令和6(行ケ)10078 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年1月29日 知的財産高等裁判所 3部 判決 請求棄却
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令和7年1月29日判決言渡令和6年(行ケ)第10078号審決取消請求事件口頭弁論終結日令和6年12月3日判決 原告 X同訴訟代理人弁護士山 田 威一郎 被告 Y 同訴訟代理人弁護士拾井央雄同訴訟代理人弁理士西村竜平同齊藤真大同中村惇志 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 特許庁が取消2022-300836号事件について令和6年6月27日に した審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等⑴ 被告は、次の商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である(甲1、 2)。 登録番号第6499385号登録出願日令和2年12月18日登録査定日令和4年1月5日設定登録日令和4年1月14日登録商標 池善(標準文字)商品及び役務の区分、指定役務第35類:化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、化粧用具(電動式歯ブラシを除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、薬剤(農 薬に当たるものを除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、不動産事業の管理、賃貸事業の管理第36類:建物の管理、建物の貸借の代理又は媒介、建物の貸与、建物の売買、建物の売買の代理又は媒介、建物又は土地の鑑定評価、建物又は土地の情報の提供、土地の管理、土地の 事業の管理、賃貸事業の管理第36類:建物の管理、建物の貸借の代理又は媒介、建物の貸与、建物の売買、建物の売買の代理又は媒介、建物又は土地の鑑定評価、建物又は土地の情報の提供、土地の管理、土地の貸借の代理 又は媒介、土地の貸与、土地の売買、土地の売買の代理又は媒介⑵ 訴外A(以下「A’」という。)は、令和4年9月15日、本件商標につき、商標法51条1項に基づく登録取消の本件審判請求(取消2022-300836号)をしたところ、その請求の理由の要旨は以下のとおりである。 A’は、昭和58年8月から令和2年12月24日までの間、株式会社池 善化粧品店(以下「訴外会社」という。)の株式の4割以上(A’の妻であるB(以下「B’」という。)が保有する株式と合算すると過半数になる。)を保有し、同社の代表取締役を務めていた。 訴外会社は、昭和52年11月21日に設立された化粧品販売等を主たる業務とする法人であり、京都市の四条河原町の交差点に昭和6年に開店した 「池善化粧品店」との店名の化粧品販売店(以下「原告店舗」という。)を、 同店が閉店に至る令和2年12月31日までの間経営し、後記各引用商標を使用していたが、同月24日付けで訴外会社については解散決議がされ(令和3年1月25日登記)、A’が清算人及び代表清算人として、在庫品の販売等の清算処理を行っている(甲3、44)。 被告は、A’の甥であるところ、A’に何らの断りもなく、令和3年3月 に「cosmetics池善」との名称の化粧品販売店(以下「被告店舗」という。)を開店し(甲5の1)、現在も被告店舗で化粧品の小売業務を行っている。被告は本件商標の商標権者であり、故意に、これと類似し、各引用商標と類似する後記各使用商標を使用し、訴外会社の役務と混同を生ずるも 開店し(甲5の1)、現在も被告店舗で化粧品の小売業務を行っている。被告は本件商標の商標権者であり、故意に、これと類似し、各引用商標と類似する後記各使用商標を使用し、訴外会社の役務と混同を生ずるものをした。 A’及び訴外会社が、これまでに被告に対し、訴外会社の事業を承継させた事実は一切存在しないが、被告は、被告店舗を原告店舗がリニューアルオープンした店舗であるかのように装っており、訴外会社の業務に係る役務と混同を生じさせているから、本件商標は、商標法51条1項に基づき、登録を取消されるべきものである。 ⑶ A’が令和5年12月26日に死亡したことから、法定相続人(子)である原告が手続を承継したところ、特許庁は、令和6年6月27日、「本件審判の請求は、成り立たない。」とする審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同年7月4日に原告に送達された(甲50、51)。 ⑷ 原告は、令和6年8月2日、本件審決の取消しを求めて、本件訴えを提起 した。 2 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は、要するに、被告が被告店舗及びそのウェブサイトにおいて使用する商標である使用商標1(下記4⑴)及び使用商標2(下記4⑵。使用商標1と併せ「各使用商標」という。)は、本件商標と類似の商標であり、か つ、本件商標の指定役務は、各使用商標の使用役務と同一の役務を含むもので あるから、各使用商標の使用は、指定役務についての本件商標に類似する商標の使用に該当するといえ、訴外会社において、原告店舗が閉店する令和2年12月31日まで原告店舗及びその広告物に使用していた引用商標1(下記3⑴)、引用商標2(下記3⑵)及び引用商標3(下記3⑶。引用商標1及び引用商標2と併せ「各引用商標」という。)は、各使用商標と類似する商標とい で原告店舗及びその広告物に使用していた引用商標1(下記3⑴)、引用商標2(下記3⑵)及び引用商標3(下記3⑶。引用商標1及び引用商標2と併せ「各引用商標」という。)は、各使用商標と類似する商標といえる が、各引用商標は我が国の需要者の間に広く認識されているとは認められないから、各使用商標と各引用商標とは、役務の混同を生ずるものではなく、故意に出所の混同を生じさせたものとまではいえず、商標法51条1項の要件に該当しないというものである。 3 各引用商標の内容 ⑴ 引用商標1 ⑵ 引用商標2 ⑶ 引用商標3 4 各使用商標の内容⑴ 使用商標1 ⑵ 使用商標2 5 原告主張の取消事由⑴ 取消事由1 出所の混同のおそれに関する認定の誤り⑵ 取消事由2故意に関する認定の誤り第3 当事者の主張 1 取消事由1(出所の混同のおそれに関する認定の誤り) 〔原告の主張〕⑴ 本件審決は、各引用商標が周知性を欠くことを唯一の根拠として、出所の混同のおそれを否定しているものといえるが、引用商標の周知性や認知度は、商標法51条1項が定める「他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをした」との要件(「出所の混同のおそれ」の要件)の判断要素の一 つにすぎず、引用商標の周知性がないからといって、直ちに出所の混同のおそれを否定できるものではない。 裁判例(知財高裁平成23年(行ケ)第10005号同年10月24日判決、知財高裁平成24年(行ケ)第10187号同年12月26日判決)においても、引用商標が周知性を有さない事案に関し、出所の混同のおそれの 存在を肯定する判決が存在しており、引用商標の周知性が出所の混同のおそ 24年(行ケ)第10187号同年12月26日判決)においても、引用商標が周知性を有さない事案に関し、出所の混同のおそれの 存在を肯定する判決が存在しており、引用商標の周知性が出所の混同のおそれの必須の要件とはされていない。各引用商標の周知性の欠如を唯一の理由 として出所の混同のおそれを否定した本件審決の認定は、商標法51条1項の出所の混同のおそれの要件の解釈を誤ったものである。 ⑵ 被告による各使用商標の使用によって出所の混同が生ずるおそれがあることア出所の混同のおそれの判断要素と本件での検討事項 商標法51条1項の出所の混同のおそれの有無は、①商標権者の使用商標と他人の引用商標の類似性の程度、②引用商標の周知著名性及び独創性の程度、③商標権者が使用商標を使用する役務と引用商標が使用されている役務との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに取引者及び需要者の共通性その他の取引の実情、を総合的に考慮して判断する必要 がある。 イ各引用商標及び各使用商標の使用態様(ア) 訴外会社による各引用商標の使用態様訴外会社の創業者であるC(以下「C’」という。)は、昭和6年に京都市四条河原町交差点に「池善化粧品店」(原告店舗)を開店し、同場所 で化粧品販売業(本件商標の指定役務中の第35類「化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に該当する。)を営んできたが、昭和52年11月21日に訴外会社が設立された後は、同社が原告店舗の業務を引き継ぎ、令和2年12月31日までの間、原告店舗において、化粧品販売業を営んできた。 引用商標1の「池善化粧品店」は、原告店舗の店名であり、昭和6年の創業から令和2年12月31日までの間、原告店舗の看板や各種の宣伝広告物に使用さ 告店舗において、化粧品販売業を営んできた。 引用商標1の「池善化粧品店」は、原告店舗の店名であり、昭和6年の創業から令和2年12月31日までの間、原告店舗の看板や各種の宣伝広告物に使用されてきた商標である。また、引用商標2は、包装袋、包装紙、広告物等において使用されていた商標であり(甲8、52)、引用商標3は、店舗の看板で使用されていた商標であるが、これらの商標 中の「ikezen」の欧文字のロゴは、遅くとも、平成10年1月よ り以前にデザインされたものであり 、引用商標2及び3は、その後、令和2年末の閉店までの間、継続して使用されてきた。 原告店舗は、ビルの2階部分の壁に横書きの態様で引用商標1が大きく表されているほか、1階の看板にも縦書きで引用商標1が表示されていた(甲54)。また、引用商標3は、原告店舗の1階の2箇所の入口の 上のプレートに表示されていた(甲54)。 被告の父であるD(以下「D’」という。)は、昭和52年以降、訴外会社の取締役を務めており、平成17年から令和2年末までの間、原告店舗のスタッフとして、店番をしていたほか、商品や従業員の管理を行っていた。また、被告の母であるE(以下「E’」という。)も平成20 年頃から原告店舗の店番をするようになり、訴外会社の監査役も務めていた。 (イ) 被告による各使用商標の使用態様被告は、令和3年3月18日に京都市四条寺町に「cosmetics池善」(被告店舗)を開店し、同場所で化粧品販売業を営んでいる。使 用商標1及び2は、いずれも、被告店舗において、化粧品の小売役務を提供する際に使用されている。 使用商標1は、被告店舗の店舗名であり、被告店舗のウェブサイトに掲載されているほか(甲5の1~3)、被告店舗で商品を購入した際のレシ 店舗において、化粧品の小売役務を提供する際に使用されている。 使用商標1は、被告店舗の店舗名であり、被告店舗のウェブサイトに掲載されているほか(甲5の1~3)、被告店舗で商品を購入した際のレシート等にも表示されている(甲55)。 また、使用商標2は、被告店舗のウェブサイトに掲載されているほか(甲5の1~3)、被告店舗の看板、1階入り口及び2階のガラス窓、店内の広告物等に使用されている(甲56)。 なお、被告店舗と原告店舗は、ワンブロックしか離れておらず、横断歩道等を渡らずに歩いて行ける位置関係にある。 また、被告店舗の主たる取扱商品は、原告店舗で長年、販売されてい た資生堂等のブランドの化粧品であり、店舗の構成(1階に販売スペースを設け、2階にお手入れルーム(販売員がメイク指導等行うことができるスペース)を設けている構成)も原告店舗と共通している。 さらに、被告店舗で実際にスタッフとして働き、店番をしているのは、D’とE’である。 (ウ) 各使用商標と各引用商標の類似性の程度本件審決では、使用商標1及び2は、各引用商標に類似するとの判断がなされているが、特に、使用商標1と引用商標1、使用商標2と引用商標2及び3の類似性の程度は高い。 本件審決では、使用商標1と引用商標1は、共に「池善」の文字が要 部になる商標であるとした上で、「両者は外観において近似した印象を与える」との認定をしている。また、両商標の称呼及び観念に関しては、「使用商標1と引用商標1とは、『イケゼン』の称呼において共通する。」、「両者はともに特定の観念を生じないから、観念においては比較できない」との認定をしている。 これらの点をまとめると、使用商標1と引用商標1は外観が近似、称呼は同一、観念は対比不可という 、「両者はともに特定の観念を生じないから、観念においては比較できない」との認定をしている。 これらの点をまとめると、使用商標1と引用商標1は外観が近似、称呼は同一、観念は対比不可ということになるが、これらの3要素を総合した場合の類似性の程度は高いといえる。 また、本件審決では、使用商標2と引用商標2及び3に関し、「両者の要部である『ikeZen』の文字部分は、その書体及び態様を共通に し、類似するものである」との認定をしている。さらに、両商標の称呼及び観念に関しては、「使用商標2と引用商標2及び3とは、『イケゼン』の称呼において共通する。」、「両者はともに特定の観念を生じないから、観念においては比較できない」との認定をしている。 これらの点をまとめると、使用商標2と引用商標2及び3は外観が類 似、称呼は同一、観念は対比不可ということになるが、これらの3要素 を総合した場合の類似性の程度は極めて高いというべきである。 ウ各引用商標の周知著名性及び独創性の程度(ア) 各引用商標の認知度を考える前提となる被告店舗の需要者各引用商標の周知著名性の要素は、被告が各使用商標を使用した場合に出所の混同が生ずるか否かを判断するための要素であるため、被告店 舗の需要者の間で、各引用商標がどの程度の認知度を有していたのかを検討する必要がある。 この点、被告は、原告店舗があった場所から100メートル程度離れた京都市四条寺町に位置する被告店舗において化粧品販売業を営んでいるが、被告店舗は2階建ての小型店舗であり、駐車場もない(甲5の2)。 また、被告店舗の取扱ブランドは、資生堂やコーセーといった一般的なものばかりである(甲5の1・2)。 一般に需要者が化粧品を購入する方法としては、デパートなどの高級 車場もない(甲5の2)。 また、被告店舗の取扱ブランドは、資生堂やコーセーといった一般的なものばかりである(甲5の1・2)。 一般に需要者が化粧品を購入する方法としては、デパートなどの高級店、ドラックストアなどの低価格店、インターネット販売などが考えられるところ、化粧品購入のルートが多様化した昨今では、被告店舗のよ うな小型の化粧品店で化粧品を購入する需要者はさほど多くはないと考えられ、遠方からわざわざ被告店舗に化粧品を購入しに来る需要者はほぼ存在しないと考えられる。 また、資生堂の化粧品を取り扱っている店舗をまとめている「BeautyKey」のウェブサイト(甲57)で検索をすると、資生堂の 化粧品を取り扱っている化粧品販売店が、京都市内だけで、被告店舗を含めて全264店検索でき、京都市内だけでも多数の化粧品販売店が乱立していることが分かる。 このような取引の実情に鑑みると、被告店舗に化粧品を購入しに来る需要者の大半は、被告店舗の近隣(徒歩か自転車で通える圏内)に住む 女性か、被告店舗の近隣で仕事をしている女性であると解され、各引用 商標の周知性や認知度を検討する際にも、これらの需要者における認知度を検討すれば足りる。 (イ) 各引用商標の認知度本件審決では、各引用商標の周知性に関し、「引用商標が訴外会社によって長年使用されていたとしても、本件商標の登録時において、訴外会 社の業務に係る役務を表すものとして、我が国における需要者の間に広く認識されていると認めることはできない。」との認定をし、各引用商標の周知性を否定している。 しかしながら、引用商標1はC’及び訴外会社によって、約90年近くの期間使用されてきた商標であり、また、引用商標2及び3も遅くと も平成10年以前から継 各引用商標の周知性を否定している。 しかしながら、引用商標1はC’及び訴外会社によって、約90年近くの期間使用されてきた商標であり、また、引用商標2及び3も遅くと も平成10年以前から継続して訴外会社によって使用されてきた商標であり、かかる長年の使用によって、需要者の間で広く認識されている商標であるといえる。また、仮に、各引用商標が「我が国における需要者の間に広く認識されている」とまで認められなかったとしても、各引用商標は、需要者の間で一定の認知度を有していたといえる。 引用商標1の「池善化粧品店」の要部である「池善」との商標は、京都の四条河原町において、江戸時代末期の頃(原告の高祖父の時代)から使われていた商標であり、訴外会社の店舗から東へ30メートル程度離れた場所で、慶応2年から昭和63年までの間、金物商「池善金物店」が経営されていた(この金物店の跡地には、平成元年に、「ユーイットゥ 池善ビル」というテナントビルが建てられている。)。 原告店舗(池善化粧品店)は、このような地域環境の中で、C’及び訴外会社によって約90年近くの期間継続して経営されてきた店舗であり、京都高島屋の前という特徴的な立地と大正15年の建物で変わらず昭和初期から営業されているという特殊性もあり、京都市民の間では、 京都の繁華街にある化粧品屋と言えば、「池善化粧品店」であるという認 識が広く知れ渡っていたといえる。 本件審決の上記認定における「我が国における需要者」がどのような地域的範囲の需要者を指しているのかは判然としないが、「我が国における」という表現をしていることから考えると、商標法4条1項10号における周知性(隣接数県程度の需要者の間での周知性)又はそれ以上の レベルでの周知性を想定した認定がなされた が、「我が国における」という表現をしていることから考えると、商標法4条1項10号における周知性(隣接数県程度の需要者の間での周知性)又はそれ以上の レベルでの周知性を想定した認定がなされたものと推察される。 しかしながら、商標法51条1項における出所の混同のおそれを検討する際の引用商標の周知性や認知度は、出所の混同が生ずるか否かを考える前提の要件にすぎないため、商標法4条1項10号における周知性のような高いレベルの周知性を検討する必要はなく、被告店舗に化粧品 を購入しに来る需要者の間での引用商標の認知度を検討すれば足りる。 この点、被告店舗に来店をする可能性のある需要者は、被告店舗の近隣に住む女性又は被告店舗の近隣で仕事をしている女性に限られると解されるが、需要者の範囲を、このような範囲に絞った場合、各引用商標は、本件商標の商標登録がなされた令和4年1月14日時点で、十分な 認知度を有していたといえる。 本件審判の中でも主張したとおり、原告店舗は、昭和6年から令和2年12月までの約90年間にわたって営業をしてきた老舗の化粧品店であり、店舗が京都市の四条河原町交差点に位置し、その外観も非常に特徴的であったため、長年にわたって、多くの人の目に触れ、注目されて きた。 また、訴外会社は、創業当時から、数多くの刊行物に広告物を掲載していたほか(甲7、12~16)、その歴史や業務形態等について、新聞等から取材を受け、新聞や雑誌に取材記事が掲載されたことも多数あった(甲18~20)。 原告店舗が令和2年12月に閉店をした際には、そのニュースが多数 の新聞やテレビのニュースで取り上げられ(甲21~23)、TwitterなどのSNSでも多数の投稿がなされたが、非常に小さな一化粧品店の閉店がこれほど 店をした際には、そのニュースが多数 の新聞やテレビのニュースで取り上げられ(甲21~23)、TwitterなどのSNSでも多数の投稿がなされたが、非常に小さな一化粧品店の閉店がこれほどまでにニュースになったのは、「池善化粧品店」が京都市民の間で長年にわたって親しまれてきたからに他ならない。 なお、本件審決では、原告が審判段階で提出した新聞、雑誌、テレビ 番組の証拠に関し、「新聞や雑誌記事ないしテレビ番組の証拠は、その多くが京都市内ないしその周辺に限定されるものである。」との認定をしているが、上記のとおり、被告店舗に来店をする可能性のある需要者は、被告店舗の近隣に住む女性又は被告店舗の近隣で仕事をしている女性に限られるため、京都市以外の需要者の認知度を検討する必要はない。 また、本件審決では、原告店舗の広告に関し、「化粧品会社の発行する冊子は昭和初期のもの、京都市内で発行される情報誌及び劇場が発行する冊子は2000年代前半のものが大部分であり、近年のものは少ない。」との認定をしているが、これらの冊子等への広告は、訴外会社が非常に長期間にわたって宣伝広告をしてきた事実を示すものであり、これらの 証拠を軽視することは妥当ではない。一般に、大手チェーン店以外の町中にある化粧品店が新聞や雑誌に宣伝広告を出すことは珍しく、その中で見れば、訴外会社は十分な宣伝広告活動をしていたと評価できる。 さらに、本件審決では、原告店舗の閉店のニュースに関し、「原告店舗の閉店の際に、閉店のニュースが各種媒体で瞬間的に報道されたとして も、それをもって、引用商標が継続的に宣伝広告されたということもできない。」との認定をしているが、原告店舗の閉店のニュースは、各引用商標の宣伝広告を示すための証拠ではなく、本件審決の認定は証拠の も、それをもって、引用商標が継続的に宣伝広告されたということもできない。」との認定をしているが、原告店舗の閉店のニュースは、各引用商標の宣伝広告を示すための証拠ではなく、本件審決の認定は証拠の評価を誤っている。非常に小さな一化粧品店の閉店がこれほどまでにニュースになったのは、「池善化粧品店」が京都市民の間で長年にわたって親 しまれてきたからであると考えられ、原告店舗の閉店のニュースが一定 のニュースバリューがあると判断されたこと自体に重要な意味がある。 加えて、本件審決では、各引用商標の周知性を否定する理由として、引用商標を使用した役務の売上高等を示す証拠の提出もないとの認定をしているが、平成20年度以降の原告店舗の売上の推移は以下のとおりであり、平成20年10月から令和2年12月までの売上の総額は9億 0740万3598円となるが、この金額は、化粧品販売店の売上額としては十分に大きな額であるといえる(甲58の1~10)。 平成21年10月1日ないし平成22年9月30日73,599,000円平成22年10月1日ないし平成23年9月30日 70,409,000円平成23年10月1日ないし平成24年9月30日65,472,783円平成24年10月1日ないし平成25年9月30日64,784,287円 平成25年10月1日ないし平成26年9月30日72,189,954円平成26年10月1日ないし平成27年9月30日91,604,558円平成27年10月1日ないし平成28年9月30日 89,748,570円平成28年10月1日ないし平成29年9月30日111,517,452円平成29年10月1日ないし平成30年9月30日115,057,147円 0日 89,748,570円平成28年10月1日ないし平成29年9月30日111,517,452円平成29年10月1日ないし平成30年9月30日115,057,147円 平成30年10月1日ないし令和元年9月30日 89,711,000円令和元年10月1日ないし令和2年12月24日63,309,847円合計金額 907,403,598円以上の点に鑑みると、訴外会社が使用してきた各引用商標は、本件商 標の商標登録がなされた令和4年1月14日の時点において、被告店舗に化粧品を購入しに来る需要者(被告店舗の近隣に住む女性又は被告店舗の近隣で仕事をしている女性)の間で十分な認知度を有していたというべきである。 (ウ) 各引用商標の独創性の程度 引用商標1「池善化粧品店」は、「池善」の文字部分を要部とする商標であるが、「池善」との語は特段の意味合いを有さない造語である。また、「池善」との商標は、原告、被告及びその親族以外は、一切使用していない商標である。そのため、引用商標1は独創性の強い商標であるといえる。 また、引用商標2及び3は、「ikeZen」の文字を非常に特殊な字体にデザイン化した商標であり、外観上も顕著な特徴を有している。そのため、引用商標2及び3も、非常に独創性の強い商標であるといえる。 エ役務の関連性、需要者の共通性、その他の取引の実情(ア) 総論 商標法51条1項の出所の混同のおそれの有無を判断するためには、「商標権者が使用商標を使用する役務と引用商標が使用されている役務との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに取引者及び需要者の共通性その他の取引の実情」を考慮要素とする必要があるが、このような取引の実情を勘案した場合、 務と引用商標が使用されている役務との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに取引者及び需要者の共通性その他の取引の実情」を考慮要素とする必要があるが、このような取引の実情を勘案した場合、被告による各使用商標の使用によ って、訴外会社の業務との誤認混同のおそれがあることはより一層明ら かである。 (イ) 役務の関連性の程度被告が各使用商標を使用している被告店舗における化粧品販売の態様は、訴外会社が行っていた化粧品販売業の態様と同様であり、取扱商品や店舗の構成も共通している。 これは、両店舗における実際の店舗運営を行っているのが共に被告の父であるD’であることによるものであり、両店舗で提供されている役務の内容に実質的な差異はない。 (ウ) 需要者の共通性被告店舗は、原告店舗の閉店の2か月半後に、原告店舗から100メ ートル程度しかない場所で開店した化粧品販売店である。 また、両店舗の取扱商品及び業態に差異はない。 そのため、両店舗の需要者は、完全に重なりあっている。 (エ) 被告が自ら混同を誘引していること被告は、被告店舗を原告店舗の「後継店」と称しており、その旨を顧 客に吹聴しており、これによって、被告店舗を訪れる需要者の間で、被告店舗を原告店舗の移転先の店舗であると誤認する事例が多数発生している。 被告店舗のウェブサイトでは、原告店舗の昭和初期の時代の写真が掲載されているほか、「1931年創業の化粧品専門店です。2021年3 月寺町市場に移転し、名前もcosmetics池善でオープン。」と記載されており(甲5の1)、被告店舗が原告店舗の移転先の店舗であるとの誤認を生じさせる記載となっている。 また、四条繁栄会商店街振興組合のウェブサイトにおける被告店舗の紹介ページ オープン。」と記載されており(甲5の1)、被告店舗が原告店舗の移転先の店舗であるとの誤認を生じさせる記載となっている。 また、四条繁栄会商店街振興組合のウェブサイトにおける被告店舗の紹介ページには、「2021年3月四条寺町に移転し営業させて頂いてお ります。」との記載があり(甲5の3、甲64の1)、被告店舗が原告店 舗の移転先の店舗であるとの誤認を生じさせる記載がなされている。 さらに、原告店舗では、「IKEZENCLUB」という会員制度を設け、会員に一定の特典を与える運用を行っていたが(甲59)、被告店舗でも同じく「IKEZENCLUB」という名称の会員制度が設けられており、このことも需要者に誤認を生じさせる要因になり得る(甲 60)。被告店舗の「IKEZENCLUB」における会員特典の内容は、原告店舗の「IKEZENCLUB」の会員特典とほぼ同内容となっており、会員入会時の葉書のデザインも酷似している。 加えて、被告は、被告店舗の電子メールアドレスとして、訴外会社の電子メールアドレスとして使用されていたアドレスを訴外会社に無断で 継続使用しており、被告店舗と電子メールでやりとりをした需要者は、電子メールの共通性からも、被告店舗を原告店舗の後継店であると誤認するおそれがある。 また、被告店舗のLINEの公式アカウントは、原告店舗のアカウントを引き継いだものとなっており、被告はLINEの公式アカウントの 投稿でも、被告店舗が原告店舗の移転先の店舗であるという内容の投稿をしており、原告店舗の公式アカウントをフォローしていた需要者が、被告店舗を原告店舗の後継店であると誤認するおそれが非常に大きい。 原告は、原告店舗が閉店した翌日の令和3年1月1日に、原告店舗の公式アカウントをフォローした アカウントをフォローしていた需要者が、被告店舗を原告店舗の後継店であると誤認するおそれが非常に大きい。 原告は、原告店舗が閉店した翌日の令和3年1月1日に、原告店舗の公式アカウントをフォローしたが、同年3月18日に、この公式アカウ ントのアカウント名はその後「cosmetics池善」に変更され、被告店舗のオープンの際に、「3月18日四条河原町から新しく名前もcosmetics池善として寺町四条下がるにて化粧品店をオープンさせていただくことになりました。」との投稿がなされ、その後も被告店舗に関する投稿がなされている(甲61)。 また、原告店舗のLINEアカウントでは、「LINEVOOM」で の投稿もなされていたが、「LINEVOOM」のアカウントも「池善化粧品店」から、「cosmetics池善」に変更されており、現在は「cosmetics池善」のアカウントのもと、両店舗の投稿が続いて表示される状態となっている(甲62)。 (オ) 混同事例が多数発生していること 被告が被告店舗において、各引用商標に酷似した各使用商標を使用していることと、被告自身が被告店舗を原告店舗の移転先の後継店であると謳っていることの影響で、被告店舗が原告店舗の後継店であるとの誤認が生じる事例が多発している。 ウェブサイトでは、被告店舗が原告店舗の後継店であると誤解した記 載がなされているものがある(甲29の1・2)。 また、被告店舗が原告店舗の後継店であるとの誤認は、より最近でも多数生じており、SNS(Twitter、X)上の書き込みが後を絶たない状況である(甲63の1ないし5)。 (カ) 小括 以上のとおり、訴外会社が使用していた各引用商標は、被告店舗に来店する需要者の間で、十分な認知度を有していた商標 の書き込みが後を絶たない状況である(甲63の1ないし5)。 (カ) 小括 以上のとおり、訴外会社が使用していた各引用商標は、被告店舗に来店する需要者の間で、十分な認知度を有していた商標であり、出所の混同を生じさせる前提は十分にあるし、各引用商標は独創性の大きい商標であり、高い自他商品識別力を有している。 また、使用商標1と引用商標1、使用商標2と引用商標2及び3の類 似性の程度は高く、被告店舗やそのウェブサイトで、各使用商標を目にした需要者は、各引用商標を使用していた訴外会社との関連性を意識する可能性が高い。 さらに、被告店舗において提供されている化粧品販売の役務と訴外会社がおこなっていた化粧品販売の役務は同一のものであり、店舗が近隣 に位置していることから、需要者も一致している。 加えて、被告は、被告店舗を原告店舗が移転した後継店と称し、その旨をウェブサイトにも記載しており、実際の混同事例も多数発生している。 以上の点に鑑みると、被告が各使用商標を使用することで、訴外会社の業務との間で出所の混同を生ずるおそれがあることは明らかである。 ⑶ 被告の主張に対する反論ア被告の主張⑴ないし⑶に対し商標法51条の取消しの要件である「他人の業務に係る商品若しくは役務」との「混同」は、他人が業務を終了した後においても、業務を行っていた期間の業務上の信用が残存している限り、生じ得るものであり、被告 の主張は失当である。 また、商標法51条の取消しの要件である「他人の業務に係る商品若しくは役務」との「混同」は、本件商標の設定登録後の期間内に生じていれば足り、現時点まで混同が継続していることは必須の要件にはならないものであるから、訴外会社が解散してから、約4年が経過した現時点におけ 」との「混同」は、本件商標の設定登録後の期間内に生じていれば足り、現時点まで混同が継続していることは必須の要件にはならないものであるから、訴外会社が解散してから、約4年が経過した現時点におけ る出所の混同のおそれがあることは、そもそも必要ない。訴外会社が経営していた原告店舗が閉店したのは、令和2年12月31日であり、被告が、被告店舗を開店し、各使用商標の使用を開始したのは、その約2か月半後の令和3年3月18日である。そして、本件商標の設定登録がなされたのは令和4年1月14日であり、原告店舗の閉店のわずか1年後である。 そうすると、少なくとも、本件商標が設定登録された令和4年1月14日の時点においては、各引用商標の周知性が十分に残存していたといえ、設定登録直後の時点において、被告が各使用商標を使用することで、訴外会社の業務との間に出所の混同を生じるおそれがあったことは明らかである。 なお、商標に化体した信用が、当該商標の使用終了後も一定期間残存す ることは、平成13年改正前の商標法4条1項13号が設けられていた趣旨からも明らかである。平成13年改正前の商標法4条1項13号は「商標権が消滅した日(・・・)から一年を経過していない他人の商標(他人が商標権が消滅した日前一年以上使用をしなかったものを除く。)又はこれに類似する商標であって、その商標権に係る指定商品若しくは指定役務 又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」に関し、商標登録を認めない旨規定していたが、この規定は、何人かが使用していた商標はたとえその使用を止めても1年間程度はその商標に化体された信用が残存していて、他人がその商標の使用をすれば商品又は役務の出所の混同を招くおそれがあるとの理由に基づくものであった。 た商標はたとえその使用を止めても1年間程度はその商標に化体された信用が残存していて、他人がその商標の使用をすれば商品又は役務の出所の混同を招くおそれがあるとの理由に基づくものであった。 この規定の趣旨からも明らかなように、商標法が防ごうとしている他人の業務との誤認混同は、他人が商標の使用を中止した後でも、当該他人の商標に関する認知度が残存している限り、生じ得るものであり、商標法51条の取消しの要件である「他人の業務に係る商品若しくは役務」との「混同」にも、そのような混同が含まれることは言うまでもない。 イ被告の主張⑷に対し被告の主張は、いわゆる血筋だけの問題であり、訴外会社とは何の関係もない。訴外会社が昭和52年に設立された当時、C’が社長となったが、C’は長年の飲酒癖があり、昭和45年ころから神経痛を患い、当時住居としていた原告店舗の二階で寝たきりのことが多かった。また、会社設立 のころには既に第一線を退いており、腎臓を患い定期的に透析の為、京都市民病院へ通っていた。このような状況であったため、A’はC’夫婦が望むまま自然に、訴外会社の実質的な経営者となり、昭和58年から令和2年12月末までの37年間継続して、訴外会社の代表取締役社長を務めていた。 また、訴外会社の株については、昭和58年時点で、A’とB’が合わ せて54%、D’が34%、C’の妻であるF(以下「F’」という。)が12%を保有しており、平成7年商法改正による増資後もこの割合が維持された(保有株式数は、A’が8400株、D’が6800株、F’が2400株、B’が2400株である。甲31、34)。その後、F’は、平成17年に死亡したが、その相続人はA’とD’の2名であったため、そ れ以降の株式の保有比率は、A’と が6800株、F’が2400株、B’が2400株である。甲31、34)。その後、F’は、平成17年に死亡したが、その相続人はA’とD’の2名であったため、そ れ以降の株式の保有比率は、A’とB’が合わせて60%(12000株)、D’が40%(8000株)となっており、A’とB’が過半数の株式を保有していた。 一方で被告は、京都府立医科大学に勤務する医師であり、訴外会社に勤務した実態も全くなく、訴外会社とは何らの関係性も有さない者である。 また、被告は、昭和63年生まれで、C’と会ったこともなく、A’とは話をしたこともほとんどないし、訴外会社の株式も保有していない。また、被告とD’との間で、事業の承継に関し、どのような合意がなされたのかも不明である。そのため、このような被告が訴外会社と同一の主体でなく、「他人」であることは明らかであり、被告の主張は、失当である。 また、被告の上記主張は、D’が訴外会社の事業承継者であるとの主張を前提とするものであるが、D’が訴外会社の事業を承継した事実はない。 D’は、訴外会社の設立当初から取締役兼従業員であり、閉店時には、従業員としての退職金目当てに既に取締役を辞任しており、退職金をもらって退職した従業員の1人に過ぎない。 訴外会社の代表取締役であったA’は、原告店舗の閉店時、D’に対し、強い不信感を有しており、D’に訴外会社が行ってきた化粧品販売事業を承継させる意図は全く有していなかった。A’がD’を後継者と考えていなかった理由としては、平成2年(1990年)から17年間、D’は原告店舗の支店であった「ハロックス」の店長として、店舗を運営したが、 17年間赤字続きであったこと、しかもその財務状況について現実を直視 せず、改善しようともせず、また、財務の は原告店舗の支店であった「ハロックス」の店長として、店舗を運営したが、 17年間赤字続きであったこと、しかもその財務状況について現実を直視 せず、改善しようともせず、また、財務のみならず業務全般について会社に対し非常に非協力的であったことが挙げられる。D’の店舗運営能力、会社への協力姿勢等に鑑み、A’は、D’は会社の社長として相応しくないと判断していた。そのため、仮に、D’から、訴外会社の化粧品販売事業の事業譲渡等の申し入れを受けていた場合、A’がこれを拒否すること は確実な状況であった。 また、そのことは、被告やD’も当然に認識しており、原告店舗の閉店のわずか2カ月半後の令和3年3月18日に、被告が被告店舗を開店した際にも、訴外会社及びA’に対し、被告店舗の開店に関する連絡は一切なされなかった。 これら経緯に鑑みると、被告及びD’が、訴外会社から、同社が行なっていた化粧品販売事業を承継したとの事実はなく、訴外会社が被告にとって、「他人」に当たることは明らかである。 なお、訴外会社及びA’は、令和4年3月11日付けで、原告が代表取締役を務める株式会社池善(訴外会社とは別の会社)との間で、訴外会社 及びA’が営んできた事業を承継させ、「池善化粧品店」の商標、店舗名称、店舗ロゴ、関係資料、事業ノウハウ等に関する使用権等を譲渡する旨の覚書(甲40)を締結している。また、同覚書において、訴外会社及びA’は、「㈱池善以外の第三者に対しては『池善化粧品店』の商標、店舗名称、店舗ロゴ、関係資料、事業ノウハウ等の使用を認めておらず、今後も認め ないことを確約する」とも宣言している。そのため、同覚書の規定から見ても、被告やD’が訴外会社の事業承継者に当たらないことは明らかである。 A’及びD’は、訴 用を認めておらず、今後も認め ないことを確約する」とも宣言している。そのため、同覚書の規定から見ても、被告やD’が訴外会社の事業承継者に当たらないことは明らかである。 A’及びD’は、訴外会社の解散時の諸々の条件に関し、話し合いを行い、令和3年1月13日付け合意書(甲43)が締結されたが、かかる話 し合いに際し、D’はA’に対し、被告店舗の開店の計画があることを一 切伝えていなかった。 同合意書の14項には、被告も主張しているとおり、「丁(D’)及び戊(E’)は、甲(訴外会社)、乙(A’)、丙(B’)に対し、今後、新たに事業等を行う場合、本合意書締結後10年間は、『池善化粧品店』を含む名称を社名、商号、店名等に使用しないことを約束する。ただし、甲、乙及び 丙は、丁及び戊が『池善』を含む名称を社名、商号、店名等に使用することは認め、異議を述べない。」との規定が設けられているが、この条項の本文の規定は、訴外会社はA’が代表を務める会社であるとの認識が世間で広まっている状況下で、D’が「池善化粧品店」との名称を使用し、何らかのトラブルを起こすと、A’及び訴外会社の信用が毀損されることを考 慮して設けられた規定である。 一方、ただし書の規定で、D’に対し、「池善」を含む名称の使用を認めたのは、「池善」との名称は、池田屋善兵衛を先祖に持つ親族が皆自由に使っている屋号であり、親族が形成する会社の中に、有限会社池善ウィングビル、株式会社リバティ池善、株式会社池善、池善電気のように「池善」 の文字を含む会社が現在も多数存在することを考慮したものである。 被告は、同合意書14項ただし書きが設けられた理由に関し、「D’が『池善』の名称による化粧品販売事業の継続を強く希望したためであり、A’自らが、D’に対 も多数存在することを考慮したものである。 被告は、同合意書14項ただし書きが設けられた理由に関し、「D’が『池善』の名称による化粧品販売事業の継続を強く希望したためであり、A’自らが、D’に対して、『池善』を含む名称を社名等に使用して化粧品販売事業を行うこと、すなわち、事実上、A’が池善化粧品店の事業をD’に 承継したことを示すものである。」との主張をしているが、A’はこの合意書が締結された時点において、被告店舗の開店の事実を知らされてはいなかったものであり、また、被告はもちろんのこと、その父D’をも事業の継承者と認めていなかったため、被告の主張は事実に反する。 また、仮に、A’がD’に対し、「池善」を含む名称を社名等に使用して 化粧品販売事業を行うことを認めていたとしても、そのことを理由に「事 実上、A’が池善化粧品店の事業をD’に承継したことを示す」などといえないことは明らかである。 上記のとおり、同合意書14項本文では「池善化粧品店」との名称の使用が明確に禁止されていることからすると、A’が池善化粧品店の事業をD’に承継することを明確に拒否していたことが分かる。 また、同合意書14項の規定は、「池善」との名称の使用は認めるが、「池善化粧品店」との名称は禁止するというものであり、この規定の趣旨からすると、各使用商標のように、訴外会社が使用してきた各引用商標に酷似する商標を使用し、訴外会社の業務との混同を生じさせる行為は禁止されていたと解するほかない。 ウ被告の主張⑸に対し原告店舗が少なくとも京都市内の需要者の間で高い認知度を有していたことは明らかであり、その点に疑いの余地はない。被告は、被告店舗が原告店舗の後継店であると主張し、そのことをウェブサイト等でも積極的に告知しているが、 も京都市内の需要者の間で高い認知度を有していたことは明らかであり、その点に疑いの余地はない。被告は、被告店舗が原告店舗の後継店であると主張し、そのことをウェブサイト等でも積極的に告知しているが、被告がこのような告知をしているのは、被告自身も各引 用商標に一定の認知度があると認識しているからにほかならない。 また、商標法51条の取消しの要件である「他人の業務に係る商品若しくは役務」との「混同」は、本件商標の設定登録後の期間内に生じていれば足り、現時点まで混同が継続していることは必須の要件にはならないものであるから、訴外会社が解散してから、約4年が経過した現時点におけ る出所の混同のおそれがあることは、そもそも必要ない。本件商標が設定登録された令和4年1月14日の時点においては、各引用商標の周知性が残存していたといえ、各引用商標の「認知度はさらに加速的に低下していることから、現在において何ら周知性を有していない」との主張は何らの意味もなさない。 なお、訴外会社が経営した原告店舗は、戦前は、当時の京都市民の足で あった市電の駅の目の前にあり、戦後昭和38年には、阪急電車が延伸し、京都河原町駅(四条河原町)のターミナル駅の真上に位置していたところ、背後の高島屋京都店が増床を重ね繁栄をしていく中で、四条河原町は、京都一の繁華街となっていった。この立地を最大限に生かし、訴外会社は90年以上にわたり実績、知名度を高め、高い信用を得て繁栄してきており、 原告店舗の閉店時やそれに近接する時期において、京都市内において大きな信用、認知度を得ていたことは紛れもない事実である。また、このような事実があったからこそ、被告の父D’は原告店舗の継続を強く望み、それが受け入れられないと分かると、A’や訴外会社に無断で、被告店舗 な信用、認知度を得ていたことは紛れもない事実である。また、このような事実があったからこそ、被告の父D’は原告店舗の継続を強く望み、それが受け入れられないと分かると、A’や訴外会社に無断で、被告店舗を開店し、原告店舗の認知度及び信用を無断で利用しようとしたのであり、 このような被告らの行為からも各引用商標が十分な認知度を有していたことが分かる。 〔被告の主張〕⑴ 本件審決は、各引用商標に周知性がないことを理由として、出所の混同のおそれがない、「故意」を認めることはできない、として原告の請求を不成立 としたところ、この点に誤りはない。 もっとも、周知性に言及するまでもなく、①訴外会社は約4年前に解散しており、出所の混同が起こり得る対象がそもそも存在していないし、また、②被告店舗は原告店舗の実質的な後継店であるから、被告による本件商標の使用により、出所の混同のおそれが生ずることはない。 ⑵ 訴外会社の来歴は以下のとおりである。 訴外会社は、昭和6年10月15日に、後に同社の設立者となるC’が、四条河原町角に小さな化粧品店を開店したことに端を発する。C’とその妻・F’は、長年の間子供に恵まれなかったため、昭和24年12月28日に、甥であるA’と養子縁組を結ぶこととする。程なくして、昭和27年5月8 日、C’とF’との間に、待望の男児が誕生する。これが被告の父であり、 後に訴外会社の専務取締役となるD’である。 昭和30年、C’の養子となったA’は上記化粧品店(池善化粧品店)に入店する。昭和52年11月21日、C’は、同店を法人化し、化粧品販売等を主たる業務とする法人である訴外会社を設立し、その代表取締役となる。 法人化後もC’は、四条河原町角にて、従来と同様に「池善化粧品店」との 名称の店舗 1日、C’は、同店を法人化し、化粧品販売等を主たる業務とする法人である訴外会社を設立し、その代表取締役となる。 法人化後もC’は、四条河原町角にて、従来と同様に「池善化粧品店」との 名称の店舗(原告店舗)で、化粧品販売の事業を継続する。 昭和58年8月25日、代表取締役であるC’が死去する。この際どのような話し合いがあったのかは不明であるが、A’が代表取締役に就任することとなる。 A’が代表取締役となって37年後の令和2年12月24日、訴外会社の 解散を決議事項とする株主総会が開かれる。取締役の一人であったD’は、訴外会社の解散を望んではおらず、父・C’の想いを引き継ぎ、後継ぎとして事業を継続することを最後まで主張した。しかしながら株主総会では、株式の過半数を保有しており議決権において大きなウェイトを占めるA’・B’夫妻の意向が反映され、訴外会社の解散が決議される。そして、同年12月 31日に原告店舗が閉店となり、90年続いた化粧品販売店はその幕を下ろすこととなる。 訴外会社の表向きの解散理由は「社長の高齢化」等とされている(甲21)。 しかしながら、訴外会社の真の解散理由は「社長の高齢化」等ではなく、従来から不動産業に熱心であったA’が、原告店舗が存在した繁華街・四条河 原町という優れた立地を利用して、A’とその近親者のみが富を得られるようにするためであると推測される。原告店舗が入居していたビル(池善ビル)が立地する四条河原町は、国内有数の繁華街であり土地代も非常に高く、小さな店舗で化粧品販売を細々と続けるよりも、店舗を貸し出して賃貸収入を得る方が、遥かに実入りがいいのである。そしてこれは、訴外会社の代表取 締役であるA’が、化粧品販売事業に対して撤退の意思を示したことを意味 する。なお、こ 舗を貸し出して賃貸収入を得る方が、遥かに実入りがいいのである。そしてこれは、訴外会社の代表取 締役であるA’が、化粧品販売事業に対して撤退の意思を示したことを意味 する。なお、このように化粧品販売事業から撤退しており、直接的な利害がないにも関わらず、A’が本件審判請求をした理由は不明である。 訴外会社の解散に当たり、訴外会社及びその代表取締役であるA’と、被告の父・D’との間で、合意書(甲43)により、新規事業を行う際における「池善化粧品店」を含む名称及び「池善」を含む名称の取扱いについての 合意が形成されている。具体的に同合意書の14項では、D’は、訴外会社及びA’に対して、今後新たに事業等を行う場合、本合意書締結日から10年間は、「池善化粧品店」を含む名称を社名、商号、店名等に使用しないことを約束する一方で、訴外会社及びA’は、D’が「池善」を含む名称を社名、商号、店名等に使用することは認め、異議等を述べないとされている。これ は、D’が「池善」の名称による化粧品販売事業の継続を強く希望したためであり、A’自らが、D’に対して、「池善」を含む名称を社名等に使用して化粧品販売事業を行うこと、すなわち、事実上、A’が訴外会社の事業をD’に承継したことを示すものである。 訴外会社の事業を実質的に承継したD’は、父・C’が始めて約90年続 いた事業を終わらせることなく継続させていくために、原告店舗の後継店を開店することを考える。しかしながら、この時点においてD’は70歳手前と高齢であり、事業の末永い継続を考慮して、訴外会社の事業承継者としての地位を、実子である被告に譲ることとする。そして、訴外会社の事業承継者としての地位を父・D’から承継した被告が、令和3年3月18日に、「池 善」の名称を含む化 て、訴外会社の事業承継者としての地位を、実子である被告に譲ることとする。そして、訴外会社の事業承継者としての地位を父・D’から承継した被告が、令和3年3月18日に、「池 善」の名称を含む化粧品販売店(被告店舗)を開店する。D’もスタッフとして被告店舗で勤務している。 ⑶ 訴外会社は解散しており、出所の混同が起こり得る対象が存在しない。 上記のように、約4年前の令和2年12月24日に訴外会社は解散が決議されており、同月31日に原告店舗は既に閉店している。原告は、訴外会社 は現在でも多数の化粧品を販売しているとするが、これは清算手続における 在庫の換価にすぎず、「他人の業務」といえない。 しかも、4年も換価を試みて売れていない在庫であれば、廃棄処分として清算手続を結了するのが通常である。単に、本件において「販売を継続している」というために清算手続の結了を先延ばしにしているという他なく、到底「業務」と評価することはできない。そして原告店舗がかつて存在してい た四条河原町角の建物(池善ビル)には、A’とその近親者の思惑により古びた看板こそ未だ残されているものの、令和6年10月9日現在、化粧品販売とは全く異なる業種の店舗(コンタクト販売店、スイーツ販売店、喫茶店)が入居している(乙1)。 このように、各引用商標の使用者であった訴外会社は約4年前に解散され ており、原告店舗も解散決議後すぐに閉鎖されているのだから、出所の混同が起こり得る対象、すなわち訴外会社がそもそも存在しておらず、被告の行為により出所混同が生ずることがあり得ないことは明らかである。 ⑷ 被告店舗が、原告店舗の実質的な後継店であること被告は、訴外会社の創業者であるC’の直系の孫、すなわちC’の実子で あるD’の子であり、訴外会社の事 とがあり得ないことは明らかである。 ⑷ 被告店舗が、原告店舗の実質的な後継店であること被告は、訴外会社の創業者であるC’の直系の孫、すなわちC’の実子で あるD’の子であり、訴外会社の事業承継者としての地位を、D’から正当に引き継いだ者である。このことから、被告は、訴外会社の事業の正当な承継者としての地位を有するものであり、訴外会社との関係において実質的に他人ではないことは明らかである。そして、訴外会社の事業を引き継いだ被告が経営する被告店舗が、かつて訴外会社が経営していた原告店舗の実質的 な後継店であることもまた明らかである。 したがって、この点からも、被告の行為により出所混同が生ずることなどあり得ないことがわかる。 ⑸ 取消事由1(出所の混同のおそれに関する認定の誤り)に対する反論原告は、各引用商標と各使用商標が類似すること及び各引用商標が周知で あることを根拠に、被告が各使用商標を使用することで訴外会社の業務との 間で出所の混同が生ずるおそれがあることは明らかであると主張する。 しかし、訴外会社は約4年前に解散決議されており、訴外会社による化粧品販売の業務は行なわれていないのだから、被告の行為により出所の混同が起こり得る対象がそもそも存在していない。さらに、被告は訴外会社との関係において実質的に他人ではなく、被告店舗は原告店舗の実質的な後継店で ある。そのため、被告の如何なる行為によっても、他人の業務にかかる役務と混同を生ずることもそもそも起こり得ない。個々の点についての反論は以下のとおりである。 ア各使用商標と各引用商標の類似性に係る原告主張について不正使用の判断における各使用商標と各引用商標の類似性に関する議論 は、本件における各使用商標が、各本件商標と類似であることを前 。 ア各使用商標と各引用商標の類似性に係る原告主張について不正使用の判断における各使用商標と各引用商標の類似性に関する議論 は、本件における各使用商標が、各本件商標と類似であることを前提として成り立つものである。しかし、使用商標1は、本件商標と同一であり、使用商標2は本件商標と非類似である。すなわち、使用商標1、2は、本件商標と類似しない。 本件審決は、各使用商標は本件商標と類似すると判断しているが、この 判断は誤りである。 被告店舗において被告が使用する使用商標1「cosmetics池善」のうち、「cosmetics」は、被告の提供役務(化粧品の小売等)において自他商品識別力がなく、商標を構成しない。すなわち、使用商標1は、需要者からすれば「池善」なる商標と認識されるものであるから、本 件商標と同一の商標である。 また、被告店舗において被告が使用する使用商標2は、本件商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても異なり、明らかに非類似である。 このように、被告が使用する各使用商標は、そもそも本件商標に類似するものではなく、このような前提を無視して各使用商標と各引用商標の類 似性の程度を議論する原告の主張は意味をなさない。 加えて、各使用商標と各引用商標(他人の商標)との類似性判断に先んじて、少なくとも各引用商標が使用されていることが必要となる。 しかるに、原告店舗の閉店日以降、現在に至るまで、各引用商標は全く使用されていないし、各引用商標の使用主体であった訴外会社は解散しているのだから、各引用商標がこれから使用されることもない。 したがって、使用されていない各引用商標に対する、各使用商標の類似性云々を主張する原告の意図が判然としない。 イ引用商標の周知性に係る原告の主張につ 用商標がこれから使用されることもない。 したがって、使用されていない各引用商標に対する、各使用商標の類似性云々を主張する原告の意図が判然としない。 イ引用商標の周知性に係る原告の主張について訴外会社は約4年前に解散決議され、原告店舗もまた約4年前に閉店しており、閉店してから現在に至るまで、各引用商標は実質的に全く使用さ れていない。原告が提出する広告物の資料(甲7、12ないし17)はいずれも昔のものばかりであり、刊行物の資料(甲6、18ないし20)とメディアの報道(甲21ないし23)はいずれも京都市内のローカルなものばかりである。そのため、各引用商標は、原告店舗を開店していた間、京都市内の限られた地域ですら認知度が高かったのか非常に疑わしく、閉 店から約4年が経過した現在においては、その認知度はさらに加速的に低下していることから、現在において何ら周知性を有していないことは明らかである。 原告は、「被告店舗の近隣に住む女性又は被告店舗の近隣で仕事をしている女性」という極めて限定された狭い範囲の需要者間において十分な認知 度を有していたことをもって、各引用商標の周知著名性の程度を主張しているようである。 しかし、商標法51条1項は、商標権者による商標の不当な使用によって、第三者の権利が害されたり、「一般公衆の利益」が害されるような事態を防ぐことを立法趣旨とするものである。このような立法趣旨からも明ら かなように、引用商標の周知著名性は、一般公衆、すなわち我が国全体に おける需要者の間に広く認識されているかにより判断されるべきものであり、「被告店舗の近隣に住む女性又は被告店舗の近隣で仕事をしている女性」などという極めて限定された狭い範囲の需要者間における認知度をもってその周知著名性は判 されているかにより判断されるべきものであり、「被告店舗の近隣に住む女性又は被告店舗の近隣で仕事をしている女性」などという極めて限定された狭い範囲の需要者間における認知度をもってその周知著名性は判断されない。 ウ役務の関連性、需要者の共通性、その他の取引の実情について (ア) 原告は、被告は被告店舗を原告店舗の後継店と称しており、その旨を顧客に吹聴しており、これによって、被告店舗を訪れる需要者の間で、被告店舗を原告店舗の移籍先の店舗であると誤認する事例が多数発生しているとして、被告が自ら混同を誘引しているとの主張をするが、訴外会社の事業を引き継いだ被告が経営する被告店舗は、かつて訴外会社が 経営していた原告店舗の実質的な後継店である。そのため、被告が被告店舗を原告店舗の「後継店」と称することは当たり前のことであり、第三者が被告店舗を原告店舗の移籍先の店舗であると認識することは、誤認ではなくむしろ正しい認識である。 (イ) 原告は、ウェブサイトの書き込み(甲29の1)や、SNS(Twi tter、X)上の書き込み(甲29の2、63の1ないし5)を挙げ、「被告店舗が原告店舗の後継店であるとの誤認が生ずる事例が多発している」と主張する。しかし、被告店舗は原告店舗の実質的な後継店であり、そのため、原告が挙げた、ウェブサイトや上記SNSにおける「被告店舗が原告店舗の後継店である」といった旨の書き込みは、誤認では なく正しい認識である。 仮に原告が主張するように、「被告店舗が原告店舗の後継店である」といった認識が誤認であったとしても、ウェブサイト上における僅か1件の書き込みと、上記SNS上における僅か6件(6人のユーザ)の書き込みをもって、「混同事例が多数発生している」とはいえない。令和6年 4月時点で あったとしても、ウェブサイト上における僅か1件の書き込みと、上記SNS上における僅か6件(6人のユーザ)の書き込みをもって、「混同事例が多数発生している」とはいえない。令和6年 4月時点での日本におけるTwitter又はXのユーザ数は約690 0万人であり、上記書き込みを行なったユーザ数の割合は、0.00001%にも満たない。原告の主張には根拠がなく、失当である。 ⑹ 原告は、原告店舗の閉店は令和2年12月31日であるから、本件商標の設定登録がなされた令和4年1月14日時点において各引用商標の周知性が十分に残存し、被告が各使用商標を使用することで池善化粧品店の業務に係 る役務との間に出所の混同を生じるおそれがあったと主張する。 原告店舗の閉店について地元の京都新聞(令和2年10月27日)や京都テレビのニュースで報道され(甲21、22)、閉店を告知するはがきが原告店舗の利用客にもれなく送付され(甲38)、閉店のお知らせ広告が京都新聞に掲載(令和2年11月8日)された(甲39)。原告店舗が閉店することは、 これらの報道、はがき、広告によって、需要者に十分に知れ渡ったといえる。 また原告は、被告店舗近隣に居住又は勤務する女性である需要者の範囲で出所混同を生じれば足りると主張しているところ、そのような需要者が被告店舗から遠くない原告店舗に足を運べば、原告店舗が実際に閉店していることを目撃することになる。それまでの営業によって各引用商標が需要者に一定 程度知られるようになっていたとしても、それと同様に、原告店舗が閉店して訴外会社が各引用商標を一切使用しなくなったこともまた、需要者の間に知られることとなったのである。 したがって、各引用商標に周知性があるかどうか、また、仮にあったとして、それが原告店舗の閉店後も て訴外会社が各引用商標を一切使用しなくなったこともまた、需要者の間に知られることとなったのである。 したがって、各引用商標に周知性があるかどうか、また、仮にあったとして、それが原告店舗の閉店後も残存したかどうかにかかわらず、被告による 各使用商標の使用によって、訴外会社の業務に係る役務との間に出所の混同を生じて公益を害することの前提が、そもそも失われている。仮に各使用商標から各引用商標を想起した需要者がいたとしても、その認識としては、せいぜい、原告店舗に何らかの関係のあった者が、何らかの約束の下に、後継となる店舗を始めたのであろうというところにとどまる。そして、実にその とおりのことが行われたのであって、ここに何ら公衆の利益を害するところ はなく、商標権者である被告に登録取消しの制裁を与える理由はない。 2 取消事由2(故意に関する認定の誤り)〔原告の主張〕本件審決は、被告の故意の認定に関し、引用商標に周知性はないことを理由に「被請求人は、引用商標の存在を知り得ているとはいえるとしても、被請求 人に原告店舗の業務を妨害する意図があったとは言い難く、故意に、原告店舗ないし訴外会社との関係において、出所の混同を生じさせたとはいえない。」との認定をした。 しかし、商標法51条の「故意」の認定にあたって、原告店舗の業務を妨害する意図があったか否かを考慮する必要はなく、本件審決の認定は「故意」の 要件の解釈を誤った認定である。 商標法51条1項の「故意」の要件に関しては、最高裁昭和55年(行ツ)第139号同56年2月24日判決が「商標法五一条一項の規定に基づき商標登録を取り消すには、商標権者が指定商品について登録商標に類似する商標を使用し又は指定商品に類似する商品について登録商標若しくはこれに類似す 6年2月24日判決が「商標法五一条一項の規定に基づき商標登録を取り消すには、商標権者が指定商品について登録商標に類似する商標を使用し又は指定商品に類似する商品について登録商標若しくはこれに類似す る商標を使用するにあたり、右使用の結果商品の品質の誤認又は他人の業務に係る商品と混同を生じさせることを認識していたことをもつて足り、所論のように必ずしも他人の登録商標又は周知商標に近似させたいとの意図をもつてこれを使用していたことまでを必要としないと解するのが相当である」と判示しており、出所の混同のおそれの認識さえあれば、「故意」の要件は満たすとさ れている。 この点、本件では、被告は、各引用商標の存在を認識した上で、あえてこれと酷似する各使用商標を被告店舗の商標として採択し、使用しただけでなく、自ら、被告店舗を原告店舗の移転先の後継店であると称し、意図的に誤認混同が生ずるような営業活動をしているものである。 そのため、被告に、訴外会社の業務との間での出所の混同を生じさせる「故 意」があることは明らかである。 〔被告の主張〕訴外会社は約4年前に解散しており、さらに、被告は訴外会社との関係において実質的に他人ではなく、被告店舗は原告店舗の実質的な後継店である。 そのため、被告の行為により「他人の業務」にかかる役務と混同を生ずるこ となどそもそも起こるはずもなく、当然ながら被告は、他人の業務に係る役務と混同を生じさせることを認識すらしなかった。これらの事実に鑑みれば、被告の行為に「故意」がなかったことは明らかである。 第4 当裁判所の判断 1 原告は、取消事由1として、本件審決の出所の混同のおそれに関する認定の 誤りを、取消事由2として同じく故意に関する認定の誤りをそれぞれ主張するところ、これら る。 第4 当裁判所の判断 1 原告は、取消事由1として、本件審決の出所の混同のおそれに関する認定の 誤りを、取消事由2として同じく故意に関する認定の誤りをそれぞれ主張するところ、これらは、いずれも商標法51条1項に定める不使用取消しの要件の充足性に関する本件審決の認定及び判断の誤りをいうものであるから、以下、本件に関連する基本的事実を認定した上で、商標法51条1項の要件の充足性の有無について検討する。 2 本件に関連する基本的事実⑴ 訴外会社と原告店舗、各引用商標の使用の事実等ア池善化粧品店は、昭和6年頃に、京都市の中心部である四条河原町の交差点に面して化粧品の小売りをする店舗を開き、その後これを法人化することとして、訴外会社が昭和52年11月21日に設立された。訴外会社 は、原告店舗である池善化粧品店を営み、化粧品販売、装飾品及び洋品雑貨の販売、タバコ小売業並びにこれらに附帯する一切の業務を目的とする株式会社であり(甲3)、資生堂等の商品の小売販売を行っていた。 イ訴外会社の設立当時はC’が同社の代表取締役であったが、昭和58年8月25日にC’が死亡し、同月31日の臨時株主総会において、A’が 代表取締役社長に就任し、以後、A’が代表取締役を務めていた(甲32、 33)。 ウ訴外会社の株式保有割合は、平成17年以後においては、A’とB’が合わせて60%(12000株)、D’が40%(8000株)であり、A’とB’が過半数の株式を保有していた。 D’は、訴外会社の取締役であり、E’は監査役であった。 エ原告店舗の看板等においては、引用商標1に係る池善化粧品店の文字及びデザイン化された「ikeZen」の文字(引用商標3)が付されていた(甲9)。 また、京都市内で発行さ 査役であった。 エ原告店舗の看板等においては、引用商標1に係る池善化粧品店の文字及びデザイン化された「ikeZen」の文字(引用商標3)が付されていた(甲9)。 また、京都市内で発行される情報誌や、京都市の劇場が発行する公演の冊子、化粧品会社の発行する冊子、近隣の商店街のウェブサイト等におい て、昭和8年頃から、池善化粧品店の広告が掲載され、それらの広告には、「池善化粧品店」を縦書きにしたものを含む引用商標1、及び引用商標2が使用されていた(甲7の1~3、甲12の1~27、甲13の1・2、甲15の1~31、甲16の1~3、甲17の1~4)。商品の包装紙には、引用商標2が付されていた(甲8)。 ⑵ 訴外会社の解散と原告店舗の閉店の経緯等ア A’は、令和元年8月26日付けで、訴外会社につき、A’、D’及びE’との間の会社関係に関する会社関係紛争調整の調停を伏見簡易裁判所に申し立てた。その申立書において、A’は、同人も高齢になり、これまでのように働き続けることは難しい状態になっており、A’の娘たちも訴外会 社の経営を承継する意思はなく既に別の仕事に就いている、A’が専門家等に相談したところ、A’が所有する原告店舗に係る土地建物を第三者に賃貸すれば、訴外会社からの賃料と訴外会社からの役員報酬等を併せた金額よりもはるかに高い収入を得られる可能性が高いと言われた、A’は不動産業等で抱えた負債の返済に窮している状況にあり、収入状況を改善す る必要性に迫られている、そのためA’は近いうちに原告店舗を閉店し、 訴外会社も解散させたいと考えている、などとし、訴外会社におけるD’の取締役・従業員及びE’の監査役・従業員としての各地位の解消等について協議したいとした(甲37)。 同調停において、6回の調 訴外会社も解散させたいと考えている、などとし、訴外会社におけるD’の取締役・従業員及びE’の監査役・従業員としての各地位の解消等について協議したいとした(甲37)。 同調停において、6回の調停期日が開かれたが、令和2年9月14日、同調停は不成立で終了した(甲47、10頁)。 イ上記調停の不成立を受け、A’は、訴外会社を解散する旨決断し、令和2年9月24日に訴外会社の取締役会を開催し、原告店舗の閉店を決議した(甲47、11頁)。D’は、原告店舗の閉店及び後記訴外会社の解散に一貫して反対し、実父であるC’の意志を受け継ぎ事業を継続したいとしていた(甲46、6頁)。 ウ令和2年10月20日の夜に、A’は、原告店舗のシャッターに閉店のお知らせを掲示し(甲47、11頁)、同日には、原告店舗の地元の京都テレビのニュースにおいて、原告店舗の映像と共に「創業90年の化粧品店が閉店へ」などと報道された(甲22、弁論の全趣旨)。 また、令和2年10月27日には、京都新聞のウェブサイトにおいて、 「『池善化粧品店』が12月末で閉店する。京都の『一等地』で街の発展を見守り、京都の多くの人に親しまれた店舗だが、社長の高齢化などで90年の歴史に幕を閉じる。」、「後のスペースはテナントとして活用し、今後、外観の改修なども検討するという。」などと報道された(甲21)。 同日のYahoo ニュースにおいても、「京都市下京区四条通河原町にある 京都高島屋に隣接するビルで営業する『池善化粧品店』が12月末で閉店する。京都の『一等地』で街の発展を見守り、京都の多くの人に親しまれた店舗だが、社長の高齢化などで90年の歴史に幕を閉じる。」などと報道された(甲23)。 エ原告店舗のホームページ(URL:http://ikezen.c 展を見守り、京都の多くの人に親しまれた店舗だが、社長の高齢化などで90年の歴史に幕を閉じる。」などと報道された(甲23)。 エ原告店舗のホームページ(URL:http://ikezen.cosmestore.jp/)が、令和 2年11月1日の時点で作成され、「京都・四条河原町池善(いけぜん) 化粧品店」として、白黒の引用商標2が表示され、原告店舗の電話番号が表示されていた(甲67、弁論の全趣旨〔原告の令和6年11月28日付け原告第4準備書面4頁〕)。 オ原告店舗の閉店を知らせる広告が、令和2年11月8日の京都新聞に掲載された(甲39)。 また、原告店舗の顧客に対しては、原告店舗は令和2年12月31日をもって閉店するのでポイントは11月から随時交換する旨などを告知するはがきが送付された(甲38)。 カ被告は、令和2年12月18日、本件商標の出願をした。 キ訴外会社は、令和2年12月24日の株主総会決議により解散し、A’ が代表清算人となった(甲3)。 原告店舗は、令和2年12月31日をもって閉店した。 ク A’は、訴外会社の清算の状況について、「閉店に当たり、多くの在庫があったため、私は正月明けから閉店後の処理に妻と共に大忙しでした。というのも、仕入れを控えるようにと、特に閉店を取締役会で決めた後から は再三D’に依頼していたにもかかわらず、通常と同様に仕入れをしていたからでした。また、今までの在庫も山のようにありました。購入価格で返品ができた品物はわずかで、殆どは仕入れ価格よりも低い利率での返品でした。また、返品できない商品も多くあり、多く商品が残りました。」、「在庫の商品は現在Yahoo ショッピングで販売しています。インターネッ トでの販売は初めてですが、少しずつ注文 での返品でした。また、返品できない商品も多くあり、多く商品が残りました。」、「在庫の商品は現在Yahoo ショッピングで販売しています。インターネッ トでの販売は初めてですが、少しずつ注文が入っています。時にはダイレクトでお客様からリピートの電話も入ります。」、「2021年1月7日に資生堂から、『D’が化粧品店を始めるので、資生堂と池善との契約は他の化粧品店に比べ優位性のある契約だったのだが、その契約を継続したいと言われているがどうしますか』と話し合いを持ってこられましたが、私は 池善と資生堂との契約は解除したい旨を伝えました。そのため、資生堂社 内では別の店舗として認識されています。」としている(甲30〔特許庁審判長宛て令和5年8月4日付けA’作成の陳述書〕)。 ケ令和3年1月13日に、訴外会社、A’、B’、D’及びE’は、これら「五者の間に存在する一切の問題について、以下の通り合意する」との内容の合意書を締結した(甲43〔本件審判請求事件における乙2〕。なお、 甲43には上記当事者全員に係る署名押印があるが、「令和3年月日」と日付けが空白となっている。原告は、同合意書につき、令和3年1月13日に締結されたとする〔甲47(本件審判請求事件の令和5年8月7日付け弁駁書11頁)、令和6年10月25日付け原告第3準備書面10頁〕。)。 同合意書において、当事者らは、訴外会社が適正・適法に解散され、D’及びE’は訴外会社の取締役、監査役の地位を有せず従業員としても退職したことなどが合意された(1ないし4項)。その余の主な合意の内容は、以下のとおりである。 ・3項なお書「なお、甲(判決注:訴外会社)、乙(判決注:A’)、丙(判 決注:B’)、丁(判決注:D’)及び戊(判決注:E’)は、清算 項)。その余の主な合意の内容は、以下のとおりである。 ・3項なお書「なお、甲(判決注:訴外会社)、乙(判決注:A’)、丙(判 決注:B’)、丁(判決注:D’)及び戊(判決注:E’)は、清算が完了するまでの間の甲における監査役としてXを選任することを合意する。」・7項「甲、乙、丙及び丁は、甲の会社清算時の残余財産について100万円とみなすこととし、それに基づいて丁は残余財産分配金相当額として39万円を取得するものとする。丁は、残余財産分配金相当額として 39万円全額の支払いを受けたときは、甲の会社清算時に残余財産の分配を請求する権利を放棄する。」・14項「丁及び戊は、甲、乙及び丙に対し、今後新たに事業等を行う場合、本合意書締結日から10年間は、『池善化粧品店』を含む名称を社名、商号、店名等に使用しないことを約束する。ただし、甲、乙及び丙は、 丁及び戊が『池善』を含む名称を社名、商号、店名等に使用することは 認め、異議等を述べない。」コ令和3年1月13日、上記合意(3項なお書)に基づき、原告が訴外会社(清算会社)の監査役に就任し、同月25日にその旨登記がされた(甲3)。 ⑶ 被告店舗の開店と各使用商標の使用の事実等 ア被告は、令和3年3月18日、原告店舗の近隣の京都市寺町四条に被告店舗を開店して資生堂等の商品を取り扱う化粧品の小売り等の業務を営み、被告店舗の看板等において各使用商標を付して表示し、各使用商標を使用した(甲5の1ないし3、甲55、56。なお、本件商標の商標権者である被告の被告店舗における具体的な係わりは不明ではあるものの、被告は D’らの実質的な後継者であると被告も主張しているところであり、上記事実関係について当事者間に特段争いがない。)。 D’及びE’は、スタ 舗における具体的な係わりは不明ではあるものの、被告は D’らの実質的な後継者であると被告も主張しているところであり、上記事実関係について当事者間に特段争いがない。)。 D’及びE’は、スタッフとして稼働し、被告店舗を実質的に営んでいる(甲5の2、弁論の全趣旨)。 被告店舗では、資生堂、コーセー等の化粧品の小売り販売をしている(甲 5の1ないし3)。 イ被告店舗は、上記⑵エのURLを引き継いで使用している(甲67、弁論の全趣旨〔原告の令和6年11月28日付け原告第4準備書面4頁〕)。 ⑷ 被告店舗の開店後の原告店舗や訴外会社の清算の経緯等ア令和3年(2021年)11月3日には、「池善化粧品の店舗が閉店し、 去就が注目されていましたが、超がつく一等地なだけあって、半年余りで3つあるテナント区画全てが埋まりました。」として、旧池善化粧品店(原告店舗)は「メガネスーパーコンタクト」に、その他のテナントもチケットショップ等となった旨がインターネット上に投稿されている(甲26の5)。 原告店舗のあった建物には、池善化粧品の看板の文字のみが残されてい る(甲26の5)。 イ訴外会社のヤフーショッピングの会社概要等(甲27)では、ストア紹介として「昭和初期に京都・四条河原町で創業した池善化粧品店です」と、代表者としてA’の、運営責任者として原告の氏名が、住所は訴外会社のかつての本店所在地である京都市伏見区深草西出町44番地がそれぞれ掲 載され、引用商標2のデザイン化された「ikeZen」の文字(「i」の上の丸はチューリップ形の赤色)が表示されている。 ウ A’は、本件審判請求に係る手続で提出された令和5年8月7日付け弁駁書において、訴外会社につき、原告店舗の閉店前に保有していた在庫が多数残 の上の丸はチューリップ形の赤色)が表示されている。 ウ A’は、本件審判請求に係る手続で提出された令和5年8月7日付け弁駁書において、訴外会社につき、原告店舗の閉店前に保有していた在庫が多数残っている状況にあり、ヤフーショッピングのサイト上で「池善化粧 品店」との名称で在庫品の販売を継続しているとし、それら販売に係る化粧品は、製造から最長10年の使用期間がある商品だけであり、メーカーに確認を取って販売を行っているとする(甲47、12頁)。 ⑸ 本件商標登録と本件審判請求に至る経緯等ア原告は、令和2年7月3日に不動産賃貸業、不動産管理業等を目的とす る株式会社池善を設立した(甲42)。 イ原告は、令和3年10月1日、引用商標3の文字部分(「i」の上の丸はチューリップ形の赤色)に係る商標の出願(商標出願2021-128279。指定役務は「化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」等を含むその他第35類の役 務及び「建物の管理、建物の貸借の代理又は媒介、建物の貸与、建物の売買、建物の売買の代理又は媒介、建物又は土地の鑑定評価」、「建物又は土地の情報の提供、土地の管理、土地の貸借の代理又は媒介、土地の貸与、土地の売買、土地の売買の代理又は媒介」等を含むその他第36類の役務)をした(甲41の1)。 ウ本件商標につき、令和4年1月5日に登録査定がされ、同月14日に設 定登録がされた。 エ訴外会社及びA’は、令和4年3月11日、原告が代表取締役を務める「京都市左京区鹿ヶ谷上宮の前町58-1 株式会社池善」との間で、訴外会社の解散・清算に当たり、A’及び訴外会社が営んできた事業を原告が代表者を務める上記「株式会社池善」に対して承継させるものとし、A’ 都市左京区鹿ヶ谷上宮の前町58-1 株式会社池善」との間で、訴外会社の解散・清算に当たり、A’及び訴外会社が営んできた事業を原告が代表者を務める上記「株式会社池善」に対して承継させるものとし、A’ 及び訴外会社が使用又は所有してきた「池善化粧品店」の商標、店舗名称、店舗ロゴ、関係資料、事業ノウハウ等の使用権等を原告が代表者を務める上記「株式会社池善」に譲渡するものとする、なお、A’及び訴外会社は、上記「株式会社池善」以外の第三者に対しては、それら「池善化粧品店」の商標、店舗名称、店舗ロゴ、関係資料、事業ノウハウ等の使用を認めて おらず、今後も認めないことを確約する、との「覚書」を締結し、公証人の確定日付けを得た(甲40)。 オ原告は、上記イの出願につき、令和4年4月7日付けで、本件商標を引用商標の一つとし、商標法4条1項11号に該当することを理由とする拒絶理由通知を受けた(甲41の2)。 カ原告は、令和4年6月22日発行の雑誌「四条」(甲28)において、「私が設立した会社が池善ビル(判決注:原告店舗のあったビル)も管理していくことになりました。」、「令和2年(2020年)以降、新しいテナントが入居されましたが、その改装時に昔の作りがそのままになっている箇所が見えました。」、「池善ビルではいまなお小売店の営業が続けられており、 京都屈指の繁華街である四条河原町の交差点に面する商業ビルとして使っていただいてこそ、その価値が生きるものです。」としている。 キ原告は、令和4年8月23日、上記イの原告に係る商標出願につき、原告の関係者が拒絶の理由である本件商標の登録の取消しを求める審判請求の準備中である旨の意見書を提出した(甲41の1・3)。 A’は、令和4年9月15日、本件審判請求をした。 き、原告の関係者が拒絶の理由である本件商標の登録の取消しを求める審判請求の準備中である旨の意見書を提出した(甲41の1・3)。 A’は、令和4年9月15日、本件審判請求をした。 クなお、「池善」の名称は、原告及び被告ら池田屋善兵衛を先祖に持つ親族が自由に使っており、有限会社池善ウイングビル、株式会社リバティ池善、株式会社池善、池善電気等が存在している(甲47、12頁)。 3 「混同」の有無⑴ 商標法51条1項所定の「混同を生ずるもの」について 商標法51条1項の規定は、商標の不当な使用によって一般公衆の利益が害されるような事態を防止し、そのような場合に当該商標権者に制裁を課す趣旨のものであり、需要者一般を保護するという公益的性格を有するものである(最高裁昭和58年(行ツ)第31号昭和61年4月22日第三小法廷判決・裁判集民事147号587頁参照)。 このような商標法の趣旨に照らせば、同項にいう「商標の使用であって・・・他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるもの」に当たるためには、使用に係る商標の具体的表示態様が他人の業務に係る商品等との間で具体的に混同を生ずるおそれを有するものであることが必要である。 ところで、本件においては、商標法51条1項への該当性を判断するに当 たり、商標権者と、混同の対象となる役務を行う業務の主体である他人とが、無関係ではなく、商標権者である被告と、他人に該当する訴外会社との間に関連があり、訴外会社が原告店舗を運営しており、被告が被告店舗を運営しているところ、訴外会社の代表取締役として原告店舗を実質的に営んでいたA’と被告店舗を実質的に営んでいるD’は親族であって、いずれも訴外会 社の役員であったこと、原告店舗も被告店舗も一店舗を京都市内の近隣 、訴外会社の代表取締役として原告店舗を実質的に営んでいたA’と被告店舗を実質的に営んでいるD’は親族であって、いずれも訴外会 社の役員であったこと、原告店舗も被告店舗も一店舗を京都市内の近隣で構え、店舗の近隣に居住ないし稼働する者を主たる顧客とし、資生堂等化粧品メーカー商品の小売販売等を営んでいる点で共通すること、原告店舗は閉店し、訴外会社は清算中の会社であることなど、本件に特有の特殊な事情がある。そのため、商標法51条1項の商標権者と他人が無関係で、他人が通常 の業務活動を行っているような、同項の典型的な適用事例における判断枠組 みによることはできず、上記の事情も含めた上記2で認定した本件に係る事実に基づき、以下、検討する。 ⑵ 原告が商標法51条1項の他人の業務に係る役務を表示するものとして主張する、原告店舗において長く使用されてきた各引用商標は、訴外会社の役務であることを示すものであるとするところ、各引用商標を使用していた 原告店舗は既に令和2年12月31日に閉店しており、原告店舗の閉店については、店舗における告知のほか、顧客への通知が行われ、京都新聞及び京都テレビでもそれぞれ報道がされた。また、原告店舗の営業主体である訴外会社は、令和2年12月24日をもって解散しており、その後は、清算会社として存続している。 清算をする株式会社は、清算の目的の範囲内でのみ存続するものとされ(会社法476条)、その範囲で権利能力を有するものであり(最高裁昭和42年(オ)第460号同年12月15日第二小法廷判決・民集25巻7号962頁)、清算人は、すみやかに現務の結了をしなければならないものである(同法481条1項)。 上記2のとおり、A’は、原告店舗の閉店時において、在庫品として残っていたものに 25巻7号962頁)、清算人は、すみやかに現務の結了をしなければならないものである(同法481条1項)。 上記2のとおり、A’は、原告店舗の閉店時において、在庫品として残っていたものについては、返品可能なものは仕入れ時よりも低い価格であっても返品し、返品できない商品だけが残ったとしている。また、上記2⑵ケの令和3年1月13日締結の合意書の7項において、訴外会社、A’及びD’らは、訴外会社の清算時の残余財産について100万円とみなすことで合意 している。 A’は、返品残りの在庫品について、10年の使用期間があることを製造元に確かめた上で、それまで行っていなかったインターネットを通じた販売をすることとして、Yahoo のショッピングサイトに訴外会社の情報を掲載し、引用商標2のデザイン化された「ikeZen」の文字(「i」の上の丸はチ ューリップ形の赤色)を表示している。こうしたインターネットにおける在 庫品の販売のほかは、訴外会社の清算手続として行われていることがあることを示す証拠はない。 上記のとおり、訴外会社の残余財産の価値が100万円とみなされていることや、A’が返品できる在庫商品は返品した旨述べていることなどから、原告店舗閉店時における在庫品を含めた訴外会社の残存価値にそれほどのも のがあるとは認め難いところ、令和2年12月24日をもって解散した訴外会社が、本件口頭弁論終結期日において既に4年近くが経過したにもかかわらず、清算の結了に至らない理由は明らかではない。 ⑶ 上記2⑵クのとおり、A’は、令和3年1月7日には、資生堂から、D’が化粧品店を始めることを聞かされ、資生堂が、原告店舗とは異なる化粧品 の小売り販売に係る契約を、独自に被告店舗と締結することを知っていたものであるとこ 令和3年1月7日には、資生堂から、D’が化粧品店を始めることを聞かされ、資生堂が、原告店舗とは異なる化粧品 の小売り販売に係る契約を、独自に被告店舗と締結することを知っていたものであるところ、その後の同月13日に、A’は、D’らとの間で、上記2⑵ケの合意をしたものであり、同合意の14項にあるとおり、A’及び訴外会社は、D’及びE’が、「池善」を含む名称を店名に使用することを認める旨の合意をしている。 その後、被告店舗は、前記2⑶アのとおり、令和2年12月の原告店舗の閉店及び訴外会社の解散決議から約3か月後の令和3年3月に、「cosmetics 池善」の店名で資生堂等の化粧品等の小売り販売等を行うものとして開店した。開店当初から、被告店舗においては、各使用商標が使用されていた。 A’が、被告店舗ないし被告に対し、被告店舗の名称及び各使用商標の使用等につき何らか異議を述べたことを示す証拠は存在せず、そのような事実は認められないところ、A’は、上記2⑸キのとおり、原告申請の商標に係る拒絶理由通知を受けたことで、被告店舗の開店から1年半ほどが経過した令和4年9月15日に、本件審判請求をしたものである。 ⑷ 上記⑵、⑶によれば、訴外会社は令和2年12月の株主総会における解散 の決議以降、清算の範囲内でのみ権利能力を有するところ、実際に行われた清算に係る行為は、それまで行われていなかったインターネットを通じた残存在庫の販売であり、上記のとおりの原告店舗閉店時の在庫や返品状況、訴外会社の残余財産の価値等からすれば、それらの販売数が相当数にのぼるものとは認められず、ヤフーショッピングの会社情報等に掲載された引用商標 2のデザイン化された「ikeZen」の文字(「i」の上の丸はチューリップ形の赤色)の ば、それらの販売数が相当数にのぼるものとは認められず、ヤフーショッピングの会社情報等に掲載された引用商標 2のデザイン化された「ikeZen」の文字(「i」の上の丸はチューリップ形の赤色)の表示が清算会社である訴外会社を示すものとして認知されていたことを示す証拠もない。 上記2⑴エ、⑵ウの報道等の経緯によれば、各引用商標を使用する主体であった訴外会社は、原告店舗が京都の一等地において営業していた令和2年 12月末頃までは、その立地、店舗の特徴や歴史の故に、京都市内においてそれなりに知られていたが、全国的に知られていたものとまで認めるに足りる証拠はないところ、原告店舗の閉店は上記のとおり、訴外会社による告知及び京都新聞等により京都市内において知られるに至っている。 原告店舗が閉店した後に、上記ヤフーショッピングのインターネットを通 じた在庫品の販売に係る清算業務に関連して、各引用商標が訴外会社に係るものとして何らかの周知性を獲得しているものと認めるべき証拠もない。 D’はかつて訴外会社の取締役、E’は監査役であり、資生堂と正式に契約を締結し、それら化粧品の小売りを被告店舗においてするものであり、被告店舗における「cosmetics池善」という店名の使用等は、上記の とおり令和3年1月13日になされたA’らとの合意の内容に反するものでないばかりか、A’も被告店舗の開店を、資生堂からの問い合わせなどにより、その計画段階から知っていたにもかかわらず、上記2⑸オの拒絶理由通知を受けて同キのとおり本件審判請求をするまで、特段の異議を唱えることもなかったものである。これらのことからすると、解散後の訴外会社におい て、被告店舗の開店・営業及び被告店舗における各使用商標の使用が、訴外 会社の清算業務に影響を及 議を唱えることもなかったものである。これらのことからすると、解散後の訴外会社におい て、被告店舗の開店・営業及び被告店舗における各使用商標の使用が、訴外 会社の清算業務に影響を及ぼすものではなかったことが推認されるものといえる。 これらの事実によれば、本件商標の設定登録後、現時点に至るまで、上記3⑴に記載したような、商標の不当な使用により一般公衆の利益が害されるような事態が生じているものではなく、被告による各使用商標の使用が、訴 外会社の役務と混同を生ずる具体的なおそれを有するものとも認められないというべきである。 そうすると、その余の点について判断するまでもなく、被告による各使用商標の使用は、商標法51条1項の要件に当てはまるものではない。 4 原告の主張に対する判断 ⑴ 原告は、前記第3の1のとおり、本件審決には出所の混同のおそれに関する認定に誤りがあり、被告による各使用商標の使用は訴外会社の役務と混同を生じさせる旨を主張する。 しかし、原告の主張は、A’がD’による被告店舗の開店を知らなかったことを前提とするものであるところ、上記3⑶のとおり、A’は、D’が被 告店舗の開店を見越して資生堂と契約をすることを知りながら、特段の異議を述べていなかったものである。この点を措くとしても、上記2の事実によれば、上記3で検討したとおり、被告店舗における各使用商標の使用は、訴外会社の役務と混同を生ずるものとは認められない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 ⑵ 原告は、前記第3の2のとおり、本件審決には故意に関する認定に誤りがある旨を主張する。 しかし、上記3のとおり、本件では、混同のおそれが認められないから、故意の有無についての認定及び判断をするまでもなく、商標法51 2のとおり、本件審決には故意に関する認定に誤りがある旨を主張する。 しかし、上記3のとおり、本件では、混同のおそれが認められないから、故意の有無についての認定及び判断をするまでもなく、商標法51条1項の要件の該当性が認められず、原告の主張は前提を欠くものである。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 5 結論以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、各使用商標の使用は商標法51条1項の要件に該当するものではないから、同旨の本件審決は結論に誤りはなく、本件審決にこれを取り消すべき違法はない。 したがって、原告の請求には理由がないから、これを棄却することとして、 主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官中平 健 裁判官今井弘晃 裁判官水野正則

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