【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告代理人萩森守、同安野一孝の上告理由第一点、第二点について。 消費貸借につ
主文本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由上告代理人萩森守、同安野一孝の上告理由第一点、第二点について。 消費貸借について利息制限法の制限を超過する利息を天引した場合には天引利息中同法の制限の範囲内の金額と現実交付額との合計額について消費貸借が成立するものと解すべきであるから、原判決が、昭和二八年七月一五日上告人(控訴人)代理人河野佳市と被上告人(被控訴人)間に元金を二〇万円、利息を一ケ月五分、弁済期を翌二九年一月三一日とする消費貸借を結ぶとの合意がなされ、その際一ケ月分五分の利息一万円が天引され現実には一九万円が右河野佳市に交付されたとの事実を確定した上、この事実によれば、当時の利息制限法に従い右天引利息一万円中同法の制限最高率の金額(二〇万円の一割の一二分の一に当る一、六六六円)と現実交付額一九万円との合計(原判決はこの詳細を示さないがこれは原判示に従えば金一九万一、六六六円となること計数上明らかである、論旨第一点一に主張する金額の詳細の計算は正確でない)金一九万一、六六六円について消費貸借が成立したものであるとの趣旨を判示したことは正当である。されば昭和二八年七月一五日になされた本件消費貸借は、被上告人の表現方法もしくは法律解釈に従えば元金二〇万円の契約であり、その実質もしくは正当な法律判断に従えば元金一九万一、六六六円の消費貸借であるので、原判決がたとえ所論の個所で元金二〇万円の消費貸借といい他の個所で元金一九万一、六六六円の趣旨に帰する消費貸借といつたからとて、畢竟原判決の認定した本件消費貸借を指すものであること明らかであつて、そこに何らの理由齟齬もなく、また当事者の申立てない事項について判決した違法あるものでもない。論旨は理由がない。 - 1 - て、畢竟原判決の認定した本件消費貸借を指すものであること明らかであつて、そこに何らの理由齟齬もなく、また当事者の申立てない事項について判決した違法あるものでもない。論旨は理由がない。 - 1 -同第三点について。 本件当事者は現金一九万円を交付し、一万円を天引した契約について代物弁済の予約をしたとの事実を原判決は認定しているのであるから、所論一は前提を欠き、二は独自の見解であつて、採用することができない。 同第四点について。 いわゆる代物弁済の予約によつて担保される債務は、特別の事情のない限り債務の全部に及ぶと解すべきであつて、元金に限るものではない。原審で被控訴人(被上告人)代理人は「少くとも元金の弁済ができないときは控訴人(上告人)は本件家屋を代物弁済に提供し云々」と主張したが、この主張は弁済は先ず利息に、ついで元本についてなされること(民法四九一条)に鑑みてなされただけのもので、本件の予約は元金のみについてなされたものだという趣旨ではないと解すべく、これと同趣旨の原判決の判断は相当である。論旨一、二は原判決を正解せざるにいでたもので採用することができない。 所論は元金および利息に対する代物弁済とせば、本件利息は利息制限法の制限を超過しており同法の脱法行為であり公序良俗に反し無効であると主張するけれども本件における上告人の正当な債務額については論旨第一、二点についてすでに判示したところであり、原判示によれば、本件家屋の契約当時の価格は三五万円であるというのであるから、これにより被上告人が不当の利益をえたとは言えないばかりでなく、原審は貸主である被上告人が上告人の思慮軽薄や窮状に乗じて右代物弁済予約をなさしめたことを認める資料がないと判示しているのであるから、本件代物弁済の予約は未だ公序良俗に違反するものということはできな 原審は貸主である被上告人が上告人の思慮軽薄や窮状に乗じて右代物弁済予約をなさしめたことを認める資料がないと判示しているのであるから、本件代物弁済の予約は未だ公序良俗に違反するものということはできない。論旨は理由がない。 同第五点について。 所論は原審が本件家屋の代物弁済予約が公序良俗に反するか否かの判断をするに- 2 -つき右予約当時の本件家屋の時価を三五万円と認定した点に理由不備があると主張する。しかし、代物弁済の予約が公序良俗に反するか否かについて判断するには家屋の価格と債務額とが対比されなければならないが、これを対比するに際し家屋の価格を判定するに当つては、本件のように債務者が借地権を有する土地の上に代物弁済の目的となつた家屋が存在する場合にはこの事情をも斟酌することを要すると解すべきである。けだし、この場合、代物弁済の結果として、家屋の所有権とともに借地権も債権者(被上告人)に譲渡されたものと推定すべきであるが、しかし債権者としては、さらに地主の承諾を得ない限り家屋を利用することができず僅かに買取請求権(借地法一〇条)を取得するに過ぎない、これに反して、債権者の取得した家屋に借地権が全然存しないときは、買取請求権すら認められないのであり、また、土地家屋が同一人の所有に属するときは債権者は借地権をも取得するものと解されるので、これらの点と更に買取請求の場合には借地権の価格はこれを加算すべきでないとされること(昭和六年(オ)第三〇三一号同七年六月二日大審院判決、集一一巻一三〇九頁)をも考慮に入れるときは、本件の場合借地権の価格は全然無視されるべきではないがその全額を加算すべきでもないと認めるのが相当だからである。本件についてこれを見るに、原判決が証拠として採用したD鑑定によれば、契約締結当時の時価は借地権二四万円、建物二二万 視されるべきではないがその全額を加算すべきでもないと認めるのが相当だからである。本件についてこれを見るに、原判決が証拠として採用したD鑑定によれば、契約締結当時の時価は借地権二四万円、建物二二万円、同E鑑定によれば借地権を含めて四七万三、八三〇円であるので、原審はこれらの鑑定の結果により原判示価格をもつて前記債務額と対比すべき家屋の価格と認めたものであることが看取される。してみれば、本件代物弁済の予約が公序良俗に違反するか否かの判断につき、原審は上告人のため必ずしも不利益な価格の認定をしたものではないから、論旨は結局理由なきに帰する。 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。 - 3 -最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官垂水克己裁判官島保裁判官河村又介裁判官高橋潔裁判官石坂修一- 4 -
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