主文 被告人を懲役1年8月に処する。 未決勾留日数中150日をその刑に算入する。 (罪となるべき事実)被告人は,平成13年3月12日午後5時43分ころ,業務として普通乗用自動車を運転し,栃木県河内郡 a町大字bc番地先の交通整理の行われていない交差点を白沢方面から下岡本方面に向かい進行するに当たり,同所付近は最高速度が50キロメートル毎時と指定され,同交差点手前には横断歩道が設けられていたのであるから,指定速度を遵守するはもちろん,前方左右を注視し,同横断歩道付近を横断する自転車等の有無及びその安全を確認しつつ進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,時速約120キロメートルに加速して進行し,後続車を引き離した距離を確認しようとルームミラーに目を転じて前方注視を欠いた過失により,折から同横断歩道直近をこれに沿って右方から左方に向かい横断中のA(当時14歳)運転の自転車を前方約35.9メートルの地点にようやく発見し,急制動の措置を講じたが及ばず,同車の左側部に自車前部を衝突させ,同人を自転車もろとも跳ね飛ばして路上に転倒させ,よって,同人に脳挫滅の傷害を負わせ,同日午後6時50分ころ,宇都宮市所在のB救命救急センターにおいて,同人を上記傷害により死亡させたものである。 (法令の適用) 1 構成要件及び法定刑を示す規定の適用刑法211条前段 2 刑種の選択懲役刑選択 3 未決勾留日数の算入刑法21条 4 訴訟費用の処理刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)本件は,本件事故地点から,400メートル足らずの手前の交差点で,赤色信号のため一時停止した被告人が,信号に従いつつ急発進したところ,常とは違い後続車も引き離されることなく追従してきたため同車を引き離そうと考えて時速約120キロメートルまでに加速し,ルームミ ,赤色信号のため一時停止した被告人が,信号に従いつつ急発進したところ,常とは違い後続車も引き離されることなく追従してきたため同車を引き離そうと考えて時速約120キロメートルまでに加速し,ルームミラーに目を転じて後続車を引き離した距離を確認し,その後再び進路前方に目を向けたところ,約35.9メートル先に被害者を発見し,急制動をしたものの,停止可能距離になく,被害者運転の自転車もろとも跳ね飛ばして傷害を負わせ,約1時間後に死亡させた事案である。 被告人は,本件現場を日常的に通行していたもので,上記信号機の設置してある交差点から本件事故現場までの距離及び事故現場が通学路として利用されていたのを知悉しながら,時速約120キロメートルの速度で進行し,あまつさえ後続車を引き離した快感を確認するため,ルームミラーで後続車の動向を確認しようとしたため前方注意義務を欠いたもので過失の内容・程度は,悪質・重大である。生じさせた結果は前途を嘱望される14歳の中学生を死亡させ,その未来を断ち切ったもので,極めて重大といえる。加えて,本件過失には直接係わらないものの,眼鏡使用の条件に従わず運転行為に及んでいること,薄暮のなか他車がライトを点灯しているのにスモールランプしか点灯せずにいたことなどを見ると,日頃から自車の運行及び一般交通の安全を十分意識して運転に及んでいたのか疑義すらもたれるところである。そして,遺族は最愛の家族の故ない突然の死に驚愕し,満腔の怒りを表すとともに悲嘆の淵に沈んでいるのである。被告人の受けるべき非難は大きいといえる。なお,示談の話し合いは始まっていないものの,対人無制限の任意保険に加入していることから,これを被告人に不利益な事情とすることはできない。 他方,被告人は事故の直後から自己の非を認め,過失の内容・結果の重大性について反省 まっていないものの,対人無制限の任意保険に加入していることから,これを被告人に不利益な事情とすることはできない。 他方,被告人は事故の直後から自己の非を認め,過失の内容・結果の重大性について反省の情を披瀝していること,幼時に父と別れ中学校卒業後真面目に稼働し,母一人子一人の家庭の支柱になっていること,平成11年の交通違反歴1件のほかは何らの前科前歴もないことなど酌むべき事情も認められる。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑・懲役2年6月)平成13年11月16日宇都宮地方裁判所裁判官伊藤正高
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