平成26年4月22日判決言渡平成23年(行ウ)第172号期限更新拒絶処分取消等請求事件主文 1 近畿運輸局長が原告に対し平成23年8月8日付けでした一般乗用旅客自動車運送事業(1人1車制個人タクシーに限る。)の許可に付された期限の更新申請について更新しないとする処分(許可に付した期限を平成23年8月15日とする処分を含む。)を取り消す。 2 被告は,原告に対し,63万7224円及びうち43万7224円に対する平成23年8月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用はこれを3分し,その2を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求の趣旨 1 主文1項と同旨 2 被告は,原告に対し,100万6625円及びうち50万6625円に対する平成23年8月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,道路運送法(以下「運送法」という。)4条1項の許可(以下「本件許可」という。)を受けて一般乗用旅客自動車運送事業である1人1車制個人タクシー事業(以下「本件事業」という。)を営んでいた原告が,本件許可に付された期限の更新を申請したところ,近畿運輸局長から本件許可に付した期限を平成23年8月15日までに変更した上で上記申請に係る更新をしない旨の処分(以下「本件更新拒絶処分」という。)を受けたため,被告に対し,本件更新拒絶処分の取消しを求めるとともに,本件更新拒絶処分によって休業損害50万6625円及び弁護士費用50万円の損害を被ったとして,国家賠 償法1条1項に基づきこれらの損害合計100万6625円及びうち休業損害50万6625円に対する平成23年8月16日から支払済みまで民法所定の び弁護士費用50万円の損害を被ったとして,国家賠 償法1条1項に基づきこれらの損害合計100万6625円及びうち休業損害50万6625円に対する平成23年8月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である(なお,後記2で認定する本件許可に付された期限の変更経過及び本件更新拒絶処分の内容に鑑みると,本件訴えのうち取消請求は上記の趣旨をいうものと解するのが相当である。)。 1 関係法令等の定め(1) 運送法の定めア一般旅客自動車運送事業を経営しようとする者は,国土交通大臣の許可を受けなければならない(運送法4条1項)。 イ国土交通大臣は,一般旅客自動車運送事業の許可をしようとするときは,次の基準に適合するかどうかを審査して,これをしなければならない。 1号当該事業の計画が輸送の安全を確保するため適切なものであること。 2号前号に掲げるもののほか,当該事業の遂行上適切な計画を有するものであること。 3号当該事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有するものであること。 (運送法6条)ウ国土交通大臣は,一般旅客自動車運送事業者が,運送法若しくは運送法に基づく命令若しくはこれらに基づく処分又は許可若しくは認可に付した条件に違反したときは,6月以内において期間を定めて自動車その他の輸送施設の当該事業のための使用の停止若しくは事業の停止を命じ,又は許可を取り消すことができる(運送法40条1号)。 エ免許,許可,登録又は認可には条件又は期限を付し,及びこれを変更することができる(運送法86条1項)。 オ運送法第2章及び第4章から第6章までに規定する国土交通大臣の権限は,政令で定めるところにより,地方運輸局長に委任することができると されており(運送法88条2項) 運送法86条1項)。 オ運送法第2章及び第4章から第6章までに規定する国土交通大臣の権限は,政令で定めるところにより,地方運輸局長に委任することができると されており(運送法88条2項),一般乗用旅客自動車運送事業に関しては,運送法4条1項の規定による事業の許可の権限等が地方運輸局長に委任されている(道路運送法施行令(以下「運送法施行令」という。)1条2項)。 (2) 公示の定めア近畿運輸局長は,一般乗用旅客自動車運送事業(1人1車制個人タクシーに限る。)の許可時又は前回の更新時等に付した期限の更新基準として,「一般乗用旅客自動車運送事業(1人1車制個人タクシーに限る。)の許可等に付した期限の更新基準について」(平成14年1月18日制定・近運旅二公示第4号。平成18年1月18日近運自二公示第51号による改正後のもの。以下「更新基準公示」という。乙1)を定めている。 (ア) 更新基準公示2(1)は,期限更新に当たっては,許可等を受けた日又は前回の期限更新の決定がなされた日から当該更新申請書提出時の期限更新の決定がなされる日までの期間(以下「審査期間」という。)における事業の実施状況及び法令違反行為の有無等を審査する旨規定する。 (イ) 更新基準公示2(2)は,期限更新に当たって,更新基準公示別表に定めるところのいずれかに該当する者については,同表所定の更新後の許可期限を付した上,期限更新を認める旨規定する。 (ウ) 更新基準公示2(3)①は,許可等に付した条件により,許可等を取り消すべき事由又は許可期限の更新を行わないこととする事由に該当している場合には,期限の更新を認めない旨規定する。 (エ) 更新基準公示別表1B③アは,審査期間が3年の場合に,審査期間における法令違反行為等の状況が,道路交通法(以下「道交法」と する事由に該当している場合には,期限の更新を認めない旨規定する。 (エ) 更新基準公示別表1B③アは,審査期間が3年の場合に,審査期間における法令違反行為等の状況が,道路交通法(以下「道交法」という。)の違反による反則点の合計が4点以上又は3回以上の同法の違反による処分がある者については,更新後の許可期限を1年後とする旨規定する。 イ近畿運輸局長は,一般乗用旅客自動車運送事業(1人1車制個人タクシーに限る。)の許可等に係る審査基準として,「一般乗用旅客自動車運送事業(1人1車制個人タクシーに限る。)の許可,譲渡譲受認可及び相続認可申請に関する審査基準について」(平成14年1月18日制定・近運旅二公示第3号。平成18年3月30日近運自二公示第64号による改正後のもの。以下「許可基準公示」という。乙2)を定めている。 許可基準公示Ⅰ4(2)は,運送法4条1項の許可の要件として,法令遵守状況について申請日を含む申請日前3年間及び申請の処分日までに,道交法の違反による処分(同法の規定による反則金の納付を命ぜられた場合又は反則点を付せられた場合を含む(ただし,申請日以前の1年間において無事故無違反であって,申請日の1年前以前における道交法の違反が1回である者については,当該違反が反則点1点以下である場合(併せて反則金の納付を命ぜられた場合を含む。)又は当該違反により反則金の納付のみを命ぜられた場合に限り無事故無違反とみなして除外。)。)を受けていないことを規定する。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,各項掲記の証拠により容易に認められる事実等)(1) 処分行政庁近畿運輸局長は,運送法88条2項,運送法施行令1条2項に基づき,国土交通大臣から,近畿地方における一般乗用旅客自動車運送事業について,運送法4条1項の規定 られる事実等)(1) 処分行政庁近畿運輸局長は,運送法88条2項,運送法施行令1条2項に基づき,国土交通大臣から,近畿地方における一般乗用旅客自動車運送事業について,運送法4条1項の規定による事業の許可の権限等の委任を受けた行政庁である。 (2) 本件許可申請原告は,本件事業を営むため,運送法4条1項に基づき,近畿運輸局長に対し,平成18年9月27日,一般乗用旅客自動車運送事業(1人1車制個人タクシーに限る。)の経営の許可を申請した(以下「本件許可申請」とい う。)。原告は,同申請の添付書類として,「申請日以前3年間,道路交通法の違反による処分(同法の規定による反則金の納付を命ぜられた場合又は反則点を付せられた場合を含む(ただし,申請日以前の1年間において無事故無違反であって,申請日の1年前以前における道路交通法の違反が1回である者については,当該違反が反則点1点以下である場合(併せて反則金の納付を命ぜられた場合を含む。)又は当該違反により反則金の納付のみを命ぜられた場合に限り無事故無違反とみなして除外。)。)を受けたことはありません」と宣誓する旨,及び「なお,宣誓日以降処分日までの間に上記に掲げる処分等を受けた場合には,直ちに報告いたします」と各記載された平成18年9月25日付け宣誓書(以下「本件宣誓書」という。)を提出した。 (3) 本件違反行為原告は,平成19年1月30日,自動車運転中に携帯電話を使用したという道交法71条5号の5違反(以下「本件違反行為」という。)を理由に,同法126条1項に基づき,反則行為となるべき事実の要旨等の告知を受けた(乙19の2)。 なお,本件違反行為につき,原告に対して,反則点数1点が付加された(以下「本件反則点数付加」という。)。原告は,同付加の事実を本件許可がなされ なるべき事実の要旨等の告知を受けた(乙19の2)。 なお,本件違反行為につき,原告に対して,反則点数1点が付加された(以下「本件反則点数付加」という。)。原告は,同付加の事実を本件許可がなされるまでの間に近畿運輸局長に報告しなかった。もっとも,反則点数が付加された具体的な時期は明らかではない。 (4) 本件許可近畿運輸局長は,平成19年2月26日付けで,本件許可申請について,平成22年4月30日までとの期限を付して本件許可をした。本件許可には,「申請書,添付書類及び陳述の内容が事実と異なることが判明した場合には許可の取り消しをすることがある」との条件(以下「本件許可取消条件」という。)が付されている。 (5) 本件反則金納付通告 原告は,平成19年3月16日,本件違反行為につき,道交法127条1項に基づき,反則金の納付の通告を受け(以下「本件反則金納付通告」という。),同月22日,反則金を納付した(乙19の2)。 ⑹ 期限の更新ア原告は,近畿運輸局長に対し,平成22年3月5日付けで,本件許可に付された期限の更新を申請した(以下「本件第1更新申請」という。)。 原告は,同申請の添付書類として,下記のとおり記載された原告に係る同年2月1日時点の過去5年間の運転記録証明書を提出した。(甲7)記(ア) 平成19年1月30日携帯電話使用等(保持) 1点(本件違反行為)(イ) 平成19年9月22日安全運転義務違反(軽傷事故) 4点(ウ) 平成19年10月16日速度超過(30以上35未満・高速)法定 3点(エ) 平成19年11月20日停止 30日(短縮 29日)(オ) 平成21年11月5日速度超過(15以上20未満)指定 1点イ近畿運輸局長は,本件第1更新申請に対し,平成22年4月26日 ) 平成19年11月20日停止 30日(短縮 29日)(オ) 平成21年11月5日速度超過(15以上20未満)指定 1点イ近畿運輸局長は,本件第1更新申請に対し,平成22年4月26日付けで,本件許可に付した期限を平成23年4月30日(更新基準公示別表1B③により1年)までに変更した。 ⑺ 本件更新拒絶処分ア原告は,近畿運輸局長に対し,平成23年2月28日,本件許可に付された期限の更新を申請した(以下「本件第2更新申請」という。)。原告は,同申請の添付書類として,原告には,前記⑹ア(ア)から(オ)までに加 えて,下記のとおり記載された原告に係る同月1日時点の過去5年間の運転記録証明書を提出した。(甲9)記(ア) 平成22年1月29日信号無視(赤色等) 2点(イ) 平成22年3月5日信号無視(赤色等) 2点(ウ) 平成23年1月20日速度超過(20以上25未満)指定 2点備考未処分事案イ近畿運輸局長は,原告に対し,平成23年4月28日付けで,行政手続法15条に基づき,下記の内容の聴聞の通知をするとともに,本件許可に付した期限を,当該聴聞の実施後,不利益処分の原因となる事実に基づき,事業許可の取消処分があった日又は事業許可の取消処分を行わないことが明らかになった日までに変更する旨の処分をした(甲10,11の1)。 記(ア) 予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項運送法40条に基づく事業許可の取消処分(イ) 不利益処分の原因となる事実許可基準公示Ⅰ4(2)に反する事実が判明したためウ近畿運輸局自動車交通部旅客第二課所属の国土交通事務官は,平成23年5月18日,原告に対し,上記イの聴聞を実施した(以下「本件聴聞」という。)。 エ近畿運輸局長は,原告に 実が判明したためウ近畿運輸局自動車交通部旅客第二課所属の国土交通事務官は,平成23年5月18日,原告に対し,上記イの聴聞を実施した(以下「本件聴聞」という。)。 エ近畿運輸局長は,原告に対し,平成23年8月8日付けで,「一般乗用旅客自動車運送事業(1人1車制個人タクシーに限る。)の許可等に付された期限の更新申請に対する処分について」と題する書面により,本件許 可に付した期限を,上記イの処分にかかわらず,平成23年8月15日までに変更した上で,運送法86条の規定に基づき本件許可に付した本件許可取消条件に該当し,さらに更新基準公示2(3)①に該当するとの理由を付記して,本件第2更新申請に係る更新をしない旨の処分(本件更新拒絶処分)をした(甲12)。 ⑻ 本件訴えの提起等原告は,平成23年10月6日,本件訴えを提起し,併せて,本件更新拒絶処分の効力を本件訴えに係る第1審判決言渡しまで停止するよう求める執行停止の申立て(当裁判所同年(行ク)第96号執行停止申立事件)をした。当裁判所は,同申立てに基づき,同年11月21日,本件更新拒絶処分の効力を停止する旨決定し(以下「本件執行停止決定」という。),同決定は同月28日の経過により確定した。なお,本件訴え中の国家賠償請求に係る請求内容は,本件訴え提起時は,967万4020円と遅延損害金の請求であったが,平成25年11月6日付けの請求の趣旨変更申立書により,第1の2のとおりの請求に減縮された。(顕著な事実) 3 争点(1) 本件更新拒絶処分の取消請求についてア更新基準公示2(3)①が定める「許可等に付した条件により,許可等を取り消すべき事由・・・に該当している場合」(以下「本件更新拒絶事由」という。)該当性(争点1)イ本件更新拒絶事由該当性が認 基準公示2(3)①が定める「許可等に付した条件により,許可等を取り消すべき事由・・・に該当している場合」(以下「本件更新拒絶事由」という。)該当性(争点1)イ本件更新拒絶事由該当性が認められる場合に本件更新拒絶処分に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用が認められるか(争点2)ウ本件更新拒絶処分が一事不再理の原則に反するか(争点3)(2) 国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求についてア本件更新拒絶処分の国家賠償法上の違法性(争点4)イ損害額(争点5) 4 争点に対する当事者の主張(1) 本件更新拒絶処分の取消請求についてア本件更新拒絶事由該当性(争点1)(原告の主張)(ア) 原告には本件宣誓書に基づく報告義務違反はなく,本件許可取消条件には該当しないことa 本件反則点数付加が本件許可の後になされた可能性があること本件宣誓書に基づく報告義務の対象は道交法違反による処分(反則金の納付を命ぜられたこと又は反則点を付せられたことを含む。以下「道交法違反による処分等」という。)を受けたことであるところ,道交法違反行為の時点と反則点数付加の時点との間には一定の期間が存すること,本件違反行為から本件反則金納付通告まで45日間を要していること等からすれば,本件反則点数付加は本件許可の後になされた可能性がある。そうであるとすれば,原告に本件宣誓書に基づく報告義務違反が認められる余地はない。 b 原告が本件反則点数付加を報告することは不可能であったこと公安委員会等から道交法違反者に対する反則点数付加の事実の通知はないため,反則金納付の通告を受けるまで違反者は自身に反則点数が付加された事実を知ることはできない。 被告は, たこと公安委員会等から道交法違反者に対する反則点数付加の事実の通知はないため,反則金納付の通告を受けるまで違反者は自身に反則点数が付加された事実を知ることはできない。 被告は,原告は運転記録証明書を取得することにより反則点数付加の事実を知ることができたと主張するが,原告には運転記録証明書を自ら進んで取得すべき義務はない。 したがって,仮に本件反則点数付加が本件許可に先立ち行われていたとしても,原告はその事実を知る由もないから,原告には報告義務違反は認められない。 c 原告は本件許可に先立ち本件違反行為に係る反則金納付命令を受け ていないこと被告は,原告が本件違反行為について反則金の納付を命ぜられたにもかかわらず,その事実を報告しなかったとして,原告には本件宣誓書に基づく報告義務違反があると主張するが,原告は本件許可に先立って本件違反行為に係る反則金納付を命ぜられていない。そもそも交通反則通告制度には反則金の納付を命じるという制度がなく,また,仮に反則金納付の通告が「反則金の納付を命じること」にあたると解しても,本件反則金納付通告は本件許可の後に行われているため,この意味でも被告の主張は失当である。 d 以上より,原告には本件宣誓書に基づく報告を懈怠したという事実はなく,ひいては,本件許可取消条件により,許可を取り消すべき事由もないから,本件第2更新申請について本件更新拒絶事由は認められない。 (イ) 本件反則点数付加は本件第2更新申請に係る審査期間外の事実であること更新基準公示2(1)によれば,期限更新申請の審査は許可等を受けた日又は前回の期限更新の決定がなされた日から当該更新申請書提出時の期限更新の決定がなされる日までの期 の事実であること更新基準公示2(1)によれば,期限更新申請の審査は許可等を受けた日又は前回の期限更新の決定がなされた日から当該更新申請書提出時の期限更新の決定がなされる日までの期間における事業の実施状況及び法令違反行為の有無等を審査するものとされている。したがって,仮に,原告に本件違反行為に係る報告義務違反があるとしても,本件許可の後に本件第1更新申請に基づく期限の更新が認められている以上,被告が主張する原告の報告義務違反は本件第2更新申請の審査期間外の事実であるから,本件第2更新申請について本件更新拒絶事由は認められない。 (被告の主張)(ア) 本件更新拒絶事由に該当することa 本件反則点数付加の時期が本件許可の前であったこと 大阪府警察では,違反登録がされ,運転記録証明書に反則点数が反映されるのは違反日から約1週間程度であること等から,本件反則点数付加は本件許可以前に行われていたと推認できる。 b 原告が本件許可までに本件反則点数付加の事実を報告し得たこと原告が本件違反行為の日に道交法126条1項の告知を受けたこと,原告自身が本件聴聞や本件訴訟において「1点であれば免除され大丈夫だという意識がありました」等と述べていることから,原告が本件許可以前に本件反則点数付加の事実を認識していたことは明らかである。仮にいつの時点で反則点数が付加されるか把握していなくとも,速やかに点数が付されることは認識していたと考えられるから,自ら運転記録証明書を取得して反則点数付加の事実を確認し,これを報告することも可能であった。 c 原告が本件許可の前に反則金納付を命ぜられていたこと本件宣誓書の「反則金の納付を命ぜられた場合」との文言は 点数付加の事実を確認し,これを報告することも可能であった。 c 原告が本件許可の前に反則金納付を命ぜられていたこと本件宣誓書の「反則金の納付を命ぜられた場合」との文言は,告知手続で反則金の納付書が交付されたことを指す。原告は本件違反行為を理由に告知手続を受けているのであるから,原告は「反則金の納付を命ぜられた」といえる。原告は,それにもかかわらず,反則金の納付を命ぜられたことを報告していないのであるから,報告義務違反が認められる。 d 以上より,原告は本件許可に先立ち,本件反則点数付加又は反則金納付を命ぜられていたにもかかわらず,かかる事実を認識し,又は認識し得る状況にありながら,近畿運輸局長に対して報告をしなかったことが認められる。このため,本件許可の段階ですでに本件宣誓書中「宣誓日以降処分日までの間に上記に掲げる処分等を受けた場合には,直ちに報告いたします」との記載について,「申請書,添付書類及び陳述の内容が事実と異なる」状態になっていた。したがって,本件許 可に付された本件許可取消条件に該当し,本件許可を取り消すべきであったといえるため,原告の本件第2更新申請は「許可等に付した条件により,許可等を取り消すべき事由…に該当している場合」(本件更新拒絶事由)にあたる。 (イ) 本件反則点数付加に係る報告義務違反は本件更新拒絶処分に係る審査において考慮し得ること更新基準公示2(1)の定めは,事務処理上の観点から,申請者に提出させる資料の範囲を限定したものであり,それ以外の期間に発生した事情を一切考慮できないことを規定したものではない。また,上記更新基準公示の定めは,前回以前の期限更新及び当初の許可が適法に成り立っていることを前提としたものであるから,当初の本 外の期間に発生した事情を一切考慮できないことを規定したものではない。また,上記更新基準公示の定めは,前回以前の期限更新及び当初の許可が適法に成り立っていることを前提としたものであるから,当初の本件許可が許可基準公示Ⅰ4(2)が定める許可の要件を満たしていないような本件では,その前提を欠き,更新基準公示が定める審査期間に限らず,それ以外の期間に発生した事情であっても,これを期限更新の許否の審査において考慮することも許容される。 イ本件更新拒絶事由該当性が認められる場合に本件更新拒絶処分に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用が認められるか(争点2)(原告の主張)本件許可取消条件が定める「許可の取り消しをすることがある」とは裁量的な取消しであり,違反行為の軽重,申請者の悪意の有無,他の許可条件との比較,申請者が受ける不利益の程度,許可処分後の経過等の諸事情から慎重に判断すべきであるところ,本件違反行為は極めて軽微な違法行為であり,その報告義務違反に原告の悪意が認められないこと,原告が受ける不利益が重大であることからすれば,本件反則点数付加の報告義務違反を理由に本件許可の取消しないし期限更新拒絶をすることは不相当に重い処分というべきである。したがって,本件更新拒絶処分は裁量権の濫用 にあたり,違法である。 (被告の主張)(ア) 本件許可を取り消す(又は更新を拒絶する)公益上の必要性が大きいこと運送法は一般乗用旅客自動車運送事業を適確に遂行するに足る能力を有する者にのみ同事業の経営を許容していること(運送法6条3号),個人タクシー事業を経営しようとする者は通常の一般乗用旅客自動車運送事業を経営しようとする者よりもこれを適確に遂行するに足る能力が要求され,許可に係る審査もより厳格に行われていること,法令 3号),個人タクシー事業を経営しようとする者は通常の一般乗用旅客自動車運送事業を経営しようとする者よりもこれを適確に遂行するに足る能力が要求され,許可に係る審査もより厳格に行われていること,法令遵守状況に関して許可基準公示Ⅰ4(2)を満たしていない原告が本件事業を継続すれば運送法の目的を図ることができないこと,本件につき更新拒絶処分ができないとすると,正確な内容の申請をしたことにより許可を受けることができなかった者との間に看過できない不均衡が生じ,許可制そのものの信頼が損なわれることから,本件許可を取り消す公益上の必要性が大きい。 (イ) 本件許可を取り消す(又は更新を拒絶する)ことによって原告が被る不利益は大きくないこと原告は法人タクシーの従業員として勤務することが可能であること,原告が購入した車両は自家用自動車への転用や他社への転売が可能であり,同車両の購入資金全額が本件更新拒絶処分による経済的不利益となることはないこと,原告が主張する逸失利益は,本来本件許可がなされなければ得られなかったものであるから,法的保護に値しないことより,原告が主張する不利益をもって,本件許可を取り消さないことの理由とすることはできない。 (ウ) 以上より,本件許可を取り消すべき必要性と,本件許可の取消しによって失われる利益と比較すれば前者がはるかに大きい。したがって, 本件更新拒絶事由が認められる本件において,本件更新拒絶処分が裁量権の範囲を逸脱し又はそれを濫用するものとはいえない。 ウ本件更新拒絶処分が一事不再理の原則に反するか(争点3)(原告の主張)原告は本件第1更新申請の際に本件違反行為及び本件反則点数付加の事実が記載されている平成22年2月3日付けの運転記録証明書を提出しており,近畿運輸局長は 争点3)(原告の主張)原告は本件第1更新申請の際に本件違反行為及び本件反則点数付加の事実が記載されている平成22年2月3日付けの運転記録証明書を提出しており,近畿運輸局長はこれを審査した上で同申請につき更新を認める処分をしたのであるから,本件第2更新申請につき,本件反則点数付加の事実の不報告をもって更新拒絶をすることは同一の事由につき二度の行政処分をすることとなり,一事不再理の原則に反する。 (被告の主張)そもそも一事不再理の原則は,刑事処分に妥当する原則であり,本件で直接適用のあるものではない。 さらに,更新基準公示上,前回の更新(1度目の更新の場合は許可)までに生じた事情については原則として審査しなければならないものとはされていなかったため,近畿運輸局長は,本件第1更新申請時に提出された運転記録証明書の記録のうち本件許可以前の部分については詳細に確認しておらず,本件反則点数付加の事実を把握していなかった。 (2) 国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求についてア本件更新拒絶処分の国家賠償法上の違法性(争点4)(原告の主張)近畿運輸局長は本件第2更新申請について本件更新拒絶事由に該当しないにもかかわらず,更新基準公示の解釈適用を誤り,本件更新拒絶処分を行ったのであるから,国家賠償法上も違法である。 (被告の主張)仮に本件更新拒絶処分が違法であったとしても,直ちに国家賠償法上違 法とはいえず,原告は国家賠償法上の違法性につき具体的に主張立証していない。 イ損害額(争点5)(原告の主張)(ア) 休業損害a 原告は平成23年8月16日から本件事業を休業し,執行停止の申立てが認められた 主張立証していない。 イ損害額(争点5)(原告の主張)(ア) 休業損害a 原告は平成23年8月16日から本件事業を休業し,執行停止の申立てが認められたため,同年12月7日から本件事業を再開した。 b 原告の平成22年度における所得は以下のとおりである(甲13)。 (a) 売上げ 562万8650円(b) 売上原価(燃料費) 82万6178円(c) 一般経費合計 328万2597円(d) 差引所得 151万9875円c 上記a,bによれば,原告が平成23年8月16日から同年12月6日まで本件事業を休業していたことによる損害は,50万6625円となる(算定方法は以下のとおりである)。なお,甲13号証の所得金額は151万9875円から青色申告特別控除65万円を差し引いた86万9875円となっているが,原告が実際に得ていた所得は上記b(d)のとおりである。 (算定方法)151万9875円×4/12か月=50万6625円(イ) 弁護士費用本案事件及び執行停止事件に係る弁護士費用は50万円を下回らない。 (被告の主張)原告は休業損害及び弁護士費用を損害として主張するが,休業損害については本件執行停止決定が確定した日の前日である平成23年11月28日までの休業損害が算定されるべきであるし,4か月間ではなく厳密に日 割で算定すべきである。弁護士費用も休業損害額からすれば過大であり認められない。 第3 争点に対する判断 1 本件更新拒絶処分の取消請求について(1) 本件更新拒絶処分に関する法令等の仕組み すべきである。弁護士費用も休業損害額からすれば過大であり認められない。 第3 争点に対する判断 1 本件更新拒絶処分の取消請求について(1) 本件更新拒絶処分に関する法令等の仕組み一般乗用旅客自動車運送事業を経営しようとする者は,国土交通大臣の許可を受けなければならず(運送法4条1項),同許可等に係る国土交通大臣の権限は,運送法88条2項,運送法施行令1条2項により,地方運輸局長に委任されている。また,運送法86条1項は,「免許,許可,登録又は認可には条件又は期限を付し,及びこれを変更することができる」と規定している。 そして,運送法は,同項に基づいて付された許可の期限の更新については,特段定めをおいておらず,専ら近畿運輸局長が定めた更新基準公示に基づいて運用がされているところ,同公示2(3)①には,期限の更新を認めない場合として,「許可等に付した条件により,許可等を取り消すべき事由・・・に該当している場合」(本件更新拒絶事由)が定められており,本件更新拒絶処分も本件更新拒絶事由に該当することを理由として行われたものである(前記前提事実⑺エ)。 (2) 争点1(本件更新拒絶事由該当性)についてア本件更新拒絶事由該当性の前提として,本件許可取消条件該当性,すなわち,原告が本件許可前に本件反則点数付加ないし本件違反行為に係る反則金納付命令を受けていたにもかかわらず,本件宣誓書の記載に反して,その報告を懈怠したか否かが問題となる。 そこで,以下,本件許可取消条件該当性の有無,具体的には,① 原告が本件反則点数付加の事実につき報告を懈怠したか否か,② 原告が本件違反行為に係る反則金納付命令を受けた事実につき報告を懈怠したか否か について順に検討する。 イ ① 原告が本件反則点 本件反則点数付加の事実につき報告を懈怠したか否か,② 原告が本件違反行為に係る反則金納付命令を受けた事実につき報告を懈怠したか否か について順に検討する。 イ ① 原告が本件反則点数付加の事実につき報告を懈怠したか否か(ア) 原告は,本件反則点数付加が本件許可の後に行われた可能性が高く,そうであるならば原告には本件宣誓書に基づいて本件反則点数付加の事実につき近畿運輸局長に報告する義務はない旨主張するため,本件反則点数付加がなされた時期について検討する。 a 道交法違反に関する点数制度の概要及びその運用(a) 道路交通法施行令(以下「道交法施行令」という。)別表第二は,違反行為に付する基礎点数及び付加点数について規定しており,道交法103条1項5号,道交法施行令38条5項は,各都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)が,自動車運転免許を受けた者について,累積点数が同別表第三所定の点数に該当したときなどに,その者の運転免許を取り消し又はその効力を停止することができる旨定めている。 そして,公安委員会は,運転者が道交法施行令別表第二の一の表又は二の表の上欄に掲げる違反行為をしたときには,道交法106条,道路交通法施行規則(以下「道交法施行規則」という。)31条に基づき,国家公安委員会に対し運転者の違反行為に係る報告を行うこととされており,この場合,国家公安委員会は,免許に関する事務の適正を図るため,当該報告に係る事項を各公安委員会に通報するものとされている。ただし,道交法施行令43条の2により,この報告の受理及び通報は警察庁長官が行うものとされている。 (b) 上記(a)の報告は,違反行為を確認した取締り警察官等から所属長に報告され,警察署長等から都道府県警察本部 2により,この報告の受理及び通報は警察庁長官が行うものとされている。 (b) 上記(a)の報告は,違反行為を確認した取締り警察官等から所属長に報告され,警察署長等から都道府県警察本部の行政処分担当課に関係書類を送付した後,都道府県警察本部の行政処分担当課において,警部補以上の警察官をもって充てる違反等登録審査官による 違反等登録審査(交通違反又は交通事故が違反等登録の対象になるか否かの審査及び当該交通違反又は交通事故が点数評価の対象となるものであるときは,交通違反又は交通事故の事実認定が適正に行われており,かつ,事実の証明が十分であるかどうかの審査)を経て,違反等登録(道交法違反の内容及び点数付加の事実の登録)がされることをもって運用されている。違反等登録については,運転者等管理のシステムが導入されており,自動車等の運転者の交通違反等の記録が同システムに入力され,その記録内容が運転記録証明書に反映されている。(乙15,弁論の全趣旨)点数制度の運用にあたって,違反等登録は迅速に行うことが要求されており(乙15),大阪府警察においても,各警察署長等から大阪府警察本部交通部運転免許課への関係書類の送付は,反則金納付通告及び反則点数の付与がなされる事案については,違反の告知日から6日以内にすることとされている(乙16,17,弁論の全趣旨)。 もっとも,違反等登録審査には,違反者の否認若しくは任意捜査への非協力等を原因とする捜査の遅れ又は登録審査のための補充捜査などにより,日数を要することがあり,そのような場合には,当該違反時から違反等登録までに長期間が経過することもあるものの,大阪府警察においては,そのような特別な事情がない限りは,通常,違反等登録がされ,運転記録証明書に点数が反映されるのに要 な場合には,当該違反時から違反等登録までに長期間が経過することもあるものの,大阪府警察においては,そのような特別な事情がない限りは,通常,違反等登録がされ,運転記録証明書に点数が反映されるのに要する期間は,違反日から1週間程度である(乙18,弁論の全趣旨)。 b 反則通告制度の概要及びその運用について(a) 道交法126条は,警察官は,反則者があると認めるときは,その者に対し,速やかに,反則行為となるべき事実の要旨及び当該反則行為が属する反則行為の種別並びにその者が同法127条1項 前段の規定による通告を受けるための出頭の期日及び場所を書面で告知し(同法126条1項),当該告知に係る反則行為が行われた地を管轄する都道府県警察の警察本部長に速やかにその旨を報告しなければならない(同条3項)と定めており,同法127条1項は,警察本部長は当該報告を受けた場合において,当該報告に係る告知を受けた者が当該告知に係る種別に属する反則行為をした反則者であると認めるときは,その者に対し,理由を明示して当該反則行為が属する種別に係る反則金の納付を書面で通告すると定めている。 なお,同法129条1項は,上記告知を受けた者は,当該告知を受けた日の翌日から起算して7日以内に当該告知がされた反則行為の種別に係る反則金に相当する金額を仮に納付することができるとして反則金の仮納付の制度を定めている。 (b) そして,道交法127条1項に基づく通告は,運用上,同法129条1項に基づく仮納付を行った場合を除き,同法126条1項に基づき告知された期日に交通反則通告センターに出頭し,通告を受けるか,あるいは,出頭ができない場合には通告書の郵送により受けることとなっており(乙21),大阪府警察においては,仮納付をしなか 項に基づき告知された期日に交通反則通告センターに出頭し,通告を受けるか,あるいは,出頭ができない場合には通告書の郵送により受けることとなっており(乙21),大阪府警察においては,仮納付をしなかった違反者には,告知された出頭期日か,同日から概ね2週間以内に交通反則通告センターに出頭するよう求めており,この方法によることができない場合には,告知された日の概ね40日を経過した後に納付書を郵送することとされている(乙22)。 c 上記aの道交法違反に関する点数制度及びその運用に関する各事実からすると,本件では,原告が本件違反行為の事実の有無等につき否認したり,捜査への協力を拒んだりする等,本件違反行為から違反等登録までに長期間を要したことを窺わせる事情は特段存せず(弁論の全趣旨),また,本件違反行為から本件許可までに約1か月の期間が あったのであるから(前記前提事実(3),(4)),本件反則点数付加は本件違反行為から本件許可までの約1か月の間に行われたものと推認される。 これに対し,原告は,本件反則金納付通告が本件違反行為から約45日後に行われていることをもって,本件反則点数付加も本件許可の後になされた可能性が存する旨主張する。 しかしながら,上記bの反則通告制度及びその運用からすれば,大阪府警察では,道交法126条1項に基づき告知を受けた者が,反則金相当額を仮納付せず,また,告知された出頭期日から概ね2週間以内に交通反則通告センターに出頭しなかったような場合には,上記告知を受けた日から約40日を経過した後に同法127条1項に基づく反則金納付の通告を郵送によって行う取扱いがなされているものと認められるから,本件反則金納付通告が本件違反行為から約45日後に行われていたという事実をもって,大阪府警察 後に同法127条1項に基づく反則金納付の通告を郵送によって行う取扱いがなされているものと認められるから,本件反則金納付通告が本件違反行為から約45日後に行われていたという事実をもって,大阪府警察内部において,本件違反行為に係る反則点数付与の手続につき何らかの遅れが生じていた可能性が高いということはできない。 したがって,本件反則点数付加が本件許可の後に行われたとする原告の主張は理由がない。 (イ)a 上記(ア)のとおり,本件反則点数付加は本件許可の前に行われたと推認されるところ,前記前提事実(3)のとおり,原告は本件許可がなされるまでの間に本件反則点数付加の事実を近畿運輸局長に報告していない。もっとも,道交法違反の行為について反則点数が付加された事実は違反者に通知されることはないこと(乙18),違反点数付加に至る警察内部の手続の流れ,違反行為から反則点数付加に至るまでに要する平均的な期間等については違反者はこれを知らないのが通常であること(弁論の全趣旨)からすれば,原告が本件違反行為につ き本件許可までの間に反則点数が付加された事実を知っていたと認めることはできない。 被告は,原告が本件違反行為につき道交法126条1項に基づいて本件違反行為の事実の告知を受けたこと,原告が本件更新拒絶処分に係る聴聞手続(本件聴聞)において,道交法に違反した事実はわかっていたが,反則点数1点であれば免除されるため大丈夫だと思い,報告をしなかった旨述べたこと(甲11の2)等をもって,原告が本件許可以前に本件反則点数付加の事実を認識していたことが明らかであると主張する。しかしながら,同項によれば,警察官は,反則行為があると認めるときは,その者に対し,速やかに告知をすべきものとしており(現に,本件においても,原告に対する告知は本件違 ことが明らかであると主張する。しかしながら,同項によれば,警察官は,反則行為があると認めるときは,その者に対し,速やかに告知をすべきものとしており(現に,本件においても,原告に対する告知は本件違反行為を行った日にされている(前記前提事実(3))。),告知の内容も反則行為となるべき事実の要旨や当該反則行為が属する反則行為の種別等であるから,違反者は告知によって自身の道交法違反の行為について反則点数が付加される可能性があることを認識し得るにとどまり,それを超えて告知によって反則点数が付加された事実を認識できるとは到底いえない。したがって,原告の本件聴聞における上記供述も,自身の本件違反行為が反則点数1点の対象行為であり,将来的に反則点数1点が付加される可能性があることは認識していたことを前提になされた供述であると解するのが相当であり,それを超えて原告が本件違反行為に対して違反点数1点が付加された事実を本件許可までの間に認識していたことを前提になされた供述とまで認めることはできず,被告の主張は失当である。 b 被告は,仮に,原告が本件反則点数付加の事実を認識していなかったとしても,運転記録証明書を取得して本件反則点数付加の事実を確認し,これを報告すべきであった旨主張する。しかしながら,本件宣 誓書の「処分等を受けた場合には,直ちに報告いたします」との文言からは,通常,処分等が違反者に通知等され,当該違反者がこれを了知したことを前提とするものと解されるところであり,現に,道交法に基づく処分の場合には当然に処分の名あて人に対して処分が通知されるし(道交法104条の3第1項等),本件宣誓書にいう「反則金の納付を命ぜられた場合」も後記ウのとおり,違反者は道交法127条に基づいて書面等で通告を受けるのであって,いずれも道交法違反者 知されるし(道交法104条の3第1項等),本件宣誓書にいう「反則金の納付を命ぜられた場合」も後記ウのとおり,違反者は道交法127条に基づいて書面等で通告を受けるのであって,いずれも道交法違反者が自身に道交法違反による処分等がなされたことを通知等で認識することを前提としている。それにもかかわらず,本件のように反則点数の付加がなされた場合についてだけ,道交法違反者は反則点数付加の事実について通知等がなされなくとも,自らかかる事実の有無を確認した上で報告をしなければ不利益を被るとするのは,他の道交法違反による処分等との均衡を失するものといえる。また,本件宣誓書に基づいて義務付けられた報告をしなかった場合には許可の期限の更新が拒絶されるという重大な結果が生じることからも,上記文言等から離れた解釈は相当性を欠くものであって,処分等を受けた場合の報告を懈怠したものとして本件許可取消条件に該当するのは,報告の対象となっている事実を認識していたにもかかわらず,それを報告しなかったという,故意に基づく報告の懈怠に限られるものと解するのが相当である。したがって,被告の主張のように,反則点数付加の事実について認識をしていない場合であっても,自らかかる事実の確認をしなければならず,そのような確認をせず,その結果,反則点数付加の事実の報告をしなかったという過失に基づく不報告の場合も報告の懈怠があるとして,本件許可取消条件に該当すると解することはできない。なお,仮に,過失に基づく不報告が本件許可取消条件に該当する場合があるとしても,本件宣誓書には「宣誓日以降処分日までの間に 上記に掲げる処分等を受けた場合には,直ちに報告いたします」との記載があるのみであって(前記前提事実(2)),かかる記載からは道交法違反による処分等の通知がない場合には申請者 日までの間に 上記に掲げる処分等を受けた場合には,直ちに報告いたします」との記載があるのみであって(前記前提事実(2)),かかる記載からは道交法違反による処分等の通知がない場合には申請者自らが道交法違反による処分等がなされたのか否かについて確認をすべきことを約したとまでは到底解し得ないこと,本件のように本件事業の許可申請がなされてからどの程度の期間を経て許可処分がなされるのかが明らかではないような場合に被告主張のような確認を義務として求めることは,申請者に許可処分がなされるまで反復して確認すべきことを強いるものといえ,過度の負担となることからすれば,反則点数付加の事実について運転記録証明書を取得してまで確認すべき義務があるとは解し難く,この点からも被告の主張は採り得ない。 c 以上より,原告は本件反則点数付加の事実を認識していなかった以上,故意に本件反則点数付加の事実の報告を懈怠したものではないから,本件反則点数付加の事実を報告しなかったことが本件許可取消条件に該当すると認めることはできない。 ウ ② 原告が本件違反行為に係る反則金納付命令を受けた事実につき報告を懈怠したか否か(ア) 本件宣誓書には,運送法4条1項に基づく許可処分までの間に申請者が道交法の規定による反則金の納付を命ぜられた場合についても申請者はその事実を報告する旨記載されているところ,そもそも道交法において反則金の納付を命ずるという手続は定められていないが,反則通告制度に係る規定等(上記イ(ア)b(a))に照らせば,一般乗用旅客自動車運送事業(1人1車制個人タクシーに限る。)経営許可申請の際に申請者が提出する宣誓書の「反則金の納付を命ぜられた場合」とは,道交法127条1項に基づき反則金の納付を通告された場合をいうと解するの 車運送事業(1人1車制個人タクシーに限る。)経営許可申請の際に申請者が提出する宣誓書の「反則金の納付を命ぜられた場合」とは,道交法127条1項に基づき反則金の納付を通告された場合をいうと解するのが相当である。これに対し,被告は,ここにいう「反則金の納付を命 ぜられた場合」とは,同法126条1項に基づく告知手続において反則金の仮納付のための納付書が交付された場合をいう旨主張するが,同条及び同法127条の規定によれば,告知をした警察官から報告を受けた警察本部長が,当該告知を受けた者が反則行為をした反則者であると認めるときに限り,その者に対して反則金の納付を書面で通告するとされており,反則金の納付を求めるか否かに関する最終決定権は警察本部長にあり,告知を行う警察官にはかかる決定権はないと解されること,告知を受けた者が自主的に行う仮納付はあくまで反則金に相当する金額の仮納付であり,反則金そのものの納付ではないこと(同法129条1項)からすれば,仮納付のための納付書の交付をもって「反則金の納付を命ぜられた場合」と解することはできない。 (イ) そうすると,本件においては,原告は本件許可の後に本件反則金納付通告を受けている以上(前記前提事実(5)),本件宣誓書に基づく報告の対象ではないのであるから,原告がかかる事実の報告を懈怠したとはいえず,この点でも本件許可取消条件該当性は認められない。 (3) 小括以上より,原告は本件許可前には反則金の納付を命ぜられておらず,また,本件許可前に本件反則点数付加がされたことが推認されるものの,原告はかかる事実を認識しておらず,故意に報告を懈怠したものではないから,本件許可取消条件に該当するものとは認められず,原告の本件第2更新申請について,「許可等に付した条件により,許可等を取り消 ,原告はかかる事実を認識しておらず,故意に報告を懈怠したものではないから,本件許可取消条件に該当するものとは認められず,原告の本件第2更新申請について,「許可等に付した条件により,許可等を取り消すべき事由・・・に該当している場合」(本件更新拒絶事由)には該当しない。 そうであるところ,近畿運輸局長は本件更新拒絶事由に該当することを理由に本件更新拒絶処分を行ったものである。ところで,運送法86条1項に基づいて同法4条1項の許可に期限が付された場合にかかる期限の更新申請に対する許可の基準について,運送法は何ら定めていない。しかしながら, 一旦許可が与えられて本件事業を開始している者の利益や期待権は保護に値するため,期限の更新申請の不許可を無制限に認めるべきでない。また,行政庁の恣意的判断の防止や申請者に対して処分の予測可能性を与えるといった行政手続法5条1項及び同条3項の趣旨等を勘案すれば,同条に基づいて審査基準が公示されている場合には,当該基準が行政庁の内部的判断基準であるとしても,行政庁はこれを合理的に適用して更新申請に対する審査を行うことが要請されているというべきである。そうすると,更新基準公示が定めた本件更新拒絶事由がないにもかかわらず,当該事由があるとしてなされた本件更新拒絶処分は,公示されている審査基準によらずになされたものであり,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用が認められ,違法な処分であるといわざるを得ず,争点2及び争点3について判断するまでもなく取消しを免れない。 2 国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求について(1) 争点4(本件更新拒絶処分の国家賠償法上の違法性)について国家賠償法1条1項の違法性が認められるのは,公務員が,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と処分をしたと認め得 (1) 争点4(本件更新拒絶処分の国家賠償法上の違法性)について国家賠償法1条1項の違法性が認められるのは,公務員が,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と処分をしたと認め得るような事情がある場合に限ると解される(最高裁平成元年(オ)第930号,1093号同5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁参照)。 そこで本件について検討するに,本件では上記1(3)のとおり,本件第2更新申請の判断をするにあたり,更新基準公示を合理的に適用し処分を行うことが職務上通常尽くすべき注意義務となっていたところ,近畿運輸局長は,本件第2更新申請について,更新基準公示が定めた本件更新拒絶事由に該当するものとは認められないにもかかわらず,これが認められるとして本件更新拒絶処分を行ったのであるから,職務上尽くすべき注意義務を怠ったものといえる。 近畿運輸局長が,原告の本件反則点数付加の事実についての報告の懈怠を 理由に本件更新拒絶事由該当性を認め,本件更新拒絶処分をする以上,原告が本件許可前に本件反則点数付加の事実を認識していたことについての審理及び認定が必要となるところ,近畿運輸局長がこの点につきいかなる審理及び認定をしたのかは本件更新拒絶処分の理由が記載されている書面(甲12)等をみても明らかではないが,近畿運輸局長が,原告において本件反則点数付加の事実を本件許可前に認識していたという誤った認定をしていた場合には,上記1(2)イ(イ)aのとおり,反則点数付加の事実は違反者に対して通知されない運用になっており,近畿運輸局長はかかる運用を当然了知しているものというべきであるから,上記のような誤った認定をしたことについて注意義務違反を否定することはできない。また,近畿運輸局長が,原告は本件反則点数付加の事実を認識 局長はかかる運用を当然了知しているものというべきであるから,上記のような誤った認定をしたことについて注意義務違反を否定することはできない。また,近畿運輸局長が,原告は本件反則点数付加の事実を認識していなかったとしても自ら運転記録証明書を取得する等して確認をした上で報告をすべきであったとして,過失に基づく不報告の場合にも本件許可取消条件に該当するという誤った解釈に基づいて本件更新拒絶処分をしたとすれば,上記1(2)イ(イ)bのとおり,本件宣誓書に基づく報告の対象となっている他の道交法違反による処分等との均衡や,本件更新拒絶処分の性質等に鑑みれば,故意に基づく報告の懈怠に限って本件許可取消条件該当性を認めるべきであって,上記のような誤った解釈をすることについて何ら正当な根拠は認められない。 仮に,近畿運輸局長が本件違反行為に係る反則金納付命令を受けた事実の報告の懈怠を理由に本件更新拒絶事由該当性を認め,本件更新拒絶処分をしたとしても,本件宣誓書の「反則金の納付を命ぜられた場合」とは道交法127条1項に基づく反則金の納付を通告された場合をいうと解すべきであるところ,原告が本件許可より前の時点で反則金の納付の通告を受けていないことは明らかであり,また,反則金の仮納付のための納付書が交付されたことをもって「反則金の納付を命ぜられた場合」にあたるとの解釈が採り得ないことは前記1(2)ウ(ア)のとおりであるから,この点からも近畿運輸局長が 本件第2更新申請について本件更新拒絶事由該当性を認めたことに正当な根拠は認められない。 したがって,近畿運輸局長は,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件更新拒絶処分を行ったものであり,国家賠償法上の違法が認められる。 (2) 争点5(損害額)についてア休業損害額 運輸局長は,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件更新拒絶処分を行ったものであり,国家賠償法上の違法が認められる。 (2) 争点5(損害額)についてア休業損害額(ア) 原告は,平成23年8月16日から本件事業を休業し,本件執行停止決定がなされた後の同年12月7日から本件事業を再開したとして,同年8月16日から同年12月6日までの期間の休業損害を主張するが,本件執行停止決定は同年11月21日になされているところ(前記前提事実⑻),原告が同日以降同年12月6日までの期間につき本件事業を再開できなかった事情について何ら主張していない。したがって,原告に認められる休業損害の期間は,被告が主張する同年8月16日から同年11月28日までの105日とするのが相当である。 (イ) そして,原告の平成22年分所得税青色申告決算書(一般用)記載の青色申告特別控除前の所得金額151万9875円(甲13)を原告の営業収入の算定根拠として日割計算により以下のとおり算定した43万7224円が,本件更新拒絶処分によって原告が被った休業損害と認められる(小数点以下四捨五入)。 151万9875円×105日÷365日=43万7224円イ弁護士費用本件の本案事件及び執行停止事件の内容,性格及び経緯等に鑑みると,弁護士費用相当損害金としては20万円を認めるのが相当である。 ウ以上によれば,国家賠償法上違法な本件更新拒絶処分によって原告が被った損害は,休業損害43万7224円及び弁護士費用20万円の合計6 3万7224円となる。そして,遅延損害金につき,原告は,休業損害に対する遅延損害金のみを請求しており,その始期を不法行為の後である平成23年8月16日として請求し 士費用20万円の合計6 3万7224円となる。そして,遅延損害金につき,原告は,休業損害に対する遅延損害金のみを請求しており,その始期を不法行為の後である平成23年8月16日として請求しているから,その限度で認めるのが相当である。 3 結論よって,原告の本訴請求のうち,本件更新拒絶処分の取消請求は理由があるからこれを認容し,国家賠償請求については,被告に対して63万7224円及びうち43万7224円に対する平成23年8月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから同限度でこれを認容し,その余は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法64条本文,61条を適用して,主文のとおり判決する。なお,国家賠償請求に係る仮執行宣言の申立てについては,その必要がないものと認め,却下する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官田中健治 裁判官木村朱子 裁判官尾河吉久は,転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官田中健治
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