,この開口部に臨んで配設したファンと,前記ファンを駆動するモータと,前記モータを駆動する携帯可能な電源と備え,前記ファンを駆動することにより,外気 を空調服内に取り入れ,袖口或いは首周りから排出する空調服であって,前記空調服の背中部分に命綱取出し用の先端の開口した取出し筒を設けたので,ハーネス型安全帯を着用しても命綱を支障なく取り出すことができる。したがって,従来では空調服の着用が困難であった場合でも支障なく空調服を着用でき,建設現場等で熱中症の予防が可能である。 また,前記取出し筒は,筒部先端近傍に口紐が設けられており,前記口紐により取出し筒から引き出した命綱の周囲を緊縛して,取出し筒の開口部を密閉するので,取出し筒から空気が漏れるのを防止することができる。 したがって,空調服内の本来の空気の流れを阻害することなく,冷却効率を損なう虞がない。 また,前記取出し筒の周囲には,非使用時に取出し筒を収納可能な収納片が設けられたので,取出し筒を使用しない場合には,完全に収納することにより通常の空調服と同様に使用することができ,取出し筒が作業の支障となる虞がない。 また,前記収納片は,面ファスナーにより空調服本体に対して開閉可能であるので,取出し筒を使用する際には開成して取出し筒を引き出し,取出し筒を使用しない場合には閉成して取出し筒を収納することができる。 また,面ファスナーを使用したので作業性に優 本体に対して開閉可能であるので,取出し筒を使用する際には開成して取出し筒を引き出し,取出し筒を使用しない場合には閉成して取出し筒を収納することができる。 また,面ファスナーを使用したので作業性に優れると共に,空調服からの突出量を少なくすることができる。 エ 【考案を実施するための形態】【0009】本考案は,空調服の一部に設けられた開口部と,この開口部に臨んで配設したファンと,前記ファンを駆動するモータと,前記モータを駆動する携帯可能な電源と備え,前記ファンを駆動することにより,外気を空調服内に取り入れ,袖口或いは首周りから排出する空調服であって,前記空調服の背中部分に命綱取出し用の先端の開口した取出し筒を設けたので,ハ ーネス型安全帯を着用していても背中から命綱を支障なく取り出すことができる。したがって,従来の空調服が着用できない場合でも空調服を着用でき,建設現場等で熱中症の予防が可能である。 【実施例1】【0010】以下,一実施の形態を示す図面に基づいて本考案を詳細に説明する。本考案の一実施例であるハーネス型安全帯の着用可能な空調服の使用状態を示す斜視図,同ハーネス型安全帯の着用可能な空調服の取出し筒を示す説明図,同ハーネス型安全帯の着用可能な空調服の取出し筒を示す斜面図である。ここで,本考案のハーネス型安全帯の着用可能な空調服10は,空調服の両サイド下端に設けられた開口部11と,この開口部11に臨んで配設したファン12と,ファン12を駆動する図示しないモータと,このモータを駆動する図示しない携帯可能な電源と備え,前記ファン12を駆動することにより,外気を空調服内に取り入れ,袖口或いは首周りから排出する空調服であって,前記空調服の背中部分に命綱取出し用の先端の開口した取出し筒13を設けたものであ 源と備え,前記ファン12を駆動することにより,外気を空調服内に取り入れ,袖口或いは首周りから排出する空調服であって,前記空調服の背中部分に命綱取出し用の先端の開口した取出し筒13を設けたものである。 【0011】取出し筒13は,図2,3に示すように基端が空調服に固定されると共に先端の開口した筒状をしており,筒部先端近傍に口紐14が収納可能な環状袋15が形成されており,環状袋15に設けられた切欠き部15aから口紐14の両端部が延出されている。 この口紐14により取出し筒13から引き出した命綱16の周囲を図4に示すように緊縛して,取出し筒13の開口部を密閉することができる。 【0012】また,図3,5に示すように取出し筒13の周囲の空調服側には,非使用時に取出し筒13を収納可能な収納片17が設けられている。収納片1 7は,略長方形をしており,一片が空調服に対して開閉可能にヒンジ結合されている。更に,取出し筒13の基端部周辺の空調服には,帯状の面ファスナー18a,18b,18cがそれぞれ直角方向に取り付けられている(図5参照)。また,収納片17の面ファスナー18a,18b,18cに対向する部位にもそれぞれ帯状の面ファスナー19a,19b,19cが取り付けられている。したがって,図6に示すように収納片17は,面ファスナーにより空調服本体に対して開閉可能であり,閉じた際に取出し筒13及び口紐14を空調服との間に収納することができる。 【0013】また,図3に示すように取出し筒13は,引き出した際に開成した収納片17の内側に取り付けられた面ファスナー19bと対向する位置に面ファスナー20が取り付けられており,この面ファスナー19bと20を接着することにより,収納片17を取出し筒13の側面に固定できる 納片17の内側に取り付けられた面ファスナー19bと対向する位置に面ファスナー20が取り付けられており,この面ファスナー19bと20を接着することにより,収納片17を取出し筒13の側面に固定できる。このように形成することで,取出し筒13の使用時に収納片17がバタ付いて,邪魔になることがない。更に,取出し筒13の内側に一対の面ファスナーを設け,互いに接着させて取出し筒13を閉じるように構成してもよい。 【0014】また,本考案の空調服には,図1に示すように頭部を覆うフード21が取り付けられている。したがって,ヘルメットを被ったままでも空調服を着用できると共に,ファン12が取り入れた外気を首周り,頭部にまで供給して冷却することができる。 【0015】図7は,ハーネス型安全帯を装着した場合を示す説明図で,命綱16が作業者の背中部分に取り付けられている。そのため,従来の空調服では着用できなかった。 【0016】本考案は上述の実施例に限定されることなく,実用新案登録請求の範囲の記載に基づいて種々の設計変更が可能である。 ⑵ 前記⑴の記載事項によれば,本件明細書には,本件考案に関し,次のとおりの開示があることが認められる。 ア空調服の両側面に設けた開口部に臨んで配設したファンを,携帯可能な電源により駆動するモータを駆動することにより,外気を空調服内に取り入れ,袖口或いは首周りから排出して冷却する形式の従来の空調服は,高所作業等に使用される落下防止用のハーネス型安全帯にはその背中部分に命綱(ランヤード)が配置されているため,ハーネス型安全帯を着用したまま使用できないという欠点があった(【0001】,【0002】,【0004】)。 イ 「本考案」は,このような不都合を解消し,空調服の背中部分に命綱取 置されているため,ハーネス型安全帯を着用したまま使用できないという欠点があった(【0001】,【0002】,【0004】)。 イ 「本考案」は,このような不都合を解消し,空調服の背中部分に命綱取出し用の取出し筒を設けると共に,この取出し筒を密封可能に構成し,取出し筒から空気が漏れるのを防止して,冷却効率を損なうことのないハーネス型安全帯の着用可能な空調服を提供することを課題とするものである(【0005】)。 「本考案」は,この課題を解決するための手段として,空調服の背中部分に命綱取出し用の先端の開口した取出し筒を設け,前記取出し筒は,筒部先端近傍に口紐が設けられており,前記口紐により取出し筒から引き出した命綱の周囲を緊縛して,取出し筒の開口部を密閉する構成を採用した(【0005】)。 「本考案」は,空調服の背中部分に命綱取出し用の先端の開口した取出し筒を設けたので,ハーネス型安全帯を着用しても命綱を支障なく取り出すことができるため,従来では空調服の着用が困難であった場合でも支障なく空調服を着用でき,建設現場等で熱中症の予防が可能であり,また, 前記取出し筒は,筒部先端近傍に口紐が設けられており,前記口紐により取出し筒から引き出した命綱の周囲を緊縛して,取出し筒の開口部を密閉するので,取出し筒から空気が漏れるのを防止し,空調服内の本来の空気の流れを阻害することなく,冷却効率を損なうおそれがないという効果を奏する(【0007】)。 2 争点1(被告製品1,2,4及び5の構成要件Dの充足性)について以下のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第4の2に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決36頁7行目「(前記1⑴ア(イ))」を「(前記1⑵イ)」と改める。 (2) 原判決36頁25行目,2 ,原判決の「事実及び理由」の第4の2に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決36頁7行目「(前記1⑴ア(イ))」を「(前記1⑵イ)」と改める。 (2) 原判決36頁25行目,26行目,37頁7行目の各「被告製品」を「被告製品1,2,4及び5」と改める。 3 争点3(被告製品3及び6は本件登録実用新案に係る物品の製造にのみ用いる物(実用新案法28条1号)か)について以下のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第4の3に記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 原判決37頁13行目末尾に行を改めて,次のとおり加える。 「 そして,被告各製品の販売単価及びこれらに対応する通常の空調服の型番及び販売単価は次のとおりである(乙91)。 被告各製品対応する通常の空調服 販売単価型番販売単価被告製品11万7800円BP500N1万5400円被告製品21万2600円P500N1万0200円被告製品37300円KU905404900円被告製品41万7800円BM500U1万5400円被告製品51万2600円M500U1万0200円 」⑵ 原判決37頁14行目「そして,」を削り,同頁16行目から17行目にかけての「前記1⑴カ(イ)認定のとおり,」を削る。 ⑶ 原判決37頁20行目の「同(ウ)認定のとおり,被告の空調服のカタログに,」を「被告各製品のカタログ(甲5)には,」と改める。 4 争点4(無効の抗弁の成否)について控訴人は,本件考案に係る本件実用新案登録には,冒認出願(争点4-1)又は共同出願違反(争点4-2)の無効理由があり, タログ(甲5)には,」と改める。 4 争点4(無効の抗弁の成否)について控訴人は,本件考案に係る本件実用新案登録には,冒認出願(争点4-1)又は共同出願違反(争点4-2)の無効理由があり,実用新案登録無効審判により無効とされるべきものであるから,実用新案法30条,特許法104条の3第1項の規定により,被控訴人は,控訴人に対し,本件実用新案権を行使することができない旨主張するので,以下において判断する。 ⑴ 認定事実以下のとおり訂正するほか,原判決27頁5行目から32頁5行までに記載のとおりであるから,これを引用する。 ア原判決27頁5行目から15行目までを次のとおり改める。 「 前記第2の2の前提事実と証拠(甲3,4,8,14,16ないし18,20,25,27,29,33,35,37ないし41,43,45,46,62,73ないし76,乙3,4,9ないし14,16ないし23,33,35ないし40,45ないし49,59,61,66,107,110,118(枝番のあるものは枝番を含む。),証人A,証人B,証人C)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。 ア被控訴人及び控訴人らの取引関係等(ア) 被控訴人は,昭和24年1月8日に設立された,ユニフォーム・カジュアルウェアの企画・製造・販売,事務機器・設備・制御機器の設計・開発等を業とする株式会社である。 被告製品67300円KU905504900円 (イ) 控訴人は,平成16年2月2日に設立された,ファンを用いた衣料品,寝具,座布団の開発,製造,販売等を業とする株式会社である。 セフト社は,平成3年9月19日に設立された,空調服の開発,製造,販売等を業とする株式会社であり,控訴人の親会社である。 座布団の開発,製造,販売等を業とする株式会社である。 セフト社は,平成3年9月19日に設立された,空調服の開発,製造,販売等を業とする株式会社であり,控訴人の親会社である。 X1は,控訴人及びセフト社の代表取締役である。 (ウ) 被控訴人は,平成14年9月頃,セフト社との間で,空調服の開発について意見交換を行い,空調服のうち,ファンはセフト社が,服本体は被控訴人が開発を行うこととなった。その際,被控訴人は,セフト社から,空調服の試作品を示された。 被控訴人は,同年10月頃から,空調服の開発を開始した。 (エ) 控訴人と被控訴人は,平成17年1月20日,控訴人及び被控訴人間の売買,委託業務等の取引に関し,取引基本契約(乙20)を締結した。 同取引基本契約は,(省略)などの条項を含むものである。 また,被控訴人は,平成18年頃から,セフト社が有する特許権に係る発明ないし特許出願中の発明の実施品であるファンを組み合わせた空調服を自社製品(甲62の1ないし7)として販売するようになった。 (オ) 被控訴人とセフト社は,平成24年11月20日,セフト社が発明・開発したDIRECTCOOLINGSYSTEM(以下「DC」という場合がある。)の応用製品である「空調服」の作業衣・ユニフォームの製造及び販売に関し,本件取引基本契約(乙21)を締結した。 本件取引基本契約の契約書には,次のような記載がある(同契約書中,「甲」は「セフト社」を,「乙」は「被控訴人」を指す。)。 (省略)イ原判決27頁16行目の「ウ」を「イ」と改める。 ウ原判決29頁14行目の「エ」を「ウ」と改める。 エ原判決30頁3行目の「アイディア」を「アイデア」と,同頁11行目か (省略)イ原判決27頁16行目の「ウ」を「イ」と改める。 ウ原判決29頁14行目の「エ」を「ウ」と改める。 エ原判決30頁3行目の「アイディア」を「アイデア」と,同頁11行目から32頁5行目までを次のとおり改める。 「エ本件出願から本件訴訟に至る経緯等(ア) 控訴人は,平成27年4月17日,G特許事務所に対し,本件依頼書1に基づいて作成されたサンプルの写真(前記イ(オ)))を添付した提案書(甲18)を交付し,実用新案登録出願を依頼した。 同事務所所属の弁理士は,同年5月11日,被控訴人の代理人として,本件出願をした。 (イ) セフト社は,平成27年6月30日,ハーネス型安全帯を着用した状態であっても冷却効果を発揮することができる高所作業用の空調服に関する発明について,特許出願(特願2015-130592号。乙19,118)をした。 (ウ) 被控訴人は,平成27年7月1日,本件実用新案登録を受けた。 (エ)a セフト社は,控訴人らが開発していたフルハーネス対応空調服に関し,被控訴人に対し,平成27年7月29日にハーネス型安全帯のフックかけの仕様(乙35の1,2),同年10月9日に空調服及びフックかけの価格(乙36)に係る情報を提供した。 b セフト社は,平成27年10月14日,被控訴人に対し,本件取引基本契約17条1項に基づき契約期間満了により現契約の終結を申し出る,セフト社が作成中の契約内容の見直し案について被控訴人と協議した後に新契約を再締結したい旨を記載した「取引基本契約の内容の見直しに伴う現契約の終結の申し出等について」と題する書面(甲29,73)を送付した。 セフト社のEは,同日,Aに対し,契約見直し案を追って送付する旨のメール(乙46)を送信した。 その後,セフ 終結の申し出等について」と題する書面(甲29,73)を送付した。 セフト社のEは,同日,Aに対し,契約見直し案を追って送付する旨のメール(乙46)を送信した。 その後,セフト社は,同月21日に控訴人らが開発していたフルハーネス対応空調服の品番(乙37),同年11月9日にポケットの逆玉仕様(乙38の1,2),同年12月17日にパターンデータ(乙39の1,2),平成28年1月29日にフルハーネス対応空調服の写真(乙40)等に係る情報を被控訴人に提供した。 (オ) 控訴人は,平成27年10月30日,セフト社との間で,セフト社の製造する製品の継続的売買に係る商品取引基本契約(乙47,61)及びセフト社の商品の物流業務等に係る業務委託基本契約(乙48)を締結した。 その後,控訴人ら代表者は,同年11月頃,Aと電話で話をした。 (カ) セフト社は,平成28年3月2日,被控訴人に対し,「空調服の製造販売に関する取引基本契約書(案)」(甲41,74)を送付した。その当時,セフト社と被控訴人は,契約見直しの協議を継続していた。 (キ) 控訴人ら代表者は,平成28年3月3日,Aも出席していた空調服の会において,特許に関するものについてはセフト社が管理しているが,新たなアイデアが出てきた場合には必ず,事前に連絡いただきたい,特許出願の際には,過去に出願された特許と比較して進歩性などが確認されるため,空調服の会に所属する会員が出願した特許によって新たな出願に支障が生じる場合がある,今回は問題にならなかったが,被控訴人がハーネスの背中部分について実用新案登録出願をした,空調服の会に所属する会員の利益及びブランドを守ることにつながるから,会員の中からこのようなことにならないよう必ず事前に相談して欲しいなどの発言(乙22)をし 中部分について実用新案登録出願をした,空調服の会に所属する会員の利益及びブランドを守ることにつながるから,会員の中からこのようなことにならないよう必ず事前に相談して欲しいなどの発言(乙22)をした。 (ク) セフト社は,平成28年5月から,平成27年10月30日付けの商品取引基本契約に基づき,被告各製品を製造し,その全てを控訴人に販売し,同日付け業務委託基本契約に基づき,その物流業務等を控訴人に委託するようになった。 また,控訴人は,平成28年5月から,セフト社から購入した被告各製品の販売を開始した。 (ケ) セフト社は,平成28年10月27日付け内容証明郵便で,被控訴人に対し,被控訴人が本件取引基本契約5条2項に違反し,セフト社がその是正を催告したが,その違反が是正されなかったため,16条1項の規定により,本件取引基本契約を解除する旨の通知(甲75)をした。 (コ) 被控訴人は,平成29年1月10日,本件実用新案登録の実用登録新案請求の範囲について,請求項1を削除し,請求項2ないし4を訂正する本件訂正をした。 (サ)a 被控訴人は,平成29年3月21日,控訴人に対し,控訴人による空調服の販売が不正競争防止法2条1項1号,3号の不正競争行為に該当する旨主張して,不正競争行為差止等請求訴訟(東京地方裁判所平成29年(ワ)第9335号。乙107)を提起した。 b 控訴人は,平成29年4月20日,被控訴人の有する「空調風神服」の文字からなる登録商標について,商標法51条1項に基づく不正使用取消審判(甲76の1)を請求した。 (シ)a 被控訴人の代理人弁護士は,平成29年6月13日到達の内容証明郵便で,控訴人の代理人弁護士に対し,被告各製品は本件実用新案権の侵害又は間接侵害に該当する旨通 判(甲76の1)を請求した。 (シ)a 被控訴人の代理人弁護士は,平成29年6月13日到達の内容証明郵便で,控訴人の代理人弁護士に対し,被告各製品は本件実用新案権の侵害又は間接侵害に該当する旨通知(甲8の1,2)するとともに,同日到達の内容証明郵便で,本件訂正後の請求項 2ないし4について新規性等を否定する先行技術文献等を発見できない旨の特許庁作成の実用新案技術評価書(甲8の3)を送付した(甲8の4)。 b 被控訴人は,平成29年6月30日,本件訴訟を提起した。」⑵ 事実認定の補足以下のとおり訂正するほか,原判決32頁7行目から35頁末行までに記載のとおりであるから,これを引用する。 ア原判決32頁9行目の「前記⑴ウの認定事実に係る」を削る。 イ原判決33頁8行目の「本件考案は」から10行目の「としての実績」までを「平成15年,平成16年及び平成28年に「繊維ニュース」(甲24の1ないし3)で発表された被控訴人のユニフォーム売上高は,全国のユニフォームメーカーの中で10位前後であったこと」と改める。 ウ原判決34頁2行目の「前記⑴ウ(エ)認定のとおり,」を削り,同頁3行目の「撮影」を「保管」と改め,同頁13行目の「前記⑴ウ(ウ)」を「前記⑴イ」と改め,同頁19行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「 さらに,控訴人は,ピース一覧表の「KI−A60−B」及び「KI−A60−F」の更新日時(平成27年2月5日)と作成日時(同月3日)は異なる日であり,更新日時と作成日時が連動して変更されていないことに照らすと,ピースデータを修正した場合に,作成日時及び更新日時が連動して変更されるものとは必ずしもいえないから,ピース一覧表における本件依頼書1に基づくサンプルに係るピース作成日時(同月6日)がCがサ すと,ピースデータを修正した場合に,作成日時及び更新日時が連動して変更されるものとは必ずしもいえないから,ピース一覧表における本件依頼書1に基づくサンプルに係るピース作成日時(同月6日)がCがサンプルを作成した日(同月2日)より後の日付である点は不自然である旨主張する。 しかしながら,ピース一覧表におけるピースデータの更新日時と作成日時が異なる日付のものがあることと,ピースデータを修正した場合に保存されるピースの作成日時又は更新日時が,結果的にサンプルの作成 日よりも後の日付となることとは別個の事柄であるから,控訴人の上記主張は採用することができない。」エ原判決34頁25行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「(キ) A及びBの供述について控訴人は,①A及びBは,原審の証人尋問において,シフトノブカバーに本件考案の着想を得たという具体的な考案の経過を供述したが,この点については,尋問前の被控訴人の主張にも上記両名の陳述書にも記載されていなかったものであり,本件考案の着想の具体的な経過は重要な事実であるにもかかわらず,このような主張立証の経過となるのは不自然であるから,上記供述はそもそも信用することができない,②Aは,内側タイプを着想した経過について,Bと2人で考えた,代理店から話があった,Bがシフトレバーについて言及した,このアイデアを選択したのが誰かはよく覚えていない,シフトレバーを模すことについてはBから話が出たなどと供述し,その供述に一貫性がない旨主張する。 しかしながら,①については,Bの陳述書(甲25)及びこれを引用するAの陳述書(甲26)には,内側タイプ及び外側タイプが検討の対象となり,内側タイプを選ぶことになったという経緯など具体的な考案の経過が記載され,その内容は証人尋問における供述と )及びこれを引用するAの陳述書(甲26)には,内側タイプ及び外側タイプが検討の対象となり,内側タイプを選ぶことになったという経緯など具体的な考案の経過が記載され,その内容は証人尋問における供述とも整合しており,証人尋問においてシフトレバーのカバーに着想を得たことについて初めて供述したからといって不自然であるとはいえない。 また,②については,Aは,Bと2人で考えて本件考案の具体的形状に至ったこと,販売店が作成した見本が内側タイプであったこと,シフトレバーのカバーのことはBが言い出したこと,紐で縛る方法はどちらが提案したか覚えていないことを述べたものであり,これらは全体として整合的に理解することができるから,Aの供述に一貫性を 欠くということはできない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。」オ原判決35頁10行目の「前記⑴ウ,オ」を「前記⑴イ及びエ」と,同頁20行目の「前記のとおり」から21行目の「認められることからすると,」までを「本件考案は,高所作業等に使用される落下防止用のハーネス型安全帯にはその背中部分に命綱(ランヤード)が配置されているため,ハーネス型安全帯を着用したまま使用できないという従来の空調服の不都合を解消し,空調服の背中部分に命綱取出し用の取出し筒を設けると共に,この取出し筒を密封可能に構成し,取出し筒から空気が漏れるのを防止して,冷却効率を損なうことのないハーネス型安全帯の着用可能な空調服を提供することを課題とするものであること(前記1⑵),被控訴人は,顧客からハーネス型安全帯の着用可能な空調服ができないかとの要望を受けたことを踏まえて,本件考案に係る空調服の開発に着手したこと(前記(1)イ)に照らすと,その当時,従来の空調服における上記不都合や要望は,取引業者の間で認識され 能な空調服ができないかとの要望を受けたことを踏まえて,本件考案に係る空調服の開発に着手したこと(前記(1)イ)に照らすと,その当時,従来の空調服における上記不都合や要望は,取引業者の間で認識されていたものとうかがわれることからすると,」と改める。 カ原判決35頁末行に行を改めて次のとおり加える。 「 その他,控訴人は,A及びBが本件考案の考案者であることを示す証拠の大部分は,被控訴人の内部資料にすぎず,客観性を欠く旨主張するが,本件出願に至る経過に関する証拠が被控訴人の社内の内部資料であるからといって直ちに客観性を欠くものはいえないから,控訴人の上記主張は採用することができない。他に前記(1)の認定を左右するに足りる証拠はない。」⑶ 争点4-1(冒認出願の無効理由)についてア実用新案法2条1項は,「考案」とは,「自然法則を利用した技術的思想の創作」をいうと規定し,同法26条1項の準用する特許法70条1項は, 「特許請求の技術的範囲は,願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。」と規定していることに鑑みると,「考案者」とは,考案の創作行為に現実に加担した者をいい,「考案者」といえるためには,実用新案登録請求の範囲の記載によって具体化された当該考案の技術的思想(技術的課題及びその解決手段)を着想し,又は,その着想を具体化することに創作的に関与したことを要するものと解するのが相当である。 イそこで検討するに,本件考案の実用新案登録請求の範囲(請求項2)の記載と前記1(2)の本件明細書の開示事項を総合すれば,本件考案の技術的思想は,従来の空調服は,高所作業等に使用される落下防止用のハーネス型安全帯にはその背中部分に命綱(ランヤード)が配置されているため,これを着用したまま使用できな 事項を総合すれば,本件考案の技術的思想は,従来の空調服は,高所作業等に使用される落下防止用のハーネス型安全帯にはその背中部分に命綱(ランヤード)が配置されているため,これを着用したまま使用できないという欠点があったことから,本件考案は,このような不都合を解消し,冷却効率を損なうことのないハーネス型安全帯の着用可能な空調服を提供することを課題とし,この課題を解決するための手段として,空調服の背中部分に命綱取出し用の先端の開口した取出し筒を設け,前記取出し筒は,筒部先端近傍に口紐が設けられており,前記口紐により取出し筒から引き出した命綱の周囲を緊縛して,取出し筒の開口部を密閉する構成を採用することにより,ハーネス型安全帯を着用しても命綱を支障なく取り出すことができるため,従来では空調服の着用が困難であった場合でも支障なく空調服を着用でき,また,前記取出し筒は,筒部先端近傍に口紐が設けられており,前記口紐により取出し筒から引き出した命綱の周囲を緊縛して,取出し筒の開口部を密閉するので,取出し筒から空気が漏れるのを防止し,空調服内の本来の空気の流れを阻害することなく,冷却効率を損なうおそれがないという効果を奏することにあるものと認められる。 しかるところ,前記⑴の認定事実によれば,①被控訴人は,平成26年 9月8日,企画会議において,ハーネス型安全帯を装着して空調服を着ることができないかという顧客からの要望があったこと,東京都では高所作業時にハーネス型安全帯の着用が義務付けられていることを踏まえ,ハーネス型安全帯を着用した状態で使用することができる空調服の開発を行うこととし,空調服の生産管理等の業務に従事していたB及び同業務を所管するユニフォーム事業部の事業部長であったAにおいて,上記開発を担当することになったこと,②A 用することができる空調服の開発を行うこととし,空調服の生産管理等の業務に従事していたB及び同業務を所管するユニフォーム事業部の事業部長であったAにおいて,上記開発を担当することになったこと,②A及びBは,共同で上記開発を進める過程において,空調服の背中部分に筒状のランヤードの出口を設け,その出口を縛ることができるように構成することにより,その出口からの空気の漏れを防ぐというコンセプトの内側タイプの空調服が候補に挙がったこと,③この空調服に係るサンプルの作成を依頼するためにBが平成27年1月28日に作成した本件依頼書1には,本件考案の上記技術的思想を含む本件考案の構成が全て記載されていたこと,④被控訴人の従業員のCは,同年2月2日,本件依頼書1に基づいてサンプルを作成したこと,⑤その後,被控訴人は,上記サンプルに係る内側タイプの空調服を製品化することとし,同年4月17日,G特許事務所に対し,上記サンプルの写真を添付した依頼書を交付して,実用新案登録出願を依頼し,同年5月11日,本件出願がされたことが認められる。 上記認定事実を総合すれば,本件考案は,本件依頼書1が作成された同年1月28日頃まで完成し,A及びBは,本件考案の技術的思想を着想し,その着想を具体化することに創作的に関与したものと認められるから,A及びBは,本件考案の共同考案者であると認められる。 そして,被控訴人は,本件出願前に,A及びBから,本件考案に係る実用新案登録を受ける権利を承継したものと認められるから,本件出願は,冒認出願であるということはできない。 ウこれに対し控訴人は,本件考案は,控訴人ら代表者において,平成27 年3月3日に着想を得て完成させたものであり,被控訴人は,同月中旬頃のEからの電話や,同年4月10日のF常務の控訴人らの訪問時に控訴人 控訴人は,本件考案は,控訴人ら代表者において,平成27 年3月3日に着想を得て完成させたものであり,被控訴人は,同月中旬頃のEからの電話や,同年4月10日のF常務の控訴人らの訪問時に控訴人から見せられた本件試作品及び交付された乙11図面などによって,本件考案に係る控訴人らのフルハーネス対応空調服に関する情報を取得し,これらを利用して本件出願をしたものであるから,本件出願は冒認出願である旨主張する。 しかしながら,前記イ認定のとおり,本件考案は,本件依頼書1が作成された同年1月28日頃までに完成していたものであり,また,前記(2)イで説示したとおり,被控訴人において,同年3月中旬頃のEからの電話や同年4月10日のF常務の訪問時に何らかの情報を得ていたと仮定しても,そのような情報を利用して本件出願がされたと認めることはできない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 ⑷ 争点4-2(共同出願違反の無効理由)について控訴人は,①被控訴人及び控訴人らにおいて,遅くとも平成26年9月8日までに,インナースペーサーを着用するフルハーネス対応空調服の問題点に関する情報(乙7の2)や,空調服の背中に開いているランヤードを通すための穴の位置がハーネス型安全帯の形状ごとに異なり,一つの位置に固定することができないことに関する情報を共有していたこと,これらの情報は本件考案の本質的部分である考案の課題に関わるものであることからすれば,控訴人らは本件考案の完成に実質的に貢献したものであるから,本件考案は控訴人らとの共同考案である,②したがって,被控訴人は,本件考案について,控訴人らと共同でなければ実用新案登録出願をすることができないにもかかわらず,被控訴人が単独で本件出願をし,本件実用新案登録を受けたものであるから,本件出願は がって,被控訴人は,本件考案について,控訴人らと共同でなければ実用新案登録出願をすることができないにもかかわらず,被控訴人が単独で本件出願をし,本件実用新案登録を受けたものであるから,本件出願は共同出願違反に当たる旨主張する。 しかしながら,前記⑴イ認定の被控訴人におけるフルハーネス対応空調服の開発状況等及び前記(1)ウ認定の控訴人らにおけるフルハーネス対応空調 服の開発状況等に照らせば,被控訴人と控訴人らは,それぞれが独自にフルハーネス対応空調服の開発を行っていたものと認められる。 また,前記(3)ウ認定のとおり,被控訴人は,本件考案に係る控訴人らのフルハーネス対応空調服に関する情報を取得し,これらを利用して本件出願をしたものと認めることができない。 さらに,控訴人が挙げる①の情報は,本件考案の技術的課題の解決手段(前記(3)イ)を示唆するものとはいえないから,被控訴人及び控訴人らが①の情報を共有したからといって,控訴人らが本件考案の完成に実質的に貢献したものということはできない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 (5) 小括以上のとおり,本件考案に係る本件実用新案登録に冒認出願及び共同出願違反の無効理由があるものと認められないから,被控訴人が実用新案法30条,特許法104条の3第1項の規定により本件実用新案権を行使することができないとの控訴人の主張は理由がない。 5 争点5(控訴人は先使用による通常実施権を有するか,又はセフト社の先使用による通常実施権を援用することができるか)について⑴ 控訴人らによる「事業の準備」についてア特許法79条を準用する実用新案法26条の考案の実施である「事業の準備」とは,実用新案登録出願に係る考案の内容を知らないでこれと同じ内容の考案をした者又はこの 人らによる「事業の準備」についてア特許法79条を準用する実用新案法26条の考案の実施である「事業の準備」とは,実用新案登録出願に係る考案の内容を知らないでこれと同じ内容の考案をした者又はこの者から知得した者が,その考案につき,いまだ事業の実施の段階には至らないものの,即時実施の意図を有しており,かつ,その即時実施の意図が客観的に認識され得る態様,程度において表明されていることを意味すると解するのが相当である(最高裁昭和61年(オ)第454号同年10月3日第二小法廷判決・民集40巻6号1068頁参照)。 そして,特定の考案に係る物品を製造又は販売する事業について,即時実施の意図を有し,かつ,その即時実施の意図が客観的に認識され得る態様,程度において表明されているというためには,製造又は販売する物品の基本的構成,仕様等の事業の内容が定まっていることが必要であり,当該事業に用いる考案の内容が確定しているだけでは足りないというべきである。 イこれを本件についてみるに,前記4(1)の認定事実によれば,①控訴人ら代表者は,平成27年3月3日頃,背中部分に先端が開口した筒状の出口を設け,その先端部分を紐様のものなどを用いて縛る構成を有する空調服に係る着想を得て,その構成を手書きで図示した乙11図面を作成し,同月4日,そのデータをゼハロスに送信して,試作品の作成を依頼したこと,②ゼハロスは,同月31日までに,背中部分に先端が開口した筒状の出口を設け,その先端部分を紐及びコードストッパーを用いて縛ることができる構成を備えた本件試作品(乙16の9)を作成したこと,③控訴人らは,同年4月7日,控訴人において購入したハーネス型安全帯を用いて本件試作品の試着をしたこと,④セフト社は,平成28年5月から,被告各製品を製造及び販売し 品(乙16の9)を作成したこと,③控訴人らは,同年4月7日,控訴人において購入したハーネス型安全帯を用いて本件試作品の試着をしたこと,④セフト社は,平成28年5月から,被告各製品を製造及び販売し,控訴人は,同月から,セフト社から購入した被告各製品の販売を開始したことが認められる。 そして,被告各製品と本件試作品とを対比すると,被告各製品は,逆玉ポケット,ファン落下防止用メッシュ及び取出筒の固定手段を備えているが,本件試作品はこれらを備えておらず,また,被告各製品の取出筒の形状は本件試作品とで異なる構成であること(乙16,54)が認められる。 しかるところ,空調服は,衣服に取り付けられたファンで,衣服内に外気を取り入れ,風を通すことにより,涼しく過ごすことを可能にする構成を有する作業服であり,空調服の製品化に当たっては,衣服内に外気を取り入れ,風を通す構成及び性能はもとより,作業服としてのそれ以外の機 能やデザイン等についても考慮した上で,仕様を決定し,製品化に至ることが一般的であることに鑑みると,被告各製品と本件試着品の上記相違は,作業服としての機能に影響を及ぼす仕様上の相違であって,本件試作品が作成された時点では,被告各製品の仕様が確定しておらず,事業の内容が定まっていたものと認めることはできない。 また,空調服は,春夏シーズン向けの商品であり,主に毎年1月頃から8月頃に販売され,それに向けて,一定のスケジュールに従って製造の発注,製造,入荷及び販売がされる製品であるところ(乙109,110),本件試作品が作成され,試着された平成27年3月及び同年4月から,控訴人らが被告各製品の販売を開始した平成28年5月までの間における被告各製品の製造の発注,製造及び入荷の経過についての具体的な主張立証はなく,この点からも,本件出願 成27年3月及び同年4月から,控訴人らが被告各製品の販売を開始した平成28年5月までの間における被告各製品の製造の発注,製造及び入荷の経過についての具体的な主張立証はなく,この点からも,本件出願日である平成27年5月11日時点において,事業の内容が定まっていたものと認めることは困難である。 以上によれば,前記①ないし④の事実から,本件出願日時点で,控訴人らにおいて,本件考案と同じ内容の考案の実施である事業の即時実施の意図を有し,かつ,その意図が客観的に認識され得る態様,程度において表明されていたと認めることはできないというべきである。 ⑵ 控訴人の主張(当審における補充主張を含む。)についてア控訴人は,特許法79条の先使用権制度の趣旨は,独自発明者による実施の促進と過度の出願を抑止することにあることに鑑みると,「事業の準備」の有無は,過度に実施がためらわれることがないように,当該発明又は考案を実施できないのであれば無駄となる投資(関係特殊的投資)がされているか否かをメルクマールとして判断すべきであるから,「事業の準備」についての原判決の判断手法には誤りがある旨主張する。 しかしながら,「事業の準備」の有無は,本件考案につき,事業の即時実施の意図を有し,かつ,その即時実施の意図が客観的に認識され得る態様, 程度において表明されているかどうかによって判断すべきであることは,前記(1)アで説示したとおりである。 また,本件考案は,実施すれば物品の構造が外観上明らかになるハーネス型安全帯の着用可能な空調服に関する構造であること,セフト社は,本件出願後の平成27年6月30日,ハーネス型安全帯を着用した状態であっても冷却効果を発揮することができる高所作業用の空調服に関する発明について,特許出願をしたこと(前記4(1)エ(イ)) ト社は,本件出願後の平成27年6月30日,ハーネス型安全帯を着用した状態であっても冷却効果を発揮することができる高所作業用の空調服に関する発明について,特許出願をしたこと(前記4(1)エ(イ))に照らすと,本件考案については,過度の出願の抑止という趣旨は妥当しない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 イまた,控訴人は,①控訴人ら代表者は,平成27年3月4日に乙11図面をゼハロスに送付した後,ゼハロスのDに電話で,フルハーネス対応空調服の量産化を行う意思表示をし,同月26日,空調服の会で,フルハーネス対応空調服の量産化を行う意思表示をしたもので,少なくとも同月には,本件試作品の量産化の確定的意思が,社内のみならず,外部にも表明され,かつ,その意思に基づいて,最短のスケジュールで量産が実行されたこと,②本件試作品と現実に販売された販売品は,共に本件考案の技術的範囲に含まれるものであり,構成要件部分については,本件試作品から販売品へ全く変更がなく同一であることからすると,本件試作品の完成及び試着会の実施後の本件出願日(同年5月11日)の時点には,本件試作品は即時実施可能な状況にあり,即時実施の意図が客観的に認識される態様,程度に表明されていたといえるから,控訴人は,本件考案の実施である「事業の準備」をしていたというべきである,③本件試作品と販売品との相違点(逆玉ポケット,ファン落下防止用メッシュ,取出筒の固定及び取出し筒の形状)は,いずれも,ファン付き作業服の背中に命綱取出し用の取出し筒を設けるとともに,この取出し筒を密閉可能にし,取出し筒から空気が漏れるのを防止するという本件考案の意義とは無関係であり,格 別の技術的意義を有しないから,上記相違点があることは「事業の準備」を否定する理由にはならない旨主 密閉可能にし,取出し筒から空気が漏れるのを防止するという本件考案の意義とは無関係であり,格 別の技術的意義を有しないから,上記相違点があることは「事業の準備」を否定する理由にはならない旨主張する。 しかしながら,特定の考案に係る物品を製造又は販売する事業について,即時実施の意図を有し,かつ,その即時実施の意図が客観的に認識され得る態様,程度において表明されているというためには,製造又は販売する物品の基本的構成,仕様等の事業の内容が定まっていることが必要であり,当該事業に用いる考案の内容が確定しているだけでは足りないというべきであるところ(前記(1)ア),本件出願日時点で,控訴人らにおいて,本件考案と同じ内容の考案の実施である事業の内容が定まっていたものと認めることができないことは,前記(1)イで説示したとおりである。 また,本件試作品と現実に販売された販売品は,共に本件考案の技術的範囲に含まれ,構成要件部分については,本件試作品から販売品へ変更がなく同一であるとの点は,本件試作品の完成及び試着の実施がされた時点で考案の内容が確定していたことを述べるにすぎないから,この点から直ちに即時実施の意図を有し,かつ,その即時実施の意図が客観的に認識され得る態様,程度において表明されているということはできない。 したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。 その他控訴人は,縷々主張するが,以上に説示したところに照らせば,いずれも前記(1)の認定を左右するものではない。 (3) 小括以上によれば,控訴人らは,本件出願日時点において,本件考案と同じ内容の考案の実施である「事業の準備」(実用新案法26条,特許法79条)をしていたものと認めることはできないから,本件実用新案権について控訴人が先使用による通常実施権 日時点において,本件考案と同じ内容の考案の実施である「事業の準備」(実用新案法26条,特許法79条)をしていたものと認めることはできないから,本件実用新案権について控訴人が先使用による通常実施権を有するとの控訴人の主張は理由がなく,また,セフト社の先使用による通常実施権を援用する旨の控訴人の主張も理由がない。 6 争点6(控訴人は黙示の実施許諾による実施権を有するか)について以下のとおり訂正するほかは,原判決「事実及び理由」第4の6に記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 原判決43頁15行目から16行目にかけての「(前記1⑴イ(イ),エ(カ))」を「(前記4⑴ア,ウ)」と,同頁19行目の「(同オ(ウ))」を「(同エ)」と,同頁21行目の「前記1(1)ウ」を「前記4(1)イ)」と改める。 (2) 原判決43頁24行目の「原告において」から25行目の「述べなかったというだけで,」までを削る。 (3) 原判決43頁末行末尾に行を改めて次のとおり加える。 「 さらに,被控訴人が,本件実用新案登録の登録日時点ないしその後において,控訴人らが本件考案の実施品を販売することを認識し,これに対して異議を述べなかったからといって直ちに被控訴人の黙示の実施許諾があったものと認めることはできない。」 7 争点7(被控訴人の権利行使が権利の濫用に当たるか)について以下のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」第4の7に記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 原判決44頁11行目の「前記第2の2⑻」を「前記4⑴ア(オ)」と,同頁17行目から18行目にかけての「旨の規定はないから,」を「旨を規定するものではないから,」と改める。 ⑵ 原判決44頁24行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「 控訴人は,①本件取引基本契約 17行目から18行目にかけての「旨の規定はないから,」を「旨を規定するものではないから,」と改める。 ⑵ 原判決44頁24行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「 控訴人は,①本件取引基本契約の当事者であるセフト社は,控訴人の親会社であり,両者の本店所在地は同一であり,かつ,セフト社の代表取締役及び専務取締役はいずれも控訴人の代表取締役であるから,両者は実質的に一体であり,被控訴人も,かかる事実を前提として,控訴人とセフト社を特に区別することなく,控訴人らとの取引を継続してきたことからすると,本件取引基本契約の保護範囲は控訴人にも及ぶと解すべきであると ころ,被控訴人は,本件取引基本契約14条及び5条6項に違反して,本件実用新案登録を得たこと,②被控訴人は,自らが控訴人らの製造委託先であることを奇貨として,本件実用新案登録を得た事実を秘したまま,控訴人から被告各製品に関する情報を取得し,それを原告製品に利用し,開発費用の抑制やその製品価値の向上に利用したこと,③同時に,被控訴人は,控訴人らがフルハーネス対応空調服を開発していることを知りながら,本件実用新案登録を得た事実を秘匿し続け,最終的に,契約違反を媒介として取得した本件実用新案権に基づく権利行使を控訴人らに行い,自らの製品価値の向上に利用した被告各製品の販売停止や損害賠償を請求していることを総合考慮すると,被控訴人による本件実用新案権に基づく権利行使は,権利の濫用に当たり,許されない旨主張する。 しかしながら,①については,控訴人とセフト社は,商品取引基本契約及び業務委託基本契約を締結し,これに基づいて空調服の製造や販売に係る取引を行うなど(前記4⑴エ(カ)及び(ク)),別個の法人として経済活動を行っていたこと,被控訴人が,控訴人とセフト社を区別せずに取引を継続し 本契約を締結し,これに基づいて空調服の製造や販売に係る取引を行うなど(前記4⑴エ(カ)及び(ク)),別個の法人として経済活動を行っていたこと,被控訴人が,控訴人とセフト社を区別せずに取引を継続してきたことをうかがわせる証拠がないことに照らすと,控訴人とセフト社が実質的に一体であるということはできないから,控訴人に本件取引基本契約の効力が及ぶものと解することはできない。また,そもそも,本件取引基本契約14条及び5条6項には,被控訴人が実用新案登録出願を行うことを制限する定めはなく,本件取引基本契約のその余の条項にもそのような定めは存在しないのであるから,被控訴人が本件実用新案登録を受けたことが本件取引基本契約に違反するということはできない。 次に,②については,被控訴人がセフト社から被告各製品に関する情報を取得したのは,セフト社が本件取引基本契約17条1項に基づき契約期間満了により現契約の終結を申し出た上で,セフト社が提案する契約内容の見直し案についてセフト社と被控訴人間の協議が継続する中で,セフト 社が自発的に情報提供をしたことによるものであり(前記4⑴エ),このような情報の取得の経緯に不当な点は見いだせない。 さらに,③については,セフト社は,平成28年10月27日付けで,被控訴人に対し,本件取引基本契約5条2項に定める製造や販売に関する事項の事前報告義務に違反したことを理由に本件取引基本契約を解除する旨の通知をし,その後,被控訴人が控訴人に対し不正競争行為差止等請求訴訟を提起し,控訴人も被控訴人に対し被控訴人の登録商標について不正使用取消審判を請求した後に,被控訴人が本件訴訟を提起したものであり(前記4⑴エ),このような本件訴訟に至る経緯に照らすと,被控訴人による本件実用新案権の権利行使が不当であるということはできない 正使用取消審判を請求した後に,被控訴人が本件訴訟を提起したものであり(前記4⑴エ),このような本件訴訟に至る経緯に照らすと,被控訴人による本件実用新案権の権利行使が不当であるということはできない。 したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。」 8 争点8(差止めの必要性)について(1) 前記2ないし7によれば,控訴人による被告製品1,2,4及び5の販売は本件実用新案権侵害に,被告製品3及び6の販売は本件実用新案権の間接侵害(実用新案法28条1号)にそれぞれ該当するものと認められるから,被控訴人は,控訴人に対し,被告各製品の譲渡及び譲渡の申出の差止め並びに廃棄を求める必要性があるものと認められる。 ⑵ これに対し控訴人は,報告書(乙122)記載のとおり,被告各製品の仕様について設計変更を実施し,設計変更後の被告各製品は,本件考案の構成要件Dを充足せず,本件考案の技術的範囲に属さなくなったから,控訴人による被告各製品の譲渡又は譲渡の申出は,本件実用新案権を侵害せず,そのおそれも存在しないとして,控訴人による被告各製品の譲渡又は譲渡の申出の差止めの必要性はない旨主張する。 しかしながら,別紙物件目録に記載された型番により特定される被告各製品において,控訴人ら代表者作成の乙122記載のとおりの設計変更がされた製品が製造及び販売されている事実や原判決別紙被告各製品説明書記載の 構成の被告各製品について販売を中止し,又は廃棄した事実を客観的に裏付けるに足りる証拠はないから,控訴人の上記主張は採用することができない。 9 争点9(被控訴人の損害額)以下のとおり訂正するほか,原判決「事実及び理由」第4の8に記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 原判決45頁6行目の「(前記1⑴カ(ア))」を「(前記4⑴エ) 9(被控訴人の損害額)以下のとおり訂正するほか,原判決「事実及び理由」第4の8に記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 原判決45頁6行目の「(前記1⑴カ(ア))」を「(前記4⑴エ)」と改める。 ⑵ 原判決54頁22行目の「第3の8」を「第3の7」と改める。 ⑶ 原判決55頁15行目の「(前記1⑴イ)」を「(前記4⑵)」と改め,同頁20行目の「(争点8)」を削る。 ⑷ 原判決56頁20行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「ウ以上によれば,被控訴人は,控訴人に対し,本件実用新案権侵害の共同不法行為に基づく損害賠償請求権1537万5027円及びうち36万円に対する平成29年7月25日から,うち1306万6381円に対する平成31年3月1日から,うち194万8646円に対する令和元年5月31日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金請求権を有するものと認められる。」第5 結論以上によれば,被控訴人の請求は,被告各製品の譲渡及び譲渡の申出の差止め並びに廃棄,1537万5027円及びうち36万円に対する平成29年7月25日から,うち1306万6381円に対する平成31年3月1日から,うち194万8646円に対する令和元年5月31日から各支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないから棄却すべきものである。 したがって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官小林康彦 裁判官高橋彩 (別紙)物件目録 空 裁判長 裁判官 大鷹一郎 裁判官 小林康彦 裁判官 高橋彩 (別紙)物件目録 空調服の服本体又は服本体とファン,ケーブル及びバッテリーセット若しくは電池ボックスのセットのうち,下記のもの。 記 1 型番 BP500FH 2 型番 P500FH 3 型番 KU9054F 4 型番 BM500FH 5 型番 M500FH 6 型番 KU9055F以上 (別紙)明細書図面 【図1】 【図2】 【図3】 【図4】 【図5】 【図6】 【図7】

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