平成25(ネ)10078 特許権侵害行為差止等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成26年3月27日 知的財産高等裁判所 1部 判決 控訴棄却 東京地方裁判所 平成24(ワ)8135
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平成26年3月27日判決言渡平成25年(ネ)第10078号特許権侵害行為差止等請求控訴事件(原審東京地方裁判所平成24年(ワ)第8135号事件)口頭弁論終結日平成26年2月25日判決控訴人株式会社シンクロン訴訟代理人弁護士服部昌明同池田和郎同西川久貴同山本和彦同北畑亮同田中伸英訴訟代理人弁理士秋山敦同大倉宏一郎補佐人弁理士城田百合子同上西浩史被控訴人株式会社オプトラン訴訟代理人弁護士升永英俊補佐人弁理士佐藤睦同大石幸雄 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,別紙装置等目録1記載の装置を製造し,譲渡し,輸出若しくは輸入し,又は貸渡しのために展示してはならない。 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,別紙装置等目録1記載の装置を製造し,譲渡し,輸出若しくは輸入し,又は貸渡しのために展示してはならない。 3 被控訴人は,別紙装置等目録1記載の装置,その半製品(同目録記載の構造を具備しているが,同目録記載の装置として完成していないもの)を廃棄せよ。 4 被控訴人は,別紙装置等目録2記載の方法を使用してはならない。 5 被控訴人は,控訴人に対し,7億円及びこれに対する平成24年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要以下,原判決における「原告」を「控訴人」,「被告」を「被控訴人」と読み替え,原判決で用いられた略語はそのまま使用する。 1 本件は,発明の名称を「成膜方法及び成膜装置」とする本件特許権を有する控訴人が,①被控訴人の製造販売する被控訴人装置(別紙装置等目録1)は本件発明2の技術的範囲に属すると主張し,②被控訴人装置の稼働により使用する成膜方法(別紙装置等目録2,以下「被控訴人方法」という。)は本件発明1の技術的範囲に属すると主張して,被控訴人に対し,特許法100条に基づいて,被控訴人装置の製造販売等及び被控訴人方法の使用の差止め並びに被控訴人装置等の廃棄を,同法102条1項に基づいて,損害賠償金7億円及びこれに対する不法行為の後の日である平成24年4月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原審は,被控訴人製品は本件発明2の構成要件2-Bを充足せず,また,被控訴人方法は本件発明1の構成要件1-Aを充足しないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。控訴人は,原判決の取消し等を求めて, 原審は,被控訴人製品は本件発明2の構成要件2-Bを充足せず,また,被控訴人方法は本件発明1の構成要件1-Aを充足しないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。控訴人は,原判決の取消し等を求めて,控訴を提起した。 なお,控訴人は,差止等の対象とする「被控訴人方法」について,「基体保持手段の基体保持面の全域に向け成膜材料を供給することによって前記基体保持面に保持され回転している基体のすべてに対して前記成膜材料を連続して供給するとともに, 前記基体保持面の一部の領域に向けイオンを照射することによって前記基体の一部に対して前記イオンを連続して照射することによるアシスト効果を与えながら,前記基体の表面に薄膜を堆積させることを特徴とする成膜方法。」(原審装置等目録2)であると特定した。しかし,特許権侵害訴訟において,控訴人が使用の差止等を求める「被控訴人方法」を,本件発明1の特許請求の範囲と同一の文言を用いて特定することは,具体的紛争解決を図る上で何らの意味も有しない。したがって,控訴審においては,原審で指摘したとおり,控訴人が差止等の対象とする「被控訴人方法」は「防汚膜装置『Gener-2350』の稼働により使用する成膜方法。」を指すものと理解した上で,審理,判断する。 2 前提事実及び争点以下のとおり付加,訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の「1 前提事実」及び「2 争点」(原判決2頁16行目ないし5頁11行目)記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決4頁8行目から9行目までの「別紙装置等目録記載2の方法(以下「被告方法」という。)は,本件発明1の構成要件をすべて充足し,」を「被控訴人方法は,本件発明1の構成要件1-B及び1-Cを充足し,」と訂正する。 (2) 原判決4頁 装置等目録記載2の方法(以下「被告方法」という。)は,本件発明1の構成要件をすべて充足し,」を「被控訴人方法は,本件発明1の構成要件1-B及び1-Cを充足し,」と訂正する。 (2) 原判決4頁15行目から16行目までの「被告装置の稼働により使用する方法」を「被控訴人方法」と訂正する。 (3) 原判決4頁21行目の「被告装置」から5頁8行目までを,「被控訴人方法は本件発明1の構成要件1-Aを充足するか(争点1)」に訂正する。 (4) 原判決5頁11行目末尾を改行して,「(4) 損害額(争点4)」を加える。 第3 争点についての当事者の主張以下のとおり付加,訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「3 争点についての当事者の主張」(原判決5頁12行目ないし11頁12行目)記載のとおりであるから,これを引用する。 1 原判決5頁13行目から6頁10行目までを,以下のとおり訂正する。 「(1) 争点1(被控訴人方法は本件発明1の構成要件1-Aを充足するか)についてア控訴人(ア) 構成要件1-A構成要件1-Aは,「基体保持手段の基体保持面の全域に向け成膜材料を供給することによって前記基体保持面に保持され回転している基体のすべてに対して前記成膜材料を連続して供給するとともに,」とされている。 同構成要件の「基体保持手段の基体保持面の全域に向け成膜材料を供給する」とは,蒸発源による蒸発物の蒸発方向が,基体保持面の全域に「向いていればよい」と理解すべきであって,蒸発源から蒸発した成膜材料が基体保持面に「付着」又は「堆積」されることを要すると解すべきではない。 また,同構成要件は,基体保持面の「回転」を前提としており,基体保持面において成膜材料の供給量が多い部分と少ない部分があるとしても,回転 付着」又は「堆積」されることを要すると解すべきではない。 また,同構成要件は,基体保持面の「回転」を前提としており,基体保持面において成膜材料の供給量が多い部分と少ない部分があるとしても,回転により均一化されるので,成膜材料の基体保持面への供給量・到達量の大小は問題にならない。 本件発明1においては,膜厚補正板の存在を前提としている以上,各基体に到達する成膜材料の「量」に差が生じているといえる。構成要件1-Aの解釈に当たり,成膜材料が基体保持面に到達する「量の大小」を考慮すべきでない。 以上のとおりであるから,蒸発源と基体保持手段の基体保持面との間に何らかの障害物が存在する場合であっても,同構成要件を充足すると解するのが相当である。 (イ) 被控訴人方法の特徴a 被控訴人装置の図面(甲6の2)の「9 SUBSTRATEDOME」は「基板ドーム」を指し,構成要件1-Aの「基体保持手段」に相当する。また,基板ドームは回転する。上記図面の「5 HEARTH],「6 RHSOURCE」は「電子銃1基」,「抵抗加熱1基」を指し,薄膜を形成する成膜材料を供給する蒸着源(成膜手段)に当たる。成膜材料は,ハース(「5 HEARTH])及びRHソース(「6 RHSOURCE」)からドーム(「9 SUBSTRATE DOME」)の基体保持面の全てに対して連続的に供給される。 b 控訴人が実施した検証の結果(甲7)により,成膜材料の到達範囲は仕切り板によって制限されないことが判明した。また,「CoatingsonGlass」(甲8)198頁の記載からは,成膜材料が,残留ガスとの衝突により自由な方向に拡散しながら基体に到達する性質を持ち,直線状に供給範囲を制限できるものではないことが分かる。このように,被控訴人装置では,成膜 8頁の記載からは,成膜材料が,残留ガスとの衝突により自由な方向に拡散しながら基体に到達する性質を持ち,直線状に供給範囲を制限できるものではないことが分かる。このように,被控訴人装置では,成膜材料が基体保持面の全域に供給される。 c 被控訴人が実施した実験結果(乙12)によると,被控訴人装置では,A1ないし10,B1ないし10及びF1ないし10のいずれの基板にも成膜材料が到達し,膜が形成されている。前記のとおり,いずれの基板にも成膜材料が到達していれば,その量の大小にかかわらず,基板保持面の全域に向けて成膜材料が供給されているといえる。 dRHソースは,蒸発源の高さや仕切り板の高さがハースと異なっており,RHソースからはドームの全域が見渡せるのであるから,RHソースを稼働させれば基体保持面の全域に向け成膜材料の供給が可能となる。そして,被控訴人装置において,RHソースとイオンソースの同時稼働が行われないとしても,レシピの設定変更により,RHソースとイオンソースを同時に稼働させることは可能である。 また,被控訴人装置は,レシピの設定変更により,RHソースとハースを同時稼働とすることも可能である。RHソースとハースの同時稼働がされれば,成膜材料は基板ドームの全領域に供給される。 (ウ) 以上のとおり,被控訴人方法は,本件発明1の構成要件1-Aを充足する。」 2 原判決6頁17行目の末尾に,次のとおり加える。 「また,被控訴人装置では,RHソースとイオンソースの同時稼働は行われない。」 3 原判決6頁19行目末尾に,次のとおり加える。 「さらに,イオンアシストを行う際のガスを導入することにより,イオンアシストを行う際の真空度(圧力)と同一の値の真空度(0.009Pa)にして行われ た実験の結果(乙12)で り加える。 「さらに,イオンアシストを行う際のガスを導入することにより,イオンアシストを行う際の真空度(圧力)と同一の値の真空度(0.009Pa)にして行われ た実験の結果(乙12)でも,ドーム左側のA7点より左側には成膜材料は実質的に供給されておらず,被控訴人装置における成膜材料の供給範囲がドームの基体保持面の一部の領域であることは変わらない。」 4 原判決6頁22行目の「被告装置の稼働」から7頁2行目末尾までを「被控訴人方法は,本件発明1の構成要件1-Aを充足しない。」に訂正する。 5 原判決7頁5行目から18行目までを,以下のとおり訂正する。 「(ア) 構成要件2-B構成要件2-Bは,「前記基体保持手段の基体保持面の全領域に対して成膜材料を供給可能となるような配置及び向きで前記真空容器内に設置された成膜手段と,」とされている。 同構成要件の「前記基体保持手段の基体保持面の全領域に対して成膜材料を供給可能となるような配置及び向きで」とは,蒸発源による蒸発物の蒸発方向が,基体保持面の全域に「向いていればよい」と理解すべきであって,蒸発源から蒸発した成膜材料が基体保持面に「付着」又は「堆積」されることを要すると解すべきではない。 また,同構成要件は,基体保持面の「回転」を前提としており,基体保持面において成膜材料の供給量が多い部分と少ない部分があるとしても,回転により均一化されるので,成膜材料の基体保持面への供給量・到達量の大小は問題にならない。 本件発明2においては,膜厚補正板の存在を前提としている以上,各基体に到達する成膜材料の「量」に差が生じているといえる。構成要件2-Bの解釈に当たり,成膜材料が基体保持面に到達する「量の大小」を考慮すべきでない。 以上のとおりであるから,蒸発源と基体保持手段の に到達する成膜材料の「量」に差が生じているといえる。構成要件2-Bの解釈に当たり,成膜材料が基体保持面に到達する「量の大小」を考慮すべきでない。 以上のとおりであるから,蒸発源と基体保持手段の基体保持面との間に何らかの障害物が存在する場合であっても,同構成要件を充足すると解するのが相当である。 (イ) 被控訴人装置の特徴a 被控訴人装置の図面(甲6の2)の「9 SUBSTRATEDOME」は「基板ドーム」を指し,構成要件2-Bの「基体保持手段」に相当する。また, 基板ドームは回転する。上記図面の「5 HEARTH],「6 RHSOURCE」は「電子銃1基」,「抵抗加熱1基」を指し,薄膜を形成する成膜材料を供給する蒸着源(成膜手段)に当たる。成膜材料は,ハース(「5 HEARTH])及びRHソース(「6 RHSOURCE」)からドーム(「9 SUBSTRATEDOME」)の基体保持面の全てに対して連続的に供給される。 b 控訴人が実施した検証の結果(甲7)及び「CoatingsonGlass」(甲8)198頁の記載によれば,被控訴人装置では,成膜材料が基体保持面の全域に供給される。 c 被控訴人が実施した実験結果(乙12)によると,被控訴人装置では,A1ないし10,B1ないし10及びF1ないし10のいずれの基板にも成膜材料が到達し,膜が形成されている。前記のとおり,いずれの基板にも成膜材料が到達していれば,その量の大小にかかわらず,基板保持面の全域に対して成膜材料が供給されているといえる。 d 前記のとおり,RHソースを稼働させれば基体保持面の全域に対して成膜材料の供給が可能となり,レシピの設定変更により,RHソースとイオンソースを同時に稼働させることは可能である。また,被控訴人装置は,レシピの設 り,RHソースを稼働させれば基体保持面の全域に対して成膜材料の供給が可能となり,レシピの設定変更により,RHソースとイオンソースを同時に稼働させることは可能である。また,被控訴人装置は,レシピの設定変更により,RHソースとハースを同時稼働とすることも可能である。 (ウ) 以上のとおり,被控訴人装置は,本件発明2の構成要件2-Bを充足する。」 6 原判決8頁2行目の末尾に「(争点3)」を加える。 7 原判決11頁12行目末尾を改行して,次のとおり加える。 「(4) 損害額(争点4)ア控訴人被控訴人は,平成23年3月1日からこれまでに,被控訴人製品を少なくとも70台製造,販売等している。控訴人の本件発明2の実施品の販売による利益額は1台当たり1000万円である。 したがって,控訴人の損害額は7億円(1000万円×70台)である。 イ被控訴人控訴人の主張は否認する。」第4 当裁判所の判断 1 原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の「1」及び「2」(原判決11頁14行目ないし14頁14行目)記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,以下のとおり付加,訂正する。 (1) 原判決11頁14行目から15行目にかけての「(被告装置の稼働により使用する方法が被告方法の構成aを充足するか否か)について」を「(被控訴人方法は本件発明1の構成要件1-Aを充足するか)について」に訂正する。 (2) 原判決12頁4行目の「被告装置を用いて,」の後に「成膜中の真空度を0. 005Paとして,」を加え,「SiO2」を「SiO2」に訂正する。 (3) 原判決12頁6行目の「測定する実験」の後に「(乙7)」を加える。 (4) 原判決12頁11行目から12行目にかけての「極めて薄くしか形成され え,「SiO2」を「SiO2」に訂正する。 (3) 原判決12頁6行目の「測定する実験」の後に「(乙7)」を加える。 (4) 原判決12頁11行目から12行目にかけての「極めて薄くしか形成されなかったこと」の後に,次のとおり加える。 「(最も厚い膜とほぼ同程度の厚さの膜が形成された右端のB10の膜厚を100. 0とした場合に,その2.0未満の膜厚であった。),(エ)さらに,被控訴人補佐人は,被控訴人装置を用いて,成膜中の真空度を0.009Pa(イオンアシストがある場合の真空度と同一の真空度)として,上記と同様の実験(乙12)をしたところ,ハース用仕切り板を設置した状態では,最も厚い膜とほぼ同程度の厚さの膜が形成された右端のB10の膜厚を100.0とした場合の左側のA6ないし8の膜厚は2.0未満,A9と10の膜厚は1.0未満であり,ハース用仕切り板を設置しない状態では,B10の膜厚を100.0とした場合のA7ないし10の膜厚は10. 0未満であったこと,」(5) 原判決12頁13行目の「被告補佐人がした実験」の後に「(乙7)」を加える。 (6) 原判決12頁15行目から17行目までの「真空蒸着では,基板近傍に遮蔽 板を設置しない限り,急激な膜厚変化は極めて困難であるのに,」を「特表2012-525495号公報(甲33),特許第5171583号公報(甲34),WO2012/008455(甲35)によると,真空蒸着においてはいわゆる回り込み等が生じるため,蒸発源に隣接して仕切り板を設置しても,急激な膜厚変化は通常起こり得ないはずであるのに,」と訂正する。 (7) 原判決12頁17行目の「減少している」の後に「,③蒸発源からの距離を考えると,A9やF2に膜が形成されているにもかかわらず,蒸発源からの距離がA9より近いA であるのに,」と訂正する。 (7) 原判決12頁17行目の「減少している」の後に「,③蒸発源からの距離を考えると,A9やF2に膜が形成されているにもかかわらず,蒸発源からの距離がA9より近いA7や8,F2より近いA10に膜が形成されていないことはあり得ない」と加える。 (8) 原判決12頁18行目の「作出した」を「作出するなどした」に訂正する。 (9) 原判決12頁20行目の「図2」を「図1」と訂正する。 (10) 原判決12頁22行目から13頁2行目までの「真空蒸着において,蒸発源に隣接して仕切り板を設置したのでは,急激な膜厚変化が生じないことを裏付ける的確な証拠はないのである。」を「実験報告書(乙7)の図1(被控訴人装置の図面)によると,基板B1とA1との間には基板数枚分の間隔があることを考慮すると,A1から極端に膜厚が減少しているとは必ずしもいえない。③については,A9やF2に形成された膜は極めて薄いものであり,後記のとおり,成膜材料は残留ガスとの衝突により自由な方向に拡散しながら基体に到達する性質を持っているとすると,A9やF2よりも蒸発源に近いA7・8やA10に膜が形成されなかったとしても,必ずしも不自然であるとはいえない。」と訂正する。 (11) 原判決13頁5行目末尾を改行して,次のとおり加える。 「また,控訴人は,被控訴人補佐人が行った実験(乙12)について,①実験(乙12)と実験(乙7)の違いは成膜中の真空度(圧力)のみであり,実験(乙12)の方が成膜中の圧力が高かったにもかかわらず,電子銃(ハース)に近い基板の膜厚が厚く形成された点は,光学薄膜の膜厚分布の技術常識に反し,不自然である,②実験(乙12)と実験(乙7)は,同一成膜レート,同一成膜時間で成膜したも のであるから,全体の蒸着量(絶 の膜厚が厚く形成された点は,光学薄膜の膜厚分布の技術常識に反し,不自然である,②実験(乙12)と実験(乙7)は,同一成膜レート,同一成膜時間で成膜したも のであるから,全体の蒸着量(絶対量)はほぼ同一となるにもかかわらず,実験(乙12)の方がドームに付着した成膜材料が多くなっている点において不自然である,③実験(乙7)では,仕切り板を設置した場合と設置しなかった場合とで,ドームの右側の膜厚分布に違いはないのに対し,実験(乙12)では,仕切り板を設置した場合は,仕切り板を設置しなかった場合と比較して,ドームの右側の膜厚が異常に増加しており,同一成膜レート,同一成膜時間での実験において,このような著しい違いが生じる点が不自然である等の理由を挙げて,実験結果(乙12)は信用できないと主張する。 しかし,実験(乙12)は実験(乙7)よりも成膜中の圧力が高くなっていることからすると,実験(乙12)において,実験(乙7)と同様にドームの中心部に設置された膜厚計における成膜レートを0.8Åとなるようにするために,単位時間当たりに蒸発させる成膜材料の量の調整等をしていることが考えられる。仮に,調整等がされていない場合には,実験(乙7)又は実験(乙12)のいずれかにおいて,膜厚計における成膜レートが0.8Åに達していないと解するのが合理的であり,その点においては,乙7及び乙12に係る実験結果には,正確性の点で難がないわけではない。いずれにしろ,両実験は,圧力以外の条件において,同一性が確保されているとはいえない。控訴人の上記各主張は,実験(乙7)と実験(乙12)との違いは成膜中の圧力のみであるとの前提に立つものであって,採用できず,前記認定を覆すものではない。」(12) 原判決13頁6行目ないし12行目を,次のとおり訂正する。 と実験(乙12)との違いは成膜中の圧力のみであるとの前提に立つものであって,採用できず,前記認定を覆すものではない。」(12) 原判決13頁6行目ないし12行目を,次のとおり訂正する。 「(2) 前記のとおり,被控訴人装置を用いて,成膜中の真空度(圧力)を0.005Paとした実験の結果(乙7)では,ハース用仕切り板を設置した場合,左側の10か所(A1ないし10)は全く膜が形成されないか,又は最も厚い膜とほぼ同程度の厚さの膜が形成された右端のB10の2パーセント未満の厚さの膜しか形成されず,被控訴人装置を用いて,成膜中の真空度(圧力)をイオンアシストがある場合と同一の0.009Paとした実験の結果(乙12)では,ハース用仕切り 板を設置した場合,A6ないし8の膜厚はB10の2パーセント未満,A9と10の膜厚はB10の1パーセント未満であり,これらによると,最も厚い膜とほぼ同程度の厚さの膜が形成されたB10に比べ,A6ないし10に形成された膜は極めて薄く,少なくとも,A6ないし10は実質的には膜が形成されているとはいえない。そうすると,被控訴人装置では,ハースを蒸発源とする成膜材料の供給が,基板保持面全域に向けてなされているとはいえず,したがって,被控訴人方法は,本件発明1の構成要件1-Aを充足しない。」(13) 原判決14頁5行目の「実験」の後に「(乙7及び12)」を,「形成されない」の後に「,又は実質的に膜が形成されたとはいえない」を加える。 (14) 原判決14頁7行目末尾を改行して,次のとおり加える。 「また,控訴人は,①本件発明1においては,基体保持面の「回転」を前提としており,回転により均一化されるので,成膜材料の基体保持面への供給量・到達量の大小は問題にならない,②本件発明1においては,膜厚補正板 控訴人は,①本件発明1においては,基体保持面の「回転」を前提としており,回転により均一化されるので,成膜材料の基体保持面への供給量・到達量の大小は問題にならない,②本件発明1においては,膜厚補正板の存在を前提としているから,その点に照らすならば,各基板に到達する成膜材料の「量」に差があるものを含むと合理的に考えられ,したがって,構成要件1-Aは,成膜材料が基体保持面に到達する量が僅かな場合であっても含まれると解すべきであると主張する。 しかし,以下のとおり,控訴人の上記主張は失当である。 構成要件1-Aは,「基体保持手段の基体保持面の全域に向け成膜材料を供給することによって前記基体保持面に保持され回転している基体のすべてに対して前記成膜材料を連続して供給するとともに,」とされている。そして,本件特許明細書(甲2)の段落【0033】には「本実施形態の蒸発源34は,成膜材料を,・・・基板ホルダ12に保持されるすべての基板14に対して連続して付着させることが可能となるような配置及び向きで設置されている。」との記載があることからすると,構成要件1-Aは,回転による膜厚の均一化とは関わりなく,基体の全てが,連続して成膜材料が付着されることを要すると解すべきである。 また,成膜補正板は,基体保持面の各所に取り付けられた基体に成膜材料が一定程度蒸着することを前提として,種々の要因によりその膜厚分布が均一とならないことから,均一を図る目的で設置されるものである(甲41)。 したがって,基板保持面に到達する成膜材料の量が僅かであっても足りるとの控訴人の主張は採用できない。 控訴人は,構成要件1-Aは,基体保持面が「回転」することを前提としていることから,「基体保持手段の基体保持面の全域に向け成膜材料を供給する」は,蒸発源か りるとの控訴人の主張は採用できない。 控訴人は,構成要件1-Aは,基体保持面が「回転」することを前提としていることから,「基体保持手段の基体保持面の全域に向け成膜材料を供給する」は,蒸発源から蒸発した成膜材料が基体保持面に「付着」又は「堆積」することと解すべきではなく,蒸発源による蒸発物の蒸発方向が,基体保持面の全域に「向いていればよい」と解すべきであると主張する。しかし,上記のとおり,構成要件1-Aは,基体の全てが,実質的に連続して成膜材料が付着されることを要すると解すべきであるから,控訴人の上記主張は失当である。 以上によれば,成膜材料が付着しているとは評価できない基体が存在するような場合には,構成要件1-Aを充足しないと解すべきである。 なお,控訴人は,被控訴人装置においては,レシピの設定変更により,RHソースとイオンソースを同時稼働とすることも,RHソースとハースを同時稼働とすることも可能であると主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。RHソースとイオンソースを同時稼働とする公知例や,RHソースとハースを同時稼働とする公知例があるとしても,そのことから,被控訴人装置において同時稼働が可能であると認定することはできない。」(15) 原判決14頁8行目の「被告装置の稼働により使用する方法は,被告方法の構成a」を「被控訴人方法は,構成要件1-A」と訂正する。 (16) 原判決14頁13行目の「基板保持手段の基板保持面の全域に向け成膜材料を供給する」を「基板保持手段の基板保持面の全領域に対して成膜材料を供給可能となる」と訂正する。 2 結論 以上のとおり,控訴人の請求はいずれも理由がない。したがって,本件控訴は理由がないので,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的 と訂正する。 結論 以上のとおり、控訴人の請求はいずれも理由がない。したがって、本件控訴は理由がないので、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官 飯村敏明 裁判官 八木貴美子 裁判官 小田真治 別紙装置等目録 1 防汚膜装置「Gener-2350」 2 上記装置の稼働により使用する方法

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