平成31年4月26日判決言渡平成30年(行ウ)第73号自己情報非開示等決定取消等請求事件主文 1 本件訴えのうち,吹田市長が,別紙1訂正目録記載1の通知文書中,同目録記載2の訂正前の記載を,同目録記載3の訂正後の記載のとおり訂正する 旨の決定をすることの義務付けを求める部分を却下する。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 吹田市長が平成28年10月11日付けで原告に対してした自己情報非開示等決定(28吹総人第1068号。以下「本件決定」という。)を取り消す。 2 吹田市長は,別紙1訂正目録記載1の通知文書中,同目録記載2の訂正前の記載を,同目録記載3の訂正後の記載のとおり訂正する旨の決定をせよ。 第2 事案の概要本件は,吹田市議会議員である原告が,被告の総務部長及び水道部長(以下「総務部長等」という。)が連名で作成し吹田市長が保有する被告職員宛ての平成28年8月26日付けの通知文書(別紙1訂正目録記載1の通知文書。以下「本件通知文書」という。)に記録された原告の同市議会における 発言内容(その記載内容は同目録記載2の訂正前の記載のとおり。以下「本件訂正前記載」という。)に係る情報が,吹田市個人情報保護条例(平成14年条例第7号。以下「本件条例」という。)にいう自己に関する個人情報(以下「自己情報」という。)に当たることを前提に,原告が現実に同市議会において行った発言内容(以下「本件発言」という。)と相違するため, 自己情報に事実の誤りがあるとして,吹田市長に対し,本件条例18条1項 に基づき,本件訂正前記載を本件発言のとおりに訂正することを求める旨の訂正の請求(以下,同項に基づく訂正の請求を「 自己情報に事実の誤りがあるとして,吹田市長に対し,本件条例18条1項 に基づき,本件訂正前記載を本件発言のとおりに訂正することを求める旨の訂正の請求(以下,同項に基づく訂正の請求を「訂正請求」という。)をしたところ,訂正しない旨の決定(本件決定)を受けたことから,被告に対し,行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)3条2項所定の処分の取消しの訴えとして本件決定の取消しを求めるとともに,同条6項2号所定の義務付 けの訴えとして,本件訂正前記載を,同目録記載3の訂正後の記載(以下「本件訂正後記載」という。)のとおり訂正することの義務付けを求める事案である。 1 本件条例の定め本件条例の要旨は,別紙2「本件条例の定め」のとおりである(乙1。なお, 当該別紙における略語の定義は,本文においても用いる。)。 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 当事者等ア原告は,吹田市議会議員である。 イ吹田市長は,本件条例2条4号所定の実施機関である。 ⑵ 本件通知文書作成の経緯ア被告においては,平成17年12月以降,①職務に専念する義務の特例に関する条例の規定に基づき,職員団体等の運営上やむを得ない最少限度の範囲内で,その業務を行う場合等に被告職員の職務専念義務免除を承認 し,承認した時間に係る給与を無給とすることとされる一方,②職員団体等が被告により職務専念義務免除を承認された被告職員(以下「対象職員」ということがある。)に対して当該無給とされた部分の給与を補填する便宜のため,対象職員からその給与減額情報を当該職員団体等に提供することの可否につき直接の意思確認をすることなく,当該職員団体等に対し, 給与減額情報を て当該無給とされた部分の給与を補填する便宜のため,対象職員からその給与減額情報を当該職員団体等に提供することの可否につき直接の意思確認をすることなく,当該職員団体等に対し, 給与減額情報を提供するとの取扱いが行われてきた(以下「本件取扱い」 という。)。(甲3,弁論の全趣旨)イ本件発言の内容等(ア) 原告は,平成28年5月23日,吹田市議会の平成28年度5月定例会において,本件取扱いに関し,次の発言をした(本件発言)。(甲2)「多数の各職員の給与の額が,こちらも個人情報ですね,本人の同意 を得ることなく,無断で市から第三者に過去何年にもわたって提供されていることについて,(中略)要は第三者に出ているものについて,どのような対処をされるのかということを質問として申し上げます(後略)。」「もう一度申し上げますが,本人の同意を得ず,無断で各職員の給与額を第三者に提供しております。再度,今も否定されたんですが,そこ にも大きな市の問題があると申し上げておきます。」(イ) 本件発言を記録した吹田市議会平成28年度5月定例会の会議録(以下「本件会議録」という。)は,同月頃,被告のインターネット上のウェブサイトにおいて公開された。(弁論の全趣旨)ウ総務部長等は,本件取扱いを変更し,職員団体等へ対象職員の給与減額 情報を提供する前提として,当該対象職員から被告に対して当該職員団体等へ当該情報の提供を行うことについての同意書が提出されていることを条件とすること(以下「本件取扱変更」という。)により,対象職員の意思の明確化を図ることを決め,連名で,平成28年8月26日付けで,被告職員に対し,「職員団体等の活動等に係る職務専念義務免除に伴い減額さ れる給与情報の提供について(通知)」 り,対象職員の意思の明確化を図ることを決め,連名で,平成28年8月26日付けで,被告職員に対し,「職員団体等の活動等に係る職務専念義務免除に伴い減額さ れる給与情報の提供について(通知)」と題する文書(28総人第1040号。本件通知文書)を発出した。本件通知文書には,本件取扱いについての記載がされた上で,次のとおり,本件訂正前記載(別紙1訂正目録記載2)を含む記載がされていた。(甲3,弁論の全趣旨)「しかしながら,先日,職員が直接市へ同意書を提出していない状態で, 第三者である職員団体等へ当該職員の給与減額情報を提供することは違法 ではないのかとの指摘が市民の方からありました。そのため,市として,そのような疑念を持たれることのない適切な取扱いとするため,下記のとおり,対象職員に同意書の提出を求めることで,職員の意思の明確化を図るものです。 記 1 市から職員団体等へ給与減額情報を提供する前提条件⑴ 市が職員団体等へ情報提供を行うことについての同意書が当該職員から市へ提出されていること⑵ (略) 2 (略) 3 同意書の様式別紙のとおり 4 (略)」⑶ 本件訂正前記載に係る訂正請求原告は,平成28年9月30日付けで,吹田市長に対し,本件条例18条1項に基づき,本件通知文書中の本件訂正前記載に係る情報が自己情報に当 たることを前提に,自己情報に事実の誤りがあるとして,本件訂正前記載を本件発言のとおりに訂正することを求める旨の訂正請求をした。(甲4)⑷ 本件決定等ア吹田市長は,平成28年10月11日付けで,前記⑶の訂正請求に対し,訂正をしない旨の決定をした(本件決定)。(甲5) イ原告は,平成29年1月10日付けで,吹田市長に対し,本件決定 吹田市長は,平成28年10月11日付けで,前記⑶の訂正請求に対し,訂正をしない旨の決定をした(本件決定)。(甲5) イ原告は,平成29年1月10日付けで,吹田市長に対し,本件決定について,行政不服審査法4条に規定する審査請求をしたが,同年11月28日付けで,棄却する旨の裁決を受けた。(甲6,7)⑸ 本件訴訟の提起原告は,平成30年5月9日,本件訴訟を提起した。 3 争点 ⑴ 取消しの訴え本件決定の適法性(争点1)なお,本件訂正前記載における「市民の方」の「指摘」が原告の本件発言を指すものであること及び本件訂正前記載に係る情報が原告の自己情報であることについては,当事者間に争いがない。 ⑵ 義務付けの訴えア義務付けの訴えの適法性(争点2)イ本件訂正後記載に訂正すべきであることが法令の規定から明らかであるか否か(争点3) 4 争点に対する当事者の主張の要旨 ⑴ 争点1(本件決定の適法性)(原告の主張の要旨)ア本件訂正前記載に係る情報が「事実」に該当すること本件訂正前記載は,本件取扱いに関して原告からどのような指摘があったのかを要約したものであり,いかなる指摘がされたか否かは「事実」に 該当する。 イ本件訂正前記載に係る情報に「事実の誤り」があること原告の吹田市議会における発言(本件発言)は,被告が,本件取扱いに関し,対象職員に無断で,対象職員の属する職員団体等にその給与減額情報を提供することの問題を指摘するものであるのに対し,本件通知文書に おける本件訂正前記載は,本件発言を,被告が対象職員から給与減額情報の提供について同意を得ていたにもかかわらず,同意書の作成・提出を求めていなかったという手続面での のに対し,本件通知文書に おける本件訂正前記載は,本件発言を,被告が対象職員から給与減額情報の提供について同意を得ていたにもかかわらず,同意書の作成・提出を求めていなかったという手続面での問題を指摘したものとして記載するものとなっており,被告が対象職員から同意を得ていなかったという問題点を隠蔽し,本件発言をわい曲して記載するものとなっているから,本件訂正 前記載に係る情報に「事実の誤り」がある。 ウ訂正の必要があること本件条例18条が訂正請求を規定する趣旨が,自己情報の主体である個人の正当な利益が損なわれることを未然に防止することにあり,本件条例が,誤った情報,不完全な情報によって自己に関して誤った判断がされない利益を保護するものであることを踏まえると,自己情報に事実の誤りが あることにより,当該個人に不利益が生ずるのであれば,訂正が認められなければならない。 本件訂正前記載は,これに接した被告職員に対し,原告が,本件取扱いの問題点が対象職員に給与減額情報の提供について同意は得ていたが同意書の作成・提出を求めていなかったという形式的な点にあるのではなく, そもそも同意を得ていなかったという点にあることを理解できていない議員であるとか,被告の肩を持つような議員であるといった誤った評価をさせるに足りる記載であり,原告の議員としての活動や市議会議員選挙に影響を及ぼすものであるから,原告の名誉に著しく関わるものである。 したがって,本件訂正前記載は,訂正の必要性のある記載である。 エ以上のとおり,本件訂正前記載に係る情報に「事実の誤り」があり,訂正する必要があるから,その訂正を認めなかった本件決定は違法である。 (被告の主張の要旨)ア本 る。 エ以上のとおり,本件訂正前記載に係る情報に「事実の誤り」があり,訂正する必要があるから,その訂正を認めなかった本件決定は違法である。 (被告の主張の要旨)ア本件訂正前記載に係る情報は「事実」に該当しないこと本件条例18条1項の「事実」とは,客観的に判断できるものをいい, 価値判断を伴うものを含まないと解される。 本件訂正前記載は,被告職員に対して本件取扱変更を行うこととなった契機を周知することを目的として本件発言を要約したものであり,発出者の価値判断を伴った記載であるから,本件訂正前記載に係る情報は「事実」に該当しない。 イ本件訂正前記載に係る情報に「事実の誤り」がないこと 前記アの点を措くとしても,本件通知文書は,給与減額情報の提供に係る本件取扱変更の内容を被告職員に対して周知することを目的に作成され,本件取扱変更の必要性を被告職員により良く理解してもらうために発出された文書であるから,本件発言を正確に記載することが要求されるものではなく,その記載内容いかんについては,文書発出者に一定の裁量がある。 そして,原告と被告との間では,本件取扱いに関し,実際には給与減額情報を提供することを同意していない職員がいたか否かについて認識は異にするものの,対象職員から同意書という形式で明示的に同意の意思が明らかにされないまま行われてきたという点で慎重さを欠いていたという限度では争いがなく,本件通知文書は,当該争いのない点を記載することで, 前記の目的を十分に達せられるとの文書発出者の判断に基づいて記載されたものであって,何ら不合理なものではない。 そもそも,本件訂正前記載は,原告が主張するように,被告が,対象職員の同意はあったが単に同意書の提出を受けないままに の文書発出者の判断に基づいて記載されたものであって,何ら不合理なものではない。 そもそも,本件訂正前記載は,原告が主張するように,被告が,対象職員の同意はあったが単に同意書の提出を受けないままに給与減額情報を職員団体等に提供したとの趣旨であると受け取る余地もなく,本件訂正前記 載に係る情報に「事実の誤り」はない。 ウしたがって,本件訂正前記載を訂正しない旨の本件決定は適法である。 ⑵ 争点2(義務付けの訴えの適法性)(原告の主張の要旨)前記⑴(原告の主張の要旨)のとおり,本件決定は,本件訂正前記載に係 る情報に「事実の誤り」があり,本件訂正前記載を訂正する必要があるにもかかわらず,これを認めなかったものであり,本件決定が取り消されるべき場合に当たるから,本件の義務付けの訴えは適法である。 (被告の主張の要旨)争点1に係る被告の主張のとおり,本件訂正前記載に係る情報に「事実の 誤り」はなく,本件決定は適法であり,本件決定は取り消されるべきもので はないから,本件の義務付けの訴えは,行訴法37条の3第1項2号の訴訟要件を満たさない不適法な訴えである。 ⑶ 争点3(本件訂正後記載に訂正すべきであることが法令の規定から明らかであるか否か)(原告の主張の要旨) 争点1に係る原告の主張のとおり,本件決定は,本件訂正前記載に係る情報に「事実の誤り」があり,本件訂正前記載を訂正する必要があるから,吹田市長は,別紙1訂正目録記載3の本件訂正後記載のとおり訂正する旨の決定をすべきであることが本件条例の規定から明らか(行訴法37条の2第5項)というべきである。 (被告の主張の要旨)争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件決定の適 定をすべきであることが本件条例の規定から明らか(行訴法37条の2第5項)というべきである。 (被告の主張の要旨)争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件決定の適法性)について⑴ 判断の枠組み ア本件条例は,実施機関が保有する個人情報の開示,訂正等を求める市民の権利を保障するとともに,個人情報の適正な取扱いの確保に関し必要な事項を定めることにより,個人の権利利益の侵害の防止を図り,もって基本的人権の擁護と信頼される市政の推進に寄与することを目的とし(1条),実施機関は,保有個人情報(実施機関の職員において職務上作成し,又は 取得した個人情報であって,当該実施機関の職員が組織的に利用するものとして,当該実施機関が保有しているもののうち,公文書に記録されているもの)の適正な維持管理を図るため,個人情報管理責任者を定めるとともに,保有個人情報を利用目的に必要な範囲内で正確かつ最新なものとすること等に関し必要な措置を講じなければならず(10条,2条1号,8 号,9号),何人も,実施機関が現に保有している自己に関する保有個人 情報(自己情報)に事実の誤りがあるときは,当該実施機関に対し,自己情報の訂正を請求すること(訂正請求)ができ(18条1項,2条1号,8号,9号),実施機関は,訂正請求があったときは,当該請求に対する決定をしなければならない(22条1項)旨を規定する。 このような本件条例の規定内容に照らすと,本件条例の定める訂正請求 の制度は,実施機関が現に保有している自己に関する保有個人情報(自己情報)の内容に事実の誤りがあると認める者に対し,その訂正を請求する権利を保障することにより,保有個人情報の内容の正確性を向上させ,もって,実施機関の保有する誤りのある保有個 する保有個人情報(自己情報)の内容に事実の誤りがあると認める者に対し,その訂正を請求する権利を保障することにより,保有個人情報の内容の正確性を向上させ,もって,実施機関の保有する誤りのある保有個人情報が利用されることにより誤った評価・判断が行われるなどすることを通じた当該保有個人情報に 係る個人の権利利益の侵害を防止することを趣旨目的として設けられたものと解される。 イ前記アのとおりの本件条例の定める訂正請求の制度の趣旨目的に加えて,評価・判断は,一般的に,保有個人情報の内容のみならず他の様々な要素を勘案してされるものであることも併せ考えると,訂正請求の対象たる「事 実」とは,評価・判断そのものは含まない一方,住所,氏名,性別,生年月日,家族構成,学歴等に限定されるわけではなく,保有個人情報のうち証拠等をもって客観的にその存否を決することが可能なものをいうものと解される。 ウそして,(ア)前記アのとおりの本件条例の定める訂正請求の制度の趣旨目 的に加えて,(イ)実施機関は,多種多様な経緯や目的により,個人情報を収集,取得等するとともに,これを公文書に記録して利用していること,(ウ)前記アのとおり,実施機関は,保有個人情報の適正な維持管理を図るため,保有個人情報を利用目的に必要な範囲内で正確かつ最新なものとすること等に関し必要な措置を講じなければならないものとされていること等に鑑 みれば,訂正請求の対象となる「事実の誤り」とは,自己情報中の事実と 客観的な事実とが相違する場合の全てを指すのではなく,(a)当該実施機関における,当該自己情報及び当該自己情報を記録した公文書の作成,取得等の経緯・目的,これらの性質,利用状況等や,(b)当該自己情報中の事実と客観的な事実との間の相違の内容,程度等を考 )当該実施機関における,当該自己情報及び当該自己情報を記録した公文書の作成,取得等の経緯・目的,これらの性質,利用状況等や,(b)当該自己情報中の事実と客観的な事実との間の相違の内容,程度等を考慮した上で,当該自己情報が利用されることにより誤った評価・判断が行われるなどすることを通 じて当該自己情報に係る者の権利利益が侵害される相当程度の蓋然性が存する場合に限って,「事実の誤り」があるものとして,訂正請求が認められるものと解される。 ⑵ 本件訂正前記載に係る情報が「事実」に該当するか否かについて以下,前記⑴イに説示した判断の枠組みに沿って,検討する。 ア本件訂正前記載は,「先日,職員が直接市へ同意書を提出していない状態で,第三者である職員団体等へ当該職員の給与減額情報を提供することは違法ではないのかとの指摘が市民の方からありました。」というものであるところ,「市民の方」すなわち原告がこのような指摘をしたか否かは,証拠等をもって客観的にその存否を決することが可能なものということができ るから,本件訂正前記載に係る情報は,「事実」に該当する。 イこれに対し,被告は,本件訂正前記載は,被告職員に対して本件取扱変更を行うこととなった契機を周知することを目的として本件発言を要約したものであって,発出者の価値判断を伴った記載であるから,本件訂正前記載に係る情報は,「事実」に該当しない旨主張する。 しかしながら,前記アのとおり,原告が本件訂正前記載に係る指摘をしたか否かは証拠等をもって客観的にその存否を決することが可能なものであるということができるのであって,本件訂正前記載が被告職員に対して本件取扱変更を行うこととなった契機を記載することを目的として本件発言を要約したものであるからといって,本件訂正前記載に 能なものであるということができるのであって,本件訂正前記載が被告職員に対して本件取扱変更を行うこととなった契機を記載することを目的として本件発言を要約したものであるからといって,本件訂正前記載に係る情報は,「事 実」に該当しないということはできない。 したがって,被告の主張は,採用することができない。 ウ以上によれば,本件訂正前記載に係る情報は,「事実」に該当する。 (3) 本件訂正前記載に係る情報に「事実の誤り」があるか否かについて以下,前記⑴ウに説示した判断の枠組みに沿って,検討する。 ア前記前提事実⑵及び弁論の全趣旨によれば,①被告においては,職員団 体等が対象職員に対して職務専念義務免除をされた結果無給とされた部分の給与を補填する便宜のため,対象職員からその給与減額情報を当該職員団体等に提供することの可否につき直接の意思確認をすることなく,当該職員団体等に対し,給与減額情報を提供するとの取扱い(本件取扱い)が行われてきたところ,②原告から,吹田市議会の平成28年度5月定例会 において本件発言がされるなど,本件取扱いが不適切である旨の指摘を受けたことから,総務部長等は,③本件取扱いを変更し,職員団体等へ対象職員の給与減額情報を提供する前提として,当該対象職員から被告に対して当該職員団体等へ当該情報の提供を行うことについての同意書が提出されていることを条件とすること(本件取扱変更)により,対象職員の意思 の明確化を図ることを決め,④本件取扱変更を被告職員に対して書面で周知するに当たり,本件取扱変更に至る経緯として,その契機となった原告による本件取扱いが不適切である旨の指摘を当該書面上で紹介することとしたが,⑤その際,本件取扱変更の要点は,これまで職員団体等へ対象職員の給 たり,本件取扱変更に至る経緯として,その契機となった原告による本件取扱いが不適切である旨の指摘を当該書面上で紹介することとしたが,⑤その際,本件取扱変更の要点は,これまで職員団体等へ対象職員の給与減額情報を提供するに先立ち当該対象職員から当該職員団体等へ 当該情報の提供を行うことについての同意書を取り付けてこなかった点を改めて,当該同意書を取り付けることにあると判断し,当該書面を読んだ被告職員に当該要点を十分理解してもらう観点から,本件取扱いが不適切である旨の指摘をする本件発言について,本件訂正前記載のとおりに要約して被告職員宛の本件通知文書に記載し,⑥もって,本件訂正前記載に係 る情報を作成して公文書たる本件通知文書に記録した上,これを吹田市長 に保有させたことが認められる。 このように,実施機関の職員たる総務部長等は,原告からの本件取扱いが不適切である旨の指摘を受けて,本件取扱変更を行うことを被告職員に周知するに当たり,本件取扱変更の契機となった当該指摘を当該書面上で紹介する目的で,本件訂正前記載に係る情報を作成し,これを公文書たる 本件通知文書に記録したのであって,吹田市議会における原告の本件発言を逐語的に正確に伝えることを目的として,本件訂正前記載に係る情報や本件通知文書を作成したわけではない(なお,議会における議員の発言を正確に伝える役割は,一般的に,会議録に期待されていると考えられるところ,本件においては,本件発言は,前記前提事実⑵イ(イ)のとおり,本件 会議録に記録されて,被告のインターネット上のウェブサイトにおいて公開されている。)。また,本件通知文書やこれに記録された当該情報については,本件取扱変更等の被告職員への周知の目的以外で利用されることは予定されておらず,本件各証拠によって のウェブサイトにおいて公開されている。)。また,本件通知文書やこれに記録された当該情報については,本件取扱変更等の被告職員への周知の目的以外で利用されることは予定されておらず,本件各証拠によっても,吹田市長,総務部長等において,当該情報について,当該目的以外で利用する相応の可能性があると 認めることもできない。 そして,本件訂正前記載と本件発言との間の相違の内容,程度等をみると,(a)本件訂正前記載は,「市民の方」すなわち原告から,職員が直接市へ「同意書を提出していない状態」で,第三者である職員団体等へ当該職員の給与減額情報を提供することは違法ではないのかとの指摘があった旨 記載されているものである(前記前提事実⑵ウ)のに対し,(b)原告は,本件発言で,職員団体等へ対象職員の給与減額情報を提供するに先立ち当該対象職員から当該職員団体等へ当該情報の提供を行うことについての「同意を得ていない」点において,本件取扱いが不適切である旨の発言をしている(同イ(ア))ところ,(ⅰ)本件訂正前記載と本件発言とは,本件取扱い が不適切であるとの指摘をする点において共通するとともに,(ⅱ)一般的 に,「同意を得てい」ること(「同意」の存在)を証する客観的な資料が「同意書」であって,地方公共団体が第三者から「同意」を得た場合には,「同意」の有無に関する事後の係争の発生を防止するため,当該第三者から「同意書」を得ておくことが多いと考えられることにも照らすと,「同意書を提出していない状態」との本件通知文書の文面を読んだ者としては,当該状 態は,「同意を得ていない状態」と同義であると受け取る可能性が高いと推認されるのであって,本件訂正前記載と本件発言とは,(ⅰ)根本部分において共通する一方で,(ⅱ)相違点は必ずしも大きくない 態は,「同意を得ていない状態」と同義であると受け取る可能性が高いと推認されるのであって,本件訂正前記載と本件発言とは,(ⅰ)根本部分において共通する一方で,(ⅱ)相違点は必ずしも大きくないものと考えることができる。 これらの諸事情を考慮すると,原告の自己情報たる本件訂正前記載に係 る情報が利用されることにより誤った評価・判断が行われるなどすることを通じて原告の権利利益が侵害される相当程度の蓋然性が存すると認めることはできない。 以上によれば,本件訂正前記載に係る情報に「事実の誤り」があるということはできない。 イこれに対し,原告は,原告の吹田市議会における発言(本件発言)は,被告が,本件取扱いに関し,対象職員に無断で,対象職員の属する職員団体等にその給与減額情報を提供することの問題を指摘するものであるのに対し,本件訂正前記載は,本件発言を,被告が対象職員から給与減額情報の提供について同意を得ていたにもかかわらず,同意書の作成・提出を求 めていなかったという手続面での問題を指摘したものとして記載するものとなっており,被告が対象職員から同意を得ていなかったという問題点を隠蔽し,本件発言をわい曲して記載するものとなっているから,本件訂正前記載には「事実の誤り」がある旨主張する。 しかしながら,原告の主張は,自己情報中の事実と客観的な事実とが相 違する場合には,「事実の誤り」があると認めるべきであるとの見解に立つ ものであって,前記⑴ウに説示したところによれば,採用することができない。なお,前記アに説示したとおり,実施機関の職員たる総務部長等は,原告からの本件取扱いが不適切である旨の指摘を受けて,本件取扱変更を行うことを被告職員に周知するに当たり,本件取扱変更の契機となった当該指摘を当 アに説示したとおり,実施機関の職員たる総務部長等は,原告からの本件取扱いが不適切である旨の指摘を受けて,本件取扱変更を行うことを被告職員に周知するに当たり,本件取扱変更の契機となった当該指摘を当該書面上で紹介する目的で,本件訂正前記載に係る情報を作成 し,これを公文書たる本件通知文書に記録したのであって,吹田市議会における原告の本件発言を逐語的に正確に伝えることを目的として,本件訂正前記載に係る情報や本件通知文書を作成したわけではないことに照らせば,本件取扱変更の要点は,これまで職員団体等へ対象職員の給与減額情報を提供するに先立ち当該対象職員から当該職員団体等へ当該情報の提供 を行うことについての同意書を取り付けてこなかった点を改めて,当該同意書を取り付けることにあると判断し,当該書面を読んだ被告職員に当該要点を十分理解してもらう観点から,本件取扱いが不適切である旨の指摘をする本件発言について,本件訂正前記載のとおりに要約して被告職員宛の本件通知文書に記載したことにも相応の合理性があるものと考えられる から,本件訂正前記載が,被告が対象職員から同意を得ていなかったという問題点を隠蔽等するものであるということはできない。 したがって,原告の前記主張は,採用することができない。 ウまた,原告は,本件訂正前記載は,これに接した被告職員に対し,原告が,本件取扱いの問題点が対象職員に給与減額情報の提供について同意は 得ていたが同意書の作成・提出を求めていなかったという形式的な点にあるのではなく,そもそも同意を得ていなかったという点にあることを理解できていない議員であるとか,被告の肩を持つような議員であるといった誤った評価をさせるに足りる記載であり,原告の議員としての活動や市議会議員選挙に影響を及ぼすものであるから, いう点にあることを理解できていない議員であるとか,被告の肩を持つような議員であるといった誤った評価をさせるに足りる記載であり,原告の議員としての活動や市議会議員選挙に影響を及ぼすものであるから,原告の名誉に著しく関わるも のである旨主張する。 しかしながら,前記アに説示したとおり,「同意書を提出していない状態」との本件通知文書の文面を読んだ者としては,当該状態は,「同意を得ていない状態」と同義であると受け取る可能性が高いと推認される上,前記アに説示したとおりの本件通知文書やこれに記録された本件訂正前記載に係る情報の作成の経緯・目的やこれらの性質,利用状況等も考慮すると, 本件訂正前記載に係る情報が利用されることにより,原告の主張するような不利益が生ずる相当程度の蓋然性が存すると認めることはできない。 したがって,原告の主張は,採用することができない。 ⑷ 以上によれば,本件訂正前記載を訂正しない旨の本件決定は,適法である。 2 争点2(義務付けの訴えの適法性)について 一定の処分を求める旨の法令に基づく申請を却下し又は棄却する旨の処分がされた場合における当該一定の処分についての義務付けの訴えは,当該申請に対する応答としてされた処分が「取り消されるべきものであり,又は無効若しくは不存在である」(行訴法37条の3第1項2号)という要件に該当するときに限り提起することができるものである(同項柱書)。 そして,本件においては,吹田市長が別紙1訂正目録記載1の本件通知文書中,同目録記載2の訂正前の記載を,同目録記載3の訂正後の記載のとおり訂正する旨の決定をすることの義務付けを求める訴えと併合して提起された本件決定の取消請求に理由がないことは前記1のとおりであるから,本件訴えのうち,前記義務付けを求 目録記載3の訂正後の記載のとおり訂正する旨の決定をすることの義務付けを求める訴えと併合して提起された本件決定の取消請求に理由がないことは前記1のとおりであるから,本件訴えのうち,前記義務付けを求める部分は,訴訟要件を満たさない不適法な訴えとして 却下を免れない。 第4 結論よって,本件訴えのうち,吹田市長が別紙1訂正目録記載1の本件通知文書中,同目録記載2の訂正前の記載を,同目録記載3の訂正後の記載のとおり訂正する旨の決定をすることの義務付けを求める部分は不適法であるからこれを 却下し,原告のその余の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文 のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官三輪方大 裁判官黒田吉人 裁判官 山﨑岳志 (別紙1)訂正目録 1 通知文書平成28年総人第1040号平成28年8月26日付け吹田市総務部長A及び 水道部長B連名の「職員団体等の活動等に係る職務専念義務免除に伴い減額される給与情報の提供について(通知)」と題する文書 2 訂正前の記載先日,職員が直接市へ同意書を提出していない状態で,第三者である職員団体等へ当該職員の給与減額情報を提供することは違法ではないのかとの指摘が市民 の方からありました。 3 訂正後の記載先日,市が直接職員から同意を得ていない状態で,第三者である職員 員団体等へ当該職員の給与減額情報を提供することは違法ではないのかとの指摘が市民 の方からありました。 3 訂正後の記載先日,市が直接職員から同意を得ていない状態で,第三者である職員団体等へ当該職員の給与減額情報を提供することは違法ではないのかとの指摘が市民の方からありました。 以上 (別紙2)本件条例の定め 1 1条は,本件条例は,実施機関が保有する個人情報の開示,訂正等を求める市民の権利を保障するとともに,個人情報の適正な取扱いの確保に関し必要な事項 を定めることにより,個人の権利利益の侵害の防止を図り,もって基本的人権の擁護と信頼される市政の推進に寄与することを目的とする旨を規定する。 2 2条は,本件条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる旨を規定する。 ⑴ 個人情報個人に関する情報であって,特定の個人が識別され,又は識別さ れ得るものをいう(ただし,1号ただし書に掲げるものを除く。)。(1号)⑵ 実施機関市長,教育委員会,選挙管理委員会,公平委員会,監査委員,農業委員会,固定資産評価審査委員会,水道事業管理者,消防長及び議会をいう。 (4号)⑶ 公文書実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書,図面及び写真 並びに電磁的記録であって,実施機関が管理しているものをいう。(8号)⑷ 保有個人情報実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した個人情報であって,当該実施機関の職員が組織的に利用するものとして,当該実施機関が保有しているもののうち,公文書に記録されているものをいう。(9号) 3 3条1項は,実施機関は,本件条例の目的を達成するため,個人情報の保護に 関し必要な措置を講じなければならない旨を 関が保有しているもののうち,公文書に記録されているものをいう。(9号) 3 3条1項は,実施機関は,本件条例の目的を達成するため,個人情報の保護に 関し必要な措置を講じなければならない旨を規定する。 4 6条1項は,実施機関は,個人情報の取扱いに当たっては,所掌する事務又は事業の目的達成に必要な範囲内で適切かつ公正な手段によって行われなければならない旨を規定する。 5 7条1項は,実施機関は,個人情報を収集するときは,出版,報道等により公 にされているものから収集することが正当であると認められるとき(3号)等を 除き,あらかじめ個人情報の収集目的を明らかにして,本人から直接収集しなければならない旨を規定している。 6 8条1項は,実施機関は,出版,報道等により公にされているものの目的外利用(収集の際に明らかにした収集目的以外の目的のために実施機関内若しくは実施機関相互において保有個人情報の利用をいう。以下同じ。)をし,又は外部提 供(実施機関以外のものに保有個人情報の提供をいう。以下同じ。)をすることが正当であると認められるとき(3号)等を除き,目的外利用をし,又は外部提供をしてはならない旨を規定している。 7 10条は,実施機関は,保有個人情報の適正な維持管理を図るため,個人情報管理責任者を定めるとともに,保有個人情報を利用目的に必要な範囲内で正確か つ最新なものとすること(1号)等に関し必要な措置を講じなければならない旨を規定している。 8 18条1項は,何人も,実施機関が現に保有している自己情報(自己に関する個人情報をいう。14条1項)に事実の誤りがあるときは,当該実施機関に対し,自己情報の訂正(追加を含む。以下同じ。)を請求すること(訂正請求)ができ る旨を規定する。 9 22条1 に関する個人情報をいう。14条1項)に事実の誤りがあるときは,当該実施機関に対し,自己情報の訂正(追加を含む。以下同じ。)を請求すること(訂正請求)ができ る旨を規定する。 9 22条1項は,実施機関は,訂正請求等があったときは,当該請求に対する決定をしなければならない旨を規定する。 以上
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