主文 被告人を懲役2年6月に処する。 理由 (罪となるべき事実)第1(令和6年2月13日付け起訴状公訴事実)被告人は、福岡県弁護士会に所属する弁護士として、合同会社Aから、B株式会社を相手方とする販売委託契約に基づく未払代金請求事件を受任し、その未払代金等の代理受領等の業務に従事していたものであるが、令和3年6月1日、福岡市a区bc丁目d番e号当時の株式会社C銀行D支店に開設されたE法律事務所預り口弁護士N名義の普通預金口座(以下「預り口口座」という。)に、Bから前記未払代金等の支払として882万9839円の振込入金を受け、これをAのため業務上預かり保管中、同月7日、9回にわたり、前記C銀行D支店において、自己の用途に費消する目的で、預り口口座から現金合計802万2380円を払い戻し(実際の払戻額は802万2799円)、もって横領した。 第2(令和6年4月24日付け起訴状公訴事実)被告人は、福岡県弁護士会に所属する弁護士として、株式会社Fの債務整理手続等を受任し、Fが有する売掛金の回収等の業務に従事していたものであるが、令和3年10月29日、株式会社C銀行D支店に開設されたE法律事務所弁護士N名義の普通預金口座(以下「弁護士口座」という。)に、前記売掛金の支払として合計368万3280円の振込入金を受け、これをFのため業務上預かり保管中、別表1記載(別表1省略)のとおり、同日から同年11月1日までの間、弁護士口座から現金を払い戻した上、福岡市a区fg丁目h番i号G等において、自己の用途に費消する目的で、H銀行株式会社I支店に開設された被告人名義の普通預金口座(以下「H銀行口座」という。)に入金するなどして、合計304万1570円(実際の入金等額は315万5550円)を着服し、 に費消する目的で、H銀行株式会社I支店に開設された被告人名義の普通預金口座(以下「H銀行口座」という。)に入金するなどして、合計304万1570円(実際の入金等額は315万5550円)を着服し、もって横領した。 第3(令和6年3月1日付け起訴状公訴事実) 被告人は、福岡県弁護士会に所属する弁護士として、Jに対する詐欺被告事件の刑事弁護人を受任していたものであるが、別表2記載(別表2省略)のとおり、令和4年6月3日から同月21日までの間、3回にわたり、福岡市a区bj丁目k番l号Kほか1か所において、株式会社L銀行に開設されたJ名義の通常貯金口座から現金合計150万円を払い戻し、これを前記Jのために業務上預かり保管中、いずれもその頃、福岡市a区bm丁目n番o号Mほか2か所において、自己の用途に費消する目的で、H銀行口座に、前記現金合計150万円のうち現金合計89万円を入金し、もって横領した。 (証拠の標目)省略(法令の適用)省略(量刑の理由) 1 本件は、当時弁護士であった被告人が、弁護士業務のために被害者3名から依頼を受けて保管していた預金を私的に流用したという業務上横領3件の事案である。いずれも常習的犯行の一環である上、弁護士に対する社会的信用を悪用した卑劣な犯行というべきである。中でも判示第3の犯行の内容は、被害者の刑事弁護を担当していた被告人が、勾留中の被害者から保釈保証金として託された預金に手を付けたというものであって、この種事案の中でも特に悪質である。 被害額は合計約1195万円と多額に上り、判示第1の被害者は会社経営に大きな痛手を被り、また、同第2の被害者は被告人に依頼した会社の債務整理が進められず、同被害者のみならず多数の関係者が損害等を被っている。さらに、判示第3の被害者に至っては、被 の被害者は会社経営に大きな痛手を被り、また、同第2の被害者は被告人に依頼した会社の債務整理が進められず、同被害者のみならず多数の関係者が損害等を被っている。さらに、判示第3の被害者に至っては、被告人が事件発覚を免れるために保釈請求を怠ったこともあり、約3か月間にわたって不当な身体拘束が続くという重大な人権侵害を受けている。後記のとおり、各被害者に対しては一定の被害弁償が行われているが、それでもなお、判示第1及び第3の被害者が、追加の被害弁償金の受領を拒みつつ、被告 人に対する実刑という厳罰を望んでいるのももっともである。本件の結果は重大である。 被告人は、ボートレース等のギャンブルで財産を浪費した挙句、更にギャンブルに使うためや、ほかの使い込みの補填をするために各犯行に及んだというのであり、身勝手な動機に酌むべき事情は全くない。しかも、被告人は、判示第1の犯行後、被害者に犯行を打ち明けて謝罪をしたにもかかわらず、その後も懲りずに同第2、第3の犯行を重ねており、厳しい非難を免れない。 以上の事情を踏まえれば、被告人の刑事責任には重いものがある。 2 その上で、被告人は各被害者に対する金銭的な被害回復に努めており、判示第3の犯行については、起訴分を含む流用金の返済を了しており、同第2の犯行については、起訴に係る被害弁償を了し、示談も成立している。また、判示第1の犯行についても、起訴前に支払った250万円のほか、被告人の供託等によって、被害者が受領意思さえ示せば、弁償金を受け取れる状態が整えられている。これらの事情は、財産犯である本件の量刑において重視すべきである。もっとも、判示第1及び第2の被害者らに与えた経済的打撃は今も尾を引いている上、同第3の被害者が受けた不当な身体拘束という被害は、そもそも金銭では取り返しがつかな 本件の量刑において重視すべきである。もっとも、判示第1及び第2の被害者らに与えた経済的打撃は今も尾を引いている上、同第3の被害者が受けた不当な身体拘束という被害は、そもそも金銭では取り返しがつかない面があり、これらの点も併せ考慮すべきである。 このほか、被告人に前科前歴がなく、事実を認めて反省の態度を示していることや、弁護士会から除名処分を受けるなどの一定の社会的制裁を受けていること、犯行の一因となったギャンブル依存症については治療プログラムを受けていること、情状証人として出廷した内妻が今後の監督を約束していることなどの事情も認められる。しかしながら、前記のような各犯情、とりわけ判示第3の犯行の悪質性や被害結果の重大性にかんがみれば、本件が刑の執行を猶予するのが相当な事案ということはできず、被告人に対しては、主文の実刑をもって臨むのが相当と判断した。 (検察官の求刑:懲役4年、弁護人の科刑意見:執行猶予付きの判決)令和7年4月21日 福岡地方裁判所第1刑事部 裁判長裁判官今泉裕登 裁判官西木文香 裁判官星野徹は、転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官今泉裕登
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